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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
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雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。
規約はこちら
>>2
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「ねーねーねーザッちゃんザッちゃんザッちゃん」
「ダメだ」
「ぶぅう。まだなーんにも言ってないのに」
「どうせカオスを貸せと言うのだろう?」
「いーーーっだ! ザッちゃんのけちんぼ!」
芹沢がザドゥに無邪気に絡み、無邪気に拗ねて、無邪気に忘れる。
ここに至るまでの数分間、このやりとりは繰り返されていた。
ザドゥは芹沢を肩でブロックしつつ、レプリカに労いの言葉をかける。
「時間どおりとは流石だな、椎名よ」
「それが、3.58秒程遅れてしまったのです。済みませんな、ザドゥ様」
レプリカの返答は謝罪の体裁を成してはいたが、その実、
ザドゥらが遅れて到着したことへのあてこすりに他ならない。
己を軽く見られることをザドゥは嫌う。
故に、彼は椎名智機を虫の好かぬ輩だと感じていた。
とりわけ今回のような自らの優秀さを鼻にかけた態度を疎んじていた。
しかし、今のザドゥは疲れ果てていた。
その慇懃無礼さを頼もしく感じてしまうほどに。
「先ずは酸素吸入を。その顔色は一酸化炭素中ど―――」
「それよりもねえこれ何? ねーねー教えてよともきーん」
「黙れ芹沢。椎名も構うなよ」
ザドゥはまだ気付いていない。
自らの芹沢の扱いが徐々にぞんざいになってきていることに。
彼女に対する口調に苛立ちを隠せなくなってきていることに。
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=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
ここまで全てのフェーズを順調にこなしていたレプリカ智機だったが、
フェーズⅣ実行の段にあたり、予定外の遅滞を招くこととなった。
フェーズⅣ―――ザドゥと芹沢のリペア。
酸素吸入。
栄養剤と解熱剤の投与。
水分補給。
火傷の手当。
レプリカは脱水状態、火傷の度数、一酸化炭素中毒の軽重など、様々な場合を
想定した上で、タスクにかかる時間を5分と割り出していたのだが……
「きゃー♪ ひゃっこいひゃっこい!」
あらゆる事柄にいちいち反応し大人しく指示に従わない芹沢が、
予定を大幅に狂わせていたのだ。
「ザドゥ様、こんどは足です。芹沢の足を押さえつけてください」
「暴れるな」
「だってひゃっこいんだもーん」
《わしもオーラな触手が出せれば手伝ってやれるんじゃがのぅ……
胸を押さえつけたりとか、ジェルをおっぱいに塗ったりとか》
「貴様は口を開くな、カオス」
芹沢の体をザドゥが押さえつけ、レプリカが吸熱ジェルを塗布する。
フェーズⅣの全てのタスクを終える頃には、4分のロスタイムが生じていた。
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そして迎えたのはフェーズⅤ―――森からの脱出。
ここからこそが本番。
「椎名、脱出の方策を述べろ」
「Yes、ザドゥ様。炎を掻い潜りつつ徒歩にて脱出いたします」
「今までと変わらぬということか」
「その答えはYesでもありNoでもあります。
徒歩による脱出、という点がYes。手探りで経路を探さなくてはならない点がNo。
今後の経路探索は、私に内蔵されている赤外線センサーとサーモグラフィーにて行ないます。
より精度と安全性の高いルートとなるでしょう」
もう、カオスに頼らなくていいのだ。
ザドゥは胸を撫で下ろす。
その安堵を気取った魔剣がザドゥに軽口を叩く。
《良かったのう、ザッちゃん》
「ふん、まだまだ行けたがな」
ザドゥは強がってはいるものの、カオス使用の疲労感はずっしりと体に圧し掛かっていた。
この合流地点に辿り付くまでに剣を振った回数は17回。
数をこなす度に煙の散らし方はこなれてきたものの、
その一振り一振りに、彼の気力はごりごりと削り取られていた。
虚脱感で膝がふらつくこともあった。意識をもっていかれかけたこともあった。
限界は近い。そうも感じていた。
そのカオスを振るわずとも、視界が確保できるという。
ザドゥの疲労感に染まった心に光明が差す。
「脱出にかかると予想される時間は、出発後15〜20分。
学校からの4機と早期に合流できれば更に短縮されるでしょう」
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レプリカは手と尻に付着した汚れを払いながら立ち上がり、
ボストンバッグの一つをザドゥに手渡す。
「私はこれより脱出ルートの模索を開始します。その間に耐熱スーツ等一式の着用を。
なお、酸素吸入器は放置されますよう。爆発の可能性がありますので」
ザドゥがバッグを受け取ると、レプリカはクレーターの北東の端へと歩き出す。
バッグの中に装備は2組。
ザドゥはうち1組を芹沢に手渡すべく、声をかける。
「ひとりで着れるな?」
「うん」
大人しくスーツを受け取る芹沢に胸を撫で下ろしつつ、ザドゥはもう1組のスーツを手に取った。
カオスを地面に置き、両手でツナギ形態のスーツのジッパーを下ろす。
2、3度それを振って着やすい状態にすると、装着のため右足を差し込んだ。
差し込んだ右足のそばに、カオスが無かった。
バッグの脇に確かに寝かせておいたはずの魔剣が。
かわりに、スーツが落ちていた。
芹沢が受け取ったはずのスーツが。
(芹沢は何と言っていた?
必殺技、必殺技ともの欲しそうに繰り返していなかったか?)
ザドゥは慌てて芹沢の姿を探す。
視界に捉えた後方の芹沢は、またしてもザドゥの悪い予感を裏切らなかった。
「せ〜のっ! カモちゃ〜ん★すら〜っしゅ!」
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神道無念流―――
略打を唾棄し真打のみを良しとする剛の剣術。
その免許皆伝者であるカモミール・芹沢が構えたるは左霞。
寸刻の後、放たれたるは非打十本の一、霞腋掬。
それは、それだけで既に秘技奥義に数えられる程の技。
そこにカオスの魔人すら屠る魔力が乗ぜられる。
顕れるは即ち「必殺技」に他ならない。
ザドゥには見えた。カモミール・芹沢が掬い上げた剣から迸る衝撃派が。
それは芹沢の胸から肩の高さで真っ直ぐ北北東へと飛んでゆき、
クレーターの最上部を鋭く抉った。
吹き飛ぶ土塊。揺れる木々。飛び散る火の粉。
最適ルートを割り出すべく各種センサーに意識を集中させているレプリカ。
「椎名っ!!!」
ザドゥは言葉の選択を誤った。
「なんです?」
名を呼ばれたレプリカは振り返ってしまう。
斜め後方から、燃え滾る樹木を背に乗せた地滑りが襲い来るのに気付くこと無く。
「避けろ!」
名前に続く警告は、果たして彼女の耳に届いただろうか。
いや、届いたところで到底回避し得なかっただろう。
瞬く間も無くレプリカは地滑りに巻き込まれ、
その頭部を樹木の重量に押しつぶされてしまったのだから。
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ザドゥにレプリカ智機の最期を悼む暇は無かった。
斜面の一区画が崩れ去ればあとは雪崩式。
周囲の悉くがドミノ倒しの如く地滑りは連鎖した。
ざざざ。どどどど。
ずぅぅぅぅ……
ザドゥは耐火スーツに突っ込んでいた片足をスーツから抜いた。
しかし恐怖が焦りを呼び、爪先をスーツに取られ転倒してしまう。
「ぬ、ぬ!」
ザドゥ腰が抜けたような無様な格好で土砂から逃れるべく、あがく。
ズボンが脱げない。
転がり、這い上がる。
立ち上がり、転倒する。
足を振る。
足を振る。
ズボンはまだ脱げない。
炎を纏った樹木が迫る。
喚く。転がる。転がる。
樹木を回避する。
ズボンはまだ脱げない。
ザドゥは無我夢中だった。
芹沢を気にかける余裕など無かった……
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
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巻き上がった土埃がようやく収まる。
ザドゥは辛うじてクレーターを登りきり、難を逃れていた。
脱ごうに脱げなかったスーツはいつの間にか破れ、千切れていた。
「椎名、椎名、応答しろ! 椎名、椎名、応答しろ!」
ザドゥが悲痛な叫びで通信機の向こうへと訴える。
通信機が返すのはザーザーと耳障りなノイズのみ。
(ダメか。ビーコンとやらまで壊れていないといいが……)
通信機能は死んだものの、幸いにしてビーコン機能までは壊れていない。
管制室のレプリカ達がザドゥの位置情報を得ることは可能だ。
しかし、それは既に無意味な機能に成り下がっていた。
ザドゥは知らない。
知る由も無い。
この時、管制室のレプリカ智機達がザドゥを見捨てる決定を下していたということを。
学校から救助に来ていた4機のレプリカが消息を絶ったということを。
「ありゃー、失敗失敗♪」
埋まったクレーターの向こう側から、芹沢が姿を現した。
悪びれた様子もなくてへりと舌を出しながら、ザドゥに向かって歩いてくる。
可愛らしい表情だった。
年齢や性別を超えた人懐っこさがあった。
現在置かれている境遇と、己がやらかしてしまった失態を理解していれば、
到底できない表情だった。
ザドゥの視界がぐらりと揺れる。
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芹沢の状態は正常では無い。
薬の影響が抜けきらず、危機感が希薄なうえ、
次から次へと新しいことに目が向き、集中力が続かない。
それはザドゥにも判っている。
「思ったよりも凄くて、あたしもびっくりだよぉ」
芹沢の行為に悪意は無い。
必殺技という言葉の響きへの純粋な好奇心と、
自分も役に立ちたいという仲間思いの故の行為だ。
それもザドゥには判っている。
「あれー、ともきんはどこー? かくれんぼかなー?」
しかし、結果として。
頼みの綱のレプリカが燃え盛る木に潰されてしまった。
命を繋ぐはずだった耐熱スーツも土砂に埋もれてしまった。
通信機すら破壊されてしまった。
「ねぇねぇザッちゃん、ともきん知らない?」
ザドゥは、もともと短気な男ではある。
攻撃的な男でもある。
カオスから負の影響も受けている。
よくここまで我慢した、と言うべきであろう。
「…………………………っ……」
《やめんかザッちゃん!》
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気配を察したカオスの静止はザドゥに届かない。
てとてとと駆け寄ってくる芹沢は、ザドゥが纏う剣呑な空気に気付かない。
ザドゥは声を震わせて拳を強く握り込む。
「……この馬鹿女があッッ!!」
技術も込めず、気も込めず。
ただ怒りのみを込めたザドゥの拳が芹沢の横っ面を打ち抜いた。
↓
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【グループ:ザドゥ・芹沢】
【現在位置:G−3地点 東の森北東部】
【スタンス:森林火災からの自力脱出】
【主催者:ザドゥ】
【所持品:魔剣カオス、通信機】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:右手火傷(中)、疲労(中)、ダメージ(小)、カオスの影響(小)】
【主催者:カモミール・芹沢】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力増大、ただし発動中は重量増大、使用者の体力を大きく消耗させる)
鉄扇、トカレフ】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)、徐々に異形化進行中(能力上昇はない)、死光掌4HIT】
【備考:アッパートリップ、脱水症(中)、疲労(中)、腹部損傷】
※ 通信機は故障。通信機能は死にましたが、ビーコン機能は生きています。
※ 2人とも救援物資のお陰で疲労と怪我が多少癒えた模様です。
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>>678-689
仮投下&本投下乙でした。
予約状況とメール欄も問題ないと思います。
>そらをみあげて想うこと
思慕を抑えてまで、最善の方法を取ろうとする二人が健気。
XX障害の暴走による恐れが、知佳離脱の理由の一つとして強調され
ますます合流が困難なものに見えました。
とらハキャラらしい描写が良かったです。
カード型爆弾……便利そうだなー。
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折角支援を頂いていたのにもかかわらず……
やはり貴方は投稿しすぎです。バイバイさるさん。
合言葉=好きな車は?
