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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

263白猫:2008/07/05(土) 22:23:14 ID:W4Rh7kXM0
Puppet―歌姫と絡繰人形―


第一章〜第五章及び番外編もくじ 5冊目>>992
第六章〜第十八章もくじ 6冊目>>924
第十九章 -愛しき君への言葉 迫り来るもう一つの敵- >>5-16
第二十章 -激戦の、一歩手前- >>43-50
第二十一章 -断罪者の覚醒 迫る最後の戦い- >>178-190









 最終章 -Epilogue-歌姫と絡繰人形






(まえがき。
どうも、ご無沙汰しております、白猫です。
この最終章は803レスに投稿しようと思っていましたが、思ったよりも早く予定が進み、したらばのサポート?的な

人も来てるようなので、早めの投稿に踏み切りました(投稿される前に使用停止は堪らない)。

えーっと、まず言っておきます。長いです、スサマジク長いです。
一気に読むと多すぎるので、何度か分けてお読みください。

なんとまぁ104KBもあります。文句なしでPuppet最長の章となるでしょう。
よっておまけのガチバトル、68hさんリク入れ替わりネタは後日ということで。ご了承ください……。


それでは、Puppet最終章、ごゆっくりお楽しみください――)

264白猫:2008/07/05(土) 22:23:42 ID:W4Rh7kXM0


ブルン歴4922年、1月19日、深夜。
ラグナロク発生まで――残り、3時間。
この夜が明けたとき、ルヴィラィか世界か、どちらかが――滅びる。
古都へと帰還したネルは深紅衣に付いた埃を払いながら、闇に染まった景観を見回して白い息を吐く。
この長い夜を、自分たちは越えなければならない。
 「…………」
物音一つ聞こえない辺りの様子に、ネルは沈黙を貫いたまま目を閉じる。
時計はもうすぐ2時を指そうとしている。集合は確かに1時半のはず、なの、だが。
よりによって今日、しかも三十分の大遅刻。
有り得ないだろう。というか空気読めよ。
と、
 「待たせたな」
そのネルの背後、地面からまるで生えてくるように、一人の男が現れた。
口と鼻を隠す覆面に、ツンツンに立った黒髪のシーフ――通称「覆面」。
覆面の声を聞き、ようやく一人目かとネルが睨みながら言う。
 「待たせ過ぎです。どういうことですか全く」
カツカツと歩み寄るネルの姿に、覆面は少しだけ目を細める。
外見は八ヶ月前に見たときと大差ない。変わっているのは、全身が紅色のローブに覆われていること……そして背

に、衣に包まれたグングニルが掛けられていることだけ。
だが、雰囲気がまるで別人である。いつの日か見た彼の父にすら見紛う、そんな威圧感と存在感を持った姿に成長

していた。
 「[イグドラシル]の所在地は?」
早速本題へと入ったネルに、覆面も小さく頷いて言う。
この戦いに自分は参加しない。自分ができる最善の手を尽くし、そして彼は"それ"を発見した。
 「実のところ、もう他の連中は其処へ向かっている。どうにもじっとしていられなかったようでな」
 「……は」
ドイツもコイツも、と溜息を吐いたネルも、しかし思う。
もし場所を知れば、恐らく自分もそうしていただろう。世界の滅亡を前に、一分一秒も無駄になどしていられない


そんなネルに、覆面は小さく「だが」と付け加えた。
 「実は……その、一人まだ来ていない奴がいてだ、な」
 「――ああ」
言いにくそうな覆面に、ネルは小さく溜息を吐いて理解した。
こんな状況でのうのうと遅刻してくる者など、自分の知る限り一人しかいない。


 「ご、ごめーん!」
そんなネルと覆面を見つけるや否や、フードを被った人物が手を振って駆け寄る。
遅刻ですよ、と不機嫌そうに唸るネルに両手を合わせ、覆面に笑いかけた人物は、土色のローブを取り、小さく微

笑んだ。
 「ごめんね、マイさんの絨毯が途中でほつれちゃって」
 「絨毯がほつれるってどういう状況ですか」
枝にひっかかってどんどん座るところが無くなっていくの!と騒ぐ少女に、覆面は思わず頭を抱えた。
こんな状況でもやっぱり能天気な少女――ルフィエ=ライアットに、ネルは小さく溜息を吐く。
だが、もうこれ以上無駄な時間は食っていられない。
 「それで、何処ですか」
覆面へと向き直ったネルとルフィエ、その姿に覆面は小さく頷く。
そして、指した。

自分たちの――上空を。
 「――あそこだ」
覆面の指の先、ネルとルフィエの視線が捉えたもの。


それは、古都の遥か上空を悠々と浮かぶ、巨大な鉄の、立方体だった。

265白猫:2008/07/05(土) 22:24:02 ID:W4Rh7kXM0


以前見たときとはまるで違うその形に、ネルは少しだけ目を細める。
 「以前僕とリレッタが閉じ込められたとき、本当に「樹」の形をしていたんですがね――」
 「それにしても高いねー……みんなちゃんと行けたんだ」
苦虫を噛み潰したような顔のネル、素直に感心するルフィエに覆面はそっと補足する。
 「黒髪の女は龍に乗って、蒼髪と茶髪の奴は浮遊靴と浮遊魔法、赤毛の女は――知らん。気付いたら既に飛んで

いた」
碧龍と浮遊靴、リビテイトと[翔舞]か。と理解するのも数秒。
軽く地面を二度蹴り、返す手で浮遊魔法を発動する。
ルフィエの方もフワリ、と難なく空中へと浮き、覆面はそんな二人に小さく溜息を吐いた。
通常、ウィザード以外の者が空中を浮遊することなど不可能に近い。それだけ魔力を統御することが難しくなるか

らだ。
――まぁ、難易度7だの8だのの術をぶっ放す彼らにしてみれば、空を飛ぶことなど朝飯前なのか。
 「悪いが俺が助力できるのはここまでだ――後は頼んだ」
そう小さく頼んだ覆面に親指を立て、ネルはルフィエに手を差し伸べる。
 「[神の母]は使わないんですね」
 「まだ――ね。びっくりさせたいから」
ネルの手を握り返し、ルフィエはそっと微笑み、言う。
それは楽しみです、と笑うのも束の間、

次に風が覆面の体を叩いたとき、既に二人は果てなく続く大空へと打ち上がっていた。






ぐんぐん近づく巨大な立方体を見、ネルは目を細める。
ただの鉄ではあるまい。生半可な威力の攻撃では弾かれるか。
 「穴を空けます、[女神]の腕は落ちていないでしょうね」
 「歌唱力はばっちりだよ」
烈風が全身を叩くのも気にせず言うネルに、ルフィエも暢気にそう答える。
そのルフィエの言葉に微笑み、ネルは背に掛けていたグングニルを掴み、布を一払いで放り捨てる。
途端に夜空に晒される、白き光を放つ美しい槍――グングニル。
同時に紡がれたひどく美しく、どこか哀しいルフィエの歌声。その歌声がネルの体を包み、金色に彩り、異能の力

を与える。
空中で、初手から最強の力を撃つつもりはない。切り札は、切らないことも使い道の一つなのだから。
 「まぁ――まずは挨拶、ですね!」
そう言うが早いか、 ネルは手に持ったグングニルを払い、投擲の構えを取った。
途端に凝縮される白い光に、ルフィエはネルの手を離し数回旋回した後、両の手に金色の光を溜め込む。
 「『 ――[破槍] 』」
 「『 スーパー……ノヴァ 』」
空中から繰り出された白と金色の怒涛が、鉄の箱――イグドラシルへと一直線に伸びてゆく。
その怒涛はイグドラシルの外壁に激突した途端、辺りの大気を飲み込み、膨らみ、縺れ合い――

大爆発を起こした。

空中で起こる大爆発に目を細め、しかしネルとルフィエは全く上昇の速度を緩めず、その爆炎の中に突入した。

266白猫:2008/07/05(土) 22:24:23 ID:W4Rh7kXM0



 「――来た」
 【ヒヒッ……奴ラガ、来タ】
イグドラシルの内部、突如起こった巨大な揺れに、ルヴィラィは目を細める。
先ほどどこからか侵入した四人組――あの四人の気配は今は、地下の魔物小屋の近く。
千体の魔物による、壮大な足止めを食っているだろう。千体全ての魔物を倒した頃には、力を取り戻した傀儡たち

の一斉攻撃を受ける。
"万が一"向かわせた傀儡が全て倒されようとも、自分の作り出した最もおぞましいあの傀儡は、絶対に倒せないだ

ろう。
人の姿を覗き、映す鏡の傀儡――マジシバ。
そう心中で思考を流しながら、ルヴィラィは目の前に浮かぶ薄汚い髑髏……パペットを見やる。
 (パペットを、私を倒すことができるのは――グングニルを持ったワルキューレだけ……)
ワルキューレ。
まさか、自分の思考の中で再びその単語が現れようとは。
パペットが最も恐れていたこと――マペットの力の本質、それを理解し操る者の出現。
そしてその"契約者"を護る、[破壊神の槍]を携えた者――ワルキューレの覚醒。
その二つに当てはまるもの。
それが他でもない――ルフィエ=ライアットとネリエル=ヴァリオルドの二人。
ひょっとするとあの二人がお互いに恋い焦がれたのも、単純な感情の問題ではない――もっと本質的な部分から来

ているのかもしれない。
 「[グングニル争奪戦]と大戦のときに、ワルキューレ"と思われる"者たちは殺したつもりだったけど、ね」
 【パペットノ力ヲ受ケ継イダ傀儡ヲ壊セルノハ、ワルキューレトマペットノ契約者、グングニルニ選バレタ者ダ

ケダヨ】
 「分かってるわパペット。この世に偶然なんてない――あの四人組も、十中八九ワルキューレね」
そこまで考え、ルヴィラィはふと考える。
傀儡の数は十三体。ならばワルキューレの数も十三人のはず。
まずルフィエ=ライアット――傀儡、ムームライトを消滅寸前まで追い込んだあの力。ワルキューレの可能性は捨

てきれない。
次にネリエル=ヴァリオルド――彼は間違いなくワルキューレ。グングニルを扱えている地点でそれは確定してい

る。
ルゼル=アウグスティヌス――[神格化]も可能であり前回の大戦で自分をしつこく妨害してきたあの正義感――彼

もまた、ワルキューレ。
カナリア=ヴァリオルドとその妻――言うまでもない。彼らをワルキューレに挙げずして、他の誰を挙げる?
そして今、イグドラシルに入り込んでいる四名――これで、九名。
前回の大戦でアドナを殺し、ルゼルの有能な補佐も数名殺している――これで、丁度十三人だろうか。少々お釣り

も来るが。
まぁ、要するに。
 「この戦いを制すれば、私たちを省くものは無くなる――」
 【ヒヒッ……アノ二人、探索ヲ開始シタヨ……】

 「フフ……歓迎するわ、フェンリル、ルフィエ――こうして"招き入れて"あげたんだから、いい前夜祭にして頂

戴」

267白猫:2008/07/05(土) 22:25:09 ID:W4Rh7kXM0


 「グァアアアアアアアアッッッ!!!」
イグドラシルに突入したネルとルフィエは、早速無数の魔物達による奇襲を受けていた。
感じられるだけで三桁、視界に入る魔物だけでも十五体はいる。
 「右に4、後ろに8」
目の前の魔物を爆砕し、その爆音の中で小さくネルは呟いた。
その言葉に返事はせず――しかしルフィエは、的確に光弾を生み出し、ネルの指示通りの方向へと全て放った。
ネルはともかく、ルフィエは戦っているというより踊っているに近い。
フワリと壁から壁へと跳び、舞い、返す手で光弾を生み出し、撃つ。
ルフィエの弾が全て魔物に着弾したのを感じ、ネルはそろそろか、と槍を旋回させる。
240日間では大した威力にはならなかったが、今はグングニルとルフィエの唄が底上げをしてくれるだろう。
宙を舞うルフィエに合図し、目の前の魔物の集団を睨み、叫ぶ。
 「――行きますよ、[ワーリングアサルト]ッ!!」
瞬間、
槍を旋回させたまま、ネルは魔物の集団へと突進する。何の防御態勢も取らず。
当然の如く魔物がドス黒い炎を吐き出してくるが、[深紅衣]を纏うネルには何の障害にもならない。
迫り来る炎を槍の回転で搔き消し、槍の破壊力に任せて魔物達を物凄い勢いで薙ぎ払ってゆく。
同時に発動する[爆風]がネルと魔物達の姿を包み隠し、傍から見れば爆弾をばら撒きながら進む、無駄に小回りの

利く戦車にしか見えない。
と、
 「――早速お出まし、ね。傀儡」
ネルを追おうとした矢先、後方に感じる、巨大な魔力。
魔物たちはネルが薙ぎ払っていってしまったというのに、ルフィエは大軍の中に置いてけぼりを食ったような感覚

に陥る。
それもそうだろう――後方の魔物から放たれる魔力が、まるで包み込むように自分を狙っている故に、気配がその"

何者かの魔力"以外感じられない。
だが、この魔力には記憶があった。
 「……あのときの、ハーピー」
 【ハーピーと呼ぶんじゃないよ】
ルフィエが振り向いた先、紫色の翼を広げ、地面へと舞い降りた一体の鳥人。
古都で自分が倒したはずの――しかし倒すことのできていなかった、一体の傀儡。
 【ムームライトと呼べ。虫唾が走る】
 「……行くよ、マペット」
 〈はい〉
傀儡――ムームライトを見やり、ルフィエは胸の十字架に手を当てる。
[唄]はまだ必要ない。一年以下の修行による付け焼刃では、自分は[三人唱]しか覚えることはできなかった。
しかも使いすぎれば喉が潰れてしまう――満足に使えるのは精々四回、それ以上は発動できる保証はなかった。
 「神格化――『 [神の母]、発動 』」
瞬間、
ムームライトは、ルフィエの体から放たれる凄まじい閃光に、思わず翼で顔を防いだ。
強すぎる光に目を抑え、ムームライトは心中で呟く。
 〈なんだアレ……前となんかチガくないか〉
徐々に収まってゆく光に翼を直し、ムームライトはルフィエの姿を見据える。
地面にまで付いてしまいそうな長い茶髪、
海の色の様でもあり、空の色の様でもあるような、思わず見惚れてしまいそうな水色の瞳。
戦うことには適していない、[目で見る美しさ]――その場に余りに不釣り合いな、クリーム色のドレスローブ。
その手には、そこにあるべき神器はなく、ただ十字架が握られていた。
以前戦った時と違う点といえば、髪の長さに――威圧感。
放たれる威圧感が、前回とは桁違いに上がっている。一体、どこでこれほどの力を得てきたというのか。
と、
握りしめていた十字架をゆっくりと離し、ルフィエはそれを胸へと戻す。
両の掌をゆっくりと重ね合わせ、呟いた。
 「 ――これが、"私"。ルフィエでありマペット。貴方達を裁く、[断罪者] 」
ひとつの口から紡がれる、ルフィエとマペット、二つの声。
その言葉にようやく戦闘体勢へと入ったムームライトは、その両の翼で空中へと飛び出した。

268白猫:2008/07/05(土) 22:25:34 ID:W4Rh7kXM0
イグドラシルは一階一階が異様に広い。ムームライトが飛んで戦うことに、何の不便も無いようにだろうか。
が。
 「 『 ノヴァ 』 」
ルフィエの前方で生み出された光弾が、無造作に一発ムームライトへと放たれる。
その光弾の瞬きを見やり、ムームライトは即座に術へと意識を向ける。
ムームライトの能力の一つ。[術の支配]。
相手の攻撃魔法であろうが防御魔法であろうが、ムームライトの前は全てが無意味となる。
 【さぁて――お返しだ】
そう言うが早いか、ムームライトはノヴァの軌道を操り、ルフィエへと放つ――

寸前。
 「 遅い、ですよ 」
既にルフィエは、ムームライトの背後へと飛翔し、追い付き、その手をムームライトの背に翳していた。
 「 『 スーパーノヴァ 』 」
 【ッ】
それを見やったムームライトは、しかし笑みを浮かべる。
自分の背後を取ったのは何人目だろうか。プリファーほどではないが、自分も速さをウリとする傀儡。背後を取ら

れたことなど滅多になかった。
 【いいねぇ、ッだりゃァ!!】
ルフィエが術を放つ寸前に、その背後へと回り込み蹴りを放つ。瞬間的に移動速度を高める[陣風]――多くは使え

ないが、四の五の言ってられる場合ではない。
信じがたいことだが、彼女の速さは――プリファーにも匹敵する。自分では恐らく止めることもできない。
パペットから力を受け取ったといっても、所詮ヒトの成り損ない――此処までが限界なのだろうか。
そう、一瞬の間だけ、弱気になった。
 「 ……雑念と戦う前に、目の前の敵と戦いなさい 」
その、一瞬。
その一瞬でルフィエは、ムームライトの左の翼に光り輝く鞭を絡ませていた。
 「 ッヒュ! 」
その鞭を軽く払い、ムームライトの身体を壁へと叩きつける。途端に上がる鈍い音に、ルフィエはさらに光弾を数

個、生み出す。
それらをムームライトへと放ち、両の手を開いた。
 「 ――おやすみ 」
ムームライトが起き上がる寸前、それらの光弾は全て彼女に直撃し、凄まじい爆発を巻き起こした。
その爆発の中、紫色の瞬きが一瞬それらを押し退け、しかし白の怒涛に押し込まれ、消えた。


 【一体脱落……残ル傀儡ハ、九体】
 「……ムームライト、か。やっぱり弱い者から殺されてゆく。この世の哀れな法則ね」
灯されている十本の蠟燭、そのうち一つが消えたのを見、パペットとルヴィラィはそう言葉を交わす。
彼らが突入してきてから、まだ数十分しか経過していないはず。
それなのにもう、一体の傀儡が倒された。あまりに呆気無く。
やはりあの二人――ルフィエ=ライアットとネリエル=ヴァリオルドは、以前に比べて格段に強くなっているよう

だ。
 「あの子たちは、今何所?」
 【地下ニ、イル。ダケド、ルフィエ=ライアットガココニ来ル方ガ、傀儡タチヲ呼ビ戻スヨリモ速イ】
 「そう」
パペットの言葉にあまり関心を持たず、ルヴィラィはすっと立ち上がり、言う。
 「さて――私も、参戦ね」

269白猫:2008/07/05(土) 22:26:01 ID:W4Rh7kXM0


イグドラシル、最下層。
室内とは思えないほどの広さ――現代で言う東京ドームほどはあるだろうか――のこの最下層。
傀儡の一人――ベルモンドが[移動要塞]と形容したのも頷けるほどの魔物の大軍が、この最下層に収容されていた


数自体は一つの軍隊並。此処に運悪く突入してしまったアーティ、カリアス、アネット、カリンの四人は、当然の

如く千体からなる魔物の大軍、その襲撃を受けていた。
 「『 [閃刃(シャイン)]ッ!! 』」
飛び掛かってきたヴァンパイアの身体を一閃、光り輝く槍で薙ぎ払ったアーティは小さく舌を打つ。
壁をぶち破って突入したにも関わらず、魔物達はそれに動じずすぐさま襲いかかってきた。
故に逃げ道を確保するどころか、体勢を整える暇なく戦闘開始、というなんとも調子の狂う始まり方になってしま

っている。
 「……『 碧龍、剣 』」
そのアーティの背後、今まさに襲いかかろうとしたミイラが、巨大な蒼の龍に呑み込まれた。
ミイラを呑み込んだ龍はそのまま空中を舞い、突然方向を変え、魔物の群れへと突っ込んでゆく。
その龍の頭に乗っていた黒髪、黒い鎧、黒マントという黒一色の剣士――カリンは、龍の頭を蹴り、跳ぶ。
魔物達の丁度上空へ跳んだカリンは、八ヶ月前までは持っていなかった小型で円型の盾を掲げ、叫んだ。
 「『 トワーリングプロテクター!! 』」
カリンが盾を薙いだ途端、その盾から凄まじく巨大な竜巻が生み出され、まるで蛇のように魔物達へと放たれた。
素早い魔物たちは即座にその場から逃げてしまうが、愚鈍なサイドウォーカーやエクソシストなどの魔物は、その

竜巻に呑み込まれた。
自分の背後に着地したカリンに微笑み、アーティは槍を構える。
 「あんがと」
 「礼を言う暇があったら手を動かせ」
不機嫌そうな声にムッとしつつも、アーティは槍を急激に旋回させた。
そして紡がれる、ひとつの呪文。
 「『 ファイアー・アンド・アイス・アンド――ライトニングッ!! 』」
途端、アーティとカリンを中心に、炎と氷、そして稲妻の嵐が吹き荒れる。
その嵐の中に入っていた魔物達は瞬時に燃え上がり、凍り付き、感電し、地面に崩れ落ちていった。
 「行くわよッ!!」
 「上等だ」
この嵐は長くは保たない。威力が弱まれば、魔法耐性を持つ魔物がすぐにでも襲いかかってくるだろう。
そう一歩踏み出したアーティ、
その足を、巨大な手が掴んだ。
 「!?」

 〈ギ、ガガ……〉
地面に崩れ落ちていたメタルゴーレムが、彼女の足を掴んでいる。
まだ生きていたのか、と槍を振り上げたアーティ、
その背後から、三体のガーゴイルが飛び掛かった。
嵐の被害が少ない上空からの襲撃に、アーティは目を見開いた。
逃げようにも、反撃しようにも、両足を掴まれていてはどうすることもできない。
マズイ、と顔を歪ませたアーティの眼前で、
ギリギリで滑り込んだカリンがゴーレムの腕を切り払い、アーティの体を蹴り飛ばした。
 「ッ!?」
嵐の外へと蹴り飛ばされたアーティは、しかし吹っ飛びながらも体勢を立て直した。
嵐の中がどうなっているかは分からない。――ただ言えることは、カリンが自分を助けたということ。
せめて彼女の無事だけでも確認し――
 「ッアーティ!! さっさと先へ行け! お前にはすべきことがあるだろうッ!!」
 「!!」
嵐の中から届いた声に、アーティは目を見開く。
そうだ、こんな場所で足止めを食っている暇はない。
一刻も早く、先に進まねばならない。ラグナロク発動まで、もう時間がない。
此処はカリンに任せて、行くべきなのだ。
 「……っ」
槍を払い、アーティは浮遊の力を持つ靴を脱ぎ棄て、裸足で走り出した。

270白猫:2008/07/05(土) 22:27:12 ID:W4Rh7kXM0


 「……それで、いい」
ガーゴイルの血飛沫を浴びたカリンは、左腕に突き刺さったガーゴイルの爪を引き抜き、笑う。
滴り落ちる血を拭い、カリンは剣を構え直した。
 「全く、私も落ちたものだ……人を、世界を守るなどとは、下らん」
自分を変えたのは、誰だろうか。
小さくは、ネリエルやルフィエ、アーティだろう。
彼らの生き方は本当に清々しく、影の世界で生きてきた自分が常に羨んでいた世界の、まさに体現だった。
だが彼らよりも――そう、ヴァリオルドの、あの四人の子供たち。
あの子たちと日々を暮らす内に、のんびりと一つどころで暮すことも、悪くないと思い始めていた。
それどころか、あの生活を守りたい――壊したくない。そう思ってすらいた。
 (……私も、ここまでかもしれんな)
嵐が晴れ、再び露になる数百を超える魔物の大軍。
二人でなんとか回せていたレベルの魔物達だったというのに、一人で――しかも手負いの状態では、まず間違いなく勝ち目は無い。
だが、尻尾をまいて逃げるという選択肢は、ない。
ここで逃げて万が一生き延びたとしても、"生きた心地"というやつがしないだろう。
自分のプライドはそれほど、安くはない。
 「さあ……来い、魔物ども」







 【『 ――竜巻堕落・旋風! 』】
 「うぉあっと!?」
同じく、イグドラシル最下層。
巨大な鎌を払い、少女の姿をした傀儡――サーレが巨大な白と黒の濁りあった竜巻を生み出し、放つ。
それを慌てて避けたカリアスの眼前に躍り出たプリファーの攻撃を杖で受け止め、[リビテイト]の力を加減し空中へと飛び上がった。
茶色い長髪と白いマントがはためくのも気にせず、カリアスは杖を回転させ魔力を溜める。
と、その背後に白髪の男が追いついたのを見、カリアスは空中でクルリと回転し、呟く。
 「『 ウォーターキャノン 』」
 【チッ!】
カリアスの"背中"から放たれた水の怒涛が、カリアスへと飛び掛かろうとしていたベルモンドへと放たれる。
その水の怒涛を大剣で受け止め、ベルモンドは地面へと下りていく。
と、今度は入れ替わるように跳んだサーレが、巨大な二本の鎌を掲げ、カリアスに向かって飛び掛かった。
そのサーレを見やったカリアスは、しかし突如リビテイトの力を弱めた。
突如失速したカリアスに目を見開き、サーレは空中で突如逆進して壁に鎌を突き刺し、止まった。
それに一拍遅れて、何処からともなくアネットがサーレへと飛び掛かる。凄まじく長い剣を構え。
それを不敵な笑みと共に見上げたサーレは、残った一本の鎌で鋭く、三日月形の衝撃波を放った。
迫り来る衝撃破を軽くいなし、アネットは返す手で無数の矢を生み出し、サーレへと全て打ち放つ。
その矢雨を見やり、サーレは鎌を壁から引き抜き、叫ぶ。
 【デュレ!!】
その言葉と同時に壁をぶち抜いて現れた巨人――デュレンゼルが、左手で矢雨からサーレを護り、右手をアネットに向けて振り上げた。
全ての矢がデュレンゼルの肌に弾かれたのを見、アネットは苦笑しながらも靴を黒く燃え上がらせ、その場から退避する。
が、

271白猫:2008/07/05(土) 22:27:40 ID:W4Rh7kXM0

 【[トリプル――アクセル]!!】
アネットの動体視力でも捉えられないほどの速さでその背後へと跳んだプリファーが、その右腕を背中へと食い込ませた。
バガン、と手甲と鎧のぶつかり合う音が響き、しかし双方、痛みの表情も苦しみの表情も見せない。
それどころか、瞬時に身体を回したアネットは剣を鋭く薙ぎ、プリファーの横腹を裂いた。
 【ッ――】
驚きに目を見張るプリファーに微笑み、アネットはカリアスへと叫びかける。
 「万年病人、早くなさい!」
 【ッハ! 逃がしゃしねぇッ!!】
空を往くアネットを睨み、白髪の戦士――ベルモンドが"壁を走り"、アネットへと斬り掛かる。
さらに、反対側からはプリファーがアネットへと拳を振り上げる。挟み打ちとは厭らしい。
それを見たアネットは空中でステップを踏み、ベルモンドの大剣を剣の腹で滑らせクルリとその背後へと回り込んだ。
自分の目の前に飛び込んできたベルモンドに舌を打ったプリファーは、その頭を踏みつけアネットへ飛び掛かる。
それを見やったアネットは、腰に差してあった短剣を抜いた。
そんな行動にもプリファーは何の反応も示さない。ただ、凄まじい速度で拳を繰り出していく。
その、僅かな残像が辛うじて捉えられるかどうかという速度の拳。それをアネットはほぼ直感と感覚だけで避け、受け、流す。

実際のところ、アネットの能力は既にほぼ完成してしまっていた。
この八ヶ月間、彼女が行った修行は――特に、何も。
のんびりとヴァリオルド邸でお茶を啜ったり、掃除を手伝ったり、部屋の模様替えをしてみたり、カリンを連れてブリッジヘッドまで買い物に行ってみたり。
"修行"というより"長期休暇"に近い。腕も、磨くというより鈍らせているようなものだった。
だが、それでもアネットは四人の傀儡を相手に戦い、余裕すら見せている。
彼女は特別な強化術などは持っていない。そのはずなの、だが。
 〈ヴァリオルドで戦ったときより――手ごわい〉
 〈コイツ――マジで人間かよ。どう見たって人外じゃねぇか〉
 〈私の[アクセル]を流すか……一体どういう身体をしているのか〉
 〈我の攻撃が、当たらぬ……〉
と、傀儡四人にある一種の恐れさえ抱かせるものだった。
アネットの隣へ舞い上がったカリアスは、荒い息で小さく言う。
 「万年病人言うな」
 「フフ……この戦いで生き延びられたら、そうね。考えてあげるわ」
そう言うが早いか、アネットとカリアスは数多くの通路の内、一つの道へと飛び込む。
あの道は、と目を見開いたサーレは、即座に思考を働かせ、叫んだ。
 【ベル! デュレはここに残って! プリっち、私と一緒に来て!!】
 【グ?】
 【俺に、残れだ……?】
 【…………】
首を傾げるデュレンゼルとベルモンドとは対照的に、逸早くその真意を理解したプリファーは、瞬時に壁を駆け上がって通路へと着地した。
同じく通路の入り口に舞い降りたサーレは、二本の鎌を二人に向け、指示を飛ばした。
 【ソイツ、よろしく】
そう言うや否や通路の奥へと消えた二人に、ベルモンドとデュレンゼルは頭に疑問符を浮かべる。
が、一瞬後。

272白猫:2008/07/05(土) 22:28:05 ID:W4Rh7kXM0


 「っはぁああああ!!!」
 【のぅあっ!?】
二人と入れ替わりに、天井をぶち破って二つの塊が二人の前に落下し、轟音と土煙を舞いあげた。
ギョッとするベルモントとデュレンゼルの眼前、地面に散らばる砂の塊が突如立ち上がり、人の姿を象る。
数秒も経たないうちにひ弱そうな男性の姿になった砂の塊は、頭を摩って二人に頭を下げる。
 【いやはや。ボロボロにやられております】
 【……なんだよ、アンドレか。脅かしやがって――エッッ!!?】
白衣の男、アンドレの姿にホッとしたベルモンド。
その丁度真横に、巨大な槍が突き刺さった。
一瞬遅れて大爆発を起こすその槍。その爆風に吹っ飛ばされ、ベルモンドは十数メートル吹っ飛び、壁に激突して止まった。
何だ、と身体を起こした、その眼前。
先の爆発の中心、白い槍が突き刺さり、クレーターのようになってしまった床に、一人の少年が舞い降りる。
紅色の髪、額と右頬を覆う形の奇妙な仮面。背を護るマントに巨大な全身鎧と、神殿騎士服。
左腕を護る、ビッグシールドほどの大きさの、三枚の刃が付いた盾。
ブレンティルで見たときとは少し風貌の違う、その少年――ネリエル=ヴァリオルド。
途端に湧き上がる闘争心に、ベルモンドは大剣を握る手の力を強め、地を蹴った。
 【ハッハァ! ちっとは面白そうなのが出てきたなァッ!?】
 「――!?」
凄まじい勢いで振り下ろされた大剣を、ネルは咄嗟に手に持った槍で受け止める。
踏ん張った両足にか、負荷のかかった床にいくつかの亀裂が入る。それを見、ネルは舌を打つ。
ビシ、と額に青筋が走ったベルモンドはしかし目を細め、両手握りの大剣にさらに力を込める。
さらに広がる亀裂に少し危機感を覚え、ネルはグングニルの力を僅かに抜き、その大剣を弾いた。
が。
 【[爆鎚]――ッ!!】
 「ック!?」
背後から振り下ろされた炎を纏った拳に、ネルは瞬時に横っ飛びに跳ね、その一撃を避ける。
轟音・爆発と共に床へと直撃したその拳に、ベルモンドは拳の主へと叫ぶ。
 【デュレンゼル! 邪魔すんじゃねぇッ!!】
 【悪い、が、コヤツは元より我とサーレの獲物――】
 【ホッホ……悪いですが、私はパスさせていただきますぞ。あなた方の戦闘は荒っぽすぎて身が保ちませんからなぁ】
ゴチャゴチャと喚き出した三人に目を細め、しかしネルはグングニルを構え直す。
グングニルを両手で握り、ネルは感覚で今の大体の時間に目星を付ける。
 (3時――でしょうか。後2時間あるかないか……此処でどうにかこの傀儡たちを倒すしかない)
と、
[先制攻撃]の範囲内に、一人の気配が入った。
こちらへとかなり速い速度で向かっている。そしてこの魔力は――

 (……"いける"、か?)
"この魔力"とは、初めての連携である。
だが、相手を信用して、やるしかない。
この一撃が決まらなければ、この後ネチネチと戦闘を続けられ、アトムが起動してしまう。
そうなれば、終わりである。
やるしかない。"彼女"を信用し、撃つしかない。
足の間隔を広げ、槍を投擲する構えを取る。
 【……アン?】
その構えに気付いたベルモンドが、ネルの方を向いて首を傾げる。
ネルを中心に、凄まじい魔力が渦巻いている。いつの日か見た女ランサーと同規模――いや、それ以上の魔力が。
だが。
 〈俺に魔術で攻撃しようってか……? 残念だが、俺にそんなモンは効かねぇよ〉
 「『 トライ―― 』」
瞬間、

   「『 ネオ・ライトニング=ジャベリン――!!! 』」

 【!?】
 (……来ました、か)
呪文の詠唱を中断したネルは、耳に入ったその言葉に笑みを隠し切れなかった。
途端、ベルモンド達の背後の壁をぶち抜き、蒼い稲妻の怒涛が押し寄せた。
何だ、と目を見開いたベルモンドとただ驚くしかないデュレンゼル、稲妻の怒涛にすら気付いていないアンドレ、
その三人に向けて稲妻の怒涛が押し寄せ、その姿を呑み込んだ。

273白猫:2008/07/05(土) 22:28:28 ID:W4Rh7kXM0

 【ッチィ!!】
稲妻の怒涛が自分に直撃する寸前、上空へと脱したベルモンド。
自分の眼下でアンドレとデュレンゼルが飲み込まれたのを見、小さく舌を打つ。
デュレンゼルはあの程度の雷ならばまだ絶えることはできる。だがアンドレは――恐らく、消滅する。
元々アンドレの能力は、身体が砂で構成されている。それだけ。
その核も、単に他の砂と同じく凄まじい小ささなだけで、攻撃に対する耐性を持っているわけではない。
ルヴィラィに作り直してもらうまで我慢しとけ、と心中でアンドレの精々の冥福を祈り、ベルモンドは壁へと着地し、大剣を突き刺した。

が。

 「『 ――トライ 』」
その前方で、いつの間にか飛び上がっていたネルが槍を構え、唱える。
それに気付いたベルモンドは、大声で怒号を上げた後大剣を引き抜き、構えた。

   「『 デントッッ!!!! 』」

呪文と共に放たれたグングニルが、ベルモンドへと一直線に飛ぶ。凄まじい量の魔力を引き連れて。
その怒涛は、しかしベルモンドの剣により吸収される。以前のブレンティルでの戦いのように。
これこそがベルモンドの力。どんな強力な相手の魔法だろうとも、それを吸収し、跳ね返す能力。

だが、ネルの[破槍]はその程度で防ぐことができるものではなかった。
 【……そう、いうことか】
観念したように、ベルモンドは小さく笑う。
その胸に突き立つ、白銀の美しい槍――グングニル。
自分を守るように構えた大剣を砕き、その槍は自分の核を――小さな人形を貫いた。
そういう、ことか。
 【手前は――そうなんだな、[名も無き最高神]……オーディンさんよ】
冷たい視線で自分を睨むネルに笑い、ベルモンドの体は稲妻の怒涛へと落ちていく。
傀儡、ベルモンド。余りにも呆気無い最期に、ネルは溜息を吐く。
 「[オーディン]……その名を口にできる者は、一体何人いるのでしょうね――」


 「やっぱフェンリルだった、か」
 「はい」
槍を番えて穴から入り込んだアーティは、部屋の中心でグングニルを引き抜いたネルに笑いかける。
感じていた忌々しい魔力は、もう辺りには感じない。どうやら自分たちの攻撃は成功したようだ。
 「アンドレ・ベルモンド両傀儡を撃破……デュレンゼルも恐らくは、致命傷を負っているでしょう」
 「そ……あの白髪男は、私の手でやりたかったけどね」
 「トドメはアーティさんでしたし、アーティさんがやったようなものじゃないですか?」
そんな、なんだか適当な返事に、アーティは少しだけ笑って辺りを見回す。
久々の[ライトニングジャベリン]、しかも技をアレンジし五回のチャージを行ったせいで、向こう側の壁は消し飛んでしまっている。
まぁ、床をぶち抜くよりはマシ。とアーティは頭をガリガリと掻いた。
 「ナイス攻撃でした」
 「そっちもね。この調子で行きましょ」
御互いに手を叩き、互いに武器を構え直す。
アーティがぶち抜いた壁から、ゾロゾロと魔物の群れが溢れ出している。感じられるだけで、百数十。
それを厳しい顔で見やり、ネルはアーティに言う。
 「アレ、任せられますか」
 「……さっさと行きなさい」
槍を払ったアーティに苦笑し、ネルはグングニルを番えて走り出す。
アネットとカリアスの通った通路へと飛び込み、全速力で駆け抜ける。

274白猫:2008/07/05(土) 22:28:56 ID:W4Rh7kXM0


……胸騒ぎがするのだ。



この先に、何か嫌なモノがある。



いったい、いったい、何があるというのか。



むかつく胸を抑え、ネルは狭い通路を可能な限り速く駆けた。








通路を抜け、再び凄まじく広い部屋へと入ったネルは、目の前の光景に目を見開いた。
目を見開いて、次に鼻を刺す凄まじい臭いに鼻を抑えた。
床に、サーレとプリファーが倒れている。サーレの方は血塗れの状態で、プリファーは左腕がもがれ。
その光景にも驚いたが――だが、その目の前。
 「遅かった、わね……ネリエル」
凄まじく巨大な何かが、アネットを足で踏み潰さんとしている。
辛うじてその一撃を剣で受け止めている状態だが――いったい、いったい、これは。
 「ごめ、んね――[白の魔術師]と私だけじゃ――こいつを、倒せなかっ――」

そのアネットの言葉が終わる、寸前。
凄まじい重量に耐えられなかった[黒懺剣]が、折れた。

剣が音を立てて折れる前に、既にネルは駆け出していた。
思考など働いていなかった。
ただ、"姉の死が訪れる"――その光景を、見たくなかっただけだった。
自分の可能な限り早く駆け、可能な限り遠く手を伸ばす。
もう見たくない。自分の大切なものが、砕かれる場面など。
ネルの右手がアネットへと届き、腕を握る――

 【――ダメですわ、お兄様】

寸前――止まった。
止まらされた。たった一言で。
一瞬後、巨大な脚が地面へと踏み降ろされ、鈍い音が辺りに響いた。
 【お兄様はお姉様なんて見てはいけない――私だけなの】
地面に跪いたネルのズボンを染める紅を見、声の主――セシェアはゆっくりとそこへ歩み寄る。
目を見開いてその脚を見るネルを愛おしげに見つめ、しかしこの数年の間に、その彼が他の者に奪われたことに強い憤怒を抱く。
あの女――ルフィエ=ライアット。
あんな女に、自分の愛しい兄を奪われたなど、有り得るはずが――ない。
 【なのに、今日もまた――私を見ないで】
 「…………セシェ、ア……?」

275白猫:2008/07/05(土) 22:29:24 ID:W4Rh7kXM0

焦点の合っていない目がようやくこちらに向いて、セシェアはネルに対する愛おしさが湧き上がるのを感じる。
狂っている――そう、狂っていた。
少女――セシェア=ヴァリオルドは、兄を慕い、兄を愛しく想い、既に[兄]として見ることはできなくなっていた。
巨大なあの足はズルズルと引きずられながら、どこかへと消え去っていく。だが、セシェアはそんなものに興味を抱かない。
 【はい……私です。お兄様、やっと……やっと、二人で暮らせるんです。ルヴィラィ様がきっと、素晴らしい新居を作ってくれますわ――】
 「――――ルヴィ、ラィ」
その単語に、ネルの体がピクリと動く。

此処は、何処だった?
       ――イグドラシルだ。

自分は、何のためにここへ来た?
       ――大量破壊兵器である[アトム]を破壊するために。

今失った大切な人は、どうして此処にいた?
       ――彼女が、自分の姉だから。


この戦いの発端は――誰だった?


