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( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

1名も無きAAのようです:2012/08/19(日) 14:18:50 ID:HrtL28j.0

('A`) 何もない会場
    いるのはオレ一人……。


('A`) 百物語が中々の盛り上がりを見せたのはいいが、
    会場が埋まってしまいそうになったからな。


('A`)+ 夜しか登場できない幽霊ブーンに代わって、
     このスーパーイケメンドクオが新しい場を開くしかないな!


('A`) と、新しい会場を借りてきたぞ。
    幽霊ブーンには……まあ、向こうの会場に案内でも貼っておけばいいだろう


('A`) おっと。こっちにもちゃんと貼らないとな




http://nullpo.vip2ch.com/ga0912.png


('A`) うん。オレの貼り付けテクも中々だ

157名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:05:41 ID:iRUeS2nI0

ふいんきを盛り上げる為に部屋の灯りを消し、ノートパソコンを開いて、適当な怪談系のサイトを探す。
表示された検索結果の中から適当に、心霊写真をメインとしたサイトを開いた。
上下にずらりと並ぶ『心霊写真』。赤文字を基調にしたなかなかに凝ったサイト装丁がまた、真っ暗な部屋と相まって恐怖感を煽るのに一役買っている。
画面をスクロールして、順番に写真と説明文を読んでいく。

从 ゚∀从「それにしても面白いもんだ。この科学万能のご時世でも、この手の心霊写真ってもんは無くならないんだからな」


21世紀に入り、フィルムを使った従来の写真機に替わってCCDなどの映像素子を使用したデジタル式のものが広く普及するに当たり、いわゆる『心霊写真』は消えてゆくかに思われた。

フィルム送りのミスによる多重露出がなくなったこと、受光部がフィルムカメラよりコンパクトなためレンズフレアやゴースト(レンズフレアの一種で光の輪や玉のように見えるもの)等の暗室内面反射が減ったこと、レンズがコンピュータ設計され精度が格段に向上していること、オートフォーカスによりピンぼけなど発生しにくくなったこと、自動露出の高度なプログラム化により光量不足がなくなったこと。
これらの写真技術のハイテク化が、前述の「偶発的な『ミス』が原因の心霊写真」を駆逐していったのだ。

しかし逆に、高性能なパソコンの普及とPhotoshopやGIMPといったフォトレタッチソフトの高性能化によって一般個人でも比較的簡単に写真を加工できるようになった。
そのため、もう一方の「トリック心霊写真」の量は増えているようだ。

結局世に出回る『心霊写真』の総量に、そう変わりはないように見える。


从 ゚∀从「需要と供給、って奴かね。案外、科学技術とオカルトは相性が良いのかも知んねーな」

宗教と同じように、いくら科学が発達して技術が進歩しても人間がスピリチュアルな物を心の何処かで信じ、求め続ける限りは、こういったオカルティックな物もまた無くならないのかも知れない。

適当なことを呟き、再び意識をサイト上の写真に集中させる。

158名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:07:37 ID:iRUeS2nI0

从 ゚∀从「ん……ああ、もうこんな時間か」

サイトに並んだ心霊写真に一通り目を通し終えると、かつて「丑三つ時」などと呼ばれた時刻になっていた。
その時刻を確認するのがコンピュータの画面であるあたり、やや風情に欠けるが。

从 ゚∀从「ちったぁ暑さもマシな気分になったし、そろそろ寝直しますかね」

パソコンをシャットダウンさせようと、マウスを滑らせてカーソルを移動させる。

从 ゚∀从(結構怖いのもあったな。夢にでも出てこなきゃいいけど)

そんな事を考えていたその時、

从 ゚∀从「……ん? 何だこりゃ」

動かしていたマウスカーソルが一瞬、普段の矢印から手のマークに変わった。
カーソルを戻してみると、どうやらサイトの片隅に小さく隠しリンクが貼ってあるようだ。

从 ゚∀从「隠しページか? 何でわざわざこんな……」

リンクをクリックする。

やや間を置いて表示されたページは、先程までの凝った装丁とは違って簡素なものだった。
黒地に白の文字で、中央にただ一文のみが書いてある。


「世界で最初の『心霊写真』」


.

159名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:09:38 ID:iRUeS2nI0

从 ゚∀从「世界で最初の『心霊写真』……?」

なかなかに興味をそそられる内容だ。

白文字にカーソルを合わせると、アンダーラインが表示された。
この文がその「心霊写真」とやらの入り口で間違いなさそうだ。

从 ゚∀从「はてさて、どんな写真なのかね〜?」

ここまで手の込んだことをするのだから、さぞかし興味深い一枚なのだろう。

期待に胸膨らませ、文字列をクリックする。


从 ゚∀从「…………んん? 何だこりゃ」

切り替わった画面に表示されたのは、ただ真っ黒な画像。
ちょうど真ん中あたりにコイン程度のサイズの白みがかった丸い円があるだけの、黒い画面だった。

从 ゚∀从「何だこりゃ。これが『世界で最初の心霊写真』?」

期待を裏切られ、ハインは軽く落胆した。
あれだけもったいぶっておいて、出してきたのはこんな意味不明の画像か?

