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機動戦士ガンダム0.5
1
:
きんけ
:2008/10/27(月) 01:05:17
武力平和の続く世界
地球連邦政府は軍部に掌握されつつあった
大衆の意見が届かず、あらぬ方向に動こうとする未来
そんな世界に警鐘を鳴らす者がいた
反連邦軍組織プレイオス
「弾圧と圧政からの解放」を目標に彼らは勝利なき戦いに身を捧げる…
機動戦士ガンダム0.5
人間らしく
2
:
きんけ
:2008/11/01(土) 07:11:41
「勘弁してください!今日だけでも三回目ですよ!?」
耳にインカムを装着した官制員がマイクに向かって叫んでいる。
《こちらにも都合というものがあるんだ、そちらの言い分を聞いている暇はない》
「それは協定違反です!ここ『ククルス』は中立都市なんですよ!」
《緊急事態なんだよ!いいからさっさとハッチを開けろ!こんなちっぽけな月面都市なんてな連邦軍にかかれば、制圧なんて容易いんだぞ!》
脅しとも取れる言葉に官制員は頭を抱えた。
他の官制員も、みな諦めや悩んだ顔をしている。
月面都市ククルスの官制室の空気はどんよりと重くなっていた。
人々は生活圏を宇宙にまで広げると、さらなる人類の躍進を目指すために地球連邦を組織した。
加盟国190ヶ国以上から成る、この連邦組織は政治・軍隊の統一化により各国の危機に対して一丸となって取り組めるようになった。
しかし、蓋を開けてみると、そこには異なる現実が待っていた。
治安維持、平和維持の大義名分の下に弾圧や虐殺を繰り返し、非加盟国に対してはMS(モビルスーツ)の侵攻や大規模な爆撃を行っていた。
そして、ここ−−−月面都市ククルスでも、地球連邦の傲慢な態度に頭を悩ませていた。
中立を宣言しているククルスであるが、地理的に連邦の月面基地間の中間に位置しており、休憩や整備のために停泊を強行している連邦艦が後を断たない。
一応、連邦との間に「停泊は1日1回のみ」と協定を結んではいるのだが、彼らが守ろうとしているとは思えない。
ククルスの官制室とは一方的に、どこか締まらない空気の連邦艦トーマスの艦橋。
「これ以上、頑固な態度をとったらMSでハッチを開けると向こうの官制員に伝えろ」
艦長がオペレーターに指示を送る。
「まったく、サイド4の反連邦気運が高まっているというのに、こんなところで時間をとるわけにはいかんのだ」
苛立ちながら、艦長が愚痴をこぼした。
もともと、この航行は予定に入っていなかった。サイド4で始まった反連邦のデモの処理のために出発を指示されたのだ。
それゆえ連邦艦の態度はいつにも増して大きい。
官制員と通信を行っていない別のオペレーターが不意にレーダーに映る、何かに反応した。
「艦長、我が艦に接近してくるモノがあります」
「何ぃ?宇宙船か?」
「いえ…この速度は…」
言葉が途絶えたことに苛立つ艦長が叫んだ。
「何だ!はっきりと報告しろ!」
「この速度は…モビルスーツです!」
月面の地表を滑るように飛行していく、一つの機影。
「連邦艦を確認した。これより目標を叩く」
バイザーの先に覗かせた、力強い瞳が連邦艦を見据える。
「行くぞ、エヴンス」
機動戦士ガンダム0.5
1話 世界が動く日
3
:
きんけ
:2008/11/02(日) 16:22:13
≪接近してくる所属不明のMSは1機のみですが、データーに該当しない機体です≫
オペレーターの状況説明もほどほどに聞きながら、アンドレは慣れた手つきで機体に火を入れる。
≪何を仕掛けてくるか分かりません。お気をつけて≫
説明を終えるとオペレーターが映っていたサブモニターは暗転し、頭部カメラによって映し出された映像がコクピットの正面に広がった。
メインモニターにはMSの視点からの格納庫が映っており、まさに自分がMSそのものになったような錯覚に陥る。
一歩。また一歩と何かを確かめるようにゆっくりと前進していく。
―俺はモビルスーツだ……―
格納庫の先。カタパルトハッチに到着すると、射出機を足に装着し出撃に備えて身構える。
―俺が……―
カタパルトハッチに備えられたランプが赤から緑に変わると、射出機がぐうんと音をたてながら撃ちだされた。
「俺がマキスだっ!」