   ドスッ

その音を、セシェアは最初理解することができなかった。
その音が、自分の胸から聞こえたことを理解するのに、半秒掛かった。
その音は、ネルの手に握られたグングニルからも聞こえたと理解するのに、二秒掛かった。
その音で、自分の胸がグングニルによって貫かれたのだということを理解するのに、五秒掛かった。
 「お前は――違う。セシェアじゃない」
だが、愛しい兄のその言葉を、理解することはできなかった。
 「セシェアは優しい子だった……誰よりも優しくて、誰よりも可愛い、僕のたった一人の妹だった」
"だった"――ネルがそう言うのを、セシェアは聞いていて、聞いていなかった。

ヴァリオルドへ向かう道中に魔物と遭遇し、殺され、
ルヴィラィに気まぐれに拾われ、傀儡として再び命を与えられ、
そして今、破壊の槍によってその命が燃やし尽くされようとしているのを感じ、戦慄いていた。
 「お前は――セシェアなんかじゃ、ない。お前はただの――名前すら持たない、哀れな傀儡だ」
立ち上がってグングニルを引き抜いたネルは、頬を伝う涙すら拭わず、冷たくそう言い放った。

本物のセシェアなら、アネットの死に何も感じないわけはなかった。
本物のセシェアなら、ルヴィラィに媚びるような言葉を使うわけはなかった。
例え彼女が本物のセシェアだったとしても――自分はこんな妹を、妹だと思うことはできなかった。
例え彼女が、自分が数年間探し続けていた愛しい妹だったとしても、自分の誇りだったあの姉を、愚弄することは許せなかった。
ドサリ、と地面へと崩れ落ちたセシェアは、一瞬後に凄まじい勢いで燃え上がり、煤すら残さずに、燃え尽きる。
彼女の断末魔をネルは聞いていて、しかし聞かないふりをしていた。
これで残った傀儡は――先の巨大な足の持ち主と、デュレンゼルの二体だけ。
"それよりも"。
 「……アネ、ット」
あんな一撃を受けたというのに、アネットはまだ人の形を保っていた。
だがあれほどの一撃で、生きている方がおかしい。事実、既に[先制攻撃]で彼女の気配を、感じることはできなかった。
安らかな表情で目を閉じるアネットの傍に跪き、そっとその手を取る。
血に塗れた、しかし白く美しいその手にそっと口付けし、ネルは小さく呟いた。

276白猫:2008/07/05(土) 22:29:47 ID:W4Rh7kXM0


   「……必ず、必ず勝ちます…………姉さん」


折れた黒懺剣の刃を腰に差し、ネルはゆっくりと立ち上がり、呟いた。
今こそ、使うべきだ……自分が使うのを拒み続けた、最後の力を。
 「『 エリクシル――[最終段階(ファイナル)] 』」
瞬間、
ネルを中心とした凄まじい魔力の渦が、突如部屋中を覆い尽くした。

地面に倒れ、動くことすらままならないサーレとプリファーは、その光景にただ驚くことしかできなかった。
 〈な、ん――なんだ、あれは――〉
 〈ネル、ぽん……〉
既にネルの体は、直視することができないほどの光で包まれていた。
と、そんな光の中。

奇麗に整えられたネルの紅色の髪が、突如伸び出した。
ゆっくりと、ゆっくりと髪の長さが伸び、脇の辺りまで伸びたところで、ようやく止まる。
今まで幼さの残っていた顔からそれらが抜け、ひたすらに冷酷な[戦人]の表情へと、変わる。
今まで背を護るように広がっていた[深紅衣]も変化し、その体全体を覆うローブへと変化した。
そして、グングニル。
グングニルは突如紅色の炎に包まれ、その形を[フィルルム]の姿から、より強力な[ランス]の姿へと変わった。

先までとはまるで違う魔力の塊――まるで"生きた傀儡"を見たような錯覚に陥り、サーレとプリファーは恐怖する。
巨大なランス――グングニルを払い、少年――否、青年は、地面へとゆっくりと降り立った。

 「ようこそ僕へ……改めて名乗りましょう、僕の名は――



   ネリエル=リマ=オーディン――"名も無き最高神"」


世界最古の神話とも呼ばれる[開闢神話]。
その開闢神話において、"名も鳴き最高神"――[オーディン]の書き出しは、こう綴られている。

   《人がその名を口にすることは、この世界の創造主たる彼に対する冒涜とされていた。
   その名を口にすることができるのは、彼が従えていた[ワルキューレ]たちだけであり、
   その[ワルキューレ]たちもまた、人々にとってしては神にも等しい存在だったのだ。
   故に人々はその名を口にすることはできず、ただ彼のことをこう呼び、崇めた。

   曰く、"名も無き最高神(オーディン)"》







同刻、スバイン要塞。
そこで小さく酒を啜っていた老人――"老師"は、小さく微笑みながら呟く。
 「エリクシルの[最終段階]……かー。まさかアレが[神格化]、しかも"名も無き最高神"へと神格化するものだったとはねぇ。
 未完成のエリクシルで創られた[パペット]と[マペット]……なるほど、グングニルであの二つの人形を破壊することができるとは、そういう意味か」
再び酒を啜り、老師は自分の右腕を見やる。
修行の最終段階においてようやく目覚めた"それ"は、老師の想像を遥かに超えたものだった。
回避行動どころか、気付くことすらできず――ネルの一撃は、自分の腕を砕いた。
 「カナリア――君の子は、強くなったさ……たぶん、フランテル東大陸でイッチバンだろうな」
老師――ラサリア=アラスター=ヴァリオルドはもう一度酒を飲み、スバインの空を眺める。
いつの日か兄、スティリアと見た夜空は、もっと澄んでいただろうか。
それとも月日を重ね、汚れたのは自分の目なのだろうか。

277白猫:2008/07/05(土) 22:30:19 ID:W4Rh7kXM0


イグドラシル、上部。
 「『 ルリマ・ウルトラノヴァ! 』」
 「『 デリマ・バインドブレイズ 』」
互いの術同士が激突し、金色の光と黒の光が混ざり合い、大爆発を起こす。
余りに巨大な爆発に幾分か吹っ飛ばされたルフィエは、しかしクルリと回り、着地した。
その爆発を見据えた、ルフィエの反対側――顔に無数の傷を走らせた紅色の髪を持つ女性――ルヴィラィ=レゼリアス。
ルヴィラィは即座に鞭を払い、脇の石柱に絡ませるや否や、その石柱を、
 「――はいやぁッ!!」
ルフィエに向けてぶん投げた。
それに目を見開いたルフィエは、しかし鋭く腕を払い、石柱を光弾で爆砕した。
その爆発の合間に間合いを詰めていたルヴィラィは、唄を口ずさみながら鞭を払う。その鞭に炎の力が宿り、ルフィエは戦慄した。
 「『 カステア・バインドブレイズッ!! 』」
デリマのように拡散しない、凝縮されたバインドブレイズ。
それに危機を感じたルフィエは、しかし逃げずに両手を掲げ、叫んだ。
 「『 スーパー、ノヴァ! 』」
ゴシャン、と光の壁に炎が激突した音が、部屋全体に響き渡る。
辛うじて攻撃を受け切ったルフィエは、しかしそこからギリギリと押し込んでくるルヴィラィの力に顔をしかめ、術の力を強める。
速攻の一撃で決めるつもりだった攻撃を受け切られたルヴィラィは、しかし無理やりにその一撃を押し込み、力勝負に持ち込んだ。
両者の魔力が互いに弾け、燃え上がり、燃え盛り、鬩ぎ合う。
徐々に押され始めたことを感じたルフィエは、唄を数度挟みつつノヴァを数個、生み出した。
 「……ちっ」
それを見て舌を打ったルヴィラィは、躊躇無くルフィエから離れ、放たれたノヴァを全て鞭で弾いた。
両者、全く譲らない攻防。だが、やはり地力の差か、ルヴィラィが僅かに押し始めている。
それに少しだけ恐怖を覚え始めたルフィエは、心中で言う。
 (後どれくらい!?)
 〈一時間……あるかないかです。このままネチネチ続けられては負けます〉
勝負自体に決着は付かないだろう。それほど実力自体は拮抗していた。
押されているのは自分の焦り――"タイムリミットがある"という、こちらの圧倒的に不利な点。
既に戦況は勝っている、はずなのである。それなのに、彼女と、その後ろにいるマペットの存在が、"勝っているのに勝っている気分がしない"という心理状況を生み出していた。
 (決める……決めないと、負ける)
 〈ええ――行きましょう、[三人唱]〉

 「ッ!?」
ルフィエの紡ぐ旋律が、突如変わった。
一つの口から高音、低音、更に男声までもが紡がれている。

一体、何だというのか? いったい、"あの唄"は何だ?
半歩下がったルヴィラィは、しかし唄を紡ぐことを止めない。
自分も唄の第二段階である[二人唱]程度なら紡ぐことはできる。今まで互いに唄っていたのはそれなのだから。
だが、ルフィエのが突然歌い出した唄は――今までの[二人唱]では、ない。
一つの口から三つの声が紡がれる、言うならば[三人唱]。
 「『 ――ジャッジメント 』」
ルフィエが左手を払った瞬間、無数の十字架がルヴィラィを取り囲むように出現――一瞬後、凄まじい速度でルヴィラィへと殺到する。
それを見たルヴィラィは、しかし鞭を鋭く払い自身を取り囲むような、巨大な炎の壁を造り出した。
全ての十字架が炎の防壁へと突き刺さり、勢いが幾分か削がれ……しかし、止まらない。
徐々に押し込まれてくる十字架に不敵な笑みを浮かべ、ルヴィラィは叫ぶ。
 「無駄よ、ルフィエ! この私は"殺しても死なない"!!」
ルヴィラィの言葉を聞き、しかしルフィエはそれがハッタリでないことを察する。
彼女の笑みは余裕のあるものに変わっていた。自分が圧倒的に押しているはずだというのに。
 「……例えそうだとしても、」
そのルフィエの言葉に、ルヴィラィは炎の防壁を強めつつも目を細める。
ルフィエの詠唱が中断したからか、ルヴィラィを囲む光の刃が、僅かに揺らいだ。

 「こうでもしないと、私の気が……収まらないの」
そして、一閃。

ルヴィラィの防壁を難無く打ち破り、無数の十字架が彼女の体を貫いた。
全ての十字架がルヴィラィに違わず突き刺さり、悲鳴すら上げずに彼女は崩れ落ちた。
 「ケホッ……行くよ、マペット」
 〈――はい〉
三人唱で歌うことができるのは、せいぜい後三度。しかも、一度歌う度に喉に負担が掛かってゆく。
それを分かってて、しかしルフィエはもう一度[三人唱]の歌声を紡ぐ。
ルヴィラィを打ち倒し――全てを、終わらせる。否、始まらせなければならない。
その眼前で、血みどろの姿で、しかし余裕の笑みを浮かべたルヴィラィが立ち上がった。

278白猫:2008/07/05(土) 22:30:50 ID:W4Rh7kXM0


 【ヨウコソ、ト言ウベキカナ……ネリエル=ヴァリオルド。ヒヒッ】
 「…………」
イグドラシルの最奥部、最後の最後まで無駄に広い部屋、そこへ入ったネルは、早速嫌な声を聞いた。
嫌そうに振り向いた先に佇んでいたのは、巨大な――そう、巨大な四肢を持った骸骨頭の魔物――デーモン。
先に見たあの巨大な脚がそのデーモンのものだと理解し、ネルはすぐさま槍を構えた。
が、
 「――――ッ!?」
突如感じた凄まじい気配に、ネルは咄嗟に床を蹴り、逆進した。
一瞬遅れて、ネルが今まで立っていた床に数本の斧が轟音と共に突き立った。その斧に目を細めてから飛んできた方向を睨み、
ネルはその場に、硬直した。

 【フン――下らん。貴様程度の男が此処まで辿り着けたなどとは――俄かに信じ難い】
ネルの目の前に立っていた青年――銀髪のアサッシン、クレリア=ヴァリオルドはゆっくりと斧を構え、唾を吐いた。
 【この傀儡、[マジシバ]の手を煩わせるとはどういうことだ? 絡繰人形】
 【ヒッヒッヒ……招キ入レタノサ。君ノ能力ヲプレゼントシテアゲタクテネ】
パペットの言葉に鼻を鳴らしたクレリア姿の傀儡――マジシバは、ゆっくりと斧を構え、首を傾げた。

途端、

突如その輪郭が崩れ、目の前で再び組み上がり――次の瞬間、目の前には銀髪、碧眼の容姿端麗な男性が立っていた。
その姿に瞠目し、ネルはしかし槍を構え直す。
落ち着け。
落ち着くんだ。
深呼吸をし、ネルは冷や汗を拭いグングニルを払う。
 「……成程、数が合わないと思ったらそういうことですか。"相手の嫌う姿"であるクレリア、"相手の敬う姿"であるカナリアへと姿を変える傀儡――恐らく後一つの姿は」
的確に傀儡の能力を見抜き、ネルはそこで言葉を切った。
彼の目の前で歪にねじ曲がった体が、バキンゴキンと嫌な音を立てながら組み上がる。
自分の最も愛しい人の姿へと――ルフィエ=ライアットの姿へと。
いつの間にかクレリア、カナリア、ルフィエの三人に囲まれていたネルは、しかしグングニルを払って目を閉じる。
力が湧いてくる――巨大な、巨大な力が。
全てを壊す、或いは創る、莫大な、無限とも思える力が。
その力がある意味では、彼に自信と平常心を与え、混乱を防いでいた。
 「さあ――来なさい、創られし人間、傀儡マジシバ。僕が相手です」
グングニルを払い、ネルはゆっくりと体勢を立て直した。
その周りで、クレリアは斧を、ルフィエはワンドを、カナリアはレイピアを構え、止まった。
そして、一跳。
鋭く空中へと打ち上がったネルへと、ルフィエが数発のノヴァを放った。
そのノヴァを[深紅衣]の一払で打ち消し、ネルは空中でグングニルを旋回させ、叫ぶ。
 「『 ――ラジアルアークッ!! 』」
槍を媒体に召喚された巨大な稲妻の柱が、地の三人へと迸る。
が、
 【――『 [絶対聖域] 』】
カナリアを中心として発生した巨大な庭園が、その稲妻を受け止め、呑み込み――?き消す。
彼の持つ最強の能力、エリクシル第三段階[絶対聖域]。
あの聖域の中ではほぼ全ての術が吸収・無効化されてしまう。しかも聖域の中に存在する無数の剣や天使を模った石像は、聖域内の任意のものを攻撃する能力を持っている。
魔術師ならば相手にすらならない、剣闘士でも苦戦を強いられる、効果範囲は一つの村を囲めるほど――と、カナリアの誇る最強術に足る能力だった。
だが――所詮は、[第三段階]の力。[最終段階]へと移行したネルにとって、あれは何ら脅威ではない。
地へと着地したネルは、即座に槍を構えて聖域の中へと突っ込む。
途端に襲い来る剣や天使を全て打ち払い、その中心に佇むカナリアへと飛び掛かった。

279白猫:2008/07/05(土) 22:31:30 ID:W4Rh7kXM0
と、その横。
 【[ダブルスローイング]】
 「ッ!」
突然放たれた八本の斧を見、ネルは[深紅衣]を盾状に広げ、それらを受け止める。
その眼前でレイピアを構えたカナリアが腕を振り上げ、そのレイピアが閃光に包まれた。
 (来るか!?)
 【『 ホーリークロスッ!! 』】
グングニルを構えたネルの前、閃光の包まれたレイピアから放たれた鋭い十字斬。
並の冒険者なら防御ごと消滅せられるほどの威力の攻撃。それをネルはグングニルで受け止めた。
自身の足が地面に幾分かめり込み、しかしその一撃を受け切ったネルは不敵に笑い、言う。
 「どうしました? これで終わりですか?」
 【……"いや"】
意味ありげな言葉を呟いたカナリアに目を細めたネルは、
一拍後、瞬時にグングニルを弾いて飛び退った。
その眼前に巨大な光弾――スーパーノヴァが着弾するのを見、ネルは一旦聖域の外へと脱する。
空中へと打ち上がったネルへ、数人に分身したクレリアが飛び掛かる。全員が全員、赤銅色の斧を構えている。
 「ふん」
それを鼻で笑ったネルは、飛び掛かるクレリアを全て薙ぎ払い、打ち崩し、斬り裂いてゆく。
攻撃を受けた分身たちは空中で不格好に回転、音もなく空気と同化、消滅した。
その分身たちの向こう、斧を構えたクレリアはネルへと向けてそれを放ち、同時に叫ぶ。
 【『 アトラス、スローイング 』】
途端、投擲された斧が十数倍に膨れ上がり、数メートルもの直径となってネルへと飛ぶ。
が、それを逃げず見据えたネルはグングニルを繰り、小さく呟いた。
 「『 万華鏡分身 』」
ネルの体から生み出された無数の分身、それが巨大な斧を取り囲み、グングニルを構える。
そして、斧が分身の生成から一歩も動いていなかったネル、その本体を貫く寸前。
 「――はいやぁっ!!」
十数人のネル、その手に握られていたグングニルが斧を貫き、[爆風]により爆砕した。
本人にしてみればなんということもないただの[突き]、だがそれを全方向から、爆発のおまけつきで喰らえば粉々になるのも無理はない。
その光景を無表情で眺めていたクレリアは、しかし追撃せずに退く。接近戦では、まず勝ち目はなかった。
が、こちらにも"そういう相手に対するプロの魔術師"はいる。
 【『 ――サルスト・ウルトラノヴァ 』】
地の聖域、そこから放たれた無数の光弾。
それをネルはルフィエのウルトラノヴァ、その強化術である[サルスト]だと瞬時に看破する。
どれもこれも自分の見たことのある術ばかり――やはり、彼らは"自分の知る姿で自分の知る術"しか使ってこない。
ルフィエの新技を見ていなくて良かった、と情けない安心感を覚えつつ、ネルは迫り来る無数の光弾を全ていなし、避けてゆく。弾の去り際にそれを[深紅衣]で貫くことも忘れない。
ルフィエのノヴァ系統の術は[絶対命中攻撃]……それを、彼は忘れていなかった。
その周りで分身たちが光弾に貫かれるのを感じ、しかしネルは何の感情も抱かない。
ルフィエ相手に十数人の分身を操りながら戦うのはほぼ不可能。せめて分身を破壊する労力を使わせなければならない。
グングニルを回転させ最後の光弾を弾き、ネルは額に浮かぶ汗を拭う。
やはり古代魔法の威力はかなりのもの、[第三段階]のままでは恐らく術を防ぎきれず、何発か食らってしまっていただろう。
[最終段階]により統御する魔力の絶対量が格段に上がっているのがせめてもの救い。"名も無き最高神"の力を卸している間ならば、[ルリマ]クラスを撃たれない限りルフィエの存在、それは脅威にはならない。
カナリアは聖域を展開している、ルフィエは聖域から出てこない、となれば。

280白猫:2008/07/05(土) 22:31:58 ID:W4Rh7kXM0
ネルは地へと下りてゆくクレリアを睨み、グングニルを肩へと番える。
聖域に入られると拙い。三人にあそこへ篭られれば、こちらも"アレ"を使う羽目になる――それは、なんとしても阻止しなければ。
グングニルを中心に白い光が渦巻き、ネルの視線がクレリアを完全に、捉えた。
 「『 ……トライ、デントッ!! 』」
右腕から放たれた凄まじい投擲、白き光を帯びたその投擲は、一寸違わずクレリアの背を打ち抜いた。
同時に[爆風]が発動したグングニルに、ネルは少しだけ目を細める。
ネルは三つあった気配の内一つが消えるのを感じてから、地面に突き刺さったグングニルの元へと下りた。
地面深く突き刺さっているグングニルを引き抜き、ネルはゆっくりと聖域を睨む。
と、
その聖域が、突如光に包まれたかと思うと一瞬後に霧散……消滅する。
 「……ようやく鬱陶しいその術を解く気になりましたか」
グングニルを構えるネルの前で、レイピアを払いカナリアが対峙する。
そのカナリアの背後に浮かぶルフィエは見もせずに、ネルはゆっくりと槍の切っ先をカナリアへ向ける。
 「父の姿を映し、父の術を使うとは何とも面倒な傀儡です……ですが、やはり偽者は偽者」
 【なんとでも言うがいい。我の"1/3"を倒したところで、どうせ貴様は勝つことは出来ない。"時間的な問題"でな】
その言葉に、ネルは目を見開く。
拙い。この傀儡を相手にし、時間の経過を忘れていた。
恐らく残り時間は一時間も無い。精々あって四十分――こんな短時間でこの傀儡とパペットを倒し、アトムを止める――こんなことが、本当にできるのか。
答えは、決まっている。
 【貴様はパペットを倒すどころか……我を倒すことすらできん。ここで敗北し――世界と共に消え失せる。それだけだ】
 「…………ッ」
今更コイツを無視してパペットと対峙したところで、ルフィエ・カナリア・パペットを相手に勝てる見込みは少ない。[最終段階]へと移行したからといっても、相手は[四強]に匹敵する。しかもそれが三体となれば……
 【アガクノハ良イケド――ワンテンポ遅イヨ、フェンリル】
 「!?」
振り向いたネルの先、デーモン姿のパペットが、二十センチほどの黒水晶を手にしていた。
そこに渦巻いていた魔力に少しだけ意識を向け、ネルは途端に苦虫を噛み潰したような顔になった。
凄まじく膨大な魔力が、あの黒水晶に渦巻いている。恐ろしいほど膨大な魔力が。
あの水晶――というより、ほぼ卵に近い宝石を見やり、ネルは気付いた。
 (まさ、か……"レッドストーン"? アリアンで強奪したものか!?)
二月の上旬だったか、アリアンの地下遺跡から強奪された赤き宝石――レッドストーン。
あれほど美しい光を放っていたというのに、今となってはその光は、ドス黒い、濁った色に変わってしまっている。
 【パペットノ対内ニ在ル[エリクシル]トレッドストーン、ソシテ傀儡タチガ滅ボシタ者ノ魂ヲ詰メタコノ黒水晶――[アトム]。ジキニ、必要ナ魔力ハ集マリ、[ラグナロク]ハ発動スル】
その言葉を聞いた途端に飛び出したネルは、しかし目の前で光る無数の光弾、十字の斬撃に目を見開いた。
咄嗟に衣を払うも一泊、間に合わない。無数の光弾と十字斬に押し返され、ネルはパペットと反対側の壁に激突した。
 「――――ッ」
痛みに顔をしかめ、口の中に広がった鉄の味を吐き出す。
が、どうやら相手は休ませてすらくれないらしい――自分の体が白い光に包まれるのを感じ、ネルは戦慄した。
 (ここで[絶対聖域]の展開――ですか。このままじゃ)
ネルの心中を理解したのか、デーモン姿のパペットがバカにするように、しかし真面目に言う。
 【ドウダイ、ルヴィラィノ仲間ニナルツモリハナイカイ? オ前ナラ、ルヴィラィノ右腕ニナレルヨ……ルヴィラィモキット許シテクレルダロウ】
 「……例え可能性は無くても、絶対にそんなことはしません」
パペットの言葉を切り捨て、ネルはグングニルを構え直す。
そう。例え勝ち目のない戦いだとしても――自分は、諦めない。諦めるわけにはいかない。
護るのだ。そう、護るために、自分という存在はあるのだから。
 「僕は世界が滅ぶかお前達が滅ぶかその時まで――戦うことを、止めはしません」




   「それでこそ……ネリエルさまです」

281白猫:2008/07/05(土) 22:32:22 ID:W4Rh7kXM0


その言葉と、同時。
巨大な姿のパペット、その四肢を無数の光り輝く十字架が貫く。
同時に出現した凄まじく巨大な鎚、それがパペットの胴体を捉え、そのままの勢いで吹っ飛ばした。
凄まじい轟音と共に壁を突き破り、隣の部屋へ吹き飛んだパペットに、ネルとマジシバは目を見開く。
その、二人にして三人の前に舞い降りた、金色と白の美しい翼を羽ばたかせる一人の天使。
追放天使ではない――"そうであるはずがない"と確信するほど美しい、その姿。
金色の髪を靡かせ、天使でありビショップであり、アウグスタの現最高責任者でもある少女――リレッタ=アウグスティヌスが、ゆっくりとネルの隣へ舞い降りた。
 「……リレ、ッタ…?」
半ば呆けたように呟いたネルに、悪戯っぽい笑みを浮かべたリレッタがそっと言う。
 「あなたなら、きっとそう言ってくれると思いました。ネリエルさまなら、きっと」
その言葉と感じる魔力に、ネルは狼狽しながらも小さく頷く。
だが、今一つ状況が飲み込めない。
リレッタは[邪道解放]した自分によって翼を貫かれたはず――それなのに、どうして。
そんなネルの疑問に気付いたのか、リレッタは困ったようにそっと言った。
 「詳しいことは話せませんけど……天上界が、ルヴィラィ=レゼリアスを無視できなくなった、ということです」
 「?」
 「簡単に言えば、天上界が私にルヴィラィの討伐を命じた。その代りに、私はもう一度空を往く力と、"もう一つの力"を賜ったんです」
そう言うが早いか、リレッタはフワリと空中を舞い、両手を広げる。
先から襲いかかってくる光弾や剣たちの全ては、リレッタの展開したサンクチュアリによって完全に阻まれている。ネルですらあの二つにかかられると面倒だったというのに、それをリレッタは、まるで裁縫をするかのように簡単に。
 「――ネリエルさま、パペットは私がなんとかします……あなたは傀儡を早急に破壊、ルヴィラィを討ってください」
今まで聞いたことも無いリレッタの冷静な声。
それに強かな笑みを浮かべたネルは、鋭く槍を払いサンクチュアリごと天使の人形共を吹き飛ばす。
何かのスイッチでも入ったのか、ネルはグングニルをまるで棒のように繰り、言う。
 「今は時間が惜しい……リレッタ、できれば君の力でパペットを撃破――或いは捕縛しておいてください」
 「厳しいですね……私の力が持たない可能性の方が高いです。長期戦に持ち込まれると逆にこっちがやられかねないかもしれません」
 「……負けは許されません。少なくとも、僕たちとルフィエには」
そう言い、ネルはグングニルを払い聖域の濃い、中心部へと消えていった。
その後ろ姿に途方もなく焦がれたリレッタは、しかし頭を振って目を閉じる。
自分もやらねばならない。神々に賜ったこの力を、今こそ開放すべき。
 「どうか私に、力を――『 ディバインアーチ=エレメント 』」









 「少しずつ威力が弱まってきてるわよ、ルフィエ――『 バインドブレイズ 』」
 「ッ――『 スーパーノヴァ!! 』」
ルヴィラィが炎を纏わせた鞭を払うのを見、ルフィエは咄嗟に巨大な光弾を生み出し、放つ。
が、その光弾は鞭に打ち払われ、その炎を幾分か逃しながらも相殺すらできない。
咄嗟にその鞭を?い潜ったルフィエは、先より強まってきた喉の痛みに、徐々に危機を感じ始めていた。
それはそうである。起動戦闘を行いながら唄を紡ぐということは、凄まじい魔力と精神力を必要とするほか、長時間唄い続けるために喉を酷使することになる。
簡単に言うならば、普通の人間の喉で拡声器を使った声と同じ音量を引っ張りだすようなものである。[神格化]で多少は融通が利いているとしても、長時間唄を歌うということはほぼ自殺行為に近い。
先も詠唱が途切れがちになり、バインドブレイズを一撃、左腕に喰らってしまっている。もう左腕はほとんど動かない。
片腕だけでルヴィラィと戦い、唄も[二人唱]すら満足に紡げない。これではもう、勝負は決まったようなものだった。
だが、戦いをやめるつもりはない。
例え喉が潰れようとも、戦うことを止めはしない。
もう逃げない。絶対に――絶対に、逃げない。
 「どのみち使えて後一撃でしょう? ルフィエ。これで仕舞にしましょう」
鞭を振り上げたルヴィラィを睨み、ルフィエは一本だけの腕でワンドを構える。
 (勝つ……勝って、みせる――!!)
 「『 デリマ――バインド、ブレイズ 』」
 「ッお願い、持って――私の声!!『 ルリマ・ウルトラノヴァ!! 』」
序盤に打ち合ったものとは桁違いの大きさの火柱と閃光が、部屋中を包み込み、照らす。

ルヴィラィの姿もルフィエの姿も、紅色と金色の光に包まれ――そして、見えなくなった。

282白猫:2008/07/05(土) 22:32:56 ID:W4Rh7kXM0



この光の中、ルヴィラィだけは見ていた。

光り輝く白銀の槍が、こちらに向けて放たれたことを。

その槍が自分の腕を打ち抜き、鞭と術ごとその腕を消滅させたことを。

それと同時に一人の青年が、少女の元へと駆け寄っていったのを。




デュレンゼルは向かう。
もうすぐ傍に、ルヴィラィの魔力を感じる。
あそこまで、あそこまで行けば、もう一度自分は戦える。
恐怖していた。サーレの気配が、どんどんどんどん小さくなっていく。
このままでは――死んでしまう。確実に。自分が、助けねばならない。
自分に様々なことを教え、一緒に様々な事をした、あの小さな少女を、助けなければ。

そんな考えを巡らせながら通路を飛んでいたデュレンゼル。
その人形を、何処からともなく現れた触手が絡め取った。




 「――ッハ、ッハハハハハハハハハハハ!!!!」
ルフィエへと駆け寄ったネルを見やり、ルヴィラィは大声で笑い声を上げる。
彼は、自分を狙っていたはずだ。傀儡マジシバを倒し、すぐそこまで来たのは知っていた。
知っていて、ルヴィラィは何の対処もしないという賭けに出た。
世界を選び、少女を見殺しにするか。
少女を選び、世界を見捨てるのか。
そして――彼は、少女を選んだ。
残り少ない魔力の一部を込めた[破槍]を撃ち、自分のデリマをぶち抜いたのだ。
彼の[破槍]は、核を"とある場所"に隠しているルヴィラィであろうが、不死の者であろうが、平等に[破壊]をもたらす。
彼のあの術に貫かれていれば、例え核を別に隠しているとはいえ、確実に消滅していた。
それを彼も知っていて、しかし彼は自分の利き腕――つまり、"少女を殺さんとしている部位"を破壊したのだ。
と、笑い声を上げていたルヴィラィの背後に髑髏――パペットが舞い降りる。
 「パペット? 丁度よかったわね、ラグナロクまで残り何――【魔力ガ足リナクテサ……モラウヨ】
ルヴィラィの言葉を遮った、パペットのその言葉。
そのパペットの言葉に、ルヴィラィの笑みが、止まった。