160名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:11:16 ID:iRUeS2nI0

从 ゚∀从「……ま、ネットなんざ所詮こんなもんだよな。さーとっとと寝よ寝よ……」

そう言って改めてパソコンの電源を落とそうとして、気付く。

終了させるためのメニューボタンが無くなっていることに。

いや、それだけではない。下部のバーそのものや、マウスカーソルすら画面上から消えていた。
真っ黒な画面にあるのは、小さな白い円だけだ。

从;゚∀从「え? あたし全画面表示とかにしたっけ……」

マウスを動かしたりキーボードのキーを叩いてみたりしたが、なんら反応は無い。
強制終了さえも受け付けず、画面にはずっと意味不明の画像が表示されたまま。

从;゚∀从「フリーズか? これブラクラかよ、ちく――」

ブツブツと言いつつ、何とはなしに体ごと後ろに向き直り、そして目を疑った。

161名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:11:33 ID:SodIsl22O
嫌な予感しかしない

162名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:12:48 ID:iRUeS2nI0


振り返ったそこは、自分の部屋ではなかった。

ベッドやスチールラック、本棚などの家具が全て消えていた。

いや、それだけではない。

入り口や窓すら無くなっている。

あるのは、壁。

部屋にあった物、部屋を構成していた物。全てが消失して、床天井を含めた6枚の壁面だけが空間を覆っていた。


从;゚∀从「どう、なってんだよ、これ……」

真っ暗な部屋。あるのは今座っている椅子と、簡素な机と、その上に乗っているパソコンだけ。
壁のうち、さっきまで背を向けていた、真後ろの壁だけがパソコンの光を受けてぼんやりと浮かんでいる。

163名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:13:48 ID:iRUeS2nI0


从;゚∀从「どう、なってんだよ、これ……」

真っ暗な部屋。あるのは今座っている椅子と、簡素な机と、その上に乗っているパソコンだけ。
壁のうち、さっきまで背を向けていた、真後ろの壁だけがパソコンの光を受けてぼんやりと浮かんでいる。

从;゚∀从「ドアも、窓も、何も無い……? 閉じ込め、られた?」

椅子から跳ねるように立ち上がり、手近な右側の壁に取り付く。
ドンドンと壁を叩いてみるが、手に返ってくるのは冷たく硬い無機的な感触だけ。
蹴ってもみたが、とても蹴破れるようには思えなかった。

从;゚∀从「おい……出せよ! 何なんだよ! どうなってんだよこれは!!」

怒鳴ってみるも、答える者はいない。出した大声さえも響きもせずに虚しく消えてゆく。

徒労と絶望に肩を落とし、ふらふらと力無く椅子に腰を落とす。
ギシリと椅子が軋んだ音を出したその時だった。ハインは変化に気付く。

164名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:14:54 ID:iRUeS2nI0

从;゚∀从「ありゃあ……『廊下』、か?」

パソコンの灯りを受けてぼんやりと光っていた後ろの壁に、古びた白黒写真のような景色が浮かび上がっていた。
壁面をスクリーンにした幻燈機のように投写された風景は、どこかの廊下だった。
ただ、映しだされた廊下らしき光景は天地が逆になった、逆さ写の状態だ。

慌ててパソコンに目をやる。画面に表示されているのは、相変わらず丸い円だけ。
いや、よく見ると、小さな円の中に廊下が映っている。さっきまではこんな風じゃなかったはずだ。
という事は、あの映像はこのパソコンから映しだされているのか?

从;゚∀从「バカな、どうなってるんだよ……プロジェクターじゃねえんだぞ」

まるでわけがわからない事の連続だ。
何度目かも分からない疑問を口にしながら、再び後ろの壁に向き直る。

すると、ハインの眼が何かを捉える。

165名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:15:56 ID:CIdRmbio0
なるほど

166名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:16:33 ID:iRUeS2nI0

从;゚∀从「何か……『動いてる』?」

倒立した映像の真ん中あたり、廊下の向こうで動くものがある。

いや、違う。少しずつ大きくなって……。


『近づいてきてる』?



从; ∀从「う、うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

167名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:17:42 ID:iRUeS2nI0

ガタン、と椅子が倒れる。
床から立ち上がれず、ずりずりと机に寄り添うように壁と距離を取る。

白黒写真の背景の中、「それ」はゆっくりと近づいてくる。

だんだんと輪郭が明確になってくる。

从 ;∀从「嫌だ、嫌だ、来るな……来るなぁあああああああっ!!」

その時。ガクンと衝撃が襲った。

視界に占める壁の割合が大きくなっていく。急に、壁自体が近づいてきていた。

いや、違う。そうじゃない。

彼女の体の方が、壁に吸い寄せられているのだ。

168名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:19:34 ID:iRUeS2nI0

从 ;∀从「え? そんな、嘘……!」

床になんとか這いつくばって耐えようとするが、大した抵抗にもならなかった。
だからと言って周りに掴めるようなものは何も無く、為す術なく体は壁に吸われていく。

その姿は、必死にもがきながら蟻地獄に落ちてゆく小さな蟻のようにも見えた。

从 ;∀从「嫌……! 助け、」

そして、その言葉を最後まで言い切ることも叶わず、ハインは壁の中に消えていった。

誰もいなくなった暗い部屋。その壁にぼんやりと映る廊下に、彼女はいた。

逆さまの白黒写真の中、近づく「それ」から必死に逃げようとする彼女。
しばらく後、追いついた「それ」が彼女を呑み込むと、パソコンの画面はフッと消え、唯一の光源を失った部屋はすぐに完全な闇に沈んだ。

169名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:20:41 ID:iRUeS2nI0


翌朝。

いつもと変わらない部屋。差し込む朝日。

いつもと変わらないベッド。スチールラック。本棚。ドア。窓。パソコン。

いつもと変わったところなど何もなかった。


ただ一点。

部屋の主が消えたことを除いて。


.

