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紫の乙女と幸福の歌

1月波煌夜:2012/03/10(土) 12:03:26 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
初めまして。
月波煌夜(つきなみ・かぐや)と申します。
小説を書くのは初めてで、とても緊張しています(^-^;
拙くて見るに耐えない文章かもしれませんが、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
感想等戴ければ泣いて喜びます。
ですが、月波は非常に小心者です。一つの批判にもガクブルしてしまうと思われます。
なので、厳しい御言葉はできるだけオブラートに包んで戴けると嬉しいです(>_<)



不定期の更新になると思います。
お話は少女小説風をイメージしています。


†主要な登場人物†

ソフィア―――
しあわせを呼ぶと云われる紫の瞳を持つ少女。

シュオン―――
エインズワーズ公爵息。変わり者だが心優しい青年。

シェーラ―――
ソフィア付きのメイド。

ヒース―――
ソフィアの見張り役の従僕。

2月波煌夜:2012/03/10(土) 17:22:06 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp

『―――――――』

豊かな緑に囲まれ、あらゆる資源に恵まれた小さな王国、マルグリット。
この国には、代々語り継がれてきた伝承がある。
王侯貴族から平民まで。
全ての子どもたちは寝物語として聞いて育ち。
ゆくゆくはまた、彼らが自分の子に話して聞かせる、ささやかな伝説。
細部は違えど、筋書きは皆同じ。


“百年に一度生まれてくる紫の瞳を持つ者は、他者に幸福をもたらす”


人々は彼らを、畏怖と憧憬の果てに。美しい宝石の名に因んで、
《紫水晶(アメシスト)》と呼んだ。

3月波煌夜:2012/03/10(土) 17:52:32 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)1』

『それ』は、少女の形をしていた。
簡素な部屋。
飾り気の無い寝台、椅子に箪笥。生活するのに最低限のものしか存在しない、どこかもの寂しい場所だった。
その粗末な部屋の中央付近の椅子に、
「……………」
『それ』は腰掛けていた。
酷く、美しい少女だった。
年の頃は十代中盤。ほっそりと痩せた体躯を、薄い水色のドレスで包んでいる。
両耳の辺りで結った、冴えた月明かりの如く輝く、銀細工のように冷たくも優美な光沢を放つ長い髪。
闇夜に一雫ワインを垂らしたような、神秘的に光る紫の瞳。銀の蝶の羽根のような睫が影を落とす淡い菫の色をした双眸はまさしく宝石の美しさ。
薄紫に発光して見える真珠の肌も、硝子を削りだしたように美しく尖った顎も、花びらみたいに可憐な唇も。全てが精巧な人形を思わせる、繊細で完璧な美貌を持つ少女だった。
しかし。
彼女には生気というものが無かった。
感情を湛えることなく静かに凪ぐ、絶望に彩られた紫の瞳は、そうすることが使命であるように、ただ、虚空をぼんやりと映していた。
華奢な四肢はだらりと力無く投げ出され。本当に、幼い主人に忘れられてしまった、大きな人形のようだった。

4月波煌夜:2012/03/10(土) 19:45:09 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)2』

此処は、広大な面積を誇るブッドレア伯爵邸の隅に聳える塔の最上階。
しあわせを呼ぶ『貢ぎ物』、《紫水晶(アメシスト)》として、様々な家を転々としてきた彼女は、三ヶ月近くこの部屋で暮らしていた。
その時。ガチャガチャ、と乱暴に外側から鍵を開ける音がし、召使いの女が入って来た。
気味悪そうに、身動き一つしない少女を一瞥しながら食事のトレイをテーブルに置くとすぐに、扉の鍵を閉めずにそそくさと出て行ってしまった。―――今からまた伯爵が来て、願い事を叶えるように言われるのかしら。
少女は椅子から降りてテーブルに近づき、固いパンを手にとると、部屋の北側にある窓の方へ足を進めた。
そして、背伸びして窓を開き、手に持ったパンを細かく千切って外側の枠にまいた。
しばらくの間、少し窓から離れてじっとしていると、餌に釣られて小鳥がやって来るのだ。
何も無い部屋、何も無い日々の中で、彼女が一番好きな時間だった。

5:2012/03/10(土) 20:03:04 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
こnです。

かぐやさんの小説、読みやすくて話に吸い込まれていきます^^

応援してますよ(*^_^*)

また来ますね\(^o^)/

6月波煌夜:2012/03/10(土) 22:07:27 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>5

初めまして。
こんな稚拙な文章に目を通していただいて本当に有難う御座います…!
燐さんのような偉大な先輩にコメントいただけるなんて…光栄です。
発見したとき「ふおおおおおお!?」と飛び上がってしまいました(←変態)

燐さんの小説も、私の更新が落ち着いたら、必ず!読ませてもらいますね(^-^)v

それでは。
まだまだひよっこですが、宜しくお願いします(*´д`*)

7ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/10(土) 22:41:00 HOST:e0109-49-132-13-14.uqwimax.jp

はじめまして、ねここという名前で小説を書かせていただいている者です(`・ω・´)
タイトルや本文に釣られてやってきましたv

ここまで読ませていただいたのですが、とても文章力が高く羨ましいなと感じました(笑)
表現が細かくできていて、この場で何が起こっているのかとかどういう服装なのか、容姿まで完璧に文章のみで再現できているのは本当に憧れます。

これからも月波煌夜さんの小説を読んで勉強させてください(笑)
小説を書く者同士の仲間として、よろしくお願いしますm(_ _)m

8月波煌夜:2012/03/10(土) 23:00:46 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)3』


―――そうだわ。椅子に乗れば、もっとよく見えるかもしれない。
少女は踵を返し、先程まで座っていた椅子を持ち上げると、窓の下に置いて、その上で立ち上がった。
「……わぁ!」
少女は大粒の瞳を輝かせた。
愛らしい小鳥たちが仲良くパン屑を啄んでいる様子がすぐ近くで見える。
―――何で今まで気づかなかったのかしら!
彼女は窓枠に掴まり、夢中になって下界の景色を眺めた。
―――綺麗……!

少女を現実に引き戻したのは、男の鋭い声だった。
「何をしている!」
はっとして振り向く。
部屋に踏み込んできたのは、この屋敷の主の伯爵だった。
「捕まえろ!」
側にいた大柄な従僕(フットマン)がすぐさま少女を椅子から引きずり降ろす。
「何するの!?離して……!」
暴れたが、小柄で力の無い少女にはどうしようもない。
抵抗虚しく腕を掴まれ、乱暴に床に押し付けられた。
「……まさか、逃げようとするとはな」
伯爵が苦々しく呟く。
「違います!こんな高い所から私が逃げられる訳が無いでしょう!?」
「だが、お前は《紫水晶》だろう!奇跡が起きて、お前を怪我なしで逃がすかもしれない」
そんな訳が。
無い、とは言えなかった。
少女の幸福を呼ぶ力は、ありとあらゆる事に及ぶ。
それに、少女にも自分の力がどういうものなのか、分かっていなかった。自分どうやって幸福を呼びこんでいるのかも分からない。
黙ってしまった彼女に、怒りに燃える伯爵が告げる。
「しあわせを呼ぶのは、その瞳なのだろう?なら、その目だけを抉りだしてしまえば良いのではないのか?」
さああああっ、と少女の美しい顔から血の気が引いた。

9月波煌夜:2012/03/10(土) 23:30:26 HOST:proxyag002.docomo.ne.jp
>>7

初めまして。
うあああああありがたい御言葉、本当に有難う御座います…!
私は無駄にゴテゴテと美少女の容姿を飾り付けるのが好きでして…。
ねここさんの小説も、更新が一段落したら必ず拝見させていただきます!
これからも見放さずに仲良くしていただけると嬉しいです(*^-^)ノ
宜しくお願いします!

10竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/03/10(土) 23:43:15 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
初めまして。
コメントをさせてもらう竜野翔太と申すものです。

話の内容が分かりやすく、更新する話が短くて、スラスラと読んでいけますね。
ですが、あまり短すぎるのもよくはないので、そこら辺はもうちょっと伸ばした方がいいかと。
作品へのアドバイスではなにのですが、なるべく『普通はこうは読まないだろう』という漢字にはふりがなをつけたほうが良いかと……僕も読めない漢字がちょこっと出てきたので……。
作品自体はとても読みやすく、いいと思います。
紫色の瞳を持つ少女が幸せをはこぶ、か……。頭の構造が中二でバトルしか考え付かない僕には永遠に出ない設定なので、羨ましいです!

これからも頑張ってくださいね^^

11月波煌夜:2012/03/10(土) 23:55:01 HOST:proxyag018.docomo.ne.jp
>>10

初めまして。
貴重なアドバイス、有難う御座います!
確かに、時間の合間を縫って急いで書いていたので、妙に短くなってしまいました。
これから少しずつ、伸ばしていきたいと思います。
あと漢字にも気をつけます(^-^;ふりがなふりがな…。

話の感想も有難う御座いました。
これからも是非、宜しくお願い致します!

12月波煌夜:2012/03/11(日) 10:16:55 HOST:proxyag042.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)4』


「ごめんなさい……」
震える声。
黙ったまま伯爵が腕を伸ばし、テーブルの上にあったナイフを静かに手に取った。
「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい!もうしません、ずっと、ずっと大人しくしてるから……っ」
鈍く光る刃が近付いてくる。
「いや!いやああぁっ!誰か!誰か助け……っ」
少女は、息を飲んだ。
―――……誰の名を、呼べばいいの?
彼女は愕然とした。
少女は物心ついたときから、《紫水晶》として、欲望の権化(ごんげ)たる人々の中に放り込まれ、必ずと言っていいほど、鍵の掛かる一つの部屋に監禁されてきた。
部屋の外に出ることは許されない。だから、同年代の友人なんているはずもない。
親の名も、知らない。
『おまえは、しあわせを呼ぶんだよ』
口元に厭らしい笑みを浮かべた、小さな少女のもたらすという幸福に酔う貴族たちの顔が次々と思い浮かんで。
彼女は。
「………………」
感情を映さなくなった瞳で、すぐ近くまで迫る刃の切っ先を見返した。
もう、何もかもがどうでもよくなってしまって。
ただぼんやりと、今にも彼女の瞳に触れそうなナイフと、その先の伯爵を見つめ。
「……旦那様。その娘を傷つければ、折角の幸福が逃げてしまうのではないですか?」
意外にも、口を開いたのは少女の腕を捕らえる従僕(フットマン)の男だった。
少女がはっと我に返ると同時に、刃先が離れていく。
「そうなのか?」
少女はこくこくと必死に頷いた。
本当は分からないけれど、他にこの状況から助かる術(すべ)は無いから。
「チッ……面倒な」
伯爵がナイフを放り出して吐き捨てる。
「確かに、折角こいつが来た後、奇跡的に娘に最高の縁談が舞い込んだんだ、それが破談にでもなったら元が取れないからな。……いいか、もし今度懲りずに同じことをしたら、窓の無い物置にでも閉じ込めるから、覚悟しておけ」
後半は少女に向けての台詞だった。
彼女はまた、必死に頷く。
不機嫌そうに顔をしかめ、伯爵が開いた扉から出て行った。
部屋には、少女と、やっと彼女を離してくれた従僕(フットマン)の二人だけになる。
―――ほんとに助かった……?
ぺたんと床に座り込んだ少女は、立ち上がった男を見上げる。身長差がありすぎて、顔は見えない。
―――もしかして……助けてくれたの……?
「あ、あの……っ」
他人に自分から話しかけるのは初めてで。かなりの勇気を振り絞って、彼女は言った。
「あ、ありが……っ」
「旦那様も、何でこんなものを養女にしてまで置いておくのか」
彼女の言葉を遮ったのは、男の冷たい声だった。
「本当に面倒だ。……もう幸福は手に入ったのだから、さっさと売り払ってしまえば良いのに」
男が閉めた扉が、ギィィイイイイ……と耳障りな音を立て。
部屋に、静寂が戻った。

13名無しさん:2012/03/11(日) 10:37:47 HOST:wb92proxy15.ezweb.ne.jp
立て板に水のように書いて下さいね。


自分の顔に満足していたら老人になっても子供だった


そうはなりたくないですね

14月波煌夜:2012/03/11(日) 11:01:19 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)5』




「おお、可哀想に……!こんなにやつれて。すぐに温かい食事を用意させるからね」
カークランド伯爵邸。
少女一人が暮らすにしては大きすぎる一室に、彼女はいた。
恰幅の良さと気前の良さで知られる老紳士、それがカークランド伯爵だった。
「可愛い《紫水晶(アメシスト)》、何か欲しいものは?何でも言ってくれ」
少女は、この屋敷についた途端、待ち構えていたメイド達に連れ去られ、薔薇の花が浮かぶ浴槽に入れられ身体中洗われて、豪華なドレスを着せられていた。
薄いローズピンクのシルクサテン。スクエアに開いた胸元には金色のコットンレースが贅沢に重ね使いされ、華やかで大きなリボンが縫い止められている。ふんわりと愛らしく膨らんだ姫袖を彩るレースにも、黄金の糸で繊細な小花が刺繍されているという凝りようだ。
光沢のある華やかなサテン地に施された銀糸の刺繍は透き通るような白い肌を引き立て、星屑のようにちりばめられた真珠は美しい輝きを彼女に添えた。
「……特にありません」
「そうか?では帽子にしよう。君の綺麗な銀髪に合うものをね」
―――帽子なんて、此処から出て行く時以外被る機会は無いでしょう?
「他に何か望むものは無いかね?」
いいえ、と言いかけて、美しく着飾った少女はささやかな望みを一つ、思いついた。
身体の自由ではなかった。自由を願ったって、無知な彼女は、どうやって生きていけば良いのか分からない。そんな夢はとうに捨てた。
「あの。……私の名前は、《紫水晶》ではなくソフィアです」
彼女―――ソフィアは滅多に呼ばれることのない自分の名前を口に出した。
「そう、呼んでいただけませんか」
そう呼ばれることで、自分は《紫水晶》という『モノ』ではなく、一人の少女なのだと思いたかったのだ。
「ソフィア。ソフィアか。良い名だ」
ソフィアは少し、ほんの少しだが嬉しさを感じた。自分の親が名付けてくれた―――そう信じている―――名前が誉められるのは、悪い気はしなかった。
胸の奥に、小さな、しかし暖かな焔が灯ったような、そんな気がした。

15月波煌夜:2012/03/11(日) 11:30:56 HOST:proxy10076.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)6』

「ではソフィア、このくらい君にプレゼントすれば、私の息子の病気を治してくれるのかな」
冷水を頭から浴びせられたような気がした。
「……え」
「息子の病気は生まれつきでね、医者にもあと二ヶ月ほどしか保たないと言われているんだ。ソフィア、君の奇跡の力が頼りなんだよ」
―――そうよ。
―――《紫水晶》の私に、人が無条件に優しくしてくれる訳がないんだわ……。
「……はい」
ソフィアの感情を灯さないヴァイオレットの瞳が、微(かす)かに揺らいだ。
「そうか!治してくれるか!何て素晴らしいんだ、ソフィア!」
伯爵は喜色満面、という様子で、ソフィアの前に跪く勢いで彼女を仰いだ。
「他には何を贈ろうか。色とりどりのリボンや……うんと素敵な靴もいいな」
すっかり舞い上がり、一人であれこれと考えている伯爵は、ソフィアのわずかな変化になど全く気がつかなかった。

16月波煌夜:2012/03/11(日) 12:02:38 HOST:proxy10075.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)7』





「聞いてくれ、ソフィア!息子の病気がすっかり治ったんだ!」
顔を輝かせて伯爵がソフィアの部屋に駆け込んできたのは、それから一ヶ月余りのことだった。
「医者も奇跡が起こったとしか思えないと言っている。本当に君のお陰だよ!どんなに感謝してもしきれない!」
伯爵は寝台に腰掛けたソフィアの小さな手のひらを両手で包み、彼女を絶賛した。
「本当に君は素晴らしいよ、ソフィア……!今日は都で流行りの色のドレスを仕入れてきたんだ、是非着てくれ」
「……有難う御座います」
ソフィアはずっしりと重い箱を受け取った。
一度も開けないでそのままにしてしまっている箱が、広すぎる部屋の片隅に次々と積まれていることを、彼は知らない。
「気のせいか、私も最近身体の調子が良いんだ。これもソフィアの力かな」
彼の緑の瞳に映るのは、少女の姿ではなく。ただの幸福の偶像で。
「他には何が欲しい?」
「……特にありません」
毎日繰り返される、いつものやりとりだ。
「そうか、君は謙虚で良い子だなぁ!」
こう伯爵が言うのも、いつものこと。
でも、次に来る言葉は、今までと違った。
「そうそう。君にはかなり世話になったからね。そろそろ君を他の方に譲ろうと思っているんだ。エインズワーズ公爵の開催する舞踏会に招待して戴いたから、公爵への土産にしようと思うのだが、どうだろう」
―――……土産。
「……はい」
「よし、君が此処にいられるのはもう少しなのだから、張り切って贈り物を考えないとな」
しあわせが逃げないようにね!と笑い、伯爵は軽い足取りで部屋から出て行った。

「旦那様は騙されている」
「あの金食い虫」
伯爵が退室した途端。わざと部屋のソフィアに聞こえるように言っているとしか思えない、使用人たちの言葉たち。
「やっと居なくなってくれるのか」


人(せかい)は―――
ひとりの少女を、否定した。

17月波煌夜:2012/03/11(日) 13:27:46 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
ここまで御覧戴いた皆様、本当に有難う御座います!
やっと序章が終わりましたので、次からは1章『邂逅』に入りたいと思います。
こんなグダグダな話ですが、ハピエン目指して頑張りますので、これからもよろしくお願いしますヽ(´ー`)ノ

18月波煌夜:2012/03/12(月) 10:25:35 HOST:proxyag035.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 1』


天蓋付きの豪奢な寝台(ベッド)で、その少女は眠っていた。
純白のシーツに散らばる、プラチナを伸ばしたように純粋な銀色の髪は朝日を弾いてキラキラと光る。
練り上げたシルクの如く輝く肌は洗練された麗しさ。
芸術家があらゆる人間から集めた美しい部分を、細心の注意を払って配置したような造形、一部の隙も無い冷ややかな美貌。硝子細工のような冷たさ、儚さはどこか神聖な雰囲気を醸し出していた。

「…………………」
突如、閉ざされた瞼(まぶた)が僅かに痙攣し、銀の長い睫(まつげ)がゆっくりと持ち上がった。
現れたのは、大粒の紫の瞳。
《紫水晶(アメシスト)》の少女、ソフィアである。
ソフィアはぼんやりと天を見つめ、それから毛布(ブランケット)を鼻の上まで引き上げた。
―――あたたかくて……お日様の良い匂い……。……カークランド伯爵邸の毛布は、こんな匂いがしたかしら……?
内心首を傾(かし)げ、そしてやっと気がついた。
―――そうだわ。此処は……。
ソフィアは昨日の夜、このエインズワーズ公爵の屋敷にやって来たのだ。
舞踏会の後、ソフィアを自慢気にエインズワーズ公爵に見せびらかし、その恩恵について饒舌に喋り倒していた伯爵の姿が思い浮かび、ソフィアは唇を噛んだ。
―――何処に行っても一緒だわ。少しでも期待する方が間違ってる。
ソフィアは、次こそは違うかもしれない、と信じることすら、諦めるようになっていた。

19月波煌夜:2012/03/12(月) 11:02:39 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 2』


静寂を破ったのは、コンコン、とドアをノックする小気味よい音だった。
「おはようございます、ソフィア様!もうお目覚めですかっ?朝の紅茶(モーニングティー)をお持ちし……」
とそこで、元気良く入室してきた人物の瞳と、ソフィアの空虚な紫色の瞳が、合った。
一人のメイドだった。
まだ若い。16のソフィアと同じくらいだろう。
ふわふわとした柔らかそうな小鹿色(フォーン)の髪に、ぱちぱちと瞬(まばた)きを繰り返す大きな青灰色の瞳。
小さな顔に、同じく小さな鼻や唇がそつなく収まっている。
僅かに幼さを残した、愛くるしい顔立ちをした娘だった。
しかし、侍女の容姿などソフィアに関係するはずもない。
すぐにふい、と視線を逸らし、もう一度毛布(ブランケット)に潜り込もうと、
「……か、か、か、」
……したのだが、奇妙な声がしたのでそちらを見やる。
―――急に鴉(カラス)の鳴き真似を始めるなんて、頭のおかしいメイドなのかしら。
それはちょっと困るわね、と思ったその刹那。
「か、可愛いいいいいぃぃぃぃ!?」
「ひッ……!?」
メイドが飛びかかってきた。
ソフィアを寝台(ベッド)に押し倒し、青灰色の瞳をこれ以上無いほど輝かせて、
「やだ何この子超可愛い!?肌すべすべ髪サラサラ良い匂い―――!」
「……………!?……………!?」
「きゃあ引きつった顔も可愛い―――!」
ソフィアの華奢な躯(からだ)を力一杯抱き締めて揉みくちゃにした挙げ句、すりすりと頬擦りしてくるメイドの少女。
理解不能な状況にソフィアが意識を飛ばし掛けたとき、
「こらシェーラ!」
「ふみゅっ」
いつの間にやら部屋に入って来ていた男が、メイドの後ろ頭をべし!と叩いた。
しなやかな黒豹を思わせる漆黒の髪に同色の瞳、目つきが少々悪いということを除けば、なかなか男前の青年だった。
「御嬢様に何しやがる!」
そのままメイドの少女の首根っこを掴み、ひょいっと片手で持ち上げて床に放り出した。
「ひゃんっ!……何すんのよヒース!」
「それはこっちの台詞だろうが何御嬢様襲ってんだよボケ!ほら怯えてらっしゃるじゃねーか!」
「ああっ!ごめんなさいソフィア様!」
慌ただしい会話が繰り広げられている間に、ソフィアは寝台の隅っこに縮こまり、クッションを盾にしてふるふると震えていた。
―――な、何なのこの人たちは……っ?

20月波煌夜:2012/03/12(月) 16:42:10 HOST:proxy10071.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 3』

「えー……この馬鹿が大変失礼致しました。俺は御嬢様の護衛に任命されたヒースです」
ヒースはクッションで半分以上隠れたソフィアのネグリジェ姿をちらと見て、
「いや……ほんと、すみません」
気まずそうにすぐに目を逸らした。
「で、あたしはシェーラ!ソフィア様の身のまわりの御世話をさせていただきます!いぇい☆」
「いぇいじゃねぇ―――!お前今まで御嬢様に抱きついてただろうがそれの何処が御世話なんだよ!?」
「えーと、ほら、あれよ。まずはお互いのことを良く知らないとね?」
「……ほぅ。で、何が分かったんだ?」
シェーラは眩しい笑顔で人差し指をぴんと立て、
「ソフィア様の胸のサイむぐっ」
「お前もう出て行け!」
「む!むむむーむ、むむむむむ!」
「あ?……あぁそうか。お前はまだ自分の仕事があるのか」
「……っぷは!そうよあんたこそ出て行きなさいよ!淑女(レディ)の部屋に何の断りもなく侵入するなんてこのスケベ!恥知らず!」
「う。そればっかりは返す言葉も無い……」
「どうせ、どさくさに紛れてソフィア様にやらしーことしようとしたんでしょう!?ハッ、これだから男はっ」
「お前がどさくさに紛れて御嬢様にやらしーことしてんのを止めようとしたんだよ!?」
「……なぁんて言いながら照れて必死に誤魔化す弟を、優しいお姉さんなあたしとしては温かい目で見守っていこうと―――」
「突っ込み所が有りすぎて混乱してきたよ!あーもう、まずお前俺より三つも年下だろうが!そしてお前のどこが優しいお姉さんなんだよ!それから照れても誤魔化してもいねぇ!」
律儀に一々訂正してから、はあっと溜め息をつき、扉に向かって歩を進める。
「御嬢様、本当に色々と失礼しました……。俺は基本いつもこの扉の前に居ますので、外に用があったり、身の危険を感じたりしたらすぐに呼んで下さい」
ヒースの礼をする姿が廊下へ消え、扉が閉まる。
その音でソフィアは、ついさっきシェーラが入って来たとき、彼女が鍵を開ける音が全くしなかったことに初めて気付いた。
―――……気のせい、よね。
ソフィアの部屋の前に、護衛……とは名ばかりの、監視役を置かない家はあった。が、扉を施錠しないなんて不用心な所は、今まで無かった。
どの屋敷でも、《紫水晶(アメシスト)》たるソフィアの奇跡の力を恐れ、万一彼女が逃げ出すことのないよう、厳重な警備を欠かすことはなかった。
彼女の自由を奪うことで、自分たちの幸福を守ろうとしたのだ。
でも。
―――『“外に”用があったり』?
今、彼はそう言わなかったか。
―――まさか。きっと聞き間違いよ。
だって、もしそうなら、彼女が部屋の外を出歩いても良い、と言っているように思える。
そんなこと、何が起こっても有り得ない。
ソフィアは僅かな違和感を抑え込み、落ち着きなさい、と自分に念じた。

21:2012/03/12(月) 20:26:56 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
かぐやs>>イエイエノシ

偉大な先輩…全然そんな気配ないんですけどね…;

私の小説はもう…連載終わったんです。

色々事情がありまして…。

何時か復活するかもしれませんが…今の所はそんな気配すらないです^^;

22月波煌夜:2012/03/12(月) 20:33:32 HOST:proxyag052.docomo.ne.jp
>>21

えぇっっ((((゜д゜;))))
ほ、本当だ…!
うわー…凄く残念です(´・ω・`)
執筆を再開される予定はほんとにないんですか…?

あ、これからもちょくちょく遊びに来てくださると嬉しいです!

23:2012/03/12(月) 20:44:54 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
かぐやs>>ごめんなさいm(__)m

でも、第1期と2期は完結したので見てくれれば幸いです^^

今の所、ないですね…。

24月波煌夜:2012/03/12(月) 20:55:24 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>23

そうですかー…
燐さんの作品、タイトルからして凄く素敵で…読むの楽しみです(*^_^*)
感想とか、絶対書きますね!
とりあえず、この話の主要登場人物が全員揃うとこまで更新できてから、ゆっくり読ませていただこうかなーと思ってます。

25:2012/03/12(月) 22:08:18 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
かぐやs>>ごめんなさいm(__)m

楽しみにしてる読者を裏切る行為になってしまって…m(__)m

絶対…強制じゃないので書かなくてもいいですよ^^

26ピーチ:2012/03/12(月) 23:14:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
月波さん>>

初めまして♪こーゆー小説大好きだよ☆

更新楽しみにしてるね〜!

それと・・・名前なんて読むの?←バカだから分かんない((汗

27月波煌夜:2012/03/12(月) 23:33:02 HOST:proxyag024.docomo.ne.jp
>>25

いやいや(^^;)
私が書きたいだけので、是非書かせていただきますっ(・∀・)

28月波煌夜:2012/03/12(月) 23:37:13 HOST:proxyag024.docomo.ne.jp
>>26

初めまして!
つきなみ・かぐや、といいます。
煌夜で「かぐや」は、本当は「輝夜」のところをかなーり無理矢理読ませておりますので(^-^;
分かりにくくてすみませんっ

コメ有難う御座います!凄く嬉しいです…!
これからも宜しくですヽ(´ー`)ノ

29名無しさん:2012/03/12(月) 23:44:12 HOST:wb92proxy04.ezweb.ne.jp
先輩きどりすぎてんのちゃう

30ピーチ:2012/03/13(火) 07:14:49 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

OK!「かぐや」ね!

憶えた〜←数秒後には忘れるww

31月波煌夜:2012/03/13(火) 08:26:54 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>30

忘れちゃったら一番上↑を御覧下さい(笑

32月波煌夜:2012/03/13(火) 12:58:51 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 4』


「はぁい、お待たせしました!ソフィア様ー、お茶ですよー?」
まだ寝台(ベッド)の上に居たソフィアはその声を聞き、床に脚を下ろした。
そろそろと、白く塗られたテーブルとメイドの少女に近付く。
「今日はとっても良いお天気ですねー!気分まで晴れやかになっちゃいます」
シェーラは笑顔で話しながらも、その手は驚くほどてきぱきと動き、この上なく優雅で洗練された手付きで、繊細な薔薇の紋様が描かれた可愛らしいティーカップに琥珀色に輝く液体を注ぐ。
シェーラに薦められて椅子に腰掛け、ソフィアはそっとカップを持ち上げ、恐る恐ると口に近付けた。
ひとくち含んだ途端、微風(そよかぜ)のように爽やかで涼やかな香りが鼻を通り、しつこすぎない絶妙なバランスの甘さと苦さが舌に広がった。
「……美味しい」
思わず口に出してしまう。
「本当ですかっ?良かったぁ」
シェーラは、花が咲くようにぱああっと顔を輝かせた。
「そうだ!お聞きしたかったんですけど、ソフィア様ってお幾つですか?」
突然の質問に内心面食らいながらも、極めて平坦な声で告げる。
「……多分、16」
「わ、やっぱり近いです!あたし17ですよー」
……そんなことを知ってどうするのだろう。
ソフィアには意味が分からなかった。
彼女の、無愛想なソフィアに対する好意的な言動は、とても演技とは思えない。
あの青年、ヒースもそうだ。
―――……きっとただの気まぐれよ。そのうち飽きたら、放っておくか、願いを叶えろと詰め寄ってくるんだわ。
「ソフィア様……そのネグリジェはどうされたんですか?」
自分なりに考えをまとめた途端。
真剣な顔付きでソフィアの着ている服を見つめるシェーラ。
「…………………?」
「いただきものですか?」
カークランド伯爵からのプレゼントだ。こくり、と頷く。
「うーん……ソフィア様にはもっと大人しい色の方がお似合いになるんじゃないかなぁ……?こういうピンクはちょっとなぁ……。うんとフリフリ!っていうのも可愛いけど腰とか手足の細さを強調するような……。それかこう、清楚な雰囲気のすっきりしたやつ……。あったかなあ…………作るか?」
下を向き、小声でぶつぶつと呟く。
―――や、やっぱりこのメイド、何かおかしい……!
「あ!ご、ごめんなさい!あたしこういう仕事大好きでー……つい自分の世界に入っちゃいました」
「……そう」
「はいっ!」

33月波煌夜:2012/03/14(水) 12:21:00 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 5』

心から嬉しそうに声を弾ませるシェーラ。
自分の人生を思い切り楽しんでいる様子の彼女を見て、少し羨ましく思っている自分に気づき、ソフィアは少し驚く。
今まで、人と関わることはほとんど無かったから。
心を閉ざして、常につきまとう悲しみも痛みも、何も感じなくて良いように。
だから、『人』と自分とを同じ天秤に掛けて初めて生まれる、『羨ましい』なんて感情を抱くのは、単なる『モノ』であるソフィアには、初めてで。
慣れないその感覚に戸惑う。
―――私、は……。
「あっそうだ!ソフィア様、坊ちゃまにはもうお会いになられました?」
その声に、いきなり現実に引き戻される。
「……いいえ」
昨夜、気難しげなエインズワーズ公爵と、優しげな風貌をした公爵夫人には簡単な挨拶を済ませたが、その息子の姿は見ていなかった。
「そうなんですか!シュオン様っていうんですけど、す――っごく綺麗でお優しくて格好良いんですよー!」
シェーラは豊かな胸の前で手を組み、夢見る眼差しで天を仰いだ。
彼女の周りにはピンクや白の小さな花々が舞い踊り、大きな瞳にはキラキラと星が瞬いている。……ように、見える。
「綺麗な金髪で、ほんとの王子様みたいなんです!あたしたちメイドの間でも大人気なんですよっ!……でもぉ」
シェーラはくるりと鮮やかにターンを決め、ぴっと人差し指を立ててソフィアの方を向いた。
「ちょおっと変わり者でして。あ、内緒ですよ?」
反応を示さないソフィアにも気分を害することなく、楽しそうな表情のまま、秘密を打ち明けるように声を潜める。
「ピアノやダンスもかなーり御上手で、……でも、火薬とか爆薬とか毒薬とかの開発に異常にハマっていらっしゃるんです。なんか御自分で色々な研究をなさってるらしくて、たまに専門家さんの方も此処にお見えになるんですよ!」
ちょっと怖いですけど凄いですよねぇ、と軽やかに笑う。
「小さい頃は、木に登って下にいる召使いに向かって如雨露(じょうろ)で水を掛けたり、屋敷中で何処から来たのかも分からないほどの量の猫を放し飼いしようとしたり、高価な花瓶を割って歩いたり……他にもありますけど、相当な悪戯(いたずら)好きだったみたいですよ?奥様に怒られたときは決まって、『悪戯じゃない、これは純粋な実験だ』っておっしゃったそうです。……うーん、例えるならー、」
そこでシェーラは少し考え込み、それからまたぴしりと人差し指を立て、
「変態王子?」
……とんだ王子様である。

34ピーチ:2012/03/14(水) 21:48:08 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

あははっ♪分かった〜!

更新待ってるよー!!

35月波煌夜:2012/03/15(木) 12:03:35 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp
>>34

有難う御座います♪
書いてる本人も何処に行きつくのか分からないという絶賛迷走中ですが、ビーチさんにそう言っていただけると凄く嬉しいです…!
これからも是非覗いてくださいね(*^_^*)

36月波煌夜:2012/03/15(木) 16:37:32 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 6』

「……そう」
「そうなんですよー。……ってああーっ!忘れてたっ!ソフィア様、朝食はいつお摂りになりますか?うぅ、これ聞けって言われてたのに……」
―――い、忙しい子ね……。
「……後でいいわ」
「うーん、じゃあ一時間くらいしたらお持ちしますね!それまでゆっくりお風呂にでも入ってお待ちください〜」
―――お風呂?
予想外の言葉に、ソフィアは目を瞬(しばたた)かせた。
「朝シャワー浴びるとすっきりしますよねぇ。あ、こちらです、どうぞどうぞ」
シェーラが壁の側面にある扉を開けると、小綺麗なタイルに囲まれたバスルームが姿を表した。
中を覗くと、猫足のバスタブには既に温かい湯が満ちている。
―――いつの間にお湯を入れたのかしら……?
このメイドの少女は紅茶を淹れる手際といい、意外と優秀であるようだ。
「お背中流しま―――……うぅ。そうですか、大丈夫ですか……。何かあったらヒースに声を掛けるか、この呼び鈴を鳴らしてくださいね」
それではごゆっくりー、と言い残し、シェーラは扉を閉めて出て行った。



半刻ほど後。
ソフィアは用意してあったバスローブを纏い、浴室を出た。
温めの湯が気持ちよく、浸かっているうちに身体が完全に目覚めたような気がする。
ソフィアは改めて部屋を見回した。
落ち着いた、けれどどこか可愛らしい印象の、品の良い部屋。
天蓋付きの豪奢な寝台(ベッド)や洒落た洋燈(ランプ)、薔薇模様が描かれた優美なカーテン。
白いクロゼットには美しく刺繍された垂れ絹が掛けられ、床にはふかふかとした毛足の長い絨毯が敷き詰められている。
白く塗られたテーブルの上にあるものに目を留め、ソフィアはそっと歩み寄る。
ふわりとそれを広げると、純白のワンピースだった。
きゅっとウエストを絞った、バレリーナのようなロマンティックで愛らしいシルエット。
繊細なシフォン生地が控えめに高貴なニュアンスを醸し出し、雪のようなファーが胸元を飾る。
―――これを着ろってことよね。
ソフィアは自分の荷物からも必要なものを取り出し、さっさと着替えを始めた。
透明にも見える白絹の靴下を履き、ワンピースに袖を通す。
ソフィアの為だけにあつらえたようにぴったりで、堅苦しいドレスよりもずっと着心地が良い。
それから鏡台の前に立ち、髪を二つに分ける。幼い頃からしてきていることなので、意識しなくても指が勝手に動き、すぐに綺麗に結い上げ終えた。
身支度を全てひとりで終わらせてしまったソフィアは、本棚を見つけ、中から適当に一冊を取り出した。
本は、何もすることが無く、無意味にただ時間を過ごすことを余儀無くされるソフィアにとって、退屈を紛らわせる一番の友だった。
読み書きを習ってからというもの、運良く本棚のある部屋に通されたときは、同じ本であっても、内容を覚えてしまうまで読み込んだものだ。
ソフィアは、表紙を眺める自分の唇が思わず綻ぶのを感じた。

37ピーチ:2012/03/15(木) 23:58:01 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

ソフィアちゃんって・・・偉ーーーーーーーい!!!!

ヒース達も優しいねー!ってゆーか・・・どこに行き着くか分かんない

はないでしょww  更新待ってま〜す♪

38月波煌夜:2012/03/16(金) 10:43:40 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp
>>37

わぁ!またお越しいただいて有難う御座いますっ(*´д`*)
ソフィアは「ほんとは普通な女の子なのにそれを自分で閉じこめちゃってる」キャラのつもりです。
ゆくゆくはツッコミもできるクールな子に育てるつもりです(ぉい
ビーチさん、どうぞ気長にお付き合いくださいませ(≧∀≦)

39月波煌夜:2012/03/16(金) 11:50:20 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 7』


しばらくして、寝台(ベッド)に座るソフィアが、小説の序章を読み終えた頃。

……ドゴオオオオオンッ!

突如、大きな爆発音が響き、部屋が僅かに揺れた。
ソフィアは驚いて思わず本を取り落とす。
「ご無事ですか御嬢様!」
扉が勢いよく開き、慌てた様子で従僕(フットマン)のヒースが顔を出した。
「……ええ。何があったの?」
「いや、その……何と言いますか、ちょっとした手違いだと思うのですが…………す、すみません御嬢様、少しだけお暇(いとま)を!すぐに戻りますから!」
あンの馬鹿男……!と唸り、あまり良いとは云えない目つきをますます鋭くして弾丸の如く廊下へと飛び出していく。
扉は開いたままだ。
「…………………」
ソフィアはちらりとそれを見て、急に不安に襲われ、寝台の上で膝を抱えた。
―――……誰かが、私を探しに来たの?
今まで、《紫水晶(アメシスト)》の力を欲する者による侵入は幾度もあった。その全てを、それぞれの屋敷の優秀な見張り役は叩きのめしてきたのだが。
今、ソフィアを見張る者もいなければ、守る者もいない。
それに。ソフィアの“しあわせをもたらす”奇跡の力は、彼女自身に及んだことは一度も無かった。……だから、ただの非力な少女であるソフィアには、自分で身を守る術(すべ)も、無い。
「…………………」
と、そこで。
「ソフィア様ぁ―――!」
ぱたぱたと駆けてくる足音が聞こえ、小鹿色(フォーン)のふわふわした髪を揺らし、シェーラが飛び込んできた。片手には朝食と思(おぼ)しきトレイを持っている。
「ああっ!もうおひとりで着替えられちゃったんですか!?……でもやっぱりあたしの勘は正しかった!超似合ってます!可愛いです!……ってちがーう!違わないけど違うっ!」
シェーラは瞳を輝かせたかと思うとぶんぶんと手を振り回し(なのにトレイはぴくりとも揺れない)、人差し指をぴんと立てて―――どうやら彼女の癖らしい―――こう言った。
「ね、さっきの音がした方で何があったのか見に行ってみましょうよー!」
…………………。
「…………………………え?」
今、この娘は何と言った?
何があったか見に行く?
部屋の、外に?
この、ソフィアと?
「ねねねねね、一緒に行きましょうよー!気になるじゃないですか!……まぁ大体予想はつきますけどね?」
ただ呆然と紫の瞳を見開くことしかできない。
―――何なの、このメイドは……。
ソフィアを勝手に部屋の外に出したと主人に知れたら、シェーラは解雇されるだけでは済まないかもしれない。
そんな危険を冒してまで、ソフィアを誘うというのか。
しあわせを呼ぶ人形《紫水晶》でしかない、ソフィアを?
「ね!早く行きましょうよー!ほら、れっつごー!」
シェーラは待ちきれなくなったらしく、トレイをテーブルに置き、座り込んだソフィアの手を取って強引に引っ張った。
思考以前に、竦(すく)んでいた脚が、自然と動いていて。
紅潮した頬に、部屋のものよりも少し涼しい空気が当たる。
シェーラが軽く走り出した。
廊下と幾つものドアが次々と視界を横切る。
繋いだ手のひらは、とても柔らかくて、温かかった。

40月波煌夜:2012/03/16(金) 15:28:21 HOST:proxyag022.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 8』

辿り着いたのは、一つの重厚な作りの扉だった。
「しーっ、ですよ」
シェーラは悪戯(いたずら)っぽく人差し指を唇に当てると、扉にそっと近づいた。そのままそろそろとドアノブを回し、少しだけ間隔を作る。
―――危険は、無いみたいね。
ソフィアは少し安心して嘆息し、それから、どうしようかと迷った後、何となくシェーラの後ろに立った。
さっきから、心臓がばくばくとうるさい。
何しろ、初めて命令以外で―――自分の意志で、部屋の外に出たのだ。
見知らぬ使用人たちとすれ違うたびに冷や冷やしたが、彼らは抜け出してきたソフィアの姿を見ても、にこやかに笑って頭を下げるだけだった。
何処かの客人とでも思っているのだろうか。
でももし、ヒースやソフィアの正体を知る者に見つかってしまったら、どうなるのだろう。分からない。
ぐるぐると考えを巡らせている間に、部屋の中の声が漏れ出てくる。
「―――……だっからお前は……!何度言ったら分かるんだよ家ン中で爆発引き起こすんじゃねぇ!毎回後片付けさせられるこっちの身にもなれや!」
―――……ヒースっ?
最初に聞こえた怒鳴り声と粗野な言葉遣いは、間違いなくあの見張り役のものだ。
「嫌だなぁ、ただの純粋な化学の実験だよ?」
「その台詞はもう聞き飽きたわ!つーか何の言い訳にもなってねぇ!」
「うーん、でも威力は想定していたものよりも大分落ちるなあ。硝石に不純物が多いのが原因かな、やっぱり」
「威力があってたまるかッ!もう火薬と結婚しろこのド変態!」
「あ、それは良いね!あと是非毒薬とも結婚し―――……うん?そこに誰かいますか?」
その声が聞こえた途端、シェーラは驚くほどの速さで扉を閉め、
「よし逃げましょうソフィア様!」
「させるかあッ!」
扉を開けて素早く出てきたヒースが、身を翻したシェーラの首根っこをこれまた驚くほどの速さで掴んだ。
「にゃー!はーなーせぇー!」
「お・ま・え・はぁっ!何で御嬢様連れ出してんだよ馬鹿!もしっ―――」
「……ごめんなさい、部屋の外に出て。その子は悪くないわ」
ヒースが言い終える前に、ソフィアが口を開いた。
「すぐ戻るから」
「あ、ち、違うんです御嬢様!いや、えっと……女のこいつには御嬢様の安全は十分に確保できませんから……。だから、不用心に連れ出したこいつに対して怒ってるだけです」
ソフィアはきょとんとしてしまう。
―――えっと……、つまり……?
「……どうしたの?」
部屋の中で聞こえたのと同じ声がした。
ソフィアは振り向き、―――息を飲んだ。
辺りが急に明るくなったような、そんな気がした。
サラサラとした蜂蜜色の髪はまさしく天使の美しさ。
大きく見開かれた、明るいブルーに輝く瞳はどこまでも蒼く、碧く。雲一つない晴れた日の空を閉じ込めてしまったかのよう。
すっと通った鼻梁、薄い唇。
その男の、優しげで、乙女心を捉えて離さない甘く整った究極の美貌はまるで、
―――御伽噺の王子様……?
と、いうことは。
「君、は……もしかして、例の《紫水晶(アメシスト)》の……?」
「……はい」
「……初めまして。僕はシュオン。一応ここの跡取り息子です」
気品と愛嬌に溢れた微笑みは、彼の育ちの良さを十分すぎる程に証明している。
―――この方が。
なるほど、シェーラが騒ぐのも当然といえるだろう。
「……あの、さ。良かったら」
そして、エインズワーズ公爵家の嫡男シュオンは、ソフィアに向けて。
「庭園に、散歩にでも行かない?」
『………………………………は?』
ソフィアとヒースの声が綺麗にシンクロした。

41ピーチ:2012/03/16(金) 17:13:00 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

わぉぉ!!喜んで貰えたww←アホ抜かせ!

ってゆーかシェーラ達も凄いことしたね〜

だからこそ続きが気になるぅぅぅ!!!!

42玄野計:2012/03/16(金) 17:35:26 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ボクは、限り無く幸せを生みます。

43月波煌夜:2012/03/16(金) 19:34:55 HOST:proxyag010.docomo.ne.jp
>>41

わーいわーいo(^o^)o(←ただのバカ

またまたコメ有難う御座います!
これからメイン四人の関係が動いたり動かなかったり。
二章からもよろしくです(・∀・)

44月波煌夜:2012/03/16(金) 19:52:26 HOST:proxyag009.docomo.ne.jp
ここまで読んでくださった皆様、有難う御座います('-^*)
初めての上に、キャラが勝手に動き出して当初の予定と凄い差ができてしまったりと……。こんなどうしようもない駄文ですが、何とか一章まで書ききることができました。
次からは二章『願いのカタチ』に入る予定です。
ソフィアがクーデレな乙女化したり、シュオンがソフィアを口説いたり、シェーラが暴走したり、ヒースが苦労したりするかもです。後半二人は一章と変わらないと思われます。はい。

感想等、引き続きお待ちしております!
これからもどうぞ『紫の歌(←意味なく略した)』を宜しくお願いします((o(^-^)o))

45ピーチ:2012/03/16(金) 21:55:42 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

すごーい!!もう第二章行くの??

早いっ!早すぎるっ!!

46月波煌夜:2012/03/16(金) 21:59:35 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>45

もう、ソフィアの主要メンバーとの「邂逅」は終わりましたからね('∇')
速めな分残念クオリティですがご容赦を(>_<)

47ピーチ:2012/03/16(金) 22:33:22 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

ラジャーwww

結局、ヒース達ってソフィアの味方なの??

48月波煌夜:2012/03/16(金) 23:47:37 HOST:proxyag057.docomo.ne.jp
>>47

はい!
味方というよりは……理解者?
《紫水晶》としてではなく普通の女の子として接してくれる人たち、のつもりです。
まぁ私利私欲とか考えられない単純バカともいえますがw


〜〜全く関係ない話〜〜

この話の下書きもどきのノートを親に発見されてしまったorz← 勉強しろ!と怒られた……。
頑張って親の目をかいくぐりつつ更新します(´_ゝ`)
もし更新が滞ったら、「あ、あいつまたドジ踏んだな」とお思いください。
が、頑張りますよー。

49ピーチ:2012/03/17(土) 00:01:01 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

・・・わぁい・・・大変・・・

まぁまぁまぁ!ドジ踏まないように頑張って!!

50月波煌夜:2012/03/18(日) 17:55:48 HOST:proxy10088.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 1』


「ソフィア、こっちこっち!ほら、この花も綺麗でしょう?」
陽光を弾いて蜂蜜色に輝く艶やかな絹糸の髪、暖かみのある優しい色の碧の瞳。
神に祝福されているとしか思えない端正な美貌に、女の子を百人くらいまとめて卒倒させてしまいそうな極上の微笑を乗せた麗しの王子―――ではなく、エインズワーズ公爵息シュオンが、中央庭園に咲き乱れる可憐な花々のうちのひとつを見て、傍らのソフィアに話し掛ける。
「………はい」
対するソフィアは、機械的に返事をするだけで心ここにあらずという状態だ。
白薔薇のコサージュが幾つも溢れる帽子の下、虚ろな瞳は幸福をもたらすと云われる《紫水晶(アメシスト)》の証の紫。二房の煌めく銀色の髪が微風(そよかぜ)に靡く。
―――まさか、屋敷と屋敷の移動以外で帽子を使う日が来るなんて……。
正直、嬉しさよりも大分混乱が勝っている。
今朝は、目覚めたと思えばメイドに襲われかけたり、家の中で爆発騒ぎが起きたり、初めて部屋を抜け出したり、それから現在進行形で知り合ったばかりの公爵の息子と一緒に庭園を歩いていたり……と、今まで一日中同じ部屋に閉じ込められて、変わり映えのしない毎日を送ってきたソフィアにとっては、非日常的な出来事ばかりだったのだ。
本当にこれは現実なのか。それとも、新入りの自分をからかっているだけ?または、御機嫌取りをして願いを叶えてもらおうとしているのか。
無表情を保ちつつも内心ぐるぐると悩んでいるソフィアのやや後方―――同じく釈然としない様子の者が一人。
「意味が分かんねぇ……」
鴉羽色の髪を揺らす、従者の青年ヒースである。
極めて嬉しそうにソフィアに解説をして歩くシュオンを見、しきりに首を捻る。
「あ、あの火薬毒薬馬鹿の変態が自分から進んで女と話そうとするだと……?ありえねえ……」
「いっやあー、面白くなってきましたなぁ!あのタラシの癖に実は相当の女嫌いって噂のシュオン様が今日いらしたばかりのソフィア様とお散歩!つまりデート!むふふー、これはこれはこれからの展開が楽しみねー!」
「……って何でお前がいるんだよ!?」
いつの間にやらひょっこり現れ、やーねー、と人差し指を左右に振って笑う少女はメイドのシェーラ。
太陽に負けないくらい眩しくにこにこと笑い、
「あたしはソフィア様の担当なんだからついて行くのは当然でしょ?護衛役のあんたと一緒。それに、あたしだってちゃあんと用事があるんだから!」
と、そこで、
「ソフィア、朝食はまだ?僕もだから、良かったらここで食べない?」
一行を先導するシュオンが、華やかに水を吹き上げる噴水の前に並ぶ優美な木製のテーブルと椅子を指差した。
「……はい」
その返事が聞こえるや否や、
「はいはーい了解ですーっ!少々お待ちください〜」
シェーラがたたっと駆け寄り、椅子を引いてソフィアを座らせる。
シュオンがその向かいの席に腰を下ろす僅かな間に、持っていたバスケットから薄いブルーのクロスを取り出し、鮮やかな所作でテーブルに掛け、皿、ティーナプキン、ナイフやカップを配置していく。
中央に置いた銀の盆には色とりどりのサンドウィッチやパン、スコーンを美しく並べ、美麗な金の装飾が施されたカップに紅茶を注ぐ。
「はい、大変お待たせしました!準備かんりょーです!」
……待ってない。全然待ってない。

51ピーチ:2012/03/18(日) 19:09:43 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

凄いね〜!いっつも見てるけどその度に圧倒されるのはナゼだ!?w

でもなぁ、頭ん中が推理・異能者系だけのあたしには一生かけても書けない作品だわにゃあww

52:2012/03/18(日) 19:14:52 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐやs>>この度は私どもの小説にコメを頂きありがとうございます!!

しかも・・・長文で・・・。

でもごめんなさいm(__)m

こっちの小説を読む時間がなくて…。

時間があいたら必ず読むので、完結まで読むので、頑張ってくださいノシ

53月波煌夜:2012/03/18(日) 21:04:52 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>51

またまたコメどうもです!
「このカス文章をよく堂々と載せられるな」的な意味なら確かに圧倒されますよねw
…推理・異能系…だと…?
私の憧れジャンルではないですかo(^o^)o
頭の中が桃色お花畑な月波には到底無理だ…尊敬( ´∀`)

54月波煌夜:2012/03/18(日) 21:21:48 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>52

いや、あまりの低クオリティにびっくりする可能性があるので読まない方がいいかもです(^-^;

また、わざわざこちらにまでお越しいただいて有難う御座います…!
燐さんの神作品に一ミリでも近づけるよう、精進します(^-^)/

55ピーチ:2012/03/18(日) 22:49:23 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

やーだなー!単純に好きなだけだって!!

実際書いてる小説も基本的に異能系だしww

まぁ、リア友には珍しがられたけどね〜ww

頭の中は桃色お花畑の方が絶対いいって!!←何のアドバイスだww

56月波煌夜:2012/03/18(日) 23:18:13 HOST:proxy10076.docomo.ne.jp
>>55

そう言ってもらえると嬉しいです〜(o^_^o)
まあたまに蛍光ピンクみたいなドピンクになったりしますが←

ピーチさんの異能系小説も読みたいなぁ(〃▽〃)
そのうちお邪魔させていただきますね!

57:2012/03/19(月) 10:31:25 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐやs>>呼びタメOKですよ^^v

にょほほほ…←キモw

どうでしょう…あんまりそこら辺の所は分かりません。

イエイエノシ

此処には遊びに来ているとだけ認識しておいてください(*^_^*)

神作品…ですか。

あんなの神でも何でもないですいよ^^;

58月波煌夜:2012/03/19(月) 12:51:31 HOST:proxyag019.docomo.ne.jp
>>57

呼びタメOKかー(・∀・)

ではでは…神に対してアレですが…お言葉に甘えて馴れ馴れしくさせてもらうねw

燐も、月波のことは何とでも呼んでいいよー(^^)v

どんどん遊びに来てねー(^-^)/~~

59月波煌夜:2012/03/19(月) 13:48:40 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 2』

シュオンも目を丸くしている。
「君、凄いね……。こんな子がいるなんて知らなかったよ。名前はなんて云うの?」
「えへへー、シェーラっていいます!」
「……シェーラ?」
その途端、ヒースが明らかに『しまった!』という顔をして血相を変えた。
「へえー……君がシェーラ、かー……」
シュオンは天使の美貌に意地の悪い微笑みを浮かべ、そっぽを向きつつもダラダラと脂汗をかいているヒースを見つめた。
「そっか〜。いやぁ、シェーラは可愛いし良い子だし器用だし……良いお嫁さんになるんじゃない?ねえ、ヒース」
「な、何で俺に聞くんだよ!?」
「可愛いよね?」
「はァ?意味わかんねーしッ」
「ね?」
「俺は知らねえ!」
完全に茹で蛸状態で叫ぶヒースと、にやにやと笑っていなすシュオンのやり取りが続く。
「な、何なのよ……ってかヒースあんた、顔凄い赤くない!?絶対やばいよそれ、とりあえず治療しなきゃ中入ってっ」
「の、ノープログラムだッ」
「その発言からして大丈夫じゃないよね絶対」
「とにかく熱計らなきゃ……!ヒースおでこ出しなさい!」
「ぜっったいに嫌だ!」
「な……!ま、待ちなさいよー!」
「俺に触るなあああッ!」
「えええええッ?ちょっとそれ酷くない!?こら待てえー!」
庭園で追いかけっこを始める二人。ソフィアは自分の担当を決めた人の人間性が少々心配になった。
「うん、良いネタができた!当分使えるなこれ」
シュオンは御満悦という感じでにこにこしている。
「……少し羨ましいです。仲がよろしいのですね」
傍観していたソフィアの口からぽろりと零れ出たのは、心からの言葉だった。
自分でも驚いて口元を押さえる。
―――私、今……自分から喋った……?
つい、気がゆるんだのかもしれない。
「うん。僕の乳母がヒースの母親でね。同い年なんだけどほとんど兄弟みたいな感じ。アレ反応面白いじゃない?小さい頃からヒースを弄るのが趣味の一つなんだぁ」
……ソフィアはヒースに魂から同情した。
哀れすぎる。
「……シュオン様は、シェーラの名前をご存知だったのですか?」
まただ。するりと言葉が出てきて、ソフィアは唖然としてしまう。
―――この人は、何か魔法が使えるのかしら……。
人の心を知らずのうちにほどかしてしまう魔法。
「あーうん。できた特製爆弾の出来を試したくて、ヒースの部屋の扉を鍵ごと吹っ飛ばしたときに」
「……その前置きから既におかしいような気がするのですが」
「威力はそれはもう最小限に抑えたんだよ?……それでね、上手く音も抑えて破壊できたから、ついでにあいつの顔に落書きでもしてやろうかと思ってぐーすか寝てるあいつに近づいたんだ」
「……そこもかなりおかしいような気がするのですが」
「気のせいだよ。……それで、僕特製“絶対消えない油性ペン”を持って顔に近づけた瞬間、ヒースが『シェーラぁ……』って寝言言ったんだよ!ほんと面白いよね!ちなみにその後しっかり指でペン押し戻しながら飛び起きて。それ誰ー?って死ぬほどからかってやった」
……実にえげつない。
「今まで誰なのか必死に隠し通してきたんだけどね。今日やっと分かったよ」

60:2012/03/19(月) 13:54:20 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>ではかぐちゃんと呼ばせて頂きますノシ

うんw呼びタメ全然おkなんっすよw

61月波煌夜:2012/03/19(月) 15:45:33 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>60

かぐちゃんか(゚Д゚)
何か新鮮w

燐は…何か呼び方のリクエストあるかな?

62ピーチ:2012/03/19(月) 16:53:02 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>えー??あたしの小説ってつまんないよ?おもしろくないぞよ?

それでもいーのかえ??←どんな言葉だ!?ww

燐さん>>ひっさしぶりー!!

最近ねーあんまり小説書いてないんだー((笑

63:2012/03/19(月) 17:09:21 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>ちゃんずけ好きだからさw

私の親友も皆ちゃんずけなもんで;

別にないなぁ…。

そのまま燐でもいいよ。

64月波煌夜:2012/03/19(月) 18:01:56 HOST:proxy10071.docomo.ne.jp
>>62

全然構わないぞよw(←なんか無理してみる

というか面白いよ絶対!
そのうち覗きに行きます(o^-')b

65月波煌夜:2012/03/19(月) 18:09:45 HOST:proxy10072.docomo.ne.jp
>>63

りょうかーいV(^O^)

いやー、皆のお陰(?)であっという間に60超えちゃったよ( ´∀`)
ありがたいなぁー

66ピーチ:2012/03/21(水) 00:01:25 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

燐さんいーなー!!

ねーねー、あたしも「かぐちゃん」って呼んでいい??

67乃亜:2012/03/21(水) 00:12:09 HOST:p2178-ipngn100203sasajima.aichi.ocn.ne.jp
初めまして月波さん!!
最初から見ましたがとてもおもしろかったです\(^o^)/
これからも頑張ってくださいm(_ _)m

68:2012/03/21(水) 09:17:53 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
ピーチs>>

気のせいでしょうか。

貴方、少しウザイです。

69月波煌夜:2012/03/21(水) 09:39:55 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>66

勿論良いですよー!
あ、私も呼びタメしていいですか?
こっちだけ敬語もアレなので(・∀・)

70月波煌夜:2012/03/21(水) 09:43:17 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>67

乃亜さんはじめまして!
わああ……お読みいただきまして有難う御座います(〃▽〃)
嬉しいですっっ

これからもどうぞ宜しくお願いします!

71:2012/03/21(水) 09:45:31 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>はろはろ♪

新しいスレ作ったぞー!!

ジャンルはホラーだぞ!!

良かったら読んでみそw

72月波煌夜:2012/03/21(水) 09:58:59 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅱ.『願いのカタチ 3』

「……………………そうですか」
「うん」
ソフィアは、『人の見た目に騙されてはいけない』ということを改めて学んだような気がした。

「―――ところでさ。君は……しあわせを呼ぶ、んだよね?」

―――……来た。
ソフィアはカップを持ったまま、ピシリと全身を硬直させた。
―――……願いを叶えるよう、言われるんだわ。
予想より遅かったけれど。
自分の欲を満たす目的以外で、ソフィアに親切にする人間がいる訳がないのだから。
胸の奥が氷のように冷たくなる感覚が、急速に蘇っていく。
「…………はい」
「やっぱりそうなのか。《紫水晶(アメシスト)》の伝説は本当だったんだね」
シュオンは上品にサンドウィッチを口に運びながら、感心するような声音で呟いた。
目の先の幸福に溺れる彼の表情を見るのが怖くて、ソフィアは唇を噛み、俯く。
―――どうして、私はこんなに恐れているのかしら……。
今まで数え切れない程、求められてきたことだ。
それなのに。
―――……きっと、中途半端に情を移してしまったからだわ……。
不覚にも、ソフィアは。
今日出逢った三人と、ほんの少しだけれど、時間を過ごして。
嬉しい、と。楽しい、と。思って、しまったから。
―――駄目ね、私。
ソフィアは下を向いたまま自嘲する。
感情を、意志を、捨ててきたつもりだったのに。
ただの、しあわせを呼ぶ『モノ』として生きてきたつもりだったのに―――

「ね、どうやってしあわせを呼んでるの?」
「…………………っ?」
ソフィアは驚いて顔を上げる。
驚いたのは、楽しそうに弾むその声が、純粋な知識欲から来るものに感じたから。
今まで、同じ質問をされたことはそれこそ何回もあったが、こんな声で言われたことは、無かった。
ソフィアは一瞬迷い、僅かに震える声で告げる。
「…………わ、わかりません」
正直にこう答えると、相手は決まって動揺し、激昂し、騙されたと怒り狂う。
怖い。でも、
でも、この人は―――?
「君にも分からない、ってことは……君の意志とは無関係に幸せを呼び込んでる、ってこと?」
「……は、い」
「それは……」
彼はしばし言葉に迷う素振りを見せ、それから、
「それは、……つらいね」
「……………え」
さ迷っていた視線を、目の前の人物に向けた。
瞬間、息を飲む。
碧の瞳は深い海のアクアブルーに染まり、真剣さと悲痛な色に満ちていた。

73月波煌夜:2012/03/21(水) 10:01:46 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>71

はろはろー♪
授業中なうo(^o^)o

おお!
新スレとな(≧∀≦)
絶対読むよー!

74:2012/03/21(水) 11:14:04 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>授業中?

あれ、中3じゃなかったん?

てか、私より下かww

75月波煌夜:2012/03/21(水) 12:06:08 HOST:proxy10072.docomo.ne.jp
>>74

ぶっちゃけると現高1w
燐はー?

というか年上か…今更ながら呼び捨て&タメ口すみませぬ(´・ω・`)

まあ、あの文章力で年下だったら泣くww

76:2012/03/21(水) 12:17:08 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>いや、春から高1っすw

春から高2か〜w

ま、年上でも私はタメにするw

特別扱いなんてしないw

77月波煌夜:2012/03/21(水) 12:27:41 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>76

わ、リアルにまさかの年下!
バカでごめん…(つд`)
タメの方が月波は嬉しいよーw

78:2012/03/21(水) 12:34:32 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>

年下でごめんちょm(__)m

馬鹿?

いや、私の方が馬鹿だよw

日本人なのに外国人だと良く間違えられるのも事実ww

79月波煌夜:2012/03/21(水) 12:49:24 HOST:proxyag108.docomo.ne.jp
>>78

いやいやそれはないw

…って外国人!?
何故に!?

80:2012/03/21(水) 12:54:34 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>

いや、馬鹿だよw

真面目そうに見えて実は○○でした!!みたいなオチだからw

お父さんに良く言われるんだよ…。

[日本語ちゃんとしてない!!]

とか何とか…etc

見た目じゃなく、性格や口調で良く言われるなw

81乃亜:2012/03/21(水) 15:45:49 HOST:p2178-ipngn100203sasajima.aichi.ocn.ne.jp
月波さんコメありがとうございますm(_ _)m
とっても良かったです( ´ ▽ ` )ノ
続きが気になります!!

82月波煌夜:2012/03/21(水) 19:07:40 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>燐

いやいやいやいや(^o^)
って、でも外国人ぽいて言われるって凄い才能だよねw
英語得意だったり?ww

83:2012/03/21(水) 19:09:33 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>

いや、得意じゃないなw

国語は得意なんだけどね…。

84月波煌夜:2012/03/21(水) 19:10:42 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>乃亜さん

うああああこちらこそ有難う御座います…!
そう言っていただけるとほんと嬉しいですっ(〃▽〃)
全部丁寧に読ませていただくので、どんどんコメしてくださいね!

85乃亜:2012/03/21(水) 22:15:58 HOST:p2178-ipngn100203sasajima.aichi.ocn.ne.jp
どんどんコメしてくね〜( ´ ▽ ` )ノ
頑張ってください!!

86月波煌夜:2012/03/22(木) 10:06:31 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp

Ⅱ.『願いのカタチ 4』

「………………っ」
初めてだった。
誰かが、ソフィアの為にこんな表情を作るのは。
身体ががくがくと震えていことに気づき、ぎゅっと手のひらを握った。
ふと、頭の片隅であの時握ったシェーラの手の温かさを思い出す。
「……百年に一度の《紫水晶》なんだ、この社会の貴族連中はこぞって君を利用したがるだろう。でも、君が望んでそうなっているんじゃないんだろう?……きっと、凄くつらいと思う」
シュオンは、王族の血をも継ぐ誉れ高き名門エインズワーズ公爵家の跡取り息子。
華やかな社交界の裏でひしめく陰謀や画策のことは、重々承知しているのだろう。それらを全て完全に理解した上での彼の言葉は、強くソフィアの胸を打った。
「でもね」
シュオンはそこで一旦区切り、ソフィアの紫の瞳を覗き込んで、言った。
「僕らは、君を利用しない。《紫水晶》の力を利用しようと思って、君を迎え入れた訳じゃないよ。それだけは信じてほしい」
―――……そんなことが、あってもいいの?
ソフィアは、未だに信じられない思いで一杯だった。
―――……ほんとうに?
信じれば信じるほど、裏切られたときの痛みは大きい。他でもない、ソフィア自身が嫌になるほど幾度も経験してきたことだ。
……でも。
―――信じても、いいの……?
「だから……ちょっとずつでもいいから、仲良くしてくれたら嬉しいな」
シュオンは頬を僅かに染め、照れくさそうに、少年のようなあどけない微笑みを作る。
今までの、甘くとろけるような魅力的な微笑とはまた違うその笑顔。
「…………………!」
思わずソフィアの胸がきゅんっと高鳴り―――
―――き、きゅんって何よばかじゃないのっ?
とても相手の顔を直視できなくて、また光の速さで下を向く。
頬や耳が焼けそうなほど熱くなり、その妙に居心地の悪い感覚に、意味もなく椅子にもぞもぞと座り直してみる。
優しい春の風が、心地良い沈黙を守る二人の頬の熱を攫い、金と銀の髪をサラサラと揺らしていった。

と、そこで。
「ヒースぅぅうううう!はあっ、はあっ……いい加減答えなさい!シュオン様とはデキてるのデキてないのっ?」
「デキてる訳がねぇだろうが気色悪い!つかいつの間にどんだけ趣旨変わったんだよ明らかにおかしいだろ!」
「はあっ……今メイドの中で超話題なのよ!?あたしは良くわかんないけどさ!何か自分たちで『シュオン様×ヒース』だっけ?……いろんな本を作って売り買いしてる子もいるんだから!」
「ぎゃああああああああああッ!」
やたら女がキラキラした目で見てくると思ったよちくしょおおおおお、と叫びながら全力疾走するヒース、と息切れしつつも必死に追いかけるシェーラ。
「……………中、入ろっか」
「……………はい」

ソフィアとの良い感じの空気を邪魔されたシュオンはにこにことした笑みを取り戻しながらも、その瞳は一ミリたりとも笑っていなかった。

87ピーチ:2012/03/24(土) 14:01:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

久しぶりーー!!

うん!タメでも何でもいーよーww←自分が敬語使え!

88月波煌夜:2012/03/24(土) 19:43:24 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 5』



アルコールランプの青と橙の炎が、薄暗い部屋を妖しく照らし出す。
フラスコや試験管、様々な実験器具が無造作に転がる、気味が悪い―――もとい、個性的でとても味わいのある部屋の奥、青年が一人、粗末な椅子に座っていた。
闇の中、本人の輝きで、精緻な美貌が浮かび上がる。
髪は純金、瞳はサファイア。滑らかで、健康的な美に溢れた仄白い肌。
美青年は蠱惑的に碧い瞳を細め、恍惚とした眼差しで手に持ったビーカーの中の揺らめく液体を見つめた。
「そろそろ、かな……」
呟き、熱していた試験管を手に取り、中の琥珀色の液体をビーカーに流し入れる。
「ふふっ……」
薄く、形の良い唇から吐息と共に嘲(わら)い声が漏れ―――
「シュオンいるかー?って暗ッ!」
目つきと言葉遣いの悪い青年―――ヒースが扉を勢い良く開けた。
「わっ」
突然の侵入者と急についた明かりに、薬品を調合していたシュオンの手元が狂い、試験管が床に落ちて中の液体を吐き出す。
「あああああ……っ!この薬液、精製するのに一週間かかったのに……!」
悲痛な表情で床にしゃがみこむシュオンを見て、ヒースがばつが悪そうな顔で頭を掻く。
「わ、悪かったよ……。あー……何作ってたんだ?」
シュオンはたちまち花が咲いたような笑顔になり、
「致死率99%、超高純度濃縮毒液キャンディ」
「前言撤回だッ!ま、ま、またお前はぁ……!で、でも良かった阻止できて……」
「え、もう完成してるよ?」
シュオンが机の上のビーカーを指差す。
「それを早く言えぇッ!」
ヒースがビーカーを覗き込み、
「……なあシュオン、俺はこーいう化学とかには全く詳しくないんだが……何でこの固形物蛍光ピンクなんだよ!出てる煙も極彩色だし明らかにおかしいだろッ!?」
「え、綺麗でしょ?」
「お前の感性には心底脱帽するわ!」
「やだなぁ、そんなに褒めないでよ気持ち悪い」
「褒めてねえ―――!つーかお前ほんと性格悪いな!」
「有難う、最高の褒め言葉だよ」
「うがぁ―――ッ!」
「あはは。こんなにバカにして楽しい人ってそうそういないよねえ」
シュオンは軽やかに笑う。その純粋で子供っぽい笑顔は普段彼が振りまいている大人びていて華やかな微笑とは全く違い、そのギャップに、目にした女性は魅了されてしまうのだが、残念ながらというか幸運にもというか、今向き合っているのは野郎一人なので問題はない。
「……ねえヒース、ソフィアはどうしたの?」
ふと疑問に思ったシュオンは、ぎぎぎと歯軋りしているヒースに聞いてみる。
ちなみに、こんな単純バカだが、従僕(フットマン)の中でのヒースの能力や反射神経はずば抜けている。
本人曰わく『散々小せぇ頃からお前の度を超した悪戯に身体で耐えてきたからな、そりゃ鍛えられるわ』とのことなのだが、そんなことはシュオンには関係ないので気にしない。
「仮眠取る時間貰ったんだよ、四時間くらい。今は他のやつに代わってもらってる」
「ふーん。昨日は寝たの?」
「んな訳ねーだろ。ここ連日公爵とお前にほとんど不眠不休でこき使われ続けた上に、昨日からは御嬢様の部屋の前張ってたんだからな」
……さすが、とシュオンは内心にやりと笑う。
こちらを睨むヒースの顔には、疲労の色は全く見えない。
こうでなくては、自分の親友は務まらないというものだろう。
「……ん。お疲れ」
「な、何をたくらんでるんだよ……お前が俺を労(ねぎら)うとか、何かの前触れだとしか思えねえ……」
シュオンはにっこり笑顔のまま、明日のヒースの休憩時間に、珍しい薬品の材料の調達を命じることを決定した。
「で、わざわざその仮眠時間に、なんでわざわざ僕を探しにきたわけ?」
「お前絶対薬液駄目にしたの根に持ってるだろ……」
「そんなことないよ?」
怖ええ、と顔を引きつらせつつ、ヒースはこう切り出した。

89月波煌夜:2012/03/24(土) 19:49:16 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp
>>ピーチ

有難う!
でわでわ遠慮なく(≧∀≦)

月波のことも好きなように呼んでくださいな♪

90ピーチ:2012/03/25(日) 01:07:05 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

・・・こっちの方が慣れた・・・←意味無いことをする大バカww

まぁ・・・いーよねー((笑

91月波煌夜:2012/03/25(日) 11:33:41 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いーよね(^-^)v

92ピーチ:2012/03/25(日) 12:29:09 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

だーよねー^0^

更新待ってまーす!!

93月波煌夜:2012/03/25(日) 17:54:43 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

有難う!
がんばるよー( ´艸`)

94月波煌夜:2012/03/25(日) 22:23:31 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 6』

「シュオンお前―――御嬢様と面識があるのか?」
その問いに、シュオンは一瞬で、お得意のその場を誤魔化す言葉をいくつか思い浮かべたが、
「…………………」
真剣な輝きを帯びた漆黒の瞳を見て。柳眉を下げ、諦めたようにふうっと一つ嘆息し。
「………何でそう思うの?」
「勘」
ヒースはきっぱりと断言する。
「つーかさ、研究馬鹿で女嫌いのお前が女と進んで話すってこと自体おかしいんだよ。いっつも猫かぶってよー……女なんか釣るだけ釣ってテキトーにあしらって終わりだろ?でも、御嬢様のことは散歩にまで誘った。御嬢様が美人だとか……そーいう普通の男が考えるようなことは、お前は絶対考えない。だったら他に理由があるとしか考えられないだろ?」
「それで、僕がソフィアと会ったことがあるって考えたのか。へえ、ヒースにしては頭回るじゃない」
「余計なお世話だッ!」
「しかも正解。……まあ、ソフィアは覚えてないみたいだけどね」
シュオンは肩をすくめ、微苦笑してみせる。
ヒースはそんな悪友の様子をちらと見、
「………何処で、とか、聞いてもいいか?」
思わず吹き出しそうになった。
―――こいつが僕に遠慮する日が来るなんてね。
恐ろしく似合わない。
「ふふっ……まあ、そんなに凄い話でもないんだけど」
そう前置きをして、シュオンは瞳を閉じ、穏やかな表情で、遠い日に思いを馳せた―――

95月波煌夜:2012/03/26(月) 09:04:03 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp


Ⅱ. 『願いのカタチ 7』



「本日はお招きいただきましてきょうえつしごくです、はくしゃく夫人」
シュオンが教え込まれた挨拶を危なげなくこなすと、彼を取り囲むルーフェ伯爵夫人やその娘たちが、きゃーっと黄色い歓声を上げた。
十歳という実年齢よりやや幼く見える彼は、社交界の女性方に大人気なのだ。
蜂蜜色の髪も宝石みたいな碧眼も、つんと尖った小さな鼻も、真っ白な肌につやつやしたさくらんぼ色の唇も。人形のように愛くるしく整った容貌は、天使という例えがぴったりだ。
「シュオン様は本当に可愛らしいですわねえ、公爵。将来が楽しみですわ」
「そうでしょうそうでしょう。それにシュオンは驚くほど頭が良いのです。もう何人家庭教師を代えたことか」
「まあ」
―――……アホか。
シュオンはにこにこと完璧な笑顔を保ったまま、心の中で毒づいた。
可愛い可愛いと言われても全く嬉しくない。むしろ吐き気がする。
それに、こっちを見ているあの娘たちの目。飢えた獣のようにギラギラしてるじゃないか。
将来良い結婚をするようにと散々親に言われているのだろう。
絶対的な権力を持つ名門中の名門、次期エインズワーズ公爵なんて恰好の餌だ。
―――くだらない。
「……すみません。少し気分が悪いので、外ですずんで来ます」
「まあっ、大丈夫ですか?冷たいお水はいる?」
「いいえ。そのおきづかいだけで十分うれしいです。……それでは」
「シュオン、くれぐれも無理はしないようにな」
「はい。父上」
もう、シュオン様は本当に良い子ねえ、という声を背に、幼いシュオンは伯爵邸の庭園に向かった。
一人になりたかった。
醜悪な世界から、少しでも離れたかった。
公爵家の跡取りに生まれた自分は、あの世界から逃げることはできない。
誰よりも上手く社交を展開し、立場に恥じないような振る舞いをしなければならない。
シュオンは歩きながら嘆息した。
外に出ると、夜の涼やかな風が火照った頬を撫で、熱を奪っていく。
座る場所を探して見回すと―――眩しい銀色が、視界をよぎった。
少女だ。
しゃがみ込んで、薄紫の小さな花を熱心に覗き込んでいる。
「……花、好きなの?」
何となく。シュオンは歩み寄り、少女の背に話し掛けた。
少女がぱっと振り返った。
二つに結った長い髪が風に踊る。
「――――――――っ!」
シュオンは息を飲んだ。
月の欠片が淡く紡ぎ出した幻影のような、儚げな少女だった。
年の頃は七、八だろう。
凍てついた氷河を思わせる、一部の隙も無い冷ややかな美貌。
……そして。
こちらを見上げた少女の輝く瞳は、鮮やかな紫色で。
―――《紫水晶(アメシスト)》っ?
「いいえ」
はっと我に返る。
透き通った、硝子の鈴を転がすような声色。
「めったにお花なんて見れないから」
―――……めったに見れない?花が?
シュオンはぽかんとした。
―――何で?
訊きたくなったが、少女が哀しげに長い睫を伏せるので、押しとどめた。話したくないことなのかもしれない。
「君の目……きれいだね」
少女の隣に座り込んでこう言った途端、少女が大粒の瞳を見開き、それから、
「……ありがとう」
ふわっと。幸せそうに、嬉しそうに、微笑んだ。
凄い破壊力だ。シュオンはドキリとしてしまう。
「あなたは……お花、好き?」
「うーん。嫌いじゃないけど……。ともだちとか、大人を困らせるのがいちばん好きかな」
何それ、と少女はまた笑った。
夢のようなひとときだった。

96月波煌夜:2012/03/26(月) 09:53:26 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 8』

シュオンは、自分がこのちいさな少女に惹かれていくのを、確かに感じた。
他愛のない話を少ししたあと。
「君の名前は?」
こう訊くと、少女はきょとんとして、それからしばらく、うーんと考え込み、
「………………………ソフィア」
「ソフィア、ソフィアか。僕は―――」

「《紫水晶》!」
会話に乱入してきた男の声が大音量で響き、二人はそろってびくりと震えた。
「どこに行ったかと思えば……!今から伯爵とお会いするというのに、折角の土産が消えたらと思うとぞっとしたぞ」
男はずかずかとソフィアに近づき、今にも折れそうなほどか細い手首を掴んで、引っ張った。
その痛みに、ソフィアの美しい瞳から、一雫の涙が零れる。
「ソフィアに何するんだ!」
シュオンは立ち上がり、男に向けて怒鳴った。
「こ、これはこれはエインズワーズの……」
男はへりくだった下品な笑みを浮かべ、
「はは。大丈夫です、コレを悪いようには致しません。大事な《紫水晶》ですからね」
―――そうじゃない!
シュオンは再び叫ぼうとしたが、
「…………………」
ソフィアが眉を下げ、『もういい』とばかりに首を横に振るので、ぐっと口を結んだ。
「それでは、失礼致します」
男は、無抵抗のソフィアをずるずると広間に引きずって行く。
ソフィアが引っ張られながらも、こちらを向いた。
『……さよなら』
その形に、唇が動く。
シュオンは二人が消えた方を見つめたまま、しばらく突っ立っていた。
ソフィアが見つめていた小さな花が、もの言いたげに、揺れた。







「―――と、いう訳なんだよ」
19歳になったシュオンは、話の終わりを結んだ。
「彼女の瞳と笑顔が、忘れられなかった。彼女を、しあわせにしてあげたいと思った……その為に、噂を嗅ぎつけてカークランド伯爵とも仲良くしておいたんだしね」
ほんとに僕らしくないでしょう?と、シュオンは壁に寄りかかった悪友に笑いかける。
「それに、火薬とかの発明にハマりだしたのも、ソフィアのことを忘れられるかもって思ったからなんだ……結局忘れられなかったけど」
「……じゃあ、お前が御嬢様と会ったときに庭園に誘ったのは」
「僕のこと、思い出してくれるかなーとちょっとだけ思ったんだよ」
シュオンは寂しそうに笑った。
「まーったく知らんかった……何でずっと相談しなかったんだよ?」
「え、ヒースごときに相談なんかして意味あるの?」
「うぐぐぐぐぐぐぐ!?」
獣のように唸るヒース。
「ま、そういうことで僕の話はおしまい」
「じゃあ……御嬢様のことはこれからどうするんだよ?」
「んー……彼女、変わっちゃったからねえ……。少しずつ、心を溶かしていってあげたいなーとは思ってるんだけど」
「そーいうの得意じゃねえのか?」
「お世辞とかなら得意だけど意味ないもん」
二人は黙って考えていたが、突然ヒースが膝を叩いた。
「そうだよ!人の気持ちを和ませる特技、お前にもあるじゃねーか!見せて差し上げれば良いんじゃねーの?」
「……どの特技?」
「嫌みかッ!あれだよあれ―――」

97ピーチ:2012/03/26(月) 14:02:00 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

わぉぉ!!凄い文章力!!

え?シュオンの特技(?)って何々??

98月波煌夜:2012/03/26(月) 15:09:07 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いつもコメありがとう!
キャラの名前出して感想くれると凄く嬉しいんだよー(≧∀≦)
シュオンの特技は……シェーラが最初に話してたとこにさらっと載ってたり。
明日あたりに、できればまた更新する予定だからお楽しみに☆

99ピーチ:2012/03/26(月) 16:46:30 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

マジマジ??でもあたしさー、最近ちょっとコメ遅れたよ>M<

ゴメン!!

明日かぁ〜!ちょー楽しみー!

うん!待ってるよ〜^0^

あ、そーだ。かぐやさんのことツッキーみたいな呼び方してもいい??

100月波煌夜:2012/03/26(月) 17:48:18 HOST:proxyag045.docomo.ne.jp

†祝☆100レス突破†
〜シェーラ&ヒースによるラジオ風コメント〜


「ぎゃあああああすげえ無茶振りきたぁぁぁあああああああ!?」
「みんなやっほー☆シェーラお姉さんだよー♪『紫の歌』読んでくれてありがとーっ!」
「順応してやがるッ!意外にも!」
「んーと、えーと、ここでは『紫の歌』の裏話とか紹介していくつもりらしいです!いぇい☆」
「激しく誰得!?」
「まずタイトルですがー……ぶっちゃけテキトーだそうです」
「ホントこれやる意味あんの!?なあ!?」
「『紫の乙女』はソフィア様だよね。『幸福の歌』はなんか語呂が良いから何となくだそうで」
「あとで無理矢理つじつま合わせするんだろうな」
「はい、次に登場人物〜。最初はやっぱりソフィア様だよね!彼女の設定『紫の瞳』は……月波の趣味だそうで」
「最悪だな」
「銀髪も、ツインテも、クーデレヒロインが目標なのも、全部月波の趣味だそうで」
「今これを読んでくださっている神様女神様読者様、そろそろキレていい頃合いではないかと俺は思う」
「ヒースはせっかちねえ。カルシウム摂りなさいカルシウム」
「がぐぎがががががが」
「次、シュオン様。最初は頼りない弱虫キャラにするつもりだったんだってー」
「ええええええええ」
「今は軽く腹黒っぽくなってるよねー。最初の登場人物紹介で『心優しい』とかあるよね」
「あ、あいつが優しい……?嘘だろ……?御嬢様限定じゃねーの?」
「え、シュオン様あたしにも優しいよ?」
「それは猫被ってるからだ!」
「そ、そんなにムキにならなくても……はっ!ヒースあんたやっぱり……」
「や、やっぱり?」
「シュオン様のこと好きなのね!?」
「どうせこんなことだと思ったわ畜生!違えしッ!」
「そうよね、シュオン様はソフィア様のことばっかり……。つらいよね。大丈夫、どうしてもつらくなったときはあたしに言って?慰めるから」
「うが―――――!」
「で、次にあたし、シェーラ!あたしは最初はソフィア様の恋路を邪魔するおしとやかなお嬢さんっていう設定だったんだってー」
「ええええええええええええええええッ!?」
「で、月波が『やべえこれ絶対暗くなる』ってことでこの性格にした、と」
「それでお前の脳天気なアホキャラが確立したわけか」
「えへへぇ」
「何故照れる」
「それから最後にヒース!ヒースは、当初の計画では、……いませんでした」
「俺の扱い一番ひでえ―――ッ!?」
「ツッコミポジション大事だもんね、ってことで急遽追加。しかも、シュオン様の親友って設定なのはぁ」
「うん?」
「腐ってる月波の趣味」
「殺す―――――!?離せシェーラ!あいつを闇に葬り去る!」
「あはは。それでは謝辞に移りたいと思います」
「あ?謝辞ぃ?」
「うん。えっとぉ、二回以上こちらのスレに書き込んでくださった皆様へ、贈ります」
「ホントありがてぇな。頭が上がらねー」
「ってことで、まずは燐さん!書き込みありがとうございます!これからも他愛のないことでもだべりましょう☆」
「俺からも」
「で、乃亜さん!コメントいつも癒されてます!どんどんよろしくですー♪」
「よろしくお願いします」
「最後にピーチさん!最近ほとんど毎回コメくれて……ホントありがとうございます!これからもよろしくね☆月波のことは何とでも呼んでね!」
「『この低脳が』とかでも構わないですよー」
「最後に!ここまでお付き合いくださった皆様!ありがとうございましたと♪」
「そんな人いるのか……?あー、これからも、御嬢様の恋の行方を見守ってくださいね」
「それではー!」

101彗斗:2012/03/26(月) 17:49:42 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
話を最初から全部読んでみました。
本当に面白いです!! 見ていてフッと笑ってしまいます。こういう物語は結構好きです。
ちょくちょく見に来ます。後、時間さえあればコメントも出来るかと…

102月波煌夜:2012/03/26(月) 19:16:10 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

こんにちは!
あ、ありがたいお言葉をいただきまして…!
本当に有難う御座いますっ(〃▽〃)
笑っていただけましたか!
う、嬉しいですー(o^_^o)
これからもキャラたちにアホ話をさせていくので、なにとぞ宜しくお願い致します( ´艸`)
気が向いたときにでも、何かのついでにふらーりと立ち寄ってくださろば嬉しいです!

103ピーチ:2012/03/26(月) 21:10:18 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

や・・・ヤバイ!!ラジオ風ってあたしも考えてたーー!?←友達のアイディアだ!!

でもさー、確かにヒースに対する扱いは酷いと思う・・・←人のこと言えないww

・・・あのー、かぐや様・・・ラジオ風あたしも使って宜しいでしょうか??←敬語使えた!!

104月波煌夜:2012/03/26(月) 21:56:31 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒースはいじられる為に生まれてきた子だからねww
もちろん、ラジオ風良いと思うよ!てゆーか許可なんかとらなくて大丈夫だよ(^-^)v
私凄いノリノリで書いてた←

105ピーチ:2012/03/26(月) 22:55:11 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ちょー優しい〜・・・((泣

優しすぎるよ〜!!


え・・・ちょっと待って、ヒース=いじられる為!?

なぜ!?

じゃあラジオ風もその内書かせて頂きます!←まずは小説書き終われ!!

