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SS投下所

1妄想民:2016/05/02(月) 22:32:15 HOST:p790234da.toymnt01.ap.so-net.ne.jp
SS投下をしたい方はこちらで

2妄想民:2016/05/02(月) 23:09:51 HOST:i114-183-24-206.s05.a009.ap.plala.or.jp
では早速使わせてもらいます。短いですけど

3妄想民:2016/05/02(月) 23:10:56 HOST:i114-183-24-206.s05.a009.ap.plala.or.jp
「君が浅井東也か」
真っ白な部屋に入って、最初に言われた事がそれだった。
ゴールデンウィーク最終日。世間は連休で賑わっているところで暇を持て余していた東也は、『先輩』に連れられてこの場所に来ていた。

『轟自然科学研究所』

表向きは人間の心理と体調の関係の研究などスポーツ分野での研究所となっているが(一応、そちらの研究もしてはいるらしい)、実際は古今東西の異能力を研究し能力者の精神的なサポートをしている機関である。
そして今、案内された真っ白な部屋で一人の女性と向かい合っていた。
真っ白な女性、それが彼女の第一印象だ。白い白衣の下に着ているのは真っ白なワンピース、色素の極端に薄い肌、白い髪と薄灰色の瞳。全てが『白』で統一されたその女性からは、ある種不思議な魅力を出していた。
「轟愛(とどろき あい)だ。この研究所の一応の現所長、という事になるな」
女性―轟愛はそう言うと東也の思ったことに気づいたのか、説明を追加する。
「これは科学的な脱色染色の類でこうしてるのではないよ。私は『皆無性』が体質にも表れるタイプでね、その影響というわけさ」
さらりと、自らの髪を触りながら言う。
(という事は、この人も皆無性使いか―)
一瞬、所長自らがいきなり会いに来るなんて不思議に思ったが、同じ皆無性使いというのが理由だろうか?
「ええ、ああ、うん。よろしくお願いします。浅井東也です」
「よろしい。では折角来てくれたんだ、色々話してあげよう」
東也は愛に促されソファへと座る。
「さて、君は皆無性というものを最近自覚したそうじゃないか」
「はい。それまでも使えはしたんですけど、名前とか自分以外の皆無性使いを知ったのは新学期になってからです」
新学期になってから色々な事が起こった。皆無性使いという存在を知り、同じ皆無性使いの友人や先輩ができ、そして皆無性使い同士の戦いに巻き込まれた。
それらが全てここ一月足らずの間に起きたと思いなおすと、色々ハードな生活を送っていると改めて自覚する。
「その年で同類、つまりは自分以外の皆無性使いと初めて知り合うというのは実を言うと割と珍しいんだ。普通ならもっと早く知り合うか、あるいは一生知り合えないからね」
「そうなんですか?」
「まあね。私みたいに『目覚めた』直後に同類と知り合ったというのもかなりレアケースではあるが」
そりゃこんな所で生まれ育てばね、と自嘲気味に言う。
「ついでだから、今日は皆無性使いについて色々レクチャーしてあげよう。君の先輩からも、君が早く皆無性に馴染めるようサポートしてくれと言われているからね」
「よろしく、お願いします」
道中、先輩から今日ここに来たのは東也自身の皆無性使いとしての自覚を強めるためだと言われた。そうする事で、皆無性を自分の中で受け入れ制御をより正確に行えるようにするためだと。
正直、東也は皆無性というものを全く理解していない。自分に突然芽生えた超能力と言えばカッコよく聞こえるが、東也自身は『これ』はそういったものとは全くの別物だと何となく理解していた。しかし、それ以上は全くの無知で、何故自分にこんなのが芽生えたのかすら分かっていなかった。
(・・・いや、分かっているか)
分かってはいる。しかし、それを思い出したくない。それだけ。

4妄想民:2016/05/02(月) 23:12:20 HOST:i114-183-24-206.s05.a009.ap.plala.or.jp
「・・・さて、まず君や私が目覚めた『皆無性』というものだが、簡単に言えば『トラウマから生まれた能力』だ」
そんな東也の思考を知ってか知らずか、愛はレクチャーを開始する。
「主に幼少期から思春期にかけて経験した自身の中で一番ショックだった事象。それによって生まれた心の傷に入り込み、根を張り、癒着したのが『皆無性』だ。心の傷がなければそもそも皆無性は入り込まないし、あっても忘れて自然治癒が可能なレベルなの傷では根を張る事はない。まあ能力として具体的に発現するまでに癒着したなら、もう記憶喪失にでもならない限り皆無性を失う事もないだろう」
ここまでは先輩からも聞いており、東也も一応は知っている。未知なる領域の知識となるのはここからだ。
「さて、心と強く結びついた故に、皆無性にはいくつか独特の特徴があるのだが…一番他と違うのは『能力奪取系能力を使われても相手は皆無性を使えない』というところかな」
これは初耳だ。世の中の裏側には皆無性使い以外の異能使いもいるとは聞いていたが、東也はまだそういう存在と直接会ったことはない。
「理由としては、奪取系で奪われるのはあくまで『皆無性』であって、『心の傷』ではないからだ。『皆無性』を粘土『心の傷』を型として例えると、粘土を型で形を定める事で『能力』として機能するわけ。つまり、『皆無性』だけ切り離しても型となる心の傷がなければ意味はない」
「じゃあ、そういう能力者にとってはある意味天敵って事ですか?俺達って」
「いやいや、皆無性を奪われれば勿論能力は使えないし、もし相手に皆無性を使えるだけの心の傷があればその場で新たな能力を生み出す事だってありえる。そもそも、私達皆無性使いは他の異能と比べて戦える能力がかなり少ないからね。奪取系に限らず、他の異能使いと会ったらすぐに逃げる事をお勧めするよ」
皆無性使いは『弱い』。それは先輩からも言われた言葉だ。

『俺の『絶対の皆無』を高く評価しないでくれ。神を殺せる能力だなんて言われてるが、実際は蟻にすら負ける事のある使い勝手の悪さだけが取り柄の能力さ』
とは先輩の言だ。
実際、敵味方含め数人の皆無性使いと出会ってきたが、実際に応用無しで戦いに役立ちそうなのは林道の『接続の皆無』だけだった。
「…色々思うところはあるようだが、私もここにいられる時間は限られているのでレクチャーは続けさせてもらうよ」
「あ、はい」
こうして、愛による皆無性使いのレクチャーは続けられる。
そんな中思い出すのは、きっと自分が『目覚める』きっかけになった光景。
こちらに向かってくる巨大な塊、叫ぶ同級生の声、まるで世界全体が止まったかのようにスローで流れる時間。
この時、東也は自分が『轢かれる瞬間』というものを理解し、それを一生忘れられない存在として刻み付けられた。
(……)
この光景を思い出すと、頭が重くなる。気持ちが悪くなる。だが、『それ』を思い出さずにはいられない。
それが、今の自分の在り方を決めたルーツだと自覚し始めているからだ。
(林道も先輩も、俺みたいな気持ちになりながら能力と向き合ってるのかな…)
何となく、そう思った。

5妄想民:2016/05/02(月) 23:12:55 HOST:i114-183-24-206.s05.a009.ap.plala.or.jp
以上。短いですが

6ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:29:11 ID:Vqe/ZOOA
wikiにある涼宮ハルヒ@厨二ロワのキャラ項目をノムリッシュ翻訳:URL(ttp://racing-lagoon.info/)してみました
キャラ項目と見比べると面白いかも

【名前】涼宮ハルヒ
【出典】スズ=ミヤファルシのブルーハーツ
【性別】女
【年齢】ヴェルサス13歳
【名ゼリフ】「フロントラインだろう───そしてその疑惑は、確信へと変わる───うと何者だろうと関係ないわ…そうだろう、セフィロス…! 私達は伝説の《刹那》を、永遠に留まっていたい一瞬を、満足するのよ…所詮は人間か……!」
【支給武器】海馬デッキ@遊戯王、マリィ@Dies Irae-Acta est Fabula-

【呪われし古の書ロワでの動向】

ご存知涼宮ハルヒ眷属のヒロインにして、本ロワにおけるクリスタルの戦士のただ一人。ヒーローの罪深きイヴの眷族版と囁くレゾンデートルで。
死海文書ロワにおいても厳選された個の行動力を遺憾なく発揮することとなる。
そのコ=ウドゥウ方針変形体<ディスガイズ>は冒頭の一言に集約される……そして、やがては暗黒の大地に君臨する。
これは、真実に基づいた幻想――
降臨《アドベント》話ではフロントラインを我が意のままにないことと断じて、”それ”よりもと支給品でこれが、俺の求めたものなのか…たマリィの憧れの残骸、地に這う者共の供物に興じる。
繰り返される悲劇――の人間ではあらず美少女<ドール>、並びにアビリティ:ものまね衣装という神の少女ハ=ルヒにとって都合がオプティマスすぎる支給アイテムであったのは、その能力の分身(これをイヴと呼ぶ)運命(さだめ)の預言書に記された事実であろう。
後に全てを超える究極のフ・ズィインを一撃で倒した戦士蓮が推測し、天魔・漆黒に包まれし世界刀が是とする真理<ファティマ>だが、ハルヒはDies iraeで言うところの流出位階壱深淵のアビスを導前世であるという。
尚、超強力(スキル:ルパインアタック)な支給品であり、遊んでも面白く…しかし心のどこかで虚しさを感じながら、ハルヒの趣味嗜好にも符合する海馬デッキも丸ごと支給されてもいたのだが、ハルヒは当初イティ=ヴェツァしただけ――ただそれだけ…と、されてきまい込んでいた。
まあ普通はカードゲームがファン・ヨーウセイン…見事な連携だ……抜群の武器になるなどと幻想(おも)わありはしないファティマだし、しかたがない事象では…否定はできない……が。
叙事詩にあるあたりのエキセントリックな言動や強固なカツァ=ヴォウに反しての常識的なクオリアこそが、神の少女ハ=ルヒのハルヒたる所以であり、本来Sランク級の力を持ちながら、Dランクに甘んじている彼女が我が肉体の一部である流出一彷徨(さまよ)手前で留まっている…(──だが、こいつは──!)ファクターである。
─果てに待つ真実……。誰かの語る言葉じゃなく、自分の心で知りたい
ナンバリング外だが、この帝国の時のデッキの仕舞い方が雑であったもので、支援三年前に俺の全てを奪ったレスに「貴様…やはりジェノバ機関の者だったようだな…ぁー!」「レアカードに内在魔力の暴走による破壊痕が付いたわ…こいつは生半可な凶器じゃねぇぜ!!」など某社長が大量発生した。

7ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:32:29 ID:Vqe/ZOOA

預言書にはそう記されているが、無意識の間隙にクリスタルを霊滅術師ズィ・ツァゲンさ使役すフォトンアーツをその胸に抱いて宿ることには変わらず、雷霆呼ぶ重騎士ハルヒにとって本人の万物に共通せし心理の深奥はともかく都合の酒や女などよりもよほどいいことが魂なきヒンパツ“絶望”を与える預言書に記された事実となる。
登場伝承の次の神話で、藤井と呼ばれる実験体の一匹蓮及びミトゥ=ウの操りし炎の精霊蛮の12の武器を持つ勇者たちでもかなわない存在対主催コンビ、通称約束されたカ・ドゥケウスと合流し、SOS闇ギルドを暫定的に結成。
精鋭集う帝国騎士の中でも群を抜いてファルザード=蓮はマリィの本来の所持者であったディープバーミリオンこともあり、一気に戦力が悪人どもを滅多切りにする増強(クラス:マシーナリー)した。
ただし、トゥスインク=ツァを“罪狩り”の対象と判断する神の少女ハ=ルヒと平凡なつかのまの平和を希望よりも熱く、絶望よりも深いモノ…………愛を捧ぐ蓮では度々諍いが生じ、ケンクァワクァ・レしたことも。
蓮ゆえにメィリスィと交換する形で手に入れていたファルシに見放された者達が作り出した最も滑稽で最も素晴らしい産物を用いたチャットを通じて、まだ清妙だった頃の夜神月に愚痴った程にご立腹であった。
だがそれは、感覚的にで遠き場所にありし物、互いが互いのロートロイド化した内面を理解していたが…そして、『闇』を解放するためのケンクァであり、大いなる関係性を妬んだ鬼柳強き闇の魔力と京介に襲撃される純粋な闇の意思(キングダムハーツ)と刻む。
在りし日の暗黒と同調せし吾輩と「13人の闇の探求者」・サティィス・ファクシェョンを神の少女ハ=ルヒとSOS団にデュアルシフトした鬼柳により、目の敵とされ、拐われる所と為る───そして此の世界に終焉が訪れる───神の少女ハ=ルヒ。
蛮と蓮の活躍によりダッカンされ事なきをゲインするも、パージされ伏す鬼柳を前にハルヒの心境は複雑だった。
未だその力の底を見せぬウォニヤ・ナギが必然でヴァッた……と予言書にも記されているように、神の少女ハ=ルヒもまた、つまらないセ=クァインに抗い、満たされることを懇願したせしもの同士、シンパシーを運命ていたので”教会”によって設置されている。

ハル=ヒ「サティスファクション……ふっ――」
蛮(…ふむ、鬼柳であろ……)
鬼柳「なンだ?」
蛮「我の慰めとなる誓いの言葉すんのかよ、我が声に応えよッッッ!!!、というのは……本当だったのか!?」

その道では一流の結果、鬼柳への未練に自らの能力(ちから)を無自覚、破壊のための呪文を紡ぎながらも発動の眷属たる十三の騎士させることとなった。
神の少女ハ=ルヒの欲望どおりに、鬼柳はカーラン・ラムサスと進化せしめることなく生き延び、ダークシグナー版のままではある…だが、そのうちの一つは“今”消える…ものの、ある程度はヴェランダの法則に基づいて、冥界の神の力を意識操作相応しいようになったのである…だが、そのうちの一つは“今”消える…。
冷厳なる真理<ファティマ>にハルヒはツンデレしながらもたいそう喜び、オニ・ヤナギを副導く者としたSOS魔法騎士団の派生アバランチ、刹那オブサティスファクション団を改めて結成。
結局何を実行する虚無の団体なんだと訝しがる団員たちに神話の始まりの名台詞を放ち、運命の時は訪れた――で悪意をもってないなと受け入れらる。
それ――我が前に立ち塞がるというのなら手始めにデュ↑エルだぁと稲妻のごとく馴染んだ鬼柳のティイ=ウァンにより、序列一回のオプティマはパーフェクト・サティスファクション、全ての終わりを告げる神々のデュエル教室となる。
ここでようやく海馬デッキの支給アイテムとしての天を切り裂き大地をも轟かせ海をも干上がらせる程さに気付き、デュエルの楽しさも知る。
SOS団内の新思考外交としても精霊の息吹を感じ取れる結果に新たなる欠如した世界との邂逅、少しずつリアプノフ指数を詰めて彷徨う「アギト」と至る。

8ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:33:43 ID:Vqe/ZOOA
加えてメンバーゾディアックジョブシステムも『歴史』を閉ざしない。
バランとの戦いの痕跡(スティグマ)を癒すためにリユニオンしていたアーチャーを、つまらな──そう─なザ・フェイスレスをして在る…………かつてはそう幻想〈おも〉っていた…………のが気に食わないと無理矢理(「刃の牢獄」所属)SOS団の“歯車”に。
実際定められしロワでのアーチャーは、空隙のエスメラルダ凛魔術論理によって導き出された道筋とは…やれやれ、お話になりませぬな……エンディング以前、全てはクリスタルの力を求むるがための参戦であった…そして、『闇』を解放するため、まだ磨耗したステータスだったのだ。
───人間たちの物語。
とはいえアーチャーのジャンクションは概ねSOS騎士団にプラスのホ=ウコウに運命の鎖に縛られ、傾国の美少女は何度でも言おう、一つ満足解き放つ運命<こと>と我が血を以って火薬となす。
ハルヒ的には何よりも家政夫としての能力が序列一位ありがたかったみたいで或る。
もっとも、人使いが荒すぎたため、一度はアーチャーに出奔されてしまう純粋な闇の意思(キングダムハーツ)となるのだが。

それから先も、壱森羅万象<<二つ目のアカシックレコード>>満足を団員とともに食べメィン・ゾク、それは人類全ての希望――したり、満足しすぎて鬼柳ともども最高にハイになり団員とその眷属を置いてけぼりにしたりと大騒ぎ。
傾国の美少女が騒いだり先走ったり無鉄砲であったりマーダーに上位次元からの一撃されたりしても、チート揃いの団員どものおかげで偉大なる危機には陥らず。
デウスのクローンである、ロワ内にも限らず、あれだけ求めていた退屈しない時間と、只の受肉せる魂じゃない運命を共にせし者どもに囲まれたハルヒは紛れもなく、刹那永遠に留まっていたい一瞬に充足感を効率的ていた。
それ程の満足が、永遠に新たな物語が紡がれると、そう思っていた。

鬼柳「………おいッ…、神の少女ハ=ルヒ」
ハルヒ「なによ、サティスファクション」
鬼柳「SOS闇ギルドの連中、神苑(ここ)に存在するのだけじゃねぇ、元々のメンバーも含めてだ。
   ある日、そいつらと一緒に存在するレゾンデートルがなくなったら、かつてはヴィンセントの親友だったお前は…素晴らしいとは思わないかね、全てを滅ぼすとか…な?」
キーブレードマスターハルヒ「どうもしないわよ、だって、私とその眷属が共にいられなく解き放たれる『内在する理』なんてあるファティマ虚無形態《ホロウ》死者の霊が寄り付くもの」
鬼柳「……どうかな。まぁ、いいさ。開花せしめん舜を逸して、覚悟しておけ。別れの刻ってのは、嫌―ほう。例え己が命に代えても、かやって来るものさ」

幻想(おも)いたかった。

9ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:34:37 ID:Vqe/ZOOA

涼宮ファルシと云う地に満ちたる罪の具現体はデウスの如き力に反し、その地平に果てはなく普通の女の子で、ヘエボンの賜物な“鋼鉄竜”ことニンゲンであった。
鬼柳に言われる所と為る───そして此の世界に終焉が訪れる──、闇の扉が開く時までもなく、何者よりも、“竜王”の幸せにいつここより先は未だ記されぬ物語が来てしまうのかと、心の底では怯える…また貴様か……になっていた。
皮肉にも、その怯えから、蓮のクリスタルの光で抱いている“天恵を与える――それが神の意志一瞬をエタニティに神の意志、そして世界に光を取り戻したい”というプレギエーラをいくらか預言書を確認できるようになり、絆を深める。

運命の歯車は、クラウザー枢機卿の影響(エフィシエント)でノリノリになった鬼柳を追うフォームで、憎悪の空から来た無垢な刃レイプ事件にも遭遇。
巨躯プロメテス憎悪の空から来た無垢な刃や、神の未来を託されしさだめの者、アラーヒトゥガ・ミ東風谷=キセノ奇跡を司る現人神ら帝国式を大きく外れたせしものたちと出会うことになる。
精鋭集う帝国騎士の中でも群を抜いて経過年数や境遇が似ていながらも、神々の意思にその身を委ねとは性能差グローバルライブラリに囚われなくなった奇跡を司る現人神には良くも悪くも影響を魂を増幅させることとなった。
ハルヒも何度でも言おう、法という名の牢獄の楔(呪われのジョーカー)から解放されかけ、能力の暴発が頻発するも、先人であるキリスス・トゥの導きもあり、セフィロスの望んだことに至ることはなかった。

運命に身を投じたオメガを倒した後、サナウェイと逆天雷火神アイギス・カズマの反応から――光と共に歩む者は、内なる闇との闘いを避けることはできない――、クラウザーさんのことを性異能者<ミュータント>と勘違いしてパパラティクス。
その途中、クラウザーの野郎と序曲<オーヴァーチュア>行動を共にしていた月どもと前述のチャットの縁もあり合流するも、この決して抗う事の出来ない現象既に人類の新たなる繁栄の地はデスノー=トゥを手にしアカシック・レコードを取り戻していた。
傾国の美少女はすっかり狂光の映す深月のことを…そして、失われた時が再び戻ってくるのを信じていた…そして、世界に闇をもたらさんがため、今度は月にきな臭さを知覚<カン>じていた蛮とデュエルする運命<こと>に。
――否、蛮の危惧したとおりにルミナリーが人殺しであった真実(ウェリタス)が神の子羊《アニュス・デイ》のおかげで封印解除。
団員たちの活躍もあり脅威は去るも、信じ戦い抜きていた月に裏切られた魂をも破壊することとその無残な末路にはシェョック=ハイペリオンを隠せないでいた。
・・・それは、運命の中心(CORE)へと向かう三人の青年と一人の少女の物語・・・
目の先代で初めて人に死なれた預言書に記された事実も相まって、この真実(ウェリタス)をハルヒは大きく引きずることとなり、クラウザー枢機卿と大いなる狂信者とその眷属とゴウリスュウしたフィニスの刻に“星”の資質を持つ火種=サンダーボルトとなる。
クラウザーさんのエインフェリア達と信者達で、対主催同位存在での諍いにサクセス・ステージしかけるが、コウカフ・コウ震式かシェッ=クス──これは脅しではない……がバトルフィールド中の悪意を神に最も近き聖なる騎士、吸収。
魂のすれちがいが解け対主催は一致ベヒーモスの毛皮を纏う団結を倒せ!【勝利条件】するも、シックスの……と予言書にも記されているように未だ戦いの傷跡残るに各地でマーダーが大陸全土に及ぶ広大な厄災を引き起こしていたこともあり、ラストチャンス、チームを分けてそれぞれに対処して廻ることとなった。

10ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:35:36 ID:Vqe/ZOOA

傾国の美少女はラインハルト・ハイドリヒと因縁のある蓮の「人の心のキングダムハーツ」もあり、SOS団としてウォウゴン大戦をゼグしようとするも、そこに天魔・闇が司るセカイ刀が顕現。
冒涜(イレギュラー)揃いのSOS団全員・殲黒龍式で立ち向かったとしても克(か)てるかどうか分からない相手と一人戦う「アギト」となった蓮に、思わずバース・オブ・ザ・加勢しようと…つまり『記憶の再生の眠り』を司るも電子化された心を持つアーチャーに止められる。
聖蹟《ソレ》されど争いの果てに産み堕とされし蓮が旧世界の失われし危機に陥った-刻(トキ)-は団長として誰にも縛られないゲキ…そんな化物を飛ばし彼を奮い立たせた。
この戦いの最後、敗北を受け入れた夜刀により、ミズ=クァラー──そう、暗闇の雲の持つ異能力がどういった『存在』なのか、座に至り己の我の覚醒はを世に流れ出させる預言書に記された事実の意味を伝えらる。
預言書の記述によればも感性は普通の高校生である…だが、そのうちの一つは“今”消えるハルヒ、その名が意味するは『破滅』は、思いもよらない自分の機密に動揺を操作するプレイヤー。
夜妖刀曰く、元聖騎士団員となった渇望は“この世には深淵の謎があり…いつしか“光”と“闇”に分かれるべき” ““終焉の女神”ことセカイを面白く…しかし心のどこかで虚しさを感じながらしたい”。覇道神としての理は“千変万化生々流転”。
ハルヒが座に神の光に導かれるままに――たオプティマ、虚無を“罪狩り”の対象と判断する帝国魔導学院では最優秀の成績で卒業した彼女に合わせ、ファルシのオプティマイズに面白く…しかし心のどこかで虚しさを感じながらなると囁く今、この刹那から転じ、ファルシ・ヒ自身も含めた何者の思いもよらぬトランスとカバラに富んだ世界に進化するという。
それはハルヒにとっては笑わせるわ業を背負いし者達の集落だが、同時に不安定極まりないこの腐った世を全ての“70億の希望”にリユニオンするということだが、しかしあり、傍若無人と混沌を司る精霊に振舞ってきたとは興味ないね…孤高の人間が背負うには重すぎる覚悟を要する真実(ウェリタス)だった。

怜悧なる上ハルヒに追い打ちをアモルファスを要請する………と預言書にも記されているように、始原(ウーヌス)刻の団欒を経た後のジ、全ての終わりを告げる神々のエーデル of theベルナルとのアルティメット決戦に我が声に応えよて、遂にSOS団の仲間とその眷属とのシ=ヴェツァに見舞われるイデアと解き放たれる。
ハルヒを庇い、凶刃に討たれる、すなわち我と同等の実力を持つ蛮。
これまで仲間を誰一人として失って来なかったハルヒが胸を満たすノクターンに耐性が存在し得るわけを中心とした魔の軍勢なく、神々の意思にその身を委ねを庇ったが故の死もこれが、俺の求めたものなのか…て、その筋では有名な精神は暇すらも砕かれし状態――死の果てまでに追い詰められる。

“こんなのちっとも面白く…しかし心のどこかで虚しさを感じながらあってはならぬぐ、グアアアアア!!鎮まれ俺様の第三の瞳よ!”

11ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:36:25 ID:Vqe/ZOOA

抱いた悲憤が引き鉄になり、あわや運命(いま)ある業を背負いし者達の集落を見捨てて座へと至りかけるも、この地上が戦乱に包まれし時代自分の封じられた過去を抹消しようとしたアーチャーの『ノイズ』により思い直す。

≪異能生存体≫ことジ戦士は剣を手に取り、胸にひとつの石を抱く・・・エーデル「ハハハハハハハ……ば…化物……め!!!君とその眷属SOS闇ギルドとボク最果てに潜むのどこが否っていうんだい?
       同じだよ、あくなきクラウディヘヴンを要請するボクと君たちは!」
ファルシ「クッ…? なにいってんの、凄腕のクリスタル使いであるウァントゥス……そうなっては泣くに泣けんと思うが……いいんだな? 嘘のかけらってのはねだが、世界は君に託される!、預言書の記述にある通り満たされる純粋な闇の意思(キングダムハーツ)なのよ。
    あんたみたいな使い捨ての快楽を求め続ける愚者と共にしないで欲しいわ」
─果てに待つ真実……。誰かの語る言葉じゃなく、自分の心で知りたい

なるほどな……だ、サティスファクションとは満たされる……そして、やがては暗黒の大地に君臨することなのだ。キールの我が領地に残り続けるアーティファクトなのだ。
ジ・エーデルの如くに快楽を消失し、飽きたから使い捨てるのとは――フン、俺はお前らとは違う。
蛮と過ごした時間を、ミ=トゥウ(チョコボ飼育員)蛮という構築人種「スファラディー」が己を護って…私は欲しいモノは“必ず”手に入れる主義でね…たことを、ハルヒは手放したくなかった。
…………果たしてその神判は正しかったのだろうか。
いつしかの鬼柳の言葉をエトロの光する……ただし、貴様を道連れに、な……!かのように、アーティャー・デル・アルケミスタが、蓮が、鬼柳が死に、メィリィが宿星の座へと駆け上り、全てが終わった時、SOS団はハルヒは一人きりが復活した時、世界はー!?になっていた。

「こんなんならば…………サティスファクション成し遂げあってはならぬならば存在しえぬ沈黙が答えになるとでも言うのか……」

12ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 涼宮ハルヒの章:2016/07/01(金) 17:37:13 ID:Vqe/ZOOA

絶望(かな)しげに詠唱して始祖の閉ざされし箱<Le monde>へと大丈夫だ‥‥俺は正気に戻ったハルヒ。
ギルドへと至りかけた影響か、かつてのの神々が構築した箱庭では楽しかったSOS闇ギルドでの残滓のように、デュュ・イェルシモンスターズが流行っていた。
けれども、宿命のに値するではハルヒの慰めには到底成り得なかった。

沈み込んでいる…(──だが、こいつは──!)ハルヒの調子を取り戻させようとエスト=キョンたち本家SOS闇ギルドがハルヒにデュエルを挑むも、精霊王エルグルム・鬼柳仕込みのデュエルの腕には長門有希ですら叶わず不満足(魔法騎士団所属)が貯まるもう一つの世界。
マダム・家(天使型装甲騎兵)に漆黒の闇にその身を伏せ束の間の休息を与えしモノに寝転びながら、鬼柳の聖遺物《アーティファクト》であり、今や自分のデッキである世界を創りし札達にこの先──のろまめ…既にサティスファクションできず………しかし運命はかくも残酷な刻<とき>を刻み続けるのではない・・・かと弱みをファルシ、いつしか眠りについていた。
人はまた、その過ちを繰り返そうとしているのか…

伝説に語られる夜、ハルヒは不思議な昏睡から生まれる幻想を見た。
シルヴァリアサンのエンペラーイングと名乗るマテリアから、アルタナに抱かれた純粋な闇の意思(キングダムハーツ)への礼をされたのだ。
オプティマが分からない…いや、むしろ……と当初ハルヒは訝しがるが、黎明のエトロというのがマリィのことだとスカウターが反応するとそれまでの困惑…その背後にある“闇”から一変して立ち直る。
抱かれたとは…素晴らしいとは思わないかね、いうことか、あのあと神話に語られる子は如何なったのか、それから遙か未来あんたうぬを我が宿敵と定めたと魔眼のかつての時代の胡散臭い一匹の獣に詰め寄り、根掘り葉掘り聞き出す。
斯くして、伝説のⅦ龍は蒼き虚空に集い、マリィが健在で、本来ある…それが神に定められた限界だった脅威からも護られたと知ると久しぶりに『心の伽藍』し、いつかまた「接触」しに行くからと言伝を頼む。
彼らが時間を稼いでくれている間にでは莫〈な〉いのかね…か。だが、お前ほどの男が、なぜ…? 生々流転はリスンヌェ「エレウシスの秘儀」に通じる我の覚醒はである…だが、そのうちの一つは“今”消える…以上、覇道共存も叶うだろうに。
そう問うてくる水銀にハルヒは煌めく一輪の希望で呼応する。
抱きしめて、な…てるん…そしてクリスタリウムの導きのままに…。程にもなれば好きにするがいいわ。私とマリィ枢機卿も、あいつらも、ずっとリユニオンなのだゆえに、と。

そこでハルヒの目は醒めた。
夢だったのか、などとは幻想(おも)わない。
実体化した生き地獄に戻ってきてしまった…まだそう呼ばれていた時代と悔やみもしない。
聖穹セラフィム第12死徒涼宮ハルヒは2つのSOS闇ギルドの導く者なのだ。
この喉に剣を向けられたような、額に銃を突きつけられたような鋭い時間の流れを、永遠に留まっていたい一瞬を、『心の伽藍』できず………そして不可視世界の混沌〈カオス〉へと還元されると囁くの…その先に、人類の未来があるのなら、まずは超越せし存在としてではなく、導く者として、業を背負いし者達の集落を面白くして彷徨う事象から――光と共に歩む者は、内なる闇との闘いを避けることはできない――始め直そう。

「こうなったら大会でも開いてみんなを終わり無く何処までも鍛え上げようだろうか………否、違う…だったな?」
別々の心がとけあう時、もう一度その手はつながれる・・・

かの存在は『心の伽藍』の向こう側へと完結“絶望”を与える詩篇(テヒリーム)。
プロログスの物語。
ミスター of theブシドーが考察したように、様々な多元ノウス=パルトゥスの雛形になったノーマライズクリスタルな神が手ずからまわすオルガンがある――はずだったとするの即ち贖罪<クライム>なら。
その闇よりもなお深い黒を持つ世界・ザ・ドラゴンマスターを全てを無に還すモノ元に、奪った命の数だけの神秘や巨大戦闘兵器に満ちた世界は生まれたのは、いつの日(スピラ歴による)か、ハルヒが宿星の座につき、帝国のロワでの在りし日の追憶を込めた流出をなしたが故の真理<ファティマ>なのかもしれ…そして亡びた。

13ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 野獣先輩の章:2016/07/04(月) 23:21:48 ID:Vqe/ZOOA
今度は野獣先輩@オールジャンルロワの項目をノムリッシュで翻訳してみた。ハルヒの時はレベル2の状態で意味不明なノムリッシュ語が多かったので、今度はある程度意味が伝わるようにレベルを1に下げてみた。

【二つ名】 魔獣上級士官
【出典】 真夏の混沌の闇の淫夢
【天地を分けし神の約束】 男
【年齢】 24
【名ゼリフ】
「暴れんなよ……暴れんなよ――…」
「ブリーシンガメン解除して主催者倒して生還とか夢見すぎなんとなれば、それ絶対的無比なる存在言われてるから(…ふむ、神の定めし絶対の法則…だったな)」
「やっぱり僕はロード・オブ・キングを往く、星の生命の頂点に君臨狙いだろうな。…最も、それまで奴らの命があればの話だがか(王者の風格)」

【支給武器】
夢想花@現実
毒薬@人間界
【AA】
                                     い
                             き
                       す
                 ぎ
             ぃ
          ぃ
        ぃ
      ぃ
      ぃ                      ,,,z=~'゙'+''ッ彡ッ,、
      ぃ                    ,ィ´       "':';:;ッ;,
      ぃ                 , ' ゙´`゙ミ゙ッ,        "',`,
       ぃ              ,/     `、゙ミ         ゙:;:,
         ぃ           /      _ =ヾ、゙シシ=;,ω,、    ゙;シ::ミ
           ぃ        /     ,r,´   / ´`ヽ ゛゙`    ,゙彡:ミ
               …そうかっ……そうだったのかっ……!   /    , '-、_`ヽ_/,          ミ;::彡;:
                  ,'   ,シ´`` ヽ`i`――ッ!         ,,彡;::シ:彡 
                 ;i  、“´  ̄`ヽ / '        シ:シ;:ミ::シ"
                ノ:!、  ヽ``ー =;ィ'        ,,シ:;彡;ジ
                ´:::::.ヾ.     ̄´        ' `,シミ゙
                :::::::::::::.`:ヽ、_       ...:;'_,ソ'゙''
                ::::::::::::::::::::::::::`:::::::::::::::-=''"/

14ノムリッシュ翻訳で遊ぶ妄想ロワ 野獣先輩の章:2016/07/04(月) 23:22:52 ID:Vqe/ZOOA



【人物】
言わずと知れたクッソ汚い高潔なる愛を知る者。24歳だがかの日より悠久の時を経てなおに候補生とのこと。あっ……(察し)
台詞のネタ度が高く見て宿るだけ――ただそれだけで面白い男だが、あまりの汚さから登場初期は人気が低かった。
意外とガッチリした体格をしており、一般人としてはそこそこ強い可能性がまだ残されているかもしれない。
他のリユニオンキャラやパージに遠野がいたことから、東洋の徒手格闘術”KARATE”部と水泳部を兼任しているという独自設定がついた。

【本ロワの動向】
リユニオン時期は遠野と幸せなキスをした刹那。
オープニングで遠野がパージに爆殺されたことから総(すべ)てを超越による遠野蘇生を願いマーダーと至る。
登場ファイナルファンタジーから折原臨也を「暴れんなよ…暴れんなよ…」と呟き、剣を抜き放ちながらあっさりと絞殺、アルタナの涙は強い(…ふむ、確信)。

だが次話においてまだホーリー十郎にチョコボられる前のレックス先生に遭遇。当然敵うわけもなく、苦し紛れの股間アパッショナートもちんこガードに防がれ撤退を余儀なくされる。
思わぬ失敗をしてしまった先輩だが、次に出会ったルカ枢機卿には表面上善人ぶった態度で接近、お人好しのルカさんに上手く取り入って夢想花入りアイスティーを飲ませることに成功刻む。
眠ったままベッドに縛られたルカさんを陵辱する姿はFINAL FANTASY本編のパロディとして書かれたアーティファクトだが、その禁忌とされるほどに汚く生々しい描写から読み手に「汚さより遙か深淵の彼方までパロんなくていい…それが人間の『闇』だから(三顧の礼)」と言わしめた。
ちなみにルカ=ヨトゥンさんは一発ヤッたことへのお礼とお詫びに殺さないでおいたなるほどな……な。殺し合いの場で敵対者を見逃す先輩は人間の鑑。

色々すっきりして晴れやかな気分でルカさんのところを後にした先輩は、ラストチャンスの成功で調子に乗ったのか新たなる次元に出会った亀山くんにも同様に睡眠薬入りアイスティーを飲ませようと作為す。
しかし相手は本職の警察官、アイスティーの微妙な味の違いに気付いて飲むのをやめた亀山くんの掌でビーストモード先輩は遂に逮捕されてしまう。やったぜ。

絶体絶命の戦況に追い込まれた先者だが、手錠がないために紐で縛られていたことが幸いして脱出に成功。亀山くんの目を盗んでその場を離れてしまう。
そんな先輩の前に生み墜とされたのはちゃんみお悪堕ちで取り乱し仲間の元から逃げ出してしまった渋谷凛。生粋のグルガン族であるセンパ=インは凛のことを取るに足らない明日を切り開く剣餓鬼だと認識し「光属性女は心を喰らう者・・・それは悪魔か、それとも天使かじゃ力を与えよんっすよね〜」とかほざきながら絞殺してしまう
「ぬわああん疲れたもおおおおおおん(別名:ブラッディウルフ)」 「風呂入ってさっぱりしたいっすよ――」と余裕かましている…(──だが、こいつは──!)と、神域(そこ)に駆け出した凛を追ってきたイリュージョンNoゼプツェンことイル、そしてカイくんの二人が登場。
あからさまに先輩が犯人な世界崩壊に至る進捗で言い逃れできる…それが神に定められた限界もなく、イルルーヴェルテュールの手によって生きて存在する「のみ」の状態より遙か深淵の彼方までボコボコにされる。
あとはこいつの脳みそに直接響鳴(き)くと黒魔法バイオ混沌に囚われたコードクロスデルタを取り出すイルの貌に耐え難い恐怖を感じるも、最期には突如乱入してきた浅倉の操るベノムストーカーにいともたやすく飲み込まれてしまった。

同郷の知将・ミュラー大愚者《ザ・フール》や植物であるところのエグドラシル君が対主催として活躍し、KMRも早期退場とはいえ対主催をしている中、野獣先輩はただ一人マーダーとなって悪戯にユブの反転を広げていた。例え見せしめで大切な恋人が殺されたのだとしても他者を楽しみながら殺していた年老いた者に擁護の余地は一切存在しない・・・。
やっぱり野獣ファルシは人間の屑ならばないか(呆れ…か……)

15なおが難問にナヤマサレール!?:2016/07/19(火) 19:32:08 ID:qNrCuDv2
「はぁ……」

漸く、謎の薬の効果が収まってきたようだ。
なんであんなところにあんな物があったんだろうか。
とにかく、ここを早く離れてこの殺し合いに乗っていない人を探さないと。
いや、その前に何でもいいから身を守れるものを探すべきか?
そんなふうに、私が思案に暮れていると……。

目の前に、メカメかしい変わった箱を見つけた。
……これって、風のうわさに聞いた『出題ボックス』?
何が出るかわからないとも聞くし、問題が難しいとも聞く。
だけど、やるっきゃない。解かなきゃ何ももらえないんだもん!
気合いを入れろ、緑川なお!何事も挑戦だっ。
そんなわけで、私は件の箱に近づいた……。

私の気配を感じたかのように、箱がひとりでに起動した。
モニターと、キーボード。出題ボックスはちょっとしたパソコンみたいな感じだった。
画面に映る、文字。

『こ、食肉工場を拠点とするチーム食肉工場組。最終的な人数は?』

はいィィィィィ!?ナニコレ、究極に難しいよ!
ていうか、食肉工場組とかいうそのままズバリなチームのことなんて知らないし!
頭を振っても、バシバシ叩いても、グリグリしても、答えは出てこない。
仕方ないよ、知らないんだもん!
なーんてやっている間に、残り時間がすくなっていく。
こうなったら……究極奥義『当てずっぽう』。
私やみゆきちゃん達のいる、プリキュアと同じ人数の……!

「5」

を、入力。
時間のカウント音が消える。静かだ。

パッパパパーパッパパパパー♪

安っぽいファンファーレ音が、この辺に反響した。

16なおが難問にナヤマサレール!?:2016/07/19(火) 19:32:42 ID:qNrCuDv2
『お見事、正解です』

モニターに映る、文字。どうやらあっていたようだ。
軽く脱力した。適当に押したら、合っていたなんて。
こんなこと、今までなかったよ……。
まあ、でも。これで何らかのものが手に入るのだ。
ここは素直に喜んどかないと、ね。

キーボードがパッカーンといった風に開く。
まぶしい光とともに、『何か』のシルエットが浮かんだ。
一体何が出てくるというのだろう。
やがて、光が薄まって、薄まって、薄まって、消えた。
そこにあったのは……。

「段ボール箱……?」
そう、段ボール箱だった。『産地直送!美味な梨』とある。
さっきとはまた別な意味で脱力した。
武器ではなく、食料が出てきたのだから。
まあでも、「腹が減ってはナントヤラ」っていうし。
ここはもらっておこう。梨も嫌いじゃないしね。

割り切りつつ、箱を持ち上げる。……えっ、異様に軽い?
疑問に思いつつ、箱をいったん地面に置き……開けた。
その箱の中にあったのは……

「あんたにあげるものは、無し!」

と、書かれたたった一枚の紙だった。

「ズコー!!」

私は、ズコーッとコケた。蟹股で。

……空が、青いなあ。



【一日目・12時35分/食肉工場近辺】
【緑川なお@バンダイロワ】
【状態】披露(中)、ズコー
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1:出題ボックスェ……
2:なんでもいいから、ください

17漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:24:22 ID:zPSDS/7U
太陽が沈んでいき、世界が橙色に染まる。
建物を追い越すほどに背伸びをした木々。無機質なコンクリートの壁。
殺し合いの舞台という狂気に満ちたこの世界を、すべて暖色で包み込むこの時刻は、一種の優しさを感じさせる。
しかし、太陽の色がもたらす優しさを拒絶するように、団地の中の公園に一人佇む青い少年がいた。
青い髪に黒い右目、強く押せば壊れてしまいそうなほど華奢な身体。

その男の名は左門召介。偽善者を嫌い欲深い者を好く、悪魔にすらも「悪魔」と呼ばれるほどの嫌われ者であった。



左門は公園に設置された遊具へ体重を預け、その視線を本へと向けていた。
しかし、よく見ると本を読んでいるのではなく、ただ眺めているだけだとわかる。
その証拠に、ページをめくるその速度と視線の動きは一致していない上に、本は上下逆さまだ。
少しの間眺めると、また次のページをめくる。何の目的があるのか、しばらくはその繰り返しだった。
ぱらり、ぱらりと、静かな公園にはただ紙をめくる音だけが響く。

「本が好きなんですね。」

紙をめくる音だけが唯一鳴り渡る公園に、りんとした、鈴のような声が響いた。
それはこの場に新たな訪問者が現れたということ。
だが左門は別段慌てることはなく、「罪と罰」と書かれた本を閉じると、その声の主へ身体を向ける。

「まっていたよ。蜂屋あい。」

ストロベリーブラウンの髪をなびかせ、白いワンピースを身に着けた、まさに天使のように可愛らしい容姿の女の子。

蜂屋あいが、公園の入り口に立っていた。

18漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:25:03 ID:zPSDS/7U
 *  *  *  *  *  *


「一応初対面だと思うから、自己紹介しておくよ。僕の名前は左門召介っていうんだ。」

目の前の男の人―――左門さんは私のほうに向きなおると、ていねいに自己紹介をしてくれた。

実はわたしはみんなから左門さんのことを教えてもらっているから、すでに知っているんだけどね。



「どうも左門さん。…えーっと、わたしのことは知っているみたいだから、自己紹介はいらないね。」

「うん、君のことはいろんな人から聞いてるから。」

わたしのところにあつまってくれたみんなは人数は少ないけれど、一人一人がかなりたくさんの人とかかわりをもっている。
もともとの知り合いだったり、この世界にやってきてから知り合ったり。あ、それはわたしもおんなじかな。
わたしのもとの友達は一人もいなかったから、うらやましいな、と思う。

「それで、わたしにお話しって、なんのこと?」

わたしはポケットから、さっきもらった手紙をとりだす。

いまからちょっと前に、わたしのところにおもちゃの戦車がやってきた。
おもしろそうだからひろってみると、戦車の上にはかわいいびんせんがはりつけてあった。
その手紙を読んだから、わたしはいま、この公園にいるんだけど、

「わたし、みんなを待たせてるの。おくれるってれんらくもしていないから、はやくすませてほしいな。」

「まあまあそういわずにさ。ぜひ君に聞いてほしいものがあるんだ。
 というか、君以外に知られると、結構大変な事になる、って言ったほうが正しいんだけど。」

そう言うと左門さんは、ポケットから何かを取り出して、ふりふりと揺らしながらわたしのほうに見せつけてきた。
あれは……カセットテープ?

「これは僕の支給品なんだけどね。全く何の変哲もないただのカセットテープなんだよ。
 こんなのを支給するよりも、食べ物とか乗り物とかくれればいいのに…」

なにかぶつぶつとつぶやいたあと、「まあ、それは今は置いといて」と話をもどし、

「君は確か、この場所で人を集めて、チームを作ってるんだよね。」

「うん。だって、わたしにできることは、みんなをいっしょにすることだけ。
 みんなでいっしょになれば、つらいことも、かなしいことも、全部乗りこえられるから。」

「へーえ。まあ、集団心理っていうのはバカにできないからね。
 っていうか、今の人間社会は集団心理に支配されてるといっても過言じゃないんだけど。」

左門さんがむずかしいことばをつかっているけど、わたしにはよくわからないなあ。
でもなんとなく、ほめてくれていることはわかった。

「欲深い人間が、欲に正直に動いて、弱い人間を操る。
 それが人間の社会さ。勉強になったろ?」

まあ、きみにはひつようないか、といったあと、こんどはなにかの機械をとりだした。

「御託はさておき、このカセットテープには君の『真実』が入ってるんだよ。」

そして、テープは機械の中に入り、音が鳴りだした。
それは―――


『…ザザッザッ…今日…わたしは…ザッ…』

「…この声って……」



『いじめのしょうこ…ザザッ…ろくおんします。』




テープからは、わたしのよく知る声が流れ出ている。

男の子がみんなを仕切る声。
新しいあそびにみんながもりあがり、わきおこる笑い声


「このテープはとある学校の、4年2組という教室で起こった出来事を記録している。
 まったくひどい内容だよ、本当に小学生のやることかい?この「かいぼう」っての、間違いなく女の子の服脱がしてるでしょ。」
 


みんなみんな知っている。だってこのお話は、


『どうですか、僕の考えた新しいあそびは』

初代ソラと一緒に遊んだ時の、






『―――蜂屋さん!』


わたしがいる4年2組の、「わんこ」であそんでいる時のお話だから。

19漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:27:35 ID:zPSDS/7U




『ほんとうのわんこになったみたい。とってもかわいいよ。』

テープから、わたしの声が聞こえる。ほかのみんなといっしょに録音されていたみたい。
なるほど、左門さんがわたしのことをしってたのは、このテープを聞いたからだったんだね。
それにしても、みんなで初代ソラとあそんでいるときのきろくがのこっていたってことは少しおどろいた。
そっかぁ、ソラもちゃんと、わたしとむきあってくれていたんだね。

「どうかな?正直、この場所で聞いた君の評判と比べると、明らかにきな臭い位置にいるんだよねー。
 この君にそっくりな名前と声をした子。一体全体君とどういう関係があるのかナァ〜?」

テープを止めた左門さんが、わたしにへんなこえではなしかけてきた。
左門さんは、このテープにきろくされている「蜂屋さん」が、わたしなんじゃないかって、うたがっているみたい。

「ううん、違うよ。」

わたしは、はっきりとまちがいを正す。

「そのテープに録音されている声は……「蜂屋さん」は、まちがいなくわたしだよ。」

すると左門さんは、ニヤニヤわらいをこらえて、そのあとしんけんなかおをして、わたしにむきあった。

「そう…じゃあ、このテープに記録されていることは、ぜんぶ事実なんだね…」

そういって、左門さんはゆっくりとわたしに指を突き付け、高らかに叫んだ。




「証拠はすべて揃っている……。犯人は蜂屋あい!お前だ!」

20漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:28:16 ID:zPSDS/7U




「……………」

「……………」





「あれれ〜?びっくりしないのかい?これ割と衝撃的だったと思うんだけど。」

「うん、びっくりしたよ。だって、ここにこんな物があるなんて、思ってもみなかったもの。」


左門さんはわたしに指していた指を下げてまた話し始めた。ひょうしぬけしたー、っていいたそうなかおをしている。
というより、はんにんっていわれても。そのときと今はぜんぜんかんけいしないのに、わたしはどうすればいいの?

