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【場】『自由の場』 その3

61夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/19(土) 22:39:01
>>(涙音)

『花時計』という名の喫茶店にやって来た。
こっちは自撮り写真を送ったが、相手の顔は知らない。
店内を見渡しながら、それらしい相手を探す。

62朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/19(土) 23:27:36
>>61
チリーン…

喫茶店に来客を知らせるベルの音が鳴り響く。

「たしかここで待ち合わせ…だったはず」
やってきたのは、清月学園の学生服を着込んだ少女。
アリスは顔を知らないだろうが、彼女が涙音である。


「さて、どこにいるかな…」
アリスを探してあたりを見回す涙音。
その様子はアリスからも見えているかもしれない。

63夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/19(土) 23:39:53
>>62

キョロキョロしながら歩いていたせいで、前を見ていなかった。

   ド ン ッ

         「おッ――――――」

                         カシャァン

二人の体が軽くぶつかり、その反動で『サングラス』が外れる。

     「ゴメン!!ダレだかわかんないけど!!」

           「え〜〜〜〜と…………」

                 ササッ

たった今落としたサングラスを、手探りで探す。
夢見ヶ崎の目は『光』に弱い。
サングラスがない状態では、何も見えなくなってしまう。
ちなみに、サングラスは『涙音の足元』に落ちている。
近い距離のはずだが、当のアリスには見えていないようだ。

64朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 00:26:47
>>63
ドンッ
「あいたっ」
涙音も前を見ていないところでぶつかってしまった。

「あ、こちらこそすいませ…ん?」
と、頭を下げたところでその姿が、どこかで見たことのある人であることに気づく。

「あー、その、捜し物はコレでしょうか?」
そう言って落ちたサングラスを手にとって、
アリスに手渡そうとする。

「もしかして、あなたがアリスさんですか?」

65夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/20(日) 00:42:45
>>64

「――――――おん??」

声を頼りにして、差し出されたサングラスに手を伸ばす。

        スカッ

しかし、見えていないせいで、一回『ミス』ってしまった。

     「あ!!コレコレ!!」

そうしてから、改めてサングラスを受け取ったのだった。

             スチャッ

「わたしの『ナマエ』をしってるってコトは…………」

       「ん〜〜〜〜〜〜??」

サングラスを掛けてから、目の前の人物を観察する。

          「ズバリ!!『しらないヒト』だ!!」

66朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 00:52:42
>>65
「これがないとよく見えないんですか?」
サングラスを付けていないときの動きを見ながら答える。
眼鏡だろうか、と思ったようだ。

「えーっと、私は…って
 知らない人じゃないでしょう!」
思わずツッコミを入れる涙音。

「ここで待ち合わせって話だったでしょう!
 私は朱鷺宮涙音です!
 鉄さんから聞いてないんですか?」
見た目の話はしてないのだろうかと
やや呆れながら答えた

67夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/20(日) 01:26:45
>>66

夢見ヶ崎が聞いていたのは『連絡先』だけだ。
そもそも涙音だって、
夢見ヶ崎の性別すら分かっていなかった。
顔を見て分からないのは当たり前の事だろう。

「まぁまぁ、おちつこうぜ。いっしょにオチャでものんでさ」

             ストン

冗談めかして笑いながら、手近な席に腰を下ろす。

「『ルネ』はナニたのむ??
 わたし、『ホットミルクティー』にするけど。
 あとは…………コバラがすいたから『ミックスサンド』!!」

メニューを眺め、一足先に自分の注文を出しておいた。

「チューモンしたヤツがくるまえに、
 かるくジコショーカイしとくね。
 わたし、『アリス』。
 しってるとおもうけど、クロガネくんのトモダチ。
 『コートーブ』の『1ねんせい』で、
 『セカイのゼンブ』をみるのがユメ」

「んっと――――そんで『スタンドつかい』。
 スタンドのナマエは『ドクター・アリス』。
 ノウリョクは『イロイロ』」

「とりあえず、そんなトコかな〜〜〜〜」

68朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 08:59:06
>>67
「えー、まぁわかりました…
 私もそこまで気にしてませんし。」
やれやれという感じで涙音はアリスと向かい合うような席に座った。

「私はそれじゃあ…ラッシーというものがあるみたいですね。
 コレを注文します。私ももひとつ注文しますね。
 この、ホットサンドで。」
涙音もアリスに合わせ、一通りの注文をした。

「ふむ、アリスさんですね。
 私は朱鷺宮涙音。同じく高等部1年です。
 夢…は今のところよくわからないですね。」

「…フォートレス・アンダー・シージというスタンドを持っています。
 どうやらお互いスタンド使いのようですね。」
と、一通り自己紹介をした。

69夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/20(日) 11:16:37
>>68

「『ききたいコト』っていうのは――――」

そう言いかけた時、注文した品が運ばれてきた。

「お、きたきた。そんじゃ、『カンパイ』!!」

         ズズズ

カップを持ち上げ、ホットミルクティーを口にする。

「うんうん、グッドグッド。
 ルネもなかなかイイみせしってるじゃん。
 コレは『ぼうしや』にもおしえないとな。
 アリスメモの『324ページ』にキロクしとこう」

           カチャ

カップを置いてから、再び口を開く。

「で、『ムラタエイイチ』ってどんなヒト??
 クロガネくんから『なんとなく』はきいたけど、
 レンラクサキおしえてくれなかったから」

「ルネからみて、どんなカンジ??」

ミックスサンドに手を伸ばしながら尋ねる。

70朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 11:44:44
>>69
「はぁ、わかりました。
 とりあえず乾杯しましょう。」
そう言ってラッシー入りのカップを打ち鳴らす。

「…帽子屋さんですか?
 ふーん、いろんな知り合いがいるんですね…」
そういいながらラッシーを飲む。
はたして涙音の連想する『帽子屋さん』と同じイメージの人物かはわからないが。

「村田さん…ですか?」
夏の魔物との戦いの時、一時共闘を果たした人物のことだろう。
少し手を止めてから考える。

「うーん、そうですねぇ。
 私もそこまで知り合っているわけでもないんですけど…
 夏の魔物との戦いのときにあってからはそれっきりですし。」

「でもわかることといえば、割りと容赦なくて
 結構な強さを持っていて…」

「でもなんというか、色々真っ直ぐな人って感じですかね。
 悪い人ではなさそうです。」
そう言ってからホットサンドをもぐもぐと食べ始めた。

71夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/20(日) 20:28:53
>>70

「アリスは『カオ』がひろいぞ。だって、アリスだもん」

    「いろいろと『しりあい』はおおい!!」

        ムッシャ ムッシャ ムッシャ

              「ふ〜〜〜〜〜〜ん」

サンドイッチを頬張りながら、涙音の話に耳を傾ける。
小林丈の失踪に関わっているという情報は、
事前に『アリーナ』から得ていた。
連絡先がもらえなかったという事は、
『拒否された』って事だろう。
対面さえできれば『真実』を掴む自信がある。
しかし、会えないんじゃあどうしようもない。

「『なかみ』はだいたいわかったからさ、
 こんどは『みため』おしえてくれない??
 トシはナンサイくらいとか、せはたかいかとか、
 どんなカッコしてたとか」

「ソレわかってないと、さっきのルネとアリスみたいに、
 ゴッツンコしそうだし。
 『キオクソウシツ』になったらタイヘンだ!!」

もし『キオクソウシツ』になったら、
『グリムのセカイ』をボウケンするのもよさそう。
『シンデレラ』とか、『あかずきん』とか、
『ヘンゼルとグレーテル』とか。
みんなとトモダチになれるかな??

72朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 22:20:21
>>71
「へぇー、色んな人の知り合いなんですね。
 アリスだから…でうか?」
自信たっぷりな雰囲気を彼女の言葉からは感じている。

「ふーむ、見た目ですか?
 …まぁあれくらいで記憶喪失にならないとは思いますけど…
 見た目といえば…」
少し前であるからか、少し考えてから口を開いた。

「学生服とマフラー…
 でしたね?…なので学生の人だと思いますよ。
 結構遊んでそうな感じというか…」
学生服をそれなりにいじってたように思ったらしい。
そして少し付け加える。

「後はまぁ、棒術が得意な感じですかね…」
そこまで言ったところでまたホットサンドを食べる。

73夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/20(日) 22:39:17
>>72

「じゃ、トシおんなじくらいかぁ。
 ん〜〜〜〜『カオ』わかんない??
 『シャシン』とかあったらイイけど、たぶんナイよね??」

          ゴソッ

「クチでセツメイしにくかったらさ、ササッと『かいて』みてよ」

ポケットからペンを一本取り出して渡す。
それから、『紙ナプキン』を押し出した。
『そこに描いて欲しい』という事らしい。

「『トクギ』まではきいてないけど、まぁイイや。
 ついでに『アリスの』もみせてあげちゃおっかな〜〜〜〜」

       ズ ギ ュ ン ッ !

そう言って、『ドクター・アリス』を発現する。
全身に『光のリボン』を纏う人型スタンド。
長い『金髪』を持ち、両手にカラフルな『ネイル』がある。
目の部分には、『青いリボン』で覆われていた。
『アリス』を思わせるヴィジョンは、『本体の姿』とよく似ている。

「これが『アリスのアリス』。どうよ??」

       シ ャ ラ ァ ン ッ

輝きを放つ金髪を、得意気にかきあげてみせる。

74朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 22:49:35
>>73
「顔…顔ですかー…
 そこまで詳しくできるかはわかりませんけど…
 まぁ絵にしてみますけど…」
ペンとナプキンを見てうなずく。

と、アリスがスタンドを発現させたのを見て

「おぉ!それがあなたのスタンドですか!
 それにしても…スタンドって、もっと人間っぽい見た目でも
 人間らしさからどこか外れていそうな見た目な感じかと思ってましたが…」
じっとアリスのスタンドを見て

「あなたにそっくりな見た目をしてますねー。
 …それじゃあ私もせっかくなので」
そう言って涙音も

 ドギュゥン!!

スタンドを発現させ、それにペンをもたせた。

「これが私のスタンド、『フォートレス・アンダー・シージ』です。」
彼女のスタンドは兵士のような力強い見た目のスタンドであった。
そしてそのスタンドにナプキンで絵を書かせているようだ。

「普通に描くよりもスタンドに描かせたほうが早いですよ。
 見た目はえーっと…」
涙音はスタンドに絵を描かせていく。
サラサラと比較的精密に早く描いているようだ。

「こんな感じでしたかねー。」
涙音のスタンドはどうやら描き終えたようだ。
彼女の記憶だよりであるためか、村田の絵は『わりと』本人に似ているくらいになったようである。

75夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/20(日) 23:20:38
>>74

「ソレはあるな!!『スタンド』って、みんなそんなんだし!!
 アリスも『ケイケン』はおおいほうだからわかるぞ!!」

涙音の意見は正しいだろう。
スタンドというのは、どこかしら異質な雰囲気があるものだ。
そして、『ドクター・アリス』にも、『異質感』は確かにあった。
しかし、『髪の毛』があったり、『爪』があったり、
人間に近い要素も多い。
全身に巻きついている『光のリボン』も、
見ようによっては『光のドレス』に見えなくもない。

「やっぱにてる??クロガネくんにもいわれたっけ。
 でも、『ムカシ』はゼンゼンにてなかったんだよ」

      「イロイロあって『こうなった』」

自身のスタンドを一瞥してから、
『軍人のようなスタンド』に目を向ける。

「おお!!スッゴイつよそうだ!!
 おしろの『ケイビタイチョウ』かな??
 おしごとゴクローサマです」

          ビシッ

至ってテキトーな動作で『敬礼のマネ』をしてみせる。

「ほうほう、『こんなカンジ』かぁ〜〜〜〜」

完成した『村田の絵』を、じっくりと眺める。

「でも、『アリス』もまけてないぜ!!」

             ヒュババッ

張り合うように、別の紙ナプキンを取り、
その上に『ネイル』を走らせる。
『ネイル』は『刃物』のような鋭さを持っているようだ。
『フォートレス・アンダー・シージ』と同等の速さで、
素早く指を動かしていく。

         「――――――どうだ!!」

      バ バ ン ! !

少しして出来上がったのは、
『フォートレス・アンダー・シージ』の『切り絵』だった。
目の前に『モデル』がいるため、なかなかのクオリティだ。
精密さに関しても、同じくらいのものを持っているらしい。

76朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/20(日) 23:40:20
>>75
「色んな人のスタンドを見てきましたが
 人だったりモノだったりと見た目は様々ですねー
 …以前は違ったんですか?」
色々あって、というアリスの言葉に少し不思議そうな顔をする。

「やっぱり、経験によってスタンドも変わっていくんでしょうね…
 あなたのスタンドは以前はどんな感じだったんでしょうね。」
やや興味ありそうに見える。

「フヒヒ、どうもありがとうございます。
 警備隊長、といえばたしかにそのとおりかもしれません。
 私のイメージでもそんな感じでした。」
そう言って涙音は自分のスタンドに敬礼をさせてみる。

「あなたのスタンドもなかなか…ほうすごい!」
アリスのスタンドの動きを見てどこか感心した表情を見せる。

「すごいです!あなたのスタンドもかなり器用なスタンドみたいですねー。
 そして、私のスタンドと見た目がそっくりです。」
嬉しそうに手をたたきながら答える。
(にしてもこの状況…他の人から妙に見られたりしてないかな…)
ふと、あたりを見る。スタンドが見えていない人間からするとかなり変な光景に見えたかもしれない。

「あぁ、それで…私のスタンドの描いた絵は参考になりそうでしょうか?」

77夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/21(月) 00:13:24
>>76

「バッチリ!!ルネ、『センス』あるよ、うんうん。
 もしみかけたら、コレでわかっちゃうもんね〜〜〜〜。
 アリスポイント『300てん』プレゼントだ!!」

          パシャッ

スマホを取り出して、『似顔絵』を撮影する。
これで他の人に聞くのも簡単になった。
大きな手掛かりだ。

「そうそう。ムカシは『ドクター・ブラインド』ってナマエでさぁ。
 いや〜〜なつかしいな〜〜!!
 ず〜〜っとイッショだったから、
 いまでもタマにまちがえちゃうし」 

     「『みたい』??え〜〜〜〜と」

              ススッ

『イラストアプリ』を起動し、保存してある『絵』を呼び出す。

           「――――『こんなカンジ』だった」

涙音に見せた画面に表示されているのは、
『盲目』の人型スタンドの絵。
『白衣』を着ているようなデザインで、
両手には『手術用メス』のような爪がある。
まるで『医者』を思わせる無機質な雰囲気が漂う。
かつてのスタンドである『ドクター・ブラインド』の絵だ。
ふと『ドクター・ブラインド』の事を思い出した時に、
スタンドを使って描いたものだが、
今の『ドクター・アリス』とは全く違う見た目をしている。

78朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/21(月) 20:12:59
>>77
「それは良かったです。
 私が助けになれたのなら嬉しいですね。」
そう言って涙音は微笑んだ

「それにしても、そこまでその人のことを知りたいんですかー?」
と、何気なく聞いてみる。

「へぇー、スタンドの名前まで違ったんですか。
 …どれどれ」
と、イラストアプリに保存されていた『絵』を確認する。

「確かに…今とはかなり見た目が違いますね。
 なんというか、全体的に…」
じっと見ていても、今のアリスのスタンドとは全く違うと思えた。

「ここまでスタンドが変わるのはよっぽどの『きっかけ』があったんでしょうかね…」
とても興味深そうな様子だ。

79夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/21(月) 20:45:28
>>78

「まぁ、イッペンあってみたいだけなんだけど。
 かくされるとさぁ、しりたくなるじゃん??」

『誰かが誰かを殺した』。
そんな話は簡単に言いふらしていい事じゃない。
ましてや、本当かどうかも分からないのだから。

「でしょでしょ〜〜〜〜!!
 『きっかけ』っていうか、『つみかさね』なんだよね。
 あるひトツゼンかわったんじゃなくて、
 ながいあいだの『ボウケンのレキシ』みたいな…………。
 コツコツやってきたセイカがでたっていうの??」

『ドクター・ブラインド』と『ドクター・アリス』は、
正反対の雰囲気だ。
共通点は『爪』くらいしかない。
それも『メス』から『ネイル』に変わっている。

「ソレをかたりだすと、スッゲーながくなるな!!」

そう言いながら笑う表情は、至って無邪気なものだった。

    「そのかわり――――チョットだけ、
     『アリスのチカラ』をおしえちゃおう」

耳を澄まし、『超人的聴覚』を働かせる。
それによって、
店の外から聞こえてくる『足音』と『話し声』を拾う。
ここに来る客の『種類』と『順番』を当てようとしているのだ。

  「まず『オトコひとり』」

         「ツギが『オンナふたり』」

                 「それから『オトコとオンナ』」

                        カラン

入店してきたのは、まさしくその内訳だった。

80朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/21(月) 21:25:44
>>79
「ふーむ、隠されると…ですか。
 ということはあの連絡は、村田さんの方にも…」
だが断られた、ということなんだろうと考えた。

「冒険の歴史…
 スタンドを使うようななにかが、あなたのスタンドを変えたってことでしょうかね…
 にしてもここまで変わるもんなんですねー、スタンドって…」
じっと『ドクター・ブラインド』を見ている。

「流石にいっぱいいろんなことがあったんですねー。
 まぁそこまで長くなるなら別に無理はしませんよ。
 …スタンド能力ですか?」
どこか注意深そうにアリスの動きを見ていると。

「…確かに、その通りの客が入ってきましたよ!
 それがあなたの能力ですかー…」
涙音の考えでは、彼女の能力は聴力の強化のようなものだろうと考えられる。
最もそれは能力の一端にすぎないのは涙音は知らない…

81夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/21(月) 22:08:35
>>80

「そーいうコト!!
 アリスは『ミミ』がスッゴイいいんだよ。
 ほかにも『イロイロ』あるけど、
 ゼンブみせちゃうとつまんないから、コレくらいにしとこう」

スタンドの能力は『一人一つ』とはいうものの、
『ドクター・アリス』の『出来る事』は豊富だ。
特に、『即時の情報収集』に関しては随一と言っていい。
とはいえ、『同じような能力』がない訳でもない。

「でも、『にたようなスタンド』みたコトもあったっけ。
 『おなじタイプ』っていうか…………。
 にてるけどちがうカンジ??」

『モノディ』――『ドクター・アリス』と同じように、
『超人的聴覚』を持つスタンド。
しかし、他の部分はかなり違っていたし、
発現のきっかけも異なる。
『ドクター・ブラインド』が感覚を発達させたのは、
『全盲』の本体を補助するためだった。
それに対して『モノディ』は、
本体自身の『聴覚過敏』を打ち消すために、
生み出されたスタンドだった。
まさしく『対照的』だ。

「ところでさぁ、わたしはいつも、
 『オモシロいモノ』をさがしてるんだよね〜〜〜〜」

「アリスはウサギをおいかけるでしょ。
 そんで、わたしはアリス。
 だから、わたしはウサギをおいかける!!」

「つーワケで!!なんか『オモシロいハナシ』ない??
 なんでもイイよ〜〜〜〜」

話題は変わり、いきなりの無茶振りだ!!

82朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/21(月) 22:30:42
>>81
「全部…いまのも能力の一つにすぎないってことですか…
 なかなかきになりますね…」
そう言ってうなずいた。

「ほう、似たようなスタンドがいるんですね。
 …スタンド使いもいっぱいいるようですし
 似た感じのも現れたりするかもしれませんね…」
ふと、自分の母親のスタンドのことを思い返す。
どことなく自分のスタンドと似ていたようにも思える。

「面白いものですかー…
 好奇心旺盛なんですね、…うーん?」
突然話題は面白い話を!という要求に変わった!

「急にふられると…うーん…
 夏の魔物の話か…
 それとも、以前急に現れた妙な動画の話か…」
どうやら、必死で話題になりそうなものを探しているようだ…

83夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/21(月) 22:47:44
>>82

「あ〜〜〜〜そこらヘンのハナシは、
 もうしってるんだよねぇ〜〜〜〜」

ホットミルクティーとミックスサンドを順調に減らしつつ、
こちらも少し頭の中で考える。

「じゃあじゃあ!!『ルネのママ』のハナシしてよ!!
 レンラクサキもらってるんだけど、まだあったコトないし。
 どんなヒト??」

親子でスタンド使いというのも珍しい。
自分が知っている限りでは初めてのケースだ。
興味はある。

「オヤコだから、やっぱにてるんだよね??
 たとえば『スタンド』とかも」

『フォートレス・アンダー・シージ』を見る。
こんなスタンドが涙音から出てきたというのも、
なかなか不思議に思う。
一見したところ、共通点らしいものが見当たらないからだ。

「ま!!ソレはおいといて…………。
 おもしろいエピソードとかあったらきかして!!」

84朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/21(月) 23:12:42
>>83
「あー、知ってましたか…
 ならそっちは無理そうですね…」
と考えて、首を振った。

「おかあさ…あ、ゴフッ」
思わず咳き込むような動作をしてから

「母のことを知りたいと?
 興味があるんですねー…
 私は別に構いませんけど…」
そう言ってから少し考える。

「まぁ似てるといえば似てるかもしれませんね。
 兵士っぽい外見とか、パワーもそれなりにあるところとか…」
流石に能力までは言わないが、どうやら似ているスタンドらしい。

「母はとても頼りになる人なんです。
 あと、私とは違ってかなりの幸運の持ち主です。
 おみくじをひいていい商品を手に入れるなんてしょっちゅうでして…
 そういえば、旅行券を手に入れたときの旅行では…」

「『薫衣草園』で友達と楽しく遊んだとかそういう話をしてましたね…
 不思議な体験をしたとか何とかで…」

85夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/21(月) 23:37:16
>>84

「すっごい『ラッキー』なんだ!!イイな〜〜〜〜。
 それだったら『ウサギ』もイッパイみつかりそう」

頬杖をつきながら、いかにも興味ありげに涙音の話を聞く。

「『わたしとはちがって』??」

気になったところで相槌を打つ。
言い方からして、涙音は『ツイてない』のだろうか。
もちろん、どの程度アンラッキーなのかまでは知らないが。

「ほうほう!!ソレはハジメテきいたぞ!!オモシロそう!!」

そして、『旅行の話』には、大きく関心を示した。

「『フシギなタイケン』――ココロくすぐられるコトバですな〜〜」

『アリス』は『フシギ』をもとめるモノ。
『フシギなタイケン』ときいては、だまっていられない!!
コレは『ホンニン』からチョクセツきかないとな!!

「ルネのママにつたえといてくれない??
 いつか『そのハナシきかせてほしい』って」

        パクッ

             ズズズ

最後のミックスサンドを口に放り込み、
残っているホットミルクティーを飲み干す。

「ルネ、まだジカンある??
 せっかくだし、これからどっかアソビいこうよ」
 
        「ん〜〜〜〜〜〜」

「とりあえず『ブラブラしながらかんがえる』ってのは??」

スマホと紙ナプキンをポケットに収め、今日の予定を尋ねる。
ここでの話は一段落したようだ。
問題がなければ、ぼちぼち店を出る流れになるだろう。

86朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2022/11/21(月) 23:54:30
>>85
「うさぎをいっぱい…?
 まさか狩る…んですか?」
よくわからない感じのようだ…

「あー、その
 まだ私はついてないというか
 まぁ不幸と言えるかもしれませんね…」
そう言って軽く自分のみぞおちのあたりを触った。
そういえばたまに涙音はみぞおちのあたりを擦る動作を見せていた…かもしれない。

「まぁ旅行の話は結構聞きましたけど…
 やっぱり本人が一番その『不思議な体験』を知ってると思いますよ。
 もっと詳しく知りたいなら母から直接聞くのがいいでしょう。」
そう言ってうなずいた。

「確かに。お伝えしておきますね。
 きっと母も色んな人に話したいと思います。」
アリスに合わせて、涙音も食べ終えたようだ。

「時間ですか?
 もちろん、今日は一日フリーにしてありますよ。
 なにかするとしたら…じゃあブラブラしながら考えましょう。」
そう言って彼女も立ち上がった。

「遊びに行くとかなら、この辺にも色々ありますからねー。」
そう言ってお代を払い始めた。
会計を済ませればすぐにでも出られるだろう。

87夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2022/11/22(火) 17:54:38
>>86

アリスはウサギを追いかけて、不思議の国に落ちていった。
ウサギ――それは『好奇心』の象徴である。
だから、夢見ヶ崎明日美は、常に新しいウサギを探している。
自分を不思議の国にいざなってくれるからだ。
今日も、明日も、これからも。

「――――よし!!いくか!!」

支払いを終えて、店の外に出た。
『超人的聴覚』に意識を集中すると、あらゆる情報が入ってくる。
『ドクター・アリス』の能力は、こんな時にも役立つのだ。

「アッチのほうでナンかやってるみたい。いってみようぜ!!」

新たなウサギの気配を感じ、涙音を先導しつつ、
アリスは歩いていくのだった。

88花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/11/26(土) 02:51:24

          ガァァァァァ――――――――ンッ!!

        ガァァァァァ――――――――ンッ!!

      ガァァァァァ――――――――ンッ!!

    ガァァァァァ――――――――ンッ!!

  ガァァァァァ――――――――ンッ!!

星見町の外れにある『農園』に『五発の銃声』が鳴り響いた。

「おっと、ちっとばかり『距離』が遠かったかァ?」

       「だいぶ外しちまったな」

両手で『リボルバー』を構えているのは、
全身を『レザーファッション』で固めた『赤毛』の男。

「だが、まぁ『一発』ブチこめりゃあ十分だからよォ〜」

畑の中で、『偽死弾』の直撃を受けた小型の『イノシシ』が、
悲鳴を上げながら悶え苦しんでいる。
きっかり『4秒後』、
イノシシは何事もなかったかのように起き上がり、
一目散に畑から逃げていった。
その後姿を見送り、
『リボルバー』――『スウィート・ダーウィン』を、
手の中で回転させる。

「ハハハッ!!二度と来るんじゃねえぞォ〜〜!!」

『花菱蓮華』が、ここにいる理由。
それは『スタンド能力を使った仕事』を請け負ったからだ。
『畑を荒らすイノシシの撃退』である。
『彼もしくは彼女(>>89)』は、
『同じ仕事』を引き受けていたのかもしれない。
もしくは、『銃声』を聞いて様子を見に来たのかもしれない。

89花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/11/27(日) 01:44:38
>>88

「ハハハッ、さっさと逃げ出してくれて大助かりだぜェ」

             スッ

「『コイツ』でやっちまうと『後始末』が面倒だからなァ」

    ガァァァァァ――――――――ンッ!!

地面に銃口を向け、『最後の一発』を発射した。
『スウィート・ダーウィン』のリロードは、
『実弾の発砲』と同時に行われる。
逆に言えば、『実弾』がシリンダーに残っている限り、
リロードが出来ない。

「生きるか死ぬかの『デッドライン』を味わえば、
 もうここにゃあ近付いてこねえだろ」

   シャララララララァァァァァァァァァァァァァァッ

上機嫌で鼻歌を歌いながら、勢い良くシリンダーを回す。

「もっとも――――俺みたいに、
 『病み付き』になっちまうかもしれないけどよォ〜〜」

    ガァァァァァ――――――――ンッ!!

自分のこめかみに銃口を押し当て、躊躇なくトリガーを引く。
『拳銃のスタンド』というヴィジョンは、
単なる見せ掛けに過ぎない。
『スウィート・ダーウィン』の本質は、
『命』をチップにした『ロシアンルーレット』なのだ。

     「う、ごおおお………………ッ!!」

『焼死』を再現した『偽死弾』によって、
『4秒間の幻覚』の中でもがき苦しみ、のた打ち回る。
『ギリギリのスリル』を愛する花菱蓮華にとって、
それは『極上の快感』だった。
あらゆる『死因』を体感できる『スウィート・ダーウィン』は、
『究極の脱法ドラッグ』だ。

その光景を目撃した人間がいるかもしれないし、
いないかもしれない――――――。

90花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/04(日) 02:19:46
>>89

ひとしきりもがき苦しんだ後、倒れたまま上体だけを起こす。

  「――――――たまんねえなぁ」

             「最高に『スウィート』だ」

その時、前方から大きなものが近付いてくるのが見えた。
『大型の猪』だ。
どうやら先程の猪の『親』らしい。

「ハハッ、ガキをやられて頭に来たか?」

      「いいぜ、来いよ」

          スチャッ

立ち上がる事なく、猪に向けて『リボルバー』を構える。

「的がデカけりゃ当たりやすいからよォ!」

     ガァァァ――――――――ンッ!!

間髪入れず『偽死弾』を撃ち込む。
だが、今回は手強かった。
巨体に似合わぬ瞬発力で軸を外され、弾丸は回避される。
そればかりではない。
足元の土を吹き飛ばし、『目潰し』を行ってきたのだ。

「クソが…………!!」

   ガァァァ――――――――ンッ!!

     ガァァァ――――――――ンッ!!

       ガァァァ――――――――ンッ!!

         ガァァァ――――――――ンッ!!

すかさず『四連射』。
しかし、命中していない。
敵の反応から、それが分かる。

        バ ッ

咄嗟に地面を転がると、その横を猪が駆け抜けた。
ギリギリで避けられたが、『次』はない。
こうしている間にも、猪が反転してくる。

  ガァァァ――――――――ンッ!!

最後に残った『一発』が発射され、
力を失った猪の体が大地に倒れ込む。

「チッ――――――」

     「『後始末』が面倒くさくなっちまったぜ」

91甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/10(土) 11:02:45
ここは星見町…ではない

今、あま公は星見を離れて>>92と旅行に来ている
その旅行先とは…

92円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/10(土) 23:58:00
>>91

師走の冷えた風が吹き、隣の少女は大げさに帽子を手で押さえた。
前をしっかり閉めた厚手のパーカーで、身は震えずに済んでいる。

「うわーっやばーい! みてみてみてー天音ちゃーん!
 これ、緑だけど抹茶ソフトじゃなくってわさびソフトだって!
 辛いのかなー!? ぜんぜん味の想像つかなーい! あはーっ」

        「あ! 普通の抹茶ソフトもある!
         食べ比べたら頭わけわかんなくなりそーっ」

あくまで高校生の小旅行だ。
多少頭のネジがぶっ飛んでいたって、
それほど無茶な行き先にはならない。

「あーでもでも、スイーツだけじゃなくってお土産も探さなきゃ!
 パパとママはなくて良いよって言うけどー、なかったら絶対落ち込んじゃいまーす」

        ――――S県I市。
        温泉と景勝地に恵まれた観光都市。
        名物はぶどうではなく、『わさび』

いつもの町を飛び出し市すら超えている。これは快挙といっていい。
なんで来たのか、なんでセララを連れて来たのかはこれから分かる……かもしれない。

    「ねえねえ天音ちゃん天音ちゃん!
     なんか面白そうなの見つけましたー?」

…………わからないならわからないで、それも青春の1ページだ。

93ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/12/11(日) 05:14:00
>>91-92

『旅行』に来た二人は、『それ』を見たかもしれない。

      ――――――プカァ

海か川か湖か。
厳密な場所は別として、ともかく『水面に浮かんでいる』。
遠目からなので分かりにくいが、『毛むくじゃらの生き物』だ。
どこかで見たような気もした。
しかし、場所を考えると『別人』かもしれない。

                 「ミャー」

風の音に混じって、微かに『鳴き声』が聞こえた。

    スィィィ――――…………

やがて、二人の視界の中で、
『野生のラッコ』は静かに流れ去っていく…………。

94甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/11(日) 14:59:08
>>92
風が吹いて来た、という事はここは屋外か
こんな寒い時期に外でソフトクリーム食べる奴なんているのだろうか
風邪引いたりしないか?
いや、屋内に入って食べるのか

ここはS県I市、名物はわさび
わさびソフトも良いが、やはりわさび丼は外せないだろう

それにしても、
わさびというとどうしても昔のわさびを連呼してたFlash動画を思い出してしまう

そんな事を考えていたら…

>>93
面白いかどうかは分からないが…見た

「…あれ」

『それ』を指差して言った

見覚えがあるかどうかと言えば、あるだろう
水族館で見た事もあるし、テレビとかでも見る事はある
が、自分が知っている個体と同じ個体かは分からない

だが、人じゃない生物に別人という表現が適切ではないという事だけははっきり分かる

ミャーという鳴き声と共に視界から緩やかにフェードアウトする謎の生物を
追い掛けるわけでもなく、静かに見送る

「ああいうのはどこにでもいるのか?」

あまの知る限りでは、ラッコは絶滅危惧種のレア生物だし
そんなにどこにでもいるものではない

95円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/11(日) 19:34:58
>>93
>>94

通りにはいくつか観光客向けの店が並んでいる。
かなりミーハーな観光スポット、って感じではあるが……
実際、少なくともセララはI市の玄人でもないしそんなものだろう。

「え! あった? さっすが天音ちゃん、面白いもの見つけるの上手ーい!
 で、なになに…………えーっ、うそーっ、ここにもラッコー!?
 町にいた子とは別ですよねー? 最近けっこういるのかなー!?」

川と隔てる柵にしがみついて、流れていく毛玉を見送る。
とはいえ……『ラッコ騒ぎ』は夏がピーク。もう珍しい物でもない。

「あはーっ、まーでも、ラッコよりワサビだよネ天音ちゃん」

        「ラッコはもう行っちゃったけど、
         ワサビはほら!どっち向いてもあるし!」

見かけたら嬉しいが、旅には添え物でしかないだろう。
セララはくるりと回って、それから視線を止めた。

「お昼もまだだもんねーっ。ねえねえ、この辺でどっか入ろ?
 あたしソフトクリーム見てたらお腹空いてきちゃいましたーっ」

この辺……やはり観光客向けらしき食堂はいくつか見当たるが、
はたしてかの有名な『わさび丼』は置いてあるのだろうか?
あったとして、それはあま公のお眼鏡にかなう『本気』の逸品だろうか?

        ・・・鎮座するワサビを模したマスコットは何も答えない。

96甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/12(月) 15:18:51
>>95
わさびが名物というが、
そんなにわさびだらけなのか?

ワサビを模したマスコットを見る
ワサビのマスコットは可愛いのか、キモイのか
いや、可愛いとかキモイとかの基準は人によって違うだろうが

しばし飲食店を探して、丁度良さそうな食堂を見つけた
客で賑わっている…というわけでもなく
まぁ、そこそこな感じの食堂だ

食堂に入ってみると、女将が客席から見える所で料理をしている様子が見られる
料理は女将一人でやっているようだ

あま公は席に着き店員を呼びつけると、
「これ」とメニューに書かれたわさび丼を指差した

他にどんなメニューがあるだろう?
何を頼むかは円谷次第だ

97円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/12(月) 19:36:30
>>96

セララはマスコットに「変なのー!」とだけ言い、
甘城に続いて店内に入る。

「わーっ、なんか風情あるー!
 旅行に来たって感じでいいネ!
 流石天音ちゃんチョイスー!」

言うほど『風情』と言う感じでもないが、セララは周囲を見渡し、
それから帽子を取って席に着いた。

「あたしはねーっ、こっちのお蕎麦とハーフのセットにしちゃお!
 あとあと、天音ちゃーん、このわさびの天ぷらも頼んだら食べる?」

          「食べないならあたし一人で食べちゃうけどネ」

メニューを覗き込み、一品にも目を止める。
そんなワサビなら何でもあるかは分からないが、
こういう観光客に寄せた店には無茶な品も多い。
ただ、風情のかけらもないロシアンたこ焼きなどは、
流石にセララも一瞥だけして読み飛ばしたが。

「わさび巻きとかわさびうどんも気になるけど、
 炭水化物ばっかりだと太っちゃうもんねーっ。あはは!」

「あーでもでもこっちのアボカドのやつも気になるなーっ!
 天音ちゃんアボカド好きだっけ!? あたしは大好きでーす!」

気になってはいるが、メニュー自体はもう決めている。
メニューを見せ続けていると永遠に気になるかもしれない。

甘城が問題ないなら、とりあえず店員には戻ってもらえばいいだろう。

98甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/13(火) 16:22:10
>>97
「ん」

ついでにわさび茶も頼んで注文を終える
メニューを見てると、本当にわさび料理が豊富だ
こんなの頼む奴いるか?というのもあるが
観光客は物珍しさで頼んでみたくなるものだろうか

ジンギスカンキャラメルなんてゲテモノを
北海道土産で買ってく観光客とか多いし、ゲテモノも案外売れたりするのか

しばらくすると、店員が料理を乗せたお盆を持って来た
円谷の蕎麦やわさびの天ぷらが運ばれてくる
そして、あま公の前にわさび丼が置かれる

鰹節が乗せられた丼の横に、生のわさびと卸し金
ここのは自分で卸すタイプらしい

このわさび卸し、よく見ると小さく「わさび」という字が書かれている
鋼鮫という、本わさび専用のおろし板だ

あま公はわさびを手に取り、鋼鮫で擦り卸した
ただ考え無しに擦れば良いものではない
まあるく、まあるく擦り卸すのだ

ザリ… ザリ…

只只管、無心でわさびを擦り卸していると
自分は何でここでわさびを擦っているのか
何故ここに来たのか、何で無駄に生きているのか…
余計な考えが次々と湧いてくる、全く無心になれていない

99円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/13(火) 23:27:15
>>98

「うそーっ、お茶もあるの!?
 わーっよく見たらワサビのお酒とかもいっぱーい!
 ママに買って帰ったら喜ぶかなーっ!?」

周りの客達も思い思いのワサビ料理を頼んでいる。
珍しい料理を食べる事はそれだけで旅を彩る思い出だ。

       スリスリスリスリ

セララの前にもハーフサイズの丼が置かれ、
手際よくワサビをすりおろしていく。

「あはーっ、なんだかとんかつ屋さんみたいだネ。
 良いにおーい、スーパーで買うのよりフレッシュな感じ!」

ゴマをすり鉢でするような話だ。
適度な労力が飯の味をより高めてくれる――――

         コト

やがて擂り終えたワサビを皿の端に置き、
手を合わせていただきます、と言ってから。

「天音ちゃん天音ちゃん、そーいえばこの後どうする?
 あたしI市って初めてだから名所とか全然知りませーん」

         「調べてはみたけど、
          天音ちゃんどこ行きたいんだっけ!」

この後の旅程について話を振った。

甘城の中には厳密な旅のしおりがあるのだろうか?
少なくともセララはただ少し離れた町に遊びに来た程度の心構えだ。

100甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/14(水) 16:33:48
>>99
ザリ… ザリ…

わさびを只管擦り続ける作業をしていると、次第にぼーっとしてくる
そんな感じで作業をしていると

ザリィ!!!

勢い余って手を擦ってしまった

擦られたわさびに血が混入しているが、
まぁ多少の血ならそこまで問題無いだろう

血が付いた卸し金を置いて、わさびが盛られた丼に手を付ける

辛さというのにも種類があり、
唐辛子の辛さは口の中が焼けるような痛みが走る
それに対してわさびの辛さは、
ビリリと電流が流されるような感覚がする

(><)

こんな感じの顔になりながら泣きながらわさび丼を食べる
そんなに辛いならやめろよと思うかもしれないが
不思議と食べ勧める箸が止まらない

そしてやや鉄臭い血の味も混じっているが、それも良い味付けに…なってるかなぁ

少し舌を休めるために、わさび茶を手に取る

わさび茶というと、これも一見辛そうではあるが
飲んでみると、わさびすっとした香りがするが
味はとてもまろやかで仄かな甘みが感じられる

>調べてはみたけど、
>天音ちゃんどこ行きたいんだっけ!

I市は温泉が豊な土地だ
だからこの後、温泉街に行って温泉に入る予定がある
だがその前に…

「旧Aトンネルに行く」

あま公の口から告げられたのは、危険度A級の心霊スポット…!

101円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/14(水) 21:38:17
>>100

「うわーっ、天音ちゃん血出てる血出てる!
 あたし絆創膏持って来てるからちゃんと止めてくださーい!」

         スッ

絆創膏ではなく、キズパワーパッドだ。
まあ似たようなものだが。

ともかく……貼るように勧めつつ、セララも箸を取る。

「うわーっ全部からーい!
 んーでもでも、結構美味しいかも。
 良いわさびって新鮮だとこんな味なんですネ」

            ツルツルツル

    「チューブわさびで同じ事したら、
     ぜーんぜん美味しくないんだろーなー」

                ザクッ

蕎麦を啜り、天ぷらを齧り…………
セララの好物はもっとわかりやすい美味しさだったが、
旅先のテンションもあり美味しく食べられる。


「え! なになに、QAトンネル?
 知らないけどなんか面白そーっ。いいよ行こ行こ!」


安請け合いだ。

旧Aトンネル……某アニメ映画のモデルともされ、
立派な観光地だが、如何にも『ありそう』でもある。

          パシャー
 
「あはーっ、完食記念!
 この後、トンネルでもたくさん撮りまくっちゃいましょーネ」

セララはスマホを出し、自分の食べ終えた皿を撮る。
それから自撮りも1枚……望むなら甘城も撮る。
ここは観光地向けの店。写真はいつでも『歓迎』だ。

…………心霊スポットもまた、『写される』事を待っているだろう。

102甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/15(木) 16:30:13
>>101
円谷から渡されたキズパワーパッドを、言われるがままに傷口に貼る
痛みがすーっと引いて行く…わけではないが、幾分かマシになる
実はさっきから痛かったのだ
ちょっと涙が出ていたのは、わさびの辛さだけではなく
痛みに耐えていたのもあったのかもしれない

そうこうしているうちに、わさび丼を完食
丼の底には、ちょっと赤い物が付いていたが気にしなくても良いだろう

そして今は、デザートのわさびプリンを食べている
このプリン、わさびの風味がするが
プリンの甘さとレモンの果汁がわさびの辛さを打ち消している

それにしても、いくらわさびが名物だからって
ここまで全部わさび製品ばかり食べているのはどうなんだ

「うん」

完食記念の撮影で丼を持ち上げるあま公
その丼には、やはり血痕が付着している
こんな物を撮って気持ち悪くならないか?

食事も済ませ、そろそろ次の目的地…旧Aトンネルに行こう

会計時に、お土産コーナーに置かれていたわさびのマスコットをなんとなく買ってみた
わさびのマスコットというと…どういうのなんだ
わさビーフの旧マスコットの牛みたいなのなら可愛いかもしれない
今の豚みたいなわけわからん奴は可愛くないが

103円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/16(金) 19:10:52
>>101

「なんかねー、潤う?から傷にいいんだってそれ!
 一応持ってきといてよかったーっ。早く治ると良いネ」

        ズズーッ

そばを音を立てて啜り終え、
先に頼んでいたわさびクリームサンドとお茶で一服。

「おんなじわさびばっかりなのに、
 なんか飽きない感じ。
 あはーっ、3食これなら飽きるだろうけど!」

           「I市の名物は他にもあるもんね!
            例えば例えば、えーと、海鮮?」

メニューももちろんわさびしか無かったわけではない。
わさびだけを選んだ……選んだからこそ意味がある。

「あ! 天音ちゃん変なの買ってるー!!
 あたしも買っちゃお、同じのもう一つくださーい!」

わさびマスコットは……わさびそのものだ。
そこに顔と手足がある。安直極まりない。
ただ……実在の『S県ゆるキャラ』の逆鱗に触れそうなので、
この件については、追及はこのあたりまでにしておこう。

「は―食べた食べたーっ! 美味しかったね、御馳走様でしたーっ」

             「それで天音ちゃーん。
              キューエートンネルはどう行くんだっけ!
              レンタサイクルさっきあったけど借りちゃう?」

旧Aトンネルはアクセスの悪さでも有名だが……
幸い、二人は元気があり余った若者だ。行く方法は無限にあるだろう。

104甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/17(土) 16:34:34
>>103
わさびそのものなマスコット…
記念に買ってみたものの、後になって
「何故こんな物を買ってしまったのか」と
後になって後悔する事になるやつかもしれない

「んん…」

旧Aトンネルまでは少々距離もあり、徒歩で行くのは厳しい
タクシーに乗るという選択肢もあるが
折角観光に来たので、色々と見て回ってみたいだろう

自転車をレンタルして旧Aトンネルまで向かう二人
道中、I市の景色やら何やらを色々見て回るが
何か変わった事があったならダイジェストで流しても良いかもしれない

そして今、旧Aトンネル前にいる…
正式名称、A隧道
このトンネルを自動車が通ると、手形がべったりと張り付いている等の話がわんさかある
苔むしていて、ひんやり冷たい空気が漂っている…
確かに、何かありそうと言われればありそうだ

懐中電灯を構えて、中へと入って行く
果たして、中には何かあるだろうか…

105円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/18(日) 17:39:27
>>109

「あはーーーっ、すっごい景色! 星見町よりずっと広ーい!!」

I市の景色は長閑なもので、
寒さも自転車を漕ぐ内に涼しさに言い換えられる。

     旧AトンネルはI市の中心辺りにあり、
     そこに向かう道はそれ自体が観光。
     地元の道を走るのでは得られない体験だ。
     友達との旅行なら、なおさら。

               ・ ・ ・ そして。

        ゴ ォォォォ ォォォ 

通行の役目を譲ってなお観光地としてI市を支えるこのトンネル。
この時間帯には他の観光客も見当たらず、物々しく静謐な雰囲気が漂う。

「疲れたーっ。こんなに自転車乗ったの久しぶり!
 それで天音ちゃん天音ちゃん、
 これがキューエートンネルでいいの?」

「なんかすごいですネ。近くのトンネルより神秘的な感じーっ」

苔むしたその外壁をしげしげと眺めていたが、
甘城が突入すると特に躊躇もなくそれに続く。

「わーっ中入ると涼しーっ。なんかすっごく冒険って感じだねー!」

一見すると古びたトンネル…………にしか見えないが、
果たして数々の伝説は全て噂に過ぎないのだろうか?

…………もっとも、何も出て来なくてもそれはそれで良い思い出かもしれないが。

106『旧Aトンネルの怪異』:2022/12/19(月) 06:34:16
>>104-105

歴史を感じさせるトンネルの内部に足を踏み入れると、
冷たい空気が全身を包み込む。
『人間以外の何か』が出たとしても、決しておかしくはない。
この非日常的な場所には、そういった雰囲気が漂っている。

《――――…………》

耳を澄ますと、闇の奥から何かが聞こえる。
『風の音』だろうか?
いや、違う。

《………………『死ねば良かったのに』………………》

それは『人の声』だった。
奈落の底から響いてくるような恨みの篭った女の声だ。
観光地に人が来るのは当然としても、
内容や声色は不気味そのもの。

107甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/19(月) 16:23:18
>>105
暗くて静かなトンネルの中に足を踏み入れる
中は少し湿っているようで
ひんやりとした冷気を感じる…霊気か?

夏ならば、このひんやりとした感じも悪くはないが
ただでさえ寒い冬に、この冷たい空気は体に毒と言える
冷気が体を蝕み、体温が奪われていく…

懐中電灯で辺りを照らすと、
外観とはまた違う雰囲気が漂う光景が見られる
歴史を感じさせる古い壁は、不気味さを感じさせると同時に
齢を重ねたそれ特有の、荘厳さや美しさといったものがある

しばし、それを眺めながら歩いていると…

>>106
「何か言った?」

聞き間違いか幻聴か?
いや、今のははっきりと聞こえた「人の声」だ
よく聞いている円谷の声でない事も確かだ

何が死ねば良かったというのだろう?
そんな事は無関係な自分がいくら考えたって分かるわけがない

少し辺りを見回して見ると、壁に顔のような染みを発見する
シミュラクラ現象というものだ
3つの点が集まれば、人はそれを顔と認識してしまう錯覚である
世の中の心霊写真の大半は、このシミュラクラ現象だ

この染みを顔のように認識してしまうのも
心霊スポットという場所だからか、そういう心理が働くからかもしれない

この壁の染みを、なんとはなしにスマホで撮影してみる

108円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/19(月) 19:25:51
>>106
>>107

     「わっ! 天音ちゃんってば……」

不気味な声に思わず周囲を見渡す。
甘城ならやりそうな悪戯だと思い、声をかけるが……

「え、あたしー!? ナイナイ、何も言ってないでーす!
 だって、あたしだったら天音ちゃんに聞こえるように言うよ」

       「天音ちゃんでもないよね?
        なんか不気味ーっ。
        誰かのイタズラかなー!?
        死んでいい事なんか何もないのにネ」

     スッ

        ―シャリリリリ

「変な人かもだしー、そうだったらやっつけちゃお!」

『リトル・スウィング』を念のため発現して、
その輪っかを一つだけ手に持っておく。

「もしもーし、誰かいるんですかーーーーーーっ」

先制攻撃を仕掛けるほど戦いは好きでもない。
やったら誰にでも勝てるとしても。

「あ! 天音ちゃん、撮った写真あとでラインしてネ」

甘城にそんな声をかけてから、周囲をもう一度見渡してみる。

109『旧Aトンネルの怪異』⇒???『???』:2022/12/20(火) 05:13:31
>>107-108

闇の中から聞こえてきた声は、
甘城のものでも円谷のものでもなかった。
もっと年上の成人女性の声だ。
確かに、『悪戯』にしてはタチが悪い。

      ヒッタ 

              ヒッタ 

                      ヒッタ 

円谷の呼び掛けに応じてか、『足音』が近付いてくる。
しかし、これも妙だった。
靴底が地面を踏む音ではないのだ。
『裸足』なのだろうか?
何とも説明しづらいが、奇妙な響きだ。

《………………『もう少しだったのに』………………》

だんだん声が鮮明に届くようになってきて――――――。

《で、『後ろを振り向いたらいなくなってる』ってヤツ!
 そういう話ありますよね〜!》

いかにも『恨めしそうな声』が、
突如として『賑やかな女性の声』に変わった。

《別バージョンとしては、
 ちゃんといるんだけど『記憶が飛んでる』とか?
 どっちが怖いですかね?そりゃ誰もいない方でしょ!
 って思うんですけど、誰かいたらいたで、
 それも怖いんですよ》
 
《ほら、『生きてる人間が一番怖い系』の。
 『覚えてない』と見せかけて、
 実は『事故に遭わせる気だった』とか。
 うわ、こわ〜い!コレ一番ヤバくないですか?》

二人とも何となく分かる。
この音声は『ラジオ』だ。
『S県I市』の放送が流れているのだろう。
しかし、ただでさえ山の中で電波が入りにくい。
おまけにトンネル内という状況では、
普通は『受信困難』のはずだった。

              「ミャッ」

110甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/20(火) 16:23:05
>>108-109
スタンドを出して謎の声の主への迎撃の姿勢を見せる円谷
そんな円谷を見ながら、声の主を探してみる

…ラジオ?
ここでラジオを流しているのか

こんな所で聞いているのも妙だが
この時期に怪談話をしている内容も若干時期外れで変な内容だ
いや、別にいつ怪談話をしようが、そんなのはその番組の勝手だが

>              「ミャッ」
「…」

これは、ラジオの音声か?
多分違うだろうし、人の声でもない

こんな山に、あの動物がいるとは思えない
思えないが…

何か聞き覚えがあるような小動物らしき声の方へスマホを向けて
その姿を撮影してみる

撮れるのは心霊写真か?それとも…

111円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/21(水) 16:16:23
>>109
>>110

「あはーっ、なーんだ!
 誰かがラジオ聞いてるだけみたいだネ天音ちゃん」

セララはラジオの仕組みに詳しく無い。
『音声コンテンツの一つ』くらきの認識だ。
外で聴くのは珍しいとは思うが…………

「確かにここで聴いたら雰囲気ありそうだもんねーっ。
 あたし大声出してお邪魔してごめんね!」

    「あ! でもでも、足音はなんか変な気が――」

謎は解けたかに思われたが、
『謎の足音』はラジオらしくない。

   セララは足音の方に顔を向ける――――と。


「あれ! 今の声!
 あたしどこかで聞いた気がしまーす。天音ちゃんはある?
 ヒントはねーっ、天音ちゃんが今日も一回見てる動物! 」

      スタスタスター

          「まあネコとかかもしれないけどネ。
           怖い人じゃなきゃ怖い事なんてないからいいや!」


聞こえて来た鳴き声に、向けた顔はそのまま足を進めていく。

112ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/12/21(水) 17:31:00
>>110-111

甘城が持つ懐中電灯の光に照らされて、
『声の主』の姿が浮かび上がる。

           「ミャア」

全身が毛皮に覆われた小型の海獣――『ラッコ』である。
『人間以外の何か』ではあったが、
いかにも『出そう』な雰囲気に反して、
幽霊の類ではなかった。
現実というのは案外こんなものかもしれない。

  『ラッコが山中のトンネルにいる』という謎は除いて。

            パシャッ

写真は無事に撮影された。
古びたトンネルの中に佇むラッコという、
恐ろしくミスマッチでシュールな絵面が出来上がっている。
心霊写真よりも目にする機会は少ないだろう。

     ザァァァァァァァァァァァァァァァッ

そして、ラッコの周囲を、
『人型スタンド』が乗る『ボート』が回っていた。
いつだったか、
公園で七面鳥とキャッチボールしていた甘城は、
それを見た事がある。
忘れていたとしても、それはそれで。

《途中から聴いてる方のために説明しますと、
 当番組では『真冬の怪談スペシャル』を放送中です。
 『コタツで食べるアイス』みたいなアレですよ。
 『わざびソフト』でなくてもいいですけどね!》

『ボート』には『ラジオ』が積んであった。
ステレオスピーカーとロッドアンテナを備えた、
『ラジカセ』を思わせるレトロなデザインだ。
先程からの音声は、ここから流れていたらしい。

         ヒッタ ヒッタ ヒッタ

二人がいる方向に向かって、
低速(スD)で近付いていくラッコ。
『ボート』の全長は『3m』で、全幅は『1.2m』。
トンネルの中だと、多分ジャマになりそうな気がする。

113甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/22(木) 18:06:38
>>111-112
答え合わせ
「ラッコ」

            パシャッ

これが霊的存在の類だったなら、
某ゲームのように撮影をする事でダメージを与えられたかもしれない

だが居たのはラッコだ
この写真どうしようか?
SNSにアップしたとしてもコラにしか見えないだろ
意味不明である意味心霊写真よりも怖い

そしてこのラッコ…
七面鳥とキャッチボールをした時の個体と同一個体である事が
ラッコの周囲を巡回する船のスタンドを見て理解する

星見町からここまで来たのか!?
そして何故ばったり出くわすのか…

「最初に言っておくけど私は妄想癖でも総合失調症でも病気でもなんでもない」

「最近ラッコの忍者に狙われてる。」

というのは冗談だが
ラッコが猫の忍者のように自分を付け狙っているわけではないだろう
マジでわけ分からん偶然だが、何度も変な所でこのラッコと遭遇するのは何なんだ?

ラッコがヒタヒタ近付いてくる
このボート、確かボールを串刺しにするくらいには危険だった気がするが
何故ラッコは近付いてくるのか?
遊んでほしいのか?別の目的があるのか?
それとも別に、こっちには用は無く、たまたま進路上に自分がいるだけなのか?

いや、ひょっとして餌を寄越せと脅迫しているのか?
仮にそうだとしても、野生動物に無関任に餌付けをするのはどうなのか?
さて、ラッコに何かやれそうな物はないかとポケットを弄ると
わさびのマスコットが出て来た
これをラッコにやろうか?ラッコがこんな物貰って喜ぶかは…微妙だが

すっ、とマスコットをラッコに差し出してみる

ちなみに後で知った事だが、このマスコット魔除けの効果があるらしい
わさびの殺菌効果がどうだこうだだとか

114円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/23(金) 17:07:14
>>113
>>114

「やっぱりー! でもでも、さっきとは別の子かな?
 あたし達自転車でだいぶ頑張ったもんねー!!」

ラッコは川を経由できる分もあるし、
食事の時間もあるので実際は計算は合うはずだ。

      水辺に特化した進化を遂げた生き物が、
      山にわざわざ来た理由は置いておく。

「あはは! この子って忍者なのー!?
 天音ちゃんってばいっつも面白ーい……

      …………かなーって思ったけど」

   「とりあえず普通のラッコじゃないですネ」

        シュリリリリリリリ

『二輪目』を取り外し、頭上に浮かべる。
『一輪目』は前方0.5mに浮かべておく。

「天音ちゃん天音ちゃん! このボートって危ないやつだと思うー!?」

もちろん問答無用で攻撃なんて事はないが……この状況、少々剣呑だ。

115<削除>:<削除>
<削除>

116ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/12/24(土) 07:37:55
>>113-114

疑問点は多いが、確実な事は一つだけ。
ここに『ラッコがいる』という事だ。
そして、海獣は人間達に近付いていく。

     「ミャー」

わさびマスコットの匂いを嗅ぐラッコ。
その間に『ボート』は消えていた。
なぜ出していたのかというと、二人が来る前に何かがあり、
そのために必要だったのかもしれない。

           ヒョイッ

差し出されたマスコットを受け取り、
『一輪目』の中央に放り投げる。
『輪投げ』の逆バージョンのような形だった。
目の前の状況を見て、そういう遊びだと思ったのだろうか。

              ――――――ポトッ

『輪』を潜り抜けたマスコットが地面に落下する。

117甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/24(土) 16:11:14
>>114-116
「危ない奴」
「前にボールを串刺しにしてた」

ボートが危ない奴かどうかという質問に
この前キャッチボールをした時の記憶から答える
危ないかどうかで言えば絶対危ない奴だろう

そのボートは今は消えているが…
じゃあ今は絶対安全か?というと分からない
何かの拍子にまた出て来るかもしれないし
そもそもラッコという動物そのものがそこそこ危険生物だ
本当なら不用意に近付くべきではないし、保健所辺りに通報するべきかもしれない

マスコットがラッコに放り投げられて輪を通過して落ちるのを見る

「…」

何なんだこれは?
ラッコはこれ、楽しいのか?
ここから…どうすればいいんだ!?
どう収拾着ければいいんだ!?

冷たいコンクリートの上に転がる哀れなマスコットを拾い上げ
再びラッコに投げ渡してみる

「何がしたいの?」

返ってくるはずもないだろうが、ラッコに問いかける
ラッコからしたらお前こそ何がしたいんだって感じかもしれないが

118円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/24(土) 20:57:34
>>116-117

「串刺し―っ!? なにそれ、やばーい!
 ってあれ、いなくなっちゃった!
 いなくなったってことは、危なくないってコト?」

より厳密にセララの意図を言うなら、
『危険はないとアピールされている』――という判断だ。
つまり、『武装解除』。

「あれーっ投げちゃった。いらないみた――――」

            スポッ

投げられたマスコットを見て笑うが、
それが自分の輪を通り抜け……

「えー!? かわいいーっ。
 なになに、この子って水族館の子なのかなーっ!?」

        「でも水族館ってラッコの芸なんかしたっけ?
         イルカとかアシカなら知ってるけど」

『ラッコが楽しむ遊び』ではなく、
『自分達を楽しませる芸』だと言うのがセララの発想だ。

「ねえねえ天音ちゃん、もしかしておやつとか欲しいんじゃないでしょーか!」

         「ラッコってホタテ食べるんだよね?
          あたしラムネしか持ってないなー!
          身体に悪いかな?」

リュックを漁りながら、ラッコと甘城の動向を見守る…………

119ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/12/25(日) 09:11:00
>>117-118

ラッコを含めた多くの動物から見れば、
地球上に人間より危険な存在はいないだろう。
様々な理由で、数え切れない生物を滅ぼしてきた。
毛皮目当てに乱獲されたラッコも、
人の手で大きく数を減らしている。

                 「ミャッ」

そんな歴史を知ってか知らずか、
甘城が投げてきたマスコットを、器用にキャッチするラッコ。

            ゴソッ

そして、ラッコは『ポケット』に前足を差し入れた。
左前足の下辺りに、ポケット状の構造があるのだ。
正確に言うと、そういう器官ではなく、
毛皮の余った部分を有効活用しているのだが。

       コト

地面に置かれたのは『シーグラス』だ。
何年も掛けて波に揉まれ、角が取れたガラスの小片である。
わさびマスコットと同じく、鮮やかな緑色だった。

            「ミャー」

意図は不明だが、旅行の思い出の一つとして、
もらっておいてもいいのかもしれない。

120甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/25(日) 19:21:44
>>118
「駄目でしょ」

芸(?)を見せるラッコに餌付けをしようとする円谷へ一言
野生なのか水族館の飼育動物かは分からないが
動物に勝手に餌をやるのもどうかって話だが
くれてやるにしても、その餌の内容も問題だ
人の食べ物は基本的に他の動物が食べるには適さない
ラムネは中毒になる成分は無いだろうが…
やはりラッコに食べさせるには不安があるだろう
1、2粒程度なら問題無いかもしれないが

>>119
「?」

まるで四次元ポケットだな…
たぬ…猫型ロボットではないが

これは、交換という事で良いのだろうか?

懐中電灯に照らされ、
暗闇の中で緑色に輝くシーグラスをマスコットの代わりに拾う

何故ラッコがそんなのポケットに入れていたのか知らないし
傍から見ればただのゴミに見えるかもしれないが
これも旅の思い出というやつか

「ミャー」

「ミャ」「ミャミャミャ」「ミャー」

今のは、ラッコ語で
「ありがとう」
「私達これから温泉に行くんだけど、良かったら一緒にどう?」

的な事を言ったのだが
本家本元のラッコに通じるかは不明だし
円谷から見れば突然ミャーミャー言い出して狂ったように見えるだろう

121円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/26(月) 13:49:51
>>119
>>120

「やっぱりダメ? ですよねーっ、人間用のだし」

          スッ

      「あたしたちだけで食べよ!
       糖分取っとかないとね」

袋入りのラムネ(コーラ味)を甘城に差し出しつつ、
ラッコの動きを見守る。

「って、えー! なにこれなにこれ、宝石!?
 もしかしてマスコットと交換してくれるって事?」

    「あはーっ、なんか絵本の話みたーい!」

旅行らしい……かどうかはさておき、
この世に何人ラッコと物物交換をした人間がいる?
旅の目的を思い出とするなら、この上無い体験だ。

「あははは! 天音ちゃんってラッコ語も話せるのー!?
 あたしも勉強したいなー。旅館着いたら教えてくださいネ!」

       「本物のラッコさんもいたら、
        もっと勉強捗るかも。
        あ、でもペットNGかなー!?」

セララはごく自然にラッコが『来る前提』でいる。
なぜなら、その方が自分たちにとって楽しいような気がするから。

122ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/12/26(月) 16:45:40
>>120-121

甘城に渡ったシーグラスはライムグリーン。
希少度的には『ややレア』くらいの品だった。
ラッコ語による意思疎通の成否はともかく、
互いに敵意がない事は伝わったはずだ。

       「ミャッ」

              テト テト テト

わさびマスコットを持って、甘城の自転車に歩み寄るラッコ。
その光景は、『カゴ』に乗ろうとしているようにも見える。
丁度いいスペースではあるかもしれない。

          「ミャア」

何を考えているのか読み取れないつぶらな瞳で、
ラッコが甘城と円谷を見上げる。
もし自転車に乗せられたら、
そのままラッコはついてきそうな気がした。
どこまで一緒に行くかは分からない。
少なくとも危害を加えてくる様子はなかった。
楽しい旅行に興を添える一風変わったお供にはなるだろう。

123甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/27(火) 16:07:31
>>121-122
「ミャア」

円谷からコーラ味のラムネを貰い
ラッコ語でありがとうと言ってラムネを口に放り込む
それは日本語で良いだろ

自転車にノコノコと近寄って来たラッコを担ぎ上げ、カゴに乗せる

「行くか」

ラッコを乗せて自転車で駆ける姿は異様だ
すれ違う者は、そのカゴに乗った生き物を二度見する事だろう

今回泊まる温泉旅館は、都合の良い事に動物の連れ込みも可だった
動物も一緒に入れる温泉があるらしい
ラッコが温泉に入るかどうかは分からないが
動物の餌も販売されてたりするので、ラッコ用の餌も買えるかもしれない
更に飲泉…、温泉を飲む事も出来るらしい
ラッコが温泉を飲むかは知らないし、ラッコに飲泉の効能があるかも知らないが

…トンネルを抜け出る際、壁の染みの表情が変わった
…ような気がした
実際変わったのかどうかは不明だ

124円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2022/12/28(水) 16:26:07
>>122
>>123

「あははは!! ミャアミャア〜」

どういたしまして、と言いたいわけだ。
ラムネの袋はポケットにしまい直し、
それから、担がれるラッコを見て頷く。


    「うんうん、行こ行こ!
     旅行って人数多いと楽しいし、
     旅は道連れってやつですよねーっ」

         シュリリリ

『輪』を手首に戻して、トンネルから自転車に戻る。
非日常の中での非日常との遭遇。夢はまだ覚めない。


    ビュオオオ ッ ……

        「わっ」

トンネルを抜ける風に帽子を抑えた。
表情の変わる壁のシミは見逃したが、
行った先で、何もなくたっていい。

「天音ちゃん、落とさないようにネ!
 日本初の『捨てラッコ』の人になっちゃうから! あはーっ」

旅の仲間を一人増やして、自転車は次の目的地に走り出す。
この旅がどんな経路を辿ったのかは彼女らのみが知ることだが……

           どうなっても、良い思い出だ。

125ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/12/29(木) 12:42:35
>>123-124

『旧Aトンネル』を出て、二台の自転車は走り出す。
甘城のカゴに乗せられ、風を切る海獣。
こうしてラッコは、人間達の旅に同行する事になった。

今日の宿は、
人間以外も受け入れてくれる心の広い旅館だったが、
ラッコが来た事はなかっただろう。
その夜、ラッコは初めて温泉に入った。
『あったかかった』。

    「ミャー」

二人の間に挟まりながら、ラッコは『S県I市』を満喫し、
『幸せ』に過ごしたらしい――――。

126甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2022/12/29(木) 19:25:09
>>124-125
温泉旅館にて、ラッコと一緒に温泉に入る円谷とあま公
もしもトンネルで何か良くないモノが憑いて来たとしても
きっとこの暖かくて清らかな温泉が洗い流してくれるだろう

それに、わさびのマスコットには魔除けの効果もある

飲泉用の温泉水を飲み、体の内側から温泉に満たされる
温泉サイダーという物もあったが、
これは温泉水を使用したサイダーで、微量なわさびが入っているらしい
こんな所にまでわさびが使われているのか…

流石にわさび推しがしつこいかと思ったが、記念に飲んでみる
リピートこそないものの、記念としては悪くない
中々美味かった

まぁ、色々と温泉旅館を満喫する3人…もとい、2人と1匹だった


これも後から分かった事であるが、
2人と1匹がトンネルを去った後に入って行った人間がいたのだが
その人間は、トンネルに入ったきり行方が不明になっている
原因は不明だが…

127宗像征爾『アヴィーチー』:2022/12/31(土) 00:03:56
>>(カリヤ)

放棄されて閑散とした廃ビル前に、
カーキ色の作業服を着た男が立っている。
その場から動く気配もない。
『誰か』を待っている様子だった。

128カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/02(月) 01:58:08
>>127
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/789-798
での会話からおよそ2時間弱が経過した頃、
のんびりと歩いて廃ビル前に到着した。
見覚えのある人影に手を振って近寄っていく。

「やぁ、宗像さん。
あははぁ、待たせちゃったかなぁ。
遅くなってごめんねぇ。
ほら、コーヒー買ったんだけど飲む?
『微糖』のやつ」

暖かそうな白のダウンのポケットから缶を取り出して、宗像へと差し出した。

「なんだっけ? 花の女の子の話だよねぇ。
うんうん、知ってるよ。宗像さんの名推理のとおりねぇ。
偶然人に聞いたんだよ。
別に隠れてるとか、そーゆーワケじゃあないみたいだねぇ」

129宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/02(月) 11:32:09
>>128

呼び出した側には『待つ義務』があり、
呼び出された側には『待たせる権利』がある。
多少の遅れは誤差の範囲だ。
『今日中に来た』なら、それでいい。

       「助かる」

手袋で覆われた片手を伸ばして、
差し出された缶を受け取った。
丈夫な革製だが、防寒用ではなく仕事用だ。
同時に、自身と『それ以外』を物理的に隔てるための、
一種の『境界線』でもある。

「目立つ格好をしているなら、すぐ見つかると思っていたが」

            カシュッ

   「そう都合良くは進まないものだ」

小気味良い音と共に缶を開け、カリヤの話に相槌を打つ。

        「だが、あんたには行き着いた」

                 グイッ

熱いコーヒーを喉に流し込んでから、言葉を続ける。

「素性、性格、行動――何でも構わない。
 『鈴蘭の少女』について、知っている限りの事を教えてくれ」

「それと引き換えに、
 あんたが興味を持ちそうな話を提供する」

130カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/03(火) 21:33:28
>>129
「そお? それじゃあいいや。
それより、その子を知ってる私のことを怪しんだりしないのかい?
ほらぁ、もしかしたら私がその事件に関わっていて……
遅れてきたのは宗像さんをどうにかする為の人を集めてたから……か・も」

にやーっと笑って、逆側のポケットの内に隠していたものを素早く取り出して突きつける。
2本目の『缶コーヒー』だ。
プルタブを開けて、自分で飲み始める。

「とか、そんなわけないよねぇ。
教えてあげるからそんなに冷たい目で見ないでよ、悲しいなぁ」

「名前は『りん』。
ほら、あそこの大きな『公園』ってあるじゃあないか。
あそこに住んでて花を育てて売って生活してるんだってさ。
あははぁ、おかしいよねぇ」

131宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/04(水) 01:21:42
>>130

「俺には『情報』がない。
 あんたを頼る以外の選択肢を選べない」

立ったまま動く事なくカリヤの動作を見つめ、
眼前に突きつけられた缶コーヒーを見下ろす。

「あんたも俺から『情報』を取りたいと考えている。
 その機会を自分から手放す真似はしない」

カリヤという人間について、知っている事は少ない。
だが、垣間見えた『一端』から推測する事は出来る。
自分は薄っぺらい人間であり、『物語』を知る時だけは、
それを忘れられると言った。
心の中に抱えた『空虚』と向き合う姿勢は本物だろう。
だからこそ、この女を信用する気になったのかもしれない。

「『罠』だった場合、動けなくしてから聞き出すつもりだった」

その声色に激しい感情は見当たらず、
どこまでも淡々とした響きを伴っていた。

        「『鈴蘭畑の幽霊』か」

カリヤの話を聞き終えてから、思い出すように呟く。

「以前、『花屋』で『噂話』を耳にした事がある。
 『鈴蘭畑に少女の幽霊が出る』という話だ。
 一度だけ行ったが、その時には何も見つけられなかった」

「しかし、やはり『そこ』を拠点にしているようだな」

132カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/05(木) 22:16:27
>>131
「あははぁ、一応『罠』の可能性も考えてたんだ。
宗像さん、慎重だねぇ。私は悲しいよ」

ちっとも悲しくなさそうに言いながら、廃ビルを眺める。

「『幽霊』? オカルトな話も好きだよぉ、私。
宗像さんも、良いところまで行ってたんだねぇ。
それなら私に頼らなくても、いずれは辿り着いていたかもね。
あっ!もしかして、宗像さんの顔が怖いから出てこなかったんじゃあないの、その子」

へらへらと笑いながら、宗像の表情を伺う。
面白いものを観察するかのように。

「ねぇ、もおいいかなぁ?
それじゃあ『ご褒美』の物語を聞かせてよ。
そーいう約束だったよねえ?」

133宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/05(木) 23:22:47
>>132

「今までは確証がなかったが、これで『裏付け』が得られた」

「少なくとも、あんたの話は無駄にはならない」

例の『鈴蘭畑の幽霊』も、『りん』と無関係ではないだろう。
探すべき場所が決まれば、いずれ出くわす可能性も高い。
見つけ出すのは時間の問題だ。

「俺を『警戒』している可能性はあるな」

以前に出会った『甘城天音』を思い出す。
あの少女は『りん』と繋がりがあった。
追っている者の存在を伝えていても、何ら不思議はない。

   「いいだろう。話してやる」

              グイッ

             「――『猫の話』だ」

残っていたコーヒーを飲み干し、
『過去の仕事』について語り始める。

「この街に『カーバンクル』という猫がいた。
 品種は『アビシニアン』だ」

「そいつは『金を生む猫』だった。
 文字通り『富を生み出す力』を持っていたという事だ」

「『カーバンクル』の『処遇』を巡って、
 『五つの勢力』が鎬を削った」

カリヤを見返す瞳の奥には、
底知れない『虚無』を含んだ光が宿っていた。

     「その内の『一つ』が俺だ」

            ズ ッ

自らの背後に『アヴィーチー』を発現する。
右腕に『1m』の『鋸』を有する『人型スタンド』。
その意匠は『ノコギリザメ』を思わせる。
『話の続き』をする前に、
『カリヤの反応』を確かめておく必要があった。
これが見えるのなら、『理解』は早い。

134カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/05(木) 23:57:02
>>133
「結構『スルースキル』高いよねぇ、宗像さん。
まあいいや、面白い話が聞ければ良いんだよ、私は」

宗像の瞳を見つめ返して、ずれた眼鏡を指で正した。

「へえー! 御伽話みたいだねぇ。
『金を産む猫』……そんなことも、ある!
ってことだねぇ、あははぁ」

目を輝かせて話を聞きながら、
何が面白いのか少し笑った。

「ふーん。宗像さんも、その『猫』。
それが欲しかったってわけ?」

じっと宗像の瞳を覗きながら話を聞いているカリヤは、
『アヴィーチー』のスタンドヴィジョンに殊更反応する様子はない。
ただ、少し息を飲んだような気がした。

135宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/06(金) 01:18:55
>>134

「ある人間から『仕事』を頼まれた。
 猫を『生け捕り』にして然るべき組織に引き渡すか、
 それが不可能だと判断した場合は『殺せ』と」

頭の中で考えていたのは、
『猫』ではなく『鈴蘭の少女』の事だ。
『カーバンクル』自身に罪はない。
存在そのものが争いを呼び、多くの血を流させる。
『制御されない力が招く災い』。
そのイメージに、どこか『りん』と重なる部分を感じていた。

「ここと似たような『廃ビル』で、俺は『四人の男』と戦った」

カリヤから目線を外し、おもむろに廃墟を見上げる。
『高天原』・『硯』・『スミノフ』・『五十嵐』。
かつての記憶が、一瞬の幻のように脳裏を過ぎ去った。

「『カーバンクル』が他勢力の手に落ちる寸前に、
 俺は最後の力で『殺処分』を実行した」

             グッ

再びカリヤに向き直り、『アヴィーチー』が空き缶を握る。

「だが、その場に居合わせた『二人』に阻止された」

             メキッ

鈍い音と共に、手の中でスチール缶が変形し、
徐々に押し潰されていく。

「それによって、俺の仕事は『片方』が失敗した」

136カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/06(金) 21:54:46
>>135
「物騒だなぁ〜。
宗像さん。本業はそっちだったりするのかい?
戦い……『スタンド使い』の。
いうなれば『スタンドバトル』ってトコかな」

諦めたように『アヴィーチー』をはっきりと見据えて、
そのまま視線を宗像へ戻す。

「宗像さんが『スタンド使い』ということは、
驚きはしたけど『予感』もあった。
この町では、色んな『スタンドバトル』が繰り広げられてるみたいだねぇ。
『りん』の話を教えてくれた人が、他にも色々話してくれたよ。
『夏のクリスマス』とかね」

「って、私の話はどーでも良いや。
それでそれで? 『片方』ってどーいうことだい?
きみは他にも『依頼』を受けていたの?」

137宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/06(金) 23:03:24
>>136

『スタンド使い』であるという確信を持っていた訳ではない。
しかし、言動から感じ取れる『気配』は存在する。
カリヤと同じように『予感』はしていた。

「前に教えた通り、本業は『配管工』だ」

          ググッ

「『スタンドを使った仕事』は副業でやっている」

          ミシィ

言葉を続けながら、空き缶を握る手に力を込めていく。

「『特別な催し』があった事は聞いたが、
 『スタンド』が関わっていたという話は初耳だ」

「俺は両足を撃たれて入院していた」

『夏のクリスマス』には聞き覚えがある。
しかし、詳しい事情は把握していない。
病院の生活が長かったせいで、
『世間知らず』になってしまったのだろう。

「『カーバンクル』は、かつて存在した『犯罪組織』に、
 『資金源』として利用されていた」

「その組織が壊滅した後、猫は『別の組織』に回収されたが、
 何者かの手引きで脱走したらしい」

「『犯罪組織の残党』は、この街の水面下に潜んでいる」

「だが、逃げ出した猫を取り戻す為に、再び姿を現した」

「俺が引き受けた『もう一つの仕事』は、
 誘き出された『残党』を殺す事だ」

          ベキッ

空き缶が歪んで原型を失い、完全に潰される。

「そして、それは『成功』した」

138カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/08(日) 21:27:59
>>137
「へぇ〜、なんかカッコいいなぁ〜。
あはは、無遠慮な発言だったかな?」

にたぁーと笑って宗像の顔色を伺うが、
あまり感情を表に出さない宗像の様子に、諦めて話の続きを待つ。

「じゃあきみの依頼は『別の組織』からのものってことかな?
って、それよりも……」

ごくりと息を呑む。

「つまり、『殺した』ってこと?
その、『残党』のひとを……」

139宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/09(月) 19:03:37
>>138

返事の代わりに、傍らに立つ『アヴィーチー』が右腕を持ち上げた。

「『こいつ』に胴体を貫かれて死んだ」

規則的に並んだ刃は鮫の牙を思わせ、
刀剣類のような鋭い切れ味は持たない。
食らいつき、抉り、引き裂く。
傷口を広げて止血を困難にさせる『鋸』は、
純粋な殺傷に特化した形状と言える。

「俺に仕事を頼んだのは『スタンドを目覚めさせた人間』だった」

あの日、『藤原しおん』から『殺しの依頼』を引き受けた時、
不思議と納得できる部分があった事を覚えている。

「そいつは『別の組織』――『アリーナ』と折り合いが良くない」

愛した者を失い、憎むべき敵を失い、生きる意味を失った。
この街に戻ってから、俺には何もない事に気付かされた。
ただ一つ残っていたのは、手を汚したという事実だけだ。

「同時に『残党』とも対立関係にある」

だから、承諾した。
誰かがやらなければならなかった。
既に汚れた手であれば、また汚れたとしても、
大した違いはない。

「『エクリプス』というのが奴らの名前だ」

俺は『その中』に生きる意味を求めていた。

140カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/09(月) 21:29:34
>>139
「それは……スゴイッ!
素晴らしい話だよ…………私は今、本当にすごい『物語』(ストーリィ)を読んでるぞ……!」

目を爛々と輝かせて両手を大きく広げ、
宗像に近づいて突然にその手を取る。

「『スタンドを目覚めさせる人間』!
そして対抗する『スタンド使い組織』!
その中で『人殺し』をも厭わない雇われ『スタンド使い』……!!
まるで漫画じゃあないかぁ……!
やはり私達に授かった『ギフト』とも言うべきこの『スタンド能力』は、
現実への『テコ入れ』だったんだ!
私はやっと、この現実の真実の一端に触れたよぉ……!
あははぁ、宗像さん!きみに抱きついてキスしたい気分だよッ!
私の興奮が、この感動がきみにわかるかなぁ……!」

どこか狂気じみた瞳を宗像へと向けて、
矢継ぎ早に話を続ける。

「きみがそんな仕事を受けるのはお金のため?
それとも何か弱みがあるの?
あの写真の女の人が関わってるのかなぁ?
教えておくれよ、きみのことが知りたい!
宗像さんの『物語』を全部読みたいんだ。
ね? ねえ?いいだろぉ……今度は何したら良いかなぁ?
何と引き換えに教えてくれる?
『りん』を捕まえる手助けをしようか?
それともお金が必要? あはぁは、なんでもするよ、私は……」

141宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/09(月) 22:28:03
>>140

不意に手を握られた瞬間、僅かに眉を顰めた。
この手は汚れている。
たとえ手袋越しであったとしても、
他者に触れる事は好ましくない。

「『物語を読んでいる時は薄っぺらい自分を忘れられる』と言ったな」

虚無を抱えた瞳が狂気を孕んだ瞳を見返す。

「俺の理由も根本的には変わらない」

「『そうする事で空虚な自分に意味を持たせる』」

「ただ、それだけだ」

『アヴィーチー』の両腕が伸び、
カリヤの手を掴んで静かに引き離す。

「『やる気』があるなら、調べて欲しい人間が一人いる」

「『熊野風鈴』――最初に『りん』の話を持ち掛けてきた女だ」

確かめなければならないのは『りん』だけではない。
『熊野』の言葉も実際の真偽は不透明だ。
間違いのない事実を把握する為には、
双方を平等に比較する必要がある。

「大本の情報源だが、完全には信用できない」

「『裏付け』になる情報と引き換えに『話の続き』をしてやる」

カリヤの『物語を知る事に対する姿勢』は本物だろう。
俺は素性を知られているが、カリヤなら、
『無関係な第三者』として探りを入れられる。
現時点で、これ以上に相応しい人材はいない。

142カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/11(水) 12:22:47
>>141
「…………」

「つまらない事を覚えてるなぁ。
ほんとに記憶力良いんだね。
宗像さんが私と変わらない?
そんなわけないよ、きみは素晴らしい『物語』の登場人物なんだから」

宗像を見る瞳が翳り、
『アヴィーチー』に掴まれた手を乱暴に振り払う。

「…………あははぁ、失礼。
『熊野風鈴』? それはどういう人なんだい?
『スタンド使い』だったりするのかなぁ」

そして一瞬の沈黙の後、取り繕うようにゆるい笑みを浮かべた。

「つまり、私がその人に会って『りん』について探れば良いんだよねぇ。
そこでの情報が合致すれば、一応は信用しても良い……
慎重だなぁ宗像さん。
その子が信用できない理由はなんなの?」

143宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/11(水) 16:21:03
>>142

スタンドの動きが生身の腕に妨げられる事はない。
しかし、カリヤは容易く振り解く事が出来た。
『アヴィーチー』が手を離したからだ。

「身なりの良い二十歳前後の女だ」

「背はカリヤより少し低い」
 
「髪の色は茶、目の色は黒だった」

「裕福な家柄の出身らしい」

「『社会見学』という名目で、
 『治安の悪い場所』に出入りしたがっている」

熊野の外見や言動を思い出しながら、
それらを順番に列挙していく。

「『フォー・エヴァ・ロイヤル』という人型のスタンドだ」

「『能力』は知らないが、『従者』のような姿をしていた」

「そいつは『自立した意思』を備えている」

本体よりも分かりやすいのは、こちらの方だろう。
『ノコギリザメ』も『自我』を有しているが、
理性的な思考とは無縁であり、一つの事しか考えていない。
同じ特徴ではあるものの、『知能』という点において、
双方の間には比較にならない隔たりがある。

「この場所で顔を合わせた時、
 俺は『本体の言った事は真実か』と尋ねた」

「『フォー・エヴァ・ロイヤル』は『逡巡』を示したが、
 近くで見ていた本体が『黙らせた』」

『意思を持つスタンド』を一個人として捉えると、
現場には『二人』の人物がいた事になる。
しかし、両者の反応には、明らかな『齟齬』が生じていた。
矛盾が存在する以上、両方が正しいという事はない。
従って『どちらかに偽りがある』と解釈できる。
『精神の具現化』と呼べるスタンドが『嘘をつく』というのは、
経験的な感覚から言って考えにくい。

「――それが『理由』だ」

熊野には『知られては不都合な話』があった。
しかし、スタンドを解除して会話を打ち切ったのでは、
間接的に『秘密』がある事を認めてしまう。
だから『口止め』したというのが、最も自然な筋書きだ。

144カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/12(木) 10:17:21
>>143
「あっ!もしかして、その子の連絡先わからないのかい?
それは大変だねぇ。
何か効率の良い方法があれば良いんだけど。人探しのね」

スマホに手早く特徴をメモしながら話を聞く。

「ふーむ、『スタンドは嘘をつかない』。
そうかもね。あり得そうな話ではあるかな。
……それよりも、その子も面白そうだなぁ。
この街は『物語』に溢れてるねぇ。
『フォー・エヴァ・ロイヤル』と『熊野風鈴』。
あははぁ、嬉しくなっちゃうよ」

145宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/12(木) 16:12:06
>>144

「『行きそうな場所』の見当はつく」

「最初に会った時、『パチンコ屋』に入りたがっていた」

「次に現れたのが『ここ』だ」

冷たく乾燥した空気が、荒れた廃ビルを包んでいる。
取り壊しが決まりながらも作業が止まり、
危険があると知られながら、長らく放置されていた。
誰かが訪れるとすれば、よほどの物好きだけだ。

「限られた人間が出入りする所を捜せば、見つかる可能性は高い」

「あの風貌なら、よく目立つ」

多くの場合、『裕福な若い女』は近付かない。
逆に、そういった場所を好んで姿を現す。
それが熊野風鈴の特徴的な行動パターンだ。

「どこかで耳にした覚えがある」

カリヤの手を掴んだ際に落としていた空き缶の残骸を、自らの腕で拾い上げる。

「『スタンド使いは引かれ合う』そうだ」

おそらくは、俺達が顔を合わせたのも、
その『縁』が関わっているのだろう。

「俺は『りん』を当たる」

「『熊野』は任せた」

熊野の言葉を鵜呑みにはしていないが、
全てを信じていない訳でもない。
今の段階では、りんも熊野も裏付けに欠ける。
双方を確かめる必要があった。

「あんたのスタンドは『荒事』が出来るか?」

「場合によっては『力』を借りる事があるかもしれない」

『吾妻常喜』もいるが、奴は『アリーナ』に所属している。
おいそれと引っ張り出す訳にはいかない。
個人で動くとしても、頼るのは最終手段だ。

146カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/14(土) 23:46:40
>>145
「あははぁ、なんか気が合いそうな気がしてきたよ。その子。
そうやって、引かれあって出会うのかもねぇ。
この町は広いようで案外狭いからね」

上機嫌そうに『アヴィーチー』を眺める。

「うん、任せてもらって構わないよ。
だけど『荒事』はどうかなぁ。
そっちの方はあんまり自信はないけれど、
それはそうと面白い話があったら教えてよねぇ。
私の方も何かあったら、ええと、きみの職場に掛けたら良いのかなぁ。
もう一回、番号教えてよ」

147宗像征爾『アヴィーチー』:2023/01/15(日) 00:40:51
>>146

「念の為に確かめただけだ」

『アヴィーチー』は殺傷に適している。
正確には『それだけ』しか出来ない。
手を借りるとするなら、むしろ『荒事以外』になるだろう。

「『有益な情報』さえ持ってくれば、また『俺の知っている話』を教える」

カリヤの求めに応じ、『仕事先の電話番号』を改めて口頭で伝えた。

「こいつは『アヴィーチー』と名付けられた」

自身の右手には、潰れた空き缶の残骸が握られている。

「『無間地獄』という意味らしい」

『鋸』を携えたヴィジョンが陽炎のように揺らぎ、
次の瞬間には消え去っていた。

「『面白い』かどうかは分からないが、多少は『足し』になるだろう」

まもなく歩き始め、正面に立つカリヤとすれ違う。
無骨な安全靴の底が地面を踏みしめ、その足音が廃墟に響いた。
寒空の下で行われた会合は、人知れず始まり、静かに幕を下ろす。

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149カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/01/16(月) 21:38:54
>>147
「いーや。楽しみだなぁ。
宗像さんの話は、本当に面白いよ」

すれ違うカリヤの顔へと、モザイク柄のように左右にずれた仮面のヴィジョン……
『タイプライター・トーメント』が一瞬重なる。

「私のスタンドは『タイプライター・トーメント』という。
あははぁ、これからも仲良くしてねぇ、宗像さん」

そしてだらしない笑みを浮かべながら、宗像と別れた。

150甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/01/21(土) 12:29:19
ここはとある山道の道路
この道は、度々山の動物が飛び出してきて車に轢かれる、ロードキルの名所
さて、今回はどんな動物の死体が見つかるだろうか

151甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/01/22(日) 20:50:15
>>150
キィーーーッ
ドン!!!

丁度今、車が何かを轢いて去って行ったようだ
今日は何が落ちているか

阿部マリア「こ、これは…!」

転がっていたのは、山の動物ではない
これは人だ!今のは轢き逃げだ!

すぐに救急車を呼ぶあま公

松本「これは…もう駄目みたいだね」

松本がそう断じるのもしょうがない
なんせ頭部を潰されているのだ
これで生きていたら奇跡だ

マリア「…お前ら、これ食いますの?」
あま「食うわけないだろ」
マリア「で、ですわよね」
松本「君、言って良い冗談と悪い冗談の区別くらいつけなよ、殺すぞ」

後日、
この同一犯と思われるドライバーによる轢き逃げ犯が警察に逮捕された

松本「例のドライバー、轢き逃げ専門で何人も人を殺してる連続殺人犯だったらしいよ」
あま「何で轢き逃げ専門?」
松本「音が良いって言うんだよ、特に頭が潰れる音が」

     r | |――┐  r――  ヽ
      L.! !_∧_∧ Li__   \
       ._| |(  ゚∀゚) ||____    \_              (~ヽ       .. .
     (_| |/   /つ⌒ヽ  i     \)         /⌒ヾ .\\_   :・:∵:
        \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄"''' - ..,,  人 /⌒ヾ / \\ ̄ヽ∴: ゲハァッ
      _  \_/⌒ヽ________/⌒ヽ  て   / ノテ-ヽ( 。Д。)二二つ  
        ヽ      _ノ r―――─―――┐ _ノ ドカッ/ / /   ∨ ̄∨
         |  ____| 三三三三三三三.|__l__    / / | |
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     ノ.|  |    ===========[___]======='   ー'    し'
   ヽ_ノ_ノ               ヽ__ノ_ノ

              終
            制作・著作
            ━━━━━
             ⓃⒽⓀ

152リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/02/08(水) 19:01:32

一人の男が、静かな夜道を歩いていた。
ふと足元に何かが落ちている事に気付き、拾い上げる。
小さな『ぬいぐるみマスコット』。
男には用のない物だ。
興味を失った彼は、それを投げ捨てた。

「――――――『捨てた』わね」

不意に、背後から呼び掛ける者がいた。
ゴシック風のドレスと、羽根飾りの付いた帽子を身に纏った『何者か』。
少しずつ距離を詰め、男に歩み寄っていく。

     カツ カツ カツ カツ カツ

         「今、『捨てた』わよね?」

                   グワァッ!

