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紫の歌×鈴扇霊

297ピーチ:2012/11/17(土) 08:14:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

一応伝えておきました。天神です。今はテスト消えろと叫んでますよ。

……昇の件については、気にしないで下さい

そりゃねぇだろ柊一!? 俺何で無害なのに殴られなきゃいけないんだよ!?

298心愛:2012/11/17(土) 15:21:42 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>彗斗さん


……(・∀・)ガンバ!


完全なる手探り状態ですがちょっとずつ頑張っていきますよ(*^-^)ノ



>>ピーチ

殴ってたんだ!
なかなかにバイオレンスなのね天音ちゃん!


ありがとうございました柊一くん(笑)

消えろ消えろー!

299心愛:2012/11/17(土) 15:23:22 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』





「……天音」



「何?」



「気の所為だったら良いんだけどさ。なんか……さっきから変な感じしないか? こいつら以外の誰かに見られてるような……」



釈然としない表情の昇の言葉に、天音は黙って瞼を閉じ。



「言われてみれば……。でも、妖の類はいないはずよ?」



「だよなぁ」



霊感の強い天音がそう言うのだから、きっとそうなのだろう。


けれど……何か、引っ掛かる。



「おい黒髪」



「……忍耐って、大切だよな……」



額に青筋を立てて呻くヒースを綺麗に無視し、昇が続ける。



「なんか、違和感とか感じないか?」



「は? いや、別に。神経質すぎんじゃねえのお前」



「おかしいわね……。確かに誰かの気配みたいなものを感じるのに」



「え? 皆して何言ってるの?」



一人、きょとんとした顔をした柊一が首を傾げる。



「その人、さっきからずっと其処にいたけど」



「は?」



「そ……その、人?」



「ま、まさか」



シェーラとヒースがはっとして息を呑む。
ソフィア、ジル、ユーリエも何かに気づいたように顔を見合わせた。



「そのまさかだよ」



シュオンは―――『彼』の方を向いて、にっこりと笑った。




「ね、レイフォード?」




『やっぱりっ!?』




「うわあああああんっ!」




涙の粒を撒き散らしながら走っていく、仕立ての良い執事服を着た茶色の髪の青年の背中を、ソフィアたちは半ば愕然として見送った。



「何だったの、あの人……」



「? 使用人じゃろう? 今更何を驚いておる?」



「あの方、気配の消し方が達人並みでしたね。私でも気づくのにはかなりの時間を要しました。敵兵であったなら非常に恐ろしい相手となったことでしょう」



「そうだったのか?」



幾つ目かも分からない“大福”片手に―――摂取した砂糖の量は常人の致死量を軽く超えているのではなかろうか―――ルイーズがぱちくりと瞬(まばた)く。



「僕が呼んだときから其処に控えてたんだけど。ヒースたちは気づかなかった?」



「お、お前絶対わざとだろ……」



「まさか」



ヒースの非難がましい視線を受け流して、シュオンはルイーズとクロードに微笑みかける。



「流石は姫君、そしてクロード殿。上に立つ者とそれを支える者としての、素晴らしい観察眼をお持ちですね。……ちなみにあれはうちで雇っている執事のレイフォードです」



「恐れ入ります」



「……わたしは喜ぶべきなのか?」



「喜ぶべきですよ! 黙ってるレイさんを自力で見つけ出すなんて、あたし一度もできたことないんですから!」



「な、何だか彼が哀れに思えてきたな……」



ルイーズは同情が籠もった眼差しでレイフォードの消えていった屋敷を見る。


続いて、シュオンは好奇心と感心とが入り混じった目で柊一を見て、



「君、凄いね。あの驚異的なまでに影が薄いレイフォードを一発で見抜くなんて。一体どんな修行を?」



「どちらかと言うと、柊の場合はただの勘だと思うわ」



「しかも根拠なしのな」



二人に言い切られ、「……そう?」と困ったように笑う柊一。



「すぐ傍にいても全然気づかれないって……影薄いって一言で片付けられるのか?」



「執事というより、忍者みたいな人ね」



「ニンジャ?」



「えっと、どう説明したら良いのかな。忍者っていうのは……」



親切な柊一に説明してもらい、ルイーズは「ほー」と深いブルーの瞳を輝かせた。

300ピーチ:2012/11/17(土) 18:38:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

メッセージもらったよー! ありがとー!

……そーなんデス。殴られちゃったんです昇君。それも単純に憂さ晴らしも混じって←

よし柊一偉いぞ! 小さい子に教えるのは当たり前だからね!

…絶対、天音とか昇は教えないだろーけど←おい

301心愛:2012/11/17(土) 20:24:36 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なにげに300突破おめ!


殴られてたのか…w

今回、柊一くんの鋭さってものを出すためにレイさんを利用したここあでした←
強く生きろ、レイさん(キリッ

302ピーチ:2012/11/17(土) 22:04:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

自分で立てたスレで300行ったの初めてだ!←ここにゃんのお陰だし

殴られてたんです…

柊一は確かに根拠ナシだ! てかあたしもレイさん使わせてもらおうと思ってたのだが←おい

303心愛:2012/11/18(日) 10:53:29 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――決断――』





「暗くなってきたね」



赤く染まり始めた空を見上げ、シュオンが呟いた。



「天音、妖の方はどう?」



「この近くにいるのは確かだと思うけど、はっきりとはしないわね」



「どうすっかなぁ。これ以上無意味に時間潰してても仕方ないし」



異界の三人が話し合いを始める。



「それではルイーズ様、そろそろ」



「ええー! まだ遊び足りん! せっかくシュオンと会えたのに」



「…………」



「く、クロードっ? 誤解するでないぞ、わたしはもうシュオンのことは何とも思っておらんからなっ? 今はその……っ」



「おー、クロードがやきもち妬いてるよーぷくく」



「俺にはいつも通りにしか見えないんだが……」



無表情で押し黙ったクロードに慌てて弁明するルイーズを見て、シェーラが楽しげに笑う。


対照的に、とても珍しいことにシュオンは複雑そうに顔を曇らせていた。



「屋敷の中に入れてあげられたら良いんだけど……」



「けど?」



首を傾げるソフィアに、シュオンは溜め息をついて。




「……今、母上がいるんだよね……」




『………………あー』




「何?」



「む?」



エインズワーズ家の面々が、天音とルイーズを見て一様に頷いた。



「奥様……ぜーったい喜んじゃいますよねー……」



「これ以上被害者を増やす訳にはいかねえな……」



「金髪の『母上』ってのがどうかしたのかよ」



「レディ・アゼリア? よい母君ではないか。彼女のことで何か?」



『…………』



ソフィアたちは気まずそうにサッと目を逸らす。


シュオンがこほん、と咳払いした。



「とにかく僕としても、姫君は勿論、何の罪もない人を飢えた猛獣の檻に放り込むような真似はしたくないってことだよ」



「どんな人なのよ……」



「……それだけは訊かないでくれるかな……」



呆れた眼差しの天音から逃げるように、シュオンまでもが視線をずらす。

304心愛:2012/11/18(日) 10:54:54 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――決断――』





「―――じゃあさ」



口を開いたのは昇だった。
屋敷の裏側、生い茂った木々の辺りを指差す。



「俺らはあそこの森とか探索してみても良いか?」



「それは構わないけど。どうして?」



「出て来ないってことは、俺らが追ってる妖もどっかに隠れてたりするかもしんねぇし」



「確かに、ただ待ってるよりは色々歩いてみた方が効率的ね」



天音も頷く。


では決定か、と思われたとき、柊一が何気なくこう言った。



「暗くなってきたし、軽い肝試しくらいならできそうな森だね」



「……キモダメシ?」



「うん。墓場とか、幽霊みたいなのが出そうな気味の悪い場所に行かせて度胸があるかどうか試す遊び」



ルイーズはキラキラと目を輝かせた。



「面白そうではないか! わたしはやってみたいぞ、キモダメシ!」



「ですが、姫君には危険かも」



「その御心遣いは無用です。私がルイーズ様を、この命を賭けてでも必ず守り通しますゆえ」



「く、クロード……」



思わず頬を染めるルイーズを、クロードはこの上なく真摯な顔つきで見つめながら、



「それに、ルイーズ様は御一人でも並みの暴漢にも引けを取らない程の豪傑でいらっしゃいますし」



「余計なことを言うでないっ!?」



「ねーねークロード、あたしはー?」



「何かあったら手は貸すが、お前にはロード・ヒースがいらっしゃるだろう」



「え、あ、あー……はい」



「だってー。クロードは冷たいなぁ。ねーヒース、あたしのこと守ってねっ!」



「ばっ……わ、分かったから抱きつくな!」



「オレ様は暇潰しできンならどーでもいーけど。幽霊って剣で斬れねェのかな」



「……な、なんか……暗すぎない? あそこ」



「あ? まさかユーリエ、怖いワケじゃねェよな? 仮にも元暗殺者(アサシン)だろお前」



「ちっ……違うわよ! 怖くなんてないから目を瞑っていても全然平気なんだから!」



「目ェ瞑ンのは怖がってる証拠なんじゃ……」



「ソフィア、怖かったらいくらでも抱きついて良いんだよ?」



「なんでそんなに嬉しそうなの……?」



……どうやら全員で行くことが決定したようだった。



「……なんか、面倒なことになってない?」



嫌そうに顔をしかめ、はあっと息をつく天音。



「柊、あんたが肝試しとか言い出すから……」



「俺っ?」

305心愛:2012/11/18(日) 10:59:46 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、ここまで進んだのはほぼピーチのお陰じゃないか!
本編じゃないコラボでこんだけいくってすごいよね(〃▽〃)


レイさん使ってくれますか!
書きやすい&いじりやすいレイさんをどうぞよろしく!

306ピーチ:2012/11/18(日) 12:03:56 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

確かに! コラボでここまでいくってどんだけソフィア様達好きなんだよあたしって感じだよね!

………シュオン様の母上…

や、やめてあげてね! 絶対シュオン様のお母さんが痛い目遭うから!

柊一が余計なこと言ったー←おい

307心愛:2012/11/18(日) 15:29:09 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

本当にありがとうございます…!


天音ちゃん可愛いから危ないよねって返り討ちか!(笑)
ちなみに母上はシュオンもソフィアもシェーラもヒースも歯が立たない『紫の歌』隠れ最強キャラです←

…一応母上も女だから、何かあっても容赦はしてあげてね天音ちゃん…!


柊一くんの天然が悪い方に向いた?←

308ピーチ:2012/11/18(日) 18:13:18 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あはは、返り討ちかなー

でも天音とか柊一達がどんな反応するか見てみたいかも、これリクにしていーですかね←おい

…隠れ最強キャラか! 天音が太刀打ちできるかなぁ…

柊一は基本的にどっちもだよー、いい方にも悪い方にも行く←

309心愛:2012/11/18(日) 20:16:22 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…クソ重い課題増えたぜ☆


うっわあどうしよう。
どっちのイメージも壊さない程度に絡ませて…(汗)



あ、次から肝試しなんだけどペアでドキドキ☆とか全然ないよ!わいわいやってるだけだよ!
どうもすみません(~_~;)

310ピーチ:2012/11/18(日) 20:31:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まじか、課題嫌い←

いや、天音達は基本を動かさなかったら好きに壊していーよ←

わいわい楽しみww

311ピーチ:2012/11/18(日) 21:29:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

何かごめんちょー今更だけど←え

ジルが幽霊って剣で切れるのかなーって言ってたじゃん?

あれ昇が召喚(?)した武器だったら出来るよー

312心愛:2012/11/20(火) 12:16:31 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

わいわい一回だけだけどね!
肝試しターンみじかっ!

ほ、ほんとに斬れるんだね幽霊……。




そろそろ天音ちゃんキレさせるよー(=°ω°=)
上手くできるか分からんがw

313心愛:2012/11/20(火) 12:17:12 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――肝試し――』






「……ひゃわっ」



「シェーラっ?」



木の根元につまずき、メイドの少女の身体がぐらりと傾く。
気づいたソフィアが悲鳴を上げると同時。



「ったくお前はいつもいつも……。危なっかしいったらねえな」



苦々しく眉を寄せたヒースが、危なげなく彼女を抱き留めた。



「ヒース」



「足、痛めてないか? おぶってやっても良いけど」



「……え、い、いいよっ」



カッと顔を紅潮させ、シェーラが「大丈夫」とぱたぱたと両手を振る。



「そうか?」



その一連の流れを見守っていたシュオンが、ヒースの言葉に便乗してにっこり笑う。



「ソフィアも大丈夫? お姫様抱っこで運んであげようか」



「……ばかっ」



みるみるうちに赤くなり、ぷくっと膨れるソフィア。


「それとも、皆の前じゃ恥ずかしい?」



「そういう問題じゃないっ」



そして、



「………! …………っ!」



「ユーリエ……マジで怖いのかよ……」



女性陣では最年長のはずのユーリエが、ジルの背後に隠れるようにしてがくがくと膝を笑わせていた。
金の瞳を涙で潤ませ、ひくっと喉を引き攣らせて。



「しっ仕方ないでしょっ? 標的がはっきりしてれば良いけど、もし暗殺術が通用しないお化けだったら……っ?」



「おいおい。いつもできるだけ殺すなっつってンのは何処の誰だよ」



「だって……!」



呆れたように首を横に振ったジルは、



「……ん」



おもむろに、彼女に向けてポケットに入れていた左手を差し出した。



当然、意味を図りかねてユーリエはぽかんと呆ける。



「……へ」



「手! 貸せっつってンの! 察しろそンくらい」



チッ、といかにも面倒くさそうに舌打ちし、頑として顔を思いっきり前に向けたままぶっきらぼうに言う彼。

ユーリエは瞳を純粋な驚きに見開き。

それから、強ばっていた頬を、少しずつ緩ませていく。



「……うん」



初々しい雰囲気を醸し出す彼らのさらに前方では、



「おっばけおっばけー! 早よ出て来ぬかー」



「ルイーズ様。そのように歌っておられては幽霊も逃げてしまうのではないでしょうか」



「わたしの歌に誘われて出て来るかもしれぬではないか」



調子の外れた歌を唄っていたルイーズが尊大に胸を張る。


クロードは頭痛に耐えるように額に手をやりながら、



「……どんなに凶悪な死霊でさえも断末魔の悲鳴を上げて消滅すると思われますが」



「どういう意味じゃっ!?」



ぽかぽかとルイーズに腹を殴られてもクロードは眉一つ動かさず、仏頂面で溜め息をついた。



最後に。



「…………」



「あ、天音?」



「天音さーん?」



一行を先導する天音が、後ろから聞こえてくるうざったいカップル共と小五月蝿いガキの声の所為で『無』としか言いようのない表情になっているのに気づいた昇と柊一が恐る恐る彼女に笑いかける。



「…………」



天音は見るからに苛々(いらいら)を募らせていた。


星月夜を映す泉のように澱(よど)みのない黒の瞳はこれ以上ない程冷たく凍りつき、暗黒の闇を秘めるその見事な髪は、彼女の内から溢れ出る不穏なオーラにゆらゆらと揺らめく。



「え、ええと天音? なんか近いような気がしない?」



「……そう、ね……。そうかもね……」



「……ひっ」



無表情のまま、唇の端だけを、く、と持ち上げた幼馴染みの姿に、柊一が思わず己の本能に従って距離を取る。



「……こりゃ確かに『肝試し』だわ……」



天音を見ながら昇が恐ろしげに呟いた、


そのとき―――




《―――……フハハハハッッ!》




最悪の―――主に相手にとって―――タイミングで、“ソレ”は現れた。

314名無しさん:2012/11/20(火) 21:33:46 HOST:EM114-51-219-252.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

わっほーいっ! 天音がキレたー!←喜ぶな

いやぁやっぱり天才様が動かすと我がキャラながらとってもかわいく見える、黒いはずの部分までもが←おい

315心愛:2012/11/21(水) 16:47:25 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――少女の逆鱗――』





「ひっ……!」



怯えたソフィアがシュオンにしがみつき、ユーリエとシェーラが身を竦ませる。


男性陣が一斉に身構えた。



《ククク……愚カナ。マンマト誘(おび)キ出サレオッテ……》



それは大の大人でも思わず身震いせずにはいられない程に、あまりにも恐ろしい声色だったが。



「……………」



「天音ちゃんっ?」



全く物怖じせずにすたすたと進み出た天音に、シェーラが慌てて声を掛ける。



「あ、危ないですよっ! 早く戻っ―――」



「あー、天音のことは心配いらないから」



「え、で、でもそんな、女の子一人……っ」



「いや……あれは最早『女の子』じゃない」



遠い目をする昇。



「そう、言うなれば……鬼?」



『鬼ぃっ!?』



―――美しき修羅が、今、異形と対峙する。




《フ、ッフハハハハハ!! ツイニ、ツイニ解放サレタ……! 我ガ貴様ラ人間ドモヲ皆殺……》



それを天音は、見た。



顔は青白い炎を纏った髑髏(ドクロ)で、巨大な体はヘドロのような濃紫の粘液で出来ている、酷く醜い異形の化け物を、見た。


いや、正確には、寧ろ一種の感動を覚える程の完全なる無表情を保ったまま、『あ゙あ゙あ゙?』とか、“あ”に濁点をつけた音を連続で発しそうな、そんな凄絶な目で、睨んだ。



「あわわわわ……」



シェーラが異形ではなく天音に、心底恐怖したように狼狽える。



「す、凄い化け物じゃなー! あれがキモダメシとやらをすると出てくるお化けなのか?」



身長差の為天音の形相に気づかない呑気なルイーズを、適当な返事をしながらクロードがさらりと天音から遠ざけ、彼女を庇う姿勢を取る。
……まだまだ若いとはいえ流石は最強の騎士というべきか、彼の判断はこれ以上なく正しいと言えた。



この場での最重要危険人物は、得体の知れない化け物よりも、間違いなく。



「ああなった天音は誰にも止められないんだよね……」



「お前が止める気ないんだったら仕方ねぇな。巻き添え食らわないようにだけ気を付けないと」



相棒二人も早くも達観した面もちだ。



《コ、殺シテ……》



天音は、無言で、異形を睨み続ける。
先程よりも鋭く、地獄をそのまま宿したかのような闇色の瞳が、化け物を捕捉して離さない。
静かな怒りを叩きつける、瞳。
長い長い黒髪を夜風に揺らめかせる彼女の背後には、どんな鬼神や悪鬼羅刹であろうとも裸足で逃げ出すであろう壮絶な表情をした夜叉の幻影が見えた。



「しゅ、シュオン……私、本当に怖いのは何なのか分からなくなってきたかも……」



「大丈夫だよソフィア。いざとなったらヒースとかジルとかそこの人とかが剣で何とかしてくれるって」



『いや絶対無理だから』



おそらく国でもトップレベルの実力のヒースとジル、それから二人と同等、もしくはそれ以上の腕を持つ昇という男三人が、少女一人相手に声を揃えて降参する様はなかなかに見ものだった。



「ほ、ほらユーリエなら暗器使ったりとかッ」



「私は女の子を傷つけるのはちょっと……」



「ちょ、オレ残して逃げンなよッ!?」



「むしろ刃物如きで何とかできんのかあれ……?」



……それでも今回の妖はなかなかにしぶといらしく、今にもガクガク震え出しそうな様子だったが、それでもとても頑張って持ち直し、気を取り直したように、“天音に”怯えて後ずさる面々に、言った。



《フ、フフ……。ソノ怯エタ顔、サテハ我を畏(おそ)レ……》



殺してやる。
この面倒なときに、さらに面倒事を持ち込むようなら、今すぐ完膚なきまでに殺してやる。
いやもう面倒でなくても殺してやる。

……という、目だった。



《ア、ア、アレ? 此処ハ平和ナ人間ノ世界ダヨナ? ナノニナンデコイツ全然、》



「………………」



《ア、イヤ、ゴメンナサイ大人シク帰リマス、ダ、ダカラソンナ睨マナ……》



すっ、
無慈悲たる少女の翳(かざ)す紅い扇が天高く掲げられた、その刹那―――

316心愛:2012/11/21(水) 16:51:29 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

せっかく褒めてもらったのに自分からぶち壊すというw

…毒吐くより無言のが怖くないですか?

というわけで好き放題やっちゃいましたごめんね!

317ピーチ:2012/11/21(水) 19:03:33 HOST:nptka207.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

……あーなった天音は止まらないぞー…

暴走族よりも暴走族やってくれそー…

318心愛:2012/11/21(水) 21:21:51 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、あれ、やりすぎたかと思ったんだけど…大丈夫だった?

ここあ、天音ちゃんが本気でキレてるとこ見たことないんで←

319名無しさん:2012/11/22(木) 20:05:17 HOST:EM114-51-202-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

全然大丈夫! むしろ天音だからあんくらいやってくれそう!

うーん…天音が本気でキレるとこねー…

機会があったら鈴扇霊に載っけとくねー←

320心愛:2012/11/22(木) 22:31:02 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そ、そっか!
これは許容範囲か!