宇宙空間に躍り出たMSが華麗にポーズを決めた。
宇宙方面軍の主力MSであるマキスとなりきったアンドレの後に2機のマキスが続いた。
4
:
きんけ
:2008/11/05(水) 08:01:33
ビームライフルを構える三機のマキス。
その銃口の先にはアンノウンが、スピードを緩めることなく連邦艦トーマスに迫る。
「射撃勧告など…必要ない!」
三条の光が宙を灼いた
5
:
きんけ
:2008/11/12(水) 07:50:02
射撃と同時に敵機は跳躍。
光条がアンノウンを碧く照らし出すも、その装甲に直撃することはなく、やはり連邦艦トーマスを目指す。
再度、アンドレらがビールを放つも、アンノウンはテールノズルの尾を引きながらその場を後にする。
「俺達には興味が無いということか…!」
トリガーを引く手に思わず力がこもっていく。
しかし、どんなに撃とうが敵機を捉えることができない。
業を煮やしたひとりのパイロットが
《少尉!接近戦を仕掛けてみます!》
言うや否や、ビームサーベルを握りしめると先駆。
「待て!!敵の武装すら分かってないんだぞ!」
遅れてアンドレが彼の後を追う。
マキスはアンドレの静止も聞かず、さらにテールブースターの出力を上げた。
《やります!やってやります!》
敵MS(モビルスーツ)が単独で飛び出した。
距離をとってのビーム射撃は、有効ではないと判断したのか、それとも…
ロイスは自機であるエヴンスの速度を緩めると、迫ってくるマキスとの距離を詰めていく。
まさに目と鼻の先。マキスがサーベルを振り上げたのか碧い粒子が迸るのが確認できた。
マキスの斬撃を喰らう直前、エヴンスの各所ブースターが忙しく噴出し、機体が反転。左腕に装備した攻防兼用防盾の刃がスライドすると、光刃を受け止めた。
「エヴンスならさ!」
余った右腕にも同様の攻防兼用防盾が装備されており、これまた同様の刃が顔を覗かせるとマキスに向けて、すぐさま一振り。
切り結んでいたマキスの右腕は易々と切断され、自由になったエヴンスの左腕の刃がマキスを襲った。
刃はマキスの頭部を仕留めたが、それでは足りずに腹部を一刺し。
「マキスの装甲ぐらい!」
さらにロイスは、刃を突き刺した部分へと胸部バルカンを撃ち込んだ。弾丸を起爆剤に腹部は小規模な誘爆が発生。
その爆発はコクピットをも襲い、マキスは黒煙に包まれながら、月面へと落下していった。
「ただ我慢弱いだけのパイロットだったか」
がっかりしたように呟くロイス。
連邦艦の相手は後回し。今はMSの対処が優先だ。
残りの敵機はニ機。
「行くぞ」
6
:
きんけ
:2008/11/14(金) 08:02:22
「あの機動性は脅威だ固まるのは得策ではない、散開して対処するぞ。敵は接近戦に特化している!レンジを詰めるのは最終手段だと思え!」
《了解》の声のもと、部隊員のマキスが散開する。
自機と距離を空けていくマキスがサブモニターに映る。それを見ながら不意にアンドレが顔をしかめた。
侮ってはいなかった。警戒して距離をとっていた。マキスの能力を過大評価してはいなかった。部隊員の無謀にも静止をかけた。
だが、予想を越えていた。
アンノウンは、奴は強い!
少尉殿の機体が敵機と接触する。
俺の目から見てもアンノウンの戦闘能力は大したものだ。
その戦闘能力は機体性能から来るものなのか、それとも搭乗している者によって引き出されるのか…しかし、それを判断できる眼はない。
だが、アンドレ少尉殿の操縦センスは確かだ。それは俺にだって分かる。
だからさあ、負けるわけがないんだよ。
断定した直後、彼の目に映ったのは、アンノウンに一蹴されるアンドレのマキスだった。
正面モニターから敵機が消えた瞬後。
激しい振動が機体を襲い、僅かな間だけ意識が飛んだ。
「…!!」
気が付いたときにはモニターに敵機の姿はなく、もう一機のマキスへと肉迫していた。
7
:
きんけ
:2008/11/16(日) 13:49:58
東芝からの大事なお知らせ。
>>5
における「ビールを放つ」という表現は不適切だったことを訂正してお詫びします。
ここは戦場で、ビールかけをしている場合ではありません。
OLT
8
:
きんけ
:2008/11/16(日) 20:53:34
アンドレ少尉のマキスを踏み台に、こちらにアンノウン。
臆するかよ、確実に当ててやるッ!
