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天界の王子-Heavens of Prince-
20
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/01/18(金) 19:12:55 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「レナの……友達?」
レナに紹介されたハクアを指差しながら魁斗は問いかける。
レナとハクアは仲の良い姉妹のように同時に頷く。こうして並んでいると本当に姉妹のように思えてきた。見た目的にハクアが姉でレナが妹だろう。
ハクアは気持ちよさげに伸びをしながら、
「風の噂で聞いたんだけど、二人とも『死を司る人形(デスパペット)』と二人で戦っているらしいじゃない? だからちょっと不安なのよ。レナはそれなりに戦えるけど、カイトくんは全然でしょ? この前一人撤退させたらしいけど、それは相手の動揺あってのことだとも思うし」
確かにその通りだ。
戦いに不慣れな魁斗に敵が合わせてくれるとは思わない。むしろ魁斗が弱い方が相手にとっても好都合のはずだ。レナも戦えるといっても二対一は厳しいだろうし、それより数が増えれば彼女一人で対処するのは不可能だ。
つまり、ハクアはこう言いたいのだ。
二人だけじゃ戦うのは難しいだろうから、私も手伝ってあげる―――と。
彼女は不器用なのか、はっきりと手伝うと言えないようだ。
それは魁斗にとっても都合がいいし心強い。彼女の強さの全貌が掴めないが、彼女の実力はレナも認めているような気がする。
魁斗はすっとハクアの前に手を差し出す。
「よろしく、ハクアさん。切原魁斗だ」
そう言う魁斗に、ハクアがくすっと笑うと彼女は魁斗の手を握り返す。
「ハクア・グランデよ。君の戦いの監督もやらせてもらうわ」
そう言った瞬間だった。
突然彼ら三人を取り囲むように五人の人間が舞い降りてきた。黒い服装で身を包んでいるため顔や性別も分からないが、おそらくは全員男だろう。
彼らはそれぞれ刀を握っている。何の能力も持たない『剣(つるぎ)』だろう。
五人は切っ先を三人に向けながら出方を伺っている。
魁斗とレナが臨戦体勢に入ると、
「―――ふあー」
間の抜けた溜息と共にハクアが前へ出て行った。男たちの注目は一気に彼女へと向き、五人が彼女一人を取り囲む。
「ハクアさん!?」
魁斗は思わず叫び飛び出そうとする。しかしそれをレナが止める。
彼女は焦る魁斗を落ち着かせるように、
「大丈夫ですよカイト様。ハクアは敵が多ければ多いほど、強くなりますから」
ハクアはピアスを刀の形に変形させる。
先ほどまで自分が腰をかけていた薙刀ではない。刀だ。
魁斗は『剣』の形状が違うことに首を傾げる。
ハクアが大きく深呼吸をし、五人の男たちを見回す。と、
「退屈しそーね。皆同じ実力なら、せめてあと五倍の人数は連れて来なさいよ」
言った途端、ハクアへと五人の男たちが襲い掛かった。
21
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/01/25(金) 23:13:53 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ハクアは刀状の『剣(つるぎ)』を持ちながら、五人の敵の攻撃を紙一重でかわしている。その光景に魁斗は思わず小さな歓声を上げた。今のこの状況だけでもハクアの実力が高いことが分かる。
ぎりぎりのところでかわしているにも関わらず、ハクアの表情には余裕が見えていた。今のこの状態も彼女にとってはただの遊びの範囲なのかもしれない。逆に焦り始めているのは襲い掛かってきた敵の方だと思える。その様子を見る限り、相手はそれほど実力が高くないのだろう。
五人の敵は再び少し距離を開けてハクアを囲むような陣形になる。
思ったより楽しめてないのか、ハクアは呆れたように溜息をついて、
「あのさぁー、もうちょっと真面目に出来ないワケ? 退屈なんですけどぉー?」
相手を挑発するような言葉だ。
その言葉に一人が動こうとするが、隣にいた男がその動きを牽制するように腕を前に出した。
動きを制され男は乗り出しそうな身体に制御をかける。
一人の動きを牽制した、恐らく五人のリーダーであろう男はハクアに告げる。
「中々の腕をお持ちのようだ」
声から推測するに三十代くらいの低い男性の声だ。低いながらも優しい印象を与え、話し方も丁寧なものだった。
男の言葉にハクアは『そりゃどーも』と軽く返事をする。
男はそれならば、というような口調で続ける。
「何故本気で戦わぬのですか? 我々は、あなたが本気を出すまでの相手ではないと?」
「……」
ハクアは黙る。
何て答えたらいいか分からないような表情だ。正直に言うべきか、謙遜するべきか。魁斗のハクアに対する第一印象としては感想などはずばっと言うような気がしたが、相手が傷つくようなことは逡巡するようだ。それも相手によるようだが。
彼女は敵には一応敬意を払う人物であるようだ。
中々答えないハクアに男は質問を変える。
「……一対一であれば、本気を出してくれますかな?」
「そっちの方が無理な話よ」
対してハクアは即答した。
一切の逡巡も躊躇いも迷いもなく。一言で言い放った。
「あなた達五人でこのざまでしょ? 四人減ったら尚更本気出せないわよ。そもそも、五人で本気出すかどうか迷っている相手に、そんな質問するかい、フツー?」
優しげな印象のあった紫色の瞳が冷徹なものへと変わり、男を睨みつける。
男は小さく息を吐いて、
「では仕方ないですな」
諦めるのか、とハクアが安堵した瞬間、
「使いたくなかった方法を講じるしかないようだ」
突如ハクアの頭上から一人の男が刀を持って襲い掛かる。五人と同じような服装の男だ。
ハクアが頭上に気を向けた瞬間、彼女を囲っていた五人が一気に襲い掛かる。
上を防げば五つの刀がハクアの身体を貫き、周りに気を配ればハクアの頭部に刀が深々と突き刺されるだろう。
どちらを防いでも彼女を待つのは死。男は最後まで正々堂々戦おうとしていた。が、ハクアの自身の力を過信したせいで、正々堂々は失われ、彼女の命が失われることになった。
魁斗が彼女の名前を叫ぶ中、二人だけが危機的状況を危機とも思っていなかった。そう、ハクアとレナだけが。