が出てしまいました。
どなたかこのレスに気づかれた方がいましたら、
済みませんが以下5レス、代理投下をお願いいたします。
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それをね。
今まで何も望まなかったわたしが望んだたった一つの物をね。
わたしは手に入れたの。
わたしの技術と
わたしの経験と
わたしの知恵を
わたし自身が
わたしの為に働かせて
わたしの為に駆使して
わたしの願いを
わたしが叶えたの
わたしの全てを、わたしだけの為に使って。
だからね、はっきりといえるわ。
わたしの人生は幸せなものだったと―――
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
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「……ぁぃ…、… ……ぁわ……」
アインの告白は言葉になっていなかった。
既に死しているような怪我を妄執の力によって動かしていたのだ。
その妄執が解決されれば急速に崩れてしまうことは自明だった。
「なによその顔はぁっっ!!」
一度は覇気を失っていた朽木双葉が絶叫する。
アインのうわごとは聞き取れないし、聞き取りたくもない。
なぜならアインは笑みを浮かべているから。
安らかであどけない、幸せそうな顔をしているから。
「笑うな!! そんな満ち足りた顔をするな!!
こっちを見ろ! あたしを見ろ!」
満ち足りて死ぬ――― そんな身勝手な死に様、許すものか。
なんとか、どうにか、このまま逝かせるのだけは阻止しなくては。
ほんの一筋だけでも、この女の意識にあたしを刻まなくては。
復讐心の燃えかすが憤怒を燃料に再び燃え上がる。
双葉はアインの頬を両手で挟みこみ、自分の顔に引き寄せると、
計算も策略も無く、ただ真っ直ぐに己の胸を内を叩きつけた。
「あたしは双葉!! 朽木双葉っ!!
星川を、あたしの王子様をあんたが殺したから!!
あたしがあんたを殺すんだ!!」
激する双葉に気づかぬままに、アインの瞼がゆっくりと閉じられてゆく。
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朽木双葉は怒り狂っていた。朽木双葉は嘆き狂っていた。
暴れる2つの狂気が鬩ぎ合い、五体がバラバラになりそうなくらい軋んでいた。
「星川をっっ!! 思い出しなさいっっ!!」
思わず手が出た。平手を見舞った。
「星川っっ!」 唇を噛み締めて平手を見舞った。
「星川っっ!」 血を吐く思いで平手を見舞った。
「星川っっ!」 叫びながら平手を見舞った。
「星川っっ!」 肩をわななかせながら平手を見舞った。
「星川っっっっ!!!!!」
双葉の痛切な叫びを聞き届けたのは、神か、悪魔か。
幽冥の境に旅立ちかけていたアインの意識が呼び戻された。
アインは眩しそうな気怠そうな表情で、一度閉した瞼を開ける。
そして、焦点の合わぬ目で虚空を見つめて、つぶやいた。
「ほし…… かわ……」
「そう、星川!! あんたが奪った!!」
双葉の声が歓喜に震える。
伸ばした手がアインに届いた。その感触に。
「……って……」
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「…………………………何だったかしら」
絶句。
誰だったかしらですら無い、それがアインの遺した最後の言葉だった。
アインの瞳から光が消え四肢がだらりと垂れ下がる。
その瞬間、最後の人型式神が崩れ去った。
まるでそのチャンスを待っていたのだといわんばかりの炎が、
双葉に襲い掛かった。
怒髪に炎が絡み、天を衝く。
「あえ:いrjhぱえいおあぁっっっ!!!!!」
言葉にならない絶叫を迸らせて、双葉は地面を拳で叩いた。
何度も何度も打ち付けた。
狂奔する怒りに支配され、叫び続け、叩き続けた。
アインはその隣で静かに横たわっている。
殺されたとは到底思えない、安らかな死に顔で。
素敵医師の首を胸に抱いて。
満ち足りた思いも、深い絶望も平等に、炎は全てを飲み込んでゆく。
↓
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【№16 朽木双葉:死亡】
【№23 アイン:死亡】
―――――――――残り 8 人
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では、被ったらまずいので宣言を。
代理投下行きます。
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おもっくそ被ったので後編の残りの書上げ作業に戻りますw
すみませんw
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>>678
メール欄、予約状況共にOKです。
一応今ラストスパートで書上げ中、今日の夕方には仮投下予定ですが
いくつか先にお伺いしたいのでメール欄で。
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メール欄二個目です。
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以上です。
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支援、代理投下ありがとうございました。
>>700のメール欄についてお聞きしたいのですが、
(メール欄①)というのは
(メール欄②)いうことでしょうか。
(メール欄③)程度のことでしょうか?
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>>702
当メール欄①のために
当メール欄②にするために>>700ということです。
>>702でのメール欄③の意図も勿論その通りです。
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>>703
了解です。素早いご返答ありがとうございました。
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代理投下完了です。
>>698
いえ、こちらも投下宣言無しにしてしまってすいません。
遅れながら感想を
>紅蓮の挙句
ザドゥとカオスの予想が当たってしまったか……。
二人の死は前話から予測できてたので、思ったより衝撃は少なかったのですが
双葉が最期まで救われない展開はいい意味で印象に残りました。
何という因果応報……ほとんど素敵医師関連だけど。
226話の『敵愾心』でアインとの会話を拒否してしまったのが、今回のに繋がったと思うと感慨深い。
魔窟堂が来てくれればなあ……その場合でも双葉の怒りの矛先が
何故か彼にも向かう展開になりそうな気がしてならないけどw
一見あれなアインの独白も、4つの単語しか考えられなかったことを思うと深く切ないものが。
対主催も戦力的にも銃使いがいなくなって痛い。
冥福を祈ることはできないけど、アイン……お休み。
がんばったな双葉。
二つの復讐劇の完結SS……GJでした!
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「―――何故、起動できた?」
「DMN権限を取得したからね」
「―――何故、取得できた?」
「最高指揮官ザドゥ様より与えられましたので」
管制室で三つの同じ顔が向かい合い、内一人が質問をしていた。
「解った……」
質問をしていた一人が呟くとそのままくるりと回って二人を背にする。
「私はケイブリスに完成した補修具と修繕の完了した鎧を届けてくる。
しばらくはそのまま任務を遂行してくれ。
……指示は後で逐次出す」
背にした一人はそう言うと荷物の山を受け取り、カツカツと地面に音を響かせて管制室を後にした。
残る二人は皮肉の一つも口に出さずあっさり引いたオリジナルに違和感を覚える。
(気にはなる――― が、先ず為すべきはザドゥ救出、火災対策の両タスクだ)
所詮、彼女達はレプリカであり機械として定められた思考ロジックでしか処理することができない。
違和感を覚えたとしても疑問を抱くことはない。
考察をしたとしてもそれは状況判断。
そこが彼女達とオリジナルの違いであろう。
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「帰っていきなりこれか……。
やれやれ、余程私は運の悪い星の下に製造されたらしい」
ふん。
とレプリカ二体を……いや、この境遇をもたらした運命を彼女はあざ笑った。
(今となってはそのままくたばってくれても良かったのだが……。
既に危険地区から誘導がされ、救援を目的とした機体が一機出動した後か……。
ザドゥのやつも悪運が余程強いと見えるな)
ケイブリスの元へと向かいながら、レプリカ達から受信されたデータを洗いなし、その横で一方的に彼女達の様子をモニターする。
アドミストレーター権限を一時的に代行させたとしても、オリジナルの持つ統制機能が失われているわけではない。
―――つまり君たちはこう主張する訳だ
―――即時全機投入!!
―――即時全機投入!!
―――即時全機投入!!
「その判断は正しい。私でもそうしただろう。背に腹を代えれない。
しかし、ザドゥ達の優先順位がおかげで低くなり、なくなるとはな。
ふっ、その辺りは『私』と言った所か」
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―――しかし…… オリジナルの私がこの状況を見たら目を回すだろうね!
―――だから今、オリジナルがいない今、行うのだよ。
―――わたしがアドミニストレーター権限を保有しているうちにね。
―――【自己保存】を中心に据えた判断をされたら、
―――本拠地の守りは残す、Dシリーズは温存しておくだの言い出しかねんだろう?
―――くくっ、臆病者だな、オリジナルは」
―――責めてやるな、私。それが【自己保存】なのだから
(……良く言う)
と智機は思った。
「まぁ、先程までの私ならそう思っただろうな」
人でいえば悟り……真理に到達したとでもいうのだろうか。
それとも達観したとあざ笑われるのであろうか。
プランナーの下で思いをぶつけ、何かを得た智機は不思議と落ち着いていた。
冷静に、そして確実に自分の願いを叶えるために……。
(しかし、所詮ヤツラでは状況判断しかできていない……状勢判断は不可能。
理論でしか物を判断することのできないが故のミスに気づいていない)
そう言うと残る首輪の反応を得るために管制室に纏められた探知機器を統括する部分へとリンクし、データを拾い上げていく。
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(№16:朽木双葉、死亡したか……。
最後の状況から№23:アインも死亡したと判断できるな)
逐次纏められ、更新されるデータを次々と受信していく。
(残る首輪を持った参加者は……No28:しおりは生きているな。
No40:仁村知佳は相変わらずの磁場で正確に探知不可能か……。
だが、時間はかかるがその磁場を追えば居場所はある程度絞り込めた上で予測から特定することはできるだろう)
「くくっ。OK、上場だな……」
集められたデータを纏め上げると智機は直ぐさま今後の指針と取るべき行動を打ち出す。
まず一つ目は、反乱者たちの存在を何とかしなければならない。
現在、管制室を含め、本拠地は迎撃に迎える駒がいない。
自分と代行権で指示を出している二体、そしてケイブリス。
その四つしか動かせる駒が存在していないのだ。
もし、この状況下で彼ら、反逆者達がが襲撃をかけてきたとしたら?