「狙いは定まった!」
放たれる光。しかしアンノウンはひらりと避けると、加速。
あっという間に眼前へと移動する敵機。
振り下ろされた刃がマキスのビームライフルを真っ二つに切断する。
「っ!」
回避行動をとる暇さえなかった。
こいつの速さは本物だ。ならば、このまま接近戦で!
≪マキスのサーベル収納部は背部のバックパック・・・≫
ノイズ混じりに聞こえた声。
MSとMSが触れているのか接触回線からアンノウンのパイロットの声が聞こえる。
≪核融合エンジンからのバックパックを介しての強力なエネルギー供給ができるが≫
こいつは何を言っているんだ!?
サーベルの柄へと伸びる右腕。不意に脇を閉めて構えたアンノウン。
≪抜刀までの時間が長いっ!!≫
電光石火。
力を一挙に解放すると両腕の刃が、これまで以上に鋭く激しくマキスを切り刻む。
サーベルを求めていた右腕は吹き飛び、胸部のダクトは叩きつけられ機能を失った。
接触回線から聞こえてくるであろう悲痛な叫び声に動じず、コクピット部へと突き刺した刃を静かに抜き取るとエヴンスは、その場から離脱する。
直後、切り刻まれたマキスの内部から核融合エンジンが爆発し装甲が周囲に飛んだ。
核融合の爆発は強力だ。コロニー内の低高度で爆発させようものなら内壁は穿ち、最悪の場合は百数メートルもの厚さを誇る壁をぶち破って穴を空けることもある。
「最後の一機だ、すぐにやる!」
ロイスは機体を転針。
こちらを見つめている最後のマキスへと刃を向け、接近。
敵機はビームサーベルを両手で持ち、身構えていた。
しかし、関係ない。マキスのビームサーベルの出力などに負けはしない!
激突する光刃と刃だが、切り結ぶこともせず強引に刃を首元へと突き立てた。
マキスの頭部そのものには影響ないが、回路を損傷し映像が一瞬でもカットされれば、こちらの勝ちだ。
ロイスの思惑通り、マキスの動きが僅かの間だけだが停止。すかさず、刃がマキスの右腕、左腕、右脚、左脚と切断していく。
「一方的な暴力とは、まさにこの事だ」
剣舞を止めるエヴンス。
胸部などに内蔵武器を持たないマキスにとって、四肢を失うことは戦闘能力を失うことと等しい。
それでなくとも、MSにとって四肢は無くてはならない存在であるが。
刃をスライドさせ攻防兼用防盾に収納すると、おもむろにマキスを蹴った。
四肢のない今のマキスでは、宙間での姿勢制御に難があり、くるくると回転しながら月面へと落下していった。
俺はマキスだ。
マキスは大破して月面へと落下している。
つまり、俺は負けたのだ。
どこの誰とも知らない機体とパイロットに、俺は完膚なきまでに負けた。
この屈辱は忘れない・・・絶対に!
