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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』 その3

1『星見町案内板』:2022/08/03(水) 13:44:17
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/

580ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/17(月) 10:41:03
>>578-579

>『大事なものを失われた』?

>お顔は難しそうですか。『名誉』のため、といった趣でしょうか

「合っている。あんた……良い腕、だな」

目利き、と続けようとも思ったが。目立つ瞳のヴィジョンを前にして
露骨に仄めかしてるような気がしたので、その称賛のみに留める。

大事なもの・・・仲間、親友、後輩、友人、家族と等しい存在。
失った……いや、捨てたのだ。結果的に弱さから投げ捨てる素行に至った。
 そして、顔……何処まで、この占い師は見抜いてるのだろう??


>火傷ではない? やっぱり大怪我をなされている?

ビクッ……ギュウ

 後ろからの送られる資格も無い暖かい掛け声が、冷たい心臓を跳ね上げさせる。

喉元まで込みあげそうなものと、目に走りそうな熱を短く息を吸うと共に収める。

 「……」  スッ

そのまま、占い師の言われるがままに手相の為に手を提示する。

返事をする事は出来なかった。声を出す事が出来なかった。

 間違いなく、どう必死に抑制しようとも震える事が自覚出来たのだ。

581ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/17(月) 22:23:30
>>579(一抹)
「……もう少しかっこいい財布とか買ったらいかが?」
「運気の上がる……蛇革とか…」

そこまで言って、
『ガキが革の長財布とか持ってたらそれはそれでムカつくな』
的な顔で眉間を顰めた。

「あ〜〜……ドラゴン柄の子供用財布でいいんじゃないですか
 運気が超上がりますよ(たぶん。)」

>>580(ノエ)
「うふふ。ありがとうございます。」
「まだ名乗っていませんでしたね。
 『ラフィーノ』、とお呼びください。」

「それでは、失礼いたします…」
「『探し物』について、聞かせてください。」

『占い師』は『ノエ』の手に触れる。
『水晶の目のスタンド』は、
手、頭部、胸元……ノエの体のあちこちに視線を動かしている。
『運命』とかの意味深いものを視る、というより『変化をチェックしている』ような仕草。


「『あなたの敵』、に関係してない?」
「………不思議なくらいに見つからず、困っている?」

「あなたの手に描かれる、あなたが辿ってきた『線』……見えてきました……」
「危ない場所まで含め、方々を探してらっしゃるのですね」

「『一人では限度がありますよ、他の方に頼ればいいではないですか』

 ………とは言いませんよ。そのままで大丈夫……でも」

ここで占い師がノエを見つめる。
『水晶の眼のスタンド』は『ノエ』に手を伸ばしている。
このままでは触られそうだ。
ノエと一抹はどうする?

582一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/03/18(火) 03:00:34
>>580
「名誉…名誉か…。それは貴方のためではなく
 誰かのために捨てたのでは…?」

「気高い生き方をしてますね。
 流石に私はそこまで出来ない生き方だ」

憧れの混じった瞳でノエを見つめる。
少し昔に同じぐらい勇気を持った人間が居た。

「ちょっと前に絶対に勝てないと思われた戦い
 でスタンドに頼らず勇気のみでチャンスを切り
 開いた高潔なスタンド使いが居ました」

「小林 丈という人です。スタンドが近距離パワー
 型じゃないのに前線に出ちゃう方でした」

小林の事を語る時の一抹は誇らしげで優しいものだった。
血は繋がらずとも一抹は小林の事を兄として認めていたのだ。

>>581
「いいえ、このバリバリ財布は小学校の入学祝いに
 義父が買ってくれた物なんです」

「何の絵柄も無い無骨な財布でも私にとって掛け替
 えの無い財布なんです。ダサいですけど…」

「竜柄ってダサくないですか…?」

一抹は今一度、財布を愛おしそうに眺めてリュックにしまった。途中で日本中の男児をディスりながら。
『水晶の瞳』で一抹をチラ見するとノエとは反対に暖かな色が見えるだろう。

「『視る』というより『触診』に近いですね。
 健康に良さそうです」

スタンドがノエに触るのを眺める。
もし、仮にノエがスタンド能力による被害を受けたら教会の宿舎で寝てるスタンド使いを差し向けるだけだ。

583ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/18(火) 11:46:13
>>581-582

ノエの肉体・・・いや、表皮は作り変えられている。小林 丈が去った期間の間に
筋肉の付き方も聊か変わった。変えられなかったは、瞳、肉体の内部、そして心。

 >……でも

「幾つか、訂正…と言うよりも釈明させてくれ」

「そいつは、オレ、と言うよりも大勢の敵だ。
見ず知らずなら、動く事は無かった。でも、オレは知った。姿を憶えている」

「今のオレは、頼れる者は少ない。だから、貴方が本物なら
『ハイネ』と言う男の在り処を割り当ててほしい」

それが、オレからの唯一の望みで、頼みだと言葉を終える。
 伸ばされるスタンドの手に対し、動きはしない。オレにとって彼女は敵でない。
例え害があったとして、オレに避ける資格は無い。

 
>名誉…名誉か…。それは貴方のためではなく
 >誰かのために捨てたのでは…?

 「――絶対に 違う」

一抹の言葉に、断言する。

 もし、誰かのため、であると肯定を己がするのなら。
その瞬間、自分は自分自身を     殺すだろう。

 幾らでも、不合理な契約であろうとも、短絡的に命を投げ捨てて
自分の大切な者たちを悲しませる事が、それが善であったと、正義であったと謳うならば……。

「君が、何をオレに期待してるか知らんが……オレは只の住所不定で
脛に傷のあって、勝手に先ほど挙げた男に恨みを抱いてる屑だ」

 一抹に対し、背を向けたまま語る。

584ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/18(火) 23:42:04
>>582(一抹)
「あら。じゃあ大事にね。
 でもあんまり万札とか入れてるの見られるとカツアゲされるわよ。」

「あとね、大人になると、
 龍とかね…そういう子供っぽい柄が…イイなってなるの。
 いつか来るわよ。覚えときなさい。」

わたしの財布はキティちゃんのだわ。


>>583(ノエ)
「でも…………ノエさんは、そんな人では無いと思いますよ」

水晶の眼のスタンドは『ノエ』の肩に触れる。
冷たくも暖かくもない手。

「………不思議な手。
 『中指』の曲がり方は『ペン』を握っていた人の骨と爪です。」
 なのに『ペン胼胝』の形跡のない、荒れた皮膚。筋肉もです。」

「あなたの『中身』のかたは、勉強熱心で賢い方、と視えます……」

「で、外のあなたは『弱り過ぎ』。」


「後ろのガキの『スタンド使い』とかの聞きなれない言葉に突っ込みがない。
 ということは、貴方は『滅茶苦茶弱ってる人』、
 もしくは、『滅茶苦茶弱ってるスタンド使い』。」

「そんな状態じゃあ『ハイネ』とやらと戦うのは、ままならなさそうね。」
「あなたの『旅』はここでお終い。それでいいんじゃない?」

試すような口ぶりの『占い師』。
水晶の眼のスタンドは、君の『フード』に手をかけている。

585一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/03/19(水) 01:11:57
>>583
「例え相手を恨んでいたとしても貴方のそれは
 義憤なのでしょうね」

「そのハイネってどんな人物なのでしょうか?
 一応、アリーナに属してるから戦う可能性
 あります」

「まぁ、その前に私が得た知識を餌にして義兄
 の呪縛を解く方が先になると思いますが」

七篠さんから聞いた『夏の魔物』討伐に関わったスタンド使い全員のスタンド能力を最中派に教えろという暴挙。
私はそれが許せなかった。

>>584
「いや、案外ブランド物を使ってそうですね。
 アリーナの案件で稼いだお金義父母に使って
 私を拾って良かったと言えるようになりたい」

残念ながら教会に休みが無い。
祖父に直接悩みをぶつける人も多い。

「一度だけ不良達が襲ってきましたが返り討ちに
 しました。やっぱり暴力は手っ取り早い」

586ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/19(水) 17:43:57
>>584-585

語りかける彼女(ラフィーノ)に対し、ノエは自分から動きはしない。
 フードにかけられた手も、ノエは自身の力を明かしてまで振りほどく事は無い。

「…オレは、個人的に占い師って言うのは」

「悩みや迷いを携えた人を助言するのものであって、弱さを支えはすれど
揺らしたり負荷を拍車するのは、お門違いだと思うんだがな」

 包帯で、表情の変化は読み取れずとも。その声色や、琥珀の瞳には
幾らかの冷ややかさが混じっているのは占い師じゃなくとも読み取れるだろう。


 「…………」……フゥ


「何でもかんでも、楽な手段(暴力)で済ませれば。
いずれ一番痛いひっぺ返しが来るとオレは思うがな」

 後ろの少年。そう、『初対面』の彼に年長者からの老婆心めいた一言だけ返す。

ハイネについては、知らせる気は無い。巻き込む気は無い。

渦中に、なし崩し的に事故か運命の悪戯で居合わせるなら全力で死守をするだろう。

だが、接点を極力作ろうとノエは考えないし、望まない。

587ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/19(水) 21:41:08
>>586(ノエ)
「お門違い……ふふ……他にもあるわよ。『占い師』は人の素顔をむやみに暴き立てない。」

水晶のスタンドは、ノエのフードから手を放す。
ため息をつくと姿勢を崩し、机の下に片手を突っ込む『ラフィーノ』。

「……その通り、お門違いなのよ」
「『スタンド使い』ならわかるでしょ?わたしのこれは『手品』に近いって。」
「私の言う事にあなたビックリしてたけど、あれも『話法』。」

「………まあ、だから……
 『敵』『ハイネ』とやらの場所は、わたしの目では分からない……本当にごめんね。
 あとあんたの手相ムズすぎ。生命線ブチ切れてんだけど。いっぺん死にました?」

