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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

1プチ住民:2003/01/31(金) 19:21
愛好会スレのプチ住民の(゚ε゚)キニシナイ!!
おまいら、煽られちゃったり・放置されちゃったり、流れにのれずレスを外しても(゚ε゚)キニシナイ!!
そこにアキラたん(*´Д`*)ハァハァ(*´Д`*)ハァハァがあるなら(゚ε゚)キニシナイ!!
合言葉は(゚ε゚)キニシナイ!!

101断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 23:23
唇を離すと、塔矢が目を開けてオレを見ていた。
「とう…」
何を考えているのかわからない、無表情な目。
わからないけれど、それでも真っ直ぐにオレを見ている。
どうして何にも言わないんだよ。
なんか言ってくれよ。
何も言わない塔矢を見てたら、なんだか泣きそうになってしまって、それを誤魔化すようにオレは
アイツの顔を睨み付けた。
それでも塔矢は何にも言わなくて、オレも何も言えなくて、オレは衝動的に塔矢の肩を掴んで、
もう一度唇を押し付けた。
掴んだ肩が不快そうに強張るのを感じた。
てっきり、また殴られる、そう思った。
でも、構うもんかって思ってたから、きっと多分オレは真っ赤な顔で、塔矢を睨んだ。
そうしてオレが必死に塔矢を睨みつけていたら、何も言わない塔矢の目が真っ直ぐにオレを見
据えたまま、アイツの手がオレの顎を掴んでぐいっと引き寄せ、オレが何かを考えるまもなく、
また唇が重なった。
塔矢の方から重ねられた柔らかい塔矢の唇の感触に、眩暈がした。

102断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 23:24
どうしよう。どうしたらいいかわからない。
自分の心臓の音がうるさい。
塔矢の唇が僅かに動くのがなんとも言えない感触で、自分の感覚の全部を唇に集中させて
しまっていたら、そこに何か別の感触のものを感じた。塔矢の舌がオレの唇を舐めてるんだっ
てわかって、反射的にビクッと逃げようとしたオレの頭を塔矢の手が押さえつける。
怖い。
でも逃げられない。
身体を強張らせてぎゅっと目をつぶった。
でもオレのそんな反応には構わずに、塔矢がオレの唇をこじ開け、オレの口の中に入ってくる。
なんだかよくわからない感覚に背筋がぞわぞわする。
目が眩んだ。
頭がくらくらして、何も考えられなくなった。
追い詰められる。
どくどくと流れる血流の音が耳元でうるさい。
もう身体に力が入らなくて、いつの間にか体勢が入れ替わって、組み敷かれるようにソファーに
もたれかかっている事にも気付いていなかった。

103断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 23:25
オレが混乱してる間に塔矢の唇はオレの唇から離れ首筋を辿りはじめる。
「好きだよ、進藤…」
耳元で囁いた塔矢の言葉が、ぼうっとしてたオレの頭に届くのには随分時間がかかった。
え…?何?今、なんて言った?塔矢。
スキダヨって、どういう意味だ…?
好きって…?誰が?誰を?
好き?塔矢が、オレを、好き?
「待っ…て、塔矢。」
本当に?塔矢。
本当なら、顔を見せて。オレを見てちゃんと言ってよ。
でも、塔矢はオレの首筋に顔を埋め込んでしまっているので、塔矢の顔が見えない。
でも、塔矢の顔が見えなくても、オレはその言葉に縋りたくて、いや、もうその時点でオレはその
言葉に縋り付いていた。頭の中をさっきの塔矢の言葉がぐるぐる駆け巡っている。
…好きだよ、進藤…好きだよ、進藤…好きだよ、進藤…好きだよ、進藤…好きだよ、進藤…好きだよ…
それなら、どうして?
オレの考えた事が聞こえたみたいに、塔矢の答えが耳に届く。
「君が好きだから、あんな事をしてしまった…許してくれるか…?」
ウソ…
本当に?塔矢?信じていいの?
泣きそうになりながらオレは塔矢にしがみついた。
「とう…や…」

104断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 23:25
塔矢の手がオレのシャツのボタンを外していき、胸元が開けられていくと同時に、アイツの唇が
オレの身体の上を降りていく。
カチャリ、と音がした。
ボタンを外していた手が、そのままベルトを外す音だ。
塔矢の手がそのまま下着の中に滑り込んでくる。
「やっ…んっ…!」
直接握りこまれて、オレは変な声をあげてしまった。胸元で塔矢がクスリと笑った気がした。
「ひっ…!」
と、次には乳首をペロリと舐められて、またオレは声をあげてしまう。
そのまま吸い付くように口に含まれて、舌先で捏ね上げるようにされて、何だかよくわからない
感覚にオレの身体は熱くなっていく。そして塔矢の手は、オレの熱を更に煽るように硬く勃ち上
がったオレを扱く。
「あっ、あ、とうや、もう…、あ、ああっ…!」
体中が熱くなって、オレの中心は塔矢の手の中ではちきれそうになって、オレは耐え切れずに
高い声をあげてしまった。
もう爆発してしまいそうだ、そう感じた時、ふいに塔矢の身体が離れた。
「とう、や…?」
曝け出された身体に空調の風を感じて、その冷たさがイヤな感じがした。
どうして?塔矢、急に…
不安になって目を開けて、そこに見た塔矢の表情に、その意味に、ぼうっとしていたオレの頭は
気付くのが遅れた。

105断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/04(日) 23:11
「…なんて事を、僕が本気で言うとでも思ったかい?」

キィーンと、耳鳴りがした。
今、何が起きたんだ?
塔矢は、なんて言った?
動けなかった。
声も出せなかった。
今のは一体どういう意味だ?
凍り付いてしまったオレを嘲るような塔矢の綺麗な唇から目を離せない。
いつもより紅く、濡れて艶めいた唇が、冷たく、残酷な言葉をオレに聞かせる。
「いい格好だね。」
そう言って塔矢は身体を起こしてオレを見下ろした。
塔矢の視線を辿るようにオレは目を落として自分の格好を確認した。
ソファーにだらしなく座って、シャツの前をはだけられて、下着ごとズボンを腿まで下ろされて。
それなのに服を直す事もできないでいるオレを見ながら塔矢は立ち上がり、そのまま冷たい表情
のままでオレを見下ろした。
動けなかった。
塔矢の視線がオレに動く事を許さなかった。
じっとオレの目を見ていた塔矢は小さく口元だけで笑い、それからその視線はオレの身体を辿る
ように動き出す。
オレはぴくりとも動く事もできずに震えながらただ視線だけを塔矢からそらせた。

塔矢がオレを見ている。
見られている。
そう思うことで萎えかけていたオレの分身がヒクリと震えるのがわかった。
嫌だ。何も反応なんかしたくないのに。
それでも、塔矢の視線を感じてオレの身体にまた熱が集まってくるのを、オレは感じる。

106断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/04(日) 23:12
突然足先を蹴飛ばされた。
「!」
反射的にオレは塔矢を見てしまった。
「君は僕に、一体、何を期待していたんだ?」
氷のように冷たい視線が、オレを見ている。
「あれだけの目に合ってもそれでもあんな甘い言葉を期待していたのか?君は。」
その視線が、逸らされずにオレに近づいてくる。
「愛されるに足るだけの価値が自分自身にあるとでも?」
アイツの手がオレに伸びて、オレを握りこむ。
耐え切れなくて目を瞑ってアイツから顔を背けた。

それなのに、アイツの手の中のオレは塔矢の手に浅ましく反応する。
塔矢の指がいやらしくオレに絡みつき、追い立てる。
いやだ、と思いながらもオレはふと、盤上に鋭く厳しいい音を立てて石を置く白く美しい手を思い出す。
その手が、と思うだけでオレは膨れ上がり、あっという間にオレはイってしまった。
情けなくて悔しくて身体が震えた。
はあはあと息をつきながら(多分赤い顔で)アイツを見上げると、アイツは面白くもなさそうな目で
オレを見下ろし、視線が合うと、オレを鼻で笑った。
「ああ、手が汚れたな。」
そう言って塔矢は部屋の隅にあった小さな洗面台で手を洗って(ご丁寧にセッケンまで使って
やがった)、更に口をゆすいで、キュッと蛇口をひねった。
ポケットから出したハンカチで、多分あいつらしく丁寧に手を拭いてから振り返り、まだ動けずに
いるオレを見て唇の片端で小さく冷ややかに笑って、そうして部屋を出て行った。

107断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/04(日) 23:13
あいつがいなくなってようやく、オレは動けるようになった。
もそもそと服を元に戻しながら、オレは馬鹿馬鹿しくなって笑い出してしまった。
笑いながら涙が出てきた。
オレはおかしい。どうかしてる。
アイツの歩く姿に、振り返る身のこなしに、仕草の一つ一つに、なびく髪の一筋にさえ、見惚れて
しまうなんて。
こんなみっともない格好を晒したまま、それでもアイツに見惚れてしまって動けないなんて。
オレはヘンだ。
なんで、あんな事をされて、あそこまで言われて、それでもアイツを嫌いになれないんだ?
オレは塔矢が怖い。
怖いんだけど、でも、それでも目が離せないんだ。
震え上がりそうなほど怖いんだけど、でも、いや、だからこそ余計に、アイツは綺麗で、冷たい目
でオレを嘲る塔矢は凄みをまして綺麗で、オレは目を離せなくなる。
怖くて、綺麗で、近づいたら切り裂かれるってわかってて近づいていってしまう。
オレはアイツの目に逆らえない。
アイツの何を考えているかわからないような目で見つめられて、「これは毒だ。だから飲め。」と
言われたら、震えながら、怯えながら、それでもオレは飲んでしまうだろう。
アイツが、塔矢自身が、その毒なんだ。
オレはもうその毒を飲んでしまった。一旦口にしてしまったら、その味を知ってしまったら、どんな
に毒だってわかっていても、毒だからこその、その甘美な味から、もう離れられない。

108断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/04(日) 23:13
オレが今まで知ってた塔矢は何だったんだろう。
あんなに、あんな風に恐ろしい奴だなんて、知らなかった。
知るはずがない。
だってオレの知ってた塔矢は、皆が知ってる塔矢は、あんなじゃない。
囲碁界の貴公子。サラブレッド。エリート優等生。そんな言葉だ。塔矢を飾るのは。
元名人の息子で、何の障害もなく、碁界の王道を真っ直ぐに、誰よりも早く、けど一段一段、確実に昇っていく。
そう言う奴じゃなかったか?
そんな筈の「塔矢アキラ」が、どうして。
知らない。
あんな、悪魔みたいな塔矢なんて。
あんな、怖くて、恐ろしくて、それなのに誰よりも綺麗でとてつもなく魅力的な魔物の存在を。
知らない。知るはずがない。

109甘味屋</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/06(火) 02:04
待っててくれてる人がいるようで申し訳ないが、断点-2はひとまずこれで終わりだ。放出完了。
続きはその内、書けたら出したい。
次はどうやってヒカルたんを苛めてやろうか思案中。
それともヒカルたんはアキラに反撃できるのか?
この先どうなるかは俺にもわからない。

110名無しさん:2003/05/06(火) 23:37
>109
天使の顔した悪魔アキラたんゾクゾクしるよ!ハァハァ(;´Д`)
だが甘いのも好きだ。
またよろしくおながいしますだ!

111裏失楽園:2003/05/09(金) 22:00
 低めの温度に設定したはずだったのに、お湯があたるたびに肌にピリっと痛みが走る。
 この鋭い痛みには覚えがあった。見てみると膝や肘は動かされている最中にシーツで擦って
しまったのか赤くなっている。擦過傷だ。
 ジンジンとした痛みはそこを中心にして生まれてくるようだった。
 温度調節の仕方などとっくに忘れていると思っていたのに、まだこの指は覚えている。
 そのことに妙な感慨を覚えながら、ボクはさらにシャワーの温度を低く調整し、身体に残る
倦怠感と汚れを洗い流した。しかし、身体に染み付いたような濃い匂いはどうやっても洗い
流すことはできず――ボクは幾分躊躇いながらも、白い陶器に入ったボディソープを手に取る。
 緒方さんの愛用しているボディソープの香りは気に入っていたが、いくらスポンジで泡立て
ても傷に良くないことは明らかだったが、それでも。
「……っ、」
 案の定、石鹸の刺激のせいでより強くなってしまった痛みがボクを苛む。
 スポンジなど使えなかった。ボクは泡をすくっては両手で肌を撫でることを繰り返すしかでき
ず、刺激を与えないように気をつけながらそろそろと肌を撫でる。
 お湯を身体にかけて泡を落としていると、ボトリと足元に白い塊が落ちてきた。ボクの後ろを
塞いでいたティッシュペーパーが、水分を含んだ自らの重さに耐えかねて落ちたのだ。 
 後ろが気にならないといえば嘘になる。…緒方さんを受け入れていた場所は、ほとんどの
感覚が消えていて、ティッシュペーパーが全て落ちたのか、それとも中にまだ在るのかさえも
よく判らなかった。そして、彼が奥深くに残しただろう残滓も。
 彼が中で出すことを良しとする人ではなかったから、ボクは自分で後始末をするといった経験が
ほとんどない。汚されても、彼に全てをゆだねておけばそれでよかった。
 しかし、今日は進藤がいる。進藤の前で、緒方さんを呼ぶわけにはいかなかった。
 ボクは覚悟を決めてそっと右手を後ろへ滑らせる。
 彼が中に入っていたところを、汚いとは思えなかった。

112ひみつ:2003/05/10(土) 18:03
すまん。嫌がらせじゃないんだがこの前話題だった強制排便アキラ…
スカトロ風味なので圧縮した。物好きな奴だけ見てくれ〜。
http://kigaruni-up.ath.cx/~kigaru/cgi-bin/clip-board/img/3425.lzh

113名無しさん:2003/05/10(土) 21:28
>112
ハァハァハァハァ(;´Д`)夢のシーンがついに俺のものに!ハアハァハァハァ(;´Д`)
光るケツ!
震える桃尻にぷりぷり放出、気持ちよさげじゃぁぁぁぁ!!アキラたん運子バンザーイ!
これ見たあとなぜか魔境避難所の文字が一瞬魔境排便所に見えた俺(w

