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獣人総合スレ 避難所

1名無しさん@避難中:2009/03/17(火) 20:14:12 ID:/1EMMOvM0
獣人ものの一次創作からアニメ、ゲーム等の二次創作までなんでもどうぞ。
ケモキャラ主体のSSや絵、造形物ならなんでもありありです。
なんでもかんでもごった煮なスレ!自重せずどんどん自分の創作物を投下していきましょう!
ただし耳尻尾オンリーは禁止の方向で。
エロはエロの聖地エロパロ板で思う存分に。

獣人スレwiki(自由に編集可能)http://www19.atwiki.jp/jujin
あぷろだ http://www6.uploader.jp/home/sousaku/

獣人総合スレ 5もふもふ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236878746/

【過去スレ】
1:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220293834/
2:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224335168/
3:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227489989/
4:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1231750837/

433太陽とケモノ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/10(月) 22:09:48 ID:hvdRUvLI0
いつしか電車の中に居たヒツジの親子は下車し、オオカミの弾性もいない。気が付くと車両はぼくらだけになっていた。
どのくらい電車は走っていったのだろう。どのくらい人々が乗り降りしたのだろう。
そして、どのくらい隣に座る先生はぼくに何かを話しかけたかったと思ったのだろう。
悔やんでも、悔やんでも、いくら尻尾を膨らませても、電車はぼくらを下車する駅へと運び続ける。
「佳望電をご利用いただきまして、有難うございます……。この電車は……」
ときおり入る車内アナウンスに助けられ沈黙から逃れていると、ぼくらの顔が反射していただけの車窓に海が写り込む。
初夏の海は新しい季節を迎えることに必死で、すっかり春の景色を忘れてしまっているのが非常に印象的な海岸線。

こっちの席に座ってよかった。誰もいないのをいいことに、泊瀬谷先生の手の甲がぼくの手の甲に当たる。
「先生も、この海を見ながら毎日学校に行っていたんだよ」
やっと口を開いた泊瀬谷先生は、ぼくと話すことを避ける素振りを見せていた。
だけど、ぼくは授業のときではない先生の声が、好きだ。

出来ることなら、泊瀬谷先生から「先生」を奪い取ってしまいたい。
「先生」という肩書きを失った泊瀬谷先生は、きっと迷いネコになってしまうんだろう。
しかしぼくは、迷いネコを放っておこうと悪しき考えを浮かべたり、独り占めしてしまおうと思ったりはけっしてしない。
なぜなら、ぼくも迷いイヌ。道に迷ったお巡りさん、迷子の子ネコに聞いても困るだけ。泣いてばかりのお巡りさん。
どうしていいのか分からない。何していいのか分からない。誰に尋ねればいいのか、まったく見当がつかない。
それでも側にいてくれて「これからどうしようかな」とまぬけだけれども、一緒に同じ目線で道を探したい。
教えてもらうんじゃなくって、いっしょに「せんせい」と歩いてみたい。
だけど、誰もこんな感情は分かってくれないんだろう。そんなことは心得てるけど。

車窓近くの立木は物凄いスピードですっとんで行き、遠くに湛える湾の波はゆっくりと流れ、遥か彼方の白い雲はのんびりと浮かんでいた。
ふと、泊瀬谷先生を見てみると、トートバッグをぼくの方ではなく、反対側の肩に掛けているのに気付いた。
泊瀬谷先生の横顔は、授業では余り見せることはない。というより、見せる機会はない。
ぼくが横顔に見入っている間に、先生がぼくの方を向いてしまったらと思うと、言葉にならないほど恥ずかしい。
幸いなことに、泊瀬谷先生は俯き加減で小さな声で話し出した。
「もうすぐ、狗尾に着くね……」
電車の速度が緩むことに比例して、先生と同じ席に座ることができなくなるという、間違った思い。
ブレーキ音が軋みつつ電車が止まる準備を始めると、ぼくは隣で頬を赤らめる小さなオトナの肩が触れた。

434太陽とケモノ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/10(月) 22:10:17 ID:hvdRUvLI0
電車は間もなく目的地である駅へと到着する兆しをみせる。時間は午前11時半すぎ。
重いモーターの音とはしばしのお別れ。ハンドルを握る運転者が、慌しく運転席の窓を開くと古い設備を操作して扉を開ける。
「狗尾ー、狗尾ー。狗尾高校前ー。電車とホームに隙間がございます。降りる際にはご注意ください」
あっ。
「ぼく、ここで降りますっ」
席を立って扉の前にぼくが立つと、泊瀬谷先生がぼくに隠れるように側に立っていた。
緩いカーブの上に建つホーム。泊瀬谷先生は無邪気に電車とホームの隙間を跳ねる。
そこまでして跳ぶ隙間ではないが、アナウンスに素直な先生の後姿が初々しい。
狗尾駅のホームは、二つに並んだ線路の間に浮かぶ。こせん橋は無く、駅構内の踏切で線路を渡って改札口に向かう古いタイプの駅だった。
駅から伸びる草にまみれた線路は、再び一つにまとまり、知らない遠くの街へと繋がっていた。
ぼくらが乗ってきた電車が駅を出る寸前、構内の踏切が警報音を巻き散らせて、ぼくらの歩みをさえぎる。
「寄り道しちゃった……。いいよね?」
「……はい」
早くここから歩き出したいのに、意図せぬ足止めが泊瀬谷先生を意地悪くくすぐる。

駅から出ると潮風が心地よい、海岸沿いの道に当たる。
見ていて気付いたのだが、泊瀬谷先生は初めてここに来たような感じではない。
すいすいと足取り軽く、目的地である狗尾高へと吸い込まれそうな勢いだった。
パンプスの音がいつもより軽く聞こえる。ぼくは黙って泊瀬谷先生の後を追った。
「先生の住んでいた町もこんな感じだったんだよ」
「そうなんですか」
「うん。懐かしいな……。まだ、あのタバコ屋さんあったんだ」
駅で降りるとき「寄り道しちゃった」と言っていた。暮らしていた町ではないけれど、どこか先生にとっては思い出深い町なのには違いない。
もしかして、これから向かう狗尾高と関係があるのかもしれないが、あまり深い詮索はよろしくない。

休日の昼前。人通りはぼくら以外にいない。
「ヒカルくーん。着いたよ!」
泊瀬谷先生が手を振って居る場所は、狗尾高の正門でも通用門でもない。海岸近くの細い道を歩く。遠くには漁協の建物。
グランドの脇を通る細い路地。確かに狗尾高の側にいるのだが、金網のフェンスがぼくらをさえぎる。
しかし、学園の息吹は予期せぬ来訪者であるぼくらに確かに届いていた。
「本当だ」
「うん。わたしが初めて来たときとちっとも変わってないね」

グラウンドでは、野球部員たちが海風と砂埃にまみれて練習に明け暮れていた。
金網越しに彼らを見ると、本当だ。イヌ、イヌ、イヌ……。
誰も彼もぼくと同じイヌの男子生徒ばかり目に付く。白球追う彼らの姿は、ぼくら「ケモノ」ではなく、野性に返った「獣」のよう。
ただ、尻尾の動きは「ケモノ」のときを忘れていない。純粋に、純粋に、そして純粋に。
本当に愚直とも揶揄できるぐらいに、彼らは一握りのボール目掛けて走っていた。
愚直も過ぎると美しく見える。汚れがない分に本能のまま、競技の魂に導かれる分、混じりけがないスピリッツ。

435太陽とケモノ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/10(月) 22:10:47 ID:hvdRUvLI0
「烏丸の言っていた通りだ」
狗尾高の野球部員たちは、丁度紅白練習試合をしているところであった。
ぼくはあまりスポーツが得意ではないのだが、そんなぼくにでも彼らの技術は卓越したものだと断定できる。
腕の良い料理人が包丁を裁くよう、炎を手に取るように扱うように、そして最高の一品を創り上げるように。
ピッチャーがボールを投げる。心地よい音を立ててバットに当たる。天高く走り去る球を彼らが尻尾をなびかせ追い駆けて、
魔法のようにグローブに吸い付けると、間髪いれずにファーストに送球する。気持ちがよいほど無駄のないプレイだった。
スポーツに励むというよりも、芸術を創り上げるといった方が、彼らには相応しいのかもしれない。
「……カッコいいね」
「……」
「そうね……。佳望学園の子も頑張ってるんだよね」
無意識に飛び出した泊瀬谷先生の爪が、金網に引っ掛かる。
きょう、狗尾高のグラウンドにやってきたのは他でもない。自分の目で確かめること、それに尽きる。

「あの子」
急に泊瀬谷先生が叫んだので、周りのみんなが驚かないか、ちょっとばかり気になった。爪を引っ込ませた指が一人の少年を差す。
しかし、子どもに戻った泊瀬谷先生は、大人の会話は通用しないほどまでに、背丈が小さく見える錯覚がする。

白い毛並みは生き写し。
大きな尻尾は生き写し。
「目元がすんごく似ているよ」と、泊瀬谷先生が言うものなので、きっと瞳も生き写し。
ただ、違うことは、彼は狗尾高野球部のピッチャーだったのだ。

噂には聞いていたが、びっくりするぐらいに、ぼくに似ている。
ひと球ひと球に魂を込めて、相棒であるキャッチャーに投げると、重い球の音がずしりと響く。
これで最後かと思わんばかりに、彼は息を切らして尻尾を落ち着かせる。尻尾の動きでバッターに悟られたら、
名ピッチャーを名乗れないのは、何となく分かる。冷静に、そして冷徹に。孤独な戦いは慣れているのだろう。
練習とは言え、試合さながらの投球にぼくらはすっかり彼に飲み込まれてしまった。
「よーし!いいぞ!いいぞ!」
仲間からの声援に頷いて答える彼は、一旦呼吸をして投球。そして、ストライク……。
「わー!よーし!あと一人!あと一人だぞ!!そろそろ押さえこんじまえ!!」
「もうそろそろかもね」
「……あ」
泊瀬谷先生の声に、先日の烏丸の声が重なった。
いつの間にか太陽はぼくらを残して、てっぺんに上り詰めていた。

