【9:1000】本スレ転載用スレ
- 1 名前:名無しさん :2011/11/19(土) 00:45:21 ID:k2jmL4Io
- 本スレに書き込めなくなった場合に使用するスレです
こちらに投下されている内容を、投下できる方が本スレに貼ってあげて下さい
- 994 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:34:24 ID:LDnjk14k
- 恐竜に追われること早十数分。奴らは文字通り、蛇のようにしつこかった。
襲いかかってくるようならば返り討ちにしてみせる。だらだら追いかけるようなら一気に加速して振り切ってみせる。 だが恐竜たちは姑息で、賢く、狼のように統率の採れた集団だった。プロシュートと千帆の乗ったバイクを追いかけて、回り込んで―――とにかくうっとおしかった。プロシュートがいらいらを表情に出さないようにするのに苦労するほどだった。
サイドミラーの中で三匹のうち、二匹が細い路地裏へと飛び込んだ。プロシュートは頭の中で地図を思い描いた。西への逃げ道を塞ごうって魂胆らしい。 以前ギアは3にいれたままで、速度計は40キロに届くか届かないかをさまよっている。プロシュートは顔をしかめ、もどかしい思いをアクセルに変えた。 いい加減追いかけっこにはうんざりした頃だった。
「あっ」
ヘルメット越しに千帆がくぐもったつぶやきを漏らした。同時にプロシュートはバイクのハンドルを右に切ろうとして―――間に合わない、と思った。 路地裏から突然身を投げ出した小柄な男の体にバイクが迫る。プロシュートは三人全員が無傷でいられることを諦めた。中でも一番優先順位の低かったのは、ようやく馴染み始めたバイクそのものだった。 バイクすべてをめちゃくちゃにする必用はなく、そうする時間もパワーも足りなかった。右ハンドルを思い切り握り、前輪を止めた。二人の体が前に投げ出されると同時にバイクの横っ面に一撃をぶちかました。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 995 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:35:00 ID:LDnjk14k
- 最も捨て去るべきものがプロシュートの足を絡みとり、そして今不安要素となって現れた。
プロシュートは甘く生き慣れていない。これまでずっと苦味と痛みだけが信用できると言い続けてきたのだ。そう簡単には変われない。
怒りがプロシュートの足を早めた。最後の十歩を大股で詰め寄ると、男の胸ぐらをつかみ、光の中にさらけ出した。 後ろで千帆が止めるように何かを言ったが、言葉もなく背中で黙らした。プロシュートは顔に傷がついた、チンピラ風情の男の体を揺らした。 その目が恐怖で大きく開かれた。震える体にさらにムチを叩き込むように、プロシュートはその襟首を掴むとひねり上げた。
「いいか、二秒だけやる。質問に答えろ。イエスもノーも要求しちゃいねェ。これはれっきとした事実になる。そうだろ、エエ?」
手触りがやけに軽く、柔らかいことが気になったがプロシュートは尋問を進めた。スタンドを呼び出すと男が腕の中で小さくうめいたのが聞こえた。
「名前は?」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 996 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:35:37 ID:LDnjk14k
街灯の光が消える。頭上の月も星も消え去り、湿った空気が一斉に流れ込んだ。あたりは一面、陰気な雰囲気に包み込まれる。 直後―――東からも、西からも……周りの方向全てから鶏を絞め殺したような奇妙な鳴き声が聞こえた。 霞越しにフラフラと揺れる影が、二人に近寄り、少し離れた場所でどうっ、と音を立てて倒れた。最後に断末魔と痙攣を残して、その四本足は動くのをやめた。 千帆とプロシュートは影に近づいて、その死体を見下ろした。そこに横たわっていたのはチンピラではなく、小型のバイクほどある、一匹の恐竜だった。
「プロシュートさん、これって……?」
千帆にかけられたスタンドはまだ解けない。状況は複雑を極めていく。 わかっているだけで四人、この状況を引き起こしたスタンド使いがいる。プロシュートは一息吐くと、千帆の手をつかみ、杜王駅の方向へ向かって歩き出した。 今は逃げることが懸命だ。怒りは収まってはいないが、一発ぶちかまして頭が冷えた。全部自分の責任だ。今ならそう判断できる。
細い路地裏をゆっくりと駆けていく二人。 その二人の向こうからの光が突然途切れた。少し小柄な―――さっきよりは大きいから別の人間だ―――影が二人の足元まで伸びた。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 997 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:36:35 ID:LDnjk14k
- トランペットの音、力強い男性ボーカルの叫び、リズムを刻むドラム音。
誰だってじっとしてはいられない。膝を小刻みに揺らしていたが、ついには広いフロアに飛び出し、思うがままに体をくねらせた。 ムーロロはそんなディエゴの姿を煙越しに見つめた。咥えた紙タバコがジジジ……と音を立てて、口先で灰に変わっていった。
