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美
210
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:39:45 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ\:0) ブブッ
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) 現実を見ろ、辺尼。足手まといなんだよ
( Д ;川 ガタガタガタガタ
( Д ;川 違う...こんなの、現実じゃない!
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ#):#= ブブブッ
( `ー@)3 ブッ
( `ー´)
( `ー´)大丈夫か?お前最近溜め込みすぎなんだよ
( `ー´)俺と一緒に来い。忘れさせてやっから
( Д ;川
( `ー´)だいじょーぶだいじょーぶだって
( Д ;川 やめて、さわらないで
211
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:42:29 ID:KZ3vL1s60
( `ー´)は?
( `ー´)
(@:\;0ー´)どうしようもねえな...マジで... ブブブッ
2「2@;:@) ブブッ
\;3、`*川 ブブブッ
:;'、`*川 ブッ
('、`*川
( Д ;川
('、`*川 はぁ....。失望したわ
('、`*川 じゃあね。バイバイ
212
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:43:52 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ま...待ってよ!
( Д ;川 ....まって、よ...
( 、 ;川
( 、 川 (...そうか)
( ∀ 川
( ∀ 川 はは
( ∀ 川 あなたはこんな、地獄の中に居たのね
( ∀ 川 脾都...
( ∀ 川 (今、分かった。何もないってことが)
( ∀ 川 (何もなくても、人は何かに縋らなきゃ、生きていけない...)
( ∀ 川 (現実逃避、なんかじゃないのね。これは...自分の形をなんとか保つために、必要な、こと)
213
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:45:04 ID:KZ3vL1s60
( 、 川
( 、 川 (私には、もうこれしかない)
プルルルルルルルル.....
( 、 川
214
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:46:21 ID:KZ3vL1s60
ノパ⊿゚) 「もしもし」
( 、 川 脾都
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) 「噴水の前で待ってる」
( 、 川 ...
( 、 川 ...たすけて
ノパ⊿゚) 「うん。助けるよ、絶対」
215
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:46:52 ID:KZ3vL1s60
美
.
216
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:47:15 ID:KZ3vL1s60
七,了
217
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 23:24:18 ID:VBrvvisw0
乙
218
:
名無しさん
:2021/04/17(土) 22:22:31 ID:PtnXe.cg0
唐突ですが今作はストーリーに直接関わりませんが
从*゚- ゚∀从 ジャスミンと死ぬようですの続編になっています。
宜しければご覧ください。BBHさんまとめありがとうございます :D
https://reiwaboonnovels.fc2.net/blog-entry-34.html
219
:
名無しさん
:2021/04/17(土) 22:30:24 ID:PtnXe.cg0
ジャスミンと死ぬは今作のスピンオフ的なお話です
220
:
名無しさん
:2021/04/19(月) 00:19:01 ID:UbGGOkaA0
乙乙
ペニ、完全に向こう側へ行っちゃったな
221
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:53:15 ID:8lVb0cJU0
投下します
222
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:54:30 ID:8lVb0cJU0
窓単木に対する生理的な恐怖は勿論あった。あの夜のことを思い出すたび、過呼吸に陥るほどに。
しかし、今辺尼がどっぷりと浸かっている絶望に比べれば、それは小さな問題だ。
絶望とは、あらゆる事柄を彼女らが蔑ろにしてきたという確信。それに気付いた人間が彼女の他に居ないという孤独。
絶望は窓単木の目からやって来た。しかし彼女の中にいつでもあったのだ。
そしてそれは手視、捻野、母親、関わってきた全ての人間の顔に変形して彼女の脳内に蘇ってくる。
辺尼にとっては脾都だけが、絶望の世界の外側に居た。彼女ただ一人が、自動化の摂理から逸脱していた。
他の道があったか?そんなことは考えても無意味だった。
彼女がいなければ、とうに死んでいただろうから。
.
223
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:55:01 ID:8lVb0cJU0
夜
廃墟
光の届かぬ深海のよう
独生に用意させた浴槽に浸かる、二人。
辺尼は脾都に頭を預ける。
脾都の腕の中
辺尼はそこだけが、安らぎの場所なのだと思う。世界のどこに行っても恐怖からは逃れられまい、と。
224
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:55:38 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
ノパ⊿゚) ...ねえ、辺尼
( 、 川 ...?
ノハ-⊿-) こんなこと言うのはおかしいんだけど...
ノパ⊿゚) 辺尼は、あたしよりずっと...不幸だよ
チャプチャプ
( 、 川
( 、 川 でも、あなたたちには何もない。未来も、過去も
ノハ ⊿ ) それは、
ノハ ⊿ ) ...そうだけど
ノハ ⊿ ) でも、辺尼はここにすら居ない....
225
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:56:26 ID:8lVb0cJU0
( 、 川 ...ッ
ノパ⊿゚) ...だから、ここに来たんでしょ
ノパ⊿゚) あたしもそうだった。わかるよ
( 、 川 ...そう、ね
ノハ ⊿ ) あたしなんかでごめんよ
( 、 川
( ー 川 ...ふふ
( ∀ 川 皆、不幸だよ
ノパ⊿゚)
( ー 川 全部...全部
( 、 川 目を覆いたくなるくらい....醜くて、哀れ...
226
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:56:54 ID:8lVb0cJU0
( 、 川 ねえ、脾都
ノパ⊿゚)
( 、 川 美は、存在するの?
ノパ⊿゚) あるよ
( 、 川 ...美を持つのは、悪いこと?