ルヴィラィの笑い声に薄らと目を開けたルフィエ。それに気付いたネルは彼女の体を抱き起こし、ギュッと抱き締める。
 「すみません、ルフィエ……僕は」
泣きそうになっているネルの顔を見やり、ルフィエは全てを悟った。
ネルが、ルヴィラィを倒す最初で最後のチャンスを狙い、そしてそれを見つけたということを。
そしてそれを見過ごし、自分を助けるためにそのチャンスを棒に振ったということを。

どうして。
どうして彼は、こんなにも優しいのだろう。
怒ってないよ、と知らせるために、ルフィエは右腕でネルの手を取り、微笑む。
まだ、終わったわけではない。
まだ信頼のおける仲間たち、そして大本命の[最終段階]へ移行したネルがいる。全員で叩けば、まだ可能性はある。
 「ネ……ル、くん? 大丈夫だ、から、……ルヴィラィ――を、倒して」
 「……はい、必ず」
返す手で回収したグングニルを払い、ネルは片手でルフィエを部屋の隅へと寝かせる。
槍を携えて戻ったネルはルヴィラィに向き直り、

固まった。

283白猫:2008/07/05(土) 22:33:24 ID:W4Rh7kXM0

 「……ッ何、を」
左腕だけで触手を堪えるルヴィラィは、ケラケラと笑うパペットに低い声で言う。
先の[デリマ]でほとんどの魔力は使い切ってしまっている。精々後一発[バインドブレイズ]を放つ程度。
だが神器を破壊され喉を締め上げられていては、十分な威力を放てない。
触手を絡めていたパペットはルヴィラィの眼の前まで浮かぶと、途端に笑うのを止めた。
 【元々オ前ノ馬鹿ゲタ企ミニ加担スルツモリナンテナカッタヨ……。当初ノ目的ハ今デモ変ワッテナイ……複数ノ[エリクシル]ヲ一挙ニ手ニ入レルコトナンダカラネ】
 「……契約、はッ…切れていないはず、よ」
メキメキと締め上げる触手に息を詰まらせながらも、しかしルヴィラィはそう言う。
そう、海底の深みからパペットを取り上げたときに、自分はパペットと契約を交わしたはずだ。
その言葉にケラケラと笑ったパペットは、触手の力をさらに強めながら言う。
 【契約ナンテ最初カラ結ンデイナイヨ? 勝手ニオ前ガソウ思イ込ンダダケ……】
 「…………ッ」
身体全体の骨が拉げるのを感じ、ルヴィラィは唇を引き絞る。
これは、どうこう言っている場合ではない。
 「『 ッバインドブレイズ!! 』」
体内の魔力を瞬時に集め、自身を縛っていた触手を焼き払う。
が、離れ際にパペットの触手が一本鋭く薙がれ、その身体を貫いた。
 「ッ」
下腹部を貫く鋭い痛みに目を見開き、ルヴィラィはパペットを睨む。
しまった。
パペットは、既に自分の命を握っている。
あの髑髏の中に隠した自分の核を――恐らくパペットは、もう破壊してしまっている。
核と身体はほぼ完全に独立しているため、核が破壊されても、再生と回復は不可能になるが自分が死ぬことはない。
いわば彼女の核は"復活の巻物"に近い。致命傷を受ければ自動的にそれが消費され、再び息を吹き返す。
それを破壊され、自分はもうただの人間と変わらない。そこにパペットの触手が腹を貫いたのだ。
"魔力を失った魔術師"が、大陸一つを滅ぼした化け物に勝てるわけが、ない。


 「……」
ルフィエを庇うように立つネルは、突如乱入してきたパペットに目を細める。
リレッタの魔力はかなり上の階で感じる。恐らく撒かれたのだろう。
以前見たときとは雰囲気が全く違う。しかも今、自分の目に狂いがなければ――ルヴィラィに致命傷を与えた。
一体どういうことなのか。とにかく、隙を突き双方を倒すだけの威力の[破槍]を、いつでも撃てるよう体勢を整える。
ルフィエの、あの掠れた声ではもう唄による援護は期待できない。さて、どうすべきか――
 〈ネリエル君〉
 「わっ」
突如頭の中に響いた声に、ネルは普通に驚いてしまう。
それに苦笑しながら、ルフィエは胸に掛かった十字架――マペットを取り出した。
 〈ネリエル君、使えるようになっているはずです。グングニルの"最後の一撃"を。今がチャンス……パペットが[最終形態]を発動する前に仕留めて下さい〉
最後の一撃。
その言葉に目を細めたネルは、しかし槍を肩に番えてそれに答えない。
ただ、マペットの言葉で気になった単語だけは引き出す。
 「[最終形態]、とは?」
 〈以前お話した通り、私マペットと奴パペットは、エリクシルを核に造られた人形です。エリクシルはその段階によって強さを変える。
 パペットのエリクシルは現在[第四段階]……つまり[邪道解放]されている状態なのです。邪に魔力を求めている。
 奴もかつては[最終段階]。完成されたエリクシルを身に秘めていましたが、古代民との戦いによりそこまで力を落としてしまった――。
 故に大陸一つを滅ぼしてでも魔力を求め――結果、聖者と私によって海底深くへ落とされたのです。それをあの呪術師が発見し、どうやらパペットとイカサマの契約を結ばされた……。
 恐らくパペットの目的は、あの水晶に込められた魔力を吸収し[最終段階]へと移行し――そして我々を破壊、完成されたエリクシル3つを手に入れるつもりなのでしょう。それさえあればこの世界をどうにでもできるようですから……。
 天上界があの天使を再び遣わせたのもそれが理由でしょう。天地創造の石が複数にでもなれば、天上界すらも破壊しかねない〉
 「……つまり、[最終段階]へと移行させるなということですね」
 〈その通りです……"彼"を絶対に[最終段階]へ移行させてはならないのです〉

284白猫:2008/07/05(土) 22:33:53 ID:W4Rh7kXM0


マペットの言葉が終わった時、既にネルは大地を蹴りパペットへと飛び掛かっていた。
"最後の一撃"は使わない。撃てて一発なのだから、急いて撃つ意味はない。
ネルの突撃に気付いたパペットが即座に触手を放つが、ネルはそれを避け、斬り払い、爆砕し前進を続ける。
脇目に、地面へと倒れるルヴィラィを見やる。が、すぐに視線を外しパペットへと斬りかかる。
その髑髏を刃が貫く、その寸前にパペットはカタカタと笑い上空へと飛び上がった。無数の触手を連れて。
 【吸収スルツモリダッタ魔力ヲ消費サレタナンテイウ本末転倒ナ結果ニナルトハネ……ルヴィラィモトンダ大馬鹿ダッタヨウダネ。大人シク魔力ヲ分ケ与エテイレバ助ケテヤッタノニ】
そう言った途端、パペットは触手に絡めていた黒水晶。それを"喰らった"。
バリン、と呆気無く砕ける水晶に目を見開いたネルは、ふと異変に気づく。

揺れている。地面が。否――イグドラシル、全体が。
 (主が魔力を失って意識まで無くしたから――崩壊が起こっているのか!?)
そうネルが心中で推論を弾き出した瞬間、すぐ傍の壁に亀裂が走る。
と、その上空。
凄まじく巨大な"何か"が、ネルへと襲いかかった。
 「ッ!?」
一瞬反応が遅れたネルは、しかし咄嗟にグングニルを上空へと掲げる。
が、上空から迸ってきた"それ"は重く、強く、そして大き過ぎた。当然のように、崩壊を始めていた床をぶち抜き、ネルごと"それ"は階下へと落ちていった。



 「……な、に。今の」
目を見開いてその光景を見やっていたルフィエは、這々の体で立ち上がり呟く。
その胸の十字架――絶句していたパペットも、その声に意識を取り戻し言った。
 〈……マペットです。黒水晶に込められていた[アトム]を喰らい、とうとう[最終段階]へと移行したのです〉
 「…………」
ルフィエはこのときほど、[神の母]を解除したことを恨んだことはなかった。
奴を一目見ていたら。もし[断罪者]が発動していたら。
自分はまだ戦えていたはずだ。アレはマペットの力。自分の魔力が尽きていようとも発動が可能なのだから。
精々使える呪文は後一発のノヴァ程度。こんな魔力の残量では、自分はまともにすら戦えない。
 「……私が、もっと強ければ」
 〈君は強くなりましたよ――ただ、足りなかっただけです〉
 「――足り、ない?」
はい、と答えるマペットにルフィエは目を閉じる。
何が足りないというのだろう。力? 覚悟? 思い?
 〈足りないのです――ルフィエ。あなたは私に対する理解が、全く足りないのです〉
その言葉に、ルフィエは目を見開く。
確かにそうだ。自分は、マペットのことを何も知らない。
知ろうとも思わなかった。彼女と日々を暮らしていたため、そんなことは思えなかったのだ。
子が両親のことを知ろうとは、きっかけでも無い限り思わない。そのきっかけが、ルフィエにはまるでなかったのだ。
 〈あなたは心の中で、私に対して遠慮している点がある……まるで上司に対するように。
 私の言うことに従い、疑問を抱かない――それでは、ダメなのです。私とあなたは二つで一つ。どちらかがどちらかに依存しては、新の力など出せるわけがないのです。
 私たちはなれていないのです……貴方達の言う、"ともだち"に〉
 「…………」
マペットの真面目な言葉に、ルフィエは少しだけ微笑む。
そういうことならば、話は早い。自分が最も得意とすることなのだから。
マペットの十字架にそっと手を添え、ルフィエはネルが消えていった大穴へと歩く。正確には、その脇に倒れて意識を失っているルヴィラィの元へ。
その気配を感じ取ったのか、目を閉じていたルヴィラィはゆっくりと目を開く。
ルヴィラィの脇へと座ったルフィエは、両足を抱えてそっと言う。
 「失敗したね、[ラグナロク]」
 「そう、みたいね」
止め処なく溢れる血に目を細め、ルヴィラィは再び目を閉じる。
初めて見た彼女の柔らかな笑みに、ルフィエはキョトンとしながらもその手を握る。
目を見開いたルヴィラィに微笑み、ルフィエはすぐに手を離し、

その頬を思い切り、ひっぱたいた。

285白猫:2008/07/05(土) 22:34:16 ID:W4Rh7kXM0

 「っ〜〜〜…………」
目を丸くして頬を抑えたルヴィラィを睨み、しかしルフィエはすぐに目を背ける。
 「ほんとは詰め所に連れて行きたいけど……その傷で詰め所に運ぶのもアレだし。私がするのは、これだけ」
 「…………そう」
ルフィエの言葉に微笑んだルヴィラィは、再び目を開いて辺りを眺める。
最後に確認した灯は、サーレとプリファーのものだけ。デュレンゼルの灯が消えたのは、恐らくルフィエの仲間か――パペットに打ち倒されたのだろう。
自分が意識を失ったからか、イグドラシルも崩壊を始めている……この調子なら、数分で跡形もなくなるだろう。
と、
 「!」
突然、自分の体に微量だが魔力が流れ込んだ。
慌てて見れば、ルフィエが自分の腕を掴み、彼女の残った魔力を自分に流し込んでいた。
何を、と言いかけた口を塞ぎ、ルフィエは小さく呟く。
 「……これで、傷口くらいは塞げるでしょ。此処から逃げて――無様に這いつくばって、孤独に生きて」
 「……私に、生きろって? 正気?」
ルヴィラィの怪訝な言葉に、しかしルフィエは軽く答えた。
 「少なくとも、あなたよりは」
ルフィエの言葉にクスリと笑い、ルヴィラィは「違いないわね」と呟いた。
簡単な治癒魔法で傷口を塞ぎ、ルヴィラィは何十年かぶりに"娘"と向き合う。ルフィエもまた、ルヴィラィの――"母"の視線を受け止め、言った。
 「私にはまだ、やることがあるから」
"やること"――ルフィエのその言葉に、ルヴィラィはまた笑う。
自分ならばさっさと逃げおおせるところである。それなのに、全くこの子は。
本当に、自分ではなく"彼"に似てしまった。どこまでも真っ直ぐな志を持った、彼に。
 「そうね……あなたはその方がいいわ。"らしい"もの」
そのルヴィラィの言葉にルフィエは応えず、マペットを握り締め、大穴の中へと飛び込んだ。
崩壊の進むイグドラシルの中、久々に一人になったルヴィラィはそっと目を閉じ、思い返す。
 (――やっぱり、駄目ね)
穴の縁へ立ったルヴィラィは、心中でそう呟いた。








 「――ぉ、おッ!!」
自分を押し潰さんとする"何か"を睨み、ネルはグングニルを捻り、弾き飛ばす。
正確にはグングニルの[爆風]により、自分の体を吹き飛ばしたのだが。それほどまでに"それ"は、重量があった。
クラクラする頭を振り、ネルは最下層らしきフロアの中心に降り立った。
ボロボロの体に喝を入れ、グングニルを払い戦闘体勢に入り直す。
その目の前、まるで黒い銃弾のような形をした2mほどの"それ"は、突然空中で回転を始めたかと思うと、

パン、という音と共に、ネルの目の前で弾け飛んだ。
勿論、ネルはその程度の現象には何の感情も抱かない。ただ目を細めるだけ。
弾け飛び、黒い布のようなものが舞う視界の中、ネルはようやく"それ"を捉え、不敵な笑みを浮かべた。
 「……"それ"が、お前ですか」
そのネルの視線の先。
黒いショートの髪、真っ黒のクロークを被った姿。時折覗く肌は、人のものとは思えないほど白い。
そして、その瞳。
例えるならば――"血を腐らせたような紅"、である。見ているだけで気分が悪くなるような色の瞳が、じっと自分を見据えていた。
間違いない。
この魔力は――パペットのものだ。
 【ああ、やっと戻れたよ……本来のボクに】
わざとらしく首を捻るパペットを見、ネルはゆっくりとグングニルを構え直す。
援護は期待しない方がいい。あくまでも単身で、こいつを打ち倒す覚悟で臨まなければ。
早くも臨戦態勢に入ったネルを見、パペットは溜息を吐いて手を天に翳す。
 【喧嘩っ早いねぇ……まぁ、いいけど? お前を殺したら、次はマペットを奪うだけだし】
 「……それは無理です。お前はここで、僕が破壊する」
 【エリクシルを破壊できるのはその槍だけ……ボクはエリクシルから生まれたから、ボクを殺したかったらその槍で攻撃しないとね】
ご丁寧に倒し方まで教えるパペットに目を細めるが、しかしネルは次の瞬間、目を見開いた。

286白猫:2008/07/05(土) 22:34:39 ID:W4Rh7kXM0

天に翳したパペットの手に、"黒いグングニル"が握られたのだ。

目を見開いたネルに笑いかけ、パペットは得意げにグングニルを構える。
 【驚いた? グングニルって二本あるんだ。白いグングニルと黒いグングニル……。
 白のグングニルは全てを滅ぼし、黒のグングニルは死者を呼び戻す――だから、このグングニルはこんなこともできる!】
両手でグングニルを掴んだパペットがグングニルを薙いだ、途端。
空中に広がった黒い波紋が集束し、一体の"死者"が生み出される。
紅色の髪、スラリとした体、その手には一本の長剣が握られている――
 「『 [爆風] 』」
波紋が広がった瞬間に間合いを詰めていたネルは、瞬時にその死者へと槍を突き出し、爆砕する。
"アネットの姿をした死者の肉片"が飛び散るのにも全く気にせず、ネルは死者の向こう、パペットへと槍を突き出す。
それをグングニルの一薙ぎで弾いたパペットは、黒いクロークをゴムのように伸ばし、先を刃のように硬化させネルへと放った。
無数の刃の殺到を見やり、しかしネルは冷静に[深紅衣]を払って弾き飛ばし、槍を鋭く回転させる。
 「『 エントラップメント―― 』」
その詠唱を聞いた途端に飛び退ったパペットに、しかしネルは追いすがる。既にパペットは、九人のネルに取り囲まれていた。
 「『 ピアシングッ!! 』」
詠唱が終了すると同時に放たれた九本の槍。それをパペットは、黒のグングニルを鋭く回転させた。
見れば、"一人のように見える九人のパペットとグングニル"が、ネルの槍を全て受け止めている。
自分が攻撃した瞬間――いや、恐らく詠唱を開始した時から、パペットも同じ呪文を口ずさんでいたのだろう。
だが、力押しならばこちらに分がある。得意な能力を持っているとは言え、パペットは十歳ほどの少年の姿をしているのだ。
 「ッ……」
 【へ、ぇ……やるジャン】
ギリギリとグングニルを押し込むネルに、パペットは冷や汗混じりに笑う。
が、ここでネルは戦局を見誤った。
この土壇場で、"相手を外見で判断する"という愚かな行為を行ってしまったのだ。
ネルは一度、ここで距離を取っておくべきだったのだ。
 【惜しいね……手下になれば絶対ルヴィラィにも勝てたのにさ】
そう笑うパペットの一薙ぎ、
九本のグングニルが鋭く薙がれた途端、全ての分身たちが一気に崩れ、霞となって消滅した。
ち、と軽く舌を打ったネルは、九人のパペットから繰り出される刺突を避け、グングニルを地面に突き刺し[爆風]を発動した。
凄まじい爆発をモロに浴びた分身は即座に消滅するが、やはりパペットにそんなものは通用しない。グングニルを払い、自分目掛けて飛び掛かってくる。
 (……厄介な!)
グングニルを受け止めたネルは、再び力勝負に持ち込みつつも、その腕力に目を見開いていた。
スピードでは僅かにこちらが勝っている。だが、腕力や魔力は圧倒的にパペットの方が上。そして、それは戦闘においてほぼ勝敗を決すると言っていい差だった。
唯一パペットを打ち倒せるであろう一撃――グングニルの秘術、難易度8クラスの[神罰ノ邪槍(ゲイボルグ)]は遠距離攻撃、しかも数秒間の溜めが必要なのだ。
このまま消耗戦を強いられれば勝ち目はない。[神罰ノ邪槍]ではなく、[破槍]を使うしか――
 【[破槍]を使う気だろ?】
 「!!」
ギリギリと槍を押し込んでくるパペットの余裕の笑みに、ネルは目を見開いた。
見透かされている。――だが、[破槍]の破壊力ならパペットでも無事では済まないはずである。
 【やりたきゃやってもいいけど……[破槍]は"この"グングニルでも、使える】
そのパペットの台詞を、ネルは理解できなかった。
槍を弾いて空中へと舞い上がったパペットを見、ネルはようやくその言葉を理解し、グングニルを構えた。
 【『 ――トライ、デント!! 』】

287白猫:2008/07/05(土) 22:35:01 ID:W4Rh7kXM0
パペットの手から放たれた、黒い光を引き連れたグングニル。
それを見たネルは、即座にグングニルを地面へと突き刺し、[爆風]で退避した。
半秒前までネルが立っていた地点にグングニルが突き刺さり、しかしそれで止まらない。
全く勢いを衰えた様子を見せずに円状に床をぶち抜いたグングニルは、そのまま二人の視界から消える。
6mほどの大穴が空いてしまった床を見やり、ネルは唇を引き絞る。
グングニルで受け止めようとしていれば、確実に死んでいた。[破槍]の威力は、自分が一番よく知っている。
そして、今の一撃で同時に痛感させられた。
 (――勝てない……僕の力では――勝てない)
 【さーて……それじゃあ、もう一発いかせてもらおうかな。手駒にするつもりだった傀儡全滅喰らって、結構怒ってるんだよね。ボク】
パペットは再び"グングニルを"構え、溜めの態勢を取る。
今度こそ逃げられないだろう。[爆風]を発動する暇なく、潰される。
――"でも"。
 (ここで諦めたら……怒られてしまいますね)
誰に、というわけでもなく。ネルはグングニルを番え、人には理解できない言語を呟く。
グングニル、最終奥義――[神罰ノ邪槍]。
間に合う確率はゼロに近い。[破槍]の方が圧倒的に溜めは短い。
それでも、ここで逃げるわけにはいかなった。
 【さよならだよ、ネリエル=ヴァリオルド――『 トライ 』】

   ――――……

 「!!」
パペットの詠唱の途中、方向から突如放たれた凄まじい光量の弾丸。
それがグングニルの刃先を弾き、パペットは空中で僅かによろける。
 【……んー?】
 「今の術は……[スーパーノヴァ]――ですか?」
首を傾げるパペットと目を見開くネルの目の前、
先に二人がぶち抜いた大穴からこのフロアに降り立った一人の少女が、ゆっくりとワンドを払う。
光を放ち、柔らかく空中と溶け合う栗色の長髪。
空のものと見紛うほど澄んだ、スカイブルーの瞳。そして、胸に輝くパペットの十字架と――細長い宝石、タリズマン。
 「……待たせちゃったかな、ネルくん」
その言葉に目を見開き、しかしネルは首を振り、グングニルを肩に番えた。
 「遅刻ですよ――ルフィエ」


ルフィエの[神格化]も、マペットの[第一段階]により開花した能力の一つでしかない。
ルリマやサルストを発動と可能としている[古代民の知恵]、そして[断罪者]もそのひとつ。
つまり、
ルフィエの[神格化]は第一段階、[古代民の知恵]は第二段階、[断罪者]は第三段階により発動したものなのだ。
第四段階は[邪道解放]の例外であるため除くが、それでもルフィエはマペットの[最終段階]を扱うことができなかった。
その原因こそが、マペットに対する敬遠だった。
ルフィエは心のどこかで、マペットに対して一種の畏怖を抱いていた。それは目上の者に抱くものだとしても、"仲間"に抱くものではない。
結果として同調がうまくいかず――第三段階の発動が、限界だった。
だがこの土壇場に来て、ルフィエはようやくマペットに対する畏怖を取り除いた。
そう。"ともだちになる"。それだけだったのだ。
今まで噛み合っていなかった歯車が突如回り出した様な、清々しい気分だった。
どうして、こんな簡単なことに今まで気付けなかったのか。
――いや、恐らく"今だから"気づけたのだろう。この土壇場でだからこそ、気付けるというものもある。
 「……マペット、行こう」
 〈はい〉
ワンドを軽く回し、ルフィエはまさに誇るように、自分の名を口にする。


   「[戦乙女(ワルキューレ)]ルフィエ=ライアット。ネリエル=ヴァリオルドの求めに応じ、この戦いに参戦します」

288白猫:2008/07/05(土) 22:35:31 ID:W4Rh7kXM0


ネルの横に舞い降りたルフィエを見やり、パペットは小さく笑う。
 【ようやく役者が揃ったね……完成されたエリクシルがここに3つも存在するんだよ? 信じられるかい?】
そのふざけた言葉に目を細め、ネルはしかしグングニルを払う。
ルフィエが参戦すれば、状況は一変する。恐らくパペットも持てる魔力をフルに使用してくるだろうが、自分の戦闘力とルフィエの魔術があれば、戦況を五分以上に持っていくことは十分に可能である。
 「ルフィエ」
 「分かってるよ、ネルくん」
ネルの求めに頷き、ルフィエはワンドをネルへと向ける。
途端、その身体を数本の光り輝く輪が包み、彼に異能の力を与える。
それを見やったパペットもようやく余裕の笑みを消し、グングニルを数回空振りさせ、数体のアンデッドを生み出した。
身体から痛みや疲労が拭い去られていくのを感じ、ネルはゆっくりとグングニルを構え直した。
 「パペットは僕がやります。ルフィエは取り巻きと援護を」
 「うん」
ルフィエが頷くのを見、ネルは鋭く跳躍しパペットへと飛び掛かった。
紅色の長髪が空中に揺れるのを見、ルフィエも即座に[二人唱]を紡ぎ出す。
ネル達に飛び掛かるアンデッドたちが空中で縫い止められ、返す手で発動したノヴァに貫かれ、爆砕される。
それを見もしないパペットはネルに向けて[破槍]を一撃放ち、空中で飛退き壁へと着地する。
迸る[破槍]をグングニルの[爆風]で反らせ、捌き切れない衝撃は[深紅衣]で弾き飛ばす。
壁側へと退避していたパペットに無数の光弾を放ち、ルフィエも空中へと舞い上がった。
ただの球体とは違う、まるで鏃のような形の光弾にパペットは目を細め、瞬時に引き戻したグングニルで全て打ち落とす。
[破槍]などで投擲したグングニルは、本人が望めば一瞬で持ち主の手に戻る。ネルやパペットが遠慮なくグングニルをぶん投げているのは、それが理由だった。
 「『 ――ウルトラノヴァ!! 』」
光弾を弾かれても全く気にする様子もなく、ルフィエはしつこくしつこく光弾を放ち続ける。
 「っはぁああああッ!!」
光弾と共にパペットへと飛び掛かったネルは、光弾を避けようとしたパペットへと突きを繰り出し、そのクロークの端を貫き、爆砕した。
 【っち……っぉおおお!!】
何発か光弾の直撃を受けグングニルの爆風を浴びたパペットは、体内で魔力を凝縮させた。
 〈――! ルフィエ!!〉
 「ネルくん、下がってッ!!」
パペットの言葉に目を見開いたルフィエは、咄嗟にネルへと叫ぶ。
それを聞き、追撃を行おうとしていたネルはパペットのグングニルを蹴り、逆進した。
 【『 アトム 』、発動――!】

瞬間、
パペットを中心とした黒い球体が出現、全てのもの飲み込まんと広がり、辺りの物質を消滅させながらネルへと迫る。
逃げ切れないか、と咄嗟にグングニルを構えたネル、

その足に、鋼製の鞭が巻き付いた。
 「ッ!?」
その鞭に引っ張られ[アトム]の威力圏外へと脱したネルは、危なっかしい足取りでルフィエの傍へ着地した。
 「危なっかしい子ね……性急は褒められたものではないわ」
その鞭の主――赤い髪を靡かせ、鞭を手にした呪術師――ルヴィラィが、ゆっくりとパペットへと向き直る。
空中である程度膨らんだ[アトム]はやがて縮み始め、クロークを被ったパペットの姿が再び現れた。
ネルとルフィエの前に立つルヴィラィの姿を捉え、パペットはケラケラと笑う。
 【一体今更何をしに来たんだい、ルヴィラィ? 折角ただの人間に戻してやったのに】
 「フェンリル、よく聞きなさい」
パペットの言葉を完全に無視し、ルヴィラィは背後のネルへと呟きかける。
その言葉に目を細め、しかしネルは頷く。今は争っている場合でもない。
 「パペットは[エリクシル]を核として造られた人形。もとは人間らしいけど……兎に角、エリクシルが心臓になってるから、他の部分をいくら攻撃しようとも奴は死なないわ」
 「それは理解しています。ですが直にエリクシルを狙うには、どうしても[神罰ノ邪槍]だけじゃない……"後一撃"、難易度8クラスを叩き込まないといけないんです」
先の戦闘により、ネルはパペットの本質を幾分か理解していた。
身体の外をいくら傷付けても、エリクシルにより瞬時に治癒されてしまう。エリクシルも莫大な魔力を秘めているため、外側を攻撃して消滅させようと思ったら、それこそ[破槍]クラスの術を何千発と叩き込まなければならない。
だが、その一歩先――[難易度8]クラスの力で身体を一時的に消滅させ、露になったエリクシルを[神罰ノ邪槍]で撃ち抜くことが出来れば。
 「ですがルフィエの[ルリマ]は破壊力に今一つ欠ける。あれは元々光魔法ですし……単純な破壊力のある"火"の力が必要なのです」
 「……[デリマ]、ね」

289白猫:2008/07/05(土) 22:36:06 ID:W4Rh7kXM0
と、
 【余所見なんて、随分余裕だねッ!!】
 「ちっ」
空中からグングニルを放ったパペットを見、ネルは小さく舌を打つ。
二人の前に立ち塞がったルフィエが唄を紡ぎ、ワンドを上空から迸ってくる[破槍]へと向けた。
 「『 ルリマ・ウルトラノヴァ 』」
ワンドから繰り出された凄まじい量の光の怒涛。それが[破槍]を捉え、弾き飛ばした。
弾き飛ばされたグングニルを掴み、ルフィエへと飛び掛かったパペット。その眼前でウルトラノヴァを放った。
 【ちっ】
 「私と遊びましょ、パペット」
ウルトラノヴァの光量に目を細めたパペットの背後に回り込んだルフィエは、その脇腹に足を食い込ませ、同時にノヴァを発動させた。
凄まじい爆発と共に吹っ飛ぶパペットへと追いすがり、ルフィエは叫ぶ。
 「時間を稼ぐ!」
 「――頼みます!」
ネルの言葉に頷き、ルフィエはワンドを払い数発のノヴァを生成、パペットの消えた壁の穴、そこへノヴァを全て投げつけた。
壁の穴から響く爆発音、それに手応えを感じなかったルフィエは、地を蹴り穴へと飛び込んだ。


 「あなたには魔力が残っていない。だから僕の魔力を使って下さい。僕はエリクシルを使います」
ネルの言葉に目を細めたルヴィラィは、少し考えて頷く。
が、
 「……待ちなさい、フェンリル。エリクシルの魔力を使えるなら、何故さっきから[破槍]って術を連発しないのかしら」
 「…………」
目を背けたネルの真意を見抜き、ルヴィラィは溜息を吐いて鞭を払う。
 「残念だけど、私は騙されないわよ……あなたの魔力なんて必要ない」
ズカズカと壁へと歩いてゆくルヴィラィを見、ネルは目を見開く。
本気なのか。本気で自分の魔力を使わず、[デリマ]の術を撃とうというのか。
まさか。
彼女が、自分と同じことを考えているとしたら。
 「待っ――」


 【――逃がさない、よ】
 「ッ……」
パペットの槍を避け、ルフィエは地面に手を付き空へと飛び上がる。
空しく空を切ったグングニルは、しかしその波紋からアンデッドを生み出す。生み出されたアンデッドは、その手に持った杖から炎を生み出し、放つ。
 「『 サルスト・スーパーノヴァ!! 』」
巨大な火球ごとアンデッドを飲み込むほどの光弾を生み出し、ルフィエはそれをその場で炸裂させる。
と、
その背後に回り込んでいたパペットが、その体にグングニルを突き出す。完全な死角から繰り出されたその刺突は違わずルフィエの胸を貫いた。
 【!?】
が、そのルフィエの体が突如揺らぎ、霞となり消え失せる。
目を見開いたパペットは、いつの間にか十数人のルフィエに囲まれていることに気づき、舌を打った。
リトルウィッチが得意とする撹乱術――[ガールズパラダイス]。
自分の分身を無数生み出し、相手を混乱に陥れる高等幻術。
 「逃げる? 逃げるのはあなたじゃないの」
 【小賢しい真似をしてくれたのはいいけど、ボクが全方位を攻撃できる術を使えるのは忘れてないよね】
 「……」
笑みを浮かべるパペットに応えず、十数人からなるルフィエが全員、ワンドをパペットへと向ける。
 「『 ルリマ 』」
 【『 ――アトム 』】
ルフィエの詠唱が終わる前に呟いたパペットが、再び[アトム]を発動させる。
今まさに攻撃を行おうとしていたルフィエたちがその球体に呑み込まれ、パペットは笑い転げる。
 【ヒッヒヒヒヒヒヒ!! やっぱりこうじゃないとねぇッ!!】
瞬時にアトムを霧散させ、パペットはグングニルを払う。
パペットは戦闘開始から僅か十数分で、もうこの槍の扱い方を会得していた。
ネルのグングニルも扱うことのできる[爆風]と[破槍]は勿論、
軌跡からアンデッドを生み出す[死者召喚(マリオネット)]、
そして、全てを食らい、無へと帰す[アトム]。
このアトムは、一度発動してしまえば全てを飲み込み、消滅させる。
再生能力があろうが、どれだけ魔法耐性を持っていようが関係ない。この術は全てを喰らう。
 「……やっぱり、ちょっと荷が重いかな」
地面に着地したルフィエは、その無茶苦茶な破壊力に目を細めた。
既に体中は[爆風]や[破槍]の余波により傷だらけになっている。治療を施す時間的余裕がない証拠だった。
パペットはエリクシルを使い半永久的に身体と魔力を保持し続けている。最も、魔力の点ではこちらもエリクシルを使っているため対等だが、流石に体力も半永久的に、というのは無理な相談である。
と、
 「ルフィエ! 頭を下げなさい!!」

290白猫:2008/07/05(土) 22:36:28 ID:W4Rh7kXM0
 「!」
遠くから届いたその言葉に、ルフィエは咄嗟に頭を下げる。
その僅か数センチ上を何かが通り過ぎるのを感じ、ルフィエは低い体勢のまま横っ飛びに跳ねる。
離れて通り過ぎたものを見やったルフィエは、少しだけ目を細める。
 「……ルヴィ、ラィ」
ルヴィラィが自分が空けた穴から入り、パペットの上半身を鞭で捕えていた。
ギリギリと締め付ける鞭を見やり、パペットは首を傾げて言う。
 【で? これがどうかした?】
 「……パペット、知ってるかしら? 古い武術書の記述なんだけど。[武術家たる者、己が技量を超える力を得たり、使おうとすれば、その肉体は滅びることとなる。決してそのようなものを求むべからず]――ってね」
ルヴィラィの言葉に目を細め、その真意を察せないパペットは首を傾げた。
 【で?】
 「それを逆に返せば――"その肉体を滅ぼせば、己が技量を超える力を扱える"……ってこと、じゃないかしら?」
 【……!! っち、『 トライ―― 』】
その台詞に目を見開いたパペットは鞭を断ち切ろうと自由な左手で槍を振り上げる、
寸前。

   「お前はここで死ぬ運命なのよ――『 デリマ・バインドブレイズ 』」

ルヴィラィが放った獄炎が鞭を伝い、パペットの身体を茜色に彩る。
同時にルヴィラィの体にも獄炎が燃え移り、ルヴィラィは目を閉じる。
目の前の、数メートルもの火柱は轟々と燃え続け、その身を焼き払ってゆく。
グングニルを離しもがくパペットと、目を閉じゆっくりと灰燼へと帰してゆくルヴィラィを見、ルフィエは目を見開く。
いったい、いったい。
 「すまないわね、ルフィエ」
 「!」

身体がゆっくりと黒く崩れてゆくルヴィラィの口から紡がれた言葉に、ルフィエはワンドを握り締める。
今まで自分は、これほど優しい、ルヴィラィの口調を聞いたことがなかった。
彼女の口調はそう――まるで、母が子に語りかけるように優しく、柔らかかった。
 「私は……母親、失格だったわね――本当に、ごめんなさいね」
ルヴィラィの小さな謝罪に、ルフィエは小さく頷く。
結局、彼女と心が通じ合うことはなかった。どうして彼女が世界を滅ぼそうとしたのか、どうしてこの局面でパぺットに捨て身の攻撃を行ったのか。
だが、ひとつだけ言えることがある。
 「…………どんなに酷いことをしても、あなたは私の母さん。母さんの罪は――私の罪だから」
その、小さな小さな言葉。
ルヴィラィはその言葉を聞いていて、聞いていなかった。既に炎は彼女の身を焦がし、消え去ろうとしていた。
灰燼と化しかけたルヴィラィの手が、ボロボロと崩れながらルフィエの頬にそっと触れる。
 「 ――――…… 」
既に声らしい声も出ないらしいルヴィラィに、ルフィエはそっと彼女の手に両手を添えることで応えた。

