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タブンネ刑務所14

1名無しさん:2017/05/06(土) 00:36:57 ID:v4JFFnrY0
ここはタブンネさんをいじめたり殺したりするスレです
ルールを守って楽しくタブンネをいじめましょう。

482キルクスタウンのタブンネ:2021/02/25(木) 19:50:24 ID:pt4juP.Q0

今まで同様、人間が寝静まった夜中になるとタブンネの活発な行動が始まる。

眠るベビを右脇に抱え、左腕を器用に使い、頑張って糞運びをした。


ベビが生まれる直前まで、タブンネは負傷した右腕を使うことが一切なかった。
糞運びをする時はいつもタマゴを寝床に放置していた。今はベビを置き去りにするなんて発想は毛頭無い。

タブンネの右腕、手先の粉砕は相変わらずで、指爪を使うことは許されなかったが、半分から付け根の部分はいつの間にか腫れが引いていて、今のように脇にベビを抱いたり、左腕の補助として添え手をするくらいは充分に可能だった。
これはベビンネが気付かせてくれた事実。野生で生きる上ではかなり大きなことだった。


2匹分の糞や、汚した雪まで片付けなければならないので糞運びの大変さは倍増したが、それでも4往復くらいして寝床付近を綺麗にした。
今までと違ってこれを惨めに思うことも、ストレスを感じることもなかった。

糞運びを終えると、足早にステーキハウスへと向かった。しばらくご無沙汰だったが、授乳の為により多く栄養をつけたかった。
ベビ誕生の翌晩からステーキハウス通いを復活した。

廃棄場にたどり着くと、すぐにはゴミ漁りを始めず、建物裏口前に立ち必死に耳をそば立てた。過去の失敗からより慎重さを増していた。

人間の気配が無いことを確認すると、裏路の雪の無い場所にベビを寝かし、袋に手をつけた。
苦手なマトマやフィラ、そんなに好きではない生肉も選り好みせず、沢山食べた。

ステーキハウスでの食事を終えると野外泉には向かわず、イオニアの廃棄場で野菜芯や木の実片、日中の非常食を少し蓄え、一度寝床に戻った。
温泉に行くのはベビが夜鳴きをしたタイミングや早朝、ベビが目を覚ました時に、一緒に向かった。

ベビンネも温泉は好きだったようで、タブンネに抱かれて入浴する度、「チィチィ♪」と嬉しそうに鳴いた。

タブンネはこれまで以上、よく身体を綺麗にした。ベビの排泄物処理も行う為、口内も入念に濯ぎ、水分もしっかりと摂った。

温泉から上がり、側路に置いてやると四つん這いでプルプルと湯雫を飛ばすベビンネ。タブンネはベビのこの姿を見る度に悶絶し、目尻を限界まで下げて顔を綻ばせた。完全に親バカだが、とにかくタブンネはベビに溺愛、幸せ一杯だった。

湯浴みを終え住処に戻ると授乳をし、親子で静かに過ごした。

483キルクスタウンのタブンネ:2021/02/25(木) 19:51:57 ID:pt4juP.Q0

タブンネはベビの一挙手一投足全てが愛おしく、まさに夢中といった様子であった。

何かを訴え鳴く時、おっぱいを飲む時、
チュピー、チヒィー...。 可愛らしい寝息を立てる時、その寝顔・・・。


湯浴みを終えた朝方、タブンネは胸に幸せな温もりを感じながら、ふと物思いに耽った。

これまで何度も自暴自棄な感情に陥ったこと、タマゴを気にかけてこなかった自分の行動を猛烈に省みた。
だがしかし、とにかくベビちゃんは無事に産まれてきてくれたのだ。これからしっかりと愛情を注いでやればいい。

かつてダーリンが自分のお腹に触覚を当て大喜びしていたこと、今ならその理由がよく解った。
ダーリンにも、せめて一目だけでもこの子の姿を見せてあげたかった。
そんな想いでタブンネが一筋の涙を溢すと、頭にその雫を受けたベビが目を覚ました。

「チィ~ッ?チュビィ~?」

小さな手を目一杯伸ばし、母の顔へ向け手を伸ばすベビンネ。
タブンネは涙を拭うと、笑顔でベビの顔を舐め、右脇と左腕でしっかりと抱きしめた。

ダーリンも、ママも、この子の中に、確かに生きている。
もう、悲しむ必要なんてないのだ。
今、自分がすべきはこの子を守り、しっかりと育て上げること。タブンネは人生で最大といえる生き甲斐と幸せを感じていた。

484名無しさん:2021/02/25(木) 20:59:42 ID:ISb1Lq5k0
母性覚醒しちゃいましたかー
ぶっちゃけ孵化前のメンタルのままなら虐待コースにいくかと思ったけど
いぢめた挙げ句に死なせたらベビの泣き声や遺体を気付かれてタブンネの存在も危ないもんね

485名無しさん:2021/02/25(木) 22:59:26 ID:sEH1OHpQ0
乙です
幸せの絶頂にいるタブンネがどうやって不幸のどん底に落とされるかワクワクする

486名無しさん:2021/02/26(金) 20:40:37 ID:Cd65AMqQ0

タブンネちゃんイッシュ15位おめでとう!!

これからも沢山楽しませてね!

487名無しさん:2021/02/27(土) 09:50:51 ID:V4tAQdhw0
レンティル地方と昔シンオウにはタブンネさん居るのかな

雄大な自然の中でのびのび殺されるタブンネさんめっちゃ見てみたい

488名無しさん:2021/02/27(土) 11:41:09 ID:5OFwwpgM0
昔シンオウにタブンネさん居たらまた追い掛け回したいな
欲を言えば野生のポケモンに殺されたママンネの死体が道端に転がってたりその傍らでチビンネ達が死体に縋り付いてピィピィ泣いてたりしたら滅茶苦茶興奮する

489名無しさん:2021/02/27(土) 18:39:42 ID:UMjpsKMg0
>>488
そのチビンネ達を片っぱしからすがり付いてるママンネの体から引っ剥がし
ケージの中にぶちこみたい
必死で動かぬママンネに助けを求めていやいやをする可愛らしい抵抗を間近で見たい
顔の見えない麻袋とかじゃなくケージにするのは
もみくちゃになって隙間から抜け出そうとしたり小さなおててを伸ばしたりするとこを眺めていたいから
「緊急時に親を呼ぶ」チイーチイー泣く声をBGMにゆっくりと自転車でママンネちゃんから遠ざかりたい

490名無しさん:2021/02/27(土) 21:42:13 ID:5OFwwpgM0
>>489
ゲージの隙間から母親の死体に向かってめいっぱい手を伸ばしてヂイーヂイーって泣き喚くチビンネの声を漕ぎながら自転車漕ぐの滅茶苦茶楽しそう
そういう楽しい遊びをするためにもママンネにはいっぱい繁殖していっぱい死んで貰いたい

491キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:32:55 ID:vGNA8xdA0

ベビンネ誕生から丁度1週間、ベビの身体に一つの変化が起き、ママタブンネの心情、行動にも一つの変化が生まれた。


いつものように深夜の活動を終え、タブンネは我が子を胸に抱きコクコクと眠りについていた明け方、ベビがいつもと少し違う声色で鳴き出した。

その声に目を覚ましたタブンネ。
腹部を見るがオシッコやウンチをしていた訳ではない。ならばおっぱいかと思い、口元を乳首に当てるが吸い付いてこない。

心配になって抱き上げ顔を見ると、今までずっと閉じていた瞼がモゾモゾと蠢いている。

フミィ~、フミィ~。 少しこそばしいような声を上げるベビンネ。やがてその小さな瞼がピクピク上下すると、パチッと目を開いた。

「ミィ...!」

こびりつく目垢を舐め取ってやると、2つの綺麗なサファイアブルーが現れた。少し遅い開眼であったが、ベビはパチパチと瞼を上下させながら不思議そうに辺りを見回した。視力も問題なく育ったようだ。

「ミィッ。ミィミィ...!」

我が子の開眼に喜びの声を上げたタブンネ。しかし嬉しさも一瞬、すぐに表情を曇らせ、大きな両耳を垂らした。
ベビが生まれて舞い上がっていてこれまで完全に忘れていたが、自分の姿はタブンネなのかもわからないような、外傷だらけの醜いバケモノなのだ。

こんな母親の姿を見てベビちゃんはどう思うだろうか。怖がって大泣きするのではなかろうか。
そんな事を思い、少しベビから顔を背けた。
右目からは涙が滲み出たタブンネだったが、小さな我が子は決してママを恐れたり、蔑んだりしなかった。

開きたての両眼をキョロキョロ動かしていたベビンネだったが、ママの顔を見つけるとそこに視線を定め、破裂が癒着し醜く腫れ上がったその左目へ向け、小さな手を一生懸命に伸ばした。

「チュイ~~..?チィチィ。チビィ~?」
—ママ、おめめケガしてるの?イタイイタイの?

その鳴き声はまだタブンネの言葉としての意味を成していないが、心配そうな表情に声色。ベビの優しさに満ちた意図を、ママタブンネはしっかりと感じ取った。

「べ、、ベビちゃん...。ううん。なんでもないミィ。ベビちゃんはなぁんにも心配しないでミィ。ママとっても幸せミィ...!」

タブンネは右目からポロポロと涙を流し、ベビをそっと抱きしめた。

弱冠タブンネの思い込みでもあったろうが、優しい我が子の心根は亡きダーリンをハッキリと思い起こさせた。
タブンネはベビへの愛情と、守り抜く決意をより一層強く、胸に誓った。

492キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:34:11 ID:vGNA8xdA0

その日の昼過ぎ、寝床前の雪の上でベビを遊ばせながら、タブンネはある算段を企て、思慮を巡らせていた。
人里からの脱出である。

ベビの這いずりはいつの間にか力を増し、言っても1分放置して2m進めるかどうかという程度のものだが、ハイハイとして成立するまでになっていた。
腕や脚の筋力も順調に育っている。

今まで浮かれていて思いもしなかった、いや、考えを遠ざけていたのかもしれないが、いつまでこの場所でこんな生活を続けるのだろう。

この子もいずれは2足で歩けるようになり、タブンネの言葉を話すようになって、身体だって大きくなる。

自分の幼児期を振り返る。
ママには申し訳ないけれど、ダーリンとの暮らしの方がどう考えても幸せで、健常だった。
この子にも森や林で伸び伸びと暮らし、人間の廃棄物ではない木の実を食べさせ、できればタブンネの、そうでなくとも林地に居たエモンガやチラーミィのような、ポケモンのお友達を作ってあげたい。


同日夜、タブンネはいつもより気持ち早めに動き出し、糞を片付けステーキハウスで食事を摂ると、ベビを抱いたまま、街の西外れまで歩みを進めた。

軒間を一生懸命進み、足を動かしてやがて市街地を抜けたが、辺り一面は相変わらず雪景色。鬱蒼と生い茂る木々はイオニアの庭と同じ針葉樹。イッシュ16番道路のような見慣れた広葉樹ではなく、目視できる限り木の実のなりそうな木は1本も無い。

結局その日は踵を返し、トボトボ住処へ戻った。

493キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:35:33 ID:vGNA8xdA0

それからタブンネは、毎晩町外れまで足を進め、新居となりうる森林地や草むらを探し回った。

3日かけてキルクスの西側一面を探索し終えたが、芳しい成果は無かった。

道中、見慣れぬ小さな鳥ポケモン(ココガラ)に2度ほど遭遇し、目が合った。
驚いて身を屈めたタブンネだったが、いつも相手の方から逃げて行った。タブンネの左目と右腕の傷に加え、他の野生ポケモンから見て恐ろしいのは火傷跡。
タブンネの胴体は尾まで含め、ザ・センターマンのように綺麗に左右の色違いができていて、初見では強そうな見た目に成り果てていた。

ココガラはともかく、タブンネにとって厄介なのは深い雪景色だった。
生まれてから10ヶ月程野生を過ごしていたことから、タブンネには“四季”という概念が備わっていた。

せめてもう少しあったかくなり、この白い地面が無くなってくれればより広範囲動けて、辺りの観察もしやすくなる。
少しでも早い春の到来を心底願うタブンネだったが、それは叶わぬ願い。タブンネには理解の及ばぬことだったがここは通年降雪地である。

またもう一つ枷となったのは胸に抱き続けるベビの存在。
順調に育つベビの身体は既に1kgを超えていて、ただでさえ速くはない歩みを更に重くした。
せめて、この子がタマゴの中に居た段階から新居探しを始めていればと何度もタブンネの頭をよぎったが、その都度「ミッ!」と短い気合いを入れ、その考えを拭い去った。
愛しい我が子を重荷と捉えるなんてあってはならない。自分が頑張ればいいだけのことだ。

深夜の徘徊中概ねベビが寝ていてくれて助かったが、ベビの日中の起床時間は日増しに長くなり、タブンネの睡眠時間、質はどんどん下がっていった。
しかしタブンネの気力は衰える所を知らず、疲労が蓄積していく身体を動かし、毎晩探索を行った。

494キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:37:17 ID:vGNA8xdA0

新居探しを始めて4日目は街中を通り、北側へ向かった。

市街地を抜ける間、タブンネにとっては驚くことであったが、何度か人間の気配を察知し、物陰に身を隠しながらの行脚となった。

広い道を歩くのはこれが初めてではない。この地へ来て間もない頃、餌場探しであちこちを2,3日歩き回った。その時はこんなに気配は感じなかった。だから夜中になればこの街の人間は動かないと思っていた。

今一度褌を締め直し、タブンネは息を殺しながら北へと歩みを進めていった。

数時間かかって漸く果てが見えてきたが、その行手を阻むように、街中のそれとは違う大きな建物(キルクススタジアム)が視界に入り、足を止めた。
タブンネにその用途を理解することはできなかったが、その壮大な造りに恐れを抱いたのと、朝までに補水を済ませ住処へ戻る時間的余裕がなかったことから、北は諦め踵を返した。

キルクスは大して広い街では無いのだが、身重のタブンネからすれば少しの探索でも壮大な冒険と言える行脚であった。

—明日からは東側を探そう。

そう思い住処へ舞い戻ったタブンネ。
その計画を邪魔するように、まるで何かの不吉を告げるように、翌朝からキルクス一帯は猛吹雪の荒天が続いた。


北側を探索した後の日中、吹き荒れる暴風と横殴りの雪がタブンネ親子を襲った。

ダクトの排気も意味を成さず、これまで寒さをもろともしない様子だったベビでさえもプルプルと震え出し、タブンネも鼻水が凍るほどの寒さに苛まれたが、親子抱きしめ合って何とか暖を取った。

夜になっても荒天は収まらなかったが、タブンネはこれをチャンスと捉えることにした。
時折ホワイトアウトさながらに吹き荒れる降雪と地吹雪。自分からも周りがよく見えないが、逆に人間からも自分が見つかりにくいということになる。それにこれだけ雪が降っていれば足跡が残らない。自由に路を歩けるということだ。

いつもとパターンを変え、近場のイオニアでゴミを漁り少しの食事を摂ると親子温泉で暖を取り、キルクス東側へ歩みを進めた。
ステーキハウスを経由してしまうと遠回りになってしまうことからの判断だった。

吹雪吹き荒れる中の行脚はいつも以上に体力を奪ったが、できるだけ軒間を選び、歩き続けて街の東果てにたどり着いたタブンネ。
視界の悪い中必死に目を凝らし辺りを探ったが、条件は西側を探った時と変わらないようだった。

ベビも寒さにやられたのか
ヂッ...ヂッ... と苦しい息で鳴き震え、下痢とまではいかないがいつも以上に柔らかい便と尿を垂れ流した。

「べべべビぢゃ、ごごべんビィっ。ぎょうばもうがえろうミィィね...っ...」

タブンネも寒さで声が震え、方向感覚も定まらぬ中帰巣本能と根性で何とか来た道を戻り、やがていつもの温泉に辿り着いて朝ギリギリまで親子で湯に浸かり、住処へ戻った。


6日目も同じく東側、相変わらずの天気の中、少し距離を伸ばし北東側を見に行ったが、昨日同様、これといって芳しい成果は得られなかった。

東側は全域を確認したわけではなかったが、これまでの状況と野生の勘からここで探索を打ち切ることにし、翌日からは最後の望みを掛け、南へ足を進めることにした。

495キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:38:32 ID:vGNA8xdA0

東側探索を終えた翌日中、気力よりも先に、タブンネの身体が悲鳴を上げ始めた。

小さなベビにも増して寒さへの耐性の弱いタブンネ。連日の荒天と睡眠不足、夜中に行われる長い行脚。幼少期からのことで慣れているとはいえ、決して衛生的とは言えない食事。

酷い腹痛がタブンネを襲い苦しめた。
止むことを知らぬ吹雪の中、タブンネはベビをダンボールの上に寝かせると、近場の雪の上で排泄の姿勢を取った。

ブリュッ!ブリブリブリッ!ビチャーッ!

—ミボッ!ミィォォォォぉぉっ!?

猛烈な勢いでケツから飛び出した液体。
腹痛がほんの少し和らぎ排泄を終えたタブンネはその凄惨な雪上を見てギョッとした。
噴射した液状便は2mくらい先までその跡を残し、茶色に赤が混じり、糞の臭いに血特有の生臭さが立ち込めている。

コレこの量あとで片付けるなんて絶対無理だ。
タブンネは焦燥感を抱いた。

おそらくタブンネはただの腹痛ではなく急性腸炎を患っている状態だった。ポケモンセンターで診てもらったら即入院になるレベルだっただろう。

幸い吹き続ける雪のおかげで血便痕は次第に薄くなり見えなくなったが、タブンネは常時腹痛を感じ続けた。

ダンボールの上に戻りベビを抱いて座り込んだタブンネ。肛門にヒリヒリとした感覚がいつまでも残ったが、ベビは幸い時々震えることと、少し便が軟くなったくらいで、タブンネよりも寒さを堪えていた。

こんな状態になってもやる気は衰えなかったタブンネ。より一層夜の行脚に向け気合いを入れ、寒さに震えながら必死に身体を休めた。


やはり野ざらしの生活には無理がある。
何処かの林地や草むらで、深い穴を掘るなり雨風を凌げる巣を構える必要がある。

結果ダーリンは人間によって殺されてしまったが、あれは不運が重なったまでのこと。やはり人里に住んでいる方がいずれ見つかり、ママのように殺されてしまう可能性が高くなる。

体力も厳しく思考力も低下した頭で、タブンネはどんどん自分の思惑を正当化していった。

496キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:39:08 ID:vGNA8xdA0

野外探索を始め7日目の夜、またイオニア廃棄場で食事を採った後、少し長めに温泉で暖を取ると、キルクス広場を抜け、9番道路と呼ばれる道へとたどり着いたタブンネ親子。

吹雪による視界の悪さは相変わらずだが、これまでと違い完全に開けた野外に出たことで、タブンネの胸に一縷の希望が灯る。

少し進むと水場を発見した。温泉と違いかなり水温が低かったが、水場の確保は野生で生きる上では必須条件。
後は餌場と、出来るだけ目立たないような住処候補地。

更に足を進め橋を渡ると草むらがあった。

—どこかに、どこかに実のなるような木はないか

タブンネは視線を上げ、吹雪の中必死に草むらを掻き分けて進む道中何かに足がぶつかり、ネチョっとした感触を覚えた。

「キョーーッ!グチョグチョグチョ」

草の中で寝ていた見知らぬポケモン(トリトドン)を蹴飛ばしてしまい、起こして怒らせてしまった。

「ヒッ!ご、ごめんなさ......ッ」

タブンネが謝る間もなくトリトドンは紫の体液を吐き出し、咄嗟に避けたがタブンネの右脇腹にモロにかかってしまった。

驚いて逃げ出したタブンネ。幸いベビにはかからず、毒などでもなかったようでダメージを負うこともなかったが、浴びた箇所は変色し、タブンネのバケモノ度はより一層凄みを増した。

トリトドンは追ってくるようなことはなかったが、精神的に驚きと恐怖を感じたタブンネはこの日の捜索打ち切り、一目散キルクスまで踵を返し走り続けた。


やがて温泉までたどり着き、汚れた体毛をゴシゴシと擦ったが痕は落ちきらず、タブンネはショックを受けた。

これまでの捜索の中で一番と言っていい、手応えを垣間見た行脚だったが再度訪れる気にはなれなかった。

あのポケモンが自分達と仲良くしてくれるとは思えない。闘うということを知らないタブンネにとって、非友好的な種族との共存は考えられなかった。

後は、南西部。この街の南西外れにも、今日と同じような開けた道があること(湯けむり小道)は、初日の行脚で視認していた。勘としては良さげな道であった。
希望を失いたくないが為か、これまでは敢えてそこに足を向けず、半無意識的に最後までその進路を取っておいたタブンネ。

—明日は、明日こそはきっと新居を見つける...!

落ち込んでいても仕方ない。タブンネは心の中で気合を入れると、ベビを胸に抱き、ダンボールの上に腰を下ろした。

497キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:32:37 ID:Wgdv5XHc0

タブンネがイッシュからガラルに拠点を移して、優にひと月を過ぎていた。


トリトドンに遭遇した後の午前中、タブンネはまともに睡眠が取れなかった。
腹痛があまりに酷く、眠りにつける状態ではなかった。

ここ数時間で何度目か、タブンネはベビをダンボールの上に寝かせると、寝床を少し離れ、排泄に向かった。

—ミォォぉっ!ミフぅーっ......

荒天の中、タブンネは通常の排便姿勢よりも上体を起こし、人間で言うところの空気椅子のような体勢で、排泄を行った。
昨日の経験から、なるべく排泄物を撒き散らさない為のタブンネなりの工夫だった。
苦しい体勢で体重30kg弱の身体を支える短い両脚には相当な負荷がかかったが、タブンネは歯を食い縛って必死に耐えた。

ハアッ!ハアッ!...

タブンネが排泄を終えた後の雪上は筒状に直径10cmほどの穴が空き、そこに新雪をかけ、後始末をするとまたダンボールへ戻った。
この時にはもう固形物は一切無い、ヌメり気のある赤い液体が噴射するだけであった。


正午を過ぎた頃、何とか繰り返す便意が鎮まり、腹痛もほんの少し和らいで浅い眠りについていたタブンネ。

「チッチィ!チィチィチィ。」

胸のベビの声で目を覚ました。
この時にはベビの鳴き分ける声色で、何となくその意図を読み取れるようになっていたタブンネ。これは乳を求める鳴き方だった。
優しく微笑みかけ、乳首にベビを当てがった。

ミヒン! 思わず小さな悲鳴を上げたタブンネ。胸にチクッとする痛みを覚えた。
おっぱいを飲み終えたベビの口を見ると、口内上下に小さな白い歯が生えだしていた。

「ベビちゃん...!すごいミィ!こんどママと一緒に、おいしい木の実を食べミィね!」

喜び一杯、小声でベビに語りかけたタブンネ。前腕骨折も何のその。たかいたかいのようにその身体を上下させた。

チミュイ? お耳をパタパタと前後させながら、不思議そうに、ママに問いかけるように声を上げるベビンネだったが、ママタブンネはそれには応えず、ベビを胸に下ろし、目を丸くして辺りの空を見上げた。

—ミィ......!

相変わらず涔々と雪は降っていたが、いつの間にか強風が止み、空は所々晴れ間が覗いていた。

ベビの嬉しい成長に、何日かぶりの穏やかな空。全てが吉兆にしか思えなかった。

—今晩、何かが変わる。きっと変えてみせる...!

タブンネはベビを緊と抱きしめると、やる気に満ち満ちた顔つきをし、今一度懸命に体を休めた。
喜びと気合いで、体調不良も意識から除外されていた。
タブンネは母親として、本当に逞しくなっていた。

498キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:33:23 ID:Wgdv5XHc0

その日の夜、ホテルイオニアディナータイム終わりに2回ゴミ捨てに出てきた調理師から身を隠し、その後2,3時間ほど、住処に座り込み、静かに息を潜め過ごしたタブンネ親子。

頃合いを見るとスクッと立ち上がり、ホテル全体を見上げたタブンネ。ホテルの宿部屋は全て灯りが消えていた。この消灯確認がタブンネにとっての行動開始の合図となっていた。

住処を一歩出ると振り返り、床にしていたダンボールを暫し眺めたタブンネ。改めて見るとベビの排泄物で、随所汚れがこびり付いていた。

—ママ、ありがとミィ。バイバイ......

心の中で、礼と餞別の言葉を述べたタブンネ。もうここには戻らない予感と意志があった。

いつしかタブンネの中で、このダンボールはママンネの形見と化していた。

湿った地面に癒着していたのもあるだろうが、それでもここ数日の暴風雪にも吹き飛ばされず、形も崩さずそこにとどまり続けたそれは、もしかしたら本当にママンネだったのかもしれない。


ミッ!  気合いを吐き出すと、一目散温泉に向け走り出したタブンネ。胸の中のベビはスヤスヤと寝息を立てていた。

今日は温泉には浸からず、ただゴクゴクと音を立ててお湯を飲み、その場を後にすると裏通りから市街地へとつながる階段へ向かった。

階段の最上部まで来るとそこから顔を覗かせ、辺りを窺いながら必死に耳をそば立て、人間の気配を探った。

人間の気配の無いことを察すると、身を乗り出してまた必死に脚を動かした。今日は通り道であることから、3日ぶりにステーキハウスへ寄る算段を立てていた。
階段を登り切ってからキルクスのメイン通りの一つを横切ると、ベビを抱いたタブンネの全速力でおよそ1分でステーキハウスにたどり着く。


駆け出してから餌場へと向かうその道中、タブンネのその心意気と計画を邪魔するように、異変が起こり始めた。
空模様が怪しくなって来た事に加え、下腹部を体内から引き裂くような強烈な腹痛と、それに付随する便意がぶり返して来たのだ。

—なんで今、こんな大事な時に...

歯を喰い縛ってそこから意を背けようと試みるタブンネだったが、次第に視界が明滅し、意識が朦朧としだした。

本人の気持ちとは裏腹、タブンネの腸は“病は気から”なんて言葉では片付けられないような病状だった。
温泉水の消化すら受け入れず、また走った事による揺れさえも危険な刺激になり得る容態。脆い生き物ならとっくに失神、悪ければ絶命する程重篤な状態であった。

いつもの倍近く時間を要したが、何とか餌場の建物へたどり着いたタブンネ。
片眼失明に悪天、朦朧とする意識、3重の意味で疎らな視界とフラつく足元の影響で何度も柵や外壁にぶつかりながらも、狭い横路に侵入していったタブンネ。

ポリバケツの影にベビを下ろすと、自身はフラフラと排水溝を探した。こんな体調でも餌場で用を足さないのは野生タブンネ特有の習性からであった。

499キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:34:04 ID:Wgdv5XHc0

暗がりと悪視野で排水溝を探し倦ねたタブンネ。それでも千鳥脚を通り越した状態で歩みを進めると、軒間へ入り込み、その中央部でドサリと転倒した。

ブリュリュリュ!ビチャッ!ビチーーッ!

「ヒンッ......ヒッ...ィッ......」

尻から赤い液体が噴出され、尻尾の付け根、両腿裏と内腿が真っ赤に糞塗られた。

ビチチッ!  バリッ! ブチブチブチィッ...

「...ゥァァ...........ゲッ.....ェェェッ.....」

繰り返される血便の噴射の連続に肛門の皮膚が耐えられなくなり、タブンネの尻が音を立てて切り裂け、真っ赤な直腸が10センチくらい、体外へ飛び出してしまった。
深刻な容態と相居るように空模様もどんどんと悪転し、周辺はゴォーーーッという轟音に包まれ、健常者でもホワイトアウトする程の様相を呈してきた。
タブンネは白眼を向いて舌を垂れ、口と鼻腔全域から透明な粘液を吐き出し、ダラーっと糸を引いていた。

(べ....びちゃ....ご......い....い......ま........)

