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( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双

1 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:37:04 ID:w.OycBSI0
お久しぶりです。2年ほど放置してしまいました。すみません。
VIPはすぐ落ちるとのことなので、こちらをお借りさせていただきます。

今回は最終話一つ前の第7話です。遅かったくせにすみません。

ご存じない方は、下記URLを参考ください。

ブーン文丸新聞 様
第一部      ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire/retire.htm
第二部完結編 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire2/retire2.htm

では、開始します。

2 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:38:24 ID:w.OycBSI0
/ ,' 3「…来たかい、ロマネスク君」

( ФωФ)「ハッ!」

王都『NEET』
VIP大陸の中枢にして、最堅の城塞都市だ。

都市の周りは高い城壁で囲まれており、空中にも結界が張り巡らされている。
唯一出入りの出来る門は、選りすぐりの小隊が守っておりセキュリティ面でも万全。

街並みは古きよき文化の伝統を受け継いだままだが、所々で魔法による影響により発達した文明が頭角を現している。

手紙のやり取りは伝書鳩ではなく、文面そのものを相手の家へ送信する『電報魔法』の普及によりスピーディとなり
火炎魔法と物質変換魔法の応用によって、都市の内部の移動は『鉄道』で出来るようになった。

魔法が使える者も、そうでないものも皆平等にその利便さを満喫できるよう、文化革命が起こっている。
その中心にあるのが、この王都NEETなのだ。

さて、

そんな都市のど真ん中に、高くそびえる城がある。
ステンドグラスやコリントの装飾が施されている柱。
ピラミッドを作るように土台から最上階まで面積が狭くなるつくりの古代式の城


そこがこの大陸の最高権力者、スカルチノフ王が住むNEET城である。

3 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:39:52 ID:w.OycBSI0
急な電報魔法を受けたロマネスクは、遠く離れた王都へ馬車を走らせ一日かけてたどり着いた。
そして今、謁見の間にて膝をつき頭を垂れて王と対峙しているのだ。

/ ,' 3「急ですまないね。
     聖騎士でもあり、養成学校の教官でもある君を呼び出すのは忍びないことだったのじゃが…」

( ФωФ)「いえ、王の命より大事なことはございません。
        して、私に一体何の用でございましょうか…?」

/ ,' 3「うむ。一年ほど前からかの。彼を感じるのじゃよ」

( ФωФ)「彼…?」

/ ,' 3「あれほどの魔力、そして独特の波動を持つ人間は二人とおるまい」

ロマネスク王は蓄えられた髭を撫でながら、小さな悪戯でもするかのように勿体ぶってから言った。

/ ,' 3「モララー=レンデセイバーの魔法の発動を感じるのじゃ」

(; ФωФ)「モララー殿のっ!?」

思わず立ち上がって驚いてしまうロマネスク。
慌ててその愚行に気づき、再び跪くが、スカルチノフは立ち上がることを許す。
今日は近衛騎士や魔術師も傍に置いていない。
戦前からよく目をつけられ、年齢差はあれども『友』として認められていたからこその対応だ。

故にスカルチノフは、ロマネスクを何度も近衛騎士へと昇格させようとしたが、ロマネスク自身がそれを拒否した。
常に戦線の最先端へ、そして街にも目を張り巡らせるためには近衛騎士ではなく聖騎士で十分なのだ。
破格の給与、栄誉が与えられるというのに、それを蹴り大陸のことを思った心身ともに立派な騎士の考えを無下には出来ない。

そう考え、スカルチノフも彼の意思を重んじ聖騎士のまま、それでありこれからも友人であることを約束させ戦後の措置を行ったのだった。

4 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:41:07 ID:w.OycBSI0
/ ,' 3「近衛魔術師ぐらいしか使えぬ空間転移魔法の発動。
    一度きりじゃったが、物質認識転移魔法も感じた。あれは彼オリジナルの魔法じゃ、間違えるはずもない」

/ ,' 3「そして、つい先日のことじゃ。大魔法の発動を感じたよ」

( ФωФ)「大魔法の…?」

/ ,' 3「あぁ。ワシでもまだ上手く扱えない大魔法を軽々と使っておったみたいじゃよ…。それも連発での」

( ФωФ)「……して、王様。私を呼び出した理由とは?」

/ ,' 3「うむ。話が長くなってすまんの」

今度は、真摯に真面目にロマネスクは共へ頼みごとをした。

/ ,' 3「簡単な理由じゃよ。ワシと一緒に、とある場所へ来て欲しいのじゃ」

( ФωФ)「とある場所…?」




―――

―――――

―――――――

5 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:41:55 ID:w.OycBSI0
(; ∀ )「……」