436太陽とケモノ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/10(月) 22:11:19 ID:hvdRUvLI0
遠くに見える校舎の時計は正午を告げる。いきなりのことだった。
針が合わさると同時に、白球を追っていた生徒たちがいきなり試合をやめて、グランドに整列する。
そして、帽子を脱いで美しい一列を保つ。
「……」
「ごらん。ヒカルくん」
ぼくに似た彼も例外なく列を成し、一同が野球部の帽子を脱いだ刹那のこと、海岸の方からサイレンが響き始める。

「うおぉおーーん!!うおぉーーん!」
「うおぉおーーん!!うおぉーーん!」
「うおぉおーーん!!うおぉーーん!」
サイレンに負けじと、野球部員たちは天高らかに声を上げて、野生の血を沸かせる。
まるで使えし君主から剣を授かったように、彼らは勇気と誇りを尻尾に太陽に向かって吠え続ける。
剣を振り上げる代わりに、遠吠えを。
災いもたらすものを斬り裂く代わりに、己の牙を。
そして、大切なものを守るために、優しい毛並みの尻尾を……。

「まだ残ってたんだぁ、コレ。よかった」
「……そうなんですか」
確か、烏丸は「犬上はんなら分かることがある」と、言っていた。なるほど、彼らの遠吠えを聞いているうちに、
ケモノの血を取り戻す気になってくる。同じように、大地を駆け巡りたくなってくる。イヌだけに分かる不思議な感覚だ。
サイレンが鳴り止む頃には、彼らも遠吠えを止めて帽子を再び被ると、練習試合のポジションへと戻っていった。
無論、ぼくに生き写しである彼も、大きな尻尾を揺らしながらマウンドへと登る。
「狗尾高って言えば、この光景が有名なのよね」

グランドに面する金網にしがみ付きながら、狗尾高のエースを見守る大きな影がある。
見覚えのある、厳つい二人組み。耳に残る荒い言葉遣い。不安がよぎる。
「本物が投げているところ見るけど、やっぱカッケーよな」
「おれもだよ。噂に聞いていたけど、マジで真っ白なわけ?」
「ああ、白いわけ。この間のことは、勘弁してやろうってわけ」
佳望の街で遭って、そして泊瀬谷先生に助けられた(と、なっている)ときの荒くれ二人組み。
彼らはどうやら、狗尾高の生徒らしい。この間は、マウンドに登る彼と見紛って退散したのだが、
やはり彼らも狗尾高で学ぶ若人とあって、ぼくに似た彼を大事にしたいらしい。と、思うことにする。
誰だって、自分の学び舎が恋しいし、愛しい。

「先生の家族が待ってますよ」
ソイツらの影を見るや否や、ぼくはそそくさと泊瀬谷先生の手を引っ張ってその場を後にした。
今思えば、なのだが……。ぼくは、どうして先生の手を引っ張っていったんだろう。
ぼくのような青二才が、大人である先生の手を引っ張って先導をきって歩くなんて、若輩者の思い上がりだ。
泊瀬谷先生の顔を見るのは、今はちょっとできない。ただ、泊瀬谷先生は、ぼくをにっこりと見つめているのだろう。
取り戻したばかりの、ぼくの中のケモノはネコの優しさで消えてしまった。

437太陽とケモノ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/10(月) 22:12:17 ID:hvdRUvLI0
―――
「先生。怒られに帰ってくるから」
「……」
不思議と泊瀬谷先生の顔は落ち着いていた。

先に泊瀬谷先生が乗る電車が近づき、ホームの踏切が鳴り響く。恐る恐るホームに寄せる電車は、ピタリと扉を泊瀬谷先生の横に合わせた。
ごろごろと扉が開く。ここに来たときのように車両の乗客は皆無。隣の車両には二、三人ほどの静かな時間。
「じゃあ、また学校でね」
ホームの隙間を気にしてぴょんと電車に飛び乗ると同時に、ぼくが乗る佳望ゆきの電車もやって来た。
明日会うんだろ。明日どころか、毎日会うんじゃないか、と当たり前の事実がまかり通らない想い。
発車する電車をお互いに見守りながら、ぼくらはそれぞれの街に帰っていった。
それにしても、おなかがすいた。

電車に揺られ揺られてつり革を眺める。リズムよく揺れるつり革に飽きて、朝読んだっきりの文庫本を開く。
「あ」
開けることのなかった烏丸の手紙が挟まっていた。表には「いざというときに開けなはれ」の一文。その内容を、今初めて知ることになる。
封筒には和紙に筆ペンで書かれた手紙が添えられている。揺れる電車で文字がぶれて見える。
「もしかして、もしかして必要なときには、これを見せなはれ。狼藉を働く不逞な者が近辺に居るらしゅうてな」
大人のような毛筆は、京都訛りの烏丸の言葉が聞こえてきそうであった。
手紙にもう一つ同封されていたのは、小さな紙片。それには印刷された文字が載っていた。一言で言えば名刺だ。
『佳望学園・新聞部部長 烏丸京子』

のほほんとしている割には、抜け目のない烏丸の考えそうなこと。
そりゃ、乱暴を働いて、記事にされちゃ困るだろう。巡り巡って騒ぎになって、狗尾高野球部の迷惑になったらそれこそだ。
それで烏丸はぼくに名刺を持たせたのだった。いや、もしかしてぼくらが狗尾高にいる頃、何処かの木の陰から覗いていたのかもしれない。
そんなに烏丸のことは知らないが、烏丸のやりそうなことだ、と想像できる自分がちょっと照れくさい。

「ウチはこう見えても、佳望学園以外でも顔が通るんでな。狗尾高はんにはお世話になっとります」
「わたくし、新聞部の美作更紗ですっ!野球部のピッチャーさんで、真っ白で尻尾の大きな先輩がいらっしゃるそうで。
もっふもふの尻尾を生かしてどんなコスが見合うかなあ!もっふもふ!!もっふ!」
「美作はん、黙っとき!」
新聞部の二人の会話を思い浮かべながら、街までの電車に揺れられる。午後の太陽を背に浴びながら、ぼくは小さく「わおーん」と呟く。


おしまい。


以上です。よろしくお願いいたします。
早く規制が解けますように。

438名無しさん@避難中:2010/05/11(火) 02:56:44 ID:/8NWh4kwO
遠吠えで気合い入れ!
スゲー燃える!
ほんと、獣人さんが野球やったらそんなんやりそうだなー
ヒカル似のピッチャーかっけぇ

439 ◆/zsiCmwdl.:2010/05/11(火) 19:06:08 ID:yoFGVT720
うむむ!? 市電以外の鉄道が出てきただと!?
烏丸先輩は相変わらず腹黒い、そして更科さん染まりまくってるw
にしても、ヒカルと泊瀬谷先生は相変わらずキュンキュンさせるなぁ……


あ、それとエロスレの方で投下したので、18歳以上の分別をわきまえた方はどうぞ

440名無しさん@避難中:2010/05/11(火) 19:16:10 ID:bZL5TWWUO
ケモスレって単発でしれっと投下しずらいんだけどいいのかな?

441名無しさん@避難中:2010/05/11(火) 19:57:24 ID:BpcS3njg0
>>440
早く投下しろーーーーーー!!!単発でもオリジナルでも版権でも
何でも来おおおおおおおい!!!!

442蛇と平和 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/11(火) 20:49:39 ID:bZL5TWWUO
>>441
 鋼鉄の檻が眼前に広がる。冷たい空気と独特の臭いが立ち込めるが、その前に立つ二人には慣れた空気だ。
 突如、檻が轟音を立てる。柵には巨大な手がかけられ、中で唸るそれはもはや知性を感じさせない。
 さながら『動物園』とでも言うべき光景だった。

「……先祖帰りだな」

 檻の前に立つ者の一人が言った。
 もう一人がすぐに返す。

「確認しただけで六人……。本人がこれじゃ事情聴取も出来ない」
「実際はどうだと思う? 久藤」
「本人は単なる生活の一部として犯行に及んだ。最初の事件から日付から考えれば……」
「そうか」

 久藤と呼ばれた人間は檻に近づき、スプレーを吹き掛けた。中に居た熊は叫んで、奥へと待避する。

「止めろ久藤。あとで訴えられたら面倒だ」
「ほっとくわけにもいくまい。この怪力じゃ壊されかねない。お前には出来ないしな。薮田?」
「イヤミのつもりか?」

 薮田と呼ばれた蛇はするすると檻の前まで行き、久藤と並ぶ。

「……こうなってしまえば、どうにもならないか」
「ああ。おそらく精神病棟にブチこまれるだけだ。治療しようにも本人に理解出来るだけの知性が無くなってる」

「悲しい事だな」
「フン。殺された被害者の前では言えないな。熊が相手じゃほとんどの連中じゃ手に負えない
 今回も結局は実弾使って、それでもまだ生きている程だ」

 薮田はチロチロと舌を出しながら、中の『野獣』をじっと見つめる。

「私ならこんなマネはしでかさないがな」
「冗談言え。お前ならもっと狡猾にやるだろう?」
「そうだ。もっと上手く、確実に。自分に被害が及ばないようにやるだろう。だから私はやらない」
「警官にあるまじき発言だぞ」
「警察は甘くないと言ったんだ」
「……蛇め」
「それは侮辱のつもりか?」

 二人は留置所から外へ出る。

443蛇と平和 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/11(火) 20:50:04 ID:bZL5TWWUO
 久藤は紙コップのコーヒーを飲みながら、先程の容疑者について思いを馳せる。
 何故か防ぎようがない、『先祖帰り』による殺人。

「知性の代償かもな」

 薮田は言った。

「どういう意味だ?」
「……いくら知性を得たとて、所詮は我々に根差す本能は消えはしないって事だよ。
 だが、知性を得た事によって危機を防ぐ能力は大分衰えた」
「それを進化と言うんじゃないのか」
「さぁな。どちらにせよ、本能は消えない。私もお前もな」
「捻くれてるな」
「そういう種族さ」

