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( ^ω^)ヴィップワースのようです
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タイトル変更しました(過去ログ元:( ^ω^)達は冒険者のようです)
http://jbbs.livedoor.jp/sports/37256/storage/1297974150.html
無駄に壮大っぽくてよく分からない内に消えていきそうな作品だよ!
最新話の投下の目処は立ったけど、0話(2)〜(5)手直しがまだまだ。
すいこー的ななにがしかが終わり次第順次投下しやす
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ブーン一向がアルバの村から戻って、三日ほどの月日が流れた。
高額な報酬を得たばかりで、しばらく全員の旅の資金には困らないだろう。
皆の疲れも癒えた今、そろそろ次の旅に出てもよい頃だ。
( ^ω^)「マスター!鳥腿炒め、もう一丁追加だお!」
爪'ー`)y-「親父よぉ、緋桜とかさ……たまに良い酒はねぇのか?」
今日も、”失われた楽園亭”には騒がしい二人の声が響き渡る。
忙しそうにしているマスターは、そのやかましさに時折頭に青筋を立てぴくぴくさせているが。
騎士団からの依頼、不死者の討伐を終えた彼らは旅先でまた新たな仲間を引き連れて戻ってきた。
数日前にこの宿を騒がせた渦中にある人物である、マスターも見覚えのある彼女を。
(´・ω・`)「さて、僕は少し二階で読書でもしてこようかな」
ξ゚⊿゚)ξ「あの、マスター。すいません……騒がしくして」
ツン=デ=レイン。荒々しい男達の姿も多いこの盛り場にあって、彼女の存在は紅一点だ。
ふわりと巻き上げられた金髪に、清楚さをたたえる白の修道服。
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彼らと共に旅歩く事を機に、捲らずとも歩けるようにと裾の丈は少しだけ詰めているが、
その清潔感には何ら代わりがなく、かわりに健康的な活発さも見られる。
彼女の容姿に惹かれてか、話し掛けてきたりする者も後を立たず、客引きにも貢献しつつある。
(’e’)「あぁ、いいんだいいんだ……ツンちゃんのせいじゃあねぇからな」
( ^ω^)「マスター?鳥腿……」
(’e’)「だがブーンにフォックス。こやかましいてめーらは駄目だ、少しは他の二人を見習いな」
爪'ー`)y-「そんな事言ったって、ここは酒を飲ます所じゃねーか」
(’e’)「俺はここを一人でふらっと訪れた冒険者が、卓で一人静かにグラスを傾ける―──そんな店を目指してるんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「それはお父さんの昔の夢でしょ? ───今この現状じゃ、もう無理じゃない」
と、横から姿を現したのはマスターの娘であり、また、この楽園亭の看板娘でもあるデレだ。
アルバの村から戻って来た際再びこの宿を訪れたツンは、デレと初めて挨拶を交わしたが、
名前に共通点があるという事から話が膨らみ、少しずつ親交を深めていた。
元々誰に対しても愛想の良いデレと、同姓に対しては気を使うタイプのツンだからか。
今では気の合う友人の一人になりつつあるようだ。
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ξ゚⊿゚)ξ「おかえり、買出し終わったの?デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ……ツン!うん、今日はね、ちょっと遠くの市場まで足を伸ばしたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。何か良い収穫はあった?」
ζ(゚ー゚*ζ「鮮魚が安かったんだ〜、だから今日は魚料理がオススメだよ?」
ξ^ー^)ξ「解った、夕食楽しみにしてる」
2階の寝室、窓際で飽くなき知識の研究に余念が無いショボンは、階下から伝わってくる
彼らの賑やかな声にふぅと鼻を鳴らしつつ、読書に集中しきれないで居た。
だが、そんな彼らとマスター達とのやりとりが大声で聞こえてくる度、笑みが零れる。
窓の外の眼下でヴィップの街中を歩く人たちの姿を眺めながら、ふと思った。
(´・ω・`)(自由の風に吹かれてというのも、案外悪くないものだね)
「早く、本当の自由に────」
ぽつりとそんな欲求が湧き出ては、また次の冒険への意欲も駆り立てられる。
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趣味や目的も違えど、なぜだか気の合う仲間たち一緒にいるのは、全員ともが苦には感じなかった。
彼らはきっと意識した事もないだろう。
幾度もの物語を経て、パーティーを結成したばかりの彼らブーン一行の絆。
漆黒の闇の中でこそ試されるその光が、輝きを強めていく為の道程は、まだこれからなのだ。
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( ^ω^)ヴィップワースのようです
第5話
「静寂の深緑」
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川 ゚ -゚)「………」
交易都市ヴィップの街中を颯爽と歩くのは、小剣をぶら下げるしなやかな細身の女性。
この界隈ではそれなりには顔の知られた冒険者、”クー=ルクレール”
そこいらの街娘が束になっても適わない彼女の美貌はそのままに、
街中を練り歩く彼女の表情には、陰りが見られた。
だが、それも当然といえば当然か。
完遂した依頼の裏に隠された真実を知る自分達を狙い、暗殺者の襲撃に遭ったばかり。
その最中で旅を共にした仲間とは離れ離れになり、街中を駆けずり回ったにも関わらず、今も行方知れず。
何より、彼女の目の前であっさりと人が人を殺す光景を、目の当たりにしてしまった。
初めて見る訳などではないが、やはり慣れたいなどとは思わないものだ。
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男の手口はあまりに手馴れ、そしてそこに何の感情も残さないものだった。
なぜ人はあんな事を出来るのだろうか、結果として自分を助けたのはその男だったが、
それでも有難い事だなどとは到底思わない。
”他人など、やはり信用できるものではない”
幼少の頃植えつけられた心の傷跡は、次第に周囲への疑念として、いつしか自らの心の中で強まっていた。
一応は旅の相棒であった”ギコ=ブレーメン”を探す為、あの後彼女はヴィップ各地で聞き込みを行った。
だが、どうしても行方は知れなかった彼の無事を、今は彼女自身、案じる事しか出来ないのだ。
剣技に関してはどがつく素人だったが、そう簡単に死にそうな男ではなかったと、言い聞かせた。
そうして、彼女はいつもの宿へと戻って来た。
”失われた楽園亭”だ。
この間は何事かの騒動に巻き込まれて店を閉めていたが、今日はいつも通り沢山の人の姿に溢れていた。
店の中央で卓を囲んでいた客の中には、いつもは見ない顔が4人。
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ξ゚⊿゚)ξ「そっかぁ、デレはまだヴィップから出た事ないんだ」
異彩を放つのは、修道服を纏う金髪の女性だった。
デレと仲むつまじく話しているが、「なぜこんな所に修道女が?」という疑問が掠める。
「よぉフォックス! …どうだ、今日も賭けカードとしゃれこまねぇか」
爪'ー`)y-「あぁ?またかよ……10戦10敗だってのに、お前さんも懲りないねぇ」
銀の長髪を後ろに結んだ、粗野で軽薄そうな男とも面識がない。
一見すると盗賊風の男だが、本職の彼らと比べてはまるっきり隙だらけに思える。
(´・ω・`)「そうだね。僕も魔術というものに関して造詣は深い方だと思っていたが、
君の今の発言は、案外その真理へと踏み込んだものかも知れないな」
「わはは!冗談が過ぎらぁ、お前さんはよぉっ」
物静かで落ち着いた物腰の魔術師風の男は、知的なジョークを用いて自分とは対照的に粗野で荒々しい
冒険者の人間達を笑わせていた。数日前にどこかの街で目にした顔のような気がするが、思い出せない。
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(;^ω^)「げふぅっ……食べ過ぎて、もう動けないお」
最後に気になったのは、同じ席に着くその三人が外側の卓へ声をかけているのをよそに、
大量の食事を終えて、にやにやと満面の笑みをその顔に貼り付けている、少し体格の良い男だ。
薄汚れた格好をしているが、背に収めた剣は年季の入りようを思わせた。
ζ(゚ー゚*ζ「あっ……クー!この間はどうしてたの?」
川 ゚ -゚)「なに……ちょっとな」
ξ゚⊿゚)ξ「………?」
冒険者同士でパーティーが結成されたのなら、ましてやこのヴィップでクーが知らない訳はなかった。
だが、たまたま偶然が重なって行き違った一人と四人は、これまで面識がなかったのだ。
デレに対して少しそっけない態度で彼らの卓の横を通り過ぎると、クーは一直線にカウンターへと向かう。
一番端に腰掛けて足を組むと、手振りだけで注文。慣れ親しんだマスターは、彼女の好みも熟知しているのだ。
手練の動作でグラスに乳白色の液体を注ぐと、それを差し出すと共に切り出した。
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(’e’)「よう………デレが心配してたぞ。なんかあったんじゃないかって、な」
川 ゚ -゚)「話すと少し長くなる。また別の機会にしよう」
「それより」と前置きし、背中越しに彼らが座る卓の方へ一瞥して尋ねた。
川 ゚ -゚)「見ない顔だな、あの4人」
「……あぁ、あいつらな」
皿を荒いながら、一瞬間の抜けた表情をしたマスターが、手を拭いながら答えてくれた。
(’e’)「例のホラ……こないだ話した馬鹿があそこの二人。その仲間が、あの二人さ」
あぁ────忘れていたと、思わず手を叩いて納得した。
例の騎士団につっかかっていった、後先の事を考えない馬鹿な冒険者。
お陰でこの店もまた三日間も営業を差し止められる憂き目にあったのだった。
その事をクーがマスターに指摘するも、彼はさほど気にした風な口ぶりではなかった。