秋風の吹く山間の開拓地。
一年間かけて、ただの荒野を畑へと変貌させたその土地で彼は今日も畑仕事に精を出す。

流れる汗も、身体にまとわりつくシャツも、振り上げられる鍬もいつも通り。


ただ一つ、違う所がある。


いつだって絶やさなかったその笑顔が……そこにはないのだ。

すぐ側にはトソンが同じように手伝っている。
誰かが居るとき、彼は決して自分の心の内を顔には出さなかった。
怒っている時だって、嘆いている時だって

彼は薄ら笑みを浮かべで、そのすべてを達観するようにして立っていた。


先日撃退した、ラウンジ大陸最強の武士、毒田ドクオとの激戦以降


モララーの中から『余裕』という言葉が消えてしまったのだった……。






第7話『少年の悩み』

6 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:43:24 ID:w.OycBSI0
(゚、゚;トソン「ふぅ…そろそろ休憩にしませんか?」

軍手をつけたまま、首にかけたタオルで顔を拭きながらトソンが問う。
涼しくなってきたとはいえ、農業のような重労働をすれば汗は自ずと垂れてくる。

この一年で季節ごとの太陽の動きを覚えていたトソンはお昼時だと判断し、お腹の虫との決議も経てその提案をモララーにしたのだった。

(; ∀ )「…あぁ、そうだね。僕はもうちょっとやれそうだから、先に休んでくれてていいよ」

(゚、゚;トソン「……そうですか」

言葉通りにトソンは行動を開始する。
農具は一度その場に置き、軍手を外して小屋の方へと歩いていく。

(゚、゚トソン(最近、どうも一人になりたがってるみたいなんですよね…)

現在では、一番近しい者だからこそ気づく違和感。
食事も極力一緒に取りたがらず、行動は同じでも言葉で交わろうとしてくれない。

( 、 トソン(何か嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか…)

別段、おかしなことをした記憶は無い。
大事な物や記憶に触れたり、無神経な台詞を投げかけたこともない。

明確にわかっていることは、自分が熱を出した期間からこうなってしまったことだ。

もしかすると…寝言で素性をバラしてしまったのか?


疑問は更なる疑問を生む。
結局は、答案を見なければ悩み続けるだけだというのだが…その勇気はまだ持てない。

理由は単純。
今の関係が壊れてしまうのが怖いから。

7 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:44:21 ID:w.OycBSI0
自分は彼の傍に居たいし、離れるつもりもない。

記憶喪失したまま、ただのラウンジ大陸民という設定でこれからも付き合っていきたいと心から願っている。

たとえ心の広いモララーといえども、自分を目標にした暗殺者が傍にいてのうのうと暮らしている、と知ったら拒絶することは必至だろう。

それが嫌だから、トソンはいつまでも記憶が戻っていないフリを続けていた。

(゚、゚トソン「……」


でも、こうなってからは薄々思ってしまう。

彼は優しい人だ。

発熱時、自分が素性を話してしまったとしてもすぐには言ってこないだろう。
何よりもっと単純に。彼は至高の魔法使いだ。
気になって魔法を使えば、武士である自分には全く気付かれず全てを知ることなんて簡単なことだろう。


一人になりたがるのは、そのことに対して悩んでいるからだろうか…。


ふと、視界に入っている森の奥が青白く光る。
そういえば今日は休日だっけ。
朝早くではなく、お昼頃にわざわざ来るのは彼らなりの気遣いなのだろうか。

( ^ω^)「こんにちはーだお」

いつものように、声の大きいブーンが一番前に立ち大きく手を振って歩いてくる。
後ろにはツンとショボン。珍しくツーも今日は来ていた。

8 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:45:21 ID:w.OycBSI0
(゚、゚トソン「いらっしゃい。モララーさんもすぐ来るから、入って待ってて」

ニコリと笑顔を浮かべてトソンは小屋へと子供たちを案内した。


ガチャリ。戸の開ける音を立てて、モララーは静かに小屋へ入ってきた。


( ^ω^)「あ、モララーさん! こんにちはだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは。お邪魔してます」

(*゚∀゚)「よーモララー兄ちゃん!」

(´・ω・`)「今日は随分と精が出ていたみたいですね」

(; ∀ )「……」

みんなの言葉をモララーは無言で受け止める。
そして、彼はそれに対して何か反応をすることなく、入ってきた時のように静かに屋根裏へと足を進めた。

余りの今までとの反応の違いに、子ども達はしばし放心する。
ブーンはツンと見つめあってから首をかしげ、
ツーは食べかけのお茶菓子をフォークに突き刺したまま停止、
ショボンはそんな彼らを見て、自分なりに何かわからないかと分析しようとしていた。