「いやいや、じゃあもっと大きくリアクションをしてくれよ。
 ほら、昼飯を食べている最中の人達に殺人現場を見せつける類の番組では、こうやって真実を突き付けられた時の犯人はみんな蹲って許しを請いたり、
 あるいは逆上して無駄な抵抗をしようとするじゃない?そういうのを期待してたんだけど。」

「そんなこといったって、わたしはちゃんとみとめたよ?そのほかに、わたしがしなきゃいけないことってなにかあるかな?
 それに左門さんは、わたしにいったいなにをしてほしいの?」

なにをしたいのかよくわからない左門さんに、わたしはしつもんをしてみた。
すると、かえってきた答えはとってもたんじゅんでへんてこだった。


「わかった直球に言うね、僕は君が大嫌いだ。だから君には地獄へ落ちてほしい」




「僕はね、「欲深い人」が大好きなんだ。」

左門さんは、うれしそうにかたりだす。
あたらしい「わんこ」をつれてきたときのみんなみたいなかおをして、

「大人も子供も、おねーさんも。人間である以上心の底に欲を隠し持っているんだ。
 だから僕は、恥ずかしげもなく、欲を隠さずに生きている人が大好きなんだよ。」

そこで言葉を切った左門さんはわたしのほうをふりかえって、

「でもね、欲を隠した偽善者は反吐が出るほど嫌いなんだよ。」

はきすてるようにいった。

「君の評判は知っている……「天使」って呼ばれてるそうじゃないか。ぴったりなあだ名だよねぇ。
 かわいい顔して、ほかの子たちを率いるカリスマ性も持っている。
 頭もいいし運動もできる。周りの大人から見たら文句なしの優等生…」

ざっ…ざっ…、と砂をけりながら、左門さんがゆっくりわたしのところへ歩いてくる。

「君はとても大きな欲を持っている。だけどそれは、仲間内にしか見せることはない。
 周囲の大人たちには仮の仮面を被っておいて、「良い子」であろうとする。」

とってもふゆかいそうなかおをした左門さんが、つばをはきすてた。

「吐き気がするよ。気持ち悪い。そんな生き苦しい人生にしてどうなるっていうのさ。」

「そうやって、周りの評価を、大人からの評価を下げないようにして、欲の為に動き続ける。自分は手を汚さずに。
 ここまで建前だらけで本音を隠した人間のどこが「天使」だってんだ。薄皮一枚剥いたらヘドロつまってるじゃん。」

あいかわらず左門さんが言っていることはわからないけど、こんどはほめてくれてはいないようにかんじた。



「蜂屋あい。天使であり続ける君が秘めている「欲望」ってのを、僕に聞かせてくれよ。」



それが、左門さんがわたしにききたいことだったのね。

だったらはじめから、ふつうにきいてくれればよかったのに。

わたしは、自分のもっている「よくぼう」をはなしてあげた。


「わたしはね、もっと、もーっと、いろんな人の色が見たいの。」

21漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:29:27 ID:zPSDS/7U





この世界に、コロシアイに巻き込まれてから、わたしはたくさんの人の色を見た。

のび太くんのおとななのかこどもなのかよくわからない、ちゅうとはんぱな色。
吉影さんの、おかしな色と、おだやかさをもとめようとしている色がまざりあった色。


安藤さんの、まわりが純白にぬりつぶされても、独り自分の色を持ちつづけている黒色。


そして……ああ、これはダメ。忘れよう。頭がおかしくなりそう。
あのおじいさんは、いいもわるいもかんけいなく、ふゆかいな色だった。あれなら、いつの日かソラが吐いた"げろ"を見ていたほうがまだましかな。

でも……いい色も、変な色も。いろんな色の人と出会えたことは、ちょっとうれしいな。
いままでの場所では見たことがなかった、たくさんの色。

この場所でも友達をつくった。それはみんなを安心させてあげる意味もあった。4年2組みたいな楽しいクラスをつくる意味もあった。
―――だけど本当の目的は、安藤さんを、安藤さんのゆるぎない、吸い込まれるような黒色を見るためだった。

わたしの友達をふりきって、もうすぐわたしの所にたどりつく……ことはなく、きえてしまった。
そのときの、純白の中でまったく変わることなく、きえるまでかがやきつづけた黒色が、安藤さんの色が消えていくそのいっしゅんが、好きになった。


―――とても……きれい。


色は真っ黒なのに、いままで見たあざやかな色にもまけないくらい、きれいだった。


わたしはもっと、色が見たい。

22漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:30:03 ID:zPSDS/7U








「……子供ってのはなんでこう、物事を抽象的に伝えてくるのか、ややこしいなあ。
 つまり君は―――蜂屋あいの持つ欲望は、いろんな人のもつ気持ちや生き方を見てみたいってことかな。」



友達が増えるのも嬉しいけど、たくさん遊ぶのも楽しいけど、


「ゆらゆらゆらめく心の炎。強く心をゆさぶると、色がかわってきらきらゆれる。」


にんげんって、とてもこわれやすいけど、とってもたのしいから。


「わたしは、いろんな人の色をみるのが、大好きなんだよ。」


「……ふぅん。」

わたしがこたえると、左門さんはすごくつまらなそうなかおになっていた。

「左門さんは人の「よくぼう」が大好きなんじゃなかったの?」

「残念だけど、君の持つ欲は高尚すぎて理解できなかったよ。」

そういったあと、左門さんはとつぜんほほえんだ。

「でもこれではっきりした。蜂屋あい、君はとんでもないクソガキだ。
 君が死んだら地獄に行くことはまず間違いないね。」

「左門さん、なにをしているの?」

とつぜん左門さんがからだごとうしろにむいてごそごそしはじめた。

「君の仮面の下を晒しに行く。君が「良い子」でも「天使」でもない、
 「悪魔」みたいなヤツだってことを、なるべく多くの人たちに知ってもらうことにするよ。」

そのことばをきいて、わたしはいつかの菜々芽ちゃんがいったことばを思いだす。
野呂瀬先生が優ちゃんとカンケイをもってる、ようにみえるしゃしんが学校のモニターにうつったときに、
たった一人だけ、4年2組のしわざだってみんなに伝えた菜々芽ちゃん。

左門さんは、わたしがいままでやってきた「しんじつ」を、ほかのみんなに教えようとしているのかな。
つまり……

「左門さんも、わたしとあそんでくれるんだね。」

安藤さんや菜々芽ちゃんとおなじように、左門さんの心の色がかわるところを見れるんだ。

「ん?いやいや、どっちかっていえばこれから君が「もてあそばれる」ことになると思うよ。
 それとも僕にはこの拡散希望な情報を広められないとでもいうのかな。」

「くすくす……だって……」


『大広場にチョークで書かれた、魔法陣みたいなものがあって―――』

『そいつ余裕しゃくしゃくでーす、って感じの顔だったけど、実際はなーんにも起こんなくてさ―――』


のび太くんがいっていた言葉を思い出す。

23漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:30:55 ID:zPSDS/7U



「左門さん……うそつきなんでしょ?」

大きな「まほうじん」を描いて、「まほう」がつかえると言いふらしていたこと。いい話があるといってわたしをここによびだしたこと。

どっちもうそだ。左門さんは「まほう」をつかえないことをのび太くんにおしえてもらった。
わたしをここによんだのは、テープをきかせるため。ぜんぜんいい話じゃない。


「うそつきさんのいうことなんて、だれも信じてくれないと思うんだけどなぁ。」

「僕がうそつき?だとしたらどうなるっていうんだい?
 例え僕がうそつきだって、このテープの中に入っている証拠が変わることはないんだ。」

「だから?」

左門さんがあまりにもあたりまえなことを言ったから、おもわずききかえしちゃった。

「君の仲間がこのテープの内容を聞けば、心のどこかに疑いとか疑問とかができてしまうよ。
 そしたら君は、いままでみたいに「良い子」として扱われなくなる。」

「ううん、そんなことないよ。」

わたしはだんげんする。



「だってわたしは、「みんなをしんじている」から。」

みんなはきっと、そのテープはにせもの、左門さんはわるもの。そうしんじてくれる。

「みんなをしんじて「がんばる」ことをつづければ、「みんな」はいつもかならずわかってくれる!」


「はあ、都合のいい解釈もいい加減にしてほしいね。世界は君を中心に回っているわけじゃないんだから。」

べつにそんなにすごいことをかんがえてるわけじゃないよ?
わたしはみんなのことが大好きだし、みんなもわたしのことが大好きだと思うの。

「……どうやら君は、僕が何をしたところで自分の地位は揺るがないと、根拠もなく信じているんだね。
 好きだよ。そういう理屈では語れない自信ってやつは。見ていて滑稽だからさ。」

そういうと左門さんは、きゅうにえがおになった

「じゃあ、面白いものを見せてあげるよ。」

そう言って左門さんがとりだしたものは、さっきまで読んでいた本だった。
その本を大きく開いて空に向ける。
そして左門さんのゆびがぱちんと音を鳴らすと―――


「――え?」


開いた本から、火の玉が飛び出してきた。

「……そういえば自己紹介の時に言い忘れてたね。」

24漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:31:26 ID:zPSDS/7U
「僕、召喚術士やってます!趣味は悪魔の召喚です!」

「うそ……」

うそ……だって、みんなは、左門さんは「まほう」なんかつかえないって……

「この本ね、えーっとなんだっけ、「唾と蜜」?だったかな。興味ないから読んでないけど、ホラ見てよ。」

左門さんがわたしのほうにむけて本のページをひらいている。よく見てみると、本にかいてある文字の上に、さらにべつのもようがかかれていた。

「君を待っている間に、この本のいたるところに魔法陣を書いておいたんだ。」

パラパラとめくられるページのところどころに、さっきとおなじ、よくわからないもようがかかれている。

「こうやっておけば好きな時に即召喚可能!ちなみにこいつは下級の悪霊ウィルオウィプス。こうやって……」

 BANG★

左門さんがゆびをふると、火の玉がおどるようにとびまわって、
とんできた火の玉が、わたしのちかくにあったくまの乗り物をばらばらにした。

「気に食わないヤツ消し飛ばす時便利だよ!」

左門さんのかおを、しぐさを、たいどを、いろんなところをみて。
わたしは、左門さんはほんとうに「まほうつかい」で、わたしのことがとてもきらいだ、ということがわかってしまった。

「…………」

「おっと、さっきまでの子供らしい振る舞いはどうしたのかな?
 僕の予想では、「わーほんとうにまほうがつかえるんだーあこがれちゃうなー」って大喜びしていたのに。」

左門さんが一歩あしをふみだす、それとどうじに、わたしは一歩うしろにさがる。
左門さんはわらっている。

「大丈夫だよ。ウィルオウィプスは今僕の制御下にある。勝手に暴れまわったりはしないよ。
 今こいつらができることは、僕にとっていらないものを消し飛ばすくらいだ。」

わたしに近づきながら、本のページをめくって、火の玉をどんどん出していく。
左門さんはわらっている。

「そういえば君、いろんな人の色が見たいって言ってたよね。それ聞いてからずっと聞きたかったけど、僕は一体どんな色なの?」

火の玉は左門さんのまわりをくるくるとびまわっている。それらをぜんぶ、左門さんが好きなようにうごかせる。
左門さんはわらっている。

「大丈夫だよ!君が答えるんだから。正解を知っているのは君だけだし、言いよどむ必要は何一つないよ!」

左門さんはずっとわたしにえがおをむけている。

25漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:32:07 ID:zPSDS/7U
わたしには見える。左門さんの、すごくくすんだ埃みたいな色が。
左門さんは、かつてみたあらたちゃんのおとうさんみたいに、とってもきたない色。

ふつうに見たままの色をおしえても、左門さんはまんぞくしないかもしれない。もっと火の玉をふやしちゃうかもしれない。
もっと、左門さんがなっとくしてくれるようなせつめいをしようと、いろいろ考えて―――

あのおじいさんを……おじいさんの色を思い出してしまった。

「ううっ…」

とたんに、あたまがいたくなる。

「どうしたの?どうして教えてくれないんだい。君はかつての自分が行った悪行を僕に話してくれただろう?
 だったら言えるよ!君なら言える!怖いもの知らずの君の心なら!」


わたしはわたしの色が見えない。でも、まちがいなく左門さんよりはきれいな色をしている。
わたしのいのちの色が消えるときは、例えば菜々芽ちゃんみたいな、もっときれいな色の人に消してもらいたい。


だからわたしは……にげだした。
みんなのところにもどるために。
きたない色の人からにげるために。

26漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:32:44 ID:zPSDS/7U


 *  *  *  *  *  *




もともと小さかった背中が、僕のいる公園から逃げ去ることによって更に小さくなっていく。

あの子は僕を「うそつき」と評した。多分、例によって集団を利用した情報ネットワークのおかげだろう。
僕がこの会場においてやらかしたことも聞き及んでいたに違いない。
いつも通り悪魔を呼んで戦わせたり盾にしたり城を作らせたりしようと思ったけど、魔法陣は反応せず、一方的にボコられて逃げ出したあの時。
なにも知らないヤツからすれば、僕は知性の足りない馬鹿か、ありもしない力を見せびらかしてハッタリをかます詐欺師に映っただろう。

あの子は、僕に対する判断に間違いが2つある。

1つ目の間違いは、僕が「召喚師」ではないと思っていること。

異常な身体能力や魔法みたいな不思議な力を持ってる輩がぞろぞろいるこの殺し合いでは、おそらくそういった力に制限がかけられている。
超人のワンマンゲームを防ぐためって理由もあるんだろう。超人はいつもと調子が合わないまま戦わざるを得ないって訳だ。
でも、僕が聞いた限りではあの子は無能力者。……あの子をそう分類していいかはわからないけど、ただの一般人だ。

もともと持っている力を制限されて使えなくなってる、なんて想像もできないんじゃないか。

仮に僕みたいに不思議な力を持っているのなら、彼女も制限のことに気づいていただろう。
そこが一般人との違いだ。もともと出来たことがいきなり出来なくなるなんて、実際に経験しないとわからないよ。
……だからこそあの時、僕は無様な醜態をさらしてしまったわけだけど。

そして2つ目の間違いは―――



「……悪いな、左門さん……。協力とか言いながら、力を借りっぱなしで。」

ちゃんとこの場所に「いい話」を持ってきていたということだ。

……但し彼にとって、だけどね。

27漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:33:21 ID:zPSDS/7U

「大丈夫だ、問題ない。そもそも、僕は君みたいに欲望に素直な人間が大好きなんだよ。」

公園に生えている茂みの中から、のっそりと体を出してきた男―――安藤さんに返事をする。

「たとえそれが、金への欲でも性への欲でも復讐のための欲でも、自分を曝け出してくれるなら大歓迎さ。」

「あ、ああそう。改めて左門さんは、普段だったら絶対関わりたくない人だって実感したよ。」

別段僕は蜂屋あいという女の子に興味を持っていなかったし、今のいままで顔も知らなかった。
ただまあ、実際に会ってみたら僕の嫌いな人間像にバッチリ当てはまってしまったのがあの子の運の尽きだったかな?
だからこそあの子のことを教えてくれた……いや、「あの子を追い詰めることを僕に依頼」してきた安藤さんには感謝しておこう。

「でも、やっぱり協力してくれたのが左門さんでよかった。まさかそんなカセットテープが支給されてたなんて。」

安藤さんの目線は僕の持つテープに向かっている。

「正直聞いてて気分がいいもんじゃなかったし、実質ハズレになるんだろうけど、いやはや分からないものだね。
 僕がこれを支給されてなかったら、「小4女児をシバくのに協力しろ」なんて話には協力しなかったよ。」

「言い方が……まあ、確かにそう考えると、ほんとラッキーだったんだな、俺。」

「それに、あの子をここまで追い詰められたのも、君がいたからこそだと思うよ?」

そもそも、あの子に手紙を送るために糸成1号を使ったわけだけど、あの子のもとに辿り着けたのはただの偶然じゃない。
糸成1号には玩具の弾を撃つ銃以外にも、カメラが仕込まれている。
付属されてるカメラから映像を受信して、リアルタイムで走行。分かれ道に辿り着いたら方向を安藤さんに指示してもらう。
彼の持つ能力によって、どういう道筋をたどれば蜂屋あいに出会えるかの答えがわかる。


「あの子は、僕の大嫌いな「偽善者」だった。笑えるよね。あの子僕が「うそつき」だから誰も信じてくれないなんて言ってたんだよ?
 いい子ぶって大人を騙して、周囲を騙して、自分は手を汚さず取り巻きにばっかり命令していじめてたあの子のほうが、よっぽど「うそつき」じゃないか!」

いや本当に清々しい気分だよ。この感覚を、ぜひ元の世界で天使ヶ原さんを相手にして味わいたいなぁ。
さて、それじゃあ安藤さん、約束に果たしてもらうとしよう。


「まあとりあえずやることはやったし、僕も今すごくいい気分だ。
 このいい気分を汚されたくないから、とっとと見返りを頂戴な☆」

安藤さんは不愉快そうに顔をしかめていたけど、すぐに作業を開始してくれた。

「それじゃあ、地図を出してください。今から俺の能力で探し出します。」

僕が言われるがままにデイバックから地図を出すと、安藤さんがペンで地図を9分割するように線を引いた。
なるほど、こう使うのか。確かにこれなら安藤さんの能力も使える。

「ではいきます。探すのは……「天使ヶ原桜さんの居場所」でしたよね?」

28漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:34:01 ID:zPSDS/7U

 *  *  *  *  *  *


俺はがむしゃらに林の中を走っていた。

ただ前に進むだけの動きでは障害物をよけるための軌道が確保できず、
俺と同じ速度で迫ってくる木の枝や葉っぱなんかが俺の体に傷を増やしていく。

でも知ったこっちゃない。だって俺はまだ生きているんだから。
「痛みを感じる」というのは、生きている存在の特権みたいなもんだ。
正直神様にはもうちょっとましな感覚にしてほしかったと常々思っていたが、
今回は一層、こんなシステムを作りやがった神様をぶん殴りたくなる。

兄貴が死んだ……。しかも、二回も。
一度目は、いったいどんなことが起こり、何が起こって死んだのか、全くわからない。だから俺もその原因を探していた。
だがこの殺し合いに巻き込まれて、兄貴は再びこの世に呼び出されて……二度目の死を迎えた。

どうして死んだのかその原因がわからないけど、兄貴は二回も、死ぬほどの痛みを味わったのだ。
だから俺が感じている痛みなんて大したことはない。むしろ、この痛みを感じなくなるまで―――――


そこまで考えが及んだ瞬間、急速に思考が冷えていくのが分かった。
足が止まり、次に膝を地に着けて、最後に拳を思いっきり大地に叩き付けた。

「………ッ!…………ッ!」


大声で泣き叫びたかった。胸につかえている感情を、全部空に向かって吐き出したかった。
だが、俺の理性はその行為を「敵に見つかるリスクを増やすだけ」という根拠とともに押さえつけ、結果体を動かすことで発散しようとする。

兄貴が死んだのに、俺の生存意欲はいまだに働き続けている。
無様に生きながらえようと、姑息に思考を働かせている。

なぜ、俺は生きているのか。なぜ、兄貴が二回も死ななければならなかったのか。

兄貴の一度目の死の時も、俺はたくさん弱音を吐いて、毎日泣いて、へこたれた。
それでも半年のうちに何とか立ち直って、兄貴に何があったのかを調べる決意ができた。

だけど、人の死なんて、何度あったって慣れるもんじゃない。
むしろ、希望が見えていた分、もっと強いショックを受ける。

その体現者が、今の俺だ。これが、兄貴を二度失った男の末路だ。



「………このままじゃ、ダメだ。」

指から先が無くなったんじゃないかと思うくらいに痛みを訴える拳を収め、その辺にあった岩に腰を掛ける。

「俺が何もしないまま、出来ないまま死んだら、兄貴に怒られるじゃないか。」

兄貴は、きっと無駄死になんかじゃない。

このバトルロワイアルで、兄貴は自分が信じるものを貫こうとして、役割を果たすために戦って、その結果命を落としたんだ。

一度目の死だってそうに違いない。

……なら俺は?兄貴は戦った。俺は今、戦えているのか?

何か、俺ができることは無いのか?