もう目も見えず、耳も聞こえず、感覚神経も殆どの運動神経も機能していない状態であったが、それでも尚タブンネは気を失うことなく、意識をその身に留めていた。

こんな状態でも“ベビちゃんを手放し、置き去りにしている“という現実を明確に把握していた。意識を手放さぬよう、左手の爪で必死に硬い地面を掻いていた。



「チィ~~ッ....チィ...チィ...」

時をほんの少し遡ってタブンネの尻が張り裂けたのと同刻、ポリバケツの陰でベビが目を覚まし、弱々しく泣き出した。
手に入れてほんの1週間の視覚で捉えるモノは一面の真っ白さ。その脇に見慣れぬ青い物体を確認したが、最愛の母の姿は無い。
鳴り響く風の轟音は乳児の心に大きな恐怖心を与え、薄い毛皮の小さな身体には厳しい寒さを覚えた。

「ヂィッ!ヂィヂィッ!チィーーーッ!」

今度はより声量を増した声で泣いた。
酷い環境の中、泣いても何も状況が変わらないことへの抗議、乳児特有の癇癪を含ませるような泣きかただった。
しかしその叫びが重体の母の耳に届くことなどなかった。

「・・・・・・」

一頻り泣き終えると、今度は目を閉じ、耳を研ぎ澄ませた。
幼体ながらも母親より優れた聴覚を有したベビンネ。道のりにして7,8m先に、母の心音を捉えた。
恋慕の強さがそれを可能にしたのか、“ママが困っている”という大まかな感情までもを読み取り、ベビンネは吹雪の中、バケツの脇から飛び出し、そこを目指して這いずり出した。

500キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:35:15 ID:Wgdv5XHc0

「...べ.....ビ.....い......っハッ...ぃっ....」

タブンネの意識は混濁を極め続けた。
裂けた尻穴付近はトクトクと血が流れ、辺りの毛は真っ赤に変色しているが、痛みを感じることすらなかった。

ただ、ただベビちゃんのため。千切れかけた糸のような意識をかろうじて繋ぎ止めたタブンネ。地面を掻き続ける左手には血が滲んでいた。

「......フィ......フィ.........」

一方でベビも、ポリバケツ横から吹雪の中へ這い出し、極めてチャチな歩みを必死に進めていた。

風除けを失った今、ベビの身体は何かの拍子に吹き飛ばされてもおかしくない程の暴風だった。

—ボクがママを、ママをたすけてあげないと...!
ベビの想いも真剣。小さな両手脚で必死に雪路を這い、ほんの少しずつだが確かにその標を伸ばしていった。

・・・・・

親子がこの建物へ到着して30分を経た。
タブンネ、ベビンネはそれぞれのフィールドで、それぞれまさに命懸けの闘いを続けた。

先に状況の変化が訪れたのはベビンネサイド。その小さな身体の後方より、ひと筋の光が吹雪を照らすように現れ、雪の軋む音と一つの生命音が背後から迫った。

「......フィ?.............」

何かがやって来ることには気づいたが、悴んだ顔を動かせずに居ると突然左耳に激痛が走った。

「ウギィーーーッ!い゛ィィッ......——」

抵抗と苦痛を示すように大声を出したが、暴風の轟音がそれを掻き消した。

「ヴォォォぉぉっ....!...ァッ....」

次の刹那には腹部にも激しい痛みと違和感を感じたが、まともに声が出なくなった。
畳み掛けるように身体が浮き上がるような感覚を覚え、ホワイトアウトの視界がブラックアウトに転じた。

何が何だか、体力を消耗した乳飲児には理解が追いつかなかったが、耳と腹の激痛に違和感、暗転した視界と立ち込め出した激臭、本能的に命の危機を感じ、強烈な吐き気を催し、小さな口から白いゲロをタラタラと漏らした。

・・・・・

—ハッ⁉︎ベビちゃん⁉︎ベビちゃん!

ベビの視界が暗転してから時間にして30秒後、タブンネの意識が突然明晰化し、暗い軒間でスクッとその身を起こした。

補足を述べるがタブンネの容態はいつ絶命してもおかしくない程のものであった。
それでも彼女の意識と体力を蘇らせたのはベビの発した母を求めるSOS、いわばテレパシーのようなもの。
親子の絆深さが生み出した医学では説明のつかない奇跡。神通力のようなものがタブンネの身体を動かした。

しかしそんな感動的な奇跡も、新たな悲劇の序章に過ぎなかった。

501キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:35:48 ID:Wgdv5XHc0

慌てて軒間を出、ステーキハウス廃棄場へ駆け出したタブンネ。ベビを下ろした筈のポリバケツ影にその姿は無く、代わりに自分の居た軒間に向かって2m程続くハイハイ跡、それが途絶えた先端には僅かな血痕が残っていた。

「ベビちゃん!!置いてってごめんミィ!ベビちゃん!?どこ?どこに居るミィ!?」

左右をキョロキョロと見回すがその姿はどこにも見えない。まさか風で吹き飛ばされたのかと思うタブンネだったが、右眼をそっと閉じると、一心に聴覚を研ぎ澄まし、その気配を探った。

その後、急いでポリバケツに両手を掛けると、渾身の力でそれを押し倒したタブンネ。
タブンネの触覚はその中から確かに我が子の息遣いを聴き取り、救出のための行動に転じた。
聴覚の健常な同族ならば訳もない芸当なのだが、タブンネには一世一代の集中力であった。

ありとあらゆる残飯がぶち撒けられたステーキハウス店横の細い裏路。その残飯の先頭に全長40cm弱の小さな身体が横たわり、微かに腹を上下させていた。

「ベビちゃん!ごめんミ!もうママどこにも......っ!ああ゛あ゛っ!ベビちゃ......!」

「.....ヴッ......グボッ.........」

ベビの元に駆けつけたタブンネ。その変わり果てた姿に猛烈な不安を抱き、長らく放置してしまったことへ巨大な罪悪感が込み上げた。

ベビンネは左耳がペシャンコに潰れて血塗られ、巻が強くなり始めていた触覚は爛れて、左右で非対称が出来上がっていた。
綺麗なサファイアブルーをしていた瞳は全体が白みがかり、完全に焦点が合っていない。
口元はお乳がそのまま戻されたような吐瀉物にまみれ、胴体はステーキソースやらケチャップ、パスタの麺にご飯粒に細切れの葉物野菜その他、あらゆる残飯が付着し、さっきまで綺麗だったピンクチョッキ模様は見る影も無い。
いつもポッコリと膨らんでいたおなかは萎み、口から漏れる吐息は今にも消え入りそうで、変な濁音を含ませている。

—どうして、どうしてゴミバコの中に?どうしてこんなケガを。なんでこんなことに...!?

困惑と混乱が渦巻いたタブンネの思考回路。
タブンネが一連の経緯を解することは無いが、ベビに傷を負わせ、ポリバケツに放り込んだのは1人の人間。この街の警察官の男であった。

502キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:36:22 ID:Wgdv5XHc0

これまで鉢合わせなかったことがかなりの幸運であったが、ここ1週間ほどキルクス市街地は深夜の巡回が強化され、警官による見回りが随時行われていた。
4日前の行脚で感じた人間の気配もそれによるものだ。

その原因を作ったのは他でもないタブンネ。

ベビ誕生以後、授乳の為、日増しにステーキハウスで漁るゴミの量が増していった事に加え、足跡を残さぬよう選んだ進路、やたらと荒らさない物色の痕跡、その全てが仇となった形であった。

細かい経緯は割愛するが、廃棄場が漁られている事に気がついた回収業社とステーキハウス店主。
その形跡からポケ災ではなく人災と判断し、警察に通報、パトロール強化を依頼していた。


タブンネ親子がこの裏路でもがいていた頃、1人の警官がそこへと足を踏み入れた。

いつもと違うことはなかったが、変わったことといえば途中で生肉らしきモノを踏んづけたこと。それをゴミ箱の中へ片付けると踵を返し、猛吹雪を掻き分け市街地へとトボトボ舞い戻っていった。

一連の流れで軒間のタブンネの存在が気付かれなかったことがまず幸運だし、ステーキ屋の廃棄場という立地に鳴き声の聞き取れぬほどの轟音からベビンネが生き物と認知されなかったことも幸運、いや、寧ろ気付いて貰った方が幸運だったのかもしれないが。



オロオロとした表情をキッと引き締めたタブンネ。混乱している場合ではない。右腕でベビの後頭部を少し持ち上げると、舌と左手を使って汚れを落とし始めた。

毛皮に染み付いた調味料や細かいカスは拭えなかったがおよその固形物は取り除いた。小さな右足の付け根から少し上の腹部にこびりつく赤い紐のようなものに目を向けると、それを落とすために爪で引っ掴み、思い切り引っ張った。

「ビャァァーーーーッ!ギャギャーーアアァァあ゛あ゛ああっ!」

ベビがこれまでの容態からは信じられない程の絶叫を上げた。その声にハッとして、手を止めたタブンネ。掴んだ紐はベビの体内から伸び出ていて、ギョッとして手を放すとそれは小さなお腹からU字にダラリとぶら下がった。

「あっ...!あ゛あっ!!ごめ....ベビちゃ....」

タブンネの掴んでいた物は汚れではなく、人間に踏まれた際に未熟な皮膚が破れ、一部体外へ露出していた小腸。
タブンネは臓器なんて見たことはないしそんな存在を知ることもなかったが、今の状況から自分が引っ張ったモノがベビの大事な身体の一部で、それを自分が傷つけてしまったことはハッキリと理解できた。

...カヒッ!.......ケヒッ!......

ベビは大きな音で、口から乾いた咳を吐き出し始めた。
普段のチィチィという声からは想像もつかぬような、生物の発する音とは思えない音色であった。

「あ......ああっ......どうし....っ.....」

両手でベビを抱き上げたタブンネ。ベビは青目と白目を上下にギョロギョロと動かし、口角からコポコポと小さな泡を吹き出して、全身をピクピクと痙攣させていた。

時間が解決してくれない傷であることはタブンネの目にも明らかであった。


—そうだ、あの泉ならば...!

暫し逡巡を見せたタブンネだったが、やがて何かを思い出したように立ち上がり、ベビを抱いたまま、一目散に駆け出した。

503キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:37:05 ID:Wgdv5XHc0

全速力で走り、小さな野外泉まで舞い戻ってきたタブンネ。
ベビは咳すらも出なくなり、まさに虫の息という容態。不思議な治癒能力のあるこの泉がタブンネにとって最後の望みの綱だった。

「ベビちゃん、チョット苦しいけどガマンしてミ!おケガ治さないと...!」

右腕で両脇を抱え、左手で口鼻を塞ぐような形に抱き直すと、親子共々ザブンと温泉に入った。ケガした耳が浸かるようにと、ベビは全身である。

「ミィォォっ!ミィ〜〜ん゛んっ......」

入るや否やお尻に激痛と強烈な不快感を覚え、思わず右目を固く瞑ったタブンネ。
タブンネの直腸も体外に飛び出したままだった。

「ベビちゃん...キモチいぃ...?ミィあ゛あ゛あ゛??イヤァあああ゛あ゛ーーーッッ゛!!!」

数秒後目を開けると、目の前の光景に絶叫し慌てて湯から上がったタブンネ。辺り一面の温泉水が真っ赤に染め上がっていた。

側路にベビを寝かせると、その身体は震えるという状態を越し、ガタガタと大きく左右に揺れ出した。まるで生命の最後を告げるような、非生物的な異常な動きだった。
辛うじて繋がっていた左耳の触覚は完全に千切れ、破れた下腹部はもう血を出し切ったのだろうか、透明な液体がトロトロと流れ出ていた。
口はカクカクと僅かに上下し、両眼は完全に白目を剥いて、全身の体毛が真っ赤に染まっていた。

無論、全て良かれと思って行ってきたタブンネの行動。
非常に酷な現実だが、その全てが手負いのベビンネに更なる追い討ちをかけ続け、小さな命は風前の灯であった。


数秒オロオロと狼狽えるタブンネだったが、誰に教わった訳でもなく、何か思惑があった訳でもなく、ベビに向けて両手を翳した。

—ママ、ダーリン、おねがいミィ!どうかベビちゃんを助けて!おねがい!おねがい!


...ポウッ

ミィ⁉︎  タブンネのおねがいがあの世の母や夫に届いた訳ではないだろうが、タブンネの掌から優しい光が現れ、ベビの身体に降り注いだ。
それは癒しの波動というポケモン技だった。
通常は対戦で経験を積み、鍛錬を積まなければ習得できない技であるが、タブンネのベビを想う気持ちの強さからか、奇跡的にそれを使うことを可能にした。

「......フッ......フィ?.......」

何が起こっているのかわからないタブンネであったが、光を浴びたベビはほんのわずかにだが呼吸を取り戻した。

「ベビちゃん、ベビちゃん!しっかりして!ママが、ママが必ず助けてあげるミィ!」

タブンネは両手を翳し続け、必死に不思議な光線をベビに浴びせ続けた。

504キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:39:33 ID:Wgdv5XHc0

新規習得した癒しの波動を用いてベビの介抱を続けること約10分。
不思議な光は段々と弱くなり、やがて完全に出なくなってしまった。

—どうしてミィ?どうして!おねがいおねがい!もう一度出て!ベビちゃんが...ベビちゃんが......

愕然と両膝を着き、ベビを見つめたタブンネ。
必死の介抱の甲斐なく一瞬だけ息を吹き返したベビは再び呼吸をやめ、もう振動することもなく、動かなくなった。

癒しの波動はそもそも命の瀬戸際の者を回復させる技ではない。
奇跡の新技習得は、タブンネに余計な希望を与え、ふたたび絶望させる無駄な時間に過ぎなかった。

暫し膠着を見せた親子であったが、ベビンネの胸元がかすかに上下し、息とも声ともつかぬ音を小さな口から漏らした。

......マ......マ.........ス......ス...ッ........———

ベビちゃん⁉︎ カッと右眼を見開いたタブンネ。今確かにベビの漏らした吐息はタブンネの言葉として何かを紡ぎかけていた。

「ベビちゃん!ベビちゃんおねがい!しっかりして!ベビちゃん!ベビちゃん!」

ひたと抱き上げ、膝の上に乗せると我が子へ向け必死に呼びかけ続けたタブンネ。


グ...グジュルルルグギギ...ッ...グジィーーィッ...ゴププルッ...

我が子の口から漏れた返答は、生物の発する音とは思えぬ、残酷な音であった。
鼻腔から一筋、深紅の液体を垂らすと、口角からそれと同じ色のあぶくをコポコポと吹き出し、ガクッとこうべを垂れた。

「.......ッッ......ベ..........」

タブンネはまともに言葉も出なかった。触覚で生命音を探る術を持たぬタブンネ。それ故か第六感には多少秀でていたのかもしれない。ベビの最期を、はっきりと理解した。

生後15日、ひと月にも満たぬ、短い生涯であった。

505キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:40:14 ID:Wgdv5XHc0

やがてタブンネは白眼を剥いたベビの瞳に瞼を被せてやると、その身体をそっと地面に下ろした。

「ベビちゃん、少しだけ待っててミィ。ベビちゃんのお耳、取ってこなくちゃ...」

タブンネはジャバジャバと温泉を掻き進むと、その中間にプカプカと浮かんだ小さな触覚を回収し、湯から上がった。

ベビの亡骸をそっと抱き上げる。酷い破れ方をした下腹部の為その両脚は少し引っ張れば胴体から離脱してしまいそうな状態で、それらを包み込むように、慎重に持ち上げた。

ソロソロと、ホテルイオニア中庭を進んで、すっかり住み慣れたダンボールの上に腰を下ろしたタブンネ。
最後のお別れからたったの2時間程で再会を果たした。

血の温泉に浸かったことで全身が真っ赤に染まっていたベビンネ。
タブンネはペロペロと顔一体を舐め回してやると、驚くほど綺麗な死に顔が浮かび上がった。

「ベビちゃん。もうママ、ベビちゃんを置いてどこにも行かないミィ。今度こそ約束ミィ。ずうっと、ずーっと一緒に居るミィからね。」

呼びかけるママの声に応えるように、ベビの顔は薄っすら微笑んでいるように見えた。
タブンネはその身体を緊と抱きしめると、一寸先の地面を眺めた。
その右瞳は落涙することはなかった。
だがそれは澄んだサファイアブルーではなく、この世の哀愁を全て含ませたように、何とも形容し難い色合に濁っていた。

—もういいミィ。もう、もう......。

タブンネは全てを諦めたような感情で、ひたすらその場に座り続けた。
これまでに2度、人間によって奪われた幸せな生活。大好きだった家族。
そんな哀しみを吹き飛ばす程の存在だった新たな命、その命は自分がとどめを刺し、殺めてしまった。

—ミィは、どうやっても幸せにはなれないんだミィ。そんな資格もない生き物なんだミィ。

胸に抱くベビは完全に体温を失い、次第に硬直し、固まっていった。

———

それから3日3晩、タブンネはその場に座り続け、場面は物語の冒頭に繋がる。

断っておくが、タブンネは絶命している訳ではない。人間並に耳は聞こえ、右眼は地面を捉えている。

その間何度も中庭に人間が現れたが、誰も彼女に気づくことはなかった。

まるで菩提樹の下で瞑想を行う釈迦の如く、荘厳な、静かな佇まいであった。


様々な理由から草むらや森を離れ、人里に住処を構える野生タブンネはこの世界に五万と居る。

今回紹介したのはほんの一例、その中の一匹の、少し小さなタブンネのお話。
ここでタブンネの半生を追うのは終わりとする。

物語冒頭の翌日、ホテルイオニア中庭には汚れたダンボールはなくなり、その一面は真っ白な綺麗な雪で埋め尽くされていた。

(終)

506キルクス:2021/03/04(木) 10:43:14 ID:Wgdv5XHc0
尻すぼみで申し訳ない

もう一つSSを書き始めてしまったので来週あたり投下するかも

誰か仕事くれ

507名無しさん:2021/03/04(木) 19:45:34 ID:IEgVIcbo0
>>506
完結乙でございます
ベビンネも結局幸せって何だっけなんて物心もつかないうちに呆気なくなってしまうとは…
しかしこの主人公ンネちゃんのじわじわ不遇を積み重ねていくタブ生にゾクゾクさせて貰いました
次もまた期待しております

508名無しさん:2021/03/04(木) 21:22:35 ID:Le.BaqDI0
>>506
完結乙 毎回楽しみにしてた
結局タブンネちゃんは幸せにはなれなかったね……それがお似合いだよ……
次回作も期待してる

509名無しさん:2021/03/06(土) 01:21:14 ID:rJsj1Is60
>>506
乙でした。生肉と間違えられて踏んづけられるベビちゃん可愛い。
次も頑張ってくださいね!

510タチワキコンビナート養タブ舎・アバン:2021/03/15(月) 12:15:29 ID:WE5UtLtA0

※あくまでタブンネを虐める、殺すことを目的としたSSであります。
作者に一切の他意がないことをご理解の上お読みください。

———

イッシュではあらゆる街のスーパーで売られ、他地方にも常に輸出され続ける、安くて美味しい家庭料理のお供。タブ肉。

カントーやホウエンなど、タブンネの生息しない地域の人間の中には、「タブンネ」と聞くとポケモンではなく、食材として認知している者も多いかも知れない。

イッシュには多くの地にタブンネを取り扱う牧場や加工場、レストランが点在する。

このお話ではそんなタブンネ産業のひとつ
とある食肉用養タブ所の様子を紹介する。

———

ここはイッシュ地方本土を離れた南西部の工業都市

  「タチワキシティ」

その市街地を離れた湾岸エリア、大規模コンビナートの一画に、幅20m強、奥行き100m程の屋舎に総計200匹を超えるタブンネ達の犇めく養タブ舎がある。

こんな空気の悪い場所にタブ舎を構える意味は特にない。
解体途中だった廃工場の建物を、あるタブ産系企業が格安の居抜きで買い取ったまでである。

建物の側面に壁はなく、数多の鉄柱が古びた三角屋根を支ているその屋舎。
工業地の排ガスが常に流れ込む為、タブンネ達の生育を考えればかなり悪条件である。

基本は雑居なのだが、屋舎前面に60cm×1.3m程のストールが40ヶ所
中間部に離乳後〜成獣以下のサイズのチビンネ達の犇めく雑居スペースを隔て
後面に前面同様のストールに、左右幅1m×前後幅50cmの囲いが連結する箇所が設けられている。

前面、ストールのみの場所は生産器に選ばれた雌タブンネの種付け場。
後面、囲いの連結するストールは産卵スペース兼授乳スペースとなっている。
(授乳スペースは上から見て「回」の字を縦長にしたような作り。中央の四角にママンネが居て、外側の四角でベビンネ達が過ごす状態)

ストールは丁度成獣のタブンネ1匹が収まる程の大きさで、このスペースでは立つ、座る、寝る、以外の動作がほぼできない。
生産器に選ばれた雌タブンネは種付けストールと授乳ストールを行き来して、その生涯を終えることになる。

屋舎の前面側の野外広場の中央には巨大なフードプロセッサーのような機械が1台設置され、その周りを埋めるようにオボンとオレンのなる木が所狭しと植えられている。

空気の悪さからか木の実はどれも黒ずんでいたり、歪な形をしているが、どれもタブンネに喰わせるための物なので別に問題はない。

そんなタチワキ養タブ舎の内部を覗いてみよう

511タチワキコンビナート養タブ舎・アバン:2021/03/15(月) 12:17:56 ID:WE5UtLtA0

ブミィー!ミ゛ミ゛ィー!ミギャー!
ヂギャー!ミィーッ!ミ゛ャー!・・・

タブ舎の数十メートル前まで近づいた段階で、けたたましい鳴き声と強烈な異臭が耳と鼻をつん裂く。

聞こえてくる鳴き声は通常のタブンネのそれよりも濁っていて、声量もデカいように思われる。

ブミッ!ブゴッ。ミゴプッ!...

雑居房の床にばら撒かれた飼料を貪り喰うチビンネ達。
およそ排泄場所の区別なんか無く、多くの個体が口にしているのは餌とタブ糞のハイブリッドである。

ゴフッ!ガフッ!ミブフッ・・・

雑居房中央部に幅、深さ10cm程の用水路が縦一線流れ、そこに顔を突っ込んでガブガブと水を飲むチビンネ達。
流れる水はやや白濁しており、ドブ臭さに酸味臭が混じっているようだが、みんなお構い無しといった様子である。

殆どのタブンネが不潔に慣れており、このタブ舎の環境に馴染んでいる様子。

タブンネはそのイメージと裏腹、健全な生育環境を与えれば案外綺麗好きな種族なのだが、生産性最重視のこの汚いタブ舎で生まれ育った為か、多くの個体がその特徴を失っている。
いつまでも不潔に慣れない個体は自然淘汰され、出荷前に処分される末路を辿る。

———

「いやだミィ!じにだぐないミ゛ィィッ!」
「はなせブヒィ!ヤメろブミィー!」
「ママに!さいごに一度だけママに会わせてミィ!おでがいだミ゛ィーッ...」
・・・

産卵スペースと種付けスペースの間
横幅10m強、それが端から端までつづく雑居房がこのタブ舎のメインスペースとなっている。

そのメインスペースで2名の飼育員がそれぞれズルズキンとダゲキを引き連れて、出荷時期を迎えたタブンネを捕らえては、屋外に停められたトラックへと連れ込んで行く。

周り雑居ンネ達はそれを心配そうに見つめる者、ミィミィ喚きながら出荷ンネや飼育員に縋り付く者
もしくは見向きもせず食事に勤しむ者、取っ組み合いのケンカをする者、その様相は色々である。

タブ舎の床はコンクリートで、その上に砂利や、適当に撒かれる飼料、またタブンネ達が辺り構わず撒き散らす糞尿で埋め尽くされ
どのタブンネも膝から下が茶黒く汚れ、ハートの肉球が視認できる個体が1匹も見受けられない。

———

「ミィミィッ!ミンミン!」

上の場面と同刻

タブ舎片端に設置される人間の事務所
そこから数えて3番目に位置する産卵スペースで、1匹の雌タブンネが声を上げた。

この雌タブも例に漏れず脚が汚れ
腹部に本来8あるはずの乳首は1つが完全に落ち去り、2つが腐りかけているらしくドス黒く変色している
また汚れと区別が難しいが膝付近に褥瘡ができて赤紫に変色し
口内は歯の全てが折れているか欠けていて、歯茎には裂傷傷と腐敗痕が随所見られる。
片耳には赤いタグがつけられ、「3」の数字が書かれている。

雌タブの居るストールの少し後方、地面から高さ50cmくらい、2本の鉄パイプからなるホルダーの上に嵌め置かれた4つのタマゴが順次ガタガタと振動し始めた。


その声に気付いてではなかろうが、やがて事務所から2名の飼育員が出てきて、雑居房に犇めくタブンネ達をドカドカと蹴飛ばしながら、雌タブの居る3番授乳スペースまで歩みを進めて来た。
2名の後ろには1匹のローブシンが追随し、雑居ンネ達にマッハパンチを打つ素振りを見せてビビらせ、怯えるその様子を見てニヤニヤと笑みを浮かべている。


...バリッ!バリバリッ...! ボトッ...ボトッ.....

チギャー!オギャー!ギャギャーッ!......

4つのタマゴは順次孵っていき、生まれたベビ達はパイプの隙間から次々と地面に落下していき、ぶつけたお尻やお腹に向けて小さな手を必死に伸ばしている。
落ちどころが悪かったベビはママのタブ糞を踏んづけてしまい、初々しい地肌と体毛が真っ黒く汚れてしまった。

512タチワキコンビナート養タブ舎・アバン:2021/03/15(月) 12:22:21 ID:WE5UtLtA0

飼A「おっ、よしよし。未熟児ナシ。奇形児ナシ。オマエ10週目だっけ?よく粘るなぁ。エライエライ。」

雌タブ「ミィッ!ミィミィ!ブミィッ!」

4ベビ孵化から間もなく到着した飼育員の1人が雌タブに語りかけ、頭を撫でているが雌タブは怒った顔をし、抗議するように鳴き声をあげている。

もう1人はベビ達を1匹ずつ抱き上げては、小汚い濡れタオルでその身体を拭き、粘液や糞を落としていく。

飼B「3番って残り居ましたっけ?」

飼A「いや、居ねえよ。コイツだいぶペース落ちてっから。上のヤツらみんな出荷したか死んだ。前んとき全部無精か奇形だったしな。」

飼B「了解。じゃあ1〜4でいいっすね。」

そう言うと若い方の飼育員がポケットから黄色のタグを取り出して油性ペンで数字を書き込み、ベテランらしい飼育員にそれを渡していく。

タグを受け取ったベテラン飼育員は1匹ずつベビを抱き上げると、小さな耳にスキンテープラーを当て、バチンバチンとタグを打ち込んでいく。

ヂィッ‼︎ヂヂィッ!ミギャギャーーッ!......

神経の集中した耳に穴を開けられるのは相当痛いらしく、ベビ達はそれぞれけたたましい鳴き声を上げる。
4ベビは3-1〜3-4の数字を与えられた。

タグを打ち込まれた後はみな乱暴に囲いに投げ下ろされ、生まれて間もなく続いたダメージにやられ、ベビ達は床に横たわり、わずかに腹を上下させて苦しそうに呼吸をしている。

飼B「ええっと1,2,4がメス。3だけオスっすね」

飼A「オッケー、オス1匹ね。メスは一応生育確認しとくぞ。母親そろそろ使いモンなんねえから、それ。」

若い飼育員が倒れベビ達の股を確認した後、2人と1匹は事務所へと舞い戻って行った。

一連をストールの中から、精一杯首を傾け心配そうに見つめていた雌タブは人間が立ち去ると、一度うつ伏せに横たわり、身体4分の1くらいを持ち上げストールの鉄棒1ヶ所に左腕を掛けて安定を取った。
かなり苦しい体勢であるが、これは彼女の授乳姿勢である。
完全に横を向ければラクなのだが、ストールに腹がつっかえてしまうのでそうすることを許されないのだ。

「ベビちゃん達、大丈夫ミィ?もうイタイイタイ終わったミィからね。がんばってコッチ来てミィ。ママのおっぱい飲んでミィ!」

チィ...チィ...チヒッ...チビッ......

4ベビは小さな耳からポタポタと血を流し、弱々しく息を吐きながらモゾモゾと必死に這いずり、およそ5分して全員ママの元へたどり着き、チュピチュピと音を立てながらおっぱいを飲み始めた。

不自由な体勢のママは精一杯首を動かし、愛しい我が子の姿を見やった。

———

これ以後、今回生まれた4匹のベビンネに焦点を当て、このタブ舎で産まれたタブンネ達の生涯を紹介する。

513名無しさん:2021/03/17(水) 21:32:16 ID:T.GttBo20
新作乙!
如何にも絶望的なタブンネ生産プラント……
これからタブンネ達がどんな目に合うのか期待してる

514タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:16:16 ID:HrzmMaMw0

これまでの登場タブンネ

・4ベビの母親→ママンネ、ママ
・3-1→長女ンネ、長女
・3-2→次女ンネ、次女
・3-3→弟ンネ、弟 or お兄ちゃん
・3-4→妹ンネ、妹

その他の個体を他ママ、他ベビ、モブタブンネなどと表現します

———

4ベビは生後2,3日、ママのストールの左側で、暖を取るように4匹固まって過ごした。

長女、次女は割とすやすや眠る時間が長かったが、弟、妹は「ヂッ...ヂッ...」と常に泣き続け、目の下に涙痕ができていた。
タブ舎に立ち込める激臭が辛かったのか、騒音が不快だったのか、もしくはその両方か。

長女、次女共に聴覚や嗅覚は通常のタブンネのそれと変わらぬ機能を有していたが、いち早くこのタブ舎の環境に馴染んだようだ。

4ベビは生後間もなくより排泄場所をママの後方一箇所に固定、ママンネの遺伝子なのか、タブンネ特有の衛生意識も同族愛も失われていないようだった。

このタブ舎のタブンネ達は品種改良(改悪)が自然進み、概ね生育が早い。
4ベビはみな生後2日目には眼が開き
3日目には長女ンネは鉄柵に手を掛けながらだが、ヨチヨチと2足歩行するようになっていた。

———

4ベビ生後5日目

この日は弟ンネに、災難が訪れる。

長女「マンマ、おちちちょうだい...」

長女ンネは片言ではあるが、タブンネの言葉を発するようになっていた。
いつものように、ママの居るストール下を這いずり、内部へ侵入しようと試みる。

チィ。チィチィ!残り3ベビもそれに呼応するように、嬉しそうに鳴きながら姉に追随する。

ママ「ベビちゃん達!ごめんミィね!もう入ってこないでミィ!おちちはちゃんとあげるミィから、おそとから飲んでミィ!ごめんミィ、ごめんミィ...」

ママは必死に声をかけながら、横脚や手を使い、泣く泣くベビ達を押し返した。

長「どうちて...?マァマ?」

チィッ...。チスン。チュビッ...