 【ま、だ……この程度の火力じゃ、崩れない、よ……】
身体全体が爛れ、崩れかけながらも、パペットは存命していた。
ルヴィラィの命そのものを糧とした[デリマ]も、その命そのものが尽きかけていたため威力が十分乗らなかったのか。
空へと散っていく灰を見、ルフィエは頬を伝う液体をそっと拭い、ワンドをパペットへと向ける。
   「――、『 ノヴァ 』」
回復を開始していたパペットに光弾が直撃し、パペットはその爆発をモロに浴び、吹っ飛ぶ。
地面へと突っ伏すパペットへとさらに光弾を連続して打ち込み、ルフィエは目を閉じる。

感じる。

遠くで、ネルが魔力を溜め始めている。

タイミングを計っているのだ。

外部に再起不能の攻撃を加え、核――エリクシルが現れる瞬間を。

 「……『 スーパー、ノヴァ 』」
パペットへと特大の光弾を打ち込み、ルフィエは大きく息を吸う。

紡げ。癒しの唄を。
悪しき者の体を浄化し、魂を黒き穢れから解放せよ。
その口から紡がれる、三つの高さの異なる、ひどく美しい歌声。
[三人唱]――ルヴィラィでも会得し得なかったこの力ならば、弱い自分の力でも、十分に威力を上乗せすることができる。
グングニルを構えた、ほぼ完全に治癒してしまったパペットを見、しかしルフィエは微笑む。

   「行くよ―― 『 ルリマ・ウルトラノヴァ 』」

291白猫:2008/07/05(土) 22:37:06 ID:W4Rh7kXM0


――来た。
ルフィエが特大の[ルリマ]を放つのを見、ネルは腕に全神経を注ぐ。
辺りに尋常ではない量の魔力が渦巻くのを感じ、ネルは目を閉じて精神を集中させる。

少し、手が震える。

この一撃に総てが掛かっている。この一撃をしくじれば、全てが――全てが、終わる。
……"いや"。
終わらせはしない。
例え外したとしても、何年かかろうとも――パペットは、この手で葬り去ってみせる。
自分には仲間がいるではないか。沢山の、信頼に値する仲間が。
 「――ふ、ふ……まさか、この僕が怖気づくとは」
肩を揺らして笑い、ネルはゆっくりとグングニルへと力を込める。
辺りの魔力がゆっくりとグングニルへと集束されていき、その光がゆっくりと強まってゆく。
全てを、終わらせる。
この一撃で、全てを。


   「『 ――神罰ノ(ゲイ)、邪槍(ボルグ)――――ッッ!!!! 』」

ネルの手から放たれた、凄まじい光量を引き連れたグングニル。
[破槍]と形状そのものは似通っていたが、纏っている魔力がそれでこそ桁で違っていた。
まるで磁石に引き寄せるようにパペットへと向かうグングニルを見、ネルは叫んだ。
 「終わらせる……終わらせるッ!!」

ワンドを握り締め、光の怒涛を放ち続けるルフィエは、その気配を感じワンドを払う。
霧散した光を見やり、ルフィエは即座にその場から退避する。"あの技"は、感じただけでも威力が強すぎる……巻き込まれかねない。
パペットがどうなっているかは分からない――が、後はネルのことを、信じるしかない。
 (お願い……お願い!)
と、
振り向いた視線の先、全ての魔力を放出し切ったらしいネルの体が、地面へと真っ逆さまに落ちてゆく。
慌てて地を蹴ってネルの元へと跳び、地面に直撃する寸前にその体を咄嗟に抱き止めた。
ドシャ、と鈍い音と共に地面へと突っ伏したネルとルフィエ。ルフィエなんかモロに地面に顔をこすり付けた。
 「……なにやってんですか、ルフィエ」
その様子に呆れたネルは、ルフィエの体を抱き止めつつも溜息を吐く。
えへへ、と頭を掻くルフィエに笑いかけ、ネルは目を細める。

グングニルが、パペットに直撃したのを感じたのだ。
此処からではその光景は見えず、音も辺りの崩壊音が五月蠅すぎて聞こえない。
だが今確かに、手応えを感じた。
 「…………ルフィエ、行きましょう」
 「……うん」
ネルの言葉に頷いたルフィエは、危ない足取りでゆっくりと立ちあがり髪を払う。
ここからではパペットの気配は感じられない。消滅してしまったのか、或いは――
確かめましょう、と呟きかけたネルに頷き、ルフィエはネルの手を取り歩き出した。

292白猫:2008/07/05(土) 22:37:31 ID:W4Rh7kXM0


パペットは崩壊しかけた体、その核に[神罰ノ邪槍]を喰らい、しかしかろうじて生きていた。
エリクシルには無数の亀裂が入っているが、それでもパペットは意識を保ち、エリクシルも砕けてはいなかった。
 「……まだ、生きていますか」
グングニルを払い、壁に縫い止められたパペットにネルは目を細める。
白きグングニルの能力、[全てのものを破壊する力]の力か。パペットのエリクシルからは、もうほとんど魔力は感じられない。
 【…………まさか、ここまでやるとはね】
掠れた声で笑うパペットは、ゆっくりと自分の足元を見やる。
その足元には、ネルによって打ち砕かれたグングニルの残骸が散らばっていた。あの名匠の一品を、こうも簡単に砕くとは。
パペットにゆっくりとグングニルを突き出したネルは、目を閉じて呟く。
 「終わりです、パペット」
 【…………冥土の土産に、ひとつだけ、教えといてあげるよ】
白銀の刃がエリクシルに押し込まれていくのを感じ、パペットは笑う。
 【ボク如きを倒して、いい気にならないことだね……東の冒険者は大陸内でも最も程度が低い……。
西、北、南の四強はこんなものじゃない……そして、西と南の四強は、確実にこの東を飲み込もうとするだろう――】
その言葉に、ネルの槍が、止まる。
西と南の四強。彼らは武術家でありながら、一国の重役である。東の今の荒れ様を見れば、確実に攻め入ってくる。
――が、そんなことは関係がない。
 「例えそうだとしても……、――例え[古代民]を敵に回すこととなっても、僕は戦い続けます」
その言葉に、ルフィエは息を呑みパペットは笑う。

古代民。
今のフランテルの基盤、それを作った大陸の"創造主"とも言われる者たち。
その魔術は大自然を揺るがすほどの力とされ、ルフィエやルヴィラィの[ルリマ][デリマ][カステア][サルスト]も全て、古代の術なのだ。
そんな古代民と"戦う"――それは、人々の中で口にしてはならないこととして通っていた。

ネルの宣言に面白そうに微笑むパペットは、しかし続ける。
 【今のおまえたちでも、四強を倒すことは難しい……それほど彼らは、強い……東はそれほど恵まれている場所なのさ。
 精々気張ることだね……どうせ、結末は見えているけどね】
 「いいえ」
パペットの言葉を、ネルは遮る。
目を丸くするルフィエを見、微笑んでからパペットへと向き直り、グングニルに力を込めた。

 「決まっている結末などありはしない……何故なら僕らは、今こうして生きているんだから」







エリクシルが鈍色の欠片となって地面に転がるのを見、ネルは小さく溜息を吐く。
終わった。
全て――終わった。
感じる。リレッタの魔力が、他のたくさんの魔力を連れてイグドラシルから退避するのを。
皆、皆無事だ。
 「……良かっ、た……」
地面にへたり込む愛しい人を見、ネルは少しだけ微笑む。
崩壊が進み、あと数分で全てが崩れ去るイグドラシルの中で、ネルはゆっくりと目を閉じ、小さくルフィエに呟きかけた。
 「……ルフィエ、先に脱出していてください」
 「えっ」
慌てて自分の方を見やったルフィエを愛しく想い、しかしネルはグングニルを払う。
 「アネットを……姉さんを、迎えに行きたいんです」
 「私も――」
 「お願いです」
ネルの真意を悟って声を上げたルフィエの言葉を、ネルは無理やり遮る。
これ以上、自分の弱い面を見せたくなかった。
好きな人の前では強く在りたい――子供っぽい、少年の見栄だった。
 「姉さんのところへは、僕一人で」
ネルの言葉に圧され、ルフィエは小さく頷く。
反論する余裕すらない。それほどネルは、真剣に自分を見ていた。
 「…………わか、った」
ネルに小さく頷いたルフィエは、小さく溜息を吐いた。
大丈夫。彼は自分を置いて――どこかに消えることは、ない。
寂しく微笑むネルに背を向け、ルフィエはイグドラシルの壁へと数発のノヴァを撃ち放った。
突入とは対照的に、呆気無く空いた大穴。そこへ立ったルフィエは、一度だけこちらを見――空へと飛んだ。
空の彼方へと消えてゆくルフィエの姿を見、ネルは踵を返して歩き出す。壁に突き刺さったグングニルを無視して、ただ歩く。
 「……すみません、ルフィエ。僕は――」
ネルの小さな、小さな謝罪の言葉。
その言葉は、大崩落の始まったイグドラシル……その巨大な轟音に遮られ、誰の耳にも届かなかった。

293白猫:2008/07/05(土) 22:37:55 ID:W4Rh7kXM0

原型を崩し、消滅してゆく要塞――[イグドラシル]。
皆をヴァリオルド邸へと避難させ、崩壊の様子を遠巻きに見つめていたリレッタは、傍に舞い降りたルフィエに頭を下げてから視線を戻した。
ネルが一体どうなったのか……それを、聞いてはいけない気がした。そして同時に、自分が一番"認めたくなかったこと"を認めつつあった。
 「……終わり、ですね」
崩壊を続ける立方体を見、リレッタは小さく呟く。
朝日に照らされ、空に消えてゆくイグドラシル。そう――戦いは、終わった。19年もの長きに亘る戦いが今、終わった。
 「でも、私達にとって、今日のこの朝が、始まり」
じっとイグドラシルの崩壊を見続けていたルフィエは、小さくリレッタにそう呟いた。
その言葉に頷いたリレッタも、しかし答えずにその光景を見続けていた。




一人の天使と一人の歌姫の見る先で、イグドラシルは朝日の中に崩れ、消滅した。


ゴドムを蹂躙し、大陸を滅ぼそうとしていた一人の呪術師と人形と共に。




二人の少女が待つ一人の少年は、戻らなかった。















ブルン歴、4925年――三月。

まだ日も低い早朝。ヴァリオルド邸の自室で珍しく羽ペンを取っていたルフィエは、傍の鳥籠に入れられた伝書鳩に微笑みながら、ペンを走らせる。
その羊皮紙の横に置かれたカバンには、数少ない自分の私物が押し込まれている。既に部屋は、自分が入る前の状態に戻っていた。

しばらくしてから、できた! と立ち上がったルフィエは羊皮紙に書かれた字にもう一度目を通す。

294白猫:2008/07/05(土) 22:38:18 ID:W4Rh7kXM0



---

この世界のどこかにいる、ネルくんへ。

あのイグドラシルでの戦いから、三年が経ちました。
ネルくんも今年で20歳! 本当に時間が経つのは早いね。
今となっては戦の残り火も消えて、古都の復興も順調に進んでます。
昨日までは私とマイさんで唄を歌って、必死に観光客を引き入れていました。
でも君の20歳の節目でもある今日――私、旅を再開することにしたんだ。


ねぇ、ネルくん?
君は……この世界のどこかでちゃんと、生きてるよね?
あのイグドラシルの崩壊に巻き込まれたり、しちゃってないよね?
リレッタちゃんは今でも、あのときのことを悔やんでるみたいです。
ううん、リレッタちゃんだけじゃない。アーティさんも、カリアスさんも、カリンさんだって悔やんでた。


でもね。私、信じることにしたんだ。
君が生きて、この世界を旅して回ってるんだって。
そしていつの日か、私の前にきっと現れてくれるんだって。
だから、その日まで、どうか元気で。

ルフィエ=ライアット

---





伝書鳩に手紙をくくり付け、ルフィエはゆっくりと鳩を窓へと導く。
窓際へと連れて行かれた鳩は窓が開いた瞬間、その翼で羽ばたき遠い空へと消えてゆく。
 「どうか、見つけて――彼のこと」
空の彼方へと消える鳩の姿に、ルフィエは小さくそう呟く。
そして、自分は机の上に置いていた小さなカバンを持ち、扉へと歩み寄った。
トン、と部屋の隅で立ち止まったルフィエは、部屋を改めて見回し、思う。
 (この部屋とも、今日でお別れね)
いつの間にか長い間暮らしていた、この部屋。
いつの間にか自分の家同然となっていた、ヴァリオルド邸。
此処を今日、自分は出る。
 「元気でね」
誰に言うわけでもなく、ルフィエはそう呟き、扉を開いた。






 「行くのか」
部屋の外で立っていたカリンが、ルフィエに向けてそう呟いた。
まさかこんな時間に起きていたとは思いもしなかったルフィエは、少し驚いて頷く。
その姿に溜息を吐き、立ち上がったカリンはルフィエに向き直った。
 「まさか三年もお前のような娘と暮らすことになるとはな」
 「セバスさんからお金、もらっちゃえばいいのに」
カリンが契約の金を未だにセバスから受け取っていないことを、ルフィエは知っていた。
そしてそれを理由に、未だに此処に留まっていることを、ルフィエは知っていた。
ルフィエの内心を知ってか知らずか、カリンはフンと笑って剣に手をかける。
 「金は依頼主から貰わねば意味がない」
それに、此処であのチビガキどもの面倒を見るのも悪くない。
そこまでカリンは、付け加えなかった。
クスリと笑ったルフィエに背を向け、カリンは一度だけ手を挙げた。
それが彼女なりの別れの挨拶なのだろうと思ったルフィエは、ぺこりと頭を下げる。
 「さよなら、カリンさん」
ルフィエの言葉に、カリンは応えなかった。

295白猫:2008/07/05(土) 22:38:41 ID:W4Rh7kXM0


 「ルフィエ」
厨房を通り過ぎようとしたルフィエに、リンゴを持ったマイが歩み寄った。
朝早くからつまみ食い? と苦笑するルフィエの頭を小突き、マイはリンゴを齧る。
 「お前がこんなに朝早いのは有り得んな。普段なら昼まで寝てる」
 「……昼まで、ねぇ」
そんな生活してる自覚ないんだけどなぁ、と苦笑するルフィエを見、マイは溜息を吐いた。
 「行くんだな、とうとう」
その言葉に込められた小さな感情を感じ、しかしルフィエは力強く頷く。
 「……うん。戦いが終わってからすぐ、決めたことだから」
 「また遊びに来い。しばらく私もこの家にいる」
マイに頷きかけ、ルフィエは胸の十字架を握る。
彼女に唄を教わらなければ、ルヴィラィと対峙することはできなかった。
それに、古都の復旧にも、彼女は彼女なりに尽くしてくれたのだ。
 「ありがとう、マイさん……さよなら」







 (ネルくんと出逢って、もう四年)
早朝にも関わらず騒がしい雑踏の中、ルフィエはフードを被ったまま歩き続ける。
今となっては、自分は大陸を救った英雄扱い。フードを取って歩いたら、違う意味で騒がれてしまうだろう。
それでも、差別扱いされるよりはきっと……マシ、だろう。
 (ネルくんに出逢ってから、色んなことがあった)

星の瞬く聖夜が齎した、偶然の出会い。
瀕死の少年を介抱し、彼の魘される声から、彼の大切なものを知った。
天使の少女を見たとき、何故か沸き出た対抗心。
思えば、あの頃からずっと恋い焦がれていたんだろう。

ビガプールでの戦い。
改めて、少年の強さを目の当たりにした。目の当たりにして、それでも傀儡に傷を負わされた。
彼との一旦の別れ。彼から渡されたタリスマンのお陰か、不思議と不安はなかった。

アリアンでの再会、初めての口付け。
喜びも束の間、ルヴィラィとの遭遇、真実の発覚。
レッドストーンを奪われ、当人には逃げられ、町は壊され――自分たちはまた、敗北した。

そして、ブレンティル。
初めての[神格化]、傀儡との総力戦――そして、またもや敗北した。
勝たねばならない戦いだった。それでも、彼女の力の前に自分たちは、またしても打ち倒されたのだ。

――古都、ブルンネンシュティング。
出来れば思い出したくはない、忌々しい記憶。
護ることができなかった――ただ、護りたかっただけなのに。
あの日、誓った。もう誰も、殺させはしないと。

ブリッジヘッド、初めて知った喜び。
その喜びもやはり、すぐに戦いの中に呑まれた。
ヴァリオルドの本邸は消滅し、自分は初めて――人を、殺めた。



そして、今。
 (私は、ネルくんに出逢ってたくさんのことを教えてもらった。
 人との関わり方、社会のルール、道徳、店での値切り方、
 戦いで最も優先すべきこと、やっちゃいけないこと、――それに、人を愛すること)
いつの間にか古都を出てしまったルフィエは、小さく、ほんの小さく溜息を吐く。
風が自分の体を打ち、フードが取れた。
昼空の元に晒された白い肌と茶色い髪、水色の瞳。
胸に輝くは、白色の淡い光に包まれた十字架と、愛しい人からの贈り物。
 「きっと、見つけるよ……何年かかってでも」
ゆっくりと、ゆっくりと彼女の身体が浮く。
当てはない。急いで探さなければならないことでも――ないだろう。たぶん。
それでもこのときだけは、全力で、そう、全力で飛んだ。一秒でもそこに留まっていると、泣いてしまいそうだったから。
空へと飛び上がった金色の光は、やがて太陽の光の中へ飲み込まれてゆく。
飲み込まれて、その光は二度と戻ってくることはない。
今度戻ってくるときは、紅色の瞬きと共に戻ってくるはずなのだから。

296白猫:2008/07/05(土) 22:39:03 ID:W4Rh7kXM0


 「――!」
空へと打ち上がった金色の光を見、銀色の髪を揺らしながら少年は目を見開いた。
あの光には、興味がある。どこか懐かしい感覚すらあった。だが、あの速さには追いつけない……追うだけ無駄だろう。
それよりも今は――あの懐かしい、懐かしいあの屋敷へと戻るのが先決。
 「……懐かしいですね、ヴァリオルド邸は。主人不在で潰れていると思いましたが」
その青年――ネリエル=ヴァリオルドは、ゆっくりと古都への道を歩く。
空へと打ち上がった光のことはもう思考の隅へ追いやられていた。今彼の頭にあるのは、あの屋敷にいるであろう、一人の少女のことだけ。
 「ルフィエ……君は、僕におかえりと言ってくれるんでしょうか、ね」



ゆるりとした歩調で歩く青年は、知らない。
一人の少女が、西へ西へと飛翔を続けていることを。
その少女が自分のことを探し、自分が探しているということを。



凄まじい速度で空を往く少女は、知らない。
一人の青年が、ついさっきヴァリオルドへ到着したことを。
自分が想い、焦がれている青年が自分のことを知り、慌ててヴァリオルド邸を飛び出したことを。










彼らは知らない。












Puppet-歌姫と絡繰人形-


END

297白猫:2008/07/05(土) 22:39:27 ID:W4Rh7kXM0
あとがき




どうも、白猫です。
本章を持ってPuppet-歌姫と絡繰人形-は完結となります。今までの皆様のご愛読、本当に有難う御座いました。
しかし完結に七か月もかかってしまいました。おうのうorz
何度も言っているようですが、当初この小説は短編小説の予定でした。クリスマスに出逢ったシーフとリトルウィッチの話の予定でした。
そして、やっぱり回収できない伏線がたくさん。誤字脱字もたっくさんorz
現在自HPで修正・加筆を行っている最中です。現在プロローグが完了。
区切りがつけば公開しようかと思っています。

コメ返し

>68hさん
いやもう……半分スランプ状態だったので、展開が急だわ無理やりだわでもう……orz
ネルくんは四代目だからⅢじゃないしスティリアと口論してたのはカナリアだよぅorz
アネットとアーティはよく間違えるし……次回作ではこんな下手はこきません! たぶん!
老師の存在は最後まで誤魔化そうと思ってしまいましたが結局若干のカミングアウト。まぁこれくらいいい……よね?うん。
---
思えば68hさんには全本編、全番外編、全短編に感想をいただいているわけですが……なんというかスゴイです。ホントにスゴイです貴方。
最初の内は設定もガタガタ、最終章でも拾いきれなかった伏線が放置状態になっているというのにいやはや。
きっと68hさんの小説も凄いんだろうなぁ。きっとメチャクチャ上手いんだろうなぁ。と一人でニヨニヨしている白猫です。いつ投稿なさるんでしょうか、楽しみです。楽しみでしょうがないです。
小説スレのレギュラー感想屋である68hさんの小説ともなれば、きっと小説スレ全住民から感想が……ゲフンゲフン。
そのときはバッチリ私も感想書かせてもらいますよー! 期待してまっすー……ハッ。ラストがあるではないか、七冊目ラストが!
兎にも角にも、七か月間お付き合い有難う御座いました。新作の投稿の目途は立っていませんが、また投稿するときは是非。


>黒頭巾さん
はーい!パパでーす!(誰
クレリア。凄いというより狡い……(ちょ)?
嗚呼……最初のアレですね。まぁアレは……そう、そうです。私の実力ですね!(←絶対後付け
じぃちゃんはですねー。まぁなんというか……パワーアップの道具、的な?ごめんじいちゃんorz
このじいちゃんのモデルは私のじいちゃんでした。異様に若い、というか……幼い人でした、はい。
本当はブリッジ編でもめんこい笑リレッタを出す予定でしたが……まぁ、まぁ、まぁ……。
格ゲー[Puppet]ですか……ネルくんの圧勝で終わってしまいそうな――あ、戦闘補正ですね、無敵の笑
隠しキャラ……入手条件はそうですね、「長電話8時間」で(ぇー)
---
ルフィエのデフォルメ、カリアスのコス……ウォッホン! などなど、自分の我侭や思いつきにお付き合いいただきありがとうございました。そして無茶ブリごめんなさいです。
これからもふぁみりあいーえっくすを応援しています。いけめんさんも応援しています。こっそりファンなごしゅじんさまはもっと応援しています。
個人的にはごしゅじん王z……ウォッホン! なんでもありません。お持ち帰りなんてしたくありませんよ、ええ。
天下一ではあのお二人の描写をハズさないよう頑張ります。。変なところがあればバシバシご指摘をば。
そしてハロウィンネタはワクワクしながら待ってます。まだ半分も出来てないんですけどね苦笑


>みやびさん
はい、ばっちり期待してます笑
きっと68hさんはやればできる子。いや、私の方が年下なので……できるお方?できるお方です。
……はい、天下一がんばります。設定自体はほぼ完成しているので、後はあっみだくじ!ですね。
リレー小説はのんびり見させていただきます。ネルくんとルフィエは適当にパーティーから外しておいてください(待って
皆様の期待に添えられるような作品にできるよう頑張ります……はい。




さて。それでは今回はこの辺で。
大量のスレ消費申し訳ありませんでした&ご愛読ありがとうございました。
いつになるかは分かりませんが、次回作もご期待下さい。
それでは、白猫の提供でお送りしました。

298◇68hJrjtY:2008/07/06(日) 02:02:28 ID:rvBV3p4k0
>白猫さん
まずは。まずは言わせて下さい。Puppet完結編、本当にお疲れ様でした。
飽きさせない、息をつかせない怒涛の傀儡、ルヴィラィ、そしてパペットとの戦闘。
白猫さんの小説では戦闘要素を主に堪能させてもらっている私ですが、もちろんそこにはたくさんのドラマがあり…。
ネルとルフィエ。戦いに次ぐ戦いの中でお互いの存在をしっかりと感じ合い、
別の点では「エリクシルを持つ者」として他に比肩できないほどの能力を手に入れた二人。
思えば古都でのあの出会いから長かったようで短かったようで、短期間の成長ぶりは白猫さんの執筆速度と相まって驚かせてもらいました。
なるほど、「エル」という言葉には「神」という意味があるという話を聞いた事がありますが、「名も無き神」とリンクしていますね。
傀儡たちも当初は敵として見ているだけでしたが、それぞれがそれぞれの想いを持って戦っているという点では
ネルたちとなんら変わりない、人間味溢れる奴らだったようにも思いました。できる事なら真っさらに人間として転生して欲しいとか(苦笑)
ヴァリオルド家代々に渡る戦いであり、ルフィエにとっては母ルヴィラィとの戦いでもあったフランデル大陸の存亡をかけた戦い。
なにやら続編の余韻を漂わせながらの堂々完結、ありがとうございました!
---
さて、白猫さん自身は毎回の文章量含めて全く疲れを感じさせないスピードでの執筆でしたね。
もちろん実際には文章構成のチェック等だけでも想像できないほど時間がかかっているとは思います。
そして白猫さんが今まで書かれたPuppet本編だけでもまとめたらそれは長大な物語になりますが
さらにHP公開の予定まで立っているとは…つくづく頭が下がる思いです。完成の折はぜひ訪問させてくださいね♪
---
>小説スレのレギュラー感想屋である68hさん
以前いらっしゃった初代感想屋のアラステキさんに敬礼しつつ感想書かせてもらっています(・ω・;A)
絶対全作品に感想をつける!なんて気持ちでやってるわけではないのですが、自然とこうなってしまいました(ノ´∀`*)

>きっと68hさんの小説も凄いんだろうなぁ。きっとメチャクチャ上手いんだろうなぁ。
この想像は早々に脳内から消した方が良いですよ!?
実はみやびさんスタートのリレー小説の続きなどを考えてたりしましたが、できたのは何の関係もない短編orz
しかも尻切れとんぼ。。

>68hさんはやればできる子。
うっ…がんばるよママン(´;ω;`)

チャットで無責任にもリクしてしまった入れ替わりネタ、ちゃんと考えてくれてるようで嬉しいです(*´д`*)
もちろんいつになっても構いませんし天下一とかいろいろUPした最後の最後でOKですよ!
そして長文感想、失礼しましたー!

299憔悴:2008/07/07(月) 08:54:12 ID:Wv5HCA4E0
ここは…どこだろう
嗚呼…あの子と一緒に遊んだ、場所。
そう、3年前、あの子は今みたいに笑顔でお花を摘んでたっけ。
無邪気に笑って。警戒心なんてこと、知らないように。
まるで純粋な天使みたいだった。
「リデル…」
そんな悲しそうな顔をしないで。
涙なんて流さないで。
その顔を苦痛に歪めないで…。
どこかに、いってしまわないで。

「………ッ」
朝。
小さい四角い窓からは梅雨明けの暑い太陽が、燦々と部屋を照らしていた。
バルコニーへ出れば前面光の世界。
「…おはようございます」
大きく深呼吸をすると、全世界への挨拶を交わす。
ローブと同じく、灰色のパジャマには小さな宝石が散りばめられていた。
あの子が大好きだった宝石の数々。
特に誕生石のエメラルドはお気に入りだったっけ。
私と同じ、薄緑色の髪を風に揺らしながら、小さい宝石を眺めていた。
…もう見ることはないだろうけど。
「おそよう!もう10時だよっ総帥様ッ」
桃色の髪をなびかせた少女が、ドアを勢いよく開ける。
「その…総帥っていうの、やめてくださいません?普通にチェルで結構よ」
「わかったー、チェル姉おそようっ」
可愛い妹のようなリーネは髪と同じ、桃色のドレスの裾を両手で持ち、丁寧におじぎをする。
ここは笑顔でおはよう、と返すところなのだろうが。
先程まで見ていた悪夢が頭の中を蝕んでいる…
素直に笑うことなんて、出来なかった。
いつだってそうだ、誰かの機嫌をとるためには作り笑顔を絶やさないようにしていたっけ。
特に、彼女に対しては笑えない、優しい態度なんて、とれっこなかった。
彼女があの子に似ているから。
どこか、すっぽりと空いた穴に彼女が入ってしまうから。
彼女と生活し始めて1週間と、短いが何度涙をこぼしそうになったか。
毎日の悪夢はもちろん、彼女自信に冷たく当たるようにしてきた。
なのに何で、毎日私を迎えに来るの?一緒にいるの???
極度のお人よし、というものはこういう人のことを言うのだろう。
「そういえばね、ロンサムさんが、自分と同じように、髪の色が違う人見つけたって!」
「本当ですの?」
パジャマからいつもの服に着替えつつ、リーネの言ったことに半分耳を向ける。
「むー、全然興味ない様子!」
「そんなこと、ないですわよ」
苦笑しつつ、総帥室を出る。

300憔悴:2008/07/07(月) 08:54:45 ID:Wv5HCA4E0
リンケンから出、総帥に任命されてからはこの組織が共有している館の数個ある内の1つに住んでいた。
特に、この総帥室があるB棟は一番格が上だった。
何故かリーネもここに住んでいた。
「貴方はなぜB棟に住んでるんですの?入ったばかりなら高くてもD棟でしょう?」
聞いた話によると、ロンサムがリーネをたいそう気に入り、その上誰とも接点を持ちたがらないチェルに軽々と話しかけているため、組織のお偉いさんが此処に住まわしたらしい。
(私は話してないのですが…というかロンサムはロリコンだったのですわね…)
そして、B棟中央ホールに来ると、もうロンサムを始めB棟の捜査委員が集まっていた。
「遅いですよ、総帥…今日は8時から話がある、と言っておいたでしょう」
「最近誰か様のせいで寝るのが遅くなって…申し訳ありませんわ」
ぎくり、とリーネが反応し、ロンサムの後ろに隠れる。
「だって、だって、みんな9時消灯だから、怖くて、チェル姉の部屋で遊びたくなるんだもん!」
「じゃあ今度から僕の部屋で遊びます?」
「…それで、話というのは?」
ああ、と思い出したように手を叩くと、
「私の知り合いにボニーという者がいまして。そいつがリーネちゃんから聞いた、職と髪の色が違う者かな、と思いまして」
異種職。
極稀に、2つの職の技術が使用出来る者。
そして、大半は姿の職と髪の色が異なる。
例に、薄緑色の髪をしたテイマー、桃色の髪をしたプリンセス。
「その、ボニーさんの職はなんですの?」
「シーフでして、髪の色は金なのですよ」
シーフにて金髪。
きっと、他の技術も使えるに違いない。
「そして、そのボニーの住んでいるところがバリアートなのですが…」
バリアート。
西方を山に囲まれた、静かな村。
東には誰も奥まで言ったことのない洞窟がある。
中には竜の子孫がいるだとか…
「それで、どうしましたの?」
「その、東にある洞窟から、今までは外へ出てこなかった竜の子孫が、少しずつバリアート方面に出てきているのです」
この報告には吃驚を隠せなかった。
街などにはロマからダメルまで、ウィザードによるモンスターの入れないように、ポーターが置かれているのだ。
そのため、街にモンスターが現れた例は今まで一度も無い。
「それは…洞窟に何か異変か、もしくはポーターが壊れてしまったのかしら」
「分からないです。この間、1度バリアートに竜が入ってきたそうです。そのボニーを中心に退治されたらしいですが…バリアートと洞窟の間にある沼には、もう竜が倒してもきりが無いほど居るらしいのです」
「それの退治依頼なのですの?」
「いえ、沼の色もおかしいですし、きっと何か洞窟にあったに違いないので、組織から数人、調査に来てほしいということです。ボニーに会いたいのなら総帥も一緒にいきましょう」
洞窟からあふれ出す沼の変色。
竜が洞窟から外へ出る異変。
それは…きっと、鬼による何かだと、チェルは確信めいていた。

301憔悴:2008/07/07(月) 08:55:11 ID:Wv5HCA4E0
「きてくださって、ありがとうございます。私がバリアートの警備隊長のボニーともうします」
ロンサムのいうとおり、姿はシーフだが、髪だけは金髪となっていた。
「一つ、お聞きしても宜しいでしょうか?貴方はシーフや武道による技術以外にも何か使えます?」
頭に疑問符を浮かべるボニー。
「それでは、このくらいの…石、いえ宝石のようなものをお持ちですか?」
「いや…もっては居ないが、あの洞窟の奥に、その、魔石があると言い伝えられてきました」
その話が本当なら、洞窟には入らなくてはいけないらしい。
しかし…
「痛た…」
洞窟に入った瞬間、無数の竜の子孫に突かれてしまう。
いくらペットが強く、回復や蘇生などが出来ても本体が死んでは意味がないのだ。
ここを、何も攻撃されずに奥までいけるのは…
「………」
楽しそうにピクニック気分で鞄に飴やお菓子を詰め込むリーネを見る。
…いや、無理だろう。普通に。

しかし、彼女しか頼めなかった。
「いって…くれますか…?」
「合点承知の輔!がんばってきまーす!」
注意などを聞く耳も持たず、鞄を背負い兎が駆けていった。
…大丈夫なのだろうか?