ノパ⊿゚) ...そんなことない
ノパ⊿゚) 美は幻想なんかじゃなくて
ノパ⊿゚) あたしたちが一度、無くしたモノなの
( 、 川
ノパ⊿゚) ...じゃあ
( 、 川 コクッ
ノパ⊿゚) ....一緒に行こっか
227
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:58:19 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
ノパ⊿゚) 大丈夫?緊張、してる
( 、 川
( 、 川 ...もう大丈夫
( 、 川 はい
辺尼は脾都から頭を離し、左腕を見せる。
脾都はその腕に布を巻きつける。布が彼女の白い肌に触れた所から、じわりと濡れていく。
彼女は手際良く辺尼の腕を縛ると、インジェクターを取り出し彼女の静脈に刺し込んだ。
ノパ⊿゚) ...いくよ
( 、 川 ...うん
薬が辺尼の中へ押し出されていく。鈍い痛みが、皮膚の下に散る。
瞬間、意識がみるみる遠くなっていくのが分かった。落ちていく感覚を覚えているのに、
対して視点は上昇していき、己の身体が、浴槽が、脾都が、小さくなっていく。
部屋に置かれたドラム缶、廃墟、奏柵の街並...と全てが猛スピードで縮小し、世界が一面のくすんだ色に変わっていく。
その時、漠然と脾都が「入ってきた」のを感じた。
そこで辺尼の意識は途切れ、視界が暗転した。
.
228
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:59:12 ID:8lVb0cJU0
.
229
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:59:50 ID:8lVb0cJU0
ぽた
ぽた
ぽた ぽた
ぽた
ぽた ぽた
ぱら ぱらぱら ぱらぱらぱら
ぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱら ぱらぱらぱらぱら
ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
-
230
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:00:46 ID:8lVb0cJU0
辺尼は闇の中、暖かな雨を浴びていた。
しばし、雨を感じる。
そうしているうちに、この闇が、瞼の裏であることに気付いた。
( 、 *川
静かに瞼を開く。周囲が俄に明るくなっていく。裸足に、砂の感覚がする。
開闢。
一筋の地平が生まれていく。
それは嫋やかに膨らんでいき、世界として彼女の前に顕現する。
辺りは、一面の砂漠だった。
天からは黒い雨が降りしきっていた。
雨は絶えず彼女を濡らす。
一方
それは擦り抜ける様にして、砂に染み渡ることを知らない。
231
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:01:54 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 ここは...
辺尼は周囲を見渡す。
何もない。延々と続く、砂の丘。
風すらない。
彼女は、彼方、丘の向こうに人影を見た。駱駝を駆り砂漠を往く。
隊商だと分かった。
瞬間、彼女の身体を電撃が走った。
.
232
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:02:37 ID:8lVb0cJU0
( Д *川 あ
( Д *川 あーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
電撃は、彼女の身体をどこまでも軽くした。
軽くした、と感じると同時に彼女は、人ならざる速さで駆け出した。
.
233
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:03:19 ID:8lVb0cJU0
( ー ;)なんだ、あれは!
( 0 ;) 女...?女なのか!?
ザワザワ...
彼女の存在に気付いた商人たちは歩みを止めた。
護衛の剣士達は、駱駝から降りると剣を抜いて構えた。
( Д *川 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!
( ー ;)襲ってくるぞ!殺せぇぇぇぇぇ!
彼女が隊商の目の前に辿り着くなり、顔を布で覆った男が斬りかかる。
俊敏である。頭2つ程低い彼女へ向かって、剣が振り下ろされた。
( Д *川 っ!
彼女はそれを片方の掌で受け止める。
刃は彼女の掌で止まる。無傷だ。
234
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:04:23 ID:8lVb0cJU0
( ー ;)....なんだと!?
そのまま彼女は刃を握りへし折ると、男の腹へ蹴りを入れた。
蹴りは男の腑を貫通し、背中から踵が飛び出した。
崩れ落ちる男の肩を踏み台に、もう一人の男へ飛びかかる。
( 0 ;) う、うああああああああっ!
遮るように構えていた刃は、彼女が「通過」するなり砕け散った。
彼女は男をそのまま押し倒し、首を掴んでへし折った。
刹那、叫びとともに、四方から振り下ろされる剣。一つは、彼女の右腕に、一つは、彼女の首に、
ひとつは、彼女の背に。
235
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:05:20 ID:8lVb0cJU0
そのいずれも彼女に傷一つ付けることなく、静止した。
辺尼は一つの剣を奪い取ると、瞬く間もなく、彼らの首を跳ね飛ばした。
駱駝を捨て、散り散りに逃げ出していく商人たち。
逃しはしまい。一人一人、殺していく。
彼女を動かしていたのは、底のない殺意。
そしてそれと同じ程の、悦びだった。
.
236
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:06:26 ID:8lVb0cJU0
(; _ ) あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!
( Д *川 (逃がすか)
辺りは血で一面赤に染まっていた。
彼女に背を向けて逃げていく。最後の一人。
彼女は男の肩を掴み、引き倒す。
馬乗りになり、顔に巻かれた布を剥がした。
237
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:07:16 ID:8lVb0cJU0
バサッ
(;´・_ゝ・`) ...お、お願いだ、助けてくれ!!
( Д *川
( ∀ *川
グシャッ
.
238
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:08:13 ID:8lVb0cJU0
.
239
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:08:50 ID:8lVb0cJU0
(_∀……)
( 。Д ) (_____:::)
( 0 。_)
( ___)
(´。_ゝ__)
( 。ー。)
(__∀ 。)
.
