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(‘_L’)は命令が欲しいようです
1
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:42:46 ID:5JotI9w60
遅いです。初心です。長い目でみててください
2
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:43:37 ID:5JotI9w60
その日、いつものように仕事を終わらせてフィレンクトは主人に連絡するために事務所へ帰った。事務所といっても二人そろって密談するだけの隠れ家。その日の出来事をつぶさに報告して、新しく仕事を命じられるために向かう。
仕事がら彼は足音を立てない。
長身でありながら静かに移動することができた。癖のようなものだが、入り口のドアが閉まっているのを確認すると隠密行動に切り替える。ここのドアは常に開いている。
主人が居るときに限って、閉められたりなどしない。壁に伝わる排水パイプをよじ登って、天窓からの侵入を試みた。ここは鍵もかかっていない。事務所には縦横斜めすべてに出口を設置している。
いつでも脱出できるように。
_
( ゚∀゚)「……」
3
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:44:50 ID:5JotI9w60
窓枠から室内を伺うと、主人の椅子に腰掛ける男がいた。男は床の血だまりを見つめている。視線の先には死体があった。
フィレンクトは咄嗟に主人の元に駆け寄ろうとして、やめた。息を確認するまでもない。死体は首と胴が離れている。
とんっと何かが降り立つ音がして、ジョルジュは振り向いた。机の文鎮でも落ちたのか、絨毯に吸収されるような音だった。
_
(; ゚∀゚)「なっ……」
(‘_L’)
フィレンクトは主人を無感動に見下ろした。これまでこの男から下された命令を思い返す。暗殺、敵対勢力の排除、護衛。ギャングへの使い。情報屋の始末。
そのすべてをこなしてきた。今日も終わった仕事を報告すると、次の命令のための待機を申しつけられるはずだった。
4
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:46:22 ID:5JotI9w60
_
(# ゚∀゚)「てめぇ!いつのまに」
ジョルジュは焦った。背後から最も恐るべき男が近づいているのに気がつかなかった。感情が表に出せないので彼にはわからなかったが、この時フィレンクトは混乱していた。ジョルジュは銃をフィレンクトに向ける。引き金を引く前に長い足がそれを蹴り上げた。余裕のある優美な動作だったがずいぶんと重い蹴りで、銃は部屋の隅に飛んでいく。ジョルジュは冷静だった。
突然現れた男の顔を知っていた。続けざまの蹴りを後退して受け流し、携帯していたグルカナイフを顔を狙って投げつける。
先端に重心が集まり、打撃性の大きい山岳兵のナイフ。まともに食らえばそれだけで致命傷になる。だがジョルジュはそれよりも避けようとする動きを狙っていた。
ナイフの後ろで、振りかぶった一撃を浴びせる。大きく殴れば隙ができ、その間に銃を拾うつもりだった。
5
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:48:09 ID:5JotI9w60
_
( ゚∀゚)「まじかよ……」
数センチずれて壁に突き刺さった。わざとはずしたようだ。ジョルジュはフィレンクトを睨みつけた。だが冷めた目で見つめ返される。わずかな攻防だったがジョルジュの息はあがっていた。向こうは涼しさを保っている。
_
( ゚∀゚)「……」
(‘_L’)「……」
6
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:49:36 ID:5JotI9w60
(‘_L’)「彼は 何か伝言を残したでしょうか」
しばらく沈黙が降りて、先にフィレンクトが問いかけた。
_
( ゚∀゚)「伝言……?誰あてにだ」
(‘_L’)「私かもしれませんし、他の誰かに」
さきほどの攻防が嘘のように淡々と話す。ジョルジュは身構えたがフィレンクトが襲ってくる気配はなかった。ボスの情報がほしいのか。しかしジョルジュはここに居た男を会話する間もなく殺している。逆上させるかもしれない。だが口を割らされるのもごめんなので正直に答えた。
_
( ゚∀゚)「知らねぇな。なにも聞いてないぜ」
言った瞬間、フィレンクトが動揺したのが見てとれる。よほど重要な案件だったのか、呆然と物言わぬ死体に目を向けた。
_
( ゚∀゚)「……?」
(‘_L’)「……」
7
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:50:51 ID:5JotI9w60
立ち尽くす彼は彫刻のようだ。息するときだけわずかに肩が揺れる。フィレンクトは考えていた。主人からはなにも聞かされていない。死んだ後のことを、命じられていないのだ。思考が停止していた。なにをすればいいのかわからない。歩んでいたレールの先が、突然消えてしまった。
(‘_L’)「それでは私は……、誰に命令を乞えばいいのですか」
_
( ゚∀゚)「は?」
突然バカな事を言い出した男をジョルジュは見る。表情は変わらないものの、どこか陰っていた。ボスの死に動揺しているのだろうか。それにしてはさっきまでの冷静さがおかしい。ジョルジュは苛立った。
知りうるかぎり最強の男が、雇い主が死んだくらいで不安そうなのが気に入らない。その気になれば自分など瞬殺できるだろう能力を持ちながら、迷子のような言葉はなんだ?
8
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:51:17 ID:FeB9SHY20
こんな時間から
支援
9
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:52:05 ID:5JotI9w60
_
(# ゚∀゚)「じゃあ死ねよ」
そう口から出ていた。そのためにジョルジュはここへ来た。先に殺した男はついで。目標はフィレンクトただ一人。
本来なら挑発の言葉だった。この後どうせ自分を取り戻すであろう男への、憎しみから吐き捨てた。
フィレンクトは混乱していた。29年、生きてきて、彼に指示をくれるものがいなかったのはこれが初めてだ。どの主人も死んだ時のことを教えてくれたものは居ない。たいてい譲られるか、代替わりでなどで仕えていた。ジョルジュは主人の身内でも、雇用の責任者でもない。全くの第三者だった。それでもその言葉は フィレンクトの耳にすっと入る。
フィレンクトはその時従うべき命令を探していた。ジョルジュは彼に悪態をついた。彼の放った言葉を命令と認識し、フィレンクトは胸元からリボルバー式銃を取り出して、身体を硬直させるジョルジュの前で自らの頭を撃った。
10
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:09:53 ID:5JotI9w60
薬品の匂いがして、目を覚ました。見慣れた病室の白い壁でなく、薄汚れたつぎはぎ布のカーテンが目に入る。身体を起こそうとして上半身がベットに固定されていた。頭を触ることもできないが、なんらかの処置がされていることはわかる。
覚醒するのに脳波とリンクしているのか、チューブにつながれた先の機器が、機械音を鳴らす。さほど大きい音でもないのに、すぐに足音がこちらへ向かってきた。
('、`*川「起きたんだ」
女はフィレンクトの脈拍をはかり、身体をくまなくチェックする。横腹を撫でられ、古い傷跡に爪を立てられたがされるがままにおとなしくしていた。
('、`*川「なんだ。つまんない。怒らないの?」
そうのぞき込んだ顔には、好奇心と、なに かしらの侮蔑がある。どこかで見たことのある表情だった。
11
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:10:38 ID:5JotI9w60
「彼は、どこに」
('、`*川「だれのこと?」
(‘_L’)「私を、ここに連れてきた人」
女はにやっと笑った。形容しがたい笑みだ。
('、`*川「じきに来るわ。……アンタもう少しビビりなさいよ。脈がほとんど一定じゃない」
それきりなにも聞こうとしないフィレンクトの耳に、女は楽しそうに呟いた。
「ここはアンタのボスが潰したくて潰したくてたまらない奴らの住処よ」
12
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:11:31 ID:5JotI9w60
数分して、ジョルジュがドアを開けた。
('、`*川「ごゆっくり」
なにが嬉しいのか、機嫌よさそうに女が部屋を出て行く。
_
( ゚∀゚)「……」
ジョルジュは、フィレンクトに繋がれている拘束を一本づつ外していく。ようやくフィレンクトは身体を起こすことができた。向かい合おうとするとがちゃん、と引っ張られる。ベッドの手すりに、手錠で片腕を括られていた。フィレンクトは座ったまま男の言葉を待つ。ジョルジュはしばらくフィレンクトを前に長考して、重そうに口を開いた。
