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SS投下所

104ピカレスク:2024/02/20(火) 20:21:39 ID:eitrr3cU
「『ヴィニエイラ』としての自分を恥じたことも、後悔した事だってない。ただ私は機械のように征服をするだけの奴にはなりたくないから、いつだって泣きたくなったら思いっ切り泣いてやるんだ。…お前にも、そんな風にはなって欲しくない。人の心を忘れた奴に征服なんてできっこないぞ」
「……」

知るかと言えばそれで済むのに、たった三文字が口の中で消え失せる。
魔王になって日が浅い自分よりも永く生きて、それでも人間らしさを捨てない。
不合理と反論しようとすれば、頭をよぎるのは己自身が行った正に不合理な真似。
あの時、死に際のスザクにわざわざ素顔を見せた理由は何なのだろうか。
ゼロではなく、ルルーシュとして彼の最期を目に焼き付けたかったのは何故。
何より、憎悪に囚われ逝った友へ自分は何を思ったのか。

黙り込むゼロに、ケイトも何も言わない。
民家からは言葉が消え、互いの息遣いが微かに聞こえるのみ。
数十秒か、数分か。
正確な時間は定かでは無いが、先に沈黙を破ったのは舌足らずな幼女の声。

「あ、あー!何だかまだ体が痛いし疲れてるなー!もう少し出発を後らせた方が良い気がするなー!」
「……」
「幼女の体は大事にしないといけないからなー!」

わざとらしいにも程がある。
パタパタと駆けて行き、ソファにぽっすり座り込む。
クッションが小さな尻の下敷きになり、両足をぷらぷら動かす仕草は年相応の子供っぽさ。
空いたスペースを掌で叩きながらこっちを見る。
何を言いたいかはすぐに分かった。

よく分からない疲れにどっと襲われる。
動くのに支障がないとはいえ、体力の回復に時間を充てても損はない。
なら良いかと、少々投げやり気味に自分を納得させる。
隣にどっかり腰を降ろせば、何が嬉しいのか満面の笑みを向けられた。
他者を振り回すのが得意な癖して、時折自分でさえ惹き付けられる何かを持つ。


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