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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部
1
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 21:28:16
SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1430536972/
SSログ置き場
http://jp.bloguru.com/masaoikuta/238553/top
2
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 21:28:46
前スレの続きの話をこのスレで書いていきます。
第一部をすべて読み終えることを前提にしていますので
前スレか、あるいは後に更新するSSログ置き場を御覧いただくことをお勧めします。
3
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 21:32:16
【第二部:berryz-side】
我々の住む地球から時空を超え宇宙を超えたところにある、とある世界。
そこにはモーニング帝国と呼ばれる大国が存在していた。
その帝国を護る少女剣士集団であるモーニング帝国剣士らは今日も訓練に勤しみ、
正午には食堂でランチを楽しもうとしていた。
「やったーごはんだー!」
帝国剣士の中でも最も若い新人、アカネチン・クールトーンは大はしゃぎだ。
成長期だからか、今が一番ご飯が美味しい時期なのだろう。
急いで定食を取りに向かうが、それを同期のハーチン・キャストマスターに制止される。
「こらあかんやろ!先輩方が先や。」
モーニング帝国剣士には厳しい鉄の掟が定められていた。
いくつかある中でも代表的なのは「料理を選ぶのは先輩から」というものだ。
まずは最も先輩であるQ期団のエリポン、サヤシ、カノンから。
次は天気組団のハルナン、アユミン、マーチャン、ハル。
続いて同じく天気組団だが先の4人より後輩であるオダが定食を運んでいく。
そして最後に新人ハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンが選択することを許されるのだ。
人気の焼肉定食などはすぐに無くなってしまうため、新人4人の選択肢はほぼ無いに等しかった。
ボリュームの少ない野菜だらけの定食を運びながら、アカネチンが寂しそうな顔をする。
「はぁ、もっとたくさん食べたかったなぁ。」
「ほんまにアカネチンはしょうがないな。じゃあウチの分も食べ。」
「え!?ハーチンいいの!?」
「ウチは氷さんだけあればそれで満足なんや。」
「ハーチン大好き!」
アカネチンは両手をあげて喜んだ。
ハーチンがご飯を分け与えることなんて日常茶飯事なのだが、
それでもとても嬉しく思えるくらい、食べたくて食べたくて仕方ないのである。
だが、その行為に対して先輩から注意が入る。
「ダメよハーチン。ご飯は自分で食べなさい。」
「「ハルナンさん……」」
指摘をしたのはモーニング帝国の剣士団長兼、天気組団の団長兼、新人剣士の教育係である
ハルナン・シスター・ドラムホールドだった。
新人のことを思って、剣士たるもの体調管理も重要だというありがたい話をしてくる。
「食事制限も行き過ぎると逆効果よ?訓練と任務をこなすためのエネルギーはちゃんと摂取しなさい。」
「はぁい……」
「そしてアカネチン。成長期とは言え定食を2つも食べるのは絶対にダメ。
身体が重かったら実践で思うように動けないでしょ?」
「でも……」
アカネチンはQ期団の座るテーブルをチラッチラッと見た。
そこでは恰幅の良いカノンと、昨年より大幅にスケールアップしたサヤシが食事をとっている。
「あの二人は……」
「それ以上言うのは許しません。」
「はい、ごめんなさい……」
4
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 22:10:19
「ごちそうさまでしたー。」
アカネチンは、食事が終わると決まってハルナンの後をついていく。
彼女らは重要な任務を任されているため、日に三回、とある場所に向かわねばならないのだ。
「アカネチン、ちゃんとお弁当は持った?」
「はい!カバンの中に入れています。」
「じゃあ行くわよ。サユ様のお部屋へ。」