_
( ゚∀゚)「陥れようなんざ考えるな。知っていることはすべて話せ。いいな?」
(‘_L’)「はい」
13
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:11:59 ID:ygYtUwqw0
見てるよ
14
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:12:48 ID:5JotI9w60
ジョルジュはフィレンクトの主人の過去や、彼の行っていた事業、関わる者たちを聞いた。フィレンクトはすべてに答えた。けれど彼の知っているものなど微々たるもので、ジョルジュの期待していたものではない。フィレンクトは仕事の時に写真を見て覚え、記憶だけを頼りに 人物を探し出して始末する。それは膨大な記憶量になるため主人からよけいなことは忘れるようにと命令されていた。した、ことはうっすら覚えていても、日時や誰かなどとうに忘れている。
「いままで殺した奴らを覚えているか」
「いいえ」
ジョルジュはフィレンクトを殴りつけた。
渾身の力を込めたのに身体は揺らいだだけだ。
_
( ゚∀゚)「……」
(‘_L’)「……」
_
( ゚∀゚)「……なんで死のうとした?都合の悪い真実でも隠すためか?」
15
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:13:37 ID:5JotI9w60
それはジョルジュの最も聞きたかった疑問だった。後始末をするなら、彼が死ぬよりもジョルジュが死ぬほうが早い。あの戦闘で人間離れした実力を知っていた。フィレンクトの行動が理解できなかったし、気味が悪かった。冷徹な殺し屋が、目の前で頭を吹っ飛ばしたのだ。奇跡、ほんの 少し銃口がずれていたらこの世には居られなかった。
(‘_L’)「……あぁ」
思い出したように呟いた。表情のなかった顔が少しだけ不思議そうに、ジョルジュを見る。年齢に釣り合わないあどけなさだった。
「あなたが言ったから」
16
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:14:45 ID:5JotI9w60
('、`*川「殺さないの?」
フィレンクトの部屋を後にしたジョルジュに、ペニサスはそう声をかけた。
_
( ゚∀゚)「……」
('、`*川「いま殺さないと、厄介になるよ。あいつ、耐性あるの」
_
( ゚∀゚)「……耐性?」
ペニサスは小さく笑った。やだ、聞かないでよ。あたしが言うのよ。
('、`*川「拷問の跡。訓練では済まないような耐性。殺すんならあたしにさせてね。うんと苦しめてあげる」
それでもジョルジュは 沈黙している。
彼の態度にじれて、ペニサスが煽った。
('、`*川「アンタだって、いもうと殺されたじゃない」
ジョルジュはペニサスを睨む。彼女を無視して、歩みを続けた。方向はフィレンクトの部屋とは間逆で、ペニサスが怒鳴ったが気にとめないフリをした。その方が彼女を苛立たせられる。
17
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:16:29 ID:5JotI9w60
フィレンクトは気持ちの悪い男だった。
その存在は半ば伝説じみていて恐れられている。あの男に挑んだものはすべて消され、ターゲットにされたものは上手に事故死した。喉の奥から笑いがでてくる。
苦かった。あれほどジョルジュが望み追いかけた悪鬼は、見捨てられた子犬ような眼をしている。
なぜあのような行動にでたのか、問いつめると命令がなかったから。そう言った。ジョルジュの乱暴な言葉が命令系だった。
それだけだ。混乱したフィレンクトはすがるようにその指示を全うした。
実に狂っている。ジョルジュは病室でフィレンクトを試した。本当に彼はそのような価値観を持っているのか。ボスを崇拝するあまりの後追い自殺ではないのか。
フィレンクト自身の持っていた銃を渡して、もう一度死ねと言った。彼は恭しくそれを受け取り、しっかりと口にくわえ込んだ。一度失敗しているので、確実な方法でやり直す。迷うことなく引き金をひいた。
通常なら声帯から弾丸が通って頭蓋にまで貫通し間違いなく死んだだろう。銃には弾が入ってなかった。カチ、カチ、と音がして、すまなさそうにフィレンクトが言う。
(‘_L’)「弾丸が入っていないようです。弾をもらえますか?」
18
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:18:14 ID:5JotI9w60
慈悲心を持ったわけでも、哀れんだわけでもない。あの男は間違いなく、己の敵だ。
復讐を忘れてなかったはずだが、ジョルジュはフィレンクトの存在をもて余している。
この世の常識を身につけ、傲慢であれば十分だった。仲間たちの多くは痛めつけて生まれてきたことを後悔されるようなやり方で処刑することを望む。
それは憎む相手の、残忍な手口に対しての報復だからだ。フィレンクトは非道だが残忍ではない。冷徹だが汚くない。見本のようにきれいな殺しかたをする。だから彼に見合うのは絶対の死。どれほど魅力的な情報と交換してもそれを変えるつもりはない。なのに彼 自身が、それに恐怖していない。
どちらかといえば、死ぬことよりも放っておく事の方が不安そうに見える。事実、敵(フィレンクト不安から主人に近く認識しているがジョルジュにそのつもりはない)から受け取った銃で死のうとした。怯え、懇願しなければ裁いたことにはならず、溜飲も下がらない。
さきほどのペニサスの言葉で痛めつける案も立ち消えた。殺してくれと頼むほどの拷問は、時間がくれば死んでしまう。フィレンクトには、死は主人が下す命令の一つにすぎないのだった。
_
( ゚∀゚)「奴は凶器だ……」
問題はどのようにしてそれを裁くべきか
19
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:30:56 ID:5JotI9w60
数日がすぎた。相変わらずフィレンクトの様子を見に来るのはあの女だけで、ジョルジュは姿を見せなかった。ペニサスはことあるごとにこれから先の捕虜への暗い未来を語ったがフィレンクトは動じない。それを決定するのはジョルジュで、すでに彼は死を命じられている。だが道具がなかった。
弾の入った銃を引いた時点で、もういいとも言われている。もっと何か言うべきことはなかっただろうか。主人の命は終わった仕事はすみやかに忘れること。今まで気にしたことがなかったので覚えていることが少ない。ジョルジュは自分を使ってくれるだろうか。時々他人と組むこともあって賛辞されることは多々ある。彼は自分の主人ではない。
主人を殺した。けれどフィレンクトは何の命令も持たされなかった。その後どうすればいいのか自分で判断できない。誰に従うべきなのか。ジョルジュの訪れが待ち遠しかった。もう一度命じてほしい。
今度こそ、上手に死んでみせるから。
20
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:32:13 ID:5JotI9w60
突然ノックされることもなく、ドアが開かれた。見知らぬ男。男はフィレンクトの側にくると、手錠を外した。
(‘_L’)「……」
(´・_ゝ・`)「……」
男はフィレンクトの腕を強く掴むと、強引に部屋の外へ連れ出す。少し迷ったが、鍵は本来ジョルジュが持つものだろう。彼の許可のうえだと思い、ついて行く。
ねじれた階段を上って、ついた先は屋上だった。建物はいくつも後から継ぎ足される形で増築されている。フィレンクトのいた部屋はおもしろい外観の建物だった。
それでここが市街地だとわかる。スラム化の一歩手前。フィレンクトでさえ入るには案内人が必要だった。
「おまえ死に損なったんだって?」
男は下をのぞき込みなが言う。フィレンクトも下を見た。工事現場だと思ったが、
手入れされた地面、墓石。墓地だった。
(´・_ゝ・`)「ジョルジュが助けたなんて思ってないよな?あいつはとことんおまえを恨んでるんだから。……俺もな」
(‘_L’)「……」
21
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:33:15 ID:5JotI9w60
フィレンクトは何も言うことはない。雑談するような能力は持ってない。ジョークのひとつも知らなかった。それでもなぜ男がここに連れてきたかを察する。
(´・_ゝ・`)「俺の手で殺せるなんて……神に感謝するぜ……なぁ悪魔、いつもなにを考え て殺すんだ?俺は早く天国にいくよう祈ってる」
男はお世辞にも体格がいいとは思えなかった。歩き方から、体術にも通じているようには思えない。軸のぶれた歩幅。だからフィレンクトは殺意は感じ取っていても、警戒はしていなかった。余裕たっぷりに、男が笑う。銃を取り出した。まるでこの世のすべてがそれにひざまずくように、優越の眼でフィレンクトを見る。