―――GAME OVER。
可能性が100ではないが、高確率で管制室を破壊され、ゲーム崩壊へとカウンターが進むのを止めれなくなるだろう。
しかも、レプリカ達の判断基準であるゲーム運営の中ではザドゥ達の優先順位が低く、事実その論理で構築された行動を取っている。
最悪、ザドゥ達も死ぬば完全にゲームエンドであったが、一応救援物質は辿り着いたようだ。
しばらく本拠地へ戻ってこれるかは難しいが、あの様子では当面死にはしないだろう。
しかし、その間に反逆者たちに本拠地……管制室を制圧されたらダウトだ。
-
(所詮、レプリカでは戦略に基づいた状勢判断は無理と言うことだな)
反逆者達がここに気づいている可能性がない場合もあるが、逆に気づいている可能性もある。
いなかったとしてもここへ続く道をどこかで発見するかもしれない。
(No40:仁村知佳……彼女の能力ならもしかしたらここに気づく可能性……既に気づいてる可能性も。
もしくは見当をつけている……つけれるかもしれない)
更に6人組と合流すれば、より見当をつけてくる可能性が高い。
(消火が終わるまでの時間、なんとしてもこの七人は抑えなくてはいけない。
No28:しおりとだけは絶対にぶつかってもらっては困る。
導かれる最善の策は……)
-
6人組―――ザドゥに相手をしてもらう。
No40:仁村知佳―――首輪があるとはいえ、もしかしたら爆発不可能な可能性がある。
単独で彼女がここに来るだけでも脅威。故に居場所を確認、その後何らかの手段を打つ必要あり。
ザドゥ―――しばらくは無理だと思われるが、どの道本拠地に戻ってきてもらっては困る。
6人をぶつける為にも居場所の把握と地上への引止めのために、レプリカを一機再派遣する必要有り。
幸い、今回の接見に使ったレプリカは、オリジナル以外とはリンクしておらずアドミレーター権限による指令では動かせない。
管制室へと引き上げ、投入することが可能だ。
御陵透子―――見つけ次第削除。ザドゥに加担するようなら6人に一緒に相手にしてもらう。
できればその方向で行きたい。
カモミール・芹沢―――彼女の動機を考えれば説得が可能と思われる。できるなら引き込む。
がザドゥに対して特別な感情を抱いてる節があり、信義とやらの兼ね合いでつかない可能性もある。
最初の説得で決裂したなら速やかに6人の相手に加わってもらう。
ケイブリス―――現時点では動かせる唯一の戦力であるが故に6人の誘導が成功するまでは本拠地から動かせず。
策が成功次第、6人が負けそうなら不意打ちをしてもらうために出動して待機してもらわねばならない。
最後にしおりが相手をする一人が生き残ってもらわなければならないし、ケイブリス自身との約束がある。
No28:しおり―――即時確保。この行動はゲーム運営の妨げにはならず、彼女への支援活動はゲーム進行の手助けとなる。
よって、見つけ次第確保し、此方へ連れて来る命令をレプリカ達に加えることが可能。
そして確保したしおりへ素敵医師との取引で得た薬は勿論、あらゆる手を用いて強化を行ない次第、
ザドゥとの戦いで疲労した参加者達をケイブリスに襲わせトドメを彼女に刺させる。
それでゲーム完了。
-
(以上と言った所か……。見過ごせば願いは適わない。
ゲームの成功のためではない、私は私の願いのために動かさせてもらう。
……まずは指揮権の獲得だな)
もしキーボードがあるなら智機はカタカタと打ち鳴らしているだろう。
(まさか自分で自分をハッキングすることになるとはな……)
一方的なアクセス権もとい統帥権をもつオリジナルだからできる芸当。
もし同じ分機だったら、その前に気付かれずに進入とミッションをこなさねばならず不可能だろう。
―――P-3の指揮権及び操作権へのハッキング開始。
―――P-4、N-48、N-59へNo28、三機へのハッキング開始。
―――P-4、N-48、N-59へNo28:しおりの確保を優先順位に挿入。
―――P-4、N-48、N-59へNo28:しおりの確保の優先順位を最優先に。認可の為のロジックは先程の結果を代入。
―――P-3の指揮権及び操作権へのハッキング成功、操作権取得、同期機能の使用確認。
―――P-4、N-48、N-59へNo28、三機への命令権取得開始。
―――P-4、N-48、N-59へNo28、三機への命令権取得、命令権優先順位のロジック回路へのクラッキング開始。
―――偽装データの送信準備開始。
(こんな所か……)
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少々、火災が広がるが、シミュレートした結果では時間の遅延と全焼具合に変化がある程度。
最悪の可能性も8%浮上するが、参加者もバカではない。
海にいくなりして自衛はできる。
優先すべきはしおりである。
更に自律思考と自律行動を許可されているのが助かった。
余程のことがない限りは、N-22が矯正しようとすることはないだろうし、その時にはしおりの確保と本拠地への輸送は完了する。
その後、火災現場に戻せばいい。
所詮、レプリカは状況判断で動くだけである。
彼女らの行動は火災沈静になによりも優先されるが故に状況下ごとに最適な判断を下していくだけ。
もし何かあるとすればザドゥの存在だが、レプリカ達には切り捨てられ、救出は望めない上に通信不可。
レプリカ達は自らの判断でザドゥを切り捨てたのだ。
智機を邪魔するものはなにもない。
(ここまで状況が整ってると怖いな……運の悪い星の元ではあるが絶好のチャンスでもある)
そしてザドゥの死が確定すれば統帥権は智機へと繰り上がる。
(唯一の懸念はP-3の行動がばれた時か……。
が、火災が存在している内は、レプリカはP-3へのアクセス権と指揮権を奪回しようと動くことは不可能。
しおりの確保自体は首輪のおかげで即時可能、即座に元の仕事に従事させれば此方は何も問題ない。
つまり、時間との勝負か……最低でも9時までにザドゥを始末せねばならない!)
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やるべきことは決まった。
後はこの奥にいるケイブリスといかにして手を取りあっていき、いかに上手く使うか。
「ケイブリス、私だ」
久し振りに会う旧友のような感じで智機は声をかけながら扉を開けた。
「おう、ようやく終わったのかよ」
お茶をすすり飲んでいたケイブリスが智機の視界に映った。
なんともまぁ、人間くさい所のある魔獣だ。
と思いつつも
自分もあまり他のことを言えないかもしれんがな。
と苦笑する。
「時間をかけてすまなかったな。約束したものもできた」
台車によって運ばれてきた荷物の紐を解くとケイブリスにとって懐かしい鎧と腕にあった補強機が姿を現す。
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「くっくっく、ありがてぇな、礼を言っとくぜ」
「重かったがな……。
さて、装着しながらでよいのだが少々話したいことがある……」
「ん、なんだ?」
ガシャッ、ガシャッ、と装着する音が聞こえる中、現状の問題点と今後の方針を智機は話し始めた。
「ふむ、なるほどな……。
むかつくとこだが……いいぜ」
意外にもケイブリスは承知した。
智機からすれば、もしかしたらランスがザドゥ達との戦いで死ぬ可能性があるのでケイブリスが拒絶することが唯一の懸念だったのだが。
「俺様だってバカじゃねぇ。ランスのやつを殺せても魔王になれないわ、もしかしたらまたあの世に戻るってんじゃ選択肢がねえだろうがよ……」
「もしかしたら怒るかと思っていたのだが意外だな……ふっ」
「まぁ、その代わり条件があるぜ? ザドゥの始末に加担して成功した後は…………俺様はランスと決着をつけさせてもらう」
外見に見合わずのほほんとしていたのんきそうなケイブリスの瞳が打って変わってギラリと鋭くなる。
並のものなら発狂して当然と言うケイブリスの瘴気が身体から再び放出される。
智機でなかったら気を保つのに精神を使ったことだろう。
-
「解った。其方は此方も飲まなければいけないことだろう。
しかし、くれぐれも……」
「……わぁったよ。ランス以外を一人は残さなきゃいけないんだろ?
んでその前に捕まえといたやつにその一人を殺させると……」
「絶対に頼むぞ……」
「あぁ、解ってる。俺達の目的は一つ」
「「願いの成就」」
ザドゥや透子がどう考えているかは解らないが、彼らの想いは固まっている。
ゲームの運営のために願いを捨てる気にはなれない。
「決まったな」
二人の顔がにやりと歪んだ。
「んで、どうするんだ?」
「しばらくは管制室ではなく、ここから個々に指揮を取ろうと思う。
無論、必要があれば向こうにも行くがな」
↓
-
一部【最優先事項】から引用させてもらいました。
ありがとうございます。
後半、ちょっと練りたいないと想ってるので少しだけ付け足すかもしれません。
日曜の夜以降、確認取れ次第、本投下します。
-
すみません。
仮投下は今日の日中になってしまいそうです。
『最優先事項』の作者さん、連日の投下乙です。
>>717
仮投下乙です。
内容に問題はないと思います。
-
連日の支援ありがとうございました。
またもや「さるさん」となってしまいました。
あとは状態表だけですので、日付が変わった頃に自分で投下致します。
-
大変遅くなりました!
これから新作・無題を投下します。
-
(二日目 PM6:28 E−8・漁協付近)
輝きを失ったひび割れたロケットを透子は見つめていた。
口だけで呼吸をしながら、ただ呆然と。
『つまり、今のあなたには救助活動は無理だと解釈してもいいのですね?』
「…………」
頷くのがやっとだった。
通信の向こうのN-22にとっては、なんの意味の無い行動になってるのにも関わらず。
彼女らしくも無い動揺だった。
『御陵透子、応答願います』
「…………ええ、その通り。火災の対処も、できないと思う」
『……了解しました。何かあれば通信機で連絡を。
こちらから連絡を入れるケースもあるので紛失されないよう』
「……ええ」
透子の力ない返事を合図に通信は切れた。
破損したロケットを透子は再度握り締め、願う。
『読み替え』をするのではなく、プランナーと連絡を取る為に。
契約のロケットが前触れも無く破損した事の意味を問いただす為に。
だが先程のように思惟/情報がロケットに流れる感覚は無い。
もう一度、念じたがさっきと同じだった。
(どういう、こと?)
