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赤瞳の不良

1ライナー:2011/11/19(土) 18:22:15 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
小説のことなら命も掛けられます、ライナーです。
2作目ですね、以前の2作目は少しプロットに手を抜いてしまったので、今回は頑張りたいと思います。
なお、1作目 係争の異能力者(アビリター)が終わるまでノロノロ更新だと思います。
遅れましたが本作は、赤瞳の不良(あかめのヤクザ)と読みます。
 〜注意事項〜
・グロテスク表現(流血程度)が含まれます。苦手な方はあまりお薦めしません。
・本作は盗作を一切しておりません。本作の真似も止めて貰いたいです。
・チェンメ、AAは一切しないようご協力下さい。
・気を付けますが、誤字脱字等の可能性がありますが、発見次第直させていただきます。
・ファンタジーも入ると思いますので宜しくお願いします。
・まだまだ未熟な部分のある駄作ですが、見守っていただけたら幸いです。

 感想、アドバイスなどあれば喜んでお受けしますので、気軽に足を運んで貰えたらと思います。
 ちなみにチャット化しない程度にお願いしますね^^;

2:2011/11/19(土) 18:27:03 HOST:zaq7a66c1fa.zaq.ne.jp
新しい小説ですか!!?

何か学園物の匂いがします(p_-)

こっちも頑張ってください!!!

応援してます!!!

3ライナー:2011/11/19(土) 18:48:37 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net

  −序章−

 夜の冷たいアスファルトを思い切り踏みしめながら、少女は1人、ひたすら走っていた。
 何故、走っているか。
 別に体力造りや、終電がどうこうって訳ではない。

 ただ逃げていた。

 少女の走る10メートル程後方には、白いマントを靡(なび)かせ走る者の姿があった。
 少女は青く腰まである長い髪を持ち、目も髪と同様に澄んだ青だった。服装は水色のワンピース一枚と、こちらも同様にスカート部分を僅かに靡(なび)かせていた。
 全身を寒色で包んだ少女の腰には、2本の水が入った試験管が街灯に照らされていた。
 一方白いマントを纏った人物は、赤いマフラーで顔を隠し性別は判別出来なかった。髪はマントと同様に真っ白で、ただの白髪、銀髪というのではなく、蜘蛛の糸を一本一本束ねたような光り輝く髪だった。服装は白いマントと赤いマフラー、マントの下には黒いセーターを着込み、寒がりオーラを辺りに撒き散らしていた。
「待たぬかッ!」
 声と共に、少女の方へ緑の不格好な針が飛ぶ。
 それは完全防寒の人物の声で、声からして女のようだった。
 少女は声に反応して素早く跳び上がる。その跳躍力はとても並大抵の人間とは思えない跳躍力だった。
 少女の姿は空中で月と重なり、鱗粉を撒いたように輝いた。
 すると、空中の少女に目掛けて先程と同じ緑の針が飛び向かう。
「クッ……!!」
 針は空中の少女の肩に刺さり、月に微かに赤が散った。
 力尽きたように、針は曲り少女の肩から抜け落ちる。
 その針の正体は一枚の緑の葉だった。
 少女はそのまま通りかかった鉄橋の下から落ちる。
「……下界に落ちたか」
 少女の落ちた先は雲の上だった。
 少女はその雲を突き抜け、下へと落ちていった。

4ライナー:2011/11/19(土) 18:50:44 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
燐さん≫
コメントありがとうございます!
そうですね、学園入ると思います^^
はい、頑張ります!応援して下さい!(笑)

ではではwww

5ライナー:2011/11/19(土) 23:43:46 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net