焦点をあてるふりをして、腕、肩、足、頭にふらふらと銃口をむける。男はフィレンクトの、絶望する姿が見たいのだ。殺してしまってはいけないのだろうな。まだジョルジュは命令していない。ならフィレンクトは独断を許されない。長年の染み着いた考えだった。この男は恐らくジョルジュの部下。本来ならば自分に向けられる銃は殲滅しなければならない。だが今の状況で、男を殺すのはためらわれた。保身のためではない。主人の気に障ることをしてはいけない。考えるフィレンクトは反応がなく、男が怒鳴った。
22
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:34:25 ID:5JotI9w60
「さっさと命乞いしろよ。いまなら頭にぶち込んでやってもいいんだぞ。それとも先にそっちに突っ込むか?」
銃口が、フィレンクトの股間に向けられる。男として、背筋が凍るほど恐ろしい瞬間のはずだった。
(‘_L’)「困ります。あの人の、命令がないので」
フィレンクトが動いた。だが階段にも、男の側に近寄るわけでもない。男は背を向けるフィレンクトの足下に威嚇射撃をした。弾が数センチ横のコンクリートにめり込む。
「おい……ふざけるなよ。ほんとに撃つぞ」
それでもフィレンクトは止まらなかった。
囲むような壁はない。銃口をようやくフィレンクトの背中にむける。男は、歩みは一度止まると思った。数歩先は落下しかない。振り向いて、戸惑う姿に連射してやろうと。だがフィレンクトは屋根を踏むように空に足を落とした。支えを失って、彼の身体は簡単に地面に落ちていく。
(´・_ゝ・`)「ハハハ……地獄に落ちろ」
23
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 04:39:06 ID:5JotI9w60
一旦ここまで
>>5
の前に
_
(; ゚∀゚)「んな!」
それなのにフィレンクトは向かってくるナイフを靴のかかとで受け止めた。先ほどから足技がすばらしい。感嘆するまもなく、ナイフはジョルジュに跳ね返ってくる。
が入ります
24
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 08:06:32 ID:D8ZVCz220
乙
面白そうだけど改行入れてくれ
25
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 12:22:35 ID:.LZph7Gk0
乙続き楽しみ
26
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 15:06:32 ID:h.pgp0HE0
いいねいいね。フィレンクトらしいストーリー。
応援してる。
27
:
名も無きAAのようです
:2014/06/19(木) 12:20:40 ID:ituE3gmY0
これほんとにオリジナル?
28
:
名も無きAAのようです
:2014/06/20(金) 07:12:29 ID:qEjEnUIs0
面白そうだな
29
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:42:37 ID:r.1uBdXk0
_
( ゚∀゚)「ここだ」
古い木造の建物だった。階段をあがってすぐの部屋。何も言わずに立っていると、開けるように促される。手の中の鍵が重く感じた。自分で鍵を開けるのは初めてだ。
何もないワンルームを想像していたが、室内は物が溢れている。テーブル、椅子、生活雑貨、テレビ、ソファ。玄関には山積みになった古新聞。観葉植物が黄色くなって放置されている。思わず隣のジョルジュを伺った。
今まで与えられてきたのはホテルの一室のような空間ばかり。すでに誰かが住んでいる場所へ、どうして連れてこられたのかわからない。カーテンを開けると太陽が部屋全体に差した。
埃が人の移動で所どころに舞っている。
珍しいもののように、フィレンクトは見ていた。
30
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:43:59 ID:r.1uBdXk0
外観からは予想できないが、中は広い。扉で区切られた部屋がリビングに面して二つもある。そのうちの一つ、物置のようになっている場所をフィレンクトは貰った。
「そこらにあるものは好きに使え」
指定された部屋。細々とした物に囲まれ不思議な気分になる。雑多な所だが、けして汚いわけじゃない。ただ物が、まるで組み合わせられたように隙間無く置かれているので、それがよかった。フィレンクトも、その一部になりたい。
病院とも呼べないようなあの場所から、土地勘を掴ませないために目隠しで車に乗って運ばれてきた。身一つで何も持たず、着ているものさえ貰ったものだ。手首には手錠はない。チップの入った首輪もない。
31
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:46:00 ID:r.1uBdXk0
チップの入った首輪もない。繋がられてい
ないと不安になる。それでもここに連れられてきた。きっと放り出されるわけではないはずだ。
積まれた荷物を前にしてそう考える。
フィレンクトの思考は一つしかない。
使われるか。捨てられるか。
「おい、手伝え。飯の支度だ」
ジョルジュの声が背中にかけられるまで、その場で考え続けた。
32
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:47:18 ID:r.1uBdXk0
敵に傷を与えてはいけない場合。戦闘になってはいけない場合。逃げることを先行する。
歩きながら距離と高さを計っていた。あの建物は背が低い。密集した建築で、隣の家との足場もある。走ってはとっさに撃たれる可能性があった。
ゆっくりと、追いつめられる所まで移動する。それから下を眺めて、落ちた。張り巡らされた電線がちょうど真下にあったので、蹴って方向を変える。
向かいのベランダの手すりまで飛んで、身体の勢いを利用し反転。電球の割れた街灯にしがみついた。するすると降りて、屋上の男が下を覗くまえに逃げた。
場所に恵まれていた。高層のビルだと、こうはいかない。捕らえられてから久しぶりに身体を動かした。すこしだけなまっている。
このままあの病室に戻ろうかと思ったのだが、街中には銃を持った自営団があちこちに居た。姿を見られたら、撃ってくるだろう。手配はされたことないが、フィレンクトの顔は知れ渡っている。
苦労して隠れながら、主人に貰った部屋に一度帰った。薄いパネルに手をかざす。認証で簡単に入れる。以外にも部屋は荒らされていなかった。
33
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:48:38 ID:r.1uBdXk0
主人が死に、フィレンクトが捕らえられて、誰も訪れていないようだ。
フィレンクトは主人からのメッセージを探した。死後、彼の縁者や後継者に従うような命令がないか期待していた。
だがフィレンクトに向けてのものは何もない。主人の死により、特定の誰かがフィレンクトを引き取るような話もなかった。
困った。これでは命令の順位は、ジョルジュただ一人になってしまう。彼は命令をくれないのに。ジョルジュはフィレンクトを捕虜として扱う。尋問くらいしか、与ええられるものがない。それ以外はずっと病室でぼんやりしている。
放置されるのには慣れていたが定期的に仕事がなければ困る。意識がさび付くのだ。思考は急に切り替えられない
長らく動けないでいる。
34
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:51:36 ID:r.1uBdXk0
すると、そのまま根が張り付いたように固まってしまう。与えられる仕事こそが、フィレンクトには飴だ。
たとえ内容がどんなものでも。
(‘_L’)「これは?」
_
( ゚∀゚) 「空豆だ」
かご一杯のさやのついた大きな豆。一つ一つを慣れた手つきでジョルジュは向いていく。みよう見まねでフィレンクトも同じようにしてみるが、どうしても手つきはたどたどしい。ジョルジュがふっと笑った。
「殺す方が上手だな」
返答を求められたのではない。だから何も答えなかった。
結局フィレンクトは戻る場所がここ以外になかった。主人の仲間には会ったことがない。常に直接、指示を下されていた。命令を下す人間が他にいないので、理想といえないジョルジュの元へ帰るしかなかった。
35
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 11:54:59 ID:r.1uBdXk0
ジョルジュは簡単にフィレンクトの帰還を許した。そもそも連れ出したのはフィレンクト憎しで殺そうとした男であり、手錠の鍵の管理も悪かった。
逃亡する能力も資金も十分にある男が、主人欲しさに帰ってくる。フィレンクトという存在に、ジョルジュは吐き気を催した。
沈黙は常にそばにある。だがフィレンクトが残念だったのはそれきり会話が途切れたことよりも作業が終わってしまうことだった。
(‘_L’)「他に、することはないのですか」
豆を向いてしまえば、それをジョルジュがもっていく。
「にんじんを刻んでくれ」
そう言って並べられた。ジョルジュは豆を洗っている。手にとって、戸惑った。包丁はある。皮むきもある。それをどのように使うのか予想してみるが、当たっているのかわからない。