数時間たつ。
洞窟の入り口に仁王立ちするチェル。
そんなに奥深いのだろうか。もしかしたらどこかで息絶えてるかも…
いや、まあ何とかなるだろう。一応異種職だし。
其処へ、小さな兎が行きの半分の量になってる鞄を背負って帰ってきた。
横には何故か傷だらけのボニーがいた。
そして、元の姿に戻ると、鞄からいそいそと満面の笑顔で黄色の魔石をとりだした。
話を聞くと、奥まではそう数十分もかからなかった。
しかし、一番奥には魔石などなく、ただ1つの扉があった。
チェルとはすれ違いでボニーを洞窟の奥まで命がけで連れて行き、彼が扉の真ん中をいじくっていたら空き、目の前の壁には龍の姿を彫った石画があり、そこの真ん中にはめ込まれていたのが、
この黄色い魔石…トパーズらしい。こうくるともうお分かりだろう。
薄緑の髪のチェルが持ち主のエメラルド。
桃色の髪のリーネが持ち主のアクアマリン。
そして、トパーズ、黄色もしくは金色の髪。
「誰かに絶対誰にもいうな、と言われたのでしょうが…教えてください。貴方は複数の技術をもっていますね?」
金色の髪を黒い帽子で隠している、少年に向かう。
「…やっぱり、ばれましたか。まあ貴方達もでしょう?俺の本職、シーフに加え悪魔、ネクロの技もこなせる。といってもあまり使わないが」
最初からチェルは気づいていたのだ。
宝石がありますか?と聞いただけで魔石、と答えたからだ。
きっと自分が持つべき魔石のことを知っていたのだろう。
その時、バリアートの西から巨大な爆発音らしきものが轟いた。
山から流れているはずの滝の水が、バリアートの村へ降り注ぐ。
「何が…!?」
降り注ぐ水と、そして空を覆う黒い雲。
…鬼が来た。

302憔悴:2008/07/07(月) 08:55:41 ID:Wv5HCA4E0
「あ…あれは…」
リーネの顔がみるみる真っ青になる。
リンケンの町長を殺された時を思い出してるのか、はたまた…
考えてる暇なんて無い。
そう、もうバリアートをリンケンの二の舞にしないためには戦うしかないのだ。
「ボニーさん!ロンサム連れてきてくださいッ」
「は、はい」
それまでに、あの数を2人で食い止められるか…
「…ぅ…鬼なんて…私が…ッ」
「あんまり一人で前にでちゃだめですわっ」
飛び出すリーネの左腕を引っ張る。
ぐい、と体が傾き、一刹那前にリーネが居た場所に落雷が落ちる。
「ひっ…」
目に零れない程度の涙をため、硬直する。
これは一人でやるしかない、と感じ取る。
すぐさま真紅に染まった本に閉じ込められた古代竜を開放する。
(…スリープ、ビューティ、任せる)
励まし、誉めるをし、唐辛子を与え攻撃命令を放つ。
すぐさま前方に出てきている鬼の数匹に取り掛かる。
その間、チェルは回復だけを専念し、2匹の支援にかかっていた。
数分経っても鬼の数は経るどころか増え、一人じゃ抑えきれないようになってきた。
(この数は…なんですのっ!)
洞窟の方角からは鬼があふれ、スリープに致命傷を与える。
(ちょっと…まずいですわね…)
その時、後方から数本の矢と、斧が鬼へ飛ぶ。
「うわ、これは酷いですな…総帥、大丈夫でしたか?」
舌をぺろ、と出すと背から矢を取り、鬼に確実に当てていく。
「これは…キリがないな、あの洞窟に何があったんだ?」
ロンサムの隣に居るボニーも、腰から小さな斧を取ると、周辺の鬼に投げつけていく。
「…う…もう、大丈夫。私に任せて」
後ろで硬直していたリーネが動き、ピンクのドレスを赤いコスチュームに変えた。
小さな魔女は自分の中に宿っているもう一つの技術、魔法使いの力を4人に振り掛ける。
彼女は星型のワンドを取り出すと、小さい声で星を集める。
そして。
「メテオノヴァッ」
小さい星たちが集まり、大きな隕石と変わる。
大きな隕石の塊は4つにわかれ、鬼にぶつかり爆発を起こす。
(これが…異種職の技…)
チェルにはこういった、ウィザードのメテオと、リトルウィッチのウルトラノヴァの効果を併せ持った技は持っていなかった。
目の前に輝く隕石は鬼に爆発を起こし、その後は小さな星の砂と変わる。
そして、リーネは高く跳び上がる。
「チリングスペシャルッ」
氷で出来た霧は4人を中心に渦となり、鬼を襲う。
その霧が収まる頃には、鬼も居なくなっていた。
「リーネちゃん…すごいですなー…初めて見ました、こういうの」
「俺にもできんのかな…」
絶賛する2人に対し、チェルは誉めることはできなかった。
すごすぎて、固まっていたからだ。
(…私にももっと力があれば…彼女を救えたのでしょうか…)

303憔悴:2008/07/07(月) 08:56:07 ID:Wv5HCA4E0
結局、洞窟はリーネの霧によって入り口が凍り、二度と竜が出てくることは無くなった。
しかし、もう既に洞窟の外に出ていたリザードキリングは巣を作ったらしく、何匹倒しても居なくなることはない。
「まあ、あいつらくらいなら大丈夫でしょう。今日はお疲れ様でした。先に帰っています」
久しぶりに疲れたのか、ロンサムは頭を抱えてB棟へ戻っていった。
「で…俺の力を借りたいわけか」
異種職についての役割を話すと、ボニーは斧と鞭を出す。
「俺もいつかさっきみたいな技使えるようになるんだよな、まあついてくよ。楽しそうだしな!」
「わーいっ」
喜ぶリーネを、まじまじと見つめるボニー。
「ほんっとさっきのお前嘘みたいだよなー。こんなガキんちょなんて」
人差し指でリーネの額を小突く。
「いたっガキってゆーなっ」
これでもねーと話し始める。
チェルは興味なさげに聞いていたのだが…
「これでも18なんだから!今年で19だよっ」
「はい?」
凍りつくチェル。
笑えない冗談だ。
彼女と同い年だなんて。

゚・*:。.:・*:.'.:☆.+゚*゚+.。+゚,゚.+:。.+:。☆゚+.。+゚,゚.+:。.+:。*:。.:'・*:.':+.*。+゚.゚.+:。.*:。☆

第三の異種職ボニー。
そして、複合技術。
メテオノヴァ、チリングスペシャル…
なんて語源力のないつまらない小説になってしまったことをお詫びいたします。



コメント返し

>◇68hJrjtY様
アレナはこちらの設定ではなく、リンケンに実際いるNPCの名前でした。
そして、魔石はエメラルドのみではなく、他にも登場させる予定です。
誕生石の12個分ですね…長い。
月がエメラルドから始まって5月、というわけではなく、
チェルのエメラルドで5月、
アクアマリンが3月、
トパーズが11月…と。

毎回コメントありがとうございます。

304防災頭巾★:削除
削除

305黒頭巾:2008/07/07(月) 22:05:01 ID:fou9k2gM0
滑り込みセーフc⌒っ゚Д゚)っズサー


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ささのはさらさら、のきまにゆれる――。


【ふぁみりあいーえっくすしりーず、たなばた編 〜そして、未知との遭遇(?)3〜】


僕はふぁみりあいーえっくす。
ちょっと愉快なぎるどの副ますさんなごしゅじんさまのぺっとだ。
僕の素敵なごしゅじんさまや愉快なぎるどめんばーさん達のご様子は、過去ろぐってやつをご参照でどうぞ。
出し渋りのつんでれろまさんからせしめた攻速石を倉庫に詰め詰めしようと、ぎるどほーるにやって来たごしゅじんさまと僕。
海の匂いのしゅとらせらとから木の香りのぎるどほーるへ飛んだ瞬間、僕の目の前は緑一色になった。
何、何、ぎるどほーる緑化運動!?
しかも何かわさわさちくちくするの!
やーん。
じたばたする僕の視界が急に開けたと思ったら、目の前にはわさわさの正体を持ったごしゅじんさまの姿。

「笹なんて持ち込んだのは誰ー?
 ちゃんと固定しとかないと、倒れてて来て危なかったじゃない!」

どうも、わさわさのお名前は笹って言うらしい。
初めて見る植物だ。
うー、お顔をちくちくされたから痒い痒い。
お顔をこしこし。

「おー、すまんすまん。
 固定する紐を捜してる間だけ立て掛けといたんだが……中々見付からなくてな」

怪我しなかったか?
奥から出てきたはんらさんが、そう言って僕の頭を撫でた。
気にしないで、大丈夫。
にひる笑ってに右手をぐってしたら、「よし、偉いぞ。男の子は強くなくちゃな」ってご満足そうな笑顔。
わーい、褒められちゃった!
でもね、笹とやらを立てかけるはんらさんに見えないように、まだお顔をこしこししてるのは内緒内緒なんだから。
そんなぎるどほーるに、ひゅんと現れたのはおじょうさまとごきぶりさん。
そのお手々には、色取り取りの紙の束が握られていて。

「ナイトさーん、飾りと短冊の材料買って来たよー!」

しまーを回してくれるはんらさんは騎士様みたいだって言うおじょうさまは、はんらさんをないとさんって呼んでる。
僕もはんらさんみたいに、ごしゅじんさまのないとさんになりたいなぁ。

「――ちゃん! ファミちゃーん?」

未来に思いを馳せる、そんな僕を呼ぶ声。

「おいでー、一緒に飾り作ろー?」

いつの間にか机の前にいるごしゅじんさまとおじょうさまの呼び声に、僕はわくわくと駆け出した。

306黒頭巾:2008/07/07(月) 22:06:08 ID:fou9k2gM0

――二時間後。
ぎるどめんばーの皆の手によって、笹はくりすます限定のつりーみたいにお綺麗になった。
反対に、おどりこさんのお手々は傷だらけになってたけど。
ただ、紙を切って折って貼るだけなのに……ここまで不器用だったのは驚いたなぁ。
まっするさんに治して貰ってお手々はすっかりお綺麗だけど、笹のお飾りの一部にある生生しい血の染みからは……皆が目を逸らしてる。
勿論ね、その他のお飾りも沢山!
ごきぶりさんお手製のみにちゅあのお飾りは凄い繊細でそのままお店で売れそうなくらいだし、いけめんさんが仕上げに魔法を掛けたお星様はきらきら輝いてる。
皆で作ったわっかのお飾りも、お星様の川みたいで楽しい。
それでね、それでね……作ってる間に七夕さまのお話を教えて貰ったんだよ!
むかしむかーしの、天上界の天使さんのお話。
神様のお洋服を作る天使さんと神様の乗り物の世話をする天使さんが、らぶらぶになってお仕事をさぼるようになったんだって。
それに困った神様が、そんな自堕落な生活はいかーんって、お二人を離れ離れにしたそうなの。
でも、両方とも天使さんだから……ぱーてぃー組んでこるで会えちゃうのにって思うよね?
お二人もそう思ったみたいで、こっそり会ってはお仕事さぼってたらしいんだけど……やっぱり見付かっちゃってさぁ大変。
追放されるされないまでお話が拗れちゃったんだけど、それは流石に可哀想だってんで、喧嘩両成敗で両方が一年毎に交代で牢屋に入れられて強制的に離れ離れにされた状態でお仕事に専念する事になったんだって。
で、一年我慢したご褒美に、一年に一度の交代する前の晩だけご一緒に会えるようにしてくれたらしい。
そしたら、お二人とも頑張ってお仕事するようになってめでたしめでたし。
で、会えて嬉しいお二人が幸せのお裾分けに小さなお願い事を叶えてくれるってんで、その記念日は皆でどさくさに紛れてお願い事してみよーってのが七夕さまの由来らしい。
一年に一度しか会えないのに皆のお願い事を叶えてばっかりじゃ、お二人でゆっくり出来ないんじゃないかなぁ。
そんな疑問が浮かんだけど、ごしゅじんさまは楽しそうだからお口にちゃっくした……言わぬがお花って言うしね!
僕も含めて一人一枚ずつ短冊を持って、皆それぞれお願いを考える。
一番最初に思いついたのは、ごきぶりさんだった。

「飛虎を拾えますように、と」
「お前、即物的すぎるだろ!」
「ずっと欲しがってたもんねー」
「同期は皆、ロト飛虎とか持ってるんだよ……もうNでいいから欲しい」

半泣きのごきぶりさんのお願いは切実すぎた。

「じゃぁ、俺は……バディのエンチャがいい加減成功しますように、で」

はんらさん、現在13連敗中。

「私は……若くて強い下僕が手に入りますように、かしら」

おねーさまの冗談に聞こえない言葉に、男性陣は必死に目を逸らした。

「今年こそ、探し人が見付かりますように」

おどりこさんは何処か遠くを見詰めるように、呟いた。

「うーん、今年のお願いは何にしよーかなー」

そんな中、おじょうさまはぺんをくるくる回しながら楽しそうに呟く。
そんなおじょうさまに、去年の騒動を思い出したらしい皆が思い出し笑いをする。

「去年は、お花とお菓子でお部屋を一杯にしたい……だっけ?」
「そうそう、本当にお部屋一杯に埋まっててビックリしたわー」
「今年のお願いも叶うといいな」

皆はにやにやと笑いながらいけめんさんを眺めて、いけめんさんはその皆の視線から目を逸らした。
貯金をはたいて可愛い妹のめるへんなお願いをこっそりと叶えた兄と、それを知らずにお願いが叶ったと舞い上がった妹。
そのぷれぜんとを上機嫌でもんすたーに投げつけまくったおじょうさまは……一日の狩りで全部使い切っちゃったと、ぷれぜんとの主のいけめんさんを半泣きにさせたんだよね。

「よし、決ーめた!」

さらさらと羽ぺんを走らせるおじょうさまに、皆の(特にいけめんさんの)目線が飛ぶ。

「おにーちゃんに素敵な彼女が出来ますよーに、と!
 うふふ、ずっと素敵なお姉ちゃんが欲しかったんだよねーv」

満面の笑顔で言うおじょうさまから目を逸らしたいけめんさんは、聞こえないと耳を塞いだ。

307黒頭巾:2008/07/07(月) 22:06:40 ID:fou9k2gM0

……時間は流れて、空には大きなお月様と綺麗な天の川。
七夕にかこつけた宴会も終わり、床に広げた敷物やソファーで眠るギルドメンバー達とファミリアの姿。
そんなギルドホールの入口に飾られた穏やかに光る星飾りが、きらりと瞬いた。
――と、光ったまま空中に浮かび、笹に下がった短冊の周りを飛ぶ。

『何だか強い想いを感じたから、来てみたけど・・・』

どれも即物的すぎるわねー、と嘆くように呟いた。

『恋人がーとか、ちょっと面白いけどねー』

こればかりは、いくら最高精霊とは言え一晩で如何こう出来る問題ではない。

『あーあ、がっかり・・・、帰ろうかなー』

そう言いながらも、見難い所に三つ並んだ短冊を最後に見付けて近付く。
内容を読み取ったのか、その星は嬉しそうに瞬いた。

『あ、これとかいいわねっ! うん、感動の友情ってやつだわ!』

如何やら、お気に召すお願いを見付けた模様。
ふわりとギルドメンバー達の上を飛んで、幸せな夢を授ける。
願わくば――遥か未来、本当にそんな願いが叶う日が来れば、と思いながら。
そのまま上空で少し考えた星の精霊は、オマケとばかりに祝福を授けた。
幸運を授けるスターライトを受けたメンバーは、きっと明日はドロップもよければエンチャの成功率もいい事だろう。

『さ、夜が明ける前に帰ろーっと。
 そう言えば・・・皆が七夕をやったら、何をお願いするのかなー?』

一緒に旅をする仲間を思い出して笑った精霊はその気配を消し、後には穏やかに瞬く星飾りだけが残った。
星飾りの光に照らされた三つの短冊はそれぞれ違う筆跡で……特に一枚は、幼い子どもが書いたようなミミズののたくった文字。
その三枚にまるでお揃いのように「皆とずっと仲良く一緒にいれますように」との一文が書かれているのを知っているのは……星の精霊と飾った張本人達だけ。
ソファーで眠るその三人――二人+一匹は、幸せそうな笑顔を浮かべて夢の中。

「おにーちゃん、おねーちゃんとファミちゃんと一緒に寝てるの、ずるーい!!」

二人の真ん中に寝ているファミリアにいけめんさんと呼ばれている青年とごしゅじんさまと呼ばれている少女が、青年の妹の抗議で目を覚ますまで……後、数時間。


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未知との遭遇第三弾&七夕編をお送り致しました。
ご本人様の承諾を取れないままに勝手にお借りしてしまいました(自重)
七夕で如何してもあの精霊が浮かんで…申し訳ない/(^o^)\
一応過去ログ全部漁って口調は調べたつもりですが…イメージ壊れてないのを祈ります^p^
書き上げて気力が尽きたので、皆様への感想は次回に回します\(^o^)/

308復讐の女神:2008/07/08(火) 02:29:54 ID:Raw2JgF20
 砂漠の村に、花が咲き乱れた。
 小さく透き通っており、砂漠にそぐわぬほど冷たい花。
 氷だ。
 氷は、雲ひとつない空から振っていた。 
 先は鋭く刃と化し、その威力はレンガであろうとたやすく貫いていく。
「あああああああああ!!!!」
 氷の花園に、赤黒いものが混じった。
 血だ。
 村を歩く者たちが、突然の雹に串刺しにされたのだ。
 家の中にいたものなど、何が起こったかすらわからず死んでいった。
 こんな砂漠の村で雹が突然襲い掛かるなど、誰も思いつくことができるはずがないのだ。
 いや、雹でなくとも、突然死が襲い掛かってくるなどと、誰が想像できるだろう。
「うぁ…」
 幸運にも、雹の槍に刺されながらも生き残った者がいた。
 彼はこの現場を、現実として受け入れることができただろうか。
 太陽の熱が猛威を振るっているはずの場に、大量の氷があるのだ。
 それら氷は太陽光を反射してキラキラと輝き、一部からは白い冷気を放出していた。
 暑いはずの村が、寒かった。
「おおおおお ……おおおおぉぉぉぉ!」
 彼の耳には、ただ女の甲高い泣き声だけがこだましていた。

309復讐の女神:2008/07/08(火) 02:30:53 ID:Raw2JgF20
 古都ブルネンシュティングの街中において、冒険者を手っ取り早く雇う方法がある。
 掲示板への張り紙だ。
 政府直下の掲示板があり、そこにはランク別に冒険者への依頼が張り出されている。
 多くの冒険者は、この掲示板の紙をとって契約し、依頼を果たすことで報酬を稼いでいる。
 そんな掲示板に、新たな紙が張り出された。
 滅多に出ない、賞金首の依頼だ。
 賞金首には2種類あり、政府が危険人物と判断し金をかけるものと、公募によってかかるものがある。
 もっとも、公募の賞金首の多くは人探しであり、普通は賞金首とは言われない。
 政府が出す賞金首は、危険が大きく難度も高いのだが、そのぶん金額が公募より1桁2桁も高い。
 金が無限にあるわけでないため、賞金首は厳選に厳選を極め、よって賞金首の数はあまり出てこないのが普通だ。 
 張り紙がされたときの現場の色めきあいは、非常に高いものとなる。
 ゆえに
「久々の賞金首ね」
「だな」
 ジェシとラディルもまた、周りの雰囲気に飲み込まれるように興奮していた。
 二人はお金に対する欲求が少ない。
 つまり、強敵の出現が、二人を高ぶらせているのだ。
「ジェシは賞金首レース、参加するの?」
 テルは、あまり乗り気でない様子。
 彼女にとっては、人間よりも珍しいモンスターのほうが価値が高いらしい。
 3人は、掲示板のすぐ近くにある店のテーブルについていた。
 ちょうど昼食が終わったところへの、騒ぎだったのだ。
「しないわ。興味はあるし、戦ってみたいけど、お金に困ってるわけでもないしね」
 この世界は広い。
 しかし、政府と協会の力はそれらをほぼ全て包み込んでいる。
 賞金首の張り紙は、あらゆるネットワークを使用して全ての街や村に届けられ、張り出される。
 相手はそれに気づくだろうし、それなりの対策はしているはずだ。
 一人を探し出すだけで、どれだけの時間と費用を必要とするのか、考えるだけでもばかばかしいのだ。
 全ては運。
「そもそも、賞金首っていっても…顔絵がないじゃない、探しようがないわ。今回たまたま生存者が…ううん"元生存者"
が証言したからこそ、小さなヒントが得られたくらいよ」
 そう、今回の賞金首の張り紙には、特徴が書かれているだけで一番重要な"顔"が描かれていないのだ。
 特徴とて「女・弓使い(氷系統魔道使用)・泣き声」の3つだけだ。
 もっとも、ジェシも含めて冒険者のほぼ全員が、それ以上の情報を自分の中で付け加えていた。

”炎系統魔道使用”

 すでに2つの村が炎で焼かたという情報は、冒険者全てに知れ渡っていた。「けちな政府が、やっと重い腰を上げた」というのが
共通認識なのである。

310復讐の女神:2008/07/08(火) 02:31:25 ID:Raw2JgF20
「両系統を完全に使いこなす弓使いの魔道師なんて、この世界に何人いるのかしらね?」
 魔法は、体内に廻る魔力を変換して放たれる奇跡だ。
 もともと性質などないエネルギーである魔力は、回路を通ることで性質を帯びる。
 4大精霊の水、風、土、火に光と闇を足した6系統は、それぞれが別の形をした回路だ。
 特に性質が真っ向から対立するものは、ほとんど逆向きの回路となっている。
「効率も悪いな」
 1系統を極めることですら、難しく長い道のりを必要とする。2系統を操るということは、魔法の威力が落ちることにつながる。
 ウィザードの連中が全ての系統を満遍なく使いこなせているよう見えるのは、外部に魔方陣として回路を生成することで、自身への
影響を極力抑えているからにすぎない。それにしたって、個人個人の得意系統は分かれてしまうのだ。
「弓魔道師の炎や氷って、そんなに残留なかったと記憶してるんですけどー」
 魔力とは、霧散しやすく集まりやすいエネルギーだ。魔力で作られた炎や氷などは、すぐに気化してしまう。そのため、物質に
与える影響力は非常に小さいものなのだ。唯一例外ともとれるのがサマナーの4大精霊召還だが、彼らの魔力の質は特殊で精霊を
物体化させることと、自分の魔力にしか影響を与えることができない。呼び出された精霊が使う魔法は、精霊が使うものとしてやはり
気化が早くなってしまう。
「そうね、影響は与えるけどすぐに魔力に気化してしまって、物理的な殺傷とまではいかないわ」
 属性の与えられた魔力は物に当たると気化してしまうが、その際に与えられた属性を相手に押し付けていく性質がある。水系統の
魔法をうけて寒さや熱さを感じるのは、一時的に体内魔力の方向性を強制されるせいだ。
「魔力を高純度に練る時間さえあれば、できなくはないのかもしれないけど…弓魔道師の雨って、ものすごい魔力を使うのよ。村一つを
焼き払うだけの魔力を練る時間なんて、考えたくもないわ」
 霧散しやすい魔力は、練る事で残存しやすくなる。冒険者などはよく小さな魔力を練って薪に火をつけるが、それは熱で発火させている
だけにすぎない。それにしたって、発火しやすいものに火をつけてからなのだ。
「ま、考えてもしょうがない、それより本題に入ろう。ジェシの分がこれ。そして、これがテルの分だ」
 ラディルは紙切れを取り出し、二人に渡した。
「ありがと、ラディル。いつも面倒言ってごめんね」
「サンキュサンキュ! いやー、ギルドって便利だねぇ」
 ジェシがもらった紙には、人の名前が書かれていた。おそらくそれだけを見ても、周りの人間はなんのリストかわからないだろう。
「まったくだ。何度も言うが、うちのギルドに所属しろよ。そうすれば全て自分でやれるし、効率もいい。ジェシの実力なら誰も反対
しないさ」
 ラディルは、とあるギルドに所属していた。人数はかなりのもので、そのおかげで多くの情報が手に入る。見返りとしてギルドのために
動かなければならないこともあるのだが、それを考えてもメリットは莫大だ。
「わかってるでしょ、私は他のギルドに所属する気はないって」
 ジェシもまた、ギルドに所属していた。
 ラディルの所属しているギルドと違い、所属している人数は少ないが、自分勝手に動けて束縛もまったくないギルドだ。
「残念だなぁ。ラディルの誘いが早ければ、私はそっちに所属してたかもしれないんだけどね」
 テルもまた、この街に来てすぐにギルドへ所属していた。
 ただ、ギルドへの所属には契約条件があり、一度所属したギルドは数日は離れることができないことになっているため、簡単に所属を
変えることができない。

311復讐の女神:2008/07/08(火) 02:31:53 ID:Raw2JgF20
「はは、しょうがないさ。契約期間が過ぎたら自由に移籍できるんだし、そのときに声かけてくれよ」
 話は終わったと、立ち上がるラディル。
 ラディルは所属ギルドの副ギルドマスターをしており、なかなかの人望を集めている。そのため、普段はそれなりに忙しい人なのだった。
「まあいいや。とにかく、また情報が集まったら渡すよ。じゃあな」
 店を出て行くラディルを見送り、ジェシとテルは向き合った。
「まさか、あなたもラディルに情報を集めさせているとは思わなかったわ」
 テルが何かを探しているそぶりを、何度か目撃していた。確かにお金を集めているようすもあるが、それが一番の目的とは思えなかった。
「うん? あぁ、うん。そんなつもりじゃなかったんだけどねー。前に街で会ったときに少し話したら、調べておいてやるよって…」
 落ち着かなさそうに手をもじもじさせて、恥ずかしそうにうつむいているのが卑怯だと思った。
 テルもまた、ラディルに恋しているのだろう。
「さて、もらうものももらったし、依頼主のところへ行きましょうか」
 ジェシが立ち上がるのに続いてテルも立ち上がる。
 もともと今日は、依頼を受けに行くために出たのだった。
 掲示板で依頼を選んだときに偶然ラディルと会わなければ、今日情報をもらうことはなかっただろう。
「護衛や荷物運びの依頼多かったよね。いつもあんななの?」
「そんなことないわよ。むしろ、普段は少ないくらいなんだけど」
 キャラバンを襲う盗賊や山賊のたぐいは、それほど多くはない。上級モンスターを倒したほうが、お金になるからだ。
 そもそも、キャラバンを営む人間の多くが、元冒険者だったりするため、簡単な魔物程度なら自分で追い払うことができる。
 そのため、護衛の仕事は楽なものという認識があり、人気は高い。
「賞金首効果かしらね」
 賞金首が出たということは、それだけ物騒であるということにほかならない。
 それだけで、説明は十分であろう。
「んでもさー、ジェシ。この依頼って…ちゃんと見た?」
 ジェシにはしては珍しく、依頼内容を詳しく見ていない。
 護衛の依頼を避けて探したため、良い条件のものが少なかったのだ。依頼は無限にあるわけではないので、よさそうなものを見つけて、
さっさととっただけであった。
 だから、テルの「いいのかなー」というつぶやきも、ジェシはあまり気にしていなかった。

312復讐の女神:2008/07/08(火) 02:41:43 ID:Raw2JgF20
第二章というかなんというかです。
今回は私の「スキル使用におけるCPの役割」的な妄想を重点に書いてみました。
妄想なので、後々設定を変えるかもしれません。
変えないかもしれません。
なので、そこら辺はテキトーに流してくださると、ありがたかったり。

他作者さまのキャラを登場させたい!とか、なんとなく思っていたのですが、実際にやり始めるとあら大変。
キャラを大切にしたいと思い始め、過去ログ読み直しの修行です。
失礼にもさらっと読み飛ばしてた場所などが発見されると、もうなんというか。
反省の行として、無課金徒歩で手紙クエを実行してきます><

313◇68hJrjtY:2008/07/08(火) 08:46:52 ID:vWCgkkT60
>憔悴さん
合成スキル、つまらないなんてとんでもない。これは妄想が止まりませんぞ(*´д`*)
宝石というのもRSのサーバーを表すものですし、つくづく面白い設定だと思います。
髪の色も実際の話でかなり重要な要素で、金髪の者でなければ王族と認めない…なんて話もあるらしいですよ(笑)
新登場ついでに仲間に加わったボニー。金髪と来たのでアチャランサかな、と思ったらネクロ悪魔とは!
でも毒スキルとか即死系とかシフと悪魔って繋がる部分も多そうですしね。さて、どんな合成スキルが出るか。
続き楽しみにしています。

>黒頭巾さん
久しぶりのダークメルヘン…ですがダークではなく、今回は素敵な七夕物語。
そういえば七夕なんてすっかり忘れてました。うーん、でもこういうイベントこそ忘れてはいけないと思います。
ごしゅじんさま、いけめんさんをはじめみんなのお願い。某精霊さん(笑)に届いたようですね。
ギルメンたちのワイワイっぽさがとっても楽しそうで、ファミたんの可愛さとそれだけでおなかいっぱい(*´д`*)
次回のイベントモノ小説も楽しみにしています。今度はなんだろう(笑)

>復習の女神さん
適当に流せません!(笑) というわけで、魔法学というかスキル学というか、女神さん設定の方に目が釘付け。
と同時に面白いと思ったのが賞金首システムですね。本当にファンタジーっぽくて(・∀・)イイ!!
ギルドというものも本来の意味はこのように特定の人々が情報を流通させるための団体といった意味みたいですし
そこにファンタジー要素を絡めることでワクテカするくらい今後の物語が楽しみになってまいりました。
しかしそれ以上に気になるのが2系統の魔力を操る弓使い…ジェシたちの新たな冒険の始まりですね。
続きお待ちしています。

314ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/08(火) 11:19:53 ID:OhTl4zsk0
>>212 からの続きですよ〜

さてさて,シュトラセラトへと異次元の黒箱を届けるために,ミリアとファミィ,サーファイユにミカエル達は森の小道を進んでいく。
道中で木の実を採取していたエルフの民の一人,ジャファイマからたくさんの木の実を分けてもらったところだ。時刻は正午近い。
「ふみゅぅ〜,ミリアお腹空いたのぉ〜・・・お昼ごはん食べよっ?ね〜?」愚図りながらミリアが兄のミカエルにせがむ。
彼はしょうがないなぁ〜と呟くと,背負っていたリュックサックを下ろして,そこからシートや簡易式の調理器具,さらには
チョコレートや乾パンなどの軽めの食材を取り出した。彼曰く,サバイバルには持って来いという品々だとか・・・
サバイバルナイフで乾パンを切り,チョコレートを砕いてボウルに移し,相棒のケルビーを召喚してそれを溶かす。

「ようマスター,今日の昼飯はチョコレートフォンデュなのか?」「あぁ,糖分もちゃんと摂取しておかないとな。」
「ん〜,ミカエルがつくるチョコフォンデュはおいしいから大好きさ〜♪サーファイユ,食べ方わかる?」
「えっと・・・あぁ!!パンをチョコに浸すんだね?へぇ〜,これが人間の食べ物かぁ・・・初めて食べるよ,えへへ」
「うにゅ〜・・・ふみゅっ,モグモグ・・・やぅ,やっぱりお兄ちゃんのチョコフォンデュはおいしくて大好きなの〜♪」
無邪気な笑顔を携えてミカエルに擦り寄るミリア。「こらこら」と苦笑を浮かべながらも,甘えてくる妹を抱きしめる腕は温かい・・・

だが一行を尾行する影が,茂みの中から彼らをマークしている最中でもあった。小柄で太った火鬼と,それとは対照的で大柄なレイス。
火鬼はというと,どこから手に入れてきたのか・・・ピンク色の奇妙な色合いをした木の実を手に,悪どい笑みを浮かべている。
「クヒヒヒヒ・・・あのガキ,ミカエルの妹だけあってタイマンじゃぁ勝てる見込みはねぇが・・・こいつがあれば戦力ダウンだぜぇ〜」
「えっ,ちょっ先輩?そのピンクの実って一体何なんスか?それをミリアたんに食べさせるんスか?」レイスが恐る恐る訊ねる。
「あぁん?てめぇそんなこともわからねぇのか!?この実はなァ,食った奴を若返らせる『ヤングバック・ベリー』って種の実だ。
 つまりこれをあのガキんちょが食べれば・・・そういや実一つで8〜10歳ほど若返るらしいし,5歳児になっちまうだろうよ!!
 クヒヒ〜ヒヒヒヒ!!!あぁ〜オレって頭い・・・ん,アレ?おいダリオ,おめぇヤングバック・ベリーをどこに・・・あぁ!?」

驚嘆する火鬼が見たものは・・・ダリオという名のレイスがヤングバック・ベリーを手に鼻息荒く猛ダッシュしているとこだった!!
「みっ,みっ・・・・ミリアちゃぁああぁああぁああぁぁぁあぁぁあああぁぁんっ!!!幼女幼女幼女ぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!」
「あんのクソったれのロリコンレイスっ!!!あいつの幼女フェチのせいで何度窮地に立たされたと思ってやがる!?ちきしょうがっ」
舌打ちをかまして,火鬼もまた暴走気味なレイスの後を追う・・・・・・


―――・・・昼食を終えたミリア一行。地面に座り込んで腹を休めている最中だ。ミリアとファミィは満腹のあまり眠ってしまった。
「うぅ〜っぷ・・・ゲプ,あぁ〜食った食っ・・・お,そうだ。サーファイユ,この辺に何か果物が生ってる場所とか知らないか?」
「あっ,それなら丁度ここから西の方にパッションピーチが生ってる木があるよ!案内してあげるよ,ミカエルさん!!」
「だけどよぉ・・・ミリアとファミィを寝かせたままにしても大丈夫か?それにさっきから誰かに尾けられてる気がするんだが・・・」
「大丈夫だって,きっと森の生き物の気配かもしないし・・・パッションピーチの木はここから歩いて1,2分くらいだし,早く行こうよ!!」
「まぁそれもそうだわな・・・うっし,じゃぁちゃちゃっと行ってデザートにでもすっか!!」「うんっ,急ごう!!」
駆け足でその場を離れるミカエルとエルフ戦士のサーファイユ・・・だが,このわずかな時間に思わぬ事態が起ころうなど
誰が予想できようか。可愛らしい寝息を立てるミリアの元に,巨大な影が忍び寄る・・・!!!

315ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/08(火) 11:59:03 ID:OhTl4zsk0
―――・・・ミリアたちが休息中の場所から少し西へ。ミカエルとサーファイユの二人はパッションピーチの木の麓へと到着した。
「ほぉ〜,これが噂に聞く幻の果物『パッションピーチ』か〜・・・夕焼けのような鮮やかなオレンジ色,はじめて現物で見たぜ。」
ミカエルが感嘆の声を漏らす。燦々と輝く夕日のような色をした桃の実が,所狭しと木の上に生っている。誰でも溜息を漏らすだろう。

「すごいでしょ,パッションピーチは20年に一度しか生らないレア中のレアな果物なんだ。食べた人にはこれまでにないくらいの
 至上の幸運が訪れるって言われてて,高値で取引されるんだ。だから密猟者が多くて,僕たちエルフはこの木を守っているんだよ。」
「ほへぇ〜・・・なァ,オレも一個食べてみてもいいかな?ングっ・・・やっべぇ,よだれが止まらねぇよぉ〜///////」
顔をほころばせて,よだれをボタボタとミカエルは垂らす。そんな彼に苦笑を浮かべるも,サーファイユは一個だけ食するのを許した。
早速木によじ登り,パッションピーチの実を採ろうとするミカエル。だが果実のあまりの大きさに彼の興奮は余計に高まる・・・!!
「うっひょぉ〜!!!近くで見るとこんなにもデケぇのかよ!?まるでウチの姉貴のおっぱいだな・・・ん?姉貴のおっぱい!?」
そう自問自答する彼の目の前には・・・肌色をした二つの大きな球体,そしてそれぞれ中心部にはピンク色の突起。まさか・・・

イヤ〜な予感が彼の頭の中を過ぎる。だが確かめてみないことにはわからない,今目の前にしているのが姉貴の乳房なわけがない。
そうだ、これはパッションピーチが突然変異したやつなんだ,きっとそうに違いない。だったら,このピンク色の突起を摘んでも・・・

だが,その憶測は所詮は彼の思い込みに過ぎなかった。ピンクの物体を指先で突付いて擦って・・・そして出てきた反応は・・・

「ふぁ・・・んっ,あぅっ・・・んゃ,いやァ〜ん/////////////////」「・・・・・・・・・・・はぁ?」

異常にエロ可愛い喘ぎ声と乾き切った声が順番にその場に木霊する・・・そしてミカエルから『ブチィっ!!!』何かが切れる音が。

「てぇんめぇええぇぇぇええぇぇぇええええぇえぇぇぇえ!!!!何してやがるあぁあぁぁああぁぁぁああぁ!!?」
怒りのあまり闇雲にジャブやらストレートやらをブン回すミカエル,そして彼と対峙しているのは・・・姉,フィナーア!!!(ドーン)
「あぁ〜んっ,ミカエルちゃん怒っちゃいやァ〜んっ!!!お姉ちゃんの軽いジョークでしょぉ,カルシウム摂ってるぅ?」
「うっせ,空気読めよこのエロ姉貴っ!!!人が嬉しそうにしてるのにブチ壊しやがって,マジKYだなこのバカ姉貴っ!!!」
「まっ,お姉ちゃんに向かって『バカ姉貴』ですってぇ〜!?そんな悪い子はァ・・・あたしのバストでお仕置きよぉ〜んっ!!!」
いきなり弟の顔を掴み,それを自身の胸の谷間へと強引に挟み込む!!!もがくミカエルだが,逆に息苦しさを増してしまう・・・
「んむぐ!!?むごぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉ!!?!ぱべぼぽぼばばはぺびぃ〜!!!へくはばはんぱ〜い!!!!!」
「あらあらァ,セクハラ反対だなんてぇ・・・これはお姉ちゃんから弟への愛の印なのよ!?ちゃんと受け取らなきゃダメよぉ〜!?」
「うんごぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉ!!?!」「(ごめんねミカエルさん,僕にはどうしようもできな・・・ん!?)」
二人を余所に合唱しているサーファイユが,木々の声を感じ取り表情を険しくした!!ミカエルを引っ張って彼を助け出すと
彼の耳元で囁き,急いで戻るように促した。二人はフィナーアのことに気もくれずに走り去っていく・・・・

「まぁっ,いきなりセクシーでキュートなフィナちゃんをシカトだなんて,いい度胸だわっ!!フィナちゃんプンプンよぉ〜!!!」
相変わらず露出度の高い格好,今日はV字型のギリギリ水着を着ている彼女は腰をくねらせプリプリと憤慨する・・・すると
ボトリ。と何かが落下する音が・・・彼女が足元を見ると,そこには黄金に輝く一つの桃の実が・・・
どうやらただのパッションピーチではないのは確かなようだ。しかしそんなことも考えずに,彼女はまじまじと果実を見つめ・・・

一口で平らげてしまった。

「あんっ・・・はふぅ,なかなか情熱的な味だったわァ。それに何かとてつもないパワーが沸いてくるような・・・あぁ〜んっ!!?!」
後に,この実を食べたことにより彼女はとんでもない体質になってしまうのを,彼女自身はまだ知らない。

316ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/08(火) 12:10:07 ID:OhTl4zsk0
そして場所はミリアとファミィが休んでいた場所・・・そこへ戻ってきたミカエルとサーファイユが目にしたものは・・・
「ふゃぁ〜んっ,えぅ・・・ふみゅぅ〜,ふぇえぇ〜ん!!?!」ミリアが泣いているのだが・・・何と,5歳児のような体格に
なってしまっているのだ。その傍らではファミィが彼女をあやそうと必死に奮闘している最中だった。

「な・・・おいおいファミィ,一体こりゃ何があったんだよ!?何でミリアが子供に戻ってるんだ!?」
「ん〜・・・オイラが起きたらいきなりこうなってたさ〜,何でなのかオイラもわかんないさ〜!!!!」
「まさか・・・これはあくまで推測だけど,誰かがミリアに『ヤングバック・ベリー』を食べさせたに違いない!!
 気をつけて,ファミィにミカエル・・・近くに敵が潜んでいるかもしれないよ!?ミリアを皆で守るんだ!!!」
「あぁ・・・ちくしょう,オレの妹をこんな目に遭わせやがって!!!ぜってぇ許さねぇっ!!!」
怒りの炎を瞳に燃やすミカエル,だが側で微笑む小さな妹にはキープするのも難しく,優しい笑顔へと戻っていく。
「ふみゅ・・・おにいたんだいちゅきなのよ〜,うみゅ〜♪」「あははは,よしよ〜し。まずは元に戻す手段を考えようぜ。」
「ミカエル,ちょっと村に戻ってエストレーアを呼んでくるよ!!彼なら治し方を知っているはずだから待っててね!!」
サーファイユはというと,エルフの村にいる医者,エストレーアの助けを求めるためにその場から離れた。
木の枝を駆け回る音が森に木霊する・・・

to be continued...