4ベビはママの行為が信じられないといった様子で、さめざめと泣き出してしまった。

——

この時ベビ達の体高は35cm前後。
長女、次女に至ってはストールに侵入する際、腹をつっかえさせながら、なんとか入り込むくらいまでに身体が成長していた。

ママがベビ達を押し返したのには理由がある。
挟まり事故を防ぐためだ。

ママの過去の産卵個体、すなわち4ベビの兄に当たる個体が、身体の成長を考えず、無理にストール内に侵入を試み、首が完全に挟まり動けなくなるという事故が起きたことがあった。
押しても抜けず、引いても抜けずで手こずるうち、挟まりベビの悲鳴に気づいた飼育員がやって来て、囲い側からローブシンが無理くりその胴体を引っ張ると、ブチィ!と大きな音が鳴り、未熟な皮膚が破れ、首から下の体皮がズル向け、骨と臓器が剥き出しになり即死するという凄惨な結果を招いた。

無論ママの心には大きなトラウマが残り、その記憶をくり返さぬよう、今回の行動に至った次第。
それはこの先二度と4ベビを抱いてやれなくなることを意味する。

生まれて間もなくはストール内に入れてやり、代わりばんこに1匹ずつ抱きあやしてやっていたが、これくらいの時期に侵入癖を治さなくてはいつでも事故が起こりうるのだ。

——

4ベビはママに突っ撥ねられたショックから食欲も失せたようで、ストールから少し距離を置いて固まり、身を寄せ合ってチィチィ涙を流している。

我が子を想っての行動ながら、子供達が自分から離れて行ったことにショックを受け、ママの目尻にも涙が浮かぶ。
こんな不自由な檻に閉じ込められ続ける自分の運命を本気で恨めしく思った。

そんな傷心の親子に追い打ちをかけるように、やがて1人の飼育員が3番授乳スペースまで足を運んできた。

515タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:16:48 ID:HrzmMaMw0

飼育員は囲いに足を踏み入れてベビ達のタグ番を確認していくと弟ンネの片足を掴み、逆さ吊りに持ち上げた。

飼「よーしよし、みんな順調に育ってるな。お、いいねお前。タマと竿わりとデカいぞ。こんならやりやすいな。」

弟「ヂィッ!ヂィヂィッ!ギャギャーッ!」

弟ンネは手足を必死にバタつかせ、精一杯の声を上げて抵抗を示す。
恐怖からか陰茎からはオシッコが、肛門からは乳児特有の軟便を撒き散らし、飼育員の作業着や囲いの床を汚していく。

女の子ベビ3匹は弟ンネに向けて両腕を伸ばし、チィチィ鳴きながらピョンピョン跳ねている。まだ足元の覚束ない妹ンネは何度も転ぶが、それでも兄を助けようと、必死に姉2匹と同じ行動を取る。
ママンネはストールの中で座り込むと固く目を瞑り、フルフル震えながら両手を胸の前で合わせ、祈るような仕草を見せる。

ベビ達の抵抗、抗議を全く意に介さず、やや老齢なその飼育員はポケットから大きめのカッターナイフを取り出すと、弟ンネの尾、その下の小さな肛門よりも前面部に亀裂を4つ入れるとうつ伏せに床に組み敷いた。

かなりベテランの飼育員のようで、その所作には一切の無駄がない。
亀裂を入れられたことに弟ンネが気づかなかった程である。

弟ンネを組み敷いたまま尾の下に手の甲をあて、思い切り体重をかけた。

ポンッ!ポンッ!

弟「イグァーーー!ゴバァーーーー!ギギィーいい゛ッ!チゴブルルゴバガガフブリュリュミアガババベベッ...!」

弟ンネの股間から白い小さな玉が2つ、音を立てて体外へ飛び出し、弟ンネは何の生き物かわからない様なあられもない声をあげ、狭い囲いの中をゴロゴロとのたうち回る。

これは雄個体に訪れる試練、去勢である。
雑居房での乱交防止と食肉加工される際にオス臭さを出さない目的で、このタブ舎では生後1週間以内にこうしてパイプカットが行われる。

飼育員は作業を終えると事もなげに事務所へと戻って行ったが、弟ンネの勢いは衰えを知らなかった。

ママ「お兄ちゃん!イタかったミィね!辛かったミィね!でも落ち着いて!大人しくして!おマタにバイキン入っちゃったら死んじゃうんだミィ!お兄ちゃん!お兄ちゃん...!」

弟ンネはママの言葉掛けに応える余裕などあるはずもなく、ギャーギャー叫びながら転がり続ける。

3匹の女の子ベビ達は人間が去り、自分達に危害が加えられない事を察すると弟を心配がるが、あまりの勢いに手も足も出ず、結局ママンネを挟んで囲いの反対側に逃げ、ストール越しに弟ンネを眺め、心配そうにチィチィ泣いている。

——

チュヒィー...ヒィーッ...チッ...ヒッ......

約3分後。ようやく動きを止め、仰向けになって小刻みに腹を上下させながら横たわる弟ンネ。
口角にあぶくを浮かべ、目は下半分が白目を剥いて鼻がピクピク痙攣している。
精神的肉体的両ショックから気絶してしまったようだ。
弟ンネが暴れたせいで囲いの左側は辺り一面血飛沫が飛び散り、弟ンネの股間からはピチャピチャと生臭い血が滴り落ちている。

「チィッ。」「チィチィ...」「弟ンネ、だいじょぶチィ?」

弟が静かになると女の子3ベビはヨチヨチと歩み寄り、心配そうに兄弟を眺める。

ママンネはストールの中に座り、首を精一杯左に傾けて息子の姿を見やった。
ママにとってはこれまで何度も見てきた光景なのだが、いつまでもこれに慣れる事は無かった。
生後間も無くしてオスとしての機能を失うことになるのだ。人間は事もなげだが、母親が不憫に思わない筈がない。
しかし女の子ベビ達の慈愛に満ちた行動に少しだけ心が暖まり、目には複雑な涙が浮かんだ。

516タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:17:41 ID:HrzmMaMw0

4ベビ生後9日目

この日は4ベビ達に、このタブ舎の凄惨さを垣間見る事件が起こった。

4ベビ達は体高40cmくらいまで成長し、妹ンネは少し足取りが覚束ないものの、女の子3匹は自力で歩けるまでに成長していた。

しかし弟ンネだけは股の傷から全く内転筋に力が入らず、歩行はおろか立つことさえ出来なかった。

それでもママンネの指示により、毎日一定時間、姉2匹の肩を借りて歩行訓練を行っていた。

——

このタブ舎の雄ベビは去勢傷の影響で、離乳後もいつまでも自力で立てない個体が一定数存在する。
そうなると満足な生育が見込めない為、早めに出荷されるか、悪ければ殺処分される。

ママンネの過去の産卵個体にも2匹、離乳後すぐに出荷された男の子ベビが居て、ママは弟ンネには同じ運命を辿ってほしくなかった。

別に死期が早まるか遅まるかの問題に過ぎないのだが、ママはこの4姉弟には出来るだけ長く一緒に過ごさせてあげたい親心があった。
それに無駄とはわかっていても、“生きていれば何かが起こるかも”という希望を完全に捨てたくはなかった。

——

4ベビは皆タブンネの言葉を話し始め好奇心真っ盛り、ママの前面、囲いと雑居房を隔てる柵に手を掛け外を眺めては、あれこれママを質問攻めしていた。

長「ねえママ、ママはどうしていつもそんなせまい箱に居るチィの?」

ママ「ママもお外に出たいミィけどね、ニンゲンに閉じ込められて、ベビちゃん達の生まれるずうっと前からこの箱の中に居るミィの。長女ンネちゃんは女の子ミィから、いつかママみたくこの箱に入れられるかもしれないミィ」

妹「ニンゲンはどうちてそんなヒドイことするチィ?チィ、ママにだっこしてほちいチィ」

ママ「ママもはっきりとはわからミィけどね、ニンゲンはこうしてタブンネさん達を閉じ込めて、いつか食べちゃうらしいミィ」

弟「チチッ⁉︎ママもボクたちも、いつかたべられちゃうチィ?たべられちゃったらしんじゃうチィ?」

次「ねえママ。ママのゴハンはおいしいチィ?ママはオッパイのまないチィ?ママのママは居ないチィ?」

・・・

ママはベビ達の質問に、優しく、そして誠実に答え続ける。

——

ママンネはこのタブ舎の2世である。
今回が10回目の産卵のベテランママで、当然ここで生まれたタブンネ達の末路など折り込み済みだ。

1回目2回目の産卵で生まれたベビンネ達には「ミィんな幸せになれるミィ」とか「ずっとママと一緒ミィ」とかお花畑な言葉をかけていたが、3回目以後はやめた。

無駄に希望を持たせれば別れる時に子供達が苦しむだけだし、順調に育っていけばここの酷さなんてどうせわかると気付いたためである。

余談であるが、そうしたママの言葉掛けから3回目以後のタブンネ達は肉質としてやや落ちている。
ある程度の覚悟を持って屠殺されることから、ミィアドレナリンの分泌が弱いのである。

さらに余談であるが、高級タブ肉、ブランドタブ肉と呼ばれるようなタブンネを出荷する様な牧場や畜舎は、このタチワキタブ舎とは雲泥の、贅を尽くした環境でタブンネを飼育する場所が殆どだ。
“自分は特別な生き物だミィ”くらいに思わせたところから一気に食肉としての現実を叩きつけることで、一度に大量のミィアドレナリンが高まって、上質な味わいが生み出されるのである。

——

しばらくミィミィチィチィと盛り上がりを見せた3番授乳スペース。
やがてその前にどこからともなく、1匹の雑居チビがポテポテと歩みを進めてきた。

チィッ!チィチィ!チャァッ!

4ベビは近づいてくる足音に気づくと怖がる悲鳴を上げ、囲い内部に逃げ込んでママのストールに擦り寄ったが、かけられた声は予想と違うモノだった。

517タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:18:12 ID:HrzmMaMw0

他チビ「みなさん、はじめましてミチィ!ミィとオトモダチになりましょミィチィ」

成獣タブンネの半分にやや満たないくらいの体格をした、雌個体であった。
体躯や口調からおそらく離乳後間もないと思われ、耳の黄色のタグには8-5の番号が書かれていた。

4ベビ達は話しかけられたことに最初驚いたが、優しそうな見た目とその言葉から興味と嬉しさ一杯といった様子で、チィチィ鳴きながらまた囲い前面へ歩み寄った。
触覚でおよその感情を読み取る術も身につき出していたようだ。

ママもこの来訪者には少し驚きを見せる。
今まで囲いの外からベビ達を威嚇してくるような雑居ンネが来ることはあったが、こうしてベビ上がりくらいの個体が優しく語りかけてくるのは初めてであった。

ママ「お嬢ちゃん、こんにちミィ。お嬢ちゃんの兄弟は?一緒に居ないミィ?」

他チビ「おばさん、こんチわ!ミィのきょうだいわね、おねえちゃんはほとんどしゃべらないし、おにいちゃんたちはときどきミィのことたたいたりするミチィの。だからおミミをつかってね、たのしそうなこえがきこえてきたからここまであるいてきたのミィ!」

長「おねえさん、こんにちは!おねえさんはおソトでくらしてるチィ?」
妹「おねえさんはオッパイのまないチィ?ママとおなじゴハンたべるチィの?」
弟「おねえさんのママはいないチィ?」

他チビ「ミィもね、ミんなとおなじおウチにすんでたミィけど、おとといおソトにだされたミチィの。いまはオッパイのまないけどね、ゴハンたべてるミィ。ミんなにもわけたげるミィチィ!」

他チビは尻尾をモゾモゾと掻き分け出すと、飼料を取り出して柵の間から4ベビに向け差し出した。

4ベビは一層チィチィ嬉しそうに鳴き、飼料を受け取ると鼻へ近づけ、クンクン匂いを嗅いでいる。

子供達は嬉しそうだが、ママンネは少し複雑な表情を浮かべた。

——

このタブ舎の飼料とは、自家栽培したオボンやオレンを粗微塵したものに、ここで処分された、あるいはどこからか譲り受けてきた廃タブのタブ骨粉をまぶしたモノなのだ。
つまりは共喰いということになる。

同族を糧としている事実に気づかぬままその生涯を終える鈍感ンネも一定数居るが、ママンネはその限りではない。

ママンネはなるべく自分の子供達にこの世界、このタブ舎の現実を包み隠さず伝えるようにしていたが、飼料については言葉を濁していた。
“共食い”という行為がママンネにとって一番辛い事実であった為だ。

——

我が子への差し入れを遮ろうか逡巡したママだったが、結局黙って流れを見守った。
遠くない未来にどうせ子供達も口にする物だし、何よりも無垢な他チビちゃんの優しさを無碍にしたくなかった。

長•次「おいしいチィ!」

弟「そうかチィ?ボクはおっぱいのがすきだチィ。」

妹「チィもコレきらいチ。なんだかくちゃいチィ」

またしばらくミィチィ盛り上がった3番授乳スペース前。
するとその様子を嗅ぎつけたのか、また別のモブタブンネがドスドスと歩み寄ってきて。他チビに話しかけた。

モブ「おい。オマエ餌隠してたブミィか。ミィによこせブミィ。腹減ったブヒィ。」

体高90cmほどの雄で、鼻腔が一般のタブンネより大きく、かなり太っていて下腹部より下一帯が茶黒く汚れている個体だった。

チビ「ミィひとりじめなんてしてないもん!すこしオトモダチのブンとったげただけミィ!おじさんだれなのミチィ?」

518タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:18:43 ID:HrzmMaMw0

気分悪そうに、フンっ!と鼻を鳴らしたモブタブ。
しかし可愛らしくフリフリと左右に動く他チビの白い尾を見やるとニヤッといやらしい笑みを浮かべ、他チビの頭を掴み、押し倒してうつ伏せに組み敷くと、その尾にガブリと噛み付いた。

チビ「ミュビィーーーー!イダっ!イダミィいい゛っ!イヤっ!ヤメ!ヤメアァァぁ゛ぁ゛っ!」

他チビはバタバタと両手脚を動かすが、モブタブの力の方が強く、どうしようにもならない。

あまりの唐突な展開に4ベビは声も出せず、みんなガタガタと震えながら立ち竦み、目をまん丸くしてその光景を見つめる。

モブはガブガブと何度か尾の付け根を噛み直すと、やがてガチリと口を閉じ、思い切り顎を振り上げた。

するとブチィッ!と大きな音が鳴り、その小さな尾は完全にチビの身体を離れ、ピューピューと鮮血が噴き出した。

チビ「チガァーーップルルルッ!ゴハッ!アググググ...」

壮絶な激痛に他チビは涎とあぶくを口から吐き出し、舌を垂らして悶絶する。

「チッ...チィーーーっ!」「チィヤァーーッ!!」

凄惨な光景に4ベビ達は我に返ったように叫び出し、皆ママのストール横に固まって耳を押さえて踞り、フルフルと震え出した。
誰が漏らしたかもわからぬオシッコで足元がびしょびしょになっている。

ママ「他チビちゃんを放せミィ!こんなことやめるミィ!!誰かーーっ!誰か来てミィッ!ニンゲンでもいいミ!チビちゃんを助けて!早く!早く......」

ママはストール前面折にしがみつき、懸命に叫び声を上げる。止めに入ることが出来ず、もどかしさが込み上げるばかりだ。

周り雑居ンネ達は何匹かは一瞬其方を見やるが、申し訳なさそうにその目を伏せて、ただただその場に座り込む。
殆どの個体は見向きもしないという有り様だ。

ママと他チビの叫びも虚しく、事態は深刻さを増し続ける。

他チビは下半身が痙攣し始め、完全に脚に力が入らなくなっているようだ。
モブがその小さな体の片脇を持ち上げると、何の抵抗もできずにゴロンと仰向けに向き直される。

モブはポッコリと膨らむ他チビの下腹部に噛み付くと、そのか弱い皮膚がビリビリと破れ、露出した腸をジュルジュルと喰い始めた。

チビ「ギギィーッーーっ!ギィーーーいいい゛イッ!
......チフッ......ハッ....アッ....」

ママ「あああ゛あ゛っ....!他チビちゃん...!...ッッ...」

どんどん変わり果てていく他チビ。ビクンビクンと数度全身で跳ねながら、さっきまでの可愛い容姿からは想像できぬような最後の絶叫を上げ抵抗を示したが、やがて呼吸が怪しくなってきた。

そのけたたましい声に気づいてか、2名の飼育員と1匹のローブシンが事務所から小急ぎに出てきて、その現場までやって来た。

飼A「うわあ...。結構ひでえぞ、コレ。すまん!ブシン!頼む!」

飼育員の声を聞くとローブシンはモブの背後にまわり、両脇を抱えて持ち上げる。

モブ「放せブミィ!もっと食わせろブミィーーン!」

ジタバタと抵抗を見せるモブ。タブンネとは思えぬ力強さで、ブシンと言えど油断すれば逃げ出されそうな様相である。
ブシンは明らかにイラついた表情をしている。

飼A「いやダメだコレ。埒あかねえ。おい!すまんがオマエ事務所からガノン連れて来てくれ、頼む!」

先輩格らしい飼育員が指示すると、若い方は慌てて事務所へと駆け戻る。

飼A「テメエ!この子だって大事な商品なんだぞっ!エサなら沢山やってんだろうが!このっ!このっ!...」

飼育員がドカドカとモブの腹を蹴飛ばすが、モブの勢いは衰えない。

519タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:19:19 ID:HrzmMaMw0

このタブ舎のタブンネの中には、このモブのように凶悪な個体が一定数存在する。
劣悪な環境から後天的にそうなる個体もいるし、2世,3世と交配を繰り返すうち先天的にそうである個体もいる。このモブタブンネは後者である。

先天的凶悪ンネはみな普通のタブンネよりも手足の蹄が硬く、牙とまでは成らないが歯と顎が頑丈で、体重も重い。
戦闘狂的な言い方をすれば攻撃種族値が50くらい普通のタブンネよりも高く、素早さがほんの少し遅い。
野生に帰ったとしても結構生き残れそうなタブンネの改良種(改悪種)と言えるかもしれない。

言っても鍛え上げられたローブシンが本気を出せば瞬殺できるくらいには弱いのだが、タブンネを殺してしまえば後で人間に怒られるので、ローブシンは今必死に我慢している。
このローブシンはタブンネが大嫌いである。

飼B「お待たせです!出てこい!クワガノン!」

ガノン「クワァーッギャギャギャ!」

出戻り飼育員がモンスターボールを投げると、タブンネよりも大きな、いかにも強そうな虫ポケモンが繰り出された。

飼A「よし、クワガノン、ソイツに電磁波だ!頼む、頼むから今は殺さないでくれよ!あとブシンには当てないでやってくれよ!」

先輩飼育員の指示に対して少し食い気味にクワガノンは足元に電気を集め出し、ローブシンは慌てた様子で地面にモブタブを投げ下ろす。

モブ「ミ゛ァァァァッ!ヤメっ!ブガァアアアアアアッ!」

ローブシンが巻き添えを喰らう寸前のところで、強力な電撃がモブタブンネにヒットする。
“電磁波だ”って指示であったが、それは明らかに10万ボルトであった。
モブは背中一面が真っ黒く焦げて白煙を上げ、死んではいないようだが舌を垂らし、白眼を剥いて気絶している。

飼B「よしっ!もういいぞクワガノン!もどr...
ガノン「ギャーッギャギャギャギャッ!」

飼育員の声を聞かず、クワガノンは大きな羽を振って雑居房を旋回し、再びバチバチと電気を集め始めた。

ミィーー!ミギャー!ミ゛ミ゛ィーーッ!・・・

さっきまで無関心な様子だった雑居ンネ達はガノンの行動に気がつくと、一斉に悲鳴を上げだしバタバタと走り始めた。

——

このタブ舎では出荷前、もしくは普段から、暴れ出したタブンネを麻痺させる目的でかねてより電気タイプのポケモンを保有している。

嘗て電気枠としてシビビールが採用されていたが、より強力な電撃を求めてカミナリの石を使ったところ、商品であるタブンネを喰ってしまう問題が発生した。

タイミングよくアローラに観光で訪れていたこの企業の社長。アーカラ島のある牧場で飼育されていたクワガノンを発見して一目惚れし、聞くと電気タイプを有して肉食ではないとのことから即買いし、シビルドンに変わってこのタブ舎の配属となった。

最初こそイッシュでは見たことのないポケモンに飼育員達も喜んだし強さは申し分ないのだが、いかんせん強力な電撃でタブンネを痛めつけるのが気に入ってしまったらしく、これまで4,5匹出荷前チビンネをブチ殺した実績がある。

手に追えないから別のポケモン寄越してくれと飼育員一同何度も上に掛け合うのだが、社長の意向でクワガノンが使われ続けた。

520タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:20:18 ID:HrzmMaMw0

雑居チビンネ達に危害が加わる直前のところで飼育員がクワガノンをボールに戻し、商品に傷がつくことはなく、事なきを得た。

2人と1匹はヤレヤレ顔で顔を見合わせ、雑居ンネ達も大きく息を吐き、みな尻餅をついている。

ほとぼりが覚めたことに気づき、4ベビも恐る恐る顔を上げだした

飼B「うわー...コレはダメっすね、もう肉になるとこ無いっすよ」

ベビンネ‘s「チギャーーーアアアッ!!」

飼育員が他チビの左脚を持ち上げると、腹一帯が破れ、グチャグチャになった臓器がそこからぶら下がり、ボタボタと血が滴っている。

飼A「8-5。こないだ離乳した5兄妹の末か。なんだってこんなトコいたんだろな。でコッチが6-2か。6番は多いなあ。まだ若えけど母親変えた方がいいんかなあ。」

飼B「せめてやっぱ抜歯できりゃ良いんすけどね、弱るし、鉄剤も高いから無理なんすかね〜。チビの方は“肥やし”でいいすか?」

飼A「うん。処刑機よこのオレンのとこ埋めといて。デカい方は明日の朝便で出しちまおう。全く余計なことしやがってコイツ...」

他チビは乱雑にビニール袋に入れられ、ローブシンと若飼育員はモブを担ぐと、スタスタその場を去っていった。

長女ンネ、次女ンネ、弟ンネはいつまでもさめざめ泣き続け、妹ンネに至っては他チビの姿を見た後失神してしまい、仰向けに倒れて口角からプクプクとあぶくを吐いている。

ママンネもストールの中でへたりこんで、泣いてはいないものの悲しい目で地べたを眺めていた。
何度も見たような光景であるとはいえ、優しいママは慣れっこになることなどなく、他チビの変わりざまに心を痛めていた。

521名無しさん:2021/03/18(木) 20:29:14 ID:p/mOp81Q0
新作乙です。
最近つべで見かけるブタ屋さん動画みたいなリアルな流れも感じられていて
ベビンネ達の反応がいちいち良いですね

522名無しさん:2021/03/20(土) 00:26:35 ID:hQs3q4Gc0
以前、クワガノン出してくださいとお願いしていたものです。登場させていただきありがとうございます!
クワガノンもタブ虐に参加していくのかな。

品種改良じゃなくて改悪とはタブらしいですね。
他チビの喋れない姉とは、そちらの一家の話も気になります。

523タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/21(日) 02:46:13 ID:PaZ4qZXE0

4ベビ生後12日目

この日は3番ママ母子の生活環境に、少しの変化が訪れた。

突然の来訪者、はじめての“おともだち”が亡き者となったショックからか、ここ3日間4ベビはほとんど喋ることがなくなっていた。

ママの指示で1日2回の弟ンネ歩行訓練が行われる他、ミルクを飲みたくなればみな黙ってストールに擦り寄り、ママもまた黙ってその要求に応えた。

それ以外の時間は4匹で囲いの1ヶ所で固まり、ボーっと座るか寝るかしているだけの時間を過ごしていた。

ママは4ベビに何か声をかけるでもなく、自身もストール内で静かに座って過ごし、ただただベビ達を見守った。

子タブンネらしい可愛らしさに溢れ、我が子をお友達と慕って来てくれたあの他チビちゃん。
彼女が死んでしまったことは勿論だが、その命を終わらせたのもまた同胞のタブンネであるという事実がママンネには一番辛かった。

他チビを殺めたのが他種族や、あるいは人間であったらまだベビ達に言葉のかけようもあったのだが、タブンネがタブンネを喰い殺すという現実はママも説明したくないし、しようがなかった。

しかしまた、ママは他チビに対し哀悼の意の一方、感謝の念も抱いていた。
いずれ伝えようと思っていたこの世界、このタブ舎で起こり得る現実、処世術。あの子はその身でもって、その一端を我が子達に教え知らせてくれたのだ。

どうか天国で、タブンネのお友達を作って穏やかに過ごしていてほしい。声には出さないが、ママはいつも心の中でそれを祈っていた。

——

お昼頃、4ベビは皆で纏ってママの乳首を吸い、やがて飲み終えてスヤスヤと眠りだした時、2人の人間が腹の大きな1匹の雌タブを引き連れて雑居房を縦断し、右隣の囲いまでやって来た。
雌タブの方耳には赤いタグがつけられ「4」の数字が書かれている。

雌タブ「ブヒィッ!苦しいミィ!苦しいミィ!
慎重に扱えブミィーッ!!」

飼「随分とデケエなコレ。5,6は入ってんじゃねえか?ほら頑張れ!何とか収まってくれ...!」

4番の囲い、ストール前面部の柵を解放すると、2人の飼育員が雌タブの腹肉を慎重に押し付けながら、何とかその身体をストール内部まで押し込み、やがて施錠して、その場を去っていった。

ママ「4ママちゃん、お久しミィ。苦しそうミィね。お加減いかがミィ?」

4ママ「ミフンッ!」

ママンネが首を精一杯向いて優しく声をかけるが、お隣さんは鼻を鳴らして不機嫌そうに返事をした。
4番ママの態度は織り込み済みのようで、不機嫌な返答を受けてもママンネはニコニコとした笑顔を崩さない。

——

ママンネはこの4番ママが生まれた時から知っている。
4番ママがまだベビの頃はママンネのことを慕ってくれていてタブンネらしい愛嬌に溢れていたが、やがて母タブに選ばれて2回くらい産卵した後、このように不躾タブへ変貌してしまった。

ママンネは4番ママのママ、4番ババンネが生きていた頃、4ババを姉のように慕っていた過去がある。
4ババは野生産で、よくお外の世界のことをママンネに教えてくれた優しい個体であった。

あの優しかった4ババの娘さん、ここの環境のせいで今はこんなんなってしまったが、彼女を見放すことなんてママンネにはできなかった。

悪いのはこの薄汚い舎屋と人間達だ。
いつか野生に帰って、元の優しい4番ママちゃんに戻ってくれたらいいな。
叶わぬ願いと知りつつ、ママンネは時々そんな妄想に耽っていた。

ママンネにとって、今でも4番ママは実妹に等しい存在であった。

524タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/21(日) 02:50:45 ID:PaZ4qZXE0