てっきりジョルジュと同じことをするものと思っていた。会食でなんどかシェフが目の前でふるうのを見たことがあるが、それは下拵えでない。
材料も違った。包丁はナイフと同じ扱いでいいのだろうか。だが、形が違うから使い方も異なるはず。頭の中で次にとるべき行動を必死に探していると、ジョルジュがまた笑って人参の皮をむき始めた。
それから小さく切っていく。フィレンクトは安堵した。見せてもらえるなら同じことができる。次に渡されたタマネギを皮むきで向こうとして、とうとうジョルジュは爆笑した。真剣な顔つきで行うフィレンクトが滑稽で。
36
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 13:52:24 ID:r.1uBdXk0
('、`*川「感情って使わないと動かなくなるの。知ってた?」
勝手をした部下に厳しく処分を言いつけてジョルジュは不機嫌だった。彼の心配がフィレンクトによる返り討ちで、飛び降りた後も無事に生きていることを知った男はうなだれ、ジョルジュの言葉を聞き入れる。
('、`*川 「なんで殺さないのよ。まさかアンタ、飼うつもりじゃないでしょうね」
フィレンクトの願いそのものだったが、ジョルジュは首を降った。簡単に主人を鞍替えするものは、簡単に裏切る。今はフィレンクトの属性を理解するものが、ジョルジュ以外にいないだけだ。
('、`*川 「……もしも後悔とか、反省や償いを期待してるんなら無駄もいいとこよ。あれはそんなことできない」
_
( ゚∀゚)「そういえば……お前見ただけで拷問痕だとよくわかった な。ひどい怪我でもないのに」
「何か知ってるのか……?」
('、`*川「ちゃんと殺す?」
「生かしておくつもりはない」
本音を言った。ペニサスはジョルジュの眼をみて、その決意を確認する。
37
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 13:58:52 ID:r.1uBdXk0
('、`*川「引き出せるものなんてないでしょ。なのに自分のとこで面倒みるなんてどういうつもり?」
_
( ゚∀゚)「お前、簡単に殺したほうがいいと思うのか」
('、`*川「だって生きてたほうが困るじゃない。使えない大きな道具は処分しないといつ向かってこられるか分かんないわよ。今はまだいいけど、アンタに不満が集中したらどうすんの」
_
( ゚∀゚) 「信用があるうちは平気だ。でかい失態さえ犯さなけりゃな」
_
( ゚∀゚)「俺はあいつに絶望してから死んでほしい」
魚を食ったことがない者に、絶滅を告げて
も意味がないだろう。痛みを与えても、耐えることに意義を見つけるかもしれない。
使い捨ての鉄砲弾にしても、恐らく完璧にこなして帰ってくる。殺すだけなら簡単にできた。難しいのは、フィレンクトを心から後悔させること。罪の意識のないものに、道徳をとくつもりはない。必要に思われてから捨てる。そのあとに殺せばいい。
('、`*川 「無理だと思うけど」
_
( ゚∀゚) 「簡単に言うな。それでも人間だ。なんらかの心ぐらいはあるだろ」
「ないわよ」
「あんな人形に、意志なんてあるわけないじゃない」
そう、吐き捨てた。
38
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 14:06:42 ID:r.1uBdXk0
噂よ。噂。そもそもあんな異常者、訓練だけでそうなるわけじゃないって予想くらいつくでしょ。どう育てたら完全に依存する人間ができあがると思う?
白い部屋に閉じこめるの。くわしくは知らない。ただ閉じこめて、自我を完全に奪ってから人格を形成するの。さっき言ったでしょ。感情を持ち主にコントロールされるから、思考ひとつが命令に従うようになってるんだって。
都合のいい人形よ。ロボットのほうがまだかわいげがあるかもね。いくらでも設定を変えられるんだもの。とにかく染み着いた性格みたいなもんよ。
変えられるわけないじゃない。フォックスがどこからあれを手に入れたのか知らないけど、あれひとりでこの辺りをまとめられるほどのもんなんだから。人間の三大欲求も低いの。性欲なんてないんじゃない。
だいたいあんなもの作るなんてろくでもないわ。変な奴らに目をつけられるまえにさっさと処分したほうがいいわよ。
39
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 14:21:22 ID:r.1uBdXk0
('、`*川「何してんの」
芋の皮を向いていた。見てわかることなので説明はしない。ペニサスはゆっくりと手つきの悪いフィレンクトの手元をみて、
「ふうん」と呟くと
('、`*川 「何作るの?」そう聞き直す。
(‘_L’)「ポトフを」
朝食を作るのは難しい。食材を切って火に通して食器に盛りつける。調味料の数も多いうえに組み合わせが限られるので合わないと美味ではない。ジョルジュから教わったものはオーソドックスで簡単なものだ。好きなように作っていいと言われたがそれが難しいので教わったとおりの順番で献立を作っている。
('、`*川 「これから何するの」
(‘_L’)「洗濯と拭き掃除を」
ジョルジュがいない間、与えられたのはこれだけだった。どの部屋も好きに移動を許されている。
40
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 14:27:35 ID:r.1uBdXk0
時間を埋めるように作業するのはフィレンクトには喜びだった。だがペニサスはその答えを聞いて一気に機嫌を損ねる。
('、`*川 「あの部屋にも入っていいって?」
(‘_L’)「はい」
('、`*川 「なにそれ。本気で罪悪感でも煽るつもり……」
ペニサスはぎっときつく睨んで言った。フィレンクトに会話の脈絡も、彼女の怒りの理由も知らない。
('、`*川 「あそこはアンタなんかが入っちゃだめよ。あたしだって駄目なんだから」
その言葉を守るつもりはなかったが、
(‘_L’)「はい」
そう答えた。
ペニサスはジョルジュの家に移ってから、
これまで以上にフィレンクトの元に来る。
明確な理由はないようだ。家事をするフィレンクトのやり方などに口をだしては怒る。彼女が来ると時間を大きくとられる。それでもジョルジュの帰りは遅いので、
終わらせることはできた。
('、`*川 「トルティーヤ食べたい。作って。」
冷蔵庫の食材は限られている。だが彼女はジョルジュに近しいようだし、家に彼女が居ることをとがめられたことはなかった。何度も作ると勝手もわかるようになる。
食材の味しかしない料理だったが、最近は混ざった味というものもわかってきた。
(‘_L’)「どうぞ」
一口たべて、なんとも言えないような顔でペニサスが言う。
('、`*川「ジョルジュそっくり。」
褒められたのか、そうでなかったのか区別がつかないが、模倣はできたということだろう。
41
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 14:45:24 ID:r.1uBdXk0
('、`*川 「なにか話して。なんでもいいから」
食べながら彼女がいう。
フィレンクトが困惑するのはこういう時だ。すべての仕事終えて、することがないので逃げることもできない。
なんでもいいと言いながら、フィレンクトが一日の行動を言葉にすれば怒られる。彼女の求めるものがわからない。
(‘_L’)「何を話せばいいのでしょう」
('、`*川 「最近あったおもしろい話なんてどう?」
(‘_L’)「雑巾を縫いました……」
('、`*川 「なにそれ。ふざけてんの」
針を使って布を紡いでいくことを、好ましいと思った。初めてのことばかりで、慣れないものが多かったが、またやりたいと思のがそういうことだろう。だがフィレンクトの感動はペニサスに伝わらなかった。
('、`*川 「じゃ、フォックスについて聞かせて。覚えているものでいいから」
覚えている。主人のすべてを記憶していた。だが彼の行っていた陰謀は知らない。
フィレンクトが知ることではなかったからだ。
(‘_L’)「あの人に似ています」
('、`*川 「誰のこと?」
(‘_L’)「私を使ってくれない人」
('、`*川「……ジョルジュのこと?」
フィレンクトはうなずいた。
('、`*川 「……とんでもないこと言ってくれるじゃない。一体どこが似てんのよ」
(‘_L’)「話かけるところが」
('、`*川 「……アンタに?」
もういちど、フィレンクトはうなずいた。
ペニサスはあきれたがフィレンクトはそう思っている。
ジョルジュは主人のごとく振る舞うことはないが、家具のように存在しようとするフィレンクトに何度も話かける。
最初は一人言かと思ったが、まれに意見を求められるので会話だと気がついた。
主人にもそんな所があった。
これまでとはほとんど違う様子の新たな主人で、仕える期間も短かった。
42
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 14:58:46 ID:r.1uBdXk0
('、`*川 「主人を変えたのは何回目?」
(‘_L’)「5回です」
('、`*川 「ジョルジュは入ってる?」