むしろこの『危機』を、『嬉々』として楽しんでいるのだ。
六人の刀が一斉にハクアを襲う。そんな中、ハクアは呟いた。
「だから言ったのよ。最初から正々堂々六人でやってれば、私の本気の片鱗を見れてたんだから」
ハクアの刀が風に包まれる。刀を台風の目として、一本の刀を真ん中とした渦巻きが刀全体に纏わる。渦を巻く風が消えると姿を現したのは刀ではなく、ハクアが魁斗と出会った時跨っていた薙刀状の武器。
先ほどの刀は何処にいったのだろうか。
「ハクアの『剣』は少し変わっているんですよ」
レナが口を開いた。
彼女は自分の家族を自慢するような口調で、
「ハクアの『剣』は刀から薙刀に変わる二段変形の『剣』。その名を―――」
ハクアが襲い掛かる六人を強力な風を巻き起こし吹き飛ばす。
彼女の『剣』は巨大な風を巻き起こす。だからこそ、彼女は一対一より、すかっと纏めて吹き飛ばせる多対一を望むのだ。
彼女は薙刀をくるくると回し、六人全員を倒したのを確認するとその薙刀をピアスに戻す。
彼女の『剣』の名前は―――『帝(みかど)』。
22
:
takeda
:2013/01/26(土) 08:22:34 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ニヒリストな俺は、無評価。
23
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/01/26(土) 23:17:09 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第4話「休日の二人」
ハクアが『死を司る人形(デスパペット)』の撃退に協力してくれることで、魁斗とレナは僅かに安心した。
二人でこれから乗り切れるとは思っていなかったし、彼女の実力も知って心強いと思ったのも確かである。
もとよりハクア自身は、二人が断っても勝手に協力する気満々だったらしいのだが。
そんなハクアがやってきたのは一昨日、つまりは金曜日。今日は日曜日でいい具合に空も元気よく晴れている。
魁斗はというと、レナと一緒に街にいた。
レナは嬉しそうに魁斗に寄り添いながら街を歩いている。密着しているせいか、魁斗は歩きづらそうな顔を浮かべている、幸せ満開のレナはそれに気付く由も無い。
魁斗は身体全身に冷たいような痛いような視線を感じている。
周りの通行人からの嫉妬の眼差しだ。銀髪美人の女性にくっ付かれているどこからどう見ても平凡な少年を見れば、恨まれるのも分からなくはない。彼らの視線が『死を司る人形(デスパペット)』よりも殺気が篭ってて怖い。
その視線に嫌気が差した魁斗は小さな声でレナに言う。
「……おい、もうちょっと離れてくれよ。歩きにくいだろーが」
「いいじゃないですか、今ぐらい。それに今日は何だかずっと近くにいてほしいんです」
少し恥ずかしかったのか、レナは僅かに頬を赤くしながら言う。その様子に魁斗は僅かにどきっとしてしまう。
傍(はた)から見れば明らかに美人の部類に入る彼女。そんな彼女とたった三日程度しか一緒にいないはずなのに、その三日の間でいろんなことが起きすぎたため、彼女のことを結構近しい存在だと思ってしまっている。
魁斗は考えた。
レナにとってはそう思われることが嬉しいのだろうか、と。
彼女はことあるごとに『主従関係』だと言っている。それが彼女の望む関係なのだろうか。それとも、自分の気持ちを隠して言っているだけなのだろうか。
自分はレナのことを、今はどう思っているのだろうか。
まずはそこからだな、と魁斗は溜息をつく。
「なあ、レナ」
「はい?」
魁斗は思わずレナに声を掛けていた。
首を傾げるレナに、魁斗が言った質問は、
「もし、俺の中に『シャイン』がなかったら……ただの天子ってだけの存在だったら、お前はこっちに来てくれてたか?」
魁斗の質問にきょとんとするレナ。
彼女は僅かに考える仕草をすると、困ったように笑いながら、
「……どうしてたでしょう。実際、こっちに来る前日も心配と楽しさが合わさってあまり寝れなかったものですから」
だからこっちに来る途中で手傷を負ったんですがね、と彼女は付け加える。
つまり彼女は、魁斗が護衛対象であろうがなかろうが関係ない。彼女の彼に対する忠誠心は彼の『シャイン』に対してじゃなく、彼自身に捧げられているのだ。
レナは魁斗を見上げて、
「カイト様がもし、普通の天子だったとしても。私はいつかこっちに来てたと思います。来た理由は違えど、私は遅かれ速かれあなたに会いに来ています」
レナは魁斗の手をそっと取って、
「さあ、行きましょう。今日はカイト様が案内してくださるんですよね? まずは何処に連れて言ってくれるんですか?」
「あ、おい……引っ張るなって!」
魁斗はレナに引かれるがまま、街を歩いていく。
そんな二人の光景を、影から見つめる人物が一人いた。
「……あれは、カイトくんとレナさん?」
肩より少し長い栗色の髪、黄色のカチューシャがチャームポイントであろう目立たない印象の美少女。
沢野叶絵だ。
24
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/02(土) 01:03:28 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「カイト様ー!」
魁斗とレナは大きなデパートの服屋に来ていた。
なんでも、レナはあまり普段着が無いらしく今も魁斗の母、由魅の服を着ている。だが、レナと彼女ではサイズが合わないらしく、レナの普段着と下着を買いに来ていた。もっとも、下着コーナーまで魁斗はいかないだろうが。
レナは二着のワンピースを魁斗に見せながら、彼の顔をじっと見つめている。どっちが似合うか決めてほしいらしい。
それくらい普通に言ってほしい、と思う魁斗だったが、レナの持っている二着を見比べる。
少し悩み、魁斗は結論を口に出そうとする。
「やっぱ無難に水色の方が――」
そこで、魁斗は躊躇った。
こういう時、女性は大抵男性の選んだ逆の方を好む傾向がある。
彼女が持っている白のワンピースと水色のワンピース。魁斗は水色の方が似合うと思うが、女性の目線では白なのだろうか。いやいや、やっぱり自分の意見が述べた方がいいのでは?
