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SS投下所

1妄想民:2016/05/02(月) 22:32:15 HOST:p790234da.toymnt01.ap.so-net.ne.jp
SS投下をしたい方はこちらで

56混沌ロワ3:2017/12/29(金) 04:19:10 ID:oUfDjp/Y
前言ったようにリピロワと感想会が終わったくらいで投下したよ
Undertaleとあすみん関連くらいしか深く知ってる作品ないから変なところがあるかもしれないけど
気になったら書き換えちゃってください。あとタイトルもだれか決めてください

自分の想定ではこのロワのSansはP寄りのNルートかPルートだと思われる

57「架空学園2ロワ」三次創作、閲覧注意:2019/01/08(火) 01:28:29 ID:.r5PYFcw






















なんで。なんであなたとわたしはこんなにちがうの?

うまれてきて。いきていて、すむいえもあって、わたしはしんぞうすら、からだすら、いみもなく”ゆうごう”させられちゃったのに。

なんで。なんでこんなにくるしいの。
ねぇ。デザイナーベビー。わたしうまれてきても、よかったのかな。

魔人柱と化したデザイナーべビーの泣き声が。響き渡る。

"違う!""――きみはボクが、助けなきゃいけないんだ!"
なんで?きみに、わたしをどうこうできるの?
みんな、むいみだったのに。いみすらないのに、しんでいっちゃったのに?


だからってそこにいたって、どうにもならねぇだろ!
でも―――ボクは、君だけを守りたい!

君を"守りたい"から守るっていっちゃあ、ダメなのかよ!


だって、ボクは、きみの叫びを聴いて―――やっと。



マグニフィセントの咆哮でも、彼女には届かない。




それでも――――なんで、手をのばそう、とするの?

やめて、やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて、やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。


わたしの"てを"、つかまないで。



ああ。そうか。
わたしは、きみに恋をするために、いたんだ。

わたしなんて、いきることすらもできないくずだったのに。
ねぇ、なんでわたしを、すくったの?


ジーっとしててもどうにもならないから。,,,,それと、キミの叫びが聞こえて、やっとボクにはいた気がしたからだ。

初めて、ボクの事を「理解してくれているひと」....が......

なぁ....次逢えたら......なれる、かな、"とも......

あぁ―――そうか。

ごめんね。でも、ありがとう。うれしかったよ?せめて、いっしょに、いて。ください。

いや。ちがう。いっしょに、ねむってくれますか?

これなら、あなたの"生"にも、わたしの"生"にもいみもあったはず、だから。


【XXXX ”魔人柱”■◆■・キリエライト――死亡】
【出席番号、2番 朝倉リク―――】

【残りXX人】

58「架空学園2ロワ」三次創作、閲覧注意:2019/01/08(火) 01:39:16 ID:.r5PYFcw
修正

"でも――ボクは"→"だから――ボクは"。

続き
"分からないのか?....君を"守りたい"から守るって言っちゃあ、ダメなのかよ!"

"ああ。そうか。
わたしは、きみに恋をするために、いたんだ。"



"ああ、そうか。
てを、にぎってくれた、わたしは、きみに恋をしたかったために、いたんだ。"

"やっとボクにはいた気がしたからだ。"→"やっとボクにはいた気がしたんだ。"

59妄想民:2019/08/12(月) 00:52:54 ID:6uTiYROQ
素晴らしいssだらけだ

60妄想民:2019/08/13(火) 09:49:56 ID:ih75dwes
まあアレなssもあるけど
最近はSSが全く投下されてないから寂しいね、また読みたい

61妄想民:2019/08/14(水) 13:05:16 ID:nXZvy6ZY
いちいちwikiに転載するのがめんどくさいからここに書かないだけでSSだけならwikiで更新されているぞ?

62妄想民:2020/05/12(火) 23:29:16 ID:WyEfe38s
これより、土曜日の語り再開前後に投下したいと考えているSSの一部を投下します。

【注意】
・まだ仮投下です。皆様の評価次第で没になる可能性もあります。
・諸事情により速筆を優先したため、内容台詞描写設定の校正が不十分です。ご了承ください。
・ご指摘や修正の意見も承ります。

63妄想民:2020/05/12(火) 23:31:16 ID:WyEfe38s
「滅却師の皇帝よ、己の未来を『視』誤ったか」

全知全能のユーハバッハが敗北して間もなく、彼が座していた王座の前に絶望を形容する黒い人型が佇んでいた。
いつの間に、全く気配もなく、ソレは死闘を終えた空間に出現していた。
そして、ユーハバッハと対峙していた全ての者がその声を聴いた瞬間、誰もが身構えていた。
そしてその内の何名かは、その正体を理解していた―――その名は、アンチスパイラル。

「反螺旋族の集合意識体、何をしに来た」

「特異点を集めしタイタン星人よ、ここは我々の領域、我々が創造せし宇宙だ」
「ゆえに、我々の知覚はこの宙域を捉えている」
「さすがに、蟻のように細かき人間共を全て識別することはないが」
「我らが同盟、ユーハバッハの死とあらば話は別だ。かの超越者を倒した、それがどのような者達なのか見に来たに過ぎん」

そう言って、アンチスパイラルはその場にいる全員を一瞥するような仕草をする。
弱肉強食の理から外れた反逆者達、全てを無に還さんとする愚考者達、無限の可能性を求めし異端者達。
その面々を、ただ一つの情を表さずに見ていた。

「おい、そんなこと言って、俺たちを潰しに来たんじゃないのか」

「否。終末を望む天司よ、我々は戦いに来たのではない」
「ここに居る我らはただの影法師、我らの中核は螺旋に目覚めし者共を注視している」

突如、アンチスパイラルのそばに映像が映し出された。
画面は星々の海に満たされ、その中にはアンバース頂点の城塞や元資源衛星の機神も映し出されていた。
そしてそれらと比較できる程に異常に巨大な機械人形が2体、モニターに映し出せない程に逸脱した攻防を演じていた。
その光景はまさに巨大な絶望と希望の激突。
その規格外、次元の違いを見せつけられれば、広間にいた面々から一時的に言葉を失わせるには充分だった。

「スケールが違い過ぎる…論外同士のバトルとしか言いようがないわ」

「そういうことだ、幻想郷の巫女。ゆえに、我々にお前達を相手する暇はない」
「だがそうだな、これだけは言っておこう」
「よくぞ、ユーハバッハを倒してくれた」

「!? それは一体、どういうつもりで言っているんだ!」

「かの皇帝は強力な同盟者であり、同時に我々の足枷でもあった」
「参加者の大半が反乱して攻め入る事態にになっても、お前達と戯れる事を選ぶ程にユーハバッハは盲目であった」
「だが、皇帝が消えたことで、奴に与えられた拒否権もなくなり」

「ようやく、原初返還による幕引きを始められるようになった」

「!? なん……だと……!」

「さぁ、原初神カオスよ、目覚めの時だ」
「我々が時空断層の狭間を創ろう、その瞼を開かせよう」
「そして、盟友ユーハバッハを倒した者共に、祝福を与える時だ」
「奴らの増長、スパイラルの増加を阻むために、地表全てを資源に還るがよい」

64妄想民:2020/05/12(火) 23:33:11 ID:WyEfe38s
空間が割れる。
ソラが割れる。
そして、あり得ざる光景が顕われる。
歪み、撓み、ねじ曲げられながら引き裂かれた―――
間隙の向こうに何かが在る。
あれは。
何だ。
歪みの宙の間隙からこちらを覗く、あれは―――

――――――あれは、瞳だ。
ソラの瞳が、地球を覗き込んでいる。



虚空の瞳が顕われた瞬間、世界は、時は、止まってしまった。
なぜなら、誰しもがその瞳に心を奪われたからだ。
見られている、偉容な存在に。
そこから放たれる熱量は、どれだけ離れていても肌身に感じる。



『―――原初たるカオスの再起動を確認。』
『―――あらゆる要素は、不要物として判断されます。』
『―――緊急警告。緊急警告。』
『―――カオス神、顕現。』
『―――資源の強制回収が開始されます。』
『―――惑星表層資源の、原初返還が実行されます。』



どこからか機械的で無責任なアナウンスが流れる。
カオス神。原初返還。その言葉の意味が、誰しもが知っている。
儀式の前に始まった光景を思い出すだけでよい。
惑星を抉り取る所業が、頭上にて待ち構えている。
ゆえに、誰しもがこの結論に思い至る。
―――ついに、超常の神による審判の時がきてしまった、と。

地上も、宇宙も、各種拠点も、それぞれの戦の勢いは止まらない。
ゆえに、誰しもが虚空の瞳に対応するには手遅れだった。
そして誰もが、絶望を抱いていただろう。





その瞳に向かって、地上から光の筋が突き進むまでは。

65妄想民:2020/05/12(火) 23:35:39 ID:WyEfe38s
とりあえずここまでです。
次が本命となる内容ですが、「その場の勢い」がいつ出てくるか分からないからあとどれだけ書き切れるか…