(゚、゚トソン「……あの、もしかして体調でも悪いんですか?」

心配になったトソンは、汗のついた服も変えずにベッドに身を投げ出していたモララーを気遣った。

(  ∀ )「……いや、そんなことはないよ。心配をかけてごめんね」

9 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:46:19 ID:w.OycBSI0
腕で目を覆いながら、モララーは若干のラグを作ってから問いに答える。
そして、再び間を置いてから言葉を紡いだ。

(  ∀ )「本当に申し訳ないんだけど……ちょっとだけ静かにしていて欲しいんだ」

(゚、゚トソン「……わかりました」

トソンは少し考えてから、階下に降りていく。
その言葉の意味を理解し、トソンは優しく子どもたちにお願いをした。

(゚、゚トソン「ごめんね、モララーさんちょっとだけ疲れてるみたいなの。
     少し休めば回復するみたいだから、今日は外でピクニックでもしましょうか」

(*゚∀゚)「おー! いいな、それ!」

ξ゚⊿゚)ξ「疲れてるって……本当に大丈夫なんですか? モララーさん」

(゚、゚トソン「心配はいらないから、行こうか。今日はお天気もいいし!」

(´・ω・`)「まぁ、外はびっくりするくらいの曇天ですけどね」

(^、^;トソン「と、とにかく行こう!」

( ^ω^)(……大魔法を使ったから疲れたのかお?
       いや、モララーさんがそれくらいで疲れるわけないおね)

ξ゚⊿゚)ξ(じゃあ、もっと別の……?)

(´・ω・`)(何にせよ、そっとしておくのが守られた側の礼儀だろうね)

トソンに背中を押されながら、先日の死闘を見ていた子ども達は各々理由を探しながら外へ出た。
何も知らないツーだけが、年相応らしく外へと駆け出して行ったのだった……。

(゚、゚トソン(……)

その時、子どもの背を押しているトソン自身は――――

10 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:47:20 ID:w.OycBSI0
(  ∀ )(……僕は……)

扉の閉まる音が聞こえると、静寂が訪れた。
少しの間、子ども達の喧騒も聞こえていたが数分もすればそれも無くなる。
風の音すら聞こえない、完全な無音空間。

いつ以来だろう。一人になるのは……。

戦争を終えてから、数ヶ月。ここを見つけて、僕は居住を始めた。
それから約10年。ただひたすら孤独だった。
実際は、ツーちゃんの所に行ったりして交流自体はあったが……家に帰れば一人だった。

そもそも、何で僕は独りを望んだんだっけ?

名誉を受け、お城で豪華絢爛な生活もあり得た。
そうでなくとも、十分な賞与をもらってどこかに自分の街を造ることだって可能だったはずだ。

それでも、それすらも蹴って僕は何故独りを願ったんだ?

人付き合いが苦手だから? お金が嫌いだから? 富も名誉も必要ないから?





――――――違う。

11 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:48:39 ID:w.OycBSI0
怖いんだ。

怖かったんだ。

僕は、戦争の功績者だ。しかし、それを裏返せば、ラウンジ大陸にとって最高の仇敵でもある。

つまり、常に命を狙われる立場なんだ。それは決して敵対大陸だけの問題じゃない。
シャキンさんのような野心家だって、たくさん見て来た。
僕の立場を利用する人だってたくさん出てくるだろう。
齢15で戦線に立った僕は、政(まつりごと)にそこまで詳しいわけじゃない。
下手をすれば、知らずにとんでもない殺戮に手を貸すかもしれない。反乱だってありうる。

人の世は、結局は醜悪だったんだ。それは、あの戦争を一番前で見て来た僕が一番知っているじゃないか。

だからこそ、たかが一人の若造である僕が知った、わずかな世界の知識を元に出した結論が……



独りになることだったんだ。


何でそうなるかなんて、当たり前だ。

僕は、まだ若い。いや、正しくは青いんだ。

魔術に関する知識は長けていても、人間社会の知識は一般人未満だ。

力ばかり持っている自分が、何かを手元に置いてそれを守りきれるだろうか。

膨大な力に惹かれた人間を前にして、僕はちゃんと守りたいものを守れるのだろうか。

―――――――無理だ。無理なんだ。

そこまで僕は出来た人間じゃない。全然完成されていない。
             ケツロン
だから、出した甘っちょろい幻想が孤独だったんだ。

どうして、それを僕は忘れてしまったのだろう。
なんで、一年以上も僕は考えなしに彼らを受け入れてしまったのだろう。

――――――今も、トソンさんと同じ屋根の下で共に暮らしている理由は何なんだろう……。

12 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:49:32 ID:w.OycBSI0
わからない?
いや、わかってる。