ハルナンとアカネチンの任務。それはこの国の先代の王であったサユの元に食事を届けることだった。
この国では昔からのしきたりで、元帝王はモーニング城の地下で隠居することが義務づけられている。
地下室に缶詰めという訳ではないが、なるべくは外に出ないほうが望ましいとされているのである。
その目的や詳しいことは末端の剣士であるアカネチンにはまったく分からないが、
研修生時代に比較的サユと仲が良かったということもあって、給仕係に任命されたのだ。
朝、昼、晩のご飯を届けるために、唯一サユにアクセス可能なハルナンについていくのが日課になっている。
「それにしてもサユ様がこんな庶民的な料理を食べるなんて意外でした。」
アカネチンが運ぶ料理は、ご飯の上に焼鳥つくねを乗せて、その上から甘いタレをかけた丼ぶり料理だった。
このいかにもB級グルメな見た目の丼ぶりを先代の王サユが好むというのは有名な話であり、
信奉者も「サユ丼」と呼んで、食堂の在庫が切れるくらいに食べまくったという。
それを運んでいると、アカネチンもヨダレが出そうになってくる。
「お腹減ったなぁ……」
「アカネチン。さっきお昼ご飯を食べたでしょ?」
「思ってません!サユ丼を食べたいなんて思ってません!」
「あなたがサユ丼って言ったらダメでしょ。立場的に……」
そんなやり取りをしながら、ハルナンは厳重に施錠された扉のカギを開けていく。
ここから階段を下ればサユの部屋はすぐそこだ。
さっさとサユ丼をお届けしようと思っていたところに、とんだ邪魔が入る。
「アカネチンばっかりズルい!ハルナンさん、マリアも連れていってください!」
「「!?」」
登場したのはアカネチンやハーチンと同期の新人剣士である、マリア・ハムス・アルトイネだ。
ハルナンとアカネチン以外の帝国剣士らは城外の監視を行っているはずだというのに、
こちらの任務を羨ましく思うあまり、本業を疎かにして尾行してきてしまったのである。
「マリア?あなたの仕事はエリポンさん達と一緒に城門を見張ることでしょ?」
「ハルナンさん!アカネチンばっかりズルいんです!」
「まったくもう……」
この時アカネチンは、マリアが仕事熱心すぎるからこんなことを言うのだと考えた。
研修生時代のマリアは相当なエリートだったため、いろんな仕事をこなしたいのだろうと推測したのである。
当時はともかく今は同格。アカネチンも言いたいことは気にせず言うようにしている。
「マリアちゃんは監視任務の方に行きなよ、ここは私がちゃっちゃと終わらすからさぁ」
「ズルい!アカネチンがそうするならマリアはドゥーさんにベッタリくっつくことにする!」
「ちょっと!?なんでそこでドゥーさんが出てくるの?意味が分からないんだけど……」
「とにかくマリアも地下室に行きたいんです!ハルナンさんお願いします!」
「ハルナンさん!こんな訳分からないこと言うマリアちゃんなんか放っといて早くいきましょうよ!」
新人二人の喧嘩にハルナンは頭を抱えてしまった。
天気組団のハルやマーチャンを超える問題児はそうそういないと思っていたが、現にこうして二名存在している。
後輩育成の難しさを改めて痛感する。
5
:
名無し募集中。。。
:2016/01/09(土) 22:11:25
スケールアップ…そこいじるのかw
祝二部スタート!楽しみにしてます
6
:
名無し募集中。。。
:2016/01/09(土) 22:22:18
やっぱり誘惑に勝てなかったかーw
7
:
名無し募集中。。。
:2016/01/09(土) 23:39:33
サユ王はほぼ缶詰状態でもあまり気にしなさそう
日がな一日ネットパトロールしたり
美少(幼)女の画像や動画を鑑賞したり
8
:
名無し募集中。。。
:2016/01/10(日) 00:30:58
どうせ地下にいても王国中の監視カメラで美少女漁るんでしょw
てか昔のサユはただのナルシストだったのにいつから幼女好きになったのか・・・
9
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/11(月) 01:19:36
「しょうがない、今日だけマリアもついてくることを許可します。」
「本当ですか!?マリア、とってもとっても嬉しいです!」
「ハルナンさん甘いなぁ……」
このまま喧嘩が長引いても埒があかないため、ハルナンは自分が折れることにした。
本来は誰彼構わず地下に入れるのは望ましいことではないのだが、
新人を一人加えたところで大きくは影響しないと判断したのである。
「さて、早くお食事を届けないとね……あら?」