(’e’)「そう気にしちゃあいねぇさ。あれでなかなか悪い奴らじゃない」
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川 ゚ -゚)「………ふん」
横目で彼らの騒がしい様子を気にかけながら、鼻を鳴らした。
爪'ー`)y-「なぁ、デレちゃん……俺にもお酌してくれ」
ζ(゚ペ*ζ「お尻を撫で回すような人には、二度としてあげません」
爪;'ー`)y-「すまねぇ、ありゃ事故なんだ……人生最高に飲みが過ぎて、それで……」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ……あんたって、そんな不潔な事する人だったんだ。最低ね」
爪;'ー`)y-「そう言われると、心に来るものがあるぜ……おいブーン、何とか言ってやってくれ」
( ^ω^)「しつこい男はもっと嫌われるお?」
(´・ω・`)「違いない」
談笑をする彼らは、明るく能天気な日々を過ごしたいだけなのだろう。
ただ中身の無い冒険を繰り返し、自由を謳歌出来ればそれで─────
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時として大きな名声をもたらす職業であるだけに、目指す者は数知れず。
それでも、確たる目的や志を持たない者、蛮勇を振りかざして無謀を重ねる者など、すぐに消えていく。
もう随分といい歳の冒険者の中には、生活の糧と割り切っているものばかりだ。
彼らは自分達の身の丈を知り、引き際というものの線引きをしっかりと心得ている。
豊富な知識や経験、まだまだ自分などでは到達できない域に立つ者が多い。
だが、若く己の実力を過信する冒険者は、単なるパーティーのお荷物でしかない。
中途半端な気持ちで冒険へ勇み出るのはいいが、そういった彼らは周りを巻き込む。
だからこそ、”仲良しごっこ”のパーティーというものを、クー自身は拒んでいた。
場合によっては同じ依頼に飛びついた者を同行者として伴うが、互いに深入りはしない。
依頼を終えればそこで協力関係は終了。
そして信じるのは、自分だけ。
その彼女の姿には───いつか共に旅歩いた、一人の男が影として重なっている。
孤高の彼を探して、それを心のどこかで目標として、冒険者としてのクーは形作られている。
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川 ゚ -゚)「……どうでもいいさ」
そんな彼女だから、群れたがる冒険者達を好ましく思わなかった。
これまでずっと一人でやってきた彼女は、恐らくこれから先も自分の旅を誰かに委ねる事はないだろう。
しかし、なぜだかその彼らの姿に、様々な出来事が乖離しては上手く行かない自分の境遇とを重ねて、対比してしまう。
(’e’)「………なぁ」
普段から感情を面に出す事の少ないクーだが、彼女の態度から浮かない部分を察して、マスターが優しく声を掛けた。
(’e’)「ちっと人里を離れて、たまには雄大な大自然にでも囲まれてきちゃどうだい」
川 ゚ -゚)「?」
(’e’)「これさ」
取り出した一枚の依頼状を、マスターはクーへと手渡す。
それにざっと目を通してみると、内容は実に簡単なものだった。
”カタンの森”から採れる高級な薬草。
それがこのところ、依頼主が営む薬草屋の元へ届かないという。
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クーの記憶によれば2年前に大規模な火事が起こった森だったが、
今ではすっかり元の森の姿を取り戻しているらしい。
”薬草の採取”と、調査のために同行する”依頼者の護衛”が依頼内容だった。
もっとも、森の中での脅威と言ったら猛獣や、低級妖魔の類ぐらいのものだろうが。
川 ゚ -゚)「なぜ、私にこれを?」
(’e’)「なぁに、ずっと街に居たら息が詰まっちまうだろ。たまには緑に囲まれて新鮮な空気を吸ってきなよ」
川 ゚ -゚)(報酬50sp+出来高払い……ねぇ)
報酬額の心もとなさにしばし考え込むクーの元に、一人の少女が現れた。
从'ー'从「もしかして……依頼を受けてくれる冒険者の方ですか?」
川 ゚ -゚)「?」
気付けば、可憐でしとやかな一人の少女が、カウンターに掛けるクーの横に立っている。
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从'ー'从「あっ……初めまして、私……”サン=ワタナベ”って言います」
それを聞いて手元の依頼状の文末に目を落とすと、彼女が名乗ったのはそこにある依頼人の名だ。
珍しい名から、彼女がヒノモトの出身であろうという事を悟る。
その彼女の顔を見て、マスターは「あぁ」と思い出したように紹介してくれた。
(’e’)「昨日からウチの店に泊り込みで同行者を探しに来てるのよ。依頼者のお嬢さんだ」
川 ゚ -゚)「そうだったか。しかし……まだ決めるとは───」
そう言おうとしたクーの言葉を遮り、彼女は深々とお辞儀をしていた。
再び顔を上げた時には満面の笑みを覗かせ、白い歯を見せながらまくし立てる。
从'ー'从「ありがとうございますっ! ……私、冒険者って粗野な男の人だとばかり思ってたから、
こんな綺麗で格好良い女性の方が同行してくれるなんて……嬉しいです」
この娘は何を言っているのだろう、と思いながら聞いていたクーだが、
最後の方の言葉に少しばかり頬を赤らめ、気を良くしてしまう。
川 ゚ -゚)「…なっ」
川*゚ -゚)「そ、そんな事もないがな……」
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从'ー'从「………それで。申し訳ないんですが、出来るだけ人数が多い方がいいんです」
川 ゚ -゚)「だから、まだ受けるとは──」
从'ー'从「でもでも! ……沢山薬草を持って帰って来られれば、それだけ報酬も多くお支払い出来るんです。
だからあと4人ぐらい募集してから、カタンの森に向かいたいんですけど……」
川;゚ -゚)(………この娘)
このワタナベという少女はわざとはぐらかしているのか、それとも天然で人の話を聞かないタイプなのか。
会話の主導権を掴ませず、ひらりひらりと避けているという印象をクーに与えた。
从'ー'从「………」
クーが「依頼を受ける」、と折れるまで言葉を覆い被せようというのか、ワタナベは彼女の
次の言葉を、じぃっと上目遣いで瞳を覗き込みながら待っているようだった。
だが、そこへクーにとっていらぬ気を回したのがマスターだ。
(’e’)「4人か……なら、丁度いいのが居るぜ」
从'ー'从「本当ですか?」
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「おぉい、ブーン!」
それぞれに卓で盛り上がる面々に向けて、マスターが声を掛ける。
その声に振り向いたのは、先ほどクーが一瞥くれた冒険者達だ。
( ^ω^)「?」
川;゚ -゚)「お……おい」
席を立つとてくてくとこちらへと歩いてくる男から視線を背けながら、マスターに小声で訴える。
御免だ。あんな連中と組まされるくらいなら、依頼は受けない。
从'ー'从「………?」
しかし、小悪魔のような少女はそんな狼狽するクーの様子に一度だけ首を傾げると、
にこやかな笑みを向けて、投げかけようとしたその言葉を思いとどまらせた。
( ^ω^)「何かお?マスター」
(’e’)「お前さんがたもそろそろサボってないで、依頼にでも行ってきな」
川;゚ -゚)(………)
気が向かないのに、なし崩し的にマスターやこの依頼者の娘に乗せられてしまっている。
静かににこにこと依頼状を読む男の方から「ふむふむ」などと声が聞こえた。
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一人当たり50sp+歩合ならば、人数の多いパーティーならば悪い話ではないだろう。
だが、クーにとってはこんな能天気な新顔の冒険者達と組むのはやはり我慢ならない。
( ^ω^)「”カタンの森”……どんな所かは知らないけど、行ってもいいお?」
从^ー^从「ありがとうございますっ!」
(’e’)「んで……今回の依頼に同行するのがこのクー────」
川;゚ -゚)「勝手に決めてくれるな! ……私は行かないからな」
从'ー'从「えっ?」
川 ゚ -゚)「えっ」
マスターがブーンらにクーを紹介しようとしたところで、彼女の言葉に沈黙が流れる。
やがて、ワタナベという少女は泣き出しそうな表情を浮かべながら行った。
从' -'从「依頼……受けてくれるんじゃなかったんですか……?」
川;゚ -゚)「いや、だからまだ一言も受けるとは……」
( ^ω^)「おっおっ。依頼ならブーン達が引き受けるから、安心してくれお」
(’e’)「そうしてやんな。実家の薬草屋は今回の件で結構な痛手らしいからな」
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从'ー'从「ありがとうございます。……でも、あとお一人くらいの手が欲しいんです」
そう言って、ちらりと視線を向けた方向にはクーの顔。
意識的にそれから目を逸らしたが、構わずブーンがワタナベをたしなめる。
( ^ω^)「依頼に対して自信が無かったり、体調が悪かったりする事だってあるお。
ブーン達は4人のパーティーだけどお、人見知りの人は入りづらいかも知れないお」
川#゚ -゚)ブチンッ
从'ー'从「はぁ……そんなもんでしょうか」
「自信が無いだの、人見知りだの?」
それは、15の時から5年も冒険を重ねてきた自分に対して向けられた言葉か。
このヴィップに居ついてさほど日も浅いであろう新参風情のその言葉に、クーは瞬時に血が昇った。
ついぞ口から飛び出した言葉は、酒盛りしてる全員の視線を集めるのに十分な声量だった。
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川#゚ -゚)「私は一向に構わんッ!!」
(;^ω^)ビクゥッ
从'ー'从「……じゃあ、決まりですね?」
川#゚ -゚)「あぁ、どこぞのあほ面を引っさげた冒険者気取りよりかは、お役に立ってやるさ!」
そう言いながら振り返ったクーの顔には怒りの色が浮かんでおり、その鬼の形相にブーンは気圧された。
それと同時に、恐らくは自分に向けられているその怒りの理由に考えあぐねるばかりだ。
(;^ω^)(な、なんでこの人怒ってるんだお……?)
