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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

365◇68hJrjtY:2008/07/21(月) 12:36:53 ID:Dh9WYsnM0
>ワイトさん
ワイトさんの小説、ちゃんと覚えてますよ!スルーしろなんて寂しいことは言わずに(´・ω・)
もし続きの構想があるというならばいくら時間がかかっても構いません、お願いします。
ただワイトさんが書ける状態でない等の理由があるならば止むを得ませんが…。
でも文面からは続きを書く方向(?)のようですし、ともあれお待ちしています!

366国道310号線:2008/07/21(月) 20:12:37 ID:Wq6z33060
・小説スレ六冊目
 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

--------------------
・小説スレ七冊目
 第三話 〜 赤き呼び声(2) 〜
 1 >>228-232 2 >>254-257


前回のあらすじ:ミモザの回想、ストーカーアッシュ、ケルビと金太郎合流の三本でお送りしました


アラクノイドと出会ったあの日、幼い色だった新芽も大きくなり深みを増していた。
あれから程なくして卵を産み母親となった彼女に、私は亡くなった母の面影を求めていたのかもしれない。


アラクノイドが身を潜めているグレートフォレストの洞穴。
ミモザはアラクノイドの体に巻いた古い包帯を新しいものに変えていた。
彼女の全身を覆っていた包帯はほとんど取れ、歩くには支障が無いほど回復していた。
「もうすぐ包帯いらなくなりそうだよ。」

−そうであるか−

治療のために洞穴へ通っているうちに、言葉少なかったアラクノイドも彼女に答えるようになっていた。
包帯を巻き終わるとミモザはアラクノイドに弾ける笑顔を向ける。
「ねぇ、卵見てもいい?」
触ろうとするとアラクノイドが嫌がるためしないが、近くで眺める分には何も言ってこない。
彼女の回復していく姿を見るのも嬉しかったが、ミモザは彼女の子供達の誕生も心待ちにしていた。

アラクノイドの了解を得、白い蜘蛛の糸に覆われたたくさんの卵を見やる。
心なしか、前に見た時より大きくなっているように思えた。
「早くかえるといいね。」
笑顔でそう見上げれば、アラクノイドも顔をほこらばせ穏やかな表情をしている。
だが、ふと真面目な雰囲気でミモザに向き直った。

−ミモザ、おぬしは二度と此処へは来るな−
突き放すような言葉にミモザは驚き瞳を瞬かせる。
小声で「え?」としか聞き返せない彼女にアラクノイドは視線を外すと顔を背けた。

−この子達が孵ったら、わらわはこの洞穴からいなくなる。 会いに来ても無駄ということじゃ−

「そんな…。遠くへ行っちゃうの? もう会えないの? 」
ミモザはアラクノイドの太い脚をぎゅっと握ると揺さぶる。
仲良くなれた彼女から突然告げられた離別の言葉に、ミモザは泣き出しそうな顔をした。
「こいつぁ、元々この森の者じゃねぇだろ。 元気になったら帰るだけでぇ。」
アラクノイドの脚に抱きついたままの彼女にケルビーはぶっきら棒ながらも諭す。
嗚咽に変わりそうな吐息と零れそうな涙を懸命にこらえ、ミモザはごわごわした体毛に身をうずめる。
アラクノイドは何も答えなかった、沈黙した洞穴の中、外の木々のざわめきがやけに耳についた。

−来るよ 人間 人間だ たくさんいる 恐い顔 人間来るよ いっぱい来る 火と鉄持ってる こっち来る
 人間いるよ ほらすぐそこ 来る来る来るよ  ……来た −

バッと顔を上げるとミモザはアラクノイドを通り越して洞穴の外へ走った。
聞こえてきた声は木のものだけではない、風も鳥も騒いでいる。
注意深く耳を澄ましていると、いくつもの足音が近づいてくるのが分かった。
囁かれた単語に嫌なものを感じていたミモザだが、森から現れた群衆に息を呑む。
「何でぇ、これは…!」
彼女の後を追ってきたケルビーも驚きを隠せないでいた。