66妄想民:2020/05/13(水) 00:17:31 ID:Ay020SBM
SS乙です!
>>『―――原初たるカオスの再起動を確認。』
やべぇよ…やべぇよ…(絶望)

67妄想民:2020/05/13(水) 01:25:48 ID:Z4A9g17o
SS乙です!
続きがすごい気になりますね…そして絶望感がヤバい

68妄想民:2020/05/13(水) 20:24:43 ID:WyEfe38s
>>63>>64の続きです、しかしSSはまだ未完成なまま。
とりあえず第一目標まではSSを書き進める予定。(第二目標以降は時間次第)


怪獣を統べし怪獣の王。
地球を守護する星の巨獣。
太古より存命する核熱の申し子。
破壊の権化にして、環境の調和をもたらす抑止力。

その名は≪GODZILLA/ゴジラ≫。

ゴジラは、外来からの侵略者を拒む性質を持つ。地球に仇なす宇宙生物を徹底的に排除する。
このバトルロワイアル会場においても、『レギオン』や『キングギドラ』に対して明確な敵対心を持って攻撃していた。
―――然るに、外宇宙より星間来訪し、大権能でもって地球環境を死滅させる、生物ならざる機械神が相手だろうと。
―――ゴジラは一歩も引かず、最大の脅威として破壊するだけであった。

だが、ゴジラとて本能で理解していた。
敵対神は超大であり、通常状態のままでは返り討ちに遭うのが目に見えていた。
ゆえに、最も新しい王とリュウソウ族と邂逅し、リュウソウルとライダーウォッチの力で傷を癒やし。
そして、星の生存本能が生み出した真祖の姫君が持ってきた放射能の塊を喰らい、大幅な自己強化を図った。
―――その行為は諸刃の剣でもあった。
過剰な核エネルギーを制御するには至らず、いつ自滅してもおかしくない暴走状態に陥っていた。
そのような代償を負ってでも、天空の狭間から俯瞰する巨瞳を打ち落とすとあらば。
―――既に、ゴジラの覚悟は完了していた。

三つ首の黄金龍を倒した後、ゴジラは赤熱する身体を抑え、神を打ち落とす力を蓄えるために、氷塊漂う海中にて神の顕現を待ち構えていた。
他の参加者が宇宙に上り、主催陣営に反旗を翻しても、すぐに動くことはなかった。
ただ一度、同じく地球を守護する怪獣・ガメラが散った時、力の一部をを受け取ったゴジラは宙に向かって一撃を放ったのみだった。
その後も上昇する熱を蓄積し、灼熱の海に鎮座し続けたゴジラは。
―――ついに、ソラに開いた虚空を目測した。

間髪入れず、ゴジラの背鰭が青く輝く。
尾鰭から始まり、徐々に頭頂に向かって発光が進む。
それまで体内に蓄積した放射能エネルギーを射出する準備が整い。
全力を込めた蒼き光の帯が、ゴジラの口から放たれた。

それは、遊星を落とす程の熱量。
さすがに太陽を落とす事は不可能だが、それを包囲する構造物に打撃を与える事はできる。
ダイソン球こそがカオスの本体。
であれば、天球の構造を崩せばよい。たった一つの穴で全体へと連鎖自壊を始め、やがて内包する恒星に飲まれるだろう。
とにかく、その一撃が機神カオスに届けば、たとえ原初の父であろとも終焉を迎えるのは自明であった。

光の柱は一瞬にして星々の海を貫いた。
ソラを割りし巨瞳に畏怖を抱いた者達も、その一条の輝きに期待を抱いた。
誰しも全てが無為に終わるだと諦観する中で、超常事象に手を伸ばさんとする明確な意思に胸を膨らませた。
―――殆どの者が、意識無意識に関わらず、その一撃が届く事を望んでいた瞬間であった。





そして、光は。

ソラに開いた虚空にて、拡散されてしまった。

69妄想民:2020/05/14(木) 05:31:55 ID:Z4A9g17o
SS投下乙です!
届かないなんて…(絶望)

70妄想民:2020/05/14(木) 16:01:54 ID:WyEfe38s
>>68の続き、次の難所さえクリアすれば第一目標達成だ!(フラグ)


星間航行用超巨大戦艦、天球型時空要塞カオス。
星間航行の果てに異次元の宇宙に辿り着いていた原初の父。
かの超越神は、普段においては別宇宙に干渉することもなく静寂の中で鎮座していた。
分隊したゼウス艦隊が地球という希有な資源惑星に降り立った後も、特に手を出さずに悠久の時を過ごしていた。
オリュンポスの十二神が滅びの運命を辿ったとしても、カオスはそれを忘れ去ったかのように近くて遠き場所にて眠りについていた。

その後、紆余曲折あってカオス神はユーハバッハやアンチスパイラルなどと手を結んだ。
彼らの目的を利用して『船団の維持』『母星回帰』を果たせると判断しての事だ。
ただし、彼らの思惑が達成するまでは運営を任せっきりにした。
もし彼らの緊急事態宣言を受ければ原初返還でもって惑星資源だけでも回収するつもりであったが、そのような有事になるまでは動こうとも思わなかった。

そして現在、アンチスパイラルによって時空断層の亀裂が入り、カオス神は彼方の宇宙を注視した。
反螺旋族の求めに応じ、カオス神は原初返還でもって細事たるゲームを終わらせようとしていた。
だが、自らが顕現して間もなく、原初返還を実行する前に、思わぬ攻撃が飛んできた。
その攻撃は虚しく終わってしまった。虚空の窓、時空断層の迷宮により無意味となってしまった。

カオス神の宇宙とこちら側の宇宙は、空間の亀裂でもって繋がっていた。
その亀裂は多重空間の歪みでもあり、カオスに真っ直ぐ進もうとするものを惑わせ阻む障壁でもあった。
ゆえに熱線は虚空を貫けず、無軌道に拡散され、カオス神の機体には傷一つ付けられなかった。

―――しかし、カオス神はその明確な敵意を認識し、脅威として排除することを決定した。
ソラは神々の領域、何者をも侵すことはならぬ。
天空まで届く不敬に対し、神罰を下さねばならぬ。
ゆえに機械神は、原初返還を実行する前に、誅伐による敵対者の殲滅を即座に実行した。

―――光が疾った。
超光速の一瞥、一撃。

それは事象の彼方から放たれる太陽の極光、必滅の怒り。
旗艦カオスの傘下にいる機神だろうと、一瞬にして神核を消滅させる大権能。
たとえ相手がティターン艦隊だろうと、巨大生命体タイタンだろうと、関係ない。
カオス神が見定めた物は、原初の海に還るのみ。



そのたった一度の攻撃で、世界を白に瞬かせた。















そして地上は、ゴジラは―――















一人の闘士が身代わりとなって消滅し。


レッド族三人のウルトラバリアーによって。


まだ、その命を繋いでいた。

71妄想民:2020/05/16(土) 12:34:52 ID:D6oZ/U3Y
とりあえず怪異ルート以外で1000%の補足できそうなネタ思いついたけど皆の意見が欲しい(ただ本スレ>>1530と矛盾するかもしれないからなんとも言えない)

まさか天津、アークサウザーにSCP-010-JPを組み込んでいたとは
あれは未来予知と言う名の『入力された未来に辿り着くまで繰り返す(ただし違う未来にたどり着きそうだった場合時間がループ。入力された未来になったらループ停止)』
(ただしユーハバッハ生存時ではそこまで万能ではなく、ループ強制停止からの黒至牟の卍解覚醒等のイレギュラー等々が発生等)
でもこれ天津が望む未来に辿り着くまで天津自身が何度も試行繰り返したってなるとちょっと笑えてくる

SCP-010-JPの詳細→ttps://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/36231.html

72妄想民:2020/05/16(土) 13:11:23 ID:nXZvy6ZY
つまりリゼロのナツキ・スバルですね、分かります
>>1530と矛盾するという話ですが、ならばアークサウザーそのものにSCP-010-JPが搭載されたのではなく
アークの方に搭載したというのはどうでしょうか?
これならアークを破壊した真の理由が自身の最大の弱点を悟られないための証拠隠滅と小型化しサウザーへの搭載に成功したため(本スレ>>2182と折衷できる?)

