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紫の乙女と幸福の歌

201月波煌夜:2012/04/13(金) 15:08:43 HOST:proxy10039.docomo.ne.jp
†祝☆200レス突破†
〜記念SS 『幼馴染みの二人』②〜



―――が、がまんがまん……。ここでおこったらまたガキだって言われる……!
あくまで大人であるヒースは、黙りこくっているシュオンに話しかけてみた。
「なあ、その本、なに?」
「……別に、きみにはかんけいない」
その、つんとした言い方にむっとしたヒースは、
「んだよ、けち。ちょっとくらい見せろよ」
「やだ」
「見せろって」
「やだ…………………あっ」
ヒースは隙をつき、さっと絵本を奪い取った。
「…………《紫水晶(アメシスト)》?」
ぱらぱらとめくると、良くある《紫水晶》の伝説のひとつだった。
紫の瞳の少女が飢えて倒れているのを見つけた村人たちが彼女を救い、貧しいながらも真心を込めて養う。立派な乙女となった少女は、助けてもらったお返しとして、村中にしあわせをもたらし去っていく―――。
「ふーん……」
「……子どもっぽいって思ってるんでしょ?もう6つになるのに、こんなの読んでるなんておかしいって。信じるのもばかみたいだって」
振り返ると、さくらんぼ色の唇を尖らせ、シュオンが睨んでいる。
……最初のときと比べると、迫力は全くと言っていいほど無くて。
「なんで?」
「……………え」
ヒースが質問で返すと、シュオンは予想外の展開だったのか、ピシリと固まった。
「おれも、《紫水晶》の話はすげー好きで集めてたし、よくママに読んでもらってた。……それにさ。好きな話を何回も読むのは、フツーなことだろ?」
ヒースは、読み古されて僅かに黄ばんだ―――しかし、丁重に扱われてきたことが良く分かる絵本を、ぽかんと呆けているシュオンに差し出して。
「ほらよ。……大切な本なんだろ?」
シュオンは、へへっと笑うヒースを驚いたように見つめ。
「………うん」
恥ずかしそうに、はにかんだ。
それは純粋で子供らしい、本物の笑顔。
「ははうえが、初めてくれた本なんだ。……すごくこの話、好きで……ぼくの宝物」
シュオンは目を閉じ、絵本を胸に抱えた。
「……いつか、《紫水晶》に会ってみたい。それ以上のしあわせは、いらないから……」
囁くように。
意地っ張りな少年が打ち明けてくれた、絵空事と何ら変わらない、夢―――。
いま実在するのかも確かでない、百年に一度現れると云う、紫の瞳を持つ人間。
……幸福を運ぶ、《紫水晶》。
「………ああ」
ヒースは、そんなの絶対無理だ、とは言わなかった。
シュオンの想いを、踏みにじりたくなかったから―――。

「きっと、……ぜってえに、会える」
驚いたように目を見開いたシュオンに向かって、ヒースは胸を張って。


「それでさ。もし、《紫水晶》がおまえのとこに来たときは……そいつはおれが命をかけて、守ってやるよ」










「―――……え、マ、マジで?んなことあったっけ?」
阿呆ヅラを晒した親友に、シュオンは柔らかに微笑みかけた。
「うん。流石ヒース、恐ろしい記憶力だね?」
「う……確かに《紫水晶》の話、好きだったような気もするけど……お前にそんなこと言ってたとは……」
「……はぁ。だから単細胞って言われるんだよ。いっそ分裂すれば?便利そうだし」
「た、単細胞は関係ねーだろ!?」
「バカなのは同じ」
う、ぐぅ……と黙りこくるバカの代名詞。
ふぅ、と溜息をひとつ。シュオンは白衣の裾を翻した。
「ほら、行くよ?」
こいつの護衛対象、ソフィアのもとへ―――。




……ヒースが母親と入れ替わりに公爵家の使用人となるのも。
シュオンが、紫の瞳の少女と出逢うのも。
少女に惹かれてしまったシュオンが、《紫水晶》の存在を秘匿する他の貴族たちから、あらゆる手練手管を駆使した末に、彼女を手に入れるのも―――。

あれからずっと、後の御噺。


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