あれこれと悩む魁斗を不思議そうに見つめるレナ。
彼女は先ほど、出かかった魁斗の言葉を聞き逃していなかった。
「……カイト様は、水色の方が私に似合うと思いますか?」
この反応はやはり逆だったか、と思い魁斗は、
「い、いや待てレナ! やっぱり逆の方が――」
「ですよねー! 実は私も、どちらかというと水色の方がいいと思っていたんですよー!」
レナは相当嬉しそうな様子で水色のワンピースをレジへと持っていった。
小学生の子供が、初めて親におもちゃを買ってもらったような、それと同じくらいはしゃいでいた。
よくよく考えてみれば、魁斗のことをいっつも考えているような彼女が、魁斗と選んだ逆の方を選ぶのは少ないんじゃないだろうか? もし、彼女が白を気に入っていたら両方買っていると思う。
会計を済ませたレナが満面の笑みを浮かべながら、袋を抱えて戻ってくる。袋の大きさとふくらみから見て、買ったのはワンピースだけじゃないようだ。
「さあ、カイト様。次は下着売り場に行きましょう! お次もどんな下着がいいか選んでください!」
「ふざけんな! 出かける前に俺はそっちには行かないって行ったろ! お金渡すから買って来い! 俺はトイレにでも行っとくから、買い終わったらメールでもしてくれ」
言いながら魁斗は三千円を渡して、軽く手を振りながらその場を去っていく。
取り残されたレナは少し寂しそうな表情をして、
「……もう、カイト様ったら……」
下着売り場へと足を進めていった。
一方で、お手洗いの方へと来ていた魁斗。
男子トイレか女子トイレかちゃんと確認したうえで、男子の方へ入ろうとした途端、横の女子トイレの方から見慣れた人物が出てきた。
肩より少し長い茶髪に、黄色のカチューシャ。魁斗のクラスメートである沢野叶絵だ。
二人は目が合うと、お互い驚いたように大きく目を開いた。
「……サワ?」
「……カイトくん」
魁斗は驚いていたが、叶絵はそうでもないようだった。
魁斗は知る由も無いが、叶絵は魁斗とレナが二人でいるのを目撃している。
だが、このデパートにいるとは思ってもいなかったので、そこについては僅かに驚いているようだった。
目を合わせて固まる二人。
見詰め合うような状況になってしまい、二人は僅かに顔を赤くして目を背ける。
「……よう、サワ。偶然だな」
「……うん。ホント、偶然だね……」
目を逸らしたまま、二人はそんな言葉を交わした。
25
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/02(土) 09:41:06 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
デパートの向かいに建っている会社の屋上で、一人の人物がフェンスに身を乗り出すようにもたれていた。
綺麗な顔立ちに、太ももくらいまで伸びた黒髪。優しそうな紫色の瞳を持つ女性だ。
レナの親友、ハクアは大きな欠伸をしながら呟く。
「そういえば、今日レナはカイトくんとデートだっけ? いいねえ若者は」
実際にレナからは『明日カイト様とお出かけするんですー』としか言われてないが、ハクアの中では男女二人のお出かけ=デート、である。
見た目が美人であるハクアは結構異性から好意を寄せられることも多いが、彼女自身恋愛に興味がないため交際も断っている。もっとも断った理由の大半が『相手が好みじゃないから』という理由もあるようだが。
そんな中、ハクアにとって切原魁斗は特別だ。
好きというわけではない。恋愛感情なんて寄せるわけもないし、ましてや相手は年下だ。彼女の好みとしては大人っぽい男性なのだから、まだ年相応の一面がある魁斗は彼女の好みとは全くの正反対だろう。
だが、ハクアは魁斗に対して好意とは別の感情を抱いていた。
好き――というよりも興味。
天子という特別な存在で、体内には『シャイン』という謎の物質を宿し、『死を司る人形(デスパペット)』の刺客を一人退けた――。
ハクアは口元に微かな笑みを浮かべ、
「……本当に、なんなのかしらねあの子は」
言いながら目の前に建つデパートに目を移す。
その中にぼんやりとしか見えないが、見慣れた少年が目に入る。別に視力がいいわけではないから、その少年に似ているというだけかもしれない別人かもしれないのだが、その少年から僅かに魔力を感じる。間違いはなかった。
その少年は、今銀髪の女性と一緒にいるはずだが、どういうわけか彼が一緒にいるのは茶髪にカチューシャをした少女だった。
「ふぅん」
ハクアは面白そうに口の端を吊り上げる。
ただの傍観者であるハクアは、誰にというわけでもなく一人で呟いた。
「――修羅場ってやつ?」
その頃、廃ビルの屋上にて二つの影が動いている。
茶髪の大きな刀を携えた少年と、桃色の髪をポニーテールに結った少女。少女の手には、刀が握られていた。普通の形ではない、峰の中心からもう一つ刃が伸びており、切っ先が二つついている刀である。
少年の方が気だるげに溜息をついた。
「ったく、面倒くせェな」
「ちょっとー、文句言わないでよ。そっちが決めたんだから」
「わーってるよ。だから嫌とは言ってねェだろ」
「さっき嫌みたいなこと言ったじゃん!」