「どうかしたんですか?」
「鍵が、開いている……」
「「え!?」」
サユの部屋へと続く扉が施錠されていないのは、かなりの一大事だった。
大したことないように思えるかもしれないが、これは場合によっては国際的な問題にも発展しうる緊急事態なのである。
詳しくは知らないマリアとアカネチンも緊迫した雰囲気を感じ取ったのか、途端に慌てだす。
「えっと、えっと、サユ様が外出しているとかじゃないんですか?……」
「この扉の鍵はサユ様も持ってるの。外出する時は必ず鍵をかけるはずよ。」
「鍵のかけ忘れは考えられないんですか?」
「ありえない。地下室の重要性を理解されているサユ様に限って、そんなミスはありえないわ。」
「うぅ……」
鍵の行方を議論するのも良いが、まず優先すべきはサユの安否だ。
ハルナン、マリア、アカネチンは覚悟を決めて扉を開こうとする。
ところが扉を開けようとしたその時、思いもしなかった出来事が起こった。
「わっ!!」「誰!?」
なんと扉の中から謎の人物が飛び出してきたのだ。
いや、正確には「謎の人物」と「謎の馬」。
馬に騎乗した女性が突如現れたのである。
そして更に信じがたいことに、そいつは気を失っていると思わしき黒髪女性を脇に抱えていた。
その黒髪女性のことは誰もが知っている。
マリアは思わず大声でその名を叫んでしまう。
「サユ様!!」
謎の騎馬兵が運ぶのはモーニング帝国の先代の王、サユだった。
その緊迫した様子からはとても乗馬遊びをしているようには見えない。
「人さらいだ。」と、マリアもアカネチンもすぐに感じ取ることが出来た。
「サユ様を放せ!」
人さらいを倒すため、サユを助けるため、マリアは両手剣を握って騎馬兵に斬りかかった。
この状況ならば帝国剣士は誰もがそうするべきかもしれない。
しかしアカネチンは瞬時に動くことが出来なかった。
人さらいのことを知っていたため、恐怖で身体が凍りついてしまったのである。
「あなたは……!!」
10
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/11(月) 01:21:26
この世界にはネットも監視カメラもありませんが、
それに近い情報を得る手段ならサユは持っているかもしれませんねw
11
:
名無し募集中。。。
:2016/01/11(月) 10:59:02
サユ王拉致!?犯人は『馬に乗っている』・『アカネチンと顔見知り』・・・あの人以外考えられないなw
まさか一部の 366 がネタではなく伏線になっていたとは…
12
:
名無し募集中。。。
:2016/01/11(月) 20:29:26
ついにあの部隊が登場か!
13
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/12(火) 08:38:51
ハルナン達が人さらいと遭遇したのと同時刻。
残りの帝国剣士らも、城門前で信じ難い光景を目にしていた。
「マイミ様!?その怪我はいったい……」
帝国を訪ねてきたのは、マーサー王国のキュート戦士団団長であるマイミだった。
それ程の大物がやって来るだけでも一大事だというのに、
そのマイミの鋼鉄で出来た義足が両方とも折れ、
更に腕が真っ赤に腫れているのだから一同は大騒ぎだ。
そんな人間が無事であるはずが無いと思った新人剣士は特にパニックに陥っている。
「い、今すぐ誰かにDoctorを呼んできてもらいます!」
ノナカ・チェル・マキコマレルは門の中にいる兵士らに助けを求めようとしたが、
それを帝国剣士団長兼、Q期団団長であるエリポン・ノーリーダーが制した。
「待って!」
「What's!?」
「騒ぎを起こすのはまずい。なるべく他の人には知らせないようにしよう。」
「でも急がないとその人が死んじゃいますよ……」
「私なら大丈夫。それよりも頼みを聞いて欲しい……そのために走ってきたんだ!」
マイミの言葉に帝国剣士らは息を飲んだ。
走ってきたとは言うが、義足の破損した今のマイミに脚はない。
つまりは、二本の腕だけでここまで来たということになる。
いくらモーニング帝国とマーサー王国が隣国とは言え、ここまで手押し車で来るなんてレスリング選手もビックリの体力だ。
霊長類最強女子とはマイミのことを言うのかもしれない。
そんなマイミがこれだけボロボロになっているのだから、一同は興味を引かれずにはいられなかった。
「頼み……とは?」
「結論から言う。キュート戦士団が倒され、マーサー王がさらわれたから助けて欲しいんだ!
