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Cry for you

1ちんぱる:2013/05/30(木) 23:48:34
島崎遥香メインの王道恋愛小説を書いて行きます!

45ちんぱる:2013/06/01(土) 19:17:18
晴人がおろたえていると、その様子がおかしかったのか、遥香が突然笑い出した。
「アッハハハハ!」
「な、なに?」
「ねぇ!」
「ん?」
「私も…、“晴人くん”のことが好きだよっ」
その瞬間、晴人の呼吸が止まった。


「苦しい…、何で俺は息を止めてんだ…?」と晴人は思っていた。
疑問に思うことすらおかしい位、当たり前のことを考えている。
理由はひとつ、彼女の突然の告白に、晴人の全思考回路が停止したからだ。
そろそろ、空気を補給しないとマズイんじゃないだろうか…。

「ブハッ!」
やっとした。

「大丈夫?」
「ご、ゴメン!ぜ、全然整理できてないんだけど」
「ウフフ」
「ちょっ!笑うとこじゃないでしょ!」
「ゴメンゴメン、ウフフ」
「もぅ…、かえ…ろっか?」
「うん」といって遥香は、左手を差し出した。

「何?」と聞いてみるも。
「ん!」と言っただけで彼女は手を差し出し続けている。

何故、この男は「手をつないで」という女の子のかわいらしい暗黙のメッセージを理解してやれないのだろうか。

「あっ…、手を繋げばいいのか…」
最初からそうすればいいのである。
そうして2人は、出会って2日という異常な早さで付き合い始めた。

そしてここから、2人の永遠に続くラブストーリーが、本格的に幕を開けるのである。

46ちんぱる:2013/06/01(土) 19:24:02

-7年前の夏-

時は過ぎ、夏。
「あっちぃ…、夏ってだけで何でこんなに暑いんだ…」
今年もこの時期がやってきた。
晴人にとっては、高校生になって初めての夏休み。
しかし部活に入っていない晴人は、1日中家で無駄な時間を過ごしていた。

「こら!朝っぱらからダラダラしてんじゃねえよ!」
「んだよ、姉ちゃん!」
「これ、買ってきて」と、優子は晴人にメモを渡した。

「はあ?歯ブラシセットに、シャンプーハットだあ?何に使うんだよ、こんなの」
「いいからいいから!駅前のスーパーで安売りしてたから、早く買ってきて!」

仕方なく買い物に出た晴人は、駅前を歩いているとある広告看板が目にとまった。

『渡辺麻友 NEWシングル発売!!』

今をときめく人気アイドル「渡辺麻友」、クラスでも彼女の話題で盛り上がっていた。


数週間前

「なあなあ!昨日の音ステ見た?」
大貴のテンションは、今日もバカなくらい上がっていた。

『音楽ステーション』、通称『音ステ』、人気のある生放送の音楽番組で、毎回いろんな歌手が出ている。

「見てないけど」
「なぁ〜んだぁとぉ〜!お前昨日の放送見てないとは!人生の半分損してるぞ!」
「じゃあ人生の半分は、得してんだな?」
「うっ」
晴人の反論に何も言えなくなる大貴。

「で?誰が出てたんだよ?」
「“まゆゆ”だよ!“まゆゆ”!」
「“まゆゆ”?」
駿太郎はそういうのには疎いらしく、キョトンとしていた。

「最近人気のアイドルのこと」
「ああ、アイドルね…」
「はぁ〜まゆゆかわいいよなぁ〜、何せあの清純そうな表情、そして時折見せる最強のアイドルスマイル!クゥ〜!たまらねえぜ!」

晴人は、大貴がそんな事を言っていたことを思い出しながら、看板を見ていた。

「ったく、アイツのどこがそんなにいいんだか…」
あたかも知り合いのような言い方である。

「さて、買いもん、買いもん!」
晴人は駅前のスーパーに向かった。

47ちんぱる:2013/06/01(土) 19:51:26

時は少し戻り、都内某所…。

「えっ!?オフ!?」
東京の街の中を走る一台の車の中には、一人の女性が運転していた。
後ろには女の子が座っている。

「はい!社長にムリ言って、明日から3週間ほど休みをもらえました!」
「さすが!ひっさしぶりのオフだぁ〜、やったぁ〜!」
「そのかわり!帰ってきたら、新曲のレコーディングやら、PV撮影やらで忙しいからね」
「うん、分かってまぁす!」

女の子の名前は、渡辺麻友。
先程も説明したが、今をときめくスーパーアイドル。
そんな彼女も一人の人間、たまの息抜きぐらい欲しいのだ。

「そうだ!久しぶりにお姉ちゃんのとこ行ってみよ!」
そういうと、彼女はある所に電話した。

48ちんぱる:2013/06/01(土) 19:55:55

晴人は駅前のスーパーで、姉の優子に頼まれた買い物をしていた。
「え〜っと、シャンプーハットは買ったし、あとは歯ブラシセットっと…」

スーパーの中を歩き回っていると、見覚えのある顔を見かけた。
「あれ?さやちゃん?」

晴人が声をかけたのは、小学校からの同級生の山本彩。
「あっ、晴人!え!?なんでいんの?」
「いやちょっと買い物にね、さやちゃんは?」
「見たら分かるやろ、アタシも買いもんや!」

彩は幼少期は大阪に住んでいたらしく、関西弁が結構強い。

「晴人、学校楽しい?」
「うん、楽しいよ」
「部活とか入ったりした?」
「いや…」
すると晴人は、何も言わず、ただ黙り始めてしまった。

「もしかして、まだ気にしてるん?」
「イヤ別に、気にしているわけじゃ…」と言うも、黙り込んでしまった。

「仕方ないやん、あれは晴人のせいとちゃうで!」
彼女にフォローされながらも、晴人の心の中は、沢山の鎖で締めつけられていた。

49ちんぱる:2013/06/01(土) 21:27:01

おつかいを済まし、スーパーから自宅に帰る道中、晴人は昔のことを思い出していた。

彼が中学のとき、起こしてしまったある“事故”。
そのことが語られるのは、まだ先の話である。

「俺のせいなんだよ…」と小さく呟く。
その声が誰かに届くことはなかった。


少し落ち込んで家に帰り玄関に入ると、早速見慣れない靴を発見した。
スーパーに買い物に行く前は、こんなの無かったはずだ。

「ま、まさか…」
嫌な予感とは、まさにこのことである。
おそるおそるリビングに向かうと、晴人の予感は寸分の狂いも無く的中した。

「何でいんだよ…」
そこには、仲良くトランプをする女子2人がいた。
一人は晴人の姉、優子。
もう一人は、ついさっき街中で見かけた顔だった。

「あ!おかえりぃ〜」
「“おかえりぃ〜”じゃねえよ、何でさらっといんだよ!“麻友”!」

神山家に来ていた来客とは、まぎれもなくあの“渡辺麻友”だった。
何を隠そう、麻友は晴人姉弟とにとって“いとこ”にあたる人物なのである。

「何でって、そりゃあオフだからに決まってるでしょ」
「オフだからって、何も俺んちに来ることねえだろ?」
「だってぇ〜最近、優子お姉ちゃんに会えなかったからぁ〜」
「カワイイこと言ってくれるねぇ〜」
この2人は、いつもこうやってイチャイチャするのが恒例となっている。
突然2人は両手をωの形にし、「おしりω!」と声をそろえた。