知ってるんだ。

悪辣な世の中であっても、パンドラの箱のように一握りの希望がある。

僕はあの戦争で、醜さと一緒に人の温かさを知ったんだ。

ロマネスクさん、デレさん、ミルナさん、他にもたくさんたくさん……

あぁ、特に僕のことを、多分……誰よりも欲し、誰よりも好くしてくれたのは、他でもないスカルチノフ国王だった。

全てを持っているのに国王は、僕を一人の孫のように扱ってくれた。
だからこそ、独りになりたいという僕の言葉を、少し悲しそうに、けど喜んで聞いてくれた。
本当に嬉しかった。国をあげてでも引き止められる、くらいの覚悟はしていたのに……本当に、ありがたい。

そうなんだ。結局はそうなんだよ。

禁断の果実を口にした原初の人間のように、知ってしまったら抗えない。

僕は、人付き合いが怖くて嫌いな癖に……大好きなんだ。

(  ∀ )「……はは」

乾いた笑いが思わず零れる。
なんだそれ。矛盾してる。怖くて嫌いな癖に好きなのかよ。
どうかしてるよ。


(゚、゚トソン「……あの」

(; ・∀・)「うわっ!?」

13 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:50:37 ID:w.OycBSI0
突然声をかけられたモララーは、普段ならあり得ないような声を出して飛びのいた。
いつの間にか、目の前にはトソンが立っていたのだ。

(; ・∀・)「ど、どうしたの? みんなは?」

(゚、゚トソン「忘れ物を取りに、と言って一旦戻ってきただけです。すぐに戻りますよ
     あ、あと勝手に入ったわけではなく、ノックもしましたし何度か声はかけていたんですが……」

(; ・∀・)「そうなんだ……気づかなくてゴメン」

(゚、゚トソン「いえ……」

(; ・∀・)「……」

(゚、゚トソン「……」

沈黙が訪れる。
忘れ物を取りに来たなら、さっさとそれを取って戻ればいいじゃないか。

……と無粋なことを考えてしまうが、モララーはその言い訳が本心でないことはとっくに気づいている。

そもそも、外へ出て行ったのですら大した理由もないピクニックなんだ。
何を忘れるものがあるのだ。
トソンは、モララーに何かを言いに戻ってきた。それぐらいは、鈍感であるモララーだってわかっていた。

しかし、中々口を開かないトソンに対してモララーは出方を窺う以外に対処法がなかったのだ。
ただ、ベッドに腰をかけたまま俯いて固まるだけ。

(゚、゚トソン「あの、隣、良いですか?」

( ・∀・)「……どうぞ」

腰を少しズラして、座るスペースをモララーは作る。
その行動に対し、トソンは軽くお礼を言ってから、失礼しますと小さく言いモララーの横へ移動した。

14 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:51:21 ID:w.OycBSI0
(゚、゚トソン「……」

( ・∀・)「……」

時計の音すら聞こえない。彼の家に時計はないから。
ただただ、重い静寂だけが屋内を満たしている。

こんな空間を作っているのは果たして誰なのか。
モララーが勝手にそうしているのか。トソンが知らずに作っているのか。

考えを張り巡らせようとしたその時、トソンがゆっくり口を開いた。

(゚、゚トソン「……私が寝込んでいた時のことですけど」

( ・∀・)「……うん」

(゚、゚トソン「実は、何が起こっていたのか、ブーン君たちに聞きました」

( ・∀・)「……そっか」

(゚、゚トソン「ただ寝ていただけで、何も出来ませんでしたけど……
     何をしてもらったかは、わかってます」

トソンはそう言うと、膝の上で固く結ばれていたモララーの拳に手を乗せた。
そして、優しく包み込むように握る。

行動の唐突さに、少し動揺したモララーがトソンを見る。

それに対し、トソンは微笑みながら心を込めて、ずっと前から言いたかった言葉をモララーに伝えた。


(-、-トソン「私を助けてくれて、ありがとうございました」

15 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:52:22 ID:w.OycBSI0
(  ∀ )「……!」

(゚、゚トソン「何をどうやって、どうしてそうなったか何てものは知りません。あえて言います、知りたくないです。
     それでも、モララーさんが私を、子ども達を、その身を呈して命がけで守ってくれたこと、それだけは事実です」

(゚、゚トソン「今回だけではないです。
     初めて会った時も、しっかりお礼を言っていなかったので……随分遅くなってしまいましたが
     本当に本当に感謝しているんです。私に生きる道を与えてくれて……」