114名無しさん:2003/05/11(日) 01:40
そおか、ひみつさんは固体派か。自分は液体派だったりする。

115Shangri-La:2003/05/17(土) 01:36
(35)
激しく上下するヒカルの胸の向こうで、アキラの漆黒の髪が揺れる。
(うわー、オレ、口だけでイっちゃったの?
 まー確かに暫く抜いてなかったけど、にしても情けねぇ……)
その髪に触れようと、ヒカルは手を伸ばそうとしたが
身体は言うことをきかず、ただアキラを見ているだけしかできなかった。

アキラは自らヒカルの上に乗ろうとしていて、
その頬は幸福に色づき、好色な笑みを満面にたたえている。
そこには確かに、ヒカルの知らないアキラが存在していた。

(オレ、こんな塔矢、知らない…。コイツ、誰だ?)
ヒカルの中の警戒心が、アキラに声をかけさせた。
「嬉しいの…?」
気の利いた言葉が出てこない自分が情けない。

アキラはヒカルの言葉に嬉しそうに頷き、自らヒカルを受け入れた。

116Shangri-La:2003/05/17(土) 01:37
(36)
「………!」
(キツい…やっぱり、急ぎすぎたかな?)
アキラの菊門は、ヒカルの亀頭を飲み込むのがやっとで
その辛さについ眉を顰めた。
深呼吸に合わせて、更にゆっくり腰を落としていく。
きついながらも少しずつ、楔がアキラに埋め込まれていくが
半ばまで埋まったところで、先を諦めた。

アキラは呼吸を調えながら、ヒカルの上半身に手を伸ばした。
「進藤、動かないでて…まだちょっと、きつい………」

アキラがヒカルの鳩尾から両手でそっとなで上げていくと、
ヒカルの口から溜息が漏れた。
さらにキスで唇を封じ、堅くなった胸の突起をそっと撫でると
ヒカルはアキラの口の中に熱い息を吐くと同時に、ぴくんと動く。
「……んんっ!」
半端にアキラの中に埋まったヒカル自身が
アキラの中の過敏な部分を掠め、思わずアキラは背中をしならせた。

さらにアキラがヒカルの肌を撫でると、
ヒカルは喘ぎながら、アキラの手の動きに合わせて
ぴくり、ぴくりと微かに動き、結果、アキラの愛撫は
結合部からアキラの中へと返されていった。

117Shangri-La:2003/05/17(土) 01:39
(37)
アキラは、ヒカルの首筋から肩にかけて吸い付き、
ヒカルの乳首を指で捏ねまわし、舌で激しく舐り
ヒカルと繋がったその場所から伝わる刺激を貪りながら
鼻にかかる甘い声で鳴いている。
「ん…んんっ……、ぅうん………」

ヒカルは、アキラの脇腹から胸元にかけて手を這わせながら思う。

(コイツのこーゆー声ってホント可愛いけど
キツイから動くなと言っておきながら、自分は散々動いてる。
ったく、何なんだよ?)

事実、アキラは猛り立った陰茎をヒカルに激しく擦りつけ
一人、行為に溺れているように見えた。

(―――うー、なんか腹立ってきた。)

ヒカルはアキラの頭を両手で挟み、顔を上げさせた。
アキラの瞳にはただ情欲だけが滾るのみで、その強さが
ヒカルの中の、まだ見ぬアキラに対する好奇心を焚き付けた。

118名無しさん:2003/05/17(土) 02:11
シャングリラたんキタ━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!
このヒカルの心の声がなんともいえず好きだ(w

119Shangri-La:2003/05/20(火) 01:31
(38)
ヒカルはアキラの頬を両手で挟んだまま、動いた。
「はぁ……あぁん……あん……あぁぁ…」
アキラは眉根を寄せ、目を伏せ、切なげに喘いでいる。
動きに合わせて変わる表情は相変わらずだったが
頭を押さえ、無理な体勢を強いているせいか
少し辛そうにも見えた。

「塔矢、塔矢……」
アキラは瞼を震わせただけだった。
「もっと、やらしい塔矢が、見たい…」
ヒカルがアキラの額に張り付いた前髪を梳くと、
アキラはようやく少しだけ目を開いた。
「これじゃ、あんま見えない…」
アキラはぼんやりとしていたが、促されるままに身体を起こし、
ヒカルの視線に自分を晒した。

120Shangri-La:2003/05/20(火) 01:32
(39)
アキラはヒカルの上で自ら揺れながらぼんやりと考える。
――何か、足りない…

アキラの中に篭る疼きは、どんどん快楽にすげ替えられ
もうその波に溺れることしか出来ないのに、
それでも何故だか、まだ満たされない。
とめどなく溢れてくる唾液をなんとか飲み込み
何度も襲い来る極上の恍惚感に流されそうになりながら
なんとか今の状態を収められないものか、アキラは必死に考えた。

アキラは、自分をじっと見つめるヒカルの瞳に視線を残しながら
ゆっくりとした動作で首を捻り、指を2本、口に差し込んだ。
涎を垂らしながら、舌を出して指を迎えるその姿は
怖ろしいほど扇情的で、ヒカルは目を離すことが出来なかった。
アキラはそんなヒカルの視線に満足して、そっと瞳を閉じ
口の中で指をめちゃくちゃに動かし舌を遊ばせる。
いまさっきまで確実に存在した渇望は、少しだけ満たされ
嬉しくて自然と口の端が上がった。

でも、まだ足りない。
空いているもう片方の手は、自然と自分のペニスに伸びた。

121Shangri-La:2003/05/20(火) 01:32
(40)
―――えっ、おい、ちょっと待てって!?

慌ててヒカルはアキラの手首を掴んで、アキラを制した。

(扱いて欲しかったらそう言えばいいのに、
なんで自分でしようとするんだよ?)

ヒカルは自分も身体を起こしてアキラの顎を掴み
正面から向き合った。
不満を訴えるように、アキラはヒカルを睨みつけてくる。
鋭い瞳の下で、指を舐ることは止めようとせず、
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、指の間からちろちろと見える
赤い舌とのアンバランスさに眩暈がした。
もう、ヒカルは限界だった。
ヒカルはアキラの口から手を外させ、
アキラの口が名残惜しそうに指を追う様子に苦笑いしてから
深く口づけた。

122Shangri-La:2003/05/20(火) 01:34
(41)
差し入れられたヒカルの舌の湿った温かさに
口の中の妙な渇きは、あっという間に消えていく。
(あ…、これが欲しかった…んだ…………)
「進藤、もっと………」
アキラはヒカルの首に両腕を回すと、更に深く唇を重ねた。

求められたことで少し満足したヒカルは
アキラの腰を支えるとひと息に突き上げた。
「――あぁぁぁぁっっ!」
アキラは背中を反らせ天を仰いだ。喉のラインが露になり
ヒカルは思わずむしゃぶりついた。
「あっ!ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、はぁんっ……ぁあん、ぁ……」
さらにヒカルが小刻みにアキラを攻めると、
その動きに合わせて、アキラは甘い悲鳴を上げ続けた。
ヒカルの手がアキラの中心を握り込むと、
アキラは息を飲んでヒカルにしがみついた。
「あ、だ、ダメ、あぁぁっ、進藤っ、やぁぁぁぁーーーっっ」
アキラが絶叫して、ヒカルの手の中に精を放つと同時に
ヒカルもアキラの中で果てた。

123Shangri-La:2003/05/31(土) 01:52
(42)
アキラはそのままヒカルに体重を預けると
しがみつくようにして頬を寄せてきた。
「塔矢、今日は中に出しちゃったから、洗わないと」
うん……、とアキラは曖昧に答えた。
「あとで辛いだろ?だから、ほら…」
「………いいよ、そんなの」
「良くないって。辛そうなの見てるのも、しんどいから」
ヒカルは半ば無理やりアキラを引き剥がした。
もう少しヒカルの上でまどろんでいたかったアキラは、
意に反して身体を離したヒカルをきつく睨むと勢い良く立ち上がり
その瞳にヒカルは射すくめられ、何も言えなくなった。
アキラは内股を伝い落ちる雫にも構わず
傍らのタオルを取り、吐き捨てるように言った。
「分かったよ、全部出せばいいんだろう」
言うか言わないかのうちに、アキラはタオルを投げるようにして
床の上にひろげ、その上に両膝をつくと、自ら指を差し入れた。

アキラははじめ辛そうだったが、時々前立腺の裏を指が掠めるのか
びくりと身を固めて甘い吐息を漏らし、また掻き出し始める。
前は少しずつ首をもたげて堅さを増している。
呼吸も荒く中を弄る様は、まるで自慰にふけっているようだった。
ヒカルは驚きのあまり、ただ呆然とアキラを見ていた。

124Shangri-La:2003/05/31(土) 01:53
(43)
暫くして、アキラは手を止め、顔を上げた。
「進藤、手伝って……」
その声で意識を戻された。
「塔矢、何やってんだよ?ちゃんと洗わないとダメなんだろ?」
「いいよ、今は…もう一度しよ……」
ヒカルは目を見開いた。
「まっ、まだする気かよ?オレもうできねーよ!信じらんねー」
アキラは浮かされたような表情でヒカルを熱く見た。
「なんで…?さっき、いやらしいボクが見たいって言っただろ?
見せてあげる。進藤が見たいなら、もっと、乱れてみせるよ…。
だから、ほら、見て……」
アキラはヒカルから視線をそらすことなく
膝立てのままヒカルに背を向け、片手を床につき
空いた手で媚肉を割り開いて見せた。
少し緩んで、中の粘膜もほんの少しのぞいている入り口が
激しくひくついて、ヒカルを誘っている。
ヒカルは思わず生唾を飲み込んだ。
(後ろからは恥ずかしいから絶対イヤって、あれほど言ってたのに…)
これまで決して見ることが出来なかった、
眩暈がするほど卑猥なポージングのアキラに、戦慄すら覚える。
「………もうっ、もういいよっ!とにかく、ちゃんと洗わなきゃ。
ほら、風呂、行ってこいって」
ヒカルはアキラの腕を取り、無理やり立たせて内股を拭うと
アキラを部屋の外へ追い出して、ドアを閉め、その前にへたり込んだ。

125裏失楽園:2003/06/02(月) 23:03
 バスタブに片足を乗せ屈みこんで、ボクは右手の人差し指を自分の身体の内部に深く差し
込んだ。自分でも判るほど熱を持った入り口は事務的に爪先を少し上下させるだけで指を
飲み込み、掻き回すとその容易さに呆気にとられる間もなくトロリとしたものが下る。
 彼が放ったものがどのくらいの量なのかは判らないが、念のためにとシャワーヘッドを
取り指で拓いた下腹部に湯を注いだ。ピクピクと口が開くたびにぬるい湯が入り込み、ややも
せずお腹が下から満たされるような奇妙な感覚が生まれる。それを目を閉じてやり過ごし、
衝動に任せて身体の力を抜いた。足元まで伝う生ぬるいものが何なのか――どうやって、
どんなシチュエーションでボクの体内にそれが入ったのか、そのときに同じマンションに誰が
いたのか――考えるだけで足が震える。
 その時、不意に視線を感じたような気がしてボクは顔を上げた。
 その視線の主は、恐らくバスルームの壁を半分埋め尽くす鏡からのものだった。
 白と金を基調としたバスルームの中でも一際異彩を放つ、悪趣味なほど大きな鏡は以前から
あるものだったが、緒方さんはこれを殊更気に入っていた。
 ボクを後ろから抱きすくめながら、あるいはボクの両手をその鏡に縋りつかせながら、彼は
ボクをゆっくりと苛んだ。そしてボクはいつも…生身の緒方さんと鏡の中の緒方さんに抱かれて
いるような、そんな感覚に酩酊した。バスルームに反響する声を抑えるどころか愉しんでいた。
 ボクがここに入ったときは進藤の名残で曇っていたが、ボクが浴びたシャワーの飛沫が曇りを
なくしている。ボクが動くたびに鏡に映るボクも同じように動き、それが目の端に映っていたの
だろう。今も、はしたない格好のボクを映している。
 一人でシャワーを浴び、後始末をしただけで興奮しはじめているボクを。

126裏失楽園:2003/06/02(月) 23:05
再掲しておくよ。ゴメン。
今2chに書き込めないんだけど、鏡妄想、マッサージ妄想すごく(・∀・) イイ!
好きだ!