十数人の男達が手に武器や農具、松明を持ち行進してきたのだ。
それもいずれも見知った顔ばかり、ミモザの村の住人達であった。
「ミモザ! 怪我は無いか?」
ミモザに気付いた村人の先頭を歩いている壮年の男性が彼女に歩み寄る。
「…村長さん。」
ミモザは戸惑い気味に彼を見つめた。

村長の手には無骨な長槍が握られており、なめし皮の鎧を身に着けている。
彼は彼女の無事な姿を見て安堵の表情をしていたが、まるでこれから戦場に赴くような緊張感がうかがえた。

367国道310号線:2008/07/21(月) 20:14:23 ID:Wq6z33060

見つかった…? なんで? だれにも言わなかったのに。

アラクノイドと出合ったあの日以来、ミモザは彼女の事を誰にも他言したことは無かった。
村人達には自然の声は聞こえないというのに、彼等に口止めをしていたほどだ。
お前の様子がおかしい事を心配した村人の一人がお前の後をつけていき、大蜘蛛を見つけたのだと村長は言った。
「絶対中には入るな。」
ミモザが愕然としていると村長は村人を引き連れ洞穴に入ろうとする。
「っ… ダメ!」
ミモザは素早く村人の前に回りこむと両手を広げ立ち塞がった。

アラクノイドが殺される、そう感じた彼女は必死に彼の行く手を阻む。
だが、村人達に押しのけられ、彼女の小さな体は道を開けてしまった。
よろめきながらも再び彼等を止めようとするが、彼女は誰かに腕をつかまれつんのめる。
「お前はここにいなさい。」
腕をつかんだのは隣のおじさんだった。
「やだ! はなして!」
懇願し腕を引っ張るが、繋がれた手は固くビクリともしない。

そうこうしていると、洞穴の奥から布を裂くような動物の鳴き声と人々の喚き声があがった。
大きな奇声に驚いたおじさんの力が緩む。
その隙を逃さずミモザは彼の手を振り払い、一目散に洞窟の中へと駆け出していった。
「あの、バカッ。 戻りやがったっ。」
この場にいればミモザは安全だと思い傍観していたケルビーは舌打ちする。

あの物々しさから見て村人達はアラクノイドを本気で退治するつもりだ。
対するアラクノイドもそう安々と村人にやられるとは思えない。
それに彼女は卵を守るために容赦なく村人を襲うだろう。
激戦となることは想像に容易い、その渦中にミモザは舞い戻ったのだ。

通い慣れた洞穴を息を切らしながらミモザは進む。
「お願い無事でいて!」
祈るような気持ちで彼女はアラクノイドのもとへ急いだ。


アラクノイドは侵入者達に威嚇の声をあげ、前脚を大きく振り上げる。
蜘蛛の中でもとりわけ大きいアラクノイドであるが、今は小屋ほどあろうかと思えるほどだった。
その迫力に気圧されて動けないでいた村人達に村長のゲキが飛ぶ。
「怯むな! 取り囲むぞ!」
彼は長槍を下段に構えるとアラクノイドへ突進した。

槍を頭上で旋回させ蜘蛛を牽制し、一気に距離を詰めた勢いを乗せ顔面を突き刺す。
眉間を狙った攻撃はアラクノイドが避けたため急所を外したが、彼女の前肢に深々と突き刺さった。
耳をつんざくような悲鳴がアラクノイドからあがる。
「お前はあっちに回れ!」
「うっ…、こいつ卵まで産んでるぞ!」
接戦する村長に続き、村人達も各々動き出した。