「だからなんだよ、それ」
別に興味はないが、とりあえず聞いてみる。

「おしりとおしりの誓いよ!」
「意味分かんねえ…」
聞いて後悔する、これも恒例の事だ。

こうして3週間、国民的アイドルの渡辺麻友が、神山家に泊まることになった。
「勝手に、話進めてんじゃねえよ!!!」

50ちんぱる:2013/06/01(土) 21:27:42

麻友が晴人達の家に来て、3日が過ぎた頃だった。

「ねえ、どっか連れてって」
突然のいとこのお誘い…、しかも相手は、国民的アイドル…。
そんな女の子からのお誘いを断る人間がいるわけ…。

「断る」

いた。

「なんでよ〜!別にいいじゃ〜ん!」
「良くねえよ!俺にだって用事があるんだよ!」
夏休み真っ只中である晴人には、彼女がいる。
島崎遥香、入学式に運命的な出会いをした(本人の思い込み)彼女。
そんな彼女と、夏休みに入って一度も会えていない。

どうやら家族と、3泊4日の沖縄旅行に行ったらしいのだ。
そしてついに昨夜、遥香からの電話がかかってきた。

「もしもし?」
「あっ、もしもし?晴人くん?」
「おう、遥香?」
「うん!」と彼女は元気よく答えた。

「実はね、さっき東京に帰って来たんだけど…」
「何?」
「あの…、明日会えないかな?」
「ま、マジ!?」
「ダメ…?」
「全然!むしろ大歓迎!!!」ということで本日は、遥香との久々のデートなのである。

話を現在に戻そう…。
「何よ!用事って!?」
「なぁんで、お前に言わなきゃいけねえんだよ!」
「い〜じゃん!どうせ大した用事じゃないんでしょ?」
「ムカッ!あんだとぉ!」
「なによぉ!」

一触即発寸前に、家のチャイムが鳴った。
「はいは〜い!今行くねぇ〜!」
インターホンに映る、愛する人に答える晴人。

「だ、誰?」
「お前には関係ねえだろ」と晴人が麻友の方を振り返ったとき、すでに彼女の姿はなかった。

「は〜い」と、なぜか玄関のドアを開けている。

「てめっ!何してやがんだ!」
「…どちら様?」
「あ、あ、あの…、島崎遥香です…」
「しまざき?」
麻友は遥香を睨んでいた。
そんな彼女に怯える遥香。

そこにようやく彼女の王子様がやってきた。
「てめえな!なに勝手にドア開けてんだよ!」
「あっ、晴人くん」
「あっ…、おはよう、遥香」とさっきとは打って変わって、笑顔を見せる晴人。

「ちょっと!あたしを差し置いて何イチャイチャしてんのよ!」
「うるせえな、お前はアッチ行けよ!」
「何よ!」と麻友が晴人の胸ぐらをつかんだ瞬間、

「あぁ〜〜!!!!!!」
突然、遥香が大声で叫んだ。

「な、何?どうしたの?」
初めて大きな声を出す彼女に、晴人は戸惑っていた。

「も、も、もしかして…、わ、渡辺麻友さん…?」
「え、ええ…」
「うわぁ〜!スゴイ!こんなところで会えるなんて!スゴイスゴイ!」
人が変わったように、テンションが上がり出す遥香。

何が起きているのか、全く理解出来ていない晴人だった。

51ちんぱる:2013/06/01(土) 21:28:13

気付くと、遥香は家にお邪魔している。
「え〜!じゃあ晴人くんとまゆゆって、いとこなのぉ!?」
「そんなに驚くことか?」
「驚くよぉ!」

晴人にとって、この展開は意外だった。
まさか遥香が、アイドルファンだったとは…。
だが、彼女の新たな一面もまた、愛おしく思える晴人だった。

「あ、あの!」
彼女はあこがれの存在である麻友に、勇気を振り絞って話しかけた。

「なに?」
「ま、まゆゆさんって…、その…、“CG”って本当ですか!?」
「えっ…?」
「は…?」
晴人は思った、この子は相当ピュアなんだろう…。
仮に麻友が“CG”だったとして、じゃあ今、ここにいるコイツは一体誰なんだ…。

「遥香…」
「へっ?」
「そんなわけ…、ないだろ」
優しい声でツッコむ晴人であった。

52ちんぱる:2013/06/01(土) 21:28:45

「じゃあ、俺らは出掛けるから」
遥香の興奮も落ち着いたところで、晴人は家を出ることに。

「ええ〜!!私も連れて行ってよぉ!」
「何でだよ!」
「いいじゃ〜ん!ねっ?“ぱるる”っ!」
「ぱ、“ぱるる”!?」
晴人の声はガッツリ裏返った。

「だってぇ遥香ちゃん、なんか“ぱるる”ぽいじゃん」
「イヤイヤイヤ!意味分かんねんだけど!」
「私は“ぱるる”でいいと思う…」
恥ずかしそうにして答える遥香。

「遥香!?」
何故だか腑に落ちない晴人であった。

53ちんぱる:2013/06/01(土) 21:29:16

晴人は今、洋服を着ているマネキンの前に立っている。
「いつも思うが、何でこんな肌白いんだ…?」
訳が分からないことを呟く。

「ねえねえ晴人くん、コレとかどうかな?」
一緒に買い物に来た彼女が、晴人に服を見せてきた。
「ん?そっちもいいけど、こっちの柄とかどう?」
晴人的に気になった服を彼女に差し出してみた。
「えぇ〜、こんな派手なの着れないよぉ」

「じゃあ、いいよ」と元の場所に戻そうとすると。

「着る」
「えっ?」
「待ってて」とそう言い残し、彼女は試着室へと向かった。
「負けず嫌いだなぁ」と思いながらも、そんな彼女がまた愛おしい。

「ふぅん、晴人ってセンス良かったんだ」
隣にバカデカいサングラスをつけて、マスクをしている人物がいる。
事情を知らなければ、変質者と間違えられてもおかしくない。

「うっせぇ、てか何でついて来てんだよ」
「いいじゃん、どうせ家にいても、優子お姉ちゃん仕事でいないから、一人だし」
「邪魔すんなよ」
「はいは〜い」
ようやく遥香が試着室から出てきた。
晴人が勧めた洋服を身にまとって。

「ど、どうかな…?」
「か、カワイイ…」
「ホントぉ?じゃあこれにしよっかな」
「じゃあこれください」と晴人は近くにいた店員にそう告げた。

「えっ?」
「俺が払うよ」
「キモっ!!」
男らしさをとにかくアピールしている晴人に、麻友が即答でキツめのツッコミを入れた。

「き、キモイって…、お前な…」
「ささっ!ぱるる!次どこ行こっか?」
「聞けよ!」
そんな二人のやり取りを、遥香は黙って見ていた。
2人がうらやましく、自分の知らない彼を知っている麻友のことが、何故だか許せなかった。