127名無しさん:2003/06/03(火) 01:03
裏失たん、書き込めないのか?早く書き込めるようになるといいなあ。

128Shangri-La:2003/06/06(金) 04:39
(44)
「進藤…?進藤?」
霞がかかった意識の中で、アキラは慌ててヒカルを呼んだ。
つい今し方まで肌を合わせていたのがウソのように、
何度呼んでも、ヒカルは答えてくれない。
ドアを開けようとしても、ヒカルが体重を乗せていて開かない。
「進藤…、なんで……………」
ヒカルを詰る言葉は、声にならなかった。
自分を支えることが出来なくなって、そのままどさりと腰から落ちた。
何が起きたのか全く分からない。
ただ、ヒカルに拒絶された現実だけを、なんとか飲み込んだ。


全身の熱が引き始めると、罪悪感が急速にヒカルを支配した。
(家族の大事に、しかも両親が留守にしているこの家で
こんなこと、してるなんて……オレって親不孝者ってヤツだよな…)
ヒカルは、先刻、新しいアキラへ好奇心を持った事を後悔していた。
その淫らな姿がうしろめたさを強め、呵責に耐えきれなかった。
ドアの外からは呼ばれはしたが、答えずにいると
どさっ、と、鈍い音がして、静かになった。
少しして、ぺたん、ぺたん、と床が鳴ったので
音が遠ざかるのを確かめてから、ベッドの上にのっそりと横になった。
(お母さん、今晩も何ともないといいけどな…。
塔矢もこんな時くらい、余計な心配事増やさないで欲しいよ…)
「あーもう、ホント、疲れた………」
睡魔が枕元まで忍び寄ってきていた。
誘われるまま瞼を閉じると、行為の後の倦怠感が
静かに速やかに、ヒカルを深淵の眠りの奥底まで押し沈めた。

129Shangri-La:2003/06/06(金) 04:39
(45)
アキラは黙って俯き、頭からシャワーの湯をかぶっていた。
自分はこんなにもヒカルを求めているのに、伸ばした手が
触れるか触れないかのところでヒカルはひらりと身を翻し、
指先を掠めて一歩向こうに逃げてしまう。

今し方のヒカルの声が、耳から離れない。
ここまで怒っているのは初めての様な気がする。
それが自分に向けられた事は衝撃だった。
今日のヒカルは疲れているから、だから無意識のうちに
本当は心にもないことをしてしまっているんだ、と思いたかった。
でも、疲れているからこそ本音を隠すことなく
ぶつかってきたのではないか?とも思えてしまう。
いくら身体を重ねても、渇きを癒すことは出来なかった。
ヒカルが怯んでいるのが分からなかった訳ではないが、
自分を止めることができなかった。

降り注ぐシャワーの湯が氷のように冷たく感じる。
アキラはのろのろとではあるが事務的に自分を洗い清めると
重い足取りでバスルームを出た。
ヒカルは自分をどう思っただろうか?
そう考えただけで、ヒカルと顔を合わせる事が怖かった。
ヒカルの意識が、気持ちが変わってしまえば、
自分たちの関係は必然的にこれまでと変わってしまうだろう。
ヒカルの部屋へ続く階段が、まるで絞首台の階段のように思えた。

130Shangri-La:2003/06/06(金) 04:40
(46)
この扉を開けてもよいものだろうか?
ヒカルの部屋の前で、もう一度考えながら、
ノブを握る手にそっと力を込めると、ドアはあっさり開き、
ベッドの上で大の字に寝ころんだヒカルが目に飛び込んだ。
側によると、規則正しい寝息を立ててぐっすりと眠っている。
アキラは拍子抜けして一瞬呆けたが、
慌ててヒカルに布団をかけ直してやった。

今に始まったことでもないが、自分のためだけに
ヒカルに色々なことを押し付けてきたのは百も承知だ。
でも、部屋から出された時の、怒気を含んだヒカルの声が消えない。
またこうして、ヒカルの寝顔を見られる日は来るだろうか?
また以前のように抱き締めてはもらえるだろうか?
考えれば考えるだけ深みに嵌まっていく――今のアキラには、
ネガティブな思考を打ち消すだけの自信も余裕もなかった。

眠っているのなら、今日はもう帰ってしまおう。
昨日の今日で顔を合わせてしまえば気まずいし辛いけど
少し時間が経てば気持ちも落ち着くだろうし、
もしかしたらうまい対処方法も浮かぶかもしれない。
アキラはそれまでとは打って変わった
きびきびとした動きで手早く服を着ると
枕元の床に膝を突いて、ヒカルの寝顔を眺めた。
ヒカルはぐっすりと眠っている。
その安らかさこそが、アキラの心を締めつけた。
その苦しさに視界が白くぼやけてゆき、やがて何も見えなくなった。

131Shangri-La:2003/06/08(日) 03:41
(47)
ヒカルの意識が覚めたのは、6時少し前のことだった。
目は開かないが、病院での習慣として身に付いた起床時間だ。
何気なく伸ばした手が、空を切る。
その違和感に弾かれたように飛び起きると、
ヒカルは一人、自室のベッドの上だった。
慌てて周囲を見渡すと、アキラがすぐ目の前で
ベッドの端にやっと引っ掛かるように両腕をついて
こちらを見るようにして眠っている。

なんでこんなところで寝てんだろ、と考えながら
アキラの頬を指でそっと押すと
頬の肉が寄って、アキラの端正な顔が少し歪んだ。

本当なら昨日は、一人でゆっくりこれまでのことを整理するはずだったのに。
いろんな事がありすぎて、頭がいっぱいだったのに
コイツが無理やり割り込んできて、全部追い出して好き放題して…
ったく、何なんだよ。まったく……勝手だよなぁ。

今度は、頬を軽くつまんでみる。
(ぶっ……変なカオ…)
アキラが起きてこのことを知ったら怒りそうだ。
秘密の形をしたアキラの顔に、少しだけ和んだ。
指を放してアキラに声をかけ、ベッドで寝るよう促すと、
アキラは驚いたように目を見開いて、ヒカルを見つめた。

132Shangri-La:2003/06/08(日) 03:42
(48)
ヒカルの声は、いつかのように穏やかで優しかった。
顔を合わせるのが怖くて仕方がなかったアキラは、その優しさに驚いた。

「どうしたんだよ。オレの顔がどうかした?オレの後ろになんか―――」
ヒカルはそこで息を飲み、大きな動作で後ろを振り返った。
何もないことを確かめ、上も周りも見回し一瞬渋い顔をしたが
すぐその色を消し、アキラに向き直った。
「何もいないじゃん、ほら」
ヒカルはアキラの腕を取り、ベッドに引き上げ腕の中に収めた。
「大体なんでオマエだけ服着てんだよ…なんか邪魔」
呟きながら、ヒカルは慣れた手つきでアキラを剥いていく。
アキラはどうしていいか分からなくて、ごめん、とだけ答えて
後はされるがままでいた。直に触れる肌の温かさが嬉しかった。

ヒカルは素っ裸にしたアキラを一度きゅっと抱き締めると、
アキラの顔を覗き込み、指の背でアキラの頬を撫で上げた。

この後、ヒカルが何を言うか心配でたまらない。
アキラは目を閉じ、身を堅くしていた。心臓がきりきりと痛む。

そんなアキラの頬には、うっすら一筋の線が
眦から耳たぶの辺りまで見て取れた。
ヒカルはアキラの涙なんて見たことが無かったし、
泣くなんて想像もつかなかった。が、それは確かに涙の跡と思えた。
ヒカルはそれを拭うように、舌と唇でそのラインをゆっくりとなぞった。

133Shangri-La:2003/06/10(火) 00:56
(49)
ヒカルの口づけを頬に受けながら、アキラは初めて泣いたことに気づき、
また、帰るつもりが眠ってしまった自分を、かつてない程に呪った。
何を言われても躱しきる自信は、まだない。
「塔矢、どうしちゃったの?オマエ、おかしいよ」
その言葉には棘もいらだちもなかったが、余裕のないアキラはそれに気づかなかった。
―――来た………!
構えてはいたけれど、体中の血が一瞬で沸騰したような気がする。
この後、何を言うだろうか?昨日のボクに何を思っただろうか?
平静を装ってみても、これだけ身体が密着していれば
動揺していることなんか、あっさりバレてしまうだろう。
それでも努めて平静を装い、なにが、と聞き返した。
一方ヒカルは、何がおかしいのか聞かれても、答えようが無い。
全体的におかしかったんだもんなー…。
「だって、えーと、ほら、今だって、なんでそんなとこで寝てんだよ?
ベッドで寝ればいいじゃん。しかも一人で服まで着ちゃってさぁ…」
(なんだ、そんなことか。そんなのボクだって知りたいよ…大失敗だ)
「え?あ、そうだね、そういえば、なんでだろ…?」
「それに昨日だって、一緒に風呂入るって言ったり、襲ってきたり、
えーと、あと、んーと……」
アキラが淫乱すぎて驚いた、とヒカルは思ったが、口にすることは憚られた。
「襲った?襲うって…ボクが?キミを?」
「そうだよ。オマエ、覚えてないの?」
「確かに、キミとしたけど…ボクが、ボクから……?
ちょっと待って、頭の中、整理するから…」
「いっ、いいよ!覚えてないんなら、いいから、忘れてろよ」
ヒカルの言葉に構わず、アキラは慌てて記憶を辿る。
昨日の夕方からの記憶は、ヒカルを寝かしつけて、
それでもヒカルが夜半に起きてしまっていたところで途切れ
あとはただ激しく交わっていた事と、ヒカルに拒絶され後悔した記憶。

134Shangri-La:2003/06/10(火) 00:57
(50)

 最悪だ…………

入眠時の記憶がなくなる事は、頻繁ではないが
両親が家を空けるようになってから、時々経験していた。
ただ、これまでは、自宅で一人の時ばかりだったから
記憶が無い時間に何をしたのか、考えたことはなかった。
ヒカルとセックスしたことはたいした問題ではない。
もしヒカルが本当に眠れないというのなら
最終手段として考えていたからだ。

食事と睡眠は、生命維持の面から言えば最も重要な要素で
それが出来ない、摂りたいと思わないと言い切るヒカルは
絶対危険な状態に違いないし、
嫌だと言うなら、無理にでも摂取させるしかない。
食事はなんとかとれたし、睡眠だって大丈夫かも、と思っていた。
が、夜半にヒカルが起きてしまっていたのを見て
強制的に眠りにつかせる方法はないか、一瞬のうちに考え
結論として、ヒカルを襲う気になったのは事実だ。
いかに深い眠りを誘うか、分かっていたから――。
お風呂では勃ったし、できるはずだと思った。

それより問題は、その襲い方だ。
ヒカルの中の自分は、昨晩の記憶にあるような事を
するようなキャラクターではない。
どこか夢を見ているようで、なのに確かにヒカルをとらえていた記憶。
夢と現実との境目がすごく曖昧で、ふわふわと足下がおぼつかない状態で
促されるままに、いやそれ以上に、淫らに振る舞った記憶―――
そこから推察すると、凄いことをして誘ったのかもしれない。

135Shangri-La:2003/06/10(火) 00:58
(51)
「塔矢、塔矢ー、と、う、やっ、」
ヒカルがいくら呼んでも、アキラは考え事を止めない。
「とぉやぁ…」
思い切ってアキラの頬をつねると、ようやくアキラがこちらに意識を向けた。
「あ、ごめん、なに?」
「オレ腹減ってきたぁ…メシどうする?」
「お腹、空いたの…?」
昨日は食べさせるだけであんなに手がかかったのに、何なんだ???
アキラは思わずまじまじとヒカルを見てしまった。
「うん。当たり前じゃん。オマエ腹減ってないの?
ホント、胃袋小っちぇーよなぁ…」
「なべ焼きうどんでよければ、買ってきてあるけど…、食べる?」
ヒカルは嬉しそうに頷いて、もう一度アキラを抱き直すと
じゃぁもう少し寝たら食べようよ、と布団をかけ直した。
ふわり、と記憶のある匂いが鼻先を掠める。
「この布団、昨日は気づかなかったけど、進藤の匂いがするね」
「そう?」
「うん、ボクこの匂い、大好きだよ…」

ヒカルの体温と香水の残り香が、アキラを心地よく眠りへと誘う。
ずっとこうしていられれば、いいのに…
胸の中に不安を抱えたまま、ヒカルの腕の中で
アキラはひととき幸せな眠りに落ちた。

136Shangri-La:2003/06/10(火) 00:59
とりあえず、終わりです。
読んでくれた皆さん、ありがとうございます。
皆さんのキタ━!!!が、アキラたんの次に心の糧でした。

話が中途半端っぽい気もしなくもないんですが、
やししいヒカルたんの腕の中でハッピー?エンドにすることは
あらかじめ決まっていました。
実は消化していない伏線もいくつかあるのですが
その辺は、気にしないで下さい(w

自分の誕生日祝いに自分で買った限定販売の香水
(強烈に欲しかったので、衝動買いにそんな題目を付けただけだが)
に触発されて、匂いをかぎ分けるアキラたん妄想で(;´Д`)ハァハァ
しちゃったついでに、それを晒してみただけなんだけど
書く作業って思いの外自分をさらけ出す作業だったもんで
未熟さを思い知らされました。自分なんか全然ダメダメだけど
職人さんってホント偉いよ。職人の皆さん、いつもありがとう。

137Trap22</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/06/14(土) 00:30

血が、ポタポタと落ちた。
灰色のコンクリの床に、点々と赤い染みを増やしていく。
「………」
それは一瞬の出来事だった
身体に触れる寸でのところで、緒方の手はナイフを捕らえていた。
右の掌で、その刃先を握り締めるようにして――。
茫然とその様子を見ていたアキラだったが、ハッと我に返り、
「緒方さん!」名を呼んだ。
「……オレはこう見えても、多少武術の心得があるんでね」
緒方は言うが早いか、ナイフを持っている方の男の腕を高く持ち上げ、
無防備になった男の腹に強烈な蹴りを入れた。
「ガハッ!」
見事に決まったようだ。
男の身体が前のめりに折れ曲がるよう崩れ落ちる。
緒方が手を離すと同時に、カシャーン、ナイフが床に叩きつけられた。
「……やってくれるじゃねぇか」
遠巻きに見ていた男達の中から声がした。
一瞬にして空気が殺気立ったのが分かった。ピリピリと痛いほどに。
アキラは眉を寄せ、心配そうに緒方を見つめている。
緒方は出血している右手はそのままに、アキラを背に庇うようにして、
「……アキラくん、さっき言った通りの作戦でいこう。オレが合図をしたら走れ。いいな」
声をひそめて指示を出した。
「でも、緒方さんは…」
「そう簡単にやられたりはしないさ」
多勢に無勢のこの状況で、本当に無事でいられるだろうか。
不安でたまらず、アキラは緒方の上着の裾をぎゅっと握る。
すると緒方は怪我をしていないほうの手で、そんなアキラの手に静かに触れた。
「……大丈夫だ」
その温もりにアキラは瞳を伏せる。
子供の頃、よく頭を撫でてくれた手。あの頃と変わらない温かさ。
久しく感じていなかった緒方の優しさに、アキラは胸が切なくなった。
「――ヤっちまえ!」
次の瞬間、男達が一斉に襲い掛かってきた。

138Trap23</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/06/24(火) 00:22
「行け!アキラ!!」
緒方が突き放すように、アキラを押しやった。

それからのことは、よく覚えていない。
アキラは無我夢中でやみくもに走った。
力の入らない身体で、必死に出口を、光を目指して、駆け続けた。
誰かが追ってくる気配がしたけれど、それも途中で消えていった。
このまま走れば、本当に外に出られるのだろうか。
また、あの温かい世界に戻ることが出来るんだろうか……。
進藤がいて、碁を打って、時にはケンカをしたりして。
他愛もない日常の断片が、アキラの頭の中をよぎっていく。