  −第一章−

 #1 「不良と白昼夢」

 夜道のアスファルトを踏み締める、2人の姿があった。
 1人はゴツイ体つきで、革ジャンを着込み、スキンヘッズで額に銃弾のような傷跡があった。360°どこから見ても危なそうな人間だ。
 人通りの少ない道で、歩いてくる通行人はその男から逃げるように距離を取って過ぎ去る。
 その隣を歩くのは学ランを着た少年で、学ランのボタンを全て外し、中から真っ赤なTシャツが覗いている。髪は褐色1つ混ざらない黒髪で、少々癖が付いていた。そしてその瞳は燃える炎のように赤く輝いていた。
 少年は身長175センチメートルある高校生くらいの顔立ちだったが、大柄な男と並んでいると少年の方がむしろ小さく見えた。
「今月の見ケ〆料(みかぎりりょう)は、しっかり貰ったんだろうな、滝」
 荒々しい声で、赤目の少年は滝となじられた男に言い放つ。
「大丈夫ッスよ、アニキ。 ちゃーんとドス利かせておきましたから、ったくアニキは心配性だなぁ」
 お前以外なら心配しねぇよと、少年から上から目線な言葉が出る。どうやら少年の方が地位的に上に立つようだ。
 暫く2人は街灯灯る狭い道を通り、ネオンサインが眩しい大通りへと出た。
 大通りへ出ると、2人は路上駐車してあったバイクにそれぞれ跨(またが)る。
 ちなみに少年がバイクに乗れると言うことは、16歳以上であると言うことだ。
 男のバイクは真っ黒にペイントされ、この男はどこまで黒を追求するのかと突っ込みたくなるくらい黒尽しだった。それは持っている携帯までもが黒で、ここまでくると、そう言えば千利休も黒が好きだったらしいなどと、どうでも良い雑学が阿曇 紅蓮(あずみ ぐれん)に溜息を吐かせる。
 一方、紅蓮のバイクはその名を受けつぐように赤く、赤いと言っても仰々(ぎょうぎょう)しい赤ではなく、落ち着いた黒よりの赤だった。例えるならば、赤ワインと言ったところだろうか。
 とりあえず紅蓮はエンジンを掛けて、滝の前を走る。
 バイクの走行音はネオン街を駆け抜けて、再び人目に付きづらい道へと入った。
「アニキ! 今日は酒(きす)飲(ひ)かないんですか?」
 バイクの音をうるさく思いながら、滝は叫ぶ。
「バカ! 俺はまだ未成年だぞ、補導の対象になるっての!」
 紅蓮は振り返りもせず、滝に言い返す。
 そして滝は、今度はバイク音を良いことに小声で呟いた。
「……夜中までバイクで走ってる方が補導されますよってな」
 すると、紅蓮が小さな公園前でバイクのスピードを急に下げる。
 ぶつかりそうになった滝は、紅蓮の前を通り過ぎてから静かにブレーキを掛ける。
「危ないッスよ〜! 何してんスかアニキ!」
「おい」
 紅蓮は空を見上げたまま滝に言う。
「何スか」
「今日の天気予報って……」
「晴れッスよ」
 もうすぐ日付が変わるのに、何を言っているんだこの人はと思いながら滝は呟く。
「女って、降ってこないよな」
「んなもの降ってきたら、アッシが網担いで捕まえに行きますよ」
「あれはどうだ?」
 紅蓮が空目掛けて指差す。
 滝は紅蓮の指先を追いながら、空を見上げた。
 すると、そこに見えたのは、調度月光に当たり女の人影を作り出している景色だった。
「バンジージャンプじゃないんスか?」
 暢気に滝は言い放つ。
「あんな所じゃ紐吊せねーだろ、紐無しバンジーやってんじゃね?」
 紅蓮も暢気に言い放つ。いや、言葉自体は暢気じゃなかった。