「何なの…?この気持ち…」
初めての“嫉妬”を感じていた。

54ちんぱる:2013/06/01(土) 21:29:50

買い物も終わり、晴人の家までやってきた。
「じゃあ、私はここで…」
「ええ〜!ぱるるも入りなよ!」
今日1日会っただけで、遥香と麻友はすっかり仲良くなった。

「え、でも…」
「全然構わないって!ねえ?晴人!」
「おう、全然大丈夫だよ」と遥香に優しく微笑む晴人。

「じゃ、じゃあ…」
遥香は恐る恐る家に上がった。
家にはすでに優子が帰っている。

「おっかえりぃ〜、ってお客さん?」
「あ、はじめまして…、島崎遥香です…」
「へえ〜」とニヤニヤしながら優子は、遥香の事を見ていた。

「何、ニヤニヤしてんだよ」
「晴人!」
優子は晴人を引っ張り、遥香に聞こえないぐらいの声で話した。

「アンタ、良くあんなカワイイ子、とっ捕まえたわね」
「ば、バッカ!」
慌てて遥香の方を見る晴人。
彼女は不安そうにこちらの様子をうかがっていた。

「どうぞ!どうぞ!狭いとこだけど、上がってって!」
麻友が何故か、しきっている。
「お前んちじゃねえかんな!」

55ちんぱる:2013/06/01(土) 21:30:20

「いっただっきま〜す!」
夕食、神山家にはルールがあり、週に1回は晴人が作ることになっている。
これは晴人自ら作り出したルールであって…。

「“いっつも姉ちゃん働いてるから、週に1回ぐらいなら俺が作ってあげるよ”とか言われちゃって〜!」
優子は晩ご飯を食べながら、思い出を遥香と麻友に話していた。

「へえ〜晴人くん、優しいんだね」
「そ、そんなことねえけど…」
「あ〜、照れてるぅ〜!」
優子がすかさず、茶化してきた。

「うるさいなぁ、さっさと食いなよ!」
「はいはい」
その後も会話は弾み、気付くと時刻は夜10時を指していた。

「あっ!遥香、時間大丈夫?」
「あ…」
完全に忘れていたようだ。

「どうしよう…」
「すぐに送ってくよ!」
「ええ〜!せっかくだから泊まってってよぉ〜!」
まだ、駄々をこねる麻友。

「いいかげんにしろよ、遥香のご家族にも迷惑だろ!」
「ううん、ウチなら大丈夫」
「何で?」
「だってママに、『朝帰りになっても、パパには内緒にしておくから。』って言われたの」
この子の母親は何を言ってるんだろうか。
しかも彼女は、母親の言葉の意味を全く理解していない様子だった。

「じゃあ、決定ね!」
「ちょっと、姉ちゃん!」
「いいじゃん、いいじゃん!」
「ぱるる!そうと決まったら、一緒にお風呂入ろっ!」
「はいっ!」
晴人が干渉するスキも与えず、話はドンドンドンドン進んでいった。

優子は自分の部屋に戻り、遥香と麻友は風呂場に向かい、1人リビングに取り残される晴人。
気付くと彼は、皿洗いを始めていた。

「…フゥ」と一息入れ、大きく深呼吸し

「話を勝手に進めるなぁぁああああ!!!!!!!!」
静かな住宅街に、彼の叫びがこだました。

56ちんぱる:2013/06/01(土) 21:30:51

その頃、風呂場では。

「ん?何か今、声しなかった?」
「そ、そうですか?」

遥香と麻友は仲良くお風呂に入っていた。
遥香の心拍数は今現在、とんでもないことになっている。
憧れのアイドルと一緒に、風呂に入っているなんて、彼女にとって夢のような時間だった。

「ねっ!ぱるる!」
「は、はいっ!な、なんですか…?“まゆゆさん”…」
「フフフ、そんなにかしこまらなくてもいいのにぃ、しかも“まゆゆさん”って、ニックネームと敬語が混ざってんじゃん!」
「あ!ご、ゴメンなさい!」
しかし遥香の緊張は一向に解けない。

「もぉ〜!堅い〜!だったら…」
麻友の目が一瞬キラッと光った。

「コチョコチョコチョコチョ!」
「アハハハハハ!!!!」
「ホレホレ!おしりも触ってやろうかのぉ〜!」
「キャッ!やめて〜!」
このときの麻友は、完全におっさんと化していた。

「うるせえぞ!もうちょっと静かに入れ!」
脱衣所から、晴人の怒鳴り声がした。

「ちょっ!何こっちに来てんのよ!」
「2人がうるさいからだろ!」
「へんた〜い!」
「なっ!誰が変態だ!」
「ねえ?ぱるるもそう思うでしょ?」
「うん!晴人くんのエッチ〜!」
「は、遥香まで…」

ホームなのに、何故かアウェー感を感じる晴人なのであった。

57ちんぱる:2013/06/01(土) 21:31:22

遥香は風呂から上がり、麻友に下着等を借りた。
「晴人くん」
「ん?」
「お風呂、ありがとねっ」
「お、おう」
笑顔の彼女に、ドキッとしてしまう晴人。

風呂上がりで、髪がまだ少し濡れているせいか、少し色気を感じる。

「何してるの?」
「えっ?ああ、姉ちゃんの明日の弁当作ってんの」
「へぇ〜、晴人くんってホント優しいんだね」
「んなことねえよ、ただ姉ちゃんには、感謝してもしきれねえ恩があるっつうか」

晴人が優子に感謝しているのは、母親代わりに育ててくれたことだけじゃない。
彼が困ったとき、必ず助けてくれたのは姉の優子だった。

「そっか、いいなぁ」
「でも遥香にも弟がいんだろ?」
「うん、歳離れてるけど」
「いくつ?」
「う〜ん、今9歳」
「そっか」
なんてたわいもない話をしてみる。
気付けば、2人きりだった。

テレビでは、ドラマが流れている。
家庭教師が家族を崩壊させるという、なんとも言いようのないドラマだ。
二人はそのドラマには見向きもせず、お互いに見つめ合っていた。

「は、恥ずかしいね…」と遥香は思わず目を逸らした。
実を言うと、晴人達はまだキスもしていない。
お互い恥ずかしがり屋なのだ。
でも、この日の晴人は違う。

「遥香…」
「う、うん…」
「好きだ」
「し、知ってるよ」
「だよな」
「うん」
こんなチャンスはめったには来ない、晴人はこれに懸けていた。

遥香の頭をそっと自分の腕で包み、唇を重ね合わせた。

58ちんぱる:2013/06/01(土) 21:36:29

「…んっ」
ほんのわずかな時間だったが、二人にとっては永遠に感じた。

「ゴメン…、急に…」
「ううん」と首を横に振る彼女はすごく嬉しそうだった。

「晴人くんに、ファーストキスとられちゃった」
「え、ま、マジ!?」
彼女にとって晴人は“初恋の相手”。
そんな彼にファーストキスされるなんて夢にも思ってなかった遥香は、今にも天に昇っていきそうな感覚だった。

「晴人くん」
「ん?」
「…ってして」
「え?」
「ギュッってして…」
言われるままに、晴人は優しく抱きしめる。

「フフフ」
「なんだよ?」
「晴人くんの身体、あったかぁい」
「そうか?なら良かったよ」
「ぅ〜ん、きもちぃ〜なぁ〜」
「フッ、そうかそうか」

「ふわぁ〜、眠くなっちゃった…」
「じゃあ、もう寝なっ」
「うん」というものの、彼女は晴人から離れようとしない。

「あ、あの…、遥香?」
「…ぅん?」
「あの…、麻友の部屋で寝るんじゃねえの?」
「ぅん…寝るよ…」
眠たそうにしながらも、晴人の質問に答える遥香。
その身体は一向に動かない。

「ちょ、ちょっ!遥香!?」
「すぅ〜…、すぅ〜…」
「マジかよ…」
結局晴人に抱きついたまま、遥香は寝てしまった。

「起きろよぉ〜、お〜い!…ったく」
起こさないようにそっとお姫様だっこをし、遥香を麻友の部屋まで連れて行った。
しかし…。

「な、何だこれは…」
麻友に貸している部屋は、もともと何もなかったはずだったのだが、見事に散らかっていた。

「これじゃ寝かせらんねえじゃねえか…」
仕方なく優子の部屋に向かうも…。

ガチャガチャ!
「アイツ!部屋の鍵閉めてやがる!!」
晴人にとって、マズい状況となっていた。

59ちんぱる:2013/06/01(土) 21:39:59

仕方なく、自分のベッドに遥香を寝かせる晴人。
「マズイな…、考えれば考えるほどマズイ…」
女の子が自分のベッドで寝ている。
それだけで晴人にとっては大事件だった。

