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クリフトとアリーナへの想いは Vol.1

1管理人★:2015/04/05(日) 00:08:03 ID:???
クリアリの話題を扱うための待避所です。
ほのぼのから悲恋物まで、あらゆるクリアリの行く末を語り合っていきましょう!
職人さんによるSS投稿、常時募集!

【投稿内容に関するお願い】
・原作や投下された作品など他人の作品を悪く言うのは控えてください。小説版も含めて。
・趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。
・個人のサイトやサークルなどを特定する投稿(画像などへのリンク含む)はご遠慮下さい。
・読む人を選ぶ作品(死ネタ、悲恋、鬱ネタ等)を投下する時には、先に注意書きをお願いします。
・性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の場所でお願いします。


    ,. --、
    | |田|| 姫様、お気をつけて
     |__,|_||     __△__ 
     L..、_,i    ヽ___/
 . 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ   / ,ノノハ)) クリフトがいるから
   `K~キチス  (9ノ ノ(,゚.ヮ゚ノi. 大丈夫よ!
    ∪i÷-|j @〃とヾ二)つ
    Li_,_/」   ん'vく/___iゝ
     し'`J      じ'i_ノ

クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可)
ttp://www13.atwiki.jp/kuriari/
 ※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。

183名無しさん:2016/05/10(火) 23:53:10 ID:xXjkDHFM
作品投下が始まったことを知らない人がまだ多数派でしょうし、避難所の存在を忘れてる人も多いんでしょうね
ふと思い出したときにwikiを見て新しい作品の存在に気づき、一部の人は避難所に来るのかな?
継続的に作品投下のある避難所であれば、いずれは人が集まるのでは
3ヶ月投稿がなかった時期は2chにスレがあった時期なので、避難所が本スレ化した今は状況が違うはずです

避難所は守られている場所なので平穏が保たれており、作品投下には適しているんじゃないでしょうか
特に従者さんの場合は、今の対話の仕方であれば2chだけは避けた方が良さそうです
無理せず負担のない範囲で、今後ともクリアリファンを楽しませていただけたら嬉しいです

184名無しさん:2016/05/13(金) 01:57:49 ID:XPdVdM/I
今やここが本スレ
ずっと2chでやってきたけど良くも悪くも悪くも2chだったからなー

185従者:2016/05/14(土) 15:07:43 ID:rymdB1q6
ああ、3ヶ月不在は2chと並行していた時期だったのですね。把握もしていなくて;
皆さまが大変だったときに離れてしまっていたことが本当に悔やまれます…

あたたかい声を本当にありがとうございます。
先日過去スレを見直したとき私が書けなくなってから2年たっても名前を呼んでくださっていた方もいました。
今その方々がここにいるかはわかりませんが、どうかご返事させてください。

従者は今ここにおります。帰ってきました。名前を呼んでくださりありがとうございます。


今回はPS版のセリフをなぞらないSSいってみます。
時期はアリーナの幼少期。
クリフトが神学校を卒業してサントハイムへ赴任してからある日のこと、アリーナ視点です。
ちょい役侍女たちとお城のニブい神父さん出てきます。
密着度やたら高いです。でも今回は幼いので微笑ましい……かな。
長くなったので前編後編に分けました。
これまで自分の見た中でクリフトがアリーナに恋をしたきっかけを描いたSSはあまり見かけた記憶がありません。
例えばこんな恋のきっかけ、いかがでしょうか。

186恋をしたのはあの日から 前編 1/14:2016/05/14(土) 15:11:46 ID:rymdB1q6
――クリフトなんかきらい、キライ、大ッキライ!!――


従者の心主知らず 〜恋をしたのはあの日から〜


あたしはずっとぶすっとしてた。クリフトったらあうたんびにお説教のあらしなんだもの。
言葉づかいだってきびしいわ。
「あたし」はお父さまやじいのまえだけ、ふだんは「わたし」、おおやけでは「わたくし」ですって。
いみがつうじれば言葉なんてなんだっていいじゃない。

いつでもあたしのあとをついてきて、おしゃべりいっぱいしてくれて、雨の日は絵本をよんでくれて。
パンチをしたらすぐ泣いちゃって、それでも姫さまぁっていってあたしのあとをついてくるの。
あのころのクリフトはもうどこにもいないんだ……。


「えー神父さまいないのー?」
「はい、今日は急ぎの用がたくさんありましてね。申し訳ありません」
「えー…」
「ですから今日のお勉強は自習です。クリフトとふたりでしていただけますか?」
「えー?」

やだな、クリフトとふたりでなんて。いちにちじゅうお説教をきかされちゃう。
そうだ。休んじゃおう。
あたしは神父さまをおみおくりしたあとクリフトがくるまえにまどをこわしてなんとかお外へはいでた。
きょうはくもひとつなくってとってもいいてんき!んー!きもちいーい!

「姫さま!なんという…!」

あ、クリフト。もう見つかっちゃった。

「やだっ!お勉強なんかしないもんっ!」
「姫さま…!」

あたしはおおいそぎでちかくにあった木にのぼった。

「姫さま危険です!おやめください!」

187恋をしたのはあの日から 前編 2/14:2016/05/14(土) 15:15:32 ID:rymdB1q6
クリフトはすぐいきますといっていなくなった。からだがおっきいからまどからはでられなかったのね。
少ししてむこうから走ってくるクリフト。

「姫さま!下りてください危険です!」

大声でさけぶクリフト。いつものうるさいお説教クリフト。
でも木の下にきたときにはあたしは手のとどかない高いとこまでのぼってた。

「姫さま!」
「やだっ!ぜったい下りないもん!」
「姫さま…!」

あたしはとおくをながめた。きょうはお空がすんでてとってもきれい。風もとってもきもちいい。
こんなきもちのいい日にかたっくるしいお勉強なんかしたくない。クリフトとふたりでなんかもっとしたくない。

――ずっとこのままでいられたらいいのに――

「姫さま!」

クリフトがまた大声でさけんだ。ふ、ふーんだ、おこったって下りたげないんだから。

「今行きます」

え?
うそ、クリフトのぼってきた?ほんとに!?
クリフトはえだに手をかけたり足をかけたりしてる。ほんとにのぼってるの!?

――神父さまだって木の上まではのぼってきたことないのに!――

「クリフトこっちこっちー。ながめがとってもいいのよー?」
「姫さま!それ以上登らないでください!」
「やだもーん」

クリフトどんどんのぼってくる。なんだかわくわくしてきちゃった。

「クリフトはやく、こっちー」
「姫さま……。私は、あなたと遊ぶために登っているのではありません」

188恋をしたのはあの日から 前編 3/14:2016/05/14(土) 15:20:52 ID:rymdB1q6
けっきょくこれ以上はのぼれないってとこまでのぼりきっておいつかれちゃった。

「姫さま……は、はやく下りましょう……」

すこし下をむいてこわい顔でしゃべるクリフト。あーあ、このあといつものお説教がまってるのね。
でも今日はちょっとだけ楽しかったわ。あたしはにっこりわらってみせた。ちょっとびっくりするクリフト。

「姫さま……なにを、ひめさ……姫さま!!」
「あれ?…ちょっとー」
「姫さま!大丈夫です!すぐ持ち上げますからっ!」

木からとびおりようとしたあたしをクリフトがつかんだみたい。からだがぶらーんてなってる。

「ちょっとーはなしてよー」
「なにをいっているのですか姫さま!」
「きゃああっ!姫さま!?」

あ、侍女だ。こわれたまどからのぞきこんでる。

「誰か、誰か姫さまをっ!!」

侍女はだれかをよびにいったみたい。あーあ、お父さまやじいのお説教までまってるわ。クリフトのバカ。

「姫さま、動かないでください!」
「はーなーしーてー」
「姫さま、すぐ、すぐ持ち上げますから…っ」
「だーかーらー」

あ、侍女もむこうからやってきた。そのうしろに兵士がふたり。
あたしははやくおりたくってからだをめいっぱいゆらした。そしたらやっと自由になった。

「きゃああっ!!」
「よいしょっ!!いったあああ…!」ぇぇっ…!!」

足がじんじんする。やっぱりこんかいはちょっと高かったなあ。つぎおりるときは気をつけよっと。

「クリフト?」

189恋をしたのはあの日から 前編 4/14:2016/05/14(土) 15:25:05 ID:rymdB1q6
クリフトは顔を下にしてねてた。ぼうしがとれてる。

「クリフト…?」

もういちどよんだけどクリフトはへんじをしない。

「クリフト…??」
「姫さまご無事ですか!?」

気がついたらまわりにたくさん人があつまってておおさわぎになってた。


「ええ……首の骨にひびが……」

「ええ、命に別状はございません。二、三日ほど安静にしていれば……」

「……はい……はい…。この度は誠に申し訳ありませんでした……」

クリフトが教会にはこばれてからあたしはずっとクリフトを見てた。
クリフトはただねむってるだけだって。そのうちおきるんだって。
だいじょうぶなんだって。
お父さまやじいにいわれていちどおへやにもどる。このあとまってるのはお説教。わかってる。
でもあたしはクリフトのことばっかかんがえてた。

おへやにもどるとちゅうとなりのおへやで侍女たちがなにかしゃべってるのがきこえてきた。

「まったく、姫さまのおてんばにも困ったものだ」

…………。
いつものこと。あたしはおてんばでいうこときかなくて、みんなにめいわくかけるわるい子。
もういいの。いわれなれてるから。

「それにしてもあのお付きの神官は何をやってたんだ。姫さまといっしょに木登りしてたっていうんだろ?」
「外出の際も兵士に何の報告もしてなかったそうですわ」
「いったい何を考えてるんだ…!」

…………。
あたしはおへやにとびこんで大声でさけんだ。

190恋をしたのはあの日から 前編 5/14:2016/05/14(土) 15:29:06 ID:rymdB1q6
「ちがうわ!クリフトはあたしを木から下ろすためにのぼったのよ!クリフトのことわるくいわないで!」

おへやにいたみんながびっくりしてあたしを見る。

「姫さま……失礼いたしました……」

口をそろえてあやまるみんな。どうせうわべだけのみんな。おとなはいっつもほんとのことをいってくれないの。

「みんなみんな大ッキライ!!」

あたしはもういちど教会に走った。だれもあたしをとめなかった。


教会にとびこんできたあたしに神父さまはさいしょびっくりしたけどわらってまねきいれてくれた。
さっきとかわらずねてるクリフト。あたしはまたずっとクリフトを見てた。

「寝る時までロザリオをつけていては肌を痛めてしまいます。これは外しておきましょうね」

神父さまがクリフトのくびからロザリオをはずした。たなの上においたあとあたしの前で片ひざをつく。

「姫さま」
「……」
「あなたがこうしてクリフトを心配してくださるように、王様も、あなたのお父上もまたあなたのことを心配しています。
クリフトはもう大丈夫ですから、さあ、お部屋にお戻りなさい」

…………。

「お父さまがしんぱいなのは、あたしじゃないのっ」
「姫さま?」
「お父さまがたいせつなのは、お上品で、おしとやかで、お母さまのかわりができるだれかであって、あたしじゃないのっ」
「姫さま……そんなことは……」
「あたしじゃなければよかったの」
「…………」
「あたしじゃなくて、もっとお母さまみたいな、お上品で、おしとやかで、いっつもわらってて、
なんでもいうこときく女の子らしい子があたしだったら、お父さまもあんなにおこったりしなくていいの」
「………………」

191恋をしたのはあの日から 前編 6/14:2016/05/14(土) 15:34:12 ID:rymdB1q6
あたしはクリフトの手をぎゅってした。

「ねえ神父さま、あたしここにいちゃダメ…?クリフトといっしょにいちゃダメ…?おへやにもどりたくないの」
「姫さま……」
「だって、おへやにもどったってあたしのいばしょなんてないんだもん」

あたしは神父さまをまっすぐ見た。神父さまはこまったようなお顔をしてる。
でもあたしは目をそらさないでずっと神父さまを見てた。そしたら神父さまは手でお顔をかくしたの。

「子どもにこんなことを言わせるなど、王は……神は……!」
「神父さま…?」

神父さまはしばらくお顔をかくしてたけど手をはなしてあたしを見た。
神父さまはとってもやさしいお顔をしてた。

「ええ、姫さま、ぜひここにいてくださいますか?
先ほどは戻るよう申し上げましたが、本当は私も姫さまにここにいてほしいのです」
「…ほんとに?」
「ええ、うそをついてしまって申し訳ありませんでした。
あなたがそばにいてくだされば、クリフトもきっと安心してぐっすり眠れるでしょう」
「うん!」

「王様には私からお願いしておきますよ。クリフトをよろしくお願いしますね」
「ありがとう神父さまっ」

神父さまはおへやをでていった。あたしはクリフトに向きなおる。うれしいはずなのに、なんだかもやもやしてた。
さっきまでわらってたのに、おへやをでていくときちらっと見えた神父さまはこわいお顔をしてたの。
たけのながいぼうしをかぶりなおして、お仕事のときしかつかわないつえをもって、しずかに十字をきってでていった神父さま。
神父さま…?
あたしはクリフトの手をぎゅってした。ちょっとだけつめたい。あたしは思いきってベッドにはいってクリフトをぎゅってした。
クリフトのからだはあったかい。ちょっとだけほっとした。きっと外にだしてたから手はつめたくなってしまったのね。
あたしはもういちどクリフトの手もぎゅってした。あたしがあっためたげる。きょうはクリフトといっしょにここですごすんだもの。
クリフトはやくおきないかな。


「おかあさまぁ…」

じぶんでいってはっとした。あたし今、お母さまっていったの…?

192恋をしたのはあの日から 前編 7/14:2016/05/14(土) 15:38:22 ID:rymdB1q6
お母さまのことはもうあんまりおぼえてないの。
おぼえてるのはいっつもわらってるお母さまのお顔。となりでねむってるお母さまのお顔。

どんなに声をかけてもおきなくて。
つかれておきられないのかなっておもったけど、つぎの日になってもお母さまはおきなくなって。
いつからかまわりがあわただしくなって、お父さまやじいや大臣、神父さままでよくくるようになって。
お父さまがお母さまをおふとんの上からぎゅってしたのを見たことある。

いつだったかお母さまのお顔に白い布をかけた日があったの。
そんなことしたらいきができなくて苦しいじゃないってあたしははんたいしたのに布をとってくれなくて。
あたしはもしお母さまが苦しがってたらすぐ布をとってあげようと思っていっしょにねたの。
でもお母さまはおきなくて。ぜんぜん苦しがらなくて。

どんどんお母さまがつめたくなってくの。どんなに大きな声でよんでもおきないお母さま。
もうにどとおきてくれないお母さま……。あたしをおいてとおいお空にいっちゃうの。

お母さま…!

おぼえてないんじゃない。あたし、あたし…っ

――いっしょうけんめい思いださないようにしてたんだ!――
――おかあさま…っ!!――

「クリフトおきて。ねえおきて。あたし言葉づかいちゃんと気をつけるから。お勉強もがんばるから。
だからおきて。ねえおねがい。おきて……」

クリフトもしんじゃうの……?
クリフトもあたしをおいてとおいお空にいっちゃうの……?