(’e’)「まぁ、仲良くやんな。気張らないようにな、クー」
从'ー'从「よろしくお願いしますっ」
川 ゚ -゚)「………あぁ」
大見得を切った手前、一度出した言葉をひっこめる訳にもいかない。
後悔の念が押し寄せてくる中、グラスを満たす乳白色の液体を一気に飲み干す。
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音を立ててカウンターにグラスを叩き付け、余計なおせっかいをしたマスターを睨むが、
静かな笑みをたたえながら、洗い終えた皿を拭いているばかりだ。
(’e’)「お天道さんの下で、ゆっくり羽根でも伸ばしてきたらいいさ」
川 ゚ -゚)(はぁ………)
「やはりこの世はうまくいかぬ事ばかりだ」
クーは己の不運を嘆いては────呪った。
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────【カタンの森 道中】────
それから二日と半日、サン=ワタナベという少女の案内の下、冒険者達はカタンの森を目指し歩いていた。
「ブーン=フリオニールだお」
「クー=ルクレールだ」
最初から必要以上に多くを語らないクーに対し、ブーンらはこれまでの道中もどこかぎこちなさを感じていた。
冒険者としては珍しく女性である彼女に歩み寄ろうとしたツンも、そっけなく突き放される。
ξ゚⊿゚)ξ「あの、クー……さん?」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「女性の冒険者って、珍しいよね?」
川 ゚ -゚)「そんなに物珍しいか、私が」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、そういう意味じゃなくて……」
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川 ゚ -゚)「私には、お前の方がよほど珍しく見えるがな」
下から上までツンの服装をなめ上げてから指差したのは、ツンの衣服。
少しばかり丈を畳んだとは言え、おおよそ冒険をするに相応しいとは言いがたい、動きづらい修道服だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……これは」
川 ゚ -゚)「そんな服装で森を探索できるというのか、甚だ疑問だな」
ξ゚⊿゚)ξ「っ………!」
外敵より自分の命を守る術を知らないツンは、この中でただ一人一般人の様な存在だ。
だが、その彼女を守るという使命をフィレンクトより課せられた3人が居てくれる。
その甘えがあったのかも知れないが、それでもツンにとっては────
(´・ω・`)「彼女にとっては、それが正装なんだ」
川 ゚ -゚)「?」
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ξ-⊿-)ξ(………ふぅ)
少しばかりかっとなって言い返してしまいそうになっていたツンだったが、
それを見越してか合間に割って入ったショボンの一言に救われ、気は紛れた。
爪'ー`)y-「なぁ、そうつんけんしなさんな」
川 ゚ -゚)「………」
爪'ー`)y-「お互い、今回は仕事仲間なんだ。仲良くやろうぜ」
いつの間にか隣を歩いていたフォックスが、クーに声を掛ける。
端麗ではあるが、軽薄さを醸し出してしまう彼の容姿が気に食わなかったのか。
川 ゚ -゚)「気安い」
爪'ー`)y-「へ?」
川 ゚ -゚)「私は、お前のような手合いは好きじゃない」
爪;'ー`)y-「たはは……手厳しい事で」
あるいは単に虫の居所が悪かっただけなのかも知れないが、彼もまた冷たくあしらわれた。
また、彼女に対して気を回そうとする面々をはっきりと拒絶するように、言い放つ。
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川 ゚ -゚)「私とお前達とは仕事仲間。それ以上でも、それ以下でも無い」
(´・ω・`)「………」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
爪'ー`)y-(けっ)
間合いに気をつけろ、そういった意味合いの言葉を彼らに掛けた。
ワタナベのすぐ後ろを歩くブーンは、時折背後でのそのやり取りを気にかけて振り向く。
( ^ω^)「………」
从'ー'从(あの、ブーンさん)
( ^ω^)「?」
从'ー'从(何だか、雰囲気悪くないですか? ……私、ちょっと責任を感じてしまって)
少し強引な態度でクーに依頼を受けさせた彼女にも、冒険者同士の空気が伝わったのだろうか。
一抹の責任を感じて、ブーンへと耳打ちする。
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( ^ω^)「君が気にする事じゃないお………大丈夫、きっとその内仲良く慣れるお」
从'ー'从(そう……だといいんですけど)
ブーン自身にとっても、こうあって欲しいと願っての言葉。
共に旅を歩く以上、誰であろうとその仲間の事を少しずつでも知っていきたい。
経験においては自分達よりも勝るであろうクーだが、有事の際に自分達の事を
信頼してくれないようでは、対処できるものも出来なくなってしまう。
今は頑なに自分以外を拒絶するような彼女だが、帰りの道程の時には互いに笑い会えるような───
そうあれば良いという、ブーンによる希望的な観測だ。
从'ー'从「あっ───見えて来ましたよ」
( ^ω^)「おっおっ、着いたのかお?」
なだらかな上り坂の頂点を折り返すと、眼下には広く深い森が姿を現した。
聞いていた話では2年前に一度延焼してしまったという事だが、見る限りでは緑深く、
そんな事があったとは思わせない程の自然が群生している。
この分なら、野生の動物なども多く生息しているだろう。
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从'ー'从「森の近くに私の叔父の山小屋があるんです。まずはそこで休みませんか?」
ξ゚⊿゚)ξ「賛成……ちょっと、疲れちゃった」
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─────【カタンの森前 山小屋】─────
从'ー'从「こんにちは」
「おぉ、サン!」
入るなり、久しぶりに出会う姪っ子の姿に喜びを露にするのは、彼女の叔父だ。
ぞろぞろと続いてくるブーン達冒険者の姿には驚いたようだったが。
( ^ω^)「お邪魔しますお」
「あんたたちは………?」
从'ー'从「叔父さん。私達、カタンの森の薬草を採りに来たんです」
彼女がそう告げると、「そうかそうか」と言いながら全員を奥へと招き入れてくれた。
全員が用意されていた椅子へと腰掛けると、空いていた一脚へ彼もまた腰を下ろす。
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「折角ここまで来たのにこんな事は言いたくないんだが……止した方がいい」
从'ー'从「え?」
その彼が姪へと告げたのは、意外な一言だった。
これまでの道中の労を労って「気をつけてな」と、心配の言葉でも掛けてから
送り出してくれるものだとばかり思っていたワタナベと同様に、冒険者らも一寸顔をしかめる。
「ここ数ヶ月、森に入った人間が立て続けに失踪してるんだ……あの森には、行かない方がいい」
( ^ω^)「………どういう、事ですかお?」
そう尋ねるブーンに対し、叔父はぽつりぽつり、神妙な面持ちで語ってくれた。
聞けば、あの森には今何らかの異変が起きているというのだ。
”森に入って失踪する”などといった事は、普通でもそう珍しい事ではない。
同じような景色ばかりが続く森の中で帰り道を見失い、遭難して彷徨う者は各地でいるだろう。
だが、その遭難者がここ数ヶ月、群を抜いてこの森で頻発しているというのだ。
例年と比べても、それは異様なほどの数だという。
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爪'ー`)y-「何か獣でも住み着いたんじゃねえか?」
「それは、森周辺に住む我々も考えたよ……」
実際に森の周辺の住人達の中から力のある者を選りすぐって、カタンの森内を捜索したのだという。