(‘_L’)「……はい」
('、`*川 「すべての主人を覚えてる?」
その質問には首を降った。交代する時に、過去を忘れるように申しつけられる。次の主人へと渡ったときに、命令系統が混乱しないように。
フィレンクトを取り戻そうとした男を撃ったことがある。だがあれは主人だったろうか。記憶はぼやけている。顔も思い出せない。
('、`*川 「アンタ、どうしたい?」
すっかり食べ終わって、つまらなそうにペニサスが聞いた。その質問の意図が汲めないでいると、もう一度彼女が問いかける。
('、`*川 「アンタ、これからどうしたい?」
フィレンクトは答えられない。
希望することは選択できない。
与えられるものを、ただ受け取ることしかできない。
43
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 15:05:28 ID:r.1uBdXk0
オリジナルですが、似た元ネタあったらぜひ教えてください。
44
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 16:15:38 ID:r.1uBdXk0
ジョルジュが帰宅すると、フィレンクトを連れて外に出た。
車に乗り込み、道路を走り出す。
舗装されていない道を抜けて、高速へと乗り継いだ。フィレンクトは警戒した。
襲われるには絶好の場所だ。自分は今、武器を何も持っていない。防弾ベストも着ていない。
盾になることもうまくできないだろう。
だが警戒とはよそに、襲撃はなかった。車はビルの隙間を抜けて、建設途中の丘へとついた。夜景が広がっていて、夜空がかすむほど輝いている。
*鼹鼹鼹* _**
( ゚∀゚)「……向こうがフォックスと手を組んでいた企業の縄張りだ。金だけは腐るほどある。今じゃ行政だって口をだせない」
ジョルジュが示した先は覚えがある。
何度も足を運んだことがある地理だ。
それから対照的に暗い方向をまた指さす。
*鼹* _**
( ゚∀゚)「俺らがいるのがあっち。みろ。わかりやすいだろ。電気だって不足してる」
ぽつぽつと暗闇にわずかな明かりが見える。大部分が闇に消えていた。
中央に集まるように華やかなビルたち、
その周辺地域は暗く沈んでいる。
*鼹* _**
( ゚∀゚)「フォックスが企業にどう取り入ったのかしらんが、奴は俺らの壊滅を約束したらしい。邪魔者がいなくなれば開発が進められる。あいつもていよく使われたもんだ」
*鼹* _**
( ゚∀゚)「企業は俺らに居なくなってほしい。だがもともとこの土地は俺らのもんだ。後から違法に土地を譲れって無理いったのは向こうで、それに抵抗して抗争になった。」
*鼹* _**
( ゚∀゚)「……フォックスは頭を潰せばちりぢりになると思ったんだろう。主要な俺らの仲間を、次々に襲わせた。お前を使って」
ジョルジュは銃を取り出す。オートマチックをスライドさせて薬莢を装填した。
フィレンクトはじっと見ていた。安全装置を外す。引き金を引けば発射する状態で、口径も大きい。
それをフィレンクトの眉間に突きつけた。
暴発すれば頭の半分は吹き飛ぶ。
殺傷能力の十分期待できる。
45
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 16:17:25 ID:r.1uBdXk0
_**
( ゚∀゚)「…最近、はまってることってなんだ?」
突如話題を変えられた。
ジョルジュはペニサスのようなことを言う。
少し、考えて
(‘_L’)「植物に、水をやることです」
** ** _**
( ゚∀゚)「それはなんでだ?」
(‘_L’)「たぶん、変化することです」*鼹*
** ** _**
( ゚∀゚) 「何がだ」
「色が」
枯れかけた植物に水やりを、ペニサスから 教わった。そのままの状態しか知らなかったので、水の有無で日に日にみずみずしく変わっていく様には驚かされた。
*鼹* _**
( ゚∀゚)「いままで、したことはなかったのか?」
(‘_L’)「ありません」
ジョルジュの指先が、銃の重さでふるえる。フィレンクトはじっと、それを見つめる。
銃口が、額にくっついた。ジョルジュが引き金をひくその時まで、フィレンクトは目を閉じなかった。
** ** _**
( ゚∀゚)「楽しいかいまを」
*鼹* _**
( ゚∀゚)「楽しかったか?」
(‘_L’)「わかりません」
カチっと撃鉄の鳴る音がした。ジョルジュは疲れたように腕を引き上げる。再び銃弾は込められていないようだった。
わずかにフィレンクトは失望する。
役割を果たせないことが悔しい。
申しつけられば自分で、出来るのに。
*鼹* _**
( ゚∀゚)「…楽しくなったら、言ってくれ」
(‘_L’)「はい」
車はそのまま、夜を走り抜けた。
46
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 16:18:51 ID:r.1uBdXk0
眉毛ェ…
47
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 16:39:13 ID:7njgdo0w0
眉毛が煌めいてるけどジョルジュはかっこいい
48
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 20:05:32 ID:FOGvZVw60
面白い
49
:
名も無きAAのようです
:2014/06/22(日) 23:50:57 ID:8P.LF1V60
こういう話大好きです
50
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:20:18 ID:7IUNAGs60
辻馬車が舗装された道路を走る。振動はゆるやかとはいえないが、激しくもなかった。
街灯が至る所に設置され、人通りもにぎやかだ。
('、`*川「ばかばかしいったらありゃしないわ」
どれほど貧しくても技術は進歩している。
ガソリンとエンジンを搭載した車のほうがはるかに利便性は高い。
だがこの街は古代の特権階級を意識しているので、手間も時間もかかる方法を好んでいた。
('、`*川「金持ちの金持ちによる金持ちのための街ってね」
('、`*川「移動手段は気にくわないけど外観がいいのが嫌らしいわ」
中世へ様変わりしたような建築が多い。
行き交う人々の多くは富裕層だろう。
彼らは街と同じような装飾を身につけている。
('、`*川「こんなところでしか満足な買い物ができないのはしょうがないか」
51
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:26:18 ID:7IUNAGs60
作りかけの道路、工事現場、そこに住み着いているレジスタンス。
対比が見事なほど際だっている。
ジョルジュが言うように、統率する人員が皆消えてしまえば、集まった反対勢力もすぐにちりぢりになるに違いない。
フィレンクトは思い返す。
周辺地理は把握しているが、ロンドンを模したこの街に入ったことはない。
移ってすぐに、フォックスへ譲渡された。
('、`*川「服を買うわよ」
彼女の突飛な行動には黙って従ってきたが、この時は珍しく意見した。
(‘_L’)「必要がありません」
フィレンクトの所有する服は一着のみ。
それ以外はジョルジュと共有している。
背丈の似ている男二人。少しだけ細身のフィレンクトには十分借りられる。
('、`*川「胸張って言うことじ ゃないでしょ。何から何まで世話になっといて恥ずかしくないわけ?」
(‘_L’)「思いません」
ジョルジュからすべてを与えられる。
それがフィレンクトの主従観念だ。
明確な命令はもらえないが、習慣は変わっていないのでそれを守り続けている。
なにを疑うことがあるのか。
('、`*川「あのね、」
一息、吸い込んでペニサスが笑う。力強い怒声が来ることがわかったが、避けられない。
('、`*川「パンツだってお下がりなんて汚いことしてんじゃねぇよ!って話なの」
52
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:33:29 ID:7IUNAGs60
ジョルジュは簡単に許可を出した。
それどころかペニサスを護るようにとの指示さえある。
_
( ゚∀゚)「たぶん買い物だけじゃないはずだ。怪我させないようにしてくれ」
(‘_L’)「はい」
_
( ゚∀゚)「それと、」
_
( ゚∀゚)「あいつが何するのか、全部見てこい。いろいろ考えて、俺に教えろ」
(‘_L’)「はい」
ペニサスは看護婦でも娼婦でもない。
彼女は情報屋だ。ジョルジュに対する気安さから同士のように見えていたが、一時的に協力しているだけの関係だと話す。
それにしては周囲の彼女への信頼は厚いが、同じだけジョルジュが信用していることなのだろう。
フィレンクトさえも軽い用なら承る。
ペニサスの態度は露骨に変わるので見極めるのがとても難しい。
何度か“誘い”をかけられることもあった。
それに乗らなければ女として腹を立てる。乗ったとしても怒るだろうし、フィレンクトがジョルジュへ恭順な態度でいても不機嫌になる。
彼女が優しくなるのは二人のときだけで、