「やだぁ…やだよお……クリフト……クリフトぉ…っ」

あたしはクリフトをぎゅってした。

「やだぁ…やだあぁ…っ」

やだあああ……。

193恋をしたのはあの日から 前編 8/14:2016/05/14(土) 15:42:19 ID:rymdB1q6
どれくらいじかんがたったんだろう。あたしはずっとクリフトをぎゅってしてた。
クリフトはあったかい。つめたくなってない。だからだいじょうぶ。
あたしがつめたくならないようにあっためる。ずっとあっためる。
だって、つめたくならなければクリフトはいつかおきてくれるでしょ?ここにいてくれるでしょ?
そのうちきっとおきてくれるわ。だからあたしはもっとクリフトをぎゅってしたの。

「っ…」
「クリフト?」

クリフトがすこしだけからだをうごかしたような気がした。

「クリフト…?」
「ひめ…さま…?」

とじてた目が……あいた。あいたの。クリフトがおきた……。おきた!おきたんだっ!!
クリフトはぼんやりした目であたしを見た。
あたしはたぶんなみだで顔がめちゃくちゃだったかもしれないけどいっしょうけんめいえがおでクリフトをむかえたの。

「クリフト。アリーナよ。わかる?」
「姫さま……ここは……私はいったい……はっ!姫さまっ」

クリフトはあたしからはなれようとした。あたしはとっさにクリフトの服をつかむ。
もういちどクリフトをおふとんにもどしてぎゅってした。

「やだクリフト。どこにもいかないで」
「何をおっしゃるのです。は、離してください。なんというみだらなことを…!」
「やあだ」

クリフトだ。いつものうるさいお説教クリフトだ。よかった…。よかった…っ。

「よかったああ…っ」
「姫さま…」
「クリフト、さむくない?ぐあいわるくない?あたまいたくない?」
「姫さま……」
「あたし、あたしね……クリフトがしんじゃったらどうしようって…っ」
「勝手に私を殺さないでください」
「うん、よかった……ほんとによかったぁ……っ」
「…………」

194恋をしたのはあの日から 前編 9/14:2016/05/14(土) 15:46:53 ID:rymdB1q6
あたしはクリフトをぎゅってした。

「っ…姫さま…っ」
「よかった…っ」
「………っ…」

クリフトはまだあたしからはなれようとする。

「こ、こんなことが王様に知れたら…っ」
「だいじょうぶ。神父さまがお父さまにおねがいにいってくれたの。あたしはきょうはここにとまるの」
「そんな…!」
「だからだいじょうぶ」
「そんな……」

あたしはもういちどクリフトをぎゅってした。

「っ…なぜ……なぜ神父様がそのような……」
「ここにいたかったの」
「…………」
「おへやにもどりたくなかったの」
「………………」

――クリフトといっしょにいたかったの――

あたしはクリフトをまっすぐ見てほんとのことをいった。

「そしたら神父さまがお父さまにおねがいにいってくれたの」
「………………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。びっくりした顔っていうかちょっとこまった顔っていうか。
きっとまってるのはいつものお説教。でもいいの。あたしはもういちどクリフトをぎゅってした。

「あ…」
「ほんとによかった…」
「………………」

あたしはクリフトを見てお母さまみたいににこってわらった。それからまたやさしくぎゅってする。

195恋をしたのはあの日から 前編 10/14:2016/05/14(土) 15:50:54 ID:rymdB1q6
「っ…………」
「クリフトがぶじでよかった…」
「………………」

クリフトのからだはあったかい。生きてる。ちゃんとここにいる。もうだいじょうぶ。だいじょうぶ……。

「姫、さま……」
「うん、もうだいじょうぶ」
「……………………」

お花のにおい……葉っぱのにおい?クリフト、とってもいい匂いがする……。
あたしはなんどもなんどもクリフトの顔を見てクリフトのすがたをかくにんして、ぎゅってした。
クリフトをそばにかんじたかったの。手をのばしてもっとクリフトをかんじる。

「ひめ…さま…」
「うん。よかった…」
「…………姫…っ」
「んっ」

クリフトもあたしをぎゅってしてきた。ちょっとドキっとしちゃった。
でもからだがふるえてる……。クリフト、こわいんだ。いたい思いをしたから……。
あたしがいたい思いをさせちゃったから……。
それにさむいのかも。あっためなくちゃ。あたしがあっためてあげなくっちゃ。

「うん、クリフト。もうだいじょうぶだからね。だいじょうぶだから。
クリフト……ごめんなさい……」

あたしはクリフトのからだをさすった。もういちどぎゅってする。

「ち、ちが……これは…っ」

こんこんて音がした。だれかがおへやのとびらをたたいたみたい。
そしたらクリフトがぱっとあたしからはなれようとするの。あたしはクリフトの服をつかんでひっぱった。
クリフトを引きよせてもういっかいぎゅってする。あわてるクリフト。

「姫さま、神父です。入りますよ」

196恋をしたのはあの日から 前編 11/14:2016/05/14(土) 15:55:01 ID:rymdB1q6
あ、神父さまだ。

「あ、あの、姫さ…っ」
「だいじょうぶだから、クリフト」
「ちが、あの…っ」
「だいじょうぶ」

クリフトはしばらくあたふたしてたみたいだけどあたしのかたに顔をうずめてしがみついた。
うん、だいじょうぶ。

「神父さまーはいってー」

とびらがあいて神父さまがはいってきた。

「おや」
「……っ」

クリフトふるえてる。すっごくふるえてる。どうしてこんなにふるえてるんだろう。

「だいじょうぶよ。クリフト」
「っ……っ」
「…………」

「これはお取り込み中大変失礼いたしました」
「えー神父さまー」

神父さまはこっちを向いたまま下がってとびらをはんぶんしめちゃった。

「クリフト、意識が戻ったのですね。具合いはいかがですか?」

はんぶんになったとびらのむこうからお声をかける。あたしはクリフトを見た。
クリフトはしばらくあたしのかたに顔をうずめてたけどゆっくり顔を上げて神父さまのほうをむいた。
クリフトは切ないみたいな苦しいみたいな顔をしてた。クリフト…?

「神父様…っこんな……」
「…………」
「こんなこと学校では教わりませんでしたっ」

197恋をしたのはあの日から 前編 12/14:2016/05/14(土) 15:59:52 ID:rymdB1q6
え?

「こんな……こんな感情……」
「クリフト…?」
「わ、私は……わたしはいったい…っ」
「…………」
「なぜこんな……こんな……」

クリフト…?

「わたしは、アリーナ姫を……こんな…」
「…………」
「こんな……みだらな……罪…っ」
「………………」

え、なに、どうしたの?どうしてクリフトはこんなにとりみだしてるの?どうして?
神父さまはとびらのむこうでだまってる。クリフトは泣きそうな顔してて……。

「……クリフト」
「神父様っ……」
「………………」

すこしして神父さまがおへやにはいってきた。クリフトの前まできてかがむ。神父さまは……やさしいお顔をしてた。

「今あなたに生じた感情は、人間であればだれもが持ち得ているものです。もちろん私も持っている情です。
学校で教わったことがすべてではありません。何も怖れることはありませんよ」
「……っ…………っ……」
「大丈夫ですクリフト。情を持つこともそれを表に出すことも罪ではありません。
ゆっくり深呼吸をして、肩の力をお抜きなさい」
「……………………」

クリフト…。
クリフトはちからがぬけたのかな。ふっとうしろにたおれこんだの。あたしはあわててクリフトをささえてゆっくりねかす。

「………………」
「クリフト…」
「……………」

198恋をしたのはあの日から 前編 13/14:2016/05/14(土) 16:10:33 ID:rymdB1q6
クリフトはぼんやりした目であたしを見たけどすぐ目をそらしちゃった。クリフト…。
クリフトは神父さまのほうを見る。

「神父様……申し訳ありません……」
「…………」

神父さまはおふとんをととのえてクリフトの頭をそっとなでた。

「まだ体を支えるのも大変でしょう。今はゆっくりお休みなさい」
「………………」

クリフトははいっていおうとしたのかな。口をうごかそうとしてたけどそれは声にならなくて、ゆっくり目をとじちゃった。
口ももううごかそうとしなかった。

「まだ治癒をすませたばかりですからね。疲れていたのだと思います」

神父さまがもういちどクリフトの頭をやさしくなでた。クリフトはもうねむってた。クリフト…。
さっきふたりがはなしてたこと、むずかしくてよくわかんなかった。つみ……つみってなに…?

「姫さまも」
「え?」
「姫さまも、どうか中へ。今夜はずっとクリフトのそばにいてくださいますか?」
「あ、うん!」

神父さまがおふとんを上げてくれてあたしは中にもぐりこんだ。もういちどクリフトをぎゅってする。
神父さまはやさしくわらってくれた。クリフトといっしょにゆっくりおやすみくださいって。
さっきクリフトがいってたのは、あたしがあんまりちかくにいてびっくりしたのとやみあがりでつかれていたのとあって
あせっちゃっただけなんだって。あんまり気にしなくていいんだって。あしたはなせばわかるって。
あたしはまたずっとクリフトを見てたけど気がついたらうとうとしてたの。クリフトのからだがあったかいからだわ。
そう、クリフトはあったかい。ほんとうにもうだいじょうぶ。だいじょうぶなんだ……。
よかった……。ほんとうによかった……。あたしもクリフトをぎゅってしながらゆっくり目をとじた。


「姫さま……。
クリフトの母が天に召され、クリフトもサランへ戻り、ここに遊び相手がいなくなっても、あなたはよくこの教会に足を運んでくださいましたね。
あの時私が、どれだけ嬉しかったか、わかりますか?」
「んー…」

199恋をしたのはあの日から 前編 14/14:2016/05/14(土) 16:14:47 ID:rymdB1q6
神父さまがなにかしゃべってる……。あたしはうとうとしながらきいた。

「あの時あなたは懸命に否定してくださいましたが、当時私は本当に、本当に、自分でもいやになるほど役立たずだったのですよ。
神の声がまったく聞こえなかったのです。何もかも、すべてが疎かになっていて……ニブい神父と言われても仕方がなかったのですよ」
「えー神父さまはなんにもわるくないよー」

神父さまは小さくわらった。

「その言葉にどれだけ救われたことか……。姫さま……あなたのその笑顔に、どれだけ救われたことか……」

神父さまはとおくを見たみたい。

「本当に、失ったものばかりを数えていてはいけませんね……」
「んー…」

――命はこんなにもたくましい――

神父さま…?

「母たちよ、見ていますか。あなた方の遺した子どもたちは今、こんなに元気に育っていますよ」

神父さまはずっととおくを見てる。なにを見てるんだろう。でもすこししたらこっちをむいてわらってくれた。
あたしはほっとしていっしょにわらう。そしたら神父さまがあたしの頭もなでてくれたの。とってもおっきくて、昔のお父さまみたいなやさしい手。
あたしはあんしんしてまたゆっくり目をとじた。神父さまはあたしがねるまでずっと頭をなでてくれた。


――次代を担う子どもたちよ、健やかであれ――

200従者:2016/05/14(土) 16:20:04 ID:rymdB1q6
>>192>>193の間もう一行改行したつもりなのに反映されてなかったんだぜ。
最後の神父さんとの会話は例のごとく今後のためのただの伏線です。いつもすみません;

今回、以下より二人はこんな幼少期だったのではと推測したSSとなっております。

FC版より
・クリフトは神学校を主席で卒業

PS版より
・クリフトは幼いころサランの教会で神の道を教えてもらった
・クリフトは昔からどうも身体が弱い(ブライのセリフより)
・アリーナは小さいころサントハイム王妃の葬儀で王家の墓に行った(ことを覚えている)
・アリーナはよく家庭教師の前で居眠りしていた(ブライのセリフより)
・クリフトは玉座の間にてアリーナの命令で代わりにブライの説教を聞いていた(プロローグより)
・クリフトはブライからアリーナが一人旅に出るという情報を聞いていた(FC版と共通)

小説版より
・クリフトとアリーナは乳兄妹

クリフトとアリーナは乳兄妹としてサントハイムで育ったが
クリフトがサランの教会で神の道を教えてもらいそのまま神学校へ。
(神学校の所在はサラン近辺にあるとしてサランの神父さんも教官の一人としました。
5の学校の規模を見るに下手したらあの教会が神学校という可能性もありそうなので)
その後学校を首席で卒業、サントハイムの教会に見習い神官として赴任。
アリーナは次期女王となるべく勉学の時間があり神学のみ(アリーナの希望で)教会にて、
クリフトが赴任してからは(必然的に)クリフトも同席したとしました。
(その他命令(気まぐれ)でクリフトを玉座の間に呼び出したり遊び相手にさせたりもしており
明確な役職としてではないがクリフトに従者の役目もそこそこ果たさせているとしました)

この従者シリーズではとりあえずそんな感じの幼少期でいってみようと思います。
もしイメージと違う方がいましたらどうかご容赦ください。
公式にて詳細が判明次第そちらを優先したいと思います。(すでに抜けなどありましたら教えてください;)
この度はご覧いただきありがとうございました。後編は翌日〜その後の予定です。

201従者:2016/05/14(土) 20:02:43 ID:rymdB1q6
学校は5じゃなくて4のイムルだったorz
誤字も見つけたしもうダメだorzorz

202名無しさん:2016/05/14(土) 22:15:55 ID:S2LTRg/s
>>185
手が離せないのでSSは後で読みますが、言いそびれないうちに…乙です

気分が悪くなる時期には見ない書かないが一番
不在で良かったんじゃないでしょうか

203名無しさん:2016/05/15(日) 05:23:58 ID:2Lhxuwkg
>>201
なんだかお疲れ様です。

過去にも似た場面があったことで、同じシーンに奥行きが!
さすが、一過性のクリアリ萌えシーンでは終わらせませんね。
クリアリにもシナリオにも注目です。

神父様が絶妙な伏線を張ってくれました。
やり過ぎない程度に心に引っかかりを残す力加減がお見事。
今後への期待が高まることを避けようがありません。

204名無しさん:2016/05/20(金) 02:56:24 ID:7.6Y2vZs
コテハンのキャップ持ちだと投稿制限が緩和されるなら良かったけど、
したらばにそういう機能はなさそうだね

205名無しさん:2016/05/23(月) 02:25:16 ID:lwr.tU/w
>>201
後編の前ではあるんじゃが、ここでGJという言葉を贈ることにしようかの
なるほど、前編だけでも一旦の区切りをつけておるようじゃな
さすがの安定感じゃ

206従者:2016/05/24(火) 21:49:27 ID:fD0voP1o
従者です。少々出遅れました。
PS版のセリフをなぞらないSSアリーナ視点「恋をしたのはあの日から 後編」いきます。
お城の神父さんとサランの神父さん出てきます。密着度やっぱりちょいありです。
両神父との関係や城と教会との関係などやや疑問を残す流れかもしれませんが後ほど解消予定です。
取り急ぎクリアリには影響ないかなと思われますので何とぞご容赦を…。ではどうぞ。

207恋をしたのはあの日から 後編 1/14:2016/05/24(火) 21:55:38 ID:fD0voP1o
あったかい。あったかい。だれかがあたしをぎゅってしてくれてるの。
だあれ?あたしをぎゅってしてくれてるのはだあれ?あたまをなでてくれてるのはだあれ?
お父さま?お母さま?

――姫さま…――

神父さま?

――さようなら…――

え…?
だあれ?だれなの?

だれかがなにかはなしてるのがきこえる。でもあたしはねむくておきられなかった。
やっと目をあけたときあたしはいつもとちがうとこでねてた。
そうだ、きのうは教会にとまったんだった。
まわりを見たら神父さまがそばにいてごあいさつをしてくれた。クリフトは……

「どうしてクリフトはいないの!?」

あたしは大声でさけんだ。クリフトがいなかったの。きのういっしょにねたはずなのに。

「クリフトは……クリフトはお休みをとったのですよ。養生のためしばらくサランで過ごすそうです」
「えーあたしなんにもきいてないわ」
「そうですね……。せめて姫さまが目覚めるまで待ってはと何度も止めたのですが……」
「うー…」

「ねえ神父さまー、きょうのお勉強サランにいっちゃダメ?クリフトにあいたいの。だってなんにもおはなししてないもの」
「そうですねえ……。先日も外出しましたからねえ……。今度はどんな理由で外出しましょうか……」
「うー…」
「………………」

「ああ、視察にしましょう。サランの大聖堂に収めてある女神像の視察と歴史のお勉強。そのついでにクリフトの様子も見てくる。
今回はそんな感じでいってみましょうか」
「うん!」
「あくまでサランの大聖堂に行く理由は女神像の視察です。クリフトと話したあと視察っぽいこともしますので覚えておいてくださいね」
「はーい」

208恋をしたのはあの日から 後編 2/14:2016/05/24(火) 22:01:09 ID:fD0voP1o
あたしはもういちどおふとんにもぐった。おふとんあったかーい。神父さまはたなのそばでご本をよんでる。
あたしはおへやにもどりたくなくってお勉強のじかんまでここにいていいってきいたら
きがえて顔をあらってお祈りしてあさごはんをたべないといちにちがはじまらないからどうかおへやへっていわれた。
それさえおわればまたここにきていいからって。たしかにおなかはすいてきたけど……
それからお父さまに教会にとまるおゆるしをくれたことのお礼をいってくださいって。
お勉強をずる休みしたことも木にのぼったこともあやまらなくていいからお礼だけはしてくださいって。
やだな、お父さまにお礼なんて。

おへやにいくにはお父さまの前をとおらないといけないの。あたしははやく教会にもどりたくって走っておへやへ。
兵士たちをすりぬけてかいだんをのぼったらいつものとこにお父さまもじいもいた。
ごあいさつだけしていそいでとおろうとしたけどアリーナってよびとめられる。やっぱり。
あたしはぶすっとした顔になっちゃったけどいっしょうけんめいお礼をいったの。
そしたらきのうはよくねむれたかですって。
あたしはクリフトがあったかかったからすごーくよくねむれたわっておおげさにいってやった。
じいがちょっとだけさわいだからクリフトはなんにもわるくないわって、クリフトのことせめないでって大声でさけんだの。
そしたらお父さまは……