だが、野生動物が生息しているような痕跡は見られなかったらしい。
その数週間前には、魔術師学連の調査員達が再度この森を訪れている。
2年前に森へ墜落した隕石の調査を行っていた先遣隊、それからの伝書が途絶えた為に訪れたらしい。
(´・ω・`)「で───その調査員達とやらは?」
「………」
ショボンの問いかけに、ワタナベの叔父はゆっくりと首を左右に振った。
”見つからなかった”か”死んでいた”のどちらかであろうが、語る気力も無いと言った風だった。
恐らくは、この森周辺の住人達はそれに預かる恩恵によって暮らしている。
森へ立ち入る事が難しくなった事により、彼ら自身日々の生活にも頭を悩ましている事だろう。
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川 ゚ -゚)「やれやれ……では、依頼はどうなる?」
「わざわざ冒険者であるあんたらを雇ってここまで来たんだ……サンので足りない分は、私も出すよ」
从'ー'从「そんな……」
実家で薬草屋を営む彼女にとっては、実に痛烈な事実だ。
利益にも大きく関わってくるここの薬草を採れないのであれば、ここまで来た意味が無い。
大きく肩を落とす彼女の姿を冒険者達が見守る中、叔父が優しく声を掛けた。
「今夜一晩はウチに泊まって行ったらいい、勿論、冒険者さん達もな」
( ^ω^)「………お言葉に甘えさせてもらいますお」
気落ちする彼女には申し訳なかったが、どうやらそうするしかないらしい。
ブーン自身、森に生じている異変が果たしてどういうものなのか気にはなるが。
从'ー'从「すいませんでした……皆さん」
-
ξ゚⊿゚)ξ「気にしないで。危険な目に遭うかも知れないなら、しょうがないわよ」
叔父の話を聞く内、気落ちするワタナベには悪いが、森へは行かないという事に合意した。
今日一日はここに泊めてもらい、明日一番でヴィップへと発とう。
そう決めてからは、面々は荷物を下ろして思い思いの時間を過ごした。
その日の晩は─────ワタナベと、その叔父が作ってくれた取れたての山菜料理に舌鼓を打った。
───────────────
──────────
─────
早朝、ブーン達の寝静まる部屋の扉を叩く音があった。
-
その音にいち早く気付いたのは、昨晩全員の中で誰よりも早く睡眠をとったブーンだ。
寝ぼけた眼を擦りながら扉の向こうに声を掛けると、どうやらワタナベだ。
( ^ω^)「ん……どうしたお?こんな朝早くに」
从'ー'从「すいません、だけど……どうしても頼みたい事があって」
( ^ω^)「………」
ブーンのものと比べてはとても小さなその顔は、真剣そのものだった。
この時、その頼みごとというものに対し、恐らくは───と察しがついていたのだが。
从'ー'从「私、やっぱりあの森に行ってみたいんです。お願いします……報酬はきちんと────」
( ^ω^)「やっぱり、そうかお」
从'ー'从「え?」
-
( ^ω^)「実は、ブーン達も森で何が起きているのか気にはなっていたんだお。
だから、これはブーン達の為でもあるお」
从'ー'从「……っていう事は」
( ^ω^)「叔父さんには内緒にしておいた方がいいお。だけど、ブーン達には妖魔なんかから
身を守る術もある……だから、森の中での君の安全は保障させてもらうお」
从'ー'从「ありがとうございますっ!」
( ^ω^)「皆が起きたら、ブーンから話しておくお」
結局の所、己の知的好奇心と、肩を落とす薬草屋の少女の姿に流されてしまった。
クーがどう言うかは解らなかったが、再び日が昇ったらカタンの森へ行く事を決めたのだった。
この緑深き場所にあって────やがて朝を告げる鳥達の歌は、何故だか聞こえなかった。
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──────────
─────
-
時間はあるのにノッてこない時期に入ったので、導入部だけ投下してまた次回。
-
乙
待ってます。
-
投下きてたああ今から読むよ
基本sageで投下されるから見落としてしまう
創作板にきてくれればなぁと思うけど、スレ埋まるまでは移住は特にしない感じなのかな
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スレ埋まったら移住しようかと思います
5話→幕間→6話後ぐらいかと。
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乙
隕石がらみで何が立ちはだかるかwktk
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>>楽に稼げるアルバイトの件。情報載せておきます(*・ω・)! http://tinyurl.k2i.me/Xxso
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気長に投下を待つんだな
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今回結構長いけど創作板でやるとか言わないよな…?
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どこ読んだんだよ…
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待ってるぞ
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急かしはしない 作者のペースでやってください
でもこの作品に逃亡されたら本当にショックだ
ゆっくりでいいから、待ってます
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嬉しい事言ってくれるぜ!
すいません、リアルに忙しいものでなかなか。
まだ逃亡する予定はないので、もうしばしお待ちを。
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トリップがない作者は本人じゃないかもしれない
ぬか喜びはしたくないから信用しないことにする
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まだっていずれ逃亡すりみたいな…
作者のペースで進めていいから逃亡だけはしないでください;;
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ソードワールド思い出すなぁ
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最初から酉付けてないんですが、作者です。
もう一ヶ月は経ってしまいましたが、昨日ようやく続きを書き始めて今8000字ぐらい。
恐らくあと12000字ちょいちょいぐらいで5話を投下しきれるかと思いますので、
気長〜に見たって下さい。
最速で書けても明後日はハードなセックスしてくる予定なんで、投下できないかも…
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あはは
待ってますよ
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久々に原作やりながら待ってるよー
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ワタナベとの約束通り、ブーンは部屋に戻ると陽も登らない内に、すでに目を覚ましていた面々を伝えた。
森に起きている異変には危険が潜んでいる事は間違いないが、自分もまた好奇心が勝ってしまっていると。
川 ゚ -゚)「私はどちらでもかまわん。元々乗り気ではなかった依頼だからな」
( ^ω^)「そうかお」
意外にも、今回同行したクーの方が調査に対して乗り気のように思われた。
三日近くの道程を経て仕事が頓挫するよりかは、多少の危険を承知で満額の報酬を受け取る事を選んだのだろう。
川 ゚ -゚)「だが、森に危険が潜んでいると解った以上、予定通り行うならば成功報酬についての交渉は行うべきだ」
( ^ω^)「交渉……吊り上げるって事かお?」
川 ゚ -゚)「当然だ。お前達だって、善意や施しのつもりで依頼をこなしている訳でもないだろう?