 二人は車に乗り込み、街へ出る。
 仕事は無いほうがいい。何事も無く、皮肉屋の蛇の小言と一緒に街を流す。それだけでい。
 久藤はそれを平和と呼んでいた。

444名無しさん@避難中:2010/05/11(火) 20:52:57 ID:bZL5TWWUO
投下終了

445名無しさん@避難中:2010/05/12(水) 21:08:21 ID:qxsZQToI0
わんこさんのを代理投稿してみましたが、さるさんを喰らってしまったよ
うです。あとふたつだったのですが… 10時になれば解除になるんです
よね? それまでじんわり待って続きを投稿したいと思います。

446名無しさん@避難中:2010/05/12(水) 22:16:34 ID:qxsZQToI0
>>427
本スレへの代理の投稿、完了しました。
 初めてなので、色々不手際が有ったけど、何とか出来ました。

447わんこ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/12(水) 22:29:29 ID:pGIx9hVk0
ありがとうございます!
投下されたイラストは、イマージどおりでびっくり!
古い電車は大好きです。

448名無しさん@避難中:2010/05/13(木) 06:12:08 ID:/3/oC5H6O
駅の絵いいなー

449名無しさん@避難中:2010/05/13(木) 06:17:34 ID:/3/oC5H6O
>>443
乙。
蛇の獣人さんはスレ史上二人目。
レアキャラ狙いましたね。

450名無しさん@避難中:2010/05/13(木) 23:41:35 ID:JkzlAUow0
>>443
どこかで見たトリと思えば。単発大歓迎!
短くて世界観が出せるのはすごいなあ。

>>414
「相関図的なもの」作者様へ。
以前うpされた相関図を、自分なりにPC上で切り貼りしてみました。キャラ多いなぁ。
佳望学園を初見の方にも少しでも把握できるように、それをうpしても差し支えはないでしょうか?
よろしくお願いいたします。

451 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/14(金) 01:23:10 ID:xqVKu1DsO
>>449-450
わんこ様に何度か心臓握り潰されそうになったんで真逆の超ドライなの書きたかったんだが、まだムリですた。

しかし投下が多くてええスレや。

452名無しさん@避難中:2010/05/14(金) 11:06:03 ID:SM/HdQcs0
>>450
相関図の者です。 御存分に御利用くださいませ。
 といいますか、是非とも皆さまの自由な感覚でアレンジしてくださいな。その
 ための素材になれれば幸いだと思いますので。

>>447
古浜海岸駅がそんなに間違ってなくて良かったです。 イメージではあの向こう
側少し行ったところに浜辺が広がってるって感じかなと思ってます。
小さいころにあまり電車と接していなかったせいか、ノスタルジックな電車とい
えば就職してから出会った東急の緑の芋虫電車になってしまい、それを元に描い
てみました。

453名無しさん@避難中:2010/05/14(金) 20:11:57 ID:LvVf8gF60
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1076.jpg
>>452さん
ありがとうございます。
「佳望学園・相関図」作ってみました。見やすいでしょうか?間違え・ツッコミあれば何なりと。

454名無しさん@避難中:2010/05/14(金) 21:17:08 ID:UR/f8Go.O
うおおお乙!すっきりしてわかりやすい!
まあ気付いた点もいくつか
まず元絵からの話だけど、正しくは「浅川・シュルヒャー・トランジット」「ルイカ・セトクレアセア」
伊織さんが不思議なことになってる件。あれ?義姉さーん
鈴鹿さんは惣一に片想い(いやいやパラレルではなくちゃんと本編で)
サン先生と英先生…はどう繋げばいいのかよくわからん
こんなとこかね

455名無しさん@避難中:2010/05/14(金) 21:25:05 ID:X8Uf9Xvo0
相関図すげえー。見やすくて良いなあ。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1077.jpg


…ルイカと淺川、こっちも間違えられやすい名前で作ってすまぬううう/(^o^)\

456名無しさん@避難中:2010/05/14(金) 22:09:41 ID:v3Nh1rfY0
>>453
おおすげえ! こいつは見事な相関図!

だが俺も少し気になった所が何箇所か。
先ず一つ、鈴鹿さんは元女子プロレス部で現在は飛行機同好会です。
二つ、上でも書いた通り、女子プロレス同好会ではなく女子プロレス部です。
三つ、血の繋がりは無いですが御堂 卓、御堂 謙太郎、御堂 利枝は一応親子関係にしてください
四つ、卓、朱美、利里の三人は悪ガキトリオで通っていると同時に鉄道研究部に所属しています。
(しかし鉄研部の入部に関しては卓、利里は同意していない)
五つ、佐藤先生、兎宮かなめは射撃部。ただし、かなめは狩猟同好会と掛け持ち。
六つ、上でも書いた通り、かなめの所属する狩猟同好会には美弥家 加奈も所属(絵には描かれていないけど三島 瑠璃も所属)
七つ、飛行機同好会のメカニック担当は跳月先生と真田 勉の二人。松来さんは部品の供給元。

む、ちょっと多いけど……こんな所かな?

457453:2010/05/14(金) 22:56:50 ID:LvVf8gF60
おおお。みなさん、ありがとうございます。
修正してまたうpしますね。

458名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 09:00:36 ID:C9TvPImA0
元図の者です。

>>455
ううう、名前を間違えてしまって申し訳ないです。

>>454,456
そーだったそーだった。
忘れている関係とかイベントとか、存外有ることに気付かされましたですよ。

>>453
と言う事で、最低限図に必要そうなキャラを追加したものをこれから描きますので、少々
お待ちいただけますか?
 えーと、ミミ、葉狐、更紗、瑠璃、堅吾、蜂須賀、アリサ、ナガレの両親、木島&緋野
 くらいですかね?(結構残ってたなぁ)。

459名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 12:00:40 ID:C9TvPImA0
ただいま、上記11にんの追加と二名の名前修正したものをアップしましたので、存分に
いじって下さいませ。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1080.jpg

460名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 17:00:31 ID:yRiOOeM.0
>>459
おお! 今までイラスト化されてなかったキャラが何人も。
特にカブト虫の堅吾はこう言う姿だったのかと感心w

461名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 21:45:02 ID:qU7U0zeA0
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1081.jpg
相関図ver1.1

修正してみました。

462名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 22:01:30 ID:qU7U0zeA0
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1082.jpg
相関図ver1.1

ちょっとまた、修正しました。

463名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 23:14:14 ID:DhYNHLlA0
獣人スレはパート2くらいまでしか把握できてないぜ
コレッタは確かケモ学の最初期キャラだったはず

464名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 23:14:35 ID:DhYNHLlA0
誤爆

465名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 23:41:12 ID:l035HkTg0
誤爆先を教える権利をやろう

466名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 23:42:13 ID:DhYNHLlA0
>>465
ラジオスレ

467名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 23:48:36 ID:l035HkTg0
見に行ったら既に終わっていたぜ

468名無しさん@避難中:2010/05/15(土) 23:51:56 ID:ZmE0F.1E0
うpを待つんだ!

469名無しさん@避難中:2010/05/17(月) 13:00:44 ID:6Z/T7QiU0
ああ、何度見直してもかわゆい
けもかわゆい相関図ケモかわゆいよ
ラジオのDJさんへおすすめとか言えなかったのが悔やまれるよ

470名無しさん@避難中:2010/05/17(月) 13:31:11 ID:fK0vbD8wO
ラジオDJ氏もここ見てるかも。

471名無しさん@避難中:2010/05/17(月) 13:38:32 ID:seyEJ3z6O
本当にねえ
リアルタイムで聞けてたなら語りまくってたのに

472蛇と銃弾 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/17(月) 19:10:28 ID:WPjUDqF2O
「今日は冷えるな」

 薮田が言う。
 小雨が降っていた。車の屋根を叩く音はさーさーと心地よく車内に響いてくる。
 薮田はしっぽの先で器用に缶コーヒーを持ち、久藤の運転する覆面パトカーの助手席に丸まって座っている。
 人間である久藤にとっては涼しい程度だが、蛇の薮田には多少堪える気温だった。

「そんな薄着だからだ」
「これ以上着込む必要もない。私にとってはジャマなだけだ」

 薮田の来ている蛇用の衣服は薄手だが特別な保温性を有している。蛇の身体特性を失わない程度の柔軟性と、体温の低下を阻止す機構を備えた優れ物だ。

「制服着てた頃が懐かしいか?」
「あんなのはもうゴメンだ。蛇に帽子はいらないさ」
「今よりは暖かいだろう」
「動きにくいだけだ」

 なんて事の無い会話だった。今日も、このまま薮田の小言に付き合って一日が終わる。そのはずだった。
 二人の乗る車は墓地の辺りを通る。雨は既に霧となり、雰囲気はB級ホラー映画のようだった。
 警察署から市街へと向かう近道として、彼らはよくここを通る。昨日は徹夜で仕事に追われていた二人はさっさと家に帰ろうと、この道を選んだのだ。
 時刻は、朝の五時半をちょうど回った頃だった。

「なんだあいつら?」

 久藤は霧の奥の人影に気づく。車を止め目を懲らすと、猪と体格のいい虎が何やら話し込んでいる。

「こんな時間に墓参りするか?」
「さぁな。私ならやりかねないが……。墓参りの雰囲気でもないな。墓を見ていない」
「よし、行こう」
「また徹夜かもな」

 二人は車を近づけ、素早く横付けにする。車を降りながら警察署手帳を見せつけ、職務質問だと告げた。

「ここで何してる?」

 久藤の質問に猪はありきたりな答を返す。

「墓参りだよ。今しか時間が無かったんだ」
「花も持たずにか? 墓参りならなぜ道路の脇で話し込む?」
「たまたまだよ。もう終わったし帰る所だ。」

 やはりと思う。
 猪の解答は筋が通っている。あらかじめ用意された解答のように。

473蛇と銃弾 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/17(月) 19:10:50 ID:WPjUDqF2O
「持ち物検査を行う。協力してくれ」
「持ち物検査? 冗談じゃねぇ。俺が何したってんだ」
「さぁね。それを今から調べるんだ」