240
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:09:27 ID:8lVb0cJU0
瞬間、辺りに静寂が訪れた。
己に打ち続ける雨の音だけが、世界の音になった。
対象を失った辺尼の殺意と悦びは、急速に消え去っていった。
代わりに湧き上がってきたのは、途方もない、食欲。
241
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:10:40 ID:8lVb0cJU0
( Д *川 ジュル
抗える筈が無かった。
辺尼は、彼女の下で死骸となった手視の首に齧り付く。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
無我夢中で、手視の肉体を貪る。
極度の高揚感で、四肢が痙攣した。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
242
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:11:39 ID:8lVb0cJU0
数時間後。辺尼が我に帰ると、辺りには骸骨のみが転がっていた。
それから。
気が遠くなるほどの間、彼女は砂漠を放浪し、人を襲い、食らった。
砂漠に夜は来なかった。
.
243
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:12:37 ID:8lVb0cJU0
.
244
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:13:45 ID:8lVb0cJU0
数え切れないほどの人間を襲った。
手視、捻野、窓単木、非記、診競、脾都、これまで知り合った全ての人、見覚えのない人、
これから会うであろう人....
朧げにだが父や、母をも手にかけたことを、憶えていた。
それでも殺したいという衝動と、飢えは収まらなかった。
どれ程の時が経っただろうか。
ある時、遂に絶え間なく降り続いていた雨が止んだ。
重く垂れ込めた雲が真っ二つに切れ、離れていく。
光が砂漠に差し込んでいく。
辺尼を、溢れんばかりの陽光が包んでいく。
( 、 *川 !
('、`*川
('、`*川 雨が...
.
245
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:14:40 ID:8lVb0cJU0
重厚な弦楽の響きが、砂漠に木霊した。
空気が震えている。
まだ丘の向こうには雲がかかっているが、
一人の子供が、こちらへ向かってくるのを、見た。
丘陵を下る途中で、子供は日陰と日向の境界線を踏み越えた。
そのまま平地に差し掛かり、辺尼の方へゆっくりと歩いてくる。
その輪郭は朧げに揺れている。
(#゚;;-゚)
246
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:16:12 ID:8lVb0cJU0
スタスタスタスタ
(#゚;;-゚)
('、`*川 あなたは...
(#゚;;-゚) 辺尼、
顔に火傷の跡が残る、少年。
彼は辺尼に飛びつくと、彼女の懐に頭を埋めた。
(# ;;- )
('、`*川 ...泥
意図せず、辺尼の口から彼の名前が漏れた。
彼のことは、何一つ知らなかった。
何をするべきかは、知っていた。
247
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:16:57 ID:8lVb0cJU0
辺尼は左腕を陽光に晒す。彼女の手首がひとりでに裂けていく。
そうして生まれた十字の傷口から、絶えず真っ赤な血が流れ始めた。
泥と呼ばれた少年は、その傷に口をつけ、辺尼の血を飲み干していく。
彼が口を離すと、傷は癒えていた。
.
248
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:17:28 ID:8lVb0cJU0
(#゚;;-゚) ('、`*川
見つめ合う、二人。
辺尼が先にまばたきをした。
次の瞬間には、泥は一艘の小舟になっていた。
('、`*川
249
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:18:13 ID:8lVb0cJU0
...それから、辺尼は小舟を引いて砂漠を歩いた。
世界を照らし続ける正午の太陽は、どれほど時が経とうとも動くことはなかった。
海を探すのだ。
彼女は一度も立ち止まることなく、幾千の丘を越えた。
途中で人に会っても、殺意が湧くことはなかった。
時の感覚が彼女から消え去っていった。
幾千が、幾万に変わった。
幾万が、幾億に変わった。
250
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:19:09 ID:8lVb0cJU0
.
251
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:19:55 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 あっ
('ー`*川 ...海だ
.
252
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:20:53 ID:8lVb0cJU0
一面に広がる、水。
陽光を受け銀色に光り輝く、大海。
彼女の足は水に浸かっていた。
からからに乾き切った小舟が、初めて水に濡れた。
辺尼は小舟に乗り、洋へ漕ぎ出していく。
('、`*川 ...さよなら
砂漠が離れていく。
もう二度とその地を踏むことはあるまい。彼女はそれから、振り向くことはしなかった。
253
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:21:41 ID:8lVb0cJU0
それから数時間、辺尼はあることに気付いた。
太陽が、傾き始めている。
それまでずっと彼女の真上にあった太陽が、水平線の向こうに移動していた。
彼女は、太陽を追うことに決めた。
はじめての夜は、満点の星空に心を打たれた。
漕ぐことを止め、長い間、星を眺めていた。
眠ることはなかった。
朝になると、彼女は再び漕ぎ始めた。
254
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:22:19 ID:8lVb0cJU0
太陽は巡り巡り、辺尼を乗せた小舟は何もない大海原を進み続けた。
はじめの夜から数日経って、彼女は月はどこにあるのかと思った。
結局、月はどこにも見当たらなかった。
しかしここは黒い雨が降り、太陽が沈まなかった世界だ。不思議には思わなかった。
そうして海の上で時間が過ぎていったある日。
辺尼は彼方に島を見つける。
('、`*川 ...!