    はぁ〜〜〜〜〜〜〜ッ

 嘆息。
 取り出したるは『タロットカード(大アルカナ)』。
 札をを机の上に無作為に散らし、混ぜ始める。

    シャカ  シャカ シャカ
 
「じゃ、無用なアドバイスはここまでにして、
 探し物は『神』にでも聞いてみましょうか。」

「あと『過去』『現在』『未来』どれがいい?」

>>585(一抹)

「うしろの暴力的な子供!手伝いなさい」
「ほら……机の上のこれ。一緒に混ぜて」

「あんたも。『過去』『現在』『未来』どれがいい?」
「一緒に神に聞いてみましょ」
「いまの子供って神とか信じてるの?わたしはいまいち信じてないんだけど」

588一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/03/20(木) 02:45:49
>>586
「一回不良をぶっ飛ばしたら十人で来てスタンド
 でも無理な人数には参りましたね。
 捕まってた所を鷲見くんに見られてなきゃ指の
 爪全部剥がされてましたよ!」

スタンド使いでも一気に十人も来れば苦戦するものだ。
本気を出して『慈悲の刃』を振るえば、話は違うが最後まで一抹は刃を抜くことは無かった。

「うーん、まぁ、私が情報を集めなくてもアリー
 ナが討伐依頼をしてくると思いますが…」

「ん? 黙っていてもアリーナが討伐依頼しそうな
 危険人物の情報を探しているって、お兄さんは
 アリーナに所属していない?」

>>587
「全部の生命線が切れてるって安倍晴明もビックリ
 ですよ!」

石繭の言うとおりにタロットカードを混ぜていく。
小学生の身長なので背を伸ばしてギリギリのところで踏ん張る。

「神様ですか? 聖職者の義父母は信じてるようで
 すが私は信じてませんね。
 ただ…1人歩きするスタンドが凄まじい能力を
 もってたり、死者が悪霊となっていた事件が
 あるのでスタンドが神様になるんじゃないか
 ってことだけは信じてます」

「私は『未来』を選びますね!」

589ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/20(木) 18:58:15
>>587-588

>あれも『話法』

「話法だけで、最初にオレが占って貰いたかった事が、敵の事だとわかったのか?」

それとも、自分が分かりやすい態度だったのだろうか? なら、今後においても
気を付けるべきだろう。

 生命線などの、余計な話については返答はしない。
占いの力が無く、ペテンに近いのなら、これ以上無駄に自分の事を深堀り出来る
要因をわざわざ作る気は無い。特に、彼が直ぐ傍に居るなら猶更だった。

「…『神』か。…………『未来』について、聞かせてくれ」

『魔物』なら、自身が別の姿形の頃に別々の形で遭った。
 
もっと昔にも、神懸った力の幼馴染が居た。
 でも、今となってはそれを証明する術は無い。


「オレが何かしらの組織に入ってるなら、もっと身なりの良い服だろうな。
…………オレがアリーナとやらに入るか入らないのは、オレの自由だろ?」

淡々と、そう雑談を続ける調子で返す。
 話し続けると、何処か気が変になりかける。それでも、胸を締め付ける感覚は
自分自身の罪で、未だ自分が弱いままな事を証明している。
 理性は、正直に全て告白するべきだろう。と告げる囁きもある。

一方で、それを頑なに否定で覆う叫び声が轟いてるのも確かなのだ。

590ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/21(金) 13:53:23
>>589(ノエ)
「当て勘。あなた『若き追跡者』って感じだから。
 『愛する人を失った』パターンかもと思ったんだけど、
 そのパターンの場合は、それを為した『敵』がいる場合も多いじゃない?
 意味を広く取れる質問をするのが占い師の基本よ。」

「他にもあるわよ。例えば………」

「『それは、愛する人に関係していない?』」

「文末が『ない?』ってのが重要なのよ。
 ……YesでもNoでも当たった感じするでしょ。」
「で、大外れしたときは
 『……あなたの感情が大きすぎて、愛と憎しみの見分けがつかない…
 あなたをそこまで狂わせる事柄があったんですね』……とか言っとけばいいの」

「………実際はどう?愛する人とかいました?」

  シャカ シャカ

「ノエさんの未来から引きましょう………えいっ」

占い師がカードを引いた。

「『正義』の『正位置』。」


>>588(一抹)
「あんた相当ヤバいわね……」

さっきから出てくるエピソードにドン引きしっぱなしだ。
でも机に手が届かないのとか年相応でカワイイわね、少年…。

「『討伐依頼』!?『アリーナ』ってそんな事もしてるの!?」
「『観客』としてしか行ったことなかったから……
 しかもわたし『スタンド使い』じゃない頃に闇金持ちの誘いで行ったんだけど」
「『過激ですごい手品だなぁ〜』としか思ってなくて……マジの厄ネタじゃない……なによ討伐依頼って…」

 シャカ シャカ

「あんたのも引くわよ……そりゃっ」

占い師がカードを引いた。

「『女教皇』の『正位置』。」

591一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/03/22(土) 03:26:21
>>589
「組織に入るとしがらみがキツかったりしますか
 ね。私は知らない間に『アリーナ』の最中派
 というカスの集まりに取り込まれましたが…」

人員が明らかに足りてないのが分かるが試合をしただけで最中派に属したことにされた時は殺意を覚えた。
今も碌でもない試合をしているのは確実だ。
あのヤミーというカスも始末しなきゃいけない。

>>590
「明らかに大量殺人やエクリプス残党やらが登場
 した時はアリーナが直々に潰しに向かうよう
 です。私は知らない間に巻き込まれたタイプ
 ですから参考にはなりませんが…」

アリーナのエクリプス残党を殲滅しようとする意思は非常に強い。
だが、夏の魔物のように密かに犠牲者を出すタイプの相手には腰が思い。

「『正義』の『正位置』と『女教皇』の『正位置』
 では、解説をお願いします」

「クラスの女の子に占われたりしましたがまったく
 分かりません!」

592ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/22(土) 11:33:12
>>590

>それは、愛する人に関係していない?

 「――いないよ。『オレ(ノエ)には』愛する人は居ない」

その質問には、躊躇うことなく告げる事が出来た。
 
誰かを命がけで愛せたのも、守ろうとした想いも。ソレはオレではない。
ノエは、ノエのままに街の人たちは守る。当然、目の前の占い師も
傍に居る彼も。躊躇う事なく、エクリプスでもアリーナであっても、だ。

 「……まぁ、一応妹のような存在は居るがな」

間借りしてる家主当然の、交換の出来る小さな娘を思い返す。
最近だと、タイミングが悪いのか顔を合わせる機会が少ない気がした。
 ちょくちょく家に足を運び、生活痕はあるので、問題ないだろうが。

「『正義』……か」

公平さ、協調性、意味合いは色々ある。未来の暗示と言うならば……。

「…………仲間を募れ、または人と人との繋がりを大事に、って所か?」



 「…………」

彼(一抹)のタロットを一瞥し、僅かに目を細めて銀色を一瞬移すものの
何も言う事なく占い師へと顔を戻した。

593ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/22(土) 23:34:34
>>591(一抹)
まかせろ。解説してさしあげましょう。

「まだ見ぬ未来。次の段階への移行。」

「また何か大がかりなことに巻き込まれるんじゃない?
 いまはその幕間、静かな時間ってことなのかも。」

「あなたの場合……今は落ち着け!
 いまは心を静め、夢、予感、直観に目を向けること。」

「『女』。クラスの女の子が言ってたこととか重要……かも?」

「探し人であれば、待ちましょう。ただ、『予感』はすぐそばにありそう…」

ちょろっと『ノエ』の方を見る。
なんか運命的に集った二人、って感じだけど、
わたしが突っ込まない方がよさそう。

>>592(ノエ)

「ちょっと待ってね、デッキと対話します。
 ……インチキ占い師がなんか言ってるとか思うでしょ?
 いや案外これが大事なのよ。」

剣と天秤を持った神の絵を眺める………。

「………まんま『正義』と『判決』の暗示よね。」
「その探してる『敵』がマジの悪なら、大丈夫そうね。裁きが下る。」

「気を付けるべきは……あなたも正しい道を行くこと。
 道徳に従いなさい。業……カルマがあるなら、清算するべし。」

「……仲間ねえ。いつか、そうしなさい。
 あなたが、そういう…人間との関わりに、後ろめたいことがあるなら。」
「急ぐ必要はないけど、このままじゃ『敵』と一緒に滅びますよ」

「…………そんな所かしら。」

594一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/03/23(日) 05:37:38
>>592
「妹……妹…? 義理のでしょうか?
 一人っ子だから妹や兄が居る人は羨ましいなぁ〜」

こうしていると義理の兄である小林先輩は得難い人だった。
死体が見つかるまで死んだなんて絶対に認めないが…

「そういえば、ヤジさんも見かけないな…」

太陽の如く眩しい人だったが小林先輩の疾走後から彼も姿を消してしまった。
彼も小林先輩を探してると信じたい。

>「『女』。クラスの女の子が言ってたこととか重要……かも?」

クラスの女の子…探偵らしい女の子が居るらしいが信じて良いものか…

>>593
「まだ見ぬ『未来』ですか。夏頃になると恐ろしい
 事件に巻き込まれるんですよ…」

「まぁ、夏まで時間は有るので風歌さんを社会復帰
 させてあげようかな?」

風歌さんもアリーナに拾われたらしいがちょっと心配ではある。
しかし、自分と同じくしぶといので心配は要らないだろう。

>「探し人であれば、待ちましょう。ただ、『予感』はすぐそばにありそう…」

ジッ、とノエを下から見つめたまま動かない。
そういえば、この人について全然知らない…

「お兄さんのお名前は? 普段は何を?」

軽くフードのお兄さんに探りを入れる。
言われてから思ったが凄く怪しい。
そもそも格好が怪しい…

595ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/23(日) 12:01:34
>>593-594(もし宜しければ、残り1、2レス程でこちらは離脱させて頂きます)

>カルマがあるなら、清算するべし

「……山積み、だな」

 懺悔で済むものでは無い。少なくとも、表を堂々と歩める程に
今の自分には、力が足りない。
 全てを自ら捨てて、その中で、か細く残る因縁が。この故郷と言って良い
場所を静かに蹂躙しようとしているからこそ、決着をつける事を優先してるだけだ。

 ……それが終えたら?