お父さまもじいもあたしのことおこらなかったの。クリフトのことも……ぜんぜんおこらなかったの。
神父さまといっしょにサランへいくっていってもそうかって、気をつけていってくるのだぞっていうだけだったの。
なんか……なんかへんなの。
きのうのことがうそみたいにふつうにおきがえをして侍女にかみをといてもらってお祈りをしてあさごはんをすませる。
あたしはまた教会へ。神父さまがまってくれてたみたいでさっそくサランへつれてってくれた。


サランの教会に入る。いつものとこにサランの神父さまはいなかった。クリフトは……
お城の神父さまがシスターにクリフトのことをきいてくれた。

「申し訳ありません、神父様とクリフトは別室でお話をされています」
「ああ……告解室ですか」
「あ、は、はい…」
「…………。告白するようなことなど、何もないと思うんですがねえ……」
「……」

神父さまとシスターがなにかむずかしいおはなしをしてる。なにをはなしてるんだろう。

「姫さま」

209恋をしたのはあの日から 後編 3/14:2016/05/24(火) 22:06:53 ID:fD0voP1o
神父さまがもどってきた。

「クリフトは今サランの神父様とお仕事の話をしているそうです。待っている間に例の視察でも終わらせておきましょうか」
「あ、うん!」

あたしは神父さまといっしょに女神像の前へ。のぼったらながめがよさそうなおっきな女神像。
サランの教会はとってもひろい。おいかけっこができそうなくらい。ものもいっぱいあるからかくれんぼもできそう。
でも走るとクリフトがうるさいからできないの。クリフトはいっつもうるさいの。お説教クリフトなの。
でもきょうはそのクリフトにあいにきたんだわ。

「ああ姫さま、終わったようですよ」

むこうからサランの神父さまがあるいてきた。そのうしろに……あ、クリフトだ。いつものふくとぼうしのクリフト。
ふたりともあたしにあたまを下げてごあいさつする。あたしはいっしゅんサランの神父さまににらまれたような気がした。
サランの神父さまはお城の神父さまにもごあいさつする。

「大司教殿……。またアリーナ姫様をお連れして……視察と称した散策ですか」
「ええ、視察と称した視察です」
「…………。お戯れもほどほどにしていただきたいものです」
「おや人聞きの悪い。どこをどう見ても立派な視察じゃありませんか」

ふたりはそのあともなにかはなしてたみたいだけどあたしはクリフトが気になってずっとクリフトを見てた。
クリフトもあたしに気がついたみたいでこっちにくる。あたしの前まできたらクリフトはあたまを下げたの。

「アリーナ姫さま、この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした」
「なによクリフト、かしこまっちゃって」
「姫さまがご無事で、何よりでした……」
「…………」

「ねえクリフト、これからもいっしょにいられるんでしょ?」
「……はい、変わりなく」
「いっしょにあそべるんでしょ?」
「……はい」
「ん」

よかった……。

210恋をしたのはあの日から 後編 4/14:2016/05/24(火) 22:10:58 ID:fD0voP1o
「クリフト、こんどじょうずな木のとびおり方おしえてあげるからねっ」
「そ、それはまたの機会に……」

よかった。
これからもクリフトといっしょにいられる。
よかった……。

「クリフト」
「はい!」

クリフトがふりかえる。サランの神父さまがよんだみたい。

「立ち話も失礼です。アリーナ姫様を部屋へご案内してさしあげなさい」
「あ……はい」

あたしはクリフトのあんないで今までいったことのないおくのおへやにつれてってもらった。
シスターがのみものをもってきてどうぞごゆっくりっていってでてった。あたりがいっしゅんしんとなる。
あたしはさっそくのみものをのみながらきのう気になったことをきいた。あ、ジュースおいし。

「ねえクリフトー」
「…はい、姫さま」
「きのう侍女がはなしてたのをきいたの。どうしてお外にでたときあたしのこと兵士にいわなかったの?」
「は…?」
「だから、あたしをおいかけたときお外へでたでしょ。そのときどうしてあたしのこと兵士にいわなかったのかなって……」
「………………」

「なぜ、そんなことを……」
「いいじゃない、しりたいの」
「…………」

「……確かに、私らしくない対応ではありました。あなたをかばうなど」
「え?」
「あの時、静かなはずの教会からあまりに不快な音がしたもので、まさかと思えば案の定壊れた窓の先にいらっしゃったのはあなたで」

う。

211恋をしたのはあの日から 後編 5/14:2016/05/24(火) 22:15:55 ID:fD0voP1o
「ただ、神父様から本日の講義は自習と伺っていましたし、嫌気が差してのずる休みだということは一目で把握いたしました」

うう。

「というのはあなたの第一声で確信したわけですが」

ううう。

「私は今はただの神官ですがゆくゆくはサントハイムの教会を任される身になるかもわかりません。
本来ならあなたを無事連れ戻すため王様や兵士に早急にご報告しなければならない立場だったのですが、そうしなかったのは私の怠慢によるもの。
罪深きことです……」

え…?

「ただ、ご報告することは放棄しましたが、かといってあなたのずる休みや木登りを容認したわけではありません。
ですからあの時私が取れる最善の対応は……誰にも知られぬうちに教会に戻っていただくこと、あれ以外には浮かびませんでした」

…………。

「以上です。望む解答は得られましたか?」
「あ……はい……」

えっと……。あたしはいっしょうけんめいあたまの中をせいりした。
クリフトは……ほんとはあたしのことお父さまや兵士にいわなきゃいけなかったたちばで……でも、あたしのこと……かばってくれたんだ……。
きのうのことを思いだしてみる。走りながら大声でさけんでたクリフト。あたしが下りるまでまってなくて木の上までのぼってきたクリフト。
そっか……。そうだったんだ……。そうだったんだ!そう思ったらなんだかうれしくなってきた。

「ありがとうクリフト!」

クリフトのうごきがとまった。

「なぜ、礼を……」
「ありがとう!ほんとうにありがとう!」
「か、勘違いしないでください。あなたのためだけではありません。神父様にご迷惑をおかけしたくなかったからです」

なんかあわててるクリフト。

212恋をしたのはあの日から 後編 6/14:2016/05/24(火) 22:20:37 ID:fD0voP1o
「それにあなたの運動神経のよさは理解していますから、多少の木登りならそこまで危険はないと判断したためです」

あたしはずっとクリフトを見てた。なんかいっしょうけんめいしゃべってるクリフト。なんでかわらっちゃった。

「ありがとうクリフト!」
「〜……」

「今さらではありませんか。こんなこと……」
「えへへ」
「ですが、結局侍女に知られてしまいました。あなたにも危険な思いをさせてしまい……今回の判断はあまりに軽率でした…。
私が暇をいただきサランへ帰ったのは、自粛の意味も込めているのです」
「?じしゅく?」
「自らに処罰を下したのです」
「え、なんで」
「…………」
「お父さまもじいもあたしのことおこらなかったの。クリフトのこともぜんぜんおこってなかったわよ?だから、だいじょうぶよ…?」
「……まさか」
「だいじょうぶだから」
「……まさか……」

――おお、クリフトか。もう体調はよいのか?――
――クリフト、今回の件そなたへの処罰はない。神父への処罰もない。今までどおり日課に励むがよい――
――聞けばアリーナを連れ戻すために木の上まで登ったそうだな。大儀であった――
――アリーナが侍女にそういったのだそうだ――
――昨夜もあやつは教会で寝るといって聞かなかったそうだな。いつも世話になる……――
――なに、サランへ行くと申すか――
――どうしても行くというなら止めはせんが体調がよくなり次第またサントハイムへ戻ってまいれ――
――待っておるぞ――

「なぜ……」

クリフトは下をむいちゃった。なにかいっしょうけんめい考えてる。あたしは……あたしはまちきれなくってきいちゃった。

213恋をしたのはあの日から 後編 7/14:2016/05/24(火) 22:24:48 ID:fD0voP1o
「ねえクリフトー、じしゅくっていつおわるの?あしたにはこっちにこれるの?」
「あ、明日!?明日は……無理です……」
「えー…。じゃああさっては?」
「姫さま……。なぜそんな、私が戻る時期を気にされるのです」
「えーだって」
「……」
「だって、クリフトといっしょにいたいんだもん」
「…………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。でもあたしはクリフトをまっすぐ見た。そしたらクリフトが目をそらしたの。
口に手をあてて……

「クリフト…?」
「…………」
「クリフトー」
「……あさって」
「え?」
「……あさってには、サイトハイムへ戻ります」
「ほんとに?」
「……はい」
「やったやった!」
「……」
「ありがとうクリフト!」
「ひ、ひめさま!?」

あたしはクリフトをぎゅってした。あれ、このかんじ……このかんじ、どこかで……。
あたしはクリフトを見た。クリフトは……かたまってた。あれ?

「ちょっとクリフト、どうしたの?」
「あ、あなたがどうしたのです!い、いきなり抱きつくなど…っ」
「だってクリフトあったかいんだもん」
「そっ……お、おやめください…」
「えー」

あたしはクリフトにやさしくひきはなされちゃった。っもう、きのうみたいにぎゅってかえしてくれたっていいじゃない。

214恋をしたのはあの日から 後編 8/14:2016/05/24(火) 22:32:28 ID:fD0voP1o
「姫さまこそ、なぜ侍女に、私があなたを木から下ろすためにのぼったと言ってくださったのですか?」
「え?」
「王様から伺いました。姫さまが侍女にそう言ってくださったと……。なぜわざわざそのような……」

クリフトがちらっとこっちを見る。侍女が…?
侍女……あたしがいったことお父さまにはなしてくれたんだ……。
お父さまも、それをクリフトに……。

「一緒に木登りをして自分を危険な目にあわせたと話していれば、私を教会から、ひいてはこのサントハイムから追い出すこともたやすかったでしょうに」
「え、なんでそんなことしなくちゃいけないのよ」
「…………。私を、疎ましく思っていらっしゃったのではないのですか…?」

え…?
クリフトはあたしをじっと見る。すこしだけさみしそうな顔。なにかをつたえたいみたいな顔……。

「……」
「……」
「…………」
「……うーん。たしかにクリフトはうるさいけど……」
「……」
「けど、やだ。いっしょにいないのはいやなの」
「姫さま……」
「だからこれからもいっしょなのっ」

クリフトがあたしを見てる。ずっと見てる。あんまり見てるからこんどはあたしが目をそらしちゃった。

「クリフトは、あたしといっしょにいるのいやだった…?」
「なにを……そんなことあるはずが……とんでもないことです」
「ん…」
「身に余る、光栄です……」

あたしはもういちどクリフトを見た。クリフトは……すこしだけわらってあたしにまたあたまを下げたの。

――おそばに置いてくださり、ありがとうございます――

215恋をしたのはあの日から 後編 9/14:2016/05/24(火) 22:38:46 ID:fD0voP1o
「アリーナ姫さま……申し訳ありません」
「え?」
「その、昨夜はあなたを……その……抱きしめてしまいました……」
「……え?」
「私からあのように触れたのは、その……初めてだったもので……なんとお詫びを申し上げればいいか……」
「え?クリフトぎゅってするのはじめてなの!?」

あたしはクリフトの言葉をさえぎっちゃった。

「っ…そんなに何回もあっては困りますっ」
「でもでも、きのうあたしをぎゅってしたじゃない」
「?……」
「ほらあの、あたしが木からとびおりたとき」
「…………」

「あ、あれは非常事態ではありませんか…っ」
「え?ひじょーじ隊?…ってなに?」
「………………」

「と、ともかく、その……」
「…………」
「申し訳、ありませんでした…」

とっても小さな声であやまるクリフト。あたしはなんだかうれしくなってきた。
クリフトったらあやまることないのに。クリフトにぎゅってしてもらえてうれしかったのに。
あ。そういえば。

「ねえクリフトー」
「…はい、姫さま」
「あれ、クリフトだったの?」
「?…」
「あたしがねてたときだれかがあたしをぎゅってしてくれてたの。あたまもなでてくれてたの。
神父さまかなって思ったんだけど、クリフトだったの?さっきぎゅってしたときなんかかんじがにてたのよね」
「…………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。びっくりした顔っていうかちょっとこまった顔っていうか。

216恋をしたのはあの日から 後編 10/14:2016/05/24(火) 22:42:57 ID:fD0voP1o
「あ、あれは……。起きていらしたのですか……」
「あ、やっぱりクリフトだったのね」
「……もうし、わけ……」
「とってもきもちよかったわ」
「!……」
「あったかくってとってもきもちよかったの。ありがとうクリフト!」

クリフトはまたびっくりした顔であたしを見た。なんかクリフトびっくりしてばっかりね。
あ。そういえば。

「ねえクリフトー」
「は…はい、姫さま」
「きょうはいつもみたいに言葉づかいっていわないのね」
「え、あ……」
「いつもなら、さいしょにいっかい、とちゅうでいっかい、さいごにいっかい、さんかいはいうのに」
「…………」

クリフトはこんどはへんな顔してあたしを見てる。なにかをいおうとしていわないみたいな。

「い、言わないからといって直さなくていいというわけではありません。…お気をつけください」
「……はーい」

あ、そうだ。あたし言葉づかい気をつけるっていったんだった。そしたらクリフトがおきてくれたのよね。
気をつけなくっちゃ。これからはちゃんとしなくっちゃ。あたしはクリフトににっこりわらっていった。

「はい。こんどこそ気をつけるわ。わたし気をつけます!」
「…………」

クリフトはまたへんな顔した。こっちを見たり下を見たりするの。それにちょっと顔が赤いような?

「ねえクリフトー」
「は…はい…姫さま」
「きょうのクリフトなんかへん」
「は…」
「なんか、しずかだし、あんまりお説教しないし、へんなかおしてるし、赤いし」
「っ……」

217恋をしたのはあの日から 後編 11/14:2016/05/24(火) 22:48:25 ID:fD0voP1o
「ま、まだ体調が万全ではありませんので…」
「ふーん。へんなの」
「っ…いきなりいらしておいてそれはあんまりです」

あ。やっぱりいつものうるさいお説教クリフト?

「クリフトこそいきなりサランにかえっちゃうなんてひどいわ」
「っ……それは……。そもそもなぜこちらにいらしたのです。私に用事だったのですか?」
「あ、そうだ。あたしお勉強しなくちゃいけないんだった」
「…………。姫さま、言葉づかい」
「あ。わたしわたし」

クリフトがすこしだけわらっていったの。やっぱりきょうのクリフトはどこかへん。
言葉づかいっていわれるのほんとにいやだったのに、きょうはそんなにいやじゃなかったの。
クリフトはあさっては10時ごろもどりますって。もしよろしければごあいさつにうかがいますって。
あさってにはクリフトがもどってくる。あさって……よし!
あたしはクリフトにまたあさってねっていっておわかれした。クリフトもはい姫さまってわらってくれた。
なんだかきもちがすっとした。足がとってもかるいの。今ならなんだってできそう。
きょうはずる休みしないでちゃんとお勉強してからかえろうって、心からそう思えたの。

――ありがとう、クリフト――


「これはおいしそうですね。チョコレートケーキですか?」
「ううん、ふつうのケーキなんだけど、ちょっとこげちゃったの」
「そうですか。んー香ばしい匂いですね」
「あたしだってやればできるんだから!あ、またあたしっていっちゃった」

そう、きょうはクリフトがサントハイムへかえってくる日。
わたしはクリフトをびっくりさせようと思ってケーキをつくったの。ちゃんとつくりかたしらべたんだから。
クリフトはお父さまと神父さまにごあいさつにいかないといけないからこっちにこられるのはそのあとなんですって。
だからごあいさつがおわったら食堂にくるようにいってってお父さまにおねがいしておいたの。
神父さまはこっちによんどいたの。さんにんでいっしょにたべようと思って。クリフトはやくこないかな。

「アリーナ姫さま、遅くなり申し訳ありません」

きた!