('、`*川 ...泥、もうすぐだよ
255
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:23:35 ID:8lVb0cJU0
彼女は昼も夜も休まず舟を漕ぎ続けた。
ただの微細な点だった島が、少しずつ大きくなる。
しかし、夜が明ける度、彼女の身体は動かなくなっていった。
石のように全身が固まり、かつての力は失われていった。
彼女は気力を振り絞り、全速力で舟を進めた。
('、`;川 (間に合え...間に合え...!)
256
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:25:01 ID:8lVb0cJU0
それから、数日が経った。
小舟は島に到着した。
舟は朝日を浴びながら、浅瀬で浮き沈みしている。
< ゚ _・゚> おい!
< ゚ _・゚> 舟だ!舟があるぞ!
[ Д`] 何だと!?まさか伝説は本当だったのか....!?
< ゚ _・゚> 俄には信じ難いが、そのようだ...!
[ Д`]待て、誰か乗っているぞ!
< ゚ _・゚>
< ゚ _・゚> ...石像、か?
( 、 *川
257
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:26:07 ID:8lVb0cJU0
[ Д`]...それは、
[; Д`]小舟に乗った「動かない女」....!何もかも、言い伝え通りだ...
<; ゚ _・゚> とんでもない発見をしてしまったみたいだな...
< ゚ _・゚> こうしてはいられない、他の者を呼ぼう!
石のように硬くなった辺尼の肉体は、島の民によって神殿に運ばれた。
小舟は、人々の言い伝えに従い森の中に安置された。
神殿は最も高い丘の頂にあった。30の石柱に支えられ、広場を見下ろしている。
日没。赤く染まった空は、青く黒ずんでいく。
千の人が、そこにいた。二千の目が、辺尼を見上げていた。
司祭が両手を高く振り上げ、祝詞を叫ぶ。
258
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:27:35 ID:8lVb0cJU0
(゜W゜) <€0 {}$ >< : )Q!!!!!!!
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
「<€0 {}$ >< : )Q!!!!!!!!!!!!」
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
.
259
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:28:24 ID:8lVb0cJU0
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
<; ゚ _・゚> あれを見ろ!あれは...なんだ!? オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ[ Д゜]あれは....月だッ!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
[ Д゜]伝説の通り、月が現れたんだッ!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
/ ̄ ̄\
/ ⊂二二⊃
| |⊂二⊃
⊂二⊃ /
\__/
.
260
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:29:01 ID:8lVb0cJU0
その月は、真っ白な、満月だった。
神殿の背後から月は昇り、姿を民衆の前に現した。
月は天蓋の中心を通って、夜の世界を一周し、水平線の向こうへと消えた。
その日から、月が現れるようになった。
その日から、辺尼は神殿に祀られる13柱の神に加えられた。
そして、彼女こそが最後の神だった。
月と太陽とが、凄まじいスピードで世界を回転し始めた。
261
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:30:14 ID:8lVb0cJU0
ウッ... オジイチャン.... ウゥ... ニイサン....
ウゥ... < - _・-> ウゥ.... ウッ... [ Д-] サヨナラ....
アナタ.... トウサン..... アナタ.... オジサン....
辺尼を見つけた青年たちは、彼女が瞬く間に年老い、消えていった。
262
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:31:15 ID:8lVb0cJU0
人は死に、産まれ、時には争い、笑い、怒り、泣き、絶望し.....
同じことを繰り返し続けるように辺尼には感じられた。
星は流線型を描くかの如きスピードで空を駆け回った。
全てが加速し、夜と昼がストロボの発光のように繰り返され、その白黒の瞬きが極限に至ると、
全てが透明になった。
それから、透明な世界が長い間続いた。
263
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:32:59 ID:8lVb0cJU0
そして、とある日の夜、時は唐突に進むことを止めた。
人間は最早いなくなった。月明かりだけが、神殿を照らしていた。
天井は剥がれ落ち、床は海水に満たされていた。
島は、長い歳月を経るうちに、神殿を除いて海の底へ消えてしまった。
( 、 *川
辺尼は、遥か昔、この島にやってきたことを思い出した。
泥は、どこにいるのだろう。
あの小舟は、どこに行ってしまったのだろう。
闇に飲み込まれた彼方から、火の灯りが近付いてくるのが見えた。
それは、小舟だった。
先端に洋燈を灯した小舟が、ひとりでにこちらに進んでくる。
('、`*川
264
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:33:45 ID:8lVb0cJU0
小舟は辺尼の足元にやってくると、彼女の脚を洋燈で小突いた。
彼女には心なしか、嬉しそうに思えた。
('ー`*川
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
265
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:34:39 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
チャプチャプ
ノハ ⊿ ) ....。
( ;、; 川 なんだ、これ...
ノハ ⊿ ) 本当に、すごい
ノハ ⊿ ) 本当に、本当に...すごい
( ;、; 川 まって....
( ;、; 川 こんな気持ち、初めてで
ノハ ⊿ )
ギュッ
( ;、; 川 あ....
.
266
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:35:40 ID:8lVb0cJU0
.
267
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:36:23 ID:8lVb0cJU0
ミセ*゚ー゚)リ 大丈夫?風邪引かないでね
ノパ⊿゚) ありがと
ミセ*゚ー゚)リ はい。辺尼もこれ
('、`*川 ...ありがとう
ノパ⊿゚) どうだった?行ってみて
('、`*川
('、`*川 言葉になんか、できる自信ないけど...
('、`*川 ....私だと思った
ノパ⊿゚)
268
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:37:33 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 凄い内容だったけど...全部、私だよ
('、`*川 認める
ノパ⊿゚) ...よかった!