「畜生ぉ!」
叫びと共にアンドレはモニターに映るアンノウンを殴った。
「MS隊が全滅した!?いったい何なんだ、あの機体は・・・」
驚愕のあまり、口をぽかりと開けてその場に佇む連邦艦トーマスの艦長。
艦橋にいる他のクルーに似たように驚きの表情を浮かべていた。
所属不明の一機のMSに正規軍である三機のマキスが易とも容易く全滅するなど、誰も予想できなかった。
静まり返った艦橋。不意にオペレーターが遠慮そうに声を発した。
「アンノウンより通信来ました・・・」
バッと振り向いた艦長。
オペレーターがすぐさま内容を読み上げた。
「『中立都市であるククルスへの横暴をこれ以上繰り返すのであれば、戦艦への攻撃を開始する。』」
最終勧告といったところか、それを聞いた艦長の表情が焦りに変わった。
これまでの戦闘を見れば、その戦闘能力の高さは一目瞭然である。たとえ、数多くの対空砲や迎撃ミサイルを構える本艦であろうと撃沈される可能性は否めない。
考える時間は不要だった。
「艦の進路をガガーリ月面基地へと変更し。アンドレ少尉の回収後、本宙域から離脱する・・・」
新たに一機のMSが連邦艦より発進した。
しかし武装はしていない。パイロットの回収斑だろう。
戦艦からの砲門も静かで、あちらに戦闘の意思はないようだ。
ならば、俺の任務は終わりだ。
「戦闘は終了。エヴンスはこれより帰還する」
推進力を爆発させ、一気に加速。
鬼神の如く、その力を見せつけた機体は流星となって姿を消した。
9
:
きんけ
:2008/11/17(月) 20:31:26
ククルス宙域の所属不明機による連邦艦襲撃事件は連邦のみならず、全世界に衝撃を与えた。
連邦政府は「所属不明機はククルスが秘密裏に開発したモビルスーツだ」として、情報開示を求めた。
ククルス側は所属不明機との関与を当然ながら否定。この対応に不満をもった連邦政府は宇宙軍艦隊によるククルス侵攻を決定する。
「いいか?全ては連邦政府の計画通りだったんだよ!」
ある昼休みの学校の屋上。少年Aが突如、力強く言い放った。
昼食をともにしていた少年Bと少年Cは何のことだが分からずに疑問を抱いた。
どうやら、ここ―――月面都市ククルスの宙域で先日発生した騒ぎのことらしい。
彼の見解はこうだ。
ククルスは連邦の月面基地と基地の間に位置し、中継ポイントとして地理的にちょうどよい。
連邦の管理下、自治区としたいのだが中立のククルスにそんなことすれば、いろんなコロニーからの反感を買ってしまう。
だから、連邦が演技してククルスのせいにすれば侵攻の理由もあるし反感だって、それほど買わなくてすむ。
「だからって、あそこまでマキスをボロボロにする必要はないと思うけど・・・」
「あの所属不明機は連邦の新型MSなんだよ、『俺たちは、こんなスゴイ機体を造ってますよー』って反連邦組織への牽制の意味も含まれているんだ」
「うーん・・・」
納得がいかない少年Bに代わって少年Cが口を開く。
「マキスは新型MSの性能を披露するための踏み台?」
「そういうことだよ!」
「でもさ、ニュース映像とかでは三機目のマキスが落とされた後に非武装のMSが三機目のマキスを回収したよね」
「うん」
静かに風がそよいでいる。
「爆発した二機目のマキスはともかくさ、一機目のマキスも回収する必要があるんじゃない?一機目と三機目の違いって何だと思う?」
「そ、それは・・・」
「コクピットをやられたか、そうでないか。一機目はコクピット部が爆発したよね、でも三機目は手足を斬られたとはいえコクピット部への損傷はなかった」
思わずたじろぐ少年A。
正直な話、彼は回収する場面の映像を見ておらず、反論などできるわけがなかった。
「三機目だけを回収したのはパイロットが乗っていたからだよ。それ以外に理由なんてないよ」
少年Cは連邦やらせ説をきっぱりと否定した。
「あれは連邦軍の新型なんかじゃない。あれは所属不明機なんだ!」
機動戦士ガンダム0.5
2話 反旗
コロニー郡サイド4に程近い暗礁宙域「エイデン」
かつての戦争で生まれた数多くの残骸が集まって出来たデブリ宙域。
MSの墓場とも呼ばれており、誰も寄り付かない場所となっていた。
そんな暗闇と破片が支配する世界に奔る一条の光。
10
:
きんけ
:2008/11/23(日) 09:29:06
光は二つ、三つと増えていき、最終的に十数もの数に及ぶと、月へと向かっていった。
「本艦隊はトーマス級二隻とクラーク級三隻で編成され、のべ22機のモビルスーツを搭載している」
ミーティングが進んでいる。
全艦ほぼ同時に開始された、それは月面都市ククルス侵攻作戦のものだった。
艦長および各部署の隊長が作戦説明を行っている。説明もほどほどにミーティングルームの隅の座席でオノディーラが人知れず闘志を燃やしていた。
実戦は今日で二度目だ。初実戦ではトリガーを引くことも出来なかったが、今回は違う!