(  ∀ )「……トソンさん」

(゚、゚トソン「はい」

(  ∀ )「僕は、そんな立派な人間じゃないよ。生きる道を与えたなんて、そんなことはしてない。
     それはキミ自身が持ってる強さだよ。僕は、何もしてなんかいない」

いつになく、いつもより……いや、本当はいつだって。

モララーは弱弱しく言った。

自分は立派な人間じゃない。
ただの殺戮人形だってことを、誰よりも一番コンプレックスにしているからこそ。
志も、祈りも、それは、そんな自分を遠ざけないでくれ、という彼の心の叫びだったんだ。

( ・∀・)「助かったのは、キミの力だよ、トソンさん」

(゚、゚トソン「…………いいえ」

( ・∀・)「え?」

(゚、゚トソン「違います。まぎれもなく、あなたは私を、私たちを救いました。
     それは事実です。あなたがそれを否定しても、その倍、私は肯定します」

( ・∀・)「トソンさん……」

(゚、゚トソン「卑下しないでください。弱気にならないでください。後悔しないでください。
     例え、間違ったことがあったとしても、結果的に私たちは救われているんです。」

(゚、゚トソン「だから、そんなに自分を拒絶しないでください。
     モララーさんは、自分で思っているより、ずっと、ずっと」


(^、^トソン「ずーっと、素敵な人なんですよ」

16 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:53:15 ID:w.OycBSI0
(  ∀ )「トソン……さん……」

優しい笑顔をモララーは凝視できなかった。
眩しすぎた。いや、そんな崇高な理由じゃない。

単純だ。

嬉しかったんだ。ありがかったんだ。

『知らない』とはいえ、彼女はラウンジ大陸の人。
そんな人に、こうやって心から感謝される日が来るなんて思ってなかったから。

何よりも。

他人が、他人が、と遠ざけていたのは……自分だったのだ。
怖いから、嫌いになって欲しくないから。その気持ちが、逆に働いていた。

なんて滑稽なことなのだろう。自分を殴りつけたくなる衝動をモララーは抑える。


……それに、いつまで虚勢を張ってるんだ。

モララーは、やっと本心に気づく。

ツーに、ブーンに、ツンに、ショボンに、ロマネスクに、デレに、ミランに

誰に言われるのでもない。

都村トソン、という女性にそう言われたのが何より嬉しいんだ。

モララーは、拳をほどくと、農業によって少し日焼けをしているその小さな手を握る。

17 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:54:21 ID:w.OycBSI0
( ・∀・)「トソンさん」

(゚、゚トソン「はい」

( ・∀・)「ありがとう。未熟で、薄弱な僕だけど……」

( ・∀・)「これからも、そういって貰える人を、一人でも増やすため僕は、頑張るよ」

(゚、゚トソン「えぇ」

(: ∀ )「……だから、その」

(゚、゚トソン「はい」

( ・∀・)「こ――――」

その先の言葉をモララーは紡げなかった。
遮られたのだ。扉を叩く音によって。

(゚、゚トソン「……誰でしょう?」

余りに無粋なタイミングだったが、すぐに現実に戻ったトソンが至極当然の疑問を口にする。
子ども達だろうか? だったら、すぐさま声をかければいい。

だが、言葉は聞こえてこない。
代わりに、規則的な音が小屋内に響いている。
それだけで、何か物が当たったわけではないことがわかった。

間違いなく、そこに人が居る。知らない誰かが。

( ・∀・)「……トソンさん。そこを動かないようにね」

(゚、゚トソン「はい」

18 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:56:23 ID:w.OycBSI0
モララーは立ち上がり、扉へ近づく。
ノックをする、ということはラウンジの人間ではないことはわかっている。
彼らには扉を叩く風習がない。
扉……彼らの場合は、戸の前に立ち、いきなり声をあげて自分の所在を知らせるのだ。

と、すればやはり以前のようにラウンジの人間が来たわけではないだろう。

子ども達でもない、ラウンジの人間でもない。

つまり、VIP大陸の何者かがここに来たのだ。
ブーンのように漂流人だろうか?

何にせよ警戒を怠ってはいけないだろう。

( ´∀`) =3 ポンッ!

モララーは最も得意な人へ、変化の呪文をかけた。
体格も人相も、全てが他人。
初老の男性、モナーへと変化した彼は、そっとドアノブに手をかけようとした。

その時だった。



「ほっほっほ。やはり、キミだったか」

19 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:58:00 ID:w.OycBSI0
(: ´∀`)「!」

こちらから出る前に、入り口にいる人間から声をかけてきた。
モナーのように、皺枯れた男性の声。

声だけ聴けば、何の変哲もない声だったろう。

しかし、それでもモナー、いやモララーには体中に電撃が走るほどの衝撃だった。

(: ・∀・) =3(まさか……!?)