「すぅ〜…すぅ〜…」
彼氏がテンパっている隣で、遥香はすやすやと寝ている。
晴人は、彼女の寝顔に思わず見とれている。

「か、カワイイ…」
「すぅ〜…、フフッ」
よほど幸せな夢を見ているのだろう。
彼女は寝ながら笑っていた。

「晴人くん…、しゅき…、すぅ〜…」
「フッ、俺もだよ」と彼女のほほに、軽くキスをした。


翌朝。
「おっはよぉ〜!」
今日も元気120%の優子が、リビングに下りてくる。

「おはよ〜」
「あれ?まゆゆもう起きてたの?」
「うん!今日は行くところがあってねぇ〜」
「どこどこぉ〜?」

その頃、晴人の部屋では。
「…な、なんで?」
遥香は今、自分が置かれている状況が理解出来ていなかった。

そりゃそうだ。
朝、目を覚ますと、彼氏のベッドの上で寝ていたのだから。

「もしかして…、私…、“しちゃった”の…?」
んなわけない。
なぜなら、その彼氏は、床に敷かれた座布団の上で寝ているからだ。
起きたら、200%体を痛めていることだろう。

「そんな…、“はじめて”を覚えてないなんて…」
そんなことをまだ言っている遥香。
ボーっとしていると。

「っん、んぁ〜!おはよう、遥香」
ようやく晴人が目を覚ました。

「ふぇっ!?」
「何だよ、その“ふえっ!?”って」
晴人には、朝からわけのわからないことをする彼女が面白かった。

「あ、あのさ…、晴人くん…」
「なに?」
「も、もしかして…、私たち…」
「“した”よ」
その瞬間、遥香は強烈なめまいに襲われた。

バタッ
再びベッドに寝る。
「お、おい!遥香!?お〜い!」
「うぅ〜ん…、うぅ〜ん…」
小犬みたいにうめき声をあげる遥香だった。

「あらら、また寝ちゃったよ…」
「晴人〜!」と優子が呼ぶ声がする。
「はいはい! ちょっと待ってて!」
起こすとかわいそうだと思った晴人は、そのままにしておいてあげた。

60シップ:2013/06/01(土) 23:20:04
気づいたらもうここですか!!
楽しみです!
頑張って下さい!

61ちんぱる:2013/06/02(日) 00:03:48
>シップさん
ありがとうございます!
とりあえず、溜まってる分は大量更新したいと思います!

62ちんぱる:2013/06/02(日) 00:05:03

「優子お姉ちゃん!」
「なに?」
「実はね…、昨日の夜、ぱるるが私の部屋に寝る予定だったんだけど…」
「うん」
「朝起きたら、居なかったの」
「誰が?」
「ぱるる」

「うっそ!」
「お姉ちゃんの所に居た?」
「居なかった、って言うか私、部屋に鍵かけてるし」
「何で鍵かけるの?」
「晴人に襲われないためよぉ」と冗談を言っていると、
「誰が襲うか!!」
朝からきれいにツッコミが決まった。

「ねえねえ、ぱるる帰っちゃったの?」
「いや、俺の部屋でまだ寝てるよ」
晴人がそう言った瞬間、2人の表情が固まった。

「えっ?何?」
「晴人…、さすがにアンタ、それは…」
「はっ?」
「サイテー」
「はぁ? 何が? 言っとくけど、何も変なことはやってねえかんな!」
あらぬ疑いをかけられた晴人は、その後2人を納得させるのに時間がかかった。

「あ、ぱるる」
寝ぼけ眼の遥香がようやく下りてきた。
「ぉはよぅござぃます」
「ウフフ、あ行が全部小文字になってるよ」
「ふぇ?」


「さ〜て、朝飯も食ったことだし、そろそろ行こうか?」
「うん」
「また来てね」
「お世話になりました」
「じゃあね!ぱるる!」
「うんっ!」

63ちんぱる:2013/06/02(日) 00:05:40

「ゴメンね、急にお泊まりさせてもらっちゃって」
「全然、麻友の友達になってくれたみたいだし、こっちこそありがとうだよ」
二人は手を繋ぎながら、遥香の家へと向かっていた。

「あ、あのね…、晴人くん」
「なに?」
「そ、その…、私…、昨日のこと全然覚えてなくて…」
「キスの事?」
「き、キス!?」
彼女にとって、予想していなかった答えが返ってきたので、思わずびっくりした。

「うん、ゴメンな」
「あ、あの、その先は?」
「その先?」
「う、ううん! な、なんでもない!」
「ん?」
晴人には彼女がなぜ顔を真っ赤にしているのかが、分からなかった。

気付くと、彼女の家の前に到着した。
「じゃあ、またね」
「おう」
笑顔で送り出し、来た道を戻る晴人。
「ただいま〜」と遥香の声がする。
昨日のことを思い出し、少しニヤけていると。

「どこ行ってたんだ!!!!!」
突然大きな声がした。

64ちんぱる:2013/06/02(日) 00:08:52

「えっ!?」
声の主を探すと、遥香の家からだった。
そ〜っと、様子をうかがっていると。
遥香が玄関先でうつむいていた。

「連絡もしないで、どこに行ってたと聞いているんだ!」
「あ、あなた…」
どうやら彼女の父親が相当ご立腹らしい。

「ゴメンなさい…、友達の家に行ってて…」
「本当に友達か?」
父親は感がいいみたいだ。
「う、うん…」
「名前は?」
「え…」
「名前を教えなさい!」
その様子を見ていて、居ても経ってもいられなくなった晴人は、思わず飛び出してしまった。

「ゴメンなさい! 俺が引きとめました!」
謎の男が突然登場したことにより、彼女のご両親は開いた口が塞がらなかった。
遥香は「あちゃ〜」と言わんばかりの顔をしている。

「誰だ、君は?」
父親の声は、彼女に話しかけていた時とうって変わって、ドスのきいた低い声になっていた。

「か、神山晴人です! 遥香さんと…、御嬢さんとお付き合いさせていただいてます!」
まるで結婚報告のような状況だ。
しかも、彼女の家の玄関先で。

68ステージ:2013/06/02(日) 19:58:22
まだ入れませんね・・・

ホントに閉鎖したんでしょうか・・・



小説は相変わらず面白いですね!

69レッズ:2013/06/02(日) 20:12:25
お久しぶりです
やっぱりこの作品好きです!
頑張ってください★

70シップ:2013/06/02(日) 20:32:32
閉鎖してしまったらこちらの小説しかないので頑張って下さい!

71名無しさん:2013/06/02(日) 20:58:18
これのどこが神AKB小説なのwwww?