展開的にも1000%自体は34話からほぼ変わらないが、アークは魔改造されており、天津が動く(ユーハバッハが死ぬ)まで動かない機械故に未来を見ても把握できなかったことにできる
1000%が凄いんじゃなくてアークが凄かった、良い着地点だと思います

73妄想民:2020/05/16(土) 13:16:01 ID:D6oZ/U3Y
>>72
ありがとう 正直SCP便りすぎるし結構無理やりかな?って思って一回こっちに貼ってみた
そう言ってくれると助かる

74妄想民:2020/05/16(土) 13:16:53 ID:VaVNqngw
いいと思います。
>>1530に関しても特殊能力が無いと思ってたけど、実はscpで常に未来の取捨選択をしてたため
一見ないように見えただけとか補完すればいいと思うし

75妄想民:2020/05/16(土) 13:20:03 ID:VaVNqngw
>>72
あぁ、こっちの方がいいですね

76妄想民:2020/05/18(月) 16:44:37 ID:WyEfe38s
本スレ>>2408で投下したエピローグを少し手直し


後日談というか、今回のオチ。

「つまり阿良々木君は殺し合いの中でもハーレムを作ろうとして性癖を暴露した変態だった、ってことね」
「っておい!人の話をどう聞いたらそういう総括になるんだよ!」

僕は、あの混沌とした大事件から帰還できた後、不在期間に何があったのかを戦場ヶ原に問い詰められて、洗いざらい隠さずに全てを話した。
―――だけど、どれだけ僕の事を貶めたいんだよ、この女は!

「まぁ、阿良々木君のことだから、いつも通り首を突っ込んでいつも通り大変な目に遭ってきたのね」
「なんだよ、こんな出鱈目な話、お前は信じるのか」
「そりゃあ、私からあなたに聞き出した話だし。阿良々木君、こういう時に嘘を交えて話す事はないだろうし」

そう言った後、戦場ヶ原は急に体を動かし。

「とにかく、お疲れ様」

そして、僕の頭を撫で始めた。
いやはや、男子である僕が同級生の女の子に撫でられるだなんて。
普通逆だろ。こういうの。男子が女子を撫で撫でするのが定石だろ。
でもまぁ、こんな風に誰かに頭を撫でられるのって、いつ以来だろうな。
こうやって誰かに褒められながら、顔を見つめられると。
―――すっげー嬉しいけど、すっげー恥ずかしいじゃん!



「そういえば阿良々木君、『七瀬かりん』って知っている?」
「……一応、まぁ知っているけど」
「あら意外、何でも知らない阿良々木君がアイドル事情に詳しいだなんて」
「いやそこまで言ってないけど、何だよ急に」

その名前を聞いたとき、僕はドキッとした。
だって、僕がその名前を初めて聞いたのはあのバトルロワイアルの最中、八神マキノの口からであって。
その事については、(特に必要ない情報だと思って)戦場ヶ原には伝えていない。
なのに、なんでこんなタイミングで?

「ちょっと前に亡くなった彼女について、巷で色々と噂が流れているのを聞いてね」
「噂?それ、誰から聞いたんだ?」
「羽川さん」

やっぱり羽川か、だと思ったよ。
ホント、お前は何でも知っているな。
―――とまぁ、僕は脳内でいつものアレを再生しているところだが、話から少し脱線しそうなので今回は割愛させてもらう。

「それで、どんな噂があるんだ?」
「例えば、とある地方都市に亡霊として現れた、とか」

それも、マキノ経由で聞いていた都市伝説の一つである。
というか、僕も実際にその亡霊『鋼人七瀬』とあの場所で遭遇したのだが。
あの時は逃げるので手一杯で、その一度っきりで再会することはなかったが。
―――ただ、あのときの『彼女』の異質さは、今でも忘れられない。

「とある掲示板でその亡霊はでっち上げで、掲示板の管理人こそ七瀬かりんだ!、なんて誰かが論破したとか」
「なんだそれ」

それは初耳だ。
たぶんそれは、本物の亡霊を見ていない人がトンデモ推理をしたのか。
はたまた、何か意図を持ってそんな推論をでっちあげたのか。
とにかく、僕の知らない世界で知らない戦いがあったのだろう、と特に気には止めないでいよとした。
が。

「そしたら、死んだはずの『七瀬かりん』が本当に生きて見つかった、って噂も流れ始めたそうよ」
「……は?」

なにそれ。
その噂が本当で、『七瀬かりん』が生きていたというのなら。
じゃあ、僕があそこで見た『鋼人七瀬』は。
一体、何なんだ?

「な、なんで死んでたはずの人間が生きて出てくるんだよ」
「さぁ、わからない。私も、噂で聞いた程度だし」

戦場ヶ原から要領を得ない変な話をそこまで聞いたところで。
僕の携帯電話に、メール着信のお知らせが届いていた。

77妄想民:2020/05/18(月) 16:45:17 ID:WyEfe38s



宛先:八神マキノ
件名:怪事件発生、協力求む

お久しぶり、アララギ君。
早速なんだけど、アララギ君は『鋼人七瀬』の元となる『七瀬かりん』が生きていた、って話聞いている?
なんでも、岩永さんがとある掲示板で『鋼人七瀬なんて亡霊はいない、生きていた七瀬かりんが演じたに過ぎない!』って推理をでっち上げて閲覧者に信じさせたら。

 な ん と 、警察の捜査で本物の『七瀬かりん』が見つかっちゃったようなの!

まさに、嘘から出た実、ってところかしら。
この展開には岩永さんも慌てふためいて、この事態収拾に頭を悩ませているわ。
それで、アララギ君の街に今滞在している、って噂の「バランサー」の手を借りたい、って言っているから。
今度、そっちに遊びに行くね。
あと、小夜ちゃんも一緒に行くから。
案内よろしくね♪



その文章の下には、一枚の写真が添付されていた。
自撮りのおかげで顔がアップになっている八神マキノ。
その後ろで頭を抱えて発狂していそうな岩永琴子。
岩永の横で彼女を宥めようとしている鷹取小夜。
拡大表示しなくても、よく分かる写真であった。

………………………………………。
なんだか今、僕の世界って色々と大変な事になっているような、そんな気がした。

「ふーん。やっぱり、私の知らないところでも阿良々木ハーレムを作っていたじゃない」

僕が動揺している間に文面と写真を見た戦場ヶ原が、したり顔でこっちを見つめていた。
―――こうなったら、妖怪ポストにでも手紙を送って、助けを呼んでみようかな


エピローグ『虚物語  第霊話 かりんゴースト』

※速筆で端折って書いたので文が変なのと、色々と矛盾点がありますが、100パーセント虚構で書かれた内容なので、適当に流してください。

78妄想民:2020/05/21(木) 15:20:23 ID:W6t2An6c
BLEACHエピローグその2


見渡す限りの砂漠と暗い空に挟まれた世界。死と、無念が形作る領域。 

虚圏へと、スタークは還ってきた。

変わらねぇな、と呟いた。それに応えるものは誰もいない。主催の本拠地に、リリネットはいなかった。自らの半身である従属官の小さな少女の破面。ユーハバッハには、彼女を人質にされたからこそジョーカーとして参加したのだが……。

ユーハバッハが嘘をついていたのか、それとも未来を視て自身の裏切りを知っていたためにどこかのタイミングで改めて抹殺されたのか、今のスタークには知る術はない。彼は全知全能ではない、一人の、孤独な破面だからだ。

虚圏へと戻ったのは、特に理由はなかった。ユーハバッハが倒れた事で、三界は再び別れるとサノスに聞いた。そうしたら、なんとなく戻りたくなったのだ。誰もいない世界だ。再生されたばかりの世界には死者も虚もいない。つまり孤独になるとわかっていて、スタークはなんとなく、戻ってきたのだ。

とりあえず、虚夜宮(ラス・ノーチェス)の跡にでも向かってみるかと歩いていると、岡の向こうに3つの強い霊圧を感じた。

「あ! 見ろよミラ・ローズ!! やっぱりプリメーラ(#1)じゃねぇか!!」
「うっさいよアパッチ! いちいちデケェ声出さなくても聞こえるし、霊圧で判ってたっっーの!!」
「アァン!? テメェが霊圧だけじゃ気のせいかもよ、って言ったからわざわざ見にきてんだろーが!!」
「おだまりなさいな二人とも。どうやらプリメーラも私たちとの遭遇は想定外だったらしくてよ」
「お前ら……確かハリベルの……」

姦しい三人娘は十刃#3の従属官だった。スタークは疑問に思った。なぜ、生きている? なぜ、ここにいる? しかし、その疑問はむしろ、あちら側が抱いたものだった。

「しっかしアンタ本当にプリメーラなのか? あいつ死神のチャラいおっさんに刺されて死んだんじゃなかったか?」
「ん……まぁそこは………」

アパッチ「…………」
ミラ「…………」
スンスン「…………」
スターク「…………」

「……色々あったんだ」
「いやそんだけ間を置いたんなら説明しろよ!? 相変わらずめんどくさがりだなアンタは!!」
「……どうやら本物のプリメーラのようですわね」
「まぁ仮にもヤミー除けば十刃トップだしな……こいつ。生きてても不思議はないけどさ……」
「仮にも」とか「こいつ」とか、一応オレ元上司なのに扱いひでーな……」