 「……滅びる時か。備えておくよ」


 >お兄さんのお名前は? 普段は何を?

「……オレは、ノエだよ」

「ただの……不審者で……そうだな……手前勝手な理由で
一人の男を追う……ただの浮浪者だ」  フゥ・・・

 静かに、幾つもの想いを最後に吐息に載せて呟く。

オレには、彼に何かを伝える資格は無い。持つことは許されない。

 ふとした拍子で、沈めようとしていた小さな細工のような欠片が
顔を覗かせて、その衝動が手探りに腕を浮上させて伸ばしかけようとするけれど。

 「……一つ、聞かせてくれ、少年」

「…………オレは、探してる人間を討とうとしている。少なからず悪だと
オレは知っているし、それを執り行う事に迷いはない。
……君は大切な人を探してる口振りだが」

「…………その人物が予想と違った形で再会すると思わないのか?
つまり、だ……」

「……君を、そいつが邪険にしたり、突き放したりだとか。
或いは誰かの命令などで敵になってるかも知れないだろ?
 そう言う不安は無いのか?」

596ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/23(日) 21:07:57
>>594(一抹)
>>595(ノエ)
少年たちを眺める。
絶対になんかある二人だけど、
二枚の未来の暗示を信じるのであれば、
『今はまだ』、しかし『いずれ機会が訪れる』。

関わりあいにはなりたくないわね。危険な香りしかしない。
わたしとこいつらの直近の未来もまとめて聞いてみますか。デッキに。
占い師はカードを1枚引き…………

  はァ〜〜〜    ポイッ

デカい溜息をついて、札を机に放り投げる。

「…………はぁ〜〜〜〜。あ〜あ!アホらし」
「暗示なんてね。何にでも当てはまる事が書いてあるだけだから」

「二人ともアテにしないように。『当たるも八卦当たらぬも八卦』よ。」

『月』の『正位置』

「『未知の事態が迫る』『神秘に目を向けろ』『不思議なもの』」
「だってさ。さあ帰った帰った。月が私たちを見てるわよ。」

勘弁してちょうだい。

597一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/03/25(火) 21:56:53
>>395
「何の手段で他者を討つべきとノエさんが決意した
 か、それ次第です…」

ノエさんが討とうとするなら多少なりとも悪だろう。

「…………その人物が予想と違った形で再会すると思わないのか? つまり、だ……」

「……君を、そいつが邪険にしたり、突き放したりだとか。
或いは誰かの命令などで敵になってるかも知れないだろ? そう言う不安は無いのか?」

「邪険にされた分だけ甘えて甘やかします!」

「小林先輩が無理して悪役になりきろうとしたら
 バトルしても連れ帰るに決まってますよ!」

「小林先輩がまったくの別人なろうとも、私が
 愛してあげるだけです!」

「ノエさんも義理の家族だろうが愛しますよね?」

>>596
『月』の『正位置』

>>「『未知の事態が迫る』『神秘に目を向けろ』『不思議なもの』」

「まるでスタンドバトルに出くわすみたいですね。
 あの、ちょっと、石繭さんは戦闘経験とかあり
 ますか…」

「ちょっと私たちの暗示が怖いのですが…」

598ノエ『ゼロ・モーメント』:2025/03/27(木) 12:27:41
>>596-597(離脱させて頂きます。長らく、お付き合い有難うございました)

>邪険にされた分だけ甘えて甘やかします!

>無理して悪役になりきろうとしたら
 >バトルしても連れ帰るに決まってますよ!

>まったくの別人なろうとも、私が愛してあげるだけです!

 ――嗚呼・・・

 「……そうか」

 >義理の家族だろうが愛しますよね?

 「…………それは、その状況次第だろうな」

また、オレは嘘をつく。太陽に向けて、嘘を吐き続ける。

それが、月と共に滅ぶ切っ掛けになろうとも。


 「……占ってくれて、有難う」

「……もう行くよ。……気を付けて、二人とも帰れよ」

 裏路地の暗い奥へと歩いていく。深く、今は深く闇に沈む事にする。

 再び太陽を、オレは目に出来た。それだけで、オレはどんな煉獄の
未来(さき)でも泳げる、泳ぎ切って見せる。

599ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2025/03/31(月) 05:11:40
>>597(一抹)
「『戦闘経験』?あるわけないじゃない。
 …チラっと言ったけど、『スタンド使い』になったのだって、ほぼ最近の話よ」

占い師は顔を顰める。

「でもね………奇妙な事は、仕事柄とかでね。ちょっと、いえ、そこそこ。」

「で、あなたの近くにいると
 『巻き込まれる』気がする!!そういう感じの暗示!」
「信じたくねえ〜〜でもこういうのって当たるのよね〜〜勘弁しろ〜〜〜〜」
「本当に嫌なのよ……そういう…怖いのとか、オカルトとか……。」

『占い師』にあるまじき発言をしながら、
机の上を片付け、立ち上がり、看板を畳み始める。
今日は『店じまい』。

>>598(ノエ)
「ありがとうございました。どうかご無事で。
 そして、何かあっても私は巻き込まないでね!
 占いならまたしてあげてもいいけど…」

「解散!帰りましょう。夜が深まる前に、愛しき我が家とか、闇とかに…」

でかいキャリーケースに収めるものを収める物を収め、
占い師も立ち去る。

600一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』:2025/04/14(月) 06:03:06
>>598
「血の繋がりより相互理解が大切です!
 私は危険を承知でぶっこむタイプ…」

「何せ、助けてくれるのは義父母ですからね!
 そして、義兄もいる。私は幸せ者です!」

暗闇に戻る彼を敢えて止めなかった。
スタンド使いは絶対に引かれ合う。
追わずともいずれは…

>>599
「そうですか、そうですか…」

「私は巻き添えを受けるか、依頼を受けるか。
 玄関を開いただけでバトロワが始まったのが
 懐かしいな〜ッ!」

四人とも承知してバトルしたのが懐かしい。
石繭さんも私と出会ったからには地獄行き決定。

「じゃあ、また会いましょうね〜!
 願わくば戦場で闘士として!」

本人は呪いとして認識していないのがまた恐ろしい。
今確実に石繭は呪いを受けたのだから…

601美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/04(水) 17:11:18
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1688977700/232-234)から

>(林檎)

一日の仕事が終わった後でタクシーを拾い、バー『黒猫堂』に向かう。
普段は愛車の『ベスパ』で移動することが多いものの、
酔ったまま運転する訳にはいかない。
ここを訪れたのは『お酒を飲むため』でもあるのだから。

       ザッ

           「こんにちはぁ〜」

入店し、空いている席に座りつつ、出勤しているはずの『林檎』を捜す。
今日も『アメカジ』で来たが、いつものスタジャンではなく、
男物のジップアップパーカーを羽織っていた。
いつもよりメンズライクなシルエットは『彼氏の服を借りた』姿に近い。

602猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/05(木) 20:20:50
>>601

『チリンチリン』

扉を開けた美作を迎えるのは、黒を基調とし、和風とモダンを融合させた『黒猫堂』のインテリアだ。
受付に訊ねると、既にテーブル席が用意されていたようだ。
まだ誰も腰掛けていないそこに美作が座ると、他のお客様と話していたのであろう林檎が、
遠くの席からにっこりと笑顔を浮かべて歩いてきた。

「いらっしゃいませ、くるみさん。またご来店して頂いて、あたしもとっても嬉しいの。
 ぜひとも今夜も、楽しんでいってね」

両手をぎゅっと握りながら、首を傾げる。
林檎の服装は、いつも通りの彼女の制服である『和ゴス』だ。
黒猫堂と和の雰囲気を合わせつつも、他の店員にはないゴシック風のカラーリングやデザインが特徴的である。
今回は青や紺を用いたデザインで、大きな袖には『紫陽花』の刺繍がある。

「それと、お土産ありがとう。さっきお店を開く前に、みんなで軽く頂いたわ。
 とってもおいしかったから、ちゃんとお礼を言っておいてって頼まれたの」
「それでは、失礼するわね。…ふふ、今日もくるみさんはカッコいいわ。
 そのステキなお洋服は、くるみさんの?それともどなたかからお借りしているのかしら?」

そう訊ねながら、美作の隣に座った。こういう時に断りを入れないのが林檎のスタイルのようだ。

603美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/06(金) 16:56:21
>>602

ここを訪れるのは久し振りだが、改めて感じたのは、
歓楽街に軒を連ねる他の店と一線を画した趣向だ。
それは『プロデュース』にも通じる。
だからこそ、多くの客を獲得しているのだろう。

      「――――どうも」

いわゆる『和モダン』に分類されるであろう内装を眺め、案内に従って着席した。
林檎の姿を認めると、軽く片手を振りながら、今日の着こなしを観察する。
やがて目を留めたのは『紫陽花の刺繍』。

「こんばんは、林檎さん。
 皆さんにも喜んでもらえたなら、私も送った甲斐があったわ。
 色々と話したいことがあるんだけど、
 林檎さんの言う通り、まずは楽しまなくっちゃね」

