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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

276白猫:2008/07/05(土) 22:29:47 ID:W4Rh7kXM0


   「……必ず、必ず勝ちます…………姉さん」


折れた黒懺剣の刃を腰に差し、ネルはゆっくりと立ち上がり、呟いた。
今こそ、使うべきだ……自分が使うのを拒み続けた、最後の力を。
 「『 エリクシル――[最終段階(ファイナル)] 』」
瞬間、
ネルを中心とした凄まじい魔力の渦が、突如部屋中を覆い尽くした。

地面に倒れ、動くことすらままならないサーレとプリファーは、その光景にただ驚くことしかできなかった。
 〈な、ん――なんだ、あれは――〉
 〈ネル、ぽん……〉
既にネルの体は、直視することができないほどの光で包まれていた。
と、そんな光の中。

奇麗に整えられたネルの紅色の髪が、突如伸び出した。
ゆっくりと、ゆっくりと髪の長さが伸び、脇の辺りまで伸びたところで、ようやく止まる。
今まで幼さの残っていた顔からそれらが抜け、ひたすらに冷酷な[戦人]の表情へと、変わる。
今まで背を護るように広がっていた[深紅衣]も変化し、その体全体を覆うローブへと変化した。
そして、グングニル。
グングニルは突如紅色の炎に包まれ、その形を[フィルルム]の姿から、より強力な[ランス]の姿へと変わった。

先までとはまるで違う魔力の塊――まるで"生きた傀儡"を見たような錯覚に陥り、サーレとプリファーは恐怖する。
巨大なランス――グングニルを払い、少年――否、青年は、地面へとゆっくりと降り立った。

 「ようこそ僕へ……改めて名乗りましょう、僕の名は――



   ネリエル=リマ=オーディン――"名も無き最高神"」


世界最古の神話とも呼ばれる[開闢神話]。
その開闢神話において、"名も鳴き最高神"――[オーディン]の書き出しは、こう綴られている。

   《人がその名を口にすることは、この世界の創造主たる彼に対する冒涜とされていた。
   その名を口にすることができるのは、彼が従えていた[ワルキューレ]たちだけであり、
   その[ワルキューレ]たちもまた、人々にとってしては神にも等しい存在だったのだ。
   故に人々はその名を口にすることはできず、ただ彼のことをこう呼び、崇めた。

   曰く、"名も無き最高神(オーディン)"》







同刻、スバイン要塞。
そこで小さく酒を啜っていた老人――"老師"は、小さく微笑みながら呟く。
 「エリクシルの[最終段階]……かー。まさかアレが[神格化]、しかも"名も無き最高神"へと神格化するものだったとはねぇ。
 未完成のエリクシルで創られた[パペット]と[マペット]……なるほど、グングニルであの二つの人形を破壊することができるとは、そういう意味か」
再び酒を啜り、老師は自分の右腕を見やる。
修行の最終段階においてようやく目覚めた"それ"は、老師の想像を遥かに超えたものだった。
回避行動どころか、気付くことすらできず――ネルの一撃は、自分の腕を砕いた。
 「カナリア――君の子は、強くなったさ……たぶん、フランテル東大陸でイッチバンだろうな」
老師――ラサリア=アラスター=ヴァリオルドはもう一度酒を飲み、スバインの空を眺める。
いつの日か兄、スティリアと見た夜空は、もっと澄んでいただろうか。
それとも月日を重ね、汚れたのは自分の目なのだろうか。


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