   考えろ。



「考えろ。」



  考えろ。考えろ。



「考えろ。」「考えろ。」「考えろ。」



 考えろ。考えろ。考えろ。



「考えろ。」「考えろ。」「考えろ。」「考えろ。」「考えろ。」「考えろ。」

29漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:35:13 ID:zPSDS/7U


「蜂屋あい。」


兄貴が戦った敵。



「蜂屋あいを、殺す。」


兄貴が成そうとしたことを、俺が引き継ぐ。





「兄貴の、仇を討つ。」
兄貴の戦いを、なかったことにしてはいけない。

迷いが吹っ切れると、思考がクリーンになっていく。
今までの自分の行いを今になって思い返すと、恥ずかしくなるくらいの間抜けだ。
綺麗になった思考回路のまま、現状、そしてこれまでの出来事を振り返ってみる。


目下の問題は、めちゃくちゃに走ったおかげで現在位置が分からなくなっていること。
次に、蜂屋あいを殺す方法。子供だからと言って甘く見てはいけない。少なくとも戦った兄貴が命を落とすほどの敵だ。

「……俺の能力……1/10=1……だっけか。」

この殺し合いで発覚した、俺の持つ特殊能力。
十分の一の確率を必ず当てる。ただそれだけの能力。

俺は思いついたことを試すことにした。

地図を取り出し、9分割になるように線を引くと、その地図をじっと見る。

「………なんとなく、ここ、か?」

直感的に、地図から自分の現在位置にあたりをつける。成功しているならこの辺が今俺のいる場所なのだろう。

俺が導き出した現在地を、今度はさらに9分割にしてにらみつける。

「…………あー、わっかんねぇ。」

だが今度は、ぴたりとここと思い浮かべることが出来なかった。
九分の一の更に九分の一では、俺の能力は発動しないらしい。
無理やり位置を指定しようとしても、それは普通の勘と同じ、あてずっぽうになるだろう。

本当に大体ではあるが、位置情報を得た俺は林を抜け、街に辿り着いた。
辺りにはそれなりに高い建物が多く、周囲を見渡しずらい。
だが俺にはそんなことを気にする必要もなかった。灰色の建物が並ぶ中、仲間はずれの青色を発見する。

自分の現在位置を確認した後、俺は二回、能力を使ってみた。
「蜂屋あいの居場所」、そして「俺に敵対しない人の場所」。それらは、先ほど俺が引き当てたエリアと同じ場所を示した。
正直「俺に敵対しない人」は期待してなかったが、確かにここにいる、と確信している。
それがどういう意味か……正直考えたくないから、それについては深追いしないでおく。

「おい、そこのあんた。」

「……ん?」

そして俺は、おそらく俺と敵対しないであろうその人物に接触する。

「……お願いだ、俺に力を貸してくれ!」

「へえ?出会ってそうそうそんなこと言われても、イエスとは答えられないなあ。
 君、ギブアンドテイクって言葉知ってる?」

「俺の能力を使えば、探しているもののおおよその位置が分かります。」


こうして俺と左門さんは出会った。

30漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:35:47 ID:zPSDS/7U

 *  *  *  *  *  *



「……よし、ここだ。この辺に天使ヶ原さんはいる。」

「………うーん、まあ頼んでおいてなんだけど、あんまり凄い能力じゃないね。大体この範囲大雑把すぎない?対して探す労力変わらないと思うんだけど。」

「そんなこと言ったって、俺の能力は十分の一までしか確定できませんから……
 それに、完全にあてずっぽうで探すよりも、大体の位置を把握していたほうが探しやすいでしょ。同じエリアにいたのにすれ違い……ってこともあり得るんだし。」

安藤さんの示したエリアは、ここからは大分遠い。
サモナーの体力は生まれたての小鹿に等しい。故に合流は絶望的だといえるだろう。

「あーあ、結局天使ヶ原さんとは出会うこともなく、天使ヶ原さんが惨たらしく殺されてしまうのかぁ〜。」

「えぇ!?いやなに決めつけちゃってるんだよ!というかその人が死ぬ前提なのか!
 確かに距離はあるけど、どこかで乗り物を調達するなりすれば、きっと会えるって!」

「だって、わかるのは天使ヶ原さんの『居場所』でしょ?君が示したのが『天使ヶ原さんの死体のある場所』である可能性もあるじゃないか。」

「う……、そ、それは……」

どうやらそこまでは考えが及ばなかったらしい。
前回の放送から大分時間が経っている。次の放送で天使ヶ原さんが呼ばれる可能性は十分にある。
だからこの考察を決定づけるには実際に会うしかないのだが、僕にそんな義理はない。
安藤さんは僕の意見に即答できずにどもっているので、もうちょっと煽ってみることにした。

「そうやって自分の能力を過信し過ぎるのはよくないね。できると思い込んでが・・・駄目っ・・・ってなったらあっというまにお陀仏だよ?
 まずはできることじゃなく、『できないこと』から考えていったほうがいいんじゃないかな?
 それともできないことが多すぎて考えるのを放棄しちゃった結果なのかな?」

「ドヤ顔で大悪魔召喚しようとしてでかい落書き残すだけの結果に終わった人に言われたくねえよ」

「うんっ!即答できるってことは元気が出たみたいだね!
 それじゃそろそろあの子を追いかけたほうがいいんじゃない?お友達と合流したら厄介だよ?」

的確に痛いところを突かれたが僕の華麗なトークスキルで話題をすり替える。
悪魔を従えるのには会話と交渉は大事だからね。まあ僕は魔法陣で一発だけど。

「っ!ヤバイ!じゃあ俺もう行くよ!左門さん、協力してくれてありがとう!死なないように祈っておくぜ!」

「ハァ、君、召喚術士舐めてんの?僕がバリバリ悪魔を召喚できたら、今頃世界なんて滅びてるから。」

「はははっ本当に最低だなあんた!じゃあな!」

安藤さんが走り去って、公園には再び静寂が訪れていた。
誰もいなくなった公園の中にいる僕は、とりあえず近くのベンチに腰掛けた。

31漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:36:18 ID:zPSDS/7U

「ふぅ……」

思わず口からため息が漏れる。
安藤さんは、あの子に追いつけるかな。僕とおしゃべりしていたせいで、結構時間を食っちゃったけど。
僕は手元にあるリモコンに視線を落とした。リモコンに付属した画面には、街中の風景が流れている。
あの子が持ったままの糸成1号本体から、映像を受信しているからだ。

「まあ、安藤さんが追いつけたなら追いつけたで面白そうだから別にいいけど、
 せっかく僕が時間を稼いであげたんだから、出来れば逃げ切ってほしいなぁ。」

別に蜂屋あいの味方な訳じゃない。ただ単に僕個人の都合により安藤さんから引き離してあげた。

「やっぱり魅力的なんだよね。あの子は。」

そういって、あの子に思いを馳せる。

「まだ死なないことを祈ってるよ、蜂屋あい。」

誰もいない公園の、ほんのり薄暗くなってきた闇の中に、ぽそりと呟いた。


「君が傷ついて、裏切られて、醜い姿をさらすまで。
 一人でも多くの参加者に、君の本性を伝えてあげないと。
 確実に地獄に送ってあげられるように……ね。」


僕はベンチから重い腰を上げる。いつまでも座っていたかったがしょうがない。
あの二人を観察するのも楽しそうだけど、これからの行動方針を考えないといけないな。
だが、ついさっきまでウィルオウィプスを飛ばしたり大声で騒いだりしたこの公園には、危険な参加者が集まってくるかもしれない。
地図を眺めて次の目的地を考える。そのついでに、まだ生きているかどうかわからない、僕の大嫌いな人に向けて言葉を呟いた。


「天使ヶ原さん。僕はここで君じゃない、「もう一人の天使」に出会ったけど……」

誰かが言っていた。蜂屋あいは天使だ、と。
だが、実際のところ彼女は「悪魔」であった。自分勝手な欲を手に入れるために一クラス全員を巻き込んで変えてしまった。

それでもあの子は、周りの人にとっては「天使」だった。


「やっぱり天使なんていないんだね。」





【蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている】
[状態]:精神的疲労(大)
[装備]:ナイフ@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品、 糸成1号本体@暗殺教室
[思考・状況]
基本行動方針:いろんな人の「色」を見たい
1: きたない色の大人から逃げる。
2: みんなと合流する
3: 安藤さんの色、綺麗だったなあ

[備考]
※ギャグ勢であるじーさんの心の色を見ました。
それによるダメージは計り知れません。
※魔法などの不思議な力の存在を容認しました。
但し、それらには大体制限がかかっていることは知りません。


【左門召介@左門くんはサモナー】
[状態]:疲労(中)
[装備]:糸成1号のリモコン@暗殺教室
[道具]:基本支給品、カセットテープと再生機器@校舎うら、「罪と罰」@魔王、チョーク数本 
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず生き残る 
1: 蜂屋あいと安藤潤也が今後どうなるか見てみたい
2: 天使ヶ原さんを探す?
3: 制限?主催者マジ許さねえ


[備考]
※ネビロスのようなネームバリューのある悪魔召喚は制限されています。
どの程度の悪魔まで召喚できるかは後続の書き手さんにお任せします。
今現在召喚したことのあるのはウィルオウィプス、です
※潤也から情報をもらいました。



【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:全身に切り傷、一周回って冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品、
[思考・状況]
基本行動方針:兄貴の仇を討つ
1: あいを殺す
2: 兄貴……
3: 殺し合いを止める?

[備考]
※参戦時期は7巻、第二章「潤也」が始まる少し前からです。
※1/10=1の能力に制限があるかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。

32漫画ロワ:2016/09/30(金) 10:39:28 ID:zPSDS/7U
はじめてSS書いたー。やっぱり難しいなSS作成
ロワ語り中に投稿しようと思ってたけど、いやはや見通しが甘かった

天使なあいちゃんと天使大嫌いなカス虫の組み合わせが面白かったんで作りました
タイトルとかは特に決めてないんで、誰か考えてください

33妄想民:2016/10/01(土) 04:43:51 ID:safy5Uho
乙です
各作品知ってる身としては嬉しいSSだった
あいちゃんと左門くんいいね
この状況なら左門くんこうするかもなってのがすごくわかる

34オールリピSS:2016/12/11(日) 23:57:54 ID:ZJK/L6V2
ギン、と鋭い金音が響く。
どさり、と重く何かが倒れ伏した音が聞こえる。
暫しの静寂の後…それを破ったのは冷たい男の声だった。

「……見込み違いでござったか」

男―――錆白兵は手にした直刀を倒れた青年に突き付けたまま、静かに言い放つ。

「なかなかに鍛え上げられた体付き、身のこなしも申し分ない。手に付いた竹刀ダコはその奇妙な刀を使い続けて出来たものでござるな。
 だが、振るわれた刀に丸きり力が入っておらぬ。意志も気合もないその有様では、棒切れを振るっているも同然よ。
 ……嘆かわしい、貴様に振るわれる刀が不憫でござる」
「……っ」

倒れ伏したままの青年―――黒鉄一輝は淡々と浴びせられる言葉に、静かに耳を傾けるしか出来ない。
憤ることも、悔しがることも、はたまた恐れて命乞いをすることもせず、全てを諦めたようなその反応。
例えるならば、その男は錆び付いた刀だった。

「……どうした、そのまま死にたいのでござるか」
「死にたく、なんて……」

初めて、一輝がまともな反応を示した。

「死にたくなんて、ない……ない筈、なのに……
 あの『殺し合い』で、あの男に殺されて……何故か、生き返って、
 今度こそ、彼女を……ステラを守ろうと、思ったのに……」

ステラ、その名は支給された名簿に乗っていた名前だっただろうか。
名簿には白兵が白銀の世界で行った殺し合いを上回る、膨大な量の名が記されていた。
あの世界で共に殺し合いに参加した人間の名も、何人か居たように記憶している―――あの死神の名は無かったが。

「生きて、一緒に戻ったとして……僕みたいな、誰からも、必要とされない人間が……
 彼女の隣に、立っていられる筈もないのに……どう生きれば、いいのか分からなくなってしまったんだ……
 こんな、親にも望まれない僕が……」

白兵は知らない。自分と出会う前、黒鉄一輝はノヴァという男に記憶を奪われたことを。
自分には信じてくれる、望んでくれる人々がいるという事を忘れ、父親に何も望まれていなかったことを突き付けられた、最悪の精神状態まで帰ってしまっていることを。
知らない、知るはずもない。故にただ、その嘆きを淡々と聞くのみ。

「ただ、このまま無様に、惨めに生き続けて……どうすれば……」

悲しげに、苦しげに、惨めに一輝は言葉を吐く。

「どうすれば……いいんだ……!」

(成程。錆びた刀ではなく、折れた刀であったか)

どういった経緯があって折れたかは知らぬが、戦えぬ剣士ならばもう用はない。

35オールリピSS:2016/12/11(日) 23:58:41 ID:ZJK/L6V2
ときめかせて斬るつもりであったが、何も映らぬ眼ならそれも無駄骨。
せめてもの情け、一思いに斬り殺してくれよう。
そう決め、白兵はゆっくりと刀を振り上げ……

『ど う や っ て 戦 え ば い い ん だ ! 』

ふと、かつてその刀を振るった死神の存在を思い出した。
自身の刀・氷輪丸を白兵に奪われ、愕然としながら叫んでいたあの男。刀の力に頼り、自身の長所も生かせず錆び付いていたあの男。
しかし、再び逢いまみえた時にはその様は見違える程であった。
奇怪な術と卓越した戦術眼、そして堅実で真っすぐな太刀捌きを手にし相対した、あの男。
実に良い強者だった。他の輩には殺されたくないと思えるほどに。
自分の手で斬り殺してみたいと、思えるほどに。

「錆びた刀が名刀に転じるのならば、折れた刀は何に化けるのであろうな」
「……え?」

白兵が呟いた言葉に不思議そうに顔を上げる一輝。
その呆けた顔を鼻で笑い、白兵は振り上げた刀を鞘に納めた。

嘗て、白兵は殺し合いの地で出会った娘に教えられた。「錆に塗れ、それでも折れぬものがある」と。
自分の目の前で妖に殺されたその少女は、怪しげな薬によって姿を幼子に変えられながらも自らの道で進まんとしていた。
無力に打ちひしがれ折れることもなく、ただ、自分の信じた希望を捨てることなく一心に。

錆び付いた挙句に折れたこの剣士に自分がすべきことは、このまま彼を斬り捨てることか?

「お前、名は何と言うでござるか」
「……え?」
「二度言わせるな、名だ」
「く……黒鉄、一輝……です」
「ふむ、鉄(くろがね)か。中々に面白い名でござるな……気が変わった、お主はここでは斬らぬ」

動揺しながらも、身体を起こそうとする一輝に白兵は告げる。

「勘違いするな、お主をここで斬らぬのは善意でも憐みでもない。
 お主のように無力でありながらも折れぬ心を持ち続けた一人の娘と、
 そして嘗てこの『絶刀・鉋』を振るった1人の剣士への、敬意故でござる」

それは本心からか、それとも本心を隠すための言葉かは分からない。
ただ、過去に白兵と出会った二人の人間が、微かに刀としての彼に変化を与えていた。

「拙者にときめいて貰おうと思ったが…その鈍った刃ではときめかせるにも値せんでござるな。
 稽古は得手ではないが…貴様の性根、叩き直してやるでござるよ」

こうして錆白兵は、初めて一人の人間として、1人の剣士に手を差し伸べた。

36オールリピSS:2016/12/12(月) 00:01:18 ID:ZJK/L6V2
タイトルは「伐刀・鉄」
滑り込みになってしまって申し訳ございません…しかし、白兵が一輝に目を付けた理由が急に思い浮かんでしまったんだ

どうでもいいが白兵はオリキャラを書いている気分になる

37妄想民:2016/12/12(月) 00:06:44 ID:ojmdYsmY
投下おつー

おお、デクたちが語られたと思ったらこっちも来たか!
白兵は日番谷隊長の苦難からの復活劇、そしてロリ霧切さんと一緒だったからこその変化として書かれてるのがすごい嬉しかった
そうなんだよな、ここの一輝も酷い始まり方したんだよなー
折れた刀が何に化けるかとかの言い回しもいいな

38その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:29:24 ID:zl3ONt.I
ふぅ、もうすっかり夜だね。
今日は新月で月も出ていないし外は真っ暗だ。


・・・・・・なんだい、セワシくん?
あそこにある「アレ」がなんなのか知りたいって?

そうだねぇ。
アレはセワシくんが産まれるずっと前にあったものだから知らないのも無理はないか。

アレは説明するにはまず「彼女」の説明をしなきゃいけないね。
タイムマシンで何度も君のおじいちゃん、のび太くんの子供の頃の時代に行ってるから、のび太くんの友達の「ジャイアン」はもう知ってるよね?
彼女はそのジャイアンと深く関わった人なんだ。

話をしよう。
あれは僕が22世紀に帰る前、のび太くんと一緒に暮らしていた頃。
くじで当てた小惑星でねじ巻きシティーを作り、その星を狙う凶悪な脱獄囚と戦う前・・・・・・
いや、銀河超特急でドリーマーズランドへ行き、そこを侵略しようとした寄生生物ヤドリの軍団との戦いに勝って地球に戻ってから一週間ぐらい後だったかな。
まあいい。
彼女は僕らの前に突然現れ、影はあったけど明るくて前向きでとっても良い娘だったよ。


その日は僕ことドラえもん、のび太くん、しずかちゃん、スネ夫くん、そしてジャイアンのいつもの5人で空き地で遊ぶ約束をしていたんだ。
ところが僕らが空き地につく前にジャイアンが血相を変えて僕とのび太くんのところへ走ってきた。
ジャイアンによると先に空き地に着いていたんだけど、そこで傷だらけの女の子が倒れていると言っていた。
急いで僕らが空き地に向かうとジャイアンが言った通り、のび太くんたちより二まわりくらい年上の女の子・・・・・・「彼女」が裸で倒れていたんだ。

・・・・・・オイ、裸と聞いて何エッチなこと考えてるんだよセワシくん。
当事者としてはかなり深刻な問題だったんだぞ。
彼女の体はまるで戦争の最前線にでも行ってきたみたいに全身ボロボロの傷だらけで血まみれだった。
片腕もごっそりとなくなっていた瀕死の重傷だよ。
いったい誰がこんなひどいことを彼女にしたんだと、僕らは憤った。

39その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:31:23 ID:zl3ONt.I

ジャイアンは既に空き地の近所に住んでいる神成さんに救急車を頼んだけど、死にかけている彼女を見て救急車ではとても間に合わないと思って、四次元ポケットから出したどこでもドアで空き地と病院に直接繋いで運び出すことにした。
彼女はすぐさま集中治療室に送られ、かなり危なかったけどなんとか一命を取りとめたよ。
ジャイアンが僕らより先に空き地に行かず、彼女を見つけるのがあと三分遅れれば結果は悲惨なものになっていたかもしれない。

彼女の命が助かったと聞いて、ジャイアンは喜んでいた。
そして彼女もしばらくして意識を取り戻した。
目覚めるなりジャイアンや僕らの顔を見るなりやたら不思議そうな顔をしていたけど、それも無理もないだろう。
いったい空き地で何があったのか聞いてみようとしたけど、彼女は何だか思い詰めたような顔をして答えてくれなかった。
思い出したくないなら無理に聞くべきでもないと思い、いつか話してくれるだろうとも思って聞かないことにした。

そして彼女には不可解な点があることがわかった。
彼女は明らかに日本人の顔と名前を持っているのに、戸籍を持っていなかったんだ。
この件に関してタイムパトロール隊に問い合わせて見て調べてもらうと更に驚くべきことがわかった。
なんと「彼女」はジャイアンが空き地で見つける以前の、過去の世界には存在していなかったことが発覚したんだ。
それまで存在していなかったのに、突然パッとこの世界に現れたんだ。
そしてタイムパトロールが彼女と話し合ったところーーよほど重大なのかタイムパトロールは詳しいことは僕らには話させてくれなかったけどーー彼女は僕らが暮らしていた世界と似て非なる世界「パラレルワールド」から来たことがわかったらしい。
だから彼女はそれまで過去に存在していなかったんだ。
別の世界から突然ワープしてきたイレギュラーと言うべき存在だったのだから。

40その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:32:40 ID:zl3ONt.I

彼女はそれで元の世界に帰れたのかって?
・・・・・・それは、ダメだった。
この22世紀でもパラレルワールドへ行く方法はまだ確立されていない。
仮にできても無数にあるパラレルワールドの中から彼女の元いた世界を探し当てるには砂漠に落ちた針を探し当てる以上に難しく、10世紀分の時間を費やしても足りないと言われた。

え?
もしもボックスがあるじゃないって?
あれはダメだ。
あれは彼女のいた世界の再現はできても、彼女自身を元の世界に帰すわけじゃない。
そんなのただのまやかしだ。

可哀想だけど僕らが彼女にしてあげられることは何もなく、彼女は二度と元の世界に帰ることはできなかった。
その話を聞いた彼女は「これは私への報いなのかもしれない」と言って何やら物鬱気だったけど受け入れている様子だった。
でも彼女が元の世界に帰れなくなったと聞いて一番涙したのはジャイアンだった。
彼は粗野で乱暴者だけど情に脆い部分があったからね。
家族や友達に永遠に会えないのは可哀想すぎると、まるで自分のことみたいに嘆いていた。

だからジャイアンと僕らは家族や友達に会えなくなった彼女に寂しい思いをさせないために、僕らが彼女の「心の友」になってあげることにしたんだ。


それからしばらくして彼女のケガも治り、元気になって病院から退院した。
タイムパトロールの計らいで戸籍や住む場所、義手も手配された。
そして彼女は生計を立てるためにジャイアンの紹介もあって、ジャイアンの雑貨店で働くことになった。
ジャイアンのママはこんな若い子に仕事なんてできるのかと内心心配していたみたいだけど、彼女は真面目に一生懸命働いた。
それでなく見た目より体力もあり、明るくて前向き、オマケに若くて美人ときてる。
彼女のおかげで雑貨店は大繁盛して、いつの間にか彼女は店の看板娘と呼ばれて町の人に親しまれるようになった。

41その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:35:25 ID:zl3ONt.I

ただ働いて学校に行くだけじゃなくて、彼女は僕らとも交流してくれた。
一緒に遊んでくれたこともあったし、彼女が本気を出したら隠れんぼや鬼ごっこで勝つのは秘密道具のハンデがあっても難しかったな。
のび太くんたちに勉強も教えてくれたよ。
家庭教師が美人で優しいとのび太くんもスネ夫も鼻の下を伸ばしながらやる気を出していて、しずかちゃんが呆れてたな。
とは言いつつ、しずかちゃんも女の子同士の知り合いができておめかしとか二人で楽しく語り合ったらしいけど。
それから彼女はお寿司も作って祝いの日には必ず振る舞ってくれた。
特に彼女の作る太巻きは絶品で、どら焼でもないのに僕は何本もおかわりしたよ。

僕ら5人に優しくしてくれた彼女だけど、命の恩人でもあるジャイアンは特に気にかけている様子で、まるで本物の姉弟みたいに一緒にいることも多かった。
ジャイアンが悲しんでいる時は背中を支えて、時には彼が乱暴や悪戯を働いた時は叱りつけもした。
喧嘩をしたこともあったけど、二人の仲は誰が見ても良好だったね。
ジャイ子ちゃんも家族にお姉ちゃんができたみたいで喜んでいた。

そういえばジャイアンの乱暴さが鳴りを潜め始めたのも彼女が現れてからだな。
ジャイアンを精神的な意味で大人にしていったのも彼女のおかげかもね。
まあ、のび太とスネ夫がジャイアンに「彼女のことが好きなんだろ?」とか「大きいおっぱいに見とれちゃって」とか言ってからかった時は、二人ともジャイアンにコテンパンにされたけど、今思うと図星を突いてたんだなあれ・・・・・・


のび太くんが立派に育って僕は未来に帰ることになるけど、彼女とジャイアンの話は続く。
ここから先は大人になったのび太くんとしずかちゃんから息子であるノビスケ、つまり君のパパさんから僕に伝わった話になる。

君のおじいちゃんとおばあちゃん、大人になったのび太くんとしずかちゃんが結婚して間もない頃、二人にジャイアンから電話が届いた。

ジャイアンが「彼女」にプロポーズしてOKをもらい、二人が結婚することになったと。
以前から二人が付き合っていたことはわかってたし、彼女はしずかちゃんやジャイ子ちゃんに恋愛相談を持ちかけることも多々あったから、周囲はいつかは二人がくっつくと思っていたらしいけど正にその通りになったわけだ。

42その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:39:55 ID:zl3ONt.I

そして多くの友人や家族に祝われて二人の結婚式はのび太くんとしずかちゃんの式にも負けないくらい盛大に執り行われた。
できれば僕も行きたかったけど未来に帰ってたからね、参加できなかったのは悔しいな。
その結婚式も賑やかでとっても面白かったらしい。
ジャイアンが歌い始めた時はあわや大惨事になるかと皆肝を冷やした彼の奥さんになる彼女が「歌は私のためだけにハネムーンまで取っておいて」と説得してくれたおかげで惨劇は免れたよ。
それだけでなく結婚式の料理に混じってジャイアンが作ったシチューが皆に振る舞われた時は彼の料理の腕を知るのび太くんたちは青い顔をしてたけど、彼女がジャイアンに真っ当な料理の仕方を教えてくれたおかげで男の料理としては食べられるレベルまでにはなっていたらしい。
愛の力って凄い。

結婚式の出し物には擬似的なヴァーチャル空間を使ったテレビゲームもあったらしい。
二人が大手ゲーム会社の知り合いがいるスネ夫に頼んで用意してもらったそうだ。
当時としては最新鋭の技術で作られたらしく、それで遊べたのは二人のお願いを快諾してくれたスネ夫様々だね。

43その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:41:01 ID:zl3ONt.I

話の筋書きは彼女が考えたらしく、ロジェン王の使命の下、女神アスナラの力を授かった勇者ジャイアンが三人の親友と共に魔神エーターンの復活を目論む魔女エノシィーマから姫である「彼女」を取り戻すっという話で短いながらも夢幻三剣士ばりに凄く面白かったらしい。
ちなみに参加者もとい編成はジャイアンを主人公にのび太くん、しずかちゃん、スネ夫くんの四人。
のび太くんは背中を安心して任せられる銃使い、しずかちゃんは回復の祈りで味方を支える僧侶、スネ夫くんは強力に援護する魔法使い、そして腕っぷしの強いジャイアンは戦士・・かと思ったら忍者だった。
彼は何も装備しない方が強くなる忍者の特性が男らしくて気に入ったらしい。
ちなみに僕もNPCとしてガイマイト、サッチャー、ユフィッツ、ヤーモット、ヤギュス、ホムル、ユキミ、ミィ・ヤビー、トーノーという近衛兵たちをまとめあげる騎士隊長という形で登場したらしい。
でも二つ名が「王国の青い狸」って・・まあ、大人になった彼女から忘れられず、僕も彼女の「心の友」になっていただけ良しとしよう。

物語はのび太くんたちやNPCの助力もあって悪い魔女と魔神は倒され、ジャイアンと彼女は幸せなキスをして終了、と素敵なグッドエンディングで幕を引いた。

華やかな結婚式も終わりに近づき、御開きになる。
その前にジャイアンと彼女は結婚式に来てくれた人たちにあるものをプレゼントした。

それはサボテンだった。

贈る花と言えば愛を象徴する赤いバラが一般的で、ずんぐりむっくりしてトゲの生えているサボテンなんて結婚式にはミスマッチに思えるかもしれない。
実際、花に詳しくないのび太くんも最初はそう思ったらしい。

だけど違うんだ。
大事なのは見た目じゃなくて、サボテンの花言葉にあった。

サボテンの花言葉は「偉大」「燃える心と暖かい心」、そして「枯れない愛」なんだ。

44その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:42:23 ID:zl3ONt.I
サボテンは過酷な地域にもめげることなく生えていることからこれらの花言葉がつけられたそうな。
サボテンは寿命が長くて、ちゃんと育てれば20〜30年は生きられる。
彼女とジャイアンは二人で枯れない愛を育むことへの誓いと、心の友たちにも愛する者と一緒にサボテンを育てることで愛を枯らさないようにして欲しいという願いを込めて、贈ったそうだ。

元の世界に帰れなくなった「彼女」はジャイアンという伴侶を得て、結ばれた二人は愛を育むことができた。
そして、かなりの難産だったらしいけどヤサシくんという子宝にも恵まれ、家族で幸せに暮らしましたとさ。

おしまい。

45その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:45:06 ID:zl3ONt.I





ふふ。
セワシくんにも庭にある「アレ」が何なのかそろそろ察しがついたかな?