予期せぬ危険が待ち受けているのならば、相応の報酬を受け取る権利がある」
( ^ω^)「なるほど、そういうものなのかお」
爪'ー`)y-「先輩冒険者の意見にも一理あるぜ。盗賊だって、伊達や酔狂だけでやっていける程甘くはねぇ」
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仲間たちもまた彼女の言葉を聞きながら頷き、納得している様子だ。
手引書には載ってなかった事柄だが、一人前の冒険者からすれば場面場面で臨機応変に立ち回り、
ある意味では”ずるさ”のようなものも身に着けていかねばいけないものらしい。
彼女自身の態度からは自分達を快く思っていないのを感じるブーンだったが、
こうした細かな配慮からは彼女には自分が見習うべき点が多いのだと感じていた。
ξ゚⊿゚)ξ「私は、皆の判断に従うわ」
(´・ω・`)「僕自身、学連の調査団が訪れたという事から、個人的な興味もある」
爪'ー`)y-「俺が居れば森で道に迷う事は……まぁないだろうさ。その点だけは保障する」
仲間にするならば、心強い面々が目の前にいる。
ゴブリン洞窟で孤独な戦いを強いられた初依頼の時には精神的にも追い詰められていたが、
彼らが一緒ならばゆとりを持って依頼に臨む事が出来るだろう。
気がつけば、いつの間にかブーンに主導権は委ねられていたようだった。
( ^ω^)「依頼者たっての希望でもあるからお、ね」
全員が起床して各員の出立の準備が整ったのを見計ったか、コンコンと部屋のドアが叩かれる。
ドアの向こうで、幼さを残した透き通るような声が響いた。
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「おはようございます」
ブーンが扉を開けると、変わらず穏やかな表情のワタナベがそこに居た。
その姿を目にするや、腕を組んで椅子に腰掛けていたクーがブーンと彼女との間に割って入る。
川 ゚ -゚)「異変が起きていると解っている森に入る以上、報酬には色を付けてくれるんだろうな?」
从'ー'从「あ……」
まだ10代も中頃といった少女に、クーはぐっと詰め寄る。
女性ながら、彼女に強く当たられれば、並の男でもたじろぐかも知れない。
そう危惧したブーンだったが、ワタナベはそのクーに言葉を返す。
从'ー'从「……という事は、皆さん薬草採りに付き合って下さるという事ですか?」
川 ゚ -゚)「報酬次第ではな」
从'ー'从「それなら、一人頭100sp……そうですね、計500spでどうでしょうか」
川 ゚ -゚)「………ふむ」
从'ー'从「どうでしょう……?」
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たかだか薬草採りの依頼で500sp、普通に考えるならば破格だ。
勿論それも頭数が居る分、より多くの採取が望めるからであろうが。
おずおずと室内の冒険者達の顔を見渡すワタナベだが、当初の倍額となった報酬には皆納得の様子だ。
爪'ー`)y-「異論はねぇ、ブーン。お前はどうだ?」
( ^ω^)「悪くないと思うお?」
川 ゚ -゚)「決まりだな。世話になったお前の叔父には、なんて告げるつもりだ?」
从'ー'从「……街へと帰る素振りを見せて、黙っていきましょう」
ξ゚⊿゚)ξ「いいの……?あなたの親戚の方、すごく心配してたけど」
从'ー'从「私だって背に腹は代えられません。ここまで来た以上、意地でもカタンの薬草を摘んで帰らないと」
どうやら、ワタナベの意思は固いようだ。
もしブーン達がワタナベとともに森へ向かうと知れば、引き止められるかも知れない。
その事実を隠してまで向かうという事は、実家の薬草屋もなかなかに逼迫した台所事情なのであろう。
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年端もいかぬ少女の口からいらぬ多くを語らせる前に、ブーンが皆に告げた。
( ^ω^)「今の森には何が起きてるかわからないお……十分に用心するお、皆?」
これにて、森行きの話は───────まとまった。
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──────
从'ー'从「叔父さん、ありがとうございました」
「サン……それに皆さんも、気をつけてな!」
森と街への分岐路、そこへ行くまでに見送ってくれていたワタナベの叔父の姿は見えなくなった。
自分の身を案じる叔父に嘘をつきながらも、少女がそれを重荷にしている風でもなかった。
あと四半刻もこの道を進めば、カタンの森だ。
そして、冒険者達の仕事はここからようやく本番を迎える。
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(´・ω・`)「この広大な森だ……獣の一匹や二匹、歩いていても簡単に出くわすとも思えない」
ショボンの言葉に、ほぼ全員が頷いた。
獣や妖魔の類、そういったものとはまた異質な何かが、この森にはあるのだろうか。
自身の気を引き締める意味もあるのだろう、ブーンがワタナベに声を掛ける。
( ^ω^)「ブーン達は君に危険が及びそうな時、出来る限り守るつもりだけど……
もしかしたら、それでも守りきれない時もあるかも知れないお」
从'ー'从「はい」
( ^ω^)「だから、もしそんな時が来たら依頼者の君だけでも……逃げるんだお?」
そんな会話を交わしているうち、森を飾り立てる木々は一段と多さを増していった。
─────どうやらこの辺りが唯一、人の手の入った入り口のような場所らしい。
そこで一旦は立ち止まった一同だったが、またすぐに何事も無い風に歩き始めた。
爪'ー`)y-「……ふぅん」
下を向いて歩きながら、そこらの地面を見渡しているフォックス。
ツンが怪訝な視線を投げかけていたのに気付き、彼女に説明する。
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爪'ー`)y-「どうやらここ一日二日の間に、先客が来てるようだぜ?」
川 ゚ -゚)「……分かるのか?」
爪'ー`)y-「あぁ、恐らくは二人組ぐらいだろうよ。僅かだが、足跡が森の中に続いてる」
(;^ω^)「ブーンには見えないお?」
爪'ー`)y-「まぁな、固い土だ。すぐに風にさらされて、見た目にはまっさらになっちまう……だが、間違いねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、なんかアンタが言うと疑わしいけど……森の中でその人達に出くわしたら、
注意を呼びかけてあげたほうが良いわね」
(´・ω・`)「その彼らが、生きていてくれればいいんだけどね」
ぞっとしない話だ。少し戻れば人里だというのに、自ら望んで森に入りわざわざ野宿をする人間も珍しい。
まして、フォックスが足跡を辿った感じでは帰り道にはそれが向いていないというのだ。
一日も二日も森に篭るなど、武芸の修行に身を置く者でもなければあり得ない話だろう。
-
少女に先導されるまま、面々はその背後で常に気を張りながら森道を歩み続ける。
左右に木々が立ち並ぶだけの景色を抜けると、やがて彼らの視界には鮮やかな青が飛び込んで来た。
从'ー'从「この森は、中央にとても大きな湖があるんです」
そう話す彼女が指差した先には、陽光を浴びて煌く広大な湖が確かに見える。
緑に囲まれた森の中央、対岸にかすかに見える小屋の近くには、木船が浮かんでいるようだ。
この光景だけを見れば、とても穏やかな時間が流れているようなこの場所。
冒険者らにも、森の中に危険が潜んでいるかも知れないなどという様子は、微塵も感じられなかった。
森は─────とても静かだった。
そこらに寝転がって目を閉じれば、風にさらされてざわめく木々の音に、まどろんでしまいそうになる。
( ^ω^)「ここらで昼寝したら、気持ち良さそうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「緊張感に欠けるわね……」
( ^ω^)「余裕があると言って欲しいお」
ブーンにそう苦言を漏らすツンの表情も、心なしか森に立ち入る以前より弛緩したように見える。
-
実際に森に立ち入ってみて、全員が肩透かしを食らった印象だ。
この視界の開けた森の中で遭難者が続出しているという理由に、全く思い当たらないのだ。
从'ー'从「なんだか、気が抜けちゃいましたね?」
ワタナベの言葉通りかも知れない。
特に障害が立ちふさがるでもなく、一同の前には何の障害も現れず、どんどんと森の奥へと進んでゆく。
ふとクーは、”たまには自然に囲まれて新鮮な空気を吸って来い”などと言って自分を今回の依頼に
送り出したマスターの言葉を思い出すと共に、肩をすくめていた。
子供のお使いのような依頼ではあるが、都会育ちの彼女には確かにマスターの言うように良い気分転換になっていた。
最近自分の前で起きた嫌な出来事が少しばかり薄らいで行くのを感じ、言葉を口にする。
川 ゚ -゚)「どうやら、杞憂だったな」
そう呟く彼女の後ろでは、フォックスが周囲をつぶさに見渡している。
爪'ー`)y-(どうかねぇ……)
目印となる木などの自然物の配置や造形を眺めては、周囲の景色を頭に叩き込んでいるのだ。
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昼前で陽光が差し込む今ならば道に迷い遭難の憂き目に遭う事はおよそ縁遠い事ではあるが、
これが夕刻となれば、周辺の景色はがらりと色を変える。
何の事は無い岐路であっても、緑深い場所にあっては人の身の感覚などそれほど頼りにならないのだ。
それは暗さを増すにつれ、あるいは森の意思であるかのように旅人の感覚をミスリードへと誘う。
万が一の時が訪れないように。はたまたそれがやってきた時にも対応出来るよう、フォックスは
盗賊としての目利きを生かしてリスクブレイカーとしての役割を人知れず務めていた。
从'ー'从「なんだか、すんなり過ぎて怖いですね」
( ^ω^)「いつ何が起こるか解らないお、警戒だけは……」
川 ゚ -゚)「………ッ」
”がさっ”
言葉を言い掛けたブーンの左手の茂みが、一瞬ざわめいた気がした。
そしてそれは、決して彼だけの思い過ごしではなかったようだ。
从;'ー'从「えっ?」
爪'ー`)(………)
-
ワタナベが突然歩みを止めた彼らの様子に振り返ると、全員が既に茂みの方へと身構えていた。
フォックスが口元を指で押さえて「声を出すな」と全員に合図する。
( ^ω^)(………何が、出るかお)
背の剣の柄に手をかけながら、茂みの奥からこちらへ近づいてこようとする気配に神経を研ぎ澄ます。
最初、風にさざめく程度だった音は次第に大きくなり、奥の方の木々を揺らしながら向かって来ているのだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何なのよ……?」
(´・ω・`)「僕らの背後へ」
从;'ー'从「は、はいっ」
こちらの声が聞こえたか、音の主の動きは一段と激しくなったようだ。
どうやら、それも複数。
(;^ω^)(────来るっ!)