106月波煌夜:2012/03/27(火) 08:06:10 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

別に優しくないよー(^-^;

ヒースはあくどいシュオンと天然ボケ・シェーラにツッコミ入れさせる為だけに作ったから☆
残りのメンバーからいじられるのは当然といえよう(ぇ

107月波煌夜:2012/03/27(火) 08:50:44 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 8』


翌日。
ソフィアは寝台(ベッド)に腰掛け、書物を読んでいた。
本日の彼女のお召し物は、ローブ・ア・ポロネーズの形がアンティークドール服を思わせる豪華なワンピース。
ふんだんにあしらわれたドレープが優雅。裾や袖口のふんわりとしたブラックレースとフリル、両サイドの黒の薔薇プリントの差し色が効いている。
落ち着いたワインレッドのヴェルヴェットの生地は上質で、暖かさと美しさを両立させるデザインだ。

ソフィアはふと、窓の外に視線を投げる。
鏡のように、光景が菫色の双眸に映し出された。
庭園。
「……………………」
“僕らは、君を利用しない”
“ちょっとずつでもいいから、仲良くしてくれたら嬉しいな”
―――……あれは、しあわせな夢?それとも、甘い幻?
ソフィアは目を閉じ、本を胸に抱えた。
……彼の言葉を、信じたかった。
彼らと一緒に話して、本当は楽しかった。嬉しかった。
けれど、どうしても『今までの自分』が邪魔をする。
期待して裏切られて、哀しむのはもう嫌だ、と。簡単に人間を信じるな、と。何度も傷つけられて、傷ついて、ぼろぼろになった心が必死に警鐘を鳴らす。……けど。
……《紫水晶》であることしか価値なんて無いのに、あの三人は、ソフィアをひとりの女の子として扱ってくれた。仲間に入れてくれた。まるで、それが当然であるかのように。
だから。やはり、ソフィアは。
「……………………」
もう一度だけ。信じてみたいな、なんて、思う。
痛みにも、哀しみにも、もう慣れた。
だから―――……
そこで突然、ドアをノックする音が響き、ソフィアの思考はそこで途切れた。
「こんにちは。今日も良い天気だね」
頬を薔薇色に染めた、シュオンが入室してきた。
「……こんにちは」
ソフィアは、普段なら無反応のところを、彼女なりに頑張って挨拶を返す。
シュオンは心なしか嬉しそうに笑い、それから言った。
「今から時間ある?あのー……、下のホールに行かない?ちょっと見せたいっていうか……聞かせたいものがあるんだ」
―――また、私を部屋の外に連れ出すというの?
だが、ソフィアに断る理由なんてあるはずもない。
それに、聞かせたいもの、とは何なのか。興味もある。
「……はい。シュオン様さえ宜しければ」
「じゃあ決定。行こうか」
シュオンがすっ、と右手を差し出す。
「………………えっ?」
―――に、握れ、ってことっ?
ソフィアはその手を凝視したまま固まってしまう。
シュオンも彼女の動揺に気がついたようで、笑顔で手を出したまま「……………あ」という声を漏らした。無意識だったらしい。
でも今更何でもなかったように引っ込めるのもおかしいような。
『…………………………』
開けた状態にして、廊下でドアを背で押さえつつ聞き耳を立てていたヒースが「何やってんだこいつ」とぼそりと呟いた。
やがて、ソフィアがそろそろと手を伸ばし、そっと。シュオンの大きな手に載せた。
「………………………ぅ」
無駄に恥ずかしい。
ソフィアは俯いてぎゅっと目を瞑った。
シェーラや自分とは明らかに違う、男の人の手だ。大きくて、骨張っていて、でも、
―――温かい……。
「あ、あのー……ソフィア?すっごい言い出しにくいんだけどー……」
困ったように、シュオン。
「………は、はい」
「えーと……これって、握手……だよ、ね」
「へっ?」
ソフィアはやっと目を開いて、急いで確認してみる。
「あ」
握手である。完全に握手である。
お互い右手を出してしまったらしい。緊張している上に慣れていないのがバレバレだ。
「すっ、すみまっ……」
慌てて右手を引っ込め、左手を差し出し、シュオンの右手を握る。
シュオンは、くくくっ、と笑いをこらえている様子だ。
きょとんとしてシュオンを見上げると、
「ご、ごめんごめん。ソフィアは可愛いなー、とか思っちゃっただけ」
「え」
かああ、とソフィアが赤面し、シュオンがまた無意識だったらしく「………あ」と漏らし―――
「エンドレスかよッ!」
耐えられなくなったらしく、ヒースが乱入してきた。
「ほら準備できてんだろさっさと出る出る!あ、御嬢様、何なら後で消毒液をお貸ししますので」
「え、どういう意味?」
「そのままの意味だろ」
「……あは。自分の方が上手くいかないからって八つ当たりされてもねえ」
「う、うるせぇぇぇええええええええ!?」
図星だったらしい。

108ピーチ:2012/03/27(火) 14:33:36 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やっほ☆♪

わぁお・・・進むのめッちゃ早くない??

あたしなんかまだ第一章も終わってないよ〜ww←笑い事じゃない!!

あ、でもね!アメブロの方では第四章くらいまでいってるよ〜ww

109彗斗:2012/03/28(水) 08:22:43 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
月波さん(で良いですか?)>>
続き読みました。ヒースの図星には笑ってしまいました(笑)

110月波煌夜:2012/03/28(水) 10:10:43 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

やっほー☆
アメブロでも書いてるの!?
おお…年季が違う…( ̄◇ ̄;)
ピーチは凄い作家さんだったんだねw
尊敬(^o^)

111月波煌夜:2012/03/28(水) 10:13:53 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

またまたコメ有難う御座いますっヽ(´ー`)ノ
はい!月波のことは何とでもお呼びください☆
また笑っていただけましたか…!
ヒースをいじる甲斐があります(ぇ

112月波煌夜:2012/03/28(水) 10:34:37 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 9』


シュオンに連れられて、階段を下り、ソフィアは一階の大広間に出た。
華やかなクリスタルのシャンデリアが眩しくて、思わず目を細める。
ソフィアはゆっくり、目線を上から下に移す。
―――純白の、グランドピアノ。
天窓から差し込む日光を浴び、神々しささえ漂わせるそれは、圧倒的な存在感をもって、広間の奥に鎮座していた。
「ソフィア、そこに座ってて。ヒース、あっちで土下座してて」
「誰がするかッ」
ヒースは憤然と部屋の片隅に歩み寄ると、壁に寄りかかった。お目付役としての義務感からだろう、かなり離れるが一応二人が見える位置だ。
慌てて、ソフィアは言われたとおり、ピアノの横辺りにある豪奢な造りの大きなソファにちょこんと腰掛ける。
それを確認して。シュオンはふわりとソフィアに向かって微笑み、芝居がかかった礼をひとつ。慣れた様子ですっと椅子を引き、座り、
―――瞬間、空気が変わる。
神聖な儀式を執り行うように。両手が鍵盤に置かれると同時、シュオンの穏やかさを絶やさない碧の瞳に、一雫の真剣さが広がる。

一呼吸―――

長い指が、一気に鍵盤の上を滑る。
……生み出されたその音色は。力強く、大胆で、しかし繊細。
儚く淡く、甘く澄んだ旋律。
どうしようもなく暖かくて、優しくて、透明な調べを、指先が紡ぐ。
交差される両手。
すべての指が意志を持って跳ね、踊り、歌う。
光の輝きを奏でるように。しあわせを祈るように。鼓動のような連打が連なる。
遠い昔に見た夢を思い出すときのような、どこか懐かしい、子守歌の優しさ。やわらかな旋律が、ソフィアの小さな躯(からだ)を駆け巡り。心の奥深くに焔を灯し、そのぬくもりを身体中に沁み渡らせていく。
大丈夫だよ、と。
君はひとりじゃないよ、と、伝えるように。
……これがシュオンの音なんだ、とソフィアは思う。
微笑みで、愛情で、全身を包み込むような―――……
「………………え」
ピアノの音が、急に止まった。
シュオンがぽかんとした表情で、こちらを見ている。
どうしたのだろう、と思って、初めて。
ソフィアは、自分の頬をつたう涙に気がついた。
指で拭う。
でも、拭っても拭っても、とめどなく、熱い雫は溢れてきて。
―――私、泣いてるの……?
瞬(まばたき)きをするとまた、ぽろぽろと粒が頬を転がって、膝に落ちていった。
温かい、涙。
……どんなに泣いても境遇は変わらないということを知らなかった幼い頃、自分の運命に絶望し、泣き喚いたことは、あった。
でも。
じんわりと心が温かくて。こんなに優しい涙は、生まれて初めてだった。

113ピーチ:2012/03/28(水) 14:48:25 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ヤッピー♪ww

いーや!つっきーの方が凄い作家だって!!

あたしのはダメダメだからさーww←要するに文章力ないのに書くバカww

114神歌と神曲と神の調べ:2012/03/28(水) 15:38:19 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>113
チョンかよw

空の元で計るやつだろw

115神歌&神曲&神の調べ和み:2012/03/28(水) 15:48:01 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>113
あ、スレ違いだったw

ごめんw

116月波煌夜:2012/03/28(水) 18:08:53 HOST:proxyag015.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやw
それは絶対ないないww
ピーチのも読みたいんだけど……もうちょっと待ってね(^-^;

117ピーチ:2012/03/28(水) 18:11:00 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははっ♪いーよいーよ、いつでも〜ww

のんびり更新だからさーあたしww←亀より遅いww

118月波煌夜:2012/03/29(木) 12:57:35 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 10』

「………使う?」
ソフィアの目の前に絹(シルク)のハンカチが差し出された。
それを使って涙を拭くという当たり前のことが熱を帯びた頭ではとっさに思いつかなくて、ぼうっと見つめていると、
「失礼」
白いハンカチが近づいてきて、眦(まなじり)に軽く押し当てられる。水分が、すう、と肌触りの良い布地に染み込んでいった。
シュオンの端正な顔がすぐ近くにある。柳眉を下げ、困り果てたようなその表情は限りなく優しくて。
「…………………っう」
「え、ええっ?」
また新たな涙が滲み始め、ソフィアは軽くしゃくりあげた。
「っ、ひっ……く」
頭が痛い。胸が苦しい。何だかもう、自分でもわけが分からない。
「う……な、……で、」
ソフィアはつかえながらも言葉を絞り出す。
「なん、っで……私にっ、優しくしてくれるの……っ?」
「え……?」
ソフィアは膝の上の両手をぎゅっと握り、下を向いた。
静かに、シュオンの手が離れる。
「……君に、優しくしたいから……かな」
「こ、答えになってない……!」
「……あれ、ほんとだ」
彼が苦笑した気配。
「…………じゃあ、」
ソフィアの口が、勝手に動く。
「貴方の、願いは、なに?」
「願い?」
「っ……とぼけないで!」
違うのに。
「わ、私に親切にしておけばっ、願い事が叶いやすくなるって……やっぱり、そう思ってるんでしょうっ?」
シュオンは、心からソフィアのことを気にかけてくれている。痛いほど、分かっているのに。
今喋っているのは、弱い『自分』だ。
涙と一緒に、心の中に潜んでいた、ソフィアの脆(もろ)くて壊れやすい部分が出てきてしまったように―――
「それは違うよ、ソフィア」
響いたのは、はっきりと意志を持った、強い声。
シュオンが絨毯に膝を付き、碧の瞳がまっすぐ、ソフィアの濡れた瞳を射抜いた。
「僕の願いは……もう半分叶ってる。あとの半分は、君の力じゃなくて、自分の力で叶えなくちゃいけないんだ」
「は、んぶん……?」
「そう」
シュオンは大切な宝物を慈しむように、愛しさに溢れた微笑みで。

「僕の願いは、君にもう一度会うこと。それから、君をしあわせにすることだよ」

「………なっ………」
ソフィアは大きく目を見開いた。
意味が分からなかった。―――……私をからかっているの?
この状況で?
シュオンは、動揺するソフィアに微笑みながら、とっておきの秘密を打ち明けるような声色で、言った。

「僕は、一度だけ君に会ったことがあるんだ」

「……………えええっ?」
ソフィアは驚いてシュオンの顔を見つめた。
「僕が10歳のときだよ。理由をつけて舞踏会から抜け出したとき、庭園で花を見てる女の子に出逢った。綺麗な紫の瞳をしていて……ソフィア、って名前を教えてくれた。一緒にいたのは、本当に短い間だったけど……僕には、何より大切な時間だった」

119月波煌夜:2012/03/29(木) 13:56:02 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ごめんねー(/_;)

いやー、でも月波みたいにほぼ毎日更新してても残念クオリティとかよりは、ゆっくりのほうがいいよww

120ピーチ:2012/03/29(木) 17:13:13 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやー、あたしの場合は・・・単純にアメブロ優先してたら忘れてた!みたいな?ww

それにさー、残念クオリティとかじゃないよ!

まずクオリティって何?ww←バカですみませーん・・・

121月波煌夜:2012/03/30(金) 18:36:56 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 11』

そのとき。
ソフィアの記憶の海の奥深くで、ちら、と金色のものが、一瞬脳裏を掠めたような気がした。
「……………っう……?」
ソフィアは呻(うめ)き、額に手を当てて、ぎゅっと強く目を閉じた。
「ソフィア!?大丈夫っ?」
「ええ………」
血相を変えて心配してくるシュオンに、こくりと頷いて答える。
「あれは……シュオン様……?」
「えっ……?もしかして、思い出したの?」
シュオンがぱっと嬉しそうな表情になる。
「すみません……そこまでは。シュオン様と……本当に会ったことがあるような気が、少ししてきただけで……」
期待してくれた彼に申し訳なくて、語尾が窄む。
「……ううん、十分だよ」
シュオンは晴れ晴れとした笑顔のまま、首を横に振った。
「九年間、僕は馬鹿みたいに君のことだけ考えてた。いくら気を紛らわそうとしても、あの日の君の笑顔が目の前にちらついて。大嫌いな貴族を片っ端から当たって、君を探そうと躍起になって……。その努力がやっと実ったんだ。ずっと焦がれてきた君にもう一度会えた……君が、ほんの少しでも、僕のことを覚えててくれた。こんなに嬉しいことはないよ」
この上なくストレートな言葉に、ソフィアの頬がかああ、と熱を持つ。意味もなく、唇があわあわとわななく。
―――こ、これって、その、つまり……?
「あ、あの、さっきのって、何の曲ですか?」
これ以上の思考はまずい。とてもまずい。流れを断ち切る為に、ソフィアはシュオンに訊いてみた。
「え」
今度はシュオンが、困ったように視線をさまよわせる。
顔が林檎のように赤い。
「えっと……その……」
たっぷり間をおいて、やがて観念したように。
「………………『ソフィア』」
「はい?」
自分の名前が呼ばれたので、ソフィアはとりあえず返事をしてみる。
「そ、そうじゃなくて!曲の名前なんだよっ、それがっ」
……………………………。
「はい?」
「うー……その、さ……。君のことを想って作ったんだよ、あの曲……」
シュオンは可哀想な程真っ赤になって、金の睫を伏せている。
ソフィアにも、やっと意味が分かった。
あの、甘くて暖かくて優しい旋律は、シュオンが一度会ったきりのソフィアのことを思い出して、その想いを込めて日々弾いていたからこそ、生まれたものだったのだ。
そう思うと、恥ずかしさよりも嬉しさが勝ってくる。
……でも、だからって。
「………ば、ばかみたい」
つい。ソフィアは吹き出してしまった。本音が漏れる。
「え、ええっ!?」
「だからって『ソフィア』は無いです。ありえないです」
「……そうかなぁ」
「はい」
くすくすと、指を唇に当てて、涙を目尻に残しながらも小さく笑うソフィア。
シュオンは驚いたように彼女を見つめ、それから。ふわりと微笑んだ。
今までにないほど、最高に、嬉しそうに。
「……………あ、申し訳ありません!」
身分が上の者に対して、思わず非礼な振舞いをしてしまったことに気づき、ソフィアは慌てて謝罪する。
「うん?あ、全然気にしてないよ。ソフィアが一番楽な喋り方をしてほしいな。と、友達みたいに」
友達、と言うときにシュオンが微妙に躊躇したが、その辺はご愛嬌である。

122月波煌夜:2012/03/30(金) 19:20:36 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>ピーチ

クオリティは、「質」って感じだよ(^-^)
残念quality☆

123ピーチ:2012/03/30(金) 21:03:32 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

へぇ〜!!「クオリティ」=「質」か!!今覚えた!!

あたしも更新しないとなぁ・・・←おおばかww

124月波煌夜:2012/03/31(土) 12:45:34 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 12』

ともだち。
友達。
本の世界でしか知らなかった単語は、ソフィアの耳に、はっきりと響いた。
……ほんの少しだけ。ちくりと胸が痛くなったりしたけれど。
「……ありがとう」
ソフィアは感謝を込めて、まっすぐシュオンを見つめた。
唇が綻ぶ。
―――《紫水晶(アメシスト)》としてしか価値のない私を、必死に探し出して、友達だと言ってくれた。
ソフィアをしあわせにすることが願いだと言ってくれた。
それはきっと美しく儚い、願いのカタチ。
だから。
ソフィアは、新しい世界を教えてくれたシュオンに、報いたいと思う。
シェーラにも、ヒースにも。
彼らのもとに居られる時間で、精一杯。

……でも。
一瞬、今まで見てきた、人々の嘲笑が頭をよぎった。

『おまえは、しあわせを呼ぶんだよ』
『ただの飾り物のくせに』

「……………………」
闇の中に急に突き落とされたように、気持ちが暗くなる。
―――やっぱり、私は臆病だわ……。
ソフィアを戒める鎖のように。現在(まえ)を生きようとすれば、過去(うしろ)が彼女のしあわせを阻む。
「どうしたの?」
ソフィアに微笑みかけられて一人夢心地になっていたシュオンが一転、気遣うような表情を見せた。
「何でも……」
「嘘。凄くつらそうだよ?」
あっさりと看破してしまう。
無表情を保つのは得意だったはずなのに。
「……つらいこと、思い出した?」
こくりと頷く。
「あの。嫌だったらいいんだけど……今までのこと、話してくれない?」
ソフィアは目を丸くした。
「……え」
「いやほんとに、嫌だったらいいんだ!ただ、誰かに話した方が楽になることって結構あるし……」
君の為に何かできるかもしれないし……、と後半しどろもどろになるシュオン。
「……でも、シュオン様が……」
「僕が?」
「その、不愉快になるかも、しれないし……」
「そんなことないよ。僕は君より大人なんだから。どんなことでも、全部受け止められる自信があるよ」
にっこりと眩しく笑ってみせる。
「あと……、僕のことは、シュオン、って呼んでほしいかな」

それからソフィアは、ぽつりぽつりと、今までの記憶を話し始めた。
物心ついたときから、《紫水晶》の恩恵を求める人間たちの下(もと)を転々としてきたこと。
しあわせを求めるばかりで、彼らはソフィアの人格を無視し、『モノ』として扱ってきたこと。
期待して裏切られる。その繰り返しのうちに、これ以上傷つかないように、『自分』をしまい込んでいたこと―――。
それらを言葉にするうちに、また、涙が溢れ出てきた。
シュオンはソフィアの隣に座り、優しく頭を撫でて、囁いた。
よくがんばったね。
今まで、ずっと我慢してきたんだよね。
つらかったよね。
でももう、大丈夫だよ。
僕が傍にいるから。
君を守るから―――。
言葉が途切れると、ソフィアはいつの間にか、自然と、彼の肩に顔を押し付けて泣いていた。
せっかくの上等な服が涙で濡れてしまっても、シュオンは何も言わなかった。
ただただ、ソフィアが泣きやむまで、あやすように頭を撫で、黙って寄り添っていてくれた。


しばらくして。
「……すっきりした?」
ソフィアはシュオンの肩からのろのろと顔を上げる。
「……ええ」
不思議なことに、目頭や頭が痛むのに、ソフィアの気分はすっきりとして、冴え渡っていた。
溜め込んでいたことを、涙にして出してしまったからかもしれない。

125月波煌夜:2012/04/01(日) 09:59:01 HOST:proxyag011.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 13』

「あの……ごめんなさい、服……」
さっきまで顔をうずめていた左肩の部分が、ぐっしょりと濡れて完全に染みになってしまった。
……しかし、こうして改めてじっくりと見ると、
―――……見かけよりも、意外とがっしりしていたような……、って何考えてるのよ私はっ?
ソフィアはぷるぷると小さく頭を左右に振った。二つに結った髪が踊る。
「気にしないで。僕も嬉しかったし」
―――……嬉しい?
ソフィアが訝(いぶか)しげに見上げる。
「い、いや深い意味は無いんだけど!ただ……」
これからも、こうやって頼ってくれないかな。
少々恥ずかしそうにはにかむシュオン。
「……シュオンは、とても良いひとなのね」
ソフィアは、思っていたことを、つい口に出してしまった。
「へっ?え、そ、そうかな……?」
微妙に複雑そうに顔をしかめ。
「じゃあそろそろ行こうか。…………………………父上と良く相談して、あの人たちとの付き合い方を考え直さなくちゃならないしね」
王に次ぐ権力を持つと云われるエインズワーズの次期公爵様は、『ニッコォォォオオ』と美しいかんばせに、唇だけの笑みを浮かべた。
息を押し殺し獲物を狙う残虐な獣の如く、冷徹に輝くアイスブルーの瞳。
立ち上がった彼の背には吹き荒れる暴風(ブリザード)が見える。
さながら、氷の女王が乗り移ったような姿だ。
……エインズワーズ公爵親子に睨まれることは、現在の……もしくは未来の、社交界での死を意味する。
「ソフィア、後で思いつく限りで良いから、君がいた家の名前を片っ端から教えてくれる?」
楽しそうにもとれる、キラキラ輝く笑顔をソフィアには向けて。
ソフィアは遠慮無く言った。
「前言撤回、貴方(あなた)性格悪いのね」
「ふふっ。お褒めいただいて光栄です」
「褒めてない」
「こういう言葉は言われ慣れてるからねー。耐性できた。あと『こ、この悪魔がァァアアアア!』とかも良く言われるよ?」
「どういう状況なのか気になるわね」
「最初に最大のプレッシャーをかけて、徐々にゆるめていくのがコツ」
「何のコツよ」
「……悪いペットのしつけ?」
「マルグリットの警察は一体何をしているのかしら」
「犯罪ではないよ?それに、警察も操作できるし」
「最低ね」
「お褒めいただいて……」
「褒めてない」
―――……楽しい。
遠慮無くものを言うことが、こんなに楽しいとは知らなかった。
ソフィアも、ソファからとん、と降りて。
「……でも、お世話になったから……あまり酷いことはしないでね」
小声で付け足した。
「ええー」
「物凄く残念そうね」
「……あは。冗談だよ。ちょっとだけにしておく」
二人で、まだ壁に寄りかかっているヒースの方に歩き出した。
多分、ソフィアの涙を見て動揺したのだろう。気を使ってか顔を明後日の方に向けていたが、足音に気づいてこちらを見た。
シュオンは開口一番、
「何でいるの?」
「ひでぇ言い草だなおいッ!御嬢様の護衛を閣下に仰せつかったからだよ!」
キレながらもきちんと説明するあたりが律儀である。
ヒースはふーん、と二人を眺め、にやりと笑い、
「その様子だと……良い結果、出たっぽいな」
「変な勘ぐりしたら『ヒースはいまだに、油断するとお母さんのことをママって呼ぶんだよ』って屋敷中の使用人に言って歩くけど」
「モウシワケゴザイマセンデシタオボッチャマ」
「うん。素直な子は嫌いじゃないよ?利用しやすくて」
「う、ぐぐ……耐えろ俺……耐えるんだ……ッ」
「ところでソフィアはどう思う?」
「良いんじゃないかしら。可愛くて」
「ぎゃぁあああああああ!?」
涙目でヒースはがくりと膝をつき、
「く、くそぉ……こいつに勝てる日はいつ来るんだ……」
「一万年と二千年前」
「まさかの過去!?あとなんか数字微妙じゃね!?」
「一生来ないから諦めた方が良いと思うわ」
「御嬢様まで!?」
ちくしょー……と涙するヒースが面白くて、ソフィアはくすりと笑った。
これからの日々が、楽しみで仕方なかった。

126月波煌夜:2012/04/01(日) 10:09:24 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
ここまでご覧いただいた皆様、有難う御座いました。
次からは、三章に入りたいと思います。章タイトルは今から決めるのですが。
この二章で、自分の文章力の無さに愕然としました。しょ、精進します。『この辺が意味わからなかった』等あれば、遠慮なくお申し付けください。弁解します(^-^;
それから、少しの間、更新をお休みさせていただく予定です。ほんの少しだと思いますが。
それでは。これからも、気長にまだまだ未熟な月波と『紫の歌』にお付き合い下さいませ。

127月波煌夜:2012/04/05(木) 17:44:01 HOST:proxyag014.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 1』



『―――……もっと体勢低く!相手から目ェ逸らすんじゃねえっつってんだろが、少しは学習しろ!』
『はいッ!』
窓の外から聞こえる、固いものを打ち付けあう音と響く怒号に、ソフィアは没頭していた書物から顔を上げた。
とある日の昼下がり。
春から夏へと移りかけている時期のやや強い日差しが、窓から差し込んでいる。
ソフィアは押し花の栞をページにはさんでから本をぱたんと閉じ、歩いて行って窓を開ける。
「………ヒース?」
激しく剣を打ち交わす男ふたりのうちの一人が見覚えのある青年であることに気付き、ソフィアはぽそりと呟いた。
「―――ぅああああああッ!」
広場の中央、ヒースよりもずっと大柄で頑強そうな相手が、大きく叫びながら剣を横薙ぎに払う。
力任せの一撃をヒースは避けることもせず、逆手に持った剣で受け止めた。
「ふーん。これはなかなか」
ヒースは余裕の表情を崩すことなくにやりと笑う。
「……でも」
その刹那。
『!』
相手の兵士と、窓から様子を眺めていたソフィアが同時に息を呑む。
一瞬のうちに、ヒースは剣で兵士の剣を勢いよく弾き飛ばし、さらにそのまま美しい軌跡を描いた剣先を、豹変した事態についていけずに呆然とした兵士の首筋に突きつけていた。
「まだまだ甘いな」
ふっと息を吐き、肩をすくめて、ヒースは剣を鞘(さや)に収めた。
わっ、と取り囲んでいた男たちから歓声が湧き上がる。
「…………すごい」
ソフィアはその光景に目を見張った。
相手が哀れなほど、あまりにも圧倒的な力量差。
初めて剣の試合を見たソフィアにもはっきりと分かる。
見る者の心を奪う、隅々まで研ぎ澄まされた美しい剣技はまるで、ひとつの芸術のようだった。
「失礼しまーす……あ、どうしたんですか?」
振り返ると、丁度トレイを持ったメイドのシェーラが入室してきたところだった。
ふわふわとした小鹿色(フォーン)の髪を揺らし、テーブルに菓子を置いて、とてとてと寄ってくる。
「お、練習試合ですね!ヒースは、と……あ、いたいたー」
ひょいっとソフィアの隣に立ち、窓の外を覗き込んだ。
「ヒースって強いのね、初めて知った」
「そうなんですよー、意外ですよねぇ」
シェーラは初日の無愛想すぎる態度を急に改めたソフィアにも何も聞かず、普通に会話してくれる。
ソフィアにはそれが、とてもありがたかった。
「仮にも子爵の息子なんですし、剣なんか一生縁無さそうですけどねー」
「………え?ししゃく?」
「はい。ユーゼル子爵家、でしたかね」
子爵家の出身なら、全く働かずにのんびりと人生を謳歌することもできるだろうに、何故使用人などやっているのか。
―――もしかして、私よりずっと身分が高いんじゃないかしら……?
「シュオン様の乳母が子爵夫人だったんですよー。その流れで勤め始めたんじゃないかと。シュオン様とはいわゆる幼なじみですねー」
それはシュオン本人にも聞いたことがあったが、
「う、乳母が子爵夫人って……」
「うーん、乳母っていうか、お母様同士が仲良いらしくて。それでも普通じゃ有り得ないですけど、それだけエインズワーズが凄いってことでしょうね」

128ピーチ:2012/04/05(木) 20:17:19 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

久しぶりーー!!ヒース凄っっっ!!

剣術得意の段じゃないよね・・・!!

あたしは全然更新できてなーいww←アホ

129月波煌夜:2012/04/05(木) 22:37:17 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久しぶりー!
また来てくれてありがとう(^-^)v

残念すぎるヒースを格好良く書いてあげたかったんだよ……凄いって思ってもらえてよかったー(^o^)

新学期だから色々忙しくて(汗)
私も、更新はちょっと遅くなるかも(^-^;

気長に待っててくれたら嬉しいな(/_;)

130月波煌夜:2012/04/06(金) 09:52:30 HOST:proxyag079.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 2』

……そういうものなのだろうか。
「ヒースは末っ子らしいですから、後継者争いは関係ないも同然ですしね。……あ、また始まりましたよっ」
ソフィアも視線をシェーラの顔から窓の外に移し、
「なっ!?」
窓枠から身を乗り出した。
剣を腰に差したままのヒースの周りを、剣を構え、武装した兵士たちがぐるりと取り囲んでいる。
その数、およそ十五。
「あ、あれはさすがに危ないんじゃっ……!」
「……いいえ」
らしくもなく慌てるソフィアに、シェーラはいまだに剣を抜かないヒースの姿を青灰色の瞳に映しながら、首を横に振ってみせる。
彼を完全に信じきっている証の、真剣な声音。思わず、ソフィアが口をつぐむ。
「大丈夫です。……あいつなら」
兵士たちが一礼。
ヒースが下唇を舐め、来いよ、と言うように顎をしゃくった。
「―――はアァッ!」
雄叫びを上げながら最初に切りかかってきた一人の剣を鞘で受け流し、目にも留まらぬ俊敏さでその兵士の背後に廻ると、背中を思い切り蹴りつけた。男が呻きながら地面に転がる。
それが合図のように、残りの衛兵たちが一斉に襲い掛かった。

一閃―――

ヒースが抜刀、音速をも凌駕する速度で空間を薙ぎ払う。
わずかな風鳴りすら生じない一瞬にして静謐の剣閃。
一秒たりと同じ場所には留まらない。あまりに早い剣戟(けんげき)に、遠目にもその姿が霞んで見え―――

―――カランッ

ヒースが最後の一人の首筋に剣を押し当てた途端、全ての動きを止めた兵の手から、まったく同じ瞬間に、剣が滑り落ちた。
「す、すごいっ……!」
ソフィアは感嘆の吐息を漏らす。
「そうでしょうそうでしょう〜」
えへへ、とシェーラはまるで自分のことのように破顔した。
下の広場では、「さすがっすヒースさん!」「一生付いていきます!」「いや付いて来んな鬱陶しいから!」などと騒々しいやり取りが繰り広げられている。
「おーいヒースぅー!お疲れ―――ッ!見てたよぉ―――!」
ソフィアが止める間もなく、シェーラは下に向かって叫んだ。
こちらを見上げたヒースがあからさまに『げぇっ』という顔をする。
「誰だあれ」「結構可愛いな」「さてはヒースさんの女か」「あ、俺知ってる、シェーラちゃんってんだ」「おい何でお前なんかが知り合いなんだよ!?」「死ね」「死ね」「脳漿撒き散らして死ね」「何でだよたまに廊下で挨拶するだけだよ!」
「お、お前ら変な勘違いしたら殺す!」
「あ、ヒースさんになら殺されてもいいっす」「俺も」「俺も」「……あれ、なんかすげえ美人がいる」
一人がシェーラの隣のソフィアに気付いた。
ヒースが慌ててシェーラの背に隠れる彼女の姿を認め、怪訝そうな表情から一転、サッと青ざめる。
「ほんとだ」「やべえな」「シェーラちゃんとまとめてお近づきになりてえ」「マジふざけんなお前、ここは俺が」「いや俺が」
「こらお前ら、ぜってーに御嬢様に手ェ出すんじゃねえぞ、俺が殺される!」
「誰にすか」「ヒースさんに勝てる奴がこの屋敷にいるんすか」
「うるせえ黙ってろ!」
明らかに年上の集団を蹴散らした上に彼ら相手に威勢良く吠えるヒースだったが、完全に『何か』に怯えきった顔をしていた。

131bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/06(金) 16:20:04 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

初めまして、月波さん^^……かぐやさんとお呼びしても良いでしょうか?←
最近小説板に足を突っ込みました、bitterと申します。

書き込むのは初めてですが、作品自体は大分最初の頃から拝見しておりましたv
文章も凄くすらすらと読んでいけて、毎回楽しませて頂いています^^

私はまだ日が浅いどころの話ではないひよっ子ですが、同じ小説を書く者として
仲良くして下さると嬉しいですノ

それでは長々と失礼しました、これからも頑張ってくださいね^^ノシ

132月波煌夜:2012/04/06(金) 17:03:18 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp
>>bitterさん

初めまして(*´д`*)
はい、月波でも煌夜でもかぐやでもゴミ虫でも←何とでも読んでください☆
コメ本当にありがとうございます…!嬉しいです(/_;)
こんなダメ文章を垂れ流していていいのかどうかいちいち不安になる小心者なもので…
書き込んでくださると安心するのですよ(^-^;
これからもよろしくお願いしますw

133彗斗:2012/04/06(金) 18:28:11 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
いつ見てもすごいなぁ……どうもお久しぶりです。
話の切り方がとても上手いですね〜〜見習いたいぐらいです。
今日は時間が無いのでこの辺で……

134ピーチ:2012/04/06(金) 18:53:29 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おぉ!また新たな更新が!!?

ヒースやばい!!

確かに・・・残念すぎるくらい残念だもんね、ヒースは←まさかの遊ばれ役ww

剣術って特技のお陰で少しはかっこ良くなったかな??

135月波煌夜:2012/04/06(金) 18:57:29 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

お久しぶりです(〃▽〃)
お忙しい中、書き込みありがとうございます…!
これからしばらく特に意味のない話がダラダラと続きますので、たまーにでも覗いていただけたら嬉しいです(^-^)v

136月波煌夜:2012/04/06(金) 19:02:58 HOST:proxyag069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

やっほー☆
ヒースは体術と剣術が半端ない設定w
ちょっとでも格好良くなってると…良いなぁ…(つд`)

でも次からはまた遊ばれ役に徹させるけどねww
シリアスに入る前に、4人の日常を描きたいんだけど、次どうしようかなー(´・ω・`)
迷い中←

137ピーチ:2012/04/06(金) 20:48:29 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ひぇっ!体術も!?やばい!やばすぎる!!!

と思ったら・・・また遊ばれ役・・・

何か可愛そーww

4人のの日常??どんな???

138月波煌夜:2012/04/06(金) 21:50:27 HOST:proxyag018.docomo.ne.jp
>>ピーチ

それがヒースですからww
でもコメディにもシリアスにも順応できる子だから重宝してるよ(笑)
動かしてて面白いしね←

遊びながらも(主にヒースで)、ソフィアがシュオンと仲良くなってく過程、かな( ´艸`)
今決めた!次かその次くらいで新キャラ入れるつもりーw
まぁ、もう微妙に登場してるんだけどねww

139ピーチ:2012/04/06(金) 22:03:54 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ぬぉぉ!!マジかっ!

え?新キャラ登場してる??

重宝するならもちっと優しくしたら??ww

140月波煌夜:2012/04/06(金) 22:25:18 HOST:proxyag006.docomo.ne.jp
>>ピーチ

マジだぜ!!

……うん。ヒースの扱いはね。反省してます←
まぁこれからも続けるけどねっ☆

明日あたりに、新キャラ(?)が誰なのか分かる内容を更新したいなーと思ってるよ(^o^)
また見に来てね♪

141月波煌夜:2012/04/07(土) 10:01:19 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 3』

「もう解散みたいですねー、残念」
集団が屋敷の中へと消えていくと、シェーラは窓枠から手を離し、何もなかったように部屋を振り返った。
「シェーラ……今、下の人たちの話、聞いてたわよね?」
「え、聞いてましたよ?いやぁ、みんなソフィア様のファンになっちゃいそうですねっ」
「………………………」
シェーラには、先ほどの彼女についてのかなり際どい話―――ヒースの女云々と彼の慌てよう―――は自動的にスルーされたらしい。
あまりにも、あっさりと。邪気の欠片もない笑顔を見せるシェーラに、ソフィアは呆れた眼差しを送る。
―――……この子に、ヒースの好意が伝わるのはいつになるのかしらね……。
このままだと一生進展は無さそうだ。
ソフィアは心の中で苦労性の青年に合掌した。
……でも。
ヒースの勝利を確信していたときに見せたシェーラのあの真剣な面持ちは、ただの他人のことを考えていたようには、ソフィアには思えなくて。
―――『大丈夫です。……あいつなら』
「……うーん。案外、もう一押しってところなのかもしれないわね」
「ほえ?何か仰いました?」
「いいえ、何も」
器用で、変なところは鋭いくせに、自身のこととなると急に鈍くなる彼女に、ソフィアは意地の悪い笑みを浮かべた。
「むぅー……絶対なにか仰ってましたようー……」
「気のせいよ」
「ええー。あたし、耳には自信ありますもん」
「……その自信は何処から来るのかしら」
自分の話題を聞き逃したばかりなのだが。
「ほ、ほんとですよ!あたしは昔から『シェーラは目と耳と鼻は良いのにね……』って言われて育ったんですから!」
「頭が入ってないのが泣けるわね」
「えへへ」
「照れる要素が見当たらないのだけど」
半眼で話しながら、ソフィアは寝台(ベッド)に腰掛ける。エインズワーズ城の寝台は寝心地は勿論、座り心地も最高なのだ。すっかりソフィアの定位置になっている。
「っあ―――!忘れてましたっ」
「……また?」
「すみませんすみません!うぅ、大事なことなのに…………あー、え、えと、」
シェーラは少し困ったような顔をして、言葉に詰まった。
ソフィアが沈黙を保ったまま、視線で続きを促す。
「あの、……旦那様―――公爵様が、今日、ソフィア様を夕食の席にお招きしたいと」
……ソフィアは、銀の睫(まつげ)をしぱしぱと瞬かせた。
「…………何で?」
「あ、あたしにも良く分からないんですよ……。急に仰せつかったもので……」
……エインズワーズ公爵。
この屋敷の主人。
シュオンの、父親。
……確かに、客人を食事に招待することはあるかもしれないが、少々急すぎるような。
ソフィアは改まった形で晩餐に参加したことはないので、不安になってしまう。
「ねえ、公爵ってどんな方なの?」
一度、見た感じでは自分にも他人にも厳しそうな人だった。
ソフィアが小首を捻って訊くと、シェーラはしどろもどろという感じで。
「ええっとー……薄いですが、王族の血を引いていらっしゃるので王位継承権を持ってますね。あの方がマルグリット王になる可能性はかなり低いですが……。あとは、シュオン様と同じ金髪碧眼で、奥様もそうですが……とても綺麗な方です。はい」
……ソフィアの数少ない知識そのままである。
「……内面は?」
「な、内面っ?い、いやー、うん、す、素敵な方ですよっ?」
―――あやしい……。
「シェーラ、あなた公爵に嫌がらせでもされてるの?」
ソフィアはふと心配になって、シェーラの顔を覗き込んだ。
いつもにこやかで天真爛漫な彼女がこんな反応をするなんて、明らかにおかしい。
「ち、ち、違いますよ!むしろヒースがというか……ううん、何でもないです!ただ……」
シェーラは一呼吸おいて。
「すご―――く変わってらっしゃるってだけです。シュオン様なんて比べものにならないくらい」
「ええええええええええ」
「そ、それではっ!夕食の頃合いになったらまた来ますね!」
シェーラは勢いよく扉を開けて走っていった。
……正しくは、逃げた。
―――公爵ってどんな人なのよほんとに!
ソフィアは顔を引きつらせた。
「あ、あの、お嬢さま……旦那様とお会いになるんですか?」
開いたドアから、ヒースの代役らしい男が顔を出していた。
「え、ええ」
「が、頑張ってくださいっす!自分、応援してます!」
ぴしっと敬礼をしながら従僕(フットマン)はそれだけ言うと、ばたんとドアを閉めてしまった。
……頑張れって。
「な、何を頑張れっていうのよー!?」
ソフィアの心の底からの叫びに、答える者はいなかった。

142ピーチ:2012/04/07(土) 10:46:23 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

・・・・・・シュオン様が比べ物になんないくらいの変わり者・・・?

なーんかやな予感・・・

ソフィア負けるなー!←何にだww

143月波煌夜:2012/04/07(土) 11:12:03 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ふっふっふ、その予感を当たらせてさしあげようぞ←誰だよ

明日あたりにまた更新したいなー。
まぁ学校の春休みの課題終わってない上に来週テストだけどね☆
気にしないー♪

144ピーチ:2012/04/07(土) 11:22:17 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ひぇぇっ!やな予感は当たらなくていーの!((必死ww

やばいよ〜!つっきーが何かに憑かれた〜〜!←アホ!

145月波煌夜:2012/04/07(土) 18:37:16 HOST:proxyag006.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ふははははははは←ノってみる

でも大丈夫!別に嫌な奴ではないから!かなりアレな感じにおかしいだけで(*^_^*)
あとシュオンの母上も無駄に濃いキャラを予定してるよw

146bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/07(土) 19:19:53 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

こんばんは、再びお邪魔します^^
本当に良い意味で面白いですねー、読んでる時にやけてました、多分←

シュオン様のご両親もどんな方なのか楽しみですw
更新待ってますねノ

147ピーチ:2012/04/07(土) 20:00:29 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あぁぁぁ〜!やばい、やばいよ〜!←調子乗るな!

嫌な奴じゃない!良かった〜!

・・・シュオン一族、無駄にキャラ濃い設定ですか・・・←シュオン一族って何だ!

まぁまぁ、更新待ってるぞよww

148月波煌夜:2012/04/07(土) 20:23:02 HOST:proxyag033.docomo.ne.jp
>>bitterさん

またまたお越しいただいて有難う御座います…!
本当に励みになりますw
折角かけて下さった温かいお言葉を裏切らないよう、頑張りますっ(〃▽〃)

149月波煌夜:2012/04/07(土) 20:27:12 HOST:proxyag034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

基本ソフィア以外は皆キャラ濃くしておりますw

シュオンファミリー(←ネーミングセンス0)は特に強烈にする予定なんでよろしく☆

…見捨てないでね(/_;)

150桜彼方どこまでも:2012/04/07(土) 20:49:29 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
ここは,“終わりの世界”
死んだ人間が停止した心臓を再び再起動してくれる世界
この世界はあの世の人間がどんなに想像力をふくらませてもそれはどこにも存在しないただの自分がつくった理想の世界
ここは,魂だけが浮かんでいる
ただそれだけの光景
何も見えなければ,何も聞こえない
風さえ吹いてない
人間は再生していく
どんなに時間がかかろうと, いずれ必ず
だけど,もう充分な想いをした
温かい恵まれた家庭で生まれて,望みも叶って,最期は自分が創り上げた家族で死ねた。
最高だった。
だからもうこれ以上の幸せはいらないー
でもそれは叶うことはないだろう
前世の世界での最期に思ったこと
身体もない魂だけの姿なのだから声を発することもできない
時は流れていく
止まることのないスピードで
どんな姿になるかわからないけど,次なる世界へ行かなきゃならない
前世の家族のことなど忘れて
 
遺伝子がこの生命の始まりだとして
人間はなぜ生まれるのだろう。それはきっと現実に生きる人々がみんなが抱いている一番の知りたいこと。
しかしそれくらい一人一人,人間は望まれただろうか
現世に生きる人間は約69億を超すほどの人口。その中にぬけがないくらい平等に望まれただろうか…‥。何かの可能性がありそれだけのために生み出された人間ではないだろうか?現世とはお金に支配されているように見える。お金よりもっと大事なこと,もっと素晴らしい幸せが生みだせる可能性がすぐそばにあるのに…

151桜彼方どこまでも:2012/04/07(土) 20:54:01 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
ここは,“終わりの世界”
死んだ人間が停止した心臓を再び再起動してくれる世界
この世界はあの世の人間がどんなに想像力をふくらませてもそれはどこにも存在しないただの自分がつくった理想の世界
ここは,魂だけが浮かんでいる
ただそれだけの光景
何も見えなければ,何も聞こえない
風さえ吹いてない
人間は再生していく
どんなに時間がかかろうと, いずれ必ず
だけど,もう充分な想いをした
温かい恵まれた家庭で生まれて,望みも叶って,最期は自分が創り上げた家族で死ねた。
最高だった。
だからもうこれ以上の幸せはいらないー
でもそれは叶うことはないだろう
前世の世界での最期に思ったこと
身体もない魂だけの姿なのだから声を発することもできない
時は流れていく
止まることのないスピードで
どんな姿になるかわからないけど,次なる世界へ行かなきゃならない
前世の家族のことなど忘れて
 
遺伝子がこの生命の始まりだとして
人間はなぜ生まれるのだろう。それはきっと現実に生きる人々がみんなが抱いている一番の知りたいこと。
しかしそれくらい一人一人,人間は望まれただろうか
現世に生きる人間は約69億を超すほどの人口。その中にぬけがないくらい平等に望まれただろうか…‥。何かの可能性がありそれだけのために生み出された人間ではないだろうか?現世とはお金に支配されているように見える。お金よりもっと大事なこと,もっと素晴らしい幸せが生みだせる可能性がすぐそばにあるのに…

152桜彼方どこまでも:2012/04/07(土) 20:58:49 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
ここは,“終わりの世界”
死んだ人間が停止した心臓を再び再起動してくれる世界
この世界はあの世の人間がどんなに想像力をふくらませてもそれはどこにも存在しないただの自分がつくった理想の世界
ここは,魂だけが浮かんでいる
ただそれだけの光景
何も見えなければ,何も聞こえない
風さえ吹いてない
人間は再生していく
どんなに時間がかかろうと, いずれ必ず
だけど,もう充分な想いをした
温かい恵まれた家庭で生まれて,望みも叶って,最期は自分が創り上げた家族で死ねた。
最高だった。
だからもうこれ以上の幸せはいらないー
でもそれは叶うことはないだろう
前世の世界での最期に思ったこと
身体もない魂だけの姿なのだから声を発することもできない
時は流れていく
止まることのないスピードで
どんな姿になるかわからないけど,次なる世界へ行かなきゃならない
前世の家族のことなど忘れて
 
遺伝子がこの生命の始まりだとして
人間はなぜ生まれるのだろう。それはきっと現実に生きる人々がみんなが抱いている一番の知りたいこと。
しかしそれくらい一人一人,人間は望まれただろうか
現世に生きる人間は約69億を超すほどの人口。その中にぬけがないくらい平等に望まれただろうか…‥。何かの可能性がありそれだけのために生み出された人間ではないだろうか?現世とはお金に支配されているように見える。お金よりもっと大事なこと,もっと素晴らしい幸せが生みだせる可能性がすぐそばにあるのに…

153桜彼方どこまでも:2012/04/07(土) 21:19:46 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
こんにちは はじめまして 間違えて桜彼方どこまでもていうペンネームになってしまいました。本当は白鳥夕という名前なんです それに同じ物を3つも入れてしまいました。すみません,名前変更の仕方と物語を消去する仕方を教えてクラると助かります。

154月波煌夜:2012/04/07(土) 21:27:28 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp
>>153

こんにちは。
私はケータイから見ているのでよく分からないのですが、ペンネームは普通に変えられるのでは?
あと、ここへの間違えてしまった書き込みは気にしなくて大丈夫ですよ。
新しいスレを作りたいなら、掲示板TOPからどうぞ(^-^)

155神野計画:2012/04/08(日) 05:08:30 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>154
コテハンが中坊臭い。

156月波煌夜:2012/04/08(日) 10:12:07 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 4』


―――……何でこんなことになったのかしら……。
ソフィアは漏れそうになる溜息をこらえ、ナイフとフォークをぎこちなく動かしながらも、ちらりと目の前の人物を盗み見た。
もとは輝かしい黄金(こがね)色であっただろう髪にはわずかに白がかかっていたが、その美しさは失われることなく痩身を覆っている。
若い頃は絶世の美男子として騒がれていたであろう、恐ろしい程に整った精悍な顔立ち。気品と威厳に満ちた美貌は冷たく、麗しく。ますますソフィアを萎縮させる。
―――現エインズワーズ公爵。
マルグリットの人間なら知らぬ者はいない、大貴族の筆頭。
緊張しない方がおかしいと言えるだろう。
彼の隣、ソフィアの斜め前に座ってにこやかに話している上品な容貌の女性はレディ・エインズワーズ―――公爵夫人アゼリア。
優しげで温和な深緑色の瞳、緩やかにウェーブがかかった艶やかなブロンド。
もうかなりの年齢のはずだが、衰えを感じさせない肌は張りがあって瑞々しい。
シュオンはお母様似かしら、とソフィアは思う。
見るからに厳しそうな父親よりも、優しさが滲み出る太陽の女神の如き微笑を絶やさない彼女は、瞳の色以外はシュオンに瓜二つだ。
……ただ。
ここに来る前に、身支度を手伝いに来たシェーラに夫人のことを尋ねてみたのだが、『え、奥様ですか?あ、は、ははは……ほ、ほらもうお時間です行きましょうっ』と汗をダラダラ流しながら言葉を濁された。
―――二人とも、まともな人に見えるのだけど……。
内心首を捻りながらもアゼリアの話に必死で相槌を打つソフィアは、前はショート、後ろはロング丈のドレスでしっかりと着飾っている。
女性らしいハイウエストのシルエットはドールのような愛らしさ。
艶のある漆黒のベロアに、銀糸でシャンデリアの模様が精緻に描かれた純白の五段フリルが映える。
フリルリボンタイの上、嫌みにならない程度に開いた胸元の眩しい素肌を飾るのは真珠(パール)のネックレス。ソフィアの肌と同色のそれは控えめに光彩を放っている。
ソフィアは、隅でヒースと共に控えている、持ち前のセンスを発揮してくれたメイドの少女に視線で助けを求めるが、『ふぁいとです!』というように指を立てられた。おまけに二人揃って目を逸らされる。
「どうかして?ソフィア」
「……いいえ、何も。大丈夫です、アゼリア様」
ソフィアは悪足掻きを諦め、アゼリアに向き直った。
「あら、そんな他人行儀にならなくても良いのよ?わたくしのことは本当の母親だと思って、ね?お義母様と呼んでほしいわ」
……何か一部の発音に違和感があったが気のせいだろう。
「お、お母様……」
「そう」
うふふ、と満足げに笑う。
「それでね。いつもあの子、研究してるからって自分の部屋で食事をするんだけど、今日は来てくれるんですって。ソフィア、あなたのお陰ね」
嬉しそうに微笑むアゼリアに、つられてソフィアの頬も緩む。
彼女の息子の自慢話は微笑ましいし、料理もこの上なく豪勢で美味、なのだが。
「………………………」
前からの値踏みするような視線に、ソフィアの背筋が凍る。
公爵の碧眼は遠慮なくじろじろと彼女を眺め回していて、
―――ま、まさか、公爵は凄い女好きとか……?それでシェーラはあんなに怯えていたの?
ソフィアが冷や汗を流しながら、少々失礼なことを考えていたそのとき、
「…………ソフィア君、と言ったな」
ぼそり、と。低いが、良く通る美声に名を呼ばれた。
「は、はいっ」
焦って正面の公爵に向き直る。
「一つ、聞きたいことがあるのだが」
重苦しい雰囲気が大テーブルに立ち上る。
公爵がゆっくりと薄い唇を開き―――

「君は、シュオンと毎日会っているのかね」

「……………はい?」
「そうなんだなッ!?」
公爵はガタンッと席から立ち上がり、
「わ、私だって五歳のときから風呂を別々にされたのに、今も執務以外では喋ってすらもらえないのに、君は、ま、毎日一緒なのかッ」
ソフィアはぽかんとするしかない。
「ま、ま、まさか、私の可愛いシュオンに手を出してはいないだろうな……?熱心に君を探していたようだし、ももももう、そう、そういう爛れた関係にっ?若い二人は肉欲のままに夜な夜な、い、い、いかん、シュオンはいずれ私と結婚するのだ、パパはそんなのぜ―――ったいに許さッ」
ゴスッ、と鈍い音を立て、笑顔のアゼリアの手刀が閃き、公爵の首の後ろに打ち込まれた。
「ごめんなさいねソフィア、この人いつもこうなのよ」
ほんわかと笑う彼女。
ソフィアは顔が引きつらないよう念じるのに、全霊を注いだ。

157ピーチ:2012/04/08(日) 12:06:41 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわぁお・・・シュオンのお父さん、キャラ分かんねーww

何となーく子離れできない、みたいな??

あと小説の方の書き込みありがとー!!

158月波煌夜:2012/04/08(日) 12:37:24 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、実は「死ぬほど親バカ」のつもりだったw
シュオン父、表現分かりにくかったかな(つд`)
反省ww

次でもうちょい親バカぶりを足しますヽ(´ー`)ノ

あとシュオン母はもうちょい待ってね、そのうち壊すから(ぉい

159ピーチ:2012/04/08(日) 13:09:41 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え・・・?まさかの親バカ!?

いや、あのね、表現が悪いわけじゃないよ!

シュオンのお母さん、壊しちゃう系ですか!?

160白鳥夕:2012/04/08(日) 14:12:21 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
こんにちは 教えてくれてありがとうございました。月波煌夜さんとっても優しい方で安心しました。良ければお友達になってもらえると嬉しいです。それとsweet memory 4読みましたとても素敵な話で気に入りました。

161白鳥夕:2012/04/08(日) 14:25:56 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
僕には妹がいた…2つ年下の妹が―‥

162白鳥夕:2012/04/08(日) 14:27:52 HOST:248.237.accsnet.ne.jp


ここは,“終わりの世界”
死んだ人間が停止した心臓を再び再起動してくれる世界
この世界はあの世の人間がどんなに想像力をふくらませてもそれはどこにも存在しないただの自分がつくった理想の世界
ここは,魂だけが浮かんでいる
ただそれだけの光景
何も見えなければ,何も聞こえない
風さえ吹いてない
人間は再生していく
どんなに時間がかかろうと, いずれ必ず
だけど,もう充分な想いをした
温かい恵まれた家庭で生まれて,望みも叶って,最期は自分が創り上げた家族で死ねた。
最高だった。
だからもうこれ以上の幸せはいらないー
でもそれは叶うことはないだろう
前世の世界での最期に思ったこと
身体もない魂だけの姿なのだから声を発することもできない
時は流れていく
止まることのないスピードで
どんな姿になるかわからないけど,次なる世界へ行かなきゃならない
前世の家族のことなど忘れて
 
遺伝子がこの生命の始まりだとして
人間はなぜ生まれるのだろう。それはきっと現実に生きる人々がみんなが抱いている一番の知りたいこと。
しかしそれくらい一人一人,人間は望まれただろうか
現世に生きる人間は約69億を超すほどの人口。その中にぬけがないくらい平等に望まれただろうか…‥。何かの可能性がありそれだけのために生み出された人間ではないだろうか?現世とはお金に支配されているように見える。お金よりもっと大事なこと,もっと素晴らしい幸せが生みだせる可能性がすぐそばにあるのに…。
一番の宝物は何だろう?人間とは疑問がありあまるくらいあり,困る。その疑問も誰かが一つ一つ解答してくれるわけではない。そんな疑問を無限にそして繊細に描いて
無限…
生命が尽きなければいいと思ったことがある。  この時間がずっと続けばいいと思ったことがある。でもそれは一瞬のキラメキで・・・・。
生命なんてなくなればいい,生まれなければよかったと思うこともある。
人間は幸せや希望で満ちていなければ居場所や生きている意味をなくしたと,思い込んでしまう。それな弱い生き物。
いったい人間はどうしたいのだろう。

163月波煌夜:2012/04/08(日) 15:01:30 HOST:proxy10038.docomo.ne.jp
>>白鳥夕さん

こちらこそご丁寧に有難う御座います(*^_^*)
はい、是非仲良くしてください(^o^)
あと、お話拝見しましたが、すごく深くて壮大な感じですね!
このスレの中で埋もれてしまうのは勿体無いので、新しいスレを作って公開することをお薦めしますよ(^-^)/

164ピーチ:2012/04/08(日) 16:45:44 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

更新待ってるぞー!←自分は全く更新しないww

白鳥夕さん>>

ここに書き込まれた話読んだよ!面白い!

新しくスレ作るのかは分かんないけど、更新頑張ってね!

あたしとも是非仲良くしてくれー!!

165月波煌夜:2012/04/08(日) 17:00:53 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 5』

「いいか、シュオンはこの薄汚れた世界に降臨した神だ女神だ天使だ大天使だ妖精だ精霊だ人類の至宝だッ!だからシュオンに近づくゴミは全て私が一番近くで排除しなくてはならないそのためには私の伴侶となることが必要なんだマルグリットに投資しまくって国王に恩着せて脅して実の親子でも同性でも結婚できるように法を変えさせるんだ、なのにシュオンは六歳の時から『ちちうえはきらい、ヒースとあそんだほうが楽しい』と言うようにィィいイイフオオォアアアあああ゙―――ッ」
血走った目をしてノンストップでエキサイトする公爵に、スパーン、とアゼリアの手刀がまたも華麗に決まった。
「うくっ……どうしたアゼリア、嫉妬か?大丈夫、勿論重婚も認めさせるからな、安心しなさい」
「あなた、いつまでたっても懲りないからシュオンに嫌われるのよ?正直わたくしも気持ち悪いわ」
全くである。
「仕方ないではないか、何しろシュオンは成長するごとに美しくなっていって、初めて正装したときの可愛さといったらもうどうしようかと」「まず貴方の頭をどうにかした方が良いんじゃないかしら」「あら、ソフィアったら素敵な突っ込みね」
―――し、しまった、つい本音が。
しかし興奮した公爵にはソフィアの呟きは聞こえなかったらしい。悲劇の主人公のように両手を広げて天を仰ぎ、
「ああ、何が不満なのだ愛しい息子よ!お前の為だけに研究所や聖堂や教会を作ってシュオンの名を付けたりもしたのに、ちっとも喜んでくれない……!お前はどうしたら喜んでくれるんだ!」

「―――父上が今すぐこの世から消えてくださるなら、僕は心の底から喝采を叫んで見せますけど?」

広い大食堂に一筋の光が差し込んだたかのような幻覚。
サラサラと揺れる眩い蜂蜜色の髪、白磁の肌に奇跡のように完璧な配置で嵌め込まれた澄んだ空色の瞳。
「……シュオン!」
「遅れてごめんね、ソフィア」
にこ、と相好を崩して笑う美貌の青年。
救世主の登場に、ソフィアは涙が出そうなほど安堵した。
目の前には変態、親切そうだが初対面のアゼリア。使用人二人は今回は全く頼りにならなそうだし、物凄く不安だったのだ。
「おおシュオン、私の天使(エンジェル)!会いたかった!」
「そんなに死にたいのなら僕の手で地獄に堕として差し上げますが。……ねえソフィア、折角来たんだけど、アレ見たら食欲失せちゃって。僕の部屋で一緒に食べない?」
若干涙目のソフィアに向けて微笑む。
「くっ……!どうしてパパには笑いかけてくれないんだ、そうだやはり二人きりで丘の上の白い家に住んで愛を育もうそうしよう!」
「おや、父上にしては悪くない提案ですね。父上の血で真っ赤な家に染め上げましょうか」
「そうか、一緒の寝台(ベッド)がいいか!全く、シュオンはいつまでたっても甘えん坊だなあ!」
「そろそろお年で耳が悪くなってきたようですね。もう限界ではないですか?」
「はは、そんなに心配するな。私はお前の笑顔さえあればこの先二億年は健康体で生きていける」
……それは完全に違うビョーキではないだろうか。

「……シュオン、左手怪我してない?大丈夫なの?」
ふと、シュオンの長い指に包帯が巻いてあることに気づき、ソフィアは声を上げた。
「ん、これ?ちょっとアルコールランプで火傷しちゃっただけだよ。ソフィアは優しいね」
「なにィっっっ!?」
公爵はシュオンに駆け寄ろうとしたが、首根っこをしっかりと握ったアゼリアに阻まれる。
「ええい離せ!シュオンの芸術品のような指に傷が付いただと、ささささあシュオンパパに言ってごらん何処の工場だ何処のメーカーだ何処の職人だ一族郎党皆殺しにしてやぅあああああアアア―――ッ」
「落ち着きなさいあなた」
笑顔を保ち続けるアゼリアに鳩尾を直撃され、公爵はうずくまり、脂汗と涙を垂れ流した。
「うぅ、私に優しくしてくれるのはお前だけだよ……愛しているよシュオン。『うん、僕も愛してるよ』」
と思いきや、公爵は何処からか額縁を取り出し、時折裏声を出しながらぶつぶつと何やら呟き始めた。
興味に駆られたソフィアは、シュオンの「だ、駄目だよソフィア、その犯罪者に近付いちゃ!」という制止の声も聞かず、そろそろと公爵の後ろに回り、その絵を覗き込んだ。
三、四ほどの幼い少年が、こちらに向かって微笑みかけている。
肖像画の、天使という表現がぴったりなその美しい子供は、
「か、可愛い……」
「む?」
「こ、これシュオン様ですよね?凄い可愛いっ」
例外なく、女性の心を射止める威力を持っていた。
「ちょ、ちょっとソフィア!?」
「ふむ。ではこれはどう思う?」
「か、可愛いですっ」
「こっちは?」
「わ、わ、可愛いいい」
次々に出てくる幼げなシュオンの肖像画に、ソフィアは目を輝かせる。

166月波煌夜:2012/04/08(日) 17:06:03 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ふぅ。私頑張ったよー!
褒めて褒めてーw

今度は「シュオン父は親バカの変態」って思いながら読んでね☆
ただの変態とも言えるけどね☆

167ピーチ:2012/04/08(日) 17:12:35 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>

おぉ!新たな更新が!!

―そーゆー事かー・・・シュオンのお父さん、ちょっと・・・引くかも←はっきりゆーな!

シュオンのお母さんは優しくてしっかりしててけじめがついてる人なのにねーww

168月波煌夜:2012/04/08(日) 17:30:05 HOST:proxyag019.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うんw
どうぞドン引きしてくださいなww

ヒースが遊ばれ役なら、父上は引かれる役だから☆←意味分からん

あ、お母様もキャラ崩壊させるよ( ´艸`)
ちなみにアゼリアは最強です。色んな意味で。

続き頑張るぞー(≧∀≦)

169ピーチ:2012/04/08(日) 17:50:41 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

まさかの引かれ役・・・お母様も崩壊の危機!?

まぁ・・・ヒースはヒースで仲間ができてよかったねー^0^←何の仲間!?

あたしも更新頑張らないとなー、つっきーとか燐さんも応援してくれてるし!!

170月波煌夜:2012/04/08(日) 18:36:09 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 6』

「……ふむ。君は、なかなか話が分かる子のようだ。……確かに」
公爵は、ずいっとソフィアに近づくと、至近距離で彼女の紫の瞳を見つめた。
夢中になって肖像画を眺めていたソフィアだが、シュオンのものと同じ暖かみのある碧眼に射すくめられ、つい、ドキリ、としてしまう。
「よく見れば、君の目は、綺麗な色をしている。濁りのない、美しい紫だ。……私は、この立場上、人の良し悪しは分かるつもりだよ。それに君は、シュオンに焦がれ、求める女狐どもとは何かが違う。シュオンのことは、友人として好んでいても、今のところ、特に異性として意識している訳ではないのだろう」
「はい」
ソフィアは迷いなく頷いた。
「えええっ!?」
「そうだろうそうだろう。うむ、ではソフィア君、シュオンの生まれたてから十歳ほどの絵は他に二百枚ほどあるのだが、どうだね、見たくはないか」
「是非見たいです」
「よし、では今から取って来よう。私しか開けられない金庫に厳重に保管してあるからね。少しの間待っていてくれたまえ」
公爵は恐ろしい速さで身を翻し、廊下へと消えていった。
「わぁ、楽しみね………シュオン?」
シュオンががっくりと肩を落としているのを見て、ソフィアは首を傾げた。
「う、ううん!何でもない!何でもないんだ……」
気のせいだろうか、顔を背けた彼の目尻に涙が溜まっていたような。
「そんなことより!ソフィア、さっさと僕の部屋に―――」

「ソフィア、髪に埃(ほこり)が付いていてよ?」

ピシリ、と。
アゼリアの妖艶な笑みに、反応して、場の空気が凍結した。
シュオンが、壁際のシェーラが、ヒースが、同時に表情を固まらせる。
「え?どこですか?」
「うーん、自分では分からないかしら。ちょっとこちらに来てくれる?」
ソフィアは微妙な違和感を覚えながらも、素直にアゼリアのもとへ向かう。
『だ、駄目だ御嬢様はもう助からねえ!シェーラ、お前だけでもすぐに逃げろ!』『わ、分かった!あたし、ちょっとお手洗いにゆ・っ・く・り、行って来る!』『分かった後は任せろ、ゆ・っ・くり、行って来い!』
変な会話が聞こえたが、気のせいだろう。
シュオンが十字を切って「主よ、ソフィアをお守りください……!」と呟いたのも気のせいだろう。
ソフィアは沸き起こる不安を必死に押し殺す。
「後ろを向いて?」
アゼリアの指示に従い、くるりと彼女に背中を向けると―――
ぎゅむっ、と。柔らかいものが押し当てられた。
「へっ……?あ、アゼリア様……?」
「お義母様よ、ソフィア」
「お、お母様?」
「……良くできました」
「え、あ、あの………ひゃぁっ」
突然、耳に熱い吐息を吹き掛けられ、ソフィアはびくりと身をすくませる。
「ふふ、イイ反応……敏感なのね、素敵だわ」
アゼリアは恍惚とした声音で熱に浮かされたように囁く。
ソフィアが硬直している間に、つぅ、と開いた胸元から、ドレスの中に細い指が侵入してきて。
「や、……んぁっ!」
「ココを誰かに触られるのは初めて?」
「は、んっ!」
「……嗚呼、何て可愛いのかしら、ソフィア。大丈夫、優しくするから……」
「は、は、母上ッ!いい加減にしてくださいっ」
見かねて割り込んできたシュオンにソフィアから引き離され、アゼリアはぷぅっ、と可愛らしく頬を膨らませた。
「……あともう少しだったのに。あのねシュオン、ソフィアのささやかな胸はシェーラとはまた違う良さが」
「語らなくて結構です!母上、すぐに女性に手を出すのはやめてくださいといつも言っているでしょう!」
真っ赤になってシュオンがアゼリアを叱りつけてくれている間に、ソフィアは素早くはだけた胸元を掻き合わせる。
「仕方ないじゃない、可愛い女の子が大好きなんですもの」
悪びれることなくしれっとしているアゼリア。
「ソフィア、今夜わたくしの寝室に来ない?たっぷり可愛がってあげてよ?色々教えてあげられるし」
「ぜっっったいに、嫌ですっ!」
ソフィアは口元を引きつらせ、ぷるぷると音叉のように震えながら涙目で叫んだ。
―――女好きなのは公爵じゃなくてお母様じゃないっ!
狂った親バカにセクハラ女。
……それは、シュオンもひねくれるはずよね。
と、ソフィアは一人。妙に納得したのだった。

171月波煌夜:2012/04/08(日) 18:39:05 HOST:proxyag076.docomo.ne.jp
>>ピーチ

よし、思いっきり壊しましたー☆
……微妙にアダルティーだけど大丈夫だよね?
セーフだよね?
明日の分まで勢いで更新しちゃった(^-^;

そうだよ、応援してるよー!

172白鳥夕:2012/04/08(日) 21:06:51 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
反町一生輝(ソリマチイブキ) 森本美絵(モリモトエミ)                    
成田心優 (ナリタミユ)   双葉和憂(フタバワユウ)
山越学  (ヤマコシマナブ)
 桜彼方どこまでも 〜あの日の約束が叶う瞬間を待ち望んでいた〜
 
 いやータイトル書くだけで気持ちがワクワクしますねー。
皆さんこんにちは♡ 白鳥夕です。
私の小説は少々暗くわかりにくく見てくれる人いないだろうなー
私の物語は,恋愛系かミステリーか推理かファンタジーかなんて言われたらどう答える
 のだろう。
 最近書き始めたばかりなので,よくわかりませんしか言えないな…。それにまだ初心者だし…
この物語は双葉和憂がなんらかんだで死んでしまった初恋の彼と再び逢えるか逢えないかの物語です。その二人は両思いで…♡でも彼が死んだかは知らない しかしその衝撃的なはなしを知った和憂は泣かなかった
その彼が死ぬ前にした約束を本当に信じている意思の強さ…そんな彼女を見て主人公たちも動き出します…
しかしどんな物語でも最後はHappy Endにしたいものです。そして私達も同じで…
どうか皆様も良き幸いを‥

173月波煌夜:2012/04/08(日) 21:20:57 HOST:proxyag061.docomo.ne.jp
>>白鳥夕さん

ここに書き込まないで、ご自分でスレ作って下さいね(´・ω・`)

そうしたら改めて読ませていただきますから(^-^)

174ピーチ:2012/04/08(日) 22:53:02 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやーーーー!!!お母様はまともだと思ってたのに!!シェーラとかヒースの方がまともだー!!

・・・って言うかアダルティーって何??

応援ありがとー!!

175月波煌夜:2012/04/09(月) 00:30:56 HOST:proxyag119.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ふははははははは←復活w

……うん。やりすぎましたごめんなさい。
あ、アダルティーは少々オトナな要素が入るってことだよ(^_^;)
まぁ気にしないでw

176月波煌夜:2012/04/09(月) 14:38:09 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
ちょこっとお知らせ(?)です。
只今三章『sweet memory』の途中なのですが、

アイディアが尽きました。

……どんだけ計画性無いんだよと。
そこで、ソフィアたちのこんな日常が見たい!というリクエスト等あれば、皆様の知恵をお借りしたいなと思っている次第です。
できれば主人公ソフィアを入れていただきたいのですが、登場人物は誰でも構いません。
例1:ソフィア、シュオンの書庫散策
例2:メイン4人、夜の屋敷で肝試し☆
例3:シェーラ、ヒースで街へ買い物
などなど。特に何も無ければ1と2で書くつもりです。
……ちなみに、シェーラとヒースの二人は後々『紫の歌』番外編として別のお話を作りたいなーとか考えてたり。

それからもう一つ。
お陰様で、二百レス突破も近くなってきました。
使用人二人のラジオ風コメントをまた書きたいのですが、こんなことを喋ってほしいというアイディアがありましたら是非に。

ただ、月波には文才というものが存在しませんので、出していただいたアイディアを生かせない場合もあるかもしれませんが、ご了承下さいませ。

それでは、長くなりましたが。
たったひとつの言葉でも、
たったひとりのキャラクターでも、
皆様の胸に留めていただけますように。
拙い文ですが精一杯頑張りますので、これからも、『紫の歌』をよろしくお願いします!

177ピーチ:2012/04/09(月) 18:49:30 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わぁ〜!!つっきーの中に眠る何かがまた動き出したーー!!←アホ抜かせ!

リクエストあるーー!ソフィアの腹黒い一面(と言うより悪ふざけしてる)見てみたい!

・・・なーんか、無理のあるリクエストですみませぬww

178月波煌夜:2012/04/09(月) 20:38:25 HOST:proxyag094.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ソフィアまで腹黒…だと…?(゚□゚;)
シュオンと二人で腹黒カップルになってしまうw
……うん、頑張ってソフィアをボケさせよう!こんな時は万能(遊ばれ役)ヒースの出番だね☆

ナイスアイディアありがとう!
他にもお願いしたい…。あるかな??

……今思ったんだけど完璧に章タイトル間違えたな!
どのへんがsweetなmemoryだよ甘さどこにもねーよ!ただのバカ話だよ!( ̄◇ ̄;)

179ピーチ:2012/04/09(月) 21:20:34 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ありゃ〜・・・ゴメーン・・・((汗

ヒース、頑張って役目果たせ!!

あたしも更新頑張るから!!

他はねー、ヒースとシェーラのデートとか?←願望かもww

180月波煌夜:2012/04/09(月) 22:11:51 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……腹黒ソフィア+シェーラ&ヒースのデートもどき……

………キタ――――Σ( ̄□ ̄)!

よっしゃひとつネタできた!
ありがとうピーチ超ありがとう!

次は、
ソフィアの☆恋のエンジェル大作戦っ☆
でいこう!←ネーミングセンス最悪


他にもあったらよろしくだよ←図々しいわ

181ピーチ:2012/04/10(火) 17:31:25 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おぉ〜!ナイス!←何がだww

役に立ったなら良かったニャ〜♪

ソフィアの恋のエンジェル大作戦・・・いーかもー!

あたしには一生でてこない言葉だどww←男嫌いww

182月波煌夜:2012/04/10(火) 19:23:24 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ほんとにありがとう!
ちょっと考えてから更新するね(o^_^o)

男嫌い…?
私もだよっ(^_^;)
二次元の男性キャラと声優さんは大好きというか愛してるけどね←
現実は無理だわーw
今日とか学校帰りナンパされたし…最悪(●`ε´●)

183ピーチ:2012/04/11(水) 19:48:18 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わぁーい♪仲間だ仲間だーww←何のだ!

ってゆーかあたしの場合はねー、顔、名前、存在知ってる同級生の男子がダメなのじゃ〜

それ以前に・・・最近はそれが酷くなって人間不信に近づいてるしww←男嫌いと同じ症状ww

184:2012/04/11(水) 20:04:45 HOST:zaq77195e4e.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>こんばんわ^m^

久々に登場ですね^^v

てか、まだ全然読んでなくてごめん<(_ _)>

読むのはたぶんGWらへんになりそうやわぁ…m(__)m

でもGWも予定詰まってるし…まだ分かりそうにもない。

もしかしたら夏休みまで延期しそう―…。

それでもエエねんやったら、最後まで読むわ…。

ホンマ身勝手な人間でごめんm(__)m

185月波煌夜:2012/04/11(水) 20:44:56 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

仲間だ仲間だーw

あらら…同級生がダメなのか(´・ω・`)
月波もクラスの男は空気以下の存在だt(ry

今日か明日には更新するね!
いつも以上にグダグダな予感するけどねw

186月波煌夜:2012/04/11(水) 20:48:13 HOST:proxy10030.docomo.ne.jp
>>燐

わーい燐だー(^o^)久しぶりー!

そ、そんな無理しなくていいよっΣ(゚□゚;)
色々忙しいだろうし…
もし時間、ていうか暇ができたらチラッとでも見てやってください(≧∀≦)

187:2012/04/11(水) 20:58:24 HOST:zaq77195e4e.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>(T_T)←思わず感動w

かぐちゃんは意外と暇人なのね^^

ほいほい了解しますたノシ

188ピーチ:2012/04/11(水) 21:09:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

くっ空気以下・・・!まぁ、あたしも人のこと言えなーいww←嫌いな人とかは視界に入れてない(男女関係なく)ww

だからそーゆー意味ではつっきーの症状は軽い方だと思うよー^0^

だってさー、修学旅行とかマジ行きたくないww←クラスに仲いい人いないww

189月波煌夜:2012/04/11(水) 22:47:20 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 7』



―――よし……。
とある日の夕方頃。
ヒースは『彼女』の紺色のスカートの裾が視界から消えるのを確認してから、もたれかかっていた壁から背を離した。
そのまま、優雅な花模様が刻まれたドアノブを握る。
じわ、と汗が滲むのが分かり、両の手のひらを服に無造作に擦り付けて。
―――……落ち着け俺。別に大したことじゃねえ。何度もシュミレーションしたじゃねえか……。
すーはーすーはーと深呼吸。
意を決して。今度こそ、ノックを三回。その扉を開いた。
「…………ヒース?」
奥の寝台(ベッド)にうつ伏せに寝転がった等身大の精巧な人形―――否(いな)、人形と見違える程の美貌の少女が、驚いてこちらを見る。
シーツに流れ落ちる二房の白銀の髪、宝石の如く煌めく淡い菫色の双眸。
ヒースの護衛対象である、伝説の《紫水晶(アメシスト)》の少女、ソフィアだ。
「どうしたの?……珍しいわね」
初めて会ったときよりも格段に表情が柔らかくなったし、少しずつだが心を開いてくれるようになった。
―――あいつに感謝しないとな。
美しい悪友の顔を思い描き、ヒースは思わず苦笑した。
「いえ。申し訳ないのですが、少しだけ、お時間いただけますか」
「ええ……あ、そこに掛けて?」
「いや、そういうわけには」
「落ち着いて話ができないじゃない」
「そ、そうですね……。では、失礼します」
指さされた、テーブルとセットの椅子に座る。
ソフィアは本を置いてから、とん、と寝台から降り、それからヒースの向かい側の席についた。
「すみません、読書のお邪魔でしたか」
この状況をシュオンに見られたら即死だな、と思いつつ、チラチラと閉じられたらドアに視線をやる。
「大丈夫よ。もう読んだものだし」
「……あー、宜しければ、書庫から何冊か適当にお持ちしましょうか?勿論御嬢様をご案内することもできますが、書庫は遠いので」
「本当!?お願いしてもいい?」
「はい、シェーラに言って持って来させます」
と。『彼女』の名を口にしたことで、ヒースは本題を思い出した。
ソフィアの部屋を訪れた、理由。
「それで……何か話したいことでもあるの?」
ティーポットから淹れた紅茶のカップを差し出し、ソフィアが促す。
ありがたく受け取って。
―――落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺ッ!
繊細なカップを割れそうな程ぐわしっ、と握り締めて、必死に念じる。
「じ、実は、御嬢様に相談したいことがありまして」
「……相談?私に?」
「はい。少し、意見というかをいただければと」
「……私に、できることなのかしら?」
「はい」
「そう。分かった、続けて」
「……俺の、友人の話なんですけど。その友人には、す、……好きな女がいて。それで、その女の誕生日が近いらしいんですよ。で、何かあげた方が良いのか、それとも、何とも思ってない男に何か貰ったら女が引いちまうんじゃないか、と悩んでいるらしくて。女性から見て、どう思われますか」
―――決まった。
ヒースは内心ガッツポーズを決めた。
スマートでエレガント、予想通りの完璧な出来である。
紅茶を作法も何も関係なしに勢い良く、ぐいっと煽り、

「なるほど。つまり、あなたがシェーラの誕生日に何かあげたいと、そういうことね?」

「ぶふっっっ!?」
ヒースは盛大に紅茶を噴き出した。
「げほっ、な、なん、げほっ」
「まあ落ち着きなさい」
ソフィアは平然とナプキンでテーブルを拭いている。
「ち、違っ……!?な、な、何で俺とシェーラが、その、出てくるんですかっ」
そこでソフィアはぽそりと、
「…………………寝言」
「あいつかぁぁぁあああああッ!?」
ヒース大絶叫。
「というか、シュオンに聞かなくてもバレバレよ貴方。分かりやすすぎ、バレてないの本人だけじゃないの?」
「う、ぐ、ぐぐ……」
「観念しなさい。で、プレゼントの話よね?」
ヒースは赤面しつつ、不承不承頷いた。
……やっぱり俺は隠し事には向かねえな、と反省しながら。
「私は良いと思うわ。きっとシェーラなら喜んでくれる。……それより、自分で誕生日のこと聞き出したの?そうだったら大したものだけど」
「い、いや……立ち話してんのを偶然聞いて……」
「ヘタレね」
「ゔっ」
「……まあいいわ。いつ、用意するの?」
「明日、街に買いに……当日なんですけど……」
「もっと早く言いなさいよ……」
「踏ん切りがつかなかったんです……」
「……ふぅ。仕方無いわね。……任せて、良いプレゼント。明日までに考えておくわ」
無駄に整った顔で、ニッコー……と微笑まれ、ドキリと心臓が高鳴る。
……恐怖で。

190月波煌夜:2012/04/11(水) 22:51:10 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>燐

うーん……暇人というか……忙しいのについだらけちゃうというか……w

うん、また遊びに来てね(*´д`*)

191月波煌夜:2012/04/11(水) 22:55:04 HOST:proxyag065.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、軽度男性恐怖症ということにしてるw

修学旅行かー……
私も「好きな人同士で班組めー」とか言われたとき確実にあぶれる役だったなー……
他のメンバーに妙に気使ってなー……
あートラウマが(つд`)

192ピーチ:2012/04/11(水) 23:43:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

分かるー!でもあたしの場合ねー、仲いい人がクラスにいない&いたとしても嫌いな人といることが多い的な理由で・・・。

元々ねー、集団生活って言う言葉自体あんまり好ましくないww←ちょー勝手な奴ww

193月波煌夜:2012/04/12(木) 07:57:43 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

確かにねー。
月波も仲良い人がクラスにいなくて、友達作るの面倒で孤立してた時あるよ(^_^;)
考えが合わない人と一緒にいるより一人の方が良いと思った←

まぁ義務教育の学校とか、社会に邪魔な子供を放り込んでおくための収容施設みたいなものだしね(ぉい

194ピーチ:2012/04/12(木) 22:10:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー、それ分かるー!!面倒だよねー、友達作りとかってだったら一人でいる方が楽だしーみたいな??

収容施設か・・・まさしくその通りかも!!

・・・ってゆーか違うクラスには友達いっぱいいるのにー!!

てかさ、つっきーって中学?高校??大学???←?が増えて行ってるww

195:2012/04/12(木) 22:27:28 HOST:zaq7a66c598.zaq.ne.jp
かぐにゃん>>今度はにゃんこみたいな名前にしてみたw

何かあずにゃん見てぇ…←けいおん興味ないw

時間空いたから来てみたゾw

だらけるか…人間はやる気を無くしてしまうのが一番多いw

物語全然読んでないのに…何故か来ている。←いわばこの場の空気的存在w

つか、チャット化なっとるから二人とも大概にしときや^^;←

196ピーチ:2012/04/12(木) 22:59:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐ちゃん>>

えーっと・・・二人ってつっきーとあたしだよね?

分かりました!気をつけて更新待ちます!←大人しく!

