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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議

749ねがい(6):2008/12/12(金) 01:59:15

(やはり、クビになったかも)

無力感と共に脱力感と倦怠感が透子を包み始めた。
範囲が狭まった意志感知と読心だけで、どうやって単独で監察役と自衛ができるのだろう。
個人個人の良心の呵責を別にすれば、今の自分はさぞかし弱い駒だろうと透子は漠然と思った。
武器も所持していないし、仮に持っていたとしても銃や刀剣類なんか扱えない。
それに本拠地に戻ったところで智機とケイブリスいるのみ。
透子の現状を二人が知れば、これまでの関係がよくないだけに仕返しされてしまう可能性は高い。

仮に無事に済んだところで、智機が透子の為に取次ぎをしてくれる可能性はかなり低い。
こうなって来ると、ますますザドゥに頼むしか方法がない。
だが『読み替え』が出来ない状態で、森の中に入っても煙に巻かれてすぐ死ぬだけだ。
このまま留まっても、参加者と遭遇する可能性はある。
徒手空拳で太刀打ちできそうな相手は今の参加者の中にはいない。
というか透子自身、攻撃力・生命力・防御力などは常人と同等かそれ以下。
つまり……

(今のわたしはユリーシャより弱い)

契約のロケットを所持してからは、自己防衛の為の常時『読み替え』が発動するようになっていた。
自身の反射速度を超えた攻撃が来ても、ロケットそのものに当たらない限りは、自動的に無効化できる防御能力を常時保持していた。
そのロケットが使えなくなった今、取れる防御手段は非常に少なく、弱かった。
透子の肉体はあくまでただの人間なのだ。
手詰まりだと透子は思った。

(疲れた。どこかにベンチはないかしら?)

ゲーム運営の完遂が成功の条件だが、もうザドゥらの力になれそうもなかった。

監察役が逃げ続けろとでもいうのだろうか? 
そう思えば思うほど、解任させられたとしか思えなかった。

(仁村知佳……今ならあなたの気持ちが判る)

読心しか使えない疲労した状態で、恭也と共にグレンとランスという脅威を切り抜けた彼女を、透子は素直に褒めた。
少し、羨ましいとも思った。
そして、相変わらず自分は孤独と強く思った。
透子は深くため息をついた。

(ここは思惟生命体の一種と言える、天津神の『大宮能売神』さえ存在を維持できなかった世界。
 仮に転生する力が残っていても、この島から脱出できない限りそれも叶わない )

透子は建物の壁に背を預け、夜空を見上げた。
火災の煙が雲のように空に広がっているが、まだ綺麗な星空が見えている。
透子は瞬きをしないままそれぞれの星を見つめ、どういう最期を迎えるのだろうと思った。

(あの人を感じながら、消えるのなら……)

同時に出来れば、自分の最期は自分で選びたいとも願う。
死後、自分の精神体がこの世界に留まるような事があれば、いずれ紳一に襲われてしまうだろうから。
人間の女性の肉体を持つゆえか、流石の透子もそれを想像すると気分が悪かった。
願いが果たせず、死ぬのなら意思そのものもこのままこの世界から消失したかった。

「でも……広場まひるは記憶を磨耗させた後も朽ち果てずに、望みの一部をここで叶えた」

だが昼に読んだ広場まひるの記憶を思い出した事により、消失願望の加速はここで終えた。




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