 紐無しバンジー

 2人の顔が一気に青ざめる。
「行くぞ、滝!」
 紅蓮の声で滝もバイクに飛び乗る。
 2人は住宅街に騒音被害を与えながら、少女の落下地点へ急ぐ。
 別に景色が見え立ってだけで、そう遠い距離じゃなかった。2人はそのまま、少女の落下地点であろう工事現場にバイクのタイヤを踏み入れた。
 工事現場と言っても、今は鉄骨置き場になっているような場所だ。
 すると、紅蓮の少し前方に少女が落下する。
 少女は髪が青く、水色のワンピースを着ている。が、今はそんなことは考えている場合じゃない。
「クソッ! あれやるしかねえか!!」
 紅蓮は前輪を浮かせ、後輪だけでバイクを走らせる。ウィリーと言う奴だ。
 乗り始めの頃、紅蓮はやっと免許を取ったような自分が何度もウィリーを練習して、幾つものバイクをスクラップにしてきた事を思い出す。しかし、蹲踞とを考えている場合ではない。
 バランスを取って両手を少女の前に差し出す。
「届けェー!!」
 紅蓮の両手が、そっと少女に触れる。
「あ?」
 思ったよりも軽く、紅蓮は余計な力を外に放出する。何せ、紅蓮は女の体など持ち上げたことは愚か、触れたことさえなかったのだ。
 瞬間、余計な力が紅蓮とバイクを引き離す。

6ライナー:2011/11/20(日) 00:00:45 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
いきなし訂正です^^;
≫5の下から7行目の 蹲踞と→そんなこと です。

えー、ついでにヤクザ言葉の補足をしておきます。

見ケ〆料……用心棒料のこと

ドス……脅しのこと

酒(きす)を飲く(ひく)……酒を飲む

とこんな感じです、読者の皆様からは解らない言葉などありましたら、ドンドン質問して下さい!
ではではwww

7ライナー:2011/11/20(日) 15:17:47 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net

 紅蓮の体が完全にバイクから離れ、振り落とされるのを感じた。
 体は少女を抱えたまま、垂直に落ちてゆく。
「(ヤベッ……!)」
 と、その時、垂直な動きは騒々しい音と共に、アスファルトと平行な動きに変わった。
「大丈夫ッスか、アニキ」
 同行していた滝が、透かさず捕まえてくれたようだ。紅蓮は大きな溜息と共に緊張感を吐き出す。
「ああ、大丈……」
 紅蓮の言葉の最後に、「大丈夫」の「夫」の字は現れず、「丈」の部分の口を保ったままだった。何故なら、紅蓮のバイクが鉄骨の山にダイブする瞬間を目の当たりにしたからだ。
 我に返った時、大きな爆発音が、硬直した紅蓮の耳を襲う。
「……夫じゃねー!!」
 叫びと共に、鉄骨からはキャンプファイヤーのように炎が巻き上がった。
「今日も派手にやりましたねー、アニキ」
「お、俺の愛車があァー!!」
 捕らえられた滝の腕を振り払い、紅蓮は炎舞い上がる鉄骨の山に、少女を抱えたまま駆け寄る。
「危ないッスよー! アニキー!」
「コノヤロー! メンチ切った訳でもねぇのに、こんな事でチャリをオジャンにしちまったよぉ〜!!」
 炎の山を前に、紅蓮は半分泣き声で叫ぶ。
「放火魔で捕まらない内に逃げますゼー! アニキー!」
 面倒臭そうに滝は紅蓮に呼び掛ける。
 しかし、紅蓮は炎を見つめ、悲しみに暮れている。
「(ったく、こうなると面倒臭いんだよなぁ〜、アニキ……)」
 滝は同じ言葉を三回ほど繰り返すと、紅蓮はやっと滝の方に振り返った。
 あからさまに目線を下に落とす紅蓮は、タイヤで黒色濃く傷つけられたアスファルトの上をなぞるように歩く。
「で、アニキ。その娘どうするんスか?」
「とりあえず、気ぃ失っているみてーだし、家に持ってって組の者に怪我ねぇか確かめて貰うか」
 少しふて腐れたような声で、紅蓮は真っ黒な滝のバイクに跨(またが)る。
「待て」
 急に掛かる声に、2人は驚いて肩を一瞬ビクつかせた。警察の声だったら、かなりまずいことになる。
 掛かった声は裏口の方からで、2人は恐る恐る振り返る。
 後ろには1人の女が立っていた。
 炎の光で照らされ、細かいところまでよく見える。女は赤いマフラーを手で首元に下げ、白いマントを着ている。マントの下には黒いセーターを着込み、髪は蜘蛛の糸を束ねたような滑(つら)らかな白髪だった。
「そいつを渡せ」
 整った顔付きの割りに、ぶっきらぼうな言葉を放つ。
「アンタ、コイツの親戚かい?」
 滝はそれに張り合うように、鋭い目付きで相手に問う。
「……ああ、そうだ」
 女の言葉には、少し躊躇(ためら)いがあった。本当の親戚なら、躊躇(ためら)うことなく親戚だと言ってくるだろう。
「どうします? アニキ」
 滝は女を睨んだまま、紅蓮に訊いた。
 紅蓮は滝の言葉を聞き取りながら、女の方へ目を向ける。女とは少し距離があったが、紅蓮の視力は1、5で正常なためよく見えた。