――ザァッ。冷たい風が、頬に吹き付けてきた。
倉庫を出ると、深い夜の闇がアキラを迎え入れた。
光も温もりも存在しなかったが、それでも閉鎖された異空間から解き放たれたようで、
アキラは初めて大きく息を吸い込んだ。
すぐに緒方の車は見つかった。急いで助手席に乗り込む。
緒方の言った通り、ドアは開いていて、車にはキーが刺さったまま、エンジンはかかりっぱなしだった。
一人、助手席のシートに座りこんだアキラの身体はガタガタと震えている。
(…緒方さん…)
ガランとした隣りの運転席を見つめながら、アキラは置いてきてしまった緒方のことを思う。
どうか彼が無事に戻ってきますように……。
祈るような気持ちで、アキラは膝を抱えて、顔を伏せた。

――それから、どのくらいの時間が経ったのか。
ガチャリ。音がして、突如、運転席側のドアが開いた。
ビクッ。アキラの身体が大きく震えた。
顔を上げるのが怖い。もしも緒方でなく、男達の誰かだったら……。
だが、息の詰まるような時間は、そう長くは続かなかった。

139マッサージ妄想:2003/06/28(土) 23:03
迷ってるうちに11時になっちったんで
こっちにあげさせてもらいます。

140マッサージ妄想:2003/06/28(土) 23:04
(69)
シャワーの水流が勢い良く浴槽を叩き、水色のカーテンに包まれた小さな世界を
温かな蒸気で満たし始める。
浴槽の縁にアキラを腰掛けさせ、その脚と向かい合う形で社は浴槽内に胡坐を掻いた。

目の前のアキラの脚は昨夜と変わらずすんなりと伸びやかなラインを描いて、その中心を
隠そうともしないまま無防備に開かれている。
昨夜あんなにも白く瑕一つなかった表面に、今は自分の残した赤い跡がいくつも散っていた。
その跡の一つ一つに昨夜の情景を甦らせながら、アキラの片方の足を取ってしみじみと眺める。
(ああ、この足や・・・・・・)
昨夜、次にはいつ触れられるかわからないからと目に焼きつけたアキラの足は、変わらない
温かさで自分の手の内にあった。静脈の透けた足の甲にそっと口づけてからボディソープで
滑りを良くし、昨夜と同じように先端から揉みほぐしていく。
「んっ・・・・・・」
アキラがもどかしそうに小さな身じろぎを繰り返す。
それを無視して泡を立てながら愛撫のような軽いマッサージを足指から足の裏、足首へと
丹念に施していくと、アキラはピタンと音を立てて後ろの壁に凭れ、目を閉じビクビクと
何度も膝を震わせた。
その中心に、早くも熱く昂りきったものが頭を擡げている。
アキラを大切だ、守りたいと日頃は思っているはずなのに、こんな姿を見せられると
つい嗜虐心がムラムラと湧いて起こり、言葉で突っついて苛めてみたくなってしまう。

141マッサージ妄想:2003/06/28(土) 23:04
(70)
「あー、もうそんなにしてもーて・・・・・・なんや今夜は、昨夜にも増してノリノリみたいやなぁ?」
「・・・・・・キミが、妙な揉み方をするからだろう・・・・・・っ?」
悔しげに声を詰まらせて、アキラがまた蹴りを放って来た。あっさりとかわして足首を捉え、
泡まみれの親指を足裏に滑らせてぐりぐりと刺激するとアキラが堪らず腰を浮かせる。
「オレ、何もしてへんでー。セッケンつけとる以外は昨夜とおんなじ、至って普通の
マッサージメニューや」
「嘘だよ・・・・・・」
コツン、と壁に頭を預け、息を乱しながらアキラは言った。
「ならどんな風に昨夜と違う?ゆうてみ」
足指の裏の付け根をくすぐりながら優しく促してやると、アキラは目を閉じかすれた声を
上擦らせて答えた。
「こんなやり方・・・・・・足の先から、痺れて・・・んっ、・・・・・・溶けちゃうよ・・・・・・」
「そら、足揉み師冥利に尽きる言葉やな・・・・・・」
乱れるアキラの姿態をじっくりと目に焼きつけながら、新たなボディソープを手に掬い泡立てる。

足首から脛とふくらはぎ、滑らかな膝と膝裏、太腿へ。
時折焦らすように手を戻しつつ、甘い香りの泡で白い脚を侵していく。
その間アキラは目を閉じ、陶然と呼吸を震わせながらされるがままになっていた。
ふと思いついて呼びかけてみる。
「なぁ塔矢。目ぇ開いてみてくれへん」
「え?・・・・・・」

142マッサージ妄想:2003/06/28(土) 23:05
(71)
社の言葉に反応して開いた目は快楽に甘く潤み、普段よりも充血している。
その赤さはやはり、愛戯の興奮と体温の上昇のせいだけではなさそうに見えた。
複雑な気持ちが湧いて起こる。
(やっぱりさっきのは絶対、泣いた後の目ぇやと思うんやけど・・・・・・コイツ何で泣いとったんやろ)
そして何故今、さっきまで泣いていた事などなかったかのようにこうして快楽に身を任せて
いられるのだろう。泣いた理由は自分に明かさないままで。
やはり自分はまだアキラのことを理解できていない、と思う。
そしてアキラも自分のことを完全には頼ってくれていない。
それでも。

「なあ、塔矢」
「ん・・・・・・っ」
内腿をゆっくりとさすられながら呼びかけられて、返事なのか喘ぎなのかわからない声を
アキラが返した。項垂れたその表情はつややかに湿った髪に覆い隠されて見えない。
「アンタ、やっぱホンマに淫乱で、好きモンで・・・・・・」
手の中のアキラの脚がピクリと動く。
「オレのこと好きやゆうても、東京帰ったらまた他の奴と寝まくるんやろな。・・・・・・いや、
帰ってからに限らへんわ。帰りの新幹線の中でだって、隣に男が座ったらきっとそれだけで
カラダ熱くして、」
アキラが泣き声のような溜め息を洩らし緩慢に首を振る。だが少し手を滑らせて腰骨の辺りを
撫でまわしてやれば、途端に白い身体がビクンと跳ね上がり悲鳴のような嬌声が響いた。
「今やってこうして、オレに何言われてもちょっと体つついてやればエッロい声出して・・・・・・
アンタのそういうとこ、やっぱ憎たらしいわ。肝心な部分でオレのこと頼ってくれへんのも
寂しいし、腹立つし、・・・・・・そやけど、」
片手でアキラの片脚を抱いて泡まみれの白い太腿に頬を伏せ、空いた手でアキラのもう片方の
脚をそっと撫でる。

143マッサージ妄想:2003/06/28(土) 23:06
(72)
「そやけど・・・・・・好きや。優しいとこも腹立つとこも、全部・・・・・・」
肉体は熱く滾り立っているのに不思議と胸の内は穏やかだった。
アキラの抱えるものが自分には見えなくても、その見えない部分も全部ひっくるめて、
今目の前にいてくれる丸ごとのアキラを愛しいと思った。
だが社のその言葉が、アキラの身体に異変をもたらした。

「・・・んっ・・・・・・く・・・・・・っ!う、う、・・・っ、」
「・・・・・・。塔矢?」
突然ガクガクと大きく痙攣し始めたアキラの腿から驚いて顔を上げると、アキラは首から上を
薔薇色に染めて両手を浴槽の縁に突き、全身を痙攣させて何かを堪えている。
(え?エーと、これは・・・・・・もしかして・・・・・・)
「塔矢。塔矢、だいじょぶや。な?我慢せんでエエ」
膝立ちになりアキラの頬を両手で包んでやるが、アキラは固く目を閉じたまま激しく首を
振って社の手を払った。
そのままアキラの手が自らのモノに伸びようとする。咄嗟に身を起こし、アキラの両手首を
掴んでパン!と壁に押し付けた。自分でも何故そんな行動を取ってしまったのかわからない。
ただ愛おしさと驚きと嗜虐心がない交ぜになったような強い衝動が込み上げて、
その先に来るものを誤魔化さず見せろとアキラに強いるような心情だった。
動揺したようにはっと潤んで見開かれたアキラの瞳と目が合う。
「・・・塔矢・・・」
その眼差しも表情も心に焼きつけながらコツンと額を合わせ、手首を掴んでいた指を
移動させて、強張り震えるアキラの指としっかり絡め合わせる。
小刻みに震えるアキラの吐息が近い。
その唇に己の唇をそっと触れ合わせてから、アキラの耳の中へ注ぎ込むように囁いた。
「・・・・・・好きや」
途端に感極まったような甘い呻きが細く長く浴室に響き、アキラの今日まだ一度も触れられて
いない陰茎から社の腹部へと、叩きつけるように白い迸りが飛び散った。

144名無しさん:2003/06/28(土) 23:22
こんなところにマッサージ妄想キタァァ――――(゚∀゚)――――――!
感じすぎるアキラたん。やっぱり社のことが好きなんじゃないのか?
いや、アキラたんこそ心の底では愛されているという証拠が欲しかったのかもしれない。

あちらでは書き込みができず、いつも指をくわえていた俺。
久しぶりにキタ――!できて嬉しい。

145名無しさん:2003/06/28(土) 23:59
キタ━━━(゚∀゚)━━━(゚∀゚)━━!!!!! !!!!! ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)
「好きだ」と言う言葉に異常に反応するアキラたんハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)
だがなぜだ?何かトラウマがありそうだな・・・・。社と同じでこのアキラたんを
理解出来て無いぞ!!

今日はハァハァ(;´Д`)出来ずにがっかりしてたがここでハァハァ(;´Д`)出来て嬉しいぞ!

146名無しさん:2003/06/29(日) 03:14
マッサージキテタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━!!!
逝ってもうた━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━!!!
やっぱ愛情が伴うと感じ方も倍増するんだよな。
アキラたんは今までは快楽追求のセクースが主だったのかもな。
でも確かにトラウマがあるような気もするし、社!アキラたんの心も珍子もしっかり
マッサージしてやるんだぞ!
今日は昼間から夜にかけて客人日和だったみたいだな。

147マッサージ妄想:2003/07/02(水) 22:42
(76)
ばらばらと浴槽に叩きつけられるシャワーの音すら、自分たちを煽っているように聴こえた。
男二人には狭過ぎる浴槽の中で、高い声と共にアキラの体重が腿と腰とに掛かるたび、
胡坐を掻いた膝や背中が浴槽と擦れ合ってごりごりと痛んだ。明日の朝には痣だらけになって
いることだろう。
(いくらでも痣になってくれたらエエ)
この一時を共に過ごした後はまたアキラのいない長い日常が始まる。
痣。肩の噛み傷。つややかな湯呑み。一晩だけアキラの身体を包んでいたシャツ。
そんなものをよすがにしながら、また来る日も来る日も自分の腕の中にいないアキラに
焦がれ続けるしか自分には手立てがないのだから。

「ん?塔矢、どした」
引っ切りなしに揺すられ切ない喘ぎを洩らしながら、アキラが懸命に身体を捩ってこちらを
向こうとするのに気づき社は一旦動きを止めた。
「・・・かお、」
「ん?」
小刻みに震える呼吸を繰り返す唇に耳を近づけてやる。
「顔が見えない、・・・・・・キミの顔が見たい」
「こうか」
濡れた肩に後ろから顎を密着させて覗き込み、しっかり視線を合わせてにっと微笑んでやると、
アキラも上気し汗に濡れた顔で嬉しそうに笑った。
切れ長の大きな瞳がキラキラと潤んで、もうその目に血の色を加えていたのが涙だったか
欲情だったかわからない。

148マッサージ妄想:2003/07/02(水) 22:42
(77)
「社。もう一度、聞きたい」
声をかすれさせてアキラは言った。
「ん?」
「さっきの言葉・・・・・・」
ああ、と頷いてしっとり湿った黒髪を掻き分け、湯で濡れた指で耳と耳の後ろをなぞりながら
唇を寄せる。同時に片手でアキラのモノを軽く握り込み、焦らすようにゆっくりと扱いてやる。
濡れた白い背がびくびくと反る。
そうしてからもう一度全ての動きを止めて、まるい穴の奥へと注ぎ込むように囁きかけた。
「塔矢。・・・・・・好きや・・・・・・」
途端に目を閉じたアキラの内部と全身が切羽詰ったリズムで激しく痙攣し、一際高く上がった
声に引きずられるようにして、社はアキラの奥に熱を叩きつけた。

その夜は、いくらでも抱ける気がした。
アキラでもセックスで音をあげることがあるのだと初めて知った。
放心状態のアキラを抱きかかえシャワーで身体を流してやりながら、社は昨夜自分がアキラの
肌に散らした赤い跡をもう一度、一つ一つ丹念に吸い上げていった。
アキラが自分と過ごした証の色濃い跡が、出来るだけ長くアキラの肌に留まるように。
同時にアキラにも自分の肩に歯を掛けさせ、もう一度強く噛み跡を残させようとしたが
何度促してもアキラの顎に力が入らず、諦めた。
「エエよ、塔矢。もうエエて」
「・・・・・・うーっ・・・・・・」
ぐずる子供か唸る獣のような声を立てながら、アキラは悔しそうに何度も社の肩に食みついた。
だが甘噛み程度に歯を立てただけですぐに力が抜け、唾液で社の肩を濡らすに留まってしまう。
そんなアキラを引き剥がし、腕に抱いてポンポンとあやすように首の後ろを叩いてやる。
「だいじょぶや。・・・・・・跡なんか付けへんでも、オレ、アンタのこと忘れへんし」
な?と笑ってみせると、力の入らなさそうな頬と顎で、アキラはそれでも嬉しそうにかすかに笑った。

149断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/10(木) 01:25
>108 の続き
相変わらず、Sアキラによるヒカル虐め(セクハラ?)続行中。
趣味に合わない方はスルーしてくれ。