218恋をしたのはあの日から 後編 12/14:2016/05/24(火) 22:54:39 ID:fD0voP1o
「クリフトー!」
「ひ、ひめさま…っ」

わたしはクリフトにぎゅってした。クリフトはあったかい。ふくの上からでもわかるの。あったかくってきもちいいの。

「クリフトおかえりー!」
「姫さまっあの…っ」
「クリフトクリフト!わたしね、ケーキを作ったのよ!」

わたしはクリフトを見上げながらにっこりわらっていった。びっくりするクリフト。

「ケーキ…?」
「そう!」
「姫さまの、手作り…」
「そうよ!わたしがつくったのよ!」

わたしはテーブルまで走ってふりかえる。手をさしだしてクリフトをあんないした。

「クリフト、こちらへどうぞ」
「…………」

クリフトはしばらくびっくりしてこっちを見てたけどふっとわらっていったの。

――あまりにもったいないことです――

クリフトが神父さまにもごあいさつをはじめたけど神父さまはまずはいただきませんかってケーキをさしてくれた。
さんにんでおせきにつく。テーブルにはケーキと紅茶。わたしたちはいただきますしてさっそくケーキをたべた。

「ごめんなさい……」

あたしはひと口でたべるのをやめた。

「…なぜ謝るのですか?」
「だってぜんぜんおいしくないんだもの。にがいしボロボロするし……」
「そんなことはありませんよ」

クリフトがもうひと口たべてくれた。

219恋をしたのはあの日から 後編 13/14:2016/05/24(火) 22:59:04 ID:fD0voP1o
「姫さまが心を込めて作ってくださったケーキなのですから……」

クリフト…。

「そうですねえ……。やはり、少し焦げてしまったのがもったいなかったのでしょうね」

あ。神父さまも食べてくれた。

「ケーキもクッキーもそうですが、低い温度でじっくりと。なかなか時間と手間のかかる料理のようです。
一気に焼いてしまいたい気持ちをぐっとこらえて、今度作る時はのんびり気長に待ってみましょう」

あ。また食べた。

「それから、味つけにはもしやあのあたりを使われましたか?」
「あ、うん。じゃなくてはい!」
「……そうですか。
ではこれらも、今度作る時は蜂蜜やシナモン、バニラエッセンスなど甘くて香りのよいものを選んでみましょう。
ソースや砂糖醤油の味もとてもおいしいのですが、甘いものを作るときには適さないのかもしれません」

あ。また食べた。クリフトも食べてる。

「最初から何もかもうまくいってしまったら料理人の立つ瀬がありません。
どんなにおいしいものを作る料理人も、最初は不満足から始めるものです。不満足でいいんです。
次への参考にすることで、どんどん満足のいくものが作れるようになるのですよ」

いつのまにかふたりに出したケーキはきれいになってた。

「……神父さまもしっぱいしたことあるの?」
「おや、これは痛いことを聞かれてしまいました」

「失敗したことがあるというより、成功したことがない、といったほうがいいですかねえ。
野外で初めて作ったカレー、ご飯は白くふっくら仕上げるつもりがふたを開けたら上から下まで真っ黒、
食べられるところなんかどこにもありませんでした。
サランの神父様に涙目で訴えてご飯を半分めぐんでもらったのは今ではいい思い出ですねえ」
「…………」
「そんな私も今では何とか白いご飯が炊けるようになりましたよ」
「そうなんだ。しっぱいしてもいいんだ」

220恋をしたのはあの日から 後編 14/14:2016/05/24(火) 23:04:17 ID:fD0voP1o
神父さまはにこにこしてあたしにいったの。

――大切なのは、どう仕上げればいいかではなく、自分がどう仕上げたいかですよ――


「悔しいです……」
「?…」
「私も、もっと……もっと何か言えることがあったはずなのに……」
「…………」

「クリフト」
「…………」
「あなたが最初に「そんなことはありません」と言ってケーキを口に運んでくれた、その気持ちこそが大事なのです。
何事も経験です。姫さまを大切に思うその気持ちがあれば、話術など自然と身につくものですよ」
「……」

あたし……わたしがおかたづけをしてるあいだ神父さまとクリフトがなにかお話ししてた。
なにを話してたのか気になったけどおかたづけもひとりでやるっていっちゃったからすぐにそっちにはいけないの。
わたしはいそいでおかたづけをすませておせきにもどった。
神父さまとクリフトがねぎらいの言葉をかけてくれたけどあたしはさっきのことであたまがいっぱい。

「ねえねえ、さっきなんのお話をしていたの?」

神父さまはにこにこしてわたしを見たけどクリフトはすこしかたい顔してあたしを見てた。

「姫さまの笑顔はとても素敵ですねと話していたのですよ」
「えー?」
「姫さまは本当に素敵な笑顔をなさいます。思わずドキドキしてしまいますから」
「神父様…」
「えーそんなことないよ」
「鏡でご覧になったことはありませんか?」
「だってかがみを見るときは侍女がかみをとくときだもの。はやくおわってほしくってぶすっとしてるわ」

わたしはわざとぶすっとした顔をしてみせた。そしたらさっきまでかたい顔してたクリフトがすこしだけわらってくれたの。
神父さまもくすっとわらってあたしにいった。

――では姫さま、あなたのその素敵な笑顔、鏡を使わずしてお見せいたしましょう――

221従者:2016/05/24(火) 23:08:58 ID:fD0voP1o
無駄に伏線回収の好きな従者です。今回のPS版のセリフをなぞらないSSは
「クリフトがアリーナに恋をしたワケ」から始まり
「クリフトが高所恐怖症になったワケ」
「クリフトがアリーナの手作りケーキの味を知っているワケ」
「アリーナが私といったりあたしといったりするワケ」と、今後への伏線にまぎれて
「お城の神父がニブい神父と呼ばれるようになったワケ」が入りました。
最後にまた一つ伏線を入れていますが後ほど回収予定です。
今のところこれらは公式では詳細不明と記憶していますが判明次第修正いたします。
この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

222従者:2016/05/24(火) 23:14:27 ID:fD0voP1o
>>202-203
さっそくの感想を本当に本当にありがとうございます!あの、あなたこそお疲れさまです。
過去を悔やんだところで変えられるわけではありませんしね……。お心遣い痛み入ります…。
こうしてまた投下のできるこのスレに、反応を下さるあなた方に、心から感謝です。

>>205
ちょwどちらさまw
ここに来て初めてのGJ……本当にありがとうございます!


かつて私がまだ従者と呼ばれる前、私を「原作沿いの人」と呼んでくれた方がいまして。
その響きがとても嬉しくてですね、なおのこと原作沿いをきわめたいと思ったんです。
なにぶん公式ではアリーナがクリフトの想いに気づいたとはっきりわかる描写がないため
この従者シリーズでも付かず離れずの二人を描き続けるわけですが
続き物のメリットは>>203さんもおっしゃるように一過性でなく徐々に関係を進展させられる点ですので
イベントをこなすごとに原作に支障のない範囲で関係が(主に密着度が)進展いたします。
前置きの長いSSもあり本当に申し訳ないのですが、長い目で見ていただけると救われます。
今後とも原作沿いの人をよろしくお願いいたします。

223名無しさん:2016/05/29(日) 00:32:46 ID:UIgMxrDI
>>221
Good Job!

パズルのピースをバラ売りするかのような発表スタイル
分冊百科のような期待感があります
完成に近づいていくたびに楽しみが膨らみそうです

初回で買ったら逃れられない
そんな分冊百科の魔力がこのスレを襲うとは・・・
無料で良かったです

224名無しさん:2016/05/30(月) 02:42:06 ID:85M36lTw
>>221
前編と後編が揃ったことで、今こそ乙と言うタイミングのようじゃな
謹んで乙という言葉をお贈りいたそう

不味いものを食べたときにそんな優しい言い回しがあるとは
それがにじみ出る人柄というものじゃな
そういう台詞の積み重ねによってじっくりと人柄を描き出すのですな
腰を据えた長距離走型のお方とお見受けしましたぞ

225名無しさん:2016/06/01(水) 00:54:17 ID:tbY6wrSU
やっぱアリーナ姫って料理が下手なイメージですよね。
姫が料理する機会なんてないだろうから当然ですけどね。

226名無しさん:2016/06/01(水) 08:10:40 ID:MU/9sIC2
>>225
イメージというか、クリフトが仲間会話で姫の手作りケーキがパデキア味(すごく不味い)だったと言うしね

227名無しさん:2016/06/02(木) 04:01:41 ID:CRh/iF32
逆に「これだけは下手じゃない」っていう料理があったりするのも、設定としては良いのかもね
以前にクリフトに教えてもらったとか

ぶっちゃけ、料理って味付けせずに炒めちゃえば、初心者でも大きな失敗にはならないよね
食べるときにお好みで調味料をかければいいんで
最初から完璧な料理をマネしようとするから収拾がつかなくなるんだと思う

228従者:2016/06/02(木) 09:00:39 ID:5h2uhey.
従者です。PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、デスパレス編いきます。
今回クリフトのあやしげなセリフはないのですがクリアリを思いついたので書いてみました。
実際にセリフをなぞっているのは1/5のみです。マーニャ(ミネア)さん出てきます。
一部さらっとですが流血、残酷描写がありますのでご覧の際にはお気をつけください。
今はまだもどかしいクリアリですが少しでも楽しんでいただけたら嬉しく思います。

229従者の心主知らず デスパレス編 1/5:2016/06/02(木) 09:05:00 ID:5h2uhey.
「アリーナ、クリフト、あんたたちはそっちの牢屋をお願い!」
「わかったわ!クリフト!」
「はい!姫さま!」

「おお神よ!ほかの人はどうなってもかまいません!
なにとぞなにとぞわたしの命だけはお救いください。アーメン」
「神父さま…?」
「……」

私たちは今魔物たちの城デスパレスにいる。
地下の牢屋に捕まってる人たちを助けようと思ってクリフト、マーニャ、ミネアと回っていたの。
けどその先で見たのは床によこたわって命乞いをしていた神父さまの姿……
私は足が止まってしまった。

「神の教えのなんたるかをひとつも理解していないとは……」

クリフトがぽつりとつぶやく。

「まったくなんと情けない神父でしょう。おなじ教えを説く者として私は…っ」

クリフトは震えてた。クリフト…。
私はよこたわった神父さまをぼんやり見る。見て、思わずクリフトの服をつかんだの。

「待って、クリフト……。ちがう……ちがうよ……」
「姫さま…?」
「ちがう…」

――違和感――

どうして……
他の人たちはみんな連れてこられたばっかみたいにきれいな服を着て普通に動いてたのに、
この人の服はボロボロで、血まみれで、傷だらけで、うつろな目……

――この人はいつからここにいるの…?――

230従者の心主知らず デスパレス編 2/5:2016/06/02(木) 09:09:37 ID:5h2uhey.
「神父さま!」

私は思わず声をかけた。こっちに気づいてもらえるくらい大きな声で。

「あぁぁあああっ…!」
「神父さま?」
「わ、わたしはあなたを救えません…っ」

神父さまはおびえた目をしてあとずさった。救えませんって……

「もう、もう、救えません…っっ」
「神父さまっ」
「あ…っ」

私は神父さまの手を両手でぎゅってした。神父さま震えてる…。すっごく震えてる…っ

「大丈夫……助けに来たの……私があなたを助けに来たのよ。だからもう大丈夫……」
「…っ………」

「神、さま…?」
「私は神さまじゃないよ」
「女神さま!!」

神父さまも私の手を両手でぎゅってした。震えながらその手に顔を寄せる。まるでお祈りするみたいに。
私ももういちどやさしくぎゅって返した。

「うん、もう大丈夫だからね」
「っ……っ」
「姫さま…」

クリフトが後ろは引きうけますっていってくれて、私たちは無事うら口から脱出した。
日の光がまぶしい。今日はとってもいい天気!

231従者の心主知らず デスパレス編 3/5:2016/06/02(木) 09:14:11 ID:5h2uhey.
「女神さま、まだ……まだ牢に捕われた者がおります。男性が二人と女性が一人……。
魔物たちは今夜女性から先に食べようなどと言っているのです。どうか…どうか彼らを…っ」

神父さまは泣きそうなお顔をして私にお願いしてきた。ああ、ほら、やっぱり。やっぱり神父さまなのよ。

「大丈夫。私たちの仲間が助けに行ってるから大丈夫よ。もう大丈夫だから」

私は神父さまににっこり笑ってみせた。
神父さまはおどろいたお顔をしたけどぽろぽろと涙を流してその場にくずれおちたの。

「ああぁぁあ…っっ」
「うん、もう大丈夫だからね」
「姫さま……」

私は神父さまをそっと包んだ。
マーニャとミネアも他に捕まってる人たちを無事連れだせたようで作戦は大成功だった。
よかった……。


「姫さま……申し訳ありません……」
「ん?なに?クリフト」
「私はまだまだ修行が足りません…っ」
「クリフト…?」

捕まった人たちを無事おうちに送りとどけてひと安心!と思ったらクリフトがとても落ちこんでるように見えた。
なんで…。クリフトもいっしょにみんなを助けだしてくれたのに。

「どうしたの?どうして謝るの…?」
「…………」

顔を上げたクリフトはとても寂しそうだった。クリフト…?私はクリフトがなにかいってくれるまでじっと待つ。
そしたらしばらくしてやっとしゃべってくれた。クリフトはさっきの神父さまとすこしお話ししたんだって。

232従者の心主知らず デスパレス編 4/5:2016/06/02(木) 09:19:04 ID:5h2uhey.
神父さまも捕われた人たちを助けだそうとした。でも力が足りなかった。助けられなかった。救えなかった…。
目の前でたくさんの人たちが自分に助けを求めながら死んでいく。死んだ後も恨めしそうにずっとこっちを見てて……
魔物たちはおもしろがって神父を食べるのは最後、なまいきな態度がなくなったらにしたんだって。
何人も何人も次から次へと捕われて死んでいく。無力な自分、募る罪悪感、待ちうける罰、絶望、恐怖、孤独……
逃避。
神父さまがあんなふうになってしまったのはそんないきさつがあったからなんだって。クリフトは静かにお話ししていった。

「私は、あの方の事情を知ろうともせず一方的に批判してしまいました……あまりに情けないことです……っ。
せめて私は、何を失っても変わらない自分でいられるよう、いつでも神の教えを説ける自分でいられるよう」
「……」
「いられるよう、強く……強く…」

いいながらクリフトはゆっくりと私を見た。

――たとえあなたを、……としても……――

クリフト…?
クリフトがとても思いつめた顔してるように見えるの。どうして……

――あなたは今なにを思っているの…?――

「大丈夫よ」

けど私は迷わずすぐ返事ができたの。だって

「だってクリフトは強いもの」
「……」
「失うことも取りみだすこともないわ」
「姫さま…」

あれ。私さらっとなにいってるのかしら。でもクリフトが強くなったのはほんとのことだし。そうよ、ほんとのことよ。
私はクリフトににっこり笑ってみせた。そしたらクリフトはびっくりしたみたいだけどふと下を向いちゃったの。あれ?

「ひ、姫さま…」
「うん」
「その……」
「う、うん」
「………………」

233従者の心主知らず デスパレス編 5/5:2016/06/02(木) 09:25:05 ID:5h2uhey.
あ、クリフト笑った?クリフトはそのままゆっくり頭を下げていったの。

――あまりに、もったいないお言葉です…――

もういちど私を見たクリフトはやっぱり笑ってた。
その笑顔がなんだかまぶしく見えて、私は思わずクリフトから目をそらしちゃった。なんだか顔が熱いの。なんで?
そしたらクリフトも私から目をそらしたみたいなの。なんだかもじもじしてるようなかんじ。それもなんで?
ふたりして下を見てる。
……なんなのこの状況。なんか……なんかへんなの。

「ほらほらそこふたり、なーに青春してるのよ」
「あ、マーニャ。ミネアも」
「マーニャさんっ」
「野次馬してあげてもいいんだけど今はちょっと状況が状況だからねえ、一段落した後にしてくれない?」
「姉さん、そんな言い方……」
「も、申し訳ありません!」
「え?」

なんかマーニャとミネアとクリフトがわかりあったみたいにお話ししてるのに私は話の展開がはやすぎてよくわからなかった。
クリフトが私に向きなおる。

「姫さま、今は一刻を争う時です。ソロさんたちはまだ城を調べているでしょうから急いで合流しましょう」
「あ、そっか。わかったわ!」

私たちはマーニャのルーラでふたたびデスパレスへ。
なんだか悔しいな。さっきさんにんが話してたのはつまりそういうことだったのよね。クリフトにいわれるまでわからなかった。
くやしいな……。
でも今はそれどころじゃないわよね。はやくソロたちと合流しなくっちゃ。
このもやもやはみーんな魔物たちにぶつけることにするわ。

私たちは入り口でソロたちと合流した。
今日は2階で会議があるんですって。牢屋のことはまだ気づかれてないみたい。
とりあえずまた変化の杖で魔物の姿になってその会議にこっそり出てみようってことになった。
私はもういちど名乗りでる。そしたらクリフトもいっしょに行くっていってくれてソロもいいぜ、頼むっていってくれた。
さあ、今度こそデスパレスの中へ!