我々キュートだけでは……王を取り戻すことが出来ない!!」
「「「「!?」」」」
マイミの口から飛び出したのは、本日最も信じられない事実だった。
マーサー王がさらわれることの重要性はもちろんのこと、
化け物のような強さを誇るキュート戦士団が壊滅したということにも驚かされた。
マイミだけでなく、ナカサキ、アイリ、オカール、マイマイと言った超一流戦士が揃っているというのに
敗北を味わうなんて現実味が無いにもほどがあった。
「い、いったい誰にやられたんですか?……」
マーサー王国の守護戦士、いわゆる食卓の騎士の強さを身をもって知ったことのあるサヤシがおそるおそる訪ねた。
キュートと同格と言われているベリーズ戦士団の恐ろしさに泣かされた経験から、
それに相当する強さを誇る人物がいるなんて未だに信じられていないのだ。
だが、そこでサヤシは気づいてしまった。
キュート戦士団を壊滅に追いやる、キュート戦士団に匹敵した実力者集団の存在を理解してしまったのだ。
「え!?まさか、いや、そんな……」
その存在を思い出すだけでサヤシの身体は重くなる。
あまりの重圧に吐き気がしそうになってくる。
サヤシが勘付いたのを悟ったマイミは、本件の全貌を明らかにする。
「あぁ、我々キュートを倒すことが出来る強者なんて、彼女ら以外には存在しないだろう。」
14
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/12(火) 08:40:28
皆さんの予想は半分アタリ半分ハズレです。
なんともコメントしにくいのでとにかく更新を急ぎますねw
次回は夜頃に更新します。
15
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 12:42:58
マジか・・・色んな意味でマジか!?
色々気になるけど今夜の更新を待つ事にしよう…
16
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 13:20:12
まーたマーサー王さらわれたのかよw
17
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/12(火) 20:18:09
マーサー王国で起きた事件の日まで時は遡る。
その日のマイミは訓練場にて3時間にも及ぶ自己鍛錬を終えた後、
ジョギングがてらパトロールに行こうとしていた。
いつもの平穏な日常ならば、42.195kmを2時間ほど走ることでマイミの1日は終わるはずだったのだが
この日に限ってはジョギングの一歩目から異変が起きていた。
訓練場を少し出たところにキュート戦士団の一人であるオカールが倒れていたのだ。
それも、血まみれで。
「オカール!?いったいどうしたんだ!」
団員の無事を確かめつつも、マイミは自然とファイティングポーズをとっていた。
まだ見ぬ敵を警戒しているのだ。
オカールはこの国で、いや、それどころか近隣諸国を含めても十二指に入るほどの実力者のはず。
特にアウェーでの戦いに強く、マーサー王国に刃向かう小国でもあればたった一人で制圧する程だった。
そんなオカールが無惨に散るなんてまったくもって考えられ無い。
それを可能にした敵とはどれだけの強者なのだろうか。
「俺のことは良いから早く王のところへ……」
「王だと!?敵は王を狙っているのか!……くそっ、ベリーズ全員が遠征に行っている時に攻めてくるなんて……
よし!今すぐナカサキとアイリ、そしてマイマイを招集して対抗しよう!」
「ダメだ!それは無駄なんだ……」
「無駄だと?……それはどういう……」
「やられちまったんだよ、キュートはアンタ以外全員な……」
「!!?」
この時受けたマイミのSHOCK!は尋常ではなかった。
キュート戦士団は全員が超一流。
一騎当千どころか一騎当万にも値する実力の持ち主だ。
そんな彼女らが4人も敗北するなんて有り得なさすぎる。
いったい相手はどれだけの戦力なのか、マイミの頭では想像することも出来なかった。