170名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:22:56 ID:Q7ucvMh6O
怖い怖い怖い…

171名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:23:01 ID:iRUeS2nI0




かつて、幕末から明治の中期くらいの日本では、写真に撮られることを忌避する風潮があった。

「写真に撮られると魂を取り込まれる」という迷信によるものだ。
だがその時代、写真を撮られることで不可思議な現象が起こった、という話もいくつも残っている。「魂を取られる」というのは、本当にただの俗信だったのだろうか。

はるか昔のカメラには、今の物にはない『何か』があったのかも知れない。

172名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:24:03 ID:iRUeS2nI0



では、世界で最も古い『カメラ』とは何だったのだろうか。

19世紀前半にヨーロッパで銀板写真法が発明される以前、ルネサンス期の画家達がより正確な絵を描く為に用いた光学器械があった。

後世、写真撮影用の機械を「カメラ」と呼ぶ由来ともなったその器械の名は、『camerae obscurae』――カメラ・オブスキュラ。

ラテン語のその名の意味は。


『暗い部屋』。



  (
   )
  i  フッ
  |_|

173名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:25:21 ID:qLLQhYOA0
すげー興奮した 乙です

174名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:26:10 ID:VUmcF81s0
上手いな乙

175名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:26:22 ID:iRUeS2nI0

以上、九十五本目終了です

これで今回の百物語用に貯めてたのは全部使いきったわ
あとは読者に戻って楽しむとするぜ!

176名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:26:59 ID:CIdRmbio0
おもしれぇ

177名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:27:20 ID:HGntewWI0
乙!雰囲気良いな

では九十六本目頂く


厨二魂 全 開 !!

※若干流血表現注意

  .,、
 (i,)
  |_|


http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_492.png

一応流石のつもり


  (
   )
  i  フッ
  |_|

178名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:28:25 ID:VUmcF81s0
>>177
すげえええ!かっけえええええ!

179名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:28:47 ID:qLLQhYOA0
>>177 うおおおおおおおおうめええええええええ!乙!

180名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:29:21 ID:FbC6w4w60
>>177

こええ
うめええ
ぱねえええ

待ち受けにしてえ

181名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:30:23 ID:Q7ucvMh6O
>>175
すごかった
こんな文章と発想ができるようになりたい

>>177
かっこいい!
流石だな二人とも

182名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:31:21 ID:CIdRmbio0
じゃあ次いくよー

  .,、
 (i,)
  |_|

九十七本目

たすけるようです

183名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:31:52 ID:CDEVEESYO
鬼の凄む山のようですのひとの代理 
 
42:名も無きAAのようです
12/08/20(月) 00:52:31 ID:ros50W1Q0
どなたか百物語本スレに蝋燭代理書き込みをお願いします
もう来れないので 

1スレ目>61様
夏の幻のようです
http://i.imgur.com/CPqrk.jpg

心優しい方よろしくお願いします 
 
 
97本目になるのかな、蝋燭は出来ないのでゴメンね

184名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:32:30 ID:CIdRmbio0

/ ,' 3 「何?!ブーンとデレが帰えってこない?!」

J(;'ー`)し 「そうなのよ、二人で蝉を取るって言って出て行ったっきり…」

/ ,' 3 「ぬう…」

J(;'ー`)し 「お父さん…」

/ ,' 3 「…自治会の皆にも探すのを手伝ってもらおう。ワシはプギャーのところに行ってくる」

J(;'ー`)し 「じゃあ、私はもう一度裏の山を…」

/ ,' 3 「ああ、お前まで居なくならん用に気をつけろ」

 日が沈みかけ、辺りは夜の気配を漂わせ始めていた。
 道沿いの民家から漏れたカレーの匂いが食欲を刺激するその時間に、村のまとめ役、荒巻スカルチノフは額から汗を垂らす。
 目どころか心臓を鷲掴みにされても痛くないほど溺愛する孫が、行方不明になったのだ。

 すぐさま村の全ての家に電話が走り、捜索が開始される。
 土地は広く、人は少ないこの村で子供を探すには、力を合わせるのが一番なのだ。

/ ,' 3 「ブーン…デレ……」

 荒巻をより不安にさせるのは村に伝わる神隠しの言い伝えだった。
 言い伝えは悪いものだけではないが危険なことには変わりなく。
 どこにでもある眉唾の伝承と言えばそれまでだが、実際記録では過去に十数人が失踪しているため、気が気では無い。

 今は自身も走り回りながら、孫の無事を祈る他なかった。
 
 * * *

185名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:33:38 ID:Q7ucvMh6O
えー…


>>182が97
>>183が98でよいかな

186名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:33:51 ID:CIdRmbio0

 村で大規模な捜索が始まったその頃。
 行方不明の兄妹、ブーンとデレは何処とも知れぬ場所を彷徨っていた。

 周囲は既にまっくら。
 星明かりはあるようだが、背の高い木々が光を阻んでいる。
 頼りになるのは、母が持たせてくれた携帯電話の明かりだけ。
 既に何度か電話をしようと試みたが、圏外と表示されてつながらなかった。