234従者:2016/06/02(木) 09:29:16 ID:5h2uhey.
>>223
Good Jobありがとうございます!なんだか大げさですよぅ
思いつきで状況が変わることもあるのでいつかどこかで破綻しそうです;
もしおかしな展開がありましたら何とぞ何とぞ教えてくだしあ

>>224
なんという見事な乙。謹んでお受けいたします。ありがとうございます。
私自身が台詞や人柄、言い回しの勉強中でして。。
投下の流れ的にも長距離走になりそうです、今しばらくお世話になります。

料理の話の続きですがクリフトの仲間会話とはこちらですね。

クリフト「パデキアの味ですか?
  そうですねえ たとえるなら
  姫さま手作りのケーキのような……
クリフト「い いえそのっ
  別に まずいとか 苦いとか
  そういうつもりでは!!

まずいとか苦いとかそういうつもりではないのならどういうつもりで言ったのか。
実は意味深な言葉でもあるのかと思うと本当にいろいろな背景が浮かびそうです。

235名無しさん:2016/06/03(金) 02:46:29 ID:45P5YSG6
人の心を中心に描き、人を浮き彫りにしていく。
だからクリアリ成分にも深みが出てくるのでしょう。
ただの萌えネタに留まらない本格派のクリアリ。
いやはや乙です。

236名無しさん:2016/06/04(土) 04:32:00 ID:i97sPjrI
「おお神よ!ほかの人はどうなってもかまいません!」って、そこに至るまでの経緯は垣間見えて
それなりに深い台詞なんですけど、それだけを見るととんでもない台詞ではあるので
ファミコン版で気に留めなかった人も多かったんだろうなと思います
説明過多にならずに考えさせる余地を残しているのが良さではあるんですけどね

>>229-233
God Job!
牢屋から出た人々が神の祝福を得て、あの島から脱出できますように
脱獄しても、城内より城外の敵の方が強いから絶望しかない島なんですよね

237従者:2016/06/04(土) 12:38:09 ID:QS3H3Q5k
従者です。さっそくすみません。
前回のデスパレス編、6章では牢に捕われていた人たちが反対に牢の番をしていたんでしたね。
さっそく設定破綻しました;(せっかくのリメイク版なので6章ルートで進めたいと考えていまして)
また同じ人が捕まったのでは切ないので6章では同グラフィックの別人が牢の番をしたとしといてください;
それと微々たる訂正ですがクリフトのセリフ
「まったくなんと情けない神父でしょう。おなじ教えを説く者として私は…っ」

「まったくなんと情けない神父でしょう。同じ聖職者として私は…っ」
にて脳内補完をお願いします。同じ言い回しがガーデンブルグにあったものでできる限り取り入れたく……
後から訂正箇所が見つかったときの落胆半端ないです。いつも申し訳ないです;

>>235
本格派……まぢですか!乙ありがとうございます。

>>236
God Job!て、うまいですね。そんなあなたがGod Job!です。

あ、あ、SS内では一応マーニャのルーラで脱出したとしています。わかりにくくてすみません;
絶望しかない島……確かに。
もともと商人が脱獄?していましたがそこかしこに移民がうろうろする世界観ですし(どうやってそこまで行ったのかと)
外の敵との関係ってゲーム内ではどうなってるんでしょうね。
ドラクエのそういういい加減なところが残念なようで気が楽でもあって実はけっこう好きです。

238従者:2016/06/04(土) 12:45:05 ID:QS3H3Q5k
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「男」21シーク分投下します。
ピサロナイト「アドン」存命ルートで>>137-152の続きのようなものです。(理由詳細は>>153にあります)
クリアリパートは12/21以降です。それ以前には流血描写がありますのでご覧の際にはお気をつけください。
その節はクリアリ要素のない前置きパートを置き逃げしてしまい大変失礼しました;
今後ピサロナイト関連にはクリアリパートがありますのでどうかお付き合いいただけると嬉しいです。

239従者の心主知らず 男 1/21:2016/06/04(土) 12:49:21 ID:QS3H3Q5k
――詳しいことはわしが聞いておく。お前たちは早く塔へ!――

私たちは今ロザリーヒルに戻ってきてる。デスピサロたちの話が気になって。
エルフのロザリーがどうのこうのって言ってたの。もしかしたらロザリーの身になにかあったんじゃ……。
ブライがよろず屋のおじいさんから話を聞いてくれるっていうから私たちは塔に走った。

「ねえ、ねえあれ、コンドルじゃない!?」

塔に近づいてきたら外れに青い生きものがよこたわってたの。あれはきっとコンドル…!

「もしやけがを……。早く治療をしなければ」

クリフトも気づいたみたいでいっしょに走ってくれた。

「コンドル大丈夫!?」
「……ギャア!」
「きゃっ」
「姫さま!」

コンドルはくちばしで私を振りはらった。でも私は気にせずコンドルをぎゅってする。

「大丈夫よコンドル!私たちは敵じゃないの!」
「ギァアアッ!!」
「お願いだから言うこと聞いてっ…」

コンドルはさわいで私から離れようとする。私はいっしょうけんめいコンドルをぎゅってした。

「クリフト!」
「姫さま!どうかそのままで!」
「うん!」

クリフトはもう準備してくれてたみたいですぐベホイミをかけてくれた。さわいでたコンドルがすこしだけ静かになる。
ケガを治したことで敵じゃないってわかってくれたのかな、やっと落ちついたみたい。ちからが抜けたのがわかった。

「キイキイ…」
「あ、こら」

コンドルは私の腕をなめた。よく見ると血がにじんでる。私、いつの間にかすりむいちゃってたみたい。

240従者の心主知らず 男 2/21:2016/06/04(土) 12:54:20 ID:QS3H3Q5k
「もう大丈夫だからね」
「キイ…」
「姫さま」

クリフトが手をかざしてた。手当てしますの合図。さっそく私にホイミしてくれた。腕がほわっとあったかくなる。

「ありがとう、クリフト」
「……いえ」

クリフトは下を向いて返事した。そのまま塔のほうを見る。

「……急いだほうがよさそうですね」

またこっちを向いたクリフトはすっごく真剣な顔してた。

「コンドルも連れていきましょう。ここに置いていくのは危険です」
「うん。私が連れてく」
「姫さま」
「私が連れてきたいの。コンドルおいで」
「キイッ」

コンドルを抱えようとしたらコンドルのほうがこっちに寄ってきた。私の前まで来ておしりをついて座る。
もしかして、私の言ったことわかったのかな。

「クリフト、アリーナ」

ソロがこっちに走ってきた。あれ、さっきまでどこにいたの?

「もう一匹のコンドルは近くにいなかった。もしかしたらまだ塔にいるかもしれない」

あ、もう一匹のコンドルをさがしてくれてたんだ。ソロもすこしだけ塔を見たあとすっごく真剣な顔して私たちを見た。

「……ふたりとも……覚悟、しとけよ……」

低い声でいうソロ。覚悟…?

「キィ…」
「ん…」

241従者の心主知らず 男 3/21:2016/06/04(土) 12:59:36 ID:QS3H3Q5k
コンドルが私に頬ずりした。まるで大丈夫だよって言ってくれてるような気がした。


重い足どりで階段を上がる。ソロもクリフトも何も言わなかった。私もだまったままただ奥へと進んだ。

「…ねえ、声が聞こえない?」

階段の向こうでだれかの話し声が聞こえた気がするの。

「お願いだよお…」

やっぱりだれかしゃべってる。この声は……

「ねえあれ、スライムの声じゃない?」
「ぷるぷるっ!お願いだよお。薬湯だけでも飲んでよお。死んじゃうよお…」
「スライム!いるのか!?」

階段を上がって廊下を見わたす。ずっと先、部屋の前の片すみにスライムとアドンの姿が見えた気がした。
無事……なの……?

「あっソロ!」

スライムは私たちに気づいてこっちにとんできた。私たちも急いで駆けつける。

「ぷるぷるっ!ロザリーちゃんが欲深い人間につかまっちゃったよお!
ロザリーちゃんのルビーの涙は人間たちにはさわることもできないってのに……」
「お前……よく無事で……っ」

ソロがひざをついてスライムをそっとなでた。スライムの目がじわって涙ぐんだように見えた。

「うん……ロザリーちゃんが守ってくれたんだ……」
「ロザリーが…」
「うん…」

――あなたたちの目当ては私でしょう!――
――これ以上彼らを傷つけることは許しません!!――
――連れていくなら早く連れていきなさい!!――

「…………」
「ぷるぷるっ!ぼくがんばったんだけど…っ」

242従者の心主知らず 男 4/21:2016/06/04(土) 13:04:24 ID:QS3H3Q5k
今にも泣きだしそうなスライムに私は思わず声をかけた。

「ええ、あなたはよくがんばってくれたわ。見なくてもわかるもの」
「うぅ…」
「お前、けがは?…大丈夫か?」
「うん、ちょっとぶつかっただけだから大丈夫。
ぼくよりもアドンのほうが心配だよ!ぼくをかばって……血が止まらないんだ……っ」
「アドン!!」

スライムが言い終わるか終わらないかのうちにソロはアドンのほうに走ってた。

「念のため治療しますよ」
「うん……ありがとう……」

クリフトもすぐスライムの手当てを始めてくれた。ふたりとも、すごくてきぱき動いてる……。
私はどうすれば……私もアドンのほうに走った。

アドンは壁に寄りかかってうつむいてた。手当てした姿のまんま。武装する時間が、なかったんだ……。
剣だけがすこし向こうに転がってる。布切れやグラスも……。
胸からおなかにかけて巻いた包帯は血まみれだった。おなかには黒い布が巻きつけてある。
ソロがもういちど名前を呼んでゆっくり近づいた。アドンは機械みたいにすっごくゆっくりこっちを向く。
血にまみれた顔。こっちを見てるのに見てないみたいなうつろな目……。床にも壁にも血がついてて……
近づけば近づくほど血のあとがはっきりしてくる。からだをひきずってここまで来たことがわかる血のあと……
私は背筋がぞっとした。
こっちを向いたんだから生きてるはずなのに、私はもうアドンが死んでるんじゃないかって思った。

「ニン、ゲン…」

でも私たちに気づいたら立ち上がろうとして……ふらついてひざをついた。

「何やってんだよ。…大丈夫か?…俺が、わかるか…?」
「……ソロ…っ」

抱きおこそうとする手を振りはらってアドンはソロにつかみかかった。血がぱたたっと飛びちる。

「アドンやめてっ」
「ぷるぷるっ!この人たちは悪い人たちじゃないよ!」
「キイキイッ!」

私と後ろに来てたスライムと抱えてたコンドルがいっせいに叫んだ。

243従者の心主知らず 男 5/21:2016/06/04(土) 13:09:13 ID:QS3H3Q5k
「ぐっ……っ…」
「っ…………」

アドンの顔がくずれてく。苦しそうな顔……。ソロも泣きそうな顔してて……

「………っ…」
「…………」

ソロをつかんでた手がゆっくり離れる。そのまま手はちからなく下に落ちた。
壁にどさっと背をあずけアドンはまたうつむく。ソロもだまったまま立ちつくしてた。

「…………」
「…………」
「…………」
「……すまなかった……」

ソロがぽつりとつぶやいた。ソロ…。

「……問答無用と斬りかかったのは俺だ。そして敗れた。お前たちに罪はない……」

アドンはうつむいたままちからなく答える。

「だが、戦いに来たんじゃないって言っときながら応戦したのは俺だ。お前が悪いわけでもない。
お前と最初に剣を交えたとき、それでも戦いに来たんじゃないって言ってたら、お前だって少しは考えただろ?」
「…………」
「それに、やっぱり誰か代わりの護衛を置いていくべきだったんだ。すまない…っ」
「………………」

アドンはゆっくり顔をあげてソロをぼんやりと見つめた。それから私を見る。私はドキッとした。

「キイキイッ」
「お前たちが、コンドルを……」

あ、コンドルを見たのね。

「……無事でよかったわ」

私はいっしょうけんめい笑顔で答える。アドンはすこしだけ泣きそうな顔したように見えた。

244従者の心主知らず 男 6/21:2016/06/04(土) 13:14:19 ID:QS3H3Q5k
「……とにかく、手当てすんぞ」
「いらん」
「ふざけんなっ」

ソロが荷物から布や消毒液、薬草を取りだしてアドンの手当てを始めた。
クリフトもスライムといっしょに奥のお部屋から水をくんできたり救急道具を集めてきたりする。
よかった……これで助かるんだ……。

「キィッ」
「ん」

コンドルが私に頬ずりした。まるで大丈夫だったでしょって言われてる気がして私はなんでか笑っちゃった。
本当によかった……。
応急処置がすんだところでコンドルがアドンに向かってキイキイ鳴きはじめた。そういえばもう一匹のコンドルは……

「キイ、キイキイ…」
「……」
「キイ…」
「そうか、見失ったか…」
「キィ…」
「アドン、お前…」
「ギァァアアアアッ…!!」

いきなりコンドルが大きな声を出した。え?あれ?ちがう。アドンは上を向いてる。ソロも。

「ギァアアア…!!!」

声は天井から聞こえてくる。別のコンドルが鳴いてたんだ。もう一匹のコンドル?
ふと口笛のような音も聞こえた。前にも聞いたことあるような音。あっと思ってアドンを見たら指をくわえてた。
指を離したら口笛もやむ。この口笛はやっぱりアドンが吹いてたのね。

「ギァアアッ!!」

バサバサと大きく羽ばたく音がしてコンドルが天窓から下りてきた。そのまま床へ墜落、いきおいで壁に激突。

「ちょ、ちょっと…」
「どうした。なぜ飛んできた?ピサロ様は…」
「キイ!キイキイキキイッ…!!」
「…………」

245従者の心主知らず 男 7/21:2016/06/04(土) 13:19:18 ID:QS3H3Q5k
コンドルは倒れたままいっしょうけんめいキイキイ鳴く。アドンもそれにこたえるみたいにコンドルを真剣に見てる。
クリフトがけがしていますって言って手当てを始めてくれた。私も思わずちからが入って抱えてるコンドルをぎゅってしちゃった。

「キイ、キイ、キイキイ…」
「ミニデーモンが?アームライオンやライノソルジャーではなくか?」
「キィ…」
「………………」

アドンは難しそうな顔してしばらくだまってた。アドンてコンドルの言葉がわかるのかしら。クリフトはずっとささやき続けてる。

「コンドル」
「「キイッ!」」
「わっ」
「きゃっ」

手当てをしてるクリフトを翼で押しのけてコンドルはアドンの前までからだをひきずって床にべたーってなった。
私が抱えてたコンドルもおんなじようにアドンの前に下りて床にふせる。
アドンは立ち上がってコンドルに近づいた。でも足もとがふらついて私が抱えてたほうのコンドルに倒れこんだ。

「キイッ」
「お前、どこ行くんだよ」

ソロがアドンの肩をささえる。でもアドンは答えない。なおもコンドルに足をかける。乗るつもりなんだ。

「お前、今の自分の状況がわかってるか?」
「…………」
「腹の傷が開いちまってんだぞ!!」

私ははっとした。止血のつもりかおなかに強引に巻きつけてあった黒い布。
ソロが手当てをするとき外してて、そのときはあんまり気にしなかったけど、今あらためて見たらぐしょぐしょに濡れてた。
床にまで黒っぽい液体がしみだしてて……もしかして、これもみんな、血なの……?
私は全身がぞくっとした。アドン…!アドンもすこしだけ自分のおなかを見たけどまたコンドルに向きなおる。

「関係ない」
「お前…!」
「アドン…っ」
「死ぬつもりか…?」
「俺が死ぬことであの方を守れるのなら、いつでもこの命…」
「ばかやろう!!」

246従者の心主知らず 男 8/21:2016/06/04(土) 13:24:37 ID:QS3H3Q5k
ソロはアドンをコンドルから引きはなした。今度はソロがアドンにつかみかかる。

「死ぬことは守ることじゃねえぞっ!!!」

ソロが大声で叫んだ。アドンはおどろいてソロを見る。

「そんなつもりで守ってほしいんじゃねえ…っ!!」
「………………」

ソロ…。

「本気で守り抜くつもりなら…っ」
「…………」
「生きて…っ」
「…………」
「ソロ…っ」
「生きて……一緒に……っ」
「………………」
「…………」
「っ……っ…」