桃色の少女が反論する。
男は違ェよ、と呟いてから、
「面倒くせェから、とっとと済ませるぞっつー意味だ」
「ああ、ナルホド」
二人の刺客が、魁斗とレナに迫っていた。
26
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/02(土) 23:11:46 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
偶然出会ってしまった、切原魁斗と沢野叶絵。
二人は少し顔を赤くして目を逸らしたままだ。この沈黙が耐えられなかったのか、叶絵の方から沈黙を破る。
「……カイトくん、今日は一人?」
叶絵の質問に、魁斗は言葉を詰まらせる。
一人と聞かれればそうではない。誰と一緒と聞かれればレナと一緒、とも言いにくい。
もし、一人でいるのかと聞かれて一人だと答えてしまえば嘘をつくことになる。最悪叶絵と一緒に行動することになって、実はレナと一緒にいましたと発覚してしまう可能性も決して低くはない。
レナと一緒とも言えない。叶絵からすればレナはただのクラスメートである。ただのクラスメートと一緒などと、叶絵から怪しまれても可笑しくない。せめて、レナと同居してることは叶絵を含め、クラスメートの誰にも知られたくない。
そのため、魁斗は返答に困った。
中々答えない魁斗の顔を、叶絵が心配そうに覗き込む。
「カイトくん?」
「あ、ああ……」
魁斗は目を逸らしたまま答える。
「母さんと一緒に来てるんだよ。たまには二人で買い物に行こうって誘われてな」
そっか、と叶絵は納得したように言葉を返す。
これで魁斗が想像しうる最悪の展開『叶絵と一緒に行動』という事態は免れたと思う。
そこへ、
魁斗の携帯電話がコール音を鳴らす。
携帯電話を開くと表示された名前はレナの名前だ。叶絵が目の前にいるこの状態で声を聞かれては少しマズイかもしれない。
「どうした? 呼び出すのはメールでいいって言ったろ?」
『それがそうもいかないんです! カイト様、気付いていないのですか!?』
魁斗は小さい声で対応するが、切羽詰ったような口調のレナはそうではなかった。
何に気付いたというのか、魁斗がレナの返答を待っていると、レナは叫ぶように言う。
『彼らが来ました! 『死を司る人形(デスパペット)』です!』
「何だと!?」
魁斗の言葉に僅かに驚いたような反応を見せる叶絵。
魁斗は慌てたように、すぐに小さい声へと戻す。
「お前は今何処にいる」
『デパートの外です』
「分かった。一分以内にそっちに行く」
魁斗は電話を切り、ポケットの中へとしまった。
側にいる叶絵に魁斗は謝るように声を掛ける。
「悪い。急用が出来た。じゃあ、また学校でな!」
「あ、うん……」
名残惜しそうに手を振る叶絵。
去っていく魁斗に叶絵は呟く。
「……今の電話の相手って、レナさん……?」
それに気付くわけも無い魁斗は、急いでデパートの外へと向かっていた。
27
:
ff
:2013/02/03(日) 00:04:05 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
名無しさんというクズ人間についてご説明致します。
過去200人を精神的破滅に追い込み、死刑判決が下される事2回
あまりの悪さ故、執行ゆうようさえ与えられなかったそうです。
しかし彼は、ことごとく生き延びました。
場所は2チャンネル掲示板の地下・・かつて変人のみを収めたといわれる地
一じょうの光も射さず身も心も凍り着くような闇の闇・・・そこが彼の現在地です。
さて・・いよいよ解放の時が来ましたね。
もしも
>>1
さんがお亡くなりになられたら、おつや招待して下さいね。
告別式も出席させてもらいますから。ご心配なく
28
:
yazawa
:2013/02/03(日) 21:58:46 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>27
因果応報から逃げても、それは無駄なことだ。
君は、贖罪すべきだ。「死ね」や「殺す」などの名誉毀損をしたのだから。
さて、通報しようかな、この犯罪者モブめ。
29
:
yazawa
:2013/02/04(月) 23:05:19 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>27
俺『ふ』
ff(たっくん)『うんこしたいです』
俺『我慢しろ』
そして、ff(たっくん)は、俺の言う通り、うんこを我慢し、死んでしまった。
30
:
yazawa
:2013/02/04(月) 23:07:35 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
もともと、たっくんは痛い奴だった。
名無しで2chに書き込みする方がカッコイィと思い込んだ、痛い奴。
そういうような、とっても、いた〜い、厨坊だった。
厨坊病という病で、何でも闇に従いたくなる、アホ。
それが、たっくん。病死だった。俺は、闇として、痛い奴ら、みんなを葬ることにした。
31
:
yazawa