「敵はどんな奴らなんだ?……数十万の軍隊でも押し寄せてきたのか?……」
「6人だよ……」
「は?」
「これ以上言わせないでくれ……察してくれよ!!俺だってもう言いたくないんだよ!」
「待つんだオカール!敵が6人だなんて、それはまるで……」
マイミが叫んだちょうどその時、背後からの凶撃によって右脚の義足が破壊される。
これによってマイミは全てを理解した。
鋼鉄の脚を一撃で粉砕する程の破壊力を持ちながら、
且つ微塵も殺気を悟らせ無い達人なんてこの世に一人しか存在しないのである。
そして、そいつが束ねる化け物集団が攻めてきたとするのならば
キュートの4人がやられてしまったのも納得できる。
「シミハム!何故っ!?」
「……」
そこに居たのはベリーズ戦士団の団長、シミハム。
第二部:berryz-side
ベリーズ戦士団が事件を起こす物語。
18
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 20:41:46
前作の主人公が敵に回る
王道やね
19
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 21:17:10
王道・・・なのか?何気にshockなんだがw
考えてみたらファクトリーはベリーズの魂を受け継いでいるんだからこの展開は予想すべきだった・・・
20
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/13(水) 08:38:41
旧知の友であるシミハムが牙を剥いたことに驚きを隠せ無いマイミだったが、
だからと言ってやるべきことは変わらなかった。
「我が国に、そして我らが王に仇なすならば排除するのみ……それを分かっているんだろうな?」
「……」
シミハムから返事は返ってこなかった。
正確には返事をしたくても出来ないのだ。
ベリーズ戦士団のシミハムとキュート戦士団のマイミは
数年前の大事件の末、それぞれ声と両脚を失ってしまっている。
ゆえに以降は不便な生活を強いられることになったのだが、
だからと言って2人の強さは変わらない。それどころか当時より数段増している。
「洗脳されているのか、何か考えがあるのか……そんなのは分からないが関係ない。
キャプテンであるお前を捕らえて、ベリーズを一網打尽にしてやる!!」
マイミは暴風雨の如き殺気を全開にし、片脚のハンデを感じさせない程の速度でシミハムに殴りかかった。
素手でも鉄扉を捻じ曲げるパワーの持ち主であるマイミが、
本来の武器であるナックルダスターを拳に装着しているのだから威力は絶大だ。
彼女が本気を出せば岩石さえもクラッシュしてみせることだろう。
しかし、その攻撃はシミハムには届かない。
確実にヒットさせる自信が有ったというのに、鉄拳はシミハムの数㎝前で止まってしまう。
「!!……相変わらずのキレだな。」
マイミが目測を誤ったのではない。むしろ非常に正確だった。
当たらなかったのは衝突する直前にシミハムがほんの少しだけ後退したからなのだ。
それも顔色や上半身の動きをまったく変化させず、
ただ爪先だけのちょっとした移動で回避したのである。
全てを破壊するパンチを、シミハムは必要最低限の動きで避けてみせたということになる。
全ての攻撃は、シミハムの前では「無」になる。
そして、キャプテンの真骨頂はこれから披露される。
「はっ!!……しまった!」
事もあろうに、マイミはさっきまで目の前にいたはずのシミハムを見失ってしまった。
一対一の状況で敵を見逃すなんて致命的すぎる。
だがこれはマイミが間抜けだという訳ではない。
シミハムが特殊能力を発揮しただけの事なのだ。
とは言っても瞬間移動や透明化などの超能力の類を発動した訳ではない。
彼女がやったのは、パンチを当てるくらい接近したマイミの右斜め後方にピョイと跳びこんだだけのこと。
それだけで十分死角に入ることが出来たのである。
ではこれの何が特殊能力か?
それは、シミハムの放つオーラの特性ににあった。
(くっ……何も分からない!!)