今日の俺には覚悟がある。
誰かを殺して、その誰かの分まで強く生きるという覚悟を!
「モビルスーツの出撃は1400時。それが作戦開始の合図だ」
ミーティングの最後。艦長はそう言って締めくくった。
11
:
きんけ
:2008/11/24(月) 22:31:06
月面都市はコロニーと同様に天気があらかじめ決められており、週の初めにその一週間の天気予報が様々な形で発表される。
天候や気温すらも管理できる環境。
それゆえに地球の暑さ、寒さ、空気に慣れない宇宙生まれ宇宙育ちの人々の地球適応能力は減少傾向にある。
そんな中の一人である月面都市ククルス生まれククルス育ちである少年Dは昼過ぎの河原にいた。
沿道からはガードレールが設置され、自分のいる場所は死角になるだろうと踏んだ。
だから、ここを選んだ。ここでなら、誰にも見つからないと思って。
自己発電―――自己処理と言ったほうが適切なのだろうか、河原に寝そべり、少年Dは独りの世界に入っている。
散歩で立ち寄ったコンビニの本棚に陳列されている数々が目についたのが原因だった。そこからは、もう勢いである。
のどかな休日の午後。雨が降り始めるまでには、まだ時間がある。少年Dの自己処理は続く…
まさに絶頂を迎えようとしている少年Dとは対照的にククルスの管制室は地獄の底に突き落とされていた。
「本宙域に接近する艦隊を捕捉・・・来ました、連邦宇宙軍の艦隊です!」
不安な顔を浮かべたり、険しくしたりと管制員の反応はそれぞれだ。
ここで焦ってはいけない。司令官としての技量を発揮しなければ!
その心構えのもと、あくまで落ち着いて状況を確認してみせる司令官。
「都市の民間人の避難状況はどうか?」
「現在、確認できている範囲では8割の住民の避難が完了しています」
「上出来だ、日ごろのシミュレーションが生きたな!」
「う、宇宙軍艦隊からモビルスーツの発進を確認!」
うわずった声で叫ぶ管制員。
「勧告なしに攻撃するつもりなのかよ!」
「なんてやつらだ!俺達を殺す気じゃないだろうな!?」
「畜生っ!連邦の糞野郎ども!!」
これまでの連邦に対する不満が爆発したかのように弱音や怒涛が飛び交う。
無理もない、軍属ではない彼らにとって戦闘の恐怖など未体験だ。
「落ち着け、まだ攻撃されているわけではない!モーラスⅡを出撃させろ!」
モーラスⅡは無人機のモビルスーツである。
前世紀の戦争では無人の戦闘機や戦車が実戦投入されていたが、宇宙という新たな戦場とモビルスーツという新兵器の登場により
それまでの思考ルーチンやCPUでは対応できなくなり、無人機は戦場から姿を消した。
「周辺の月面都市やコロニーの反応は分かるか?」
「ヴェテロイレン、レーニンズなどの月面都市は中立を宣言。サイド4は沈黙を保っています」
「分かっていたとはいえ…援軍はなしか」
こんなチンケな月面都市相手にして連邦との関係を悪化させることは出来ないというわけか…
≪ククルスよりモーラスⅡの発進を確認。A小隊が撃破のために先行します≫
≪トーマス級一番艦、モビルスーツ全機発進を完了。続いて二番艦よりモビルスーツを順次発進≫
≪位置につきました。次の指示まで待機します≫
無線が行き交っている。この忙しなく混線する無線が戦場の臨場感をさらに引き出してくれる。
前の機体がカタパルトから撃ち出されていく、次は俺の番だ。
この戦場の主役の出番である。エンディア大尉に次ぐ宇宙軍のエースパイロットとして名を知らしめるであろうオノディーラが、この戦場を駆け抜けてやる!
カタパルトが加速し、急激なGが体にかかる。
さあ、見るがよい!このオノディーラが美しく踊り出る姿を!