レースの長手袋に覆われた両手が伸び、男の首を容赦なく締め上げ始める。
男も抵抗しているが、腕力が拮抗している為に、なかなか引き剥がせないようだ。
もがき苦しむ男の視線が、帽子に隠された『マネキンの顔』を目撃した。

    「今のあなたの顔、わたしと『同じ色』よ」

         「ウフフフフフフフフフフフフフフ」

               「『お揃い』ね」

            「ウフフフフフフフフフフフフフフ」

徐々に青白くなっていく男の顔を眺めながら、『リトル・メリー』は愉しげに語る。

153杉夜 京氏『ドッグ・イート・ドッグ』:2023/02/09(木) 12:21:28
>>152

「――な ぁ゛??!!!  ガ   ハぁ゛っっっ゛ ぐ ぅぅうっ゛!!」

(な、何だってんだ!?何だってんだ??何だってんだ???!!)


落とし物があった。だが、俺にとって関係なんて無かった。

お袋が、もし正気なら。そんな夢見事が現実ならば、交番かどっかに
渡そうかと、珍しく親切心で動いたかも知れない。

だが、お袋は元に戻りはしない。最近は排尿したばかりの紙パンツを
何かの宝物だと思ってるのか、俺が捨てようとすると暴れだす。
 背中の、あの時の試合からまだ治らない痛みが続く。

クソみてぇな現実、クソみてぇな明かりなんぞない世界。
 今さっきまでの足取りも、いま歩いてるのが夢の中なのか本当に
歩いているのかすら定かでは無かった。

だが、首の苦しみは確かで息は出来なくて。背骨は砕けるような悲鳴を発している。

じゃあ、これは悪夢じゃないって事か。つまり、糞みたいな現実の
その中の糞の糞の糞糞糞糞糞糞糞みてぇな糞糞糞糞糞糞くそクソクソクソ
jkろえphじぇいkろじぇちおえ…………っっ゛!!!


          ――ズズズッッッツ゛!!!


      『D     E    D   』


 苦悶で、無精の中で土気色の顔の中で唯一鮮明な赤い血走った目に
黒い火が駆け抜けて、幽鬼めいた気配と共に煤けた色合い
人形ではない、機械仕掛けでロボットめいた人型の『スタンド』だ。

      ――ギギギ   ギィッ……ッ!

 そのスタンドは、マネキンの君の首に手を伸ばそうとしているぞっ!(スC)

154リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/02/09(木) 18:13:19
>>153

以前、『杉夜京氏』は『一つの試合』に臨んだ。
負けられない理由がある。
だからこそ『どんな手を使ってでも勝つ』。
周到な準備を整えて、相手に何もさせず、一方的に叩きのめす筈だった。
熾烈な戦いの結末は――――――。

    「ウフフフフフフフフフフフフフフフ」

          グググググ…………

目の前に立つ女の『異常さ』には、杉夜も気付いただろう。
これは『人形』だ。
等身大の『マネキン人形』。
それが杉夜の首を締め上げている。
だが、『リトル・メリー』は知らなかった。

     「!?」

  杉夜京氏に『DED』があるという事を。

              バッ!

咄嗟に両手を離したマネキンは、杉夜から飛び退いた(スC)。
互いの距離は2m程だろうか?
まだ『DED』の射程内だ。

155杉夜 京氏『ドッグ・イート・ドッグ』:2023/02/09(木) 20:00:03
>>154

 「がフっ! げ ハぉっっ゛ はー--っ  はー----っ!!」

『マネキン人形』のメリーには、必死に陸にあがった魚のように
喘ぎつつ息を吸い込もうと咳き込みつつ呼吸をする杉夜がよく見える。
 当たり前ながら、先程まで窒息死一歩手前であったのだ。

 「…………る」

僅かに息が整ったのだろう。ぜーぜーと唸るような呼吸音と共に
擦れるような声が、メリーにも届く。

「……ろして、やる」

         ――ズゥゥゥ゛ンン゛

 男は、ブツブツと繰り返すように低い声で言い募りながら。
機械仕掛のスタンド。『DED』が。一歩、一歩と本体の彼と共に
接近を試みようとする。その気配は、明らかに尋常ない危険な匂いが放たれているっ!

156リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/02/09(木) 21:02:59
>>155

睨み合う『人間』と『人形』。
形こそ似ているが、根本的に異なる存在。
偶然が齎した両者の邂逅は、一つの『戦い』に発展する………………。



以下(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049803/472)へ移動

157甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/02/14(火) 10:44:41
2月14日 バレンタインデー

スッ

丁寧にラッピングされた包みを>>158に差し出す
恐らくはチョコレートだろうが…

158甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/02/15(水) 19:45:13
>>157
松本「見た目は普通のチョコレートだね」
松本「でも念のためだ、あいつで試そう」

松本「おーい、マリア
   チョコレートあるんだけど食べないか?」
阿部マリア「あら、お前が食べ物をくれるなんて珍しいですわね」
マリア「普通に美味しそうじゃありませんの、遠慮なく頂きますわゾ」

バリッ ガリッ
グチャグチャグチャ

マリア「おぉ〜、こりゃうめぇです…わ…っ」
マリア「うげ…ぐぐぐ…てめぇ、何食わせやがったんですの?」

松本「おいあま公!あのチョコレートは何なんだよ!?」
あま「ラジウムチョコレート
   半額セールしてたから…」
松本「ラジウム!!??一体何年もののヴィンテージ品なんだよ!!!
   何でそんなもん食わせようと思った!?」
あま「最近肩凝りに悩んでたみたいだし、ラジウムチョコレートは若返り効果があるっていうから」
松本「あれを見ろ!若返るどころかボロボロの老人みたいになって死ぬわ!」

マリア「うげげげ…」

                       __
                   /⌒\/●) \
                   ̄\ \  ●)ヽ
                    \ \   |
                    。/⌒\ L_ノ|
                   。∴∵。/ /   |
                   。o∴U/ /~LГL/|
                   o。∵/ /    |
                   (∴Uイ    ノ
                   ||U \__/
                   ||  _|_ _|/
                   U   /|  ヽ ̄

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                     ⓃⒽⓀ

159勇者『リィン・カーネイト』:2023/02/18(土) 11:27:23
青空が晴れ渡る清々しい天気
今日は絶好の洗濯日和だ

勇者も今日は庭先で洗濯物を干している
おかしな点があるとすれば、物干し竿がロングソードだという事だけだ

160勇者『リィン・カーネイト』:2023/02/19(日) 19:09:33
>>159
まほ「ゆうちゃーん、ちょっと休憩しよう」

まほに呼ばれて休憩に入る勇者

庭に置かれている椅子に腰を掛け
テーブルのお茶を手に取り一服入れる

勇者「今日は良い天気だねー」
まほ「良い天気なのは良いけど、ちょっと風強くない?」

ビュウゥゥゥ〜〜〜

ビチャア

勇者「あつっ!」

吹き荒ぶ強風によってカップのお茶が飛び散り勇者の顔にかかる

まほ「あっ、ゆうちゃん洗濯物!」
勇者「えっ?」

まほの声で洗濯物の方へ振り向く勇者

ズバァ

聖剣にかけられていた洗濯物は
風によって動かされ聖剣の刃によって切り裂かれていた

まほ「ゆうちゃん、何で剣なんかで干しちゃったの!?」
勇者「昨日物干し竿を叩き斬っちゃって…」

勇者「洗濯って難しいなぁ…」

   (;'A`) | |_| |_| |            
    (/ )/ |       |             
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161リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/02/20(月) 20:19:34
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049803/472-490)から『一分後』――――。

町外れに佇む『教会』。
厳かな静謐に包まれた懺悔室の中に、古めかしい『西洋人形』が座っていた。
以前、自然公園で『鷲津ヨハネ』と出会った『リトル・メリー』は、
時々遊びに来ていたのだが、いつの間にか『居着く』ようになったのだ。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1630107603/340-362)

血のように赤いドレスとボンネットを着た『青い目の人形』。
その瞼は閉じられており、まるで眠っているように見える。
より『人間らしさ』を持たせる為に、『スリーピングアイ』という機構が、
内部に組み込まれているのである。

       ………………パチ

緩慢に瞼が持ち上がると、無機質な硝子の眼球が露わになっていく。
『強制解除』のタイムラグである『一分』が経過し、『魂』が元に戻った。
『仮の体』であるマネキンから、身長60cmの『本体』に。

      コトッ………………

やがて、微かな物音と共に、人形が独りでに立ち上がる。

「『意地悪な人』は、皆いなくなればいいのに」

「そうしたら、世界は『優しい人』だけになるの」

近くの窓に歩み寄り、『リトル・メリー』は『最後の瞬間』を思い出す。
倒れ込みながらの猛攻。
まともに食らったマネキンは、『ほぼ全損』させられてしまっていた。
だが、自ら『影』に飛び込む形となっていた以上、あの男も『命懸け』だったのだ。
ほんの少しでも破壊が遅れたなら、『全身が腐って死んでいた』だろう。
しかし、そうはならなかった。
男が『呪い』に触れる前に、『メリー・バッドエンド』が離れてしまったからだ。

「今度は、もっと上手にやらなきゃ」

          バッドエンド
それが誰にとっての『 不幸 』だったのかは分からない。
仮に、あのラッシュで『全破壊』が間に合っていたなら、
その前に距離が開いてしまった為に壊しきれなかった事は『男の不運』。
あるいは、もし『間に合っていなかった』としたら、
男の全身を『腐食』させ損なった『メリーの不運』。

    「――――忘れないから」

果てしなく暗い瞳を持つ男と、真っ黒に煤けた機械的な人型スタンド。
それらは完全に『覚えた』。
メリーに宿った『魂』が、それらを記憶している。

       「 『 絶 対 』 」

『神の家』に住み着いた『呪いの人形』は、窓ガラスに小さな手を添えて、ポツリと呟いた。

162ソラ『ステインド・スカイ』:2023/02/25(土) 11:01:52
ジャアアアアアア

自宅の車庫にて、ホースから水を車に浴びせかける
今日は休日だ、久しぶりに愛車のカローラを洗車をする
車は良い、人間と違って余計な口を利かないし、しっかり整備して使ってやれば裏切らない

163ソラ『ステインド・スカイ』:2023/02/26(日) 19:52:52
>>162
きゅっきゅっ

汚れを綺麗さっぱりと洗い落とされたカローラ
太陽の光に照らされ、キラリと輝いている

折角だ、こいつに乗ってドライブに行こう
しかしどこに行こうか
目的地なんて決めなくても良いか
気の向くままに走り、美味そうな店があれば立ち寄る
そんな適当なドライブも良いだろう

洗い立てのカローラに乗り込み、早速1人ドライブへ走り出すのだった

途中ガソリンスタンドに立ち寄るが、ガソリン代の高さにキレそうになった

164ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/05(日) 21:58:50

「ふむ。寒いか……? まだちょっと……
 いや、そうでもないか?」

  「ナーン」


灰色の猫を抱えて、あてどなくさまよう金髪の子供。


「誰かおらんかの」


うまい導入が思い浮かばない。
レスが久しぶりすぎてめっきり衰えている……
いいんだ。どうせ出会った人に営業を仕掛けるだけだから……
ここはどこなんだ……
それも>>165に任せよう……

165小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 06:23:45
>>164

ふとスマホを確認すると、一通の『メッセージ』が届いていた。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/786)

今まで気付かなかったのは、アプリが不調だったのかもしれない。
『いつか』と書いてあるので、今すぐ向かう必要はなさそうだ。
もし適当な営業先が見つからない時は、遊びに行ってもいいかもしれない。

166ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 12:51:51
>>165

「む、これは……!」

 「ニン…」


今までメールが滞っていたのか、
メールは来ていたが全然チェックしていなかったのか、
気づいていたが十分に配慮されているように見えて、ナイの漢字の読めなさを小石川が舐めていたのか、
(そもそも『小石川』という名前を読めるか怪しいので、誰からメールが来たのかわからないかもしれない)
そこはまあボカしておこう。
だが、今、メールに気づいた……メールに気づいたのだ。そこが重要だ。
三番目だとしても親切な誰かが、読み上げてくれたんだろう。
ありがとう親切な人。


「よし行くか」


とりあえずメールを返し、
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/807
小石川の家へ向かう。
一度行ったことがあるから大丈夫だろう。たどり着ける……多分。
迷子になる可能性もあるが、そんな虚無レスをする意味は無い。
あるいは、「メールには気づいていたが、何回も道に迷い今日やっと小石川家にたどり着いた」
そんな可能性もある……

小石川家にたどり着いたらチャイムを押すだろう。


「押す!」

167小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 15:44:51
>>166

市街地の喧騒から離れた閑静な住宅地。
そこに佇む落ち着いた雰囲気の一軒家。
表札には『小石川』と掲示されている。

    ピンポォ――――――ン

チャイムを押すと、少しの間を置いて、反応が返ってきた。

           ガチャ…………

玄関の扉が開き、喪服姿の小石川が姿を見せる。

  「……ナイさん、こんにちは」

  「今日は遊びに来て下さって嬉しく思います」

      スッ

  「どうぞ、家の中へ……」

一人と一匹を招き入れ、リビングに案内する。
テーブルの上には準備が整っていた。
皿に乗っているのは、アールグレイを使った『紅茶のシフォンケーキ』。
生クリームが添えてある。
猫用として、茹でた『ささみ』も用意されていた。

  「久し振りに、ナイさんとお会いしたかったので、こうしてお呼びしました」

          ソッ……

ソファーに腰を下ろし、ナイにも座るように促す。

  「よろしければ……食べながら『最近のお話』を聞かせていただけませんか?」

今、自分は『安らぎ』を必要としている。
短期間の内に多くの出来事があり、それらの一つ一つに向き合おうとして気負いすぎたせいで、
いつの間にか気持ちの余裕を失ってしまっていた。
誰かの為に何かをする前に、自らの為に何かをしなければならない事に気付いたのだ。
自分自身が不安定な状態では、周囲にも迷惑を掛けてしまう。
これまで顧みなかった自身を気遣い、『精神の休息』を得なければならない。

  「私は、それを聞いていますから……」

だから、『ナイに会いたい』と思ったのだろう。

168ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 16:34:43
>>167

「おお。こんにちわ。
 おじゃまじゃするぞ」

 「ニューン」

「あっ」


家に上がる際の挨拶めいた文言を放ちながら、招かれるナイ。
小脇に抱えられていたが、靴を脱ぐ隙に抜け出す猫。


「礼儀のなっていないやつじゃ。
 こういう時はテミヤゲを渡すもんじゃ。
 お前の分も出してやろう」

  「フシュシュ」


一足先に『ささみ』を嗅ぐ猫を一瞥する。
この子供に訪問先に手土産を持参するなどという躾がされているわけもない。
多分、テレビか何かの影響だろう。
手土産とは言うが、いつも通り『交換品』のストックから出した上、そのチョイスが
『舌が黒くなるガム(ブドウ味)』と『ほしみまくろうキーホルダー』なあたり、上辺を真似ているだけ感がある。


「じゃあそのなんかの肉と、美味しそうなのと『交換』じゃな」


次いでささみとケーキを、ガムとキーホルダーと交換宣言。
ここまで通常運行だ。
ソファーに腰を下ろし、足をぶらつかせる。


「最近か、しかし最近はわしは寒くてずっと家に居たからの……」


このままだと家でごろごろしていた話しか出なさそうだ。
もうちょっと前まで遡って聞いた方がいいか。
あるいは作業用BGMのように、子供のめちゃくちゃどうでもいい話が小石川の求めた『精神の休息』なのかもしれないが……?

169小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 18:17:30
>>168

  「――ありがとうございます……」

ガムとキーホルダーを受け取り、ナイが連れてきた猫を眺めながら、
彼女の話に耳を傾けていた。
積極的に動く訳ではなく、穏やかに流れる時間に身を任せ、静かに過ごす。
こうして静養する事が、自分にとって何よりの休息になる。

  「……私は『お友達』に会いました」

ナイの話が途切れた合間に、自らの近況を語る。
聞くばかりではなく聞いてもらおう。
そう思って、言葉を紡ぐ。

  「『朱鷺宮笑美』さんと『朱鷺宮涙音』さん――それから『朱鷺宮由楽』さんです」

  「由楽さんはナイさんと同じくらいの女の子で、涙音さんは由楽さんのお姉さん……。
   笑美さんは、お二人のお母さんですよ」

彼女達と話し、遊び、食事を共にした時間。
それは極めて大きな『意味』を持っていた。
こうしてナイと過ごす時間と同じくらいに。

  「ナイさんは……何か新しい『出会い』がありましたか?」

しっとりしたシフォンケーキからは、生地に混ぜ込まれた茶葉の香りが漂う。

170ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 18:59:06
>>169

  「ナャムニャムナムナムナム」

「トキ……聞いたことある気がするの。
 前の部分の名前が同じやつが3人おるのか?
 お母さんだとそうなるのか。面倒なんじゃな」

  「マァムナムニャムナンナムナ」


涙音には会った事はあるが、あまり顔と名前は一致していないようだ。
家族というものに対する理解は浅いらしい。
猫はささみを食べながらずっと何かを喋っている。


「むぐ。出会いなー。
 そういえば、なんか剣持った奴が……ええと、タヌキ……じゃなくてクマ? を殺してた!
 そんで一緒に焼いて食った!
 まあ、あんまり美味しくは無かったがの……」


シフォンケーキを頬張りながら、
現実と夢の区別がついていないような事を言い始める。
実際の獲物はクマはクマでもアライグマだったが。
(一応URL ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1630107603/500)


「あとー、悪の組織を脱走した怪人が公園に住んでいたんじゃが、
 外で寝るのは絶対寒すぎると思っての。
 うちに……まあ爺の家じゃが、誘ったりしたの。
 時々泊まりに来るぞ。
 爺の家もエアコンは無いがの」

171小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 19:35:22
>>170

  「由楽さんとは年が近いですから……もし会う事があれば、
   きっとナイさんもお友達になれると思いますよ」

        ニコ……

猫の背を撫でつつ、微笑と共に相槌を打つ。

  「『剣』――ですか……」

  「……それは私の『ナイフ』のような感じでしたか?」

  「手元から出せるような……」

すぐに思い浮かんだのは、『スタンド』の可能性だった。
狩猟なら猟師かもしれないが、それにしては『道具』が奇妙だ。
解体用だとしても、普通『剣』は使わないだろう。
ただ、それ以上にナイの身が心配になる。
無事だった事は幸いだが、もしかすると危ない目に遭っていたかもしれない。

  「『怪人』というのは……どんな方なのですか?」

安堵した直後に、別の不安がよぎる。
『悪の組織』を標榜している人物というと、自分の身近では『朝山佐生』が思い出された。
しかし、『公園に住んでいた』というなら、彼女は無関係だろう。
それとも、まさか『家出』をしてしまったのだろうか。
ありえない話だと思いながらも、一度考えてしまうと、なかなか頭から離れないものだ。

172ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 20:03:04
>>171

「わしは友達の歳は気にせんぞ!
 ちび共の方がいじわるしてくるのが多いしの」

  「ナウーンン」

「ナイフと剣は似てないじゃろ?
 見るかの?」


猫を撫でていると、ささみを食べ終わったのか、小石川の方へさらに寄って来た。
一方、ナイへの質問の主旨はあまり伝わらなかったようだ。
しかし『剣』は『交換』していたらしく、実物を見せる事はできるらしい。
ポケットからゴミ屑を出したナイの手に、『ロングソード』が出現する。
小さな手に不似合いなそれは、重さで少女の手首を捻り、小石川家のテーブルに穴を開ける……前に霧散した。


「こんなじゃ。一瞬じゃが、見えたか?
 なにか知らんがすぐ消えてしまうんじゃが……」


『剣』は小石川の予想通りスタンドか、それに類するものなのか。
『交換』すると『所有権』が移るが、
ものによっては本体が代わるという想定していない事態に、エラーが出る事もある……のだろう。


「ノエは包帯でぐるぐる巻きの男じゃ。
 うちに来た時は掃除とかするが、綺麗好きなのかもしれん」


怪人はノエというらしい。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1630107603/444)
実際は家を掃除しないナイへのお礼のようなものなのだが……

173小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 21:33:46
>>172

寄ってくる猫は、そのままにしておいた。
特に退かさなければならない理由もない。
そうしていると、ナイの手元に『剣』が現れる。

  「――……!」

『ベター・ビリーブ・イット』は知っているが、さすがに驚きを隠せない。
一瞬だったが、確かな『切れ味』を備えているように見えた。
『ナイフのスタンド』を扱い慣れているからこそ、そう感じられる。
これを堂々と持ち歩いていたとは思えない。
『スタンドの産物』である可能性の方が高いだろう。

  「……すぐ消えてしまうものでも気を付けましょうね」

  「『剣』は危ないですから……」

まだ内心に動揺を残しながら、ナイの為に『注意』だけしておく。

  「――『ノエ』……」

やはり朝山佐生ではなかった。
ただ、それならそれで懸念はある。
疑いたい訳ではないが、ナイから聞くノエの人相は、明らかに尋常ではない。
『掃除をしてくれる』というし、悪い人物ではないと思いたかった。
それなら『脱走した』というのは何なのだろう。

  「ノエさんとは……どんなお話をされたのですか?」

ノエについて尋ねながら、『キャペリンハット』を拾い上げる。
驚いた拍子に大きく動いてしまい、
近くに置かれていた天然木のポールハンガーから落下したのだ。
持ち上げられた帽子は、ちょうど猫の顔辺りの位置にあった。

174ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 22:16:22
>>173

「大丈夫じゃ」


『剣』を注意されたナイはそう答えた。
根拠は無いだろうが。
猫はもっと撫でて欲しいのか、頭突きをしてくる。


「話……いや、悪の組織と言えば秘密組織じゃからな。
 秘密組織のことは秘密じゃから秘密じゃろ?
 だから特に何も聞いておらんな」


そもそも悪の組織の怪人とかいう設定がナイによる決めつけなので、そこを深掘りしても何も無いのだが。


「あとは別に、普通じゃな。
 テレビ見て何か言ったり。
 何も言わんかったり」


特別な話はしていないらしい。
猫は帽子に頭突きをして、頭をこすりつけている。
被害は猫の毛がつくくらいだろう。


 「フナス」

175小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 22:34:36
>>174

  「――……そうですか」

今は、そうとしか言えなかった。
ひとまず何も問題がないのなら、それでいいのかもしれない。
気に掛かる事ではあったが、ノエに関しては一旦保留にしておく。

  「ふふ……」

帽子に頭を擦り付ける猫を、どこか微笑ましく見つめる。
このまま好きなようにさせても良かったが、撫でて欲しいのなら、そうするべきなのだろう。
黒いキャペリンハットを脇に置き、改めて猫の頭を撫で始めた。

  「この猫さんには……名前はありますか?」

スキンシップの最中、ふと思った事を口に出した。

176ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 22:51:18
>>175

「名前はない!」


自己紹介ではナイ。


「というか、好きに呼んだらいいんじゃないかの。
 わしはこいつに名前なんて生意気なものいらんと思っておるが」

「まあ、呼んでもわりとすぐどっかに『押し付けて』しまうがの……。
 こいつにもこだわりだかなんだかあるのかもしれんが」


  「グルグルグルグル」


撫でると、猫は目を細め、喉を鳴らし始める。

177小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/06(月) 23:27:47
>>176

繊細な手付きで猫を撫でながら、少し考える。
今、猫は撫でられている。
『撫でる』という文字が、無意識に浮かび上がった。

  「――……『撫子(なでしこ)』」

自然に思いついた名前を、素直な気持ちで口にする。

  「もし、そんな名前を付けたとしたら……」

  「……気に入ってもらえるでしょうか?」

『押し付ける』という行為に、どのような意味があるのかは分からない。
本人としては『名無し』の方が気楽なのだろうか。
もしかすると迷惑なのかもしれないが、この瞬間だけはそう呼んでみたかった。

  「押し付けられたら――『その子の名前』にしますね……」

           クス……

猫を見守りながら微笑し、猫の毛が付いた黒いキャペリンハットを一瞥した。

178ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/06(月) 23:44:24
>>177

「どうなんじゃろうな。
 『捨ててる』んじゃなくて『増えてる』だけのつもりかもしれんし……
 あるいはわしと違って『ホントの名前』があるからかもしれんの」

   「プシュン!」


そう言いながらナイが猫の鼻をつつくと、猫はくしゃみをした。
ちょっかいを出されて気が削がれたのか、小石川の手を逃れると、
きょろきょろと周囲を見回しはじめる。


「うーむ、これは駄目そうかもしれん。
 『押し付け』先を探しておる。
 近くのものをどけないと猫になってしまうぞ。いいのか?」


飼い主ではないが、一応付き合いが長いためか、わかるらしい。
『押し付け』られると『猫』になる。
案の定、帽子に目を付けたようだ。猫が近寄っていく。
まだ別のものにすり替える隙はあるが……

179小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/07(火) 00:10:36
>>178

離れていく猫を名残惜しげに見送りながら、ナイに向けて小さく頷く。

      コク……

  「……構いませんよ」

同じような帽子は幾つか持っている。
似ているように見えて、それぞれデザインが違うのだ。
いつも被っているキャペリンハットも、実際は微妙な変化があった。

  「私も『見てみたい』ですから……」

        ニコ……

『マシュメロ』については、全く知識がない。
しかし、不思議と受け入れられた。
連れ歩くナイがスタンド使いだからというのもある。
ただ、それとは別に、何となく納得できるものを感じていた。
この猫が持つ独特の雰囲気が、そう思わせるのかもしれない。

  「――ナイさん、一緒に見てみましょう」

ナイの隣に座り直し、彼女と並んで猫の行動を見守る。

180ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/07(火) 00:52:41
>>179

「いいならいいがの……」

「ほぐほぐ」


一緒に見ようと誘ったものの、ナイはケーキを食べるのを再開していた。
オヤツを食べながらテレビを見ている時くらいの真剣度だ。


  「ナン」


そして猫は――ポスッと帽子を前足で踏んで、通り過ぎていった。それだけだった。
そのまま、少し離れた場所に陣取り、丸くなる。


     「……」


・猫耳帽子(黒)『撫子』
黒いキャペリンハットの猫。形としては元の帽子からほぼ変わらないようだ。
中身が空洞で半球状のまんまるい猫。
ツバ部分は毛で、長毛種ということになるのかもしれない。
脚はツバの下に隠れて普段は見えないが、マンチカンのように短いらしく、
あまり邪魔にならないので十分普通の帽子のように頭にかぶる事ができる。
性格的にも大人しいようで、寝るのが好き。
目を閉じてじっとしていればただの猫耳付き帽子に見える。
さらに耳を撫ぜて寝かせ、そのまま大人しくさせておけば、普通の帽子にも擬態できるだろう。
尻尾はツバの下にあるようで、元は帽子の紐だったと察せられる。
餌は猫が食べるものならなんでも。ツバが広いので食べるのは下手。
食後にかぶるとちょっと重い。
ツバが広いのでトイレも下手だが、排泄するのは帽子の素材と同じ布で、
あまり汚さは無いので気にしない方がいいのかもしれない……
撫でられるのはもちろん好き。
側面に『マシュメロ』のピンクの肉球マークがある。

181小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/07(火) 06:23:57
>>180

奇妙な『帽子猫』が生まれる様子を見届け、改めて思う。
スタンド能力の多様性を。
これまで自分が見てきたタイプには当てはまらない能力だった。

  「――『撫子』……」

自分が与えた『名前』を口にして、丸まった猫の代わりに呼び寄せたい。
能力の産物とはいえ、自分の帽子から誕生した存在には愛着を感じた。
近くに来てくれたなら、耳の辺りを撫でる。

  「……ケーキは美味しいですか?」

やがて、ケーキを食べるナイに目線を移した。

  「私はナイさんの事が好きです。
   大切なお友達だと思っています」

やや伏し目がちに、次の一言を告げる。

  「――ナイさんは……私の事が好きですか?」

どう思われているかは関係なく、ナイの素直な気持ちを聞きたい。
ただ、幼い彼女に難しい尋ね方をしても、おそらく主旨を理解してもらえないだろう。
だからこそ率直な言葉を使った。

182ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/07(火) 12:06:09
>>181

「にゃ……」


声をかけられた『帽子猫』は、短い返事を返すと、小刻みに揺れながら近づいて来た。
ツバ(毛)で見えないが短い脚がちょこちょこと動いているのだろう。
しかし疲れたのかなんなのか、半分くらい来たところで止まってしまった。


「うまいぞ。
 どうしたお前。動くの嫌いか?」


ケーキを食べ終わって皿を舐めていたナイが、立ち上がり、撫子を摘まむと、
戻って来て、小石川の膝に置いた。
形が帽子だから随分軽い。どこに内臓が入っているのか。それともこの不思議生物にはそんなもの無いのか。
だが小動物らしい温かさがあった。


「にゃ」


「ん? そうじゃな。
 うーん、わしも、そうじゃなあ、知り合いの好きと、結婚の好きの間くらいじゃからな。
 友達くらいの好き、かの」


知り合いと友人と結婚の好きが並列らしい。
恋愛を理解していなさそうなので当然かもしれないが。
その間が全部友達の枠に入るなら相当範囲が広そうだ。

183小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/07(火) 14:14:27
>>182

膝の上に感じる温もりに目を細める。
およそ生物には見えない姿をしているが、やはり生きているのだ。
こうして触れ合っていると、心の中が穏やかになっていくような気がした。

  「『友達くらいの好き』――ですか……」

自らの内側で反芻するように、返ってきた言葉を繰り返す。
それから、ケーキを食べ終えたナイを見つめる。
まだ幼い彼女の言葉は、偽りのない素直な響きを持って、胸の奥に届いた。

  「ナイさん――」

     ソッ……

  「今日の記念に『握手』してくれますか?」

片手で撫子を撫でてやりながら、もう片方の手をナイに差し出す。

  「……これからも、私とお友達でいて下さい」

彼女が応じてくれたなら、お互いの体温が伝わる程度に、優しく握り返すだろう。

184ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2023/03/07(火) 20:18:01
>>183

       「クアァ〜」

 「……スゥスゥ」


名前の知らない灰色の猫が、あくびをして目を閉じる。
小石川の膝の上の帽子猫はすでに眠ってしまっているようだった。


「握手? よいが……」


このタイミングに握手という理由が理解できないのだろう。
小首を傾げながらも、断る理由も無い。


「おお、これからもよろしく」


握手すると、小さな手がぎゅっと握り返してきた。
子供だからか、少し体温が高く感じる。


「ケーキ食べおわってしまったの……。
 そうだ、さっき言った『クマ』食べたくないかの? なんかと交換するか?
 この間食べた時に半分くらい交換しておいたんじゃ。
 あんまり美味しくないが、チンミじゃろ」


小石川とナイは友達である。
すぐ商談に持って行こうとするので、
将来マルチの勧誘とかしてきそうなタイプなんじゃないかという心配があるが……

185小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/03/08(水) 06:09:12
>>184

握手を交わしながら、初めてナイに会った日の事を思い出す。
自然公園で『トンボ』と『香り袋』を交換した。
あのトンボを逃がした時も、ナイは先程のような顔をしていた気がする。
全ての機微を伝えるのは難しく、それは仕方のない事だ。
それでも二人が『友達』である事実は変わりない。

  「『クマ』は……また今度にしましょう。
   それを使って作れそうなメニューを考えておきますから……」

本当は『アライグマ』だとは知る由もない。
どちらにしても珍しいのは確かだろう。
故郷にも『昆虫食』の文化があるので、珍味の類に対する抵抗は薄かった。

  「代わりに『トランプ』をして遊びませんか?」

         ソッ

膝の上で眠る帽子猫を両手で持ち上げ、起こさないように注意しつつ、ソファーの上に移す。
静かに立ち上がり、キャビネットに歩み寄る。
引き出しを開けてトランプを取り出した。

  「『神経衰弱』というゲームです」

       シャッ シャッ シャッ

カードをシャッフルし、裏向きにしてテーブルに並べていく。

  「……2枚めくって、同じ数字なら自分の手元に置いて下さい。
   もし違う数字の時は、また伏せておいて下さいね」

  「ナイさんの次は私が2枚めくります……。
   たくさんカードを取れた方が勝ちですよ」

先日は朱鷺宮姉妹と『ババ抜き』をしたが、今日はナイだけなので、
こちらの方が分かりやすいだろう。
そのようにして、しばらくナイと穏やかな時間を過ごす。
『非日常』から離れた何気ない『平穏な日常』――。

186???『???』:2023/03/10(金) 06:18:04

『公衆電話』。
携帯電話が普及した現代においては、既に役目を終えたと思われがちだが、
災害時にも安定した通話が可能な利点から、緊急時の備えとして、
今でも一定数が設置されている。
とはいえ、日常的には使用しなくなり、あまり見かけなくなっているのも事実。

  purururururururu………………

街の片隅で『電話』が鳴っている。
それ自体は何ら珍しい事ではない。
ただ、少しだけ状況が違った。

  purururururururu………………

呼び出し音を奏でているのは、何十年も前からありそうな古ぼけた『公衆電話』。
そこから『発信』するのは普通だし、至って当たり前の光景だ。
しかし、この電話は『着信』している――――。

187??『??????』:2023/03/11(土) 10:46:28
>>186

「お?」

一人の学生が、その公衆電話の前を通り過ぎようとして、音に気付いて足を止める。

細い目を、僅かに見開いて。次に、興味と好奇心を覚えた笑みを浮かべて近寄る。

 ガチャ

「もしもしー」

 受話器を取る……さて、反応はどうだろうか?

188美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/03/11(土) 11:40:31
>>187

その時『着信』に気付いたのは『一人だけ』だった。
この受話器が持ち上げられるのは何年振りだろうか?
おそらく多くの人間は、ここに電話機がある事さえ知らないに違いない。

「――――はぁい、こんにちは」

受話器の向こう側から聞こえてきたのは、明るい女の声だった。
よく通る声色で、豊かな『ハリ』と『ツヤ』が感じられる。
想像できる年齢は、二十代半ばくらいだろう。

「『忘れられた歌鳥』の『囀り』に耳を傾けてくれて、どうもありがとう」

「私は…………『カナリア』と名乗っておこうかしら」

カフェの店内でスマートフォンを手にしながら、『美作くるみ』はそのように告げた。

     ――――――『プラン9・チャンネル7』

通常『発信』のみを行う『公衆電話』にも、他の電話と同じく『電話番号』が設定されている。
悪戯や悪用を防ぐ為、一般には公表されていない『非公開情報』。
だが、『プラン9』なら簡単に手に入る。
直接『本人』に教えてもらえばいいのだから。
あとは、その番号にスマホから電話を掛ければ、こうして『繋がる』という訳だ。

189雨田 月人『インサニティ』?:2023/03/11(土) 23:29:31
>>188(遅レスですが、宜しくお願いします)

「あ、こんにちはー。僕は……そうだな
『ウサギ』と呼んで貰っていいですかね。どっかで聞いた事ある声だけど
もしかして、有名人の方?」

美作こと『カナリア』は、若い男の声を聞くだろう。
 何と言うか、妙に感じる程に快活で朗らかな声だ。見知らぬ相手と
喋る警戒心や緊張が欠けてるような……いや、元々社交的なだけかも知れない。

まぁ、上の文はさておき。
ハイエストのミッションとか関係なしに、僕って勉強の作業BGMとして
ラジオ聞く事あるし、美作さんの声聞いた事あっても不思議じゃないよね。

と言うか、いつ再開するんだろ? いや、別に催促してるわけじゃないよ。
ただ、休止なのか打ち切りなのか。ちょっと知りたいなー……ってね。

いやぁ、それにしても良い声だ。どんな『ミミ』なんだろう?
 僕の運命の相手かも知れない。そう思うと胸が弾むよね。

「お洒落な言い回しの方ですね。僕の知り合いには、そう言う方って
中々居ないから新鮮な体験です」

「あの、たまたま通りかかったら此処の電話が鳴ってて。
何か困った事でもあるなら、僕で良ければ助けになりますけど……」

いやぁ、実際に会えたら良いよね!
 やっぱり直接目にして、触れて、ずっと僕の側に入れるような相手なら
最高なんだけどなーっ。

190美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/03/12(日) 03:24:17
>>189

「フフッ、どうかしら?『ヒ・ミ・ツ』よ。
 『シークレット・アイデンティティ』ってヤツね」

『正体』を問う言葉に対し、冗談めかした風に笑い、サラリと受け流す。

「私は『覆面アーティスト』みたいなものだと思ってちょうだい。
 ほら、『秘密』がある方が魅力的に見えるでしょう?」

『カナリア』と名乗る声の主は、積極的に素性を明かす気はないらしい。
だからこそ、わざわざ『別名』を使っているのだろう。
もちろん雨田が推測するのは自由だ。

「あぁ、大丈夫。
 トラブルを抱えてるって訳じゃないの。
 ただ、ちょっとだけ『お喋り』したいと思って」

「今は『公衆電話』なんて滅多に使わないでしょう?
 それはそうよね。
 これだけ携帯電話が普及してるんだから」

「でも、スマホが通信規制された後でも優先的に繋がるから、
 いざという時の重要な『ユニバーサルサービス』なのよ」

「その為には『どこにあるか』知っておいてもらわなきゃね。
 今じゃ皆が忘れちゃってるんだから。
 だから、こうして『囀り』を響かせてるの」

『公衆電話』と『ラジオ』は、意外にも『共通点』が多い。
どちらも昔から存在し、普段はあまり意識されないが、災害時には大きな役割を果たす。
かつては『アイドル』だった美作くるみとしても、
『忘れられた歌鳥』である公衆電話には、奇妙な『親近感』を覚えていた。

美作が『この活動』を始めたのは最近の事だった。
スマホから公衆電話を呼び出し、偶然『受話器を取った相手』と会話を交わす。
その『目的』は二つ。
一つ目の理由は、万一に備えて『公衆電話の位置』を人々に知らせる為だ。
二つ目は『フラストレーションの昇華』。

先日『音仙』に語ったように、美作は『相反する側面』を抱えている。
メディア関係者としての『高いモラル』と、アイドル時代からの『強い自己表現欲求』。
それらを同時に満たす手段を考えた結果、
美作は『スタンド使い』としての『新たな顔』を作る事にした。

「『忘れられた歌鳥の囀り』は『不定期』なの。
 だから、それを聴けた『ウサギ』さんは、とっても『ラッキー』よ」

『ラジオ』を通じて『声』を届ける『美作くるみ』を『表の顔』とするなら、
『公衆電話』を通して『声』を届ける『カナリア』は『裏の顔』だ。

191雨田 月人『インサニティ』:2023/03/12(日) 19:45:19
>>190

「そーですねぇ。秘密を着飾る女性は素敵だって言いますし。
僕も無理に根掘り葉掘り、カナリアさんの素性とかは追及しないですから」

安心してくださいよー、と電話の向こうで快活に告げる。

これは本音だよ。僕も、無理くりに『ミミ』を得ようとはしないからね。
 運命って言うのは、偶然のような必然で出会えるんだ。
こう電話をして、そしてフッと前触れもなく同じ声質の人物と
何処かで出会う事があれば、衝動的にミミと添い遂げる気にもなるけど
此処から強引な手を使うのは違うんだよ。

 『お喋り』か、それじゃあ。最近の僕の話をするか。

「それじゃー、カナリアさん。僕、最近占いにはまってる同級生が居てね。
クラスも違くて、殆ど面識ないけど占いをしてくれるって言うのに頷いて
内容が、君はこれから大きな運命のうねりに出会うだろうとか言われたんだけど」

「占いの内容を信じて、色々フラフラしていて。
その結果、カナリアさんの公衆電話に僕が誘われたって訳
それで、ちょっと聞きたいんだけどさ。
 カナリアさんは『運命』って言うのは、どう言うものだと思っている?」

そう、ウサギ君はカナリアへと聞く……。

192美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/03/13(月) 05:45:06
>>191

『プラン9』の能力を使うのは、『電話番号』を入手するところまで。
そこから先は『電話を掛けるだけ』であり、この行為に『射程距離』は存在しない。
現に『カナリア』は、『ウサギ』から遠く離れた店にいた。

「そうね…………私の考えだと、『運命』は『自分の周りを取り巻く力』のように見えて、
 実際は『自分の中』に宿っているものなの」

「本人がどう行動するかによって、引き寄せられる人もいれば離れていく人もいるし、
 一旦離れた後で戻ってくる人もいる。
 もちろん自分の方から誰かに近付く事だって出来るし、逆に距離を置く事も出来るわ」

「それが私にとっての『運命』。
 『運命を切り開く』っていうのは、『出会いと別れの積み重ね』よ」

リスナーの一人としてラジオに関心を持ち始め、
パーソナリティーとのやり取りで自信と目標を得て、アイドルとして大きなステージに立ち、
人気の低迷から引退に追い込まれ、現在は自らがパーソナリティーを務めている。
それら一連の流れも、ある種の『運命』と言えるだろう。
どこか一つ欠けたとしても、今の自分は成立していない。

「――――参考になったかしら?」

言葉を返しながら、期間限定メニューの『イチゴのレアチーズケーキ』を口に運ぶ。

193雨田 月人『インサニティ』:2023/03/13(月) 21:14:46
>>192

「あー、成程ね。つまり、運命って言うのは
自分の努力とか、そう言うものの結果が引き起こすって言う感じかー」

まぁ、妥当って言えば凄く妥当ー。

そう言うものだよね。僕の母さんも、結局無神経だったから
僕に焼かれたんだし。

悪い事したら、天罰って言うのが起こるもんだし。逆に善行つんだら
良い事が自分に還ってくるのは当然だもんね!

「うんうんっ! めちゃ参考になりましたよっ。
やっぱ、良い運命を掴み取るには、ドシドシ外で活発に動かなくちゃって
事ですよねっ。僕が、こうやってカナリアさんと話したのも
占いのアドバイスで外に出てるからだし」

「アグレシップに動くのが、やっぱり人間一番ですねっ」

「因みに、カナリアさんは外でどんな場所が一番気に入ってたりとかします?
あっ、別に細かい店とかじゃなくて。湖畔辺りか人と出会うのに最高ー
とか大体の感じで、良い体験談があればアドバイスして欲しいなーって」

図々しいかな? でも、こうやって人同士の出逢いを教えてくれれば
『ミミ』との再会も早まる可能性はあるじゃない?
 やっぱり、運命の出会いって言うのは気長に待つのも良いけど
突然のあっと言う間でも嬉しいしね!

194美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/03/14(火) 07:09:14
>>193

「ええ、そういう事よ。
 だから、ウサギさんが私と出会ったのも運命」

「あなた自身が運命を切り開いたの。
 これで一歩前進ね」

「同時に、あなたと出会った事で、私も自分の運命に向き合えた。
 今日ここで、私達はお互いに前進できたわ」

公衆電話を呼び出しても、誰かが受話器を取ってくれなければ、そこから先には進まない。
しかし、ウサギと名乗る少年が電話に出た。
広い意味では、これも『運命の出会い』と言える。

「湖畔っていうと、あそこも『電話ボックス』があるの。
 やっぱり利用される事は少ないみたいだけど。
 公衆電話が必要とされるのは、大抵『大きな問題が起きた時』だから」

「話が逸れちゃったわね。
 ええと、お気に入りの場所は――――」

喉の渇きを潤す為に、桜の花の塩漬けが入った『桜ストロベリーラテ』を傾ける。

「せっかくウサギさんが候補に挙げてるんだし、『自然公園』の方に行ってみたら?
 私も結構好きな所なの。
 『都会のオアシス』っていうのかしら。
 たまには文明から離れて、自然に触れてみるのもいいものよ」

美作くるみの趣味は色々あるが、その中の一つが『バードウォッチング』。
双眼鏡を手にして、野鳥観察に出掛ける事がある。
日頃から、文明社会に肩まで浸かっているせいもあり、そうした機会は貴重だ。

「もしかすると『新しい運命の欠片』が見つかるかもね」

結びの言葉でアドバイスを締めくくる。
カナリアは『占い師』ではない。
だが、『喋る事』に関しては『専門分野』だ。

195雨田 月人『インサニティ』:2023/03/16(木) 13:23:34
>>194(遅レス失礼いたしました。次で〆で問題ないでしょうか?)

「『自然公園』、やっぱいいですよね!
静かで、やっぱり誰かと一緒に過ごす事が出来るなら」

 人が少なく そして愛しい相手と一緒になるのなら。
要らないものは直ぐに目立たない場所に沈めるなり、隠せる場所がベストだ。

「……あと、つかぬ事聞いていいですか?」

「カナリアさんって……ピアスとか付けてます?
あ、いや変な事聞いちゃって御免なさい!
 実は、知り合いの女子に今度ホワイトデーで返すの
お菓子じゃなくて、何かアクセが良いなぁってクラスで言ってたから。
カナリアさんなら、良い感じの耳に付けるの知ってるかなぁって」

カナリアさん……もしかして、君(ミミ)が
傷一つない清らかな存在なら。もしかして、これが本当に運命の相手かも。

そう、固唾を呑んで返事を待つ……頼む、ピアスを付けた事は無いって言ってくれ……っ。

196美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/03/16(木) 15:17:18
>>195

『電話』を通して『見ず知らずの相手』と『会話』を行う。
パーソナリティーである美作くるみにとって、それ自体は珍しい事ではない。
ただし、違いもあった。
ラジオでは『向こうから掛かってくる』が、今は『こちらから掛けている』。
ラジオでは『リスナーが別名を使う』が、今は『美作が別名を使う』。

「いいのよ、気にしないで。
 ホワイトデーにアクセサリーね。
 フフ、ステキじゃない。
 プレゼントは相手が喜んでくれる事が一番だから、とってもいいアイディアだと思うわ」

「だけど――――『ピアス』…………」

「あぁ、それが悪いって意味じゃないの。
 私、ピアスをした事って『一度もない』のよ。
 だから、あんまり詳しくなくって」

美作は『売れっ子アイドル』だった。
ルックスが全てではないとはいえ、『身体に傷が付く』のは、
大きな『損失』に繋がりかねない。
同様の理由で、身体に傷を付けるような装飾は好ましくないというのが、
『事務所』の方針だったのだ。

「残念だけど、こっちの方は参考になれないみたい。
 でも、その人の為に選んだ物なら、きっと気に入ってもらえる筈よ」

アイドル時代、当時の美作には『芸名』があった。
『美作くるみ』の『最初』と『最後』。
その『二文字』を取った名前だ。

「『ウサギ』さんの気持ちが伝わるように、この『止り木』から『カナリア』も応援してるわ」

『MIMI』――――それが美作の『芸名』だった。

(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1653187672/296)

公衆電話を介した会話は一段落した。
『カナリア』は言葉を切り、『ウサギ』からの応答を待っている。
このまま受話器を戻せば、『カナリア』も通話を切るだろう…………。

197雨田 月人『インサニティ』:2023/03/17(金) 13:22:52
>>196(お付き合い有難うございました。
またいずれ宜しくするべきかは、ちょっと判断つきかねますが
機会があれば、宜しくお願いします)


> 私、ピアスをした事って『一度もない』のよ


一度も無いのよ

            一度も無いのよ

                   一度も無いのよ


頭にリフレインするように、その単語だけが脳の細胞一つ一つに
刻み込まれるような産声を発している。

 (嗚呼 つまり、電話越しの彼女の、カナリアの『ミミ/人』は
女神のように、無垢で、まっさらで……)

 天啓を得たかのように、まるで初めてキリストに出会った熱教徒のように
思わず目じりに涙を浮かべてしまう程に雨田は感動を覚えた。

 「そう……そうなんですね」

口元は震えたものの、声だけは辛うじて普段通りの声に留めた。
 だが、感激は過分に体に流れてた為に。勘の良い人物なら
何だか少し声の調子が変わったかと察する事も出来るかも知れない。

一度、僕は深呼吸をした。電話の向こうで、その毛髪のカーテンに閉じられる
彼女/ミミの姿を思い浮かべる。

 脳裏に過る、一度最愛の形をしていたミミ。
忌まわしい誕生日前に起きた悲劇。イアリングを付けた生みの親と言う名の外道。

その前に、あの外道の心臓を刺すなり首を切り落とすなりして
彼女を切り離して僕の傍に置いておくべきだった。

今度は きっと同じ過ちなど起こさない。あの悲劇を二度と繰り返してはいけない。

(君を……今度こそ守り抜く。僕の傍で一生、君が穢れず、傷つかず
健やかなる時も病める時も、永遠に僕と一緒だよ)

 片方の目から一筋の涙を流しつつ、決意を胸の中で唱える。

そうだ、僕はあの時の弱い男じゃない。いま、僕の隣には何時であれ
ミミを取り戻せる力となる存在が居る。最初は母の亡霊か何かと思ったけど
僕の思い通りに動かせる、この力は。きっと、あの時ミミを護れなかった
無念と失意が産んだ、僕の希望を取り戻す為に神か悪魔か、または別の何かなのか
それは知らないけれど、僕に授けられた力で。きっとミミを取り戻す。

 ――待っててくれ

「はい、絶対に……最高の思い出が出来るように頑張りたいと思います。
また……今度もし、カナリアさん。
 今度は手で触れあえるような距離で会えた時は……その時」

 ――必ず、君と出会うよ。その時は、必ず二度と離さないから。

「――その時を、楽しみにしていてください」

 慈愛を含み、別れを惜しみつつ再会を望む声と共に受話器を置く。

 「……今日は良い日になるかもな」

 最愛の相手かも知れない声を知った。この街に、ミミは居る。

希望が胸に灯る。受話器を握った手と、聞いた耳を通して体に力が巡った。

 今日はよく眠れそうだ。幸せな、幸せな夢を見れそうだ。

198百目鬼小百合『ライトパス』&百目鬼巌『一般人』:2023/03/17(金) 15:36:07

       ――――――パチッ

伝統的な風情が漂う『数寄屋造り』の座敷に、小気味良い音が響く。
歴史を感じさせる重厚な日本家屋。
『百目鬼邸』だ。

      フゥゥゥゥ――――…………

「こりゃ駄目だ。またアタシの負けだよ」

煙草の煙を吐き出しながら、『百目鬼小百合』は呟いた。
年季の入った将棋盤を挟んで、
『不変』を象徴する『常磐色』の作務衣に身を包んだ老人が向かい合っている。
頭髪は白く染まり、顔には深い皺が刻まれているが、その双眸には未だ衰えぬ鋭さがあった。

「いつになったら親父に勝てるのかねぇ」

ぼやく娘を見つめ、『百目鬼巌』は静かに口を開く。

「…………お前は『勝っていた』」

父に言われ、小百合は改めて盤面に視線を向ける。

「終盤の戦局は、お前に傾いていたのだ。
 後は『ただ押し切るだけ』で良かったにも関わらず、
 儂が『まだ何か仕込んでいる』と考え、警戒して攻め手を緩めた」

「儂には『策』などなかったというのに」

父の言葉は的を得ていた。
『こんなに簡単に終わる筈がない』と思ったのだ。
その心の隙を突かれてしまったという事か。

「それじゃあ次こそ勝ってみせるさ」

自らの失策と父の指摘に苦笑しつつ、小百合は言った。
そして、床の間に飾られた『掛け軸』を一瞥する。
毛筆で描かれた力強い『書』は、父の手による物だった。

     『 一 罰 百 戒 』

『一人の罪』を罰する事によって『百人の戒め』とする。
『百目鬼小百合』の『座右の銘』。
『二人の鬼』――『百目鬼親子』の『座右の銘』だ。

199御影憂『ナハトワハト』:2023/03/22(水) 11:55:58

『新月』――――月明かりが乏しく、色濃い闇に支配された今夜は、絶好の『活動日和』だった。

      (………………『この辺』でいいか………………)

『喧騒』と『静寂』が入り交じる『夜の街』に一つの『影』が差す。

   バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサァッ

ビルの屋上から降り注ぐ『白い紙』が宵闇の中に舞う。
無機質な『ゴシック体』で印刷された大量の『ビラ』だ。
そこには次のように記されていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

この世界には『不可思議な現象を引き起こす力』が存在し、
いつ誰が言い始めたのかは定かではないが、これを『スタンド』と呼ぶ。
『スタンド』には様々な種類が存在しており、多様性に富んでいる一方で、
共通した法則性を持つ場合も多い。
『スタンドを持つ者』は『スタンド使い』と呼ばれ、
『力を持たない者』とは明確に区別される。

これら両者の間には、
絶対に越える事の出来ない壁が立ちはだかっていると考えて良い。
同様に、『スタンドを知る一般人』と『スタンドを知らない一般人』の間にも、
計り知れない格差がある。
ほとんどの状況において、
『一般人』が『スタンド使い』に立ち向かうのは無謀な行いだが、
知識があれば危険を回避できる可能性を作り出せるのだ。

『スタンド』によって危機的な状況に陥った際は、
逃げる事を第一に考えなければならない。
大抵の『スタンド』は力の及ぶ範囲が限られている為、
その場から遠ざかってしまえば、被害を受ける確率を大きく減らせるだろう。
知識は力であり、適切な知識を身に付ける事が、自分を守る術となる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『広報活動』を済ませた御影憂は、闇夜を見渡して『獲物』を探す。
『暗視能力』を持つ『ナハトワハト』は、真昼のような鮮明さで周囲を見通せた。
やがて、御影は一人の男に目を留める。
攻撃的で粋がった身なりの若者。
『怖い物などない』と言わんばかりの雰囲気だ。

   ――――――『あいつ』にしよう。

人々に『恐怖』を与える『御影のライフワーク』は、
『スタンドの脅威』を知らしめようとする『度会の思惑』と、巧妙に噛み合っていた。
御影が『超常の力』で『恐怖心』を煽れば、
それは『危機意識』を高める引き金に繋がり、
恐れられる事は御影自身の望みでもある。
それが度会一生の巡らす企みの一端であり、
二人が共謀して演出している『舞台劇』なのだ。
全ては『力を持たない者を庇護する』という目的の為に。
だが、『畏怖』を利用する事は躊躇しない。

        フ ワ ァ ッ

『闇の衣』を纏う姿が空中を漂い、音もなく地上に舞い降りる。
長く伸びた前髪の下で、御影の口元が妖しく吊り上がった。
そして、今夜も『恐怖の宴』の幕が上がるのだ――――。

200美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/04/09(日) 11:46:19

公私共に活動的な美作くるみは『乗り物』を好む。
普段の足は『スクーター』だが、今日は気分を変えて『ミニベロ』に乗っていた。
ミニベロはフランス語で『小さな自転車』を意味し、文字通り小型自転車の総称だ。
愛車はドイツ製の『birdy(バーディー)』。
走行性に優れたミニベロであると同時に、折り畳み自転車の代名詞として知られている。
車体の色は『ヴェスパ』や『ランドクルーザー』と同じ『カナリアイエロー』。
美作の『パーソナルカラー』である。

  シ ャ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ

「『時速25km』――まぁまぁね」

軽快にペダルを漕ぎながら、ハンドルバーに取り付けられた機器を一瞥する。
フロントフォークのセンサーと連動して、
走行速度や距離、時間などを計測できる『サイクルコンピューター』だ。
やがて目的地に到着し、自転車を止めた。

         ザッ

「確か、この辺りだったと思うけど」

スマホで地図を確認しつつ周囲を見渡すと、真新しい『公衆電話』が見つかった。
大抵は撤去される事が殆どだが、電話機の老朽化や設置場所の見直しから、
稀に新しく設けられる場合もある。
この電話も、そうした理由で『新設』されたのだろう。

201美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/04/11(火) 16:53:46
>>200

『アイドル』と『パーソナリティー』。
本質的な役割は異なるが、それらには共通点もある。
アイドルは『歌う為』にマイクを使い、パーソナリティーは『喋る為』にマイクを使う。
どちらも『声』が重要だ。
そして、その声によって『支持者』を増やす。

  「『あなたの番号を教えてくれる』?」

          「ハイ!!ワタシノ『番号』ハ――――」

『公衆電話』に語り掛け、『電話番号』を聞き出す。
『脅迫』も『誘惑』も要らない。
ただ『欲しい』と言うだけで差し出してくれる。
『美作くるみの声』が『魅力的』だからだ。
これが『プラン9・チャンネル7』。

「でも、『簡単すぎる』のが玉に瑕ねぇ。
 やっぱり人間相手でないと、『駆け引きの妙味』は味わえないわ」

       ピッ

手に入れた番号をスマホに登録し、停めておいたミニベロに跨がる。

「『私の力』は、まだまだこんなものじゃあないんだから」

小回りの利く『ヴェスパ』は、よく故障する。
『ランドクルーザー』は堅牢だが、燃費が悪い。
この『バーディー』は故障もしないし燃料も不要だ。
だが、機動力ではスクーターに劣り、長距離の移動は車に劣る。
だから、自転車に乗るのは『運動したくなった時』だ。

「もっと『カナリア』を知ってもらわなきゃね」

力強くペダルを漕ぎ出し、並木道を颯爽と駆け抜けていく――――。

202ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/15(土) 12:27:06
とある料理教室
非番の日に料理を習うのがささやかな楽しみだ
今日は何を作るのか

203小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/15(土) 15:06:10
>>202

小石川家のキッチンには、料理の準備が整えられていた。

  「今日は旬の春野菜と桜えびを使ったパスタを作りましょう。
   まずは野菜から……」

まな板の上には、新鮮な春キャベツと瑞々しい新たまねぎがある。
その傍らには包丁が置かれていた。
手入れが行き届いており、よく切れそうだ。

  「キャベツは葉を5枚ほど、たまねぎは一つで大丈夫です。
   キャベツを食べやすい大きさに、たまねぎは2cm幅のくし切りにして下さい」

ソラの横に立ち、手順を説明しながら彼女の様子を見守る。

204ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/15(土) 18:45:31
>>203
春野菜と桜えびのパスタ
季節感があって良いじゃないか

包丁を手に取り、まずはキャベツを切る

ザクッ ザクッ

刃物の扱いにも慣れたものだ
キャベツを親の仇でも討つかのようにスムーズに切り刻んでいく
細か過ぎず、ある程度の食感が残るくらいの丁度良い大きさだ

問題はもう一つの野菜だ

「…」

たまねぎを切ると、その細胞が壊れて混ざり合い
催涙性物質「硫化アリル」が発生する
この硫化アリルのせいで目が刺激され痛みに襲われる

「……」

痛みに耐えながら新たまねぎを切る
目が見え辛いため、若干が手元が狂う

205小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/15(土) 19:53:13
>>204

よく研がれた包丁は、たまねぎの細胞を壊さずに切れるので、
硫化アリルの発生を抑えられるが、それは『切り方』にもよる。

  「包丁を軽く握って……あまり力を入れすぎずに、
   滑らせるような感覚で切ってみて下さい」

  「刃の『面』を意識して使うといいですよ」

彼女の包丁捌きは上手いものだった。
ただ、『キャベツの切り方』を見ている時から思っていたが、
少し力が入っているように見える。
刃を押し付けずに動かせば、細胞を壊す事なく切る事が出来るだろう。

  「……私はパスタを茹でておきますね」

ソラの手元を確認しつつ、沸騰する鍋の前に立ち、
たっぷりの湯にパスタを投入する。

  「お湯に対して『1%』の塩を……。
   下味が付くだけでなく、麺の吸水量が減って『コシ』が生まれます」

今回は二人分なので、およそ大さじ一杯ほどだ。

206ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/16(日) 17:55:49
>>205
「おぉ…」

小石川の指示に従って滑らせるように切る
たまねぎを切るのに力を入れる必要は無い
包丁が良い為か、綺麗にサクサクと切れるため
硫化アリルが発生せずにあまり目が痛くならない

「…それはスパゲッティなのか?スパゲッティーニなのか?」

茹でられるパスタをチラリと見る
パスタと言っても色々種類がある
こういう時、使われるのは大体スパゲッティだろうが
ひょっとしたらスパゲッティーニの可能性もある
そんな細かい事を一々気にする奴はうざがられるのだが

そんなくだらない事を考えているうちにたまねぎを切り終えてしまう
野菜はこれで終わりなのだろうか

207小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/16(日) 18:56:49
>>206

横合いから鍋を覗くと、ごく一般的な太さのパスタが見えた。

          グツグツ

  「……今日は『スパゲッティ』を用意しておきましたよ」

あくまでも『料理教室』なので、奇を衒うよりは、
オーソドックスな種類が向いていると考えたのだろう。

  「こちらのボウルに調味料を入れて下さい。
   オリーブ油大さじ2、醤油小さじ1、黒胡椒を少々……」

  「それから……ニンニクをすり下ろして、
   同じボウルに加えていただけますか?」

置かれているニンニクは、実の大きな『国内産』だ。

       ソッ

目の細かい『おろし金』を取り出し、ソラに手渡す。
ニンニクが持つ疲労回復効果の元になるのは、『アリシン』という化合物。
これは細胞を破壊する事で産出される為、たまねぎとは逆の方法が適切になる。

208ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/17(月) 17:50:35
>>207
「にんにくか…」

指示通りにんにくを摩り下ろす
にんにくを食べる上で気になるのは匂いだ
アリシンは疲労回復効果があり、ありがたいのだが
同時ににんにく特有の匂いの元でもある

「匂い対策は?」

一般的ににんにくの匂いの対策には、牛乳やりんごが良いとされる
しかし、料理するのにそんなの一々気にすんなよという感じではある

209小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/17(月) 19:05:08
>>208

ソラの言う通り、ニンニクを使う料理では風味と匂いの加減が難しい。

  「食後に『ジャスミンティー』をいただきましょう」

          コト

棚の中から『茉莉花茶』と書かれた缶入りの茶葉を出してみせる。
ジャスミンティーには豊かな花の香りがある。
それがニンニクの臭いを打ち消してくれる。

  「キャベツとたまねぎを鍋の中に入れて、
   スパゲッティと一緒に一分ほど茹でて下さい。
   私は桜えびを……」

      ピッ

  「ラップをかけずに電子レンジで40秒加熱します」

ここまでの流れで大体の工程は終わっているので、完成まではもう少しだ。

          「……にゃ」

ふと、後ろの方から『猫の鳴き声』がする。
以前ソラが来た時には、猫などいなかった。
そちらを見れば、『猫の耳が生えた帽子』が動いているのが分かるだろう。

210ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/18(火) 17:55:51
>>209
「ジャスミンティーか…」

マジでどうでも良い余談だが
大分前に、ハーブティーを飲んでからハーブティーにはまっていて、自宅で淹れたりしている
ハーブ毎に違った香りを楽しめ、疲れを取ったり気分を落ちつけたり
仕事で疲れて帰ってきた自分に癒してくれる

>          「……にゃ」

「…」

スパゲッティを茹でようと材料を鍋にぶち込もうとしたところに、猫の声が聞こえた
声の元を確かめようと振り向いてみると、『猫の耳が生えた帽子』を確認した

「…猫か?あいつ…」

一応、小石川に聞いてみる
これは猫なのか?いや、帽子なのか?
そもそも生物か?
よく分からないが、小石川の飼い猫なのか?

だがまぁ、一番問題なのは

「台所に猫入れんなよ…」

211小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/18(火) 20:33:25
>>210

『黒いキャペリンハット』に耳が生えた外見。
元は小石川の帽子だった事が窺える。
一見すると四肢は確認できないが、おそらく極端に短いらしい。

  「茹で上がったスパゲッティと野菜をザルで湯切りし、
   先程のボウルに入れて十分に混ぜれば、
   『春野菜と桜えびのパスタ』の完成ですよ」

そこでソラと同じく『鳴き声』を聞いた。

  「……起きてしまったようですね」

『帽子猫』は二人に擦り寄ってくる事もなく、離れた場所で大人しくしている。
初めて会うソラを見ているようだ。
『帽子があるだけ』と思えば、さほどの懸念はなさそうなので、
放っておいてもいいのだろう。

  「私も詳しくは分かりませんが……
   『友人の猫の能力』で、私の『帽子』が『猫』に変わったのです」

  「撫でられるのが好きなので『撫子』と名付けました」

話しながら、野菜ストッカーから『新じゃが』を、冷蔵庫から『そら豆』を取り出す。
調味料はマヨネーズ、レモン汁、塩胡椒。
別のボウルを用意し、調理台に置いておく。

  「今日は簡単に出来る『もう一品』を作りましょう。
   『新じゃがとそら豆のサラダ』です」

      ジャァァァ……

じゃがいもの皮を洗い、まな板に乗せる。

    トン トン トン トン

洗い終わったじゃがいもを四等分に切る。

      ピッ

それを電子レンジで加熱する。

212小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/18(火) 20:41:41
>>211

耐熱皿に乗った桜えびは、
新じゃがと入れ替わりに電子レンジから出され、
今は調理台に置かれている。
春の訪れを感じさせる色合いだ。
これを野菜やパスタと同じボウルに入れて混ぜればいいのだろう。

213ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/19(水) 17:58:07
>>211-212
「ほー…」

スパゲッティと野菜と桜えびをボウルの中で混ぜながら
帽子猫の誕生経緯を片手間に聞く
わけわからん奴だが、そういう猫を作るスタンド能力があるのだと考えればまぁ納得はいくか
もっと意味不明な奴らは他にも大勢いる
いちいち帽子猫程度にツッコんでいたらツッコミきれない
そこまで興味も沸かない
生憎だが猫を可愛がるような趣味は無い
離れているとはいえ猫が台所に居るというのは衛生的に大問題な気はするが、飼い主である小石川が良いなら別に良いのか
(仮にも料理教室の生徒が来ているのにそれはどうかと思うが…)

そうこうしているうちにパスタは完成した事だろう

214小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/19(水) 19:33:26
>>213

『帽子猫』――『撫子』はキッチンに入っていなかった。
自分が踏み込むべきではない場所だと理解しているようだ。
そのまま静かに立ち去り、リビングの方へ歩いていく。

  「『盛り付け』は私が担当しますので……」

        スッ

  「ソラさんは――『これ』でじゃがいもを潰していただけますか?」

加熱して柔らかくなった新じゃがの入ったボウルの前で、ソラにフォークを差し出す。

  「十分に潰せたら、調味料を加えて混ぜ合わせて下さい。
   マヨネーズ大さじ1、レモン汁小さじ1、塩胡椒を少々――」

説明を挟みながら、二枚の皿に手際良くパスタを盛り付けていく。

  「……『イチゴのショートケーキ』は喜んでもらえましたか?」

  「相手の方は、ソラさんの『親代わり』だとお聞きしましたが……」

前回、彼女は『ケーキの作り方』を習いに来ていた。
『お世話になった人と出会った記念日』の為に。
教えた人間として、その結果は気掛かりだった。

215ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/20(木) 18:07:52
>>214
入ってはいけない場所を分かっているとは賢い猫だ
小石川の躾けの結果なのかどうかは分からないが
猫に対して冷たい態度を取っているかもしれないが、
これでも小石川の飼い猫という事でまだ気を使っている方だ

>フォーク

「マッシャーは…?」

ジャガイモを潰すにはポテトマッシャーが最も効率が良いのだが
ポテトマッシャーがあるご家庭の方が少数派なのだろうか
ただこの家には無いのか、あるけどお前にはフォーク十分だという事なのか

グチャ グチャ

フォークに不満を持ちつつも、ぐちゃぐちゃと芋をすり潰す
何かを潰す仕事もやった事はある、出来ない事は無い

>……『イチゴのショートケーキ』は喜んでもらえましたか?

「まぁ、大体あんたのお蔭で」

以前作ったショートケーキが美味かったのは
大半の部分は小石川が作ったからだろう
自分がやったのは苺を苺状に並べるとかアホな事やったくらいだ

216小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/21(金) 02:16:59
>>215

今までに何度か会って話をした事で、小石川もソラの性格は知っている。
猫に対する気遣いも、おそらく理解しているだろう。
猫の方は気付いていないかもしれないが、
だからといって傷付いているという事もない。

  「『ポテトマッシャー』は常備されていない家庭もありますが、
   『フォーク』なら大抵の家で使われています」

  「『マッシャーなしでも作れる』事を、お伝えしたかったものですから……」

特定の役割に特化している道具は、人によっては所有していない場合もある。
そして、それがなければ作れない訳ではない。
用意が簡単な品物の方が、より分かりやすいだろうという考えだった。

  「他には……『スプーン』や『しゃもじ』や『お玉』なども、
   食材を潰す際には役立ちますよ」

パスタが盛られた皿を両手で持ち、ダイニングテーブルに運ぶ。

  「ケーキの作り方を習いに来てくれなければ、
   私が手助けする事は出来ませんでした。
   ソラさんの行動があったからこそ、
   喜んでもらう事が出来たのです」

小石川はソラに手を貸したが、
そもそもソラ自身が動かなければ何も始まらなかった。

  「……その人を想う気持ちは、きっと伝わっていると思います」

あらかた潰し終わったタイミングで、ソラの隣に戻ってくる。

  「――『完成』までは、もう一息です。
   茹でたそら豆と調味料を加えますので、
   全体を混ぜ合わせていただけますか?」

そら豆をボウルに投入し、そこに調味料を加えていく。
先程はソラに頼んだが、彼女には混ぜ合わせる作業も任せている。
それ以外は自分が担当した方がいいだろう。

217ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/21(金) 19:57:22
>>216
「……」

若干やり辛いフォークでじゃがいもを潰しながら
黙って小石川の話を聞いていた
頷く事も相槌を打つ事もなく、黙々と

>茹でたそら豆と調味料を加えますので、
>全体を混ぜ合わせていただけますか?

「おお」

これが最後の作業だろうか?
ボウルの中の材料を混ぜ合わせていく
しかし、こういうのは優しく丁寧にやるべきなのか?
それとも、満遍なく混ざるように勢いよくぐちゃぐちゃに混ぜた方が良いのか?

ドガガガガガッ

よく分からないが、混ざりやすいように力を込めて勢い任せにかき混ぜる
そんなやり方をしてたら豆とかが潰れてしまうかもしれないが…

218小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/21(金) 23:57:39
>>217

サラダを混ぜ合わせるソラを見て、ここでケーキを作った日を思い出す。
スポンジ生地を泡立てた時も、こんな風に勢い良く混ぜていた。
彼女は力が入りがちなのかもしれない。
しかし、それも真剣に向き合っているからだろう。
そう考えると心なしか微笑ましさを感じ、自然と口元が緩む。

  「……ありがとうございます。
   しっかりと混ざりましたね」

ボウルの中身を確かめ、小さく頷く。
少しばかり潰れた豆もあったが、それも食感の変化に繋げられる。
あくまでも家庭料理なのだから、必ずしも完璧を求める必要はない。

  「仕上げに小さじ1杯のオリーブオイルを回し掛けて……」

そら豆の緑色が鮮やかなポテトサラダに、オリーブオイルを垂らしていく。

  「――『新じゃがとそら豆のサラダ』の完成です」

       ソッ

そして棚から小皿を取り出し、ソラに差し出した。

  「『盛り付け』をお願い出来ますか?
   それが済んだら、あちらのダイニングテーブルまで運んで下さい」

  「ちょうど『お昼』の時間帯ですので……
   料理の『仕上がり具合』を一緒に確認しましょう」

テーブルの上には『昼食の支度』が整っていた。
『春野菜と桜えびのパスタ』とカトラリー。
また、『ジャスミンティー』の入ったガラス製のポットと、
カップが二つ用意されている。

219ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/22(土) 18:16:43
>>218
「ん…」

出された小皿にサラダを盛り付ける
さっき荒々しくぐちゃぐちゃにサラダをかき混ぜていた割に
盛り付け方は妙に綺麗だ
お花の形になるように皿の上にサラダを盛り付けている
そんな盛り付け方をした所で味は変わらないんだが…

サラダが乗った皿をテーブルに置き、昼食が全部揃う

このメニューなら魚介類と合う白ワイン
それに食後酒のリモンチェッロが欲しい所だが
残念ながらここではそれは出て来ないだろう

椅子に座って、自分の食器を引き寄せる
食事の準備は完了だが、小石川が号令をかけるまでは食べる事は出来ない
号令がかかるまでは静かに待つ

220小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/22(土) 19:43:05
>>219

ワインは嗜む程度だが、何本か買い置きはある。
小石川は『ロゼワイン』を好んでいた。
もちろん今は出てこない。

  「――『いただきます』……」

ソラが席につくのを待ってから食事を始め、まずスパゲッティを口に運ぶ。
新たまねぎと春キャベツは、どちらも瑞々しくて柔らかく、甘味が強い。
そこに桜えびの香ばしさが加わり、互いを引き立て合う。
旬の季節だからこそ楽しめる味わいだ。
すりたてのニンニクの旨味も効いている。

  「……美味しく出来ていますよ」

        ニコ……

テーブルを挟んでソラと向かい合いながら、穏やかな微笑を浮かべた。
カップにジャスミンティーを注ぎ、口をつける。
立ち昇るのは華やかな香り。

  「以前、皆さんに集まっていただいた時は……
   『ジャスミン』はお出ししませんでしたね」

あの時に出したのはラベンダー・カモミール・レモングラス・ローズヒップ。
自分が見る限り、それらに一番興味を示していたのはソラだった。
色々なアレンジを加えつつ、全ての種類を試していた。

  「ソラさんは『ハーブティー』はお好きですか?」

綺麗に盛り付けられたポテトサラダ。
この花を崩してしまうのは勿体ないような気もした。
しかし、食べる為に作ったのだから、そうするのが正しい。

221ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/23(日) 18:37:48
>>220
「…いただきます」

小声でそう言ってフォークに手を付ける
フォークでくるくるとスパゲッティを小さく巻いて口に入れる
その所作は意外と綺麗で、品の良さを感じさせる
普段がさつなくせに、テーブルマナーは結構きちんとしているようだ

たまにスパゲッティをずるずる啜って食べる奴もいるが
こいつはなるべく音を立てずに静かに食べるタイプらしい

それにしても、キャベツは食感が大事だ
やはりキャベツを千切りにしたりせず、ある程度大き目に切っておいたのは正解だったか?
シャキシャキで瑞々しいキャベツはにんにくの効いたスパゲッティと相性が良い

>ソラさんは『ハーブティー』はお好きですか?

「あぁ、好きだよ」

そう言ってジャスミンティーを一口飲む

「最近は自分で淹れたり、育てたりしてるよ」
「…オススメとか何かあるか?」

222小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/23(日) 23:24:28
>>221

ソラは不思議な雰囲気を持つ少女だ。
この年頃は何かと多感な時期ではあるものの、そういった感覚とは違う。
彼女を見ていると、刻一刻と移り変わる『空の色』を眺めているような気分になる。

  「――『マロウブルー』はいかがでしょうか?」

手にしたカップをテーブルに置き、
目の前に座るソラを見つめながら、一つのハーブを挙げる。

  「淹れたては深い青色ですが、
   時間が経つと少しずつ澄んだ紫色に変化していくのです……。
   そこにレモン果汁を加えると、今度は淡いピンク色に変わります」

ハーブティーは主として香りを楽しむものだが、
『マロウブルー』は色を楽しむ事が出来る一風変わったハーブだ。

  「『夜明けの空』のように色が変わっていくので、
   『夜明けのハーブティー』とも呼ばれています」

  「ストレートで飲むと味は薄めですので……
   蜂蜜やシロップを入れたり、他のハーブと組み合わせたり、
   色々なアレンジを楽しめますよ」

  「……『空の色』に例えられる『マロウブルーティー』は、
   ソラさんに似合うのではないでしょうか?」

言葉を切り、次にポテトサラダを口にする。
新じゃがとそら豆も春が旬の食材。
しっかり潰れているじゃがいもは食べやすく、味も染みている。
そら豆は崩れたものもあれば、形が残っているものもあり、
それも食感のアクセントになっていた。
スパゲッティと合わせて『上々の仕上がり』と言っていいだろう。

223ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/24(月) 18:52:14
>>222
「マロウブルーか」

コトリ
ジャスミンティーのカップを置く

「バタフライピーと似てるよな?」

バタフライピーもまた、鮮やかな青色をしていて
レモンを加えると色が変化するハーブティーだ

「アントシアニンにクエン酸を混ぜると色が変わるんだったか」
「マロウブルーも同じようなもんか?」
「何か違いとかあんのか?」

一々そんな事を気にして質問してくるうざい奴だ

ポテトサラダを食した小石川に続くように、自身もポテトサラダを食べる
味の染みたじゃがいもに食感の良いそら豆
概ね満足の行く出来なのだが…

「やっぱりんごを入れるべきだったな…」ボソッ

小石川に聞こえるかどうかってくらいの小声で呟く
今更文句言うなよって感じだし
ポテサラにりんごとか酢豚のパイナップル並みに嫌われてるだろう

224小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/24(月) 21:21:56
>>223

  「バタフライピーの方は安定した色が出ますが、
   マロウブルーは淹れる度に違う色合いが出ます。
   蒸らし時間によっては濃くなったり透明になったり……」

  「『空の天気』と同じように一定ではありませんが、
   その時々の色を楽しめるのがマロウブルーの個性です」

バタフライピーも候補として考えていたが、
毎回微妙に違う色が出るマロウブルーの方が、
よりソラには合っているのではないかと感じていた。

  「その他の大きな違いは香りと効能です。
   マロウブルーは『花のような匂い』で、
   バタフライピーは『マメ科に近い匂い』です」

  「バタフライピーは『疲れ目の回復』などに効きますが、
   マロウブルーは『喉の痛みや腫れ』に効果がありますよ」

ソラの問い掛けに対して一つ一つ返答する。
彼女は掴みどころのない人物だが、こうして質問する様子は年相応に見えた。
子供のいない自分にとっては可愛らしく思える姿だ。

  「……ソラさんが作る時には、是非『りんご』を入れてみて下さいね」

ソラの呟きを耳ざとく捉え、そのような言葉を返した。

  「その代わりにはなりませんが……
   昨日りんごを使った『パウンドケーキ』を作って、
   味を馴染ませる為に一晩寝かせておきました」

  「よろしければ、ソラさんにも『味見』をしていただけませんか?」

パスタとサラダを食べ終わった後で、
ソラに余裕があればデザートが出てくるだろう。
入りそうになければ持ち帰ってもいいのかもしれない。
すぐに悪くなる品物でもない。

225ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/25(火) 18:35:32
>>224
「なるほどねぇ」

食事を続けながら小石川の説明を聞いていた
淹れる度に違う色が出るというのは面白い
どんな色になるか分からない楽しみがある

それにマメ科の匂いよりも花の匂いの方が好きだ

そして効能についてだが、
普段の労働による疲れ目はよく起こる症状だが
ストレスから癇癪を起してよく怒鳴り声をあげるため、喉を傷める事もしょっちゅうある
この辺り、使い分けが必要かもしれない

総じてマロウブルーは確かに合っているかもしれない

>よろしければ、ソラさんにも『味見』をしていただけませんか?

ここにきてりんごのパウンドケーキというデザートが出て来た
こんな性格だが、味覚の方は結構甘党な方だ

「おう…」

ボソリと愛想の無い返事をするが、
内心楽しみにしながらメインの料理を平らげる

226小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/25(火) 22:04:12
>>225

何気ない会話と共にソラとの食事は進む。
ごく普通の世間話ではあるが、自分にとっては幸せな時間だった。
慌ただしい『非日常』の中で忘れかけていた『日常の尊さ』を思い出させてくれる。

  「すぐに持ってきますので……少しだけ待っていて下さいね」

食べ終わると席を立ち、まもなくケーキの乗った皿を手にして戻ってきた。
それをテーブルの中央に置く。
同時に、ふんわりと甘い香りが漂う。

  「『りんごのキャラメリゼ』と『シナモン』を使いました」

     コト……

食べやすい大きさに切ったパウンドケーキを小皿に取り分け、
その内の片方をソラの手元に置いた。

  「……どうぞ」

カラメルソースの絡んだりんごは、
甘酸っぱさに加えてコクが強く、少々ほろ苦さもある。
そこにシナモンが持つ独特の風味が添えられていた。
やや『大人向きの味わい』と言えるかもしれない。

227ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/26(水) 18:24:05
>>226
フォークで一口サイズに切ったパウンドケーキを食べてみる
キャラメリゼされていて香ばしく、酸味と苦みが甘さを引き立てている
りんごと相性の良いシナモンの香りも大いに食欲をそそる

「…美味いな」

期待していた以上の味だ、待った甲斐がある
美味いケーキを食べながら、ジャスミンティーを飲む
最高の食後のデザートだ

「…今度作り方教えてくれ」

美味いと思ったものは自分でも作ってみたくなるものだ

228小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/04/26(水) 22:23:14
>>227

大切な事というのは意外と身近にあるものだ。
遠くを見すぎていると近くを見る事を忘れてしまう。
ソラと過ごす時間は、その事を改めて教えてくれた。

  「ええ……是非そうしましょう」

        ニコ……

柔らかい微笑みを浮かべながら、ソラの言葉に頷いた。
それは今日一番嬉しそうな表情だった。
美味しい物を食べる時、人は自然と笑顔になるという。
しかし、それだけではない。
ここにソラがいてくれたから、こうして笑う事が出来たのだ。

  「余った分は包んでおきますので、持ち帰って下さい。
   ソラさんに食べてもらいたいですから……」

帰り際、丁寧にラッピングされたケーキの残りが、ソラに手渡された。

  「――今日は来てくれてありがとうございました。
   一緒にお料理して食事が出来て……私はとても嬉しく思っています」

幼いながらも強く生きるソラを見つめ、自分の中にある素直な気持ちを伝える。
ソラと過ごす時間は楽しい。
どこまでも正直な思いだった。

  「……ソラさん――また来て下さいね」

穏やかな微笑と共に、ソラの姿が見えなくなるまで、彼女を見送るだろう。

229ソラ『ステインド・スカイ』:2023/04/27(木) 18:21:24
>>228
「…どうも」

帰り際にお土産のケーキを受け取る
これで家でゆっくりと食べる楽しみが増えた
茶と合わせるか、それともここでは飲めなかった酒と合わせようか?
ブランデーが丁度良いかもしれない

「今度は猫の玩具でも持って来るわ…」

帽子猫に対して塩対応だったが、別に猫が嫌いというわけではない
今度来る時は猫に土産でも持って来よう

今日は車やバイクで来たわけではない
徒歩で来たのだ、帰るのも徒歩だ
小石川に見送られながら、足でとぼとぼと帰るしかなかった…

230甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/06(土) 12:22:33
ゴールデンウィーク終盤
9連休を利用して>>231とある場所に旅行に来た
その場所とは…

231リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/07(日) 11:08:53
>>230

甘城が旅行に来た場所。
それは『I県N市』だった。
中部地方最大の都市であり、『グルメ激戦区』としても知られている。

「ウフフ」

「ウフフフフフフフフ」

「ウフフフフフフフフフフフフフフ」

甘城に同行しているのは、青い眼の『西洋人形』だ。
ここは『N駅前』。
『ナナちゃん』の愛称で親しまれる『巨大マネキン』が佇む。

「天音ちゃん、メリーこんなに大きくなっちゃったわ」

『魂』を半分移した『ナナちゃんの視界』から甘城を見下ろし、軽く手を振る。
身長『6m10cm』、体重『600kg』の巨体だ。
これが動き出せば怪獣映画さながらのシチュエーションになるだろう。

232甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/07(日) 18:29:38
>>231
お人形さんを連れて来たらぼっちというか寂しい奴みたいだ…

巨大マネキンがこちらを見下ろし手を振っている…

「…」

それを見上げて手を振り返す
この巨体が動き出してうっかり人を踏んだり蹴ったりしたら死人が出るだろう
普通に喋っているが、周りに人は居るのだろうか?
ナナちゃんがいきなり手を振ったり喋ってたりしてたら怖すぎるぞ

「…で、どこに行く?」

N市はグルメ激戦地として有名ではあるが、
観光地として何も無い事でも有名だ
N城くらいじゃないのか?観光するところなんて

233リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/07(日) 19:28:40
>>232

偶然にも、ちょうど周りに人がいないタイミングだった。
近くで何かのイベントをやっているらしく、そちらに注意が向いていたのだ。
しかし、もし移動し始めたりしたら、大騒ぎになるのは間違いない。

 「 ウ フ フ フ フ フ フ フ フ フ フ フ フ フ フ 」

         グ  ル  ゥ  ン  ッ

巨大化した体を楽しんでいるのか、その場でバレリーナのように一回転するナナちゃん。
近くを歩いている人間がいたら、圧倒的な大質量で吹っ飛ばされていたかもしれない。
そして、本体自身は甘城の傍にいた。

「メリー、『お舟』に乗りたいわ」

      ソッ

巨体を誇るナナちゃんとは対照的に小さな本体の手で、
案内板に掲示されたイベント情報を指差す。
『H川水上散歩』というのがあるらしい。
N城前の乗船場から舟が出ているようだ。
そもそも甘城にくっついてきただけなので、決まった予定など何もない。
ただ、元々この国に船で輸送されたメリーは、それに興味を抱いた。

234甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/08(月) 18:10:26
>>233
ジーッ

人が居ない事を良い事に
やりたい放題やってやがるナナちゃんを、スマホで動画を撮影している
この動画を動画投稿サイトやSNSに挙げたらどうなるだろう?
まぁ、普通はCGだとか特殊撮影としか思わないだろうが…

「『お舟』?」

メリーが指差す案内板を見る

「じゃあ、まずそこ」

予定も特に決まっていないのでメリーの好きな所に行こう
どうせN市には何もないし

乗船上まではカットしていこう
どうせN市には何もないし

しかし…
お人形さんを連れて会話するのも大分ヤバいんだが
この場合、チケットはどうすればいいのだろう?
メリーを含めると2人分なのか?
メリーはあくまで人形だから1人分で良いのか?

235リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/09(火) 07:11:51
>>234

甘城の撮影に合わせるように、
ナナちゃんは座ったり立ったり歩いたり跳んだりしていた。
まともに受け取られる可能性は極めて低いとはいえ、本物ゆえのリアリティはある。
もし投稿すれば一定の反響は得られるかもしれない。

「ウフフフ、ありがとう。
 天音ちゃんと一緒にお舟に乗れて嬉しいわ」

客観的に見れば、人形が勝手に喋る光景は明らかに異常だし、
人形と会話する人間も別の意味で怖いだろう。
メリーとしては世間が何を思おうが関係ない。
だが、せっかくの旅行を台無しにしてしまうのは嫌だった。

《天音ちゃん、メリーを持っててくれる?》

よって、自然と『スタンド会話』を使う形になった。
メリーは乗船料金を支払っておらず、
身動きせずに『普通の人形』として振る舞っている。
無賃乗船となるが、ただの人形に運賃を請求する人間はいないので、
料金は一人分だけで済む。
その代わり動けないので、甘城に持っていてもらうしかなくなってしまう。
奇異の目で見られる可能性に関しては、
カバンか何かに入れて外が覗けるようにしておけば、
かなり不自然さは薄れる筈だ。

      スィィィィ――――――――

まもなく舟は進み始め、ゆっくりと川を下っていく。

《メリーはね、大きな船で運ばれてきたの》

規模は全く違うが、それでも何となく郷愁を誘われる部分はある。

236甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/09(火) 18:53:40
>>235
動画を投稿するかどうかは取り合えず保留としておこう…

メリーを鞄に入れて船に乗り込む
鞄は大き目に開けているので、辺りをキョロキョロ見渡す事が出来るだろう
しかしまぁ、他に客がいたら何か首が動く不気味な人形が見られる可能性も無くはないが

>メリーはね、大きな船で運ばれてきたの

『…そう』

メリーが何時、何処で作られ、どういう経緯で来たか
それはあま公の知るところではないし、勝手に想像するしかないが
少なくともN市ではないだろうという事は分かる

そして、この妙な人形について興味が無いわけではない

『何処から来たの?』

今日は気持ちの良い晴天だ
涼しい川の上を渡る船に、心地の良い春風がそよぐ
人形にそのような感覚が感じ取れるかは分からないが

237リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/10(水) 04:40:43
>>236

鞄を開けておいてくれたお陰で、
甘城が見ているのと同じ景色をメリーも見て、
甘城が感じているのと同じ風をメリーも感じる事が出来ている。

《あのね、ずっと前に『外国』から来たの》

そこはかとなくフワッとした答えが返ってきた。
大切にしまっている『パスポート』を見せても良かったのだが、
今は動かないようにしている。
ただ、メリーにとって重要なのは、
『どこから来たのか』よりも『何の為に来たか』だ。

《ウフフフ、メリーは『親善大使』なのよ。
 みんなと仲良くなって、人と人の『架け橋』になりたいの》

舟は『G条橋』の下を潜り抜けていく。
『H川七橋』の一つで、最も上流に位置する橋らしい。
現在のコンクリート橋に架け替えられたのが昭和初期の事で、
メリーが来た時期と近いせいか、何となく親しみを感じる。

《人間は大人になってからだと、お友達になるのが難しいんですって。
 でも、『その前から友情を育てよう』って考えた人がいたの。
 違う国同士でお人形を贈り合って、『思いやりの大事さ』を伝えたかったの》

今から一世紀近く前、そういう話が持ち上がった。
国を越えた友好の証を人形に託し、子供の頃から思いやりを育む。
『リトル・メリー』も、その計画によって輸送された一体である。

《このお話、天音ちゃんはどう思う?》

当時も批判の声は少なからず存在した。
稚拙で幼稚な発想だと。
だが、最終的には人々の理解が得られ、計画は実現する事になる。

238甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/10(水) 19:12:05
>>237
昭和初期というと割と最近のような気もするが
それでもそこそこの歴史を感じる橋だ

『…青い目の人形?』

メリーの話を聞いて思い出した歴史の話だ
そう言えば、メリーの見た目も件の人形と合致する

確か…送られて来た人形の大半は
敵性人形として無残に処分されたんだったか

『上手くいけば良い話だったと思う』
『失敗したらどうしょうもない』

折角送った人形が、
惨たらしく壊されてしまったのだから

『大人には「思いやりの大事さ」は伝わらなかった』

人形には何の罪も無いのに、人形にとってはとんだ災難だろう
壊されるために作られたのではなく、国同士の仲を取り持つために作られたのに

当時の考え方は知らないので、現代の価値観で考えても仕方ない事だが

『でも、送られて来た事は無意味じゃなかった』

大半の人形は処分されてしまったが、みんながみんな人形を敵視していたわけではない
人形を哀れんだ人間達によって匿われた人形も存在する
そして、その人形達は現在も大切に保存されている

人形が平和を齎す事は無かったが、何かの役には立ったはずだ

239リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/11(木) 12:44:07
>>238

リトル・メリーの青い眼が、鞄の中から甘城を見つめる。
作り物の顔は表情を変える事はない。
しかし、どことなく笑ったようにも見えた。

《メリーもね、隠してくれた人がいたから助かったの》

当時の軍部から人形の処分命令が伝達され、
友好の為にやって来た人形達の多くは、
頭を砕かれ手足をもぎ取られて火の中に投げ込まれた。
メリーが破壊を免れたのは、壊す事を不憫に思った人間がいたからだ。
だからこそ、この『魂』は憎悪に染まりきらずにいられる。

《メリーは見つけてもらえたけれど、
 まだ見つけてもらえてない子も、きっと何処かにいると思うわ。
 誰かが見つけてくれるのを、きっと一人ぼっちで待ってる》

舟は『N橋』を通過する。
『G条橋』のすぐ下流に位置する橋で、竣工は大正16年。
交通量が少なかった事から架け替えが行われず、現代に至っている。
次に見えてくるのが『T橋』。
昭和の終わり頃に修景されたものの、
こちらも竣工は大正9年で、昔の面影が垣間見えた。

《メリーは、そういう子達を見つけてあげたいの》

時代の流れで人々の記憶から忘れ去られ、
取り残されてしまった『姉妹』を見つける事が、
リトル・メリーの願いだった。

240甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/11(木) 18:32:17
>>239
こうして色々な橋を見ると
どの橋もそれぞれ違った歴史を感じさせる趣がある

メリーを見ると、そんな橋と同じくらいか
それよりも長い歴史があるように思える

『…見つかると良いね』

隠されたまま行方不明の人形
今、見つけたとしても当時の姿のまま無事でいるだろうか?
まぁ、どうなっているにせよ…
ずっと隠されて歴史の闇に葬られるよりも
発掘されて再び日向の世界に戻って来た方が人形は嬉しいのかもしれない
もし壊れていたとしても、そのまま朽ちていくより
正式に供養して葬られた方が救いにもなるか


橋ばかり見ていても飽きてしまいそうだ
折角船に乗ったんだから、もっと色んな風景に目を向けたい
川の中を見てみれば、魚や亀がいたりするだろうか?

241リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/11(木) 19:36:38
>>240

実際、メリーの保存状態は、かなり良好な方だった。
全ての人形が同じ境遇ではない以上、
もし見つかったとしても破損してしまっている個体もあるだろう。
それでも永遠に埋もれたままでいるよりは救われる。
歴史の証人として、現代の子供達に伝えられるものもある筈だ。
そうであるなら、今度こそ『本来の使命』を果たす事にも繋がる。

  《ありがとう、天音ちゃん》

       《これからもメリーと『お友達』でいてね》

昔、リトル・メリーは人間に裏切られた。
しかし、メリーは『甘城天音』を信じている。
かつてメリーを救った人間がいたように、
人間の心には『思いやり』もあると理解しているからだ。

《ねえ、天音ちゃん。色んなお魚がいるわ》

甘城の視線を追いかけて、同じく水中を見下ろす。
近くを遊泳しているのは、キラキラ光るギンブナの群れだ。
また、コイも一匹いた。
なかなか大きいので、もしかすると長寿なのだろうか。
舟に怯える事なく悠然と泳いでいる。

《ウフフフ、あのお魚はメリーみたい》

それとは対照的に、水底のカマツカは臆病だ。
舟が近付くと砂の中に潜り、目だけを出した体勢で、外の様子を窺っている。
鞄の中から景色を眺めている今のメリーは、それと似ていると言えるかもしれない。

242甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/12(金) 18:50:40
>>241
メリーはこの人間を信じているようだが
人間、何が理由で裏切るか分からない
思いやりという点では希薄な方だ
この人間もとんでもない理由でメリーを裏切らないとも限らない

川の中を見ると
様々な魚が泳いでいて、その川の生態系を観測する事が出来る

土座衛門や溺れている人が流れて来たら面白いななどと
不謹慎極まりない事を思っていたが期待外れだった
その期待は外れるべき事だが

悠々と泳ぐギンブナの群れや物怖じしないコイ、臆病なカマツカ
そう言えば、コイは元々中国から輸入された外来種だったか
メリーは今の自分をカマツカに似ているというが
海外から運ばれて来た外来種という点ではコイの方が共通しているかもしれない

どれもそれぞれ特徴の違う魚だが、その全員に対して思った感想は

『…美味しそう』

ギンブナもコイもカマツカも全部食用になる魚だ
見ていると腹が減って来る
…コイやカマツカに似ているメリーも料理したら美味いのだろうか?

ジロ

そんな事を考えながらジロリとメリーと魚を見比べる

243リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/12(金) 20:21:43
>>242

生憎、景観を乱すようなものは見当たらなかったが、
その方がN市としても幸いだった事は言うまでもない。

《今、メリーは町外れの『教会』にいるの。
 『お友達』の『シスター』が『いてもいい』って》

  《ウフフフフフフフフフフフフフフフ》

もし裏切られたら、全身が腐食した死体が一つ出来上がるだろう。
その出来事がきっかけとなって、メリーは人間に対する憎悪を強め、
無差別に人を襲い始めるかもしれない。
この魂が滅びるまで。

《見て、天音ちゃん。お魚を獲ってるみたい》

        ス ッ

甘城の考えを読んだ訳ではなかったが、小さな手で川の一点を指差す。
そこには白い鳥がいた。
あれはコサギだ。
周囲に気を配りながら歩き回り、首を素早く伸ばして魚を捕らえている。
少し離れた所にはアオサギもいた。
こちらは待ち伏せ型の狩りで、特定のポイントに陣取ると、
魚が通るタイミングに合わせて、水中に首を突っ込んでいる。
スタイルは違えど、両者共になかなかの腕前のようだ。

《ウフフフフフ、とっても上手》

N市はグルメ激戦区だが、提供している店があれば、
敢えて定番を外した川魚料理を味わうというのも、
旅の楽しみ方の一つだろうか。

《――――天音ちゃんは『清月学園』に通ってるの?》

船上から鳥達の魚捕りを眺めながら、ぽつりと問い掛ける。

244甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/13(土) 18:18:36
>>243
>今、メリーは町外れの『教会』にいるの。
>『お友達』の『シスター』が『いてもいい』って

『…友達がいっぱい居て良いね…』

呪いの人形なら神社や寺に封印されていそうなものだが
西洋人形となれば教会の方が似合うだろうか

>見て、天音ちゃん。お魚を獲ってるみたい

鳥に食われる魚を見て、これが食物連鎖かと自然の厳しさを感じる

コサギにアオサギ
違うスタイルながら、どちらも見事なハンターだ
野生の生物の狩りの瞬間は美しく
その一連の動きは、一種の芸術のようなものを感じる

そんなサギの狩りを見ていると…
今度はサギを料理したら美味いのかと考え出すあま公
こういう考えに至るのは人間が食物連鎖の頂点に立つ存在だからなのだが
だからといってすぐ料理に繋げるなよって感じだ

実際の所、サギは昔は食われていたらしく
今でも増えすぎたコサギを有害駆除として捕獲して食利用される事はあるらしい
1度は食してみたいが、そんな機会はそうそうないだろう

こう考えていると、今度は鳥料理が食べたくなってくる
しかし折角N市に来たのだ
N市の名物が食べたいところだが、N市の名物といえば何があるか?

>――――天音ちゃんは『清月学園』に通ってるの?

『…そうだけど?』

そんな事を考えていたら、唐突に今までの流れと関係の無い話を切り出される

星見町も学校は清月学園だけではないはずなので
星見の学生が全員、清月学園に通っているとは限らず違う学校に在学しているかもしれないが
あま公は清月学園で合っているようだ

だがそれがどうしたというのだろうか?

245リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/13(土) 20:19:27
>>244

星見町の学校が複数存在する事は、メリーも知っている。
そして、その中で最も大きな学校が『清月』である事も。
要するに、一番可能性の高そうな名前を出したに過ぎなかった。

《あのね、元々メリーは『学校』にいたの。
 そこはもうなくなっちゃったけど――――》

姉妹達が燃やされたように、あの学校も戦火で焼けてしまった。

《『今の学校』を知りたくなって、ちょっとだけ見に行った事があるの》

その時は誰かと出会う事はなかったが。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349342/483-484)

《ほんの少しでも、また学校で『お友達』と一緒に過ごせたら素敵だと思って》

《天音ちゃんが通ってるなら、『もしかしたら会えるかも』って》

            ザパンッ

不意に、軽い水飛沫が上がったのを見て言葉を切り、そちらに視線を向ける。
カワセミが水中に飛び込んだのだ。
『空飛ぶ宝石』と呼ばれるコバルトブルーとオレンジの体色が美しい。
水から飛び出したカワセミは、嘴に小魚を咥えていた。
これも食物連鎖の一部と言えよう。

《そういえば、そろそろお昼ごはんの時間ね》

人形であるメリーは食事をする必要がないが、
人間ならお腹が空いてくる頃合いだろう。

《ウフフフフ、天音ちゃんは何が好き?》

川の両岸には飲食店も散見される。
やはりというかN市名物としては定番の『ひつまぶし』や『味噌カツ』、
『手羽先』の店などが多いようだ。
人気の店は混んでいるかもしれないが、空席のある店は今一つかもしれない。
グルメの街でもあるし、いっそ食べ歩きをしてみるというのもアリだろう。
出汁を掛けると、手軽なひつまぶしとして食べられるらしい、
『鰻の焼きおにぎり』というのもあった。

246甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/14(日) 20:09:51
>>245
>ほんの少しでも、また学校で『お友達』と一緒に過ごせたら素敵だと思って
>天音ちゃんが通ってるなら、『もしかしたら会えるかも』って

『…』

メリーが学校に来てどう過ごしたかは知らないが
もし、学校でメリーと鉢合わせする事があれば相手になっても良い

メリーに声をかけようと思ったその時

>            ザパンッ

カワセミが水の中に飛び込む音がする
小さな体をして、大した狩りの名手だ

>そういえば、そろそろお昼ごはんの時間ね
>ウフフフフ、天音ちゃんは何が好き?

食べ物の好き嫌いというものは
その時の気分によって変わったりする事もある
何が好きか?と聞かれると、今は何の気分だろう

魚か?鳥か?
魚ならひつまぶし、鳥なら手羽先がある
だがひつまぶしだとか手羽先だとか味噌カツだとかも食った事はある
N市の名物だが別にN市じゃなくても食える物だ

あま公はN市に来たら食べてみたい物があった
恐らくそこじゃなければ食べられないものだろう
だがそれが好きかどうか?と聞かれるとアレだ

『スパゲッティ』

スパゲッティ、というとまぁ普通の答えだが

『メリー』
『抹茶と苺、どっちが好き?』

あま公が行こうとしている所は…


              喫 茶 マ ウ ン テ ン

247リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/05/14(日) 20:58:15
>>246

『喫茶マウンテン』といえば、
どうしてもイロモノ的な側面が目立つものの、
実際は本格派の喫茶店らしい。
食材も高品質で店主の腕も確かだとか。
それらはメリーの知らない事だ。

《なんだか面白そうね、ウフフフフ》

《ウフフ、メリーは『イチゴ』が好き。
 ほら、このドレスも『赤色』なの》

メリーが着ているドレスも赤い色をしていた。
どちらかといえば、イチゴよりも『血』に近いような赤だ。
もちろん返り血で染まっている訳ではない。

《天音ちゃんと一緒にお舟に乗れて、メリーはとっても楽しかったわぁ》

やがて舟は終点に辿り着いた。
『登頂』か『遭難』か――ともかく甘城と共に『マウンテン』に向かうだろう。
『イチゴがいい』と答えておきながら、
食事をしないメリーは、甘城が食べている様子を見ているだけになるが…………。

《ウフフフフフフフフフフフフフフフフ》

《まだまだ知らない事がたくさんあるのね》

その後も甘城との旅行を楽しみ、
人間についての見識を深めたメリーであった――――。

248甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/05/15(月) 18:48:00
>>247
『じゃあ、苺』

メリーの好みでメニューを決めてしまったあま公
メリーの服は苺よりも血の赤に近いというが
そもそも苺の赤と血の赤は割と似てるので、あまり変わらない気がするが…

中時間のクルーズを楽しみ舟を降りたあま公達
目指す先は喫茶マウンテン

出て来た冬春限定の甘口イチゴスパを見て思う
苺は赤いのにスパゲッティはピンクだな…
それにしても、この苺ヘタが付いたままなんだが…

意を決して登山を開始すべく一口目を食べる
…早くも挫けそうだ
熱い麺にクリームが溶けてギトギトの油っぽさが絡まり
そこに甘酸っぱい苺の味が「俺を見ろ!」と激しい自己主張をしだして
量は普通なのにエベレストの如く高くて危険な山のように感じる
それでも一度登り始めた山を途中で下山する事は出来ない

途中、何度も挫折しそうになりながらも一歩ずつ登り進めていく
メリーは食事をしないため見ているだけで良いのだが
それでもメリーには味覚を感じる事が出来る
見学しているメリーにもお裾分けとしてイチゴスパを味わわせるあま公
こんな事してたら、メリーの恨みを買って殺されるかもしれないが
旅は道連れだ、メリーにも地獄に付き合ってもらおう

一歩ずつ、一歩ずつ
歩みは遅いが着実に頂上に近付いていく
そして最後の一口を胃袋に収めた瞬間、妙な達成感を感じた

甘口イチゴスパ登山RTA36分45秒
登頂完了した感想は
「もう二度とやらねーよ」だった

249妖狐『キン・コン・ユウ』:2023/05/20(土) 12:28:02
どこかの家の庭先

犬「ワン」狐「こゃーん」

犬と狐耳の生えた少女が何か話し込んでいる
>>250の家かもしれないし、関係無いかもしれない

250斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/20(土) 22:10:49
>>249

ある『家』の話をしよう。

むかーしむかし、ある複雑な思い出したくもない事件のせいで
この星見町に単身引っ越し……というより、引き取られた僕は
父方の祖父母の家に部屋を用意された。

星見町の喧騒から少しばかり離れた山中の寺、そのすぐ隣に建てられた屋敷は
どうも祖父母2人で過ごすには随分と部屋が余っているらしい。

ここの広さと静けさは僕にとって、
縁側でどれだけリラックスしようと座布団を枕代わりに寝転んでも
自分が……よそ者で、この家にとって赤の他人だという感覚を引き起こさせるに余りあるものだった。

だから、(いい年こいて大型二輪を乗り回してるあの)ばあちゃんの
まだ芽を出したばかりの紫陽花が置かれた小さなほうの庭先で、知らないなにかの話し声がした時
眠りの浅い僕はゆっくりと上体を起こして声の方をみなければならなかったのだ。

 (おかしいな、爺ちゃんもばあちゃんも、今日は出払ってる筈なのに……)

ねぼけまなこのピントが合うのは、それから更に数秒を要した……。

251妖狐『キン・コン・ユウ』:2023/05/21(日) 17:59:51
>>250
ねぼけまなこで庭先の話声の方を見て見ると
白い狐耳が生えた9歳くらいの少女と犬が犬語で何か話し込んでいるのが見える

斑鳩の祖父母は犬を飼っているのだろうか?
飼っているのならそういった体で話しを進めても良いが
飼っていないなら、山から下って来た狸という事にしよう

わんわん こゃんこゃん

少なくとも見た目は人間に見える狐がこゃんこゃん言ってるのは
こいつ頭大丈夫か?となる事だろう

まぁもっと異常なのは、少女が牛刀に何かの肉を刺して食っている事だが
この肉、かなり薄っぺらいハムのようだが、斑鳩は恐らく見た事の無いはずの肉だ
その薄っぺらい肉を話し相手も貪っている

そして犬用の飲み皿に何かのパックから注がれた赤い液体が入っている
肉を肴にこの赤い液体で飲みをしているようだが、何かこう、血生臭いにおいが漂っている

252斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/21(日) 21:21:02
>>251

まず目頭を抑えた。
夢だと思いたいが、『今の僕に限って』それは『あり得ない』事だ。
つまり目の前で……えー……

爺ちゃんが山から拾ってきてなんかおかしい犬だなぁ、と思ってたら
3か月後に『狸』だと判明した『ポチ』と。

なんかうちの庭に勝手に入ってる、『狐耳生やした少女』が
牛刀片手に……ハムと……ザクロジュースかな?いやこの…鉄臭い…っていうか
そのまま……血生臭い液体で。

酒盛りしてる、人の庭で。
えっ、はた目から見てすごい楽しそうじゃん……話盛り上がって見えるし。
ポチ、お前そんな友人居たんだ……へー……ところで血生臭いんだけど?鼻につくんだけど??
え?この匂いファブ〇ーズできなかったら、あのばあちゃんに説明、僕がすんの?マジィ???

 (……とりあえず、人の家の庭に『不法侵入』かまして、刃物もとい『銃刀法違反』もつけて
 酒盛り……『未成年飲酒?』してるのは……ギルティでいいんだよな?あまりにも当たり前に、目の前で行われてるわけだけど。)

法律違反!フルコンボだドン!『レオン』か何かか、次は体をキメキメに捩じりながらア〇ンでもキメるのか。
白黒の浴衣姿をゆっくりと起こし、2匹…1人と1匹にゆっくりと歩いていく。……苦笑いしながら。
いざとなったら、使わなくてはならないものを、心の中で準備しながら。

 「あー……もしもし?」

253妖狐『キン・コン・ユウ』:2023/05/22(月) 16:24:52
>>252
狸「キューン…」狐「こゃーん」

一見すると
仲良く酒盛り(?)をしているように見える狐と狸だが
狐の方は狸を見下しているような態度を取っている
狸の方も狐をうんざりしたような顔で見ている…ように見えるかもしれない

こいつら険悪というか、そんなに仲が良いわけではないのかもしれない
そんな奴らが何で人ん家で飲み会してんだよって感じだが
人間である斑鳩には犬の会話は理解出来ないのでそんな理由分かるわけないだろう

狸が赤い液体をペロペロと舐めると、口元がべったりと赤く着色される
それと一緒に、狐が盃に注がれた液体を舐めるように飲む
どうやら、この液体はがぶがぶ煽るように飲むものではないようだ
高級品なのだろうか?

以下は斑鳩には理解不能の犬語を翻訳した会話である

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
狸「この血、サラサラでさっぱりしてて美味いな」
狐「裏ルートで買ってるAB型だからな、お前のような狸には勿体無い代物よ
  きちんと我に感謝しろよ?」
狸「ババァがいちいち恩着せがましいんだよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

>あー……もしもし?

そんな会話をしている折、外野から声が入って来る
人の声だ

その声に反応して狸が斑鳩を見る
口元をベッタベタの真っ赤にしてじっと斑鳩を見ている

そして人の姿をした狐がさも面倒臭そうに斑鳩の声に応える

「なんじゃ小僧、貴様も食うか?」

牛刀に刺さったハム…のような物を斑鳩に突き出す

254斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/22(月) 20:46:35
>>253

ポチを一瞥し、すぐ目の前の狐耳に視線を戻す、巻き込みかねない位置にいるのは実に困る。
困るが、まだなんとかなる範囲だ。すくなくともまだ紫陽花の苗も無事の筈だ。

 「食わない。しかし……日本語を理解できるようで何よりだ。
 人んちの庭に玄関以外から無断で侵入してるから、つい礼儀知らずの獣かと思ったァ〜……。」

勿論、皮肉80%事実40%だ。
余った20%は適当にツケといてくれ、誰も気にしない。
少なくとも、今この状況よりは気にすべき事じゃあない。

 「とはいえ此方は礼儀知らずになりたくないんで、一応『こんにちは』と言ってやる。
 ポチ、離れてろ……何かあったらお爺ちゃんとお祖母ちゃんが悲む。」

家族に警告終了、通じるかは兎も角として……

 (夢の方がマシだったな……これは。)

口調からして既に、眼前の相手が『常識』だの『年齢相応の態度』だのが欠如してるのは理解した。
少なくとも『のじゃろり狐耳刃物BBA』とかアニメから抜け出してなきゃあり得ない生き物だ、頭の中の警報が一段と甲高い音をたてている……
廊下のダイヤル式電話で応援を呼ぶのは無理だろうな、それを目の前の人間?にいう必要はないが。

 「……ついでに10秒以内に何してんのかと、
 今すぐ警察に通報しないで済む理由を教えてくれると助かるぜ。……勿論あんたが助かる方だが。」

斜めに身体を構え、右腕を背の裏に回すと『ロスト・アイデンティティ』を右腕に『部分発現』させる。
右腕に銀の鎖が巻き付いていようと、これで向こうからは見えない、他に視界があれば別だが。
左腕を浴衣のたもとに、携帯を探す『フリ』だ……僕が奇襲するにも防御するにも時間はいる。

 「おたくの家庭や人生がどうだったかなんて知らないが、『無礼』という行為に該当するんだぜ……
 『人んちの庭に挨拶もなしに無断侵入して、無断飲食かつ、人の家族(ポチ:狸)に無断エサやり』はな……。」

口角を吊り上げ、日差しの陰で不敵に笑いながら狐耳の眼を真っ直ぐと見抜く、動揺を悟られるのはアドバンテージの損失だ
少なくとも、今までの戦いではそうだった。頼むから話し合いでなんとかなってくれれば助かるのに。

 「はい、10……9……」

……おっと、刃物振り回してんのを追加し忘れた。
僕も流石にこの状況で、人並みには緊張しているらしい。

255妖狐『キン・コン・ユウ』:2023/05/23(火) 13:05:41
>>254
狸「ウューン」(は?何言ってんだこいつ?)

斑鳩がポチと呼ぶ狸に離れてろと言うが、
残念ながら斑鳩が犬語を解さないのと同じように、狸も人語を理解出来ない
何か怖い顔してごちゃごちゃ言ってるくらいにしか見えない
そんな斑鳩をうざそうな顔で見る狸
狸の表情など斑鳩に分かるかは不明だが

ちなみに斑鳩はポチと呼んでいるが
狸世界でのこの個体は徳家康川という名前で呼ばれている
これも犬語など分からない斑鳩には知る由もないし、どうでもいい事だろう

「ペラペラとよく喋る小僧だな…」

斑鳩がカウントを始めたところで、その口数の多さにはぁ…と溜息を付く
やけに喧嘩腰な斑鳩を後目に2匹はハムを食っている

喧嘩腰な斑鳩に対して狐の方は、
斑鳩に敵意はあるものの殺気というものは放っていない
心底ダルそうな態度を取っている

この狐、寿命までに出来るだけ多くの人間を殺そうと思っているが
最近は歳のせいで体がボロボロで思うように体が動かない
故に狩りは他の犬達と共同で行う事が主だ
今食ってるハムも101匹のダルメシアンと協力してようやく仕留めた肉だ
肉が極薄なのは102匹で山分けしたからだ

まぁそんなわけで、今日は持病の喘息も酷いし、狩りの気力が沸かないという事だ

「無礼というのは貴様ら人間の方ではないのか?
 この土地は元より我ら狐狸の領域(てりとりぃ)だった
 そこを貴様らが勝手に踏み入ってきたのだろうが」

斑鳩の質問に答えず別な話をする狐
何百年前の事言ってんだよって話でもあるし
土地の所有権とか持ってこられたら困るが

256斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/23(火) 21:01:34
>>255

斑鳩は喧嘩腰だった、何故か?

喧嘩腰にならないといけないのは、そもそも目の前の生き物の存在が、現代日本&人の庭に喧嘩を特売セールしてるからである。
スタンド使いが存在してるのは身体で理解していても、まさか『むかしむかし』から始まるお伽噺の存在がまだ生きてるとは思わなかった。
むしろ生きてると思ってるやつは月刊ムーの編集者に就職するか、精神科に通院するべきであろう。両方でもまったく構わない。

 (創作の中の生き物って、現実に目にすると本当に面倒なんだな……。)

まぁ、よく考えなくてもそうだろう フィクションのバトルジャンキーはフィクションであれば楽しめるのであって
目の前にいたらそれはただの社会不適合者である。丁度目の前でハム食ってるのもそうだ。
おお、クラスメイトの天童よ、義理の妹が欲しい欲しいと常日頃言っていたが、お前は考え直したほうがいい。現実は非情である。

 (そして、厚かましいにも程がある。玄関から入ってきてもねぇくせに無礼だとぉ?)
 
 「質問に質問で返すなァーッ!」

とは言ったが、斑鳩は既に相手との会話でのキャッチボールは諦めている。
ドッジかラグビーかデッドボールありきのベースボールにしかならないだろうと、さしもの斑鳩も予想していた。
すくなくともミットの代わりに刃物向けてきてる相手とキャッチボールはできない。
 
 「こっちが舌回してんのはなぁ、あんたのやってる事が言わせてんだよ!何その刃物!何その肉と……」

斑鳩はどうみても『血』だとかまだ認めていない。
というか認めたくなかった、『夢見ヶ先』はこんな面白い事が星見町にあるなぞ言ってくれなかったのだ。
もっと早く言ってほしかった……知ってたら……知っててもどうしようもなかったかもしれない、何故そんな生き物が自分の祖父母の家の庭先に?
家屋が落雷で燃えたと思ったら、逃げ出した矢先に隕石が頭部に直撃して死ぬくらいの運命ではないか。予測不可&回避不可のクォーラルボンバーである。

 (とはいえムカついてきたな……何で不法侵入してる側が不遜な態度で僕の前に立ってんだ?)
 (罪を犯した側が、犯していない者に道理を垂れてるのか?……そう考えるとスゲーむかついてきたな。)

祖父インストール、脳みそが最適な罵倒を考え出した。
目の前のこいつの性根におそらく警察は無意味、読んだところで小馬鹿にしながら逃げられるだけだ、ならば全力の罵倒でボコボコにするまで。
これは、心を抓む戦い……!(たぶん)

 「……あんたの仲間は見た事ない、それはつまり元々いたとしても人間との種族競争で負けたって事だ。」
 「それだけ知識があって人語を解せるなら、人間社会に溶け込めたし、人間のルールに従って土地を金で買う事もできた、でもしなかった。現実にここはあんたの土地でも屋敷でもなく、俺の祖父の土地で屋敷だからだ。」
 「しなかった理由は知らない、だが競争に負けておいて敗者のルールにも従わずに、刃物振り回して先祖のしたことをそいつの17のガキに礼を失するだの駄々こねてんのが、おたくらの正しい姿か?」

 (ペットになってるポチの扱い見て察したぜ、テメーが獣の側だって言うなら、弱肉強食の敗者のルールを知らないとは言わせねぇ……本来は自分も首輪で繋がれてる側だから優しくしてたんだろ?)
 (負け犬……いや、負け狐が人の家に不法侵入かまして、屋敷を立てた僕の祖先を嘲るだって?……ボコボコにしたくなるよなぁ〜〜!)

 「随分とご立派な……『負け犬』の姿じゃあないか……すまないなぁ、言いすぎたよ。僕が悪かった。」

構えを解くと、浴衣の襟元を正す。負け犬の部分をゆっくりと……強調しながら。
よく考えたら何でもない事だった、とでも言う風に。わざと一旦謝ることで冷や水を浴びせ……

 「アンタらの中じゃあ、刃物片手に人の土地に土足で踏み入って、親の罪を知らない子供にご高説とやらを垂れるのが『ご立派』で『カッコイイ』姿なんだもんなぁ?尊重してやるよ。」

親の罪が子の罪になるなど通らない話、相手の主張は祖先を持ち出した最初の時点で既に矛盾しているのだ。
そしてトドメに相手の現状を叩きつけてフィニッシュ、完璧だ……!言葉のデッドボールとしては。

 (……こっちの主張に言い返してテメーは尊重を強要する癖に、お前はこっちの事欠片も尊重してないって『皮肉』だけどなぁ〜!)
 (ケッ、野郎がすこしでもムカツクんならこう言ってやるぜ。内心欠片も謝ってねぇけどな〜〜馬鹿にしてんだよぉ!!)

257妖狐『キン・コン・ユウ』:2023/05/24(水) 14:16:09
>>256
狐を…世界最高種族を侮辱した罪―――軽くねーぜ?
…という事にはならなかった

狐はこれでも気さくに話をしてやっていたつもりで、喧嘩など別に売っていなかった
しかし、こうも会話が成り立たない相手となると白けるというか、冷めるというか

1000℃の炎で熱された焼石の如くありったけの罵倒で殴りかかる斑鳩だが
無気力な今の狐の精神状態は謂わば水
水をいくら力任せに殴ったところで砕く事は出来ない

そして斑鳩の罵倒は正論もあるが些か検討違いなところもある
まず、狐という種族は知っての通り世界中に分布している生物だ
別に人間との種族競争に負けたという事実は存在しない

斑鳩は勘違いしているのかもしれないが
この狐と同じような狐を見た事はないのは当然の事だ
この狐が、狐の中でも特殊な個体であり、同じような妖狐がいるわけがない
仮に妖狐をそういう種族と定義するなら一匹一種族だ、元より一匹しかいない

負け犬という言葉に関してはその通りだ、血縁者を、子供達を遊びで鏖にされ誰一人守る事の出来なかった負け犬だ
だからこそ、その憎しみの炎で今日まで生きてきたが、その命の灯火も後僅かか…

しかし一々反論したり訂正する気は起きない狐だった

「元気な小僧だな…」

いちいちうるせえやつだなお前は本当に(無慈悲)
というのが狐の斑鳩に対する印象だが、同時に血気盛んさ羨ましくも思った

若者は元気で良いな…
ん百年前は人間共を殺して殺して殺しまくっておったな、懐かしい…

まだ若き日の事を懐かしむ老いぼれた狐だった

徳家「おい婆さん、さっきから顔真っ赤にして何言ってんだこいつ?」(犬語)
狐「ここは人間様の土地だから出て行け、とさ」(犬語)

いつの間にか飲み皿の血を飲み干していた徳家
狐もハムと盃の血をさっさと胃袋に片付け、チリ紙で牛刀『剃刀』をスッと拭き懐にしまう
ゆらりと立ち上がり、1万円札を斑鳩に前に落とす
葉っぱなどではない本物だ

「場所代じゃ、足りるだろう?」

斑鳩が知るわけないが、この狐はその界隈では人気の人肉料理研究家・作家として
人間社会においてそれなりの地位を持ち、それなりの家・土地・収入がある

狐「商談の続きは我の家で良いか?」(犬語)
徳家「やだよ婆さんの家なんて、犬カフェにしようぜ」(犬語)

2匹のビジネスで繋がっている関係だ
お互い嫌い合っている相手でも、こういう場を設けて話し合わなければならないのだ
犬の社会にも色々あるという事だ

改めて商談をするべく、屋敷を立ち去る狐と狸

258斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/25(木) 07:40:55
>>257

妖狐が土地から去っていくのを、気配が消え去るまでただ待つ。
相手は怒りもしなければ論じもしなかった、ただうっとうしそうに去っただけだ。
傍目には、小型犬がキャンキャン鳴いてるのを大型犬が迷惑そうに去っていったように見えた。

この場合、何方が滑稽に見えるかなどと論ずるまでもない……小型犬の方だ、斑鳩 翔の方だ。

 「…………。」

          テ ン プ レ ー ト
 (けっ、どーせ『こんなこったろう』と思ってたさ……。)

老人という物はえてして、若者と隔絶し、理解しがたいものに映る。
過ぎ去った昔はよかったと回顧し、あるいは内心で向こう見ずさ等を馬鹿にして、終わり
後に残ったのはから回った間抜けな若者が一人だ。

 (『生きるという事は、たいへんな事だ。あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。』)

だが、今回はそのから回った若者は家を守った
昔は守れなかった家族を、酷く滑稽で間抜けな形とはいえ。
スタンドを手に入れるきっかけとなった、あの事件の時にはできなかった事を。

 (安い値段だ。ぎゃあぎゃあと喚いて、顔を真っ赤にして、恥をかいて、かっこ悪かろうが。)
 (俺ができなかった事を今できると証明するには随分安いじゃあねえか、えぇ?情けないのに、代わりないがよ……。)

無論悔しい、噛んだ唇から血が滲み、握りこんだ拳の爪が、掌を抉るほどに僕は恥をかいた。
次に見つけたら問答無用でスタンドを叩き込んで、全身の骨を折ってやりたかった。
いやさ、今から追いかけて奴の後頭部に叩き込んでやろうか……そんな考えすら赤熱した火箸を入れられたようにじりじりとする頭によぎった。

 (いいや、今は家を守るのが先決だ。優先順位は二度と、二度と間違えない。)
 (俺が周囲など顧みず暴れたせいで、私の父と母は病院の寝床から起きなくなったのだ……これ以上僕の家を荒らされてたまるか。どんな理由のある、何処の誰であろうと……。)
 (いくら僕たちが泥を飲んだとしても、あってはならない。家族への累が及ぶ事態は……!)

妖狐は知る由もない、目の前で怒っていた子供はかつての妖狐自身とほぼ同じように、心無い者の手によって己自身より大事な家族を奪われた事を。
そして己自身に枷をつけて、未だその胸に炎を付けたままにしている事を。今日の妖狐がした事はまさに、彼にとっての妖狐が受けた仕打ちだという事を。

氷のような瞳を向け、足元の万札を一瞥する。
もう血混じりの泥に汚れてしまって使えるかどうかわからない。

 (場所代ね……最後まで本当に馬鹿にしてるな、あの女にとって礼を失すると言う土地の問題は、紙切れ一枚で解決できると思ってた事なのか?)
 (それとも人間に合わせただけか?どちらにしても、こっちを馬鹿にしてる事には変わりはないが。)

                                               カゾク
 「言うに事欠いて場所代だって?安い値段だ。……俺なら青天井に跳ね上げても売らないぜ、テメェの土地はな。」

拾い上げると、爪に泥が跳ねるのもお構いなしに袂に入れる。
息を吸って、吐く。煮えたぎる重油のような感情と共に吐き出したかった。

 (できないな……喉につかえてばかりだ。ちゃんと笑顔を作らないと心配させてしまうぞ。斑鳩翔。)

 「……お祖母ちゃんの朝顔の苗は無事として、この匂い、換気でごまかせんのかな。」
 「家政婦さんに頭下げなきゃダメかな……こりゃあ。」

259妖狐『キン・コン・ユウ』:2023/05/25(木) 13:54:50
>>258
結局、狐は斑鳩に反論せずに退散したのだから
レスバは斑鳩の勝ちという事で良いのではないだろうか
レスバは相手が逃亡して書き込まなくったら勝ちなのだから

斑鳩が気にする匂いだが、その元となる液体は
既に綺麗さっぱりと舐めとられていてもう無い
だからもう匂いなどしないはずなのだが、
皿に顔を近付けて嗅げばまだ血の匂いが辛うじて嗅ぎ取れるかもしれない
その程度、ちょっと洗えば取れるだろうが、それでも気になるのなら皿を処分してしまえばいいだろう

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
斑鳩の屋敷を去ってからしばらくの事
結局狐達は都内の犬カフェに来ていた

徳家「やっぱ犬カフェは良いな、若くて可愛い犬がいっぱいいるぜ!」
徳家「俺、ちょっとあの子に声かけてみようかな?」
狐「あー、良いんじゃないか?」

徳家「おーい、そこのお嬢さ

バンッ!

警察「警察だ!」
狐狸「な、なんだ?」
警察「このカフェは違法風俗店の摘発があった、今から調査をさせてもらう!
   逆らえば…射殺する!」

徳家「おい、お前がこんな所連れてくるからこうなったんだぞ!どうすんだよ!」
狐「ふざけるな!お主が来たいと言ったんじゃろうが!」

おわり

260りん『フューネラル・リース』:2023/05/27(土) 13:29:47
ここはとある遊園地

年齢10歳程度の少女が>>261と共に
何か上がったり下がったりする絶叫マシンに乗り込んで来た

ゴォォォォォォォ

マシンが超スピードで上がったり下がったりすると
りんの頭に咲いている鈴蘭が風圧で物凄い勢いで靡いている

261りん『フューネラル・リース』:2023/05/28(日) 20:25:20
>>260
その後もジェットコースターやお化け屋敷に入り遊園地を満喫するりん達
ちょっと暑くなって来た気候の中、
猛スピードで走る絶叫マシンに乗りながら受ける風が涼しくて心地が良い

態々自ら危険な乗り物に乗って恐怖を味わう人間はやっぱり面白いなぁと思うりんだった

帰り際、何か遊園地によくあるソフトクリームを食べながら話すりん達

りん「今日は楽しかったねぇ〜」
阿部マリア「そうですわね、特にあのボロボロの観覧車が良かったですわね!」

そう、マリアが観覧車の方へ振り向いて言った直後

がしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん
つい先程まで乗っていた観覧車が崩落した!

りんマリ「「あっ…」」
清「けれど、次はないでごじゃるよ」

二二二二二二二二ヽ
            |。|
        / ̄ ̄ ̄ ̄\
       /       ヽ               /^^^^\
       |        |             /      ;、 \
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       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|     ⌒⌒⌒/ ,            、 \⌒⌒
       ヽ           /        /           、     \
        \____/    ⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒ヽ
ヽ                           '⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

             終
           制作・著作
           ━━━━━
            ⓃⒽⓀ

262甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/03(土) 12:57:34
5月中旬頃の話だった
ここは公園なのか、道端なのか
そこには綺麗な紫色のツツジの花が咲いていた

何をするわけでもなく、ただツツジを見つめている

263甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/04(日) 20:38:24
>>262
スッ

徐にツツジの花に触れ、一輪取る
そしてそれを口に含んだ

その花弁には、甘い蜜が溜まっている
花の香りと相まって、自然のジュースといったような味だ

ツツジの蜜を吸うと、何だか懐かしい
子供の頃の思い出に浸れるような感じがする

だがそんな時間も、蜜を舐めて一瞬で終わる

「…」

いくら思い出に浸った所で、昔に戻れるわけではない
ほんの少し物思いに浸れるだけだ
だが、そんなほんの少しでも有意義な時間だった

ひとしきりツツジを見て、そして去って行く
それだけの話だった

264小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/14(水) 16:45:07

『H湖』近くの『金平糖工場』にやって来た。
一般的な体育館程度の大きさの建物。
ここで何万種類もの味の金平糖が作られている。

  「――……」

今、『彼ら』は見当たるだろうか?

265小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/16(金) 22:10:16
>>264

しばらく周囲を散策し、静かに立ち去った。

266甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/17(土) 12:17:01
学校でのとある教室でのこと

トントントントントントン

鉛筆で指の間をトントンする遊びをしている
ただし、使っているのは鉛筆ではなく
カッターナイフだ

267リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/06/17(土) 19:24:40
>>266

放課後の教室。
危ない遊びに興じる甘城。
その様子を眺める『西洋人形』。

「天音ちゃん、とっても上手ね」

「ウフフフフフフフフフフフフフフフ」

イチゴスパゲッティをお裾分けされた恨みを晴らしに来た――――のではない。
人間達の視線を掻い潜り、こっそり校内に侵入した。
たまたま甘城を見かけて今に至る。

268甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/17(土) 21:44:57
>>267
トントントントントン

隙だらけだ
メリーが復讐に来たのなら今が絶好のチャンスというやつだろうが
そうでないのなら別にどうでもいいかもしれない

トントントン…
        ドスッ!

メリーが話しかけて来たせいで気がそれたのか
手の甲に思い切りナイフが突き刺さる

269甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/17(土) 21:56:13
>>268
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

270リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/06/17(土) 21:56:28
>>268

メリーとしては、例のイチゴスパはそこまで悪い味ではなかったので、
その件で甘城を恨んではいなかった。

「あっ――――――」

事故が起きた瞬間、思わず声が出た。
メリーが話し掛けたせいで手元が狂ったのなら、メリーのせいなのだろう。
友達が傷付くのは良くない事だ。

「天音ちゃん、大丈夫?辛い?苦しい?」

「どうしよう。天音ちゃんのお手々が痛い痛いしちゃったわ。早く直さないと」

甘城の近くでワタワタするが、それでどうにかなりはしない。
つまり、何も出来ていない。
ただ動揺しているだけだ。

271甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/17(土) 21:57:07
>>269
どうしようもなく体から定期的に湧き上がる
破壊欲、殺人衝動、怒り、憎悪

自分自身に叩きつける事で少しは気が晴れる


肉を切り裂き、裂かれた肉と肉の間に異物が割り込んでくる感触


   グチャ グチャ


鋭くも鈍い痛みが手の甲を襲う

スゥー

刺さっていたナイフを一気に引き抜き…


ザシュ  ザシュ  ザシュ


何度も手の甲を突き刺す動作を繰り返す


「やる?」

真っ赤に染まったナイフをメリーに差し出す

272リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/06/17(土) 22:14:35
>>271

鈍く光るカッターナイフを、自らの手に振り下ろす甘城。
その光景を見ている内に、逆にメリーは冷静になっていく。
狂気を孕んだ甘城の姿と、『悪い人間』を腐らせる自分自身が、
記憶の中で重なったからだ。

「――――ありがとう、天音ちゃん」

         ソッ

カッターナイフを受け取る。
人間用なので、メリーには少し大きめだ。
しっかりと両手で握った。

       ブ ォ ン ッ

それを全力で『振り被る』――――。

273甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/17(土) 22:55:55
>>272
思い切り破壊衝動を
自身に何度も何度も何度も何度も突き立てた事で、多少は溜飲が下がった
後に残るのは手の痛みと、疲労感だけだ
別に心地良いとも、不快ともいえない
ただ疲れただけだ

何も感情の籠って無さそうな顔で、メリーがナイフを振りかぶるのを黙ってみている
その刃で何を、どこを切るのか
何もせずにただじっと見ているだけだ

274リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/06/17(土) 23:32:51
>>273

勢い良く振り被った『カッターナイフ』。

     パ ッ

それを途中で『手放す』。
メリーの体は小さいが、力は大人と同等。
全力で物を投げれば、相応の衝撃は与えられる。

       ――――――ガシャァンッ!

投げつけたカッターで『窓ガラス』を割る。
これは『合図(>>272signal)』だ。
ここは教室。
『ガラスが割れる音』がしたら、近くにいる生徒か教師が来るだろう。
さらに『血濡れのカッターナイフ』が飛んできたとあれば、
無視されるという事はない。

  「メリーは天音ちゃんを手当できないから」

      「だから手当してくれる人を呼んだわ」

         「天音ちゃん、カッターを投げちゃってゴメンね」

              「メリー、また来るから」

                  「その時は、また遊んでね」

人が来る気配がしたら、室内の適当な場所に隠れておく。
おそらく甘城の方に注意が向くだろう。
その隙に教室から脱出する。

275甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/06/18(日) 07:45:57
>>274
       ――――――ガシャァンッ!

普通のナイフならともかく、人形のパス精CCCで投擲された
カッターナイフくらいで割れるほど脆い窓ガラスがあるか?
という疑問は多少あるが…とにかく割れた

「……」

教室内の物陰に隠れたメリーに、血の滲んだ手を振る


カツカツ

誰かの足音が聞こえる
どうやら教室に入って来るようだ
あま公とその人物が話している間に、メリーはこの場から去るのだろう

それにしても、この二人がまた会う事はあるのだろうか?
もしかしたら、次に会うまでには死んでいるかもしれない…


ところで、割られた窓はあま公が弁償しなくてはいけないのか?
手の治療費よりもそっちの方が高くつくぞ…

276小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/18(日) 17:10:39

『花びら』を庭に埋めて、自宅で『彼ら』を待っていた。
彼らとの交流は続いていたが、
このところ忙しい日々が続いたせいか、会うのは久し振りだ。
今日は『お茶』と『お菓子』も用意してある。

        コト……

口の中で柔らかく解ける『スフレパンケーキ』と、
それに合わせた濃厚な『アッサムミルクティー』。
しかし、『お茶会』をする為だけに呼んだのではない。
彼らなら、何か見聞きしている事があるかもしれないと思ったのだ。

277『リトルスター』:2023/06/19(月) 18:35:45
>>276(お待たせしました)

 ぴょんっ!

ロポポ「アヤコ! おはよう! ちょっと暫く会ってなかったね」

ラポポ「と言っても、おいら達も忙しかったから三人一緒に来るのは難しかったかな」

ヨポロ「うーん! 良い匂いだ。相変わらずアヤコが作る菓子は
食べる前から、お腹がグーグー鳴りそうなぐらいだっ」

 来たのは、貴方が最初に邂逅した時。それと同じく『仲良しな三人組』

小人達は、めいめい好きに喋りつつ、君の腕に飛び乗りつつ菓子を見たり
兄妹で喋ったりしている……。

278小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/19(月) 19:40:47
>>277

  「――久し振りに皆と会えて私も嬉しいですよ」

           ニコ……

穏やかな微笑みと共に『リトルスター』を出迎える。
『スタンド使い』となって初めて遭遇した『非日常』。
それが『彼らとの出会い』だった。

        「にゃ……」

来訪者の気配を察したのか、『帽子猫』が起きてきた。
撫でて欲しいのか、飼い主に擦り寄っている。
その毛並みに触れながら、小人達に向き合う。

  「この子は『撫子』です。仲良くしてあげて下さいね」

  「……食べながら、お話をしましょう」

       コト

           コト

               コト

スフレパンケーキを切り分け、小皿に分けて三人の前に置いた。

279『リトルスター』:2023/06/20(火) 11:40:13
>>278

ラポポ、ロポポ、ヨポロ共に。『撫子』と言われた少々変かった猫に対し
良い意味で驚きの声を各自上げつつも。直ぐに、笑顔でその顎と言える部分や
撫でた方が良さそうな部位に手を伸ばす。

 三人の小人。小皿に切り分けても十分に、彼等、彼女には大きいサイズだ。

こう言う、お茶会に関しては来訪する機会が多いであろう三人だ。

用意したらしい、小人達のサイズの食事出来る食器なりカップなりを
取り出し。小石川も見慣れた感じに穏やかな小人達との交流は何時もの感じで
開かれる事は間違いない。

ロポポ「アヤコ、そー言えば、どんな話があるの?
 何だか何時もする、お話と違う気がするわ」

 人から見ればパン屑程度(小人からすれば結構な量だ)の
スフレパンケーキの欠片を飲み込み。お茶を飲みつつ、首を傾げて
妹の彼女は君に尋ねる。

ラポポ「なんだか何時もと違って、ちょっと悩みがある感じだもんな」

ヨポロ「僕ら小人は、そー言うのがわかるんだよアヤコ。
 特に、長く付き合ってる人なら、猶更ね」

 君が、何か悩みを抱えてるのは、お見通しのようだ……。

280小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/20(火) 20:25:14
>>279

やはり特異な存在だからこそ、直感が鋭いのだろうか。
そうでなくても、彼らとは古い付き合いだ。
何となく分かってしまうのも無理はない。

  「『小林丈』……そういう名前を聞いた事はありませんか?」

  「『ヤジ』という名前でも構いませんが……」

彼ら――『リトルスターズ』は、今日のように外へ出る事もある。
もしかすると町の何処かで、『小林に関する手掛かり』を見聞きしているかもしれない。
そういう期待があった。

  「……去年の夏頃からいなくなってしまった私の友達です」

  「その時期に――誰か『特別な想い』のようなものを感じた事はないでしょうか……?」

『想い』――あの『金平糖』には、それが使われる。
もし、小林に何か『強い想い』があったのなら、小人達が感じ取った可能性もあるだろう。
彼らに分からなければ、『工場の主』である『ゴースト』に聞く事も考えていた。

281 『リトルスター』:2023/06/21(水) 14:00:49
>>280(レス遅れ失礼しました)

小林? ヤジ?

 小人達は、君の訊いた名に不思議そうな顔をで互いに見合わせるものの
合点がいった者達はいない。

ラポポ「去年の夏、かー。そう言えば、ちょっと街から出そうな隅っこで
強い輝きが一杯出た。って言うのをゴーストが言ってた気はするよ」

ヨポロ「でも、一杯だからね。誰が誰の輝きって言うのを知るのは
流石に難しいよ。ゴーストなら、また違ってるかも知れないけどさ」

 やはり、小人達では『想い』の輝きについて出所程度は聞きかじってるものの
完全に把握となると難しいようだ。

ロポポ「んー……アヤコ、それじゃあゴーストに、会う?
 お茶会を、ちょっと早目に終わっちゃうけれど」

小人達は、君を『ゴースト』に会わせる事に抵抗はない。
 また、いずれ会おうとゴーストも言っていた。

久しぶりだが、彼女は変わらず。あの『工場』に居るだろう……。

282小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/21(水) 18:46:14
>>281

三人の言葉を聞いて、深い頷きを返す。

  「――あの時には沢山の『想い』が生まれましたからね……」

例の事件では、多くの想いが生じた筈だ。
逆に言えば、その中に『小林の想い』も含まれている。
闇雲に歩き回るよりも、手掛かりを得られる可能性は高い。

  「もし『さっきの名前』を何処かで聞いた時は、私に教えて下さい」

        スッ

  「……『工場』に行きます」

ソファーから立ち上がって、『普通の帽子』に擬態した『撫子』を被る。
いい機会だから一緒に連れて行く。
これも貴重な経験になるだろう。

「ここに戻って来たら、また『お茶会』の続きをしましょう」

三人には肩に乗ってもらい、『ゴースト』の下へ向かう。

283『リトルスター』:2023/06/25(日) 11:06:05
>>282(大変お待たせしました。場スレを占領するのも悪いので
自身のミッションスレ↓へ移動したいと思います
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1606787541/l50
【ミ】『星のダイアローグ』)

      〜〜♪


〜♬         〜〜♩


      〜🎶

 ロポポ「うんっ! 『ゴースト』との、お話が終わったら
お家かでも、工場の何処か楽しそうな場所でも、お茶会はしてもいいよっ」

 ラポポ「友達となら、何処でだって、お茶は楽しいからなっ」

 ヨポロ「よーしっ、それじゃあ、飛び込めーっ」

仲良し三人組は、帽子猫の撫子の縁に跳び乗るようにして
小石川と共に光の輪の中へ入っていく。

 思えば、あの時から随分と色んな事が貴方にはあった。

救世を望む医師の団体、夢幻の如き紅い街、夏の事変……数えきれない
幾つもの想いを経て、貴方は久しく工場へ向かう……果たして、待ち受けるのは。

                              To be continued...

284斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/06/28(水) 10:25:24
何時かの昼下がり、6月28℃の熱い日々にて……(スターウォーズOP曲)

先日は『ケーブルテレビ』で見た蕎麦屋に行く予定だったが、もたもたしている内に結局時間切れになってしまった。
しかし一度決めた事を成し遂げないのは、僕の心によくないモノを残すぜ。

 「今日こそは……今日こそは行く!故の『ショートカット』!」

赤いメッシュをいれた黒髪を揺らして、星見町を疾走する僕は
そんなこんなで近道を選択した結果、エンドア大戦とかお年寄りの道案内とかクローン戦争とか携帯電池切れとか色々あって、遠回りと化して公園を横切る羽目になった。
僕にも何故こうなったかは分からない(たぶんシスのせいだ)が、お陰で『奇妙なもの』を見つけた

 「……何故だろう、どんどん離れてってる気が……うん?」

なんのけなしに掌をついた樹木の幹に、平べったい穴が深く刻まれているのを見つけたのだ。
およそ人間の肩ぐらいの高さに空いた無数のそれは、奥が見えないくらいには刻まれていた……。

 「なんだこりゃ……キツツキ?いや、それにしちゃ低いしデカいな。」

285白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/28(水) 11:10:00
>>284

「……?」

          スタスタ

「斑鳩君。……こんにちは」

用もなく公園にいたわけではなく、
この道を通るのが近かっただけだ。
そこで友人を見つけたので、声をかけて。

「木のうろを。見ているのですか?」

ゆっくりと、横からそれを覗き込もうとした。

286斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/06/29(木) 22:06:09
>>285


声をかけられてパッと、猫に声をかけられた鼠のように半歩飛び退いた。
えーと?このお麗しい髪をした先輩は何処のどなただったか……。

 「白岸パイセン?」

チャーリーのチョコレート工場ばりのサイケデリックな脳内が回答を導き出す
そう、学食をご一緒させていただいた仲だ。

 「こんにちは、んー……」

別に回答に詰まる事じゃない、ただ衣服を正す準備とかが欲しかった
炎天下を散々歩き回ったからね。あと風下にも移動したかった。理由は同じ。

 「……うろだと思ったんですけど、多分違うな。『人為的』な何かを見てて。」

そう、この樹木の『これ』は人為的なものだ
多分とは言ったが、僕はほぼ確信していた。

 「先輩はどうしてここに?」

287白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/29(木) 22:24:11
>>286

「はい。トーリは、『白岸・ノエル・トーリ』です」

         ペコリ

小さく、頭を下げた。

「『人為的』」

言葉を繰り返して、飲み込んでから、問いに答える。

「買い物に。今から行くところでした。
 この道を通ると、近いので…………」

        スッ

「今日はとても、暑いですから。
 だからトーリは、近道がしたかったのです」

僅かに額に滲む汗が、前髪を張りつかせる。
トーリが話し、動く調子は、いつでもアンダンテだ。
ゆっくりとハンカチで汗を拭いながら――

「『人為的』」「だと……斑鳩君は、言いましたよね」

「たしかに。トーリにも……
 啄木鳥が突いたとか。栗鼠が、巣を作ったとか」

      「そのような穴には、見えませんね。
        ……とても。『人為的』に見えます」

『謎の穴』に顔を近づけて、それをやはり、ゆっくり見つめた。

288斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/06/29(木) 22:51:52
>>287

この人、こういう事に興味を持つ人だったのか……好奇心旺盛なんだな
そんな事を考えながら改めて樹木に空いた穴を横目で見る。

 「確かに……リスとかキツツキの仕業じゃなく」

それは深く、一つではなく無数に空き、平べったいがよく見ると菱形で
同じ場所に何度も開けたような跡をしていた。

 「なんというか、穴のこの部分を見ると」

がっぽりと開いた穴の淵を指さす。

そして何より、穴の淵が『崩れていない』
無数にとは言ったが、何度も穴を開けたというより
『一発で穴を開けた』のが無数にある……とみるべきかもしれない。

 「一撃必殺っていうか……躊躇いが無いんですよね、思い切り開けてる。」

でも、そんな道具は思いつかないし、そんな事をする理由も思いつかない。
どんな人間がどんな理由で?

 「それだけと言えばそれだけ……なんですけどね。」
 「気になります?」

289白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/29(木) 23:19:41
>>288

「そう、ですね。トーリは……とても気になります」

トーリの顔には『表情』が出にくい。
あるいは、読みにくいだけなのかもしれないが。

「もし『人為的』だとすれば、これは……
 ただなんとなく、砂を山にしてみるとか、
 拾った枝を、手折ってみる。とか、みたいな、
 ちょっとした……気軽な事ではない気がします」

「どんな人が……なぜ、こんなことをしたのか」

         「とても。とても気になるのです」

『学校生活』ではないのかもしれないが、
学友と取り組む『課外研究』にはちょうどよかった。

「『目印』」

「というのが。トーリの中には、一番に浮かびました。
 高さが似ているのは、『見やすい』ように」

    「……けれど。それなら、きっと。
     こんなに同じ木にいくつも、付けませんね」

躊躇い傷なき大量の『傷』は、
少なくともおあつらえ向けの『自明の解』はない。

「それに。何への目印なのかも、よくわかりませんし。
 トーリは、この意見は……
 自分で言ったことですが、違うような気がします」

「斑鳩君は。……どんな気持ちなら、これを付けると思いますか?」

大真面目に一度、頷いた。

それから、『斑鳩』の所感も聞いてみようと、話してもらおうとする。

290斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/06/29(木) 23:59:52
>>289

木陰の中で髪の毛をかき上げる。
夏の木漏れ日に映るパイセンとか絵になるなぁ、などとのんきな事を考えていたので
その疑問は飲み込むのに数分を要した。

 「白岸パイセンが自信ないって言われてもな……」

じゃあ自分にはあるのか?と問われると微妙なところだ
確かに『目印』としては何度もつける意味はないかもしれないが
じゃあ他に何かあるか?と常識的に考えるとパッと思いつかない。

 「それじゃあ……パイセンが常識的な考えを披露してくれたので、非常識なものから考えましょうか?」

全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる、と
ホームズ先生も言ってらっしゃる。

懐を探すと、財布を取り出し、更に中から千円札を取り出す。

 「んー……まぁこれでいいか。」

渋い顔で穴に突っ込むと、紙幣は穴の中に完全に隠れてしまった。

 「最初は『八つ当たり』だと考えたんですけど、自分ならもう少し乱雑に空けますね。」
 「八つ当たりできりゃあなんでもいいんですから。そこらのベンチでもゴミ箱でも。たぶん……厚さが足りなかった。」

紙幣を穴から取り出す。木くず一つついていない。
断面は実に……滑らかだ。

 「穴は随分深い、『ナイフ』とか『包丁』よりも長いけど、『鉄パイプ』よりは幅が広いし上下に狭すぎる。」
 「何より断面が鋭利……この道具は『幅広』の『長い刀身』を持っていて、こう……肩の部分まで持ち上げてから体重をかけて思い切り突いた。」

幅広で。長い刀身を備えた道具。
 
 「……『剣』で。」

そうでなければここまで深くは突き刺せない。少なくとも『剣を持った人間』がやるには。
……現代に剣を持った人間とかいるんだろうか?

 「激情に任せてない……『明確な目的』をもって、『集中してた』のでは?と、思うんですよね。ただ……」

地面をチラリと見る、残念だが……今の説に必要な、其処にある筈の物がないのだ。
ここでパイセンと同じ結論に至ったが、同じように躓いている。何度もそれを行った筈なのに、その跡がない、不気味なくらいに……。

291白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/30(金) 09:13:52
>>290

「斑鳩君がトーリをどう見ているかは分かりかねますが、
 トーリはあまり、自信が無い方です」

涼しい真顔で、そう返す。

「ですから。考えの続きは……斑鳩君に、お任せしてみます」

そうして、彼の推理と、その披露をじっと見ていた――――
汚れすらなく出て来た紙幣を見て、小さく二度ほど、拍手の仕草をする。 

「――――トーリは。見事な推理だと、は感心しました。
 以前、包丁で、木のまな板を深く斬ってしまったことがありました。
 固い野菜を切るとき、勢い余って……
 その時の切り口は……もっと狭く、粗い物だったと、記憶しています」

     「『剣』を使って、とても。丁寧に。
        何度も何度も、斬りつけて……」

地面を見る斑鳩とは対照的に、トーリは上を見る。思考の際の、癖だった。
只の癖で――――斑鳩と違い、何かに気付いたからではない。

「『稽古』」
          「『強くなりたい』……そんな、気持ちで」

「かも。しれません。真剣を使った稽古はあまり聞きませんが。
 何度も何度も剣を木に打ち付ける理由が、トーリは他に余り思いつきません」

現代に剣を持った人間などいるのだろうか?
ゆっくり、顔を下げる。

「そうだとすれば。『剣豪』が、このあたりにいるのかもしれませんね。
 ……トーリも少し、斑鳩君の『冗談』を真似してみました」

                   フ

目元と吐息だけ、小さく笑う。
そういう情緒がトーリにはある――――そして。

「……地面に。何か、あったのですか?」

そこでようやく、斑鳩が下を見て、何か言いたげなのを気付いたのだ。

292斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/06/30(金) 21:23:37
>>291

 「おっ、やりますな白岸パイセン。」

『冗談』にニヤリと笑う
しかしそう聞くと何処かストンと腑に落ちる物がある

 「『練習』か……そうだよ、練習の筈なんだ。」 

スカーフを弄る。或いはこれが僕の癖なのかもしれない。
集中し、冷静に実行された行為……条件には確かに当てはまる。ただ……。
 
 (突きの練習、ただそれなら…何故僕の『肩の位置の高さ』なのだろう?酷く大男なのか?わざわざそうする理由があったのか?)
 (それに、仮に大男だとしたら……やはり『残っていないとおかしい』)

いつの間にやら当初の目的をすっ飛ばし
襟元をパタパタすると、白岸パイセンに視線を戻す。

 「あった……というか、無いんですよ。これだけ深く差し込むなら当然ある筈の」
 「雨が降ったとか、風が吹いても これだけの深さの数を空けているなら。」

無数に空いた穴の手前を。足先で追う……全体重を使って樹木の幹に刀身を押し込む場面を想像すれば
この辺りの筈だった。しかし其処には何もない。

 「『脚運び』の痕跡が無いんです、どんな戦技でも、脚を使わない……というのは限りなく少ないし」
 「地面を蹴り、その反作用で重心を移動させ、一撃を入れてるなら。この辺りの地面が僅かでも抉れてたりする筈なんです。」

雨が降ろうが風が吹こうが……足跡の残る土の構成は有るし
これほど深々と穴を開けるなら、相応に地面も抉れなければおかしい…というのが斑鳩の考えだ。

 「もっと言うなら……さっきの千円札にもついてなかった。『鉄片』が僅かばかりも。」
 「樹木に大穴を空ける鋭さを持っていて、欠片も刃こぼれしない刀剣なんて有るんでしょうか?まるで……」

僕は言い淀んだ、常識、非常識以上にまさしく冗談のような話故に
まるでそんな物など最初からなかったかのようだ……穴だけが勝手に空いたというのか?

 「『超越した何か』だ……。」

293白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/07/01(土) 09:39:55
>>292

「ありがとうございます、斑鳩君。言ってみた甲斐がありました。
 ――――――――――『無い』、ですか?」

地面に向けていた目を上げる。
答えは推理しなくとも、斑鳩が教えてくれる。

「『足運び』……ああ。そう。ですね、斑鳩君のお陰でトーリも理解しました。
 剣道部の練習でも、皆さん剣を振るときは『踏み込んで』いましたし」

        「踏み込まずに刃を振るう……
         それこそ『料理』のような行程では、
         こんなにも深く、傷付けられません」

    「それとも。鋸で引いたりしたら。
     それでも、こんなにも綺麗には、傷付けられません」

その推理をなぞるように言葉を紡ぎ、得心と共に、穴に指を添える。
殺傷力は勢いが作る――――――勢いは踏み出す脚が作る。

「だから、そう、『道理』がありません」

足跡を隠そうとするほど慎重な人間なら、こんな形で練習はしないだろう。
推理が成立しないのは、『論理』が無いからだ。

そして――――現実において論理無き事象は『論理無き力』だけが起こす。

「……『超越』」

「トーリは疑問でした。
 もし。『剣豪』が、真剣の練習をするためにこれをするとして、
 わざわざこのような、人が通る道でする理由はありません。
 音も。とてもうるさくなるでしょうから、夜でも油断は出来ませんし。
 『刀』を。持ち歩いている行き帰りだけでも、罪に問われかねないのです」

                スッ

「『人目についても問題が無い』」「……」「そこにも、『道理』がありません」

木に触れていた白指を離す。そこにもやはり、木屑などは付いていない。

「だからトーリは。『超越した何か』が。
 あるいは。『超越した何か』で、これを『した』という事を否定できません」

「それが一番。道理があるだなんて。不思議な話です。……そうですよね?」

『斑鳩』はそれを認めるだろうか――――?
この世には『超越した力』があるという、荒唐無稽な話だ。だが、それは『ある』

294斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/07/02(日) 05:02:33
>>293

彼は何もしゃべらなかった。


瞳を先輩から逸らし、その視線を大地から樹木に向けて
ただ黙っていた。


 ( 技巧に優れる装甲、影の身体、統一し縛る鎖……『三位一体』 )


女の声が、聞こえた気がした。
私達から何かを引き出した女の声が。


ただ黙って、樹木の穴に見せつけるように右腕を掲げて見せる。

そして見える者にはその腕に……無数の銀色の蛇のように、無数の『鎖』が這い回り。
蛇が落ち着いた頃には、その右腕は腕時計ごと半透明の枷で覆われていた。

それが動けば、聞こえる者には金属の鱗がこすれ合うような音が聞こえたであろう。

『それ』は常人に見えず聞こえず、物理的法則を無視してなお『立ち向かう力』として顕現する。

推理の必要はない、矛盾を超越したものは此処にある。
回答は……。

 (……思い出した、一抹とか言ったかな、彼。)

295白岸・N・トーリ『ダムぜル・イン・ディストレス』:2023/07/02(日) 19:11:42
>>294

言葉ではない返答。『鎖音』が脳裏によみがえり、
目の前の音と、光景と合流する。

深い納得と、理解。そして、自分がどうすべきか。
――――答えを。導くのは難しくない。

「…………」


            スッ ・・・

両手を体の前で組み、目を閉じる。
『それ』は無限の原野に立つ為の力であり、
ひけらかす武力ではない。

                  だが―――― ・・・

   (『ダムゼル』)
      
   『枷』であり『翼』


     シャキン!               シャキン!

         (『イン』)

        『檻』であり『鎧』

                    ズァァァァァ ッ


         (――――――――― ……『ディストレス』)

                    『錘』であり『剣』

丸みを帯びた、『足跡』にも見える10枚の羽。
それを擁するのは、広げれば身の丈を凌ぐ『鋼鉄の翼』。

「トーリも、斑鳩君も、『これ』を出来る形ではないのですから――――
 トーリ達の間には。隠し事はあっても、『嘘』はそこにはなかったのでしょう」

             「トーリには。それが、嬉しく感じます」

笑みを浮かべず、ただ、口に出した。

返答は無くても良い。ただ、所感を述べただけだ。
背に宿る一対の『それ』が――――その同種の力が、『答え』になるなら。それでいい。

296斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/07/03(月) 00:43:26
>>295

 「遅めの『自己紹介』……という事にさせていただきますよ、トーリ先輩。」

鎖を引っ込めると後に残っている事実はこうだ

誰かが(恐らく彼だ)『スタンド』の練習でこの穴を開けた。
トーリ先輩は『スタンド使い』だ。
僕らは何方も、この穴を(たぶん)空けれるスタンド使いじゃない。

 「お互い『力』を持つものとして、誠実にお付き合いする方がよろしいでしょうから、ね。」

あまりいい事じゃあないが、この言葉に嘘はない、まぁ喜んでもらえるなら何よりだし。
他人のスタンドについて嬉々として話す事もないだろう。

 「それにしても『鉄の羽』……です、か、中々手札が多そうな……」

それにしても蕎麦を食いに出た遠回りの先で、我ながらとんでもない事を知ったと思う。
汗も引っ込みそうな衝撃……そばを食いに?

 「あっ、蕎麦……ッ」

急いで腕時計を見……動いていない。
ゼンマイ式のこの腕時計は中の振り子がゼンマイを巻いて動く。
そして僕は此処で穴を調べたせいで『立ち止まっていた』……ので……。

 「スマッ……」

ホと言う前に懐から僕を出迎えたのは真っ黒な板切れだった
残念だが……電池切れだぜ、数レス前にちゃんとその旨が記載されている。

 「……。」
 「…………。」
 「………………。」

言わずもがなだが、僕は此処で先輩と出会う前にやたらと遠回りし
穴の事をしげしげと眺めていたので、先輩に責任があるわけではない。
ただ、自らの好奇心にトドメを刺されただけである。


僕は夏の木陰の中、糸の切れたマリオネットの如く膝を屈した。

297白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/07/03(月) 01:23:14
>>296

「はい。『能力』を持っていても、いなくても。
 トーリと斑鳩君である事には変わりませんが、
 それでも。『能力を持ったトーリ達』である事は、大事だと思います」

「改めて。よろしく、お願いいたします」

首肯して、とてもゆっくりと、その羽を畳んでいく。
畳み終えたら、長々と見せびらかす事もない。解除するだろう。

「『手札』」
「斑鳩君は。―――――――――――……『そば』?」

何かを言いかけて、けれど。
目の前でいきなり崩れ落ちた後輩に、かける言葉が思いつかず。

「『そば』」

なんとなく、もう一度、繰り返して。

「……ふ」
「よかったら」「お腹が。空いているならですが」

口元にささやかに浮かんだ笑みと共に、
ゆっくりと……切り出す。

「この近くに。トーリが好きな、和風のカフェがあります。
 そこの名物は『あんみつ』なのですが。
 ……軽食として、小さな御蕎麦が、出ていたような覚えがあります」

少しだけ屈んで、視線を合わせて、伝える。
 
「トーリの買い物先と、同じ方向です。……トーリが。案内しましょうか?」

実はそれは的外れな親切なのだが――――友達には、親切にすればするほどいいのだ。

298りん『フューネラル・リース』:2023/07/08(土) 12:41:34
ここは星見町…ではない
ここは富士山

「うーさーぎーおーいしかーのやーまー♪」

頭から鈴蘭が咲いた10歳ほどの少女が山を登っている

何故、りんが富士山を登っているのか
それは、富士山には美味しい湧き水があるからだ
水にこだわりのあるりんは、富士山の湧き水を汲むためにわざわざ星見からやってきたのだ

299りん『フューネラル・リース』:2023/07/09(日) 20:57:11
>>298
苦労して登った甲斐あって、美味しい富士山の名水をたくさん汲む事が出来たりん達
その帰りの出来事だった

りん「いやぁ〜、冷たくて美味しかったねぇ〜」
阿部マリア「頭から水被った時は流石に引きましたわ…」
清「なんじゃあれは!」

突然大声をあげる清
その視線の先には、登山を舐めているとしか思えない
やけに軽装な登山者の姿が

マリア「おい、あいつ落ちますわよ」
りん「あっ、ちょ、危ないっ!」
清「此奴の構え…隙が…ある!」
清「否!隙があるようで隙がある…余程の身の程知らずか!不気味な…」

登山者「滑るッ!」

りん「あああっ!」

ザシュザシュザシュ

マリア「うおぉ、こいつはひでぇ…」
清「だが…ここは一気に!(滑落)」

一気に滑落していった登山者
その体は岩に何度も叩きつけられ、肉が抉れ骨が折れ
もはや人間とは思えないような無残な姿になっていく様を見せつけられた

りん「あぁ…(吐き気) はぁ…(吐き気)」
マリア「ちっ、気持ち悪ぃもん見せやがって
    おい、救急車に連絡しますわよ」
清「承知してごじゃる…」

その後、救急隊が駆けつけたが、登山者の遺体はしばらく見つからなかったという

マリア「しかしあの軽装、死にに来たとしか思えませんわね」

<

                       / ̄⌒´ ̄\
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                        終
                      制作・著作
                       ━━━━━
                       ⓃⒽⓀ

300百目鬼小百合『ライトパス』:2023/07/13(木) 18:53:18

星見町――――『地下アーケード』。
どのような需要があるのか分かりにくい店や、看板を掲げていない店などが軒を連ね、
大通りや歓楽街とは違ったアングラな雰囲気を漂わせている。
無論、ここにも秩序は存在し、堂々と法を犯す者はいない。
一見して常連客と思われる人間もいれば、興味本位で入り込んだらしい者もいた。
その中で自然と目立っていたのは、汚れ一つない真っ白なスーツを着こなした人影だ。

         ザ ッ

短く整えられた黒髪と切れ長の目を持つ長身の女。
口に咥えている煙草はフランス産の『ジタン』だ。
『スペインのジプシー女』を意味し、扇を手にして紫煙を纏った踊り子が、
パッケージに描かれている。

       ザッ

            ザッ

                 ザッ

女は歩き続ける。
その風貌は若くはないが、枯れてもいない。
未だ衰えない力強さがあった。

               ――――――ザッ

気の向くままに歩いている風を装っているが、足取りとは裏腹に眼光は鋭く、
油断なく周囲を観察しているようにも見える。

301百目鬼小百合『ライトパス』:2023/07/14(金) 12:12:10
>>300

かつての百目鬼のような『スタンド使いの警官』という例外はあっても、
『アリーナ』と『警察』では根本的な領分が違う。
同時に、共通点もある。
どちらも巨大な組織ゆえに構造が複雑化し、簡単に動く事が出来ない点だ。
至らない部分をカバーする為には、市井の人間の協力が欠かせない。
だから刑事を退いた訳ではないが、
組織に属さない今の自分だからこそ出来る事もあった。

         ジジ…………

立ち止まった時、ちょうど煙草を吸い終わってしまった。
踊り子の図柄がデザインされた小箱から、新たな一本を取り出す。
それを口に咥え、ライターの蓋を親指で跳ね上げる。

       キィィィィィ――――――――ン

甲高く澄んだ金属質の音色が、地下街に響く。
フランス製『デュポン』のライターが奏でる独特の音だ。
『喫煙具』にこだわりを持つ百目鬼は、とりわけ『フランス製品』を好んでいた。

302百目鬼小百合『ライトパス』:2023/07/15(土) 15:05:23
>>301

見回りを行う百目鬼の注意は、やがて一人の男に向けられる。
首筋から覗く『蜘蛛の入れ墨』には見覚えがあった。
その特徴と罪状から『毒蜘蛛』という名前を付けられた犯罪者だ。

   (あの野郎は昔アタシがブチ込んでやった筈だ)

           フゥゥゥゥ――――…………

   (奴がシャバに戻ってもおかしくない頃合いか)

思考と共に煙を吐き出し、男の動向を窺う。
『毒蜘蛛』は『知能犯』だ。
自分では手を下さず、常に『巣の中枢』に陣取っている。
複数の犯罪に関与した事は間違いないが、
決め手になるような証拠を見つけられず、一応は逮捕できたものの、
全ての罪を暴くには至らなかった。

       ス ッ

『毒蜘蛛』は地下街の奥に姿を消した。
入口から最も遠い『最深部』だ。
それは何処か『蜘蛛の巣』を思わせる。

(こいつは放っておく訳にもいかないねえ)

一定の距離を保ちながら、その後を尾行する。
油断の出来ない相手だ。
用心して掛からなければならない。

    ……………… ……………… ……………… ……………… ………………

通行人の中に『スタンド使い』がいれば、以下のような光景が見えただろう。
『白いスーツを着た女』の傍らに『白い人型スタンド』が発現している。
スタンドの右手に握られた『警棒』が、金属的な光沢を放っていた。

303百目鬼小百合『ライトパス』:2023/07/17(月) 14:55:03
>>302

    それから数分後――――――。

             フゥゥゥゥ――――…………

突如として襲い掛かってきたチンピラ達を叩きのめし、
百目鬼は景気良く煙を吐き出した。
おそらく『毒蜘蛛』の手先だろう。
こいつらの相手をしている間に、本命には逃げられてしまったようだ。

「退屈させてくれないねえ」

その言葉は一概に否定的とも肯定的とも言えず、複雑な響きを伴っていた。

304甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/07/22(土) 13:02:46
台所

ここはあま公の自宅か>>305の家だかは分からないが、
ここでお菓子を作っているようだ
さて、何の料理を作っているのだろうか

305甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/07/23(日) 21:17:47
>>304
松本「おっ、出来たみたいだね」

あま公が冷蔵庫から取り出したのは、綺麗な透明の水ゼリーだ

マリア「結構美味そうじゃありませんの」

無造作にゼリーを掬い、口にするマリア
ゼリーの中には魚や海藻を模した寒天が入っている
掬うとプルンと震えて、見た目にも涼やかで綺麗だ

マリア「うん、美味いですわ」

海のイメージしているのか、ほんのりと塩とラムネの味がする
寒天にも一つ一つ、違うフルーツの味がして飽きさせない

マリア「ただね」

ガリ ガリ

マリア「何でガラス片が入っているんですの!?」
あま「シーグラスをイメージして」
あま「飴細工を入れるつもりだった」

ゼリーの中には様々な色のステンドグラスの破片が混入している
眺めるだけならこれはこれで綺麗だ

マリア「どう間違えたらそうなるんですの!?」ペッ
松本「ステンドグラスが血で真っ赤に染まってるね」
あま「きたない」
マリア「ふざけんじゃねえですわよ!てめぇらもガラスみたいに粉々に砕いてやりますわよ!」


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       終
     制作・著作
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306斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/07/31(月) 02:39:19
斑鳩翔は7月の終わりに夏のビーチに来ていた。

阻む物一つない広い空、地平線まで広がる青い海
砂浜は太陽の光を反射して、黄金の輝きを放ち。

海の家では500円の焼きそばを800円という夢と思い出込みのぼったくり価格で売却し
シャワー場所と簡易トイレには長蛇の列ができている……筈だった

そしてサーフパンツにサングラスを装備して降り立つ僕は、人呼んで真夏のラブ・ハンター……

 「あっつ……ぅ……」

ラブ・ハンターは溶けかけてた

気温は約39℃以上を記録し、雲一つない晴天は……
砂浜で反射した日光ビームは紫外線と肩を組んで容赦なく照り付ける
海からの風は吹いているが、もはやドライヤーが眼前にあるのと変わらない。

 「クソッ!マジに誤算だった……!自然現象まで計算に入れてなかった……」

拳を強く握りしめる、汗が頬を伝う様はもはや滝といっても……流石に過言だったが、体感はまったく変わらない。
このままだと日光で僕はとける。

 「何処だよ『僕達』がナンパすべき水着美女は!肌を炭化させようと考えてる気合入った野郎しか見えねぇ!」

307硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/07/31(月) 06:51:30
>>306

「翔チャン」


嘆き斑鳩のすぐ背後、
鼻ピアス、金髪のブレイズヘアを後ろで縛った男子高校生こと『硯研一郎』。
襲いかかる熱波から少しでも逃れる為にパラソルの下に備えられたビーチチェアに腰を下ろし項垂れている。


「俺は君が今日遊びたいって言うから、
 前日の夜にアルバイト先にお休みの電話して、予定を空けたんだぜ。
 夏休みの稼ぎ時の男子高校生がバイトのシフトに穴をあけてしまったんだ。
 次回、出勤する時にバツが悪い事必死だ。
 こんな髪型だと入れるアルバイトも中々に絞られてしまうんだぜ」


ゴキュッ


この炎天下ですっかり温くなってしまったペットボトルのジュースを一気に飲み干す。



「てっきり冷房の効いた部屋でスマブラ大会としゃれ込むのかと思ったが、
 『ナンパ』しに外に駆り出すとはまさかって感じだ。
 正直、もう身体は限界だ」


「なぁ翔チャンーー、
 現実の女は置いておいて今から俺の家で『ギャルゲー』でもしないかい?
 

 現状、この海岸に女性は見当たらないが、
 俺の家に行けばスイカみたいなおっぱいの妹から、
 国家予算級に資産を持った家の太いお嬢様やら、女がよりどりみどりだし、
 ゲーム屋の小倅の俺には『知識』があるから、
 俺が横にいれば、女とのゴールインをアシストできる。確実にだ。
 そして何よりーーー『冷房』がある」

308斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/01(火) 01:28:25
>>307

 「成程ォ!完璧な提案だな!冬でも夏でもなにも問題ない!ついでにあのラッパー&ラッカー共も呼ぶか!」
 「って、じゃあー今海でやる意味ねぇーだろうがぁー!!夏だから来たんだよォ!」

赤いメッシュの入った短髪を揺らし
ケンイチローの要請を日焼け止め&アイスノンごとケンイチローにダンク&シュートしつつノリ突っ込みをキメる
タオルで巻いてそのアイスノン首に回してろと言いつつ研一郎の夏の予定の裏をスルーした。

 「てゆうか、自分から連絡取っといてなんだけど……生きてたんだなぁYOU。」
 「しばらく見ないからてっきりよっぱりトラブルとダンスっちまったかと。」

周囲を見渡すと、目星を付け
自分のクーラーBOXに『鎖』を引っ掛けてon小型ラジオonパラソルon鳥のぬいぐるみごとずるずる引っ張っていく
砂浜に跡を残しながら目指すは『日陰』かつ、風と海に近くなる岩陰のほうだ。

 「まぁ〜〜〜しゃあねぇ、予定変更だ……研一郎チャン。針と糸で海の『魚』相手にナンパしに行く、ビーチチェア持ってきてくれ。」
 「ところでおたく、『釣り竿』は?後呼んでるのが『一抹』だから餌は兎も角。竿が『2本』しかねぇけど、持ってきたよな?確かメールして……」

309硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/01(火) 10:09:09
>>308




    「ああ」



空のペットボトルをリュックにきちんと仕舞い右肩に掛け、
ビーチチェアを折り畳み、やたらテンションの高い斑鳩の後に続く。




「普通さ。
 学校に行ったり、地元の友達と遊んだり、
 家の仕事を手伝ったり、バイトしたり、色々さ。
 幸いな事にあの『オモシロ超能力』を使う事もなく平穏な日々を過ごしていた。


 ああ…いや、この前、『クリフト』だか『トルネコ』だか『ビアンカ』だか『セフィロス』だか忘れたが…
 とにかく、そのーー『セフィロス』の案件に首を突っ込んでしまい、
 その日1日だけ『猫探し』の為に『猫捕まえ太郎』の『像』を発現してしまったがね」



適当な所にビーチチェアを置いて再び組み立て、
その上に腰を下ろし徐にリュックの中を漁り始める…。



「その『一抹』という人は知らないが、それはそうと。

 『母子家庭』の一人息子が当日、釣具を用意するというのは中々にハードルが高く、
 結果的に言うと『釣竿』は見つからなかった。
 だが代わりに『店』の『倉庫』から『それっぽい』『長柄』を見繕ってきたんだが…、
 あったあった」


リュックの中から取り出したのは、
各所に『信号機』の意匠が施された全長30cmにも満たない紫色の『斧』だ。
刃物であるにも関わらずその材質は『プラスチック』であり、刃先は丸みを帯び殺傷力が皆無。
明らかにーー子供向けの『特撮ヒーロー』の『玩具』だ。
(参考動画:ttps://youtu.be/Ljt6JGBfxGE)




「ええと…、
 『仮面ライダードライブDXシンゴウアックス&シグナルチェイサー』だそうだ。
 翔チャン、これでなんとかなりそうかい?」

310斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/01(火) 21:05:07
>>309

 (おも……しろ……?たぶん『スタンド』の事だよな……)

汗と共に髪をかき上げる、場所はこの辺りでいいだろう
パラソル片手に設置によさげな場所を探す。

 「君が電話帳に僕の『名前』をどう書いてるか気になってきたぜ、その『名詞群』。」

 (でも、ひとつ『確信』を持って言える、本来の名前と絶対かすりもしてないと……FFトDQマジッテルシ)

セフィロスの案件って何……黒マテリア強奪とか?
そんな事を考えつつ腕に『鎖』を巻きつけ、重量を増したうえでパラソルをしっかりと地面に差し込む
これで滅多な事ではズレる事もないだろう、しかし今重要なのは『釣り竿』だ。

 「で、釣り竿の件は……」

彼の家は確か『おもちゃ屋』だ、その倉庫なんだから竹竿かな?
最低でもウケ狙いで磁石式の釣りゲームとか……?等と考えていたら、彼はリュックから『それ』を取り出した。

 「…………」

僕はゆっくりと歩み寄ると、研一郎の手からそれをそっともぎ取り、柄についていた目立つ赤い色のボタンを押した。

 マッテローヨー! ピッピッピッピー!