突如隣のストールに現れたタブンネさんとママの声に気がついて、4ベビは目を覚まして囲いの右側に集まり出し、チィチィ鳴きながら柵にしがみついた。

今まで両隣のスペースはずっと空いていて、初めてのお隣さんに興味津々のようだ。
赤児とは現金なもので、数日虚ろだった目にはすっかり生気が蘇っている。

長「おばちゃん、こんにチィわ。すごい大っきなお腹チィ!ゴハン沢山食べたのチィ?」
弟「おばちゃんママのおともだチィ?」
妹「はじめましてチィ!チィは妹ン...」

4ママ「ミガァアッ!!!」

ベビンネ‘s「チィヤァァァァッ!」

次々話しかけるチィチィ声を一喝され、4ベビは怖がって、ママンネのストールへ擦り寄った。

ママ「ミィんな、今は静かにしてあげて。お隣さんは、今タマゴを産む準備をしていて、お腹苦しいんだミィ。ホントはとっても優しいタブンネさんなんだミィよ。」

ママンネの言葉で少し落ち着いたが、4ベビはみな驚いて震えている。妹ンネに関しては脱糞してしまった。

4番ママは今一度フンっ!と鼻を鳴らすと、苦しそうに腹肉をつっかえさせながら、うつ伏せに横たわり眠りについた。

———

4ベビ生後13日目

その日の午前中、4番ママの陣痛が始まった。

4ママ「ミヴゥゥゥ...ぐるじっ...!ぐるじいミィィィッ...」

ママ「4ママちゃん!頑張っても少し下がってミィ!タマゴが柵に挟まっちゃうミ!おーいニンゲン!早く来るミィ!4ママちゃんを手伝えミィィイ!!」

4番ママはストールの前側に頭をつけて、うつ伏せに横たわっている。

ストール後面には少し柵が開けている箇所があって、成獣タブンネが中腰になればそこから排便したり、産んだタマゴが外に溜まるような構造になっているのだが、4番ママはお腹がかなり大きくストールに挟まっている状態だったため、自力でそこに尻を当てがうのは明らかに困難であった。

ママンネは真横を向く事ができない為、4番ママ後部の状況を確認してモノ言ってるわけでは無いが、頭の位置関係からそれは見なくてもわかる。
2年くらい住んでるのでストール内部の構造やサイズ感など嫌というほど把握している。

4ベビはママのブラインドにならぬよう二手に分かれ、柵にしがみついて固唾を飲んで隣のストールを見守っている。
産卵に興味もあったし、昨日一喝されたとはいえ、4番ママの苦しそうな様子を心配しているようだ。

——

やがて4番ママの股がメリメリと音を立て、一つ目のタマゴがスポンと出てきて、母体とストール後柵の狭い隙間にコロンと転がった。

ママが懸念していたのはタマゴが圧迫されてしまうこと。
叫びの甲斐無く人間が現れる気配が全く無いまま産卵が始まってしまった。
もう幸運を祈るしかない。

ママ「4ママちゃん!がんばってミィ!ほら、ミッ!ミッ!フゥー!ミッ!ミッ!フゥー!」

4ママ「オガッ...!ミガガガァッ!フッ...フゥーッ...」

4番ママは6つのタマゴを抱えていた。自然であれば一度の種付け、一度の産卵で6つも同時に宿ることはほぼない。
身長1.1m、体重31kgのポケモンにそんな懐妊は無理がある。
おそらく無理矢理発情させるホルモン注射の影響で、このタブ舎の母タブンネは最大で8つのタマゴを抱える場合があり、産卵の為死亡する母タブもしばしば現れる。

難産ながらも産卵は進んでいき、3つ目のタマゴが出てきたところで4番ママとストール鉄柵の間がパンパンになり、タマゴはメキメキ危険な音を立てて居る。

4つ目のタマゴが出てくる時、辛うじて4番ママが尻を持ち上げることができて、先3つの上に乗っかる形で何とか産み落とした。

ママの懸念が現実になってしまったのは5つ目。
半分以上が出てきた所で母体と先産の間で圧迫されてしまい。バリンと音を立ててタマゴが割れてしまった。

4ママ「ミ゛ィ゛ィ゛ヴァ゛ァァッ!イダイッ!痛いミ゛ィ゛ッ...ィッ....ァ゛ァ゛ッ....」

勢いを持って割れたタマゴ片の一部が4番ママの臀部一帯に突き刺さり、ボタボタと血が滴る。彼女には裂傷痛みと陣痛の2重苦である。

「チィッ!」「チビィン...」「チィ〜ッ...」

4ベビは思わず両眼に手を当て、短い悲鳴を上げながら視界を覆い隠した。
4番ママのお尻の傷も辛いが、4ベビにとってより衝撃的だったのは割れたタマゴから出てきた物体。

体長10cmくらい、毛も生えていない、赤ピンクの地肌が剥き出しの超未熟児ベビンネが外界に投げ出され、短い両手をピクピクと動かしながら、必死に口元へ持っていこうとしている。

「.....パァッ....プ...........ヴッ.......ヴグッ........」

孵化には程遠い状態で、ねばり気の極めて強い粘液が口と鼻腔にネットリと絡みつき、呼吸混乱を起こしているようだ。

10秒ほどするとビクンビクン全身が激しく蠕動し、やがて完全に動かなくなり、小さな息の根が絶えた。

享年20秒、短い生涯であった。

525タチワキ:2021/03/21(日) 04:33:43 ID:PaZ4qZXE0
>>522
ご意向に添えておりましたら何よりです!
ガノンは今後も登場させる予定でいます

526タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/24(水) 02:44:14 ID:JcWF88Z60

一瞬目を開け超未熟ベビの亡骸を見やると、4ベビはみなチィチィ泣きながら翻って、ママンネのストールに寄り固まった。

ママンネの目尻にも涙が浮かぶ。その現場を確認できたわけでは無くとも、我が子達のリアクションと触覚から伝わる音から何が起こったかは容易に想像できる。

自分が産卵を手伝いに行ければ小さな命は高い確率で助かったのだ。
生涯で何度目か、自身や妹分を閉じ込めるこの鉄檻に強い憎悪が込み上げる。

しかしいつまでも嘆いている場合ではない。ママはキッと顔を引き締めると、再び声を上げる。

ママ「4ママちゃん、頑張るミィ!あと少しミィ!少しだけお尻持ち上げてミィッ!ミッ!ミッ!フゥー!ミッ!ミッ!フゥー!」

4ママ「ミ゛ミィッ......わかっ......ミフゥ....
いだミィッ...くる゛ミィ......」

ママの励ましが効いたのか否か、4番ママは精一杯お尻を持ち上げ、やがて最後のタマゴが出てきて、コロンと下3つのタマゴの上に転がった。ちょっとしたタワーのようになっている。

4ママ「ハアッ....ミハァーーッ!おわっ....ミィッ...」

4番ママは産卵を終えると、舌を垂らして失神してしまった。
まだ若年の母タブンネとはいえ、かなり消耗する産卵であった。

ママ「4ママちゃん、お疲れミィ。よく、よく頑張ったミィ!」

ママンネは目に涙を溢れさせながら、お隣の妹分を賞賛する。
しかしまだ予断を許さない。ギチギチに挟まっているタマゴは何かの拍子に破損しても何らおかしくない状態だ。

——

4番ママが命懸けの産卵を終えて30分後、若い2人の飼育員が漸く4番産卵スペースに現れた。

飼A「やべえやべえ。もう終わってんじゃん。
やっちまった〜、1個死んでるよ...」

飼B「まだ大丈夫だと思ったんだけどな〜。やっぱ後ろでできなかったか...まぁあの腹じゃ無理だろうなぁ。」

隣の3番の囲いからミィミィチィチィと抗議の怒号が飛ぶが、飼育員達は気にも留めていない様子だ。

気絶する4番ママの頬をペチペチとはたいて起こすと、両脇を抱えてストール前面に座らせる。
あれだけ大きかったお腹もすっかり萎み、普通のタブンネのそれと変わらない状態になっていた。

後部に溜まるタマゴ、上2つは綺麗な状態であったが、ギチギチに挟まっていた下3つは所々ひび割れが入っていた。

飼A「うわ大丈夫かコレ?中の液体漏れ出して来ねえだろうな?」

飼B「3つもダメにしたら流石に怒られるぞ俺ら。何とか補強しよう!」

飼育員達はひびにガムテープを貼って応急処置すると、囲い後方のホルダーに5つのタマゴをはめ置いていき、未熟ベビの死骸はビニール袋に入れた。
なんともぞんざいな命の扱い方だが、タブンネだから仕方がない。
やがて2人ともスタスタと踵を返し、去っていった。

4番ママは中々体力が回復せず、餌にも水にも手をつけることなく、大の字に寝転んでその日1日を過ごした。

———

4ベビ生後14日目

その日の朝から4番ママは目を覚ましていて、1日3回与えられる給餌をブゴブゴ音を立てながら勢いよく平らげていた。

ママンネは別段話しかけたりはしなかったが、ニコニコと笑みを浮かべて嬉しそうだった。
新たな命の為ではなく、4番ママが産卵で死んでしまわなかった事が何より嬉しかった。

4ベビはいつものようにママンネミルクを飲み、ウンチをし、窮屈になり始めていた囲いの中をウロチョロ歩き回って過ごしたが、時々右側の柵にしがみついて5つのタマゴをまじまじと見つめた。

4ベビにとってタマゴは強い興味の対象であった。
その日の中でも、聞こえる鼓動は次第に大きくなった。

527タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/24(水) 02:44:46 ID:JcWF88Z60

4ベビ生後15日目

その日の昼過ぎ、4番囲い後方のホルダー上5つのタマゴがほぼ一斉ガタガタと音を立てて震え出した。
4ベビはその音に気がつくと、チィチィ鳴きながら柵にしがみつき、目をまん丸くしてその球体を見つめる。

鉄パイプのタマゴホルダーには電熱が通っている。
タブンネのタマゴはそもそも孵化が早いことも相まって、このタブ舎ではこうして丸2日前後で孵化が始まる。

...バリッ!バリバリッ...! ボトッ...ボトッ.....

チギャー!ミギャー!ヂギャー!チンギャー!......

5つのタマゴが順次孵っていき、ホルダーから床に落下していって五月蝿い産声を上げる。

次「チィー!生まれたチィ!」
妹「かわいいチィ!ミんなおメメとじてるチィ!」
弟「ちいさくてカワイイチィッ!ボクたちも生まれたときこんなだったチィ?」

ママ「シーッ。ミんな静かに。うるさくしたらお隣のベビちゃん達、ママを見つけられないミィから、静かにするミィ。」

ママの言葉で4ベビはみな口に手を当て押し黙ったが、視線はお隣ベビンネに釘付けになり、瞳をキラキラと輝かせている。

先日死んでしまった個体はまだ何の生き物かも判らぬような姿であったが、今正常に孵化した5匹ははっきりタブンネの赤子だとわかる容姿であった。
4ベビには弟妹が生まれたような感覚だったのだろう。

4ママ「ミミッ⁉︎もう出てきたミィか!ミフンッ!せっかく静かに過ごしてたのミ...!」

うつ伏せに横たわり、ミヒーミヒー寝息を立てていた4番ママ。
4ベビの感嘆声と実子の産声に気づくと目を覚まし、母として有るまじきセリフを吐きながら起き上がり、ストール後方に凭れるようにしてドスンと腰を下ろした。

生まれたてベビンネ達は大きなチィチィ声で喚きながら這い出し、実母の居るストールを目指してモゾモゾと動き出した。

......チ.........チ.........

しかしながら1匹だけ、落下先のホルダー下からいつまでも動かず、四つん這いに手を突いて、カクカクと頭部を上下するベビンネが居た。

長「チチッ?ママ、ひとりだけ動けないベビちゃんが居るチィ。カラダも少し他のベビちゃん達より小さいみたいだチィ。」

いち早くその存在に気づいた長女が小声でママに話しかける。
ベビンネの口から『ベビちゃん』という単語が出てくるのはこのタブ舎ならではの光景かも知れない。

ママ「ミミっ?少し心配ミィね。おててかあんよお怪我しちゃったミィかな。」

ママの位置からは視認できなかったが、不動ベビンネは身体が17cmくらいの未熟児で、ホルダーから落下した際、割れたタマゴ殻の小さな破片が右大腿部に刺さり、少し腫れ出していた。

先に動き出した4匹の内先頭のベビがストール内までたどり着き、おっぱいに吸い付かんとした時、先日の若い2名の飼育員がやって来て、その身体を摘み上げた。

ヂィッ!ヂィヂィッ!ヂギャギャヂィーッ!....

飼A「やっぱもう出てきてたか。よかった〜、割とみんな元気そうで。あれ⁉︎4匹しか居ねえぞ!」

飼B「あっホルダー下に1匹居るぞ!死産じゃねえだろうな。中の水漏れちまったのかな...」

....チュビッ........ピッ.........

1人の飼育員が小ベビンネを摘み上げると、弱々しいが声を上げた。

——

やがて2人がナンバリング作業を済ませて去って行くと、お隣ベビンネ達はママのおっぱいにたどり着き、コクコクとミルクを飲み始める。
4番ママが座り姿勢の為、2匹が股上2つの乳首に吸い付き、その上に乗っかる形でもう2匹が上の乳首を吸っている。

弟「かわいいチィ~。ミんなおいしそうだチィ!」
次「おめめ開いてないのにスゴいチィ!なんでおっぱいの場所わかるミチィかな。」

......チィ.......チィッ!........チッ.........チビッ.........

4番ママの乳首は半分しか使われてないのだが、実母の不親切な授乳姿勢の為、小ベビンネは乳飲みベビ達の周りをモゾモゾ這いずるだけで、いつまでもミルクに有り付けなかった。

ママ「ミィ.....」

ママンネは心配そうな表情を浮かべる。
未だハッキリと小ベビンネの姿が見えた訳ではないのだが、鳴き方からお腹が空いていることはよくわかった。
このタブ舎では母親の愛情不足の為、餓死するベビンネがたまに現れるのだ。

528タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/26(金) 03:29:41 ID:PvbMUWbg0

4ベビ生後16日目

ママンネの不安が的中、というよりもっと惨い形で、お隣の囲いに悲劇が訪れた。


.....チッ.....ヂ........チ..........ッ.....ッ......

孵化から一日足らず、4番授乳スペースの小ベビンネは目に見えて衰弱が進み、母体の居るストールの外で踞り、微かな鳴き声を上げて弱々しく震えていた。
ミルク獲得競争に負けてストール外に弾き出された形であった。

長「ミんな、小ベビンネちゃんにもおっぱいわけてあげチィ!」
弟「小ベビンネちゃんくるしんでるチィ!
おばさん、たすけたげてチィッ!」

4ベビは囲いにしがみついてチィチィお隣へ向けて野次を飛ばすが、4番ママは見向きもしないし、生まれたてベビ達にそんな分別はつかないようである。

乳飲みベビ達は最初の授乳終わりからお腹がポッコリと膨らみ、ベビながらもタブンネらしい体型になっていた。
一方小ベビンネはゲッソリとした腹をし、這いずるにも手足に力が入らず動けないといった様子であった。

自然淘汰なので仕方がないと言えばそれまでなのだが、まるで貧富の差を描く風刺画のような構図になっていた。

——

その日の昼下がり、3番、4番両授乳スペースではそれぞれベビンネ達が母タブンネの乳首に吸い付き、何とも平和な光景が見られた。
1匹蚊帳の外に居る小さな個体を除いては。

4ベビは昨日からずっと隣の囲いに釘づけ、弱々しい小ベビンネをずっと心配していたが、自分達の飲乳時は幸せ満面の表情であった。
タブンネらしい、優しい個体であったとはいえ彼らもまだ乳飲児、食欲私欲があくまで最優先事項であった。

4ママ「ミ゛ッ...ミ゛ィーーーッ!
ミガァーーッ!ミガァーーーーッ!」

ガシャン!ガシャン!ゴッ!グキッ!

「ヂッ」「..ッ...」「...ゥァ......」「ヂィ~..」

ストール後面に凭れ座り、4匹の健常ベビ達におっぱいを飲ませていた4ママが突如叫び出し、乳首に張りつく我が子を次々と引っ剥がしては猛烈な勢いで前方に投げ出した。

投げられベビンネ達は囲いやストールの鉄柵にぶつかり、1匹は頚椎が折れて死亡、1匹は右腕が捻じ曲がり、残り2匹は目立った外傷は無いものの脳が揺れてしまったようで、仰向けに横たわって両手で微かに宙を掻いている。

ママ「ミィィッ⁉︎どうしたミィ⁉︎4ママちゃん‼︎?」

投げられベビ達は横たわって授乳をしていたママンネの丁度視線の先に現れた。
4ベビは突如鳴り響いた衝撃音に振り返るがその光景に理解が追いつかず、飲み途中だったミルクを垂らしながらあんぐりと小さな口を開けている。
あまりに唐突な出来事にママンネも理解が追いつかない。

今回生まれた小ベビンネのように、数が多い時の半育児放棄は以前にもあったのだが、4ママは決して自分の子供に手を掛けたり、まして殺めたりすることはこれまで一度も無く、それはママンネも知っていた。

4ママ「イ゛イ゛イ゛ィッッッガハッ。
ミガァぁア゛ア゛ッ⁉︎ミハァア゛ア゛アッ...」

4ママは苦しそうに雄叫びをあげ続け、手をついて四つん這いになる。

ビリッ!バリバリブチャーッ!

手をつくや否や、4ママの股が音を立てて引き裂け、夥しい血液が噴出される。

長「ママッ!おばさんのおマタから赤いウンチみたいのが出てきてぶら下がってるチィ!おばさん病気になっちゃったんだチィッ!」

ママ「ミィッ⁉︎おマタから赤いウンチ⁉︎そんな...
どうして...!?」

ママンネの位置からは見えない4ママの下半身事情を、長女ンネが実況して伝えた。ナイスアシストである。

4ママは脱子宮を起こしていた。長女の言葉からママンネはそれを理解したが、混乱が深まるばかりであった。

529タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/26(金) 03:30:11 ID:PvbMUWbg0

このタブ舎で生まれ、長くここで生きてきた経験から、ママンネは子宮や腸、生き物の体内に存する臓器という物を理解している。

母体の股から出てくる場合があるのは子宮。
しかし脱子宮を起こすのは通常産卵時。
4ママは2日前にそれを終えている。

ママンネは思考を巡らせても理解し得なかったが、どうゆうわけかこのタイミングでそれが起きてしまった。

次「ママ!ひとり音が聞こえないチィ!ベビちゃんが死んじゃったチィッ!」
弟「他のベビちゃんたちもくるしそうだチィッ!
ママ、おばさんはどうしちゃったチィ?」

4ベビの注意は次第瀕死ベビ達に向いていき、ママに向けて必死になって問いかけるが、ママンネはそれには応えない。
ママは授乳時のまま、倒れかかった涅槃像のような姿勢で膠着しながら、両眼からボロボロと落涙する。

4ベビと違い、ママンネの心配は脱子宮を起こした妹分に100%向いていた。
脱子宮を起こした母タブの末路はママンネはよくわかっていた。


チュイ......⁉︎......チッ...!

オロオロと鳴き叫ぶ4ベビ、ピクピクと悶える投げ出されベビ達の喧騒の合間を縫って、弱々しく、モゾモゾと膠着を破ったのは1匹だけ蚊帳の外に居た小ベビンネであった。
優れた触覚から、母の胸に常にまとわりついていた兄弟が居なくなり、おっぱいが空いていることを察したようだ。
母の容態を考えれば何とも言えないタイミングであるが、生まれてからほぼ何も口にしていない小ベビンネにとっても真剣な行動であった。

全身をピクピクと震わせながら必死に這いずり、ストールの鉄柵を潜り、おっぱいを求めて4ママの身体下に潜り込んだところで、小さな背中が飛び出した子宮にブリュリと触れた。

4ママ「イ゛っダァーー!痛イ!イダミィィィッい゛い゛い゛っ!!な゛に゛ずるミィィッ!」

グチィッ!グチィッ!

小ベビ「グゥギィぃヤーー!!!
...ァ゛ァ゛ーッ....グァッ.....ァ゛ーー......」

4ママは白眼を剥き、激痛と体内異常から錯乱状態になっていた。
子宮に触れた我が子を外敵と判断してしまったのだろうか、小ベビンネの首元を掻き掴むと、その小さな右腕、顔の右上部分に噛み付くと、大きな音を立てて食いちぎっていった。

小ベビンネは精一杯の悲鳴をあげたがすぐに虫の息になり、腕からは大量の血、頭からは脳漿がグジュグジュと滴り、瞼に隠れていた片眼球がギョロリと剥き出しになっている。
実母に掴まれた首から下の胴体を前後にビクビクと動かし、まだフワフワとした尾はぶっ壊れたメトロノームのようにバタバタと左右に振り乱している。

長「ヂミィーーッ‼︎小ベビンネちゃんがっ!
おばさん!ヤメで!ヤメチィーーッ!」
妹「ヂィーーッ!チゴプルルル...ッ.....」

あまりのショッキングな映像に妹ンネはあぶくを浮かべバタリと倒れ失神してしまった。よく泡吹いて倒れる個体である。
残り3ベビは意識こそ保っているが、みなチョロチョロと糞尿を垂れ流してプルプル震えている。小ベビンネの状態は不慣れな人間が見ても嘔吐確実なほどグロテスクで、無理もないことであったかもしれない。

数秒後には小ベビンネは事切れて4番ママの腕から放り出され、4番ママはうつ伏せに倒れてビクビクと悶絶していた。

530タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/29(月) 13:40:36 ID:Ecl6fRec0

飼「うわっ!うわうわうわ!何だよコレ!4番?何で⁉︎やばいやばい......」

子殺しの惨劇から約20分後、雑居房を巡回しに来た1人の飼育員が4番授乳スペースの惨状に気がつき、慌てて事務所へと駆け出して行った。

長「何でもっと早く来なかったミチィーッ!」
弟「ベビちゃんたちをたすけろチィ!」
次「おまえらのせいだチガァーッ!」

妹「...チ?....チィーッ!ばかー!」

長女次女弟は人間の存在に気がつくや、強い口調で抗議の鳴き声を上げた。この時まで気絶していた妹ンネもその声で目を覚まし、がんばって兄姉につづく。

お隣のベビちゃんたちを痛めつけたのはお隣のママンネなので人間に抗議するのは少しお門違いなのだが、まあ遠因を作ったのは確実に人間なのだから彼らの言い分も間違いではない。

ママンネの教育が良い為か、みんな段々と人間に対して強気になってきていたようだ
そのママンネはいつの間にかストール内でへたり込み、胸の前で手を合わせてミィミィ震えていた。

——

程なくして現場まで戻ってきた飼育員達と1匹のローブシン。
飼育員は5人もやって来て、さっきまでの勢いはどこへやら、4ベビは怖くてチィチィ鳴き震えてストールに擦り寄った。
多勢で来られると流石に強気には出られないようだ。

飼A「脱子宮?脱腸?でも何で?産んだの2日前だろ?そっちの生きてっかな?生きてたら治療して。たぶん“げんきのかけら”じゃなきゃダメだと思う」

飼B「えーっと1匹アウト。3匹はセーフっすね。内1匹腕折れてますけど」

この中でリーダー格らしい1人が指示すると、若手らしい3人がそれぞれ投げ出されベビ達の息を確認し、げんきのかけらを適当にぶっ掛けていく。

...チィ... ...チ....チッ... ...アッ...ハッ...ヒッ..ィ...

親切な人間の治療の甲斐あって、ベビ達は息を吹き返した。骨折ベビは尚も苦しそうで、呼吸音がおかしく熱を出していたが。

リーダー格の人物がうつ伏せに横たわる4ママの脇腹に靴を引っ掛け蹴り上げ、ゴロンと仰向けに向き直させた。

4ママ「ア゛ッ...ミ゛ア゛ア゛ッ....ァ゛ァ゛ッ....」

4ママの下敷きになっていた小ベビンネの亡骸が現れ、無事だった片腕と両脚、胴体は押し潰れて、肛門と口から得体の知れぬ臓物がニュルリとはみ出していた。
4ママの腹には脳漿や血、サファイアブルーの片方がベットリこびりついている。

飼A「うわキモっ!1匹噛み殺したのか?爺さんどうだ?まあ処分確実だけど...」

飼C「うーんちょっと見てみるか。ローブシン、一応頭押さえといて。」

爺さんと呼ばれたやや老齢な飼育員。医師ではないのだが、経験深く多少のポケ医学(タブ医学)の知識がある人物であった。ちなみに弟ンネの去勢を行った男である。
その彼がポケットからカッターナイフを取り出すと、体外に飛び出した子宮を切り裂いていった。

4ママ「ミ゛ァ゛ガーッ!ギミギブィがガバァーッ
ゴバグボルルルッ......」

4ママは断末魔に等しいような奇声を発し、顔から足先までをグネグネと動かしながら渾身の力でのたうち暴れる。屈強なローブシンが押さえつけているので幸いお爺さんに被害は無い。

ママ「ミミィ〜ッ。。4ママちゃん......ッ..」

ハッキリとその全貌を見たわけでは無いが、ママンネは今一度滝のように落涙し静かな悲鳴をあげた。産声から聞いている妹分の悲惨な断末魔はとても聞くに耐えなかった。
4ベビもそれに同調するように、ボロボロ落涙しながらチィチィとママに擦り寄る。暖かな母体に顔をうずめられる訳ではなく、顔や胴体に触れる感触は冷たく残酷な鉄棒だが。

飼C「お、出てきたぞ。この子6つ産んだんだっけ?原因はコイツじゃな。」

「...パッ......プアッ.......」

子宮の中から、お爺さんが先の超未熟児ベビンネに等しい大きさの赤児を摘み上げた。
身体は卵殻に成りきらぬ皮膜に包まれ、両眼と両脚が無い奇形であったが、耳の形から辛うじてベビンネだとわかる生命体で、懸命に口をパクパクと動かし呼吸を試みていた。

4ママの産卵は6つであったが、受精卵自体は7つあった。
人工的に弄られる故のホルモン異常の為か、受精はしたものの卵殻の形成不備を引き起こし、それでも尚ゆっくり成長してこのタイミングで産卵(分娩)を迎えたが、球体を成していなかったことから子宮に引っ掛かり、今回の不幸を招いたようだ。

531タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/29(月) 13:42:11 ID:Ecl6fRec0

ベチャッ!   「ピ」

お爺さん飼育員は当たり前のように地面に奇形ベビを叩きつけ、その小さな命を終わらせた。
何ともぞんざいな扱い方だが、タブンネだから仕方がない。

飼B「この生き残り達“里子”っすよね?どこ出します?」
飼D「隣いるけど時期ズレてるしなー。おっぱい途絶えそう。てか何でみんな怖がってんだ?」

「ヂィッ!ヂィッ!」「ヂィギャギャーッ!」
「...ピッ...ピスン...」

2人の若手飼育員が回復ベビ3匹の首根っこを引き掴むと、無傷の2匹はパタパタと暴れながら抵抗を見せたが、骨折ベビはされるがまま人間の手にぶら下がり、弱々しく泣きだす。

飼A「3番はあり得んだろ。逆端の区画に昨日産んだの居たはずだから連れてってくれ。『32』だったかな?善良個体だから大丈夫だろきっと」

リーダー格飼育員が支持を出すと若手2人は片手を上げ了解の合図をし、ゾロゾロとタブ舎奥へ歩いていった。

それに気づいた長女ンネが囲い前面に歩み寄り、チィチィ声を上げながらピョンピョン跳ね出した。やがて下3ベビもそれに続く。
彼らにとって弟妹のつもりだったベビちゃん達を取り戻したかったのだろう。今後彼らが交わることはもう無い。

飼C「さて、母親の処分じゃな。どうする?午後便で出荷するか?」
飼A「いやあ“ミキサー”でいいだろ。移動中死にそうだし。次世代は実子まだ残ってるはずだからお前探しといて。」
飼E「了解。上の子7,8居ましたよね?“見せしめ”やります?」
飼A「いや、いいよ。4番は大体子供懐いてねえし、数多いと手間だし。よし、ブシン!持ってくぞ!」


リーダー格はそう言うとストールと囲いの檻を解放し、ローブシンと共に4ママの両脇を掴み抱え、ズルズルと運び出した。

子宮を裂かれて以後文字通り瀕死状態であった4ママであったがママンネの横に差し掛かった所でグルリと首を向き、大声で鳴き出した。

4ママ「3ママお姉ぢゃーーーん゛!ごわいミ゛ィィッ!じにだぐないミィーーッ!だすけてっ!助けてミィーーッッ!おでえぢゃーーーン!」

いつの間にか両眼にはサファイアブルーが蘇っていて、そこから大粒の涙が溢れている。

いつしか乱暴なタブンネさんへと変わり果ててしまった4番ママ。自身の最期を悟り化けの皮が剥がれたのだろうか。嘗ての面影と声色を取り戻し、姉貴分に向け必死に助けを求めた。

さっきから不細工なぬいぐるみのような佇まいであったママンネはその声にハッと立ち上がり、歯を精一杯剥き出して鬼の形相を浮かべると、狭いストールの中で限界まで助走をとって、それを壊さんとばかりに突進しだした。

半年以上ぶりに彼女の口から聞かれた『お姉ちゃん』という単語はママンネの生気、正義感、勇気、そして人間への怒りを焚きつけるのに絶大な効力を有した。


ママ「4ママちゃんを放せミギィーーーーーーッ!タブンネ達がっ!4ママちゃんがオマエらのために、どれほど苦労したと思ってるミ゛ィィィィッ!4ママちゃんを治せミィッ!オマエらがっ!オマエらが責任持って看病しろミ゛ィッ!4ママちゃんをがえせっ!!ミィの4ママちゃんを返せミィイイい゛い゛い゛っ!!」

言ってることは支離滅裂だったが、ママンネの怒りのベクトルは凄まじく、ガシャン!ガシャン!と大きな音を立てながら、何度もストール鉄檻にぶつかっていく。

普段の優しい姿からは信じられないママの形相と行動に一瞬怯んだ4ベビであったが、触覚からママの感情を読み取り、それに同調するようにチィチィと喚き出し、囲いの前面にしがみつき4匹で可愛く抗議の威嚇を見せる。

飼A「うわっ。何だ何だ?3と4って血縁じゃねえよな。んな訳ねえよな。お隣同士仲良しだったか?そんな風に見えなかったけど」

3番母子の必死の抗議も実らず、1人と2匹はズルズルと歩みを進めて行く。
飼育員はすぐに顔を向き直ったが、タブンネの言葉をおおよそ理解できるローブシンは何度も其方に振り返り、戯け顔やあっかんべーして親子を挑発した。

タブンネのこういった叶うはずのない懸命な抵抗や命乞いといったモノが、ローブシンは大好物である。
ちょっと意地悪だが、彼もずーっと人間を手伝い、汚いタブンネ達の相手をし続けているのだ。これくらいの娯楽は許されて然るべきだろう。

ママ「グミィ〜〜ッ!グミミィ〜ッ‼︎」

ローブシンの挑発はママンネには効果抜群であった。

彼らの姿はやがて3番スペースからは見えなくなり、4ベビは力無くぺたりと囲いに座り込んだが、ママンネの触覚はいつまでも妹分の体音を捉えて放さなかった。

532名無しさん:2021/03/30(火) 06:52:13 ID:Qm1gq4K.0
投稿乙ンネ
命がゴミのように扱われるタブンネさんが最高

533名無しさん:2021/03/31(水) 22:03:38 ID:vZg3yHmA0
目も開かぬ日齢のベビンネちゃん達が人間の手の中でされるがままになりながら
チィチィ抵抗する姿がかわいすぎていいぞもっとやれ

534タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/01(木) 21:47:29 ID:HoVFiUeg0

4ママ「イヤアーーっ!ミ゛ィャァ゛ーーあ゛っ」

4ママはされるがままに屋外スペースまで連れ出されて、中央部まで引き摺り歩かされると不気味な佇まいをした階段を登らされてゆく。
階段の先は回転刃が二重螺旋構造になった巨大なプロセッサーのような機械の投入部に続いている。
これは『業務用タブンネクラッシャー』というれっきとしたタブンネ殺害用(粉砕用)の製品である。

脱子宮を起こしそれを引き裂かれるという重大な内外傷にも関わらず、4ママの意識と瞳はハッキリと澄んでいた。
体調不良よりも“数秒後に確実に殺される”という恐怖のほうが勝ったようだ。

飼「よしっ、ローブシンそのまま押さえてろよ!スイッチ起動!」

ギュイいーーーーーーーーーーーーーン!!


