アブサルディンさんの乗っていた船は、密航業者によって途中で放棄された。その後は、難民船の受け入れに消極的なマレーシアとインドネシアがいずれも寄港を拒み、領海から追い出したため、船は海上を漂流するほかなかった。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch、HRW)はこれを「人間ピンポン」だと非難している。
同氏の推計によれば12年以降、人身売買産業によって2億5000万ドル(約300億円)が生み出された。この金は「さまざまな層の人物」によって享受されてきた。ミャンマーのラカイン(Rakhine)州では、国籍を与えられずにいる130万人のロヒンギャ人の多くが12年の民族間衝突以降、密航船に乗り込んでいる。隣国バングラデシュでも今年1〜3月の間に2万5000人のロヒンギャ人と貧しい難民たちが、ベンガル湾(Bay of Bengal)から密航した。同国のコックスバザール(Cox's Bazar)では、約30万人のロヒンギャ人の難民と膨大な数の貧しいバングラデシュ人が、かろうじて生き延びている。