 「…………」

仮面ライダードライブDXシンゴウアックス&シグナルチェイサーを見る。
硯研一郎を見る。
もう一度、仮面ライダードライブDXシンゴウアックス&シグナルチDXシンゴウアェイサーを見……

 スゥー

 「わぁー、ニチアサでキル率最多を誇ってそうな斧だ―!」

 「成程、これで海の魚どもを根こそぎKillし、ついでに砂浜で人様に迷惑かけるイカれた半グレだのロイミュードだのもフェイタリティ。
  最終的に真夏のビーチでマーメイドどもを片っ端から口説き落とし、ハレムを築いて二人でこのビーチの帝王となろうってか。
  なんやかんやで地球温暖化も解決し、一抹 貞世も腰を抜かすってもんだぜ。(ワンブレス)」

 「よーしそうと決まればイケイケで」

DXシンゴウアックス&シグナルチDXシンゴウアェイサーを構え。

 「イケるかァーーーーッ!!!」

渾身のツッコミと共に空に放り投げた(精密動作:B)おお、見よ
まるで『2001年宇宙の旅』で空に投げられた骨が宇宙船に変わるシーンのようではないか。

 ヒュンヒュンヒュンヒュン パシィ

 イッテイーヨ! ピッポー ピッポー

仮面ライダードライブDXシンゴウアックス&シグナルチェイサーをキャッチ(精密動作:B)して
研一郎にそっと返却する、人の物を勝手に乱暴に扱ってはいけない。

 「せめて1mある竹竿かな?とか思うじゃん!さっきの名詞の如くかすりもしてねぇんだけど!?」ナンダヨネコツカマエタロウッテ
 「どうにかなりそうかって?ならないよ!糸も針も長さもないだろ!ビックリしてるわ君の発想力に…………嫌味とかじゃなく純粋に興味で聞くんだけど、何で持ってきたのコレ?」

311硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/01(火) 21:52:11
>>310


「やっばり駄目だったかい。
 ひょっとしたら、もしかしたら、
 いけるんじゃあないかと思ったんだが」


ポチ \イッテイーヨ!!/


目の前で繰り広げられた斑鳩劇場の後に、
手元に返却された玩具のボタンを押す。
万が一に備えて、一応電池は入れてきた。



「逝ってよし、だそうだ。」


          「いや」


「『備えあれば憂いなし』と言うじゃあないか。
 翔チャンが途轍もない発想力の持ち主ならば、
 これを上手く釣竿にしてくれるかもしれない。

 それに『わらしべ長者』理論で、
 その辺に『大きなお友達』がいたら交換してくれて、
 気が付きゃあ手元にロッドがあったかもしれない。
 こー言うのを『ワンチャン』って言うんじゃあないのかい?」
 
     トントン

玩具を肩にかける。


「ちなみにエサに使えるんじゃあないかと、
 冷蔵庫にあった『ミートボール』を持ってきたんだが、
 この炎天下で痛むのは必死だったから、
 バス待ちの停留所で全部食べちゃったよ」

         「とても」

「美味かったよ。
 ご馳走様でした」

312硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/01(火) 22:26:32
>>311
必死→必至

313斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/01(火) 23:27:38
>>311

 (すさまじくか細いの解ってたんじゃん……)

呆れた様子でクーラーBOXから長い袋を2本取り出すと一つからロッドとリール、糸、針、重り、餌箱を取り出し
慣れた手つきで組み立てていく。

 「こんな健康有料不良少年の僕たちが要る所に彷徨ってる『大きなお友達』とか
  ジョーンズに襲われてる最中かどざえもんの二択じゃない?」

糸に針と重りを付けると、ラジオの電源を入れる
今くらいの時間なら『カナリアの声』が聴けるかもしれない。

 「そして僕が求めてるのはひと夏のアバンチュールであってワンチャンじゃあ……
  いやそりゃあ、ワンチャン狙いではあるけどもそれは女の子狙いなの、生足素敵なマーメイドなの。野郎はNO。」

完成した釣り竿を何回か降って確かめると
満足そうに頷き……

 「ハイハイ、良かったね。
  研一郎チャン、キャッチ!」

完成した釣り竿と餌箱を硯研一郎に放ると
自分の釣り竿に取り掛かる。

 「壊すなよ、まあお下がりのお下がりだけど……
  餌の付け方はミートボールを冷蔵庫から取り出すみたいにいかないぜ?」

餌箱は二つある、木箱とプラスチックだ
……プラスチックの方からは何かか細く音が聞こえるが。

314斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/01(火) 23:28:44
>>313
有料→優良

315硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/02(水) 01:16:31
>>313

「アバンチュールはよくわからないが、
 アバンストラッシュならできるぜ。

 アバンストラッシュ、知っているかい?
 子供の頃近所のラーメン屋に置いてある漫画で読んだんだが、
 このシンゴウアックスをこう逆手に持って…」


昔漫画で読んだ独特の構えを再現し、
本来の玩具の遊び方を堪能した後リュックに仕舞い
渡された釣竿に持ち替えた。


「ありがとう翔チャン。
 凄いな、手慣れたものじゃあないか。
 将来はこれで食っていけるんじゃあないか」


        「だが」


「どうにも厭な予感、というか悪寒がするな」

恐る恐る両方のエサ箱を開いていく。

316斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/02(水) 22:42:54
>>315

 「アバンストラッシュねー。」

ラジオからロックが流れる最中。

 「ホントはさー、沖縄だのハワイだの行きたかったんだよな。
  ホノルルでアバンストラッシュだのギガストラッシュだのしたかったよなー、だって僕達1どきりの青春だぜ?」

僕が釣り竿を組み立てる傍らで、研一郎チャンが餌箱に手をかける

 「でもカツアゲできそうな悪い面したヤツが近所に居なくてさ。
  話聞いてみたら、なんかもうボコボコにされて『爆発』した後なんだってよ。アバン先生から大地斬伝授する前にハドラーやられてるんだもんな」

木箱の方は練り餌だ、茶色の粘土のようでちぎって捏ねて
釣り針にくっつけて使うタイプ、食いつきはよくないが量だけは有る。

 「目の上のたん瘤の風紀委員四天王もなんかいつの間にか倒れてたし……。」

もう片方は……人間大だったら『宇宙怪獣』と言われても信じれる姿の『イソメ』。
手で触るには割とガッツがいる姿をしていてうにゅにゅと動く……食いつき抜群の画像検索したくないソレである。 
あ、そういえば聞いてなかった。
 
 「にしても一抹君遅いな、一足先に年上のお姉さま方とアバンチュールしてんのかな?メールでも送ろうかな。
  ……ところでおたく、蟲平気だっけ?」

317硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/03(木) 08:47:43
>>316

「俺の家は商売をやっているし、
 それに家には祖父母がいるからな。
 子供の頃から旅行に行けないのは慣れっこだ」

        「まぁ」


「今年も東京に住んでいる、
 叔母の『悠碑ちゃん』が一人娘ーー
 つまり俺の従姉妹の『キラミちゃん』を連れて帰省してくるので、
 彼女の相手をして終わるだろう」



        カパッ



(ウネ ウネ ウネ ウネ ウネ)


             「ひゃあ」



上擦っているが抑揚の全く感じ取れない独特の悲鳴をあげた。
どうやら『ウネウネ』の類は『不得手』だったらしい。


「翔チャン、ちょっとばかし助けが欲しいのだが、
 ひょっとして今、お手隙ではないのかい?」

318斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/03(木) 19:34:54
>>317

従妹、自分には聞きなれない言葉だ。
祖父母しかいないのは僕と同じだが、彼の家は家計的にだいぶ苦しそうではある。
ある意味、僕の方は恵まれてると言えるだろう 比較する意味があるかは兎も角。

 「へー……従妹ねぇ。」

素っ頓狂な声にニヤニヤしながら完成した竿を片手に立ち上がる。
準備は完了、後は投げて待つだけだ。

 「ヘイヘイ、年の離れた兄でアバンの使徒の割に、勇気たりてないんじゃないのー?」

 「というか君『アレ』あるだろ『アレ』……えーと『おもしろ超能力』?
  ちぎって針の先に刺すんだよ ハヤニエみたいにな。」

竿を肩に担ぐと行こうぜと海岸に置いた椅子を顎で指す

 「ま、どーしてもというなら、共闘のよしみで助けてやらなくも……。」

319硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/03(木) 21:13:37
>>318


「悠碑(ゆうひ)ちゃんとキラミちゃんだったら、
 悠碑ちゃんの方が歳が近いんだがね。
 俺のお母さんもその妹の悠碑ちゃんもシンママってヤツで、
 我が家唯一の男であるおじいちゃんも『文化系男子』だから、
 こういう『虫取り』や『川釣り』ってのには、
 中々触れる機会がなかったんだ」


            「よっと」

顔を顰め、意を決し
餌箱の中で蠢くイソメを摘み悪戦苦闘しながら針につける。


「あの、『スタンド』?ってやつは中々便利ではあるんだが、
 アレばかりに頼るのはどうかと思っていてね。
 上手く言語化するのは難しいが、
 俺が未だに『ガラケー』を使っている理由に近いかもな」

       
       「うひゃあ」

「なんとかできた。
 さぁ、フィッシングの時間だ」

320斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/08/03(木) 23:12:47
>>319

 「アハン?」

研一郎を待って位置につくと、餌箱から餌を取って針に付け。
リールのストッパーを外し、水平線向けてスイングする。

 「右手に『ハンマー』持ってるくせに、態々石ころ探して釘を打つのも
  妙な話だと思うけどね。」

風切り音と共に針が飛んでいく様は、自分のスタンドでの戦いざまに似ている。

妙なもので、普段だとベタベタするだけの潮風も
こういう格好で浴びると実に涼やかだと思う

 「ま、物好きがいても神様がバチあてるわけじゃ、ねぇか!」

後は竿からの感覚を頼りに、ラジオや波の音を聞きながら待つだけ。
魚をひっかける騙し合いとして餌を何処に放るかという考えは有るが
それを除けば釣りの基本は忍耐だ……。

 (うーん……。)

ありていに言えば『暇』になった。

 「なぁ、従妹ってどんな感じ?やっぱ可愛いのか?」

321硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/04(金) 17:19:08
>>320


「硯希良美ちゃんは、
 綺麗な顔立ちをしているんじゃあないかい。
 まぁ、最もまだ『小学校2年生』だがね」


       チャポッ


「ちょっと前までは『プリキュア』にハマっていたらしくて、
 この間彼女を向かいに行く時に『サプライズ』で
 その『キュア』のお面を被って待っていたら、
 どう言う訳かその『セフィロス』の問題に巻き込まれたんだ」


水面に沈んだ釣り針、動きはまだない。


「非常に胸糞悪くなる場面に、
 遭遇する事になってしまったし、
 俺も結構な怪我を負ってしまった。
 東京から遊びに来た親戚を向かいに行ったら、
 何故か全身怪我をしてしまったわけだから、
 あの後お母さんに無茶苦茶怒られてしまったぜ。


 翔チャンは随分と荒事に慣れている様子だったが、
 君にもこんなトホホなエピソードはあるのかい?」

           「ーーあ」

「翔チャン、君の釣竿にアタリがきてるぜ」

322斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ:2023/08/05(土) 14:57:04
>>321

「いや、容姿でなく君から見てどうかだぜ?
 殊更に下は流石に範囲外だ。
 僕は生まれてこの方一人っ子だし、親戚の類も聞いた事がない。」
 
 「とはいえなるほど、君がプリなんとかを
  用意するくらいには目に入れてもなんとやらか。」

楽な姿勢を取り直す
姿勢で釣りの成果が上がるわけではないのだから
こういう姿勢の方がいい。

 「認めるのは癪だが、ないとは言えないな
  しかし君が手傷を負うとは信じ難い。
  君が手傷を負う程の相手かい?」

側からの声に反射的に手首を返す
手応えアリだ。

 「おっと……」

 「うん?」

323硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/05(土) 16:40:53
>>322

「そうさ。
 女の子にしては少々ヤンチャな所があるが、
 硯の家は女が強い家系らしいからな」

カラカラッ


針の先に確かな重さを感じはするが、
魚が掛かった時の『引っ張られる』感触がない。
リールを巻き、獲物を海の中から陸へと手繰り寄せる。


「翔チャン、
 ただの男子高校生を買い被りすぎじゃあないのかい。
 俺はただ右往左往していただけだ。

 むしろ、俺より翔チャンのエピソードの方が聞きたいな。
 クラスメイト達が教室で話すソーシャルゲームの話題よりずっと興味深い」


釣針の先に繋がっていたのは『ジーマ』の空き瓶。
どうやら砂底に転がっていた瓶の口に、
落とした針が引っかかってしまったらしい。


「翔チャン、
 俺の方には『スミノフ』の空き瓶がきたぜ。
 随分とチャラい『お魚さん』だが、
 確か昨日ここで『ヒップホップフェス』が開催されたので、
 来場者の『忘れ物』だろうな。
 『釣り』から一転『ボランティア活動』だ」

324 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ:2023/08/05(土) 19:08:23
>>323

 「さて。」

 「僕と君で戦ったあの時は
  君がただフラフラしていたとは到底思えなかったな
  それともここ数日でフラフラの定義が変わりでもしたのかい?」

魚を誘う為に断続的に糸を引っ張っていたが
随分と抵抗を受けている。

 「僕の方もそう多くはない、君とのを除いても
  戦略的勝利が1結果的勝利が1
  自他共に認められる勝利となると……」

ロッドが極端にしなり
とうとうリールを巻けないほど抵抗が強まる
父に連れてもらった時はよくやった事だ

 「根掛かりだなコレは、石にでも引っかかったか」

こうなると糸を切らざるをえない
友人が見たのはおそらく僕の竿の誘いだろう。
針と糸を付け直し、再び海に投じる

 「やれやれだ、何の話だったかな?」

325硯研一郎『RXオーバードライブ』:2023/08/06(日) 07:36:18
>>324


   
「君も大概、随分と謙虚な生き方をしているな。

 人生において『勝利』の定義は難しい。
 『受験』『就職』『結婚』『起業』『出産』など、
 これから俺らの人生には様々な『ターニングポイント』が訪れるだろうが、
 その時の『選択』の答えが正しかったかどうかは直ぐにはわからないだろうし、
 きっと死ぬ直前まで何が『勝利』だったのかわからないだろう。


 にも関わらず君はその若さで、
 既に明確な『勝利』を『3つ』も手にしている。
 充分に、充分に立派じゃあないか」



吊り上げた酒瓶を取り外し、
横で針を付け直す斑鳩の所作をなぞり、
四苦八苦しながらも自身の釣竿に針と糸を付け直し、再び海に落とす。



 「確か『ロスト・アイデンティティ』って名前だったかい。
  凄い格好いい名前だ、俺の『猫捕まえ太郎』とは大違いだ」



「何の話をしたいのか俺にもよくわからないが、
 夏休みに友達とダラダラと遊んでいる、
 その行為に『中身』を求めるのは無粋じゃあないのかい」

326斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ:2023/08/06(日) 16:39:31
>>325

「ならわかるだろ?若いからさ」

若いから取捨選択できず
不可能を諦めきれず
自分を納得させられない。

 「未来は明日からやってくる、避けようがない
  だったら詰め込む中身くらい
  自分で選びたいんだよ。」

斑鳩翔は足りるを知らない
いつかは知るかもしれないけれど
今はまだ、赤いスカーフを首に巻いている

 「空き瓶釣ったのも釣りは釣り
  でも釣ったって気しないだろ?」

自分で選んで中身を詰め込みたい、
振り返った時に、今日の事を思い出すように。

 「……あとな、名前の件はおたくが忘れてるだけ
  だと思うぜ、ぜってーそうだ。」

327甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/08/12(土) 12:28:46
海岸
>>328とスイカ割りをしている

328甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/08/13(日) 21:31:21
>>327
信長「なぁ、その西瓜何か変なもん噴き出してるんだが…」

あま公が棒を西瓜に降り降ろした瞬間、

パァァァン!!!

棒が西瓜を叩き割るよりも先に、西瓜が爆発した!

信玄「ほら言わんこっちゃない!
   だから中国産の西瓜はやめろって言ったんだ!」
謙信「しょうがないだろ安かったんだから」

しかも、安かったので調子に乗って大量に持って来た西瓜は
誘爆するかのように次々と爆発していき、
海岸は血の海地獄のように真っ赤に染まっていった

                          __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                   \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                      ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      .'                            ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:               ゙゙゙゙゙;;;;;;
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329甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/09(土) 12:44:14
ここは祭りの会場

祭りは夏の専売特許ではない
秋には秋祭りがある
秋というには暑い気もするが…

そして今、>>330と食べ歩きをしている

330空井イエリ『ソラリス』:2023/09/10(日) 13:36:05
>>329

夏場をほとんど抜け殻のように過ごしていたが、
空蝉も見当たらなくなった今、
一念発起して人間らしい事をしようと思った。

祭りに誘うような相手はいないので、
1人で来ることになったわけだが……

「こういうのも、たまにはいいもんだ」

       ガリッ

       りんご飴の端を齧る。
       りんごには到達しない。

「こいつは……たまに食う度に、
 どうするのが正解か分からなくなるよな?」

そこに偶然知り合いがいたのは、僥倖だったと言える。

331甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/10(日) 15:57:13
>>330
こういう祭りの屋台で売られているようなりんご飴は、
見た目は綺麗で美味しそうだが、いざ食べると食べ辛くて困る
祭りという環境の雰囲気でつい買ってしまうが、買った後後悔する事は少なくない
りんご飴専門店なら美味くて食べやすいりんご飴も食べられるかもしれないが、
りんご飴なんて屋台でしかほとんど見かけないだろう

「切って食べるのが正解…らしい」

という事らしいが、
屋台で買った物をわざわざ切るために持って帰る奴もそんなにいないだろう
大抵はその場で齧りつくものだ
刃物持ち歩いてるやべー奴ならそれでカットするのもいいかもしれないが

厚い飴の壁に阻まれりんごに届かない空井の隣では、
いちごやみかんやぶどうといった、ミニサイズで食べやすいフルーツ飴を食べているあま公がいる
ちなみに、さっきの切る云々の情報は今あま公がスマホで検索したらしい

332空井イエリ『ソラリス』:2023/09/10(日) 18:25:22
>>331

「なるほどな……道理だぜ。
 食べ歩きにはそもそも向いてねーわけだ」

      ペロ

「ま、おれはこう見えて少食なんでね。
 屋台歩きの間……
 こいつだけで間が持つなら、悪くはない」

噛んで砕けた側面を舐めながら、
甘城の食べている『フルーツ飴』類を見る。

「……悪くはないだけで、
 もっといい択はあったようだけど」

りんご飴は進化の歴史に取り残された遺物だ。
そもそも飴が仮に柔らかいとして、
りんご自体、棒に刺して丸齧りに向いていない。

「お前さん、こういう祭りってヤツに慣れてるのか?」

『フルーツ飴』を選ぶのに慣れも何もないが……
少なくとも、このイエリよりは手慣れているように思えた。

333甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/11(月) 16:04:41
>>332
「りんご飴食べてると飽きるし…」

慣れているかどうかはともかく、
経験則からりんご飴を避けてフルーツ飴を選んだようだ
りんご飴は食べるのに時間がかかるし、食べてる途中で飽きやすい
それにりんご飴だけで割と腹いっぱいになってしまう

「…食べる?」

フルーツ飴を1本差し出してみる

334空井イエリ『ソラリス』:2023/09/11(月) 18:57:22
>>333

「確かに……こんなサイズの飴を、
 そうそう食べることもないからな。
 もちろん中身はりんごなわけだが、
 りんごだって丸ごと齧ろうとは思わねー」

「純粋におれのミスだ。
 だがまあ……そういう向こう見ずさも、
 祭りらしさってやつに背負ってもらおう」

飴から口を離して、差し出された飴を見る。

「ついでに、『分けっこ』もな。
 ここでの遠慮はいいことじゃねー。
 ありがたくいただくよ」

少しだけ逡巡した後、受け取ることにした。
それから泳いでいた視線を周りに走らせる。

「とはいえ……おれも大人だ。お返しに何か奢るよ。
 綿がしでも、タコ焼きでも……くじ引きでもいいぜ」

335甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/11(月) 21:34:33
>>334
「良いの?高いけど」

昨今の物価の高騰の影響か、
今年の祭りの屋台は大分値上がりしている

そこのたこ焼き屋も500円はするし、
今食べてるフルーツ飴は800円はした
かき氷も綿あめも例年よりずっと高い

こうしてぐるっと見回して見ると、どこもかしこも値上げしている
ワンコインで買える方が少数派なくらいかもしれない

何か風船ヨーヨーの風船の水を飲んだり、
金魚すくいの金魚を食おうとしている奴もいるが、
見なかった事にした方が良いかもしれない

「じゃあこれ」

あま公が指差したのは、電球にカラフルな液体が入った飲料
電球ソーダという物だ
これまた、祭りという場でしか見かけない代物だ

336空井イエリ『ソラリス』:2023/09/12(火) 05:20:44
>>335

「いいよ。遠慮するような場所でも、相手でもないさ」

並んで歩くと甘城と然程変わらない年には見えるが、
これでも大学生だ。大学生は大人では無いが……
まあ、高校生よりは自由に出来る金を持っている。

…………イエリが金を持ってるのは、
スタンド使いとして稼いだのもあるが。

        「……」

ヤバすぎる客たちからはスッと目を逸らす。
祭りの喧騒とアルコールのせいだろう。
あるいは世相か。今背負い込むような話ではない。

「へぇ、『電球ソーダ』か…………なるほどな。
 おれはSNSでしか見たことなかったぜ。
 こいつは、実に『映え』ってやつだな。
 せっかくだ、おれも一杯やらせてもらおう」

二人分の『電球ソーダ』を買う事にしたイエリ。

「何色がいいかな、甘城ちゃん。
 おれはこう見えて、『青』が好きなんだが…………」

カラフルな液体を吟味する。
こう見えても何も今日着ている服も空色だ。

どれも味は変わらなさそうだが、選ぶのも楽しさだ。

337甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/12(火) 16:16:33
>>336
電球ソーダはまさに『映え』のために作られたものらしい
ただ、インスタに挙げるためだけに買って即捨てられる物が多い中、
電球は飲んだ後にインテリアとして再利用しやすく、捨てられにくいらしい

「じゃあ…赤」

青が好きというのに対して、赤と答える
赤と青で見栄えを気にして…か、どうかは分からない

電球の中に入っている液体は、
LEDで照らされ綺麗に光っているが、
これ、飲んで良いのか?と言いたくなるような、
健康的にヤバそうなケミカルな発光をしている

338空井イエリ『ソラリス』:2023/09/12(火) 19:13:00
>>337

「良いね。甘城ちゃんには赤が似合うよ」

ソーダを二つ買って、赤い方を渡す。

「かき氷のシロップの色だ。
 綺麗で映えて、食べ物の色じゃねー。
 自然にこんな色なのは毒のある動物くらいだ」

      「だが嫌いじゃない」

   ヂュ

細いストローから中身を吸った。
甘いだけの味だ。
口の中がベタつくタイプの。

「やっぱり、悪くないな。
 ……おっと、乾杯するのが先だったか?
 ま、こいつで盛大にやると、多分割れちまうからな」

    フッ

鈴の転がるような笑いを言葉の端に浮かべながら、
不出来で人工的な甘露を啜る。『悪くない』と思える。

339甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/13(水) 16:17:25
>>338
「かんぱーい」

  チン

電球が割れないように、優しくグラスを合わせる

ストローから電球の中の赤い液体を吸い上げる
鮮やかにも毒々しいかき氷シロップの味

「甘っ…」

そのままでは甘すぎて喉に絡み付きそうな、焼け付くような味だ
だがこれはソーダ、炭酸水で割っている
炭酸のおかげか、幾分かは飲みやすくはなっている

「飲み物なのに喉が渇く…」

軽減されているとはいえ、ベタつくもんはベタつく
美味いか不味いかで言えば、美味い方だが
一言で言えばジャンクな味だ

340空井イエリ『ソラリス』:2023/09/13(水) 19:32:50
>>339

「ああ、乾杯」

もう一口飲んだ。

「家で同じものを飲めって言われれば、
 断固拒否させてもらいたいな……
 ここの空気で割るのが前提の味だ」

電球という小さな器にも関わらず、
その底が見えるのはとても遠く感じる。

「……あとで、ラムネでも買いに行くか。
 まあ、アレはアレで甘い飲み物ではあるけど。
 自販機で水、って手も無くはないけどな?」

祭りの屋台にある飲み物といえば、
アルコール以外は甘いものばかりだ。
食べ物の方はソース味とタレ味が9割だろう。

「おれはせっかくなら、この祭りを楽しみたい」

はっきり言って飽きる部分もあるが、
この日ばかりはバランスを取る必要性もないだろう。

341甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/14(木) 16:25:22
>>340
バリ バリ

数本持っていた飴も、
もう食べ終わって棒だけになってしまった
一つ一つが小さいのですぐ無くなってしまうし大してお腹に溜まらない
飴とかき氷シロップのようなソーダの食べ合わせは、くどいくらいに甘いが

「じゃあ、次どうする?」

いつの間にかベビーカステラを買っていたあま公
小さいベビーカステラは甘さ控えめなので、
激甘ソーダとも合わない事もない
カップに何個か入っているそれは、言えば分けてもらえるだろう
というか、シェア出来るからこれを買ったのかもしれない

甘い物ばかりで飽きるかもしれないが、周囲を見回してみれば結構総菜系の屋台もあった
唐揚げにじゃがバタに鮎の塩焼き、珍しいものだとケバブがあったりする

342空井イエリ『ソラリス』:2023/09/14(木) 19:03:31
>>341

「甘いものばかり食べたからな……
 そろそろ目先を変えていこうと思う。
 甘さとしょっぱさでバランスを取るのは、
 砂上の楼閣並みに不安になるが…………
 ま、お互いまだまだ若いからな?」

暴飲暴食は肌に悪いが、たまになら悪くない。
『惣菜』系の屋台の並ぶ通りへと進んでいく。

「あの妙に長いフライドポテトでも買ってみるぜ。
 祭りでしか食えないってもんでもなさそーだが、
 そういう微妙さも祭りらしさな気がするんだ」

    トコトコ

「それで良いかな、甘城ちゃん」

つまんで食べられる数の多い物という意味では、
フライドポテトもベビーカステラも意味は同じだ。
祭りらしさとは『それそのもの』ではなく、
それを取り巻いての交流や、空気なのだろう。

秋祭りはまだまだ多くの屋台が並んでいるが、
それを全て回り尽くすには――誌面の方が足りないかもしれない。

343甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/15(金) 18:06:47
>>342
どこにでもありそうな普通のフライドポテトだが、
祭りという場所の雰囲気が調味料になり妙に美味く感じる
たこ焼きも焼きそばもだが、家で同じ物を食べても
まぁ、こんなもんかとなるだろう
味覚に直接影響を与えているわけではないのに、面白いものだ

「良いよぉ〜…」

こうしてイエリと一緒に歩いていると何か落ち着く
これといって特別面白い事してるわけでもなく、無駄話をしているだけだが楽しい
何か気楽でいられる相手だ
なんとなくお姉ちゃんっぽい人だと、密かに心の中で思うあま公


フライドポテトの屋台の横で、鳥肉の焼ける香ばしい匂いがする
小さい屋台で、お客がいなくて気付きにくいが焼き鳥の屋台のようだ
ただ、ここで焼いている鳥はどうも鶏肉ではないようだ

イエリが気付くかどうかは分からないが、この店、普通の焼き鳥屋ではない

ス ズ メ の 焼 き 鳥 屋 だ

ジュー…

小さい雀が1羽丸ごと串刺しで焼かれている

「……」

それをじーっとあま公が見つめている

「それください」

344空井イエリ『ソラリス』:2023/09/15(金) 23:03:05
>>343

「ありがたい話だ。
 お前さんとは好みが合うぜ、甘城ちゃん」

波長が近い、というものかもしれない……と、
少しだけ浮かべてすぐに頭の中で取り消した。
自分に似ているというのは、失礼な話だし、
甘城に似ているというのは、思い上がりだ。

「おっ、焼き鳥もあるのか。
 安居酒屋みてーな品揃えになってきたな。
 いや、安居酒屋が祭りみてーな…………ん?」

        「……成る程?」

なかなかショッキングな見かけだ。

「いつか……京都に行くことがあれば、
 怖いもの見たさで食いたいと思ってたんだ。
 だが、こういう出会い方も悪くねー」

が、イエリはそこに深い関心を持たない事ができる。
根底にある無関心と酷薄さを、社交で包み隠せば良い。


    「おれも、それを一つ」


少なくとも、この時間が楽しいと思える感受性はあるのだから。

345甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/16(土) 19:40:53
>>344
羽を毟られた雀の姿そのまま焼かれたそれは、
見る人によってはグロテスクに映り、人を遠ざけてしまう
だがこれも立派な食材だ

雀と言ったらそこら中に無数に居るが、
野生の個体を勝手に捕って食べる事は法で禁じられているし、
野生の雀は非常に衛生的に悪く、食には適さない
だから食用に育てられた雀を輸入しなければいけないのだが、これが結構貴重だ
なので、雀の焼き鳥というのは結構レアな食べ物だったりする

バリ バリ

それは骨ごとバリバリと食べる事ができ、
頭に齧りつくとトロッとして鶏レバーのような味の脳味噌が飛び出て来る
みりんと醤油で味付けされたタレもよく合っている
単なる珍味ではなくちゃんと美味い、今日まで続いている理由が分かる料理だ

肉に支配された咥内を甘いソーダで洗う
リセットするというには味が濃すぎるが、今はこれで良い

祭りの会場は広く種々雑多な屋台が並んでいる
この後も祭りを練り歩いていれば、珍しい屋台を見つけるかもしれない
けどそれは今語る事ではない
ただ、秋祭りを十分に楽しんだ、この事実があるだけだ

346甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/30(土) 13:03:31
図書館

異常な残暑でそう感じないかもしれないが
9月ももう終わり、暦の上ではもう秋だ

秋といえば読書の秋
静寂に包まれた図書館で静かに本を読む
>>347はどんな本を読んでいるのだろうか

347ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/09/30(土) 15:50:10
>>346

甘城の向かいに座っているのは、プラチナブロンドの五歳児だった。
瞳の色は透き通るようなエメラルドグリーン。
『有名私立幼稚園』の制服を着ている。
図書館に来たら甘城を見つけたので、その近くに座ったのだ。
隣の椅子には、大きなテディベアが座らされている。

          パラ…………

読んでいるのは『はらぺこあおむし』。
一匹の青虫が沢山の食べ物を食べ、蛹を経て蝶になる仕掛け絵本である。
『人生は椅子取りゲーム』。
いずれ自分も美しい蝶として華麗に羽ばたくのだ。
そんな事を考えながら、ページを捲っていた。

348甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/09/30(土) 22:12:15
>>347
こうして、静かな空間でジッと亞書を読んでいると気が狂いそうになる
マジで何の意味も無いアルファベットの羅列だ
これを大真面目に呼んで何になるというのだろう?
ハッキリ言って苦行だ
こんな物読むくらいならヴォイニッチ手稿を解読していた方がマシだ

正面に座る五歳児の読んでいる絵本が目に入る

「はらぺこあおむし…」

超有名な児童書だが、未だに読んだ事が無いあま公

「…面白い?それ」

少なくとも、亞書よりは面白いかもしれないが…

349ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/09/30(土) 22:40:21
>>348

記憶が飛んだ甘城にアッパーカットをかましたり、
台風の日にコロッケを奢ってもらったり、
強くなる為の特訓に付き合わせたダイアナだ。

「あま公はつまんなさそうね、フフン」

別に何か勝ってる訳でもないのに、無意味に鼻を鳴らす幼稚園児。

「そんなの読んでないで、あま公も『はらぺこあおむし』見なさいよ」

        ズイッ

机の上に乗せていた絵本を、甘城の近くに押しやる。
特に目を引くのは大胆かつ鮮やかな色彩だ。
しかも、これは読み聞かせに向いた大型版であり、
開くと全長80cmにもなるビッグサイズなので、見応え十分。

350甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/01(日) 18:05:11
>>349
「うん」

随分と大きな絵本を押し付けられる
読み聞かせには丁度良いのだろうが、個人で読むには大き過ぎなのではないだろうか?

ペラ

ページを捲ってみると、
あおむしが食べたと思われる箇所に穴が開いているというギミックに感心させられる
今となってはそう珍しくもないギミックなのだろうが、発表された当時としては斬新だった事だろう

ギミックが面白いだけではなく、子供に分かり易いように蝶の一生を描いている
児童書とは案外侮れないものだ

しかし気になるのは

「何で土曜日だけドカ食いしてるの?」

チョコレートケーキとアイスクリームとピクルスとチーズとサラミとペロペロキャンディーとさくらんぼパイとソーセージとカップケーキとスイカ……

絵本にこういうのは野暮かもしれないが、それにしたって土曜日だけ明らかに異常だ
ぜってー青虫が食うわけねーだろって物を食べているのもツッコミどころだが、何より食べる量がおかしすぎる
青虫がドカ食い気絶部でも青虫の体躯を考えれば無理があるだろう
質量保存の法則はどうした?

351ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/01(日) 18:54:01
>>350

自分の席から身を乗り出して、甘城と一緒に絵本を眺める。

「きっと、すっごくお腹が空いてたんでしょ」

良く言えば子供らしい答えが返ってきた。
空想を現実に当てはめておかしいだの間違ってるだの、
重箱の隅をつつくような些末な事を考えながら絵本を読む五歳児はいない。
いたとしても、それはダイアナではない。
肉屋に来て秋刀魚が売ってないと文句をつけるのか?
科学的な議論がしたいなら、ネイチャーでも読んでろって話だ。

「あま公はどれが好き?
 わたし『さくらんぼパイ』が食べたい気分だわ!」

        スッ

たくさんの食べ物が描かれた中から、パイのイラストを指差す。

「そういえば、あま公も『大きなケーキ』を出せるじゃない。
 ねえ、他にも作れるの?」

以前、湖畔で特訓に付き合ってもらった時の事を思い出した。
巨大な『ウェディングケーキ』によって、突撃を阻止されたのだ。
よって『ビター・スウィート・シンフォニー』の事は、
『ケーキを出せるスタンド』と認識している。

(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1591247432/903-917)

352甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/02(月) 18:54:56
>>351
>あま公はどれが好き?
>わたし『さくらんぼパイ』が食べたい気分だわ!

「さくらんぼパイ」

スッと机の上にハンカチを置く
するとハンカチの上に、さくらんぼパイが一切れ出現する

図書館は基本、飲食禁止の所が多いのだが、ここではどうなのだろう?
仮に禁止されてる所だったとして、ダイアナはルールを守るだろうか?
お嬢様というのは、そこら辺きっちりとしていそうではあるが

>そういえば、あま公も『大きなケーキ』を出せるじゃない。
>ねえ、他にも作れるの?

「お菓子なら何でも」

何でも、とは言うが作れない物は当然ある
醤油煎餅を出せと言われても作れないし、ジュースなんかも無理だ
案外制約の多い能力である

「何か食べたい物でも?」

353ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/02(月) 19:47:53
>>352

魔法のように現れた一切れのパイに視線が釘付けになる。

  「おいしそ…………」

       スイッ

         「――――う…………!」

               ピタ

無意識に手を伸ばしかけ、寸前で思い止まった。
大抵の図書館では飲食禁止だ。
いくら自分で食べたいと言ったからといって、
ルールに反してがっつくのは浅ましいような気がする。

「な、なかなかスゴいじゃないの!」

          チラ

        「フフン、褒めてあげる!」

そう言いつつもパイの事を気にしているらしく、時折そちらに視線を送っている。

「え、ええと――――そうね…………。
 やっぱり豪華で美しいものがいいわ!
 わたしを満足させたら専属パティシエにしてあげてもいいわよ!」

あまり具体的な注文ではないが…………何が出てくるのだろうか?

354甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/03(火) 18:04:49
>>353
パンッ

ハンカチの上のさくらんぼパイに手を押し付けると消えるパイ
必要の無い手順であるが、こうすると何となくそれっぽい感じにはなる

「はい」

パイの消えたそこに、次いで出て来たのは
刻まれたデーツが練り込まれた、温かくてしっとりした蒸しケーキの上に
べたべたのトフィーソースがかかり、その上に冷たいバニラアイスが乗っかったケーキ
スティッキートフィープディングだ
キャサリン妃の好物として知られているが、ダイアナ元妃のお気に入りでもある
ソースが垂れてしまっているが、能力で消してしまえば無問題だろう

食器を作る能力は無いのでスプーンは付かないので、もし食べるとしたら素手で掴む必要がある

355ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/03(火) 19:39:40
>>354

さくらんぼパイが消えてしまう様子を未練がましく見ていたが、
続いて現れたお菓子の方に興味が移り、大きく目を見開く。

「わ!『スティッキー・トフィー・プディング』じゃない!」

英国の伝統的なお菓子であり、ダイアナもそちらの血筋なので食べた事があった。
『ビター・スウィート・シンフォニー』の能力で出しただけあって、とても美味しそうだ。
鼻をくすぐる甘い匂いが、否応なしにダイアナの心を誘惑する。

(お、美味しそう…………!
 でも、ここで食べたら負けた気がする…………!)

(わたしは一流のレディーわたしは一流のレディーわたしは一流のレディー………………)

「――――――ご、合格よ!
 とりあえず、あま公を『専属パティシエ候補』って事にしといてあげるわ」

       「フフン!」

              ジィィィィィ――――――――――ッ

『スティッキー・トフィー・プディング』をガン見しながら、自分勝手な判定を下した。

356甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/04(水) 19:01:40
>>355
「…それは光栄です」

勝手に『専属パティシエ候補』にしながら、プディングをガン見するダイアナ
はらぺこあおむしのようにはらぺこな子供におあずけしたままにするのも忍びない

サッ

ハンカチを取り上げると綺麗さっぱり消えるプディング

「あそこに休憩所があるから」

図書館内の休憩所、そこは飲食が可能な場所だ
御親切な事に、ちょっとした食器程度なら借りられそうだ
そこでなら規則違反にもならないだろう

357ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/04(水) 22:14:03
>>356

「――――あっ」

パイと同じように消滅したプディングを見て、
露骨に残念そうな顔をするダイアナ。
本人としては、なんて事ない風を装っているつもりでいる。
お菓子を凝視していたり、心の声が口から出ているが、
これでも頑張っている方だった。

    「え!?」

         「あ!そ、そうね!」

「せっかくあま公が出してくれてるのに、一口も食べないんじゃあ失礼だわ。
 『一流のレディー』のわたしが直々に味見してあげる。
 そう、これは上に立つ人の義務よ!」

       トッ トッ トッ

そこはかとなく言い訳じみた言葉を並べながら、
お菓子につられて甘城についていく。

             ――――――ストン

休憩所の中で一番良さそうな場所(ダイアナ目線)を選び、
そこで『座る動作』をする。
このアクションによって『椅子形態』の『オンリー・ガール』が発現し、
その上に腰を下ろして生意気に脚を組む。
空気を取り込んで実体化しているので、見た目は半透明の椅子だ。
甘城の前で使うのは初めてかもしれない。
今までは『人型』しか見せていなかった気がする。

358甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/05(木) 18:40:41
>>357
椅子ならそこら辺にいくらでもあるのに態々『オンリー・ガール』に座るダイアナ

確か、『オンリー・ガール』の『空気椅子』に座る所は見ているはずだ
なのでそれに驚きは無いのだが
お気に召す椅子が無かったのか、やはり椅子に対する拘りがあるのか?
そんな疑問がほんの少し頭を過ったが、然程気にする事でもないか
どんな椅子に座ろうがダイアナの自由だ
もっとも、空気椅子に座る5歳児は傍から見ればかなり変だが…

カタ

「ご試食お願いします」

改めて『スティッキー・トフィー・プディング』をダイアナに献上する
庶民の物とはいえちゃんと食器を添えてあるプディングは、
ハンカチの上にあったさっきの物よりも様になっているのではないだろうか

水筒から液体を注ぐと、紅茶の香りが漂ってくる
無糖の紅茶のようだ

359ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/05(木) 20:09:32
>>358

『オンリー・ガール』は、その名の通り『唯一無二』。
ダイアナだけが座る事を許されたダイアナ専用の椅子なのだ。
そこに座るという行為は、ダイアナにとって自らの特別さを誇示する事でもある。

          「フフン!」

ただ椅子に座っただけなのに、何故か得意げな顔でほくそ笑んでいるのは、
その辺りに理由があるのだろう。
確かに『オンリー・ガール』の『発動条件』は珍しい。
だが、ダイアナが他の人間よりも優れているかといえば、
少なくとも本人が思っている程ではない事は明らかだが。

「フフ、ありがとう」

      コホン

   「では、このダイアナが味見をしてあげましょう」

とろけるようなプディングをスプーンで掬い上げ、そっと口元に運ぶ。
金持ちの令嬢だけあって、極めて上品な所作だった。
一応、基本的な教育は行き届いているらしい。

         「 ! ? 」

次の瞬間、口の中に広がる味に目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。

  「な、何よコレ!」

      パク

      「美味しい!美味しすぎる!クセになりそう!」

              パク

                「手が止まらないわ!」

                     パク

余裕ぶった態度は呆気なく消え失せ、ひたすら眼前のプディングを味わう。
ダイアナも高級品には慣れているので、それなりに舌は肥えている。
しかし、『ビター・スウィート・シンフォニー』は、それを上回っていた。

360甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/06(金) 20:50:20
>>359
普段不遜な態度を取りながら、
上品な所作で食するダイアナに育ちの良さを感じさせられる

パク
   パク
      パク

しかしプディングを食べる手は止まらない
『BSS』の作る食べ物は一流パティシエ並みだ
とても甘いが、優しい甘さで上品さを感じさせる
温かいプディングの上に乗った冷たいアイスとの組み合わせで飽きを感じさせない

『BSS』の菓子は賞味期限が非常に短いが、
このペースならばすぐに完食出来るだろう

しかし、いくら美味いからといって
飲み物無しで食べ切るのは厳しいかもしれない

「紅茶、砂糖要る?」

無糖の紅茶は子供には渋いだろうか?
ダイアナの場合は無糖でも飲めるのだろうか

361ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/06(金) 21:51:49
>>360

見事に洗練された奥深い味わいに舌鼓を打つダイアナ。
その時、紅茶の香りが漂ってきた。
いったん手を休め、紅茶の注がれたカップを眺める。

「あま公、なかなか気が利くじゃない。
 『パティシエ兼メイド候補』にしてあげてもいいわよ」 

ちょうど喉が渇いていた所だった。
躊躇なく紅茶を受け取り、そのまま音を立てずに飲む。
甘味の強いプディングと合わせるには、無糖の紅茶が丁度いい。

「――――――『ごちそうさま』」

         コトッ

『賞味期限』については知る由もないが、
あまりの美味しさで無事に完食する事が出来た。
正直、予想以上の味だ。
しかも、それが即座に出てくるのだから、
ダイアナとしては是非とも目をつけておきたい。

「フフン、あま公あなた見所があるわ。
 ご褒美に『ダイアナとお話できる権利』をあげる」

         ゴソ

制服のポケットから、『キッズスマホ』を取り出す。

「わたしの為に働きたくなったら、いつでも言っていいのよ」

恩着せがましく連絡先を押し付けようという算段のようだ。

362甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/07(土) 21:41:47
>>361
読書の秋で図書館に来たのに、
すっかり食欲の秋になってしまったが
ダイアナが満足しているのなら、それでも良いだろう

『パティシエ兼メイド候補』にしていただいたあま公
我儘お嬢様に仕える使用人は気苦労が絶えないだろう
実際に彼女に仕えている方々はご苦労な事だ

そして恐れ多い事に『ダイアナとお話できる権利』までいただいてしまった
オプーナを買う権利とどちらが価値があるのだろうか?

>わたしの為に働きたくなったら、いつでも言っていいのよ

それはこちらにメリットはあるのか!?
いや、それなりの給与が出るのならメリットはあるかもしれないが

「…有難き幸せ」

サッとスマホを取り出し、交換をする

363ダイアナ『オンリー・ガール』:2023/10/07(土) 22:27:18
>>362

腐っても『金持ちの令嬢』。
いくら人使いが荒かったとしても、タダ働きで酷使させられる事はないだろう。
常識的に考えれば、それなりの待遇は保障される筈だが…………。

        ピッ

とにかく連絡先の交換は完了した。

「良かったわね!あま公は世界一の幸せ者よ!」

       「フフン!」

上機嫌で鼻を鳴らし、『オンリー・ガール』から下りる。
『人型』に変形したスタンドが、テディベアの中に入り込んでいった。
甘城と特訓していた時は、この能力を使う事なく決着してしまったので初公開だ。

「さ、戻るわよ。
 今度はあま公の選んだ本を一緒に見てあげるわ。
 わたしに相応しいタイトルを持ってきてちょうだいね」

           トッ トッ トッ

相手に選ばせると言いながら、いちいち注文をつける。
それがダイアナだ。
その後、秋の図書館で二人がどう過ごしたかは本人達次第だろう。

364甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2023/10/08(日) 19:07:10
>>363
とんでもなく尊大で自分勝手だが、不思議な事に腹が立たない
ダイアナが子供だからか?
微笑ましさすら感じるくらいだ

軽食を済ませて、再び読書に戻る

「ならこれ」

ダイアナに期待に応えられたかは分からないが、
オススメの本を持って来るあま公

そのタイトルは「非現実の王国で」

ヘンリー・ダーガーが19歳の時から約60年間をかけて書いた超大作
世界一長いとして有名な小説だ
この小説を通して、ヘンリー・ダーガーという人物の人生を伺う事が出来る…ような気がする
もっとも、ヘンリー・ダーガーはこの小説が世に出る事は望んでいなかったのだが…
現代でいえば、パソコンのHDD内の物を全世界に公開されるようなものだろう
公開処刑も良い所だ

そして、やたら長いだけでなく内容も子供が読むのに適しているかどうか…そこが問題だ

365りん『フューネラル・リース』:2023/10/14(土) 12:28:59
木々が鬱蒼と生い茂る秋の山

「きのこのこのこげんきのこ」

10歳ほどの頭に鈴蘭が咲いた少女と>>366が歩いている
この山にも色んなきのこが自生している
これは、きのこ狩りだ

366夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/14(土) 15:00:25
>>365

傍らに『ドクター・アリス』を発現させ、りんと一緒に秋の山を散策していた。

     ザッ ザッ ザッ

           「――――――おん??」

                ピタッ

「りんちゃんりんちゃん、
 アッチから『キノコっぽいニオイ』がするぞ」

『超人的嗅覚』が、それらしい匂いを捉えた。
古くからトリュフを探す為に豚の嗅覚が活かされ、
近年ではトリュフ犬も活躍している。
非常に鋭敏な『超嗅覚』なら、それらと似たような芸当が可能だが、
本体の知識が乏しいので、キノコの種類までは分からない。

367りん『フューネラル・リース』:2023/10/14(土) 18:36:34
>>366
「凄いよアリスちゃん、豚みたい!」

もう少し言いようがあるだろう

松茸でも見つかれば良いのだが、
そう簡単に見つかったら苦労はしないだろう

夢見ヶ崎が捉えたキノコらしき匂いを辿ると
一本の大きなキノコが生えているのを発見した
…いや、見る人によっては全くキノコに見えないかもしれない

燃え盛る炎のような凶悪な形をした赤いキノコ
見るからにヤバいそれは

「カエンタケだ…」

368夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/14(土) 19:23:09
>>367

王様の耳はロバの耳、アリスの鼻は豚の鼻。
オモシロイからユルしてやろう。
フハハッ!!

「おお!!なんかスゴそうなのがでてきた!!」

見つけたキノコに近寄り、じっくりと観察する。
りんの言う通り、火炎という名前を冠するに相応しいフォルムだ。
名は体を表すとは、まさにこの事だろう。

「ねえねえ、コレってレアなヤツかな??」

         スッ

その辺に落ちていた枝を拾い、
『ドクター・アリス』で『超人的味覚』を『移植』する。

「せっかくだし、チョット『あじみ』してみよっと!!」

            プスッ

枝の先端をカエンタケに突き刺し、『味』を確認する。
たとえ致死性の猛毒が含まれていたとしても、
それが身体に回る事はないので、平然と『味見』が出来るのだ。
『スズランのアジ』もスリリングだったけど、『カエンタケのアジ』はどうかな??

369りん『フューネラル・リース』:2023/10/15(日) 18:30:10
>>368
カエンタケはレアなのだろうか?
ある地域では大量発生していたりするし
ナラ枯れによって全国的に生育環境が広がっている
そう珍しくもないかもしれない

「ああ、アリスちゃん危ないよっ!」

凶悪な見た目に違わぬ途轍もない攻撃的な性能を持つカエンタケ
その致死量はたったの3g、しかし食べてすぐ死ぬわけではなく
腹痛、嘔吐、水様性下痢、頭痛、めまいや手足のしびれ、呼吸困難、言語障害
造血機能障害、血圧低下、びらん、肝不全、腎不全、呼吸器不全、循環器不全、胸痛、高熱、悪寒、口渇、眼球出血
これが2日ほど続き、仮に回復しても後遺症が残るという地獄のようなキノコだ
極めつけは触れただけでも皮膚が炎症するというが…まぁ、触らない方が良いだろう

毒キノコの中には美味い種類も多く存在する
有名なのはベニテングダケで、中毒症状を覚悟してまて食べるチャレンジャーも少なくない
ベニテングダケはその毒の成分に旨味があるらしい
では、カエンタケはどうだろうか?

『超人的味覚』を移植した枝に味見をさせるアリス
感じたのは苦味だ
不味い…という事もないが、死の危険を冒してまで食べるようなものではない

「ど、どう?美味しい?」

370夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/15(日) 19:15:26
>>369

『ドクター・アリス』を通して、
凶悪極まりない威力を誇る猛毒キノコの味が伝わってくる。
やはり苦味が強く、美味ではなかった。
少なくとも、これを食べる為に死にたいとは思わない。

       「う〜〜〜〜〜〜ん??」

「ビジュアルはインパクトあるけど、アジはイマイチかなぁ」

  「コレだったら『スズラン』のほうがウマかった!!」

とりあえず満足したので、テイスティングに使った枝を引き抜く。

   「でも、きねんシャシンとっとこ」

              パシャッ

ついでにスマホのカメラを起動して、カエンタケを撮影しておいた。

「よし!!『カエンタケのニオイ』はおぼえたぜ!!」

       「――――――で??」

改めて意識を集中させ、『超嗅覚』によるキノコ探知を再開する。

「むこうのほうで『ちがうニオイ』がする。
 こんどはおいしくたべられるヤツかも!!」

        ザ ッ

新たなキノコの匂いを追いかけて歩き出す。
松茸ではなさそうだが、カエンタケでもない。
おツギはナニかな??

371りん『フューネラル・リース』:2023/10/16(月) 18:40:51
>>370
「い、いや〜照れるな〜」

スズランの方が美味かったと言われて、何故か我が事のように喜ぶりん
カエンタケと比べて美味いと言われて嬉しいのか…

それにしても、
命の危険を賭してまでも食べようとする
人間の食に対する探究心には驚かされる
りんはやっぱり人間って凄まじいなと感心する

「あ、待ってアリスちゃん!」

新しいキノコの匂いを辿って歩くアリスを追いかけるりん
その匂いの先には

「あっ、綺麗だね〜…
 ド ク ツ ル タ ケ」

純白の卵のような形をした幻想的で美しいキノコが生えていた
その味もとても美味しいというが…名前通り毒持ちだ

その毒は、食した人にコレラのような症状を齎すがそれは1日程で収まる
が、それは罠だ
一旦収まった後に何日か後に再発症し、内臓の細胞を破壊し尽くし多臓器不全に至らしめる
別名「死の天使(destroying angel)」

372夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/16(月) 20:56:23
>>371

溢れ出る好奇心はアリスを動かす原動力だが、
それだけでは命が幾つあっても足りない。
探知に優れた『ドクター・アリス』があるからこそ、
目前に迫る危険を未然に回避できるのだ。
アリスじゃないコたちは、いいコもワルいコもマネするなよ!!

「お〜〜〜〜!!
 ハデじゃないけどキレイなカンジ!!
 シンプルイズベスト!!」

               プスリ

さっきと同じように枝を突き刺して、躊躇なくテイスティングを行う。

「ん!!なかなかイイよ!!
 クセがなくてたべやすそうだし、『テンプラ』とかどうかな??」

カエンタケと比べると味は悪くない。
むしろ美味しいと思える程だ。
しかし、その奥底に『刺激的な何か』を感じる。
言葉で言い表すのは難しいが、何となくヤバそうな気配だった。
もしかすると毒素に由来するものかもしれない。

「でも、もったいないから『カンショウヨウ』にしとこう」

だいたいナマエに『ドク』ってついてるだろ!!
こんなモンくえるか!!
そんなコトよりツギだツギ!!

  「ん〜〜〜〜〜〜」

           「――――――『ソッチ』」

                ス ッ

新しく見つけた匂いの源を指差す。
専門家には及ばないが、毒キノコっぽい匂いはボチボチ学習しているので、
キノコ探しの精度は少しずつ上がってきているだろう。
ずっとヤマあるいてると、だんだんオナカすいてきたぞ。

373りん『フューネラル・リース』:2023/10/17(火) 18:09:33
>>372
『ドクター・アリス』がいるアリスは
命の危険を冒さず好奇心を満たす事が出来るが、
それを持たない普通の人間は常に命懸けだ
そんな命を張った人間のおかげで様々な事が解明されてきたのだ
先人達が良い子か悪い子だったかは分からないが、敬意を払わなければ

「あっ、ちょっと待ってってば」

キノコを試食してはさっさと次のキノコを探すアリス
そんな忙しないアリスに付いて行くのに必死のりん
ゆっくり鑑賞している暇も無い

毒キノコっぽい匂いを学習したアリスの目指した先には何があるか…

「おぉぉぉっ!?ヤマドリタケだよ!!!」

味にくせがなく、香りも舌触りも歯応えも良く
ポルチーニとも呼ばれる高級キノコ、それが数本

超激ヤバ毒キノコを乗り越えてついに当たりを引いたか

374夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/17(火) 18:58:56
>>373

「そうそう!!シャシンとるのわすれてた!!」

           パシャッ

せっかくなので、『ドクツルタケ』の姿もカメラに収めておく事にした。
しかし、これが毒だと分かるのは、やはり先人達の知恵の賜物だろう。
勇気ある先人には敬意を払う。
それは大事な事だ。
当たり前のように存在する物の一つ一つも、
多くの人のが積み重ねた努力によって成り立っているのだから。

「いや〜〜〜〜キノコってオモシロイよねぇ〜〜〜〜。
 みればみるほどおくがふかい!!
 キノコのセカイはソコしれないな!!
 アリスポイント5000!!」

じゃあさじゃあさぁ、りんちゃんとアリスも、
いつかソンケイされるようになるんじゃないかな??
まだダレもみつけたコトのないキノコをハッケンしたりして!!
いや、ソレはホントにキノコなのか??
もしかしたら、キノコがはえたウサギかもしれない。
『スズランのはえたオンナノコ』だったら、すぐちかくにいるけどな!!

「お??コレおいしいヤツ??
 どうりで『イイにおい』がするとおもった!!
 りんちゃんにみとめられるとはタダモノじゃないとみたぞ」

        サクッ

「よし!!グルメでユウメイなアリスがレビューしてやろう!!」

毒きのこエキスが付着した枝は捨ててポケットを漁り、
取り出したヘアピンに『超味覚』を移植して味見してみよう。

375りん『フューネラル・リース』:2023/10/18(水) 18:28:21
>>374
キノコなんてほとんどが未知の種類だ
その気になればマジで新発見も夢じゃないかもしれない
キノコが生えたウサギ…
キノコの中には昆虫に寄生する冬虫夏草という種類もある
そういうキノコが存在しないとも言い切れないのがキノコの恐ろしい所だ

『超味覚』を移植したヘアピンで味見をする
独特の香りと旨味があり、生でも十分美味いが
やはりこれはソテー等にして料理のトッピングにするのが良さそうだ

「あれ?でもこれヤマドリタケとヤマドリタケモドキ
 どっちだろう…?」

ヤマドリタケによく似たヤマドリタケモドキというキノコが存在する
どちらも纏めてポルチーニと呼ばれ、モドキも美味しく食べられるのだが

376夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/18(水) 20:55:23
>>375

期せずして『ポルチーニの匂い』を覚えてしまった。
この辺りを探し回ったら他にも見つかるかもしれないが、
環境に対する配慮を無視した乱獲は控えておく。
自然に挑んだ先人達だけではなく、
恵みを与えてくれる自然そのものにも感謝しよう。
ねこそぎとっちまったら、もうとれなくなっちゃうもんな!!
フハハハ八ッ!!

  「 お お お お お ! ? ! ? 」

味見した瞬間に、毒素とは違う意味で『ビビッ』と来た。
常人の舌で味わったとしても、とても美味しいキノコ。
『超嗅覚』に加えて『超味覚』を通す事で、素材の味が鮮烈に感じられる。

「いままでのヤツとは、ひとアジもふたアジもちがう…………!!」

    「ひとくちで『よんアジ』くらいちがうぞ!!」

さすがのグルメなアリスも、コレにはニッコリせざるをえないのだ。

「あ!!じゃあさ、あたらしくナマエつけたらどうかな??
 『ヤマドリタケ』とか『ヤマドリタケモドキ』はほかにもあるけど、
 『りんちゃんとアリスがみつけたキノコ』はトクベツってコトにしてさぁ」

      「んっん〜〜〜〜〜〜」

「『ヤマドリタケモドキヤマドリタケリンスズランアリスブタモドキ』とか」

                  「――――――どう??」

地面にしゃがみ込んで、ヤマドリタケかヤマドリタケモドキを観察しながら、
やたら長ったらしい通り名を提案する。

      シ ャ キ ィ ン ッ

その隣で『ドクター・アリス』が腕を振るった。
『超人的触覚』+『精密性』+『爪』!!
これらの要素が組み合わさり、まるで外科手術のような手際の良さで、
根の部分を傷付ける事なく採取できる筈だ。

377りん『フューネラル・リース』:2023/10/19(木) 18:41:47
>>376
「早口言葉みたいだね」

『ヤマドリタケモドキヤマドリタケリンスズランアリスブタモドキ』
これを噛まずに言える人はいるのか?

「や、ヤマドリタケモドキヤマドリタケリンスジュ…」

言えない!覚えられない!
何の名前だか分からない!


りんが早口言葉に苦戦している間に、
『ドクター・アリス』の超精密な動きでキノコを採取
寸分の狂いも無い外科手術のような動きは一種の芸術とも言える

余談だが、キノコの正確な種類を特定出来ない場合は絶対に採取すべきではない
専門家ですら間違える事のあるのがこの界隈だ
ましてや、素人が誤って毒キノコを採ってしまったら目も当てられない
これは『ドクター・アリス』という最強の毒見役がいるからこそ出来る事だ

378夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/19(木) 20:55:35
>>377

   「そいっ――――」

       ヒョイッ

      「ほほいっ――――」

           ヒョイッ

          「――――オッケイ!!」

                ヒョイッ

持参したカゴの中に、収穫したポルチーニを放り込む。
ちょっと少ないかもしれないが、味は保証されている。
今は量より質だ。

「ねえ、りんちゃん。
 アリスはオナカすいてきちゃったんだって。
 つーワケで、ボチボチもどらない??」

「ヤマドリタケモドキヤマドリタケリンスジュ…………」

「『リンスズランアリスブタモドキタケ』で、
 『バターやき』とかたべてみたいなぁ〜〜〜〜」

同じ場所で噛んでしまったので、妥協してリメイクした。
まだナガイって??
もっとよさげなナマエがおもいついたヒトは、
『りんとアリスのキノコがかり』までドシドシおうぼしてくれよな!!

  「おん??どっかでナンかいいニオイがするな??
   でも『リンスズランアリスブタモドキタケ』じゃないし…………」

      「にてるんだけど、チョットちがうような…………」

            ザッ ザッ ザッ

『超嗅覚』に引っ掛かった方向へ進むと、そこにはキノコが何本か生えていた。
今さっき採ったばかりのキノコと瓜二つの見た目。
つまり、ヤマドリタケかヤマドリタケモドキのどちらかという事になる。
コ、コレは…………ドッチがドッチなんだ!!
さては、ふたごトリックか??

「まとめて『リンスズランアリスブタモドキタケ』でいっか!!」

       ――――プスッ

『味見』をしてみると、やっぱり違う。
ヤマドリタケのフリをしたヤマドリタケモドキか??
ヤマドリタケモドキのフリをしたヤマドリタケなのか??
アリスしじょうにのこるナンカイなジケンにブチあたってしまった。
『グルメたんていアリス』がみちびきだした、
ジケンカイケツのてがかりは――――――『おいしくたべる』だ!!

379りん『フューネラル・リース』:2023/10/20(金) 20:21:43
>>378
『リンスズランアリスブタモドキタケ』

ちょっとだけ短くなったがヤマドリタケ要素が消えたせいで原型が無い!
もはや何のキノコだかこれもう分かんねぇな
リンスとか体に悪そうだしズランとか誰だよ?

「バター焼き良いねぇ
 そこに鈴蘭も添えて…」

それはりんにしか出来ない食べ方なのだが

>おん??どっかでナンかいいニオイがするな??

「あっ、ちょっと待ってってば〜」

次から次へとキノコを見つけては歩いて行くアリス

「若い子は元気でいいなぁ」

アリスのスタミナについて行くので精一杯なりん
キノコ狩りに来たのに全くキノコを採らずにもう疲弊気味だ

「これは…う〜ん、どっちだろう?」

匂いが違うという事は、どっちかがヤマドリタケでどっちかがヤマドリタケモドキなのかもしれないが
全くの別種という可能性も大いにある
が、『ドクター・アリス』が味見をして大丈夫というのなら毒キノコではないのかもしれない
本来は絶対に手を出すべきではないが、ここは採ってしまっても大丈夫だろう、多分…

「『リンスズランアリスブタモドキタケ』で行くんだね…」

名前に関しては一旦置いておくとして
どっちなのかよく分からん謎キノコを数本採取するりん
折角来たんだから少しくらいは自分で取らなくちゃ来た甲斐が無いだろう

「どうやって食べようかな〜」

キノコを採取しながらどう料理しようか想像を膨らませにやにやする

380夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/20(金) 22:21:58
>>379

この意味不明な名前を聞いて何のキノコか分かるのは、
実際に採取した本人達だけだろう。
地方の一部地域のみで使われるマイナーな通称よりも遥かにレア度が高い。
もはや暗号の域だが、今日という一日を彩る思い出の一つになってくれる筈だ。

「ニオイよしアジよし。
 『アリスのアリス』はウソつかないからさぁ〜〜〜〜」

     スッ

『リンスズランアリスブタモドキタケ』を採取するりんを見守りつつ、
秋の風物詩であるキノコ狩りの様子をカメラに収める。

             パシャッ

「みためチョーそっくりだから、アリスじゃなかったらコンランしちゃうね!!」

みんな、ちょっとココでおもいだしてほしい。
『リンスズランアリスブタモドキタケ』は、メイジツともに『こうきゅうキノコ』。
『ヤマでポルチーニとってきたよ!!』なんていいふらしたら、
いっぱいヒトがきてシゼンがあらされてしまうかもしれない…………。
ゲンケーがフッとんでしまったリユウは、
かなしい『ランカク』をふせぐためでもあったのだ!!
グルメたんていアリスにシカクなし!!

「だんだんサムくなってきたし、あったかい『キノコスープ』もイイかも。
 『キノコのパイつつみ』とかもよさそうじゃない??」

りんがキノコを入れられるようにカゴを差し出す。

「ヤマおりるまでに、たべたいメニューかんがえようよ。
 もどったらイッショにリョウリしようぜ!!
 アリスもジャンジャンてつだう!!」

以前、二人で『カニ鍋』を食べた思い出があるが、
『ドクター・アリス』がなければ危うく中毒死を遂げていた。
もし鈴蘭が混入されそうになったら、その時は阻止しよう。
いれるなよ??ゼッタイだぞ??

381りん『フューネラル・リース』:2023/10/21(土) 18:09:29
>>380
アリスの奴そこまで考えて…

「キノコに合うお酒も考えなきゃね〜
 ピザやパスタにしてワインと合わせるのも良いかなぁ〜」

鈴蘭酒も良いが、やはりワインの方が合うかもしれない
いや、アリスは飲まないかもしれないが

>以前、二人で『カニ鍋』を食べた思い出があるが、
>『ドクター・アリス』がなければ危うく中毒死を遂げていた。

確か、あの時はりんが飲んでいた鈴蘭酒をアリスが味見していたはずだ
カニすきその物には鈴蘭は混入していない!
自分以外が食べる物には基本鈴蘭は入れないぞ!たぶん
人に食べさせる鈴蘭料理はまだ研究中だ!

>いれるなよ??ゼッタイだぞ??

ふりか?ふりでも入れないからな?たぶん


十分にキノコを採った籠を背負い山を歌いながら降りる

「ある日 森の中 熊さんに 出会った♪」

ところで、最近熊による事件が多発しているようだが
りん達は無事に下山する事が出来ただろうか?

382夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/10/21(土) 20:03:03
>>381

あのときは、りんちゃんトクセイの『カニず』を、
ウッカリもらおうとしたトコだったから、りんちゃんはワルくないぞ。
たしか『フオンなニオイ』がしたから、やっぱりやめといたんだっけ??
ブタにもまけないアリスの『ハナ』がなかったら、
そのままブッたおれて『リタイア』まっしぐらだったぜ。

   「ハナさくモリのミチ♪♪」

          「クマさんにであった♪♪」

りんに合わせて歌を歌いながら、並んで歩いて下山する。
その途中、遠くの方で獣の臭いやら四足で地面を踏みしめる音を感じ取った。
おっ??モリのクマさんかな??

    ザッ ザッ ザッ

通常、山に入った人が熊と遭遇しにくいのは、
熊の方が人の気配を先んじて察知して、接近する前に離れているからだ。
そして、『ドクター・アリス』のセンシング能力は、熊と同じか熊より上。
あからさまに目立つ獣臭さや移動音を見落とす事などあろう筈がなく、
そちらから遠ざかる方向に進んでいく。
探索、採取、危機管理など、
あらゆる面において威力を発揮する『ドクター・アリス』は、
まさにキノコ狩りにはうってつけのスタンドだったと言えよう。
キノコがりといえばアリス、アリスといえばキノコがりだ!!
アリスを『アキのキゴ』にしてもイイかもしれない。
ココでイック――――『きのこがりクマさんいたらマジにげろ』

        ザッ ザッ ザッ

『危険に立ち向かえるスタンド』は数多くいる。
しかし、『危険に遭わないように立ち回れるスタンド』は少なく、
そこは『ドクター・アリス』の専門分野。
ついでに、このヘンからガメンにながれはじめるエンドロール。

  『 りんちゃんとアリスのボウケンinアキのヤマ

      リンスズランアリスブタモドキタケをさがせ

             (クマさんにチューイせよ) 』

            ――――――そんなカンジでオシマイ!!

383リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/24(火) 21:25:34

町外れに立つ『教会』。
ここは『鷲津ヨハネ』の家族によって運営されている。
『聖堂』とも呼ばれる『礼拝堂』の一隅に、
古めかしい『西洋人形』が腰掛けていた。
この人形に関して、一部の人々の間で奇妙な噂が囁かれている。
真相は定かではないが、『独りでに動く事がある』らしい。

   ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

    少なくとも――――――今は動いていない。

384アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/25(水) 23:31:05
>>383
「これが『噂』の人形?」

そんな『噂』を耳にして教会に訪れる一人の女性。
人形の前に屈みこみ、物珍しそうにジッと見る。

「……別に、普通の人形よね?」
(なんで『協会』にこんなのがあるの?って感じだけど……)

385リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/25(水) 23:58:40
>>384

長椅子の上に座っている(あるいは座らされている)西洋人形は、
『アンティークドール』を思わせる外観だった。
綺麗に仕立てられた赤いドレスとボンネットを身に着けている。
見た目の古さとは裏腹に『保存状態』は良好で、なかなか値打ちがありそうだ。

   ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

人形の『まぶた』は閉じられている。
まるで眠っているようにも見える姿だが、勿論そんな筈はないだろう。
こうした人形には『スリープアイ』と呼ばれる可動式の機構が存在しており、
それが組み込まれたタイプだとすれば説明はつく。

              パチ………………

  では――――――

      今、それが『緩やかに開こうとしている』のは、

                   一体どんな理由なのだろうか…………?

386アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/26(木) 00:13:13
>>385
「……やっぱり、どう見ても普通の可愛い人形ね。
『手入れ』がされてるみたいだから、教会の展示物って所かしら」

ちょっとした好奇心で訪れてみたが、
何の変哲もないただの『人形』にちょっと残念そうに呟くが……

              パチ………………

「……えっ!?」

ゆっくりと瞼が動くのを見て、驚愕の声を漏らす。

387リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/26(木) 07:13:59
>>386

所詮、根拠のない『噂』に過ぎなかったのだろうか。
先入観を持って見れば、何でもない事が奇妙に思えるものだ。
少なくとも『さっきまで』は。

      ス ゥ ゥ ゥ ゥ ゥ ゥ ッ

その両目が緩慢に開き始め、冷たいガラス製の眼球が露出していく。
美しい『青い眼』だ。
およそ半分ほど持ち上がった所で止まり、
薄目を開けている『寝起き』のような顔になった。

            ジィィィィィィ――――――………………

まだ眠そうな表情の『青い眼の人形』が、正面で屈むアヤメを見つめている。
そんな風に見えるだけかもしれない。
あるいは、本当に『見ている』のかもしれなかった。

388アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/26(木) 21:49:45
>>387
「び……」

(ビックリした〜〜〜!
今、勝手に開いた気がしたけど……
アレよね、傾きで自動に目が開く機能があるタイプの……)

心臓をバクバクと鳴らしながらも、未だ『半信半疑』だ。
人形の『スリープアイ』機能の詳細は知らないまでも、何となくの知識として知っていた。

「は……」

「はぁい。こんにちは」

そんな自分の淡い希望を確かめるべく、
速まる鼓動を抑えながら、ニッコリと挨拶してみる。

389リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/27(金) 06:52:39
>>388

非常に『地味な絵面』ではあるものの、確かに『独りでに動いた』。
随分と呆気ないが、これが『噂の真相』なのだろうか?
そうだとしたら、また大袈裟な『尾ひれ』がついたものだ。

  「――――――こんにちは」

今、礼拝堂には『アヤメしかいない』。
だが、『何者かの声』が聞こえた。
それも、『かなり近い距離』から。

           パ チ リ

ほとんど同じタイミングで、人形の『まぶた』が『完全に開いた』。

  「わたし、『メリー』」

       「一緒に遊びましょうよ」

           「ウフフフフフフフフフフフフフ」

幼い少女のような笑い声が、『神の家』である神聖な教会内に響く。

390アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/27(金) 09:56:51
>>389
「ふふっ……なんて、喋るわけ」

所詮ただの噂話か、と言いかけた矢先、

           パ チ リ

「えっ」
     「今、目がっ――」

>  「――――――こんにちは」


「ぉぎゃわああああ!!?」

     ズデェエエエンッ

完全に不意を突かれ、尻もちをついて驚きの声を上げる。

391リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/27(金) 12:20:04
>>390

「ウフフフフフフフフフフフフフフ」

       スクッ

座っていた人形が、誰の手も借りずに立ち上がる。
恐ろしい程に自然で、全く違和感のない動作だった。
現代の最先端技術を駆使したとしても、ここまで出来るかどうかは怪しい。

        ――――――コトッ

椅子から降りて、アヤメの足元に近寄っていく。
身長は『60cm』。
およそ生後二ヶ月の赤子と同じくらいだ。

  「ウフフフフフフフ」

      トッ

       「何して遊ぶ?」

           トッ

    「『ヨハネちゃん』がいないから退屈してたの」

              トッ

アヤメの周りを歩きながら、西洋人形は話し続ける。
『ヨハネ』というのは、どうやら教会の関係者らしい。
この『呪いの人形』にも思える存在と、どういう関わりがあるのだろうか?

      「『あなたのお名前は?』」

再び正面に向き直った人形が、アヤメに問い掛けた。

392アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/27(金) 12:50:44
>>391
「ひィィィ〜〜〜……っ」

「お化っ! おば、おばばばば!?」

完全に腰を抜かして喋る人形に圧倒される。

(い、いやッ! なにビビってるのよ! 私には『スタンド』があるじゃない!
何かあっても案外何とかなるかも……
こーゆー西洋妖怪?って拳銃だとか剣だとか、そーゆー物理が案外有効だったりするものね!?)

(そ、それによく見たら……赤ん坊だと思えばちょっと可愛いかも……?)

パニックになりながらもアクション映画(脳筋)的な思考を働かせ、
大きく息を整えて心を落ち着かせる。

   スゥ―――っ
              ハァ ア ア ア ・ ・ ・

「―――よしッ」

>      「『あなたのお名前は?』」

「はひィィっ!?」

「あ、アヤメって言います! 『カワチ アヤメ』――」

   ――ハッ

(――こ、こういうのって……名前言って大丈夫なのかしら……!?)

393リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/27(金) 13:37:35
>>392

この人形が本当に『呪いの人形』の類であれば、
『名前を知られる事』は『良くない結果』を招くかもしれない。

  「『カワチアヤメ』――――――」

         「『アヤメちゃん』ね」

               ――――とはいえ、もう『知られてしまった』。

「メリーはね、お友達の『顔』と『名前』を覚えるのは得意なの」

     「忘れないから」

             ズ イ ッ

                 「『絶対』」

念を押しながら、間近に迫る人形の顔。
口元は『オープンクローズドマウス』となっている。
口を開けて話し始める寸前のような造形だ。

「ねぇ、アヤメちゃん。メリーとお話しましょうよ」

「アヤメちゃんは『お祈り』しに来たの?」

両手を背中に回し、あどけなく小首を傾げる。
教会を包む『神聖な空気』も、
この『動く人形』に対しては、何ら効き目がなさそうだ。
つまり『かなりヤバい代物』とも解釈できた。

394アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/27(金) 14:07:18
>>393
「うっ…うぅ…!」

「よ、ヨロシクね……メリーちゃん…」

(も…もしかして、マズイ? ひょっとして……)

顔面に肉薄され、顔面をひくつかせながら答える。
これが『ホラー映画』なら、間違いなく『バッドエンド』のフラグを一つ立ててしまっただろう。

「え?! えーっとぉ……そう、そうねぇ……」

ここで変な誤魔化しをすれば、何となくだが『よくない』雰囲気を覚えた。
元より、自分は『嘘を吐く』というのは非常に『嫌い』な性分だ。
それ故に――

 「あ…」

「貴女に……会いに来たの」

――偽らず、答えることにした。

「この教会で『動く人形』が居るって噂を聞いて、興味本位で……
その、私も最近『不思議な力』――って、言っていいのかしら――を自覚して……
それで、もしかしたら貴女もそうなのかなって……」

「どんな子かな〜って……」

395リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/27(金) 14:46:20
>>394

迂闊に名前を教えてしまった者が『どうなるか』。
それを視聴者に知らしめる為の『最初の犠牲者』。
もしかすると『有り得る』のかもしれない。

「メリーに会いに来てくれたの?」

人形の発する声色に、明らかな『喜びの色』が混じる。
下手に言い繕わなかったのは正しい判断だったようだ。
『リトル・メリー』も『嘘』は好きではなかった。
正確には『嘘をつく人間』が嫌いなのだ。
そういう『悪い人』を見ると、『物言わぬ肉塊』に変えてしまいたくなる。

     「メリー、とっても嬉しいわ」

         ピ タ ァ ッ

     「ありがとう、アヤメちゃん」

不意に伸ばされた人形の両手が、アヤメの手に触れた。
赤子のように小さな手を通して、体温を持たない冷たい感触が伝わる。
これによって『呪い』を掛けられている…………というような事はないだろう。

              ――――――多分。

  「『不思議な力』?」

       「メリーも『持ってる』わ」

              「ウフフフフ、『おそろい』ね」

ほとんどのスタンドには『本体』が存在する。
もしメリーが『スタンド能力』で操作されているとすれば、
この奇怪な現象にも説明がつく。
謎は解けた。

    ………………そうだとしたら『本体』は?

396アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/27(金) 15:21:52
>>395
「え…えぇ、仲良くしましょうね? メリーちゃん」

触れられた手に一瞬びくっと戸惑う。

「え…じゃあ、貴女も『スタンド使い』――」

『同じ』だという言葉を耳にし、
言葉の途中で、その可能性に気がつきハッと安堵する。

「『スタンド使い』! そう、それよ! 『スタンド能力』!!」

「な〜んだ! 全然! 怖がる必要なんかなかったわ!」

謎(不安)が解けた! と言わんばかりにメリーの手を両手でぎゅっと握り返し、
嬉しそうに『メリー』を持ち上げてそのままその場でグルグルと楽し気に回りだした。

397リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/27(金) 15:55:58
>>396

特に抵抗する事もなく、『リトル・メリー』の体は軽々と持ち上げられる。

     「ウフフフフフフフフフフフフフフフフ」

厳かな静謐さを湛えた礼拝堂の中で、
『メリーゴーランド』のように回る一人と一体。

「アヤメちゃんは『お友達』だから、メリーの事を教えてあげる」

「実はね、メリーは『親善大使』なの。
 『本当に仲良くなるのは大人になってからじゃ遅い』って考えた人がいたのよ。
 それで、この国のみんなと『お友達』になる為に、ずっと昔『お船』に乗ってきたの」

「たくさんの人が港にいて、みんな歓迎してくれたわ。
 それから『学校』で暮らしていたのよ」

それは、およそ『一世紀』近く前に遡る。
人形を『子供達の友好の架け橋』として、国同士で贈り合おうという計画が存在した。
子供騙しだと冷笑する人々もいたが、計画は実行に移され、
輸送の為に用意された船で『リトル・メリー』も運ばれて来たのだ。

398アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/27(金) 16:22:35
>>397
「へぇー、海外から?
凄いじゃない、立派な使命だわ」

「お友達が欲しいってそういうことだったね」

そんな『遥か昔』の出来事だとは露知らず、そっと地面に下して頭を撫でる。
『幽霊』でなく、『スタンド』だと思えばとりわけ怖くもないのだ。

(いやね、私ったら。
こんないい子を怖がっちゃって……
どうしてそのことに頭が回らなかったのかしら)

「『人型』とか、『剣』だとか、『翼』だとか……
色んな形があるんだもの。『人形のスタンド』が居てもおかしくないわ」

  ・ ・  ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「『幽霊』なんて、居る訳ないもの」

目の前の『人形』が『スタンド能力』による片鱗だと思い込み、一人うんうんと納得して頷く。
そして、ふと抱く一つの当然の『疑問』――

「貴女の『本体』はどこ? どうせなら挨拶したいわ」

「さっき言ってた『ヨハネ』ちゃんって子?
『学校』で暮らしてる――って、言ってたけど……学生さん? あ、それとも学校の先生かしら?」

399リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/27(金) 17:22:28
>>398

スタンドには様々なヴィジョンが存在し、秘められた能力も千差万別。
『メリー・バッドエンド』も例外ではなかった。
他のスタンドと比べて異質な点があるとすれば、それは『本体』に他ならない。

   「ウフフフフ」

優しく頭を撫でてもらうと、楽しかった頃を思い出す。
学校に寄贈され、そこに通う子供達と過ごした日々。
幸せな毎日だったが、『ハッピーエンド』は訪れなかった。

「『ヨハネちゃん』は『お友達』で『シスター』なの。
 『懺悔』に来る人達のお話を聞いてあげてるのよ。
 初めてメリーに会った時、『ここに住んでもいい』って言ってくれたから――――」

     「だから、メリーは『ここ』にいるの」

少なくとも、『ヨハネ』は違うようだった。
しかし、『本体の所在』については、今ひとつ要領を得ない。
語られる話の中に、『それらしい人物』が出てこないのだ。

「メリーの『不思議な力』はね、いつからあるのか分からないのよ。
 どうして『こうなった』のかメリーも知らないの」

   「ウフフフフフフフフフフフフフフフフ」

アヤメを見上げながら、『魂』を宿した人形は楽しげに笑う。

400アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/27(金) 23:01:59
>>389
「ん……んん?」

いまいち要領を得ない答えに、不思議そうにやや眉を顰める。
何となく分かるのは、現在この教会に保護(?)されているという事だけだ。

『スタンド使い』になって日は浅いが……
自分が考えているモノと、目の前の人形――何かが『食い違っている』ように思えた。

「えぇっと……じゃあ、結局のところ、貴女の『本体』って『誰』なのかしら?
近くに居るのよね……?」

401リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/28(土) 00:30:36
>>400

『何かがおかしい』と感じたのは、決して気のせいではなかったのだろう。

「――――――『本体』?」

人形が小首を傾げる。
表情こそ変化しないものの、質問の意図を掴みかねている様子が窺えた。
しかし、途中で合点がいったらしく、一歩踏み出しながら言う。

    「ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

          「『すぐ近く』よ」

      「だって『目の前』にいるじゃない」

   「アヤメちゃんはメリーとお話してるでしょう?」

      「ウフフフフ、変なアヤメちゃん」

    ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

仮に、今の言葉を『ありのまま受け取る』としたら、
どういった解釈が成り立つだろうか………………?

402アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/28(土) 12:19:05
>>401
「え? でも、スタンドって精神の形(?)なのよね
『人形』が本体ってどういう――?」

                      「……?」
      「あ、あれ……?」

(モノに『スタンド』――精神力が宿ったってことなのかしら
つまり、『肉体』の代わりに『人形』の方に精神が入ってる? って事?
じゃあ元々あった『肉体』はどこに……)

     ゾゾゾォ―――ッ

独り言をつぶやくように思考し、ふと、先程語られた『メアリー』の過去を思い出す。
『元が人間』だとかそういう話をしていたわけでなく、『自分は元から人形だった』という風に言っている様に聞こえた。

ちょっとだけ背筋に悪寒が走る。

「え、えぇっとぉ……つ、つまり……」

(結局のところ、それって『お化け』と何が違うのかし、ら……)

……などと、そんな不躾な質問が口から出る訳もなく、再び固まった表情で『メリー』を見る。

403リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/28(土) 13:16:12
>>402

大抵のスタンドには本体が存在し、本体がいないスタンドは珍しい。
本体がいて、なおかつ生物ではないケースは更に少ない。
『リトル・メリー』は、その極めて稀な実例の一つだった。

   「アヤメちゃんも分からないのね」

          コトッ

     「メリーも分からないわ」

          コトッ

    「ウフフフフ、不思議よねぇ」

          コトッ

軽い足音を響かせながら、少しずつ近付いていく。

「でも、メリーとアヤメちゃんは『お友達』よ」

「メリーに会いに来てくれたんだもの」

「――――――そうよね?」

透き通った『青い眼』がアヤメを見上げ、無邪気な声色で問い掛けた。
美しくも無機質な『ガラスの眼球』。
しかし、そこには人間に対する強い『念』が渦巻いているような…………。

404アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/28(土) 13:46:14
>>403
(や、やっぱり『幽霊』とか……
そういう類の『関わっちゃいけない』系のナニカなのかしら……)

(――でも、別に悪い子じゃあなさそう――)

自分の中の『恐怖心』と葛藤しつつ、唸りながら思考を巡らしていると……

          コトッ

     「――うっ!」

          コトッ

       「うぅ…っ!」

          コトッ

             「――ぅひい!?」

一歩、また一歩と近づく『メリー』。
その情念渦巻く『圧』に気圧され、思わず退きそうになる。
こういう『ホラー』な感覚は、正直に言えばかなり『ニガテ』な部類に入る『アヤメ』。
だが同時に、友達が欲しいというこの子の無垢な願いを、無下には出来ないという葛藤が自身の頭を悩ませる。

「……………」
           「も……」

               ・  ・
             「 勿 論 っ ! 」

「『お友達』になりましょう、メリーちゃん!」

405リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/28(土) 15:02:45
>>404

スタンドは『超常の存在』であり、目の前の西洋人形も同様だ。
しかし、果たして『リトル・メリー』の全てが、
『スタンド能力』だけで説明できるのだろうか?
もしかすると、それとは別種の『オカルトじみた何か』が関わっている可能性も、
必ずしもゼロとは言えない。

「ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

返ってきた言葉を聞き、満足げな笑い声が響く。

「アヤメちゃんと『お友達』になれて嬉しいわぁ」

「メリー、アヤメちゃんの事を忘れないから」

「――――――『絶対』に忘れないから」

青い眼の奥で渦巻いていたのは、人間に対する根深い『愛憎』。
『友好の証』としてやって来たメリーは子供達に愛されたが、
国交断絶と共に『敵国の人形』に変わり、『憎しみの対象』となった。
破壊される事を不憫に思った教師の手で隠されたという事実があったからこそ、
まだ『人間を信じる気持ち』が少しだけ残されている。

「アヤメちゃんも、メリーの事、忘れちゃイヤよ」

      ピ タ ッ

人形の両手がアヤメの足に触れた。
メリーの『魂』には『人を信じる気持ち』がある。
それを裏切らない限り『安全』だ。

    もし裏切ったら――――――『呪い殺される』としても………………。

406アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/28(土) 15:39:15
>>405
(い……言ってしまったわ……)

半ば勢いで承諾してしまった事に、やや顔を引くつかせる。

(……でも、大丈夫。後悔はしないわ。
この子の素性がどうであれ――『見捨てる』なんて選択を取ったら――
私は、今以上に自分の事が嫌いになりそうだもの)

「……えぇ、そうね。私も嬉しいわ」

満足そうに笑う『メリー』を見て、そんな細やかな恐怖心は微かに吹き飛んだ。

「……ごめんなさい、実を言うとちょっと……
ホンのちょこっと――(いや、かなり)――貴女を怖がっちゃったけど……
何故か分からないけど……私、貴女のこと嫌いにはなれないわ」

瞳の奥に渦巻く『愛憎』の情念を、その深さを、『アヤメ』はすべて理解した訳ではない。
しかし、『メリー』が『人形』の姿をしている為に感じる『幼さ』故か……
どこか大人に必死に救いを求める子供の様な――純真で、今にも壊れてしまいそうな危うさを覚えたのだった。

「でもあれよね。要するに『ピ〇キオ』みたいなものだと考えればいいのよね!?」

「そう考えるとやっぱり! 全ェ〜然っ! 怖くなんかないわ!
むしろ『可愛い』部類に入るのでわ!?(実はちょっと怖いケド…)」

そんな『子供』を決して『放ってはおけない』と、
そう自分に言い聞かせるよう、力強く握りしめ――

>「――――――『絶対』に忘れないから」

「……………」   ヒクッ ヒクッ・・・

(ごめん、やっぱりちょっと怖いかも)

――ちょっぴり、後悔したのだった。

407リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/10/28(土) 16:31:39
>>406

『操り人形』ではないが、『魂を持った人形』という意味では、
それと似たようなものなのかもしれない。
とりあえず、今は『目に見える危険』はないのだ。
そう――――ただ『独りでに動いて独りでに喋るだけ』と思えば…………。

「ねぇ、アヤメちゃん。
 『メリーの好きなお歌』を教えてあげる」

そう言い置いてから、『リトル・メリー』は歌い始める――――。

     「 青い眼をしたお人形は 」

    「 アメリカ生まれのセルロイド 」

      「 日本の港へ着いた時 」

     「 いっぱい涙を浮かべてた 」

神聖な『賛美歌』の代わりに、『礼拝堂』の中に響く歌声。

    「 わたしは言葉が分からない 」

    「 迷子になったらなんとしよう 」

     「 優しい日本の嬢ちゃんよ 」

     「 仲良く遊んでやっとくれ 」

メリーが口ずさんだのは、異国情緒の漂う童謡『青い眼の人形』だ。
戦前に流行し、戦時中は『敵国の歌』と見なされ、歌う事を禁じられていた。
自分と同じ過去を持つ『青い眼の人形』は、
長い年月を経たメリーの『孤独』を癒やしてくれる。

「アヤメちゃん、今度は一緒に歌いましょうよ」

会いに来てくれた。
友達になると言ってくれた。
だから、『リトル・メリー』は『カワチアヤメ』を信じている。

408アヤメ『ジ・アルビオン』:2023/10/28(土) 17:05:53
>>407
静かに耳を澄まし、『メリー』が口ずさむ歌を聴く。

自分が生まれる以前のこの歌は、当然初めて耳にする歌だった。
年号が2つ3つと遠く離れたこの歌は、普段自分が聴いている歌に比べるととても古臭く思えるのだが……

「……いい歌ね、とても」

この歌が『この子』の為に作られた歌ではないのだろう。

だが、『この子』の瞳に宿る『人を信頼したい』という想いが、
凄惨な日々を過ごしてきたであろう悲しみが、
目の前の子供と自然と重なり今で聞いたどんな歌詞よりも心に響いた。

「ふふっ、上手に歌えるかしら?」

「正直、歌は苦手なのだけれど――」

不可思議な出会いを求めた。
友達になると『約束』した。
だから、『カワチアヤメ』は『メリー』を裏切ることはないだろう。

409百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/03(金) 13:15:52

(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1688977700/63-70)

黒羽とのやり取りを終えた後、『乗り込む手筈』を考えていた。
こちらは『手掛かり』を提供してもらいたい立場だ。
その為には何らかの『代価』を用意するのが上策。
だが、要求を撥ね付けられたり、それ以前に門前払いを食らってしまえば、
話し合いの段階にすら到達せずに終わってしまう。
そこが要点だ。
つまり『話さざるを得ない状態』に持っていけばいい。
『前渡し』してしまえば、向こうも口を閉ざす訳にはいかなくなる。

個人だろうが組織だろうが、『悩み事』の一つや二つは常に抱えているものだ。
だから占い師の『何か悩み事がありますね』という常套句が成立する。
その『種類』まで特定できれば、切り込む『隙』も見出だせよう。
『推理の材料』はある。
『関星会』が『落ち目』である事を考えると、
『羽振りのいい暮らし』をしているとは思えない。

だが、まだ細やかな情報が足りていない。
やはり、実際に『現場を見てから』だ。
『筆』のヴィジョンを持つ『黒羽の能力』も知っておきたいし、
『ライトパス』についても話す必要がある。

    キィィィィィィ――――――――――ン

                   シボッ

甲高く澄んだ音を響かせながら、『デュポン製ライター』の蓋を親指で跳ね上げ、
同じくフランス産である『ジタン』の煙草に火を点ける。

「『三刀屋』に言うべきかねぇ…………」

「まだ手を借りたいような状況じゃあないが…………」

『三刀屋路行』は、百目鬼小百合と親交の深いスタンド使いだ。
以前の『組手』で『能力』も把握している。
荒事となれば頼りになる存在ではあった。
しかし、別に『殴り込み』に行く訳ではない。
無計画に人手を増やした所で、目に付きやすくなるだけだろう。

      フゥゥゥゥ――――…………

「今後、必要になったら呼ぶ事にするか」

思考に区切りをつけると共に、深まりつつある秋の空に向けて煙を吐き出し、
『枯山水の庭』に面した縁側から立ち上がる。

410百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 15:50:56

警察時代の元部下『如月慧慈』から、
『流星刀』についての情報を得た『百目鬼小百合』は、
街で『聞き込み』を行うと同時に、信頼できると感じた人物に『協力』を求めていた。
その内の一人が『ここ』にいる。
個人的な連絡先は聞かなかったが、『町外れの教会』といえば他にはない筈だ。

「さてと――――首尾よく会えればいいけどねえ」

          ス ッ

『鷲津ヨハネ』は『懺悔に耳を貸している』と話していた。
おそらく『懺悔室』だろうと見当をつけ、そこに入って椅子に腰を下ろす。
ざっと半世紀ほど生きてきて初めて入る場所だが、
まるで『取調室』のような印象を受けるのは、昔を思い出してしまうせいだろうか。

411ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/04(土) 18:04:05
>>410
「そこにいるのは迷える仔羊…
 貴方が何者であろうとも、ここはすべてを受け入れる…」
懺悔室の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
どうやら小百合の目当ての人物はここに居たようだ。
彼女はどこか棒読み気味に退屈そうな顔で文言を唱えている。

「…おや?」
そして目が合う。ヨハネは以前と同じような修道服の身なりで現れた。

「まさかここで知り合いと会えるとは思わなかったねぇ。
 わざわざここに来るとは、何か耐えられないことでもあったのかしら?警備員さん?」
両手を顎に乗せ、肘をついた体制で小百合の顔を見つめてくる。
こちらに気づくまで見せていたつまらなそうな顔が、とたんにどこか楽しげな顔になった。

412百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 18:47:56
>>411

聞き覚えのある声が耳に届き、肩を竦めて胸を撫で下ろす。

「いや、せっかくだから『懺悔』しようかと思ってね。
 『煙草の吸いすぎ』で『空気を汚した罪』を、
 アタシが『肺ガン』になる前に告白しておこうと考えたのさ」

      「ま、今更な話だけどねえ」

笑みを浮かべる口元に煙草はない。
教会内で大っぴらに喫煙するのは流石に憚られた。
向かい合うシスターが喫煙者だとしてもだ。

「本題に入るけど、ちょいと尋ねたい事があるんだ。
 これから『一仕事』やる予定があって、その為の『人材』を探してる」

「単刀直入に言うと『敵情視察』さ。
 そういう『才能』を持った人に手伝って欲しい仕事があるんだよ」

「ここには色んな人が来てるだろうから、
 もしかしたら『心当たり』があるんじゃないかい?」

『ライトパス』の能力は、お世辞にも『偵察』には向いていない。
教会は『不特定多数』が訪れる場所であり、
スタンド使い同士は『引かれ合う性質』を持つ。
だからこそ、ある種の『期待』を持って、この場所に赴いた。

413ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/04(土) 19:24:48
>>412
「へぇ、そりゃ気が合うね。
 私もちょうどそれに関して何度も神様に懺悔してるよ。
 でもここの神様は特に気にしないそうだよ。」
彼女の言葉に軽い調子で答える。
ジョークを返しているあたり、どうやら楽しいようだ。

「ふぅん?随分じゃないか。
 警備会社ならそういうお仕事の人は足りてるかと思ってたよ。」
軽口を言いつつも、先程よりも真面目な表情になった。
小百合の『目』を見て本気で伝えたいことであることがわかったのかもしれない。

「さぁねぇ、迷える仔羊の数には事欠かないけど…
 大体の場合この懺悔室に来る人間からはそういう個人情報は聞かないのさ。
 私ができるのも嘘発見器くらいだけどねぇ。」
そう言って少し考える。

「一体どこを視察するのかな?
 もっと詳しく聞きたいところなのだけど…」

414百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 19:59:20
>>413

ヨハネが『特技』によって感じた通り、小百合の両目には『真剣さ』が漂っていた。

「そういえばヨハネさん――――アンタの事は、まだ聞いてなかったねえ」

ここに来る人間の事を考えていたが、目の前のシスターについて知るのが先だろう。

「懺悔の内容は『守秘義務』があるんだったね。
 だから、まずはアタシから教えるよ」

      ズ ギ ュ ン ッ

白百合の紋章を持つ人型スタンド『ライトパス』を発現する。

          ライトパス
「こいつの名前は『 正 道 』。能力は『光の線』を引く事さ」

          ド ヒ ュ ウ ッ

ジャケットの内ポケットから取り出した『扇子』を広げ、
神速で『特殊警棒』を走らせると、一筋の『光の線』が生まれる。

「この『線』に触れたものは、
 生物でも物体でもアタシの『好きな方向』に動かせる。
 ただし、スタンドの力で動かせる重量に限るけどねえ」

『光の線が入った扇子』を掲げながら、自分の『能力』を明かす。

「視察する場所は『暴力団の本拠地』さ。
 前に話した『スタンドを目覚めさせる刀』について、
 『昔の知り合い』から『情報』を買った。
 『刀』の『元々の持ち主』が『そこの連中』だったって事が分かったんだ」

「実際に『乗り込む』前に、『探り』を入れておきたいと思ってね」

どうやら、小百合が相手にしているのは『ヤクザ』らしい。
しかも『スタンド絡み』だ。
これは『警備会社』では扱えない案件だろう。

415ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/04(土) 20:34:47
>>414
「なるほど、秘密を共有しようということ?
 貴方の能力は戦いに向いていそうだね。」
感心するように彼女のスタンドを見つめる。

「まぁ、そうだねじゃあ私のスタンドも見せようか。」

      ズ ギ ュ ン ッ

そう言って自分の背後にスタンドを出現させた。
以前も見た通り、目隠しをした聖職者のようなスタンドだ。

「私の能力は、視界を外した相手の『目』を
 鉄球として拝借する能力だよ。
 まぁ、相手の眼球を盗むわけじゃないけどね」
背後に立つスタンドはじっとしたままである。

「…なるほどねぇ。
 ヤクザ連中にスタンドを生み出す刀ねぇ。
 まさにナンタラに刃物ってやつか。」
小百合の危惧も理解できるとヨハネは思った。
暴力団がスタンド使いの集団となっている可能性があり得るのだ。

「しかし、探索に適した人物ねぇ…
 懺悔室には色んな人が来るが、スタンド使いかまでは明かす人は居ないし…
 私は、その手のことは素人だしねぇ。」
そう言って考える。

「そいつらがお人形集めが趣味のかわいいチンピラだったりでもすりゃ
 心当たりはあるんだがね。」

416百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 21:11:54
>>415

片手で扇子を閉じながら、『聖職者風のヴィジョン』を見やる。

「確か『ゴッド・ノウズ』だったね?
 『目を拝借する』ってのは、つまり『視界を覗ける』って事かい?」

「そうだとしたら『うってつけ』の人材だよ。
 連中の一人に能力を使えれば、『ソイツの視界』を通して屋内の様子が掴める」

鷹揚に腕組みをしながら考えを巡らせる。
『ヨハネのスタンド』は、まさしく『敵情視察向き』の能力。
これは思いがけず『当たり』を引いたかもしれない。

「ソイツらの名前は『関星会』。
 今は『落ち目』になってるけど、それでもヤクザはヤクザだからね。
 『危険』を伴うのは間違いない」

「それを承知した上で『協力』を頼みたいんだ。
 ヨハネさんは、外から『能力』を使ってくれるだけでいい。
 その間、アンタに危害が及ばないように、アタシが周りに目を光らせとくよ」

「――――『世の為』と『人の為』だ。頼まれてくれないかい?」

居住まいを正し、深く頭を下げる。
小百合の『ライトパス』を含めて、『戦闘向きのスタンド』は多いが、
『調査が出来る能力』は貴重だ。
ヨハネに並ぶような人材は、なかなか見つけられないだろう。

417ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/04(土) 21:28:36
>>416
「まぁ、そういうものと思ってくれていい。
 あまり使ったことはないが、視界を把握はできるだろう。」
そう言ってうなずいた。

「ふっ、聖職者にヤクザの視察を頼むとは
 なかなか面白いことを言うねぇ。」
ニヤニヤと笑いながらヨハネは答える。
嫌がっている様子ではないようだ。

「世のため人のためねぇ。
 その言葉はどうやら、でまかせで言ったものじゃないようだ。」
小百合の目をじっと眺めた上で答える。

「まぁ警備員さんが警護してくださるんなら、考えてもいいかもねぇ。
 報酬、次第かなぁ?」
そう言ってみる。

「そろそろ美味しいお酒と
 それに合う最高の料理が欲しいと思ってたんだけど…」
チラチラと小百合の様子をわざとらしく見る。
何が欲しいのかは明白だろう

418百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 21:57:45
>>417

百目鬼小百合の『目』からは、少しの『嘘』も感じられない。
確かに『本心』で言っている事が分かる。
事実、小百合は『本気』だった。

「アタシは『絶対に嘘をつかない』とまでは言わないけど、
 『大事な時に嘘はつかない主義』でね」

まもなく顔を上げ、ヨハネに向き直る。

「ウチの会社は『施設警備』だけじゃあなく『身辺警護』も扱ってるんだ。
 アンタの安全はアタシが保障するさ」

以前、小百合の背後から襲い掛かろうとしたチンピラを、
『ゴッド・ノウズ』が返り討ちにした。
その様子を思い出すと、ヨハネも『戦えないスタンド使い』ではなく、
むしろ戦闘も十分にこなせるだろう。
しかし、『警護する』と言った以上、決して危害は加えさせない。

「ヨハネさんは『シードル』が好みだったね?
 それに合う『気の利いたつまみ』も保障するよ」

ヨハネとは歓楽街の居酒屋で一緒に酒を飲んだ仲だ。
『何が欲しいか』は言われずとも察した。
無論、その要求にも応えるつもりでいる。

419ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/04(土) 22:45:43
>>418
「そういう人間は信用できるね。
 私としては肝心な時に嘘をつかない人間は嫌いじゃない。」
じっと小百合と目を合わせて告げる。
ヨハネの視線はまさに刺さるように見えるだろう。

「それじゃあ御厄介になろうかな。
 私は喧嘩は得意じゃないからね。」
本当にそうなのかはともかく
ヨハネ自身は争いは好まないようだ。

「まぁ、それが正解。
 そういうご褒美があるなら
 私もやる気が出るさ。」
正解を引き当てたようで
ヨハネも嬉しそうな顔をしている。

「それじゃあ知る限り、一番いいところのを頼んでもらっていいかな?
 シードルもおつまみもね。」

420百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 23:06:45
>>419

左右で色の違う『オッドアイ』。
その瞳と向き合っていると、心の中を見透かされているように感じる。
思い返せば、ヨハネと知り合った時から『奇妙な感覚』を覚えていた。

「ここの『神様』に誓って約束したよ。
 罪深い『ヘビースモーカー二人』を許して下さる器の大きな方だからねえ」

「…………ところで、ちょいと気になった事があってね。
 さっき『私が出来るのは嘘発見器くらいだ』と言ったけど、
 それも『能力の一部』なのかい?」

ヨハネの話では、『ゴッド・ノウズ』は『他人の視界を借りる能力』の筈だ。
『嘘を見抜く力』も持ち合わせているのだろうか?
有り得ない事ではないだろうが、そこに疑問を抱いた。

421ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/04(土) 23:20:26
>>420
「なーに、神様は寛大だからね。
 ニンゲンのことなんてなんとも思ってないさ。
 だから許してくれるよ。今回のこともね。」
いたずらっ子のような表情で答える。

「…あぁ、能力のことを聞きたいんだね?
 実を言うと、目を盗むことが能力であってね」
そう言って改めてじっと見つめる。

「…嫌われるのとかがあんまり好きじゃないから、大体の人には黙ってるんだけどね。」

「でもまぁ、背中を預ける人には教えておいてもいいか。」
刺すような視線がまた小百合に向く。

「嘘かどうかわかるのは、私自身が元々持っているものなんだよ。
 こうして相手の目を覗き込むと、
 相手の言ってることが嘘か本当かわかってしまうんだ。
 相手の目の動きでね。」

422百目鬼小百合『ライトパス』:2023/11/04(土) 23:48:51
>>421

「ハハハ、そりゃあ違いない。
 勝手に崇め奉られたんじゃ、神様も迷惑してるだろうさ」

百目鬼自身、古くからの『信心』を蔑ろにはしないが、
それに頼り切るような精神は持ち合わせていない。

「『嘘が分かる』…………か」

「なかなか『難儀な特技』を抱えてるんだねえ」

「話してくれた事に感謝するよ」

一見すると便利なように思えるが、本人にとっては辛い面の方が大きいだろう。
周りが嘘つきばかりに見えてしまっても不思議はない。
『嘘』が溢れている世の中では、さぞかし生きづらいであろう事が想像できた。

「――――さて、そろそろ帰る事にするか。
 『次の人』を待たせてると悪いからね」

         スッ

おもむろに椅子から立ち上がると、
ヨハネと正面から向き合い、『嘘のない目』で告げる。

「仕事が終わった後は、ブッ倒れるまで呑ませてやるから楽しみにしてな」

そう言って軽く笑い、背中越しに片手を振って、『懺悔室』から出て行く。

423ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/11/05(日) 00:04:26
>>422
「ま、そういうこと。
 だから好き放題で構わないさ。」
神様への認識が思いの外軽いようだ。

「わかってくれて嬉しいよ。
 …私としてもこういうのはあんまり好きじゃないのさ。
 まぁ、それでも話せるニンゲンがいることは嬉しいよ。」
気軽に話せるのはどうやら彼女が小百合に気を許しているようだ

「じゃあ、また会おうか。その時に。」
と言って手をふる。

「ありがたいねぇ。
 私はこう見えて結構行ける方だから、覚悟しておくといいよ。」
ニッコリとしながら彼女の背中を見送っていった。

「…次の人が案外ヤクザの人が来るんだったりしてねぇ?」
そう言って次の客を待つのであった。

424赤月『サクソン』:2023/11/06(月) 13:52:33

「むぅ・・・・・」

首を軽く傾げ、悩まし気な唸り声を上げる
黒髪の一部を赤く染めた女子中学生だ。下校途中らしく制服を着ている
だが、少女が居る場所は健全な中学生としては随分と『らしからぬ』場所であった

「こういうのもあるのか」

ここは歓楽街。その一画に聳え立つビルの一つ
その中には『コスチュームショップ』と呼ばれる・・・・『衣装』を売り買いする店が存在していた
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1621051851/433)
彼女が居るのは、そんな店の一つだ

「ぶかぶか・・・・」

だが、『コスチュームショップ』だからといって全てが全て如何わしいわけではない
どうやら、この店は比較的猥雑ではない、アニメやゲームのキャラクターの
コスプレ衣装をメインとした店らしい

そんな店の中で、彼女はサングラスや伊達眼鏡などを扱うゾーンに居た
どうやらいくつかの眼鏡をためつすがめつ見分し、自分の顔にかけているようだ

425呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/06(月) 17:40:59
>>424



    「む」

    「むむむ〜?」


ぐいーっ


    「いいじゃんいいじゃん」


サングラスを試す赤月のフレーム越しの眼前に、
緑とピンク色のツートンカラーの派手な髪色をした女子高生が唐突に現れた。


「ちゅかちゅかぁ〜〜、
 赤メッシュパイセン顔ちっちゃぁ〜〜!
 羨ましいんですけどぉーッ」


「赤メッシュパイセン、
 せっかくの小顔ちゃんなんだから
 こっちのフレームのないほっそい眼鏡の方が似合うって思う、
 『キザシちゃん』なんだけどそこん所どーす??」

426赤月『サクソン』:2023/11/06(月) 18:13:28
>>425

「む・・・・これはなかなか・・・・・」

>ぐいーっ


>    「いいじゃんいいじゃん」

                           「わっ」

突然の声掛けに動揺したせいか、手に持っていたサングラスが俄かに宙を舞う
わたわたとした手付きで両手が動き、何とか空中でキャッチする事が出来た
ほっ、と息をつきながら突然の闖入者に視線を合わせる

「君は・・・・」

何か苦情でも言ってやろうと思ったが、その口調からはどうも悪意のようなものは感じられない
そう思いながら、ふと手元のサングラスに視線を落した

ゴーグルの様に目線を覆い隠すようなミラーシェードだ
成人男性を想定した製品である為か赤月の輪郭に対しては大分ぶかぶかな印象が感じられる
第三者視点でまともに『おしゃれ』として使うのであれば、控えめに見ても合ってはいないだろう

「・・・・・・。」

「これ、かな?」      スチャッ

何か言おうとしたのかしばらくもごもごと口を動かした後、
呉羽の言葉に従うようにノンフレームの伊達眼鏡をかける
どちらかというと子供らしい印象を受ける赤月の顔立ちであったが、
シャープな形状の伊達眼鏡をかけた事でインテリめいた知的な印象が強まった

427呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/06(月) 20:20:56
>>426





     「お〜っ」


「良き良きじゃあ〜ん。
 さっきの『なんとかレンジャー』や自転車乗りみたいな、
 鬼デカ鬼テカリサングラスもアレはアレでアリだけど、
 せっかくの強カワフェイスが隠れちゃうしィ、
 絶対こっちの方が良き衛門だッてぇぇ〜〜」


細いメガネを掛けた赤月の容貌を褒める女子高生。
その語調自体は独特ではあるが、
貶すなどの悪意は一切含まれていない事が伺える。



      「撮ろ撮ろ!
       笑ってぇ〜〜〜〜」

カシャッ!