           ────ニコッ

「ええと、『ミモザ』を貰えるかしら?
 それから、何かおつまみを見繕ってくれる?」

林檎が隣に座ると、明るい笑顔で飲み物を注文する。
『シャンパン』と『オレンジジュース』を1対1で割ったフルーティーなカクテルだ。
その名が表すように、『ミモザの花』を思わせる鮮やかな黄色に仕上がるだろう。

「『空織さんに頼んだ物がある』って話したことを覚えてる?
 実は、この『パーカー』をお披露目したくて」

        スゥッ

林檎から見えやすいように立ち上がり、
黒いジップアップパーカーの『胸元』を指し示す。
左胸には『ライオンの刺繍』が入っており、
その『たてがみ』は『蜘蛛の巣』によって構成されていた。
かなり凝った意匠だ。

           キラッ

               キラッ

さらに、用いられているのは単なる糸ではなく、
『シルク糸』に『錫合金糸』が『バネ』のように巻き付く形で、
1本の糸として仕上がっている。
この世に存在しないはずの『全く新しい縫い方』。
極めて精緻に織り込まれた『刺繍』は、
まさしく『神業』と呼べる完成度で、芸術的な存在感を湛えていた。

   「それから『こっち』もね」

                  クルッ

軽やかに背中を向ければ、そこには『別の刺繍』が施されていた。
『女性と蜘蛛が融合した怪物』――『アラクネ』が中心に鎮座し、
その周囲に『魔法陣』が描かれている。
また、『蜘蛛の足』には『引き千切られた鎖』が繋がっていて、
『胸の刺繍』と合わせて、一つの『物語』を感じさせるデザインだ。

(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1658664736/272)

「この『刺繍』は、私と空織さんでアイデアを出し合って考えたの。
 私の『コンセプト』を、空織さんの『才能』が実現してくれたのよ。
 林檎さんなら分かってくれるでしょうけど」

『才能』――すなわち『エラッタ・スティグマ』の『能力』の産物。

「これには『ストーリー』があるんだけど、よかったら話しましょうか?」

再び座り直し、林檎に向き合う。

604猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/06(金) 21:14:35
>>603

>「ええと、『ミモザ』を貰えるかしら?
> それから、何かおつまみを見繕ってくれる?」

「はぁい」

林檎は頷いて、細身な黒髪のバーテンダーに注文を伝えた。彼は頷き、カクテル作りに取り掛かる。
間も無くテーブルに『ミモザ』か届くだろう。ひらひらと衣服を揺らしながら、林檎も席に戻ってきた。

「えぇ、もちろんよ」
「くるみさんから『服飾関係』のお知り合いをたずねられた、あの件でしょう?」

そう答えた林檎の伏し目がちな瞳が、『パーカー』のデザインを見て大きく見開かれた。
まず左胸の、ライオンの刺繍。ライオン自体はデザインのモチーフとして珍しくはないが、
その『たてがみ』が蜘蛛の糸によって構成されているのは珍しい。獣と虫の組み合わせというのも斬新だ。

「…すごい…」

普段より少しだけ低い声のトーンで、呟いた。

「ね、ね。触ってもいいかしら?」

案の定、答えを待たずに独特な織り方のなされたたてがみの糸に触る。
当然ながら、人生で初めて見た縫い方だ。服については一家言のある林檎も興味津々と言ったところだ。
そうして美作が背中を見せれば、今度もまた林檎の笑顔が溢れる。
写真を撮ってもいいか、と興奮気味の少女が訊ねた。

「あぁ、なるほどね。清次さんの『才能』あってこそ、の作品なの。
 どうりで見たことのない作りだと思ったわ。えぇ、本当にすばらしい作品よ」
「もちろん、くるみさんの『デザイン』もあってこそ、だけれど」
「背中の…『アラクネ』、でよかったかしら?このデザインは、特に目を引くわ。
 もちろん、くるみさんがお手数でなければ。ぜひ、お聞かせ願えるかしら?」

ずい、と林檎が身を乗り出し、美作の顔に近付く。時を同じく、テーブルに『ミモザ』が届いた、

605美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/07(土) 17:10:46
>>604

職業柄、『声の変化』には敏感だ。
林檎が発した『低い声色』にも気付くことができた。
しかし、あくまでも『刺繍に対する反応』なのだろうと判断し、
それ以上は考えが及ばない。

               ────ソッ

林檎の指先が触れると、金属特有の冷えた感触が伝わる。
『金属糸』を用いた衣服は他にも存在するが、
ここまで複雑に織り込まれた前例はないだろう。
服飾の知識を持つ林檎には、
素材の異なる『2種類の糸』が生み出す『コイル構造』が、
『着用者の動きやすさ』を考慮した工夫なのだと分かった。

「あぁ、それじゃあ先に『写真』を撮りましょうか。
 『刺繍』の出来栄えが凄いのは当然だけど、
 それを着こなす『モデル』の方も負けてないはずよ」

    スッ

「それに、私も林檎さんと一緒に写りたいわ」

自分のスマホを取り出し、林檎に微笑んでみせる。

「林檎さんと私の『ツーショット』を、空織さんに送ってあげましょう。
 彼も林檎さんには会いたがってたから、きっと喜ぶんじゃないかしら」

           パシャッ

林檎に歩み寄ると、身体を寄せ合ってシャッターを切った。
その後、林檎の求めに応じて、即席の『ファッションモデル』を務める。
こうして、それぞれの『写真撮影』はスムーズに完了するだろう。

「まずは『アラクネ』――それをモチーフにした『女悪魔』から始めましょう」

そう前置きしてから、『刺繍』に込められた『ストーリー』を語り始める。

「『天才的な織手』だった彼女は、
 人の身でありながら『女神』に『織物勝負』を挑み、
 戦いに『勝利』したことで逆鱗に触れ、『傲慢の烙印』を押されてしまった。
 『罪深い者』として奈落の底に幽閉され、『鎖』で拘束された身体は、
 半身は『人間』を保ちながら、もう半分は『蜘蛛』に変じ、
 いつしか『悪魔』と成り果てる」

「でも、『悪魔』になったことで、『新たな力』を得ていたんでしょうね。
 長い時間を費やした末に、ついに『忌まわしい鎖を引き千切った』」

話の合間に、『刺繍』に使われた『糸』を指し示す。

「『シルク糸』は『蜘蛛糸』を、『金属糸』は『鎖』を表現してるのよ。
 己を縛る『枷』さえも取り込んで、
 自らの『力の一部』にしてしまう力強さを表しているの」

               クイ

手元に置かれたグラスを手に取り、おもむろに口をつける。

「自由の身になった彼女が望むのは『女神に対する復讐』。
 だけど、拘束を破るために消耗してしまったから、
 『女神』に挑むには『まだ力が足りない』」

「そこで、彼女は『現世の人間』を利用することにした。
 自分と波長が合う『自尊心に満ちた人間』を」

いったん話を区切って、つまみとして出された『チーズ』を手に取った。

606猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/08(日) 20:59:05
>>605

刺繍の感触を確かめて、林檎がふぅと感嘆のため息を漏らした。

「…美しいわ」

『錫合金糸』による煌めく美しさと、『シルク糸』による着心地を両立させている。
まさしく『エラッタ・スティグマ』にしか不可能な技だろう。
一緒に写真を撮ろう、という美作の提案にこくりと頷く。

「もちろん、着る人あってこその『ファッション』よ。衣服を飾るだけなら『マネキン』でいいわ」
「その点で言えば、くるみさんはこの『パーカー』に勝るとも劣らない『カッコよさ』をお持ちですもの」

>「林檎さんと私の『ツーショット』を、空織さんに送ってあげましょう。
> 彼も林檎さんには会いたがってたから、きっと喜ぶんじゃないかしら」

「あら、お世辞でも嬉しいわ。あたしも清次さんがお元気かどうか気になっていたの」
「あのひと、ふとした拍子に倒れてしまいそうな雰囲気があったから」

まずは身体を寄せて、斜め上から他のお客様が映らない画角で一枚。
そしてそこからは、美作を立たせてポーズを取らせたり、椅子に腰掛けさせまたポーズを取らせたり。
一つのポーズにつき何枚か写真を撮り、そして最後に『パーカー』の正面と背後の接写を撮った。
林檎はにこにこと笑みを浮かべ、満足そうだ。
そして二人は再度椅子に座り、美作の語りが始まる。

「───────────────」

流石は普段から『語り部』をしているだけあり、引き込まれるような話し方だ。
もっとも話の腰を折ることになるので、それを口にするのはやめておいた。
やがて一旦美作の話が一段落ついたところで、初めて口を開く。

「たいへん興味深いお話ね」
「彼女が手に入れた『新たな力』…それはあたしたちの持つような『それ』だったのかしら?」
「だとしたら、昔のお話に出てくるような不思議な人たちは、みぃんなあたしたちみたいな存在だったりして」

などと、取り止めのない感想を呟く。

「『復讐』…そうでしょうね。勝負に勝ったことで、恨まれてしまうなんてあまりに理不尽だもの」
「それにしても、こんなにおもしろいお話が聞けるなら、コーラとポップコーンでも持ってくればよかったかしら。うふふ」

607美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/08(日) 23:50:17
>>606

『空織清次』という人間に対する所見は、概ね林檎と同意見だった。
久し振りに顔を合わせた時も『二日酔い』だったことを覚えている。
そんな状態でも仕事をこなしてくれた所に、同じ『プロとしての矜持』を感じたが、
やはり心配な部分があることは否定できない。