ζ(゚、゚ ζ 「おにいちゃん……」

 妹のデレは兄の手を強く握る。
 その顔は不安でいっぱいで、直ぐにでも泣き出しそうだった。

( ^ω^)「おっおー、平気だお!きっともうすぐ知ってるところに出るお!」

 本当のところを言えば、ブーンも泣き出してしまいそうだった。
 しかし、泣くわけにはいかない。
 ブーンは9歳で、6歳のデレより年上で、なによりお兄ちゃんなのだ。
 妹を守る責任って奴があるのだ。
 だったら、早く家に帰るため、少しでも歩かなければいけないのだ。

 そんな少年の勇気は、虚しくも悪い方向に働いてしまう。
 幼い兄弟は方角も分からない森の中を、村とは逆に進んでいった。

187名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:34:48 ID:CIdRmbio0

 どれ程歩いたろうか。
 デレの息は既に絶え絶えとしていて、苦しそうだ。
 汗が冷えて体温も下がっているようで、それが余計に彼女の体力をうばっていた。
 ブーンは自分の腰に巻いていたシャツをデレに着せてやる。
 ほんのりと温もりを帯びていたため、デレはちょっとだけ安心することが出来た。

 携帯電話の時刻は八時過ぎ。
 電池も半分をとうに切っている。
 疲労もそうだが、お腹も空いた。
 遊ぶ時ならば無尽の体力を誇るとしても、この先に安心の無い状況では、子供は大人よりもはるかに消耗が早い。

 大きな木の根に腰を降ろし、デレを抱きしめて休憩を取る。
 デレを安心させるためではあったが、互いの体温を感じることでブーンも落ち着くことが出来た。

 時計で十分。
 二人は再び歩き出す。
 小学校でサッカークラブに入っているブーンは、あまり休み過ぎると筋肉が固まって動けなくなることを直感的に理解していたのだ。

 道の無い森を必死に歩く。
 木が作る陰で周囲は真っ暗だが、そのおかげで草が伸びておらず足元が歩きやすいのが幸か不幸か。
 二人はどんどんと森の深みへと入ってゆく。

 もう一度休憩を取ろうかとブーンが思い始めた頃、突然デレが立ち止まった。
 振り返って顔を伺うと、青ざめ硬直した表情で前を凝視している。

( ^ω^)「どうしたんだおデレ?疲れたのかお?」

ζ(゚、゚;ζ 「お、おにいちゃんは、みえないの?」

( ^ω^)「え?」

188名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:36:10 ID:CIdRmbio0

 デレが、繋いでいるのとは逆の手で前を指さした。
 ブーンは恐る恐るそちらへ目を向ける。

 暗がりの中、他には何も見えないというのに、ぼんやりと浮かび上がるように見える物があった。
 ブーンが目を凝らすと、人の形をしているようにもとれた。

  「もしもし、道に迷ったのかい?」

 兄妹の身体がびくりと震えた。
 人影らしきものがゆらりと近づき、続けて声をかけて来た。
 老人のようにも、若いようにも聞こえるしゃがれた声だった。

  「おいで。帰り道を教えてあげるから」

 デレの雰囲気が変わったことにブーンは気付いた。
 探しにきた大人の誰かだと思い安心したのだろう。
 ブーンも、少しだけそう思った。
 でも、違うと確信していた。

( ^ω^)「一つ聞いていいですかお?」

  「なんだい?」

( ^ω^)「明かりも持たないで、なにしてるんですかお?」

189183:2012/08/20(月) 01:36:22 ID:CDEVEESYO
>>182 
ゴメンね、さっきのやつ98本目にカウントしてもらおう

190名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:37:12 ID:CIdRmbio0

 人影は答えず、また一歩近づいてきた。
 ブーンの不穏な気配をデレも感じたのか、安心を取り消すように、にじりさがる。

  「さあ、いこう。村へ案内して…」

( #゚ω゚)「くるな!」

 ブーンは足元に向けていた携帯電話のライトを人影に向けた。
 弱々しい光では顔を見ることは叶わなかったが、姿を見ることは出来る。
 人影、おそらく男はシャツにハーフパンツにサンダルを履いていた。
 見た目はそこらへんの若者のようではあるが、尚更明かりを持っていないことが怪しい。

  「大丈夫だよ、怖くないから」

 ついに見えた男の顔を見て、ブーンはデレの手を引いて走り出した。
 デレも、最初は戸惑ったものの、すぐに倣って必死で掛けた。
 背後で女の笑い声のようなものが聞こえる。

 僅かな光の中に見えた男の顔は、明らかに人間ではなかった。

191名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:38:40 ID:CIdRmbio0
 * * *

ξ゚⊿゚)ξ 「だから言ったじゃん。あんたじゃだめだって」

('A`) 「うるせえな。おまえじゃ無理だから俺がやろうとしたんだろ」

ξ゚⊿゚)ξ 「で。どうすんの?」

('A`) 「俺に考えがある」

ξ゚⊿゚)ξ 「役に立つ考えならいいけれど」

('A`)

ξ゚⊿゚)ξ 「そんな睨まないでよ。冗談じゃない」

('A`) 「…まあ、いいや。一度しか言わないからちゃんと聞けよ」

ξ゚⊿゚)ξ 「はいはい」

 * * *

192名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:38:53 ID:qLLQhYOA0
>>185  今日84本目からスタートって書いてたけどそれがある(既に投下終了してた)から
自分が85本目からスタートした
からもうカウントしなくていいはず
ややこしくしてごめん…