317ドワーフ:2008/07/09(水) 21:26:21 ID:AepyIIHk0
『ゼーレクラン』

ロマ村に住むエマは動物たちとも、精霊たちとも仲が悪かった。
癇癪持ちの彼女は笛を吹いても言う事を聞かない動物達に腹を立てて暴力を振るったり、全く従おうとしない精
霊に向かって悪口ばかり言っていた。
そんなエマの様子を見て長老は言った。
「エマや。動物や精霊は我らの奴隷ではないのだ。対等の立場で語り合わなければならん。まずお前が信頼に足
る人間にならなければ、彼らは絶対にお前の言うことを聞きはしない」
しかし心配する長老の言葉を彼女は聞こうともしなかった。
エマはビーストテイマーにもサモナーにもなれない男の子達を羨ましがり、彼らとよく遊んでいた。しかし、そ
の半面で動物や精霊を楽しそうに侍らせる他の女の子たちに嫉妬していた。
エマの動物達はというと、もう二度と彼女になつこうとはしなかった。すぐに暴力を振るうエマを恐れて彼女の
姿を見るなり逃げ出してしまうのだ。
そうしてついにエマが他の女の子の動物にまで手を出すようになると、長老も説教ばかりではどうにもならぬと
重い腰を上げた。
「エマや。この笛を少しの間だけ貸してやる。これを使えば動物達はお前に心を開いてくれるだろう。ただし、
その間にお前は彼らと仲良くなることに努めねばならない。決して、いたずらに命令してはならん」
エマは長老からその笛を受け取ると、首を傾げながらも動物達の元に行ってみた。
動物達はエマが来ると一斉に逃げ出し、物陰に隠れて怯えて震えだした。
エマはそんな動物達の反応にムスっとしながらも、長老に貰った笛を吹き鳴らした。
それはとても不思議な音色で、吹いているエマ自身も身体の奥で何かが震えているような感覚を受けた。
「こっちにこい!」
エマは隠れている動物達に命令した。
すると不思議な事に、怯えていた動物達がケロっとした顔でエマのそばに集まってきた。
エマは不思議がって試しにまた命令した。
「回れ!」
すると動物達はくるくると自分の尻尾を追いかけているかのようにその場で回りだした。
こうなるといよいよ面白くなってきて、エマはさらに命令した。
「跳ねろ!」
動物達は狂ったように飛び跳ねだした。
エマはあまりに可笑しくて、飛び跳ねている動物達を指差して笑った。
その様子を見つけると、長老は大きな声でエマを叱り付けた。
「命令をするなと言っただろう」
笛を取り上げられ、エマはふてくされた。
「お前には別な方法を考えねばならんようだ。しばらく動物たちに近づいてはならん」
そう言って長老は笛で飛び跳ねている動物達を鎮めると、去っていった。
エマは長老が持ち去ったあの笛をなんとしても欲しいと思った。あれさえあれば他の女の子を見返してやれる。
エマはあの笛を盗む事にした。
長老が外出している間に、長老のテントに忍び込んであの笛を探し出した。
そして勝手に持ち出すと、エマは早速動物達に向かって笛を吹いた。
そうして動物達を散々に動き回らせ、飽きてくると今度はケンカさせたりもした。
そうしていると、遠くに別の女の子が笛を吹きながら動物たちを散歩させているのが見えた。
エマは何か思いついたように笑みを浮かべると、その女の子の傍に寄っていって笛を吹き鳴らした。
「回れ!」
エマがそう命令すると、その女の子の周りにいた動物達が皆一斉に回り始めた。
なんと、女の子も一緒になって回っていた。
エマはポカンとその様子を眺めていたが、笛の力に気づくと手の中の笛を見て自然と笑みがこぼれた。
そのとき、背後からにゅっと伸びてきた腕が笛を彼女の手から取り上げた。
「この愚か者め」
その人物。長老は静かな怒りの表情でエマを見下ろしていた。
「愚かな娘よ。我らロマと言えどもお前のような者は必ず生まれてくる。憐れと思えばこそ何か手はないかと模
索してきた。しかし、またこのような事をせねばならんとはな」
エマは長老の顔を見上げて震えた。今まで見た事もない冷たく怖ろしい顔だった。
長老はエマに向かってその笛を吹いた。

318ドワーフ:2008/07/09(水) 21:30:15 ID:AepyIIHk0
あとがき
タイトル通り、またユニークをネタにしました。
心を支配するというこの笛が一番強そうな気がします。

319◇68hJrjtY:2008/07/10(木) 09:11:17 ID:SaqKH4OA0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ミリア幼児化計画、再びの発動ですね(ノ∀`*)
しかも今回は本編での幼児化…ミリアの役回りがそろそろ固定されてきそうだといったところですか(笑)
一方フィナ姉の方もなんだか怪しい果物を普通に食べちゃった…こちらはいったいどんな効果なのか。。
某海賊漫画の○○の実シリーズを彷彿とさせるこの果物、果たしてミカエルはどう切り抜けるか(笑)
ミカエルのイイお兄ちゃんっぷりも良かったです(*´д`*) 続きお待ちしていますね。

>ドワーフさん
今回のU昔話はなんだか怖い終わり方で、教訓的なものすら感じられました。
ロマの中にも能力が劣っていたり性格的なものがあったりでエマみたいな子も確かに居そうですね。
結局その性癖は最後まで変わらなかったようですが…心を支配する笛、ゼーレクラン。
友好的、協力的に精霊たちと接するロマたちにとっても異色の笛でもありそうですよね。
次回の小説もお待ちしています。

320之神:2008/07/10(木) 17:26:56 ID:iLS/PbZU0
無題
◆-1 >>593 >>595 >>596-597 >>601-602 >>611-612 >>613-614
◆-2 >>620-621 >>622 >>626 >>637 >>648 >>651 >>681
◆-3 >>687 >>688 >>702 >>713-714 >>721 >>787 >>856-858 >>868-869
◆-4 >>925-926 >>937 >>954 >>958-959 >>974-975

◇――――――――――――――――5冊目完―――――――――――――――――◇
   >>25 >>50-54 >>104-106 >>149-150 >>187-189 >>202-204
◆-5 >>277 >>431-432 >>481-482 >>502 >>591-592 >>673-674 >>753-754
   >>804-806 >>864-866 >>937-939 >>971-972 >>997-1000

◇――――――――――――――――6冊目完――キャラ画>>907――――――――――◇
   >>122

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――番外
>>796-799 クリスマス
>>894-901 年末旅行
  5冊目完
>>226-230 節分
>>358-360 >>365-369 バレンタインデー
>>510-513 雛祭
>>634-637 ホワイトデー@シリウス

321之神:2008/07/10(木) 17:28:21 ID:iLS/PbZU0
α

「うーん、シルヴィーさん…」
「はい?」

「このエレベーター、乗って平気なんですかねぇ?」
「もう、徹さんったら、心配性ですね…」

シルヴィーはスタスタと扉の前へ近づく。
そして、足をエレベーターの中へ踏み入れる。


…。

「ホラ、平気ですよ…、早くこちらへ」


俺は女の子を毒見に使った事を悔いつつ、そのままエレベーターへと乗り込ん…ダーーッ!?


ガガガガガガガガ…と好ましくない轟音と共に、それは急降下した。



                                      [定員 1名]



「うわああああああああああああぁっ!」
「キャアアアアアアアアァァッ!」

開けっ放しの扉からは、高速でスライドしていく壁面が見える…触れたら終わりか。


「どっどど、どうしまっしょぉ…」 声が震えてよく聞き取れない。
「おおおお俺にい言われても困りmmす」 俺も十分震えていた。

気がつくと、俺たち2人は抱き合って身を縮めていた。


「あ、今14階だそうです」
「シルヴィーさん…orz」



「ちょっ、このままじjjゃマジで死にますって…!」
「で、ですnnね」

抱き合ったまま、死体で発見されたらミカにボコられるな…と一瞬考えた。

「あの鳥とか魚で何かできませんkかっ」
「ウィンディとスェルファーです!」 どうでもいいよ…。


「あ、スェルファー!…水を満たして!この中にっ!」

あと6階で激突。

「う、うわっ?」
一瞬で、胸元あたりまで水が満たされた。

「息、止めて潜って!」

「うわわわわ…」

スーっと息を吸って、俺はエレベーターに潜った。

天井まで既に水は満たされた、少し後…。

映画さながらの音響で、、ミュリエ・ジュール本社、本日2度目の爆発が起きた。

322之神:2008/07/10(木) 17:29:44 ID:iLS/PbZU0
γ

「へっ?」

エレベーターを降りてすぐ、爆音が響く。
そして同時に大量の水が滝のように俺に向かって突進してきた。

「ちょっ、そりゃ無いぜ…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「うっ、うわあああああああああーっ!」

一瞬で水に飲まれた。

「ちょっ、ストップー!止まれ!あああああああっ!」

水の流れに乗り、どんどん通路を流れて行く。

「掴むもの、掴むもの……」


「…!」

ドアノブを数メートル先に見つけた俺は、掴みにかかる。

「あと少し……」

「今っ!」

がっちりと掴んだドアノブは、ライトの進行を抑え…

「ふう……?」

ボキン!

壊れた。

「マジかよおおおおおお!」

流れるプール、再開。



ψ

ミュリエ・ジュール本社ビル 地下4階
「うー、どこだぁ?」 

周りは草花が生い茂り、まるでビルの中とは思えない。

「偽者の太陽まである…俺草原は好きだけど、ここは嫌いだなぁ…」

地下階に作られた人工的な平原に、ナザルドは珍しく嫌悪した。


中には鳥や、他の動物、そして…

「残酷な人間め…我々が何をしたと言うのだ!」

「お!?」

サッ、と振り返るとそこには

「エンティング…?」

木の精がいた。

323之神:2008/07/10(木) 17:36:10 ID:iLS/PbZU0
こんにちは。
こんばんわかな?

お久しぶりです、生きてました。ごめんなさい。

リア用が多忙すぎて書き込むヒマがありませんでしたorz
天下一がどうなったかとか、リレー小説の進行とか、せっかく書いた七夕も載せられず。

以前の更新率はどこへ行ったのやらって愚痴…ってあれ?

また参加していきます、のんびりですが。

それと小説のタイトルは無題のまんまです、小説完結したらつけようかなと。

では引き続き小説スレをお楽しみ下さい。

之神でした。

324白猫@感想:2008/07/10(木) 22:45:14 ID:DBiBcWKA0
しばらくは感想屋として生きていこうと思う白猫です。

>68hさん
初っ端に「うおなげぇ」と素で言ってしまい、電車で怪訝な視線を感じました。白猫です。
最終章。本当はブレンティルのリベンジを書きたかったのですが、それをやると50を超えてしまいそうなのでやめておきました。
おかげでアネット、リレッタ以外のサブキャラがほぼ空気……特にカリア(ry
---
>全く疲れを感じさせないスピードでの執筆
結構イッパイイッパイでした。チェックもたまに抜けてしまうくらいいっぱいいっぱいでした苦笑
最終章にも2つほど誤字をしてますね……自HPへと上げるときは注意しますorz
フフフ、絶対に68hさん最強職人説は曲げないのです。68hさんは書くとスゴイ人なのです。(意味不
入れ替わりネタは現在製作中です。黒頭巾さんとの悪ふざけで書いたちびネルリレッタの方が先に完成してしまうってorz
まぁ、その……期待はあまりしない方が無難です笑


>憔悴さん
はじめましてでしょうか。初めまして。
ようやく憔悴さんの小説に追いつけたので、徒然なるままに感想を。
まずは異種職。私には想像も付かない設定、ありがとうございます。
複合技術も極悪ひd…コホン。出鱈目な強さであります。本当にありがとうございます。
金髪シーフいいよ金髪シーフ。ボニーいいです。好きなヤツです。
そしてチェルとリーネのやりとりは個人的に大好きです。敬語な人と人懐っこい人のやりとりは近しいものを感じます笑
続きをワクワクしながら待ってます。頑張って下さい〜


>黒頭巾さん
七夕であることを当日まで忘れていました白猫です。
つんでれろまさんいいよつんでれろまさん。あの出し渋みは個人的に大ッ嫌いですが(待って)
早速「ギルドホール緑化運動」に吹きました。これはまさに地球温暖化対策最終防衛ライン……あれ?違う?
はんらさんカッコいいです。ナイトさんかっこいいです。私もはんらさんを目指します。
おどりこさんの不器用かわいいのぅ……ごしゅじんさまには負けますがn(斬
仲良しないけめんさんとごしゅじんさまとファミちゃん。かわええのう、かわええのう(壊
最近タガが外れかかっています。このまま狂ったらどうしましょう。
兎にも角にも、続きを期待して待っています。そしてハロウィンはお任せ下さい。


>復讐の女神さん
�怔睨,寮瀋蠅繁睥論瀋蝓△Ć腓笋蠅Ľ襪福�
まさに目から鱗な設定をありがとうございます。なるほど、こういう考え方もあったのかと改めて納得。
そして化け物アチャの登場。別系統である二種類の魔法を操るアチャ。村一つという馬鹿げたパワーです。
さらにさらに、昨今のギルド事情というか盗賊事情というか。冒険者事情。そう、冒険者事情。
ケチな政府と金に貪欲な(三人は除外)冒険者。まさにいたちごっこ。なんだかその光景が目に浮かんで笑いました(笑うところ違)
次回の更新も楽しみにしています。


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ミリア――――――ッ!!!(叫
期待を毎度毎度裏切りません。というか斜め上を行ってくれます。大好きです。
そしてフィナ―――――――――ッ!!!(再叫
もうね、大好きです。青少年は見ちゃダメです。腐った人しか見ちゃダメです(意味不
DIWALIさんは予想の斜め48°くらい先を行ってくれます。次回も大いに期待します。
ハードルは上げるために存在します。なんならMAXまで上げましょう(待


>ドワーフさん
ゼーレクラン。
アイテム説明の通り[相手の心を支配する力]を持つ笛。
黒頭巾さんの「ふぁみりあいーえっくすしりーず」のようなほのぼのなお話も大好きですが、このような雰囲気のお話も大好きな白猫です。
いつもUお話を楽しませていただいています。そしてこれからも楽しみにしていますよー!
是非是非頑張ってくださいです。wktkして待っていますよ〜


>之神さん
こんばんは、お久しぶりです。
いつもながら改行がイカしています。いつもなら携帯から読む私ですが、PCから読んでも読みやすい読みやすい。
そして今回。恐ろしきかなエレベーター。定員は守ろうお二人さん(・ω・`)
開けっ放しで高速スライドする壁を想像し、大根おろしとかすぐにできそうとか思ってしまいました(コラ)
抱き合う二人を想像して吹きました。そして折れるドアノブ。空気の読めるドアノブです。
そしてエンティング登場。これはいい寸止め。
次回も楽しみにしています。

325 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:51:44 ID:n19Iy/ug0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック 六冊目>>44-45
  ■Act.2 少女 3 六冊目>>65-67
  ■Act.3 少女 4 六冊目>>87-90
  ■Act.4 レスキュー? 六冊目>>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>222-223
  ■Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>272-273
  ■Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>426-427
  ■Act.10 封印された九つの刻印2-SevenDaysWar- 六冊目>>581-582
  ■Act.11 科学と錬金術とその未来と -SevenDaysWar- 六冊目>>710-711
  ■Act.12 Act.12 EDELWEISS -SevenDaysWar- 六冊目>>738-739
////********************************************************************************////

326 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:53:04 ID:n19Iy/ug0
Act.13 The Beautiful World 1



 一夜が明けて決戦前日、古都に住まう人々は大戦を予想し各々町を出る準備を始めていた。近くの詰め所や炭鉱都市ハノブを目指して東の城門前は長蛇の列が出来ていた。
泣きながら我が家を出る者や友人と抱き会う人々。分かれば馴れになってしまう事の悲しさから来る涙をこらえる者。幾つ物思いがそこには有った。
「いよいよ明日なんですね、こうして見ると何もかも光の速さで事が進んだようにも思えます。」
琥珀の人を手入れしているミトのすぐ脇にアレンの姿が有った。天守閣に集まるギルドの上層部達。その中にガズルの姿も見られた。
「勝ったとしても、この町をどの位現状を維持できるか…それだけが心配です。」
メガネを右手で直しながら広く綺麗なこの街を眺めるガズル。その後ろでタバコに火をつけるクラウス。
「分かりません、思い起こせばいつも犠牲になるのは無力な市民達です。この戦に勝てば大陸の半分は統括する事になるでしょう。そうすれば戦も起らずにすむ。」
「そう…ですね。」
「雑談はそのくらいにしておこうか、昼になる前に人員の配置を決めてすぐ様移動してもらう事になる。」
アレンが会話を止めた、そして天守閣の中央に備え付けてあるテーブルに各自足を運び広げられている地図を見る。
「第一斑は砂漠との境界線、グレートフォレスト近郊にて待機。第二班は中継所の詰め所手前で待機してくれ。ガズルはシーフ達に罠を設置するように伝令、第一般は敵部隊とエンカウント次第中継所まで退避。第三班と第二班は第一斑が目標に降下し次第攻撃を開始。第四班は王城跡にて待機してくれ。第一斑隊長ガズル・E・バーズン。第二班隊長クラウス・アルフォード。第三班隊長ミト・メーベ。第四班は俺が引き受ける。」
地図を開きながらそう説明する、後は各自配下の者に伝達を行い当日決行となる。
「あの…アレンさん。」

327 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:53:27 ID:n19Iy/ug0
「ん?」
「アデルはどうしたんですか?あの夜から全く姿が見えないのですが。」
今まで真面目な顔をしていたアレンはその言葉を聞くと一度だけ表情が歪んだ、同時にいらつきを表情に出しそれを落ち着かせようと懐からタバコを一本取った。
「用事があって出かけた、明日の朝には戻るそうなんだが…今朝方アデルの使い魔から連絡が来た。」
「何と?」
「「呪いの墓は何処だ?今どこかの浜辺に来ている。お土産に蟹とクラゲを持って帰ろう。」、だとさ。」



 「マスタ。」
会議終了後ガズルがアレンの部屋を訪れていた、ドアをノックして中に入る。
部屋の中にはカーテンを開けた窓のすぐ側にアレンが立っていた、窓から見える古都は静かでまるで早朝の古都を眺めて居るようだった。
「ガズルか、どうした?」
「…双子のランサーの事なのですが。」
被っていた帽子を左手で取り胸の前に添える。アレンは懐からタバコを一つ取り出して咥えた。
「あの子達も戦わせるのですか?」
「…あぁ。」
ガズルの口から出た言葉に咥えたタバコを落しそうになる、火をつける直前での事だった。帰ってきたアレンの言葉にはどこか悲しい意味あいも含まれているような。そんな感じだった。
「本当なら戦わせたくないさ、でもあの子達の意思だ。」
「しかし…。」
「ガズル、君が何を言いたいのかは分かる。」
「では何故。」
「…それ以上、言うな。」
背筋が凍るというのはこう言う事なのだろう。とても冷たい目でアレンはガズルを睨んだ。その目にはどんな意味が込められているのだろう。感じ取れる感情からは蛇の肌より冷たい殺気にも似た目をしている。
「あの子達の生立ちは聞いています、母親に捨てられそこに通りかかった英雄に育てられた。報告書を見ているのでしたら何故…。」
「…。」
冷たい表情のまま暫くガズルを睨んでいたアレンはタバコに火をつけるために右腕を前に持ってきた。そして指をこする摩擦熱を利用してタバコに火をつける。
「アレは最前線には出て来ないだろう、向こうからすれば切り札のようなもんだろうからな。」
「ですが、勝ち進めば必ずぶつかる壁になります。」
「…その時は。」
再び窓の外を眺め咥えているタバコを左手で取った。煙を吐きながら右手で握りこぶしを作りプルプルと振るえていた。
「その時は、俺がケリを付けるさ。」
「マスタ…。」
「それに…俺たちの全滅だって有りえる話だからな。アデルが間に合えばいいんだけど…。」
握りこぶしをほどき、再びガズルに顔を見せた。そこには何時もの笑顔で優しいアレンの表情があった。内心は砕けそうになりそうな感情と戦い、押し潰されそうな重圧に必死で耐えて居るような。そんな表情は一切出さずに居た。
「…お察しします。」
「あぁ、すまない。」
「いえ、マスタの仰せのままに…。」
ガズルは一度深くお辞儀して部屋を後にした。パタンと音を立ててしまったドアを見つめながらアレンは近くの机に向かう。机の上には一枚の報告書が置かれている。それに何度も目を通し、そして右手で握りこぶしを作っては机を殴った。
「なんで…なんでこんな事に…。」



Act.13 The Beautiful World 1
To be continues...

328 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:57:21 ID:n19Iy/ug0
スレの皆さんこんばんは、代理人の21R(仮)です

事情を説明いたします。
21Rさん(本人)は現在仕事多忙or別MMOで忙しいようなので続きを見たい読みたい渡し
代理人が許可を頂いてUPさせていただいてます。

名前のコテハンをお借りし、投稿させていただいている次第であります。
同時に皆様のご感想は私の方からご本人にお伝えさせていただきたく思います。
先に作品を読んでる私をお許しください(汗)

ではご本人さんから本編のメールが来るまで暫くお待ちくださいませ。

21R代理人 21R(仮)

329◇68hJrjtY:2008/07/11(金) 13:16:20 ID:SaqKH4OA0
>之神さん
お久しぶりです〜♪
定員1名って少なっ!さて、故意というかなんというか、エレベーター一個のせいで3人の命が危険に(笑)
とりあえず徹とシルヴィーは無事に済んだ(?)ようですが…ライト、順調そうだったのに(ノ∀`*)
一方ナザ君は怪しい空間突入ですね。もしかして事件の真相に一番近づいている…?
そろそろ外界の人々にも感づかれそうでハラハラしつつ。続きお待ちしています。
---
七夕ネタで完成されてるのならぜひUPしてくださいよー(笑)
せっかくの小説がデータの肥やしになるのが勿体無い(´・ω・`)

>白猫さん
感想屋増殖☆-ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノイエーイ
カリアス、そういえば(笑) でもあれくらいのレベル同士の戦いになるともはや仕方ない気もしますよ。
あまり種類を読んだ事はありませんが、ファンタジー小説や漫画なども後半はそんな展開が多い気が。
アネットやカリアスたちももちろん大好きですしワルキューレの一員として能力も高いのですが
やはりラストはネルとルフィエでガチッとシメてくれた白猫さんナイスです(笑)
(でもカリアスやアネットたちの単独小説はそれはそれで読みたい。ってまたリクしそうだorz)
リクの方は気が向いたらで結構ですよ〜♪ ちびネルリレッタ…それも読みたい!(こら

>21R(仮)さん
おお、本当に久しぶり…!と思ったらなんと代理人様!?
代わりに小説投稿してくれるファンなんていい話です(´;ω;`) ご本人様によろしくお伝えくださいませ。
さてさて、小説の方も佳境に入って参りましたね。戦争が近づいている雰囲気がプンプン。
思えばRSではGvというものがあるからか、あまり真剣な戦争情景は表現しづらいように感じていましたが
まったくそんな事は無く。まあ、これは単なるギルド同士の戦争ではないわけですが…。
そしてお約束。アデルさーん(苦笑)

330憔悴:2008/07/11(金) 17:50:21 ID:Wv5HCA4E0
熱い…
何年ぶりだろう、こんな熱を出したのは───…
「チェル姉さま…だいじょーぶ?」
自室のベットで丸くなっているチェルの横で、リーネがタオルを絞る。
先日の戦いの時にバリアートで流行っていた感染症を貰ったようで、40度を超えるひどい熱がチェルを襲う。
久しぶりの熱に、組織の大半もはじめてみる総帥の弱っているところを見るのは初めてだった。
「うあー。はよ…」
そこへ、ボニーが起きてくる。
あの日からボニーもまた、B棟に住んでいた。
「リーネー、ロマ村の依頼行くぞー…腹減った…」
「あ、今日なんだっけ…じゃあロンサムさんに任せていくねー」
この間からボニーと仲がいいのか、一緒に組織の依頼を解決しに出かけるため結構役立つ。
ただロンサムは半泣き状態だが。
「大丈夫、ですわ。私の分までお願いしますね」
「はーい、じゃあ行ってきますー」
いつもの五割り増しに輝いてるリーネはばたばたと着替えると、B棟を出て行った。
「と言ったのものの…」
熱い。
寝たらまたうなされるだろう熱に、頭は痛い、体は熱い…
しかし、この痛みに眠りに落ちていってしまう………。

「おねーちゃん、あたしね、ぜったいにおねーちゃんみたいな技使えるようになる!」
「あんたにはまだ無理よ…」
「でもね!おねーちゃん、すごいよ!あんなかいぶつ、いっしゅんでふきとばしちゃうんだよ!」
「きっと、リデルもいつか、出来るよ…私の妹だもの」

「助けて!おねーちゃん!たすけてぇぇえっ!!熱いよ…熱いよおおおぉ…」
「リデル!まってて、いま、いくから…」

「きゃあああああああああああああ!!」
「助けて!ロンサムさッ………」
外から叫び声と、燃え盛る炎の音がする…
ふらつく足で窓を覗くと、そこには…
「鬼………ッ」
炎の中、こちらへ向かってくる鬼を、ロンサムを先頭にB棟の者が戦っていた。
着替えずに、急いで外に出るが、もう大半の者は焼き殺され、数人は鬼に引き裂かれていた。
「フルヒーリング…ッリザレクション……ック…」
まだ熱もあり、体力のない体で仲間を回復していくが、その場で倒れる。
「総帥!まだ無謀です!大丈夫ですから、しっかり寝ていて…」
「だ…めです…鬼が襲ってくるのは…私とリーネを狙っているから…私が戦わなくては…いけませんの…」
自分さえいなければ、ここは襲われなかった。
自らの体が滅びてでも…鬼と…

331憔悴:2008/07/11(金) 17:50:49 ID:Wv5HCA4E0
ぺしっ
左頬が、軽くはたかれる。
「貴方のせいではありません。貴方が居なくなったら、どうするんですか!」
ロンサムは弓矢を置き、槍を取り出す。
「私に任せてください…!」
長く、鋭く尖った大槍は、周りの炎の色を帯びてうす赤い。
それを見、一斉に襲い掛かってくる鬼を、次々と槍でなぎ倒す。
(おかしい…あっけ、なさすぎる…)
前回と比べ、数が少ないのか、鬼はみるみると少なくなっていく。
そのたびに周りの残骸は増え、生きている鬼が居なくなるころにはロンサムは鬼の残骸で囲まれていた。
残骸が脈打っているように見える…
いや、実際に脈打っているのだ!
「その残骸からはなれ………ッ!!」
そう叫ぼうとしたときにはもう遅かった。
一つの残骸がロンサムの足に絡みつくと、それにあわせ別の残骸もそこへくっついていく。
全ての肉片がくっついたときには、巨大な鬼がロンサムの体を取り込んでいた。
それを見、チェルはペットの本を取り出そうとする。
「くふ…殺してくれるなよ、私が斬られる度にこの男も傷つくのだからな…」
その言葉に、歯を食いしばりつつ、チェルは本をしまう。
(どうすれば…いいの…!?)
「ばかな女だな…この男に戦わせたのだ、罪の無い者に…お前の身代わりとなって、な」
鬼は大きく腕を振り上げる。
その時、地に転がっていたロンサムの大槍が、鬼の胸を突き抜けた。
「くはッ!?」
「…その…人をバカ呼ばわりですか…どっちがバカなんですか!」
取り込まれつつあったロンサムが、鬼の肢体を切り裂く。
そして、鬼の後方に転がっていた槍で、心臓を突き刺す。
「ドラゴンツイスター!!」
ロンサムを中心とし、赤い竜と青い竜が鬼の肉片を燃やしていく…
その竜の怒りがおさまった時には、鬼の残骸は一つも無かった。
(戦士のドラゴンツイスターと…ランサーのファイアーアンドアイス…!?)
「もしかして、異種職…なのですか…?」
ぎくり、と動くと、
「そ、そうなんですよ…今まで黙っていて、すみません…」
聞くと、彼は昔からこの髪と技のせいで恐れられていて、やっと最近になって落ち着いたのだという。
そこで、もうこの技は封印しよう…と。
そして、リーネに聞かれたときに嘘をついたのは、もう無駄な争いをしたくなかったためだという。
「貴方を守りたい一心で…使ってしまいましたね…」
ロンサムは頭を抱えるそぶりをするが、すぐに立ち上がると、チェルを抱き上げる。
(…ッ!?)
「部屋に戻りましょうか、しっかりやすんでくださいね!」
真っ赤に紅潮した顔を手で隠しつつ、ロンサムを見上げる。
し、しかしこれで4人そろったわけだ。

332憔悴:2008/07/11(金) 17:51:14 ID:Wv5HCA4E0
「そういえば、魔石は…」
「ああ、ここにありますよ」
腰から青い石を出す。
「私のサファイアです…祖父から貰ったものなんですよね…」
「あーっ!チェル姉さまロンサムさんに抱っこされてる!」
ふと奥を見ると、リーネが両手を拳にして震わせていた。
「え、あ、これはですね…えーと」
「ずるーい!ねーボニーちゃん私も抱っこして!」
「へ!?」
隣に居たボニーにジャンプをして強請るリーネ。
「ていうか、これどーしたの?植物さんこげちゃってる」
「お、鬼がきまして…私が倒れてしまったので、ロンサムさんに…」
そこで、リーネはチェルが持っているサファイアの魔石に気づくと、再び叫んだ。
「あーっ!!!それ、魔石!?やっぱりロンサムさんが異種職だったの?」
ボニーは、興奮しているリーネを抱きかかえ、トントンと、小突く。
「ふぇ…はぁ、なによぅ!」
「まぁまぁ」
子供をあやすように抱っこする。
「まあ、そういうことですわ。そして、4つそろったので地下遺跡へ行きますわよ!」
「貴方の熱が下がったら、ですね」
そこへ、鼻歌を歌いながら組織の数人が帰ってきた。
総帥を抱っこしているロンサムと、少女を抱っこしているボニーを見、
「…!?な、なんですか、誘拐ごっこですか?」
本当に大変な一日だった。

この後したことを少し書こう。
まず、チェルの熱は無事2日後には下がり、大事として1日ゆっくり休み、元気を取り戻した。
そして4人そろったことから遺跡への侵入を急いだ。
しかし。
「…なに、これ…?」
はしゃぎ、先に遺跡をみたリーネは愕然する。
あったはずの遺跡はなくなっていた。
其処はただの平野となっていたのだ───…

此れについての可能性をあげるとすると、
鬼が危険を察知し、遺跡を消したか。
もしくは、別の何者かの手によって、遺跡丸ごとをどこかへ運ばれたか…
それは、正しく神のみ知ることだった。

333憔悴:2008/07/11(金) 17:51:50 ID:Wv5HCA4E0
北のある場所に不思議な洞窟が出来ている事を知らされたのは数日後の事だった。
その場所というのが場所だった。
キングベアーの巣。
世界には簡単に分けて5匹、恐れられているモンスターが居る。
まずはミズナの洞窟の奥に住み着いている毒蜘蛛、ミズナ。
そして、回避率で知られているキングラット。
ある戦いの場所に居る、戦争の王者、デビ・ロン。
地下水路の厳重な檻の中に閉じ込められたヴァンパイア。
そして、このキングベアーの巣にいる、キングベアー。
攻撃力はもちろん、致命打も酷いスグレモノである。
いまならこのキングベアー、タダで退治させてやる。
といいたいくらい危険な熊さんなのだ。
しかし、この熊の話をしている最中、ずっとボニーは自分の武器の爪を磨いていたのだが。
どーにかしてくれよ。
「そこの端末。話を聞きなさい」
「ん?キングベアー倒すんだろ、俺に任せとけ。あんなプーさんに負ける俺じゃないぜ」
「え、なになにぃ、ボニーちゃん熊さん倒したことあるの?」
リーネが目を輝かせて身を乗り出した。
「あたぼーよ。あのプーさんは元々俺が飼いならしてたもんだ」
プーさんは置いといて、この発言には流石のチェルも興味を持った。
「あの凶暴なキングベアーを?ただのブラウンベアーやそこらではなく?」
「おう。プーさんが凶暴になったのはそうだな、俺が一年ばかしとあの巣に行ってなかった時だ」