197月波煌夜:2012/04/12(木) 23:01:36 HOST:proxy10022.docomo.ne.jp
>>ピーチ

分かってもらえて嬉しいー(笑)
月波は高2ですよw


あ、近々二百レス突破記念SS載せるから、良かったら読んでね(≧∀≦)

198月波煌夜:2012/04/12(木) 23:20:01 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp
>>燐

やほやほー☆
かぐにゃん……なんか無駄に可愛いなっ!?
けいおん!、ちょっと読んだことあるぞ←

いやいや、来てくれるだけで嬉しいよ(o^_^o)


チャット化気をつけます!
ごめんなさいでした燐先輩(つд`)
一応小説掲示板だもんね、ほどほどにしておくねw

199月波煌夜:2012/04/13(金) 12:31:18 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
次から、200レス突破記念ssを載せますので、大丈夫だとは思いますが、書き込みはもうしばらくお待ち下さいませ。
シュオンとヒースの過去話を、200にちなんで2回分の予定です。
それでは(^-^)/

200月波煌夜:2012/04/13(金) 13:54:36 HOST:proxyag066.docomo.ne.jp
†祝☆200レス突破†
〜記念ss 『幼馴染みの二人』①〜



「シュオン、こちらが私の息子のヒース。仲良くして頂戴ね」
今年で6歳になるヒースは、エインズワーズ公爵息に乳母として仕える母親の背後から、そっと顔を覗かせた。
……瞬間、息を呑む。
肩まで伸ばした、キラキラと光を弾く純金の髪。
ぱちくりと瞬く、小さな顔に不釣り合いなほど大きくて、つぶらな空色の瞳。
華奢で、触れたら壊れてしまいそうな体躯。
今まで、こんなに美しいものは見たことが無かった。神さまに、いや、この世の全てに愛されたような、儚げで、究極の可憐さを持つ―――。
「……ママ、うそついただろ」
「え?何で?」
「男の子って言ってたのに。女の子じゃん」
ヒースが悪気なく言った途端。
暖かみのある明るい碧の瞳から虹彩がかき消え、冷え冷えとした硝子玉の如く、凍りつくようなアイスブルーに変化した。
「……ひっ……?」
シュオンの小さな身体からゆらゆらと発せられる確かな殺気に、ヒースは思わず後ずさる。
「あらあらヒースったら。シュオンは男の子よ?」
「は、……はぁッ!?うそだろっ?」
―――こ、これが、男?おれとおなじ?
ヒースは迫り来る恐怖をも忘れて、じっと目の前の愛くるしい生き物を見つめた。
……確かに、スカートではなくハーフパンツ姿だが……どう頑張っても、『男の子の格好をした凄く綺麗な女の子』にしか見えない。
「ま、まじで?こいつ男なの?え、付いてんの?」
「こら、口が悪い」
「い゙っ!?」
母親に遠慮容赦なくバシッと叩かれ、ヒースは頭を押さえてうずくまった。
「―――はい、とりあえず握手握手〜」
母親に、半ば強引にシュオンの手を握らされる。
「……ヒースくん、よろしくね!」
大輪の薔薇が咲くように、にっこりと微笑んだその愛らしさは、特殊な趣味をお持ちの男やご婦人方に誘拐されかねないのではないかとヒースが一瞬心配になる程だったが、
「よ、よろしく……」
『きみとよろしくする気はみじんもない』というオーラをビシバシと無言のうちに感じて、ヒースはシュオンの笑顔から視線をぎくしゃくと外した。
「うんうん、じゃあママはアゼリアさんとお話してくるから」
「は!?ちょ、」
「お利口にしてるのよー?シュオン、ヒースと遊んであげてね」
「うん」
―――ちょ、待……お、おれを置いて行くなああああああ!?
ヒースの願い虚しく、母親は軽やかに笑いながらさっさと退散していった。
―――あ、あンのクソババア……!
ヒースは内心盛大に毒づく。……面と向かって口にする勇気は無かったりするのだが。
―――……はぁ。どうすっかなぁ……。
ヒースはちらっと横目で、笑顔のメッキが剥がれて無表情になったシュオンを見やる。
「……こっち見ないでよ、ガキ」
ぼそりと呟かれたその単語に、ヒースは激しく反応する。
「あ゙あ゙!?おまえおれと同い年だろうが!」
「……そう、すぐにムキになるところがガキっぽいって言ってるの」
「うっ、…………チッ、女顔のくせに」
苦し紛れに絞り出した悪口はしかし、シュオンがかなり気にしていることだったらしく。
「…………………ぅ」
「え、……いや、な、泣かなくてもいいじゃんか……」
「泣いてないっ」
大粒の瞳に涙を溜め、ぷいっとそっぽを向く。
「わ、悪かったって……泣くなよもう」
「泣いてないもんっ」
「……あーはいはい、泣いてないなーおまえは泣いてない。そうだよな、うん」
ヒースの必死のご機嫌取りにも耳を貸さず、シュオンは腹立たしげに本棚へと歩き。一冊を手に取って、座り込んでページを捲り始めた。
―――下手ながら愛想笑いを浮かべたままのヒースは完全無視で。

201月波煌夜:2012/04/13(金) 15:08:43 HOST:proxy10039.docomo.ne.jp
†祝☆200レス突破†
〜記念SS 『幼馴染みの二人』②〜



―――が、がまんがまん……。ここでおこったらまたガキだって言われる……!
あくまで大人であるヒースは、黙りこくっているシュオンに話しかけてみた。
「なあ、その本、なに?」
「……別に、きみにはかんけいない」
その、つんとした言い方にむっとしたヒースは、
「んだよ、けち。ちょっとくらい見せろよ」
「やだ」
「見せろって」
「やだ…………………あっ」
ヒースは隙をつき、さっと絵本を奪い取った。
「…………《紫水晶(アメシスト)》?」
ぱらぱらとめくると、良くある《紫水晶》の伝説のひとつだった。
紫の瞳の少女が飢えて倒れているのを見つけた村人たちが彼女を救い、貧しいながらも真心を込めて養う。立派な乙女となった少女は、助けてもらったお返しとして、村中にしあわせをもたらし去っていく―――。
「ふーん……」
「……子どもっぽいって思ってるんでしょ?もう6つになるのに、こんなの読んでるなんておかしいって。信じるのもばかみたいだって」
振り返ると、さくらんぼ色の唇を尖らせ、シュオンが睨んでいる。
……最初のときと比べると、迫力は全くと言っていいほど無くて。
「なんで?」
「……………え」
ヒースが質問で返すと、シュオンは予想外の展開だったのか、ピシリと固まった。
「おれも、《紫水晶》の話はすげー好きで集めてたし、よくママに読んでもらってた。……それにさ。好きな話を何回も読むのは、フツーなことだろ?」
ヒースは、読み古されて僅かに黄ばんだ―――しかし、丁重に扱われてきたことが良く分かる絵本を、ぽかんと呆けているシュオンに差し出して。
「ほらよ。……大切な本なんだろ?」
シュオンは、へへっと笑うヒースを驚いたように見つめ。
「………うん」
恥ずかしそうに、はにかんだ。
それは純粋で子供らしい、本物の笑顔。
「ははうえが、初めてくれた本なんだ。……すごくこの話、好きで……ぼくの宝物」
シュオンは目を閉じ、絵本を胸に抱えた。
「……いつか、《紫水晶》に会ってみたい。それ以上のしあわせは、いらないから……」
囁くように。
意地っ張りな少年が打ち明けてくれた、絵空事と何ら変わらない、夢―――。
いま実在するのかも確かでない、百年に一度現れると云う、紫の瞳を持つ人間。
……幸福を運ぶ、《紫水晶》。
「………ああ」
ヒースは、そんなの絶対無理だ、とは言わなかった。
シュオンの想いを、踏みにじりたくなかったから―――。

「きっと、……ぜってえに、会える」
驚いたように目を見開いたシュオンに向かって、ヒースは胸を張って。


「それでさ。もし、《紫水晶》がおまえのとこに来たときは……そいつはおれが命をかけて、守ってやるよ」










「―――……え、マ、マジで?んなことあったっけ?」
阿呆ヅラを晒した親友に、シュオンは柔らかに微笑みかけた。
「うん。流石ヒース、恐ろしい記憶力だね?」
「う……確かに《紫水晶》の話、好きだったような気もするけど……お前にそんなこと言ってたとは……」
「……はぁ。だから単細胞って言われるんだよ。いっそ分裂すれば?便利そうだし」
「た、単細胞は関係ねーだろ!?」
「バカなのは同じ」
う、ぐぅ……と黙りこくるバカの代名詞。
ふぅ、と溜息をひとつ。シュオンは白衣の裾を翻した。
「ほら、行くよ?」
こいつの護衛対象、ソフィアのもとへ―――。




……ヒースが母親と入れ替わりに公爵家の使用人となるのも。
シュオンが、紫の瞳の少女と出逢うのも。
少女に惹かれてしまったシュオンが、《紫水晶》の存在を秘匿する他の貴族たちから、あらゆる手練手管を駆使した末に、彼女を手に入れるのも―――。

あれからずっと、後の御噺。

202ピーチ:2012/04/13(金) 19:05:16 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

すっごーい!!ヒースとシュオンの子供時代?ww

あ、でもあたしも今ねー陰陽師の主人公の子供時代(記憶が戻った直後)の話ノートに書いてるよww

203月波煌夜:2012/04/13(金) 19:54:46 HOST:proxy10083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

早速読んでくれたんだね、ありがとー!
またこの二人の子供時代書きたい←生意気にもw
次は3回分か……何にしよう(^-^;

過去話はキャラを掘り下げられて良いよねw
またピーチのお話も見に行きたいなー(*^_^*)

204ピーチ:2012/04/13(金) 22:56:09 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

全然生意気じゃないよ!むしろ読みたいww←勝手ww

見に来てくれる!?ありがとー^▽^

更新頑張らないと・・・!!

205月波煌夜:2012/04/13(金) 23:54:13 HOST:proxy10039.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うううありがとー!
ピーチのお陰で月波は頑張れる……!(ノ_・。)

リクエストのシェーラとヒースのデート……あんまり期待しないでね(~_~;)
バカなりにやってみるんでw

206ピーチ:2012/04/14(土) 10:00:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あたしのお陰・・・そう言ってもらえるだけで嬉しい・・・!!

ありがとー!それと、頭いい人がバカって言ったらダメなんだよ!←本物のバカになるぞょ!

207月波煌夜:2012/04/14(土) 21:39:31 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

頭良くないよー元々バカだよー(*_*;

……ところで、デートってどんなことするの?←経験値0
とりあえず買い物させとけばいっかなーと思いつつ。
この世界観ってどんな店があるんだろね……

208ピーチ:2012/04/14(土) 23:33:10 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

文才ある人(要するにここで凄く小説上手い人)は頭いーの!

・・・理系の方は分かんないけど・・・←文系も理系もできない人ww

209月波煌夜:2012/04/15(日) 11:22:52 HOST:proxyag086.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 8』



―――……どうしてこうなった……。
ヒースは内心頭を抱えた。
「シュオン様ー、シュオン様はどんなお店に行かれるんですかー?」
「うーん、とりあえず薬草類を見たいかな。実験の材料にしたいから。……ソフィア、大丈夫?暑くない?寒くない?気分悪くない?」
「だ、大丈夫よ。こんなにいっぺんに人を見たことがないから、ちょっとびっくりしてるだけ」
「ねー、凄いですよねー!こんなに人が多ければ、まさか未来の領主様がいらしてるなんて誰にも分かりませんよ〜」
……翌日。
ヒースは、予定通りエインズワーズ領のとある街へとやって来ていた。
……誤算だったのが。
「やっほぅ、色々ありますねえ!あたしは何から見ようかなー、靴?服?小物ー?」
「ほ、本当に色々あるのね……」
「ソフィアはどこか行きたいところはない?」
「いえ……とりあえず、良く分からないし色々見てみたいわね」
―――な、ん、で!こいつらがついて来るんだよッ!?
理由は簡単。
ソフィアが例の話を昨日シュオンに相談した結果、ソフィアを外へ連れ出してあげたかったらしいシュオンが、この機会を逃すものか、と渋る公爵から彼女の外出許可をもぎ取ってしまったのだ。……ちなみにシュオンの必殺技―――潤んだ目+上目遣いの『父上……僕のことは、嫌いですか?』は、マルグリットを滅ぼすだけの威力があると思われる。誇張は一切無い。
……とにかく、ソフィアの外出に彼女付きのメイドであるシェーラが食いつかないはずがない。
「あたしも行きたいです、こういうのは女の子の案内人がいた方が良いじゃないですか!……それにこのチャンスにお二人の仲を進て……あーいえ何でもないですよ?」とソフィアに迫り、彼女が快く承諾してしまったと、そういう訳である。
―――また奴にからかわれるネタが増えた……つーか御嬢様はともかくシェーラが来るとか……どうするおつもりですか御嬢様……!
ただでさえアレな目つきを一層凶暴にギラつかせて悩んでいるので、「何あの男の人超かっこいー……」だの「ね!でも何処かで見たような……?」だの「見て銀髪!キレー!」だのといったギャラリーを怯えさせては蹴散らしているのだが、本人は全く無自覚である。
「じゃあ、四人で回る必要はないし……二手に分かれましょうか」
ソフィアの言葉に、ヒースはやっと納得した。
―――そうか、御嬢様は最初からそのおつもりで……!
「なら俺は御嬢―――」
「あー、あたしヒースとが良いー!」
「様と………………………………は?」
何だろう、今とても幸せな空耳がしたような。
「え、な、……は?」
「そうね、じゃあ私はシュオンと行くわ。良いわよね、シュオン?」
「勿論だよ……あ、ほら見てソフィア、早速珍しい置物があるよ?」
「まあ本当、でも押し付けられたならともかく、買いたくはないわね」
「ね。いくら高くても……そうだな、10リーン程度じゃない?」
「リーン……それってどれくらいなの?」
「飴玉一個分」
「妥当ね」
二人がヒースを遠巻きに眺めては失礼なことを言っていたが、絶賛固形化中のヒースには届かない。
「よっしヒース行こー?」
「あ、ちょっと待って」
ソフィアがツインテールを揺らしてヒースへと駆け寄った。シュオンが一気に不機嫌そうな顔つきになる。
ソフィアは爪先立ちをして、ヒースの耳にこう囁いた。
「……いい?ちゃんとシェーラをエスコートするのよ?折角のデートなんだから」
「で!?」
「じゃ、邪魔者は消えるから、ごゆっくり!」
ソフィアは素敵な笑顔を一つ。くるりとターンして、微笑を取り戻したシュオンのもとへと戻って行った。
「で、で、で、で、で、」
「え、ちょっとヒース大丈夫?」
心配げに下から覗き込むシェーラの顔が視界に移り、物真似『壊れたラジオ』を開始していたヒースの体温が否応なく急上昇。
しっとりと湿り気を帯びた熱い青灰色の瞳も柔らかそうに艶めくローズピンクの唇も薔薇色の頬も、鎖骨に一筋流れ落ちる小鹿色(フォーン)の髪も、ふわっと開いた胸元から立ち上る花のような香りも、春の妖精みたいな愛らしいワンピースに包まれた小柄な身体に華奢な手足も、
―――こ、こいつってこんなに可愛かったっけ?
「具合悪かったら言いなさいよー、折角ゲットした荷物持ちが勿体無いけどさ」
―――……うん。気のせいだな。こいつが普通に俺とどっか行きたいなんて、思う筈がねえもんな……。
ちょっと泣きそうになった。
ヒースが去りゆく二人に視線をやると。
振り返ったソフィアが『頑張ってね!』と言うように悪戯っぽくウインクをして見せた。
―――いや無理です御嬢様、この俺に女の扱いをしつつプレゼント探しができるとお思いですか……。
ヒースの苦悩はまだ、始まったばかりである。

210月波煌夜:2012/04/15(日) 11:29:48 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp
>>ピーチ

月波の辞書に文才の文字は無いよ←キッパリ
あと勉強と運動も努力も根性も無いよ←つまり駄目人間

そんなこと言ったら本格派陰陽師小説が書けるピーチの方がずっと頭良いに決まってるじゃないかー。
てゆーかピーチはおいくつで?いや、答えなくなかったらスルーして下さいな。

211ピーチ:2012/04/15(日) 11:47:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えー・・・あたしこそダメ人間だよ〜ww←数学・理科の点数最悪ww

あたしのあれは別に本格的じゃないよーww←あたしで本格的なら、結城光流さんはどーなるww

あたしは13だよー←4月で14♪

212白鳥夕:2012/04/16(月) 14:16:30 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
読んでくれてありがとう。壮大て,本当にー?すごく嬉しいです。ああそうそう,新しいスレ?とか作らなくてもこのスレの中でも充分いいよ。この場所で少しでも多くの人に読んでもらえて私は幸せです。

213白鳥夕:2012/04/16(月) 14:29:44 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
わーピーチさんだ。びっくらポン!!こちらこそ〜仲良くしましょう。あと小説読んでくれてありがとう。嬉しかったよ。お互い頑張ろーう!また新話書くと思いますので良かったら読んでね。ではまたー

214ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/16(月) 16:18:57 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

お久し振りです!
相変わらず綺麗にまとまった文章すぎて羨ましいですその才能を分けてくれ。
これからも頑張ってくださいねー!

215ピーチ:2012/04/16(月) 18:48:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
白鳥夕さん>>

うん♪仲良くしよーねー^0^

新話頑張って!応援するから!

216白鳥夕:2012/04/16(月) 20:25:46 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
ねここさんですか!変わったお名前ですね。 でもとっても可愛い♡ はじめまして白鳥夕です。
良かったら仲良くしましょう。

217月波煌夜:2012/04/17(火) 10:39:51 HOST:proxy10081.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、中学生!
数学はちゃんとやっといた方がいいよー…(x_x;)
後で泣くよー…←体験談
…更新なかなかできなくてごめん(´・ω・`)

218月波煌夜:2012/04/17(火) 10:48:08 HOST:proxy10081.docomo.ne.jp
>>白鳥夕さん

うーん、分かりにくかったみたいなのでもう一度。
ここは私、月波だけが小説を書くために作らせて頂いたスレであり、それを有難くも読んで下さった方が感想やコメントを書き込む場所です。
たまには雑談も入りますが、他の方が小説を書き込む場所では、断じてありません。それでレスが増えても、困ってしまうので。
本っ当に申し訳ないのですが、もし小説を書かれるのなら、新しく自分だけのスレを作って頂けませんか?これはお願いです。
勿論、月波個人に用がある場合、感想などを書き込んでくださるのなら、大歓迎です。是非、こちらにお越し下さい。
…分かって頂けましたでしょうか?(´・ω・`)

219月波煌夜:2012/04/17(火) 11:05:16 HOST:proxy10081.docomo.ne.jp
>>ねここさん

お久しぶりですー!
……月波の低レベル文如きにそんな素敵な感想が出てくるとは……相変わらず文才半端ないですね(ぇ
コメ有難う御座います頑張りますっ(*´д`*)

220月波煌夜:2012/04/17(火) 17:41:44 HOST:proxyag024.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 9』

§ソフィア&シュオンside§


「……ヒース、上手くやってるかしら?」
ソフィアはシュオンの後ろにぴったりとくっついたままの状態で道を歩きながら、そっと呟いた。
「いや、絶対無理だと思うよ。あいつは女の人や子供が苦手だし……シェーラ相手じゃ尚更」
「そう。何とか、してあげたいのだけど……」
「……ねえ。ソフィアは何で、そんなに一生懸命なの?他人のことなのに」
シュオンが不思議そうに――やや不満そうに――訊いてくる。
ソフィアは立ち止まり、彼に反論するように。
「他人じゃない……!私はあの人たちに、物凄く優しくしてもらったし、助けてもらったもの。どんなに感謝してもしきれないくらい。だから……今度は私の番。あの二人を、しあわせにしてあげたいの……私の《紫水晶(アメシスト)》としての力に頼らないで」
「……うん。ごめん、他人は失礼だったね。恩返ししようとするなんて、ソフィアは優しいよ」
シュオンは柔らかく微笑んだが、やはり若干面白くなさそうな声色である。
「……いいえ、貴方の方がずっと優しいわ。意地悪なところも一杯あるみたいだけど……私が一番感謝しているのは、シュオン、貴方だもの」
ソフィアがそう言って。滅多に笑わない彼女が一瞬、にこりとして見せただけで、
「そ、そう?……あ、忘れてた!ソフィア、そろそろ帽子被らないと」
普段は冷静沈着な筈のシュオンの白い頬にサッと鮮やかな朱が走り。わたわたと焦ったように、預かっていた帽子を引っ張り出した。
「そうね……ちょっと邪魔だけど、仕方ないわね」
ソフィアは白薔薇のコサージュが縫い止められた鍔の広い帽子を被り、顎の下できゅっとリボンを結んだ。
ソフィアの小さな頭には大きすぎるそれはぶかぶかで、彼女の顔が半分ほど隠れてしまう。勿論、《紫水晶》の証の瞳も。
光の加減ですぐには紫とは判別が付かないとはいえ、目ざとい者の中には、彼女の正体に気づく人間も出てくるかもしれない。
この帽子は公爵夫人アゼリアの配慮である。
『他にも貴女の為の衣装はたぁくさん用意してあるから……うふふ、楽しみね』とうっとりと話していたアゼリアの姿を思い出し、ソフィアは思わずぶるっと身震いをした。
きゅっ、とシュオンのシャツの裾を掴む。
「え、ど、どうしたの?」
「……ごめんなさい、しばらくこうしていても良い?迷惑……かしら?」
「う、ううん、大歓迎だよ」
―――まさか、お母様に襲われそうで怖いなんて言えないわよね……。
微妙にぎくしゃくと歩き始めたシュオンのシャツを摘みながら、ソフィアははぁ、と溜息をついた。


.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+


「……これが、本物のアメシスト?」
キラキラと控えめに上品な輝きを放つ紫色の宝玉を前に、ソフィアは目を丸くした。
「うん。淡いライラック色から濃紫まで、色々あるでしょう?」
見せたいものがある、とシュオンに連れられてやって来たのは、アクセサリーの店。
彼の言う通り、加工された様々な濃淡のアメジストがずらりと並んでいる。
「アメシストの石言葉は、例えば誠実、心の平和、愛情。邪気払い、冷静さを保つ、感情のコントロール、癒やしや安らぎをもたらす……とか、様々な作用があるみたい。特に有名なのは、悪酔いを防いだり解毒の働きがある、ってやつかな。これから、《紫水晶》の人間には毒の類が全く効かない、って伝説がある」
「く、詳しいのね……」
「昔、色々調べたからね」
シュオンは照れくさそうに笑った。
「苦しみを喜びに変え、調和を生み出す。“真実の愛”を守り抜く、最も高貴な輝きを放つ、愛の守護石」
―――……それが、アメシスト。
ソフィアは食い入るように、その宝石に見入った。
「―――はい、これ」
「えっ?」
急にひんやりと冷たい感触が首を滑り、ソフィアは驚いてシュオンを見上げた。
「今買ってきた。ソフィアにはこれが一番似合うと思うんだけど、どう?」
淡い菫色の石は、ソフィアの瞳とおそろいだ。
「そんな、……高いものでしょう?」
「別に、そんなことないよ」
それは、裕福な公爵家の人間には大した額ではないのかもしれないが。
「君にも、愛の加護がありますように、ってね。貰ってくれるでしょう?」
嬉しそうに頬を染めてこんなことを言われたら、断れる筈もない。
「……有難う。大切にする」
彼につられて小さく微笑むソフィアの胸元で、美しいアメシストが、キラリと光った。

221ピーチ:2012/04/17(火) 19:08:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

久々の更新キターーーーーー!!>w<

あたしの方も、第一章は終わったよー!!←やっとかよ・・・

222月波煌夜:2012/04/18(水) 07:52:08 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うううごめんー!
学校が本格的に忙しくなってきて…(つд`)

一章終わったんだねw
じっくり丁寧に…の方がいいよー(*^_^*)

223白鳥夕:2012/04/18(水) 20:20:58 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
久々です。皆さんに逢いたくなりきてしまいました。あれから,“桜彼方どこまでも”はそれほどかけていない状況です…。もうしばらく時間がかかりそうなので,ヒマつぶしに私が中学1年の時に書いた“たったひとつ”を読んで待っていて下さい。ヒマつぶして,ほど長くはありませんが…。(うん!全然短い。)

224白鳥夕:2012/04/18(水) 20:28:33 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
僕には妹がいた…2つ年下の妹が―‥
でも,ある事故のせいで妹は行方不明になってしまった。
それに父さんは‥                         
「おーい」 
あれ?どこからか声が聞こえる。何か聞いたことがあるような声だな。 
「おーい」
何か耳がひどくキンキンする。
「おい!萩野」
「萩野夕輝!!」
「うわ,広!もう驚かさないでよ」
 「驚かされたのはこっちのほうだ。黒板の目の前で倒れるんだもん」
倒れた?何のことだ?」
 広という友人らしき人物は説得するような口調で言う。そんな中,今さっき友人広が言っていた事に不信感を抱く。
「黒板の目の前ってどういう事?」 
「数学の時間あっわかったとか言ってお前手を上げただろそして萩野が指名されて,黒板の目の前に立った時,急に倒れたんだよ。覚えては‥いないの?」
萩野の友人,広は恐る恐る聞く。
「‥…。」 
 何も知らない夕輝は何も答えることができない。そんな中,広が言っていることを理解しようとアベコベの光景を夕輝は思い浮かべたりする。
 「覚えてなさそうだね。もしかしてまた,夕葉ちゃんのこと考えてた?」
その脳裏の中にいつもしまってある夕葉との生きた記憶その悲しい過去を彼は知っている。
(いや,話してしまった…僕が)
悲しくて寂しくてそれでもあの時のことの意味を理解できなくて,彼に八つ当たりするように言ってしまった。あまり人には無駄に話してはいけないと,いつも心に誓っている。夕輝の情けないどうすることもできない真実。でも…それでも,残された家族を見つけたくて。ずっと彼の脳裏だけに存在する夕葉を…。
いつもそう。苦しそうな笑顔でいつもいつもごまかし笑うのだ。広の前では笑顔でいようという思いでいるからだろう。
「あ…ごめん」
「いや,違う少し寝不足だった‥だけだよ…」
“うん”とうなずくしかない。夕輝は無理してと友人,広に心配をかけさせないように笑ってくれるんだから。
(萩野は強い,強いと思う)
元気のなかった顔を忘れさせるようにごまかして。
(日常なんて笑いたくない時には笑わなくてもいいのに苦しいのなら俺に相談してもいいのに)。
と友人,広は思う。
でも,彼は他人に頼ることを好まない。そのせいでいつも友人,広ばかり助けてもらっていた。萩野はどんな時でも無理に笑ってくれるんだ。
「まあ,頭の能力とかもすごいけど夜遅くまで勉強でもしてたんだろ。さすが,優等生」
「優等生じゃないもん」
「で,体のほうは本当に大丈夫なの?」
「あ,うん平気だよ。心配してくれてありがとう」
「本当か?」
「本当だ」
「ほん」   
『生徒会の生徒は生徒会室へ 繰り返します…』
「キヤガッテシマッタ」
と,もう少し夕輝と話していたかったという会話の時間もおわずけになってしまった。実は萩野と広は,生徒会役員で校内の代表のようなものに二人はなっているのだった。しかし夕輝は,今日はこんな状態におちいってしまった。
「はは(笑),いってらっしゃい」
「じゃあ行ってくる。萩野は今日は出ないって言っておくよ」
「うん,ありがとう」
「じゃあな」
「いいお友達ね」
と,さっきまでいなかった保健室の先生,早希が戻ってきた。         
「あっ,早希先生 確かにいい友達ですけど少し心配しすぎですよね…」
「いいじゃない,それくらい心配してくれるんだから なにしろ黒板の目の前で倒れたんだから」                              
早希が言ったことで,痛いくらに恥ずかしさを感じた。
(あははは…)
「軽い貧血だけど最近よく寝ていないの?」                
「はい,ただの‥寝不足です」
「そう,ならいいけど‥」
「でも少し休んで行きなさい」
「あ,はい…」

225白鳥夕:2012/04/18(水) 20:32:46 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
(続) 本心的には別に寝不足なわけではない。一人でも眠れる。だからただの作り話。誰にも心配かけず。誰にも頼らずに。それで見つける。 だけど友人,広もきっと本当は心配してくれているんだろう。無理して笑ってそのくせ誰かの心を動かしてしまったり… でも,広は関係ないのは事実妹をいなくなったことを話してしまっても,これからのことは誰のも触れさせたくはない。
彼と何気ない会話をしているだけでも,僕は元気になる。それだけは理解してほしいものだった。
 夕葉と父さんがいなくても 夕葉…そう,僕の妹だ。             
…僕は4人家族だった。母さんと過ごした記憶はほとんどない 母さんは,昔から心臓の病気だったらしく,僕と夕葉を生んですぐに,亡くなってしまった。
父さんはそれから何も手につかなくなり勤めていた会社も辞め,僕達の世話に専念した。お金もあまりなかったし,母さんの死でそうとうショックだったはずなのに父さんはよく笑ってこう言っていた。
「夕輝と夕葉がそばにいてくれたら父さんは最高に幸せなんだぞ」
「えー本当?」
「本当だよ」 
 これが僕と父さんと夕葉との最後の時間だった。                    
次の日の朝,父さんは買い物に行ってくると言って出かけたきり帰ってこなかった。
 次の日の朝,父さんは買い物に行ってくると言って出かけたきり帰ってこなかった。
「お父さん遅いね…」
「すぐに帰ってくるよ。ねぇお兄ちゃん。テブ」
お昼ごろ,近くにある病院の看護師さんから電話がかかってきた。
「君のお父さんは,信号を無視してきたトラックにひかれてしまって…今すぐ来てくれる?」
僕は慌てて,夕葉を連れて家から飛び出した。
『お父さんは今,心肺停止の状態…助かるかは分からないんだ』
僕は病院に向かっている間にも,お医者さんの言っていたことを心の中で繰り返した。                                 
 父さんの居る病室に着いた。病室の扉を開くと父さんはベットで眠っていた。父さんのベットの周りにいたお医者さんや看護師さん達は悲しそうな顔で首を振っていた。それは,父さんはもう生きていないという意味だった。
「父さん!父さん!!」
僕は泣きながら呼び続けた。
 そのすぐ横にいた看護師さんの一人が
「お別れの言葉を言ってあげて」
 と,背中を優しく撫でながら言った。さっき電話をくれた人だとすぐに気づいた。 僕はすぐに流していた涙を拭いで
 「どうして,父さんが…」
 と呟いた。その時,僕の後に隠れていた夕葉は突然病室から飛び出した。
「夕葉!」
 僕も病室から飛び出し夕葉を追いかけようとした。
「夕…葉‥?」
 病室を出たとした時には,夕葉の姿はどこにもなかった…。

Onlyone
 

主人公
萩野夕輝(Haginoyuuki)
萩野夕葉(Haginoyuuha)
登場人物
平塚広(Hiratukahero)  
中田早希(Nakatasaki)
中田幸実(Nakatasatimi)
愛川静菜(Aikawasizuna)
田崎南斗(Tazakiminato)
田崎切名(Tazakisetuna)
日野まどか(Hinomadoka)
東小川彩花(Higasiogawasaika)
渋谷美冬(Sibuyamihuyu)
渋谷真冬(Sibuyamahuyu)

226白鳥シ:2012/04/19(木) 01:35:35 HOST:opt-183-176-173-189.client.pikara.ne.jp
白鳥タさんすごいわ俺には無理なことだよ。

227白鳥夕:2012/04/19(木) 14:01:50 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
短くてゴメンナサイ。まだ続きはあるんだけど…場面が滅茶苦茶で
恥ずかしほどです。

228白鳥夕:2012/04/19(木) 14:04:50 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
でも,ありがとう。嬉しかったです。
では,また

229白鳥夕:2012/04/19(木) 14:16:34 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
御迷惑かけてごめんなさい。そうか やっと,煌夜さん言っている意味がわかりました。

230月波煌夜:2012/04/20(金) 15:35:28 HOST:proxyag066.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 10』

§ヒース&シェーラside§



「次は雑貨ー!ほら行くぜヒース二等兵!」
「何なんだよその呼び方は……」
「何となくよ!いーからさっさと歩けーい!」
すっかり馬と化しているヒースは両手両腕に大量にぶら下げた紙袋と共に、スキップしそうな足取りのシェーラについて歩く。そろそろ頭にも乗せるべきではなかろうか。
―――……うん。まぁ、予想はしてたけどな……。
ヒースは色々と諦めて遠い目をしながら、彼女が消えた店の入口を通る。
「ほわー、何かいっぱいあ……にゃっ」
そのとき。きょろきょろとよそ見をしていたシェーラの背中が、ドンッ、と派手に棚にぶつかった。
「え、……きゃああっ!?」
棚の上の箱が、悲鳴を上げてとっさに頭を抱え、しゃがみこんだシェーラへと一斉に落ちてきて―――
「……ッの馬鹿……!」
ヒースが舌打ちをして駆ける。
間一髪で降り注ぐ箱の下へと滑り込み、
「………ふえ?ヒース?」
「笛?じゃねえよボケ!危ねえだろうが、ちゃんと後ろ見て歩け!」
見事、伸ばした片腕と胸で全ての箱を受け止めて見せた。
「ごめ……あ、ありがと……」
「別にいーけどよ……」
勢い良く叱り飛ばしたものの、しおらしく謝られると調子が狂う。ヒースは頬を掻―――こうとしたが、両手が塞がっているのに気づき顔をしかめた。
「あなた達、大丈夫!?」
「あ、はい」
騒音に気づいたらしく、店主らしいふくよかな婦人が慌てて駆け寄って来た。
「やだ、これ重いのに……ほんとに大丈夫?」
「大丈夫です、あ、手伝います」
「ごめんなさいねー、高い所は危ないからこっちに置こうかしら」
「う……ごめんなさい……」
しょぼくれて謝罪するシェーラに、婦人は逞しく笑って。
「良いのよ、捨てるものだから近々移動しないとって思ってたし。とにかく、怪我が無いなら良かったわ。お兄さん、力持ちなのね」
「あー、まあ頑丈だけが取り柄なもので」
「あらそうなのー?でも……ほら、格好いいじゃない、ねえ?」
「どこが!?」
「真顔かよ!」
シュオンを毎日のように見ているから諦めてはいるが、頭ごなしに否定されると悲しいものがある。
ずーんと沈み込むヒースを見て、婦人が首を傾げる。
「……え?恋人同士じゃないの?」
『違いますッ!』
綺麗に揃った。
ヒースは真っ赤になって、シェーラは怒ったように。
「あー……」
婦人は事情を察したらしい。曖昧な笑顔を浮かべ、
「美人なお嬢ちゃんには男前のお兄さん、お似合いだと思ったんだけど……」
「えーーー」
「随分不満そうだな……?」
「超不満」
「そーですか……」
……ちょっと泣きたくなった。
「じゃ、ゆっくり見てってね。……お兄さん、頑張ってね」
「どうも……」
カウンターへと戻る婦人の同情めいた視線が哀しい。
「あ!このくまさんかわいー」
暗い空気を醸し出すヒースにもまるで気づかず、大きなクマのぬいぐるみを見て、シェーラが脳天気な声を上げた。
「むむむ……でも高ーい、ちょっと厳しいかなー……あ、これも可愛いー!」
てくてくと歩きまわっては、色とりどりの髪留めやリボンが並ぶ棚を熱心に眺める。
かと思えば。急に仏頂面のヒースに向き合って背伸びをし、
「……えい」
「……………あ?」
「っあはははははは!やば、似合わなっ!っぷ、きゃはははははッ」
ピンクの花の髪留めを、ヒースの前髪にくっつけて爆笑するシェーラ。
「ひっ、お、なか痛いいいっ」
「馬鹿かお前は……」
ヒースは憮然として、可愛らしい髪留めを外し。
「ったく……ほら。お前のがずっと似合うだろうが」
シェーラの小鹿色(フォーン)の髪に差してやった。
シェーラはきょとんとして髪留めを押さえ、
「……ヒースってさぁ……、ほんと、勿体無いよねえ……」
「は?」
彼女の頬が、ほんのりと染まっているように見えたのは……きっと、気のせいだろう。
「目つきよ目つき。どうにかしなさいよ、女の子も逃げちゃうよ?」
「大きなお世話だ。それにこれには深い訳が」

「ああ、ほんとは女受けする顔なのに、普通にしてると年上の奥様方にモテまくるのが嫌だから、意識してそうしてるんでしょ?」

「ぶふっっ!?」
ヒースは思い切り吹き出した。
「おま、な、なん、で知っ……!?」
「え、皆知ってるよ?シュオン様が教えてくださったもん」
「あ、あいつ殺す―――!?」
いきり立つヒースを見て、シェーラはけらけらと笑い。
「じゃ。……あたし、これ買ってくるから」
ピンクの花の髪飾りを手に取り、心から楽しそうに、微笑んだ。

231ピーチ:2012/04/20(金) 16:18:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おー!!久々の更新キターーー!!

あれ・・・これってもしかして、ヒースとシェーラのデート編??

232月波煌夜:2012/04/20(金) 19:43:59 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>ピーチ

YES!
……うん。分かりにくくてごめんね(/_;)
月波の経験値と文章力ではこれが限界だった……(ノ_・。)

そのうち学園ラブコメとか書いてみたいんだけど厳しいなー(~_~;)
キャラだけ出来てるw

233ピーチ:2012/04/20(金) 20:29:38 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

限界って言ってもじゅーぶん分かるよ!少なくともあたしのよりは!←偉そーなこと言うな!

学園ラブコメかー・・・あたしはどんなのか分かんない・・・((汗

あ、でもあたしもあるよー、キャラだけできてるとか、話の途中だけ思いつくとか!

そのせいで、今ちょっと陰陽師の連載(?)中止っぽくなってるしww

まぁ、もーちょい頑張ってみる!

234月波煌夜:2012/04/23(月) 14:35:56 HOST:proxy10083.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 11』


.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+


「ねーねーヒース、楽しーね!」
何がそんなに楽しいのか。隣を歩きながら、シェーラがへらへら笑って見上げてくる。
手にはさっきの髪飾りが入った小さな包み。
スカートの裾が、風を孕んでふわりと膨らんだ。
「……そうか?」
「うん!………ヒースは、……楽しくない?」
満面の笑みが曇り、途端に不安げな表情になる彼女。
―――そうだよな……。
脳天気なアホのように見えても。実はこいつは、相手のことを驚く程考えている。
自分が過剰な位明るく振舞うことで、人の暗い気持ちを全部、吹っ飛ばしてしまおうとするように。
……そういうところが好き、だったり、するのだが。
つい、いつもの調子で『当たり前だろ』と言いそうになり、慌てて口をつぐんだ。
少し考えて。
「そうだな。……つまらなくは、ないんじゃねーの?」
……これでも、どうしても素直になれないヒースの精一杯である。
シェーラはその言葉の意味をじっくりと噛み締めるように黙り込み、
「……うん!」
ぱああっ、と大輪の向日葵が咲くような、眩しい笑顔を見せた。
―――……わ、やべ、かわ……いく、ねえ!
ヒースは自分の心の声にまで生真面目に突っ込み、頬を熱くしてそっぽを向いた。
「ヒース、よそ見してると転ぶよ?ただでさえ荷物多いんだし」
「……誰のせいだよ……」
「えへへー、あたしあたし。つい買いすぎちゃったー」
いや、そっちではなく。
―――……まあ、いっか。
結局、今日一日で何も進展しなくても。彼女のこの笑顔が、見られたのなら―――。

「―――って良くねーよ!?全然目的達成してねーだろーが!」
「あらヒースじゃない、偶然ね」
「……は!?御嬢様!?」ヒースが通行人もドン引きする勢いで叫んだその刹那。背中に、喧騒を割る涼やかな声が掛けられた。
駆け寄ってくるちいさな身体、風に舞う銀細工の輝き。大きな帽子で顔は見えないが、まさしく護衛対象の少女のものだ。
「何でここに……」
「―――ソフィア、急に離れちゃ駄目でしょう?」
ヒースの話を遮る形で。美形此処にあり、と云わんばかりの華やかなオーラを振り撒くシュオン様も御登場。
町娘たちが貴公子然とした彼とすれ違うたびに、ぽーっとして棒立ちになってしまうのも無理はない。
「シュオンまで……まさか俺らの後を尾(つ)けて」
「お疲れ様。ヒース、今度は私の買い物に付き合ってくれるかしら」
みなまで言わせず、ソフィアがすかさず口を挟んだ。
「へ、あ……構いませんけど……」
「有難う。シュオン、ヒースの荷物を少し持ってあげてくれる?」
「うん」
「いや大丈夫ですからッ」
「まあまあ、そんな遠慮せずに」
絶品の微笑みが逆に恐ろしい。
―――こ、この悪魔にこれ以上借りを作る訳にはいかねえ……!
「ええっ?やだシュオン様に荷物持ちなんかさせられませんよっ!あたし持ちます!」
「何で俺にはさせられるんだよ……」
「だってヒースだもん」
「答えになってねーし!」
「ヒース、いいから持ってもらいなさい。ね?」
「御嬢様がそう仰るなら……」
ヒースは渋々、シュオンに幾つかの紙袋を託した。
「じゃ。シュオン、シェーラをお願い」
シュオンへと微笑むソフィアの胸元に紫の宝石を見つけ、ヒースは思わず声を上げた。
「あ!それ、やっと渡せたのかよ」
「……え?やっと?」
「はい。シュオンの奴、結構前に手に入れてたんですけどね。なかなか―――」
「あー、何か無性に昨日発明した小型爆弾の威力を確かめたくなってきたなー、良い実験台はいないかなー」
「―――綺麗な色ですねそれッ!うわー、初めて見るなぁ!」
「今、やっとって」
「気のせいです!」
ヒースはダラダラと冷や汗を流してチラッと悪魔を見やった。
『コ ロ ス』の三文字をアイスブルーの瞳に垣間見て、サッと目を逸らす。
「……そうなの?」
シェーラと同じく、妙なところに鈍いようで。
ソフィアはきょとん、と首を傾げていた。

235ピーチ:2012/04/23(月) 16:44:37 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ひっさしぶりー&久々の更新!!

・・・ソフィア様って、鋭いの?鈍いの?どっち!!?←アホww

236月波煌夜:2012/04/23(月) 17:12:58 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ソフィアは本質的には鋭いんだけど、自分の恋愛方面はさっぱりw
シェーラもそんな感じかなー。
特にソフィアは恋愛事とか本でしか知らないから、まぁソッチにはかなーり鈍いのです(^-^;

237ピーチ:2012/04/23(月) 19:23:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

・・・納得・・・!凄い設定だねー・・・

シェーラ・・・とヒースはもー少し頑張らないと、ヒースの気持ちは伝わんないねー・・・

238月波煌夜:2012/04/23(月) 21:19:00 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp
>>ピーチ

す、凄い…かな?

ヒースとシェーラは、もうちょいしてクライマックスなシリアスパートに入ったら一気に超進展させちゃうつもりw

気長に待っててくれたら嬉しいな(≧∀≦)

239ピーチ:2012/04/23(月) 22:28:50 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん!大丈夫だよー、あたし待つのは得意だから!ww←意味分からんww

クライマックス・・・早くこーい!!←↑と言ってること違う!!

240麻琴:2012/04/24(火) 00:02:25 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
かぐやさん、この話とっても面白いです!読んでいるうちにどんどん引き込まれていきました!ピーチと一緒に気長に待ってます!

241月波煌夜:2012/04/24(火) 09:40:32 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとー!
できるだけ頑張るよっ(つд`)
優しい読者さんに恵まれて…月波は幸せ者だーw

242月波煌夜:2012/04/24(火) 09:43:30 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>麻琴さん

初めまして!
コメ有難う御座います…!嬉しいですー(*´д`*)

駄文ですが…宜しかったらこれからもちょくちょく遊びに来てくださいね(*^_^*)

243月波煌夜:2012/04/24(火) 12:27:29 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 12』


.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+


「………………御嬢様ー?」
ヒースは目の前に広がる光景から全力で顔を背けながら、ソフィアに呼び掛けた。
「なあに?」
少女がこちらを向いたのが気配で分かる。
「……そろそろ他のところに行きません?俺、いい加減居づらいんですけど……?」
「あら、何で?」


「―――ここが女向けの下着屋だからですよッ!」


やたらフリフリした白や黒、ピンクに水色のレースの塊たち。
僅かに香る甘ったるい匂い。
ヒースは紳士らしく―――ただ照れているだけだが―――それらを一切視界に入れないように努めながら、自分をこんなファンシーな場所に連れてきた本人に抗議する。
「な・ん・で!御嬢様にこ、こういうのが必要なんですか!屋敷にいっぱいあるでしょう!」
「お屋敷のは、私には豪華すぎるし……全部、私の胸にはちょっと大きす……な、何でもないわ。とにかく少し買っておきたいのよ」
「じ、じゃあ金は!?持ってないんじゃないですか!?」
「大丈夫、公爵が沢山くださったし」
―――いつの間にそんなに仲良くなったんですか……!
ちなみにヒースはと云えば、シュオンを溺愛する公爵に息子をたぶらかす敵と認定されているらしく、良くこの街へと使い走りさせられたりする。……誰が、好き好んであの悪魔の権化をたぶらかすというのか。
「ほら、かえって不審者みたいじゃない。堂々としてなさい」
「こんなとこで堂々とはしたくないものですねえ!?」
それを人は開き直りと言う。
「あ、そうだ!どうせなら此処でプレゼント選んじゃえば良いじゃない!」
「御嬢様、絶対わざとやってらっしゃるでしょうっ?」
年頃の女性が、何とも思っていない男から誕生日に下着をプレゼントされる。
……どう言い訳しようと、ただの変態としか思えない。
「まあ、それはさすがに冗談だけど」
「よ、良かった……。これが本気だったら俺絶望してました……」
「失礼ね。―――あ、ほら。ヒースでも使えるものがあるわよ。これなんかどう?アイマスク」
「へ?何で下着屋にアイマスクが?…………あぁ、確かに丁度良い作りですね。お洒落だからつけて歩いても違和感―――大有りだわッ!」
ヒースはソフィアに渡された『ソレ』―――黒色の某・女性が胸部に装着する用途のブツを力一杯床に投げ捨てた。
「ええー。似合うと思うけど……全然違和感ないし」
「俺は御嬢様にどう思われているんですかっ!?」
そこでソフィアは、そっと哀しげに長い睫(まつげ)を伏せ、
「……わ、私の口からは、とても……」
「ちょっ……ほ、ほんとにどう思われてるんですかぁああああああ!」
「……ごめんなさいっ……!」
「え、御嬢様泣いてます!?泣いてるんですか!?えええええッ?」
絹のハンカチで目尻を押さえながら俯くソフィアに、ヒースは面白いほど動揺して。
「冗談よ」
「酷え!」
けろっとした表情で顔を上げる彼女。
「これは……癖になるわね……。シュオンの気持ちも分かるわ」
「変な癖作らないでください!」
うんうん、と納得したように頷くソフィア。
「……ふふっ。待たせておくのも悪いし。私の買い物、一応急ぐわね」
ソフィアは悪戯っぽく笑って。
「そうしたら、シェーラが喜びそうなもの、色々なお店を回って探してみましょう」
「いや……その、」
きょとんとしたソフィアに、ヒースは歯切れ悪く。

「や、ちょっと、心当たりが、あるんですけど……」

244白鳥夕:2012/04/24(火) 13:56:27 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
クンクン美味しそうなお話←面白いという意味 シェーラさんは,御嬢様ののことが気になっていらっしゃるのかしら…♡ それにしても12章も続けられることがとってもすごいです☆彡次回作も待ってます。ではまた〜☆

245ピーチ:2012/04/24(火) 17:33:05 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわぁ・・・ソフィア様がどんどん腹黒く・・・!

次の更新も待ってるねーww

246月波煌夜:2012/04/25(水) 13:30:13 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 13』


.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+



「はいはーい、お呼びですかソフィア様…………ほえ?」
「―――お誕生日おめでとう、シェーラ」
外はすっかり闇に包まれ、冴え冴えとした輝きを放つ銀色の月が部屋を照らし出している。
椅子に腰掛けたソフィア、彼女に寄り添うように立つシュオン、そして仏頂面の見本のような仏頂面でムスッと腕を組んでいるヒースを順番に見やり、入室してきたシェーラは首を傾げた。
「え、え、え?」
「今日、誕生日でしょう?」
「え、そうですけど……え?何で、え?」
「……友達の誕生日をお祝いするのは、当然のことでしょう」
不満げに唇を尖らせて、ソフィア。
「そ、ソフィア様―――!」
感極まったらしく、シェーラは青灰色の瞳をうるうると潤ませると、ソフィアにひしっと抱きついた。
「暑苦しい……」
当のソフィアは憮然としているものの、されるがままになっている。
「にゃー嬉しいですー!ソフィア様大好きですー!あ、で、でも何で今日だって御存知だったんですか?」
「とある筋からの情報提供によるわ」
ちらっと、頑なに二人から目を逸らし続けるヒースに視線が送られる。
「……とある筋って―――」
「あ、ちょっと待ってて。僕、ケーキ用意したんだ」
「―――え、ケーキ!?」
危うい方向へと進む彼女の話を遮ったシュオンの一言で、シェーラはたちまち顔を輝かせて。
使用人に廊下まで持って来させたらしく、シュオンが『それ』を自ら運び出す。
明かりを消した部屋に、ゆらゆらと幻想的な蝋燭の炎が揺らめ―――
「ちょおっと待てい!」
―――かなかった。
「シュオンお前、蝋燭の代わりに何挿しやがった!?」
ケーキの上、ヂヂヂヂヂと不快な音を立てる、太い棒状の『ナニカ』―――ダイナマイトによく似た物体。
火のついた導火線らしきものが少しずつ減っていくあたり、明らかに爆発物である。
「やだなぁ、大丈夫だよ。それはダイナマイト型の―――」
「あ、あはは!そ、そうだよな!いくらお前だってケーキにダイナマイトなんかぶっ挿す訳ねえもんな!やっぱ普通の蝋燭―――」

「―――小型爆弾だから」

「大丈夫要素どこだぁああああああああ!?」
「十、九、八、七―――」
「何のカウントダウンだそれぇ―――!?」
「五、四」
「やべえ時間が!?はははは早く吹き消せシェーラ!」
「う、うん!」
ふうーっとシェーラが慌てて息を吹きかけると、炎が消えて部屋が真っ暗になった。
素早く明かりを付けたヒースが、早速平然としているシュオンに食ってかかる。
「お、お前って奴はあ……!」
「純粋な化学の実験だもん」
「ケーキの蝋燭代わりに爆弾仕掛ける実験があるかぁッ!」
「うーん、本当はケーキの飾り付けにも色々工夫したかったんだけど、調合してるうちに鍋が溶けちゃって。残念ながら普通のケーキだよ」
「残念なのはお前の脳みそだわ!ケーキの飾り付けに鍋使おうとする段階でおかしいだろ!……まあ一応聞いてやるか……どんな工夫をしようとしたんだ?」
「ケーキを蛍光イエローとスカイブルーの水玉模様に」
「それは最早毒でしかねえ―――!」
いい加減叫び疲れたらしく、体力バカであるはずのヒースだが、ぜえぜえと肩で息をしていた。

247月波煌夜:2012/04/25(水) 13:35:22 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp
>>ピーチ

腹黒…てゆーかふざけるソフィア、リクエストに応えられたかな?

ヒースの哀れ具合が加速中w

248ピーチ:2012/04/25(水) 18:34:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん!めっちゃ答えてくれてるよ!

ってゆーか・・・シュオン様にはついていけないだろーなー・・・←あたしは即ダウンww

ヒースが・・・ヒースがかわいそーだよー!

少しでいいから、またヒースの特技増やしてあげてー!!←うるさいww

249ピーチ:2012/04/25(水) 21:22:57 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

よ、よかったー!
月波にはこれが限界だーw

ヒース、格好良く書いてあげたいんだけど……かなり先になりそうだよ……。
てゆーかもう番外編でしか無理じゃね?みたいなw
まあ頑張るよー(o^_^o)

250ピーチ:2012/04/25(水) 21:49:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あらら・・・ヒースはあれが最高かww←ちょー偉そうww

まぁ、気長に待ってるニャ〜♪

251月波煌夜:2012/04/25(水) 22:49:00 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

自分の名前間違えたw
ごめんー(x_x;)

うん、ヒース頑張ってるから…。色々と…。
勘弁してあげてー(ノ_・。)

他に、何か読んでやっても良いよ的な短編リクエストない??
またすぐに300いっちゃいそうで←

252ピーチ:2012/04/26(木) 06:54:18 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ありゃりゃ、やっぱり?だいじょぶだいじょぶ!気にしないしーww

うーん・・・あ、シュオン様がヒースにめっちゃ優しくなるとか?

ちょい無理難題??

253彗斗:2012/04/28(土) 23:10:11 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
どうも、滅茶苦茶久しぶりです。ここ最近ヒースが半端じゃ無いほどに酷い扱いを受けてますねww
私もシュオンが優しくなった所が見てみたいなぁなんて思っちゃいました。……やっぱ無理かな……(キャラの都合上)

254月波煌夜:2012/04/29(日) 11:16:29 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

はろはろー☆
更新滞り中…ごめんね(*_*;


うん無理!!
…と言いたいとこだけど…
うーん、頑張ってみようかなー(^_^;)
子供時代あたりならいけるかもしれんw
現在verの方がいい??

255月波煌夜:2012/04/29(日) 11:21:23 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

お久しぶりですー!

う……ど、努力します(^^;)
一応形だけのデートもさせてあげたのに、やっぱり苦労性なヒースですw
いつかはちゃんと幸せにしますから!←

お忙しい中有難う御座いました!
宜しかったらまたお越しくださいな(≧∀≦)

256月波煌夜:2012/04/29(日) 17:52:52 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp

Ⅲ. 『sweet memory 14』


「それ、本当に時限爆弾だったの……?」
「うん。スリルがあって面白いでしょう?」
「こんな場面で、死と隣り合わせのスリルは体験したくはなかったわね」
ソフィアも呆れ顔だ。
「大丈夫、ソフィアを危険に晒すようなことはしないよ。それに間に合ったんだし良いじゃない」
「俺らは危険に晒されても良かったのかよ……」
「まあそれはさておき。ほら、ケーキ切っちゃおうか」
……誤魔化した。完全に誤魔化した。
「あ、あたし切りますよー!」
「シェーラ?貴女は主賓なのだし、そんなことしなくても」
「だーいじょーぶですから!……それに、他の人たちに任せてはおけないし」
たはは、と人差し指をぴこぴこと動かしながら苦笑。
……確かに、妥当な判断である。
「……じゃあ、お願いしようかしら」
「はいはーい、お任せあれ!」
大張り切りでナイフを手にするシェーラ。
「あー……俺は甘いもんは無理だし、いらねーから」
「ええッ!?」
思い出したように告げたヒースの言葉に衝撃を受けたらしく、シェーラは大袈裟にフラリとよろめく。
「う、嘘……甘いものが嫌いな人がいるなんて……」
「いや、結構いると思うけど……」
「絶対おかしいよそれ病気だよ!病院行け!」
「何でそこまでボロクソに言われなくちゃならねーんだよ!」
「ヒース、何飲む?カレー?」
「そんなに俺をデブキャラにしたいのかお前は!?」
「シュオン、駄目よ。ヒースが可哀想じゃない」
「それ何のフォローにもなってませんからね御嬢様!?つーか全然俺太ってませんし!」
「…………………そう、ね」
「ちょ、何で目ェ逸らすんですか!?え、俺太ってないよな!?なあ!?」
涙目で腹をさするヒースに、一同は優しく微笑んで、『そうだね』と頷いた。
「憐れまれたッ!?」
「まあ、冗談なのだけどね」
「今日何か俺に対して酷くないですか御嬢様!?で、でもほら、やっぱ俺痩せてる方ですよね!」
「……今はね。じきに、分かるわ」
「御嬢様ぁぁあああああ!?」



……そんなこんなで、あっという間に時間も過ぎて。



「―――シェーラ。これやる」
「へ?」
ケーキが片付いた頃。ソフィアとシュオンが『や、もうちょっとマシな渡し方ないの?』という冷たい目で見てくる中、ヒースはあくまで無造作に、ぽいっと『それ』を放り投げた。
「にゃっ」
シェーラは慌てて手を伸ばしたが取れずに、綺麗な放物線を描いた『それ』は顔に直撃。
「な、なんなのよもー……」
「いいから開けろ!」
ぐわっ!と想い人相手に本気で怒鳴りつける馬鹿一名。
「はぁ!?何が、」
「い、い、か、ら、開けろッ!」
「あーもう、分かったってばー……」
シェーラが渋々折れて、ガサガサと紙袋を開け、丁寧に包み紙を解き―――

「―――……え?くまさん?」

中から出てきたのは、かなりの大きさのクマのぬいぐるみ。
もふもふとした柔らかな手触りに、きゅるん、と輝く黒くてつぶらな瞳。
「わ、分かったらさっさとしまえ!」
ヒースは決して彼女と視線を合わせないようにしながら叫ぶ。
シェーラは可愛らしいぬいぐるみとそっぽを向いているヒースを交互に見つめ、
「……っあはははははは!」
爆笑した。
「ひ、ヒースが!ぬいぐるみ!くまさんって!嘘これ買ったの!?この顔で!?っぷ、ぷははははは!」
「シェーラ、笑っちゃ……くくっ」
「ソフィア、自分が笑ってちゃ意味ないよ……っく」
「うるせえ―――!?」
すっかり逆上して茹で蛸状態のヒース。
「っ……あ、ありがと、あたしが買えなかったやつだよね、これ」
笑い疲れた様子のシェーラは、目尻の涙を拭いながら。
「今日から一緒に寝る!……この子の名前、どうしよっかなあ……」
シェーラはしばし思案して、
「うん!黒い目だから、『ヒース』にする!」
「それはやめろ!」
「何でー?」
「…………は、恥ずいからに決まってんだろボケがっ」
「え、何か言った?」
「何でもねえ!」
「うん?……ヒースは変だねー、ねえヒース?」
「意味が分からん!」
シェーラはむぎゅっとクマを抱き締めて、大切そうに頬擦りして。
「えへへ……ありがと、ね」
……それだけで、こちらまでちょっと嬉しくなってしまったりするのだから、本当、惚れた方は弱い。
ヒースは火照った頬を隠すように、またぶっきらぼうな表情を作って腕組みをし、壁に寄りかかるのだった。

257ピーチ:2012/04/29(日) 17:59:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うn・・・って簡単に無理ゆわんでくれー!!

う・・・っ何かヒースだけがちょー哀れに感じる・・・なぜ!?

ってゆーか・・・ヒースって太ってんの?あたしのイメージではシュオン様の方が・・・何でもなーいww

258月波煌夜:2012/04/29(日) 18:05:57 HOST:proxy10079.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、どっちも痩せ型だよ!安心して!
ただ皆がふざけてただけだから(*´д`*)
……うん。体型の描写も入れた方がいいか……?

259bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/29(日) 18:09:52 HOST:p3021-ipbf1310sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

お久し振りです!
最近は忙しくて中々小説板に顔を出せなくて…久し振りに来られたので
溜まっていた分をまとめ読みしました^^
相変わらず綺麗な文章で読みやすいですね。

これからも変わらず応援していますノ

260月波煌夜:2012/04/29(日) 18:14:51 HOST:proxy10079.docomo.ne.jp

ここまでご覧くださった皆様、本当に有難う御座います……!
月波の好き勝手に書き散らしている駄文を読んでいただけてその上で感想までいただけるなんて、嬉しすぎて泣けてきます←
さて、微妙な終わり方ですが、次からは四章『恋のSpica』に入ります。
タイトル通りラブ要素を入れたいなーと。思っているのですが、どうなるやら……。男性陣(某二名)も格好良く書きたいなー。
五章ではバカ話はなしのシリアス回の予定。だいたいこのへんで完結かなーと。

亀更新で申し訳ないのですが……これからも『紫の歌』にお付き合いください!

261月波煌夜:2012/04/29(日) 18:18:33 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp
>>bitterさん

お久しぶりです!
お忙しい中のコメ、有難う御座います……!うああ嬉しいー!

尊敬する作家さんにそう言っていただけるなんて、この身に余る光栄です(*^_^*)
これからもよろしくです←

262bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/29(日) 19:04:11 HOST:p3021-ipbf1310sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

いやいや、そんな大層な存在ではありませんよ^^;
私にとって尊敬する作家さんとは、かぐやさんをはじめとする他の皆様です+

此方ものろのろと更新中ですので、お付き合い下さると嬉しいです^^
ではでは、今日は連続で失礼しましたノ

263月波煌夜:2012/04/30(月) 10:00:15 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 1』





エインズワーズ城の廊下の一隅にて。
「お、奥様ー……?あたしそろそろ、ソフィア様のお部屋に……ひ、ひゃうっ」
「そんなにつれないことを言わないで、シェーラ。用事なんて後で良いじゃない、ね?」
―――ぜんっぜん良くないですぅー!
哀れ、シェーラは絨毯の敷かれた床に押し倒され、美貌の婦人―――シュオンの母、公爵夫人アゼリアに襲われている真っ最中だった。
「メイド服っていうのがまたそそるわよねえ……でもこう、もうちょっと露出があった方が燃えるかなあ……」
使用人の立場ゆえ抵抗できない彼女に覆い被さったアゼリアは、蠱惑的に新緑色の瞳を細め、ローズピンクに艶めく唇を朱い舌でちろりと舐めた。
その仕草が壮絶なまでに色っぽくて。
シェーラはとても直視できず、すぐ正面にあるアゼリアの整った顔からぎくしゃくと視線を外す。
「あら、駄目よシェーラ……ちゃんとわたくしの目を見て?そして貴女の乱れる可愛い姿をわたくしに見せて頂戴―――」

「―――母上。何をなさっているのですか」

極北の大地に吹き荒ぶ風のように冷たく、それでいてオーロラの如く美しい声が響く。
カツ、……カツと規則正しい足音が止まり、すらりと伸びた長い脚が見えて。
「シュオン様……っ!」
「何よシュオン、お母様の邪魔をするつもり?」
光が当たるところが虹色に煌めいて見える純金の髪。
玉座からこちらを見下ろす氷の女王のように、冷徹に輝くアクアブルーの瞳。
すっと通った鼻梁、形の良い唇、美人の代名詞でもある柳眉。
誰もが認める美青年、次期エインズワーズ公爵のシュオンだ。
「……別に母上のお楽しみの邪魔をするつもりはありませんが。そのメイドは顔見知りですし、見逃したらソフィアに嫌われてしまいますから」
……完全に後者が真の理由だろう。
「もう!わたくしはそんな冷たい子に育てた覚えはなくてよ、シュオン!」
「僕も変態の両親の下に生まれてきたことを大変遺憾に思っておりますよ。……それでは、彼女をお借りします」
立てる?と手を貸され、シェーラはこわごわ立ち上がった。
ぷくっと膨れて「良いもん、他のメイドを当たるから」とぼやいているアゼリアを置いて、すたすたと歩き出すシュオン。
「……あの、有難う御座いました……!」
シェーラは彼に付いて歩きながらも、縮こまって礼を言った。
「当然のことをしたまでよ。こちらこそ、母が迷惑を掛けてごめん」
シュオンは完璧で華やか、隙のない微笑を美しい顔に載せて。
「―――重そうだね。その本、持つよ」
「ええっ?いえ大丈夫ですから!」
「……そう?」
多分男としての義務感から言い出したのだろうシュオンは食い下がることはせずに、にこやかなまま小首を傾げて見せた。
「はい!ソフィア様のお部屋に持って行くんです、これ」
「……ソフィアに?」
「はい。ソフィア様、本がお好きですから」
「そうだよね。僕も後で行くよ」
慈しむような、愛しむような。
先程までの上辺だけの笑顔とは明らかに違う、優しさが滲み出るような、柔らかな微笑み―――。
「―――シュオン様は本当に、ソフィア様が大好きなんですね」
シュオンは一瞬驚いたように、長い金の睫(まつげ)をしばたたかせたが、
「まあ、ね」
少し困ったように笑った。
「でも、いつも何ですぐにソフィア様と会わないんですか?いつでも行けるのに」
「……あんまりしつこくしたら、嫌がられちゃうかもしれないし」
その拗ねた子供のような横顔があまりにも可愛らしくて、シェーラは思わず噴き出してしまう。それを誤魔化すように、
「あー、いいなー!あたしもそんな風に想われてみたいー!恋がしたーいっ!」
背伸びをして叫ぶシェーラに、シュオンは呆れたような眼差しを送って。
「……君さえ望めばいつでもできると思うけど……」
「えーそんなことないですよ!あたし、シュオン様みたいにモテないし!」
「……奴も報われないなぁ」
彼女の付けている花の髪飾り辺りを眺めながらのシュオンの同情めいた呟きは、彼女の耳には入らない。
―――で、も!まずは、あたしじゃなくてあの二人!そろそろ……『あっち』に一揺すりかけてみても、良い頃合いよね。
自分の考えに、シェーラは満足げに、にっこりと笑った。

264月波煌夜:2012/04/30(月) 10:04:52 HOST:proxy10031.docomo.ne.jp
>>bitterさん

いやいや、大層な存在ですよっ(≧∀≦)
bitterさんの流麗な文章を見習いたいものです←

了解です、そのうち其方にも伺いますね!

265ピーチ:2012/04/30(月) 10:23:11 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

シェーラ・・・何か可愛そうすぎるのはなぜ?

今こーして考えてみるとさー、結局奥様以外は悲しいキャラみたいな?

266月波煌夜:2012/04/30(月) 15:50:08 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 2』




「…………シェーラ?」
「何ですかー?」
寝台(ベッド)にいつものように寝転がって書物のページを捲りながら、ソフィアはすぐ傍に控えているメイドの少女の名を呼んだ。
「書庫から本を沢山持って来てくれるのは、感謝しているし、大変有難いのだけど」
高く積まれた本の数々をチラリと見てから、何ですか?と言うようにほわほわと笑っているシェーラに向き直る。
「―――……どうして、恋愛小説(ラブストーリー)ばかりなの?」
今、ソフィアが読んでいるのは、平民の娘と青年貴族が、激しい恋の末に駆け落ちを決意しているシーンである。
熱烈な接吻(キス)を交わしている娘と青年の描写から、ソフィアはやや辟易として顔を上げた。
「勿論、恋物語も大好きだけど、さすがに飽きるわ。ここ数日、ずっとこんなのばかりじゃない」
「ソフィア様の、お役に立つものばかりですよ?」
「……私の、役に立つ?何処が?そんな訳がないじゃない。何で―――」
「だって、」
シェーラは、あくまで余裕の笑みを崩さずに。
こう、言った。



「―――貴女が、シュオン様に恋しかけているからですよ―――ソフィア様」



「…………………………え?」

時が、止まった。
「…………シェーラ?今、貴女なんて」
「ソフィア様が、シュオン様のことをお好きになりかけていると、そう言ったんです」
きっぱりと、言い切るシェーラ。
ソフィアはしばし、何を言われたのか分からない、というように呆けていたが。やっと我に返ったように、上体を起こし、透き通った紫の瞳で彼女を軽く睨みつけた。
「……意味が分からないわ。冗談も程々になさい」
「冗談じゃありません。本当のことです」
シェーラの顔つきは、これまでにないほど真剣で。
つい、その勢いに押し切られそうになる自分を奮い立たせて、ソフィアは声を荒げた。
「……っ、いい加減にして!私の気持ちなんて、この私が一番良く分かってる!シュオンは只の友達で―――」


「―――本当に?」


シェーラの冷静な声が、ソフィアに宿る熱を、急速に冷ましてゆく。
言葉に詰まり、固まってしまったソフィアに、シェーラは。
「本当に、シュオン様は只のお友達なんですか?」
枯れた大地に降り注ぐ雨のように、シェーラの言葉が、胸に沁みこんで。
「ソフィア様は、それで、本当に良いんですか?」
……頭を思い切り殴られたような、衝撃。
唇がわななく。
「あたしには、シュオン様と一緒に居るときのソフィア様は、他のどのときよりも、満ち足りて、凄く、凄くしあわせそうに見えます」
シェーラは静かに、慎重に言の葉を紡いでいく。
「……違いますか?」

―――私、は……。

ソフィアはぎゅっと目を瞑った。
寝台の上で膝を抱える。
「……良く、分からない」
囁くように、呟いて。
「……シュオンと話していると、ふっと、何だか変な、あったかくて、優しい気持ちになるときがあるの」
俯き、胸に下げたアメシストを、そっと握りしめる。
「でも、特別好き、とか……そういうことではないと思うの」
「―――ソフィア様」
寝台に腰掛け、シェーラは優しく、握ったソフィアの手を包み込んで。
「……どうですか?何か、感じますか」
「―――温かくて、気持ちがいい」
「じゃあ……シュオン様に触れられたときは?」
ソフィアは記憶の糸を手繰り寄せ、シュオンにこの手を握られたときの感触を思い出す。
「シュオンの手は……温かくて、大きくて、……もっと、」
顔が、焼けそうになるほど、じわじわと熱くなる。
「……ドキドキ、した」
「―――それが答えですよ」
シェーラは淡く微笑んで。


「ソフィア様は、シュオン様のことが、好きなんです」


「わ、わざわざ口に出して言わないでっ」
ソフィアは真っ赤になってぷるぷると髪を震わせる。
「えへ、つい。……後はシュオン様のお気持ちに気づけば……こっちの方がずーっと楽なんだけどなあ」
「……な、何か言った?」
「いえいえ〜。こっちの話です!あたしってば超鋭い!って話ですよう」
「……それは絶対ないと思うけど」
「え?何ですか?」
「何でもないわよ」
「やー、それにしても、ソフィア様も今日から恋する乙女ですね!胸が弾みます!」
「う、うるさいッ」
顔をすっかり紅潮させてぽかぽかとシェーラを叩くソフィアだったが、
「ちょ、ちょっと待って!今日からどんな顔してシュオンに会えば良いのよっ?」
途端、血の気が引くソフィアに、シェーラは笑って指を立てて。
「だから、それを本でお勉強です!」
……道理である。

267月波煌夜:2012/04/30(月) 15:57:13 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp
>>ピーチ

え、そ、そうかな?(´・ω・`)

基本、皆バカで残念なキャラだよ!月波は完璧人間なんか書けないよ!
ソフィアが一番まともではないかと←


今書いたやつは本文長すぎてエラー出ちゃったから一杯削ったのでさらに酷いことになっております(つд`)
シェーラ、お前人に構ってる場合じゃないだろ!と突っ込んでくれれば幸いw
つーか何か無理矢理感漂ってるけど、ソフィアついに『乙女』化です!長かった(~_~;)

268ピーチ:2012/04/30(月) 16:31:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え・・・つっきーが書いてる人物って、基本みんな真面目キャラだと思ってた!←アホ。

あたしは・・・自分がバカだから、逆に真面目キャラしか作れないww←主な登場人物だけww

269月波煌夜:2012/05/06(日) 09:57:12 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 3』



「―――それでね、……ソフィア?」
「ひゃ、……はいっ!?」
盛大に噛んだ上、変に声が裏返った。
「え、大丈夫っ?」
「大丈夫よ。にゃにも問題はないわ」
「……そ、そう?」
不自然なまでの無表情を繕うソフィア。シュオンは違和感を感じたらしく、不思議そうに首を傾げた。
―――うううシェーラのばか……!本で読むのと現実は全然別じゃない……!
ソフィアは涙ぐましい努力を続けながら、内心此処には居ないメイドの少女を呪う。
さっきから心臓がバクバクとし過ぎて痛いくらいだし、上手く視線も合わせられないし、全く、自分の気持ちの自覚なんかするものじゃない。
―――お、落ち着きなさいソフィア……!そう、この人は外面は完璧でも、腹黒で火薬毒薬マニアのド変態なのよ……!緊張してどうするの!
能面のような表情を全力で保ちながら、ソフィアは傾く思考を制御しようと尽力。
―――……でも、良いところも一杯あるのよね。私のことは大切に扱ってくれるし、何だかんだで優しいところもあるし、……って、だ、か、らぁっ!
また変な方向に考えが飛びかけて、はーっと息を吐き、額に手を当てた。
……本当に。自分が自分ではないみたいだ。
ガクガクに緊張しているというのに、シュオンと二人きりのこの状況に、心の何処かで浮かれている自分がいるというのも、認めがたい事実で。
―――こんなの私じゃない……!
「それでね。本題なんだけど……」
柔らかなシュオンの声に、ようやく現実に引き戻される。

「―――来月、うちで舞踏会を開くんだ。それにね、ソフィアも来てほしいなって……」

彼の突然の誘いに、ソフィアは演技もすっかり忘れて呆然と。
「舞踏、会?」
「うん。僕、やっぱりああいう場所は嫌いで、気が進まないから……でももし、ソフィアが来てくれるって思ったら気が晴れるし、きっと色々と頑張れると思うんだ。正式に招待するのは難しいから、顔を出してもらうだけになっちゃうだろうけど……駄目?」
こちらの反応を伺うように、上目遣いで見つめる様子がやたら可愛らしい。
「……そ、それは、私もちょっと見てみたかったりもするけど……でも、大勢の人が来るのでしょう?私が居てはまずいことになるだろうし」
何しろ、ソフィアは存在を秘匿されている、伝説の《紫水晶(アメシスト)》だ。
街に出掛けたときのように、帽子を被って瞳を隠す方法も、室内では無理な話である。
が、
「あ、それは大丈夫!ちょっと工夫すれば何とでもなるよ、心配しないで」
しどろもどろなソフィアの返事に、シュオンはぱっと顔を輝かせる。
「……本当?本当に、私が行っても良いのね?」
「勿論だよ」
「そ、それなら……」
“―――ちょっとだけ、行ってみたい、かも”
唇を尖らせ、そっと呟かれたその一言を、シュオンは決して聞き漏らすことなく。
「……良かった。約束、だからね?」
安心したように、無邪気な笑顔を見せたのだった。









「ソッフィアッ様ー!聞きましたよ聞きましたよ、舞踏会に行かれるんですってっ?」
シェーラが声を弾ませながら部屋に飛び込んできた。
「そうみたい……ちょっとだけね」
「やりましたねソフィア様!シュオン様の正装はそれはもう格好良いんですよう」
しっかり見られるじゃないですかー、とにやにやする彼女から、ソフィアは視線を外す。
……少し。少しだけ、そういう算段もあったり、なかったり。
「早速ドレス、候補を幾つか持ってきました〜」
「持ってきたのは俺だがな……?」
恨めしげな声に振り向くと、従僕(フットマン)のヒースが大量に積み上がった箱を一度に運んでくるところだった。
「お疲れ様。……良く落ちないわね?」
「や、慣れてますんで。それに崩したりしたら、御嬢様の晴れ姿が見たいが為に公爵閣下に必死に頼み込んで御嬢様相手に嘘までついたあいつに殺され……あー何でもないです」
シェーラに鋭く一睨みされ、ヒースは口をつぐみ、黙って新品のドレスが入った箱をひとつひとつ並べる作業に移る。
「どれが良いですかねー?ソフィア様は何かリクエストとかありますか?」
シェーラに尋ねられ、ソフィアは。
「……そうね。これに合うものが良いわ」
恥ずかしげに、胸元のアメシストを指先で弄る。
シュオンからのプレゼントのネックレスだ。
「―――なら、」
シェーラは微笑ましいものを見るように穏やかに笑って、迷いなくひとつの箱を開き包装を解いた。
「これが一番、お似合いになると思います」

270月波煌夜:2012/05/06(日) 10:01:54 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ

遅くなってごめん(x_x;)

……え、真面目キャラ!?
ピーチは心が綺麗なんだね……(/_;)
ピーチは頭良いから真面目キャラが書けるんだよ!絶対そうだよ!

271ピーチ:2012/05/06(日) 12:25:44 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えぇぇぇ!?

あ、あのぉー・・・あたしめっちゃ腹黒いけど・・・←リア友に良く言われるww

それにさー・・・馬鹿キャラ書いてると自分が惨めになってきて・・・うぅ・・・

だからあたしは自分に一番ありえない優等生キャラしか書けないのだ・・・←泣きたい・・ww

272月波煌夜:2012/05/06(日) 21:33:02 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 4』




季節は移ろい、咲き乱れる花々は庭園に短い夏を染め上げる。
シュオンに招待された日から三週間が過ぎ、迎えた舞踏会当日。
ヘアピンやラベンダー水の瓶が並べられた鏡台の前にソフィアは腰掛け、メイドたちの手で飾られてゆく自身を、ただぼうっと眺めていた。
彼女の躯(からだ)を覆うのは、光沢のある華やかなサテン地に、銀糸や真珠で細かな装飾を施された、豪奢な薔薇の透かし模様が入った明るいライラック色―――淡い紫のドレス。
ウエストから切り替わって床を引きずる形になる引き裾(マントー)、裾の広がりを増やしてふくらみを持たせた上品なデザイン。
ふんわりとふくらんだ可愛らしい袖は、ソフィアの真っ白な長手袋に包まれた手の真珠細工の如き繊細さを余すことなく引き立てる。
鏝(こて)を当ててカールされた艶やかな銀の髪は丁寧に結い上げられ、最高級のダイヤモンドが散りばめた蝶の髪飾りが華を添える。
細かいレースで縁取りされた裾から僅かに覗くのは、可憐な三段のリボン付きの淡く透き通る銀色の舞踏靴。
ドレスと同じサテン地のリボンで大輪の薔薇を模したヘッドドレスから繋がる、限りなく薄いレースを顔に掛けると、正体を明かしかねない紫の瞳の色が程良く隠れ、密度のある睫(まつげ)を伏せる物憂げな表情と相俟って、高潔で穢れを赦さぬ、独特の神秘的な雰囲気が生み出された。
仕上げに、惜しげもなく露わにされた白鳥のようなほっそりとした首筋を通り、眩しく輝く胸元に、アメシストのネックレスが飾られる。
「……完璧です!」
思わずと云ったように、シェーラをはじめ、彼女らの作品とも云える、女主人の美しい完成形の姿に、メイドたちが歓声を上げる。
「何てお美しい……!」
「きっと何処の姫君にも負けませんよ」
溢れる感嘆の溜息。
しかし不安なソフィアはそれらを素直には受け取れず、おろおろとするばかりだ。
「い、いえ、決してそんなことは……ねえシェーラ、本当におかしくはない?」
「当ったり前ですよ!自信を持って下さい、ソフィア様!」
シェーラが豊満な胸をドンと叩く。
「本当の本当に?」
「本当の本当にです!ふふふ安心してくださいって、絶対シュオン様も見惚れちゃ……もがっ」
瞬間、ソフィアは仄白い肌を真っ赤に染めて、プロの暗殺者の手際の素早さでもってメイドの少女の口を塞いだ。
「もが、もがががが」
「……シェーラ?分かっているとは思うけど、くれぐれも、余計なことは言わないでね?」
「もがー!」
「よし」
ソフィアは了承らしき返答を聞いてから、彼女を解放する。
「ひ、酷いですー……」
危うく窒息しかけて涙目のシェーラ。
特に命に別状はないと判断し、今度は一連の流れをにこやかに見守っていた他のメイドたちに向き直る。
「……有難う。貴女たちのお陰で、堂々と舞踏会を見に行けそうよ」
「そんな、私たちも楽しませて戴きましたから」
「そうですよ。それにしても、舞踏会の身支度(トワレット)が出来るなんて……夢みたい」
「―――本当に、夢みたいね」
温かい言葉。
……そう。本当に、夢みたいだ。
大事な商品、土産として飾り立てられた《紫水晶(アメシスト)》としてではなく、普通の一人の女の子として、ドレスを着て舞踏会に参加できる。
まだ実感が湧かない。
余りにも。しあわせすぎて。
―――この私が、こんなにしあわせで、良いのかしら……?
また、後ろ向きになってしまうけれど。
幻想(ゆめ)はいつか、終わるもの。
甘く幸福な幻にも、必ず終焉の刻はやってくる。
その刻は、決して遠くはない。ソフィアにはそれが、十分すぎる程、痛い程良く分かっていた。
だから。
「さあソフィア様、行きましょう!もっと夢みたいな世界が待ってますよ!」


―――……一夜の幻でもいい。
―――どうか。今だけは、しあわせな夢を。


ソフィアは、毅然と顔を上げた。

273ピーチ:2012/05/06(日) 23:25:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわわわっ!ソフィア様凄い!まさかシェーラを窒息させかけるなんて!!

・・・いろんな意味で、凄い考えもってるお方だねー、ソフィア様って・・・

274月波煌夜:2012/05/09(水) 11:36:59 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 5』




白と金の衣装でしっかりと着飾った従僕(フットマン)が大広間へと続く重厚な造りの扉を恭しく開くと、部屋の中から、様々な楽器が幾層にも重なって奏でる優雅な調べが溢れ出た。
それはまるで、目も眩むような華やかさ。
広々とした四角い部屋の隅々まで光が満ち溢れており、夜空の星をかき集めたかのような頭上の巨大なシャンデリアには寸分の隙もなく明かりが灯され、踊る人々の装飾を虹のように輝かせる。
音楽に合わせて舞うたびに、色とりどりのドレスの花が咲き誇る。
「すごい……」
ソフィアは、ほうっと息を吐き出した。
今まで、舞踏会やパーティーに連れて来られることは良くあったが、ここまで豪華で大規模な催しは見たことがなかった。
これに勝るのは、王城で開かれる舞踏会くらいのものだろう。
ソフィアは壁際に寄り、あくまで。あくまで何となく、金の髪の人物を探していると、
「……御嬢様?」
背後から聞き覚えのある声が掛けられたので、ソフィアはくるりと振り返った。
「…………?」
……聞き間違いだったのだろうか。
良く見回しても、見慣れた、目つきがアレな護衛役の姿はなかった。
ソフィアは困惑して首を傾げる。
だって、目の前に立っていたのは、洗練された身なりの紳士なのだ。従僕の訳がない。
無駄なく鍛えられたしなやかな筋肉を予想させる長身。ぴったりとした黒羅紗の燕尾服は、程良く日に焼けた浅黒い肌や整えられた鴉羽色の髪、切れ長の漆黒の双眸に絶妙に合っており、締められた白の蝶ネクタイが黒との鮮やかなコントラストによって、凛々しさを醸し出している。
「え、ちょ、御嬢様ー?」
舞台の男優のように目鼻立ちの整った紳士が、困り果てたように妙に情けない声を出し―――
「……えっ?ヒース!?」
「このタイミングで!?」
驚愕した紳士―――ヒースが眼光を鋭くして、頬を引きつらせる。
「う、嘘……でも間違いない、ヒースだわ……」
「さっきから何なんですかその反応ッ!」
ソフィアは未だ戦慄の表情で、
「な、何故かしら……まるで、ヒースがまともな人に見えるのだけど……」
「な、何故だろう……まるで、俺がまともな人じゃないと言われているようなんだが……」
ヒースは渋い顔でゴホンッ、とわざとらしく咳払いして。
「まあとにかく、今日は俺も一応、正式に招待されてるんです。それなりの格好をして臨むのは当然ですよ」
「そうだったの……」
そういえば、彼も由緒正しき子爵家の出身だと聞いた。
それを見事なまでに綺麗さっぱり忘れさせてくれるのは、間違いなく日頃の残念すぎる扱いの所為だろう。
「それにしても、こんなに凄い舞踏会は初めて見るわ。来ている人の身分も高そうだし」
「それはそうですよ、王侯貴族や大臣、将校、外国高官……。しかるべき人物の紹介を経なければ入場できないのが、エインズワーズ城伝統の舞踏会ですから」
さらりと言ってのけたが、その本人も、ソフィアのような例外とは違い、立派な招待客であるあたりが何とも言えない。
「……私なんかが来て本当に良かったのかしら……?」
ソフィアは貴族の生まれどころか、身元もはっきりしない人間だというのに。
つい暗い顔になるソフィアに、ヒースは困ったように慌てて。
「あ、当たり前じゃないですか!御嬢様はシュオンに誘われて、いらっしゃったんですから。堂々としていてください!」
「……そう、ね」
―――堂々として、か。
身振りを交えて必死に話す不器用な青年が可笑しくて。不器用な少女は、小さく微笑んだ。
―――……本当に、優しい人たち。
ソフィアは思う。
本当は、ずっとこのまま笑っていたい。
優しい人たちに囲まれて、しあわせな夢を見ていたい。
……でも。
此処に滞在した期間は、今までのどの家よりも長い。
だから。もう、いつ他の屋敷に行くことになっても、全くおかしくはないのだ。
……一人の女の子として暮らすことができて、楽しかった。嬉しかった。
秘めていたシュオンへの想いに気づき、それからすぐ、彼にこの会に招待されて、舞い上がって。
……そして、気づいた。気づいて、しまった。
今が、ソフィアにとっての、しあわせの絶頂なのだと。
そして、怖くなった。
ソフィアは、ここまでの幸福を、味わったことがなかったから。
怖い。
彼らを失うのが。
“彼”を失うのが―――。
そう、ソフィアは只の女の子ではなくて。《紫水晶(アメシスト)》だから。
運命に逆らうことは、許されない。
……それは、ソフィアの中に漠然とある、“予感”だった。

近いうちに、このしあわせな日々は終わりを告げる。

……それは、どんなに抵抗しても、避けることができない、と。絶対的な自信のようなものが、ソフィアにはあった。

275月波煌夜:2012/05/09(水) 11:47:40 HOST:proxyag119.docomo.ne.jp
>>ピーチ

月波なりに、ヒース(の外見)を格好良く書いてみたぞ!

うん。ソフィア悩んじゃってます(x_x;)
まあでも、月波は特に、ちゃんとした心情描写が死ぬ程苦手だから、上手く伝わらないとこも多いと思うよw
ソフィアは何となーく女の勘的なもので嫌な予感を感じてて、それを「そろそろ他の家に行かなくちゃならない時期だから」と片付けてる……っていう感じで読んで貰えればちょっとは分かるかな??
今までいろんなお屋敷を点々としてきたからね←あと、「自分はしあわせになっちゃいけないんだ!」って無意識のうちに思っちゃってるのだ(~_~;)

276ピーチ:2012/05/09(水) 19:08:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えっ!まさかの「自分幸せになっちゃだめ」的な!?

そんなことないのにー!!

もー少し自信持て!ソフィア様!!

・・・うn。何かゴメン。マジで。

もーそろそろ自分が幸せになる番だー!!

277月波煌夜:2012/05/11(金) 13:19:29 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 6』


その考えは、少しずつ、しかし確実に、ソフィアを蝕(むしば)んでいて。
―――……いけない。折角の舞踏会なのに、一人で沈んでいても仕方ないじゃない。
ソフィアは軽く両手で頬を叩き、立ちこめていた暗い気分を振り払う。
―――とにかく、今は楽しまなきゃ。
こうやって壁際で、舞い踊る人々を見物したり、豪華な音楽を聴いて楽しむだけでも気が晴れるだろう。
横を見れば、隣には手持ち無沙汰な様子のヒースが居る。
「……ヒースは踊らなくて良いの?知り合いに挨拶したりとか」
「あー、そうですねー……御嬢様は、お一人で大丈夫ですか?」
一応、彼なりに気を遣っていたらしい。
「大丈夫よ。私も子供じゃないんだし、変なことはしないわ。こうして見ているから」
「そうですか?」
「ええ、」
「―――ヒース様、ですか?」
話に割って入った声に、びくっとしたソフィアとヒースが揃ってそちらを見やる。
「おや、これは失礼。お邪魔でしたかな」
立っていたのは、これまた身なりの良い紳士だった。申し訳なさそうな表情で、こちらの反応を窺っている。
―――ひ、ヒース“様”!?
ソフィアは特大の雷に打たれたかの如き衝撃に、思わず後ずさった。
『あの』ヒース相手に敬語で話しているところも、遊ばれたり粗末に扱われる場面しか見ていない身としては、かなりの驚きである。
「いいえ、とんでもない。お久しぶりです、ロード・リーヴェン」
ヒースは普段の強面(こわもて)ぶりとは似ても似つかぬ上品な微笑を、彫りの深い端正な顔に浮かべて。
「本当に。どうです、お父様は?お母様も、ご兄弟お元気ですかな?」
「はい、手紙でやり取りをする程度ですが。皆元気でやっているようです」
「それをお聞きして安心しました。……ところで、そちらのご令嬢はどなたですかな?」
ソフィアは慌てて片足を引いて軽くお辞儀をする。
「は、初めまして」
「初めまして。お目にかかれて光栄に存じます……おや、お嬢さん。今夜初めてお逢いする気がしませんね。何処かでお逢いしたかな?」
「えっ?わ、私の記憶には……」
「ロード・リーヴェン。彼女はこういう場に不慣れなのですから。あまりからかわないで差し上げて下さい」
「はは、これは失礼。あまりにお可愛らしいので、つい口が弾んでしまいました」
茶目っ気たっぷりにウインクして見せるリーヴェン卿。
その調子の良さに、ソフィアもくすりと笑ってしまう。
「お美しいレディ、貴女のお名前は?」
「ソフィア、と申します」
「とても可愛らしい響きですね。貴女によく似合う。……ではソフィア嬢、早速ですが、ダンスを一曲、お願いできませんかな」
「…………え、」
確かに、舞踏会なのだからダンスに誘われるのは当然のことだ。
けれど、バルコニーなどの遠い場所から舞台を眺めていたことこそあれ、娯楽のない監禁生活から抜け出したばかりのソフィアには、踊りの嗜(たしな)みは全くないと言って良い。
―――ど、どうしよう……?
無下に断るのも気が引ける。
ソフィアが黙りこくっていると、ヒースがさり気なく助け船を出した。
「……御嬢様、今日は身体の具合は宜しいのですか?本日は見学にいらっしゃっただけで、病が治ったばかりなのですから、無理はなさらない方がよろしいのでは?」
ヒースの真意が分かったソフィアは、その台詞に有難く乗っかることにする。
「……そうね。ロード・リーヴェン、大変申し訳ないのですが、私は生まれつき身体が弱くて、病気がちなのです。昨日まで寝たきりだったので、まだ今はちょっと……」
「そうだったのですか。それは、気が回らず失礼しました」
リーヴェン卿がばつの悪そうな顔を作る。
「いいえ、お気遣い有難う御座います。こうして見ているだけで十分です」
「確かに。……ところで、ヒース様とソフィア嬢はどのようなご関係で?」
軽く探りを入れられたが、ソフィアが答えるよりも先に、ヒースがすかさず。
「ソフィア御嬢様は、シュオン……様の遠縁の家柄の令嬢です。今はこの家に滞在しておられます」
嘘ばかりついてリーヴェン卿には申し訳ないが、《紫水晶》としての正体はどうしても明かせない。
ソフィアは胸中でごめんなさい、と謝罪する。
「シュオン様の?」
リーヴェン卿は意外そうに、踊る人々が溢れる広間の中央に視線をやった。

278月波煌夜:2012/05/11(金) 13:24:18 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、『sweet memory』からすると不自然だけど、ここでソフィアにネガティブになってもらわないと話が繋がらないんだわw

エールありがとう!
ソフィアは必ずやしあわせにします(`・ω・´)キリッ

279ピーチ:2012/05/11(金) 16:05:46 HOST:125.204.92.164
つっきー>>

あららwwじゃ、何としてでも話繋げてー!!←かなり無茶振りww

うん!ソフィア様は幸せになるべし!!←何言ってるww

280彗斗:2012/05/12(土) 20:13:05 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
ヤッホ〜(ちょっと何気に言ってみたかった)久しぶりです。いつも見ていて思うんですがシュオンとかソフィアとかって何でヒースを人として見ていなかったりするんですかね? 滅茶苦茶可哀そうです(泣)

281Mako♪:2012/05/12(土) 22:03:51 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
彗斗さん、まぁそこは、「ドンマイ」
なんじゃないでしょうか…
かぐやさん、お久しぶりです!
なんか、とても面白くなってきてますね!興奮です!
更新、頑張って下さいね!