193名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:39:29 ID:CIdRmbio0

 しばらく、走り、息が苦しくなって立ち止まる。
 デレは地面や屈み込んで泣き出した。
 荒い息で、声すら出せずにボロボロと涙を零す。
 ブーンは自分の息を整えながら泣き止ませようとしたが、ダメだった。
 今まで泣かなかったことを褒められても、泣くことを責めることは出来ない。
 ただ、つられて泣くのを堪えるのが大変だった。

ζ(;д; ζ 「おかぁさぁん…!」

( ;^ω^)「……」

 何度も何度も背中を摩った。
 先程のアレも気になるが、とりあえず泣きたいだけ泣かせてあげようというのがブーンの考えだった。
 弱々しい鳴き声が響く。
 これを聞いて村の誰かが来てくれないかと淡い期待を抱くが、鬱蒼とした木々に吸われて村には届かない。

 強い風が吹き、木々がざわめいた。
 デレが小さい悲鳴を上げ泣き止む。
 ブーンはその小さな身体を引き寄せ、庇うように抱きしめる。

 風がやみ、再び周囲に不気味な静寂が訪れる。
 いや、静寂では無い。
 パキパキと枯れ枝を踏むような音がどこからか響いて来ていた。

 助けにきた母親か、村人の誰かか、それとも先程の……

 明かりを消し息を潜める二人の元に、足音が近づく。

194名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:40:26 ID:qLLQhYOA0
>>185 ごめん違った何でもないですみなさんすみません…
  
そして支援

195名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:40:51 ID:CIdRmbio0

( ;^ω^)(…かなり近いのに、明かりが見えない。やっぱり…)

ζ(゚、゚;ζ(おにいちゃん…)

( ;^ω^)(だいじょうぶだお。お兄ちゃんがついてるお)

 ぱきり。

 ごく近く、二人の寄りかかる木の裏で音がした。
 背中を冷たい汗が流れ落ちる。

  「あれぇ?」

 先程聞いた笑い声と同じ声だった。

 恐る恐る振り返える。
 木の陰から大きな何かが二人をみている。
 ブーンの頭ほどある目玉を持った、まるで巨大な生首のような何かが。

( ;#゚ω゚)「!?」

 ブーンが手を引き走り出そうとするが、デレは腰を抜かして動けない。
 迷う間も無く、ブーンはデレを背負い走り出した。

196名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:40:55 ID:Q7ucvMh6O
>>192
把握
大丈夫ですよ
では次が98本目となります

197名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:42:55 ID:CIdRmbio0

 たとえデレが小さな六歳の子供であっても、それを背負うブーンもまた九歳の子供。
 疲弊した状態でのおんぶは決して楽では、いや、むしろ無理をしている以外の何物でもない。

 しかしデレを降ろす選択肢はなかった。
 降ろせば腰を抜かしているデレは走れない。
 置いて逃げるという考えが無い限り、背負って走る他無い。
 ブーンはお兄ちゃんだから、妹を守らなくてはいけないのだ。

 デレに携帯電話を持たせ、足元を照らして貰って走り続けると、目の前に細い山路が現れた。
 山菜を取る地元の人がたまに使うような、道とも言えない道だったが、二人にとっては希望の道だった。

( ;^ω^)(どっちが正解だお…?)

 目の前を横切る道を、左へ行くか、右へ行くか。

ζ(゚、゚;ζ 「おにいちゃん!みぎ!みぎ!」

( ^ω^)「お?右に行くのかお?」

ζ(゚、゚;ζ 「ちがう!みぎからきてる!」

 はっとして右を見ると、先程の男が足音を忍ばせ近づいて来ていた。
 デレがライトを向けたので顔がはっきりと見えた。
 目が腫れて潰れた、毛むくじゃらの醜い顔が、そこにあった。

198名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:44:46 ID:CIdRmbio0

 男の手がブーン達に伸びる。
 ブーンは踵を返し、男とは逆の、左の方へと逃げる。
 デレが振り返って確認すると、先程の大きな生首も追って来ているという。

 いやだ。

 怖い。

 怖い!

 足が限界に来て、デレを降ろし、ブーンは木に背を預けて座り込んだ。
 追ってくる姿はとりあえず見えないので、息を整えるのに集中する。
 気丈に頑張ったブーンの精神も、錯乱寸前に追い込まれていた。
 辛うじて耐えられるのは、傍らに妹の体温を感じるからだが、それも時間の問題だ。

ζ(゚ー゚ ζ 「おにいちゃん、デレだいじょうぶだよ。じぶんではしれるよ」

 力尽き、動くこともままならない兄を励ますように、デレは引きつった笑顔でその手を握った。
 ブーンの限界を悟り、励まそうと震える足を必死に堪える。
 夜が無性に怖くて眠れない時に、母がそうしてくれたように優しく兄に笑いかける。

 ブーンはそんなデレを強く抱きしめ、ついに泣き出した。
 今の状況が恐ろしくて、妹の優しさが嬉しくて、自分の情けなさが悔しくて、ただただ泣いた。

199名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:45:54 ID:CIdRmbio0

 何時の間にかデレも泣き出して、二人で声も枯れるまで泣いていた。
 どれ程の間そうしていただろうか。
涙も枯れ、体力も果て、その場に座り込んでいると、

  「おーい!こっちにいたぞー!!」

 あの毛むくじゃらの男の声だった。
 仲間を呼んでいる。
 背筋に寒気が走った。

 逃げようとしたが、疲労で身体が動かない。

 どうしようもなくなり兄妹は抱互いを硬く抱きしめた。
 守るように、庇うように、あるいは、どちらかが一人きりなってしまわないように。

 おびただしい足音が聞こえ始めた。
 
( ;-ω-)(もう、だめだ)