そこから言葉が続かない。ソロはアドンの肩にゆっくり顔をしずめた。まるで隠すみたいに……。アドンもずっとだまってる。
ソロ……泣いてるの……?ソロ……っ

――村のみんなのこと、考えてたの…っ?――

ソロはアドンをゆっくり床に座らせた。アドンはもう自分をささえるちからもないみたいでソロに寄りかかる。
ふたりともしばらく目を合わせないでだまってた。苦しいのかな、アドンの息がやけに乱れてる。ソロもすこし…。

「…………」
「…………」
「…………」
「……お前、コンドルの言葉がわかるんだろ?」
「………………」

「……だったら、なんだ」
「教えてくれ」
「…?」
「ロザリーをさらったやつらはどこへ行ったのか」

247従者の心主知らず 男 9/21:2016/06/04(土) 13:29:10 ID:QS3H3Q5k
アドンがおどろいたようにソロを見た。

「……なぜ…?」
「助けに行くから」
「………………」

――俺たちが助けに行くから……――

アドンはもっとおどろいた顔をした。

「なぜ…」
「なぜって」
「お前たちに、何の関係が…?」
「……んなこと当たり前だろ。いちいち聞くんじゃねえよ」

私はすぐ思いつく言葉があってアドンに言った。

「ロザリーは、私たちのお友だちなの。お友だちの危機には駆けつけるのが当たり前でしょ?」
「…………」
「アリーナお前、いいこと言うな」
「え、そう?」

こっちを向いたソロはもう普通の顔してた。すこしだけほっとした。でもアドンはまだびっくりしてる。

「とも…だち…?」
「そう!」
「………………」
「頼む。教えてくれ」
「どうか、お願いします」

クリフトも話に加わった。あれ、さっきまでどこにいたの?思わずコンドルを見たらもうからだをひきずってなくてこっちを見てた。
もしかして、ずっとコンドルの手当てをしてくれてたの…?クリフトは今はまっすぐアドンを見てる。
クリフト…。
クリフトって、いつもてきぱきしててすごいな……。助けられてばっかり。なんだかくやしいな……。私もしっかりしなくっちゃ。
私もアドンに向きなおった。

「………………」

アドンはまだびっくりしてこっちを見てたけど、視線をゆっくり下に落とした。
しばらく床をぼんやり見てたけど、ひとりごとのようにつぶやいたの。

248従者の心主知らず 男 10/21:2016/06/04(土) 13:34:23 ID:QS3H3Q5k
「……ここより北西」

「さらったのは三人。
青いフルプレートの戦士と腰巻に鉄火面をつけた武闘家、白いシャツに赤いバンダナを巻いた盗賊、こいつは確実に人間だった」
「青いフルプレート……恐らくこの村でかぎ回っていたあの戦士ですね……」

クリフトが手をぎゅってした。クリフト…。

「キメラの翼で砂漠と山脈を越えた先まではコンドルが目撃している。
軌道から追えばバトランド地方だが、あるいはブランカか、ボンモール地方北部か……それ以上はわからない」
「それだけわかればじゅうぶんだ」

さがしに行こう。私たちの意見がひとつになった。


クリフトが飛んできたほうのコンドルを奥へ連れてく。私もさっき抱えてたコンドルをもういちど抱えてクリフトの後に続いた。

「申し訳ありません、姫さま」
「ううん、いいのよクリフト」
「姫さま…」

そういえば前もこんな会話をしたの覚えてる。あのときはコンドルを休ませることにいっしょうけんめいで返事しかできなかったけど。
でも、今はなんだか胸を張ってコンドルを抱えていられるの。もしかしたら、私もあれからすこしはクリフトみたいにやさしくなれたのかな。

「あなたたちも無理しないでね…」

コンドルたちを敷布に寝かせると二匹ともくるりとうずくまる。大きなからだなのに今はなんだか小さく見えた。

「お前も部屋で休んでろ。血流しすぎだ」

私はアドンを見た。
アドン……口調も変わらないし平気そうにしてるけど、ほんとうはアドンがいちばんひどいケガしてたのね……。
でも肩を貸そうとするソロの手をアドンははらった。

「俺はいい」
「いいわけないだろう」

ソロがアドンを抱き上げてこっちに来る。

249名無しさん:2016/06/04(土) 13:38:08 ID:kEILwRP6
ネタばれはまだ控えますがヒーローズ2でもクリアリ的に美味しい会話や設定などが出てくるのでおすすめですよ!

250従者の心主知らず 男 11/21:2016/06/04(土) 13:39:12 ID:QS3H3Q5k
「腹の傷は治すのに時間かかるし後にもひびくから厄介なんだ」
「待て、頼む。ダメだ!そこはダメだ…っ」
「何が」

アドンはソロの首に腕を回してしがみついてる。下ろされたくないみたい。

「そこは……その……」
「?」
「ロザリー様の、寝台だから…………その……」
「…………」

私は話の内容がよくわからなくてふたりをじっと見てた。心なしかアドンの顔が赤いような気がするの。なんでだろう。

「知るかそんなこと」
「あっ…」

ソロはアドンをベッドに寝かせておふとんをととのえた。

「ロザリーがここに寝かすように言ってくれたんだ」
「ロザリー様が…?いや、だがっしかしっ」

起きようとするアドンをソロが手で押さえる。

「必ず連れて帰る……」
「………………」

「頼む…」

ソロがアドンのおなかに手を当ててもう一度かけるぞって言って何かささやいた。アドンは腕で顔を隠す。向こうを向いてすこしだけうめいた。
ソロはまだささやいてる。聞こえてきたのはべホイミ。……そっか。ソロも魔法が使えるんだもんね。魔法ってすごいな。魔法っていいな。

「……っ」
「?」

泣いてる…?手で顔を隠してるから見えないけど、アドン、泣いてるんだ……。
ロザリーを守れなかったから……?

251従者の心主知らず 男 12/21:2016/06/04(土) 13:45:03 ID:QS3H3Q5k
「絶対に連れて帰るからな…」
「…………」
「だからお前も、体あっためて安静にしとけよ。少し落ち着いたら薬湯飲め。せっかくスライムが用意したんだ。
いざ帰ってきたら死んでましたとか許さねえからな」
「………………」

アドンは腕で顔を隠したまま無言でうなずいた。


手当ても終わって出かける準備もととのって、お部屋を出るとき私はふと思い立って。
すぐ下りてくから先に行ってるようクリフトにお願いして私はアドンに声をかけたの。

「ねえ、アドン…」

アドンがびっくりしてこっちを見た。

「あ、ごめん。私アリーナっていうの。よろしく」

そうだ、私も謝らなきゃ……。

「あの、ごめんなさい……。最初に会ったときコンドルにケガさせたの私なの。
ごめんなさい……」
「…………」

私はコンドルたちにもごめんなさいって頭を下げた。コンドルたちはだまってこっちを見てる。
さっき私が抱えてたほうがすこしだけキイキイって鳴いた。なんて言ったのかな。わかんないや。

「なぜ……」
「え…?」

――なぜ、お前たちは……――

アドン…?
アドンはゆっくり天井を向いた。

252従者の心主知らず 男 13/21:2016/06/04(土) 13:49:24 ID:QS3H3Q5k
「……すまなかった……」
「え?」
「人間はすべて、敵だと思っていた……」
「……」
「欲深く、騙す生きものなのだと……」
「……」
「…………」
「……」
「…………すまなかった…………」
「…………」

確かに私たちは敵だった。最初は本気で戦った。でも今は敵じゃない。味方になったわけじゃないけど、でも敵じゃない。
倒れるまで戦わなくてもいい敵がいる。たとえそれが……

――魔族であっても……――

そういうことだよね。そういうことなんだよね、クリフト。

「スライムから聞いた。前に手当てをしてくれたのもお前たちだそうだな。
今も……コンドルまで……」
「…………」
「…………ありがとう…………」
「キィ…」
「…………ん」

私はにっこり笑ってみせた。そしたらアドンもすこしだけ笑ってくれたの。

「姫さま、そろそろ行けますか?」

あ、クリフト。先に行っててって言ったのに。

「もうちょっとだけ待って」

クリフトはうなずいて戻ってった。あれ、いるならいるで別にここにいてもよかったんだけど……
まあいっか。私はアドンに向きなおる。

「ねえアドン、さっきどうして顔が赤くなったの?」
「?」
「それに、ロザリーのベッドだからダメとか待ってとか、どういう意味?」

253従者の心主知らず 男 14/21:2016/06/04(土) 13:55:09 ID:QS3H3Q5k
アドンがいっしゅんちらっと下を見る。おふとんを見たのかな。あ、また顔が赤くなった。

「お前に関係ないだろう!さっさと行け!」
「なによ!教えてくれたっていいじゃない!」
「常識的に考えろ!お、女のベッドに男が入るなど、ありえんだろう!人間は違うのか!?」
「え、だって……私はよくクリフトといっしょに寝るし……」
「…………」

「それは、お前の男だからだろう…」

え?

「ロザリー様は……」
「……」
「俺の、女では…」
「……」
「…………」
「……」
「……いいからさっさと行け!!」
「むー。また来るから」

どうして今まで名乗らなかったの?どうして素顔を見せなかったの?
聞きたいことはまだあったのに、急にアドンの声が暗くなった気がしてそれ以上聞けなかった。
ううん、それ以前に言われたことがあまりにとうとつすぎて言葉を返せなかったの。
お前の男って……私のクリフトってことよね。どういう意味?
私のクリフトって、なんでそんな、物みたいな言い方……たしかに家来ではあるけど……。

「…待て、女」

…………。
私はいきおいよく振りかえってアドンに言った。

「アリーナ!」
「あ……アリーナ…」
「……なによ」
「あれを持っていけ」
「え?」
「そこにある水晶」

254従者の心主知らず 男 15/21:2016/06/04(土) 13:59:43 ID:QS3H3Q5k
アドンの視線の先を見てみると紫色の水晶があった。首飾りになってる。
水晶の両側を竜の足みたいなのがつかんでてちょっと不気味だけど。

「なにこれ。きれい…」
「静寂の玉。光を浴びた者の魔法を封じ込める力を秘めている。
お前たちの役に立つかはわからんが、俺にはもう必要ないからな」
「え、いいの?」
「ああ…」
「……ありがと……」

アドンも照れてるのかな。向こうを向いてる。

「……ロザリー様を、頼む……」
「おねがい!」

いつの間にか足もとにいたスライムもこっちを見上げながらお願いしてきた。

「……うん!」


私はお部屋を出ながらさっきのことをもういちど頭の中で整理した。

――お前の男だからだろう…――

私のクリフト。今までそんなふうに言われたことなかったな。私のクリフト……

――私の…男?――

ちょっと、なにこのひびき。やだ、どうしよう。顔が熱いわ。きっとアドンの熱がうつったのね。
でも、どうしてアドンの顔が赤くなったのかは結局教えてもらえなかったわ。
それがわかればクリフトが赤くなるのもわかるかもしれないのに。クリフトは教えてくれないから。

「姫さま?」
「あ、クリフト」

廊下で待っててくれたみたいでクリフトが近づいてきた。私はなんでかうつむいちゃった。

「これ…」

静寂の玉をクリフトに見せる。

255従者の心主知らず 男 16/21:2016/06/04(土) 14:04:16 ID:QS3H3Q5k
「これは…」
「もらったの。敵の魔法を封じこめられるんだって」
「…………」

「何か、話したのですか?」
「え?」
「いえ、その……姫さまのご様子が先ほどと違うように見えるので……」

クリフトが私の顔をのぞきこんできた。

――私の男――

やだ、また顔が熱くなっちゃった。

「なんでもないっ」
「姫さま?」
「なんでもないったらっっ」
「姫さま…」

私はものすごいいきおいで歩く。
っもう、どうして私がなんでもないとかクリフトみたいなこといわなくちゃいけないの?
クリフトのバカ!


「ソロ、これアドンからもらったの」
「アドンから?」
「うん。静寂の玉だって。敵の魔法を封じこめられるんだって。
とりあえず私が持ってていい?」
「……あー、そういうことか」
「え、なに?」
「いやまあこっちの話なんだ。別にいいぜ。しばらく持っててくれ」
「う、うん…」

256従者の心主知らず 男 17/21:2016/06/04(土) 14:09:07 ID:QS3H3Q5k
「アドン謝ってたよ。人間はみんな敵だと思ってたんだって。すまなかったって言ってたよ」
「……そうか……」
「あと手当てしてくれてありがとうって。アドンてもしかしたらいい人なのかなあ。
私、魔族はみんなおんなじだと思ってたんだけど…」
「……俺は怖いよ、ああいうやつは」
「え?」
「あいつ、本気で死ぬつもりだったんだ。
お前はあのときコンドルと戦ってたから知らないと思うけど、あいつ、俺が腹刺したあと盾投げ捨ててさ、
俺を道連れにするつもりで、相打ち狙って突っ込んできたんだ」
「え…」
「死ぬつもりだったから名前も名乗ったんだろうなって、ロザリーの話聞いて思った」

――名はなんという、人間?――
――ソロ。お前は?――
――ピサロナイ……いや、アドン。俺の名はアドンだぁっ!!――

「…………」
「さっきだって、スライムの話じゃ手当てどころか止血すらまともにしてなかったみてえじゃねえか。
死ぬことを何とも思っちゃいねえ。ああいうやつって、一度思い詰めると何するかわからねえから怖いんだ。
まああんだけ血流して平然としてるんだから、魔族ってのはもともと生命力が高いんだろうけど、
何かもう、死にたがってるようにすら見えちまったからさ……。……自害なんか、しなきゃいいけどな…」
「そんな…」

私は静寂の玉を見た。

――俺にはもう必要ないからな――

あのときのアドンの顔、見なかった。向こう向いてたから。でも……
でも、ちがうよね。あれは、自分はもう死ぬから必要ないって、そんなつもりで言ったわけじゃないよね……。
ちがうよね……。

「はやく、ロザリーをさがそう」
「……そうだな」

257従者の心主知らず 男 18/21:2016/06/04(土) 14:14:18 ID:QS3H3Q5k
「なあアリーナ」
「ん、なに?」
「お前さ、アドンのことが気になるのか?」
「え、なんで?」
「ロザリーに話聞いたり自分から話しかけたりしてたじゃねえか」
「あー」
「その首飾りももらったわけだろ?あいつに気があるのか?」
「なにそれ。アドンには悪いことしちゃったから謝っただけ。首飾りは何かの役に立つかもってもらっただけ。
私はきほん、魔族は大ッキライ!」
「……それクリフトに言ってやれよ」
「え?」
「変な風に落ち込んでんだ。きっと喜ぶぞ」
「えー?」

どうして私がアドンとお話ししたり何かもらったりするとクリフトが落ちこむのよ。
あ、もしかして。
クリフトはずっと普通にしてたから気にしなかったけど、ほんとはアドンのこと、魔族のこと、クリフトもキライだったのかな……。
私だってべつにアドンと仲良くなったわけじゃないし。

「……うん。クリフトと話してみる」
「おう、頼んだぜ」

――私の男――

なんでまた思い出すかなあ。っもう、また顔が熱くなっちゃった。うう、大丈夫、大丈夫よ。普通に話そう。うん、大丈夫。
そうよ、いっそクリフトにそれどういう意味って聞いちゃえばいいのよ。それくらいの気持ちで行こう。よし。


「クリフトー」
「姫さま…」
「ちょっといい?」
「……なんでしょうか」

すこし落ちこんでるように見えるクリフト。ソロが言ってたのはほんとうだったのね。クリフト…。
私はクリフトに頭を下げた。

「ごめんなさい…」
「姫さま?な、何を…あ、頭を上げてください!」
「…………」

258従者の心主知らず 男 19/21:2016/06/04(土) 14:19:11 ID:QS3H3Q5k
私は頭を上げたけどクリフトをまっすぐ見ることができなかった。
すこしだけ下を向いて話す。

「クリフトはアドンのことキライじゃないんだって思ってたけど、クリフトだって魔族のこと、キライだったのかなって」
「…………」
「私クリフトのことぜんぜん考えないでアドンに話しかけてた。ごめんなさい」
「…………」

私はもういちど頭を下げたあとがんばってクリフトを見るようにした。

「アドンね、お礼を言ってたの。ありがとうって。それからすまなかったって謝ってもくれたの。
何かの役に立つかもって首飾りもくれたの。あれね、敵の魔法を封じこめられるんだって。俺にはもう必要ないからって」
「…………」
「アドンは魔族だけど、悪い人じゃない気がするの。だからクリフトも、アドンのことキライにならないでほしいの」
「姫さま……」
「お願い…」
「………………。浅はかで、本当に申し訳ありません…っ」
「え?」

クリフトは私に深々と頭を下げた。え、なんで。しかもすぐに頭を上げないの。それもなんで?