282ピーチ:2012/05/12(土) 22:35:48 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あたしも慧斗さんの意見にさんせーい!

あたしの目には、めっちゃ可哀そうな感じに映る!ww

283彗斗:2012/05/12(土) 22:52:44 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
ですよね?! 他の人達にも同じ様に映ってるんでしょうか……
あぁ、可哀そうなヒース(泣)

284ピーチ:2012/05/12(土) 23:40:55 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
慧斗さん>>

だよねーww

良く一人で、「ヒースって・・・ヒースが・・・」みたいな感じで言ってたらお母さん達に何言ってんの?みたいな感じで言われたもん←要するに気味悪がられたと言うww

あと、タメでいいよーww

285彗斗:2012/05/13(日) 00:06:05 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
すみません。何をどうしてもタメが使えなくて……こう言う性分なんです。その点弟子は見境なく誰にでもタメですけどね。あぁ……弟子が羨ましい……

286ピーチ:2012/05/13(日) 01:02:05 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
慧斗さん>>

あー・・・そっかぁ・・・じゃーさ、あたしだけでもタメでいい?←既にタメだこの野郎ww

あ、それと、慧斗さんの小説読んでみたよ(^0^)

何か・・・やっぱりあたしは小説書く権利なしみたいに思えてきた・・・((泣

287彗斗:2012/05/13(日) 01:10:02 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
はい。タメでもオッケーです。でも小説書く権利は誰でも持ってる気が……(汗)
感想が無いから誰も見てないのかと思ってた見てくれてる人いたんだ……(驚)

月波さん>>
この続き期待しています!! それと少しでいいですから本当にヒースの立場を少しは良くしてあげて下さい。人じゃ無い目で見られてる時点で酷過ぎますよ(泣)

288ピーチ:2012/05/13(日) 01:15:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
慧斗さん>>

うん、今さっき一気読みしたww

つっきー>>

あたしからもお願いじゃー!主役も大事だけど、脇役も大事だよ!!!

頼むべしっ!!←何語だww

・・・慧斗さんの意見にさんせーい。せめて“人”として見てやってくれっ!

そして運が良ければ、ヒースとシェーラを両思いにっ!!

289月波煌夜:2012/05/13(日) 15:06:58 HOST:proxy10075.docomo.ne.jp
わあいお客さんが一気にっ(*´д`*)
皆ありがとう!月波頑張ります!←変なテンション



>>ピーチ
そうかヒース可哀想か…(^_^;)
脇役にそんなに愛着持ってくれて有り難う…!(涙)
さらっとネタバレすると、ラストにちょっと戦闘シーンを入れるつもりだから、そこで活躍してもらおうとしようw
完結した後始める予定の番外編では、ちゃんとシェーラとくっつけるから!
シェーラにも裏設定あるしねw



>>Mako♪さん
こんにちは!
コメ有難う御座います!
うん、ドンマイですよね☆←酷ぇ
クライマックスが近づいて参りましたので、また是非覗いてやってくださいな(≧∀≦)


>>彗斗さん
お久しぶりです!
よし、ヒースは人間。ヒースは人間(またなんか唱えてる)
あ、そういえば300レス突破記念SSでも、結局ヒースが残念なことになる予定に…
うん。気長に待っていていただけますでしょうか…?
必ずやヒースを人間にしてみせます!(ぁ


まとめて失礼しました☆
これからもぼちぼち更新していきますので、気が向きましたら気軽にいらっしゃって下さいね(^-^)/~~

290ピーチ:2012/05/13(日) 15:36:11 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

・・・何気にヒースを虫同然として見てない?←つっきーに限ってそれはないと思うが・・・。

・・・・・・シェーラの裏設定ぃぃぃぃぃぃぃ!?何それ!?シェーラは、せめてシェーラだけは純粋にしててくれ!頼む!

291月波煌夜:2012/05/13(日) 15:48:47 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 7』



……どうして、今まで気がつかなかったのか。
その圧倒的なまでの存在感。この世に二つとない、天から賜りし奇跡の美貌。
楽隊の音楽に合わせて踊る数多の人の中に、一際華やかに輝く貴公子の姿。
すらりと長い脚が踏むのは、空の上を歩くように優雅なワルツのステップ。パートナーの若い焦げ茶色(ブルネット)の髪の貴婦人へと向けられる、甘やかな微笑みはまるで大輪の薔薇が綻ぶようで、全ての人々の視線を否応にも惹きつける。
彼の細身ながらも均整のとれた体つき、中性的な顔立ちを彩る極上の絹糸の如き金の髪や色素の薄い肌に、純白の燕尾服はこれ以上無いくらい完璧に似合っていて。
―――……ちょっと、くっつきすぎじゃないかしら。
ソフィアは内心眉をひそめる。
会場の女性客が、時を忘れたようにそのカップル―――否、彼に見惚れているのもそうだが、シュオンの柔らかなリードに身を委ね、絢爛な夜会服(ローブデコルテ)を着た婦人が至近距離から彼を見上げては、頬を染めてうっとりとしているのが、何故か妙に引っかかって。
焦燥、小さな苛立ち。
ちりちりと胸が焼けるような、感覚。
ソフィアはぎゅっ、と手のひらを握った。
シュオンが女の人たちに人気があるのは、重々承知していた。
それなのに。
……苦しい。
いつも自分に優しく笑いかけてくれるシュオンが、手の届かない、遠い遠い場所へと行ってしまったみたいで。
今までの嫌な想像とその思いが重なり、心臓が締め付けられる。
その痛みに耐えられなくなったソフィアは。できるだけ平静を装い、リーヴェン卿に申し出た。
「ごめんなさい、少し気分が優れないので、一人で休んできます」
「それは大変だ。医務室へ行かれた方が」
「いいえ、大丈夫です。本当に有難う御座います」
ソフィアは心配そうに見つめてくるリーヴェン卿とヒースに別れを告げると、そそくさとその場を後にした。
とにかく、一人になれそうな場所を探して進んでいく。
給仕(ウエイター)の青年が、グラスに注がれた淡い金色のシャンパンを勧めてきてくれたが丁重に断り、やっと一息ついた。壁にもたれ掛かる。
―――……駄目ね、私は。
ふっと息を吐き出し、ソフィアは自嘲する。
感情表現ができるようになったとはいえ、大事な部分では、何一つ変わっていない。
楽しくて、しあわせで、《紫水晶》としての自分を忘れられる毎日。
なのに、中身は孤独な頃の、暗い少女のまま。
全然、変わっていない。
そんな自分が嫌で、唇を噛んだ。
「―――失礼、レディ」
俯いていたソフィアは、はっとして顔を上げる。
「一曲、お相手願えませんか」
立っていたのは一人の男。
上等な衣服を着ていることから、紳士であることは間違いない。
けれど、口元に浮かぶ品性を感じさせない笑みに気づいたソフィアの背筋が凍りつく。
「……あ、あの、私はちょっと……」
「ふふ。なに、恥ずかしがることはありませんよ。私の父は伯爵、母も侯爵家の血を引く者で、叔母は男爵夫人で、従兄は……」
身分自慢なんて聞きたくもない。
「あの、本当に困ります……きゃっ」
「大丈夫です、大丈夫ですから。さあ、参りましょう」
男が怯えるソフィアの肩を掴み、歩き出したそのとき。


「―――ミスター・サウスフォークとお見受けしますが」


甘く柔らかな香水(トワレ)の香り。
それはごくごく淡いのに、他の様々な匂いを押しのけ、頭の中に入り込んでくる。
自然な所作で、肩に置かれていた男の手を解かれ。硬直したソフィアの腰に腕が回されて、軽く抱き寄せられる。


「あまり、女性を困らせるのは感心しませんよ」


……ああ。
ソフィアは、彼の腕の中で、今にも滲みそうな涙をこらえた。
どうしよう。
どんどん好きになっていく。
怖いくらい。
もう、どうしようもないくらい。
……この人が、好きだ。
「僕の姫のエスコート、御苦労様でした」
おどけたように。だが、それに内包された静かな憤りを確かに感じさせるような、そんな不思議な声音だった。
さっきまで余裕綽々だった男が、ろくに弁明もせずに逃げ去っていくのが分かる。
「……大丈夫?ソフィア」
いつの間にか、大好きになっていた声。
シュオンに覗き込まれ、ソフィアは何も言わずに、顔を彼の胸板に押し付けた。
今、顔を見せるのはまずい。とても、まずい。
ソフィアは返事の代わりに、小さく頷いた。

292月波煌夜:2012/05/13(日) 15:58:03 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp
>>ピーチ

〜月波の中の扱い(ひいき度)・キャラ対比〜


シュオン>>ソフィア>>>>>>シェーラ>>>>>>>(越えられない壁)>>>>>母上>>>>>>父上>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヒース>>>>>虫


こんな感じかなっ☆
大丈夫!虫ではないよ!ちょっと近いだけで!



そ、そんなに怯えないでー!
シェーラはピュアな良い子だよ(多分)!ちょっと人間関係的な意味での裏設定だよ!

293彗斗:2012/05/13(日) 16:13:33 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
これは近いのレベルでは無くほぼ完璧にヒースを虫扱いにしてますね(笑)
まあ無視よりはまだマシかな?(虫だけに)

294月波煌夜:2012/05/13(日) 17:56:24 HOST:proxyag069.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

あ、あっれー?(笑)

はい!無視なんて勿体無いことできませんよ、登場したら一回は弄り倒さないと(`・ω・´)

295Mako♪:2012/05/13(日) 18:21:51 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
ハハッww
まあ、虫よりは前だし…
でも、お父さんより下っていうのはねww

296ピーチ:2012/05/13(日) 18:34:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ち、ちょっと待てー!!ヒースは完全に虫になってるぞー!!←あたし曰くだけどww

まこに賛成!!シュオンの両親よりも下は、ちょっと可哀そうすぎる!!

297月波煌夜:2012/05/13(日) 18:43:16 HOST:proxy10048.docomo.ne.jp
>>お二人(ぉい)

うん、さすがにそれはないよね!
シュオン両親よりはマシにしますw


あ、大変申し訳ないんですが、できれば300番目には書き込まないでいただけますか?
299になったらストップしてくだされば嬉しいです〜。
勝手なお願いですみません(´・ω・`)

298月波煌夜:2012/05/13(日) 19:00:39 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 8』



ずっとくっついているのはさすがに気が引けて、ソフィアはそっとシュオンから距離を取った。
心配そうに見つめてくる、透き通った夏の青空のサファイア・ブルーの瞳と視線がかち合い、とっさに俯く。
心臓が震え、
全身が燃えるように熱を持ち、
この人に恋をしていると、全身が叫ぶ。
ソフィアは気恥ずかしげに、胸元のアメシストを指先で弄った。
それに気づいたシュオンがふわりと微笑み。
おもむろに、僅かに赤らんだソフィアの耳に唇を近づけて。
「―――凄く綺麗だよ。何処のお姫様かと思った」
有難う。来てくれて本当に嬉しい。
最後に、そう囁いた。
「〜〜〜、……ばかっ」
ソフィアは面白いくらい真っ赤になり、両耳を押さえて憎まれ口を叩く。
「っ、そ、それより、私といたら変に思われるからっ」
扇子(ファン)で口元を隠した女性たちがこちらを不審そうに見ているのに気づき、ソフィアはシュオンの胸を押して半ば無理矢理離れる。
「気にしなくて良いよ、彼女たちには僕から上手く言っておくから」
シュオンは満足そうに、にこにこと笑っている。
「でもっ、」
何か理由を捻り出して彼を遠ざけなければ。
これ以上、シュオンに赤い顔を見せたくないというその一心で、ソフィアが何か口走ろうとしたとき、

「―――シュオンじゃないか!」

良く通る声がシュオンの名を呼ぶ。
折角の良い雰囲気を邪魔された本人はたちまち不機嫌そうな表情になったが、それも一瞬のこと。輝かしい微笑みを顔面に貼り付け、
「レオン殿下!お久しぶりです」
……でんか?
ソフィアが聞き慣れない呼称に首を傾げる。
人混みを掻き分け、美しい若者が現れた。
光の加減で赤味が増す、豪奢で見事な金髪。
がっしりとした体つきと精悍な相貌は威厳と男らしさに溢れている。
近寄ってきたその紳士は空色の双眸を和ませ、
「今宵の招待に感謝する」
「またお会いできて嬉しいです。どうぞ、楽しんでいって下さいね」
社交の手本とも云うべき優雅な挨拶に、二人に注目していた広間の人々が一斉に、ほうっ、と感嘆の溜息をついた。
その二人の片割れのシュオンは、完璧に麗しい笑みを浮かべたまま、紳士と傍のソフィアにしか聞こえないような小声で、
「なんだ、いらっしゃってたんですか。影が薄いから気がつきませんでした、すみません」
突然の毒舌。ソフィアはぎょっとして、ヴェールの下で目を見開いた。
しかし紳士も負けてはいない。挑戦的に碧の瞳を細め、
「とんだ御挨拶だな。お前のことだ、来客くらい全て把握しているだろうに。まったく、相変わらず見事に真っ黒な根性だなシュオン。ご婦人方が知ったら卒倒するんじゃないか?その陰険ぶりはいっそ清々しいよ、いっそお前が次の王になってくれたら、マルグリットも安泰なんだがな」
「貴方を含む王族全員と父上が一気に亡くなったら考えて差し上げても良いですけどね。レオン殿下が国王になった暁には、僕が選りすぐりの最高の刺客をプレゼントするつもりですから。訓練だと思って楽しみにしていて下さいね」
「うん?良く聞こえなかったようだ。すまないがもう一度言ってもらえるか?」
「若年性認知症ですか?気をつけた方が良いですよ」
―――ちょ、ちょっと……?
漏れ聞こえてくる悪質な応酬に、ソフィアは顔を引きつらせる。
「―――あ。忘れてた」
話を中断したシュオンがソフィアの背をごく軽く押し、紳士の前に立たせた。
「ソフィア、紹介するよ。こちら、レオンハルト王太子殿下。マルグリットの第一王子、次期国王だよ」
―――……な、お、王子様っ!?
さらりと説明され、ソフィアは驚いてその紳士―――レオン王子の顔を見上げた。

299月波煌夜:2012/05/14(月) 08:04:13 HOST:proxy10086.docomo.ne.jp
では次から、300レス突破記念SS『白衣の天使』を投稿します(`・ω・´)

裏も何もないバカ話ですので、かるーくお楽しみいただければ幸いです。
……いや、楽しい人居るのか……?

戴いたリクエストが「ヒースに優しくするシュオン」だったのですが、結局何故かヒースが一番哀れなことになっているという。どうしてこうなった。


あと、次回の400レス(いくよね……?)突破記念の4回分は勘弁してください……。


さてさて、サラッと流し読み推奨・『白衣の天使』行きます!
何かショコンの方と腐り気味の方にしか需要ないような気もするが気のせいだっ○| ̄|_

300月波煌夜:2012/05/14(月) 08:25:40 HOST:proxy10086.docomo.ne.jp
†祝☆300レス突破記念†

記念SS『白衣の天使①』



「ごめんっ、ほんとにごめんね……っ」
えぐえぐと泣きじゃくる金髪の少年。
年の頃は八、九あたりか。
小さな顔に不釣り合いな程大きな碧い瞳から、次々にぽろぽろと宝石のような涙の粒が零れ落ち、桜色の頬を滑る。
その凶悪なまでの可愛さ、可憐さはヒースと同じ人類とは思えない程で、天使だ太陽だ神が作りたもうた最高傑作だと日夜唾を飛ばして熱弁を奮っている公爵にも、まあ頷けるというものだ。
ふくふくしたちいさな手の甲で涙を拭う様を見て、ヒースは反射的にハンカチーフを差し出してやりたくなったが、
「あーもーいーから泣くなっての……」
力無く慰めることしかできない。
此処はエインズワーズ邸の、住み込みで働くヒースに与えられた私室である。
シュオンの友人……と言うよりも年の近い遊び役として優遇されたらしく、幼いながらも贅沢に一人部屋を使わせてもらっている。
ともかくその部屋の隅、ヒースはまだ真っ昼間だというのに、寝台(ベッド)に仰向けに横たわっていた。
理由は簡単。
この寝台の横で泣きながら謝っている悪戯小僧―――シュオンが、隠れ鬼の最中に庭園の木の上に登って、そこから、彼を探しに来たヒースの頭上へと、バケツの冷水をぶっ掛けやがったのである。
これには穏和なアゼリアも、悪びれずけろっとしているシュオンを叱り飛ばし、ヒースに丁寧な謝罪をくれたのだが。
……ちなみに、季節は真冬。雪は降っていないとはいえ、吐く息が凍りつく程の寒さ。
やむなく野外での冷水シャワーを楽しむ羽目になったヒースは、最悪な事態である心臓停止は免れたが、次の日―――今日から高熱にうなされ、寝込んでいるという状態だ。
いつもの軽い悪戯なら、シュオンも数時間後には笑って次の作戦を仕掛けてくるのに、ヒースが体調を崩すという、自分の計算外の事態には動揺してしまったらしい。または、シュオンは身体があまり強くないらしいので病気がちで、発熱時の苦しみを良く理解しているから、ということもあるのかもしれない。
……良く考えれば、極寒の中、冷たい水を掛けられたらそれはもう当然の成り行きとも言えるのだが、そこはまだまだ子供、ということだろうか。
「ひっ、ぅく」
朝からずっとこの調子だ。
ヒースは溢れてくる溜息を恐ろしい精神力で必死にこらえて、
「シュオン。もう良いって言ってんだろ、お前にうつったらまずいから、いいかげん部屋にもどれ」
「やだ!」
「アホか!やだじゃねー……、つっ」
病人の体で急に大声を出したヒースは、襲ってきた頭痛に顔をしかめる。
「ひ、ヒースだいじょうぶっ?」
「全くもってだいじょーぶじゃねーよ……」
また泣きそうになるシュオンに、ヒースは大人しく横になりながら恨みがましく呟く。
「ご、ごめんなさっ……」
「……チッ、だからもう良いって」
シュオンの自業自得だとはいえ、友人にぼろぼろ泣かれるのは、気分が良いものではない。
普段の冷たい、それなのに、内心構ってほしそうにヒースにちょっかいをかけてくるシュオン。
たとえ表面に出さなくても。彼の、立場から来るシュオンの不安、寂しさは誰よりも一番理解しているつもりだし、
これでも、大切な友達、だから。
「―――ぼく、ヒースのかんびょうするっ」
「…………はい?」
何か変な単語が聞こえたような、熱のせいか、とヒースが意識を飛ばしかけていたとき。シュオンがバッと立ち上がり、
「ヒースがかぜ引いちゃった、せきにん取るからっ」
「い、……いやいやけっこうですからッ」
「まっててね!」
―――な、ちょ、人の話を聞けええええええっ!
残念ながら、その声はすっかり掠れて、慌ただしくバタバタと出て行ったシュオンには届かなかった。

301月波煌夜:2012/05/14(月) 08:49:30 HOST:proxyag050.docomo.ne.jp
†祝☆300レス突破記念†

記念SS『白衣の天使②』



「ヒースーぅ!」
いつもの冷静さは何処へやら。扉をバン!と勢い良く開け放ち、シュオンが中に入って来た。
病室で騒音立てる奴があるか!と叱る気力もなく、ヒースは「んだよ……」と言うに留める。
シュオンは何故か小綺麗な白衣……いや、
「ナース服だとッ!?」
「うん。メイドたちが『かんびょうにこれは必須です!』って言って貸してくれた」
何故、只のメイドがナース服を当たり前のように所持しているのか、しかもこの時代に、などということは深くは突っ込まないでおこう。
「ね、似合う?」
「非常に残念なことにな」
誇らしげに胸を張るシュオン。心優しいヒースは、それは女物だとは言わないでおく。
「えへへ」
「なあシュオン、お前メシは?」
この時間なら、夫妻と同じテーブルで仲良く昼食を摂っている頃合いなのだが。
「後でここで食べる!」
「ええ?つーか、こうしゃくかっかは何てゆってたんだよ」
「んーと、」
シュオンは非常に可愛らしく、唇に人差し指を当てて考え込み、
「『フフフそうか、シュオンは私とはいっしょには食べたくないのか……ははっ、私のかわいいかわいい天使をたぶらかしているのはあのガキか……そうか、っフフフフフ』だって」
「おれ終わった!」
怒りにブルーの双眸をギラつかせ、金の髪をユラユラと揺らめかせる公爵の姿が目に見えるようだ。
「とにかく!ヒース、一回ベッドから降りて」
「はぁ?何でだよ」
「シーツかえるから!」
なるほど、とヒースはだるい身体を動かし、寝台の横の床に座り込んだ。
「待っててねっ」
シュオンはとてとてと歩き、廊下から、純白のシーツを持っ―――
「ちょっと待て」
「なあに?」
「な、何でそのシーツびしょびしょなんだよっ?お前それ敷く気か?正気かっ?」
そのシーツはぐっしょりと濡れていて、今にも水滴が垂れてきそうである。
シュオンは唇を尖らせ、
「だって、洗濯はちゃんとしたんだけど……時間なかったんだもん」
「時間なかったんだもん、でぬれたシーツ敷かれてたまるかッ」
「だいじょうぶ!すぐかわくから!」
「かわくわけあるかあああああ!?」
ヒース大絶叫。
「……はいできた!ほらヒース、もう寝ていいよっ」
「ぜんっぜんよくねーしおれの話聞いてたか!?良いからそれ外せ!さっきの敷けもう一回!」
「えー……」
シュオンはしょぼん、としながらシーツを元に戻した。
「うう、まだちょっとしめってるし……」
「……ごめんヒース、ぼくまた失敗した……?」
大きなサファイアの瞳から一雫の水滴がぽろり、と―――
「い、いや、おれはだいじょーぶだし気にしてねーし」
男は女の子の涙には弱いものと決まっている。
……こう見えて、シュオンは立派な男の子なのだが。
シュオンはぐし、と涙を拭い、
「……ほんと?」
「ほんとほんと」
ぱっと笑顔になって、
「じゃあ次は、ご飯、あーんってしてあげるっ」
「全力でえんりょするッ」
「え。あ、く、口うつしの方が、いい?」
「どこで覚えてきたそんな言葉ッ」
あまりの可愛らしさに、一瞬ぐらっと来た自分を殴ってやりたい。
「おれは食欲ねーから、後でいい」
「そう……」
「き、気にしてねーからな?」
「……うん!えっとね、後は子守歌っ」
「……子守歌?」
「うん。ヒースが良く眠れるように」
そしてシュオンは何処からか玩具のピアノを取り出し、
ふっと目を細めると、
小さな手に全く合わない超絶技巧で演奏を始めた。
そう、それはまるで激しい嵐のように情熱的な音色で、
―――いやがらせじゃないよなっ?いやがらせじゃないんだよなあっ?
眠れる訳がなかった。
「シュオン?シュオンさーん?」
「んー?」
中断して、こちらを向くシュオン。
「な、なぜにそのチョイスを?」
「今習ってる曲だから!」
悪気も何もない無垢な瞳。
「そーですか……」
「あれ、もしかして眠くなってきたっ?」
「そーですね……」
ヒースは天井をボケーッと見つめながら、半眼で、嬉しそうなシュオンの声を聞いたのだった。

302月波煌夜:2012/05/14(月) 09:04:58 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
†祝☆300レス突破記念†

記念SS『白衣の天使③』



「じゃあ次はっ」
「まだ何かあんのか!?」
迫り来る恐怖の予感に怯えまくるヒース。
「うん……えいっ」
「はっ?」
突然、シュオンが寝台に乗り、ヒースの毛布(ブランケット)を除けて、その中に潜り込んできた。
もそもそと動き、ヒースの隣に、向かい合うように横になって。
「……ね。最後は添い寝、だよ」
頬を染めて、恥ずかしそうに若干視線を逸らして。
「…………………」
最初こそ、こいつばかじゃん?と思っていたヒースだが。
―――……これは、いちばん効くかもな。
熱に浮かされているせいか、ぼんやりとそんなことを思う。
ヒースの胸に寄り添うような位置に、サラサラとした柔らかな金色の髪。
じんわりとあたたかい体温が、ぬくもりと何とも言えない安心感をもたらす。
心地よさに、ヒースが瞼を閉じたとき。
「んっ……」
息遣いと共に、ぷつん、ぷつんという音が聞こえた。
そう、まるで―――ボタンをひとつひとつ外しているような。
「……へっ?」
目を見開くと。
潤んだ碧の瞳、薔薇色に色付いた頬、艶やかな唇から漏れる熱い息。
そして、雪の平原に綻ぶ可憐な花のように、白くて薄い胸に二つの小さな―――
「ぎゃぁあああああああああああああ!?」
ヒースはガバッと起き上がり、
「ななななな何してやがるお前ッ!それに何でその下何も着てねえんだよっ!?」
「だ、だってメイドが、その、は、裸であたためあうと良いって、言うから……」
恥辱に女の子顔負けの愛くるしい顔を火照らせながら、シュオンは毛布の下で、ヒースの寝間着に手を伸ばし。
「は、恥ずかしいけど!ぼくがこうやってごほうしすれば、ヒースもすぐに元気になるってッ」
「まままま待ていやおれは良く分かんなえけどそれはぜったいなんか違う意味だとッいやだから下は!下はまずいってッ」
あくまで真剣なシュオンと、己のプライドを守ろうと必死なヒースの攻防戦が開始。
と、そこで。
僅かに、ほんの僅かに隙間ができた扉から、抑えられた小さな声が漏れ出てきた。
「ぼ、坊ちゃまの裸ナースハァハァ」「看病イベとかうますぎて生きるのがつらいわあああ」「鬼畜攻め×ヘタレ受けかヘタレ攻め×女王受けだと思ってたけどこれはまさかのシュオン様ツンデレ受けっ?ああ面白くなってきた、ほんと将来が楽しみだわあ」「いやむしろあたしは今の方が萌える」「ちょっと見えないわ、どきなさいよっ」「貴女こそずっと見てるじゃないっどきなさいよっ」「いいぞもっとやれ!よしヒース君、そろそろ押し倒しちゃっておk!」
……………。
…………………。
………………………………。
ヒースは。
細かいことは分からないにしろ、なんかもう、色々と、許容範囲を超えていて。
とっても、とっても優しい微笑みを浮かべ、ヒースの服を脱がそうと頑張っているシュオンに言った。
「シュオン」
「なあに?」
「お前に、ひとつだけ、たのみたいことがある。お前にしかできない、大事なことなんだ」
「ほ、ほんと?何でも言ってっ」
顔を輝かせるシュオンに、ヒースは。


「―――しばらくどっか行っててくれ……」










この後、もう二度と風邪なんか引くものか!と、誰もが驚く恐ろしい勢いでヒースが剣の稽古に励み、身体を鍛えるようになったのは、言うまでもない。

303月波煌夜:2012/05/14(月) 10:05:37 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 9』



「初めまして。今夜、貴女のような美しいレディにお会いできたことを、天に感謝しなければならないね」
気障な台詞を完全に自分のものにして、レオンが微笑む。
「い、いえそんなっ……ええと、ソフィアと申します。お目にかかれて恐悦至極です、殿下」
ソフィアが彼の正体を知らずにぽかんとしていたと云うのに、気にしないでくれた相手の寛容さに感謝しながら、ドレスの端をつまんで一礼する。
「それにしても。そうか、こんなに可愛らしいお嬢さんが居らっしゃるなら、シュオンが我が妹姫の熱烈な求婚(プロポーズ)にも全く靡(なび)かないはず……い゙っ」
急に形の良い唇の端を引きつらせたレオン。
何かと思うと、シュオンが素敵な笑顔のまま、レオンの靴をガシッと踏みつけているところだった。
マルグリット王国の第一王子レオン殿下は誰もが心奪われる爽やかな微笑みで、
「ははっ。この私の足を踏む度胸のある奴なんてお前くらいだよシュオン。……包丁で刻んで火にくべて夕食を作る時の燃料にしてやろうか?」
エインズワーズ公爵家の嫡男シュオン様は貴婦人を腰砕けにする甘い微笑みで、
「あはは。申し訳ありません、足が滑りました。……八つ裂きにして焼いてすり潰して川に流して差し上げましょうか?」
「しゅ、シュオン……?」
またの悪辣な会話に、ソフィアは伝う汗を感じながらもシュオンを見上げる。
本物の王子様相手にそんなことを言っても大丈夫なのかとか、シュオンと同レベルの陰険バトルを繰り広げられる彼は何者なのかとか、そんなことよりも気になる言葉が聞こえたような気がするのだが。
「プロポーズ、って……?」
「あー、えー、ええとー……」
シュオンは完璧な微笑を崩し、困ったように視線を彷徨(さまよ)わせて。
「何だシュオン、ソフィア嬢に言ってないのか?」
レオンがからかうように口を開く。
「私の妹たちは皆シュオンの外面(そとづら)に夢中でね。特に、私が一番美人だと思っている第三王女のルイーズは、この前もこいつにくっついてはキスを―――」
「……え」
「殿下ッ!」
ショックを受けて固まるソフィアと、珍しく恐ろしい剣幕で怒鳴るシュオン。
「おお怖。なに、キスをねだってたってだけだよ。シュオンにはサラッと流されてたけどな」
「あ、そ、そうなんですか」
ソフィアは幾分ほっとして、息を吐いた。
―――……それにしても。
またレオンと中身だけ醜い言い争いを始めているが、王女様に求婚されているというシュオンを、ソフィアはそっと盗み見る。
王女様。
ソフィアには、とても手の届かない存在だ。
もし本当に、シュオンが王女様と結婚したなら、エインズワーズ家の今後の発展は約束されたようなもの。
それが、シュオンのことを思えば、彼にとって一番しあわせなことなのかもしれない。
……いやだ。
でも、そう思ってしまう。
シュオンが他の女性と添い遂げる姿を想像しただけで、どうしようもなく、胸が痛くなる。
なんて我が儘で、なんて愚かなんだろう。
自分は、只の―――







―――ゾクリ、







皮膚が、粟立った。
―――……これは、誰かの……?、
そこまで考えて、しかし、
急速に、視界が白に染まってゆく。
『―――ソフィアっ?』
大丈夫よ。
そんな声、出さないで。
彼を安心させたくて、微笑もうとして、

―――ソフィアの意識はそこで、ふつりと途切れた。

304ピーチ:2012/05/14(月) 19:08:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おぉっ!!一気に300スレ行った!!

おめでとー(^0^)

・・・ヒースの剣術にあんな理由があったなんて・・・恐るべし!シュオン様!

305月波煌夜:2012/05/14(月) 22:08:24 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとー(^o^)

今回はシュオンに悪気がないのがポイント←
結果的に剣の腕がめきめき上がっちゃったんだから、ヒースよシュオンに感謝せよ(ぇ

あ、記念SSは本編の流れとは全くもって関係ないから、サクッと切り替えて読んでもらわないと、例えば頑張ってシュオンを美化してても、「こいつさっきまでアホ行動してたのに…」って感じになってしまうのでご注意を★

306ピーチ:2012/05/14(月) 23:01:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

・・・ヒースはどこまで哀れなキャラなんだろうと思うのはあたしだけか?

うーん・・・今回はシュオン様にも悪気があるわけじゃないから責められない・・・。

どこまでも哀れなヒースよ。←マネww諦めろ。←とは言いたくない人ww

307月波煌夜:2012/05/15(火) 09:43:27 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

月波もそう思うよ…(~_~;)
彼には後でしあわせになってもらうとしよう(^-^;

308月波煌夜:2012/05/15(火) 09:59:54 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 10』



「―――ソフィアっ?」
突然、ぐらりと傾いた華奢な躯(からだ)を自らの胸に抱き止めて。シュオンは美しい顔を青ざめさせ、らしくもなく取り乱していた。
「……シュオン、落ち着け」
「っ、落ち着いてなんて、」
「落ち着けと言っている!」
一喝。
他でもない、王太子レオンハルトの怒声に、広間の人々が一斉にこちらに注目した。
シュオンは柳眉を寄せ、険しい表情で俯く。
「こういうときに、お前がしっかりしなくてどうする」
シュオンは、気を失ってぐったりとしたソフィアの儚い体躯を抱き締める。
「……そう、ですね」
悔しいが、正論だ。
どんな事態にも、誰よりも冷静に、冷淡に判断し、行動しなければならない。
いずれは爵位を継承し、社交界を支えなければならない身として。
……たとえ、最愛の人が関わっていたとしても。
シュオンは一度、静かに絨毯の敷かれた床に跪(ひざまず)き。彼女の膝裏を掬うように片手を差し入れ、か細い肩の辺りを、もう一方の腕で支えた。
その瞬間、シュオンのしようとしていることに気付いた紳士たちのどよめき、淑女たちの悲鳴が、楽隊の調べに代わって広い部屋に響き渡る。
シュオンはソフィアを軽々と横抱きにしたまま立ち上がり。全ての人間の心をとろけさせる、華やかな至極の微笑を浮かべて言った。
「本当に申し訳ありません。僕の大切な友人が体調を崩してしまったようので、少し席を外しますね。……殿下、皆様と父上をお願いします」
「……お父上を?」
後半の小声を聞き取ったレオンが、訝しそうにシュオンの目線を辿る。
『しゅしゅしゅシュオンがっ!おひ、おひ、ひひひひひひひッ』と威厳もへったくれもなく壊れている公爵の頭をアゼリアが笑顔でひっぱたいている光景を目にして、レオンは苦笑いした。シュオンに全ての人の注意が向いている為、他の人たちには気付かれていないのが幸いである。
レオンはふぅ、と腕組みをして。
「分かった、任せろ。くれぐれも気をつけろよ」
「―――はい。有難う御座います」
……“気をつけろ”と言ったということは、この聡(さと)い男は、ソフィアが倒れた理由に、薄々感づいているのだろう。
シュオンは『分かっている』と彼に小さく頷いて見せて。
「それでは」
従僕が立っている大きな扉へと歩を進め、
最後に、少し振り返って顔だけを広間へと向け、


清冽な氷塊を想わせるアイスブルーの瞳で、ひた、と『それ』を捕らえた。


視線の交叉、刹那の空白。
その成果に、シュオンは薄く微笑み。
そして、抱きかかえたソフィアと共に、規則正しい足音を響かせながら、会場を後にした。

309月波煌夜:2012/05/16(水) 14:25:54 HOST:proxyag091.docomo.ne.jp
Ⅳ. 『恋のSpica 11』



―――カツ、カツ。
広間から一歩離れるごとに喧騒が遠ざかる。シュオンは静寂が支配する広い廊下を通り、赤い絨毯が敷かれた階段を登っていく。
ふいに、姫抱きだとかお姫様抱っこだとか、この抱き方の俗称を思い出し、
「…………………」
シュオンは僅かに照れくささが混じった苦笑を漏らしながら、ソフィアを抱え直して。一段一段、ゆっくりと階段を上がり続ける。
彼女は重量のあるドレスを着ていても、少し心配になるくらい軽かった。
……羽根のように軽くて、でも、自分にとってはこの星よりも重い存在。
シュオンは一つのドアの前まで来ると片手で鍵を開け、部屋の中へ入る。
そこは、シュオンの自室だった。
彼は絢爛豪華な家具は好まない。
その代わり、入口からは見回すことが出来ない程の広さの部屋は、ほぼ書物の類(たぐい)で埋まっている。
散らばった本を無意識のうちに避けて歩き、一番奥にある寝台へと、宝石でも扱うように細心の注意を払って、眠るソフィアを横たえた。
「……それにしても、心臓に悪い状況だなあ、これ」
寝台に余ったスペースに腰掛け、シュオンは困ったように笑う。
ソフィアの部屋の鍵は持っていないから、自分の部屋に連れて来てしまったのだが。
自分の寝台に、片想い中の女の子と二人きり。
しかも彼女は気を失っているときた。
……男としては、色々とつらいものがある。
「はー……」
シュオンは邪念を追いやる意味も兼ねて、先程の出来事を分析してみる。

―――ソフィアが倒れた原因は、慣れない舞踏会への緊張や疲労もあっただろうが……おそらく、一つの“視線”。
ある疑いを持っていて、『それ』をさり気なく、しかし注意深く観察していたシュオンは気付いたが。あれには、限りなく凝縮された、純粋な殺意にも似た憎しみが込められていた。

彼女は敵意には人一倍敏感だ。
望んでもいないのに《紫水晶》として生まれ、幼い頃から恐怖や好奇、憎悪の感情に晒されてきたソフィア。
それに耐える為に、何も感じない、人間に踊らされるだけの人形であろうと、自分を戒めていた。
その緊張の糸が解けたのは喜ばしいことだったが、さっきはすっかり油断していたのだろう。
そして、シュオンと、さらにレオンも同じ。
目立つ立場にある自分たちは、明確な敵意には慣れてしまっている。
それに気づかないふりをして、不快感をおくびにも出さずに笑顔で愛想を振り撒くこと。
シュオンやレオンには、それができる力がある。
……しかし、繊細な少女にそれを求めるのは、酷というものだろう。
「……まだまだ弱いね、僕は」
シュオンは呟く。
弱いからこそ、強くなりたいと願う。
彼女を、誰よりも近くで、守ることができるように。
「……ソフィア、」
シュオンは、少女の顔を覆うヴェールをずらして。
「君が初めて、ここに来たときのこと、覚えてる?」
静かに、眠る少女に語りかける。
「ほんとはね。すぐにでも、一秒でも早く、会いに行きたかった」
シュオンは小さく息を吐き。
「でも、できなかった。何を話したらいいのか、どんな顔をして会ったらいいのか。そんなことをずっと悶々と考えてさ。結局、実験に熱中してたふりをしたんだよね」
廊下で、あの、彼を魅入らせる宝石の双眸を再び見たとき。嬉しくて嬉しくて、シュオンは喜びに震える自身を隠したくて、とっさに初対面を装った。
「本当、馬鹿だよね」
シュオンは露わになったソフィアの片頬を包むように、優しく手のひらを当てる。
濡れた花びらに触れたときのような、しっとりとした感触に眩暈がした。

「ねえ、ソフィア。僕は、強くなりたい」

ソフィアを見つめ、小さく囁く。

「君を一生守ることができるのなら、何でもする」

たとえ地獄の業火に焼かれたって、
ソフィアの為なら、喜んでこの身を差し出すだろう。
それくらい、もうどうしようもなく、彼女のことが好きだった。

「……こういうことを、愛してるって云うのかな」

シュオンは、柔らかに微笑み、目を閉じて。
彼女に、そっと顔を近づける。

そして。


ソフィアの瞼に、淡い、淡い、口づけを落とした。


シュオンは、ゆっくりと唇を離すと。

「え、……あれ……?」

我に返り、少し呆然としたような表情で、しばし、自分がしたことを確かめるように自らの唇に指先を当て。
たっぷり一分間はそのまま固まり、

「――――――――っ!?」

しゅぼっ、と音が聞こえそうな勢いで赤面し、
冷静さの欠片もなく、書類や本を蹴飛ばしながら、部屋を飛び出した。



―――瞼へのキスは、“憧れ”の証。

310ピーチ:2012/05/18(金) 20:24:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わぁぁぁぁ!!シュオン様こーゆーときだけかっこいいっ!←「だけ」は余計だ。だけは。

うーん・・・やっぱりソフィア様は侮れない!←何がだww

311Mako♪:2012/05/18(金) 20:57:10 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
なんだろう。久々にキュンとしたかも。
I LOVE^.^シュオン様〜♪

312彗斗:2012/05/19(土) 12:20:07 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
おぉ……何故かちょっと物悲しい…でもやっぱりシュオン様はカッコイイ…もうシュオン様では無くシュオン様様ですなぁ……

313月波煌夜:2012/05/19(土) 16:50:33 HOST:proxyag100.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「だけ」でも全然いいよー(^o^)
シュオンは月波が力入れてるわりにはただの性格破綻者になりかけてるしね←


>>Mako♪さん

少しでもキュンとしていただけましたか!
嬉しいですー(≧∀≦)
ありがとうございます!是非、シュオンと仲良くしてやってくださいね(ぇ


>>彗斗さん

シュオンをカッコイイと思っていただけるとは、本当嬉しいです(*^_^*)
そういえばなんか、いつの間にかシュオンは様付けで統一されちゃってますね(笑)
うん、何とでも呼んでやってください(`・ω・´)





今更ながらちょっと追加。
月波は完全に付け焼刃状態で書いていますので、爵位などの制度とかは全く理解しておりません(^^;)
「いやこれはおかしいだろう」と云うことがあっても、マルグリット王国ではこれで良いんだ!と何でもありの不思議ワールドのつもりで読んでいただければと。

314月波煌夜:2012/05/19(土) 17:48:17 HOST:proxyag099.docomo.ne.jp

Ⅳ. 『恋のSpica 12』



「―――それでは、ミスター・ヒース=ユーゼルは、まだ婚約などはなさる気は御座いませんの?もう十九になられるのでしょう?」
「ええ。まだ当分は」
「あら、そうですの。それは残念ですわ」
ヒースは密かに、社交的な笑みを崩さないように努力する。
「妹は貴方に随分と御執心みたいだし、貴方が妹と上手くやってくれれば、わたくしも安心なのだけど」
「……とんでもない。レディ・アンはとても魅力的なお方です。私などには勿体無い。いくらでもお相手はいらっしゃることでしょう」
ユーゼルと同等の名門子爵家の令嬢アンとは先程一曲踊ったが、確かに妙に視線が熱かったような気もする。
しかしヒースにはその気は全くないので、非常に申し訳ないけれどやんわりとお断りさせていただくしかない。
相手を不愉快にさせないようにしつつ、持ちかけられる縁談を上手くやり過ごす。
家の教育係から嫌と言う程叩き込まれた『正しい紳士としての』社交術の応用だ。
「そうだといいのだけど……あら!ミスター・シュオンがお戻りになられたみたいね」
扉の方を見やって、話し好きの婦人が声を上げた。
「それにしてもあのご令嬢はどちらの方だったのかしら?もしかしてミスター・シュオンの恋び―――」「それでは、彼に少々用がありますので失礼」とヒースはこれ幸いと、清涼感溢れる爽やかな笑顔でさっさと話を切り上げ、扉へと爪先を向けた。
……逃げたとも言う。

……さて。わざわざ探す必要はない。彼の親友はやたらと目立つから。
御伽噺の王子様そのものの輝かしい金髪碧眼に、麗しく整った顔立ち。
煌びやかに着飾った人々の中でも、ずば抜けて燦然としたオーラを放つシュオンは、やはりすぐに見つかった。
ヒースは彼に声を掛けようと口を開きかけたが、
―――ん?
微かな違和感に、片眉を上げた。
―――あれ……なんっかあいつ、ボーっとしてないか?
シュオンの透明感のある青空の瞳は焦点が合っておらず、ふらふらと彷徨っているように見える。心なしか、少々顔も赤いような。
おかしい。
奴なら、会場に入った途端ににこやかな仮面を被り、愛想を振り撒くはずだ。
―――な、何があったんだ……?

と、そこで。
「きゃっ……」
一人の少女の肩が、シュオンの腕の辺りにぶつかった。
その軽い衝撃で、シュオンはやっと立ち直ったようだ。
素早くサッと跪くと、すかさず少女の手を取って彼女を見上げ、
「失礼。お怪我はありませんでしたか、レディ」
「は、……はい、大丈夫です」
少女は彼に手を取られたまま、見惚れたように頬を染める。
「それは良かった。貴女のように可愛らしい花を少しでも傷つけてしまったのなら、僕は生きていられないと心配しましたよ」
「え、」
「貴女のお名前を当てさせて下さい……そう、レディ・アーシュラ。確か、二年前程の夜会で御一緒しましたね」
「お、覚えて下さったのですか」
「勿論。貴女の小鳥のような可愛らしいお姿と声は僕の魂に刻み込まれた刻印です。忘れたくても忘れられない」
内気そうな少女アーシュラは、シュオンの必殺技、流れるような口説き文句と対御婦人用の完璧な微笑みに、すっかり虜になってしまった様子である。
シュオンが彼女と別れたのを見計らって、ヒースはやっと彼に話しかけた。
「シュオン!御嬢様は?無事だよなっ?」
「……うん。心配ないよ、今は僕の部屋で寝かせてる。シェーラを呼んでおいたし」
良かった、とヒースは内心胸を撫で下ろす。
「ところでさ。シュオンお前、さっきからなんかおかしくないか?ボーっとしてるっつうか」
ヒースの指摘に、シュオンは微笑んだまま。
「気のせいだよ」
「……いや絶対なんかあんだろ……じゃあー……そうだなぁ。はは、寝てる御嬢様に手ェ出した、とか?」
―――『例えば、キスとか』
冗談のつもりで言ったヒースだったが、

「……………………………………」

「………………………」
「……へ?」
予想に反し、シュオンはぎぎぎ、とぎこちなく首を明後日の方に向けた。
耳が赤い。
……不自然な静寂が、シュオンとヒースの間に漂う。
二人はそのまま、数秒間硬直し、
「…………え!?は、ま、まさかマジでっ?」
ヒースは驚愕してガシッとシュオンの肩を掴んだ。
シュオンは頑なに顔を逸らし続けながら、
「…………………ち、違うっ」
「いやいやいやいや、違くねえだろその反応は!ちょっと待て詳しく教えろ、な、なあマジで!?マジでやったのかっ?」
「ううううるさいっ!僕はレオン殿下と話があるからっ」
「ちょ、シュオンっ?」
シュオンは真っ赤な顔でヒースの手を振り払い、踵を返し、早足で歩き去った。

315月波煌夜:2012/05/19(土) 18:04:50 HOST:proxyag099.docomo.ne.jp
ここまで読んで下さった皆様、本当に有難う御座います。

微妙に不完全燃焼な感じが否めませんが、次からは終章『祈り(仮)』に入りたいと思います。多分長くなります。
あとはエピローグのようなものをつけて、完結でしょうか。
ノリの軽いアホ話しか書けない月波に、ちゃんとしたバトルシーンやらシリアスやらを表現できるものか心配ですが……
精一杯、近いものができるよう、頑張ります。

あと、番外編としましては、シェーラとヒースの話、さらに、レオンの話に出て来たシュオンに求婚してるお姫様の話などを書きたいなと思っております。

あともうしばらく、お付き合い下さいませ。

316ピーチ:2012/05/19(土) 19:51:14 HOST:125.204.92.164
つっきー>>

おわぉ!!早いっ!早すぎる!!

祈りかー・・・何か面白そーww

楽しみにしてるねーww

317彗斗:2012/05/19(土) 20:10:19 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
おぉ…もう終章ですか…凄く早い様な遅い様な……

318Mako♪:2012/05/20(日) 01:07:13 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
さみしいけど…頑張ってね!
楽しみ!

319月波煌夜:2012/05/20(日) 18:13:42 HOST:proxyag119.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 1』




―――夢を見た。ような、気がした。

甘くてやわらかくて、でも何か力強いものに守られているみたいな感覚。
ふわふわと揺り籠で微睡んでいるような心地良さが訪れると、不思議なことに、辛さや痛みがすうっと引いていって、安らかな気持ちになって。


―――“……愛してるって、こういうことを云うのかな”


頭の中に朧気に響く、胸の奥をくすぐるように、優しい声。
……そして、閉じた瞼に、何か柔らかいものが押し付けられ―――



「――――――――――っ?」



ソフィアは覚醒すると同時に、ガバッと跳ね起きた。
「…………な、……っ」
ソフィアは額に手を当て、ばくばくと鳴る心臓を必死に宥める。
「い、今の……ゆ、夢……よね」
―――わ、私ったらなんて夢を……!
シュオンに“愛してる”と言われ、あまつさえ―――、
「う、うううー……」
なんかもう、恥ずかしすぎる。
ソフィアは耐えきれなくなって、顔を毛布にうずめた。
……しかし。
ガチャリ、と、扉が開く音がして。ソフィアは弾かれたようにそちらを見る。
「……え?あ、そ、……ソフィア様あ―――!」
入ってきた小鹿色の髪の少女―――シェーラが目を覚ましたソフィアを視認して、うるうると瞳を潤ませたかと思うと、勢い良く飛びついてきた。
そのまま、ぎゅうっときつく抱き締められる。
「ちょ、シェーラ……苦しい……」
「うわあああんソフィア様あー!し、し、っ心配したんですよおおおおお」
「え、ご、ごめんなさい……」
号泣する彼女を何とか落ち着かせながら、ソフィアは改めて状況を確認した。
此処は間違いなく、ソフィアに与えられた、品の良い部屋の中。
舞踏会の身支度(トワレット)で、結い上げていた銀髪はきちんと解かれ、ソフィアの背中を覆っている。
淡い紫のドレスではなく、今は寝間着代わりのネグリジェ姿だ。
―――私は確か、レオン殿下にお会いして……、
そこまでは覚えているのだが、そこからの記憶が曖昧で。
「……ねえシェーラ、私、なんで此処で寝ていたのかしら?」
「えっ?覚えていらっしゃらないんですか?」
シェーラはきょとんとして。
「ソフィア様、舞踏会の途中で倒れられたみたいなんですよ!お酒とか飲んだりしたんじゃないですか?」
「そうなの?……ええと、お酒はないと思うけど……」
給仕(ウエイター)にシャンパンを勧められたが断ったことを思い出す。
「ええっ?あたしてっきり、お酒飲んで潰れちゃったのかと……じゃあなんででしょうね?」
「さあ……疲れてたのかしら」
急に貧血を起こしてそのまま意識を失ってしまったのかもしれない。
ソフィアは納得して小さく頷く。
「そうなんでしょうか……ええとそれで、シュオン様が御自分の部屋までソフィア様を運んで下さったんですよ、それからあたしが」
「ちょ、ちょっと待って」
「はい?」
此処は重要だ。かなり重要だ。
ソフィアは真剣な顔で。
「わ、私を運んだですって?シュオンが?」
「はい」
「シュオンの部屋に?」
「そうです」
「…………………………」
まさか。
―――……ま、まさかっ、現実ってことは絶対ない!夢にちょっとだけ影響が出ただけよ多分!
ソフィアは火照る頬を手のひらで冷やしながら、半ば無理矢理結論付ける。
「……まあそれで、あたしがソフィア様を勝手に着替えさせちゃいました、すみません」
「いえ、助かったわ。大変だったでしょう」
「そんなことないですよー」
にこにこと笑う彼女。
と、そこでソフィアは、大切なことを思い出した。
「シェーラ、あのネックレスはっ?」
「大丈夫です、ちゃんとありますよー」
鏡台の、薔薇の紋様が描かれた引き出しを開けて、シェーラがそれを取り出して見せる。
すっごく大事なものですもんねー、というからかいを含んだ声に、ソフィアが何か言い返そうと口を開きかけたとき。
―――扉をも突き抜け、ピアノの重苦しい低音の連打が、微かに響いた。ソフィアはビクリと身を竦ませる。
「わ、シュオン様ですね!……そっか、今日はあの方がいらっしゃるって聞いてますし……見に行ってみます?」
「……いいの?」
「勿論ですよー。あたしは用があって……新しく入ったメイドに色々教えなくちゃならなくて、お供はできないんですけど。代わりにヒースでも連れて行ってください」
「分かった」
ソフィアは慌てて寝台を降り、階下へ行く準備を始めた。

320月波煌夜:2012/05/20(日) 18:22:57 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp

皆さん、有難う御座います!
月波はなんか、早かったような遅かったような、微妙な感じです。
多分更新的には早めだけど、レスが多いので遅く感じるのかなと。
レスが多いのは、ひとえに皆さんの温かいコメたちのお陰です……!

中途半端なところなのですが、リアルな話をしますと月波は今週試験を控えておりまして(´・ω・`)
多分少しの間、お休みさせていただくと思われます。
でもでも、お休み中もコメはお待ちしております(・∀・)

321ピーチ:2012/05/20(日) 23:31:10 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

忙しいねー・・・でもなぁ、「紫の乙女と幸福の歌」終わらないでほしい・・・。←ちょー勝手だけどww

それにしても、ソフィア様は夢と現実とをはっきりさせなさーい!←アホ。

うん!いろいろ頑張って!(・M・)

322月波煌夜:2012/05/30(水) 09:09:32 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 2』




弾けて飛び散る旋律の火花。
鋭い音が跳ね回り、肌を食い破って血管へと沁み込んでいく。
「……すごい……」
扉を開けるやいなや、溢れ出る音色の嵐に襲われて。
ソフィアは、ほうっと溜息をついた。
―――魂を、奪われる。
繊細にして大胆。
危険にして甘美。
降り注ぐ熱い雪みたいに、紡がれる流麗な音のひとつひとつが溶け合って、混ざり合って、至極の旋律を紡ぎ出す。
「……はは。懐かしいな」
隣を見れば、従僕(フットマン)のヒースが腕組みをして、
「この曲……あの風邪引いたときの……」
ぼそぼそと呟きながら、切れ長の漆黒の瞳にやたらと哀愁を漂わせていた。
「……風邪?」
「い、いえ何でもないです、御嬢様はお気になさらず」
ピアノの音を消さないよう、小声でのやり取りだ。
「そう言われると余計気になるのだけど。……ねえヒース、下に行ってもいい?」
「あー……分かりました、でも俺は『あの方』はちょっと苦手なんで……そうですね、申し訳ないのですが、階段の辺りにいますので」
「『あの方』?」
人の良い彼でも敬遠する対象といえば、公爵かアゼリアくらいしか思いつかない。
「……そう。分かった。じゃあ、行ってくるわね」
「はい。ごゆっくり」
ソフィアはヒースに背を向けて、淡い桃色のドレスの裾と、長い銀髪を翻した。


.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+


大広間へと繋がる扉をそろりと開け、ソフィアは中を盗み見た。
翼を広げた白いピアノの前に座り、振り上げた両手を鍵盤へと力の限り叩き付ける演奏者。
金の髪が窓から差し込む光を弾き、粒子を纏って揺れる。
その横顔は天使の清らかさ、天上の調べは嵐の激しさ。
暴力的なまでに美しい連打―――熱情の欠片が連なり、

―――世界を断ち割る激烈な和音が、意識の奥底にまで、響いた。

時が止まったような、感覚。
ソフィアは瞬(まばた)きさえも忘れ、ぼうっ、と頭の片隅に残る痺れを確かめていた。

静寂に満たされた空間に、一人分の喝采が木霊する。
「さすがだなシュオン……!素晴らしかった。これまで数多くの音楽家の演奏を聴いてきたが……やはりお前は私の知る最高のピアニストだよ」
「お誉めに預かり光栄です」
先程までの情熱的な奏楽とは似ても似つかぬ、冷めきった表情で椅子を引き、立ち上がるシュオン。
彼を賞賛する、公爵とはまた違う男の声に聞き覚えがある気がして。ソフィアは扉から少しだけ身を乗り出し、
「っ!」
思いのほか。開かれた扉がギイイ……!と大きな音を立てた。ソフィアは身を竦ませる。
シュオンが驚いたようにぱっとこちらを見やる。
「ソフィア!」
たちまち眩しい笑顔になり、ソフィアへと駆け寄ってきた。
「目が覚めたんだね……!大丈夫?具合は悪くない?」
「ええ。迷惑をかけたみたいで……ごめんなさい」
ソフィアは夢のことを極力思い出さないように努めながら、長い睫を伏せる。
「そんなっ、僕の方が謝らなくちゃならないくらいだしっ」
―――……謝る?
何を。
「あ、……わ、忘れてっ」
シュオンは慌てたように手のひらを左右に振る。
その耳が赤い。
「そ、それよりソフィア、今日はその、」
「―――……まさか。ソフィア嬢、か?」
シュオンの声を遮る、存在感のある美声。
ソフィアは弾かれたように『彼』に視線を向け、
「……お、王太子殿下……!」
動揺に揺れるソフィアの紫の瞳が、レオンハルトの姿を映し出した。

323月波煌夜:2012/05/30(水) 09:15:44 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとうー……!
でも完結しても、ソフィアたちのその後、みたいな短編書きたいなーとか思ってます←
まだ時間かかりそうだから、気長に待っててくれたら嬉しいな( ´艸`)


なにげに、レオン殿下は結構お気に入りだったりする。
あ、最後でソフィアが動揺しちゃってるのは、《紫水晶》ってばれちゃうじゃんどうしよう!っていう意味ですヽ(´ー`)ノ

324Mako♪:2012/05/30(水) 18:40:15 HOST:119.148.244.122
あ!更新されてる!って思って来たら、
キャーー!ソフィア、紫水晶ってばれそうじゃないか!
ソフィアじゃない私が、オロオロ。
どうなっちゃうのかな?ドキドキ。
楽しみにしてるね!

325月波煌夜:2012/05/30(水) 20:55:19 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>Mako♪さん

お待たせしましたっ(^^;;

ありがとーう!
早く更新できるように頑張るね!

326ピーチ:2012/05/30(水) 23:04:02 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あはは〜♪うん!きながーに待ってるねーww

うーん・・・ソフィア様の正体は何としてでも隠し通して欲しい!どんな手段使ってでもっ!←大あほ。

にしても・・・久々に読むととんでもなく文才ある人だなーっと改めて思いましたww

その才能、少し分けてくれっ!←バカww

327月波煌夜:2012/05/31(木) 09:04:02 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 3』




―――どうしようっ……?
ソフィアはサッと青ざめて、とっさにシュオンの背後に隠れる。
帽子もヴェールもない今、うかつにレオンに近づけば、一瞬で正体を見破られてしまう。
「……あ、あの、」
「―――心配ないよソフィア。レオン殿下は君のことを知ってる」
「え?」
ふわりと優しく微笑みながら、シュオン。……ちなみに彼が微妙に嬉しそうなのは、ソフィアが土壇場で自分を頼ってくれたから、という理由なのだが、シュオンの僅かな表情の変化などという些細なことには、混乱中の彼女は綺麗さっぱり気づいていない。
「僕が話したんだ。どうせいずれ話すことだし。殿下は頭のネジは緩いけど口は堅いから、信用して大丈夫」
―――……いずれ、話す?
その言葉と、彼女だけに向けられた照れたような微笑みに妙に引っかかりを覚えたソフィアだが、それでも素直にシュオンの説明を呑み込んだ。
「……なら、殿下は私があの、《紫水晶(アメシスト)》だって……」
「ああ。昨日ぶりだな、ソフィア嬢。貴女の可愛らしさを隠す無粋なものがない今、貴女の美しい瞳を見ることができて嬉しいよ」
灼熱の大地に吹く一迅の風の如く、清涼感溢れる微笑。
赤味を帯びた、癖のある豊かな金髪は、まるで太陽神が光臨したかのような輝かしさだ。
レオンはいつの間にやらソフィアに接近。慣れた手付きで、背中に流したままの髪を一房手に取り、
「今日は髪を下ろしているんだね。そう、まるで月影のように神秘的な銀色だ。紫とのコントラストが美し……ぅぐっ?」
「汚い手でソフィアに触らないで戴けますか?」
にっこり。
『それは僕の台詞です』と、隙一つない鉄壁の笑顔で、シュオンはレオンの足をグリグリとえげつなく踏みつけていた。
何処かで見たような光景である。
「……ははっ。冗談。誰の手が汚いって?お前の方がよっぽど汚れているだろうに」
足の痛みに脂汗を流しながらも、恐るべき精神力で爽やかな笑顔を保ち続けるレオン。
「嫌ですねえ、僕は自分の手は汚さないことにしていますから、綺麗ですよ?」
「根性真っ黒ね……」
「うん。有難う」
「褒めてないけど」
―――……って、違うっ!
ソフィアは我に返り、恐る恐る、『ふうん……なるほど』と何やら納得して頷いているレオンを見上げた。
―――私が《紫水晶》だって、殿下は知っているのよね……?
なのに。
レオンはソフィアとシュオンを見比べては楽しそうに、にやにやと笑っているだけだ。
―――……殿下も、このお屋敷の人たちと、同じなの?
ソフィアの紫の瞳を、美しいと言ってくれた。
懼(おそ)れることもなく、珍しがることもなく。
ただ、美しい、と。
「―――ソフィア嬢」
「は、はいっ?」
当人に話し掛けられ、ソフィアはびくっと身体を竦ませた。
「ソフィア嬢からも言ってやってくれないか。今夜のうちの晩餐会の招待状を、こいつは無視しやがってな。無理矢理にでも連れて行かないと、私が妹に怒られてしまう」
「殿下っ?ピアノを一曲聴かせてくれればこの話はなかったことにすると仰ったではないですか!」
「……晩餐会?」
レオンからの招待と云うことは、王宮で開かれる盛大なものだろう。
「私は良く分からないけど。……行ってきたら?シュオン」
「ソフィアー……」
妙に情けない顔で、しょぼんとするシュオン。
行きたくなかった、と云うよりソフィアと離れたくなかったらしい。
ソフィアも少し良心が痛んだが、
―――もし、私の体調を気にして断ってるのなら申し訳ないしね。
……激しく勘違いしていた。
「よし!そういう訳で。ソフィア嬢、寂しくなってしまうかもしれんが、今夜はシュオンを借りるぞ」
レオンが悪戯っぽく片目を瞑って見せる。
「な……っ!寂しくなんてなりませんっ!」
一瞬、そっか、と思ってしまったのを誤魔化すように、ソフィアは食い付いた。
「そこでムキになること自体が、証明になっているような気もするが?」
「うっ」
ぐうの音も出ない。
シュオンは二人の話を理解できなかったらしく、きょとん、と首を傾げていた。

328月波煌夜:2012/05/31(木) 09:10:00 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

月波にはあげられるほどの文才ないんだよごめんね……(´・ω・`)

大丈夫、もし何かあってもシュオンが口八丁で丸め込むから!



ちなみに前回、シュオンが言いかけたのは「今日は髪下ろしてるんだ、可愛いね」でした。
何故かここでネタバレしてみる。

329ピーチ:2012/05/31(木) 21:13:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー・・・良かったー!!

ソフィア様はやっぱり、隠し通してこそのソフィア様だもんね!←どーゆー意味だww

・・・つっきーは文才ありすぎなの。半分くらいあたしにくれても何の問題もなしっ!

330月波煌夜:2012/06/01(金) 13:28:35 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 4』




「ユーリエさーん?あ、良かった、いた!」
「シェーラちゃん」
厨房の奥。鮮やかな赤い髪の女性が振り返り、穏やかに微笑んだ。
悪戯っぽく輝く、アーモンド型の琥珀の瞳に、大人の色気を醸し出す泣きぼくろ。
スレンダーな体型も相俟って、しなやかな猫を彷彿とさせるようなとびきりの美人だった。
彼女は新入りのメイド、ユーリエ。
二十になったばかりという年齢にしてはとても落ち着いていて、仕事を教える立場であるはずのシェーラの方が、色々教えてもらったりしているのだが。
「聞いてくださいよユーリエさーん、今夜シュオン様がお出掛けになるんですって」
「……ふうん。シュオン様が?」
ユーリエは金の瞳を妖しげに細め、細い指を頬に当てて少し考えるような間を取り。
「……それは残念。見たかったのに、“王子様”」
「でも、また明日から会えますってー。紹介しますよ!……それでそれで、ソフィア様が、あーちょっと分かりにくいんですけど、でもやっぱり微妙に寂しそうでー。『ば、ばかなことを言わないで!絶対に、そんなことないっ!』て強がってましたけど、……うううシュオン様酷いです、ソフィア様が可哀想!」
拳を握り締めぷるぷると震えるシェーラを見て、ユーリエが苦笑する。
「シェーラちゃんは、そのお嬢様のことが、本当に大好きなのねえ」
「はい!」
シェーラは相好を崩し、力一杯頷いた。
「ソフィア様は、あたしの自慢のお嬢様なんです!」
「ふふ、そう。私も会ってみたいなあ……わ、随分量が多いけど、これって皆のぶんなの?」
ユーリエは大きな鍋の中のスープを覗き込み、目を丸くする。
「そうなんです、このお屋敷の方も勤めてる人も、みんな同じですよ」
「へえ……」
猫の瞳が、キラキラッ、と不思議な光を宿して一際輝いた。
ユーリエは赤の髪を揺らしながらシェーラに向き直り、
「ねえ、シェーラちゃん。私、この辺りに詳しくないから……もし良かったら、これから案内してくれない?街に行ってみたいの」
「わあ、良いですねー!」
「今からだとー……そうね、丁度夜ご飯の時間ね」
「あ、あたし良いお店知ってますよ!すっごく美味しいんです、おばさんと顔見知りだから、もしかしたら安くしてくれるかもっ」
弾むように言うシェーラに、ユーリエは可憐な笑顔で。
「やった、じゃあお願いしてもいい?」
「はい!あたし、メイド長に、夕飯いらないって連絡して、ついでに外出許可貰って来ます!」
「有難う!宜しくね」
―――えへへ、ソフィア様にはちょっと申し訳ないけど……でも楽しみだなあ!
ソフィアにお土産を買って来ようと思いついたシェーラは、ますます気分が高揚するのを感じながら、足取り軽く走り出した。

331月波煌夜:2012/06/01(金) 13:34:17 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp
>>ピーチ


文才とかないし。本当ないし。
半分も取ったらミジンコレベルのさらに半分になっちゃうじゃないか!





すみませんミスりました!
↑のシェーラとユーリエは、エインズワーズ邸のバカ広い厨房(キッチン)にいる、ということで。
ごめんなさい、描写が抜けた……(x_x;)

332ピーチ:2012/06/01(金) 19:04:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あのさー・・・つっきーがミジンコの半分だったら、あたしの中に『文才』の二文字が存在しなくなっちゃうよー!!

・・・わーん・・・かなしーよー・・・

333月波煌夜:2012/06/01(金) 20:04:47 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……いやいやいや、文才の塊が何をおっしゃる(^^;;

むしろ月波に分けろーo(^o^)o

334ピーチ:2012/06/01(金) 20:36:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うーん・・・あー・・・こんなゴミ虫以下の才能でよければどうぞーww

じゃあさー、半分こする?←あほ。

335Mako♪:2012/06/01(金) 21:29:20 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
ちょ、ちょっと待って!
久しぶりに来てみれば……
二人共文才に溢れてるよっ!
もう、二人の文才がそんなだったら、ウチはどーなんねん?
ゾウリムシ、ミカヅキモ以下やないか!
月波さんもピーチも、ファンタジー得意で、面白くて、はまって、「読むの辞めろ」なんて、銃をつきつけられても、「はい」とは言えませんよ!
頑張って下さい!

336ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/01(金) 22:06:36 HOST:w0109-49-135-28-249.uqwimax.jp

しばらく読めてなくて、読み直しも含め今日一気読みしたのですが話に吸い込まれていってすごくおもしろかったです!
個人的にヒースくんがかっこよくて好きです←
最初の頃からヒースくん好きだったんですけどここまで読んで更に好きになりました(*〃ω〃*)

つづき楽しみにしています、がんばってください!

337月波煌夜:2012/06/01(金) 22:51:03 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

よし半分こにしよう←なんか乗ってみる


>>Mako♪さん

銃突きつけられたら「はい」って言ってーっ!(゚Д゚)
でも、こんな稚拙な文章にそこまで入れ込んでくれて有難う……!
うう、涙出てきましたよ°・(ノД`)・°・


>>ねここさん

わわ、お久しぶりです!
読んで下さったんですか……!有難う御座いますっ(*´д`*)
ひ、ヒースがかっこいい、ですと……ヽ(゜ロ゜;)ノ
あのヘタレバカを気に入って戴けたなんて、この身に余る光栄です←
ヒースを格好良く書けるよう……努力は、します。頑張ります!






さてさて、やたら胡散臭い新キャラ、ユーリエ(赤の髪+金の瞳は銀髪+紫の瞳と並ぶ月波のお気に入り)も登場しまして、次の次あたりから、月波の限界に挑戦・シリアス回に入ります(/_・、)
ソフィアがどうなってしまうのか、ヒースの人間としての地位は守られるのか、月波はどこまで真面目な文を書けるのか。
ごゆるりと見守って戴けたら幸いです。

338ピーチ:2012/06/02(土) 06:41:53 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーぃわーぃ♪半分こーww

よしっ!文才ある人のその才能をすべて貰おう!←半分ww

あははー♪あたしもまこにさんせーいww

銃突きつけられても「いや」だったら言うかもww

あたしも個人的にソフィア様とかシュオン様とかシェーラちゃんとかヒースとか好きだよーww←なぜヒースだけ呼び捨てww

339月波煌夜:2012/06/02(土) 12:23:56 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp
>>ピーチ

残念ながら月波にはないんだけどね、文才←


自分の命は大事にしてー!
その気持ちだけでもう十分すぎるほど幸せだからっ(つд`)


……メインキャラ四人全員じゃないかw
ありがとー!
読者様に気に入ってもらえる時点で、もう幸せ者じゃないかソフィアさん。

340ピーチ:2012/06/02(土) 12:37:11 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーぃわーぃ♪←何がしたいww

うん。じゃあ大切にするけど「イエス」は言わないww

危ないと思ったら蹴り飛ばすか殴り飛ばすww←もしくは返り討ち?ww

341月波煌夜:2012/06/02(土) 16:33:03 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp
>>ピーチ

誰か知らないけど犯人逃げろー!
ピーチに返り討ちにされるぞー!

342ピーチ:2012/06/02(土) 17:25:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えー!!まさかの犯人の味方!?

酷くないですかっ!?

343月波煌夜:2012/06/02(土) 17:29:00 HOST:proxy10011.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 5』




「―――じゃあ、最初の質問ね。ヒースは、シェーラの何処が好きなの?」

「ちょっ……!?」
ぶふっ、と激しく吹き出したヒースを、自室のテーブルに頬杖を付き、妙に冷めた顔で軽く睨んでくる少女。
そんな表情でも、首に下がっているアメシストと同色の美しい瞳は輝きを失うことはなく。
「で。どうなの?」
「は、な、何で今更そんなことッ」
「……別に、シェーラにからかわれた腹いせに今度は貴方で遊んでやろうとか、そんなことを考えてる訳ではないのよ」
「今、完っ全に本音出ましたよねえ!?」
「気のせいよ」
つーん、とそっぽを向くソフィア。
明らかに、ご機嫌斜めだった。
―――あンの馬鹿息子……っ!
ヒースは内心、今頃は渋々……いや、外面は完璧に取り繕うだろうが、王城の晩餐会に向かっているだろう親友に毒を吐いた。
今日の流れは大体、目の前のソフィアから聞いた。正確には聞かされた。
気が進まないなら、断ってしまえば良かったのに。
ソフィアには全面的に弱い何処かの阿呆息子は、彼女の言葉に促されて、出席を承諾してしまったらしい。
可愛い妹の為に、シュオンの唯一と言っても良い弱点を短時間のうちに見つけ出してみせた、抜け目のないレオンも勿論気に入らないがしかし、
―――元はシュオンの野郎が悪ィんだよ、お前がしっかり断ってりゃあ俺がこんな生き地獄を体験する必要もなかったんだよくそが……!
「ただの八つ当たりよそれ」
「人の心勝手に読まないで下さいますかねえ!?」
素知らぬ顔で紅茶のカップに口を付ける、美しい女主人。
「で?」
「だ、か、ら!何で今更ンなこと話さなくちゃならないんですか!意味が分からないんですけどっ!」
「良いじゃない。こういう話題を、ガールズトークと言うのでしょう?一度やってみたかったのよね」
「俺、何処からどう見ても男ですからね!?」
酷すぎる扱いの末、ついには性別までも認識されなくなったらしい。
「そんな些細なことは気にしない。……仕方ないわね……なら、質問を変えるわ」
「切実にお願いします」
「そうねえ。……じゃあ、貴方とシェーラは何処で出逢ったの?」
「あー、それなら。昔、俺が公爵閣下にとある任務を出されて。あいつはその時に泊まった村の旅籠(はたご)の娘だったんです。それで、旅籠の裏で、あいつが……ってちょ、何喋らせてるんですか御嬢様ッ!?」
そこまで話して、やっと余計なことまで教えてしまったことに気づいたヒースはテーブルをバン!と叩く。
ソフィアは冷静にカップを避難させながら、
「……ち。あともうちょっとだったのに」
「御嬢様ぁ―――!?」
「でも正直。ちょっと心配になるわ、貴方の見事なまでの単純さは。どうにかした方が良いわよ?」
「え、何でここまでボロクソに言われてるんだろう俺」
「……ごめんなさい、嘘がつけない性分なの」
「謝るポイント間違ってますからね?」
それはもう非常に申し訳なさそうに柳眉を下げるソフィアに、ヒースは逆に笑顔で応じた。
「まあ、シェーラとのことはまたゆっくりみっちりねっとり聞くとして」
「助かったはずなのに素直に喜べないのは何故でしょうね」
「さあ。何故かしらね」
ソフィアは紅茶を一口啜(すす)り。
それから、
「―――じゃあ、二つ目の質問、なのだけど……」
そこで。言葉に迷っているように、整った容貌を曇らせ、不自然に間を置いた。
「…………やっぱりいいわ」
ふいに、ソフィアはカタンッ、と音を立てて椅子から立ち上がり、寝台の方へ歩いて行って。
明らかに様子がおかしい。ヒースは思わず眉を寄せた。
「……御嬢様?」
「ごめんなさい、何でもないの。引き止めて悪かったわね」
「……いえ、」
力無く笑うソフィア。……もしシュオンなら、上手いこと誘導して話を聞いてあげられるのかもしれないな、とヒースは思うが、不器用な自分には至難の業だ。とてもできそうにない。
ヒースは困って頬を掻き。
「あー……失礼します」
生真面目に散々悩んだ挙げ句。ヒースは礼をして、退室していった。
シン、と静まった部屋。後には、寝台に膝を抱えて座ったソフィアが残される。
ソフィアは胸元のアメシストを手に取り。紫の瞳を霞ませ、怖くて言葉にできなかったその一言を、呟いた。



“私は、しあわせになっても、良いと思う?”

344月波煌夜:2012/06/02(土) 17:32:29 HOST:proxy10011.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいや、月波はいつでもピーチの味方だよ?
でもそんな残念なことで返り討ちにされる犯人も哀れだと。

345ピーチ:2012/06/02(土) 17:41:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

よ、良かった・・・!

うーん・・・PC上で友達けなされたら返り討ちにしてやるぞぃ♪

いやいやいやいや!!ソフィア様はいつからそこまで腹黒くなった!?

完っ全にヒースのこと玩具にしてるでしょ!?

いや、あの、ソフィア様がいたら登場して頂きたいんですが・・・。

シェーラ!ヒースをソフィア様の拷問から救ってあげて!!←人任せww

346月波煌夜:2012/06/02(土) 18:42:04 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ソフィアの腹黒化はピーチのリクエストじゃないかー(´_ゝ`)

忠実にやっただけだもん。調子に乗ってやり過ぎたりなんかしてないもん。

…いやあ、ソフィアがふざけられる最後の機会だったものでついw

347ピーチ:2012/06/02(土) 20:43:18 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あ・・・そーでした・・・

あー、そっか!ソフィア様もそろそろ終わっちゃうもんね・・・。

できれば番外編なんかで続けてくれー!!←わがままゆーな!

348月波煌夜:2012/06/03(日) 09:36:23 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 6』




鮮血が、飛んだ。
大柄な男の身体が前のめりに倒れ、砂埃が舞う。
絶命し、倒れた男たちから溢れ出る血潮が、乾いた大地に急速に染み込んでいく。
「……ハァ。これで終わり?んだよ、『あの』エインズワーズの門番だって云うから期待してたのに。呆気なさすぎじゃん」
夜風に乗せられた声が、無人となった空間に、虚しく響く。
「ハハッ!ま、このジル様が相手だったのがテメーの運の尽きだな。悪く思うなよ?」
体温を失った男の身体を無造作に投げ捨て、血の滲んだ跡を靴で踏み締めて。その男―――ジルは、薄い笑みを浮かべながら、舌で乾燥した唇を拭った。
長く伸ばした焦げ茶色の髪。暗闇の中でも強烈な光を帯びて輝く山吹の瞳や、驚く程の痩身は発狂した猛禽(もうきん)を想わせる。
ジルは、心から愉(たの)しそうにクツクツと笑い声を漏らしながら、聳(そび)え立つ屋敷を見上げた。
「んじゃ……お邪魔するとしますか」
剣を濡らす血を軽く振って払い。ジルは軽快な鼻歌を歌いながら、歩き出した。










.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+









「……あ、あれー?」
シェーラはランプの明かりを手に、すっかり暗くなった廊下を歩いていた。
怖いくらいに静まり返っていて、シェーラひとりの足音と、僅かに震えた声での独り言が木霊する。
「何でこんなに静かなの……?あ、あれか!ドッキリか!」
シェーラは、妙に纏わりつく不安を吹き飛ばそうと、いつものようにあはは、と笑ってみるが、しかし少しずつ声が萎(しぼ)んでいく。
「……って言っても……。やっぱりおかしくない?まさかもう寝ちゃったの?みんなー、まだ寝るには早いよー?……あは、誰も答えてくれないし」
もう少しでソフィアの部屋だ。
こうなったら、扉の前に居るはずのヒースに頼んで一緒にいてもらおう、とささやかな決心をして、シェーラが足を速めたとき。


「―――シェーラちゃん?」


「ユーリエさん!」
ふいに、背後から聞こえた声に、シェーラは満面の笑顔で振り返った。
「やだびっくりしたあ!何でだろ、なんか今日すっごい静かじゃないですか?あたし怖くなっちゃってー、……」
言葉が、止まる。
「……え?ユーリエ、さ……?」
「……ごめんね、シェーラちゃん」
首に押し付けられた、冷たい金属の感触。
刃物だ。
ゾワリ、と鳥肌が広がる。
「な、……何するんですかっ?」
「……シェーラちゃん。今日一日、付き合ってくれて有難う。凄く楽しかった。……こんなことをして、本当にごめんなさい」
ユーリエが真紅の睫を震わせると、その下の金色をした瞳が揺れた。
「謝ってるだけじゃ分かんないですよ!これ、何なんですか!ふざけてるんですか!?ユーリエさんっ」


「―――失礼だなァ。ぜーんぜん、ふざけてなんかいねぇよ?」


足音は、聞こえなかった。
いつの間にか、湧いて出てきたかのように、シェーラとユーリエの前に、見知らぬ男が立っている。
その異常さに。シェーラは、ひっと息を呑んだ。
「ジル」
「おっせえっての……なァに、まだ迷ってンのか?」
「、そんな、ことは……」からかうような調子の男に、ユーリエは何か言い返そうとして、口を噤む。
「あンだろ。此処までしておいて、今更何を迷うってンだよ」
やってらんねえなァ、とジルはユーリエの傍まで歩いてくると、
「……御主人様(マスター)の命令に、逆らうっての?」
びくりと身を震わせたユーリエに、囁いた。
その途端。
「…………………」
シェーラの背後で。ユーリエの気配が、変わった。ような、気がした。
「……そう、ね。っふふ、そうよねぇ」
赤い唇から、ふふふ、と笑いが零れる。
「御主人様(マスター)との契約は絶対」
鮮やかに赤い髪が燃え上がり、細められた黄金の瞳は妖艶な色気を湛える。
「……ねえ、シェーラちゃん。貴女のお嬢様のところ、連れて行ってくれない?」
シェーラは目を見開いた。
まさか。


「そうよ、シェーラちゃん」


うふふふふふ、
ユーリエは愛おしいモノに触れるように、シェーラの首をナイフでなぞり。


「そう。……《紫水晶》の、ね」


シェーラの持っていたランプが、床に落ち。
がしゃん、という音を奏でた。

349月波煌夜:2012/06/03(日) 09:41:46 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん!頑張る!



↑あああ痛いのやだよう……とガクガクしながら書きました。
ど、どうかな?
シリアスに見える?見える?
それにしても初めて人を殺してしまった……罪悪感w

350ピーチ:2012/06/03(日) 11:22:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ち、ちょっと待って!!待ってー!!

何でシェーラが狙われんの!?何でソフィア様の所なの!?

また≪アメシスト≫の奇跡狙ってるの!?

シリアス・・・見える!絶対見える!!

だって普通さー、「恋愛=刃物×」の方程式できるよ!?

351月波煌夜:2012/06/03(日) 12:51:31 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ソフィアの女の勘、的中o(^o^)o


次回でちょっと説明するから待っててねー(^^;)
うん、《紫水晶》の力を狙ってるんだよ!
ちなみに、二人の御主人様つまり策謀者は、すでに出てるキャラですw

月波が痛々しい話書くのはこれが最初で最後だ……!

352ピーチ:2012/06/03(日) 14:45:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ぎゃーっ!!止めてくれー!

ソフィア様渡さないでっ!!シェーラちゃん解放してっ!!

つっきー!!≪紫水晶≫の力を狙う奴なんか殺してしまえー!!←バカゆーな!