 心の中で諦めの声をあげた。
 足音は、すぐそばにまでたどり着く。

  「ブーン!デレ!みんな、こっちだ!二人ともいるぞ!」

 目の前であげられた声は、村の交番のお巡りさんのものだった。

200名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:47:14 ID:CIdRmbio0
 * * *

/ ,' 3 「二人とも、眠ったのか?」

J( 'ー`)し 「うん。とても疲れてたみたいですぐ寝ちゃったわ」

 奥の部屋から戻ってきたカーチャンは安心した様子で座布団に腰を降ろす。
 座敷では、孫の捜索に協力してくれた村人にささやかな詫びと礼として酒を振舞っていた。

 ブーンとデレが見つかったのは30分程前。
 裏山の、比較的麓に近い木の根元で抱きしめあっているところを発見された。
 かなり疲弊はしていたが大きな怪我もなく無事で、村人揃って胸を撫で下ろした。

J( 'ー`)し 「プギャーさん、本当にありがとうございますね」

( ^Д^) 「いやいや」

 兄妹を見つけたのは村の交番に勤める青年のプギャーだった。
 少々抜けたところがあるが、頼りになる男だ。

( ^Д^) 「それに、初めに見つけたのは俺じゃないっすよ」

J( 'ー`)し 「え?でも…」

( ^Д^) 「誰だかわからねーけど、呼ぶ声がしたんですよ」

201名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:48:47 ID:CIdRmbio0

/ ,' 3 「…?」

( ^Д^) 「いやね、確かに俺があそこに行った時はブーンとデレしかいなかったんですけど」

( ^Д^) 「そもそもそっちに行ったのはその呼び声がしたからなんすよ」

J( 'ー`)し 「まぁ、そうなの?」

( ^Д^) 「ええ、不思議なこともあったもんで」

/ ,' 3 「……」

J( 'ー`)し 「お父さん?」

 荒巻はおもむろに立ち上がり、台所へ。
 カーチャンや集まっていた村人が不思議そうに視線を向ける中、
冷蔵庫から残り物の天ぷらと油あげを取り出し、足早に家を出て行った。

J( 'ー`)し 「どうしたのかしら?」

( ^Д^) 「さあ?おしっこですかね」

J( 'ー`)し 「あらやだ」

202名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:50:07 ID:CIdRmbio0
 * * *

('A`) 「とりあえず無事に帰れたみたいだな」

ξ゚⊿゚)ξ 「それにしてもよく思いついたわね」

('A`) 「まあな。声をかけて逃げられるなら、安全な方へおいたててやればいいのさ」

ξ゚⊿゚)ξ 「ま、怖がらせたお陰でお礼も何も貰えないけど」

('A`) 「ど、どっちにしろ、今の奴らは俺らのことなんか忘れてるだろ…」

ξ゚⊿゚)ξ 「それでもー、普通に送り届ければお礼くらいもらえたんじゃないかなー」

(#'A`) 「だ、黙ってきいてれば!それはお前がやり過ぎたからだろ馬鹿!」

ξ#゚⊿゚)ξ 「な、なによ!しかたないでしょ!私生首くらいにしか化けらんないんだもん!」

(#'A`) 「好い加減人間にくらい化けろよ!」

ξ#゚⊿゚)ξ 「なによ!そもそもあんたがちゃんと化けられれば問題なかったじゃない!」

(#'A`) 「なんだとぅ!……ん?」

ξ゚⊿゚)ξ 「…ん?……なにあれ。なんか来る?」

('A`) 「…あのじいさん、あんなに急いでどうしたんだ?」

 * * *

203名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:51:31 ID:CIdRmbio0

 いいか、ブーン、デレよく聞きな。
 あの山の奥では神隠しが起きるって話はしたことあるよな?

 でもな、いつからか人間が神隠しにあわないように護ってくれる神様がでるようになったんだ。
 迷い混んだ人間を里まで連れて来てくれる狐と狸のありがたい神様がな。

 たぶん、お前たちが見たおっかないのは、道案内しようとして出て来てくれた神様だったんだ。
 だから、感謝はしても、うらんじゃならねぇよ。
 そうじゃなきゃ、おまえらはもっと酷い目にあったんだから。

 とりあえず、昨日はじいちゃんがお礼しておいたけれど、今日皆で改めてお礼に行こうな。
 大丈夫。じいちゃんも一緒だから、怖くなんかねえよ。

 そうそう、今度からはは暗くならない内にちゃんと帰えってこような。
 神様は気まぐれだから、いつでも助けてくれるわけじゃないからよ。

204名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:52:41 ID:CIdRmbio0


  (
   )
  i  フッ
  |_|

おわりどすえ
えーっと、これが九十七本目で良いのかな?
次どうぞ

205名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:52:49 ID:VUmcF81s0
稲荷かな?優しい神様でよかった乙

206名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:53:45 ID:qLLQhYOA0
よかった おつおつ

207名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:53:55 ID:Q7ucvMh6O
書きたてほやほや投下してもよろしいかしらー

208名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:54:26 ID:SodIsl22O


終わりが近くてウズウズする

209名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:54:55 ID:Q7ucvMh6O
>>204
乙でした
ほっこりホラーで癒された…

210名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:55:20 ID:qLLQhYOA0
>>207 しえん

211名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:55:42 ID:CIdRmbio0
んーっと>>183は鬼の棲む〜とは別もんだからこれが98本目扱いでいいんだよね?