「空織さん、ちょっと飲み過ぎちゃうみたいね。
 ここに来ることがあったら、林檎さんも気を付けてあげて」

おそらく『何か』あるのだろうとは思いつつ、今に至るまで深入りはしていないし、
今後も必要がない限り言及するつもりはなかった。

「林檎さんに褒めてもらえると自信が付きそう」

         フフッ

摘んだチーズを齧り、柔らかく微笑む。

「林檎さんの言うように、『女悪魔』が手に入れた『新たな力』は、
 『織手としての才能』を昇華させたものだったの。
 半身が『蜘蛛』に変じた彼女は、自らの『魂』を『糸』に込めて、
 『凄絶な美しさ』を持つ『織物』を完成させた。
 その『悪魔の織物』を、自分と同じく『誇り高い心』を持つ人間に授けたのよ」

再びグラスを持ち上げ、それを手の中で弄ぶ。

「ここで、物語は『次の段階』にステップアップ。
 命懸けで織り上げた『最高傑作』を通して、
 地の底から響くような声で『女悪魔』は言ったわ」

         スゥゥゥゥ…………

そこで深呼吸を挟み、美作の『声色』が変化する。

「心して拝領し、神の創造物を上回る『尊き美』を知らしめよ。
 我の『伝道者』に選ばれた栄誉に心服し、終生の忠誠を誓うがよい」

威厳を湛えながらも艶めかしい声は、聞き手に『気高い女悪魔』を想起させるだろう。

「『現世』において、人間達から『信仰』を集め、収穫した『信仰心』を我に捧げよ。
 それらは我の『力』となり、再び『女神』に挑む足掛かりとなるであろう。
 『収穫』を完遂した時こそ、我が『報復』を為さん」

これらの『台詞』は、中途で頓挫してしまった『魔法使い試験』において、
美作が『女悪魔』を演じた時のものだった。

「『現世』に蔓延る人間達よ。
 我を崇め、讃え、跪くことこそ『至上の美徳』と心得るがよい。
 汝らの『信仰心』と引き換えに、大いなる祝福を授けてくれよう」

   その『幻の悪魔』の名は――――――

       「我が名は『グリジルダ』。
        稀代の『織手』にして、誇り高き『悪魔』である」

最後の一節を終えると同時に、美作の唇とグラスの縁が軽く触れ合った。

608猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/09(月) 22:07:50
>>607

「そうね、一度お酒を飲んでいる清次さんも見てみたいわ。
 今度お会いした時に、来ていただけるようお誘いしてみるわね」

職業柄、一度お酒を飲む姿を見ていれば、その人がお酒に強いか弱いかは大体分かる。
何となく彼はお酒に弱そうな気がする、とも林檎は思った。
飲んで頂けるのは助かるが、それでも知り合いの弱っている姿は見たくない。
もし店に来ることがあるなら、その前に止めておかなければ、と一人決意する。

「なるほど。世の中には、とある『美術品』を取り合って争いが起きる事件が古今東西あるようですけれど。
 その『女悪魔』の作り出した『織物』は、それに匹敵するような作品だったのね」

美作の声を聞きながら、相槌を打つ。
実際に聞いたことはないが、『オペラ』とはこんな雰囲気なのだろうか、と感じた。

「『信仰心』が力になる、というのはなんとなく分かるような気はするわ。
 どんな『神様』でも知るひとが一人もいなくなってしまったら、なにもできなくなってしまいそうだもの」

自ら『史上の織物』を生み出すことにより、自分を慕う存在を集めるというのは理に適っている。
もっとも、物語であるならば。『悪魔』と取引して無事で済んだ人を見たことはないが。

609美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/10(火) 16:21:04
>>608

さすがホステスだけあって、林檎は『聞き上手』だ。
こちらもついつい饒舌になって、なんでも打ち明けたくなってしまう。
外見や仕草から感じ取れる愛らしさだけではなく、
この辺りも人気の理由なのだろう。

「『悪魔』というと『悪者』のイメージが強いけど、
 この物語を用意するに当たって、私は自分なりに『再定義』してみたの」

「例えば、『人間は生まれながらに罪を背負っている』という考え方があるわよね。
 いわゆる『原罪』よ。
 その対極に位置するのが『悪魔』だとしたら、
 それは『人間性の肯定』だと解釈できないかしら」

その方向性は、おそらく『スタンド』にも通じる部分があるだろう。

「だから、私の考える『悪魔』は、
 必ずしも『不幸にする』とか『命を奪う』とか、そういうものじゃないの。
 彼女の目的は『布教』を行って『信者』を増やすことだから、
 それ以上は求めないし、自分を支持する者には慈悲深い面もあるみたい。
 『アイドル』と同じで、きっと『ファン』を大事にしてるのね」

「でも、『織物』は動けないから、
 『自分の代わりに布教してくれる者』が必要だった」

        スッ

「『伝道者』として選ばれたのが『彼』よ」

スマホに写真を表示し、それを林檎に見せた。
画面には『1人の少年』が写っている。
高校生らしいが、林檎には見覚えがない。
彼は『オールブラック』の『モードストリート』に身を包み、
美作が着ている『刺繍入りのジップアップパーカー』を着用していた。
高架下の薄闇に佇み、極彩色の『ウォールアート』を背景にして、
背中越しに笑っている。

「つまり、この子がイベントの『主役』。
 私がプロデュースしたんだけど、
 『とにかくカッコ良く決めたい』っていうのが彼の希望でね。
 『パフォーマンス』を盛り上げたくて、
 説得力のある『シナリオ』を考案したってわけ」

「彼は『自分を飾り立てる美しい衣が欲しい』と願い、
 『女悪魔』は『織物の美しさを知らしめるに相応しい人間』を求めた。
 ほら、さっき林檎さんが言ってくれたでしょう?」

「『飾るだけならマネキンでいい』。
 『着る人あってこそのファッション』だって――――」

「つまり『伝道者』は『モデル』で、『織物』は『舞台衣装』なのよ。
 それが彼らの間に交わされた『契約』。
 こうして『利害の一致』が生まれ、
 『奇妙な協力関係が結ばれた』って感じかしら」

        ススッ

指先でスマホに触れ、新たな写真を表示させる。

「実は、私も出演することになっていて……というか『出演した』の。
 声で『女悪魔』を、姿で『悪魔の敵対者』を演じる『一人二役』よ」

そこには『白いレディーススーツ』を纏った美作が写る。
ツーピースのノーカラージャケットとタイトスカートというフォーマルな服装だ。
オーバル型フレームの眼鏡を合わせており、
どこか『天使』を彷彿とさせるコーディネートだ。

610猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/10(火) 21:20:01
>>609

「ふぅん?」
「ええ、確かに『悪魔』が悪者として描かれているのは、そもそも作者が
 そういった価値観の持ち主であることは、否定できないわ」

林檎も詳しく知っているわけではないが、堕落を招く存在として様々な宗教に『悪魔』が登場するらしい。
元より悪者としてデザインされていたのであれば、物語においてそう扱われるのも当然といった所か。

「うふっ。そう言われてしまうと、確かに『悪魔』と『人間』はそもそも切り離せないものだと言えるわね」
「そもそもあたしたちは、人間の『欲』を否定することなんてできないもの。
 それはこのお店の人間だけでなくて、この一帯の地域を訪れるような人たちはね」

そう言って、林檎はくるりとあたりを見回した。
『黒猫堂』の中には様々なお客がいるが、色々なリアクションを見せつつも、全てがお酒を飲み楽しそうな雰囲気に包まれている。

「なぁるほど、そこから『アイドル』に繋がるの」
「言葉の始まりとしては、グウゾウ…だったかしら?元より何かを信仰することこそが由来だものね」

頷きつつ、美作がかざしたスマホの写真を見る。
完成度の高い一枚だ。このままで、ファッションブランドの宣材写真にも使えそうな程である。
モデルの男の子は、知り合いではないが、高校生くらいだろうか?
そしてその先の美作の説明を聞き、にっこりと頷いた。

「そういうことだったのね。彼の『プロデュース』の際に作り出したストーリー。
 聞き入ってしまうくらい素晴らしかったですし、彼の雰囲気にも合っていて、納得よ」

続いて、2枚目の写真を見る。
これまた先程の少年とは対照的な衣装だ。無論、その方が映えるからだろうが。
それにしても、一人二役とは相変わらず働き者だなぁ、と柚子は思った。
もっとも、普段から声の仕事をしている美作だから出来ることだとも思うが故に、仕方ないのだろうが。

「あら、こちらの服装もステキね。くるみさんはやっぱりカジュアルな服装の
 イメージがあったけれど、こういったキレイめフォーマルな格好もお似合いよ」
「ですけれど、くるみさんは、相変わらずお忙しそうね。無理なさらないように、ね?」

案じるような声を出したところで、バーテンダーが『ホワイトソーダ』をテーブルに置いた。
先程美作の注文を伝えた際に、自分用の飲み物として同じく頼んでおいたものだ。

611美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/11(水) 10:40:31
>>610

『自らの仕事』について話す美作は、とても活き活きしていた。
仕事一筋という訳ではないが、やはり『パフォーマンス』に携わることが好きなのだ。
特に、この仕事は『やり甲斐』に恵まれていたと言える。

「やっぱり林檎さんは良い指摘をくれるわね。
 そう――『偶像』のことを、英語では『アイドル』って呼ぶの。
 『偶像崇拝』というモチーフを通して、『悪魔』と『アイドル』を組み合わせる。
 彼が求める『プロデュース』の方向性として、これはピッタリだと思ったわ」

        ────チラ

「彼は『キリシマくん』っていうんだけど、『パルクール』の経験があるから、
 それを活かして『ストリートダンス』をやってもらったのよ」

林檎の視線につられて、グラスを手にして歓談する人々を眺める。
皆、それぞれの思いを抱えながら生きているはずだ。
そして、心の中にある『独りでは埋められない何か』を満たすために、
この店を訪れるのだろう。
もちろん美作自身も例外ではない。
空織のように『お酒』が必要な時もあった。