ミモザとケルビーが洞穴の奥に辿り着いた時には、すでに戦闘は激化していた。
奥にアラクノイドを囲んでいる村人達、手前には彼女にやられたのだろう頭から血を流し倒れている人。
アラクノイドも背中に数本の槍などが刺さり、右前脚は無くなっていた。
その光景を見た瞬間、ミモザの体にも激痛が走り身悶える。
苦痛や恐怖といった感情が彼女の中に流れ込み、その身を切り刻んでいった。
「ミモザ…。」
我が身を抱きしゃがみ込んだ彼女をケルビーは心配そうに見やる。

「なぜ、戻ってきた!?」
すぐ近くで怒鳴られ、ミモザはゆるゆると顔を上げる。
目の前にいたのは村長だった、彼も肩から胸にかけて裂傷を負い荒い息をしている。
「お願い…やめて……。」
涙にかすむ視界の中、痛みを訴える心身を堪えて彼女は叫ぶ。
「どうして、こんなことするの?! アラクノイド、ケガしているのに! ここでじっとしていただけなのに!!
 …もうすぐ、もうすぐここから出て行くって言っているのに! お願い… やめてよ!!」
洞穴中に彼女の声は響いたが、村人と蜘蛛の戦闘は止まることはなかった。

泣き崩れそうになるミモザの両肩を村長は掴むと、彼女にいきり立った顔を向けた。
「直に卵が孵化すると子蜘蛛は母蜘蛛を食い殺し、次は人間も襲う…! 村のこんな近くに巣があるのは危険すぎ
 る!」
彼女の目を見すえながら彼は続ける。
「こんな時まで魔物の声が聞こえるというのか!? いい加減にしろ!!」
ミモザは零す涙さえ忘れ、ただ茫然と彼を見つめた。

368国道310号線:2008/07/21(月) 20:16:38 ID:Wq6z33060
激しい衝撃音がしたかと思うと、二人の足元に人が吹き飛ばされてきた。
村長は彼が吹き飛んできた方向に視線を戻し、厳しい顔をした。
お互い一歩も譲っていなかった戦況は一転、アラクノイドの猛攻に一人また一人と村人は倒れていっている。
−我が子には一遍たりとも触れさせぬ!−
彼女は血に塗れたアゴを大きく広げ雄叫びを上げた。

「ちっ。」
長槍を持ち直すと、村長は再びアラクノイドに攻撃を仕掛ける。
ミモザの瞳は村人とアラクノイドの激戦を映していたが、心ここにあらず只々立ち尽くしていた。


訳が分からなかった。

村長はアラクノイドがいるこの場所を危険だと言う。
アラクノイドは優しい蜘蛛だ、だって人間の自分を襲った事など一度もなかった。
村長はアラクノイドの子供が彼女と人間を襲うと言う。
あの優しいアラクノイドの子供が襲うというのか?
どうして?

思考は堂々巡りを続け、当ても無い出口を求めて意識の深淵を彷徨う。


アラクノイドが受けているダメージは大きく満身創痍ながらも倒れる気配は無い。
最初は数で押していた村人達だが、ほとんどが負傷し重傷者も出始めている。
「火を使う。 可燃剤を撒け!」
このまま手をこまねいていては不利と、一気にかたをつけるべく村長は最終手段に出た。


村人の一人がアラクノイドに火矢を射ると、瞬く間に炎が彼女の全身に燃え広がる。
次に放たれた矢は彼女の足元付近に刺さり、燃料の道をたどって卵にも発火した。
洞穴内を揺るがす凄まじいアラクノイドの叫びに、ミモザはハッと我に返る。
「アラクノイド!」
卵を見守るアラクノイドの優しい顔が頭を過ぎる。
このままでは母子共々焼かれてしまう、そんなことは堪えられなかった。

走り寄ろうとするミモザ、しかし、ケルビーは彼女のスカートを咥え行かせない。
「ケルビー! 放して!」
「バカヤロウ! おめぇまで燃えちまうだろうが!」
水の神獣をミモザが喚び出せれば何とかなったかもしれないが、まだ一番簡単な火の神獣しか彼女は喚べない。
今行っても無駄死にさせるだけだ。
そうなってしまっては、彼女の母親に顔向けできないではないか。