それでも伺うような目つきが警戒していた。フィレンクトはさらけ出すようなものは何もない。
けれどペニサスは探ろうとするのをやめない。不快にさせているのだと思っていた。
そんな彼女が世の中の好意にあたいする贈り物を、フィレンクトへする理解が難しい。
53
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:38:10 ID:7IUNAGs60
緑の絨毯が詰められた店だった。
シャンデリアが豪華に光を集めて中央に輝いている。形式から言えば並の店だ。
それでもここら一帯では上等の部類に入る。ドア・ボーイがガラスの回転ドアを開けた。ペニサスは堂々と中に入り、フィレンクトもそれに続く。
ペニサスは知識からの振る舞いだがフィレンクトは単純に慣れていた。それでも着ているものはお下がりなので、場の違和感が強い。
('、`*川「呆れた。アンタ、ジョルジュよりも高いくせに、股下が長いってどういう意味よ」
既製品でなく寸法を計ってのオーダー。
ひと昔まえなら出来上がりに三ヶ月はかかったが、ここでは半日で仕上がる。
('、`*川「こういう時間は短縮するんだから、ほんと訳分かんないところよね」
次に連れて行かれた先が美容室だった。
服ができあがるまで、身だしなみを仕上げるようだ。必要最低限のことしかやってこなかったが、隠れ家にいる間ほとんど外には出してもらえなかったので久しぶりに髪にを整えて貰う。
従者の恥は主人の恥。そういえば以前にも、主人に人形遊びのように衣装を着替えさせられたことがある。
執事の格好が似合うと褒められた。
忘れるようにと、まだ命令されていない。
だから思いだしたのかもしれない。
54
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:46:22 ID:7IUNAGs60
('、`*川「さ、エスコートなさい」
あつらえた服に袖を通す。ペニサスは大金を払っただろう。軽く、しとやかでデザインのわりに動きやすいスーツだった。
ただ体にぴったりとしているので、中から何もつけることができない。銃も忍ばせられない。それを計算したような出来だった。
ペニサスもドレスアップしている。化粧をしてきらびやかな姿だった。
フィレンクトは手をとって彼女を席へと連れていき、椅子をひく。紳士な対応は暗殺になくてはならないものだ。
ソムリエがワインをついで、それから料理が運ばれてくる。
特に厳しいマナーでもないが、雰囲気がそれを強要している店だった。
('、`*川「飲みなさいよ」
フィレンクトは口をつけた。主人の毒味もしたことがあるのですぐにわかる。
業務ボトルの味がした。
「バカみたいでしょ」
フィレンクトは何も言わない。表情にもださない。それでも内面を当てようとペニサスが言う。
('、`*川「こんなものありがたがって、真似しようとして、バカみたいでしょ。」
('、`*川「ここにいる奴らはね、中流層なの。本物を知らないから、アタシたちみたいなのをみて裕福だと思ってるわけ。
本物の金持ちにとっちゃいいカモよ。
これだけで納得させられるんだから」
('、`*川「与えられるものに不満がなくて、それが最上だと思ってる。疑わなくて、バカでとってもかわいい。アンタそっくり」
55
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:50:35 ID:7IUNAGs60
蔑むような目でペニサスが微笑んだ。
その時、フィレンクトは唐突に理解した。
彼女はフィレンクトを、ジョルジュに近づけたくないのだ。理由はわからない。
考察もできない。
けれど彼女の感情がきっとそうだ。
フィレンクトに対して、反発するものは常に居た。だが彼女は今まで一番わかりにくい。
(‘_L’)「何をするのですか」
ジョルジュの命令を優先する。
護ること。たとえ本人が嫌がっても。
(‘_L’)「私ができることはなんですか」
('、`*川「だからホイホイついてきたってわけ……?じゃ、アイツに筒抜けじゃないもう。そっか、だからアンタも来たんだ。あんなに渋ってたのに」
言われるほど抵抗していないが、フィレンクトがNOを出すのはほとんどない。
それにジョルジュの側を離れることは、いきなり主人を失ったフィレンクトにわずかな不安を抱かせた。
56
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 05:55:52 ID:7IUNAGs60
('、`*川「向こうのテーブル。」
視線だけで場所を教えると、ペニサスはバッグから小型のデータメモリをだした。
('、`*川「中身はべつに知る必要ないでしょ。アタシはこれからいい男にナンパされるの。それまで誰にも邪魔されないようにして」
ペニサスの指定したテーブルは予約されている。待ち合わせる相手がこれから来るらしい。ようやく、ふさわしい命令をもらえた。
ジョルジュ本人ではないが、ペニサスを護衛することが承けたものなのだから。
(‘_L’)「時間はありますか?」
('、`*川「あんまりないわね」
(‘_L’)「貴方ですか?」
('、`*川「両方」
(‘_L’)「ここのセキュリティは?」
('、`*川「七大企業のお膝元よ?バカでも天才でも、潜り込めたら苦労しないわ」
習慣の一部になっていたことは、身体はけして忘れない。
服を汚さないようにと命じられて、フィレンクトは階段をあがる。
景観のよい街並だが、そろって中世風の建築なため高い建物は限られる。一つは名物のために場所をとった城。
ライトをあてられ神々しく浮かび上がる城の側面。陰になっている暗闇の屋根のうえ。
レストランの対角線上に位置する場所。
足音を殺して屋根を上り、耳をすませる。
付近に人影は見あたらない。
道具は何一つなかった。それでも殺すだけなら可能だ。スナイパーの場合たいてい見張りがセットになっているが、フィレンクトが動いたのが直前なため、他に仲間は居なかった。
ふちに銃器をセットし、スコープを覗いている男が闇にとけ込んでいる。
57
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 06:01:02 ID:7IUNAGs60
道具がないため時間をかけることができない。情報を吐かせるのも難しいだろう。
男の口元には通信機があり、悲鳴をあげるだけで仲間に気取られる恐れがあった。
仕方なく、フィレンクトは気配を消して彼の背後に忍びよる。力を込めて男の首を捻った。体重をかけて思い切り骨をねじるとゴキッと鈍い振動が手に伝わる。
何も知らない男はそのまま死んだ。
少しだけ痙攣したが数分で硬直が始まる。フィレンクトは男の顔から暗視ゴーグルを外して自分につける。設置されたスコープは、窓から見えるペニサスを捕らえていた。
('、`*川
談笑している男の姿も見える。
( ^ν^)
暗殺用の口径の小さな銃だが、もう少し大きい
ものだったら一発で二人を殺せる。それほど彼らの距離を近い。
フィレンクトはその位置からレストラン方向を狙える場所を探した。恐らく三方向。
一人が外してもそれを補助する別のスナイパーがいるはずだ。ペニサスは両方が狙われている可能性を教えた。
ならば文字通り蜂の巣にされてもおかしくはない。思った通りばらけた場所にスナイパーが居た。通信器は沈黙している。
一斉射撃で逃げるまもなくしとめる計画だろう。銃にサイレンサーがついていてよかった。近場の敵も、静かに殺せる。
('、`*川「化け物」
髪を夜風に乱されて、帰ってきたフィレンクトに、デザートを食べながらペニサスが言った。目に見える変化はそれだけだった。
返答せずに席につく。背中に視線を感じていたが、振り向くことなく食事に手をつける。
58
:
名も無きAAのようです
:2014/06/26(木) 06:06:18 ID:7IUNAGs60
('、`*川「アンタが欲しいってさ。どうする?」
ペニサスの取引相手だった。受け渡しが終わったのに、まだその場にいる。フィレンクトの交渉をしたらしい。
('、`*川「「いい条件じゃない?ちゃんと使ってくれるってよ」
フィレンクトは沈黙している。その権限は彼にない。ジョルジュが命じるなら素直に受け入れるが。
('、`*川「何人いた?」
(‘_L’)「四人です」
('、`*川「あらら。けっこう本気で狙ってきたわね」
('、`*川「アタシが何をしてるか、知りたい?」
(‘_L’)「はい」
彼女の行動を、ジョルジュに報告せねばならない。内容は主人が判断することだ。
('、`*川「教えない」
にこにこと嬉しそうにいじわるされる。
彼女はフィレンクトがジョルジュのために動くことを、邪魔するのが好きだ。
(‘_L’)「そうですか」
('、`*川「もっとねだりなさいよ。口説くみたいに。そしたら教えたげる」
そう言われるが、どのようにしてもペニサスは口を割らないだろう。
代わりに嘘も言わない。それを悟ったのでフィレンクトは何も言わなかった。
59
:
名も無きAAのようです
:2014/06/27(金) 02:22:55 ID:TIjqCXDI0
しえん
60
:
名も無きAAのようです
:2014/08/18(月) 21:28:10 ID:RDT23Eiw0
支援
61
:
名も無きAAのようです