OK、それでは遠慮なくw

321心愛:2012/11/23(金) 10:01:17 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――邪魔者、再び――』





「はーっはっはっは!」



突然、惨劇が展開される直前の緊迫感を、高らかで軽快な、換言すれば妙に雑魚の雰囲気漂う笑い声が引き裂いた。



腕の動きを止めた天音が怪訝そうに辺りを見回す。



「……誰」



「まさか」



シェーラがはっと息を呑む。



「ソ、……レ? ファー……ええっと……あ、ソルファール侯爵……!」



「いかにも!」



その命知らずの馬鹿、もとい―――ソルファール侯爵は胸を張り、



「此処で会ったが百年目。今度こそ、目的を果たしてみせますよ」



かと思えば、



「……そう、元はと言えば三年前のこと―――」



目を閉じ、一人勝手に自分の話に入ってしまってしまった侯爵に、シュオンはふわりと華やかな微笑を浮かべる。



「……教育(おしおき)が足りないようですね?」



「待て待て待てぇっ!?」



笑顔でポケットの中に手を入れたシュオンの腕をガシッと掴む。



「離してヒース。そいつを殺せない」



「落ち着け! 大人になれ! この森爆破したって何にもなんねえし、侯爵とは一応表面上の付き合いってもんもあんだろ!?」



「お嬢様だって吹っ飛ぶぞッ!?」



「じゃあ生きたまま脳髄だけ引きずり出す。それなら文句ないでしょう?」



「死ぬからな!? それ百パーセントの確率で死ぬからな!?」



超シャイニングな笑顔で、セルリアン・ブルーの瞳だけを底なし沼のように澱ませるシュオン。



「僕とソフィアの楽園を脅かそうとする者は許す訳にはいかないよ。ありとあらゆる手段を駆使して死すらも霞む恐怖と苦痛と絶望をじわじわと身体と精神に刻み込んでこの世界に生まれてきたことを後悔させ」



「分かった! 分かったから!」



「あら。気が合うわね、金髪君」



「「ひッ」」



昇と柊一が揃って悲鳴を上げる。



「あれ、君も同意見?」



「えぇ。今私、ちょっと虫の居所が悪いのよ。たまりにたまったストレスの発散を邪魔してくれたお礼も兼ねて、代わりにあの人に栄えある犠牲者一号になってもらおうかなって」



「なるほど。なら、目的は同じだね?」



「そういうこと。金髪君ごときとなんて屈辱だけど、此処は手を組みましょうか」



「うん、その暴言は特別に聞き逃してあげる。……何かあっても権力と財力で握り潰すから、証拠隠滅なら任せて」



『結託したっ!?』



最凶コンビの誕生に、両者それぞれの恐ろしさを知るメンバーが一斉に青ざめた。

シュオンの策略と天音の殺傷能力、ついでに爆弾の威力も付加すれば。



「人ひとりどころかこの国滅ぶぞおいッ」



「クロード殿、マルグリットの危機ですよ!? 今すぐに《イルファーレ》、いや、王立騎士団ごと出陣の申請を!」



「……仰る意味が分かりかねますが……」



真顔で困惑するクロード。



「まず手始めに、この森の木を全部吹っ飛ばしても構わない?」



「構うよ! 大いに構うよ! 何サラッと言ってくれちゃってんの!?」



「うん、別に構わないよ。屋敷はちょっと困るけど」



「えええええ!? 森なくなっちゃうんですかっ!?」



「そ、そうよシュオン! そんなのだめ!」



「でも、近々伐採して、このあたりにソフィアと二人で暮らす新しい屋敷を建てるつもりなんだけど」



「……え」



「早く結婚したいね、ソフィア」



「……う……うん」



「……いや待て。何かちょっと良い雰囲気のところ悪いけど、それじゃ爆弾と変わりねえだろ!? 俺たちまで死ぬって!」



「でも、あの人ひとり殺す程度じゃ物足りないし」



「それ最早殺人鬼の台詞だよなあっ!? おいお前ら何とかしろよ責任取って!」



「……ご、ごめん」



「謝るな! 諦めるな! もっと自分を信じろ!」




「―――そして、その時からのことだった。妻のみならず、いつも私を慕っていた娘が―――」



《ア、アノー……》



喧騒の外には、一人で喋り続ける侯爵と、すっかり存在を忘れ去られた哀れな異形が残された。

322名無しさん:2012/11/23(金) 14:09:21 HOST:EM114-51-192-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

え……まさかのシュオン様と天音が手組んだ!?

……天音は、キレると留まることを知らないからね…

323心愛:2012/11/23(金) 15:23:19 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんつええ←


…そんなわけで侯爵って大地色の瞳らしいけど髪の色は?

324ピーチ:2012/11/23(金) 19:17:57 HOST:nptka301.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

天音は強いよー←

侯爵はねー…赤茶系の髪←何か気持ち悪いよね

325心愛:2012/12/02(日) 18:56:00 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――邪魔者、再び――』





「……ソルファール? 聞いたことがあるような……」



事態についていけず首を傾げていたルイーズの呟きを、侯爵が耳ざとく拾って唐突に声を上げた。



「おお、これはこれは第三王女殿下。正式に挨拶申し上げるのは初めてかと存じます。陛下からソルファール侯の名を賜っている者です、以後お見知りおきを」



一礼する侯爵に、ルイーズは「うむ」と頷き。



「くるしゅうない……で、何故こんな所に? 此処はエインズワーズの敷地であろう?」



「よくぞ聞いて下さいました」



その一言で、彼の声色がガラリと変わる。



侯爵に鋭い視線を投げられ、ソフィアはびくっと震え上がった。




「この間の報復を―――今一度、そちらの《紫水晶(アメシスト)》を我が下に、と思いましてね」




「……なッ」



「………!」



ルイーズが驚愕に目を見開き、冷静沈着を絵に描いたようなクロードでさえもが息を呑む。



「な、……んじゃと?」



「殿下には御理解戴けないかもしれませんが……どうしても、私には《紫水晶》の幸福の力が必要なのです」



侯爵は悩ましげに額に手をやり、



「最後の手段である《紫水晶》の強奪が失敗しても、妻と娘は帰って来ぬまま。一人悶々と暮らしていたところに―――」



やはり彼の事情を知らないルイーズは良く分かっていない様子だったが、侯爵は構わず言葉を続ける。



「王城の舞踏会で、レオンハルト王太子殿下にお会いしたのです」



「……は? 兄様と?」



「ええ」



まるで嫌な予感でもしたかのように、ルイーズは片頬を痙攣させた。



「我らが寛大なる第一王子はこのように仰いました―――『シュオンに報復を果たしたい? それなら絶好の機会があるぞ。私の妹のルイーズが近々エインズワーズ邸に遊びに行く予定になっているのだが、その日なら流石の奴も油断しているだろう。……ははっ、面白い報告を期待している』……と」



聞いてもいないことを勝手にぺらぺらと喋り倒してくれる侯爵。



「…………シュオン」



「何でしょう」



ルイーズはにっこりと眩しい笑顔で、同じく穏やかに微笑んでいるシュオンに言う。



「あの馬鹿兄を殴るときには是非とも誘ってくれ」



「はい、姫君。必ず」



「こらこらこらあっ!? 次期国王陛下になんちゅーことをっ!」



「でも、そろそろ僕あたりがレオン殿下の息の根を止めておいた方がマルグリットの為になるんじゃないかと思うよ。本気で」



「激しく同感じゃ。しかし、そうなったらわたしが女王にならなくてはならぬのがいささか面倒じゃのう」



「危険なことを仰らないで下さい!」



晴れやかな笑顔で世にも恐ろしい発言を繰り出す二人にヒースが突っかかる。



「……お、王太子様がそんなことを……?」



「というより、シュオンに返り討ちにされる侯爵が見たかっただけなんじゃ……」



「成程。王太子殿下の道楽好きにも困ったものですね」



順番にシェーラ、ソフィア、クロード。



「ねえジル、大丈夫なの? 確かあの人、かなりの刀の使い手だったはずじゃ」



「大丈夫だろ。こっちにゃオレ様とヒースにお前、それからそこのでかい奴と男二人……に加えて、何よりもお怒りのシュオンとお嬢ちゃんもいることだし」



「そ、そうね……。シュオン様はソフィアちゃんに何とかしてもらうとして、天音ちゃんが手加減できるかどうかの方が問題かしら」



「天音とあの人だけでも、核ミサイルとピコピコハンマーくらいの戦力差だよな」



「? かく……?」



「えー、それは、ええと……」



前回あまりにも簡単に倒せてしまったことも手伝ってか、なかなかに和やかな会話である。



それを聞いているのかいないのか、侯爵は声を張り上げて。




「ふふふ、念の為に、今回は我が兵士たちも連れて来たのです!」




『おおーっ』




「それを早く言えええッ!?」



侯爵の背後の草木の陰から、ぞろぞろと武装した男たちが現れた。

326心愛:2012/12/02(日) 18:59:17 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久々の更新で申しわけない←

赤茶系いいじゃん!了解!

327ピーチ:2012/12/02(日) 19:04:45 HOST:EM114-51-189-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いやいやいやシュオン様もルイーズ王女も何言ってんの!? 冗談抜きで怖いからね!?

………ソルファール侯爵ごとき、天音の逆鱗に触れたら多分一瞬で焼死が溺死か絞殺か生き埋めか最悪解体されて終わるね←おい

328心愛:2012/12/02(日) 19:59:41 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……天音ちゃんはやっぱりシュオンと似たとこがあるみたいだね☆

シュオンは口では色々言ってるけど、基本自分の手は汚さずに陰湿な手口で攻めるけどね!

329心愛:2012/12/02(日) 20:02:15 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――決戦――』






「ちょ、待っ……表の兵は何やってんだよ畜生!」



「親切に道を教えてくれたが?」



「あの馬鹿共がぁああ!?」



自らも愛刀を抜き放ち、侯爵は勝ち誇った笑みを浮かべる。



「しかし、大人しく《紫水晶》を渡すのなら武力は行使しませんよ」




「……話は、お終(しま)い?」



侯爵の発言を華麗なまでに無視、苛立ちを隠す気もない天音が無表情のまま口元だけを綻ばせ、その漆黒の瞳をすっ、と細める。



「ちょうど良かった。どうせやるなら派手にやらなくちゃね」



続いて笑むシュオンを見て、ヒースがサッと青ざめる。



「やべえって、確実に死者出るぞこれ! こんな人数じゃとても守り切れねえから!」



「ま、守る対象が変わっちゃったね……」



「くそ、折角俺が必死こいて『つい逃がしちゃったけど……やっぱり僕の花に近寄る悪い虫にはそれ相応の報いを与えるべきだと思わない? ねえ、ヒース』とか言い出したシュオンの機嫌取って、これからの表面上の関係に影響ないようにお咎めなしにしてやったっつーのに、これで死人でも出てそれが明るみに出たりなんかしたときにゃあ俺の努力が全部水の泡じゃねえかぁ……!」



「……君も、苦労してるんだね……」



「……は、は……」



柊一の同情と共感が入り混じった微笑に、ヒースは力ない笑みを返した。



「そうだね、まずは昨日完成したばかりの―――」



「シュオン、だめ」



ソフィアにじっと見上げられ、シュオンがたじろぐ。



「……う……でもソフィアが」



「だめ」



「わ、分かったよ……。ソフィア、こっちに。ついでに君たちも」



「行動早えなおい」



自分の出る幕がないと知るや、さっさとソフィアたちを促して避難を始めるシュオンに、ヒースは苦い顔をする。



「……其処を退(ど)け」



確かな威圧感と共に、侯爵はずいっと一歩踏み出した。



「この場からって言うんならいくらでも退くさ。でも、御嬢様たちの前からってことなら」



無意味に喧嘩を売る真似はしたくないけれど、これだけは言わせてもらう。


ヒースは挑発的に口端を上げ、



「金輪際、お断りだね!」



「……それは残念だ」



侯爵はふっと息を吐いた。



「だが私としても、無意味な戦いはしたくない。女性を怯えさせるのは趣味ではないのでな」



その決然とした台詞は、睨みをきかせている天音のド迫力に怯えて一歩下がりながらの言葉でなかったならば格好良く聞こえたかもしれなかった。



「そんなわけで、シュオン様。この従僕に粗暴な振る舞いをやめるよう言って戴けますか? 平和的にもう一度話し合いを―――」




《待テ……!》




『え? まだいたの?』




突如として割り込んできたのはあの髑髏型の異形。


ヘドロを撒き散らしながら屈辱にプルプル震えていたが、彼らの酷く冷たい反応をなかったことにしたらしく。



《……………ク、クク、コレハ、コレハ凄イ負ノ感情……!》



「な、何あれ気持ち悪っ」



正直な感想と共にユーリエが後ずさる。



見る間に異形はひゅん、と影のような形状になり、



「……え?」



『…………あ』



ソルファール侯爵の身体に、吸い込まれた。



《……オ、オオ……! 力ガ……力ガ湧キ出テクル……! ッフハハハハハハ!》



高笑いする侯爵―――否、彼を乗っ取った妖。



「憑依……!」



「面倒なことになったわね……」



異界の三人の表情が引き締まる。



「天音」



「分かってる」



彼女の首の動きに合わせて、暁闇を秘めた髪が広がる。


なめらかで、艶やかで、―――残酷な、輝き。



「取り敢えず、ストレスの発散は後回しよ。すぐにあれを何とかしましょう」



「あ、ああ……」



「う、うん……」



“後回し”ということは、彼女の溜まりに溜まった怒りの被害に遭うのは―――と瞬時にその答えを出してしまった二人は、身構えながらも曖昧な愛想笑いを浮かべて頷いた。

330ピーチ:2012/12/03(月) 20:24:27 HOST:EM114-51-83-65.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

うん、多分天音はガキの頃から色々面倒事ばっか持ち込まれてたから耐性ついたのかも←

柊一達がんば!

憑依か! あたしがやると面白くないからなぁ……

続き気になるよー! 待ってるよー!

331心愛:2012/12/04(火) 17:12:28 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――迎撃――』





「……だ、旦那様……?」


戸惑った様子の兵士にこわごわと声を掛けられたが、侯爵を乗っ取った妖は案外平然とした対応を見せた。



《何デモ、ナイ。……オ前タチ、ヤッテシマエ!》



「は、はいっ!」



「いや気づけよ!?」



ヒースの叫び虚しく後方に下がった主人の命を得て突撃を始めた、従順な彼らの前に立ちふさがったのは、



「天音、柊一。此処は俺に任せてくんねぇか? お前らは後に備えて体力温存してろ」



「……仕方ないわね」



「任せたよ?」



いつの間にやら、淡い月光を彷彿とさせる美しい剣を右手に構えた昇。



「剣を向けられたのならば取るべき行動は只一つ」



「く、クロード……? おぬし、物凄く張り切っておらんか……?」



「そんな事は御座いません」



漆黒の大剣を携えたクロード。



「……ッしゃあ! まとめてオレ様がお相手してやんよ!」



「ジル……気をつけてね?」



「ハハッ、誰に向かって言ってンの?」



喜々として愛用の剣を振り回すジル。



「ひゅうひゅーう! ヒース頑張ってー!」



「っ……せえな黙ってろ!」



最後に、シェーラの緊迫感に欠ける声援に体勢を崩しかけたヒースだ。


短く舌打ちし、ヒースは横に並んだ三人に聞こえるように。



「分かってると思うけど、間違っても殺すなよ。意識飛ばすでも、戦意を喪失させるだけでもいい。上手く手加減しろ」




『……え?』




「こいつら殺す気満々だったっ!?」



ヒースは驚愕する。



「冗談冗談、分かってるって黒髪」



「黒髪違う!」



ひらひらと手を振る昇はともかくとして。



「ハァァァア? なにソレ、つっまんねェーの」



「つまんないとかそういう問題じゃないからな!? クロード殿も分かっていらっしゃいますよね!?」



「……承知」



唇を尖らせるジルに続き、渋々といった雰囲気を漂わせたクロードが頷いた。



「ったく……じゃ、」



「やりますか!」



ひゅうっ、と口笛を鳴らして真っ先に躍り掛かったのは、やはり元暗殺者(アサシン)の男、ジル。


鋭い踏み込みと共に、異常なまでに軽い体重と一流の身のこなしを生かして空高く跳躍。



「いっくぜぇぇええええ!」



驚いて彼を見上げる敵兵を剣の柄で一気に殴り飛ばす。




「……なんだ」



ひゅん、と小さく剣先を振る昇。
その動作だけで、相手の気力を根刮(こそ)ぎ奪ってしまいそうな強烈な凄み。

不意に上げられた灰色がかった黒い瞳が、雄叫びを上げて突進してくる男たちを映し出したその刹那、昇は動いた。



―――迅(はや)い。



滑るような動き、疾風の如き剣閃。


次々と襲い来る攻撃を、正確に弾き、逸らし、叩き落とす。



「黒髪たちくらいかと思ってたけど……全然弱いじゃん」



口元には余裕の笑み。




「……これは、なかなか」



クロードは彼に感心したように呟く。



「ルイーズ様の騎士として、負けてはいられませんね」



振り、合わせ、流す―――“戦神”の太刀筋には一切の無駄がない。

一人一人の剣の軌跡を完璧に読み切っているからこそ為せる技。

背後からの攻撃でさえも、全く振り向かずに受け流す。



「……さっすがクロード殿……!」



ヒースは上半身を大きくねじり、戻す勢いで突きを繰り出す。


鞘を使った横薙ぎの一撃で数人を地に沈めると同時、フェイントで鋭い蹴りを見舞う。



「ふっ……」



「ロード・ヒース」



ジルを視界に入れたクロードが、短く一言。



「此処は私たちに」



「……はい!」



尊敬の対象であるクロードに言われ、ヒースは力強く頷いた。
彼がヒースの力量を認めてくれたという事実が、単純に嬉しい。



「って訳で黒髪! 行くぞ!」



「黒髪言うな黒髪! 言わなくても分かってる!」



「こういうときは黙って頷いときゃあ良いんだよ空気読め黒髪が!」



目指すは侯爵。

視線、それからついでに罵声を交わし、ヒースと昇は兵の間を駆けた。

332心愛:2012/12/04(火) 17:18:28 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ


サービスの一環で昇くんの描写を長めにしてみた((いらねーよ

それにしても、皆強いって設定だから自キャラと昇くんの力量のさじ加減が難しいー(~_~;)

333名無しさん:2012/12/04(火) 22:24:14 HOST:EM114-51-92-224.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

おっ、昇が活躍してる!←

いや、昇は基本的に最悪の状態になるまで手出ししないから適当に弱くしちゃってください←おい

334心愛:2012/12/06(木) 23:03:47 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、そうなの?←
ヒースに勝負申し込んでたくらいだし結構ケンカ好きなのかと……ってうちのバカ共と一緒にしちゃ失礼だよねすみませんでした(T^T)

じゃあ最後のトドメをお願いしようかなー←

335ピーチ:2012/12/07(金) 06:52:06 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

いや、何て言うかケンカ好きっていうより自分より強い人見て手合わせしたくなった的な?

336心愛:2012/12/07(金) 18:08:51 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なるほど!
じゃああくまで受け身で、雑魚ズにはやられたら倍返しってことで?
……侯爵にも昇くんが積極的になる価値はなさそうですな(・∀・)


次はこっちのキャラが目立っちゃうけど、ちゃんとその後はお三方を立てるんでお許しをm(_ _)m

337心愛:2012/12/07(金) 18:15:59 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――闘うもの、護るもの――』





「……ほわぁー! クロードってやっぱり凄かったんだぁ」



「ヒースもジルも、昇さんも全然負けてないわね」



「うむ。王立騎士団の御前試合でもなかなか見られぬほどの腕……クロードを抜かせば匹敵するのはクラウスくらいじゃろうか」



シェーラにルイーズ、それから狙われている当人であるソフィアも、こちらの明らかな優勢を察して安心したらしくのんびりと高みの見物を始める。



「この様子だと、侯爵―――じゃないけど―――が取り押さえられるのも時間の問題だね」



「……いや」



シュオンの言葉に、柊一が小さく頭(かぶり)を振って異を唱えた。



「案外、そうとは限らないかもよ?」



「そうね」



ぱたん。と音を立てて、天音は手にした扇を閉じながら。



「柊の言う通り、前とは違って憑依している妖が身体を操作しているから、前みたいに簡単にはいかないと思うわ」



「そっか。じゃあやっぱりあの侯爵だけは厄介だね―――あ」



「ヒースと昇さんだ!」



黒髪の青年二人が、何やら口論しながらも肩を並べて侯爵に向け疾走。
行く先を阻む兵士たちを文字通り蹴散らしながら順調に進んでいく。



「クロード殿が指示を出したみたいだね。確かに、大人数相手の戦闘はジルの基本戦術に合ってるし、クロード殿御自身も良く慣れてる。妥当な判断じゃないかな」



シュオンの発言に、ユーリエも頷いた。



「ジルは元々個人を狙うより、好き放題暴れるのが得意ですからね」



「……ヒース、大丈夫かなぁ」



不安そうに声を揺らしたのはシェーラ。

いつも脳天気な彼女の暗い表情に、ソフィアが驚いたように瞬いた。



「心配? らしくないわね」



「だって、ヒースって慎重なように見えて、無茶するときは一人で物凄い突っ走っちゃうんですもん」



「ふぅん。誰かさんに似てるような似てないような……ね、天音?」



「……さぁ。検討がつかないわね」



言いながらも少しだけ気まずげに、天音がついっと視線を逸らす。



「とにかく、黒髪君だけならともかく昇もついてるから。そこまで心配する必要はないんじゃない?」



「……はい!」



シェーラが笑い、こくんと頷こうとした、そのとき―――




「「―――危ないっ!」」




柊一、そしてシュオンが血相を変え、ほぼ同時に声を上げた。


戦力が分散した瞬間を狙ったのか、死線を潜(くぐ)り抜け突如として一人の兵士が彼らのすぐ目の前に出現。


彼が目をつけたのは、



「……王女様!?」



この場で最も幼く、最も弱そうに見えるルイーズ。


二人よりやや遅れて気づいたユーリエがすぐさまナイフを握り締め、ソフィアとシェーラは悲鳴を呑み込んだ。



「……失礼!」



抵抗しないルイーズにぴたりと剣の切っ先をあてがい、



「そちらのレディ―――《紫水晶》の身柄と引き換えに致しましょう」



「……へえ。王族である姫君に刃を向けるなんて、それだけで重罪なのに」



「随分と横暴な真似をしてくれるじゃない」



シュオンが呆れたように微笑み、天音が冷めた声で言う。

しかし彼らの眼差しは、その間も油断なく反撃の機会を窺っていることを物語っていた。

しかし、



「……そう慌てるでない」



落ち着いた様子で、捕らわれたルイーズが笑う。



「そなたには『あれ』とお相手願うことになるからな」



「………?」



視線を逸らさず、口元の笑みを深くして。



「よりにもよってこのわたしを選ぶとは……。運が悪かったとしか言いようがない」



言い切ると同時、

すっと瑠璃(ラピスラズリ)の瞳を細める。

それだけで『やれ』と命じた。



―――殺気が満ちる。



鷹を思わせるジェード・グリーンの双眸が、闇の中冷ややかに煌めいた。



「もうよい。戻れ」



「はい」



ずるりと崩れ落ちた敵兵を一瞥、彼女の騎士が恭しく腰を折って立ち去る。



「……大丈夫?」



「うむ」



余裕の笑みで天音に頷いてみせ、それから意味深に胸元に手をやるルイーズ。



「この程度、慣れっこじゃ」

338ピーチ:2012/12/07(金) 19:47:14 HOST:EM114-51-188-250.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

すげぇやっぱルイーズ王女凄いっ!