 瞳が濁っている。

 人間誰だって目はごまかせないものだ。嘘をつけば必ず瞳が濁り、光を失う。
「んじゃあ、別の場所で話そう。ここじゃ警察(マッポ)が来ちまうからな」
 紅蓮が女にそう言うと、女からは意外な言葉が放たれた。
「だったら消せばいい」
「……消す?」
 紅蓮の頭上には疑問符が幾つも浮かび上がった。こんな山のような大きい炎、消防車でも呼ばなければ消せるはずがない。
 すると女は、足下にあったブルーシートを燃える鉄骨の山に被せる様に広げる。無論、ブルーシートだけでは炎を消すことは出来ない、はずだった。
 大きく広がったブルーシートは、空中でいきなり靡(なび)きを失う。そうかと思うと、今度は落下速度が速まり、あっという間に炎の山に被さった、いや、むしろ落ちた様に見えた。
 ブルーシートは鉄骨と鈍い金属音を響かせながら、その山を崩し、勢いで炎が消える。
「これで良いか」
 まるで何事もなかったように、女は真顔で紅蓮に言う。
 紅蓮と滝の2人はその瞬間、ただ唖然としていることしか出来なかった。

8ライナー:2011/11/20(日) 15:32:26 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
語句補足です。

メンチ切る……喧嘩を吹っ掛ける、または吹っ掛けられる

チャリ……≫7で言うバイクのこと

マッポ……警察官のこと

以上です、では読者が付くよう願いながら……ではではwww

9竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2011/11/20(日) 15:52:32 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
こちらでは初のコメントですね。

不良……。
何だか今までのライナーさんの作品からは想像が出来ないようなジャンルですね。
にしても、青い髪の少女っていいですよね。
僕は結構好きですy((
白髪も好きですが、今はまだ二人ともよく分からない状況ですね。
続きも楽しみにしてます。頑張ってくださいねw

10ライナー:2011/11/20(日) 16:34:34 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!

そうですね、不良を主人公に置くのは初めてかも知れませんね^^;
自分でもどんな作品になるのか分からなかったりします、今後が不安だw
青い髪、僕も好きです。キャラの絵は小説を書く度に出てくるキャラを描いているのですが、自分でも意外と良いのが描けたりなんかしちゃったりしt((殴
勿論1作目のキャラも描いています。
麗華ちゃんがやb((殴
こんな作者ですが、頑張らせていただきますので、応援宜しくお願いします!

11ライナー:2011/11/22(火) 19:21:12 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
「どうした」
 女の言葉で、2人は意識が半分飛んでいたことに気付く。
 そして2人は同時に唾を呑む。
 この女は、どう考えても普通の人間ではないことが確かだ。それに少女を追っているとすると、少女は何かの事件の重要参考人と言うことも有り得る。
「(どうする……)」
 無心で、紅蓮の頭にその言葉が響いた。
 何にせよ、ここで少女を女に渡してしまえば、面倒臭いことは逃れることは出来る。しかし、もし、少女が無実の罪でただ追われていたとするとどうだろう。気を失っている状態にも関わらず、女は鋭い目つきになっている。と言うことは、少女が寝ていても何か危険性があると言うことだろうか。
「(どうする、俺……!!)」
 再び、無意識のうちにその言葉が響く。
 追われている……いや、もしかしたら少女は危険人物で、今すぐ消さなければいけないのか。それが女の鋭い目つきの理由だろう。
 しかし、少女がどんな位置に立たされていても、答えは1つだった。