:2013/02/04(月) 23:08:58 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
そして、その支配者、それが竜野翔太・・・現実世界のラスボスである。
何れ、彼と、このPhoenix矢沢は、対峙するだろう。
否、竜野翔太・・・またの名を、竜野翔一。
32
:
名無しさん
:2013/02/05(火) 17:36:30 HOST:180-042-153-151.jp.fiberbit.net
正直、書き直しの理由がわからんな。
管理人の負担を増やしているだけに過ぎない。
小説の内容に関しても、意味の被る文章(十五、十六歳〜恐らく高校生のところなど)が多いしキャラクターの価値観がストーリーに振り回されていて共感できない。
しかも、主人公のバックボーンがないから、レナを守るところとかいちいち台詞がクサく聞こえる。
後は面倒なのでやめとく。
33
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/08(金) 20:29:47 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
魁斗とレナが電話をしている頃、同じく敵の襲来に気付いたハクアは薙刀状の『剣(つるぎ)』である『帝(みかど)』に乗って、敵の下へと飛んでいた。
今回も前回と同じように敵を退けられるか分からない。むしろ、二回目こそ注意するべきだろう。
魁斗のスペックも、使用した『剣(つるぎ)』も大体情報はつかまれていると考えるのが妥当だ。何もしないで再び来る方が可笑しい。
だからこそ、魁斗のサポートをするためにハクアは敵へと向かっていた。
地上にいる人達が奇異の目を向けてくるが構ったことではない。いちいち気にしていた方が面倒なことになりそうだ。
そこで、ハクアは背後の視線に気付く。
攻撃の機会を狙っている、にしては殺気も敵意も感じない。単に尾行しているだけのようだ。
しかし、相手にせず攻撃されても厄介だった。ハクアは近くの建物の上に着地し、背後を振り返る。
「出て来なさいよ。そんなバレバレな視線送って、私が気付かないとでも思った?」
溜息が聞こえた。
ハクアの声に返事するかのような溜息の後に、尾行していた人物は姿を現す。
向こうの建物の上にある看板の陰から姿を現したのは、白スーツの男だった。白いスーツに白いマント、髪は肩まで伸びていた。目つきは舌なめずりでもしているような不快感を感じさせる目つきで、笑みを浮かべている。
男の登場にハクアは薙刀を構える。
しかし、男は両手を頭の位置まで上げる。銃を突きつけられた人質のような状態である。
戦意がない、と主張するような行動を示されてもハクアは構えを解かない。その代わり肩の力を抜いた。
戦う気がない相手に、ハクアは問いかける。
「……アンタ誰? 私を尾行しようなんていい度胸じゃない」
ハクアの質問に、男は笑みを浮かべたまま答える。
「尾行するつもりはなかったんですよ。ただ、私は貴女を監視してましてね。貴女が動くもんだから、こっちも動かざるを得なかったというわけで」
ついてきてたなら尾行よ、とハクアは言って、
「何のために監視してたの? 隙あらば襲おうとでも思った? それとも、交際の申し込みかしら」
「どちらでもありませんよ。ただ、貴女に邪魔されると面倒なことになるので」
邪魔? とハクアは眉をひそめる。
男は笑みを浮かべたまま、ハクアの疑問に答えるように言葉を続けた。
「今敵が来ていることにお気づきでしょう? この戦いを邪魔してほしくないんですよ。これは彼らの大事な戦いですから」
「要するに、戦いが終わるまで私は見ず知らずのアンタと仲良くお喋りでもしてろっての?」
「ただするのも退屈でしょう?」
男の笑みが、何かを企んでいるようなものに変わる。
「貴女に一つ提案があります」
提案? とハクアは鼻で笑う。
どうせくだらないものだろう、と思ったハクアに、男が出した提案はこうだった。
「『死を司る人形(デスパペット)』に入ってください。そしたら、切原魁斗とレナ・エルミントの身の安全を保護しましょう」
34
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/09(土) 23:32:28 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「却下よ!」
ハクアは男の提案を即座に断った。
それもそのはずだ。彼女はただ観光のために人間界に来ているわけではない。彼女がここに来た理由は、こっちで戦っている親友のレナを助けるためだ。ここで敵の仲間になってしまえばレナも、そして魁斗のことも裏切ることになってしまう。
彼女は、裏切るのはもうやめることにしたのだ。
提案を断られた男は、困ったように溜息をつく。仲間の命を交渉材料に出しても応じてくれないことに、困ったようだ。
ハクアはそんな男の心中も気にせずに、言葉を続ける。
「たとえここで私がアンタらの仲間になったところで、カイトくんやレナの身の安全が完全に保障されるわけじゃない。私が仲間になった途端、約束をなかったことにして、二人を襲うことだって出来る」