・・ミ゛ィーーッ!ミヤァー!ミンミン!・・・

タブクラッシャーのスイッチが入れられると、けたたましい音を立てながら螺旋刃が動き出し、辺りの母タブンネ達や、中央部に居る雑居チビンネ達が一斉に騒ぎだす。

15番〜25番くらいの母タブ達の種付けスペースからは良く見える位置にクラッシャーが設置されており、幸運にも彼女達は生涯に何度も同胞の“処刑”を見ることができる。
お気に召さないのか大体の個体は目を背けるが。

——

長「ミチッ⁉︎ママ、とっても大きな音ミィ!コレ何の音ミ?」
弟「おばさんの声もきこえてくるチィ!」
妹「おばさんビョーキになったからたべられちゃうチィ?ママ⁉︎」

ママ「ミゥー..ミスン、ミスン...。」

姿は見えなくとも、ミキサー音と4ママの叫びは3番授乳スペースまでも十二分に届いている。というか周りの工場群が静かであればタチワキコンビナート全域に響き渡る程の騒音である。

4ベビは恐怖と興味が入り混じった様相で思い思いママを問いただすが、ママンネはそれどころではない。悲しみと絶望感で胸が一杯であった。

妹ンネの問いに敢えて答えるならば4ママをいつか食べちゃうのは人間ではなく自分達かもしれない。

——

4ママ「おでがいじま゛ずビィッ!お願い゛でずビィ!どうがっ!どうか殺ざないでミィぃぃ?ミガァーーッ!」

彼女を組み敷くローブシンが彼女の命乞いを聞く由ある訳もなく、代わりに耳のタグを引きちぎることで返答し、それを人間に手渡した。

飼「忘れてたわサンキュー、ブシン。もう落としていいぞ!好きなようにな!」

ローブシンは口元一杯にニヤリと笑みを浮かべると、4ママの両脇に手を掛けその身体を持ち上げ、足先からクラッシャーへとゆっくりと降ろした。

ブジューッ!ブチグチブチュッ....

4ママ「グミギヤァーーベベガガベギッ...!
グァミミミ゛ィィッ!ゴァブルルルル...」

4ママの足先とはみ出た子宮が螺旋刃に巻き込まれていき、残酷な遅さでゆっくりとその身体が刻まれていく。
タブンネ殺害、フーズ加工を目的とした製品であるため、最大限ミィアドレナリンが排出されるような親切設計、最初のダメージから死亡するまで平均で2分かかるような代物である。

グチュルル!グギッ!ブニュ〜......

一層目の刃がじわじわ4ママの胴体下から3分の2くらいまで到達する。一層目では即致命傷を与えられずかなり粗い刃で斬られるため、所々骨がそのままの形で残り、大腸小腸が無傷で回転に絡まり、巨大なミミズのように螺旋中央に巻きついている。

4ママ「ブァーばばばぷ......お、お゛でえぢゃ...!づめだぐじでゴメ...ミィ。べべべベビだぢ....ヂビだぢ.....バマばあいじで....ボんドば....ァァァッ..ミガガガガガ....」

4ママが訳のわからぬ遺言を残しかけた所で下半身がニ層目に達し、一層目にタブレバーやタブハツ、タブトロが巻き込まれ始めて呂律が失われていった。

535タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/01(木) 21:48:01 ID:HoVFiUeg0

4ママ「ァ゛ーーー。ァ゛ーーーーッ…マ....ママ......ミ....ッ.....」

首から下が無残な姿に成り果てた所で今生最後の言葉を紡ぎかけ、1匹のタブンネの尊い命の灯が完全に消え去った。

享年1年7ヶ月
産卵5周、生産タブ肉27匹分。
十分かは微妙だがまあまあ役目を果たした母タブンネと言えるだろう。
この先同胞達の“エサ”としての最後の役割が待っている。

——

彼女をここまで連れてきた飼育員は顔を顰め片手合掌のような素振りを見せるが、ローブシンは苦しそうに笑いを殺し腹を抑えている。

1人と1匹は機械下部の受け皿を開けるとタブ骨粉と化した4ママの身体を溢さぬよう慎重に抱え、ソロソロと事務所方向へ運んでいく。

出来たてでホカホカのタブ骨粉は一日強専用の部屋で陰干しされると収穫したオボンオレンと共に別場所の自社加工場へと運ばれ、程なくして飼料となり、またこのタブ舎へと舞い戻ってタブンネ達の糧となる。

“タブンネ捨てるとこ無し”がこの会社のモットーである。

——

弟「おっきなオトとまったチィ...」
次「おばさんは死んじゃったチ?」
長「きっとそうだミチィ。どうしてタブンネさんがこんな目に...こんなのおかしいミィ!」

4ベビはヒソヒソと井戸端会議で盛り上がったが、ママンネはプルプルと震えながら唇を噛み締め、血混じりの涎が締まりのない口角からタラタラと垂れ流れている。
散々望まぬ妊娠とそれに伴う育児を繰り返させられ、まさに命を削って毎日を生きてきたタブンネさんへの最期の仕打ちがコレでは到底受け入れられない。

先程の連続突進で鉄柵に擦れまくり、ママンネの横腹にはミミズ腫れが出来上がり、元々の劣化と相まってかなり痛々しい容姿に成り果てていた。

——

4ママの死亡は時刻にして午後1時半頃の出来事であったが、ママンネはストール内に座り込み、給餌にも手をつけず、4ベビを呼んで授乳をすることもなく、暗い目をして廃タブの如くその日1日を過ごした。

妹ンネは多少グズったが、4ベビはママの心情を慮ったのか空腹を我慢し乳をせがむことも無く、4匹で固まって静かに過ごした。

ママンネが授乳放棄したのは彼女の生涯でこの日が初めてのことであった。
子供達との別れにはある程度耐性がついているが、長い時を共に過ごし、同じ立場で生かされてきた妹分の死は彼女の心に想像以上にダメージを残したようだ。

536タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:23:55 ID:.35ECOTA0

4ベビ生後17日目

連日の悲劇から立ち直る間も無く、親子お別れへのカウントダウンは着実に進んでいる。

お隣のママさんが殺されて以降、何も口にしていなかった4ベビ。

ママンネは相変わらずブッ壊れたテディベア人形のようにストール内に座り込み、朝の給餌にも一切手をつけなかった。
絶望で満たされたママンネの感情は触覚を通して4ベビにもしかと伝わっており、それに呼応するように彼らもまた生気を失い、囲いの一箇所でおしくらまんじゅう、静かに過ごしていた。

しかし膠着を破ったのは最も幼さが残っている妹ンネ。朝の給餌から30分後、空腹に耐えかねて立ち上がった。

妹「ママ.....チスンチスン...。おなかすいたチィ。おっぱいちょーだい。ママ。おねがいおねがいチ。」

ストール越しに柵の隙間から短い腕を伸ばし、ママの肩をチョコチョコと掻いて可弱く呼びかけた。

ママ「......ミ?........ミィ......」

ママンネは一度立ち上がり、狭いストール内にうつ伏せに横になると、身体四半分を持ち上げて柵に腕をかけ、授乳姿勢を取る。完全に惰性のみで動いているような一連の動作であった。

ママの動きを見て上3ベビもストールに擦り寄り、仲良く乳首に吸い付いた。
妹ンネは本能的にチィチィ声を漏らしたが、他の4匹は無言、チュパチュパという音だけが響き渡る、何とも不思議な空間であった。

ものの1分も経たぬうち4ベビは口を離すと翻り、また囲いで身を寄せ合って静かに寝過ごした。誰も敢えて声に出したりはしなかったが、ミルクの出があまり良くなく、芳しくもなかったようだ。

ママ「.........ミッ.........ミッ......」

ママンネは柵から手を離し、ノソノソと動いてまたうつ伏せに寝そべり、子供達から見えぬ様に両腕に顔をうずめると、しくしくと泣き出した。
半ば自分の方から放棄していたとはいえ、満足に授乳も出来ない自分の無力さが本当に惨めでならなかった。

ママ(ごめんミィ...可愛いベビちゃん達....
...4ママちゃん....ミィもきっとあと少しで、おんなじトコロに行くミィから...待っててミィ...。)

——

昨日の強い精神的ショック、また2食抜いたことや睡眠不足も影響しているが、母体としてのママンネの身体はとうにピークを過ぎ去っている。本人もそれは感じていた。

今回の産卵に至っても、ママンネの乳腺が張っていたのはせいぜい4ベビ孵化から1〜2日くらい。
今ママンネが野生に帰って駆除や捕獲されたとしても、誰も子引きとは思わないだろう。
昨日からだけで考えても、ママンネの老け込みは一気に加速していた。

タブンネ種の寿命を考えればママンネはまだ血気盛んな齢と言えるのだが、ハイペースで何匹も孕み、産み落とし、育てを繰り返している為、身体にしても、おっぱいにしても、命分というものには限界があった。

——

ママンネは二の腕で目を擦って涙を拭うと、スクッと起き上がってストール前部まで歩き、モシャモシャと飼料を平らげ、不味い水をゴクゴクと飲み干した。
彼女の目には力が蘇っていた。

妊娠や産卵自体は決して望んでいるわけではない。
こんなゴミ溜めのような屋舎に生涯閉じ込められ、無理やり別れさせられる、可哀想な命。できれば生まれてこないで欲しい。

それでも傍らで過ごす4匹の我が子。彼等を無碍にする事なんてできない。
自分の命にはまだ意味がある。

無慈悲なジレンマを抱え続けながらも、懸命に使命を、生き甲斐を模索し、それを全うする強い母の姿がそこにはあった。

537タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:25:02 ID:.35ECOTA0

時刻にして正午を少し過ぎた頃、係の飼育員の1人が3番の囲いの前にやって来て、ママンネの餌箱に飼料を入れ、水箱にタブンネ用の汚い水を注いでいく。

これまではそれで終わりだったのだが、飼育員は竹製の餌入れと金盥を取り出しそれにも飼料と水を入れると、柵の下から囲いの中へそれを差し出した。

飼「よーしよし。4匹とも問題なく育ってるみたいだね。みんな今日から、おっぱいだけじゃなくて水を飲んでエサも食べるんだよ。もうすぐママと別れて、お外で暮らすんだよ。」

飼育員は囲いの中の4ベビに一声かけ、スタスタと奥へと足を進めていった。

「...チィ...?...」「チィ.....」・・・・

一度乳首を吸って以降、また黙って寝ていた4ベビは人間の声に振り向き、見慣れぬ2つの容器をちらっと見やったが、また興味無さそうに顔を伏せ、4匹仲良く身を寄せ寝そべった。

ママ(もうそんな時期だったミィか....)

ママンネは差し出された容器を一瞬見ると、ストールの最後部まで身体を移し腰を下ろして、精一杯首を横に向けて4ベビの姿を見つめた。

4ベビはこの時皆おそらく50cmを越えるほどの大きさだった。
ママンネの経験則から見ても十分な発育と言えるサイズである。
このタブ舎ではこうして、離乳の5日前からベビンネに飼料を与え始め、母乳とのハイブリッド給餌を始める。要は乳離れ訓練である。

ママンネは嬉しさに淋しさ、そして我が子の運命を想って悲しさの入り混じった表情を浮かべ数秒押し黙ったが、懸命に笑顔を作り、ベビ達に話しかけた。

ママ「みんな起きてミィ。元気をお出しミィ!
みんなのゴハンあるミィよ。食べてミて!」

4ベビはママの声に振り向き起き上がるとヨロヨロ歩き出し、餌箱の前で顔を見合わせ、手に取って食べ始め、水にも舌をつけた。

長「前におねえさんがくれたゴハンミィ。これママのと同じミィよね?」
次「このお水なんだか酸っぱいミチィ?」
弟「チィ...やっぱりこのゴハン嫌いチィ。くちゃいチィ」
妹「ペッペッ。チィもコレきらいチ。おけけみたいのがベロについたチィ。ママ?このゴハンなんでできてるチィ?」

——

ママンネミルクが不十分だった為お腹の空いていた4ベビは皆餌にがっついたが、弟妹はすぐに音を上げ、食べるのをやめてしまう。

飼料は汚いオボンオレン混じりのタブ骨粉である。

そして今出された水は雑居房に流れているもので、上水道ではない。ここをタブ舎として買い取った時からついていた蛇口から流れ出ている得体の知れない汚水である。
元々何の用途なのか、どこから引いているのかもわかっていない様な代物で、酷く濁り、かなり臭い。
水道代がかからないので雑居房では常に流されている。

チビンネ達が飲んでも殆どの個体は下痢も嘔吐も起こさないことから猛毒ではないであろうが、人間が数秒手をつければ皮膚炎を起こすほどには有害で、身体に良い水ではないことは明らかである。

このタブ舎では15匹に1匹くらいの割合で奇形ベビンネが生まれてくるのだが、その最たる要因はおそらくこの水である。

しかし重大な損害も起こらず、タブンネ達もみな慣れればガブガブ飲み出すので、いつまでもこの汚水がダブンネ達に与えられ続けている。
タブンネとはその程度の生き物なのだ。

538タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:25:40 ID:.35ECOTA0

妹「ママ、チィおっぱいのみたいチィ。おねがい、おっぱいちょーだい。」
弟「ボクもボクも!おっぱいのがおいしいチィ!」

ママ「わかったミィ、こっち来てミィ!でも約束ミィ、これから毎日、ほんの少しでもいいから、ゴハンも食べてお水も飲むこと。タブ切りげんまんミィ。もう少しでママ、みんなにおっぱいあげられなくなるミィのよ。でも一緒に居るうちは、好きなだけおっぱい飲んでいいミィからね!」

少量だけ飼料を口にし、ひと口だけ水に舌をつけた妹ンネがダダをコネだし、弟ンネもそれに便乗する。
ママンネはそれに優しく応えると、今一度授乳体勢を取った。

2匹が嬉しそうにチィチィ声を上げながら乳首に吸い付くと、チュパチュパとミルク飲みの音が響いた。
先程の食事が功を成してか、今回はしっかりミルクが出たようである。

やがてそれに気づいた長女次女もママに擦り寄り、4匹で仲良く乳首を分け合った。
発育が良いとはいえ、あくまで彼等はまだベビンネである。

——

長「ねえママ、もうすぐお別れするミィ?ママはどこに行くミィの?おばさんミたいに殺されちゃうミィ⁉︎」
次「ミィ達おソトで暮らすミチィ?」
弟「おソトに出たらああやって他のタブンネさん達とケンカするミィチィ?」
妹「チィおソトいきたくない!ずーっとママといっしょチィ!」

乳飲みを終えると、一斉にミィチィとママンネへの質問攻めが始まった

ママ「ミフフ、みんな落ち着いて。ママはね、ここの箱とは違う、別の箱にお引っ越ししなきゃいけないミィの..こうやってみんなをナデナデしたり、おっぱいはあげられなくなるミィけどね、ちゃあんとみんなの声を聞いて、いつも見守ってるミィからね。」

ママンネの講釈が始まる

「それからね、お兄ちゃん、お姉ちゃん達も、お外に出ても、決して他のタブンネさん達を叩いたり、悪く言ってはいけないミィ。これだけは覚えておいて。ああやって乱暴なタブンネさん達もね、ミィんなホントは心の優しいタブンネさんなんだミィ。こんな汚い場所に閉じ込められて、優しい心を忘れているだけなのミィ。悪いのはニンゲンや、ニンゲンに従うポケモン達だミィ!」

雑居房ではしばしばどこかで取っ組み合いのケンカが起こりだす。
ママンネの講釈は続く。語気が少し強くなった。

「みんな“とらっく”の話は前にもしたミィ?いつも連れ去られるタブンネさん達は見てるミィね?ニンゲンと一緒にタブンネ達を連れ去るポケモンは、オレンジの方はズルズキンっていって、青い方はダケキってポケモンだミィ。ズルズキンには特に気をつけるミィ。アイツはタブンネ達をイジめるのが大好きな奴ミィ。絶対近づかないようにするミィ」

・・・

ママンネは次々、タブンネ以外のポケモン達の名を挙げながら解説をしていく。

ここの従業ポケ達は誰かの飼いという訳ではなく、会社の共有ポケモンであり、それぞれに役割がある。

かなりざっくりとだが、ローブシンは主に凶悪ンネからの人間護衛要員で、クワガノンは暴れンネを麻痺らせる要員。
ダケキ、ズルズキンは出荷ンネ捕獲用、他に清掃要員のシャワーズ、フタチマル、マリルリが居る。

ここで詳述はしないが、ローブシン以外はタブンネ搬送先、屠殺時にも仕事がある。

539タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:26:16 ID:.35ECOTA0

ローブシン、クワガノンの説明を終えたところで、未登場の水ポケモン達の解説が始まる。
4ベビは黙ってママの話をしっかり聞いているが、瞳が潤み出している。聞けば聞くほど暗くなる話であった。

「みんなたぶんまだ見たことないミィけど、お外で暮らすようになったら水の技を使うポケモンと会うことになるミィ。特に気をつけないといけないのは、マママリルリってやつででっ...ミィ...ミィーンミンミン!ブミィオオオオオオお゛お゛お゛んん゛!......」

長「ママ!大丈夫ミィ?」
次「ママ!」
弟「チ、チ、チビィ〜ン!」
妹「チビャーン!チスンチスン....」

話している最中でママンネが大声で泣き出してしまい、弟妹も連られて号泣してしまう。割と平静としていた長女次女ですら目からボロボロと落涙している。
何ともカオスで、滑稽を通り越して惨め極まりない光景であった。

——

ママンネはいつも、こうして飼料が与えられ始めたタイミングでこのタブ舎の処世術を我がベビ達に伝えている。
もう何週も産んで育てて出荷されを繰り返している為、落語家が持ちネタを噺すように今回同様の講釈を行なってきた。

しかしママンネにとっていつも辛くなるのが他のポケモンについて説明を行うくだりであった。

ママンネは『人間』『ポケモン』という生き物の大別はついている。朧げながら4ベビもそれは同様である。

同じポケモンなのに、どうして他の種族は人間に可愛がられ、どうしていつも自分達タブンネだけがこんな辛い目に遭わされ続け、何の自由も権利もなく、されるがままに殺されなければならないのか。

人間はともかく、タブンネの味方をしてくれるポケモンが1匹も居ないことも悲痛な事実

皆タブンネに全く興味がないか、苦しんでいる様を見て喜んでるかのいずれかだ。触覚を使わずとも表情や仕草から否応なしに伝わってくる。

それを我が子に伝え教えなければならないという屈辱。ママンネにとって到底受け入れられないこの世界の現実であった。

——

小一時間親子固まって悲痛なタブ泣きを続けたあと、冷静さを取り戻してママンネが最後の言葉を紡ぐ。

「みんなごめんミィ。ママがしっかりしなきゃいけないミィよね。沢山お話ししたけど、これだけは忘れミィで。みんなに、他のタブンネさん達全員に、優しくしてあげること、みんな仲良くすることが、ミィ達タブンネさんの、大切な誇りなんだミィ。ベビちゃん達がタブンネの誇りを忘れなければ、いつかきっと神様が、ミィ達を助けてくれるかも知れないミィ。最後まで、決して希望を捨ててはいけないミィ。タブンネさんは誇り高い生き物ミィ!みんなタブンネの誇りを忘れミィで!きっと約束ミィよ!」

ママンネは半ば自分に言い聞かせるように、食肉らしからぬ演説を結んだ。

4ベビは目に涙を浮かべながらも、真剣な表情でそれを聞き、コクコクと頷いて返事をした。

実に素晴らしい生き物達である。

540タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/08(木) 22:06:38 ID:/Z9fMBhY0

4ベビ生後18日目

特に変わったことは無いが、昨日昼1回だったベビ用の飼料は午前と午後1回ずつ、計2回に増やされた

ママンネの命令によりみんな飼料にも水にも手をつけたが、妹ンネはそれぞれ舌につける程度のみ、弟ンネも飼料も水もひと口ずつ食べ飲みするだけに留まり、飼料は殆ど長女と次女が平らげ、2回とも水はかなり余った

ベビ達が起きてる時間、1匹ずつ代わりばんこにママのストール前に位置どり、柵越しに毛繕いや、尻尾を梳かしてもらい寵愛を受けた

親子共に過ごせる時間もあと数日
身を持ってそれを知り尽くすママンネは1秒でもベビ達との時間を無駄にしたくない心持ちだった
ストール前部はママンネ用の餌箱が設置されている為窮屈な座り姿勢であったが、それでもベビ達は嬉しそうで、小汚いながらもみな尻尾はフワフワになった

ママンネは平等に愛を注いだが、弟ンネに対しては特に入念に、“タブンネの誇り”とやらを説き聞かせた

——

ママンネはこれまでに何匹もベビ達を離乳させているベテランママで、その性格故か先天的に凶悪な個体を産み落としたことは一度もないが、それでも離乳後、雑居房で傷害沙汰を起こした子タブが過去に2匹居た。いずれも♂個体であった。

このママンネの様な善良個体の子タブであっても、後天的に凶悪化するタブンネは一定数存在する
♀個体にも現れるが、♂の方が圧倒的に多い。おそらく去勢が原因であると思われる。本来性欲として発散されるべき欲求が暴力に昇華されてしまう為だ

子タブ達とのお別れは否応なしにある程度の耐性がついていたものの、我が子が同胞を痛めつけるようなことはママンネとしては何としても避けたい想いがあった

同族への慈愛はタブンネ特有の傾向とも言え、ママンネにはその特徴が色濃く残っていた。より注意すべきは弟ンネではなかったことはこの時誰も知る由もなかった...

——

4ベビは睡眠を取る際、ストールを挟んで左右に分かれ、全員がママに触れる様な形で眠るようになった
残酷に冷たい鉄柵が常に彼女らの間を隔てたが、それでもママンネは我がベビ達の温もりをしかと感じ取り、嬉しさに切なさが入り混じった涙を流し続けた

なんだかんだ言っても、我が子と接することのできるこの僅かな期間が人生で一番幸せなひと時かもしれない
タブンネ以外の生き物なら当然の時間なのであるが、そんなセコセコしい哲学に耽るママンネであった

541タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/08(木) 22:07:10 ID:/Z9fMBhY0

4ベビ生後19日目

与えられる飼料のペースも、4ベビの食いつきも昨日と変わらず
しかしここ2日間の食いが影響してか、ほぼ横一線だった4ベビの体躯に差がつき始めた。長女ンネ、次女ンネが少し大きく、ついで弟ンネ、妹ンネとタグ番通り降順に身長差が生まれた

飼料をしっかり喰っている為、長女次女の糞はもっさりとした粘りのある固形糞に変わり、匂いもかなり臭くなっていた
ママンネのストール後方にできていた糞だまりはいつの間にか山となって、囲いの後方は完全に行き来できぬ状態になっている

——

昼下がり、2名の飼育員が1匹の雌タブを引き連れて雑居房を縦断し、左隣の囲いまで運んできた。数日前に4ママが連れられて来た時と全く似た状況、今回連れられて来た雌タブの方耳には「2」の数字が書かれた赤いタグがつけられている

飼A「いやーお前ホントすげえな。うんともミィとも鳴かなくなったけど。今回も6は確実に入ってんぞコレ」

飼B「コイツはタマゴ自体もデカいっすからね..ホラ、しっかり歩いてくれ!ゆっくりでもいいから!」

...ヒュー...ビュー...ビューッ.........

2ママの腹は先の4ママよりもさらに大きく、パッと見ではタブンネではないくらい巨大化していて、心肥大に喘息が加わった様な呼吸をしていたが、目つきや態度は苦しそうな様子ではなく、生気を失ったような虚な瞳をしている

飼B「今回もこれストール入りは無理っすね..」

飼A「ああ。明らか物理的に不可能だろ。前みたく囲いでいいよ。どう考えても柵越えれねえだろ。50キロ以上あるぜ..コイツ...」

飼育員2人はほぼ担ぐように2ママを囲いの中に入れ座らせると、汗を垂らしながらその場を去って行った

ママ「2ママさん、お久しぶりですミィ。今回も大変そうですミィね。どうかお身体気をつけてミィ」

2ママ「・・・・・」

3日ぶりのお隣ンネ登場で4ベビは囲いに擦り寄ってその姿を眺めたが、4ママの時とは違い話しかけたりはしなかった

前回の惨劇で情を移すのを躊躇ったこと、ママンネの態度がよそよそしかったこともあるが、何より2ママに全く生気が感じられず、感情というものが全く読み取れないことに畏れを抱いたためであった。

2ママはママンネの問いにはうんともミィとも応えず、4ベビの存在も全く意に介さぬ様子で、虚ろな目をしたまま、やがてゆっくりと体勢を変え、仰向けにゴロンと寝転がった
うつ伏せ寝が不可能なほど大きな腹をしていた

542タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/08(木) 22:07:42 ID:/Z9fMBhY0

この2ママについて少し補足を述べておく

2ママはこのタブ舎の生まれではなく、ある牧場から買い取られて来た個体である
ママンネは敬語を使っているが、ママンネよりも、他界した4ママよりも若年であり、今回の懐妊が3回目であった。



このタブ舎の母タブンネの代継ぎは基本的に実子から選ばれる。父親との近親関係を簡潔化する目的もあるが、単に面倒臭いからそうされている

しかし母タブンネが凶悪ンネ量産器と化したり、もしくは母タブンネ自体が子殺しやネグレクトを行うようなことが2,3代続くと、“血の入れ替え”と称して2ママのように何処からか買ってきたり、もしくは従業員の誰かが適当に野生を捕まえたりしてここのストールにブチ込まれる
先代の2番ママはベビを次々喰い殺すなかなかファンキーなタブンネさんであった



現2ママがやって来た時、ママンネは親切にあれこれ話し掛けたが、お互い全く反りが合わなかった。人間観に大きな乖離があった為だ

2ママの詳しい生い立ちはママンネもよくわかっていないが、おそらくガラルタブンネ牧場さんのような場所で悠々と暮らして居た個体だと思われる。このタブ舎の2世であるママンネと話が合うわけがなかった

どこかお花畑過ぎたが2ママは性悪という訳ではないので、ママンネとは懇意ならずも仲悪くもないといった関係性であった

しかし2ママは次第にタブンネらしさというものを失っていく
一度目の産卵ベビ達と引き離された際に情緒不安定になり、さらにその子供達が出荷された際に発狂し、今の様な廃タブと化してしまう
深く信用していた人間に我が子を取り上げられ、現実を受け入れられなかったのだ

佇まいこそ廃タブだが与えられる飼料は食べ水も飲むし、生殖機能は失っていないどころかハイペースに量産し、1週目2週目で8個産み、今回も8個宿っている何とも気の毒なタブンネさんである。

ここに来た当初は不潔な環境に閉口したのだが、今はストール内で平気で糞尿を垂れ流す為、腹も尾も真っ黒く汚れて、タブ糞と体毛が癒着する強烈不潔ンネに成り果てている

543名無しさん:2021/04/10(土) 20:22:05 ID:gsn30QHM0
子殺ししといて"ファンキーなタブンネさん"ですますなよこの糞豚w

てかベビのうちから自分達だけタブンネ"さん"なんて
高尚ぶらせるとかホント腹立つわー

544名無しさん:2021/04/11(日) 16:36:36 ID:1BbRCPrI0
タブンネさんの誇りとはw
ママンネ演説でクワガノンのことをどう説明したか気になりますね。電気でいじめてくる意地悪なクワガタとかかな?

545タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/12(月) 23:14:25 ID:IxTHbfYs0

4ベビ生後20日目

この日は朝の給餌のタイミングから、ベビンネ用の餌が与えられた。1日3食、いよいよ離乳の最終段階である

飼「ホラ、みんなちゃんと喰えよ。...あれ?3番ってこんなデコボコだったっけ?要観察だなコレ...」

朝の給餌を行った飼育員は3番囲いの中をちらっと観察し、ブツブツと独り言を言いながらその場を去って行った

4ベビの食いは相も変わらず、弟妹が少しだけ食い、長女次女が殆どを食う様相であった

昨日お隣にやって来た2ママの様子も相変わらずで、ママンネは朝1回だけ挨拶の声を掛けたが答えられず、4ベビはチラチラと左隣の囲いを見やって気にする素振りは見せたものの、話しかけたりはしなかった
見た目こそタブンネさんであっても、やはりその佇まいや心音が不気味で、恐怖がまさったようである

本当に生きているのか死んでいるのかも解らぬような2ママであったが、3番親子も気づかぬうち、いつの間にか餌箱は空になり、股の間の床は尿で濡れてタブ糞が転がっていた。4ベビにとってさながらマジックのようであった
よく耳を澄ますとヒューヒューと乾いた呼吸音が聞こえた。一応生きているようだ

4ベビは代わりばんこにママンネのストール前部に陣取り、蹄で毛繕いをしてもらい、限られた条件の中で精一杯の寵愛を受けた。毛繕いはハイブリッド給餌が始まって以降のルーティンになっていた

——

昼の給餌

給餌はいつも雑居房にまず飼料がばら撒かれてから授乳スペースをタグ番昇順に与えられていき、最後に種付けスペースの母タブンネ達に与えられていく順番であるのだが、この時3番授乳スペースが何故か飛ばされてしまった

ママ「おいニンゲン!ミィ達のゴハン忘れてるミィ!」

自分の餌がスルーされたことに気がつくと、ママンネはガシガシと前折にしがみつき、抗議の雄叫びを上げる
ママンネはとりわけ卑しい性格でもないし、別段腹が減っていたわけでもないが、この時は餌への執着を見せた。先日のミルク不精がそうさせた原因であった

長「ミィッ!ゴハンくらいちゃんとよこせミィ!」
弟「ちゃんとしごとしろミチィ!」
妹「チィーッ!ニンゲンのばかーっ!」

ひと段落遅れて4ベビもママに呼応するように、届かぬ怒りの声を飼育員に向けて浴びせかける
授乳スペース前部の柵に4匹が固まると横幅はギチギチになった。いつの間に随分と成長したものである
弟、妹はまともに餌なんか食べないクセに随分と偉そうな態度であった。誰に教わったわけでもなく、人間が自分達の言葉を理解出来ないことをわかってきたようだ
“言い得”であればとにかく叫んでみる、というのはこのタブ舎のタブンネ達によく見られる傾向である。きっとロクな死に方できないだろう

ママ「ミィ....」

いち早く勢いを失ったのはママンネであった。4ベビの後ろ姿を見ると、シュンと両耳が垂れ下がった
ママが4ベビの並んだ立ち姿を見るのは何気に久々のことであった。それだけストール内で生きる母タブンネは視野すら不自由なのである

4ベビの体躯は一番大きい長女ンネと小さい妹ンネを比べれば10cm違う程の差が生まれていた
ハイブリッド給餌が開始されたのはほんの3日前なのだが、ほぼ2匹分の飼料を口にしていた長女次女はみるみる成長し、タブバラ肉も詰まっているし、タブロースもガッチリとしていた。

ママンネの心配は大きい子にも小さい子にも注がれた

成長が早過ぎればそれだけ出荷も早くなるし、今の段階で餌の食いが悪ければ雑居房で淘汰される可能性がかなり高くなる。今は綺麗な状態で飼料を与えられているが、雑居房では床にばら撒かれる為、砂利や糞混じりのモノを口にしなければならないのだ

これまでだってずっとそうだったのだが、ママンネの望みは同時に生まれた兄姉弟妹にできるだけ長く一緒に居させて上げることである。気の毒にもこの時ママンネが抱いた不安はおよそ実現されることになる

力ないサファイアブルーで4ベビの後ろ姿を見つめるママンネ。この4匹はみな綺麗好き(?)で、決まった場所で排泄を行う子たちであったが、それでも所々にウンコ色が癒着し、元々そんな模様であるかの様なブチ柄が出来上がっていた

ショッキングな出来事が色々起こる度に脱糞していた為であろう、ママンネストールの両脇や、囲いの随所に軟便跡が付着している。授乳スペースの清掃は稼働中には行われないのだ

546タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/12(月) 23:20:41 ID:IxTHbfYs0

係の者は一通りの給餌を終えると、一度事務所へ寄ってから3番授乳スペースへとまい戻って来た。

飼「なんだ?お前らエサ好きなのか?そこ居られたら箱入れれねえだろうが!」

ドサッ!ポヨンッ!ポテッ!ドカッ!

「ミ゛!」「いチィ!」「チギャッ」「ミゴッ」

若く、ガタイの良い飼育員は前面に張り付く4ベビの首根っこを引っ掴むと次々囲いの中へブン投げていった
ベビとはいえそこそこ重いタブンネ達を片手投げするとは相当なパワーである

余談だがここの従業員は常勤が全部で10名居て、今回の人物はこれまでどこかで登場している
おそらく一番力のある男で、作業時に格闘ポケモンの手を借ることが少なく、過去に雑居房で喧嘩ンネを仲裁し、一撃で蹴り殺した実績がある
タブンネに人間への恐怖心を植え付けるのにひと役買っている人物であった。今後も登場するかどうかはわからない

その飼育員はママンネの餌箱に飼料を入れ水を注ぐと、ベビ達の餌も少し多めに与える。

4ベビはぶつけた腹や尻をさすりながら餌箱に擦り寄るが、手をつけずに立ち竦んだ。いつもさっさと去っていくのだが、ガタイ飼育員が囲いの前にしゃがみ、柵越しにジーっとベビ達を見つめている
先程のパワーを見せられ本能的な恐怖を感じたのだろうか、弟妹はピチャピチャと放尿してしまう。妹ンネはウンチのおまけ付きであった

長「ミ...ミィッ!いつまでそこに居るの⁉︎コッチ見ないでよ!」
次「ミ、、そうだミィ!あっち行けミィ!」

恐る恐る長女ンネ次女ンネは人間を威嚇したが、飼育員はガン無視して視線を浴びせ続ける。弟ンネ妹ンネは抱き合ってプルプル震え、人間を見ないようにキョロキョロと顔を動かしている

547タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/12(月) 23:23:15 ID:IxTHbfYs0
しばらくして長女次女は泣く泣く餌箱に手を伸ばしたが、ちびちびと手につけて口に運ぶような細い食であった
弟妹は身体の震えが止まらず、餌箱に向かうことができずママに擦り寄った
4ベビ共囲い前の人間に相当な威圧感を受けたようだ

弟「ママ、おねがいミチィ。まだゴハンたべてないけど、おっぱいちょうだい」
妹「アイツこわいチィ。おねがい、ママ」

ママ「ミ..!?..ミィ。おいで...」

物思いに耽っていたママンネは呆けた返事をすると、いつものように授乳姿勢を取った
弟妹は嬉しそうなチィチィ声を漏らし、乳首に吸い付かんとした時、こわいニンゲンが動き出した

飼「やっぱそうか、チビ2匹喰ってねえんだな。オマエら!エサ食わなきゃデカくなれねえぞ!ちゃんと親離れしろ!」

「チィィーッ!」「ヒギィー⁉︎」

飼育員はピョンと囲いに飛び入ると、弟ンネ妹ンネの首根っこを引っ掴んで餌箱の前にドサリと投げ下ろした
2匹は飼育員の大声と突然の感覚に驚き、せっかく落ち着いた震えがまた復活し、抱き合いながら人間を見上げる
飼育員は別に怒鳴った訳ではないのだが、素の地声のデカい人物であった。また被捕食ポケモンにとって身体が宙に浮くという感覚は本能的にかなり恐怖を感じるようで、耳の良過ぎるタブンネには二重苦の効果があった

ママ「ミ...お兄ちゃん、妹ンネちゃん、落ち着いてミィ。ゴハン食べてミィ。ふたりともゴハン食べないと、ソイツ居なくならないミィ。もっと虐められるかも知れないミィ!」

人間の行動にハッと我に還ったママンネが2匹に説き聞かせる
飼育員は再び囲いを跨ぐと、外からジーッとベビ達へ視線を浴びせる

人間の意図はママンネにも何となく理解することができた。ベビ達の体格差を見て、小さい子に離乳を促しているのだ
口惜しいと言うのか虚しいと言うのか
ママンネの心配は飼育員の意図と合致していた。雑居房、というか生涯でここのタブンネが口にできるのはこの飼料だけなのだ

先程の衝撃の為か強そうな人間に見られている恐怖の為か、いつまでも抱き合い震えて立ち竦む弟妹を見かねてママンネはスクッと起き上がり、自分の餌箱の飼料をモシャモシャと食い始めた

ママ「ほら見てミィ!お兄ちゃん、妹ンネちゃん!ママもね、小さい頃はニガテだったミィけど、なれてきたらこのゴハンもけっこう美味しいミィのよ♪」

何とも大根演技だが、ママンネは精一杯の笑顔を浮かべ2匹を促す。その目尻は薄っすら光っていた。ママンネにしても決して共喰いを望んでいる訳ではない

妹「チ...ほんとチィ...?」
弟「妹ンネ、ボクたちもたべようミチィ...」

漸く2匹は長女次女に割り入るようにして飼料に手をつけ、ちびちびと飼料を食べ始める

見つめ飼育員は一瞬ピクッと眉間を動かしたが表情も視線も変えない

・・・
(長「ニンゲン居なくならないミィ。ふたりとも、顔つけて食べるミィ...!」)
(次「フリでもいいミィ。ミィとお姉ちゃんで食べるミィから!」)
(妹「ケホッケホッ...やっぱおいしくないミチィ...」)

ママンネのアシストもあって人間の意図を読み取ったのか、ヒソヒソとタブ知恵ベビ達の作戦会議が始まった。声を潜める意味あるのだろうか

——

飼「小せえのそれ本当に喰ってたか?まあいいや。やっぱ3番は良いママさんだな!何言ってたかオレには大体わかるぜ!」

4ベビ地獄の食い作務続けること約7分
飼料箱がほぼ空になった所でやっとこわいニンゲンが立ち上がり、スタスタその場を去っていった

弟ンネはだいぶマシな食いになったが、妹ンネにはまるで人間の幼児がお母さんに無理矢理ピーマン食べさせられる時みたいな拷問の時間であった

548タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/13(火) 19:59:09 ID:hxNrIOLE0

妹「チゲホチゲホッ!ママ、どうしてきらいなゴハン食べなきゃいけないチ?ずっとママといっしょに居れないチィ?」

食べるフリのつもりだったもののそれでも頑張って餌箱に顔を埋め続けた妹ンネがグズる。鼻から下が粉餌にまみれた間抜けヅラが可愛らしい

ママ「妹ンネちゃん、よく頑張ったミィ!これからずうっとゴハン食べなきゃいけないミィけど、きっと慣れるミィ」

ママは励ましのつもりで言ったのだが、妹ンネには絶望的な言葉で、目に涙が浮かんでいる

ママ「さあみんな、キレイキレイしたげるミィから、ひとりずつコッチ来てミ。長女ンネちゃんから...」

次「ミィ?」
弟「ボクたちママのおかげでしっぽふかふかミィよ⁉︎」

ママがベビをストール前へ呼ぶ。この給餌の直前までにみんな毛繕いが済んでいたのでベビ達は怪訝な顔を浮かべたが、ママの声色と顔つきが真剣だったので指名を受けた長女が身を屈めてストール前へ座り入る

ママ「ミィ...長女お姉ちゃんはホントに大きくなったミィね!あまり動かミィで...」

ママンネは膝を着き四つ這いになってストール柵から精一杯口元を突き出すと、ベロベロとその身体を舐め回した

フミィ〜、フミィ〜ン。こそばゆい感覚に長女ンネは気持ち良さそうに間の抜けた声を漏らす。一瞬?顔を浮かべた残り3ベビであったが、長女ンネの様子を羨ましがり、ミィチィ鳴きながら近くに陣取る

ママンネの意図はベビ達の体毛体皮に癒着するウンチ柄を舐め落とすことであった。今までこんなことはしたことないのだが、先程4ベビの汚れた後ろ姿を見た時に思い立ったのだ
このタブ舎の衛生環境上タブンネと糞尿は蜜月な関係性と言えるのだが、本来の状態にしてあげることでこの世界に抵抗したいし、何より子供達を不憫に想う気持ちがあった

ママンネの膝下は積年のストール生活で褥瘡ができ、両脚にかなりの負荷がかかったし、ベビ達の糞尿跡は頑固にこびりついているので相当難儀な作業であったが、ママンネは乾いたタブタンでの愛撫と不揃いな歯での甘噛みで必死にウンコと闘い続ける

長女ンネの嬌声も相まり、ママンネの体勢はまるで人間の女性がフェラチオを行っているような卑猥な光景に見える

ママ「お姉ちゃん、コッチ向いて。アンヨが一番汚れてるミィ...」

ママンネは短い腕を懸命に柵下から伸ばし長女ンネの体位を変える

長「ミヒィ〜ン。ミフンミフンッ。ママイヤァ!
くしゅぐったいミィ~」

ママンネは長女の足裏に口をつける。砂埃や癒着ウンチのせいで肉球が全く見えなかった

妹「チィーッ!長女お姉ちゃんばっかズルいチィ!」
弟「ママボクたちにもキレイキレイしてくれるミィ?」

待ち兼ねた3ベビがストール越しに手を伸ばしてママンネの背中をチョコチョコ掻きだした。いよいよマニアックな変態ビデオみたいな構図になってきたが、演者がやつれたタブンネと汚いベビンネなのでかなり気色悪い

——

次「ミィッ!お姉ちゃんがピカピカになったミィ!」
妹「ほんとチィッ!タブンネさんじゃないみたいチィ!ママしゅごい!チィもチィも!」

ママ「ハァッ..ハァッ...ミんな順番ミィ。次は次女ンネちゃん...」

ママンネが懸命にタブチオを続けることおよそ20分。漸く長女ンネのウンチが綺麗に落ち去った。ママンネは残しておいた水箱に口をつけ、渇き切ったタブタンを潤す。ママの口周りはウンコの泥棒髭が出来上がったようになっている

妹ンネの言葉が何気に残酷で、ママンネのサファイアブルーがウルウルと湿りだす
こんな所で生まれたが為に、ウンチ柄のついた姿が本当のタブンネさんだと思っているようだ
本当のタブンネさんは綺麗なピンクチョッキ柄なのに...

ミッ! カッと目を閉じ、溜まった涙を弾き飛ばすママンネ。何とか、今一瞬だけでも綺麗にしてあげようと今一度気合いを入れた

——

ママ「ハァッ..ハァッ!...ミフッ!ミガフッ!...待たせてごめんミィ!妹ンネちゃんの番だミ。コッチ来てミィ...」

妹「チミィ〜??チュイ〜〜...」

タブチオによるウンコ掃除を開始してから1時間強、やっと上3匹の分が終わり、ママンネは妹ンネを呼びつける

グズり続けていた妹はいつの間にか寝てしまったようで、目を擦りながら間の抜けた声を上げる
ママの愛撫を受け終えた3匹は嬉しさよりも、ママへの心配がまさっている様子であった。タンを酷使し続けたママンネは口元の締まりが完全に無くなり、弱った膝下が痙攣している
それでも1時間以上フェラチオを続けられるとは中々のスタミナである。どこかの監督の目に止まれば女優に転職できるかも知れない

549タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/13(火) 20:02:59 ID:hxNrIOLE0

ママの愛撫を受け始めた妹ンネ
最初こそは耳をパタパタ動かして喜んだが、向き合う形になると顔を顰めだし、遂には不快さを漏らし始める

妹「ママもーいいチィ!ママのおクチくさいんだもん!チィこのままでいいチィッ!」

ママンネにとって痛烈な一言であったが、妹の言うように3匹分の糞を舐めとった口内は激臭なんてものではなかった。ただでさえママは口内が荒れ果てていて獣臭を通り越した異臭を普段から放っている。上3匹が喚かなかったのは生まれた時からのママの匂いに慣れているからだろう
妹ンネはよく言えば天真爛漫で素直。悪い面では幼児特有の残酷さがあった

ママ「ミィ...ン。ミグッ...ミン...」

泣きそうになるママ。諸々の事情で自分の口内が腐敗し臭いことは十分知っている。それをハッキリ指摘されたことは彼女のプライドを大いに傷つけた
しかし幼い娘に泣き顔を見せぬよう必死に涙を堪え、懸命な愛撫を続けた。

——

長らく続けられたママのタブチオがやっと終わり、4匹のベビンネは生まれた日以来のピンクチョッキ模様を取り戻した

わがまま言っていた妹ンネもなんやかんや嬉しそうで、姉兄とお互いの身体を見せっこしている

達成感と子供達の様子にママンネの目にも嬉し涙が浮かぶ。言ってもベビ達の毛並みは綺麗なんて表現すればトレーナーやブリーダーに笑われるレベルだし畜生臭さは酷いものなのだが、それでも3番授乳スペースは幸せ一杯のひと時を過ごしていた

——

やがて夕夜分の給餌が行われた。
昼と違ってニンゲンの監視の無いことに弟妹は最初大喜びであったが、ママンネの指示により4匹で等分を食べさせられた

妹「ママなんでニンゲンのミカタするチィ?チィゴハンたべたくないのに...!」

なんやかんやで飼料を平らげたベビ達。昼の訓練が効いたのか弟ンネは割とすんなり食べ、妹ンネはだいぶ苦戦したがみんなの励ましで倍の時間をかけてなんとか流し込んだ
給餌の後は4匹仲良くママンネミルクを堪能した

——

夕食も済んで暫く、外はすっかり闇に沈み、3番親子は眠りに就こうとしていた
ストール内でママンネが寝て、左側に長女と妹、右側に次女と弟
4ベビは精一杯ストールに寄っているが鉄柵のため身を寄せ合っているとは言い難く、みな辛うじて身体の一部がママに触れているという状態だった

給餌の傾向からママンネは今日がこの子達と過ごせる最後の夜だとなんとなくわかっていて、瞳を閉じることなくベビ達の体温に全神経を集中していた

次「ママ。なんだか眠れないミィ...」
弟「ボクも...」
長「ねえママ。本当にもうすぐお別れするミィ?」

ママの感情が伝わってか否か。いつもならとっくに寝息を立てているベビ達が次々に話し出す

妹「チィもねむれない。ねえママ、“たぶんねムカシバナシ”して...」

ママ「ミフフ。妹ンネちゃんはホントに甘えんぼさんミィね。むかーしむかしのことだミィ。ある草むらに、ババアタブンネとジジイタブンネが住んで居ましたミィ。ジジイタブンネは山へオボンを採りに、ババアタブンネは川へコイキングをいじめに......

...チビィ~...チヒ~...ミヒュー....ミヒュー.....ミィャー....ミゥミゥ....

ママ(ミフフ、みんな寝ちゃったミィ。本当に可愛い寝息ミィ...!どうかみんな、ずっと仲良くネ!...ウトウト......ミィ。ミィもなんだかねむく....きょうは....つかれ....ミ...ィ...)

最後の夜はどんどん深くなっていく...

550名無しさん:2021/04/14(水) 07:25:50 ID:Rh91.kRA0
ブタ屋さん動画とかでも
持ち上げられた子ブタが特に痛くなくてもピーピー喚くのは
宙に浮くのが嫌なだけだって聞いたことあるな
4ベビもこれから離乳部屋か
幼稚園バスなんて呼ばれてる台車で優しく移動させて貰える訳はないと思えよw

551タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/17(土) 07:54:07 ID:aGR0RnTI0

4ベビ生後21日目

孵化からたった3週間にして様々な場面に遭遇してきた4ベビ。この日はいよいよ離乳の最終章、母タブンネの移動が行われる

ママ「ブヒンブヒン......ごめんミィ。ごめんミィ。可愛いチビちゃん達...ナムアミタブツ...ナムアミタブツ...

長「ママどうしたミィ⁉︎しっかりして!」
次「ママ起きて!ミィ達もうゴハン食べ終わったミィよ!」

ママ「....ミグッ...ミミ⁉︎....ミハッ⁉︎..あ..ミォォン!ベビちゃん達!ミィーい゛ンミンミン...!」

朝の給餌が行われて暫く経ってもいつまでも寝たままで、変な寝言を垂れていたママンネ。ベビ達の声で間抜けな第一声と共に目覚め、辺りをキョロキョロ眺めると我に還り、みっともなくタブ泣きする

昨日酷使したせいかママの唇はメスのソーナンスさながらに腫れあがり、目尻には何故か涙跡がついている

弟「ミィ⁉︎ママ、だいじょぶミィ...?」
妹「ママねぼすけさんミチィ!ママ見て!ミィ、ママに言われなくてもちゃんとゴハン食べたミチィよ!ミッヘン!」

上3匹はママのおかしな挙動を心配したが、自発的に飼料を平らげた妹ンネは自慢を言い聞かせる
明るいこの娘がある意味一番タブンネらしいのかもしれない
昨日頑張って飼料を食べた為か、この一晩でひと回り大きくなったように見える。タブンネにとってもタブンネは高栄養食品なのだ。適食であるかどうかは別だが

寝起きの朧なサファイアブルーでぼんやりベビ達を眺めるママンネ
昨日の苦労も虚しく、各個体毛には真新しいウンチ柄が付着している。寝床自体が汚ければ当然の結果である

・・

ママ「...ミィッ!たいへんミィ!みんな来てミ!ママのおっぱい飲んでミィ!」

ママは空になったベビ達の餌入れ、盛られたままの自分の餌入れを一瞥すると、慌てた様子で授乳姿勢を取る
ママンネ視点、ベビ達の奥ではお隣の2番ママさんが涅槃像みたいな体勢でちびちびと水箱に舌を伸ばしていた。昨日より腹が大きくなっているように見えた

——

授乳を始めて30分後、飼育員2人がダゲキを引き連れて3番授乳スペースまでやって来た

この時4ベビはまだ乳首に張りついたまま
あと何回飲めるかわからぬミルクを味わいたい意思があったこと、その裏腹、出が悪くて中々満足できなかったことでいつもより長く吸い付いていた。妹ンネに至っては乳首を口に含んだまま寝てしまっている

ママ「ミミィ〜...!ダゲキ!待ってミィッ!せめてもう少しだけ!お願いミィ!お願いミィ...

飼A「おっ、最後のおっぱいタイムだったか?おつかれ!ママちゃん!今回はすぐ王子様とイチャイチャできっからな」

ママの懇願など認められる筈もなく、飼育員はストール、囲い両方の檻を開放していく

始めて自分達のおウチのトビラが開けられたこと、触覚から伝わるママの切実な感情と始めて間近まで来たダゲキ、あらゆる事象に上3匹はパニックと恐怖でオロオロと動き、割と落ち着いた性格だった長女ンネを含み皆ボトボトビチャビチャと脱糞尿してしまった
妹ンネは一足遅れて目を覚まし、ムニャムニャ口を鳴らしながら目を擦っている

飼B「あれ、朝飯食わんかったのか?まあもうお乳も出さなくていいし、3ママもダイエットかな?」

飼育員がママンネ用餌箱を掴むと、残った飼料を雑居房へぶち撒ける。気づいた雑居チビンネ達がミィミィ群がってきた

飼A「おい、てか3ってこんな汚かったか⁉︎なんか脇腹も破けてるし、唇まで腫れてない?」

飼B「3も次あたりで御免かな〜。でもチビ達いつになくデカくない?よくおっぱい出たなお前。偉いぞ〜」

飼育員は口調こそ穏やかだが動作は乱暴極まりなく、片方が脱臼せんほどママの両腕を引っ張り、もう片方はストール後部に入り込んで尻尾を掴み上げてドカドカとタブケツを蹴飛ばしている
ダゲキは囲いの外からベビ達に睨みを利かせて佇んでいる

ママ「ミィッ!お願いですミィお願いですミィ!どうかっ!どうか最後に一度だけっ!子供達を抱かせてくれませんかミィ⁉︎後生でございミィ〜!」

「ママ!」「ママ〜ッ!」「ミヤァ〜ン!」

ママは抵抗しているわけではないのだが、脚に力が入らず中々人間の思い通りに立ち上がらない。恐怖もあるし、昨日の疲れで体力的にかなりのキツさがあった。ベビに習いウンチも漏らしている

いつになく人間を怯え怖がっているママの様子は次々ベビ達に伝播し、上3匹は大きくプルプルと震え泣き叫んでいる。足元が凄く汚い
リアクションがワンテンポ遅れる妹ンネは目をまん丸くしてママとニンゲンを見つめて口をあんぐり開けている

552タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/17(土) 07:58:46 ID:aGR0RnTI0

飼A「なんかいつになく反抗的だな。オラ立てよ!」
飼B「遅れてきた反抗期か?ホラ歩けっ!子供と離れたくないってか?オマエはもう慣れっこだろうが!」

ママ「ブギィーーッ!ミギャッ!ミヒンガァーッ!従いますミィ!従いますミィッ!だからおねがい蹴らミィで!引っ張らミィでっ!ブヒィ〜ン!コワイミィ〜!マ、ママァーッ!」

人間は別に怒っているという程ではないのだが、口調も動作も強さを増していく
引っ張られるママンネの腕はビリビリと毛皮が破れ落ち、インステップキックを喰らい続けるオシリは真っ赤な靴跡がついている
それはベビ達が悲しみと恐怖に支配されるに十二分な光景であった

ようやっとママンネが震える足腰を何とか立たせ、歩き出してストールから出ようとした時、意外にも勇み出したのは一番幼さの残る妹ンネであった

妹「ミ...ミギィーーッ!ミィのママに乱暴するなミチィーッ!ママをつれてかないでっ!ミィのママを放せミチィ!」

精一杯怖い顔をして怖い声を発すると、ポヨンポヨンと引っ張り飼育員の身体を目掛け体当たりを繰り返す
戯れてるようでとてもかわいい

次「ミ、ミィーッ!ママを放せミィ!ヤメろミィッ!」
長「どこまでタブンネさんをイジメるミィ!ママを放すミィッ!くたばれミィーッ!」

ワンフレーズ遅れて3ベビも妹ンネに追随しだし、長女は妹に加勢、次女弟は蹴りつけ飼育員をストール越しにペチペチ叩き出した

ダゲキ「セアァッ!」

ゴッ!ゴッ!ドサッ!ポヨッ!
「ミボッ!」「ミグッ」「ミガッ!」「ミベシ!」

4ベビの行動を見てここまで静かだったダゲキが動き出す。首根っこを引っ掴むと囲いの側柵に向けて次々投げ飛ばしていく
ベビ達がぶつかる度お隣の2ママはビクンビクン体を震わせ目を見開いた。恐怖や同情という訳では無かろうが、やはり耳は良いようで衝撃音には反応するようだ

飼育員はベビ達の攻撃なんて屁でもなかったので、ダゲキの行為は完全なる過剰防衛である
そもそもダゲキを連れてきたのは防衛用よりも、移動作業中にベビ達の雑居房への逃げ出しを阻止する目的である
ダゲキが動き出しても尚、2名の飼育員はそちらを気にも留めない

——

ここの従業ポケ達の“タブンネ観“には少し個ポケ差がある

ローブシン、シャワーズはタブンネが大嫌い
クワガノン、マリルリ、ズルズキンはタブンネが大好きで(愉快なオモチャとして)、嘗てはローブシンもこの括りであったが、いじめ過ぎて人間に何度も怒られた為心底嫌うようになった

そのいずれにも該当しないのがダゲキとフタチマルである。彼らは人間への忠誠の強い真面目な性格で、ただただ人間の意図通りに動き、おそらくタブンネをポケモンとしてすら認識していない。ただの“商品”だと思っている

特にダゲキは人間からの信頼が厚い。彼はタブンネの“耐久ライン”というものを人間以上に正確に見極めることができて、今回4ベビを叩きつけた際も骨や臓器を傷つけず、嘔吐すらさせない中で最大限ダメージを与えられる絶妙な威力で危害を加えている

553タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/17(土) 08:02:41 ID:aGR0RnTI0

妹「チグッ...ミヂィーッ!ママをがえせっ!ミィたちのママをっ!...ミギヤァッ!」ゴガッ!