宣伝するなら違う場所でやれこっちはいい迷惑なんだよ

72ちんぱる:2013/06/02(日) 21:05:31
>名無しさん
宣伝?何の話ですか?
僕はそんなことした覚えないですよ

74ちんぱる:2013/06/02(日) 22:12:08

「付き合ってる?君と遥香がか?」
「は、はい!」
晴人の声は震えていた。
父親はゆっくりと晴人に近づいてくる。
思わず後ずさりしてしまうほどの気迫だ。

「そうか…」
父親の右手が上がり、それが勢い良く振り降ろされた。

「殴られる!」誰もがそう思った瞬間。
父親の手は晴人の肩の上に優しく置かれた。

「えっ!?」
「君が遥香の彼氏か!そうかそうか!それはよかったなぁ!」
なぜか彼女の父親は上機嫌であった。

「ハハ、ハハ、ハハハハハ…」
父親に合わせて晴人も笑ったが、その表情は明らかにひきつっていた。

75名無しさん:2013/06/02(日) 22:26:06
人が書いてたものを勝手に消すのはおかしい

AKB48妄想小説って名前なんだから妄想で書いても問題ないだろ

ローカルルールにも記載しないで随分とふざけたことしてくれるね

このことはしたらば掲示板運営に報告させてもらうから

76ちんぱる:2013/06/02(日) 22:31:58
>名無しさん
しかし、あれはあまりにも卑猥すぎる内容じゃありませんでしたか?
ああいう作品は、世間一般的にもあまりいい印象をもたれないと思います。

77ちんぱる:2013/06/02(日) 22:32:59
でももし、それがあなたにとって
不快に思われたとしたら、申し訳ございません。
今後、気をつけさせていただきます。

78名無しさん:2013/06/02(日) 22:40:55
そういう部類の作品を載せられるのが嫌ならローカルルールに記載すべき

したらば掲示板というのは、掲示板ごとにルールが違うからちゃんとローカルルールに書いてないと利用者はわかってくれないよ

79ちんぱる(板野友美 速報14位→6/8 1位!):2013/06/02(日) 22:43:28
分かりました。
申し訳ございませんでした。

ただ先程のような、あらしの方が立てたスレなどは削除しても構わないですよね?

80名無しさん:2013/06/02(日) 22:46:25
問題ないですよ

きわどい場合はその人に確認を取るか、運営に報告などすれば大丈夫

81ちんぱる(板野友美 速報14位→6/8 1位!):2013/06/02(日) 22:50:26
分かりました。

ご指摘ありがとうございました

82ステージ:2013/06/04(火) 20:37:16
続きがきになる

83レッズ:2013/06/08(土) 21:54:14
更新待ってます

84名無しさん:2013/06/08(土) 22:52:19
続きすごく楽しみです!
更新待ってます

85WBX:2013/06/09(日) 23:24:22
続き気になります!更新お願いします!

86名無しさん:2013/06/11(火) 16:37:31
更新お願いします!

87黒蜜もち:2013/06/16(日) 17:45:29
全部読みした。

ぱるるのかわいさ100%でてますね。

こちらも更新ファイトです。

88ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…):2013/06/19(水) 23:23:41
「まあまあまあ、座ってゆっくりしてってくれ!」
なぜか晴人は、遥香の自宅の和室に通されていた。

「はあ…、失礼します…」
「ゴメンね、お父さんが紛らわしいことしちゃって」
奥から愛おしい彼女がお茶をもってやってきた。

「いや、そんなことは…“ないですよ”」
「なんで敬語?」
「いや、だって…」とチラリと父親の方を見た。
「アッハハハ!気にしないでくれ、いつもの通りで構わないよ」
晴人が思ってた以上に優しそうなお父さんである。

島崎浩之(51)、遥香の父親で、大手広告代理店の専務をやっているらしい。
島崎裕子(40)、こちらは遥香の母親で、見た目通り優しそうな人だ。
そして、島崎家には他にも家族が…。

「痛った!」
突然、晴人の足元に激痛が走る。
「ああ〜!こらぁ、ロン!ダメでしょ〜、お客さんの足を噛んじゃぁ」
遥香は彼の足もとにいたチワワを抱き寄せた。
「スマンな、ウチのロンが」
「いや…」
それにしても、浩之は結構関西なまりが強い。
「ウチはな、犬を4匹飼ってんねん」
「よ、4匹もですか」
すると隣でチワワの頭を撫でていた遥香が、説明しだした。
「アメリカン・コッカー・スパニエルが1匹、ポメラニアン2匹、でチワワのロン」
「犬好きなんだ?」
「うん!だって癒されるでしょ?」

89ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…):2013/06/19(水) 23:36:26
久しぶりに更新してみました(笑)
いかがでしょう?

90名無しさん:2013/06/20(木) 06:38:22
更新ありがとうございます!
この小説大好きです!
また更新お願いします!

91レッズ:2013/06/20(木) 16:38:01
更新ありがとうございます!

92ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…):2013/06/20(木) 19:32:26
「もしかして…、犬キライ?」と不安そうな表情で尋ねてきた。
「いや、そんな事無いよ」
「よかったぁ〜」
晴人はどちらかというと猫派の人間だったが、ここは彼女に合わせてあげることにした。

「それより、晴人くん」と突然、浩之が深刻な顔で語り出した。
「は、はい…」と思わず背筋を伸ばす。
「君は本気で、遥香の事を想ってくれているのか?」
「ちょっと、パパ」
彼女の言葉を遮り、晴人は質問に答えた。
「はい、想ってます。誰よりも彼女を…、遥香さんの事を」
浩之は晴人の目をまっすぐ見てくる。
ここは逸らすわけにはいかなかった。

しばらくして笑顔になり、「そうか、なら頼んだよ」と握手してくれた。
そのときから既に、晴人の決意は固まっていたのだろう。

93ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…):2013/06/20(木) 21:11:48
>>90の名無しさん
そうですか、すごく嬉しいです!

>レッズさん
お待たせしました!

94ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…):2013/06/20(木) 22:29:40

「け、結婚!?」
神山優子、25歳。弁護士の秘書をしている。
この日は親友の前田敦子からの報告に驚いていた。
「え…あっちゃん、結婚するの?」
「うん…」と顔を赤くしているのは、前田敦子。
優子の高校の同級生で、唯一無二の親友である。

「だれ?だれ?どんな人?」
「喫茶店の店長やってる人なんだけどね、すごく優しくてあったかいんだ。」
「そっかぁ」
「それでね!ハヤシライスが美味しいの!」
「ハヤシライス?」
「うん!その人の得意料理なんだ」
「へぇ〜、あっちゃんがそんな人とねぇ」と親友の幸せを自分のことのように喜ぶ優子。

「優子は?彼氏とか作んないの?」
「へっ?あたし?」
「うん」
「あたしは…、いいよ」
「なんでぇ?優子カワイイし、高校のときだってモテてたじゃん」
「いやいや、あたしは今忙しいから」と何とか話をうまく逸らす。

実際、優子はそのルックスとスタイルから多くの男性にアプローチされたことは何度もある。
しかし、どれも優子の好みには合わなかった。
そんなことよりも大事な弟が高校卒業するまで、養わなくてはならない。
そんな気持ちから彼女はいつからか、恋をするなんて事を忘れてしまっていたのだった。

95ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…):2013/06/20(木) 23:38:27
更新しました!

96名無しさん:2013/06/21(金) 06:35:31
ありがとうございます!