「だからといってここで貴女を逃すわけにもいかないんですよ。ここで貴女を逃して、彼らの戦いに首を突っ込まれては困りますからねぇ」
「しないわよ。そんな野暮なこと」
「保障出来ますか?」
ハクアは頷けなかった。
多分、魁斗やレナが敵に圧倒され殺される寸前の場面に遭遇したら、手を出さずにはいられないだろう。親友のレナが危ないなら迷わず薙刀を振るうし、興味を持っている魁斗が危ないなら彼と敵との間に割って入るだろう。
相手の言葉に頷くことは出来ない。だからといって相手の提案に乗るのも嫌だ。
だったら、彼女が取る行動は一つだった。
彼女は今まで抜いていた肩の力を再び入れ、静かに深呼吸を繰り返す。
「……?」
その様子に白一色の男も首を傾げた。
深呼吸するのはすぐに見て分かるだろうし、肩の力を入れたのも気付いたようだ。
ハクアは薙刀の切っ先を相手に向けると、静かな口調で告げる。
「抜きなさい。アンタも『死を司る人形(デスパペット)』の人間なら、戦う術(すべ)くらいは……『剣(つるぎ)』の一本くらいはあるでしょう?」
「ほお。……そう来ますか」
男は愉快そうに呟いた。
それから俯いて引き裂かれた笑みを浮かべると、そのまま高らかに笑い出した。
「アーハハハハハハハハハッ!! いやぁ、実に愉快だ。敵に降るのも嫌、手を出さない保証もない。ならば戦う、か」
「可笑しいならずっと腹抱えて笑ってなさいよ。その鬱陶しい笑い声を発する喉を掻っ切ってあげるから」
おお怖い、と男は僅かに笑いながら相手を挑発する。
だが、そんな質の低い挑発に心を乱すほど、ハクアは馬鹿でもなくまた、短気でもなかった。
ハクアは薙刀の切っ先を向けたまま、再び相手に言う。
「戦うか逃げるかどちらかにしなさい。戦うなら容赦はしないし、逃げるなら今回だけは見逃してあげる」
つまり、次は逃がさないということだ。
男はくくっ、と笑いながら、
「ならば私は前者を選びましょう」
ハクアが眉間にしわを寄せた瞬間、だが、と相手が言葉を続けた。
「戦うのは私ではありませんがね」
瞬間、どこから現れたか分からない黒装束の人間が二十人程度でハクアを囲むように並んだ。以前と比べて人数も多いし、武器も刀だけではない。斧や槍、中にはヌンチャクや鎖鎌などもいる。しかも、一人一人から感じる殺気や闘気も違った。肌を刺すような、そんな気を発している。
カイトくんなら死んでるね、と小さく呟いてから、ぺろっと舌なめずりをした。
ハクアは薙刀を構え直して、
「いーじゃん。前言ったとおり五倍の人数……いや、前は五人だったから四倍か? ま、どっちでもいーや! とりあえず楽しませてくれんでしょーね」
二十人の男達は、次の瞬間戦慄する。
ハクアは紫色の瞳を、鋭く冷たくしながら、低い声で、言葉だけで相手を殺すように言う。
あくまで冷たく、これから殺戮するように。
男達に、『天嵐の姫君(てんらんのひめぎみ)』の表情を見せた。
「本気できてね? そーでもしないと、マジでアンタらイっちゃうからさァ」
35
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/10(日) 22:29:48 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第5話「狂気の再戦」
デパートの外で合流した魁斗とレナは、顔を見合わせることもなく敵の出現位置へと向かって走っている。
驚くことに、常人より脚力が優れている魁斗とレナが肩を並べて走っていた。理由は簡単で、レナが足に魔力を集中させているからだ。
魔力は通常、武器に炎や光を纏わせるもので、それでただの斬撃の威力を強めている。しかし、使い方によっては身体の筋力を上げることも難しいことではない。圧し負けたとはいえ、レナの細い腕でザンザの刀を受け止めたのは、腕の筋力を魔力で増強しているからだ。
普通に走っては、レナが魁斗より圧倒的に遅い。彼女は自分のせいで魁斗に迷惑をかけないよう、配慮しているのだ。
魁斗達が着いたのは工場の跡地のような場所だった。建設途中なのか、鉄筋が建物の骨組みのように組まれている。その鉄骨の一本に、二人の人影を見つける。
その二人の人影を、魁斗は力強く睨みつける。
「随分と悠長に待ってるじゃねぇか。余裕だな、『死を司る人形(デスパペット)』」
魁斗の言葉に、巨大な刀を背中に携えた男が反応する。
鉄骨に腰掛けていた男は、その場に立ち上がり、鬱陶しげな口調で言う。
「いちいち組織名で呼んでんじゃねェよ、天子。俺の名前も憶えられてねェのか?」
「そっちこそ、変な呼称を使うんじゃねぇよ」
二人は睨み合う。
その光景に、男の傍らにいた桃色の髪を一つに結った少女が呆れたように溜息をついた。
彼女は一歩前に進み出ると、男を牽制するように手を彼の前に出す。
「君が天子かぁ。もうちょっと大人っぽい人を想像してたけど、違うみたい。まだ子供ね。ちょっと可愛いかも」
無邪気な笑みを浮かべながら、少女が魁斗を見て言う。
魁斗は彼女を見つめるが、少女からは特に何の反応もなかった。
巨大な刀の男が、背中から刀を引き抜いて切っ先を魁斗に向けながら言う。