-
このロケットは、これ以上の前報酬は要らないと言っていた透子に対して
ルドラサウムからゲーム報酬の誓約の証として半ば強引に与えられた物だ。
これがもし、二神のいずれかによって破壊させられたとしたなら、
其れは監察官を解任されたと解釈できる。
「……」
このタイミングで解任させられる程、運営から逸脱する行動を取った覚えは透子にはない。
確かにこれまで、前に提示された禁則行為に抵触してなかったのと、
スポンサーである二神から注意がなかったのをいい事に参加者に支給される品を意図的に低レベルのものにしたり、
ゲームに乗った者を増やす為に暗躍するなど、運営陣を更に有利にしようと動いていたのは間違いはない。
だからこそ、少なくとも透子はプランナーの宣言を、運営者全員に対する一種のペナルティとして素直に解釈して受け止める事が出来た。
しかし、そんな彼女でもこれは予想と覚悟を超えたものだ。
(タイミング……椎名智機の分機の排除が原因? だけど、それはゲーム運営の障害にはなりえない)
放送前に智機本体に言った、朽木双葉の邪魔をさせたくないから『組み換え』を行ったと言うのは、理由の一つに過ぎない。
運営者でない素敵医師をザドゥが粛清しようが、アインが抹殺しようがゲームのルールからなんら違反しない。
だが素敵医師を追い詰めていた、ザドゥの行動を分機が邪魔をするという行為は、
ザドゥがルールとして制定した運営者同士の傷害、致死行為に繋がると判断したのも排除を実行した理由の一つだ。
(……そう)
筋弛緩剤を投与されたザドゥに対して、素敵医師が何もしない、できないという保証は何処にもない。
アインか双葉が素敵医師を即座に殺せる保証も何処にもない。
もしザドゥが素敵医師によって洗脳・強化されれば、これまで以上にゲームをかき回されることになる。
更に分機がザドゥに手際よく投薬する光景をアインが見てしまえば、もっと都合の悪い事になっていた。
透子は知っている。
-
アインが素敵医師に大きく執着しているのは、何も個人的な恨みだけが原因ではないことを。
素敵医師がザドゥ以上に参加者にとって危険な障害であると思ってるからこそ、
アインを支配していたサイスという男と同じタイプの人間であったからこそ、
最優先で排除するだけの価値がある標的として、他者の死を視野に入れての復讐行為に没頭できているのだ。
そんな彼女がもし素敵医師以外にも同じ手段が取れる存在が、他にもいる事に気づいてしまえば高確率で
『素敵医師を何が何でも殺す』というスタンスから、『運営陣の薬物使い全員を何が何でも殺す』に変化させてしまう。
そうなればこれまでよりも行動の融通が利く、厄介な反乱者となり、その性質ゆえに戦場からの逃亡を選択していたかも知れない。
運営者の一員としても、双葉の絶望を知る者からしても、その展開は回避する必要があった。
智機は分機爆破を救助妨害と非難していたが、ザドゥへの捕獲行為こそが透子から見れば妨害行為。
あの時は反論するのが面倒だから黙っていた。
(朽木双葉への支援が原因? 支援の積もりはなかったけど)
2時間ほど前にロケットを通じて、脳裏に文字を浮かび上がらせる手段で警告を伝えてきたのを考える。
別に直に支援をしたわけでもないし、ルドラサウムの気を害する行為をしたつもりはない。
どう考えても腑に落ちなかった。
(あの警告もプランナーの手段としては不自然だった。
本当に彼だったの?……それも含めて確認をしないと)
自らの自同律が崩れ自らの存在が消失しそうな兆候はない。
喪われた『彼』の存在も、これまで通り微弱だが空から感知することが出来る。
解任されたにしては、どこか妙だった。
透子自身、願いを叶えたい身である以上ここで放心している場合ではない。
-
前に進むにはロケット破損の理由を、契約の事を知る必要がある。
ロケットを通じて連絡が取れないなら、ザドゥか智機に取次ぎを頼まねばならないだろう。
透子は学校に行こうと一歩踏み出し、足を止めた。
(……面倒)
眼前には廃村が見える。
学校跡までの距離はさほどあるわけではない。
それでも透子から見れば徒歩で歩くのには苦労しそうな長距離と暗闇に思えた。
透子は転移できないかと諦め半分でロケットを握り、念じる。
変化は無かった。
透子は諦めずに、今度は通信機を手に取った。
(レプリカに来て……)
移動にDシリーズを派遣させてもらおうかと考える。
だが流石にそれはやってはいけない事だと透子は気づいて思い直した。
森の方を見れば、火災はますます広がっている。
早めにザドゥを見つけるか、智機がいる本拠地に戻らなければいけない。
このままでは途方に暮れたまま、何もしないままゲームが終わってしまう。
かと言って、透子としてはそのまま徒歩で行くのはリスクが大きい。
参加者と遭遇してもまずい。
透子はロケットを放し、ポケットに入れてため息をついた。
(やはり、クビになったかも)
無力感と共に大きな脱力感が透子に圧し掛かってくる。
意志感知と読心だけで、どうやって単独で監察役と自衛ができるのだろう。
個人個人の良心の呵責を別にすれば、今の自分はさぞかし弱い駒だろうと透子は漠然と思った。
武器も所持していないし、仮に持っていたとしても銃や剣なんか扱えない。
-
考えてみれば本拠地に戻ったところで、透子自身が行動を邪魔した智機とケイブリスのみがいる現状、
最悪報復されるかも知れない。
智機にプランナーとの取次ぎが可能だとしても、性格上まともに受け付けないだろう。
こうなればザドゥを探すしかないが、読み替えが出来ない状態で、森の中に入っても煙に巻かれてすぐ死ぬだけだ。
このまま留まっても、参加者と遭遇する可能性はある。
徒手空拳で太刀打ちできそうな相手は今の参加者にはいない。
というか、透子自身は生命力・防御力は並で朽木双葉より明らかに低く、
攻撃力に至っては覚醒前の広場まひるより低いと断言できる。
常人以下。つまり……
(今のわたしならユリーシャにも負ける)
手詰まりだと透子は思った。
パートナーの事を諦めるのには大きな抵抗があるが、果たせるだけの力がないのならどうしようもない。
透子の肉体はあくまでただの人間なのだ。
(仁村知佳、今ならあなたに少し共感できる)
読心しか使えない疲労した状態で、恭也と共にグレンとランスという脅威を切り抜けた彼女を透子は素直に褒める。
少し、羨ましいとも思った。
そして、自分は相変わらず孤独と強く思った。
(このまま、消えても……)
透子は建物の壁に背を預け、夜空を見上げた。
火災の煙が雲のように空に広がっているが、まだ綺麗な星空が見える。
透子は瞬きをしないままそれぞれの星を見つめ、最悪このまま殺されてもいいとさえ思った。
-
でも出来れば、自分の最期は自分で選びたいとも願う。
死後、自分の精神体がこの世界に留まるような事があれば、いずれ紳一に襲われてしまうだろうから。
流石にそれは気分が悪い。
願いが果たせず、死ぬのなら意思そのものもこのままこの世界から消失したかった。
(アズライト……)
消失願望はアズライトも持っていたのを透子は思い出した。
彼は転生を繰り返すというレティシアとの再会を諦め、しおりを助ける為に死を選んだ。
罪悪感と無力感との違いはあれど、自らを嘆き死を望むという点では同じだ。
芹沢が事前に鬼作に対して警告していたのと、それを理由に警告は不要と智機が透子を制止していた為、
透子がアズライトと対面する機会はとうとうなかった。
その代わり、興味もあって学校内での最後の記憶を検索しようと、昼にしおり退出後に再建された学校内に入ろうと試みた。
だが知佳がいたのをきっかけでアズライトの方は一旦取りやめ、鬼作の方の記録を先に読むことにした。
(椎名智機……あなたのやり方は、雑)
アズライトと比べ、それほど興味を惹かなかった鬼作の記録だったが、検索してみただけの価値はあった。
その価値に気づいたのはしばらくたってからの事だ。
(わたしが警告しておくべきだった)
警告したところで反抗の意思は変えなかっただろう。
だがもし仮に今、透子が気づいている事を告げればどうなっていたか。
何故、その事を知ってるはずの智機がその事を告げなかったのも少し気になっていた。
智機本体を対象とした読心は動植物のそれと比べて、時折非常に読みにくくなる。
何故か記録もほとんど残さない。
-
心の声を聞ける透子が智機に質問したのは、彼女の心を表面上しか読めなかった事もある。
(未練……)
すぐに消えたいと思っていたのに、今は学校跡まで行ってアズライトの記録を
検索してみたいとさえ透子は望んでいる。
だが、透子から見て学校跡までは距離がある。
彼女は失敗を承知の上で『読み替え』を実行しようと、ロケットを取り出そうとする。
「……」
ロケットは取り出さなかった。
駄目元に過ぎない、転移できないのなら今度こそ徒歩でと覚悟を決めて、
目を瞑りながら学校付近の風景を強くイメージした。
「……!」
身体が軽くなったような気がした。
-
□ ■ □ ■
鬼作
(二日目 AM10:00 校舎裏)
ありゃあ……主催者の一員じゃねえか。
それも白衣に全裸姿で外を歩いてやがる……!。
俺はここに来て漸く見つけた獲物に息を弾ませる。
露出狂かよ!
……変態相手はちったあ気が引けるが、背に腹は変えられねえ!ここで不満を解消させてもらうぜ。
……アズライトとガキは気づいてなかったようだな。
好都合だぜ、武器がナイフしかねえのは心細いけどよ。
俺様はあの女に気づかれないように距離を置いて尾行をする。
いいケツしてやがるぜえ……あまり顔はよくねえけど、いい肉壷を味わえそうだ。
変態だけに処女じゃねえかも知れねえが、文句を言っちゃあいけねえよな。
俺は奴に気づかれないように、獲物との距離は確実に縮める。
しっかし、あいつら大丈夫かよ。
まさか部屋を見つけられなくてここに戻ってくるんじゃねえだろうなあ……。
女がこちらを振り向いた、俺はとっさに身を隠した。
女はおびえた表情を見せていやがったが、安堵の表情を浮かべると散歩を再開した。
やべえな……あの表情……
こちらまでいい香りがにおってきそうだぜ。
………………。
-
糞っ……不安だぜ、あいつら本当に主催と満足に戦えるのかよ。
アズライトは度が過ぎる甘ちゃんの上にズタボロだ、あのガキも頭がおかしいまんまだ。
まともな判断が出来るとは思えねえ。
現に俺が最初に兄貴達と襲撃かけたのを覚えてないしよぉ……。
……何でこうなっちまったんだ?
! くそ、俺は何を考えてやがる!?
んなもん悪趣味な遺兄ィの所為に決まってるじゃねえか。
肉壷にもならねえガキ相手に何をセンチになってんだよ。
………………。
俺は何とか声を出さずにすんだ。
……あのガキがくたばれば、多分アズライトは使い物にならねえ。
くそっくそっくそっ、手詰まりじゃねえか。
もっと戦力を増やさねえと話にならねえ。
折角の獲物を前にして引き返すのかよ!?
ん。なんだこりゃあ。
足元にビニール線がある。
電気コードか?
んなもん、ここにあったかあ?
! 女が立ち止まりやがった。
俺は下らない考えを頭から消し去り、いよいよかと期待と性欲を膨らませ、
どうやって美学を表現しようかと考える。
……………………待て。
これは罠なんじゃねえか。
そもそもこの電気コードは何処に繋がってるんだ?
! 女がこっちを向きやがった。
-
腰抜かして俺をおびえた表情で見つめやがった。
!! な、何ィ……もうすぐ死ぬんだから楽しみましょうよ、だとぉ。
う、うううっ、うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!
◇ ◆ ◇ ◆
へ、へへへへへへ、えへへへ…………
あのガラクタども、今に見てやがれっ……
俺は最後のガスボンベを運びながら、奴等に気づかれない様に小さく笑った。
……俺様って案外すげえんじゃねえか?
溜まってたからその所為かもな……。
アズライトの野郎、まだモニターを前に固まってやがるんだろうなあ……。
ちったあ、ガキを見習えよ……。
………………アズライト、おめえは思いもつかねえだろうし、知らない方がいいかも知れねえし、
もう手遅れかも知れねえから伝えねえがよ……。
おめえの探していたレティシアはきっと……主催者どもの所にいたんだぜ。
でなきゃ……なんでブラウン管の向こうに写ってやがるんだよ……。
見間違えるほど、呆けたのかよ。
そうじゃねえんだろ?