赤月と顔を並べ、
横構えのスマホのインカメラで2ショットの写真を1枚撮影する。


「バッチェ撮れてるしィ〜〜〜〜〜。
 赤メッシュパイセンってば、
 ハイパー可愛いすぎてキザシちゃんキレそう!!!」


         「あっ」


「パイセン、今撮った鬼カワ写真渡したいから、
 LINE教えてくれないすかー?」

428赤月『サクソン』:2023/11/06(月) 21:01:29
>>427

「あ、ああ・・・・ありがとう」

先程までかけていたミラーサングラスに名残惜しそうな視線を送りつつ、
どこか歯切れの悪い返答を返す赤月
容姿を褒められて悪い気はしていないものの、それを素直に喜んでいないようだ

>      「撮ろ撮ろ!
>       笑ってぇ〜〜〜〜」

                        「あっ!」

呉羽の言動に圧される様な形で抵抗なく画角に収まる
咄嗟に出てきた右手は反射的に指を二本立ててピースサイン

「あ、ああ・・・・・ありがとう」

   そのまま流れでスマホのLINEを開き、
     自分のIDを登録させるためのQRコードを彼女に見せ・・・・

 
                     「・・・・じゃない!」

「なんだ、君は!
 何が目的なんだ!?」

事、ここに及んでようやく状況の不可解さに大きな声が出た
スマホ画面を見せながらも、誰何の声をあげる

429呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/07(火) 10:24:32
>>428



     ポロン



QRアイコンを読み込まれた赤月のスマホの画面に友人登録画面が現れた。
『萌』という名前にアプリで煌びやかに加工した自撮りアイコンだ。


        
        「はて?」

狼狽える赤月の問いかけに首を傾げる女子高生。
カラコン、アイシャドウ、つけまつ毛を駆使し、
これでもかと言う程にデカ目メイクされた瞳で赤月を見つめる。
だが、やはり『悪意』の類は感じられない。


「なんだ君は!?って言われてもなぁ〜ッ。
 キザシはただの『SJK』だヨ?
 バイト帰りになんとなく寄ってみただけぇ〜〜、へへ」



        「あッ」 




「LINEきたぁ〜〜〜〜?

 萌え萌えキュンの『萌』って書いて『キザシ』って読むんよ。
 中々に一見さんぶっ殺死の名前だよねェ」



       「ちゅかちゅかぁ〜」


「パイセンはコスプレしてぇ!って意気込み持って来たの〜〜〜?
 『ハロウィン』は過ぎたけどぉ〜〜〜??」

430赤月『サクソン』:2023/11/07(火) 14:18:55
>>429

 「あっ」

                ピコン

QRアイコンが読み込まれ、友達登録画面が現れた瞬間に反射的に承認を押してしまう
それにより呉羽のアプリにも赤メッシュのアカウント・・・・『赤月ナカレ』の情報が流れ込む
(アイコンは初期画面のまま変更がない)

 「キザシ・・・・」

             「む、むむむ・・・・・」

悪意が無いのがこの際厄介だ、と赤月は感じた
相手が敵意を向けてくるなら同様の敵意で叩き返せば良い
だが、純粋な好意で関わって来る相手にはどうすれば・・・・距離感を掴めずにいる

「はあ・・・・」

ため息をつきながら、目の前の受難を受け入れる
実際のところ、呉羽が選んだ伊達眼鏡は結構イケてるように見えたし、褒められて悪い気はしなかったからだ

もっとも・・・・

「『ハロウィン』や『仮装パーティ』の為にここに来たわけじゃない」

「ちょっとした理由があって、『変装』に使えそうな物を探しに来ただけだ
 説明が遅れて勘違いさせてしまったみたいだけどね」

近くに置かれていた仮装用の『仮面』を手に取り、
ささやかに困ったような眉根を寄せた笑みを浮かべる

「私の名前は赤月ナカレという
 キザシ・・・・君はこの手の物に詳しいのかな」

431呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/07(火) 16:13:33
>>430



    「うーん」
ゆら

「うーん」  ゆら   「んー?」 ゆら


唇に人差し指を添え、目線を上に向ける。
緩いテンポを刻むメトロノームのよう上半身を左右にゆらゆらと揺らし、
考え込む仕草を見せる。


     「キザシはぁ〜」


「別にコスプレにも変装にも詳しくないけれど、
 めちゃくちゃ詳しい人は知ってるよおぉ〜〜ッ。
 『スマホちゃん』って名前なんだけどぉーー」

      カッカッカッカッ

握ったままのスマホの画面を開き、
ご機嫌な表情のまま片手で手早くフリック入力し、検索。



       「出た出たぁ〜」


「えっとぉ〜、


 その場にふさわしい格好でありながら、
 オシャレ要素は省くといいでしょう。
 いつもと違うイメージ作りをすると驚く程気付かれません。
 全身黒などは逆に目立ちます。

 メガネ、帽子、髪の毛を縛って印象を変えるのも有用です。
 体型を隠すよう服、ストールやマフラーなどで顔のラインをぼかすのもおすすめです。


 だってえぇ〜〜〜〜。
 ねぇねぇナカレちゃん、
 今ナカレちゃんが手に取ったその『仮面』もチョーイケてるとは思うんだけど、
 多分、コスプレって『目立つ』為のものだろーし、
 ひょっとして『お店選び』の時点で間違ってたりするんじゃねす?」

432赤月『サクソン』:2023/11/07(火) 20:27:20
>>431

「ん・・・・?」

    ゆらり

           ゆら

  ゆら 
                 ゆら ゆらり

不思議なリズムで身体を揺らす呉羽を見つめているうちに
いつの間にか同じようなリズムで体幹を揺らす自分自身の姿に気付いた

「検索か・・・・!」

ぐいっ、と身を乗り出すようにして画面を見る
そういえば、『変装』というイメージに捕らわれて過ぎていたように思える
ここは過去の知見を参考にするべきだろう

「・・・・・・・・・・・・・。」

「確かに、変装をするにしては些か目立ち過ぎていたように思える
 ここは改めて別の商品を見分し・・・・」

>ひょっとして『お店選び』の時点で間違ってたりするんじゃねす?

        「ぐっ!!」

『変装』について書かれた記事を読むにつれて、赤月の表情は明らかに曇っていった
いわゆるテンションがダダ下がっている状態だ
そこに・・・・呉羽から『トドメの一撃』が突き刺さり・・・・・!!

呻き声を一つ上げて
明らかに・・・・! 致命傷を受けたかのように蹲る・・・・!

433呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/07(火) 21:08:26
>>432


「あちゃあ〜〜〜。
 ひょっとしてキザシってば、
 ナカレちゃんの地雷をちゅどーん!しちゃった感じ?」



スマホを制服のポケットに仕舞う。
そして、蹲る赤月に合わせてその場にしゃがみ込み、
沈んだ顔を下から覗き込む形でじぃと見つめる。



「やっぱ『変装』って『コスプレ』のイメージあるし、
 ナカレちゃんが勇み足で『コスショップ』に来ちゃった気持ちわかるよ。
 
 スマホちゃんは地味なカッコしなさーい!って言ってるけど、
 そんなアドバイスはシカトブッこいて、
 ウチらはウチらなりのサイコーのコーデを目指せば良さげじゃね?

 お互いのお洋服ちゃんを見て、キャピキャピするのは女の子の特権じゃね。
 んでェ〜、その後サイゼで打ち上げすればよくね?」


          「ちゅか、ちゅか」


「ナカレちゃんは、
 何で変装したいのかなあぁ〜〜〜っ。

 深いワケがあるのか、ないのかワケワカメだけどさあぁ〜〜〜っ。
 キザシちゃんで良ければお話し聞くよおぉ〜〜〜〜」

434赤月『サクソン』:2023/11/07(火) 23:03:26
>>433

「別に・・・・そんなのではない」

蹲る赤月の顔を見上げてみると、
そうは言いつつも気にしているのだろう
複雑な表情で眉を顰めながら呉羽を見つめ返してきた

「勇み足・・・・」

             「いや・・・・」

     「確かにこれは勇み足だった」

すうっ、と立ち上がる

「前回、この店で買った商品が良かったから
 そのせいで偏った成功体験が生まれてしまったのだろう
 キザシに勇み足と言われても仕方がない程に」

うんうん、と一人合点がいったような顔で頷く

「そう考えると原点に立ち返るべきだろう
 キザシ・・・・君は私がどうして変装をしたいのか、と聞いたな?」

「詳しい理由は教えられない
 だけど、ちょっとした理由で私が何者であるのか・・・・隠したい理由があるだけだ
 今更だけれども」

435呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/08(水) 03:36:21
>>434


    「ん〜〜〜っ」
「ぺこり」


ぬるっと立ち上がり、
再び赤月に目線を合わせ頭を下げる。


「そうだよねぇぇ〜〜〜、
 変装したいなんてよっぽどの訳アリアリーナちゃんで、
 誰にだって聞かれたくないことの一つや2つあるだろーし、
 それを聞くのはヤボヤボだったねぇ〜〜。
 キザシちゃんも『勇み足』だ、ゴメンゴメン」

      
        「でも」

「『陰がある』って言うのかにゃあ〜〜ッ、
 『アンニュイ』って言うのかわ〜んッ、
 キザシ、フンイキある女の子激カワで好き〜〜ッ」

436赤月『サクソン』:2023/11/08(水) 12:19:21
>>435

「『訳アリアリーナ』・・・・・」

正直なところ、赤月がこうして変装用の道具を仕入れている理由はある種の『備え』であった
『アリーナ』と『極夜』。星見町の闇に存在する二つの組織。『二重スパイ』・・・・
複雑な身の上となってしまった以上、時に素顔のまま活動する事が出来ない可能性もある

(変装道具はその為の備えのつもりだったけど)

「・・・・・・・・・・。」

「いや、ありがとう。キザシ
 変装の役には立たないかもしれないけど、君が選んでくれたコレは」

     すちゃっ

先ほど手に取った『ノンフレーム伊達眼鏡』を再び顔に乗せる

「結構似合ってる・・・・と私も思う
 変装とかは関係なく普通に買っておきたいくらいだ」

「しかし、陰のあるフンイキか・・・・
 君から見て私は、そんなに陰があるように見えていたのかな?」

不安げに聞く
心当たりがあったからだ

ここ最近の騒動の中で赤月は一人の人間を『殺害』していた
その経験が、見ず知らずの人間から見ても明らかになるようだとしたら・・・・

(気配を隠すすべを身につけなければならない・・・・)

437呉羽萌『バッド・アイデア』:2023/11/10(金) 20:49:18
>>436



    「ん〜〜」

    「ん〜〜〜?」

    「んん〜〜〜??」


「キザシ、難しい事はよくわかんないけどおぁ〜〜、
 あんま詳しくなさげなコスプレショップに1人で行ってェ〜、
 真剣に衣装選びするって事はぁ、
 そんだけ『変装』する事に必死ちゃんって事でしょー?」

「まっ」

          カシャッ


スマホを取り出し、
伊達メガネ姿の赤月の姿を撮影し、
その車種をLINEで送信する。


「とりあえず、そのメガネはすげー似合ってるよ!
 マジでチョーカワいいんだから!!!」


         「さっ!」


「メガネは決まったし次はお洋服選びしよーぜ!
 ウチらなりのサイコーの変装を見せつけよ!

438赤月『サクソン』:2023/11/10(金) 22:37:08
>>437
         カシャッ

                「うわっ!」

シャッター音に合わせた短い悲鳴
突然の無礼を咎める間もなく、ピロリンというスマホの着信音が鳴る
不意討ちのような隠し撮りでありながら、余計な力が籠っていないためか
なかなかに写りの良い写真だ

「む・・・・そういうのはちゃんと許可を取ってから」

>         「さっ!」

                   「わ、わっ!」

反論も虚しく腕を引かれる
彼女の態度がそこまで反感を買うものではない為か、あるいは言葉の『起こり』を見抜かれている為か
完全に会話のペースを呉羽に握られたまま、次なる『お洋服選び』へと引っ張られていく

「ま、待て、会計を・・・・会計を済ませてからだー!」

そう言って彼女らはこの店から離れて行った
なんともデコボコな二人の、珍道中はここから始まるのだろう・・・・多分

439りん『フューネラル・リース』:2023/11/11(土) 12:27:22
異常な残暑が続いた11月
ようやく気温も下がり秋らしくなって来た頃
紅葉が舞い散る並木道

ひゅーるりー
       ひゅーるりーららー

紅い葉っぱに混じって、白い鈴蘭の花が舞う
その下で頭に鈴蘭が咲いた少女が歌っている

440宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/11(土) 17:20:07
>>439

赤く染まる並木道の向こう側から一人の男が歩いてきた。
カーキ色の作業服と革手袋を身に着けている。
初めて会った時と同じ姿だ。

「君は『りん』という名前だったな」

見覚えのある少女の手前で立ち止まる。

「俺の事を覚えているか?」

以前りんが育てた鈴蘭を見せてもらう約束をしていたが、
仕事が忙しかった事もあり、完全に時期を逃してしまった。

441りん『フューネラル・リース』:2023/11/12(日) 18:08:30
>>440
「はい?」

何か作業員らしき男がいきなり現れて
「俺の事を覚えているか?」などと話しかける
声かけ事案か?

ここは春先に会った時のように、そこそこ人通りが多い

「えーっと…」

宗像とは一度会った事はあるが
大分前に一回会ったきりのおじさんを思い出すには少々時間が掛かる

「あっ、前に鈴蘭が見たいって言ってた」

少し思い出して来たようだ

「えーっと…
 宗像志功さん!」

微妙に違う…!

442宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/12(日) 18:40:44
>>441

左手の『痺れ』を意識的に無視しながら、りんと向き合う。

「――――『宗像征爾』だ」

「『鈴蘭』の季節は過ぎてしまったようだな」

おもむろに周囲を見渡し、どこか座れそうな場所を探す。

「それは別として、幾つか聞きたい事がある」

「君が『熊野風鈴』という名前を知っていればいいが」

りんが熊野と面識があるかどうかは定かではなかった。
熊野側が一方的に知っているだけという可能性もある。
いずれにしても、俺のやる事は変わらない。

443りん『フューネラル・リース』:2023/11/13(月) 18:59:00
>>442
宗像が周囲に座れる場所を探して見渡すと
近くにベンチが置かれている場所があった
そのすぐ横には自販機が、後ろにはドラッグストアがある
ドラッグストアにがそこそこ人が出入りしているようだが、ベンチには誰も座っていない

>君が『熊野風鈴』という名前を知っていればいいが

「え?」

風に乗って、
紅い葉っぱと共に踊るように宙を舞っていた白い花弁が
ひらりと地に落ちる

熊野風鈴という名前を聞いた時、僅かにりんの表情が変わった
宗像にそこまで表情の違いを読み取れるかは分からないが
そこには敵意だとかいった感じは無い
どちらかというと、少し怯えのようなものがある

「あのぉ、熊野さんの知り合い?」

444宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/13(月) 20:58:22
>>443

宙を舞う白い花弁を目で追い、やがて緩やかに落下する様子を見届けた。

「二度ほど会って立ち話をした程度の間柄だ」

自分という人間は、客観的に見ても気が利く方ではない。
しかし、今回は向き合っていた為に、りんの表情が変化した事に気付けた。
一瞬、心証を悪くしてしまった可能性が頭を掠め、
『一抹がいれば助かった』と考えたが今更だろう。
それよりも熊野に対する反応が引っ掛かった。
奴の話には信憑性に欠ける部分があるが、
それと関係しているかどうか見極めておきたい。

「良ければ座って話したいが、構わないか?」

空いているベンチに視線を移し、りんに問い掛ける。

445りん『フューネラル・リース』:2023/11/14(火) 19:03:18
>>444
「う、うん…」
「良いよ?」

少しばかり怖がっているようだが
話し合いには応じるようだ

ベンチへと移動するが
座る前に自販機の前に立つ

何か買うつもりらしい

446宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/15(水) 00:48:26
>>445

熊野の話では、りんの頭に咲いている『鈴蘭』を放っておくと、
大きくなって『怪物』を生み出してしまうらしい。
それを防ぐ為には、定期的に花を引き抜く事で、
成長を妨げなければならないと聞かされていた。
りんの隣に立ちながら、鈴蘭に変化が起きていないか確認する。

「――――『家族』は元気か?」

『仕事』を終えて戻ってきてから、自販機の前で硬貨をバラ撒き、
通りすがりの少女に手を貸してもらった。
どこか覚束なさのある動きに、一種の共通点を感じた事を覚えている。
その時の出来事を思い出したせいか、
りんの後から『リンゴジュース』を購入してベンチに腰を下ろす。

447りん『フューネラル・リース』:2023/11/15(水) 18:55:48
>>446
隣からりんの鈴蘭を確認する
鈴蘭は特に変化した様子は無く、至って普通だ
いや、人間に咲いているという時点で異常なのだが、普通だ
強いて変わった所といえば、花弁が一枚欠けているというくらいか

宗像が『リンゴジュース』を購入した後に、
硬貨を入れて飲み物を一つ、いや二つ購入する

1本はいろはすスターフルーツフレーバー
星見町の地域限定フレーバーだ、マイナー過ぎる

もう1本はいろはす天然水

ギュッ

天然水のキャップを開封する

ボトボトボト

そして頭部に注いだ!
頭の鈴蘭に水やりをするように

「ぷはーっ」

頭部の花も緊張して喉が渇くのか?
それは分からないが、水やりをしてスカッとしたような表情だ

>――――『家族』は元気か?

「家族?」
「うーん、元気にしてるって言って良いのかな?」

ハッキリと元気にしてる、とは答えられないのか微妙な答えだ

「今は時期が違うからみんな枯れちゃってるけど
 春になったら元気に咲くよ」

448宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/15(水) 20:42:32
>>447

花に関する知識は乏しいが、外見に大した変化が見られない事くらいは分かる。
考えられる可能性としては、熊野が嘘をついたか、既に誰かが花を抜いたか。
仮に後者であれば、熊野の言う『依り代』であるりんは、嫌がって抵抗していただろう。

「随分と『変わったスタンド』を持っているな」

『頭に花が咲く』という奇妙な現象が、必ずしもスタンドによるものである確証はない。
しかし、それ以外の可能性が考えにくいのも事実だ。
結局は『風変わりなスタンド』として判断するしかなかった。

「初めて俺に会ってから今日までの間に、
 その『鈴蘭』を誰かに触られた事はなかったか?」

         グッ

水を被るりんを眺めながら、左手でキャップを開けようとした。
だが、上手く力が入らない。
右手を使えば簡単に開けられる。
しかし、楽をしていると今の状態に慣れるのが遅れてしまう。
この分だと、中身に有りつくには、もう少し時間が掛かりそうだ。

449りん『フューネラル・リース』:2023/11/16(木) 18:57:37
>>448
スタンドというものが存在し、
自分の鈴蘭が咲いているのはスタンドによるもの
それは他のスタンド使いと話して知ったし、
音のおねえさんこと音仙にも教えられて分かっている

しかし、自分のスタンドというのがどういうものなのか
その本質は知らない

>初めて俺に会ってから今日までの間に、
>その『鈴蘭』を誰かに触られた事はなかったか?

「え〜と、誰かに触られた事はいっぱいあるけど
 宗像さんと会ってからは無かったかな」

         グッ

キャップを開けられずに苦戦する宗像を見るりん

「あの」
「大丈夫?開けようか?」

今の状態に早く慣れるために敢えて左手で開けようとする宗像
ここでりんに開けさせるのは楽をする事になってしまうだろうか?

450宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/16(木) 19:49:00
>>449

誰からも触れられていなければ、他の人間に花を抜かれた可能性はなくなる。
りんが嘘をついていないとは言い切れないが、ここで嘘をつく理由が薄い。
本当の事を言っていると思ってもいいだろう。
そして、熊野の説明によると花は成長する筈だが、時間が経っても変化がない。
これらを総合すると、熊野の話は怪しくなってくる。

「いや、気にしなくていい」

     ググッ

「さっき熊野について話したが、それは君の『スタンド』と関係がある」

             グググ

「まだ『可能性』の段階だが――――」

        プシュッ

しばらく格闘した末に、ようやくキャップを開栓する。
ペットボトルを傾け、リンゴジュースを喉に流し込んでいく。
当然だが、『ドクターペッパー』よりは癖のない味だった。

「その前に、俺の『能力』を教えておく」

        ズ ズ ズ

そう言い置いて、傍らに『アヴィーチー』を発現する。
右腕に備わった『鋸』は、以前は見せていなかった代物だ。
さらに、もう一つ目に見える変化があった。
左腕に『罅』が入っている。
今にも壊れそうだが、負傷している訳ではないらしい。

「君がしたように、その『水』を俺に引っ被せてくれ」

本体が受けた『傷害』と『損害』を引き金にして、
『アヴィーチー』は『能力』を発動する。
何故、熊野風鈴は『花を抜け』と言ったのか。
一つの仮説だが、その答えが分かりかけてきたような気がする。

451りん『フューネラル・リース』:2023/11/17(金) 18:26:08
>>450
「えぇ?水を?」

いきなり水を被せろと言われて困惑するりん
宗像の頭部には花が咲いてるわけでもなく、栄養になるわけでもない
こんな寒空の下、水を被るなんて正気なのか?

「じゃあ…
 行くよぉ?」

ドボ ドボ ドボ

自分にそうしたように、
優しく頭に天然水をかける

452宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/17(金) 19:12:23
>>451

『寒空の下で水を被せられる』というのは、
直接的なダメージはなくとも、明確な『被害』の一つに数えられる。

      ド サ ァ ッ

その直後、『アヴィーチー』の右腕が切り離され、地面に落下した。

        ≪アヴィィィィィィィィィイ≫

    ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリィッ

 ≪血ィィィィイイイイイイ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!≫

猛烈な勢いで高速回転する『チェーンソー』を唸らせながら、
解放された『ノコギリザメ』が咆哮を上げる。
接触するだけで四肢が吹き飛ぶ。
これまで効かなかった奴らは何人かいたが、
よほど常人離れした耐久力を持っていない限り、直撃を受ければ死ぬ。

  ≪ドコダッ≫

     ≪ドイツダァ〜〜〜〜ッ≫

          ≪『水ヲ浴ビセタ奴』ハァ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!≫

『嗅覚による探知』を挟む為、すぐには動き出さない。
だが、あと一瞬後には、『水を被せた相手』に突っ込んでいく。
目の前に『生命を脅かす危険』が迫っている事は、りんにも分かるだろう。

453りん『フューネラル・リース』:2023/11/18(土) 18:12:40
>>452
「ひ゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛?゛?゛」

水を浴びせた直後、右腕が落ちて『ノコギリザメ』となり
怒りの咆哮を上げる

自分から頼んでおいてブチギレるのは理不尽過ぎる…

「ご…ごめんなさい」

それでも一応、水をかけたのは自分だ
正直に謝罪すれば許してもらえる…か?

「これあげるから許して…」

いろはすのスターフルーツフレーバーを鮫に差し出す
値段は120円程度
頭から水かけられた被害に見合うか?
そもそも、鮫がいろはすを飲むか?

人通りが割と多い道の中で繰り広げられる光景
それを目撃している人もちらほらいるが、
傍から見れば中年のおっさんが子供相手に恐喝しているように見えるかもしれない
何か中年男性が頭に水をかけてくれと頼んでいる所から見ていた人もいそうだが

454宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/18(土) 19:25:14
>>453

『等価以上の傷』を負わせるか、『価値ある品物』を差し出す事で、
『ノコギリザメ』の攻撃は終了する。
だが、それを決めるのは本体ではない。
全ては『ノコギリザメ』次第だ。

  ≪アヴィィィィィィィィィイ≫

                 ――――――ドギュンッ!!

今にも突撃しようかという直前、『ノコギリザメ』が『右腕』に戻る。
今回は大した被害ではなかった為に、『水のボトル一本』で『足りた』らしい。
『アヴィーチー』を解除し、自らの手で『いろはす』をりんに返す。

「『アヴィーチー』の能力は、本体が危害を加えられない限り発動しない」

「スタンドには『受動的な能力』も存在するという事だ」

髪から滴り落ちる雫を払い、言葉を続ける。

「俺は熊野風鈴から『頭に鈴蘭が咲いた少女の花を抜け』と言われた」

「そうしなければ花が大きくなり、
 『怪物』を生み出してしまうというのが理由だが、俺の考えでは信憑性が薄い。
 その『鈴蘭』には変化がないし、誰かに抜かれた事も考えにくいからだ。
 君の話を聞いて、そう判断した」

「では、『なぜ鈴蘭を抜かせたがったのか』という疑問が出てくる」

「――――ここまでは分かるか?」

りんが理解しやすいように、一旦そこで話を区切る。

455りん『フューネラル・リース』:2023/11/19(日) 18:38:36
>>454
渡した傍から突き返されるボトルを受け取り戸惑うりん

「え、えーと…
 良かったらこれ使って」

鈴蘭の柄のハンカチを出して言う
ハンカチには微かに鈴蘭の香りが付いている

>俺は熊野風鈴から『頭に鈴蘭が咲いた少女の花を抜け』と言われた

「え?」

さっきの出来事にも戸惑うりんだったが、
宗像の口からは更に混乱の元になる言葉が発せられた

「何それ…
 初めて聞いたんだけど」

これまで生きていて、
今の今までそんな経験は一度たりとも無い

「うちよりうちの事に詳しいおねえさんに聞いても、
 そんな事言われた事ないよ…」

>――――ここまでは分かるか?

「う、うん…」

456宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/19(日) 20:59:06
>>455

『価値ある品物』を差し出して『ノコギリザメ』を退かせたのは、りんが初めてだった。
『アヴィーチー』の能力を知らなかった以上は『偶然』だろうが、
明確に『生命の危険』を伴う状況で不確かな手を打つ事は考えにくい。
戦闘の経験がないか、戦闘できる力を持たないというのが妥当な解釈だ。

「驚かせて悪かった」

りんの手からハンカチを受け取り、水滴を拭いながら話を続ける。

「熊野の言葉には嘘が混じっているが、
 『怪物が現れる』という部分に関しては間違っていないだろう。
 実際に『怪物によって引き起こされたと思われる事件』が存在するからだ」

「ただ、本当に『鈴蘭が育って怪物が現れる』なら、
 その花に全く変化がないのは腑に落ちない。
 おそらくは『逆』だ」

「――――『鈴蘭を抜かれると怪物が現れる』」

「熊野は『怪物を表に出したかった』。
 だから、俺に『鈴蘭を抜け』と言ったらしいな」

俺の知る熊野風鈴は『刺激』に飢えた性格の持ち主だった。
人に害を為す『怪物』を解放しようと考えても不思議はない。
問題は『なぜ知っていたか』だ。

「熊野が『条件』を知り得た理由だが、
 本人も知らない事実なら、誰かに聞いた可能性はない」

「熊野は『鈴蘭を抜いた事がある』からこそ『何が起きるか分かっていた』。
 そう考えれば、全体の辻褄は合う」

再び話を中断し、りんの反応を待つ。
熊野の名前を出した時、りんの表情には怯えの色が窺えた。
それは、熊野が『怪物』を知っていた事と無関係ではないだろう。

457りん『フューネラル・リース』:2023/11/20(月) 18:32:43
>>456
実際、りんは戦闘経験無いし、戦闘には不向きな能力だ
毒を扱う能力でありながら、その毒では殺す事は出来ず暗殺にも向かない

「え、待って…え?」

鈴蘭を抜かれると怪物が現れる
鈴蘭を抜いた事がある

理解が追い付かない

鈴蘭を抜かれた事なんて一度も無いし、
怪物…?
この人、何言ってるの?

でも、この話を聞いてると何かざわざわするのを感じる
聞くのは怖い
でも、ちゃんと聞かなきゃいけない気がする

「あの…ちょっと待って」
「うち、鈴蘭を抜かれた事なんてないし、怪物って言われても…」

怪物によって引き起こされたと思われる事件
そんな身に覚えのない事を言われても、りんには何の事だがさっぱりだ

458宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/20(月) 19:31:18
>>457

りんの反応を見て、しばらく押し黙る。
嘘は言っていないように見えた。
おそらく本当に知らないのだろう。

「『俺の能力』は見せた通りだ。
 何らかの形で『危害』を受ける事で発動し、
 『等価以上の傷』を与えるか『価値ある品物』を差し出すまで暴れ続ける」

「君にも『似たような力』があると思ったが、俺の勘違いかもしれない」

『アリーナ』や『エクリプス』の言葉を借りるなら、
『アヴィーチー』は『カウンター型』のスタンドだ。
自分の意志で自由に能力を使えず、相手が特定の行動を取らなければならない。
『花を抜かれると発動する』というのは奇妙ではあるが、
可能性としては十分に有り得る。

「『事件』の現場は町外れに立つ『廃墟のビル』だ。
 そこで『鈴蘭を咲かせた少女から怪物が現れた』と熊野は言っていた」

「この事は『熊野のスタンド』からも話を聞いている。
 本体の思惑は別にして、
 『精神の象徴』であるスタンドが嘘をつくというのは想像しづらい。
 だから『真実を語っている』と見た」

りんの頭に咲く『鈴蘭』を一瞥する。

「『例えば』の話だが、その花を抜くと何が起きる?」

熊野が鈴蘭を抜いた事があるとしても、なぜ抜こうと思ったのか。
単なる興味本位だったのか。
あるいは、それ以上の何かがあったのかもしれない。

459りん『フューネラル・リース』:2023/11/21(火) 18:47:29
>>458
町外れに立つ『廃墟のビル』

そういえば、
一日だけ何も覚えてない時があった
その時、町外れの廃ビルで目を覚ました
あの時、何だか分からないが変な違和感があった

鈴蘭を咲かせた少女から怪物が現れただとか、
熊野のスタンドがどうだとか言われても、
頭の中がもうぐちゃぐちゃだ

>『例えば』の話だが、その花を抜くと何が起きる?

「あの…あの…」

目の前の男は、りんの花を抜こうとしているのか?
それは分からないが、りんはその問いに怯えを感じている

「分かんない…」
「でも、絶対抜いちゃ駄目」
「抜かれたら、きっと死ぬから…」

460宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/21(火) 19:19:46
>>459

『花を抜くと死ぬ』。
その一言で、熊野が『鈴蘭』を抜こうと思った理由に察しがついた。
大方、本当に死ぬかどうか試したのだろう。
あの性格なら考えそうな事だ。
花を抜けば本体が死に、本体が死ぬと『怪物』が現れる。
そう解釈した方が納得はいく。
花を抜かれて死ぬ筈のりんが生きているのは不可解だが、
おそらく『行方不明』になった一人が関係している可能性が高い。

「――――そうか」

りんから視線を外し、通りを行き交う人々を見つめる。
あの事件で、少なくとも『四人』が命を落とした。
ここで同じ事が起これば、もっと多くの人間達が犠牲になるだろう。
この世界に害を及ぼし、しかも本体に制御できない力なら、
二度と使われないように取り除いてしまうのが最も確実だ。
だが、『本体の死亡』が『条件』なら、それも難しい。

「俺が『その花を抜く』と言ったら、君はどうする?」

片腕を伸ばして『鈴蘭』に触れながら、りんに問い掛ける。

461りん『フューネラル・リース』:2023/11/24(金) 16:23:05
>>460
花を抜くと怪物が現れる?
そんな話信じられない…信じたくない
けど、もしもそれが本当だったら…

「させないよ」

りんの顔には未だに怯えや戸惑いがある
だがそれだけではない

「もし、今の話が本当だったら」
「ここに居る人間達が死ぬかもしれない」
「うちは生きたいし、人間を死なせたくもないし
 貴方を人殺しにしたくもない…!」

自分も生きる、周囲の人間を死なせない、宗像を人殺しにはさせない
覚悟を決めたものの顔だ


                ふわっ・・・


宗像が鈴蘭に手を伸ばし、触れようとした瞬間
鈴蘭からはひとひらの白い花弁が分離し、その手に触れる

白い花弁には、『鈴蘭の毒』が付与されている
最高出力に調整されたその花に触れれば、強いかぶれに襲われるだろう

462宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/24(金) 18:16:55
>>461

虚無を湛えた黒い瞳が、りんの表情を正面から見据える。
さっきまでとは違い、少女からは確かな『覚悟』を感じた。
自分と周囲を守る為に、目の前の相手に立ち向かおうとする強い意思だ。

「『知り合い』に聞いたが、『鈴蘭』には『毒』があるそうだな」

        ふわっ・・・

風に舞う『花弁』が手に触れた。
こちらから腕を伸ばしていたのだから、避けようがない。
『素手』で接触すれば、急激な『かぶれ』に襲われ、隙を作る事が出来ただろう。

「――――次からは『顔』を狙え」

だが、その手は『革手袋』に覆われていた為、
『鈴蘭毒』は本来の効果を発揮する事が出来ない。
事前に対策した訳ではなく、普段から身に着けていた。
要するに『幸運な偶然』だ。

「『敵の能力』が分かっている以上、『攻撃』は慎重に行うべきだ。
 危害を加えられた瞬間に『発動条件』が整い、
 俺が『ノコギリザメ』を放つ事は容易に想像できる。
 今度は『水のボトル一本』では足りないだろう」

「その『花弁』で止められるのか?」

       ス ッ

『鈴蘭』から手を離す。
ここで『抵抗の意思』が見られなければ、
花を掴んで『危機感』を煽るつもりだった。
しかし、その必要はなくなったようだ。
りんは生き続けなければならない。
それが『犠牲者を出さない唯一の方法』だろう。

「俺が話した内容が、どれだけ頭に入っているかは知らない」

自分が生きる。
周りの人間も死なせない。
俺を人殺しにさせない。

「だが、『今の言葉』を忘れるな」

実現できないのは『最後の一つだけ』だ。

463りん『フューネラル・リース』:2023/11/25(土) 15:51:43
>>462
りんとて策も無く花を飛ばしたわけではなかった
さっき見たところ、宗像は左手が不自由で力が入らない様子だった
そして鈴蘭に手を掛けようとした手(鈴蘭を引き抜けるのなら恐らく右手だろう)
そちらを狙えば鈴蘭を引き抜く事は出来ない

そして被害を受けた時に出て来る『ノコギリザメ』
さっき出て来た時は、即座に襲い掛かって来る事はなかった
宗像の話を信じるなら、加えた危害以上の物を差し出せば良い
いろはすでは足りないかもしれないが、十分価値のある物を出す事は可能だ

だが、結果はこの通りだ

「あっはは…駄目だったかぁ…」

相手の服装を計算に入れていなかったという致命的なミス
これが、幾度も修羅場を潜り抜けてきた宗像と
今まで戦いとは無縁の世界に生きて来たりんの差だろうか

宗像はりんを殺さなかった
何故なのか?
何にしても、相手が違っていたら死んでいたかもしれない
自分の力がまるで通じない事に、非力さを痛感させられる結果になった


りんは、宗像が既に殺人の罪で手を汚している事を知らない
だが、もしそれを知っていたとしても、りんは自分の前で更に殺しの罪に汚れる事を止めるだろう

「…あのね、宗像さん」
「お願いがあるんだけど」

もしも自分が制御不能の怪物になったら倒してほしい――――

そんなお願いは絶対にしない
りんは『生きる決意』を決めているのだ

「もしも、うちに何かあったら…」
「うちの事を助けてくれる『味方』になってくれない?」

りんは知らないが、殺人者である宗像に『命を救う味方』になる事を頼む
たった2回会っただけ、それもあまり仲良くもなく恐怖の対象ですらある宗像に何故頼むのか

「宗像さん、きっと良い人だと思うから、信用出来るかなって」

花を摘まず、りんに次はどうすれば良いか助言をしてくれた
それだけで信用して良いのか?
だがりんは、宗像を…人間を信じてみたかった

464宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/25(土) 17:59:20
>>463

最初に考えたのは、りんが本気かどうかだった。
『敵』と見なされたとしても当然の人間に対して言う言葉とは思えない。
しかし、先程の『覚悟』を考えると本心なのだろう。

「――――『分かった』」

申し出を『承諾』する。
りんが何処かで死ねば、また新たな犠牲者が出てしまう。
それを防ぐ為には、この少女の命が守られなければならない。
『殺し屋』を始めた筈だが、どうやら『逆』をやらなければならなくなった。
物事は思い通りにはいかないものだ。

「だが、『条件』がある。
 問題が起きた時、俺が必ず駆けつけられる保証はない。
 自力で逃げ切れるのが一番だが、最低でも時間稼ぎ程度は出来る力が必要だ。
 今のままでは『本気で向かってくる相手』に対抗できる見込みは薄い」

「『実戦』では、常に先を読む事が要求される。
 『ノコギリザメ』が起動するまでの間、
 俺自身も『アヴィーチー』で攻撃を仕掛ける。
 『自動操縦』を相手にしながら、
 『人型』を凌ぐ方法まで考えていたなら大したものだが、
 俺なら距離を取る事を優先した」

『命の奪い合い』においては、一手の間違いが『致命傷』に至る事は珍しくない。
それが戦闘に向いた能力でなければ尚更だ。
やはり、りん自身の『自衛能力』を高める必要がある。

「『今よりも強くなれ』――――それが『条件』だ。
 その場に俺がいれば助けてやれるが、
 そうでなければ自分で我が身を守らなければならない。
 ただ、経験がなければ分からない事も多いだろう」

「必要なのは『訓練』だ。
 能力が戦闘向きでなくとも、『立ち回り』次第で生存の確率は上がる」

「今後、俺が『戦い方』を教える。
 『何かあった場合』と合わせて、『やる気』がある時は連絡してくれ」

口頭で『電話番号』を告げる。
それを伝える事が出来たら、りんの連絡先を聞いておく。
そこまで済めば、このやり取りも終わりが近いだろう。

465りん『フューネラル・リース』:2023/11/26(日) 18:24:34
>>464
りんは、戦う事は苦手だ
能力が戦いに不向きだからとかそういう事ではない
人間を傷付けたり、傷ついたりする事が嫌なのだ

それでも、もっと酷い事に…
最悪の事態にならないようにするには
戦わなきゃならない事もあるだろう


「…強くなるよ、うち」

「じゃあ、先生って呼んで良い!?」

それは用心棒的な意味での先生なのか
戦いの師としての先生なのか

今時スマホを持っていないのは珍しいが、そういう人も居るだろう
宗像の連絡先を登録して、自分はスマホの番号を教える

「じゃあその時はお願いするね、先生!」

466宗像征爾『アヴィーチー』:2023/11/26(日) 20:09:54
>>465

例の『怪物』を目の当たりにした訳ではないが、
その性質は『ノコギリザメ』と似ているのだろう。
傷付けられる事で発動し、本体の意思と無関係に暴れ回る。
違う点を挙げるとすれば、制御の可否だ。
『ノコギリザメ』の発動と解除は任意で行える。
しかし、りんに宿る『怪物』は、完全に制御不能である可能性が高い。
二度と現れないように『封印』しておかなければならない力だ。
その為には、りん自身が強くなる事が根本的な解決策になる。

「今の段階で、俺に考えられる使い方を教えておく」

「目の前に何かが飛んでくるだけでも、大抵の相手は隙が生まれる。
 露出している事もあるが、それが『顔を狙え』と言った大きな理由だ」

「上手く隙が作れたら、『花弁』を『服の中』に潜り込ませるのが手っ取り早い。
 相手は対処しなければならなくなり、一時的に動きが止まる」

「もちろん距離が開いている事が前提だ。
 そうでなければ、相手は『花弁』を何とかするよりも、
 君に攻撃する方を優先するだろう。
 だから距離を置く事が重要になる」

それをされていたら、もっと手を焼いていた。
少なくとも『人型』の射程外には逃げられていた筈だ。
あの『花弁』も、使い方を工夫すれば身を守れる。
おそらく、りんなら出来るだろう。
『悲劇を起こさせない覚悟』があるならば。

「好きなように呼べばいい」

空のペットボトルを手にして、ベンチから立ち上がる。

「それから――『これ』を渡しておく」

       ス ッ

ポケットから『L型フラッシュライト』を取り出し、りんに差し出す。
大人の手の中に収まる大きさで、『配管』を思わせる形状が特徴だ。
これを渡すのは『理由』があった。

「『俺の物』が傷付けられた時にも、『アヴィーチー』は能力を発動できる。
 射程距離は『100m』だ」

「その範囲内にいれば助けられる」

あらかじめ渡しておけば、距離が離れていても『援護』が可能になる。

          ザッ

「生憎『今年の開花』は見逃したが、いつか『家族』を見せてもらう」

             ザッ ザッ ザッ

おもむろに踵を返し、赤く色づいた通りを歩いていく。
熊野に話を聞いてから長い時間が経ったが、これで一応の片がついた。
この顛末に関しては、『アリーナ』の『吾妻常喜』にも話しておくべきだろう。

『事件の詳細』について、りんには伝えなかった。
本人の意思ではなかったとはいえ、
自分の能力で『五人』が犠牲になったという事実。
それを受け止めきれるかどうか分からなかったからだ。
いずれにせよ死者は生き返らない。
しかし、死者を増やさない事は出来る。

あの夜、『赤月ナカレ』に言われたように、
俺も『先の事』を考えなければならなくなったようだ。

467りん『フューネラル・リース』:2023/11/27(月) 18:32:27
>>466
少女の手には不釣り合いなフラッシュライトを手に取るりん

そういえば、鈴蘭のハンカチを宗像に貸しっぱなしだった
でも、それも良いだろう
フラッシュライトと交換という事にしておこう
価値が釣り合っているかどうかはさて置いて…

何処へと去る宗像を見送るりん
紅い葉っぱが降りしきる中、りんも再び歩き出し帰路へと
いや、そのまま鈴蘭畑には帰らない

りんには今、行きたい場所がある


ちなみに、余計な事かもしれないが
これは人通りの多い道中にあるベンチの前での事であり
一際目立つ二人の一連のやり取りは道行く人達にバッチリ見られており
会話まで聞いていた人達には「なにいってだこいつら」って顔で見られていた

468美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/11/30(木) 17:34:42

愛車の『ランドクルーザー』で『山』に来ていた。
星見町と同じ『S県H市』にある『根川山』だ。
しかし、本格的な登山をしようという訳ではない。
根川山は『S県内で最も低い山』である。
標高は『32m』で、登頂に要する時間は僅か『五分』足らず。

    バタン

運転席のドアを閉め、車をロックして駐車場に立つ。
鍵には『キーホルダー』が取り付けられている。
『Electric Canary Garden』のイメージキャラクター『電気カナリア』のマスコット。

        「――――さて、と」

                     パシャッ

この辺りは自然豊かな公園でもあり、今は紅葉が真っ盛りだ。
見応えのある景色を眺めつつ、スマホで『写真』を撮り、『SNS』に投稿する。
それから、緩やかな足取りで遊歩道を歩き始めた。

469美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/01(金) 17:31:45
>>468

まもなく遊歩道を抜けると、小さな立て札が見えてきた。
『根川山登山口』とある。
つまり、ここから先が『本番』だ。

        パシャッ

SNSに投稿する為に、スマホで写真を撮る。

「高くても低くても『山』なのよねぇ」

現在の『門倉派』は『大山脈』には程遠い。
まさしく、この『根川山』のようなものだろう。
だからこそ、こうして訪れようと思ったのかもしれない。

「それじゃあ『登って』いきましょうか」

心の中で『門倉派』の成功を祈願し、『最初の一歩』を踏み出す。
『登山道』は歩きやすく整備されており、『スニーカー』でも問題なかった。
木立の中を散策しつつ、一番いい『画角』を探しながらスマホを構える。
もしかすると、その様子が誰かの目に留まるかもしれない。
あるいは、『ソーシャルメディア』という『文明の利器』を通して、
見知らぬ誰かに伝わるかもしれない。

470美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/02(土) 20:33:16
>>469

落ち葉の降り積もった山道を登る。
『バードウォッチング』は趣味の一つであり、野外に出掛ける機会は少なくない。
しかし、最近は『門倉派』の活動に時間を割いていた影響で、
自然に触れる機会が減っていた。

「――――まだまだ『インパクト』が弱いのよねぇ」

考えていたのは『自分の能力を最大限に発揮する方法』だ。
門倉に『大型スピーカー』の調達を依頼した。
だが、それだけで『プラン9・チャンネル7』を活かしていると言えるだろうか?
『アイドルショー』の前座でもある『AIアイドルショー』においては、
『プラン9』の全てを出し切らねばならない。
これは『一人のスタンド使い』としての『挑戦』なのだ。

「『スピーカー』は『人寄せ用』と割り切るとして、
 『人が集まった後』で何をするか…………」

現実的なパフォーマンスとしては、観客のスマホを通して『声』を届ける。
つまり『一対一』で話すのだ。
『お題をくれた相手のスマホに飛ぶ』というのがいいかもしれない。
まず、全体に向けてスマホを出してくれるように呼び掛け、
そこから順次『能力対象』にしていき、最終的には全部『ファン』にする。
切り替えは意識するだけで行えるから、そこは問題ないだろう。
改良の余地はあるが、悪くないアイディアだ。
サプライズ的な要素を残すなら、こちらからスマホに話しかけ、
当たった人から『トークのお題』をもらうのもいい。

「物事を理解する為には距離を置いてみる事も必要ね」

『プラン9・チャンネル7』は『文明ありき』の能力。
『音響機器』にカテゴライズされる『電子機器』に溢れた街中で、
『プラン9』は最大の力を発揮できる。
逆に言えば、このような山の中では無力に近い。
逆に、敢えて『文明』から離れる事によって、『新しい発見』を得られる筈だ。
そういう事を期待する気持ちもないではなかった。

「…………ん」

何か小さなものが視界を横切り、ふと足を止める。
それはスルスルと木の幹をよじ登っていく。
よく見ると『リス』だった。

「これも『新しい発見』ではあるかしら」

      パシャッ

木の枝で動きを止めたリスの姿を撮影し、コメントを付けて投稿する。

471美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/03(日) 22:04:51
>>470

『プラン9』の能力を最大限に発揮する方法。
それは自分が一番よく分かっている。
『モラル』という足枷を外してしまえばいい。

あくまで例えばの話だが、
『無差別に情報を抜いて拡散する』なんて事も出来てしまう。
しかも、それを実現する事には何の苦労もなく、おそらく露見する可能性も低い。
呆気ないくらい簡単に、人々の注目を集められる。

しかし、それは『パフォーマンス』ではなく『犯罪』だ。
社会秩序を乱しかねない使い方は、他ならぬ美作自身が許せない。
誰よりも『プラン9』が活かされる事を願いながら、
それを自分が阻んでいるというジレンマに、美作は葛藤し続けている。

「『使われない』っていうのは、『力』にとって幸せな事なのかしら」

     ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

             「それとも――――――」

考え事をしながら登り始めて、およそ五分後。
前方に立て看板が見えてきた。
どうやら、ここが『山頂』らしい。

        ザッ

「――――――『登頂完了』ね」

さすがに絶景は臨めないが、眼下に見える湖と、
そこに掛かる木製の橋は、なかなか風情がある。

        パシャッ

山頂を背景に、スマホを構えて『自撮り』する。

472薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/03(日) 23:35:48
>>471
山頂には先客がいた。
駐車場に自転車が一台停めてあったので、事前に予想はできたかもしれない。

茶色とベージュで統一された地味な服装の男性。歳は20代くらいだろうか。
背は高くも低くもなく、痩せても太ってもおらず、おおよそ特徴というものが見当たらない体格。
男性は後からやってきたあなたの方を振り返り、会釈をする。
何かを言いたそうな黒い、深淵の底のような瞳が印象的だった。


男性は『盾』のような……いや『盾そのもの』としか言いようのない物体を左手に持っている。
子供向けのオモチャだろうか?だが、あなたはその『盾』に見覚えがあるはずだ。

それは、先日『ニンゲン』を名乗る者によって強制的に参加させられた謎のゲーム、
その中で襲ってきた三人組の盗賊のひとりが持っていた『盾』とそっくりだった。

473美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/04(月) 03:54:30
>>472

写真を撮った後、少し遅れて『先客』に気付く。

「――――こんにちは」

     ニコッ

向き合う男性とは対照的に、一分の隙もない完璧な笑顔で会釈を返す。
そして、まず視界に飛び込んできたのは『盾』だ。
最初は疑問に思っただけだった。
真贋は別として、普段から持ち歩くような品物ではないし、
風変わりな『アウトドアグッズ』でもないだろう。
それを持参する理由が思い付かない。

「…………?」

しかし、何故か引っ掛かる。
記憶の片隅に、無視できない何かを感じた。
その正体を理解した時、頭の中でピースが嵌まる音が響く。

「あの、ちょっとお尋ねしたいんですけどぉ……」

「もしかして――『知らない誰かに閉じ込められた事』ってありません?」

常識で考えれば妙な質問だが、彼が『参加者』の一人だったなら、
これだけでも何を言わんとしているかは察しがつくだろう。

474薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/04(月) 12:32:26
>>473
「どうも」

サイクリングは薄島の趣味のひとつだ。
特に自然の中を一人で散策することは、普段人間の相手ばかりの
毎日の気疲れを癒すのに最適だと思っている。
山中の人目の付かないところで『イカルス・ライン』の射撃の練習もしているのだが……。

『イカルス・ライン』は『弓使い』のスタンドだ。この『盾』は『的』にちょうどいいのだった。
木にこの『盾』を括りつけて狙う──そうしてスタンドの練習をしているのだ。
あなたが目敏ければ、『盾』に何かで穿たれたような穴がいくつもあることに気付くだろう。

そんな練習をしていたが人が登って来たのでやめた、というのが今の状況だった。

「あー……急に始まって急に終わって、ギフト券を10万円分もらいましたが。
『VISITORS』だったか。何だったんでしょうね」

その男はまさしく参加者のひとりだった。

「知ってるってことはあなた……でも『ニンゲン』さんじゃあなさそうだ。
私以外の6人の誰かですか。私は『ヤガモ』です」

475美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/04(月) 17:09:35
>>474

『盾』の表面に穿たれた穴には気付いたが、
相手の雰囲気を察し、今は言及を避けておいた。

「『ヤガモ』――――」

立てた人差し指を口元に添わせ、緩やかに記憶を辿る。

「確か『仕事先』で巻き込まれた方ですよねぇ。
 実を言うと、私も同じ境遇だったんです。
 仕事中に『アレ』がありまして……」

当時を振り返り、苦笑いを浮かべた。

「『部屋』の受ける影響が、
 『ゲームと現実で繋がってる』って聞いた時は、
 思わず血の気が引いちゃいましたよ。
 高価な機器が色々ありましたから」

ミキシングコンソール、モニタースピーカー、コンデンサーマイク。
途中で終了した事も手伝い、結果的に破壊を免れた。
弁償する必要がなくなったのは救いではある。

「それから『トイレットペーパー』を送ってくれましたよね?」

目の前の彼が『届け先』を覚えていれば、この言葉で分かる筈だ。

476薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/04(月) 18:25:10
>>475
「ええ、ええ……清掃の仕事で向かった他所様のアパートだったもんで、
『部屋はリセットされない』って言われた時はどうしたもんかと思いました。
結果的には毛布くらいで済みましたが」

土足で踏み込まれた靴の跡などの汚れも発生したものの
もともと清掃で来ていたので予定通り仕事するだけで済んだのは幸いだった。
もしアパートの建て替えが必要なほどの被害が生じていれば、
二つある臓器の片方が無くなっていたかもしれない。

「あーなるほど。役に立つわけでもない高額機材が。
そりゃおっかないですね……お互いに無事でよかったものです」

安堵の気持ちを共有する。
薄島のいた部屋には高価な家財はなかったが、
他人様から預かった部屋で大事が無くて本当に助かった。

「ということは『カナリア』さんか。
いやぁ、まあ余っている品を送りつけただけでして。
情報を出したくないのか、せっかくの一日一回の日記を無為に書く人がいるなと思ったから
情報共有に積極的だと思った人へお礼を送ってみよう……という試みだったんですが。
そちらからの情報には助けられました」

薄島は相手が出したくないと思っている情報を引き出す──『交渉術』が得意ではない。
あのゲームの時は、その辺りで後れを取っている感覚があったため
お互いライバルよりも仲間として『情報を共有し合おう』という機運を醸成して補おうとしていたのだった。

477美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/04(月) 19:22:13
>>476

「あはは……『値段』もそうですけどね、
 『スケジュール』に支障が出なかった事にホッとしましたよ」

あの場所は『スタジオ』であり、そこに置いてあるのは全て『局の備品』だった。
それらが壊れたとなると、その後の予定に穴が空きかねない。
もちろん対策はされただろうが、何事もないのが一番だ。

「あれにはビックリしましたよぉ。
 まさか『品物が運ばれてくる』なんて思わなくて。
 でも、元気づけられました。
 物資が限られた状況で譲ってもらえたんですからね」

『上手く活用できたか』と言われると微妙な所だ。
あの時の『ヤガモ』自身が言っていたように『粗品』だったし、
そもそも使う前にゲーム自体がシャットダウンされてしまったのだから。
しかし、『隔離された空間に物資が届く』というのは、それだけでも有り難かった。

「私の『情報』がお役に立てたなら何よりです」

『メディアに携わる者』として、
『情報』を通して『誰かを助けたい』と思う気持ちがあった。
それゆえに、ささやかな『アドバイス』を流したのだが、
こうして同じ『参加者』と顔を合わせると、
その判断が正しかった事を実感できる。
『カナリアは生かす価値がある』と気付かせる事で、
『交渉』を有利に進める打算もなくはなかったが。

「そうそう――せっかく会えたんですし、『これ』渡しておきますね」

        スッ

名刺入れから『名刺』を一枚取り出し、『ヤガモ』に差し出す。

「――――よろしくお願いします」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

        星 見 F M 放 送

         *   *   *

        Electric Canary Garden

         *   *   *

      パーソナリティー:美作くるみ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そのような『所属』や『肩書』が記されている。
片隅には手書き風のイラストが添えられていた。
『電気コード』の付いた『デフォルメ調の小鳥』だ。

478薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/04(月) 19:56:22
>>477
「まあ、そういう『特殊技能』でもあったんで、活用しないとね。
……『スケジュール』ですか」

高額機材といい、なにか芸能関係の方だろうか?
そう思っているところへ名刺を渡される。

「ほう、星見FM……たまに聴きますよ。
配送の仕事をすることもあるので」

趣味のサイクリングにしろ、仕事での運転にしろ
ハンドルを握っている時におあつらえ向きなのが『ラジオ』というメディアだ。
残念ながら星見FMだけを聴くわけでもないし、彼女のファンというわけでもなかったが……
それは『言わぬが花』か。

「すみません、職業柄お返しの名刺を持っていなくて……」

バツが少し悪そうに懐からメモ帳を取り出すと、さらさらとペンで書いて手渡す。


薄島 漣
       080-****-****


「配送だの清掃だの、地味な仕事ばかり点々としています。
少し古い言葉ですが『フリーター』ってやつですか。
薄島 漣(すすきしま れん)です」

479美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/04(月) 20:41:46
>>478

手渡されたメモ用紙を受け取り、そこに書かれた文面に目を通す。

「ご丁寧にありがとうございます。『薄島さん』ですね」

『人脈』は広い方がいい。
特に『スタンド使い』の人材は。
個人としてだけではなく、『門倉派』としてもそうだ。

「現代は『ネット社会』ですけど、
 大きな災害が起きた時に役立つのが『ラジオ』ですから。
 いざという時に必要とされる重要なメディアなんですよ。
 安定して受信できるだけじゃなく、『情報の質』という意味も含めてです」

今はネットに繋がってさえいれば、大抵の情報は手に入れられる。
しかし、情報の数が大量になると、
『フェイク』や『誤情報』の流布も増える事は避けられない。
ましてや非常時ともなれば、尚更その傾向は加速してしまい、
さらなる混乱を引き起こす原因になってしまう。
それ以前に、ネットが使えなくなる可能性も有り得るのだ。
緊急時であっても機能し、情報に『一定の質』が維持される『ラジオ』の需要は、
現代社会においても決してなくなる事はない。

「ところで、薄島さんは『ああいう事』には慣れてらっしゃいます?
 ええと、『スタンド絡み』の件について。
 私は……まぁ、なんというか『触り程度』なんですけど」

こうして会えたのも何かの縁かもしれない。
多少の『情報共有』はしておいて損はないだろう。
ただ、薄島の認知度によって、話す内容は変わってくる。

480薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/04(月) 21:28:13
>>479
「なるほど。確かに発信する側の設備と、受信する側の機器さえあれば聴けますからね。
しかし『情報の質』というのは……まあ難しい話ですね」

『何かを言いたげな目』で美作を見る薄島。

なにをもって情報の質とするか。それを決めることは難しい。
かつて郵便屋だった薄島。郵便配達員には『通信の秘密』を遵守することが求められる。
それは『どんな情報が伝達されているかに関知しない』ということであり、
たとえ邪悪なやり取りが行われていようと『全て素通しする』ということだ。
それは警察のような国家権力すら協力を求めることのできない、重いものだった。

「それは『フィルタリング』ということですから。
そこに善意がなければ、容易に堕落するものですし」

個から個への通信を右から左へ素通しするだけの薄島のような郵便屋と違い、
多数の公共へ発信する美作らマスコミには素通しなど不適切なばかりでなく、物理的にも不可能だ。
そこにはどうしても発信者による『フィルター』がかかる。
『フィルター』の『質』とはなにか?

「……失礼、釈迦に説法ですね」


「スタンド絡みの件……ですか。
残念ながら私も『ああいうの』はこの間のアレが初めてですよ。
まあ仕事柄、噂程度に耳に入ることはありますが……」

あちこちをウロチョロしているので色んな物事や人との接点は得やすい。
人に深く関わらない性格ゆえ『そうと知らずに出会って別れた』こともあったのかもしれない。

「そういえば……この間は路地裏でおかしな女を見かけましたね。
群れをなす野良猫に襲われながら、傘一本でそれらをちぎっては投げていました。
両者ともスタンド像らしきものは見当たりませんでしたが、アレもスタンド絡みだったのかな……?」

481美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/04(月) 23:15:57
>>480

「おっしゃる通りです。
 その為に『電波法』や『放送法』という決まりがあり、
 『電波の使用』には客観的かつ明確な定義が定められ、
 問題が生じた際に及ぶ『責任の所在』が明らかにされています。
 そして、それらを以てしても『絶対確実』は有り得ない。
 他のメディアと比較した場合の『相対的な評価』に過ぎません」

美作くるみは『何か言いたげな顔』はしていなかった。
にこやかな表情を崩さないのは、薄島のように『生まれつき』ではない。
経験と訓練によって培われた『技術』だ。
しかし、言葉には『真剣さ』が込められている。
目の前にいる男性は『ラジオ』に――『美作くるみの生きる世界』に一石を投じているのだ。
それと真剣に向き合わずして『メディア関係者』は名乗れない。
『リスナー』を大事にせずに『パーソナリティー』を名乗れはしない。

「『放送の倫理』については、私も常日頃から考えています。
 いえ…………『この仕事』を続けている間は、
 ずっと考え続けなければならない問題でしょう。
 実を言うと、ここに来るまでも考えていたんですよ」

薄島が何気なく口にした問い掛けは、
美作の『スタンド使いとしての本質』をも突いていた。

「例えば、私に『社会を混乱に陥れる力』があるとします。
 それを実現するのは至って簡単で、不用意に証拠を残す事もありません。
 そして、『その力を活かす事』を、私は心から望んでいる」

『例えば』と前置きしているが、全て『事実』だ。
やろうと思えば、世間を騒がせる事くらいは幾らでも出来てしまう。
それも『ノーリスク』で。

「でも――――私は『そうしません』。
 これから先も決して実行しないでしょう。
 私の『キャリア』に誓って、それだけはお約束します」

口先だけなら何とでも言える。
そう思われても当然だろう。
だが、『断言』する。
『今だからこそ言い切れる』と言うべきか。
『プラン9・チャンネル7』という力。
圧倒的であるからこそ、『モラル』を欠いた使い方は出来ない。
同時に、この才能を華々しく『開花』させたいという強い願望がある。
この葛藤、ジレンマ、苦悩は、他人には理解しがたい領域かもしれない。
『力の使い方』に悩み苦しみ、ようやく『道』を見出した今だからこそ、『断言』できるのだ。

       美作くるみの表情は、『そういう顔』だった。

「…………話が逸れましたね。
 メディアが間違いを犯した時は、薄島さん達に『声を上げる権利』があります。
 それを躊躇わずに行使して下さい。
 『より良いメディア』を、ぜひ私達と一緒に作り上げて下さい」
 
「これは私からの『お願い』です」

そこまで言い終わると一礼し、少し間を置いて口を開く。

「――――薄島さんは『アリーナ』という組織をご存知ですか?」

482薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/05(火) 00:10:08
>>481
「……なるほど」

微笑む。
薄島の闇の底のような瞳が、眩しいものを見るかのような笑顔に変わった。
その眼差しが伝えるものは『敬意』。『何か』ではなくはっきりと見て取れた。

「それは私個人に対してというより、ラジオの向こうの人たち……
いやそれ以外も含めた『世間』みんなに対する宣誓ですかね。
『リスナーを代表して』……というのは僭越ですが、ええ、確かに聞きました」

彼女の番組のファンでもない自分にその資格があるかはやや怪しいが、それを言うのは野暮か。

薄島にはもちろん美作のスタンド能力まではわからない。
ただあのゲームに参加させられた以上、スタンド使いではあるのだろう。
仮に放送に何ら関係のない能力であっても『スタンド使いのマスコミ関係者』というだけでも
今の星見町の秩序を乱すくらいはいくらでもできてしまうに違いない。

それを思えば、美作の宣言は立派だと思った。


「わかりました。頼まれた以上は心に留めておきます」

『お願い』を受け取る。
今日まで、薄島は他人に深く関わることを避けてきた。
『イカルス・ライン』が矢として放つメッセージには必ず『矢傷』の痛みが伴う。
わざわざ傷つかなくても伝わる要件にはあえて自分が介在する必要はない。
そんな生き方を選んできた。

だが、こうして真摯に語り合って無下にするほど冷淡でもないのだ。


もしも、世の多くの人が彼女のラジオの間違いを正したいと願った時は──

『イカルス・ライン』の欠点は『矢の供給』に困ることだ。
薄島自身の意見を扱うことには向いていない。
矢となるのは原則として『誰かに託されたメッセージ』だ。

──だからその時は、無数の矢が降り注ぐことになろう。


もちろん、今の彼女からはそんなことは想像もつかないが。


「『アリーナ』……いえ、初めて聞く名前です」

483美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/05(火) 22:11:08
>>482

「――――ありがとうございます」

心からの『誠意』を短い謝辞に込めて、焦点を次の話題に切り替える。

「端的に説明すると、『アリーナ』は『スタンド使いの組織』です。
 『全員がスタンド使い』という訳じゃなく、
 あくまで『スタンド使いが中核になっている』という意味ですが……」

「もう少し細かく言うと、幾つかの『派閥』が集まって出来上がっている組織ですね。
 『スタンド使いの闘技場』があって、その運営が活動のメインです」

「私も『アリーナ』が開催する『興行』に、一度だけ『出場』した事があるんですよ。
 例の『VISITORS』に巻き込まれたのは、その後でした」

簡潔な説明を終え、一呼吸つく。
最初は『出場者の一人』だった自分も、今では『アリーナの一員』になっている。
ただし、現時点では『名前だけ』の状態に近い。

「関わりを持つ事になるかは別として、薄島さんも『スタンド使い』であれば、
 存在を知っておいても損はないんじゃないかなと思います」

484薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/05(火) 22:47:33
>>483
「『闘技場』を運営する組織ですか。
しかも実態は雑多な派閥の寄せ集めであると」

スタンド使いを戦わせて興行を行うという商売はいかにもあり得そうだ。
それがそんなにも盛り上がっているとは。自分の耳に入っていないということは
表沙汰で大っぴらに行われてはいないのだろうが。


「闘ったんですか?
それは……失礼ですが、意外ですね」

ラジオパーソナリティーとして表の顔を持つ女性が、裏の闘技に。
しかも実況解説とかではなく選手として参加するとは驚いた。
美作のここまでの態度からも想像がつかない。
実はメディア人としての表の顔を見せているに過ぎなかったのだろうか?

(いや、已むに已まれぬ事情があったのかもしれないしな)


「そうですね、どう関わるかはともかくとして
知っておいた方が良さそうです。詳しく聞かせてください」

485美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/05(火) 23:35:34
>>484

「あぁ、私は『試合』に出た訳じゃあないんです。
 『闘技場』が『興行』のメインストリームなのは事実ですけど、それだけじゃなくて。
 私が参加したのは『競技』なんですよ」

「提示された『シチュエーション』に対して、
 それぞれの選手が『能力』を使って対応し、
 幾つかの項目に分けて『採点』されるという趣向でした。
 最終的に『得点の高い人が優勝する』という流れでしたね」

あの日の事を思い出す。
溢れんばかりの大歓声に包まれて、大きなステージに立つ感覚を。
かつて『アイドル』として活動していた時代と重なる心地良い瞬間だった。

「もし『殴り合って欲しい』と言われていたら、間違いなく断ってたと思います」

薄島は知らない事だが、『プラン9・チャンネル7』に戦闘能力は皆無だ。
強い弱い以前に、『戦闘』という行為そのものが不可能。
もっとも、仮に『戦える力』があったとしても、
そういった場は美作の望む『舞台』ではなかった。

「そんな風に、『アリーナ』は『闘技場以外の興行』も行っているんです。
 でも、そういう派閥は『少数派』みたいですね」

それをやろうとしているのが『門倉派』だ。
しかし、そこまで言ってしまう事は躊躇った。
人脈は広い方がいいが、実際に協力してもらうとなると、
やはり『適性』を考慮しない訳にはいかない。
現在は『アイドル候補』を探すのが最優先。
その考えからいくと、薄島は『候補者』には成り得ないだろう。

「それから、場合によっては街の『治安維持』とか、そういった側面もあるそうですよ」

486薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/06(水) 01:31:03
>>485
「へぇ……
そういうスポーツめいたことをしてる団体もあるんですね」

『アリーナ』、思ったより懐の深い組織のようだ。
芸能人が課題にチャレンジする系のテレビ番組を連想した。


(まあ、僕はあんまりスポットライトを浴びるのは好きじゃないけども……)

美作が『薄島にアイドルの適性がない』と見て取ったのは正しい。
それはルックスの面でもそうだし、性格的にも向かないだろう。
そしてそれは『闘技』でもおそらくはそうだ。
薄島は一対一の接近戦より、多対多の広域戦で輝くタイプといえる。

「参加したいかと言われると痛いのはあんまり好きじゃありませんが……
観戦もできるなら、いちど見てみたいですね」

『まずは観客として』。可能なら、それが一番穏当かつ『百聞は一見に如かず』だ。
その伝手を美作が持っているかはわからないが。


「なるほど治安維持活動ですか……うーん」

薄島は『悪事を働く側にも事情があるのではないか』と考えてしまうタイプだ。
正義感をもって自警団のような真似を進んでするのは柄じゃないとは思う。
とはいえ、それは人間らしさの残る『小悪党』に対してのこと。
唾棄すべき邪悪や大被害をもたらしそうな巨悪に立ち向かう者がいるなら、
それを助ける仲間の一人になることは吝かでない。
さらに言えば上述の通り『誰かと組んだ方が能力的にはシナジー』だ。

「正直言いますとね。
スタンド能力が『後衛向き』なもので『前衛』がいた方が能力を生かせるんでしょうけど……
もし『上から正義を押し付けるような』治安維持だったら、あんまり気が進まないんです。
だからそれこそ詳細を聞かない段階で『やりたい』と言える話じゃないですね」

487美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/06(水) 16:39:35
>>486

「それが普通の感覚だと思いますよ。
 『アリーナ』の全体像については、私も良く知らないんですから。
 さっきも言いましたけど、『アリーナ』の『興行』に参加したのは、
 『その一回きり』なんですからね」

『門倉派』としての『興行』は『まだ実現していない』。
『アリーナ』の全容を知らないのも本当だ。
この辺りの認識は、おそらく代表者の『門倉』も同じようなものだろう。

「あ、もう一つありました。
 『アリーナ』主催の『パーティー』に出席した事があります。
 その時は、ただ食事をしながらお喋りするだけでしたけど」

思えば、あの時が最初だったのだ。
『アリーナ』という存在を知り、次に『選手』として出場した。
そして、今では『構成員』の一人。

「ご存知かどうか知りませんが、『夏の魔物事件』というのがあったんです。
 何十年前も前から沢山の被害者が出ていた大規模な事件で、
 私も『解決』に協力させてもらいました。
 ただ、『協力依頼』を出してきたのは、
 事件と直接の関わりがあった人で、『アリーナ』とは無関係です」

「その事件に『アリーナ』が関わったという話は聞きましたね。
 といっても、彼らが主導で動いた訳じゃなく、
 あくまで『バックアップした』という事らしいです」

「かなり大きな事件でしたし、そこで『自分から舵を取らなかった』というのは、
 不用意に動かないスタンスがあるのかもしれません。
 大抵の場合、大きな組織ほど腰は重くなりがちですし」

『魔物事件』には、美作自身も大いに関わった。
その件に『アリーナが関与したらしい』と聞いたので、
『治安維持的な側面もある』と考えたのだ。
これくらいしか根拠はないが、
大規模な事件でも主導権を握らなかった事から、
ある程度の推測は成り立つ。

「もし『観戦』したいのでしたら、私が紹介しますよ。
 私も一度は『出場』した身ですから、
 もしかすると『観戦の案内』が回ってくるかもしれません。
 その時は薄島さんにお知らせしますね」

「実を言うと、後学の為に『観戦』に行った事もあるんです。
 まぁ、なんというか『凄かった』ですよ。
 お客さんの熱気や雰囲気の盛り上がりもですけど、
 やっぱり『試合』となると、お互いに『攻撃』が飛び交う訳で…………」

「『スタンド使いの戦い』というのを初めて見たんですけど、圧倒されましたね」

『扇原映華』と『結城迦楼羅』の試合を思い出す。
あれは『プラン9』では踏み込めない領域だった。
逆に、彼らには踏み込めないのが『美作の領域』なのだが。

488薄島漣『イカルス・ライン』:2023/12/06(水) 20:55:07
>>487
「『夏の魔物』。そんな事件が……。
そうですね、個別の案件の事情を考えた上で
そんな風に依頼を受ける形の方がしっくりきます」

ふんわりとだが輪郭は掴めてきた。
伝手があれば、何かあった時に縁になるだろう。
『夏の魔物』については縁がなく、薄島はまったく蚊帳の外だった。


「それはいい刺激になりそうです。是非とも機会があれば。
スタンドに目覚めてから、いままで一人で練習するしかできませんでしたから」

美作がその道のプロだということももちろんあるのだろうが、
言葉での説明だけでも『アリーナ』の試合の熱さは伝わってきた。
薄島はスタンドに目覚めて結構経つが、実践というものをまだ見たことはない。
スタンド同士の戦いとはどういうものか知れば参考になる。

「それじゃあ、何かあったらさっきの連絡先にでも。
……電話番号だけじゃアレか。SNSの連絡先もどうぞ。
では」

パーソナリティーの仕事中とかでは電話だと差し支える場面もあるだろう。
メモ帳にSNSの連絡先を記して渡し、その場を去る。


(『Electric Canary Garden』か。次のオンエアはいつかな)

ラジオは今まで聴きたくなった時に適当に付けて
やっている番組を聴くだけだったが、せっかくだから美作の番組を聴いてみようか。
そう思いながら山道を降りて行った。

489美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/12/07(木) 16:55:57
>>488

「これはどうも。
 こちらこそ、あの『ゲーム』に参加していた方と、
 こうして出会えた事を嬉しく思っています。
 もし何かあれば、連絡を取らせていただきますね」

     ニコリ

「薄島さん、ではまた――――」

メモ用紙を受け取り、笑顔で会釈して薄島を見送る。
そういえば、彼が持っていた『盾』を見て、困った事を思い出した。
今、美作の手元には『サーベル』があるのだ。
『銃砲刀剣類登録証』を申請しようとしたのだが、
対象になるのは『日本刀』のみで、それ以外は認められないらしい。
とりあえず自宅に置いてあるものの、どうするべきか。

「まさか『ゲームの世界から持ち帰ってきた』なんて言えないし…………」

おいおい考えるとして、今は『他にやるべき事』があった。

         パシャッ

薄島に会う前に撮影した『自撮り写真』。
それを改めて撮り直す。
今の方が『いい表情』が出来るような気がしたからだ。
そうだとしたら、きっと薄島と話したせいだろう。
心の中にあった『わだかまり』が一つ解消できたように思える。

「――――やっぱり『こっちの方』が写真映りいいじゃない」

490宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/07(木) 17:37:18

寂れた神社に一人の男が佇んでいた。
カーキ色の作業服と革手袋を身に着けている。
足元を覆うのは無骨な安全靴だ。

「『見込みは薄い』と思っていたが――――」

周囲を見渡し、境内を歩き始める。
やがて辿り着いたのは石垣の一角だった。
『あの男』は、そこに座っていた筈だ。
『暗灰色の瞳』に『乾いた光』を湛えた男。
酷く『冷えた目』を持っていた事を覚えている。
『殺手のマテリア』と『同じ目』だった。
そして、今は『俺の目』も似たようなものだろう。

「やはり『いない』ようだな」

胸ポケットから小箱を取り出す。
箱の前面には『ココアシガレット』と書かれている。
昔からある駄菓子の一種だった。

「――――少し『待つ』か」

あの日、『あの男が座っていた場所』に腰を下ろす。
一度しか会っておらず、約束もしていないような相手と、
本気で再会できるとは考えていない。
『待つ』というのは『ここに来る誰かを待つ』という意味だった。

491ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/08(金) 11:02:37
>>490(遅レスとなりますが、宜しくお願いします)


 コツ
    コツ
         コツ……
 
   「―――『蝙蝠』……」

境内に、一人の人影が新たに訪れる。貴方に、宗像に気づいてる様子は無い。

頭上に首を回し、何か探してる素振りだ。そして、恰好も頭まで隠すフードで
顔は包帯で覆っており、異様だ。

 低い声は、一言そう空飛ぶ存在の名を唱えていた。
貴方にも、つい最近記憶に焼き付く呼称だろう。

 
 コツ コツ コツ チャリン……

 男性らしい、素性も不明な人物は賽銭箱に近づくとズボンから
剥き出しの小銭を数枚掴むと、箱に投げ込む。

 (……神頼みしか、今は縋る方法が皮肉にも他に余り無い)

幾らか町を練り歩いてみた。だが、『蝙蝠の男』の情報を得る事は叶わなかった。

 残るは、『小林』の頃の伝手だ。だが、それはノエにとって禁じ手であり
決して選ぶ事は出来ない。

 (『ロダン』にも、この話はするべきか? ……情報網は広いだろう。
だが、オレに出せる対価は今は無い)

 賽銭箱の前で、考え込む。思考に没頭してる為に宗像が
声を掛けるか近寄らない限りは意識を向けないだろう。

492宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/08(金) 14:33:54
>>491

あの日、ここで『殺し屋』と出会った男がいた。
今は、その男自身も『同業者』だ。
仮に、『殺し屋になった男』が『あの日と同じ場所』にいたとして、
『男と出会う者』は『同じ道』を辿るのか。
何の根拠もない迷信じみた話だが、数日前から漠然とした疑問を感じていた。
俺が『ここ』に来たのは、それを確かめる為だったのかもしれない。

          ビリィッ

賽銭箱の前に立つノエの後方で、不意にビニールを裂くような音が響いた。
ココアシガレットの包装を破いた音だ。
それに反応したなら、石垣に腰を下ろした人影にも気付けるだろう。

「――――『願掛け』か?」

『あの日に聞いた問い掛けと似た言葉』を、包帯の男に投げ掛ける。

493ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/08(金) 15:59:18
>>492

> ビリィッ

クルッ

振り返り、片手を服の内側に触れるように手を差し込める。

服の裏にはペットボトルを括り付けている。中身は湖畔の水だ。

>『願掛け』か?