 猪は明らかにうろたえている。普通なら怪しまれれば身の潔白を正銘しようと協力的になるか、より攻撃的になる。それならば最初の段階で取り付く島も無いはずだ。
 持っている。
 久藤の勘はそう言っている。

「拒否するなら公務執行妨害だ。どうする?」
「ふざけんじゃねぇよ! 俺が何かしたかよ!!」
「うろたえすぎだ。観念して指示にした――!」

 突如、横に居た虎が久藤を突き飛ばす。
 体格差が有りすぎた為か久藤は紙屑のように飛ばされ、派手に尻餅を付いた。

「ううううううぅうう………」

 虎の声はもはや言葉となっていない。憎しみを込めて唸っているだけだった。

「やりやがって……!」

 久藤はなんとか立ち上がり、目線で虎を追う。それを見ていた猪は虎とは反対の方へ逃げだそうと走りだす。
 待て! そう言おうとした矢先、猪の膝に鞭のような物で一撃が加えられた。薮田だ。
 たっぷりとしなりを効かせたしっぽの一撃は並の威力ではない。
 猪は情けない声を上げて転倒し、薮田はそれに瞬時に絡みつく。

「うご………! 放せ! 放しやがれ!」
「喚くな猪風情が。このまま締め上げて殺す事も出来るぞ。全身の骨を砕いてな」

 薮田は感情の無い目で言う。ただの脅し文句だが、暴れる犯人を震え上がらせるには十分だ。

「久藤! 逃げた虎を追え。コイツは私に任せろ」
「わかった。すぐ戻る」

 久藤は懐から拳銃を取り出す。相手は虎。それも錯乱している可能性がある。嫌な予感が頭を過ぎっていた。
 スライドを引いてチャンバーに弾薬を送り込み、安全装置を外す。

「朝から撃ちたくねぇけどな」

 走りながら愚痴を言うが、誰も聞いてはくれない。
 虎はフラフラと歩いたり走ったりを繰り返し、半地下の納骨堂の前につく。
 ちょっとしたレンガ造りのトンネルに入り、壁に寄り添いうなり声を上げていた。

474蛇と銃弾 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/17(月) 19:11:43 ID:WPjUDqF2O
「警察だ! 止まれ!」

 銃を構えお決まりの事を言う。
 映画ではこれで止まる者などいないが、実際はこれ以上の脅しは無い。ほとんどの連中は大人しく従う。
 一方虎は、壁に頭をズリズリと擦りながら声を上げ続けている。

「警察だ! こっちを向いて止まれ!」

 もう一度怒鳴る。虎の耳にも届いたのか、ゆっくりと久藤の方を向いてくる。
 その顔は既に感情に飲まれている。
 目は血走り、口からはよだれがだらだらとこぼれ、野獣のような唸り声を漏らす。

「両手を頭の後ろに置いて地面に伏せるんだ! 今すぐ!」

 虎は一歩前に出る。指示に従う様子は無い。その視線からは明確な敵意が伝わってくる。

「指示に従わなければ発砲する! もう一度言うぞ! 止ま――」

 久藤が言い切る前に虎が飛び掛かる。
 猫科特有の瞬発力を用い、その巨体が久藤の上にのしかかる。
 上を取られた久藤はあえなく下敷きになる。

「うううう………。うあアアッァァァアア………!!!」
 もはや声とは呼べない。錯乱した虎は爪を久藤の身体に食い込ませようと何度も爪を立てるが、下に着込んだボディアーマーが邪魔をする。
 うまく行かないとみるや、今度はその長い牙で喉元に噛み付こうと大口を空け顔を近づけてくる。

「舐めやがって……!」

 久藤は銃を握ったまま鉄槌を虎の顔面に打ち込む。グリップの底が虎の牙に当たり、久藤は確かな手応えを感じた。虎が叫ぶと同時に、今度は耳の下の急所にも同じ攻撃を加える。
 虎が一瞬怯んだ隙を見て久藤はそこから脱出し、距離をとって再び銃口を向ける。

「うううううううううううう…………!!!」

 虎はまだ敵意を表す唸り声を上げていた。
 口からは血が流れている。最初の一撃で牙が折れていたのだ。

「今度こそ止まれ。次は警告無しだぞ」

 その言葉は届かないだろう。事実、虎はまた久藤ににじり寄るってくる。
 そして、霧のかかった朝の墓地に銃声が二回、連続して響いた。

475蛇と銃弾 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/17(月) 19:12:03 ID:WPjUDqF2O
※ ※ ※


「虎からLSDが検出されたわ」
「そうか。あの猪野郎も持っていた。奴が売人だな」

 薮田は警察署で鑑識の女性警官と話をしていた。
 彼女は久藤が射殺した虎の鑑識を行い、薮田の指示で行った薬物検査の結果を告げに来たのだ。
 シロサギの彼女の羽は幾分かバサバサになっている。彼女もまた署内での缶詰業務に追われていた。

「忙しい所悪かった。邪魔をしてしまったな」
「いいわ。これも仕事よ。久藤さんは?」
「医務室だ。LSDでパニックになった虎と立ち回ったんだ。無傷のはずが無い」
「そう。遺体を確認した皆が驚いてるわよ。……凄い射撃の腕だって」
「心臓に二発か。基本に忠実だ」
「知ってたの?」
「銃声は二回だった。それは久藤が射殺すると決めて撃った時だ」

 薮田はするりと椅子から降り、その場から立ち去ろうとする。あまりに素っ気ない態度。
 しかしそれが薮田だ。蛇そのものの生き方。

「どちらへ薮田刑事?」
「取り調べさ。あの猪を締め上げてどこからLSDを持ち込んだのか吐かせる」
「あなたが言うと冗談に聞こえないわね」
「冗談をいうタチじゃないさ。しかし……」
「しかし……。何?」
「この街で薬物犯罪が無かった訳じゃない。だがLSDが出て来たのはここ最近だ。それまではコークが主流だった」
「売人が乗り換えたんじゃないの?」
「違うな。コカインを転がし続けた連中がそうそう他のに手を出すはずがない。それにLSDは競合する薬物になる。
 そうなればコカインの売上も落ちる」
「どういう事?」
「商売敵がこの街に来たって事さ」

 薮田の推測が当たっているかは解らない。だがそんな事は当の薮田には関心は無い。

「あとは麻取と麻薬科の仕事だ」

 薮田はそれだけ言った。彼は彼の仕事をするだけだ。
 己の職務をまず第一に全力で行う。それが薮田の信念だった。
 彼はそのまま、医務室に居る相棒を迎えに行く。そしてそのまま、持ち前の狡猾さで取り調べを行うだろう。

476蛇と銃弾 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/17(月) 19:12:26 ID:WPjUDqF2O
投下終了

477名無しさん@避難中:2010/05/21(金) 20:20:06 ID:PRTBDwNUO
これはなんとハードな雰囲気
蛇刑事とは新しい。かっこいいな

478 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/21(金) 21:19:31 ID:STQjZeVkO
いつの間にか代行されてた件。
乙でした。

479名無しさん@避難中:2010/05/21(金) 21:46:16 ID:3WT3wOT2O
塚本「口蹄疫オソロシス」

来栖「どげんかしてほしいですマジで」

ライダー「ユンケルがどうかしたの?」

馬&鹿「「……」」

ライダー「え?俺なんか変な事言った?」

塚本「ツッコミが救えるボケばかりだと思うなよハゲ!」

来栖「当事者意識ひきーんだよ巨大昆虫が!」

ライダー「…………ごめんなさい」

蜂須賀(蜂大量死したときはスルーしてたくせに……)

480名無しさん@避難中:2010/05/21(金) 21:57:51 ID:STQjZeVkO
>>479
ワロタけどワロエないwww

481名無しさん@避難中:2010/05/22(土) 01:55:35 ID:1HT9qI3MO
塚本「口蹄疫オソロシス」

来栖「と、いうわけで対策を教えてもらいにきた」

シロ「お前達ヒマ人だなあ」

塚本「コーシーくれよー」

シロ「サ店じゃないんだぞ…(言いつつコーヒー差し出す)」

塚本「(ズゾゾー)ウマー」

来栖「で、俺たちは死ぬのか?」

シロ「死なんわ口蹄疫くらいで」

来栖「え?死なねーの?」

シロ「人間の病気に口唇ヘルペスってのがあるんだが、それに似てるんだ。
顔面神経にウイルスが取り付いてしまって、一度感染するとウイルスを全部除去出来なくなる」

来栖「困るじゃん」

シロ「うん。でもヘルペスウイルスは日和見感染症で、免疫が働いていると全然症状が無い」

来栖「口蹄疫も同じ?」

シロ「いや、口蹄疫は結構症状が現れやすい。完治しようが無い理由は同じだけどね。
くわえて口蹄疫の場合は感染力がべらぼうに強いから、畜産の場合は殺処分する」

塚本「(ゲップ)ごっつぉーさま。オカワリ」

シロ「お前始めから全く聞いて無いだろ」

塚本「失礼な!しっかと聞いてたわ!」

来栖「じゃあ俺とシロちゃんの会話、要約してみろ」

塚本「ああん?えーと、うー……口のヘルスは、顔に付くと、困る?アレかな、メイクが落ちるからかな」

シロ「カエレ」

482名無しさん@避難中:2010/05/22(土) 09:55:30 ID:7aUHYxj.0
口蹄疫って、偶蹄目の病気なんで、来栖はまずいけど塚本は大丈夫なんじゃないかしら?
花子先生とかいのりんとかトンコは気をつけないと。wikipediaによると大吾もか。

483名無しさん@避難中:2010/05/22(土) 11:17:35 ID:1HT9qI3MO
塚本「俺は大丈夫だと、途中で気付いた」

来栖「だからサ店気分だったのか」

484名無しさん@避難中:2010/05/22(土) 16:30:43 ID:tPbogZH6O
保健委員も大変だな

485 ◆wHsYL8cZCc:2010/05/26(水) 23:19:01 ID:UnAl3IDEO
本スレ>>736
薮田が俺のイメージ通り過ぎる件wwwwwwwwwwww