……何気に、ヒースと昇って仲いいよね←

339心愛:2012/12/07(金) 20:41:54 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ルイーズは多分、クロードが間に合わなくても自力でぶちのめしたと思うけどねw
…にしても、ソフィアとシェーラ以外の面子は、人質に取られそうになっても何とかしちゃいそうな人たちばっかりじゃない?←


天音ちゃんはクールだけど無茶するときはしちゃうっていうイメージがあったんだけど大丈夫だよね( ̄〜 ̄)?


ヒースと昇くんセットはとっても動かしやすいです!ここあの主観で!
似てるとこがあるからなのかなぁ。
何気に良いコンビかも?

340彗斗:2012/12/07(金) 22:36:46 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
クロード早っ!? ルイーズ王女の為なら何だってするのがやっぱりクロードですねっ☆
 
それはさて置き……クロードの実力がここまでとは正直な所、思っていませんでした(汗)

それじゃここまで強いクロードさんにはこっちで「奴」の相手でもして貰おうかな……?

341ピーチ:2012/12/08(土) 09:30:37 HOST:EM49-252-80-29.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、確かに。自分で何とでもしちゃいそうw←

…ソフィア様もシェーラちゃんも、何気に人質取られても問題なさそうじゃない?

ばっちぐー! 天音は一人で突っ走る傾向ありww

確かに似てるよね、ヒースと昇! 自分でも動かしやすそうって思える!←

342心愛:2012/12/08(土) 16:48:40 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

“イルファーレの戦神”様は最強なので!( ´∀`)

ルイーズとの信頼関係的なものがもっかい書きたかったんです←



>>ピーチ

ソフィアが捕まったらシュオンが黙ってないだろうねw


…そんな息ぴったりのヒースと昇くんは次で活躍してくれるはずでぐふぅ。

343ピーチ:2012/12/08(土) 17:01:17 HOST:EM49-252-145-12.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ソフィア様が捕まったらシュオン様、シェーラちゃんが捕まったらヒースが黙ってないだろうねw←

まじですか! どーぞヒースたちを目立たせてやってくれ!

344心愛:2012/12/09(日) 20:37:00 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――闘うもの、護るもの――』






「あれか」



視界に入るは、悠然と赤茶の髪を靡かせる侯爵の姿。



……この男に指示を仰ぐのは少々癪だが、仕方ない。


ヒースは昇をちらりと見やり、



「で? どうすれば良い」



「動きを止める」



昇は真っ直ぐ前を見据えたまま、短く一言。



「できるのはそれくらいだな。後は天音たちの仕事だから」



「了解……っと」




《……貴様ラ》




放つ気迫が凄まじい。
あの侯爵の身体とは到底思えない程の圧倒的なオーラを纏い、異形の化け物は二人に対峙する。



《我ニ、逆ラウノカ》



「ああ」



刀身を鞘から抜き放ち、ヒースは挑発するように鈍く光るその先端を『ソレ』に向けた。




「俺たち二人が、お前の相手だ」




「―――……あ。そういや黒髪」



唐突に何かを思い出したように昇に言われ、出鼻を挫かれたヒースは半ば逆ギレ気味に応じる。



「黒髪じゃねえっつの! ……んだよ」



「言ってなかったけどさ」



昇は人の良さそうな笑みを浮かべ、




「俺は基本ノータッチってことで。ヤバくなったら助けるから、あとよろしく」




「……はああああっ!?」



《ナラバ、排除スルノミ》



昇の無責任な発言に食ってかかる暇も与えず、刀を携えた妖はヒースたちに向かって突進。



「ちょっ」



とっさに身を翻して避けながらも、ヒースは額に青筋を立てて怒鳴る。



「何でだよ!? 明らかに此処は二人で協力してって流れだっただろうが!?」



「これ如きに二人がかりってのも可笑しい話じゃねぇ? それとも一人じゃ無理?」



飄々とした昇の台詞に、



「い、言ってくれるじゃねえか……!」



酷く単純なヒースはすぐに引っかかった。


剣の柄をぐっと握り直し、



「分かった、」



重心を左足に乗せ、一呼吸おいてから強く地面を蹴る。



「そんなに言うなら―――俺だけでやってやるっての!」



凝縮した空気が破裂するような跳躍音、妖との距離が瞬時に零になる。



―――ギィッンッッッッ



短く、鋭い剣響が空気を切り裂きながら木霊する。


剣と剣が正面からぶつかり、その反動で身体が後方へと弾かれた。



「……っ!」



足元から砂埃が舞い上がる中、すぐさま体勢を立て直して肉迫。


衝撃で流れた剣先を制御し、再び振りかぶる。


続けざまに、そして際限なく続く剣戟。



―――強い……!



相手の攻撃の起点となる箇所だけを目で追いながら、ヒースは舌打ちした。


前回の侯爵の動きの比ではない。
何倍、何十倍という速度、そして精度。


斜めから打ち下ろすように、下から抉るように、横から払うように。


瞬きすら許さない銀光を紙一重で見切り、捌(さば)くのが精一杯だ。



「くそっ」



突き終わりの瞬間に斜め上段から突き下ろす。
直後、それと交叉して相手の剣が真下から跳ね上がった。



……追撃のチャンスは皆無か。



それをやっとのことで弾き返してなお、異形の動きは止まらない。

防がれるのをあらかじめ悟っていたかのように衝撃を受け流し、大地を蹴って瞬時に迫ってくる。


苦し紛れに空を切った刃を寝かせ横に薙ぐが、



「……っは、」



そのまま数メートル後方に着地して、ヒースは荒い息を吐いた。
一日に何度も酷使した所為で力が入らなくなった腕はぶらりと垂れ、こめかみを熱い汗が伝う。



《終ワリダ、小僧》



ざっ、と足音。



《覚エテオケ。我ヲ阻ム者は、皆―――》



「いや」



ひょい、とヒースは肩をすくめた。



「まだ終わりにするには早い」



そして、異形―――否、その“背後”に向けて、ヒースはほんの少し口の端を上げる。




「……別に、まだ全然ヤバくなってねえけど?」




―――……二の太刀は、不要。




「はっ、黒髪の癖につまんねぇ意地張るなって」




楽しそうに笑う声。




―――昇の刃が、相手の得物を一閃の下に弾き飛ばした。

345ピーチ:2012/12/10(月) 20:30:00 HOST:EM114-51-154-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

やばいヒースがめっちゃかっこいい!←

昇は相変わらず何ていうか………自由人?(おい

346心愛:2012/12/10(月) 21:44:37 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒース負けかけてたけどねw

猫さんとマジ勝負した後だし仕方ないw


最後の最後で昇くんにいいとこ取られてるヒースでした←


次からは天音ちゃんと柊一くんに頑張ってもらう方向に持ってこうと思います!
どうなることやらー(~_~;)

347ピーチ:2012/12/11(火) 22:45:59 HOST:EM49-252-224-226.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あの猫さんと真剣勝負した後だから仕方ない! ヒース頑張った!

天音達がどんな暴走を繰り広げてくれるのか楽しみだw←こら

348心愛:2012/12/12(水) 18:04:28 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ

暴走…よりはしばらくマジメトーンかもしれないw

ここあがとあるシチュを書きたいばっかりに天音ちゃんにはちょっとだけ可哀想な目に遭わせちゃいますがごめんね天音ちゃん!

349ピーチ:2012/12/12(水) 18:44:23 HOST:nptka401.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

マジメトーンか!

全然いいよー←

あ、そういえばソフィア様逹って天音のこと何歳くらいだと思ってる?

350名無しさん:2012/12/14(金) 19:04:21 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――そして、決着の刻は来たる――』





「……ふーっ」



最後の一人が崩れ落ちるのを確認してから、ジルは長い息をついた。
戦うのは好きだけれど、これだけの人数を相手にして一人も殺さない方が骨。
後からじわじわと精神的な疲労が襲ってくる。



「あちらも決着がついたようです」



そのジルと全く同じことをしていたというのに汗一つかかず、クロードが昇とヒースが消えた方角を見やってさらりと言う。


あっそ、とジルは腕を組み、



「……なァ」



「はい」



明らかに格下であるジルにぞんざいに話し掛けられたにもかかわらず、クロードは素直に彼に向き合って。



「如何されましたか」



「兄さん、アンタただもんじゃねェな」



ジルは皮肉げに片頬を歪めた。



「いかにも育ち良さそーな顔してっけど、血の匂いがプンプンしてやがる。今までにそりゃあもう、もっの凄い量の血を浴びてきましたっていう匂いが、アンタの身体には染み付いてる」



クロードは表情を動かさない。
黙ってジルを見下ろすだけ。



「オレ様も似たよーなことしてきたから分かるンだよねー……アンタ強ェだろ、それも滅茶苦茶に」



にやっと嬉しそうに笑うジル。



「兄さん、今度手合わせしてよ」



彼の言葉に、クロードは少しだけ、驚いたように眉をぴくりと動かした。

それから、普段は引き結んでいる口元を僅かに緩め。



「……はい。ルイーズ様にお暇を戴けたならば」






*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。:*・゚゚・*






《……オノレ……》



「「……っ?」」



血走らせた目を上げ、二人を睨み付ける異形。

その姿は未だ侯爵のものにも関わらず、異様なまでの迫力を放っている。



《オノレ、オノレ……ッ! 矮小ナ人間ドモガ……!》



怒りに顔を歪め、そう絞り出すように吐き捨てたソレは、



「! 待っ」



二人を振り切って身を翻し、瞬く間に森の奥へと消え去った。



「はあ!? 意味分かんねえし! ……あーくそ、とにかく」



「―――天音っ!?」



そのとき、何処からか漆黒に艶めく長い髪を靡かせる天音が飛び出した。
着物の袖を風に煽らせ、瞳に強い意志を光らせ、消えた異形を追い、真っ直ぐに駆けていく。



「ばっ、天音っ? 何しっ」



「二人とも無事っ!?」



サッと青ざめた昇を遮り、またも新たな闖入者が現れる。
戦いの様子を遠くから眺めていた者たち、そして彼らに合流したクロードとジルだ。




「……昇、天音が」




ぽつりと漏らしたのは、いつになく険しい顔つきをした柊一。
その短い言葉の節々には、確かな焦りの色が見える。



「分かってる」



昇は頷き、柊一の後について駆け出しながら全員に向けて声を張った。



「天音を追うぞ! あの厄介娘、また一人で無茶やらかす気だ!」






*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*






木々の間を走っているうちに開けた場所に出、天音は足を止めた。
注意深く、ぐるりと辺りを見回す。



「見失った……?」



先程まで背が見えていたのに。

無意味に時間を潰していても仕方がない。素直に柊一たちと合流するしかないかと踵を返したとき、




―――突然、彼女の視界が、痛い程に暴力的な―――鮮烈な紅(あか)色に染まった。




「……あ、……?」



そして、燃え盛る火炎の中に、ゆらりと浮かび上がったのは―――人の形をした、黒い、影。



呼吸が、止まる。



……嘘。


だって、……だってこの人が、こんな場所にいるはずが。



大きく見開かれた瞳が、『それ』を映し、揺れる。



「……ぁ…………あ…………っ」



熱い。



熱い。



―――……あつ、い!




思考が停止すると同時、記憶に灼き付いた声が甦り、彼女を容赦なく責め立てる。



全身から血の気が引き、脚が震え、唇が戦慄(わなな)く。



直後、




「―――――――っっっ!」




細く、白い喉から迸った声なき悲鳴が、夜の帳(とばり)を引き裂いた。

351心愛:2012/12/14(金) 19:08:59 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
上の名無しさんになってしまった人はここあです(´ー`)



>>ピーチ

最近忙しくて駄目だわーw

そんな中の重要シーンなんだけど、焦ったせいかいつにもまして上手くいかなかった(~_~;)


それから天音ちゃんごめんねぇええええ(T^T)

352心愛:2012/12/14(金) 19:12:40 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ



追加!
年齢不詳のお姉さんだと思ってるんじゃないかなw
少女って表現出てくるんで「女性と呼ぶべき年齢ながら、幼さを残した顔立ち」ってことにしてるんだけど…
昇くんや柊一くんに取ってる不遜な態度から二人と同年代、じゃあ自分たちより上か?みたいな←

353ピーチ:2012/12/14(金) 19:27:49 HOST:nptka203.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

さっすがここにゃん!

え、何これ何でこんな神文章になっちゃってるの!?

年齢不詳か! だったら次のコラボで使わしていただきます♪

天音のことだから多分年齢関係ないけどね!←おい

354心愛:2012/12/14(金) 23:09:37 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp
>>ピーチ

え、そ、そう……?
妄想加速しすぎて天音ちゃんをぶっ壊してないか心配だったんだけど大丈夫…?


じゃあ次もこのまま突っ走っちゃうよー!
天音ちゃんと柊一くんで是非ともやってほしいシーンがあるのよね←

355ピーチ:2012/12/14(金) 23:36:31 HOST:EM1-114-162-231.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

全然!! むしろいい!

天音と柊一だったらいっくらでシーン思いつくよねー!←

356心愛:2012/12/15(土) 23:11:46 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――二人なら、きっと――』





「……天音っ!」



深い森の中響いた、余りにも弱く、か細い声。


昇と柊一が血相を変えた。


只事ではないということは、部外者であるソフィアたちにも十二分に分かる。


天音の身に何があったのか。



人が通った跡を探しながら走ること数分。

一行を先導していた柊一が、突然立ち止まった。

全員が息を呑む。



「火……!?」



視界を埋め尽くさんばかりに激しく燃え上がる炎。
瞬く間に木から木へと移り、彼らの周りに円を描くようにして広がっていく。



「嘘だろッ!?」



「こっ……こうしてる場合じゃないわ、早く逃げないと!」



ジルとユーリエが退路を探し始める中、



「シェーラ! ぼさっとしてんじゃねえ、お前もさっさと逃げろ!」



ヒースに怒鳴られ、一人ぼうっと突っ立っていたシェーラはやっとのことで我に返り。



「天音ちゃんは!? あたしたちだけ逃げるっていうのっ?」



うっと言葉に詰まったヒースが何か言い返す前に、



「……っ天音!」



「柊一さん!?」



木陰にうずくまる少女を見つけた柊一は、一切の躊躇もなく炎の渦へと飛び込み、彼女へと駆け寄った。



「危な―――」



「……皆、落ち着いて」



落ち着いた声音で、シュオン。
知的に澄むアクアブルーの双眸で、柊一と昇、そして辺りの炎をぐるりと見回す。



「この火、何かおかしい」



「シュオンの言う通りじゃ」



火の粉が舞い飛ぶ風に髪を踊らせ、腕を組むルイーズがちらりと彼女の従者を見上げた。



「焦っていても埒が明かぬ。……クロード」



「はい」



「く、クロードっ!? あんた何やってっ」



主の命を受け、クロードが迷わず火焔へと近づき、その真っ只中へ手を突っ込んだ。


蒼白になるシェーラに、クロードは普段通りの無表情で「案ずるな」と返し、



「……やはり、この炎は全く熱を持っていません。何か違う物の様です」



「え?」



彼の信じられない言葉に、ソフィアたちは恐る恐る炎の上に手を翳し。



「ほんとだ……」



「熱く、ない……?」



《見破ラレタカ》



声の方へと目を向ける。



「侯爵……!」



異形の化け物をその身に宿す侯爵が、この場にそぐわない酷薄な笑みを浮かべていた。



《予定ガ狂ッタガ……我ガ唯一ノ脅威、ソノ小娘を封ジテシマエバ、此方ノモノ》



確かに、妖に物理的な攻撃が効かないのは、すでにヒースが実証済みだ。
頼りになるのは、天音と、そして―――




「―――させない」




良く通る声。

穏やかな眼差しに、彼の内に内包された僅かの怒りを孕ませ、柊一が妖を見据えた。
思わずといったように、妖が黙り込む。



「天音」



屈み込み、小刻みに震えている彼女の顔を覗き込む柊一。



まるで示し合わせたように、場が水を打ったように静まり返る中、



「もう分かったでしょう? これは幻覚だよ」



「……そ……っなの、分かっ……」



天音は歯を懸命に喰い縛り、首を振る。
唇から漏れるのは弱々しい吐息ばかり。
美しい瞳に恐怖を滲ませ、



「でも……っ」




「俺がいる」




きゅっと手が握られた。
まるで幼子のように無防備に、天音は目を見張って彼を見る。



「俺がついてる」



彼女を優しく見つめ返し、柊一は微笑んだ。



「いつもそうだけど……。一人で抱え込まないで。もっと俺を頼ってよ」



一人じゃない。



「いけるね? 天音」



二人なら、きっと。



長い長い沈黙の末―――




「―――……誰に向かって、ものを言ってるの?」




小さく、天音はくすっと笑った。


あくまで素っ気ない動作で手をするりと解いて立ち上がり、異形を振り仰ぐ。




「―――よくも、この私を侮ってくれたわね」




不敵な冷笑。




「覚悟して。……その下品な口、今すぐに塞いであげる」

357心愛:2012/12/15(土) 23:17:00 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

書きたかったシーンその一!
弱る天音ちゃんを励ますかっこいい柊一くん!←ここあの主観です


次は悪ノリに悪ノリを重ねた詠唱と、書きたかったシーンその二ですやっほい( ´∀`)!

358心愛:2012/12/16(日) 09:26:33 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

質問いいー?
柊一くんって天音ちゃんと同じような力持ってるんだよね?
それ使うときって、両手を胸の前で組む……で、いいの?
鈴は使わないの?



あと、やりすぎじゃボケって場合はどんどん言ってね(・∀・)

359ピーチ:2012/12/16(日) 13:16:51 HOST:EM114-51-148-75.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

やばい凄い! あの天音をここまで上手く動かすことってあたしぜったい無理だよー!

天音と同じような力+で結構持ってるからね柊一は←

柊一の家系の鈴は漆黒ですはい。似たような使い方してるからね

どっちか言うと柊一は右手で鈴持ってそれを天に掲げるって感じかな←おい

360心愛:2012/12/16(日) 19:15:20 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――夜凪乃唄――』







《……面白イ》



異形が、嘲弄とは似て非なる純粋な笑みを浮かべた。



《人間如キガ、今の我ヲ止メルトイウノカ……》



背筋を伸ばし、真っ直ぐな眼を向けてくる天音に、異形が言う。




《ナラバ小娘。貴様ノ意思ヲモッテ、我ヲ見事倒シテミセヨ》




「えぇ。言われなくてもそうさせて貰うわ」



挑戦的に微笑み、それから昇が念の為にソフィアたちを安全な場所へと誘導しているのを横目で確認した天音は、



「……柊」



不意に、隣に立つ柊一に小さな声で。




「後ろ、向いて」




「え?」



「早く」



苛立ったように語尾を強める天音に、柊一は不思議そうにしながらも素直に従う。


すると、



―――とんっ



背中に触れた重みと体温。

驚いた柊一が、首を後ろへと向ける。



「……天、音?」



「別に、深い意味はないから」



少し下方に、彼女の後頭部。

ぴったりとくっついた背中に体重を預け、何とも居心地が悪そうにそっぽを向いている。



―――やがて、柊一の顔がふわりと柔らかく綻んだ。



「……そっか」



「そうよ。……何か文句でもあるの?」



まったく、素直じゃない。


柊一は思わず笑みを零す。



「ううん。それは残念だな、って思っただけ」



「……五月蝿い」



やや迫力に欠ける一睨みを背後へ投げる天音。


それから―――自分が今為すべきことへと思考を入れ替える。



すっと息を吸い、




「―――……宵に煌めく残月、静寂(しじま)に響くは微かな鈴鳴り」




りん―――




辺りを取り囲む炎の中心、背中合わせに寄り添う二人。

紅と黒の鈴が、優しく涼やか調べを奏でた。




《…………ッッ》




妖がびくりと反応する。




「永却(とわ)の記憶(ねがい)は儚く遠く」




「束の間の夢幻(あい)に只溺れゆく」




彼らの夜風に靡く髪を彷彿とさせる漆黒の鈴が、柊一の手によって天へと掲げられる。




「さまよい、いざよい、ゆらめく彩葉(いろは)」




「雪華に堕ちた罪の色、紅(あか)く黒く、尚暗く」




「心、翼、躰(せかい)を染める」




天音が手にした深い紅の扇が月明かりに照らされ、闇に浮かび上がる灯の如く、ぼう、と妖しげに霞んだ。



《コノ、力……小娘、……貴様ラ……ッ》



妖がよろめき、苦しげに呻く。




「乱れ咲け虚城の夜桜、断罪の刻を祝せ」




「舞い踊れ棘(いばら)抱く蝶、贖罪の巫(かんなぎ)を導け」




美しき唱和。
静かなる二人の言葉が波紋のように広がり、森の奥深くへと沁み渡る。




「鵺(ぬえ)吼ゆる玉響(たまゆら)、泡沫の繚乱は狂おしき微醺(びくん)」




「此なるは魂(みたま)に手向けし鎮歌(しずめうた)、空葬の烙印を受けよ」




《……ッアアアアアアアアアアアアア!!!》




突然異形が発狂したかのように絶叫し、髪を振り乱し、喉を掻きむしって苦しみ始めた。
紅蓮の猛火が一段と激しく燃え上がり、異形を覆う。




「鬼火の制裁にて―――」




「常世の呪縛に囚われし者よ」




《コノ、我ガ………ソンナ……ソンナ、コトガ……ッ!》




炎の中、カッと濁った目を見開き、消滅の淵で慟哭を撒き散らす異形の姿を見ても、それでも天音は怯まない。
扇を握り締める手に力を入れ、前を見据え続ける。




「其の総(すべ)てを賭し―――」




そのとき。
ちらり―――まるで示し合わせたように、天音と柊一、両者の間で一瞬視線が交わされた。
天音が何事もなかった風を装い顔を逸らし、それに柊一がふっと微苦笑。



そして。




「「―――汝が終焉を告げよ」」




―――厳かに響く二人の声が、重なった。

361心愛:2012/12/16(日) 19:23:18 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp
>>ピーチ


…中二病って怖いね!((キラキラ


書きたかったシーンその2、背中合わせで戦う男女!
いやー、「お前に背中は預けるぜ」みたいなシチュに持ってくにはうちの子たちは貧弱が過ぎるので…
ある程度同等の身長、実力じゃないと映えないもんね!