 助けるしかない。

 騎士道精神、侍魂。色々な言葉があるが、少女を見捨てるなどと言うことは男とも言えない。それが紅蓮のポリシーのようなものだった。
 それに少女が仮に悪い立場に立とうと、良いモンの立場に立とうと、それは関係なかった。何故って?
 何故ならそれは、紅蓮が極道に関係する一端の不良だったからだ。
「どうした、そいつをサッサと渡してくれぬか」
 女の根強い声量が耳に届く。
 紅蓮は女の返事の代りに、懐に手を伸ばした。
「悪いな、コイツとはものの1分しか、それも話せねぇ状態で出会ったが……」
 学ランの内ポケットに隠されていたのは……
「お前、怪しすぎるから渡せねぇ!」
 一丁の自動拳銃だった。
 瞬間、女の目が一層鋭さを増して、紅蓮の赤い瞳を睨み付ける。
 紅蓮はそんな女をものともせず、スライドを引いて素早く銃口を向ける。それに習って、滝はポケットに手を突っ込みメリケンサックを取り付けた。
「アニキ、久々ッスね。でもいいんスか? 絶対にただモンじゃないっスよ?」
「バカかお前は、奴は全体的に白い。だから白テープと同じ意味を持つ、つまり『喧嘩売ります』だ! ちなみに俺の方は赤い目が赤テープの役割をこなしている」
「その考え方、古いっスよ……」
 苦笑いを浮かべながら、滝はボクシングのような構えになる。その横で、いーんだよと言いながらトリガーに指を添える紅蓮の姿があった。
「関係のない人間を巻き込むのは、いささか気が引けるが仕方がない。主らには死んで貰おう」
 言葉が終わると同時に、女の汚れのない手からは不格好な針が放たれる。
 その針は真っ直ぐに紅蓮の方に向かい、銃声と共にその勢いを失った。そして、紅蓮と滝は目を疑いゴシゴシと擦る。
 針は一枚の葉だった。
 葉は、虫に食われたように丸い穴を開けて、ヒラヒラとアスファルトに降りてゆく。
「……やっぱただモンじゃねぇ」
 額に大粒の汗を浮かべて、紅蓮は無理矢理笑みを作った。
「滝、下がってろ」
 苦汁の声が滝の耳に伝わる。

12ライナー:2011/11/26(土) 17:44:01 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「これは俺の勘だが、接近戦に縺れたらやばそうな感じがする」
 勘と言っても、あまり根本的ではない紅蓮の意見だったが、滝の足を2、3歩下がらせる。
 極道の世界では、上の人間の命令は絶対服従だった。

 阿曇組若頭、阿曇紅蓮―――
 その右腕である滝は、生まれた時から紅蓮を支えてきた。
「なー、滝ー。俺のとーさんっていつ帰ってくんの?」
 阿曇紅蓮、5歳。生まれた時、彼は母を失い、頭である父、阿曇 天斗(あずみ あまと)は旅に出ると言って、組を去っていた。
「もうすぐ……じゃ、ないっスかね?」
 幼い紅蓮が、乱暴な言葉を使う事に、滝 次五朗(たき じごろう)は少々悲しみを覚えていた。
 このような、赤い瞳という特性を受けついだ子供が、極道という中で失われるのではないかと、不安だった。
 自分よりも美しい存在は傷つけたくない、汚してはならないと考えていた。
 11年前、滝は17歳だった。
 天斗から救われ、組に入ったのを滝は良く覚えている。しかし、何故入ったのか、何故助けられたのかは未だに思い出せずにいた。
「とーさんって、どんな人だったんだ?」
「えーと、強くて、口べたで、とにかく男らしい人だったっスよ」
「んじゃ、俺はとーさんみたいに、強くて、口べたで、男らしい人間になってやる!」
 そう言う紅蓮の瞳は、微かに日の光を帯びて、真っ赤に輝いていた。
「いや、口べたはいいんじゃないスか……?」