150断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/10(木) 01:26
昼飯なんか食べる気にならなくて、用意されたお弁当もかなり残してしまった。
中々進まない上に、途中で箸を置いてしまったオレを見て、和谷が不思議そうに言う。
「なんだ?進藤。具合でも悪いのか?」
「ん……」
悪いっちゃ、悪い。身体の具合よりも精神的なもんのほうが大きいんだろうけど。
「おまえがメシ残すなんて、風邪でもひいたか?」
「オレだって食欲ないときぐらいあるよ!」
ムッとして苛ついた声で返したら、
「ふーん、」
と、和谷は何か言いたそうな感じでじろっとオレを見た。
「ま、いいけどさ。何があったんだかは聞かねーけど、とりあえず午後はしっかりやってくれよ。」
「なんだよ、午後は、ってその言い方。午前中だってちゃんとやってたろ!」
「ちゃんと?あれが?」
人の言葉尻を捕らえたような和谷の言い方にオレはますます苛つく。
「朝からずっと誰かさんの方ばっかりちらちら気にして、気もそぞろだったじゃん。
でもってアイツの方はさっぱりだし。喧嘩でもした?」

……誰かさんって、やっぱ塔矢の事か?
自分じゃそんなつもりなかったけど、そんなにオレは塔矢の事を気にしてたのか?
そうかもしれない。だってあの時以来、塔矢に会うのは初めてだったんだから。
和谷って結構鋭いんだ。ちょっとびびった。
「まあ、そんなとこかな……」
たいした事じゃないってふうにオレは言った。
喧嘩、なんかならまだよかったんだ。

「全く、おまえと塔矢って仲がいいんだか悪いんだかわかんね―よな。」
そう言って和谷はお弁当を片付けて、先行くよ、と言って部屋を出て行った。

151断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/10(木) 01:27
公開対局やら指導碁やらのイベントも随分慣れてきたけど、やっぱり疲れる。
プロって手合いだけじゃなくてこういうイベントも多いんだって、最近やっと実感してきた。
でもオレはやっぱ敬語とか得意じゃないし、オジサン達相手にも、ついついフツーの喋り方をしてしまっ
たりして、棋院の人には失礼だとか言われて怒られるし、和谷には馬鹿にされるし、でも、お客さんだっ
て喜んでるんだからいいじゃねーか、と言ったら、ちっとは塔矢を見習え、なんて言われてしまった。
塔矢はこういう場にも慣れてるみたいで、いつもみたいに涼しい顔で多面打ちの指導碁をこなしていた。
そう言えば囲碁サロンでも指導碁とかしてたし、大人相手の指導とかも慣れてるんだろうな。
塔矢の指導碁は人気らしい。なんてったって「塔矢アキラ」は既に囲碁界のブランドみたいなもんだし。
強さはもちろんだけど、あのルックスも随分ものをいってるんだろうな。髪も眼も真っ黒で、すごく色白だから、
白と黒の碁石みたいだな、とかオレは思ってた。
そんなところまで塔矢は「若き日本囲碁界の象徴」そのものって感じだ。

こうやって塔矢を見ていると、忘れてしまいそうになる。
あんな事があったなんて、信じられないと思う。
他の誰に言ったって信じないと思う。

でも、あんな風に愛想よく、お人形みたいにキレイな、でもお人形みたいに冷たい笑顔をばら撒いてる
塔矢を見てたら、何だか無性に腹が立ってきた。
この大嘘つき。
いつもそうやって皆を騙くらかしてたんだよな
何が囲碁界の貴公子サマだ。
清廉潔白、汚いことなんか何も知りません、みたいな顔をして。
オレにあんなコトしたくせに。

152名無しさん:2003/07/10(木) 01:38
断点キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━!!!
久しぶりだな!また会えて嬉しいぞ!
アキラたんは俺のS心を刺激するが、サディスティックなアキラたんも魅力的だ。
アキラたんの深層にはいろんなものが渦巻いてそうだとも思う。
だが実は深いものは何もなく、ただ野性と欲望だけで動いてるようにも思える。
究極の愛に憧れてたりするようにも見える。アキラたん万歳!!!
和谷・・・またアキラたんの気まぐれで餌食になったりしてな(w

153断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/10(木) 22:57
ノックもせず、物音を立てないようにしてドアを開けたら、やはりそこに彼がいた。
「……塔矢、」
ヒカルが低い声で呼びかけると、アキラは一瞬動作をとめ、それから酷く緩慢な動作で振り返った。
「よくよく懲りない人間だな、キミも。学習能力というものがないのか。」
なんだかもう見慣れてしまったような無表情なアキラを見て、ヒカルの怒りは急速にしぼんでいった。
アキラを責めてやりたいとか、詰ってやりたいとか思っていたのは只の口実にすぎなくて、何とかして
近寄りたいと、話をしたいと思っていた事に気付いてしまった。
なんて情けないんだろう、と思いながら、それでも口を開く。
「話がしたくて……」
「ボクはキミと話すことなんてないね。」
冷たく切って捨てるアキラを上目遣いに睨みつけてヒカルは問う。
「…塔矢はオレが嫌いなのか?」
「何を今更。」
当たり前の事を聞くな、と、アキラは鼻で笑って言う。
「でもっ…」
声を詰まらせながら、それでもヒカルは必死に食い下がる。
「それでも、塔矢、オレはおまえが…」
「言うなっ!」
言い出したヒカルを、アキラが鋭い声で遮った。
「…言わせない。そんな事。許さない。」
言われたヒカルは大きく目を見開き、次いで、アキラの言葉の理不尽さに噛み付くように言った。
「…許さないって、何だよ。オレが何言うかなんて、おまえの許可なんかいらねぇよ。
おまえが許さなくたって嫌だって言ってやるよ、おまえが、」
「やめろッ!!」
「おまえが、好きだッ!!」
叩き付けるように言ったヒカルを、アキラは息を飲んで見詰める。
「よくも…よくも、そんな事を、言ったな……」
「ああ、言ったよ。言ったがどうした。
何度でも言ってやる。おまえが好きだ。
好きだ好きだ好きだ好きだ好きだッ!
おまえが何て言おうと、何しようと好きだ!」
顔面を蒼白にし、怒りに拳を握り締めるアキラに向かって、ヒカルは悲痛な声で叫ぶ。
「なんで、なんでオレが好きだって言ったらおまえが怒るんだよ!?」
「なんでだって?よくもそんな事が言えたな。何も、何もわかってないくせに…!」

154断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/10(木) 22:57
ヒカルを睨みつけていたアキラは、ようやく湧き上がる怒りを押さえ込んで、低い声で言った。
「…だから、だったらどうだって言うんだ。それで、どうするつもりだ。
キミがボクを好きだって、だからどうした。それがなんだ。
キミがどう思おうと、ボクはキミなんか好きじゃない。」
「ウソだ。」
間髪入れずにヒカルは言う。
「――何が、嘘だって?」
「オレを好きじゃないなんて、ウソだ。おまえだって、おまえだってオレを好きなくせに。」
まるで予想もしていない事を言われたように、アキラはまた大きく目を見開く。
そこに付けこむようにヒカルは続ける。
「だって、おかしいじゃないか。オレがおまえの事好きなのが気持ち悪いとかって言うんなら、まだ、
わかるよ。オレだって自分がヘンなんじゃないかとか思ったし、おまえ以外の男なんて絶対ヤだし、
絶対考えられないし。」
ギリギリと睨みあげる視線に怯みそうになるのを隠して、ヒカルは必死に言い募る。
「おまえだって言ったじゃないか。オレの事、好きだからゴーカンしたんだろ。
でなきゃ、あんなこと、するかよ。好きでもないのに。ヤりたいなんて、思うのかよ。しかも、男を。」
ヒカルがやっと言い終えて挑むようにアキラを見上げると、相対するアキラの目がすうっと細くなった。
「……馬鹿馬鹿しい。ボクがキミを好きだって?」
平静を取り戻したアキラは冷たく言い捨てる。
「おめでたいね。そんな事、考えてたのか。
ふ、キミの理論からすると世の強姦魔は皆被害者に好意を持っていたとでも言うのか。」
アキラがすっと手を伸ばしてヒカルの前髪に触れると、ヒカルがビクリと身を竦めた。
その様子にアキラは冷ややかな笑みを浮かべながら、身体を縮こまらせながらアキラを見上げるヒカル
の瞳を覗き込む。
「確かに、キミに欲情したのは事実だよ。
そうやって怯えた目でボクを見るキミは実にボクの劣情をそそるよ。
どうしたらもっとキミを痛めつけてやれるだろうって、考えるだけでゾクゾクするよ。
だがそれは好意なんかとは無関係だ。」
ヒカルの前髪をくるくると弄びながら、薄く笑んだまま、アキラは続ける。
「相手が男だろうと女だろうと挿れて出すことには変わりはない。
好意なんかなくたって、いくらだってできるさ。
嫌がらせだって、鬱憤晴らしだって、」
ヒカルを見ていた瞳にギッと力がこもる。
「憎しみからだって。」

155断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/12(土) 00:42
「オレが…憎いのか…?」
「ああ。」
「そんなに、オレの事、キライなのか。」
「ああ、嫌いだね。」
「……どう…して。」
「理由なんて、ありすぎて並べてたらきりがない。」

「時々、殺してやりたいと思うくらい憎らしいよ。
でも、そこまで手を汚す気にはならないからしないだけだ。」
「こ、殺さなく、たって、でも、犯罪、だろ…」
「そうだね。でも強姦は親告罪だから、被害者が訴えて出ない限り犯罪にはならない。
それとも訴えるかい?」
微笑みを浮かべながら優しく甘い声で囁きかけるアキラの目は、けれど氷のようだ。
ヒカルの髪を弄っていたアキラの手は、次いで、ヒカルの頬に触れる。
ビクリとヒカルは顔を強張らせる。
アキラの手はそのまま顎のラインを伝い、首筋に軽く触れた。
緊張でヒカルの全身が強張る。
手のひらでヒカルの細い首を包むようにしながら、アキラは顔を近づけ、ヒカルの目を覗きこむ。
「威勢のいい事を言っていたわりには、ボクが怖いのか?」
頚動脈を撫で上げられるように手を動かされ、思わずヒカルがきゅっと目を瞑ると、その手は何事も
なかったかのように離れていった。
「首を締められるとでも思ったのか?殺しはしないって言っただろう。」
クス、とおかしそうに笑った後、アキラはキッと表情を引き締め、一転して冷たい声で言い放った。
「とっととボクの前から消え失せろ。目に入るだけで不愉快だ。」

156断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/12(土) 00:43
アキラから離れるように一歩下がって、けれどそれ以上は動かずにじっとアキラを見ているヒカルに、
アキラは苛ついたように言った。
「出ていけって言ったろう。そんなにボクを怒らせたいのか。
また痛い目にあいたくなかったらさっさとボクの前から消えろ。目障りだ。」
「なっ、なんだよ、怖くなんか、ねぇよ。」
また一歩あとずさってから、けれど自分を奮い立たせるようにヒカルは言う。
「そうだよ。怖くなんかねぇよ。
それに痛い目ってなんだよ。またオレをゴーカンでもするって言うのかよ。
そんな事したいんなら好きなようにしろよ。ヤりたいんならヤれよ。
どうせもう一回ヤられてんだから、二回だって三回だって同じだよ。
でもな、オレはおまえがどんな事したって、おまえの事、キライになんかなってやんないからな。」
勢いづいたヒカルは挑むようにアキラを見上げて続ける。
「キライになんかなってやんないからな。
何したって好きだからな。
覚えてろよ。おまえから離れてなんかやんないからな。」
ヒカルを睨みつけていたアキラの眉が不快げに強張る。
が、何かを言おうと口を開きかけたアキラは、その口を閉じ、ヒカルを睨みつけてからくるりと背を向けた。
「なんだよ、ヤらねぇのかよ。」
ヒカルを置いて出て行こうとしたアキラの背中に、ヒカルは言葉をぶつける。
「意気地なし。」
歩き出しかけていたアキラの足が一瞬止まり、けれどまた歩き始める。
それを引きとどめるようにヒカルは続ける。
「根性なし。臆病者。オレが怖いのかよ。」
ドアノブに手をかけていたアキラはゆっくりと振り返り、冷たくヒカルを一瞥する。
「よく、言ったな。」
負けじとヒカルもアキラを睨みつける。
低い、氷のような声が響いた。
「望み通り抱いてやろうじゃないか。」

157二人の未来</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/07/15(火) 00:47

若獅子戦が終わって、帰り道、岡と庄司は今日の進藤ヒカルと塔矢アキラの対局について語り合っていた。
「まさか、進藤があんな手を打ってくるとは思わなかったよな〜」
「さすがの塔矢アキラもかなり追い詰められてたっていうか」
どっちが勝ってもおかしくなかった。
まるでタイトル戦を見ているような、白熱した対局だった。
よきライバル達のぶつかり合う闘志に、ギャラリーはただただ圧倒されるばかりで。 
「……いつかオレ達もあんな風になれたらいいな」
「ああ、ボクもそう思うよ」
――興奮冷めやらず、お腹も空いていたので、近くにあったハンバーガーショップに入り、そこでも延々と語り合い、
気がつけば、すっかり日も暮れ、外は暗くなっていた。
「いっけね、母さんに怒られちまう」と庄司。
「ホントだ。もうこんな時間。遅くなっちゃったね」と岡。

158二人の未来</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/07/15(火) 00:49

店を出て、「駅までの近道だ、こっちの通りを抜けようぜ」と庄司が裏通りへと入っていく。
岡は落ち着かない様子で、辺りを見回しながら、そわそわとしている。
「何か、この辺ってアレだよな…」
うさんくさげなスナックや、ナニを売っているのか分からない怪しげな店、ラブホテルなどが建ち並んでいる。
こんな時間に子供達が通るような場所ではないのだ。
「ここを抜けるとすぐなんだから、早く行こうぜ」
庄司と岡は足早に歩いていたが、前を進んでいた庄司がいきなり立ち止まった。
「わっ」
岡が庄司にぶつかりそうになって、声をあげた。
「な、なんだよ。急に止まって…」
「しっ。おい、あれ見ろよ」
庄司の見ているほうに、視線を向ける岡。
彼らが見ているものは――つい数時間前まで対局していた、話題の二人−進藤ヒカルと塔矢アキラの姿だった。少し離れたところにいる彼らは何か言い争いをしているようで、腕を掴もうとした進藤の手を振り解く塔矢。
一方的に塔矢が怒っているような感じで、進藤をにらみつけている。
「あの二人…今日の対局のことでケンカしてんのかな?」
「…う、うん…?」
しかし、何となく何となくだが、それとは違うような雰囲気が。
おかしい。まるで、痴話喧嘩を見せられているような気分になってくるのだ。
庄司と岡は黙って事の成り行きを見守っていたが、いきなり進藤のほうが行動に出た。
塔矢の両肩を掴んで、自分の方へ引き寄せると――。
岡達の位置からは、進藤の背中しか見えなかった。塔矢の姿はちょうど進藤に重なり合うように隠れている。
だが、ナニかしているのは分かった。たぶん至近距離でなくては出来ないようなことを。