弟「ブボッ..ママ!マ゛マ゛ッ!行かないで!
ヂギッ...」ドスッ   ・・・・・

傷む身体がフラつきながらも、何とかヒョコヒョコと人間に向かって行き、またダゲキに投げられ腹パンされを繰り返すベビンネ達

重症とまではいかないまでも、身体のあちこちには青赤痣ができ始める。昨日せっかく取り戻したピンクチョッキ模様は二重の意味で失われてしまった

ママ「ベビたちっ!もう立たないで!もうヤメでっ!ニンゲンには敵わないミィッ!いいミ゛ィ?ミィのベビたち!!“タブンネさんの誇り”を忘れミィでっ!みんなで助け合って生きるミィ!ママはお引っ越しするだけミィ!みんなを見守り....ミグハァッ!もう蹴らないで下さいミィ!おてて引っ張らミィで!ミィァァァンミィミィ...!」

ベビ達の殴られ音と悲鳴を聞いて少し冷静さを取り戻したママンネ。必死に子供達を諭したが、人間に引かれ蹴られをされると再びみっともなく泣き散らし、どんどんと雑居房を進まされていく。

母タブが一定の距離まで離れたところでダゲキが最後に足払いでベビ達をすっ転ばせると、囲いの錠をしてスタスタと飼育員の後を追っていく

次「ミグンミグン...ママ!ママァーーッ゛!」
弟「どうして!ママ〜ッ!ざみじぃミィーッ!」
・・・

囲いの前面にしがみつき、離れていくママの背中を目で追いながら喚き散らす4ベビ。やがて雑居チビがブラインドになってしまい、その姿は完全に見えなくなってしまった

ママ「ミギー⁉︎マリルリ....ミ゛ィーッ!強いミィ強いミィ!ミギャーーーッ⁉︎あづミィ!熱いミィ!ヤメっ!ミア゛ア゛ァァァッ....」

飼「おい、マリルリ熱湯打ってねえか?ただの水鉄砲でいいんだぞ!ババアなんだから優しく...

リルリルー♪   .........

姿が見えなくなって尚、ママンネの叫びは3番囲いまで響き渡ってきた。ママの叫声に混じった楽しそうな他ポケの声に気づく余裕はなかったろう
4ベビはメソメソミィミィと柵にしがみつき、やがて力なく膝から崩れた

ママンネのリアクションが大きいせいで雑居房にはタブ集りができている。嫌がっているように見えて実は目立ちたがり屋さんなのかも知れない

——

ミズン...ミィミン....ミスッ.....ミィ~ン...........

いつまでもヘタリ混む4ベビ
誰が何か声を発する訳でもなし、やがて与えられた昼の飼料にも全く手をつけなかった

——

ママが移動されて何時間後であろうか。今度膠着を破る口火を切ったのは一番良いサイズの長女ンネであった

長「ミ゛ィッ!グミミィ〜!このハコがっ!こんなハコがいけないんだミィッ!」

徐に立ち上がると、もぬけの殻となったママンネのストールに向けて歯茎を剥き出し、渾身の力でペシペシと鉄柵をはたきだした

妹「ミ...ミィッ!そうだミチィそうだミチィ!」
次「どこまでタブンネさんをバカにするミギィ!」
弟「ニンゲン嫌いミィ!いてミィいてミィ!」

呼応するように姉に続く下3ベビ。なぜストールを攻撃するのか謎だが、凶悪な理不尽を叩きつけられ何処かに怒りをぶつけずにはいられなかったようだ

30分強それが続けられた頃、次第にベビ達の各手が止まり、目に涙を溜めながらミフゥミフゥ肩で息をしている。何度も硬い檻を叩いたせいで両手両腕が腫れて、蹄に血が滲んでいる

妹「ミ...ミァアああああん!ママぁ〜っ!」
弟「ミ゛ーーッ!ミ゛ーーッ!」
次「ミビェーーーーン!」

今度は妹ンネを皮切りに、みな汚い床に顔をつけ、精一杯ストール下に鼻を擦り寄せている。ママンネの残り香を嗅いでるようだ
ストールがキライなんだか好きなんだか

——

夜の給餌

飼「おう何だ何だ!昼飯食ってねえじゃんか。ママが居なくなって拗ねたか?ちゃんと食えよ〜、さもねえと明日出荷しちまうぞ〜」

係の飼育員は残った餌箱を見ると、一声かけてスタスタ去っていく

長「ミグッ...ミグッ...みんな、ゴハン食べようミィ。妹ンネも...ちゃんとみんなで分けよう...」

人間の言葉の意味がわかった訳ではないが、長女ンネの号令で皆ちびちびと昼飯の残りを食べ始めた
4匹とも悲しみよりも、空腹の限界に気づいたのだ。所詮タブンネは獣である

舎屋内も暗くなり始めて人間も4ベビも気づかなかったが、お隣の2ママの股下にはコロリと大きなタマゴが1つ転がっていた
タブンネのそれとは思えない、ゴンベやチゴラスの入ってそうな大きさであった

夕飯が済むと4ベビはシクシクと眠りに就く
みんなで固まらず、何故か空のストールを挟む昨日までと同じ陣形であった

———

ベビンネ章終わり

雑居、チビンネ章へ続く

554タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/19(月) 22:33:51 ID:Wug.drIY0

はじめましてミィ

ミィはタブンネ。
沢山のタブンネさん達が暮らす、広いおウチでこの世に生を受けましたミィ

沢山タブンネさんが居ると聞くと、とっても楽しそうだと思うでしょ?とんでもミィ。

広いおウチと言っても、ミィは“すとおる”っていう狭い箱の中にいつしか閉じ込められて、2つのすとおるを行ったり来たりしてずうっと過ごしていますミィ

仲良くなったタブンネさん、ミィのお兄ちゃんや弟や妹は、ミィんな“しゅっか”って言って、”とらっく“って言うニンゲンの乗り物に乗せられて、どこかへ連れ去られて行きましたミィ

ミィ、いっぱいニンゲンの言葉知ってるでしょ?
ニンゲンどもが思ってる以上に、ミィ達タブンネさんはとっても賢いポケモンなんだミィ

他にも沢山言葉知ってるミィ。たとえば
『しょぶん』『たねつけ』『こやしたぶんね』
『にく』『みきさあ』『しね』『ころす』....
ニンゲンが使うのはコワイ言葉ばかりだミィ。もっと優しい言葉をかけてほしいものだミィ

・・・

モブタブンネさんA
「嫌だミィ!死にたくないミィ!」
モブさんB
「最後に、最後にもう一度だけママにあわせてミィ!お願いだミィーッ!」

今ミィの目の前では、何匹かのタブンネさんがニンゲンと手伝いポケどもに追われて捕まえられて、とらっくに詰め込まれていますミィ。
ここで生まれ育ったタブンネさんは、ある程度の大きさになるとああやってしゅっかされるのですミィ

何度も何度も見てきた光景ミィ
ミィはとらっくに乗ったことはありませんミィ。だからその後のことはわかりませんミが、どうやら殺されて、食べられてしまうらしいですミィ
ミィ達は殺される為に生まれてきたようなものですミィ

この世には釈迦もアルセウスもございまミィ...


....バリッ!.....ピキ.....ピキピキ!.......

ミミッ!たいへんミィ!ミィの後ろで、タマゴの割れる音がするミィ!
タマゴは高いトコロに置かれていて、そのまま孵ったらベビちゃん達がイタイイタイしちゃうんだミィ!

おーいニンゲン!早く来いミィッ!.....

555タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/19(月) 22:36:16 ID:Wug.drIY0

それからなんやかんやあって、ミィのベビちゃん達が無事タマゴから孵りましたミィ

ミィ達お母さんタブンネは自分でタマゴを温めることも、タマゴを見ることすらできませんミィ。それだけすとおるの中は不自由なのですミィ

しゅっかされたタブンネさん達は気の毒ミィけど、やっぱり自分のベビちゃん達は一番大切ミィ。

・・・

ミィは何度も何度も、ベビちゃん達を産んで、おっぱいをあげて沢山お話しを聞かせて育てて来ましたミィ

この子たちの前にタマゴを3つ産んだ時は、1つは産んですぐに割られて
ひとりはタマゴの中からトクントクンて聞こえていた音がどんどん小さくなって、やがて聞こえなくなって、やっぱりタマゴのまま割られてしまって
もうひとりは孵ってすぐにジメンに叩きつけられて殺されましたミィ

生まれてから殺された子は“きけい”とか言って、ミィは見ていないけどお顔からおててが生えている子だったそうですミィ。
少し不思議なカタチでもミィのベビちゃんはミィのベビちゃん、育ててあげることも、むくろを抱かせてもらうことすら叶いませんでしたミィ

チピィーーッ!ギギーー!グイッ....ピヒッ...チ....チィ~..ッ....
—イタイ!イタイよう!ママ!ママだっこ!
 イタイ!ママたしゅけて!どうし...て?.....ママ.....

きけいベビちゃんの悲痛な叫びを、ミィは今でもよく覚えていますミィ
せっかく頑張ってタマゴから出てきて、ママのおっぱいが欲しくて鳴いていたのに、突然現れたニンゲンの乱暴な手に掴まれて、何度も何度も硬い床に叩きつけられて....

・・・

かんしょうに浸って居る場合ではないミィよね

今生まれたベビちゃんは4匹。3匹がおんなのこで1匹がおとこのこ。
今みんなですとおるの中でミィのおっぱいを飲んで寝てしまいましたミィ

ミィ〜...。なんてカワイイお顔!なんてカワイイ寝息なのでしょミィ!
みなさん生まれたばかりの赤ちゃんタブンネを抱っこしたことありますミ?

タブンネの赤ちゃんはおけけが細くてピンク色のおはだが見えていて、ふんわりとあまい良い匂いがして....

ミフフ、この姿を見て、この匂いを嗅げるのはミィのようなお母さんタブンネ達の特権ミィ!
可愛いベビ耳に”たぐ“っていうニンゲンの悪趣味な耳飾りが付けられているのがタブに傷ミィけど。。

この子達もいつかはニンゲンに食べられて....

ミィッ!今からそんなこと考えちゃいけないミィよね。天使のようなミィのベビちゃん達。ずっと良い子にしていればきっと、いつかアルセウス様がこのおウチから連れ出してくれるはずミィ!

今まで生まれてきた子たちもミィんなミィんな可愛いタブンネさんだったミィけど....

556名無しさん:2021/04/19(月) 22:46:23 ID:Z03uXVq.0
>タブンネの赤ちゃんはおけけが細くてピンク色のおはだが見えていて、ふんわりとあまい良い匂いがして....

ほうほう美味そうですなあ
今すぐ小麦粉まぶして油の中にぶちこむか
夏なら身欠きタブンネに
冬なら凍みタブンネにしてやりたい

557名無しさん:2021/04/21(水) 12:10:52 ID:0NoiTfE.0
でもこの養豚場のタブンネは食べたくないなぁ
BIGやマックスバリューで売る用かな?
ママンネが愛情たっぷりに育てたチビンネちゃんがスライスされてグラム60円かそこらで叩き売られてしまう・・・
ああ〜無情だぜ

558タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/21(水) 16:17:18 ID:AOLr6E8c0

モブさん
「ブミヒヒィ〜〜。うまそうだブミィッ!目のあくまえが食べごろなんだブヒィ〜

ミィ
「ミガァアッ!こっち来るなミィ!ミィのベビちゃんに寄るなミィッ!」

ベビちゃんを見て、おソト(雑居房)に居たひとりのタブンネさんが涎を垂らしながらオゲレツな台詞を吐きましたミィ

彼はおそらくベビちゃんを食べる気だったミィ。この囲いの柵は大きいタブンネさんなら越えられるくらいの高さなのですミィ
彼のようなタブンネさんをニンゲンは”べびんねはんたあ“などと呼びますミィ

ミフゥッ。心優しいミィとしたことが、思わず大きい声を出してしまいミィ。
見ての通りミィは清く優しいタブンネさんミが、ベビちゃん達を守るためなら容赦しないんだミィ

今のモブさんのように、鼻の穴が大きくてちょっとオゲレツなタブンネさんが、このおウチには一定数居るんだミィ

ミィは決して、オゲレツなタブンネさんのことを忌み嫌ったりはしていませんミィ。
彼らは犠牲者なのですミィ。汚いお水、陽も差さない場所に閉じ込められ続ける毎日、いつか殺される恐怖、ウンチだらけのおウチ...

色んな要因を以ってして、あのようにオゲレツなタブンネさんへと進化してしまうのですミィ。
これはてきおうへんかと云いまして...

おっと、思わず生物学者のような説明を始めてしまいましたミィ。
ミィ達タブンネさんは、ニンゲンどもが思っている以上に賢いポケモンなんだミィ。前にも言ったミか?


はなしを現在に戻すミィ

ミィに触っついて寝息を立てるベビちゃん達。

ごめんミィ。ミィの可愛いベビちゃん達。すとおるの外側で寝てミィね。起こさないようにそおっとそおっと....

....フゥッ。何とかおソトに出せたミィ。
えっ?薄情な母親だと思いますミ?
これは仕方のないことなのですミィ。すとおるの中で過ごすクセがついてしまいミィと、あらゆる惨劇が常時起こり得るのですミィ

ミィの過去のベビちゃんには、すとおると床に挟まってしまった子、ミィの寝ている間にすとおるに入ってきて、ミィの寝返りによって踏み潰されてしまった子、ミィのウンチをダイレクトにお顔で受け止めた子、色々おりましたミィ。

このおウチの各囲いを隈なく見てみて欲しいミィ。きっとどこかに、挟まりベビちゃんやペシャンコベビちゃんが居ますミィ。大体2日に1匹くらいのわりあいですとおる事故が起こりますミィ

ミィはすとおるが嫌いミィ。せめてベビちゃん達にお乳をあげる間だけでも、すとおるから出して欲しいものだミィ。
ミィを閉じ込めなくても、ベビちゃん達を置いてミィだけお外に逃げ出したりしないのミ....

559名無しさん:2021/04/22(木) 00:04:30 ID:bvq9sqkw0
寝返りで子豚を潰してしまうのは中々リアルですねぇ
共食いモブンネは中々いいキャラしてるけどこの後あっけなく死んでしまうのがタブの哀れさですな

560タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/23(金) 19:38:23 ID:B3CCVcgE0

4匹のベビちゃんが生まれて丸一日が経ちましたミィ

生まれたてベビちゃんと過ごせて幸せ一杯だと思うでしょうミか?

そうでもありませんミィ

げんじつとは残酷なものですミィ

たったの一日で、昨日までの甘い匂いは消え、ベビちゃん達はこのおウチ特有の、糞尿臭や排ガス臭に染まってしまいましたミィ
もっと空気も床も綺麗な所で子育てさせて欲しいものだミィ...


ミィには今、2つの心配ごとがありますミィ

「ヂッ...ヂィッ..」「ヂィ...ヂビッ!...ヂー」
—クチャイ...クチャイよう...
—うるちゃい...コワイ...コワイ...

ミィの横で、仲良くおしくらまんじゅう眠るベビちゃん達。
お姉ちゃん2匹はスヤスヤ眠っておりますミが、下の子2匹は一晩中苦しそうに鳴いておりましたミィ

まだその鳴き声はタブンネさんのコトバになっていませんミが、下の子達の思っていることはミィにはよくわかりますミィ。
ミィ達タブンネさんのお耳はとっても高度なのですミィ

だから街中や草むらで、タブンネさんの触覚を引きちぎって遊んでいる悪ガキを見つけたら、皆さん是非注意するようにして下さいミィ。
まったくニンゲンの子供はとんでもミィ...


モブタブンネくんA
「ブミヒヒヒ!ウンコ合戦しようミィ!」
モブくんB
「ミィーッ!ミィのはホカホカウンコミィ!
 ミガッ⁉︎潰しちゃったミィ...」
モブちゃんC
「ミィーッ!きたないミチィきたないミチィ!
 ウンチ投げちゃイヤー!」
モブちゃんD
「ここはミィのなわばりミィ!あっちいくミィ!」
モブくんE
「なんだとミィ!土地の権利書でも持ってるミか⁉︎生意気ミィ!くらえ!乾燥ウンコミィ!」

・・・とんでもないのはニンゲンの子供だけではないかもしれないミィ
今ミィの目の前では、おソト(雑居房)で沢山の子タブンネちゃんが騒いでいますミィ
一度騒ぎが起きると中々鎮まらないのですミィ

それにしても作者はタブンネさんをウンコに結びつけるのがよっぽど好きだミィ...
昔、タブンネさんをボットン便所に突き落とすSSがあった気がするミィ。
個人的にあれはかなりの名作と言え....

—⁉︎ハッ⁉︎ ミィは一体何を⁉︎

ミィの心配ごとを話すところだったミィね

ミィの心配は下の子2匹の様子だミィ。
タブンネさんは静かな場所、清潔な環境を好むポケモンであることは有名なはなしだミィ

下の子2匹は、このおウチの臭さや五月蠅さが辛いみたいだミィ。上の子はそうでも無いようでお母さんとしては安心ミが、下の子のリアクションの方がタブンネとして正しい気もするミィ...

匂いはどうしようもないミが、五月蝿いのはタブンネさんにとって本当に辛いことなのですミィ
このおウチが一度五月蝿くなると、屋根で反響して地獄のようになるのだミィ

このおウチのお母さんタブンネの中には、自らの手で触覚をちぎってしまったタブンネさんがなんにんか居りますミィ
五月蠅さにも耐えられないし、外敵もあまり来ないし、要は触覚なんて無くてもよいのですミィ。なんなら触覚の無い状態で生まれてきた子がミィのベビちゃんにも居ましたミィ
これはある意味適応変化ですミィ

561タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/23(金) 19:41:08 ID:B3CCVcgE0

皆さん何故タブンネさんに触覚がついているか知ってますミ?

『脚がおっそいから、遠くの音聴けないと肉食ポケに喰われるからでしょーwww』

とか言って、馬鹿にしないで頂きたいミィ
その通りですミィ。

いや、それだけではないのですミィ。
タブンネさんの触覚は相手の感情や体調を汲み取ったり、タマゴがいつ孵るかわかったりするのは有名なはなしだミィ

だからタブンネさんはその優しさで、他のポケモンさんやニンゲンさんのお役に立てるポケモンなんだミィ
それを食べちゃうだなんて言語道断ミィ

このおウチに外敵があまり来ないのはさっきも言いましたミィか

ここでは読み取れる感情もロクでもミィ
『コワイミィ』『腹減ったミィ』『死にたくミィ』『退屈ミィ』『どうせいつか死ぬミィ』『うるミィ』『クサイミィ』『死にたいミィ』

ニンゲンは
『美味そうだな』『早くデカくなれよ』『沢山産めよ』『良いタブ肉になれよ』
従業ポケどもは
『たぶんねってクサイ』『タブンネってウザイ』『タブンネおもしれ〜。もっと殴りて〜』

....なんだか辛くなってきたミィ

一体何のはなしだったミィか?

そうミィ、ミィの心配ごとミィ。

下の子たち、自分でお耳をちぎったりしてしまわないか心配だミィ
抱きあやしてあげたいミが、ミィの位置から短い腕が届かないミィ
ホントに地獄のような環境ミィ。
アルセウス様、なぜタブンネさんがこんな目に...


ミィの心配はもう一つありますミィ。

ミィのおっぱいのことですミィ

タマゴを産んでから、昨日ミルクをあげた時までパンパンに張っていたミィのおっぱいは完全に萎んでしまいましたミィ

初めてタマゴを産んだ時は、ベビちゃんとお別れしてしばらくしても張っていたのミ

だんだんと元気がなくなってきたミィ

いちおうさっきつねってみたらミルクが出てきたミィけど、ちゃんとベビちゃん達をおなかいっぱいにしてあげられるだろうミか...

どうかせめて、ベビちゃん達とお別れするまで出て欲しいミィ。ミルクのために、好きじゃないゴハンも残さず食べてるのだけれど...


...ミィのカラダ、よく見ると随分ボロボロになったものだミィ...

ミィのおっぱい、最初の子育てをした時は8コあったミィけど、ひとつ無くなっちゃったミィ。気づいたらこうなってましたミィ

残りの7コ全部使えたらいいミが、2つは腐ってしまったようで、絞ってみてもガマン汁みたいな苦い水が出てくるだけですミィ

アンヨも赤黒くて、毛並みも尻尾もボサボサ...

...ミィもきっと、もう若くはないんだミィ。
そういえばミィは自分がなんさいなのかもわかりませんミィ。

ベビちゃん達は大人になる前にいつもお別れだし、ママもしゅっかされたし勿論おばあちゃんも居ません

このおウチのお母さんタブンネさんはみんな同じでしょうミが、月齢感覚なんてあるはずもございまミィ...

562タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/26(月) 18:12:24 ID:S/S0DDzU0

そう言えばミィのママのことをおはなししていなかったミィね

ミィのママは、“ばあすでえたぶんね”っていう、特別なタブンネさんだったそうですミィ

ママと一緒に居たのはミィが生まれてから大きくなる前のみじかい間のことでよく覚えていまミィが、美しくとっても優しいタブンネさんでございましたミィ

ママは本当に特別でしたミィ
ミィがベビだったころ足をおケガした時、タブンネさんの魔法(普通の癒しの波動)を使って、ミィのおケガを治してくれましたミィ

ママは今でもミィの憧れミィ。ミィもタブンネさんの魔法、使えるようになりたいな...

ママはもの静かなタブンネさんでして、あまり沢山おはなしをしなかったミが、信じられないことに昔ニンゲンのおウチで暮らしていたそうですミィ

ニンゲンとの暮らしをママは詳しく教えてくれませんでしたが、ニンゲンは酷い生き物だと言っていましたミィ
ママのお腹や太ももには、タブ毛もよだつほどの傷がありましたミィ。きっとニンゲンにやられたんだミィ

ママは“たぶんねほごだんたい”って所に引っ越したあと、なんやかんやあってこのおウチに連れられて来たんだとか...
ほごだんたいはタブンネさんで飽和状態になったとか何とか。世の中には酷い目に遭うタブンネさんが沢山居るってママは言ってたミィ
どうしていつもタブンネさんだけが...

ママのお話はやめますミィ

涙が出てきたミィ

・・・


4匹のベビちゃんが生まれて数日が経ちましたミィ

え?◯◯日ってちゃんと教えてほしいって?

それは無理なお話だミィ。ミィにはせいぜい、昨日と今日と明日くらいしかモノ考えられないのですミィ
タブ脳とかバカンネとか言って馬鹿にするのはヤメテ下さいミィ...

ミィのベビちゃん達、まだコトバは可愛いチィチィって声で、アンヨもヨチヨチとしておりますミィ。
ミィんなおめめはパッチリと開いて、綺麗なタブンネブルーが覗いておりますミィ

ミィ〜、実に可愛い姿だミィ!

タブンネを食べちゃう全てのニンゲンにこの姿を見てほしいものだミィ。きっと考えを改めてくれるはずミィ

ミィが教えるまでもなく、ベビちゃん達はちゃんとミィのうしろでオシッコやウンチをしますミィ
やはりタブンネさんは綺麗好きミィ!

563名無しさん:2021/04/26(月) 18:51:24 ID:oRuhoY2E0
生まれて数日か…
ミルクしか飲んでない日齢のベビならやっぱ
タブンネそうめんかからしタブンネかなあ
地獄砂糖漬けとか焼いたら皮がクニクニ動く餃子も捨てがたい
ってママンネちゃんたらレシピに迷うような事言わないでよ

564タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/29(木) 21:55:01 ID:BxFgqx9U0

スクスクと育つミィのベビちゃん達

お母さんとして、本当はベビちゃんの成長ほど嬉しいことは無いのですミが、ミィはふくざつな気持ちミィ

スクスク育つってことは、それだけしゅっかまでの時間が進んでることだミィ。ミィの子育てがニンゲンをよろこばせているようで歯痒いミィ...

・・・この日は悲しいことがありましたミィ

すとおる事故を防ぐために、ベビちゃん達を押し返したらベビちゃんに嫌われてしまったミィ。どうしてこんな箱があるんでしょうミか...
ミィがベビちゃんをだっこできるのは、本当に本当にわずかな時間ミィ...
ごめんネ...ミィのベビちゃん達....

...それだけではございまミィ
おとこのこのベビちゃんが、ニンゲンにオマタを傷つけられてしまったミィ。今までのおとこのこも、ミィんな同じ目に遭わされてきましたミィ

なんでおとこのこだけこんな目に遭うのか最初はわかりませんでしたミが、今ではなんとなくわかりますミィ。

皆さん、大人の♂タブンネさんの後ろ姿を見た事がありますミ?ゆうてミィもあまり見たことありませんミが...

♂タブンネさんは、オマタの間からチェリンボみたいのがぶら下がっているのですミィ
どうやらチェリンボがないと“たねつけ”ができないみたいですミィ

ニンゲンや他のポケモンさんもたねつけをするのでしょうか?
たねつけはミィも何度もさせられてますミが、それはそれは苦痛極まりない時間で...

話が逸れがちで申し訳ミィ。
ミィのおとこのこベビちゃんが傷つけられるのは、チェリンボを取られているみたいですミィ。今思えばおとこのこベビちゃんはみんな大きくなってもチェリンボがありませんでしたミィ

どうしてそんなヒドイことを...
チェリンボがなければおとこのこは何の為に生まれて来たのか...

・・・・


また少し日付が進みましたミィ。

おマタを傷つけられた弟ンネちゃん、アンヨがまったくできなくなってしまいミィ
せっかく可愛いヨチヨチ歩きができるようになったところだったのミ....

でもお姉ちゃんふたりの力を借りて、毎日アンヨの練習をしていますミィ
女の子3匹は、みんな精一杯弟ンネちゃんを励ましていますミィ
なんて優しいタブンネさんなのでしょ!
さすがはミィのベビちゃんミィ!
そもそもおマタを傷つけられなければこんな努力は要らないのですミが....


ミィのベビちゃん達、みんなタブンネさんのコトバをお話できるようになって、ちょっとずつタブ格もこせいがでてきましたミィ

長女ンネちゃんは面倒見のいいしっかり者のお姉さん
次女ンネちゃんは大人しくて、優しいタブンネさん
弟ンネちゃん、おとこのこはこの子だけミィけど、他の子たちとも仲良しミィ。チェリンボさんが無いからなのかな...
妹ンネちゃんは一番甘えんぼさんで、明るくて愛嬌たっぷりミィ

ミィんな綺麗好きで優しくて、じつにタブンネさんらしいタブンネさんミィ!

どうかこの子たちに、たくさん幸せが訪れますようミ...

565名無しさん:2021/04/30(金) 16:31:54 ID:iLfY5NEs0
たねつけは苦痛なのか〜
その話も見てみたいですミイ

566名無しさん:2021/05/01(土) 09:55:23 ID:KkMawWC20
newポケスナのタブンネって最初の研究所?にしか出てこないの?

エアプだから誰か教えてくれ..