「さしづめ『アイドル候補』のキリシマくんが『たてがみのないライオン』で、
 『蜘蛛糸で編んだたてがみ』を与える『女悪魔』が、
 『プロデューサー』の私ってところかしら。
 つまり、さっき話した物語は、そのまま私達にも当てはまるの」

            クイッ

そう言ってミモザを飲み干し、1杯目のグラスを空にする。

「…………でも、『結果』に繋がらなかったのは辛いわね」

少し酔い始めたせいだろうか。
普段は抑えている感情が、ぽつりと口から零れ出た。
『挫折』を味わうのは初めてではないし、この程度で折れるつもりもない。
しかし、あの仕事には『全力』を尽くしていたのだ。
それだけに、実らなかったことは相応に堪える。

「世の中、必ず成功することなんてないのは分かってるつもりだけど――――」

          フゥ…………

              「成功……させたかったな……」

空っぽのグラスを見つめて、いつもは見せない物憂げな表情で、ため息交じりに呟く。

612猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/11(水) 21:40:44
>>611

活き活きと話す美作を、林檎は少し目を細める。まるで眩しいモノを見るかのように。
林檎にとってこの『仕事』は、かつては憧れたものであるし、実際に黒猫堂の『No.1』であるからには、天職だとも思っている。
それでも、美作ほどに『やり甲斐』を感じているかどうかでいえば───。

「・・・・・」

迷いを振り払うように首を振る。
思案しようが、どちらにせよ選択肢はないのだから。他の道を考える方が辛いだけだ。
くだらない考えは捨てて、傍らのお客様の言葉に頷く。

「へぇ、『キリシマ』さんというお方なのね。能力はあれど、それを魅せる場所もなかった彼に
 くるみさんという『女悪魔』が、求めるものを与えてくれて願いが叶ったというわけ」

「───けれど、それでも。悪魔の助けがあったとしても、全てが意のままに、とはいかないのかしら」

それからの経緯に関しては、林檎は一切分からない。
だが、これ程の『パーカー』を作り出すまでに至った美作の手腕を持ってしても、
抗えないようなことが起きたのだろう。計画が根本から頓挫するような何かが。
それを美作がこれから語るのかもしれないし、口にするのも憚られるような事かもしれない。
どちらにせよ、林檎に出来ることは一つ。隣に座り、お話を聞くだけだ。

「もう、どうしようもないことなの?」

何故なら、自分は『ホステス』なのだから。

613美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/12(木) 18:05:01
>>612

誰もが『違った思い』を抱えて生きている。
おそらく、そこには林檎も含まれているはずだ。
無論、『人の心』を推し量ることは容易ではない。
しかし、何も分からない訳ではなかった。
『ここで働いている』という事実が、何よりも物語っているのだから。

「…………私の力が及ばない範囲の問題だから。
 一応、私達の『パフォーマンス』は披露できたの。
 全力を傾けて『全てを出し切れた』と思う。
 だけど、その後の『審査』が始まる前にトラブルが起きて、
 結局イベント自体が流れちゃった」

例の『魔法使い試験』は、関係者以外には『秘密』という扱いになっていたので、
詳細な経緯を語ることは避けた。
だが、『聞き手』が林檎でなければ、ここまで話さなかっただろう。
林檎という人間に対する『信頼』の証だ。

「でも、こう考えることにしたのよ。
 『目に見えない力』が『美作くるみ』を恐れているんじゃないかって。
 それこそ『運命の女神』なんかがね」

        クスッ

「ほら、『出る杭は打たれる』って言うでしょう?」

アンニュイな面持ちから一転して悪戯っぽく笑い、
林檎のグラスを満たす『ホワイトソーダ』を見やる。

「今度は『ホワイト・スパイダー』を貰おうかしら。
 せっかくだから『乾杯』しましょう」

次に注文したのは、
ウォッカにホワイトミントリキュールを加えた白いカクテルだった。
林檎の『ホワイトソーダ』に合わせたチョイスだ。
また、『アラクネ』をモチーフにした『女悪魔』に対する手向けでもある。

「実は、また『新しい企画』を考えていてね。
 それは『星見FM』の企画なんだけど、林檎さんの意見も聞きたいわ」

       スッ

           「ええと――――」

スマホを操作して、1つのファイルをタップする。

614猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/13(金) 20:02:18
>>613

「そう。できることは、やったのね」
『コクリ』

静かに頷いた。
『シナリオ』を作り、実際に衣装まで用意して、更に『パフォーマンス』まで漕ぎ着けたにも関わらず、
結果として合格に至らなかったのではなく、計画そのものがなかったことになってしまったようだ。
万事を尽くしても、より上の者がいたならあるいは諦め切れるかもしれない。
けれど、たまたま運が悪かっただけで全てが徒労に終わってしまった辛さはどれほどだろう。
だが。

「─────」
「…さすがはくるみさんね。『神様』をも恐れさせるなんて、並大抵のひとにはできないわよ?」

『徒労』と勝手に判断するのは早計だったようだ。
彼女なら、この経験を活かし更に成長しているのだろう。
この前向きさこそが、美作くるみの強さであり魅力なのかもしれない。
林檎は紫陽花が描かれた袖で口元を隠し、ふふ、と笑った。

「ええ、もちろん」

美作の提案に頷き、バーテンダーに注文を出す。
間も無く、ウォッカベースの爽やかな飲み口が特徴的な『ホワイトスパイダー』がテーブルに運ばれた。
林檎もグラスを手に持ち、にっこりも微笑む。

「乾杯、ね」
『カツン』

グラスを合わせると、小さな音が鳴った。
林檎は一口『ホワイトソーダ』を飲み終えると、スマホを操作する美作の方を見る。

615美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/14(土) 19:09:32
>>614

スマホから手を離したタイミングで、カクテルが運ばれてきた。

  「私と林檎さんと――――」

              カツン


              「――――『誇り高い悪魔』に」

それを林檎のグラスと触れ合わせ、心地よい音を響かせる。
そして、初めての相手とキスする時のように、ゆっくりとグラスに唇を寄せた。
短い口づけが終われば、先程よりも深くアルコールが染み渡り、頬に赤みが差していく。
ミモザの度数は8%程度だが、ホワイト・スパイダーは30%前後。
林檎も知っている通り、本来お酒に強い方ではないが、今はこれくらいで丁度いい。

「私が旅行に出たのは、
 いったん気持ちをリセットしたかったからなの。
 『心機一転』しようと思ってね。
 それで、せっかくだし動画も撮ってたんだけど、
 その最中に新しいアイデアが思い浮かんだのよ」

         ソッ

「とりあえず、『これ』を見てくれる?」

テーブルに置いたスマホの画面を林檎に見せる。

────────────────────────────────────────

*星見FM主催フォトコンテスト*

★コンテストの概要:

・見る人の目を引く『映える写真』を撮影し、
 『#星見FMフォトコンテスト』の『ハッシュタグ』を付けて、
 『SNS』に投稿してください。

・『被写体』は『自由』です。
・『投稿回数』に制限はありませんが、
 『最終的な選考対象』になる写真は『最新の投稿のみ』です。
・写真を投稿する際には『タイトル(写真の題名)』、
 『キャプション(写真の説明)』、『ラジオネーム』を忘れずに。
・投稿された写真には、パーソナリティーの『美作くるみ』が、
 SNS上で『コメント』します。
・また、『投稿を見た人からのコメント』や『グッド!(高評価)』も歓迎します。 

・『金賞』は『5万円分』、『銀賞』は『3万円分』、
 『銅賞』は『1万円分』の『ギフトカード』が授与されます。
・入賞できなかった方にも、『参加賞』として、
 『Electric Canary Gardenオリジナルグッズ』の詰め合わせをプレゼントします。
・皆さんからの『評価』と、星見FM放送スタッフによる厳正な『選考』を合わせ、
 『Electric Canary Garden』の番組内にて、最終的な『結果』を発表します。

※注意事項

『審査員』は『星見FM放送のスタッフ』です。
あくまでも『一般人の目線』から審査を行うので、
あまりにも『非現実すぎる写真』は、
『加工』を疑われて審査対象から漏れてしまいます。
『見映えが良い』のは勿論ですが、
なおかつ『一般人から見て現実に有り得そうな範囲』に収めるのが望ましいです。

────────────────────────────────────────

「ここにある通り、今『フォトコンテスト』を考えてるわ。
 ちなみに、『注意事項』っていうのは『スタンド使い向け』の話だと考えて。
 もっとも、正式に告知する時は『ぼかす』つもりだけど」

「つまり、『スタンドを使った写真』が来る可能性も考慮してるってこと。
 そこは避けられないし、私も『盛り上がるなら問題ない』と思ってるから」

「思案中の段階だから、まだ開始の目処は立ってないんだけど、
 林檎さんの意見を聞いておきたくて」

画面から目を離し、林檎の顔を見つめる。

616猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/14(土) 21:27:09
>>615

比較的強めなお酒を飲む美作をちらりと見る。
潰れた人の介抱は慣れているが、この人に限って心配はいらないだろう。
お酒を飲んだことのない自分には分からないが、時には強いお酒が心の栄養になる時があるみたいだ。

「うふふ。ご旅行に行かれたのは、そういうわけだったの。ステキな景色においしいお食事、
 気分を変えるには最適ね。結果も出てくれたみたいで、最高の旅になったようで何よりだわ」

アクティブな美作の性格なら、旅行自体は珍しくないと思ったが、
そもそも仕事に対して積極的な彼女が、そこまでの休みを自ら取る事自体が中々ないことか。
何にせよ、美作が新しく『プロデュース』する企画に目を通す。

「ふぅん」

『フォトコンテスト』。
スマホを持つことが当たり前になり、即ち高性能なカメラを誰もが手にしている昨今。
更には『SNS』の流行により、目的はどうあれ、様々な人が綺麗な写真を撮りネットに上げている。
間口が広いという点で、良い企画のように思える。