 とにかく、滝は紅蓮の命令に絶対服従してきた。それはこれからもそうだし、紅蓮は無理な命令は今までしなかった。滝が今まで会ってきた中で、一番部下思いな上司だった。
 だから、どんな状況下でも、紅蓮の言うことに反論はしなかった。
 ただ、ギリギリまで待って―――

 その頃、紅蓮と防寒女は葉と銃弾のぶつけ合いをしていた。
 葉と銃弾だというのに、金属音が辺りに響く。
「クソッ! どうなってやがる、コイツの攻撃は!」
 無限と言うに等しいくらい、女の懐からは何枚もの葉が、手裏剣のように打ち出される。
「貴様に言ってくれるほど、そう易々とした技ではないわっ!」
 言葉と同時に、また、葉の先端が紅蓮を襲った。
 このままでは銃弾が足りなくなる。そう感じた紅蓮は急いで横に跳ぶ。
 紅蓮が葉を横跳びして躱すと、着地と同時に頬から血が溢れる。葉の側面は刃のように鋭かったのだ。
「チクショウ!」
 すぐさま体勢を立て直し、紅蓮は女に向かって銃声を響かせる。
 一瞬と言える銃弾の速さに、女は白いマントで身を防ぐ。たった一切れの布一枚で。
 銃弾がマントに当たると、これもまた金属音が響き渡る。一体、相手はどんな方法で、あのような芸当とも言える事をしているのだろうか。
「(弾切れか……)」
 スライドを引きながら、銃弾がもう残っていない事を察する。
「(あんまし、これは使いたか無いんだが……!)」
 紅蓮は銃のリリースボタンを押して、マガジンを取り出す。そして、それを懐へと仕舞うと、先程とは違う鉄骨の山に身を隠す。
「仕入れが難しい弾なら、一発で決めねぇとな!」
 紅蓮は、懐から新たなマガジンを取り出し、銃に填め込む。
 その間にも、女は鋭い葉を放っているようで、鉄骨の影から、緑の葉がまるで地から出たモグラのように、3つ4つ飛び出してくる。
 飛び出す葉に焦りながら、鉄骨の影で銃を構え、歩調を早めた。
「これでも、食らいやがれっ!」
 鉄骨の影から、銃口を女に向けた状態で飛び出した。
 呆気に取られた女を余所に、いらない力まで振り絞って、紅蓮はトリガーを引いた。
 大砲でも撃ち放つように、大きな銃声が響く。
 女は同じようにマントで防いだが、今度はそうではなかった。白いマントに銃弾が触れると、勢いよく爆発が起こったのだ。
 マントの外で炎が舞い上がり、黒い煙を纏いながら、女は鉄骨の山へと飛ばされて行く。
「逃げるぞ、滝!!」
 紅蓮の雷声(かみなりごえ)を聞き取って、滝は急いでバイクのエンジンを掛ける。
 バイクの荷台に、布団でも干すように掛けられた少女を紅蓮は担いで、滝の後ろへとバイクに跨った。
 鉄骨で蠢(うごめ)く女を確認しながら、バイクは工事現場をうるさく走り抜けていった。

13ライナー:2011/12/03(土) 16:57:23 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net

#2 家と少女

 鉄骨を手で退かしながら、防寒女はゆっくりと起き上がる。
「撒かれたか……」

 大通り。紅蓮達は、バイクの走行音を鳴らして、レースゲームのように軽車両を追い越して行く。
「クゥ〜! マッポに通報なんてされてないだろうな……!」
 紅蓮は滝の後ろに座り、寒色少女を担いでいた。
 つまり、1台のバイクに3人乗り。今も通報される可能性はあり得るのだ。さらに言うと、車を追い越していることで、違反になり、さらにスピード違反も犯している。3段活用の違反だった。
「通報されてたら、即ムショ行きっスね」
 滝は暢気な調子で、紅蓮に言う。
 人から見られれば、即変な人達扱いされるというのに、良く平気でいられるものだ。紅蓮はそう思う。
 暫く街灯の当たる大通りを走り抜け、少し狭い住宅街へと入っていった。
 ある場所で、滝はバイクを留める。
「着いたっスよ」
 滝の声で紅蓮はヘルメットを外し、少女を担いだままバイクから降りた。
 バイクを留めた先は、大きい日本式の屋敷で、ここが紅蓮の家、または阿曇組の本拠地と言った。
 紅蓮が先頭になって屋敷の門をくぐる。