567名無しさん:2021/05/02(日) 19:10:50 ID:YBl6D4320
>>566
調べてみたらタブンネちゃんは「ベースキャンプ」に出るってさ
エアプどころか未プレイなもんでその研究所? の名前がベースキャンプなのかどうかもわからないけどw

568名無しさん:2021/05/03(月) 19:17:49 ID:nxYutlv60
>>567
ありがとう!
捕食は無理にしても竜族に追われるくらいの描写は見たかったなぁ...

569名無しさん:2021/05/04(火) 00:07:03 ID:Yp1YliDg0
工場による汚染とか悪い環境で狂ってしまったタブンネとか何か日野日出志作品のような情景がありますな

570タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/04(火) 19:32:13 ID:.pUx01Ko0

...また少しの日付が進みましたミィ

ベビちゃん達の幸せを願うミィですが、中々思い通りにはいかないミィ

こないだ、ベビちゃん達の初めてのオトモダチが、オゲレツなタブンネさんに殺されてしまいましたミィ

オトモダチは肥やしとなり、オゲレツな方はしゅっかされたミィ。
何もかもが地獄ミィ...

あれからベビちゃん達、すっかり元気が無かったミが、さっきミィにとって嬉しいことがありましたミィ。
4ママちゃんていう、ミィのオトモダチがお隣のおウチにやって来たのですミィ!

ミィは4ママちゃんがまだベビちゃんだった頃から知っていて、4ママちゃんのママ、4ババさんってタブンネさんともタブ見知りでございましたミィ

4ババさん.....懐かしいミィ。
今や4ママちゃんも、ママそっくりのべっぴんさんミィ!
それにしても大きなおなか...
どうか無事にタマゴを産んで欲しいミィ

—————

(ここからはミィの回想シーンミィ。どうか心して聴いて頂きたいミィ)

...それはミィが初めて“たねつけ”をさせられて、囲いつきのすとおるへブチ込まれた時だミィ

若かりしミィ
「ミゴッ....ミハッ!ぐる...苦しいミィ....ミスン....ママ!ママ〜!ミィも....ミィも死にたいミィ〜ン!」

4ババさん
「3ママちゃん、そんな悲しいことを言わないでミィ。お腹の中のベビちゃんが悲しむミィ。きっと3ママちゃんそっくりの、可愛いタブンネさんが生まれてくるミィよ!」

ミィ「あなたはお隣のおばさん...。...ベビちゃんなんて関係ミィ!どうせしゅっかされてしまいますミィ!」

4ババさん
「ミィ...。それはそうかもしれないミィけど、でもネ、3ママちゃん。世の中にはベビちゃんのまま誰かに食べられたり、目の前で子供を食べられちゃうタブンネさんが沢山居るんだミィ。だからせめて、一緒に居る間だけでも、しっかりベビちゃんを可愛がってあげなきゃ!考えようによっては、ミィ達は幸せなタブンネさんかもしれないミィよ!」

・・・

4ババさんはミィのママにも負けないくらい優しいタブンネさんで、色んなことを知っている賢タブでしたミィ

他にも色々なおはなしをしたものだミィ

4ババさんは昔、“やぐるまのもり”っていう、綺麗な木が沢山生えてるおソトの世界で暮らしていたそうですミィ

優しい旦那さんとふたりのチビちゃんと暮らしていたそうですミィ。

ある日、産みたての新しいタマゴを守ろうとして、ペンドラアってポケモンに旦那さんはタマゴ諸共殺されてしまったそうですミィ

悲しみに暮れる間も無くその数日後、残ったふたりのチビちゃんと小川へお水を飲みに行った時、ひげもじゃ(タブ舎の飼育員の一人)が突然現れて、チビちゃん達は斧でタブ頭をぶった切られて、4ババさんはもんすたあぼおるってニンゲンの道具で捕まえられて、このおウチに連れて来られたそうですミィ

4ババさんは泣き言を言わないタブンネさんだったミが、なかなか凄惨な過去だミィ...

世の中にはただの1匹も、幸せなタブンネさんは居ないのでしょうミか...

571タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/04(火) 19:35:36 ID:.pUx01Ko0

ママや兄妹達はしゅっかされ、せまくて地獄極まりないすとおるに閉じ込められ、痛くて苦しいたねつけが行われ、おなかがパンパンになって、この世の苦痛全てを背負って絶望していたミィでしたが、やがてほんの少し元気を取り戻すことができましたミィ

4ババさんの励ましもありましたミが、ミィの初めてのベビちゃん達が生まれたのですミィ!ミィんなそれはそれは可愛いタブンネさんでしたミィ!

最初のベビちゃんは全部で7匹でしたミィ
1匹はすとおるに挟まってローブシンに殺され、1匹はおマタにバイ菌が入って病死、残りの5匹は例外なくしゅっかされましたミィ

すとおるに挟まった子は毛皮がズル向けて即死でしたミィ。剥き出しになったシンゾウやハイがトクントクン動いていた様は未だに頭に焼き付いてますミィ
ビョーキになった子はおマタからじゅんばんに身体中が紫色になって行きましたミィ。可愛いアンヨがドロリと溶け落ちた時は絶望的なキモチでしたミィ
しゅっかされた子達の叫びも忘れられませんミィ

回想シーンですら幸せから絶望までの顛末が早すぎるミィ。
どうしてタブンネさんはフツーの死に方ができないのでしょうミか...

・・・

ベビちゃんがしゅっかされたり死んじゃったりする度発狂ンネに成りかけたミィでしたが、4ババさんが一生懸命に励ましてくれて、何とかタブンネさんらしく生きることができましたミィ。
次々に生まれてくるベビちゃん達、どうせしゅっかされてしまうのだからミィもタマゴを産みたくないのですミが、生まれてきたら生まれてきたでそれはそれは可愛いくて仕方ないという、何とも言いがたい感情ミィ...


それから何週か2つのすとおるを移動するうち、現4ママちゃんが爆誕しましたミィ。

ベビ4ママちゃん
「チィチィ♪オトナリのおねえさん!おねえさんさんはママのオトモダチィ?おねえさんもおソトでくらしていたのチィ?」

若かりしミィ
「ベビ4ママちゃん。そうミィ!ミィは貴方のママのオトモダチミィよ!ミィはずーっとこのおウチに住んでるミィのよ。ベビ4ママちゃんは可愛いタブンネさんミィね〜♪ママそっくりミィ!」

過去のミィのベビちゃんA
「ベビ4ママちゃん!こんチわ!ねえねえ、チィ達としりとりして遊ぼうチィ!」

ベビ4ママちゃん
「チィチィ!じゃあチィのばんチィ!
 えーっとじゃあ...、“おぼんのミ”」

ベビちゃんB
「おぼんのミ?えーっとえーっと...
 “ミィあどれなりん”!......あれ?...」

.........

4ママちゃんは特に明るいタブンネさんで、ミィのベビちゃん達とも仲良しでしたミィ。

やがて4ママちゃんもおっぱいを卒業して、おソト(雑居房)へ出されましたミィ
おソトに出てからは、ずーっと4ババさんのたねつけすとおる近くに陣取って居たようですミィ

・・・

それからミィもたねつけすとおるに移されて、苦行を終えておなかが大きくなって、またタマゴを産む方のすとおるへ戻された時、4ババさんに最期の時が訪れましたミィ...

ミィは無事にタマゴを産み終わったのですが、ミィより先に移動していた4ババさんはいつまでもタマゴが産まれず、おなかが大きいままずうっと苦しんでいましたミィ...

572名無しさん:2021/05/05(水) 22:30:36 ID:UNWdmCMk0
やはりベビが呆気なく死ぬ所はたまりませんな
ところでこのSSに出てくるストールという物がうまく想像できないのですが
リアルの畜舎にある牛が頭だけ出して飼料を食べてる鉄柵みたいなやつですかね?

573名無しさん:2021/05/06(木) 16:47:01 ID:zO.NNIxo0
>>572
ストールの解釈はそれでいいと思うよ
自分はリアルにYouTubeのブタ飼育動画想像してたけど
大切に細やかにお世話されてるそこのブタさん達と違うのがタブンネならではなんだよな

574名無しさん:2021/05/06(木) 17:01:06 ID:ck3X2nsY0
劣悪な方の動画ももちろんあって元ネタの子ブタやヒヨコは心が痛むんだが
某国がベビンネを床に次々と叩きつけてる奴とか
ブロイラー子タブンネの50日間として出荷されていく子タブンネ達がまだベビ上がりの日齢なもんだから
怯えてチイチイ悲鳴を上げて泣き叫ぶ映像と共に
「タブンネ達はまだ赤ちゃんのうちに出荷されます」と解説されつつカゴに詰められていくのは凄くいいね

575タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/08(土) 22:40:17 ID:8K7FcR6I0

4ババさん
「ミグフンッ....!ミフン!ミフンッ...!お....おかミィ...
 もうとっくに産まれるハズ......ぐるしぃ...
 おマタが張り裂けそうだミィ....」

チビ4ママちゃん
「ママ!どうしちゃったミィ⁉︎だいじょーぶ⁉︎ママ!しっかりして...!」

若ミィ
「4ババさん、ラミィズこきゅうミィ!ほら、ミッ!ミッ!フゥー!ミッ!ミッ!フゥー.......」

4ババさん
「あ....ありがどミィッ。チビぢゃんだぢ...3ママぢゃん....ミ゛ッ!ミ゛ッ!ブミィガッ...?グギャミミ゛ィ〜⁉︎オゴがガガガが....!!」

ブジュッ!グニュニュニュニュ.....

声がおかしいのを感じて心配になるや否や、4ババさんが大声ををだして、変な音が聞こえてきましたミィ

チビ4ママちゃん
「ミ゛ミ゛ィーッ!!ママ!ママだいじょぶ!?ミ゛ーッ⁉︎ミ゛ャーッ!3ママお姉ちゃん!ママ゛が!ママのおマタからヘンなブヨブヨが出てきたミィ!」

ミィの位置からはなんとなくしか見えませんでしたミが、4ババさんはおマタが張り裂けて身体の中の大事なモノが飛び出したのですミィ

これは後から知ったことですが、飛び出してきたのはニンゲンのコトバで言う、“しきゅう”というモノですミィ。

?「....ビャッ....ブググッ....パ....ププッ.....」

チビ4ママちゃん
「ミミ゛ーッ!たいへん!ブヨブヨからベビちゃんのアタマが!まっかっかミィ!血だらけミ゛ィ!」

若ミィ
「ミィ⁉︎ベビちゃんが⁉︎でもどうして⁉︎タマゴも産まれてないのに....??」

4ババさんはいわゆるさんらんいじょうというヤツでしたミィ。
ミィも難しいことはよくわかりませんが、ポケモンの産道はツルツルしたタマゴは通れても、ベビちゃんのようなフクザツなカタチをしたものはツッかえてしまうのですミィ

——

やがてニンゲンがやって来ましたミィ

ニンゲンA
「うわー...なんかタブだかりできてると思ったら....やっぱり産めんかったか〜。よりによってこのクソ人手足りねえ時に...」

ニンゲンB
「おいおい。オマエ今処理しようとしてる?今無理だぞ。早く積まねえとトラック出ちまうぞ!ただでさえ今タブンネだらけなんだからこの畜舎。4はとりま放置!死んでからミキサーでいいよ!」

若ミィ
「ミィッ!ニンゲンさん!4ババさんが大変ですミィ!早く!早く治してあげて!」

チビ4ママちゃん
「ベビちゃんも!ベビちゃんも居るのですミィ!お願いします!早くしないとふたりとも死んじゃ.....ミ゛⁉︎ミギャーーッ...!」ドサッ

囲いの前に張りついていた4ママちゃんが突然吹っ飛びましたミィ。それはニンゲンに追随していたズルズキンというクソポケのしわざでしたミィ

クソズキン
「プギャーーwwwなんだコイツwwwマタからクソ垂れてやんの!タブンネマジサイコー‼︎」

若ミィ
「グミィ‼︎なんてこと言うミ゛ィ!いま4ババさんがどれだけ苦しんでると思ってるミィ!あやまれミィィィィッ!」

クソズキンは囲いの中を見て、ほーふくぜっとうしながら涙まで流してましたミィ。
コイツは本当にイジワルなのですミィ!
絶対ロクな死に方できないミィ!

ニンゲンA
「おーいズキン!構うなよそんなヤツ!早く手伝ってくれ!超急ぎなんだよ今!」

若い頃のミィにとって信じられないことでしたが、ニンゲンは何事もなかったように4ババさんをほったらかしにして、しゅっかタブンネさんを捕まえ始めましたミィ
クソズキンはミィにアッカンベーしたあと、ニンゲンについて行きましたミィ

......この時ミィはある程度このおウチの事をわかっていましたミから、ニンゲンが酷い生き物なのは知っていましたミィ。
しきゅうから出てきたベビちゃんを助けてもらえないのはなんとなくわかって居たミが、それでも4ババさんは絶対助けてくれると思っていましたミィ。

なぜならばミィや4ババさんのようなお母さんタブンネは、ワリと丁重に扱われるのですミィ。
しかし現在は非情でしたミィ。

ちなみに4ババさんはニンゲンにも恨み節を決して言わないタブンネさんでしたミィ。
その4ババさんを裏切るなんて...
この時からミィは絶対にニンゲンを信用しなくなったミィ......

576タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/08(土) 22:49:46 ID:8K7FcR6I0

チビ4ママちゃん
「ミグン...ッ。イ....イタイミィ...。ミミッ⁉︎ミィーッ!ニンゲンさん!どこ行くミィ⁉︎ママのこと見て!ママはビョーキなのですミィ!早く!早くママとベビちゃんを助けて!」

若ミィ
「チビ4ママちゃん!ニンゲンはアテにならないミィ!!早く戻ってきて!みんなでベビちゃんを助けてあげなきゃ....!」



※4ママは5兄妹であった。
長兄ンネ、次男ンネ、4ママ、三男ンネ、妹ンネの順。

この時次男ンネは両脚の障害から既に出荷済み、妹ンネは所謂未熟児個体で、他に比べ体躯が小さく、知恵も遅れていた。

兄妹は不仲なわけではなかったが常にベッタリというわけでもなく
長兄ンネ、三男ンネはそれぞれ雑居房をいつもトテトテ巡回し、他タブとも仲良し
4ママと妹ンネは常に一緒に居て、排泄、食事以外の時間はずっと4ババ囲いに張りついていた

飼育員が気づくのに先駆け、長兄三男も囲い前に合流していた
4ババの子タブ達は例外なく母によく懐いていた



長兄ンネくん
「ミッ!ミミィ〜!...ママ、待っててミィ!今すぐ助けに...」

ニンゲンが役立たずだと察するや、長兄ンネくんと三男ンネくんは必死に柵を越えようとピョンピョンしだしたミィ
しかし悲しいかな、ふたりともまだチビちゃんミィから、全然届かミィ。

若ミィ
「長兄ンネくん!キミのじゃんぷでは柵を越えられミィ!ふたりで肩車して、だれかひとりが中に入るミィ!!」

チビ4ママちゃん
「ミハァッ!ミハァッ...!ミィが行くっ!お兄ちゃん、三男ンネ!ミィを持ち上げて!」

4ママ妹ンネちゃん
「おねえちゃ!おにーちゃ!はあくはあく!ママちんじゃう!」

クソズキンに投げ飛ばされた4ママちゃんが猛スピード(おそい)で戻ってきて、囲いの中へ入り込みましたミィ
見事な兄妹の連携プレーでしたミが、褒めてる場合ではありませんでしたミィ。
一刻も予断を許さミィ

4ババさん
「...ミガッ...ミフッ....ァァッ..ググッ......
チビ4ママちゃん
「ママ!ママしっかり!ミィが見えるミィ⁉︎今たすけ....ミ...ミィ....そういえば助けると言っても何をどうすれば....」

4ババさん
「....ミハッ...?そこ....に居る...のチビ4ママちゃ....ミィ?
....ミィはもう....ダメ...ベビチャ...を...」

死にそうな状態になって尚、4ババさんはどこまでも賢タブでしたミィ

4ママちゃんはオロオロするばかり。

4ババさんの覚悟を察してミィも涙腺が崩壊しそうでしたミが、必死に4ママちゃんにはなしかけたミィ

若ミィ
「チビ4ママちゃん!ブヨブヨからベビちゃんを引っ張り出してあげて!まだちゃんと生きてるミィ!」

恩タブとそのベビちゃんが半死じょうたいだというのに、ミィはしゃべることしかできなくてそれは辛かったミィ....
それでも4ママちゃんは必死にミィの指示を聞いて、ベビちゃんをしきゅうから救出したミィ

チビ4ママちゃん
「3ママお姉ちゃん!ベビちゃんが出てきたミィ!でも血だらけで苦しそう...!」
若ミィ
「ベビちゃんはきっと息ができないんだミィ!チビ4ママちゃん!ちょっと大変ミが、お鼻の周り舐めたげて!」

.....

チビ4ママちゃん
「ミゲホッ!...ペッペッ...ミィ...ニガくて気持ちワルイ....さあベビちゃん!お鼻キレイになったミィ!頑張って息してミて......⁉︎ミィァァッ⁉︎3ママお姉ちゃん!この子お鼻が無いミィ!」

みんな決死の思いで救出したベビちゃんは、“きけい”のベビちゃんでしたミィ。

...その後なんやかんやあって、ベビちゃんは死んでしまいましたミィ....

ミィはお医者さんじゃないから詳しくわかりませんが、息をするためのカラダができていなかったみたいですミィ....

仕方のないことですミィ。そもそもポケモンはタマゴから産まれて来なくてはいけないのですミィから...

4ママちゃんや兄妹ンネちゃん達は大泣き、ミィも悲しさと虚しさで涙が止まりませんでしたミィ...

577名無しさん:2021/05/11(火) 00:45:28 ID:enrCFKqE0
奇形ベビちゃんでも頑張って助けようとする優しさとそれが無駄に終わる儚さ、たまりませんな
チビンネ章も楽しみにしてます
この健気なベビたちが出荷の所なんか特に

578タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/13(木) 17:42:45 ID:7wdwCcsY0

4ババさん
「ミグッ...ミハァミハァッ......そこにいるのチビ4ママちゃんね...?どうか...泣き止んでミィ....ママのおはなし....ッよく聞いてミィ....!」

ミィを含めシクシクミィミィというみんなのタブ泣きが響き渡る中、しゃべり始めたのはなんと瀕死の4ババさんでしたミィ

チビ4ママちゃん
「ミ゛ッ...ン??ミィ!ママだいじょぶなのミィ⁉︎そうミィ!ここに居るのはミィ!ちゃんと聞くミィ!おはなしして....!」

4ババさん
「..ッ...チビ4ママちゃん...。ママは...もうすぐお別れミィ...きっとママがい...居なくなったアト....貴方がこのストールに入ることに...なるミ゛。....なかなか.....ストールでの生活は地獄ミィ。...でも最後まで...希望を捨てミィで...アルセウス様が...グホッ!」

ハッキリとは見えなかったミが、4ママちゃんはババさんの手を握って、コクコク頷きながらシンケンにおはなしを聞いていたミィ。
シンケンに聞いていたのはミィも同じミィ。
4ババさんは時々吐血しながらも、必死にコトバを紡いでおりましたミィ...

4ババさん
「3ママちゃん...聞こえるミィ..?今までアリガトミィ....ハァ...ハァッ!あなたがおはなし相手になってくれて、とっても楽しかったミィ...!ミィのチビちゃんのコト....どうかヨロシク....ネ...」

若ミィ
「4ババさん!聞こえてますミィ聞いておりますミィ!!お礼をしなければいけないのはミィ!今まであじがどう゛ございビィ〜ッ!」

チビ4ママちゃん
「ミミィッ!オワカレって⁉︎ママ!ママしっかり!」

4ママ妹ンネちゃん
「チュミィ!ママおめめがまっしろ!ミィにもオハナシしてオハナシして!チュビャ〜〜ン!!」

...きっとこの時4ババさんは、もう目が見えていない状態だったのですミィ...
無垢な4ママ妹ンネちゃんの大泣きにつられて、またミィ達全員のカワイイ泣き声がコダマしましたミィ....

——

...4ババさんに異変が起きてからどれくらい経ってからでしょうミか...
シゴトがひと段落したらしく、さっきのふたりのニンゲンとクソズキン、それからダゲキってポケモンがやって来ましたミィ

この時4ババさんのイキがさっきより落ち着いていて、ひょっとして治してくれるのかと期待したミィでしたが、想像のキャパシティを超えるさんげきが待っていましたミィ。

チビ4ママちゃん
「ミィッ!やっと来てくれたミィ!早く!早くママを助け...

ニンゲンA
「なんだなんだ。なんでチビ1匹中入ってんだ?...うわマジ?4番まだ生きてますよ!?」

ニンゲンB
「バーカそりゃ生きてるだろ。脱腸くらいじゃ死なねえよ。タブンネってスゲえ生命力なんだから....」

ミギャア! ブヒッ! ミギュッ! ....

囲い前に集まっていた兄妹ンネちゃん達をらんぼうに投げ飛ばしながら、ニンゲンはズカズカと囲いの中へ入っていきましたミィ

ニンゲンB
「あーやっぱタマゴできなかったんだな。もう出てきてたわ」

チビ4ママちゃん
「ミィーッ!ベビちゃんに何するミィ⁉︎かえしてかえして...!」

4ママちゃんがずーっと大事に抱いていたきけいベビちゃんのムクロをニンゲンが取り上げて、らんぼうにゴミ袋の中へ突っ込みましたミィ

579タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/13(木) 17:43:54 ID:7wdwCcsY0

ニンゲンA
「へー、卵できてなくてもちゃんとタブンネの形になるんすねぇ。コレ肥やしっすか?」

ニンゲンB
「いや、アドレナリンなきゃ大した養分ねえだろうからなあ。後でその辺のマメパトにでもやっていいよ。それよりどうする4の処分?今やっちゃうか?昼休み削れるけど」

ニンゲンA
「午後便で出すんじゃないんすか?午後だけで3ピストン(トラック3往復の意)あるんすよ。どっかに混ぜれば..」

ニンゲンB
「いや、出しちゃダメだよコイツ。オレが獲ってきた完全野生だから4は」

ニンゲンA
「へー野生って出荷できないんすか?でも3の先代って出しませんでしたっけ?」

ニンゲンB
「アレは保護団の譲渡で、しかもポケセンの出生だったから。完全野生は衛生法でプロセスできねえんだよ。オマエもタブ産やるならもっと色々覚えろ」

....必死にベビちゃんを奪還しようと跳ね続ける4ママちゃんのことなど全くムシして、ニンゲンはよくわからん談義で盛り上がってましたミィ。

・・・

ニンゲンB
「...よし。じゃあ運ぶぞ。歩けるかオマエ?ありがとうな4ママちゃん!オマエのおかげで一儲けさせてもらったわ。最後の一仕事だ。頑張ってくれ!」

ニンゲンA
「ママってか完全ババアっすよねコレ。よく妊娠できたなあ...。何才なんだろ?」

チビ4ママちゃん
「ミ゛ィッ!ミ゛ー!!ママをどこ連れてくミィ⁉︎ビョーキなんだミィ!らんぼうしないで...

ニンゲンA
「うっせえなあ!邪魔!オマエ!」ポフッ!

ミギャーん!

ニンゲンB
「おーい腹蹴るな!たぶん実子だろソレ?次世代候補たしか1匹しか居ねえはずだから」

ニンゲンは囲いを開けると、4ババさんの両脇を抱えて引き摺るように連れ出しましたミィ

長兄ンネくん
「ミィッ!ママッ!ママをどうする気ですかミィ⁉︎」

4ママ妹ンネちゃん
「チミィチュミィ!ニンゲンさん!ママにイジワルしちゃヤンヤ!」

さっき投げ飛ばされた兄妹ンネちゃん‘sが再び集まってきたミィ

4ババさんは子供達の前でもニンゲンのことを悪く言わないタブンネさんでしたミが、この時チビちゃん達は危機を察していたようですミィ。
殺される時とか、死ぬ時というのは教わらなくてもわかるものなのですミィ。生き物の不思議ミィ

ニンゲンB
「1,2,3....中にいるヤツ含めて4。コイツらたぶん実子だな。ついでだから“見せしめ”やろう!おーいズキン、ダゲキ!コイツら捕まえて!」

クソズキン
「プギャーハハハ!やったなオマエら!めっちゃ良いモン見れるぜ!超ラッキー!!」
ダゲキ
「・・・・」

なぜそんなコトをするのかこの時わかりませんでしたが、兄妹ンネちゃんが次々捕らえられましたミィ。

...悍ましい出来事が待っていましたミィ...

ニンゲンの考えることは狂ってるミィ......

580名無しさん:2021/05/14(金) 22:32:22 ID:o7P7lAds0
4ババの娘は4ママだけじゃなくて妹もいるのに
なんで次世代候補が1匹だけなんだ?
長女ンネ以外の♀タブは一律出荷組ってことかな

581タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/16(日) 20:38:15 ID:e5LYManY0
 
ニンゲンA
「うーんやっぱ歩けんすね...。両脚痙攣してますわ...」
ニンゲンB
「てか随分重くねえかコイツ?子宮引き摺んのかわいそうだけどしゃーねえな。最後の苦労だ!我慢してくれ!」

若ミィ
「ミィッ!なんてらんぼうするミィ!優しく扱えミィッ!ちゃんと治療してミィよ!」

4ババさん
「...イダッ!いだミィ痛ミィッ!...ハァッ...ハッ....
...3ママちゃん....どうか取りミィださないで...ミッ...ミィは....先に天国に行くだけミ゛ィッ....バイバイミィ...。サヨナラ....3ママちゃん....ッ..!」

ミィや兄妹ンネちゃん達が返事やリアクションをする間も無く、更なるヒゲキが畳み掛けて来ましたミィ...

ズリュッ....ブポッ!...ズボッ!...ボトッ、ボトッ

「ヂビィッ!...ヂプァッ....」「...チ....ゴォッ...」

引き摺られて破れかかった4ババさんのしきゅうから、ふたりのベビちゃんが落ちて来たのですミィ!
やはり血まみれで、濁った苦しそうな泣き声をしていたミが、さっき死んじゃった子よりも大きく、たまにいる小さいベビちゃん(未熟児ベビンネ)くらいの大きさでしたミィ
さっきの子よりは元気で、手脚を必死にパタパタ動かしていましたミィ。

三男ンネくん
「ミ゛ミィーッ!ブヨブヨからまたベビちゃんが出てきたミィ!どうしよ...ママ!ベビちゃんが....!」

三男ンネくんがいち早くベビちゃんの存在に気づいて、長兄ンネくんと4ママちゃんもみんな必死に身体を捩ったミィけど、ダゲキとズルズキンに首根っこをガッシリと掴まれていて、まさに手も足もでミィ...


モブタブンネくんA
「なんだミィ!なんだミィ!あーっ!おソトにベビちゃんが落ちてるミィッ!」
モブタブンネちゃんB
「ホントだ!ベビちゃんだミィベビちゃんだミィ!でも血だらけミィ!なんかコワイミィ〜」

・・・

おソト(雑居房)にいた他の子達もベビちゃんに気づいて、ちょっとしたタブだかりができましたミィ
子供達は純粋ミィから、ちょっと珍しいことが起こるとミィんなキョーミが湧くんだミィ。おソトにベビちゃんが居ることはまず無いミィから....

若ミィ
「4ママちゃんたち!ベビちゃんはミィに任せて!今は4ババさんに付き添ってあげて!おーいだれかーッ!ベビちゃんをミィのところまで連れてきて!だれか!早く早く!」

このときミィが考えていたのは、ふたりの生まれたベビちゃんをミィが育ててあげることでしたミィ

このおウチ(タブ舎)には、“さとご”ってしすてむがあるのですミィ。
要は産卵でお母さんタブンネが死んでしまったり、おっぱいが満足に出なくなってしまったりした時に、他のお母さんタブンネが代わりにベビちゃんを育ててあげることですミィ。

タブンネさんは優しいポケモンミィからね。
ちなみにミィはこれまで3匹のさとごベビちゃんを育てたことがあるミィ。3匹ともしゅっかされてますミが...

必死に野次馬ンネちゃん達に呼びかけたミィでしたが、みんなタカってはいるものの、一定の距離を取って、中々誰も動いてくれまミィ

だれもベビちゃんを抱きあやしたりしたことなんてないし、勝手な行動をしてニンゲンに蹴られたりするのもコワイだろうし、何より血だらけで泣き声もヘンだから不気味だし...、様々な事情があったのでしょうミィ

今思えばですが、さっきメソメソ泣いていた時に、ミィがもっとしっかりしていればよかったのですミィ...。
耳を澄ませば心音に気づけたハズですミィ...
いじょうじたいでそんなココロのよゆうが無かったのですミィ...




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