353月波煌夜:2012/06/03(日) 15:16:13 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ごめん、多分死ぬのは雑魚敵だけだ…←

だ、大丈夫!
きっと後でシュオンとヒースが何とかしてくれるから!
それまでしばらく待っててね(´・ω・`)

354月波煌夜:2012/06/03(日) 17:50:55 HOST:proxy10086.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 7』




「……いや……絶対、いや……っ!ソフィア様は渡さないッ!」
シェーラは、きっ、と目の前のジルを睨みつけた。
ジルは、ひゅうっ、と口笛を吹く。
「お、なにこの娘(こ)、結構カワイーじゃん?強気な女ってオレ超好み!いーなー、ユーリエ、代わってよ」
「良いけど、変なことはしないでね?大事な案内人さんなんだから」
「わーかってるって」
ユーリエと刃物が離れた一瞬の隙をつき、シェーラは走り出そうとしたが、
「……おっと。逃がさねぇからな?」
すらり、と伸びたジルの刀身に阻まれる。
シェーラは唇を噛んだ。
「……こんなことして、ただで済むと思ってるの……っ?あたしが大声出せば、すぐに衛兵がやってくるんだよ?」
「あはははは!悪ィな、それ無理」
無理無理、と歪なメロディに乗せて口ずさむジル。
「みーんなネンネしちゃってるからさ。今起きてんのはオレたちとー、キミだけだし?」
「私がやったの」
ユーリエは不敵な微笑を浮かべて壁に寄りかかり、腕を組む。
「かなり強い眠り薬。朝まで目覚めないくらいね。仕掛けるの、なんかもう呆気ないくらい簡単だったわ」
シェーラは、さっき、ユーリエが厨房(キッチン)にいたのを思い出した。
あれは、鍋の中身に睡眠薬を混ぜるため。
わざわざシェーラを外に誘い出したのは、ソフィアの部屋を知る、専属のメイドであるシェーラだけは、薬の入った食事を摂らせて眠らせたくなかったからか。
シェーラは、屋敷にまんまと潜り込んだ彼女の思惑を見抜けなかった悔しさと共に、歯を食いしばってユーリエを見上げた。
「ユーリエは優しいよなァ。オレだったら毒にするのに、ただの睡眠薬だろ?まあ全員派手にぶっ殺す方がずっと楽しーけど」
「今回の依頼は殺人じゃなくて『《紫水晶》の奪取』。で、依頼達成には余計な犠牲は払わないのが私の主義。知ってるでしょ?」
「そうだけどさ、つまんねーじゃんそんなの。ろくに暴れらンないで、お高く留まった貴族サマの下で働くなんて反吐が出るし」
貴族サマ。
侮蔑と嘲笑を込めたその言い方に、シェーラは違和感を覚えて顔をしかめる。
ジルはシェーラに気づいたらしく、
「あー、不思議に思ってる?オレら、こう見えても雇われの暗殺者(アサシン)って奴なのよ、お嬢ちゃん。だから御主人様(マスター)に忠誠も何もないんだよねえ」
「ちょっとジル!」
「いーじゃん、オレ様カワイー子にはサービスしたくなっちゃうんだよ」
飄々とユーリエの叱責を受け流すジル。
シェーラは、どうやったらこの状況を打破できるか必死に頭の隅で考えながら、彼らに聞いてみた。
「……あんたたちの御主人様(マスター)って?誰のことなの?」
「うーん、それはいくらお嬢ちゃんでも教えらンないなァ。契約に反しちまう」
駄目元の質問だったが、やはりそこまで教えてくれるほど馬鹿ではないらしい。
「―――シェーラちゃん」
ユーリエが膝を折り、シェーラと視線を合わせた。
「私たちは、《紫水晶》を傷つけない。それは約束する。ね、だから大人しく言うことを聞いて」
「いやっ!」
「……強情ねえ。シェーラちゃんだって、痛いのは嫌でしょう?私たちは、簡単にシェーラちゃんを殺せちゃうのよ?ほら」
ユーリエは婉然と微笑みながら、手にしたナイフでシェーラの頬を、ゆっくりとなぞった。
ユーリエをキッと睨むシェーラの青灰色の瞳から、一筋の水滴が伝う。
嫌だ。怖い。
……でも、


「…………殺せばいいじゃない」


ユーリエが目を見開く。
ジルが息を呑む気配がする。
シェーラは、怒っていた。
ぽろぽろと涙を零しながらも、決意に満ちた鋭い眼光で、ユーリエを射る。
「殺したいなら殺しなさいよ!あんたたちみたいな奴にソフィア様を差し出すくらいなら、あたしが死んだ方がましよ!」
決然と顔を上げ、叫ぶ。
「……はは。こりゃすごい」
少し間をとった後。ジルが感心したように呟いた。
「お嬢ちゃん、あんたますます気に入ったわ。こんなとこで殺にゃあ勿体無―――」
「―――ジルッ!」
ユーリエの金切り声。
それと同時、


―――ザクッ


勢い良く、肉を切り裂く音。
「………か、は」
ジルが苦悶の声を上げ、
「――――――っ!」
ユーリエがいち早く反応し、すかさず闖入者の刃を受け止める。
闇に溶け込む漆黒の髪の間から、狂熱に燃える瞳が覗く。
「ヒースっ!」
「…………を、………なせ」
血を吐くような声。
「くっ…………」
ジルは背中の傷に呻きながらも、刀を退くことなく、ヒースをねめつけた。


「…………こいつを、…………シェーラを、離せっつってんだよッッ!!」

ヒースの怒号が、屋敷中を震わせた。

355月波煌夜:2012/06/03(日) 19:05:30 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 8』




「嘘だろっ?薬は今がピークのはずだぞ、なのにまだ意識があるだと!?」
ジルが痛みに顔を歪ませながら叫んだ。
「しかもそれでこの動きとか……おかしいだろ、何者だよこいつッ!」

ユーリエのナイフと、ヒースの剣が、ギリギリと不協和音を立てる。
つまりは、腕力は、互角。
……おかしい。
いつものヒースなら、いくらユーリエがプロの暗殺者で強くても、もっと余裕をもって片付けられるはずだ。
それだけ、ヒースは強い。
誰より、シェーラはそのことを良く知っていた。
なのに。
「ふうん……なるほどねえ。あの薬を飲んでこの力を出すなんて、国の騎士でも到底無理なんじゃない?本当、物凄い根性ね、坊や。驚いたわ」
ユーリエは額を汗で光らせながらも、余裕の笑みを作った。
「でも、さすがに結構キツいんじゃない?………左手」
ユーリエの最後の言葉に、シェーラはヒースの左の腕に視線を走らせ、
「――――――!」
僅かに震えるヒースの腕は、流れ出した血で真っ赤に染まっていた。
幾つもの裂傷。
間違いなく、剣で付けられたもの。
「いやっ……ヒースっ!もうやめて!」
ヒースは、襲い来る強烈な眠気に耐える為に、自分の腕を切り裂いては、その激痛で意識を保っていたのだ。
強く、強く噛み締めたヒースの唇の端からも、血がどくどくと溢れ出す。
「……………ッハ、」
ヒースは苦しげに小さく息を吐き出し、次の瞬間、
「―――――――ッッッ!」
ユーリエの刃を力任せに弾き飛ばした。
「っ!」
ユーリエの顔が驚きに染まる。
そのまま流れるように剣を、斜め上段から突き下ろし―――
「…………くそ、が」
……しかし、真紅の髪を数本散らして虚空を切る剣閃。
カラリ、と力を失った手から剣の柄が滑り落ち。目蓋が、ゆっくりと落ちていく。

「は、………す……まな、……い」

ヒースの身体が斜めに傾ぐ。


「……シェー……、」


絶え絶えの唇でそう呟いて。
黒髪の剣士が、膝からくずおれる。
「……いやあっ、ヒース!ヒースッ!」
シェーラは首に触れる刀身のことも忘れ、彼に駆け寄ろうと身を乗り出した。
喉に走る熱。
「ちょっ……お嬢ちゃん!待てって!」
「いやあああああッ」
慌てて刃を退くジルにも構わず、シェーラは取り乱して気を失ったヒースの方へと手を伸ばす。
「………彼、どうする?」
まだ衝撃から覚めないらしく、ユーリエがどこか呆然とした声色で。
「……そのままにしとけ。このお嬢ちゃんもそうだが、こんなとこで死なせるには惜しすぎるだろ。これじゃあ害もないし」
いつか本気でやり合ってみたいもんだ、とジルは愉しげに呟く。
「それにしても、とんだ化け物も居たもんだ。お嬢ちゃんの男か?」
からかうようなジルの言葉も、放心したシェーラには届かない。
「……さて、随分時間がかかっちゃったけど。さあシェーラちゃん、《紫水晶》の部屋を教えて」
鏡のように、シェーラの瞳にユーリエの姿が映り込んだ。
「……や、…………」
「ちょっと、まだそんなこと言ってるの?」
ユーリエは呆れて頭を振った。
「できればこんなことはしたくなかったんだけど、仕方ないわね。実力行使で行かせてもらうわ。……ごめんね、簡単には死なせないから」
ユーリエのナイフの切っ先がシェーラへと近づき、



「―――……そこまでよ」


決して大きくはない、しかし、何処までも凛と研ぎ澄まされた、美しい声音。
カツ、カツ。
足音が高く響き、


ふわり、と滑らかな銀の髪が広がり、月明かりに照らされて虹色に淡く光った。


一切の穢れを赦さぬ、冷たく、高潔な美貌が浮かび上がる。


そして、感情を湛えることなく静かに凪ぐ、紫の瞳―――。


その、神聖さに。美しさに。二人が言葉を無くし、見惚れるのが、確かに分かった。



「ソフィア、様……っ」
「シェーラ」


彼女の主。
ソフィアは寂しそうに、微笑んだ。

356ピーチ:2012/06/03(日) 19:10:10 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おぉぉぉぉぉ!!!ヒースがめっちゃいいタイミングで登場したー!!

ヒースかっこいい!!初めて思った!

やっぱり、睡眠薬程度じゃ恋の力にはかなわないみたいな?←あほ。

ヤバイッ!何か初めてヒースが輝いて見えた・・・。←今までヒースのことを哀れんでしかいなかった人ww

何かさー、ひょっとしたらシュオン様より輝いてるかも!

357月波煌夜:2012/06/03(日) 19:41:47 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ありがとう!
月波頑張ったよ……!

最後は負けた……というか力尽きちゃいましたが。
それでも格好良いと思ってもらえて良かった!


よし、次もこのまま頑張るぞー!

ソフィアの決意をご覧あれ(つд`)

358月波煌夜:2012/06/03(日) 19:50:39 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 9』




「……話は全部、途切れ途切れだけど私の部屋まで聞こえてきたわ。貴方たちの目的は私、そうでしょう?」


「な、……何で眠っていないの……?」

ユーリエが信じられない、という顔で呟く。

「シュオンが言ってた」

ソフィアは柔らかに微笑んで、


「“―――《紫水晶》の人間には毒の類が全く効かないって伝説がある”」


私も初めて知ったんだけどね、と、ソフィア。


呆然とした三人を気にかけることなく、ソフィアはうずくまったヒースに近づき、

「……ごめんなさい、私の所為で」

申し訳なさそうに、頭をそっと撫でて。

「……ゆっくり休んでね。シェーラをよろしく」
ソフィアはくるりと向き直り。

「シェーラ」

「ソフィア、様……?」

ソフィアは優しい表情で。

「怖い思いをさせてごめんね。私のことは、忘れて。しあわせにね」

「―――ソフィア様っ!?」


ソフィアは瞼を閉じた。

「実はね。薄々、こうなるって分かってたの」


歌うように。


「私が《紫水晶》である限り、この運命からは逃れられない」


ソフィアは。


不自然な程、楽しそうに、笑った。


「今まで有難う。こんなに、生きることがしあわせだって知らなかった」

月の欠片そのもののように、長い髪が揺れる。


「貴女やヒースと話して、シュオンに恋をして、……毎日楽しくて、仕方なかった」


瞼が開き、紫の瞳が輝いた。


「もう十分よ。私と一緒に居てくれて、優しくしてくれて、本当に有難う」


その拍子に。


「…………あれ」


ソフィアは指先で目元を拭った。


「あはは……。なんで涙なんて出るのかしらね」


これじゃ、普通の人間みたいじゃない。



「ソフィア様!いや、嫌です!お願い、早くお部屋に戻ってください!」



「ごめんねシェーラ。私、貴女たちに、これ以上迷惑は掛けられない。……シュオンに、よろしくね」



ソフィアは、ユーリエとジルを促して。


シェーラに背を向け、歩き出した。


「いやっ……ソフィア様!ソフィ……っ」


シェーラが急に沈黙する。
振り返れば、ユーリエが、シェーラを気絶させたらしい。


「何か酷いこと、していないでしょうね?」


静かな怒気を孕んだソフィアの言葉に、ユーリエは慌てて。

「え、ええ。少し気を失ってもらっただけで……」

「そう」

ソフィアは恭しく手を取るジルに先導され、廊下を歩いていく。


私は普通の女の子じゃない。


人々の願いを叶えるだけの存在、《紫水晶》。


だから。





―――叶うことのない恋ならば。




―――この手で、終わりにしよう。





ソフィアは、涙の粒で頬を濡らして。




微笑みながら、楽しかった日々に、別れを告げた。

359ピーチ:2012/06/03(日) 20:47:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?ちょっと待ってよ!!何でソフィア様自分から出て行ったの!?

シェーラの覚悟はどうなっちゃうの!?ヒースが切った自分の腕はどうなるの!?

何でそーなっちゃうのー!?

第一にシュオン様は!?こーゆー時に役立つもんでしょ、王子って!!

えーん・・・ソフィア様ー・・・

360月波煌夜:2012/06/03(日) 21:19:21 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ


うーん、ソフィアは、これ以上皆に迷惑を掛けたくないって思っちゃったんだよ。
自分のせいで、大好きな人たちが傷つくのは、大好きだからこそつらくて、耐えられないことだから。
このまま部屋に閉じこもってても、頼みの綱のヒースもダウンしちゃったから望みないしね……。
シェーラが身を呈して自分をかばってくれたから、それで吹っ切れて、シェーラにまで被害が及ぶ前に、割って入っちゃったのです。

ソフィアは悩んで悩んで、でもやっぱり《紫水晶》としての運命に逆らうことは、自分ではできなかったんだよ。


……さーて、ここは偽王子の出番だぞー?
嫌々晩餐会に行ってる場合じゃないぞー?


あ、ちなみにこの出来事で、結果的に二つのカップルがくっつくんで我慢してねーっ(*´д`*)

まあ、ヒースとシェーラは番外編でだけどね!


捕らわれのお姫様を助けに行くのは王子様って決まってるからね。
剣が使えるヒースならともかく、シュオンはどうするのか。火薬使うのか。でもそれ王子的にはすごい格好悪くない?とか悩みつつ。


真犯人が分からないのに、まずはどうやってソフィアの下に辿り着くのか!
ソフィアは絶対助けるよ、乞うご期待☆

361Mako♪:2012/06/03(日) 21:38:05 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
涙。涙、涙、涙、涙、涙。
ソフィア様ー!どうしてそんなに辛い決断を成されたの?
まぁ、シェーラのため、みんなに迷惑をかけないためだよね。
ヒース、OK!感動したよぅ!

っていうかー!シュオン様!一刻も早い救出を!そしてかっこいいお姿を!
頑張って下さいね!

362月波煌夜:2012/06/03(日) 22:31:01 HOST:proxyag045.docomo.ne.jp
>>Mako♪さん


感動してくれましたかーっヽ(´ー`)ノ

ありがとう!
そう言ってもらえるように頑張ったよ!
今回の山場で、ヒースとシェーラの好感度がupしてくれたらいいなー( ´艸`)
あ、良かったらユーリエとジルも嫌わないであげてね!
本当は悪い人たちじゃないから(^-^;

しゅ、シュオンも格好良く書かないとね…?
どうしよう…このままだとヒースばっかり活躍してしまう…(ぶつぶつ






あとあと、月波の予想通り、皆さんのお陰で400レスいきそうなので、記念SSのお題を募集します!
多分シリアス展開の途中に入ると思うので、気分転換的にバカ話の方がいいかなーとか思ったり。
最初にこの掲示板に来たとき、『300レスも続く人もいるのか…!』とおののいた記憶があります。
ここまで来れたのも、皆さんの温かい声援のお陰です!
月波のつまらない妄想を形にすることができて、読んでもらえて、さらに優しい言葉を戴けるなんて、本当に夢のようです…!
物語も佳境に入りました。
これからも、『紫の歌』をよろしくお願いしますっ(`・ω・´)

363ピーチ:2012/06/03(日) 22:55:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

だからって・・・ソフィア様優しすぎるよぉ・・・

嫌だー!認めないぞー!ソフィア様は一生シュオン様達といるんだー!←勝手なことゆーなっ!

・・・確かに。剣使えるヒースはともかく、シュオン様は・・・。

あっ!火薬じゃなくてさー、水鉄砲みたいなやつに唐辛子入れたのを犯人に向かって投げつけるとか!

それなら周りへの被害も少ないっ!←あほ。

・・・でも。確かにどーやって真犯人を探し当てる、シュオン様!

ダウジングとか?ww←大あほ。

364月波煌夜:2012/06/04(月) 16:45:16 HOST:proxy10081.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 10』





「―――シュオンッ!」


ヒースはシュオンの研究室のドアを開け放ち、中に飛び込んだ。
朝日に照らされた部屋は様々な実験用具で溢れかえっている。
その奥に、『彼』は居た。
珍しく眼鏡を掛けており、騒音にも眉一つ動かすことなく、書物を捲ってはずらりと並んだ怪しげな瓶のラベルに視線を走らせる。
「……ああ、ヒース、おはよ。怪我したんだって?具合はどう?」
「は?……まあちょっと痛むが動かすぶんには問題ねえけど……じゃなくて!」
ヒースはずかずかと侵入し、シュオンの前まで歩を進めた。
「…………何?僕、忙しいんだけど」
「……ふっ……ざけんなよッ!」
てっきり、大切なソフィアが誘拐されて、悲しむなり怒り狂うなりしていると思ったのに。
ソフィアのことにも構わず、報告を聞いても実験に打ち込むなんて、……研究馬鹿なのは元からだが、まさかこんな奴だとは思わなかった。
頭に血が昇ったヒースは思わず、白衣の胸ぐらを掴み上げた。
「……ちょっと、何。痛いんだけど」
「何、じゃねえよ!御嬢様が攫われたんだぞっ?なんでそんな冷静でいられるんだよッ!」
ヒースはまだ頭に残る痺れを感じながら、シュオンに怒鳴り散らす。
対するシュオンの表情は、全くと云って良い程変化しない。
そう、全く。


「……冷静に、見える?」


冬の蒼天のように、怖いくらいに冴えた、透き通る瞳。
ヒースが息を呑み込む。
「ふうん。ヒースには、ソフィアが居なくなっても僕が何とも思ってない、って見えるんだね?」
「わ、悪かったよ……」
シュオンの迫力に、すごすごと、ヒースはすぐに彼を解放した。
シュオンは仏頂面で白衣に寄った皺(しわ)を伸ばしてから、また本を片手に、ビーカーや試験管を弄り始める。
アルコールランプで液体を熱しているようだが、
「……じゃあ、こんなときに何やってんだよお前」
「ちょっとね」
シュオンは熱し終わった液体の入った試験管を軽く振り、それをビーカーの中に流し入れる。
「ちょっ、わ、……何だこれ!?」
もくもくと煙が湧き上がってきて、ヒースは悲鳴を上げる。
「静かにしててよ、此処からが重要なんだから」
シュオンの左の指先はページを恐ろしい速さで捲り、その視線は絶えることなく左右に行き来する。
読み飛ばしているのだ。
右手の指は完全に手探りで瓶を選び出し、蓋を開けて、本の内容と寸分違わない量の液体を調合していく。
最早、神業の領域。
ヒースは呆けて口を開けることしかできない。
「……此処でこの反応……うん。分かった」
作業が終わり、シュオンは眼鏡を外して、瞼を閉じた。
「俺には全く分からねえんだが。いい加減説明しろ」
「……ん」
シュオンはふう、と息を吐き出し。
「この花なんだけど」
徐にシュオンは、開かれた書物に描かれた、ひとつの白黒の挿絵を指差した。
多分、白い花だ。
清純な乙女のように、可愛らしいシルエット。
「何だよこれ、マルグリット語じゃねーし……読めるかフツー?」
渋い顔を作るヒースに、シュオンはあっさりと。
「え?クインシード語だけど……五カ国語くらいは読めて普通でしょ?簡単な挨拶くらいならプラス三カ国」
「お前と一緒にすんじゃねーよアホか……で、何て書いてあんだよ」
シュオンは嘆息し、
「夢見草。見た目も香りも良いが、鮮度の良い花弁には睡眠を促進する強い作用がある。多量の摂取は死に繋がる……良かったね、大事にならなくて」
「……は?ちょっと待て、つまりっ……?」
「そう。例のスープに混ぜられていた睡眠薬の正体。大方、採ってきた花弁をすり潰したものだろうね」
ヒースは言葉を失った。
シュオンは朝、この屋敷に戻り事情を聞いてから、誰よりも迅速に、冷徹に行動を起こしていたのだ。

「この花は凄く希少でね。ローエン地方にあるリーガ湖のほとりにしか生息しないんだ」

シュオンは精緻に整った容貌を歪めて、笑う。

「リーガ湖の周辺にある屋敷は、僅かにひとつ」


―――カークランド伯爵の、別荘だよ。



シュオンは、秘密を明かすように、囁いた。

365月波煌夜:2012/06/04(月) 17:08:47 HOST:proxy10030.docomo.ne.jp
>>ピーチ

急いだからいつもよりさらに残念な出来に…

シュオンの変態趣味が初めて役に立ったよーヽ(´ー`)ノ

…ダウジングの方がずっと面白かったような気もするw

366ピーチ:2012/06/04(月) 20:37:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やったーっ!!やーっとシュオン様の登場だーっ!ww

・・・確かに。初めてかもね、シュオン様の変態趣味が役立ったの・・・

あははーwwダウジングはあたしが好きなのww←良く本で読むww

367ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/04(月) 22:26:34 HOST:w0109-49-135-28-249.uqwimax.jp

ヒースがいつもの倍以上かっこよくてキュン死しそうでしたヤバイ←
ヘタレでもなんでもいじられてるけどそれを否定するのに必死なヒースが超かっこよく見えるんです(`・ω・´)ry

ねここは感動系とか戦闘系とかすごく苦手なのでその文才が羨ましい…
そして涙ポロポロな回でした(´;ω;`)

つづきが気になる!
そしてヒースを活躍させてくだs((

368月波煌夜:2012/06/05(火) 13:16:59 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 11』



「………や、ちょっと待て。お前まさか、貴族の本邸とか別邸とかの位置まで全部把握してんのかっ!?」
「まあ、有力貴族のものなら一通りは。変なとこに食いつかないでよ、話が進まないから」
―――こいつの頭は一体どうなってるんだ!?
ヒースにはとても想像がつかない。
「……話を戻すけど。もちろん、だからってカークランド伯爵が首謀者だとは限らないよ。他の誰かが、リーガ湖にまでやって来て夢見草を採取していっただけかもしれない。でも、……ヒース、カークランド家について今現在知っていることは?」
ふいにシュオンに聞かれ、ヒースは必死に、なけなしの知識を挙げていく。
「かなりの資産家だって話だな。別邸を幾つも持っていて、どれも物凄い広さ。社交にも非常に積極的、ユーゼル(うち)も面識はあるし、エインズワーズとも友好的、のはず。……ただし歴史はないに等しく、成り上がり、と陰で呼ばれることもある。……最近は……そう、先代の伯爵が亡くなって、息子が爵位を継承したんだったか」
シュオンはそう、と頷いて。
「ソフィアが、此処に来る前に居たところなんだけど……その息子が問題なんだよね」
「……問題?」
「うん。僕―――エインズワーズが仲良くしておいたのは、先代の伯爵の方なんだ。後を継いだ現伯爵とはあまり接点がなかったんだけど……」
そこでシュオンは一旦言葉を切り、
「この前の舞踏会で、その『彼』に会った。僕には比較的にこやかに話してたけど。……伯爵の、ソフィアを見つけた時の目は、」
―――異常、だった。
「……限りなく殺意に近い、狂った敵意だったよ。レオン殿下も気づくくらいにね」
「お、お前、じゃあもう、御嬢様が攫われるって予測はついてたってことか?」
「いや。さすがに、伯爵が何をしでかすかは、僕にも何も分からなかったけど」
さらにね、と前置きをして。
「とある筋からの情報によると。カークランドは今、上手くいっていないらしいんだ。不幸の連続。ソフィアが離れた途端、先代の伯爵が亡くなった上に、本邸で大規模な火事が起きた。伯爵がローエンの別荘に滞在しているとしたら、それが理由だろうね。……順調だった所領の経営も苦境に立っているらしい。前伯爵夫人と伯爵の妹も、二人揃って落馬、かなりの重傷を負っている」
つらつらと裏情報を並べてみせるシュオン。ヒースは、若干恐怖のようなものを覚えつつも、言った。
「つまり、その状況なら、《紫水晶》―――御嬢様の奇跡の力を欲しているっつう可能性は、大なワケだな?」
「そういうこと」
ソフィアに憎しみを抱いている、という点ではやや疑問は残るが、動機は完全に一致する。
ならば。
「確定、か」
「……そう、だね」
シュオンは碧い双眸に蔭を落とし、それきり沈黙した。
迷うような表情。
……やがて。
覚悟を決めたように、決然とヒースを見据えた。
薄い唇が、ゆっくりと開く。
「あの、さ。ヒース」
「……ん」

ヒースは、ふ、と笑い、この上なく真剣な顔をしたシュオンを見つめ返す。
「……睡眠薬、まだ残ってる?つらく、ない?」
「ばーか。久しぶりにしっかり寝てスッキリしてるくれぇだよ」
「……腕、痛いんでしょう?」
「さっきも言っただろ。自分でやったことだし、大したことねーって」
嘘だった。
まだ頭が痛むし、包帯を巻いた腕の傷も疼く。
ヒースは嘘が下手だ。
だから、ヒース如きの嘘なんて、シュオンは間違い無く看破している。
だから。
シュオンは、自分の方が、ヒースの背負う痛みに耐えるように、辛そうに美貌を歪め、俯いた。
そして。

「……今から、凄く、酷なことを言うよ。
ヒース、……僕は―――」


「分かってる」


シュオンが驚いたように顔を上げ、ヒースを見上げる。
―――……ばーか。分かってるっつの。
―――今からさ。身体張って、御嬢様を助けに行くんだろ?
「俺がお前の立場でも、きっと同じことを言う」
―――……だから、さ。
「らしくねえツラしてんじゃねえよ。いつもみてぇに、俺を顎で使ってみせろや」
「……っあはは!……そう、だよね」
シュオンは、笑った拍子に浮かんだ涙を指で拭う。


「有難う」


花が咲いたように。


「有難う。……君と友達で、本当に良かった」


「……ハッ、気持ち悪いこと言うな馬鹿」


ヒースは照れ隠しに、ぶっきらぼうな口調で吐き捨てた。

369月波煌夜:2012/06/05(火) 13:32:03 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>ピーチ

シュオン、王子役のくせに登場地味でごめんね……(´・ω・`)
それにしても戦えるのかこいつ……w




>>ねここさん

実は、ねここさんに戴いたコメを意識して書いたので、喜んでもらえて良かったです(`・ω・´)
『ヒースかっこよく……かっこよく……』と念じてました←
文才も何もありませんが!
とにかく、ヒースをばしばし活躍させていきたいですo(^o^)o




ちなみにこの後、研究室を出たヒースはシェーラに会いに行って……という一悶着がありまして。
その出来事は番外編のメインになりますので、『紫の歌』が完結するまでもう少しお待ちくださいね!
月波は、二つの話を同時進行できる程器用ではないので……
複数の作品を書ける皆様の才能が本当に羨ましいっ(x_x;)

370ピーチ:2012/06/05(火) 22:21:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おいおいおいおいっ!!作者が心配してどーするっ!

仮にその心配があるんなら、読者はもっと心配になるんだぞー!!

作者様!月波様!自分のキャラぐらい安心して送り出して!!←あほ。

・・・にしてもなー、もう終わりかぁ・・・

ソフィア様にシュオン様にシェーラにヒースに、その他諸々みんな好きなんだけどなー・・・

371月波煌夜:2012/06/06(水) 09:14:51 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 12』





「……はは。良く聞こえなかったようだ。シュオン、もう一度言ってくれるか?」
マルグリットの実権を握ると云われる男にしてシュオンの父親、エインズワーズ公爵は、上質なハンカチーフで滲む汗を拭った。
「僕が、ソフィアの居ると思われるカークランド伯爵家に行く、と言いました」
シュオンはきっぱりと言い切り、真摯な眼差しで公爵を見据えた。
「……しゅ、シュオン?良いか、良く聞きなさい」
公爵はマホガニー製の立派な机にハンカチーフを置き、立ったままの息子を見やる。
「まず、ソフィア君の居場所を突き止めたのは御苦労だった。まさか、カークランド伯爵の仕業とは思わなかったが……。警察の聞き込みによる捜索に任せておいては、何ヶ月かかるか分かったものではないからね。私としても、《紫水晶》に危害を加えることはないだろうからソフィア君の安全は保証されているとしても、やはり心配なものは心配だ。できるだけ早い方が良い。……だが、」
公爵の身に纏う空気がガラリと変わり、碧く澄み渡った双眸を眇めて。


「―――何故、お前が行く必要がある?」


来た。
シュオンは行儀悪く舌打ちしたくなるのを、懸命にこらえた。
腐っても、『あの』エインズワーズの当主。
その迫力、貫禄たるや、並のものではない。


「お前自身も分かっている通り、お前は本家の大事な跡取り息子だ。そのお前が、何故、進んで危険に合いに行く必要がある?」


正論だ。
でも、……ここで引く訳にはいかない。
シュオンは静かに公爵の視線を受け止める。
「うちの衛兵を向かわせる。お前は大人しく、此処で朗報を待っていれば良い」
「……嫌、です」
「シュオンッ!」
激昂した公爵が、音を立てて席を立ち上がった。
「何を子供のようなことを言っている!」
「もう子供でないからこそ、言っているんです!」
シュオンは父親を鋭く睨みつける。
「……父上。うちの衛兵、と仰いましたが。エインズワーズとカークランドが公(おおやけ)に戦ったらどうなるか、お分かりでしょう?」
シュオンの反論に、公爵も十分承知しているのだろう、渋面を作った。
『あの』エインズワーズの兵がカークランドに攻め込むとなれば。向こうから仕掛けてきたとはいえ、間違い無く。
「カークランド領民の混乱を招き、マルグリット王国を二分する戦に発展しかねません」
それくらい、大きな問題なのだ、これは。
「……警察に、任せれば」
「ろくに統制されていないマルグリットの警察に、証拠隠滅以外に能があるとは思えませんが」
「なら、どうすれば良いというのだね!」
「だから、僕が行くと言っているでしょう」
シュオンは太々しく笑う。
「馬鹿なことを言うな!ソフィア君を攫うような奴らだぞ、話が通じるとは思えない!」
「ソフィアの存在を必要以上に知らしめない為には、できる限りの少人数で動く必要があります」
「それはそうだがっ……お前が行って何になる!」
「……ヒースを、連れて行きます」
シュオンのその発言に、公爵は刮目して。
「ヒース君は昨夜、我々が寝静まった後も最後まで諦めずに闘ってくれたと聞いている。彼の能力は申し分ないが、負傷中だろう、なのに無理をさせるのか!」
「……大勢の兵を連れていけば、悪目立ちする。でも、今のヒースでも、」
シュオンは一瞬、辛そうに睫を伏せたが、
しかし顔を上げ、自信に満ちた口調で、言った。
「今の状態でも、奴なら、……ヒースなら、確実に下手な衛兵数十人にも勝る戦力になります」
「だが、……お前が行く必要はっ」

「―――お願いします」

シュオンは公爵に、頭を下げた。
此処にもしヒースが居たのなら、愕然としていたことだろう。
あのプライドが無駄に高いシュオンが、まさか頭を下げるなんて、と。
「僕の一生で一度の我儘です。どうか、……お許しを下さい」
「な、……」
口をぱくぱくと開け閉めする公爵。
シュオンは視線を逸らさない。
息を吸い、背筋を伸ばす。

「父上。僕は、悔しいんです」

お得意の口八丁は使わない。
正直な胸の内を打ち明けていく。


「父上にも、お話しましたね?九年前のあの日、僕は、連れ去られていくソフィアを、ただ見送ることしかできなかった」


「……ああ、」


「何もできない無力な自分が、悔しかった。……だから、」


自分でも馬鹿なことを言っていると思う。
下手をしたら殺されるかもしれないのだ。この身で、闘う力もないのに敵のテリトリーに踏み込むなど、正気の沙汰とは思えない。


でも。……それでも。


「もう、後悔はしたくない。この、僕の手で、ソフィアを取り戻したいんです」

372月波煌夜:2012/06/06(水) 17:39:13 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp
>>ピーチ

駄目だうちの子たちは皆危なっかしくてとても安心なんかできない…!
目を離すとすぐ暴走するんだよ…(つд`)

完結しても、頭の片隅ででもキャラたちのこと覚えててほしいな←

373Mako♪:2012/06/06(水) 21:19:53 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
うう、シュオン様がいつもの1000倍かっこよく見えるよ~!

ソフィア、今頃どうしているのだろうか……
うう、ソフィア様、どうかご無事でいらして下さい!

374ピーチ:2012/06/06(水) 21:48:02 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!!安心しなさい!!

ああああ、あのプライドの高いシュオン様が・・・頭下げた・・・!←しかも公爵にww

ソフィア様、愛されてるねぇ♪

シュオン様かっこいいー!!ヒースもかっこよく見えたけど、シュオン様も負けてない!!

いや、ヒースももちろんかっこいいよ!←これ事実!!

375月波煌夜:2012/06/06(水) 22:50:25 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
>>Mako♪さん

ほんと?シュオンかっこいい…o(^o^)o!?
よ、良かったー!

ソフィアの様子の回も入れるつもりだから、もうちょっと待っててくださいな(`・ω・´)




>>ピーチ

そう、あのプライドが山より高いシュオンが!ってとこ、月波的には結構ポイントだったから、分かってくれて嬉しいw
シュオンへの応援ありがとー!

376月波煌夜:2012/06/07(木) 10:56:16 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 13』





ぱちぱちぱちぱち、と、緊迫した状況に相応しくない喝采が背後から聞こえ、シュオンはびくりと身を竦ませた。


「―――ふふ。わたくしはシュオンに賛成よ、ランディ」


「……アゼリア……立ち聞きはやめろといつも言っているだろう」
途端、苦い顔をするエインズワーズ公ランドルフ。
ドアを開け、弾む足取りで書斎に入室してきたのはアゼリア。彼女が笑って小首を傾げると、ゆるやかにウェーブがかかった淡い金の髪が波打つ。
「……まあいい。今のは一体、どういう意味だ?」
「わたくしはいつでも可愛い女の子の味方だもの。この場合、ソフィアの味方はシュオンの味方、ってね」
「アゼリア!いい加減に、」
「まあそれは冗談として」
アゼリアは、少女のように若々しい容貌で愛らしく微笑みながら、ぽかんとしているシュオンを見上げ、手を伸ばして彼の顎を細い指で包み込んだ。
「……良い目をするように、なったわね」
「……母、上?」
「ふふ。わたくしは嬉しいのよ、シュオン。いつも何処か冷めていて、素直じゃない貴方がこんな、男らしい目をするようになった。祝福すべきことだわ」
成長した自慢の息子の頬を、愛おしげに撫でて。
「―――それは他でもない、ソフィアのお陰なのね」
その一言に、シュオンの頬に急速に熱が集まるのを感じて、アゼリアは楽しそうに笑って手を離す。
「ねえ、ランディ?」
アゼリアは滅多に使うことのない、夫の愛称を呼んで。
シュオンと瓜二つの美しい顔に、太陽の女神の如き微笑を浮かべた。


「ねえ、わたくしからもお願い。シュオンの望む通りにしてあげて頂戴」


「……アゼリア、」


「ついこの間までヒース君とはしゃぎ回っていた子供が、こんなに立派になったのよ。今は、エインズワーズ公爵としてではなく只の親として、それを後押しするのが、貴方の、そしてわたくしの役目ではなくて?」


……ランドルフは黙って肩肘を付き、息を吐いて目を閉じた。
たった数秒間の間が、数時間にも感じられる程、シュオンはらしくもなく緊張していた。
ごくり、と唾を飲み込む。


「……条件がある」


喉の奥から搾り出したように苦い声に、シュオンは目を見開いた。


「ヒース君を休ませる時間が必要だ。出発は、いくら早くとも明日の朝にしなさい」


「……父上!」


「ランディ!」


ぱっと顔を輝かせるシュオンとアゼリア。


「この件については、私は何も聞いていなかったということにしておく。……お前の好きにしなさい」


「……はい!有難う御座いますっ」


シュオンは腰を折って一礼。
「母上も。本当に、有難う御座います」
「良いのよ。それより、」
アゼリアは我が子を眩しそうに見つめ。


「絶対に、帰ってくると約束して。もちろん、ソフィアも一緒にね」


「……はい」


シュオンはその言葉を噛み締めるようにしっかりと頷いて踵を返しかけ―――

「あ、父上。少し訂正したいことが」

何かに気付いたように、ランドルフを振り返った。
「ソフィアの存在を知らしめないようにする、と言いましたが。あまりその必要はないかもしれません」
「…………何?」
だって、とシュオンは眩しい笑顔で。


「エインズワーズの跡取り息子の婚約披露宴。それはもう盛大に催して下さるのでしょう?」


「なっっ!?」
「それでは失礼します」
爆弾発言を残してシュオンが出て行った後も、ランドルフは口を開けて固まっていたが、
「な、な、……ままま待ちなさい!こらシュオン!どどどどういう意味だそれはッ!」
「あらあら」
―――シュオンったら。わたくしの役目は、まずこの人を宥めて落ち着かせることかしら?
アゼリアは、青くなったり赤くなったりと忙しい最愛の夫と、最愛の息子の姿を無意識のうちに重ねて、柔らかに微笑んだ。

377ピーチ:2012/06/07(木) 20:32:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わぁお!!アゼリア様がシュオン様に味方したー!!

そーゆー面では優しいお母様だねー(・w・)

それにしても・・・シュオン様の大胆発言にはびっくりした!!

ソフィア様を家族として受け入れるって事でしょ??

378bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/06/07(木) 22:27:36 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

お久し振りですノ 久し振り過ぎて若干忘れられてないか心配なbitterですw
紫の歌、たった今最初から読み終わりました^^
やっぱりここのキャラさん達は、皆人間味が溢れてて素敵ですよねー(憧)
いつもお手本にさせて頂いてます+ノ

私のところは執事くんが暴走しはじめて、大変で大変で大h(ry)
まあそれはさておき…最後まで応援していきますので、頑張って下さいね^^

では、今日の所はこの辺でノシ

379月波煌夜:2012/06/07(木) 22:30:09 HOST:proxyag023.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ずっとこのシーンが書きたくて父上と母上を登場させたんだヽ(´ー`)ノ
理解のある親って良いよね…!


最後の爆弾発言は、無事に帰って来ます+そしたらソフィアと結婚するつもりですけど文句ないですよね?というシュオンらしい強気な腹黒発言w

でもでも、明日あたりにもっと凄い爆弾行動を誰かさんに取らせますので待っててねー( ´艸`)

380月波煌夜:2012/06/07(木) 22:52:02 HOST:proxyag023.docomo.ne.jp
>>bitterさん

お久しぶりです!
まさか、忘れるわけないですよっ(゚Д゚)


人間味溢れすぎて絶賛暴走中のキャラたちで御座います…w

bitterさんの方にもまたお邪魔しますね!

381ピーチ:2012/06/07(木) 22:56:59 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えぇぇぇ!?まさかの最初から決めてた的な!?

すっごい計画性だねー・・・←あたしは適当に行き当たりばったりww

・・・確かに。シュオン様らしい腹黒発言ww

あー、誰かさんの暴走が楽しみだーww

382月波煌夜:2012/06/08(金) 13:47:22 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 14』




「―――シュオン」
「準備できた?……あれ、ヒース……その格好」
出発当日の朝、玄関ホールで声を掛けてきたヒースは、エインズワーズ兵指定の軍服姿だった。
品の良い濃緑の地に繊細な金の刺繍入りのそれは、ヒースの長身にぴったりと馴染んでいる。
「ああ、これか。昨晩、公爵閣下がわざわざ俺の部屋まで見舞いに来て下さってな。どうせ喧嘩ふっかけんなら、エインズワーズ兵として正々堂々と挑めって、これ着てくように言われた。久し振りだなこれ……それより」
ヒースはシュオンに何とも言い難い疑わしげな目を向け、
「そんとき、閣下にシュオンと御嬢様の関係を知らないかってすっげえしつこく聞かれたんだが。なんか余計なこと言っただろお前」
「さあ?」
観察するような視線に、シュオンは肩を竦める。
「……まあいい。つーかさお前、覚悟はできてんのか?別に、俺だけでも良いんだぞ」
「冗談。今更何言ってるの?僕が行かなきゃ意味ないじゃない。ヒースこそ、本当に良いの?その身体で、ちゃんと闘えるわけ?」
「当ったり前だろうが。薬も夜のうちに綺麗に抜けたみてえだし、別に大した怪我もしてねーし。第一、俺は御嬢様専属の従僕(フットマン)だぞ?御嬢様を守り切れなかったのは俺の責任だし。俺にも矜持ってもんがあるんでね」
にやりと笑うヒース。
それは紛れもない本音だろうが、
―――本当に。
シュオンは、自分より頭一つ分背の高いヒースをちらりと見上げ、こっそり含み笑いを零す。
―――僕は、良い友達を持ったよ。
昨日までは睡眠薬の副作用があったことをサラリと暴露しているにもかかわらずそれに気づかない、間抜けで詰めの甘い悪友。
心配を掛けないようヒースなりに気を遣ったのだろうが、もう少し上手くやれば良いのに。
「何笑ってんだよ」
「別にー?」
「意味分かんね……あ、思い出した!そういえばお前、メシ全然食ってないんだって?メイド長が心配して嘆いてたぞ」
シュオンは内心ぎくりとしつつも、
「……たまたま、食欲なかっただけだし?」
「顔色も良くねえだろ、ほら。ろくに寝てないんじゃねーの?」
「人の顔じろじろ見ないでよ気持ち悪い。馬鹿が移る」
「お前なぁ!?」
……こいつに見破られるとは屈辱の極みだ。
募る焦燥感、不甲斐ない自身への苛立ち。
確かに昨日からソフィアのことを考えては居ても立ってもいられずいたが、決してバレないよう平静を装っていたのに。
「―――そうだ、シェーラは?何処か知らない?」
こういうときは話題を変えるに限る。
丁度気になっていたところだ。
彼女が意識を取り戻すや否や、矢継ぎ早に質問責めにしてしまったのは自分である。
随分とショックを受けて泣いていたにもかかわらず、申し訳ないことをしてしまったのを謝っておきたいのだが。
「あー……」
ヒースは何というか、困り果てたような焦ったような微妙な表情で頬を掻いて。
「……どうかした?」
「いやー……そうだな、あいつは―――」


「ヒースッ!」


ヒースが何か言いかけたとき。全力疾走して来たらしく、懸命に呼吸を整えるシェーラが現れた。
その目頭が、赤く腫れている。

383月波煌夜:2012/06/08(金) 14:29:45 HOST:proxy10007.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 15』




どうやらメイドの少女はシュオンのことは視界に入っていないらしく。
頬を熟した林檎よりも赤く染め上げ、涙の溜まる青灰色の瞳で、ヒースを睨みつけた。
そして。


「も、もし死んだら、絶対赦さないからっ」


震える声。


「ちゃんとソフィア様を助け出して、あんたもっ、……あんたも此処に帰って来なくちゃ、絶対絶対、赦さないからっ!」



「……ん」


ヒースはシェーラから視線を逸らし、小さく頷く。
「分かった。約束する」


その言葉に、シェーラはしばらく俯いていたが。


徐にキッと顔を上げ、ヒースの方へずかずかと歩いて来た。

シュオンが思わず、無言で道を譲る程の気迫。

シェーラはヒースの目の前に立つと、上目遣いに彼を軽く睨んだ。

凄まじい可愛らしさに、う、とヒースが赤面する。

これは殴るのか、とシュオンが微妙に二人から離れ、息を呑んで見つめていると。


シェーラは手を伸ばしてヒースの制服の胸元を引っ掴み、


思い切り、力を込めて下へ、つまり自分の方へと引っ張った。


当然、彼女の予想外の行動に付いていけないヒースは、バランスを崩されて、



「……――――――!?」



乱暴に押し付けられた甘く柔らかい感触。


ヒースが漆黒の瞳を見開いた。


数秒後、
己の唇とヒースのそれを離して、シェーラはヒースの胸を突き飛ばして距離を取り。


「………これは……お返し、だから」


言い訳するように小さく呟き、スカートを翻して真っ赤な顔で走り去った。


後には、無言のヒースとシュオンが残される。


「…………へえ?」


ヒースは先程までの情けない様子から一転、にやりと笑みを作った。

妖しげに目を細め、乾いた唇を赤い舌で舐める様子は、完全に一人の『男』のそれで。

「……ははっ。ちょっとやる気、出たかも」

不覚にも、その野性味溢れる姿に一瞬見惚れてしまったシュオンは。

「……それは良かった。後で諸々の説明よろしく」

「全部片付いたら、そのうちな」


―――ソフィア。何か良く分からないけどさ。こいつらはいつの間にか、随分進展してるみたいだよ?

シュオンは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

―――二人で、根掘り葉掘り聞いてやらないと。


その為には。
あの可笑しくて、温かくて、優しい日々を、取り戻す為には。



―――今、助けに行くよ。だからもう少しだけ待ってて、ソフィア―――

384月波煌夜:2012/06/08(金) 14:35:07 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp
>>ピーチ

急展開。
……やっちゃいましたシェーラさん。
何で!?って感じだけど、その謎は番外編でと云うことで。

うん、次からはちゃんと緊張感とか書きます!ごめんなさい自分の好みに走りました!
……だってつらいの嫌なんだもん……(´・ω・`)

385ピーチ:2012/06/08(金) 19:23:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわぁっ!!本当に急展開!!

シェーラちゃんも凄い!まさかシュオン様の前でいきなりとはっ!

あたしは辛いのが大好きー!!←大ばか者。

386月波煌夜:2012/06/08(金) 21:46:45 HOST:proxyag006.docomo.ne.jp
>>ピーチ

え、つらいの好き!?
…よ、よーし、月波頑張るぞー(涙目

387ピーチ:2012/06/08(金) 22:32:37 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははww あたしの場合、辛いのが好きなんじゃなくて、主人公とか重要人物が危険な目に遭うところが好きなの!

・・・あ。泣くほど嫌なら、書かなくても良いんでは・・・!?

388月波煌夜:2012/06/09(土) 09:52:43 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 16』




―――ソフィアに与えられたのは、広大な土地の片隅に聳える、北の塔の一室だった。
夜遅く、ユーリエに案内されて通された部屋は十分な広さがあったが、新しい主の心境を代弁するように、何処か物悲しさが漂う。
ソフィアは寝台に腰掛け、ぼうっと天井を眺めていた。
目を閉じれば、嫌でもシェーラやヒース、シュオンのことが頭に浮かんで離れなくなってしまうから。

「―――初めまして、《紫水晶》」

ソフィアは立ち上がり、ゆっくりと《紫水晶》の証たる紫の瞳を『彼』へと向けた。
いつの間に部屋に入ってきたのか。
それは。一人の、少年だった。
年の頃はまだ十五、六。丁度ソフィアと同じくらいだろう。
小柄で華奢な身体、濃青の髪に鳶(とび)色の双眸、僅かに幼さを残した、端正で貴族的な顔立ち。
しかし、その愛らしい姿とは裏腹に、片眼鏡の奥の冷たく研ぎ澄まされた視線は、ソフィアの背を震わせる。
「そんなに固くならないで下さい。そうですね……まず、ぼくはオスヴァルト、カークランド伯爵です。以後お見知り置きを」
この上なく丁寧な物腰。
なのに、絶え間なく溢れ出る侮蔑の念を敏感に感じ取り、ソフィアは一歩後ずさる。
「手荒な真似をしたことをお許しください。ぼくも正直気が進まなかったのですが、どうしても貴女を手に入れなくてはならなかったのです」
「……カークランド伯爵、と仰いましたが……」
「はい。もちろん、父のことは御存知ですよね」
―――思い出した。
カークランド伯爵。
息子の病気を治してくれと頼まれ、それが叶うと貰いきれない程の沢山の贈り物を用意してくれた老人。では、目の前の少年が、医者にも見放される重い病にかかっていたと云う息子なのか。
“―――しあわせが逃げないようにね”
「……………………」
胸の奥が凍りつく温度が、甦る。
「……貴方は何故、私を必要としているのですか」
「何故、ですって?」
オスヴァルトは嘲笑して。
「白々しい。何をとぼけているのです?」
「…………、?」


「当家を不幸に陥れたのは、《紫水晶》、貴女でしょうに」


ソフィアは目を見開いた。
「……………え?」
「貴女が父のもとから離れたその日に、父は急病で亡くなりました。母と妹は事故に遭って怪我を負い、屋敷は火災に見舞われた。順調だった所領の経営も行き詰まっています。これが偶然で済むとでも?全て貴女がしでかしたことでしょう」
容赦のない蔑みの眼差しと鋭利な言葉が、ソフィアを抉(えぐ)る。
「……そ、んな、……私には……」
そんな力はない。
そう言おうとしたのに、それは掠れて声にならなかった。

「単純な父を唆(そそのか)して散々貢がせておいて、やっと居なくなってくれると思ったら、今度は災いをもたらすとは」
―――私、は……、

表情が凍りつき、紫の瞳から虹彩が掻き消える。
主人に忘れ去られた哀しい人形のように。


「―――そう。貴女にできるのは、罪を償う為に、当家へと失った分の幸福を呼び込むこと。それだけですよ」

389月波煌夜:2012/06/09(土) 09:55:45 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ほどほどにしておきます……°・(ノД`)・°・

ヒース(とシュオン)が格好良く活躍できるように頑張るよー!

390ピーチ:2012/06/09(土) 18:54:00 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えぇぇぇぇぇ!?ち、ちょっとストップ!!

何でソフィア様がそんなことしたってことになってんのー!?

だーもー!!シュオン様もヒースも!早くソフィア様を助けなさい!!

391Mako♪:2012/06/09(土) 19:05:22 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
おいーーーーー!
カークランドさん!?何でそんな発想しちゃうかな!?
ソフィア様はそんなことしないもん!
シュオン様ーー!早く助けてあげて!

392ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/09(土) 19:18:19 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp

シェーラとヒースが進展してよかったです゚(゚´Д`゚)゚
わああもうヒースかっこよすぎてやばい←

つづき楽しみですー!

393月波煌夜:2012/06/09(土) 20:28:10 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ&Mako♪さん

す、すみません(←何故か謝ってみる
オスヴァルトさんはあれだね。臨死体験経験してる上に金持ちのお父さんに甘やかされて育っちゃったから根性腐っちゃったんだろうねw
……敬語に片眼鏡って良いよね……ヽ(´ー`)ノ
うん、シュオンとヒースに頑張ってもらわないと!



>>ねここさん

急展開すぎましたけどね……(´_ゝ`)
これからは嫌でもヒースに働いてもらわなくちゃなので、張り切って書きます!

394月波煌夜:2012/06/09(土) 21:41:16 HOST:proxy10007.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 17』




「此処が……カークランドか……」
「正しくはその本邸じゃなくて別邸ね」
馬を飛ばして半日、シュオンとヒースはローエン地方のリーガ湖に到着した。
黒い艶やかな毛並みの馬から降りながら呟くヒースに、シュオンは真珠色の馬の首を撫でながら。
「僕も予想以上だったけどさ」
マルグリットに名だたる大富豪カークランド伯爵家。
その領有する土地は、マルグリットで最も力を持つ貴族、エインズワーズ公爵家にさえ匹敵すると云われているが、
「ユーゼル(うち)とじゃ比べもんになんねーなー……家のデカさじゃ負けてんじゃね?お前んとこも」
「普通にそうだろうね。でも最近は財政が厳しくなって屋敷をいくつか手放した上に、兵士を雇う余裕もなくなって数百単位で減らしたらしいよ?」
「俺はお前が心から恐ろしいよ……」
ヒースは嘆息し、とても視界に入りきらないカークランド城を仰いだ。
「だから今居る兵は、伯爵の妹君と母君が療養中の屋敷にかなり人員を割いていることを考えると……二百も居ないんじゃないかな?」
「サラッと言うなサラッと」
闘うのはヒース一人なのだ。
力を入れている貴族であれば千人規模で兵士を雇っていることにすれば破格の少なさだが、しかし限りなく不利なのは間違いない。
「……ふふ。信頼してるよ?」
「当たり前だろ」
……先程から、門衛が立派な馬を連れた軍服姿の青年とやたら身分が高そうな青年の二人連れに、不信そうな眼差しを向けている。
「……申し訳ありませんが……どちら様ですかな」
「こんにちは。あれ、聞いていないかな?伯爵と少々お話があって」
シュオンは余所行き用の笑顔を浮かべると。

「―――《紫水晶》のことなんだけど」

その一言に、男がびくりと僅かに反応したのを確かに見極め、シュオンはヒースに視線を送った。
当たり、だ。


「……おっさん、悪く思うなよ」


黄昏の光を鈍く照り返し、剣の切っ先が閃く。




.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+




「あー……集まって来たねえ」
侵入者の情報が行き渡ったらしく、敷地内に入った二人をすぐに、無数の兵士が取り囲み始めた。シュオンはあくまで冷静に、その人数が予想と違わないことを頭の片隅で計算しながら、
「僕、どうすれば良い?火薬で散らしても良いんだけど、間違えたらヒースどころか屋敷まで吹っ飛ばしかねないからなあ」
「つくづくこういうときには使えねえなお前。引っ込んでろ、俺が何とかする」
「あはは、さすが。じゃあ僕は邪魔にならないように大人しくしてようかな。大丈夫、自分の身は自分で守るから」
―――……“思う存分、暴れてきなよ”
最後に妖艶な微笑を残し、シュオンが言葉通り後退する。
―――本当。こいつに隠し事はできねえわ。
ヒースはそれを視界の隅で確認してから。

精悍な顔に、獰猛な笑みを浮かべた。

自分に向けられるのは、紛れもない敵意、そして殺意。
殺す気で向かってくる相手には容赦はしない。
それがヒースなりの流儀。
だから、

身体が、歓喜で震えるのが分かる。
―――こいつらは、本気で殺っても良い。
武器を構え、じりじりと向かってくる二百もの軍勢を前にしても。

ヒースは笑みを崩さずに、ゆっくりと口を開く。


「……わりぃ、一応気はつけっけどさ。殺しちまったらごめんな?」


一迅の風が吹き、鴉羽色の髪を静かに揺らした。


「……好きな女泣かされて、」


血に飢えた獣の瞳が獲物を捕らえ、爛々と輝く。



「俺今―――サイッコウにブチキレてっからさァ!」




―――黒き豹が今、その牙を剥いた。

395ピーチ:2012/06/09(土) 23:19:02 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわうわうわうわっ!!ヒースがヤバイっ!

理性吹っ飛んでます的な??

まぁ確かに、ヒースからすればシェーラが一番だもんねー

そのシェーラを泣かせたんだから、それだけでもヒースの中では万死に値してそうww

く、黒い豹・・・凄い表現だ・・・

あたしじゃ絶対思いつかないっ!!←文才ゼロで書いてる人ww

396月波煌夜:2012/06/10(日) 09:50:54 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 18』




―――……何度も何度も血が跳ね、刀身を、ヒースの顔を身体を髪を、全てを濡らした。


剣を振りかぶる間も惜しく斬りつける。

「……っぁあああああ!!」

背後からの声。
それが音となって空気を震わせ脳まで届く前にすかさず、振り向きざまに刀剣を振るう。刹那、グシャリ、という不快な音が耳に届いた。


―――集中しろ、風の悲鳴を聞き逃すな。


全方向からの攻撃を、目だけで察知するのは不可能。
意識を、感覚を研ぎ澄ませる。


大気を切断し真空すら生じさせる彼の超高速の剣戟は、最早常人が視認できる領域を遥かに超えていた。


無音の閃光が迸り、前方の兵士が纏めて吹っ飛ぶ。


「……はははっ」


しかし、ヒースも決して無傷ではなかった。
エインズワーズの制服は無残に切り裂かれ、所々日に焼けた肌が覗く。
ヒースは額から唇へと垂れ落ちるドロリとした熱いものを舐め取った。
苦味のある、鉄の味。

「こ、のっ……化け物があっ!」
顔を畏怖に歪ませる兵士たちが、剣を振りかぶり果敢にも襲いかかる。

「化け物、か……。それはさすがに傷つくんだが、俺も」

狂気じみた表情をふいに崩し、ヒースは苦笑した。


「でも、悪いな。……何と言われようと、俺は負けられないんだよッ!」


鋭い踏み込み。
直進運動を回転運動へ。
繰り出される剣を、彼らごと力ずくで吹き飛ばす。


腕力、膂力。反応速度、判断力。そして剣士としての熟練度。
全てにおいて、ヒースは圧倒的に卓越したものを持っていたが、


背後にいるシュオンを守り通さなくてはいけない。
捕らわれているソフィアを助け出さなくてはいけない。
―――待ち続けているシェーラのもとへ、帰らなくてはいけない。


こんなところで死ぬ訳にはいかない、と云う限りなく強い信念が、何よりもヒースを加速させる。


「は、……………ッ!」


―――お前らは雇われてるだけだ。何も悪くないのは分かってる。


―――でもさ。本気でこの俺を殺す気で戦ってるんだったら。



自らの目でもって戦術を制し、自らの脚でもって間合いを制し、自らの腕をもって剣を制し、
その剣をもって戦を制す。



「……そりゃあ、殺されたって、文句は言えねぇよなあ?」

397月波煌夜:2012/06/10(日) 09:57:29 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ヒースは理性なくなると微妙に性格変わるらしいね!

黒豹って言葉はヒース初登場のときに使ってるんだよw





月波、限界に挑戦中←

うわあああん痛いの嫌だよおおおお(うるさい


今回は短めだけど、ヒース活躍回として見逃してください……

398ピーチ:2012/06/10(日) 10:01:00 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ヒースが狂ったぁー!!

・・・あ、でも、ちゃんと生きて帰れるよね?大丈夫だよね?

399月波煌夜:2012/06/10(日) 10:04:16 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ


うん!月波はハッピーエンド大好き人間なので←

あ、次の書き込みはもうちょい待っててね!ごめん!

400レス突破SS載せるから……

400月波煌夜:2012/06/10(日) 10:09:49 HOST:proxyag002.docomo.ne.jp
†祝☆400レス突破†
記念SS『アイツの弱点①』

※『祈り』の前のあたりのお話になります。




「っきゃははははは!や、も、無理でっ……ひゃははははははッ」
屋敷中に、少女のあどけない笑い声が響き渡る。
「……なんだこの騒ぎ」
呆れた表情で、ヒースが扉を開け顔を出した。
「大人しくしてなさい……あらヒース」
「ひ、ひっ、……た、助かったぁ」
寝台(ベッド)の上、ソフィアとシェーラが揃って振り返る。
「シェーラが、脇をくすぐられるのが弱いって言うから、試していただけよ」
「もう十分試したじゃないですかー……」
「だって面白いんだもの」
ソフィアはあくまでしれっと。
「うー……ソフィア様にもやってやるんだからーっ」
シェーラはソフィアに後ろから抱き付くと、脇の下に手を突っ込み。
「くすぐったいでしょうっ?くすぐったいですよね、ねっ?」
「私はあんまり……」
「えええーっ!?」
微妙な反応のソフィアの肩を、シェーラは涙目でガクガクと揺らして。
「そんな、嘘ですよねえっ?」
「……こんなことで嘘をついてどうするの?」
「むー、そうですけどー……あ!ねえねえヒースは!?」
ぷくっと頬を膨らませて不満をアピールしていたかと思いきや、シェーラは期待するような、キラキラした眼差しで。
ヒースは正直に答えた。
「いや、俺もあんまり」
「嘘だぁあああー!ひどい!裏切り者ーっ!」
「俺がいつ何を裏切ったって言うんだよ!?」
シェーラはむくれて、
「絶対二人ともおかしいって!普通ならもっとこう、こそばゆいとか、」
「こんな風に?」
「ちょ、……ひゃはははっ!急には、ず、ずるいっ、っひ」
どさくさに紛れてまたくすぐり攻撃を追加するソフィア。
「この好感触……良いわね。ハマりそう」
「変なことにハマらないでくださいいーっ!」
爆笑しながらじたばたと暴れるシェーラを押さえつけながら、ソフィアは彼女を妙に嬉しそうに見下ろす。
「……じゃあ俺はそろそろ、」
「―――なんなのこの騒ぎ」
「わ!驚かせんなよシュオン!」
ヒースと入れ替わる形で、眉をひそめたシュオンが入室して来た。
似たような台詞をつい先程も聞いた気がするのは幼馴染みたる所以か、それともただの偶然か。
「ひゃ、……あ、シュオン様!丁度良かった、シュオン様はくすぐられるのって―――」


「ごめん、急に用事思い出した!またね」


素敵な笑顔を浮かべ、鮮やかに回れ右。
早足で去っていくシュオン。


「「「…………………………」」」


ソフィアたちは、黙って顔を見合わせた。

401月波煌夜:2012/06/10(日) 16:09:00 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp
†祝☆400レス突破†
記念SS『アイツの弱点②』




「待て―――!」
「待って下さいシュオン様―――!」

「……何でこういうときだけ鋭いかなぁ……っ」
シュオンは珍しく必死の表情で、長い廊下を突き進む。
その速度は最早競歩の域である。
―――とりあえず部屋まで逃げ込めば……!
「―――……させるかあっ!」
「わっ!?」
いつの間にやら、気配を完全に消して背後に接近していたヒースに飛びかかられ、両腕が絨毯の上に縫い止められる。
「……いったぁ……ちょっとやめてよ、この体勢すっごい嫌なんだけど」
「ふっふっふ。御託なんざ並べてないで観念するんだなシュオン!」
にやにやと笑いながらヒースは、日頃の恨みとばかりに、しかめっ面をして起き上がろうとしているシュオンを押さえ込み、遠慮容赦なしにくすぐり始めるが、
「…………………っく」
「……あれ?」
こしょこしょこしょこしょ。
「…………〜〜〜……っ……」
「……んだよ、何ともないじゃんか」
シュオンが顔を横に向けてぷるぷると小刻みに震えて耐えていたことにも気づくことなく、ヒースは不満そうにシュオンの脇から手を離した。
「折角お前の弱点見つけたと思ったのに。つまんねーの」
「はぁっ……はあ、……ヒース速いっ」
やっとのことでシェーラが到着、ぜえはあと息を整える。
「で、シュオン様も脇弱いんですよねっ?ぜーんぜん恥ずかしいことじゃないですよー、ソフィア様とヒースがおかしいんです!」
「……いや、僕は平気だよ?」
「えええええー!?」
がーん、とシェーラは大袈裟にふらりとよろめき。
「うーそーだー!」
「くすぐってみたけど普通だったぞ」
「これじゃああたしが変みたいじゃないですかー!」
ぷう、と頬を膨らませるシェーラ。
シュオンはゆっくりと時間を掛けて起き上がり、

「……で?この僕を床に押し倒すなんて……覚悟はできてるよね?ヒース」

聖天使にも勝る美貌に甘やかな微笑みを乗せて、にっこりと笑った。




+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+




「―――シュオン」
「ソフィア?珍しいね」
入って、とシュオンは書物から顔を上げ、心からの微笑と共にソフィアを自室に招き入れる。
「……ヒースが居ないけど何処かに出掛けたの?」
「うん。ちょっと材料調達のお使いを頼んだんだよ」
シュオンは笑顔で『猫目草:茎の部分に麻痺作用があるという。非常に希少でユミル平原の一帯のみに生息するらしい。レーゲ草と特徴がほぼ一致している為、発見は難しい。なお、ユミル平原はすぐ下が崖の上に、野生で気性の荒い獣が多数出没するので厳重な注意が必要』と書かれたページをぱたんと閉じた。
「ふうん。なら明日には戻ってくるのかしら」
「……生きてればね」
「え?」
「ううん、何でもない」
シュオンは曇りの一切ない輝く笑顔で。
「ところでソフィア、今日はどうしたの?」
「え、ええっと……」
ソフィアは頬を染めてふいっと目を逸らし、
「あ、あの、シュオン、ちょっと後ろを向いて貰えるかしら」
「後ろ?」
シュオンは首を傾げながらも素直にそれに従う。
すると。

―――ぽす。

軽くて柔らかくて、温かい感触が腰の辺りに当たった。
「……へ?そ、ソフィアっ?」
「黙って……」
「え、え、え?」
―――この格好だと赤い顔を見られる心配はないから良かった、じゃなくて!
嬉しいけど!正直凄く嬉しいけど!
「ソフィアっ?本当に何が、」
シュオンが首だけ振り返ろうとしたその瞬間。

「……えい」

「ひゃわっ?」

完全に油断していた。

ちょん、と脇の下を人差し指で触れられ、シュオンはビクリと身体を震わせる。
「……ごめんなさい」
目が合い、シュオンはしおらしく謝りながらもソフィアの紫の瞳が、玩具を見つけた子供のように、明らかに楽しげにキラキラと輝くのを見た。
悪寒。
「そ、ソフィア……?」
シュオンの笑顔が僅かに引きつる。
「……本当に、ごめんなさい」




その半刻ほど後。
「シュオン様、お茶をお持ちしまし……た……?」
「あらシェーラ。偶然ね」
シェーラはぱちぱちと瞬きした。
部屋の奥の寝台、金の髪を乱して頬を紅潮させ、はあはあと荒い呼吸をするシュオンが腕を付いて起き上がった。
涙で潤むサファイアの双眸や誘うように僅かに開いた唇など、色気だだ漏れ状態である。
その横に平然と―――訂正、物凄く満足そうに微笑むソフィアが座っている。
「な、何があったんですか……?」
「秘密よ」
ソフィアは笑って、可愛らしく小首を傾げた。

402月波煌夜:2012/06/10(日) 16:47:06 HOST:proxyag025.docomo.ne.jp
……ふう←久しぶりにバカオンリーの話が書けてすっきりした

すみません、訂正させてもらうと、『祈り』の前ではなく『恋のSpica』の前辺りの話になります。本当すみません。

……くすぐられるの弱い男の子ってちょっと可愛くないですか(`・ω・´)?
月波の萌えポイントがずれているのか……




それにしても本当に400いってしまいました。
腕試しということで此処まで長い話にするつもりはなかったので、自分でもびっくりです。
500は……いく……のかな(*´д`*)?
最終章なのに何処まで続くのか、ちょっと楽しみです←

403名無しさん:2012/06/10(日) 17:03:41 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
中二臭い

404月波煌夜:2012/06/10(日) 18:19:53 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 19』




「―――……お疲れ」
「…………ん」


振り返る必要はない。

この空間にはもう、自分たちしか残されていないのだから。

急所はできる限り外したが、果たして生きている者はいるのだろうか。血塗れで地に臥した兵士たちに黙祷を捧げてから、ヒースはシュオンに視線をやった。
「うわ、足の踏み場もないじゃない……」
「おんぶでもして運んでやろうか?」
「死んでも断る」
シュオンは細心の注意を払いながら傍までやってきて。
「こんだけの血ィ見ても失神してくれる可愛げはないのな」
「僕に可愛さを求めてどうするの?」
シュオンは肩を竦めて純白のハンカチーフを取り出すと。
「ほら。君も凄いことになってるよ、これで押さえて顔だけでも止血して」
「……良いって、汚れるから」
「こんな酷い顔した奴が僕の知り合いだと思われたら嫌だし?」
「他に言いようねーのかよ……」
世話が焼ける、とシュオンは嘆息して、背伸びしてヒースの顔を拭い、それから軽く手当てをする。
「……悪いな」
「うん悪い。もっと謝れ」
「………………………」
こいつの減らず口はいつ直るのだろうか。
―――まあ、こういうとこに可愛げがあるのかもしれねえけどな。
「……何?気色悪い顔しないでよ」
「やかましいわ」
思わず頬が緩んだのを感じて、ヒースは急いで気を引き締めた。




.。゚+..。゚+. .。゚+..。゚+



「………隠れて」
「は?」
「良いから」
屋敷の中へ易々と足を踏み入れた途端、シュオンに囁かれてヒースは眉をひそめた。
だが経験上、こういうときは相棒の言うことを聞いた方が良いということが分かっているので、ヒースは渋々と柱の陰に身を隠した。
すぐにぱたぱたという足音がして、真新しいメイド服姿の少女が駆け寄ってくる。
「……え、ええっと、」
「初めまして、可愛らしいお嬢さん」
シュオンは女性を虜にする砂糖菓子のように甘い微笑みを浮かべた。
「あ、あう……?」
少女は予想通り茹で蛸のように真っ赤になり、あわあわと口ごもる。
「僕は伯爵と晩餐(ディナー)の約束をしていた者なんだけどね。正門の方が妙に騒がしくて、この前教えて貰っていた裏口から入ったんだけど……人も少ないし。何かあったのかな?」
つらつらと嘘を並べ立て、心配そうに眉を落として少女を見るシュオン。
「ご、ごめんなさい!わ、私は良く知らないんですけど……二人連れの賊が侵入したらしいです。でも兵の人たちが皆出て行ったのでもう大丈夫です、安心してください!」
その兵の人たち皆を全滅させてしまった二人連れの片割れは声を潜めて。
「確かにそうかもしれないね。でも油断はしない方が良い、その賊っていうのはおとり役かもしれないよ」
「……おとり、ですか?」
「そう。騒いで注意を引きつけておいて、その隙に本命の仲間が侵入する。良くあるパターンだよ」
「そ、そんな……」
青ざめる少女に、シュオンは真摯な眼差しを向けて。
「君は……《紫水晶(アメシスト)》のことを知ってる?」

405時計:2012/06/10(日) 18:25:55 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
いやんっ

406時計:2012/06/10(日) 18:26:13 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
シコシコ煩いww

407名無しさん:2012/06/10(日) 18:31:07 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
中二暴走wwwwwwwww

408名無しさん:2012/06/10(日) 18:32:18 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
つきなみ嗅ぐなや笑

409月波煌夜:2012/06/10(日) 18:48:33 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 20』



「……《紫水晶》?あの、物語のですか?」
シュオンと隠れたままのヒースは素早く目配せしあう。
どうやらソフィアがこの屋敷に居ることを知っているのは使用人全員ではないらしい。
門衛と兵士にだけ知らされているのかもしれない。
「……ううん、宝石のアメシストのこと。伯爵とこの前お話したときに、かなり大きなアメシストの原石を買い取ったって仰っていたから……もしかしたらそれが狙われているのかもしれない」
「わ、私はどうしたら……っ」
「そうだね、アメシストのことは諦めた方が良い。それより巻き添えで殺される可能性があるから、できるだけのメイドや従僕(フットマン)を集めて一旦裏口から避難させよう。玄関ホールではなくて一階の窓からでも。できるかな」
シュオンの美形ぶりとそれっぽい言い方で、メイドの少女はすっかり騙されてしまったようである。
「分かりました……でも、御主人様がまだお部屋に」
「僕が呼びに行くよ、何階?」
「さ、三階ですけど……お客様にそのような……」
「ううん、可愛い女の子を危険に遭わせるなんて僕が耐えられない。ね、言うことを聞いてくれる?」
「……は、はい……っ」
「健闘を祈るよ!ほら早く、急いで!」
少女は今にも泣きそうになりながらも髪を翻し、使用人たちに情報を伝える為に駆けていった。

「……よし、邪魔者はこれで消えた、と」

「お前いつか天罰が下るぞ……」
ヒースは半眼で突っ込みながら柱の陰から顔を出した。
屋敷内の使用人を一掃した上に門前の凄惨な光景が見つからないよう裏口を使うことを指定し、《紫水晶》の名を出して鎌を掛け、さらに伯爵の部屋の場所まで聞き出してしまった。
腹黒女たらしの本気は恐ろしい。
「そうかな?かなりおかしいところもあるし苦しい言い訳だったけど、素直な娘(こ)で助かったよ……まあ顔見れば、どう取り繕ってても性格くらいは見当つくけど」
「…………………」
……本当に、恐ろしい。
遠くから、逃げ去る使用人たちの喧騒が聞こえ、やがて静まるのを確認してから、
「うわ、本当に行っちゃったよ。さっきの娘は素直だからだろうけど、我が身可愛さの人が大半だろうねえ」
「そうかもなー……」
にこにこと笑っているシュオンを胸中でこの悪魔、と罵りつつ、ヒースはもたれ掛かっていた柱から身を起こす。
「じゃ、そろそろ行こうか。嘘に気づいて戻られたら困るし」
「了解」
目指すは三階の伯爵の私室。
そこにソフィアが居るかは分からないが、行ってみる価値はあるだろう。

広々とした階段を上り、二階へ。足が着くと同時、



「―――待ってたぜ、お二人さん」



弾む声が響く。

手すりに腰掛け、にやりと笑う男の姿。
やや長めの大地色の髪、爛々とした光を放つ山吹の瞳。
―――暗殺者(アサシン)の青年、ジルだった。

410ピーチ:2012/06/10(日) 20:04:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーっ!!ジルの奴、待たなくてもいい!!

むしろ待つなー!!

さっさとソフィア様を返せー!!

・・・何かゴメン。うん、喚いてゴメン

411月波煌夜:2012/06/10(日) 20:38:57 HOST:proxyag009.docomo.ne.jp
>>ピーチ


うんごめん!
ジルは悪い子じゃないんだ!許してあげて!

……それにしてもシュオンの存在感の希薄さが半端ないな。
本当は火薬使う場面もあったんだけど、非道すぎるからやめたw
完全に悪役に染まってたしね←

……一瞬、群がる兵士を痛めつけるヒースが悪役に見えたのは何故だ……

412月波煌夜:2012/06/10(日) 20:53:55 HOST:proxyag010.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 21』




「……お前……ッ」
へらへらと笑うジルを映し出し、ヒースの双眸に殺気が宿る。
「ハハッ!やる気なのは嬉しーけど。まあまあ、ちょっと待ってくれや兄ちゃん」
ジルは余裕の笑みを崩さない。
よっと、と手すりから飛び降りると、
「ッてかマジであの量の兵士やっちゃったワケ?すっげえなァ、楽しみで仕方ねえや」
「楽しみ……?」
「そ、楽しみ。オレ様何よりも闘うのが大好きなんだよねェ。この前会ったときからさ、そこの兄ちゃんはぜってーに来ると思ってたんだよ。だから殺りあうのがそりゃあもう楽しみで仕方なかったワケ」
ジルは剣の柄をくるくると回し、
「で、そこのキレーなお兄さんは?まさかエインズワーズんとこの……」
「うん、一人息子」
ジルは猛禽を思わせる凄絶な笑みで。
「どーりで。オレ様、あんたみてーなさ、お上品なお坊ちゃんって一番キライなんだよねェ」
「……それは残念」
シュオンは不快感などおくびにも出さずに、柔らかに微笑む。
「……ま、とにかく、運動するにゃあ階段は狭っ苦しくてかなわねえ。とりあえずあっちに行こうか、お二人さん」
一瞬このまま駆け抜けて三階へ、そのまま逃げてしまおうかと考えたが、
「………………」
シュオンは首を横に振った。
それより早く、この不愉快な初対面の男―――ジルに捕らえられてしまうだろう。
何より。
シュオンは後ろ目に、ヒースをちらりと見やった。
「んだよ」
「……別に?仕方ない、行こうか」
―――……もしこのまま逃げ切っちゃったら、ヒースに恨まれるし?
大人しくジルの後に付いて歩くと、やがて広間に辿り着いた。
舞踏会が催されるエインズワーズ邸の大広間とほぼ同じだけの広さ。
しかし内装は全く違い、人気(ひとけ)がなく、ただただガラリとした部屋は寒々しい。

「―――で。お相手してくれるのはそっちの兄ちゃんで間違いねェな?」

「……ああ」

ヒースがシュオンを庇い、一歩前に出る。

「―――負けないでよ?」

「当然」

シュオンは壁際に寄り、静かに息を吐いて、対峙する二人を眺めた。


―――あの、ジルという男。
全く持って動きに無駄がない。
薄い橙の瞳は獲物を決して離さない。
足音は皆無、一つ一つの動作は敏捷。
……かなり、できる。
対して、先程の連戦で疲労したヒースはかなり不利だ。

……でも。


信じるしかない。
非力な自分にできるのは、彼を信じ、祈ることだけ。




「へへっ……兄ちゃん、本気で掛かって来いよ?オレ様、兄ちゃんくれえに強ェ奴と本気で殺り合えるなんて初めてだわ!」


「―――そりゃどうも」



心からの愉悦に酔っている様子のジルと対照的に、ヒースは静かに相手の力量を量っているようだった。
黒い瞳を細めてジルを睨み付け、剣を上段に振り上げた状態で体勢を保つ。

そして。


―――刹那、満ちる静謐。



開始(はじまり)の合図はいらない。



「―――っしゃ、行くぜ兄ちゃん!」



「……………………ッ!」



ヒースは、目の前の男に向かって駆けた。

413ピーチ:2012/06/10(日) 21:03:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

だーもーっ!!ヒースっ!いくらジルが悪い子じゃなくても、今は敵だー!打ちのめしてしまえー!!

殺気宿してていいから!!とにかくシェーラちゃんのためにも倒せー!!

あ、それと話変わるけどさー、相談乗ってもらいたいんですが・・・。

414Mako♪:2012/06/10(日) 22:34:45 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
ヒース、頑張れ!
ソフィア様に辿り着けるように!

ピーチ大丈夫かー!?

415ピーチ:2012/06/11(月) 00:06:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
まこ>>

へ?あたし?何が大丈夫?

分かんないけど、とりあえず大丈夫ーww

416月波煌夜:2012/06/11(月) 09:14:26 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 22』




蹴り足の勢いを足から背中へ、背中から肩へと流して剣を振りかぶり―――
閃光。
「っ!」
それを振り下ろすことなく、ヒースは床を蹴って真横に跳躍。
靴が硬い感触を捉えるのと同時、突き出された無音の剣先が軍服の端を僅かに切り裂いた。

「わお!すっげえな兄ちゃん、オレの一太刀目を避ける奴ァ初めて見た!」

ジルは興奮に山吹色の瞳を炯々と輝かせる。


―――今のは危なかった。


ヒースは舌打ちしながら上半身を反らし、顎先すれすれに剣を回避。


キンッッッ!


甲高い音が響く。


腕力は互角―――否。
こちらの方が僅かに上。
……ただし、差はほんの微細だが。


鍔迫り合い。
鼻先が触れそうな程の距離で敵(ジル)が笑う。


「なあなあ、あのメイドのお嬢ちゃんは兄ちゃんの女なワケ?」


……この状況で無駄話をする余裕があるとは。


ヒースは表情には出さず感心しながらも、


「……いや?」


さらに踏み込み、剣を彼ごと、渾身の力を込めて吹き飛ばす。

―――……とん。

しかし先程の兵士たちとは違い、しなやかな猫のように綺麗に衝撃を吸収、異常なまでに軽い体重を生かして難なく着地するジル。


「―――まだ、違う」


「へええ?」


からかうような笑みを浮かべた途端、すぐさま体勢を整えて疾走。


「あっはは!そりゃ面白え……けど、」


ジルは歯を剥き出してけらけらと笑い、


「お嬢ちゃんのお陰であんたのこんな目ェ見れたってんならさ、お嬢ちゃんに感謝しねえと、な!」


一切の感情が消え、美しく冴えた殺気だけを湛える漆黒の双眸。


その言葉に、ヒースは笑みを浮かべ、口を開いたが、


「―――――っ!」


ずきんっ―――鋭く走る激痛。


「…………っ、」


「ん?どーしたの兄ちゃん」


よそ見してる場合じゃないよ?とジルは剣を突き出そうとしたが、


「……ヒース……腕!」


切羽詰まったシュオンの声に細い眉を潜めた。



解けかかった包帯に赤が滲み、ぽたり、ぽたりと、次々に血の雫が床へと落ちていく。
……傷が、裂けたのだ。

「ぅ……ぐ……」

ヒースは苦悶の呻き声を漏らすが、それでも歯を喰い縛り、ジルを真っ直ぐ睨み付けた。


「うわぁ痛そー……でもまだいけそーだな。オレ様怪我人だからって容赦しないよ?」


「……はっ!当たり前、だろうが」


血と共に、夥(おびただ)しい量の脂汗が伝うのを感じながらも、ヒースはやや時間を掛けて剣を構える。


―――持久戦となれば勝利はない。


なら。


「……休憩は終わりだ。行くぞ」

「アハハ!それでこそ兄ちゃん!」


―――出来る限り早くケリをつける。


それしか、ない。

417月波煌夜:2012/06/11(月) 09:19:43 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あのヒースと同等の実力のジルですが、はたして勝負の行方は!(なんかナレーションぽく

相談?どしたのー(^o^)?



>>Mako♪さん

応援ありがとう!
ヒース頑張ってるよw

418ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/11(月) 11:59:00 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp

やっべえヒースかっこいi(ry
なんだかここに来るたびヒースヒースうるさくてすみません^o^←

ジルが良い子だということを信じてシェーラといっしょにヒースの帰りを待ってます!((

419月波煌夜:2012/06/12(火) 11:04:22 HOST:proxyag022.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 23』




「は……っ、」

視界が霞む。
血が足りないのだ。

傷口が開いた左腕だけでなく、全身が痛む。
筋肉が悲鳴を上げている。
気を抜けば崩れそうになる足を叱咤し、ヒースは薄笑いを浮かべ、迎え撃つ姿勢を整えた男へと一心に駆けた。
―――この一撃に、賭ける!



「「――――――――ッッ!」」



二条の閃光と化した剣が真正面から衝突し、


―――刹那の空白の後。二人は互いに背を向けて、立っていた。


「…………ハハ」


ジルの唇が開き、小さな笑い声と共に吐息が漏れる。


「……やっべえ。強ェなァ、兄ちゃん……本当は国の騎士か何かか?」


―――リ、ィィィィ……ィィンッ……


ジルの剣の刀身が、透き通った音を立て、砕け散った。



「……いや」

ヒースは静かに、右手で柄を握った剣の切っ先をジルの額に向けて。

「ただの、御嬢様付きの従僕(フットマン)だよ」


―――……終わった。
シュオンは安堵に息を吐き出した。
労いの言葉を掛けようと口を開いたが、




「―――……わりィな、兄ちゃん。まだ終わってねェんだ」




―――……終わって、ない?
シュオンは瞬きした。
油断なく剣を構えるヒースも訝しげな表情をしている。


「はー……オレは正々堂々と勝負すンのが好きだからさ。こォいう負けた上にセコいことすンのはショージキ気が乗らなかったんだがねー……『命令』だから仕方ないんだよなァ」


「……言え。何を隠している?」


「やー、隠してはいないんだけどね、見えなかっただけで」



ジルはまだ余裕の残る表情で、



「……忠告しとくと。兄ちゃん、真っ直ぐなのはいーけど、他人(ヒト)を疑うってことを覚えといた方がいーよ?」



ヒースを見つめ返しながら、右の指先を、何かを引っ掻くように“ついっ”と動かした。


「オレはあくまでも剣士じゃなくて暗殺者(アサシン)で、おまけに此処は敵(オレら)の本拠地なんだからさ」



意味を分かりかねていたヒースの顔に、



「っ!?」



急速に、驚きの色が広がる。



「……な、」



剣を持つ右腕が、動かない。
……いや、右腕だけではない。

左腕も胴体も足も指一本でさえも、全てが。



「何を……した……っ?」



「ゴメンゴメン、そんな怖ェ顔しないでよ兄ちゃん」



ジルは、本当に申し訳なく思っているようだった。

こぉいう小道具使っていたぶるのってオレじゃなくてユーリエの十八番(おはこ)なんだがなー、と呟く。


シュオンは何が起こっているのか見極めようと、ヒースの周りに目を凝らす。
……キラリと光る、限りなく細い線が走っている?
あれは。

「……糸?」


「お、お兄さん正解」


ジルは片眉をひょいと上げて。



「でも、ただの糸じゃねェんだなこれが。特殊な刃が組み込まれた暗器」



だから、とジルは距離を取り、握った右手を“ぐい”と引いて。



「―――こういうことも、できる」



鮮血が、迸る。
糸が食い込み、ヒースの皮膚を切り裂く。


「……う、っあ」


「ヒースッ!」


シュオンは血相を変えて駆け寄ろうとするが、


「このまま殺せ、ってのが『命令』なんだがな……」


ジルが俯き、小さく呟く。

次の瞬間、顔を楽しげに輝かせてシュオンの方を向いた。



「この兄ちゃんは気に入ったし、オレも鬼じゃねえ。そこでだ」



ジルはにやりと笑った。


「そこのお兄さん。オレと勝負しねェか?もしオレに勝てたら、そうだな……二人纏めて見逃してやるよ」

420月波煌夜:2012/06/12(火) 12:09:36 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 24』




シュオンは碧の瞳を動揺に揺らす。

「……僕、が?」

「そ。小細工なしの剣勝負。オレ様、力に溺れたお貴族サマをこてんぱんにすンのって大好きなんだよねェ。だから大サービス。あーオレ様やっさしー」

「―――馬鹿シュオンやめろ!こんな分かりやすい挑発に引っかかるんじゃねえ!」

糸が緩み、ヒースは膝から崩れ落ちる。荒い呼吸をしながらも叫んだ。

「お前だって見てただろうが!こいつ半端じゃねえ強さだぞ、家で習ったことがある程度のお前が適う相手じゃない!」

「……そうだね」

シュオンは静かに頷いた。


「―――でも、やるよ」

「シュオンっ!?」

「それしか打開策はないんでしょう?なら仕方ない」


シュオンはジルを真っ直ぐ見据えて。


「―――僕は、自分が今できることをするだけだよ」


「へええ?ただの優男だと思ってたら意外と根性ありそうじゃねェか」


ジルはコートの中から、すらりと長い刀身の新しい剣を取り出して。


「そこそこ楽しめそうだな?」

シュオンはヒースに歩み寄り、しゃがみ込んで。

「ヒース、これ借りるからね?」

「待てシュオン!お前こんなとこで死んだらどうするつもりだよッ」


「そのときはそのときだよ」


シュオンはヒースを軽くいなしながら彼の剣を持ち上げたが、

「……重っ」

「馬鹿、だからやめとけって!」

「大丈夫大丈夫」


シュオンは微妙によろけて顔をしかめたが。やっと、ふう、息をついて剣を構える。


「……や、本当に良いんだな?お兄さん」

「うん、大丈夫」


敵に心配される程に不慣れな様子を見せるシュオンだったが、儚げに笑って言った。


「……そういや兄ちゃんもそうだけど、名前聞いてなかったな」


ジルはやや躊躇した様子で剣を持って。


「オレはジル、あんたらは?」


「そっちはヒース=ユーゼル。そして僕は、」

シュオンはふわりと微笑んで。



「―――シュオン=フィユ=エインズワーズ」



「……じゃあ、シュオンとやら。しつけェけど……マジで、良いんだな?」

「うん」


シュオンはジルに向き合った。




「僕は、僕が守るべきものの為に戦うよ」




背後で苦しげに見守るヒース。
そして、この屋敷の何処かに居るはずの、ソフィア。
彼の最愛の女性(ひと)。



「―――お手柔らかに」



それが合図。

両者が同時に、床を蹴った。

421月波煌夜:2012/06/12(火) 12:15:47 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
>>ねここさん


いえ、ねここさんのコメは心の励みです!
最近「ヒースかっこよく……ヒースかっこよく…ヒース……あれ、本当にかっこいいのかこれ」となってきていたので良かった……!



独り言を呟いてみる。
ヒース最強にするのもアレだしジル暗殺者ぽくないしシュオンの見せ場ナッシングなので使ってみました暗殺器具。
シュオンがんばれ!と応援して戴けたら嬉しいです←
なにげにシュオンのフルネーム初登場な回でした。…フィユって可愛くない?

422Mako♪:2012/06/12(火) 20:26:25 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
な……シュオン=フィユ=エインズワーズだと!?

可愛いじゃないですかー!

というか、シュオン!!そんな、剣を持っただけで、悲鳴を上げてたら……
大丈夫かーーー!?

とにかく頑張れ!

423月波煌夜:2012/06/13(水) 11:00:14 HOST:proxyag077.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 25』





―――誰の目にも分かる。はっきりと劣る、腕力の差。

「……………っ!」


絶え間なく突き出される剣を、何とか身を捩(よじ)ってかわし、息継ぎする間もなく次の瞬間にはまた襲い来るそれをぎりぎりまで引きつけ、身体を反らす。
剣閃は虚空を切るが、鋭い痛みが頬を走り、シュオンは整った顔を歪ませた。

熱い。皮膚一枚を削られ血が滲むのを感じる。

シュオンは距離を取ろうとするが、ジルがそれを許さない。


「逃げンのだけは得意みてェだけど」


放たれた矢の如く真っ直ぐに駆けるジル。


剣が閃き、剣先が血を舐める。


「…………は、ぁっ」


緊張と焦燥、そして怯え。
苦しげに小さく喘ぐシュオンの顔に、様々な色が浮かんでは消え―――



―――……うん?
ヒースは僅かに胸の奥にひっかかるものを感じたような気がして、眉根を寄せた。
……何かが、おかしい。
その正体は分からないがしかし、確かな違和感。



「―――ほらもう後がねェぞッ!」



ジルが余裕の笑い声を上げ、剣を振り上げる。


勝敗は明らか。


ヒースは低く唸り、惨烈な光景から目を閉じて逃れようと―――




「―――……ふふっ。……それはどうかな」




ジルの見開かれた双眸に映ったのは、
―――サファイアの透碧。
何処までも美しく、何処までも鮮やかで清らか。
しかし背筋を凍らせる程に冷たい、研ぎ澄まされた鋭さを宿す冷徹な瞳。



「……実はね。距離を変えて間合いを測っていたんだ」


穏やかな声が、柔らかに弧を描く口唇を震わせる。


「大体分かったよ。君の剣の間合いは最大四・二六メートル、対してこちらは三・九四メートル」


「「なっ……!?」」


ジルとヒース、同時に漏れる驚愕の吐息。


「つまり、君が三二センチ以上近づけば僕の間合い。それより離れていればこっちの攻撃だけが一方的に当たる」


そこまで一気に話すと、シュオンは小首を傾げて笑った。


「……ってことで、合ってるよね?」



ヒースは愕然とした。
……この短時間で、相手の攻撃をかわしながら剣のリーチを寸分違わず見極めていただと?それがでたらめでないなら、
―――……何なんだこいつは本当に!