そんなわけでここあは完全自己満足お腹いっぱいですが、直すとこ言ってくれたら書き直すよ(´ー`)
っていうかありすぎるよねうん←

362ピーチ:2012/12/17(月) 20:29:02 HOST:EM114-51-182-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

…………凄いの一言でございます。←

確かにいいかもね! 背中合わせ!

……直すどころか、このまま続けちゃってくださいな←おい

あ、二人の呪文もらっていいでしょうか? もしだめだったら言ってねー!

363心愛:2012/12/18(火) 11:59:25 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

………ま、まじで………?

それならよかったんだけど……いいのね? 本当にいいのね?(゚Д゚)


ええもちろん、あんなんでよかったらいくらでももらっちゃってください!
ただ、中二心に響く漢字組み合わせて造語作ったり勝手に意味分からんルビ振ったりしてるので気をつけて(・∀・)


これで一応終わり……な流れだったんだけど、『あの人』が出てきてないんでもうちょい続くよー(^^)/

364ピーチ:2012/12/18(火) 18:25:39 HOST:nptka104.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

あああありがとうございますー!

色んなありがとうー!←おい

らじゃー! 楽しみにしてまーす!

365心愛:2012/12/21(金) 19:13:41 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――幕は閉じる――』





《覚エテオケ……》



おぼろげな声。



《貴様ラノ事、我ハ決シテ忘レヌ……。ソノ顔、ソノ姿、コノ報イ……》



苦しそうに荒い息を吐きながらも―――けれど妖のその表情は柔らかく、憑き物が落ちたように晴れやかなものにも見えた。



《何度、デモ……イツカ、コノ世界ヲ……我ノ物ニ、シテ……》



「お断りよ」



天音はぱたん。と扇を閉じて冷たく告げる。



「仮に、もしそんなことがあっても―――私たちがまた送り還すから。何度でも、ね」



そのときは特別に相手にしてあげる、と薄く笑う天音。



《……最後マデ、良ク吠エル小娘ヨ……》



声を立てて笑い、異形は穏やかに瞼を閉じた。
その身体が、ふっ、と完全に弛緩する。



りん―――



鈴の音色。
それはまるで、妖に安らかな眠りを告げる旋律であるかのようで。



間を置いてから、ソフィアがこわごわと声を発した。



「終……わった、の?」



「あぁ。そうみてぇだな」



昇が首肯し、すぐさま天音と柊一の元へと駆け寄る。



「お疲れ」



「昇もね」



「えっと……お前はもう、大丈夫なのか?」



彼らに割り込む形で、天音へと遠慮がちに尋ねたのはヒースだ。
彼にしては、それなりに気を遣っているようにも見える。


対する天音は額に手を当てて俯き、ふう、と哀しげに息を吐いた。



「……これは、思った以上にショックね。黒髪君如きに心配される程、私は落ちぶれてはいないつもりだったんだけど……」



「こっちがショックだよ畜生!」



途端にいつにもまして凶悪な目つきになったヒースがゲシゲシと傍に立つ木を蹴る。



「……天音さん……」



「もう大丈夫よ。見苦しいところを見せたわね」



「そんなことっ」



何処からか「何で御嬢様には普通の対応できるんだよ……!?」という怨念の籠もった呟きが聞こえたような気がしたがそれには構わず、ソフィアが困ったように視線を彷徨わせる。

ソフィアだけでなく、他の面々も複雑な表情をしていた。

この彼女が取り乱す程の、何か深く、厳しい事情をどうやら天音は抱えているらしくて。

正直に言えば気になるし、自分たちで彼女に何かしてあげられることが、もしもあったならしてあげたいとも思う。
けれど、それについて口に出しても良いものなのだろうか。
変なことを言って、余計に彼女を傷つけてはしまわないだろうか。


そのとき、



「天音ちゃん元気になって良かったですー! もー、走って行っちゃったときはどうしようって思ったんですよ?」



シェーラがおどけたように言い、ぷくっと膨れてみせた。



「昇さんも柊一さんもすっごく心配してたんですから。一人で無理しちゃ、めっ、ですよ!」



彼女は場を明るくするのが異様に上手い。

ソフィアたちはふっと気が抜けて、安心したように笑った。


―――彼女が望まないのなら、何も訊かないことにしよう。


だって、きっとそれは、自分たちの役割ではなくて。



「天音?」



「分かってるよね?」



「……分かってるわよ……」



じとりと据わった目の昇と、笑顔で釘を刺す柊一。
今日は同じことを言われてばかりね、と天音は不承不承頷いた。



「で」



「アレ、どうしましょうか?」



彼らが次に見たのは―――妖が消えた所為でそのまま地面に転がっている侯爵の死体―――訂正、身体。



「処分するのが妥当でしょう」



完全なる無表情のクロードが重々しく告げた。



「生かしておいても価値はありません」



「そうですね。僕も同じ意見です」



「ちょ、ちょっと待てって! クロード殿も落ち着いて下さい!」



「クロード、シュオン! 罰を与えることは必要としても、それはあんまりではないか!」



「ですが」



「ですがも何もない。民を殺めるなど、決してわたしは許さぬからな」



この場の最高権力者であるルイーズが強く言う。
さらに、



「シュオン。許してあげて」



「ソフィア……」



「この通り、私は無事なんだから。酷いことはしないで」



それで、想い人に甘い二人は完全に黙る。

366心愛:2012/12/21(金) 19:19:12 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp
>>ピーチ

冬休みになっても忙しいここあです…。
学校燃えr(ry


早めに終わらせてピーチに引き継いで、自分のスレ進めようと思ってるんだけど厳しいわー←
ほんとすみません(つд`)

367彗斗:2012/12/22(土) 02:20:18 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
侯爵〜!? この二人に処分されてたらただ事じゃ無かったねこれw

色々な私用が込み入ってコメントが書けなかったのですが今回久々に書く事が出来ました☆

これからコメントする回数も多くなるかと思いますので宜しくお願いします!

368ピーチ:2012/12/22(土) 14:51:52 HOST:EM114-51-6-93.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ごめんなさい何かすごくごめんなさい!!

いや、別に嫌だったら無理に引き受けてくれなくてもよかったのに……

ほんとごめんね!?

369心愛:2012/12/22(土) 18:18:01 HOST:proxy10011.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

ありがとうございます!
確か彗斗さんは受験学年…ではありませんでしたっけ…?

彗斗さんが遊びに来て下さるのはとっても嬉しいですけど、無理はなさらずに(・∀・)



>>ピーチ

あ、あれ!?
言葉のチョイスがまずかった!?

嫌じゃないよ全然嫌じゃないよ!
忙しいのは確かだけど、スキマ時間見つけて書くのは結構好きなことだからむしろ嬉しい悲鳴と言いますか。
恐れ多くも天音ちゃんたちを書かせていただくのが嫌だなんてそんなのあるわけないじゃないか!(くわっ
ただ、散々待たせた挙げ句に内容残念な亀更新で申し訳なくて…m(_ _)m

370ピーチ:2012/12/22(土) 23:23:21 HOST:EM49-252-13-47.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

よ、よかった……!

嫌なのに無理して付き合ってくれてるんじゃないかと思った←

天音達なら永久に健在だよ! 天音はいつまでも女王だよっ!←おい

371彗斗:2012/12/23(日) 15:49:46 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

大丈夫! 私は一応余裕ですので☆

全く話が浮かばなくて……ちょっと前までは更新を控えていたんですがね……ピーチさんや心愛さんの小説を見て「無理矢理でも何でも良いから書こう!」とがむしゃらに全ての作品に手を付けている所ですw

良かったら見てみて下さいね☆

372心愛:2012/12/23(日) 20:36:42 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そんなわけないない!

…天音ちゃん最強女王伝説☆



>>彗斗さん

ならよかったです(・∀・)

なんか、全く手が着かなかった回を無理矢理にでも終わらせると、次からは意外とすらすら出てきたりしますもんね!



このコラボも一応山場は越えたので、そろそろ邪気眼少女やソラの波紋も再開できたらいいなーと思います!
ごめんねピーチ…やっぱりコラボ完結はもうちょい待ってー…!(^-^;

373ピーチ:2012/12/24(月) 14:04:39 HOST:nptka207.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

いーよここにゃんさえ迷惑じゃなければ!←

むしろありがとうー!

…あ、質問いーですかね?

374心愛:2012/12/24(月) 16:50:14 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――嵐、来襲――』






「とにかく。兄様に唆されてとはいえ勝手に侵入し、さらにソフィア嬢の身柄を狙ったのだから、野放しにしておくのも問題じゃな」



「でも可哀想ですよー……。天音ちゃんはどう思います?」



天音は「そうね」と考える素振りを見せる。
そして―――次の瞬間には、誰であろうとも思わず見惚れないではいられない程に温かく、麗しい微笑を湛えて言った。




「―――それなら、私が満足するまでひたすら殴る、ってことでどう?」




「「ではそれで」」



「うおおおおいっ!? 落ち着け落ち着いて考えろ! この女絶対殺すまで殴るぞ!?」



揃って即答する真顔のクロードと笑顔のシュオン。

ヒースが二人を、柊一が天音をとそれぞれ必死に説得を開始する中、地面に転がる侯爵がもぞもぞと動いた。



「私、は……何を……? 《紫水晶》は……?」



「あ? 寝ぼけてンじゃねェよオッサン。早いとこ出てきな、じゃねェと面倒だしオレ様が殺っちまうよ?」



「ひいっ」



「ジル、台詞が完全に悪役なんだけど」



真っ青になり尻餅をついて後ずさる侯爵に剣先を突きつけ、ちらりと冷たく見下ろすジル。



「ンなの元からだろ。オレ様もお前も」



「……そうだったわね」



ユーリエがくすりと笑む。



「此処にいると、自分がしてきたことをつい忘れそうになるわ」



「……同感」



ハッと笑い声を漏らして肩を竦め、ジルが侯爵から刃を退いた。



「くっ……またしても……! こんな野蛮な者たちに負けるなん―――」




「お父様っ」




「あなた!」




『………はい?』



侯爵を遮る、新たな二つの声に全員が振り返る。


ザッと音を立てて地を踏み締めたのは、ランプの明かりで足元を照らした二人の女。
赤とも茶とも取れる豊かな巻き毛を背中に垂らした彼女らは眉を釣り上げ、侯爵を見つけるやぱたぱたと駆け寄って。



「お、お前たち、どうして此処に」



「それはこっちの台詞です!」



「誰だあれ」



「さぁ……。あの人の家族、じゃないかな」



昇の呟きに、柊一が首を傾げる。



「お父様こそ何をしているのですかっ」


「王太子様があなたの居場所を教えて下さって、馬車で慌てて駆けつけたの。すぐに見つかって良かったけれど……。まさか、本当にこんな馬鹿なことを……」



どうやら二人は、侯爵の妻子であるようだった。

娘の方と思しき若い女性が、「でも……」と苦笑する。



「こんなことになったのも、元はと言えば私たちの所為だものね……。お父様、私たちが悪かったわ」



「もう心配はいらない。帰りましょう、私たちの家へ」



「お前たち……っ」



侯爵の目にじんわりと涙が浮かぶ。


長らく別れていた家族の再会。
それは一つの感動のシーンのようにも思えたが、


侯爵へとそっと手を差し伸べようとした母娘の瞳が、不意に『彼』を映し出した、その途端―――




「「きゃあああああシュオン様―――――っっ!」」



「こんにちは、親愛なるレディたち」



すかさずソフィアにヒースの後ろへ隠れるよう囁いて、完璧外面を装着したシュオンがにっこり微笑む。
暗い闇の中でさえも、彼の美貌は健在だ。
キラキラ輝く粒子を身に纏い、



「まさかこんな所でお会いできるだなんて……。お二人とも、相変わらずお美しい。今日の僕は神に愛されているようですね」



「金髪君、頭でも打ったの?」



「ええと……シュオンは基本、他人には猫を被ってるから……」



「シュオン様は真性の女タラシなんですよー」



「はぁ」



呆れ顔の天音に、ソフィアとシェーラが小声で解説する。

そして、



「ぅぅ、く……っ」



「…………うん…………」



しくしくと膝を抱えていじける侯爵の肩を、ヒースが慰めるようにぽんぽんと叩いた。

375心愛:2012/12/24(月) 16:59:40 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp
>>ピーチ

じゃあそろそろ並行し始めようかなーw


…まさかの侯爵妻子登場です。
ほら、ここあって悪役も最後までちゃんと扱うからね!異形もね!

…ちょっと前に思いついただけだけどね!


質問どーぞ( ´∀`)

376名無しさん:2012/12/24(月) 20:30:26 HOST:EM114-51-208-89.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの侯爵の妻子登場w

優しすぎるもんねここにゃん!

何気天音の言葉がうけたw

多分三学期に入ってから授業で物語を書いたりするのがあると思うんだけど、このコラボ使ったらだめだよね……?

377心愛:2012/12/25(火) 09:10:50 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女王天音ちゃん復活?←



授業で物語…!?
なんて素敵な学校だ!

や、ここあは全然構わないよ?
構わないんだけど…先生とか同級生が話分かんなくてもいいの?
せっかくピーチの才能が色んな人の目に触れるチャンスなんだから、どうせだったら一本書き下ろしたら…?
それにうちのあんなアホたちが我が物顔で登場したら引かれるんじゃ(;゜ロ゜)


…そりゃあ嬉しいけどさ! 嬉しいけどさっ!

378心愛:2012/12/25(火) 17:51:54 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――嵐、来襲――』





「ルイーズ様。いつものこととはいえ、仮にも一国の王女がふらふらと外を出歩いているなどと部外者に情報が行くのは避けるべきです。此処は身を隠しましょう」



「そなたの言い方には少々引っかかるが、承知した」



クロードに誘導され、ルイーズが森のさらに奥の方へと消え去る。



「ああんシュオン様、お名残惜しいですわっ」



「それは僕も同じです……が」



くっついてくる二人をやんわり押しのけ、シュオンは申し訳なさそうに微笑んだ。



「今の僕は婚約者がいる身ですので」



ヒースの背後のソフィアがびくっとする。



「……そうでしたね……」



二人はしょぼんと目に見えて落ち込み、肩を落とした。



「ごめんなさい。つい調子に乗ってしまいましたわ」



「ですから」



にっこり笑い―――シュオンは柔らかな視線で彼らを指し示した。




「どうせ触れるなら。あちらの二人なんて、如何です?」




「「は?」」



我関せずを決め込んでいた昇と柊一がその顔を上げる。

二人ともすらりと背が高く、さらに方向性は違うにせよ東洋風の魅力を持つ文句なしの美形である。



女性方は彼らを見た途端にぱああっと目を輝かせ、



「「きゃーっステキー!」」



「えぇっ!?」



流石に抱きつきまではしないものの、彼らに密着しては「何処から来たのか」「今いくつか」などと質問責めにする二人。


それを見て、



「………しくしくしく」



侯爵がさらにだばだばと滝のような涙を流し、



「……………」



「あ、天音っ? これはその、違うってっ」



慌てて弁解する柊一にも耳を貸さず、天音は磨きが掛かった「つーん」をかましてそっぽを向き続ける。



やがてたっぷり堪能した後、二人は「ふぅ」といかにもしあわせそうな表情で身体を離して。



「私、とっても満足しました」



「それは良かった」



「全然良くねぇよこの金髪っ!?」



昇が笑顔を崩さないシュオンに噛みつく。


「えへっ?」とちょっと可愛らしくちろっと舌を出す娘。
続いて夫人がおっとりと頭を下げる。



「夫共々、非礼をお詫びしますわ」



「本当にな!」



「それではシュオン様、そちらのお二人もまた! ご機嫌ようー!」



「うう……」



ある意味逞しい親娘は「格好良かったわね!」「私はあの大人しそうな方がストライクで」「えぇーっ? 私は背が高い方の」などと興奮気味に雑談を交わしながら侯爵をずるずると引っ張って退場。



「すげえ……あの人たち、俺らのこと最後まで見なかった……」



半ば呆然として呟くヒースに、シュオンが面白がるように。



「ソルファール侯爵夫人とお嬢様は美形好きで有名だからね。当然と言えば当然じゃない?」



「「どういう意味だコラ」」



見向きもされなかった男二人が額にピシッと青筋を立てた。



「暗い中だったのじゃし、良く見えなかったのかもしれぬな。わたしはそなたらもなかなかの二枚目だと思うぞ」



「王女殿下……!」



茂みの中から出てきたルイーズが苦笑する。
ヒースが少し涙ぐんでいた。


そして、


「いつまでも遊んでないで帰るわよ」



「天音……い、今のは俺たちが悪いんじゃないよね? どうして怒って」



「どうして私が怒るの?」



「ごめんなさい」



「だからもっとプライド持てよお前!」



不思議そうに首を傾げる天音の瞳が冷たく凍っているのを瞬時に察した柊一が流れるように謝罪。

昇も青くなって顔を引き攣らせていた。



そこへ、さらに。



―――またも、新たな闖入者の声が響く。




「―――シュオン? そこにいるの?」




エインズワーズ家の面々が、皆一様に『げぇっ』という表情になった。

379ピーチ:2012/12/25(火) 23:23:58 HOST:EM1-114-215-92.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

天音女王復活伝説w←え

小学校の時にもやってるよー! 教科書めくってて見っけて一人で舞い上がってたよー!

…………柊一達まで餌になったか!

あれ、昇にもちゃんとした人は居るはずだけどw

次のコラボで出せたら出すね!

380心愛:2012/12/26(水) 15:33:14 HOST:proxyag103.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫、昇くんのことはちゃんと承知してるよ!

ただ、天音ちゃんを美人美人言っといて男二人の美形ぶりは書いてなかったなーって思ってちょっと強調してみただけですw

381名無しさん:2012/12/26(水) 21:18:52 HOST:EM114-51-172-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

よかった大丈夫か!←

うん、まぁ一応みんな美形キャラ頑張ったけどね!(おい

382心愛:2012/12/26(水) 23:16:51 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美形美形ー!
美形万歳!

…なんか美形ばっか書いてるからレイさんにとばっちりが行ったのかなーとか思うけど気にしない(´ー`)
美形って言い切れない自キャラはなかなか他にいな……あ、ジルがいたか((こら

383ピーチ:2012/12/27(木) 13:57:25 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

美形万歳ー!←

いや、あのね、ジルもレイさんも結構美キャラだと思うよ?

384心愛:2012/12/27(木) 19:16:17 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
奴らが聞いたら絶対喜ぶよ! 特にレイさんは号泣して喜ぶよ!

まあ容姿は並以上だろうけど突出してないから他キャラに埋もれちゃうんだよね…(^-^;

385心愛:2012/12/27(木) 21:08:28 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――災厄、来襲――』






「クロード殿! 姫君をすぐに目の届かない場所へ!」



シュオンが余裕を消し血相を変えて叫ぶ。



「む、今の声はレディ・アゼ」



「承知しました」



「なっ!? 何故ゆえっ! はーなーせー!」



おそらく状況は分からずとも主の身への危機を察知したのだろう、ひょいっと暴れるルイーズを軽々抱きかかえてクロードが再び姿を消す。



「そこの黒髪二人、そいつ連れて早く逃げろ!」



「は?」



「ユーリエ、シェーラちゃん、お嬢様もっ」



涼しげな夜風が吹き抜ける中、ダラダラと冷や汗を流すヒースとジル。



「ソフィア様、あっちに行きましょう!」



「ほ、本当に逃げきれるかしら……?」



「大丈夫、いざとなったら私が何とかするわ。……多分」



慌てて先導するシェーラに怯えるソフィア、そして何処から取り出したのか、鈍く光る包丁を不安げに眺めているユーリエもクロードの後に続く。



「……何の騒ぎだこれ」



「天音、何か嫌な予感がするんだけど……。言われた通り逃げた方が」



「嫌。何だか知らないけど、逃げるだなんて冗談じゃないもの」



「……これだからトラブル抱え込むんだよ……」



一人で何かやらかすよりは良いけどさ、と昇が呆れたように頭を振ったとき。




「―――もう、探したじゃない」




ソルファール兵を従えた貴婦人が姿を現した。


ゆるやかに波立つ淡い黄金色(オフ・ゴールド)の髪に穏やかな新緑色の瞳。
シュオンに瓜二つの甘い美貌は少女のように若々しい。

エインズワーズ公爵夫人アゼリア。



「は、母上……? そちらの人は……?」



「貴方を探している途中で知らない人たちが大勢倒れているのを見つけたから起こして話を聞いたのよ。この人はお願いしたら護衛に付いてくれたのだけど……。災難だったわね」



「今の方が断然災難ですけどね」



「あら、何か言ったかしら?」



「いいえ、何も」



一見にこやかな笑顔の応酬。
ただし、鉄壁であるはずの息子の方は微妙に強張っているような。



「それで? ランディから今日はお客様―――ルイーズ姫がいらっしゃると聞いていたのだけど」



もしかしなくても、ルイーズ目当てにこんなところまでやって来たらしい。



「残念ですが、母上。プリンセス・ルイーズなら既にお帰りになられました」



「……そうなの?」



シュオンの嘘に、アゼリアは不思議そうにぱちぱちと瞬き。



「ソフィアとシェーラとユーリエは? 一緒ではないの?」



「ソフィアたちは先に屋敷へ戻りましたよ。途中で会いませんでしたか?」



さらりと嘘を重ねるシュオン。
三人挙がった名前を「ソフィアたち」で片付けてしまうところは流石と言うべきか。


アゼリアは信じたのか信じていないのか、「ふぅん……」と指先を尖らせた唇に当て面白くなさそうに辺りをぐるりと見回し、




「……まぁ」




「やっぱこうなるか……!」とヒースが頭を抱え、「お、オレあっちの方散歩してくるわ!」とユーリエらがいる方向へジルが駆け込む。
シュオンの微笑に、ピシッ、と最早取り繕えない亀裂が入った。



アゼリアは頬に手を当て、これ以上ないという程にその表情をぱああああっと輝かせる。



「まぁまぁまぁっ! そこの貴女」



「……私?」



眉をひそめ、柊一と昇を伺う天音。



「あぁなんて可愛らしいのかしら……! この年になってこんなに美しい子と巡り逢うことができるだなんて、わたくしの人生もまだまだ捨てたものではないわね。そのオリエンタルなドレスもとっても似合っていてよ!」



「母上。彼女は客人ですから……あと下手に手を出したりしたら後で聞いたソフィアが悲しみますし、まず彼女自身が黙っていませんのでほどほどに」



シュオンの忠告も何処吹く風よと聞き流し、アゼリアは天音に近づいて、キラキラッと熱を纏った煌めく瞳で背の高い彼女を見上げた。

386ピーチ:2012/12/27(木) 22:58:29 HOST:EM49-252-69-209.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

とうとうアゼリア様のご登場だーいっ!