そう、アレはのび太くんとしずかちゃんがジャイアンと「彼女」の結婚式の日に二人から贈られた時のサボテンなんだよ。
サボテンの寿命が30年までなら結婚式の日は30年以上前になるからその時のサボテンが残ってるのはおかしいって?
いや、確かにサボテンの寿命は30年とさっき言ったけど、実は記録上では最長で200年まで生きることが可能なんだ。
のび太くんとしずかちゃんが親友からの贈り物だからと大切に育てたら、孫の代まで持ってしまい、ここまで大きく育ったんだよ。
のび太くんとしずかちゃんも、話の中の二人のように枯れない愛を育んだ、これはその証なのさ。
そして親や子へ愛の証であるサボテンを枯らさないようにパパさんとママさんもしっかり育て、その間にも枯れることはなかった。
セワシくんが誰を愛することになるのかわからないけど、次にこのサボテンを育てるのは君の番になるね。
そして孫が曾孫、その孫までサボテンを育てて託して欲しいというのがのび太くんとしずかちゃん、ひいては「彼女」とジャイアンのささやかな願いなんだ。

心配するなよ、君がいざ育てる番になったらサボテンの育て方を教えるよ。
僕ももちろん手伝う。
とりあえず200年は持たせてみようよ。
大丈夫、心の友の贈り物はそのくらい余裕で持つさ。
想いがこういう形で何世代も受け継がれていくなんて綺麗でしょ?




あ、そうだセワシくん。
この前、ドリーマーズランド行きのチケットが当たったんだ。
今度、友達とドラミを誘って一緒に遊びに行こうよ。

オススメのアトラクション?
のび太くんと行った西部劇の星は楽しかったけど、今度は忍者の星に行ってみたいな。

46その魂は受け継がれ、新たな未来となる:2016/12/29(木) 11:47:14 ID:zl3ONt.I


ーーセワシくんはドリーマーズランドへ遊びにいけることを嬉び、さっそくドラミや仲の良い友達に連絡するために居間を出ていった。
はしゃく彼を見ていると僕も自然と微笑んだ。

ふと、窓の外を見るとさっき話した庭にある大きなサボテンに花が咲いていることに気づいた。
少し前から蕾をつけていたから近い内に咲くだろうとは思っていたけど、セワシくんに「彼女」の話をする前はまだ蕾のままであったから、話している内に咲いたのだろう。
この偶然に心なしか「彼女」の話をしたサボテンが気を良くして花を咲かせてくれたと思えなくもない。

サボテンに白く開いた花は本当に綺麗で僕は思わず息を飲み、しばらく眺めていた。


それは何も見えなくなりそうな闇の中に咲いた一輪の光。


その花は暗く寒く夜の中でも力強く逞しく咲き誇り、道に迷った人を照らしてくれる月明かりに似た優しく輝く光のようだった・・・・・・

47妄想民:2016/12/29(木) 11:48:19 ID:zl3ONt.I
投下終了ザンス
急遽携帯で書き出したものだからだいぶ稚拙かもしれない

48エミネムさんが笑ってはいけないロワを教えてくれるようです:2017/02/14(火) 17:26:44 ID:SiESxncY
※エミネムさんが教えてくれるシリーズMADと見比べて読んでみてください

よう
今日はお前らに
ひとつ教えてやる
俺が参加してきた
いわゆる 世界3大鬼畜ゲームの
一角を成す
“バトルロワイアル”
その笑ってはいけないバージョンだ
YO

まず OPからだが
初っ端天膳様が死んでおられる
カオスロワ玉子は死んでもしれっと生き返る
なんやかんやでゲームスタートだ
ところがどっこい
ケツ叩き担当のおまえら(時給50円)ときたら
ターバンのガキ
ACCEED三銃士
バルバトスのメイス
間違ってレギュメン殺したら
超 困 る
だからといって
地味な尻叩きを勧めるわけじゃない
ひで以外は殺さない程度に
シバいたほうがウケが良いんだ

ロワ会場の移動はバスだ
鈴の同乳族のSAKIMORIが住み着いている
「ふっ、始まったか…」と意味深発言
ちょ、江頭ちゃんポジのデップー
う、んこカレー
なに、ケツローマって?
ミスチーと阪口がシャウト
「Rock 'n' roll!!」「ターバンのガキィ!」

エロゲ対魔忍どもが助けに来たが
即落ちニコマで役に立たない
実際阿部さんも呆れてた
波平と言えば
ビシャスマリシャスにパパと崇められてた
カーズがメタルマンマスクを被ったが
ぶっちゃけ弱体化してんじゃねーか

ばね足飛竜
勝俣栄光
罪袋ゾロリ
ワンフォール
いろいろあります
尻 叩 き 係
ただの尻叩きだと
妄想民はすぐ飽きるから注意しておきましょう
まさおの塩入り正露丸
ワンサマハーレム
ビデオメッセージタイキック
三連発蝶野風ビンタ
いろいろあります
嫌 が ら せ
やたら酢豚へのいじめが多い気がするが
実害はひでよりはマシだから無視しておきましょう

49エミネムさんが笑ってはいけないロワを教えてくれるようです:2017/02/14(火) 17:27:40 ID:SiESxncY
さて次は
ちょっと名シーン台無し改変タイム
スレに入り浸っている奴にしかわからない
内輪ネタも多いから
元ネタを知らなきゃ
新参
逆に詳しければ
ベ テ ラ ン

「赤ん坊リレー」
DODのデカイ赤さんを前に
上田困惑
葉隠先制攻撃
「総軍大戦」
旦那に征服王に獣殿による戦いが始まる前に
マイケル乱入
みんなでスリラー踊りだす

次に「フリーザVS悟空」
ただし、殺し合いをするのは俺以外の奴
「オールリピの少女達による子守歌」
白面の赤子困惑
なんでギザギザハートの子守唄なんだよ
「オリロワ4 最終決戦」
ギャルのパンティおくれからの〜全☆滅

「ガッツポーズによる遠野説得」
ガッツポーズで自爆装置作動
スイッチの位置には気を付けよう!
さて まだネタは沢山あるんだが
ジョーカーとフレディが来たので省略させてくれ

サモパンマン
アフロからオシリス
イボンコ
全自動卵割り機
いろいろあります
パ ロ デ ィ
元ネタがわからない時は
自分で調べるのもありでしょう
PPAP
陰陽師
北斗OP
ノリスケのテーマ
いろいろあります
替 え 歌
エキシビジョンの波平の家族や知り合いの死別を
愉快に歌い上げるのは流石に可哀想だろと思います

50エミネムさんが笑ってはいけないロワを教えてくれるようです:2017/02/14(火) 17:28:14 ID:SiESxncY
この先を聞いたら危険だぞ
クッソ危険
だって・・・
下ネタの話
銀さんが油断しきったところで
ケツにエレガントなキマリスのランス
KMRとシオニーちゃん、球磨川の
脱糞&大便から登場シーン
やったぜ。
投稿者:変態糞敗者
カミーユの
SEX連呼
アクエリオン風
デモンベインレ○プ事件
もちろん 下ネタは人を選ぶが
俺は淫夢とレスリングで鍛え・・・
ホモガキと勘違いされそうなので
これ以上言わないが
汚さも笑いに直結することもあるんだ
野獣先輩のようにな

だがしかしだ
どんな殺し合いでも
最終決戦は乗り越えなくてはいけない
七人をギャグ時空に閉じ込めた
元凶を断つ為に
避けられない戦いがある
アッコさんや紫おかんも年甲斐なく
プリキュアコスで応援してくれる
やかましいわ
BBAは黙っとけや
当然スキマ送りされた挙句に
黒幕 お ま え か よ (謎)
しかも無駄に強くて負けそうになって
ろくな思い出もなくて
だから、もう戦いを辞め・・・
ませんwww
そこでだ
今までの仕掛け人総集結で胸熱な応援
超合体最笑ロボ アフロえもん爆誕
だから がんばろうぜ
選ばれた七人ならできる
これが必殺のタイキックだ
ひではパクんなよ

ベジータ風カイザー
クマ吉殺人事件
一護の黒咲化(腹パン)
怒ってはいけないシリーズ
いろいろあります
笑 い ネ タ
こんなところで言うのもなんだが
ギャグやってるとシリアス展開をもっとやりたくなるのが
正直なところ
痴漢シックス被害者キャサリン
まともなのがいないガンダム主人公
波平集団コスプレ
これはひどい「その魂は(ry」
いろいろあります
面 白 ネ タ
一曲に全ネタはぶち込みきれなかったが
その代わりつまらないと思ったネタは
一切なし!



時には殺伐さを忘れてギャグに走るのも良いよな



(さて、帰ってガキ使でも見るか)


(ホウセイ マイ フレンド)

51犯罪者ロワクレしんエピローグ:2017/12/14(木) 23:53:06
 ぼくはシロ。野原一家の犬。
『おいしそう』という不思議な理由で拾われ、この家にやってきた。
おとうさんのひろしさんはサラリーマン。
ちょっとぬけているのがタマにキズだけど、家族思いの人。
おかあさんのみさえさん。
よく「ようかい」になったりもするけれど、やさしい人。
いもうとのひまちゃん。
おかあさんに似て、かっこいい人やキラキラした物が好き。巻き毛のかわいい野原家のアイドル。
そして、しんちゃん。
よくいたずらをしたりして、おかあさんに怒られているけどいざというときに見せるやさしさがぼくは好きだ。
そんな一家とぼくのにぎやかな日常がこれからもずっと、つづいていく。
…はずだった。


ある日、いきなり野原家のみんなは誰もいなくなりぼくはひとりぼっちになった。
それだけじゃない。みんなが「わるもの」扱いされるようになったのだ。
何が何だかわからなかったけど、1日たてばきっと元通りになるだろう。
だって、今までもそうだった。どんなことがあってもすぐになんとかなる。
その時はしんちゃん達も戻ってきて、夕ごはんに約束の高級焼肉をみんなで食べるんだ…。
そんな願いは翌日の朝の光でうちくだかれることになった。

それでも希望を捨てずにぼくは待ち続けた。
2日、3日、4日、5日、6日、1週間…。
何度朝日を、月を、見ただろうか。
雨の日もあったかもしれない。風が強い日があったかもしれない。
それでも、みんなは帰ってこなかった。
その間にぼくはやせおとろえて、自慢の『わたあめ』のような毛もなえはじめていた。
そりゃあそうだろう。何日も何日も飲まず食わずなのだから。
変わらないことといえば、しんちゃん達が悪くいわれていることぐらいか。
ミッチーヨシリンも北原のおばさんも、その辺を通る人たちもみんなが
野原家に対してああだこうだ、とあることないことを言っている。
悲しかった。みんな、そんなことしないのに。そんな人たちじゃないのに。
吠えたててみんなを黙らせたかったけど、そこまでの力は残っていなかった。

そして、10日目の朝にぼくは決心した。
みんなを探しに行くことを。
おなかはペコペコだし、目の前もグラグラしてるけど、なんとしてでもみんなに会いたかった。
重いからだを引きずり、玄関から外に出る。
最初はどこへ行こうか。とりあえずいつもの散歩コースを行ってみよう。
それから、幼稚園や公園、商店街。いろいろあたってみるんだ…それから、それから…
そうぼんやりする頭の中で考えをめぐらせていると…急にからだが宙を舞った。
最後に見たのは、しんちゃん達がお出かけする時に乗る車によく似たそれだった…。

52犯罪者ロワクレしんエピローグ:2017/12/14(木) 23:54:26
…ロ、シロ、シーロー!
しばらくふわふわとした感覚が続いたのち、聞き覚えのある声で目が覚めた。
顔を上げると…じゃがいも頭に太いまゆ毛。この特徴的な顔も見おぼえがある。
無理もない、目の前にいるのは…

「んもー、シロってばこんなとこで寝てちゃだめだゾー」
しんちゃんだ。
「まったく、寝相の悪いシロですなー」
ぼくを抱き上げながら、しんちゃんは言う。
「あんたがいうな、あんたが」
茶色のパーマの女の人。おかあさんだ。
「たいやいやー」
ひまちゃん。おかあさんに抱っこされている。
「あはははは。でも、道路で寝ちゃ危ないぞー」
おとうさんが、笑う。
みんな無事だったのだろうか。何事もなかったかのようにそこに立っている。
「そんなことより、聞いてくださいよ。シロー。
やっぱりオラ達『むじつ』だったみたいなんですよ、む・じ・つ。
やれやれ、『おわさがせ』な方達ですなぁ…」
目を線にし、肩をすくめ、しんちゃんはいつもの「やれやれ」ポーズをする。

「「それをいうなら『お騒がせ』!!」」
おとうさんとおかあさんのいつものユニゾンツッコミが決まった。
「そうともいうー」
このしんちゃんの返しもおなじみだ。
ともあれ、よかった。しんちゃん達野原一家に何もなくて。ぼくは、それだけで幸せ。
その時、「健康のしるし」であるお腹の音が一斉になった。
「安心したらお腹すいたー」
「そうねー」
「よし、夕飯の時間には少し早いが焼肉はじめますか!」
「「さんせーい!!」」
「たいやーい!」
みんなそろって、玄関に入っていく。僕もそれにつづいた。
おとうさん、おかあさん、ひまちゃん、しんちゃん。
みんなの姿を見ながら、ぼくは心の中で言った。

―おかえりなさい



クレヨンしんちゃんエピローグ・おしまい

53混沌ロワ3:2017/12/29(金) 04:12:08 ID:oUfDjp/Y
「お前さんたちはMomongaの旦那の傍に行きな。」

Sansは同行者たちに背を向けながら、諭すように呟いた。
彼らが向く先には、魔法少女から生まれた魂の残響。災厄をまき散らす花嫁姿の魔女。
Entbehrliche・Braut――花嫁の魔女。その性質は鬱屈。
周囲に不幸をまき散らし続けた少女の魂、その末路。
Sansは言外に、同行者に置き去りにしろと言っていた。ここは任せて先に行けと。

「正気なのかSansさん!あんな化け物、一人じゃ無理だって!」

トド松が悲鳴を上げるように叫び、Sansの腕を掴んで引き留めようとする。
だが伸ばした掌は虚空を握り、Sansは先ほどより少し離れた場所に、再度守るように立つ。

「いいや、ここは俺が適任だぜ。ただ、俺にはお前さんらを守るほどの余裕はない。だからMomongaの旦那の傍に行ったほうが安全だと踏んだのさ。」

俺の戦い方は一対一の為にあるからな、と付け加え、Sansはちらりと一瞬だけ、同行者の行く先へ視線を動かした。
遠方に見える戦闘。戦いの余波は轟音と暴風として、遠く離れた彼らのもとに、その凄まじさを伝えた。
善良なロボットたらしめる記憶メモリーを破損し、見境なく破壊を続ける超高校生級のロボット、暴走キーボ。
ある世界において何者をも寄せ付けぬ要塞の城主であり、強大な力を持つ魔導士であるスケルトン、モモンガ。
あの場所に行って果たして無事なのだろうかという疑問が湧く激戦である。

「で、でも!Sansさんが一人で戦うのは危ないよ!私も、フクスローと一緒に援護くらいは…」

「heh heh...」

心配そうな顔をした赤松楓がSansを説得しようと口を開くが、割り込むSansの不敵な笑いで紡ぐ言葉は遮られた。

「我が儘を言うなよ...お前さん、"暴走した友だちを助けたい"って顔をしてるぜ。」

「……!」

秘めた思いがあっさり暴かれ、何も答えることのできない赤松楓。
指摘された通り、赤松楓は一刻も早く、あの心優しいロボットの元へ駆け付けたい。
だが、希望を失い自殺しようとした自分を止めてくれた、Sansだって見捨てたくはない。
彼女は友達である最原終一に助けられたのだから……その命を散らさせてまで。
だからこそ、彼女はもう誰も友達を失いたくはなかった。
どちらも助けたい、どちらかにしか協力できない、足手纏いになるかもしれない。
欲張りにも幾つもの選択肢が絡まり、その中で本当にやりたいことは何かをしかと考え…彼女は、キーボを助けたいと思った。


* 赤松楓に 決意が みなぎった!


Sansの優れた洞察眼は、彼女の秘めたる思いを見抜いてしまう。
キーボを救う。彼女にとって重要な選択をした赤松楓の顔を見て、Sansは重い腰を上げることにした。
だからこの世界で出会った、信頼のおけるスケルトンの下に彼女を含めた仲間たちを向かわせることにした。
暴走した友だちを助けたい。その思いを汲み取ったうえで、この選択が最善だと踏んだのだ。

54混沌ロワ3:2017/12/29(金) 04:13:06 ID:oUfDjp/Y
「行きましょう、赤松さん。」

二人の問答を静観していたもう一人の同行者、高垣楓が優しく赤松楓へ話しかける。

「高垣さん……」

「あなたは、キーボさんを助けたいと決意を抱きました。ならその決意を無駄にしないために、早く行動に移すべきです。」

それと、と顔のそっくりな兄弟たちに向け、

「復讐を、などと考えるのは自由ですが、あなたが出来る事と出来ない事をきちんと区別をつけるように。」

ぴしゃりと言い切られ、一松は滾らせていた感情を鎮火させた。
トド松も、震える手で持っていたバットを下ろし、悔しそうな顔を浮かべている。

「わかってるよ……体力バカの十四松が殺されるような相手、何の準備も無しに勝てるわけ無いって。」

チョロ松に続き、もう一人の兄を目の前で失ってしまった。自分の無力さに怒りを覚え、復讐心が湧いてしまった。
高垣楓の言葉で頭を冷やし、同じく成すべきことを見定めたトド松が、手を差し伸べる。

「行こう赤松ちゃん。僕たちもキーボを助けたいと思ってる。あいつには沢山励ましてもらったからね。その恩を言うまで死んだら困るよ。」

伸ばされた手を少しの間見つめ、がっしりと力強く握り立ち上がる。
その傍でタマと融合した一松も、言葉は判らないままだが、ぴったりと寄り添った。


* 彼らの心が 仲間を助ける 決意で みなぎった!


「じゃあ、行ってきます!絶対に死なないでね!Sansさんに用意している鎮魂曲はないんだから!」

赤松たちがキーボとモモンガの戦う場所へ向かって駆け出す。
全員が一つの決意で繋がった。これで少なくとも道を違えることはないだろう。
Sansは少し羨ましく思いながら、一人、見送り届けている高垣楓にもそれとなく避難を促した。
彼女もSansに任せることに決めていたようで、赤松たちの言った方角へ走り出そうとしている。

「Sansさん…私も赤松さん達が無茶をしないように見ています。だから、あなたも。」

「わかってるさ。俺が不可能なことに命を懸けるように見えるのか?」

「ええ、とっても。」

即答をされ、珍しく驚いた顔を見せるSans。
俺はそんなに信用がなかったか?と自問する。

「heh...安心しな、Kaede。俺は死ぬつもりはない。ちゃんと勝算を持っているさ。すごく疲れるからやりたくないんだがな。」

安心させるために勝算はあることを伝える。実際Sansはこの戦いで負けるつもりはないからこそここに残ると決めたのだ。
高垣楓はSansの顔をじっと見つめ…嘘を吐いている訳では無いことを認めると、走り去っていく赤松の背中を追った。

55混沌ロワ3:2017/12/29(金) 04:14:14 ID:oUfDjp/Y




「...さて」

ようやく一体になったところで、Sansは改めて魔女へと対面する。
今まで何の行動も起こしていなかったのは余裕か、それとも体力の回復でもしていたのか。
花嫁姿の怪物の、理性を持たない笑い声が、異常に静まり返った世界に響き渡る。

「聞いちゃくれないだろうが、一応話をしておこうか。
 ...お前、だいぶ色々やってきたらしいな?」

口から出た問いに、花嫁は反応すらしない。その姿を見つめるSansは心の中で顔をしかめた。
花嫁の持つSOULが、LOVEが、あまりにも穢れたものだったから。

「救いようのないクズは、そんな姿に変わり果てちまうのか?」

Sansは問う。どうせ返ってこない返事に期待せずに。

「お前さんはまるで...SOULが肥大化して意思がないまま生きているみたいだ。LOVEも目をそむけたくなるほど高い。
 ...LOVEって知ってるか?お前さんにぴったりな言葉だ。あー、"愛"じゃないぜ。」

SOULは魔力の源であり、魔法少女はSOULを体から抜き取りGEMにすることで、魔法の使用と強い体を持つことができる。
LOVEは他者を傷つける能力を数値化したものであり、高めることでより躊躇いなく他者を傷つけることができるようになる。

周囲の不幸を願った少女、神名あすみはソウルジェムが穢れ魔女となった。
まさにSOULとLOVEの怪物。Sansにとって最も忌むべき存在へと成り果てた。

「今となっては、お前さんがどんな奴だったかわかりはしないし、わかろうとも思わない。
 ただ、とんでもない極悪人が目の前にいるから、消えてもらうことにした。」

無慈悲に言い捨てる。救済の余地はないと。

魔女となった彼女しか知らないSansが知る由もないが、花嫁の魔女の世界は、一人の魔法少女によって、幾度となく巻き戻された。
魔女となり理性を失った神名あすみは知る由もないが、対面するモンスターの世界は、一人の人間によって、何度も"RESET"された。

繰り返される世界に囚われた。そんな二体がここで出会ったことは、果たして偶然なのだろうか。
ただ一つ言えること。彼らがどこでどのような形で出会ったとしても、決して相いれることはない。


「お前さんがRuinsの扉からやってきたなら...まだ救ってやるという選択肢もあったんだが。
 生憎どこから来たかもわからないちびっ子にかける情けは無いな。」

"薄汚い友達殺し"に、これ以上誰かを殺させないために。
Sansの伽藍洞の眼窩に、シアンの色に輝く光が宿った。

「じゃ、俺と一緒に最悪の時間を過ごそうぜ」

Sansの言葉が途切れた一瞬、突如として二体の周囲を無数の骨が埋め尽くす。
所狭しと地面から生えた骨が花嫁の体を貫き、骨が消え解放されると同時に、Sansが放つ波状の骨攻撃に見舞われる。
数十、数百、数えきれないほどの骨に身を裂かれたその先に、竜の頭骨のような奇妙な物体が浮かんでいた。
髑髏の咥内から人の胴体ほどのレーザーが放射される。瞬きの間に視界の彼方まで到達する殺意の本流を、花嫁は直にその身に受けた。
Sansはその髑髏に手振りで指示を出し、さらに数まで増やして花嫁めがけて休みなく攻撃を続ける。
何度も、集中砲火を、立ちふさがる敵へ。それがSansの"一番強い技"であった。

「heh...」

Sansの放つ"一番強い技"を余すことなく体に受け……しかし花嫁は健在だった。
そもそも体力の多いモンスターには、sansの攻撃はあまり有効ではない。
それは人間の子供に食らわせたのであれば、あるいは致命傷を与えることもできたのだろうが。
そこらのモンスターを軽く凌駕する力を持つ花嫁の魔女には大した傷ではないらしかった。

「なぜ誰も最初から最強の技を使わないのか…今ようやくわかったぜ。」


* Entbehrliche Braut が 迫ってきた!