石垣に座る人影を見て、包帯から覗かせる琥珀色の目を僅かに細めて
手の動きは止まるものの、下す事は無い。

夢の中の人影と、その人物の背格好は一致しない。
いや、あの蝙蝠の男が姿形を変えられるなら、夢の中の人物像に意味は無いが。

「……あぁ」

「『蝙蝠』を探してる」

(どうオレの言葉に反応する)

雰囲気や気配は、只者で無いと直感が囁く。

オレを、蝙蝠の男は把握してないだろう。小林は死んだ
ノエのオレを知る術は無い。だが、奴の仲間にそう言う能力者が
万が一でも無い可能性は、疑うべきだろう。

 警戒は崩さず、男の動きを注意深く見定める。

494宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/08(金) 16:46:10
>>493

身なりの異質さは気にならなかったが、相手が取った行動には注意を引かれた。
反射的な動作にしては、妙に手慣れたものを感じる。
そこから汲み取れたのは、『場数を踏んだ者の動き』だ。

「水を差すようで悪いが、見つけるのは難しいだろうな」

包帯の男から見て、『俺の目』には何が映っているのか。
そこにあるのは『乾いた光』か『冷えた眼差し』か。
俺に知る術はない。

「俺の知識が間違っていなければ、この時期は『冬眠』している筈だ」

今は『真冬』だ。
蝙蝠が活発に活動する季節は、とっくに過ぎてしまっている。
常識で考えるなら見つかるとは思えない。
だが、目の前の男は『蝙蝠を探している』と言う。
不可解な話ではあった。

「それとも『蝙蝠に似た何か』の話か?」

『季節外れの蝙蝠』から頭に浮かぶのは、
『カーディナル・シン』と呼ばれた『スタンド』だった。

495ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/09(土) 22:22:49
>>494(レス遅れ失礼しました)

男の瞳の光の色合いを、ノエがどう解釈して推測を立てるか。
 答えを出すには半日以上の時を有する必要がある。

その目の色合いよりも、まず先に男の言葉に対してどう返すか。重要なのは其処だ。

明らかに『蝙蝠』に対して強く反応はしてない。『クロ』では無い。

だからと言って、明け透けに自分が蝙蝠に変化する男の事を
洗いざらい告げるかと言えば、否だ。手前勝手な目的で探してるが
 その相手の危険性を熟知してるなら、吹聴するのは下の下の策でしかない。

「……そうだな、あんたの言葉は正しい。見た目通りに
オレは頭の中も普通じゃないんだろう。
 『普通の人には見えない蝙蝠』、そんな代物を探してるって言うなら」

「あんたは、どう思う?」

 さらに、深堀りするように言葉を重ねる。

深く、この話題を追求しようと思ったのは、その対峙する男の気配が
自分と同じく陽の光が当たらぬ陰りの匂いを無意識に嗅ぎついた故か。
 または、暗中の中で手あたり次第に手応えを求めたからかも。

 とは言え、言葉の賽は投げられた。もう戻す事は出来ない。

496宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/09(土) 23:16:57
>>495

大方の察しはついたが、腑に落ちない点もある。

「今の言葉は『限られた人間には見える』と解釈した」

俺が対峙した『カーディナル・シン』は、
『血肉』を取り込んで『実体化』したスタンドだった。
そうだとすれば『一般人』にも見える筈だ。
だが、異常な『しぶとさ』を含め、『ハイネ』には謎が多い。
あるいは、単に発現するだけなら、『実体化は不要』とも取れる。
いずれにせよ、未知の何かがあったとしても不思議はないだろう。

「簡単に探せるものではないだろうが、
 少なくとも『真冬の蝙蝠』よりは見込みがあるだろう」

村田の話では、奴は『手駒』を増やしている。
『方法』は聞かなかったが、『威武』から得た情報と繋ぎ合わせれば、
それを推測する事は難しくない。
『刀を持った男』、『刀傷』、『増えるスタンド使い』。
総括すると『刀で斬られた者がスタンド使いになる』と考えるのが妥当だ。
そして、人目を引きやすい行動を続けていれば、
いつか何処かで『誰か』の目に触れる事は避けられない。

「『その蝙蝠』なら俺も見た事がある」

包帯の男を見据えたまま、おもむろに腰を浮かし、
座っていた石垣から地面に降り立つ。

497ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/10(日) 13:12:58
>>496

ノエには『カーディナル・シン』の全貌を知る由は無い。知ってるのは
夢で知った群体の蝙蝠から人に代わる事、また村田や黒羽と共闘の際に
見た一匹の蝙蝠、それが恐らく関連してると推測のみ。全て気の迷いで
論破される程の儚い手掛かりのみだ。

ノエには、『蝙蝠』がスタンドであるだろうと推察は出来てる。
だが、それが実体化か非実体化を任意で出来るのか? 元々実体してるのかも
判断出来ない。だが、スタンド使いなら普通の人間には見えない。その言葉で
察せられるだろう。そう見当をつけての問いかけだ。

>『その蝙蝠』なら俺も見た事がある

「そうか」

 腰を浮かせた挙動に反応する事はしない。敵と見定めてるなら既に
仕掛けているだろう。少ない反撃の手口を見せるのには遅すぎるし
その必要は無いと判断する。

「オレは、そいつを追ってる。人相は『幾らか把握』してる
手段まで教える気が無いがな」

「……あんたは、何処までそいつの情報を把握してる?
等価交換だ」

アレは、確かに夢だ。だが、只の夢で無いのは間違いない。

目の前の男が、そいつと何処まで関わってるかは知らない。だが
手掛かりがあるなら、少ない対価だが渡そう。

498宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/10(日) 15:24:35
>>497

握力の具合を確かめるように、『左手』を軽く握り締める。
この『後遺症』は『殺し屋の形見』だ。
俺が生きている限り、捨てる事は出来ない。

「俺は奴と戦った」

あの『仕事』を思い出すと、生々しい『血の匂い』が蘇る。

「話す代わりに、この場で俺と戦ってもらう」

『交換条件』を口にしながら、改めて境内を確認する。
正面に『社殿』が鎮座し、入口の『鳥居』までは『石畳』が通っていた。
その左右には『狛犬』や『石灯籠』が並び立つ。

「個人的な事情で『戦力』が低下しているが、
 その状態で『どこまでやれるか』を確かめておく必要がある」

『左腕の精度』が落ちた事は、致命的ではないにせよ、小さくない足枷だ。
今の状態を踏まえた上で、戦い方を考え直さなければならなかった。
そして、その相手は『熟練者』であるほど都合がいい。

「『練度の高い人間』と『手合わせ』すれば、今後の参考になるだろう」

包帯の男は、相当な『経験』を積んでいると判断した。
先程の自然な動きから、それが読み取れる。
相手に取って不足はない。

「そちらも『準備』は出来ている筈だ」

『衣服の内側に差し込まれた片手』に視線を向け、
ココアシガレットを胸ポケットに収める。

499ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/10(日) 16:22:01
>>498
(本格的なバトルになるまでに、こちらは中断する方針ですが
もし望むのであればバトルスレに移行します)

>俺は奴と戦った

 ピク

「……そうか」

>話す代わりに、この場で俺と戦ってもらう

>『どこまでやれるか』を確かめておく必要がある

「……そうか  ――是非に及ばず
オレもオレの為に、試すのは願っても無い機会だ」

神社なら『手水舎』があるだろう。チラッと一瞬目線をそちらに移したが
特に仕込む事はせず、歩みは『狛犬』の方に向け歩く。
 そして、懐に忍ばせたペットボトルと、ポケットに入れてた残る小銭を
掲げて、告げる。

「立ち位置は、どちらも此処から。合図は、ポケットにコインもあるが……
あんたが好きなやり方で決めてくれれば良い」

 男(宗像)が好きにして良いと言うなら、軽くペットボトルの水を口に
含んだ後に、コインを宙に投げる。落ちたら……手合わせの開始だ。

500宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/10(日) 17:50:43
>>499

包帯の男と向き合うように、反対側の『狛犬』に歩いていく。
互いの距離は『5m』程だろうか。
相手と同時に立ち止まり、掲げられたコインに視線を移す。

「見ず知らずの相手と『殺し合い』をするつもりはない」

いくら寂れた場所とはいえ、『神社』を『血』で汚す事は忍びない。

「どちらかが一度でも『有効打』を命中させた時点で『決着』だ」

死力を尽くした『命のやり取り』においては、
たった一度『触れられただけ』で、『死』に直結する状況は珍しくない。
俺も『そうなる筈だった』。
『アリーナ』が何らかの処置を施したらしいが、
おそらく『死にかけた』というよりは『生き返った』と呼ぶ方が近いだろう。

「――――戦う前に一つだけ聞きたい事がある」

包帯の男の姿が、記憶の中で『熊野風鈴』と重なり合う。
『花屋』の前で奴と対峙した時、こう考えた。
こちらが明確な攻撃行動に出れば、『フォー・エヴァ・ロイヤル』は迎撃するだろう。
そして、向こうの方が速い以上、俺は一撃を食らう事になる。
それを『引き金』として『能力』を発動し、その場で熊野を八つ裂きにする。

「『自立した意思を持つスタンド』についてだが――――」

しかし、俺は『執行猶予』を選択した。
他でもない『熊野のスタンド』によって、
『間接的に助けられた事実』を否定できなかったからだ。
スタンドが『精神の象徴』であるなら、
『フォー・エヴァ・ロイヤル』の言動を、
『本体の良心』と解釈する事も出来る。

「『スタンドの意思』は、どこまで『本体の意識』と繋がっていると思う?」

『アヴィーチー』の一部である『ノコギリザメ』も『自我』を持つ。
それは『スタンド自身の意志』であり、
『本体の精神』が形を成した存在だと言える。
『ノコギリザメ』に宿る『凶暴性』は、間違いなく俺自身の中から現れたものだ。
『事件の現場』で『フォー・エヴァ・ロイヤル』が言いかけた事も、
本体が無意識の内に『真実』を明かそうとしていたのかもしれない。
実情は定かではないが、結果的に俺は『欺かれると同時に助けられた』。
奇妙な話ではあるものの、それは紛れもない『事実』だ。
そうだとすれば、考慮しなければ『義理』を欠く。

501熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/10(日) 22:42:37
>>499-500

その時、人気のないはずの神社に近付く者がいた
ハイブランドのコートに上品な格調のブラウスで身を包んだ女だ
彼女は緊迫感が満ちる境内へと近づき・・・・そこで見知った男性がいる事に気付いて笑みを浮かべた

「あら? ふ、ふふふ・・・・」

502宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/10(日) 23:00:57
>>501

(※ノエPCとのやり取りが終わるまでは、そちらに対しては反応できる余裕がない。
  終わった後であれば、おそらく反応できると思われる。
  または『一方的にやり取りを見ていた』などの形にしてくれても構わない)

503ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/11(月) 12:19:59
>>501-502(レス遅れ失礼、宗像PCと同上の意見です)

>どちらかが一度でも『有効打』を命中させた時点で『決着』だ

その言葉に無言でコクリと頷く。
 『ゼロ・モーメント』は本来、相手に披露した時点で『敗北』に近しい。
奇襲によって最大の効果が発揮すると考えてるし、目の前の男の申し出を
普通ならば辞退するべきなのか賢い。だが

(『運命』は何時であれ自分を優遇などしない。未来を手繰り寄せるのは
己の力を最終的に発揮しない事には)

蝙蝠の男と対峙した時、幸運に雨が降るか? 水場が近くにあるか?
 弾丸に出来る程の大量の水を、仲間を備えてるか?

運では勝利を手に出来ない。一人では白星を手にした事も未だ覚えが無い。

(『ゼロ』のままに 何を成せるか……何を得れるか)

コインを投げる前に水を含もうと、腕を上げ。そして、男の問いかけに
暫く口閉ざす。気を害した訳では無い、答えを紡ぐのに暫し考えを整理した。

>『スタンドの意思』は、どこまで『本体の意識』と繋がっていると思う?

「……難しい問いだな」

自立した精神の意思。それで思い浮かぶのは、あの黒い影法師
討つ事は叶わなかった。そして、魔物の手によって夏の象徴へ変化し
本体と分離した存在(エド・サンズ)。小林は、言葉を交わす機会は
あの騒動の状況だとほぼ無かったが、それでも記憶に強く残ってる。

最近でノエが遭遇した事件で思い出すなら『ナイトメア』だ。
 あれは自立、と言うよりは自動操縦と言うべきだろうが
少年の苦しみを緩和する為に産まれたものだった。

『ゼロ・モーメント』は群体だ。意思は存在しない、ただ自分の意思の任意で
動き、硝子の球の弾となる。彼が求める答えの一助に足りえない。

「……オレ個人の考えに、なるが。
『自立』されたスタンドならば、その時点で本体との繋がりは
『意識』と言う意味合いでは無いと思う。だが、少なからず
『心』の繋がりはあるんじゃないか? 表面的な繋がりじゃない
もっと根深い部分で……」

「……長話をし過ぎたな」  ゴキュ


           ――ピィンッ

答えを言い終えると共に、ペットボトルの水を口に含みコインが指から弾かれ
宙を舞う。回る硬貨の光が鈍く空の陽に反射しつつ……地面の石畳へ接触しようとする。

504宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/11(月) 14:45:20
>>503

『熊野風鈴』は十中八九『りん』から手を引かない。
おそらく『警告』は無駄に終わるだろう。
それは最初から明らかだった。

「――――『貴重な見解』だった」

だが、包帯の男が言うように、
本体とスタンドの間に『根深い心の繋がり』があるなら、
『僅かな可能性』は残されているのかもしれない。
『スタンドが本体を止められる』とは思わないが、
『フォー・エヴァ・ロイヤル』には『借り』がある。
『借りを返す』という意味でも、あの場で仕掛ける事は出来なかった。
しかし、『一度だけ』だ。
『二度目』はない。

「俺の名は『宗像征爾』――――」

太陽光を反射しながら空中で回転するコインが、
冷え切った石畳に向けて落下していく。

      キィンッ

まもなく、金属質の音が境内に響いた。
周囲が静かだった事もあり、その音は意外に大きく聞こえる。
境内の外にいた者にも聞こえただろう。

       アヴィーチー
  「これは『無間地獄』だ」

            ズ ズ ズ ズ ズ

開始の合図と同時に『自らのスタンド』を発現する。
『ノコギリザメの意匠』を持つ『右腕』に、
長大な『鋸』を備えた人型のヴィジョンだ。
一方、『左腕』には全体的に『罅』が走り、何らかの『前兆』を思わせた。

         ザ ッ

相手の動向に注意を払いながら『アヴィーチー』を半身に立たせ、
最大まで展開した『鋸』と『右腕そのもの』を『盾』にするように構える。
これは『訓練』だが、仮に『実戦』なら『一撃で即死』だ。
積極的に攻め込んで相手の攻撃を誘い、
『発動条件』を満たすのが『アヴィーチー』の常套手段だが、
瞬時に決着する状況では慎重に立ち回らなければならない。

505熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/11(月) 16:52:11
>>503-504

「・・・・・・・。」

そこに居たのは2人の男(?)たち
いや・・・・一人は顔に包帯を巻いているせいで生物も明らかではないのだが
どちらにせよ互いに尋常の人間でない事は確かだろう

「ふぅん・・・・・」

境内に流れる剣呑な気配を感じ取り、物陰で息をひそめる熊野
彼らが対峙する様子を見ながら、唇が不満の形に突き出される

「何、あれ・・・・・」

彼らは戦いに臨んでいた・・・・そう、『戦って』いるのだ

「私には・・・・何もしてくれなかったくせに」

だからこそ・・・・熊野の心の中には腹立たしさがあった
宗像という男が、自分ではなく『包帯男』を害そうとしている事に不満があったのだ

「ま、いいか
 宗像さんには『素敵なプレゼント』を用意しているのですもの」

ポケットの中に突っ込んだ『スマートフォン』を弄りながら
彼らの戦いの決着が着くのを見守る

506ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/12(火) 12:11:09
>>504


        アヴィーチー
  「これは『無間地獄』だ」


    ゴゴゴゴゴゴゴ・・・ッ

(人型…右腕は『鋸』、見た目は完全に近接に秀でていると感じられる)

『ゼロ・モーメント』の神髄、それは水中及び水源が豊富な足場でこそ発揮される。

 だが、この場ではそうでない。仮想敵が『蝙蝠』の使い手である以上
宗像が考える思考と奇しくもノエは合致している。全ての攻撃がほぼ致命傷
になると考え、臨まないといけない。

 (なら、決めるべき行動は ――ただ一つ)

        ――タンッッ!

動くのは、横か? 後ろか?  否!  『前進』だっ!!

『アヴィーチ』へ、無謀にもスタンドを何処にも発現する様子も無く
包帯男は自殺志願の如く駆ける! 距離は、今のスタートダッシュで
3〜4mに縮まったと思える。

507宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/12(火) 16:21:57
>>506

何故『スタンド』を出さないのか。
あるいは、既に出しているのかもしれない。
いずれにせよ、『一撃で決着する』という状況で接近してきた以上、
『無策』である筈はないだろう。

「自分が不利な状況では、人間は強く警戒する」

包帯の男は『熟練者』だ。
そうした相手は往々にして、対峙する者の『裏』を突く。
あらゆる行動の中には、常に何らかの『布石』が仕込まれている。

「だが、有利な状況になると警戒が緩み、つけ入る隙が生じる」

純粋な接近戦では、おそらく『アヴィーチー』が有利だろう。
だからこそ、俺を油断させやすい。
『相手に有利だと思わせる事』は、確実に不意を突く上では欠かせない行動だ。

「だから敢えて突っ込んできた」

その場から動かず、前進する相手を注視しながら浅く腰を落とし、
体勢を安定させて『タイミング』を計る。
俺自身、攻める事で敵の攻撃を誘う場面は多い。
『あからさまな突撃には裏がある』と判断した。

「――――違うか?」

少なくとも『水』を使う事は分かっている。
衣服の内側に片手を差し入れた動作と、
そこから取り出されたペットボトルから、
『水』が重要な意味を持つらしい事は推測できた。
当然の帰結として『現時点で水が存在する場所』を警戒しなければならない。

508ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/12(火) 16:44:44
>>507

 >――――違うか?

それに対し、ノエの答えは『行動』で示される。

 距離 『アヴィーチー』との間隔は約2m程。そこで、歩みを止めると共に
止めるまでの走った勢いのままにペットボトルを投げる。

それはアヴィーチーを盾にしてる男(宗像)向けてか? 
 いや、スタンドを盾にしている相手に向けて単調な投擲は通じない!
アンダースローからの……アヴィーチーより更に頭上! 空目掛け!!

 この行動が成功するなら、凡そ5〜6m程アヴィーチーの頭上を越えて
ペットボトルは宙を舞うだろう。

(敵の選択肢を、狭める。近接操縦型スタンドである確率が高いならば
そう言ったスタンド使いはスタンドへ割くリソースは大きく占める。
 故に、頭上のペットボトルを警戒して行動をするか。或いは
一見無防備であると見えるオレを狙うか、二つの動きに絞らなければいけない。
どちらを警戒して対応しようと動いても『オレに優位になる』)

509宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/12(火) 18:07:29
>>508

『投擲』は成功し、狙い通りの軌道で投げる事が出来た。
放物線を描くペットボトルは、現在『アヴィーチー』の上空に位置している。
無論、その動作を見落とす理由はない。

  「『搦め手』が得意なようだが――――」

             ダ ン ッ ! !

                  「それを使われる前に終わらせる」

ペットボトルが投げられた瞬間、足元の石畳を踏みしめて前方に跳躍し、
大型肉食獣並みの『体当たり』を仕掛ける。
『跳ぶ為の準備(>>507)』は既に終えていた。
『2m』という距離は、たった一度の跳躍で十分に埋まる距離だ。
前進する事によって、頭上から来るであろう攻撃を逸らす意図もある。
仮に相手の攻撃が速かったとして、こちらの攻撃も『一動作』で済む。
相手は『動いた後』だが、こちらは『動く前』。
立ち止まった直後の無防備な『静止時間』を狙い、確実に命中させる。

「俺は正面から攻める事しか出来ない」

予想される『本体からの攻撃』は、
ダメージフィードバックのない『右腕』を盾にして防ぎ、
痛みを意に介さず突き進む。
共通点は『水』。
警戒するのは『水を含んだ口』だ。

510ノエ『ゼロ・モーメント』:2023/12/12(火) 18:43:03
>>509


『体当たり』

 近接型のスタンド、パワーに自信あるだろう体躯。
成程、理にかなった攻撃だ。初動の準備も、抜かりなく行っている。

恐らく、オレより死闘と言う点で自身より上の場数を踏んだであろう。
 小林は、常に隣に共闘者が居た。この男のように激闘に身を置ける資格を
有する強力な力なら、それを必要とせずとも生き抜けただろう。

 スタンドの突進である以上、避けるにしても常人である自身の肉体では
相手のスピードが例え同等であれ一度ペットボトルを投げるのに
立ち止まるのを選んだ自分では直撃こそ避けれても、完全な回避は出来ない。

 >俺は正面から攻める事しか出来ない

             『奇遇だな』

      『オレも』         『似たようなもんさ』

 宗像には、声は複数から聞こえただろう。
一つは、予測してた通りに包帯男の口……それと、『頭上』だ。

 メ欄:口3 ペ2

 『ペットボトルに二体』 『口の中に三体』の『ゼロ・モーメント』を
備えてる。そして、それを瞬時に『硝子(死滅回遊)弾』へ化す事は可能だ。

 (『鋸』への攻撃は、無意味……であるなら  ば!)

口の中の『ゼロ・モーメント』はゴムボール程のサイズ。それを
アヴィーチーの『両足』! 両方の太腿付近へ飛来!(パス精:CBC)

      ――更に

 『もう一発……ッ』

 ペットボトルに入った容量の水、限界サイズまで『死滅回遊弾』生成!

  『死滅回遊    旗立』

 ペットボトルごと、それを宗像の頭上へ落下!(スB)

尚、アヴィーチーへ直撃するものは攻撃を止めると言う意味合いで
本気で直撃させるつもりだが、宗像本体への頭部への攻撃は。当てる直前には
停止をさせ、解除するつもりだ。
 それでも、弾丸並みの速度。手で頭部を防ごうとしてもペットボトルと言う
重しは軽くてもゼロ・モーメントの速さが勝るだろう。
 アヴィーチーの突進が阻止出来れば、宗像本体への攻撃は『致命傷』の
判定と捉えられても可笑しくない。
 とは言え、アヴィーチーの攻撃を喰い留められなければ、こちらの敗北は必須。
距離と、ゼロ・モーメントの速さがシビアだが。どちらの攻撃も同じタイミング
になれば引き分けにもつれ込めるか……と言う具合か。


(※判定については、そちらに任せて頂き構いません)

511宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/12(火) 20:16:13
>>510

『至近距離』の戦いにおいては、特に『スピード差』が大きな影響を及ぼす。

     ド ヒ ュ ッ !

                ド ヒ ュ ッ !

硬質の『死滅回遊弾』が『アヴィーチー』の両足に命中する。
しかし、既に『跳んだ後』であり、それら『二発のパワー』だけでは、
突進自体を阻止するには力不足だった。
多少は勢いが落ちたものの、互いの距離は急速に縮まり、もはや激突する寸前だ。

「『近距離型』にとって最も厄介なのは、『遠距離からの飛び道具』だ」

『スタンドによる飛び道具』は『五十嵐宙』の『エフェメラル』を思い出させる。
次の瞬間には、上空から『狙撃』される事は理解できた。
『跳躍』という行動を選んだのは、頭上の攻撃を回避する為でもあったが、
自由に操作できるとなれば話が違ってくる。
このまま予定通りに『体当たり』を敢行したとして、
『先手』を打てるかどうかは微妙な所だろう。
今のダメージを『引き金』にして、
『ノコギリザメ』を起動させたとしても意味は薄い。

「だが、距離が近ければ『やりようはある』」

        ド ッ !

ゆえに『体当たりよりも早く命中する攻撃』を繰り出す。
『鋸』の長さは『1m』。
突進の勢いに乗せて『槍』のように突き出す事で、『残りの距離』を一気に埋め、
『上空からの攻撃』を食らう前に一撃を浴びせる。
ただし全力は出さず、適度に加減する程度に留める。
それでも直撃すれば幾らかは吹き飛ぶだろう。



(※この行動に対する判定は一任する)

512ノエ『ゼロ・モーメント:2023/12/15(金) 13:17:12
>>511(レス遅れ大変失礼しました)

>、距離が近ければ『やりようはある』

 吸い込まれるように体の深い鳩尾付近に向かう『鋸』

スピードは、人並みに近い。『ゼロ・モーメント』……口内に一つ
残してるが今の口の水の容量では精々ビー玉か、それより少々大きいサイズ。
 鋸と言う大きい武器を逸らすに至らない。

なら、回避? 後ろへ倒れ込もうとしてみるか? 
 僅かにでも、鋸の当たる時間を防げれば頭上の『ゼロ・モーメント』が
相手の頭部に命中出来る。 そら  体を 動か


         ――あばよ、『小林 丈』。


            …………。



   ドスゥ!


 「っくうっ!!?」  ドサッッ゛


……包帯男は、鋸が命中するまで『微動だにせず』硬直し。そして
アヴィーチーの攻撃は完全に直撃する。加減を宗像がしたなら
 打突の衝撃で後ろに倒れ込むだろうが、胸元が裂かれたり出血するような
重傷にはならない筈だ。数日は、打ち身の青痣ぐらいは出来るだろうが。

 その直後程度で、宗像の背中に僅かに軽い衝撃でペットボトルが
軽く当たる感触と共に石畳へコロンコロンッと転がる音が聞こえる。

 「……負け、だな。オレの…………」

 男(ノエ)は『降参』の言葉を、座り込みつつ力なく唱える。

513宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/15(金) 16:48:26
>>512

『鋸』の先端は『丸型』であり、ただ突き出しただけでは斬撃に至らない。
実質的なダメージは、概ねノエが理解している通りだろう。
完治には『自然治癒』で事足りる筈だ。

「そちらが先に攻撃を食らわせた」

両足に残る痛みを自覚しながら、『アヴィーチー』を解除する。
銃弾のようなスピードだったが、パワーで上回ったのが幸いだった。
しかし、『命中した』という結果は覆せない。

「場合によっては、あれで死んでいる」

地面に転がるペットボトルを拾い上げ、包帯の男に差し出す。

「――――『君の勝ち』だ」

奈落の底を思わせる黒い瞳に虚無の光を湛え、淡々と『事実』を告げる。
『接触のみ』で命を奪われる状況は、『殺し屋』を殺した際に身を以て体験した。
だからこそ、両足に受けた『硝子球』に殺される未来も、十分に有り得ただろう。

514ノエ『ゼロ・モーメント:2023/12/15(金) 18:31:39
>>513

「……どうなんだろうな」

両足の攻撃、それでも尚 怯むことなく突撃を繰り出せた男(宗像)

確かに命中すれば能力が作用するスタンドは幾らでも存在するだろう。
 だが、ノエは持ち合わせてない。たらればの話を幾ら挙げてもキリが無い。

「……『蝙蝠の男』は」

「ダークレッド色の髪、年齢は少年に近い。『マテリア』っての言うのを
得ようとしたがアリーナに邪魔されたらしい。
人相ってさっき言ったが謝罪する。オレが知ってるのは、これ位で
顔は正確にどんな容貌が知らない。年齢も、そいつが肉体の年齢を操れるなら
大した情報にはならない」

 目の前の差し出されたペットボトルを受け取ると共に
見上げつつ情報を出す。

「あんたは、そいつについて何処まで把握してる?」

515宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/15(金) 19:47:21
>>154

包帯の男が語る容貌は、『あの夜』に見た姿と一致していた。

「そいつの名前は『ハイネ』だ。
 スタンドは『カーディナル・シン』」

「『マテリア』は『殺し屋』だった。
 俺は『アリーナ』から奴を排除する依頼を受け、
 その途中で『ハイネ』と出くわして交戦している」

『マテリア』が残した『後遺症』を噛み締めるように、
『左手』を胸の高さに持ち上げて軽く握り込む。

「『蝙蝠』は『実体化』していた。
 実際の『血肉』を取り込んでいるらしい
 奴自身が言うには『穢れた血啜りの群像』だ」

「『蝙蝠』を集める事で『人型』を作り出せる。
 その動きは『パワー』も『スピード』も『常人以上』だった。
 最低でも『二体』を同時に操る力を持つ」

「おそらく『実体化』しているせいだろうが、
 奴とスタンドは『ダメージの繋がり』が薄い。
 『人型』の一体を寸断されても『四肢を失う程度』で済んだ」

「そして、その状態から『自力で復活できる』ような事を口走っていた。
 『損耗は時が癒す』と――――」

『蝙蝠の群れ』や『複数の人型』も脅威だが、奴の『生命力』は異常だ。
それこそが『ハイネ』の強さだろう。
『殺す寸前』までは持っていける。
事実、辛うじて椅子に寄り掛かっていた『ハイネ』は、
まともな人間に当てはめると『瀕死の重傷』に見えた。
しかし、完全に『とどめ』を刺す事は容易ではなく、
取り逃がすと『再起』してしまうとなれば、これほど厄介な相手は少ない。

「――――俺が知っているのは『これぐらい』だ」

一通りの話を終えると、静かに口を閉じる。

516熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/15(金) 20:12:17
>>514-515

包帯の男と宗像の激突は一応の決着が着いたようだ
どうやら、両者は何らかの情報のやり取りをするためにスタンド戦闘という形で交渉を行っていたらしい
一通りのやり取りが終わったところで、さてどうしようか、と考えていたところ・・・・

(『殺し屋』の『マテリア』・・・・?
 『蝙蝠』の『カーディナル・シン』・・・・?)
       キケン
とても・・・・『面白そう』な話が聞こえてきた

(『蝙蝠』のスタンドに・・・・『アリーナ』・・・・『排除の依頼』・・・・?
 ねえ!それってとっても・・・・)

(――――楽しそう!!)

「ふ・・・・うふふふ・・・・・ふふふふ・・・・」

物陰となった林の中から若い女の声が聞こえてくる
その声はあまりにも・・・・そう、あまりにも・・・・

『楽しげ』な・・・・この状況にそぐわぬ声色だ

517ノエ『ゼロ・モーメント:2023/12/15(金) 20:48:41
>>515-516

「……」

 目線で、笑い声の方に顔を向け。

「仲間か?」

宗像へ尋ねる。その傍ら、思考も続ける。

そして、一つの結論に到達する。

「……マテリアを妨害したのは、あんたもだな?
そして、他に仲間に男女が居た。そして、男の方は『村田』……違いないな」

 フゥ……と短く吐息をつく。

夢の中の幾つかの単語、そして宗像の余りに敵を把握してる事を知れば、だ。


(……彼は、やはり。オレよりも遥かに先で闘ってるか)

自分がノエとなった契機に、彼が居た。巻き込んでしまった。


 恨みなんて無い、感謝しかない。でも、それを伝える事は出来ないだろう。

会わせる顔も、資格も無い。

>奴とスタンドは『ダメージの繋がり』が薄い。
 >『人型』の一体を寸断されても『四肢を失う程度』で済んだ

「……四肢、を? でも、奴は携帯で普通に手を使って仲間と連絡」

 あの夢は、間違いなく真実に近い光景だった。だが、彼の言葉も嘘では無い。
ならば、と思い至った事実に手を口に当てて一瞬愕然を示して、予想を口にする。

「――ダメージを『年齢』で肩代わりしてる?」

 驚異的だ。そうなると、見かけだけで相手を探し当てるのは困難だ。

蝙蝠と言う姿に変形し、人には侵入不可能な経路も可能。
 更に相手の血肉を得る。『吸血鬼』に近しい特性の能力。


・・・今のままでは『勝てない』

元々、ノエは単身でどんなスタンド使いにも奇襲などの搦め手を除いて
真っ当に戦って勝てるとは思ってないが。敵の強大な能力の片鱗や
仲間が居る背景も考えれば、小細工でどうにかなる相手で無い事は
再確認出来た。今の、自分がどんな犯罪行為などして事前準備をした所で
奴の足元にすら触れる前に無残に死ぬのは目に見えてる。

「……有難う。あんたのお陰で知りたい事が知れた」

518宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/15(金) 21:13:12
>>156-157

無言のまま林を一瞥し、包帯の男に向かって首を横に振る。

「あの『硝子球』のようなタイプは初めて目にする。
 一つの経験として大いに参考になった」

どういう事情があるのかは知らないが、目の前に立つ人物にも、
相応の『何か』があるのだろう。

          ス ッ

      「俺からの『餞別』だ」

胸ポケットに入れていた『ココアシガレット』を取り出し、それを差し出す。
かつて『ここで出会った殺し屋』から、これを受け取った。
今、『殺し屋となった自分』が同じ物を渡す事に、奇妙な感覚を覚える。

          ザ ッ

にわかに踵を返し、その場から立ち去ろうとする。

519熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/15(金) 21:50:09
>>517-518

「私の時はあんなにもそっけなかったのに・・・・」

物陰から、姿を現す
10代後半くらいの若い女性だ。冬物の衣装に身を包んでいるが
その言動からはただの参拝客という気配は感じられない

「そこの『包帯さん』とはあんなに楽しく遊んじゃうんだ?」

「ねえ、宗像さん」

520熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/18(月) 01:01:39
age

521ノエ『ゼロ・モーメント 』:2023/12/19(火) 11:31:25
(すみません。文面から宗像PCとの
やりとりが先になるだろうなぁと思って書き込んでいませんでした。
こちらは離脱します。お付き合い有難うございました)

>>518-519


 身を起こし、手元のココアシガレットを少し見つめ
離れる男と、少し遠くから身を現した女を見つめる。
 自分の記憶に関連のない姿なのを認めると、そのまま静かに足を動かし
神社から離れる。

 
 『蝙蝠の男』の正体。能力について重要な手掛かりを知った。

そして、自身の知る人物たちが。今も尚 激闘の渦中の中で動いてる事も。

(……今のゼロのオレに、何が出来て、何を成せるのか)

 日々、自分の胸に問いかけている。そして、前にも後ろにも光は見えない。

 だが今日は他の日とは違う。収穫のある一日だったのは確かだ。

止まらずに、歩みを進めよう……小さくながらも、一歩ずつ。

522宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/19(火) 16:43:30
>>519-520

この寂れた神社に、三人もの『スタンド使い』が集まっている。
驚くべき偶然だが、これも『持つ者』の間に働く『引力』の影響か。
それは認めざるを得なかった。

「『取り引き』を果たしただけだ」

背後から聞こえた『熊野風鈴』の声に足を止め、振り返らずに言葉を返す。
こいつが満足するのは『手合わせ』ではなく『殺し合い』だ。
しかし、まだ『執行猶予中』である以上、手を上げる訳にはいかない。

「言いたい事は、それだけか?」

『自立した意思を持つスタンド』は、本体自身と深い部分で繋がっている。
包帯の男が示した見解が正しければ、熊野が『命を捨てない可能性』も皆無ではない。
少なくとも『フォー・エヴァ・ロイヤル』には、
『自らの存在を消滅させない権利』があるだろう。

523熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/19(火) 17:17:35
>>521-522

「あら、行ってしまった・・・・」

勝負が付くや否や足早に去って行ってしまった『包帯の男』を見送る
彼も危険な香りが漂う人であり、それなりに興味があったが・・・・本命は別にいる

「お久しぶりです。宗像さん」

本命はこちらだ。宗像征爾・・・・『ノコギリとサメ』のスタンドを持つ男
彼に対して軽く挨拶を交わす

「本当につれない人
 そんなに冷たいと大切な物を取りこぼしてしまいますよ?
 例えばこんな風に・・・・」

         ぽいっ

そう言いながらスマートフォンを宗像に向けて放り投げる
SIMカードが未挿入のその端末は、近隣のWiFi電波を拾ってSNSの画面を表示していた

           『花の女の子』

それは、複数のSNSや文章投稿サイトに跨って掲載されたとある『怪談話』
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1688976640/43)

星見町ローカルの都市伝説を装ってはいるものの、宗像が見ればそこに込められた『悪意』に気づくだろう
この文章は・・・・『スタンド使いに「花の女の子」の花を抜かせる事』を目的に書かれた文章であると・・・・

「力作です。宗像さんにレビューを貰えると嬉しいなぁ」

524宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/19(火) 18:15:28
>>523

投げられたスマートフォンを左手で掴もうとして『取り零した』。
それが足元に落ちると同時に『表示された文面』が視界に入る。
電子機器の扱いには未だに慣れていない。
だが、そこに書かれた内容は理解できる。
熊野自身が明かさなければ、おそらく半永久的に知る事はなかっただろう。

  「初めて会った時に言ったな」

           ズ ズ ズ ズ ズ

               「『程々にしておく事だ』と」

音もなく振り返りながら、傍らに『アヴィーチー』を発現させる。

「『神社を血で汚す』のは忍びないが、止むを得ない」

          ザ ッ

「『熊野風鈴』――――お前には死んでもらう」

右腕の『鋸』を構えて前進し、一歩ずつ間合いを詰めていく。
『執行猶予』が切れた以上、熊野を自由にさせておく理由はなくなった。
『この場で殺す』。
包帯の男に妨害されていれば厄介だったが、今は『一対一』だ。
しかし、もし戻ってくれば『二対一』になる可能性はある。



(※現在の距離を決めて欲しい)

525熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/19(火) 23:33:54
>>524

「あなたのせいだよ・・・・?宗像さん」

「あなたが私の気持ちを弄んだから・・・・」

「人の事を『その気』にさせておいて、自分だけはさっさと帰っちゃって」

「そんな甲斐性なしだから・・・・こんな事になっちゃったんだよ・・・・?」

彼我の距離は『5m』
全力で距離を詰めれば今すぐにでも近接出来そうだ
・・・・・だが

「あの時、私を『殺して』おけば
 こんな風になる事もなかったのに」

     ぐるっ!!

             ―――――ダッ!

熊野風鈴は・・・・宗像征爾に向かって『いかない』!
くるりと踵を返すと、彼から逃げる様に鎮守の森方向・・・・つまり森の奥に向かって走っていく!

「追いかけて来てね!宗像さん!」

「私を逃がしたら、次はもっと大きな事でりんちゃんを追い詰めてみせるから!」

・・・・かつてと今とでは、熊野風鈴と宗像征爾の関係性・・・・状況が違う
かつては熊野の方が『追いかける側』であったが、今は宗像が追いかける番だ
だからこそ・・・・今まで使えなかった作戦が使える

――――即ち、『逃げる』こと

人の手が入った場所とはいえ、鎮守の森は天然自然の障害物が多数存在しており
また、地面には人を転ばしてしまいそうな木の根や石が多くある

             ズギャッ!!

熊野はそれらの障害物を・・・・避けていかない
その代わりに『赤絨毯』を自分の足元に連続発現し、自分の動きを『都合の良い動き』に変えていく
それにより常人では不可能な速さで森の中を歩く事が可能となるはずだ・・・・!

宗像と熊野の進行速度の差を使って、宗像の視線から外れるくらいに距離を取ろうとする。

526宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/20(水) 00:56:11
>>525

脱兎の如く駆け去る熊野の動きを見て取り、
地面に落ちているスマートフォンを拾い上げる。
僅かな時間差だが、この間にも若干の距離が開いた。
それから熊野を追って走り出し、鎮守の森に踏み込んでいく。

「その『絨毯』を出すのが『フォー・エヴァ・ロイヤル』の能力か」

だが、足場の悪い場所では、どうしても動きが制限されてしまう。
一方、『絨毯』の上を走る熊野の速度は衰えない。
『舗装されている』という理由だけではなく、
『都合の良い結果を出す能力』が、一目散に逃げる本体を助けている。
両者の『走行時の安定性の差』によって、確実に距離が広がり始めていた。
このままでは、『見失う』のは時間の問題だろう。

「『怪物』から逃げ切っただけの事はある」

       ドゴォッ!!

完全に姿が見えなくなる前に、なるべく大きな石を見つけ次第、
『アヴィーチー』で蹴り飛ばす(パス精BCC)。
狙いは『熊野の胴体』だ。
苦肉の策だが、現状では他に打つ手がない。
その為、この攻撃の目的は、どちらかといえば『探り』を入れる事だった。
ここで熊野を取り逃がしたとしても、ある程度の情報は得ておく必要がある。

      ――――――熊野風鈴を『確実に殺す為』に。

527熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/21(木) 13:15:29
>>526

「ふふふ・・・・さあ、どうだろうね!?」

       ドゴォッ!!

               「・・・・・・・・・!」

逃走する熊野に向かって蹴り飛ばされる石を見やり、
一瞥した後に、ぷいっと視線を逸らして逃げに徹する

蹴り飛ばされた石の衝撃音と速さから、彼のスタンドの力強さは何となく把握した
この程度の攻撃であれば、『赤絨毯』の特性・・・・『好都合な結果』を出す能力で十分に回避可能だろう

(まあ、少しくらいはヒントを差し上げないとね)

そのまま逃走を続けて宗像からの視界を切り・・・・・山奥へと逃げ去る

          (さて・・・・・)

『仕込み』の時間は5-6分程度あればいい
その間に・・・・・いくつかの『仕掛け』を済ませて・・・・・

「来てくれるかな・・・・・?宗像さんは」

森の中、自身が立つ地面に2X3m程度の『赤絨毯』を敷いた状態で
宗像征爾が訪れるのを待つ

528宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/21(木) 18:30:32
>>527

派手な音と共に飛んできた事によって、熊野は容易に背後からの攻撃に気付けた。
元々『アヴィーチー』の精度は高くない。
足場の悪い中で蹴り飛ばした石は、さらに命中率が落ちる。
それに加えて、熊野には『フォー・エヴァ・ロイヤル』がある。
掠めただけでも軽い衝撃を受けただろうが、幸い石が当たる事はなかった。

「『逃げ』に徹する相手は『高天原』以来だ」

石を蹴り飛ばした直後、まだ距離が大きく離れていない内に、
『アヴィーチー』が『スマートフォン(>>525)』を投げ放つ。
命中精度を上げる為に、『走りながら』ではなく、その場に立ち止まって投擲を行う。
これが外れてしまえば逃してしまう可能性が高くなるが、
このまま追い続けても、いずれ同じ事になる。
狙いは変わらず『熊野の胴体』だ。
要するに、身体の何処かに当たればいい。

       ザッ ザッ ザッ

『結果だけ』を先に述べると、熊野は『逃げ切った』。
また、『絨毯の上』を走る『熊野の足跡』は、地面には残らない。
しかし、体重が掛かった分だけ地面は沈み、『絨毯を敷いた跡』が残る。
それを辿る事は難しくないだろう。
今、『絨毯の跡』を追い、安全靴の足音が熊野に迫りつつあった。

529熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/21(木) 22:38:20
>>528

『アヴィーチー』の攻撃速度は人間の域を出ない
こうして距離が離れた状態であれば、それが対象に当たるかどうかは運次第という事になるだろう
相手が、ただの人間であれば芯を捉えられずともいくらかの手傷を負わせる事が出来たはずだが・・・・
どうした事だろうか、熊野は決して回避能力に優れているわけではないにも関わらず、その攻撃は掠りもしない

       ザッ ザッ ザッ

「・・・・・来たね」

いくらかの仕込みを終えて、宗像を待ち構える熊野
森の中に『赤絨毯』を引き、その上に立っているのが宗像から見えるはずだ
宗像の姿を認めるや否や、熊野は『赤絨毯』の端(宗像が居る方の端っこ)に立ち、
己のスタンドに地面に落ちている石をいくつか拾わせる

「その・・・・『高天原』さんっていうのが誰の事なのかは知らないけれども」

「私の前で他の人の名前を呼ぶなんて
 ちょっと嫉妬しちゃうなあ」

「ねえ、宗像さん」

「今は・・・・私だけを見て、いただけます?」

「私を・・・・この場で殺す為に」

530宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/21(木) 23:26:52
>>529

いかに『絨毯』による『補正』があったとしても、熊野自身の動きは常人の域を出ない。
そして、『一目散に逃げる』という事は、『真っ直ぐ走っている』と考えられる。
後ろを振り返らず、先程のような音もしないのだから、
何かが飛んできている事にも気付けないだろう。
『アヴィーチー』の精度で命中させられる確率は、外す確率と同じ程度にはあった筈だ。
だが、スマートフォンは小さい為に、当たらなかった事は不自然ではなく、
この時点で『奇妙』と断言できる程ではなかった。

「お前には『遺言』を吐く猶予を与える気もない」

多くの『枯れ葉』が降り積もった地面を踏みしめながら、
『アヴィーチー』の両腕を下ろした状態で、『絨毯』の上に立つ熊野に近付いていく。
適当な石は幾らでも転がっている。
『フォー・エヴァ・ロイヤル』のスピードと精度で、それらを素早く拾う事が出来た。

「だが、『フォー・エヴァ・ロイヤル』には『借り』を作っていた」

熊野に付き従う『フォー・エヴァ・ロイヤル』に視線を移す。

「一つの『意思を持つ存在』として、最後に言い残す事があれば聞いてやる」

最大まで展開した『鋸』の先端は、地面と近い距離に位置している。

531熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/22(金) 00:11:00
>>530

「はあ・・・・」

「この期に及んでまだ誰かの話・・・・
 私の事をちゃんと見てくれないんだ」

溜息をつく。
呆れかえったような目付きで宗像を眺めながら

「・・・・・『エヴァ』」      『・・・・ハイ』

「貴女の言葉を禁じる」
                   『・・・・・!?』

「この戦いで、何があろうとも」
「貴女は一切、言葉を発してはならない」
「これは主人としての『命令』・・・・だよ?」
                           『・・・・・・・・。』

「ごめんね、宗像さん
 以前は私の従者が勝手な事を言ってしまったみたいで」

「二度と、あんな真似はさせないから」

言葉を発した直後、『フォー・エヴァ・ロイヤル』に回収させた石を掴み
一つ一つ、本体の手によって宗像の顔へと投擲する パス精CCC
『赤絨毯』の上では本体の行動に『失敗』はあり得ない
投擲された石は100%の精度を以て、目標となる宗像の顔面へと殺到する

(だからこそ・・・・あなたは防御か回避を選ばなくてはならない
『エヴァ』の『絨毯』がある以上、偶然起こり得る全ての可能性は
 私にとって『都合の良い未来』へと収束するのだから)

532宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/22(金) 19:16:10
>>531

投げつけられた石は、あたかも『運命』に愛されたかのように、
真っ直ぐ『顔面』めがけて飛来する。
妙に『精確』だと感じたものの、本体による投擲であり、不意を突かれた訳でもない。
『ただの石』はスタンドを傷付けられない筈だが、
何らかの『能力』が付与されている可能性を考慮し、
軌道を避けるように『斜め前方』に歩いていく。
『アヴィーチー』は、本体の『1m先』を進ませる。
仮に回避が間に合わなかったとしても、スタンドが間に立っていれば、
『能動的接触』によって直撃を防げるだろう。
それと同時に、熊野の投擲に合わせる形で、
『アヴィーチー』の『左腕(パス精BCD)』に握った『数個の石(>>528)』を、
一纏めにして投げ放つ。
大雑把な散弾に近いとはいえ、『精度低下』を加味して命中は期待しておらず、
あくまでも牽制に過ぎない。

「――――憐れなものだ」

その一言は、発言を禁じられた『フォー・エヴァ・ロイヤル』に対して投げ掛けられたのか。
あるいは、自らの半身を他人として扱う『熊野風鈴』に向けた言葉だったのかもしれない。
いずれにせよ、俺の考えは変わらず、行動に影響を及ぼす事もなかった。

「『死ぬ準備』をしろ」

本体である俺自身から『フォー・エヴァ・ロイヤル』まで、
およそ『2m』の距離に近付く事を目的として、足を止めずに歩き続ける。
境内で刃を交えた『包帯の男』が引き上げた事は幸いだった。
もし残っていたなら、おそらく邪魔されていただろう。
彼の『目』からは、どこか気負う部分が見受けられた。
しかし、それは『殺しの仕事』とは違う筈だ。

533熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/22(金) 21:28:44
>>532

正確な軌跡を描いての投擲とはいえ、所詮は人並みの力による攻撃だ
宗像の目前に迫ったそれはスタンドヴィジョンに妨げられて地面に落ちる
・・・・互いにけん制の攻撃を交わし合う状況ではあるが、手傷を追わせるには足らない状況が続く

「嬉しい・・・・
 ようやく私に向かって話しかけてくれたね。宗像さん」

                  バラララッ!

そして、宗像の石弾もまた致命打にはなり得ない
『赤絨毯』の端に立つ熊野は自身の能力によって『回避』行動を最善化している
視線は宗像に向けっぱなし、飛来する石に対してはほんの少し視線を動かしただけ
だが、『フォー・エヴァ・ロイヤル』の能力はそれでも・・・・それだからこそ、最大限の効果を発揮する

軽く身体を動かすだけで、石の散弾は熊野の遥か後方へと飛び去って行った

「・・・・これがもう少し早ければ
『りんちゃん』を護れたかもしれないのにね?」

宗像が接近する。その距離は熊野からみて2mの距離だ
その前方1m・・・・宗像と熊野の丁度中間地点に先行した『アヴィーチー』が迫る

「やって、『エヴァ』」

      ズワァァアアアア――――ッ!!

それまで本体の傍に控えていた『フォー・エヴァ・ロイヤル』が動き始める
本体に迫り来る宗像を妨げる様に、一歩大きく前進し・・・・

               ドッシャウアアァァァ!!

両腕を大きく振りながら、
フックのような打撃を『アヴィーチー』の頭部に向けて放つ パス精CBB

534宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/23(土) 19:11:40
>>533

『左腕の精度』が低下しているせいで、『絨毯の真価』には気付けない。
外れるのは当然だろうと、自分の中で結論づけた。
投擲直後に走り出し、一気に間合いを詰める(>>532)。

「終わってしまった事を考えても意味はない」

俺は『熊野を目指していない』。
『本体である俺自身からフォー・エヴァ・ロイヤルまで2mの距離』に接近した。
そして、『アヴィーチー』は『本体の1m先』に立っている。
『アヴィーチーからフォー・エヴァ・ロイヤルまでの距離』は『残り1m』であり、
現時点における『鋸の長さ』は『最大』。
既に『攻撃できる間合い』だ。

     「俺が考えているのは、お前を殺す事だけだ」

          ザ バ ァ ッ ! !

走ってきた勢いを合わせ、『アヴィーチー』の『右腕』を力強く振り上げる。
地面には降り積もった『枯れ葉』。
それらを『鋸』で巻き上げ、熊野と『フォー・エヴァ・ロイヤル』両方の視界を塞ぐ。
さらに、この間合いは『ギリギリ鋸が届く距離』だ。
向かってくる『フォー・エヴァ・ロイヤル』に対する直接攻撃になる(パス精BCC)。

それだけではない。
ここに来るまでの間、スタンドの両手に『石』を拾い集めていた(>>528)。
『右腕』を振り上げた瞬間、『握っていた右手を開く』。
そうする事で自然に『アンダースロー』の形になり、
至近距離から『石の散弾』が飛んでいく(パス精BCC)。
これによって、近くにいるであろう熊野を『同時に攻撃する』。

また、振り上げられた『ダメージフィードバックのない右腕』は、
そのまま『防御態勢』に繋がり、急所に対する攻撃を防ぐ『盾』になる。
『スピード』と『精度』は『フォー・エヴァ・ロイヤル』が上だが、
『攻撃のリーチ』は『アヴィーチー』が上だ。
先んじて行動を起こし、『枯れ葉』で視界が遮られたのなら、
『スピードと精度の差』を埋められる可能性はある。

地力で勝る相手に対して、無駄な動きは一切しない。
『視界の阻害』、『スタンドを狙った攻撃』、『本体を狙った攻撃』、『防御』。
それら『四つ』を『一つの動作』で完遂させる。

535熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/23(土) 22:56:42
>>534

「・・・・・・・!?」

           「退きなさい!『エヴァ』!」

己に迫り来る『アヴィーチー』を迎撃する為、敵に向かって前進する『フォー・エヴァ・ロイヤル』
その視界が振り翳された『鋸』によって巻き上げられる『枯れ葉』によって塞がれる
瞬間、身の危険を察知した熊野は己の『従者』を手元に戻すように下がらせる!


   ギャリギャリギャリィィ────ッ!!

だが一瞬、遅い!
バックステップをするように後方へ飛び退いた『フォー・エヴァ・ロイヤル』であったが、
己をかばう様に突き出した左手が『アヴィーチー』の『鋸』に引き裂かれていった!

    ブッシャアアア――――ッ!!

ダメージフィードバックによって熊野の左手から血が噴き出る!
熊野は苦痛に表情を歪めながらも『エヴァ』とともに後ろに下がる・・・・!

     そこに追撃する『石の散弾』であったが・・・・・

        「はっ・・・・・」

『石の散弾』を認識するや、ふわりとやる気のない動きを見せる熊野
たったそれだけの動きで、『散弾』の軌道から身体が外れ、石は後方へと去って行く
先程と同じ結果、幸運な回避。だが、幸運が何度も続くというのは、むしろ必然と言えるものかもしれない

     バッ!

だが、熊野は次なる宗像の追撃を警戒しているのか
『フォー・エヴァ・ロイヤル』を自身のもとに戻して後退・・・・
『赤絨毯』の真ん中へと戻るように後ろ向きに歩いていく

後ろ歩きとはいえ、その動きには危うげが無い・・・・
後ろが見えているかのようなスムーズさで下がっていく

536熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/23(土) 22:57:07
>>535
追記

537宗像征爾『アヴィーチー』:2023/12/24(日) 19:13:44
>>535

最初に蹴り飛ばした石を含めて、熊野に対しては何度か『投擲』を行っている。
これまでの攻撃は、いずれも『外れても不思議のない状況』であり、さほど違和感はない。
しかし、『視界を阻害した状態』で『精度の低下していない右腕』を使って、
『至近距離』から放った『散弾』が『一発も命中しない』という結果は、
流石に疑惑の念を抱かせた。
単なる『偶然』で片付けてしまうには出来すぎている。
そうなると、これまで一度も当たらなかった事も、全くの無関係ではなさそうだ。

「随分と『運がいい』ようだな」

『フォー・エヴァ・ロイヤル』は『独立した意思』を持つ。
『本体と連携してくる可能性』を警戒して、両者を同時に攻めた事が、
思いがけない光景を浮かび上がらせる。
『フォー・エヴァ・ロイヤル』は『斬撃を食らった』。
あらゆる攻撃を無条件で回避できるなら、これも避けられている筈だ。
一見『無敵』に見える『熊野の能力』にも、『死角』が存在する事を暗示している。

「だが、従者は『そうでもない』らしい」

攻撃を受けた事で、熊野側には『僅かな隙』が生じるだろう。
平常時であれば、どうという事のない一瞬。
『命のやり取り』においては、それが『生死の境』を左右し得る。

      ズ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ッ

熊野が予想した通り、すぐに『追撃』は来た。
熊野達を追って前進しながら、手傷を負った本体とスタンドを纏めて狙うようにして、
袈裟斬りに『鋸』が振り下ろされようとしている。
ただし、依然として『1m』の距離は維持されており、あまり踏み込まれてはいない。



(※占有を避ける為に、以後のやり取りはバトルスレッドで行いたい)

538熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/12/24(日) 20:09:39
【戦】『スタンドバトルスレッド』 その1 へ移動
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049803/491

539りん『フューネラル・リース』:2024/01/06(土) 12:23:09
街外れにあるとある廃ビル

りんはここに来る事が怖かった
だが、『フューネラル・リース』と向き合うために
一度ここに来なくてはいけないと思った

ある時突然、ここに倒れていて
前日の記憶が無かった

『フューネラル・リース』が何かしたという事は分かる

ここに来て、何かする事があるわけではないが
それでもここを見ておく必要はある

540芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/07(日) 18:46:10
>>539

 町はずれの廃ビル。そう、君にとっての恐怖の『原点(オリジン)』

りん、君は自分の中にある恐れ。抱える心の陰りを少しでも克服 晴らす為。

君は訪れた。少しでも前に進むために。そう……そして。



 「 お  れ   には


              関係な

                     Wiiフィ!!!」



   一人の変な野郎が、君の頭向けて虫取り網を振りかざし
突如として空中から躍り出てくるように参上した!!!


 明けまして!
           あんまり目出度くねぇ新年だけどそれでも前向きに行こうぜ!


 『地の分で良い事ほざこうとしても、やってる蛮行は許されないから!!』

 
「でも、ウィゴーちゃん!! 人気投票が出てくる前に少しでも
俺は人気投票上位陣を物理で出来る限り排除せにゃならんのよ!!」

 『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトだボケ!!』

 狂人の目的は、君を人気投票から排除する目的だ!!

541りん『フューネラル・リース』:2024/01/07(日) 19:51:14
>>540
しばらく一人でこの廃ビルを歩き回ったが
やっぱり何も思い出せない
ここで起きた事、その痕跡を辿ってみても『フューネラル・リース』は応えてくれない
けど、ここで『フューネラル・リース』が覚醒して、誰かが犠牲になった事は本当なんだって
それは分かる

謝ったらその人が帰って来るわけじゃないし、どうにかなるわけでもない
それでも、心の中でその人に謝るりん
だからって、いや、だからこそ手に入れた命を手放したりはしない
勝手かもしれないけど、その人の分まで背負って生きる

その誓いを胸に、その場にそっと花を置き

>   一人の変な野郎が、君の頭向けて虫取り網を振りかざし
>突如として空中から躍り出てくるように参上した!!!

「ふぁっ!?」

何だこのおっさん!?(驚愕)

あまりにも不意打ち過ぎて反応が追い付かずに虫取り網で捕獲されてしまった
どう考えても真面目な話する導入だったのにどうするんだよ…

「に、人気投票って何!?」

当然の事だが天の声とは会話出来ないしメタ的な話などりんは知るはずもない

というかこのキャラに投票する人なんていないから排除する必要などないのでは…

542芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/08(月) 12:28:14
>>541

>どう考えても真面目な話する導入だったのにどうするんだよ…

「てめぇ、アウラPCとの教会での絡みでは最後
(>ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1621051851/837)
ドロドロの愛憎劇を新郎新婦にやってた癖に、今更なに言ってんの?
あん時、真面目にこちとら絡んでたんだよ? 
 結構ショックだったよな〜〜〜〜〜ぁぁぁ??? あの茶番(チラッ?)」

『あんたPLの持ちPCの一人だからって、その関連で他のPCの出来事
列挙すんの反則でしょ!! つかそのチラ見もキモいし!!』

>このキャラに投票する人なんていないから排除する必要などないのでは

「そうかもしれねぇし、そうじゃないかも知れねぇ。だが、朝山PLは
普通に、りんちゃん好きだから投票が開始されたら一票入れる気なんだよ
( ゚д゚)、ペッ
 震災で、ミッションの返信が遅いと、あれみんな大丈夫かな? って
心労は増えるし、家電製品がぶっ壊れてPC新調すんの遅くなったりとかで
こちとら散々なのに、おめぇは清き一票が確実に入るとか、ふざけてんじゃねぇよ」

『お め ぇ の リ ア ル 事 情 と か 知 ら ん よ ! ! !
あと、早くそちらのお嬢さんの頭から網を外してやれよ! 可哀そうでしょ!』

「まぁまぁ、少し待ってくれよウィゴーちゃん。
俺は、しゃべる人形、踊って歌えるアイドルの素質あるミーガンみたいな
人形を探して、ここまでやって来たのに。見つけたのはピクミンガール一人。
 何でだよ……人気投票でメリー&芦田コンビで、あわよくば一位獲ろうと
画策してたのに、こんなの・・・こんなのあんまりじゃねぇかっっ゛!!!!」

『だったら、りん&芦田・ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトで良いだろうがい!!!』

「嫌だよ!!! なんでケムリクサのワカバや犬夜叉の殺生丸の妻みてぇな
名前の奴に、俺ら夫婦がわざわざコンビ組まないとならんのさ!!!」

 『誰 が 夫 婦 じ  ゃ   い!!!!!!』   ド ガ  ァ゛! ! !

スタンドが狂った変な野郎をぶっ飛ばした拍子で網は君の頭から外れた。良かったな、感謝しろよ

『はーっ  はーっ……まじ疲れる、こいつ……。
……? と言うか、そちらのお嬢さん。貴方、その頭の花とか、スタンドでは……』

「頭に花生えてるなんて、別にそんな不思議でも無いだろ。
俺、似た奴を知ってるぞ」

 スタンドは、遅れて君の頭に気づいた。頭から血を咲かせてる男の方は
君に対して殆ど意識を向けずに、そう嘯く……多分、次にこいつが
放つ言葉は、君にとって何の利益もない話題だろう。

543りん『フューネラル・リース』:2024/01/08(月) 18:55:20
>>542
>ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1621051851/837

その節は申し訳ありません…
反省はしていますが、自分でも何故ああしたのか割と本気で分からない

それにしても、りんは一体何を見せられているんだ?

「これは…夫婦漫才?」

目の前で繰り広げられているそれに思わず言ってしまったが
そんな事言ったらスタンドの方は絶対嫌がりそうだ
無論、りんはそんな事は知らないが

>……? と言うか、そちらのお嬢さん。貴方、その頭の花とか、スタンドでは……

「あっ、貴方もスタンドの人ですよね」
「えーっと、うちのこれはスタンドというか
 花もうち自身なんだけど」

なんというか、その辺の事は本当によく分からない
というかりんの存在自体が色々と謎なのだ

>頭から血を咲かせてる男

「うわぁ…頭大丈夫ですか?」

物理的な意味でだ、他意はない

鈴蘭の香りのする鈴蘭柄のハンカチ手に頭がヤバい事になってる男の頭を拭おうとするりん

544芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/08(月) 20:05:59
>>543

>その節は申し訳ありません…

「いや、許しはしねぇ……。例えウィゴーちゃんが許しても
俺は許しはしねぇ! 何故かって!?
 そ の 方 が 面 白 く な る じ ゃ ね ぇ か!!」

『屑の極みか、おめぇは。あとウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです
それと夫婦漫才って次言ったらマジビンタね。こいつの頭は大丈夫ですよ
もう治らないから、喀血を逆にさせれば少しは血の気も引いてマシに
なるってもんですよ』

「そんな冷酷な言葉も美しいマイangel『誰がangelだdevil面』
 あー、そんでお前に似てる奴の話をしてたんだっけ?
そいつはな……国会にも出た事がある。んで、頭は花じゃなくて魚なんだわ。
 可哀そうによ、頭が半分ぐらい魚に吞み込まれた影響なんだろうな。
そいつは何時もギョギョって興奮すると叫んでるんだよ」

『さ か な ク ン は 人 間 だ よ ! ! ! !』

「ウィゴーちゃん!! さかなクンは人間って括りじゃなくて偉人だぜ!」

 『ちがっ……違わないのが腹立つな、こいつ!』

>鈴蘭の香りのする鈴蘭柄のハンカチ手に頭がヤバい事になってる男の頭を拭おうとする

「――拭うな!! そんなスズランで生きながらえたくはねぇ!!」

 『なに言ってんだこいつ(´゚д゚`)』

「ハァ……ッ  ハァ……っ  おれは過去……スズランの奴隷だった!!』ドンッ!!

『おまえ何処のフィッシャータイガーだよ。殴るのも疲れるから放置するよ、オッケー?
 どうせスズランハンケチで頭部拭ったら、毒が頭から心不全とか起こして
次レスでは喋れなくなるから、こっからは私だけ喋る事にするからね』

「メタ推理で、俺の事置物にするの流石に酷くね( ゚Д゚)」

『どうせ、あんたギャグ空間なら蘇るから別にいいじゃん』

 りんがハンカチで血を拭う事に関して、スタンドもイカレ男も
特に抵抗も何もしない。PLも、芦田がこれ以上ボケると収拾つかないと
判断してるしな。



 芦田「俺の味方は誰も居ないのかよ。( ゚д゚)、ペッ
失望しました。あま(※甘城)にゃんのファンやめます」

『上等だよ! むしろ、甘城PLも、あんたをファンには持ちたくねぇよ!!』

545りん『フューネラル・リース』:2024/01/09(火) 20:21:54
>>544
>さ か な ク ン

さんをつけろよデコ助野郎!!
いやそれはともかく

「いやでも、拭かないと色々危ないから…」

>どうせスズランハンケチで頭部拭ったら、毒が頭から心不全とか起こして
>次レスでは喋れなくなるから、こっからは私だけ喋る事にするからね

「香りだけだよ!?」

毒とかないからね!?

特に抵抗しなさそうな芦田の頭部を優しく拭うりん
鈴蘭のように白いハンカチが芦田の血でべったりと赤く染まる…

りんは知らない(はず)の知識だが
本体とスタンドにはダメージフィードバックなるものが存在する
芦田が思いっきり頭から血を垂れ流す怪我をしているのに
『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』はなんともないのだろうか…

「スタンドとめ…」
「どつき漫才する人間は初めて見たよ〜
 人間って色々あって面白いな〜」

と言っても、
芦田のように第四の壁を軽々しく超えてくる人間もそうはいないだろう
それもスタンド能力とか全く関係無しに

「えっと、ウェア・ディ…」
「ウェアさんと」

フルネームで呼ぼうとしたが諦めた

「芦田さん?」

二人の会話から恐らくそれが名前だろうという事は分かった

「は、ここに人形を探しに来たの?」

これもさっきの会話で聞いた事だ
最初は人気投票がどうとか言ってたが…

546芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/10(水) 12:29:58
>>545

>さんをつけろよデコ助野郎!!

「はい……その切は平にお詫び申し上げます。さかなクンさん
この度は弊社がまことに無礼な発言をして申し上げありません。
ほら……星の女も謝って」

  星の女「すみません、新年だからって勝手にやりたい放題でゲスト出演させるの
止めてくれません??」

 『誰 だ よ ! ? Σ』

銀河のような、まさしく宇宙がウェーブの長い髪の中に彩られ、瞳にも夜空が
映っている幻想的な女性が突如として

星の女「いや、流石にこれ違反行為ですから記憶処理しますよ?」


 ーーーーーーー^ーーーーーーーーーーーー

芦田「……ぁん? いま何の話だったけ? あー、そうだ。
ウィゴーちゃんが俺と痛み共有しない話だったけ」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです。あと、夫婦(めおと)って
いま言おうとしませんでしたか?? 
 えーっと、確か魂の拘束。スタンドの拘束は本体(この馬鹿)も拘束するけど
本体の拘束は精神である私には意味無いんで「ウィゴーちゃん、ウィゴーちゃん」
ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトだっつーの、なに? スマホ??』

チョイチョイと、苦笑いで芦田はスタンドへスマホのある部分を見せる。


           星見板wiki

【スタンドのルール】
◆『スタンド』とは『人間』が引き出す『精神的エネルギー』である。
◆『スタンド』の多くは『力有る像』を持ち、これを『ヴィジョン』と呼ぶ。
◆『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えないし、触れることも出来ない。
◆逆に『スタンド』は『ヴィジョン』を利用し、他の物体や『スタンド』に『干渉』出来る。
◆『スタンド』の負った傷は『本体』の傷となり、その逆も然りである。


   ◆『スタンド』の負った傷は『本体』の傷となり、その逆も然りである。


『馬 鹿 は 私 だっ    だ! !  !   ゴ   ハ ァ  ァ! !  !   !』


 スタンドパズル、他ミッションでも数々与え続けた芦田へのツッコミ及び
いま現在までの累積した痛みがウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトを襲う……!

 『ぜーっ……自立型…………自立型になりさえすれば、こんな痛みなどぉおおおっっ゛』

「ウィゴーちゃんがセル第三形態見たいに!
 おい、てめぇ!! どうしてくれるんだよ、頭お花畑野郎がっっ!!」

 芦田は自分のスタンドが傷つけられた怒りで、青筋を立てて
りんに指を突き付ける。

 ……いや、お前の所為だよ!!

547りん『フューネラル・リース』:2024/01/10(水) 18:59:46
>>546
「え゛ぇ゛っ゛!?」

いきなり目の前で
スプラッタな状態になった『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』に
思考が追い付かず、只々驚愕するしかないりん

「えっ?うちのせい!?」

地の文はりんではないし、
地の文に対してならともかくりんに責任を問うのは筋違いなのだが
いや、というかどう考えても自爆だしこちらに責任を問われても…

「えっ、あの、えっと」
「ごめんなさい!」

「あの、うちどうすればいいか…
 スタンドの手当てとかしたこと無いし」

「と、とにかく救急車!救急車!!!」

謂れのない罪を着せられあたふたと慌てるりん
とりあえず119をしようとするが、これ呼ぶ意味あるかな…

548芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/11(木) 12:52:14
>>547

>ごめんなさい!

 「――お前の罪を 赦そう アシュタロス」

 『ど う  言  う ネ タ だ よ! ?
誰もわからねぇよ、GS美神の漫画なんぞ!』

 「正月で少し時間ある時にPLが久しぶりに読んで面白かったからさ」

 芦田のボケによって、痙攣していた筈のウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは
元気に怒鳴りつつツッコミへと復活した。どうやら自力で蘇生範囲のようだ。

 『黄色い救急車を呼んでも手遅れだと思いますし……とりあえず
話を戻しますね、お花の方。この馬鹿もとい狂人は
なんか道を自由に歩く人形の噂をどう言う伝手なのか知ったらしく
何を思いついてか、そっから虫取り網一本で意気揚々と外を散策してる次第でして』

「別に、生真面目に説明しなくて良いよウィゴーちゃん。
あと、ついでに人気投票の話をここでしても。スパイダーマンとデッドブールの
会話で、デップーがメタ発言してもスパイディには何言ってるか意味不明に
聞こえる処理が公式でもされてるから。りん坊も、そー言う処理で
さっきの話題は宜しくね(キラッ)」

 『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです。
一人だけツッコミはきついです! 誰かまともなPCの方、乱入扱いで
構いませんので、この場をどうにかしてくれませんかね!!?』

 「安心しなよ、ウィゴーちゃん……あと精々222レスぐらいで終わるから」

『2を重複打ちだよな、ソレ!!!!?? 地獄の空間が形成されるよ、そのレス数!』

 わーわーぎゃーぎゃーと騒ぐ一人と一体。
ある程度騒いでテンションが落ち着いたのか、急に真面目な顔で芦田は告げた。

そう、りんに。目の前の花が頭に咲いた少女にである。

「……フッ
おめーが何でそんなに深刻に悩んでるのか、知らないけどよ」

そう、野性味のあるシニカルな感じに口の弧を微かに吊り上げ……。

 『お 前 今 ま で の 茶 番 の 空 気 で シ リ ア ス
や れ る と 思 っ て ん の ! ! ?』

上げる前にスタンドが驚愕の叫び声で遮った。

そりゃそうだ。

「ちょちょっ(;'∀') ウィゴーちゃん、いま真面目なく う き♪」

『無理だよ!!! お前今までの流れで、この娘の悩みとか苦しみとか
吐き出させるの天地ひっくり返しても不可能だって!!
 あとウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト! せめてウェアさんとかにしろ!!』

 


 どうする? 真面目な空気にしちゃう?

549りん『フューネラル・リース』:2024/01/11(木) 19:09:25
>>548
頭のイカれた大男がいる、一人では手に負えん(コ)

「え?あれ?治ってる?何で?」

もはやどこをどうツッコメばいいのか分からないが
さっきまで血みどろの惨状だったスタンドが
何か知らないが勝手に治ってるいるので、救急車を呼ぶ必要は無いようだ
…多分

と、何か急に真面目な雰囲気に…
なろうとして自らのスタンドに邪魔される芦田

ここから真面目にして良いのか?
出来るのか!?

…ここはギャグで流してしまった方が良いのかもしれないが
何事も度胸が肝心だ、やってみようか


「ここ、ちょっと前に事件があって」

りんの傍には一輪の花が供えられている
被害者が正確にどこで亡くなったかは知らないため
とりあえずここに供えるしかない

芦田に心境をぶちまけるだとかそういう事は無いだろうが
ちょっとした世間話程度の話ならするかもしれない

550芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/12(金) 11:22:37
>>549

>ここ、ちょっと前に事件があって

「ふーん? んで?
誰が死んで、多分知り合いで? お前さん。その殺した奴を知りたいとか?」

 『――何か、周辺に残骸があるのなら』

           『知る事 可能かも知れませんよ』

       ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

 芦田は、狂人であるが馬鹿でも鈍い訳でも無い。周囲に便利で有能な
人間がいれば鈍感で役立たずとしてサボる事もあるが、基本は探偵事務所の
助手をする程度に能はあり……更に、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトと言う
アリーナが初期捜査で重宝する程度に有能な力を所持もしてる。

 『廃ビルですので、色々と残骸が多く少し絞り込むのに時間は掛かりますけどね』

「まぁ、血を拭ってもらったサービスがてら。ウィゴーちゃんも
『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトっ』
まぁ、そー言う訳で殺人現場の捜査ってんなら、別にいま目の前で
危険があるでもねーし、急用でも無いしな」

 どうするよ? そう、芦田は君(りん)へ問いかける。

勿論、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは説明を省いてるので
スタンド関連の過去まで読みほどけない。だが、『ここで過去にスタンド関連で何か』と
言う分からない故に分かる情報も得られるだろう。
――また、『引き金』となった人物が或いは映る可能性も、ある……。

 選択は、君だ。

551りん『フューネラル・リース』:2024/01/12(金) 15:53:03
>>550
誰が死んだかは知らないし、知り合いでもないだろう
犯人が誰かなんて事は言わずともだ
ただ、喪に服し、この場で起きた事を考えるだけだった

「分かるんですか?過去の事」

だが、この口ぶりからすると
この二人は出来るらしい、ここで起きた事を知る事が

全て知る事は出来ないかもしれないし、
知りたい事が必ずしも知れるとは限らない
けど、ここで起きた事を知りたい

…りんは正直な所、怖い
だが、『フューネラル・リース』の事を少しでも知らなければ
『フューネラル・リース』と向き合う事は出来ない

だから

「あの…」
「本当に、出来るんなら」
「知りたいです、ここで何があったか」

逃げない

552芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/13(土) 16:57:37
>>551

>本当に、出来るんなら 知りたいです、ここで何があったか

『重い期待に対して、こう答えるのは心苦しいですが。
私の力は過去を見れますが、スタンドの関わるものに対しては見えません。
 ですので、貴方に関わった何かがあったとしても、それを知るのは難しいでしょう』

ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは、最初にそう告げる。

「でも、ウィゴーちゃん。何かあったんなら、その前の犠牲者なり
誰か出入りしてたかは知れる筈だ。こいつの出入りはともかくよ
他に使い手が居たとして、行き成りスタンドを発現して出入りしてたとかじゃねぇならよ」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト……まっ、確かにね』

具体的に、何が起きたのか? その事実は闇だ。だが、闇を明かすであろう
光への手がかり、その『種火』となるものは得られる可能性がある。

数分ほど、下らない戯言を発するイカレた男と、そいつに嫌味の応酬で言葉を返す
スタンドは『フィルム』を何度かモノクロのヴィジョンに触れつつ色んな廃ビルに
散らばってた残骸から引き出していた。

 
  そして……結果は。


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 「駄目でした てへぺろ! (ノ≧ڡ≦)」

 『微塵切りにしてやろうか……? 今なら出せるよ 領域展開』

 廃ビル内で、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは懸命にいろんな場所に
スタンド能力を行使してみた。
 だが、りんの記憶から抹消されてる為に仕方がない事なのだが。
【場】『自由の場』 その2
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1621051851/724-748
   及び
『葬送の花渦』にて、被害が起きたのは廃ビル外。そして廃ビル内での発端でも
加害者となる人物はスタンド能力を発現していた為に、今のスタンドの力では
何にせよ過去改変フィルムで詳細を明らかにする事は出来ないのだ。

「まっ、そうがっかりすんなよ〜ピクミンガール。何か起きたか不明だが
此処でスタンドの何かしらが起きたってのの確かなんだからよ。
 気にせず、前向きに人生……」

 せめて帰り道だけ途中まで送ってやるわ。と言いつつ適当な男と共に
りんは外に出るだろう。そして……自由奔放な男は適当な場所を目的なく
ぶらぶら君の視界の中で踊るように移動したのをピタリと止め……。

 「…………この『ゴミ』は、最近落ちたもんか?」

 ――そう手に持つのは、だいぶ時間が経ってて汚れてるが。

 ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1647262289/29

 「――『タオル』か? これ」

 ……芦田の手には、既に最近の天候や野晒なのも相まって襤褸布だが
辛うじてタオルと思しき形態をしていた。何処となく、それは君にも
芦田にも名も無き何かの犠牲になった存在の『遺志』なり『無念』のようなものを
不思議と感ずるに至った。

 「……ウィゴーちゃん」

『正式名称で……えぇ、わかってますよ』

 「――俺ら、すげー今シリアスしてんじゃね? 最初の導入見返してみろよ?
おめぇら、こんなマジの展開になると予想出来たの居ないでしょ?」

 『だ ま っ て く れ る ? ? ほ ん と 』  ズギュン

一瞬、全ての空気を台無しに男はしかけたが。間髪入れずにスタンドは
『過去改変』のフィルムを抜き出し……そして、フィルムのある部分を見せた。

 タオルを使用する……『髪を金色に染めた大学生程度の男』

 周囲には、数人程度の同年代の若者の姿も見て取れる。
金髪の大学生が、何やら焦った様子でタオルを使用しており、それを
差し出した仲間と共に何か早口で伝達してるらしい様子。

 そのフィルムより先は『感光』して黒く……『スタンドが関わった』のだろう
形跡が見て取れる。

 「……多分、こいつら『被害者』だな。
おい、目に焼き付けておけよ」

 「――お前が原因か、他に元凶が居るか知らないが。
こいつ等は、十中八九死んだ。そして、お前さんが関わってるって
思ってるのなら。何かしらで『償い』の方法探すんだな」

「どうやって? そんなん俺は知らねぇし、わからねぇよ。
こんな狂った男なんぞの言葉より、お前さんが模索するしかねぇんだから」

 風が吹きすさぶ。冷たい風だ、男の言葉と同様に暖かくは無い。

逃げなかった君は、少しだけ出来事の『片鱗』を知ったのだ。

553芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/13(土) 17:05:59
>>551(悪い! ちょっとタイム!)

 「……いや、ちょっと待てよ?
これって普通に【ミ】『葬送の花渦』に調査した結果とか
言い切りじゃなく、そっちに伝えて結果報告を出して貰ってから
行動処理するべきだよな? この事案って」

『今更かい! まぁ早めに気づいたんなら、良し!』

554芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/13(土) 18:18:23
>>551(↓により訂正させて頂きます。色々と暴走してすみません)
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1647262289/47

 「……ふむ、『なしのつぶて』なぁ。

『すみません、力不足で』

 「いや、ウィゴーちゃんの所為じゃないよ」

なるべく、しらみつぶしに。芦田とウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは
周辺、廃ビル内や外にもあるゴミを探してみたが。綺麗さっぱりと
フィルムを引き抜けるに可能だと思える物は無かった。
 代わりに、芦田は持ってるスマホから一つの記事を出す。

 ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1647262289/40

「とりあえず。ウィゴーちゃんがビル内に転がってたネジとかから
フィルム出したら『感光』してた。つまり『スタンド関連』の何かはあった。
 そんでもって、此処の住所と合致してる記事」

 何かあったのは、確かなんだろうよ。そう、りんに
明日の天気でも告げるような軽い調子で芦田は告げる。

 「……なんつーか、『納得』があんま出来ねぇ感じだよなぁ」ポリポリ

「おめぇさんは? このまま、此処で何か大変な事ありました。
 でも、わからねぇし忘れて前向きに生きましょうって感じにすんのか?」

芦田は、りんに聞く。何が起きたかわからない、ただし『何か起きた』のだ。
スタンドに関わる何かは、このビルで過去に。

 それと、調べればわかる程度の未解決の事件の記事。
今は、これだけが数少ない過去の残滓だ。

555りん『フューネラル・リース』:2024/01/13(土) 18:57:50
>>554
『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』の能力をもってしても
その仔細を知るには至らなかった
ちょっと期待と、不安があっただけに
ほんの少しの落胆と安心が入り混じった複雑な感情に見舞われる

ここで『フューネラル・リース』が覚醒し、人が死んだ
それは言われるまでもなく分かり切っている事だ
ただ、『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』によって
それはより確実な事実となった、それだけだ

「ううん、忘れるつもりはないよ
 多分、忘れた方がずっと楽なんだろうけど」
「でも、だからってずっと引きずって後ろ向きになるのは嫌」
「勝手だけど、ここで何が起きたか今は分からないけど
 うちはそれも持って行って前向きに生きたいな」

結局、ここに来た収穫はほとんどが無かったが
ここに来て向き合う、それ自体がりんにとって意義のある事だったのかもしれない

「それに、うちが前に進んで生きてればいつか分かると思います」

りんが『フューネラル・リース』と向き合い続けていれば
何れ分かるかもしれない

その時、りんは己の過去を受け入れられるだろうか?

556芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2024/01/13(土) 19:17:55
>>555(お付き合い有難うございました! 楽しかったです)

 「……『納得』が、できねぇな」

「いや? お前さんの回答じゃねぇよ。この『事件』っての『真相』よ。
元凶がよ、まぁ、そっちにあるとしてもよ?
 因果関係とか、何でこの記事の奴らが死んだのか。
巻き込まれたのか、実は悪い奴らで正当防衛で、お前さんが返り討ちしたのかだとか。
 そこら辺が全く謎しな……腐っても『探偵』の助手だしなぁ」

 なぁウィゴーちゃん?

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです。
ふむ、この事件……少し追う必要性があるようですね』

 「おぅ、つう訳でだ。りん、だったか?
 こっちもこっちで、この事件ちょいと追ってみるからよ。
また何かあればスマホなりで連絡しろよ。
 ――真実ってのは、いずれ解き明かされるもんだぜ。
例え、どんなに上手く葬り去ろうとしたってよ、必ず人の手で
隠されたもんは人の手で暴かれるもんさ」

 何時になく、狂った男は少々『やる気』になったようだ。

虫取り網で理由なく捕まった、この奇妙な出逢い。

 何時か……この縁が何か、今の暗闇を明かす切っ掛けになるのやも。

557りん『フューネラル・リース』:2024/01/13(土) 20:27:47
>>556
『納得』というのは重要だ
『納得』がいかなければもやもやしたものが残ってしまい
人によってはそこから進めなくなってしまう事すらある

芦田だけではなく、りんにしたって
飲み込み進もうとはしているが納得には至ってはいないだろう

「はい
 芦田さん、だよね?
 そっちも何か分かったら教えてください」

あれ?りんって名乗ったっけ?
と思ったが細かい事はいいだろう


冷たい風が吹く冬の廃ビル
あの日は、冬と春の境目となる時期だった
冷たさと暖かさが入り混じる微妙な時

しばらくすればまた、あの季節がやってくる
春一番が吹いてくる頃

その時が来れば、りんはまたここの事を思い出すだろう

558美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/01/14(日) 05:45:57

『図書館』の敷地内にも『防災行政無線』の『屋外拡声器』は整備されていた。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1665841153/346)

「さて、と――――」

         キキィッ

駐輪場に停車する『カナリアイエローのベスパ』。
『臨海地域』では『ちょっとした問題』が起きたが、ずっと気にする程の事でもない。
『機械仕掛けの小鳥』――『プラン9・チャンネル7』を発現し、
鉄柱に取り付けられた『スピーカー』を『能力下』に収める。

    《『1001-111(イチゼロゼロイチ・イチイチイチ)』》

        《『1001-111(ナイン・セブン)』》

拡声器から響き渡る『スタンド音声による放送』は、
『半径300m内のスタンド使い全員』に聞こえただろう。
そして、本体は『120m離れた場所』にいる。
『遠隔型』の強さ。
ヴィジョンが遠くに行けるのではなく、能力そのものが広範囲に作用するタイプ。
それゆえに、誰一人として『本体』に気付ける者はいない。

(門倉さんの『人を見る目』は、本当に『確か』よね)

この方法を使えば、『門倉派』の宣伝も簡単に出来てしまう。
『プラン9』は『最高峰の広報担当』だ。
『スタンド音声』である以上、完全に無視する事は出来ないし、
確実に『スタンド使いだけ』に届く。
『ネットを使った拡散』などは、誰でも出来るゆえに『信憑性』が薄く、
埋もれて忘れられたら『そこで終わり』。
底の浅い『伝播』など足元にも及ばない、圧倒的な『情報発信能力』が、
『プラン・チャンネル7』にはある。

(まぁ、『宇宙戦争』程にはならないでしょうけど)

H・G・ウェルズのSF小説『宇宙戦争』が『ラジオドラマ』として放送された際、
火星人の襲来を事実と信じた人々によるパニックが起きたという都市伝説がある。
美作が企図しているのは『それ』に近い。
『星見町』を混乱に陥れようという訳ではないが、
多くの『リスナー達』を巻き込むような『派手なパフォーマンス』をやろうとしていた。

        ド ル ン ッ !