:2014/08/26(火) 16:28:10 ID:ytzCl5C20
待っておるよ
62
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:02:11 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「似合ってるな」
元々薄い顔立ちで、さらに表情豊かでもない。仕事着としてスーツしか着てこなかった。その評価は妥当なものだろう。
フィレンクトは今日のできごとを報告する。一からすべて。ペニサスとの会話。
店員の様子、取引の相手、暗殺の男たち。さすがにオーダーメイドのくだりになると苦笑した。
63
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:02:53 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「つけられた?」
(‘_L’)「いいえ監視です」
_
( ゚∀゚)「どう違う」
*鼹鼹鼹*
(‘_L’)「我々の居場所よりも行き先が目的です」
辻馬車の利点は窓が大きく通りを一面みることができた。移動手段はすべて馬車のため、待機の間は車と違って人が居ることは少ない。
排気ガスの心配がないため窓にガラスはなく、冷気も入れられないので走らせないと中は蒸して暑い。
行きも帰りも、同じ馬車が同じ場所で人を入れたまま居るのはかなり不自然だ。
64
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:03:39 ID:S4N5dkbU0
誰かを待つなら、近くの喫茶に入ったほうがいい。以上の推論からフィレンクトは何者かによる監視だと報告する。
ペニサスかフィレンクトか。
どちらが目的かはわからないが。
*鼹鼹鼹* _
( ゚∀゚)「恐ろしいな……」
先行きの不安よりも、目の前の淡々とした男は食事中に人を殺して、帰りに怪しげな馬車を見抜いてしまう。
その能力の高さが何より恐ろしい。
今更ながらジョルジュは幸運だった。
フィレンクトに主人がいたまま相対していたら、いまごろ簡単に死体となっている。
65
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:04:23 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「ペニサスを狙った相手の目的はなんだ?」
(‘_L’)「わかりません」
教えてもらえなかったし、情報を引き出すには手段も道具も足りなかった。
_
( ゚∀゚)「しょうがない。あいつにもあいつの思惑があるだろうしな」
66
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:05:08 ID:S4N5dkbU0
一つだけジョルジュに話していないことがある。
67
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:05:54 ID:S4N5dkbU0
('、`*川「それ、高かったんだから。ちゃんと着なさいよね」
ペニサスにそう言われたが、このスーツはフォーマルなもので、着る場所は限られる。前の主人たちならばいくらでも場を作れたが、今の状態では機会は恵まれないだろう。
下着とスーツ一着。あれほどジョルジュと共有することに嫌悪をみせたペニサスだったがフィレンクトに与えたのはこれだけだった。
('、`*川「必要ないんでしょ」
酒に酔って頬に赤みがさす。いつもなら表情がころころと変わる女だったが、その時は表情をなくしていた。
68
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:06:41 ID:S4N5dkbU0
('、`*川「アンタはジョルジュより先に死ななきゃ駄目よ?それが嬉しいんでしょ?仕事になるんでしょ?弾よけでいい。できるだけ頑丈になりなさい。」
('、`*川「少しだけ同情されてるだけ。あいつこそバカだから。八虫類に恐怖を教えたいだけなの。わかった?」
('、`*川「これから死ぬ人間に、多くは要らないの。アタシからのプレゼント。できたら血塗れにしてね。生地に栄えるわ」
('、`*川「あいつきっと怒るわね。口だしするなって。バカなのよ。バカなんだから、仕方ないじゃない」
69
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:07:23 ID:S4N5dkbU0
フィレンクトは悩んだが、結果ジョルジュに伝えなかった。一つにペニサスの感情、思考がジョルジュを害するものでも邪魔するものでもなかったからだ。
以前にも、主人の陰口を聞いたことがあったが聞かれるまで告げなかった。
もう一つに、主人とても近しい交友関係の場合決定的な裏切りが見つからないかぎり愚痴は見逃すことになっている。
たわいない文句も、第三者からの口で聞くと別の意味に聞こえてくるからだ。フィレンクトはそれを考えてやめた。
ペニサスは忠誠に似ている感情をジョルジュに抱いている。それで十分だった。
70
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:08:59 ID:S4N5dkbU0
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71
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:10:01 ID:S4N5dkbU0
爪'ー`)y「何が食いたい?」
何でも。と答えると不機嫌になるので、彼の好きなものを答える。
爪'ー`)y「肉と魚、野菜。この三つが全部で理想だ。おまえいい加減自分の好みを覚えろ。」
連れられていくのは高級な店ばかりだった。彼は自分に惜しみなく与える。
72
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:10:45 ID:S4N5dkbU0
服も、食事も、部屋も、武器も。必要な時以外は置物としてしか動かない自分に、際限なく話かける。
食事もレーションがあればそのほうが効率がいいのだが、せっかくマナーを知っているのだからと隣に座らせた。
爪'ー`)y「成り上がりに必要なのは品格なんだと」
用意される事情通の店でなく、一般の高級会員向けに通うことを好んでいた。
ためされることで、彼はスキルを学んでいる。
73
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:11:29 ID:S4N5dkbU0
爪'ー`)y「なにもかも終わったらお前を返さなきゃならん」
契約は急だった。
ある日突然彼の元に送られた。七つのビルに、海を渡って。
爪'ー`)y「そら、うまいか?」
レア・ステーキ。些細な火加減で味が微妙に変化する。だが自分には成分はわかっても、旨みがよくわからない。ビタミン・ミネラル・亜鉛。脂質の高いほうが、美味とされる。
74
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:12:17 ID:S4N5dkbU0
爪'ー`)y「お前は銃だ。オールマイティ。
使い方さえ知っていれば、誰にでも扱える」
肉の味。付け合わせのポテト。それから芳醇なワイン。
爪'ー`)y「だがもし銃に意志があったら。
お前がそのままに意志があったら。」
彼の話はいつも難しい。呼吸することと同じようにしか、自分は動けない。
彼が望むことならすべて従う。けれど、それは彼が欲しいものではないようだ。
爪'ー`)y「せめて嘘のつきかたくらいは覚えろ」
その命令に、はいと答えた。
75
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:13:05 ID:S4N5dkbU0
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76
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:14:01 ID:S4N5dkbU0
目が覚める。
規則正しく、いつもと同じ時間。
記憶の反復。夢ではない。過去だ。
前主人との会話。結局何をさせたいのか、わからないままに終わってしまった。
着替えて、朝の日課を行う。窓をあけて風を入れ、掃いてから雑巾でほこりをぬぐう。
77
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:14:48 ID:S4N5dkbU0
着替えて、朝の日課を行う。窓をあけて風を入れ、掃いてから雑巾でほこりをぬぐう。
ジョルジュからは相変わらず仕事の命令をもらえない。
ペニサスとの事を思い出す。
少数だが片づけた。フィレンクトは役にたったろうか。
ジョルジュはなにもかも主人たちと違う。
殺しを命じてくれない。物のように扱ってくれない。放置することもない。
彼のおかげで困惑することが増えた。考えることは苦手だ。それは主人の仕事だった。