ぐわりと射出機から離れ、その姿が戦場に踊り出ると思われた刹那。
彼の視界は黒から緑の閃光に支配され、意識はそこで途絶えた。
何が起こったか理解する前に彼は蒸発した。オノディーラのマキスは緑の光条に貫かれ、爆散したのだ。
(一話分なげぇ・・・)
12
:
きんけ
:2008/11/27(木) 22:06:57
え?
何かが光った。何かがとてつもない音を立てながら艦が揺れた。
不意に爆散したマキスに皆、虚を突かれたような表情をした。
ククルス側からの大きな軍事展開がなかったために油断していたため判断が遅れたのだ。
「何が起きた!?観測班!」
≪マキスが爆発したんだ!≫
「爆発!?攻撃か、襲撃なのか?」
≪―――分からん。レーダーには何も映らなかった≫
くそっと艦長が心の中で罵った。
観測班がこれではどうにもならないじゃないか!
「艦長、カタパルトデッキがビームがマキスを貫いたのを見たと言っています!」
「我が艦を狙った長距離射撃だとでもいうのか…」
この宙域にビーム砲が配備されているという情報は聞いたことがない…もし、この攻撃がククルス側の兵器だとしたら平和主義を謳う中立都市の名が泣くぞ。
「レーダーから目を離すなよ、警戒態勢を厳にするんだ!」
「了解。全艦に伝えます」
「ノーマルスーツを着けていない者には着用を指示しろ!」
マキスの破片が流れているのが見える。
あみだ被りの帽子をきゅっとかぶり直すと一息。
まったく…先日のアンノウンといい、この宙域には怪物でも潜んでいるのか?
「怪物はエイデンの墓場にでも引きこもっていればいい」
艦長の呟きが聞こえた。
カタパルトハッチでは出撃と併用したマキスの破片の撤去作業が行われていた。
混乱と不安が入り混じりながら光の尾が宙へと伸びていく。
連邦の艦隊よりも高い高度。
戦艦の形をわずかに認識できるほどの宙域に彼はいた。
ただの鉄くずになり下がった、かつてのモビルスーツの装甲を陰に暗緑色の人型が一機。
両腕で握りしめ、月光を浴びて鈍く反射している、それはスコープを装着した狙撃仕様のライフルだった。
オノディーラを射たのも、この狙撃銃である。
「センターに入った!」
そして、一射。
不気味なまでも正確な光の矢が放たれた。
「少尉のマキスが撃たれた!!上からビームがっ!!」
爆風から逃げるように後退しながら軍曹のマキスが力の限りに叫んだ。
戦場で恋人の話などするものじゃなかった。
あれは噂でも前世紀の年季の入った都市伝説でもない。
少尉が三度目のデートに行った時のことを俺に話してたら、彼の機体にビームが直撃して爆発した。
あれは…死亡フラグは本物だ!
ならば!!かつての彼女とよりを戻そうとしていると少尉に相談した俺は―――
「三機目もやられた!観測班、上だぞ。上からビームが来ている!」
≪怒鳴らないで、今度こそ見つけました。艦隊の頭上にいます!≫
観測班が伏兵の姿を見つけると艦橋のメインモニターに映し出される。
破片から身を晒し出すと銃口をこちらに向けているモビルスーツの姿がそこにあった。
「モビルスーツだったのか…!?」
銃口から閃光が放たれたと思った瞬後。その光は自分たちを灼いていた。
艦橋が吹き飛ぶ。しかし、それでは足りずにさらに三射の光条が艦に直撃。
悲鳴にも聞こえる轟音と黒煙を吐きながらトーマス級二番艦は、その役目を終えた。
沈黙に包まれた一番艦の艦橋。
混乱状態にあるクラーク級一番艦の艦橋。
神に祈りをささげているクラーク級二番艦の艦橋。
己の生きる意味を再確認しているクラーク級三番艦の艦橋。
様々な状況にある艦橋に水を差してきた、多数の熱源反応。
艦隊の周辺に散乱していた無数の破片から跳び出してきたモビルスーツ群。
「こちらシラナミ。プレイオスとしては初めての作戦だ。心してかかろう」
多数≪了解≫の声と共にモビルスーツが散開していく。
それこそが世界が変えるための第一歩。
変革を求める者達の最初の反撃の狼煙である。
13
:
きんけ
:2008/11/29(土) 11:44:07