………女性群のみならず男性群まで青くなるのが凄いよね←

387心愛:2012/12/28(金) 16:06:04 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>ピーチ

最強母上アゼリアさん登場ーw
ちょっと口調がリリスと似てる(;゜ロ゜)


あと二回で完結予定だよ!
良かった年内に終わりそう…(´ー`)

ラスボスはアゼリアかとか考えちゃいけない←

388ピーチ:2012/12/28(金) 17:36:26 HOST:EM1-115-30-179.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

最強最強w

あと二回か! じゃああたしは来年から始めようかなー

ラスボスNOだよここにゃん!

389彗斗:2012/12/28(金) 23:47:13 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
アゼリア様のご登場w(←これはラスボス登場の場面と似た所を感じるのは私だけ?ww)

一体どれだけ他人を怖がらせたら気が済むのやら……(シュオン様が逃げだすジルを道連れにした所が一番ウケたww)

390心愛:2012/12/29(土) 15:48:23 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――貴婦人は微笑む――』





天音の全身を舐め回すように熱っぽく見つめ、ほうっと吐息を零すアゼリア。



「何て綺麗な髪……! 触ってみても良いかしら」



「は?」と一瞬唖然とした彼女の返事も待たずに手を伸ばし、アゼリアは心底恍惚(うっとり)とした表情で髪をさらりと一束掬い取る。



「あぁ、手触りまで最高なのね。ずっとこうしていたいくらい」



目の前の理解不能な生き物に、天音がどう対処すべきか迷っている間に。



「肌も黒に良く映える眩しい白……。堪らないわ。ねぇ貴女、今夜はわたくしととっても楽しいことをして遊ばない? 大丈夫、乱暴なことはしないから」



「はーはーうーえ! ですからそういう不埒な―――」



つつつつつ。


指先で首筋をなぞられ、ぞわっ、と全身に鳥肌が立つ。


天音の頭の中に、正当防衛、というシンプルな単語が浮かぶ。


この際殴り飛ばしても誰にも咎めることはできないのではなかろうか。
きつい言葉を浴びせたり怪我しない程度に振り払ったりしても、このタイプの変人には通用しない。そう天音の本能が告げていた。

やむを得ない。

混乱が過ぎ去り、理路整然とした思考の末に一つの結論を出し、天音が拳を握りかけたとき。




「あの」




苦笑する柊一が、遠慮がちに声を発した。



「……天音が困ってるので」



空気が凍る。


シュオンとヒースが信じられないものを見たときのように目を見張った。


まさか、果敢にも―――柊一は完全に自然体だが―――このアゼリアに対抗しようとする者がいるとは。



「……別に、困ってないわよ」



不満げに響いた声は天音のもの。

むっとしたように柊一を睨む。



「……ふふ」



するり、と指先が離れた。


微笑むアゼリアが天音から距離を取る。



「素敵な騎士(ナイト)様ね」



くすくす笑って柊一を伺い見た後、



「残念だけど……この続きはまた今度」



「その『今度』が二度と訪れないことを祈ります」



「つれないのね。そこも可愛い」



冷ややかな目つきの天音に、性懲りもなくにこにこする。



「母上、冷えた風は身体に障ります。そろそろ中へ」



「はぁい。シュオンったらすっかり口五月蝿くなっちゃって」



ぷんっ、と息子に膨れてみせたアゼリアはそのまま放置していた兵士に向き直り。



「ああ、貴方、申し訳ないのだけどわたくしを屋敷まで送って行って下さる? そうしたら他の皆と一緒に帰ると良いわ」



「は、はい」



「『お願い』なんて嘘だろ絶対強制しただろ……」



ぼそぼそ呟くヒース。



「貴女、お名前は?」



「……天音です」



「天音さんね、可愛い響き!」



明らかに引いている天音もものとせず、



「またお逢いしましょう!」



ドレスの裾を翻し、災厄の具現化とも言える貴婦人は優雅な微笑を残して歩き去った。



「すげぇ、あの人俺らのこと最後まで見なかった……」



何処かで聞いたことがあるような台詞と共に、昇。



「母上は無類の女性好きだから……。嫌な思いをさせてごめんね」



「金髪君に謝られると気持ちが悪いんだけど……」



天音相手に素で謝るシュオンが、次に瞳に微かな尊敬の色を滲ませて柊一を見る。



「柊一さん、だよね。また母上絡みで何かあったら是非よろしく。君しか頼れる人がいないんだ」



「え? 何で俺?」



「やっぱり自覚なしかよ!」



俺でも何となく分かったぞ、と昇が呆れたように。



続いて「良いんじゃねえの?」とヒースが笑った。



「何しろあのお前が『はーはーうーえ!』だもんなー、此処はそっちの黒髪に頼るしかねえだろ。……ははっ、すっかり可愛げも何もなくなっちまったと思ってたけど、珍しいもん見させてもらっ」



「あはは、この僕を困らせることができるのはソフィアと母上だけだからね」



「まっ待て超楽しそうに笑いながら爆弾取り出すんじゃねえマッドサイエンティストかお前は!?」



「そうだけど?」



「そうだったぁー!」



突如として始まった、あまりに不毛な追いかけっこ。

天音が「……帰っていい?」と小さく呟いた。

391心愛:2012/12/29(土) 15:59:31 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

最強最強ーw

ここあの中での隠れ最強天然男・柊一くんに撃退していただきました!
ひねくれ者のシュオンが認めるってことは物凄いことだよ(o^_^o)



>>彗斗さん

ラスボスですね!

あ、ジルはすでに逃亡しております。シュオンはアゼリアに「やばっ」と引き攣っただけです、分かりにくくてすみません!



残り一回、ピーチや、これからに繋げつつ綺麗にしめられるように頑張りますっ( ´∀`)

392ピーチ:2012/12/29(土) 16:15:30 HOST:EM49-252-63-97.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

最強ーw

…うん、まぁ柊一も色々凄いからね。ある意味←

あのシュオン様が認める母上も凄いw

頑張れ! 何とか頑張って繋げられそうなところ繋げるから!

393彗斗:2012/12/30(日) 11:28:40 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

おぉ……柊一君強っ……アゼリア様をこんなにも簡単にw

シュオン様が認める位だから、相当な物なんだろうねw(色んな意味で)

それと……思いっきり話が変わりますが、正月が近づいているって事である事を企画している最中なのです☆

一月一日深夜12時丁度に更新を予定してますのでお楽しみに☆

394心愛:2012/12/30(日) 11:38:17 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――さよならは言わない――』





「ふー。やっと行ったか?」


「あ、生きてたんだ。ドヘタレ害虫」


「はァ!? 何その言い草!」



木の陰から続々と出てくる彼ら彼女ら。

その中で、ソフィアがそっと申し出た。



「あの……もう、帰ってしまうの?」



「えぇ」



「も、もしかして奥様に何かされちゃったからですか!?」



「……それは関係ないわよ……」



涙目ですがりつくシェーラをさり気なく遠ざけながら、天音が苦笑した。



「また遊びに来てよ。君たちがいると、ソフィアが喜ぶんだ」



「ふふ。次までに、三人専用のカップを用意しておこうかしら」



「おー、さっすがユーリエさん! グッドアイディアです!」



仕方ない、とでも言うように天音は肩を竦め、



「……何かあったらね」



「はい!」



彼女の返事に、黙って聞いていたソフィアも安心したように微笑んだ。



「王宮に来てもよいぞ! 国を挙げて歓迎しよう」



「ルイーズ様、それは激しく有難迷惑と云うものなのでは」



「なんじゃとー!?」



むきゃー! と暴れる王女を諫めながら、クロードが三人を流し見て。



「達者で」



「どうも」



柊一が穏やかに笑みを返す。

続いて、昇が笑って手を振った。




「ヒースもまたな!」




「だっから黒髪言うな! 俺はヒース=ユー……………………………………え?」



ピシッ、と硬直するヒース。



「お湯でも掛けたら解凍できそうだね」



「……あ、悪い。俺としたことが間違えた。じゃーなー、黒髪ー」



氷漬けにされたようにカチコチに固まっているヒースをよそに、三人は歩を進め。




「―――また」




轟音、吹き荒ぶ突風。


巻き起こる黒い渦の中、振り返って薄く微笑んだ天音の唇が確かにそう動いた―――ような、気がした。


やがて三人の姿がその中へと完全に溶け込み、そして―――




「……行っちゃったか」



ふっと息をつく間もなく。



「こうしてはいられません!」



メイドの少女が元気に声を弾ませた。



「天音ちゃんのイメージに合うドレスを作らなきゃ! あーもう柊一さんに好みを聞いておくんだったー!」



一人無駄な使命感に燃えるシェーラの火の粉は、他の誰かにまで飛んでくる。



「ユーリエさん、天音ちゃんの代わりにモデルお願いします! 体型近いから絶対いける!」



「え」



続いてルイーズが、んー、と伸びをして。



「わたしたちも帰るか。早速料理長にもっと美味いダイフクを開発させて、今度あやつらに振る舞えるように!」



「畏まりました。料理長に『すぐに逃げろ』と連絡を入れておきます」



「何を言うか! クロード、そなたもわたしと一緒に味見役を務めるのじゃぞ。たまにはそなたも息抜きをするべきじゃ」



「……それが、ルイーズ様のご意志でしたら」



ルイーズの我儘に、クロードが表情を和らげた。



「あの人たちに関わるとトラブルがつきないけどね。たとえ魑魅魍魎が攻めてきてもこの星が粉々に爆発しようとも、僕はソフィアだけを守るし愛し続けるよ」



「しゅ、シュオン……! 恥ずかしいから……っ」



「この星爆発しても生きてるつもりなのかよこいつら」



ジルがじとーっとした目で呆れたように言う。



「まぁ、日常も良いけどたまには刺激も必要ってことで。毒薬みたいにね」



「お前の求める刺激はヤバすぎンだよ!」



「ちょっとヒースー? 起ーきーろー!」



シェーラに揺さぶられ、はっとようやくヒースが我に返った。



「……ま……間違ってねえし全然間違ってねえし!」



わなわなと震え、



「あの野郎、言いたいだけ言って帰りやがって……! 次逢ったら覚えてやがれぇ……っ」



頬を凶悪にひくつかせて天を見上げる。




「ふざっけんな、俺の名前はヒースだっての―――――――ッッ!!」




「ヒース五月蝿い」



何処までも哀れな従僕の叫びが、森の奥に木霊した。

395心愛:2012/12/30(日) 12:23:44 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp
>>ピーチ

繋げちゃってくださーいっw
あ、でも無理に詰め込まなくていいからね!


>>彗斗さん

最強対最強?(笑)
いいですねー、イベントのときに更新するのはここあの夢だったり←
でもどうにも忙しくて一度も叶ったことがないという(^-^;



おめでとうヒース! やっぱりオチはお前のものだ!


次っていうかこの関係がずっとずっと続いていくことを願いまして。
…というわけで、
大変お待たせしましたありがとうございました楽しかったです!


ここあ編完結をここに宣言いたしますっ(つд`)

396ピーチ:2012/12/30(日) 16:07:51 HOST:EM114-51-157-47.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

繋げちゃいまーすっw

ナイスここにゃん! 天音のドレスはあたしも考えてたっ!

…ドレスのデザイン、どんなのがいい?←

397心愛:2012/12/30(日) 18:06:37 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……どんな感じがいい?(逆に


雰囲気変えずクールなブラック系で攻めるのもいいけど面白みがないよね…。
イメージ壊さない程度の意外性があった方がいいかなぁ。


作者様のリクエストがあればここあが適当に描写を量産してお手伝いしますよっ(〃▽〃)
わくわく←

398ピーチ:2012/12/30(日) 18:22:37 HOST:EM114-51-44-25.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

聞かれたっ!

うーん……黒と真逆の白とか?

天音的にあんまりふわふわしてない大人しめのドレスみたいな?

わ、我儘だけどできる?

399彗斗:2012/12/30(日) 23:41:43 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

完結おめでとうございます☆

オチはヒースで締めちゃったのねww やっぱりヒースの物かなぁ……オチの類は全部w

ピーチさん>>

心愛さんの続き、頑張って下さいね☆ 続きの更新も楽しみに待っていますので!

さてさて、これからどうなるか色んな楽しみがあるねww(ヒースのオチとか昇君と柊一君の扱いとかw)

その他にも、お正月の特別書き下ろしストーリーもお楽しみに☆(因みに人数を絞ってますので大体五話ほどストーリーがあります)

400ピーチ:2012/12/31(月) 15:20:15 HOST:EM114-51-4-198.pool.e-mobile.ne.jp
慧斗さん>>

とりあえず駄文ぶちまけてみる←

駄文なので目隠しもしくは目薬のご用意を!

ここにゃん>>

めっちゃ遅れたけど完結おねでとー!!

401心愛:2013/01/01(火) 10:47:34 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp

あけましておめでとうございます!
今年もよろしくです(〃▽〃)



>>ピーチ

……オーケイ、白ね白!

マーメイドスタイルでいこうか。
髪はそのまま流してもいいけど、結い上げてアップにしてもいいよね!

裾が床まで届く長いドレスの生地は眩しい純白のシルクサテン。
人魚(マーメイド)の名が示す通り、身につける者のスタイルを十二分に生かす何処か大人びたデザインだ。
銀糸や真珠で繊細な装飾を施してあり、所々に襞(ドレープ)、胸元には透けるシフォンレースを重ねている。

初々しくて清楚な雰囲気を……

……はい気持ち悪いね!(笑)
まあ適当に必要なとこだけ拾ってくださいなw
必要あればもっと書くけど(ぇ




>>彗斗さん

ヒースは使いやすいので!
荒々しいツッコミ締め(そんな名詞はない)ならこいつにお任せあれーw

402ピーチ:2013/01/01(火) 14:12:40 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
明けましておめでとうございます!

今年もどうぞよろしくお願いいたします!

ここにゃん>>

あああありがとうー!!

よし、早速駄文ぶちまけてみる!←

403ピーチ:2013/01/01(火) 14:22:10 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




―――安らぎの唄を、今君に。




優しく紡がれた言霊はどこまでも響き、




冥(くら)い空を、照らす光となった。

404ピーチ:2013/01/01(火) 15:12:22 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「………?」
 ふっと、銀の髪を二つに束ねた少女が顔を上げた。
 その手にはそこそこに厚い本が載せられ、その約半分のところに、ソフィアが栞を挟む。
「今の声……」
 そう呟いて、窓の外を見る。
 そして、予想通りの顔ぶれが揃っていたことを認めたソフィアが、楽しそうに笑った。
「やっぱり―――天音さんたちだわ」
 そう言って、彼女は庭まで足を運んだ。




 突然の訪問者に、真紅の髪を持ったメイド―――ユーリエが困惑気味に対応していた。
「あ、天音ちゃん!?」
「あ……お久しぶりね、ユーリエさん」
「え? えぇ……っていやそうじゃなくて!」
 なぜ、彼女らが此処に居るのか。
 また、何かしらかの妖を追ってきた?
「違うわよ、今回は私的な用事」
「私的?」
 少女の言葉に、ユーリエが首を捻った。
「えぇ、この前の…………あの馬鹿男に取り憑いてた妖に関する、事後処理みたいなもの」
「はぁ………?」
「まぁ、一応事情は説明したから」
 天音の言葉を遮るように、彼女の傍に居た青年が笑った。
「悪い、すぐ済むからちょっと通してな」
 そう言って軽く跳躍し、昇がユーリエを超えていく。彼の纏っている着物の裾が、ふっと翻った。
 それに倣い、天音たちも苦笑気味に彼に続く。
「あ、ちょ………」
 行ってしまった。
 事後処理だからすぐに済むとは言っていた。だが。
「…ソフィアちゃんかシュオン様に、言った方がよかったのかしら……?」
 彼女は色々な事情からエインズワーズのメイドとして働いている。ある意味、ユーリエの今の主はシュオンやソフィアだ。
「天音さんたち、今来てたでしょう?」
 涼やかな声が、背後から聞こえた。




 静かな森に足を踏み込んだとき、ふと少女が辺りを見回した。
「…………?」
 空気があまりよくない。前の妖のせいもあるのだろうが、それだけではない。
「天音?」
「空気が悪い」
 天音の言葉に、柊一と昇、それから今回たまたま同行していた彼らの友人―――飛湘あおり(ひしょうあおり)がえ、と呟いた。
「あたし、初めて来たからよく分かんないけど……そんなに悪いの?」
「あぁ……かなり、な」
 あおりの言葉に言葉に昇が短く答える。
 そこに、幾つかの足音が聞こえてきた。
「え…………」
「あーっ! やっぱり天音ちゃんだったー!」
 そう叫んだ少女を見て、天音が瞠目した。
「シェーラちゃん……?」
「えへへ、お久しぶりですー」
 シェーラの言葉に、はっとしたように天音が答える。
「え、えぇ……久しぶり、ね」
 つい先ほどユーリエとは会ったが、そう言えばそれ以外の屋敷の人間とはまだ会ってなかったなと今更思う天音である。
 とそこに、ほぼ初対面のあおりが問うてきた。
「天音、この子誰? かわいーね」
「え? あ、この子は……」
 天音の言葉を遮るように、シェーラが大きな青灰色の瞳を輝かせて。
「かっわいーっ!」
「へ?」
 突然のことに思考がついていかないあおりに、シェーラがすかさず飛びかかった。
「…あの世でお元気に」
「こらこらこらぁっ!?」
 縁起でもないこと言うんじゃない! と憤るあおりに、天音が苦笑してみせる。
「気に入られちゃったわね。シェーラちゃんに」
 当のシェーラは、次にそう言った天音を見て言った。
「今日もお仕事ですか?」
「え? あー…仕事っていえば仕事かな……」
 それを聞いたシェーラが、キラキラと眩しいほどの笑顔で、言った。
「じゃあ、その前にこっち来てくださいよー!」
「―――は?」
 こっち、とはどっちだ一体。
 そんな天音の心の叫びも虚しく、メイドの少女にがっしりと腕を掴まれた天音が、そのままずるずると森の外に引っ張り出された。

405ピーチ:2013/01/01(火) 17:49:14 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「………シェーラちゃん?」
「はい?」
「……どういった経緯で、此処に来ることになったのかしら?」
 天音の問いに、シェーラがからりと笑う。
「やーだなー、だって今度天音ちゃんが来たら、ぜひとも着てほしいのがあったんですよー!」
「…………………」
 嫌な予感がする。とてつもなく嫌な予感がする。
「あ、三人ともちょーっと待っててくださーい」
 そう言って天音を部屋の一角に引っ張り込んだ。
「…着てほしいのって?」
「あー………」
「多分、『あれ』だよな……」
 二人して若干青くなる昇たちに、あおりが首を捻った。
 ―――数分が経過した頃。
「はーいっ! お待たせしましたーっ!」
「や、ちょ、シェーラちゃ…………!」
 シェーラが、絶対に出たがらない天音の背を押しながら言う。
「―――あま、ね………?」
 深藍の着物を纏っていたはずの天音が、対極とも言える純白のドレスを身に纏っていた。
「やっぱり似合うー! 人魚(マーメイド)をイメージしてみましたー!」
 裾が床まで届くほどの長いドレスの生地は天使を思わせるシルクサテン。
 人魚(マーメイド)の名が示す通り、身に着けた者の美しさを更に生かすどこか大人びたデザインになっている。
 繊細な装飾は銀糸や真珠で施してあり、しかし天音はどこか居心地の悪そうな表情をしている。
「…どうせ、似合わないんだから……」
 一人でぶつぶつ言っている天音を見て、柊一と昇は揃って言葉を失っていた。
「………何よ」
 彼女の頬に僅かに走った朱を隠すためか、ふいとあらぬ方を見やる天音。当然、そんなことに気付くはずもない柊一が、ふわりと笑った。
「似合うと思うよ」
 彼の言葉を受け、天音が目を瞠る。続いて、昇とあおりが言った。
「確かにな」
「似合ってるよー」
「……うるさい」
 口先だけのお世辞ならいらないのに、と呟く天音に、シェーラが言った。
「口先だけなんかじゃありませんよっ! 似合ってますよ!」
「…ありがと……」
 にこにこと笑っている少女の気を暗くさせるわけにはいかないだろう。それは、いくら何でも可哀そうだ。
「あ、そうだっ! 柊一さん、こーいうの好きですか?」
「え?」
 突然話を振られた柊一が、驚いてシェーラを見る。そして、彼女の言葉の意味を悟って。
「あー……いや、それは…」
 言い澱む柊一に、シェーラがきょとんと首を捻った。一方の柊一は、天音の視線の威圧を受けて言葉が出ない。
「ま、まぁとりあえず、ね……」
 苦笑する柊一の視線を追い、やっとのことで彼の真意を図ったシェーラが、小さく苦笑した。
「すいません、ちょっと場が悪かったみたいですね」
「あら、どういう意味かしら?」
 さすがに気分を害したような声音の天音の耳に、またしても聞き慣れた声が聞こえてきた。

406心愛:2013/01/02(水) 17:27:07 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp
>>ピーチ

皆さん再びようこそ!