97ちんぱる:2013/06/22(土) 20:52:53

敦子と別れ、帰り道。
「やっばい、ちょっと飲みすぎちゃったかも…」
完全に千鳥足の優子に近づく不穏な影があった。
「あれ?お姉ちゃん、こんなとこでなにやってんのかな?」
近付いてきたのは2人のチンピラ。
どうやら優子を格好のターゲットにしたらしい。

「何でもないです!アッチ行ってください」
「まあまあ、そんなこと言わずにさ、俺らとイイコトしない?」
「いいです!」
しかし、チンピラは一向に引こうとしない。
「もういい加減にしてよ!」ともっていたカバンを振りまわすと、チンピラの1人に命中してしまった。

「痛ってえなぁ、何すんだテメエ!」
チンピラは優子の頭を掴むと、そのまま放り投げた。
彼女の華奢な体はアスファルトの地面の上に転がってゆく。
チンピラが今にも襲いかかりそうだったそのとき、「何やってるんだ!」と男の声がした。
声のする方を見ると、スーツ姿の男性がそこに立っていた。

「んだよアンタ、アンタには関係ないだろ?」
「彼女を離せ、彼女嫌がってるじゃないか」
「はあ?ウゼえよ!」とチンピラの1人が男性に殴りかかろうとすると、彼はいとも簡単にその拳を避け、相手の体にボディーブローを入れた。
「お、おい!大丈夫かよ!」
「ヤベえ…、逃げんぞ!」とチンピラ共はあっさり退散していった。

「大丈夫ですか?」と優子に手を差し伸べる男性。
「ありがとうございます…」
「あ、血出てるじゃないですか…」
「ホントだ…」気付くと、足の傷から血が出ていた。
アスファルトの上を転がったとき、擦り剥いたのだろう。

「大丈夫ですよ!このぐらい」と笑ってごまかしたが、それは通用しなかった。
「大丈夫じゃないです、早く消毒しないと!」

98ちんぱる:2013/06/23(日) 12:54:59

結局男性の家に、お邪魔することになってしまった。
男性は「さあ、そこ座って」と救急箱をもってきた。
「スミマセン、何から何まで」
「いえ!それよりあんな時間に、ひとりで歩いていたら危ないですよ」
「はい、気を付けます…」と言い、優子は男性の部屋をまじまじと見た。
一般的な男性の部屋に比べ、とてもきれいで清潔感のある部屋だ。

「よし、これでOK!」
「ありがとうございます、あのお礼に何か…」
「いえ!そんなの結構で…」と言い終わる前に、男のお腹から大きな音がした。

「アハハハ、じゃあ何か作りますね?」
「いや!そんな、お構いなく…」
「こういうのは、ちゃんと甘えた方が女性にモテますよ」と笑いながら冗談を言った。
時刻は12:30を過ぎる頃だった。

99ちんぱる:2013/06/23(日) 15:29:42

2人は優子の得意料理の一つであるオムライスを食べていた。
「へえ〜、じゃあ櫻井さんって学校の先生なんですか」
「はい、今年1年生を担当することになったんです」
「うちの弟も、今年高校1年生なんですよ」

「そうなんですか、えっと…」
櫻井は優子のことを何と呼べばいいのか分からなく迷っていた。
「“優子”でいいですよ」と彼女が言ってくれるまで、悩み続けるところだった。

「優子さんは、お仕事は何を?」
「秘書です。弁護士秘書をやってます」
「へぇ、それはスゴイですね」
「いえ、まだ出来たばっかりの事務所なんで雑用ばっかですよ」
楽しく話しているうちに、時刻は2時半を指していた。

「今日は本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。ご飯ご馳走になっちゃって」
「また食べたくなったら、いつでも連絡くださいね」と冗談のつもりで言ったのだが
「分かりました」と笑顔で返された途端、彼女の中で何かが始まった。

100ちんぱる:2013/06/23(日) 19:03:05

「じゃあお世話になりました!」と麻友がようやく出て行く日が来た。
「また来てね!しりり!」
「うん!おしり子お姉ちゃん!」
「いつからお前らは、そんな変態な名前になったんだよ」と晴人が冷静にツッコんだ。

「麻友ちゃ〜ん!」と遠くから走って来る女の子がいた。
「あっ!ぱるる〜!」
遥香は手を振りながらこっちに向かってきたが、途中で思いっきり転んでしまった。

「ちょっ!遥香!?」と思わず彼女のもとへ駆け寄る晴人。
「大丈夫かよ?」
「イタタ、大丈夫…」と目に涙を浮かべる遥香。
「泣いてんじゃん…」
晴人の言葉をよそに、麻友の元へと駆け寄った。

「麻友ちゃん、これ!」と遥香が差し出したのは可愛いリボンで装飾された箱だった。
「なにコレ?」
「クッキー、久しぶりに作ったから上手く出来てるか分からないけど…」
「大事にするね!」と麻友は遥香に抱きついた。

「ホラホラ、早くしねえと柏木さん待ってんだろうが」
柏木さんとは麻友のマネージャーの柏木由紀のことである。
彼女は麻友のデビュー以来、ずっと傍にいて今では母親代わり…。
「今、柏木さんの説明は別によくね?」
それもそうである。

101ちんぱる:2013/06/24(月) 18:28:54

-7年前の秋-
「ええ〜!!!!」
始業式早々、騒々しいヤツがいた。

その大声の主は「ま、まゆゆが居たの?この街に?」と言って腰を抜かしている。
「おう」
“何か問題でも?”と言わんばかりの表情を浮かべている晴人。

「何で教えてくんないんだよぉ〜!」
「だって別にいいかなって思って」
「いいわけねぇだろが!」と興奮度MAXの大貴に興味が失せた晴人は、大掃除に取り掛かった。

2学期に入り、掃除場所も大きく変わった。
1学期は教室掃除だったのだが、今回から5階建ての校舎の一番上。
そう、屋上掃除なのである。
事実上サボることが出来るから、掃除決めの際には男子の激戦区と化す。
まあ男子2:女子3の割合であるため、女子の目を気にして手を休めることは出来ない…。
なぜなら…。

「コラぁ!神山くんと松井くん!ダメだよ、掃除サボっちゃ!」とクラスの学級委員長の子が怒ってやってきた。
高橋みなみ、自分から学級委員長になると立候補した元気のいい女の子だ。

「あ〜高橋さん、ゴメンなさい」
「私に謝ったってしょうがないでしょ」と笑顔で返す。
ちなみにさっきの大声を出していたのがウソみたいに大人しくなっている大貴は、高橋に一目ぼれしていた。
「あ、あのっ!高橋さん!」
「はい?」と振り向く彼女のポニーテールがキレイになびいている。
「こ、今度さ!!」

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン。
「はい、帰るぞ〜」と晴人は大貴の首根っこを掴み、そのまま校内に入っていった。

「何だったんだろう?」と高橋が首をかしげていると、同じ屋上掃除の板野が近寄ってきた。
「高橋さん、災難だね…」と謎の一言を残すと、彼女も校内に戻った。
「どゆこと!?」
頭の上に?マークが浮かんでは消え、浮かんでは消えている高橋だった。

102ぱんだ:2013/06/30(日) 20:05:37
最初から読みました!
面白いです!頑張って下さい

103ちんぱる:2013/06/30(日) 22:41:22
>ぱんださん
ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

104ちんぱる:2013/06/30(日) 23:00:11

そして迎えた放課後。
少しずつ青空を、闇が包むのが早くなるこの時期。
正門で、大好きな人を待つ女の子がいた。

「お待たせ、遥香!」
「あっ、晴人くん」
「ゴメンね、ちょっと先生に呼び出されちゃって…。待ったでしょ?」
「ううん、わたし晴人くんだったら、待つのぐらいへーき!」

極上の笑顔をしっかりと受け取った晴人は、担任に呼び出された内容など
すっかり吹き飛んでしまうほど、テンションがMAXになった。
「そ、そっか…。でも女の子を待たせちゃったのはあれだから、なんか奢るよ」
「ホント?だったらぁ、う〜んとね」と楽しそうに考える彼女の姿を見ているだけで、晴人は幸せだった。


しかし遥香に連れてこられたのは、以前から通っているドーナツ屋だった。
「また、ドーナツでいいの?」
「うん!この、ぷるぷるしたドーナツがいい!」
「そっか。じゃあそれと、俺は…」
彼女のリクエストのドーナツと、自分の分のドーナツを選び取り
レジで会計を済ませ、いつものように店内で食べる。