「な、何なんだよあんた……」


ジルも顔を引きつらせたが、


「……っ、間合いが分かったって近寄らせなきゃ良いだけだ、あんたがド素人で弱いってことは変わらねェだろッ!?」

それになア、と我に返ったように猛禽の双眸をギラつかせ、大剣を構えるジル。


「リーチが長いぶんこっちの方が有利なんだよッ」


迫り来る剣の嵐。

「……確かにそうだね」

シュオンは先程と同じく防戦一方で、



―――いや、違う。



ヒースは唾を飲み込んだ。
興奮しきっているジルは気づいていないようだが、


刀身を僅か数ミリの差で逸らし、最低限の力で受け流す。
水が流れるように自然で、しかし全て計算尽くの所作。


「―――……さて」


シュオンは目だけで笑い、




「そろそろ反撃、行こうかな」

424月波煌夜:2012/06/13(水) 11:04:59 HOST:proxyag077.docomo.ne.jp
>>Mako♪さん


ううう優しい…!
ありがとー!

シュオンの名前は密かに気に入ってます←

シュオン頑張ってるよ!
次で決着つけます、応援本当にありがとう!

425月波煌夜:2012/06/14(木) 08:59:18 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 26』





キンッッッ!


鍔迫り合い。
確かな手応えに、ジルの目が見開かれる。

やはり僅かに押し負けて後退したが、……ほぼ、互角?
そんな馬鹿な。


一瞬できた空白、シュオンの剣が突き上げるように閃く。


「ぐっ……!?」


ジルは慌てて大剣の柄を握る手に力を込め、それに応じた。


―――この男。

―――目の色が、違うッ?



機敏にして静謐。
華麗にして残酷。


これが戦闘だということすら忘れさせるような、あまりに美しい剣技。


舞の如く無駄のなく澄み切った流れ。


まずい。


―――嘘だろッ!?これ以上踏み込まれたら……!




『―――……ねえ』




背筋が泡立った。


鈍い光を魔性の瞳の奥に灯し、シュオンが笑う。


いつの間に自分の背後、息の掛かる距離にまで接近していた?
振り向こうとしても、魔法にかかったように身体が痺れて動かない。




『―――この世で一番、人間(ヒト)の心を奪う色を知っている?』




それは妖艶なる悪魔の囁きで。




―――……“紅(あか)”。


噴き出した血飛沫に、切り裂かれたジルの背が急速に深紅に染まっていく。



前のめりに倒れるジルを、シュオンは黙って見つめていたが、



「王手(チェックメイト)……かな」



やがて。ヒースを振り向き、照れくさそうに、満足そうに、微笑んだ。





「……お、お前……そんなに強いなんて知らなかったぞ……?」

静寂を取り戻した広間に、しどろもどろなヒースの呟きが木霊する。

「や、強くないよ?全然腕力ないし。だからそのぶんスピードだけ伸ばしたんだ。相手の隙を叩くのはちょっと得意なんだよね」

ちなみに剣を持ったときよろめいたのはちょっと大袈裟にやってみた、と笑う。

初め、つらそうな様子を見せていたのは演技。
ジルはまんまと騙され、そしてこれなら楽勝だと油断した。
しかし後半、垣間見たシュオンの冷静な分析によって、油断の反動で生まれた焦り。
そこを狙った。

「間合いを測ってたっていうのは……」

「それは本当」

シュオンは血が滴り滑り落ちる剣を嫌そうに見つめていたが、徐に臥したジルの服にごしごしと擦り付けて―――いやそれはいかがなものか―――拭い去ってから、ヒースに手渡した。

「黙っておいても良いのにわざと口に出したのは、ああいうふうに言っておけば勝手に焦ってくれるかなと思って」

「俺もそこまで意識しねーし、とてもできねえぞ?」

「普通そうだよ。僕は細かい作業は得意分野だからねー。目的の物質を作るときも、液体の量をたった一滴でも間違えたら台無しになっちゃうんだよ?それがスリルあって楽しいんだけど」

……そういう問題だろうか。

「まさか勝っちまうとは思ってなかった……」

「失礼な。僕が勝負事を引き受けた時点で負ける訳ないじゃない」

凄い自信である。

「それにさ。僕のこと馬鹿にしてるみたいだったし道具を持ち出すなんて卑怯だしソフィアを攫った人らしいし、ちょっと制裁加えてあげようかなーって」

「つまりお前の山より高いプライドを傷つけられた上に俺も殺されかかった上に御嬢様を連れ去った張本人だしでしおらしく振る舞いながらも内心ブチキレてたと」

「そうとも言うね」

にっこり。

ヒースは呆れてしみじみと言った。
「あれだな。お前が俺以上に馬鹿だってのが良く分かった」
「……こ、ここまでの侮辱を受けたのは生まれて初めてだよ……」
「どういう意味だそれ!」
本気で絶望した表情をされた。

426月波煌夜:2012/06/17(日) 19:00:19 HOST:proxyag046.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 27』





「……っつぅー……」
呻き声。
見れば、ジルがゆっくりと身体を起こしているところだった。
その拍子にごぽ、と溢れ出る血に青ざめた顔をしかめる。
「……はーいってぇ……そこの兄ちゃん……ヒースだっけか?とおんなじとこ切ンのなー……」
「え、そうなの?ごめんね」
形の良い眉を下げて謝罪するシュオンを見てヒースは確信した。
―――……絶対わざとやりやがったなこいつ。
口に出しては言わないが。
「あーあ……オレ様超カッコわりィじゃん」
血がこびりついた大地色の長い髪を掻き上げて、力無く呟くジル。
「そうだね」
「うぉい」
怪我人を笑顔でなじるとは実に容赦がない。
「リーチが長い得物ほど、間合いに入られたときの隙は大きい。分かりきったことだと思うけど?」
「ハハ。ごもっともすぎて何も言い返せねェわ」
ジルは床に座り込んだまま肩を竦める。
「でもまっさかお兄さ……シュオンにやられるたァ思わなかった。女顔のおキレーな顔してるしてっきりかなり弱いかと思ってたわ」
「ヒース、この愚劣で下品で呼吸する資格すらない下等生物の髪を毟り取って穴という穴に詰め込んでやってくれる?」
「リアルに怖えこと言うんじゃねえよ!」
一片の曇りもない完璧笑顔で、殺せ、よりもずっと惨い命令を下してくるシュオン。
幼い頃から密かに気にしている『女顔』という単語に反応したらしい。
「な、なにこいつ怖い……」
先程までの闘争意欲に溢れていた姿は跡形もなく、顔面を引きつらせ兎のように怯える彼。
「余計なこと言わない方が身の為だと思うぞ……」
「……あ、あんたも苦労してンだなァ……」
「……ああ。それはもう……」
ジルの哀れみの眼差しが痛い。ヒースは微妙に視線を逸らした。
「……で?僕たちはもう行って良いんだよね?」
シュオンの微かに苛立ちを含んだ声に、ジルは頷いて。
「ああ、男に二言はねェよ。……そっか、あんた達はあのお嬢さんを連れ戻しに来たんだったか」
「ソフィアの居場所を知ってるの!?」
“あのお嬢さん”が指す人物が誰なのか瞬時に理解し、たちまちシュオンは血相を変える。
「や、わりぃ、それは知らねェけど……んー、ユーリエは知ってるンじゃねェかな」
彼の剣幕に本能的な恐怖を感じ、愛想笑いを浮かべながら微妙に後ずさるジル。
「そのユーリエ?って?」
「もしかして、あのときお前と一緒に居た女のことか。赤い髪の」
「そ。色々事情があって、オレのパートナーやってる。根は争い事が嫌いで、優しくて良い奴なんだが、自分の仕事に差し障りがあると判断したときはオレよかずっと容赦ねェから、気ィつけた方が良いぜ?」
あと倒すべきは、ユーリエという赤い髪の女というわけか。
そもそも彼女は何故、争い事が嫌いだというのにジルと組んで暗殺者(アサシン)を生業(なりわい)をしているのか。少し気になったが、それについて聞き返す程ではないのでシュオンは些細な疑問を飲み込むことにする。
「彼女は今何処に?」
「さあ……。最初の方は《紫水晶》のお嬢さんにくっついて熱心に話しかけてたけど、上手くいかなかったみてェで残念そうだったな」
まーそりゃ自分を攫った奴と仲良くできるワケねェよなァ、とジルは苦笑して。
「諦めて、今は大人しく伯爵の護衛をしてるってのがオレの予想」
「他に誰か戦えそうな人は?君たちの仲間とか」
「んー、伯爵は《紫水晶》の奪還にはオレらしか雇ってねェから、いねーと思うよ?兵と使用人共は誰かさんたちが全員追っ払っちゃったみてェだし?」
つまり、伯爵に会うにもユーリエと対決するにも、居場所が分からないソフィアを救出するにはやはり、とにかく三階の伯爵の私室に行くしかないということだ。
「そう。情報有難うね」
そうと決まればできるだけ早く行動するに限る。
シュオンはヒースを促して広間を出ようと身を翻したが、
「ちょっと待て」
まだ何かあるのか。
二人は訝しげに振り向く。
ジルが剣を杖代わりに、よっ、と立ち上がり、息を吐いて。
「伯爵の部屋、何処か分かンねーだろ?三階だけでアホみてェに部屋数あるし、教えてやっから」
「……君って案外、良い人だったんだね」
シュオンは意外そうに金の長い睫を瞬かせて。
「まァな。お貴族サマでも根性腐ってねェ奴がいるってことが分かったし、ヒースにも怪我してるってのに悪いことしちまったし。せめてもの罪滅ぼしってやつ?」
それに、とジルはにやりと笑って。

「人の恋路を邪魔したら馬に蹴られるって云うしな」

427ピーチ:2012/06/17(日) 19:16:37 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ひっさしぶりー!!!

いや。今ね、テスト期間中なんだわ。うん。

それでPC使わないように頑張ってたんだけど、無駄なことだと分かり、現在に至るww

ヤバイヤバイ!!シュオン様って計算高すぎ!!

ヒースは強いし・・・ソフィア様っていろんな意味で強い人に囲まれてるねー・・・

・・・ほんとにジルが優しかった!!何か信じらんない・・・

あ、相談しても宜しい??←あほ。

428月波煌夜:2012/06/17(日) 19:40:19 HOST:proxy10087.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久しぶりー( ´艸`)

テストか(゚Д゚)
確かに息抜きしないともたないよねー←
でもほどほどに、後悔しないように頑張って!

シェーラとヒースに引き続き、ジルとユーリエの話も書きたくなってきて困るw
もし書いたときはちらっと読んでやってー(´_ゝ`)


相談どうぞ( ^-^)_旦〜

429ピーチ:2012/06/17(日) 20:51:37 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやー、もーテストとかって捨てたいしーww←事実上は捨てらんない・・・((泣

うーん・・・ほどほどにしすぎて後悔するかもwwでももう気にしなーいww←おおばか。

じゃあ、そーだん行きまーす←ばか。

あのさー、友達とかと小説書いたりしたことある?自分のキャラと友達とかのキャラ混ぜて←こんだけかよって思わないでね((汗

430月波煌夜:2012/06/17(日) 21:42:14 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ

す、捨てちゃ駄目だー!
どんなにちっさいテストでも勉強したことは絶対後で役に立つから!
頑張ってー(*´д`*)


や、月波はこそこそ小説やってるの親とか友達にもひた隠しにしてるし、書いてるのもコレだけだからやったことないよw
それがどしたのw=(゚o゚)=w?

431ピーチ:2012/06/17(日) 21:58:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははーwwもうテスト人生終わったーww←何だそれww

だって数学の単元テストの結果、最悪だったもーんww

あー・・・やったことないかー・・・うん。あのね、つっきーのこれと合わせてみたいなー、なんて思ったことがあったりしてww

まぁ、あたしの残念な小説とコラボすると完全につっきーのまで残念になっちゃうからね・・・

頭ん中で考えるだけにしとくーww

うん。でも、いやだったら言ってね。即座にやめるから!

432Mako♪:2012/06/17(日) 22:08:08 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
わ!なんだか奇跡の作品が生まれそうな予感……♪
良いですなー♪
合同作品かー。面白いことになりそうだ♪

ピーチ>>テストねえ……
ってヤバ!明日からテスト週間だ!!
部活の朝練無い代わりに勉強会だぁ。
面倒だけど、中間ヤバかった分、取り返さなきゃ!


みんな頑張ろう!
(勉強、小説)←馬鹿野郎ww

433月波煌夜:2012/06/17(日) 23:16:58 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここここらぼっ!?
いやピーチがやるなら絶対素敵なものになりますけれども!
え、私も書くの!?ピーチだけではなく!?無理だそんな文才は月波には備わっていないッ!

あ、『紫の歌』のキャラどもは、それはもういくらでもお貸ししますよ?( ・∀・)つ【箱】


>>Mako♪さん

テスト頑張ってねー!
皆忙しいなー……月波は来週から文化祭ですが←

434ピーチ:2012/06/17(日) 23:59:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

えっ!いーの!?ほんとに!?

あたしがつっきーのキャラ借りたら・・・多分、つっきーの中でのキャラ壊しまくるかと・・・

それでもいーの!?

まこ>>

ゴメン。スレ的につっきーのスレだからつっきー優先しちゃった・・・

奇跡の作品・・・いやっ!つっきーのならいいとして、あたしのキャラが悲しいことしまくるよー((泣!!

て、テスト週間・・・あたしは、まさしく今がそれだー!!

もー知らない。テスト捨てたww

あ、まこは捨てたらダメだよ?

435月波煌夜:2012/06/18(月) 07:55:35 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、ほとんど既に壊れてるから大丈夫w
それ以上に壊れるっていうのもそれはそれで面白いしね←
こんなんで良ければ喜んでお貸し致しますよ(`・ω・´)

なんかテキトーにタイトルつけて、別にスレ立てちゃってね☆

436ピーチ:2012/06/18(月) 17:44:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ああああありがとうございますー!!!

あ、そー言えばソフィア様とシュオン様とヒースとシェーラって何歳くらいの設定??

よかったらそこら辺教えてくれー!!

タイトル・・・お願いしますっ!!一緒に考えてくださいっ!!!

437月波煌夜:2012/06/18(月) 19:07:04 HOST:proxyag032.docomo.ne.jp
.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚

ピーチ応援企画!!
†月波的・『紫の歌』メインキャラまとめ†



○ソフィア
存在感一番薄いけどヒロイン。ヒロインったらヒロイン。
銀髪、紫の瞳の儚げな美少女。16歳。
幸福をもたらし願いを叶えるという伝説の《紫水晶(アメシスト)》であり、重なる辛い体験から人が信じられなくなっていたが、エインズワーズ邸にて出会った三人との交流のうちに心を開き、感情の起伏は乏しいが思ったことをそのまま口に出せるまでになった(→やや毒舌の傾向あり。言うまでもなくヒースが主な被害者)。
最近シェーラの計らいによりシュオンを意識するように。でもシュオンの想いには綺麗さっぱり気づいていない。
一人称「私」。

○シュオン
金髪碧眼の美青年。19歳。
フルネームはシュオン=フィユ=エインズワーズ。
超名門の公爵家の子息。
外面は完璧だが、本性は腹黒く狡猾。しかしことソフィアのことが絡むと途端に純情になったり。
趣味はピアノ、また火薬毒薬の研究には周りから「変態」と称せられる程の情熱を注ぐ。
一人称「僕」。

○シェーラ
エインズワーズ家のメイド。17歳。
小鹿色(フォーン)のふわふわした髪に青灰色の瞳。
人差し指を立てるのが癖。
天然で脳天気、でも誰よりも相手を思いやり明るく振る舞うという一面も。
何かと器用で、メイドの中では重宝されている。
ソフィアとシュオンには様付けで敬語、ヒースは呼び捨てでタメ口。
何だかんだでヒースの能力はしっかり認めている様子。
一人称「あたし」。


○ヒース
何かと哀れすぎる従僕(フットマン)。19歳。
黒髪に黒い瞳、長身。
その高い身体能力と剣の技術を買われ、ソフィアの護衛に任命された。
たまにエインズワーズ家の兵士と手合わせをしており、彼らには大変慕われている。
にも関わらずその単純さゆえにからかわれることが多く気苦労は絶えない。
シュオンの乳母の息子であり実家はユーゼル子爵家。シュオンの親友。
シェーラに片思い中だがなかなか報われない(多分)。
ソフィアにだけ敬語、彼女のことは「御嬢様」と呼ぶ。普段はやや乱暴な言葉遣いが特徴。
一人称は「俺」。


.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚



やー、こいつらがコラボしてもらえるほど愛されてるなんて嬉しすぎて涙が出てくるよー( ´д⊂)
タイトル……うーん、「紫の乙女」は入れてほしいかもしれない←
とりあえず考えてる内容を軽ーくぷりーず( ・∀・)

438ピーチ:2012/06/19(火) 21:48:40 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー・・・ありがとー!!ほんとにありがとー!!!

む、紫の乙女か・・・

むー・・・

あ、『紫の乙女 〜瞳の奇跡〜』みたいなのでいい?

あ、それとさー、あたしがスレ作ったらつっきーも書かない?一緒にww

嫌だったらいいんだけどねーww

439月波煌夜:2012/06/19(火) 23:07:27 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp
>>ピーチ

な、なんかコレより本編な感じがするぞ!?

えっと……まず聞きたいんだけど、ピーチが今書いてる小説のキャラとコラボするの?それともピーチが新しく『紫の歌』の世界観に合わせてキャラ作ってくれるの?
もし前者ならピーチの要素も入れなきゃだよね(´_ゝ`)
それなら“協奏曲(コンチェルト)”みたいな単語入れても良いかも。
後者ならー……短編みたいな軽い話だったら“挿話集(エピソード)”みたいな言葉の方がわかりやすくない?

とにかく、どんな感じの話のつもりなのかもうちょい詳しく教えてくれー(´・ω・`)

月波は書き下ろしみたいな奴なら書いても良いかな的なつもりなんだけど……

440ピーチ:2012/06/19(火) 23:11:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あ、考えてる内容はね・・・

とりあえず一番最初はソフィア様とシュオン様に喋らせて、その話の内容がヒースのことで、シュオン様が機嫌悪くしてー・・・

んでその後にシェーラちゃん乱入してきてまたしてもヒースがなんたらかんたら・・・

で、ソフィア様の部屋に異形が入り込んでー・・・

んでヒースはヒースでどこの誰とも知れない人間三人に向かって剣の先突きつけてて←その三人があたしの小説キャラww

「異形のモノが入り込んだ」って言ってかなり強引に邸に入ってー・・・

で、その後に頃合を見計らってヒースにとんでもないモノ憑かせたいなーと思いましてー

ヒースの役柄これでOKですか、作者様!!←おおばか。

441月波煌夜:2012/06/19(火) 23:39:02 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp
>>ピーチ

わあいヒースはやっぱり苦労するんだね!

うん、なんか月波のやつが主軸で申し訳ないけど(;´д⊂)
確かに『紫の歌』はファンタジーの癖してモンスターとか魔法とか出てこないからね!派手で良いと思う!

うーん、それだと、あんまり気取ったタイトルじゃないほうが良いかな?
無難に「紫の歌×【ピーチの小説のタイトル】」みたいなので良くない??
サブタイつけるならつけるでw

442ピーチ:2012/06/19(火) 23:46:15 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーい♪ありがとー!!

あ、それいいかも!よしっ!タイトル決定!!

早速スレ作るねーww

あ、ついでだけどさー、あたしの小説で使うのは『鈴扇霊』ってやつだよーww←今更だけど・・・ゴメン!

443ピーチ:2012/06/20(水) 00:19:55 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜瞳が持つ奇跡〜

「―――ソフィア?」
ソフィア、と呼ばれた紫色の瞳を持った少女が、声に反応して振り返る。
「どうかした?シュオン?」
同じくして、シュオンと呼ばれた彼も、彼女に向き直る。
「それはこっちの台詞だよ・・・どうしたの?ボーっとして」
シュオンの問いに、ソフィアはその澄んだ瞳を、ほんの少しだけ震わせた。
「何か・・・ヒースの声が聞こえたような気がして・・・」
それで外を見てみたら、ヒースと見知らぬ人間が三人、居たと言う。確かに、彼女の部屋から確認できる。
「でも、大丈夫じゃ―――」
シュオンがそこまで言った時。
「失礼しまーす!!!」
そう言って、半ば叫びながら、ドアを蹴飛ばさんばかりの勢いで開けたのは、ソフィアの専属メイドのシェーラ。彼女の持つ青灰色の瞳が、何もない空(くう)を見回している。
「あら・・・どうしたの?そんなに慌てて」
「あの・・・ヒースが」
「大丈夫じゃないかな。ヒースのあの剣術があれば」
笑顔でそう言って、しかし半ば強引にヒースの話題を切り離そうとするシュオン。
―――刹那。
「―――え・・・?」
ソフィアとシェーラの短い悲鳴が、ソフィアの部屋に響き渡った。

「―――何だ、お前ら」
そう言って、包帯を巻いた方の腕を庇いながらも、剣(つるぎ)の切っ先を見知らぬ人間に向けているのは、従僕(フットマン)のヒース。
「何・・・って言われても、ねぇ・・・」
困惑気味に、剣の切っ先が向けられている少女が後ろを振り返る。彼女の長い黒髪が、その動きに合わせてゆっくりと踊る。彼女の視線の先には、大学生くらいの二人の男子。三人に向かって、ヒースの持っているその剣の先が、鈍く光っている。
「何をどう説明したらいいのか・・・」
「此処に来た理由は?」
ヒースは、間髪入れずに目の前の少女に向かって尋ねた。
「んー・・・此処に迷い込んだ経緯(いきさつ)話せばいいの?」
「・・・あぁ」
「・・・じゃあ」
そう入った後、彼女はこう切り出した。
「それは省かせて貰います。単刀直入に言いますけど―――この邸の中に、異形のモノが入り込みました。入れていただけませんか?」
「・・・はぁ?」
そう言った彼女の瞳は、真剣そのもの。しかし。
「イギョウ・・・って何だよ?」
ヒースの問いに、少女がほんの少しだけ、苛立ちを露にした口調で答えようと、した。
「だから・・・」
そう言った瞬間。
どこか部屋の一室で、誰かの短い悲鳴が木霊した。

444月波煌夜:2012/06/20(水) 12:05:29 HOST:proxyag013.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 28』




「……そこのドアだから」
ジルは声を潜めて、一つの扉を指差した。
「オレも一応ユーリエの手前見つかるワケにゃあいかねェし、ここまでになっちまうけど」
「うん。本当に有難う」
偽りのないシュオンの微笑みに、ジルは照れたように頬を掻き。
「ハハ。ったく、ターゲットに協力するたァ、オレ様も暗殺者(アサシン)失格だなァ……なあシュオン、このオレ様がここまでしてやったンだから、上手くやるんだぞ?」
「うん」
「ヒースも、お嬢ちゃんに悪かったって謝っといてな。いつかまた勝負しよーぜ、今度は負けねェからな」
「……ああ。さんきゅな」
ジルは頑張れよ!、と最後に囁き、廊下の奥へと消えていった。
「怪我酷いのに、無理させちゃったかな……」
「それは俺もなんだが」
彼の背中を見守るシュオンの呟きに、ヒースは非難を込めて言い返す。
「え?雑草並みのしぶとさだけが取り柄なのにこれくらいでくたばってどうするの?」
「ちょ、他にもっと良い例えなかったのかよ!?」
きょとん、と可愛らしく首を傾げるが言っている内容は全くもって可愛くない。
「じゃあゴキブリ?」
「嫌な方向にグレードアップさせんじゃねえ―――!?」
「まあそれは冗談として」
シュオンは優しく微笑んで。
「勿論、無理をさせてるのは十分承知してるよ?」
「……分かってるっての」
ヒースは何となく気まずげに視線を逸らす。
―――お前が本当は、そんなに達観した人間じゃあないってことは、こっちだって十分分かってるし。
一度認めた人物は、たとえどんなにつれない態度を取っていても決して裏切ることはなく、切り捨てることができない。
だから、ヒースの負傷のことだって実はかなり気にしているはずだ。
ジルを叩きのめそうとしたのも、ヒースを必要以上に傷つけたことに本気で怒っていた、という理由は大きいだろう。
そんな、一種の優しさと呼べるものを持っているだなんて、ひねくれたこいつは絶対に認めようとはしないだろうが。
「なら言わないでよ。……何なのその気持ち悪い顔。気分悪くなるからこっち向かないでくれる?」
「はいはい」
途端にいつも通りの素直じゃない憎まれ口が飛び出してきて。
ヒースはにやにやと笑いながら、
「で?無駄話してる暇なんかないんじゃねえの?」
「当然。ソフィアが酷い目に遭っているとは考えられないけど……」
「けど?」
ヒースが意地悪く聞き返すと、シュオンは面白くなさそうに彼を軽く睨んで。

「……一刻も早く、ソフィアに逢いたいから」

少しでも早く、彼女の無事を確かめたい。
彼女の美しい紫の瞳、柔らかな髪、涼やかな声、温もり、全てが恋しくて。
触れるほど、募る愛しさ。
あの日々のように、彼女の隣でそれを、感じたいから。
たった一日、彼女の顔を見なかっただけなのに、狂おしいほど、彼女の存在をこの身体は欲してしまっていて。
頬を染めてそっぽを向くシュオンを、ヒースは微笑ましく見つめ、
「ん。素直でよろしい」
「はぁ?何なのさっきから。ヒースのくせに生意気」
「へいへい。ったく、いつまでもそーいう無駄口言ってっから」
ヒースはへらへらと笑いながらゆっくりと視線を例の扉へと移動させ、

「―――ほら。気付かれちまったみたいだぜ?」

緻密な紋様が描かれた重厚な扉が微かな音を立てて開き、室内の光を漏らす。

「別に、今からお邪魔しようとしたところだし?」
シュオンは不敵な微笑を浮かべて扉―――否、その奥に立っている人物を見据えた。


「―――おや。随分早かったですね、お二方。ご機嫌麗しく」


まだ変声期前の少年の高い声、やけに大人びた口調。
濃い青の髪に鳶色の瞳、端正な顔に何処かアンバランスな片眼鏡(モノクル)。
カークランド伯爵オスヴァルト。

「ご機嫌麗しゅう、伯爵。ふふ、残念ながら僕の機嫌はあまりよろしくないのですが」

シュオンは天使の笑顔を張り付けて春の日差しのように微笑む。

「はは、それはいけませんね。シュオン様、ヒース様、とりあえずお入り下さい。話し合いと致しましょう」

オスヴァルトはシュオンの無礼な言葉にも眉を潜めることなく、子供らしく無邪気に笑って、部屋の中を指し示した。

445月波煌夜:2012/06/20(水) 15:58:15 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 29』




「―――まず、貴宅に勝手に入り強引に《紫水晶》を持ち去るという、この上なく非礼な行為をしてしまったことをお詫びします」
―――……“持ち去る”、か。
ソフィアを完全に“モノ”としてしか見ていないことが伺いしれる言い方に、ソファに並んで腰掛けるシュオンとヒースは不快感を押し殺し、黙って続きを促した。
「本当に、非道な行いを致しました。……しかし、どうしても《紫水晶》を手に入れなければならない理由があったのです。どうかお赦(ゆる)しを」
「……その、理由とは?」
ヒースが問い掛けると、ユーリエではなく一人の従僕を控えさせたオスヴァルトは哀しげに、幼さの残る美貌を蔭らせた。
「当家の今の状況は、御存知でしょうか?」
「……ええ。概ね」
概ねどころか些細なことまでほぼ全て把握しているのだが、それは黙っておくことにする。
「なら話は早いです。だから、」
「だから、ソフィア……《紫水晶》の力で、カークランドに幸福を呼び戻したい、と」
「さすが、我が国の科学技術の発展に貢献していらっしゃるシュオン様。頭の回転がよろしい」
オスヴァルトは感心したように拍手してみせ、しかしすぐに表情を引き締めて、言った。
「……しかし、それだけではないのです」
あまりのオスヴァルトの深刻な様子に、シュオンは片眉を上げる。
―――それだけでは、ない?
度重なる不幸な出来事から家を救うべく、ソフィアの奇跡の力を欲している。そこまでは予想通り。
でも、それ以外に理由があると?
オスヴァルトはしっかりとシュオンの碧眼を見つめ、口を開いた。


「お二人とも、どうか良く聞いてください。我がカークランドに災いをもたらしたのは、間違いなくあの《紫水晶》です」


ガタンッ!


突然の騒音に、ヒースが驚いて隣を見やる。
テーブルに手を付き、シュオンが勢い良く立ち上がったところだった。

「……どういう意味でしょう」

ソフィアへの侮辱は赦さない。
静かな怒りに燃える絶対零度のアイスブルーの瞳がそう告げている。
柔和さを失った顔立ちは、整っている程迫力を増す。
オスヴァルトはシュオンの反応を面白がるように見ていたが、鳶色の双眸を妖しげに細めてシュオンを見上げた。
「シュオン様は随分とあの《紫水晶》に入れ込んでいらっしゃるようだ」
愛らしい唇が嘲笑の形に歪む。


「シュオン様。《紫水晶》が当家からあなたの城に移されたその日に、ぼくの父は亡くなりました」


「……はい。聞いております」


「本邸が火事に見舞われ、幸い家族は無事だったのですが、屋敷は使えなくなりました。その家族も続けざまに怪我を負い、領地の経営も急に、上手くいかなくなりました」

「……はい」

オスヴァルトは冷たい眼差しで。


「これらは全部、《紫水晶》が当家から居なくなった日を境にして起こったことです」


「……ふざけんなよッ!」


ヒースも立ち上がり、冷静さを失わないオスヴァルトを睨みつけた。



「確かに、それはおかしい。偶然にしちゃ出来過ぎてるさ。でも、それが御嬢様にどう関係あるって言うんだよ!?《紫水晶》は不幸なんかじゃなくて幸福を運ぶ、誰でも知ってることだろうが!」


「……ヒース様。では、これは御存知ですか」


オスヴァルトは冷めた声色で。



「ルーフェ伯爵家、リーダ侯爵家、ミュシア侯爵家、ブッドレア伯爵家、……他にも数え切れないほど。《紫水晶》がかつて滞在した家は、全て一つ残らず、酷い災厄に見舞われているのですよ。……シュオン様も、わかっていらっしゃるとは思いますが?」


「なっ……!?シュオン、そんなの嘘だよな!?」


知らなかった事実。ヒースは刮目してシュオンを問い質すが、


「……嘘じゃない」


「シュオン!?」


「本当のことだよ。ソフィアが居たことのある家は全部、ソフィアが違う家に移った途端に不幸に遭っている。それで没落した所も、ある」


「……そんな、っ」


オスヴァルトはにやりと笑って何か言おうと口を開いたが、



「でも」



シュオンはそれを遮り、決然と声を張った。



「僕は、貴方がたに災いが訪れたのには、他の理由があると思います」

446ピーチ:2012/06/23(土) 08:27:04 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わぁぁぁぁ!!シュオン様ちょーいいこと言ったー!!

でーもなー・・・その言葉で納得するかー?

・・・いや、絶対納得するよね!ねっ!?

447月波煌夜:2012/06/23(土) 21:51:12 HOST:proxy10081.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 30』




「……何ですって?」
オスヴァルトが苛立ちの色を滲ませる。
それも当然のこと。
怨念に駆り立てられ、シュオンとヒースを引き入れソフィアを貶めようとしたのに、そこに思わぬシュオンの冷静な反撃を受けたのだから。
「他の理由?シュオン様は、当家の不幸を笑うのですか……!?」
オスヴァルトとて引く訳にはいかない。あくまで元凶はソフィアであり、自分は哀れな被害者であるという主張を貫くために。
オスヴァルトは額に手を当て大袈裟に嘆く。


「貴方がたは騙されていらっしゃるのです……!大人しそうな外見に惑わされてはいけません。当家でも次々高級な服飾品を要求し、散々贅の限りを尽くしました」

執拗に続く罵倒の声。

「……ざけんなっ!さっきから黙って聞いてれば……!御嬢様がンなことするわけッ」


「―――ヒース」


激昂したヒースの叫びを遮ったのは、シュオンの低い声だった。


「黙って」

「っ、でも……!」

「良いから」


有無を言わさない強い口調に、ヒースは渋々口を噤む。


「―――そして、何処の生まれかも分からないような、願いを叶える飾り物でしかない小娘が此処まで成り上がってきたのです。一体どのような手練手管を使ってきたのか。全く恐ろしい」


オスヴァルトは嘆息しながら首を横に振って。


「一時の幸福に騙されて《紫水晶》を大切に扱っていた父は本当に愚かだったと思いますよ。……貢がせるだけ貢がせておいて、やっと居なくなってくれると思っていたら、今度はしあわせどころか世話になった家を呪うとは」


シュオンは黙ってまくし立てるオスヴァルトをじっと見つめていた。
碧の双眸は、闇に包まれた暗い深海の色。


「昨日、《紫水晶》と顔を合わせたのですが、驚きましたよ。あんなに人間らしい口が利けたのですね。仕込まれた言葉以外は話せないのかと思っていましたが、オウムよりも芸達者ではないですか」


棘のある嘲笑。


「聞きましたが、アレをほとんど放し飼いにしていたそうではないですか。さすが公爵閣下、寛大でいらっしゃる。しかしシュオン様、《紫水晶》は物をたかった分、災いをもたらすもの。残念ながら、不幸を上塗りさせなければならないので《紫水晶》をお返しすることは当分できませんが、どうかこれから、お気を付けください」


オスヴァルトは誇らしげにそう言って話を締めくくった。


訪れる静寂。


一息ついて、オスヴァルトが紅茶のカップに手を付けると同時―――


「……伯爵。僕の言ったことを聞いておられましたか?」


シュオンは。


「……災いが起きるのには、《紫水晶》の存在以外に何か理由があると云うことですか?そんなことが―――」


「無いとは言わせない」


真っ直ぐ、冷たく透き通る瞳でオスヴァルトを見据える。

448月波煌夜:2012/06/23(土) 21:54:34 HOST:proxy10081.docomo.ne.jp
>>ピーチ

こーいう話だけの地味な回ってつらいなー(´・ω・`)

ボロクソ言っております頑固少年。
シュオンはその場の雰囲気で上手く言いくるめることができるのでしょうかー!
……できるのかな……(ぇ

449bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/06/23(土) 22:16:18 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

何だか最近凄く良い盛り上がりで、毎回見逃せません…!
終わってしまいそうなのは寂しいですが、どう完結するのか楽しみにしてます^^

あ、あと何気にオスヴァルトさんが好きだったりしまs←

ではでは、これからもお体に気をつけて頑張って下さいね^^ノ

450月波煌夜:2012/06/23(土) 23:43:39 HOST:proxyag094.docomo.ne.jp
>>bitterさん


月波は凝ったストーリーとか細かい設定とかそういうものが全くもって考えられないので、その場で無理矢理繋げてる感が拭えません(´・ω・`)
でもそう言っていただけると嬉しいです…!
ほんのちょっとでもbitterさんの神文章に近づけるよう精進致しますっ(つд`)


オスヴァルトを気にして下さる方がいるとは…(;´д⊂)←嬉し泣き
ショタで敬語で片眼鏡は完全に月波の趣味で御座います(ぇ
是非彼にはショーパン+ニーソはいてほs(ry


完結まで、これからもよろしくですー!

451ピーチ:2012/06/24(日) 00:06:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやじゃあぁぁぁぁぁ!!!ソフィア様はそんなに我侭じゃなーいっ!!

こーゆー自己中な人ってあたし好きじゃないなー・・・

シュオン様も好き勝手言わせてるよーにも見える・・・

内心キレまくってそーだねー・・・

シュオン様が一番怖い時って実は大人しい時っぽい?

452月波煌夜:2012/06/24(日) 13:29:03 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

んーとね、シュオンは気の許せる相手だと、ブチキレてると笑顔の輝きが増します。「ニッコオオオオ」って感じで。
赤の他人の場合は穏やかに微笑んでます。目は笑ってないです。内心「さぁてこのクズの処理はどうしようかなぁ。焼死水死圧死それともまずは爪から攻めてじわじわt(ry」みたいに盛大に毒吐いてます。
今回は後者に近いね!

453ピーチ:2012/06/24(日) 19:02:01 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ぎゃあぁぁぁぁぁ!!シュオン様も相変わらず腹黒いっ!

・・・って本人に言ったらまた「最高の褒め言葉」って言いそーだねー・・・

こ、後者はかなり怖いぞ・・・焼死水死は兎も角として、なぜに圧死が出てくる!?

まさかの実験好きのシュオン様オリジナルの発想!?

454月波煌夜:2012/06/24(日) 21:57:34 HOST:proxyag080.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「有難う、最高の褒め言葉だよ」(にこ)
そんな昔の台詞を覚えててくれて有難う…!

あ、焼死か水死か凍死か爆死か圧死かのどれかがもれなく選べるよ☆
まあシュオンはすぐには死なせずにネチネチといたぶる系だよね、笑顔で。

455ピーチ:2012/06/24(日) 22:25:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!!そのスマイルは要りませんから!シュオン様!!

いやいやいやいやいや!!そのもれなく選べるのも要らないから!つっきー!!

あーでもなー・・・あたし的には凍死が一番マシかなー・・・間違っても爆死とかヤダww

ね、ネチネチといたぶる・・・あー怖っ!下手にシュオン様を敵に回すもんじゃないね!

・・・ん?ちょっと待てよ?それってソフィア様が一番得してるわけじゃないか!!

456月波煌夜:2012/06/25(月) 13:26:27 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 31』





「……僕の考えでは、」


ヒース、そしてオスヴァルト。
二人が思わず固唾を飲んで見つめる中、シュオンは言った。


「普通では実現不可能な願いを叶えた分だけ、ソフィアは無意識のうちに不幸を呼び、通常の運気になるようそれを調整している」

「……意味が、分かりかねます」


「そうですね……僕たちが生まれたときから、運命―――ひとりひとりが持つしあわせの量というものは決まっている。その運命を唯一、覆してしまうのが《紫水晶》です」
静まった部屋に、シュオンの声音が明瞭に響く。


「たとえば、伯爵。貴方は不治と医師にも云われていた病から奇跡的に立ち直ったそうですね」

「……そう、です」

「ソフィアの力によって、“不可能”が“可能”になったと云うことの証明です。……他にも、伯爵のお父様だけでなく御家族や使用人たちにまで、その家に関わる者全てが願いを持ち、それを叶えるようソフィアに言いつけたとしたらどうでしょう。そうなれば、ソフィアの意志とは関係なしに、大きいにも小さいにも関わらず、その願い事たちは全て実を結ぶ。カークランドに必要以上の幸福が溢れてしまいます。運命という、上限を超えてね」


「……………………」


オスヴァルトが黙り込む。


「つまり、ソフィアの中の力はカークランドを、天から与えられた幸福の量に戻しているのではないでしょうか」


「……ふん。やはり民に崇められる《紫水晶》も紛い物、役に立たないガラクタに過ぎないと云うことですか」


オスヴァルトは指先を伸ばして片眼鏡を掛け直し、憎々しげに呟く。

それを聞いたヒースが歯軋りしながら腰の剣に触れ、オスヴァルトの傍らの従僕もまたヒースを警戒し腰に手を掛けた。


「ああ、貴方。大丈夫です、剣を仕舞って」
そう言ったオスヴァルトがそのまま従僕の男の耳に顔を近づけ、何かを囁く。

「な、……しかし……」


「構いません。早くおやりなさい」


「……、はっ!ただちに」


従僕は敬礼して踵を返し、扉から出て行った。


「……何事ですか!?」


「なに、お客様にお茶をお出ししない訳にはいきませんのでね。頼んだだけですよ」


「へ?あ、はあ……それはどうも」


あまりにも脳天気な言葉に、ヒースは毒気を抜かれたように姿勢を崩した。

シュオンは目を細めて閉まりゆく扉の方を見つめていたが。

「……シュオン様のお話は大変良く分かりました」

オスヴァルトの苦い声に首を元に戻した。


「当家の不幸は、《紫水晶》の意志によるものではなく、元はと言えば、ぼく達が高望みした結果起きたものである、と」

「その通りです」


「それについては、ぼくも出過ぎたことを言いました、撤回させて戴きましょう。……でも、」


オスヴァルトの整った貌(かんばせ)に、毒々しい笑みが一瞬浮かんで、すぐに消える。


「《紫水晶》をお返しすることはできません」


その言葉は当然、シュオンの予想の範囲内だった。
ソフィアを『あの』エインズワーズから攫うような人物なのだ。ソフィアを返せと言われて、はいそうですかと渡す方が気味が悪い。


……しかし。
妙に、嫌な胸騒ぎがするのは、何故だろう。
シュオンは不快感を抑えつけて顔に出さないよう努力する。


「その代わりと言ってはなんですが、ローエンの統治権をお譲りする……という形で御容赦願えませんでしょうか」


此処、ローエン地方は豊かな自然に囲まれた広大な土地だ。
それを譲る、と言ったのだから、オスヴァルトとしても精一杯の譲歩なのだろう。


でも。


「お断りします」


迷う余地なんてない。
シュオンははっきりと首を横に振る。


「……確かに、《紫水晶》の恩恵を考えればそれでは足りないと思われるのは当然のこと。それなら、」


「―――伯爵。貴方は何も分かっていない」


シュオンは呆れたように言った。



「僕が欲しいのは、《紫水晶》としてのソフィアではなく、」



凍てつく氷の双眸。



「……一人の女の子としての、ソフィアですから」

457月波煌夜:2012/06/25(月) 13:30:23 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ


うん、シュオンはソフィアのためなら王子だろうが王だろうが神だろうが喜んで敵に回すんじゃないかなw

ソフィアは何気に美味しいポジションだよ(´_ゝ`)

458月波煌夜:2012/06/25(月) 14:10:51 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 32』





「どうやら、交渉決裂、のようですね」


「ええ。僕はどんな好条件でも譲る気はありませんから」


「……ふふ。そう仰ると思っていましたよ」


オスヴァルトの鳶色の瞳に狂気の焔が燃え上がる。


「―――ヒース」


「おう。任せとけ」


交流の深いカークランドの伯爵を手に掛けるのは気が乗らないが、仕方がない。こうなったら力尽くででもソフィアの居場所を吐いてもらう。

シュオンに頷き返し、ヒースが今にも、剣を抜き放とうとしたそのとき。



「―――あら。また会ったわね、坊や」




殺気。


「「……―――――っ!?」」


首の後ろに冷たく硬いモノの感触を捉え、シュオンとヒースは驚きながらも素早く背後に視線を走らせた。


揺れる髪は紅蓮の赤。
猫の瞳は輝く純金。

ジルの相棒、暗殺者(アサシン)のユーリエ。


「嘘だろ……?全然気配感じなかったぞ……?」

ヒースが力無く呟く。
それはシュオンも同じだった。
ずっと後ろで自分たちを見張っていたのだろうが、シュオンの鋭敏な感性をしても全く気づかなかった。


「職業柄、気配を消すのは慣れているのよ」


ユーリエは艶めかしく微笑んだが。
かと思えば、急に少女らしい不安げな表情になり、


「……ジルは?まさかやられたの?」


「……まあ、な」


「そう……」


それを聞くと、真紅の睫を僅かに震わせた。
大丈夫かしら、と声には出さず唇だけで呟く。


「ユーリエ。何をしているのです」


オスヴァルトが苛立ちの声を上げると、ユーリエはハッと我に返ったように息を呑んだ。


「命令です。お客人にお引き取り願いなさい」


“命令”という単語に反応し、ユーリエの美貌から人間味が跡形もなく消え失せ、完全なる一人の暗殺者の顔になる。


「御意に、御主人様(マスター)」


両手に持ったナイフを同時に華麗な所作で回転させ、二人の首筋に再びぴたりと押し当てる。


「ぐ……」


ヒースが苦々しく唸る。
いくら彼でも、今から剣を抜くのは不可能。

ユーリエのナイフがそれを絶対に許さないだろう。



「ほら、痛いのが嫌だったら、さっさと降参した方が身の為よ?私も命令だったら楽に殺してあげるんだけど、お引き取り願うってだけだし。こうなったら、意識を飛ばして無理矢理お帰り戴くしかないかしら?」



―――どうする。

―――どうしたら、良い?


この状況をひっくり返して、ソフィアを助け出すには、どうしたら良い?

459月波煌夜:2012/06/25(月) 15:07:08 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 33』




「……そう言えば、あの従僕はどうしたのでしょうね。お茶を淹れに行っているにしては、帰りが遅くないですか?」


下手ながらも、時間を稼いで突破口を探すシュオンに協力しようとしているのだろう。
ヒースがそう言うと、オスヴァルトは意外にもすぐに食い付いた。


「ああ。あの従僕ですか?」


オスヴァルトは残忍な笑みを浮かべた。
にっこり―――それは猛毒を隠した蛇のようで―――、




「あの方なら、《紫水晶》の居る塔に、火を点けに行きましたよ」




「…………なっ、……んです、って……?」


ヒースが信じられない、と云うように声を震わせる。

シュオンが思考を中断し、碧空の瞳を見開く。

ユーリエが息を呑み込む音がする。


オスヴァルトは三人の反応を順番に、愉しげに見つめ、けらけらと笑った。



「っあはは!どうせこの場で貴方がたを逃がしても、また懲りずにやって来るのは目に見えていますからね。頼りの兵は殆ど減ってしまいましたし、次も勝ち目はないでしょう。貴方がたを今此処で殺してしまえば話は早いのですが、ぼくはそこまでのリスクを負いたくはありませんからね」


オスヴァルトは子供らしく無邪気に、しかし残酷に嘲(わら)う。



「貴方がたが欲しているのは生きた状態の《紫水晶》。なら、《紫水晶》の方を殺してしまえば、もう狙われることもないわけです。なに、心配はいりませんよ。かつての《紫水晶》の墓のある家は繁栄するそうです、灰にしてでも幸福を呼んで戴きますので」



狂っている。
この小さな少年は、狂っている。



―――どうしたら良い……!?


何か。

何か、この絶望的な状況を打開できるものは。

すぐにソフィアの元へ向かい、彼女を助け出せる方法は―――!?


動揺、怒り、哀しみ、

シュオンの頭は色々な感情で一杯になっていたが、



シュオンの研ぎ澄まされた耳は、その感覚を失っていなかった。



この部屋の誰も、『それ』には気づいていない。


シュオンは素早く隣のヒースと視線を交わす。


ヒースは何が何だか分かっていないようだったが、


シュオンの真剣な、意志を秘めた双眸を見て、ユーリエとオスヴァルトに気付かれない程度に、小さく頷いた。

そして、シュオンが待ちわびた『その』瞬間が来る。





―――この二人に、合図(ことば)は不要(いらない)。





突如。扉が、大きな音を立てて勢い良く開いた。



刹那、ユーリエが驚いてそちらを向いた隙にシュオンは服の袖口に隠し持っていた小型ナイフでユーリエのナイフを二つ同時に弾き飛ばし、


ヒースは目に見えないほどの速度で剣を抜き放ち、オスヴァルトの額にその切っ先を押し付けた。



「―――我々はレオンハルト王太子殿下私設騎士団《イルファーレ》である!この城は完全に包囲された、速やかに投降せ、よ……?」



大勢の部下を引き連れ、そう叫んだ先頭の騎士は、ぱちくりと瞬きをして。


「えー……もしかして、我々の無駄足でしたかね?」


「まさか、とんでもない。感謝します……レオン殿下の、騎士の方ですか?」


「はっ!レオンハルト様直々の命により、赴いた次第であります!」


―――レオン殿下……!

脳裏に『貸し一つな』と言うレオンの姿を思い描き、ユーリエを捕らえたシュオンは思わずふっと笑ってしまった。

この部屋へと近付いてくる完璧に消された足音の気配がしたから何かと思ったが、まさかレオンの騎士団だったとは。



「何故……」



オスヴァルト。
生気の抜け落ちた瞳で、ぼんやりと虚空を見つめている。



「こ、んなはずでは……!何故、《紫水晶》の加護がないのです……?」



「きっとソフィアは、貴方に利用されるのを初めて拒んで、僕のことを選んでくれたんです」




シュオンはふわりと笑い、呆然としたユーリエを騎士に預けると、



「お、おい待てシュオン!何処行くつもりだよ!?」


「シュオン様!危険です、《紫水晶》の捜索は我々に任せてお戻り下さい!」



「―――ごめん!後はお願いしますっ!」




シュオンは彼らの制止の声も聞かず、騎士団を掻き分け振り返ることなく駆け出した。
今は一秒が惜しい。



「……ソフィアが、僕を呼んでる」

460月波煌夜:2012/06/25(月) 15:48:16 HOST:proxyag089.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 34』





北の塔の一室。
ソフィアは、寝台に膝を抱えて座り込んでいた。

全ての感覚をなくしてしまったように、空虚な紫の瞳が揺れる。


―――私は、不幸を呼ぶ……。


その事実が、頭にこびりついて離れなかった。


自分が居たエインズワーズの人たち―――シュオンたちは、ソフィアの所為で不幸に遭ったりしていないだろうか。


シェーラの明るい笑顔、ヒースの無愛想な顔、シュオンの優しい微笑み。

「………だめ………!」

楽しかった日々のことを思い出してもつらいだけ。
分かっているのに。
十分すぎるほど、分かっているのに。


「……痛い、よ……」


頭が痛い。


胸が痛い。


助けて。




「シュオン……!」



そのとき。



ソフィアの中で、何かが弾けた。











涼やかな夜風。
しゃがみ込んで、小さなソフィアは薄紫の花を眺めていた。

この色は、一番嫌い。

この世界で一番、大嫌い。

だって、ソフィアの瞳と同じ色だから。

この瞳の所為で、ソフィアは幼い頃から一方的に崇められ蔑まれ、過酷な運命を背負わされたのだから。

舞踏会が開催されている時間、隙を見て部屋から逃げ出したものの、一人で遠くまで行くことなんかできない。こうして、小さくなって庭園の花をこっそり見ることしかできない。

ソフィアはだんだん哀しくなってきた。

―――なんで、わたしの目はこんな色なの?


こんな目に生まれなければ、普通の女の子として生きていくことができたのに。


ソフィアはきゅっと唇を噛み締め、この薄紫色の可憐な花を滅茶苦茶にしてやりたい衝動に駆られて、ゆっくりと手を伸ばした。


そのときだった。


「……花、好きなの?」


まだ高い、男の子の声だった。


ソフィアはぱっと振り向き、息を呑んだ。


―――天使さま……!?


闇の中、キラキラと輝く蜂蜜色の髪。
零れ落ちそうなくらい大きく潤むサファイアの双眸。
真っ白な肌に、人形みたいに愛くるしく整った容貌―――。
ソフィアは思わず目を凝らし、少女……否、少年の背中に白い翼を探してしまった。
……ない。天使の輪っかも、ない。
人間?
こんなに、美しいものが?

「いいえ」

ソフィアはやっとのことで答えた。

「めったにお花なんて見れないから」

少年が不思議そうに瞬きする。

それはそうだろう。

この少年はソフィアとは違って、恐らく正式に舞踏会に招待された立派な貴族の息子。
花なんて、望まずとも毎日見られるものなのだろう。

ソフィアは少年に、何故花などが見られないのか、と聞かれるのだろうと身構えたが。

少年は迷うような表情を見せた後、さくらんぼ色の唇を開いた。


「君の目……きれいだね」

―――……え?

何を言われたのか、分からなかった。

綺麗?

この、紫の瞳が?


その意味を、混乱した頭が時間をかけて理解すると同時、

……ソフィアの胸に、確かな温もりが生まれた。

そんなことを言われたのは、初めてだった。

《紫水晶》。人はソフィアをそう呼ぶ。

この少年は、ソフィアが大嫌いな、嫌いになるしかなかった《紫水晶》の証の瞳を、綺麗だと褒めてくれたのだ。


「……ありがとう」


笑い方は、忘れていなかった。
何年ぶりだろう。ソフィアは自分が自然と、微笑んでいるのを感じた。
びっくりしたように目を見張った少年がやがて、恥ずかしそうに笑った。

461ピーチ:2012/06/25(月) 21:02:22 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわぁぁぁぁぁ!!ヤバイっ!ヤバイよー!!

シュオン様凄い!!ヒースも凄い!!

・・・あれだけ遊びながら、二人に言葉は要らないのかぁ・・・

すっごい信頼だね!

ソフィア様がカークランドを拒んだ・・・

そのとーりだー!!もっと不幸を呼び込んで差し上げなさーい!!

462月波煌夜:2012/06/25(月) 22:48:57 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あっさりやられちゃいましたオスヴァルトとユーリエ。

レオンの騎士団の介入は、シュオンが心配でたまらなくなった父上がレオンに伝えちゃって、それを聞いたレオンが急いで派遣したっていう裏話がw


早ければ明日あたりにソフィア救出するから、待っててくれたら嬉しいなヽ(´ー`)ノ

463Mako♪:2012/06/25(月) 23:33:51 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
月波 様>>
おう!!待ってるぜ♪

ソフィア様、シュオンが助けにきても、「不幸を呼ぶから」とか言って、拒んじゃ駄目だよーーーーーー!←馬鹿

464月波煌夜:2012/06/25(月) 23:41:50 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>Mako♪さん


さ、様!?


おおう鋭い!
ソフィアの不幸云々はもうちょい後で話にするよ(`・ω・´)

465ピーチ:2012/06/25(月) 23:52:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわぁ・・・ほんとにあっけなさ過ぎww

と、とんでもない裏話が・・・!

あのプライドの高いシュオン様が聞いたら、絶対怒ってそうな話だねーww

466月波煌夜:2012/06/26(火) 00:08:25 HOST:proxyag108.docomo.ne.jp
>>ピーチ

でも、父上とレオンの配慮がなければ逆転は不可能だったから、今回は怒りたくても怒れないんじゃないかなw
後で冷静になれば、ちょっと気に入らないとこはあるかもだけどね(^o^)

467ピーチ:2012/06/26(火) 00:27:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははーww確かにそうかもーww

うーん・・・シュオン様の場合、冷静になるより先に不満が口を突いて出てそうなタイプに見えるww

あ、更新したよーww←何の宣伝だww

468月波煌夜:2012/06/26(火) 08:31:17 HOST:proxyag079.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 35』






「今、の………、」


ソフィアは呆然として、寝台から、透明な窓に映る自らの瞳―――紫のそれを見つめた。

甦った九年前の記憶。
シュオンと初めて出逢った日。
彼はずっと覚えていてくれたというのに、自分はと言えば彼と離れてから思い出すなんて。


「シュオン……」


と、哀しげに伏せられた双眸に、硝子越しに窓の外の景色が映り込んだ。

……一瞬、視界を掠めた橙色は。


「え……?」


炎。

塔を覆い尽くすほど、激しく燃え盛る炎。


「嘘……っ!?」



ソフィアは窓を開けた。

漂う焦げた臭いが鼻を突く。


炎に包まれた大木がバキバキと巨大な音を立てながら倒れ、塔にその火を移す。
ソフィアの部屋の、すぐ下だ。


「……どうし、よう……っ」


扉の鍵は閉められている。
誰かに助けを呼ぶ?どうやって?
此処には、誰一人としてソフィアの味方は居ないのに。


そう思った途端。



ソフィアは。全てを諦めて、瞼を閉じた。



逃げたところで、もう帰る場所はない。


―――私は、ただ生かされているだけの幸福の偶像。


願いを叶えるだけの存在。


それを勘違いしたのが、この結果。


甘く幸福な幻の代償。


これが、貴方と夢を見たことの罰なのだったら。


―――……もう、何も望まない。



ソフィアは、胸に下がるアメシストを握り締めた。



―――……シュオン。


―――最後に、もう一度だけで良いから、逢いたかったな。




“僕らは君を利用しない”



柔らかな声。




“ちょっとずつでもいいから、仲良くしてくれたら嬉しいな”




優しい笑顔。





“僕の願いは、君にもう一度会うこと。それから、君をしあわせにすることだよ”




繋いだ手の温もり。




“君にも愛の加護がありますように、ってね。もらってくれるでしょう?”




愛の守護石、アメシストの確かな重み。



―――……シュオン。




“僕の姫のエスコート、御苦労様でした”

“……大丈夫?ソフィア”

469月波煌夜:2012/06/26(火) 09:29:57 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 36』





「……シュオンっ……!」




気づけば。
ソフィアは、泣いていた。
紫の瞳に雫が溜まり、つう、と頬を伝い落ちる。



「やだ、よ……っ」




シュオンに逢わないまま、独りで死んでしまうなんて、そんなの嫌。



嫌だよ。




逢いたい。




シュオンに、逢いたい。



逢いたいよ……!




―――この想いはもう、止まることはない。



貴方に、触れてしまったから。




あの、自らの運命に慟哭した幼い日のように、ソフィアは寝台の上にうずくまって泣きじゃくった。




「シュオン……っ」




愛しい彼の名前が、空気を震わせると同時―――






「……―――ソフィア―――!」






風の悪戯だと思った。

ソフィアは涙で濡れた顔を上げ、窓に焦点を合わせる。


―――……シュオン?


まさか。そんなはずはない。

彼はエインズワーズ邸で、ソフィアのことは忘れて、シェーラやヒースたちとしあわせに暮らしてくれているはず。





「ソフィア―――!」





「っ…………!」




いや、聞き間違えようがない。


紛れもない彼の声は、
この身体の熱が覚えてる。




ソフィアは窓から下を見下ろした。




ソフィアへと確実に迫り来る炎。



そして。



暗闇を照らす純金の輝き。
強い意志を秘めたサファイアの双眸。



―――嘘。嘘でしょう?



シュオンがこんなところに居るはずは。




「ソフィア!」




他でもない、自分だけの名前を呼ぶその声に、ソフィアはびくりと身体を震わせた。


彼女を蝕んでいた躊躇の念が、消えるのが分かる。
恐怖は、ない。




「―――早く!」




ソフィアは。





窓枠をとん。と軽く蹴り、真っ直ぐ飛び降りた。





月光を浴び、銀の髪が虹色に煌めきながら、ふわりと広がった。


風を含み、ドレスの裾がはためく。



シュオンが一瞬、眩しそうに目を細めた。



天から舞い降りた、彼だけの天使を見上げるように。




シュオンは。





彼の最愛の少女を、自らの腕に、しっかりと抱きとめた。





「……待たせてごめんね。迎えに来たよ、お姫様」





「……誰がお姫様よ」





ソフィアは彼の胸に顔をうずめ、しゃくり上げながらも、心にもない憎まれ口を叩く。





「遅いじゃない、変態王子」





シュオンは黙って優しく微笑んで、彼女を抱き締める腕に力を込めた。






―――……ぽつり、ぽつり。髪に落ちる冷たい水滴を感じて、二人は空を見上げた。




「雨……?」



「そうみたいだね……っと」



「え?……ひゃあっ!?」



シュオンは上着を脱いで彼女に羽織らせ、そのまま慌てるソフィアを抱え上げる。



「な、え、……ちょ、ちょっとこれお姫様抱っ……じゃなくて!お、重いでしょう?やめてっ!離して!」



「やだ」



シュオンは悪戯っぽく笑いながら、顔を真っ赤なにして暴れるソフィアをものともせず、煙を上げる火を避けて屋敷の中へと歩き出した。


この雨が収まったら直ぐにでも出発しよう、と思いながら。






―――激しい雨は、燃えさかっていた炎を容易く掻き消し、ソフィアの部屋や本邸に移る直前に、完全に鎮火した。

触れてはならない神聖なものを、火の手が自ら避けたかのように。

消化に当たった騎士たちは、誰もが一つの噂を思い出し、驚愕に顔を見合わせた。


―――それは紛れもなく、《紫水晶》の奇跡。

470月波煌夜:2012/06/26(火) 09:49:14 HOST:proxy10039.docomo.ne.jp
ごめんなさい、訂正です。

↑“真っ赤なにして暴れる〜”は“真っ赤にして暴れる〜”

“消化”は“消火”に頭の中で直していただけますと幸いです。それにしても何を消化するというのでしょう。



ソフィアが自分の存在に引け目を感じているままでは気持ち悪いので、もうちょい『祈り』は続きます。長いな!

そうしたら、エピローグに入ろうかなと。終章?エピローグ?何か違いましたっけ?…細かいことは気にしないで下さいお願いします。


ついでにちょっと語らせて戴きますと、「待たせてごめんね、お姫様」「誰がお姫様よ。遅いじゃない、変態王子」には、ソフィアとシュオンのキャラが定まらない状態から、絶対この台詞は入れたい!と変な執着を見せておりました。
そのためにシュオンを王子系にしたりソフィアをクールな子にしたりシェーラにシュオンを「変態王子」と称させたりと色々…。

まあどうでも良いんですけどね!


無事にソフィアを救出できましたので、あともうしばらく、ゆっくりと完結を見届けて戴ければ嬉しいです( ・∀・)つ

471ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/26(火) 20:20:53 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

わあああああ、ハッピーエンドっぽくてよかったです(´;ω;`)!!
エピローグも楽しみだ!

ていうかこの祈りのお話でシュオンとソフィアが今まで以上に好きになりました←
ヒースとシェーラは相変わらず好きです(´・Д・`)!

ちなみにベルも好き←

最後までがんばってください^^

472月波煌夜:2012/06/26(火) 21:56:00 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ねここさん


ほわあああああ°・(ノД`)・°・
ソフィアとシュオン、ジルも気に入ってくださってありがとうございます…!
なんかもう嬉しすぎて号泣でございます(ぇ


ヒースとシェーラは本編での登場は少なくなりますので、無事完結したら、彼らが主役の番外編もちょこっと覗いていただければ死ぬほど嬉しいです←


あともう少し、お付き合いくださいませ( ・∀・)

473ピーチ:2012/06/26(火) 23:14:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わわわわっ!!!ヤバイヤバイ!!ソフィア様すっごーい!!

あー・・・うん。ジルも結構いい奴かもww

でもなー・・・ユーリエは好きじゃない・・・

474Mako♪:2012/06/26(火) 23:44:04 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
キャーーー♪
なんて面白い!
特に『遅いじゃない、変態王子』のところですかね♪

続き(最終章)も楽しみになって来ました!

頑張って下さいね!

475月波煌夜:2012/06/27(水) 10:51:09 HOST:proxy10076.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そうかーユーリエ駄目かー…(´・ω・`)

月波が容姿をちゃんと決めてるキャラには自分的に何かと愛着があるキャラなのです←

誤解されないようジルとユーリエの話も書かねばと決意w
番外編に入れるか500レス突破記念、いったらやるか…さすがにいかないかな?うーん。



>>Mako♪さん

『遅いじゃない、変態王子』反応してくれてありがとう!嬉しいです!
あと5、6回以内で終わらせるつもりなんだけど…続きもどうぞよろしく!
グダグダで申し訳ないですが、是非最後まで見届けてほしいな(*´д`*)

476月波煌夜:2012/06/27(水) 11:42:16 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 37』



「うわああああんソフィア様あああああああああああ」

「だ、だからまずは落ち着けシェーラ!御嬢様が窒息死する!」

「ひっ、……ぅ、」

シェーラは折角の可愛らしい顔を完全崩壊、台無しにする勢いで、ソフィアをむぎゅうっと抱き締めたままわんわんと泣き散らしていたが、

「しぇ、シェーラ……くるし……」

「うっ、く……ソフィア様のバカあああああ!バカバカバカぁあああー!なんで、何であたしを置いて行っちゃうんですかああああ!」



……此処はエインズワーズ邸の玄関ホール。
ソフィアを気遣ってか、カークランド伯爵邸を出発してから道中にあった村の旅籠で一晩休んで来たので、到着が遅くなってしまった。
門の前でうろうろとしていたシェーラは、黒馬のヒース、白馬に一緒に乗ったシュオンとソフィアを見つけるが早いか人目も介さずに大声で泣きながらすがりついてきて、ヒースがそれを諫(いさ)めつつ何とか玄関ホールにまで連れてきたという次第である。



「ご、ごめんなさい……」

ソフィアはひたすら平謝りするしかない。

「心配、掛けたわよね……」

「当たり前じゃないですかぁっ!」

真っ赤に泣き腫らした青灰色の瞳できつく睨まれる。
……かと思えば、ふにゃっと怒りの形相を崩し。

「心配、したんですよ……!ソフィア様がもう戻って来なかったらどうしようって……すごく、すごく心配したんですよ……っ」

「ごめんなさい……」

ぼろぼろと涙を零す彼女の言葉が、胸に沁みる。

「もう、絶対勝手に居なくなったりしないで下さいね?」

「………………ええ」

返事がやや遅れたことを、後ろで見守るシュオンには気づかれてしまっただろうか。

「や、約束ですからね!……ひっく……う、とっとにかく、旦那様と奥様に御挨拶しませんと!お二人ともすごく気にかけていらっしゃったんですから!」

彼らの優しさは嬉しい。
もう涙が出そうなくらい、凄く、嬉しい。
ソフィアの存在を必要としてくれている人がいる。
捕らわれたソフィアを探し出して、助けに来てくれた人だって、いる。
この、《紫水晶》にしか過ぎない、ソフィアを。

皆が愛しい。
この大切な人たちに、彼らに貰った愛情に、報いなければと思う。

でも。

それには。


「―――……ソフィア」


ソフィアはびくりと身を震わせた。

この世界で彼だけには、ソフィアの考えは隠し通せないようで。


「ちょっと話があるんだけど。後で、君の部屋に行っても良いかな?」


シュオンの強い輝きを帯びた空色の瞳と、
ソフィアの動揺に揺れる紫の瞳が、かち合う。


「……ええ」


ソフィアはすぐに視線を逸らして、小さく頷いた。
だから。
シュオンが一瞬、ふっと作った、寂しげな表情を見ることは、なかった。

477ピーチ:2012/06/27(水) 20:58:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

し、シェーラちゃん・・・御嬢様を窒息死させたらダメー!!!

どんな苦労も水の泡になっちゃうよー!!!

シュオン様どーしたの?

まぁ、ソフィア様が無事戻ってきて良かったね・▽・

478月波煌夜:2012/06/27(水) 21:49:13 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ソフィアが、自分は不幸を呼び込むんだーって思いこんでるままだから、その関係で大事なお話をね?

次から、二人に大きな変化がっ( ´艸`)
山場だから頑張って書くぞー!



あ、ちなみに、“途中にあった村の旅籠”は実はシェーラの実家だったりしますという小ネタを披露してみる。
番外編ではお屋敷のお勤め前のシェーラ(とヒース)もちらっと書く予定☆

479ピーチ:2012/06/27(水) 23:04:28 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ソフィア様!!思い込んじゃダメですよー!!

おわっ、マジか!?

これから山場!?早くないですか!?

え・・・まさかのシェーラちゃんの実家出てる的な!?

むぅ・・・あたしは100パーセント書けないww

480月波煌夜:2012/06/28(木) 11:11:47 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 38』






ソフィアは目の前に座り、今は紅茶のカップに口を付けているシュオンが先程彼女に話した内容を、呆然として頭の中で反芻する。
やはり、ソフィアが言われたことはオスヴァルトに既に聞いていたようで、ソフィアが不安を感じていることを、シュオンは良く理解していた。


まず―――ソフィアの存在が、不幸をもたらすものでは決してないこと。
カークランドが襲われた災厄は、確かにソフィアが関係するかもしれないが、それは彼女の所為ではなく、《紫水晶》である彼女が無意識のうちに、望みを全て叶えた結果与え過ぎた幸福を、後からそのぶん不幸で調整しているのではないかということ。


「―――だから、ソフィアが気にする必要は全然ないんだよ」


一瞬。本当に一瞬、納得しそうになるけれど。


「でも……」


自分がいることで、不幸せになる人がいる。
その事実は、変わらない。


浮かない顔をするソフィアに、シュオンは。

「ソフィアは優しすぎるんだよ。他人のことなんて気にしていてもどうにもならない。欲に取り付かれて君を利用した、あの人たちの自業自得なんだから。彼らにも良い薬になると思わない?」


「違う!私は優しくなんてない!」


ソフィアは椅子から勢い良く立ち上がり、涙を浮かべながらシュオンを見据えた。


「私は……っ、私は本当は、心の底で、他の人たちのことなんて構わない、って思ってるのよ……!」


最低でしょう?、自嘲の呟きを漏らして。


「それよりも、私は、……私は、皆を……シュオンを不幸にしたくないの!」


……考えたのよ。
ソフィアは俯いてそう言い、それから顔を上げた。


「貴方たち……この家の誰かの願いをもしも叶えてしまったら、私が此処を出て行ったときに皆に迷惑が掛かるかもしれないんでしょう!?」


なら。


「誰かの望みを叶えてしまう前に、……今すぐにでも、此処を出て行った方が良いんじゃないかって、思うのよ」


その言葉に、シュオンが表情を険しくして息を吸い、何か言おうとした。

しかしソフィアはそれを遮って続ける。


「カークランドのお屋敷で火事に遭ったときも、このまま全て諦めて死のうと思った」


一雫、涙が頬を伝う。


「……っ、でも、できなかった!」


ソフィアは泣きながら怒鳴った。



「だって、貴方が、……シュオンが、好きなんだもの!」



シュオンが綺麗なアクアブルーの双眸を見開く。



「し、仕方ないじゃないっ……!貴方にはちゃんとしあわせになってもらいたいのよ、でもっ、……貴方が誰よりも好きだから、私は、シュオンと離れたくない!本当は少しでも、どんなに迷惑でも、貴方の傍に、いたいっ」



拳を握り締め、涙で濡れた顔を見られたくなくて、下を向く。
なんて身勝手で、傲慢で、愚かなのだろう。


彼には誰よりも、しあわせになってもらいたい。だから、彼やこの家の人たちのことを考えるなら、ソフィアは願いを叶える前に、今すぐこの温かい場所を出て行った方が良い。
なのに。
他でもないソフィア自身が、シュオンと離れることを拒む。
そんなのは嫌だと泣き叫ぶ。


「……ひっ……どうしたら、良いのよっ……!」


シュオンがそっと立ち上がり、近づいてくる気配がした。



「ソフィア」



優しい声が淡く耳をくすぐる。
ソフィアが好きな、柔らかくて甘くて、でも芯のある声。


「君は、いつかこの家から出て行かなくちゃいけないって……そう思ってるの?」


「……そんなの当たり前、じゃない」


今までソフィアは、幸福の贈り物《紫水晶》として、貴族の屋敷を転々としてきた。
エインズワーズに居る時間は長かったけれど、此処を離れてまた次の屋敷でしあわせを呼び込むことになるのは、当たり前。
だから、できるだけ早く出て行かなくてはいけないのに―――



「―――ソフィア。簡単なことだよ」



シュオンが微笑んで軽く膝を折り、背の低いソフィアに視線を合わせる。



「君がずっと、此処にいれば良いんだよ」

481月波煌夜:2012/06/28(木) 11:55:03 HOST:proxy10012.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 39』




「え……?」


ずっと、此処にいる?
シュオンやシェーラや、ヒースたちと一緒に、ずっと此処に?


「だって、《紫水晶》を欲しがる人はいくらでもいるのよ?そんなことっ」


「できるよ」


あっさりと。


「他の貴族連中がどんなに五月蝿く言い寄ってきたって、そんなの全部はねのけられる」


僕を誰だと思ってるの?
ぽかんとするソフィアに、シュオンはふっと笑って。


「もう二度と、君を離してあげる気はないから、覚悟してね?」


「え、え?」


顔が急激に熱くなっていく。

だって。

そんなの、まるで。


「―――ソフィア、」


シュオンは愛しげな眼差しで、すっかり真っ赤になってしまった少女を見つめ、微笑んだ。




「好きだよ、君を愛してる」




―――……これは、現実なの?


「僕から離れるなんて考えないで」


どうしよう。



「一生傍にいて。僕が君を、たくさんのしあわせで包んであげる。約束するから」



……嬉しすぎて、どうにかなりそう。



「……………っ、」



温かい涙が溢れ出した。
ぼろぼろと転がる雫を、シュオンは優しく指先で拭って。



ソフィアの、今にも壊れてしまいそうなくらい華奢な身体を引き寄せ、彼女を抱き締めた。



びくりと身を竦ませるソフィアが可愛くて、愛しくて仕方がなくて。


シュオンはこっそり笑ってしまう。

482ピーチ:2012/06/28(木) 20:49:22 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

・・・あ、シュオン様がとうとう告った!!!!

ソフィア様が口あけてポカンとしてるのが容易に想像できるのはなぜだww

やっと二人に春が来たんだね〜(^w^)

おめでとー!!

あ・・・そー言えばシェーラちゃんとヒースさんはどーなったの?

483ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/28(木) 21:20:34 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

うきゃあぁあ(/ω\)←
やばい告ったやばいやばい(ry

お幸せに(´;ω;`)!

484Mako♪ (yes!happy☆人間):2012/06/28(木) 21:24:31 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
Yes!Happy☆ ←馬鹿

いやー、なんかラヴラヴだねぇ。

シュオンの父上が見たら、どうなっちゃうの?ってくらい。(^~^)//

羨ましい♪

本編はこれで終わりですか?
それもHappy,endでいいですけど(*^。^*)

番外編も楽しみwww

485月波煌夜:2012/06/28(木) 22:47:45 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp
>>ピーチ

春来ちゃったねー(*´д`*)
シェーラとヒースは……番外編でしっかり書くよ!
待たせないように頑張ります☆


>>ねここさん

はい!とうとう告りました!
ありがとうございます、そう言っていただけるなんてもうキャラたちは幸せ者です…!


>>Mako♪さん

HAPPY☆
うん。父上発狂しそうですな(´_ゝ`)
この章はあと一回、明日更新します。
それからエピローグを一、二回載っけて本編は終わりかな?
ありがとう、番外編もどうぞよろしく!




>>★読んで下さっている皆様へ追伸★


参考までに、『紫の歌』でお好きなキャラを一人教えていただけたら嬉しいです!
や、いなかったら別に良いですよo(^o^)o

486ピーチ:2012/06/28(木) 23:01:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

はーるがきーたーはーるがきーたーww←あほ。

うぅぅ・・・シェーラとヒースの番外編がめっちゃ気になるー!!

・・・ってゆーかもう終わっちゃうの!?

えーん・・・終わって欲しくないょー・・・

好きなキャラ・・・あたしはみんな好きだけどww

あ、でも敢えて言うならソフィア様とヒースかなー?

何か、御嬢様が攫われた時からなんとなーくかっこよくなってない?

金髪よりも黒髪の方が好きなのも理由の一つだけどww

487Mako♪:2012/06/29(金) 00:37:08 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
好きなキャラ……

ソフィア様もいいんだけど、やっぱり
 シェーラかなぁ。

天然なとことか、可愛いし♪

488月波煌夜:2012/06/29(金) 12:03:44 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

よし、期待にお答えしてシェーラ&ヒース編は長めにしよう(`・ω・´)キリッ
ああありがとうー!
完結しても仲良くしてねっ((号泣
ヒースは戦うときに輝くので。逆にそこなくしたらただのヘタレになっちゃうので。


>>Mako♪さん

シェーラですか!意外なところがきた!
天然というかただの脳天気アホになってる気がするんだけど←
そう思ってもらえて良かったよー…(/_・、)



好きなキャラを聞いたのは、それによって番外編の最後に、人気キャラの一人称小説でも書いてしめようかなーとか思ってたんだけど決めた!なんかもう主要キャラ全員書くわ!
というわけで二人ともありがとう(つд`)

489月波煌夜:2012/06/29(金) 13:52:44 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp

Ⅴ. 『祈り 40』






「……ね、お願い。もう二度と、一人で悩んだり、抱え込んだりしないで」



シュオンは彼女の髪を撫でて顔をうずめる。



「君のいない未来に、生きる意味なんてないよ……!」



ソフィアと離れて、シュオンもつらかったのだ。自分と同じくらい、すごく。
そのことが、やっと分かったソフィアは。


「もし、」


しゃくり上げながら、ぎゅうっとシュオンのシャツを握り締めて。



「……もし迷惑でないなら、これからずっと、好きでいても良い?」



「迷惑なわけないよ」



凄く嬉しい。
吐息が掛かる程の距離、耳元で囁く声。



「自信を持って、ソフィア。君は、世界で一番愛されてるんだって」



これからも、僕の隣で、僕のしあわせを作ってくれる?



「……うん」



しあわせ、よりも上の言葉はないのだろうか。


この気持ちを表す言葉が、何処かにないのだろうか。



指先に顎を掬われて、上を向かされる。


僅かに潤む、澄み渡った空色。



「―――ソフィア」



好きだよ。





―――不器用な青年と少女の影が、今、ひとつに重なった。




それは永久に感じられる、夢のような時間。
優しくて、柔らかくて、甘い感触。



ゆっくりと唇を離し、ソフィアは彼を見上げて微笑んだ。



微かに残る余韻と抱き締められた腕の温かさに、照れるよりも先に涙が溢れてきて。



愛しい人の姿を映し出し、淡い紫の瞳が穏やかな光を湛えて輝く。




「……私も」




しあわせなときには、できるだけ笑顔でいたいと思う。



この広い広い世界で貴方と巡り逢ったこの奇跡を、


何よりも大切にしたいから。

490ピーチ:2012/06/29(金) 19:53:16 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーぃ♪シェーラ&ヒース編は長編だー♪

あああああ!!終わったー!?

こちらこそ!!是非仲良くして下さいましー((号泣←あほ。

・・・闘う時のヒースは輝く。それがなかったらヘタレ!?

ちょっとつっきー!!それはさすがに可哀そうだよー!!

491ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/29(金) 20:34:03 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

すごく遅かったので質問の〆切りはすぎてるのですがねここの好きなキャラを←
遅くてうざったい野郎にしか見えないと思うので華麗にスルーしてオッケーです\(^o^)/


ねここはヒースが一番好きです!
好きなんです!

でもシェーラとソフィアとシュオンとベルにもうわあああああってなるんです!目がハートにry←
あと隠れファン的な感じでユーリエが好きです←
シュオンのお父さんとお母さんも好きなのでもう全員好きです←

でも悪役は苦手です(´;ω;`)


わー!
主要メンバーの小説楽しみです!
とりあえずキスの表現がうますぎてビビッたので泣きながら帰ります←

492Mako♪:2012/06/30(土) 01:59:30 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
や、やだ。なんか読んでるコッチが恥ずかしいよう(>.<)

突然ですが、(月波s、ピーチ)

もうじき、私のスレも100突破です。
(なんて気の早い人間だろう)
で、その際、こちらやピーチのスレのように、突破記念スレを、ラジオ風にしたいのですが……。
いいでしょうか?

493月波煌夜:2012/06/30(土) 09:42:42 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あーでもヒースは理性飛んだときに格好良くなるかもだよ?

ずっと応援してくれた、ピーチが納得いくような終わり方にしたいな(つд`)


>>ねここさん

いえ1日で〆切ってすみません!
お答えありがとうございます!

ヒースもシェーラもシュオンもジルも、さらにはユーリエや父上母上まで…!
あれ、目から塩水が…(;_;)
ありがとうございます!本当にありがとうございます!

な、泣かないでー!?
キスのシーンはなんかもう色々振り切った変なテンションで書きましたw



>>Mako♪さん

大丈夫!書いてるこっちの方が恥ずかしいから!
これからも胸焼けするくらいあっまあまなのを書いていきますよろしく!

100突破、早いかもだけどおめでとう!
ラジオ風、一回しかやんなかったけどねー。
月波に許可とる必要なんかないよ!思いっきりやっちゃってください☆

494月波煌夜:2012/06/30(土) 09:52:36 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp

Epilogue. 『紫の乙女と幸福の歌 1』





儚く淡く、この上なく甘く透き通った旋律が、波紋のように大広間に満ち、屋敷の全ての部屋へと広がっていく。
優しくて脆くて、なのに確かな強さを感じられる不思議な音色。
この屋敷の一人息子が初恋の少女の為に作った、繊細で、全ての人の心に沁み渡る奇跡の調べを奏でているのは、言うまでもなく。

純白のグランドピアノの鍵盤に指を滑らせていたシュオンがふうっと一息。演奏を中断し、両手を離すと―――そのまま、ぎゅうっと腕の中の少女を抱き締めた。


「ちょ、ちょっと!なんでやめちゃうのよっ」


案の定、少女は真っ赤になってもがき、彼に抗議する。


「無理。目の前にソフィアがいるのに、ピアノ弾くとか絶対無理。我慢できない」


「少しは我慢を覚えなさい!」


「やだ。……ソフィアは、僕にこうされるの、嫌?」


べ、別に嫌ではないけど、とぽそぽそと呟くソフィア。
それを聞き取るや、捨てられた子犬のようにウルウルとしていたシュオンの瞳がぱっと輝き。


「じゃあ文句ないよね?」


「う……」


そういう問題ではないような気もするが、言質をとられてソフィアが赤面したまま俯く。


椅子に腰掛けたシュオンの、やや広げた両脚にできたスペースにちょこんと座っている状態のため、逃げたくても逃げられない。


……いや。決して逃げたいというわけでもないけれど。


「ねえシュオン。この曲って……」


ソフィアは少しでも頬の熱を冷まそうと画策、ごく普通の話題を持ちかけようとしたが。


「ああ、『ソフィア』のこと?」


「シュオンっ!?」


分かっていてやっている意地悪なシュオンに、ソフィアは涙目で頬を膨らませる。


「お願いだからその曲名だけはやめてっ!」


「ええー。今更変えるの?九年間ずっとこの名前だったんだよ?それに、僕としてはこのままの方がソフィアの反応が面白くて良いなぁ」


「よし変えましょう今すぐ!」


ぐっと使命感に燃えるソフィア。
シュオンは不満げに、しかし微妙に嬉しそうに、彼女を見つめて。


「じゃあ、ソフィアはどんなのが良いの?」


「え……」


ソフィアは黙って考え込む。
ちなみにその間、シュオンはほわほわと「悩むソフィアも可愛いなぁ。照れたり怒ったりするソフィアも可愛いけどっていうかむしろ全部が可愛い」などと不埒なことを考えていたのだが思考に夢中のソフィアは全く気づかない。


しばらくして。


「……『幸福の歌』」


ソフィアはシュオンを見上げて、言った。


「すごく、しあわせな気持ちになる曲だから……どう?」


「……うん」


シュオンは春の日差しのように微笑んで。


「良いんじゃないかな」


「よかった……この曲を聞いたすべての人が、しあわせになれれば良いな」


「ソフィアの曲だもん、当然だよ」


「それは関係ない!」


顔を真っ赤にして、ソフィア。

495月波煌夜:2012/06/30(土) 10:16:50 HOST:proxyag008.docomo.ne.jp

Epilogue. 『紫の乙女と幸福の歌 2』





「……随分嬉しそうね」


「嬉しいよ?」


シュオンは。


「君が僕と一緒にいて、ドキドキしてくれてるのがたまらなく嬉しい」


「なっ……」


耳まで朱を走らせ、ソフィアが唇をわななかせる。


「あは。かーわい」


「う、うるさい!……なんで貴方は平然としていられるのよ!?」


にっこりと眩しく笑う恋人。



「ううん、僕はもう十分すぎるくらい緊張してるよ?これ以上ドキドキしたら死んじゃうくらい」


ほら、とソフィアの身体を反転させ、彼女の手を取り、自らの胸に触れさせて。


「……ほんとだ」


とくんとくんと速まる鼓動。
ソフィアと同じくらい。


「ね?」



壊れ物を扱うように、優しく髪を梳く指先。


「……貴方は、私を甘やかしすぎなのよ」


くすぐったいほど、この青年はソフィアを大切にしてくれる。
それは嬉しくもあり、気恥ずかしくもあり。


「それはそうだよ」


背中を預けていたときとは違い、相手と向き合う形になる。

シュオンはソフィアの恨みがましい視線を受け、晴れやかに微笑んで。


「僕は、君をどうやって甘やかそうかって、いつも考えてるんだから」


たとえばこんな風に。


燃えるように熱を持った頬を手のひらで包まれ、
シュオンの綺麗な顔がさらに近づいてくる。

彼が意図するところを察してしまったソフィアは、しばらくあわあわとした後、ついに心を決めて瞼をきつく閉じる。


今にも二人の唇が重なろうと―――




「「―――……あっ!」」




ギィィイイイッ!


そのとき、突然広間の大扉が開き、
扉に掴まっていたらしいヒースとシェーラが揃ってバランスを崩し、部屋に倒れ込んだ。


「「「「…………………」」」」


痛い沈黙。


「や、ち、違うんです御嬢様!これは俺じゃなくてシェーラがっ」


「ヒース、後よろしくっ!」


「ちょっ待てお前ふざけんな!?」


キラッ☆とヒースに向けて素敵にウインク、シェーラが一足早く逃げ出した。


「……ヒース」


ソフィアを庇いながら、シュオンがゆらりと立ち上がる。

その手には……いつ取り出したのか、爆弾の形をした、明らかに危険な物体。


シュオンは殺戮の天使のように輝く微笑みを浮かべ。


「……死のうか」


「いつもより暴言がダイレクトだ―――!?」


ヒースは恐怖に震えて、シュオンを唯一止められる存在であるソフィアに向けて。


「お、御嬢様!何とか言ってやって下さい!」


ソフィアは。
震えながらも、涙の溜まる紫の瞳に静かな怒りを湛えて。


「室内だけど……やむを得ないわね」


「御嬢様ぁー!?」


味方はいないと悟るや否や、脱兎の如くシェーラが消えた方向へ走り去るヒース。


「行くよソフィア」


「ええ」


手を繋いで駆け出す。


顔を見合わせて、笑いあう。


ばかみたいで、可笑しくて、でもかけがえのない日常。





嬉しくて、苦しくて、切なくて、


どうしようもない感情で溺れそうになるけど。


この気持ちだけは変わらない―――



「大好き」



世界で一番のしあわせを作っていこう。


―――貴方の隣で、ずっと一緒に。







――Fin――

496ピーチ:2012/06/30(土) 10:24:44 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あわわわっ!!?読んでて凄いと思うよ!ソフィア様!