56混沌ロワ3:2017/12/29(金) 04:19:10 ID:oUfDjp/Y
前言ったようにリピロワと感想会が終わったくらいで投下したよ
Undertaleとあすみん関連くらいしか深く知ってる作品ないから変なところがあるかもしれないけど
気になったら書き換えちゃってください。あとタイトルもだれか決めてください

自分の想定ではこのロワのSansはP寄りのNルートかPルートだと思われる

57「架空学園2ロワ」三次創作、閲覧注意:2019/01/08(火) 01:28:29 ID:.r5PYFcw






















なんで。なんであなたとわたしはこんなにちがうの?

うまれてきて。いきていて、すむいえもあって、わたしはしんぞうすら、からだすら、いみもなく”ゆうごう”させられちゃったのに。

なんで。なんでこんなにくるしいの。
ねぇ。デザイナーベビー。わたしうまれてきても、よかったのかな。

魔人柱と化したデザイナーべビーの泣き声が。響き渡る。

"違う!""――きみはボクが、助けなきゃいけないんだ!"
なんで?きみに、わたしをどうこうできるの?
みんな、むいみだったのに。いみすらないのに、しんでいっちゃったのに?


だからってそこにいたって、どうにもならねぇだろ!
でも―――ボクは、君だけを守りたい!

君を"守りたい"から守るっていっちゃあ、ダメなのかよ!


だって、ボクは、きみの叫びを聴いて―――やっと。



マグニフィセントの咆哮でも、彼女には届かない。




それでも――――なんで、手をのばそう、とするの?

やめて、やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて、やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。


わたしの"てを"、つかまないで。



ああ。そうか。
わたしは、きみに恋をするために、いたんだ。

わたしなんて、いきることすらもできないくずだったのに。
ねぇ、なんでわたしを、すくったの?


ジーっとしててもどうにもならないから。,,,,それと、キミの叫びが聞こえて、やっとボクにはいた気がしたからだ。

初めて、ボクの事を「理解してくれているひと」....が......

なぁ....次逢えたら......なれる、かな、"とも......

あぁ―――そうか。

ごめんね。でも、ありがとう。うれしかったよ?せめて、いっしょに、いて。ください。

いや。ちがう。いっしょに、ねむってくれますか?

これなら、あなたの"生"にも、わたしの"生"にもいみもあったはず、だから。


【XXXX ”魔人柱”■◆■・キリエライト――死亡】
【出席番号、2番 朝倉リク―――】

【残りXX人】

58「架空学園2ロワ」三次創作、閲覧注意:2019/01/08(火) 01:39:16 ID:.r5PYFcw
修正

"でも――ボクは"→"だから――ボクは"。

続き
"分からないのか?....君を"守りたい"から守るって言っちゃあ、ダメなのかよ!"

"ああ。そうか。
わたしは、きみに恋をするために、いたんだ。"



"ああ、そうか。
てを、にぎってくれた、わたしは、きみに恋をしたかったために、いたんだ。"

"やっとボクにはいた気がしたからだ。"→"やっとボクにはいた気がしたんだ。"

59妄想民:2019/08/12(月) 00:52:54 ID:6uTiYROQ
素晴らしいssだらけだ

60妄想民:2019/08/13(火) 09:49:56 ID:ih75dwes
まあアレなssもあるけど
最近はSSが全く投下されてないから寂しいね、また読みたい

61妄想民:2019/08/14(水) 13:05:16 ID:nXZvy6ZY
いちいちwikiに転載するのがめんどくさいからここに書かないだけでSSだけならwikiで更新されているぞ?

62妄想民:2020/05/12(火) 23:29:16 ID:WyEfe38s
これより、土曜日の語り再開前後に投下したいと考えているSSの一部を投下します。

【注意】
・まだ仮投下です。皆様の評価次第で没になる可能性もあります。
・諸事情により速筆を優先したため、内容台詞描写設定の校正が不十分です。ご了承ください。
・ご指摘や修正の意見も承ります。

63妄想民:2020/05/12(火) 23:31:16 ID:WyEfe38s
「滅却師の皇帝よ、己の未来を『視』誤ったか」

全知全能のユーハバッハが敗北して間もなく、彼が座していた王座の前に絶望を形容する黒い人型が佇んでいた。
いつの間に、全く気配もなく、ソレは死闘を終えた空間に出現していた。
そして、ユーハバッハと対峙していた全ての者がその声を聴いた瞬間、誰もが身構えていた。
そしてその内の何名かは、その正体を理解していた―――その名は、アンチスパイラル。

「反螺旋族の集合意識体、何をしに来た」

「特異点を集めしタイタン星人よ、ここは我々の領域、我々が創造せし宇宙だ」
「ゆえに、我々の知覚はこの宙域を捉えている」
「さすがに、蟻のように細かき人間共を全て識別することはないが」
「我らが同盟、ユーハバッハの死とあらば話は別だ。かの超越者を倒した、それがどのような者達なのか見に来たに過ぎん」

そう言って、アンチスパイラルはその場にいる全員を一瞥するような仕草をする。
弱肉強食の理から外れた反逆者達、全てを無に還さんとする愚考者達、無限の可能性を求めし異端者達。
その面々を、ただ一つの情を表さずに見ていた。

「おい、そんなこと言って、俺たちを潰しに来たんじゃないのか」

「否。終末を望む天司よ、我々は戦いに来たのではない」
「ここに居る我らはただの影法師、我らの中核は螺旋に目覚めし者共を注視している」

突如、アンチスパイラルのそばに映像が映し出された。
画面は星々の海に満たされ、その中にはアンバース頂点の城塞や元資源衛星の機神も映し出されていた。
そしてそれらと比較できる程に異常に巨大な機械人形が2体、モニターに映し出せない程に逸脱した攻防を演じていた。
その光景はまさに巨大な絶望と希望の激突。
その規格外、次元の違いを見せつけられれば、広間にいた面々から一時的に言葉を失わせるには充分だった。

「スケールが違い過ぎる…論外同士のバトルとしか言いようがないわ」

「そういうことだ、幻想郷の巫女。ゆえに、我々にお前達を相手する暇はない」
「だがそうだな、これだけは言っておこう」
「よくぞ、ユーハバッハを倒してくれた」

「!? それは一体、どういうつもりで言っているんだ!」

「かの皇帝は強力な同盟者であり、同時に我々の足枷でもあった」
「参加者の大半が反乱して攻め入る事態にになっても、お前達と戯れる事を選ぶ程にユーハバッハは盲目であった」
「だが、皇帝が消えたことで、奴に与えられた拒否権もなくなり」

「ようやく、原初返還による幕引きを始められるようになった」

「!? なん……だと……!」

「さぁ、原初神カオスよ、目覚めの時だ」
「我々が時空断層の狭間を創ろう、その瞼を開かせよう」
「そして、盟友ユーハバッハを倒した者共に、祝福を与える時だ」
「奴らの増長、スパイラルの増加を阻むために、地表全てを資源に還るがよい」

64妄想民:2020/05/12(火) 23:33:11 ID:WyEfe38s
空間が割れる。
ソラが割れる。
そして、あり得ざる光景が顕われる。
歪み、撓み、ねじ曲げられながら引き裂かれた―――
間隙の向こうに何かが在る。
あれは。
何だ。
歪みの宙の間隙からこちらを覗く、あれは―――

――――――あれは、瞳だ。
ソラの瞳が、地球を覗き込んでいる。



虚空の瞳が顕われた瞬間、世界は、時は、止まってしまった。
なぜなら、誰しもがその瞳に心を奪われたからだ。
見られている、偉容な存在に。
そこから放たれる熱量は、どれだけ離れていても肌身に感じる。



『―――原初たるカオスの再起動を確認。』
『―――あらゆる要素は、不要物として判断されます。』
『―――緊急警告。緊急警告。』
『―――カオス神、顕現。』
『―――資源の強制回収が開始されます。』
『―――惑星表層資源の、原初返還が実行されます。』



どこからか機械的で無責任なアナウンスが流れる。
カオス神。原初返還。その言葉の意味が、誰しもが知っている。
儀式の前に始まった光景を思い出すだけでよい。
惑星を抉り取る所業が、頭上にて待ち構えている。
ゆえに、誰しもがこの結論に思い至る。
―――ついに、超常の神による審判の時がきてしまった、と。

地上も、宇宙も、各種拠点も、それぞれの戦の勢いは止まらない。
ゆえに、誰しもが虚空の瞳に対応するには手遅れだった。
そして誰もが、絶望を抱いていただろう。





その瞳に向かって、地上から光の筋が突き進むまでは。

65妄想民:2020/05/12(火) 23:35:39 ID:WyEfe38s
とりあえずここまでです。
次が本命となる内容ですが、「その場の勢い」がいつ出てくるか分からないからあとどれだけ書き切れるか…

66妄想民:2020/05/13(水) 00:17:31 ID:Ay020SBM
SS乙です!
>>『―――原初たるカオスの再起動を確認。』
やべぇよ…やべぇよ…(絶望)

67妄想民:2020/05/13(水) 01:25:48 ID:Z4A9g17o
SS乙です!
続きがすごい気になりますね…そして絶望感がヤバい

68妄想民:2020/05/13(水) 20:24:43 ID:WyEfe38s
>>63>>64の続きです、しかしSSはまだ未完成なまま。
とりあえず第一目標まではSSを書き進める予定。(第二目標以降は時間次第)


怪獣を統べし怪獣の王。
地球を守護する星の巨獣。
太古より存命する核熱の申し子。
破壊の権化にして、環境の調和をもたらす抑止力。

その名は≪GODZILLA/ゴジラ≫。

ゴジラは、外来からの侵略者を拒む性質を持つ。地球に仇なす宇宙生物を徹底的に排除する。
このバトルロワイアル会場においても、『レギオン』や『キングギドラ』に対して明確な敵対心を持って攻撃していた。
―――然るに、外宇宙より星間来訪し、大権能でもって地球環境を死滅させる、生物ならざる機械神が相手だろうと。
―――ゴジラは一歩も引かず、最大の脅威として破壊するだけであった。

だが、ゴジラとて本能で理解していた。
敵対神は超大であり、通常状態のままでは返り討ちに遭うのが目に見えていた。
ゆえに、最も新しい王とリュウソウ族と邂逅し、リュウソウルとライダーウォッチの力で傷を癒やし。
そして、星の生存本能が生み出した真祖の姫君が持ってきた放射能の塊を喰らい、大幅な自己強化を図った。
―――その行為は諸刃の剣でもあった。
過剰な核エネルギーを制御するには至らず、いつ自滅してもおかしくない暴走状態に陥っていた。
そのような代償を負ってでも、天空の狭間から俯瞰する巨瞳を打ち落とすとあらば。
―――既に、ゴジラの覚悟は完了していた。

三つ首の黄金龍を倒した後、ゴジラは赤熱する身体を抑え、神を打ち落とす力を蓄えるために、氷塊漂う海中にて神の顕現を待ち構えていた。
他の参加者が宇宙に上り、主催陣営に反旗を翻しても、すぐに動くことはなかった。
ただ一度、同じく地球を守護する怪獣・ガメラが散った時、力の一部をを受け取ったゴジラは宙に向かって一撃を放ったのみだった。
その後も上昇する熱を蓄積し、灼熱の海に鎮座し続けたゴジラは。
―――ついに、ソラに開いた虚空を目測した。

間髪入れず、ゴジラの背鰭が青く輝く。
尾鰭から始まり、徐々に頭頂に向かって発光が進む。
それまで体内に蓄積した放射能エネルギーを射出する準備が整い。
全力を込めた蒼き光の帯が、ゴジラの口から放たれた。

それは、遊星を落とす程の熱量。
さすがに太陽を落とす事は不可能だが、それを包囲する構造物に打撃を与える事はできる。
ダイソン球こそがカオスの本体。
であれば、天球の構造を崩せばよい。たった一つの穴で全体へと連鎖自壊を始め、やがて内包する恒星に飲まれるだろう。
とにかく、その一撃が機神カオスに届けば、たとえ原初の父であろとも終焉を迎えるのは自明であった。

光の柱は一瞬にして星々の海を貫いた。
ソラを割りし巨瞳に畏怖を抱いた者達も、その一条の輝きに期待を抱いた。
誰しも全てが無為に終わるだと諦観する中で、超常事象に手を伸ばさんとする明確な意思に胸を膨らませた。
―――殆どの者が、意識無意識に関わらず、その一撃が届く事を望んでいた瞬間であった。





そして、光は。

ソラに開いた虚空にて、拡散されてしまった。

69妄想民:2020/05/14(木) 05:31:55 ID:Z4A9g17o
SS投下乙です!
届かないなんて…(絶望)

70妄想民:2020/05/14(木) 16:01:54 ID:WyEfe38s
>>68の続き、次の難所さえクリアすれば第一目標達成だ!(フラグ)


星間航行用超巨大戦艦、天球型時空要塞カオス。
星間航行の果てに異次元の宇宙に辿り着いていた原初の父。
かの超越神は、普段においては別宇宙に干渉することもなく静寂の中で鎮座していた。
分隊したゼウス艦隊が地球という希有な資源惑星に降り立った後も、特に手を出さずに悠久の時を過ごしていた。
オリュンポスの十二神が滅びの運命を辿ったとしても、カオスはそれを忘れ去ったかのように近くて遠き場所にて眠りについていた。

その後、紆余曲折あってカオス神はユーハバッハやアンチスパイラルなどと手を結んだ。
彼らの目的を利用して『船団の維持』『母星回帰』を果たせると判断しての事だ。
ただし、彼らの思惑が達成するまでは運営を任せっきりにした。
もし彼らの緊急事態宣言を受ければ原初返還でもって惑星資源だけでも回収するつもりであったが、そのような有事になるまでは動こうとも思わなかった。

そして現在、アンチスパイラルによって時空断層の亀裂が入り、カオス神は彼方の宇宙を注視した。
反螺旋族の求めに応じ、カオス神は原初返還でもって細事たるゲームを終わらせようとしていた。
だが、自らが顕現して間もなく、原初返還を実行する前に、思わぬ攻撃が飛んできた。
その攻撃は虚しく終わってしまった。虚空の窓、時空断層の迷宮により無意味となってしまった。

カオス神の宇宙とこちら側の宇宙は、空間の亀裂でもって繋がっていた。
その亀裂は多重空間の歪みでもあり、カオスに真っ直ぐ進もうとするものを惑わせ阻む障壁でもあった。
ゆえに熱線は虚空を貫けず、無軌道に拡散され、カオス神の機体には傷一つ付けられなかった。

―――しかし、カオス神はその明確な敵意を認識し、脅威として排除することを決定した。
ソラは神々の領域、何者をも侵すことはならぬ。
天空まで届く不敬に対し、神罰を下さねばならぬ。
ゆえに機械神は、原初返還を実行する前に、誅伐による敵対者の殲滅を即座に実行した。

―――光が疾った。
超光速の一瞥、一撃。

それは事象の彼方から放たれる太陽の極光、必滅の怒り。
旗艦カオスの傘下にいる機神だろうと、一瞬にして神核を消滅させる大権能。
たとえ相手がティターン艦隊だろうと、巨大生命体タイタンだろうと、関係ない。
カオス神が見定めた物は、原初の海に還るのみ。



そのたった一度の攻撃で、世界を白に瞬かせた。















そして地上は、ゴジラは―――















一人の闘士が身代わりとなって消滅し。


レッド族三人のウルトラバリアーによって。


まだ、その命を繋いでいた。

71妄想民:2020/05/16(土) 12:34:52 ID:D6oZ/U3Y
とりあえず怪異ルート以外で1000%の補足できそうなネタ思いついたけど皆の意見が欲しい(ただ本スレ>>1530と矛盾するかもしれないからなんとも言えない)

まさか天津、アークサウザーにSCP-010-JPを組み込んでいたとは
あれは未来予知と言う名の『入力された未来に辿り着くまで繰り返す(ただし違う未来にたどり着きそうだった場合時間がループ。入力された未来になったらループ停止)』
(ただしユーハバッハ生存時ではそこまで万能ではなく、ループ強制停止からの黒至牟の卍解覚醒等のイレギュラー等々が発生等)
でもこれ天津が望む未来に辿り着くまで天津自身が何度も試行繰り返したってなるとちょっと笑えてくる

SCP-010-JPの詳細→ttps://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/36231.html

72妄想民:2020/05/16(土) 13:11:23 ID:nXZvy6ZY
つまりリゼロのナツキ・スバルですね、分かります
>>1530と矛盾するという話ですが、ならばアークサウザーそのものにSCP-010-JPが搭載されたのではなく
アークの方に搭載したというのはどうでしょうか?
これならアークを破壊した真の理由が自身の最大の弱点を悟られないための証拠隠滅と小型化しサウザーへの搭載に成功したため(本スレ>>2182と折衷できる?)

展開的にも1000%自体は34話からほぼ変わらないが、アークは魔改造されており、天津が動く(ユーハバッハが死ぬ)まで動かない機械故に未来を見ても把握できなかったことにできる
1000%が凄いんじゃなくてアークが凄かった、良い着地点だと思います

73妄想民:2020/05/16(土) 13:16:01 ID:D6oZ/U3Y
>>72
ありがとう 正直SCP便りすぎるし結構無理やりかな?って思って一回こっちに貼ってみた
そう言ってくれると助かる

74妄想民:2020/05/16(土) 13:16:53 ID:VaVNqngw
いいと思います。
>>1530に関しても特殊能力が無いと思ってたけど、実はscpで常に未来の取捨選択をしてたため
一見ないように見えただけとか補完すればいいと思うし

75妄想民:2020/05/16(土) 13:20:03 ID:VaVNqngw
>>72
あぁ、こっちの方がいいですね

76妄想民:2020/05/18(月) 16:44:37 ID:WyEfe38s
本スレ>>2408で投下したエピローグを少し手直し


後日談というか、今回のオチ。

「つまり阿良々木君は殺し合いの中でもハーレムを作ろうとして性癖を暴露した変態だった、ってことね」
「っておい!人の話をどう聞いたらそういう総括になるんだよ!」

僕は、あの混沌とした大事件から帰還できた後、不在期間に何があったのかを戦場ヶ原に問い詰められて、洗いざらい隠さずに全てを話した。
―――だけど、どれだけ僕の事を貶めたいんだよ、この女は!

「まぁ、阿良々木君のことだから、いつも通り首を突っ込んでいつも通り大変な目に遭ってきたのね」
「なんだよ、こんな出鱈目な話、お前は信じるのか」
「そりゃあ、私からあなたに聞き出した話だし。阿良々木君、こういう時に嘘を交えて話す事はないだろうし」

そう言った後、戦場ヶ原は急に体を動かし。

「とにかく、お疲れ様」

そして、僕の頭を撫で始めた。
いやはや、男子である僕が同級生の女の子に撫でられるだなんて。
普通逆だろ。こういうの。男子が女子を撫で撫でするのが定石だろ。
でもまぁ、こんな風に誰かに頭を撫でられるのって、いつ以来だろうな。
こうやって誰かに褒められながら、顔を見つめられると。
―――すっげー嬉しいけど、すっげー恥ずかしいじゃん!



「そういえば阿良々木君、『七瀬かりん』って知っている?」
「……一応、まぁ知っているけど」
「あら意外、何でも知らない阿良々木君がアイドル事情に詳しいだなんて」
「いやそこまで言ってないけど、何だよ急に」

その名前を聞いたとき、僕はドキッとした。
だって、僕がその名前を初めて聞いたのはあのバトルロワイアルの最中、八神マキノの口からであって。
その事については、(特に必要ない情報だと思って)戦場ヶ原には伝えていない。
なのに、なんでこんなタイミングで?

「ちょっと前に亡くなった彼女について、巷で色々と噂が流れているのを聞いてね」
「噂?それ、誰から聞いたんだ?」
「羽川さん」

やっぱり羽川か、だと思ったよ。
ホント、お前は何でも知っているな。
―――とまぁ、僕は脳内でいつものアレを再生しているところだが、話から少し脱線しそうなので今回は割愛させてもらう。

「それで、どんな噂があるんだ?」
「例えば、とある地方都市に亡霊として現れた、とか」

それも、マキノ経由で聞いていた都市伝説の一つである。
というか、僕も実際にその亡霊『鋼人七瀬』とあの場所で遭遇したのだが。
あの時は逃げるので手一杯で、その一度っきりで再会することはなかったが。
―――ただ、あのときの『彼女』の異質さは、今でも忘れられない。

「とある掲示板でその亡霊はでっち上げで、掲示板の管理人こそ七瀬かりんだ!、なんて誰かが論破したとか」
「なんだそれ」

それは初耳だ。
たぶんそれは、本物の亡霊を見ていない人がトンデモ推理をしたのか。
はたまた、何か意図を持ってそんな推論をでっちあげたのか。
とにかく、僕の知らない世界で知らない戦いがあったのだろう、と特に気には止めないでいよとした。
が。

「そしたら、死んだはずの『七瀬かりん』が本当に生きて見つかった、って噂も流れ始めたそうよ」
「……は?」

なにそれ。
その噂が本当で、『七瀬かりん』が生きていたというのなら。
じゃあ、僕があそこで見た『鋼人七瀬』は。
一体、何なんだ?

「な、なんで死んでたはずの人間が生きて出てくるんだよ」
「さぁ、わからない。私も、噂で聞いた程度だし」

戦場ヶ原から要領を得ない変な話をそこまで聞いたところで。
僕の携帯電話に、メール着信のお知らせが届いていた。

77妄想民:2020/05/18(月) 16:45:17 ID:WyEfe38s



宛先:八神マキノ
件名:怪事件発生、協力求む

お久しぶり、アララギ君。
早速なんだけど、アララギ君は『鋼人七瀬』の元となる『七瀬かりん』が生きていた、って話聞いている?
なんでも、岩永さんがとある掲示板で『鋼人七瀬なんて亡霊はいない、生きていた七瀬かりんが演じたに過ぎない!』って推理をでっち上げて閲覧者に信じさせたら。

 な ん と 、警察の捜査で本物の『七瀬かりん』が見つかっちゃったようなの!