そして天音ちゃん可愛いよ天音ちゃん(=°ω°=)
初々しいカップルだなうらやましいぞちくしょう!

407ピーチ:2013/01/02(水) 17:41:06 HOST:EM114-51-35-42.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

またまたお邪魔しちゃいました!w

初々しいというかいつもの調子のままというかw

昇の想い人登場だーいっ!←

408心愛:2013/01/02(水) 22:22:54 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ようこそあおりちゃん!

ひらがなの名前っていいよね!
…昇くんとのラブイベント期待(こら

409ピーチ:2013/01/02(水) 23:34:52 HOST:EM114-51-61-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お邪魔してます初めまして飛湘あおりですっ!

いや、何か天音とか昇とか天神さんとかと違って何の力もないんですよあたし

でもまぁ、前に少しだけ発揮してることもあったかも………?

410心愛:2013/01/03(木) 10:25:40 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あおりちゃんいい子そうだよね!
シェーラが気に入っちゃったのも頷ける!

あ、シェーラは基本いくら可愛くても中身がアレだったら懐かないので。動物みたいな嗅覚で瞬時に察知してるので。


力使うときに瞳の色が変わるんだよね(・∀・)?

411ピーチ:2013/01/03(木) 10:39:41 HOST:EM114-51-25-253.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

イエス!←おい

シェーラちゃんまさかの動物並み!?

………うん、鈴扇霊キャラの中で柊一と同様に素直で優しい子だよ。天然はないけどねっ!

412ピーチ:2013/01/03(木) 11:02:57 HOST:EM114-51-25-253.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「やっぱり君たちだったんだね、ユーリエから話を聞いて、まさかと思ったけど」




「……お久しぶりね、ソフィアちゃん、金髪君」
 渋い顔をしたシュオンに見向きもせず、天音が続けた。
「それから黒髪君に茶髪君」
「だっから俺は―――」
 言いかけたヒースが、天音の服装を見てぽかんと口を開ける。彼の視線を追った天音が、何とも居心地悪そうに呟いた。
「―――変態」
「いや何でだよ!?」
 思わず怒鳴ったヒースに、昇がぽんと肩を叩いて言う。
「諦めろ、黒髪」
「うるせぇ! 黒髪に黒髪言われる覚えはねぇよ!」
「あ? 誰が黒髪だって? 黒髪如きが黒髪言うなっ!」
「馬鹿言うな絶対お前らの方が黒髪だ!」
 顔をしかめた天音が、しかし次に笑顔で、とんでもないことを始めた。
「ねぇ、昇?」
「なん…………ですか天音さん」
 瞬時に伸ばした爪を、振り向いた昇の首に素早くあてがる。
「次うるさくなったら、どうなるか分かってるわよねぇ?」
「はい俺が悪うございましたもう二度とうるさく致しません」
 半ば青ざめる昇に、天音が「分かればいいのよ」と呟きながら。
「……黒髪、もう黙ってろ。死にたくなけりゃ黙ってろ」
「だから黒髪言う………分かった。黙っとく」
 天音の恐ろしいまでの視線を受け、昇のみならずヒースまで青くなる。
 それまでの成り行きを見ていたジルが、苦笑しながら言った。
「ま、まァ落ち着けお嬢ちゃん。いっくら何でもマジじゃねェよな?」
「あら、脅しのためだけにこんな面倒なことすると思う?」
「マジかよッ!?」
 笑顔の天音を見て、柊一があらぬ方を見ていた。不審に思ったソフィアが、彼に声をかける。
「……柊一さん?」
「あー…無表情も十分すぎるくらい怖いんだけどねぇ……」
 苦笑しながら、柊一が呟いた。
「…………笑顔の天音も、それに引けを取らないくらい怖いんだ」
「………………………なるほど」
 先ほどからずっと笑顔の天音を、柊一がさっと視線から外す。
 ソフィアも、意味が分かって苦笑していた。

413ピーチ:2013/01/03(木) 11:21:30 HOST:EM114-51-137-117.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「……ねぇ天音」
「何?」
 あおりの呼びかけに笑顔で応じる天音。この笑顔が偽物でないと分かっているあおりは。
「昇とあの黒髪の子って、どっか似てるよね」
「だっから黒髪言うなっ! 俺にはヒース=ユーゼルっつう名前があるって何回言えば……っ!」
 ヒースの言葉に、あおりが一瞬きょとんとし、そしてふわっと笑った。
「そっか。ごめんね、ヒースくん」
「―――…………へ?」
 今、この少女は何と言った。素直に名前で呼ばなかったか。
「…今、なんつった?」
「え? ヒースくんって言ったけど?」
「初めてまともに呼ばれた……っ」
 素直に感動するヒースに、あおりが首を捻る。
「どうしたの?」
「さぁ? 普段私たちが黒髪君としか呼ばないからじゃない?」
「それ酷くない? さすがに」
「いいのよ、黒髪君だもの」
「どういう意味だよっ!?」
 平然と言ってのける天音に、ヒースが激しく突っかかった。
「って、天神さんは? 黒髪って呼んでたの?」
「いや柊は……」
 ……………………。
「何て呼んでたっけ?」
 柊一が彼らを呼ぶことの方が少なかったから、今思えばよく分からない。
「いや、名前で呼ぶことはなかったけど、憶えてはいるよ?」
 思わずと言ったように苦笑した柊一に、天音と昇が目を見開いた。
「すげー! え、男の方も覚えてんの?」
「まぁ無理ないわね。私は基本、どうでもいいことは憶えないから……」
「オレらはどうでもいいのかよッ!?」
 天音の言葉に、ヒースより早くジルが突っ込んだ。
 柊一が苦笑する。
「とりあえず、さ…俺たち、仕事で来てるんだけど……」
「え?」
 ソフィアが驚いたように目を丸くする。
「えぇ。だからこの服も、できれば早く着替え…………」
 言い差して、ふっと天音が黙り込む。そして、シュオンやヒース、ジルを見やり。
「………人生最大の屈辱、ね」
 小さく呟いた言葉が聞こえたせいか、柊一たちが苦く笑う。
「あーまーねー」
「いくら何でもそれは……」
 その傍で、未だに意味が理解できていないあおりが首を捻っていた。

414心愛:2013/01/04(金) 18:11:39 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃん可愛いよ天音ちゃんー!

あおりちゃんがいい子すぎるw ヒースよかったね!
柊一くんのこっちメンバーの呼び方はここあもスルーしてたよすみません(・∀・)


シュオンはどうでもいい人には外面笑顔の応対だから、渋い顔するってことは身内に認めたんだね(´ー`)!

415ピーチ:2013/01/04(金) 20:30:45 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あっりがとー!

あおりは人の名前で遊べないタイプw
柊一の呼び名は適当に決めちゃっていーですかね?

あ、あれ? そうだったのシュオン様ごめんなさいっ!

あ、それと今書いてる短編の闇色ってやつ読んでみてくれないかなー←

416心愛:2013/01/04(金) 21:27:19 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやなんでもピーチのお好きなとおり!


いや、シュオンは天音ちゃんたちのこと(ソフィアが喜ぶからという理由も含めつつ)ちゃんと認めてるからね!?
ちなみに本編で、シェーラ相手に猫被ってたときの態度から、普通に接するようになる過程とか、結構苦労してちょっとずつ変えてたんだw
気づいてなくてもそれをサラッと書けてるピーチすごいよ!

417心愛:2013/01/04(金) 21:29:26 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやなんでもピーチのお好きなとおり!


いや、シュオンは天音ちゃんたちのこと(ソフィアが喜ぶからという理由も含めつつ)ちゃんと認めてるからね!?
ちなみに本編で、シェーラ相手に猫被ってたときの態度から、普通に接するようになる過程とか、結構苦労してちょっとずつ変えてたんだw
気づいてなくてもそれをサラッと書けてるピーチすごいよ!


あ、短編かー(~_~;)
全部は読めないかもだけど、ひとつの話のまとまりくらいにならちょっとお邪魔しようかしらw
なんかこれ読めよ!っていう話があったらお願い(〃▽〃)

418ピーチ:2013/01/04(金) 22:53:10 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いーのあたしの好き勝手でいーの!?

あ、よかった安心w

……ごめんなさい全く気付いてませんでした。

あ、短編はできれば「櫻の相談所」って題名のやつ読んでくれたらとってもありがたい!

…ほんとに、無理に読まなくていいからね!?

419ピーチ:2013/01/04(金) 23:23:13 HOST:EM49-252-44-128.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




 静かな森に再び足を踏み入れ、天音がすっと目を細める。
 闇を秘めたその髪は彼女の歩幅に合わせて小刻みに揺れ。
「……やっぱ、完全には浄化されてないか」
 深藍の着物の裾をはためかせた天音が、小さく息を吐いた。
「………また、何か出てこなきゃいいけど…」
 刹那。
「下がれっ!」
 唐突に叫んだ昇が、ざっと数メートル後方に飛び退った。
 同時に突風が吹き荒れる。
「―――っ!」
「ちょ…何これ、何でいきなりっ!?」
「知らないわよ」
 あおりの言葉にぴしゃりと返し、天音が正面を見据えた。
「…………………誰?」
 人ならざるものだと言うことくらい、もうソフィアたちにも十二分に分かる。
 それを肯定するように、天音の背後に白い何かが伸びてきた。
「――――――っ……!?」
「天音さん!?」
 伸びてきたそれは、白い糸だった。その更に後方に、巨大な蜘蛛の姿が認められる。その蜘蛛の糸が、彼女の手足の自由を完全に封じる。
「な…………っ」
 ―――極上ノ獲物、我ガ物ト
 醜く嗤ったそれは、その糸を天音の首に巻き付ける。
「…………………あ……っ…!?」
「あま…」
「どけ、柊一」
 怒気を孕んだ昇の声が聞こえ、直後に淡い月光をそのまま映し出した大鎌を構え。
「天音を離せ」
 まさに無としか言いようのない表情でそれだけを厳かに告げる。そして。
「あ……」
 勢いよく跳躍し、鎌を大きく振り上げて彼女に巻き付いた糸を無造作に薙ぎ払った。
 しかし、糸は細い割に中々強度があるようで、簡単には切れない。
「くそ………っ」
 力任せに引き裂き、切れた瞬間に重力に逆らえない天音が勢いに乗って倒れる。
 しばらくむせ込んだ天音に、慌てた柊一が駆け寄った。
「大丈夫?」
「何とかね。………私自身は」
 最後に小さく呟かれた言葉に、あおりが首を捻る。どういう意味だ。
「……まずいかもなぁ…」
 苦笑気味に、天音が笑った。そして。
「―――これだけ、霊力吸い上げられたらね……」

420匿名希望:2013/01/05(土) 01:00:45 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
面白い小説ですね。
さて・・ウンコでもするか

421匿名希望:2013/01/05(土) 01:12:47 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
>>1
ピーチさん?女性ですか?
ドクター・ゲロさんが貴方の事好いてるそうです。
一度お付き合いしてみてはいかがでしょうか?

ドクター・ゲロこと20号といいます。
非常に格好いいです。

422匿名希望:2013/01/05(土) 01:34:35 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
>>1さん

20号が貴方の乳首を吸い取りたいと申しております。
これがいわゆる吸収というやつです。

423匿名希望:2013/01/05(土) 01:40:31 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
近々ドクターゲロというジジイのアソコが
貴方のハンバーガー(パイ)を貫く予定で御座います。

パイズリ期待しております。

424匿名希望:2013/01/05(土) 01:41:10 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
私は人の気持ちを理解できる人間であります。

425匿名希望:2013/01/05(土) 10:47:45 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
面白いですね

426匿名希望:2013/01/05(土) 11:02:02 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
ドクター・ゲロが貴方にホレています。
ピーチさん

427匿名希望:2013/01/05(土) 12:13:43 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
「「「

428ムツ:2013/01/05(土) 14:53:51 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 ピーチ&心愛さん》

 どうもぉー! コラボって聞いて読んでみましたぁ〜!

 どんな風なのかなって思って読んだら、両方それぞれの話しを読み込んでて凄いなぁと思いましたぁ〜…

 ハッキリ言ってお二人を尊敬しますね(*^^)v!

 これからも投稿をお待ちしてマース!!

429心愛:2013/01/05(土) 17:39:07 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

昇くんかっけえ(´ー`)


短編、もうちょい後からでもいいかな?
どうせならじっくり読ませてもらいたいので!

テスト前一週間きってるのにまず冬休みの課題がぱっぱらぱーなので(つд`)

あ、今すぐじゃないとってときは言ってね!



>>ムツさん

はじめまして!
そうなんですよー、ピーチはよく読み込んでくれた上にキャラを最大限に生かしてくれちゃうのでもう感謝感謝です(o^_^o)
ここあのお目汚しターンは終了しましたので、ピーチの美麗見事な神文章をどうぞお楽しみにヽ(≧▽≦)/

430ムツ:2013/01/05(土) 17:57:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 心愛さん》

 ピーチの神様文には頭も上がらないですよねぇ〜…(イヤハヤ…

 何より、自分の話と他の方の話ををくっ付ける部分が上手い(^-^*)!

 それぞれのキャラの品立てとか上手いとしか言いようがないですよねぇ〜

 ヤッパリあの神的才能憧れます(#^.^#)!

 そして、心愛さんの文を読み易くしてる、あのお心遣いにも一目置きます(´∀`*)!

431ピーチ:2013/01/05(土) 22:45:46 HOST:EM49-252-3-97.pool.e-mobile.ne.jp
ムツ>>

いや、ここにゃんなら分かるけどあたしのを尊敬されたら大惨事なるよ……?

ここにゃん>>

あーいう強引なことは武力頼りの昇ならではw←

読ンデ下サルノデシタライツデモ!(おい

432心愛:2013/01/06(日) 10:57:40 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp
>>ピーチ

色んな武器使えるっていいね!
ヒースあたりに弓とか使わせたら力任せにやって大惨事になりそうw


そ、そう…?
申し訳ない(~_~;)
邪気眼少女だけ更新したらまたちょっとお休みします(^-^;

433ピーチ:2013/01/06(日) 19:14:24 HOST:EM114-51-207-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

色んな武器使うw

ヒースー! 気ぃ付けろー!←

434心愛:2013/01/07(月) 10:10:17 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うちの戦い担当は剣バカばかりだということに今気づいたw
クラウスあたりなら無難にこなしそうだけど……うーん。

オールマイティー昇くん!(急に)

435匿名希望:2013/01/07(月) 13:57:09 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
何の話ですか・・?
もう少し分かりやすくお願いします。

ウンコしたくなってきました。

436名無しさん:2013/01/08(火) 14:45:55 HOST:EM114-51-155-248.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

た、確かに!←

クロード殿もあっさりこなしそうじゃない?

ルイーズ王女辺りも力任せにやってくれそうなイメージある←

437ピーチ:2013/01/08(火) 17:00:39 HOST:EM1-114-186-134.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「あれだけ、霊力吸い上げられたらね……」
「………え?」
 今、彼女たちは何と言った。自分たちの耳がおかしくなければ、霊力を吸い上げられたとか何とか。
「……何でもないわよ。とにかく、」
「お前はしばらく隠れてろ」
 突然の昇の言葉に、天音が目を見開く。
「な……っ!?」
「ろくに力も残ってないんだ。自分自身を護れるかどうかさえも怪しいのに」
 これで自分を捨てられたら、こっちが困る。
 自分の考えに思わず苦笑した彼に、天音が渋い顔をする。
「大丈夫だって言ってるじゃ………」
「霊力吸い上げられたくせに無茶言うな」
「…………………っ」
 ぐっと押し黙る少女を横目で流し見、昇が言った。
「柊一。今回天音の代わりな」
「俺ってピンチヒッターみたいなものなんだ?」
 苦笑する柊一に同じように苦笑を返し、次に天音を見る。
「あおり。場所確認してくれないか」
「分かった」
 そう言ってふっと目を閉じ、彼女が全神経を研ぎ澄ます。
 やがて、ゆっくりとその漆黒から藍へと変化した瞳が開かれ。
「………三百メートル前方。結構動きが速い」
 蜘蛛のくせに生意気だ、とあながち見当違いなことを言うあおりに苦笑し、柊一がすっと漆黒の瞳を細めた。

438たっくん:2013/01/09(水) 12:20:06 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
毎日、勉強ばかりで参ります。
学生って辛いですね〜ホント

80点以下赤点ですからね

439たっくん:2013/01/09(水) 12:20:36 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
>>1
時々、荒らしとかくるんで気をつけて下さい。

ウンコします。

440たっくん:2013/01/12(土) 17:40:54 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
つまらないスレに来てしまったようだ・・・
期待していたのだが・・残念だよ

441たっくん:2013/01/12(土) 17:41:48 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
しょうのないスレなので
ウンコさせてもらいます。

ババスレ御苦労様

442ff:2013/01/15(火) 16:12:32 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
>>1さんの
スレ臭いです。ウンコさせてもらいます。
ババスレにはウンコがつきものですからね

443ff:2013/01/15(火) 16:13:12 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
ウンコスレ最高です!

444ff:2013/01/15(火) 16:14:04 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
矢沢は体臭だけど
ウンコのほうはどうかな?

身体2回洗えよ

445ff:2013/01/15(火) 16:14:47 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
それにしてもこのサイトは
体臭人の集まりか?

それとも馬鹿の集まりか?

まともなのはいないのか?

446矢沢:2013/01/15(火) 16:28:20 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
たっくん、idと文章の癖でバレバレよ。

447ピーチ:2013/01/20(日) 19:54:17 HOST:EM1-114-13-197.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「あ…………っ」
 思わず叫びかけたシェーラを、ヒースが慌てて止める。
 いつの間にか召喚された月光を映し出す剣を構えた昇が、勢いよくそれを払った。
「危な…」
 天音の腕すれすれのところを剣が動き、それを見たソフィアたちが息を呑む。
 右の手首に巻き付けた漆黒の鈴を持ち直し、柊一が軽く天へと掲げる。
「―――忘れ亡(な)き夜を、天(そら)へと掲げよ」
 流れるような詠唱。強さを感じさせない穏やかな言霊が、彼の振る鈴と共に辺りへと放たれた。
「我、汝を招くもの」
 りんと一鳴りした鈴が涼しげに舞う。それを見て、あおりが小さく呟いた。
「……天音もだけど、やっぱ凄い…」
「確かにな」
 あおりの言葉に賛同し、昇がすっと黒曜の双眸を煌めかせる。
「―――……あいつの邪魔、すんなよ」
 ひゅっと月光を映し出した剣を一振りし、青年が軽く息を吐く。
「天神さん。二十秒後、背後に居ます」
「了解」
 術を執り行っている間でも、彼の耳には人の声もしっかり入る。恐らくこれが、天音と柊一の決定的な違いだろう。
「っと…」
 小さく笑んだ柊一が、ふっと軽く跳躍する。今まで彼が居た場所に、様々な動物の一部を併せ持った妖が飛び込んできた。
 それを見て、柊一が鈴を通した紐を引きちぎる。
「……って天神さん!?」
「大丈夫だよ」
「え?」
 慌てたあおりを、昇が軽くいなす。彼女の瞳が、なぜだと問うていた。
 小さく苦笑した彼は、ついと柊一に視線を投げる。
「天音と一緒。……あいつも、たまにあれをばら撒いて拘束だ結界だと色々使ってる」
「………なるほど、ね…」
 昇の言葉を受け、あおりが妙に納得した表情になった。よくよく考えれば、こうやってばら撒くのだからよびがあって当然だろう。
「さて―――」
 勝ち誇った笑みを浮かべたじゃあと呟いた。
 そして、左腕を前に突き出す。
「―――行け」
「あ…………っ」
 思わず叫びかけたシェーラが、何とかそれを押し留めた。
 青年の腕から飛び出した見たこともない生き物―――恐らく、彼らの言う『妖』だろう―――に、ソフィアたちが半ば青ざめる。
 あおりは表情を変えないが、心配に及ばないであろうはずの天音が、一番血相を変えていた。
「ちょ……、柊!?」
「ごめん、でもあれだけ小さいのが居ても面倒だからさ」
 大丈夫だよ、こいつら言うことはちゃんと聞くし。
 そう言って笑った青年に、天音が怒鳴る。
「そうじゃなくて!」
 思わず叫ぶ天音に、柊一が静かに返した。
「分かってるよ。下手すれば、仲間を呼ぶことになる」
 そう言った直後に、四人がはっと背後を顧みた。
 彼らにつられて同じ方向を向いたシュオンたちも、さすがに息を呑む。
「な、何あれ……っ」
 さも気持ち悪そうに呟くユーリエに、天音が短く返した。
「妖よ。このまま行けば、確実に此処に来る」
「えっ」
 同時に声を上げた女性陣が揃って後退する。
 でも、と天音がふっと笑い。
「このまま野放しにするわけないでしょ……ねぇ、みんな」
 呼ばれた三人が振り返る。彼らに、天音が言った。
「二手に別れましょう、その方が早いはずよ」
 そう言った天音が闇を秘めた髪を翻し、何かを言いかけたとき。
「―――お前一人ってのはぜってぇ駄目だからな」
 うっと言葉に詰まった天音が、進めていた歩を止めた。
「もちろん黒髪たちはこっちで守ればいいけど。俺らはそうもいかねぇだろーが」
「だから黒髪言うなってっ!」
「黒髪君。その目つきいい加減改めないと、戻らなくなるわよ?」
 天音に指摘されたことに対し、ヒースが更に怒号する。
「だっから俺はヒースだって言ってんだろーがっ!」
「まぁとにかく」
 ヒースの叫びを綺麗に黙殺した天音が、ちらとシュオンを見やる。
 それを受け、シュオンが口を開いた。
「どうかした?」
「金髪君、確か毒薬作ってるのよね?」
「毒薬と爆弾なら任せてよ」
 にこやかに答えるシュオンに、天音が僅かに考える素振りを見せ。
「―――今すぐに妖に一瞬で致命傷を与えられる爆弾を作れる?」
「いや、無理だねさすがに」
 とうとう天音までが爆弾に頼るようになったかとヒースが頭を抱える。
「じゃあ毒は?」
「難しいかな、結構時間もかかるし」
 そう、と呟いて、天音が小さく息を吐き出した。

448亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/20(日) 22:51:25 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
はじめまして*
亜琉火です><*
えと、おもしろいです!頑張って下さい!
私も小説書きたいです><///
あと、おもしろいですって言ったかw
これからよろしくお願いします…*

449心愛:2013/01/22(火) 20:23:05 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「なき」を「亡き」にすると一段とカッコよくなるよね(´ー`)

うん、いくらシュオンでもすぐに一から作るのは無理ですよね! 常備してるやつならともかく!
そして天音ちゃん、相変わらずの容赦のなさw

450ピーチ:2013/01/23(水) 20:37:35 HOST:EM1-115-14-104.pool.e-mobile.ne.jp
亜琉火さん>>

はじめましてー! どーもでーすここにゃんの神作品にも是非目を通してみてねー!