212名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:55:48 ID:VUmcF81s0
次は九十九本目になるわけか……

213名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:56:27 ID:SodIsl22O
>>207 が、99本目?

214名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:56:56 ID:FbC6w4w60
なんか
実体験のようです
読んだからか
ビビってきた

215名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:57:44 ID:Q7ucvMh6O
>>211
おっとそうでしたか、失敬

では僣越ながら…

  .,、
 (i,)
  |_|

九十九本目いただきます

爪'ー`)y-は今日もオレオレ詐欺をするようです

216名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:58:23 ID:iRUeS2nI0
百本目が近づいてきたな
みなぎってきた

217名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:59:27 ID:CIdRmbio0
ラス2支援

218名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 01:59:34 ID:Q7ucvMh6O
オレこと、フォックスはいわゆるヤのつくこわーい自由業を営む悪いお兄さんである
…とはいえ、周りに比べればまだまだケツの青いガキ
下っ端中の下っ端で、それらしいことはあまりやっていない
…まぁ強いて言うなら、オレオレ詐欺をしていることくらいだろうか

そんなわけで、今日もタバコを片手に、名簿とマニュアルに従って年寄りに金をせびるのだ

「はい、もしもし鬱田です」

覇気のない声だった
オレの脳内にパッとしないおばさんのイメージが浮かんだ

爪'ー`)】y-「オレオレ、オレだよ母さん!」

【J( ‐ )し「っ…」

電話の向こう側で、母親らしき人物が息を飲むのを感じた
まずいかもしれない
もし息子が亡くなっていたり失踪したりしていたら、それはそれは面倒なことになるのだ
けれども、実際は違った

【J('ー` )し「ドクオかい…?」

爪;'ー`)】y-「あ、ああ、そうだよ母さん」

【J('ー` )し「…あんたが母さん、なんて呼んでくれたのは…いつぶりだろうねぇ」

そう言って相手は涙声になった

爪;'ー`)】y-「な、泣くなよ母さん」

【J('ー` )し「そうだけどね…今までババァって呼ばれてたんだもの、嬉しいに決まってるじゃない」

219名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:00:41 ID:qLLQhYOA0
>>214 和紙に塩包んで持っとけばいいよ 気休めかもだけど無いよりいい

220名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:02:09 ID:Q7ucvMh6O
相手はごめんね、ごめんね、と謝っている
気まずさを感じながらも、オレはいつも通り話を切り出す

爪'ー`)】y-「あの…それで悪いんだけど…実は会社で」

【J('ー` )し「……ドクオ、いつの間に就職したの?」

爪;'ー`)】y-「……」

おいおいドクオくんとやら…
オレも大概クズだけどあんたはもっとクズだなぁ
なんて思いながら適当な言い訳

爪'ー`)】y-「あーバイト始めたんだ…」

【J('ー` )し「そう…うまくやれてるのね」

はぁ、とため息が一つ聞こえる
まったく親不孝な息子だぜ

爪'ー`)】y-「それで、その…実はその仕事中にヤーさんの人怒らせちゃって」

つらそうに、相手の様子を伺いながら金の話に持っていく

爪'ー`)】y-「それで…示談金が必要で」

【J('ー` )し「あら、」

返ってきたのは、冷たい声

爪'ー`)】y-(あーまずかったか)

221名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:04:52 ID:Q7ucvMh6O
察するに今まで働かずに母親を罵って生きてきた脛齧りのようだから、縁を切られても不思議じゃないな
そう思って電話を切ろうとした時だった

【J( - )し「私を殺してもお金が足りないの?」

爪;'ー`)】y-「え…」

【J( - )し「お母さん、やめてって言ったのに」
【J( - )し「たくさん包丁で刺して」
【J( - )し「保険金もらって」
【J( - )し「仕事に就いて」
【J( - )し「幸せになろうとして」
【J( - )し「ふざけるな」
【J( - )し「私みたいに苦しんで死ね」


ブツンッ


爪;'ー`)】y-

……その電話番号に掛け直す勇気なんかあるはずもなく
オレは無言で、電話が繋がらなかったことを意味する×印を名簿に書き加えて再び電話をした


爪'ー`)】y-「もしもし、オレオレ」

爪'ー`)】y-「フォックスだよ、母ちゃん、元気か?」

222名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:05:33 ID:Q7ucvMh6O
  (
   )
  i  フッ
  |_|


九十九本目ありがとうございました

次で最後ですね…

223名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:06:23 ID:qLLQhYOA0
乙でした  カーチャン…

224名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:07:20 ID:VUmcF81s0
カーチャン……
そして次はいよいよ……

225名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:07:28 ID:HGntewWI0
最後だけちょっとほっこりした

次……百か……!!

226名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:08:00 ID:FbC6w4w60
乙。

カーチャン…

>>219
ありがとう、でも和紙が無いや。

227名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:09:36 ID:qLLQhYOA0
>>226 通気性が大事 ティッシュ重ねて包んで持ってたらおk

228名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:10:38 ID:Q7ucvMh6O
…ところで今し方トイレに行ってきたんですが見てしまった

百本目以降に投下します、多分

229名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:11:18 ID:HGntewWI0
>>228
し、塩!塩!!