486名無しさん@避難中:2010/05/29(土) 07:40:53 ID:QtBNmH16O
チェンジリングにあの正義の味方が現れた模様です

487361:2010/05/29(土) 09:31:40 ID:XTrk/m2YO
ご名答。
ただ知らない人にとっては謎の人物ってことにしておきたいので、
話の中でネタバレするまではケモスレの話題は出さないでくれると助かります。

488名無しさん@避難中:2010/05/29(土) 09:57:11 ID:QtBNmH16O
そうでしたか、すみません!
ちゃんと黙っておきますんで。
SSでの動きとか拾っててくれて非常に嬉しかったです。
続きwktkしてます

489名無しさん@避難中:2010/05/31(月) 12:55:08 ID:O6QOf/UoO
吹奏楽部かわいいよ吹奏楽部
噛み付きに特化した肉食獣の口だと息吹き込むの大変そうだなあ

490 ◆/zsiCmwdl.:2010/06/19(土) 02:59:46 ID:KtWOKf/60
ちょいとお知らせなのでここで。
来週の金曜に投下する予定の第2部【承】ですが、
諸所の事情の為、来週の火曜日の投下へと変更します。

お知らせは以上です。

491 ◆akuta/cdbA:2010/06/19(土) 22:53:54 ID:BZtTSGwk0
ムオオー
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1167.jpg

492名無しさん@避難中:2010/06/19(土) 23:14:04 ID:JW/JpIOQO
>>491
なんかかわいいw

493名無しさん@避難中:2010/06/21(月) 05:51:13 ID:3htNoXMoO
かわいいなー

獅子宮先生って眼帯っ子だったね
その過去って明かされてたっけ

494わんこ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:24:37 ID:CXf7ZP6k0
>>491
獅子宮センセに萌えた!

本スレでは長編が進行中なので、ここで投下しよっと。

495そよ風の憧れ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:25:21 ID:CXf7ZP6k0
「助けてっス!!!ボクの人生最大の危機を助けて欲しいッス!!」
いつもは静かなそよ風吹き抜ける午後の佳望学園の図書室で、けたたましい悲鳴がいきなり広がった。
声の主は保健委員。ケモノの尻尾をふりふりと、ケモノの脚をぶらぶらと、そしてパニくるこえはぎゃあぎゃあと。
他でもない。ちょっと高めの本棚の一番上の本を取ろうとしていただけのことだ。しかし、無理してジャンプしたのがいけなかったのか、
片手を棚に引っ掛けて地上50cmの宙ぶらりん。いつも被っている海賊の帽子もこのときばかりは勇ましさも感じられなかった。

保険委員の声を察知してか、白くて大きな尻尾を揺らしながらやってきたのはイヌの少年・犬上ヒカル。
ついインクの香りに誘われて小説もいいけどエッセイも、と思いながら背表紙の文字だけで今日借りる本を選りすぐっていたところ、
この部屋に似つかわぬ声を耳にした。声の元は、『保健』に関する本棚の方。借りようかと思っている本を手に現場へ向かう。
今、危機に陥っている保健委員を助けなければと、ヒカルは暴れる一方である保健委員の脇を抱えて、そっと母なる大地に下ろしてやった。

「ふう……。助かったっス!ありがとう!ヒカルくん!」
「……図書室では、静かにね」
「分かったッス。で、あのー……ヒカルくんにお願いが」
遥か高く見える本棚の頂上、お目当ての本が取りたくて恐る恐る視線で指差す保健委員。
コスプレの眼帯もこのときばかりはちょっと格好が付かない。ヒカルは保険委員の目を一瞥すると何も言わずに、本棚上段に手をかけた。
「そう、その本っス」
小柄な保健委員が取りたくても取れなかった本を軽々と手にするヒカル。いや、保健委員が小さすぎる為だろう。
ヒカルはじっと注射器や聴診器の絵が描かれた本の表紙を見つめて、大きな尻尾を揺らした。

「そう!ボクの夢は立派な保健委員になることっスよ」
「……」
司書さんが待つカウンターへと、本と志を胸に抱きながら保健委員はヒカルと並んで静かにじゅうたんを踏み鳴らす。
図書室の窓が額縁のように校庭に立つ大きなイチョウを描き、梅雨の合間の光を受けていた。そして、そのおこぼれを頂く一人の子ネコ。

「クロも風に乗ってみたいニャ」
イチョウの枝に腰掛けて、衣替えしたばかりの制服の裾なびかせて、クロネコの佐村井玄子が水無月の風を感じていた。

―――図書館でお気に入りの一冊を借りると、ヒカルと保健委員は好きな本のことを話しながら下駄箱へ向かった。
犬上ヒカルという子は普段は物静かなのだが、本のこととなると話が止まらなくなるらしい。
初めて読んだ絵本、先生に薦められた童話、父から贈られた詩集。高校生になるまでに積み上げてきた小さな読書歴が、春を待ち望んだ花のように咲き誇る。
負けないッスよと保健委員も頷き返しながらアンリ・デュナンやナイチンゲールの偉人伝を思い出す。
幼いころ読み漁った本はいつか思い出と、記憶の糧になるとは誰が言ったのか。

496そよ風の憧れ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:26:00 ID:CXf7ZP6k0
話に夢中になっていたからか、二人はいつの間にかクロの登っている木の下にやってきていた。
「何してるッス!落っこちたらケガするッスよ!骨折して……」
「……」
保健委員は子ネコが木の登る姿に肝を冷やしているが、冷静に考えれば杞憂に過ぎない。何故ならクロはネコの子。
それを分かっているヒカルは、子ネコを通り越してグラウンドから響く声の方が気になっていた。
いつも聞きなれた中等部の生徒の声に混じって、聞き覚えのある若いお姉さんの声が届いたのだ。
「来てるのかな……」
「誰っスか?」
「杉本さん……」

―――そのころ、グラウンドで小さな巨人・イヌのサン・スーシ先生が『コンダラ』を引っ張ろうとして、空中で足を空回りさせていた。
もっとも『コンダラ』と言う呼び方は正しくないと理解している者は多いと思われるが、おそらく国内では『コンダラ』で通じるアレ。
その『コンダラ』の重量を制しきれず、握り棒を持ったまま宙ぶらりんなサン先生は、ひたすら足を永久機関の如く回し続ける。

「あははは!サンったら本気出せー」
サン先生だって、狙ってやっているわけではない。なのに、笑い声が聞こえてくるなんて、台本なしのコメディ映画が大ヒットするようなもの。
さて、その声の主とはバットを杖代わりにし、ケラケラと笑いながらサン先生の本気ぶりを眺める若い女のネコ。
Tシャツから覗く白い毛並みと、ショートの金色の髪が健康的。すらりと伸びたGパンの脚はお子ちゃま体型のサン先生と対照的。

いや、お子ちゃま体型と言うより「見た目は子ども!」を体現した立派な成獣男子なのだが、如何せん言動がお子ちゃま以上オトナ以下だ。
実際にサン・スーシ先生は、初等部の子たちと比べても大差がない。むしろ先生の誇りといっても差し支えはない。
それに『コンダラ』の握り棒は丁度、サン先生の顔あたりに当たるので『コンダラ』はサン先生を軽く持ち上げることができる。
「まったく、ミナは何しに来たんだよ」
「理由なんか後付で十分だよ」
彼女は学園外部の者。教師にしては自由すぎるし、生徒と考える道筋は、はなから間違え。だが、親しげにサン先生に話しかける。
第三者から見れば凸凹だけど、離れ離れになったピースがぴったりと合うようなネコとイヌは、放課後の佳望学園を賑やかす。

「あのー、サン先生。全然進んでいないんですけど」
「動いてる!動いてる!」
「ちっとも、そうは……」
サン先生、中等部の生徒たちにまで心配されているようじゃ、そろそろ誇りを守ることを考えたほうがよろしゅうございませんか?
ほら、御覧なさい。中等部のお気楽三人組タスク・アキラ・ナガレが手に野球用のグローブをはめて心配そうに見つめる姿が滑稽に映ったのか、
若い女のネコは使い込まれたスニーカーで駆けつけて、意地っ張りな仔犬をからかいにやって来たではないですか。
「ミナはまったくなにしに来たんだよ」
「面白いな、コレ」
「あの、杉本さん……」
「ミナでいいよ!アキラくん」
オトナのオンナノヒトと話が出来ただけで、アキラはちょっと舞い上がった。
オトナのオンナノヒトが笑っているのを見ただけで、タスクはちょっと尻尾が揺れた。
オトナのオンナノヒトのTシャツが捲れただけで、ナガレはちょっと瞬きが多くなった。
弟みたいなオトコノコたちに囲まれて、杉本ミナは少年のような無邪気さを垣間見せる。

497そよ風の憧れ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:26:29 ID:CXf7ZP6k0
「いい加減、諦めなよ」と、言い終わると同時に空を突き抜ける気持ちの良いサン先生の音。
頭を擦りながらサン先生は目の前で満面の笑みのミナを見上げていた。「コレでも教師だぞ」と抗議するも、ミナには届かず。
手をはたいて『コンダラ』を諦めたサン先生は、両脚揃えてとび跳ねる。
「あの。ボール持って来ました」
「でかしたっ。気の利く男子は女の子にモテモテだ」
バケツ一杯にソフトボールを詰め込んで、両手でふらふらと抱えるイヌの芹沢タスクは、反射的に頬を赤らめた。
グローブに拳を叩き込んで、気合だけはいっちょ前のアキラ。物静かにメガネを光らせるナガレ。そして、生徒以上に生徒なサン・スーシ。
透き通る空と、汗ばむ季節に誘われて。グラウンドに白球の虹を架けてみせると、杉本ミナは意気込んだのだ。

「さあ!みんなバックバック!!わたしの球をキャッチしたいなら、相当後ろに行かないと取れないぞー!」
男子4人組よりも活発で、空色のような声を上げてバケツから球を拾い上げ、軽く上に投げる。腰を落とし、脚に力を込める。
音が出るぐらいの勢いでバットを振ると、ポカチーンと音を立てて白球は大空に吸い込まれた。
タイミングを合わせたように風が吹く。ミナのTシャツの裾が揺れ、白い毛並みのへそが顔を出した。
おっと、健全かつ不健全な思春期の少年にはちょっとこのご褒美は早すぎる。いや、奴らはそれ頃じゃない。
愚直にまっしぐらに、そしてケモノの本能そのままに白球を追い駆けているのだから、そりゃ残念でした!