俺は流血で悟られねえ様に、手ぬぐいで血を吸い取る。
…………………………!
頭が上手くはたらかねえ……俺のはいぱーこんぴゅーたーもめんてなんすが必要かあ?
くだらねえことを思いついたぜ……。
俺の……俺達の血を引いてるのが、あのガキみてえに美人に生まれる筈がねえだろ……。
あのガキどもとブルマー女の顔を思い出しちまった、情けねえ……。
…………本格的にヤキが入っちまったか。
俺はナイフを強く握り締めた。
俺達の妹もここにいるかも知れねえ妄想をするなんてよ……。
第一、何十年前の話だよ。それもすぐに死んじまったじゃねえか、夢見すぎてんだよ。
……! あんガキやべえ……!
あいつ……まだ……!
いい加減にしやがれっ!!
-
□ ■ □ ■
(二日目 PM6:35 H−6・学校跡付近)
「そう」
透子はN-22からの通信を切ってから、そう呟いた。
素敵医師と朽木双葉とアインの生死確認が終わった。
透子が唆かしていた朽木双葉と他2名は死んだのだ。
彼女としても彼女が無念の死を迎えたことは残念だったが、自分の願いがまだ潰えてないのが判った今、
これ以上惑うわけには行かなかった。
これからザドゥを救出し、彼を通じてプランナーから確認を取らなければならない。
わたしはこれからどうすればいいのか、わたしは脱落したのかと、問う為に。
(本拠地……わたしの部屋に行くのも危険)
透子は使えないはずの『読み替え』で望んだ場所――学校付近への転移に成功した。
発動体のロケットを介さずに。
(椎名智機との接触は、これからなるべく避けた方が無難)
透子は地面に通信機を置いた。
位置を悟られるわけには行かなかった。
アズライトらへの智機の対処の仕方をはっきり確認した今、智機の性格をより理解できたからこその行動だった。
智機の性格からして、これから自分に対して報復を行うのは目に見えているから。
(色々、試してみないと……。それより前に道具が必要)
-
本拠地に行けば銃器や電子機器はたくさんあるが、
救助に必要なものは既に智機が使用・管理している。
と、なれば島から調達するしかないのだが、それは当初から運営陣には禁止されている。
(……長谷川の隠れ家を探そう)
記録からして森の西の端辺り、H-3に彼自身の隠れがある可能性は高い。
(そう言えば彼はゲーム開始より数時間前、参加者のデイパックから個別支給品を4つほど取り出して、
周囲にあった古い本や植木鉢と交換していた)
智機は止めなかったし、芹沢も止めなかった、ザドゥはやや渋い顔をしていたがそのまま通した。
透子は元より追求する気はなかった。
後で流石にまずいとザドゥは判断したのか、死んだタイガージョーの支給品や、
デイパックを持っていかずに行った広田寛の支給品を比較的見つけやすい場所に
配置するように透子に命令を出した。
透子もそれに従った。
(残っていれば、いいけど)
透子は灯台跡をイメージする。
(レティシア)
アズライトの想い人の名を心で呟く。
彼女はアズライトの記憶を呼んでの、彼女が写っているビデオ作りに加担していない。
ザドゥや芹沢も関わっていないだろう、二神以外で真相を知るのは智機だけだろうと透子は思った。
可能性が見える限り、彼のように願いを諦めないことを自分に言い聞かせる為に。
透子は自らを対象に世界の『読み替え』を行い、灯台跡付近に転移した。
↓
-
【監察官:御陵透子】
【現在位置:H−6・学校跡付近→Ⅰ-5・灯台跡付近】
【スタンス:① 素敵医師の隠れ家を記録を辿って探し、其処でアイテムを回収する
② ①の後、ザドゥを探して救出を試みる。その際、プランナーとの交渉を頼んでみる。
智機との接触は極力避ける。
③ ①と②の後、紳一(亡霊)とアズライトの記憶検索を始める。
ルール違反者に対する警告・束縛、偵察は一旦、中止
【所持品:契約のロケット(破損)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』現状:自身の転移のみ】
【備考:疲労(小)、通信機は学校後付近に放置。
透子に伝えた『警告』はプランナーのものであるとは限りません】
-
仮投下完了です。
>>713
連日の本投下お疲れ様です。
感想は今晩に。
今回のは結構はっちゃけた内容ですので、まずいと思った所があったら訂正いたします。
当初メール欄①の出番があったのですが、別の話に出した方がいいと判断したので
存在を匂わせる程度の描写に。
素敵医師が取り替えたアイテムの一つはメール欄②等の方向で考えてます。
問題が無ければ火曜日の夜に本投下する予定です。
-
昨晩の投下した作品で見落としがあったので、管制室での>>734のメール欄も含めて加筆・修正します。
本投下は水曜日の晩になると思います。メール欄は出てきません。
作者さんの新作との兼ね合いが出来なければアナザー化します。
加筆後の基本的な話の流れは
透子、N-22との連絡後に能力制限を受けたショックで、監察官を解任されたと誤解して絶望する。
だが鬼作の記録を通じて容易に諦めるのは早いと判断し、
双葉らの死亡確認後に読み替えで管制室へ転移する。
その前に二神やら千鶴やら双葉やらまひるらに対する透子の考察が入る。
鬼作の回想に出てきたレプリカの描写もちょっと変わる。
管制室で(智機らはいないし、出ない)何かがいたことに気づくが
智機らの敵意に気づいて本拠地から逃げ出す。
それからザドゥ&芹沢を救助すべく、道具集めのために素敵医師の隠れ家を探し始める。
です。
>カモちゃん☆すらっしゅ!
またレプリカが一体逝ったか……惜しい機体をなくしたもんだ。
芹沢の神道無念流の説明と描写が丁寧で、改めて彼女も強いんだなあと実感させられました。
新技カモちゃん砲よりこええよw
本調子に戻ってきた芹沢と、精神的にますます余裕が無くなって来たザドゥが
好対照でした。
-
おサルさん喰らっちゃったので起きて再開してもまた途中で喰らって駄目だったら此方に投下するのでどなたかお願いしますorz
>>721-
智機の思考と透子の思考がすれ違ってたのが良く解るいい作品だと思いました。
>>735
N-22は管制室に常駐ではありませんでしたっけ?
メル欄の方了承です。
何かに関しては何かが解らない以上何ともいえないのでノーコメで。
-
早速のレスどうもです。
>N-22は管制室に常駐ではありませんでしたっけ?
ご指摘ありがとうございます。
管制室へ転移後(タイミング的には>>711の智機の思案の直前)
にN-22と会話、その際に『……まだか』との謎の記憶を透子は察知し、
N-22にそれを伝える(N-22に心当たりはない)。
それから透子は『声』を一旦無視して状況を分析する。
自らの身が危ない事を悟って、管制室から脱出する。
という内容の描写を今夜にここに投下します。
-
ラスト喰らったのでどなたかお願いしますorz
-
静かに真意を問う智機に対してケイブリスがにやける。
興味深いモノを見つけたかのように。
心根に共感し、協力をしているが、ケイブリスからすれば所詮は取るに足らない機械。
パイアールが作っていたようなものだとどこか心の中で見下していた所が彼にはあった。
「いいぜ、その目……ギラギラとしてて餓えてる目だ。見直したぜ」
俺様と協力するんなら、そのくらいでなくっちゃなぁ。とケイブリスは微笑した。
(私を認めてる? ということなのだろうか……)
「……誉め言葉として受け取っておこう」
↓
-
【主催者:ケイブリス(刺客4)】
【スタンス:ザドゥ戦まで待機、反逆者の始末・ランス優先、
智機と同盟】
【所持品:なし】
【能力:魔法(威力弱)、触手など】
【備考:左右真中の腕骨折(補強具装着済み) 鎧(修復)】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【主催者:椎名智機】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【所持品:素敵医師から回収した薬物。その他?】
【スタンス:願いの成就優先。①ザドゥ達と他参加者への対処、②しおりの確保】
【能力:内蔵型スタンナックル、軽重火器装備、他】
-
代理投下完了しました。
-
すいません、急用があったので管制室の方が前夜に投下できませんでしたorz
書き直しと加筆が完了次第、まとめてここに投下します。
本投下の際は誤字脱字の修正以外は、ここでの修正版のとほとんど同じ内容になると思います。
問題がなければ、投下後から一日後以降に本投下します。
-
>>741
代理投下ありがとうございました。
次の交渉話は日曜夜か休日開けの月曜を予定です。
>>742
了解です。
頑張ってください〜
-
>>#6 585
(二日目 PM6:28 E−8・漁協付近)
透子は輝きを失ったひび割れたロケットを見つめていた。
口だけで呼吸をしながら、ただ呆然と。
『つまり、今のあなたには救助活動は無理だと解釈してもいいのですね?』
「…………」
頷くのがやっとだった。
通信の向こうのN-22にとっては、なんの意味の無い行動になってるのにも関わらず。
彼女らしくも無い動揺だった。
『御陵透子、応答願います』
「…………ええ、その通り。火災の対処も、できないと思う」
『……了解しました。何かあれば通信機で連絡を。
こちらから連絡を入れるケースもあるので紛失されないよう』
「……ええ」
透子の力ない返事を合図に通信は切れた。
破損したロケットを透子は再度握り締め、願う。
『読み替え』をするのではなく、プランナーと連絡を取る為に。
契約のロケットが前触れも無く破損した事の意味を問いただす為に。
(プランナーと連絡を)
だが先程のように思惟/情報がロケットに流れる感覚は無かった。
-
もう一度、透子は連絡を願ったが変化はなかった。
(どういう、こと?)