慌てて変化の魔法を解きながら、モララーは勢いよく扉を開けた。



/ ,' 3「久しぶりじゃね、モララーくん」


(: ・∀・)「スカルチノフ……国王……!」





最終話へつづく……

20 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/12(木) 22:58:54 ID:w.OycBSI0
時間を置いたわりに短くてすみません。

最終話は今月中にはあげるので、よろしくお願いします。

普通にVIPであげた方が良かったかもですね。

21名も無きAAのようです:2012/07/12(木) 23:27:45 ID:EOwA7npU0
嘘だろ・・・続きが読める日がくるとは・・・お帰り!

22名も無きAAのようです:2012/07/12(木) 23:38:21 ID:BUR6wMUkO
続き待ってた!乙

23名も無きAAのようです:2012/07/12(木) 23:39:19 ID:qjnFtbgE0
お帰り


24名も無きAAのようです:2012/07/12(木) 23:50:28 ID:NmtzNv0E0
正直、諦めていた…

戻ってきてくれて有難う、有難う

25名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 00:40:47 ID:1PYxIUCkO
乙だが、ミランって誰?ミルナの誤字?

26 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/13(金) 00:49:39 ID:nBcM8dA60
>>25
誤字ですね。ミルナ、と書くべきところでした。
設定上ですが、ミルナの本名がミランです。すみません。

そして、3年も経ってまだ覚えていてくださる方々がいて嬉しいです。
あと一話だけですが、頑張ります。ありがとうございます。

27名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 00:52:59 ID:q5jVELg.0
乙!
復活してくれて嬉しい

28名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 01:43:48 ID:KzLmjJs2O
帰ってくるとは…

最終話も楽しみにしてる

29名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 11:33:35 ID:hDLBQLEYO
ちょうどこの前読み返したばかりだった



30名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 13:30:34 ID:GnRk7CWE0
まじでかよ
スレ覧で衝撃受けた



31名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 15:24:03 ID:pbsZ5HSMO
タイトルは知ってたけど読んでなかった 
前作から読んできたよ

32名も無きAAのようです:2012/07/13(金) 18:12:28 ID:KE6afMLMO
ブログ更新しないのか

33名も無きAAのようです:2012/07/14(土) 05:34:28 ID:Rh1S/2rUO
懐かしすぎワロタ

おかえり

34名も無きAAのようです:2012/07/14(土) 08:08:24 ID:N6thy2two
貴様ァァ
何回戻ってきて欲しいスレに書いたと思ってんだ!

俺は嬉しいぞ!


35名も無きAAのようです:2012/07/14(土) 21:00:11 ID:4OtYrMxc0
おかえりぃぃぃぃ!!!
乙です

36名も無きAAのようです:2012/07/15(日) 04:15:51 ID:0Duv4Uds0
まじか!おかえりいいいいいいい!

37名も無きAAのようです:2012/07/16(月) 19:24:54 ID:52tJgaj.0
うほ

38名も無きAAのようです:2012/07/17(火) 06:01:10 ID:78hjOusw0
素晴らしい

39名も無きAAのようです:2012/07/17(火) 07:02:50 ID:kzCrd4TIO
そういやAll for one〜はどうすんのアレ完結してないよね?

40 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/17(火) 13:08:42 ID:yA095mk60
>>39
そちらも勿論書いていきます。再開までは、ちょっと時間がかかるかもしれませんが……。投げっぱなしはしたくないので。
もともと、長い一話を投下する作品ではないので、波に乗れば更新頻度は早くいけると思います。

41名も無きAAのようです:2012/07/17(火) 21:51:16 ID:kzCrd4TIO
>>40
うおーマジか
楽しみにしてる

42名も無きAAのようです:2012/07/18(水) 00:11:19 ID:S2wU4SkgO
おかえりー!
待ってたー

43名も無きAAのようです:2012/07/18(水) 00:15:30 ID:2h.uvt.oO
Afoofの人だったのか!!
あの作品ずっと待ってるんだから更新してくれ!!







もちろんツンルートで

44名も無きAAのようです:2012/07/20(金) 00:15:30 ID:bKGRityQ0
待ってたぜ!乙!