ノパ⊿゚) なんかね...もしこれが何でもなかったらどうしよって...思ってた
('、`*川 ...今の感じはね
('、`*川 ...嘘みたいに、世界が軽いの
('、`*川 脾都、診競...ありがとう
ノパ⊿゚)ミセ*゚ー゚)リ ポー
ノハ* ⊿ ) ...うん。まあでも、褒められるようなことじゃないよ
ノパ⊿゚) ここにいる皆、もう犯罪者な訳だし。さ
('、`*川
('、`*川 ...そうね
269
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:37:59 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 でもこれで満足
('、`*川 二度目はない、かな
ノパ⊿゚) ...それもありだね
( ー *川 はは、取締官失格だな...
('、`*川 退職ね、これは...
ミセ*゚ー゚)リ もう、会えなくなっちゃうかな?
('、`*川 ...どうかしら
ノパ⊿゚) 五日後、あたしたちは奏柵を出るよ
('、`*川 ...そう
270
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:38:37 ID:8lVb0cJU0
ノパ⊿゚) あ、これ言ったらヤバかったかな...
('、`*川 安心して。誰にも言わないから
('、`*川 あ
('、`*川 一つ質問、いい?
ノパ⊿゚) ?
('、`*川 あなたたちは、どうして何度も行くの
ノパ⊿゚)
271
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:39:01 ID:8lVb0cJU0
ミセ*゚ー゚)リ ...私は、自分の美が壊れるのが怖くて
ミセ ー )リ 何度も、何度も確認しないと、自分が保てないと思ったから
('、`*川 ...そう
('、`*川 美も、永遠じゃないのね
ミセ ー )リ ううん
ミセ ー )リ 美はきっと、永遠なの
ミセ*゚ー゚)リ 私が、弱いだけ
('、`*川
272
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:39:40 ID:8lVb0cJU0
ミセ*゚ー゚)リ ごめんね。変な話して
('、`*川 ...いいよ。やっと色々わかった
('、`*川 脾都
('、`*川 今日、あなたと行って分かったことが一つある
ノパ⊿゚) ?
('、`*川 ...助けを求めてるのは、あなたも同じね
ノハ ⊿ )
('、`*川
('、`*川 ...多分、一番空っぽなのはあなた
ミセ*゚ー゚)リ っ...
ノハ ⊿ )
('、`*川 ...酷いこと言ったと、思う。傷付けたら、ごめんなさい
ノハ ⊿ ) ...いや
ノパ⊿゚)いいよ。ありがとう
273
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:40:20 ID:8lVb0cJU0
ノパ⊿゚) ...正直、あなたに声かけたのも
ノパ⊿゚) 助けたい、とか以前に辺尼の美に興味あったからだと思う
ノパ⊿゚) あたしは空っぽかもしれない。何も覚えてないんだ
ミセ*゚ー゚)リ ...。
('、`*川
('、`;川 あ〜...やっぱごめんね。前言撤回する
('、`*川 脾都は凄いよ。私を救ってくれた
('、`*川 私にも恩返しさせて欲しい
('ー`*川 だからまた、会いましょう
ノパ⊿゚) そうだね
ミセ*゚ー゚)リ いつか、ね
ミセ*゚ー゚)リ 今日はありがとう。私は見てただけだけど、すごい励みになったよ
('、`*川 そう
ミセ*゚ー゚)リ 私、頑張るよ。いつか...美に負けないようになる
274
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:40:47 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 ...そんな凄いの
ノパ⊿゚) うん。みっちゃんは凄いよ
ノパ⊿゚) あたしたち全員を救ってくれたんだ
('、`*川 ...へぇ
ミセ*゚ー゚)リ ...うん
ノパ⊿゚) じゃあね。ここに居ても危ないだろうし、また電話してよ
('、`*川 ええ、また
ノパ⊿゚)ノシ ミセ*゚ー゚)リ ノシ
275
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:41:46 ID:8lVb0cJU0
...余談。
あたしが非記とあの夜見た星空は、辺尼が見ていた夜空とおんなじだった。
月のない、満天の星空。凄いよ。
あたしはあの夜のことを、決して忘れないだろう。
全てが流れのまま動いている。
水が、いつどうなるか、あたしの手に負えるものではない。
だけど、従えなければならない。
遠くない未来、きっとその日が来る。
診競は絶対に、死なせない。死なせないよ。
.
276
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:42:12 ID:8lVb0cJU0
八,了
277
:
名無しさん
:2021/04/21(水) 21:04:06 ID:cUd.NbXI0
otsu
278
:
名無しさん
:2021/04/22(木) 18:56:17 ID:r4MTxk4g0
これが美なのか....乙です
279
:
名無しさん
:2021/04/29(木) 23:26:36 ID:rhqoT9OI0
更新遅くなっており申し訳ないです...次回は約束していた播院の話になります
280
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:10:37 ID:L4uSg5iE0
投下します
281
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:11:10 ID:L4uSg5iE0
「...あれは、何だお?」
「どれだ?」
「あの、窓の外でキラキラ光ってるやつ。UFOかお?」
「...あれはビルの反射光だよ、文」
「...言われてみれば、確かにそうだお」
「ほら、壁。光が届いてる」
「綺麗だお」
「...ああ」
282
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:15:28 ID:L4uSg5iE0
「...今、何日だお?」
「5月17日だな」
「...あれから、どのくらい経ったのかお」
「...4年」
「そんなにかお。てっきり一週間くらいかと思ってたお」
「...あぁ、1時間前に何考えてたかも思い出せないお。何か大切なことがごっそり抜け落ちてるような....」
「...ごめん」
「おっ、どうして播院が謝るんだお?」
「...文に、酷いことしたから」
「...? 僕に何したってんだお」
「ごめん...本当にごめんなさい...」
「や、やめるお、播院!君は何も悪くないお!」
「...私は、もう播院じゃ、ない」
「....全部、私のせいだ」
.