頭を掻くスターク。そうだ、とアパッチが言った。

「いや、ホンモンのプリメーラなら大助かりだぜ! 頼むプリメーラ! 俺たちと一緒にハリベル様を救ってくれ!!」
「? どういう事だ?」
「虚圏に、白装束の謎の一団が襲撃を仕掛けてきたのです。有象無象の虚や破面では太刀打ち出来ず、ハリベル様が奮戦されたのですが……」
「奮戦、じゃねーよ! ハリベル様が圧倒的に押してたじゃねーかよ! あのヒゲオヤジが出てくるでは……!!」
「!? まて、まてまて! まさかそいつら、霊子の弓を使ってなかったか……? ヒゲオヤジってのは、黒いケープを纏ってる、髪の長い偉そうなやつか?」
「知ってんのかプリメーラ!?」
「スタークだ。……もう十刃壊滅してんだから、名前で呼んでくれよ」

スンスンがそうですわ、と応えた。そのヒゲオヤジにハリベルが敗れ、連れ去られたとも言った。スタークは混乱した。が、やがて一つの答えに至った。

サノスだったか。あの男が気を利かせてくれたのだ。なぜそうしたのかまではわからない。単なる気まぐれか、気持ちを汲んでくれたのか……あるいは、この世界において『ユーハバッハ』を倒せという事なのか。

「……めんどくせぇな」
「アァン!? テメェハリベル様を見捨てんのか!?」
「テメーとバラガンが死神なんかにやられるから、虚圏の統治を買って出たハリベル様に恩を感じないのか!?」
「いやお前たちの頼みがめんどくせぇわけじゃねぇよ」

スタークがそういうと、三人娘はえっ、と驚いた顔をした。

と、四人は一斉に同じ方を見た。その先、遠くで数多の霊圧が乱れているのを感じたからだ。

79妄想民:2020/05/21(木) 15:20:54 ID:W6t2An6c

「アイツらまた来やがったな……!!」
「今度こそぶっ殺してやる……!!」
「落ち着きなさいな。皆殺しにしてはハリベル様がどこにいるか聞き出せませんわよ。一人二人は生かしたままにしないと」

臨戦態勢に入った三人の先頭に、スタークは立った。

「スターク?」
「これからオレたちが戦うのは滅却師だ。親玉のヒゲオヤジはユーハバッハって言って、めちゃくちゃ強いやつだ。はっきり言って藍染サマより強いかもしれねぇ」
「なん……だと……!?」
「嘘でしょ……あの化け物より強いっていうの、あのヒゲオヤジが……!?」

「だが、ま。意外となんとかなるモンだぜ」

 絶望に顔を歪める三人娘に、スタークはふっと微笑を浮かべて言った。

「なんだよ……アンタのそんな顔、初めて見たぜ……」
「この後に及んで嬉しそうな顔って、状況分かってます?」
「ああ、わかってるよ。ただ、まぁ。オレは戦いってやつはめんどくせぇから嫌いなんだが……」

「仲間を護るために、って思ったら……意外と悪くないかもしれねぇって思っただけさ」

そういうとスタークは響転を用いて走った。三人娘は慌てて後を追う。スタークは空を翔る最中に「帰刃」を行った。リリネットの霊圧は感じない。ヴァレンタインを倒したあの時から、なぜリリネット無しで帰刃ができるのかはわからない。だが、今は力を振るえることに感謝しようと、スタークは思っていた。

青い霊子が体を包み、密度の極まった霊圧によって体が黒く変色し始めていることに、スタークはまだ気づいていない。

──BLEACH ALL GENRE Ⅲ

『EPILOGUE :WHAT IF 千の夜をこえて』

【コヨーテ・スターク@BLEACH 生還】

80妄想民:2020/05/21(木) 17:43:20 ID:Ay020SBM
SS乙です
原作のIFへと繋がる粋な作品だ…

81妄想民:2020/05/22(金) 07:48:30 ID:9xR2oAR6
乙です
これは面白いエピローグ

82妄想民:2020/05/23(土) 07:22:46 ID:W6t2An6c
鬼滅の刃エピローグ補完


天気の良い日だった。

小さな小屋の縁側に、しわがれた男が座していた。畑の前ではしゃぐ子供たちを温かい目で見守っている。時折、思い出したように口付ける湯呑みに注がれているのは白湯であった。

今日もいい日だ。

肌を撫でる柔らかな風に心を靡かせるのは心地がいい。眠りたくなるほどで、事実その老人は隣にそっ、とかがみ込んだ妻が耳打ちするまで意識を手放す寸前だった。

「もう。気持ち良くなるとどこでもすぐうとうとするんですから」

老人はにこりと微笑んだ。老婆はムッと膨れた。

「私はこれから子供達と、炭吉さんのとこに出かけてきますよ」

お土産は期待しないでね、と言う老婆に、大丈夫。と返す。それは夫婦の暗黙の了解なのか、老婆は特に何も返さず、子供らを集めるとテキパキと出かけの準備をした。

「……!」

老婆は名前を呼ばれ、振り向いた。

気をつけて。老人はそれだけ言った。呟くような声だったが、明確に老婆に、妻に向けてのものだった。老婆ははいはい、と言い、離れていく子供達はいつまでも手を振っていた。

いい日だ。

いつのまにか、日が沈み始めていた。昼と夜の境界線。蒼く薄い空が世界に蓋をする。体が少し寒い。流石に風が冷たくなってきたか。そう思って、老人が目を擦ると、その目線を、揚羽蝶が横切った。鱗粉が星の砂のように軌跡を作る。

そして、老人は気づいた。

「……流石だ。老いてなお、平和にあってなお……お前の鋭さは増しているようだ……」

顔を上げた老人の、視線の先に、黒い着物に白い羽織りを被せた、侍が立っていた。

「兄上……」
「ひさしいな、緑壱……」

しわがれた声で、老人は名を呼ぶ。袂を分かったはずの来訪者に、しかし思った以上驚きはしなかった。今日はいい日だったからだ。ふと見上げれば、空には月が浮かんでいた。綺麗な三日月だ。

継国巌勝は、緑壱の隣に座った。

「……鬼舞辻無惨は……斬ったようだな……」
「……はい。夜通し斬り続け、朝日によって廃となりました」
「そうか……言葉足らずだったから……心配していた」
「いえ。兄上はあの時『斬れ』ではなく『斬り続けろ』とおっしゃいました。だから、その通りにしたまでです」

淡々と、緑壱は言った。

「兄上は……戦死なさいました」
「そうか……」

それも、淡々と言った。しかし、その言葉にはあらゆる意味を内包している。その言葉を噛み砕き、巌勝は目を閉じた。

「その確認に来られた訳ではないのですよね」

緑壱の声が、はっきりとした通るものになった。巌勝はああ、頷いた。

「約束を。お前と、凧揚げをしようと……思ってな。だが、お前がもし、人生を幸せに過ごせていないのなら……考えざるを得なかった」

巌勝は立ち上がった。闇に煌く白い羽織りが見せる。緑壱は追いかけた。その背中が、少しの悲しみを纏っていた。巌勝が振り返った。

「だが、お前は幸福だったのだな」

緑壱も釣られた。そして見た。縁側で項垂れる老人に、老婆と、子供たちが抱きついている。その目に涙が溢れていた。老人は眠っていた。その表情は、笑っている。夢見心地にあるのだろう。老婆の顔は、しわくちゃの顔をさらにぐしゃぐしゃにして、一生懸命に泣いていた。悲しみが溢れ出していた。

「緑壱」

巌勝が呼んだ。はい、と応えた。

83妄想民:2020/05/23(土) 07:23:33 ID:W6t2An6c
「お前が言ったことは、間違っていなかった。……我らは、いつでも安心して……身を引くことができたのだ。今ならわかる……遅すぎたがな」

『お労しや、兄上』

かつて、同じ顔をした緑壱に言われた言葉。あの時は意味がわからなかった。憐憫だと、蔑む言葉とさえ思っていた。だが、違ったのだ。憐みは確かにあっただろう。だか、その本質は違うのだ。

「緑壱」

緑壱に、手を差し出した。

「大儀であった」
「────!!」

緑壱は一も二もなく手を握った。張りのある肌に血が回り、重さのある肉を脈動して熱を持った。

「兄上──」


「お疲れ様でした」

巌勝とほぼ同じ顔をした緑壱が、言った。



二人を照らし、包んでいた三日月が山の向こうへ沈んでいく。役目を果たしたように。


暁の空はすぐそこまできている。
世界から消えた、太陽と月の兄弟。
偉大なる彼に、負けぬように。



────鬼滅の刃 オールジャンル3

『エピローグ:日はまた昇る』

84妄想民:2020/05/23(土) 13:28:49 ID:zHIlIsHk
SS乙です!
あっ、やっと…この兄弟が救われたんやなって…(落涙)

86妄想民:2020/06/14(日) 22:03:35 ID:W6t2An6c

「おかえりなさいませ、我が主よ」

空間の歪みから歩み出たサノスを迎えたのは、エボニー・マウを筆頭にするブラックオーダーの面々だった。彼らは突然行方不明になり、またこの場において唐突に現れたはずのサノスに対しても全く驚くことなく頭を垂れる。そして、彼らの主たるサノスもまた、それが当然であるかのように、まるで全てが掌の上の出来事であるかの如き振る舞いを持って応えて見せた。