ボニーはバリアートの、とある豪邸で生まれ育った、まあ多少の我侭なら聞いてもらえるお坊ちゃんだったらしい。
そして、ある日ペットが飼いたくなったボニーは、メイドのビショップに頼み、キングベアーの巣まで連れて行ってもらったそうだ。
その時、前の冒険者によってズタズタに切り裂かれたキングベアーを応急処置をしてやったそうだ。
そうしたらなつき、約半年とキングベアーの巣に通い続けていたのだが、親にばれて、一年ばかし行けなかったらしい。
そしてそのうちに凶暴化し、ボニーの手に負えなくなった、と自慢げに語っていた。
「凶暴化して手に負えなくなったなら倒してはいないのですね」
ロンサムに痛いところを突かれたボニーは、しばし俯くと、リーネのように目を輝かせ、
「あそこで謎が解けるのかー。わーいうれしいなぁ」
と叫んだ。
組織の人の視線が気になった。

334憔悴:2008/07/11(金) 17:52:20 ID:Wv5HCA4E0
「うわー懐かしいな。ここは」
キングベアーの巣の前ではしゃぐボニー。
そしてそれにつられてリーネもわくわくとした表情で巣の中をのぞいていた。
「ロンサムならわかりますわよね、明らかにこの気配…」
「この間の鬼の気配ですね、それに増して殺気や邪気も感じます…」
「…?あれ、熊さんが…」
中を覗き込んでいたリーネが中を指差す。
少し暗くて見えにくいが、数匹の熊が倒れている。
「あれ、プーさんの子分その1とその2じゃないか」
数匹のうちの二匹、色が少し濃い者だ。
キングベアーの連れだという。
「しっかし、プーさんいねーなぁ」
覗き込んでいるうちに、二人は中へ入っていく。
「ちょ、ちょっとまってください、あぶな…」
「チェル姉さま、ちょっと来て!」
「………!」
其処には、キングベアーが居た。
巨大な檻の中に…
ベアーはかなり衰弱し、呼吸をしているのか、少し動く体のみが生死の判別ができた。
「プーさん…だれに…」
「遅かったね」
後方から女性と取れる声が聞こえる。
振り向くと、其処には悪魔のような、いや、しかしもっと邪悪な気配を漂わせたモノが居た。
「貴方は…?」
「私?フン、今から死ぬものにそんな情報はいらないだろう?…まあ、教えといてやろう。私の名前はサリア。鬼の国の姫さ」
「鬼の…頭か」
何かの本で読んだことがあった。
地下界には三つの種族が暮らしている。
一にネクロマンサーを仕えた悪魔。
二に鬼を使えた鬼能。
三に世界が始まった時から代々受け継がれてきた、まあ簡単に言えば地下界の王。
鬼の頭、鬼能は悪魔を敵視し、王の命令なら何でも聞く。
しかし、悪魔達は王の命令に逆らった。
そして、地下界を追放された。
鬼能が何を考えているのかは分からない。
しかし、地下界のとって有利な…天上界や、この世界の征服を企んでいないとも言えない。
実際今、鬼能の姫君が目の前に居、死の予言をしているのだから。
「キングベアーは衰弱している。しかし、それは今だけ。最期の力を与えてやる…」
サリアは、右手に持っていた骸に、小さな闇の結晶を入れる。
それは、骸の中で拡大し…
膨らんだ闇は、キングベアーに入り込む…
「人間が憎いだろう…何もしていないのに殺そうとしてくるものな…さあ、目の前の人間を殺れ…そして、お前のとーさんの仇をうちな!」

335憔悴:2008/07/11(金) 17:52:52 ID:Wv5HCA4E0
檻が消え、それまで震えていた体を持ち直し、怨念の篭った暗黒色の瞳で四人を見る。
「じゃ…じゃあ、あれはプーさんじゃなくて、プーさんの息子…?」
絶望するボニーに狙いを定めたのか、大きく跳ぶ。
「絶望するのは後ですわ!いまは、集中しないと…クッ」
いつの間にか姿を消していたサリアの方角を少しみたが、その瞬間を逃さない。
鋭い爪がチェルの肌に鮮血を流す。
「あ、ああ…でも、俺…こいつを殺したくない!」

コロシテ…

「…?」

アナタヲキズツケルナラ、コロシテ…

「意識が…?」

タシカニ、オトウヲコロシタニンゲンヲニクンデイタ…ケド、アナタハオトウのコトダイジニシテクレタ。ダカラ、アナタヲキズツケルナラ、コロシテ…

「………できねぇ………」
俯くボニーの背に、鋭い牙が食い込む…
「だ、大丈夫…お前を、殺したり……しない、から、泣くな…」
気が付くと、キングベアーの瞳からは大粒の涙が零れていた。
憎しみの気持ちがあっても、きっとボニーには何かを感じたのだろう。
そっと牙を離すと、少し動きが止まる。
「み、見てられないよぉ…ッひどいよ、あのサリアって人…だって、これじゃあ、熊さんが死ぬか私たちが死ぬまで、この戦いは終わらないじゃない…ッ」
キングベアーと同じく、純粋な涙を流すリーネ。
確かにそうだった。
あの、鬼能の姫が仕向けた戦いは、どちらかが死ぬまで終わらなかった。
いや、"私たち四人が死ぬように"仕向けた結果だった。
四人は罪無きキングベアーを傷つけられない。
キングベアーは攻撃を続ける………
そう、仕向けたのだ。

コロシテェッ………

キングベアーの爪が、振りあがる。
「浄化…」
チェルは、痛む足を押さえながら、小さく呟く。
その瞬間、洞窟全体に充満していた邪気が消える。
「複合技術…!」
テイマーののどやかな一日に足して、洞窟全体を回復の場と変えたヒーリングの力───…

336憔悴:2008/07/11(金) 17:53:19 ID:Wv5HCA4E0
「…!私の人形が、消えた…」
どこか遠く。
暗黒に染めた長い髪を揺るがせながら、骸の髪を梳いていたサリアの、膝に乗せていた黒色の人形が消えた。
「…なんなの、噂に聞いてたより手ごわそうじゃない…」
まあ、この骸さえあれば…
「どおってこと、無いけどね…ッ」
というと、櫛を地に突き刺す。
イラッとした雰囲気を漂わせつつ、其処から消えた。
サリアの座っていたところに生えていた草は黒くこげていた。



゚・*:。.:・*:.'.:☆.+゚*゚+.。+゚,゚.+:。.+:。☆゚+.。+゚,゚.+:。.+:。*:。.:'・*:.':+.*。+゚.゚.+:。.*:。☆

鬼能というわけのわからない者をつくってしまった。
意味も無く実家の動物に悪戯描きをしている憔悴です。
猫を豚という、とても素敵な動物が出来ました。
全く、自分は何を言っているのか自分でも分かりません。


>◇68hJrjtY様

何故か文面がつまらないと感じてしまいました…
宝石は、石などが好きなため考えてみました。
はい、アーチャーと剣士でした。
高火力な物理二職で楽しもうと思いましたが、
今回はあえて知識で行きました。
ありがとうございます。


>白猫様

初めましてです。
68hさんに続き、このスレを見始めて存在の濃い、いえ
プロでもいけるのではないか、というような小説を読ませていただいていました。
完結、おめでとうございます。
ネルルフィエコンビに似ているのでしょうか、
この二人、いえ、ロンサム、ボニーを含め四人は身近な自分の知り合いを元に創りました。
たとえばチェルの元となった人物ですが、メインをテイマー、サブをビショップという素敵な組み合わせだったので小説にもそうしました。
リーネの元となった方は明るく、天真爛漫という言葉があう方でした。
でした、と過去形にするのはもう最近は話をしていないからですね。
またどこかであの子とあってみたいです。
そういえば白猫さんの小説は元となった人物などはいるのでしょうか…
話がずれましたね、
他のネタ等、楽しみにしております。

337自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:21:47 ID:FF6L/MaE0
えー・・・お久しぶりです&始めまして、自称支援BISです
小説スレ5でWIZ&ネクロカップルを書き逃げした者です

今回は、黒頭巾さんの「いけめんさん」と国道310号線さんの「ブルーノさん」が登場します
いわゆるコラボネタです
ちなみにベースは武道&サマナの物語です(つまり68hさん狙いでもあります(待))

とりあえず、注意事項が一つだけ

※いけめんさんが盛大に壊れています
 黒頭巾さんの「いけめんさん」のイメージを壊したくない方は、「これはいけめんさんじゃないんだ!」
 と思い込んでから読んで下さい
 もしくは、読むのを止めて下さい

では、武道家&サマナーの物語、どうぞ〜

338自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:24:27 ID:FF6L/MaE0
私は今藪森の中に居ます
目の前では武道家さん、剣士さんの二人がエルフ達と戦っています
私の隣では、WIZさんが彼ら二人の補助をしています

何故そんな場所に居るのか、ですか
それは・・・


〜依頼〜

「武道家さーん」
「ん、どうしたサマナー?」
「今銀行に行ったら、係の人からクエストを頼まれまして・・・」

ここは港町ブリッジヘッド
港町というだけあって、貿易を主とした町らしいです
シーフ達の本拠地でもある、シーフギルドがあるのもこの町と聞きましたが
本拠地に近づかなければ大丈夫みたいです

私は、数年前に結婚した武道家さんと一緒に露店巡りをしようと思い、
この町にやって来ました
前々から探していた品物が見つかったので、購入して銀行に預けに行ったんですが、
そこで係の人からクエストを頼まれたんです

「あぁ、もしかしてエルフから剣を取ってきてほしい、ってやつか?」
「はい、そうです」
「俺もさっきそれ頼まれたんだよなぁ・・・」
「そうなんですか?」
「あぁ。折角だし、今から二人一緒に終わらせないか?」
「そうですね・・・そうしましょうか」

そこで、私達は藪森に行く事になりました
藪森には、神聖都市アウグスタから行くのが一番近いので
テレポーターの方に向かおうとしました
そうしたら・・・

「突然すみません、私も一緒に行ってもよろしいですか?」

声のした方に振り返ると、そこにはWIZさんが居ました
町で見かける他のWIZさんと比べると、何だか「いけめん」って感じがしたので
私は心の中で勝手に「いけめんさん」と呼ぶ事にしました

「一緒に・・・って、藪森にですか?」
「えぇ、先程話されていたクエスト、私も受けているんです」
「あぁ、そう言うことでしたか」
「どうする、サマナー?」
「私は構わないので、武道家さんが良ければ・・・」
「俺も大丈夫だ。むしろ、あんたが居てくれた方が心強い」
「そう言って頂けるとありがたいです」

こうして、いけめんさんを加えた三人でクエストを行う事になりました


〜藪森〜

いけめんさんが風の加護をかけてくれたお陰で、藪森まではすぐに着くことが出来ました
ですが、実際に藪森を見てみると思わず足が止まりました

「こうして見ると、広いですねぇ・・・」
「そうだな・・・」
「別名迷いの森とも言われていますからね」
「えぇ!?」
「何でも、森の奥に行くには正しいルートを通らないと行けないらしいです」
「・・・もし間違ったルートを通ったら・・・?」
「延々と同じ場所をまわる事になりますね」
「またやっかいな場所だな・・・」
「まぁ、この地図の通りに行けば大丈夫ですよ」

そう言うと、いけめんさんは地図を取り出しました
なにやら迷路みたいな物が書かれていて、その中の一本の道に色が付いていました

「え?地図・・・?」
「えぇ、先程の町で買ってきたんです」
「流石WIZ、準備がいいんだな」
「偶然見つけただけですよ、それより行きましょう?」
「そうですね」

339自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:25:26 ID:FF6L/MaE0
〜戦闘〜

藪森に入ると、いきなりエルフ達が襲いかかって来ました

「サマナー、下がってろ!」

武道家さんはそう言うと、跳び蹴りで敵の懐に入り攻撃を始めました
私も急いで召喚獣を呼び出し、エルフ達に攻撃を仕掛けます

「ウインディ、ゲイルパンチ! スウェルファー、バンブーランス!」
「サンキュ! よし、一気に決めるぜっ!!」

武道家さんの攻撃によって、次々とエルフ達が倒れていきました
やっぱり武道家さんカッコイイ・・・

「ふぅ・・・とりあえず片付いたな」
「みたいですね」
「・・・なぁ、あんた何やってんだ?」
「・・・申し訳ない、驚いたはずみで転んでしまったようだ・・・」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、ありがとう」
「しっかりしてくれよー」

どうやらいけめんさんの運動神経は、良くは無いみたいです
武道家さんとは大違いです
武道家さんはかっこよくて、運動神経もバツグンで、私の事を一番に考えてくれてて・・・

「おーいサマナー、行くぞー?」
「あ、はーい」

いけない、武道家さんの事を考えるとついそっちに考えが・・・気をつけなきゃ
その後は武道家さんの攻撃、私といけめんさんの補助で順調に進んで行きました
時々私が武道家さんに見とれてしまって、進むのが遅くなったのは気にしない事にしました

〜洞窟〜

「滝の裏の洞窟を通っていくなんて・・・やっぱり地図無かったら辿り着けませんね」
「そうだな・・・WIZ、本当にありがとな!」
「いえいえ、私も一人では辛かったと思いますし」

地図上では、丁度真ん中辺りにある洞窟にさしかかりました
ここまでの敵はエルフと原始人だったのですが、ここでは芋虫が出て来ました
ですが、武道家さんが一匹を蹴り飛ばすと、他の虫達がいそいそと逃げて行きました
どうやら武道家さんとの強さが違うという事が分かったみたいです
やっぱり武道家さんは・・・

「・・・すまないな、サマナーは時々あぁなるんだ」
「なんとなく分かりますから、お気になさらず」

「お話中悪いんだけどさ・・・道空けてくれないかなー?」

武道家さんでもいけめんさんでも無い人の声で、私は我に返りました
後ろを向くと、そこには剣士さんが居ました

「あ、すみません」
「ありがと〜。ところでさ、エルフの持ってる剣ってのを探してるんだけど、何か知らない?」
「ん、それなら俺達もこれから取りに行く所だが・・・」
「本当!?俺も一緒についてっていい?」
「私は構いませんが・・・武道家さんとい・・・WIZさんは?」
「俺もOKかな」
「人が多くなるのは心強いですからね」
「ありがとー!あ、俺ブルーノって言うんだ、よろしく!」
「よろしくお願いします、ブルーノさん」

結局、洞窟の中で出会ったブルーノさんを加えた四人で目的地まで行く事になりました

340自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:26:33 ID:FF6L/MaE0
〜守護者〜

洞窟を抜けた先は、前までと変わらない藪森でした
敵が少し強くなったような感じはしましたが、ブルーノさんも一緒に戦ってくれているので、
今まで以上に早く進んで行きました
そして、目的地の場所「ドーナツ」と呼ばれている場所まであと少しの所で、
いけめんさんが僕達を呼び止めた

「あ・・・ちょっと待って下さい・・・」
「ん、何だ?」
「地図上ではこの先に何か居るみたいなんです」
「何かって、何々?」
「少し古い言葉で書いてあって・・・えっと・・・ガー・・・ディア・・・ン?」
「ガーディアン・・・って、守護者って意味だったような・・・」
「そうですね、大体は何かを守るために存在している物に使われる言葉ですね」

もしかして・・・私達が取りに行こうとしてる剣を?
皆を見渡すと、同じ事を考えているみたいでした

「守護者、ってついてる以上強いんだろうなぁ・・・」
「でしょうねぇ・・・どうしましょうか・・・」

私、武道家さん、いけめんさんが悩んでいると、ブルーノさんが不思議そうな顔をしました

「どうする、って倒せばいいんじゃ?」
「倒す・・・って、そりゃそうかもしれないが、どんだけ強いかも分からないんだぞ?」
「えぇ、出来るだけ安全な方法を・・・」
「そうです、いけ・・・WIZさんはあんまり運動が得意じゃないんですから」
「・・・はっきりと言われるとは思って無かったよ、サマナーさん・・・orz」
「あ、えと・・・その・・・すみません」
「否定はしないのな、サマナー」

結局いい案も出なかったので、ブルーノさんと武道家さんが先に進んで、
私と落ち込んでるいけめんさんが後ろからついて行く、という事になりました
つまりは今までと一緒、という事だったりもします


〜突撃〜

「この辺り・・・でしたよね?」
「・・・えぇ・・・そうです・・・」
「元気出しなよー、WIZー」
「大丈夫で・・・うわっ」ドサッ
「・・・言ってるそばから転んでるし」
「フフ・・・私は・・・運動神経が・・・悪いわけじゃない・・・」
「WIZ・・・さん?」
「私はっ・・・!」

いけめんさんはそう言うと、テレポーテーションで一気に進んでいってしまいました
私の言葉、そんなに気にしてたのかな・・・

「ちょ、WIZさん待ったー!」
「ガーディアンが居るんだぞーー!」
「いけめ・・・WIZさ〜ん!」
「・・・サマナー、さっきからWIZさん呼ぶ時に別の名前言おうとしてないか?」
「え・・・そ、そンな事ないデスよ?」
「声が裏返ってるのは気にしないでおくとして・・・早く行かないと!」
「そうだな、行こう!」

いけめんさんを追いかけるために、私と武道家さんはケルビーに乗せてもらって、
ブルーノさんは「俺は走るよ!」と言って走っていきました
ブルーノさん、元気だなぁ・・・いけめんさんとは正反対みたい
でもやっぱり武道家さんの方が・・・
・・・あ、いけないいけない、また自分の世界に入っちゃう所だった・・・


〜石像〜

「WIZさーん?」
「どこまで行ったんでしょう・・・」
「ってか、ガーディアンは?」
「そう言えば居ませんね・・・」
「まさかWIZさんが倒したとか?」
「流石にそれは無い気がするけどなぁ」
「ブルーノさんも何気に酷い事言いますね・・・」
「いやー、だって事実だし」

そんなやり取りをしながら進んでいくと、突然目の前に鎧霊が現れました
・・・ですが、何故か刀を振り上げた形で石化しています

「これ・・・石像とか?」
「こんな場所に石像は無いと思いますが・・・」
「って事は、これガーディアンなんじゃ?」
「もしそうだとしても・・・何で石化してるんだ?」
「もしかして、いけ・・・WIZさんが石化させたんじゃないでしょうか?」
「そういえば、ストーンタッチってスキルあったよなー」
「でも、あのスキル効果時間短くなかったか?」
「「「・・・・・・」」」

・・・悪い予感は良く当たる物、という事を改めて実感しました
って、そんな事言ってる場合じゃないんですよ!

「ウインディ!スウェルファー!ゴメン、お願い!!」

341自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:27:38 ID:FF6L/MaE0
〜交渉〜

「はぁ、はぁ・・・」
「な、なぁ・・・召喚獣大丈夫なのか?」
「そ、それは大丈夫です・・・しばらく召喚出来ませんが・・・」

全速力でガーディアンから逃げてきた私達
ふと目の前を見ると、いけめんさんが腰を下ろしていました

「あぁ、君達やっと来たのか」
「WIZさんが突っ走ったんじゃないですか・・・」
「というか、WIZ元に戻ったのか?」
「・・・とにかく、目的の剣はあのエルフが持ってるらしいです」

いけめんさんが指差した先には、いかにも「俺が持ってるぞー!」
といったオーラを出したエルフが居ました
こういう場合は・・・やっぱりお願いしようかな

「じゃ、私に任せて下さい。ケルビー!いつものよろしくね〜」

私はケルビーを召喚すると、エルフの所へと向かわせました

「なぁ、ケルビーだけじゃ危ないんじゃないか?」
「まぁ見てなって サマナーのケルビーはちょっと違うんだよ」


「ほう・・・何か話し合ってるようですね・・・」
「俺、魔物と話し合う召喚獣って初めて見るんだけど」
「私だって初めて見ますよ」


「あ、どうやら話し合いは終わったようですね」
「・・・なぁ、何かエルフがケルビーに手を振ってるように見えるんだが?」
「しかもとびっきりの笑顔っぽいですよね・・・?」


ケルビーが戻ってくると、その口には剣が四本銜えられていました

「ありがと、ケルビー♪」
「よし、じゃ帰ってクエスト終了にしようか」
「そうですね〜」
「「・・・いや、ちょっと待て!」」
「どうしたんだ?二人揃って」
「えーっと・・・まず、何でケルビーはエルフから剣を受け取ってこれたんだ?」
「あぁ、私のケルビーは魔物と会話できるんです。なので、今みたいに話をして物を貰ってきてくれるんですよ」
「・・・どうやったら四本も貰ってこれるんですか?」
「そりゃ、この物語の作者が早く話を終わらs」

話の途中でしたが、武道家さんは間違って帰還の巻物を使ってしまったみたいです
あくまでも「間違って」です
決して「武道家さんを黙らせるために、作者が無理矢理使わせた」わけではありません

「・・・サマナーさん、どこに向かって何話してるんですか?」
「あ、何でもないです」
「とりあえず・・・・・・俺達も戻るか」
「・・・そうですね」


〜別れ〜

こうして、私達四人は無事クエストを終わらせる事ができました
武道家さんが「俺は帰還の巻物なんて使ってねー!」と意味不明な事を叫んでいたのが少し心配です

「武道家さん、サマナーさん、今日は色々とありがとうございました」
「ホント助かったよ、ありがとな!」
「また縁がありましたら、ご一緒しましょう」
「そうだな、それじゃ俺はこれで!」
「私も失礼しますね」

「ふーっ、何か今日は疲れたな・・・」
「それじゃ、早速ご飯の用意しますね」
「あぁ、お願いするよ」
「武道家さん、何が食べたいですか?」
「そうだなー、それじゃあ・・・」


え?ケルビーがエルフに話した内容は何だったのか、ですか?
それは、ゲーム内でケルビーに聞いてみて下さい♪

342黒頭巾:2008/07/12(土) 01:59:29 ID:fou9k2gM0
>国道さん
ちょ、アッシュストーカー自重www
盛大に噴きました…コミュ拒否疑惑に凹むブルーノ可愛いよブルーノ。
そして、マイペース金ちゃん…味方の筈のケルビに特技攻撃とは!笑
喧嘩仲間的な召還獣&P達の仲がとても面白いです…喧嘩する程仲がイイと(*ノノ)(ぇー)
ミモザの過去の出会いと、護れなかったというケルビの言葉…如何繋がっていくのか楽しみにしております!

感想も感謝でする…違和感少なかったようでよかったです(ノ∀`)ペチン
うふふ、きっとあの二匹は仲良くなれると思うのですよ(*´∀`)
てるみつくんファンクラブ会員番号一号としては再登場を願ってやみません(何ソレ)


>68hさん
ふぁみりあいーえっくすシリーズ、ファミたん視点でのお話は久々だったので…うっかり口調とか決まり事忘れかけてましt(ry
出だしを間違えて僕の名前は、にしちゃったり…名前じゃねーっての(´д`)
種族が違うと、個人の判別が難しいと思われます…人間が同じ種類の動物の見分けが付きにくいみたいに!笑
最近はんらさんを育てだして愛着が沸いて来たので、黒はんらさんはいつか出したいです←
ダークメルヘンをお望みの様なのでちょろちょろと別の短編を書いてみたら…ダーク分しか残らずに首を傾げている次第です、隊長殿(`・ω・´)ゝ(駄目じゃん)
七夕は職場で学生達がやっていたので慌ててお昼休みに書いてみた次第です…季節感って大事だね!(そんな)
何かもうイベントしかないのか…イベント担当なのか!笑
初心者クエか誕生日か…あ、ハロウィンはやる予定で打ち合わせしております(遠いよ)

ブランクあるとキツイですよねぇ…いつか、いつかきっとSSスレの神が降りてくるわ!(何)
取り敢えず、感覚を取り戻せるように念を送っておきます、ぴろぴろーって(ぇー)


>ドワーフさん
ドワーフさんのU話、いつも楽しみにしております(*´д`)
一枝梅の刀ってマトモに見た事がなかったので思わずググってしまいました。
今まで義賊って何かシーフなイメージだったのですが、剣士もアリだなって思ってしまいました(*ノノ)
遺されたザトーには哀しい結果となってしまいましたが、ハナは幸せだったんでしょうね(´;ω;`)ウッ
語り部のお相手さんに、ザトー達の意志が受け継がれているようで、嬉しく感じました。
ゼーレクランのお話は、童話みたいで…恐ろしく感じましたガクガク(((((゚д゚;)))))ブルブル
教訓的と言いましょうか…赤い靴みたいな。
今度見かけたら、ガクブルしてしまいそうです…笑
うふふ、いつかU話をコンプリートして下さると期待してみます(無茶振り)


>憔悴さん
初めまして、ROM専さんから作家さんへの転身おめでとうです!(*´∀`*)ノシ
異種職の設定にハァハァです…確かに、リトルもWIZも魔法を使う職ですし、テイマもBISも補助をかける職ですよね!
シフネクロにアチャ戦士もキタ―(・∀・)―ッ!!
特にロンサム…近距離にも遠距離にも強いなんて、最強すぎます((((´д`))))ガクブル
今までの登場人物の中でロンサムが一番のお気に入りです…素敵すぎです(*ノノ)
F&Iドラツイとか鬼すぎて…火と水の多段攻撃なんだから!Σ( ゚д゚)
ついに四人揃いましたが、異種職以外の誕生石の残りの8人も気になるところです!
と言うか、リーネたんTUEEEのに無邪気で可愛いよリーネたん(*´д`*)ハァハァ(自重)
ぷーさんの話は和むと共に切なく…ぷーさん息子(´;ω;`)ウッ
鬼能の姫様という親玉っぽいのが出てきてどんどんお話の謎の部分が見えてくると同時に、更に別の謎が深まってのスパイラルから目が離せません(*ノノ)

343黒頭巾:2008/07/12(土) 02:00:11 ID:fou9k2gM0
>白猫さん
わちょーい、完結編きたーよ!(´∀`)ノ
お会いする度に100KBいっちゃえいっちゃえと唆していた自分ですが、本当にお疲れ様でしたと声を大にして言いたいです←
読み応えたっぷりすぎてハァハァしました…読み込みが足りない部分がありそうなので、何度かじっくり読み込ませて頂きます(ΦωΦ)フフフ
マペットの契約者を護るのがワルキューレかと思いきや、契約者のルフィエ自身もまたワルキューレとは…!
と言うか、セシュアとアネットぉぉぉ!orzorzorz
やっぱりセシュアの現れたり消えたりの不可思議な動きは傀儡だったからなんですね(ノд;)
うぅ、コレから姉弟仲良く暮らせると思ったのに…アネット…orz
そして、一緒にいた筈のカリアスの空気具合がもうたまらんとです…好きだけど、可哀想なカリアスもまたイイy(ry
最近、彼は不幸担当なんじゃないかって思い始めてきました(今更)
しかし、万年病人とはナイスな呼び名です(待って)
そして、潜伏していたリレッタのPTへの帰還…あのドジっ子リレッタがしっかりさんになった!←
詳しく言わなくても相手の望む行動が取れるネルフィエコンビのツーカー振りに萌えるのは私だけでしょうか(死語)
そしてそして…ルヴィラィとルフィエ、最期にお母さんと娘に戻れてよかったです(´;ω;`)ウッ
最期の最期だってのが激しく切ないですが…最期だからこそ、言えた事もあるのかなぁと。
で、三年経ってもタイミングが悪くすれ違いな彼ら…本当にトラブルが絶えない!笑
本当にお疲れ様でした…まとめページで補足されたものを読んで新しい発見が出来る日を楽しみにしております(*´∀`*)ノ
…てか、番外編のリクいいの?(自重)
私的には、ルフィエのパパの“彼”とルヴィライの番外編を期待したいです(待って)

隠しキャラ入手条件に盛大に笑いましたから!笑
例のアレとかアレとかは、コチラもお付き合い頂けて嬉しかったのですよ!(*ノノ)
いつも突飛でアレなコレとかで申し訳ない!(どれ)
無茶振りの件は、未だに如何したモノかと←
はんらさんはお互いにナイトさんを目指しましょう…っても、ウチのはんらさんは突撃勇者になりそうですが(ソレはぶらっくはんらさんだ←)
てか、白猫さんが何故にそげにごしゅじんさまを大プッシュするのか不思議でなりません…普通のコなのに!笑
タガは外す為にあるのです…限界点なんて超えてみせるんだ!(色々駄目だろう)
ハロウィンは(,,゚Д゚)ガンガルます…白い子は取り敢えず不幸にすればイイんですよね?(ちょ)
むしろ、そちらのネタが楽しみで楽しみで仕方がありません(*´д`*)ハァハァ


>復讐の女神さん
Σ確かに車を突き破ったとかそんな話は聞きますが、雹恐い!Σ(゚д゚|||)
そして、魔術の属性のお話…火と水は確かに相反する属性ですよね。
RSではただの難易度としか分類されませんが、この設定は素敵です(*ノノ)
だから浮かぶレビテイトで地属性上がるんですな…風っぽいから!(待って)
そして、ラディルのモテモテ振りに(・∀・)ニヨニヨです。
賞金システム、あれば便利だろうなぁ…クエが世界中に散らばってて、面倒だったらありゃしn(ry
テルがそれだけ確認を促す依頼の内容が…あの変態魔術師絡みじゃないかとwktkしながら続きを待っております(*´∀`)ウフフ


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
わーい、ちまミリアー!ヽ(´Д`)人(´д`)人(´Д`)人(´д`)ノ〜♪
…よりも、ミカエルおにーちゃんに萌々した私は駄目なのでしょうか(ぇー)
こんなおにーちゃん( ゚д゚)ホスィよ!←
ミリアとの絡みも、保父さんみたい(ぇー)
しっかし、野外でお昼ご飯がチョコフォンデュとか、おにーちゃん素敵すぎますから!爆笑
フィナ姉は相変わらずです…って、更にパワーアップしちゃうんですか!?Σ(゚д゚|||)

344黒頭巾:2008/07/12(土) 02:01:23 ID:fou9k2gM0
>之神さん
定員一名のエレベーターとか小さな遊園地じゃないんだから!_| ̄|○ノシ べしべし
順調だった筈のライトがトバッチリ受けてますが…折れたドアノブにGJと言いたいです←
もしかして、コレで合流出来るのかなとwktk!
木妖精、恐い見た目に反して可愛いと最近思い始めました…この野郎、お前達が!(ちょ)
ラッキーナザくんですから、きっと何かイイ事に結びつくんだろうなぁと楽しみに!
今まで「あなたとどなた」がタイトルだと思ってました…どんなタイトルが付くのか楽しみにしております(ノ∀`)ペチン

七夕で復活されると期待しておりました…SSスレの季節感担当のがたん!(ちょ)
せっかく書かれたのですから、うpして下さいよぅ…気になるなら、8月に旧暦の七夕とか!(ぁ)


>21Rさん
きゃぁぁぁ、続きお待ちしておりましたぁぁぁ!!!。・゚・(ノд`)・゚・。
蟹とクラゲはスバインビーチかな?
期待を裏切らないアデル…そうさ、そんな君が大好きさ!ヽ(´д`)ノ
一人で重圧に耐えるアレンくんが心配ですorz
TOPに立つってそんな事だってのは嫌と言う程わかってはいても切ない(´;ω;`)ウッ
せめて、少しでもイイ方向に向かうのを祈っております。
ご多忙みたいですが、如何かご自愛下さいませ(゚д゚)ノシ


>21R(仮)さん
おぉ、お疲れ様で御座います、スネーク!(`・ω・´)ゝ
先に読んでおいでるのに若干嫉妬するのはお約束(笑)として、橋渡しありがたいです(*´∀`*)
そうか、そんな手があったのかと目から鱗です←
如何ぞ宜しくお伝え下さいませ(*ノノ)


>自称支援BISさん
わーい、いけめんさんがヘタレだー!(喜んだ←)
いけめんさんは時々壊れるので全然おっけーですよ!(*´∀`*)(満面の笑顔/ちょ)
ドタバタ珍道中、とても楽しく拝見させて頂きました(*ノノ)
物理火力が二人に支援とサマナが一人ずつとは…うほっ、イイPT!(自重)
掛け合い漫才が面白かったです…ブルーノ正直!爆笑
今では普通に通れる藪森も、適正当時はかなり苦戦したものです…いけめんさんでガー君に何度殺されたか(嗚呼)
クエ対象MOBとの戦闘よりも辿り着くまでが大変とは、ケルビー最強伝説(?)ですね…何と便利な子d(ry
おっと危ない…帰還の魔石を破壊しようとして使って以下略←
またの投稿をお待ちしておりますにょろ(*´∀`)ウフフ(とか圧力をかけてみるテスト)


嗚呼、めがっさ疲れた…溜め込むんじゃなかった!orz

345◇68hJrjtY:2008/07/12(土) 16:14:34 ID:SaqKH4OA0
>憔悴さん
だんだんとUP量とスピードの増える続き、ありがとうございます!
ロンサム、やはり異種職でしたか…本人に思うところあったのでしょうが、無事に4人揃ったと思いきやまたも事件が。
「あえて知識職で行った」ロンサムのF&Iとドラツイ。恐ろしいながらそのエフェクトを見てみたいとか(ノ∀`*)
突然消えてしまった遺跡も気になりながらもボニーにとっては悲しすぎるプーさんとの戦い。
鬼能という存在設定も面白いと思いました。鬼とは地下界から来ているのが分かってきましたね。
サリアや他の鬼たちとの戦いをさらに予感させつつ、続きお待ちしています。

>自称支援BISさん
お久しぶりです〜!そして武道×サマナキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(*´д`*)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
しかし、今回はそれ以上にいけめんさんとブルーノが大変なことに(笑)
一時的な狩り(クエスト?)PTの奮闘といったノリでコメディ風味にニヤニヤしながら読ませていただきました。
才色兼備ないけめんさん、意外にもギルメン以外の人たちの前ではドジっ子(子!?)だったりして…。
そして逆にギルメンたちの前では天真爛漫なブルーノはしっかり者とか(笑)
サマナたん視点の物語でしたが、折に触れて武道君に見とれる彼女は私の分身ですね!(*´д`*)
またの作品お待ちしています!

346防災頭巾★:削除
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347防災頭巾★:削除
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348名無しさん:2008/07/13(日) 18:42:28 ID:OnMpHZjE0
クソスレage

              )
             (
         ,,        )      )
         ゙ミ;;;;;,_           (
          ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
          i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
          ゙ゞy、、;:..、)  }
           .¨.、,_,,、_,,r_,ノ′
         /;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
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        ".¨ー=v ''‐ .:v、,,、_,r_,ノ′
       /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ 
       ゙{y、、;:...:,:.:.、;、;:.:,:.:. ._  .、)  、}
       ".¨ー=v ''‐ .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′
      /i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′.ソ.ヽ
      ゙{y、、;:..ゞ.:,:.:.、;:.ミ.:,:.:. ._υ゚o,,'.、)  、}
      ヾ,,..;::;;;::,;,::;):;:;:; .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′

349名無しさん:2008/07/15(火) 00:23:58 ID:ddy6MTJU0
懐かしい夢を見た。
それは私の一番古い記憶。

人通りの多い通りの片隅で、雨に打たれながら座り込み、ただ行き交う人を眺め続けるだけの日々。
私は、気が付いたときにはここに居た。
道行く人は私を生ゴミなどを見るような眼で見ていく。
場合によっては人に罵声を浴びせられ、なじられ、理不尽な暴力に膝をついた。
ここでは子供が生きていくのは非常に過酷で、それは私自身とて例外ではない。
その為、生きていく為には何でもやった。

スリ・強盗

時には、人体実験の実験台にすらなって金を得、生活していた。
当時は、子供に殺しをさせるような暗殺集団があった時代だ、私がやっている程度は子供が一人で生きていく上では、日常茶飯事だった。
そして気が付いたときには同じ身の上の子供が集まり一つの集団を作って
、私はその集団の中心人物になっていた。

だがその時の私にはそんなモノはどうでも良かった。
所詮大人になろうとこの生活に変化はなく何れは誰かに恨まれ殺されるだろうと本気で考えていた。
しかし自分は生きている。
生きていく為に人から物を奪い、生きていく為に食っている。

何故?