まさに、嘘から出た実、ってところかしら。
この展開には岩永さんも慌てふためいて、この事態収拾に頭を悩ませているわ。
それで、アララギ君の街に今滞在している、って噂の「バランサー」の手を借りたい、って言っているから。
今度、そっちに遊びに行くね。
あと、小夜ちゃんも一緒に行くから。
案内よろしくね♪



その文章の下には、一枚の写真が添付されていた。
自撮りのおかげで顔がアップになっている八神マキノ。
その後ろで頭を抱えて発狂していそうな岩永琴子。
岩永の横で彼女を宥めようとしている鷹取小夜。
拡大表示しなくても、よく分かる写真であった。

………………………………………。
なんだか今、僕の世界って色々と大変な事になっているような、そんな気がした。

「ふーん。やっぱり、私の知らないところでも阿良々木ハーレムを作っていたじゃない」

僕が動揺している間に文面と写真を見た戦場ヶ原が、したり顔でこっちを見つめていた。
―――こうなったら、妖怪ポストにでも手紙を送って、助けを呼んでみようかな


エピローグ『虚物語  第霊話 かりんゴースト』

※速筆で端折って書いたので文が変なのと、色々と矛盾点がありますが、100パーセント虚構で書かれた内容なので、適当に流してください。

78妄想民:2020/05/21(木) 15:20:23 ID:W6t2An6c
BLEACHエピローグその2


見渡す限りの砂漠と暗い空に挟まれた世界。死と、無念が形作る領域。 

虚圏へと、スタークは還ってきた。

変わらねぇな、と呟いた。それに応えるものは誰もいない。主催の本拠地に、リリネットはいなかった。自らの半身である従属官の小さな少女の破面。ユーハバッハには、彼女を人質にされたからこそジョーカーとして参加したのだが……。

ユーハバッハが嘘をついていたのか、それとも未来を視て自身の裏切りを知っていたためにどこかのタイミングで改めて抹殺されたのか、今のスタークには知る術はない。彼は全知全能ではない、一人の、孤独な破面だからだ。

虚圏へと戻ったのは、特に理由はなかった。ユーハバッハが倒れた事で、三界は再び別れるとサノスに聞いた。そうしたら、なんとなく戻りたくなったのだ。誰もいない世界だ。再生されたばかりの世界には死者も虚もいない。つまり孤独になるとわかっていて、スタークはなんとなく、戻ってきたのだ。

とりあえず、虚夜宮(ラス・ノーチェス)の跡にでも向かってみるかと歩いていると、岡の向こうに3つの強い霊圧を感じた。

「あ! 見ろよミラ・ローズ!! やっぱりプリメーラ(#1)じゃねぇか!!」
「うっさいよアパッチ! いちいちデケェ声出さなくても聞こえるし、霊圧で判ってたっっーの!!」
「アァン!? テメェが霊圧だけじゃ気のせいかもよ、って言ったからわざわざ見にきてんだろーが!!」
「おだまりなさいな二人とも。どうやらプリメーラも私たちとの遭遇は想定外だったらしくてよ」
「お前ら……確かハリベルの……」

姦しい三人娘は十刃#3の従属官だった。スタークは疑問に思った。なぜ、生きている? なぜ、ここにいる? しかし、その疑問はむしろ、あちら側が抱いたものだった。

「しっかしアンタ本当にプリメーラなのか? あいつ死神のチャラいおっさんに刺されて死んだんじゃなかったか?」
「ん……まぁそこは………」

アパッチ「…………」
ミラ「…………」
スンスン「…………」
スターク「…………」

「……色々あったんだ」
「いやそんだけ間を置いたんなら説明しろよ!? 相変わらずめんどくさがりだなアンタは!!」
「……どうやら本物のプリメーラのようですわね」
「まぁ仮にもヤミー除けば十刃トップだしな……こいつ。生きてても不思議はないけどさ……」
「仮にも」とか「こいつ」とか、一応オレ元上司なのに扱いひでーな……」

頭を掻くスターク。そうだ、とアパッチが言った。

「いや、ホンモンのプリメーラなら大助かりだぜ! 頼むプリメーラ! 俺たちと一緒にハリベル様を救ってくれ!!」
「? どういう事だ?」
「虚圏に、白装束の謎の一団が襲撃を仕掛けてきたのです。有象無象の虚や破面では太刀打ち出来ず、ハリベル様が奮戦されたのですが……」
「奮戦、じゃねーよ! ハリベル様が圧倒的に押してたじゃねーかよ! あのヒゲオヤジが出てくるでは……!!」
「!? まて、まてまて! まさかそいつら、霊子の弓を使ってなかったか……? ヒゲオヤジってのは、黒いケープを纏ってる、髪の長い偉そうなやつか?」
「知ってんのかプリメーラ!?」
「スタークだ。……もう十刃壊滅してんだから、名前で呼んでくれよ」

スンスンがそうですわ、と応えた。そのヒゲオヤジにハリベルが敗れ、連れ去られたとも言った。スタークは混乱した。が、やがて一つの答えに至った。

サノスだったか。あの男が気を利かせてくれたのだ。なぜそうしたのかまではわからない。単なる気まぐれか、気持ちを汲んでくれたのか……あるいは、この世界において『ユーハバッハ』を倒せという事なのか。

「……めんどくせぇな」
「アァン!? テメェハリベル様を見捨てんのか!?」
「テメーとバラガンが死神なんかにやられるから、虚圏の統治を買って出たハリベル様に恩を感じないのか!?」
「いやお前たちの頼みがめんどくせぇわけじゃねぇよ」

スタークがそういうと、三人娘はえっ、と驚いた顔をした。

と、四人は一斉に同じ方を見た。その先、遠くで数多の霊圧が乱れているのを感じたからだ。

79妄想民:2020/05/21(木) 15:20:54 ID:W6t2An6c

「アイツらまた来やがったな……!!」
「今度こそぶっ殺してやる……!!」
「落ち着きなさいな。皆殺しにしてはハリベル様がどこにいるか聞き出せませんわよ。一人二人は生かしたままにしないと」

臨戦態勢に入った三人の先頭に、スタークは立った。

「スターク?」
「これからオレたちが戦うのは滅却師だ。親玉のヒゲオヤジはユーハバッハって言って、めちゃくちゃ強いやつだ。はっきり言って藍染サマより強いかもしれねぇ」
「なん……だと……!?」
「嘘でしょ……あの化け物より強いっていうの、あのヒゲオヤジが……!?」

「だが、ま。意外となんとかなるモンだぜ」

 絶望に顔を歪める三人娘に、スタークはふっと微笑を浮かべて言った。

「なんだよ……アンタのそんな顔、初めて見たぜ……」
「この後に及んで嬉しそうな顔って、状況分かってます?」
「ああ、わかってるよ。ただ、まぁ。オレは戦いってやつはめんどくせぇから嫌いなんだが……」

「仲間を護るために、って思ったら……意外と悪くないかもしれねぇって思っただけさ」

そういうとスタークは響転を用いて走った。三人娘は慌てて後を追う。スタークは空を翔る最中に「帰刃」を行った。リリネットの霊圧は感じない。ヴァレンタインを倒したあの時から、なぜリリネット無しで帰刃ができるのかはわからない。だが、今は力を振るえることに感謝しようと、スタークは思っていた。

青い霊子が体を包み、密度の極まった霊圧によって体が黒く変色し始めていることに、スタークはまだ気づいていない。

──BLEACH ALL GENRE Ⅲ

『EPILOGUE :WHAT IF 千の夜をこえて』

【コヨーテ・スターク@BLEACH 生還】

80妄想民:2020/05/21(木) 17:43:20 ID:Ay020SBM
SS乙です
原作のIFへと繋がる粋な作品だ…

81妄想民:2020/05/22(金) 07:48:30 ID:9xR2oAR6
乙です
これは面白いエピローグ

82妄想民:2020/05/23(土) 07:22:46 ID:W6t2An6c
鬼滅の刃エピローグ補完


天気の良い日だった。

小さな小屋の縁側に、しわがれた男が座していた。畑の前ではしゃぐ子供たちを温かい目で見守っている。時折、思い出したように口付ける湯呑みに注がれているのは白湯であった。

今日もいい日だ。

肌を撫でる柔らかな風に心を靡かせるのは心地がいい。眠りたくなるほどで、事実その老人は隣にそっ、とかがみ込んだ妻が耳打ちするまで意識を手放す寸前だった。

「もう。気持ち良くなるとどこでもすぐうとうとするんですから」

老人はにこりと微笑んだ。老婆はムッと膨れた。

「私はこれから子供達と、炭吉さんのとこに出かけてきますよ」

お土産は期待しないでね、と言う老婆に、大丈夫。と返す。それは夫婦の暗黙の了解なのか、老婆は特に何も返さず、子供らを集めるとテキパキと出かけの準備をした。

「……!」

老婆は名前を呼ばれ、振り向いた。

気をつけて。老人はそれだけ言った。呟くような声だったが、明確に老婆に、妻に向けてのものだった。老婆ははいはい、と言い、離れていく子供達はいつまでも手を振っていた。

いい日だ。

いつのまにか、日が沈み始めていた。昼と夜の境界線。蒼く薄い空が世界に蓋をする。体が少し寒い。流石に風が冷たくなってきたか。そう思って、老人が目を擦ると、その目線を、揚羽蝶が横切った。鱗粉が星の砂のように軌跡を作る。

そして、老人は気づいた。

「……流石だ。老いてなお、平和にあってなお……お前の鋭さは増しているようだ……」

顔を上げた老人の、視線の先に、黒い着物に白い羽織りを被せた、侍が立っていた。

「兄上……」
「ひさしいな、緑壱……」

しわがれた声で、老人は名を呼ぶ。袂を分かったはずの来訪者に、しかし思った以上驚きはしなかった。今日はいい日だったからだ。ふと見上げれば、空には月が浮かんでいた。綺麗な三日月だ。

継国巌勝は、緑壱の隣に座った。

「……鬼舞辻無惨は……斬ったようだな……」
「……はい。夜通し斬り続け、朝日によって廃となりました」
「そうか……言葉足らずだったから……心配していた」
「いえ。兄上はあの時『斬れ』ではなく『斬り続けろ』とおっしゃいました。だから、その通りにしたまでです」

淡々と、緑壱は言った。

「兄上は……戦死なさいました」
「そうか……」

それも、淡々と言った。しかし、その言葉にはあらゆる意味を内包している。その言葉を噛み砕き、巌勝は目を閉じた。

「その確認に来られた訳ではないのですよね」

緑壱の声が、はっきりとした通るものになった。巌勝はああ、頷いた。

「約束を。お前と、凧揚げをしようと……思ってな。だが、お前がもし、人生を幸せに過ごせていないのなら……考えざるを得なかった」

巌勝は立ち上がった。闇に煌く白い羽織りが見せる。緑壱は追いかけた。その背中が、少しの悲しみを纏っていた。巌勝が振り返った。

「だが、お前は幸福だったのだな」

緑壱も釣られた。そして見た。縁側で項垂れる老人に、老婆と、子供たちが抱きついている。その目に涙が溢れていた。老人は眠っていた。その表情は、笑っている。夢見心地にあるのだろう。老婆の顔は、しわくちゃの顔をさらにぐしゃぐしゃにして、一生懸命に泣いていた。悲しみが溢れ出していた。

「緑壱」

巌勝が呼んだ。はい、と応えた。

83妄想民:2020/05/23(土) 07:23:33 ID:W6t2An6c
「お前が言ったことは、間違っていなかった。……我らは、いつでも安心して……身を引くことができたのだ。今ならわかる……遅すぎたがな」

『お労しや、兄上』

かつて、同じ顔をした緑壱に言われた言葉。あの時は意味がわからなかった。憐憫だと、蔑む言葉とさえ思っていた。だが、違ったのだ。憐みは確かにあっただろう。だか、その本質は違うのだ。

「緑壱」

緑壱に、手を差し出した。

「大儀であった」
「────!!」

緑壱は一も二もなく手を握った。張りのある肌に血が回り、重さのある肉を脈動して熱を持った。

「兄上──」


「お疲れ様でした」

巌勝とほぼ同じ顔をした緑壱が、言った。



二人を照らし、包んでいた三日月が山の向こうへ沈んでいく。役目を果たしたように。


暁の空はすぐそこまできている。
世界から消えた、太陽と月の兄弟。
偉大なる彼に、負けぬように。



────鬼滅の刃 オールジャンル3

『エピローグ:日はまた昇る』

84妄想民:2020/05/23(土) 13:28:49 ID:zHIlIsHk
SS乙です!
あっ、やっと…この兄弟が救われたんやなって…(落涙)

86妄想民:2020/06/14(日) 22:03:35 ID:W6t2An6c

「おかえりなさいませ、我が主よ」

空間の歪みから歩み出たサノスを迎えたのは、エボニー・マウを筆頭にするブラックオーダーの面々だった。彼らは突然行方不明になり、またこの場において唐突に現れたはずのサノスに対しても全く驚くことなく頭を垂れる。そして、彼らの主たるサノスもまた、それが当然であるかのように、まるで全てが掌の上の出来事であるかの如き振る舞いを持って応えて見せた。

「変わりないようで安心しました。我が主人(あるじ)よ」

マウはサノスの三歩後を歩いた。サノスのために用意した玉座に彼が座したところで、歩みを止めた。

「ストーンを全て、手に入れられたのですね」

サノスが手に装着するガントレット。そこには取り取りに輝くストーンが全て嵌められていた。にこやかに笑うマウに対して、ほかの3人のブラックオーダーらは驚愕の表情を浮かべ、ざわめいた。しかし、当のサノスはいまいちすっきりしない──というより、思考がまとまらないような、はっきりと複雑な表情を浮かべていた。

「マウよ。ストーンの力には限界が存在する」
「ほぅ、それはそれは……」
「な!? 本当でございますか!?」

プロキシマ・ミッドナイトが槍を鳴らしてサノスへ問いかけた。ともすれば不敬にも思われる言動であるが、この場におけるサノスとマウを除いた全ての者は、その心の内で彼女の驚愕に賛同していた。

「ストーンの力はこの宇宙でしか正常には働かぬ。いや、元々わかっていたことではあるが……」
「未来を「視」られたのですね?」
「……そうだ」
「そして、アベンジャーズに敗れる未来があった……と」
「エボニー・マウ! サノス様に口がすぎるぞ」
「よい。私が敗れる未来があったのは紛れもない事実だ」

サノスは躊躇うことなくガントレットを外した。

「では、ストーンはどうされます?」
「ストーンは我が元に置いておく。アベンジャーズにむざむざ渡すこともなかろう。なにより……これから私が手に入れんとするモノを制御するために、ストーンのパワーは絶対に必要であろう」

インフィニティ・ガントレットを捨て、手に入れたいモノ。またしてもブラックオーダーたちは目を見開いた。あまりにも短期間に驚きが連鎖している。言葉がうまく出てこなかった。ただ一人、マウだけがふむ、と口を自在に動かしている。彼には心当たりがあったのだ。インフィニティ・ガントレットを越える存在に……。

「と、いうことは。本当にアレがこの宇宙に存在している確証を得たのですね?」
「そうだ。ガントレットのパワーでは探知し切れなかったが、おそらく存在していることはわかった。ならば探さぬ手はなかろう」
「い、一体……なんのことです……? 私たちには何がなんだか……!?」

プロキシマとコーヴァスが前に出た。サノスは口を開いた。

「これから我らが探し求るは、INFINITY GAUNTLET(インフィニティ・ガントレット)を越えるモノ」

「MULTIVERSE(マルチバース)の領域を越え、遍く全てを超越する全能者の片鱗」

「HEART OF THE UNIVERSE(ハート・オブ・ザ・ユニバース)だ。それを探す」

サノスの静かな、それでいて覚悟の秘められた重厚な宣言を聞き、さしものブラックオーダーもかしこまった。しかしただ一人エボニー・マウだけが物押しすることなくサノスに会釈をした。

サノスの宇宙船が軌道を変える。
遠ざかるアスガルド、遠ざかる地球。

愛すべき娘との再会にさえ、サノスはもう目もくれない。

眼前に映るは真っ暗な闇。当たり前だ。これから彼らが行く領域は、ストーンのパワーでも遥か及ばない、無限の先の、その先なのだ。

サノスは言った。

「さぁ行くぞ。見果てぬ神の領域へ」

宇宙船は光の海へと姿を消した。

静かな宇宙が残された。
その静けさが束の間の平和か、恒久を貫くかは、神々の王と謳われ、神の視座にて世界を見下ろすLiving tributary(リビング・トライビューナル)にすら測れないだろう。

──THE AVENGERSA ALL GENRE Ⅲ

『EPILOGUE :MARVEL CINEMATIC UNIVERSE -THE END-』

87バルクホルンの想い(zwei):2020/08/05(水) 16:37:17 ID:Z4A9g17o
「…ところで一つ聞きたいことがあるんだけど…いい、かな?」

先程までトゥルーデに抱きついて泣きじゃくってたのが嘘のように、明るい口調でハルトマンは問いかける。

「別に構わないが…なんだハルトマン?」

(何か気になる事でもあったのだろうか…?)
と思いつつ、トゥルーデはハルトマンの言葉を待つ。しかしハルトマンの口から出たのは、トゥルーデにとっては予想外にも程がある言葉だった。

「トゥルーデはさ…キラって子のこと、好きなの?」
「な……!?お、お前…いきなりっ、何の事を…何を言ってるんだお前はっ!?」

トゥルーデは顔を赤くしながら、あからさまに動揺してしまう。まさかハルトマンがその事を聞いてくるとは思っておらず、またその事がバレているとも思っていなかったところにこの質問が来たのだ。普段はカールスラント軍人として冷静であろうと努めているトゥルーデであったが…今の彼女にはどう頑張っても、平静を保つ事も、冷静になる事も不可能であった。

「…へー……やっぱりそうなんだ〜」

(…えっ、あれで誰にもバレてないと思ってたの…?)
と思うも、そのままハルトマンは言葉を続ける。

「…先に言っとくけど、わたしは…トゥルーデにはあっちの世界に行って欲しくないなー…って」
「…どうしてそう思ったんだ、ハルトマン…?」
「だって…まだまだトゥルーデと一緒に居たいし、二度と会えなくなるなんて嫌だし…話聞いた感じたと、同じ人間同士なのに、強要されてるワケでもないのに…殺し合ってるみたいだし…わたしたちの世界よりずーっと死ぬ確率高いだろうし…それに、あっちの世界に行くってことは、クリスを…妹を、たった一人の家族を置いてくことになるんだよ?トゥルーデはそれでもいいの…?」

悲しそうに、しかしどこか諭すかのように、ハルトマンは問いかける。

「……わかっている、わかっているさそんな事…!…だからどうするべきかで悩んでいるんだ…。
…お前の言う通り、クリスは大切な妹で、たった一人の家族だ…お前たちも…かけがえのない大切な仲間だ…置いてなんて行けない。行きたくないんだ…!
…置いて行かれる辛さも、悲しさも…苦しさも…知っているつもりだ…。
……だけど…私にとってはあいつも…キラも、かけがえのない存在なのだと…気付かされた…いや、気付いてしまったんだ…。
……教えてくれハルトマン。私は…私はどうしたらいい…?…情けない事に私は、自分一人じゃどうすればいいのかを決められそうにない…!」

抱え込んでいた感情を吐露するトゥルーデ。そんな彼女を見てハルトマンは、申し訳なさそうに、

「ごめんトゥルーデ…ちょっと言い方キツかったかも」

と謝る。そして暫し考え込んだ後、再び話し始めた。

「…さっきはああ言ったけど、それ以上にわたしは…トゥルーデには幸せになって欲しいし、幸せを掴んで欲しい。トゥルーデが幸せになってくれるんなら、わたしはそれでいいんだ。
……だから、こういう時は自分の心に素直になっていいと思うよ、トゥルーデ。後悔なんてしたくない…でしょ?」

(こういうこと言うの、照れくさいんだけどな〜…)
そう思いながらもハルトマンは、自分の気持ちを伝えた上で、自分たちの世界と彼との…キラとの間で板挟みになって苦悩しているトゥルーデの背中を押そうとする。

88バルクホルンの想い(zwei):2020/08/05(水) 16:37:47 ID:Z4A9g17o
「……私は……」
「だいじょーぶ、トゥルーデがあっちの世界に行くことなったら、その時はわたしがクリスの面倒見るから。トゥルーデの分までわたしが頑張るよ。…そのための力も、なんか手に入っちゃったしね」

なおも悩んでるトゥルーデを安心させようと、優しい口調で喋りながら、ハルトマンはあっけらかんと笑った。

「ハルトマン…お前…」
「それに…そのキラって子の方がどう思ってるのかはまだわかんないんだろ?なら悩む前に、直接聞きに行ってもいいんじゃないかな。もしその子がこっちの世界に来たがってるようなら…勿論わたしは歓迎するつもりだよ」

(出来ればそうなってくれると、色々ありがたいんだけどねー…やっぱ難しいかなあ…彼にも彼の事情とかあるだろうし…)
と思慮しながら、ハルトマンは彼女の…トゥルーデの背中を押した。
それを聞いたトゥルーデは暫し悩む。そして彼女は…

「……それもそう…だな……ありがとうエーリカ。私は私の心に、素直に従ってみる事にするよ」

最終的には自分の心に従う事を選んだ。キラ本人にどうしたいのかを、聞きに行くという選択を。

「にしし…どういたしましてだよ、トゥルーデ!」

ハルトマンは満面の笑みを見せる。例え結果がどうなろうと、この戦友が後悔をする事は無いだろうと、そう確信したが故の笑顔であった。しかし…彼女はうっかり口を滑らせてしまう。

「……それにしても…ほんと、不器用でヘタレなところあるよねートゥルーデって」
「……おい、聞こえているぞハルトマン……!!」
「げっ…聞こえたの…!?待って待って!先聞きに行った方がいいよトゥルーデ!今行かなきゃ絶対後悔するからっ!」

聞こえてないと思っていた呟きを聞かれていた事に動揺し、ハルトマンは慌ててトゥルーデを急かした。

「ああ……お前の言う通り、後悔はしたく無いからな。今は聞きに行く事にする。それが終わったら……覚悟しておけよ?ハルトマン…!」

そう言い残すと、トゥルーデは部屋を出て行く。
彼女の足音が離れて行った後、一人部屋に残されたハルトマンはため息をついた。

「…はぁ…まさか聞こえてるなんて思ってなかったよー…。
……どうしよ……このままじゃ後でみっちり説教される未来しか見えないや…常磐やコウやナダ辺りに言えば匿ってくれるかなぁ…滝沢は…匿ってくれるどころか突き出されそうだからやめとくかー…」

そんな事を言いつつ彼女は、トゥルーデの想いが成就する事を祈ったのであった。

89妄想民:2024/02/20(火) 13:50:20 ID:eitrr3cU
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90ピカレスク:2024/02/20(火) 20:07:09 ID:eitrr3cU
「ゼロォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

穢れの無い純白の機体から発せられたのは、怖気が走る程の憎悪で彩られた声。
何が彼をここまで堕としたのか。
その理由を知らないまま、魔王は死闘に臨む。

悲劇が生まれ、地獄が芽吹き、絶望が嗤う。
闘争の度に新たな物語が紡がれ、同時に一つの物語が終焉を迎える。
混沌の二文字がこれ程に似合うだろう光景も無い、それこそがバトルロワイアル。
100を超える魂が鎬を削り合う魔境にて、今宵の主役は騎士と魔王。
悪逆非道の怪物を打ち倒すべく、正義の剣を突き立てる。
語り尽くされた勧善懲悪の御伽噺と違う、誰もがイメージするのとは正反対。
俄かには信じられまい。
騎士は虐殺の魔導へ堕ち、魔王こそが騎士を止める使命を背負った者などと。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

正気を削ぎ落とした絶叫が開戦の合図。
双剣を手に騎士が接近。
迫る姿は姫の危機に駆け寄る心優しき従者とは程遠い。
生き血を求める悪鬼そのものであった。

91ピカレスク:2024/02/20(火) 20:07:48 ID:eitrr3cU
機械仕掛けの騎士、ランスロット・アルビオンを駆るは枢木スザク。
罪に苛まれ、それでも正しき道を歩まんとした少年の成れの果て。
とある魔王と友情を育み、欠けた心を癒したのは最早過去の話。
魔王は死に、絶望で己が身を腐らせた鬼がここにいるだけ。
真紅の双剣を叩きつける彼に、良心の呵責が起ころう筈も無かった。