「変わりないようで安心しました。我が主人(あるじ)よ」

マウはサノスの三歩後を歩いた。サノスのために用意した玉座に彼が座したところで、歩みを止めた。

「ストーンを全て、手に入れられたのですね」

サノスが手に装着するガントレット。そこには取り取りに輝くストーンが全て嵌められていた。にこやかに笑うマウに対して、ほかの3人のブラックオーダーらは驚愕の表情を浮かべ、ざわめいた。しかし、当のサノスはいまいちすっきりしない──というより、思考がまとまらないような、はっきりと複雑な表情を浮かべていた。

「マウよ。ストーンの力には限界が存在する」
「ほぅ、それはそれは……」
「な!? 本当でございますか!?」

プロキシマ・ミッドナイトが槍を鳴らしてサノスへ問いかけた。ともすれば不敬にも思われる言動であるが、この場におけるサノスとマウを除いた全ての者は、その心の内で彼女の驚愕に賛同していた。

「ストーンの力はこの宇宙でしか正常には働かぬ。いや、元々わかっていたことではあるが……」
「未来を「視」られたのですね?」
「……そうだ」
「そして、アベンジャーズに敗れる未来があった……と」
「エボニー・マウ! サノス様に口がすぎるぞ」
「よい。私が敗れる未来があったのは紛れもない事実だ」

サノスは躊躇うことなくガントレットを外した。

「では、ストーンはどうされます?」
「ストーンは我が元に置いておく。アベンジャーズにむざむざ渡すこともなかろう。なにより……これから私が手に入れんとするモノを制御するために、ストーンのパワーは絶対に必要であろう」

インフィニティ・ガントレットを捨て、手に入れたいモノ。またしてもブラックオーダーたちは目を見開いた。あまりにも短期間に驚きが連鎖している。言葉がうまく出てこなかった。ただ一人、マウだけがふむ、と口を自在に動かしている。彼には心当たりがあったのだ。インフィニティ・ガントレットを越える存在に……。

「と、いうことは。本当にアレがこの宇宙に存在している確証を得たのですね?」
「そうだ。ガントレットのパワーでは探知し切れなかったが、おそらく存在していることはわかった。ならば探さぬ手はなかろう」
「い、一体……なんのことです……? 私たちには何がなんだか……!?」

プロキシマとコーヴァスが前に出た。サノスは口を開いた。

「これから我らが探し求るは、INFINITY GAUNTLET(インフィニティ・ガントレット)を越えるモノ」

「MULTIVERSE(マルチバース)の領域を越え、遍く全てを超越する全能者の片鱗」

「HEART OF THE UNIVERSE(ハート・オブ・ザ・ユニバース)だ。それを探す」

サノスの静かな、それでいて覚悟の秘められた重厚な宣言を聞き、さしものブラックオーダーもかしこまった。しかしただ一人エボニー・マウだけが物押しすることなくサノスに会釈をした。

サノスの宇宙船が軌道を変える。
遠ざかるアスガルド、遠ざかる地球。

愛すべき娘との再会にさえ、サノスはもう目もくれない。

眼前に映るは真っ暗な闇。当たり前だ。これから彼らが行く領域は、ストーンのパワーでも遥か及ばない、無限の先の、その先なのだ。

サノスは言った。

「さぁ行くぞ。見果てぬ神の領域へ」

宇宙船は光の海へと姿を消した。

静かな宇宙が残された。
その静けさが束の間の平和か、恒久を貫くかは、神々の王と謳われ、神の視座にて世界を見下ろすLiving tributary(リビング・トライビューナル)にすら測れないだろう。

──THE AVENGERSA ALL GENRE Ⅲ

『EPILOGUE :MARVEL CINEMATIC UNIVERSE -THE END-』

87バルクホルンの想い(zwei):2020/08/05(水) 16:37:17 ID:Z4A9g17o
「…ところで一つ聞きたいことがあるんだけど…いい、かな?」

先程までトゥルーデに抱きついて泣きじゃくってたのが嘘のように、明るい口調でハルトマンは問いかける。

「別に構わないが…なんだハルトマン?」

(何か気になる事でもあったのだろうか…?)
と思いつつ、トゥルーデはハルトマンの言葉を待つ。しかしハルトマンの口から出たのは、トゥルーデにとっては予想外にも程がある言葉だった。

「トゥルーデはさ…キラって子のこと、好きなの?」
「な……!?お、お前…いきなりっ、何の事を…何を言ってるんだお前はっ!?」

トゥルーデは顔を赤くしながら、あからさまに動揺してしまう。まさかハルトマンがその事を聞いてくるとは思っておらず、またその事がバレているとも思っていなかったところにこの質問が来たのだ。普段はカールスラント軍人として冷静であろうと努めているトゥルーデであったが…今の彼女にはどう頑張っても、平静を保つ事も、冷静になる事も不可能であった。

「…へー……やっぱりそうなんだ〜」

(…えっ、あれで誰にもバレてないと思ってたの…?)
と思うも、そのままハルトマンは言葉を続ける。

「…先に言っとくけど、わたしは…トゥルーデにはあっちの世界に行って欲しくないなー…って」
「…どうしてそう思ったんだ、ハルトマン…?」
「だって…まだまだトゥルーデと一緒に居たいし、二度と会えなくなるなんて嫌だし…話聞いた感じたと、同じ人間同士なのに、強要されてるワケでもないのに…殺し合ってるみたいだし…わたしたちの世界よりずーっと死ぬ確率高いだろうし…それに、あっちの世界に行くってことは、クリスを…妹を、たった一人の家族を置いてくことになるんだよ?トゥルーデはそれでもいいの…?」

悲しそうに、しかしどこか諭すかのように、ハルトマンは問いかける。

「……わかっている、わかっているさそんな事…!…だからどうするべきかで悩んでいるんだ…。
…お前の言う通り、クリスは大切な妹で、たった一人の家族だ…お前たちも…かけがえのない大切な仲間だ…置いてなんて行けない。行きたくないんだ…!
…置いて行かれる辛さも、悲しさも…苦しさも…知っているつもりだ…。
……だけど…私にとってはあいつも…キラも、かけがえのない存在なのだと…気付かされた…いや、気付いてしまったんだ…。
……教えてくれハルトマン。私は…私はどうしたらいい…?…情けない事に私は、自分一人じゃどうすればいいのかを決められそうにない…!」

抱え込んでいた感情を吐露するトゥルーデ。そんな彼女を見てハルトマンは、申し訳なさそうに、

「ごめんトゥルーデ…ちょっと言い方キツかったかも」

と謝る。そして暫し考え込んだ後、再び話し始めた。

「…さっきはああ言ったけど、それ以上にわたしは…トゥルーデには幸せになって欲しいし、幸せを掴んで欲しい。トゥルーデが幸せになってくれるんなら、わたしはそれでいいんだ。
……だから、こういう時は自分の心に素直になっていいと思うよ、トゥルーデ。後悔なんてしたくない…でしょ?」

(こういうこと言うの、照れくさいんだけどな〜…)
そう思いながらもハルトマンは、自分の気持ちを伝えた上で、自分たちの世界と彼との…キラとの間で板挟みになって苦悩しているトゥルーデの背中を押そうとする。

88バルクホルンの想い(zwei):2020/08/05(水) 16:37:47 ID:Z4A9g17o
「……私は……」
「だいじょーぶ、トゥルーデがあっちの世界に行くことなったら、その時はわたしがクリスの面倒見るから。トゥルーデの分までわたしが頑張るよ。…そのための力も、なんか手に入っちゃったしね」

なおも悩んでるトゥルーデを安心させようと、優しい口調で喋りながら、ハルトマンはあっけらかんと笑った。

「ハルトマン…お前…」
「それに…そのキラって子の方がどう思ってるのかはまだわかんないんだろ?なら悩む前に、直接聞きに行ってもいいんじゃないかな。もしその子がこっちの世界に来たがってるようなら…勿論わたしは歓迎するつもりだよ」

(出来ればそうなってくれると、色々ありがたいんだけどねー…やっぱ難しいかなあ…彼にも彼の事情とかあるだろうし…)
と思慮しながら、ハルトマンは彼女の…トゥルーデの背中を押した。
それを聞いたトゥルーデは暫し悩む。そして彼女は…

「……それもそう…だな……ありがとうエーリカ。私は私の心に、素直に従ってみる事にするよ」

最終的には自分の心に従う事を選んだ。キラ本人にどうしたいのかを、聞きに行くという選択を。

「にしし…どういたしましてだよ、トゥルーデ!」

ハルトマンは満面の笑みを見せる。例え結果がどうなろうと、この戦友が後悔をする事は無いだろうと、そう確信したが故の笑顔であった。しかし…彼女はうっかり口を滑らせてしまう。

「……それにしても…ほんと、不器用でヘタレなところあるよねートゥルーデって」
「……おい、聞こえているぞハルトマン……!!」
「げっ…聞こえたの…!?待って待って!先聞きに行った方がいいよトゥルーデ!今行かなきゃ絶対後悔するからっ!」