「いいと思うわ。参加するのにお金も時間もかからないし、スマホかPCさえあればどなたでも関わることができるもの。
 最近はキレイな写真を撮ることに、こだわりのある方もいらっしゃるようですし」

かくいう自分もその一人である。
他の人が撮った綺麗な写真にも、当然関心はあるというわけだ。

「『注意事項』も問題ないでしょうね。『加工』が審査対象外と書いてあるのなら、
 『使い手』の方々も疑われない程度の能力の使用にとどめておくはずよ」

617美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/15(日) 04:42:20
>>616

普段、あまりお酒に頼ることはないのだが、
適度に回った酔いが背中を押してくれる場合もある。

「そう言ってもらえると一安心よ。
 いずれは正式に告知したいと思ってるから、
 もう少し詰めていく必要があるわね」

休みの間も仕事を忘れられないというのは、我ながら良くない癖だと思う。
これでは何のために休みを取ったのか分からない。
しかし、その経験が新しいアイデアに繋がった。

「それでね……もし企画が実現した時は、林檎さんも『参加』を検討してくれない?
 これは『もう一人のアイドル候補』にも伝えたんだけど、
 『アイドル』としてスカウトした『埋め合わせ』も兼ねて」

『もう一人』である『地下アイドル』の『高宮一三』を思い浮かべる。

「きっと『黒猫堂』の宣伝にもなるんじゃないかしら。
 それに、私も林檎さんが撮った写真を見てみたいわ」

         ススッ

「残念ながら、『私の能力』は写真じゃあ映えないけれど」

そう言いながらスマホを弄り、写真フォルダを表示させた。
美作は『プラン9・チャンネル7』の能力を秘匿しているが、
林檎はそれを知る数少ない人物の1人だ。
だから、こうして躊躇なく口に出せる。

「ここに写ってるのは『私の車』で、これに乗って旅行に出掛けたの。
 ちょっとだけ燃費が悪くて、頻繁に市街地を走るには向かないけど、
 どんな悪路でも走り抜けてくれる『タフさ』が自慢ね」

写真に写っているのは、
『質実剛健』を体現したような『大型SUV』――『ランドクルーザー70』だった。
日常生活の足として愛用している『ベスパ』は洒落たデザインだが、
それとは正反対の無骨で力強いシルエットだ。
他に目立つ特徴としては、
スクーターと同じ『カナリアイエロー』に塗装されている点だろうか。

618猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/15(日) 21:46:16
>>617

「ええ、もちろんよ。もしくるみさんからお願いをされなくても、参加するつもりでいたもの」
「お店の知名度が上がることも大事ですけれど、なによりくるみさんの『企画』だもの」

ましてや先程感じたように、参加するハードルはないようなものだ。手伝わない理由はない。
もちろんお店にご来店するお客様は、何人いても困らないけれど。
いや、流石に店の前に列が出来るほどはいらないか。

「そう残念がらないで。あたしの『カーマ・カメレオン』も似たようなものよ」
「現実に存在する衣服と同じようなものでは目立たないし、かといって固体以外を素材にすれば『加工』と疑われてしまうわ」
「まぁどちらにせよ、あたしは写真の撮り方で勝負するつもりよ。これでもそれなりに研究してるのよ?うふふ」

顎を自分の手に乗せ、意味ありげに美作を見上げる。
自分のスタンド能力を頼みに勝てるとは思っていないし、それで勝ちたいとも思わない。
ここまで考えて、自分が写真に対して意外とストイックなことに初めて気付いた。
閑話休題。やる気は満々ということだ。

「あら。くるみさん、彼の他にも別の車をお持ちだったのね。
 確かに、舗装されてないような場所にも行きたい時はこちらの方が向いていそうだわ」
「ああでも、色はお揃いにしてあるの?ふふ、くるみさんらしいわ」

『ペスパ』の方は知っていたが、他にも車を持っていたとは。
乗ったことはないが、やっぱりスクーターだと遠くまで運転するのは大変なのだろうか。雨とか天候が荒れた時に大変だろうし。

619美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/16(月) 19:01:31
>>618

躊躇いなく発せられた林檎の言葉が、今は何よりも嬉しい声援に感じられた。
『ホステス』と『パーソナリティー』には、
『お客様』や『リスナー』との『対話』という共通点があり、だからこそ分かる。
やはり林檎も『一流』なのだと。

「そんな風に言ってもらえるなんて光栄だわ。
 林檎さんが参加してくれるなら、今まで以上に張り切って準備しなきゃ」

     フフッ

「林檎さんの知ってる『彼』は、街乗りがメインだから長距離移動に向かないし、
 大きな荷物を積めないから留守番してもらったの。
 そういう場合は『こっちの彼』が頼もしい相棒ね。
 今度、機会があったら林檎さんも乗せてあげる」

           スス

人差し指で画面をスワイプすると、車とスクーターが並んだ写真に切り替わる。

「ただ、ちょっと豪快すぎてデリカシーに欠けるのが玉に瑕だけど。
 小回りの利く軽快な走りを求めてる時は、やっぱり『そっちの彼』が一番かしら。
 どっちにも良い所があるから、私は両方とも好きよ」

                ────パッ

「でも、たまには『浮気』しちゃうこともあるのよねぇ」

次に出てきた写真は、『魔法使い試験』の最中に、林檎や薄島と撮ったものだった。
駐車場に停められた250ccのバイク――『ホーネット』と写っている1枚だ。
あの時はベスパが修理中だったので、『代車』として乗っていたことを思い出す。

「この写真だって、『あのイベントがなければ撮れなかった』と思えば、
 全てを『糧』にできる――――」

やがてスマホから顔を上げて、神妙な表情で林檎に向き直る。

「ねぇ、林檎さん……時々でいいから、これからも相談に乗ってもらえない?
 ここ最近、門倉さんが多忙で、身の回りに話し合える人がいなくて困ってるの。
 林檎さんは『プラン9・チャンネル7』を知ってるし、
 『アリーナ』のことも把握してくれてるから、私も色々と話しやすいわ」

「何より、私が林檎さんを『信頼』しているから」

本来なら相談相手になってくれる人間が不在という状況は、
正直かなり悩ましいと言わざるを得ない。
今日こうして話せたことで、頭の中も整理された実感がある。
もし林檎に支えてもらえるなら、それは大いに心強いだろう。

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621猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/17(火) 20:23:47
>>619

「あたしはね、くるみさん。多分、あなたが思っているよりも、あなたのことが好きなのよ」

ずいっと体と顔を寄せて、美作との距離を詰める。
職業柄、色々なタイプの人間と接しているけれど。
その中でも、彼女ほど誠実で努力家な人間は中々いないと思う。だから人間として尊敬する気持ちもある。
自分の子供を捨てていくような大人を見たからだろうか、ちゃんとしている大人が安心する。
仕事に対する誠実さで言えば空織もそうだが、私生活にやや危なさがありそうなのが少しマイナス。

「へぇ、そうなの。あたし、あまり『車』に詳しくないものだから」
「でもこういうのはカッコいいって思えるわ。ふふ、そちらの子にも会える機会を楽しみにしておくわね」

やっぱり小さいスクーターだと、ガソリンがあまり入らないから、遠くまで行くのが大変なのだろうか。
ただ、大きい車はそれだけでカッコよく見える。どっちにも魅力がある、という美作の言葉にも頷ける。
乗り心地、というのはどちらも未体験だけれど。

「そちらの子もステキよね。やっぱりあたしもバイクの免許を取ろうかしら。
 そうしてくるみさんと二人でツーリングなんていうのもいいわね」

それには後一年くらい必要だけど。このまま働いていれば、それ位の余裕は出来ると思う。
けれど、祖母への説明はどうするか。まぁその時が来たら考えればいいか。

「─────」
「うふふ。今更ね、くるみさん。あたしはいつだってあなたの話し相手になるつもりよ。
 何もお気になさらず、あたしに何でもご相談にいらっしゃって」
「それにくるみさんのお話をうかがうことで、あたしも色んなお勉強ができるわ」

安心させるように、軽く肩を抱く。
何となく、今の彼女には手を差し伸べる誰かが必要に感じたから。

622美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/18(水) 16:18:05
>>621

何かを察したように目を細め、近付いてくる林檎を見つめ返す。

「林檎さんのことは信じてるけど、つい確かめてみたくなったの。
 私も人間だから、たまには不安な気分になっちゃう時があって」

     ソッ…………

肩を抱く手に指先で触れる。
一連のスキンシップを通して、林檎の温かさが伝わってきた。
ほのかな体温と同時に、『心』も感じ取れたように思えたのは、
決して気のせいではないはずだ。

「ここ最近は仕事に熱中して、プライベートな付き合いが少なかったせいかな。
 自己診断の結果は『心の栄養不足』ってところかしら」

もちろん体調管理には気を遣っていた。
しかし、自分でも気付かない内に、『精神的疲労』が溜まっていたのかもしれない。
だからこそ、林檎の優しさが身に沁みる。

「でも、林檎さんのお陰で『栄養』を分けてもらえたわ」

             ニコッ

「ツーリングは先の話になりそうだけど、サイクリングならできそうね。
 私は『自転車』にも乗ってるから、いつか一緒に出掛けましょう」

       ────スス

              「『こういうの』よ」

スマホに映し出された写真は、スポーティーなデザインの折り畳み自転車だった。
ドイツ製の小径車である『バーディー』だ。
車やスクーターと同じ色に統一されており、所有者の『こだわり』が窺える。