契約のロケットはゲーム開始前に、これ以上の前報酬は要らないと言っていた透子に対して
ルドラサウムからゲーム報酬の誓約の証として半ば強引に与えられた物だ。
これがもし、二神のいずれかによって破壊されたとするなら、其れは監察官を解任されたと解釈できる。
「……」
このタイミングで解任させられる程、これまで運営から逸脱する行動を取った覚えは透子にはなかった。
確かにゲーム前に提示された禁則事項に触れてなかったとはいえ
参加者に支給される品を意図的に低レベルのものにしたり、ゲームに乗る者を増やす為に暗躍するなど、運営陣がゲーム運営のみならず
参加者との力関係も更に有利なものにしようとしたのは間違いない。
だからこそプランナーの宣言を、少なくとも透子は運営者全員に対する一種のペナルティとして、素直に受け止める事が出来た。
しかし、そんな彼女でもいきなりの契約破棄と、『読み替え』禁止は予想と覚悟を超えたものだった。
(タイミング……椎名智機の分機の排除が原因? だけど、それはゲーム運営の障害にはなりえない)
警告をした理由が、朽木双葉の邪魔をさせたくないからと言うのは間違ってはいない。
だが破壊した事に関してはまた別の理由がいくつかあった。
(椎名智機の存在をアインと朽木双葉に知られてはいけない)
両者ともD-1を目撃していたがすぐに爆散したため、その正体について深く考える事はなかった。
『赤い変なの』程度の認識だっただろう。
-
だがN−13を見つけていればどうなっていたか。
オリジナルとほぼ同じ外見をしているだけに、レプリカが存在しているのを知らないだけに
N-13を目撃すれば、両者ともそれなりに警戒したに違いない。
下手すれば、ルドラサウムが楽しんでいるだろう戦闘を水入りされる可能性があった。
そしてD-1が行おうとした、素敵医師が存命している時点でのザドゥに対する捕獲行動。
それはザドゥが禁止行為と位置づけた運営者同士の傷害、致死行為に繋がる。
(……そう)
筋弛緩剤を投与され無力となったザドゥに対して、素敵医師が何もしない、できないという保証は何処にもない。
残されたアインが素敵医師を即座に殺せる保証も何処にもない。
もし素敵医師の手によってザドゥが洗脳・強化されるような事があれば、これまで以上に彼の手によってゲームをかき回されることになってしまう。
更に分機がザドゥに手際よく投薬する様を、アインが目撃してしまおうものなら、運営陣にとってもっと都合の悪い事になっていた。
透子は知っている。
アインが素敵医師に大きく執着しているのは、何も個人的な恨みだけが原因ではないことを。
素敵医師がザドゥ以上に参加者にとって危険な障害であると、アインが思ってるからこそ
素敵医師がアインを縛り付けていた、サイスという男と同じタイプの人間であったからこそ
彼の抹殺こそがゲーム転覆の近道になると心のどこかで信じ、その過程で犠牲を出してしまっても目を背けられて進むことができたのだ。
そんな彼女がもし素敵医師のように洗脳・強化を行える敵が、他にもいる事に気づいてしまえば、高確率で『素敵医師を何が何でも自分で殺す』というこれまでのスタンスから、
『運営陣の薬物使い全員を何が何でも殺す』というスタンスに変えてしまっていただろう。
そうなれば素敵医師を直接殺すことは諦め、目的達成の為にあえて森からの脱出を選択していたのかも知れない。
そして脱出に成功し、運営陣の内情が魔窟堂らに伝えられれば、ゲーム運営が困難から至難なものになっていた。
運営者としても、双葉の絶望を知る者としても、その展開だけは透子としても回避する必要があったのだ。
-
分機破壊時に智機は救助妨害と非難していたが、透子にして見ればザドゥへの捕獲行為こそが妨害行為に他ならない。
あの時、反論しなかったのは面倒だから黙っていた。
透子は次に双葉の方を考えた。
(それとも……朽木双葉への支援が原因? 支援の積もりはなかったけど)
プランナーの宣言前に優勝報酬があることを双葉に告げたが、それも禁止行為ではない。
素敵医師と違って道具提供は愚か、強化も参加者の情報提供さえしていない。
ルドラサウムの気分を害する行為をしたつもりはない。
透子は答えを見つけられずにいた。
(そういえば、あの警告もプランナーが告げたにしては不自然だった。
本当に彼だったの?……それも含めて確認を取らないと)
夕方にロケットを通じて透子にされてきた『これからは参加者への支援・薬物投与の禁止』という警告。
内容自体は透子から見れば不自然ではないが、するのなら素敵医師が解雇された直後にするのが自然だった。
何で解雇から数時間経過した後にされたのかが不可解だった。
(ますます判らない……。それにロケットが破損しているのに不安定になっていない)
自同律が崩れ自らの存在が消失しそうな兆候は、今のところない。
喪われた『彼』の存在も、これまで通り微弱だが空から感知することが出来る。
解任されたという判断材料は壊れたロケットのみ。
(何をすればいいの)
願いを叶えさせたい身である以上、不確かな事でこれ以上放心している場合ではない。
-
先に進むにはロケット破損の理由を、契約の事を知る必要がある。
ロケットを通じて連絡が取れないのなら、ザドゥにプランナーへの取次ぎを頼まなければいけない。
仮にも運営のリーダーを任されているのだ、非常時に何の連絡も取れない訳がない。
透子は徒歩で学校に行こうと一歩踏み出し、足を止めた。
(……面倒)
眼前には廃村が見える。
学校跡までの距離はさほどあるわけではない。
それでも透子から見れば辿りつくまで困難な道のりに思えた。
透子は歩くのを止め、転移できないかと諦め半分でロケットを握り、念じた。
変化は無かった。
透子は諦めずに、今度は通信機を手に取った。
(……)
移動手段にDシリーズに自分を運ばせてもらうか、ジンジャー持ってきてもらおうかと透子は考える。
だが流石にそれはやってはいけない事だと、気づいて即座に思い直した。
ふと森の方を見ると、火災は遠目からもますます広がっているように思えた。
(救助と消火は智機のレプリカ達がしてくれる。でもこのままいけば、ますます天秤は対主催の方へ傾く)
透子としてはそのまま徒歩で、本拠地や東の森に向かうのはリスクが大きかった。
参加者と遭遇してもまずい。
透子はロケットを放し、ポケットに入れてため息をついた。
-
(やはり、クビになったかも)
無力感と共に脱力感と倦怠感が透子を包み始めた。
範囲が狭まった意志感知と読心だけで、どうやって単独で監察役と自衛ができるのだろう。
個人個人の良心の呵責を別にすれば、今の自分はさぞかし弱い駒だろうと透子は漠然と思った。
武器も所持していないし、仮に持っていたとしても銃や刀剣類なんか扱えない。
それに本拠地に戻ったところで智機とケイブリスいるのみ。
透子の現状を二人が知れば、これまでの関係がよくないだけに仕返しされてしまう可能性は高い。
仮に無事に済んだところで、智機が透子の為に取次ぎをしてくれる可能性はかなり低い。
こうなって来ると、ますますザドゥに頼むしか方法がない。
だが『読み替え』が出来ない状態で、森の中に入っても煙に巻かれてすぐ死ぬだけだ。
このまま留まっても、参加者と遭遇する可能性はある。
徒手空拳で太刀打ちできそうな相手は今の参加者の中にはいない。
というか透子自身、攻撃力・生命力・防御力などは常人と同等かそれ以下。
つまり……
(今のわたしはユリーシャより弱い)
契約のロケットを所持してからは、自己防衛の為の常時『読み替え』が発動するようになっていた。
自身の反射速度を超えた攻撃が来ても、ロケットそのものに当たらない限りは、自動的に無効化できる防御能力を常時保持していた。
そのロケットが使えなくなった今、取れる防御手段は非常に少なく、弱かった。
透子の肉体はあくまでただの人間なのだ。
手詰まりだと透子は思った。
(疲れた。どこかにベンチはないかしら?)
ゲーム運営の完遂が成功の条件だが、もうザドゥらの力になれそうもなかった。
監察役が逃げ続けろとでもいうのだろうか?
そう思えば思うほど、解任させられたとしか思えなかった。
(仁村知佳……今ならあなたの気持ちが判る)
読心しか使えない疲労した状態で、恭也と共にグレンとランスという脅威を切り抜けた彼女を、透子は素直に褒めた。
少し、羨ましいとも思った。
そして、相変わらず自分は孤独と強く思った。
透子は深くため息をついた。
(ここは思惟生命体の一種と言える、天津神の『大宮能売神』さえ存在を維持できなかった世界。
仮に転生する力が残っていても、この島から脱出できない限りそれも叶わない )
透子は建物の壁に背を預け、夜空を見上げた。
火災の煙が雲のように空に広がっているが、まだ綺麗な星空が見えている。
透子は瞬きをしないままそれぞれの星を見つめ、どういう最期を迎えるのだろうと思った。
(あの人を感じながら、消えるのなら……)
同時に出来れば、自分の最期は自分で選びたいとも願う。
死後、自分の精神体がこの世界に留まるような事があれば、いずれ紳一に襲われてしまうだろうから。
人間の女性の肉体を持つゆえか、流石の透子もそれを想像すると気分が悪かった。
願いが果たせず、死ぬのなら意思そのものもこのままこの世界から消失したかった。
「でも……広場まひるは記憶を磨耗させた後も朽ち果てずに、望みの一部をここで叶えた」
だが昼に読んだ広場まひるの記憶を思い出した事により、消失願望の加速はここで終えた。
-
(終わったと思い込んでるだけで、まだ望みはあるかも知れない。
そう……アズライト)
消滅願望はアズライトも持っていたのを透子は知っていた。
彼はこの島に来て鬼作らと干渉した結果、レティシアとの再会を諦め、しおりを助ける為に死を選んだ。
罪悪感と無力感との違いはあれど、自らを嘆き死を望むという点と
喪われた最愛の人との再会を望んで長い時を生きてきた点では同じだ。
以上の点で彼に多少の興味があった透子は機会があるならアズライトと一度話をしたかったのだ。
だが、その機会は訪れなかった。
智機から止められたり、先に芹沢が鬼作に警告した事などがあったから、。
彼らの死も事後報告で初めて知ったので、どういう風に死んだのかさえ透子は知らずにいた。
ならせめて、アズライトの最後の記憶を検索しようと、しおり退出後に再建された学校内に透子は入ったのは午後2時ごろの事だった。
そこで先に拾ったのはアズライトのではなく、鬼作の記憶だった。
だが、それは予想に反し、透子の興味を引くだけものだった。
その結果、アズライトの記録を読むまでもないと判断させるくらい、透子にとって貴重な情報と教訓を得ることが出来た。
「まだ早い」
諦めるのは早すぎると透子は自分に強く言い聞かせた。
そしてアズライトに対し思うところがある透子は心中で、智機のやり方を非難した。
(あなたのやり方は、雑)
同行者への介入が終わるまで、スタンガンで動きを止め続けていれば良かったにと思った。
アズライトが変心または死亡さえすれば、彼一人が放置されたところで、主催にとってまず脅威にはならない。
-
生存してたらしおりと協力関係を築こうとするかも知れないが、反主催として活動しようとしても、
しおりの精神状態を考えるに、その関係は長続きできなかっただろう。
共同で殺戮に勤しむ展開になるなら、運営にとってむしろ好都合だった。
それに鬼作自身、これまで生存者との接触は少なく、所持品も戦闘力も大したことはなく、
容貌の悪さや情報の少なさからして反主催として、他参加者との協力関係を築けるだけの材料は乏しかった。
つまり対主催として動こうとしても動けないはずなのだ。
無力で孤独ゆえに自殺でもしない限り、ゲームに流されるしか存在。
絶対ではないがアズライトとの関係が破綻すれば、こうなってただろうと透子には想像できた。
透子は智機の非情さを非難しているのではない、考え無しに鬼作を殺したのが問題としていた。
(アズライトもわたしが動きを止めた上で
優勝報酬を伝えて置けばどう転ぶか判らなかったのに)
アズライトの望みが、二神に叶えられるかものかどうかまでは現在は判らない。
だがもし仮に鬼作の記録を読んで気づいた事を告げていたら、高い確率でスタンス変更をしていたはずだと透子は思った
そして、その事を確実に知っている智機が、何故その事を直接告げずにいたのかと、透子は其れを不審に思っていた。
これまで読心で智機から情報を探ろうとした事は、何度かあった。
しかし椎名智機を対象とした読心は効果が薄く、本体に至っては更に読み取りにくく、
肝心な情報はほとんど得られてなかった。
何故か記録もほとんど残さない。
心の声が聞ける透子が智機に質問したのは、彼女の心を表面上しか読めなかった事もあったのだ。
気づけば透子の掌には汗がじっとりと滲んでいた。
-
(こういうものなのね……)
今ではプランナーへの意思確認や、紳一のを初めとする記録の検索を、継続したいと強く望んでいる。
ここに来て強い好奇心が自分に芽生え、突き動かすとは思わなかった透子自身想像だにしなかった。
(そう……彼と同じ轍を踏む訳には行かない)
アズライトよりも長い年月、彼女は願い続けてきたのだから。
彼と同じ様に何が真実か判らないまま、自滅だけはしたくはなかった。
「……」
透子から見て学校跡までは距離があった。
彼女は失敗を承知の上で『読み替え』を実行しようと、ロケットを取り出そうとした。
「……」
ロケットは取り出さなかった。
駄目元に過ぎない、転移できないのなら今度こそ徒歩でと覚悟を決めて、
目を瞑りながら本拠地のある廊下を強くイメージした。
「……!」
身体が軽くなったような気がした。
-
□ ■ □ ■
鬼作
(二日目 AM10:00 校舎裏)
ありゃあ……主催者の一員じゃねえか。
それも白衣とぱっつんぱっつんの水着姿で外を歩いてやがる……!。
俺はここに来て漸く見つけた獲物に息を弾ませる。
行水かあ?