「第八部隊第一小隊隊長ザンザ・ドルギーニだ。憶えとけ、天子ィ!!」
ザンザが鉄骨の上から飛び降りて、下にいる魁斗に刀を振るう。
しかし、彼の攻撃を受け止めたのは魁斗の双刀ではなく、レナの一本の刀だった。特に珍しい部分はない。しいて言えば、刀身がやけに白い。普通の白よりも透明感があるような、純白といった白さだ。
突如割って入ったレナに、ザンザは不機嫌に顔を歪める。
「……またテメェか。どうやら、本気で死にたいよォだな」
「そうではありません。あなたとの決着が着いていなかった。曖昧なまま終わらせるつもりはなかっただけです」
言いながらレナとザンザは横の方へと戦場を変えていった。すると、入れ替わりに桃色の髪の少女が鉄骨の上から優雅に地面に降り立つ。
少女は髪を靡かせながら、笑みを魁斗に向ける。
「第八部隊第二小隊隊長カテリーナ・アルサント。よろしくね、えーっと……」
何て呼べばいいか分からないらしく、随分無邪気な表情で首を傾げてくる。
魁斗は二本の刀を構えて、
「切原魁斗だ。よろしく頼むぜ、カテリーナ」
ふふ、とカテリーナは笑って、
「いいえ、こっちこそよろしくね」
36
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/18(月) 18:17:01 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
カテリーナは悠長に右手で刀を持ったまま、空いている左手で前髪をいじっていた。一方の魁斗は二本の刀を構えながら、そんなカテリーナを呆れ気味に見ている。
どうも相手から戦おうという意志が見受けられない。しかし、ただ余裕ぶっているわけでもない。これは相手なりの挑発だ。待ちくたびれた相手が踏み込んでくるのを待って、返り討ちにする。多少なりとも怒っていると冷静な判断力は欠かれてしまう。
しかし、相手の思う通りに動かない、と魁斗は決めていた。隙を見せないように、相手の動きに気を張り巡らしている。
カテリーナは横目で彼を見ながら、称賛していた。
彼女が称賛したのは安易に突っ込まないこと。戦いの素人である魁斗が相手であるならば、相手の攻撃をかわしつつ隙を突けばいいだけだ。相手の足が速くとも、必ず隙は生まれる。素人であるならば、隙は多いはずだ。
はあ、とあからさまな溜息をついて、カテリーナは後ろで結っている髪を手櫛で一回梳いた。
「……やーめた。挑発して君の動きを単純にしようと思ったけど、全然引っかからないじゃん」
「はっ、舐めてもらっちゃ困るぜ! 戦いに関しては素人だが、冷静さは欠いちゃいけねぇと思ってるんでな」
ふぅん、とカテリーナは笑みを浮かべながら楽しそうに頷いた。
すると二本の切っ先がついた刀を魁斗に向ける。
「まあそういう考えなら別にいいんだけどさ、私強いよ? さすがにザンザには負けるけど、八部隊では結構いい位についてるんだから」
「そーいや、第八部隊第二小隊隊長……とか言ってたな。ザンザも似たようなことを。小隊って何だ?」
するとカテリーナはきょとんとした表情で、
「そんなことも知らず戦ってたの? まあいいわ。私は優しいお姉さんだから、無知で無能たる君に教えて進ぜよう!」
カテリーナが刀の切っ先で地面を突付きながら説明を始める。
「私たち『死を司る人形(デスパペット)』は一から十の部隊に分かれている。それぞれの部隊に隊長と副隊長が一人ずついるわ。一つの隊が大体五百人ってとこ。んで、五百人を一人の隊長で纏めるのも大変でしょ? だから、百人を一纏まりにしたのが『小隊』。私は部隊に五人いる小隊のうちの一人。まあザンザもなんだけどね」
「……つまり、お前は上から数えて三番目ってことか?」
魁斗の問いにカテリーナは少し考えながら、
「んーどうだろうね。八部隊内じゃそうじゃないかなぁ? 小隊隊長同士で戦ったことないから、ぶっちゃけ強いとか分かんないんだよね」
そうか、と魁斗は獰猛に笑ってみせる。
まるで楽しんでいるかのように。相手が一番強い奴じゃなくてよかった、と思わせるような笑みだ。
「だったら、お前を倒せば八部隊のほとんどは倒せるってことだよな」
「一対一ならね。ま、まずは私に勝ってから言いなよ」
言葉と同時、魁斗が地面を思い切り蹴り、刀が届く範囲まで距離を詰めた。
咄嗟に接近され、カテリーナが何とか反応する。振り下ろされた魁斗の刀を、切っ先が二つの刀で防ぐ。
鍔迫り合い状態になり、魁斗がカテリーナに告げる。
「上等だ! だったら、今ここでお前を越えてやるよ!」
「威勢と気迫だけは一人前だね。お姉さんもびっくりしちゃうよッ!!」
37
:
たっくん
:2013/03/01(金) 11:19:48 HOST:zaq31fa4c87.zaq.ne.jp
>>1
つまらんスレ立てるなよ
失敗ズラ
38
:
ナコード
:2013/03/01(金) 20:16:27 HOST:i118-17-185-78.s41.a018.ap.plala.or.jp
≫37
貴方は人の作品にケチをつけられるような方ですか?
人其々に頑張っているのに、それを侮辱するような行為は犯罪ですよ?