「それよりさ、晴人くん、何で先生に呼び出されたの?」
「えっ…」
「もしかして、テストで点数悪かったとか?」
「ち、違うよ!」と慌ててジュースを飲もうとするが、一気に飲んでしまったためむせてしまった。

「ゴホッゴホッ!」
「大丈夫!?」
「う、うん…。大丈夫大丈夫…」
「ホントに?よかったぁ」

ドーナツ屋の近くに立っているビルの屋上に映るスクリーンには
渡辺麻友の新曲が流れていた。
「あ、まゆゆだ!」
「えっ?ああ、そうだな」
「やっぱカワイイなぁ」
「“ラッパ練習中”?あいつラッパなんて吹けねえだろ」

「ねぇ、まゆゆからあれから連絡きた?」
「ねえよ、あいつだって忙しいんだろ。そんなしょっちゅう、ウチに来れるわけねえよ」

「そうだよなぁ、そう簡単に会えるわけねえもんなぁ〜」
「そうそう…、っておい」
気付くと晴人の隣には、大貴が座っていた。
「あ?」と素っ頓狂な顔でとぼける大貴。

「何でテメエがいるんだよ?」
「いや、晴人くんがご馳走してくれるからって…」
「ちげえだろ!」と調子に乗る大貴を後ろから引っぱたいたのは、駿太郎だった。

「ちょっ、駿太郎まで!」
「わりぃ、コイツがどうしてもって言うからさ」
「いいだろ?別に〜」
「良くねえよ!」と晴人と駿太郎は声をそろえてツッコんだ。
そんな3人の様子をただただ、遥香は見ているだけしかできなかった。

105ぱんだ:2013/07/01(月) 19:43:09
更新おつかれさまです!

106ダンシング:2013/07/03(水) 22:54:11
面白いです更新待ってます

107ちんぱる:2013/07/04(木) 20:02:34
>ぱんださん
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!


>ダンシングさん
ありがとうございます!
もう少しお待ちください(笑)

108ダンシング:2013/07/11(木) 19:50:13
まだっすか

109T:2013/07/11(木) 21:42:42
じっくり待ちましょうよ
焦ってもいいことないですから

110ちんぱる:2013/07/11(木) 22:54:06

目の前で繰り広げられているドタバタ劇に対処しきれない遥香の存在に、ようやく晴人は気付いた。
「あ、ゴメン。コイツら、俺のクラスメート」
「あっ、そうなんだ…」
戸惑いを隠し切れていない遥香を、好奇心溢れる眼差しで見ている大貴。
晴人と一緒にいる人物のことが全く分からない、駿太郎。
晴人は一人ずつ、彼女に彼らの事を紹介した。

「し、島崎遥香です…。よろしくお願いします…」
やはりどこか緊張している。

彼女は極度の人見知りだと言う事は、晴人は既に承知の上だ。
だがそのとき気になったのは、何故自ら、自分に話しかけてきたのかと言う事だった。
その事を聞く度に、彼女は、
「う〜ん、なんでだろ?晴人くんは、何か、大丈夫な気がしたんだよね」と謎の答えを返すのみだった。

「そっか、晴人の彼女か」と頷きながら事情を把握した駿太郎の隣に座っている大貴は
相変わらず大型ビジョンに映る麻友の姿を凝視していた。
「はあ〜、まゆゆって、ホント、カワイイよな〜」
「まだ言ってんのかよ」
「だってさ、カワイ過ぎんだろ!常識じゃ考えらんないぜ、あのルックスは」
「はいはい」と適当に晴人はあしらったが、意外にも遥香が食いついた。

「分かります!まゆゆってホントかわいいですよね!」
「おっ!遥香ちゃんもその口かい?」
「はい!」
「おお〜!思わぬところに同士がいたか〜!」と何故か握手を交わす二人。
駿太郎と晴人はやれやれと言わんばかりに、両手をあげていた。

「んで、結局何しに来たんだよ、お前ら」
「だからぁ、最近遊び誘っても付き合い悪いだろ?お前。だから、これはもしかしたら“コレ”でも出来たかと思ってさ」
“コレ”と言いながら、小指を突き出すそのそぶりは、数十年昔のトレンディドラマを思い出す姿だった。

「古いんだよ!」
まあ、妥当なツッコミである。

111ちんぱる:2013/07/11(木) 22:54:46
>ダンシングさん
お待たせいたしました!
遅くなって本当に申し訳ございません!

>Tさん
スミマセン、ありがとうございます。

112ちんぱる:2013/07/12(金) 01:54:33

「それでさぁ、晴人に言ったんだよ!まゆゆに会わせてくれって、そしたらさ、“無理”の一言だよ!どう思う!?」
先程から、大貴は晴人に対する文句を遥香にこぼしていた。
当の本人は、「は、はぁ…」と完璧に困ってしまっている。
「当たり前だろうが、つーか遥香が困ってんだからいい加減にしろ」
「は、“遥香”だって!もうそんな間柄なんだ、ぱるちゃん」
気が付くと、島田晴香も同席している。

「何で晴香がいるの?」
「え?何か楽しそうなことやってたから」
「え〜、やだぁ〜」
「やだぁ〜って何でよ!」とツッコミながらも、楽しそうな晴香。
どうやらこの2人は相当仲が良いようだ。

「あれ?君は誰?」
ようやく駿太郎が晴香の存在に気付いた。
「あ、島田晴香です!女子テニス部に所属しています!ぱるちゃんとはクラスメートなんです、ね〜」
「うん」

「そっか、あ、俺は時田駿太郎。んで、このうるさいのが…」
「うるさいって何だよ!」
すかさずツッコミを入れる大貴。しかしそれはあえなく、駿太郎に鮮やかなまでにスルーされた。
「松井大貴です!よろしくぅ!」
「よろしくお願いします!」
体育会系の二人は、がっちりと固い握手を交わしていた。
そんな中、遥香はようやく席に、彼氏がいないことに気付いた。

「あれ?晴人くんは?」
「ああ、なんかさっき電話しに外に行ったけど」と駿太郎が教えてくれた。
入口の方に目をやると、確かに電話で誰かと話している晴人の姿があった。
遥香は席を立ち、彼の元へと寄った。

「晴人くん」
声をかけた時、ちょうど向こうも電話を終えた所のようだった。
「おお、どうした?」
「だって、急にいなくなっちゃうから」
「ゴメンゴメン、姉さんから電話でさ」
「お姉さん?」
「今日、帰り遅くなるって。またカレーかよ…」

ここんところ、優子も忙しいらしく、残業が長引くことがしょっちゅうだった。
そのため、作り置きしているカレーを温めて食べるのだが、さすがに4日連続は飽きてしまう。
そんな中、晴人の耳に思わぬ言葉が飛び込んできた。
「よ、よかったら…作ろっか?晩ごはん…」
「えっ…?」

ハトが豆鉄砲を食らった。
思いっきり直撃だった。

113ちんぱる:2013/07/12(金) 23:55:54

晴人は家までの距離が、こんなに近かったのかと思うほどビックリしている。
実際はそんなことはないのだが、ただ単に、時間が立つのが、早く感じられたためである。

みんなと別れる時、島田は空気を読んでくれたのか、気付くと姿は見当たらなかった。
しかし大貴は、そんなこともお構いなしに、ドンドンからんでくる。
だが、駿太郎が何とか大貴を釣ってくれたおかげで、二人はこっそり抜け出すことが出来た。

「にしても、本当にいいのか?」
「うん」
「遥香って料理得意だったっけ?」
確かに一物の不安はぬぐえない。
彼女が料理上手なんて、わずか半年の付き合いだが、初耳だ。

「だいじょ〜ぶ、ママがよく作ってくれる豚キムチおにぎりを作るから」
「な、なんじゃそりゃ…」
楽しみでもあり、不安でもある晴人は彼女と手を繋ぎながら、自宅へと向かっていた。

114ぱんだ:2013/07/13(土) 18:27:25
更新おつかれさまです!