「モーラスⅡの能力など前世紀の無人戦闘機にも及ばない。高い工業能力を持っているククルスでも無人モビルスーツの開発は完璧じゃないんだよ」
先行していたA小隊がモーラスⅡを捉える。
マキスがビームを放つよりも先にモーラスⅡの無反動バズーカが彼らに襲いかかる。
しかし実弾、ましてやバズーカを避けることなど容易いこと。三機のマキスがひょいと回避運動を実行する。
「砲台代わりにはなるだろうが、この数じゃあ…」
ライフルを構えると、次々と撃ち抜いていく。
同様に小隊員のマキスも的当てのようにモーラスⅡを落としていった。
会戦から数十秒。連邦軍の勝利は決定的なものとなった。
我々の敗北は決定的だ。
「予測できたとはいえ、強烈だな…」
これ以上、モーラスⅡを投入しても結果は同じだ。所詮は無人モビルスーツだったというわけか…
中立都市ククルスが消える日。
こうやって地球連邦政府は勢力図を増やしていくつもりだろう。
都市への被害を出すわけにはいかない。
「連邦艦へ通信を繋いでくれ。停戦を―――」
「待ってください。何か…何かが高速で…」
「どうした?」
「レーダーがかすかに反応したんです。高速で迫る何かを…」
ククルス側からモラースⅡの追加投入の気配が見られない。
まさか、もう降伏準備でもしているんじゃないだろうな?
「まあ、いい。後退するぞ」
機体を転針。
硝煙が漂い、モーラスⅡの残骸が漂う戦場跡を尻目に三機のマキスが母艦へと帰っていく。
―――違う。テールブースターを吹かす直前、僚機が何かの直撃を受けて爆散した。
「!?っ」
振り向いた小隊長の目に映ったのはモーラスⅡとは違うモビルスーツの姿だった。
両腕に装備された巨大な刃は暗闇の中でも異質なほどの存在感を放っていた。
機動戦士ガンダム0.5
3話 解放への戦火
モビルスーツ「セーメイ」は残骸に紛れて連邦艦隊を取り囲むように出現した。
対応に遅れたマキスはセーメイの連携攻撃に圧倒され、次々と落ちていく。
「僚機との連携はしっかり決めるんだぞ。相手のほうが戦力は上なんだから!」
腰部の収納部より抜き放った光刃がマキスのコクピット部へと突き刺さった。
14
:
きんけ
:2008/11/30(日) 15:49:40
機能停止した敵機の背後より、さらにもう一機のマキス。
すでに放たれていたビームを辛うじてシールドで受け止めると、大破したそれを放棄。
頭部に装備されたバルカンで牽制をかけるも、射線をかいくぐり側面へと回り込もうとする。
テールブースターを吹かし一気に距離を詰めようとするマキス、それに対して正面から受け止めるべくサーベルを構えたセーメイ。
サーベルのレンジに入る直前。マキスが突如介入してきた光の矢に貫かれ四散した。
「援護するのはいいが、味方への誤射だってあるんだから気をつけろ!これはゲームじゃないんだぞドラウロ!」
上を見上げて、パイロットは味方のスナイパーを叱咤した。
≪シラナミ隊長≫
「ん?何かあったか」
≪敵艦の応戦が思ってたよりも厚くて、破壊に時間をとられています≫
「ならば、上のドラウロにでも援護射撃してもらえ」
≪了解≫と短く返答された後に回線が切断された。
「対艦兵器を最低限装備しての対艦戦闘か…」
隠密性を高めるためにはやむ得ない事とはいえ、あまりにも強引すぎる。
味方艦からの援護は一切なしに、遠距離のたった一機のモビルスーツの狙撃援護ありきな作戦だ。
「コロニー独立のためには、その身を滅ぼす勢いで戦うしかないのか!」
そう叫ばずにはいられないシラナミ。
彼を先頭に騎兵隊がトーマス級へと迫っていった。
何だ?
連邦軍のモビルスーツが我々のモビルスーツを撃破したと思ったら、謎のモビルスーツが連邦軍のモビルスーツを撃破した。
「思考がまったく追いつかない…」
何だよ謎のモビルスーツって、訳が分からない。
これは夢であって欲しい。もう私は疲れた。
わずかな目まいを覚えて、椅子に座りこむ司令。
「司令…強制的に割り込んでくる映像回線があります」
「ああ、もう何が来ても驚くものか」
今度は、どこの連中が来たんだ?ククルスには怪しい奴らが集まるほど重要な場所なのか?