283
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:17:00 ID:L4uSg5iE0
美
.
284
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:17:34 ID:L4uSg5iE0
今は...奏柵を発つ2日前の朝だ。あたしはみっちゃんと集会場で寝ていて、丁度起きたところだ。一面に布団の海。まだ時間は早いが、皆この時間から一様に活動を始めるのだ。
ミセ -ー-)リ スースー
あたしは朝強い方だけど、みっちゃんはそうではない。朝は同じ布団の中、いつも彼女の寝顔を眺める。人って何故か見られてると目を覚ますじゃない?
彼女はそうではないらしい。あたしが満足するまで、ずっとこうしていられる。
ノパ⊿゚) ジー
出会った頃の彼女は...すごかった。
あたしは芸術はわからない。美術館に行けるお金もないし。でも考えないで感じるものだと何となく理解していて、すると彼女がそういう存在なのだろうかと思ったりもしていた。
理屈なんてないんだ。人は理屈で、世界を地獄に変えたり天国に変えたりする。でも彼女はこちらの状態を無視して本当に「やばい」ものを感じさせてくれたのだ。拒みようがなかった。彼女の声を聞くだけでも。こうして寝顔を覗くだけでも。
それが幸せだった。
285
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:18:27 ID:L4uSg5iE0
でも、今の彼女にはそれが無い。
勿論、彼女がすごいのは分かってるし、そう思うようにしてる。だけど時々頭で考えてるという感じがする。
「無条件さ」がない。
それは、彼女の「美」が変質し始めたのと無関係じゃないんだろう。
不思議で、残酷なこと。彼女の内面は、彼女の肉体の全てに顕現しているのだ。きっとあたしも、皆もそうなんだろう。
昨日、辺尼が言ってたことを思い出す。
あたしは空っぽだ。だからきっと、あたしの肉体に、声に、空虚が滲み出てるんだ。
みっちゃんにも、非記にも、それが分かってるんだろう。
そう考えるたび不安で押し潰されそうになるけど、それすら実際は空っぽなんだろうとか
思うと、入子構造の不安が無限に続いていくような気がして、あたしは考えるのをやめる。
286
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:19:00 ID:L4uSg5iE0
ノハ ⊿ )
トントン
( ´_ゝ`)よっ
ノパ⊿゚) あ
ノパ⊿゚) 亜丹
(; ´_ゝ`)なんか今にも死にそうな顔してたぞ...
ノパ⊿゚) ほんとに?
(; ´_ゝ`)俺が言えたことじゃないけどな。なんか、死ぬ前の弟が頭によぎって...大丈夫か?
ノパ⊿゚) ...うん。まあ
287
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:19:46 ID:L4uSg5iE0
( ´_ゝ`)ならいいんだが...久しぶりだな
ノパ⊿゚) ね
( ´_ゝ`)隣にいるのが、あんたの彼女かい?
ノパ⊿゚) そう
(; ´_ゝ`)まだ寝てたんだな...失礼した
ノパ⊿゚) いや、気にしなくていいよ。そろそろ起こすところだったし
ミセ -〜-)リ う、うーん...
ミセ*゚ー゚)リ パチ
( ´_ゝ`)
288
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:21:51 ID:L4uSg5iE0
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ ひーとの、友達?
ノパ⊿゚) うん
ミセ*゚ー゚)リ ...はじめまして。とりあえず、起きるね
ゴソゴソ...
ミセ*゚ー゚)リ 私は診競。よろしくね
( ´_ゝ`)ああ。俺は亜丹だ
( ´_ゝ`)死ぬつもりで土砂降りの中「行ってた」んだが、脾都に命を助けてもらってな
ミセ*゚ー゚)リ ...そうなんだ
289
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:22:27 ID:L4uSg5iE0
( ´_ゝ`)この前、連絡先交換するの忘れてて
ノパ⊿゚) あ、そーだね
( ´_ゝ`)俺は携帯持ってないんだが...公衆からかけるから、番号教えてもらえるか?
ノパ⊿゚) いいよ。...実は仲間のなんだけどね
ミセ*゚ー゚)リ 辺尼にも教えちゃったね
ノパ⊿゚;) それな...独生に絶対怒られるわ...
カキカキ....
ビリッ
ノパ⊿゚) はいこれ
( ´_ゝ`)感謝する
ノパ⊿゚) あ
( ´_ゝ`)
ノパ⊿゚) あたしら、あと2日で奏柵から出るわ
( ´_ゝ`)...マジで?
290
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:22:50 ID:L4uSg5iE0
ノパ⊿゚) この携帯、あたしが持ってるか分からないね
( ´_ゝ`)...残念だな
ノパ⊿゚) 一応独生に聞いとくよ
ノパ⊿゚) 警察が動き始めててさ。亜丹も危ないかもよ
( ´_ゝ`)...そうなのか
ノパ⊿゚) 一緒に、来る?
( ´_ゝ`)いいのか?