闘争心のある者であれば誰もが大なり小なり殺気やらプレッシャーを放つものだ。
マイミだけでなく、食卓の騎士に属する者は長年の経験からそのようなオーラを任意に知覚することが出来ている。
それによって背後からの不意打ちから身を守ることが可能になっているのである。
ところが、シミハムからはそのようなオーラが全くと言っていいほど感じ取ることが出来ない。
矛盾した表現になるかもしれないが、シミハムは「無」を放っている。
大した人物に見えない大した人物。
それがシミハムだ。
21
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/13(水) 08:39:58
第二部はベリーズを倒しに行くお話です。
結末はずっと先かもしれませんが、どつかお付き合い願います。
22
:
名無し募集中。。。
:2016/01/13(水) 11:00:28
何部構成になるのかしら
23
:
名無し募集中。。。
:2016/01/13(水) 12:46:44
ベリーズを倒すって・・・今の帝国じゃあ、相手にならない。。。どうやって強くなるのかな
24
:
名無し募集中。。。
:2016/01/13(水) 19:42:39
>>21
のんびりお付き合い致します
25
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/14(木) 09:10:38
一人一人が大物の風格を見せるベリーズ戦士団の中で、唯一シミハムだけは小動物のような見た目をしていた。
身長がかなり低いというのもあるが、それ以前に威圧感のようなものが殆ど感じられないのだ。
ゆえに、ベリーズのことをよく知らない外敵は戦力を見誤る。
小柄なシミハムなら倒せると誤解して返り討ちに遭うことなんてしょっちゅうだ。
となれば、シミハムの実力を十二分に認めているマイミならば脅威を肌で感じ取っても良いものだとと考えるが、
それでもマイミは背後にいるシミハムの気配すら認識できなかった。
足音を、鼓動を、気配を、その全てをかき消してしまう程の圧倒的な無。
それがシミハムの特性なのである。
この状況ならばシミハムは背後からの不意打ちを100%確実に決めることが出来る。
しかもシミハムの獲物は、全長にして自身の身長の倍もある三節棍だ。
ただでさえ重量のあるこの武器を勢いよく振り回すのだから、
衝突時の威力は遠心力も相まって相当なものになる。
先ほど鋼鉄の義足を破壊したのと同等のパワーで、棍はマイミの背中へとぶつかっていく。
「ああ゛っ!!」
この時、シミハムは確かな手応えを感じていた。
相手の背骨を砕く感覚が三節棍を通して伝わってきたのだ。
マイミは食卓の騎士の中で最も高い生命力を誇るため、こうでもしないと動きを止めることは出来ない。
それをなんとかスムーズに実行することが出来たので、シミハムはほっと胸を撫で下ろした。
だが、ここで異変が起きる。
三節棍を引き寄せようとしても、まるで何者かに阻害されているかのように戻ってこないのだ。
何者か、という問いに対して説明は不要だろう。
答えはマイミに決まっているからだ。
「そんな攻撃で私を倒したつもりか?シミハム!」
「!!」
なんとマイミはヒットした瞬間に背中に力を入れることで、肩甲骨で棍を挟み込んでしまったのだ。
シミハムの存在を知覚できないのであれば、攻撃を受けると同時に対応すれば良いと考えた結果である。
人並みを大きく外れた反射神経と度胸がなせる技だろう。
「それではお返しだっ!」
マイミは伸びきった三節棍を掴み取り、逆に自身の方へと引き寄せた。
義足を一本失い、そのうえ確かに背骨は折れているというのに
マイミはしっかりとした重心で片足立ちをしている。
その異常なまでの「生きるという力」はシミハムの想定を何段階も上回っていたのである。
26
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/14(木) 09:12:43
よほどのことが無い限りは全三部構成にするつもりですよ。
一部はsayu-side
二部はberryz-side
三部は拳士です。
27
:
名無し募集中。。。
:2016/01/14(木) 12:46:49
おお!こぶし来るか
28
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/15(金) 12:40:18
次の更新は夜遅くになりそうです。
29
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/16(土) 04:44:00
三節棍をグンと引っ張っては、力強く振り回して周囲の壁に何回もぶつけていく。
本来の持ち主がすぐに棍から手を放したため、シミハムごと叩きつけることまでは出来なかったが
それでも敵の武器を奪い取り、尚且つ破壊できたのは大きな成果だった。
マイミがクラッシャーっぷりを発揮すればこれくらい容易いのである。
「さぁ、丸腰でどう私に勝つつもりだ!」
武器を失ったシミハムは誰がどう見ても絶体絶命の状況だった。
三節棍を持ってしても倒しきれないマイミに対して、素手でどうこう出来るはずがない。
普通の戦士であれば敗北を認めて降参してもおかしくないシチュエーションだ。
ところがシミハムはそうしなかった。
それどころか目を閉じて、その場で座禅を組み始めたのだ。
真剣勝負の場でこんなことをするなんてふざけているとしか思えないのだが、
この行為にはちゃんと意味があった。
(なんだと?……シミハムの姿がぼやけていく……)
シミハムの身体そのものが、目に見えて薄くなっていく。
彼女の集中が極限に達した結果として、目視することすら困難なほどに存在が希薄になったのだ。
他の食卓の騎士が天変地異のようなビジョンを視覚的に見せているのに対して、
シミハムは無そのものを具現化しているため、このような現象を可能にしているのである。
こうなればもう透明化と同じ。マイミは何をされても抵抗できないだろう。
武器のアドバンテージなんて、無いも同然だ。
(驚いた……シミハムの修行はここまで極まっていたというのか。
同じ食卓の騎士でありながら、私はベリーズのことを何も分かっていなかったんだな。
だが、ここでみすみすと勝利を逃すわけにはいかない!絶対にだ!