しかし、その映像はククルスだけでなく全世界のありとあらゆる施設へと発信されていた。
15
:
きんけ
:2008/12/03(水) 19:18:14
「地球に宇宙に住む人々よ、こんにちはこんばんは初めまして。先日、そして今現在ククルス宙域で地球連邦軍と交戦しているのは
我々、反地球連邦軍組織プレイオスのモビルスーツ部隊です。連邦軍は以前より中立を宣言していたククルスを、まるで我が物顔
で利用してはククルス市民、関係者を不安にさせていました。これは、その裁きの鉄槌と言ってもいいでしょう。そして我々、プ
レイオスはこれを皮切りに独裁と圧政からの地球、宇宙の解放のために地球連邦軍に対して宣戦を布告します。人が人らしく生き
ていける世界を実現させるためにも、我々は―――
会議中のモニター。昼下がりの点けっぱなしのテレビの液晶。ネットゲーム中のパソコンのディスプレイ。あらゆるモニターというモニターに生え際が後退してきている初老のナイスガイが突如として映し出された。
画面越しのファーストコンタクトは様々だ。ある者は訝しげに彼を睨みつけ、ある者は彼の顔を見た直後から笑いが止まらず、ある者は彼に怒りの限りをぶちまけてキーボードを机上に激しく叩きつけていた。
ククルス宙域でも疑問符が連邦軍兵士を支配していた。
「誰だが知らないけど、なんかやべえこと言ってる!」交戦中のマキスパイロットが、力の限りで叫んでいる。
よし、敵は混乱している。
戦闘中に宣戦布告の演説なんて聞いても混乱するだけだ、演説の詳しい内容は戦闘後に確認しやがれ!
ましてやアングラでしか知名度のないプレイオスの指導者だ。世間的には抜け毛に悩んでいそうなオジサンが電波なこと言ってるようにしか聞こえない。
「よし。撤退するぞ!対艦砲は全弾ぶち込んでやれ!」
シラナミの指示に呼応するかのように味方のセーメイが敵艦の側面へと回り込もうと弧を描くように宙を走っていく。
敵の残存艦は二隻。マキスだってドラウロの狙撃で着実に数が減っている、勝ちは見えてきた。
スナイパーライフルの接眼用モニターを覗きこみ、遠方でちょこまかと動き回るマキスを目で追いかけていた。
逃げるんじゃないぞぉ…外すとシラナミ隊長殿がうるさいからな。
一瞬の隙。マキスが動きを止めると、すぐさまポインタを敵機に重ね合わせると一射。
光はマキスの頭部を吹き飛ばすも撃墜には至らず、マキスはその場からの緊急離脱を図った。
「ヘッドショットだぞ、堕ちろよ!」
何とも滑稽である。
悔しがるドラウロのもとに撤退の旨を伝える通信が入った。
「はいはいはい。やっとかよ…」
歯噛みしながらも、どこか安堵の表情を見せる。
スナイパーライフルを肩のジョイント部に装着すると、そそくさと帰路へとつこうとしていた。
ヘルメットを放ると、シートにもたれかかり目蓋を閉じた。
「まったく…」
オールバックには似つかない不精髭が生えた顔には疲労の色が見えた。
連邦艦隊を全滅させたプレイオスのモビルスーツ隊はククルス宙域から離脱していた。
「ドラウロのアルガとロイスのエヴンスはいるんだろうな?」
≪ええ。エヴンスは後方にアルガは…かなり先行していますね≫
その報告にシラナミがムッとした。
「まったく、本来はドラウロがしんがりに着くべきなんだがな…」
あのゲームジャンキーの考えることは分からない。
シラナミがメガネのフレームを指で持ち上げようとしたが、ヘルメットをしていることを忘れて中指がバイザーに拒まれた。
思わず苦笑するシラナミ。
戦闘からの緊張に開放され、やけに気持ちが緩んでしまっているな…
操縦桿から離した手が震えていた。これは怖さで震えているのではない握り疲れただけだと自分に言い聞かせた。
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