45 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:31:38 ID:VC0QHqzQ0
私のミスで、新しくスレを立ててしまいました。

こちらで投下しますので、ご注意ください。

では、最終話いきます。

46 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:33:04 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「久方ぶりじゃのう、モララーくん」

枯れた喉から発されたのは、柔らかくも気高さを感じさせる言葉。
懐旧のこもったその言葉にはどこか優しさも覚える。

(; ・∀・)「何故……こちらが……?」

/ ,' 3「まぁ、それは追々話すとしよう。立ち話もなんじゃ、キミさえよければ上がらせて頂きたいのじゃが」

ドアノブを手にしたまま、半身になってモララーは対応していた。
その余りの不敬さに、モララーは自分を恥じると同時に謝罪の言葉を紡ぐ。

(; ・∀・)「し、失礼しました。どうぞ、何分窮屈な場所でございますが……」

/ ,' 3「そこまでかしこまらなくて結構じゃよ。
    ワシはキミに、国王と匹敵するほどの位、大魔術師の称号を捧げたつもりじゃ。
    昔のように、盟友(とも)として接してくれればよいぞ」

ほっほっほっ、とスカルチノフ国王は、嫌味さを感じさせない笑いでモララーを許した。
いや、元より不敬などとは、彼は思ってもいない。
立場上、その厳しさを見せることはあれ、平時の彼は王ではなく一人の老人なのだ。

( ・∀・)「……ありがとうございます。では、改めて。いらっしゃいませ」

/ ,' 3「うむ。お、そうじゃ。ロマネスクくん、キミも入りなさい」

( ФωФ)「ハッ!」

キレのある返事と共に、扉の影からヌッと大男が出てきた。
黒騎士に与えられる、金の装飾が入った墨色の全身鎧を着こんでいる。背にはVIP大陸の紋章が刻まれたマントも着用していた。
背中には身の丈ほどもある大剣を携えた彼は、有事のロマネスク・ホライゾネルに他ならない。

47 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:34:44 ID:VC0QHqzQ0
王衣も羽織らず、動きやすい普段着のスカルチノフに対し、彼の格好はとんでもなく場違いにさえ見えた。
しかし、ここまでの道のりや他の護衛がない以上は、それくらいの準備は当然のこと。スカルチノフもそれを踏まえて、彼に重曹をさせた。
裏を返せば、彼一人で一個師団ほどの実力があると信頼をしてのこと。
実際に近衛の位を預かっている騎士より動かしやすく、それでいて匹敵する屈強さを備えているロマネスクを、スカルチノフは非常に気に入っていた。

( ・∀・)「ロマネスク団長まで……。お久しぶりでございます」

と、礼節を持って接そうとしたモララーが頭を下げるより早く
ロマネスクはモララーの前に跪き、深々と頭を垂れた。

( ФωФ)「こちらこそ。お懐かしゅうございます。大魔術師、モララー=レンデセイバー殿」

(; ・∀・)「ちょっ……!? ロ、ロマネスクさん!?」

突然の対応にモララーは焦る。
年下であろうと、敬意を払うべき者には徹底的に。
それを地で行くロマネスクだが、ここまでの行為は今まで見たことがなかった。
以前のような、フランクなやり取りを望んでいたモララーとしては、経年劣化のように、ロマネスクが遠い人になってしまったようで寂しさも覚えた。

( ФωФ)「……というのは、冗談である」

(; ・∀・)「え?」

顔をあげ、少しいじわるそうな笑顔を見せたロマネスクは、重量のある金属鎧を纏ってるにも関わらず
衣服でも着込んでいるかのように、軽々と身体を持ち上げてモララーに手を差し出した。

( ФωФ)「とはいえ、本来階級上ではこれくらいの行為は当然なのである。
       お主が知らないだけで、吾輩は常に、お主のことをこれぐらいの気持ちで接していたことだけは、知って欲しかったのである」

( ・∀・)「ロマネスクさん……」

( ФωФ)「堅苦しい挨拶はここまでである。モララー殿、本当に久しぶりである。会えて嬉しいのである」

( ・∀・)「こちらこそ。僕も会えて嬉しいです」

かつての戦友(とも)達は、かつてのようにがっちりと熱い握手を交わした。

48 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:35:33 ID:VC0QHqzQ0






     フタ
最終話「双つの肩」

49 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:38:16 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「お待たせいたしました」

/ ,' 3「おぉ、すまないね」

この大陸で最も大きく、産業も農業も全てが主要である王都NEETの主の前に、シルムの紅茶が置かれた。
柑橘系の、甘くも酸味を含んだ空気をその鼻腔へと吸入する。香りを楽しんだ後、王はゆっくりとカップに口をつけて茶を嚥下した。
たったそれだけの動作なのだが、その中に気品さ優雅さを感じさせる空気が、彼から発せられていた。