鞘から刀身の七分程を抜き出していたブーンは、それを完全に抜き去ると上段に構えた。
茂みを抜けて飛び掛ってきたそこに、一瞬で振り下ろせるように。
-
やがて、その"何か"が勢い良くこちら側へ飛び出してきたのをしっかりと確認する余裕も無く、
そのまま剣を振り下ろす──────そう、思った瞬間だった。
皿のようにひん剥かれた眼と、視線が合った。
それとほぼ同時に、ブーンの背後でクーが大声で叫んでくれたお陰であったかも知れない。
川#゚ -゚)「─────止せッ!!」
(; °ω°)「お……おぉッ!?」
「な、な、なんでぇッ!?」
どうにか、すんでの所で振り下ろしかけた剣の勢いを止める事が出来た。
ブーン自身もそうだが、相手の"人間"の驚き方たるや、凄まじい狼狽ぶりだった。
なにしろ、人の声を聞きつけて急ぎ茂みを抜けたところに、長剣を振り下ろそうとした男が
大上段で自分の頭を狙い済ましていたのだから。
爪'ー`)「どうやら、あんたらか」
森の入り口付近でフォックスが観察していた足跡の主は、どうやら見つかった。
この───目の前で尻餅を付いて驚きに竦んでいる、二人組の冒険者風の男達のようだ。
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──────────
─────
「俺が、ラッツ。んで、こっちがボアードってんだ」
(;^ω^)「ブーンだお。さっきはその……すまなかったお」
互いに冒険者だと分かると、そこからはこれまでのいきさつを説明した。
ブーン達が薬草採りにこの場所を訪れたように、木こりの傍ら冒険者をしているボアードは、
盗賊風の男ラッツを引き連れて、カタンの森の質の良い木材を採取に来たのだという。
「いやぁ、参ったぜ。昨晩はこの物寂しい森で野宿する事になってよ、俺が焚き火をしようと
したら……”山火事になったら大変だからやめとけ”なんてこいつに止められたのさ」
「俺は暗所が落ち着くのさ……昨日ここに着いた時には、もう夕刻でな。
丈夫な樫の木の群生地を確認するだけにして、仕事は翌日の今日やる事にしたのさ」
爪'ー`)y-「んで、成果とやらは?」
-
「それがな……俺とした事が、何度も来た森だってぇのに道に迷っちまったんだ」
「俺だって、迷うはずはねぇと思ったさ」
体格の良いボアードに同行する、蛇のように鋭い目をした男も言った。
そのラッツを見て、フォックスは一目で盗賊家業だという事が分かる。
洞察力などに長けていなければ務まらない職業だというのに、あろう事か森の出口すら見失ったというのだ。
「んで、お前さんがたはどっちから来たんだ?」
川 ゚ -゚)「一目で分かるほどの一本道だと思うのだがな……あっちだ」
そう言って、今しがた自分達が歩いて来た道を指差すクー。
だが、ボアードは困惑の表情を浮かべながら、首を傾げる。
「……っかしいな、さっきもこの辺りを通ったと思ったんだが、こんなに拓けた道じゃなかったはずだけどな……」
「………」
傍らで沈黙を守るラッツの表情にも、どうやらボアードと同じ疑問が浮かんでいるようだった。
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川 ゚ -゚)「ふぅ……」
( ^ω^)「じゃあ、そろそろブーン達は行くお」
彼らの様子に肩をすくめたクーの仕草を合図に、二人の冒険者に別れを告げる事にした。
「おう、色々すまんな。出口の場所も分かった事だし……俺たちも昨日確認した樫を切って帰るさ」
ξ゚ー゚)ξ「気をつけてね」
挨拶も程ほどに、きょとんとしていたワタナベに声を掛け、再び先導を頼んだ。
从'ー'从「私、突然何が起きたのかとびっくりしました……」
(;^ω^)「ブーンも驚いたお」
ξ゚⊿゚)ξ「ホント早とちりなのよ……大体あんたは────」
先ほどの出来事をツンに突っ込まれながら、ブーンがばつが悪そうに後ろ頭をさすっていた。
一端の冒険者でも無い修道女が、同じ稼業に身を置く者を罵倒している光景───
彼女にとっては、それが恐らく自分の事のように感じられたのだ。
それは、かつてから今に置いても憧れている人物がただ単に冒険者だったから、という理由なのかも知れないが。
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川 ゚ -゚)「どうだかな」
ξ゚⊿゚)ξ「────え?」
尚も言葉でブーンを攻め立てようとしたツンの言葉は、クーに遮られる。
川 ゚ -゚)「さっきは私が瞬時に相手が人だと見抜いて止めさせる事が出来た」
ξ゚⊿゚)ξ「……ええ」
川 ゚ -゚)「だが、もし仮にあの時飛び出してきたのが強力な妖魔だったら、お前はどうしていた?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうって……何が?」
川 ゚ -゚)「そいつが剣を振り切れなかった時、お前の中に……勢いのままに襲い掛かってくる
強力な妖魔と対峙するような覚悟はあったか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、無いわよ!私には戦う力なんて……」
川 ゚ -゚)「なら、お飾りはお飾りらしくしていればいい」
ξ#゚⊿゚)ξ(………かっちーん)
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川 ゚ -゚)「制止が間に合わず、あのまま冒険者の男の一人を斬り殺してしまっていたとしても、
私には仕方の無い───合理的な判断だと思えるんだがな」
ξ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)「仲間を危険に晒すぐらいならば、時としてそういった切り捨ての判断も必要なのさ。
――――ま、所詮男の庇護を頼りにするだけのお嬢さんには、わからんだろうがな」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ……あんたの言い方」
川 ゚ -゚)「………」
にらみ合う、女が二人。
猛獣をも怖気づかせてしまいそうなほどの雰囲気が二人の間を取り巻き、足を止めて睨み合いを始めた。
どうやら、クーのきつい言葉にさしものツンも相当頭に来ているようだ。
自分よりも頭一つ近くは身長も体格も良いクーに対し、一歩も引く様子を見せない。
爪;'ー`)y-(お、おいブーン……このままじゃ進めねぇ。後ろの二人なんとかしろ)
(;^ω^)(……それだけは、無理な相談だお)
(´・ω・`)(危うきには近寄らず……それが最善だと思うけどね)
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男どもは震えているか気配を殺してやり過ごすばかりで、二人の間に介入する勇気など毛頭無かった。
だが、そこへ天からの助け舟を出してくれたのが、先頭を歩く少女の一声だ。
从'ー'从「あった……あの断崖の前に咲いているのが、"カタンの薬草"です!」
そこで初めてワタナベは年頃に合ったような明るい笑みを浮かべたかと思えば、小さく飛び跳ねる。
走っていく彼女の背中を追いかけるべく、背後でにらみ合う女性陣にブーンが消え入りそうな声で小さく促した。
(;^ω^)「ふ、二人共?や、薬草も見つかったみたいだし、その辺にしとくお……」
ξ゚⊿゚)ξ「はんッ………ほら、見つかったってさ?」
川 ゚ -゚)「………ふんッ」
辛うじて届いたブーンの声に応じて、二人はあからさまに不機嫌な表情で鼻を鳴らし、
互いに勢い良く視線を背けると、面倒臭そうにゆっくりと歩き出した。
いつの時代も女というものは強く、怖いものだ。
それを改めて実感しながら、一同はほっと胸を撫で下ろす。
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爪;'ー`)(……相性最悪だな、あの二人)
(´・ω・`)(あまり刺激しない方が身の為だよ?)