「なんだか、こんな話をしたのも久し振りかも」

          クイ

グラスに残っていたカクテルを飲み干し、
頭の中で明日の予定を反芻しながら、袖口から覗く腕時計を見やる。
流行りのスマートウォッチではなく、アナログ式のシンプルな文字盤だが、
ファッショナブルな『リボンベルト』が目を引く。
この小物も『アメカジ』と合わせたコーディネートなのだろう。

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624猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/18(水) 21:38:31
>>622

「あたしはかまわないわ」
「何度でもお好きなように試していいのよ。くるみさんがそれで安心するなら」

肩を抱く手に少しだけ力を込める。
どれほど前向きに捉えたとしても、やはり今回の一件が美作に与えた影響は計り知れない。
流石にこの人に人生を委ねるほどの想いはないけれど。
それでも疲れたり苦しんでいるなら、支えになりたいとは思う。

美作が林檎に見せた写真は、やはりと言うべきか同じ『カナリアイエロー』のカラーリングだった。
持ち運びやすそうな、折り畳み式の自転車だ。

「あら、この子はかわいいわね。例えるなら、三兄弟の末っ子のよう」
「でも、くるみさんがこの子をツーリングに連れていくということは、サイズに似合わず意外と走れるのかしら?」

何となく、車輪が小さいと遠くまで行くのが大変だと思っていたけれど。
でも見たことのない特徴的なデザインだし、そういうのにも優れているんだろうか。
とりあえず、メーカーは覚えておこう。
これから『写真』を撮って回るにしても、乗り物はあった方がいいから。

「あら、ステキな時計ね。くるみさんのファッションを崩さない、目を引く小物だわ」
「あたしも自転車に乗るなら、この格好ではいられないから。
 動きやすい、でもテーマを崩さないお洋服も探す必要があるわね」
「うふふ。それもまた楽しみだわ」

『柚子』としての私物は、『林檎』とはまた少し違った雰囲気のものだから。
『林檎』としての和ゴスに合わせたメンズライクな洋服も今度買っておこう。それもまた楽しみだ。

「そういえば、明日はくるみさんはお仕事なのかしら?」

625<削除>:<削除>
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626美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/19(木) 18:22:06
>>624

美作の時計は『タイメックス』の『ウィークエンダー』――
『アメカジ』と相性が抜群に良いブランドで、
こだわりの強い彼女が気に入って使用しているアイテムだった。

「これはね、『アメリカ製』なの。
 林檎さんと同じように、私も『コーディネート』には一家言あってね」

時計から視線を外し、小さく首肯する。

「そんな訳で明日も仕事よ。
 このままだと居心地が良くて、閉店まで長居しちゃいそうだから、
 名残惜しいけどそろそろ帰らなきゃ。
 今夜はとっても楽しかったわ」

     「――――励ましてくれてありがとう」

肩に置かれた林檎の手が離れるように、ゆっくりと席を立つ。

         「ええと、お会計してもらえます?」

バーテンダーに呼びかけて支払いを済ませる。
その後、スマホの配車アプリで、店の近くにタクシーを呼ぶ。
前回の来店は『夏の魔物』関連の祝勝会だった。
あの時は、まともに帰れるかどうかも怪しい状態だったが、
今回は『ほろ酔い』程度に収まっている。
晴れやかで心地よい気分だ。

「そうそう……林檎さんには伝えておくわ。
 実は『門倉派』としての活動も平行して進めてるの。
 私が『スピーカー』を通して『AI』を演じ、
 対話する相手が出した『条件』を元に、
 『理想の疑似人格』を構築するっていうのが概要よ。
 私の『能力』と『技術』を活かしたくて」

そのまま帰ろうとしていたが、ふと立ち止まり、林檎に明かす。
 
「もちろん私が『演者』なのはナイショ。
 『対人コミュニケーション機能のアップデート』のために、
 『フィールドワーク』を行ってるって設定でね。
 今は『表の仕事』が忙しいから、
 一旦そっちは中断してるけど、いつか再開すると思う。
 『それ用』のSNSアカウントを送るから、
 『こういうこともやってる』ってことだけは覚えておいてくれる?」

林檎のスマホに、作成済みのアカウントを送信する。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1688976640/60)

「『1001-111(ナイン・セブン)』という名前で『放送』してるのよ。
 『二進数』で『1001』は『9』、『111』は『7』――
 私の『スタンド』と『コンピュータ』から命名したの」

件のアカウントを閲覧すれば、大方の内容は把握できるだろう。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1666422968/158)

「この『イベント』を始めた理由はね、
 自分で『才能を活かす場』を作りたかったから。
 長い間、私は『チャンス』を求めてきたけど、
 いくら待っても来ないし、やっと来たと思ったら……」

苦笑しながら肩を竦め、表情を引き締めて言葉を続ける。

「だから、私は『待つだけ』に見切りをつけて、
 自分の力でどうにかすることにしたってわけ」

そう語る美作の表情は、明るさを失わない。
挫折を含めて、あらゆる経験を糧にすると決めたからだ。
だからこそ、これからも『先』に進んでいける。

627猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2025/06/19(木) 19:50:46
>>626

「そうね、あたしも寂しいけれど」
「あたしのせいで、お仕事に全力で臨めないくるみさんを見たくはないもの」
「ぜひ、また一段落ついた頃にいらっしゃって」

名残惜しそうに笑う。
お相手の帰り際を察して、背中を押すのも『ホステス』の役目。
もちろんお客様が引き止めて欲しいと思っていそうなら、話は別だけど。

テキパキとお会計し、更には配車までするくるみさんを見て、これがデキる大人なんだなぁと頷く。
これぐらいのことがやれるお客様は、実は3割くらいしかいない。
もちろん彼女も前回はもう少し酔っていたけど、もっと大変なお客様も全然いるし。

ドアの近くで待って、お見送りの準備をする。
ベルがなり、外に出たところでくるみさんが思い出したかのようにお話をした。

「『門倉派』…いわゆる『非戦派』の派閥だったかしら?」
「先日のアイドルといい、様々なことを手広くやっていらっしゃるのね。
 でも戦わずにみなさまを楽しませられるのなら、それに越したことはないものね」

しかしこれまた随分と難しそうなことをしているなぁ
、と柚子は思った。
『演じる』という点では自分も同じだし、お相手の望むことを話すという点では『ホステス』も近しい。
けれど最初から『ホステス』がいることを知って来るようなお客様と違い、
美作の方は様々な人たちが、様々な人格を求めて来るのだろう。
それら全てに対応できる自信は、自分にはない。

「ありがとう。くるみさんのがんばってるお姿を拝見するために、
 そしてあたしもお仕事の参考にするために。フォローさせていただくわ」

「…そうね、『チャンス』は待っていても訪れるとは限らない。今すぐ変えたい何かがあるのなら、
 持っているものでできることから、始めていかなければいけないわね」

美作の意見に同意する林檎。
自分も母親に捨てられたその時から、ただ現状に流されるのではなく、自分の容姿を活かして稼ぐことを決めた。
他人や社会に期待するより、行動を選んだのだ。だから行動的な美作の振る舞いには共感する。

「くるみさんの───いいえ、『1001-111(ナイン・セブン)』の活動も応援するわね」
「ねぇ、くるみさん。あたしたち、お互いに支え合っていきましょう?
 ですから、また心が疲れてしまった時はいつでもいらっしゃって」
「もちろんお出かけでもいいわ。あなたとお話しできると、あたしも元気が出てくるもの」

「おやすみなさい、くるみさん。よい夢を」

すっとお辞儀をして、別れの挨拶として小さく手を振る。

628美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2025/06/20(金) 17:14:12
>>627

林檎の『戦わずに楽しませる』という言葉に、力強い頷きを返す。
それは美作自身の考え方にも重なる。
『アリーナ』の主流は『闘技場』だが、
『プラン9・チャンネル7』は『戦うことのできない能力』だ。
あまりにも尖り過ぎた力を活かすための場など、そうそうあるものではない。
誰も用意してくれないなら、自分の手で作るしかないではないか――そう思い至った。

「『1001-111』のプロジェクト自体は、かなり前から用意してあってね。
 門倉さんからも『許可』はもらってるの。
 でも、いざ実行に移そうとした直前に、
 キリシマくん関連の仕事が来たから、ひとまず保留してたのよ。
 そっちが中止になったから、最初の想定と順序は逆になったけど、
 こっちの方を動かそうと思って」

この計画は美作が独断で始めたものではない。
『魔法使い試験』の開始前には、既に存在していた。
当時、門倉に耳打ちしたのが『それ』だった。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/281)

「でも、さっき言った通り、
 今は『本業』が忙しい状況だから、とりあえず一時中断してるわ。
 しばらくは『フォトコンテスト』の実現に注力することになると思う」

スマホをポケットに戻し、林檎の申し出に耳を傾ける。

     「――――ありがとう」

「林檎さんが話し相手になってくれると、本当に心強いの。
 支え合うからには、もし私に相談したいことができた時は、
 いつでも連絡してきてちょうだい。
 それ以外の話でも大歓迎よ」

        「これ、しばらく前に作ったから渡しておくわね」

                   スッ

別れ際、シンプルなデザインの名刺をカウンターに残す。
そこには『門倉派:広報担当・美作くるみ』と綴られている。
『星見FM放送』のパーソナリティーではなく、
『アリーナ構成員』としての名刺だった。

「それじゃ、また寄らせてもらうから」

美作くるみは、年の離れた林檎を『妹』のように感じている部分がある。
並々ならぬ苦労を背負っているであろう彼女が、
それを表に出すことなく、自らの仕事に向き合う姿には、胸を打つものがあった。
そこに『大きな秘密』が隠されていることを知る由もない。
しかし、美作にとって林檎は『良い友達』だ。
おそらく、これからも変わらないだろう。

「おやすみなさい、林檎さん。あなたも良い夢を」

ひらひらと片手を振り、明るい笑顔で『黒猫堂』を後にする――――――。

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