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SS投下所

34オールリピSS:2016/12/11(日) 23:57:54 ID:ZJK/L6V2
ギン、と鋭い金音が響く。
どさり、と重く何かが倒れ伏した音が聞こえる。
暫しの静寂の後…それを破ったのは冷たい男の声だった。

「……見込み違いでござったか」

男―――錆白兵は手にした直刀を倒れた青年に突き付けたまま、静かに言い放つ。

「なかなかに鍛え上げられた体付き、身のこなしも申し分ない。手に付いた竹刀ダコはその奇妙な刀を使い続けて出来たものでござるな。
 だが、振るわれた刀に丸きり力が入っておらぬ。意志も気合もないその有様では、棒切れを振るっているも同然よ。
 ……嘆かわしい、貴様に振るわれる刀が不憫でござる」
「……っ」

倒れ伏したままの青年―――黒鉄一輝は淡々と浴びせられる言葉に、静かに耳を傾けるしか出来ない。
憤ることも、悔しがることも、はたまた恐れて命乞いをすることもせず、全てを諦めたようなその反応。
例えるならば、その男は錆び付いた刀だった。

「……どうした、そのまま死にたいのでござるか」
「死にたく、なんて……」

初めて、一輝がまともな反応を示した。

「死にたくなんて、ない……ない筈、なのに……
 あの『殺し合い』で、あの男に殺されて……何故か、生き返って、
 今度こそ、彼女を……ステラを守ろうと、思ったのに……」

ステラ、その名は支給された名簿に乗っていた名前だっただろうか。
名簿には白兵が白銀の世界で行った殺し合いを上回る、膨大な量の名が記されていた。
あの世界で共に殺し合いに参加した人間の名も、何人か居たように記憶している―――あの死神の名は無かったが。

「生きて、一緒に戻ったとして……僕みたいな、誰からも、必要とされない人間が……
 彼女の隣に、立っていられる筈もないのに……どう生きれば、いいのか分からなくなってしまったんだ……
 こんな、親にも望まれない僕が……」

白兵は知らない。自分と出会う前、黒鉄一輝はノヴァという男に記憶を奪われたことを。
自分には信じてくれる、望んでくれる人々がいるという事を忘れ、父親に何も望まれていなかったことを突き付けられた、最悪の精神状態まで帰ってしまっていることを。
知らない、知るはずもない。故にただ、その嘆きを淡々と聞くのみ。

「ただ、このまま無様に、惨めに生き続けて……どうすれば……」

悲しげに、苦しげに、惨めに一輝は言葉を吐く。

「どうすれば……いいんだ……!」

(成程。錆びた刀ではなく、折れた刀であったか)

どういった経緯があって折れたかは知らぬが、戦えぬ剣士ならばもう用はない。


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