(;^ω^)(本当、心臓に悪いお………)
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──────
从'ー'从「皆さん、ありがとうございますっ!」
一通り採取を終えた頃には、全員の麻袋には一杯に薬草が詰まっていた。
一般に出回る際には高級な薬草であるこれを加工すれば、様々な病にも効力のある薬も取り出せるのだ。
これほどの採取が出来れば、恐らくは困窮しているであろう彼女の家業には大助かりだ。
( ^ω^)「礼には及ばないお、当初の予定通りの依頼だからおね」
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喜びを露にするワタナベだが、街に帰るまでは気が抜けない。
同行する依頼人をしっかりと護衛してやることも、今回の依頼には含まれているようなものだ。
爪'ー`)y-「随分と楽な依頼だったな」
ξ゚⊿゚)ξ「………まぁね」
川 ゚ -゚)「お前は居るだけだし、な」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ?……あんただって、別に大して仕事してる訳でもないじゃない」
(;^ω^)「ちょ、ツン……落ち着いて!ストップ、ストップ!」
依頼を終えたばかりだというのに敵意の篭った眼差しを向け合い、再び小競り合いを始める二人。
制止するブーンも神経をすり減らし、次第に手を揉みながらごまをするような格好になっていた。
そこへ、極力刺激しないようにと発言を控えていたショボンが言葉を発した。
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(´・ω・`)「お嬢さん、あの小船が停泊している小屋には、誰かが滞在していたのかい?」
両手一杯に薬草を抱えて、それを嬉々として麻袋に詰めている少女の後姿に言葉を投げかけた。
そのショボンの指先が向く方向には、確かに木造の小屋の屋根が遠くに見える。
从'ー'从「あ、はい。何でも以前この森に調査に訪れた人達が使っていたみたいで」
(´・ω・`)「確かに滞在を続けて調査するならば、船で湖を対岸に渡った方が早いか……」
魔術師学連の調査団が訪れたというこの森には、何があるのか。
そして、その調査結果は上がっているのか、ショボンにはその点が気になっていた。
一度好奇心が沸けば、それを自分の目で見るまでは気になってしようがないという性分、
それはどうやらブーン達とも同じで、冒険者としてよくあるタイプの性格なのだろう。
(´・ω・`)「ちょっと確認してみたい事があるんだ。あの小屋に行ってきて構わないかな?」
( ^ω^)「まぁ採るものも採ったし、ブーン達はかまわないけどお……」
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そう言って、クーの方へと振り向くブーン。
彼から向けられていた視線から言わんとしていた事を察知すると、短くクーが言い放った。
川 ゚ -゚)「私は構わん。だが、手短に頼むぞ」
(´・ω・`)「すまない、すぐに戻るよ」
爪'ー`)y-「それまで俺たちは、のどかな緑に囲まれて一服とでも洒落込みますか」
ブーン達に踵を返すと、盛り中央の湖のほとりにひっそりと佇む小屋へ、ショボンは一人消えていった。
───────────────
──────────
─────
-
さほど古びてもいない小屋だ。恐らくつい最近まで人の出入りが多かったのだろう。
そこら中一面には書物や羊皮紙が投げ出され、乱雑な印象を受けた。
それも、何らかの聞きから逃れるために泡を食って飛び出した、というのなら頷けるが。
(´・ω・`)(これか……)
数冊の書物にまぎれて、そっけない室内の卓上に置かれた調査報告書らしきものを手に取る。
どうやら、この森に留まり何らかの経過を観察していた学連の諜報員の、手記だ。
ぱらぱらとページをめくっては、近い日付のものを探した。
(´・ω・`)(○月×日……これが、半年前か)
速読などお手のもののショボンにとっては、ただなんとなくページを捲っているだけで、
調査員が何の目的でこのカタンの森へ来訪し、調査していた事柄は何かまで、その全貌がすぐに読み取れた。
(´・ω・`)「数週間前は、これだね」
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『△月▲日 やはりこの森は静かで居心地が良い。温暖な気候で眠る時も快適だし、何より仲間たちと呑む
夜のエールが一番の楽しみで、まるで調査が遊びみたいなものだ。
しばらくここに滞在するのは、私個人まるで苦ではない』
(´・ω・`)「おやおや……」
数週間前まではまるで日記のような内容だったが、日付が最近に近づくにつれて、その内容は
だんだんと調査員としての本分を果たしているものになっていった。
ショボンも予想していた通り、このカタンの森へ2年前に降り注いだという隕石について調査報告だ。
「△月×日 隕石が落下した事が影響しているのか、この開けた視界の森で何故か道に迷う事例が増えた。
どうやら磁場に何かしらの影響を及ぼし、それが感覚を狂わせているのだとは思うが……」
-
何も変わった出来事の無い手記のページを、さらに捲り続ける。
そしてショボンの手は、あるページで止まった。
(´・ω・`)(………これは?)
『△月●日 今日は最悪の出来事が起こった。調査員の一人、カシェルの遺体が発見されたのだ。
死因は外的な衝撃で、恐らくは胸を何かで強打されたものと思われる。
気さくで、本当にいい奴だった……無くしたのは惜しいが、今は悲しんでばかりいる訳にもいかない。
一体カシェルを殺したのが何者なのか、絶対に突き止めてやる』
どこか、楽観するようにして流し読んでいた手記の端に、物騒な文字が躍っていた。
調査員の一人が胸を強打され、殺されたというのだ。
一体────何に?
(´・ω・`)(続きを────)
クーやブーン達を待たせているが、どうやらこの調べものが終わるまで彼らには待っていてもらわなければならない
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未だこの森に潜んでいるであろう未知の危機をもたらす存在に対し、ぽっと火が灯された彼の好奇心。
それを識るべくして、ページを捲る手を止めさせようとは、決してしなかった。
『△月○日 一体どうなっているんだこの森は……頭がおかしくなりそうだ!!
一昨日はルシオが、そして昨日はバドラックが遺体で発見された……残る調査員は、私を含め3人。
皆の士気を見る限り、調査を続けるのも限界だ。学連には厳しく追及されるだろうが、
事後報告でこの森から去る事に決めた。恐ろしいのだ、この虫の声一つ無い森に、我々の命を
どこかで舌なめずりして狙っている、目に見えぬ"何か"が潜んでいる事が。
また、それは本当に生き物なのかも分からない……まだ、誰も見た者は居ないのだ。』
(´・ω・`)(やはり、この森には何かが────)
-
『追記 : 先ほどは遺体で発見されたと記したが、正確には全身の7割を致命的な大火傷に覆われた状態で
発見されたバドラックの、最期の言葉をここに記しておこうと思う。
その彼の言葉を聞いていた我々からすれば、彼は自分の意思で身を焼いたとしか思えないが───』
『やってやったぜ 見たか 俺は他の奴とは違う ……………燃えている。』
手記はそれきり何も書かれておらず、その謎めいた最期の言葉だけで締めくくられていた。
ゆっくりと両手でそれを閉じたショボンの手には、じっとりと嫌な汗が滲む。
-
何とも言えぬ表情を浮かべながら、森の中にあって人一人に焼身自殺をさせてしまうほどの畏怖の対象を、思い浮かべる。
だが、当然ながらそんなものは妖魔ぐらいしか思い当たらず、何より逃げればよい話なのだ。
そう、逃げられる場所さえ────あれば。
(…… ……ぎゃああぁぁぁぁぁッッ…… ……)
(´・ω・`)「ッ!!」
思案に暮れていたショボンの耳に微かに届いたのは、どこかから響いた断末魔。
それが彼の背筋に電撃を放ち、弾き出されるようにして再び動き出したショボンは───ブーン達の元へと駆けた。
───────────────
──────────
─────
-
大体半分投下したとこで区切りが良いので、今日はここまで……
これ以降は少しは面白くなる予定。
-
乙
続き楽しみに待ってます
-
「………ぎゃあぁぁぁぁぁぁッッ!!………」
(;^ω^)「!」
ξ;゚⊿゚)ξ「……何、今の声……!」
ブーン達にも、当然ながら耳に届いていた。
ショボンの向かった小屋の、更に奥の方から聞こえた、男のうめき声。
その声の主にも、大方の察しはついていた。
川 ゚ -゚)「今の声は……」
从'ー'从「今の悲鳴……もしかして、さっきの人達じゃないですか?」
爪'ー`)y-「───あぁ、多分な。さっき会った連中のどっちかさ」
今このカタンの森に訪れているのは、ブーンら冒険者5人と、依頼者の少女サン=ワタナベ。
それ以外の人物となると、やはり先ほど出会ったラッツとボアードとしか思えない。
川 ゚ -゚)「猛獣の類にでも、襲われたかな」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな………ブーン!」
-
ツンが言葉を掛ける前から、既にブーンは立ち上がっていた。
先ほどの悲鳴の上がった方へと助けに行くつもりなのだろう。
( ^ω^)「分かってるお、フォックス……一緒に来るお!」
爪;'ー`)y-「あー……へいへい、お前さんも物好きだぜ」
川 ゚ -゚)「私はこの場に残るぞ、まだショボンも戻らない」
ξ#゚⊿゚)ξ「(ムカッ)……じゃあ、私も行くわッ!」
どこか冷ややかな視線で彼らを見送るクーの横顔に一瞥し、ツンが走り出そうとした時、
その肩はクーによって掴み止められた。
川 ゚ -゚)「大人しく待っていろ……依頼者の少女がこの場に居るというのに、足並みが乱れ過ぎだ」
ξ#゚⊿゚)ξ「………ッ」
遺恨を残したままのお互いは、またもこの局面で睨み合う。
だが、今ばかりはそんな二人のやり取りに気を揉んでばかりいる訳にもいかぬだろう。
何しろ、人命が懸かっている可能性がある───それほどの悲鳴だったのだ。
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(;^ω^)「ツン、クーさんの言う事はもっともだお。ブーンとフォックスが帰ってくるまで待ってて欲しいお」
ξ#゚⊿゚)ξ「チッ……分かったわよ」
爪'ー`)y-「ったく、どーしてお前らもそう何にでも首突っ込んじまうかねぇ……」
川 ゚ -゚)「ま、安心しろ。しばらく待っても戻ってこなかったら、私は遠慮無しに彼女を連れて森を出る」
ξ#゚⊿゚)ξ「この………!」
爪'ー`)y-「あぁ、正しい判断だぜ。こちらとしてもな」