「タスクくん!走れー!!」
一度地面に落下した球は勢いをそぎ落とし、幾ばくか跳ねながらグラウンドの外へ向かって逃げ出す。
ワイシャツ乱しながらタスクは一心不乱に球を追い駆け、グローブでキャッチ。下手投げでホームのミナに送球するも、
地面を駆け抜けるネコに追われたネズミのように、球は素早く転がっていった。しかし、悔しそうなのはサン先生。
「あ、あれは……ミナが打つのがヘタクソだったんだよな」
「ヘタクソの癖にヘタクソ呼ばわりなんて、サンには千本ノックだよ!!ヘタクソ!」
白い歯を見せて、白い毛並みを揺らし、球を一つ拾い上げて、さあマシンガンの如くミナの千本ノックがサン先生に浴びせ……。
いや、意外にも球はゆっくりと垂直に飛んでいった。地上の一堂、天を仰ぎ各々両手を上げる。

革の響く音!清々しい爽快感!そして、一瞬の静寂!一人だけが浴びることを許された視線!

498そよ風の憧れ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:26:57 ID:CXf7ZP6k0
「あ……」
マヌケな声を上げたのはタスクだった。両手を挙げて一旦掴んだ球が転がり、頭にコツリ。
「わたし、ヘタクソだから簡単に取られちゃったね!」
「へたくそ!!」
「言ったね……、サン・スーシくん」
ミナの本気がみなぎる。動き出した機械仕掛けの時計のようにゆっくりとバットは地上から天を指し、ボールを持つ手も力が入る。
構えたポーズからはゆらゆらと陽炎のような空気のゆれ。そんなに暑い季節でもないのに、ミナの周りはとみに濃い影が出来ているようにも見えた。
ぱあっ!と天空に放たれたボールは一瞬のうちにミナの振り切るバットに吸い込まれ、この夏いちばん快い音。

取るか?
取れぬか?
取るか?
取れぬか?
取るか?

白い雲に吸い込まれそうなボールを追い駆け、両手を挙げるサン・スーシ。
丸いめがねに丸い球が映る。大きくなりつつある白球。地面のイヌに向かって、すっと……。

―――クロがヒカルの肩に飛び込んだ。
予期せぬ出来事にヒカルは目をちょっとだけ丸くした。初等部の児童とはいえ、いきなり背中にオンナノコが乗ってきたんだから。
「ヒカルくんのお陰で、空を飛べたニャ!!」
ほんのわずかだけど、鳥のように空を独り占めできたクロが珠のような歓喜の声をあげる。ヒカルはその声だけで、全てを許していいとも思った。
あまりにも一瞬の出来事だったので、保健委員も口を開く暇さえなかった事実。クロはヒカルの若々しい白い髪に顔を埋める。

「くんくんするニャ」
「……」
けっしてヒカルは声を荒げることは無い。小さく細いクロの脚がヒカルの両腕に掛かり、くすぐったいクロの手が首筋を擦る。
クロの黒曜石のような毛並みがヒカルの雪に埋まり、ただでさえ小さなクロが小さく見える。
「くんくん……ニャ」

夢は見えた?夢は叶った?

クロは「今度は大空を飛ぶニャよ!」と目をつぶってヒカルに抱きついた。
「おや?ヒカルくんじゃない。これまた背中にかわいい子をおんぶしちゃって」
「あ、あの……。杉本さん」
「ミナでいいよ!」
ヒカルはちょっと頬を緩めた。自分と同じような格好をしているミナとかち合ったのだから、当然と言えば当然だ。
ただ、ミナが背負っていたのは『かわいい子』ではなく、頭にたんこぶ作ったサン・スーシだった。
「たいしたことない!たいしたことない!!」と、大声を出して抵抗するサン・スーシだが、ミナに全てを掌握されて
だだをこねる子ども以上に金切り声をグラウンド一杯に溢れさせていた。後を追う中等部の三人組も見守るだけ。
とみにヒカルの背中が軽くなる。サン先生の声で目を覚ましたクロが、恥ずかしそうな顔をしてヒカルと保健委員の間にぴょんと割り込んだのだ。

499そよ風の憧れ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:27:22 ID:CXf7ZP6k0
「大変ッス!取り合えず患部を冷却するッスよ!!ヒカルくん、おんぶッス!」
「ええ?」
「ちょ、ちょっと!白先生は勘弁だぁぁ!!」
クロの代わりに今度はサン先生かぁ、とぼやく暇も無くヒカルは暴れるサン・スーシを背負い中等部三人組引き連れて保健委員と共に保健室へと急いだ。

「お姉さん……は、ニャ?」
「先生のお友だちよ」
スカートの裾を引っ張り、背を丸くするクロの目線にミナがしゃがむとミナのTシャツから白い毛並みの背中が見えた。

「もしかして、お姉さん……。わたしをお子さまって思ったニャね!だって、だって、ヒカルくんにおんぶされて!
わたしだって立派な『れでぃー』なんだから、おんぶなんかされても嬉しくないニャだもん!だって……だって」
「ふふふ」
「空を飛びたかったんだもんニャ」
クロのすねたような、恥らうような、爪先立ちの子どもの背伸び。
ミナはクロの目線まで腰を落とし、頭を撫でながらクロをなだめる。
「気持ちよかった?」
「うん」
「そうなんだ、わたしも飛んでみたいなあ」

―――
街が一休みする時間なのに、未だ外は明るい。佳望学園からの坂道を一台のバイクが風を切って下りてゆく。
ちょっと昔のデザインだけど、古さを感じぬミナの愛機。白いヘルメットから顔を出すミナの短い髪が涼しげになびいた。
エンジンの振動は心地よく、夏の香りをかぎ分けながら、目下に映る街を望む。空の雲は白い。
「コイツで空を飛べたらいいのになあ」

風は味方。
風はよき友。
ネコだって、ケモノだって、風さえ心許せば空を飛べる。愛機に乗っていると、そんな錯覚さえ事実だと思い込んでしまう。
「まったく、ミナは何しに来たんだよ!」
後ろからサン・スーシがポケバイに乗って追い駆ける。グランドにいたとき以上にやかましい声を聞きながら、杉本ミナはスロットルを噴かす。

「理由なんか後付けで十分だよ」


おしまい。

500わんこ ◆TC02kfS2Q2:2010/06/24(木) 23:29:29 ID:CXf7ZP6k0
投下はおしまい。
お気楽中等部とクロをお借りしましたが、なんだかクロが書いているうちに愛しくなってきた!

501名無しさん@避難中:2010/06/24(木) 23:59:39 ID:Vpb9d.qkO
>>500
乙。一日二話とはやるのう。
しかし……。ヒカル……クロ……ハァハァ

502名無しさん@避難中:2010/06/25(金) 01:40:18 ID:ZsdJ59ggO
なんでも無い日常をなんだか愛しいものに書き起こすわんこ氏の才能に嫉妬
素晴らしいぜチクショー

503名無しさん@避難中:2010/06/25(金) 21:21:28 ID:FiHKkiHgO
クロかわゆいのう
モフモフしてる2人を想像するだけでハァハァしてくるわ
ミナは相変わらず気持ちのいいお姉さんだ

504名無しさん@避難中:2010/06/28(月) 11:32:52 ID:pb1SdTK.0
>>498
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1190.jpg
>>499
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1191.jpg

505名無しさん@避難中:2010/06/28(月) 12:17:43 ID:.RnDL856O
>>504
まぁ………///

506名無しさん@避難中:2010/06/28(月) 19:49:44 ID:4.wBBNDoO
クロちっこいなあハァハァ

507名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 06:14:21 ID:OsZOSERUO
クロ可愛いなもう
てかはせやんやクロがくんかくんかしたくなるヒカルきゅんのかほりを嗅いでみたいぜ

ミナさんあぶっ、あぶねっ

508名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 19:12:48 ID:3/rzbajc0
見れません><。うわああ

509名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 22:11:04 ID:ZEOiXft60
残念、見れない。

510名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 15:20:13 ID:JKpUq3HYO
えー…何で絵削除したん…?(´・ω・`)

511名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 21:25:38 ID:LqkRGij.0
うう…。いくらやっても「ヒカルきゅん」のもふもふが見れない。
何でだよ、くそー。ってか、何で見れたの?逆に。

512名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 21:54:55 ID:yan5YKoQ0
>>511
アップされてた日は見れたけど、ろだ見たら削除されてたよ

513名無しさん@避難中:2010/07/03(土) 21:52:03 ID:AbwR9E020
すいません、一寸思うところが有って削除してありましたが、再度あげました。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1205.jpg
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1206.jpg

514 ◆/zsiCmwdl.:2010/07/04(日) 13:00:39 ID:0CE1gt2.0
修正点があったのでここで。
×頭一盃に疑問符を浮かべる私へ言いながら、盃にサイダーを注ぎ始めるゆみみ。

○頭一杯に疑問符を浮かべる私へ言いながら、盃にサイダーを注ぎ始めるゆみみ。

それと、美作 更紗の、『更紗』である部分を『更級』と間違えてました。今更それに気付くとはギギギギ
面倒ですが、Wik収録時は上記の間違えを修正して頂けるとありがたいですorz

515名無しさん@避難中:2010/07/16(金) 12:26:54 ID:DlyCDjik0
絵師の人が来なくなったな・・・何かの用事で忙しいのかな?