「ソロさんの言葉、胸に落ちました……」

――死ぬことは守ることじゃねえぞっ!!――

クリフトが遠くを見ながらぽつりとつぶやいた。私はクリフトのよこ顔を見る。クリフト…。

クリフトも私を守るって言ってて、私を守ろうと無理をして、無理をして、ずっと無理をして、ミントスで倒れた。
ソロたちがパデキアを持ってきてくれなかったらどうなってたかわからない。
あのとき私はただ泣くことしかできなくて、クリフトを抱きしめることしかできなくて、
すぐ他の方法をさがしにいけてたかどうか、わからない。
あのときのことはもうわからない。けどこれからのことだってわからない。いつどこでだれがどうなるかわからないの。
だから……

「クリフトも、無理しないでね……」
「…………はい……」
「……ん」

259従者の心主知らず 男 20/21:2016/06/04(土) 14:24:05 ID:QS3H3Q5k
私はなんとなくクリフトに肩を寄せた。クリフトはびっくりしたみたいで姫さまって言ったけど動かなかった。
クリフトの肩にそっと頭を乗っける。立ってるとできないけど座ってるとなんとかできるの。私はクリフトをそばに感じた。
あ、そういえば。うん、よし。

「あのね、クリフト」
「…はい、姫さま…」
「アドンにね」
「……はい」
「アドンに……アドンにー……」
「…………」
「うー…」
「………………。アドンさんと、何かあったのですか…」
「あのねっアドンにクリフトのこと、お前の男って言われたのっ。
それってどういう意味?私の男ってどういう男っ?」
「え?」

クリフトがびっくりした顔で私を見るの。な、なによー。

「たしかにクリフトは私の家来だけど、なんか、物みたいな言い方だし、ヘンなひびきだし、なんか……
なんかへんなのっ」

やだ私、もしかしてまた顔が熱くなっちゃってる…?
でも私は気にせずクリフトをじっと見た。
クリフトもしばらく私を見てたけどそのうちあっち見たりこっち見たり私を見たりなにか言いかけたりやめたり忙しそうだった。
きっと今むずかしいこと考えてるのね。

「ア、アドンさんが、あなたにそのようなことを言ったのですか…」
「そう!」
「…………」

あ、クリフトも顔が赤くなった。やっぱり赤くなるようなお話なのね。

「い、いったいアドンさんとどんな話をしたんですか!」
「知らないわよ!アドンが勝手にそういったんだもん!
あとロザリーは、俺の女じゃ……ないっていってたのかな」
「………………ああ…」
「ああって」
「そういった意味では、姫さまも私の……その、女ではありません。
ですから必然的に、私も姫さまの、男では……」
「……」

260従者の心主知らず 男 21/21:2016/06/04(土) 14:30:46 ID:QS3H3Q5k
クリフトはそこまで言いかけて止まった。むー?

「いえ、その……もし、もの……所属という意味で答えていいのなら、そのように考慮していただけるのなら、
姫さまは私のものではありませんが、私は……」

クリフトはそこまで言ってゆっくりと私を見た。

――私は、姫さまのものです――

「…………」

クリフトがすっごく真剣な顔して言うの。なんで…。そういう顔されると目をそらしたくなっちゃうからいやなのに……。
私は結局目をそらしちゃった。ずっと向きあっていられないのってくやしい…。急いでクリフトの言葉の意味を考える。
私はクリフトのものじゃないけどクリフトは私のもの…?ものって……

「ですから、姫さまの向かうところ「クリフトー」
「……はい、姫さま」
「難しいことよくわかんない」
「あ…はい…」
「クリフトはクリフトのものよ。私は私のもの。だれのものでもないしだれのものにもならないわ。そうでしょ?」
「…………」

クリフトがちょっとびっくりした顔で私を見たけどすこししたらふっと笑ったの。そのまま遠くを見る。

「そうですね」
「そうよ!」

私もいっしょに遠くを見た。またクリフトの肩に頭を置いてみる。そしたらクリフトもすこしだけ顔を寄せてくれたの。
なんだろう、なんだかすっごく安心する。元気も出てきた。
今ソロとトルネコ、ライアン、ブライがブランカ、ボンモール、バトランドへ捜索願いに行ってくれてる。
よろず屋のおじいさんが犯人のことをくわしく教えてくれたんだって。じいがいうにはただ者じゃない神官なんだって。
ソロがその間にエスタークを倒したことでサントハイムになにか変化があったか見に行ってこいよって言ってくれたの。
お父さまのことずっと気になってたけど、でも、今はなんだかロザリーをさがすのを急いだほうがいい気がしてる。
ロザリーを無事助けだしたら嬉しい知らせを持ってお父さまのところに行こうと思うの。
クリフトにそのことを言ったら姫さまの望むままにって、このクリフトどこまでもお供いたしますって返ってきた。
っもう、クリフトったら大げさなんだから。
でもちがうときはちがうって言ってくれるのがクリフトだから、きっとよかったってこと。そういうことよ。

私たちはこれからロザリーをさがしにいく。ぜったい見つけようねって言ったらはい姫さまっていつもの声が返ってきた。
よし、ロザリーをさがそう!

261従者:2016/06/04(土) 14:35:08 ID:QS3H3Q5k
ロザリーがさらわれた場所がバトランド地方というのはFC版のスライムの台詞「イムルのほう」を参考にしています。
当時はイムルで夢を見るよう誘導するための台詞だったと思うのですが、なぜかPS版では削られていて残念に思います。
また、短編集「知られざる伝説」より、ロザリーヒルで商売をしているご老人はゴットサイドの神官であり
ピサロの動向を探るために訪れたスパイでしたがロザリーがいれば魔族の王と人間との戦いを回避できるかもと思い
自分の役目はなくなったとゴットサイドへの報告書を灰にし一生をロザリーヒルで過ごすことにしたという設定を入れています。
その後もロザリーの安否を気にかけていたとしました。この度は長文をご覧いただき本当にありがとうございました。

>>249
まさかのはさまれる人wなつかしいです。恥ずかしいです。ありがとうございます。

ヒーローズは本当に親密度がぐっと上がっている感じですね!
クリフトの「誰よりも強くてまっすぐでいつだってステキな姫さま」発言が自分のイメージを後押ししてくれていてとても嬉しいです。
ヒーローズ関連も4クリア後という設定でいいのでしょうか?
DS版6のデスコッドといただきストリート関連は4クリア後ということで把握しているのですが
もしそうならいろいろな戦いやイベントをこなすごとに親密になっていったのかな、いくのかなとさらにわくわくなのです。

262名無しさん:2016/06/04(土) 14:49:54 ID:opyK2yL2
>>261
いつも楽しく読ませてもらってます
ヒーローズは、1が本編クリア後の参戦だとインタビューで回答されていて
2はさらにその後(1のことは皆覚えてないが、時々思い出しかける)なのでやはりクリア後ですね

263名無しさん:2016/06/04(土) 15:16:55 ID:kEILwRP6
>>261
SS乙です!さえぎってしまってごめんなさい!

ヒーローズは1も2もクリア後設定ですね
今回は長い間2人で旅してたらしいのと4の仲間キャラがクリフトの片想いに言及するなど…とちょっと匂わせておきますw

264従者:2016/06/04(土) 15:40:38 ID:QS3H3Q5k
>>262
ああやはりクリア後ですか!
個人的にパラレルとはちがった嬉しさがありまして、ありがとうございます!
SSも読んでいただき感謝です!

最初あなたがはさまれた人かと勘違いしました失礼しました。

>>263
いえいえ!直にお話しできて嬉しいです。乙ありがとうございます!
長い間二人旅というのがすでにクリフトがんばったのにさらにそんな展開が…!
貴重な情報をありがとうございます!今後の二人に期待ですね。

265名無しさん:2016/06/05(日) 02:29:24 ID:Lv6DfGlw
>>261
GJです
ソロの気遣いが何気にいいですね
こういう暖かいリーダーがまとめてくれてるから、死と隣り合わせの旅にも笑顔が生まれるのでしょう
ソロにもGJ!

過去スレでもソロって、たいていさりげなくクリアリを応援する優しい人でしたね
直接応援したり頭を抱えてたりポカーンだったりと、展開の仕方は色々ありましたが、書き手の暖かさがソロの人柄に出ることが多かった気がします

266従者:2016/06/07(火) 16:58:32 ID:jCTGY80g
従者です。今回レスだけで失礼します。

>>265
ソロにも注目していただけるとは…!嬉しいです。感想ありがとうございます!
実はソロの人柄は正に過去スレをベースにさせてもらっています。
皆さんの描くソロがとても暖かくてあの雰囲気を出したいと考えていました。

実はこの従者シリーズではソロはその生い立ちゆえ落ち込んでいたり病んでいたり、
なんというかこう、暗く腐った状態から始まっております。
クリアリに関わる部分もありますのでそう遠くないうちに一部投下するかと……。
いつだったか同じ発想をされた方がいてとても心強かったのですが、
どうにも絆を深めるためにはソロとクリフト、一度は喧嘩せざるを得ない展開です;

今後訂正箇所のないよう見直し気をつけます。更新今しばらくお待ちください。
この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

267名無しさん:2016/06/12(日) 05:59:52 ID:JsFm30Jk
全てを失って旅立ったソロが出会ったのは、面倒見の良いお姉さんたち。
1章のライアンでなく、わざわざ4章の姉妹から会わせてるのが上手いんだよね。
戦闘では格段に強かったお姉さんたちだけど、敵が強くなってくると打たれ弱さが目立ってくる。
ソロは庇護される立場から守る立場に変わって、責任感ってのも生まれてくるはず。

そんなソロが2章の面々に出会って、クリアリとどう関わるんだろうか。
ドラクエ伝統のしゃべらない主人公だけに、我々は想像するしかない。
そういうあたりもクリアリの奥深さだね。

268従者:2016/06/14(火) 21:15:39 ID:20PI.NtE
>>267
>1章のライアンでなく、わざわざ4章の姉妹から会わせてるのが上手いんだよね。
同意です!
辛さを感じさせない二人の明るさにソロは大いに救われたのではないでしょうか。

>そんなソロが2章の面々に出会って、クリアリとどう関わるんだろうか。
さしあたって本編で確実にわかるのは、ソロは
・ブライと同行したときブライに旅の目的を聞いている
・アリーナがデスピサロをさがす旅を続けましょうと言ったとき自分もさがしていると自己申告した(もしくはブライに事前に話していた)
・山奥の村(夜)では元気がなく落ち込んでいた(ようにアリーナには見えた)
ですかね。他にもあるかもしれません。
これらから想像するのは難しいですが、伝説の勇者といえど一人の人間だ、
そう思える人だったらいいなと思いここではそんなソロを描いていきます。少しでも共感いただけたら嬉しく思います。


PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、結界のほこら(アンドレアル)編いってみます。
今回もクリフトのあやしげなセリフはないのですがクリアリを思いついたので書いてみました。
一部さらっとですが流血描写がありますのでご覧に際にはお気をつけください。(いきなり倒しています)
回復や蘇生に関して一部疑問を残す流れがあるかと思われますが後ほど解消予定です。
取り急ぎこれらも直接クリアリには影響ないかなと思われますので何とぞご容赦を…。ではどうぞっ

269従者の心主知らず 結界のほこら編 1/6:2016/06/14(火) 21:20:21 ID:20PI.NtE
竜のからだがゆらめいた。こっちをにらみつけてるけどもうなんにもしてこない。
やった!

――竜を倒したのね!――

「うぐぐ……」

竜は足をなんども置きなおして大きなからだをささえようとする。
でもささえられなくてからだはずっとゆれてる。

「ロザリーさまを失いピサロさまがどれほどなげいたことか…」

え?

「なげいたことか…っ」

竜はまた私たちをにらみつけた。

「人間など滅びてしまうがいい……」

――デスピサロさまばんざい!――

「ぐふっ!」

竜はふたたび口から血を吐いた。大きな音を立てて地面に倒れる。
もういちど大量に血を吐いたあと竜は動かなくなった。

「……」

ロザリー…?

「敵ながら、忠誠心を忘れぬ見事な死に際でしたな」

ブライがぽつりとつぶやいた。

「……」
「……どうやら外の結界がこれでひとつ消えたようです」

270従者の心主知らず 結界のほこら編 2/6:2016/06/14(火) 21:24:14 ID:20PI.NtE
クリフトも外のほうを見ながら言った。
剣をかまえてたソロもゆっくりしまって外のほうを見る。そのままなにも言わずに歩き出した。
クリフトとブライも私に目で合図して外へ向かう。でも私はすぐ歩き出せなくて……

「…………」

ロザリー…。
ロザリーは、ほんとうに死んじゃったんだ……。
ロザリー……。
私はぼんやりと竜を見た。

――わたしはこの結果を守る者――
――命にかえても結界を破らせるわけにはいかぬ!さあ、来るがよい!――

竜はもう動かない。

「…………」

動かない……。

「…………。ロザリー……」
「姫さま?」
「…………」

もしロザリーを助け出せてたら、ううん、その前にアドンの代わりにだれか護衛をつけてたら、守れていたら、
この竜も戦わなくていい敵だったのかな。アドンみたいに、お話しできたのかな……。
でも、ロザリーがさらわれる前からデスピサロは人間を滅ぼそうとしてた。それならやっぱり、戦うべき敵でいいのよね。
……じゃあ、いつかアドンとも戦うことになるのかな……。今みたいに、殺しあうことになるのかな……。
私は竜に近づいてそっと首に手を置いた。

「姫さま!?」
「…………」

竜はもう動かない。ソロが深くつらぬいたからきっと内臓もやられてる。
だからたぶん、もう生き返らせることもできない。この竜とはもうにどと会えない。話せない。
戦えない……。

「姫さま…」
「…………」

271従者の心主知らず 結界のほこら編 3/6:2016/06/14(火) 21:29:02 ID:20PI.NtE
私は戦うのが好き。大好き。
でも、だからって、殺すのが好きなわけじゃなくて……出会う敵みんなを殺したいわけじゃなくて……
そうじゃなくって……

トクン…

え?まだ脈打ってる?生きてるの…?

「クリフト!」

私は思わず叫んだ。クリフトがすぐ駆けつけてくれる。

「はい!姫さま!」
「ねえクリフト、この竜、助けられないかな…」
「姫さま…?」
「まだ脈打ってるの。助けられないかな…」
「…………」
「お願い…」
「…………」
「おねがい…っ」
「…………」
「っ……っ」
「………………」

「かしこまりました。やってみます」

クリフトが笑って答えてくれた。すぐ竜の手当てに入ってくれる。クリフト…っ。
クリフトの優しいささやきがあたりに響いた。私はクリフトの声に聞き入る。

「がはっ!」

竜が息を吹きかえした。目をうっすら開けようとしてる。
助かったの…?

「ぐっ…」
「大丈夫です。ゆっくり息をしてください」
「あ……ぐ…っ。なんの、マネだ…っ」
「あなたのためではありません。姫さまがお望みになったからです」
「………っ…」

272従者の心主知らず 結界のほこら編 4/6:2016/06/14(火) 21:34:06 ID:20PI.NtE
クリフト…。
竜はしばらくクリフトをにらみつけてたけどふたたびゆっくり目を閉じた。
また地面によこたわる。

「クリフト…?」
「大丈夫です。少々強めにかけましたので、疲労で眠ったようです」
「眠ったの…?」
「はい」
「そっか……。よかった…」
「……はい」
「アリーナ」

すぐそばまで来てたみたいでソロが私の名前を呼んだ。私はあわてて振りかえる。
でも私はうつむいちゃった。ソロの顔をまっすぐ見ることができない……。

「ソロ、ごめん…っ」

声までふるえちゃった。泣きそうになるのをいっしょうけんめいこらえて言葉をつむぐ。

「でもわたし、なんかいやだったの」
「…………」
「なんだか、死なせてはいけないような気がしたの」
「…………」
「……ごめん……」
「………………」
「ごめんなさい…っっ」
「………………。そうか」

ソロは小さな声でそれだけ言った。ソロ…。

「結界が戻っていないか心配ですが」

あ…。
クリフトも小さな声で言ったあとまた結界のほうを見た。
少ししてクリフトはこっちに向きなおる。

「大丈夫です。とけたままのようです」

クリフト……。

273従者の心主知らず 結界のほこら編 5/6:2016/06/14(火) 21:38:08 ID:20PI.NtE
ソロたちは私がしたことに対してなんにも言わなかった。いっつも口うるさいじいも私を怒らなかったの。
なんで……。
みんなであらためて外へ向かう。だれもなんにも言わなかった。
私は外へ向かう前に竜を抱えようとしてみた。大きすぎて重くてうまく持てない。首も長いし耳も大きいし。
思えばコンドルは小型の竜だったのね。

「姫さま……」

クリフトが私に話しかけてきた。いつもより少しだけ低い声……。
クリフトは竜のほうを見たまま話を続ける。

「ここで一命を取りとめたところで、また戦うことになるだけです」
「……」
「敵を生かしたことに他なりません」

クリフトがゆっくり私のほうを見た。

「私たちの関係を取り持ってくれる方はもういません。
アドンさんのときとは状況が違うのです」

いつものようにお説教を言うクリフト。あきれるくらいいつものこと。
でも今は、その言葉が痛いくらいよくわかって……

「姫さまのお考えは、甘いと言わざるを得ません……」

よくわかって、私はなんにも返すことができなかった。
少しだけ目が熱くなる。

「ですが……」
「…………」
「限りある命を大切にしようとされる、あなたのその慈悲深きお心遣いが……」
「…………」
「私は、好きです」

え…?
クリフトは向こうを向いた。

「ここに置いていくしかないでしょう。どのみちすぐには目覚めないと思います」

私に背中を向けたまま話す。顔をこっちに向けてくれないの。

274従者の心主知らず 結界のほこら編 6/6:2016/06/14(火) 21:44:14 ID:20PI.NtE
「クリフト…?」

クリフトはそのまま外へ行こうとしてしまう。

「待ってよ。ねえクリフト」

さっきなんて言ったの…?