( ・∀・)「お口に合うか自信がありませんが……」

/ ,' 3「良いのじゃ。キミがもてなしの心を込めて振る舞ってくれたものを、何故美味い不味いの範疇で語るのじゃ?
    どんなものでも、ワシは喜んで飲むよ」

( ・∀・)「国王……」

( ФωФ)「国王様。ゆっくりと歓談する時間は、私も望んでおります。
       ですが余り長時間、国を留守にするのは……」

/ ,' 3「ほっほっほっ。わかっておるよ、ロマネスクくん、わかっておるよ。わかっておる」

少し乾いた笑いをあげてから、国王はカップをゆっくりと置いた。
そして、それから対面に座っているモララーの目を優しく、覗き込むように見据える。

/ ,' 3「本題に入る前に。まず、今キミが何をやっているのか、それを聞かせてほしい。
    もちろん、差支えの無い程度で構わんよ。言いたいこと、言いたくないことは誰にだってあるじゃろう。
    話せる範囲で、しかし出来るだけ伝わるように、お願いできるかな?」

( ・∀・)「…………わかりました」

モララーは、目をそらさずに答えた。
答えに少し時間を要したのは、拒否反応があったわけではない。
どれだけ話そうか、どれだけ話せるか。それを考えていただけ。
話さない、という選択肢はこの人の前では存在しえなかった。

50 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:40:45 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「まずは、王都を出てからのお話をしましょう」

と、結局モララーは洗いざらい話すことにした。
何故、どうして、を偶に省くことはあったけれど、事細かにこの空白の11年のことを話した。

しかし、内容自体は非常に簡潔だった。
役目が終わったから、城を出たこと。それから、この山中で暮らすことにしたこと。
そこから10年余りは、非常に無味乾燥な話だったのだ。
野菜を作ると決めたこと、城下町で売るようにしたこと。それだけを話すのに数分の所要時間で良かった。

そして一年前。
そう、ここから彼の生活は一気に色を帯びる。
あえて、モララーは誰と会ったのかまでは隠した。目の前にロマネスクが居たことによる配慮なのだろうか。

それでも、彼の語り口調は楽しげであった。
子どもの世界のこと、大人の世界のこと。未だに、悪を掲げる者がいること。

( ・∀・)「とりあえず、騒がれないように彼らはラウンジ大陸に返しておきました。
      多分、もう二度と現れはしないでしょう」

と、あえて重い話は軽く話した。これは、先日の毒田ドクオとの死闘の後日談だ。
話し終えて、モララーは一息つく。話した。話せることは全て。
後は一つだけ。話すか、話すまいか。

/ ,' 3「それが大魔法の発生だったわけか……。
    まったく、スペルキャンセラーを空間ごと張るなんぞキミにしか出来ん芸当じゃの」

( ФωФ)「しかし、大魔法を打ち消せるほどの具足とは……ラウンジ大陸も恐ろしい武具を発明したものである。
       何より、使い手はあの毒田ドクオ……うむむ。うかうかしていられないのである」

51 ◆hCHNY2GnWQ:2012/07/28(土) 21:43:35 ID:VC0QHqzQ0
かつて、戦い敗れたことのあるロマネスクは真剣に悩んだ。
今の自分で、果たして勝てるのだろうか。モララーが撃退してくれたのは嬉しい限りだが、果たして後継者などは存在するのか。
たった一つの戦闘から炙り出された心配事はたくさんあった。

/ ,' 3「なぁに。大丈夫じゃろう。その戦闘狂とやらも心が折れておる。特注の具足ということは、つまり高コストの製品じゃろう。
    正直に言うが、ラウンジ大陸の文明力よりも我々VIP大陸の方が文明は栄えておる。
    それほど高コストの製品を量産できるほど文明が発達しているとは到底思えぬよ」

( ФωФ)「……そうですね。少なく見積もっても、文明の差は10年以上は見受けられますから心配には及びませんね」

/ ,' 3「さて、続きはもうないのかね?」

ロマネスクと安否の話をしていたスカルチノフは、ふいにモララーへ話を振った。
モララーは一瞬のうちに、考える。
言うか、言わざるべきか。

――――ところで、彼が一体何を話していないのか、だが……。

それは、都村トソンのことだった。
何故話さないのか、といえば至極当然。
彼女はラウンジの人間だからだ。
記憶を失っているとはいえ……というところがある。

間違いなく、容姿を見せるだけで国王とロマネスクならば一発でわかるだろう。
この大陸の人間はない、と。
どんな反応を示すだろうか。無条件に忌み嫌っている人たちと違い、哀しき戦争の最前線に立った人たちだ。
少なくとも、拒否反応は示してくるはず。それをどう言いつくろえばいいのだろう。

そして、再び思うのだ。

例えば、話したとしよう。包み隠さずに。

……で、どうして欲しいのだろう。


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