とうとうソフィア様までが・・・。

・・・シュオン様、「死のうか」は酷いと思うぞ・・・。

497彗斗:2012/06/30(土) 14:18:27 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
月波さん>> 
どうもお久しぶりです。もう当分来ていませんでしたが…もう終わっちゃたのでしょうか(?)それにしても相変わらずですねシュオン様とヒースはww
前回見た時よりも明らかに殺意が見え見えですが…大丈夫ですよね? 本当に殺さないですよね? この調子でエスカレートすると…うん…色んな意味でヒースは死んじゃうかもww 周り敵だらけだし…

498ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/30(土) 17:58:05 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

うきゃー!←
最後にシェーラとヒースも出てきたのでテンション上がってます!

最後までお疲れ様でしたー!
まだ番外編もあるのかな(´・ω・`)?
とにかくにも、これからもがんばってくださいv

499月波煌夜:2012/06/30(土) 18:43:44 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
皆さん、コメありがとうございます!
申し訳ありませんが、コメ返しはもう少しお待ちくださいませ。


さて、今から500レス突破記念SSを載せます。

これで本当に、このスレにお話を書き込むのは最後になります。
……な、泣いてなんかないんだからねっ!


今までご愛読くださり、本当にありがとうございました。

あとで、あとがきという形でダラダラと語らせていただくつもりです。


それでは、「お前ソフィア好きすぎだろ!」と突っ込みながらでも、『紫の乙女と幸福の歌』最後のお話をご覧ください。

500月波煌夜:2012/06/30(土) 18:46:23 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
†祝☆500レス突破†

記念SS 『今は ①』




「よし」


透けるように光り輝く銀髪を、光沢のあるヴェルヴェットのリボンできゅっと結い上げる。

鏡の前でくるりと回れば、二房の髪が踊り、スカートの裾がふわっと広がった。


「大丈夫、おかしいところはない……はず」


ソフィアは自室の鏡に映る自分に向かってうん、と頷き、踵(きびす)を返そうとしたが、


「ひゃっ?」


突然、背後から誰かに抱き締められて悲鳴を漏らした。


「―――誰でしょう?」


楽しげに問いかけるその声は。


「……誰って、シュオンに決まってるじゃない」


「なんで?」


「……だって、シュオン以外の男の人が私に抱きついたりするのを、貴方が許すわけないもの」


確かに、と笑って、シュオンはソフィアを解放―――


「……シューオーン?」


「もう少しこのまま」


―――……しなかった。


「シュオン!?こら、離れなさいっ」


「やだー」


かなり下に位置するソフィアの頭に軽い口づけを落として。


「ねえ、ソフィアって、なんでいつも髪結んでるの?」


「人の話聞いてる!?」


「都合の悪いことは聞こえないんだよね」


「そんな耳があったら人生楽そうね……」


悪びれないシュオンに、ソフィアは溜息をついて。


「……小さいときからの癖なのよ。なんていうか……こう、思いっきりきゅって髪を縛ると、心が閉ざせるような、そんな気がして」


無感情な人形でありたいと願った。
怒りも痛みも哀しみも、何も感じなくなるように。
自らの感情を少しでも封印したくて、幼いソフィアは、髪をきつく結い上げることにした。


その、固く何重にも鎖を巻き付けていた心をほどいてくれたのが、シュオンと彼の“幸福の歌”だった。


「でも、髪をほどいてても可愛いと思うけど?」


彼女の心境は十分承知しているのだろう、シュオンはおどけるように明るく言った。


「まあ、どんなソフィアもみんな可愛いけどね」


「かっ……可愛くないっ」


「可愛いよ」


きっぱりと断言。


「この僕がこんなに狂わされてるくらい、可愛い」


「……〜〜〜〜〜……!?」


その台詞と共にすかさず頬にキスすれば、ソフィアは何かもう、面白いくらい真っ赤になってしまって。


そんなところも可愛い。

501月波煌夜:2012/06/30(土) 18:48:29 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
†祝☆500レス突破†

記念SS 『今は ②』




ソフィアに怒られそうだから―――もちろん怒るソフィアもすごく可愛いし大好きだけれど、あまり体力を使わせるのも可哀想なので―――それは言わないで胸の中にしまっておく。


「でも、さ」


シュオンは優しく。


「―――今はもう、此処に鍵を掛ける必要はないでしょう?」


胸元に輝くアメシストのネックレスに触れて。


ソフィアは思い出すものがあったのか、一瞬だけ、泣きそうな顔をしたけれど。


「……そう、ね」


花が綻ぶように、ふわっと微笑んだ。


―――……でも、やっぱり。


シュオンは思う。


―――笑っているときが、一番可愛いよね。



「……シュオン?あの、」



我に返れば、照れくさそうにこちらを見つめてくる少女。


「どうしたの?」


「うー……い、いいからそこに座ってっ」


―――……座る?なんで急に。


シュオンは不思議に思いながらも、何よりも大切な彼女の頼みを断るなんて選択肢はまず存在しないので、素直に彼女の言葉に従ってソファに軽く腰掛けた。
かなり背が低い彼女と比べて、やっと、彼女から見てやや低い目線の高さになる。



ソフィアはてくてくとシュオンの目の前まで近づいてきて。

少し躊躇うように、視線を彷徨わせたあと。



ぎゅっと強く目を瞑り。

―――ちょん、と。唇を、シュオンのそれに押し付けた。


触れたのは一瞬。



「……違うのよ」


ソフィアは見事なほど鮮やかな薔薇色に染まった顔をふい、と逸らして。


「ふ、深い意味はなくて……いつも、貴方からだったから……って思って……それで……」


後半はほとんど聞こえない程のか細い声で。



―――……あー、もう。



「……ソフィア」


「………………………」



頑なに首を横に向け続ける彼女。


―――訂正。



シュオンはソフィアの顎を捕らえると、にっこりと笑った。



「僕のスイッチ入れた責任、取ってくれるよね?」



「へ?……な、」


「ちなみに拒否権はありません」


「え、え?ちょ、ちょっと待って!それずるいっ」


「ずるいのはどっち?」



―――恥ずかしがってるときが、一番可愛い。



「ん!?ん―――!」





……ソフィアの苦難はまだ、始まったばかりである。

502月波煌夜:2012/07/01(日) 09:46:40 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん。ソフィアが絡んだときのシュオンは最強(最恐)です。
もうシュオンの腹黒ぶりを書く機会ないのかーと思ったらついやりすぎたw
冗談だから!いつもの楽しいジョークだから!
エインズワーズ家は今日も平和です(・∀・)


>>彗斗さん

お久しぶりです!
はい、一応完結となってしまいました。
ヒースとシェーラの話がメインの番外編も書く予定ですので、そちらもよろしくお願い…したいです(^-^;

だ、大丈夫です殺しはしません!
200と201を見て戴ければシュオンのヒースに対する態度…いじめてるけど本当は悪くは思ってないんだよって感じが分かるかも?
しばらくこれをネタにいびられるだけでしょう(ぇ


>>ねここさん

よ、よかったー!
最終回にして無理矢理シェーラとヒースをねじ込んだかいがあります←

ありがとうございます!
また番外編も、宜しかったら、本当に宜しかったらで良いのでよろしくお願いしますっ(〃▽〃)
ヒースをときにヘタレにときに格好良く書けるよう頑張ります…!





☆★番外編のお知らせ★☆

近いうちに新しくスレを立てます!
タイトルは『紫の乙女と愛の花束(ブーケ)』。

内容は、まず最初に悪役(?)s、ジルとユーリエたちの話「孤独な少年と追憶の欠片(仮)」。
次にメインのシェーラとヒース編「黒の騎士(ナイト)と秘密の誓約(仮)」
それからシュオンに求婚しまくってたというお姫様の話「我儘王女と約束の灯(仮)」
最後に主要キャラ四人のそれぞれの視点からの短い話、「紫の乙女と永遠の恋歌(仮)」

…のつもりです。
「黒の騎士と〜」以外は短めに抑えたいところです。



それも完結したら、生意気ながらも、ファンタジーは一切なしの日常系学園ラブコメとか純愛ものの短編とかもやってみたいなとうっすら考えておりまして。
もしお目にかかる機会があれば、どうぞよろしくお願いします( ´艸`)

503ピーチ:2012/07/01(日) 10:21:18 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あ、そーなの・・・良かったねー、ヒース。命拾いしてww←あほ。

・・・にしても、いつもの楽しいジョークにしては度が過ぎてるような気がしないでもないけどww

わぉ!新スレ!!楽しみにしてるよ〜♪

・・・あ、何か地味に我侭お姫様気になるかもww←読み出したら絶対文句だらけww

でもやっぱり、一番気になるのは黒の騎士だね〜(^w^)

504月波煌夜:2012/07/01(日) 15:25:04 HOST:proxyag047.docomo.ne.jp
>>ピーチ

番外編は、読者様の「このキャラはどうしても好きになれなかった」って苦手意識を克服しちゃおうぜ!って企画でもあるw

レオンの妹・ワガママ姫ルイーズも結構濃いキャラだと思う←
悪い子ではないから嫌わないであげてね(´_ゝ`)

黒の騎士は、ヒースって騎士ってわけじゃなくてただの従僕(男の使用人)じゃね?ってとこがポイントだよ!


もうスレだけ立てちゃおっかな…?うーん。

505月波煌夜:2012/07/01(日) 15:48:57 HOST:proxyag047.docomo.ne.jp
†あとがき†


※月波の完全自己満足のために書いた上に無駄に長いので流し読み推奨




此処まで―――この『紫の乙女と幸福の歌』に最後まで目を通して下さった皆様。
本当に有難う御座いました。
途中まででも読んで下さった方にも、チラッとでも覗いて下さった方々にも。ありったけの感謝を捧げたいと思います。


さて、折角の機会なので思いっきり気持ち悪く語らせて戴きましょうか。
あるとき、月波―――私の脳内に、一人の女の子の姿がふっと現れました。
寂しそうに銀色のツインテールを揺らす、紫の瞳の少女。
この子は誰なんだろう。
何でこんなに悲しそうな目をしているんだろう。

勿論、私の妄想の果てに出てきてしまった只の理想の二次元少女像だという説も否めませんが!

でも、この子のお話を、いつか作ってみたいな、と思ったんです。
できることなら、この孤独な女の子を、最高にしあわせにしてあげたい。
そう、ぼんやりとですが思っていました。



それからかなり時間がたって。
学校生活が落ち着いた私は、ノートに色々なキャラを作ってはその子たちにまつわる簡単なお話を作り、妄想するようになりました。
はい。完全に痛い人ですね\(^o^)/

まあそれはさておき。私はその妄想を文にして、小説にしてキャラたちを生かせないかなと思ったわけです。

しかし私は完全にド素人。作文はそこそこ好きではありましたが、人様に堂々とお見せできるものでは決してありません。

こんな私でも温かく迎えてくださるような掲示板はないものか…!とケータイで検索しまくり、やがて辿り着いたのがこの掲示板でした。
どなたかの作品を読んだわけでもなく、ただ何となく「ここがいいな」と小説を書く場所を決めました。

それで、いざ書こうとしたものの、そこで思わぬ壁が立ちはだかりました。

そう。何と私が考えていた話は、全部いわゆるBLと呼ばれるジャンルではありませんか!

さて、困りました。
この掲示板は比較的ジャンルは自由なようですが、しゃしゃり出てきた素人が、稚拙な文でパッションピンク妄想小説を載せるようなら大問題になる上に他の利用者の皆様を不愉快にさせること請け合いで御座います。

でもやっぱりこのままで終わるのは嫌だ。どうしようか―――そう足りない頭で考えて、
思いついたのが、全く新しい、普通のノーマルラブなお話を書こうと。そういう考えでした。

最初は腕試しの為に、無難でごく短い話を載せようと思いました。
でも、そこで。

あの日の孤独な女の子の姿が、甦ってきたのです。

今度こそ、あの子をしあわせにしなくては。
そう思った私は、構想期間一日弱でこのスレを立てさせて戴き、早速書き始めたのでした。

何しろ文才というものが欠落している上に初めての小説です。
まず文が下手だわやたら難しい言葉使うわ文章のルール無視だわ展開は急な上に意味分からんわドレスの描写多いわ何かにつけて登場人物の見た目を美化するわ。
あーもう何でこんなに下手なんだー!と悩んだときもありました。というかほぼ毎回でした。皆様も大変読みづらかったことと思います。
でも。
難しいことは気にせず、自分が好きなように書き散らしたバカ話を人様に読んでいただけて、それも温かい感想やコメまで戴けて。
お褒めの言葉や、応援の言葉をたくさんたくさん、戴いて。

嬉しくて、仕方ありませんでした。

みっともない話ですが、このキャラが好きになった、という感想を貰ったときには涙が出そうになるくらい。

自分が一番好きなキャラで、一番楽な書き方で。
楽しい。

そう、思えるようになりました。


皆様と出逢えたこと、それ自体がもう、ソフィアの奇跡の力なんじゃないかなーとか恥ずかしいことを思ってみたり。


本当に、皆様がいらっしゃらなくては『紫の乙女と幸福の歌』は成り立ちませんでした。

改めて、お礼を言わせてください。

506月波煌夜:2012/07/01(日) 16:01:18 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp
では、感謝の言葉は尽きることがありませんので、切り替えてキャラクターについてでも。

まず、主人公ソフィア。
そんなわけで容姿はすんなり決まったものの、本当の性格が私自身も良く分からないままでのスタートとなりました。
クーデレっぽくなったら良いな、と考えていたものの、果たしてどうなのでしょうか。
つらい経験をしてきたという設定なので、そのせいですぐ悩んだりマイナス思考になったりしまいがちな子でしたが、クールにボケたりたまに突っ込んだり、慌てたり叫んだりと色々な表情を見せてくれるようになりました。
ソフィアの名前はすぐに考えつきました。
ふわっとした感じが好きなので、結構気に入っています。
ギリシアの言葉で知恵、という意味だそうなので、クールな感じが…しませんか…?


次に王子系ヒーローシュオン様。
銀髪にはやっぱり金髪碧眼だよね!という根拠ゼロの思い込みにより容姿はすぐ決まりました。
頭良くて腹黒だけど一人の女の子にだけ優しいとか、金持ちだとか美形だとか音楽青年だとか、私の大好き要素を詰め込んだ結果、嫌みかコラというレベルの完璧野郎が出来上がってしまったので、火薬毒薬の変態趣味をプラスしました。後悔はしていません!
ちなみにシュオンは漢字で「主音」のイメージです。ピアノだから!
こいつの名前も、響きが好きで結構気に入っています。
女性にモテまくりな彼ですが、これからもソフィアだけを一途に愛し続けてくれるでしょう。


そしてシェーラ。
ソフィアの恋路を邪魔するお嬢様だったはずが、一気にソフィア大好きアホメイドに。
こっちにして良かった…。
シェーラは美少女という訳ではなく、「素朴だけどカワイイ」系を目指してみました。
花に例えるならタンポポでしょうか。
彼女の底無しの明るさの背景はまた色々ありまして、その辺も番外編で書けたらなと思っております。
とある村の旅籠の娘がどうやってエインズワーズ家に仕えるヒースと出会ったのか。『祈り』の最初の方でヒースがサラッと口を滑らせておりますが、そのへんから話を進めたいなーと。


最後にヒース。
黒髪に黒い瞳のワイルド系イケメン(目つきの悪さ除く)のつもりが何故あんなことに…。
シェーラとくっつかせるため&ツッコミ役として生まれた彼ですが、ヒースがいなかったらどうなったことか。
コミカルにいじられシリアスではちゃんと活躍してくれる、とても有難い子でした。その割には扱い酷いけどね!読者様にことあるごとに心配されてたけどね!あれ?なんだ十分しあわせ者じゃないか!
ヒースの名前は、“荒野”という意味です。植物の方ではなく。
強いキャラにしたいなということで。体力精神力両方の意味で。



では、長々と書き殴ってしまいましたが。
これでもう二度と、『紫の乙女と幸福の歌』を書くことはありませんが、また番外編という別の形でお会いできることを願って。


たったひとりの人物でも、たったひとつの言葉でも。
ほんの少しでも、貴方の心に残るものがありますように。

「あーそういえばこんな変な話あったなー」とでも、何かの拍子に思い出して戴けるなら、これに勝る喜びはありません。

本当に、有難う御座いました。


皆様に、ソフィアたちが奏でる幸福の歌が届くことを祈りつつ。




月波煌夜

507ピーチ:2012/07/01(日) 17:18:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

す、凄いあとがき・・・!

・・・まぁ、あたしはあとがきするつもりないけどね!←何の意地だw

あー・・・こっち終わっちゃったけど、コラボの方は続けていいのかな?

508月波煌夜:2012/07/01(日) 17:36:55 HOST:proxyag119.docomo.ne.jp
>>ピーチ

もちろんですよ!
ばんばん続けちゃってくださいなヾ(^▽^)ノ

月波もコラボ書けたらなと思うんだけど、ピーチのキャラ把握してないし思いつかないしで、ピーチのお話が一段落したら考えるよ!

509ピーチ:2012/07/01(日) 17:51:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あああぁぁぁぁぁ!!!?ごめんっ!ほんとごめん!!

最近自分の更新忘れてた・・・。

つっきーとのコラボが終わったら絶対更新するから!!

510ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/01(日) 22:53:21 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

いやもう本当おつかれさまでした!
何回お疲れ様って言ってるのかわからないけどおつかれさまでした←

あとがきに妙に感動しました(´;ω;`)
次作も楽しみにしています!

511ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/01(日) 22:53:36 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

いやもう本当おつかれさまでした!
何回お疲れ様って言ってるのかわからないけどおつかれさまでした←

あとがきに妙に感動しました(´;ω;`)
次作も楽しみにしています!

512AiLA:2012/07/01(日) 23:05:27 HOST:KD106169002172.au-net.ne.jp
こん♪
更新がんば!です

513月波煌夜:2012/07/03(火) 16:54:33 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

がんばれー!
暇なときにでも、天音ちゃんのプロフィールとか教えてほしいな(〃▽〃)


>>ねここさん

ありがとうございます!
いえ、ここまで付き合って下さって…こちらこそお疲れ様でした(*^_^*)
これからもよろしくです(^-^)v


>>AiLAさん

ありがとうございます(`・ω・´)

514玄野計:2012/07/03(火) 17:37:37 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
                    \    _
                    r-''ニl::::/,ニ二 ーー-- __
 便女がしゃべった!!  ,/: :// o l !/ /o l.}: : : : : : :`:ヽ 、
                  /:,.-ーl { ゙-"ノノl l. ゙ ‐゙ノノ,,,_: : : : : : : : : :ヽ、
              ゝ、,,ヽ /;;;;;;;;;;リ゙‐'ー=" _゛ =、: : : : : : : :ヽ、
              /  _________`゙ `'-- ヾ_____--⌒     `-: : : : : : : :
...-''"│    ∧  .ヽ.  ________   /   ____ ---‐‐‐ーー    \: : : : :
    !   /   .ヽ  ゙,ゝ、      /  ________rー''" ̄''ー、    `、: : :
    .l./     V   `'''ー-、__/__r-‐''"゛     ̄ ̄   \   ゙l: : :
                   l     .,.. -、、 _ ‐''''''''-、    l   !: :
                  |   /    .| .!     `'、  |   l: :
                      l   |     .l,,ノ     |  !   !: :
                       / '゙‐'''''ヽ、 .,,,.. -''''''''^^'''-、/  l   !: :
             r―- ..__l___    `´            l   /   /: :

515ピーチ:2012/07/03(火) 18:30:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ラジャー!!いつかパッタリ更新されなくなるかもだけどww

そん時はあたしのパソコンが使えなくなった時だww

そーならない内にプロフィール載せとくね〜

516月波煌夜:2012/08/13(月) 11:26:09 HOST:proxyag028.docomo.ne.jp
こちらのスレではお久しぶりです、月波です。

ここでは、番外編『紫の乙女と愛の花束』の話の展開の都合上、載せきれなかった短編を書いていきたいなと思います(*^_^*)
ただ、番外編を踏まえての内容が多いので御注意を。


それでは始めます(≧∀≦)

517月波煌夜:2012/08/13(月) 11:28:26 HOST:proxyag027.docomo.ne.jp
☆★ピーチ感謝祭★☆


特別SS 『封じられた記憶の鍵は 1』





「ユーリエ。こっちに来い」


重苦しく響いたその声に、メイドの少女はびくりと肩を震わせた。


埃にまみれても鮮やかさを失わない赤い髪に、恐怖の色に染まった金の瞳。
彼女は非常に愛らしい顔立ちをしていたが、薄い身体や細過ぎる手足が、その魅力を半減してしまっていた。


「……はい、御主人様」


また、自分は何か失敗しただろうか。
それとも、彼の機嫌を損ねるような真似をしてしまった?


まだ幼さが抜けきらないユーリエは、へたり込みそうになる両脚を叱咤して、何とか主人の前へ進み出る。
鋭い視線に射竦められ、ぞわりと鳥肌が立ち、全身に付けられた傷が、痛みを伴って疼いた。


今日は殴られるのか、蹴られるのか。こんなに近くまで呼びつけたのだから、怒鳴られるだけでは済まないだろう。
少しでも怯えた表情をすれば、顔が気に食わないと余計に暴力を振るわれる。
だからユーリエは、歯を食いしばってできるだけ表情を消すように努めた。


「……私に何か」


「ああ。お前に頼みたいことがある」


ユーリエは真紅の睫を瞬かせる。
まさか、普通の仕事の為に呼びつけられたのだとは思いもしなかった。



「―――しばらくの間うちで預かる予定の、ひとりの子供の世話をお前に一任したい」



「……畏まりました」



ユーリエは頷く。
主人に背くことなど、彼女にできる訳がない。
だから、これは『頼み』ではなく只の『命令』だ。
『命令』には、無条件に従わなくてはならない。


「少し事情がある子供だから、扱いには十分気をつけろ」


「はい」


何故かは分からないが、今日の主人は随分機嫌が良いようだった。


「細かいことは後で知らせる。もう出て行って構わん」


「はい。失礼致します」


深く一礼して扉を閉め、ユーリエはやっとのことで、溜め込んでいた息を吐き出した。


「……怖かった……」


誰にも聞き取れないくらいの音量で、呟く。


もう夜も遅い。
ユーリエは扉の前で一息ついてから、自分の部屋に戻ろうと廊下を歩き始めた。


「事情がある子供って……」


あれはどういう意味だったのだろうか。
もしかして、主人の隠し子?それとも、何か病気を抱えているとか?


「もしそうだったら、看病しないといけないわね」


何にせよ、子供の世話なんて久しぶりだ。
ユーリエは此処何年も固く閉ざしていた唇を、ひとり綻ばせた。

518ピーチ:2012/08/13(月) 15:06:17 HOST:nptka403.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

うわぁ!ユーリエちゃん凄い怯えよう!!

よっぽど酷いんだろうねぇ…

お世話頑張って!!

にしても、相変わらずの神作品ですなぁ♪

519月波煌夜:2012/08/13(月) 17:01:23 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、感謝祭とか銘打ってる割に暗くてごめんね?

ユーリエとジルの話はきっと明るくなるはずだから!

520月波煌夜:2012/08/13(月) 17:06:21 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp
☆★ピーチ感謝祭★☆


特別SS 『封じられた記憶の鍵は 2』





―――くす、という小さく抑えた笑い声が聞こえた。


「貧乏くさい赤毛ねえ」

「やあね、汚らしい」

「大して役にも立たないのに、旦那様も、あんなものを拾って」


年長のメイドたちだ。
露出した肌に残る傷や痣(あざ)、煤(すす)けた髪や服を見て嘲笑う者たち。

ユーリエの年齢に見合わない美しさを僻(ひが)んでの言葉だったのだが、素直な彼女はそこまで頭が回らなかった。


「………………」


この数年で随分慣れた、聞こえていない振りを貫きながらユーリエはひたすら歩いていく。

彼女の手には一人分の食事。
今日は、例の子供と初めて顔を合わせるのだ。
これはその子に届ける為の、朝食、という体のやや早い昼食。


「……好き嫌いとか、ないと良いけど」


やがて、主人に教えられた一つの扉の前で立ち止まり、コンコン、と左手でノックをする。


「失礼します。朝食をお持ちしました」


暫く待ったが、返事は聞こえない。


「……失礼します」


仕方なくもう一度声を掛け、ユーリエはそっと扉を開けて入室した。


「…………?」


しかし、部屋中を見回しても目的の人物がすぐには見つからず、ユーリエは不思議そうに首を傾げた。

テーブルに食事を置き、何処かに隠れているのかとあちこち探してみる。


「……あ」


閉じられたカーテンの裏を覗き込むと、……いた。


女の子だ。
びくんと飛び上がった小さな後ろ姿。
二つに結い上げられた、銀細工のようにきらきらと眩しく輝く綺麗な髪。


「……こっちに、こないで」


鈴を転がすように可愛らしい声が、明確な拒絶の言葉を紡ぐ。


「どうして?」


「わたしにちかよらないでと言ってるの」


「だから、どうして?」


ぱっと小さな少女が振り返る。


ユーリエは驚いた。


―――この子、目隠しをしてる?


少女の両の瞳を覆い隠すように、彼女のヘッドドレスから繋がる薄いヴェールが顔に掛かっていた。


「……っ、人はきらいだからよ!あっち言って!」


「嫌」


反射的に、答えていた。

この傷ついた女の子を、孤独(ひとり)にしてはいけない。

そう思った。


「私は貴女の世話を命じられたメイドよ。貴女が此処から出て来て、きちんとご飯を食べるのを見届けるまで、帰らない」


「ごはんなんかいらない!」


少女は頑なに首を横に振る。


「ちゃんと食べないと駄目よ。身体壊れちゃう」


「あなたにだけは言われたくないわ」


確かに、とユーリエは苦笑する。
どうやらヴェールの所為で此方からは良く見えないが、少女はユーリエの姿をはっきり見ることができるようだった。

521月波煌夜:2012/08/13(月) 17:49:18 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
☆★ピーチ感謝祭★☆


特別SS 『封じられた記憶の鍵は 3』





「でも、貴女が身体を壊したら、悲しむ人がいるでしょう?」


「……いない!」


少女は叫んだ。


「そんなのいない!家族も友だちもいない!わたしが死んだって、困る人はいるけど、……っ、心からかなしんでくれる人なんてだれもいないもの!」


途中で、嗚咽が混じった。
ひく、と華奢な肩を震わせ、小さくしゃくり上げる少女。


「……貴女は……」


この女の子は、ユーリエが想像していたよりもずっと、酷い境遇に置かれているようだった。

ユーリエは、どくん、と心臓が脈打つのを感じる。


「貴女は、私と一緒なのね」


「……あなたも……?」


「そう。私も同じ。いつも一人ぼっち」


血の繋がった人間なんて知らないし、友達だって勿論いない。
気がつけばこの屋敷で働いていた。
苦しくて、つらいだけの毎日。


「……うそよ。あなたはきれいだもの」


「綺麗?」


「すごく、きれいな目をしてる」


ユーリエは金の瞳を丸くする。
そんなこと、言われたことも、思ったこともなかった。


「わたしとはちがう……」


「貴女は……なんで目を隠しているの?」


疑問に思ったユーリエは、俯く少女に尋ねる。


「……このおやしきの人に言われたから」


「なんでかしらね」


「………………」


少女は何か言いたげに口を開いたが、何も言葉にはしなかった。


その代わりに、少女は言う。


「……ねえ」


「なあに?」


「わたしはなんで、こんなにつらい思いをしなくちゃいけないの?いつまで、こんな日がつづくの?ずっと?」


消え入りそうな、声だった。


「………」


彼女の、ずたずたに切り裂かれた心を垣間見た気がして、ユーリエは胸が苦しくて堪らなくなる。


「……そんなの、わかんないよね。あなたもつらいのに……ごめんなさい」


「…………っ」



ユーリエは少女の手を、両手でぎゅっと握った。


「え、」



「謝らないで。お願い」



怯えたように身を竦める少女を、そっと引き寄せる。



ユーリエは、少女の見えない瞳を見つめて言った。



「誓っても良い。貴女は絶対、しあわせになれる日が来るわ」



「……そんなのうそよ」



「嘘じゃない」



小刻みに震える身体を、そっと抱き締める。
彼女が寂しくないように、怖がらないように。
優しく、力を込める。



「いつか、貴女だけを愛して、全てから守ってくれる人が現れる」



「……っ」



「本当よ」



ユーリエでは、この子を本当に救うことはできない。



誰でも良い。
いつかこの子に、溢れるくらいの幸福を。



「……あなた、にも」



「え?」



「あなたはやさしいから、きっと、すごくすてきな人が見つかるわ」



少女が、小さく囁く。



「そうね」



いつか。

いつか、心から笑いあえる、そんな人に逢えたらいい。


ユーリエは少女を胸に抱きながら、優しく微笑んだ。

522月波煌夜:2012/08/13(月) 17:56:30 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
感動的、を目指してみたのですが、如何でしたでしょうか?

ユーリエとソフィアが昔出会ってたとか、考えつくピーチの頭脳が恐ろしい(*´д`*)


ユーリエはソフィアの瞳を見てないし、お互いに名前も知らないんで覚えてないって設定で。
これからしばらくして、屋敷から脱走したユーリエがジルに出会い、ソフィアがシュオンに出会う訳ですね!
そしていずれこの四人が一緒に暮らしていくことになるとか、ビバ運命!


あ、次は、本編『恋のSpica』の舞踏会にジルとユーリエが潜入してたよって話です(・∀・)
こちらもピーチ考案です!

523彗斗:2012/08/13(月) 21:40:45 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
感動できました!! 凄いですね〜! 何か運命ってのが怖く感じて来た…(笑)

あ、そうそう。このピーチさんが考え付いたのを見て今さっき思いついたんですがシェーラとユーリエなら…ヒースとジルの話もお願いできませんかね?
ちょっと見てみたいなって思っちゃったので…

524ピーチ:2012/08/13(月) 21:57:56 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

やべぇつっきー天才!!

あ、慧斗さんにさんせーい!!

ヒースとジルが出会う前にマジでやりあったとか?

…無理だったらスルーしてねーw

525月波煌夜:2012/08/13(月) 22:23:08 HOST:proxy10079.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

なるほど!では、彗斗さんリクはヒースVSジルということで!
でも、どういう場面とか指定あります?
ジルいわく「こんなに強い奴と戦うの初めて」なので、二人の記憶にないくらいの昔がいいでしょうか?

あ、感動してくださってありがとうございますw


>>ピーチ

ありがとう!
いや、凡才以外だけどね!

あれれピーチもプッシュしてくれる?
OK、ヒース&ジル、月波頑張るよ!
なんか指定あったらいってほしい(`・ω・´)

526彗斗:2012/08/13(月) 23:16:39 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
まぁ…その位が宜しいかと思いますが…っていうかそうしとかないと色々辻褄が合わないですしねww

527ピーチ:2012/08/14(火) 15:28:33 HOST:nptka401.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

うん!プッシュするー!

楽しみにしてるねー!

528月波煌夜:2012/08/14(火) 17:20:48 HOST:proxyag017.docomo.ne.jp
☆★彗斗さん感謝祭★☆


特別SS 『剣士の氷刃 1』





「―――おい、ちょいと待ちな!」


ジルは疾走する一つの馬車の前に躍り出て、ひゅうっと口笛を鳴らす。


剣を馬の鼻先に突き付ければ、悲鳴のような嘶(いなな)きが響いた。


御者が慌てて手綱を引いて馬車を止め、それから暴れる馬を抑えようとする。


「な、……何事なのっ!?」


馬車の中から、黒い髪の女が顔を出した。


「どォも、初めましてお姉さん」


ジルはにやりと笑って言う。


「なァに、金目のモン出してくれりゃあ痛い思いはさせねェよ。ほんとはみーんな殺しちゃってもいーんだけど、お姉さん美人だからサービスね」


此処ですぐに男が出て来ないということは、馬車の中にいるのは女のみと考えて良い。
ジルも鬼ではない。
弱い者苛めは嫌いだし、女子供を手に掛けても、何となく後味が悪くなるだけだ。
御者の男だけ殺しても面白くないし、女の手では馬を操ることもできずに野垂れ死ぬだろうから、見逃す意味もなくなってしまう。
ジルが盗賊ではなく人攫いの類であったなら、話は別だったのだが。


「………っ」


女は焦ったように唇を戦慄(わなな)かせる。


「ん?どーしたのお姉さん。そんなに悪い話じゃねェと思うけど?」


なかなかどうして、強情な女のようだ。


仕方ねェな、とジルは抜き身の剣を手に、馬車の扉に近づいていく。



「オレ様の言うこと聞いてくんないと、綺麗なお顔に傷が付いちゃうかもよ?」



女の額の前で剣先をぴたりと止める。
なに、少し脅すだけだ。
圧倒的に優位なのは此方なのだから、ちょっと押せばどうとでもなる。


「いやマジで、女の子相手に酷いことしたくはないんだわオレ様。な、オレ様だって生活苦しいワケ。ちょっとくれェ恵んでくれたっていーと思わな―――」




閃光。




「―――――――ッッ!?」




瞬時に危険を察知したジルは反射的に跳躍、背後へと飛び退(すさ)る。
地に足が着くと同時、一秒前に居た空間を、鈍く光る剣先が斬り裂いた。


「な、……ッ」


ジルの暗闇に慣れた双眸は、襲撃者の姿をしっかりと捉える。


強い光を宿す黒瞳(こくどう)に純粋な怒りを燃やし、女を庇うように立ってジルを睨み付ける、その人物は。


「や、やめなさい!ヒース!」


女が真っ青になって叫ぶ。


―――十にも届くか届かないかくらいの、幼い少年だった。

529月波煌夜:2012/08/14(火) 20:44:58 HOST:proxyag099.docomo.ne.jp
☆★彗斗さん感謝祭★☆


特別SS 『剣士の氷刃 2』





「へェえ……?ガキの癖に、やるじゃん……!」



血が沸騰したように熱く滾(たぎ)り、全身が歓喜に震える。

追い剥ぎのような真似を働いてはいるが、ジルは、強い相手と戦うことこそを至上の悦びとする。
相手が子供だとか、さらには金品を奪うという目的さえも忘れてしまいそうになる程、ジルは興奮していた。


「………ふざけんなッ!おれはガキじゃねえ!」


ジルの発した一単語に少年が激昂し、地面に降り立った途端得物を構え、猛烈な勢いで突進する。

「やめなさいっ」

「いやだ!」

へたり込んだ女の声にも耳を貸さず、少年が吼える。


「姉貴はだまってろッ」


どうやら女は、彼の年の離れた姉であるらしかった。


彼女の言葉に、少年は失速どころか逆に加速。
そして瞬きする間もなく、剣が振り下ろされる。


「っと」


すかさず身体を捻る。


―――……早い!


思わず、驚嘆の溜息が漏れた。


次々と襲い来る剣撃を彼我(ひが)数ミリという精度で回避しながら、ジルは口端を釣り上げて山吹色の瞳を炯々と輝かせる。


そして。


「すげェなお前。お家で教えてもらったのか?それにしてもこの年で、オレ様を此処まで追い詰めるたァほんと大したモンだ……よっ!」


「………ッ!?」


少年が驚愕に漆黒の双眸を見開く。


光速の一撃を易々と受け止められ、舌打ちする少年。


しかしすぐに体勢を立て直し、ジルの剣を一刀のもとに凪ぎ払うが、


―――ギンッッッ!


ジルがそれを赦さない。


銀閃と銀閃が真正面から衝突し、高く澄んだ剣響を奏でる。



「う……っあ」


初めて、少年が苦しげに呻いた。


「でもよ、あれだな。見てて分かったんだけど」

剣に全体重を掛けながら、ジルは笑って言う。


「―――軽い。スピードで補ってはいるけど、お前に足りないのは筋力と膂力、重量ってとこか?荒削りってのもあるが……ま、どっちにせよガキにゃあ無理があるもんなァ、仕方ないか」

530月波煌夜:2012/08/15(水) 17:56:21 HOST:proxy10083.docomo.ne.jp
☆★彗斗さん感謝祭★☆


特別SS 『剣士の氷刃 3』




「……っだまれ!」


「あとはー、」


と、ジルは一旦剣を引き、バックステップ。
すぐに迫る追撃をかわし、
振り下ろした剣先を地面に突き立て、引き抜く拍子に大量の土砂を巻き上げて少年の視界を潰す。


「……………!」


思いも寄らぬ原始的な戦法に少年が怯んだ一瞬の虚を衝いて、



「まだ、甘い。実直な性格もいーけど、それを生かすにはまず経験を積むこったな」



彼の喉元に、切っ先を当てがった。


「……なァお前。何でオレ様に刃向かった?お姉さんを守りたかったのは分かっけど、勝てると思ったワケ?」


まだ此方の隙を狙おうとしているのか、油断なく瞳をぎらつかせる少年に、ジルは苦笑を零す。

少年は相手の余裕を見るや、適わないと悟ったらしく悔しそうに俯いた。



「……おれはまだ弱いよ。でも強くならなくちゃ、いけないんだ」



「そりゃまた、なんでよ」



「やくそくしたから」



少年は、見上げるようにして、きっとジルを睨み付けた。

こうやって落ち着いて見ると、子供にしては結構背が高い。
ジルの肩くらいはある。


「……友だちと、やくそくしたんだ。……を守るって。でもそれには、もっともっと強くならなくちゃいけない」


前半は聞き取れない程小さな声だったが、少年は真っ直ぐな眼差しで、言う。


「……今からそいつのうちに行って、そこでずっとくらすんだ。いそがしいのに、姉貴はおれを見おくりに来てくれて。だから、……別に、うちは金がないわけじゃないけど。姉貴とか、おれの家族がいっしょうけんめいはたらいて、これからおれが生活してくために用意してくれた金を、お前なんかにとられたくないし、お前をたおせなくちゃ強いってことにはならないから」


少年はやはり、剣捌きと同じように、とても真面目な性格のようだった。
真っ直ぐで、正しくて、……ジルには少し、眩しい。



「―――……今はおれの負けだけど。いつかぜったい、お前を見返せるくらい、強くなってみせる」



鋭い眼光。

それに、ハハッ、とジルは笑う。



「そんだけの気概がありゃァ大丈夫だな」


「…………?」


完全に不可解なものを見る目になる少年。


「……なあ。お前、一つだけ、オレよかずっと強ェモン持ってるんだけどさ、何だか分かるか」


少し考えた後、彼は小さく首を横に振った。


やっぱりなァ、と呟き、ジルは少年の胸を人差し指でつついた。



「此処の、強さ。それをどうにかして、最大限に引き出すことができれば、間違い無く、お前はオレよりもずっと、強くなれるよ」



「………………」



少年は分かったような分からないような、という微妙な表情で黙り込んでいる。


「今は分かんなくていーよ。お前には時間がある」


ジルは剣を引き、ぽんぽんっ、と少年の頭を叩く。


「精進しろよ、少年」


それからニカッと笑って、呆然と二人を見ていた女の方を向き、


「そーゆーワケで。オレ様今超機嫌いーから、サービスのサービスで見逃してやるよ、お姉さん」


「……は?」


「やー、良い弟持ったねェ」


あまりに気まぐれで身勝手な盗賊に、女は唖然として口を開けている。


「これから弟君を見送りに行くんだって?んじゃ、気をつけてなッ」


「……い、意味が分か……っ、待て!」


「待てって言われて待つ程、オレ様素直じゃないんだよねェー」


身を翻し、家々の間を飛ぶように走るジルの背に混乱した少年の声が届くが、ジルは気にしない。



「……ま、未来の剣士に期待してってことで?」



あと五年もしたら、あの少年は驚く程成長するだろう。
ジルがとても太刀打ちできないくらい、強く。
……それでも、とジルは思う。


「また、いつか」


―――戦ってやるよ。


闇を駆けるジルの呟きが、夜風に攫われて、静かに消えた。

531月波煌夜:2012/08/15(水) 18:04:33 HOST:proxy10083.docomo.ne.jp
彗斗さんのアイディアを戴きまして、ヒースとジルが昔会ってたよっていう話を書いてみました←

…ダメですね。ジル甘すぎだろおい。
あと何気にヒースのお姉さん初登場です。

本編の200レス突破?で書いた『幼馴染みの二人』の後、ヒースが実家からエインズワーズ家に移る途中でジルに遭遇したという流れでよろしくです(*´д`*)


次はやっと、ピーチに考えてもらったジル&ユーリエの話になります(o^_^o)

532ピーチ:2012/08/15(水) 19:11:29 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

ジルーーー!?

お前甘すぎだろーーー!?

でも、それのおかげでヒースが生きてる…w

533月波煌夜:2012/08/15(水) 22:05:30 HOST:proxyag065.docomo.ne.jp
>>ピーチ

こんなんでよく強盗できたね!
でもそれがジルのジルたる所以だよ…。
本編でもヒース仕留めそこねた上に協力しちゃうし…w





‡キャラの身長対比予想(兼既存キャラの整理)‡


〜男ver.〜

クロード>>>ヒース>>>ジル>クラウス>ランドルフ>レオン>レイフォード>シュオン>>>>>>>>>>>>オスヴァルト



〜女ver.〜

ユーリエ>アゼリア>>ティルダ>シェーラ>>>ソフィア>>>>>>>>ルイーズ



男性陣は比較的背高めで僅差です(約一名除く)。シュオンも一応高い方ですよ!
ちなみにクロードは巨漢というわけではなく、筋肉とかも目立たない感じの、シャープですらっとした体型。
日本だったら涼しげな着流しとか似合いそうな細身のイメージw ザ・武士!

ユーリエは…百六十センチ後半くらいなのかなぁ。ルイーズは百四十ないと思われますが。


こうして見ると、メイン四人だったのに結構いますね(゚o゚)/
そして、女の子と引き合わせると男の方が余るというw

534ピーチ:2012/08/15(水) 22:41:35 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ほんとだよぉー!?

…それは心のどっかが優しいと見なしていいのかな…?

えぇぇぇ!?ユーリエりゃんと天音の身長って設定が近い!?

535ピーチ:2012/08/15(水) 22:42:16 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ほんとだよぉー!?

…それは心のどっかが優しいと見なしていいのかな…?

えぇぇぇ!?ユーリエりゃんと天音の身長って設定が近い!?

536ピーチ:2012/08/15(水) 22:42:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ほんとだよぉー!?

…それは心のどっかが優しいと見なしていいのかな…?

えぇぇぇ!?ユーリエりゃんと天音の身長って設定が近い!?

537ピーチ:2012/08/15(水) 22:43:04 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ほんとだよぉー!?

…それは心のどっかが優しいと見なしていいのかな…?

えぇぇぇ!?ユーリエりゃんと天音の身長って設定が近い!?

538ピーチ:2012/08/15(水) 22:43:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ほんとだよぉー!?

…それは心のどっかが優しいと見なしていいのかな…?

えぇぇぇ!?ユーリエりゃんと天音の身長って設定が近い!?

539月波煌夜:2012/08/16(木) 13:20:39 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp
☆★ピーチ感謝祭★☆


特別SS 『暗殺者の二人 1』




「―――ジル」


「おう、遅いじゃねー…………か?」


「何で疑問形なのよ」


呆れたように肩を竦める相棒の女。


燃えるように赤い髪は丁寧に結い上げてアップにし、細い項(うなじ)や鎖骨を惜しげもなく晒している。
すらりとした体躯を包むのはマーメイドスタイルの真珠色のドレス。
無駄の一切ない見事な身体のラインを浮き彫りにするドレスを身に纏う彼女は、華美な装飾を付けていないにも関わらず、懸命に着飾ったそこらの貴婦人たちよりもよほど美しく輝いていた。


「……なに。似合わないのくらい分かってるわよ、じろじろ見ないで」


拗ねたように唇を尖らせるユーリエ。
大人びた容姿と装いにも関わらず、その仕草は驚く程可愛らしくて、何故かジルはそわそわと落ち着かない気分になってしまう。


「……いや、似合ってる……と、思、う」


「え!?」


ユーリエが大袈裟なくらい大きな声を出して、猫のような琥珀の瞳を見開く。

それから、かあ、と白い頬を赤らめた。


「え、あ、……ありが、とう?」


「何で疑問形なんだよ」


冷静に口では突っ込むものの、ジルは内心混乱真っ最中だ。


―――な、なんで急にこいつが女っぽく見えるンだよ、しっかりしろオレ様!


「ええと、例えるなら、あれだな」


確か、見た目が良いことを褒める慣用句があったような気がする。

ジルは余計な思念を追いやろうと画策、乏しい頭脳を必死に働かせる。


「なに?」



心なしか幾分機嫌が良いように見えるユーリエに、やっとのことで閃いたジルは、ぽんっと手を打って。



「―――馬子にも衣装」



「目を閉じて歯を食い縛りなさい」


「殴んの!?この流れで殴んの!?」


綺麗な見た目とは裏腹に、大きな瞳に殺意を漲(みなぎ)らせ、とんでもない暴挙に出ようとするユーリエをジルは必死で止める。


「ま、待て!冗談だから冗談!」


「……冗談?」


「そう冗談!」


「………」


訝しげに半眼で見てくるユーリエ。
ジルは慌てて言い繕う。


「ええとその、お前が………………あ、あの娘(こ)の胸すげぇってみぎゃああああああ!?目が!目がぁ―――!」


「…………」


光速で突き出された二本の指に目を直接攻撃され、ジルは床をのた打ち回る。


「目潰しはねェだろ、歯を食い縛れってフェイクだったのかよ!?」


「そんなに私の指が不満なら、刃物の方が良いかしら?」


「まあ待て。落ち着いて話し合おうじゃないか」


虹彩が消え失せた瞳から目を逸らし、ツツー、と背筋に汗が伝うのを感じながらも、ジルは必死に愛想笑いを浮かべた。

540月波煌夜:2012/08/16(木) 13:24:27 HOST:proxy10022.docomo.ne.jp
>>ピーチ

結局ジルはとんでもなく優しいんだよ…。

そんなジルが、ヒースの代わりに突っ込んだりいじめられたりするようになるんだね!



あ、天音ちゃん日本人の女の子にしては背高め?

541ピーチ:2012/08/16(木) 14:21:02 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

ジルーーー!!

…こんだけ叫びながら哀れの一言で済ませるというww←ひでぇw

うん、天音ちゃんは165くらいかなw

542月波煌夜:2012/08/16(木) 18:43:56 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
☆★ピーチ感謝祭★☆


特別SS 『暗殺者の二人 2』




コツ、と足音が響く。



「……何をやっているのですか貴方たちは」



「伯爵?」


不機嫌そうな黒の燕尾服姿の少年が目に入る。
濃青の髪に鳶色の瞳、幼さを残した貴族的な美貌。
王国を代表する大富豪であるカークランド伯爵家の若き当主、オスヴァルトだ。
オスヴァルトは単眼鏡(モノクル)を冷たく光らせ、


「此処は舞踏会の会場ですよ?駄犬に貴族らしく振る舞えというのは無理な話にしても、せめて目だたぬようにすることもできないのですか?」


「「……あ」」


ジルとユーリエは同時に声を上げた。
オスヴァルトの言葉通り、此処はエインズワーズ公爵が主催する舞踏会の会場である。
今日は依頼人のオスヴァルトに連れられ、標的の《紫水晶》の人間を一目見ておくようにと二人してやってきたのだ。


辺りを見回せば、喧騒や楽隊の音楽で少しは誤魔化せてはいたが、近くにいる人達からは奇異なものを見る目を向けられているのがひしひしと感じる。
由緒正しき催しの中、ぎゃーぎゃー騒いであまつさえ床に転がったりしているのだから、迷惑がられない方がおかしい。


「貴族の頂点が集うエインズワーズ家の舞踏会は、しかるべき人物の紹介を受けないと入場することもできないのですよ。まったく、貴方たちを連れてきたぼくの顔に泥を塗りたいのですか?」


「うぐ……悪い……」


「ごめんなさい……」


しゅんとして謝る暗殺者二人。


「分かれば良いのです。……シュオン様……と言っても分かりませんね。金髪碧眼の目立つ青年の傍に、『あれ』はいるはずです。まだ出て来てはいませんが、一応気をつけておきなさい」


「え、伯しゃ―――」


言うや、用は終わったとばかりにさっさと歩き去っていくオスヴァルト。


「……気ィ短っ」


「御主人様(マスター)も、《紫水晶》を見つけるのに必死なんでしょう」


行き交う人々の間を縫い、二人は『金髪碧眼の目立つ青年』を探し始める。


「金髪碧眼の男なんざ腐るほどいンじゃねェか……。分かるかっての」


ジルはぼやくが、


「……あ!あれじゃない?」


すぐにユーリエが一人の男を指差す。


フロアの中心でメヌエットを披露する、白い燕尾服の青年。
金の髪に碧の双眸は、ありふれた色合いだが美しさ、華やかさが段違いだ。
青年の蕩けるような甘い微笑みに、パートナーの女性だけでなく、周りでそれとなく彼の順番待ちをしている貴婦人方もうっとりと見入っている。


「うっわー……。オレあーいうの一番無理」


見るからに育ちの良さそうな青年の姿に、ジルは顔をしかめる。


と、


優雅なステップを踏みながらも青年がふと壁際に視線をやり、
……ほんの一瞬、彼の笑顔が凍った。


どうしたのかと思って見ていると、青年はすぐに笑みを取り戻すとパートナーに何事か断り、つかつかと壁の方に歩いていく。

此方に向けた彼の背中の所為で良くは分からないが、淡い紫のドレスが、ちらっとだけ見えたような気がした。


―――紫。


「当たり、かもな」


「あれが……《紫水晶》?」


ジルとユーリエは、息を詰めて彼らを見守っていた。





二人がソフィアを連れ去り、彼女を助けにやって来たシュオンとヒースと一戦を交え。
そして、暗殺者の職を降りた二人が、彼らと共に暮らしていくことになるとは、無論、誰も予測などしえないことであった―――。

543月波煌夜:2012/08/16(木) 18:46:55 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
>>ピーチ


オチも何もない話でごめんw


ユーリエは結構170に近いのかもしれない(・∀・)

544ピーチ:2012/08/16(木) 20:16:52 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいや、オチはなくともだいじょーぶっ!

文才で補えるからっ!←まずオチが分からんww

ゆ、ユーリエちゃん……高っ!?

545月波煌夜:2012/08/16(木) 21:19:22 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者』




「王女様!遠路はるばる、よくぞおいで下さいました……!」

「王女様」

「王女殿下っ」


「うむ、くるしゅうない」


ひれ伏した村人たちにキラキラと尊敬の眼差しで見つめられて、ルイーズは小さな背丈を少しでも大きく見せようと足を踏ん張り、平らな胸を張った。


「いかにもわたしは栄えあるマルグリットの第三王女、ルイーズ=リィ=ユリア=ローエンシュタインであるぞ。存分にもてなすがよい!……主に甘いもので」


「ルイーズ様。そのようなお召し物を着て戴いている意味がなくなってしまいますので、御身分を無闇に主張しませんよう」


「う、五月蝿いぞクロード!人が折角気持ちよく喋っているのにっ」


黒装束の騎士を見上げ、ルイーズはぷぅっと頬を膨らませる。


さて、此処はクロードの故郷であるミルダ村。
一年ぶりに帰省するという彼に、ルイーズも付いて行くと言い張ったのだ。
勿論クロードは止めたのだが、「ルイーズは言い始めたらきりがないからな。宜しく頼む」と妹姫に甘いレオンに頼まれてしまい、渋々と承諾。
敢えて護衛も付けず、“お嬢様とその従者(ヴァレット)”というなりで此処までやって来た。
クロードはいつも通りの服装だが、ルイーズはいつもの豪奢なドレスではなく、ヴィクトリアン調のモチーフプリントが華やかなワンピース姿だ。


「よい村じゃな。そなたは此処で育ったのか」


「はい。……何度もお話し申し上げています通り、ルイーズ様が満足なさるようなものは何もないと思われますが」


「構わぬ。城の外に出られるだけでも嬉しいからな」


旅籠の中をてくてくと歩き周り、珍しそうに物色しているルイーズ。
彼女を見て、クロードは鉄面皮を崩さないままだが密かに溜息をついた。


「クロード!おめえはやっぱり凄かったんだな、立派な騎士になったと思ったら、今度は王女様を連れて来ちまうなんてよ!」


「王女様ではなくルイーズ様と呼んで差し上げてくれ。……どうしてもとルイーズ様が仰るのでな」


たちまち、村一番の出世頭であるクロードの周りに人だかりができる。
……この村人たちは皆善人だが、野次馬根性溢れる性格をしている。

シェーラとあのような形で別れたクロードが、可愛らしい姫君と連れ添って帰ってきたのだから、彼らが喜び勇むのも分からなくもないけれど。


「で、クロード。正直に教えろ、姫さんとはドコまでいってんだ?」


「こんなに遠出したのは此処が初めてだな」


「いやそっちじゃなく……っあはは!相変わらずお堅いなぁお前」


「何のことだか分からないのだが」


クロードは憮然として、笑い転げる―――笑顔が娘そっくりの―――シェーラの父親を見返した。

546月波煌夜:2012/08/16(木) 21:19:35 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 1』




「王女様!遠路はるばる、よくぞおいで下さいました……!」

「王女様」

「王女殿下っ」


「うむ、くるしゅうない」


ひれ伏した村人たちにキラキラと尊敬の眼差しで見つめられて、ルイーズは小さな背丈を少しでも大きく見せようと足を踏ん張り、平らな胸を張った。


「いかにもわたしは栄えあるマルグリットの第三王女、ルイーズ=リィ=ユリア=ローエンシュタインであるぞ。存分にもてなすがよい!……主に甘いもので」


「ルイーズ様。そのようなお召し物を着て戴いている意味がなくなってしまいますので、御身分を無闇に主張しませんよう」


「う、五月蝿いぞクロード!人が折角気持ちよく喋っているのにっ」


黒装束の騎士を見上げ、ルイーズはぷぅっと頬を膨らませる。


さて、此処はクロードの故郷であるミルダ村。
一年ぶりに帰省するという彼に、ルイーズも付いて行くと言い張ったのだ。
勿論クロードは止めたのだが、「ルイーズは言い始めたらきりがないからな。宜しく頼む」と妹姫に甘いレオンに頼まれてしまい、渋々と承諾。
敢えて護衛も付けず、“お嬢様とその従者(ヴァレット)”というなりで此処までやって来た。
クロードはいつも通りの服装だが、ルイーズはいつもの豪奢なドレスではなく、ヴィクトリアン調のモチーフプリントが華やかなワンピース姿だ。


「よい村じゃな。そなたは此処で育ったのか」


「はい。……何度もお話し申し上げています通り、ルイーズ様が満足なさるようなものは何もないと思われますが」


「構わぬ。城の外に出られるだけでも嬉しいからな」


旅籠の中をてくてくと歩き周り、珍しそうに物色しているルイーズ。
彼女を見て、クロードは鉄面皮を崩さないままだが密かに溜息をついた。


「クロード!おめえはやっぱり凄かったんだな、立派な騎士になったと思ったら、今度は王女様を連れて来ちまうなんてよ!」


「王女様ではなくルイーズ様と呼んで差し上げてくれ。……どうしてもとルイーズ様が仰るのでな」


たちまち、村一番の出世頭であるクロードの周りに人だかりができる。
……この村人たちは皆善人だが、野次馬根性溢れる性格をしている。

シェーラとあのような形で別れたクロードが、可愛らしい姫君と連れ添って帰ってきたのだから、彼らが喜び勇むのも分からなくもないけれど。


「で、クロード。正直に教えろ、姫さんとはドコまでいってんだ?」


「こんなに遠出したのは此処が初めてだな」


「いやそっちじゃなく……っあはは!相変わらずお堅いなぁお前」


「何のことだか分からないのだが」


クロードは憮然として、笑い転げる―――笑顔が娘そっくりの―――シェーラの父親を見返した。

547月波煌夜:2012/08/16(木) 21:26:00 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>545は無視して下さいすみませんm(_ _)m

王女がそんなにほいほい外出できるはずがないのですが、そこは創作なので!(ぇ
ルイーズとクロードが書きたくなって←



>>ピーチ

外国人女性と考えるとそのくらいかな?と。
ちなみに月波は男女の身長差が好きです。↑なんかはその最たるカップルだね(≧∀≦)

548ピーチ:2012/08/17(金) 09:17:04 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

あ、なるほど!

あたしはあんまり身長差がないほうが好きかもw

549月波煌夜:2012/08/17(金) 16:29:56 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 2』





「む?これは何じゃ?」

「おそらく、人参の砂糖漬けかと」

「に、にんじん!?……むぅ………美味いのか?」

「味は保証できませんが、ルイーズ様のお好み通り甘いものと思われます」

「むうう………本当に甘いのだな?信じてよいのだな?」

「このような場面で嘘をつく利点が御座いません」


フォークを握って人参とにらめっこするルイーズ。


そして、やっとのことで意を決したらしく、ぱくっと頬張った。


もぐもぐもぐ、とリスのように咀嚼して。


「………美味いっ!」


「……それは良う御座いました」


「にんじんがこんなに甘くなるとは知らなかった……!今度、料理長に作るように言おう」


人参を砂糖に漬けるだけの料理を所望されては、王宮の腕自慢のシェフもさぞや複雑な心境になることだろう。


「黒パンも固いけれどスープに浸せば食べられるし、庶民の食事も面白いものじゃな!」


「…………」


……でも、この笑顔が見られるならどうでも良いか、とクロードは思う。

此処は王城でも離宮でもないので、今日だけは礼儀作法については口五月蝿く言わない。


「御主人、これを追加じゃ!」

「おー姫さん、ちっこいのに良く食べるねえ。作りがいがあるってもんだ」

「ルイーズ様、人参嫌いを克服なさったのは大変宜しいことですが、糖分の過剰な摂取は身体に良くありませんので量はほどほどにして下さい」


……とはいっても主の健康管理だけは欠かせないので、クロードは早速口を挟む。


「何を言う。いつもはこの五倍は食うておるぞ」


「五倍?」


「……………………あ」


ルイーズはしまった!という顔になる。


「……ルイーズ様。もしや、普段から私の目を盗んでまで菓子類を召し上がっている訳では御座いませんよね?」


「う、うむ」


クロードの視線から逃げるように顔を逸らすルイーズ。
ひゅー、と吹けもしない口笛の真似事をしている様子から判断するに、



「……ルイーズ様。私はルイーズ様のお身体のことを考えて申し上げているのです」


「………………う」


「食べ過ぎも良くありません」


「で、でも心配ないぞクロード!わたしに掛かればケーキやパイやクッキーの数百個、楽勝で腹に収められる!」


「心配大有りです。ルイーズ様の胃袋の大きさが無限ということは良く存じ上げておりますが、ルイーズ様が次から次へと食料を消費してしまっては作物を育てる民に負担を強いることになります」


「それはわたしの身体の心配ではないぞ!?」


「僭越ながら、姫様のお身体よりもマルグリットの農民の生活事情の方が危険だと判断致しました」


無表情で、クロード。


「そなたは本当にわたしを好いておるのじゃろうなっ!?」


「勿論です。私がお慕いするのはルイーズ様只一人。……私の右腕は剣、左腕は盾。私の全てはルイーズ様の御心のままに御座います」


「全然わたしの心のままになってはおらぬではないかッ」


「御言葉ですが、ルイーズ様。物事には限度というものが御座います」


「都合のよい言葉じゃなあ!?」



この二人は、たとえどれだけ環境が変わろうとも同じ調子であることは、まず間違いないだろう。

550ピーチ:2012/08/17(金) 16:50:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……ルイーズ王女、間違ってもお腹壊さないで下さいね?

こーゆーことはクロードが正しいよね、いっつも思うけどw

551月波煌夜:2012/08/17(金) 18:43:16 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ルイーズだから大丈夫!
お腹壊したりはしないよ!
……ちんまい身体の何処に入ってるんだろねお菓子。
ミニブラックホールだね。


クロードは基本正論だよ\(^o^)/
たまに壊れるけどw

552ピーチ:2012/08/17(金) 23:40:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!?

ルイーズ王女だからこそ心配なんだよ!?

……ほんとにどこに入ってるんだろうねお菓子。

確かにミニブラックホールだw

…何気にクロードが壊れる所を見てみたいw←ひでぇ

553彗斗:2012/08/18(土) 00:02:44 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
ルイーズ姫の言う通りだww
クロードの言ってる事は都合が良過ぎるって言うよりは使い勝手が良過ぎるねww
けどルイーズ姫もルイーズ姫だよね?

…だって平気でパイやケーキとかを数百個腹に収めれるってどう言う腹してるんだww

554月波煌夜:2012/08/18(土) 10:21:45 HOST:proxyag082.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ミニブラックホール!

クロードが壊れるっていうのはあの例の長台詞またはマジ切れ状態とかね\(^o^)/
うーん、もうちょい壊してみようか(ぇ



>>彗斗さん

数百個はさすがに気持ちだけでしょうけどね!
というよりクロードが制限掛けてるから試したことないという…
でも多分、ルイーズがお菓子に飽きる日はずっとこないかと。

555月波煌夜:2012/08/18(土) 10:36:41 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 3』





―――不穏な気配がした。

いつもと違う簡素な寝台(ベッド)にはしゃいで、ぴょんぴょん飛び跳ねていたルイーズだったが。

とん、と寝台から降りるや、深いブルーの瞳を眇め、窓の外をじっと見つめた。

ルイーズはこういう気配には人一倍敏感だ。

王族のひとりであり、さらに王太子の実妹である彼女が命を狙われた回数は計り知れない。

対処法はある。
幸運にも、ルイーズは幼くてか弱く見える為、直接差し向けられる刺客はいつも一人か二人。
だから、油断している刺客から主導権を奪うことができれば、後はひたすら時間を稼ぎ、応援が到着するのを待つこともできる。

クロードの部屋は同じ階だから、少し騒げばすぐに気づくだろう。


だが、


「数が、多い……?」


ルイーズは呟く。


肌を不快にざわめかせる、闇に蠢(うごめ)く気配は一人や二人のものではない。


「面倒なことになりそうじゃな」


さすがにルイーズも、大人数を相手にするのはきついものがある。
大事になる前に、素直にクロードを呼びに行こうと歩き始めたとき、


「……遅かったか」


ルイーズは苦々しく愛らしい顔を歪めた。


着々と此方に近づいてくる、ほぼ完璧に近く消された足音。


「完全に居場所を突き止められたようじゃな」


まさか、ミルダ村に滞在してこの家で一泊することも知られていたとは。
……いや、もしかしたら尾行されていたのかもしれない。


「……どちらにせよ」


ルイーズは胸元に手を突っ込んで、いつもそこに隠している物体を取り出し、包んでいた布を剥ぐ。
ギラリと鈍く光る、刃。


「短剣ではなくてペーパーナイフなのはちと心細いが、」


―――自分の身は自分で守る。



ガチャリ、とドアが開き、



覆面を付けた一人の男が飛び出して、瞬く間にルイーズの口を塞ぎ、その手からナイフを床へと弾き飛ばした。

ルイーズは顔をしかめる。

これでは悲鳴が上げられないし、口八丁で時間稼ぎもできない。

流れるように無駄のない動きから、かなりの手練であることが伺えた。

……だが、声を上げさせないようにして、すぐに殺さないということは、この男はルイーズをすぐに殺そうとしている訳ではないということが分かる。
どうにかしてナイフを拾えないかと考えるが、男はルイーズを引きずって廊下へと連れ出そうとする。


ならば。


ルイーズは口に当たった手に思い切り噛みつくと同時、足を後ろに引き、戻し様に渾身の力で男の脛を蹴り上げた。
男の手が離れ、よろめいた隙に、同じ場所にもう一撃をお見舞いする。
床に倒れ、すぐに起き上がろうとする男の鳩尾を靴のヒールで容赦なく踏みつけて沈黙させてから、ルイーズは金の髪を翻した。

556ピーチ:2012/08/18(土) 14:54:52 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

でぇぇぇぇぇええ!?ルイーズ王女、どんだけクロードに仕込まれたんですかっ!?

……ある意味凄い逃げ方…

557月波煌夜:2012/08/18(土) 16:09:24 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ルイーズが武闘派って設定、生かしきれてなかったんでw
もともとルイーズは強かったんだけどクロードの仕込みによりレベルアップ(^^;;
女性陣では一番度胸ある子なんでよろしく!


いやぁ、ピーチとか彗斗さんがバトル書いて下さってるから、参考になればいいなと(*´д`*)


身分高い人って護身用の武器を忍ばせてることが多いらしいので、シュオンは爆弾(ぉい)と袖口にナイフ(対オスヴァルトで一回だけ登場)。
ルイーズは胸に布で包んだペーパーナイフ、それから護身術というか只のパンチとかキックとかの攻撃。靴はいつもヒール高いやつ履いてます。
ジル、ヒース、クロードは常に帯剣してるけど、クロードの剣は、刀身と鞘が真っ黒の長剣って設定が(≧∀≦)
ユーリエは言うまでもなく暗器なら何でもありで、床やら壁やら色んなとこから出すことができるみたい。手品か。

558月波煌夜:2012/08/18(土) 16:10:12 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 4』




床のナイフを拾い、すぐさま部屋の外に出ようとするが、


それを許さず、仲間の危機を察してか、剣を手にした男が廊下の奥から現れる。


―――二人じゃったか!


ルイーズは、思わず王女らしくなく舌打ちしたくなるのを寸前で耐え、ナイフを両手に持ち変える。



「……無礼者っ!」



屈強な体付きと、立派な剣を持っていることからして、相手は並の盗賊や暗殺者(アサシン)でないことは知れた。


……おそらくは敵国の兵。


クロード、クラウスを始めとする《イルファーレ》、そして王立騎士団の活躍により、マルグリットは数々の敵国を退けたが、土地の譲渡や王族同士の政略結婚などを経て、互いに協定を結び、彼らとは友好的な姿勢を保っている。
だからこそ、マルグリットは小国の割に安定していられるのだ。
しかし、それでもマルグリットが優位に立っているのは間違いない。
いくら国王が納得していても、それを面白くなく思う者も、少なからずいる。
王の側近たちだ。

娘であるルイーズを人質に、マルグリット王を脅すつもりなのかもしれない。

……下手をしたら、戦争になる。

そんな真似をさせる訳にはいかない。



「……このわたしに刃向かうならば、覚悟はできておろうな?」



ルイーズは傲然とした微笑を浮かべ、相手を見返す。


男は床で意識を飛ばした仲間とルイーズの手の凶器を見比べ、剣を彼女に突きつけたまま躊躇したように動きを止めた。


―――これで、良い。


もう十分だ。



「わたし相手に、そなた一人では役者不足じゃぞ?」



中にいる敵は一人。



扉の陰に身を隠した『彼』に聞こえるように、声を張る。



「殺しはせぬ。そなたらの主の名を吐かせねばならぬからな」



―――やれ。



男の顔だけを見たまま、唇をその形に動かす。



……優秀な騎士は迅速に動いた。



黒い影が視界を掠める。



「―――ルイーズ様に、刃を向けましたね」



ヒュッと息を呑む男に声を出す暇さえも与えず。



翡翠の瞳に暗い光を灯すクロードの長剣が、男の腹をいとも容易く斬り裂いた。

559ピーチ:2012/08/18(土) 17:04:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ルイーズ王女が一番度胸あり…何か分かる気がw

……うん、ユーリエちゃんは言わずとも知れた手品師ってことにしておこう←意味分からんw

560月波煌夜:2012/08/18(土) 18:33:17 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 5』




「誠に申し訳御座いません。遅くなってしまいました」


「よい。……おぬしならば必ず来ると、信じていたからな」


ふっと笑うルイーズの顔色は良いとはいえない。


「……申し訳御座いません」


「よいと言っておるじゃろう」


ルイーズは床に広がる血溜まりを見ないように努めながら、それでも笑う。


土壇場では恐るべき強靭な精神力を見せるルイーズだが、それでもまだ13の少女だ。
卒倒する程ではないにせよ血を見るのは苦手だし、自分に明確な殺意や敵意を持って襲ってくる人間を怖いと思うのも当然のこと。


クロードはそれを良く分かっているからこそ、怖い思いをさせたルイーズに謝罪しているのだ。


「何をしている。この旅籠はかなりの数に囲まれておるぞ。急がねばわたしたちだけでなく村人の命さえも危うい」


「……はい」


小さな主を振り仰ぎ、クロードは頷く。


「本来ならば、ルイーズ様には部屋にいて戴く方が賢明なのですが、」


「分かっておる。部屋にいても何が起こるか分からんからな。わたしも行くぞ」


「はい」


城とは違って護衛が一人もいない今、クロードからできるだけ離れないようにすることが必要だ。



「では、失礼します」



「うむ……………む?」



クロードにひょいと抱き上げられたルイーズは、目をぱちくりとさせ、数秒間そのまま硬直し。



「な、何をするッ!下ろせこのたわけ!痴れ者!」



我に返って暴れるルイーズをものともせず、クロードはかなりの小柄な体格をしているとはいえ、人ひとりを抱えているのが信じられない程の速さで、涼しい顔をして出口を目指して走る。



「ルイーズ様のスピードに合わせていると、たとえ走っていたとしても遅くなってしまいますので。……歩幅の差もあることですし」



「わたしの足が短いと言いたいのか貴様はぁああああああ!?」



ぎゃんぎゃん喚くルイーズを支えて駆けながら、クロードは片手で、ぎらりと光る漆黒の刀身の剣を構える。



「ところでルイーズ様。奴らの始末の方法について、何か御命令は御座いますか」



「……ほ、方法?」



「はい」



クロードはいつもの無表情で、しかし殺気とも取れる凄まじい気迫を鋭い双眸に湛え、



「中途半端に生かしておいてもまた反逆を企むだけでしょう。……すぐに処分しますか。それとも命と意識はかろうじての所で繋ぎ止め、死にたくとも死ぬことができないという痛みと絶望の地獄を味わわせますか。それとも捕らえて拷問した上で、見せしめに一人ずつ、ゆっくりと時間を掛けてなぶり殺しますか。如何致しましょう」



「頼むから苦しまぬように一太刀で殺してやってくれ!」



「畏まりました」



間違いなく、当事者のルイーズよりも冷静沈着の代名詞である騎士の方が怒り狂っているようだった。

561月波煌夜:2012/08/18(土) 18:34:38 HOST:proxy10022.docomo.ne.jp
>>ピーチ

手品師w


ついにマジギレ悪魔降臨!
いやぁ、クロードだけ戦ってるとこ書いたことなかったからやりたかったんだよね←

562ピーチ:2012/08/18(土) 19:05:19 HOST:nptka402.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

手品手品ーw

マジギレ悪魔、ついに登場!

…本人よりも切れるって…((汗

563月波煌夜:2012/08/18(土) 20:45:36 HOST:proxyag014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんか月波が書く男って、好きな子が酷い目にあったりなんかしたらブチギレちゃう奴ばっかだな←


シュオンは言うまでもなくだし。
ヒースも「そいつを、……シェーラを、離せっつってんだよッッ!!」「俺今―――サイッコウにブチギレてっからさァ!」みたいなのとかあったよね(^_^;)
ジルも、もしユーリエになんかあったら結構怒りそうだし←

564ピーチ:2012/08/18(土) 21:27:35 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あはは、確かにw←何気に納得w

…うん、シュオン様とヒースは敵に回すと怖いね。絶対w

………ジルのキレル所は想像できない…((汗

565月波煌夜:2012/08/18(土) 22:57:00 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ジルは本気でキレたらどうなるんだろね…。
でもおっさんに捨てられた直後なんかそうっぽいかもw


ただジルが真面目なとこはほんとに難しい…。
今ねここさん御考案のジル&ユーリエカップル成立!を頑張ってみてるんだけどほんとに…<(_ _)>
こういうコクりとかは男からだろ!という月波の偏見がいけないのだが←

566ピーチ:2012/08/18(土) 23:09:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あ…確かにそーだ!ジルがひねくれたのはあのおっさんが原因だ!←あほ。

いや、告白は男からってイメージあるけどな、あたしの中ではw

567月波煌夜:2012/08/19(日) 09:07:30 HOST:proxy10076.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、やっぱりそう?
でもソフィアとシュオンは、一応ソフィアからだったよね!シュオンは隠す気ねーだろって感じに態度に出まくりだったけど\(^o^)/

568ピーチ:2012/08/19(日) 09:35:39 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

…シュオン様ははっきりしすぎてるよねw

ヒースもヒースで何気にしっかりガードしてる的な?

後はジルとレイさん達だけだよね〜ww←ちょー他人事w

569月波煌夜:2012/08/19(日) 11:26:22 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 6』




「出てきたぞ、第三王女だ!」



「殺すな、生きたまま捕らえろッ」



驚く主人に事情を素早く説明し、旅籠の外に出ると、兵士たちが二人を取り囲み、一斉に刃を構えた。



「っ……!」



「ルイーズ様」



恐ろしさから息を詰めたルイーズに、クロードは囁く。


するりと彼女の身体を下ろし、



「目を閉じて、私にしがみついていて下さい。……御命令通り、すぐに終わらせます」



ルイーズは一瞬迷ったものの、素直にぎゅっと固く目を瞑り、彼の胴体に強く腕を回した。



「……敵の戦力は」



「《イルファーレ》とまではいきませんが、王立騎士団並みの者が数十名程」



「……やれるのか」



「はい」



クロードは頷き、上着を脱いで彼女の頭に掛ける。



「ルイーズ様の御身は、この命に掛けましてもお守り致します」



何も言わず、瞼を閉じてルイーズは頷いた。



クロードはそれを確認してから、


ひゅん、と剣を一振り、じりじりと距離を縮めてくる集団を静かに見返す。


「ルイーズ様に仇為す者に情けは不要。……と言いたい所ですが」



翠緑色の瞳を婉然と細める。
鋭い爪を隠した獰猛な鷹を思わせる、剣呑な眼差し。



「ルイーズ様の広い御心に感謝することですね。……楽に殺して差し上げます」



その声が合図。



「ッアアアアア!」



ザラザラとした耳障りな声と共に、男たちが飛び掛かる。



クロードは怯まない。
身体は動かさず、完全に右腕だけを使って長剣を突き出す。



一閃―――



漆黒の刀身が不吉に煌めく。



「ぐあっ」



肉を切り裂く鈍い音と、勢い良く血潮が噴き出す音。



ルイーズが小さく震えた。



無音の剣戟。
僅かな風さえも生じさせない、超高速にして不可視の一撃。


長剣を一度振るう、その衝撃波だけで軽々と屈強な男たちが吹き飛ばされ、彼らの肌が裂け、血飛沫が舞う。



それはあまりに美しく、

あまりに一方的な、殺戮。



「……くそ、貴様が、……あの、“悪魔”……ッ」



「御名答」



断末魔の悲鳴の中、事切れる寸前の一人の男が憎々しげに漏らした単語に、クロードは唇の端をほんの僅かに上げた。

570月波煌夜:2012/08/19(日) 11:29:54 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ねー!
あのおちゃらけと突っ込みと剣しか取り得のない馬鹿男をどうするかだよ…。
ヒースはやる時はやってくれる子だったけど…うーん。

571彗斗:2012/08/19(日) 12:02:48 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
やべぇ…クロード、格好良過ぎる……無表情なキャラは明るかったりおしゃべりだったりする重要なキャラと同じ場所に入れておくと対照的なオーラが出ますね。
最もな話、ルイーズ姫とクロードに至ってはその効果が滲み出過ぎてるしww

572ピーチ:2012/08/19(日) 13:09:22 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あのー、作者様ー?自分のキャラに対して随分と酷いこと言ってません?

うん、やる時だけってのが悲しいね、どことなく。

573月波煌夜:2012/08/19(日) 14:13:18 HOST:proxyag076.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

身長差・年齢差・性格差(?)の三拍子揃ったカップルですね!
こういう対照的なコンビは書きやすいので楽です←

クロード格好良いですか?ありがとうございます(・∀・)



>>ピーチ

だってジルだから☆

ヒースはやらない時はただの哀れないじられキャラだからね…。
何気にこの二人、扱いが似てきたよね…。
主にシュオンによる(^^;;

574ピーチ:2012/08/19(日) 14:21:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!ジルだから☆ってどーゆーことー!?

……うん、確かに似てきてるよね、ヒースとジルの扱いw

575月波煌夜:2012/08/19(日) 18:54:22 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 7』






「―――きゃああああっ!?」



突如響いた、この場に似つかわしくない高い悲鳴に、一瞬敵の動きが鈍る。


視線を走らせれば、集団のさらに向こう側、民家の扉の前で女がへたり込んでいた。
騒ぎに気付き、様子を見に外に出て来てしまったのだろう。



「クロード!」



「承知」



ルイーズの鋭い声に、クロードは俊敏に反応する。
先程と同じように彼女を左腕でふわりと抱き上げ、



「ルイーズ様。申し訳御座いませんが、私にしっかりと掴まっていて下さい」



「う、うむ」



肩口にぎゅっとしがみつくと、さらさらとした黒髪がルイーズの手を擽(くすぐ)る。



「行きます」



トン。

地を蹴る音さえも置き去りにし、クロードは動いた。


疾走、そして加速。


兵士と転がる死体の間を縫い、真横や背後に足下、死角を狙って慌てて繰り出された剣の軌跡を読み正確に回避。



「……そこな者!此処は危険じゃ、早よう中へ入れ!」



兵が向かう前に女の下へと無事に辿り着き、ルイーズは声を張り上げる。


「……っ、………!」


しかし女は屍(しかばね)や血溜まり、そして武器を携え走り寄って来る兵士たちを見据えたまま動かない。……否、動けない。


「仕方がありませんね」


「そうじゃな。……頼むぞ」


「はい」


クロードは女を背に庇う形で立ち、長剣を構えた。


「一撃で全員仕留めますので、少し動きますが」


「構わぬ。存分にやれ」


「はい」


クロードは言うが早いか駆け出し、突き出た岩に足を掛けて跳躍。


瞬く間に周囲の背景が移り変わり、目標へと一瞬で距離を詰める。


ルイーズと彼を目掛け雄叫びを上げて突進してくる兵。


後ろ髪を夜風に靡かせるクロードは、冷たく凍ったエメラルドの双眸を細めてそれを見つめ、静かに長剣を振りかぶった。



「……来世には覚えておきなさい。ルイーズ様には指一本……いえ、血の一滴でさえも、触れさせはしません」



煌めく銀閃。





―――黒き騎士の刃が空間を抉り、全てを凪ぎ払った。

576月波煌夜:2012/08/19(日) 18:57:19 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

だってジルですから☆


…ヒースもジルもついでにクロードも、剣使ってるときくらいは貧困なボキャブラリーを駆使してでも格好良く見せかけてあげたいという月波の親心ですw

577ピーチ:2012/08/19(日) 19:01:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……最初の台詞が前と同じに見えるのは、あたしの気のせいか…?

剣使ってる時限定!?ついでにってクロード殿も!?

うん、あのね、つっきーの親心はス補遺と思うよ。

でもね、その「〜限定」はやめようよー!?

578月波煌夜:2012/08/19(日) 19:08:00 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

気のせいだよ☆(キラキラッ


う、うん…分かったよ!
剣使ってないときも真面目に書きます!多分!
…格好良くなるかは運による(ぇ

579ピーチ:2012/08/19(日) 19:09:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

気のせいなのねぇ気のせいなの!?

……格好良くして?←え…(退き

580月波煌夜:2012/08/19(日) 19:16:36 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

気のせいなんです☆(しつこい


…(´・ω・`)ガンバリマス…
まずはジルだな…。うん。

581月波煌夜:2012/08/19(日) 20:38:11 HOST:proxy10072.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 8』






「……終わった、のか?」


「はい」



そっと地面に降ろされたルイーズはクロードの上着を頭から外し、新鮮な空気を吸い込んだ。

その拍子に錆びた鉄のような臭いが鼻腔に入り込み、うっと顔をしかめる。


「ルイーズ様。御無事ですか」


「ずっとおぬしに抱え上げられておったのだから、無事に決まっておるじゃろう」


「万一ということもあります。随分と振動を与えてしまいましたし」


「わたしは首が据わっていない赤ん坊か……。あの程度、何ともなかったぞ」


「それは何よりです」


クロードはいつもと変わらぬ無表情で、ルイーズに渡された上着を羽織る。


「そなたは?わたしに上着を寄越せば、怪我をしやすくなるじゃろうに」


「ルイーズ様を血で汚れさせる訳にはいきませんので。私は傷一つありません」


「相変わらず凄まじいな……」


仮にも国中の精鋭が集う王立騎士団級の兵士数十人を、ルイーズを常に庇いながら相手にしていたのにも関わらず、此方は怪我も何もせずに余裕で瞬殺。
しかもルイーズに血が飛ばないよう配慮していたときた。


「やはりそなたは“戦神”であり“悪魔”なのじゃなぁ」


「クラウスの話では、私は我を忘れて歯止めが効かなくなると、それこそ本物の悪魔が乗り移った様に目の色を変えて敵兵を虐殺し始めるそうです。……ルイーズ様の前でそんな醜態を晒すことがなくて本当に良かった」


「気にするのはそこなのか」


全く、腕の割に天然というか何というか。



「ふう。これ以上村の者に迷惑を掛ける訳にはいかぬ。夜が明けたら帰るぞ。とりあえず後始末の前に、村人たちに無事を伝えて来よう」


「御意に」


ゆっくりと歩き始めるクロードに、ルイーズは小走りで追いつき。


少し迷ってから。そっと、彼の血まみれで大きな手を取った。



「……ルイーズ様?いけません、汚れてしまいます」



「汚れてなどおらぬ。わたしを守ってくれた手じゃ」



労いの言葉も、礼も言わない。
騎士に守られる姫君は、そんなことは当たり前だと、昂然たる態度でいなければならないから。


だから、

ルイーズが何も言わなくても、この繋いだ手から、この気持ちが伝わるといいなと思う。


―――お疲れ、じゃったな。クロード。



隣の騎士が、ふっと小さく笑んだような気がした。

582ピーチ:2012/08/20(月) 09:18:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……あの、タイトルの割りにルイーズ王女が我侭に思えないのはナゼ…!?

むしろすっごく優しい王女様じゃーん!!

クロードー!?心配するとこちがーうっ!?

583月波煌夜:2012/08/20(月) 10:58:58 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 9』






「―――という訳で。お疲れだったな、ルイーズ、クロード」



ルイーズはぷるぷると震え、沸き起こる激情を必死に諫めた。



「に、兄様?すまんが、もう一度言って貰えるかの」



「ああ」



豪奢な金髪に碧眼の麗しい青年、この国の王太子にしてルイーズの実の兄であるレオンハルトは爽やかに笑って言った。


「極秘任務、大変御苦労だった」


「その前じゃその前!」


ルイーズは癇癪を起こしてむきゃー!と髪を逆立たせる。


レオンはにっこりとした笑みを崩さずに。



「―――国家に関わる機密事項だから、言ってはいなかったが。隣国の一部の者に不穏な動きがあったのは私も気付いていたのだが、近いうちに何とかしなくてはと様子を伺っていたところにクロードが村に帰省するという話が出たからな。此処はルイーズを餌におびき出して、この絶好の機会に手っ取り早くクロードに一掃してもらおうと考えて、ルイーズの外出を後押ししたんだ。……ちなみに奴らにルイーズの居場所の情報を流したのも私だ」



「ええい離せクロード!この愚兄の頭をカチ割っておかねば我が国の未来がないッ!」


「ルイーズ様。次期国王陛下たる王太子殿下を殺害すれば、ルイーズ様の御立場が危うくなります。どうかお控え下さい」


「クロード、諫言の仕方がおかしいぞ」


レオンが言い終わった途端に弾丸のように飛び出そうとしたルイーズを見事、襟首を掴んで片手で止めてみせたクロードを見て、レオンは一層楽しそうに笑う。


「おかしいぞではないッ!妹を何だと思っておるのじゃこの馬鹿兄が―――ッ!?」


「二人とも無事だったのだし良いじゃないか」


「よいわけがあるかぁああああ!」


「……殿下。私もこの件については正直如何なものかと思います。機密事項というのは分かりますが、それにしても事前に注意を呼び掛けておくなどの対策を―――」


「クロード」


レオンは一転、かつての自身の騎士を真剣な表情で見つめる。


「はっ」


ルイーズは、この兄がクロードに対してこのような顔をしたときは大概ろくなことを言わないと分かっているので、嫌な予感と共に二人を見上げた。



「お前はいずれ私の義弟となる存在だ。大切な妹姫を預ける為には、その男の技量を見定めて、本当にルイーズの夫に相応しいかどうか事前に確かめる機会を設けたかったのだよ」


「成程。それで、その結果は如何でしたでしょうか」


「無論、合格だ。不意打ちの夜襲にも焦らず動じず、ルイーズを見事守りきったお前は私の義弟として十分の器を持っている」


「恐れ入ります」


「恐れ入らんでよいから少しは人を疑うことを覚えろぉお―――!」


「はは、仲が良くて羨ましいことだな。……実の実を言えば、普通に言い忘れただけだったのだが誤魔化せたようで良かった。さすが単純」


「今何か言ったじゃろう兄様!?絶対言ったじゃろう!?」


「うん?何のことだか分からないな」


またも食ってかかろうとする妹とそれを止める騎士を見て、レオンは微笑。



―――今日も王宮には、小さな王女の怒鳴り声が木霊する。

584月波煌夜:2012/08/20(月) 11:02:42 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ

月波のキャラは、何だかんだで皆優しいとこがあるからね(`・ω・´)
ルイーズがワガママはワガママだけど、むしろ強引、とかの方が近いかも←

585ピーチ:2012/08/20(月) 11:41:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

…レオン殿下、何気に酷いネ…

普通に言い忘れてた…ルイーズ王女はとんでもない兄上を持ったんだネw

レオン殿下も確かに、妹に怒鳴られても痛くも痒くもないかもw

586月波煌夜:2012/08/20(月) 15:37:44 HOST:proxyag009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、レオンは酷いんだ←
でも憎めない酷さ、と側近には思われていたり思われていなかったり?w

シュオンまではいかないもののちょいブラックが入ったレオンは結構好きで、あと一回だけ登場するよ!何気に超重要な役割背負ってるよ殿下!