聞こえてないと思っていた呟きを聞かれていた事に動揺し、ハルトマンは慌ててトゥルーデを急かした。

「ああ……お前の言う通り、後悔はしたく無いからな。今は聞きに行く事にする。それが終わったら……覚悟しておけよ?ハルトマン…!」

そう言い残すと、トゥルーデは部屋を出て行く。
彼女の足音が離れて行った後、一人部屋に残されたハルトマンはため息をついた。

「…はぁ…まさか聞こえてるなんて思ってなかったよー…。
……どうしよ……このままじゃ後でみっちり説教される未来しか見えないや…常磐やコウやナダ辺りに言えば匿ってくれるかなぁ…滝沢は…匿ってくれるどころか突き出されそうだからやめとくかー…」

そんな事を言いつつ彼女は、トゥルーデの想いが成就する事を祈ったのであった。

89妄想民:2024/02/20(火) 13:50:20 ID:eitrr3cU
test

90ピカレスク:2024/02/20(火) 20:07:09 ID:eitrr3cU
「ゼロォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

穢れの無い純白の機体から発せられたのは、怖気が走る程の憎悪で彩られた声。
何が彼をここまで堕としたのか。
その理由を知らないまま、魔王は死闘に臨む。

悲劇が生まれ、地獄が芽吹き、絶望が嗤う。
闘争の度に新たな物語が紡がれ、同時に一つの物語が終焉を迎える。
混沌の二文字がこれ程に似合うだろう光景も無い、それこそがバトルロワイアル。
100を超える魂が鎬を削り合う魔境にて、今宵の主役は騎士と魔王。
悪逆非道の怪物を打ち倒すべく、正義の剣を突き立てる。
語り尽くされた勧善懲悪の御伽噺と違う、誰もがイメージするのとは正反対。
俄かには信じられまい。
騎士は虐殺の魔導へ堕ち、魔王こそが騎士を止める使命を背負った者などと。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

正気を削ぎ落とした絶叫が開戦の合図。
双剣を手に騎士が接近。
迫る姿は姫の危機に駆け寄る心優しき従者とは程遠い。
生き血を求める悪鬼そのものであった。

91ピカレスク:2024/02/20(火) 20:07:48 ID:eitrr3cU
機械仕掛けの騎士、ランスロット・アルビオンを駆るは枢木スザク。
罪に苛まれ、それでも正しき道を歩まんとした少年の成れの果て。
とある魔王と友情を育み、欠けた心を癒したのは最早過去の話。
魔王は死に、絶望で己が身を腐らせた鬼がここにいるだけ。
真紅の双剣を叩きつける彼に、良心の呵責が起ころう筈も無かった。

「来るか、スザク……」

されど、迎え撃つ相手もまた狩られるだけの獲物に非ず。
永遠を生きる魔女との契約により、混沌を齎す使命を背負った魔王。
如何なる偶然か、世界は違えど断ち切れぬ因縁が彼らを引き寄せた。
運命、その二文字で片付けるには陳腐と分かっていても感じずにはいられない。
僅かに浮かんだ感傷を握り潰し、ゼロは拳を構える。
魔王にとっては自身の肉体そのものが最大の武器。

振り下ろされた真紅の剣、MVSがゼロの視界を占領する。
傍から見れば余りにも馬鹿げた光景としか映らないだろう。
生身でKMF(ナイトメアフレーム)と戦う、質の低いジョーク以外のなにものでもない。
であるならば、次に起こったのは自らの正気を疑うに違いない。
斬る、というよりは叩き潰さんと襲い来る剣にゼロは逃げも隠れもしない。
MVSに比べれば遥かにちっぽけな拳を叩き付け、弾いた。
ナイト・オブ・ラウンズが駆る高性能なKMFではない、生身で素手の相手がだ。
機動兵器の絶対性を過信するブリタニアの高官が見たら、泡を吹いて倒れること間違いなし。

動揺して然るべき光景にもスザクが抱くは決して冷めない怒り。
一撃が防がれた、だからどうしたというのか。
確実に死ぬまで攻撃を続けるのみ。

92ピカレスク:2024/02/20(火) 20:08:40 ID:eitrr3cU
もう片方の剣が振るわれ、こちらも拳で対処。
反撃に移る隙は与えぬとばかりに、右の剣が再度接近。
双剣が与える死は悉く回避され、拳が齎す破壊もまた届かない。
刃に切り裂かれた空気が悲鳴を上げ、鉄拳との衝突で起こる余波が地面を消し飛ばす。
得物の応酬でエリアを破壊したとて、両者決定打にならず。

手を変える必要がある。
憎悪に呑まれて尚も、こと戦闘となれば油を差した機械の如く思考が回るのは流石の枢木スザクか。
丁度50に届く刃を防いだゼロへ、ランスロットの足が唸る。
攻撃から防御へ変更、交差させた両腕に爪先が命中。
吹き飛ばされつつも空中で華麗に一回転、着地したと同時に殺意の接近を察知。

片方のMVSを捨て、新たな得物が魔王を睨む。
底冷えする殺意を銃口に宿し、スーパーヴァリスが火を吹いた。
ランスロット・アルビオンの武双は全て、KMFを始めとした対機動兵器用。
生身の相手を殺すには余りにも過剰過ぎる威力だ。
装填された弾丸は、掠っただけでも人体を容赦なく破壊する。
命中などしようものならば、ミンチがマシと思える肉片と化す。

弾丸の脅威にゼロは慌てず右手を翳す。
無駄な抵抗にしか見えない動作、だが魔王にとってはこれが最適解。
全身を抉り潰す鉄塊は宙でピタリと動きを止めた。

まるでトリック映像のような不可思議な光景。
これこそ魔王が持つ最大の矛であり盾でもある異能。
ワイアードギアス、ザ・ゼロ。
森羅万象を無に還す輝きは、バトルロワイアルだろうと変わらず行使可能。

93ピカレスク:2024/02/20(火) 20:09:24 ID:eitrr3cU
敵が一兵卒程度なら、常識を鼻で笑う現実に慄いただろう。
だが此度は枢木スザク、泥の底へ心を沈ませようとも天才的な戦闘センスは健在。
続けてトリガーを引き、スーパーヴァリスが殺意を吐き出す。
弾丸の嵐をギアスが止め、先程とは反対にゼロが接近。
機体そのものへザ・ゼロを当て機能停止を狙う。
尤もそう簡単に懐へ潜り込むのを許す程、スザクは甘い戦士ではない。

照準はゼロに合わせたまま移動。
ランドスピナーが高速回転し、巨体とは裏腹の機動力を発揮。
移動した先へ駆けるも急旋回、またもや引き離された。
縦横無尽に戦場を動き回りながらの射撃。
出鱈目な移動に見えて狙いは正確無比。
右からの弾丸を防いだ傍から、左より殺意が襲来。
片腕のみでは足りない、両手でギアスを行使し弾丸を宙へ縫い付ける。
しかし手数は向こうが上、蜂の巣にされるのは時間の問題。

「そこだ!!」

並のパイロットならば気付けない、隙とも呼べぬほんの僅かな裂け目。
それをスザクは見逃さない。
持ったままのMVSを投擲、飛来する真紅の刃は当たれば即死は確実。
なれどゼロの能力を以てすれば回避は難しくない、飛び退き死を遠ざける。
スザクの狙い通りに、だ。
スーパーヴァリスの射線上へ誘導完了し、王手を掛けるべくトリガーを引く。
発射されたのは弾丸に非ず、目も眩む鮮血色の光線。
ハドロン砲が魔王を飲み込み、骨の一欠片まで焼き潰す。

「だが甘い」
「っ!?」

コックピット内のレーダーが、何よりスザク自身の感覚が背後からの敵意を察知。
地から足を離し、頭部部分の真後ろにゼロはいた。
攻撃の先読みが得意なのは、何もスザクのみに限った話ではない。
敵が先の先まで読むのであれば、こちらは更に先までルートを作る。
スーパーヴァリスを後方へ向けると同時に、軽くない衝撃が銃身に走った。
余りの大きさに機体そのものの体勢がグラついた程。
この状態はマズい、急ぎ距離を取り再度狙いを付ける。

94ピカレスク:2024/02/20(火) 20:10:35 ID:eitrr3cU
右腕を跳ね上げ、そこで気付いた。
銃身部分が破損しており、これでは撃っても弾が発射されないどころか暴発で自分がダメージを負う。
蹴りの一撃でKMFの武装を破壊したゼロが、追撃に出ない理由は無い。
羽織ったマントが生き物のように蠢き、純白の騎士目掛けて射出。

「くっ…!」

武器一つ失ったのは痛手、しかし戦闘の継続は十分可能。
MVSやスーパーヴァリスだけが持ち得る装備の全てではない。
スラッシュハーケンを巧みに動かし、ゼロのマントを迎え撃つ。
黒い蛇と鉄の触手が踊り合う中、魔王と騎士が真っ向からぶつかる。