部屋はタバコの煙、アルコールの匂い、レコードが流す音楽の音でいっぱいだった。 ムーロロはワイングラスにタバコをつっこみ、また意味もなくタバコに火をつけた。ディエゴは変わらず踊り続けている。 曲が終わり、ムーディーな音楽に変わったところで、ディエゴはようやく満足したようだった。 ソファに放り投げた酒瓶を片手にムーロロのいるデスクに戻ってくる。瓶から直接酒を煽ろうとしたが既に空になっていた。ディエゴは唇を曲げ、瓶を放り投げた。ムーロロが代わりにデスクの上の瓶を差し出してやった。
「上機嫌だな」
ディエゴの顔色はいい。頬は上気し、目線は鋭さがぬけてとろん、としている。口元にはだらしない笑みが浮かべられていた。 酒を半分ほど煽ったディエゴは一息つき、意味もないニヤニヤ笑いを机越しによこした。 ムーロロはタバコを差し出すと、ディエゴが咥えたのを見てから、火をつけてやった。煙を溶かすように一瞬だけ火があたりを照らした。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 998 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:37:16 ID:LDnjk14k
- 「俺たちの目的は遺体の総取りだ。誰が死のうが何人くたばろうと知ったことじゃない。
たとえ遺体を総取りにすることがヴァレンタインの計画の一端であったとしても、今はこれが最善手だ」 「一人一人に頭を下げてお伺い立てて来いとでも言うのか。俺たちは対等なはずだぜ、ディエゴ」 「対等―――ほう、対等ねェ」
ディエゴは地図を眺め、遺体を持ったコマの数を数えた。七つのコマ越しにムーロロと目を合わせる。ムーロロは突然帽子の裏地に興味を持ったようで、視線が合うことはなかった。しばらくそうした時間が流れたが、ディエゴは鼻を鳴らし、話を進めた。
「俺はそんなお利口さんじゃないぜ、ムーロロ。奪い取る……カスどもたちには犬のエサでもくれてやれ、だ」
そう言いながらディエゴは緑色の紙とハサミを取りあげ、何物かを作り始めた。ムーロロの目の前で緑のコマが次々と積み上がっていく。 その緑のコマは地図のあちこちに一見無造作に配置されていった。十はあるようだった。ディエゴはそれらを自由自在に動かしながら、言う。
「お伺いはしなくていい。ただ狩りには参加してもらうぜ。いや、猟か。追い込み猟だ」 「銃の腕前には自信がない」 「司令官としての技量を見込んでの採用だぞ、カンノーロ・ムーロロ君」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 999 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:37:57 ID:A5b9ZT3I
- 「だが―――『こうなったら』……どうする?」
七つのうち二つのコマが持っていた遺体がカーズのコマに加わり、カーズが持つ遺体の総数は三つになる。相対する集団は周りに存在しない。 今度はムーロロが様子を伺われる番だった。ディエゴはカーズのコマを指で弾き飛ばし、ムーロロの方へよこした。
「消耗したカーズ―――本当に消耗していればの話だが―――相手でも、俺とお前じゃ相性が悪い。 やつは稀代の大食いだ。油断したらカードでも恐竜でもなんでも食われるぜ」
しばらくの間、二人は無言のまま見つめ合う。保身と策略が言葉もなく二人のあいだを飛び交った。 部屋の真下でごそごそと誰かが動く気配がした。ムーロロは黒いコマを取り上げ、やれやれと小さく呟いた。
「作戦は弾切れか、司令官」 「いや、あるぜ。ただリスクがある。懐柔に自信は?」 「イタリアマフィアを一人手懐けたという実績はあるが」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 1000 名前: ◆c.g94qO9.A :2016/04/04(月) 21:38:42 ID:LDnjk14k
- その一室は膨らみきった風船のようであった。
「周りに敵は?」
正面の壁にもたれたナランチャは興味なさげに発言者―――プロシュートを見つめ返した。しばらく待ったが答えは帰ってこなかった。 ナランチャ、とトリッシュがたしなめるように言ったが、ナランチャは黙ったままだった。トリッシュの目線から隠れるように顔をうつむかせた。 トリッシュが間を取り持つかのように、プロシュートに目線を向けた。プロシュートはソファに座りなおすと肩をすくめた。
「俺がアンタに危害を加えることを恐れているらしい」 「そんな気はないのよね?」 「顎先の餌より背後の虎の方が気になるたちでね。シーザー、もう一度説明を頼む」
風が唸りをあげると、ガタガタと建物全体が震えた。シーザーは窓の外を一瞥すると向き直り、出会ったばかりの仲間たちを見た。 緊張感と不安が部屋の中に漂っている。かつて相対していたギャングの二人がその中心にいた。 机をはさんで傾きかけた混乱を支えていたのは二人の少女たちだった。トリッシュは背後に立つナランチャをたしなめ、千帆は隣に座る男の自制心をつっついた。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
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