私の全神経を注いでお前の姿を捉えてやる!!)
シミハムが集中するのと同じくらい、マイミは前方に向けて集中した。
国を、そして王を守りたいという使命感が大きくなるのに連動してマイミの雨女力も強くなっていく。
嵐を超えて、暴風雨を超えて、台風を超えて、マイミのビジョンはハリケーンの如き激しさを見せる。
部屋中のどこを見ても雨が降る中、ただ一部分だけは穴が開いたかのように「何も」なかった。
シミハムはそこにいることをマイミは確信する。
「そこだぁ!!」
何もない空白に向かってマイミは飛び掛かる。
これを逃せばチャンスはもう来ないと心から信じている。
オカールの叫び声も聞こえないほどの瞬間最大降水量の中、マイミは強烈なパンチを繰り出していく。
30
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/18(月) 08:47:45
体調不良で更新できていませんでした……
続きは明日か明後日になりそうです。
31
:
名無し募集中。。。
:2016/01/18(月) 10:58:42
お大事にね
32
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/21(木) 20:16:42
すいません、もう少し長引きそうです。
33
:
名無し募集中。。。
:2016/01/22(金) 08:43:47
ゆっくり待ってますよ
34
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/26(火) 02:10:21
マイミの読みは当たっていた。
嵐の中の空白には、確かにシミハムが存在していたのだ。
このまま鉄拳を振り切れば、敵に対して大きな痛手を与えることが出来たはず。
ところが、またしてもあと一歩のところでそれは叶わなかった。
「猟奇的殺人鋸――」
「!?」
「――"派生・愕運(がくうん)"」
突如現れた凶刃によって、マイミは義足をスパッと切断されてしまう。
先ほどシミハムに右義足を潰されたうえに、こうして左義足までも斬られたものだから
マイミは敵の技名通りにガクーンと転倒することとなる。
これほどの鋭さを誇る斬撃。マイミには心当たりが有りすぎた。
「ミヤビか!」
食卓の騎士としてこれまで戦ってきた仲間のことをマイミが当てられない訳がなかった。
もっとも、今こうして登場しているのは「仲間」などではなく、
殺人的な禍々しいオーラをビンビンに放ち続けている「敵」な訳だが。
「2対1が卑怯だなんて思わないよな?」
「……!」
ミヤビのプレッシャーは刃物のように鋭く尖っている。
それが無数にギラギラと飛んでくるのだから、
余程の胆力が備わぬ者でなければ、四肢を切られる苦痛を味わうことになるだろう。
だが、ここでマイミは一つの違和感を覚える。
これほどまでに暴力的な存在感を持つミヤビの不意打ちに
マイミほどの達人が何故気づくことが出来なかったのか、分からないのだ。
本来ならばすぐに勘付いて回避行動にうつっていたはず。
だがここで考えこんでも意味がない。
その原因さえもがマイミの脳裏から消え去りつつ有るのである。
35
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/26(火) 02:11:24
10日ぶりくらいになっちゃいましたね、、、
なんとか回復したので、続きを再開できそうです。
36
:
名無し募集中。。。
:2016/01/26(火) 06:53:03
待ってました〜
37
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/27(水) 02:15:07
気づけばマイミはミヤビにばかり集中をしていた。
ついさっきまで戦っていた相手のことも、自ら破壊した棍のことも忘れていたのだ。
だがその忘却も長くは続かない。
後頭部に強烈な打撃をぶつけられることで、マイミはシミハムを思い出す。
「!!」
薄れていく意識の中、マイミはすべてを理解した。
凶器の如きオーラを持つミヤビを知覚出来なかったのはシミハムに集中しすぎていたからであり、
そのシミハムを今の今まで見失っていたのは、ミヤビに少しでも関心を向けてしまったからなのだ。
単純なタイマン勝負ならばマイミはシミハムに勝利していたのかもしれないが、