159二人の未来</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/07/15(火) 00:52
「………」
しばらくして、二人は離れたようで、進藤の影からチラリと塔矢の横顔が見えた。
塔矢の頬には紅みがさしていて、怒りのため…とは違う気がする。
それから二人は少し言葉を交わした後、塔矢は進藤に手を引かれるようにして、目の前の建物に入っていってしまった。
視界から消えてしまった二人に茫然とする岡と庄司。
しばらくして、庄司がぽつり。
「…なぁ、あいつら、あの中に入ったよな…」
「…うん…」
「…これから二人きりで検討でもするのかな…」
――ラブホテルで?
庄司と岡は顔を見合わせると、複雑な表情を浮かべた。
そして「見なかったことにしよう」どちらからともなく提案され、事実は闇に葬られる。

無言で駅へと向かいながら、庄司と岡は、それぞれに心の中で誓いを立てた。

『いつかオレ達もあんな風になれたらいいな』
『ああ、ボクもそう思うよ』

前言撤回。


 オレたちは
        あんな風にはなりません!(たぶん)
 ボクたちは

  おわり。

160</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/07/15(火) 00:54
あ、「おわり」が変な位置に来た(;´Д`)
もっと右に配置したつもりだったのに・・・

161断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/16(水) 00:05
「おまえさぁ、こーゆーとこ、前にも来たことあんの?」
「まさか。」
「だってさぁ、なんかすげー慣れてるみたいで……」
ヒカルの言葉に、アキラはさも不愉快そうに眉をひそめ、侮蔑するような表情でヒカルを見返した。
だって部屋に入る時だって、全然迷ったりとかしてなかった。初めて来たふうになんか見えなかった。
誰かと―――誰と、来たことがあるんだろうか。

塔矢アキラとラブホテル。あまりにも似合わない単語の取り合わせだ、とヒカルは思う。
けれどそれを言ったら、今までに知ったアキラの見た事も無い一面が、あまりにも「塔矢アキラ」らしからぬ
ものでもあったのだが。
誰かに言う気なんかこれっぽっちも無いけれど、それでももし誰かに言ってみたところで、信じる人なんか
いる筈がない、とヒカルは思った。

妙に可愛らしい少女趣味なピンクのフリルのベッドカバーが、いかにも、といった感じで居心地が悪い。
本当に、本気でする気なんだろうか。
挑発したのは自分のほうだけど、まさかこんな所にまで連れてこられるとは思わなかった。
本当に、あいつが何を考えているんだかさっぱりわからない。
これからどうしたらいいんだろう。どうするつもりなんだろう。
怖い。本当はすごく怖い。でもここまで来て今更逃げ出せるわけもないし。
「……塔矢、」
所在無さげに辺りを見回していたヒカルは助けを求めるようにアキラを見た。
ヒカルがきょろきょろとしている間に、いつの間にか華奢な籐製の椅子に腰掛けていたアキラがヒカルを
見上げていた。相変わらず冷たい視線に怖気づきそうになる。けれどここで逃げたら負けだ、と言う意識
もあって、ヒカルもきゅっと顔を引き締めた。
「塔矢、」
もう一度呼びかけると、長い脚を見せつけるように組み、身体の前で軽く指を組み合わせたアキラは、
傲岸不遜にヒカルを見上げたまま、言い放った。
「脱げよ。」

162断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/16(水) 00:05
「脱げよ。ボクが好きなんだろう?ボクに抱いて欲しいんだろう?
だったらさっさと脱げよ。それとも着たままされる方が好きなのか?」
突然の言い草に大きく目を見張ってアキラを見返す。けれど変わらずに冷ややかな視線で見上げて
いるアキラに、ヒカルも覚悟を決め、ギリ、と睨み返した。

アキラを睨みながら上着を脱ぎ捨て、更にネクタイを解き、ワイシャツのボタンを一つ一つ外していく。
その様子を、アキラは無言のまま無表情に見ていた。
ヒカルはシャツを脱ぎ捨て、更にTシャツの裾を捲り上げ、頭から引き抜いて放り投げる。
ぱっと見だけは豪華そうなシャンデリアの安っぽいキラキラした光の下で、ヒカルは裸の上半身を
晒してアキラに向き合う。
が、変わらずアキラは冷ややかな視線を向けてヒカルにその先を促した。
アキラの目を見据えたまま、ヒカルはベルトに手をかけた。

最後の一枚はさすがに躊躇した。
何しろこっちはパンツ一枚になっているのに、向こうは相変わらずきっちりとスーツを着込んで、眉
一つ動かさずに自分を見ているのだ。
屈辱と羞恥と怒りとで震えそうになる身体を必死にこらえて彼を睨み付けた。
だがその視線を受けても、彼はびくともせずに変わらぬ冷ややかな視線を返した。
それでも、ここまで来て引き返すなんて出来ない。
自棄のように乱暴に下着を足から引き抜き、バシッと音を立てるほどに放り捨てて、震えをこらえる
ように両拳を握り彼の前に仁王立ちになって全てを曝け出した。

163断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/16(水) 23:19
上から下へゆっくりと降りていった視線がまた上に戻り、ヒカルの目を捕らえる。
言葉もなく真っ直ぐ見る目に耐え切れずに奥歯を噛んでぎゅっと目を瞑った。
普段以上に肌の表面が敏感になっているような気がする。
空調の風が肌にあたるのがイヤな感じだ。
早く。
早く何とかして欲しい。
せめて何かひとこと言って欲しい。
塔矢。

空気が乱れたような気がして目を開けると、アキラが椅子から立ち上がり、けれどヒカルを見ては
いない事に、ヒカルは呆然とした。
「…塔矢……!」
その声が届いてもいないように、アキラはヒカルを見ないまま、その横をすり抜けようとする。
「待てよ、なんだよ、どこ行くつもりだよ。」
思わず引きとめようと伸ばした手を無言ではらわれて、ヒカルの目は大きく見開かれる。
「どういうつもりなんだよ、おまえ!」
やっと振り返ったアキラはヒカルをちらりと一瞥して言い捨てた。
「――やる気が失せた。」
「…なんだよ!?それ!!」
「いくら据え膳でもそんなんじゃ食欲がわきやしない。出直してきな。」
「な…ふざけんなよ!」
「何が?」
「何って、ここまでさせておいて、それはないだろう…!」
「キミが勝手にした事だろう。
残念ながらその気になれそうにないから失礼させてもらうよ。」
「ふざけんなよ、塔矢、いい加減にしろよ!!」
「触るなッ!」

164断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/16(水) 23:19
引き止めようと咄嗟に手首を掴んだヒカルの手を、アキラは物凄い勢いで振り払った。
弾みでよろけたヒカルの裸足の足が絨毯の上で滑り、ヒカルはそのままバランスを崩して尻餅をついた。
「あ……」
アキラは自分の手首を押さえたまま、自分のしてしまった事にびっくりしたように無防備に目を見開いて、
すまなそうにヒカルを見下ろした。だが次の瞬間、元の表情に戻ってヒカルから目を逸らし、またドアに
向かおうとした。
「待てよ、塔矢ッ!!」
ヒカルは跳ね起きてアキラの前に回りこみ、ドアの前に立ちはだかる。
行く手を阻まれたアキラは眉を跳ね上げてヒカルを睨みつける。
「いい加減にしろ。ボクに構うな。つきまとうな。一体何様のつもりだ。」
「……何様のつもりって、そっくりおまえに返してやるよ。おまえこそ、何様のつもりだよ。
何考えてんだよ、一体。」
「キミはボクを好きだという。だから何だ。それがどうした。それでキミはどうしたいって言うんだ。
そんなもの、迷惑なだけだ。」
吐き捨てるように言ったアキラはヒカルから顔を背け、拳を握り締める。
「ボクに必要なのは碁だ。それだけだ。それだけで十分だ。それだけがボクの全てだ。
それ以外は要らない。何も要らない。必要ない。」

165断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/16(水) 23:20
―――要らない。
その言葉を聞いてオレはフリーズしてしまった。
最初に塔矢にヤられた時にも言われた言葉だ。
「後悔してるよ。キミなんかに関わってしまった事を。キミに出会ってしまった事を。
キミさえ、キミさえいなけりゃボクは……」
向き直ってオレを見ている塔矢の顔が今までとは違った風に歪んでる気がした。声が震えてる気がした。
今だ。今、塔矢を掴まえなければ。
頭の中で何かが必死にそう叫んでいるのに、オレは動く事ができずにバカみたいに突っ立ったままで、
そのオレの横を塔矢は通り過ぎた。ギィーッと軋んだ音をたててドアが閉まった。

166断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/19(土) 02:08
ピンク色のひらひらした飾りのついた妙に可愛らしい、無意味に広いベッドの上に一人で転がって、
ヒカルは天井を見詰める。

ラブホテルって、ヘンな所だよな。鏡張りの天井とか、ぐるぐる動くベッドとか、聞いた事はあるけど、
ここはそーゆーんじゃないっぽいな。やっぱ女の子狙いでこんなに可愛くしてんのかな。でも女の子
はこーゆーのもロマンチックで好きなのかもしんないけど、こーんなピンクのフリフリなんか、男として
は萎えそうだよな。それともヤれるんならそんなのどうでもイイのかな。
……まさかこんな形でこんなとこに来るとは思わなかったな。
信じらんねーよ。
まさかさ、塔矢と、こーんなブリブリのラブホテルなんかに来るなんてさ。
しかもオレがヤられる側だなんてさ。
ハハ、笑っちゃうよな。

オレ、何やってるんだろう。こんな所で。

――― キミさえいなけりゃ

声、震えてたような気がする。
どういうことなんだ?塔矢。
なんで…なんでおまえがそんな泣きそうな目をするんだよ、塔矢。
泣きたいのはこっちのはずなのに。
ずるいよ、塔矢。
そんな顔されたら、おまえの事、嫌いになれないじゃないか。憎めないじゃないか。
オレ、バカじゃないか。
どうかしてる。
こんなとこで、何してるんだ。

167断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/19(土) 02:09
どう考えたってオレのほうが酷い目にあってるのに、なんでアイツが傷ついてるような気がするんだろう。
必死で強がってるように見えてしまうのはなんでなんだろう。
オレなんかに関わんなきゃよかった、なんて。
オレ、おまえにそんなに酷いこと、したか?
佐為のこと?
それともおまえを好きだって言った事?
おまえにキスしたいとか、触りたいとか思った事?

オレがおまえを好きだっていうのが、そんなに嫌なのか?
どうして――オレを、憎んでるなんて言うんだ?
どうして「オレさえいなきゃ」なんて、そんな事言うんだ?
そんなに、おまえにとってオレは―――いないほうがいい存在なのか?

168断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/22(火) 00:43
――― 好きだよ、進藤。

突然、アキラの甘い――嘘が、ヒカルの耳によみがえってきた。

信じたりなんかしてねぇ。
あんなの、最初っからウソだってわかってた。そんな筈ないってわかってた。
それでも――ウソでも何でもよかった。
こんな風に放り出されるくらいなら、バカにされるんでも、無理矢理ヤられるんでも、痛くっても怖くっても、
まだそっちのほうがマシだ。こんなとこに一人で放っとかれる事に比べたら。

「クソッ!」
身体をうつ伏せに反転させて拳を振り下ろすが、柔らかいマットレスはその衝撃を吸収してしまう。
「畜生ッ!!」
もう一度、拳を振り下ろす。
それでも、頭の中ではアキラの言葉がぐるぐると回って耳を離れない。

…好きだよ、進藤…好きだよ、進藤…好きだよ…好きだよ…好きだよ……

「やめろッ!」
耳に残る声を打ち消すようにヒカルは叫ぶ。
「やめろ、やめろ、やめろ…」
あれはウソだ。オレをバカにするためだけの、ウソだ。そんな言葉に未練がましくしがみ付くな。
どうせなら、もっと酷い言葉を思い出せばいいんだ。そんな事言うはずないとか、殺してやりたいくらい憎い
とか、触るなとか、つきまとうなとか。
「やめろッ!塔矢!!」

…好きだよ、進藤…

「塔矢……なんで、なんでそんなにオレが嫌いなんだよ。」

169断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/23(水) 22:39
嫌われてるなんて、憎まれてるなんて、あの日、塔矢にぶたれるまで気付かなかった。
いや、ずっと前、プロになる前は確かにそうだったかもしれない。
「もうキミの前には現れない」と言われ、「キミが?」と嘲られ、やっとプロ試験に合格して、やっと
並べたと思ったら思いっきり無視されて。
確かにあの頃だったら、オレは塔矢に嫌われてると思ったかも知れない。でも、オレにはそんな
事、関係なかった。そんな事関係無しにオレはオマエを追いかけた。オレなんか見ないで、ずっと
前だけを見て背中を伸ばして真っ直ぐに歩くオマエを、オレはずっと追いかけて、いつか追いつい
てやる、いつかオマエの目をオレに向けさせてやるって。

塔矢はいつだってオレの目標だった。
そしてその塔矢とやっと対局できたとき、塔矢がオレの中に佐為を見つけてくれたんだ。
オレの中の佐為に気が付いて、その上でオレを見て、オレを認めてくれた。
「キミの打つ碁がキミの全てだ。」
その言葉が、ずっとオレの支えだった。