ミセ*゚ー゚)リ 独生に聞いてみないと、わからないよね
ノパ⊿゚) ...そーだなぁ
291
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:23:20 ID:L4uSg5iE0
ノパ⊿゚) とりあえず、独生んとこ来ない?紹介するよ
ミセ*゚ー゚)リ きっと、独生なら歓迎してくれると思うよ
( ´_ゝ`)おぉ....
( ´_ゝ`)なんか、夢みたいだ
ミセ*゚ー゚)リ え?
( ´_ゝ`)ずっと、兄弟だけで生きてきて...弟が死んでからはずっと一人で....でも急にこんな仲間に出会えるなんて
ミセ*゚ー゚)リ ....。
ミセ*゚ー゚)リ 私たちは何もないんだから、助け合ってなんぼじゃない?
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)やべえな...あんたの彼女、天使か?
ノパ⊿゚) 天使だよ
292
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:23:43 ID:L4uSg5iE0
ノパ⊿゚) 独生には、なんて紹介したらいいかな?
( ´_ゝ`)俺はどこにも属してなかったから、名前だけで十分だぜ
( ´_ゝ`)奏柵に来たのも一年前だしな
ノパ⊿゚) え、そうなんだ...どうりで見ない顔だと思った
( ´_ゝ`)あんたらは奏柵出身なのか?
ノパ⊿゚) いや。ちょっと前にVIP市から移り住んできたんだ
(; ´_ゝ`)本当か!?俺もVIP市からだ
ノパ⊿゚) そうなん!...意外だ
ミセ*゚ー゚)リ VIPは広いもんね
( ´_ゝ`)なんか縁を感じるな
293
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:24:10 ID:L4uSg5iE0
プルルルルルル
ノパ⊿゚) あ
ミセ*゚ー゚)リ ...独生からだ
ピッ
ノパ⊿゚) もしもし?
('A`)「朝早くにすまん。起こしたか?」
ノパ⊿゚) いや、大丈夫
('A`)「播院の件なんだが...」
('A`)「今から、話したい。もう時間がなくて」
ノパ⊿゚) いいよ。全然
('A`)「すまない。四威も呼んだぞ。診競も一緒か?」
ノパ⊿゚) うん。あ、
ノパ⊿゚) あと一人、知り合いがいるんだけど
ノパ⊿゚) 一緒に連れてっていいかな?
('A`)「...いいけど、誰だ?」
ノパ⊿゚) 亜丹っていう、奏柵に来たばっかの
('A`)「...聞いたことない名前だな。まあいいだろ」
ノパ⊿゚) ありがと。じゃ、向かうね〜
ピッ
ノパ⊿゚) ...ということで、行こっか
294
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:26:16 ID:L4uSg5iE0
朝の光が、廃墟の一室を柔らかく照らしている。
ガラスのない窓、その向かいの壁には朧げなサインが浮かび上がっている。
サインは形をゆっくりと変え続けていた。
('A`) 皆、朝早く集まってもらってすまない...助かる
ノパ⊿゚)ミセ*゚ー゚)リ( ´_ゝ`) (*゚ー゚)
('A`) ...俺は独生。あんたが亜丹か
( ´_ゝ`)ああ...会いたかったぜ
('A`) ん?知り合いだったか俺ら
( ´_ゝ`)いやノリだが
('A`)
('A`) すまないんだが...少し外しててもらえるか?
( ´_ゝ`)
('A`) あ、いや身内の話でな...聞かれるとまずいっつーか
( ´_ゝ`)おk
295
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:27:26 ID:L4uSg5iE0
(*゚ー゚) 独生、なんで私を呼んだの?
('A`) 何ってそりゃ...あの時全部収めたのお前だからさ
('A`) まだ脾都と診競に説明してなかったし、一緒に過ごすことになるから
('A`) 一度全部説明しなくちゃいけないと思ってな
(*゚ー゚) ...そういうことね
(*゚ー゚) 播院は、嫌がってなかった?
('A`) 彼女が、話したいって言ってた。特に診競に
ミセ*゚ー゚)リ え、私?
('A`) ああ。この話は「美」に関わってるから
('A`) だけど...もし嫌だったら外してもらっていい
ミセ*゚ー゚)リ いや、聞くよ
296
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:28:42 ID:L4uSg5iE0
('A`) ...わかった
('A`) 播院、文
从 ∀从( ω )
297
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:29:05 ID:L4uSg5iE0
从 ゚∀从 ...播院だ。よろしくな
从 ゚∀从 それで、こっちが文
( ω )...。
ノパ⊿゚) ...?
从 ∀从 事情があって、な
298
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:29:35 ID:L4uSg5iE0
('A`) さて...どこから話すべきか...
从 ゚∀从 私と文、独生は奏柵で生まれて、ずっと一緒だったんだ
从 ∀从 でも皆、私のせいで変わってしまった
('A`) ...俺は、後悔してないよ
从 ∀从 そう。だけど、私は大き過ぎる罪を背負ってしまったんだ
从 ∀从 以前の私も、どこにもいない
从 ∀从 ...私はもう播院じゃない。私は、ジャスミンだ
299
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:30:08 ID:L4uSg5iE0
ミセ*゚ー゚)リ ...ジャスミン?
从 ゚∀从 これは、私の中にある「美」の話なんだ
从 ゚∀从 だから、診競に話したかった
ミセ*゚ー゚)リ っ...
从 ゚∀从 貴女の「美」が凄いことも知ってる。だからこそ、この話を聞いて欲しい
从 -∀从 私は、3人とずっと一緒だった
.