先ほども、今もクーが口にしたのは、仲間を冷静に切り捨てるかのような発言。
それに対してツンはまたも食って掛かりそうになったが、フォックスのフォローによって事なきを得た。
最悪の状況は、常に想定しておいて損は無い。
ただそれは時として、"仲間"というものを見捨てる事に対して割り切れるかどうかが枷となるのだが。
ワタナベとクー、そしてツンの女性三人だけを残して、ブーンにつられるようにフォックスも走り出した。
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──────────
─────
声の聞こえた南西へとひた走ると、すぐに少し拓けた視界の場所に出た。
さきほどボアード達が言っていたように、丈夫な樫が群生している場所のようだ。
そしてすぐに目にしたのは─────その一本の木の前にうつ伏せに倒れている、一人の男の姿。
(;^ω^)「………大丈夫かおッ!」
爪;'ー`)「こりゃあ……」
力なく倒れている彼の身を抱き寄せると、やはりそれは青みがかった黒髪の男、ボアード。
もはや意識も完全に失われて、瞳は混濁している。
抱き寄せたその胸元は大きな衝撃に穿たれた痕跡があり、完全に胸を潰されていた。
爪'ー`)「即死だったんだろうぜ────恐らくは、な」
(; ω )「そんな……」
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道すがらで出会っただけでも、多少なりとも言葉を交わした同じ冒険者を、放ってなどおけなかった。
だからこそ助けたかったブーンに、フォックスは辛らつな事実だけを冷淡に述べた。
大きく肩を落としていたブーンだが、開ききったボアードの瞳を手で閉じてやると、
彼の亡骸をそっとその場へと横たえてから、ゆっくりと立ち上がった。
(; ω )「もう一人、居たはずだお……」
何故ボアードはこの場で死んでいたのか、そして一体、"誰"にどうやって殺されたのか。
湧き上がる疑問と共に、今この自分達の周りにもその危険が取り巻いているという事実に、戦慄を覚える。
爪'ー`)「……あぁ。今、来たようだぜ」
フォックスが親指を差した方向の茂みを揺らしながら、同じように悲鳴を聞きつけたのか、先ほどまで
一緒に行動していたラッツはようやく姿を現した。
自分達に目が合うよりも先に、相棒の変わり果てた姿を目の当たりにすると、彼は叫んだ。
「!?……ボアード、おいッ!」
-
口と胸から血を流している彼へ駆け寄ると、ラッツもまたブーン同様の反応を示した。
彼が既に死んでいる事を確認すると、瞳を強く閉じこみながら、ゆっくりと首を左右へと振った。
「あんたら………何があった?」
爪'ー`)「そりゃあこっちが聞きてぇ」
( ω )「ブーン達が悲鳴を聞きつけてここに着いた時には───もう………」
「そうか……」
だが、共に行動していたはずの彼が何故この場にいなかったのか、という事実。
それに端を発してか押し寄せる疑念が、ラッツに対して鋭い視線を送っていた。
自らを訝しむ視線に気づき、ラッツ口を開く。
「俺は……こいつが木を切り倒してる間に何か採取できる野草はねぇかと、探しに出てたんだ……」
爪'ー`)「少しの間か?」
「あぁ、ものの数分ってとこだろうよ……ほれ見ろ」
そう言ってラッツが指差した先には、木を切り倒そうとしていたのだろう。
先ほどまではボアードが手にしていたと見られる伐採用の斧が、木の中ほどにまで突きたてられたままだった。
-
( ^ω^)「その最中に……どうしてボアードは……」
その手斧の柄を何気なく引き抜きながら、浮かぶ疑問を口にした。
木を切り倒している間に、しかも斧を突き立てた状態で。
どこから、誰に、どうやって狙われれば───────
丈夫な人間の肋骨を、こうまで粉々に砕く事が出来るのだろうか。
「人ぐらいの力じゃ、こんなこと………」
そうラッツが呟き、またブーンが見上げた先にはただ一本の太い木が聳え立つばかりだ。
爪'ー`)y-「わからねぇ……だが、やっぱりこの森はどこかおかしいぜ」
(;^ω^)「そうだおね、ツン達が心配だお」
先ほどまでは何の変哲も無い平和な光景が、瞬時に謎めいた危険な場所に感じられ、
残してきた面々もまた同じ目には遭ってやいないかという焦燥、頬には冷たい汗が伝う。
(;`ω´)「ラッツ、ボアードを連れて、一緒に森を出るお!」
「………あぁ、すまねぇな」
-
ぼうっとボアードの顔を眺めていたラッツだったが、緩慢ながらそのブーンに言葉を受け、動き出した。
ボアードの両肩をそれぞれブーンとラッツが抱きかかえるようにして、彼を森から運び出してやるのだ。
(;^ω^)「これは形見だけれど……悪いけど、置いていくお」
ラッツが手にしていた伐採用の斧を、再び同じ木に突き立て、それに背を向ける──────
────────そこから、静寂に包まれていた森は 途端にその色を変えた─────────
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─────
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ξ゚⊿゚)ξ(大丈夫かな……皆)
誰かの危機となれば、それが見ず知らずの他人でさえも例外ではない彼ら。
ツン自身が彼らと出会った時も、そうだった。
何にでも首を突っ込むとは良く言ったものだが、ツンもまた同じ種類の人間だ。
だからこそ彼らと共にこの場を飛び出して行きたかったのだが、それはこの隣に並び立つクーと、
たった少しの間でも一緒に居たくなかったからという理由も大きい。
川 ゚ -゚)「あと5分だけ待つ……それを過ぎれば、何かがあったということだ」
从;'ー'从「本当に、ブーンさん達を置いて行くんですか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!あんたは冒険者が長いのか知らないけど……こちとら!」
だが、クーの言う事にもあながち道理が通っていないという訳でもない。
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依頼者と共に同行し、ましてや彼女はまだ14、15ぐらいの少女だ。
何か不測の事態が起きたとして、今この場に居る二人でまともに戦力となり得るのは、クーだけ。
適切な判断を行え、行動力においても人並み以上である彼女に反論するツンだが、その要望は聞き入れられない。
ξ゚⊿゚)ξ「あんた……さっきも言ってたけど、こういう事?同じ仲間を、切り捨てる判断って……」
川 ゚ -゚)「先ほど、あの銀髪の男達にも告げたはずだがな。本人達もそれを望み、了承は得ている」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、随分と非情なのね─────自分が助かりたいからってワケ?」
川 ゚ -゚)「お前のように、個人の感情に振り回されたりはしないさ……私達が守ってやらなければ
たちどころに妖魔の餌食になるような子供を置いて、あいつらは何をしている?」
ξ;゚⊿゚)ξ「でもさっきの悲鳴は、きっとただ事じゃない!もし助けが必要だったらどうするのよ!」
川 ゚ -゚)「それならば、きっとこの森にはやはり危険が潜んでいるという事だ。
なおさら、こんな所でまごまごしている訳にはいかんだろう」
ξ#゚⊿゚)ξ「どうして……そんな風に割り切れるの!?同じ依頼の仲間じゃない!」
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川 ゚ -゚)「だからこそ───最小限に被害を留めるべきだ。そんなに待っていたかったら、お前はここに居るといい」
从;'ー'从「あ……あの二人とも……その、落ち着いて下さい」
おずおずと二人の間に挟まれおろおろとするのは、ワタナベ。
気丈で大人びているといえど、自分を護衛してくれるパーティーが分離してしまっている現状に、
ツンらをたしなめる彼女の表情にも、さすがに不安さが覗いた。
だがツンとクーの言い分にはどちらにも一理があり、根本的な部分では同じなのだ。
窮地に陥った仲間を思いやる気持ち。
また、より多くの仲間が助かるように苦渋を飲む決断。
それはどちらも仲間の事を想っての行動、考えであり、それほど大きくは違わない。
ツンの感情にまかせたきつい言葉に、さらに態度を硬化させてそれを跳ね除け続けるクー。
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そうした二人のやり取りをたしなめ続けてばかりいたワタナベが、突如覚えた違和感に周囲を見渡した。
从;'ー'从「………え?」
ざわ・・・
ざわ・・・
ざわ・・・
川 ゚ -゚)「………待て」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ?」
鳥の鳴き声一つ聞こえなかった周囲が、途端にざわめきだす。
それは、自然の中にあるならば普通の事だ。
風があれば───木々は揺らぐのだから
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だが今は頬を撫で付けるような風はほとんど感じない、無風。
だのに──────驚くほど急激にざわめきだした"それ"。
それはまるで木々達が、舞いを踊るかのようだった。
从;'ー'从「ひっ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何なのよ……これ!」
… キチキチキチキチキチ …
… ウケケケケ ……
… ケタケタケタケタッ …
川;゚ -゚)「………」
次第に、不快な雑音がそこら中から奏でられ、怖気さに肌を泡立たせる。
音ではなく明らかに"声"として耳へと伝わるざわめきは、悪意に満ちていた。
周囲全方位を覆う全ての木々達が、足を地面から抜くような動作で根を抜いて"歩き出す"。
その光景はもはや、ハロウィーンの悪戯かと思い込んでしまいたくなるような悪夢だった。
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待っていたぜ
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来たか
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ワクワク
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仕事とハードセックスの兼ね合いで、今日の深夜から明け方までの間に出来れば投下を…
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どんだけハードセックス強調する気だww
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