MVSを拾うや否や振り被る騎士へ、魔王が頼るはやはり己の肉体。
剣相手に徒手空拳などと侮るなかれ、油断出来る相手で無いとスザク自身も理解している。
拳と刃、マントとスラッシュハーケン。
互いに何発放ったかを数えてはいない、そんなものに思考を回せる余裕を持てる敵ではない。
己の首に添えられた死を跳ね退け、反対に相手の心臓へ終わりを叩きつける。

恐るべき人間だと、ゼロは我が身を以ち改めて実感する。
彼にとって枢木スザクとは、殺し合い以前から最大の脅威だった。
たとえ自身の知る世界のスザクでなくとも、強さの程は一切変わらない。
ましてこのスザクは繋がりし者(ワイアード)じゃないにも関わらず、ここまで自分と渡り合うのだ。
全く、敵ながら一周回って感心する他ない。

故にこそ、己の内へ形容し難い痛みが生まれる。
世界は違えど間違った過程を嫌うスザクが、正にその道を転げ落ちている現実に。

95ピカレスク:2024/02/20(火) 20:11:27 ID:eitrr3cU
「……」

命のやり取りの場において感傷は枷だ。
思考をどんな名剣よりも研ぎ澄ませ、勝利への最短ルートを構築。
出来上がったら後は実際に動くだけ。
切っ先を真っ直ぐ見据え、ザ・ゼロを発動。
虚無の光に剣が侵食され、MVSは瞬く間に機能を停止。
切れ味を失った刀身を駆け上がり、今度は機体に直接ギアスを叩き込む。
スラッシュハーケンを戻すのも間に合わない、叩き落とすのだって手遅れ。
死が待ってましたとばかりに牙を剥き、スザクを喰い殺さんと迫りくる。

――生きろ

絶体絶命の危機、それこそスザクが能力を最大限以上に引き出す瞬間。
友が与えた願い/呪いは断じて死を認めない。
素でさえ、超人的な身体機能を持つスザクのリミッターが外れる。
生きる、その為に必要な動きに移る準備は完了。
レバーを操作すると、全身に尋常ではない負荷が圧し掛かった。
元々スザク以外では扱えないランスロットで、更に無茶な動きを実行したのだから当然である。
全身から上がる悲鳴を黙殺、回避不可能な体勢からの迎撃により魔王の勝利が覆された。

「っ…!!」

魔女との契約で得た不死の肉体は、KMFの一撃だろうと簡単には滅ぼせない。
とはいえ防御も取れずに直撃を受け、流石に堪えた。
叩きつけられ、仮面の下で漏れる短い苦悶の声。
だがまだ死には至らない、魔王を殺すにはもっと確実な方法が必須。
もう一本のMVSを拾い上げ、完全なるトドメを刺す。

「終わりだ、ゼロ…!!!」

終焉が足音を立てて近付いて来た。
不死を否定され、冥府へと手を引かれるのを受け入れる。
或いは、それも一つの選択だろう。
光り輝く正道を往く騎士に、魔導を往くしか無かった魔王は敗北。
何かが違えば、抵抗せずに自身の終わりに納得したのかもしれない。

96ピカレスク:2024/02/20(火) 20:12:23 ID:eitrr3cU
ああ、だけど

「お前には…殺されてやらん」

何故だろうか。
今のスザクに命をくれてやる事だけは、酷く気に入らない。

騎士の剣が魔王を殺す。
カビの生えた展開を否定するべく、魔王もまた剣を取り出す。
直接の斬り合いに興じるつもりはない。
頭上へ放り投げ、重力に従い落下した柄を蹴り付ける。
ゼロの脚力で放たれたソレが、さながら銀の弾丸の如く騎士へ放たれた。

たかが剣一本、怒れる騎士の進撃を止めるには力不足。
本来ならば、そうだったろう。
容易く躱されるか、羽虫のように地面へ落ちるか。
その程度の悪足掻きでしかなかった筈。

だというのに騎士は動かない、スザクは動けない。
急速に迫る刃が、いやにスローモーションに見えて仕方ない。

スザクはゼロが蹴り飛ばした剣に見覚えは無い。
しかし分かる、分かってしまう。
剣に宿る力、殺し合いに巻き込まれなければ一生知る機会の無かったモノ。
それを知っている、知らない訳が無いのだ。
だってあれは、剣から感じるあの力は――

97ピカレスク:2024/02/20(火) 20:13:54 ID:eitrr3cU
「貞…夫……?」

友情を結んだ魔王と同じなのだから。

一騎当千の騎士と言えども、動かなければただの的。
碧の瞳を貫いても止まらず突き進む。
内部システムが食い荒らされ、コックピット内の画面にもエラーが表示。
カメラアイの破壊により視界は奪われた。
予備システムが即座に起動、戦場が再び映し出される。

「っ!?」

だが遅い。
魔王を相手に余りにも致命的。
添えられた掌から光が溢れる。
輝かしい絶望が、枢木スザクへこれ以上ない王手を掛けた。

「う、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

伸ばした手は何も掴めない、誰も殺せない。
全てがゼロになる。
何もかもが無に還る。
全機能が停止した騎士は最早、物言わぬ木偶人形と変わらない。
友が残した呪い(ギアス)共々、少年の命が失われていく。

勝利の女神は騎士に唾を吐き、魔王へ愛を囁く。
ここに一つの決着は付いた。

98ピカレスク:2024/02/20(火) 20:14:29 ID:eitrr3cU



コックピットを出たのは奇跡に近い。
ザ・ゼロを食らいながらまだ動くことが出来た。
執念の為せる技か、スザクの持つ能力がそれだけ異常だからか。
どちらが答えにしろ、迎える結末は同じ。
戦闘はおろか、立つ事すらままならない。

「僕、は……」

地面を這い、指先に力を籠めようとするも無理だった。
身動ぎする体力も失われていき、嫌でも終わりを理解させられる。

結局自分は何がしたかったのだろうか。
犯した罪の重さに絶望し、だけど苦しみを分かち合う友がいてくれて。
戦えない人々を友と一緒に保護している時、少しだけ救われた気がした。
焼き払った人々が生き返る訳じゃ無い、自分の罪は帳消しにならないと分かっていても。
もしかすると、目を逸らしていただけなのかもしれないけど。
それでも、魔奥貞夫が共に戦ってくれて嬉しかったのは嘘じゃない。

「俺は……俺は……!」

分かってる、分かってるんだ。
本当にやるべきは、友の死を背負って助けを待つ人達に手を伸ばす事だったと。
自分がやったのは彼への裏切りに等しいと、心の底では分かっていた。

「スザク」

頭上から掛けられた声に、視線だけをどうにか移動する。
荒れた大地を背にこちらを見下ろす、黒い魔王。
放って置いても死ぬというのに、わざわざトドメを刺すつもりか。
死刑執行人を気取る男の顔をせめてもの抵抗で睨み――凍り付いた。

99ピカレスク:2024/02/20(火) 20:15:13 ID:eitrr3cU
「あ……」

そこに無骨な仮面は無い。
レンズを貼り付けた偽りの顔じゃあない、晒されたのは魔王の素顔。
その顔をスザクは知っている。
アメジストの輝きを持つ瞳も。
黒曜石のように艶のある髪の毛も。
自分の知る『彼』よりも達観した雰囲気こそあれど、見間違える筈がない。

「ルルー…シュ……?」

袂を分かった親友がいる。
もうすぐ死ぬというのにルルーシュの顔を見た途端、視界がやけにハッキリし出す。
放送で名前を呼ばれた彼の顔を、もう一度見る事が出来た。
自分の与り知らぬ場所で死んだ彼に、どんな感情をぶつけるべきか分からなかった。
だけど今、もう一度ルルーシュに会えたなら。
たとえ違う世界の彼でも、自分の名を呼ぶ彼がここにいるのなら。
込み上げる想いを口に出すのに躊躇はない。

「ルルーシュ……」

そうだ。
偽りなんかじゃない、湧き上がるこの気持ちはきっと――





「ふざけるな……!!!」





憎しみだ。

100ピカレスク:2024/02/20(火) 20:17:43 ID:eitrr3cU
結局この男は、どの世界でもゼロを選んだ。
間違った過程を良しとし、結果だけを重視する。
ナナリーが本当に喜ぶかどうかなど、微塵も考えようとしない。
優しい世界などという言葉で誤魔化した、嘘に満ちた世界実現の為ならどんな犠牲も厭わない。
ユーフェミアを虐殺皇女に仕立て上げ、命と尊厳を奪った憎むべき友のように。