そうだ。佐為がいなくなった時、オレは何もかも見失って、打つ意味もわからからなくて、オレなんか
いなくなってしまえばいいと思ってたのに。
でも、おまえがいたから。
佐為はいなくなってしまったけどおまえがいたから。
佐為の碁はオレの中に受け継がれていて、そしてオレの前にはずっと前を見て歩いてるおまえの
背中があったから。だから、オレはもう一度打つ決心をしたんだ。
塔矢。
おまえが、いたから。

170断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/23(水) 22:39
いつも、おまえの存在がオレを奮い立たせる。
いつだっておまえなんだ。おまえじゃなきゃ駄目なんだ。

北斗杯の時だって、中国に負けて、高永夏にも負けて、自分の駄目さ加減に落ち込んで、立ち上
がれなかったオレを動かしたのは塔矢の言葉だった。
「これで終わりじゃない。終わりなどない。」
そしてその時だけじゃなく、それからもずっと、気付かないうちに、その言葉を頭の中で繰り返して
いた。自分の無力さを思い出してしまって動けなくなってしまった時も、遥かな高みのその高さに
挫けそうになる時も、もう駄目なのかと思ったときも、気付いたときには塔矢の言葉をオレは繰り
返していた。
「オレの打つ碁がオレの全てだ」「これで終わりじゃない」「終わりなどない」
今はまだ力が足りなくても、それが今のオレだ。どうにもならない事実だ。でも明日のオレは今日
のままのオレじゃない。これで終わりなんかじゃない。今日勝てなかった相手にも、明日は勝てる
かもしれない。

塔矢の言葉がオレの支えだった。
こんなにも自分が塔矢に頼り切ってしまってたなんて、気付いてなかった。
駄目だ。
オレは塔矢を失えない。
塔矢を忘れるなんて、この気持ちを捨てるなんて、できない。


それなのに、塔矢にはオレは要らないんだ。
オレには塔矢が必要なのに。一番大切なのに。

171断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/23(水) 22:40
「塔矢……」

ああ、ダメだ。
泣くもんかって、ずっと思ってたのに。
オレはもう泣いてしまってる。

バカか、オレは。
こんな部屋に、一人ぼっちで取り残されて、オレを置いて出て行った奴の名前を呼びながら泣いてる
なんて。
三流メロドラマじゃあるまいし。
本当に、バカみたいだ。
それなのに。

涙が止まらないんだ。
どうしたらいいのかわからないんだ。
どうしたらいいんだ。
オレはどうしたらいいんだ。
なあ、
教えてくれよ、
塔矢。

172断点・3</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/07/23(水) 22:41
断点・3 終わり。

173○○アタリ道場○○</b><font color=#FF0000>(.QypifAg)</font><b>:2003/08/06(水) 00:16
<おかっぱの国から2003・夏ノ巻>

(1)
お父さん、日本は長期の梅雨が終わり、本格的な夏が訪れました。
照りつけるような強烈な日差しを肌に感じ、やっと夏らしくなってきたと実感
する今日この頃のボクです。

お父さんは、今頃台湾で碁の鍛錬に力を注いでいるのでしょうね。
今、ボクは緒方さん・芦原さん、そして お母さんの4人で海釣りに来て
います。釣り船で海に出ているので、本格的です。
毎日囲碁漬けの生活を送っているボクにとって、目の前に広がる風景は
とても新鮮で、頬を掠める潮風も本当に気持ちがいいです。
コバルトブルーの海に浮かぶ小さな島々に、波と一緒に飛びはねるトビウオ。
空一面に踊るように、もくもくと湧きあがる白い雲の群れ。
どこまでも果てしなく続く青と空だけの世界。
ボクの目は、それらに釘付けです。
ええ、お父さん・・・決して後ろの人達の姿は見ないようにしています。
ボクは見ていません。見ていないったら、見てないですっ!

芦原さんが船酔いをしないように服薬したものは、実は下剤だったなんて。
それに気付いたのは、すでに釣り船は港を出た後。
現在、芦原さんはトイレにこもっている状態だということはボクは
知りません!
ボクの目に映るのは、綺麗な海だけです。
(どうやったら、そんな間違いが出来るのか謎です。)
・・・・・・ああ、お父さん・・・・、だけどボクの目の前で緒方さんが眼鏡をしたまま
金メラ入りのフンドシ一丁で、気持ちよさそうに平泳ぎをしています。
せめて、泳ぐ時は眼鏡を外せばいいのにと思うのですが。

174○○アタリ道場○○</b><font color=#FF0000>(.QypifAg)</font><b>:2003/08/06(水) 00:17
(2)
それに、この海はサメが出て人を襲うから気をつけろと、地元の方が言って
いたのに、その助言を無視して緒方さんは好き勝手なことをしています。
実際にサメが出たら どうするのでしょうか。
・・・って言っているうちに、本当にサメが出てしまいましたっ!!
おっ、緒方さんが危ない!!!
ボクは、どうしていいか分からず、トイレにこもりきりの芦原さんは
ほっといて、船内にいるお母さんを思い出し、キッチンのドアを開けました。
・・・・・・ああぁ、お父さん・・・・、ボクは目の前の光景は本当に現実なのだろうかと
疑っています。
だって、暗い船内のキッチンで お母さんがマンガ日本昔ばなしによく登場
するような、どデカイ包丁をシュッシュッと石で磨ぎながら、
「腕が鳴るわぁ〜、腕が鳴るわあぁあああ〜、
新鮮な海の幸よ、主婦の腕の見せどころよ!
オ―――――――――――ホッホッホ──ォオ!!」
と、雄たけびをあげています。
・・・・・・ああぁあ、お父さん・・・・、きっとボクは疲れているんでしょうね。
これは全て夢なんですよね。
でも、この状況で頼りになるのはボクだけだ。
かろうじて、それだけは分かるので緒方さんを助けられないかと必死に考えを
めぐらせ、とりあえず浮き輪にロープを巻き、緒方さんの方へ、それを投げま
した。
・・・・・・ああぁああ、お父さん・・・・、緒方さんにはボクの助けなど皆無でした。
緒方さん、サメと取っ組み合いのケンカを始めました。

175○○アタリ道場○○</b><font color=#FF0000>(.QypifAg)</font><b>:2003/08/06(水) 00:19
(3)
──〝大自然と人間の熱い戦い〟
そんなキャッチフレーズが、ボクの脳裏にとっさに浮かびあがります。
でも、その戦いの結末をボクは見届けることは出来ませんでした。
サメのヒレに噛みついた緒方さんは、ボロボロになり逃げていくサメに
懸命にしがみついたまま、
「フカヒレ──!、キャビア──!」
とだけ叫ぶと、キラリと海の彼方に光り輝き、そのまま姿が見えなくなりました。
「緒方さん、キャビアに出来るサメが生息するのはカスピ海沿岸です」
ボクはそっと教えてあげました。(←心の中で)
ボクは、このメンバーで出かけるのは、もうこれっきりにしようと固く強く
心に誓いました。
・・・・・・ああぁあああ、お父さん・・・・、あっという間に陽が暮れて辺り一面の海
が金色に染まりました。
心和む風景だとは思うんですが、生憎ボクの心の中はブリザードが吹き荒れて
いて、イマイチ感動できません。
ある意味で今年は、とても思い出残る印象深い夏になりそうです。

・・・・・お父さん、南の空に一番星が見えます。
なぜか、その光がボクの目にとても沁みるんです。



・・・・・・ううっ・・・・・早く家に帰りたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあぁ。(←溜息)

(おかっぱの国から2003・夏ノ巻  完)

176CC</b><font color=#FF0000>(.QypifAg)</font><b>:2003/08/06(水) 00:26
キャビアなんてモノは食ったことねえよお。
アキラたんって、オレ的には高価な食い物の味、よく知っているイメージがある。
今回、アキラたん達が海釣りに行ったところの設定は、瀬戸内海。
ガキの頃に行ったことがあって、すっげえ海がキレイなの覚えている。

177名無しさん:2003/08/06(水) 20:09
>176
俺実はキャビア食ったことある。ホテルでバイトしてるから残り物貰って食った。
あんま味の印象ねえ。
アキラたんはキャビアとか食いなれてそうだ。
レストランで上品にフルコースを平らげるアキラたんハァハァ(;´Д`)

178断点3.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/08/16(土) 02:02
今、ボクの身を震わせているのは屈辱感だ。敗北感だ。
負けるはずのない勝負で完敗した、絶望的な敗北感だ。

なぜだ。
なぜ、彼は―――


あの日と同じように、彼を押さえ込んで犯して、床に這いつくばらせてやればよかったんだ。
どんな屈辱的なことでも、させてやればよかったんだ。
床に四つん這いにさせて、足を舐めさせて、頭を押さえつけてボクを咥えさせて、奉仕させてやればよかったんだ。
そのつもりだった。
考え付く限りの陵辱を、屈辱を味あわせてやろうと思っていた。
それでもまだボクを好きだなどと言うのなら、思いっきりせせら笑ってやろうと思っていた。
思い上がるなと、下らない事を言うのも大概にしろと、言ってやろうと思っていた。
泣いて許しを請われたって、許してなどやらないと、そうするつもりだった。
それなのに。

なぜそれをしなかった。
完璧な布陣を張っていたはずだったのに、負けなどありえない筈だったのに。

179断点3.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/08/16(土) 02:02
何も持っていないはずの彼に、敗北した。
彼を傷つけてやったなどと思っていたのがとんでもない思い上がりだったと、思い知らされた。
床に打ち付け、飛び散った欠片を踵で踏み砕いて、粉々に踏み躙ったはずだったのに。
それなのに、完膚なく叩き壊した筈のそれは、拾い上げてみれば傷など一つもついていない。
それどころか、それまで以上の輝きを放っている。
その強靭さを見せ付けるように。
ボクの弱さを、ボクの無力さを嘲笑うように。
そうして、醜く引き攣れた傷跡が、傷一つ無い鏡に容赦なく映し出される。
傷つける事で癒せる傷などないのだと、ボクの愚かしさを嘲笑うように。

いつでも、この世でただ一人キミだけが、隠し続けていたボクの弱さを暴き立てる。
だから、だからボクはキミが嫌いなんだ。
キミに関わりたくなんかなかったんだ。

それなのになぜ、キミはいつもそうしてボクの前に在るのか。
なぜそうしていつもいつも、キミはボクの前に立ちはだかるのか。
そしてなぜ、ボクは、キミに振り回されて、
ボクはいつまで、キミに、翻弄され続けなければならないのだろう。

許せない。
キミが、キミの存在が、ボクには許せない。
認めることができない。
受け入れる事ができない。

180断点3.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/08/16(土) 02:04
違う。
許せないのはボクの弱さだ。
ボクはキミのように強く在る事はできない。
キミのその強さが、輝きが、ボクには眩しすぎて、
ボクにとってキミは忌避すべき存在にしかなり得ない。

だからどうか、もうボクを解放してくれ。
キミの強さを見せ付けるのは、ボクの弱さをつきつけるのは、やめてくれ。
ボクを苦しめるのはやめてくれ。
忘れたいんだ。
忘れてしまいたいんだ。何もかも。
キミさえいなければ、ボクは全てを無かったことに出来る。
だからボクに関わらないでくれ。
ボクを忘れてくれ。
頼むから。
進藤。

181断点3.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/08/16(土) 02:06
3.5はこんだけ。
キャビアって、そのものの味がわかるだけ食った事ねえなあ。
なんかの上に飾りみたいに、ちょこんって乗ってるのくらいしか知らないよ。

182裏失楽園:2003/09/01(月) 19:55
 ボクは興奮しかけていたそれを両手で掴んだ。抑えるつもりで掴んだのに、浅ましいボクは
その刺激にすら悦びの咆哮をあげる。
 身体の欲求と理性は別物だ。セックスの後、ボクの理性は容易に本能に凌駕されてしまう。
それが今日のような行為だと尚更だった。数度撫で上げると、立っていられなくなりボクは
しゃがみ込んだ。
 震える手でシャワーの温度を下げると、デジタル制御の水温はすぐに調節された。
真水に近い温度のそれが全身を濡らすと火照った身体は余計に温度差を感じる。
「つめた……」
 あまりの冷たさに一瞬息が止まり、ボクは震え始めた身体を両手で抱いた。
 震えながら、ボク一人の空間であるこの箱庭から出る潮時なのかもしれないと思う。
 だが、外に出たくはなかった。バスルームを出れば進藤や緒方さんと顔を合わせなければ
ならない。それが辛かった。
 しかし――いつまでもこうしているわけにはいかない。あまりに遅いと却って心配をかけて
しまう。それに、あの二人を長く二人きりにさせるわけにはいかないのだ。
 温度の高い湯ならば夏の日の蜃気楼のように立ち上がってきてボクをいたずらに刺激する
はずのあの匂いが、すっかり水に流されて消えていったことに安堵しながら、排水溝のとこ
ろに溜まったティッシュの残骸をかき集めてきつく握りしめる。
 決意が挫ける前に早く出なければ。
 バスローブを羽織り、気が進まない足を叱咤しながら長い廊下を歩いた。

183裏失楽園:2003/09/01(月) 19:55
ずいぶん休んでいたので、リズムがつかめなくなってしまった。
だらだらしててスマンよ。

184Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:24

――その夜、ボクは恐ろしい夢を見てしまった。


10年後、ボクは棋院にいた。
本因坊戦の最終リーグ、進藤とあたることになり、緊張の面持ちで。
棋院のロビーにいると、周りの人たちの声が聞こえる。

『進藤と塔矢、どっちが勝つかなぁ……』
『それにしても相変わらず塔矢さんはスラッとして、見目麗しいというか。それに比べて進藤さんは……』
『進藤君、ありゃ身体に悪いよ。もっと健康管理に気をつけないと……』

すると、問題の対局相手が現れた。
手にはトレードマークになった扇子を持って歩いてくる。
のっしのっし、と。いや…どすっどすっ、か? 彼が歩くたびに地響きがしそうな勢いだ。
「よぉ、塔矢」
若干、野太くなった声が、ボクの名を呼ぶ。
恐る恐る顔を上げると、そこにいたのは――。

185Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:24

ぱちっ。そこで目が覚めた。
額から、汗がひとすじ流れ落ちる。
ボクはしばらくの間、硬直した体制で、天井を食い入るように、凝視していた。
――見てはならないものをみてしまった。
もしあの夢が、もう少し、長く続いていたら、ボクは進藤に向かって、こう呼びかけていただろう。

『……倉田さん…?』

何で、あんな夢を見てしまったんだろう。
10年…といえば、ボク達は30前。中年太り、というには、まだ早過ぎないか?
 