自分のペースで頑張って下さい!

115名無しさん、いらっしゃい!:2013/07/15(月) 21:58:53
わすごーい(失笑)

116名無しさん:2013/07/15(月) 23:38:41
とてもおもしろいです!
更新頑張ってください!

117Tさん:2013/07/18(木) 17:46:41
珠理奈はもう終わりですか?

118ちんぱる:2013/07/18(木) 23:13:09
>Tさん

もう少ししたら登場させますんで、お待ちください(笑)

119Tさん:2013/07/18(木) 23:28:22
楽しみにしてます
更新頑張ってください!

120youwm:2013/07/22(月) 19:24:11
いつも楽しみにしてます( ̄▽ ̄)
頑張って下さい( ^ω^ )

121ちんぱる:2013/07/22(月) 21:04:37

「どうぞ!召し上がれ!」と笑顔で机の上に置かれたのは、明らかに
ぐっちゃぐっちゃになったおにぎりと言い難いものだった。

「お、おう…」と苦笑いで返すものの、どう食べたらいいのか全く分からない。
期待のまなざしで見つめる遥香。
その期待にこたえようと必死の晴人。

正直、彼にとってこの時間は耐え難いものだった。
「うん…、おいしいよ…」
その味はとても薄かったという。

122ちんぱる:2013/07/22(月) 21:16:28

「絶対美味しくなかったんでしょ!?」
「いや、美味かったって!」
「ウソ!顔が引きつってる!」
核心を疲れた晴人は、思わず後ろを向き、最上級の笑顔を作ってから再び前を向いた。
「そ、そんなことねえって!」
「今の約2秒は一体何よ?」
「ウッ…」
それ以上晴人は何も言えなくなってしまった。

「ゴメン…、正直言うと、味がちょっと薄かったかなって…」
「やっぱり…」
晴人の予想通り、うなだれる遥香。
そんな彼女を必死に晴人はフォローし始めた。
「いやでも、ちょっとだよ!“ほんのちょっと”薄かったってだけで、味は最高、最高」
「いいよ、無理しなくて」と彼女はとうとう膝を抱え、顔をうずめてしまった。

やっべ〜、泣かせちまったよ…。
晴人は心の中でそう呟くと、彼女の元へそっと近づき、後ろから覆うような形で抱きしめた。
「ありがとう、俺のためにわざわざ作ってくれて。その気持ちは十分、いや十二分に伝わったよ」
「ホント?」と涙目で晴人の目を見つめる遥香。
「ホントホント、ごちそうさまでした。遥香」と優しく微笑み、彼女の額にキスをした。
突然のキスに彼女は一瞬目を閉じたが、すぐにまた開くと彼の顔を見て、よほどうれしかったのか、少しだけ笑顔になった。

123youwm:2013/07/22(月) 21:37:21
更新ありがとうございます( ^ω^ )

これからも自分のペースで頑張って下さい( ̄▽ ̄)

124Tさん:2013/07/22(月) 22:18:36
更新お疲れさまです
今後も頑張ってください

125レッズ:2013/07/25(木) 18:14:20
晴人優しいですね。
遥香は相変わらずぽんこつでかわいいですね。

126マル数:2013/07/26(金) 22:58:06
早く続きがみたいです。

127マル数:2013/07/28(日) 19:30:12
まだですか?
続きがきになります。

128ぱるるLOVE!:2013/07/28(日) 21:10:55
次が気になります。頑張ってください!応援しています!

129ちんぱる:2013/07/28(日) 21:41:20

ソファーの上で満足そうに、ぐっすり眠っている遥香の姿を確認してから、晴人はそっと風呂へと向かった。
限界までお湯が張られた湯船の中に、溢れるのも気にせず、晴人は豪快に入った。
「ああ〜!ふぅ〜」
顔を軽く洗い流した後、天井を見上げていると、大事な事を一つ思い出した。
「そうだ、部活…。どうしよっかな…」

今日の放課後、担任の櫻井から呼び出された理由は、晴人の部活に入部するかどうかについてだった。
「どうして部活に入らないんだ?」
「まあ、ちょっと…」と話を濁らしていたが、さすがに今回はそれも無理な様だった。

「まあ、無理にとは言わないんだけどな。でもな正直、この学校、部活をやってると何かと都合がいいんだよ。
 例えば、大会出て単位が貰えたりだとかな」
「は、はあ…」
「そう言う訳だから、とりあえず一度帰って考えてみてくれ」

部活、晴人にとってそれほどまでに関わりたくないものはなかった。
あの日、自分が部活を優先したばっかりに…。

「くそっ!」
晴人は、暖かい水の表面を強くたたいた。
拳が通った所から、波ができ、それによって浴槽の水があふれて行った。

130マル数:2013/07/28(日) 22:30:05
ありがとうございます。
もっとみたいです。

131ちんぱる:2013/07/28(日) 22:31:29
>マル数さん
もう少々お待ち下さい(笑)

132つまさき:2013/07/28(日) 23:10:36
いつも楽しみにしてみてます〜
頑張ってください♪

133ぱるるLOVE!:2013/07/29(月) 11:54:16
続き気になります。自分のペースで頑張って書いてください!

134さやねー推し:2013/07/29(月) 12:06:01
面白いです。
楽しみにしてます。

135ぱるるLOVE!:2013/07/29(月) 13:52:05
ちんぱるさん ファイトです!

136Tさん:2013/07/29(月) 15:24:58
更新頑張ってください

137youwm:2013/07/29(月) 18:34:07
僕も楽しみにしてます( ^ω^ )
頑張って下さい( ̄▽ ̄)

138まゆゆ推し:2013/07/29(月) 18:44:52
アイツの何がいいんだか...

139まゆゆ推し:2013/07/29(月) 21:24:56
何ほざいとんじゃ貴様

140すまん、「ら」をつけ忘れた:2013/07/29(月) 21:27:59
すまん、「ら」をつけ忘れた

141マル数:2013/07/31(水) 22:08:08
まだかな?

142ちんぱる:2013/08/02(金) 19:55:43

風呂からあがると、遥香がリビングで立ちつくしていた。
「どうしたの?」と頭をタオルで掻きながら尋ねると、彼女が振り向いた。

「どこ行ってたの〜?」
何故か涙目の彼女は、そう訴えてきた。

「どこって、風呂だけど?」
すると彼女は鼻をすすりながら、晴人の胸に飛び込んだ。

「うわっ!どうした?」
「怖い夢見ちゃった…」
「どんな?」
「晴人くんが…、ぐすっ、どっか遠くに行っちゃう夢…」

たかが夢なのに、晴人は一瞬そう思ったが
何も言わず、優しく抱きしめながら彼女の頭を撫でた。

「どこにも行かないよ。俺が遥香のそばから離れるわけ無いだろ?」
「う、うん…」
「だからもう泣くな、な?」
「うん…」
彼のぬくもりを感じながら、遥香はより強く彼に抱きついた。

143youwm:2013/08/02(金) 21:07:23
更新ありがとうございます( ^ω^ )

いつも楽しみにしてます( ̄▽ ̄)

144マル数:2013/08/03(土) 11:57:43
もっと沢山見たいです。


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