さて、次はジルとユーリエがくっつく話ということで、ねここさんにリクを戴きました!
暗殺者組は、本編ではあまり良いイメージなかったと思うんですけど、こうしてリクを戴いてみると結構好きになっていただけたのかなとしみじみ←

…ええと、最初に謝っておきます。
ごめんなさい月波に恋愛メインのモノは一生無理だということが今回判明しました本当にごめんなさいこれで御容赦下さい。
残念ながらこれが月波の全力です…!°・(ノД`)・°・

↓からとりあえず始めてみます(^^;;

587月波煌夜:2012/08/20(月) 15:44:12 HOST:proxyag010.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 1』





“こっちはそこまで覚悟決めてるのに、私だけ逃がそうですって?ふざけないでよッ”



闇を照らす焔(ほのお)のように、風に靡いてふわりと広がった真紅の髪。



“だって私は、あの日からずっと、貴方のことが―――ッ”



……消えてしまったあの言葉の続きは、何だったのだろう。



―――今でもふと、そう思うことがある。








*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*








ユーリエは困っていた。


「あ、ああの、……っ良かったらお俺と、あの、お付き合いし……っ」


「そ、それはもう分かったから」


赤面してどもりまくる兵士の正面で、ユーリエも少しつられたように赤くなりながら、それでも内心溜息をつく。


猫を思わせる瞳は黄金にも似た琥珀の輝き。
物憂げに伏せられた長い睫、色香が漂う泣きぼくろに、頬に掛かった一房の髪を掬って払うほっそりとした指。

とびきりの美人で性格も柔和と使用人の中で専らの噂のユーリエだが、今までにも何度もあったというのに、このような場面にはまだ耐性ができていなかった。


落ち着け、と息を吸い込む。


「……ごめんなさい」


人を傷つけるのは苦手だ。
長年、人を傷つける為だけの職に身を置いていたというのに、やはり苦手なものは苦手なまま。
相手が心に受けるだろう痛みを想像すると、自分まで胸が苦しくなる。


「その……好きになってくれて有難う。……でも、貴方には私なんかよりもずっと、素敵な人が見つかると思うわ」


申し訳なさそうに眉を下げて、ユーリエは微笑む。


「……はい」


青年兵はやはり落ち込んだ様子だったが、それでもユーリエに合わせてはにかんだ。


ユーリエはこのまま、自分から立ち去るべきなのか少し悩む。
それは冷たすぎるような、でもこれ以上の話もしようがない。


「―――あの!」


突然呼び掛けられ、ユーリエは驚いてぱっと顔を上げる。


兵士は真面目そのままの顔で。



「やっぱり、好きな人とか……いるんですか?」



不意打ちだった。



「え、……」



そう言われてすぐに脳裏に思い浮かんだのは、かつての相棒だった大地色の髪の男。
ユーリエが長い間想い続けてきて、でもこちらの想いにはまるで気付こうともしない、そんな男の姿だった。



「そう……ね」



無意識のうちに、頬が緩む。



「いるといえば、いる……のかも」



「そうですか」



兵士はニカッと笑い、頑張って下さい!とおどけて敬礼してみせる。

明るい彼に感謝しながら、貴方もね、とユーリエも笑った。

588彗斗:2012/08/20(月) 16:07:35 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
やっと見つけた……
ヒースとジルの話…レス数が多過ぎて見つからなかったって言うww

私の目から見てもやっぱり最高でした! 月波さんって何のジャンルを描いても凄いですね〜正にオールラウンダーですね☆

589ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/20(月) 16:10:21 HOST:EM117-55-68-36.emobile.ad.jp

ついに始まったとか内心思いながら告白されちゃってるユーリエちゃんにモテるなあとか言ってみr((
そして兵士くんも性格的に好きです!
明るいところでいi(ry←

やっぱり恋する人はみんな輝いているんだと名言を吐き捨てたところで去りますw
つづき、楽しみにしてますね!

590月波煌夜:2012/08/20(月) 20:26:55 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

ヒース&ジルの話、気に入って戴けたようで何よりです!
彗斗さんに捧げます(キリッ
いやいや、どのジャンルも中途半端で困ったものです←



>>ねここさん

ユーリエは結構モテる子でした←
兵士くんは名前もないけど良い人ぽいですw
ありがとうございます、続きも期待はせずにお待ちください(`・ω・´)

591月波煌夜:2012/08/20(月) 21:19:03 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 2』





―――最近、ジルの様子がおかしい。



屋敷の中を歩きながら、ユーリエは悩ましげに眉を潜める。


元々まともな奴とは言えないけれど、近頃は明らかに、輪を掛けておかしいと思う。



ひとことで言えば。……ユーリエを避けているような。そんな気がしてならない。



話し掛けようと近付くと、すぐさま何処かへ行ってしまう。
しかもあの脳天気なお気楽男が、何故かいつも不機嫌そうに顔をしかめていて、



―――怒ってる、のかな。



こんなの、今までになかったことだ。

自分が何か彼を怒らせるようなことをしただろうか。

……何年も一緒に暮らしてきたけれど、ユーリエがジルを叱り飛ばすことはあっても、ジルが本気で怒っているところは、ユーリエは一度も見たことがない。

どんな時でも最高に楽しそうに、ユーリエの隣でへらへら笑っていて。



―――どうしたっていうのよ……。



ユーリエはふうっと息をつき、それからふるふると頭を振る。


……悩んでいても仕方がない。
今日はもう遅いから、明日にでもジルを捕まえて詳しく話を聞こう。
そう思うと、少しだけ足取りが軽くなった。


「こんばんは」


すれ違おうとした人物に声を掛けられ、ユーリエは笑顔で応える。


「こんばんは。……あら、貴方」


「はい。今日も御苦労様です」


誰かと思えば、先日告白してきた青年兵だった。


「御苦労様。こんな時間まで訓練?」


「そうなんです。ジルさんがなかなか許してくれなくて」


あはは、と兵士は頬を掻く。


「その調子なら、毎日大変よね」


「はい。でも少しずつ腕が上がってるような気がして楽しいです」


にっこり笑う青年。

……こんな風に、真っ直ぐな人を好きになっていたら苦労しなかったのかな、とユーリエが苦笑したとき―――



「―――ユーリエ」



低い声。
ユーリエはハッとして振り返る。


やや長い大地色の髪に、猛禽を連想させる山吹色の双眸。
異常な程の痩身を、深緑色の軍服で包んだ青年。



「……ジル?」



「ちょっとこっち来い」



鋭い視線。

ユーリエと兵士は、思わず顔を見合わせた。

592月波煌夜:2012/08/20(月) 21:20:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 3』





「……で?何なの?」



自室の扉をバタンと閉めたジルに、ユーリエは問い質す。


ジルはむっつりと黙り込んだまま、返事もせずにすたすたと部屋を突っ切って、後ろ手に腕を組み、寝台(ベッド)に仰向けに寝転がった。


……意味が分からない。


ユーリエは少し迷った末に、適当に椅子を引っ張って来てジルの横に座る。



「ちょっと。聞いてるんだけど」



険悪な雰囲気にしたい訳ではないけれど、どうしても語気を強めてしまう。



「……私が貴方に何かした?なら―――」



「―――お前が」



唐突にジルが口を開く。



「……お前が好きな奴って、誰」




心臓が跳ねる。



まさか。



「聞いて、たの?」



あのとき。
ジルもユーリエの言葉を、聞いていた?



「……散歩してたら、たまたま聞こえちまっただけ」



一瞬ばつが悪そうな顔になったジルはすぐにそれを崩し、上半身を起こしてユーリエを見た。



「誰。オレが知らない奴?」



ユーリエは、ジルが“オレ”と自分を呼ぶときには、彼にふざける余裕がないときだということを知っている。

だから、余計に分からなかった。


……なんでジルは、こんなにも動揺している?



声が震えないように、膝の上でぎゅっと両手を握り締める。



「……何で、そんなこと聞くの?これは私の問題よ、貴方は関係ないでしょう?」



ジルはまた黙り込んだ。



ただの興味本位、だったらこんな態度は取らない。
なら、どうして?



「ねえ」



彼の偽らない、本音が聞きたい。



「最近のジル、なんか変だよ」



ジルは喋らない。



「いっつも機嫌悪そうだし、ほんとに悪いみたいだし。それはどうして?」



「……分かんねェんだよ」


ジルが、ぼそりと呟いた。



ユーリエは黙って続きを促す。



「何がなんだか、オレにもさっぱり分かんねェ。……そ、おかしいンだよオレ」



自嘲するように、何かを吐き出すように。



ジルは薄笑いを浮かべて言う。



「なんか、さ。……」



ユーリエを見つめる山吹色の中に火影(ほかげ)が揺らめく。




「お前がいつか、オレが知らない誰かのモンになんのかって考えたら……良く分かんねェけどすっげえムカついて」

593ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/20(月) 21:42:40 HOST:EM117-55-68-19.emobile.ad.jp

余裕があるジルもかっこいいけど余裕がないジルもかっこいいいい(ry
なんかもうきゅんきゅんしてます←
そして相変わらずジルって鈍感ですね(・ω・)
でもそこがいi((


続きもとってもとっても期待してます←
がんばってください!

594月波煌夜:2012/08/21(火) 16:32:21 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 4』






「……なに、それ」



カッと頬が熱くなった。



「ずるい、……そんなの」



「何が」



ユーリエは笑った。
嬉しくて、くすぐったくて、少し期待してしまう自分がいて、……そんなわけない、と否定する自分もいて。


でもやっぱり、嬉しくて。


色々な感情が限界を振り切って、泣きそうになりながら、笑った。

あたたかい何かが、胸の奥から込み上げてくる。






「……好きだよ」





自分でも不思議なくらい、するりと言葉が出てきた。




「……冗談は―――」




「言っとくけど本気だから」




ジルを遮り、静かに言の葉を紡いでいく。




「好き」




「……………」




「世界で一番、貴方が好きだっていう自信がある」




「待っ………今待って」




ユーリエは、光に透ける羽根のように、優しく微笑んだ。




「初めて逢ったあの日から、貴方だけがずっと好きだよ」




「待てって……頼むから」




顔を隠すように額に右手をやり、俯くジル。
くしゃり、と長めの髪を掻き上げる。

その耳が赤い。



……そんな些細なことさえも、愛おしくてたまらなくなる。



顔を覗き込もうと近付くと、左手で止められた。



「見んな。……オレ今、すげぇカッコ悪ィから」



「そんなのいつものことじゃない」



目が合った。
何か言い返そうと口を開いていたジルが、慌てて顔を逸らす。

やっぱり、真っ赤。



「……ったく……ほんとおかしい、オレ」



熱に浮かされたように声を僅かに震わせながら、苦しげにジルがぼやく。



「……すげえ…頭ン中、熱い」



「……こっちの台詞よ」



ユーリエは小さくそう呟くと、


横を向いたジルにそっと顔を近づけて。





―――その頬に、軽く唇を押し付けた。





「……………ひゃぁえ!?」



「何そのやたら可愛い悲鳴」



ユーリエが触れた箇所を手で押さえ、見ているこっちが面白くなるくらい赤くなって、ずざざっと壁際に後退するジル。



「な、なん、おま、……い、いきなり……ッ」



「んー……練習、みたいな?」



悪戯な猫みたいに、ふふっと笑う。


……耳の形が自分でも分かるくらい、熱くなってるけど。



―――今日くらいは、強がってみても、良いわよね。




「……本番は、ジルからしてね?」




口元に笑みを浮かべて、上目遣いに見上げると。



「な、あ、………ンなの無理に決まッ」



「あ。今想像した?」



「ハァ!?しっ……こ、こっち見んな馬鹿!」



「やだ。照れるジルなんて滅多に見れないし」



「ぎゃぁああ―――!?」



ジルは毛布を引っ被ってこちらに背を向ける。



「出てけ!お前もう出てけ!」



「呼びつけたのは貴方でしょうに」



ユーリエは立ち上がり、



「……ね、ジル」




―――私のこと、好き?




毛布がもぞもぞと動く。



しばらくして。




「…………多分」




くぐもった小さな声が、聞こえてきて。


ユーリエは頬を染めて、微笑んだ。

595月波煌夜:2012/08/21(火) 16:37:50 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ねここさん


これで一応終わりです(^_^;)

…大変申し訳御座いませんでした!
すみませんこれで勘弁してくださいお願いしますっ(T^T)


ジルを格好良いと言って戴けて、実はちょっと嬉しい月波でした←

596ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/21(火) 16:46:40 HOST:EM117-55-68-148.emobile.ad.jp

うわああああもう本当神ですねヤバいジルかっこかわいいユーリエかわいいいい(ryry
いや読む前からニヤニヤしちゃうとは思ってたけど想像以上に良すぎて見たあともずっとによによしちゃいました←
ねここみたいなゴミ野郎のリクエストにこたえてくれて本当にありがとうございます!
もうテンションあがりすぎてやばいですw
何度も言っちゃいますが本当にありがとうございました!

597ピーチ:2012/08/21(火) 17:45:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やばい神様ー!!

あ、あのジルがんな素直に…!?

あのー、これはくっついたと見なして宜しいでしょうか?←

598月波煌夜:2012/08/21(火) 18:02:06 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
神=読者の皆様((キリッ



>>ねここさん

こちらこそとても素敵な案をありがとうございました!
月波には純愛ものは一生無理だという良い教訓になりました\(^o^)/
そういうのはねここさんにお任せします(ぇ
また何か、リクエストあったら是非ともお願いします!



>>ピーチ

このアホにどうやって、自然に自覚させてかつ素直にさせるかすごい悩んだ←
くっついたと見なしてください!
ジルがジルなんで!
あの鈍感男がここまで漕ぎ着けたからそれで許してっ<(_ _)>




そろそろ、あと一個の特別編と、それから番外編の最終回に取り掛かろうと思いますが、他にも短編のリクエストがありましたらどんどんお願いします(≧∀≦)

599ピーチ:2012/08/21(火) 19:21:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

…アホ?ジルが?←確かに多少アホ要素は混じってるけど…(酷w

りょーかーいっ!やっとくっついたよこの二人!

リクエストいーですかー!

メイン四人プラスユーリエちゃん、ジル、ルイーズ王女、クロードの八人の肝試しとか見てみたいw

…無理だったらスルー頼んます。

600月波煌夜:2012/08/21(火) 20:06:06 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ

肝試し、新作というかなんというかの学園もので書きたかったんだよね←

あ、コラボの方でやってもいい?
天音ちゃんたち皆頼りがいありそうだしw



なにげに600超えましたいえーい!
記念SSは間に合ってるんでやめときますが←
皆さんご協力(?)とご愛読、本当にありがとうございます!

601ピーチ:2012/08/21(火) 20:29:58 HOST:nptka102.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

え、いいの!?

ありがとうございますー!

…あいつらは頼りがいないとこの仕事やっていけないからネw

602月波煌夜:2012/08/22(水) 18:09:25 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、上手くできるか分かんないけど←
肝試しってグループとかペア分けした方が良いのか?w




次からは、レオン殿下の「悩める王子と銀の妖精」に入ります!
これは前からしつこくうだうだと言ってるとおり、とっても大事なエピソードになります(・∀・)
むしろ本編に入れろよというレベル。
これを読んだ後に、本編や、ピーチリクのユーリエとソフィアの話などを読んで戴くとまた違う感触が得られるかも?\(^o^)/

ではでは(^-^)/~~

603ピーチ:2012/08/22(水) 18:39:52 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やほーい☆w

うーん、三人のみの時は基本的に天音、柊一・昇って感じw

基本的に天音は一人で居たがるタイプ

だから多分、天音はソフィア様組のどっかに入ると思うw

604月波煌夜:2012/08/23(木) 13:56:29 HOST:proxy10086.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 1』





「………………」



レオンは辟易として、目の前にどっさりと積み上げられた書類、そして肖像画を見た。



「何の嫌がらせだこれは……」



ただの政務に関する仕事なら、さほど嫌ではなかったのだが。

彼は優秀な王子だ。
緻密な計画力と実行力を持ち合わせ、税金の管理や式典の計画、指示、それから法の整備もお手のもの。
語学や音楽も堪能だし、武力にも優れている。
何処かの変態息子とはまた方向が違うものの、すべての人を惹きつける力にも恵まれている。


赤味が混じった豊かな金の髪に、鮮やかな碧の瞳。
窓越しに差す光を浴びたその横顔は、薔薇というよりも向日葵―――いや、その向日葵が振り仰ぐ太陽のように眩しく輝いている。
彫りの深い端正な顔立ちの彼は、相当の美形でもあった。


だが、その全てにおいて完璧で、常に余裕の態度を崩さないレオンを持ってしても、



「はあ……」



この状況に溜息をつかずにはいられなかった。


仕方なしに、一枚の名簿に目を落とす。


公爵家や侯爵家の令嬢やら未亡人やら、果てには他の国の王女や著名な貴族女性の名前がずらりと並ぶそれを見るだけで目眩がして、レオンは額に手を当てる。
肖像画の方も、実物よりも誇張しているのだろう、麗しい姫君の姿ばかりだ。……見たままを正直に描いたなら画家の首が飛ぶのは明白である。


……頭が痛くなるこれらは、現国王の正妃にしてレオンの実母、ファウスリーゼが寄越したものだった。
この量でも、ファウスリーゼが厳選に厳選を重ねて、申し込みの手紙から選び出したものだというのだから信じられない。信じたくもない。



―――王太子レオンハルトの結婚相手。



レオンは、すでに愛人どころか妃を娶っていても何の不思議もない年頃だ。
さらに、同じような好条件を持つシュオンが婚約を大々的に発表した今、レオンの下には今までよりもさらに、結婚の申し込みが殺到するようになってしまった。


「…………はあ」


また溜息をつく。



古い慣習に縛られた、愛情もない形式的な結婚なんて正直したくない。

レオンは革新的な青年だった。

だからこそ、王女である妹のルイーズと、それなりに地位はあるが元々は没落した貴族の出身であるクロードの仲を応援できるし、シュオンとソフィアのことも心から祝福できる。
身分の差なんて、本当につまらないしくだらない問題だと思う。
それが分からずにお高く留まっている貴族がほとんどというのが、残念ながらこの国の現状だけれど。

605ピーチ:2012/08/23(木) 14:04:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……レオン殿下…間違っても倒れないで下さいねー?

…画家の首が飛ぶって、ある意味凄いよネ…w

606月波煌夜:2012/08/23(木) 20:18:29 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 2』





「―――レオンハルト殿下」


「クラウスか。どうした」


亜麻色の髪に淡褐色(ヘーゼル)の双眸を持つ騎士が、浮かない顔でノックをして部屋に入ってきた。

彼は《イルファーレ》の騎士団長を務めるクラウス。
柔らかな物腰や明るい笑顔、人懐こい性格と確かな力量から、若いながらも多くの騎士に慕われている青年だ。


「殿下。平民と思(おぼ)しき三人が殿下に謁見を賜りたいとしきりに申しておりまして……。今侍従が追い返そうとしているのですが、如何致しましょう」


……平民?


レオンはふむ、と眉を寄せる。
普通の王族ならば、ふざけるなと一蹴するのだろうが生憎レオンは違う。

民の意見を聞き入れるのめ支配者の務め。
何か特別な事情があるのかもしれないし、話くらいは聞いてやっても良いかもしれない。
クラウスもレオンの性格を熟知しているからこそ、わざわざ知らせに来たのだろう。


「謁見の間に行くのも面倒だな……。構わん、此処に通せ」


「畏まりました」


クラウスが一礼して退室する。

レオンは侍女に、部屋を軽く片付けるよう言いつけた。





*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*





「客人をお連れしました」


クラウスが扉を開け、背後の人物たちに入るよう促した。


「王太子殿下!急なお願いをして申し訳御座いません……!」


レオンは人好きのする笑顔を一瞬で装備し、神でも目にしたように頭を床に擦り付けんばかりに萎縮してしまっている、質素な身なりの男女に声を掛ける。



「はは、そう固くならなくて良いぞ。私がレオンハルト=フェリ=ユリア=ローエンシュタインだ。初めて目に掛かるな。どうした、一体何が―――」



そう言いかけて、遅れて入ってきた女を目にした途端。

、レオンは言葉、いや、呼吸を止めた。



妖精がいた。



肩まで届く、冴えた月明かりのような銀細工の髪。
限りなく淡い碧―――水色の瞳に白磁の肌。
氷のように冷たく、清らかな高潔たる美貌。



「………………」



何故王宮に妖精が?とレオンは真面目に考える。


妖精はちらりと熟年の男女を一瞥すると、



「ちょっと何やってるの?父さん、母さん。いつまでもそんな調子だったら日が暮れるわ。王太子殿下にお話をするんでしょう?」



なかなかキツいことを言う妖精だった。


彼女が短めの髪を揺らしてレオンを振り向く。
呆けたように見惚れていたレオンは慌てて、こほんと咳払いをした。



「御前で大変失礼致しました、殿下。お目に掛かることができて嬉しく思います」



妖精はまるで似合わない地味なドレスの裾を摘み、完璧な仕草で膝を折って女性の最高礼を取る。



「―――この様な粗末な格好で御前に出ることをお許し下さい。……私たちは陛下から伯爵家の称号を戴いておりますミルフルール家の者です。この度は、差しがましくも殿下にお聞きしたいことがあって参りました」

607月波煌夜:2012/08/23(木) 20:19:24 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫!レオンは強い子!

画家は雇われてるだけだからね←

608ピーチ:2012/08/23(木) 21:21:28 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え…うん、まぁ、レオン殿下は強い子に見えるけど…

よ、妖精ってソフィア様みたい…←銀細工の髪がw

609月波煌夜:2012/08/23(木) 22:03:36 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 3』





ミルフルール伯爵家か、とレオンは顎に指を当てた。

辺境に大きな屋敷を構える由緒正しい家柄だが、先代の伯爵の遊び癖と散財ぶりはそれはそれは有名で、当主が代わっても社交界に出ることはおろか日々の暮らしにも困っている状況だと聞いたことがある。

つまり、やや威厳が足りないように思えるが、目の前の中年の男が現伯爵、隣の女が伯爵夫人だということだろう。


「なるほど。貴女の名を教えてもらえるかな、美しいレディ」


「イルゼと申します」


物怖じせずにはっきりと答える妖精―――イルゼを、両親ははらはらと見守っている。
良く見れば、受ける印象は全く異なるものの、三人は銀髪や水色の瞳、気品のある顔立ちがそっくりだ。



―――それにしても。



レオンは腕を組む。



―――この三人、私が知っている誰かに似ているような気がするのだが……。



「……イルゼ嬢、ミルフルール伯爵夫妻よ。それで、この私に何の用かな」



生活を助けてほしい、ということか。
いや、この見るからにプライドが高そうな娘がそんなことを了承するとも思えない。


イルゼは一瞬銀の睫を伏せ、
それから背筋を伸ばして、真っ直ぐレオンを見つめた。




「―――行方不明になっている妹の居場所を、教えて戴きたいのです」




「……妹?」


「はい」


「その妹君の居場所を、私が知っていると?」


「おそらくは。……少し長くなりますが、聞いて戴けますでしょうか」


イルゼが目配せをすると、気の弱そうな伯爵が躊躇しながら。


「重ね重ね申し訳御座いません、殿下。どうか、できる限りこのお部屋の人数を減らして戴けませんでしょうか」


「それは……どうしてだ?」


「事情がありまして……。この話は、あまり多くの方に聞いて戴きたくないのです」


怯えたような表情の伯爵。
レオンはふむ、と頷いた。


「分かった。クラウスを除いて、皆表に出ていろ」


使用人たちが出て行くのを何度も頭を下げて見届け、伯爵はようやくのことで口を開いた。



「……もう十五年以上前の出来事です。妻が二人目の娘を出産しました。イルゼに似た、利発そうで親の贔屓目を抜いても、とても可愛い子でした」


「………………」


レオンは黙って瞼を閉じた。

今にも泣き出しそうに端正な顔を歪ませた夫人が続きを引き取る。


「……ところが、ある日。屋敷に強盗が押し入って……。生まれたばかりのその子を、何処かへ連れ去ってしまったのです。誰にも言うな、言ったなら私たちの命はない、と」



「絶対にあの男の仕業です……!遊ぶお金がなくなったから、あの子を人買いに売ったんだわ!」



「イルゼ!やめなさい!」



イルゼは悔しそうに俯き、言葉を絞り出す。



「……だって、あの子にはそれだけの価値があったもの……!」



それを聞いて。
レオンは静かな確信と共に、そっと微笑みを浮かべた。




「―――その妹君の名前は、ソフィア嬢……ではないか」




ソフィア。



その名前が空気を震わせると同時、
耐えきれなくなったように、夫人が顔に手を当ててわっと泣き崩れた。

610月波煌夜:2012/08/23(木) 22:04:41 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ


……………(・∀・)キヅカレタ!

611ピーチ:2012/08/24(金) 07:24:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……………やっばりカ!

…ソフィア様ってお姉さま居たんだネ…

え、え、あのご両親はともかく、お姉さまは絶対に認めなさそう←婚約

612月波煌夜:2012/08/24(金) 14:45:36 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ソフィアがなんで気づいたらいろんな屋敷点々としてたのかなーってとこ書きたかったのよね←

お姉さんのイルゼなんだけど、一番最初の案だと、《紫水晶》の双子として本編に登場するはずだったんだよー\(^o^)/
《紫水晶》は百年に一度生まれるって設定だから双子ならいけるんじゃね?っていう。
面倒だからやめたけど☆
女の子にしては髪が短めなのはずっと考えてたんだけどね!


ソフィアのフルネームはソフィア・ミルフルールでした。
みるふるーるって可愛くない?←
一応伯爵家の娘だったらシュオンとヒースの中間くらいだから丁度良いはず!


イルゼは気が強いけど、理解がある子だから大丈夫だよー(`・ω・´)

613ピーチ:2012/08/24(金) 15:44:04 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

…あのー?面倒を理由に出さないのは、よかったのか?

大丈夫?理解ある子?

614月波煌夜:2012/08/24(金) 16:30:26 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ


メイン4人で精一杯だったから、そんな重要人物投入しちゃったら大変なことになってただろうし(^_^;)


月波のキャラって時点で良い人確定だから大丈夫!
ほんとに悪い人って丁寧に書けない…

615彗斗:2012/08/24(金) 17:17:27 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
ま…まさかのソフィア様の御姉様…!! Σ(0_0;)

お姉さんが…まさかお姉さんが居たとは…正直驚きました…しかも出身が没落した貴族の出とは…本当に今とは考えられない…ここから行方不明になってシュオンと出逢って幸せになったんだね。

最初から見てると…ソフィア様って本当に苦労人なんだ…あ〜何かもう泣きたい…(半泣)

616ピーチ:2012/08/24(金) 17:36:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん、確かにつっきーキャラってだけで安心だ!←

あたしは次の小説の主人公を悪い人を丁寧に書こうカト思ってマスw

617月波煌夜:2012/08/24(金) 18:21:46 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 4』





「ソフィア嬢なら私の知り合いだ。エインズワーズ家の跡取り息子と元気にやっているよ」



良かった、良かったと嗚咽を漏らしてハンカチを濡らす夫人と、それを、涙を耐えるように唇を噛み締めながら支える伯爵。

イルゼも、安心しきったように瞼を閉じた。
頬に一筋の涙が伝う。



「やはりそうでしたか……。噂で、《紫水晶》の少女とその方が婚約したという話を聞きまして……。もしかして、って居ても立ってもいられなくなって、父と母を急かして此処まで来たんです。エインズワーズのお屋敷の場所は分からないけれど、王城に行けば何か分かるかもしれないと思って」



「……貴女は美しいだけでなく賢明で、行動力もある女性なのだな」



愛娘を手放し、他人に訴えることもできず苦しい毎日を哀しみ暮らしていた夫婦。
先代の伯爵が亡くなり、そしてシュオンの婚約が発表されたのを契機に、イルゼは動いた。
怯える両親を説得し、門前払いを食らうかもしれないのに王城にまで出向いて。


「そんなことはありません。私がこうやって行動を起こせたのも、王太子殿下はどんな民の声でも聞き入れて下さる、とてもお優しい方だという評判を聞いていたからです。……お会いできて、本当に良かった」


イルゼは眦に涙を溜めたまま、レオンに微笑みかける。


―――じわ、と頬が熱くなった。


レオンはそれを誤魔化すように早口で言う。


「……それで、貴方たちはソフィア嬢を取り返したい、と?」


「まさか。あの子が見つけたしあわせですもの。私たちの出る幕はありません」


イルゼはきっぱりと言い切った。


「ただ、無事が分かった今は、妹……ソフィアに一目会いたい。それだけです」


「そうか」


気の強さが伺える物言いと、可憐な見た目や心の優しさ、純粋さがアンバランスで微笑ましい。


レオンは知らずのうちに口元を緩める。


「今すぐエインズワーズの屋敷への案内人と馬車を用意しても構わないのだが……。長旅で疲れただろう、当城で休んで行くと良い。エインズワーズに使いを出して明日にでもソフィア嬢を呼び寄せよう。……もれなく過保護な虫がくっついて来るがな」


「そんな、殿下!貴重なお時間を取って戴いて、これ以上お世話になる訳には……」


「父さん、折角のご申し出を断る方が殿下に失礼よ」


ぴしゃりと言い、イルゼは再び深々と頭を下げた。


「本当に、何と言って良いのか……。恩に着ます。このお礼はいつか必ず」


「なに、礼などいらないよ。貴女の助けとなれるのなら何だってしよう」


「殿下は冗談がお上手なのですね」


ふふっと笑うイルゼ。

……さらりとかわされたレオンとしては、あながち冗談という訳でもなかったので曖昧な苦笑いを返した。

618ピーチ:2012/08/24(金) 18:28:40 HOST:nptka107.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

イルゼちゃんって優しいよねー

…レオン殿下って、やっぱ身分の違いのせいかな

619月波煌夜:2012/08/24(金) 18:30:07 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

貧乏な家に生まれたと思ったら悪い祖父の手引きで誘拐されて、家族の記憶もないまま侮蔑と好奇の視線に囲まれて育った所為で、ユーリエに慰められつつも小さいシュオンと出逢った後くらいから心閉ざしちゃって、貴族のお屋敷を回った挙げ句やっとのことでエインズワーズに到着、と。
可哀想な境遇のソフィアでした(´・ω・`)
でもそういう子が思いっきり幸せになってくれたら良いですよね!



>>ピーチ

安心設計☆((違う

悪い主人公ってのも良いと思います!

620ピーチ:2012/08/24(金) 18:39:02 HOST:nptka301.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

安全設計w

…その主人公が、ジルとそっくりなんだけど、いーでしょうかー?

621月波煌夜:2012/08/24(金) 21:38:43 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>ピーチ


イルゼは良い子ですよ(≧∀≦)


え、ジルに?
あの剣バカにそっくりって…大丈夫?
いや全然構わないけど(*^-^)

622彗斗:2012/08/24(金) 23:01:01 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
確かに! それは言えてますね!!
ソフィア様がシュオンの力で幸せになってくれたら良いですけど…私の春は……来るどころか見当たりもしないです(泣)

623ピーチ:2012/08/24(金) 23:08:09 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

イルゼちゃあぁぁぁぁん!!!←退き

ありがとーうっ!!ほんとにほんとにありがとぉー!!

や、似てるって言っても口調とか性格がね?ちょーっと問題アリなわけでして…

624月波煌夜:2012/08/25(土) 11:08:30 HOST:proxyag100.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 5』





「殿下はお若いのに、本当に立派な方でいらっしゃるのねぇ。手筈を整えて下さった上にこんなに立派なお部屋や着替えまで……。いくら感謝してもしきれないわ」


きちんとしたロイヤルブルーのドレスに着替え、メイドたちによってメイクを施された伯爵夫人―――コーネリアは、見違えたように若返っていた。
イルゼのような目を見張るタイプの美人ではないものの、顔立ちは極めて整っていて、微笑みの形に刻まれた皺さえも品が良い。


「ああ。……ソフィアに……明日、会えるのか」


未だに信じられないような声音で呟く伯爵アルフレッド。
僅かに白が混じる銀髪を丁寧に梳いた彼は背格好も良く、紳士然とした雰囲気を振りまいているが、残念ながらおどおどとした態度がそれを相殺してしまっている。


「え、ええ……ど、どうしましょうアルフ、私何て挨拶したら良いのかしら。まず母親だって信じて貰えるかも怪しいし」


「そ、そうか、そういう心配もあったか……!」


「二人とも五月蝿い。黙ってて」


イルゼの冷たい流し目に、二人はびくっと身体を震わせた。


「でも、ソフィアに十六年ぶりに会えるのよ?緊張するのは当然だし」


「こっちが緊張してどうするのよ情けない。父さんも母さんも堂々としてれば良いから」


口調は相変わらずつれないが、さり気なく遠回りな励ましの言葉を掛けているのがイルゼらしい。

娘の性格を熟知しているアルフレッドとコーネリアは、静かにそっと微笑み合う。


「ところでイルゼ、貴女はさっきから何を?」


「決まってるじゃない。市で売るショールを編んでるのよ」


イルゼは指先の動きを止めずに言う。


「家庭教師(ガヴァネス)の仕事はしばらくお休みなんだから、こういうちまちましたので稼ぐしかないのよ。丁寧にさえやれば結構な値が付くわ」


「こんな時まで……。いつも悪いな、イルゼ」


「別に良いのよ。私ってそこそこ器用だし。教えたり働いたりするのって結構好きだから」


自分たちより断然しっかり者の長女に、両親は頭が上がらない。


「イルゼも良い年頃なのにねえ……。折角綺麗なのに、浮いた話もないし」


「何言ってるの?こんな状態で家を捨ててお嫁になんて行ける訳ないわ。父さんと母さんだけだったら絶対そのうち野垂れ死ぬわよ」


イルゼは自嘲の笑みを浮かべる。



「持参金がない上に実家が借金抱えた花嫁なんて、よっぽどの物好きでなければ歓迎される訳ないもの。……だから、何も知らないソフィアがしあわせになってくれて本当に良かったと思ってる。私はそれで十分」



「……そのことだけど、イルゼ」


コーネリアは彼女の顔色を伺うように。


「何よ」


妻の後を引き取り、アルフレッドはそろそろと口を開いた。



「……王太子殿下、お前のことをとても熱心に眺めておられなかったか」



イルゼは手を止め、父親と母親を睨む。


「何が言いたいの」


「え、ええと、いえ、もしかしたらその、……やっぱり何でもないから!気にしないで」


「なら言わないでよ」



父さんも母さんも何を考えているんだか、とイルゼは思う。


―――たかだか一回会っただけの貧相な小娘に、王子様ともあろう方が血迷う訳がないじゃない。


無意識のうちに脳裏にレオンの姿を思い描いていたイルゼはハッとして、火照る頬をぱんぱんと両手で叩き縫い物を再開する。


「ほら、父さんも母さんも余計なこと考えてないで、暇ならソフィアに会ったときのシュミレーションでもしてなさい」

625ピーチ:2012/08/25(土) 12:12:39 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわやべぇ、ソフィア様とはまた違うけどやっぱり優しい!!

でもさー、ソフィア様って何で自分の名前知ってたの?

連れてかれたのって赤ちゃんの頃でしょ?

まさかの記憶があったとか?

626月波煌夜:2012/08/25(土) 12:24:47 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

シュオンのことですから命を掛けてでもしあわせにしますとも!
月波の春も見当たるどころかその気配すら全くないです☆



>>ピーチ

イルゼは優しいんだよ!良いお姉さんだよ!

そう、そこに気がつくとはさすがピーチ、目ざとい!
ソフィアはイルゼの指摘通り、遊び人でどうしようもなかった祖父の手引きによって誘拐されたんで。
祖父はさすがにソフィアの名前知ってたから、貴族に受け渡すっつーか売り渡すときに、一応忘れずに伝えたんだと思うw
この死んだじーさん伯爵の所為でイルゼとかお父様お母様は今も苦労してるんですよ。困ったものです!

627ピーチ:2012/08/25(土) 13:20:14 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

えぇぇぇ!?

まさかの身内に売られた!?

…最悪だな。ソフィア様のじぃさんw

628月波煌夜:2012/08/25(土) 15:20:29 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 6』





「ソフィアには家の事情は一切伏せておくこと。良いわね?」


迎えた当日、ソファの隣でカチコチに緊張している両親に、イルゼは囁いた。


「え、どうして?」


「あの子が気に病まないようにする為よ。だからこそ殿下の御厚意に甘えて綺麗な服装をさせて貰ってる訳だし」


実際、王宮に入るときは見窄らしい格好から平民だと勘違いされた。
幸い、今の自分たちは何処からどう見ても、実際の身分に相応しい紳士と貴婦人だ。
だというのに、苦しい家庭事情が露呈したら、やっと自分自身でしあわせを掴んだソフィアに心配させ、さらには迷惑を掛けることになる。


「あの子は何も知らない方が良い……。そうでしょう?」


娘の言葉に、納得した夫妻はこくりと頷いた。



「―――失礼」



ドアが開けられ、レオンが顔を出す。
慌てて立ち上がったアルフレッドとコーネリア、それから相手をしっかりと確認してから席を立つイルゼを見て、レオンは燦々と輝く太陽のようににっこりと微笑んだ。


「今、城門にエインズワーズの紋章の馬車が入ってきたのが見えたから知らせに来たのだが。心の準備はできたか?」


「ほほほ本当ですか!わざわざ申し訳御座いません!」


「父さん落ち着いて」


がくがくと膝が笑っている父を見て、イルゼが嘆息する。


「有難う御座います、殿下」


「あのう……。一つお聞きしたいことが……」


遠慮がちにコーネリアが申し出る。


「何だ?」



「ええと、……ソフィアは、どのような子に育っているのでしょうか」



それはイルゼも気になっていた。
何しろ、生まれたばかりだったソフィアとはもう十六年近く顔を合わせていないのだ。
ぼんやりとした記憶を辿ってみても、あんなに小さかった彼女がどう成長したのかは、全く想像できない。



「そうだな……。私の私見になってしまうが」



と、そこでレオンはイルゼの顔を見た。


美しく澄んだ深いブルーの双眸に見つめられて、心臓がどくんと跳ねる。



「容姿で言うならば、イルゼ嬢に最も近いな。勿論、瞳の色は違うが……。綺麗な銀髪で、そう、まるで御伽噺から出て来た妖精のように愛らしく可憐だ。初めて逢ったときは、まさかこんなに美しい女性がいるとはと見惚れてしまったよ」



「まあ。やっぱり、あの子はイルゼに似ると思ったのよ」


嬉しそうに声を弾ませるコーネリアに、ええとか何とか曖昧な返事を返しながら、イルゼは顔を隠す為にサッと俯く。

……それはそのまま、イルゼに対してのレオンの評価と受け取って良いのだろうか。



「性格は……そうだな」



レオンはイルゼの苦悩もつゆ知らず、腕を組んで考え込む。
それから爽やかに笑い、



「私は、貴方たち三人のそれぞれに良く似ていると思う。内気で心優しく、人を思いやることができて、しかし芯は驚く程強い娘。……真実は貴方がた自身で確かめると良い」



レオンが言い切ったと同時。



「―――失礼致します。シュオン様とソフィア様をお連れしました」



侍従が、扉を厳かに開けた。

629ピーチ:2012/08/25(土) 15:43:31 HOST:nptka101.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

イルゼちゃーん!!

やっぱりお優しいおねーさまだねー!

イルゼちゃん大好きー!

いやもちろん、ソフィア様のご両親もいい人だと思うよ!

630月波煌夜:2012/08/25(土) 16:07:14 HOST:proxyag001.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 7』





さすがのイルゼもごくりと喉を鳴らし、入ってきた人物を注視した。


蜂蜜のように甘やかな金髪に、サファイアの瞳。
少女の理想をそのまま具現化したような、完璧に整った目鼻立ちに優しい笑顔。

一瞬、レオンより少し下の王子であったら第二王子だろうか、と考えてしまったが。


―――この人が……。


『あの』エインズワーズ公爵家のシュオン。
じきにソフィアの夫となる男だ。



「ソフィア。僕がついてるから。大丈夫だから、ね?」



困ったように笑い、シュオンは縮こまってぎゅっと彼の袖を握り締める少女を振り返る。


アルフレッドが身を乗り出した。
コーネリアは口元を押さえて、淡い空色の双眸に涙を滲ませる。



きらきらと輝く銀の髪を背に流した小柄な少女。
透き通る肌、繊細な硝子細工のように華奢な体躯。

―――淡い紫の瞳。



ソフィア。



「遠路遥々ようこそ。シュオン、ソフィア嬢」



気を遣ったレオンが微笑み、この場を取り仕切る。



「さて、ソフィア嬢。事前に知らせた通り、こちらの方々が貴女の実の御両親と姉君だよ」



両親に目で合図をして、イルゼはびくりと身体を震わせたソフィアに近づいていく。


シュオンがそっとソフィアの背中を押した。



「―――ソフィア」



イルゼは妹の手を取り、微笑んだ。



「貴女、が……私の、お姉様……?」



「そうよ」



安心させるように、小さな手を優しく握る。


ソフィアは紫の瞳を揺らし、イルゼの背後に立つ二人を見上げた。



「……お父、様?」



アルフレッドが唇を引き結んで力強く頷く。



「……お母……様」



ぼろぼろと涙を零してハンカチーフを濡らしながら、コーネリアも何度も頷いた。



ソフィアの喉から、ひっ、という小さな嗚咽が響く。



「会いたかった……っ」



今にも崩折れそうになる身体を、イルゼは頬を伝う熱い涙を感じながらも抱き締める。



「ずっと、ずっと会いたかった……!」



少し離れてシュオンとレオンが微笑んで見守る中。



実に十六年の時を経て。


―――少女は、家族との再会を果たした。

631月波煌夜:2012/08/25(土) 16:09:09 HOST:proxyag002.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ありがとう!
イルゼは月波も特に気に入ってるよー!

両親も娘に押されがちだけど良い人たちだよー!


ソフィアを家族に会わせてあげたいってずっと思ってたから嬉しいです(`・ω・´)

632ピーチ:2012/08/25(土) 16:16:57 HOST:nptka404.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

うわやべぇ、つっきーちょー天才!!

十六年…めっちゃ長い時間だよね…

再開、おめでとうございます!!

633月波煌夜:2012/08/25(土) 21:08:17 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 8』





四人は色々なことを話した。


レオンが、ソフィアを心配するシュオンを半ば無理矢理連れ去って退室してしまったので、家族だけでテーブルを囲む。


物心がついたときからしあわせを呼ぶ贈り物《紫水晶》として多くの屋敷を点々とし、沢山の心ない言葉を浴びせかけられてつらい毎日を過ごしたこと。
とある舞踏会で出逢ったシュオンと九年後に再会し、今は彼や優しい使用人たちと共に満たされた日々を送っていること。


アルフレッドやコーネリア、イルゼは顔を曇らせたり、時には声を上げて笑ったりと親身に話を聞いてくれた。



「貴女にソフィアって名前を付けたのはイルゼなのよ」



コーネリアはふふっと目元を和ませる。



「まだこーんなに小さかったのにね。自分の名前はきっちりした音だから、柔らかい感じが良いって言って聞かなかったのよ」



「そうそう、イルゼは小さいときからいつもつんとしてた癖に、ソフィアが生まれたときの喜びようは凄かったな。それはもう、ぴょんぴょんそこら中跳ね回って」



「ちょっと父さん!?」



余計なことを、と父親を睨みつけるイルゼ。
彼女の隣で、ソフィアはこらえきれなくなったように笑いを零した。



「……お姉様が?」



「そうよ。『わたし、お姉さんになるのね!』ってにこにこしちゃって」



「元気に育ちますようにって、時間を決めて毎日お祈りしてたもんな」



「いい加減にしてよ二人とも!?」



激昂したイルゼはテーブルをばんばん叩く。


「ソフィアじゃなくて私の話になってるじゃない!」


「私はお姉様のお話の方が楽しいけど」


「そうだろうそうだろう。よしソフィア、実はイルゼはな―――」


「…………父さん?」


冷たく凍った水色の瞳でちらりと見られ、アルフレッドはすごすごと引き下がった。

コーネリアとソフィアは顔を見合わせてくすりと笑う。


「ねえソフィア、それより私はあの……シュオン、様?の話を詳しく聞きたいんだけど」


イルゼはすぐ隣のソフィアにずいっと顔を近づけた。


「え」


「確かに、それは大事よね」


コーネリアとアルフレッドもうんうんと同意。


「ソフィア、お姉様には正直に答えて。凄く評判は良いけど、実際はどんな方なの?私が見た限りでは、ただのお坊ちゃんじゃなくて、なかなかのやり手っぽいかなって思ったけど」


「イルゼは人を見る目がかなり良いからなぁ」


「ええと……。確かにシュオンは、一癖も二癖もあるけど」


ソフィアは、心から嬉しそうに微笑んで。



「とても優しくて……私を凄く大事にしてくれる人よ」



「……それを聞いて安心したわ」


イルゼも笑って言った。



「つらい思いをしてきたからこそ……これからしあわせになるのよ、ソフィア」



「ええ」



両親と姉に、ソフィアはしっかりと頷いてみせた。

634月波煌夜:2012/08/25(土) 21:10:24 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ


いや凡才以下です(^_^;)

ありがとう!
あの人見知りのソフィアが大分リラックスできてるし、やっぱり家族は違うんだね(≧∀≦)

635ピーチ:2012/08/26(日) 09:33:40 HOST:nptka402.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

いやいや!つっきーで凡才以下だったらあたし泣く…

ソフィア様のご家族様ー!!←意味分からんw

636月波煌夜:2012/08/26(日) 19:27:56 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 9』





「……此処にいたのか」



夜風に短めの銀髪を踊らせるイルゼが振り向いた。


「王太子殿下」


「レオンで良い」


レオンはバルコニーの手すりに掴まる彼女の隣に立ち、微笑みかける。


「……は?」


「レオンと呼んでくれないか」


「え、……レオン、殿下?」


「そう……なのだが」


レオンは口元を緩め、



「……一度だけで良い。敬称を付けずに呼んでみてくれ」



「はい!?無理です、そんな無礼なっ」



「無礼かどうかは私が決めることだよ」



イルゼは王太子の命令に逆らうことはできないと判断したのか、助けを求めるように視線をあちこち彷徨わせた後。



「…………レオン」



耳まで真っ赤になって、レオンの顔を見ないまま消え入るような声で言った。


レオンはそれに満足げな笑みを浮かべる。



「有難う」



意味が分からないという顔のイルゼ。
それはそうだ。
レオンだってどうしてこんなことを言い出してしまったのか、自分でも良く分かっていないのだから。


分かることは、ただ一つ。



「……もう、行ってしまうのか」



ソフィアとの再会を果たしたのだから、彼女たちにはもう、この王宮に用はない。
明日にでも発つつもりなのだろう。



―――それが、イルゼと別れることが、嫌でたまらないということ。



「……はい」



イルゼはこくりと頷く。



「仕事がありますから」



「仕事?」



「……一応、家庭教師(ガヴァネス)を少し。専門は裁縫だけですが」



レオンはぱちくりと碧の双眸を瞬かせた。

それから。



「………はははっ!」



自分がおかしくなって、笑ってしまう。



「全く……。こんなことを思いつくなんて。どうやら私は、貴女を引き留める理由を作るのに必死らしい。困ったものだよ」

637ピーチ:2012/08/26(日) 19:55:27 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

まさかのレオン殿下、イルゼちゃんを引き止めたい派ですかww

まぁ、あのソフィア様の姉君だからねぇww

638月波煌夜:2012/08/26(日) 21:12:34 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 10』






「……え!?」



驚いたように淡い空色の瞳を見開き、イルゼはかあっと頬を染め、怒ったようにレオンに詰め掛かる。



「ど、どういう意味ですか、それっ」



「どういう意味だろうな。……くくっ」



「笑ってないで答えて下さい!」



イルゼの叱責に、レオンはまた笑って。



「貴女を引き留めるには、具体的にどうするのかって?」



「そっちではなく……あ、いえ、そうですっ」



彼女にしては珍しく、慌てている様子のイルゼ。

レオンは一頻(ひとしき)り笑ってから。



「……私の三番目の妹は裁縫や刺繍の才能が驚異的なまでに皆無でね。ある騎士に世話役や教育係を一任しているのだが、いくらあの万能な男でも無理がある」



そこで一度切り、イルゼの反応を伺う。


イルゼは次の言葉を予想したように、息を呑み込んだ。



「貴女に、妹―――第三王女ルイーズの家庭教師の仕事を依頼したい」



「私に、……王宮仕えをしろということですか」



「そうだ。ルイーズはどうしようもない暴れ馬だが、クロード……奴の騎士にサポートさせるし、それに貴女にならきっと制御できる。働く場所が変わるだけなのだから、負担はないだろう?」



「………………」



王族の家庭教師といえば、名門貴族の出の者ばかり。
ミルフルール家は爵位こそあれ、その現実は没落する寸前。
王宮に勤めるということは、勿論給金も非常に高い位置で安定する。
父母の生活の救済、伯爵家の権威の復興を目指すイルゼにとっては願ってもない話だ。



「無論、休みにはお父上とお母上に会いに帰っても良いし、此処からは近いからソフィア嬢がいるエインズワーズの屋敷に行くこともできる」



「……それは、とても有難いですけど……」



イルゼは疑うように、レオンの顔を見上げた。



「私なんかに……何故、そこまで……」



「貴女を離したくないから」



微笑んで手を伸ばし、レオンはイルゼの滑らかな頬を指先でそっと撫でた。

イルゼはびくんと身体を跳ねさせる。



「それは……どういう、意味ですか」



「知りたい?」



薄い肩に片手を置き、接近してくすりと笑う。

暗がりでも分かるくらい、彼女の白い肌が赤らんでいる。
指先に伝わる熱。



イルゼは視線を逸らし、こくん、と小さく頷いた。


それを見て。



レオンは。




「―――うん。やはりまた今度にしようか」




「…………はああ!?」




人民向けの爽やかな笑みを瞬時に装備、何事もなかったようにイルゼから手を離した。



「こんな早い段階で取って置きの切り札を使うのは面白くない。もっと焦らしてからでないと。……そうだろう、イルゼ?」



茶目っ気たっぷりのウインクをするレオンに、イルゼはぷるぷると震えて。



「こ、……この馬鹿王子ぃ……ッ!」



「おお、その呼び方は新鮮だな。もっと呼んでくれて構わんぞ」



イルゼは涙目で、キッとレオンを睨みつけ。



「タラシ!女の敵!……レオンなんかもう知りませんっ」



お?と思ったのも束の間、イルゼは身を翻すと、つかつかと高いヒールの音を立てて歩き去った。



「ははっ!この私に向かって馬鹿王子ときたか……。ますます惚れそうだな」



バルコニーに残されたレオンは心から楽しそうに笑う。



「さて、未来の妃の機嫌を取りに行きますか」



とある悩みからやっとのことで解放された王太子は、彼の天使―――否、妖精の後ろ姿を追い掛けようと一歩を踏み出した。

639月波煌夜:2012/08/26(日) 21:27:20 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんかの本で、王族とは伯爵家以上なら結婚できるって記述があったんでマルグリットでもできるよ!イルゼもソフィアも、苦労した子は報われるんだよっていうシンデレラストーリーみたいだね(`・ω・´)

イルゼの話は、またいつか書きたいかもしれない←




【お知らせ的なもの】

さて、月波の心残りだった「ソフィアと家族の再会」も無事終わりましたので、次からは最終回のシェーラ編、そしてソフィア編になります。

ただ、輪をかけてつまらない話を致しますと月波の学校の課題がぱっぱらぱーなことになっておりまして。
しかもすぐに定期考査が控えておりまして。

そんな訳でして、結構迷ったのですが、時間がない中で焦って適当に完結させてしまうよりは、折角ですからじっくりといきたいので、申し訳ありませんがしばらくの間更新はお休みさせて戴きます。
でも寂しかったらスレには出没するかもしれないので、良かったら構ってやって下さい(・∀・)

番外編が完結したら、ピーチとのコラボに移りたいと思います。ごめんねピーチ!

そうしたら、新作の学園ラブコメ(ラブが存在するかは神のみぞ知る)を始める…かもしれません。
『邪気眼少女の攻略法。(仮)』
↑こんな感じのタイトルを見つけたらよろしくです!
痛い中二病の女の子っていいよね…!
あと多分ハンドルネーム変えると思います。


詳しい予告はまた今度!

640ピーチ:2012/08/27(月) 08:11:11 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー!確かにー!!

……何か何気にイルゼちゃんがかわいいw

…………あたしも課題ぱっぱらぱーだw

学校で居残り喰らうww

641彗斗:2012/08/27(月) 14:07:02 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
課題がパッパラパ〜ですか〜私ももうすぐ課題と言う名の殺人狂にに殺されちゃう……ww

それはともかく…イルゼちゃん、流石ソフィア様のお姉さんだからきっと可愛い人なんでしょうね☆

小説にも入れよっと☆

642月波煌夜:2012/08/27(月) 16:24:34 HOST:proxy10039.docomo.ne.jp
ぱっぱらぱーww
…なんかもう物理的に終わる訳ないんだけど頑張りますよ…。
読書感想文とか消えれば良いのに…○| ̄|_



>>ピーチ

イルゼかわいい?(笑)
月波が書く女の子キャラは基本皆シャイになる模様ですw



>>彗斗さん

…刃物を持った殺人鬼に追い掛けられてる気分です(T^T)
イルゼ出して下さいますか!
では説明載っけときます(*^-^)ノ

643ピーチ:2012/08/29(水) 13:41:20 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

イルゼちゃあぁぁん!!!

うん、ソフィア様御一行様大好きー!!

644彗斗:2012/08/29(水) 15:43:10 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
あ……ついでに教師という名の鬼もやって来たww

これは…正に八方塞がりww 

確実に殺しに来てる…もうすぐ本当に死んじゃうww

645ピーチ:2012/08/30(木) 22:50:28 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
もしこんな駄文小説を読んでる人が居たらすいませーん!

アイディア綺麗さっぱり消え失せましたー

………いや、何か良く考えたら最初の方の計画しか立ってなくて。

そこで、ほとんどつっきーのまねになるけど、何かリクあったら言ってくださーい

…………今の所、慧斗さんのみが読んでくれてるらしいです。

つっきーもし読んでたら、ほんとごめんまねばっかで!!

646Mako♪:2012/09/03(月) 21:20:26 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
ううっ!

再会のシーン…。泣いちゃいました。(T^T)

ソフィア様、家族に会えて、本当に良かったです!!!!

レオン様、恋しちゃいましたー!
叶うとイーネ☆

647ピーチ:2012/09/04(火) 22:21:30 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ごめんなさいすいませんスレ間違えましたー!?

あれ自分のスレに載せるつもりだったやつです!!

ごめんなさいっ!!

648心愛:2013/03/10(日) 09:10:14 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp



○| ̄|_←土下座のつもり

何ヶ月返事遅れてんだよバカー! このバカーっ!



>>Mako♪さん

本当すみません…。

レオンも恋しちゃいましたね!
イルゼとしあわせになってもらいたいものですw

ありがとうございます! ソフィアの家族はずっと書きたかったので、そう言っていただけるとすごく嬉しいです(*^-^)ノ



>>ピーチ

すみません今の今まで気づかなくてすみませんほんとに…!





さ、さて!
このスレではとてもとてもお久しぶりです、心愛(元月波)ですヽ(≧▽≦)/

紫の歌、本日で一周年記念ということで、短いながらちょっとした話を載せてみようかなと。
リクは、紫の歌を皆さんが忘れ始めた頃合いに…と企んでいたのですが、まだ使う機会がありません。
本当に、本当にありがたいことです。


それでは始めます!

649心愛:2013/03/10(日) 09:11:02 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 1』






「―――ひとつ、買いましょう」




「……えっ?」




花売りの少女―――アイリーンは、驚いて目の前の人物を見た。



少年だ。


彼女よりも三つは年下だろう、子供っぽさが抜けない目鼻立ちはしかし異様なほど整っていて、彼の貴族的な美貌にアイリーンは思わず見惚れてしまう。


―――……なんて綺麗な子。


深い、深い青の髪に冷ややかな鳶色の双眸。
それに、下町の子供には有り得ない上等なコートを着込み、片眼鏡(モノクル)を光らせながら小さな手を差し出している彼は、



「か、可愛い……」



……カチンッという音が、少年の眉間の辺りから確かに聞こえた。


彼の目つきが一気に蔑みの色を帯びる。



「貴女は数秒前にぼくの言ったことも覚えていられないのですか? 蒙昧(もうまい)で卑しい小娘と無駄話をしている暇はぼくには一秒たりともないのですが」



耳を打つ冷罵に、アイリーンは自分が何を言われているのか分からずにまず唖然として、それから、



「あ、ご、ごめんなさいっ」



慌てて、手に持っていた花束を少年に手渡した。


摘んだ野花を新聞紙にくるまれただけのひどくみすぼらしいそれ。


いくら声を張り上げても、誰にも見向きもされなかった乱雑な花束を、どうしてこの少年は買う価値があると判断してくれたのか。
アイリーンは疑問に思う。



「どうも」



少年はそれだけ言ってコートの裾を翻し、左手で彼女へと『何か』を放った。


アイリーンは慌ててそれを受け止め、手のひらを開く。



「……えっ!?」



ずっしりとした重みに、きらきら金色に光る丸いもの。



金貨。



「ま、……待って!」



それが何なのか理解した瞬間、アイリーンは少年を引き留めるべく叫んだ。



「何です」



「いただけません、こんな大金っ」



少年は心から億劫そうに顔をしかめた。



「ご心配なく。貴女にとっては大金でも、ぼくにとってはそれ一枚如きは無価値も同然ですから」



……物凄い台詞だ。


一瞬納得しかけたが、それでもアイリーンの良心がそれを許さない。


たとえそれが大金持ちの貴族様の気まぐれだったとしても、こんな花数本のブーケが何百、いや何千も買えるだろう金を払ってもらうわけにはいかないのだ。



「そっ……それでも駄目です! こんなのと引き換えにいただけるような金額じゃ、全然ありませんからっ」



「……面倒な小娘ですね」



少年は肩をすくめた。



「ぼくが、それが釣り合う価値がこの花束にあると判断したのです。ぼくの審美眼に何か不満がお有りですか?」



……この少年は頭がおかしいのだろうか。

それとも、あまりに恵まれた生活を送っている所為で、金貨の価値というものを理解していない?



なら身分の差なんか関係ない。年上の者として最低限の常識を教えてやらなければと決心し、アイリーンは拳を握った。



「あるに決まってるじゃない! 大有りよ! 君は何も分かってないからそんなことが言えるんだわ。いい、金貨っていうのはほいほい人にあげて良いようなものじゃなくて……って、え? どうしたの?」



身体をくの字に折り曲げ、くっくっ、と何かをこらえるような声を漏らし始めた少年に、アイリーンはびっくりして駆け寄った。



「だ、大丈夫? お腹痛いの? どうしよう、お医者様に診てもらわないと……。でも私、そんなお金持ってな……あ、そうよ、これを使えば良いじゃない!」




「くっ………っあはははは!」




「へっ?」



突然上がった盛大な笑い声に、アイリーンは目を白黒させた。



「……はっ! もしかして変な毒キノコ食べちゃったとかっ? ええとええと、此処から一番近い病院は、確かカーク―――」



「あははははははははっ!」



「わ、私一人で運べるかな……。でも何事も根性だってママも言ってたわ。……よし、頑張るのよアイリーン!」



「ぷ、ふく、く……っ、……小娘」



「なに? そんなにつらい? ……え、ちょ、ちょっと、駄目だよ無理したら!」



少年はアイリーンの制止も聞かずによろよろと立ち上がり、片眼鏡を掛け直した。

650心愛:2013/03/10(日) 10:50:36 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 2』





「ふふっ……。このぼくに、こんな物言い……。爵位を継ぐ前から色々な人間を見て来ましたが、こんなに愉快な女に会ったのは初めてですよ……」



「なにか言った?」



「いいえ」



少年は何故か、とても上機嫌な様子で花束を抱え直した。



「残念ですが、ぼくは至って健康です。気遣いは無用ですよ」



「そうなの? 良かった……って良くないよ!」



「はい?」



ぽかんとしてしまう少年。
アイリーンは打って変わって、真剣な顔で言った。



「元気でいるのに、それを残念なんて言っちゃ駄目」



少年は、じっとアイリーンの揺れる瞳を見つめ返す。




「元気になりたくても、なれない人だって……たくさん、いるんだから」




アイリーンの顔に一瞬、暗い影が立ち込める。
沈黙を割り、少年が口を開いた。




「……貴女のご家族のように?」




アイリーンは目を見開く。



「なんで、分かるの」



「あれを見ましたのでね。後はただの推測です」



少年はつい、と少し離れた場所を指差した。

ひとつの、申し訳程度に佇むちっぽけな、まだ真新しい墓石。
その周りには物寂しさを紛らわせるように、小ぶりの野花が一面に咲いていた。
アイリーンが持っているのと、同じ花。


彼女は息を吐いた。



「当たり。ママが眠ってるの」



「いつからです?」



「五日前。……ちゃんとしたお墓も、買ってあげられなかった」



肩を竦め、苦笑する。




「駄目ね。まだ、離れるのが嫌で……唯一の家族、だったから」



「それで、こんな辺鄙な場所で花売りを?」



「そんなとこ」



少年の勘の良さに軽い驚きを覚えながら、アイリーンは頷いた。



「……あはは。お葬式とかの費用で貯金は全部使っちゃったから、ほんとに一文無しなんだ、あたし」



つい、口が滑る。
アイリーンは見知らぬ子供相手に愚痴を零している自分が情けないような気がして、ただその笑みを深くした。



「まだお情けで置いてもらってるけど、家賃も払えてないし。だからこうして、ママの傍で小銭を稼いでるんだ」



はっ、と今まで黙って聞いていた少年が鼻で笑った。




「いい加減強がるのはやめなさい、白々しい」




意味が分からず首を傾げかけた彼女に、少年が続いて冷徹な声を浴びせる。



「貴女、全く吹っ切れていないではないですか」



「……」



再び笑顔を作ろうとして、でも、できなかった。
だらりと腕が下がる。



「娘を縛りつけることで、貴女のお母上が喜ぶとでも?」



何を思ったか、溜め息をついた少年が、突き出た岩にすとんと腰掛けて。
黙って立ち尽くすアイリーンの姿を、やや細めた大きな双眸に映し出し、呟いた。



「……悪くないと思いますよ」



「え?」



反射的に聞き返すと、微かに笑われる。




「夕陽色。……みすぼらしい小娘にしては、悪くない色です」




彼に言われて。
アイリーンは、背中に流れ落ちる、自らの髪を掬い上げた。
赤ともオレンジとも、純粋な金色とも違う、夕映えの雲のように不思議な色。



「そう? あたしは、あんまり好きじゃないんだ」



どうやら話し相手になってくれる気らしい少年に、アイリーンは髪と同色の瞳を静かに向けた。



「ああ、一日が終わっちゃうんだなぁ―――って、虚しくなるから……。太陽が沈むと、なんか変に悲しくなるよ」



「愚かなことで何をうじうじと感傷的になっているのです。沈まない太陽がありますか」



あまりにもあっさりと言われ、拍子抜けしそうになってしまう。



「黄昏の後に、冷たく暗い夜がやってくる。それは、ぼくらがどんなに努力しても、大金を積んでも、どうしようもないことです」



目を丸くしている彼女に、少年は口端を上げて笑んだ。




「―――でも、夜明けのない世界だって、ないでしょう?」

651ピーチ:2013/03/10(日) 17:11:37 HOST:EM49-252-15-7.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ひっさびさのこうしーん!

え、この少年ひょっとしてオスヴァルト少年?←

652心愛:2013/03/10(日) 18:59:01 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>ピーチ

せいかーい!
オスヴァルトだよ!

『お子様伯爵と未来への翼』にちなみまして、その翼の欠片的な羽根をタイトルに使ってみたw

653心愛:2013/03/10(日) 19:02:26 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 3』





それは酷く、月並みな台詞だった。
当たり前のことだった。



「終わりは始まり、と云う言葉もあります」



なのに、
少年の陳腐な、使い古した言葉に、何処か救われている自分がいる。




「貴女の“それ”は、始まりの色なのですよ」




アイリーンはもう一度、自分の髪を見る。


母が残してくれた色。
終わりじゃなくて、新たな始まりの色。


温かなものが込み上げてきて、唇を噛んだ。



始まり。
……だったら。



「あたしは、どうしたら、いいの……?」



譫言(うわごと)のように、呟く。


どうしたらいい?
夜を乗り越え、再び暁の光を呼び戻すには、どうしたらいい?



「死ぬ気で生きなさい」



冷たいようで、温かい声音。



「今生きていることが一番大切で、それだけが真実です。無様でも、笑われても良い。自分だけのしあわせを探しながら、懸命に生きなさい」



アイリーンは、動揺に揺れる瞳で少年を見た。



「あたしのしあわせって……」



「さあ? 甘えないで自分で考えることですね」



はっ、と笑ってあっさり切り捨ててから。


少年はふと物憂げな表情になり、広がる空を見上げた。




「……そう言うぼくも、以前幸福というものの意味を履き違えて、早とちりをしたことがあるのですが」




年齢に見合わない、哀愁が漂う儚い笑みだった。



「その結果、多くの罪なき人を傷つけました」



良く分からずにきょとんとするアイリーンに、少年はふっと微笑を零して。



「でも……もう、ぼくは奇跡なんて曖昧なものは信じませんし、頼る気もありません」



僅かに首を横に振り、

顔を上げ、きっぱりと言い切る。




「ぼくは何より、自分を信じます。可能性を持つ、自分の未来を」




「みらい……」



未来。
誰にだって、当たり前のように与えられたその存在。


なのに少年が口にしたその言葉は、酷く甘美な響きに思えた。



「そう、未来」



少年のコートが翻る。
風に煽られる濃青の髪を小さな手で抑えながら、



「貴女はこれから、無数の道に出逢うでしょう。でも、覚えておきなさい。正しい選択肢なんて最初からありません」



一言も聞き漏らすまいと、アイリーンは懸命に耳を傾ける。
少年の眼差しが和らいだ。




「―――選んだ後で、それを正しいものにしていけば良いのです」




「……そっか」




過去に縛られたまま悩んでいては、今生きているこの時間を無駄にしてしまう。

間違ってもいい。
必要なのは、前へ進むこと。
どちらが前か分からなくても、がむしゃらに頑張ってみること。


……それしか、ない。



「ふん。まあまあ見られる顔をするようになったではないですか」



くくっと喉の奥で笑う少年。


彼は岩から降りて着地し、花束を抱えてそのまま花畑の方へと歩き出した。



「え、えと……」



ついて来い、ということらしい。
アイリーンは慌てて後を追いかける。


少年は、花畑の中を歩き、墓石の前でぴたりと足を止めた。



「……見せかけが豪華なだけで、中身のない花束より」



灰色の石の前に、花束をそっと横たえる。




「こちらの方が、価値のあるものだと思いませんか?」




少年は慣れた様子で十字を切り、瞼を閉じる。


まだ幼く見える少年にも、花を供える人がいるのだろうか。
容姿がそう思わせるだけで、本当はもう少し年上なのかもしれない。



少年が祈りを終えるのを見てから、アイリーンは口を開いた。





「……君は、どんな道を選んだの?」



話を聞く限り、この少年は、とても重い過去を背負っているようだった。
彼がどうして、再び立ち上がることができたのか。


踵を返し、立ち去ろうとしていた少年は足を止め、しばし考えてから。




「ある人に……いえ、一人ではありませんね。“彼ら”に堂々と顔向けできる自分になるための道、でしょうか」

654心愛:2013/03/10(日) 22:08:31 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 4』





決して明るい口調ではなかったけれど、そう答えたときの鳶色の瞳は、晴れやかに澄んでいた。



「……今は、この身体を生かしてくれた“彼女”にも、感謝していますよ」



付け足されたその小さな呟きの意味は、良く分からなかったけれど。
アイリーンは微笑む。



「……色々、ありがと。なんか、元気出たかも」



「言っておきますが、貴女に同情した気は全くありませんよ。今までの無駄話はただの独り言ですので」



「うん」



少年のきつく感じられる言い方がなんだか可愛らしくて、アイリーンはもう一度同じ言葉を繰り返した。



「でも、ありがとう」



「……お人好しも過ぎると危険を招きます。精々気をつけることですね」



少年は一瞥を残してアイリーンに背を向け、今度こそ歩き去った。
アイリーンは彼の後ろ姿が丘の向こうに消えるまで、静かに見送る。



「……そういえば、名前も聞けなかったな」



あれだけ色々話をしたのに、馬鹿みたいだ。

アイリーンはくすくすと笑い、それから、光の所為で赤に色づいた瞳を霞ませる。



「道を探しなさい、か」



気持ちに整理はついた。
でも、これから具体的にどうするべきか分からない。



「自分で、決めなきゃ」



そうしなければ何も始まらない。
これから何処に行ったら良いだろう。
アイリーンが頭の中に地図を思い描いていると、




「お? 嬢ちゃん、こんなとこに用でもあんのか?」



旅人といった風情の男が二人、アイリーンに声を掛けてきた。



「あ……えっと……」



アイリーンは、少年のときのように見ず知らずの他人に身の上話をして良いものか、少し迷う。

しかし男たちは彼女の身なりや困惑した様子を見て、大体の事情を察したようだった。




「嬢ちゃんさ。困ってんなら、あそこ―――カークランドの孤児院に行ってみたらどうだ?」




「孤児院?」



アイリーンは素っ頓狂な声を上げる。



「ああ。此処の領主様が経営してる孤児院でね、つい最近出来たから設備が良いと評判なんだ」



「え、領主様……が、作ったんですか? 孤児院を?」



アイリーンは首を傾げる。
そんな事業、このローエン地方の領主である大富豪、カークランド伯爵の派手なイメージに合わない。



「そそ。代替わりしてからしばらくたつけど、病院作ったり貧しい家に巨額の寄付したりしてさ。良い人だよ」



「オスヴァルト様だろ?
この辺も、たまにお忍びで巡回してるらしいぜ。領地の隅の隅もいいとこなのに、熱心だよな」



「そうだったんですか……」



世間知らずな自分が恥ずかしい。



「それよりあんた、身寄りがねえんだろ。ならちょうどいい!」



男は荷物から紙とペンを取り出し、下手な地図を書いてアイリーンに手渡してくれた。



「連れてってやりたいところだが、俺らが行く方向と逆だからな」



「領主様に逢えるかもしんねえぞ」



「あ……ありがとうございます!」



ぺこぺこと頭を下げ、アイリーンは親切な二人組と別れた。

ふう、と息をつき、握りしめてくしゃくしゃになってしまった地図を見る。



「……行って、みようかな」



思わぬ道標。
よしっ、と一人気合いを入れ、アイリーンは何気なくポケットをまさぐり、



「ああーっ!」



唐突に叫んだ。



「金貨!」



無意識のうちにポケットに入れてしまっていたらしい。
アイリーンはその重みも忘れて少年と別れてしまった自分を呪う。



「うー……今は借りるしかないか……でもでもっ! 次逢ったら、絶対返すんだから!」



いつになるか、分からないけれど。
願い続けていれば、いつか巡り逢えると信じよう。
自分の未来を、信じてみよう。



アイリーンは、笑顔で後ろを振り返った。



「ママ。寂しいけど……いったん、お別れ」



墓石を撫でる。
それから、ゆっくりと手を離した。




「あたし、頑張ってくるから!」




祝福するように、吹き抜けた風が色鮮やかな髪と、野花とを揺らす。
夕焼けの光が、ふわりと舞う羽根の如き優しさで、新たな道を歩き出す少女を柔らかに包み込んでいた。

655たっくん:2013/03/11(月) 10:15:03 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
たっくん
『貴方のサイフは私のものです。どうか小銭を』

サツ
『たっくん・・あんた>>1さんのサイフを懐に入れた張本人か。
あんたも組織の一員だったのか・・?』

たっくん
『いやいや誤解しないで下さい。私は一般人です。
一般人のまま名無しさんのサイフを欲しています。
言ってみれば私こそ、はじめて名無しさんのサイフを手にした男というわけです。』

サツ『そんな事誇らしげにいうな。』

たっくん
『いやいやそんな・・。何をほざこうが
>>1さんの小銭は私のものですからね。』

小銭下さいね1さん

656ピーチ:2013/03/12(火) 14:59:45 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

アイリーンちゃん目が丸くなりそーだねーw←

オスヴァルト様も丸くなったよねー←

657心愛:2013/03/12(火) 18:50:13 HOST:proxy10065.docomo.ne.jp
>>ピーチ

オスヴァルトはもう、ソフィアのこと恨んでないよって台詞も言わせておきたかったのですw


アイリーンとオスヴァルトがばったり逢ったりしたらどんな反応するのか…だいたい予測つきそうな気も←
ひねくれたお子様なオスヴァルトには、天然入ってるけどお姉さんぽいアイリーンとくっついたりしてくれたらいいなぁ。

658ピーチ:2013/03/13(水) 05:05:21 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ばったりって言っていいんだ!? 向かってるんじゃなく!

あー、確かに若干天然入りだよねアイリーンちゃん!←

659心愛:2013/03/13(水) 22:05:38 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp
>>ピーチ

一応偶然だからね、逢うの!


オスヴァルトにはこういう真っ直ぐな子が合うと思ってたのよね。
遊ばれつつ喧嘩ふっかけつつ仲良くやってくれるさw

660彗斗:2013/03/14(木) 16:41:09 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

早速来てみました☆

心愛さん>>

正直、最初から読んでまさかのオスヴァルトには驚いた……

あれ? どこかで頭打った? みたいなww

悪役にはとことん悪いイメージを持ってしまう私はオスヴァルトをちょっと見なおしました(笑)

661彗斗:2013/03/14(木) 18:37:04 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

何かややこしい事をしてしまった―!?

すみません入力ミスです……

662名無しさん:2013/03/15(金) 05:36:47 HOST:EM49-252-224-96.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

真っ直ぐ過ぎないですかねぇ……?

まぁ確かに! とか思ったあたしもあたしだけどw←

663心愛:2013/03/16(土) 10:57:44 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

まさかのオスヴァルトですw
もともと口は悪いけどいい子なんですよ!
お父さん亡くなったり不幸なトラブルが続いて暴走しちゃっただけなんです!

ここあ作品……少なくとも、紫の歌では悪役はいませんよ〜(o^_^o)
これでオスヴァルト少年を少しでも見直していただけたなら幸いですw



>>ピーチ

下町出身でお姉さん気質のアイリーンは、たぶん孤児院の子供たちのリーダー的存在になることでしょうw
見回りに来たオスヴァルトと揉めたりなんだりしながら頑張ってほしいなぁ←
あのオスヴァルトを笑わせられる逸材なんだから、相性は悪くないはず!

664ピーチ:2013/03/16(土) 21:02:35 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お姉さん気質か! それもうらやましいかも!←

「あの」オスヴァルト少年を笑わせられる……?

で、でもまぁ、根性悪はいないよね! ここにゃんキャラで!

665心愛:2013/03/18(月) 17:17:08 HOST:proxyag096.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあキャラはいくら腹黒でもなんだかんだで悪い子じゃないからw

今のところは、根性悪さんはいないぜ←

666彗斗:2013/03/18(月) 22:46:03 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

それなら私の作品の方でも、安心してどの人からでも書けるって訳ですね☆
未だ出していないのがティルダのお姉さんとレイさん、あと話にもなっているオスヴァルトもアイリーンちゃんも……

まぁそれはそれとして、心愛さんの方から私の作品にこの子は出して欲しい! 等々があるのなら喜んで引き受けますよ☆

667心愛:2013/03/18(月) 23:11:47 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>彗斗さん


クラウスはティルダのお兄さんですよー(笑)

え、アイリーンも出してくださるんですか!?
それならオスヴァルトとレイさんも、もしやってなかったら三人合わせてキャラ紹介しちゃいましょうか? あれ、二人はやりましたっけ…?←


うーん。
出してほしい子…紫の歌では完璧出尽くしましたね!
ヒースの兄姉はここあもまだ書いてないしなぁ。
ここは思い切ってソラの波紋のミレーユと空牙をお願いして…でも無理があるかなぁ…(´・ω・`)
悩むところですw

668彗斗:2013/03/18(月) 23:46:45 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

あ〜!! クラウスを書き忘れてたww

はてさて、私も誰をやって下さって、誰をやって下さっていないかハッキリと覚えておりません(汗)

お? ミレーユちゃんと空牙君をですか!(その発想は流石に出来なかったw) この二人が加わると面白い事になりそうですね!
私の観点から言いますとこの二人も入れてみたいなぁ……と思ってますが駄目ですかね?

669ピーチ:2013/03/19(火) 05:30:22 HOST:EM114-51-37-149.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

だよね根性悪さんはいないよね!←

いーなー慧斗さんいーなー!

あたしも空牙くんたちとのコラボやってみたーい

…とか何とか言い出すと全部ヒナさんたちとかやりたくなっちゃうんだけどね←

670心愛:2013/03/19(火) 20:40:20 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

あ、ほんとですか?

これから本編ではミレーユの秘密が暴かれるので、あんまり深くはつっこまずの方がいいかもですね…うーん。

それから、できるだけソフィアたち紫の歌キャラと、ソラの波紋キャラは直接的には会わせないでいただきたいな、と。
ここあのつまらないこだわりで大変申し訳ないんですが←


それでも構わなければ、とりあえず時間あるときに一回ソラの波紋を、今までの分読み直していただけたら幸いですw
押し付けがましい上にお手数かけてすみませんが、空牙とミレーユの会話のやりとりとかも例がたくさんあった方が書きやすいでしょうし、「こいつも新しく使ってもいいかも」というキャラがいれば言ってくだされば喜んで紹介文書きますので!


クラウスとティルダ兄妹はやった気がするので、紫の歌からはオスヴァルトとアイリーン、レイさんでもプロフィール書いときましょうか←




>>ピーチ

もちろんOKだとも!
ただ、彗斗さん宛てにも書いたけど、これからミレーユのネタばらしするんで、急がないならもうちょい待ってくれてもいいかい…?

うん、そう言ってくれるだけでここあは涙が止まらないよ(;_;)

671ピーチ:2013/03/19(火) 21:57:33 HOST:EM114-51-160-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いいいいいいいの!?

もちろんですとも待ちますとも! もう受験生だけど!←

じゃあ邪気眼少女から始めちゃっていいですかね……?

672ピーチ:2013/03/19(火) 22:28:57 HOST:EM114-51-160-122.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「ありがとうシェーラちゃん。多分、『あの』言葉よりも先に可愛いって言われたの、初めてだわ」
 苦笑気味に笑ったあおりの言葉に、少女が首を捻った。
「何でですか? 可愛いのに」
 シェーラの言葉を聞いた天音の肩が、傍で小さく震え出す。柊一と昇は、どこか気まずそうな表情であらぬ方を見ていた。
「? 昇さん、柊一さん?」
 呼ばれた二人が苦く笑いながら顔を見合わせる。
 それを見たあおりの瞳に、ほんの一瞬殺気が満ちた。
「教えてあげましょうか? あたしの名前を聞いた昇が、最初に何て言ったか」
「え?」
 傍で黙って聞いていたソフィアたちも、興味を持ったらしく無言で集まる。
 それを見て苦笑したあおりが、変に晴れやかな笑みを浮かべた。
「最初にあたしの名前を聞いた昇が言ったことがね」
 ちらと青年を伺い見て、少女が一段低くなった声で言った。
『―――あおり? 何かあおりんごみてぇだなー』
「……って、言ったの」
 ねぇ? と笑顔で確認するあおりに、昇が降参と言うかのように片手を上げた。
「だから悪かったって! それに、俺だけじゃねぇだろ?」
「あ、そうだったね。ね、天神さん?」
 少女の問いに対し、是を唱えるかのように青年が苦く笑う。
「と、ところで天音! これどーする?」
 話題を切り替えた昇が、天音に言った。それを受けた天音が再び思案に暮れる。
「……先に私が戻って、私が着いた頃に柊たちが送る…とかしか、方法なんて浮かばないわよ?」
「あ、じゃあそうする?」
「え?」
 あまりにもあっさりとした返答に、思わず天音とあおりが問い返す。柊一が笑った。
「でも、天音が戻るんじゃなくて、俺たちが先に戻る。それでいいだろ?」
 もうしばらく残っててほしそうだしね、と言う彼の言葉に、天音がソフィアたちを振り返る。
 そしてしばらく考えた後、やがて諦めたように息を吐いた。
「じゃあ、そっちは頼むわ。気配は一瞬で消せるはずだから」
「うん」
 答えた柊一が小さく何かを唱える。瞬間、漆黒の突風が巻き起こった。
「じゃあ、俺たちはこれで」
 穏やかに笑った柊一が、シュオンにそう告げた。それとほぼ同時に、昇が片手を上げる。
「ヒー……じゃなくて黒髪も、」
「俺の名前はヒース=ユーゼルだっつってんだろーがっ! 何回言えば……っ」
「あーはいはい分かった分かった」
 まるで子供のけんかである。
 軽く嘆息した柊一と昇の姿は、今度こそ見えなくなった。

673彗斗:2013/03/19(火) 23:42:48 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

すぐにミレーユちゃん達を起用するとは言っておりませんので、そこの所は安心しておいて下さい。それに私はミレーユちゃん達のストーリーとソフィア様達のストーリーを全くの別物にしておりますので、私からすれば都合のいい話です☆
……よし、それじゃ読み直して無かったから、明日からソラの波紋を一から読み直すついでに使ってみるキャラクターさん達を選ぶとしますかww

それじゃあ、御三方のプロフィールの方もお願いしますm(_ _)m

674心愛:2013/03/20(水) 10:10:13 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあももう受験生だ!←
うん、邪気眼少女もだけど、紫の歌とは融合しないでもらえるとありがたいんだけど大丈夫?
できれば別スレ立ててほしいな。


あとピーチ、スレ違いだぞっ!(o^_^o)

…あおりんご。
か、かわいいじゃないか! どっちにしても!

ヒースと相変わらずのケンカっぷりをどうもありがとう昇くん!
柊一くんもお疲れ様でした!



>>彗斗さん

ありがとうございます! それは助かります!

長くなってきましたが、さらっと目を通してやってくださいな←

邪気眼少女を一段落つけたら、ソラの波紋にも本格的に手を着け始めますね。

プロフィールの件、了解しました(`・ω・´)

675ピーチ:2013/03/20(水) 19:37:43 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

だよねー! 初めてだからどんな勉強したらいいのか分かんないw

うん、邪気眼少女もソラの波紋もそれぞれでスレ立てさせてもらえたらうれしいなと←

ごめんなさい今気づきましたー!! 自分のスレにもちゃんと書いときますから!

あ、それとヒナさんたちはスレ立てちゃっていいですかね?

あおりんご、かなーり前から考えてたw

昇は多分ヒース以上にキレやすいよ! 多分だけど!

676心愛:2013/03/20(水) 23:23:41 HOST:proxyag096.docomo.ne.jp
>>ピーチ

受験勉強は、やべえって焦り出す気持ちがあればそれなりになんとかなるものだと思うよ←
ここあは結構のんびーりしすぎたから後で苦労したけども!


ヒースはキレやすいってよりは怒鳴りツッコミが多いだけだからねw


スレ立てよろしくー!
あ、でもタイトルとか決めちゃった方がよくない?
あと、主に誰を使ってくれる予定?

677ピーチ:2013/03/23(土) 09:53:27 HOST:EM1-114-3-215.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あたしはやべぇって段階以上にやばい気がする←

主に使わせていただきたいのはヒナさんと美羽ちゃんと美空先輩と夕紀ちゃん始めとするクラスメイトの方々と昴さん……かなぁ? あ、他にもいるかもだけど今はこれくらい!

あ、それとヒナさんたちの学校って何県にあるのー?

いきなりごめんね!

678心愛:2013/03/23(土) 18:54:30 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

どうせこのスレ当分使わないし、ここで話し合いしちゃえw



ヒナ、美羽、夕紀、苺花は本編スレのキャラ紹介を見てくれるかい…?

他に質問あったらなんでも言ってね!

使わなかったらいいんだけど一応ざっくりまとめ↓




*春山慎太郎(はるやま しんたろう)


金髪不良風ドM。
一人称俺、軽い感じの口調(あくまでここあ主観)。
ただのチャラいアホかと思いきや、意外と頭良かったり友達思いだったりする。
暴力はお任せ! っていうか超ウェルカム!
実は、その気になればケンカは強かったり。
他メンバーの呼び方はそれぞれ「ヒナ」「結野ちゃん」「姫宮ちゃん」「柚木園」「結野先輩」など。
美羽や夕紀にちょっかい出しては苺花とヒナに制裁を受けている。それで悦ぶ。



*結野美空(ゆいの みく)


美羽の姉で高二。
一人称「あたし」、黒髪ツインテールの美少女先輩。
いっそ芸術的なまでのドジで、それもウケるのかかなりの人気者。
美羽大好き。すべての行動はほぼ美羽に直結する(ダンス部部長なのも勉強とスポーツ頑張るのも目立って美羽の立ち位置を向上するため、ヒナに絡むのも美羽を助けるため)。
「美羽ちゃん」「圭くん」「昴」「王子」「姫」など。

一人、または昴と二人きりになると冷静な本来の性格が出るけどそれは特に触れなくていいと思う。
この作品で一番厄介な人物。



*一ノ瀬昴(いちのせ すばる)


一人称「私」、20代前半。
常識人で、好青年の代表のような好青年。
美空の執事に相応しく万能だが、美空に色々な意味で振り回されてばかりいる可哀想な大人。

実は外国人の血が入っている。
黒髪に淡いブルーの瞳、燕尾服(を兼ねた執事服)着用。
美空を密かに恋い慕う。

美空は「お嬢様」。「美羽様」「圭様」以外は基本名字に様付け。



あとヒナたちの高校はここあの学校をモデルにしてるので詳しくはちょっと……ごめんね。
関東の田舎だよ←


初めて会う人に関しては、だいたい彩が学校に来ちゃったときと同じリアクションかな、と。
美羽は人見知りだからヒナの後ろに隠れてそうだけど、素敵能力には反応しそう。
クラスメイト男子は女性なら誰でも大歓迎でもてなすと思うよ!


あと年上にはちゃんと敬語使えるメンバーなのでご安心を!

679ピーチ:2013/03/23(土) 21:57:40 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いいの!? ここで話し合いしちゃっていいの!?←

見たよー!そしてわざわざありがとう!

あ、だよねごめんね無神経に聞いちゃって……

じゃあ早速スレ立てさせていただきます!←

680心愛:2013/03/24(日) 00:02:51 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

や、なければいいけどね!


がんばれピーチ!
ここあは無責任にわくわく待ってるよ!(ぉい

681ピーチ:2013/03/24(日) 00:16:34 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

頑張るよ!

大切なキャラ様を貸してくださったここにゃんのために!←


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