39
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/03/02(土) 12:41:41 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
刀を何度か交わせ、カテリーナは魁斗と距離を取る。
距離を取っても魁斗には優れた脚力がある。数メートル離れられても、そんなもの一瞬ともいえる時間で縮められるのだ。それを何度も繰り返しながら、魁斗は思う。
――相手は一体何を考えているのか、と。
距離を取るのも二、三回程度で意味が無いと気付くだろう。回数を数えるのももどかしくなるくらい繰り返しているので、相手もいい加減気付くはずだ。なのに何故相手は距離を取り続けるのか、魁斗には相手の意図が読めなかった。
一方のカテリーナは笑みを浮かべたまま、立っている。まるで、自分から踏み込む気はないというように。
魁斗はもう一度強く踏み込み、カテリーナの懐へと飛び込む。刀の届く範囲まで近づき、魁斗は刀を横薙ぎに振るう。しかし、この攻撃もカテリーナの刀に防がれる。
魁斗は顔をしかめて、
「どういうつもりだ」
「何が?」
とぼけるような口調で言うカテリーナに、魁斗はふざけんな、と睨みつけながら言い放つ。
尚もカテリーナの表情には笑みが浮かんでいた。
ぎりぎり、と鈍く刀同士が軋む音が鳴る。
「さっきから攻撃しようとしねぇじゃねぇか! お前、戦う気があんのか」
「あるよ。だから『剣(つるぎ)』を持ってるし、君の前に立ってるし、何より考えて戦ってる。何も考えずに突っ込んだり攻撃だけするのは、戦いじゃないよ?」
その言葉に、魁斗の力が僅かに緩んだ。
その隙を見逃さず、カテリーナは魁斗の刀を払う。後方によろめく、魁斗へと攻撃を放つため、カテリーナは二つの切っ先を備えた刀を空へと向けた。
すると青かった空が、急に分厚い雲に覆われ、灰色へと変色していった。
「なっ……!?」
天候が変わるという超常現象、それを目の当たりに魁斗は驚愕していた。
一方で、鉄筋の上を移り変わりながらザンザと戦っていたレナも、空を見上げこの変化に驚いていた。
レナははっとした表情で、下にいるカテリーナへと視線を向けると、
「それは『雷叫(らいきょう)』!? どうしてその『剣(つるぎ)』を貴女が?」
「……さっすが天子の養育係。博識だねぇ」
カテリーナもレナ以上に、『剣(つるぎ)』には詳しい。
中には自分で使わず保管してあるものもあり、『死を司る人形(デスパペット)』メンバーの三分の一くらいの人間は、彼女から『剣(つるぎ)』をもらっている。そういうことから、カテリーナは『剣の才女(つるぎのさいじょ)』とまで呼ばれている。ちなみにザンザも彼女からもらった『剣(つるぎ)』を使用している。
肩で刀を担ぐようにしたザンザが呆れたように空を見上げ、
「オイオイ、ガキ相手に本気になったのか」
「まっさか。そんなワケないじゃん。ただ――」
暗い雲から雷が落ち、それがカテリーナの刀に直撃する。
しかし雷は刀を破壊することも、カテリーナを傷つけることもなく、彼女の持つ刀に留まり続けている。強力な電撃を纏った刀は、眩い光と激しい音を発している。
カテリーナが攻撃する態勢に入りながら、
「ちょっと天子くんに、いたーい目に遭ってもらうだけだよ」
カテリーナが刀を振りかぶる。
しかし、魁斗の位置まではカテリーナの斬撃は届かない。魁斗は何をしようとしているんだ、という表情でカテリーナを見つめていると、鉄筋の上のレナが叫ぶ。
「カイト様、避けてください!! 『雷叫(らいきょう)』は、刀に電撃を帯びさせて放つ刀ですッ!!」
「……ッ!?」
レナの声が届くが、僅かに対応が遅れた魁斗には逃げ切れない。たとえ、脚力がいかに高くてもだ。
「遅いよ、天子くん」
カテリーナが雷の斬撃を飛ばす。
魁斗が刀を交差させて斬撃を防ごうと試みるが、それも失敗に終わる。
雷の斬撃はまっすぐ魁斗に向かって飛んでいき、大きな爆煙と爆音を鳴らした。
40
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/03/08(金) 22:09:35 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
爆煙に包まれる場所を見ながら、カテリーナは退屈そうに嘆息した。
自分の相棒――ザンザをまぐれであるとはいえ退かせたものだから、彼女自身も切原魁斗という人物に興味を持っていたのだ。
だが結果はこれだ。
何のことはない、ただの普通の少年だった。『剣(つるぎ)』の能力を理解せず、油断したが故に攻撃をくらい、十五年という短い命を散らすこととなってしまった。こんなつまらない少年に興味を持っていたのかと思うと、自分で自分が恥ずかしくなってくる。
彼女は背を向けながらふと思った。
――少年の『剣(つるぎ)』の能力は何だったのだろう、と。
自分が知らないのだから大して珍しいものではないのかもしれない。ザンザも形状は詳しく憶えていなかったし、自分もこの目で見て、見覚えがなかったとすると、そんなにレアなものではなかったのかもしれない。
まあ今死んだのだから、それも気にする必要は無いか。そう思いながら、カテリーナが『剣(つるぎ)』を元のアクセサリーに戻そうとしたところで、
「カテリーナッ! 奴はまだ終わってねェぞ!」
ザンザの叫び声で、ばっと後ろを振り返った。
晴れつつある爆煙の中に、少年の影が視界に飛び込んでくる。二本の刀を持った、黒髪の少年だ。彼の刀には、先ほどまでなかった、眩いほどの光が纏っている。
カテリーナは、驚愕を露にしながら大きく目を見開いている。
「……うっそ……。『雷叫(らいきょう)』の一撃をくらって、平気だなんて……」
魁斗は煙の中で、獰猛に笑ってみせる。
身体は決して無事ではない。口の端から血を流しているし、あちこちに火傷がある。とても無事とはいえない状況だが、彼はカテリーナの攻撃を防いでみせた。
レナは魁斗の無事を確認すると、目尻に涙を浮かべてしまう。
「……カイト様……」
「……続けようぜ、カテリーナ・アルサント」
カテリーナは笑う。
愉しそうに、口の端を吊り上げて笑みを浮かべてみせた。
「いいじゃん、いいじゃん、そうこなくっちゃ! そうじゃないと、全然面白くもないもんね!」
レナは隙を見せるザンザに斬りかかる。
それに咄嗟に気付いたザンザが身体を反らして、なんとか攻撃をかわした。体勢を立て直し、レナを睨みつけながら、
「随分と卑怯なマネをするじゃねェか。俺はお前が戦う状態まで待とうと思ってたのによォ」
レナは刀を前に構えながら、
「随分と余裕のあることをするんですね。その驕りが、敗因にならないように気をつけてください」
切っ先をザンザに向ける。
ザンザは引き裂かれた笑みを浮かべて、刀を振りかぶる。
「デカイ口叩くじゃねェか、養育係! その言葉、あとで後悔させてやるよ!」
言いながら、ザンザは突っ込んでいく。
それにレナも応じ、ザンザに向かって突っ込んでいく。
二人の刀が、大きな音を立てながらぶつかり合う。
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