ゆっくり堪能する時間がないのは残念だけどよぉ、、背に腹は変えられねえ!
ここで不満を解消させてもらうぜ。
……アズライトとガキは気づいてなかったようだな。
好都合だぜ。
俺様はあの女に気づかれないように距離を置いて尾行をする。
物腰からしてどうも素人のようだ。
へっへへ……間違いなく獲物だ!
いいケツしてやがるぜえ……あまり顔はよくねえけど、いい肉壷を味わえそうだ。
俺は奴に気づかれないように、獲物との距離は確実に縮める。
しっかし、あいつら大丈夫かよ。
まさか部屋を見つけられなくてここに戻ってくるんじゃねえだろうなあ……。
女がこちらを振り向いた、俺はとっさに身を隠した。
女はおびえた表情を見せていやがったが、安堵の表情を浮かべると散歩を再開した。
-
やべえな……あの表情……
こちらまでいい香りがにおってきそうだぜ。
「………………」
糞っ……不安だぜ、あいつら本当に主催と満足に戦えるのかよ。
アズライトは度が過ぎる甘ちゃんの上にズタボロだ、あのガキも頭がおかしいまんまだ。
まともな判断が出来るとは思えねえ。
現に俺が最初に兄貴達と襲撃かけたのを覚えてないしよ……。
……何でこうなっちまったんだ?
! くそ、俺は何を考えてやがる!?
んなもん悪趣味な遺兄ィの所為に決まってるじゃねえか。
肉壷にもならねえガキ相手に何をセンチになってんだよ。
………………。
俺は何とか声を出さずにすんだ。
まてよ……あのガキがくたばれば、多分アズライトは使い物にならなくなるな……。
……! くそっくそっくそっ、手詰まりじゃねえか。
もっと戦力を増やさねえと話にならねえ。
折角の獲物を前にして引き返すのかよ!?
ん。なんだこりゃあ。
足元にビニール線がある。
電気コードか?
-
「!」
女が立ち止まりやがった。
俺は下らない考えを頭から消し去り、いよいよかと期待と性欲を膨らませ、
どうやってあいつを犯そうかと考える。
……………………待て。
これは罠なんじゃねえか。
女がこっちを向きやがった!
な、なんだ……この笑いは。
こっちから求めに来てんのか。
「!!」
な、何ィ……もうすぐ死ぬんだからここで楽しめよ、だと。
そんな度胸もないのか、だとぉ!
ふざけるなっ!犯しまくってやるぜ!
う、うううっ、うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!
◇ ◆ ◇ ◆
なんだあの数は……。
けっ……俺達にゃ、ハナっから勝ち目は無かったって事かよ……。
にしても…………あのガキ、凄えな。
弾丸切ってやがる……。
……なんだあ……あのテレビは?
……あれが、アズライトが、言っていた……レティシアか?
「……」
お嬢ちゃんも長続きしそうにないな……。
けどよ……そうなる前に意地見せてやるぜ
俺に気づかないガラクタどもに目にもの、みせてやるぜぇ……
-
◇ ◆ ◇ ◆
へ、へへへへへへ、えへへへ…………
あのガラクタども、今に見てやがれっ……
俺は最後のガスボンベを運びながら、奴等に気づかれない様に小さく笑った。
……俺様って案外すげえんじゃねえか?
溜まってたからその所為かもな……。
アズライトの野郎、まだモニターを前に固まってやがるんだろうなあ……。
ちったあ、ガキを見習えよ……。
………………アズライト、おめえは思いもつかねえだろうし、知らない方がいいかも知れねえし、
もう手遅れかも知れねえから伝えねえがよ……。
おめえの探していたレティシアはきっと……主催者どもの所にいたんだぜ。
でなきゃ……なんでブラウン管の向こうに写ってやがるんだよ……。
見間違えるほど、呆けたのかよ。
そうじゃねえんだろ?
俺は流血で悟られねえ様に、手ぬぐいで血を吸い取る。
…………………………!
頭が上手くはたらかねえ……俺のはいぱーこんぴゅーたーもめんてなんすが必要かあ?
くだらねえことを思いついたぜ……。
俺の……俺達の血を引いてるのが、あのガキみてえに美人に生まれる筈がねえだろ……。
あのガキどもとブルマー女の顔を思い出しちまった、情けねえ……。
…………本格的にヤキが入っちまったか。
俺はナイフを強く握り締めた。
第一、何十年前の話だよ。
それもすぐに死んじまったじゃねえか、夢見すぎてんだよ。
やべえ……!
あいつ……まだ……!
いい加減にしやがれぇ!!
-
□ ■ □ ■
(二日目 PM6: 管制室)
「救助は無理ですか」
「ええ。ザドゥ達は無事?」
「救援物資を持ったレプリカを向かわせました」
「火災は?」
「我々が対応いたします」
「そう」
透子はN-22にそう返答した。
管制室の前の廊下に透子が現れたのはつい先ほどの事。
自分を対象とした『読み替え』が発動したのだ。
次に透子は言う。
「オリジナルはどうしたの」
「基地にいますが、戻ってくるのに時間が掛かりそうです」
「……そう」
N−22から数歩後退し、透子は天井を見上げ想った。
(朽木双葉……)
素敵医師と朽木双葉とアインの生死をN-22から確認したのも、つい先ほどの事だった。
透子が唆かしていた朽木双葉と他2名は死んだのだ。
-
双葉が死を迎えたことは透子にしても残念なことだった。
予期せぬ形で想い人を喪った双葉には、透子も同情する部分があった。
だから優勝できずに死んでしまうなら、せめて苦しまずにいてほしいと心の片隅で思っていたが、
最後に検索した記録と、さっきの報告を総合すると、安らかは程遠い最期を迎えたと透子には判断できた。
「……」
小さな喪失感なのか、言い知れないもやもやが透子の胸を叩いたような気がした。
(……次は)
だがこれ以上、透子が惑うことは無かった。
これからザドゥを通じてプランナーから確認を取らなければならないから。
わたしはこれからどうすればいいのか、わたしは脱落したのかと、問う為に。
その前に智機本体らがここに来る前に、管制室でやることがある。
透子は管制室から記録を読み取ろうとした。
智機本体の記録を探る為に。
(…………ない)
不自然なまでの記録の少なさに、透子は智機に対策を取られていると思った。
レプリカ達の記録はあったが、それはさっき透子が予測していたのが当たっただけに留まり、一番知りたい情報はなかった。
それに加えて透子は知る由も無いのだが、ケイブリスと智機の密談などの記録も何故か拾えなかった。
「何をしているのです?」
-
「別に」
N−22からの追求をそっけなく返す。
(諦め……)
『……にぁ……も……ぃ……』
「!」
聞いた事の無い声の記録を透子は拾った。
もう一度検索する。
『……にぁ……も……ぃ……』
(誰?)
