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天界の王子-Heavens of Prince-

23竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2013/01/26(土) 23:17:09 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 第4話「休日の二人」

 ハクアが『死を司る人形(デスパペット)』の撃退に協力してくれることで、魁斗とレナは僅かに安心した。
 二人でこれから乗り切れるとは思っていなかったし、彼女の実力も知って心強いと思ったのも確かである。
 もとよりハクア自身は、二人が断っても勝手に協力する気満々だったらしいのだが。
 そんなハクアがやってきたのは一昨日、つまりは金曜日。今日は日曜日でいい具合に空も元気よく晴れている。
 魁斗はというと、レナと一緒に街にいた。
 レナは嬉しそうに魁斗に寄り添いながら街を歩いている。密着しているせいか、魁斗は歩きづらそうな顔を浮かべている、幸せ満開のレナはそれに気付く由も無い。
 魁斗は身体全身に冷たいような痛いような視線を感じている。
 周りの通行人からの嫉妬の眼差しだ。銀髪美人の女性にくっ付かれているどこからどう見ても平凡な少年を見れば、恨まれるのも分からなくはない。彼らの視線が『死を司る人形(デスパペット)』よりも殺気が篭ってて怖い。
 その視線に嫌気が差した魁斗は小さな声でレナに言う。
「……おい、もうちょっと離れてくれよ。歩きにくいだろーが」
「いいじゃないですか、今ぐらい。それに今日は何だかずっと近くにいてほしいんです」
 少し恥ずかしかったのか、レナは僅かに頬を赤くしながら言う。その様子に魁斗は僅かにどきっとしてしまう。
 傍(はた)から見れば明らかに美人の部類に入る彼女。そんな彼女とたった三日程度しか一緒にいないはずなのに、その三日の間でいろんなことが起きすぎたため、彼女のことを結構近しい存在だと思ってしまっている。
 魁斗は考えた。
 レナにとってはそう思われることが嬉しいのだろうか、と。
 彼女はことあるごとに『主従関係』だと言っている。それが彼女の望む関係なのだろうか。それとも、自分の気持ちを隠して言っているだけなのだろうか。
 自分はレナのことを、今はどう思っているのだろうか。
 まずはそこからだな、と魁斗は溜息をつく。
「なあ、レナ」
「はい?」
 魁斗は思わずレナに声を掛けていた。
 首を傾げるレナに、魁斗が言った質問は、
「もし、俺の中に『シャイン』がなかったら……ただの天子ってだけの存在だったら、お前はこっちに来てくれてたか?」
 魁斗の質問にきょとんとするレナ。
 彼女は僅かに考える仕草をすると、困ったように笑いながら、
「……どうしてたでしょう。実際、こっちに来る前日も心配と楽しさが合わさってあまり寝れなかったものですから」
 だからこっちに来る途中で手傷を負ったんですがね、と彼女は付け加える。
 つまり彼女は、魁斗が護衛対象であろうがなかろうが関係ない。彼女の彼に対する忠誠心は彼の『シャイン』に対してじゃなく、彼自身に捧げられているのだ。
 レナは魁斗を見上げて、
「カイト様がもし、普通の天子だったとしても。私はいつかこっちに来てたと思います。来た理由は違えど、私は遅かれ速かれあなたに会いに来ています」
 レナは魁斗の手をそっと取って、
「さあ、行きましょう。今日はカイト様が案内してくださるんですよね? まずは何処に連れて言ってくれるんですか?」
「あ、おい……引っ張るなって!」
 魁斗はレナに引かれるがまま、街を歩いていく。
 そんな二人の光景を、影から見つめる人物が一人いた。
「……あれは、カイトくんとレナさん?」
 肩より少し長い栗色の髪、黄色のカチューシャがチャームポイントであろう目立たない印象の美少女。
 沢野叶絵だ。


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