78
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:15:31 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「手伝え」
キッチンに行くと珍しくジョルジュが起きていた。着てるものの様子から、寝ていないようだ。
階段を降りて、持たされた荷物を運ぶ。
塀の外に、組まれた木があって中に炭が燃えている。それにあふれるほど家にあった雑貨をつぎつぎ投げ込んだ。
79
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:16:14 ID:S4N5dkbU0
小さなぬいぐるみ。リボンの花。目覚まし時計。キノコの電球。編まれたショール。小説。女物の靴。ヘアバンド。
生活する上で必要なものも、かまわず燃やしていく。塩化ビニールが、黒煙をだした。カラフルな彩りは、焦げて色を失っていく。
炎がひときわ大きく燃えあがった。わずかにガソリンの匂いがする。
80
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:17:11 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「お前生まれはどこだ」
(‘_L’)「わかりません」
_
( ゚∀゚)「家族は?」
(‘_L’)「わかりません」
カチカチ。ジョルジュはシリンダーをいじっている。彼の癖なのかもしれない。
みたことがあった。ライナスの毛布。
無自覚の、精神の安定。
81
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:17:54 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「自分が可哀相だと思ったことは」
(‘_L’)「わかりません」
ジョルジュは苛立っている。まるでゾウに噛みついたアリのような抵抗しかなかったが、それも滞っていた。
フィレンクトに仲間を殺されたことで勢力は大きく低下している。
82
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:18:37 ID:S4N5dkbU0
開発の遅れを嫌って交渉に入っていた企業も、自滅を狙って手を引いてきた。
ほとんど詰んでしまった状態で、仕事を貰って傘下に入ってしまえという声もでている。
ジョルジュは起死回生を待っているわけではなかった。死と引き替えに手痛い攻撃をしかけて、妹の仇をとれればそれでよかった。
このまま膠着が続ければ資金も底をつき、それを埋めるためにさらなる犯罪を起こさなければならない。
仲間を養う立場の彼は、それを憂いている。
83
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:19:21 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「…あいつがいるから、後のことは心配してなかったんだ」
あの日、フォックスを殺した日。
死んでもいいと思っていた。
担当がいなくなれば開発に時間をとられ、
地味な嫌がらせと敵討ち。
命令をしたものと手を下したもの。この手で殺すと決めていた。
84
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:20:04 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「お前が死ぬのが簡単なのが悪い」
(‘_L’)「申し訳ございません」
復讐するのに手ごたえがなさすぎた。
「なあ、俺の事、どう思う」
(‘_L’)「……」
主人の評価はフィレンクトがすることではない。それでもジョルジュが苦しそうなので、フィレンクトは考えた。しばらく考えて、
85
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:20:46 ID:S4N5dkbU0
(‘_L’) 「わかりません」
それしか答えられない。
86
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:21:55 ID:S4N5dkbU0
_
( ゚∀゚)「俺はお前を許せない」
(‘_L’)「はい」
_
( ゚∀゚)「でも迷ってる」
(‘_L’)「はい」
_
( ゚∀゚)「……もう一人殺したい奴がいる。その時まで、働いてくれ」
(‘_L’)「はい」
ジョルジュが黒い炎で煙草に火をつけた。最初の煙を堪能してからフィレンクトにわたす。
生まれてはじめての煙草の味、上手に吸えなくて、しばらくむせた。
87
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 18:24:43 ID:S4N5dkbU0
しばらく書き込める状態じゃありませんでした。見ててくださった人たちありがとう!
88
:
名も無きAAのようです
:2014/10/04(土) 19:13:50 ID:BSJxuORc0
見てます!!乙でした!!
89
:
名も無きAAのようです
:2014/10/05(日) 01:50:12 ID:HDUtD6nM0
来ていたとは!乙です 続きも待ってます
90
:
名も無きAAのようです
:2014/10/05(日) 07:29:06 ID:a5eyF7jk0
待ってた!ありがとう!乙!
91
:
名も無きAAのようです
:2014/10/05(日) 11:38:36 ID:5nU2oR1E0
乙
92
:
名も無きAAのようです
:2014/10/05(日) 13:48:22 ID:bCsv2Otw0
いい雰囲気だな。
93
:
名も無きAAのようです
:2014/10/05(日) 14:02:59 ID:.CpxSjvc0
乙!とても好きだ!続きを渇望して待つ!
94
:
名も無きAAのようです
:2014/10/06(月) 13:56:59 ID:hZ3SYm9c0
乙
しんしんと静かな雰囲気がいい
だんだん話が動きそうで期待
地の文好きだわ
95
:
名も無きAAのようです
:2014/10/08(水) 04:44:46 ID:y9lJb8uA0
( ^ν^)「仕掛けるのか?」
_
( ゚∀゚)「ああ」
( ^ν^)「……勝てると思うのか?」
_
( ゚∀゚)「そんなわけない」
( ^ν^)「じゃあなんで」
96
:
名も無きAAのようです
:2014/10/08(水) 04:45:34 ID:y9lJb8uA0
_
( ゚∀゚)「いろいろだ。考えた結果これが一番いいと思う」
( ^ν^ )「……気負いすぎだ。おまえは責任を負いたがる。一度捨ててみたらどうだ」
_
( ゚∀゚)「……ハハッ……無理な相談だ」
(‘_L’)
( ^ν^)「…………」
( ^ν^)「……おい、どういうことだ」
( ^ν^)「なんでこいつがいる」
97
:
名も無きAAのようです
:2014/10/08(水) 04:46:27 ID:y9lJb8uA0
_
( ゚∀゚)「言ったろ?」
「戦争だ。歯止めはない」
カチリ。トリガーをセット。
いつでも発射可能。フィレンクトはジョルジュの隣の頭に銃口を当てた。ひやりとした鉄の感触に、男が身を凍らせる。
98
:
名も無きAAのようです
:2014/10/08(水) 04:47:15 ID:y9lJb8uA0
( ^ν^)「……あの女か」
_
( ゚∀゚)「いいや。ペニサスは何も言ってない。引き際がうまい奴だ。そもそも、」
_
( ゚∀゚)「おまえ、あいつとは別人だろ?」
( ^ν^)「…………」
_
( ゚∀゚)「お喋りが上手じゃないな。ここで黙秘は認めたようなもんだぞ」
99
:
名も無きAAのようです
:2014/10/08(水) 04:47:57 ID:y9lJb8uA0
( ^ν^)「…………」
_
( ゚∀゚)「……わからないのは、交渉が決裂した後もおまえが留まった理由だよ。もうこちらには引き出せるものなんてないはずだ。」
( ^ν^)「…………」
_
( ゚∀゚)「狙いは何だった?こっちは大幅に人が減って工作は必要ないくらいだ。これだけ近くにいて俺を殺さなかった理由は?」
脅しは必要ない。ジョルジュの合図でいつでも殺せる。銃を構えた腕のまま、フィレンクトは動かない。
100
:
名も無きAAのようです
:2014/10/08(水) 04:48:40 ID:y9lJb8uA0
( ^ν^)「…………守るためだ」
_
( ゚∀゚)「何を……?」
( ^ν^)「おまえを守るためだジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「笑えないな」
( ^ν^)「真実だ」
_
( ゚∀゚)「なんのために?」
( ^ν^)「決まってるだろう」
( ^ν^)「おまえが死んだら、誰があのクズどもをまとめるんだ」
_
( ゚∀゚)「……」
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