答えが出ないまま悶々とした何かを胸に抱え日々を送っていく。
だが、そんな私に生きる意味を与えてくれた人がいた。

雨の日だった。
今日も【仕事】を終えて、自分達のねぐらに戻った時だ。
ねぐらへの出入り口に一人の男が立っている。
暗くてよく見えないが、顔から歳は40代といったところか。
男は背中まで伸びた白髪混じりの髪を後ろで結い、
白く古ぼけた武道家特有の武道着を纏っていた。

突然現れた男は、こう叫んだ。
「君達には一切の私怨はない。だが君達がやっている事は間違いなく悪いことだ。だから今、この場でお前達を成敗しなければならない!今なら俺から何とかしてやれる、だから君たちの頭と話をさせてくれ!」

仲間は私へ視線を送り、仕方なく男の前に顔を出す。
「……オレだ」
「なぁ、今すぐ解散できないか?」
「オレ達に死ねって言うのか?」
「そうは言ってない。ただ他のやり方もあったんじゃないのか?」
「ないね。……話は終わりだ、帰れ」
「そうもいかん。俺はこれでも仕事で来てるんでな」
その一言で周りの仲間が殺気立ち、

「今なら俺が何とかしてやれる!もう止めるんだ!」
この一言で一斉に各々の得物を携えて飛びかかっていった。

が、相手が悪すぎた。
あの人は、拳一つ、しかも右腕一本で仲間達を成敗していった。
当然、私も立ち向かっていったが一太刀浴びせる間もなく呆気なく打ちのめされた。
しかし当の本人は相当手加減したのだろう、まだ痛みを伴いながらだが動くことは出来た。
周りを見やると、そこには自分と同じように打ち倒されて呻き声をあげる仲間が所々に転がっている。
そしてその中心にあの人が立っていた。
その表情は酷く悲しいものだった。

しばらくの沈黙。

そしてあの人が口を開いた。
「すまない、これも仕事なんだ」
すると何処からともなく聞こえてくるかすれた声
「はっ、謝ってどうなるんだよ。
てめぇが、何してくれるって言うんだ?
俺達はただ生きていく為に、仕事してるだけじゃねぇか!
お前ら大人の勝手な都合で、つぶされてたまるか!」
まだ体にダメージが残っているのだろう、声量は無かった。
しかしその紡がれた言葉は、力強く私たちの気持ちを良く伝えていた。
すると周りからも罵声が飛び交う。
その言葉に対してあの人はたった一言。
「本当にすまない……」
と深く頭を下げた。
その行為に私はとても驚いた事は今でも覚えている。

何か間違った事をした訳じゃない。
何か悪い事をした訳でもない。
むしろいくら生きていく為とは言え、悪行を働いているのは私達であり、彼はそれで迷惑をしているその他大勢の為にこうして止めにきたのだ。
それも力づくではなく『説得』と言うカタチで。

それなのに彼は謝る。
今まで会ってきた大人は何奴も口ばかりで、決して心の底から言葉を紡ぐことはなかった。
だが彼の口から紡がれるのは誠心誠意の言葉。

ーこいつはどこまで人の事を考えているんだ?
内容はともかく、そんな疑問がふっと湧いた瞬間、この男に興味を持った。
生きること以外に、何の興味も沸かない自分がだ。
気が付いたときには、私の口から意外な言葉がついて出てきた。
「…分かった、従うよ」
「本当か!?」
当然仲間からは反対する怒号が飛び交うが私はそれを遮り、
「ただし!仲間が食っていける場所を与えてやってくれ」
「それなら任せておけ!」
と、即答に近いカタチで、拳を自分の胸にドンと押し当てながら、自信満々に言い放った。

350スメスメ:2008/07/15(火) 00:24:51 ID:ddy6MTJU0
「……眩しい」
朝日が部屋に差し込み私の顔に当たり、窓からの少し冷気を帯びた風が顔を撫でていく。
ここは古都ブルンネンシュティグのとある社員寮。
ここで自分は寝食を仲間と共にしています。
寝食を共にと申しましても各部屋には調理場がありますので大概の住人は自炊したりしています。


「それにしても懐かしい夢でしたね」
「んー、何が?」
「いえ、久しぶりに子供の頃の夢を視たものですから、少し感慨深くなっていたのですよ」

…ん?
ここは私の部屋。
ですから自分以外の人間が居る事などあり得ない訳でして…。

ふと自室のテーブルに目を向けると、側にある椅子にややもたれながら座りガツガツと忙しなくテーブルの上にある皿の食事をかき込んでいる二人組が…。
一人は白いポニーテールにカッターシャツを着ている少年、もう一人は金髪の綺麗なミニドレスを着ている少女だ。


「……何をしているんですか、アル?」
そう問いかけると少年の方が、事も無げに答える。
「朝飯食ってる」
そう、悪びれもなく答え腕をピッと上げ軽く挨拶すると彼はまた口の中にモノをいれモグモグと動かしだした。

「いや、あのですね。私はどうして私の部屋に勝手に入り込んで食事をしているのかと聞いているのですが?」
「腹が減ったから」

……もういいです。

大体彼はいつもこうだ。
突然ふらりと勝手に部屋へ入ってきて「泊めて」だとか「何か食べさせて」だとか勝手気ままなことを言い出す。
それもまだ許可を求めてくるだけマシで、酷いときは今回のように許可無く居座ってしまう。
しかも必ずと言っていいほど問題事を抱えてくるのですからこっちとしては迷惑千万ですよ。

「分かりました、では朝食を取ったら出ていって下さいね。私は仕事なんですから」
「そんなツレない事言うなよぉ、『お兄ちゃ〜ん』♪」と言う猫なで声が耳に障る。

「都合の良いときだけ弟面しないで下さい」

……申し遅れました。
私の名は、クニヒト=エヴァーソンと申します。
非常に、不本意ではありますが、この愚弟の兄です。

「いや、今日はマジで相談に来たんだよっ」
「ほぅ、勝手に人の部屋にあがり朝食をとっている事が『相談』ですか?」
「こ、これは……。あの子がお腹空いたって言うからさ、今のオレで連れていける所なんてここ位だったんだよ」
少し詰まって出た言葉からはいつもの様なフザケ口調では無く何処か力がなかった。
どうも少し様子がおかしいようですね。
まぁ、変なのは今に始まったことではないですけど。
「朝食の件は今に始まった事ではないにしても、そちらのお嬢さんについても、勿論教えていただけますよね?」とアルの対面の椅子に座り口一杯に食べ物を頬張っている少女の方を見た。
アルは少し黙り、そして珍しく神妙な面もちで先日起こった出来事を話し始めた。
どうやら核心を突いたみたいだ。

フローテック氏の依頼を受け、地下墓地へバインダーの討伐に向かった事。
バインダーの祭壇で襲われそうになっていた少女、キリエを助けた事。
バインダー討伐中に彼の友人であるアイナーと出会い、襲われた事。
キリエが剣に変身できる特殊な力がある事。
何とか助けようとあの『技』まで使ってアイナーを止めようとした事。
結果としてアイナーに太刀打ちできず、殺されると思ったが通りすがりの旅人に助けられた事。




「……大体は理解しましたが一つだけ腑に落ちませんね」
話を聞きながら淹れた紅茶を自分のカップに注ぎ、食い散らかされたテーブルに浅めに腰を下ろしアルを見る。
すると何で?と言わんばかりな顔で首を傾げた。
「その旅人ですよ。恐らくアナタの負っていた傷を治したのは魔術以外には考えられない。よく考えてみて下さい、今のご時世に、魔法を使える人なんて、そうそう居ません。仮に使えたとしても、『自分は魔術師だぞ』と正体を明かす人間は居るはずがない」
「あ……」

351スメスメ:2008/07/15(火) 00:25:30 ID:ddy6MTJU0
今から丁度40年前、それは起きた。
突如スマグ地方を拠点としたウィザード協会が当時スマグ地下道や各施設を占拠していたレッドアイを壊滅・吸収し、フランデル大陸の全都市国家に対してアウグスタを中心としたグリーク教の根絶を訴えたのだ。
突然の事態に各都市は、当然拒否もしくは相手にしなかった。
しかし事態はそれだけで終わるわけもなくウィザードギルドはブルンネンシュティグ、アリアン、ブリッジヘッドなどの主要な大都市で抗議デモを行い、グリーク教が如何に不適切な教団かと言う事を説いていきます。
その中で宗教どころか天使や天上界までも非難した抗議まであったと言う噂も出てくる程、講義内容は過激なものだったそうです。
当然、グリーク教の総本山であるアウグスタが黙っている訳もなく。ウィザードギルドへ3名の名のある僧侶を使者として出し、彼等に講義内容の全面撤廃を求めた。

しかしその後、ウィザードギルドから何の返事もなく、
月日だけが過ぎ第2陣の使者を送ろうかと協議していた頃です。
アウグスタヘ3つのちょうど頭がすっぽり入るサイズの木箱が送られてきました。
その丁寧に装飾されさらに立派な衣に包まれた木箱から出てきたのは……

元高名な僧侶達の姿です。

これに激怒したアウグスタ側は兵を集め、ウィザードギルドに対して宣戦布告する事になります。
これが後の歴史に名を残す『元素戦争』です。
初めはウィザードギルドvsアウグスタ(グリーク教)の大陸東部での争いでした。
しかしブルンネンシュティグ、シュトラセラトなどの中東部の都市国家が武力介入し、
更にそこへアリアンなどの内陸部の都市国家が、その隙を突いて各都市国家へと攻め入るという泥沼化の情勢になっていきました。
また、この戦争では様々な元素を用いた強力な大量殺人兵器や身体に元素を取り込んで戦闘力を増大させる技術などが開発・導入されるなど、益々戦況は混迷へと突き進んでいくことになります。

その泥沼と化した戦況が7年の月日が経ち、小規模な村などは殆どは焼け落ち、田畑は廃れ、人々の心は荒んでいった頃でした。
どこから現れたか今でも不明ですが、7人の傭兵や冒険家が各都市にて人々に停戦を呼びかけ、戦争を収めようと努める人たちが現れました。
彼等は自らを『Tierraーティエラー』と呼び、次々と各都市に停戦する様に呼びかけ実行していったのです。
そして遂にはアウグスタまでも武装放棄させ、ウィザードギルドにも停戦を呼びかけましたが決して応じることは無くやむを得ず僅か7人だけで彼らを追い込み遂には最後の砦であったスウェブタワーにて壊滅させたのです。
この時の戦争がきっかけで、アウグスタを除く殆どの各都市は同盟を組み、現在の様な統一国家としての一歩を踏み出したと言う訳です。
この立役者である『Tierra』の面々は英雄視され今でも語りぐさになっています。
アウグスタはと言うと戦争終了後から途端に大きな壁を都市周辺に建設し、現在に至るまで一切の交流を絶っている状態です。

そしてこの戦争が元素戦争と呼ばれるようになったか、これは判りますね?
そうです。
この戦争の後、徐々にではありますが空気中の元素の濃度が薄くなっていったのです。
初めは微々たるものでしたが、現在では元素を用いた機関はほとんど作動せず、魔術も余程の実力がある者でない限り扱うことが出来なくなってしまいました。
しかも、大体の家庭には、元素魔法を用いた生活必需品が多々あり、生活の面においても少なからずの支障が出てきていた、と言う事です。
しかし、これも未だに原因は分からず、解明が急がれている案件の一つです。

「よって今のご時世で魔法はおろか、それを行使する魔術師なんていうのは、ごく一部を除いて存在するはずがないのですよ。わかりましたか?」

「ぶっちゃけた話、要はウィザードがアウグスタに喧嘩を売ってぼろ負けして何故か魔法が使えなくなったって事だろ?」

……ぶっちゃけすぎです。

「とにかく、魔法使えることも自分が魔術師だと正体を明かすようなことをすると言うのはおかしいですね」
「まぁ、助けて貰ったんだしそれで良いじゃん」
椅子の背もたれに目一杯もたれながらそう答える。

どうして彼は、こうも楽観的と言うかここまで物事を軽く考えられるのでしょうか?

「それよかキリエの事なんだけどさ……」
「あぁ、それでしたら私の方で何とかしましょう」
「ホントか!?」
「知り合いの孤児院に話を付けておきます。話が付くまでの間は私の部屋で預かることにしましょう」
「え……」
アルの顔が予想外と言わんばかりに驚く。
「何か不具合でも?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどさ」

352スメスメ:2008/07/15(火) 00:25:53 ID:ddy6MTJU0
「まさか、一緒に連れて行くなんて言うのではないのでしょうね?」
そう言うと彼は黙り込んでしまった。
まさか本当に考えていたとは。
全く、何を考えているのでしょうか?
「で、でもさ。」
「『でも』も何もありません。仮に連れて行ってアナタはあの子にもしもの事が起きたとしたらどう責任を取ると言うのですか?」
「じゃあ、アンタは初めから見捨てればいいって言うのか!?」
「そうは言ってません。今のアナタでは彼女は守れないと言っているのです」
「守ってみせるさっ!」
そう、彼の眼と同様に強く言い放ちスッと立ち上がった。
「キリエ、行こうか」
そうして、キリエの手を取り入ってきた窓から出ていこうとする。

「何処に行くのですか?」
そう問いかけるとアルは私の方を見ずに
「じっちゃんの所。相談する人間違えたっ!」
まさか……
「今からすぐにブリッジヘッドまで行くつもりですか!?第一、行くとしてもどうやって行くつもりなんですか?」
「鉄の道沿いに歩いていけばそのうちたどり着くだろ」
「アウグスタの関所はどうするのです!?」
「なんとかなるっ!」
馬鹿げてる。
無計画もいいところではないか。

「……アナタの一度言い出したら一歩も譲らないところは、本当に『あの人』と一緒ですね。もう何も言いません。ですが、路上強盗団の動きが最近活発ですから気を付けて下さいね。あと…」
「分かったから、もう良いっ…」
もはやうんざりしている様子の言葉を遮り
「いえ、これだけは言わせて下さい。非常に大切なことですので」
「…何?」
「せめて玄関から出ていってくれませんか?」


すると、軽く舌打ちをして玄関から出て行くアル。
その後ろをトコトコとついていくキリエちゃん。




……ふぅ、やっと出ていきましたよ。
きっと、寮監にまた叱られることでしょうね。


それにしてもあのキリエと言う娘、不思議な雰囲気を持つ方でしたね。
何故でしょうか昔に同じ様な雰囲気を持つ人と会った事あった気が…。
ふぅむ、どなたでしたか?妙に引っかかる。

……おっと、こんな感慨に耽っている場合ではありませんでした。
私もそろそろ支度をしないと仕事に間に合わな…。

不意に時計を見やるのと同時に、私は眉を軽くしかめる。
もう出勤しなければ、遅刻が確定な時間だ。

「これは…、ちょっとマズいですね…」
そう呟くと軽く頭を掻いて、急いで支度を始めた。

353スメスメ:2008/07/15(火) 00:29:54 ID:ddy6MTJU0
小説スレ5 >>750
小説スレ6 >>6-7 >>119-121 >>380-381 >>945-949
小説スレ7 >>30-34

ぎゃー!sageれてない!?


……気を取り直してコメ返しだけでもしたいと思います。

>国道310号線さん
いやっ、そんな勉強になるような箇所があれば、むしろ教えていただきたいくらいでして……。
自分自身、アイナーはもっと掘り下げたかった所ですが、技量が追いつかずあの様なモノになりました。
もっと各キャラクターを生かせるように書きたいです。

>ESCADA a.k.a DIWALIさん
確かに萌えますな〜♪
しかし、自分自身が【萌え】より【燃え】体質なので熱い話が来るとさらに悶えます。
しかも、変に武に関わっていた分、「この格好でこの動きって動きやすいか?」などと考えてしまうのでちょっと楽しさ半減してしまう体質?です。
茶会ではお話があまり聞けなかったのでまたの機会にでもお話しませう。

>黒頭巾さん
スタダじゃなかったのね……orz
サバイバルで生かさず殺さず無限地獄……、えぇのぉ。
自分の趣味が入ってる?それがどうしたっ!
そんな黒頭巾の作品が大好きだっ!!(←こう言うところが【燃え】なんだろうな)

今回から別キャラクター中心の視点になります。
ややこしいかもしれませんがどうか生暖かい目で付き合ってやってください。

354拙作失礼します@初:2008/07/18(金) 06:21:08 ID:JxIMEokA0
 まぶたの裏側に赤い光を感じた。
六時起床、本日も晴天なり。
アルコールに犯された頭を二、三度振り、上半身をゆっくりと起こす。早起きは良い事だけど、褒めてくれる人物など私の周りには一人も居ない。
ベッドの脇にある机へ首を向け、机の上に鎮座する、鈍く青白い光を放つパソコンに視線を移す。最近はまり始めたネットゲームの資金廻りの一つである、「露店」を確認するが、私が出品していた商品は寝る前と変わらず画面の上に浮かんでいた。
ため息を一つ、気だるい意識と一緒に吐き出す。会社もやめ、怠惰で自堕落な生活にまみれたこの私を心配するものは、親兄弟、友人どこに矛先を向けてもどこにも存在しなかった。
立ち上がり、牛乳でも一つ飲もうかと思うが、それでも無気力的な思考に脳を支配され、その計画は直ぐに頓挫する。そのまま私は敷布団に体を預け、気が付けば二度寝の体制に入っていた。

――――――――

「あなた、大丈夫?」
 一人暮らしの私に有るはずの無い声が鼓膜を揺らす。開いた眼球に飛び込んで来たのは、雪のように白い華奢な腕。次に飛び込んできたのは手を伸ばした少女の隣に立つ緑色の生物だった。
「……へ?」 
 自分でも間抜けな声を出してしまったと思う。それでも私の脳は今の状況を解することを。その緑色の生物が振り上げた槍のような物――否、あれは「槍そのもの」だ――が次の六十五の刹那、その腕に突き立てられたその状況を、一体何なのか思考することを拒み続けていた。
 少女は苦痛に顔を歪ませながら、それでも私に笑いかけようと必死に笑顔を繕っていた。彼女の伸ばした指先から垂れた血が私の顔にぽたりと垂れ、視界を赤く染める。そこで初めて、体が動いた。
 声にならない声を上げ、全力で後ずさる。手の平に感じるごつごつとした感触、今まで味わったことの無い極上の恐怖。まるで夢とは思えなかった。
 私が避難したことにより少女は臨戦態勢に入ることが出来たらしい。金色のイヤリングを揺らしながら大きく後ろに跳び距離を取り、その背の丈もある大きな弓に、光り輝く矢をゆっくりと番えた。その光に、緑色の生物のぬめぬめとした鱗が七色に光る。牙とその口角から涎を滴らせ、距離を詰めるために少女に飛び掛った。
 瞬間、少女の細い腕から光の粒が舞った。目を覆わずにはいられないほどの圧倒的な明。二、三秒後、瞼を開いたときには怪物の姿は無く、緑色の血だまりに立つ少女だけが残されていた。
 少女は私のほうへ顔を向け、ゆっくりと微笑む。安堵から全身の筋肉が融解したように弛緩し、私の意識はまたも闇へと落ちていった。

――――――

 ぶぅん、と静かな音を立てる冷蔵庫。そこはいつもの私の部屋だった。夏の暑さのせいだけではない汗が全身を包んでいて、酷く不快だった。夢、にしてはリアルだった。心臓の鼓動が自分にも聞こえるほど高鳴っている。
 とりあえずシャワーを浴びるため、体を起こす。壁に掛けられた時計に目をやると、時刻は正午過ぎを刻んでいた。深く寝入りすぎた、と反省をする。
 熱を帯びた頭と体をぬるめのシャワーで流し、バスタオルに身を包み。そこで、冷静な思考回路をやっと取り戻す。
 一日の大半をネットゲームで費やすという病的な生活のせいで、おかしな夢を見てしまった。壊れているんだろうな、と自分自身の評価を下す。
 パソコンに向かう。変化の無い画面に心の中で悪態を吐きながらも、私は操作のためのマウスを探す。
 クリック、操作、クリック。ゲームへ本格的に熱が入り始めたその時、マウスを動かす私の右手に何かが当たり、床へと滑り落ちた。
 屈み込み、机の下を見ると。錆びたイヤリングが落ちていた。脳裏に少女の穏やかで優しい笑みが浮かび上がる。自分のような人間を身を挺して守ってくれた、あの少女。

 十八時過ぎ、とあるコンビニ店員は目を丸くした。毎日この時間にやってくる一人の客。同じコンビニ弁当とパックに入ったミルクティーを買い続ける客が、今日はアルバイト情報誌を手にレジへ向かってきたのだ。
 何かあったのだろうか。勿論店員には分かることは無い。ただその表情は晴れやかで、それを見るコンビニ店員の心も少しだけ嬉しくなる。もう顔なじみとなった二人に、いつもより少しだけ、明るく取引が交わされる。
一人の少女の笑いかける声が、どこかから聞こえた気がした。

355354:2008/07/18(金) 06:25:59 ID:JxIMEokA0
 勢いだけで書かせてもらったので言葉の重複が多々有ったり、言い回しがおかしかったり
改行がきちんとされていなかっりと、不備だらけで申し訳ないです……。
 スレ汚し失礼しました。

356◇68hJrjtY:2008/07/18(金) 09:10:04 ID:hUbuaNDM0
>スメスメさん
なにやら新展開を予感させつつ登場のアルの兄、クニヒト。理知的な仕事人っぽさが感じられますね(*´д`*)
それよりなにより、この小説の世界観がだんだん浮上してきた事も特筆できますね。
「ウィザードギルドがアウグスタにケンカを売った後なぜか元素が薄くなった」分かりやすい解説までありがとう、アル(笑)
つくづく今のRS世界が戦争状態になったらと思うと…しかし、「ティエラ」という英雄集団もキーワード的に気になります。
アルとキリエが無事にブリッジヘッドまで辿り着けるかどうか、見守らせてもらいますね。

>354さん
初めまして!投稿ありがとうございます!
リアルとネットの境目がつかなくなる…まさかとは思いながらも誰もが恐怖する(?)、千夜一夜物語風小説ですね。
それが夢だったのかまた現実だったのかは分りませんが、彼(彼女?)が前に向かって一歩進めたのが何より。
画面の中のキャラが警告を、そして祝福をしてくれたみたいなように捉えつつ読ませていただきました(*´д`*)
もしまた気が向いた時の投稿などお待ちしています♪

357憔悴:2008/07/20(日) 01:35:01 ID:Wv5HCA4E0
お前は人間じゃないな!
出て行け!この村から!
この村を破滅に導く悪魔だ!!!

…もうやめてください…
どうしたら、この悪夢から逃れられるのでしょうか…
こんな力のために、こんなに辛い奴隷の毎日
救世主なんているのでしょうか
いたら、今すぐ私を助けてください…

「…ロンサムさん?」
チェルがロンサムの顔を覗き込む。
「どうかされましたの、顔色が、悪いようですわ」
「いや…なんでも、ないですよ」
自分が異種職ということが知られてからもう1週間程たった。
彼女たちは自分のことを仲間だと思ってくれている。
…判ってる、判ってるさ。
それは彼女たち自身も異種職であるから…
自分のことを同じ人材だと思っているのだろうな…
「…あんまり無理しないでくださいね、心配になりますから…」
しかし、この心を通る暖かい気持ちは何なんだろう
彼女はやっぱり、私の…
「ぼにいいいいちゃん!!!!!!!!!!」
「ん?」
台所にいたリーネが叫ぶ。
それはボニーに対してだった。
「あ、あたしのはちみつぷりんたべたでしょ…!!」
「嗚呼、うまかったぞ」
「うぐー!今日こそ息の根を止めてやるううううッ」
リーネがスリングを構える。
それにあわせてボニーも拳を握って戦闘態勢になった。
思わず笑みが零れてしまう。
幸せすぎる、こんな、ただ総帥様とリバーシをしたり、ボニーとリーネさんの戦闘を見てるだけのような、平凡な毎日でも。
このまま、この毎日が続けばいいと、誰もが思うだろう。
いままでなかった幸せが、いま降りかかってきている気がする。
それも、長くはないのだろうが。

358憔悴:2008/07/20(日) 01:35:38 ID:Wv5HCA4E0
「あの…」
数時間たち、ボニーとリーネが疲れて一緒に昼寝をしているころ。
B棟に珍しい来客が訪れた。
珍しいのは、2点あった。
まず、依頼ならばA棟にいくか、もしくは手紙で伝えるからだ。
もう1点は、彼女はサマナーのようだったのだが…
「あ、はい。わたくし、サマナーの格好をしていますが、悪魔なのです」
確かに、彼女はサマナーなのに髪が赤色であった。
チェルとは違う意味で、目立つサマナーだった。
「それで、今日頼みたいことなのですが…」
彼女は、鞄から、ルビーともとれる宝石を出した。
それが、魔石と形が同じくらいなのはいうまでもないだろう。
「あなたはいったい…?」
「元々、地下界にいた悪魔の頭でございます」
追放された悪魔のトップ。
つまり、悪魔の姫君ということだった。
「記憶はあるのですね、珍しく」
「はい、それで、この魔石を預かってもらいたいのです」
「ふむ…また、それはどうしてですの?」
「それは…」
地下界は元々、この"ライシュ"さんの父上がまとめていたものらしい。
だが、お人よしだった父上は別の者に王の証を渡してしまった…
悪魔、ネクロマンサーと鬼能、鬼たちは互いにいい関係ではなかったため、
王の証を握った元鬼能の頭は悪魔たちを出て行かせた。
しかし、失敗はここだった。
悪魔たちは魔石を持っていたのだ。
それも、2つも…
「わたくしがもっています、ルビー…それと」
またもや鞄を漁る。
そして、今度は紫色の宝石をとりだす。
「元は鬼能の姫がもっていたものを、わたくしたちのネクロマンサーが拾ったらしく…アメシストです」
「そのネクロさんも色が紫だったり?」
「はい、その通りです。しかし、彼は元々は普通の青いネクロマンサーでしたの。だけど、このアメシストを拾ってきたときに変色し…」
紫色にかわった、ということだろう。
しかし…鬼能の姫、ということはサリアがもっていたのだろうか。
彼女は紫色ではなかったが…
「推測ですが、魔石を手放すと力がなくなる、と考えられています」
「では、ライシュさんも力を…?」
「わたくしは、この魔石をもつ相応しい人物じゃなかったため、力はうまれませんでした。いっておきます。サリアは手ごわいです。本体は何度引き裂いても死にません…それと、戦うなら、この2つの魔石に相応しい人物を探してください。そして、仲間を増やすべきです」
魔石は人物を選ぶ。推測に、ゆっくりと…
相応しい人物が見つかったら、きっとなにか魔石に異変があるはずです。
4人じゃ無理です…鬼能はサリア一人じゃない。
覚えておいてください…

359憔悴:2008/07/20(日) 01:36:06 ID:Wv5HCA4E0
そう言われても、全くと言って検討がつかないわけだが。
「だけど、これであと6個になったね、魔石」
「…魔石は、格それぞれの頭がもってるんじゃないかしら…その人が異種職と限られるわけじゃないみたいだけど」
4人はなんらかで最初に選ばれた異種職。
残りの8個…まず1個目のルビーは悪魔の姫君。2個目のアメシストは鬼能の姫君。
そして、実際、チェルはテイマーの中でも有能な総帥をしている。
こう考えると、残りの6つも、シーフ、武道の頭、ウィザード、ウルフマンの頭…と
持っているのではないか…
「シーフの頭ならしってるぜ」
ルビーを見ていたボニーが地図で、スウェブタワーを指差す。
「ここのいっちばん地下の階にいるといわれてる。俺のにーちゃんだけどな!」
「貴方のお兄さんはシーフの頭ですの?」
「いや、そうじゃねーけど、あいつは強いぞ、とにかく」
まあスウェブの地下にいる時点で強いのはわかるが。
「…まあ、他に当てもないしいってみましょうか」

「おい…お前…」
何とかぼろぼろになりつつ(リーネは無傷)
スウェブの最下階につく。
そこにいた黒い人物にボニーは…
「老けたなあ兄貴い!!」
「おお、ボニーか!おめーかわんねーなぁー!」
ボニーと瓜二つ。
少し違うといえば帽子とマントの色だろうか。
「なー兄貴ぃ、魔石っつーのもってねーか?」
「ませきぃ?しらねーなぁ…だが、このどこかのモンスターが妙な石を持ってる、ということは聞いたことがあるぜ!」
誰にも倒せない、紅色のオーガ。
聞いた話から察すると、魔石を持っていることは明らかだった。
「そいつはどこにいるんですの?」
「おんやぁ…ボニーのこれか!」
小指を立てる。
その瞬間ボニーとロンサムからの拳でノックアウトされたのは言うまでもない。
「なんでロンサムまで?」
「ただむかついただけですよ」
こき、と指を鳴らす。
まあそんなことで死ぬシーフの頭じゃなさそうなんだが。
「あっちの方でみたっていうな。俺はしらねーけど…」
「ありがとうございます」
丁寧にお礼を言い、指がしめした方向へ進む。
「…ッなんか…怖いよ…」
今まで珍しく黙っていたリーネが、ウサギの姿でボニーにすがりつく。
「すごい、邪気と…痛みや、苦しみを感じるの…まるで、あのキングベアーの時みたい…」
紅色のオーガ…一筋縄ではいきそうになかった。

360憔悴:2008/07/20(日) 01:36:37 ID:Wv5HCA4E0
「おっ…よくあうねぇ。もしかして、あたいのストーカーかい?」
サリアがにやにやしながらオーガを尻に引いていた。
そして、手にもっていた骸にあの時と同じ、黒い結晶を入れ込む。
「またあの時みたいに…ッ」
「いんや、そんなヘマするもんか。そんなことしたらあんときみたいに浄化されちまうんだろ?あたいは王に新しい力を授かったんだよ!」
声を張り上げて叫んだ瞬間、黒い結晶はロンサムにむかった。
「そいつが心に闇をもってると思ったんだね…さあ、仲間と死の舞を踊りな!」
地に手を着くと、ビシビシと音を立てて地面が裂けた。
それはチェルを狙ったものだった。
「ッ!?」
がくん、と力が抜け、気を失ってしまう。
「ふふ…さあ、いくんだ!」
心が宿っていない目で、矢を取る。
「ロンサム、やめ…ッ」
確実にボニーの足を狙う。
そして、今度は5本まとめて矢を取る。
今度狙っているのはボニーの横にいるリーネだろうか。
「どーして…なんで、ロンサムさんはそんな…」
操られちゃったの…?
泣き始めるリーネに、さすがのロンサムも手が出せないのか、またボニーの方に弓を向ける。
「…くそ…とりあえず、その弓と矢は没収だな!」
分身を作り、ロンサムへ向かう。
その途中何度か矢を受けたが、分身が消えるだけ。
そして、弓と矢を奪いとるが…
「!!ボニーちゃん、逃げて、それは罠…ッ」
後ろから出した槍で、大きな二つの竜巻を起こす。
「てめー…いいかげんに…」
「やめて!!」
鞭を取り出そうとしたボニーをとめる。
「だめ、だよ。傷つけちゃ!ただ、ただ、操られているだけなのに…仲間なんだよ!?だめ…だよ?」
泣きながらリーネが叫ぶ。
頬から流れた雫は、ぽた、と地に落ちる。
「かはっ…はぁ…はぁ…」
その声を聞き、チェルが立ち上がる。
手足には無数の傷。
しかし、しっかり握った笛を精一杯吹く…
その音は、あの時奏でた浄化の音源だった。
「………ごめ…なさい…」
ロンサムは槍を落とす。
その声を聞き、チェルはそっと傍による。
そして、子供を慰めるように、ぎゅっと、抱きしめる。
「…総帥…」
「大丈夫、貴方が思っているほど、辛い人生じゃない。私たちがいる。だから…」
そっと耳元に顔を寄せ、
苦しまないで…
と囁いた。

361憔悴:2008/07/20(日) 01:38:02 ID:Wv5HCA4E0
その後、オーガからガーネットを貰うと、B棟へ帰還した。
チェルの傷は思ったより深く、1ヶ月は動けないという。
そんな体で歩き、ロンサムを抱きしめたのは…
「やーっぱり愛の力!だよねー!」
「なー!」
リーネとボニーがにやにやしながら笑いあう。
「…うるさいですわ」
ベットで横になっていたチェルは、低くどすの効いた声でつぶやく。
ばたばたと二人は総帥の部屋をでる。
たまには着替えも必要、と服を脱ぐ。
「総帥ー、あの件なのです…がっ!?」
白い肌に、大事なところだけを隠すようにした下着姿のチェルをみたとたん、時が止まる。
「し、失礼…」
ロンサムは鼻を抑えながら、開きかけていた扉を閉める。
「…なん…ですの」
チェルもまた、布団を被ってつぶやいた。
心の中の何かが、動いた気がした。

ドアの向こう、総帥部屋の前でかくん、と体を落とすロンサム。
(み…みてしまった…)
白くて、光る肌。
それに、何時間もかけて合わせた様な純白の下着。
遠くからみたら…まるで、裸のような…。
ぶはっ、と思いっきり血を吹きだす。
(な、なにを考えてるんですか、私は…)
鼻を抑えつつ、その場を後にする。

「チェルちゃんが動けない間に、1人異種職見つけるよぅ!」
「情報は集めてきました。さあ、見てください」
ロンサムが5枚ほど、紙を並べる。
「んー?ロマ娘シュリア…ああ、あの連続暗殺事件を解いた女か」
「スカイアーチャーズのGMライリア…ギルド戦争では勝ち続きのあのGですね」
「…ッ!!ぷ、ぷりんせすのねお…こ、このこにはまだ会いにいきたくないなぁーなんて…あはは」
「後は有名な剣士のホクスと…ネクロマンサーのウリン…ふむ」
何処からいこうか?

(1,チェルがいない間にロマっ子に話を聞いておく
2,格好良いおねーさまとお話をする
3,リーネが嫌がるプリンセスのところへいく
4,おにーさんと遊ぶ。(話す
5,ネクロちゃんに飴をあげる(話す…)

さあ、どれがいいかは小説スレの方が決めてください〜。
ちなみに今回、ひぐらしの鳴く頃に で使われている奈落の花を聞きながら書きました。あの曲は大好きです。
時間がないためコメント省き。

362◇68hJrjtY:2008/07/20(日) 04:17:30 ID:hUbuaNDM0
>憔悴さん
流れるような筆遣いとはまさに。たった5レスでかなーりな話の展開に驚きです。
宝石の残りも気になりますが、まずはやっぱり他の異職種…3人の候補が挙がっているようですね。
仲間を見つけて悪魔を倒す!なんだかオラ、わくわくしてきたぞ!っていうのは置いといて(笑)
さりげなくボニーの兄貴なども登場してますが、チェルの下着姿とそれに鼻血ブーなロンサムの両方に萌え萌え(*´д`)
次回は選択式ですか!(笑) ゲームブック風なノリに吹きました。うーん、では私は5で…旦~


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