516名無しさん@避難中:2010/07/16(金) 20:49:45 ID:xRZUgft.O
ちゃんと板に居るよ?絵師さんもSS職人さんも。
ケモスレは過疎だからちょい離れがちだけど。

517名無しさん@避難中:2010/07/17(土) 20:09:27 ID:H43KZg7I0
以前、絵師さんが乗せて頂いた相関図の絵を使って、ケモ学SSガイドを作ってみました。
相関図を見て「登場キャラが多い」と感じられる方もいらっしゃるようで、主要キャラ中心に
初期作品をまとめました。よく出るキャラは多くはないので、初めてケモ学に触れる方の力になれば幸いです。

また、事後になってしまいますが、いつもの絵師さんの絵を使用させていただきました。すいません。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1246

518名無しさん@避難中:2010/07/17(土) 21:43:47 ID:HHWnD8fI0
これはまた面白いですね。判り易いし。
相関図用元画は、元々こんな感じに汎用的に誰でも使っていただけるようにと描きました
ので、ご自由にどしどしとお使い下さい。
 ちょっとコントラストが低いかな? 少し上げたものを再アップしたほうが良いかしら?

519名無しさん@避難中:2010/07/19(月) 15:11:01 ID:xfYwc8K20
http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/868.html
の冒頭を勝手に絵コンテ切ってみた。

http://loda.jp/mitemite/?id=1251

520名無しさん@避難中:2010/07/31(土) 20:35:44 ID:3Pt/Oed6O
ちょっと質問、既出だったらごめん

祥子さんの苗字って「れいの」?
ウィキの紹介文が「ふだの」になってたけど

札野という苗字は「れいの」「ふだの」どっちも実在するっぽいんだが
名前のモトネタから「れいの」だよな……
俺の勘違いかもしれん?

521名無しさん@避難中:2010/08/01(日) 00:35:06 ID:wuCiE1GI0
あれはれいの、ですね……。名簿やら紹介やらはコピペしてwikiに乗せてしまったので、生みの親なのに気付かなかったです……。

522名無しさん@避難中:2010/08/01(日) 21:35:08 ID:sKUz/C6w0
書き込めない人へ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277458036/

523名無しさん@避難中:2010/08/02(月) 07:09:20 ID:zkHQaH2s0
移転はいいけどさぁ…スレ落ちた…

524名無しさん@避難中:2010/08/02(月) 18:20:13 ID:XnRGpqps0
いつの間にか消えてる!!

525わんこ ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:40:51 ID:fKdkN0eQ0
本スレがアレな状況だからこそ!投下する!

526きつねの子 ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:41:30 ID:fKdkN0eQ0
最悪だ。
カレーうどんのつゆが、わたしの手にはねた。
母さんが弁当を作り忘れたから、たまに学食に行くとコレだ。ほっておとくと、取れなくなるからたちが悪い。
「風紀委員長であるわたしとしたことがー。あーん!!」
自慢の白く柔らかいウサギの毛並みが、カレーの香りとともに染み付いて午後の授業のための集中力を奪ってしまう。
とろみの付いたうどんのつゆは、なかなか冷めずわたしのメガネをいたずらに白くするだけ。カレーの風味もどこかへ消えてしまった。
今日は毎月楽しみにしている『コミック・モッフ』の発売日だから、きっと浮かれてしまっていたのだろう。

返却口に食器を返すとすぐさまに、学食側の洗面所へとはせ参じた。誰かが見ているような気がして、落ち着かない。
無駄だと思いつつ、洗面所で染まった箇所を洗うが、悲しくも事態は前と変わることはなかった。
ただ、手が冷たいだけ。ただ、濡れた毛並みが情けないほどわたしの体にへばりついているだけだった。

「あ……」
誰もいないと思っていた洗面所に、誰かが使っている気配がする。あれは同級生の小野悠里。
大きなキツネの尻尾を揺らし、銀色の艶かしい髪を片手で掻きあげ、そして胸元からははみ出さんばかりの豊かな胸。
鏡を前に歯ブラシを咥え、また熱心に歯を磨いている。ブラシの音が洗面所に微かに響き渡っていた。
歯磨きをしているというだけなのに、図り底得ない色気を感じ、よからぬ妄想図がわたしのメガネに焼きつく。
彼女は本当にわたしと同じ高等部の生徒なのか、と誰も得しない自問自答を繰り返しながら、自分のお情け程度の胸に手を当てる。
何もかも正反対なわたしは、小野の不思議な魅力に取り付かれたのか、何故か彼女をじっと見つめていた。
ハッカのような歯磨きチューブの香りが、わたしの瞳を半開きにさせる。

「小野さん?」
ハンカチで手を拭きながら、わたしの呼びかけに振り向いた小野は、ちょっと頷くと再び鏡の方を向く。
歯ブラシを口から出すとともに、磨いたばかりの白い泡がたらりと口からこぼれる。糸を引いた白い泡が彼女の口を汚す。
流しに垂れた泡の音をわたしは聞き逃すはずが無い。むしろ、その音に理由なき色気を感じたのだ。
手持ちの赤いコップで小野は口をゆすぐと、再び口からぷくぷくと白い泡を細い口元からこぼしていた。

「委員長だ。リオちゃん、珍しいね。ここで会うなんて」
「ちょ、ちょっとね。お弁当を忘れて学食で食べたんだけど……」
「いつもお弁当だもんね、委員長は。ンフフ」
そういえば、小野と面と向かって話すのは、これが初めてかもしれない。
小野悠里。キツネの高等部女子生徒。実家がお寺で弟が一人。わたしの持つ彼女に関するパーソナルデータはこのくらい。
そして、横から彼女を見ると、制服からでもやゆん、よゆんとたわわに実った胸が誇らしく見える。きっと柔らかい。
「わたしとちょっと、あそばない?」だなんて言葉が口癖でも不思議じゃない、学園の妖女。
仮に同じセリフで男子を誘惑しても、わたしなら「ぷっ」と一笑されるだけかもしれないが、彼女なら化かされたように
男子は彼女の後を付いてゆくのであろう。はいはい、男子なんかそういう生き物なんだよっ、バーカ。

「小野さんは、いつも……」
「あら、『小野さん』だなんて。『悠里』でいいわよ、リオちゃん」
使った後の歯ブラシを洗いながら、悠里はわたしより遥かに年上っぽい声で、わたしを同級生と認めてくれた。
コップとお揃いの歯ブラシケースは、お年頃の女の子のもの。水気を切ってポーチに収めると、悠里はわたしを教室へと誘った。

527きつねの子 ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:41:58 ID:fKdkN0eQ0
悠里といっしょに歩くと、女のわたしでも男子の気持ちが分かる気がする。
一歩ごとに大きな尻尾は揺れて、わたしの純真な乙女心を落ち着かせない。見慣れている二次元の世界では、ここまでの色気は出せない。リアルの勝利か。
銀色の髪の毛は、ミステリアスな彼女の雰囲気とよく似合い、例えば悠里の為にお小遣いをすっからかんにされても後悔は無い。
「そうだわ。今日の放課後、わたしとご一緒出来ないかしら。りんごちゃんは吹奏楽部、翔子はバイトなんだって」
もちろん、わたしは無言で首を縦に振っていた。悠里のことに、俄然興味が湧いてきたのだ。
わたしと悠里との共通である友人は、わたしと同じウサギの星野りんごだ。
りんご曰く「年下でも年上でも、うぶな男子をからかうのが趣味」だとか。悠里とつるむことの多い翔子は、
そのことにやや苦心しているようだが、悠里の側に立って御覧なさい。理由はすぐに分かるから。

放課後、約束どおりに悠里とわたしは、帰り道を共にした。彼女がローファーを履く姿に見とれる。
足を靴に入れる仕草、屈むとふわりと顔を覆う前髪、スカートから覗く太腿、そして母なる大地を思い起こさせる胸がゆらり。
悠里の一つ一つの仕草が、どうしても色っぽくわたしの胸に訴えてくるのだ。足音さえ、大人を感じさせると思わないか。
とんとん!とつま先を床で叩くと同時に二つの豊かな胸が声を合わせるように揺れている。夏服のせいか著しく見える。

それを見ながら、わたしは自分の小さな胸を触ってみたが、何かが起こるということはなかった。
そうだ。出かけたことは無いけれど、デートに行くとしたら男子は、きっとこういう気持ちになるのだろう。
言葉で表すにはもったいないほどなのだけど、あえて言うなら「どぎまぎ」「はふはふ」「くらくら」そして「ふわふわ」。
まるで綿菓子の上を歩いているような感じ。雲ではなくて綿菓子だ。ここだけはどうしても譲ることは出来ない。
ちらりと横目で悠里を覗き見するわたしは、周りからはどう見てもおかしな子のようにしか映らないのだろう。
スタイルが良い悠里は、制服の着こなしが洒落ている。白いソックスが、キツネの細い脚によく似合う。
普段はどんな格好をしているのだろう。トップスも大人びたものも似合うんだろうし、スカートも短くても格好が付く。
流行のサンダルもちゃっかり履きこなして、世の『オトコノコ』たちを独り占めするんだろうな。
勝手に悠里を着せ替え人形にしてしまったわたしは、彼女の潤んだ目を見るのが少し恥ずかしくなった。
「お気に入りの店に行こうかと思ってね。誰かを誘おうと思ったんだけど、ごめんなさいね。リオも委員会がなくてよかったね」
「そうね、うん!うん……。わたしもさ、お……悠里と話したいなぁ!って思っててさ!ね!ね!」
悠里から誘われなければ、彼女の服装のことでやかましくお小言をしていたのかもしれない。
ただ、今は、悠里に興味津々。悠里の気になる店とは、一体どのような店なのか期待が高まるとともに、果たして自分が来店しても
一人で浮いてしまわないのだろうかと、少々心配になってきた。大人の世界にいてもおかしくない悠里のお気に入りの店だもの。
だってさ、銀座のおしゃれなカフェで「ガリ○リくん」をかじるようなものじゃないか。

この間は教室で落雁を食べていた。どうやらお取り寄せで手に入れた『鱚屋』の落雁。甘い物にはぬかりの無い
わたしたちの年代の子にしては、なかなか大人びた選択だ。上目遣いで甘えて来る洋菓子もいいが、三つ指付いて迎え出る和菓子もいい。
街の書店の脇を通り過ぎるが、悠里といっしょなので『コミック・モッフ』の表紙を直に見ることが出来ない。
今月の表紙『若頭』なのになぁ。むっはー!