230名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:11:25 ID:VUmcF81s0
こえーよ……
家の前の街灯が不定期に点滅してるし……

231名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:13:23 ID:qLLQhYOA0
怖いヤバいって思うやつはみんな塩持っとけw
実体験読んだ人は特に

232名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:13:29 ID:.vz/DdAUO
>>228
はやく逃げてー!

233名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:14:14 ID:SodIsl22O

ドクオェ……


あぁゾクゾクしてきた
次で最後か

234名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:17:42 ID:iRUeS2nI0
お前らのせいでトイレ行くの断念したじゃねーか
部屋から出られねぇwwwww





あ、俺が投下したの部屋にいたままでもアウトな奴だtt

235名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:21:17 ID:qLLQhYOA0
>>234  クソワロタwwwwww
トイレいってこいwww

236名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:24:15 ID:.vz/DdAUO
丑三つ時だぜ…

237名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:26:28 ID:Q7ucvMh6O
…できたんですがこんなのが百本目でいいんだろうか

238名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:27:08 ID:VUmcF81s0
洗練された創作よりもふわっとした実話の方が怖かったりするんだぜ?

239名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:27:23 ID:qLLQhYOA0
>>237 よしきた支援

240名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:29:28 ID:iQxuuTyc0
しえん

241名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:29:46 ID:HGntewWI0
全力で支援するぜ

242名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:30:10 ID:Q7ucvMh6O
優しいお言葉をもらえたので投下します


  .,、
 (i,)
  |_|

とうとう百本目
なにが起きても不思議じゃない…

短いですが、お付き合い願います

从 ゚∀从はトイレにびびるようです

243名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:33:16 ID:Q7ucvMh6O
No.1

病院のトイレにて

从 ゚∀从「やっぱ夜のトイレはこえぇな…」
从 ゚∀从「さっさと用足して部屋に戻ろ」
从 ゚∀从「ん、髪に何かついて…」


川∀川从 ゚∀从 |鏡
川∀川从;゚∀从 |鏡


从;゚∀从(…見なかったことにしよう)

244名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:36:03 ID:Q7ucvMh6O
No.2

大学のトイレにて

从 ゚∀从「ちょっとトイレ行くわ」

ξ゚⊿゚)ξ「ここのトイレ、でるらしいよ」

从 ゚∀从「いやいやそんなまさか」
从 ゚∀从「というわけで待っててねー」


从 -∀从「はーやっぱ洋式の個室は落ち着くねぇ」

コツ、コツ…

从 ゚∀从(ん、ツンか…?)

パタン、カチャッ

从 ゚∀从(隣に入ったのか)
从*゚∀从(ついでだから脅かしてやろう)

ジャー
ガチャ、キィ

从 ゚∀从「…あれ、隣開いてる…?」

バァン!!!!

从; ‐从「ひっ!?」

从; ‐从 (なんで?なんで自分の入ってた所から音がしたの!?)

从;゚∀从「で、でた…」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ」

从;゚∀从「扉バァン!ってされた」

ξ゚‐゚)ξ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「…音、聞こえなかったよ」

245名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:38:31 ID:SodIsl22O
トイレネタやめろおおぉぉぉぉ!!

246名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:39:29 ID:qLLQhYOA0
また一人トイレに行けないやつが…
流石百話目だな…www

247名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:39:45 ID:Q7ucvMh6O
No.3

家のトイレ

从 ゚∀从「うートイレトイレ」

ジャー

从 ゚‐从(…家の洗面台、苦手なんだよね)
从 ゚‐从(浴室と向かい合わせで合わせ鏡になるから…)

チラッ

川川川从 ゚∀从 |鏡
川川川从;゚∀从 |鏡



从;゚∀从(……見なかった、何も見なかった)
从;゚∀从(と、とりあえず部屋に)

くいっ

川川川っ从;゚∀从そ


从; ‐从(ね、寝間着つか、つかまれ……!!)


結局、そのまま離してくれるまで洗面台の前で棒立ちでしたとさ

248名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:41:08 ID:Q7ucvMh6O
  (
   )
  i  フッ
  |_|


百本目、失礼しました
先程の体験談だけではあんまりにも短すぎるので三つにしました
支援ありがとうございました

249名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:42:05 ID:qLLQhYOA0
最後のが可愛かったw 乙でしたー!

250名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:43:06 ID:VUmcF81s0
乙乙
百本行ってしまったな……

251名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:44:41 ID:iRUeS2nI0
乙!
霊感ある人は大変だなww
この場で言うのもアレだが霊感ゼロのオカルト否定派人間だからそういう経験が皆無なんだよなぁ


さて、とうとうこれで百本だな……

252名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:44:44 ID:SodIsl22O

先程の体験って……
おい おい

253名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:44:56 ID:HGntewWI0
乙ですた!ついに百いったな!

254名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:45:43 ID:Q7ucvMh6O
百本目行ってしまいましたよ…

というか窓がパシパシ鳴って?るのは気のせいさきっと…!

255名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:45:52 ID:FbC6w4w60
乙!
百物語完走!

おめでとう!

256名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 02:46:30 ID:qLLQhYOA0
>>254 大丈夫それきっと虫


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