書けるよ小説! あたしでさえ書けるから!←

ここにゃん>>

えへ、ちょっとこだわったw←

あ常備してるやつがあるんだ!?

天音は毒舌ですから基本!(おい

451亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/23(水) 21:56:11 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
はいぃ!((ピシィw!
アリガトウデス*
これから宜しくです♪それと、
タメ、呼び捨てOKです!マジメは
嫌いです…;;
それでは!応援してます><**
>ピーチs

452ピーチ:2013/01/25(金) 06:24:15 HOST:EM114-51-162-116.pool.e-mobile.ne.jp
亜琉火>>

こっちこそよろしくねーw

あたし全然真面目違うよっ! 紛うことなき不真面目ものだよっ!

453亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/25(金) 16:54:37 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
え!ホントですか?w
私は真面目って言われますが
勉強中に手紙を回しているバカですw
さらにダジャレ好きのバカですww
こんな私ですが、
よろしくお願いしますね*;;;

454ピーチ:2013/01/27(日) 14:32:16 HOST:EM49-252-73-193.pool.e-mobile.ne.jp
亜琉火さん>>

ほんとほんとw

真面目ぶってるだけの大馬鹿ーw

ダジャレは興味ないけどー←

455亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/27(日) 20:41:53 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
えー!そう見えませんが(ー△ー)

そーですよ*ホントバカですカラ^^

ははっ!友達にダジャレ言ってみたら
「ウザイ」って言われましたぁ♪
もう慣れたです;;
>ピーチ

456ff:2013/02/01(金) 23:57:25 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
↑ほんとアホだね君
そんなアホな君にいい贈り物があります。

457ff:2013/02/01(金) 23:58:11 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
>>454
真面目な人ほどアホなんだよ

458ff:2013/02/02(土) 00:00:39 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
>>1さん

あんたのスレつまらないけど
その反面、なかなか面白いから削除だけは勘弁してあげます

459ピーチ:2013/02/03(日) 11:28:11 HOST:EM1-114-222-30.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「じゃあさ」
 唐突に発された言葉に、一同が柊一を見た。
「天音と俺、昇とあおりちゃんが分かれるのは?」
 柊一の言葉の意味を正確に理解した三人が、揃って顔を見合わせる。
「そうね…じゃあ、私は向こうに回るから。どっちかが私の方に来る?」
「じゃああたしが……」
 言いかけたあおりを遮り、昇が口を開いた。
「いや、俺が天音の方に行く」
「え?」
 思わず問い返すあおりに、昇が苦く笑う。
「柊一にはお前の場所視が必要だろ? 天音は一人で突っ走ると周りを忘れる」
 それこそさっきみたいなことになりかねない、と言った昇の選択は正しいだろう。
「分かったわ。…柊」
「へ?」
 唐突に呼ばれた柊一が呆けた声を上げる。天音が苦笑しながら言った。
「あおりを怪我させることだけはしないでね? もちろん、自分も」
 天音の言葉を受け、柊一がしばし呆然を彼女を見る。そして、やがて笑って。
「分かってる。飛湘だけは無傷でいさせるから」
 そう言った後に、柊一が昇に向かって微笑んだ。
「昇も、天音のこと頼んだよ?」
 柊一の一段低くなったような声音に、昇がさっと青ざめる。
「わ、分ぁってるよそんくらい!」
「だよね、まさか昇が天音に護られるなんてことないよね?」
 ―――自分無傷で天音が傷だらけだったら容赦しないからね?
「ない! 絶対ないからっ!!」
 笑顔の裏に隠された言葉を正確に読み取り、昇が叫んだ。
「い、行くぞ天音!」
 そう言って疾風の如き速さでその場を離れた昇をしばし見送り、あおりが不審げに問うた。
「……天神さん?」
「ん? どうかした?」
 笑顔で応じる柊一に苦笑しながら、あおりが問う。
「…昇に、何か言ったんですか?」
「まさか」
 言ってはいない。それは間違いない。ただ単に無言の圧力をかけただけで。
 音になっていない彼の黒い感情を僅かに察知したあおりが、無意識に己が身を震わせた。

460心愛:2013/02/03(日) 16:27:24 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久しぶりの更新ーヽ(≧▽≦)/


ああ、昇くんはやっぱりこういうポジションなのね!

柊一くんはやっぱり真の最強なんじゃないかと思うここあですw
あれ、おかしいな……一瞬彼の中にシュオンブラックバージョンの影が見えた気が(^-^;

461ピーチ:2013/02/03(日) 17:23:46 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久々の更新でございますー!←

そうなの! 昇はどうあってもこのポジションなの!

天音のことになったら性格真っ黒になっちゃう柊一君ですw

下手すればシュオン様よか酷い腹黒さ←

462心愛:2013/02/03(日) 17:40:11 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おっと、それは聞き捨てならないなぁ。
シュオンの腹黒は王国一だぜ?(張り合うな


でも、こういう優しげ(シュオンも猫被ってるときは)キャラが実は腹黒っていいよね!
しかも好きな女の子のことになると……ってやつ!
天音ちゃん愛されてるなー(*´д`*)

463ピーチ:2013/02/03(日) 17:47:38 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




 しばらく気配のする方に足を運んでいた二人が、足を止めた。
「…ここた辺、かしらね」
「え? あ、あぁそーかもなっ」
 ―――自分無傷で天音が傷だらけだったら容赦しないからね?
「ぜっったい悪意だろ、お前…」
 思わず、今ここには居ない青年に対して愚痴る昇である。
「―――……」
 りんと一鳴りした紅い鈴の音が、辺りに木霊した。
「……っ、昇!」
「避けろ!!」
 唐突に発された言葉に、天音が後ろを顧みる。そこに、漆黒の闇を纏った影が迫っていた。
「わ……っ」
 思わず飛び退る。今まで天音が居た個所に、影と淡い銀の剣が躍りかかった。
「…さすがね……」
 思わず呟いた彼女に、昇がぶっきらぼうに言い放つ。
「俺のできることっつったら、こんぐれぇだろうが」
 あとは、神を呼び出す際の依り代程度か。
「お前らが出来るようなことが出来ないんだ。せめてこれくらい、自分のものにしたっていいだろ?」
 そういってにっと笑った青年に、天音が小さく笑い返した。
「…かもね……」

464ピーチ:2013/02/03(日) 17:53:08 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そ、そんなに酷いのか……←

普段は温厚で優しいけどねっ!

ごくごくたまーに腹黒柊一が登場しちゃいますw

いやでも基本的に男女で分かれると女子優先するよ二人とも!←

あおりも愛されてるぞー、一応!

465心愛:2013/02/03(日) 21:17:28 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

役割分担w
バランスがいいパーティだね(^-^)人(^-^)


微ブラックもまたよし!
そうだよね、あおりちゃんも愛されてるよね!

466亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/02/04(月) 21:16:32 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
やっぱり面白いですなぁ〜*
さすがでス**
ピーチ
お?はじめまして♪よろしくお願いします♪
心愛

467ピーチ:2013/02/09(土) 10:01:34 HOST:EM114-51-170-28.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




 突如現れた妖を前に、昇が月光の剣(つるぎ)の切っ先を向けた。
 天音は、現状況では彼の補佐という役割が大きいだろう。
 ―――ソノ娘、寄越セ
 厳かに告げられたその言葉に、昇は皮肉気に片側だけ口端を吊り上げ。
「やなこった」
 挑発気味に言い放った。
「こいつは俺らの仲間なんだ。……今は、客だけどな」
 最後尾の言葉が掠れ、天音には聞こえない。尤も、聞こえていたら否応(いやおう)なく彼女が前に出ていただろうが。
 ―――ナラバ
 彼の挑発を真に受けてしまったそれが、音もなく飛びかかった。
 ―――貴様ラヲ、排除スルノミ。
 刹那。
「え?」
 唐突に囲(かこ)われた自分の周りを見て、昇が目を瞠った。
「その方が、やりやすいんじゃない?」
 不敵に笑った少女が、闇を秘めた漆黒の髪を揺らす。
 しばらく呆然としていた昇が、やがてにっと笑い。
「あぁ」
 そう言った彼の月光を秘めた剣が、それの目前へと迫った。




「天神さん?」
 唐突に呼ばれた柊一は、はっと我に返った。
「え? あ、何?」
「やっぱり気になります?」
 苦笑するあおりの言葉に、柊一が言葉に詰まる。
「うーん……どうだろうね、二人とも無事だとは思うけど」
 何しろ、昇には無言の圧力―――悪く言えば脅しだが―――をかけておいたのだ。天音が怪我をすることは、可能性的には低い。
「ま、大丈夫じゃないかな」
 そう言って薄く笑った柊一に、あおりも笑みを返した。
「そうですね」
「……でもさ」
 不意に思ったことを、柊一が何気なく呟いた。
「あおりちゃんは、心配じゃないの?」
 ぴくん。
 彼の言葉を聞いたあおりの肩が、僅かに震え出す。それを受け、柊一があ、と呟いた。
「え、えーと……やっぱり、心配?」
「あったりまえですよっ!!」
 突然怒鳴られた柊一の足が、無意識に後ろに下がった。
「二人とも強いんです。それに関しては心配なんかしてません。でも天音ときたら、自分の力の強さ自覚せずに一人で突っ走って結局周り巻き込んで! あたしだけじゃなく昇まで危険な目に遭ったら…」
 勢いよくまくし立てたあおりが、しかし別の気配を察して黙り込んだ。彼女の黒曜の瞳が、藍へと変わっていく。
「……天神さん」
「何匹くらい、居る?」
 彼も察したのだろう、あおりが言うより早く、柊一が問うた。
「かなり居ます。……本当にここ、あたしたちが来る前平和だったんですか?」
 かなり失礼な質問である。傍に居たシュオンたちに聞こえていなかったからよかったようなものの、もし聞こえていたら。
「あ、あーうん。…たぶん」
 思わずそう答えてしまう柊一である。
 しかしその後、とにかく、と呟いて。
「あおりちゃん、下がってて」
「え?」
 問い返したあおりに、薄い笑みを返した柊一が言った。
「そいつら、一掃してくるから」
 冷笑を一つ零した青年が、漆黒の鈴を右手にかけた。

468心愛:2013/02/09(土) 18:02:43 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ

瞳の色が変わるっていいよね!(しつけぇよ


平和、だったのかなぁ…?
なんか妖さんが頻繁にいらっしゃったり日常的にシュオンが爆発起こしたりジルがユーリエに殺されかけたりしてるけど、ほんとに平和、なのかなぁ…?

469ピーチ:2013/02/14(木) 05:34:44 HOST:EM114-51-138-2.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

わーごめんなさいーっ!!

妖除きさえすれば平和だよ!

微笑ましいんだよ!←

470心愛:2013/02/14(木) 18:25:01 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫、少なくともシュオンは刺激を求めてるから!

妖が頻繁に出没する世界だって、死にはしなければ面白いものじゃないw

ここあも日本が舞台のファンタジーを書いてみたいものだ←
そういう短編もやってみたいんだけど、紫の歌のリクとか(忘れてないよ!)オスヴァルトの話とかもたまってるからなぁ。
夢で終わりそうな予感(~_~;)

471ピーチ:2013/02/20(水) 05:55:17 HOST:EM1-114-47-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

大丈夫? よかった……!

だよね面白いよね! あたしも一回でいいから会ってみたいw

あたしは別世界を舞台にしたファンタジーも書いてみたいなー←

472心愛:2013/02/20(水) 22:57:51 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

もう書いてるじゃん! 紫の歌で!(笑)

ここあは一番異世界ファンタジーが書くの楽らしいw
妄想癖があるからだな、うん。


百鬼夜行←
可愛いやつなら会ってみたい! そしてペットにしたい((こら

473ピーチ:2013/03/02(土) 10:49:02 HOST:EM49-252-90-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

確かに! でも駄文w

あたしもかなり酷いよ、妄想癖w

分かる! 分かるよあたしもペットにしたいもん!

だって餌をやる必要がないから!←おい

474ピーチ:2013/03/02(土) 10:51:34 HOST:EM49-252-90-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

確かに! でも駄文w

あたしもかなり酷いよ、妄想癖w

分かる! 分かるよあたしもペットにしたいもん!

だって餌をやる必要がないから!←おい

475心愛:2013/03/02(土) 19:08:45 HOST:proxy10030.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやいや!
本編を超えた名作だよ!

エサいらないのはいいねw
そのぶん首輪とかすり抜けちゃいそうですが←



告知ー!
10日あたり、紫の歌本編スレでちょこっと動きがあるかも?
よかったら気をつけてやっててくださいなw

476ピーチ:2013/03/02(土) 21:38:45 HOST:EM49-252-124-211.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

本編超えてない!

あんなんで本編超えられたら怖いよ!←

特にここにゃんの神作品を読んだ後だから特に………っ!

477心愛:2013/03/03(日) 18:34:17 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ほんとだよー!
本編を優に超えた素晴らしさだよ!


や、ここあのはただの駄作だからね?

478ピーチ:2013/03/03(日) 18:42:55 HOST:EM114-51-64-43.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「夢現(ゆめうつつ)、結(ゆ)いし赤玉、白貫(しらぬき)の座を冠する者」
 静かな流れるような詠唱が、優しい言霊が放たれる。
 それまで黙っていたソフィアたちが、驚いたように目を瞬かせた。
「柊一さんも、天音さんと同じようなことが出来たのね……」
「まぁ、どっちかって言えば天神さんの方が始めたのは早かったわね」
 あおりの言葉に、シェーラがえ、と零した。
 それを受け、あおりが苦笑気味に答える。
「そりゃそうでしょ? 天神さんの方が先に生まれてるんだから」
「………あの」
「ん?」
 突然呼ばれ、あおりが首を傾けた。
「…天音さんたちって、何歳なんですか?」
「へ?」
 聞いてなかったの? と問い返したあおりに、シュオンが口を挟んだ。
「聞いてないっていうか、聞く暇がなかったいって言った方が正しいかな」
「………あぁ…」
 あいつ、また自分のことだけやってさっさと帰ったんだな、という彼女の胸の内は、誰も知らない。
 苦笑気味に、彼女が言った。
「天音とあたしが二十歳で、天神さんと昇がその一つ上」
「二十歳?」
 確かに大人びてるけど、本当に大人だったんだー。
 そんなシェーラの呟きを拾ったあおりが、苦く笑った。
「見た目だけよ? 天音も昇も、あたしも」




 ざん―――。
 一瞬の閃光が走り、銀の剣についた血を払った昇がふぅと息を吐いた。
「大体、これで全部だろ」
「……そう、かしらね…」
「え?」
 問い返した青年に、天音が不安げに言った。
「まだ、残ってるような気がするの。…それとも、私の気違いかしら」
 少女の言葉に、昇が腕を組んで辺りを見回す。
 だが、これと言って不審な気配はしない。
「お前にしては珍しく、変なところで五感が働いたんじゃねぇの?」
 そう言った青年が身を翻しかけた、刹那。
「―――え……?」
 天音の声に振り返った昇が、思わず目を瞠った。
 ―――ソノ霊力、我ガタメニ
 そう言ってにぃと嗤った『蛇』が、彼女に迫る。
「っ………!」
 咄嗟に扇を構えたが既に遅く、天音の腕に紅い筋が走る。
 刹那。
 蛇の形を保っていたものが音を立てて崩れ、原型を留めない『それ』に成り代わった。
「え…」
 呟き、茫然と空を見上げた少女の眼前に、『それ』が躍りかかった。

479心愛:2013/03/04(月) 15:40:05 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久々の更新きたぜー!


そうだよね皆さん二十歳超えてるもんね!
うちのバカが年上相手に好き放題しててすみません…。
敬意ってものを知らないのよ…。


天音ちゃんたち、いつもピンチに陥ってる気がするよ!
がんばれー!

480ピーチ:2013/03/05(火) 05:11:53 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久々の更新だぜー!←

だいじょーぶ! 四人とも同い年として扱ってるから!

敬意を知らないのはこっちも同じだよ!

そーなの天音達はピンチに陥らないと話が進まないの!

481ピーチ:2013/03/05(火) 05:33:56 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「え…」
 茫然と呟いた彼女の瞳が、音を立てて凍り付いた。
「し………」
 ―――力、寄越セ…
 そう言った『それ』が、天音に向かって襲い掛かる。
「―――凛然(りんぜん)たるは、紅き眼(まなこ)」
 突然、鈴を転がしたような声が響いた。
 ―――ナニ……!?
「憎き骸(むくろ)を血に染めて」
 僅かに赤みがかった薄い膜が、青年を包み込む。
「―――我先に、彼(ひ)へと行(ゆ)く」
 りん―――
 左手で扇を払い、右の手首に巻き付けた紅い鈴を微かに鳴らす。
 その瞳に、今までなかった色が浮かび上がっていた。
「昇…………っ!」
 宿主の意を受けたかのように、薄い膜が音もなく消え去った。




「……?」
 唐突に、あおりが首を巡らせた。
「…? どうかしました?」
 シェーラの問いに、あおりが苦笑を返す。
「ううん、ちょっと…」
 刹那。
「あおりちゃん!」
「え?」
 慌てたような柊一の声が、耳朶を打った。
「昇か天音に、何かあったかもしれない」
「………え?」
 何か、とは。
「…まだ、分からない。から、行ってみよう?」
 促した柊一の後に続くように、あおりが走りかける。だが、不意に止まって。
「貴方たちも来て?」
「え?」
 突然言われたシュオンたちが思わずと言ったように問い返した。
「あたしたちの手の届かない場所に居られたらまもることさえできないでしょう?」
 早口にそれだけ告げると、あとは任せるというかのように駆け出した。

482心愛:2013/03/05(火) 16:55:55 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ

すみませんほんとうちの子敬意払わない上に足手まといで!

ファンタジーのくせに特殊能力持ってるのソフィアしかいないし不安定だし(つд`)
魔法使えるミレーユなら加勢できるのかな…?


護衛よろしくねあおりちゃん…!

483たっくん:2013/03/07(木) 15:01:46 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
そういえばさっき言い忘れたが・・俺の銀行の口座に
100円振り込め
いつも世話になってるんだからそれくらい当然だろう。

それと夕ご飯おごってくれるって話どうなったの?
待ってるんだけど・・ではまた後日

484たっくん:2013/03/07(木) 15:04:10 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
ちゃんと俺に金を恵めよお前
でないと面倒見てやらないからな

それと以前話してた1991年のカードダス20
お前らが買うんじゃなくて俺に買ってくれよちゃんと
そのくらいしろよクソスレ名人

485たっくん:2013/03/07(木) 15:04:58 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
カードダス買ってくれよ
1988年〜1991年のな

新作はいらないからな
ちゃんと覚えとけよ俺の言う事

486ナコード:2013/03/07(木) 18:01:17 HOST:i118-17-185-78.s41.a018.ap.plala.or.jp
>>483 >>484 >>485
貴方の言動はこのスレ内に有るまじき物ですよ?
言葉の意味分かりますか?
何なら国語辞典片手に考えてみて下さい。
『迷惑』の意味を。

487ピーチ:2013/03/12(火) 15:31:20 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

大丈夫だよ全然問題ないよ!

あおりは場所視以外では特別な力持たないからなぁ…

まぁ、ソフィア様たちを護るためなら何とかなるさ!←

488ピーチ:2013/03/12(火) 16:12:25 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「……二人とも、大丈夫かな…」
「多分、どちらか一方はやられてる」
 あっさりと返す柊一の言葉に、あおりが目を伏せた。
「ですよね…」
「でも、急げば何とかなることも、あるかもしれない」
 自分の勝手な、ともすれば希望よりも儚い思い。
 それがあるから、迅速に動くことが出来た。
「それに……」
 柊一が、死ぬほどの致命傷を負ったとも限らない、と言おうとした直後。
「――――――…っ……!?」
 唐突に、柊一とあおりの足が止まった。
「…? どうしたんですか?」
「……まずい、かも…」
 困ったように苦笑して、言いたくなさそうに声を吐き出した。
「………やられた方、分かった」




「昇………っ!?」
 今の妖は、確か。
「―――あ…」
 人の命(み)を喰らうと言われている、蛇道(じゃどう)。
 だが、なぜそんな凶悪なものがここに。
 一瞬考えたが、今はそんなことを考えている暇はない。
 回復を促す言祝(ことほ)ぎが、あったはずなのに。
「―――君が為にと、言わずして……」
 少女の口から放たれた言霊が、辺りに木霊した、その時。
「天音、昇!」
 突如として聞こえた声に、天音が目を瞠る。
「……え………?」
「天音、大丈夫!?」
 あおりの問いに対し、天音は首を振る。
「私は大丈夫なの。でも、昇が……」
 天音の言葉に、少女が目を瞠る。柊一が額に手を置いた。
「やっぱり昇だったか……」
 僅かに遅れてきたソフィアたちも目を瞠った。
「昇さん……?」
 シェーラの呟きを拾ったあおりが、微動だにしない青年に近寄った。

489心愛:2013/03/12(火) 18:46:38 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

昇くーん!
致命傷じゃないよね、ねっ?