「ここなのよ。ここ」
郊外へと伸びる私鉄の乗換駅前。わたしたちと同じ学生の姿も多い。悠里が指を差した店舗は、出来たばかりのものだった。
だが、すこしばかり「今日の」わたしには、ちょっと足止めしたくない店なのは致し方ない。
なぜなら、看板には『しの田のうどん』と書かれていたのだから。

528きつねの子 ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:43:00 ID:fKdkN0eQ0
店内に入ると学生で一杯だった。
わたしたちの通う佳望学園のほか、隣町の学校、海岸沿いの女子高の生徒が多い。寄り道してまで食べてみたいということか。
壁際の席に座ったわたしたちは、さっそくオーダーを決めようとしたところ、悠里はすぐさまオーダーの伝票に書き込み始めた。
ここでは、お客が自らメニューが書かれた伝票に印をつけて、オーダーするシステムのようだ。
「きつねうどんねー。リオちゃんは?」
少し考える演技をする。お昼のトラウマを若干蘇らせながら、わたしはつゆがはねても少々平気である
悠里と同じきつねうどんにすることにした。それに、出来上がる時間も同じだから待つこと無い。なんて聡明なわたし。

「ここの油揚げは最高ね。豆腐はたんぱく質たっぷりだから、美容にもいいし」
「もしや!」
じっと、悠里の胸元を凝視するわたしはもうだめかもしれない。彼女が手を拭くたびに、二つの胸が揺れてどうも目を困らせる。
しかし、もっとわたしを困らせるものが目に入ってしまったのだ。毎日顔を会わせてる、ソイツの顔。
(う……。マオのやつ。朝のことは覚えてろよ、この愚弟が)

わたしと違う天秤町学園に通う中学生の弟のマオ。どうやら帰り道、友人たちといっしょにここに来ていたらしい。
いつも利用する私鉄の乗換駅だから、ここに来ていても不思議は無いが、せめてわたしがいない時間か日に来て欲しかった。
呑気にうどんをすすりながら、友人たちと談笑しているマオは、もしかしてわたしの悪口でも言っているのだろうか。
あちらが笑えば笑うほど、わたしは取り残されたような孤独感を抱いてやまないのだよ。

「お待たせさまでした」
二つどんぶりが並んでわたしたちのテーブルの上に並ぶ。熱々の湯気が夕飯前のわたしたちの食欲をかっさらい、
それに答えてわたしは油揚げが麺の上に浮かぶ姿に見とれる。すうっと息を飲み込むと、出汁の効いた風味が鼻腔をくすぐる。
揺れるつゆの香りと、油揚げの甘い香りが混ざる独特の風味なら、わたしの体の一部であるメガネを曇らせる価値が十二分にある。
つゆに浮かぶ葱はゆっくりと回転し、麺と葱の色合いが食欲を誘った。悠里は丁寧に割り箸を割ると、手を合わせていた。

「い、いただきます!」
割り箸で摘んだ麺は程よい硬さ。やや少なめにわたしは口にすると、わたしの口に麺の腰の強さが伝わる。
つるっと暖かい麺を一口ですすると、先からつゆがはねてわたしのメガネに張り付いた。
油揚げを口に咥えると、甘い汁があふれ出て口いっぱいに広がりつつも、熱さで少し舌が痛い。
半分に噛み切られた油揚げは、つゆに浮かんで丼の中でくるりと葱といっしょにまわっていた。

「やっぱり、ここの油揚げはいいでしょ?あら、そうだ。リオちゃん、お冷を汲んでくるね」
悠里は開いたコップを片手に席を外すと、尻尾を揺らしてお会計そばの冷水機へと向かっていった。
一人取り残されたわたしは、マオをじっと監視し続けた。ヘンな気持ちは無いけれど、アイツがヘンにさせるんだ。

529きつねの子 ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:43:24 ID:fKdkN0eQ0
悠里が自分のコップで水を汲む。こんこんと糸のように冷水湧き出る機械の前で、彼女は大きな尻尾を揺らしていた。
ここで言うのもなんだが、悔しい。何だか悔しい。悠里の後姿は、色気の溢れる大人のシルエットだったのだ。
ローファーを鳴らして冷水機に向かう姿、一歩進むたびに尻尾がやゆん、よゆんと揺れて、ふわりとスカートもつられている。
お年頃の青少年だったら、かどわかされても「それじゃあ、仕方ないね」と呆れられるオチ。
オンナノコに甘い幻想を抱いて、本物の女の子を知って壊れることを恐れる世代の「オトコノコ」の考えることって!!そんな「オトコノコ」が、
妖しい色香を漂わせるわたしの同級生と冷水機の前でかち合った。ソイツは、毎日会っているウサギの少年だった。

「お先にどうぞ」
悠里はわたしの弟のマオに、順番を譲り一歩下がってマオを立てた。コップ片手にマオは、会釈をする。
とくとくと冷水機は白い糸を描きながら、のどを潤す水を湛えていた。その時間は短いようで、意外と長い。
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ、ボク。どうもね」
悠里はマオの後に続いて冷水機から水を注ぎ始めたのだが、わたしはふと星野りんごの言葉を思い出した。

「年下でも年上でも、うぶな男子をからかうのが趣味」

きっと、悠里はマオと目を合わせたと同時に、りんごの言葉を如実に現すスイッチを入れているだろう。
イヌ科独特の尻尾のゆれを御覧なさい。マオのような少年は、きっと尻尾を見ているだけで、よからぬ妄想を抱くのだ。
マオが喜んで読んでいる少年マンガ誌で連載されてた『ているずLOVE』でも、やたら尻尾の描写がリアルだったじゃないか。
マオはそういう「ぱんつはいてない!」的な作品は読み飛ばしていた(と思う。多分)。そういう文化を小バカにするヤツなんだ。
だけど、女のわたしが読んでも萌えたというのに、弟ぐらいの中学生が見たら……。おっと、ジャッジメント!!

「あっ」
わたしと悠里が同時に同じ言葉を呟く。
悠里は冷水機からの水を不注意で溢れさせ、手を濡らしてしまったのだ。いや、不注意では無いことは、わたしにだってわかる。
濡れた手で持っていたコップを側の机に置くと、ぶんぶんと手首を振って、真珠のような水滴を飛ばす。
ケモノの手は一度濡れると後始末が悪い。ハンカチを探そうと(している振りの)悠里を見てマオが彼女の甘露溢れる蜘蛛の巣へ。
「いけない。ハンカチがバッグに……」
「お姉さん、コレをお使いください!!!」
手持ちのコップをすぐさま置いて、自分のポケットからハンカチをすっと渡すマオは、ここだけ見れば非常に紳士的であり、
騎士道を重んじる勇者のようだ。しかし、経験値の足りない勇者は魔女のまやかしに玩ばされるんだ。

530きつねの子 ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:43:49 ID:fKdkN0eQ0
「ありがとう。助かったわ」
「は、はい」
机の上には、冷たい水が湛えられたコップが並んでいる。
片方は悠里のもの。もう片方はマオのもの。ぱっと見、どちらが誰のものか分からない。
悠里のコップは、年上のお姉さんの甘い口元触れた、オトナの甘味。甘くて、イケなくて、そして甘くて……。
「えっと……。どちらでしたっけ?」
「……えっと…」
弟は悠里の甘い口元を気にしながら、自分のコップを思いだそうとしていた。
きんきんに冷えた水。年上のお姉さんの口元。そして、彼女の口元が触れたかもしれないコップ……。

「ふふふ……。どうぞ?」
弟はじっと並んだコップを見つめながら、悠里の口元を想像していたに違いない。バーカ。

「そうだ、こっちだったね。ごめんね」
わたしが見つめていたから間違いないが、確実に悠里は悠里のコップを拾い上げ、マオに微笑みかけた後わたしの席に戻ってきた。
マオは自分のコップだというのに、恐る恐る残ったコップを掴み明らかに動揺した足つきで友人の待つテーブルへと戻る。
せめて、悠里が今日の日のことを忘れるまで、あのウサギがわたしの愚弟だとバレませんように!

悠里とさよならをして、自宅に戻ると残念ながら弟は帰宅していなかった。
わたしの高貴な趣味をバカにして、リア充街道まっしぐらの因幡マオ。この間、楽しく汚れなき二次元少女を愛でていたら、
渋柿を十食べたような顔をされた。彼に一矢報いるために、わたしはあの光景を目に焼き付けてきたんだ。
清く正しい少年も、妖艶な女子にとってはおもちゃ同然なんですよって。わたしだって!わたしだって!
弟の帰宅が待ち遠しい。制服のまま、居間で待つわたしのおもちゃになっておくれ。リアルに「コレなんて○○?」だよ。
くんくんと開きたての文庫(ラノベですが)を匂う。結構気に入っているスカートを揺らす。ニーソックスの脚をバタつかせる。
白く雪のような毛並みがはためくスカートから見えるじゃない?そうよ、わたしってば、みんな大好き女子高生だよ。
オトナの色香漂う悠里と同じだよ。おまけに頭に『文学』ってつけていいんだから。希少価値!
弟の声が玄関からゆっくりと響く。おかえり!わたしのおとうとくん!
「ただいまー」


おしまい。

531わんこ ◆TC02kfS2Q2:2010/08/03(火) 17:44:28 ID:fKdkN0eQ0
悠里さんをお借りしました。こんこん。

投下おしまい。

532名無しさん@避難中:2010/08/03(火) 19:16:15 ID:shch4MEM0
うわよく見てんなあリオ。描写すげー
キツネ…もといキツネうどんが食べたくなったわ

困った状況だからこそ投下する姿勢はまさに創作者の鑑だ


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