――今どんな顔をしてるの…?――

「とにかく一度このほこらから出るとしましょう。
どうするかを考えるのはここを出てからでも遅くはありますまい」
「はい、ブライ様」
「え」

ブライの言葉にクリフトが反応しちゃったからそのままになっちゃった。
でもブライもいつものじいらしくない優しい声だったの。
ソロもこっちを見てた。きっと怒ってると思ったのに、ソロも優しい顔をしてたの。どうしてみんな……
みんな…っ。
もしまたあの竜と戦うことになっても、私はぜったいにみんなを守るって決めた。ぜったい守ってみせる。
それに竜も死なせない。ぜったい死なせない。それが今私ができるせいいっぱいのことだと思うの。
よし!
さっ次行くわよ!次!もうここに用はないでしょ!私は自分に言い聞かせて気を引きしめた。
両手を強くぎゅってする。

「あせらず行きましょう。あせって生命を落としたのでは意味がありません」

え…?
まるでクリフトが私の心を読んだみたいに言ってきたの。クリフト…?クリフトはもう普通の顔をしてた。
勘の鋭いクリフトっていや。いやだったはずなのに、なぜか今は……

「とはいえもうこのほこらには用がありませんね。次にまいりましょうか」

…………ぷ。なんでだろう、なんでか笑っちゃった。
なぜか今は少しだけ気が楽になったの。またクリフトに助けられちゃった。
おかしいな。いつもだったらくやしいはずなのに、気持ちがすっとしてるのはなんでだろう。ねえクリフト……

――不思議なクリフト…――

なんだか元気も出てきた。今度は堂々とみんなの顔を見て話しかけることができたの。

「わたしはまだ大丈夫よ。みんなはまだいける?」

275従者:2016/06/14(火) 21:48:41 ID:20PI.NtE
従者です。これ以降いたストSP・ポータブル・DS、ドラクエヒーローズの語り入ります。

触りだけですがだいたいの流れを把握しました。>>157さんの教えてくださったこと大いに理解です。
「クリフトなんか最初から相手にしてないのよね〜(笑顔)」
とはクリフトが最下位のときのライアンとの掛け合い台詞でよいでしょうか。
DSは確かにアリーナの心の動きがよく見えますね。前2作で何かあったのかと勘ぐりたくなるw

ヒーローズは壮大感半端ないですね。
何ぶん個性的なキャラが多いので(作戦好きだったり最強だったり王だったり魔王だったり)
何かとサポートに回りがちなクリフト、ヒーローズでは和み・ヘタレ要員に回っていた感が;
ですが基本後ろに控えつつ危機を感じた際にはとっさにアリーナの前で守りの体勢に入るところや
アリーナが突っ走っている際にはすぐ後ろで間を空けず追うところ(背中を預けられそうな印象を受けました)、
何より肩を貸す際のコンビネーションや例のバンジーへの誘いなど見逃せないところが山ほどですね!
礼儀正しく頭は下げるも名乗らないクリフトw
あの名台詞「このクリフト……」も出ましたね。思いつめた表情とまばたき一回が印象的でした。
今回「王様」ではなく「お父上」と言っていたのもちょっと気になりましたが。。
主人公たちに同行する際まじめな思案顔でいったい何を懸念しているのかと思ったら
「せっかく姫さまとふたりきりだったのに……(涙目)」
ってそっちかいw思わず噴いてしまいましたよ。あのイケメン顔であれは反則ですw
後ろ手に組み佇む姿も素敵でした。
ヒーローズ2はまだ登場シーンを拝見しただけですが、いきなり親密度がハイパーになっていませんか?!

今のところ大きな設定破綻はなさそうなので本編クリア後このシリーズのまま展開してみようか考え中です。
まだ把握不足にて会話の流れがめちゃくちゃかもしれませんが、とりあえずこんなクリアリ、いかがでしょうか。

276従者の心主知らず いただきストリートSP編(仮):2016/06/14(火) 21:54:10 ID:20PI.NtE
「ねえライアン。クリフトじゃ相手にならないと思わない?」
「うーむ、クリフトどのは意外とこういうのは得意かもしれませんぞ!」
「えー?でもでも、クリフトってかけ事はしないしお金とか宝とかにも興味ないし、
自分のことより人のこと優先するし、みんなを応援しちゃう気がするのよねっ」
「ほほっアリーナどのはクリフトどののことを本当によくご存知なのですな」
「え?そ、そんなことないよ!」
「うーむ、ライアンさんが相手ですか……。姫様をお守りしなくては」
「え」

「平気よクリフト!わたしのことはほっといて!!」
「ひ、姫さま?」

ほらやっぱり、自分のことより人のこと優先するクリフト。
べつに私がクリフトのことよく知ってるわけじゃなくて、クリフトがいっつもそうだからなのっ!
なんでこんなことで顔が熱くなるの!っもう、クリフトになんかぜったい負けないわ!

「いい、クリフト?手を抜いたりしたらあとでおしおきよ!」
「そ、そんな姫さま…」
「ほほっこれはきびしいですな、クリフトどの」
「ぜったいにクリフトには負けたくないわ!!」

クリフトが私の高いお店に止まった!やったやった!
「おお、ここは姫様のお店!ここに止まれるなんて神にカンシャします!」
「え」
「……アリーナ姫様にならば、この身を捧げてもかまいません……」
「な…」

クリフトがぶっちぎりで最下位!
「悪いけどクリフトは最初っから相手にしていなかったのよね」
「キツいですな、アリーナどの」
「アリーナ姫様と一緒に遊べるなら、順位などどうでも良いのです」
「え…」

目標金額を達成したわ!
「このままお城へ行けば私の優勝ね!」
「さすがはアリーナ姫様です!優勝なさればブライ様もきっとおよろこびになりますよ!!」
「う…」

っもう、なんなのよクリフト!今は勝負中でしょ!?クリフトのバカ!バカバカバカ!!
顔が熱いわ…。

277従者の心主知らず いただきストリートポータブル編(仮) 1/2:2016/06/14(火) 21:58:46 ID:20PI.NtE
今回クリフトはお休みなの。だからもう調子がくるわないで勝負できるのよ!よし!
サントハイムのアリーナよ!手加減なしでお相手するわ!

「わたしはアリーナ。プレイヤーさんはみどころがありそうね。楽しみだわ」
クリフトもたくさんもうけてて実はけっこう強かったんだなって見直したんだけどね。

「プレイヤーさん、そろそろこの勝負にも慣れてきたんじゃないかしら?」
私もクリフトも最初はよくわからなくってバタバタしてたっけ。ふふ。

「プレイヤーさんとの勝負悪くないわ。ね、もっと2人で特訓しましょ!」
そういえばクリフトともよく特訓してたっけ。クリフト今なにしてるかな。

「プレイヤーさんってなかなかのウデね。ねぇ、もっと試合しに来て!
わたし、プレイヤーさんが対戦相手だとワクワクするわ!」
クリフトともいっつも追いつ追われつしててドキドキワクワクイライラしてたのよね。
なつかしいな。やっぱりクリフトとももういちど勝負がしたいかな。

「ねえ、プレイヤーさんじゃなくってプレイヤーって呼んでもいいかしら?」
今までもみんなのことそう呼んでたしここでだけさんづけで呼ぶのはめんどうなのごめんなさい。

「プレイヤーといっしょに旅ができたらすごーく楽しそうね!
ねえ知ってる?『プレイヤーは強い』ってみんなのうわさになってるのよ」
クリフトはうわさになるほど強くはないけど優しくて気がきくところがあるのよね。

……なんでクリフトいないのかな。
弱っちくてお説教バカで過保護でうるさくて、でもいっつも姫さまっていって私のあとついてくるのに。
なんでいないのかな……。
やはり私も参加いたしますって飛びこんできたっていいのに。
お休みした理由は知ってるんだけど、そういうんじゃなくて……そういう難しい話じゃなくって……
なんで……

「ね、ねっ!プレイヤーってちょっといい男じゃない?」
「……そうですね。少なくともトルネコさんより見込みがありそうです」
「……あんたそれ、すっごい皮肉?」

…………。

「わたしもザキにばっかりたよるクリフトよりよっぽどホネがあると思うわ!」

しーん。ん?何か間違ったかな。

278従者の心主知らず いただきストリートポータブル編(仮) 2/2:2016/06/14(火) 22:04:08 ID:20PI.NtE
「アリーナあんた、なんかキゲン悪い?」
「アリーナさん…?」
「え?そ、そんなことないよ!だってクリフトがここにいないのが悪いんだもん!」
「「え?」」

マーニャとミネアがびっくりした顔で私を見るの。
あれ?だってクリフトが……あれ?

「……じゃあアリーナ、次の勝負にはクリフトを引っぱってでも連れてきてやんなさい」
「ふふ、アリーナさん、クリフトさんがいなくて寂しかったんですね」
「えー?」

マーニャはなんかにやにやしてるしミネアはなんかにこにこしてるしなんなのよもうっ。

「さ、寂しくなんかないわよ!イライラしてるのよ!」
だっていっつもいるのにいないから!

「そうね。ま、そういうことにしといてあげるわ」
「姉さん、そんな言い方……」
「ともかく、サントハイムに帰ったら今思ったことちゃんと本人に伝えなさいよ?」
「えー…」

やだな、クリフトになんか会いたくないわ。だってほんとにイライラしてるんだもん。
いても調子くるうのにいなくても調子くるうってなんなのよ!クリフトのバカ!バカバカバカ!!
…………。


……私、やっぱりクリフトといっしょがいいのかな。クリフトと勝負がしたいのかも……。
くやしいな。クリフトなんかいなくたってひとりでぜんぜんかまわなかったはずなのに……

「アリーナ姫、長旅お疲れさまでした。勝負はいかがでしたか?」

…………。

「もうサイアクだったわよ!!」
「ひ、姫さま…?」

お城に着いたら帰りを待ってたのかお出迎えしてきたクリフト。
私はものすごいいきおいでお部屋に走っちゃった。だってクリフトの顔を見られなかったの。
なんで……なんで顔が熱いの……?

279従者の心主知らず ヒーローズ編(仮) 1/2:2016/06/14(火) 22:08:43 ID:20PI.NtE
こんなたくさんの人数で旅をするなんてひさしぶり!前より人数多いし馬車より広いし!
うふふったのしーい!

「今のところこの中でわたしより強そうな人は……」

うん!やっぱりムチと魔法のゼシカよね!あと最強とか言ってる剣のテリーも気になるわ。
ピサロはまたあとで戦えるからほっといて、あとはー……あ、マーニャ。
そういえばマーニャとは手合わせしたことなかったな。空にいることが多いから戦いにくそう。
そういえばクリフトとも……あれ、クリフト?クリフトは?クリフト!?クリフトー!?

「クリフト!?」

クリフトがいないの!どこ?どこなの!?

「クリフトー!?」
「はっはい姫さま!」

クリフトが向こうから走ってきた。

「ちょっとクリフト、どこ行ってたのよ!」
「いえあの、ちょっとトランペットの……いやあの、ちょっと外へ……」
「っもう、心配したじゃない!いっつもそばにいるくせに!」
「…………。……申し訳ありません……」
「べ、べつに謝らなくてもいいけど……。
けど、今度どこか行くときはちゃんと言ってってよねっ」
「…………。はい、姫さま」

なんかクリフトがちょっとだけ笑ったような気がしたんだけど。まあいいわ。

「クリフトわたしね!この中でわたしより強そうな人がいないかさがしてたの!
手合わせしようと思って」
「手合わせ、ですか……」
「そう!手はじめにあなたとすることに決めたわ!クリフト勝負よ!」
「ええ!?そっそんな……姫さまにヤリなど向けられません!」
「なにいってるのよ!勝負なんだから姫とか家来とかはなしよ?わたし本気なんだから!」
「あのっ……で、ではせめて、ちがう勝負にしませんか?」
「ちがう勝負?」
「はい。たとえば、すごろくとか、いただきストリートとか「クリフトー……」
「……はい、姫さま」
「みね打ち!」ぅ…っ」

280従者の心主知らず ヒーローズ編(仮) 2/2:2016/06/14(火) 22:12:17 ID:20PI.NtE
おなかを押さえてうずくまるクリフト。まったくすきだらけだわ。

「ひ…ひめ……さ…っ」
「いつどこから敵がおそってくるかわからないのにクリフトすきだらけよ」
「も……もうしわけ……っ」

ガタンッ

「え?なに?」
「っ…船が急に進路方向を変えたような気がしましたが……」

ふと気がつくとクリフトが私の目の前にいた。手を広げて私を守ってる。あ…。

「……落ち着いたようですね」

少ししてクリフトは手を戻した。まじめな顔をして私を見る。

「何があったのか聞いてまいります。姫さまはここでお待ちください」
「う、うん…」

クリフトは静かに走って外へ出ていった。クリフト…。

今日はもともと風が強くて視界が悪い日だったんだって。
着地の際にさほうにあった小だかい岩山の発見が遅れて?進路変更したとき少しかすってしまったみたい。
船に損傷はなかったけど念のためメンテナンスするんだって。
ご心配をおかけして申し訳ありませんでしたと言っていましたよって、クリフトがわりとすぐ戻ってきて教えてくれた。
クリフト……すごくてきぱきしてた……。

「姫さま……あの、私の顔に何かついていますか?」
「ううん」
「そ、そうですか…」

でもまたあっち見たりこっち見たり私を見たりそわそわしてる。すきだらけのクリフト。
…………。


私がみんなとの旅を楽しめるのは、いつものクリフトがいつものようにそばにいてくれるからなのかな。
もしクリフトがいなくて私ひとりだけでここに来ていたら、今みたいには楽しめなかったかもしれない。
今クリフトはここにいるからいないときのことはほんとにはわからないけど、なんとなくそんな気がするの…。
クリフト……ねえクリフト、私だってあなたを守るからね。負けないからね。

281従者:2016/06/14(火) 22:17:51 ID:20PI.NtE
いただきストリートSP編の補足として、本編にてアリーナはロザリーに
クリフトさんと恋人同士なのですよね?クリフトさんのこととてもお詳しいですよね、
と言われ慌ててちがうちがう、幼なじみだよ、仲間だよと返した経緯があります。
少しでも解釈の助けになれば幸い……詳細はピサロナイト編にて投下予定ですすみません;
またヒーローズ編でのクリフトのすごろく発言も本編クリア後にて詳細投下予定です;
いただきストリートDSとヒーローズ2は台詞そのままで楽しいのでもう少し眺める側をやってきます。
いろいろ長くなりました。この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

282名無しさん:2016/06/15(水) 04:40:49 ID:STMXZHEo
お姉さんたちと会った当初はお姉さんたちが前に出て戦うので、戦闘のBGMはジプシーダンスでしょう。
お姉さんたちがメインで戦ってる感を感じさせます。
しかしソロがお姉さんたちを庇わないと戦闘が成立しなくなり、戦闘のBGMは通常曲になります。
そういった無言の演出が秀逸です。
ソロのパーティー内での立ち位置の変化を感じさせます。

以前のスレでも、ソロと姉妹のそういう力加減をステータスだけで表現したことに感心の声がありましたっけ。
ドラクエ4が丁寧に組み上げられていることにあらためて驚かされます。


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