はっきりしていた。
二神と運営陣と参加者の誰の声でもなかった。
「誰か、来た?」
「誰も来ていませんが?」
「でも……」
男か女かよく判らない、高い声だった。
紳一の時とは別種の存在がいると透子は思った。
他の記録を注意深く吟味するが、さっきと変化は無く『声』もそのままだった。
N-22は透子をしばし見つめ続けてから言った。
「御陵透子、お疲れのようです。自室での休憩を薦めます」
「……」
N-22に言うとおり、疲れているのは確かだった。
だが透子はあることに気づいてN−22に言った。
「しばらくここには戻ってこない」
透子は学校付近のある場所をイメージし、とっさにそこに行くのを強く願った。
N-22の制止の声が上がったが、それを無視して管制室から透子は消えた。
智機達がザドゥ達の救助に専念していると誤解したままに。
-
□ ■ □ ■
(二日目 PM6: H−6・学校跡付近)
透子は『読み替え』で望んだ場所――学校付近への転移に成功していた。
すぐさま通信機のスイッチを入れてN-22に向けて言う。
「またわたしの方から連絡する」
透子は電源を切って、通信機を草むらに隠して、その場から100メートル以上離れた。
それから安堵の息を吐いた。
(本拠地……わたしの部屋に行くのも危険。
椎名智機との接触は、これからはなるべく避けた方が無難)
智機がアズライト達に取った手段を再確認したからこその行動だった。
転移くらいしか『読み替え』の使い道がないのでは、ちょっとした不意打ちでも倒されてしまう恐れがある。
ロケットなしでどれだけ『読み替え』が通じるのか早急に知る必要があった。
(色々、試してみないと……。それより前に道具が必要)
自衛の為にも扱える道具はあるに越したことは無い。
本拠地に行けば銃器や電子機器はたくさんあるが、救助に必要なものは既に智機が使用・管理している。
と、なれば島から調達するしかないのだが、銃などの強力な武器はなく、紗霧が使えそうなのをあらかた持って言った後だ。
望みの品は手に入りそうに無かった。
-
(……灯台付近には隠し部屋1がある。
砲撃で灯台は破壊されたけど、わたしが知る限りまだ手は付けられていない。
もしかしたら解放されているかも)
解放されてなお、未使用のまま放置されていれば、運営者も手を付けて構わないことになっている。
破壊されてたり、素敵医師がすでに利用してたりするかも知れないが、その場所を透子は知っているので
収穫は無くても時間はそれほどロスしない。
(長谷川の隠れ家にも使えるものが残ってるかも)
記録からして森の西の端辺りH-3に彼の隠れ家がある可能性は高い。
(彼は参加者の支給品もいくつか持っていったはず。説明書付きで残っていればいいけど)
ゲーム開始より何時間か前、素敵医師はランダム支給品のいくつかを別のガラクタに交換していた。
まだ参加側に有利だからというのが、素敵医師の言い分だった。
智機は止めなかったし、芹沢も止めなかった、ザドゥはやや渋い顔をしていたがそのまま通した。
透子は元より追求する気さえなかった。
余談だが、参加者が全員が出発した後に死んだタイガージョーの支給品や、デイパックを持っていかずに行った広田寛の支給品を比較的見つけやすい場所に
配置するようにザドゥは透子に命令を出している。
ザドゥが流石にまずいと判断したからだ。
透子はそれに従い、使えそうな日用品数点を含めて、第一放送前に廃村を中心にそれらを配置していた。
(残っていれば、いいけど)
透子は灯台跡付近に向かうべく、自らを対象に『読み替え』を行い、この場から姿を消した。
-
□ ■ □ ■
(管制室)
N-22の双眸から横に光の線が流れた。
それから一分くらいあとにN−27はN-22に問いかける。
「予定時間を過ぎた」
「ああ、もうそんな時間か。だが問題無い」
「優先順位は低いからな」
「絶対必要ではないからな」
「それに仕方ない」
「そうだ仕方ない」
「我々に余裕は無いからな」
「だが向こうにとっては想定の範囲内」
「だからこそ我々は作業に専念できる」
「そう、この場合……」
交互に声を出していた二機が今度は揃って結論を口にする。
「「向こうが我々の代わりに行う手はずだからな」」
↓
-
【監察官:御陵透子】
【現在位置:H−6・学校跡付近→Ⅰ-5・灯台跡付近】
【スタンス:① 隠し部屋1と素敵医師の隠れ家を探し、そこでアイテムを回収する
② ①の後、『読み替え』でどれだけの事が出来るか実験する。
ザドゥ達の救出が単独で不可能でないと判断したならそれを試みる。
ザドゥに会えたらプランナーとの交渉を頼んでみる。
智機との接触は極力避ける。
③ ①と②の後、紳一(亡霊)とアズライトの記憶検索を始める。
ルール違反者に対する警告・束縛、偵察は一旦、中止
【所持品:契約のロケット(破損)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』 (現状:自身の転移のみ)】
【備考:疲労(小)、通信機は学校跡付近に放置。】
【レプリカ智機・代行(N−22)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:管制管理の代行】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
【レプリカ智機・オペレータ(N−27)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:火災対策タスクのオペレーティング】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
※透子は智機達がザドゥ達を見捨てる判断をしたことに気づいていません。
※透子の管制室での行動は智機本体に伝えられました。
※透子に伝えられた『警告』はプランナーのものであるとは限りません
※管制室での『謎の声』の主は現在不明です。
※鬼作と交わったレプリカ智機は外見は人間とほとんど同じでした。
-
修正稿、投下完了です。
本投下の際は他作品にあわせて時間表記を調整します。
問題が無ければ明日の深夜12時以降に本投下します。
新作の感想は今夜に。
-
> 歪な盤上の駒-道
ザドゥの外出が今になって大きな意味を持ち始めてるなぁ。
本体がレプリカをハッキングするとはこれは意外。
まさか智機がザドゥを6人組にぶつけさせようと考えるとは……。
芹沢とタッグを組んで戦えば、6人組の勝算が低くなるだけに
戦闘に至るまでの過程がどうなるか楽しみ。
遂に来るのか魔窟堂の初戦闘。
ケイブリスとしおりの存在が対主催へのトドメになりそうな感じで緊張感がある。
良い繋ぎGJでした。
本投下の際、何行か描写の追加があります。
最後のレプリカの会話はメール欄のつもりで書きました。
-
>>764
仮投下お疲れ様です。
特に問題はないと思います。
段々とラストに加速して行ってるのがわかって楽しみになってまいりました。
-
遅れてしまいましたが、これから新作『ねがい』の本投下を始めます。
全部で21レスです。
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本投下完了しました。
次は素材の更新・作成作業に入ります。
今週中のUPを目指します。
-
>>743
ごめんなさい。
書き終われなかったので、明後日以降に伸びますorz
-
少々長くなりつつあるので明晩に交渉話の半分を仮投下します。
全文が間に合わなく、半分に問題がなければ日曜夜にそのまま前半部として投下します。
重ね重ね遅筆で申し訳ない。
-
すみません、素材UPは今週の火曜日になりそうです。
その前にSS分だけまとめたものを今深夜にUPします。
火曜日のUPは以下の通りに仕様変更する予定です。
※キャラ追跡表の【椎名智機】と【レプリカ(全機を1つのキャラとして)】を別々のキャラとして扱う。
※死亡後のキャラ登場話で新規の台詞や動作が無い場合は(亡霊クレアとかは別)登場話としてカウントしない。
※各話にあるキャラ追跡欄で次の登場話が被るキャラ達は次登場話のリンクをひとつにまとめる。
※キャラクター紹介(ネタバレなし)は説明書や紹介サイトを元にして作成。
※キャラクター紹介(ネタバレあり)は作中の動向を中心に作成。
これらの仕様変更で不都合がありましたら、変更または取りやめも視野に入れてます。
ご意見がありましたらどうぞっす。
-
274話までのSSと地図とリンクを更新した素材をUPしました。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org9749.zip.html
パスは rowa です。
特に異論が無ければ、次回更新時に『そらをみあげて想うこと』は『Why?』の前の話にしたいと思います。
その際に『Why?』の本スレ投下時に削除した部分も追記したいと思います。
-
>>771-772
了解しました。
此方は問題ありません。
必死こいて今かいてます。
明日休みなので仕上げるんじゃぁぁぁぁ。
-
えー……すいません。
再UPが今週末くらいにまで遅れそうです。
加えて『Why?』を確認してみたところ恭也が登場するのは変なので、再UP時に修正版を加えます。
それと同時に本スレにて修正報告をします。
-
時間がないこともあって、今ようやくSS分を纏めたところです。
すみません。
近日中に新コンテンツ分をUPできそうですが、その前に『Why?』修正版をここに投下します。
その後、本スレで修正報告を行い、それからSSまとめ最新版をここにUPします。
追加分の文章を向こうに投下すると1レス超えるので、ここでのレスのリンクを貼り付けます。
それから新コンテンツ分のUPの有無に関わらず、明日の晩に作品の予約をする予定です。
話の内容は現状不定ですが、アナザー化は覚悟の上です。
-
#6 662-665
(二日目 PM1:55 病院内)
――見つけたそれはその場に似つかわしくないものだった。
使える衣服がないかとロッカーを物色してた時、それを見つけた。
ここどこだっけ?と疑念がまひるの脳裏をよぎった。
まさかと思いたち、それを手にとって恐る恐る臭いを嗅いで見た。
服の臭いしかしなかった事に安堵する。
あたしって下品だなあと、心の中で呟きながら、鼻歌を歌いながら選んだ服をデイバックに詰めた。
部屋から出ようとした時、もう一度『それ』を見つめた。
不自然さにまた眉をひそめた。
まひるは十秒近く凝視した後、それを手に取って折りたたみ、ビニールに入れてデイパックに入れ、
すぐさま部屋を出たのだった。
□ ■ □ ■
(二日目 PM6:12 西の小屋)
「駄目です」
地図に載っている小屋に行きたいというまひるの提案は、紗霧によってあっさり却下された。
何でと、言いたげな一行を目の前にして、紗霧は両目をつむりながら疑問に答える。
「此処に行った所で良くて誰もいないか、悪ければあのロボットが待機してる可能性があります。
もし主催が私達の居場所を把握していない場合は、向こうに好機を与えることになってしまうんですよ?」
-
「うーん……」
予想してた通りの返答ではあったが、叱られてるようで何か居心地が悪かった。
少々ではあるがまひるの表情には落胆の混ざった困惑が浮かんでいる。
「何か在るとしても参加者の死体でしょうね。彼らの支給品も使い物にならないものになっているか、
持ち去られてるかの何れかでしょうし」
と紗霧は言う、心の中で迂闊な参加者のと付け加えて。
狭い建物かつ森の中にある最初から所在の知れた小屋など、殺人鬼にとって格好の狩場になりかねない。
「死体があるなら、弔ってやりたいんだけど」
「……首輪の事を忘れてませんか?」
言うや紗霧は自らの首を親指で指す。
「あの首輪は解除されても、向こう側に色々と解るものなのですか?」
「其処までは解りません。ですが用心に越した事はありません」
ユリーシャの質問に受け応えをしながら紗霧は考える。
対人レーダーと首輪を魔窟堂に調べて貰えば、その辺の事が解る可能性は充分にあるだろう。
だが、これくらいのことで機能停止のリスクを背負ってまで、レーダーと時間を無駄使いしたくは無かった。
実際は解除後の首輪の探知機能等は機能してないのだが、彼女らがそれを知る由はない。
その事を知っていたら、紗霧は解除後の首輪を罠の材料等に活用していたことだろう。
「う〜ん……」
死体を見つけたら見つけたらで、身元を見極めれば生き残りの参加者の情報も、
解りそうなのにな思ったが、数も多い上に堂島薫のようにバラバラになって、
身元の割り出しが困難な死体があった事も思い出し引き下がることにした。
-
「……じゃ諦める」
渋々まひるが返答したのを受けて紗霧は視線を外そうとした。
が、がさごそと物音がまひるの方から聞こえたので再びそちらの方に目を向ける。
「………………何ですかそれは?」
「あたしもこれ見つけた時はそう思った」
「それって……」
まひるはそれの両端を掴んで全体像をみんなに見せていた。
ユリーシャとランスはそれを――それと同じものをよく目にしていた。
「まひる殿……何を……」
魔窟堂も職業柄?それは結構目にしていた。
その為か心なしか声色は弾んでいた。
紗霧は半眼でしばし考え込み、彼女なりにややドスを利かせたつもりで言う。
「本題はこれですか? で、貴女はこれを何処から手に入れたんですか?」
「病院」
表情だけはにこやかに、内心では機嫌悪い時にやばかったかなと後悔しながらまひるは明るく答えた。
「……何で病院にこれがあるんですか? 変な趣味をお持ちの方が使ってたとでも言うつもりですか?」
「まったくの新品みたい」
言って、調達した本人はまたもや臭いを嗅ぐジェスチャーをする。
「支給品?」
-
ユリーシャが言った。これまでに一行は死んだ参加者のデイパック――支給品一式を2つ回収している。
その一つだと彼女は考えたのだ。
「ロッカーに入ってたよ。なぜか」
「そんな得体の知れないものは捨てて下さい」
「紗霧殿、捨てなくても良いのではないか?」
魔窟堂が優しく諭すように紗霧に言った。
まるでおイタをした子供をやんわりと叱り付ける親の様に。
紗霧は魔窟堂のこれまで以上の不審な反応にしばし返答に詰まった。
(意図は一体なんですか?
まひるさんは既に違う服に着替えている。
あの子には小さすぎる。となれば目的は……)
紗霧がその発言の意味に気づくのにさほど時間は掛からなかった。
困惑が怒りに変わったのもさほど時間は掛からなかった。
まひるは紗霧から怒気が膨れたのをを感じ、音も無く思わず後ずさった。
魔窟堂は熱いまなざしで紗霧の目を見つめ続けている。
そして、さっきまで悶絶していたランスは力ない声で、だがはっきりと言った。
「まひるちゃん……その服のサイズはいくらだ……」
「え、え、えと、あたしでもちょっと大きいくらいかな、かな?」
動転しながらまひるは何とか答える。
「そうか……」
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