−あぁ、わらわの卵…−
炎に包まれ悶えながら、アラクノイドは卵の火を消そうとその身を覆い被せる。
その時だった、命の危機を感じたのだろう、まだ孵化の時期には早いというのに幼虫が卵から飛び出してきた。
裏返ったような甲高い悲鳴をあげる半透明の白い幼虫は、燃え盛る火を避けるとアラクノイドの腹に取り付き、
生命の行動原理に基づくままその体液を吸った。
だが、すぐに炎にまかれ、子蜘蛛は親に貼り付いたまま絶命してゆく。

辺りにはすえたような嫌な臭いがして、黒煙が立ち込める。
生に対する壮絶な蜘蛛の姿を見た村人達の中には吐き気をもよおす者もいた。
幼虫は次から次へと卵から孵り、村人にも襲い掛かる。
卵の一番近くにいた男性は握り拳大の幼虫に全身にまとわり付かれ、絶叫をあげ転がり回った。
「くそ…!」
彼に取り付いた幼虫を村長は槍で払うが、深く吸い付いているので中々離れない。
矛先を村長に向けてきた幼虫を槍で裂き、村長は猛然と子蜘蛛郡へ立ち向かった。
「村へは行かさん、全てここで潰すっ!」


襲い掛かってくる幼虫達を、ケルビーは体と同じくらいの長さのある尻尾をしならせ叩きつけた。
殻さえ固まっていない幼虫は地面に激突すると、体液を撒き散らしベシャリと潰れた。
「洒落にならねぇって!」
ぼやく暇も無く幼虫は襲い掛かってくる。
彼は体を反転させ、勢いを付けた尻尾でそれを薙ぎ払う。

逃げ出す村人もいたが、ほとんどは村長と幼虫相手に戦っていた。
いつの間に追いついたのか、隣のおじさんも農具を振るっている。
一匹一匹は大した事無い幼虫だが数は何十匹といる。
ケルビーは周囲に目を配らせたまま、背に守っている主に呼びかけた。
「ミモザ! 逃げるぜ!」
「……ゃ…」
震えるかすれた声で何かを言った彼女にケルビーは振り返る。

ミモザの見開かれた瞳からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
「…い…や……」
後ずさり首を左右に振る彼女は、両手で耳を塞ぐ。
しかし、彼女の心に直接届く声は容赦なく彼女の心を切り刻んでいった。

−痛い 助けて 死にたくない 熱い熱いよ… 守らなければ 死ね 苦しい お母ちゃん…−

苦痛を訴える声、助けを求める声、何かを護ろうとする声、それらはもう誰の言葉かすら分からない。
轟音のごとく響き渡る声は止め処なく、今は自分の鼓動でさえ耳障りだった。

369国道310号線:2008/07/21(月) 20:18:30 ID:Wq6z33060
彼女の様子を見てケルビーは血の気が引いた。
心が重圧に耐え切れず外界との接触を遮断しようとしている?
術者と心が通わなくなれば、神獣は呼び出せなくなるばかりか具現化すら出来ない。
混戦となっている今、自分を召喚解除することは正に自殺行為。

「しっかりしろ! 気をちゃんと持たねぇか!!」
「いや! もうなにも聞きたくない! 聞きたくないよぅ!!」
激しく被りを振り、目をきつく閉じたミモザはその場にうずくまる。
キィィンと耳鳴りがして、一瞬だけ彼女の世界は無音となった。
消えゆく体でケルビーはせめてもと、ミモザに抱きつき身を挺しようとした。
しかし、彼は彼女の体に後一歩のところで姿を消してしまった。