300
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:37:00 ID:L4uSg5iE0
…
物心付いた頃から、私たちは路上で暮らしてた。
私は、人間ではなかった。
女の殻を被った何かだった。
その上、自覚がなかった。
(;'A`) おい、播院、どこだ!?
(; ^ω^)出てくるおーー!!
从 ゚∀从 ...。
(;'A`) あ、おいあれ見ろ文!
(; ^ω^)おぉっ!?
(;'A`) 屋上で何してるんだ?危ないだろ!?
301
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:37:24 ID:L4uSg5iE0
从 ゚∀从 ...独生か
(;'A`) 降りてこいよ!播院!
(; ^ω^)屋上行ってくるお!
从 ゚∀从 なんで、慌ててるんだ?
(;'A`) なんでって、飛び降りるんだろ!?慌てるに決まってるよ!
从 ゚∀从
从 ゚∀从 ...ごめん
从 ゚∀从 よくわかんない
(;'A`) なんか悩みでもあるのか?教えてくれればよかったのに!
302
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:39:12 ID:L4uSg5iE0
从 ゚∀从 悩み?
(;'A`) え、違うの!?思い詰めてるから、人って飛び降りるんじゃないのか!?
从 ゚∀从 そうなんだ
(;'A`) ...っ!
(;'A`) 理由は後で聞くから、そこでじっとしててくれ!
从 ゚∀从
タッ
(;'A`) ちょ、
(゜A゜) まっ、....!?
.
303
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:39:48 ID:L4uSg5iE0
ガシッ
(; ^ω^)っぶねぇぉぉぉぉぉぉ!
从 ゚∀从 あれ
从 ゚∀从 ...落ちて、ない
プラン... プラン...
(; ^ω^)今引き上げるお!
304
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:40:16 ID:L4uSg5iE0
(;'A`) マジどうしたんだよ播院
(; ^ω^)そうだお、流石に怒るお?
从 ゚∀从 ...怒る?
从 ゚∀从 怒ってるのか、ふたりとも
(;'A`)(; ^ω^)...!?
(; ^ω^)まさかここまでとは、呆れたお
(;'A`) 本当に、何の理由もないのか?
从 ゚∀从 いや。なんか、飛んだら何か道が開けるかなって....
从 ゚∀从 下にゴミ袋積んでたから怪我もしないかなって、思ったんだが...
305
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:40:41 ID:L4uSg5iE0
( ^ω^)あ、そうなのかお?
从 ゚∀从 ああ
( ^ω^)
(; ^ω^)...いや納得しかかってたけど、やっぱ意味不だお!?
(;'A`) 播院、理由は百歩譲って、危ないことはやめてくれ...
从 ゚∀从 ...分かったよ
306
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:41:40 ID:L4uSg5iE0
从 ゚∀从 なんで、二人は俺に構うんだ?
( ^ω^)...なんでって、幼馴染だからだお?
从 ゚∀从 ...へえ
从 ゚∀从 俺、この前誰かに言われたよ。人に嫌われる天才って
( ^ω^)...そんなことないお!
从 ゚∀从 そうなの?
( ^ω^)だって、僕らは播院のことが好きだお
( ^ω^)播院は多分、普通の人とは違うんだお...
('A`) 誰か...ってか、いかにも捻余が言いそうなことだな
307
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:42:35 ID:L4uSg5iE0
从 ゚∀从 捻余?...あぁ、第2区の
从 ゚∀从 確かに、そうだったかも
('A`) ...ま、それはいい
('A`) 播院は、そのままでいいんだよ
从 ゚∀从 ...そうか
(;'A`) あ、でも俺たちがやめてって言ったことは極力守ってほしいかな?
从 ゚∀从 ...分かった
('A`) もし。それがやっていいことなのか、駄目なことなのか分からなかったら、俺たちに聞いてくれよ
从 ゚∀从 うん
('∀`) いい子だ
从 ゚∀从 いい子?
( ^ω^)独生キモいお、播院は同い年だお!
('A`) うるせー!
308
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:43:24 ID:L4uSg5iE0
私たちはそのまま成長した。色々なことが分かってきた。
周囲は親の顔なんて知らない連中ばかりだったからか、心はボロボロに荒んでいった。
独生や文も、不安定な時期が続いてた。貴女達も、きっとそうだったよね。
どっかに盗み入って、殴り合って、捕まって...。
私の周りにも薬物に手を出す奴、先輩に誘われて売人になる奴、いっぱいいたんだ。
けど、
その時の私は、何も感じてなかった。
相変わらず、人間じゃなかった。
(# ^ω^)あーイラつくお!皆僕を蛆虫見るような目で見やがってお!
(# ^ω^)独生!どっか叩きに行くお
('A`) おい文
('A`) 俺たちが蛆虫なのは本当だろ
('A`) ...自ら証明する気か?
309
:
名無しさん
:2021/04/30(金) 21:45:02 ID:L4uSg5iE0
(# ^ω^)は...独生...お前...殴っていいかお?
('A`) 俺たちにできんのは、これ以上堕ちないようにすることだ
('A`) それとも、第2区の連中みたいに...蛆虫以下になりたいのかよ
(# ^ω^)う...
(# ^ω^)うるせーお!僕にもプライドはあるんだ、心まで死んでたまるかお!
(#'A`) ...お前な
(#'A`) 頭使えバカ!刑務所行ってどうなるか...ヤバい奴に目付けられて引きずり堕ろされるに決まってるだろ!
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