「ルルーシュ…!君は…お前はなんで……!」

怨嗟を吐き出しても、何一つとしてやれることはない。
拳の一発すらこの男には届かせられない。
命尽きるまでの残された時間全てで、友へありったけの憎悪を向ける。

やがて動かなくなって尚、血走った目は見開かれたまま。
悪鬼に堕ちた騎士に相応しい顔で、また一つ命の灯は消えた。

名を捨て、零の記号を得て生き続けた彼と、憎悪を抱き自分自身を捨てずに逝った彼。
一体どちらが少年にとって救いだったのか。
或いは、最初から彼に救いなど無かったのか。
答えを出す者もはもうどこにもいない。

死という変えられない現実だけが、ゴミのように転がっていた。



【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】

101ピカレスク:2024/02/20(火) 20:18:37 ID:eitrr3cU
◆◆◆


終わった。
戻って来るなり簡潔に言った男へ、星宮ケイトは暫し返す言葉に詰まった。

斑模様の長髪男との戦闘後、一人民家で待つこと数十分。
永遠を生きるケイトにとっては瞬きの間に等しい筈が、妙に長く感じられた。
そうして玄関ドアを乱暴に開け戻った男は、出て行った時と何ら変わらない。
負傷こそ見られるも致命傷まではいかず、仮面をこっちに向ける。

「勝った、のか?」
「そうなるな」

戸惑いがちに聞けば、淡々とした声色が返て来る。
付近で暴れている白いロボットが、ゼロにとって縁の深い者だとは薄々察していた。
だから一人で決着を付けるという申し出にも悩んだ末に頷き、自分はここに残った。
長髪男相手に受けた傷を癒す目的も、あるにはあったが。

「お前の方は何か……聞くまでも無いか」

民家の中は綺麗なものだ。
争いは勿論、訪問者の一人も現れなかったのだろう。
尤もそんじょそこらの相手程度、容易く返り討ちにできる力の持ち主だとはゼロも理解している。
とにかく自分の方は片が付き、彼女の方も問題無い。
それならさっさと移動するべきだと、彼女を促す。

102ピカレスク:2024/02/20(火) 20:19:35 ID:eitrr3cU
「大分休めたからな、動くのに問題ない」
「そうか。なら――」
「けどお前は違うだろ」

そろろそろ行くぞ、そう続けるつもりの言葉は遮られる。
見上げる姿は幼い少女が必死に大人へ追い付こうとしているようで、微笑ましいもの。
自分の腰の辺りまでしかない身長のケイトと、視線がかち合う。

「…傷は放って置いても治る。動けなくなる程の消耗もない。ここに留まる理由は無い筈だが」
「体のことを言ってるんじゃない。それなら私だってピンピンしてるからな!」

えっへんと無い胸を張る様子は、見た目通りの子供らしさ。
なれど適当にあしらえない。
じっと見つめる真紅の瞳がゼロを捉えて離さない。

「お前とあのロボットがどういう関係か、話したくないなら私も深くは聞かん。部下のプライベートに気を遣うのも首領の義務だ」
「勝手に部下にするな」
「むっ、強情な奴!…それはともかく、お前とロボットの操縦者に何があったか話す気が無いならそれで良い」

でも、と一拍置いてストレートに言う。

「別れを悲しむ時間は、誰にだって必要だ」
「…………」

咄嗟に返す言葉が思い付かない。
何を言われたのかは分かる、だけどそれにどう反応すべきかが分からなかった。
悲しむとは、自分が殺した友の死をか。
思うところが全く無い、という訳ではない。
だが友や妹との敵対は覚悟の上で、魔王の使命をC.C.から引き継いだ。
たとえ違う世界のスザクだろうと、殺した事に後悔はない。

103ピカレスク:2024/02/20(火) 20:20:21 ID:eitrr3cU
戯言だと、冷たく吐き捨てれば良い。
見当違いも甚だしいと、呆れを直接ぶつければ良い。

「お前も私も置いて行かれる側だ。何人自分の前で死んだかなんて、分からなくなってもおかしくはない」

それでも、何も言い返さないのは。
目の前の幼女が、ただ上辺だけの説教をしているのではないから。
契約を交わした魔女と同じ、永き時を生きた者だけが知る重みが言葉に宿っているが故か。

「けど、私はいつだって部下との別れは悲しんで来たぞ。私の征服について来てくれた者達がいなくなったら、隠さずにわんわん泣いた」

ガラクーチカを受け取った事に後悔はない。
幼き身でありながら女王として民を統べ、いずれ訪れる自分の運命を受け入れる準備は出来ていた。
不老の呪いが降り掛かり辛くないと言えば嘘になるが、征服者としての己を間違っているとは思わない。
組織を結社し、全世界の征服を果たすべく活動を始め気が遠くなるような年月が経った。
世は良い方向にも悪い方向にも流れ、現代は確実に後者。
東京リベリオンで笑うのはいつだって一握りの勝者と、そのお零れに与る連中。
そんな時代で再びズヴィズダーのメンバーを集めるまでに、多くの同胞が自分の元から旅立って行った。

部下の死は今に始まったものじゃあない。
自分一人が幼女のまま、老いて力尽きた者を看取るのだって珍しくもない。
出会いと別れを幾度も繰り返し、その度に悲しみの涙を流した。
呪いが解かれない限り味わい続ける喪失に、時折膝を抱えずっと俯いていたくなった時もある。
だけど、死を嘆く心を失いたいと思った事はただ一度もない。
悲しみを感じなくなったら、それは機械と変わらないから。
涙を流すのを忘れてしまえば、そんなのは自分じゃないから。

104ピカレスク:2024/02/20(火) 20:21:39 ID:eitrr3cU
「『ヴィニエイラ』としての自分を恥じたことも、後悔した事だってない。ただ私は機械のように征服をするだけの奴にはなりたくないから、いつだって泣きたくなったら思いっ切り泣いてやるんだ。…お前にも、そんな風にはなって欲しくない。人の心を忘れた奴に征服なんてできっこないぞ」
「……」

知るかと言えばそれで済むのに、たった三文字が口の中で消え失せる。
魔王になって日が浅い自分よりも永く生きて、それでも人間らしさを捨てない。
不合理と反論しようとすれば、頭をよぎるのは己自身が行った正に不合理な真似。
あの時、死に際のスザクにわざわざ素顔を見せた理由は何なのだろうか。
ゼロではなく、ルルーシュとして彼の最期を目に焼き付けたかったのは何故。
何より、憎悪に囚われ逝った友へ自分は何を思ったのか。

黙り込むゼロに、ケイトも何も言わない。
民家からは言葉が消え、互いの息遣いが微かに聞こえるのみ。
数十秒か、数分か。
正確な時間は定かでは無いが、先に沈黙を破ったのは舌足らずな幼女の声。

「あ、あー!何だかまだ体が痛いし疲れてるなー!もう少し出発を後らせた方が良い気がするなー!」
「……」
「幼女の体は大事にしないといけないからなー!」

わざとらしいにも程がある。
パタパタと駆けて行き、ソファにぽっすり座り込む。
クッションが小さな尻の下敷きになり、両足をぷらぷら動かす仕草は年相応の子供っぽさ。
空いたスペースを掌で叩きながらこっちを見る。
何を言いたいかはすぐに分かった。

よく分からない疲れにどっと襲われる。
動くのに支障がないとはいえ、体力の回復に時間を充てても損はない。
なら良いかと、少々投げやり気味に自分を納得させる。
隣にどっかり腰を降ろせば、何が嬉しいのか満面の笑みを向けられた。
他者を振り回すのが得意な癖して、時折自分でさえ惹き付けられる何かを持つ。

105ピカレスク:2024/02/20(火) 20:22:45 ID:eitrr3cU
「お前といると――」

捨てた筈の、『ルルーシュ』としての部分が顔を出す。
口には出さずに独り言ちる。
「ちゃんと最後まで言えー!」との抗議は聞き流し、仮面の下で目を瞑る。

友を殺し、憎悪を向けられた。
涙は流れない、後悔もしていない。
しかし見えない部分へ痛みにも似た感覚が走る。
人を捨て、自分自身の幸福も捨てて尚も自分にルルーシュの心が残っているのなら。
それは自分を殺す毒でしかないのか、或いは決して捨てるべきではないからこそ残り続けてるのか。
今のゼロには分からなかった。


【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、魔剣@はたらく魔王さま!
[思考・状況]
基本方針:主催者を殺し帰還する
1:ヴィニエイラと行動。
[備考]
※参戦時期はLAST CODEでナナリー達に別れを告げた後。

【星宮ケイト@世界征服〜謀略のズヴィズダー〜】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ガラクーチカ@世界征服〜謀略のズヴィズダー〜、変身用ウド×複数@世界征服〜謀略のズヴィズダー〜
[道具]:共通支給品一式
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを征服という形で終わらせる
1:ゼロと行動
[備考]
※参戦時期はアニメ本編終了後。

『支給品紹介』

【魔剣@はたらく魔王さま!】
元魔王軍四天王、カミーオが魔奥に持って来た剣。
かつて恵美(エミリア)に砕かれた魔奥の角の欠片から生み出されている。
魔力の残滓から一度は真奥と配下である芦屋達に、本来の姿を取り戻すほどの魔力を与えた。


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