存在感を自在に希薄化できるシミハムは、個性が極めて強いベリーズのメンバーがそばにいることで
完全なる無となることが出来る。
そのせいでマイミは本来ならば喰らわないような不意打ちを何度も受けたのである。
骨が折れ、義足も壊され、その上さらに手痛い打撃を脳天にもらったため、
さすがのマイミも立ち上がれないほどに弱ってしまう。
「シミハム団長。マイミの奴はもう動けません。そろそろ行きましょう。」
地に這いつくばるマイミを見て、ミヤビは逃走の提案を持ち出した。
これが真剣勝負であれば、まだ戦う意思のある相手に背を向けるなんて許されないことだが
シミハムとミヤビの目的はそのようなものではなかった。
マイミをここで動けない程度に痛めつけることが出来れば、それで十分だったのだ。
シミハムはコクリと頷くと、外へと走っていく。
「ま、待て!私はまだやれる……!」
「マイミ。私たちはお前に構ってやるほど暇じゃないんだ。なんせ王を待たせているんだからな。」
「王だと?……王に何をするつもりだ!!」
「これからベリーズ全員でマーサー王を攫う形になる。
長期の不在になるだろうね。国民が混乱しないように上手くやるんだぞ。マイミ、オカール。」
そう言い残してミヤビはシミハムの後を追っていく。
その間マイミは悲痛な叫びを何度もあげ続けたが、当然なんにもならなかった。
この日、ベリーズらの手によってマーサー王国から王が消えることとなる。
38
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/28(木) 12:53:40
マイミの回想は終わり、話は現在に戻る。
ハルナン、マリア、アカネチンらは何者かにサユが連れ去られる現場を目撃した訳だが、
この件もマーサー王がさらわれた事件と密接に関わっていた。
そう、どちらもベリーズによって引き起こされていたのだ。
(モモコ様……どうして!?……)
ベリーズ戦士団のモモコが馬に跨りながらサユを抱える姿を見たアカネチンは、
なんて声を発すれば良いのか分からないようだった。
以前出会ったときはこのような事をするような人物には見えなかったので、ショックが大きいのだろう。
しかし主犯が誰であろうと、サユが拐われるのを黙って見逃す訳にはいかない。
アカネチンは剣を取ってモモコに斬りかからねばならないのだ。
だが、それだけのことがアカネチンには難しかった。
モモコの事を知っているからこそ、脳が攻撃を拒否するのである。
新人剣士のアカネチンと食卓の騎士でおるモモコの実力差は月とスッポン。
いや、あるいはそれ以上かもしれない。
仮にも帝国剣士団長であるハルナンですら一歩も動こうとしないのだから、
モモコとそれ以外には絶望的なまでの差が有るのだろう。
このまま攻撃に行くのは自殺行為そのもの。
それを重々承知しているため、アカネチンは動くことが出来なかった。
それでも、マリアは動くことが出来る。
「サユ様を放せえええええええ!!」
モモコを知らないマリアは、両手剣「翔」を握ってモモコへと飛びかかることが出来た。
マリアにとって相手が誰かというのは大した問題ではない。
憧れの存在であるサユに害を及ぼす者はみな排除すべき敵なのだ。
後先なんて考えず、超重量級の斬撃をぶつけようとする。
「あなた、見かけによらずパワーがあるのね。」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「でもね、許してニャン。 モモはパワーだけのお馬鹿さんは結構得意なんだ。」
39
:
名無し募集中。。。
:2016/01/28(木) 13:29:08
モモコだったのか!絶対山木さんが我慢できずにサトダに乗って暴挙に出たのかと思ったのにw
40
:
名無し募集中。。。
:2016/01/28(木) 17:26:56
普通はそう思う
馬触るのにもビビってた人だからなw
41
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/01(月) 12:38:08
多分今夜には更新できそうです><
モモコがサトタの新たな騎乗者になったのは、カントリーだからですね。
と言うわけで、そのほかの人たちも近いうちに登場するはずです。。。
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