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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

269白猫:2008/07/05(土) 22:26:01 ID:W4Rh7kXM0


イグドラシル、最下層。
室内とは思えないほどの広さ――現代で言う東京ドームほどはあるだろうか――のこの最下層。
傀儡の一人――ベルモンドが[移動要塞]と形容したのも頷けるほどの魔物の大軍が、この最下層に収容されていた


数自体は一つの軍隊並。此処に運悪く突入してしまったアーティ、カリアス、アネット、カリンの四人は、当然の

如く千体からなる魔物の大軍、その襲撃を受けていた。
 「『 [閃刃(シャイン)]ッ!! 』」
飛び掛かってきたヴァンパイアの身体を一閃、光り輝く槍で薙ぎ払ったアーティは小さく舌を打つ。
壁をぶち破って突入したにも関わらず、魔物達はそれに動じずすぐさま襲いかかってきた。
故に逃げ道を確保するどころか、体勢を整える暇なく戦闘開始、というなんとも調子の狂う始まり方になってしま

っている。
 「……『 碧龍、剣 』」
そのアーティの背後、今まさに襲いかかろうとしたミイラが、巨大な蒼の龍に呑み込まれた。
ミイラを呑み込んだ龍はそのまま空中を舞い、突然方向を変え、魔物の群れへと突っ込んでゆく。
その龍の頭に乗っていた黒髪、黒い鎧、黒マントという黒一色の剣士――カリンは、龍の頭を蹴り、跳ぶ。
魔物達の丁度上空へ跳んだカリンは、八ヶ月前までは持っていなかった小型で円型の盾を掲げ、叫んだ。
 「『 トワーリングプロテクター!! 』」
カリンが盾を薙いだ途端、その盾から凄まじく巨大な竜巻が生み出され、まるで蛇のように魔物達へと放たれた。
素早い魔物たちは即座にその場から逃げてしまうが、愚鈍なサイドウォーカーやエクソシストなどの魔物は、その

竜巻に呑み込まれた。
自分の背後に着地したカリンに微笑み、アーティは槍を構える。
 「あんがと」
 「礼を言う暇があったら手を動かせ」
不機嫌そうな声にムッとしつつも、アーティは槍を急激に旋回させた。
そして紡がれる、ひとつの呪文。
 「『 ファイアー・アンド・アイス・アンド――ライトニングッ!! 』」
途端、アーティとカリンを中心に、炎と氷、そして稲妻の嵐が吹き荒れる。
その嵐の中に入っていた魔物達は瞬時に燃え上がり、凍り付き、感電し、地面に崩れ落ちていった。
 「行くわよッ!!」
 「上等だ」
この嵐は長くは保たない。威力が弱まれば、魔法耐性を持つ魔物がすぐにでも襲いかかってくるだろう。
そう一歩踏み出したアーティ、
その足を、巨大な手が掴んだ。
 「!?」

 〈ギ、ガガ……〉
地面に崩れ落ちていたメタルゴーレムが、彼女の足を掴んでいる。
まだ生きていたのか、と槍を振り上げたアーティ、
その背後から、三体のガーゴイルが飛び掛かった。
嵐の被害が少ない上空からの襲撃に、アーティは目を見開いた。
逃げようにも、反撃しようにも、両足を掴まれていてはどうすることもできない。
マズイ、と顔を歪ませたアーティの眼前で、
ギリギリで滑り込んだカリンがゴーレムの腕を切り払い、アーティの体を蹴り飛ばした。
 「ッ!?」
嵐の外へと蹴り飛ばされたアーティは、しかし吹っ飛びながらも体勢を立て直した。
嵐の中がどうなっているかは分からない。――ただ言えることは、カリンが自分を助けたということ。
せめて彼女の無事だけでも確認し――
 「ッアーティ!! さっさと先へ行け! お前にはすべきことがあるだろうッ!!」
 「!!」
嵐の中から届いた声に、アーティは目を見開く。
そうだ、こんな場所で足止めを食っている暇はない。
一刻も早く、先に進まねばならない。ラグナロク発動まで、もう時間がない。
此処はカリンに任せて、行くべきなのだ。
 「……っ」
槍を払い、アーティは浮遊の力を持つ靴を脱ぎ棄て、裸足で走り出した。


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