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紫の乙女と幸福の歌
40
:
月波煌夜
:2012/03/16(金) 15:28:21 HOST:proxyag022.docomo.ne.jp
Ⅰ. 『邂逅 8』
辿り着いたのは、一つの重厚な作りの扉だった。
「しーっ、ですよ」
シェーラは悪戯(いたずら)っぽく人差し指を唇に当てると、扉にそっと近づいた。そのままそろそろとドアノブを回し、少しだけ間隔を作る。
―――危険は、無いみたいね。
ソフィアは少し安心して嘆息し、それから、どうしようかと迷った後、何となくシェーラの後ろに立った。
さっきから、心臓がばくばくとうるさい。
何しろ、初めて命令以外で―――自分の意志で、部屋の外に出たのだ。
見知らぬ使用人たちとすれ違うたびに冷や冷やしたが、彼らは抜け出してきたソフィアの姿を見ても、にこやかに笑って頭を下げるだけだった。
何処かの客人とでも思っているのだろうか。
でももし、ヒースやソフィアの正体を知る者に見つかってしまったら、どうなるのだろう。分からない。
ぐるぐると考えを巡らせている間に、部屋の中の声が漏れ出てくる。
「―――……だっからお前は……!何度言ったら分かるんだよ家ン中で爆発引き起こすんじゃねぇ!毎回後片付けさせられるこっちの身にもなれや!」
―――……ヒースっ?
最初に聞こえた怒鳴り声と粗野な言葉遣いは、間違いなくあの見張り役のものだ。
「嫌だなぁ、ただの純粋な化学の実験だよ?」
「その台詞はもう聞き飽きたわ!つーか何の言い訳にもなってねぇ!」
「うーん、でも威力は想定していたものよりも大分落ちるなあ。硝石に不純物が多いのが原因かな、やっぱり」
「威力があってたまるかッ!もう火薬と結婚しろこのド変態!」
「あ、それは良いね!あと是非毒薬とも結婚し―――……うん?そこに誰かいますか?」
その声が聞こえた途端、シェーラは驚くほどの速さで扉を閉め、
「よし逃げましょうソフィア様!」
「させるかあッ!」
扉を開けて素早く出てきたヒースが、身を翻したシェーラの首根っこをこれまた驚くほどの速さで掴んだ。
「にゃー!はーなーせぇー!」
「お・ま・え・はぁっ!何で御嬢様連れ出してんだよ馬鹿!もしっ―――」
「……ごめんなさい、部屋の外に出て。その子は悪くないわ」
ヒースが言い終える前に、ソフィアが口を開いた。
「すぐ戻るから」
「あ、ち、違うんです御嬢様!いや、えっと……女のこいつには御嬢様の安全は十分に確保できませんから……。だから、不用心に連れ出したこいつに対して怒ってるだけです」
ソフィアはきょとんとしてしまう。
―――えっと……、つまり……?
「……どうしたの?」
部屋の中で聞こえたのと同じ声がした。
ソフィアは振り向き、―――息を飲んだ。
辺りが急に明るくなったような、そんな気がした。
サラサラとした蜂蜜色の髪はまさしく天使の美しさ。
大きく見開かれた、明るいブルーに輝く瞳はどこまでも蒼く、碧く。雲一つない晴れた日の空を閉じ込めてしまったかのよう。
すっと通った鼻梁、薄い唇。
その男の、優しげで、乙女心を捉えて離さない甘く整った究極の美貌はまるで、
―――御伽噺の王子様……?
と、いうことは。
「君、は……もしかして、例の《紫水晶(アメシスト)》の……?」
「……はい」
「……初めまして。僕はシュオン。一応ここの跡取り息子です」
気品と愛嬌に溢れた微笑みは、彼の育ちの良さを十分すぎる程に証明している。
―――この方が。
なるほど、シェーラが騒ぐのも当然といえるだろう。
「……あの、さ。良かったら」
そして、エインズワーズ公爵家の嫡男シュオンは、ソフィアに向けて。
「庭園に、散歩にでも行かない?」
『………………………………は?』
ソフィアとヒースの声が綺麗にシンクロした。
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