「来るか、スザク……」

されど、迎え撃つ相手もまた狩られるだけの獲物に非ず。
永遠を生きる魔女との契約により、混沌を齎す使命を背負った魔王。
如何なる偶然か、世界は違えど断ち切れぬ因縁が彼らを引き寄せた。
運命、その二文字で片付けるには陳腐と分かっていても感じずにはいられない。
僅かに浮かんだ感傷を握り潰し、ゼロは拳を構える。
魔王にとっては自身の肉体そのものが最大の武器。

振り下ろされた真紅の剣、MVSがゼロの視界を占領する。
傍から見れば余りにも馬鹿げた光景としか映らないだろう。
生身でKMF(ナイトメアフレーム)と戦う、質の低いジョーク以外のなにものでもない。
であるならば、次に起こったのは自らの正気を疑うに違いない。
斬る、というよりは叩き潰さんと襲い来る剣にゼロは逃げも隠れもしない。
MVSに比べれば遥かにちっぽけな拳を叩き付け、弾いた。
ナイト・オブ・ラウンズが駆る高性能なKMFではない、生身で素手の相手がだ。
機動兵器の絶対性を過信するブリタニアの高官が見たら、泡を吹いて倒れること間違いなし。

動揺して然るべき光景にもスザクが抱くは決して冷めない怒り。
一撃が防がれた、だからどうしたというのか。
確実に死ぬまで攻撃を続けるのみ。

92ピカレスク:2024/02/20(火) 20:08:40 ID:eitrr3cU
もう片方の剣が振るわれ、こちらも拳で対処。
反撃に移る隙は与えぬとばかりに、右の剣が再度接近。
双剣が与える死は悉く回避され、拳が齎す破壊もまた届かない。
刃に切り裂かれた空気が悲鳴を上げ、鉄拳との衝突で起こる余波が地面を消し飛ばす。
得物の応酬でエリアを破壊したとて、両者決定打にならず。

手を変える必要がある。
憎悪に呑まれて尚も、こと戦闘となれば油を差した機械の如く思考が回るのは流石の枢木スザクか。
丁度50に届く刃を防いだゼロへ、ランスロットの足が唸る。
攻撃から防御へ変更、交差させた両腕に爪先が命中。
吹き飛ばされつつも空中で華麗に一回転、着地したと同時に殺意の接近を察知。

片方のMVSを捨て、新たな得物が魔王を睨む。
底冷えする殺意を銃口に宿し、スーパーヴァリスが火を吹いた。
ランスロット・アルビオンの武双は全て、KMFを始めとした対機動兵器用。
生身の相手を殺すには余りにも過剰過ぎる威力だ。
装填された弾丸は、掠っただけでも人体を容赦なく破壊する。
命中などしようものならば、ミンチがマシと思える肉片と化す。

弾丸の脅威にゼロは慌てず右手を翳す。
無駄な抵抗にしか見えない動作、だが魔王にとってはこれが最適解。
全身を抉り潰す鉄塊は宙でピタリと動きを止めた。

まるでトリック映像のような不可思議な光景。
これこそ魔王が持つ最大の矛であり盾でもある異能。
ワイアードギアス、ザ・ゼロ。
森羅万象を無に還す輝きは、バトルロワイアルだろうと変わらず行使可能。

93ピカレスク:2024/02/20(火) 20:09:24 ID:eitrr3cU
敵が一兵卒程度なら、常識を鼻で笑う現実に慄いただろう。
だが此度は枢木スザク、泥の底へ心を沈ませようとも天才的な戦闘センスは健在。
続けてトリガーを引き、スーパーヴァリスが殺意を吐き出す。
弾丸の嵐をギアスが止め、先程とは反対にゼロが接近。
機体そのものへザ・ゼロを当て機能停止を狙う。
尤もそう簡単に懐へ潜り込むのを許す程、スザクは甘い戦士ではない。

照準はゼロに合わせたまま移動。
ランドスピナーが高速回転し、巨体とは裏腹の機動力を発揮。
移動した先へ駆けるも急旋回、またもや引き離された。
縦横無尽に戦場を動き回りながらの射撃。
出鱈目な移動に見えて狙いは正確無比。
右からの弾丸を防いだ傍から、左より殺意が襲来。
片腕のみでは足りない、両手でギアスを行使し弾丸を宙へ縫い付ける。
しかし手数は向こうが上、蜂の巣にされるのは時間の問題。

「そこだ!!」

並のパイロットならば気付けない、隙とも呼べぬほんの僅かな裂け目。
それをスザクは見逃さない。
持ったままのMVSを投擲、飛来する真紅の刃は当たれば即死は確実。
なれどゼロの能力を以てすれば回避は難しくない、飛び退き死を遠ざける。
スザクの狙い通りに、だ。
スーパーヴァリスの射線上へ誘導完了し、王手を掛けるべくトリガーを引く。
発射されたのは弾丸に非ず、目も眩む鮮血色の光線。
ハドロン砲が魔王を飲み込み、骨の一欠片まで焼き潰す。

「だが甘い」
「っ!?」

コックピット内のレーダーが、何よりスザク自身の感覚が背後からの敵意を察知。
地から足を離し、頭部部分の真後ろにゼロはいた。
攻撃の先読みが得意なのは、何もスザクのみに限った話ではない。
敵が先の先まで読むのであれば、こちらは更に先までルートを作る。
スーパーヴァリスを後方へ向けると同時に、軽くない衝撃が銃身に走った。
余りの大きさに機体そのものの体勢がグラついた程。
この状態はマズい、急ぎ距離を取り再度狙いを付ける。

94ピカレスク:2024/02/20(火) 20:10:35 ID:eitrr3cU
右腕を跳ね上げ、そこで気付いた。
銃身部分が破損しており、これでは撃っても弾が発射されないどころか暴発で自分がダメージを負う。
蹴りの一撃でKMFの武装を破壊したゼロが、追撃に出ない理由は無い。
羽織ったマントが生き物のように蠢き、純白の騎士目掛けて射出。

「くっ…!」

武器一つ失ったのは痛手、しかし戦闘の継続は十分可能。
MVSやスーパーヴァリスだけが持ち得る装備の全てではない。
スラッシュハーケンを巧みに動かし、ゼロのマントを迎え撃つ。
黒い蛇と鉄の触手が踊り合う中、魔王と騎士が真っ向からぶつかる。

MVSを拾うや否や振り被る騎士へ、魔王が頼るはやはり己の肉体。
剣相手に徒手空拳などと侮るなかれ、油断出来る相手で無いとスザク自身も理解している。
拳と刃、マントとスラッシュハーケン。
互いに何発放ったかを数えてはいない、そんなものに思考を回せる余裕を持てる敵ではない。
己の首に添えられた死を跳ね退け、反対に相手の心臓へ終わりを叩きつける。

恐るべき人間だと、ゼロは我が身を以ち改めて実感する。
彼にとって枢木スザクとは、殺し合い以前から最大の脅威だった。
たとえ自身の知る世界のスザクでなくとも、強さの程は一切変わらない。
ましてこのスザクは繋がりし者(ワイアード)じゃないにも関わらず、ここまで自分と渡り合うのだ。
全く、敵ながら一周回って感心する他ない。

故にこそ、己の内へ形容し難い痛みが生まれる。
世界は違えど間違った過程を嫌うスザクが、正にその道を転げ落ちている現実に。

95ピカレスク:2024/02/20(火) 20:11:27 ID:eitrr3cU
「……」

命のやり取りの場において感傷は枷だ。
思考をどんな名剣よりも研ぎ澄ませ、勝利への最短ルートを構築。
出来上がったら後は実際に動くだけ。
切っ先を真っ直ぐ見据え、ザ・ゼロを発動。
虚無の光に剣が侵食され、MVSは瞬く間に機能を停止。
切れ味を失った刀身を駆け上がり、今度は機体に直接ギアスを叩き込む。
スラッシュハーケンを戻すのも間に合わない、叩き落とすのだって手遅れ。
死が待ってましたとばかりに牙を剥き、スザクを喰い殺さんと迫りくる。

――生きろ

絶体絶命の危機、それこそスザクが能力を最大限以上に引き出す瞬間。
友が与えた願い/呪いは断じて死を認めない。
素でさえ、超人的な身体機能を持つスザクのリミッターが外れる。
生きる、その為に必要な動きに移る準備は完了。
レバーを操作すると、全身に尋常ではない負荷が圧し掛かった。
元々スザク以外では扱えないランスロットで、更に無茶な動きを実行したのだから当然である。
全身から上がる悲鳴を黙殺、回避不可能な体勢からの迎撃により魔王の勝利が覆された。

「っ…!!」

魔女との契約で得た不死の肉体は、KMFの一撃だろうと簡単には滅ぼせない。
とはいえ防御も取れずに直撃を受け、流石に堪えた。
叩きつけられ、仮面の下で漏れる短い苦悶の声。
だがまだ死には至らない、魔王を殺すにはもっと確実な方法が必須。
もう一本のMVSを拾い上げ、完全なるトドメを刺す。

「終わりだ、ゼロ…!!!」

終焉が足音を立てて近付いて来た。
不死を否定され、冥府へと手を引かれるのを受け入れる。
或いは、それも一つの選択だろう。
光り輝く正道を往く騎士に、魔導を往くしか無かった魔王は敗北。
何かが違えば、抵抗せずに自身の終わりに納得したのかもしれない。

96ピカレスク:2024/02/20(火) 20:12:23 ID:eitrr3cU
ああ、だけど

「お前には…殺されてやらん」

何故だろうか。
今のスザクに命をくれてやる事だけは、酷く気に入らない。

騎士の剣が魔王を殺す。
カビの生えた展開を否定するべく、魔王もまた剣を取り出す。
直接の斬り合いに興じるつもりはない。
頭上へ放り投げ、重力に従い落下した柄を蹴り付ける。
ゼロの脚力で放たれたソレが、さながら銀の弾丸の如く騎士へ放たれた。

たかが剣一本、怒れる騎士の進撃を止めるには力不足。
本来ならば、そうだったろう。
容易く躱されるか、羽虫のように地面へ落ちるか。
その程度の悪足掻きでしかなかった筈。

だというのに騎士は動かない、スザクは動けない。
急速に迫る刃が、いやにスローモーションに見えて仕方ない。

スザクはゼロが蹴り飛ばした剣に見覚えは無い。
しかし分かる、分かってしまう。
剣に宿る力、殺し合いに巻き込まれなければ一生知る機会の無かったモノ。
それを知っている、知らない訳が無いのだ。
だってあれは、剣から感じるあの力は――

97ピカレスク:2024/02/20(火) 20:13:54 ID:eitrr3cU
「貞…夫……?」

友情を結んだ魔王と同じなのだから。

一騎当千の騎士と言えども、動かなければただの的。
碧の瞳を貫いても止まらず突き進む。
内部システムが食い荒らされ、コックピット内の画面にもエラーが表示。
カメラアイの破壊により視界は奪われた。
予備システムが即座に起動、戦場が再び映し出される。

「っ!?」

だが遅い。
魔王を相手に余りにも致命的。
添えられた掌から光が溢れる。
輝かしい絶望が、枢木スザクへこれ以上ない王手を掛けた。

「う、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

伸ばした手は何も掴めない、誰も殺せない。
全てがゼロになる。
何もかもが無に還る。
全機能が停止した騎士は最早、物言わぬ木偶人形と変わらない。
友が残した呪い(ギアス)共々、少年の命が失われていく。

勝利の女神は騎士に唾を吐き、魔王へ愛を囁く。
ここに一つの決着は付いた。

98ピカレスク:2024/02/20(火) 20:14:29 ID:eitrr3cU



コックピットを出たのは奇跡に近い。
ザ・ゼロを食らいながらまだ動くことが出来た。
執念の為せる技か、スザクの持つ能力がそれだけ異常だからか。
どちらが答えにしろ、迎える結末は同じ。
戦闘はおろか、立つ事すらままならない。

「僕、は……」

地面を這い、指先に力を籠めようとするも無理だった。
身動ぎする体力も失われていき、嫌でも終わりを理解させられる。

結局自分は何がしたかったのだろうか。
犯した罪の重さに絶望し、だけど苦しみを分かち合う友がいてくれて。
戦えない人々を友と一緒に保護している時、少しだけ救われた気がした。
焼き払った人々が生き返る訳じゃ無い、自分の罪は帳消しにならないと分かっていても。
もしかすると、目を逸らしていただけなのかもしれないけど。
それでも、魔奥貞夫が共に戦ってくれて嬉しかったのは嘘じゃない。

「俺は……俺は……!」

分かってる、分かってるんだ。
本当にやるべきは、友の死を背負って助けを待つ人達に手を伸ばす事だったと。
自分がやったのは彼への裏切りに等しいと、心の底では分かっていた。

「スザク」

頭上から掛けられた声に、視線だけをどうにか移動する。
荒れた大地を背にこちらを見下ろす、黒い魔王。
放って置いても死ぬというのに、わざわざトドメを刺すつもりか。
死刑執行人を気取る男の顔をせめてもの抵抗で睨み――凍り付いた。

99ピカレスク:2024/02/20(火) 20:15:13 ID:eitrr3cU
「あ……」

そこに無骨な仮面は無い。
レンズを貼り付けた偽りの顔じゃあない、晒されたのは魔王の素顔。
その顔をスザクは知っている。
アメジストの輝きを持つ瞳も。
黒曜石のように艶のある髪の毛も。
自分の知る『彼』よりも達観した雰囲気こそあれど、見間違える筈がない。

「ルルー…シュ……?」

袂を分かった親友がいる。
もうすぐ死ぬというのにルルーシュの顔を見た途端、視界がやけにハッキリし出す。
放送で名前を呼ばれた彼の顔を、もう一度見る事が出来た。
自分の与り知らぬ場所で死んだ彼に、どんな感情をぶつけるべきか分からなかった。
だけど今、もう一度ルルーシュに会えたなら。
たとえ違う世界の彼でも、自分の名を呼ぶ彼がここにいるのなら。
込み上げる想いを口に出すのに躊躇はない。

「ルルーシュ……」

そうだ。
偽りなんかじゃない、湧き上がるこの気持ちはきっと――





「ふざけるな……!!!」





憎しみだ。

100ピカレスク:2024/02/20(火) 20:17:43 ID:eitrr3cU
結局この男は、どの世界でもゼロを選んだ。
間違った過程を良しとし、結果だけを重視する。
ナナリーが本当に喜ぶかどうかなど、微塵も考えようとしない。
優しい世界などという言葉で誤魔化した、嘘に満ちた世界実現の為ならどんな犠牲も厭わない。
ユーフェミアを虐殺皇女に仕立て上げ、命と尊厳を奪った憎むべき友のように。

「ルルーシュ…!君は…お前はなんで……!」

怨嗟を吐き出しても、何一つとしてやれることはない。
拳の一発すらこの男には届かせられない。
命尽きるまでの残された時間全てで、友へありったけの憎悪を向ける。

やがて動かなくなって尚、血走った目は見開かれたまま。
悪鬼に堕ちた騎士に相応しい顔で、また一つ命の灯は消えた。

名を捨て、零の記号を得て生き続けた彼と、憎悪を抱き自分自身を捨てずに逝った彼。
一体どちらが少年にとって救いだったのか。
或いは、最初から彼に救いなど無かったのか。
答えを出す者もはもうどこにもいない。

死という変えられない現実だけが、ゴミのように転がっていた。



【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】

101ピカレスク:2024/02/20(火) 20:18:37 ID:eitrr3cU
◆◆◆


終わった。
戻って来るなり簡潔に言った男へ、星宮ケイトは暫し返す言葉に詰まった。

斑模様の長髪男との戦闘後、一人民家で待つこと数十分。
永遠を生きるケイトにとっては瞬きの間に等しい筈が、妙に長く感じられた。
そうして玄関ドアを乱暴に開け戻った男は、出て行った時と何ら変わらない。
負傷こそ見られるも致命傷まではいかず、仮面をこっちに向ける。

「勝った、のか?」
「そうなるな」

戸惑いがちに聞けば、淡々とした声色が返て来る。
付近で暴れている白いロボットが、ゼロにとって縁の深い者だとは薄々察していた。
だから一人で決着を付けるという申し出にも悩んだ末に頷き、自分はここに残った。
長髪男相手に受けた傷を癒す目的も、あるにはあったが。

「お前の方は何か……聞くまでも無いか」

民家の中は綺麗なものだ。
争いは勿論、訪問者の一人も現れなかったのだろう。
尤もそんじょそこらの相手程度、容易く返り討ちにできる力の持ち主だとはゼロも理解している。
とにかく自分の方は片が付き、彼女の方も問題無い。
それならさっさと移動するべきだと、彼女を促す。

102ピカレスク:2024/02/20(火) 20:19:35 ID:eitrr3cU
「大分休めたからな、動くのに問題ない」
「そうか。なら――」
「けどお前は違うだろ」

そろろそろ行くぞ、そう続けるつもりの言葉は遮られる。
見上げる姿は幼い少女が必死に大人へ追い付こうとしているようで、微笑ましいもの。
自分の腰の辺りまでしかない身長のケイトと、視線がかち合う。

「…傷は放って置いても治る。動けなくなる程の消耗もない。ここに留まる理由は無い筈だが」
「体のことを言ってるんじゃない。それなら私だってピンピンしてるからな!」

えっへんと無い胸を張る様子は、見た目通りの子供らしさ。
なれど適当にあしらえない。
じっと見つめる真紅の瞳がゼロを捉えて離さない。

「お前とあのロボットがどういう関係か、話したくないなら私も深くは聞かん。部下のプライベートに気を遣うのも首領の義務だ」
「勝手に部下にするな」
「むっ、強情な奴!…それはともかく、お前とロボットの操縦者に何があったか話す気が無いならそれで良い」

でも、と一拍置いてストレートに言う。

「別れを悲しむ時間は、誰にだって必要だ」
「…………」

咄嗟に返す言葉が思い付かない。
何を言われたのかは分かる、だけどそれにどう反応すべきかが分からなかった。
悲しむとは、自分が殺した友の死をか。
思うところが全く無い、という訳ではない。
だが友や妹との敵対は覚悟の上で、魔王の使命をC.C.から引き継いだ。
たとえ違う世界のスザクだろうと、殺した事に後悔はない。

103ピカレスク:2024/02/20(火) 20:20:21 ID:eitrr3cU
戯言だと、冷たく吐き捨てれば良い。
見当違いも甚だしいと、呆れを直接ぶつければ良い。

「お前も私も置いて行かれる側だ。何人自分の前で死んだかなんて、分からなくなってもおかしくはない」

それでも、何も言い返さないのは。
目の前の幼女が、ただ上辺だけの説教をしているのではないから。
契約を交わした魔女と同じ、永き時を生きた者だけが知る重みが言葉に宿っているが故か。

「けど、私はいつだって部下との別れは悲しんで来たぞ。私の征服について来てくれた者達がいなくなったら、隠さずにわんわん泣いた」

ガラクーチカを受け取った事に後悔はない。
幼き身でありながら女王として民を統べ、いずれ訪れる自分の運命を受け入れる準備は出来ていた。
不老の呪いが降り掛かり辛くないと言えば嘘になるが、征服者としての己を間違っているとは思わない。
組織を結社し、全世界の征服を果たすべく活動を始め気が遠くなるような年月が経った。
世は良い方向にも悪い方向にも流れ、現代は確実に後者。
東京リベリオンで笑うのはいつだって一握りの勝者と、そのお零れに与る連中。
そんな時代で再びズヴィズダーのメンバーを集めるまでに、多くの同胞が自分の元から旅立って行った。

部下の死は今に始まったものじゃあない。
自分一人が幼女のまま、老いて力尽きた者を看取るのだって珍しくもない。
出会いと別れを幾度も繰り返し、その度に悲しみの涙を流した。
呪いが解かれない限り味わい続ける喪失に、時折膝を抱えずっと俯いていたくなった時もある。
だけど、死を嘆く心を失いたいと思った事はただ一度もない。
悲しみを感じなくなったら、それは機械と変わらないから。
涙を流すのを忘れてしまえば、そんなのは自分じゃないから。

104ピカレスク:2024/02/20(火) 20:21:39 ID:eitrr3cU
「『ヴィニエイラ』としての自分を恥じたことも、後悔した事だってない。ただ私は機械のように征服をするだけの奴にはなりたくないから、いつだって泣きたくなったら思いっ切り泣いてやるんだ。…お前にも、そんな風にはなって欲しくない。人の心を忘れた奴に征服なんてできっこないぞ」
「……」

知るかと言えばそれで済むのに、たった三文字が口の中で消え失せる。
魔王になって日が浅い自分よりも永く生きて、それでも人間らしさを捨てない。
不合理と反論しようとすれば、頭をよぎるのは己自身が行った正に不合理な真似。
あの時、死に際のスザクにわざわざ素顔を見せた理由は何なのだろうか。
ゼロではなく、ルルーシュとして彼の最期を目に焼き付けたかったのは何故。
何より、憎悪に囚われ逝った友へ自分は何を思ったのか。

黙り込むゼロに、ケイトも何も言わない。
民家からは言葉が消え、互いの息遣いが微かに聞こえるのみ。
数十秒か、数分か。
正確な時間は定かでは無いが、先に沈黙を破ったのは舌足らずな幼女の声。

「あ、あー!何だかまだ体が痛いし疲れてるなー!もう少し出発を後らせた方が良い気がするなー!」
「……」
「幼女の体は大事にしないといけないからなー!」

わざとらしいにも程がある。
パタパタと駆けて行き、ソファにぽっすり座り込む。
クッションが小さな尻の下敷きになり、両足をぷらぷら動かす仕草は年相応の子供っぽさ。
空いたスペースを掌で叩きながらこっちを見る。
何を言いたいかはすぐに分かった。

よく分からない疲れにどっと襲われる。
動くのに支障がないとはいえ、体力の回復に時間を充てても損はない。
なら良いかと、少々投げやり気味に自分を納得させる。
隣にどっかり腰を降ろせば、何が嬉しいのか満面の笑みを向けられた。
他者を振り回すのが得意な癖して、時折自分でさえ惹き付けられる何かを持つ。

105ピカレスク:2024/02/20(火) 20:22:45 ID:eitrr3cU
「お前といると――」

捨てた筈の、『ルルーシュ』としての部分が顔を出す。
口には出さずに独り言ちる。
「ちゃんと最後まで言えー!」との抗議は聞き流し、仮面の下で目を瞑る。

友を殺し、憎悪を向けられた。
涙は流れない、後悔もしていない。
しかし見えない部分へ痛みにも似た感覚が走る。
人を捨て、自分自身の幸福も捨てて尚も自分にルルーシュの心が残っているのなら。
それは自分を殺す毒でしかないのか、或いは決して捨てるべきではないからこそ残り続けてるのか。
今のゼロには分からなかった。


【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、魔剣@はたらく魔王さま!
[思考・状況]
基本方針:主催者を殺し帰還する
1:ヴィニエイラと行動。
[備考]
※参戦時期はLAST CODEでナナリー達に別れを告げた後。

【星宮ケイト@世界征服〜謀略のズヴィズダー〜】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ガラクーチカ@世界征服〜謀略のズヴィズダー〜、変身用ウド×複数@世界征服〜謀略のズヴィズダー〜
[道具]:共通支給品一式
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを征服という形で終わらせる
1:ゼロと行動
[備考]
※参戦時期はアニメ本編終了後。

『支給品紹介』

【魔剣@はたらく魔王さま!】
元魔王軍四天王、カミーオが魔奥に持って来た剣。
かつて恵美(エミリア)に砕かれた魔奥の角の欠片から生み出されている。
魔力の残滓から一度は真奥と配下である芦屋達に、本来の姿を取り戻すほどの魔力を与えた。


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