『目的』を果たした後は、ここに留まる意味はない。
速やかにエンジンをリスタートさせ、駐輪場から発進する。
『立つ鳥跡を濁さず』。

559宗像征爾『アヴィーチー』:2024/01/18(木) 08:18:02

おそらく『ここ』だろうと考え、再び『鎮守の森』に足を踏み入れる。

    「――――――『また』か」

細切れに散らばった『破片』を見下ろし、
時間の流れに取り残されたかのように立ち尽くす。
それと同時に、散乱した『写真』の残骸と、
『馨』が命を落とした日の出来事が、記憶の中で重なり合う。
失うのは『二度目』だった。

           ス ッ

やがて緩やかに腕を伸ばし、『写真の切れ端』を拾い始める。
『こうしたのが誰か』も、その『目的』も容易に想像できた。
俺に『人間らしさ』を期待したのだろう。
俺自身も『そうであって欲しい』と、心の何処かで感じていたのかもしれない。
だが、現実は違ったようだ。

「もう『終わってしまった事』だ」

これは単なる『過去の記録』に過ぎない。
写真が破られたからといって、そこに写る人間が死ぬ事はない。
『既に死んだ人間』は死なない。

「『これ』がないと、いつか忘れてしまいそうになる」

それでも破片を拾い集めているのは、これが必要だからだ。
たとえ大切な思い出と呼べる記憶であっても、
長い時間が経てば、徐々に薄れて消えてしまう。
『思い出せる物』がなければ、過ぎ去った過去を忘れない事は難しくなる。

         ハラリ

               ハラリ

しかし、左腕の『後遺症』のせいで細かな破片を掴みづらく、
作業は思いのほか難儀していた。

560宗像征爾『アヴィーチー』:2024/01/22(月) 01:50:45
>>559

長い時間を掛けて『写真の破片』を集め終わった。
それは記録であり、既に終わってしまっている。
たとえ破られたとしても、写っている人間が死ぬ事はない。

  『元通りに直せる』としても、そこに写る人間が生き返る事はない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「完全にぶっ壊れて原型留めずとも
 多少パーツあれば直ぐに元通りなのよ。凄くね? 凄くね?」

「あんたの知り合いか、あんた自身
 喋れるスタンドの知り合いっている? 
 教えてくんねえかな。ウィゴーちゃんの友達増やしたいのよね 俺。
 あんたのなんか貴重品壊れた時とか、無償で直すけど」

「んじゃまー、またどっかで出会えた時に。
 もし知り合ってたら教えてくれーな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』という名で呼ばれる、
『半自立型のスタンド』を連れた男を知っている。
『部品があれば元通りに出来る』と言った。
『意思を持つスタンド』を紹介すれば『無償で直す』と。
顔を合わせたのは一度きりだが、あれほど目立つ人間は多くない。
あの男を探し出すのは、りんの時より難しくはない筈だ。

        「妙な『縁』だ」

男の風貌を思い出しながら、『公衆電話』を探す為に立ち去った。

561小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/26(金) 18:32:17

閑静な住宅が立ち並ぶ通りを、しずしずと進む黒い人影。
それは『喪服の女』だ。
何かを探している様子で、しきりに辺りを見回しながら、
気遣わしげな表情で歩いている。

  「日が落ちる前に見つけてあげないと……」

家で飼っている『猫』の姿が見えなくなった。
普段は眠っている事が多いのだが、
気まぐれを起こして外に出てしまったのだろう。
行動範囲は広くない筈なので、見つける事は困難ではないとは思うが、
冷え込みが強くなる前に探し出したい。

562白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/27(土) 21:00:59
>>561

学校帰り、この辺りに寄る用があり、その帰路だ。
殆ど改造のない制服に瞳と似た濃い青のマフラーを巻き、
冬風に長い髪を揺らして、静かに歩いていた。

「……?」

喪服姿の珍しさに顔を向けたが、
その人物の仕草に、声をかける事を決めた。

「あの。何か、お探しですか?」

頼まれたわけでもないが、
『頼みたい』ように思えたから――――それだけだ。

563小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/27(土) 21:59:19
>>562

呼び掛けられて、くるりと振り返る。
普段は喪服と揃いの『黒い帽子』を被っているのだが、今日は被っていない。
アップに纏められた黒髪は、控えめながら艷やかな光沢を持っていた。

  「――ええ……」

相手の質問に『肯定』を返しつつも、『説明の仕方』には迷う。

  「『猫』がいなくなってしまったもので……」

確かに猫である事には違いない。
ただ、『とても珍しい猫』だ。
一見して猫には見えない程の。

  「気まぐれで出掛けたのだと思いますが、
   暗くなると冷え込みが厳しくなりますから、
   その前に見つけてあげたいのです」

もし、このまま帰ってこなかったら。
心配は募り、それが顔にも表れている。
今まで一人で暮らしてきた自分に出来た『家族』なのだから。

564白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/27(土) 22:05:07
>>563

「『猫』……そう、なのですね。
 それはとても心配だと、トーリも思います」

『葬儀』に関係する用事ではない事には、
触れない方がきっと良いのだろう。
頼まれてもいない詮索はしないに限る。

「その。よければですが……
 トーリにも、探すのを手伝わせてくれますか?」
  
それよりは、して欲しそうなことをするべきだ。

「『猫』に。詳しいわけではないので、
 うまく探せるかどうかは、わかりませんが……」

それがトーリ自身にもしたいと思える事なら尚更だろう。

565小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/27(土) 22:27:51
>>564

『葬儀』以外で、日常的に『喪服』を着る人間は多くない。

  「……ありがとうございます」 

         ニコ…………

見ず知らずの相手に向けてくれた親切に、自然と柔らかい微笑が浮かぶ。
ただ、ここから先が少々問題だった。
説明しなければならない。

  「『撫子』という『黒い猫』です。
   近くで呼べば出てきてくれると思うのですが……」

話しながら、再び歩き始める。
向かう先は住宅地の中に整備された『公園』。
そこにいるという確信があった訳ではなく、
行動範囲はそれくらいまでだろうと予想したからだった。

  「私は……『小石川』という者です」

少し歩くと、やがて公園の入口らしいものが前方に見えてくる。

566白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/27(土) 22:46:28
>>565

「トーリも。心配ですので。
 ……『白岸・ノエル・トーリ』と言います。
 小石川さん、よろしくお願いします」

         ペコリ

「『撫子』」
「ちゃん。ですね。黒猫の」

公園には人らしき影は多くは無い。
住宅街の公園というのは得てしてそういうもの。
せいぜい親子連れをたまに見かけるぐらいだ。

「撫子ちゃん、には。 
 なにか、首輪のような……鈴のようなものは。
 ……ほかの黒猫と見分けられるものは、付けていますか?」

       「小石川さんには見分けられても――――
        トーリには、見分けられないかもしれないです」

もちろん、『撫子』の実態からしてそんなことは起きないのだが・・・

567小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/27(土) 23:13:53
>>566

白岸と名乗った少女に丁寧な会釈を返す。
この近辺は街の喧騒から離れており、賑やかなのは子供が遊んでいる時くらいだった。
大抵の場合、今のように静かなものだ。

  「――いいえ……」

  「その……『そういったもの』はありません」

答え方に『躊躇い』が混じる。
『撫子』は『マシュメロ』によって誕生した『帽子猫』だ。
他の猫と間違う可能性はないだろう。
どちらかといえば、『猫に見えない姿をしている』と言った方が正しい。
しかし、ありのままを話す事は難しかった。

  「……家の庭で『花』を育てているのです」

  「もしかすると、そういった場所にいるのかもしれません」

さりげなく話題を変えながら、季節の花々が植えられた『花壇』に近付いていく。
しかし、そこに撫子の姿はなかった。
花壇の周囲は小さな『生垣』で囲われており、その中は見えない。

568白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/27(土) 23:23:37
>>567

会釈を終えると、ほとんど同じ背丈の二人は並んで歩く。

「そう。なのですね。『縛る物』がないのは――――
 撫子ちゃんにとっては、開放的で。良いことなのだと、思います。
 猫は、縛られるのが嫌いな、生き物だと。……聞いたことがあるので」

言葉を丁寧に探して、ゆっくりと返す。
本心でもない事を言っている、という意味ではない。
少しでも。相手のためになることが、言いたいから。
『縛る物』がないのが良いことだと、口にするのはどこか重いから。

「お庭で、花。とても……お洒落だと、トーリは思います。
 トーリの家でも。プランターで、小さな花は育てています」

            キョロ ・・・

「『花壇は立ち入り禁止』……これも。
 撫子ちゃんには、関係ないでしょうね」

立て看板が目に入る。
少なくとも花が踏み荒らされたような様子は無い。

「見えるところには、見当たらないですが――――
 ……黒い猫なら。影にいたら、トーリなら気づかないかもしれません」

花を踏まないあたりまで近づいて、生垣の影などを覗いてみる事にした。

569小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/27(土) 23:45:37
>>568

  「……そうですね」

  「猫は……好きな時に好きな場所へ行く生き物です。
   撫子は眠っている事が多いので、
   あまり独りで出掛ける事はありませんが、
   やはり時々どこかに行きたくなるのでしょう」

  「私にも、時々そうした事がありますから……」

           ソッ

  「――『花壇』は乱れていませんね……」

荒らされていない花壇を見て安堵した。
内側が空洞になっている撫子の体重は、普通の猫と比べて軽いが、
もし花の上を通ったなら足跡は残る。
それがないという事は、そうしなかったのだろう。

  「白岸さんは『お好きな花』がおありですか?」

  「私は『ラベンダー』が好きで……その『香り』も愛用しています」

白岸に倣い、『生垣』に視線を移す。

    ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

その中に何か『黒いもの』が見える。
形までは分からないが、『生垣の一部』ではない事は確かだろう。
そして、よく観察すれば、微かに動いているらしい事も分かった。

570白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/28(日) 00:15:45
>>569

「――――そう。なのですね。
 トーリは。あまりそういう気持ちになることがなくて。
 ずっと。同じ場所にいたいというわけでは、ないのですが」

          「……いえ」

途中で話を切ったのは、
自分のそれがひどく個人的な独白に感じたからだ。

「花――――」

「トーリは。あまり詳しくはありませんが、
 青くて、小さい花が好きです。
 名前は今となっては分かりませんが、
 ……昔いた家で育てていて、
 その想い出のせいなのだと、思います」

生垣の中の『何か』に気づき、

「『ラベンダー』……トーリも知っています。
 小石川さんに、似合う気がします。
 ……雰囲気の話で、花言葉、だとか。
 そういうものは、トーリはあまり、知らないのですが」

普通のように話しながら『小石川』に視線を戻して、
特に止められたりしないようであれば、それをよくのぞき込んでみよう。

571小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/28(日) 00:38:17
>>570

ここ――『小石川家』がある住宅街は、至って静謐さを湛えた場所だ。
小石川自身そういった雰囲気を好むが、時には賑やかさが恋しくなる事もある。
そんな時は、多くの人々が行き交う通りに足を運ぶ。

  「……白岸さんも『花』がお好きなのですね」

気に掛かる部分はあったが、踏み込むべきではない。

  「きっと……『白岸さんに似合う花』なのだと思います」

白岸も同じように配慮してくれた事は察していた。

         ゴソ…………

僅かに見えたのは『猫の耳』だろうか?
やはり、ここには猫がいるようだ。
それも『黒い猫』が。

  「――『撫子』」

           「にゃあ」

生垣に向かって名前を呼ぶと、やや遅れて『反応』があった。

572白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/28(日) 00:58:58
>>571

住宅街の閑静さは単に過疎地域なのではなく、
そうした空気を好む住民が集まるゆえなのだろう。
小石川の気風からもそれは読み取れる。

「そう、だったのかもしれません。
 ……ああ。トーリは、その時も。
 そう言われた覚えがあります。
 ……トーリに似合う花を選んだんだ、と」

より厳密には、その時は『ノエル』と呼ばれていた。
その名前は、もっぱらその頃に呼ばれていた。

「撫子ちゃん。
 見つかって、良かったです。
 家に帰ることが出来て……」

物思いの霞を思考から払いながら、猫を見てみる。
小石川に似合う、小さく大人しい黒猫なのだろうか?

573小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/28(日) 01:27:01
>>572

  「……外は寒いですから、ここに入ってしまったのかもしれませんね」

         ガサ…………

                ガサガサ…………

  「白岸さん、ありがとうございました。これで無事に連れて帰れます……」

生垣から物音が聞こえる。
呼び掛けに応じて、こちら側に出てこようとしているのだろう。
それから数秒後、『黒猫の撫子』が姿を表した。

     トッ トッ トッ

           「にゃあ」

これは――――果たして『猫』なのだろうか?
出てきたのは『黒いキャペリンハット』だった。
似合うといえば似合うかもしれないが、
それは『帽子として』であり、とても猫には見えない。
確かに『耳』は生えているし、『尻尾』らしきものもあるようだ。
それどころか、この世の生き物とも思えないような奇妙な外見だった。

  「その――驚かせるつもりはなかったのですが……」

  「――『説明』が難しかったもので……」

奇妙な『帽子猫』は、白岸の足元に座り、その姿を見上げている。
鍔の部分が体毛である事を考えると、『長毛種』なのだろう。
体毛に隠れてしまっているが、きちんと『足』もあるらしい。

574白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/28(日) 01:46:01
>>573

「その。子は。……そう、なのですね。
 いえ。確かに、撫子ちゃんの見た目は……
 『説明』されても、分からなかったと思います。
 今のように、こうして、見てみないと」

見たとしてもかなり信じ難い存在だろう。
トーリは『スタンド』の存在を知っているので、
それが『ありえる』ということを理解はしている。

「トーリも。疑ってしまって……
 この子が寒い思いをする時間が、
 長くなってしまったかも、しれません」

しばらく猫を見ていたが、
顔を上げ、小石川に向き直った。

「……どういう種類でも。猫は、可愛い動物ですね」

トーリ自身は犬派なのだが、それはわざわざ言わない。
猫を可愛いと思う気持ちは別に嘘ではないのだから。

575小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/28(日) 02:10:21
>>574

思っていたほど驚かれなかった事は、逆に意外だった。
しかし、その理由は分かるような気がする。
『非日常』に接する事が初めてでなければ。

  「ええ――この子は確かに『猫』です……」

         スッ

  「そして……私の『家族』なのです」

両手を伸ばして撫子を抱え上げる。
大人しい性格のようで、すんなりと持ち上げられた。
遠目からは『変わった帽子』に見えるだろう。

  「……撫でられるのが好きなので、『撫子』と名付けました」

        ソッ…………

片手で帽子猫を撫でる。
そうされると落ち着くらしく、徐々に耳が『寝た状態』になっていく。
こうなると完全に『帽子』にしか見えなかった。

  「いえ……白岸さんが見つけて下さったのです。
   私だけでは気付かなかったかもしれません」

  「よろしければ、何か『お礼』をしたいのですが……」

帰宅の途中に見えたし、あまり引き止めるのも迷惑だろうか。
そのように考えながら言葉を紡ぐ。
ただ、今この場で出来る事があれば、それをしたいと思う。

576白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/28(日) 15:42:23
>>575

「そう、なのですね。
 ――――意味があって。素敵な、お名前だと思います」

『名づけ』はどれほどシンプルな物でも意味がある。
そこに『想い』があるならなおさらだろう。

「『お礼』」
「―――――――ですか。そうですね、『何か』」

          「せっかく、ですから」

申し出に、少しだけ思考がフリーズした。
お礼という概念にではなく、『何か』という言い回しにだ。
もちろん受け取らずに拒む事も出来るのだろうが、
それはこの女性に対し、失礼なことに感じられる。

「あの。……例えば、なのですが。
 小石川さんが考えている『お礼』というのは、
 どのようなものがあるのでしょうか?」

          「……」

「すみません、失礼な言い方だとは思います。ただ……
 トーリはとても。『何かを決める』のが、得意では……ないのです」

わざわざ触れ回るような弱みでもないが、
不躾な問いかけには、理由が必要だと思った。するべきだから、する。

577小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/28(日) 20:55:54
>>576

表情には出さないものの、白岸の反応は気に掛かった。
予想していない答え方だったからだ。
しかし、そういった人間がいる事そのものは不思議ではなく、
ゆえに深く立ち入ろうという気は起こらない。

  「――お気になさらないで下さい。
   私にも『苦手な事』がありますから、お気持ちは分かります」

それから、自らの腕の中で静かにしている『撫子』を一瞥する。

  「……では、こうしましょう」

  「少しの間、この子を抱いてあげてくれませんか?
   『お礼』なのに『お願いする』というのは変な話ですが……
   『滅多に出来ない体験』ではないかと思います。
   とても大人しい性格ですから、暴れたりしませんよ」

普通の猫と同じように、その辺りの気質は『飼い主に似る』という事なのだろう。

  「もし『アレルギー』をお持ちでないのでしたら……」

相手に心の余裕を持たせる緩やかな所作で、白岸に『帽子猫』を差し出す。
それを受け取ったなら、まず『重さ』が『帽子程度』しかない事が分かるだろう。
そして、生き物の証である『体温』と、豊かな『毛並み』の感触が伝わる筈だ。

578白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/29(月) 00:47:43
>>577

「……ありがとうございます、小石川さん」

        ペコリ

「『猫アレルギー』は。ありませんので。
 ぜひ、トーリにも抱っこをさせてください。
 ……トーリは猫を抱いたことがないですが、
 『傷む』のような抱き方は、しないよう。気を付けます」

        ス ―――― ・・・

両手を前に差し出し、『帽子猫』を受け取る。

「……『暖かい』」

軽い、と思うよりも先に、それが口に出たのは、
冬の住宅街を歩いた後だったからだろうか。

「猫。なのですね。分かってはいたのですが、
 こうしてみると――――もっと、実感できます。
 安心している事が。……生きている事が」

              「……」

腕の中にいるその姿に視線を落としていたが、
少しすると、ゆっくりと顔を上げた。

「……そろそろ。トーリはお礼にとても満足しました。
 今度は小石川さんが、撫子ちゃんを抱っこしてあげてください」

          ソ ・・・

あるじ
「主の腕の中が一番――きっと。落ち着ける場所なのです」


預かるときに増してゆっくりと、その体を『飼い主』の方へと返す。

579小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/01/29(月) 02:01:53
>>578

撫子は眠りかけているのか、両方の目が半分ほど閉じられている。
出歩いて疲れたのかもしれないし、白岸の抱き方が良かったのかもしれない。
ともかく落ち着いた心持ちでいる様子だった。

         「――にゃあ……」

『スタンド生物』である撫子は、
外見だけを見れば生き物にすら見えない不可思議な存在だ。
しかし、たとえ風変わりな姿であっても、普通の猫と同じように生きている。
その『生の営み』が愛おしい。

  「……ご飯も食べますし、睡眠も取ります。
   食事をした後は、ほんの少しだけ『重くなる』んですよ」

            クス…………

穏やかに微笑みながら、白岸の手から撫子を受け取る。

  「撫子に優しくして下さって、ありがとうございました。
   白岸さん……もし何処かでお会いする事があれば、またお話をさせて下さい」

        スゥッ

  「――では、失礼いたします……」

深々と頭を下げると、寝息を立て始めた帽子猫を抱いて花壇から離れ、公園の出口に向かう。

              コツ コツ コツ …………

立ち去り際、白岸が最後に口にした言葉が、意識の片隅に引っ掛かった。
普段あまり使わない表現だからだろうか。
撫子を見て驚きが少なかった事と合わせて、何か複雑な事情を感じる。
しかし、それは彼女の個人的な部分だろう。
今の自分にとって大事なのは、撫子が無事に見つかり、
『小さな縁』が出来たという事なのだから。

580白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2024/01/29(月) 02:44:46
>>579

口にしてから、言ってしまった――――と、そう思った。
この小石川という女性の雰囲気が為せるものなのか?
表に出していないものは、出すべきではないものだ。

「―――――――こちらこそ。
 また。お話しできたら嬉しいです、小石川さん」

                スッ

頭を下げ返し、公園の逆の出口に向かう。
単純に、帰る方向が逆だからだ。

「では。……日も沈んで来ますから、どうか。お気をつけて」

              ザッ ・・・

『主』――――己の指針は、とうに失われた。
新しい保護者は保護者でしかない。
自由であるべきという指針は指針ではない。

(それでも)

自由である事で小石川や――――千々石、斑鳩。
縁が紡がれているのも事実だ。それは良いこと。とても良いこと。

          ・・・思考を振り払い、そのまま帰路についた。

581りん『フューネラル・リース』:2024/02/03(土) 12:51:31
ここは自然公園内にある
少女の霊が出るという噂の心霊スポット 鈴蘭畑

「鬼はうち、福は外〜♪」

その近くの小屋で豆をまいているのは
年齢10歳程の頭に鈴蘭が咲いている少女だ

582ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/04(日) 19:29:15
>>581
「ふー…」
近くのベンチでゆっくりとタバコを吸う女性。
…のように見えるがそのタバコには火がついていない。

「ま、少しは量を減らさないとね」
どうやらそれはタバコではないらしい

「おや」
太線を向けると頭に花が生えた少女が見えた。

「…都市伝説みたいなのがいる」
興味があるのか、そっちに歩いていく。

583りん『フューネラル・リース』:2024/02/05(月) 18:05:11
>>582
「鬼はうち〜」

豆をぶつけられる鬼役がいないが
これは本来、鬼役をやる予定だった長谷川 平蔵(ながせがわ へいぞう)の
家が火付けされてしまったために来れなくなってしまい
止むなく一人で豆まきをする事になったからだ

バラバラと豆を撒き散らし、ノリにノってきたりん
りんお手製の豆鉄砲用のアサルトライフルに豆を装填する

「福は外ぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

ババババババババッッッ

豆の詰まったアサルトライフルを四方八方に発砲するッッッ!!!

「あっ」

周囲に誰もいないと思っていて気付かず
ヨハネにアサルトライフルの豆が勢いよく飛んでいく(パスEBくらいか?)

584ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/05(月) 19:23:14
>>583
「あっと危ない。」
自分に向けて飛ばされてきた豆鉄砲。
ヨハネは咄嗟に目を庇いつつ…
あえて避けたりしなかった

ピシッ ピシッ
パクっ

「いまのはちょっとだけ、効いたかな〜?
 あ、周りはよく見ようね〜」
口の中に飛び込んだ豆をポリポリと食べながら、ヨハネは微笑んだ。

「福は外ってことは、コレで私に福来たる…ってことでいい?」
目付きが悪い女性だ。
りんからみたらちょっと怖い見た目に見えるかもしれない。

585りん『フューネラル・リース』:2024/02/06(火) 19:08:41
>>584
タバコではない、電子タバコか
さもなくばココアシガレットだろうか?
を咥えながら豆を食べるのは中々器用な真似をする
いや、その時は咥えていないのかもしれないが

「ごめんなさ〜い」

頭の鈴蘭を揺らしながらヨハネに駆け寄り謝るりん
多少目付きが悪かろうと、あまり気にしない

「怪我とかしてませんか?」

豆鉄砲とはいえ、目とかに入ったら危険ではある

586ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/06(火) 20:32:31
>>585
ヨハネは口をモゴモゴさせている。
どうやらタバコは咥えていなかったようだ。

「ああ、気にしないでいいよ。
 見ての通り無傷だよ、」
そう言ってヨハネは手を振る。

「福は外、だそうだからむしろ感謝かな?こっちに福が飛んできたってわけだし?」
どこか意地悪そうに答える。
よく見ると手に持っているのはタバコではなくココアシガレットのようだ。
ちょっと甘い匂いがする。

587りん『フューネラル・リース』:2024/02/07(水) 13:58:35
>>586
「良かった〜」

とりあえず、怪我をさせていない事に安堵する

「いつも鬼が追い払われてるのはかわいそうかと思って
 うちは鬼はうちって言うようにしてるんですけど」
「日本昔ばなしで、そうすると鬼が来て福を持って来てくれる話もあったし」
「けど福を追い払わなくても良かったかなぁ」

「あ、でもおねえさんに福が行ったなら良かったです!」

588ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/07(水) 22:01:06
>>587
「ずいぶんと優しい子だね。
どうせなら欲張って、鬼も福も全部家に溜め込むのが一番得なんじゃないかな。」
再び口にココアシガレットを加える。

「それも福を外に持ってきてくれたおかげだろうねぇ。
多分今後いいことがあるだろうね。」
どこか気さくな態度で答える。
しかしヨハネの視線はそう話してる間にも『りん』の頭の上に生えているものに向いているようだ

589りん『フューネラル・リース』:2024/02/08(木) 11:37:06
>>588
「えへへ、じゃあそろそろ豆を片付けないと」

辺り一面の散らばった豆をせっせと回収するりん
しかし、銃まで使って盛大にばら撒いた豆を回収するのは大変だ

しゃがみ込んで豆を拾い集める集めると頭の鈴蘭もゆらゆら揺れる
ふと、ヨハネの視線に気が付くりん

「あ、うちの鈴蘭気になる?」

590ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/08(木) 21:14:42
>>589
「拾ったのはそのまんま食べちゃだめだよ。
ちゃんと洗ってからにしな。」
そう言って軽く前かがみにその様子を見る。

「ああ、そうそう、スズランだったねえ。
そのお花の名前。」
そう言って頭の上で揺れる鈴蘭を指さした。

「それって本当に頭に生えてるやつ?
それとも」
「ネットで出回ってるお花の女の子とかいうののコスプレ?」

何気なく質問して…今度は少女に視線を合わせる。
ヨハネは目を見れば嘘を言っているかどうかがわかる。
本物か偽物か。果たしてどっちが本当なのだろうか…?

591りん『フューネラル・リース』:2024/02/08(木) 22:03:59
>>590
「犬じゃないんだからちゃんと洗うよ〜」

流石に地べたに落ちたものを
そのまま食べたりはしないくらいの衛生観念はあるが
食べ物を捨てるような事もしない

>それって本当に頭に生えてるやつ?
>それとも
>ネットで出回ってるお花の女の子とかいうののコスプレ?

「本物だよぉ、えへへ、綺麗でしょ?」

自分の鈴蘭を撫でながらちょっと自慢気に笑う

「ネットで出回ってるのって、あれ?
 見ると30日後に頭に花が咲いて死んじゃうっていうの…」

どうやらネット上の噂はりんも把握しているようだ

「あれうちに似た特徴で紛らわしいから迷惑してるんだよ〜」

ヨハネの真偽を見抜くその目には、鈴蘭の少女が嘘をついているようには見えない

592ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/08(木) 23:25:01
>>591
「ああすまないね。
 見た目的に土とか好きそうに見えたもんだからね。」
冗談を飛ばしているようだ。

「ネットは見てるんだねぇ。それなら話が早い」
彼女の目を見たヨハネは確信する
(本物か…)
世の中には妙なやつがいると感じた。

「まぁ要するにあんたにはそんな能力はないってわけだ。
それなら一安心だね。」

「ま、そもそも本当なら誰がそんな話で来るわけないし。」
ココアシガレットを新しく咥えて答える。

「…帽子とか、被ってみるかい?妙な噂に巻き込まれずに済むかもしれないけど…」
どうやら心配しているようだ

593りん『フューネラル・リース』:2024/02/09(金) 14:06:47
>>592
「帽子は被る時もあるけど
 日が当たらないと元気が出ないし
 花を押さえつける感じになっちゃうからちょっときついんだよね」

別に帽子が嫌いというわけではなく
気分によっては被る時もあるが、花を押さえるのは少々苦しいようだ
夏なんかは時々麦わら帽子を被っているりんが見られる

結構な数の豆を拾ったが、まだ辺りには豆がいっぱい散らばっている
調子に乗ってばら撒き過ぎたせいか、一人で集めるのは骨が折れそうだ

「それに、うちは自分自身をあんまり隠したくないな」

594ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/09(金) 21:50:23
>>593
「確かに…日光は花にとってはなくてはならないものだしねえ。
 常にはできないか」
彼女の言い分に耳を傾け、理解を示すように返事を返す。

「隠し事は得意じゃないってことかな…」
りんの目を見ていると、彼女は常に正直に生きているようだと感じた。

「たとえそれで、なにか起こる可能性があったとしてもかい?」
具体的には言わないが、どこか都市伝説を鵜呑みにする人間が現れないかと心配なようだ。

595りん『フューネラル・リース』:2024/02/10(土) 15:09:42
>>594
「何かかぁ…」

拾い集めた豆を袋に詰める
そんな作業を繰り返しながらヨハネの言う可能性について考える

りんの鈴蘭はりんそのものと言っていい
噂を鵜呑みにした人間がそれを引き抜こうとしたら、死ぬ

そして解き放たれるのは『フューネラル・リース』

周囲の命を狩り尽し、
りんを再生させる無慈悲で絶対的なりんの味方だ

例のネットの噂を鵜呑みにする馬鹿者はそうそういないだろうが
今後絶対に出て来ないとは言い切れない
そう考えると、鈴蘭を隠した方が良いのかもしれないが

「自分を偽って生きるのって、きっと苦しいと思うよ」
「うちは、花も含めてりんっていう人間だから」
「それも含めてちゃんとりんを見てほしいの」

鈴蘭はりん自身であり、誇りであり、偽りたくないものだ

「確かに、それで何かされるかもしれないけど
 でも、絶対に悪い事なんて起こさせない」

それを防ぐのはそう簡単な事ではないだろう
だから隠しておいた方がいいのかもしれない
でも、自分を偽って隠しておくのは嫌だ

勝手だけど、りんは自由に生きていたい
そのための覚悟は出来ている

596ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/10(土) 20:47:52
>>595
「なるほど、一理あるね。私も仕事柄、自分を偽ってる人間は嫌になるくらい見てきたよ。」
ポリポリと、ココアシガレットを食べ始める。

「世の中はそういう人間のほうが多いからねぇ。誰も彼もが苦しそうに見えてくるよ。」
目の動きで嘘が分かる。そんな能力があるからこそ、ヨハネは彼女の言葉に何処か共感できるのかもしれない。

「あんたは見かけによらずできた子みたいだね。思うままに生きるなんてのはなかなかできることじゃない」

「まぁ、それがあんたの生き方なら反対はしないよ」
そう言ってあたりを見回す。
「それでも大変なら…愚痴くらいは聞いてやってもいいよ。私は見ての通りの聖職者だからね」
りんの様子を見ながら答える。
聖職者…のわりにはタバコっぽいのを咥えていたりと、あまり真面目そうには見えないが。

597りん『フューネラル・リース』:2024/02/11(日) 15:38:27
>>596
「じゃ、じゃあ愚痴っていうかお願いなんですけど…」

笑顔を浮かべながらも
申し訳なさそうというか、ちょっと疲れたような顔でヨハネを見る

「あの…
 豆を拾うの、手伝ってくれます?」

もうかなり拾ったのにまだ豆はそこら中に散らばっている
一人でやってたら日が暮れちまうよ!

別に聖職者がそれを手伝う必要はない

598ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/11(日) 22:09:01
>>597
「ん?あぁごめんね。ずっと見たままで」
そう言って近寄っていき、屈んで豆を拾いに行く。

「しかし随分と撒いたもんだね。
これだけやってるなら多分いいことあるんじゃないかね。」
あっちこっちを探しているうちに結構豆が集まってきた。
少し楽しそうにヨハネは答える。

「他にもなにかあったら、ちょっと町外れの教会に来てみなよ。相談くらいはできるからね。」
そう言いつつどんどんと集めていく。
割とすぐに集め終わるだろう。

599りん『フューネラル・リース』:2024/02/12(月) 15:07:28
>>598
りんとヨハネの二人掛かりでようやく終わりが見えてきた豆拾い

「ありがとうございます、やっと終わりそうだよ〜」

腕をまくり額の汗を拭うりん
まだ2月だというのに、労働をしていると暑くなってくる
その労働の種を撒いたのはりん自身なのだが

「あっ、よかったらおねえさんもそれ持ってってください」

ヨハネが集めた分はヨハネに譲る
労働の対価としてはやっすい給料だ


バサバサバサ

鳥が飛んで来た音がする
何羽か鳩が豆に集って来たようだ

「あっ、由紀夫久しぶりだね〜、元気にしてた?」

ホーホケキョ

顔見知りなのか、1羽の鳩に挨拶をするりん


>他にもなにかあったら、ちょっと町外れの教会に来てみなよ。相談くらいはできるからね。

「その時は、由紀夫も連れてって良いですか?」

600ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2024/02/12(月) 22:33:21
>>599
「あぁ、こっちの分も終わったよ。」
豆を抱えながら答える
やがて、りんから自分が拾った分を受け取ることになった

「どうもありがとう。まぁこれは…料理に使えなくはないか」
量はそこそこある豆を見ながら呟いた。

バサッ

「おや、鳩が豆をくいにきた?
…ってペットだったのね…
 まぁ…」
鳩の様子をしばらく眺めてから答える。

「うちには他にも変なのがいるし、今さら鳩が増えても大丈夫だろ。私は構わないよ。」
そう言って軽く笑った。

「おっと、そろそろ帰らないと。
 そらじゃあ…」
そう言ってからスマホを操作して、地図アプリを見せる。

「うちの教会はここだから、覚えといてね。」
そう言って住所を見せると、
覚えたところを見計らい、その場から悠々と去っていった。

601甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2024/02/14(水) 15:13:59
2月14日

「あげる」

季節外れの陽気のバレンタインデー

暖かい空気に包まれながら>>602にチョコレートの包みを渡す
果たして、中身は一体…

602甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2024/02/15(木) 16:17:23
>>601
松本「へー、USJのカエルチョコじゃないか
   珍しい物を買って来たね」

ケロ

松本「ん?」
松本「なぁあま公、今何か声が聞こえた気がしたんだけど…」
あま「そう?」

松本「おーいマリア、チョコレートあるんだけど食べるかい?」
阿部マリア「おぉ、デカいチョコレートですわね!食いごたえがありそうですわ!」

カエルチョコに齧りつこうとするマリア
その時、突如チョコレートが動き出してマリアの頭部を直撃し破壊した!

松本「おい、どういう事だ!?何でチョコレートが動くんだよ!?」
あま「ネットで買おうとしたんだけど買えなかったから、手作りしてみたんだけど
   多分…その時、本物のヒキガエルが混入した」
松本「何でこの季節にカエルがいるんだよ!?」
あま「暖冬だから…」

           ,、   ,、
         /・`、ニ・ヽ
        /  ___ゝ
        /.   ´ヽ_ノ
       八     く `ー、
     /丁   房 }ソ_ノ
     Ц_/{;ニニニニソ
      ノ八ー―ノ八

       終
     制作・著作
     ━━━━━
      ⓃⒽⓀ

603妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/17(土) 12:32:38
パチ

白い狐の耳と尻尾を生やした9歳くらいの女が将棋を打っている
対局相手は犬(四国犬)だ
(犬が吠えると狐が代わりに打つという形を取っている)

604雨田 月人『インサニティ』:2024/02/17(土) 12:52:36
>>603(僕 ケモナー『獣耳派容認』じゃないんだ。御免ね
あと、ちょっとレス遅めになります)

 いやー、あの人(美作) 一瞬運命の人(ミミ)かなぁ〜って
思えた気がしたんだけど、当てが外れたなー。何だか調子が出ないなぁ。

 そんなブラブラと人気が少ない公園(とかで良い?)を歩いてたら
なんか子供と犬が将棋してた。なんかの童話の風景?

 「へぇ〜 それ、将棋の体裁とか出来てるの?」

(僕もそんな将棋について詳しくないけどね)

 のんびりと声を掛ける。なんか暇つぶしに面白いネタになりそうかな。
学校とかで他の人間たちと話す時って、正直面倒だけど爪弾きにされる
関係性は色々と面倒くさいからね。はー、やだやだ学校も。
 気を抜くと直ぐにミミと一緒に何時までも過ごしたくなるよ。

605妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/17(土) 14:21:45
>>604
公園の屋根付き休憩所にて将棋を打つ2匹
狐の対戦相手は四国犬の一二三

「なんじゃ?」

一二三との対局に水を差す人間に殺意が湧いた狐だが
今は神聖な対局の時間だ、すぐに殺意を抑える

「見てわからぬか?」

盤面を見てみれば、将棋に詳しくなくてもちゃんと出来ている事が分かるだろう
何故犬がルールを理解出来るのかというと、四国一二三を始め狐がここら辺の犬達に将棋を教え広めているからだ

狐の方は振り飛車戦法で攻めていたようだが

以下、犬語を日本語に訳して表記する

四国一二三「王手」
狐「何?」

盤面を何度も見返す狐だが、どう見ても詰みだ

狐「…詰みです」


「おい人間、貴様が話しかけてきたせいで負けてしまったではないか
 食い殺されたいか?」

四国一二三「おばあさまが耄碌したからだと思うんですけど」

606雨田 月人『インサニティ』:2024/02/17(土) 14:30:46
>>605

>以下、犬語を日本語に訳して表記する

って事は、食い殺されたいか? ってのも実際は。

アーゥン  ガァウ  グゥウ゛ゥ?

って事だね。御免、ぼく犬語は流石に無理だな。ミミの声は
良く聞けるんだけどさ。

 「あー、犬の真似 上手だねぇ。僕が子供のころもやったのかなー」ニコニコ

「それにしても、君。親御さんとかは? 一人だと、物騒なんじゃないの?」

周りをきょろきょろ見るよ。獣耳より、母親とか父親の方(ミミ)は
確かな僕の運命の相手かもと期待しつつね。

607妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/17(土) 15:33:43
>>606
いや、そこは普通に日本語で言ったのだが…(人間と話す時は基本日本語)
まぁ、いちいち訂正する事ではないか…

「親などとうの昔、平安時代に死んでいるわ」

残念な事にとっくの昔に死んでいるし
仮に生きていたとしても、狐の親は狐
雨田のお好みのミミではないだろう

四国一二三「やっぱり将棋は面白いですね(犬語)」
狐「将棋は世界最高のボードゲームだからな(犬語)」
狐「プロの棋士は本当に尊敬するわ、藤井聡太王将は我がリスペクトする数少ない人間だ(犬語)」

そんな会話をしていた所に、急にぐぅ〜と腹の音が鳴る

狐「ああそうだ(唐突)、我も藤井聡太王将のような昼飯を食いたくて作ってきたのだった(犬語)」

そして、昼飯を取り出す狐
弁当箱の中から、何か蒸した肉のような匂いがする
そしてこの肉、耳のような形をしているのだが…人の耳の形にとてもそっくりなんだ…

608<削除>:<削除>
<削除>

609雨田 月人『インサニティ』:2024/02/18(日) 12:26:32
>>607

 言うて、子供の姿だと。食い殺すぞって言われても、はは 随分口悪いねーって
笑顔で僕なら流すぐらいだから、大した反応の差異ないよね。

 で、耳焼きに対してだが。

 「……?」 スン スン

   「――あれ? この匂い、最近すごくどっかで嗅ぎ覚えがあるな」

人の耳の形は、まぁ人形焼きとか豚足とかあるじゃない? 行き成りリアルな
耳の形されても、そう言う形で焼かれてる肉なのかなーってミミを愛する僕としても
一瞬でそれがミミが焼かれたものだと理解して激昂とかしないよ。

 でも、僕。以前のゲームで人の肉を燻製にして焼いて食べてるし、嗅ぎ覚えあるよねー。

 「え……まさか」

  「それ、は。まさか、本物のミミを焼いたもの……!?」」

  (※一応、焼かれたミミに対してもダイスロールしとくよ。
もし最愛のミミに近しかったらショックの度合いも比例する)

610妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/18(日) 14:43:16
>>609
「ん?ああ、そうだな」
「耳だよ」

木耳とかパンの耳とかじゃない、耳だ
何の耳とは言っていないが…

「沖縄の郷土料理、ミミガーを我なりにアレンジして作ったのよ
 本来は豚の耳でやるのだがな」

耳を一つまみ食う狐

「うむ、美味い!
 このコリコリ食感とコラーゲン…
 冷めても美味いとは流石我だな」

四国一二三「藤井くんはそんなもの食べないと思うんですけど…(犬語)」
狐「なんじゃ、お主はいらぬのか?(犬語)」
四国一二三「いえ、食べさせて頂きます!」

狐が耳をくれてやるとガツガツと食べる四国犬

611雨田 月人『インサニティ』:2024/02/18(日) 22:28:15
>>610

 犬と共に人の耳をパクパク食べ進める妖狐。

もし、雨田にとって。その耳が運命に近しい相手に近かったら。

 なんで……なんでそんな残酷な事を人(ミミ)に行えるんだよぉ―――zノ!

なんぞ、のたまってたかも知れないが。戦闘力たったの6のミミだ。
多分、ピアスなり開けられてる跡が微妙にミミ愛好家の雨田は目敏く気付いたのだろう。

ただ、ミミ愛好家としても本物の『ミミ』だとわかる。

 「へぇ〜、それ『本物』か。て事は……」

特に先程の衝撃さを引きずる事なく、それでもちょっとしたマジックでも
見たような淡い感嘆を込めて、妖狐へ問いかける。

「あんた、人喰いか。人間に怪物とか言われる感じの存在?」

 雨田にとって、人間は別に愛着を覚えるものでない。

・・・・
たまたま自分は、そう言う造りで産まれて。そして似たような構造の
生き物が周囲に居るが、執着や愛情に近しい感情を覚えるのは『ミミ』限定だ。

映画などなら、人を襲う存在は山ほど居るが。現実で自分以外に
人間と言うカテゴリーを息するように襲うであろうものを目にするのは
これが初めてだ。自分以外を除いては。

 「僕の、お仲間?」

612妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/20(火) 14:15:23
>>611
狐「う〜む、この味…
  息子や娘達にも食わせてやりたかったな(犬語)」
四国一二三「しかしこれ、値段はいくらになるんですかね?(犬語)」
狐「何故そんな事を聞く?(犬語)」
四国一二三「500円以上したら藤井昼食嫉妬民が沸いてきそうじゃないですか(犬語)」
狐「我らは藤井君じゃないから別に良いだろう(犬語)」

>あんた、人喰いか。人間に怪物とか言われる感じの存在?
>僕の、お仲間?

「…む?」

雨田の言葉に耳をピクッと震わせ反応する

  バケモノ
「…人間の仲間などもった覚えはない」

青く冷たい目で雨田を見る

「貴様からは同胞(狐)の匂いもしない
 妖怪変化でもない、人間であろう?」

613雨田 月人『インサニティ』:2024/02/21(水) 14:59:26
>>612


>貴様からは同胞(狐)の匂いもしない 妖怪変化でもない、人間であろう


「肉体の構造だけはねぇ。でも、僕も君も別に必要ないのに人は殺すんでしょ?
生まれに関しては、もう仕方がないでしょ。そうやって作られちゃった命なんだし」

 糸目で破顔しつつ、笑い声と共に告げる。

「でも、僕は人間ってのは、まだ一つしか殺してないし。
いや、四つが正解かな? でも、三つは特殊なゲーム……ゲームってわかる?
まぁ、お遊び染みたものだったから厳密には一つだけかな。
 けど、そっちは多分さ、僕より沢山殺してるわけじゃん?
凄いよっ、僕、先輩って君の事を呼んでもいいかな?」

 にこやかに、笑顔を崩す事なく言葉を続ける。

「僕と先輩、多分仲良く出来ると思うよ。僕はミミって言う運命の相手を
望んでるけど、先輩はミミって言うのを別に食事の為以外に
必要としてるんじゃないでしょ? 違うよね。だったらどんなに
穴空いてる醜いミミでも、焼き殺すなんて愛してるのならしないだろうし」

 雨田 月人は狂っている。妖狐は、人を喰うまでのルーツがあっただろう。
だが、雨田は最初から人から産まれてるが人間と言う対象に愛情とか共感する
感性が大いに欠けていた。そして、それ以外の知性などは相応に所有してる。

「僕ね、思うんだよ。この人間って社会は誰か一つ殺すだけで
騒ぎになるし、グループでそいつを躍起になって探そうとする。
 そして、今の現代は探し当てるのに中々優秀だ。不思議な幽霊さんを
持ってる人たちも居るらしいし、僕一人で一つ殺すにしても一苦労なんだよね。
 先輩みたいな人が一人でも協力してくれるんなら、僕としても助かるんだけどな」

 どう? そう、雨田はにこやかに首を傾げて穏やかに提案をする。

614妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/21(水) 19:22:34
>>613
「必要ない…?」

その言葉に顔を顰める
狐にとって、殺人は必要な事だ
例えこの命尽き果て魂だけになっても、殺して殺して殺し続けなければならない

今すぐにでもこの男を殺してやりたいところだが
九尾だった頃の全盛期ならともかく
老衰ですっかり衰えた身では無暗に突っかかる事は出来ない

少しばかり、狐は雨田の戯言に耳を傾けた

>不思議な幽霊さんを
>持ってる人たちも居るらしいし、僕一人で一つ殺すにしても一苦労なんだよね。

スタンド使い…
かつては陰陽師や憑きもの筋などと呼ばれていたもの達か
しかし雨田の言葉からは、彼自身がそうであるかは断定出来ない

「…その協力とやらは、
 貴様は何をして我に何をさせるというのだ?」

聞くだけ聞いてやる
そんな態度で雨田の提案を聞く

615雨田 月人『インサニティ』:2024/02/23(金) 10:34:08
>>614

>必要ない…?

「あー、語弊かな。食欲・睡眠欲・性欲とかの人間で言う三大欲求って言うの?
人間が作った『括り』だと不必要って意味ね。
 先輩にとって誰か喰うのが必要不可欠だったのなら、謝るよ。
僕にも、僕のポリシーがあって。それ、否定されると流石に我慢ならないしね」

 言い方が悪かったとは思う。多分、先輩って普通の人間と何処か違うようだし
産まれながら人を主食にしてたとかなら、勝手に人間って言う種族の
ルールを挙げたのは先輩を侮辱した事になるだろうからね。

>協力とやらは、貴様は何をして我に何をさせるというのだ?

「え? 僕は別に先輩にあれこれ何かして欲しい、やってくれなんて言わないよ?
 むしろ、僕が先輩が誰か喰うとか殺すのに手を焼いてたとかあって
助けがいるなら、僕も、その人(ミミ)に関心あったら手伝うって話。
 で、僕はその時にソレの『ミミ(人)』が欲しかったら、頂戴って
先輩に強請る時があると思うんだ」

 どう? と、雨田は糸目のまま微笑を浮かべて問いかける……。

616妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/24(土) 16:26:14
>>615
「ふん…」

実に気持ちの悪い男だ

狐は愛するものを奪われた怒り、悲しみ、憎しみを原動力として今日に至る
雨田は愛するミミを求めている
そこには愛という共通するものがあるが、狐と雨田では決定的に違うところがある

狐は自分が狐という種族である事を決して否定しないし
絶対厳守ではないが狐社会におけるルールは重んじている

対してこの人間は…

「哀れな人間よのぉ」

様々な含みを持たせているが、だらだらと語る事でもない
この一言で十分だろう


狐の経験上、こういった手合いは絶対に信用してはならない
信用出来る要素が微塵もないが

「貴様にそんな利用価値があるのか?」

まず、この男に何が出来るというのかだ

617雨田 月人『インサニティ』:2024/02/25(日) 15:59:33
>>616(レス遅れ失礼しました)


>哀れな人間よのぉ
>貴様にそんな利用価値があるのか?

「うん? ないと思うなら断ればいいだけの話じゃない?」

「別に先輩に上手く取り入りたい、とか。そう言う打算目的じゃないよ。
あくまで効率から、二人で協力した方が何かと楽になるでしょ? って言う
提案だからね。だから先輩が乗り気じゃないなら、この話は、お終い!」

 終わり、終わり! と軽く拍手を鳴らして雨田は相も変わらず
糸目で微笑を掲げて今の話題を〆に向かわせる方向へ演出している。

 妖狐と駆け引きを行おうとしてるのか? これに対してメリットがあるのか?

雨田は、別にそう言った物事は考えてない。憐れ、と言う言葉にも
一瞬疑問符を浮かべたが、話題にする必要性も無いと一瞬で頭の隅へ押しやった。
 
 (『ミミ』の事を、別に先輩が理解しそうとはミミ焼いてる時点で
同好の士には成らないだろうからな。
 別に、ここで幽霊さんで仕掛けるのも無くな無いけど)

 先輩は、正直、守備範囲外だ。前提として僕の運命の人(ミミ)は
狐では無いだろう。啓蒙がもっと深ければ、それも有りになる? いや、厳しいな。

 運命の人(ミミ)なら、例え相手がどれ程強くてもモノにする為に
死力尽くそうとも思うが。はっきり言って、対象外だと既に織った先輩と
喧嘩なり無駄に殺し合うのも疲れるし、後で家に帰って叔父さんに見咎められたり
学校で誰誰に絡まれたんだーって言い訳の話を作るのも怠い。

少なくとも妖狐には無い悩みだ。人間社会に擬態して生きてるような怪物(雨田)は
身の丈に合わないサイズの小さな服で着るような窮屈さを味わってる。

少し前に、幾らかミミを得た事で溜飲も下がったが、いずれこのフラストレーションと
言える解消したいと思える気持ちも融点を超える事があるのかも知れない。

「あ、それじゃあ一つだけ取引って言うか『意見交換』しようよ。
 先輩なら、幾らか食べようと思った獲物で普通の人には見えない
幽霊を持ってる人を少なからず知ってるんじゃない?
 僕も、浅い因縁だけど数名知ってるから、少し情報交換でも
こうして知り合った記念として、どう?」

 妖狐の直観は、まごう事なく雨田の内心を射抜いてる。

彼は誰であろうとも損得の勘定で切り捨てられる状況なら即座に恋人であろうと
家族であろうと『ミミ』の為なら平然と切る。それは、妖狐とて例外で無いのだから。

618妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/26(月) 19:41:14
>>617
これまでの狐生、様々な人間を相手にしてきた狐だ
憎き人間であろうと、利用価値があるのなら手を組む事もあった
今、目の前にいる信用ならない人間とも、能力次第では手を組んでも良いのだが…

何が出来るかも分からない相手と組むというのはリスクが大きい
手強い相手との戦いで、殺すのを手伝ってくれと言っても
後から殺人の証拠隠滅が専門でしたとか
逆に証拠隠滅の手伝いをしてくれといって、後から得意分野は殺しでしたとか
なんて事になったら間抜け過ぎるだろう

>『意見交換』

「…そうさなぁ」

狐にとって、相手がスタンド使いかどうかなど正直に言ってどうでもいい
そこにいる人間を殺したいかどうか、それだけだ

が、この男が自分が話した情報に興味を持ち殺しにでも行けば
間接的に殺した事になるのでそれはそれで良いか、とも考える

「いいだろう、暇潰しには丁度良い」

ミミガー擬きに齧りつき話を聞く姿勢に入る

耳を一つ雨田に差し出して

「食うか?」
「…まぁ、食わんだろうな」

619雨田 月人『インサニティ』:2024/02/28(水) 12:40:47
>>618

>食うか?

 「あー、うん……ミミ以外の部位で、今度お誘いしてくれると嬉しいかな」

苦笑気味に、そこは手をひらひら翳して丁重に断らせて貰った。
 これが100点近いもんだったら、流石に先輩でもちょっと許せないけど
六点のミミだしね。もし、次に出会った時に気が利いてくれたら先輩
ちゃんと綺麗に包装してミミをプレゼントしてくれるかな?

六点でも、ミミはミミだからねー。分け隔てなく愛する、って思想は尊いと
思ってるから口にするのは遠慮するよ。

 「とりあえず、僕が出会った幽霊持ちだけど。
スピーカーで大音量で番号の羅列を放ってた。いわゆる、特定の人にしか
聞こえない感じの。かなり広範囲に、そんな音量流せる女だからさ」

 名前教える前に、すぐ行っちゃったから容姿だけ
かいつまんで告げるね、と。その時の30点台のミミ(美作)の
服装なり、顔つきや外見年齢などを簡潔に告げておく。

「多分、殺すのはそんな難しくなさそうだったかなー。
 けど、仕留めるとなると。あれって一回逃がしたら大音量で広めに
他に助け求められそうだから。もし先輩が出会ったら、直ぐに何も
させずに意識失わせる手段もたないと、きつそうだよ」

 なんの目的で数字を挙げてたのか。雨田には知る由も関心も無い。
ただ、結構遠くからでも聞こえた感じ。
 以前、ゲームに参加した時に同じように幽霊持ちらしい人物が大勢居たのと
学校で見かけたのも含めると、うじゃうじゃ虫見たいに居そうだ。

「一番楽そうだけど、厄介そうな奴はソレかなー。
 先輩は、どんなの知ってる?」

620妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/28(水) 20:56:08
>>619
大音量で番号の羅列を放つ女
目的が不明なのが不気味だ
特定の相手にしか聞こえないとはいえ、その特定の相手からすれば
「ドッカンバッカンうるせーんだよ!近所迷惑だろーが!」って所だろう

「何かの呪術か?面妖だな」
「そういう奴は…
 直接的な武力は持たないが、掠め手
 化かす力を持つ奴が多い、油断ならん」
「一度術中に嵌れば抜け出すのは難しいだろうな」

実際の所、暗号垂れ流し女の能力など知る由も無いが
今聞いた第一印象はそんな所だ

>先輩は、どんなの知ってる

雨田が気に入るミミかどうかは知らないが
最近あった中でも特にイラつかされた人間の事を教える事にした狐

「貴様が興味があるかは知らんが、50くらいの小娘だ」
「よく無駄口を叩く奴でやけにヤニ臭い女だったよ」

アリーナの試合で戦わされた女だ
ざっくりと容姿くらいは教えるが、名前なんかは知らない

「警棒を持つ式神…
 あぁ、貴様の言う幽霊だ」
「ただでさえとんでもない速度で面倒な奴だったが
 奴との戦いの最中、我は何かの力に引っ張られた」
「恐らくはあの警棒による力だったのだろうな」

アリーナの試合という形式故に殺されはしなかったが
それが狐の誇りをズタズタに切り刻んだのだ
何より、敗けた相手があの小娘だった事が腹立たしい

「耳など興味も湧かん故に見ておらんかったが…
 興味は湧いたか?」

621雨田 月人『インサニティ』:2024/02/29(木) 10:58:13
>>620(長らく付き合わせてすみません。
よろしければ、〆に向かわせて頂きます)

 「警棒かぁー」

警棒。所謂、自衛の為とか警察官なりが使う道具。
 職業そのまんまの人が発現したとかじゃないだろうけど
年齢が50ってなると、何というか、お堅い感じの人間なんだろうなぁと
言うイメージが沸いた。どんな『ミミ』なのだろう。
 『ミミ』は、若くとも老いても傷さえ無ければ美しい。
年と共に彩られた美麗さと言うのを秘めている。

 「うんっ 有難う先輩。興味 持ったよ
会えるか分からないけど、もし『ミミ』を手に入れられたら
先輩に一番に会わせて上げるねー」

 ニコニコと、先輩にお礼を言う。こうやって、種族は異なるだろうけど
先輩って言う存在と会えたのは良かったな。意見交換って言うのも
新鮮で楽しかったよ。なにより、先輩は僕を吹聴しようとしないだろうし
したところで、信じる人間とかってどれだけ居るだろうって言う位には
人類の天敵として生きてるだろうしね。

 「引っ張る力か。僕と先輩が出会ったのも
何かしらの『引力』なにかもね? 先輩」

 「また、今度気が向いたら此処へ来るよ。良い所だね 人気が少ないってのは」

    「じゃあ、またね! 先輩っ」

 (さて、今日は先輩とで時間を潰せたし。
 ――早く、新しい『ミミ』と出会えれば良いな)

 雨田は鼻歌と共に妖狐より足取り軽く去っていく。

  その向かう運命の旅路は……何処へと向かうか。

622妖狐『キン・コン・ユウ』:2024/02/29(木) 18:45:43
>>621
「ふん、
 貴様との引力など今すぐにでも引き千切って捨てたいものだな」

去り行く雨田に聞こえるかどうかは知らないが
そう吐き捨てる

相手が人間であろうと使える物は使う
雨田が件の女を見つけて殺してくれればそれで良し
返り討ちにあってもそれはそれで愉快だ、どっちがくたばっても溜飲が下がる
そうならなくとも別に損はしない


ここからは犬語を日本語に翻訳して進める

四国一二三「藤井くんの昼食を真似するならやっぱりぴよりんとかが食べたいのですが」
狐「ぴよりんか……あれは取り寄せは出来ぬからな、作ってみるか」

後日

四国一二三「えっ、何ですかこれ」
狐「ぴよりんを再現しようとしてみたのだが、ちょっとばかり失敗してしまってな」

狐「ひよこ饅頭になってしまった」
四国一二三「ジャンルが全然違うじゃないですか、どういう間違えをしたらそうなるんですか」

四国一二三「しかもこれ、ひよこ饅頭ですらないし」

     / ̄\      /⌒\    
    /     ヽ    /     ヽ
    |   |   |    |   |   |
     |.   |   |   |.   |   /
     ヽ.  |  |___|    |  /
     /             \
     /    、______,     ヽ
    |      \___ノ     丿
    \___  、____,   _/
    カ エ ル ま ん じ ゅ う

623甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2024/03/03(日) 12:23:33
3月3日 本日は雛祭り

飾り付けられたひな人形の前で
雛祭りの料理を食べるあま公と>>624

624甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2024/03/04(月) 18:43:41
>>623
カリ カリ カリ

あま「…」
松本「…」
朝比奈「…」

さっきから全員ひなチョコしか食べていない
会話もなくただひなチョコを貪る、謎の会合

ふいに米麹甘酒に手を出すあま公

朝比奈「あっ、それは」

甘酒と間違えて白酒を飲んだあま公がしばらく暴れたが
ちょっとして落ち着いた後、みんなで雛流しに行く事になる


朝比奈「雛が流されるの見てるとさ」
松本「見てるとなんだい?」
朝比奈「何か、虚しくなるよね」
松本「何でさ?」
あま「流されていく人生を見てるみたい」
朝比奈「そういう事」
松本「そう…」

松本「ん!?」

雛に混じって妙な物が流されているのを見つけた松本

松本「死体じゃねえか!!!」


後日、警察によって土座衛門の身元が調べられたが
結局身元不明の遺体のままだ

松本「結局何だったんだろう、あの死体は」
朝比奈「考えてもしょうがないのは分かるけど、頭から離れないんだよね」

あま「…そういえば、飾ってた雛人形が一つ無くなってるんだけど」
朝比奈「だから?」

         ∩
.           {::}              _
         /:;;:ヽ.        ,.:'::;;;;::ヽ
.        l|  |!         〈:::l  l:::〉
      ,.r┬ゝ-イ‐r┐、     ゞゝ-イ:<
       / | 「l "~" | .| , ヽ   / ,゙-‐-"、 \
     l. ヽ,|」    l/  l   / 、.\__/_,  l
.     |  ノr'r:=zく    .|  l  77-'-ヾ.、  ヽ.
      〉、.// .||  ||゙ヾ.、 ./、 /   // ,へ ヾ.、  ヽ
.     / //ー|L,,」|―ヾ.、 l   // /   ヽ,ヾ.、  l
 __l,,_/,/__二二___ヾ.、,l,,_/,/_/____ヽ_ヾ.、ノ__
.|   ||〈〉||   ||〈〉||   ||〈〉||   ||〈〉||   ||〈〉||  |
.|   ||〈〉||   ||〈〉||   ||〈〉||   ||〈〉||   ||〈〉||  |

                終
              制作・著作
               ━━━━━
               ⓃⒽⓀ

625コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/03/31(日) 04:57:43

『駅前広場』で『棒』のようなものをもって歩き回る影一つ。


「こゃ〜〜ん、ごめん王城ちゃ〜ん。
 思ったよりこんこんちきでうまくいかないねっ。
 この町に来てからすぐは何回も会ってたんだけどな〜。
 あれは初心者ユーザー優遇サービス? だとしたら短あい!」


急に独り言を言いだしたヤバイ子だろうか?
もちろん違う。スマホでビデオ通話しているカワイイ子だ。
       
      ・・・少なくとも、彼女に聴けばそう言うだろう。
         持っている棒はつまり、『自撮り棒』というわけだ。

「カワイイ魔法使いちゃんが行きそうなところとか、
 そういうのもあたし、わっかんないしね〜。
 あ、もしかしたらリョージちゃんのお店はそうだったのかも!?」

                 キョロ

                      キョロ

「とりあえず、『可能性ありそ〜なとこ』に来てみてるけど、誰〜もこんこん!」


ヒントがあるとすれば、恐らく例の『電波放送』だ。多分きっと。
『スタンド使いに聴かせるための放送』をしていたということは、
つまり、それを流していた場所は『聴かれる公算』があったということ。

もちろん、適当にやってただけとか、『全部の場所でしてた』とか、
反証になるようなシチュエーションはいくらでも思いついてしまうけど。


「王城ちゃんがカワイく喜んでくれるように〜、そろそろ見つけたいんだけどなあ」


思いつくことはなんでもやってみる、そういう段階が今なんだろうと思ったのだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――
●『魔法の呪文はおこのみで!』関連の活動です。
  対応いただける方は、以下の詳細を確認の上よろしくお願いいたします。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319

626真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/03(水) 22:17:33
>>625 (コヤシキ様)

 地域指定の大型ゴミ袋をずるずる引きずり、
 背を丸めた『シスター』がひとり広場に近づいてくる。

 その肩には、
 『清らかな心で愛する星見をきれいに
           ほしあかり聖心教会』 のたすき。


 だが……抱えるポリ袋に厚みはなく、
 中身がほとんど入っていないことが分かる。


  「うぅ……」   トボトボ…


「駅前なのにぃ、ゴミがぜんぜんありませぇぇん……
 星見住民、モラル高すぎですぅぅ……」

 手持ちぶさたの『火ばさみ』をカチカチ鳴らしながら、
 一本線にデフォルメされた目をしょぼしょぼさせる。


「このままではぁ、また奉仕活動をサボって
 玉打ちに行ったと思われてしまいますぅぅ……」


 そこへ……とつぜんの『春嵐』。



   びゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 彡彡彡



「ひょげぇ〜……っ!?」


     「ま、待ってぇぇ……!」


 啓蟄の風に奪いとられた薄身のゴミ袋は、
 春空の下を転がるように飛んでいく。
 ……ちょうどコヤシキの眼前を横切るように。

627コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/04(木) 04:34:21
>>626(ありやさん)

 
             びゅ

              わああ
                  っ


「わおわおわお! 転がるゴミ袋を猫に見間違える、
 とってもとってもカワイ〜イあるあるがあるけど〜」
          

      ――――――――――  はしっ

               
         『袋』は『コヤシキコヤネ』の前を通り過ぎて。
          少しだけ離れた『空中』でくるりと回り、動きを止めた。

「空飛ぶ袋なら、間違えるのは『カラス』かなあ?
 こゃ〜〜ん、やだやだ。だとすればこれって『共食い』かもね〜っ」

何も知らなければ、つむじ風が袋を捕らえたようにも見える円の動き。

けれど『白いカラス』のような『スタンド』が、それを捕らえていたから、
それを手元に下ろしながら、『ありや』の方に振り向いて。

「……って言っても分かんないか!
 お電波ゆんゆん送受信中のコヤコヤの前に、
 かわい〜いシスターちゃんがとぼとぼ登場〜」

                  スッ


「は〜い、返すねシスターちゃん。ゴミ拾いだなんて偉いんだあ〜」

目を細ぉ〜く細めて、『ゴミ袋』を差し出しながら、
持ち手部分をゆっくりと差し出す。

「でも、この町ってあんまりゴミ落ちてないよね。そういうとこもか〜わいいけどっ」

628真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/05(金) 17:51:43
>>627 (コヤシキ様)

「え、えぇ……うそぉぉ……
 す、すごい『かしこ鳥』ですぅ〜〜〜!」


 予想外の『キャッチング』に瞳を見開き、
 語彙力ゼロで讃嘆の声をあげるありや。

 春風にふたたび巻き上げられぬように
 修道服のベールを両手で押さえながら、
 親切な回収者のもとへと駆け寄る。


「す、すいませぇぇん………ハァハァ
 助かりましたぁぁ……
 か、風で髪が暴れまくりでぇぇ……
 いっしゅん前が見えなくなりましたぁ……」

 いったん背筋を伸ばし、
 型崩れしたベールと乱れた蓬髪を整えてから、
 ふかぶかと頭を下げてゴミ袋を受け取る。


「ありがとうございますぅ……!
 『善き行いには善き行いで贖われる』と言いますがぁ、
 あなた様の『善行』に、わたくし感謝いたしますぅ……
 とってもとっても見事な腕前でしたぁ……(パチパチ)」
 
「あっ、『鳥ちゃん』も、ありがとうねぇぇ〜〜〜……
 見た目より重かったはずなのにぃ、
 あなたもとっても偉いですぅぅ……(パチパチ)」


  「…………(パチパチ)」


 「……… (パチ…)」


「………」


「あのぉ……
 『世界一鳥と仲良しな人』、ってわけでは……
 もちろんないです、よねぇぇ……?」

「この鳥ちゃんもこころなしか、
 ちょっと透けてますしぃ……」    サッサッ

629コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/05(金) 23:16:33
>>628(ありやさん)

   「わおわお〜、拍手喝采あられやこんこ〜ん」

                           ヒラヒラ〜

世の中には『鷹匠』のように鳥とコミュニケーションを取り、使役する人間もいる。
だが――――『狐耳ヘッドホン』を付けたこの風貌。どう見ても『匠』って感じはしない。

「いいよいいよ〜。落ちてから拾うか、落ちる前に拾うかの違いだこん〜。
 かわいいヒトをお手伝いしただけのあたしと、
 かわいくな〜いゴミを集めたシスターちゃん。よきよきな行いはど〜っち」


                      ヒュルルル

           「か〜わいいあなたの方っ! だ、こ〜ん」

白く透き通る『かしこ鳥』は、『コヤシキコヤネ』の手に止まり、
そのくちばしで『ありや』の顔を指し示す。

    「というか!見えてるんだあ」

「コぉ〜んンな感じだけど、あたしって『魔法使い』なんだ〜。
 見えるってことは、『シスターちゃん』もそうってことだあ!」

          「魔法使い同士!
           世界一仲良くなっちゃう、こ〜ん?
           ……あ、でも魔法使いは『教会』の敵だっけ!
           こゃ〜ん、あたし達狩られちゃう〜?」

     ズイ

口ではそのように言いながら、『カラス』を引っ込めず、
『ありや』の手がそこを通るなら『すり抜ける』事を確かめられる。

        ――――『スタンド』で間違いなさそうだ。


「な〜んて失礼千万こんこんちきだよねっ。
 JRPGじゃないんだから、そんな悪い風には思ってないよお」

JRPGって例え、オタクちゃんすぎるかなあ!?と付け加える――――

630真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/06(土) 11:17:42
>>629 (コヤシキ様)

「まぁぁぁ…… (頬に手を当てる)

 ではぁ……
 もしもわたくしが『かわいくないゴミ』だったら、
 あなた様はわたくしを
 助けてくださらなかったのですかぁぁ……?」


「いいえぇ、
 きっとそんなことはないはずですぅ……
 あなたもぉ、そうだよねぇぇ〜〜〜〜?」   ウフフ

 膝を曲げて視線を『鳥ちゃん』の高さに合わせると、
 指先を差し出しながら
 小さな賢者にも同意を求める。
 (『善行』に『上下』はない、と言いたいようだ)


「それにしてもぉ、
 『魔法使い』ですかぁぁ……」

   「わたくしが『見える』のは、
    『主の御わざ』によるものだと
    信じておりますがぁ……」

「ところ変われば『主の呼び名』も変わるように
 (あるいは『聖書』の解釈が変わるように)、
 『奇跡』の呼び方もひとそれぞれ、
 ということでしょうかねぇぇ……?」


 頬に手を当てて う〜〜ん とうなるが、
 すぐさまこんな推論に意味はないと膝を伸ばし、
 あらためてコヤシキに向き直る。


「うふふ……もしも仮にあなた様が
 『世界一悪い魔法使い』だったとしても、
 わたくしはあなた様と
 『世界一仲良く』なりたいって思いますよぉぉ……?」


 手荷物を置いて一歩うしろに下がると、
 胸に手を当て、『一人と一羽』にそっと会釈する。


       マ ガ チ
「わたくし、真雅致 ありやと申しますぅぅ……」

「名も知らぬ者、されど窮する者を
 あわれむ心を持つ優しいお方ぁ……

 あなた様のお名前をおうかがいしても、
 よろしいですかぁぁ……?」

631コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/06(土) 19:15:33
>>630

                  ・・・
「こゃ〜ん、シスターちゃん優しいのに意地悪なこと聞くね!
 そんなところもか〜わいいっ。
 あたし、実際ゴミ拾いとか全然〜したことないからさあ。
 そーゆーことしてる人のこと、ほんとにエライと思ってるんだあ」

                    トン

           『白いカラス』をありやの指先に止まらせる。
            きわめて繊細な着地は、痛みを感じないものだ。

「でも、確かに『人助け』とどっちが上とかはないのかもねっ。
 さっすがシスターちゃん、おはなし上手でか〜わい〜い」

言葉は微妙に『噛み合っていない』返答だが――――
それ以上何かを言うでもなく、ほかの話題に言葉をつづけ始めた。

「昔の人とか今の人が西や東で見た『それ』を、
 こんこんちきにいろんな呼び方をしたのかもね〜。
 あたしは『魔法』だっ!って思ったけど、
 『奇跡』でも『加護』でもいいし、
 『ノロイ』でも『スタンド』でもいいし……
 うぅ〜ん、でも今回は『奇跡』に一票かなっ!」

     ≪こうしてあたしたちを、めぐり合わせてくれたんだもん〜
        こんこんぐらっちゅれーしょん!出逢いに感謝とお祝いを!≫

            カラスに喋らせたのに、深い意味はないけれど。

「だから、世界一カワいい仲良しコンコンビになっちゃおっかあ!
 あたし、『コヤシキ コヤネ』
 せっかくなら『コヤコヤ』ってかわいく呼んでほしいこ〜ん」

                クイ

          「コヤは2か〜い。そこがチャームポイントっ!」

『狐のサイン』を作った両手にお辞儀をさせ、目を深く細める。

「というわけで! 今後ともよろしくね、ありやちゃ〜ん。
 ちなみに、『ほしあかり聖心教会』っていうのがありやちゃんのお仕事場?
 あたし、このへん引っ越して来たばっかりだから、詳しくなくって〜」
 
         「『ほしあかり』なんて、なんだかロマンチックでか〜わいい名前っ」

632真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/08(月) 22:01:42
>>631 (コヤコヤ様)

「ま、まぁぁぁ〜〜〜……!
 『かしこ鳥ちゃん』かしこぉ〜〜〜〜……!」


 スタンドを介したおしゃれなごあいさつに、
 口元を押さえ感嘆の息を漏らすありや。

 頬ずりしそうな近距離で手元の鳥をキラキラ…と眺めるが、
 コヤシキの声ですぐさま我に返って襟を正す。


「あっ、オホン……失礼しましたぁぁ……。

 それでは親愛の情を込めてぇ、わたくし
 『コヤコヤ様』と呼ばせていただきますねぇぇ……」


「えぇ〜〜っとぉぉ……
 あっちの『ぶどう農園』を抜けた先の
 おやまのふもとに『精神科病院』があるんですがぁぁ、
 わたくしたちの教会はその真裏にありますぅぅ……」


「『ほしあかり』って名前はたぶん、
 むかし山のあたりには街灯がなくて暗かったのを、
 むりやり小綺麗に言い換えてみたのが由来じゃないかと
 わたくしは睨んでおりますぅぅ……」


「そんなかんじで建物はちょっとおんぼろなんですがぁ、
 中にいるのはみんな良い人たちばかりですよぉぉ……」

「もしコヤコヤ様がなにかの折にでも
 立ち寄ってくださったときは、
 いっぱいおもてなししますねぇぇ……」


「……」


「…………」 ソワ…


「あ、あのぉ〜〜〜〜……ちなみにコヤコヤ様はぁ……
 普段どういうことをされてる方なんでしょうかぁぁ……?」


 おめーが言うなって感じだが、
 コヤシキの風貌と場馴れ感にはさすがのありやも
 『カタギじゃない』気配を感じているようすだ。

633コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/10(水) 19:48:34
>>632(ありやさん)

「わおわお〜〜嬉しいなあ!
 もちろんあたしも、あ・り・や・ち・や・んって〜
 カワイイ6文字全部に親愛込めて、こんこんとお話するこ〜ん」

人懐っこい表情に、どこまで意味を持たせているのかは分からないが、
声色からするに、少なくとも『親愛』という言葉に嘘はないのだろう。

「それで〜……あ〜そっちはまだ行ったことないなあ!
 今の『お仕事』が終わったら、お散歩ついでに、
 ありやちゃん達に遊んで貰いに行っちゃおうかなっ」
  
     「あたしも『サイレント・ライト』も、
      遊びざかりで愛されざかりだから〜」

示された方角に首を向け、『かしこ鳥』に愛想をふりまかせていたが、
自分の手に戻した『サイレント・ライト』に細めた目を合わせる。

「でも、遊んでばっかりでもいられなあ〜い世知辛あ〜いこの世の中!
 こ〜んな風に見えて、カワイイコヤコヤお仕事熱心なんだよ〜」

サイバー調で装飾の多いジャージ……のように見えるその服装からして、
インターネットか都心部にのみ生息する人間なのは『風体』通りだが……

      「インターネットのセーフティネット、
       かしこまないで申しにおいで、
       『コヤコヤのお悩み相談小屋』
       毎週土曜と時々不定期ドキドキ配信中〜!」

          クイクイ

「まあ要するにまとめると、『配信者』なんだけど〜
 誰にでも、信じられて、心を預けられるものは必要だから……
 例えそれが偉くてスゴい神さまでも、道案内のカラスでも、かわいいキツネでもね!
 だから、そういうものを、あたしも、しようとしてるんだあ」

『キツネのサイン』を両手で作り、改めてご挨拶。
ゲーム配信とかもしてるけどね〜と、軽い響きで付け加えてから。

「で、今は拡張版……ネットの外でもお悩み解決中なんだよね。
 ありやちゃん、もしよかったらなんだけど、
 こんなあたしの『お手伝い』をちょこんっとだけお願いしてもいい〜?」

そしてぱちぱちと、人一倍に大きく輝く目を瞬かせ、返事を待っている。

634真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/10(水) 23:56:43
>>633 (コヤコヤ様)

「はえぇ〜〜〜〜……!
 コヤコヤ様はぁ、『配信者様』だったんですかぁぁ……
 どおりでぇぇ……!」


 手元から飛び立った『かしこ鳥』――
 『サイレント・ライト』を追いかける視線が、
 そのままコヤシキが携える『棒』に留まる。


「それってつまりぃ……
 わたくしたちでいう『傾聴』と『伝道』のご活動を
 おひとりでなされているということですかねぇぇ……?」


 瞳を閉じてふむふむ唸るありや。
 そのまま胸の前で手のひらをぱんと合わせると――


「それってぇ……とっても
 すばらしいご活動ですねぇぇ……!」  パァァァ…!


「『福音の伝道とは、どのような形であれ、
  ひとびとに対する愛で心を満たし、
  救いを信じさせる力を持つ』――などと申しますぅ。

 わたくしぃ、献身の志を同じくするものとしてぇ、
 コヤコヤ様のご活動をぉ、
 心から応援いたしますよぉぉ……!」


 ずいぶんと『前のめり』な解釈にも思えるが、
 ともかく懐からスマホを取り出すと、
 本人の目の前で『コヤシキコヤネ』と検索するありや。

 もし『チャンネル』がヒットしたら、
 そのまま登録ボタンをぽちーする。
 (現代人のスピード感)


「(スマホをしまいつつ) それで、ええっとぉ……
 『お手伝い』、ですかぁ……?
 まぁぁ……わたくしにできることでしたらぁ、喜んでぇぇ……」


「市井の方々のお困りごとに寄り添うというのもぉ、
 『ゴミ拾いをサボるのに絶好の口実……
 じゃなくってぇ、そのぉ、
 たいせつな『奉仕活動』の一つですのでぇぇ……」


    カニカニ


 ダダ漏れな打算の声をごまかすように
 右手の『火ばさみ』をカニカニさせる。


「それでぇぇ……
 その『お手伝い』の内容というのはぁぁ……?」

635コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/11(木) 07:33:22
>>634(ありやさん)

『サイレント・ライト』は手の上を駆け上り、棒の先端、スマホの上に留まる。
もちろん――――そういう風に操作をしている、という話だ。

「うんうん〜、言葉が合ってるかは分かんないけど、たぶん合ってるよお!
 だからあたしたち、ある意味同業者……というかライバルなのかも?
 なのに応援ありがとう〜! わおわお、具体的な応援もしてくれてる!?
 コヤコヤ嬉しい〜! 最近ちょっと配信減らしてるけど、
 今のお悩み解決が済んだら頻度戻すから、良かったら遊びに来てねっ」

どこまで本当に合っているのかは分からないところだが……
とりあえず、『コヤシキコヤネ』の公式チャンネルはすぐに見つかった。

             凝ったロゴデザイン、週に複数回に及ぶ配信頻度、
             有志による切り抜きまとめの存在――――
             そして5桁に及んでいるチャンネル登録者数。
             『個人配信者』としては『上澄み』の部類だが、
             『インフルエンサー』とまでは言えない段階だろうか。

「こゃあん、サボリなんて! ありやちゃん意外と俗っぽい〜?
 そんなところもか〜わいいっ。
 あ、で! お手伝いなんだけどね〜。
 ありやちゃんの『カワイイ魔法』……
 じゃなくって『神さまの奇跡』?を、
 ほんのちょこ〜んっとだけ教えてほしいんだあ」

『火ばさみ』の動きに向いていた視線を、
改めて『サイレント・ライト』に向ける。

「具体的には、お名前と、何が出来るのか?
 細かい難しいこんこんちきな『ルール』とかは言わなくって大丈夫〜。
 もちろんあたしと、カワイイ『お悩み主』ちゃん以外に喋ったりはしないこ〜ん」

          「じゃあ何に使うの〜? それはひ・み・つ。
           こ〜んな怪しいお手伝い、受けてくれる?」

636真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/11(木) 22:38:48
>>635 (コヤコヤ様)

> 「ありやちゃんの『カワイイ魔法』……
>  じゃなくって『神さまの奇跡』?を、
>  ほんのちょこ〜んっとだけ教えてほしいんだあ」


 「えっ」  ピタッ


> 「具体的には、お名前と、何が出来るのか?」
> 「こ〜んな怪しいお手伝い、受けてくれる?」


 「………………………………
  ………………………………い、」 


        「い、い、いやですぅぅ」   サァァ ――〜 ッ


 先ほどまでの『きゃっきゃうふふ』の
 楽しげな雰囲気から一転、
 心の潮が引くようにさ〜っと身を引くありや。


  「な、『なんで』ですかぁ……?」


 口をついて出たのは『当然の疑問』……
 それは端的だったが、しかし『多面的』な問いでもあった。


   『なんで』、そんなことを知りたいのか?
   『なんで』、その理由は秘密なのか?


 短い問いかけに込めた『疑念』は、
 コヤシキがあらかじめ『お断り』を入れた部分に
 対してだけではなく……


> 「もちろんあたしと、カワイイ『お悩み主』ちゃん以外に喋ったりはしないこ〜ん」


   『なんで』、急に無関係の『第三者』が出てくるのか?
   『なんで』、その第三者には『喋って』しまう前提なのか?


 突如あらわれた『その相手』への『疑心』を、
 眼前のコヤシキに訴えかける『なんで?』だった。



    ジト――――――〜〜〜〜〜ッ


 眉根を寄せ、半眼になってコヤシキを見つめる。
 『疑問』が『疑念』に変わる直前のさざなみに、
 その視線は揺れていた。


「あ、あやしぃぃぃ…… (ジト目)

 コヤコヤ様だけにお伝えするならまだしもぉ、
 その『お悩み主ちゃん』とはいったいぃぃ……?」


「こんなことあまり言いたくはないのですがぁぁ……
 コヤコヤ様、なにか騙されているのではぁぁ……?」  


 それでも目の前の『同友』を信じたいありやは、
 疑いの目をコヤシキではなく『第三者』に向けている。

637コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/12(金) 10:22:51
>>636(ありやさん)

瞬いていたまぶたがゆっくりと止まり、
また、殆ど閉じるくらい細めた目に戻っていく。

「こゃ〜〜〜ん、疑いの目100%〜!
 でもわかるよお。あたしもこんな話されたら、
 きっと『なんで』『おかしい』ってこんがらがっちゃうと思うなあ」

                  ジ…


「なのにあたしの心配をしてくれるなんて〜!
 ありやちゃんってと〜っても、優しくって、か〜わいいっ」

この町の事情やスタンドの知識、あるいは無条件で信じてくれる知人。
そうした『有利材料』を持たない以上、選択肢は多くは無い。

          まるまるでっちあげの話を作るのか、
          何も言わず、自然に聴けるのを待つのか、
          それとも、正直に正面からお話しするのか。

「かわいいお悩み主ちゃんは――――本人が良いって言ってたから言っちゃうけど、
 今『試験』を受けてるの。その内容が、『魔法使いについて沢山知ること』!
 ほんとはもうちょっと先もあるんだけど、そこは『守秘義務』って感じ。
 あたしは知ってるし、悪いことじゃない?のかなあ?とも思ってる」

         「試験に受かったら、お悩み主ちゃんは、
          晴れて『自分の夢』に踏み出す事が出来るんだあ」

話に聴いただけの『魔法使い』の試練。
『門倉』や『候補生ら』が組んでの大ペテンだとして、
そこに極端な不思議があるわけでもない。
実は何かの下準備をさせられている、と言う可能性だってある。

             『それでも』。

「実際、全部がホントに正しい話かは分かってないんだけど〜
 『100%間違いないもの』なんて、きっと、この世界にないからさあ。
 それでもあたしはかわいい『お悩み主ちゃん』のことを、信じて導いてあげたい。
 ありやちゃんがあたしのことを信じてくれるのと、同じくらい……」

『雑賀王城』という男のことを、それほどよく知ってはいない。
幾度かの会話の中で、彼が本気だと知っただけだ。
迷える子羊から、『王さま』になろうとしていることを。

                             『それでも』。

    「それでも……だから、かな?
     ありやちゃんを化かして、イイ感じに丸めこんで、
     そういう風に教えてもらうっていうのは嫌だから〜」

「だから、話せるのはここまで!だ、こ〜ん。
 これで『イヤかも』って思うなら、
 あたしとありやちゃんのために、この話は一回無かった事にしてほしいなっ」

638真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/13(土) 19:16:30
>>637 (コヤコヤ様)

「『魔法使い』を知る……『試験』……?」


 コヤシキの説明を聞いてみても……正直、
 その『黒塗り』の背景を飲み込めたとはいいがたい。
 ただ、ひとつだけ分かることはある。

 たんに情報を訊き出したいだけなら、
 第三者に話すことを事前に伝える必要なんてない。
 訊き出す理由だって適当にでっちあげればいいだけだし、
 それは今この瞬間の説明だってそうだ。

 コヤシキは今にいたるまでずっと、
 ありやに対して『誠実』でありつづけようとしている。

 そしてどうやらそれは――
 彼女の『お悩み主』に対しても同じように。



「…………わたくしはもともと、

 『神から授かった賜物を、むやみやたらに
  見せびらかしたり自慢してはならない』――

 そう教わってまいりましたぁぁ……」


「……それでなくとも、わたくしの『賜物』は
 なんと言いますかぁ、そのぉぉ………ち、『ちぶ』……」


「ンンッ…………わたくしにとってはぁ、
 こころの『恥部』でもあると言いますかぁ……
 あんまり人様にすすんで
 見せるようなものでないと言いますかぁぁ……

 ……すみませぇぇん、このはなし、
 あんまりピンと来ないですよねぇぇ……?」


 困り笑いを浮かべつつ、顔を上げて
 コヤシキの持つ『自撮り棒』の先端を見つめる。


「だからぁ……『あの子』の堂々たる姿には、
 とってもびっくりしたんですよぉぉ……
 そういう心の有りようもあるんだなぁってぇぇ……」


 春光の透き通る白翼にまぶしげに目を細めると、
 コヤシキへゆっくりと微笑を向ける。


「『お悩み主』様についてはぁ、わたくし、
  正直よく分かりませぇぇん……」

「けれどぉ……
 その方を『信じたい』と言ったコヤコヤ様の『誠実さ』を、
 わたくしは信じますぅぅ……」


      ニコ…

            スタンド
「―――わたくしの『賜物』でよければ、
 お見せしますねぇぇ……」


 祈りのかたちに重ねた両手のひらを
 コヤシキへ向けて伸ばし、そっと開く。

 蓮華を模した手の中に、
 『手のひら大』の『ハエ』が一匹、
 生まれたての赤子のようにうずくまっていた。


「『デビルズインレイ』――と、申しますぅ……」

639コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/15(月) 21:40:52
>>638(ありやさん)

                       バサッ

飛び立った『サイレント・ライト』が、コヤシキコヤネの頭に乗る。

「あたしの『サイレント・ライト』は――――――
 あたしの魔法で、あたしに焼き付いた光なんだあ。
 だからあたしには、きっと、ありやちゃんがいう『賜物』のお悩みは、
 ちゃあんと、心の底からの『共感』っていうのはできなくって」

『魔法』を積極的に触れ回ることは、
『鬼柳』に教わる前からしていなかった。
だけれど、『魔法を隠そうと思った事』も、おおよそなかった。

           その姿の『意味』は、忘れていないからだ。


「……でも、だから大切にしたいし!
 それにぃ、分かることもあるんだこ〜ん。
 ありがとね、ありやちゃん。
 隠してたものを教えてくれる大事さは、コヤコヤよぉ〜く分かるから」

                「……こんっくらいねっ!」

    バッ

「ぜぇ〜んぶ終わったら、きっと『お悩み主ちゃん』と一緒にお礼するねえ」

カラスの翼と、コヤシキコヤネの両腕が大きく開いて円を描き。

       「っていうわけで! コンコンセンサス成立〜だ、こんっ」

少しはにかんだ後、それを畳みながら、ぱん、と小さく手を打った。

「わおわお! スヤスヤしてる?
 『デビルズインレイ』ちゃん、こんこん〜っ。
 かわいいあたしは『コヤコヤ』。今後ともよろしくねっ。
 それで。かわいいあたしを踏んでるのが『サイレント・ライト』だよお」

            ヒソヒソ

そうして、やけに小さな声で、両手を筒のようにして声をかける。
スタンドに挨拶をするのは一般的には変かもしれないが――――
少なくとも『ありや』は『サイレント・ライト』にも礼を言っていたから。

「コヤコヤちょっぴりムシぎらいなんだけど……こゃあん、この子はか〜わいいかもっ」

それから、手のひらに向けていた視線を上げ、『ありや』にそれだけ伝えておいた。

640真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/17(水) 15:38:03
>>639 (コヤコヤ様)


            ポワワ…


 コヤシキの真摯な、そして思いやりある応答を受け、
 ありやの胸中に『あったかぁ〜〜いきもち』が
 春先の蕾のようにふくふくと芽吹く。


「か……『か〜わいい』……?」


 それはまるで自分の醜い精神の鏡像に、
 初めて『赦し』をもらった時のような……。

 あるいはSNSに黙々とアップし続けてきたダイエット記録に
 初めて『いいね!』をしてもらった時のような……。
 (一回もやったことないけど……)


「え、えへ、でへへぇ……!
 じゃ、じゃあ、どんどん出しちゃいますねぇぇぇ……!」


 ゆるゆるな照れ顔をうつむかせ、
 頭の上に『寝ぼけバエ』をボテっと載せる。

 そうしてありやはとつぜん、
 自身の衣服や所持品を次々と翻していく。

 ベールの内側、スカートの裾、ひっくり返したバッグの裏……
 そんなありふれた陰の中から、新たな『ハエ』たちが
 無造作にボトボトと転がり落ちてくる。


 最終的に――ソフトボール大の『6匹のハエ』が、
 夕刻の電線に集まる烏合のように、
 ありやの肩や頭を止まり木にして一列に並んだ。


「じゃ、じゃじゃあぁぁ〜〜〜〜〜んんん……!
 じつはぁ、『デビルズインレイ』はぁぁ……
 『デビルズインレイ』……『ズ』なのでしたぁぁ……!」

  「コヤコヤ様、『サイレント・ライト』ちゃん、
   よろしくねぇぇ〜〜〜……!」


 彼女たちの優雅な『協奏』に憧れて、
 自分も両腕を広げてみるありや。

 しかし止まり木のハエたちは、おのおの好き勝手に
 顔や前脚を洗ったりするだけだった。


  「………………」


「……オ、オホン……。
 それで……ええぇっとぉ……
 この子たちに、『何ができるか』……でしたっけぇぇ……?」


「………………あ、あのぉ、それってぇぇ……
 説明だけでも、大丈夫ですかねぇぇ……?
 実際にお見せする必要って、ありますぅぅ……?」

 それは質問の体裁をしているが、
 あきらかに否定されたがっている疑問文だった。

 ありやの瞳に、露骨なためらいの影がふたたび垣間見える。

641コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/18(木) 19:18:28
>>640(ありやさん)

「うわうわうわ! 『デビルズインレイ』ちゃんが沢山!
 ちょっとぞくぞくするぐらい続々ご登場〜!」

          パタパタ

   「マジシャンのショーみたいでか〜わいい!
     それか、水族館のペンギンショーかな?
      昔行った『やる気ないペンギンショー』がかわいくって〜」

どういう情緒か、手足をばたつかせるコヤシキコヤネ。

     「って〜、話題をしっかり、
      こんこんトロールしないとねっ。
      ペンギンショーのことは置いていて〜っ」

「ごめんね〜ありやちゃん、『見なきゃダメ』なんだあ!
 なんだけど、『見せられるとこだけ』で大丈夫。
 これは例えばなんだけど〜」

          スッ

    《あたしの『サイレント・ライト』は、
     名前通りかわいいライトになるんだよね》

              カッ!