死骸から死骸に火は燃え移っていく、炎に照らされた岩壁に揺らめく影は不気味なダンスを踊っているようだ。
動いている者が少なくなった洞穴に村長は長槍を杖のようにして、酸素の薄くなった空気を貪る。
最初にアラクノイドから受けた傷が響き、目は霞み立つのがやっとの状態だ。
彼は目の前にいる弱った子蜘蛛を突き刺そうと槍を振り下ろす。
だが、上げた右腕に別の幼虫が噛み付き、とっさに腕を振り払うが、その痛みに彼は槍を手放してしまった。
思わぬ方向に飛んでゆく槍の軌道の先には、うずくまっている金髪の少女。

「しまった…。」
青ざめる村長、しかし次の瞬間、黒い巨大な影が槍と少女の間に割り込んだ。

ドスッ と鈍い音が頭上でする。
暗くなった視界に何かの気配を感じ、ミモザは顔を上げた。
「…アラクノイ・・・ド・・・?」
黒く焼き焦げた蜘蛛の横腹が長槍で貫かれているのが、彼女の泣きはらした目に入った。

−…ゎ…らわ……の……こ……−

力尽き、アラクノイドはゆっくりと地に倒れる。
アラクノイドの最期の言葉は、ミモザにはもう伝わらなかった。
「…あ……ああぁ… ぅああぁあああああぁぁ!!!」
言葉にならない声をあげ絶叫するミモザ、彼女は変わり果てた姿の蜘蛛にすがりついた。
「危ない!」
村長の声に彼女は振り返ると、幼虫が自分目がけて牙を剥き飛んでくるのが見えた。
首筋に鋭い痛みを感じたかと思うと、突然視界は真っ赤に染まる。


そこで、私の記憶は途絶えた。


―ハイランド洞窟B2

崩れやすい足場の坂道をケルビーと金太郎は慎重かつ黙々と登っていた。
ケルビーの背中には眠ったままのミモザが乗せられている。
「おい、本当にこっちで合ってるのけぇ?」
のそのそと後ろを歩く金太郎にケルビーは何度目かの同じ問いをかけた。

落下音も無く崖下にやって来た金太郎にどうやって来たのか問いただすと、彼は降りやすい場所があったと言う。
彼の案内でかなり長い間崖を登り続けると、ようやく頂上が見えてきた。
「やっと着いたぜ。」
ケルビーは石造りの通路に足を付くとふぅと一息ついた。
しばらく犬の姿になっていなかったためか、彼女を運ぶのはいつもより大変に感じられた。
金太郎も重い甲羅を引きずり、通路に這い上がってくる。
彼の歩みに合わせていたので歩く速度は遅くなってしまったが、道を切り開いてくれた功績者にケルビーは感謝
した。

「しかし、ここはどこいら辺でぇ?」
石畳の道に魔力の燭台、自分達が落ちたあの通路に違いないようだが、こんな狭い道があっただろうか。
ケルビーは首をかしげながら辺りを見回した、不気味なほど静まり返った通路は生き物の気配を感じさせない。
「…ん…。」
背中にいる人物が身をよじらせたのを感じ、ケルビーは急いで振り返る。
「気がついたのか?」
ずっと意識が無かった主人の目覚めに彼等はホッとする。
ふらつきながらもケルビーの背から彼女は起き上がると、ボンヤリとした表情で呟いた。
「…呼んでる。」
「はぁ?」
意味が分からず召喚獣とペットは顔を見合わせた。

誰かが助けに来てくれたというのか、だが彼等には声らしきものは聞こえない。
やがて彼女は通路の奥へと進んでいった。
「おいっ、下手に動くと危ねぇぜっ。」
努めて小声で注意を促すが彼女は歩みを止めない。
マントを引っ張ってみたが、少女のものとは思えないほど強い力で引きずられる。

明らかにミモザの様子が変だ、一体何に呼ばれているというのか。
昔は自然の声を聞いた彼女が声に引かれてどこかへ行くという事がよくあり、ケルビーもそれに付き添っていた。
(だが、あの日以来、こいつは『声』が聞こえなくなった。)
どのような人や魔物と接していても、それらの感情を読み取っていた様子はなかったはずだ。


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