――しばらくして、夢の余韻が消え、ようやく気持ちが落ち着くと、ふいに耳につく小さな寝息。
隣りを見ると、すうすうと穏やかな呼吸で眠っている進藤がいる。
子供の頃に比べると、シャープになった顎のライン。
顔は大人びて、体つきも、成人男性に近づいてきている。
身長はボクより2センチ高いだけなのに、体重は進藤のほうが、数キロ重い。

186Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:27

『塔矢、もっと肉たくさん食べろよ』
 先日、二人で焼肉屋に行って、野菜ばかり焼いて食べるボクに、進藤が注意した。
『…ボクはあまり肉は好きじゃないんだ。キミこそ、肉ばかり食べすぎだ。ちゃんと野菜も取らないと』
『いーの。だって、ここ焼肉屋だもん』
――どういう理屈だ。
眉をひそめるボクの向かいの席で、進藤は肉を食べ続けた。
いくら若いからとはいえ、2.5人前くらいは食べていた。
普段だって、そうだ。彼はボクの倍の量は食べる。
『オマエが小食すぎんの。ほら、こんなに腕だって細いし……』
そう言って、ボクの腕を掴んだ進藤は、そのままボクをベッドに押し倒した。
『…進藤!』
『こんなに細い身体じゃ、オレ以外にも簡単に押し倒されちまうぞ? 気をつけないとな』
笑いながら、キスをしてきて。
その後は進藤のいいようにされて……まぁ、ボクも気持ちよくしてもらったから文句は言わないけど。

187Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:27

ボクはゆっくりと上体を起こした。
ひんやりとした空気が、素肌に心地いい。
進藤の上にかかっているのは、毛布一枚だけだ。
何となく気になって、ボクは起きあがった。
進藤はまだ眠っている。
彼の上にかかっている毛布をそっとめくった。
夏に和谷くんたちと海に行って焼けたという肌は、薄い小麦色をしている。
ボクは仕事で行けなかった。一応、進藤は誘ってくれたけれど……。
毛布を進藤の腰の辺りまで下ろすと、現れた上半身。
ボクよりも、しっかりした肩幅。胸板も厚くて――男を感じさせる。
そういえば彼の裸をこうして、まじまじと見るのは初めてかもしれない。
ふと、お腹を見ると、少し、少しだけだが、ポッコリとふくれている。
「………」
そういえば、夕飯も、かなりの量を食べていたっけ。
――さっきの悪夢を思い出す。本当に、そのうち現実になるかもしれない。
ボクは眉をしかめると、進藤のお腹に手をのせた。

188Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:28

これがあんなに大きくなるんだろうか。妊娠何ヶ月だ、アレは。
…まさか、ボクの子供…? いや、いつも注ぎ込まれているのはボクの方だ。
身篭るとしたら、ボクだろう。というか、それ以前にボク達は男同士だ。ありえない。
大体、あんな巨体で、上にのられたら。つぶれる。つぶされる。
今でも、重いと思うのに、あんなのにのられてみろ。骨の一本や二本くらい…。
そういえば進藤のお父さんには会ったことがない。遺伝はありうる。
お母さんも、そんなに痩せていらっしゃるわけではないようだし。
だんだんと怖い考えになり、青ざめていると、
「…塔矢、なにしてんの…?」
ふいに、声が降ってきた。目を覚ましたらしい。
進藤は首だけ起こして、ボクを見ていた。
「あっ、すまない」
慌てて、手を離すと、進藤は「うーん」と伸びをして、えいっと起き上がった。
そして、にやりと笑って、
「なにやってたの? もしかしてオレの寝込みを襲おうとしてた?」
彼らしい軽口を叩く。
ボクは 「キミじゃあるまいし」 ボクの髪に触れてこようとした進藤の手を払いのけた。

189Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:29

「つれないなぁ」
「つれなくて結構」
ちぇっ…塔矢ってば冷たい…。
進藤が唇をとがらせる。
その様子が子供っぽくて、何だか可愛いと思った。
ボクは小さく笑って、進藤の唇に軽く触れるだけのキスをした。
「と、塔矢…」
進藤は驚いたように、ボクを見返した後 「も、もう一回して!」 迫ってきた。
「…やだよ。キミからすればいいだろう」
「ダメ!塔矢からしてくれるなんて貴重じゃん!」
「貴重だから一回きりだな…っ」
言ったすぐそばから、進藤に唇をふさがれた。
もちろん、触れるだけなんて、軽いものですむはずがなく。
しばらく舌の感触を楽しんでから離れた唇は濡れていて……。
「塔矢…」
抱きしめられる。素肌の温もりが気持ちいい。
好きな人としているから、こんなにも幸せになれるんだろうな。

190Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:29

「そういえば、オマエなんで起きてたんだよ。眠れなかったのか?」
進藤がボクの顔を覗き込む。
「…ああ、ちょっと、変な夢を見てね。目が覚めたんだ」
「変な夢?」
「うん、キミの夢」
「――」
答え方がマズかったか。進藤は複雑そうな表情をしている。
「それってどんな夢?」
「ナイショ」
進藤は苦虫をかみつぶしたような顔をして、ボクを恨めそうに見た後、ふわぁと小さなアクビをした。
時計を見ると――まだ朝まで時間がある。
「…起こしてしまって、悪かったな。もう一眠りしようか」
毛布を引き寄せて、横になろうとしたら、いきなり進藤がボクの上にのってきた。
ボクの腰の辺りに馬乗りになる。
ちょうど進藤のモノが、ボクの…にあたった。
「――」
勃ってる、進藤の。
寝る前に散々ヤったくせに。元気だな…。

191Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:30

「眠いんじゃないのか?」
「うん。でも、少しだけ」
本当に『少しだけ』で済むのだろうか。
思ったけれど、進藤の好きなようにさせてあげるのも悪くないかなとも思った。
でも、ここのところ、甘やかせすぎかもしれない。そのうち厳しく!シツケないと。
「……進藤、これ以上、太るなよ」
「え? わりぃ、重いかな。じゃあ、塔矢が上にのる? オレ、騎乗位も好き♪」
――そうか、その手があったか。進藤につぶされる心配もしなくて済む。
もしも進藤がああなってしまっても、体位によっては難しくないな。…じゃなくて…。
「…最近、ボクはキミと思考まで似てきた気がするよ…」
「へぇ、いいじゃん。もっとオレに影響されちゃえよ」
「――っ…あ…」
乳首をぺろりと舐められて、思わず声が漏れる。
吐息が微熱を帯び始めて、進藤の頭をかき抱いた。

192Eternal Promise</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:31

しょせん身体なんて魂の入れ物でしかない。
ボクはキミが好きなんだ。
キミがどんな姿になっても、きっとボクはキミを好きでい続けるだろう。
だってボクはキミの身体を好きになったわけじゃないから。
ボクは『キミ』を好きになったのだから――。

「…進藤…」

月日が経てば、いろんなものが変わっていくだろう。
周囲の環境、人間関係、自分の立場も……。
信じていたものが崩れることもあるかもしれない。
それでも。
ボクには変わらないものがあると思う。
この胸の中に存在する、キミへの想い。変わらない心。

ずっとずっと…ボクが死ぬまで。ボクが死んでも。

 

 ― ボクはキミに変わらぬ愛を誓います ―

193</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/09/04(木) 21:34

コミックス23巻発売記念の読みきり作品ですた。
ヒカルの腹が出ないことを祈るよ(;´Д`)

194Shangri-La 番外:2003/09/04(木) 23:16
(1)
「よう、元気そうじゃないか?」
降りてきた嘲笑交じりの声に、アキラは棋譜並べの手を止めず、答えた。
「ええ、お蔭様で」
向かいの椅子に緒方が座り、市河がコーヒーと灰皿を運んだ。
「彼女とはその後うまくいってるのか?」
「えー!?アキラくん、彼女出来たの???」
市河が大声で繰り返したおかげで、アキラは碁会所中の注目を浴びる羽目になった。
「………違いますよ…、緒方さんってば、からかってるんですよ、ボクのこと。
ね、緒方さん?」
緒方に向けられたアキラの眼光があまりに鋭い。有無を言わさぬ視線に強要され、
緒方はうっすらと苦笑いで市河を見遣った。
「なぁんだ!そうなの!びっくりしたわぁ〜!
んもう、脅かさないで下さいよ、緒方先生!」
と、碁会所のドアが開き、客が一人、入ってきた。市河は嬉しそうにその場を離れた。
緒方さんの使う隠語は、ありがたいようでありがたくないような、……複雑だ。

195Shangri-La 番外:2003/09/04(木) 23:18
(2)
緒方は煙草を取り出した。銀のマッチケースがきらりとアキラの視界を過った。
――へぇー……、まだ飽きてないんだ。珍しいな。
「地獄耳ですね、相変わらず」
「いいや、何の情報もないさ。君はすぐ態度に出るからな」
「───あ、ちょっと失礼します。」
ポケットの中の携帯がかすかに震えて主を呼んでいる。アキラは席を立ち、
一旦外へ出た。相手が誰かは分かっている。緒方の前でこれ見よがしに
見せ付けても良かったのだが、何人かいた客の手前、それは憚られた。

196Shangri-La 番外:2003/09/04(木) 23:18
(3)
緒方を牽制しようと感情を抑えつつ、嬉々として席を立ったアキラの背中を
緒方は黙って見送った。
アキラは気づいているだろうか?
あの頃は、ヒカルと出会う前のアキラは、いつも渇いていた。
ヒカルと出会ってアキラは大きく変わった。年頃だということもあるのかもしれない。
知っていたからヒカルを近づけ、けしかけた。アキラの反応の一つ一つが面白かった。
そしてヒカルに失望したアキラは、以前にも増して瞳の中の渇いた色を隠さず、
それが妙な艶となって現れた。その色香に誘われるままに師匠の息子であるアキラに
つい手を出してしまったが、訳の分からぬ渇望に混乱して、闇雲に手を伸ばす子供を
手中に収めることは、全く造作なかった。

アキラは、教えたことは何でも覚えた。その素直さだけは子どもの頃から変わらず、
ある種の感動を覚えた。アキラが、緒方に抱かれ、腕の中で拙く反応しながら
冷たく渇いた瞳で虚空を見つめていたのも、分かっていた。
いや、むしろ、何も見ていなかったのかもしれない。それはいつか変えられようと
思ったが、それは変わらないまま、アキラは緒方の両手をすり抜け、
ヒカルの元へと戻っていった。その時はそんなものかと思ったし
口が堅く、体のいいセックスフレンドの一人を失うことへの未練もなかった。

197Shangri-La 番外:2003/09/04(木) 23:19
(4)
が、確実にヒカルを手に入れて、アキラはまた変わった。自分では与えられなかった
何かをヒカルから享受し、満たされているのだと、纏う空気が有り体に語っていた。
赤ん坊の頃から知っているアキラを満足させられなかった事が衝撃でもあり、
苦々しくもあった。

あの夜、一時の気の迷いだと、ヒカルの身代わりでしかないのだと分かっていても、
どれだけアキラの誘いに乗りたかったか知れない。自分の手を離れたアキラが
どう変わったのか、興味は尽きなかった。だからアキラの中の火を煽ったが、
なかなか誘いに乗らない上に、乗ったら乗ったで背筋が凍るほど凄艶で、
驚きのあまり、思わず突き放してしまった。ひょっとしたら、とんでもない
化け物を覚醒させてしまったのかもしれないとさえ思った。
―――君子危うきに近寄らず、とはよく言ったものだ。
先人の知恵は何と素晴らしいことか……。

198Shangri-La 番外:2003/09/04(木) 23:20
(5)
電話を済ませたアキラが戻ってきた。表情は相変わらず硬い。
いや、あえて硬くしている、という風体だ。
「彼女、なんだって?」
「緒方さんには関係ないでしょう」
「ふーん…デートの約束か」
「───緒方さん、」
「時間はあるのか?ちょっと打たないか」
アキラが向けるであろう都合の悪い話を遮る方法も、緒方は良く心得ていた。

199名無しさん:2003/09/04(木) 23:24
番外兄貴編。Shangri-Laの少し後ッス。
アキラたんと対峙する格好いい兄貴…にしたかったんだが
全然そんな話になってないな。自分ってなんてヘ(ry

最終刊発売記念…と思って置きに来たのだが、
罠たんの記念小説来てたΣ(゚Д゚;)
じっくり読ませてもらいます。

200Today</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/09/05(金) 03:00
一陣の風が吹き渡り、髪をなびかせうなじを撫でて通り抜けていった。
見上げる空は青く高い。
五月の薫風は透き通ってさらりと軽く、それなのに何かが終わってしまった哀しさを感じさせて、小さな感傷に
目を細める。

昨日も見たはずの光景が、昨日とはまるで違って見える。
一日毎に世界は新しく生まれ変わってゆく。
こうして風に吹かれ、流れる雲を見上げ、初夏の風になびく緑に目を細めている間にも、時は過ぎてゆくのだ。
今こうして目に映る鮮やかな新緑も、日毎に色を変え、形を変え、来るべき夏へ向けて成長してゆく。
今日の彼は昨日の彼ではなく、そして明日の自分は今日の自分とはまた変わっているのだろう。
時は止まらない。
過ぎ去っていってしまったものは二度と帰らない。
どれ程、昨日の自分を懐かしんだしても、どれ程失くしてしまったひとを惜しんだしても、そしてどれ程、自分が
変えてしまったひとを、変わる前のその人を思ったとしても、取り戻せるものは何一つない。
吹き抜けていった風を掴まえることなどできないように、過ぎてしまった時を戻すことはできない。
時は常に過去から現在へと、ただ、前に向かってしか流れない。
見つめる先に何があるのかはわからない。
未来に待ち構えているものなど見えない。
確かなものなど何一つない。

それでも。
だからこそ。
風に抗うように顔を上げ、未来を見つめる。


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