カラスが上に向けた『口』が開くと、
そこから『ライト』が空に向け照射される。

     「で、このもうちょっと先があるんだけど……
      けっこう危ない魔法だと思ってるから、
      カワイイ人たちがいるとこでは使わない事にしてる」

「ありやちゃんも……そういう『見せて良いとこ』ってあるかなあ?
 イヤな気持ちにしてまで『試験』に受かったって、
 『お悩み主ちゃん』もそういうのは、すごくイヤだと思うからさ」

『特徴集め』において能力の粒度は触れられていない。
勿論深く掘り下げるほど悪魔作成の材料は増えるが、
極論、『光を放つ』だけでも『問題』はないはずだから。

「どうかな〜ありやちゃん。かわいいコヤコヤかわいくおねだり〜」

                チラッ

         「四つも頭下げちゃうこ〜ん」

両手の狐のサイン(棒を持ってて半端だけど)と、
『投光』を止めた『サイレント・ライト』と、
それから、本人も頭を下げつつ、ちらちらと視線を上げて反応伺い。

642真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/19(金) 22:28:38
>>641 (コヤコヤ様)

「お? お、おぉぉ〜〜〜……!」

 『サイレント・ライト』から放たれた
 光の尾を追いかけ、天を仰ぐありや。


「『サライちゃん』、すごいですぅぅ……
 こっちが『ハエ』ならそっちは『映え』ですねぇぇ……
 同じ『はえ』でも天と地ですぅぅ……」


「それにしても、安心しましたぁぁ……
 こんなにかわいい『サライちゃん』でも、
 わたくしの子たちと同じような問題を
 抱えていらっしゃるのですねぇぇ……」


「コヤコヤ様のいう『危ない』使い方……。

 わたくし……ほんのすこし前に、
 まさしくその使い方を誤ってぇ、
 『大切な方』を傷つけてしまいそうになったのですぅ……」

「なのでぇ、人前で『賜物ズ』を使うことに
 どうしても慎重になってしまって
 いたのですがぁ……」


「たしかに……この『サライちゃん』の光のように、
 危なくない部分だけをお見せすればよいのですねぇ……
 それでしたらぁ……」

「『コンコンコヤコヤサライ』のみなさまぁ、
 どうかそのお顔を上げてぇ、
 良ければご覧になってくださいぃぃ……」


 頭上のハエを一匹、片手でつかんで胸の前へ。

 捕まえられたハエは六本脚でシャカシャカと
 宙を掻いて必死の抵抗を示すが、
 ありやが頭をキュッとつまむと、
 なにかを悟ったように動かなくなる。


「わたくしの『デビルズインレイ』は、こうやってぇぇ……」


 言いながら、縦割れた口器部にありやが指を差し込む。
 そのままバナナの皮を剥くみたいに、
 ハエの皮を頭からべろぉ〜っと裏返しにひん剥く。

 そうしてきれいに翻った赤黒い蝿肉の奥から、
 バナナの果肉のように白い『鉄杭』が突き出していた。


「ぺろ〜〜〜んとぉ、きれいな『鉄杭』に
 生まれ変わることができますぅぅ……」

643コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/22(月) 14:52:59
>>642(ありやさん)

「こゃあん、ありやちゃんってば〜!
 いっぱい褒めてくれるね! コヤコヤうれし〜い。
 あたしって結構ぜぇ〜んぶ真に受けちゃうよ〜」

                   バササ
          
    「『サイレント・ライト』も喜んでるこ〜ん。
     あたしには見えてないけど!」

翼をはためかせるカラスは、律儀に顔を下げたまま。

「まあ、あたしも色んな魔法を知ってるわけじゃないけど、
 やろうと思えばどんな魔法でも危険だとは思うし……
 たぶん、慣れるまでは失敗しちゃう事も普通だと思うから、
 自分なりのルールを見つけて守っていくしかないんだろうねえ。
 あ! いわゆる、コ〜ンプライアンスってやつ?」

   「だからありやちゃんはそこのところ、
    すっごくしっかりしてるなぁ〜ってコヤコヤ感心!」

『投光する』だけのスタンドであっても、
目に見えない光源を作れるだけで危ない使い方は思いつく。
それが出来るからエライとか、強いとか、そういう事じゃあないけれど。

             スッ

「はいは〜い、コンコンコヤコヤあ〜んどサイレント・ライト、
 かわいく前向きモ〜ドで」

言われてから顔を上げて、『デビルズインレイ』と『ありや』を見据える。

「――――わおわおわお!
 『杭』になっちゃった! 確かにこれは『映え』じゃないかも!?
 うぅ〜ん、でもでもゾンビ映画とかにも『カワイさ』はあるし、
 ありやちゃんとか、いつもの『デビルズインレイ』ちゃん――――
 『デレイ』ちゃ〜んっ、とのギャップで、むしろカッコかわいい路線?」

       「って、そういう話じゃないかあ!」

   ジ…

何でもかんでも無理にかわいがるわけではなくって、
『可愛いと思う』理由は、いつだってそこにある。

「無理言ったのにありがとうありやちゃ〜ん!これでお悩み解決に近づいたよお」

644真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/22(月) 22:39:19
>>643 (コヤコヤ様)


「………」


「………………うふ」


 色彩豊かなコヤシキの反応に微笑をつくり、
 みずからの唇にそっと『鉄杭』をあてる。


「うふふ……ありがとうございますぅぅ……
 コヤコヤ様のようなお方にそう言っていただけると、
 とってもとっても嬉しいですねぇぇ……」


 微笑みながら感謝を伝えるありや。
 しかし、その音色は先ほどまでとはすこし違っていた。

 コヤシキが自分の向けた言葉たちを、
 ほんとうの意味では受け止めていないような。
 ここにはいない遠い自分へと手渡しているような。


 すこしだけ首をかたむけて、
 ありやは鉄杭をかり、とかじる。


「……………ただぁ、ええっとぉ……
 ごめんなさぁぁい……」

「たいへん申し訳ないのですがぁぁ……
 わたくしがコヤコヤ様にお見せできるのは、 
 ここまでになりますぅぅ……
 『サライちゃん』も、ごめんねぇぇ……」

「主から賜った物は、
 主の元へと返さなくてはなりませぇぇん……」


 眉をハの時にかたむけながら、
 『鉄杭』を握った手を胸の前へと運び、
 もう一方の手で上からそっと包みこむ。

 そのまま花びらを撒くように両手を開くと、
 『主の御印』は風一つ残さずこの世から消え去る。


 それからすこしだけ背を丸め、
 両手を合わせてコヤシキへと向き直るありや。


「それでぇ……えぇ〜っとぉ……
 代わりといってはなんですがぁ……」

「コヤコヤ様がたのご活動――
 『魔法使いについて沢山知ること』――でしたよねぇぇ……?」

「ひょっとしたら……とってもとっても
 差し出がましい申し付けかもしれませんがぁぁ……

 それにご協力してくださる方を探すお仕事ってぇ、
 わたくしもお手伝いさせていただくことってできますかぁぁ……?」

645コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/23(火) 01:22:38
>>644(ありやさん)
               
「やったあ! かわいいありやちゃんが喜んでくれて、
 コヤコヤもとっても×(かける)3! 嬉しいこ〜ん」

          パチ
            パチ


       「あ!片付け方もとってもお洒落!
        か〜わいかったなあ。
        またねえ『デレイ』ちゃ〜ん」

大きく輝く目を、数回瞬かせる。
それは目の前の微笑をいつもよりしっかり見る為で、
そして、それを何か行動に繋げはしないのだ。

        今すぐ、パズルでも解くように、
        彼女に言葉をどうこうしたとしても、
        互いの望みを導けはしないだろう。


「……って、わおわおわお、ありやちゃん謝らないで〜!
 大事だからもっかい言っちゃうことだけど、
 ほんと、見せてくれただけですっごく助かるんだから!」

        バサバサ

カラスの羽も羽ばたかせて喜びを表現する。
それは、ある程度『見せるため』の動きだけど、
それを沸き立たせているのは打算だけじゃあない。

「……で! なのに、まだまだ助けてくれるなんてさあ!
 差し出がましいなんて! そんなわけないよお〜っ。
 むしろあたしが申し訳なくって、それに、
 とっても嬉しくって! こゃぁん、情緒が迷子でこんこんちき〜っ」

『ありや』の協力的姿勢に、言葉以上に感謝していた。
能力を見せてくれるだけでもありがたい話だった。
だが、その先はコヤシキコヤネが導いた答えではなく、
『ありや』が自主的に見せてくれた、かわいい輝き。

「う〜ん、あたしもありやちゃんのこと、 
 お仕事とかプライベートとか、何か手伝えたりするかなあ?」

        「見ての通りカワイイコヤコヤ。
         こう見えてけっこう働き者だよ〜」

だから『見返り』なんか求めてないとしても、
ただただ甘えて貪るより、出来ることで返せれば良いと思う。

          特別な背景なんかはない、善意としてだ。

646真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/23(火) 14:51:52
>>645 (コヤコヤ様)

「むむっ……。
 コヤコヤ様からの個人的な『お手伝い』、
 ですかぁぁ……?」

「それでしたらぁ……!
 ぜひとも 『わたくしを通して寄付金――」


 瞳に『¥』形のよこしまな光を宿し、
 すぃ〜っとコヤシキに一歩近づくありや。

 すると両肩に乗せていた二匹のハエが、
 左右同時にほっぺたへ体当たりして主人を戒める。


「オベェッ! ご、ごぼぼっ……
 す、すみませぇぇん、まちがえましたぁ……」
 (一仕事を終えて解除されるハエたち)


「そうですねぇ…… (さすさす)

 わたくしとしてはぁ、
 コヤコヤ様が普段されているような
 『善き行い』をつづけてくだされば、
 それが何よりの見返りであると
 お伝えしたいのですがぁぁ……」


 両頬をさすりながら、
 地面に置いていたゴミ袋と火ばさみを拾いあげる。
 薄いゴミ袋を見て、なにかを思い出したような顔。


    \ ??ピコーン /
  
       「あ」



「ではではぁ……こういうのはどうでしょうぅぅ?

 わたくしの今日のような奉仕活動のことをぉ、
 コヤコヤ様のSNSとかで
 ご紹介していただくというのはぁぁ……?」


       「 ……わたくしが日々の奉仕に
         まじめに取り組んでるという
         『アリバイ作り』にも
         なりますしぃぃ…… (小声) 」


「もちろん、コヤシキ様のご活動とお手伝いとの
 釣り合いがとれれば、の話ですがぁぁ……」


 自分が手伝える『お仕事』の範囲については、
 このあときちんと詳細をうかがうつもりだ。


「……いかがでしょうぅ……?」

647コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/24(水) 19:31:39
>>646(ありやさん)

「わあ〜ぉ、ありやちゃんってば案外体張るぅ!
 カワイイねぇ〜。コヤコヤますます好きになってきちゃったあ!
 『配信』やってたらほんとに寄付(ドネート)しちゃうかも〜」

俗物っぷりはそういう演技とみなしたのか、
演技じゃないとわかったうえでそういうことにしたらしい。

「うんうんいいよぉ、共犯者になってあげる!
 あ、『教会』の宣伝とかは、コンプラ的にちょこんっと難しいけど。
 個人的なお友達としておハナシは出来るんじゃないかな〜。
 最初は文章からスタートして、ウケが良かったらコラボ配信とかあ!?」

  「……は、ありやちゃんサイドのコンプラNGかな!
   でも、ありやちゃんだけじゃなくって、
   きっとあたしにもプラスになるんじゃないかなって気がするこ〜ん」

ことインターネットにおいて『宗教』は過敏な反応を生む。
だが、『シスターさん』はむしろ大歓迎だ。

『コヤシキコヤネ単体』を推している人間も当然存在はするが、
コラボ相手が『同性』かつ『似た業種』であればリスクも小さい。
多くの子羊たちは、残念ながら、真意ではなく振る舞いを愛するから。

「だから、こんこんぐらっちゅれーしょん!
 『魔法の試験』だけで終わらないパートナーの誕生をお祝いしよ〜」
 
        「どういうことをお話していくかとか、
         こういうことは話さないでほしいとか、
         その辺りはまたおいおい打合せしたいなあ」

『軽く触れてくれ』くらいの話だったのかもしれないし、
今後実際そうなるのかもしれないが、コヤシキコヤネは結構乗り気のようだ。

「だから、ね、ありやちゃ〜ん。連絡先教えておいてくれる? 解散はその後〜」

どのような未来が導かれるかは未知数だけれど、
出会いというものは得てして、『求めることだけ』では止まらない。

            『以上』であれ、『以下』であれ・・・

648真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/25(木) 17:36:35
>>647 (コヤコヤ様)

「えっ……ど、『ドネート』……
 あっ、なるほどぉぉ……
 『そういう稼ぎ方』がぁ……」


 コヤシキが放った何気ない一言を捕まえて、
 ハッと真剣な『値踏み顔』になるありや。

   (なにか星見町のモラルにとって、
    あまり良くないひらめきを
    与えてしまったかもしれない)


「あっ、連絡先でしたねぇぇ……
 もちろんお教えしますよぉぉ……
 ちなみにわたくし、撮影NGありませぇぇん……!」


 謎の自信に満ちた顔でスマホを取り出すと、
 手慣れた操作でメッセンジャーアプリの
 QRコードを示す。
 (画面はバキバキに割れている)


 そんな感じで連絡先交換を終え、
 ほくほく笑顔で画面をスワイプしていると……


    ポコッ(81) ポコッ(82)  ポコココココッ ((((88))))


 教会からの『通知』の数が
 エグいことになっていることに気づく。


   「ビョエ!! 鬼電!!」



「す、すみませぇぇん、コヤコヤ様ぁぁ……!
 わたくし、ちょっと急用を思い出してしまいましたぁ……!」

「ていうかぁ、悪い心当たりがありすぎて
 逆にちょっと何用か思い出せないんですがぁぁ……!」


「わたくし、ここで失礼させていただきますぅぅ……!
 ごめんなさぁぁい……!」     ペコ! ペコ!


「く、くれぐれも! くれぐれもぉ、『アリバイ作り』……
 じゃなくってぇ、『お手伝い』のほう、
 よろしくお願いいたしますねぇぇ〜〜〜!!」


「あとで連絡しますからぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」



     彡彡彡 びゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん



 そんな感じで……
 とつぜんの『春嵐』が運んだ出会いは、
 その終わりもまた『嵐』のごとく。

 ゴミ一つない道をつむじ風のように駆け上り、
 それから最後に振り返って手を振ると、
 シスターの後ろ姿は遠い道の先に消えていく。

 穏やかな春の、すこしだけ騒がしい光の中へ。

649コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/25(木) 20:57:33
>>648(ありやさん)

「こゃあん、ありやちゃん……! ほんとか〜〜わいいっ!」

それがどこにかかるのか、
あるいは『言葉通り』そのものなのか――
『良くない』と『可愛い』は相反しないのかもしれない。

「オッケー、オッケー!
 もしエラぁい人になにか聞かれたら、
 あたしの名前出しちゃっていいからあ!
 またあとでね〜っありやちゃ〜ん」

        ヒラヒラ

「春らんまん、素敵な出会いで気持ちもらんら〜ん。
 カワイイお友達が出来てほくほくのコヤコヤでしたあ〜」

『サイレント・ライト』を解除しながら、
狐を模ったままの両手をひらひらと振る。
汚れも輝きも背負って吹き去った、
ありやの背中が消えるまでそうしていた。

「さあて! さっそく王城ちゃんにシェアしなきゃあ〜っ」

『やってること』とは別の『やりたい事』も増えたから、
やはり春というのは出会いの季節なのだろう。

       勿論……『試験』の行程が進んだのも収穫。
       吉報を持ち帰るべく、その場を去ると決めたのだった。

650真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/04/25(木) 22:45:20
>>649 (コヤコヤ様)

651コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/04/30(火) 10:08:33

『ありや』と別れたあと、『雑賀』との合流のため、
移動を始めた『コヤシキコヤネ』……

「うぅ〜ん?」

が、連絡にイマイチ反応がない。
単純にスマートフォンをしまっているだけか、
リアルタイムで今、『魔法使い』に会っているのか……


     カチャカチャ


手元のスマホを再度『撮影用』の棒に取り付けた。

           バサササ


肩に乗せた『サイレント・ライト』も含め、
『出会い』を促すある種の誘蛾灯。

人通りの多い駅前。目にして反応する人間がいれば、
この『待ち時間』も無為なものにはならなさそうだ……


―――――――――――――――――――――――――――――――
●『魔法の呪文はおこのみで!』関連の活動です。
  対応いただける方は、以下の詳細を確認の上よろしくお願いいたします。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319

652コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/05(日) 20:03:36
>>651(つづき)

           コン!

『狐の鳴き声』は『王城』からの着信音。

「……わおわお、流石王城ちゃん!」

思わず声を上げてしまったけれど、
これで『半数』は集められたということだ。

          『過半数』にして会えたら、
          それはもっと良いだろう。


         スタスタスタ


『自撮り棒』の上に『サイレント・ライト』を止まらせ、
周りを探りながら駅前通りより歓楽街方向へ向かっていく……

653コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/12(日) 04:11:49
>>652(つづき)

そのまま、歓楽街の方へと消えていった。

654美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』:2024/05/12(日) 15:03:21

高架下に描かれた『ウォールアート』の前に、二十代半ばの女が佇んでいた。
『オールブラック』でコーディネートした『モードストリート』を身に纏っている。
思案顔で周囲を見渡し、何事か考えている様子だ。

「理想的な『リスニングポジション』は、
 『リスナー』と『二つのスピーカー』を結ぶ『三角形』――――」

交互に視線を行き来させる先には、古い『電柱』が立っている。
いつ頃からあるのか、配線が複雑に絡み合っている様は有機的にも見え、
まるで巨大な『蜘蛛の巣』が張られているようだった。
ただし、観察しているのは『電柱そのもの』ではなく、『付属物』の方だ。

「…………『ステレオ』は『アレ』と『ソレ』が良さそうね」

街を歩くと、時折『電柱に取り付けられたスピーカー』を目にする事がある。
ここから流れるのは、商店の宣伝や放送業者からの広告募集、
または警察からの注意喚起など様々だった。
一説によると、こうした『街頭放送』のルーツは、
戦後の混乱に紛れて業者が機器を設置した事に端を発するらしい。

    タ ン ッ

           グ ル ッ

                  バ バ ッ

女の背後にいるのは高校生ぐらいの少年だ。
身体を動かしながらリズムを刻み、軽快なステップを踏む。
『ストリートダンス』の練習らしい。
連れの女と似た格好だが、
彼の衣装には『アラクネ』と『ライオン』の『刺繍』が施されていた。
特殊な技法を用いて製作されているようで、金属的な輝きを放っている。

655美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』:2024/05/13(月) 16:10:02
>>654

これで『下見』は済んだ。
ほとんどの準備を終えた今、他にやるべき事は多くない。
差し当たって『もう一つ』。

「キリシマ君、いい感じに仕上がってるじゃない。
 『パルクール研究会』に所属してるだけあって、
 やっぱり基本的な運動神経は大したものね」

後ろを振り返り、パートナーのダンスを評する。
早い段階から練習させてきて正解だった。
まだ荒削りの部分があるものの、人前に出せるレベルにはなりそうだ。

「最初こそ苦難の道を歩んだが、
 『パル研』と掛け持ちする日々にも慣れてしまった……。
 我が『使命』の為ならば容易い修練さ……」

         ビ ッ !

激しく動いていたキリシマが、
不意に静止してポーズを決め、美作に人差し指を向ける。
『ロック』および『ポイント』と呼ばれるアクションだ。
この場において、たった一人の観客である美作は、静かに口角を上げた。

「その『熱意』と『努力』に負けないように、
 私も『技術』と『才能』を駆使して全力でサポートしてあげる」

『悪魔召喚パフォーマンス』を披露するという『魔法使い試験』は、
美作くるみにとって『初回興行』に近い。
『門倉派』の名義ではないので『非公式』だが、『次』に繋がっていく仕事なのだ。
『一人の人間』としても『一人のスタンド使い』としても、
どこまでやれるか試されている。
だから、『これまでの全て』を使う。
『門倉派の肩書』も、築き上げてきた『人脈』も、
手に入れた『物品』も、何もかも注ぎ込んで『完璧』を志す。

「――――『雑賀君』って、どんな人なの?」

「フ……なんだか急な話じゃあないか……。
 そうだな……オレと同じく『使命』を背負った男だ。
 ヤツ自身が口にしていたように『王』を目指している」

         ス ゥ ッ

おもむろに姿勢を戻し、美作の問い掛けに応じる。

「オレが見るところ、それに見合う『大器』の持ち主でもあるな……。
 『王になる』という意思が『身の丈』に合っている。
 フフ……相手にとって不足はない……!」

キリシマから見た『雑賀王城』という人間は、手強い競争相手だ。
『魔法教室』に入った時から、そう感じていた。
最後まで残るであろう事も予想し、事実その通りになっている。

「で――雑賀がどうかしたのか……?」

「『試験』とは関係ないんだけど、ちょっと気になる事があったから」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ああ、いや? 『元アイドル』の方に仕立てていただくのも、
 まっ、もちろん随分と魅力的ではありましたがね……
 『王』になるッて話を導けるのは『神』だけ、という事です。
 ぼくは『こんな風』は決まってる。――――よろしくお願いします」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あの日、『アイドルだった事』は言っていない。
しかし、雑賀は『元アイドル』と明言した。
それが少しだけ引っ掛かっていたのだ。

「ここで分かれましょう。私は私で動くから、何かあったら連絡して」

「フ……オレは『剣』に見合うように、自らに『磨き』をかけておくとしよう……」

再び踊り始めたキリシマを残し、駐車場に向かって歩いていく。
少なくとも『あと一手』できる事がある。
それを果たしておこう。

656コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/13(月) 16:47:10

         ――――『歓楽街』の近辺。

「…………」

         ポコッ

     メッセージを送信した。

ベンチに腰掛けて『スマホ』に夢中になっている。
『友達』から連絡が来たから、
足を止めてそうする必要があった。

頭に『サイレント・ライト』を止まらせているけれど、
今は目立つためというより、一応周りの確認のため。

        「ほんと、かわいいひとだなあ」

そう溢して返信を待つ。
もしくは、『スタンド』に気づいた誰かがいることを。

―――――――――――――――――――――――――――――――
●『魔法の呪文はおこのみで!』関連の活動です。
  対応いただける方は、以下の詳細を確認の上よろしくお願いいたします。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319

657鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/14(火) 22:45:46
>>656

キコッ キコッ キコッ


「あーッ、重てェ。
電動チャリ欲しいけれどたっけェんだよなありゃあ。
原付も考えたけれど駐車場代はバカらしいし」

「はぁ、はぁ」

         「あ」


職場からの帰路、
年季の入った無骨なデザインのママチャリを立ち漕ぎしていた途中で、
見知り顔を発見したのでママチャリから降り自転車を押し歩きコヤシキへ近づく。

      カラカラカラカラカラッ


 「オッス。おめー、あにやってんだ?
 なんか頭に『鳥』乗っかってけどよ」

658コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/15(水) 00:14:53
>>657

             ピョン


背筋が小さく跳ねて、それからスマホをポ膝の上に置く。
おどろいたから跳ねたのではなく、喜んで跳ねた。

「わおわお、アヤネちゃん!だあ〜っ、今日もか〜わいいっ」

             クイクイ

    「やっほおこんこん〜コヤコヤだよお」

片手できつねを象るポーズ。

「待ち合わせ中にカワイイお友達からメッセ来て、それ返してたとこ!
 夢中になっちゃってたから……乗せてて正解だったかも!」

          ≪これが、あたしの魔法なんだあ。
            ちょっと出しとく用事があって……
            説明するとこんこんちきなんだけど、
            イタズラはしてないから安心して〜≫

混み入った話は『くちばし越し』にしつつ、自転車に目を向ける。
行きかもしれないけれど、疲れて見えたからだ。

「そういうアヤネちゃんは? どこかの帰り?
 だとしたらお疲れ様ぁ〜だ、こんっ」

          ポンポン

              「かわいく並んでおしゃべりしよ〜!」

ベンチの隣席のほこりを手ではらい、『烏』は一旦しまっておいた。
目の前に蝶がいるのに『誘蛾灯』をつけておくなんてことはないのだから。

659鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/15(水) 04:40:29
>>658


「よっと」
     ガチャッ


歩行者の邪魔にならないように、
コヤシキの座っているベンチの裏に自転車を寄せ、足でスタンドを起こし
念の為にロックを掛けて鍵を抜いておき、
特に遠慮をする事もなくベンチに腰を下ろす。



「おー、おー。
 こんこんだぜ、こんこん。
 今日も今日とて普通にお仕事こなしてましたわな。
 とっとと家帰って風呂入ってメシ食ってウダウダする為にィー、
 チャリで爆走していた所コヤコヤに遭遇したってわけよ」


ちなみにこちらの服装は上下共黒のパンツスーツで。インナーは白のブラウスで、化粧も最低限で済ませている。



「スタンドを出しとかなきゃいけねー事情ったァ、
 こりゃあまた、まぁまぁメンドくさそーな……。
 ひょっとしてすげーダルい事に首突っ込んでねーか?」


          「まぁいいや」


「前に言っていたお友達リストのお友達が増えたんなら良かったじゃねぇか。
 その、なんだっけ…アレだ……『配信』ッ!!『配信活動』は順調か?」

660コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/15(水) 22:55:17
>>659

       「んっん〜。さっすが!
        かわいくてえらぁ〜いっ」

ベンチの裏はあまり人が通りそうにない程度のスペースだから、
自転車を止めて迷惑になる事は一切ないだろう。

「わお〜やっぱりお仕事帰り!お疲れ様あ!
 スーツも似合ってて、か〜わいいっ。
 潤いといやしのフレッシュなコヤコヤを、
 帰り道の給水スポットにして行っちゃって〜」

サイバー調のジャージのような服装と鬼柳の服装は対照的でもある。
もっとも、化粧については同じくそれほど厚いものではないけれど。

「うぅん、めんどくさいってほどじゃ〜ないんだけど、
 けっこう大変ではあるかも! そうだねえ、こんっくらい〜?」

                      スッ

とびっくり大きな丸を両腕で作った。

「でもまあ、怖かったり危なかったりはしないし、
 やりがいもやる意味もあるお仕事なんだけどねえ」「……」

   「コぉ〜んプライアンス、ってやつで!
    詳しいことは内緒だけど〜」

       そして一瞬何かを言いかけたが――――
       広げていた腕をぱたぱたとさせた後、続きは無かった。

「ね〜! そうなの! と〜ってもかわいい子と仲良くなれたんだあ。
 あ! 勿論アヤネちゃんも負けないぐらいかわいいけど〜〜。
 その子は『配信』! とかも一緒にやったりできるかも〜って感じだし」

    「まあ今あんまりできてないんだけどね!
     こやぁん、早く防音室のあるおうちにありつきたいこ〜ん」

休んでもいいと言われがちな世の中だが、配信者にとって『数』は正義。
『ゲーム実況』をはじめとする編集済の撮りためを切り崩したりはしているが、
メインコンテンツである『雑談配信』に適している環境が無い。

「いちおう不動産屋さんにはもう会ったけど。アヤネちゃん『不動産』詳しい〜?」

661鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/15(水) 23:48:41
>>660

「いやァ、毎日疲れるわ。
 職種柄5月なんてただでさえクソ忙しいのによ、
 この間なんて「業務だけではなく会社のSNSにも注力しろ」ッて、
 お叱りを受けちまってよおぉ〜〜〜。

 いやさ、仕事だからそりゃあ言われりゃあやるけれどよおぉ〜〜ッ。
 なんつーの?『適材適所』ちゅーもんがあんだろ!
 メシの写真を撮らねェ人種にやらせるのは酷ってもんよ」



            「はあぁぁ〜〜〜〜」


自らの現状に深く嘆息して、項垂れる。
明日の事を考えると正直気が重たい。


「生憎、不動産には詳しくねェけど、
 ちゅか『ユーチューバー』や『配信者』ってのは審査通り辛いって聞くぜ。
 年収がウン百万あろうとも『定職』じゃねぇのがいけねぇのか、
 ガンガン審査落とされちまうとか何とか。
 何処で聞いたかすら覚えてねぇ程のうろ覚えの話だけどよ」


           「あー」

「『配信』してーのなら、市の『貸し会議室』使うとか?
 市営だからネカフェ使うよりよっぽど安く済むだろうし、
 最近の会議室は『Wi-Fi』も通してるし、
 それにこの間『スピーカージャック』した『バカ』みてーに、
 近隣住民にご迷惑をかけるような事もねーだろうし」


          「よっと」


ベンチから腰を上げると、
真横に設置された自販機の前に立つ。
ポケットから取り出した小銭を投入する。


「まッ、折角の『給水所』だしな。コヤコヤは何飲むよ。
 時期柄か『つめた〜い』も『あたたか〜い』、
 どっちも入ってるぜこりゃあ」

662コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/16(木) 01:45:37
>>661

「アヤネちゃんカワいいしおしゃべり上手だけど、
 SNSってそれだけじゃないもんねえ。
 全部が全部『案件』だとウソもつかなきゃいけないし、
 きっと言いたい事全部言えないし〜。
 うぅ〜ん、あたしだったら相談乗れるけど……」
 
         「でもでも、お仕事の事をよそに出せないかあ。
          あっちもこっちもコンプライアンスでこんこんちき〜」

芸能人や配信者でも『SNSの使い方』を間違える例など枚挙にいとまがない。
『企業アカウントの中の人』に任命された勤め人には、より難しい事だろう。

         そういえば『鬼柳』の職業を前の時に聞いていたか、
         コヤコヤは頭の中でボヤボヤ考えていたりした。
         ガパオライスを食べながら聞いたような気もしなくはないけれど。

「あ! そうそう! そうなの! アヤネちゃんそれって詳しい部類だよお。
 前に何度かかわいいお家探ししたんだけど、つんつるてんのこんちきちんだったなあ。
 まぁ、お仕事のせいだったのかはわかんないけど! こゃ〜ん世知辛いっ」

『コヤシキコヤネ』は計算づくというタイプではないが、
『個人勢配信者』の中で戦っていける程度には『頭』は働く。

           「まあ、こっちでそーゆうの気にしない、
            とびきりかわい〜いお店に出会えたから、
            結果的にはこんこんぐらっしゅれーしょんだけどっ。
            契約とかまだまだだし、配信はもうちょっと〜……」

なのでもちろん『本気で何もなしでいきなり来た』わけじゃあなくって、
――――多少なりのタイムラグはあるけれど、『調べていた時期』はあった。

「ってわおわお、会議室! またまた詳しい〜さっすが町の大先輩だあ。
 たしかに……踊ったり歌ったりする配信するんじゃなかったら、
 かわいいサラリ〜マンちゃんたちの会議の邪魔にはならないはず?
 あとは配信する時間に空いてるなら――――あ! 『つめた〜い』ので!」

  トトッ

                 「今日はコヤコヤ『冷た党』〜」

ベンチから立ち上がって、ポケットをあさりつつ自販機の前についていく。
奢ってくれそうな気はするけど『奢られる気満々』にしない処世術ってやつだし。

「いやあ、アヤネちゃんのおかげで『本業』が出来るかも。
 そうなったら、ううん、ならなくっても感謝感激あられやこんこんだあ」

「まぁ〜その前に、かわい〜『副業』をクリアしなきゃだけど〜。あ! ココアだこん!」

アイスココアに目を少しだけ見開きつつ――単純に並んでお喋りがしたいだけ、だったりもする。

663鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/16(木) 18:05:11
>>662


「アイスココアね。あいよ。
 私は微糖のコーヒーっと」
 

    ピッ

        『ガッコン』!


ベンチから立ちあがろうとするコヤシキに、
片手で「座ってな」と言うジェスチャーで制すと、
自販機のボタンを押し、
取り出し口から出てきた缶を取りベンチに戻り、
そのうちの一つをコヤシキに差し出す。


「そーそー、前メシ食いながら話したけど、
 アヤネちゃんは今は『ブライダル会社』で働いていて、
 すんげぇ〜掻い摘んで話すと新郎新婦様のご要望を聞いて、
 最高の結婚式の為に『粉骨砕身』しましょー!って仕事よ。
 
 ガキの頃から憧れていた仕事って訳じゃねーし、
 給料が安いやら拘束時間きちーやら、あのクソ上司ぶん殴りてーやら、
 それなりに不平不満もあるけれどォ〜〜。

 ーーまぁ、働いていたら誰だって何かしらあるだろうし、
 会社からお賃金貰って『OL』やらせて貰ってる身だし……
 こうやって『友達』と話したり、酒飲んだりしてストレス解消する訳」

   
         カッ

缶のプルタブを引きコーヒーを一口。
フルタイムでの労働で疲弊し切った脳みそに糖分を与える。

        
           「かぁぁぁ〜!!!」



「って、いやァ、別に私なァ〜〜んにもしてねぇけどな。
 その『副業』やら『本業』やらが上手く行くなら何よりだわ。

      っていけね、ジャリ銭取るの忘れてたわ」


         ズギュン


特別、気負ったり身体を硬直させたりといった様子もなく
まるで呼吸や瞬きをするかのように極々自然な所作で、
『人型スタンド』の『上半身』だけを発現。
その『スタンド』で自販機の硬貨受け取り口を漁らせて、
鬼柳自身はベンチに腰掛けたまま取り忘れたお釣りを回収する。

664コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/17(金) 01:36:50
>>663

「わおわお、疲れてるのにごめ〜ん。ありがとうねっ!」

            ストン

ジェスチャーを受けて座りなおして、ジュースを受け取る。

「あぁ〜そっかそっか、5月の次は……『ジューンブライド』っていうんだっけ?
 やっぱりウエディングドレスとかってあこがれるし、
 かわいいチャペルで狐の嫁入り〜なんてシアワセのイメージだけど、
 裏ではアヤネちゃんたちが頑張ってくれてたりっ」

                     カシュ

          「支えてくれてたりするんだあ。
           『お仕事』ってなんでも大変だこ〜んっ」

   ゴッゴッ

「ん〜〜〜甘ぁい! 脳に効くぅ〜。これまた幸せっ!.」

ココアを流し込む。脳に響くような甘さが好きだ。

「え〜! またまたあ!
 アヤネちゃんってば謙遜しいでか〜わいいっ。
 まあでもさ、実際すっごい助かったと思ってるんだよ。
 こやぁん、コヤコヤずっと助けられっぱなし〜」

             「ほんとこゃ〜んだよ」

『スタンドのヴィジョン』に視線を向けて、
それから、すぐに『鬼柳』へと視線をなおす。

                    「それでさあっ」

お願いするのはスタンドにではなく、人にだからだ。

「もう一つ、アヤネちゃんに助けてもらう事ってできないかなあって……!」

見ず知らずの人に頼むのは苦手じゃあない。むしろ得意だ。
そこから友達が出来ることもあるし、それは嬉しい。
けれど『友達』相手に利害を持ち出すのは、いつだって緊張する。

            そこから友達じゃなくなるかもしれないのが怖いのだ。

665鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/17(金) 13:18:33
>>664

「まぁまぁ、仕事の話は良いわけよ別に。
 明日もそれなりに忙しいだろうけれど、
 お陰で家で飲む『第3のビール』が進むわマジで」

  
          「ご苦労」


釣り銭をスタンドから受け取るとそのヴィジョンを消し、
財布ではなく直にスーツのポケットの中に突っ込む。


「私、ジッサイ別に何もしてねぇしなぁ〜〜。
 私の話を聞いて動くかどうかはコヤコヤ次第だしよぉーーッ。
 まっ、けれど褒められて悪い希望はしねーぜ」


           「はて?」

「助けてもらう?
 よくわかんねーけど取り敢えず話聞くぜ」


コヤシキの心中を察しているかは定かではないが、
真剣な眼差しを向けてくるコヤシキとは対照的に、
怪訝に思う様子も見せずにコヤシキが口を開くのを待つ。

666コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/18(土) 00:44:47
>>665

「『動く』のは本人でも、きっかけを与えることって、
 あたしはすっごく尊いことだと思ってるんだあ。
 ……まあまあまあ、仕事もそこも一旦おいといて〜っ」

『鬼柳』の様子は話を続けるのに助けになる。
なるべくいつも通りの笑顔を作る。それも得意な事だ。                 

「実はあたしの今の副業っていうのが、
 『スタンドのことをたくさん調べる』ことなの。
 詳しくはコンプライアンスってやつなんだけど……
 それで『スタンド使い』を見つけるために、
 あたしの『サイレント・ライト』を出したままにしてたり〜」

          スッ

ベンチから前に出した手の上に、
『サイレント・ライト』を発現する。

「あたしなりに『いるかも』ってところ歩いてみたり、
 いろいろやってるみたけど全然見つからなくって」

         「それで」

       バササササ

飛び立たせたそれは町の光景を俯瞰するけれど、
もちろん見えるところにターゲットがいるはずもない。

「こんな事頼まれて、もしイヤじゃなかったらなんだけど……
 アヤネちゃんのスタンドのこと……ちょっとだけ教えてくれないかな!」

          「お礼できる事はそんなに多くないけどっ」

『頼む』以外の選択肢はないだろう。
『丸め込む』ような選択肢はありえない。

いつか自分の友達が、『王城』の前に立ちはだかる運命にならないように。

667鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/18(土) 01:48:35
>>666


「『スタンド使い』の調査だぁ〜〜〜?
 そりゃあ、また随分と『アングラ』なバイトだわな。
 なァんか悪い大人に騙されていたりしてねぇかぁ〜〜〜?」

事情を話してくれた『コヤシキ』にではなく、
話してくれたその『仕事』の内容の胡散臭さに『心配』し思わず顔を顰め。

       
           「にしても」

「その仕事斡旋した奴ぁ随分と意地が悪ィんだなぁ。
 『スタンド使い』なんて多分そもそもの絶対数が少ねーだろうし、
 『スタンド』持ってる人間の有無なんて見た目じゃあ区別つかねぇだろうし、
 そりゃあ探すのに難儀するだろーに……」


            グビッ

缶を傾け中身を飲み干しーー、


          『ズギュン』


傍に改めて『スタンド』を発現。
黒檀色の陶器の様な質感の女性的な線の細い人型であり、
胸元まで伸びた艶やかな髪で目元が隠されておりその表情は伺えない。
両腕・両膝から先が幾つもの『星型性多面体』で構成された奇異なデザインをしている。


「別に隠す程大それたモンでもないから、
 教えるのなんて全然構わねェんだけどよぉぉ〜〜〜!

 私の『アスタロト』ッてマぁぁジで『地味』だぞッ!! 
 本ッッッ当に地味だからなッ!!!
 教えてくれって言ったのオメーなんだから、
 ショボくてもガッカリすんなよマジで!!!!」

668コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/18(土) 18:07:17
>>667

「わおわお、あたしの心配〜!?
 優しいなあ。アヤネちゃんってほんと優しくってかわいいよ。
 大丈夫! あたしこんな感じだけど騙されないの得意なんだ〜」

         クイッ

           「ホントにありがとね。
            びっっくリするぐらい見つかってなくって、
            困惑困窮こんこんコンビネーションだったからさあ」

キツネのサインを両手で作って『問題無し』を明るく示す。
『ありや』からも心配をされたが、それも妥当な『胡散臭い話』だし、
そのうえで『コヤシキコヤネ』を心配してくれるのはどこまで嬉しい話だろう。


「えぇ〜! 見せてもらって地味なんて思わないよお!
 あたし、『魔法』が地味かハデか分かるぐらい詳しくないし!
 とりあえず見た目はとってもエキゾチック?ミステリアス?
 むしろ、オシャレでハデハデ〜な感じだあ」


          ジィィ〜〜〜

               「『アスタロト』ちゃん! っていうんだね。
                なんだっけ、ゲームで聞いたかも。
                すっごい賢い悪魔の名前だったかなあ」

「名前も含めて、かわいいだけじゃなくってとっても『強そう』!」

                              バサササ

頭の上に戻した『サイレント・ライト』と、2つの視界でその姿を見る。
『人型のスタンド』自体を見た経験があまりないけれど、
少なくとも、見た限りでは『地味な魔法』とは思えない。

「じゃあじゃあアヤネちゃん、コンティニューよろしくお願いだこ〜ん!」

お披露目の続きを促す。すっかり観客の気分ではあるが…………

669鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/18(土) 23:52:55
>>668


「そうそう、『アスタロト』。
 なァんでこんな名前つけたんだっけかなァ。 
 誰かに付けてもらったような気がすっけど…
 あぁ〜〜〜〜ッ、思い出せねェェ〜〜〜〜ッ」


           コンッ


中身を飲み干したスチール缶を足元に置き、
傍の『アスタロト』に缶蹴りの鬼の要領で踏ませる。

「え〜〜とだなァ。
 手足から先が『パイナップル』みてーにボコッてなってるよな。
 例えば、この缶踏ませている脚を、こう念じて…」


         『パッ』


ボドボドボドボド!!!

缶を踏む『アスタロト』の右膝から先が消え失せ、
消失した右足の代わりに20匹前後の『ヒトデ』がこの世に現れ、足元に落下する。

出現した『ヒトデ』は奇抜なデザインもさる事ながら、
その身体は半透明に透けており『スタンド』である事は明白。


「こんな感じにスタンドの手足を『ヒトデ』にして、
 すげートロいるけれど私が操作できる感じ。
 
       ーーな、『地味』だっていったろ?」


ウネ ウネ ウネ ウネ


コンクリートの上に放られたヒトデ達は、
足元に置いた『缶』を目指し『星』型の体を捩らせるが、
その動きは『鈍重』そのもである(スE)。

670コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/19(日) 00:53:40
>>669

      「うわわわわわ!
       お星さまキラキラ!?じゃなくてボドボド!」

ヴィジョンとはいえ足がばらけて無数の生物になるのは、
けっこうショッキングな絵面ではあるのだった。

「こゃ〜っ、これってコヤコヤ全然地味じゃないと思うけどお!?
 『見た目が変わる魔法』は見たことあるけど、
 『形が変わって、そのまま動かせる』なんて初めてだし」

               ジィィィ

「それに、ゆっくりたくさん動いててか〜わいいっ!」

『スタンドの知識』が豊富であれば別なのかもしれないが、
『絵面』で言えばそれはかなり『希少なタイプ』だ。

「いやあ〜すごいの見られたあ!
 見せてくれてありがとねっアヤネちゃ〜ん」

        スッ 

「お返しにあたしのも……って、言いたいんだけど、
 ここだとほんとに『飛ばすだけ』〜になっちゃうし。
 ベつにアヤネちゃん、魔法を見たい〜とは言ってないもんね〜」

お返しをしたいが、『スタンドを見せる』のは、
きっとお返しとして成立しない。
見たいのはこっちだけだろうから。

「お仕事の手伝いってわけにもいかないだろうし、
 わわおどうしよ〜! アヤネちゃんはコヤコヤに何かしてほしい事あるかなあ?」

671鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/19(日) 18:34:05
>>670



        ウネッ ウネッ

   ウネッ クネッ グジュ… ギュル…


『バキッ』    『ベコ』ッ


     『バキャ』ッ!      『メゴォ』ッ!


地面に放られた『ヒトデ』達がようやく空き缶に到達し、
ゆっくりと、まるで捕食し消化するのように『スチール缶』を破壊していく。



「クッソトロいけれど、すげーパワーを持ってる感じ。
 んでヒトデだから何にでもひっつくし、
 家であまりにもやる事がねー時は、
 コレを壁に投げては剥がしてって繰り返して遊んだりしてるわ」
 
          「ヨイショ」

ズズズズ!


『アスタロト』の腿をヒトデに近付けて吸引。
群体の『ヒトデ』を『アスタロト』の右脚へと戻す。


「見たい見たくないで言ったらアレだな〜。
 他人の話す『バイク』や『腕時計』と一緒だわな。
 私ァそれ自体にゃあさして興味はねェけどよおぉ〜〜〜、
 目キラキラさせて楽しそうにバイクや腕時計自慢するのを、
 ウンウンと頷きながら聞くのは嫌いじゃねェぜ。
 

 ーーーまァ、けどアレだわな。
 ぶっちゃけスタンド見るよりオメーのやってる『配信』の話の方が聞きてェわ。
 だってオメー、『スタンド』なんざより、『配信』の方が好きだろ?
 なんつったて『配信』を『生業』にする為に家も決めずに、
 身一つで星見町までやって来たくれェなんだからよォ」

      
           「よっと」

『アスタロト』に破壊され鉄切れと化したスチール缶を拾わせゴミ箱に投げ捨てる。
そしてスタンドを解除し、ベンチから腰を上げる。


「メシ行こーぜ、メシ。
 私ン家の裏にこのご時世にも関わらず店内で喫煙できる『町中華』があんのよ。
 今日の日替わりメニューは確か『麻婆茄子定食』だった筈。

 『レモンサワー』が飲みてぇからチャリ一旦家に置いて帰るけれど、
 そこで『餃子6個400円』を奢ってくれや。
 それがスタンド見せたお礼代わりっつー事で」

672コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/20(月) 00:57:49
>>671


「すごぉい! やっぱり地味じゃないよおこれ。便利そうだしかわいいし!」

ただ、彼女がそれを地味だというのも分かるけれど。
そこに同調して、盛り上がる必要はないだろう。

「やっぱりアヤネちゃんってすっごく、とってもかわいいよ。
 そうなの、あたし『サイレント・ライト』の事も……好きだけど、
 でも『お話』したいっていうのとは違ってさあ」


         『魔法』は『魔法』。
         『自慢』するまでもない、降ってわいたギフト。
         それに――――――


「『配信トーク』のほうがあたしも楽しいし、楽しませられそうってこと!
 楽しいお話してなんぼのコンなお仕事、早口でしっかり語りまくっちゃうこ〜ん」

          「コンコンプライアンスの範囲でねっ」

 ・・・・・・・
『配信をするため』に星見町に来たというのは、
あながち間違っているわけでもない。

  
「わおわお! 中華いいなあ〜。この前のお店もおいしかったし、
 中華って好きなの多いんだよね。酸辣湯とか〜、麻婆もそう! ……あ!
 でもでもごめ〜ん! さっきチラッと言ったけどコヤコヤ今待ち合わせ中なんだあ」

『王城』との合流は『経過報告』の意図なので、
なんならチャット一本でも問題は無いだろう。
けれど『合流』に対面を選んだのは彼だ(話の流れでもあるにせよ)。
 
     導くというのは『支配』でも『放任』でもないのだと思う。
     彼がしたい事をしたうえで勝てるようにしてあげたい。

「ちょこんっとお話しするだけのすぐ終わる用事だから、
 アヤネちゃんが自転車置いてくる間にお話ししてきて、
 そのあと合流するのでもい〜い?

ダメだ!って言われればそれはもう優先するしかないし、王城も納得はするだろうけど。

673鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/20(月) 16:35:36
>>672



    「オーケーオーケー」

「全然、謝るこたァねぇっての。
 むしろ急に誘って私の方こそ悪りィなって感じだぜ。
 先約が優先だろそりゃあ」


ポケットの中から猫のキャラクターのキーリングを付けた自転車の鍵を取り出し、
リングの隙間に人差し指を通しくるくると回す。


「んならついでに着替えるわ。
 私ん家の前で集合でいっか?
 
 私の都合でその待ち合わせ相手を帰すのも申し訳ねェし、
 なんならそいつも連れて3人でメシでも食うか?
 コヤコヤとそいつが良ければッて話になるがよォォ〜」

674コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』:2024/05/20(月) 20:08:35
>>673

「ううん、誘ってくれて嬉しい〜。
 アヤネちゃんあたしが知らないお店連れてってくれるし、
 お話ししてて楽しいんだあ」

             スッ

ベンチから立ち上がる。

「あたしは3人で食べるの賛成〜っ。
 あ、待ち合わせしてる相手、
 いちおう『男の子』なんだけど……
 ま、あたしたち女子会って感じじゃないし、
 そのお相手ちゃんもあんまり気にしなそうだし。
 せっかくだからお誘いしてみるねえ」

『鬼柳』と『雑賀』の相性が良いかは分からないけど、
仮に魔法使いになれたなら、話せる相手は多い方が良い。というか。
そういう打算を抜きにしても、彼とご飯を食べるのも楽しいだろうから。

「それじゃ〜またあとでっ。こっち合流出来たら一回連絡するこ〜ん」

そういうわけで、ここでお別れというわけでもない。さっくり分かれて、あとはお楽しみだ。

675鬼柳礼音『アスタロト』:2024/05/20(月) 20:34:42
>>674


     「あいよ」


「私ァ別に気にしねぇけどォ。
んじゃあまた後でなぁ」

ガチャリ


ベンチの裏に停めた自転車のロックを解除し跨ると、
右手でバイバイ代わりのキツネサインを作り、
自宅へ向けて自転車をゆっくりと漕ぎ始めた。

676りん『フューネラル・リース』:2024/05/25(土) 10:27:29
芸術と言えば芸術の秋だが
別に絶対に秋でなきゃいけないなんて決まりはない
初夏の芸術があったって良いだろう

そしてここは美術館

10歳くらいの女の子が展示品を見て回っている
頭に鈴蘭が咲いているが何もおかしな事はない
平和な美術館の一幕だ

677りん『フューネラル・リース』:2024/05/26(日) 20:58:08
>>676
芸術というと、芸術品を作る生物は人間だけではない

海底の砂に円状の模様、ミステリーサークルを描く
アマミホシゾラフグという魚がいる
これは雌のフグの産卵場としての役割がある

ニワシドリという鳥はあずまやを作り
それを花や木の実で美しく飾り立てる、高い美的感覚を持っている

しかし、それらは大体本能による行為で生存戦略の一環なのだが
人間はそういう本能とは別の目的で芸術品を創り上げる

生きる上で必要は無いが、人生を豊かにする
そんな芸術品を創り上げる人間がりんは好きだ


今、りんが居る絵画のコーナーには鈴蘭の絵が展示されている
一口に絵画と言っても、作者毎にその絵のタッチはまるで違う
同じ題材でも一つとして同じ物は無いのだ
それがまた興味深く、いくら見ていても飽きが来ない


            バシャアア

何の音だ?
突然、何か液体がぶちまけられた音にりんが振り向く

そこにはなんと

りん「えっ、何してるの!?」

絵画にトマトスープをぶっかける謎の集団が居た!

環境活動家「お前ら食べ物を大切にしろ!!!
      こんな絵よりも食べ物の方が大事に決まってるだろ!!!」
りん「いや、食べ物を粗末にしてるのあなた達だよ…」
阿部マリア「っていうか、それガラスに覆われてるからスープかけても無駄ですわよ」

環境活動家達はその後すぐに警察に逮捕された
彼らの主張自体はまるっきり間違っているという事もないのだが
どうしてこうおかしな方向に行くのだろうか?

こればかりはいくら考えてもりんは理解が出来なかった

                     _
                  ,  ´   ̄マュ  
                /         ヘ  ㍉
                    /           彡入_ミヽ
               7 / /    , -‐ ' ´     .寸
                { ∥/  //ノ             }!
                 {∥  /〃/リ         ヽ  .i {
                 {.ノ, - 、_/      --ー.〟〉 ,才
               { .{f ヽ.~〃      +壬ぅ  .ヒ孑
                  {λ弋`     丶  ~´   V.}
               {  Iッー '        ,廴ニ .ソ7
                   ` yソ! .}       /   __」/
                /           /.ャ七7{/  < How dare you !
             / ̄く    ヽ、    .′ `ニ丿
             _/   ヽ     `  .、 ヽ ~ノ
         /        ヽ     /仰k゛ "
        / /        ヽ |   ./!|リト 〈
        /  /         ヤ    i.トゝミヾ
    /    \            ヤ   / ( 人)、
   /                 ヤ  /  ハク }

              終
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             ⓃⒽⓀ

678美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/30(木) 14:52:39

星見町の一角に立つ『Luna-Polis』は、
月の光を思わせる『月白色』が印象的な十階建てのマンションだ。
物件としての質は『それなり』に高く、防音とオートロックを完備している。
その一室に『美作くるみの住居』があった。
インテリアはガラスと金属を多用した無機質で都会的な『アーバンモダン』。
日当たりと眺望の良い窓からは、刻一刻と移り変わる街の風景を見渡せた。

「――――フ……ここから見える『世界』は中々の展望だな……。
 オレの見立てでは、あの辺りが『門倉不動産』といったところか……」

キリシマを『自宅に呼んだ』のは理由がある。
『試験』に向けて『最終確認』を済ませたかったが、
それは『門倉不動産』では出来ない。
『間違いなく人目につかない場所』が必要だったのだ。

「『これ』を持っていて。『幸運のお守り』よ」

          チャリッ

美作がキリシマに差し出したのは、『鈴蘭のペンダント』だった。
『りん』・『涙音』・『一抹』の三人がいなければ完成しなかっただろう。
ペンダントを受け取ったキリシマが、それを首に掛ける。
傍らにあるのは『アンティーク』の詰まった『トランク』。
『一抹の義父』から『小道具』として譲り受けた品々だ。

「オレは『Bluetoothスピーカー』を調達してきた。
 『詠唱内容』も『スキマ時間』を駆使して完成させている……。
 後ほど『メフィスト』の意見に耳を傾けたいが……」

美作のプロデュースは『クラシック』な路線ではなく、
独自の世界観で構築されている。
そして、『スタンド使い達の言葉』を使って作る『詠唱』は、
美作の監修の下でキリシマが担当した。
美作が彼に教えたのは、ただ上手く歌うだけではなく、
感情を込めれば強い訴求力を伴うという事だ。

「ええ、せっかくだし一足先に『実演』してもらおうかしら。
 それから、今の内に『例の物』を見せておこうと思って」

クローゼットから取り出されたのは、一振りの『剣』だった。

「本当に何度も言うようだけど、くれぐれも取り扱いには注意してね」

       ソッ…………

それが美作からキリシマの手に渡される。

「あぁ……分かっているさ……。決して『振り回したりはしない』と誓おう」

            …………ス

「実は『振り回したくて仕方ない』と思っていても、だ」

大きな姿見の前に立ち、己の全身を鏡面に映し出す。
『魔法による刺繍』が施された衣装と、『魔力を秘めた鈴蘭』を封じたペンダント。
さらに『異世界の魔剣』を携え、その柄に片手を添える。

    ス ラ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ

慎重に『サーベル』を鞘から引き抜き、湾曲した刀身の重さを確かめる。
キリシマを見ていて思い出すのは、
『ニンゲン』と名乗る正体不明の何者かが仕掛けた『ゲーム』。
そこで手に入る『ゲーム内アイテム』の一つが、この刀剣だったのだ。
持ち帰って以降、長い間しまいっ放しだった。
世に出すつもりはなかったのだが、
思いがけず『活躍の場』が訪れた事を喜ぶべきなのかどうか。

「ポンと出したように見えるかもしれないけど、
 それを手に入れるのだって苦労してるのよ。
 まぁ、心から欲しかった訳でもないんだけど…………」

    バッ!

           バッ!

                   バッ!

一方のキリシマは、サーベルを構えてポーズを取り始め、
完全に自分の世界に入ってしまっている。
『役に入り込む』なら、これくらいの方がいいのかもしれない。
今にも振り回すのではないかと少し心配したが、
さすがに分別はあったようで、しばらくしてから刃を鞘に収めた。

「フ…………フフフ…………!!『いい』――――実に『いい』…………!!
 この身に『力』がみなぎってくるのを感じるぞ…………!!」

「それは良かったわ。
 じゃ、本番前の『リハーサル』に移りましょうか。
 私も『参加』するから、最初から最後まで『通し』でやるわよ」

          ――――――パチン

美作が指を鳴らすと、肩の上に『プラン9・チャンネル7』が発現し、
リビングに設置された『サラウンドスピーカー』が能力下に置かれた。
ホテルのラウンジを思わせるデザインのソファーに腰を下ろして、
手塩に掛けて育てたキリシマの『演技』を眺める。
これが二人で行う『最後の仕上げ』だ。

679甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2024/06/01(土) 09:09:48
6月
雨がよく降る時期、梅雨の真っ只中
この時期が梅仕事をする頃だ

梅シロップを作る為に青梅のヘタを取り除くあまと>>680
一つ一つ丁寧に……

「……」

只只管大量の梅のヘタを取る作業
苦行か何かか?

680甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2024/06/02(日) 18:57:03
>>679
永遠にも続くかのようなヘタの除去作業
最初はただの苦行でしかなかった
しかしやっている間、シロップの出来上がりを考えると段々楽しくなってくる
そして、その内心は無になり……

あま「あっ」
富沢梅夫「もう終わってる」

気が付くと終わっていた

阿部マリア「あら、美味しそうな梅じゃありませんの
      一つ頂きますわよ」

突然押し入って来たマリアが青梅をいくつも鷲掴みにして食った!

ガリッ バキバキィ

マリア「この硬い種がうめぇんです…わ……」
マリア「おえっ…貴様ら、何を食わせやがったんですの…?」

梅夫「お前が勝手に押し入って食ったんだろ」
あま「生の青梅食べたらそうなる…」

梅の実にはアミグダリンという成分が含まれている
これは人体に取り込むと猛毒のシアン化水素、俗に言う青酸が生じる
特に種に多く含まれており、所謂天神様を食べて死亡した例は数知れず
ただし、これは梅干しにしたりして熟成させる事によって毒性が弱まるため
少量なら摂食する事が出来るようになる


医者「またこいつか、今度は何だよ?」
看護師「青梅を種ごと大量に食ったそうです」
医者「こいつの歯どうなってんだ?」

普通未熟な梅をそんなに食ったら死ぬ
だがマリアは何故か生きていた
奇跡的に生きていたのだ
何故生きていたのかは不明だ


それから時が経ち

マリア「美味そうなシロップですわね、飲ませてもらいますわよ!」

ガブガブ

梅夫「なぁ、梅シロップを作ってたんだよな?」
あま「そうだけど?」

マリア「ヒック、これは…梅酒ですわゾ」
梅夫「あま公、お前酒入れただろ」
あま「ごめん、知らないうちに入れてた」


梅夫「まぁ、普通の梅酒ならいいよ」
梅夫「けどこれ…」
マリア「みりん梅酒じゃねえか!!!!!!」

免許の無い者が梅酒を漬ける時は通常、20度以上の酒を使わなければならない
何故なら度数の低い酒だと、梅の酵母菌を殺菌し切れずに
元の酒よりも高い度数の梅酒にり、密造酒として扱われるためだ
みりんは精々度数15程度、完全にアウトだ
免許さえあれば問題無いのだが、当然あま公達は免許を持っていない

梅夫「どうすんだよ、警察にバレたら現行犯で抹殺されて梅の木のしたに埋められちまうぞ!」
あま「マリアのせいにしとく」
梅夫「おぉ、それは名案だな!」

梅夫「このアバズレが、お前がみりん梅酒なんか作ったせいでみんなが迷惑してるだろうが!
   警察が来たら全部話してやるから覚悟しとけよ!」
マリア「えぇっ?」

   |/ ̄ ̄\| \ 今日はみりん梅酒/  ┌─────┐
   |\    /|   \   にするか /.   │みりん梅酒 │
   |   ̄ ̄  |    \ ∧∧∧∧/      └─────┘
   | .○○○. |     <    み >  一般の人が
   \.○○./     < 予  り >  みりんを使って梅酒を
.      ̄ ̄       <    ん >  造ることは許されていません
 ─────────< 感 梅 >──────────
   __[警]          <    酒 >     ,.、 ,.、
    (  ) ('A`)     < !!!! の >    ∠二二、ヽ
    (  )Vノ )     /∨∨∨∨\   ((´・∀・`))<みりん一升
     | |  | |     /死ぬ気なの!\  / ~~:~~~ \

                終
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681小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/02(日) 21:00:34

街の喧騒から離れた閑静な住宅地に佇む『離れ付きの一戸建て』。
そこには一人の女と一匹の猫が暮らしていた。
『小石川文子』と『撫子』だ。

      パチ…………

深夜、不意に目が覚め、ベッドの上で身を起こす。
何か物音がした訳ではなく、『夢』を見たからだった。
やがて立ち上がり、窓の方に歩いていく。

  「――また『あの夢』が……」

『夏』が近付くと『同じ夢』を見る。
かつて星見町を巻き込んだ事件と、そこに関わった多くの人々を思い出す。
そして、『魔物』と呼ばれた魂が迎えた最期の瞬間を。
その度に『もっと何か出来たのではないか』と考えてしまう。
しかし、既に『解決』した話であり、何もかも終わってしまった。

  「――『私に出来る事』は……」

だが、『同じ事が起こらない』という保証はない。
『これから』に備える事は無駄ではないし、万一を考えれば『必要』だ。
『起こってからでは遅い』というのは、身に沁みて理解している。

       「にゃあ」

                ――――ゴソ

寝室の片隅で『黒い影』が蠢く。
『マシュメロ』の能力によって『キャペリンハット』から生まれた『帽子猫』。
奇妙な姿をしているが、それ以外は猫そのもので、
小石川にとっては『家族』と呼べる存在だった。

  「……ありがとう」

            ニコ…………

撫子に微笑みかけ、カーテンに手を掛ける。
自分の中で『やるべき事』が決まった。
カーテンの隙間から星空を見上げ、小さな輝きに思いを馳せる――――。

682佐良 猟果『マンティコア』:2024/06/05(水) 21:15:30

「はーーーーっ!」

自宅の自室で、溜め息混じりの呼気を大きく漏らす。
通話を終えたばかりのスマートフォンに、自身の険しい表情が反射する。

「全然ダメだった」

「語尾跳ね過ぎだ。絶対馬鹿だと思われた。
 『すっごく』って何回言った?準備が足りないから、慣れてる言葉に逃げるんだ」

「『くるみさん』が、漫画に詳しくないのも分かってなかった。
 古参のリスナー共から、きっとニワカだと思われる」

「『悲しい』も、本当は『哀しい』のニュアンスで言いたかったのに、できなかった。
 緊張とかじゃなくて、私がダメだからだ」

「何より最後、『私以外』って二度続けた。いくらでも言い換えられたのに。
 最後だからって気を抜いたんだ。一番頑張らないといけないのに。
 私のせいで、リスナーさんが減ったらどうしよう............」

「全部私のせいだ。私が全然ダメだから」

「私がダメだから、あのひと多分、ずっと他のひとのこと考えてた」

そのくらいはわかる、という自負はあった。
涙は出なかった。泣いていいほど、頑張ってないから。

683小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/06(木) 00:19:06
>(笑美)
>(朝山)

街の喧騒から離れた閑静な住宅地に立つ『離れ付きの一戸建て』。
やって来た二人をリビングに迎え入れ、ソファーを勧める。
テーブルの上には、ラベンダーのハーブティーと、
ドライフルーツを練り込んだパウンドケーキが用意されていた。

  「――どうぞ、召し上がって下さい……」

          コト

二人の向かいに座ると、切り分けたケーキを皿に乗せて差し出す。

684朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2024/06/06(木) 16:56:28
>>683
今日は小石川から、一つ考えていることがあるということで
笑美は彼女の家へとやってきたのであった。

「本日はお呼びいただき、光栄です。
 どうぞよろしくお願いいたします。」
席に座っていた笑美は頭を下げた。

「これは…どうもありがとうございます。
 とても美味しそうです。」
積もる話はありそうだが、まずは一息つくところだろう。

「朝山さんも本日は、よろしくお願いします。」
朝山さんの方にも視線を向けて頭を下げた。

685朝山『ザ・ハイヤー』:2024/06/06(木) 18:22:30
>>683-684(少し遅レスとなりますが、一日一レスは何とか返そうと思います)

「小石川おねーさん、この前はパーティ有難うっス
これ、お返しっス」

 そう、ごま蜜饅頭を渡した。ちゃんと、この前のお礼をしなさいねと
朝山の母親などがチョイスした品だ。味の保障は出来る。

 「ケーキ有難うっス。こちらこそ、宜しくっスよ。ときみー」

お礼と挨拶を返しつつも、普段なら披露するニュー・エクリプス・ポーズなり
ハイテンションな様子は薄い……どうも、少し今日の朝山は
ぼんやりとしている感じだ。

686小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/06(木) 19:12:49
>>684(笑美)

  「……こちらこそ、いつも笑美さんには感謝しています」

何かと頼っているのは、やはり彼女を『信頼』しているからだろう。
そうした繋がりを大切にしたいと思っている。
『未来に起こり得る災い』を防ぐ為に。

  「これからお話する内容は、涙音さんにも知っていて欲しい事ですから、
   よろしければ笑美さんの方から伝えておいて下さい……」

パウンドケーキは手作りだった。
しっとりした生地に、ほのかなラム酒の香りが漂う。
甘すぎる事のない自然な味わいで、ラベンダーティーにも合っている。

  「先ほど少しだけ伝えましたが……今から詳しくご説明します」

>>685(朝山)

  「ありがとうございます……。せっかくですから、皆さんで頂きましょう」

饅頭の箱を受け取って、テーブルの上に置いた。
同時に、普段と違う朝山の様子に気付く。
どう声を掛けるべきか迷っていると、奥の方から小さな足音が聞こえてきた。

        「にゃあ」

              トトトトト…………

控えめな鳴き声を上げた『帽子猫』が朝山の足元に寄ってきた。
小石川が愛用している『キャペリンハット』そのものだが、
『耳』が生えているし『尻尾』もある。
奇妙な外見ではあるものの、確かに『猫』だ。

  「……朝山さんは、まだ会った事がありませんでしたね」

  「この子は『撫子』という名前です……。どうか仲良くしてあげて下さい」

>>684-685(両者)

  「――お二人とも、食べながら聞いていて下さい……」

  「ご存知のように『魔物事件』は『解決』しました。
   ですが、それで何もかも終わりにしてしまえるほど簡単な話ではありません。
   今後いつか何処かで、また『同じような災い』が起きても不思議はないからです」

  「『起きた後で動くのは遅い』――あの時、私は痛感しました……。
   そして、二度と『同じ過ち』を繰り返さない為に、
   今度は『起きる前』から準備する事にしたのです」
 
  「私は『スタンド使いの集まり』を作ります。
   『烏合の衆』ではなく、お互いの事を理解し合う『和』を持った『輪』を……」

  「今こうしているように、
   『お茶』を飲んで『お菓子』を摘みながら『会話』をして、
   それぞれについて深く知る。
   そのような『スタンド使い同士の親睦の場』です」

  「……『サロン』と名付ける事にしました」

687朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2024/06/06(木) 20:17:04
>>685
「ときみー?…あ、私のことですね。はい。
 お土産、私もいただきますね。」
少しだけ気づかなかったようで、慌てて返事を返した

「フヒヒ、元気ですね。朝山さん…」
朝山は普段よりも元気さはない。ものの、笑美からすれば元気そうに見えるのだろう。

>>686
「いえ、こちらも小石川さんにはお世話になってますから。夏子さんと再会したときにも大きな助けになりましたし。」
互いに力を貸してもらっている。笑美はそんなふうに感じているのだろう。
友人とその息子と会ったときのことは、感謝してもしきれないほどだ。

「…はい、涙音も小石川さんのことなら協力してくれると思います。由楽のこともありますし。」
そう言ってからケーキを口に運ぶ。考えてみれば家族ぐるみでの付き合いになっている気がしている。

「とても美味しいです。お茶と合います。」
パウンドケーキの味は思わず顔が緩んでしまうほど美味しく感じる。

そして小石川の話をゆっくりと聴いていく。
彼女から感じるのは確かな信念。そして魔物事件においての悲しみ。

「…なる程。同じスタンド使い同士でお互い腹を割って話し合えるような場所…それが必要だと感じたのですね。」

「そのような場所があれば…情報交換もできますし、あるいは心のケアも可能かもしれませんね。『サロン』…ですか。」
そう言ってラベンダーティーを口に運ぶ。
スタンド使い同士の交流が必要という彼女の思いは、笑美には共感できるものだ。

「円滑に話ができる場は必要ですね。たしかに…」
カチャリとカップを置く。

「私たちはその参加者第一号…という感じでしょうか?」

688朝山『ザ・ハイヤー』:2024/06/07(金) 10:57:55
>>686-687
(申し訳ありません。朱鷺宮 笑美PCに対して、ときみーと言いましたが
正確には、ときみーママと書くつもりでしたが、抜けてました。
以後気をつけさせて頂きます)

「『撫子』ちゃんっスか。朝山っス、初めましてっスね」

よろしくっス、とハット部分を撫でる。
 普段なら、うわーーーー!!! すっっごく可愛い不思議なメルヘンキャットす!

と、大はしゃぎしそうな朝山だが。やはり、大人しい反応に留まっている。

もぐもぐと、ケーキを大人しく食べて話を聞き終えると共に
鷹揚に頷いて、ちょっと考える仕草と共に、こう口を開いた。

「うーん…とっても素晴らしいアイデアだと思うっス。
是非ぜひ、自分も協力はしたいと思うっスよ。
 そうすると、これから私が色々友達をいっぱい作ったら
小石川おねーさんの、そのサロンを紹介するって事で良いんスかね?」

689小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/07(金) 17:26:14
>>684(笑美)

  「お役に立てたのでしたら、私も嬉しく思います……」

            ニコ………

  「ええ、いわば『スタンド使いの社交場』です。
   お互いについて理解し合える機会を設ければ、
   強いて団結する事を意識せずとも、
   知らず知らずの内に繋がりを深められるでしょう……。
   私が求めているのは、そうした『自然な結束』です」

『空井イエリ』も名簿には加えているのだが、
『サロン』の拠点となる『ここ』で初めて話をしたという意味では、
『第一号』と言えるだろう。

  「笑美さんと涙音さんも、是非『会員』に加わって頂きたいのです」

>>685(朝山)

  「撫でられるのが好きなので、撫子と呼んでいます。
   きっと朝山さんの事も好きになってくれると思います……」

         「にゃ……」

                スゥッ

  「……『権三郎』にも会わせてあげたいですね」

もう少し撫でてもらえると思ったのか、
撫子は朝山の足元に落ち着いて、
その場から動かなくなった。

  「はい――私と朝山さんのような、
   『スタンド使いの友人』を増やしたいと思っています。
   でも、朝山さんの出来る範囲で大丈夫ですよ。
   朝山さんがいてくれるだけでも、私は心強いのですから……」

>>684-685(両者)

  「『サロン』の『入会方法』ですが、『招待制』を導入しています。
   『主宰者の友人』か『会員の友人』……どちらかの条件を満たす方を、
   『新たな会員』としてお迎えします」

  「つまり、加入する為には『誰かの紹介が必須』という事です……。
   『誰を紹介するか』は、笑美さんと朝山さんの判断にお任せします。
   それから、『正会員』になった方には、『これ』をお渡しします」

          スッ

『ラベンダーの香り袋』を三つ取り出し、それらをテーブルに並べる。

  「――こちらが『会員証』になります。
   『ラベンダー』の香りが心を落ち着かせるように、
   この町に『災い』が起きた時、それを『鎮める』という意味を込めました」

  「お二人のような『主宰者の友人』には基本的に無条件で渡し、
   『会員の友人』の場合は『主宰者』が判断した上でお渡しします。
   そして、それらによって生じる『責任』は『主宰者』が負います」

  「『見学に来ただけ』というような方は、
   ひとまず『仮会員』に留め……その後も来てもらえるようであれば、
   『会員証』を渡して『正会員』になって頂きましょう」

  「……ここまでの話を聞いて、お手伝いして頂けるなら、
   お二人とも『会員証』を受け取って下さい」

690朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2024/06/07(金) 19:49:29
>>688
(問題なしです>朝山さん)
「…何だかいつもより…?」
先程までは元気そうであると思っていたものの、以前見た時より少しおとなしいように感じられた。
笑美は不思議そうに朝山の様子を見始めた。

>>689
「ええ、由楽もまた会いに行きたいといっているくらい気に入ってるみたいですよ。
 またよろしければ…お願いしますね。」

小石川の提案を聞いて同意するように頷いた。
「スタンド使い同士は惹かれ合うものだと聞きますが…
 やはり協力し合うためにはお互いを詳しく知ることが必要ですね。
 協力しますよ。」
会員になってほしいという小石川の要望。
笑美には断る理由もないだろう。

そして差し出された『会員証』を確認する。
「災いを鎮める香り…確かにふさわしいものかもしれませんね。」
「…誘いも無理強いはせず、自由意志での参加を尊重する。ということですね。
 素晴らしい判断と思います。」
そこまで言うと、会員証である匂い袋に手を伸ばす。

「私にできる限りのことをします。この街のため…とまではいかなくとも、
 小石川さんの望むことのために。」
笑美は喜んで協力するつもりのようだ。

「もちろん涙音にもこのことを伝えますね。」

691朝山『ザ・ハイヤー』:2024/06/08(土) 12:04:04
>>689-690

「うん。権三郎もきっと撫子ちゃんと仲良くなれると思うっス。
そうっスね。自分も、ときみーママと同じで……あっ」

会員証の香り袋を受け取り、同意の言葉を口にしようとした所で
ラベンダーが何か頭を刺激したのだろう。思い出した顔で、呟く。

 「そう言えば、いちまっつんに。『小林先輩』を探す協力を
してくれるように頼まれたんっス。
 お友達を作るのと一緒に、そっちも皆で手伝って貰って良いっスかね?」

(……木崎君が、一緒にいま居たら。魔法使い試験も
これでちゃっかり突破ってなったんスかね?
 でも、ずっちぃっスよね)

 朝山が少し落ち込み気味なのは、手伝いが途中で出来ずに終わったからだ。
理由としては色々あってだ。少なくとも、朝山にはどうしようも出来ない
事情で中途半端に友達になれた彼の助けを無碍にしてしまった。

 それが、小骨に引っかかったように朝山には未だ気が重く
調子が少し出ない理由だ。

 「…………」

 多分だが、木崎は別に朝山を責める言葉も詰りもしなかった。

でも、凄く寂しそうな顔を覗かせてたと、朝山の記憶には根強い。

 再度撫子を撫でで上げつつ、自分の無力さに、どうもパワフルが
今は調子が出ずに居る。でも、友達の小石川や、ときみーママに対して
悩みを伝える気は少なくとも朝山には無い。

692小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/08(土) 20:42:07
>>690(笑美)

  「涙音さんにも、よろしくお伝え下さい」

そして、笑美は『二人分の会員証』を受け取る事になる。
『小林の件』について朝山に話す時、小石川が笑美に視線を送った。
『あの事は黙っておいて欲しい』という意味だろう。

  「……朝山さんが持ってきてくれたお饅頭を頂きましょうか」

やがて、朝山を気にする笑美を見て、率先して饅頭に手を伸ばす。

  「――美味しいです。お二人もどうぞ……」

>>691(朝山)

  「ええ――『小林さん』の事も……是非そうしましょう」

『小林丈の足取り』は、既に掴んでいる。
だが、小石川は口外しない。
彼が自らの意志で姿を消したのなら、無理に暴くべきではないだろう。
その代わり、手伝ってもらう事も否定しなかった。
『多くの人が捜している』と知れば、小林も気が変わって、
自分から真実を明かしてくれるかもしれない。

  「……覚えていますか?
   以前、ここでパーティーをしていた時、
   朝山さんは私を励ましてくれましたね」

  「朝山さんは、いつも私を勇気づけてくれて……。
   あなたが悩んでいる時は、力になりたいと思っていました」

小石川文子と朝山佐生が出会ったのは、もう随分と前の話になるだろう。
大抵の場合、小石川は『励まされる側』だった。
二人の立場が逆になったのは、今が初めてかもしれない。

  「話しづらいのでしたら、無理に教えて欲しいとは言いません。
   でも、私は朝山さんの味方ですよ」

朝山の手の上に、自分の片手を添える。
お互いを理解するというのが『サロン』の目的であり、
それは付き合いの長い朝山に対しても同じ事だ。
あくまでも相手の気持ちを尊重した形で。

  「だから、今日でなくても……いつか打ち明けてくれますか?」

>>690-691(両者)

  「笑美さん、朝山さん――ありがとうございます。
   お二人が助けて下さる事が、私には大きな支えになります」

  「……さっき朝山さんが言われたのは『一抹貞世』という方ですね?
   私は面識がありませんが、『あの事件』で被害に遭われたという……」

  「お二人とも、一抹さんの連絡先はご存知ですか?
   差し支えなければ、その方と話してみたいのですが……」

  「『サロン』については、いずれ『烏丸』さんにも伝えておきましょう。
   今はお忙しいようですから、また日を改めて連絡を取ってみます」

693朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2024/06/08(土) 22:21:43
>>691
「小林さんを探すお手伝いですか?
 …できるかぎりやってみますね。私も心配ですし。」
朝山から持ちかけられたその要望に軽く微笑みかける笑美。

「その、改めてお土産ありがとうございますね。」
と言ってお饅頭を手に取った。

>>692
(わかってます。あのときのことは秘密ですね。)
小石川の視線を確認した笑美は軽く頷いた。
以前小林のことを探っていたときのことを話すわけには行かないだろう。
とはいえ心配なのは本心だ。

「涙音も、喜んで参加してくれると思いますよ。
 もしかしたら由楽までついてくるかもしれませんけど。
 あの子、カラスのお姉さんがお気に入りらしいですから。」
少し笑いながら答える。
かつてのお泊りのようにまた騒がしくしそうである。

「思えば…夏の魔物の件で色々ありましたね。一抹さん。」
小石川が頑張っていたことを思い出した。
とても忙しかったなあと懐かしむように考える。

「一抹さんとは…はい、連絡先は受け取ってますよ。
 以前あったことがありまして…」
そう言ってから思い出したように声を出す

「あぁ、そう言えば一抹さんには小石川さんの連絡先も教えてました。
 お礼をしたいって言ってましたよ。」

694朝山『ザ・ハイヤー』:2024/06/09(日) 10:50:25
>>692-693

>だから、今日でなくても……いつか打ち明けてくれますか?

「うん・・・大した事じゃないんっスよ。本当に」

 「ただ、新しく出来た友達に。お手伝いして上げる約束だったんスけど。
……色々事情があって、約束を駄目にしちゃったから……。
 ちょっと落ち込んでるだけっス。また、直ぐに元気になるっス」

 木崎や、魔法使い試験については。詳しく話す事は出来ない。
それは重々承知してるので、そう曖昧にしか伝えられないが
折角の好意を無碍にする事は朝山には出来なかったので、そう
ぼかしつつ伝えたのだった。

「いちまっつんの連絡先なら、私も知ってるっスよ。
 今すぐにでも連絡先渡しておくっス。
小林先輩と、いちまっつん。早く会えると良いっスね」

695小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/09(日) 20:34:18
>>693(笑美)

  「私も、また由楽さんにお会いしたいです……。
   『そう言っていた』と伝えておいて下さい」

スタンド使いではない由楽は、『サロンの会員』としては扱えないが、
大切な友人の一人である事は変わりない。

  「『撫子』は……見せると驚かせてしまうでしょうか。
   由楽さんは笑美さんと涙音さんの『特技』を知っていますか?」

朝山の足元にいる帽子猫を見下ろす。
撫子は実体化したスタンド生物であり、一般人にも見えるし触れる。
由楽に『スタンドの知識』を身に付けさせるなら、見せてもいいかもしれない。

  「……笑美さんも一抹さんとお知り合いだったのですね。
   私の連絡先をご存知なら、話をするには丁度いいかもしれません」

>>694(朝山)

  「――そうでしたか……お友達と……」

朝山の気持ちを察して、それ以上は無理に触れない。

  「私と朝山さんも、まだまだお互いに知らない部分がありますね。
   これから一緒に理解していきましょう。
   その為の『サロン』なのですから……」

交流を深める事で互いを理解する。
それが『サロン』の理念。
少なくとも、今ここで朝山の新しい面を知る事が出来たのなら、
決して無駄にはならない。

  「……『一抹さんの連絡先』も受け取っておきます」

>>693-694(両者)

  「――ありがとうございます。一抹さんとは後ほどお話してみます」

一抹の連絡先を受け取り、お茶の入ったカップを持ち上げる。
彼は、二人の『共通の友人』らしい。
笑美と朝山の事は信頼しているので、もし二人が推薦するなら、
『保証』は十分に確保できるだろう。

  「もしかすると、彼も『サロン』に招待するかもしれません。
   お二人の知る範囲で、一抹さんはどのような方ですか?
   どんな事でも構いませんから、主観的な印象を聞かせて下さい」

696朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2024/06/09(日) 21:45:39
>>694-695
「朝山さん。
 困ったことがあれば相談に乗りますよ。いつでも。」
笑美も気になっていたようだ。
朝山の告げた話を聞いて、相談にならいつでも乗れると伝えたくなったようだ。


「分かりました。それを聞けばきっと由楽も喜びますよ。
 色んな人に会えたら由楽も楽しめるかもしれませんね。」
由楽はサロンの会員とはなれないが、ここにはいつでも来たいだろう。

「いえ…そういうことは伝えてませんけどね…
 でもちょっと興味深そうに見てくることはありますね。」
由楽はスタンド使いではないので、スタンドは見えないだろう。
だがもしかしたら感づいていたりするのだろうか…

「でも、猫ちゃんも大好きですからね。『撫子』ちゃんを見たら
 とっても喜ぶと思いますよ。
 それに…結構魔法とかが好きな子ですから、むしろ気にいるんじゃないでしょうか。」
そう言って微笑んだ。
由楽は意外と度胸も座っているのかもしれない。

「ええ、あったのはまだ少しだけですけど。
 …一抹さんはどんな人かですか?」
小石川の質問に少し考えてから答える。

「…なんだかとても危なげな雰囲気でしたね。
 例の夏の魔物の一件をずっと気にしているような…
 もっと強くなりたいと、思い詰めているように見えましたね。」
湖畔であった時の一抹を思い浮かべた。
あの時の彼は、もっと強くなりたいと言う思いを強く感じていた。
助けられてばかりであるのを気にしていたように思えたのである。

697朝山『ザ・ハイヤー』:2024/06/10(月) 21:53:18
>>695-696

>お二人の知る範囲で、一抹さんはどのような方ですか?

「いちまっつんスか……」

アダージョ達との共闘、焼き肉、そして最近での公園。

何気に思い返すと、あんまり個人でいちまっつんと遊んだり
話しをしたりなどが自分、そんなに無いなと小さな衝撃もあったが
うんうん考えた後に、自分の精一杯の語彙を集めて、呟く。

 「音痴仲間っスね。あと、たまに毒舌をよく吐くっス。
それと、私と一緒で焼き肉も大好きっス」

 「いちまっつんの、その危うげ……って所は、あんまり自分は
よく分からないっスけど。小林先輩を凄く心配してたのは知ってるっス。
 心配事が多いと、きっとご飯もあんまり美味しく食べれないから
早く会えるように、私もお手伝いしたいっスね」

698小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/10(月) 23:13:02
>>696(笑美)

  「確かに……由楽さんは、とてもしっかりした子でした。
   それでは、いつか撫子をお見せしましょう」

以前、この家で朱鷺宮姉妹を預かった時、
由楽は姉の涙音よりも堂々としているように見えた。
その事を思い出すと、笑美の意見にも納得できる。
何より母親の言葉なのだから、おそらく大丈夫なのだろう。

  「――『思いつめていた』……ですか」

きっと、周りに迷惑を掛けてしまったと感じているのだろう。
彼の立場を考えれば、それも無理からぬ事だ。
押し潰されそうな気持ちは良く分かる。
他でもない小石川自身も、意図せずに傷付けてしまった多くの人達と、
救おうとしながら救えなかった魂に対し、
『償いをしたい』という思いを抱く部分があった。
一抹と小石川は何処か似ているのかもしれない。

  「さっき笑美さんが『心のケアも可能』と言われましたが、
   ここで『他のスタンド使い』の方々と話す事は、
   一抹さんの助けになれるかもしれませんね……」

>>697(朝山)

  「……人には色々な面があるものです。
   一抹さんにも、朝山さんの知らない部分があるのでしょう。
   そうした事を理解し合うのも『サロン』の目的ですよ」

おそらくは、小石川も朝山も笑美も、
それぞれ『人の知らない部分』を持っているのだろう。

  「きっと一抹さんは……朝山さんと一緒にいる時には、
   『パワフル』に過ごせているのだと思います。
   私も朝山さんが元気だと嬉しく思いますから……」

年が近いからという理由もあるかもしれないが、
普段は元気な朝山の姿が一抹に良い影響を与えているのであれば、
それは好ましい事と言える。

  「今日、今まで知らなかった朝山さんの一面を知る事が出来ました。
   次に会う時は、私の事もお話しますね……」

>>696-697(両者)

  「お二人のお陰で、一抹さんの事が少し分かってきました。
   あとは、私の方からお話してみようと思います」

ひとまず次は、一抹に『サロン』の案内をする事にしよう。
その際は、同じ場に空井を招く事も考える。
『あの事件』に関わった者同士、話したい事があるかもしれない。

  「……私からは『以上』です。
   次に来て頂く時までには、正式に『サロン』の準備を整えておきます。
   お二人は『正会員』ですので、私が不在の時に『会員』の方が来た場合、
   代わりに『応対』をお願いするかもしれません」

そこまで言うと、笑美と朝山の顔を交互に見つめ、穏やかな微笑を浮かべる。

  「お二人のお陰で、私は立ち上がれます……。
   どうか、これからも私に力を貸して下さい」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「本当に誰かに寄り添いたいなら、
 まずはそいつらの抱えてる、
 醜悪な『負の感情』から目を背けるのをやめろ……」

空井イエリから伝えられた言葉を聞いた時、心の奥が軋むように感じ、
無意識に自らの胸元に手を添えていた。

  「――……確かにお聞きしました」

正確に言えば、小石川文子は『悪い面から目を背けていた』のではなく、
『良い面に目を向けていた』のだ。
それが結果的に『悪い部分から目を逸らす』という形になっていたのかもしれない。
しかし、『どう受け取られるか』は『相手次第』。

  「その『醜悪さ』を『どう受け取るか』は『私次第』です」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

追い求めた『理想』が『現実』によって打ち砕かれても、
小石川文子は『理想』を捨てない。
心が折れても再び立ち上がれるのは、
かけがえのない『友人達』がいてくれるからだ。
かつて『魔物』を討つ為に味方を集め、その味方によって激しく糾弾されても、
ずっと味方であり続けてくれる友人がいる。
小石川文子は『一人ではない』。
だから、何度でも立ち上がれる。

699朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2024/06/10(月) 23:58:50
>>697-698
「…知り合いとまでは行きませんけど
 こうしてみると、一抹さんはいろいろな一面があるんですね。」
朝山の言葉を聞いて、少しほほえみながら答える。

「ありがとうございます。
 由楽から撫子を見た時の感想を聞いてみたいものですね。」
小石川の言葉に嬉しそうにかえした。
どんな反応をするか、少し想像ができたかもしれない。

「私が見た限りだと…
 色々と大変なことがあったことが分かります。
 きっと小石川さんと話すことで、少しは一抹さんの気持ちも
 軽くなると思います。もちろん、他のスタンド使いの方々とのお話も。」

夏の魔物の一件は思った以上の影響がある。
心に深い傷を残したものもいれば、姿を消してしまったものもいる。
サロンはそういう人のために必要かもしれない。

「改めて、サロンの設立に賛成します。
 …私も時々顔を出しますので、そのときには応対できると思います。
 これからのサロンの運営、できる限り力を貸させていただきますね。」
と言って頷いた。

「できる限りのことをしましょう。
 ここで人同士のつながりができれば、大きな事が起こってもきっと大丈夫ですよ!」
笑美は力強く声をかけた。
これからサロンが大きな助けになることを期待しているのだろう。

700朝山『ザ・ハイヤー』:2024/06/13(木) 11:50:24
>>698-699(レス遅れ失礼しました)

 >きっと一抹さんは……朝山さんと一緒にいる時には、
   『パワフル』に過ごせているのだと思います

「……『パワフル』に……そうっスか」

     ――ニコ

「うんっ……なら、ちょっと元気を取り戻すっス!
 ときみーママに負けないっス! サロンを、この家いーーーっぱい
埋めつくすぐらいに沢山人を集めるっスよ!」


 小石川の言葉に、少しだけ朝山も元気を取り戻したようだ。
普段と同じ、よりは少し小さいが、それでも元気な声量で
ガッツポーズと共に、サロンの活動を宣誓する。

 (木崎君、約束守れなくて御免ねっス)

(けど、いつか木崎君が、また笑顔で、こっちでも
お茶出来るように、私、頑張るっスよ)

 そう、まるで遠い空に木崎の面影があるかのように(※しんでない)
彼方を強く見つめつつ、瞳に炎を燃やすのだった。

701小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/06/13(木) 21:15:16
>>699(笑美)

思い返すのは、初めて笑美と出会った幼少期。
お互いに大人になり、それぞれの道を歩んだ後に再会し、今も交流が続いている。
その経験が『人と人の交流』の大切さを改めて教えてくれた。

  「『お茶』と『お菓子』は、常に用意しておきます。
   それを出して頂ければ問題ありません。
   『持ち込み』も歓迎しています」

朝山が持参してきた『饅頭』に視線を向ける。

  「『未来の災い』に備える為に、私は力を尽くします。
   それが私に出来る『私の戦い』だと思っています」

数十年前、一緒に遊んでくれた『お姉ちゃん』。
いつの間にか背が伸びて、身長は追い越してしまった。
その事実が過ぎ去った年月を物語っている。

  「一緒に『サロン』を作り上げていきましょう」

それでも『鵲笑美』――『朱鷺宮笑美』が、
小石川文子にとって頼りになる存在である事には変わりない。

>>700(朝山)

少しだけ元気を取り戻した様子を見て、静かな微笑を返す。
彼女の事情は知らないが、誰でも落ち込む事はある。
そんな時、倒れてしまわないように支えられる力になりたい。

  「朝山さんが元気でいてくれると、私も元気になれます……」

そして、そんな姿は『小石川文子の心』も支えてくれる。

  「『私の戦い』に、朝山さんの力を貸して下さい」

複数の人間がいれば、一人では達成できない事も可能になる。
『魔物事件』では『質より量』を重視していたが、『サロン』の目的は逆だ。
朝山を呼んだのも、彼女を信頼に寄せているからこそ――――。

>>699-700(両者)

  「――では……お二人とも、よろしくお願い致します」

ソファーから立ち上がり、姿勢を正して頭を下げた。
そして、笑美と朝山を玄関まで見送るだろう。
『スタンド使いの社交場』である『サロン』は、ここから始まる。

702美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』:2024/06/13(木) 21:31:06

『H市』から『T名高速』に乗り、およそ二時間のドライブを経て『M市』に到着した。

         ――――――バタン

愛車の『ランドクルーザー』から降りて、駐車場を歩き出す。
目的地は『紫陽花園』。
先日、リスナーの一人である『ミルク綿菓子』に、
『オススメスポット』として紹介された場所だ。

「そういえば聞き忘れてたけど、キリシマ君は『高所恐怖症』じゃなかったわよね?」

「フッ……オレは『パル研』の『発起人』にして『会長』……。
 上り詰める事を恐れていては『パルクール』は出来ないさ……」

今日は『パートナー』であるキリシマ・アキトも助手席に乗せてきた。
まもなく、二人の前に『大吊橋』が姿を現す。
『400m』の長さと『70m』の高さを誇る『日本最長』の『歩行者専用吊り橋』だ。
天候に恵まれたお陰で『日本一の山』を望む事も出来る。
二つの『日本一』を同時に楽しめるのは贅沢な気分だった。

「スゴい眺め!雄大な自然と大パノラマ!これぞ『絶景』って感じ!」

「あぁ……『メフィスト』が棲む『月の都』を上回る見事な眺望だな……。
 いつの日か、こんな『映える舞台』で立ち回りたいものだ」

「それは――止めておいた方がいいと思うけど……。
 さて、忘れない内に『写真』を撮っておかないとね」

        パシャッ

都会から離れた開放的な空間を堪能し、『SNS』に使う写真を撮影しながら、
二人は『紫陽花園』に向かって歩みを進める。

「本当にキレイな所ねぇ。
 どっちを向いても見渡す限り『紫陽花天国』。
 まるで別の世界に迷い込んだみたい」

彼らを待っていたのは、『205種』にも及ぶ『紫陽花尽くし』の世界だった。
美作が特に注目するのは、ここでしか見られない『オリジナル品種』だ。
雪のような白と仄かな水色が印象的な『スカイウォーク』。
薄紫色の可愛らしい『夏空』。
そして、淡いブルーが清涼感を漂わせる『覇王』。

「近くに『強者の気配』を感じるが……あれが『そう』じゃあないか?」

「『覇王』って書いてあるから間違いないわね。
 『覇王線』の持ち主が育てたから、そういう名前が付いたらしいわ」

「フ……『ミルク綿菓子』か……。それならオレも『聴いている』」

『覇王線』は『成功者の相』。
是非あやかりたいところだ。
それは『魔法使い試験』に限らない。

「『覇王』と一緒に私を撮ってくれる?あとでキリシマ君も撮ってあげるから」

「『盟約』において『取引』に応じよう……。『支配者の名を持つ花』よ……!
 このキリシマ・アキトに力を授けてもらうぞ……!!」

           パシャッ

『紫陽花見物』を満喫した二人は、続いて『ショップ』に向かった。
ボリューム満点のホットドッグと分厚いサンドイッチをテイクアウトし、
爽やかな初夏の空気に包まれながら、心地良いウッドテラスに座って味わう。
眼前には吊り橋が見えており、景色と食事を同時に楽しむ事が出来る。

                パシャッ

デザートは、ここでしか食べられない『空色』のソフトクリーム。
ロケーションに因んで『そらソフト』と名付けられているらしい。
店先に等身大のオブジェが設置されており、そこで撮影する人が多く見受けられた。

「――――それで『願い事』は何にするの?」

帰り際、『フラワードロップ』を手にして、美作がキリシマに問い掛ける。
間伐材に『花の種』を貼り付けた木製チャーム。
これに願いを込めて橋の上から蒔く事が、ここを訪れた観光客の恒例になっているそうだ。

「『契約成就』と言いたいところだが、この大自然から力を得た今のオレは、
 より『高み』を目指して『使命の全う』だ……!」

「じゃあ、私は……『この大空に向かって羽ばたけるように』」

         パ ッ

                パ ッ

次の瞬間、二つのチャームが同じタイミングで夕暮れの空に放たれた。

「帰りは下道を使いましょうか。行きと違った景色を見るのもオツなものよ」

二人の間に初夏の風が吹く。
地面に落ちた『種』は芽吹き、いつか『花』が咲くだろう。
彼らは橋の上に佇み、自らが描き出す『未来』に思いを馳せる。


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