あとやっぱり真っ先に駆けつけるのはあおりちゃんですよね分かります!

490ピーチ:2013/03/13(水) 05:07:00 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

昇は大丈夫! しぶとさも取り柄の一つだから!←

やっぱりって感じだよね! あおりにはこれからもーちょい頑張ってもらいますw

491ピーチ:2013/03/13(水) 05:47:04 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「昇………?」
 あおりの呟きに、返ってくる声はない。
「どうしたの? いつもなら答えるでしょ?」
 何だよ、と。ぶっきらぼうで、でもどことなく優しい口調で。
「返事くらい、しなさいよ…………っ!」
 少女の瞳から大粒の滴が零れた。それに構わず、あおりが昇を揺する。
 半ば叫びながら呼べば、彼はうるさそうに耳を塞ぐのに。うるさいと言って、本当に迷惑そうに。
「昇…、」
 刹那。
「眠れ―――目覚めんとする厄鬼(やっき)」
 穏やかさを思わせる声が、耳朶を打った。
 はっと顔を上げると、柊一の苦笑気味の表情が映る。
「そんな顔しないでよ、俺が昇に怒られるから」
 青年の言葉に、あおりがえ、と呟いた。
「でも……」
「大丈夫だよ。どんな手段使ってでも叩き起こす」
 場を明るくさせようと、あえて彼がそんなことを言っていることは分かる。だが、どうやって。
「問題ないわよ。柊なら」
 力なく発された言葉に、あおりが天音を見た。酷く痛々しげで、己を蔑んでいるかのような。
 しかし、やがて扇を手に、天音がソフィアたちの傍へと駆け寄った。
「……あの類の妖はね、群れで行動することが多いの。…一匹だけ紛れ込んだような、馬鹿げた妖じゃなければ」
 天音の予測が正しかったのだろう。
 しばらくしても別の妖気が感じられることはなかった。
「あの…天音さん」
「何?」
 いつもと、なんら変わらない表情。穏やかで、でもシュオンやヒースには意地悪く。
「昇さん、大丈夫ですよね?」
 シェーラの言葉に、天音が軽く目を瞠った。しばらく考え込むような素振りを見せ。
「―――大丈夫、かな…。私が言えたことでもないけど」
 自嘲気味に、天音が笑った瞬間―――。
「昇っ!」
 唐突に、あおりの声が聞こえた。それを聞いたソフィアたちが、何事かと前を向く。
「……あおり…?」
 彼女を見つけた青年が、億劫そうに身を起こしている。
「……あ」
「無事…だったみたいね」
 ほっと安堵したように呟かれた言葉にシェーラたちも知らずの内に頬が緩んだ。
 これで、無事すべてが終了―――と思ったのだが。
 そうは問屋が降ろさなかった、らしい。
「ばかぁっ!!」
 唐突に響き渡った、甲高い声。
 昇のみならず、回りまでもが一斉に耳を塞ぐほどの金切り声だ。
「昇のばか……っ! 本当に、死んだかと思ったんだから…っ」
 そう言ったあおりが、彼にしがみついた。
 突然のことに事態が呑み込めていない昇も、これには驚いたようだ。
「え? ちょ、あおり……?」
「勝手に死ぬなんて、絶対許さないから」
 軽く睨んで威嚇したつもりが、涙のせいで台無しになっている。
 それを見た柊一が、苦笑しながら言った。
「まぁ、昇も帰ってきたし、とりあえずこれを何とかしよう?」
 柊一の言葉に、一同が彼の指す方を見る。
 大きな残骸となって残っていた蛇道の姿が目に入った。

492彗斗:2013/03/13(水) 16:10:03 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
お久しぶりです☆ 受験から返ってきた彗斗です!

ほぼ一か月ぶりに読ませてもらいました……何故か凄くあおりちゃんの気持ちか分るのは何故だろうか……

まぁ、それはそれとして……私の作品の復帰作一発目にアクアさんを起用させていただきました☆

なんかもう間違ってる気しか起こらないので添削宜しくお願いします!!

493心愛:2013/03/13(水) 23:03:26 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ

どこかで聞いたような評価!



よかったね昇くん…!
コラボで死んだら死んでも死にきれないよね…!

女の子にあんまり心配させちゃだめだぞっ?

494名無しさん:2013/03/15(金) 05:41:56 HOST:EM49-252-224-96.pool.e-mobile.ne.jp
慧斗さん>>

久しぶりー!

あおりの気持ちかー…あたし分からないながらに書いてた←おい

アクアさん起用してくれてありがとう! 何かもう良すぎて言うことなっし、みたいな感じだったよ!

ここにゃん>>

だよねどっかで聞いたよね!←

とりあえず死の淵から這い上がってきた根性男ですw

女の子を心配させちゃうの! ピーチキャラはなぜか!←

495心愛:2013/03/16(土) 10:59:50 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

罪な奴らだぜ男性陣…w

でもやるときにはキメてくれるよね(*^-^)ノ
昇くん然り柊一くん然り。

496ピーチ:2013/03/16(土) 20:59:43 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

こんなキャラがいーなーとか思って作ったら自然とこんなのが出来上がってたw

やる時だけね! あとはちょこちょこ天音に怯えてるだけね!←

497ピーチ:2013/03/16(土) 22:05:04 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「…これ、は……」
 珍しく困惑するようなそぶりを見せた天音が、小さく唸る。
「あっちに持って行ったら、今度こそ面倒になるわね……」
「じゃあ、どうする?」
「何か、話が見えねぇけど…」
 天音と柊一の言葉に、昇が渋面を作る。
 彼を見て、天音が気まずそうに視線を泳がせる。
「? ………天音?」
「……ごめんなさい」
 突然の言葉に、昇が目を瞠った。
「へ? え、天音?」
 彼女が謝る理由が分からない。
 しばらく悩んでいた昇に、柊一が大まかに説明をした。
 曰く。
 昇から見てどこか様子がおかしかったらしい天音の目の前に、蛇道が襲い掛かってきた。
 それを見た昇が、条件反射で飛び出したために天音は無傷だった。
 柊一の仮定と昇の言葉を組み合わせたらこうなった。
「嘘だろおい……」
 思わず呟いた昇である。条件反射だか何だか知らないが、まさか本気で自分が天音を守ったとは。
「いや、守ったとまでは言えないか……」
 いささか疲れたように肩を落とした青年に、柊一が穏やかに笑った。
「昇、ありがとう。天音を守ってくれて」
「え?」
「でもさ」
 表情を強張らせ、柔和な面立ちの青年が苦笑する。
「………飛湘を泣かせろとは、言ってないよ?」
「う……っ」
 柊一と昇が互いに苦笑している傍で、天音だけが浮かない顔をしていた。
「天音? おーい、あーまーねー?」
 あおりの声ではっと我に返ったらしい天音が、再び沈鬱な表情になる。
「天音ー? 昇のことだったら気にしなくていいよー?」
「―――は?」
 ちょっと待ていくら何でもそれはあおりが決めていいことなのか。
「だって昇ほどタフな人も珍しいし。ちょっとやそっとのことじゃ問題ないよ、死にさえしなければ」
 からりと笑ったあおりのその性格は、恐らく昇から学んだものだろう。いや、学んでいいと言えるものでもないが。
「それに、あんまり後悔ばっかしてると昇に嫌われるよ?」
「……そう、ね…」
 苦く笑った天音に、あおりが笑みを浮かべる。
「…そういえば」
 唐突に聞こえたシェーラの声に、天音たちが彼女の方を向いた。
 小鹿色(フォーン)の髪を揺らした少女があおりに言う。
「あおりちゃんって可愛い名前ですよねー」
 天音ちゃんも可愛いけどあおりちゃんも可愛いー
 そんなシェーラの言葉に、あおりが苦笑した。

498たっくん:2013/03/18(月) 12:25:04 HOST:zaq31fa59a5.zaq.ne.jp
>>1
とっとと俺に金よこして消えな

オークションでドラゴンボールの当時物(レトロもの)買うんだよ
早く100円出せよカス

クソスレ立ててる暇があったら
俺にカードダス20の一枚でもおごってくれ
頼んだぞ

499心愛:2013/03/18(月) 17:24:35 HOST:proxyag096.docomo.ne.jp
>>ピーチ

空気読めないシェーラだねw

うん、天音ちゃんもあおりちゃんも可愛いよ! 響きが素敵!

500ピーチ:2013/03/19(火) 05:34:24 HOST:EM114-51-37-149.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ごめんねシェーラちゃん何か天然らしきところがありそうで!←

天音は普通に考え付いたけどあおりは面白いエピソード(?)があるよ!

501矢沢:2013/03/19(火) 13:55:10 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>498
加虐者たっくん。
僕は被虐者矢沢です。
君は、死ぬ。病気で。ざまみろ。

502矢沢:2013/03/19(火) 13:58:38 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ピーチのおしり

503たっくん:2013/03/19(火) 14:34:49 HOST:zaq31fa59a5.zaq.ne.jp
早く白人女性のヌード写真買ってくれ
金出せ金
とっととよこせクソガキ

大人をなめるなよ

504たっくん:2013/03/19(火) 14:35:39 HOST:zaq31fa59a5.zaq.ne.jp
>>1
クソガキにゃ白人女性の魅力なんて分からなねぇーよ
お前らはその辺の小娘で充分

505心愛:2013/03/19(火) 20:23:06 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫、シェーラは天然だよ! ばっちりだよ!


ほう、あおりちゃんとな?←

506ピーチ:2013/03/19(火) 22:01:08 HOST:EM114-51-160-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

よ、良かった……!

そだよー! これから昇の悪事(?)をばらしていくよー!←

507心愛:2013/03/20(水) 10:15:14 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ

悪事…
女の子に向かってそれはないかもだよねw
あおりんごー(*^-^)ノ

508ピーチ:2013/03/20(水) 19:28:51 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、昇だけじゃなかった、柊一もだった。

女の子にむかってそれはないよねw

ちなみにその後、なぜか昇だけが容赦なく殴られたっていう更に酷い裏話があったり←

あおりんごーw

509ピーチ:2013/03/20(水) 20:14:12 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「ありがとう、シェーラちゃん多分、『あの』言葉よりも先に可愛いって言われたの、初めてだわ」
 苦笑気味に笑ったあおりの言葉に、少女が首を捻った。
「何でですか? 可愛いのに」
 シェーラの言葉を聞いた天音の肩が、傍で小さく震え出す。柊一と昇は、どこか気まずそうな表情であらぬ方を見ていた。
「? 昇さん、柊一さん?」
 呼ばれた二人が苦く笑いながら顔を見合わせる。
 それを見たあおりの瞳に、ほんの一瞬殺気が満ちた。
「教えてあげましょうか? あたしの名前を聞いた昇が、最初に何て言ったか」
「え?」
 傍で黙って聞いていたソフィアたちも、興味を持ったらしく無言で集まってくる。
 それを見て苦笑したあおりが、辺に晴れやかな笑みを浮かべた。
『―――あおり? 何かあおりんごみてぇだなー』
「……って、言ったの」
 ねぇ? と笑顔で確認するあおりに、昇が降参と言うかのように片手を上げた。
「だから悪かったって! それに、俺だけじゃねぇだろ?」
「あ、そうだったね。ね、天神さん?」
 少女の問いに対し、是を唱えるかのように青年が苦く笑う。
「と、ところで天音! これどーする?」
 話題を切り替えた昇が、天音に言った。それを受けた天音が再び思案に暮れる。
「……先に私が戻って、私が着いた頃に柊たちが送る…としか、方法なんて浮かばないわよ?」
「あ、じゃあそうする?」
「え?」
 あまりにもあっさりとした返答に、思わず天音とあおりが問い返す。柊一が笑った。
「でも、天音が先に戻るんじゃなくて、俺たちが先に戻る。それでいいだろ?」
 もうしばらく残っててほしそうだしね、と言う彼の言葉に、天音がソフィアたちを振り返る。
 そしてしばらく考えた後、やがて諦めたように息を吐いた。
「じゃあ、そっちは頼むわ。気配は一瞬で消せるはずだから」
「うん」
 答えた柊一が小さく何かを唱える。瞬間、漆黒の突風が巻き起こった。
「じゃあ、俺たちはこれで」
 穏やかに笑った柊一が、シュオンにそう告げた。それとほぼ同時に、昇が片手を上げる。
「ヒー……じゃなくて黒髪も、」
「俺の名前はヒース=ユーゼルだっつってんだろーがっ! 何回言えば……っ」
「あーはいはい分かった分かった」
 まるで子供のけんかである。
 軽く嘆息した柊一と昇の姿は、今度こそ見えなくなった。

510心愛:2013/03/20(水) 23:18:35 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ


殴ったのか! あおりちゃん容赦ねえ!

そして柊一くんもという…←


でもあおりんご可愛いよー?

511ピーチ:2013/03/23(土) 09:56:27 HOST:EM1-114-3-215.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

殴っちゃったの! あおりはある時は情け容赦の欠片もないから!←

柊一はどっちかって言うと口でさんざん怒られたって感じかな

あおりんご…本人はなぜか嫌ってる呼び名ですw

512心愛:2013/03/23(土) 18:52:30 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いいじゃん可愛いじゃんあおりんごー!

容赦ないんだね…あおりちゃんもやっぱり、天音ちゃんのお友達だよね(どういう意味だ

513ピーチ:2013/03/23(土) 22:00:06 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お久しぶりです飛湘です!

……心愛さん、あたし小学校の時に男子にそれ言われて条件反射で殴りまくっちゃったんですよ?

そんな忌まわしいあだ名はできれば封印したいんです!←

514心愛:2013/03/24(日) 00:01:40 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ

お久しぶりですあおりちゃん!

あおりちゃんある意味天音ちゃんより豪快じゃないかい!?

大丈夫だよ可愛いよ!

515ピーチ:2013/03/24(日) 00:17:54 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ある時ある意味天音以上に強いあおりですw

可愛いかなー…自分で言うのもなんだけど←

516ピーチ:2013/03/24(日) 13:24:12 HOST:EM114-51-148-79.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「わ……っ」
 着地の際に均衡を崩した柊一が、反射的に腕を前に出した。
 それを見た昇が意外そうに目を見開く。
「珍しいな、寝不足か?」
 茶化すような口調の青年に苦笑を返し、柊一が黒曜の瞳をすっと細めた。
「―――始めるよ?」
「いつでも」
 対する昇も不敵に笑い返す。
 静寂が満ちる。
 もしここに立つのが彼女だったら、あるいは自分以上に手早く済むかもしれない。
 尊大な様子を思わせる、でも繊細な少女を思い浮かべ、柊一がくすりと笑む。
 刹那。
 ―――来た。
「―――立ち還る山代の燐光を帯たるもの、真実我が姿に成り代わりて」
 向こうから送られた、光に包まれた蛇道の姿が、朧に浮かんで容(かたち)を持ち始める。
 柊一が蛇道を処分する間に、昇が群がってこようとする妖たちをその大剣で切り刻む。
「躯(むくろ)を葬る死刑人(しけいびと)、断末の雄たけびを聞き届け」
 鈴を一鳴り鳴らした青年の漆黒の髪が、不自然に揺らめいた。
「―――臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」
 瞬間―――。
 昇が相手をしていた妖たちが、仄白い燐光を帯びて霧散した。
 それを見た柊一が鈴を括った腕を下げ、昇がふてぶてしく笑う。
「こっちは終わったよ……天音、飛湘?」
 青年の言葉を聞いた昇が、小さく笑った。

517心愛:2013/03/24(日) 18:39:14 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

可愛いともさ!
林檎ちゃんって名前もあるくらいだし!


昇くん柊一くんお疲れ様です!
あとは天音ちゃんたちだね(・∀・)

518たっくん:2013/03/25(月) 11:31:23 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
    【貴方のサイフでフィギュアをおごってもらう】

単刀直入に言いますが、18号のフィギュアを私におごって下さい。
貴方のおこづかいで。

もし買って頂けない場合は、 18号のこと諦めます。
フリーザに乗り換える事にします。フリーザのほうを好きになります。

私がフリーザを好むか、人造人間18号を好むかは
>>1さんのサイフにかかっているのです。
貴方が私にフィギュアを買ってくれるかどうかで
その後の展開が変わりますよ。

それにしても何故18号のフィギュアだけ入手できないのだろうか・・?
何度入札しても落札できない。

超サイヤ人孫悟空およびフリーザのほうが比較的簡単に入手する事ができます。
この文をご覧になってもし、18号のほうを愛せよとおっしゃる方がいらっしゃいましたら
フィギュアを私に譲って下さい。お願いします。
寸法20cm以上希望。最低でも20cmは欲しいです。

でなければ即フリーザに乗り換えますからね
フリーザでも別にいいんですよ私は
元々好きだったのは、超サイヤ人覚醒時の孫悟空ですから。
フリーザ戦のエピソードです。

さあ>>1さんはどうするか?
おごるのか、おごらないのか?さあどっちだ?
また来ますから返事はその時で結構です。

519たっくん:2013/03/25(月) 11:31:52 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
返答次第では
フリーザに乗り換えますからね。

520たっくん:2013/03/25(月) 11:46:55 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
>>1
サイフから金出たか?
もうそろそろ返事くれないと
フリーザになっちまうよ

521ピーチ:2013/03/25(月) 20:53:57 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そーだね後は女子軍だね!

まぁ、後始末だけだから大丈夫だと思うぞ!←

522心愛(ピーチの代理です):2013/03/26(火) 17:05:32 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp
紫と紅と黒






「っ…………」
 ふっと瞳を見開いたあおりが、天音に笑みを向ける。
「終わったみたいだよ、天音?」
 それくらい、この親友ならすぐに感づくのだろうが、一応。
 声に出さないのと声に出すのとは、やはり重みが違ってくるのだ。
「えぇ」
 僅かな安堵が、声音から感じ取れる。それに気付いたあおりが苦笑する。
 何だ、口では何だかんだ言ってもやはり二人のことを気にかけていたのか。
 そんなことを思ったとき、少女の声が聞こえた。
「えーっ!」
「へ?」
 唐突に聞こえた声に二人が同時に振り返る。
 シェーラが不満そうな表情で天音たちに問うた。
「もう帰っちゃうんですか? シュオン様がいいって言えば、ちょっとくらい上がって……」
「………ごめんなさい、それだけは遠慮しておくわ」
 彼の母の存在を知ってなおあの邸に足を運ぼうなどとは、到底思えない。
 それを彼女の表情から読み取ったシュオンが苦笑する。無言で謝っているようだ。
「? 何で?」
 ただ一人意味が通じないあおりが、天音を見た。あの強情の塊のような彼女をそうまで言わせる人物など、そう居ないだろう。
 そう思っての問いだったのだが、天音をはじめとし、それぞれが視線を逸らす。
「え? ちょ、天音っ?」
 一人置き去りにされたようであおりが焦った。柊一たちも知っているだろうが、あの天音がこの状態では、二人が口を割るとはまず思えない。
「……何なら、あおりだけ直に会ってみれば?」
 少女の提案に、ソフィアたちはもちろん、シュオンとヒースもさすがに言葉を挟んだ。
「え、ちょ、止めとけって! これ以上犠牲者を増やすわけには……っ」
「それに、喜ぶのは母上だけだしね…」
「分かってるわよ」
 二人の言葉に冗談だと返し、天音が僅かに苦笑する。
「まぁ、私たちも色々とあるから……ごめんね?」
 シェーラにそう言って、天音はソフィアたちを顧みた。
 ソフィアたちもシェーラと同様のことを思っているのだろうが、彼女たちがそれを口にすることはあまりないのだろう。
「…それに」
 さすがに疲れたように、しかし妙に晴れやかに彼女は言った。
「―――もう、定期的にこっちにも来た方がいいみたいだから」
「え?」
 天音の言葉を受けたソフィアたちの瞳が僅かに輝いた。
「だから、今回は帰るわ。またね」
「…はいっ!」
 元気よく答えたシェーラの言葉を聞き届け、天音とあおりの周りに突風が吹き荒れる。
 そして、薄い微笑を湛えた天音と、軽く手を振ったあおりの姿が、闇に呑まれた。

523心愛:2013/03/26(火) 17:07:05 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp
>>ピーチ


移動しておきましたw

また遊びに来てね四人ともー!
遊びじゃなくてどちらかといえば仕事っぽいけどー!

524ピーチ:2013/03/26(火) 22:09:19 HOST:EM114-51-188-154.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ごめんなさいわざわざごめんなさいー!

今度ネタを拾ったときは(え?)完璧な遊びで連れてくるから!←

525心愛:2013/03/27(水) 12:58:29 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、それは楽しみだw

いつでも遊びにおいでー(`・ω・´)

526ピーチ:2013/03/28(木) 07:05:29 HOST:EM114-51-160-221.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

じゃあ次は頑張って遊ぶために連れて行くから! 足りない頭で考えて!

じゃーいつでも行きまーす←

527心愛:2013/03/29(金) 09:23:19 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp
>>ピーチ

足りなくないだろむしろ満ち足りてるだろ!


いつもいつもすみませんなぁ(つд`)
ここあは気楽に待ってるよw

528ピーチ:2013/05/15(水) 11:56:35 HOST:zaq31fa543a.zaq.ne.jp
貴方のスレは最高です!
感動しました!こんなにも素晴らしいスレがあるとは・・・

でも所詮はアホ女かな?


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