「お疲れ様ですっ! 阿曇の若頭!」

 帰宅早々、柄の悪い男の声が紅蓮の耳に差し掛かる。
 紅蓮は、あーハイハイ、とぞんざいに返す。家の入り口までの道程に、90°の角度で頭を下げる男達の間をスタスタと通り過ぎ、家に入って行った。
 その姿を追い掛けるが如く、紅蓮に持たされた少女を担いで、滝も家の中へと足を踏み入れた。
「若〜、おかえりなさ〜い」
 ボタンの花の柄をした着物を纏った女が、紅蓮にニッコリと声を掛ける。
 彼女は樒(しきみ)と言う名前で、まあ、言ってみればメイドのような存在だ。ちなみに、苗字しか明かさないのは阿曇組の仕来りのようなものだった。
「おう、樒。滝の持ってるヤツ、悪いところないか調べてやってくんないか?」
 紅蓮が親指を立てて、滝の方を差す。
 樒は元女医で、この屋敷では怪我したときに頼れる人物だった。言うなれば、学校の保健の先生当たりだろうか。
「あらあら、こんな遅くに帰ってきたと思ったら、女の子まで連れてきて、もしかして……」
「テメェは何を考えてんだ! 言っておくが、コイツは空から落ちてきたんだ!」
 紅蓮は樒の言葉を防ぐように言った。
「空?」
 信じられない言葉に、樒は疑問符を浮かべている。
 それもそうだろう。樒は事情を知らないし、あからさまにファンタジー一杯の嘘のような出来事なのだから。
「ハハァ〜ン、そう言うこと。分かりましたよ〜、アタイにお任せ下さいな」
 案外素直に受け取ったことに、紅蓮はひどく驚いた。どうせ、紅蓮が誤魔化しているとでも思っているのだろう。
 何となく嫌な顔をしながら、紅蓮は2階へ上がった。
「ったく、今日は不運だ。寒色系の少女が落ちてくるし、完全防寒の女が襲ってくるし……」
 そんなことを思いながら、今日の占いを見ておけば良かった、と後悔した。

 朝。部屋に布団を敷いて寝ていた紅蓮は、昨日風呂に入っていないことに気が付いた。
「風呂、入っかー……」
 寝ぼけ眼の状態で、紅蓮は部屋の襖(ふすま)を開けて風呂へと向かう。
 現在、午前5時。学校には間に合う時間帯だった。
 紅蓮は、私立蘭西高等学校(しりつらんせいこうとうがっこう)に通う高校生だ。
 学校が終わってからも、極道に関する仕事が溜り疲れる毎日だが、もしもの為に勉強はしている。と言うたぐいで入学した少年。
 とりあえず今からは、余裕を持って風呂に―――

「お早う御座います」

 紅蓮は風呂場にいた。しかし何故だろう、目の前には髪が青い少女が立っているのだ。

 ―――何の服も纏わずに。

「ドワアァッ!!」
 紅蓮は大声を上げて、回れ右という体育の時間に身につけたスキルを発動する。
「て、テメーは何でこんな所にいるんだあー!」
 半分棒読み状態で、紅蓮は少女に怒鳴りつける。
「昨日、お風呂に入りそびれて……」
 運命とは恐ろしいものだ、紅蓮はそう思った。
 そして、今日から紅蓮の不運な日々が送られるのだった。

14月峰 夜凪 ◆XkPVI3useA:2011/12/05(月) 18:40:05 HOST:softbank221085012009.bbtec.net
こんにちは、コメントさせて頂きますノ

不良(ヤクザ)が主人公の物語は、ここの掲示板では見覚えが無かったので新鮮だなぁ、と思いつつ読ませていただきましたノ
いやー、黒髪赤瞳ってかっこいいですよね!
月峰のストライクだったりします((
あと、聞きなれない語句がちょくちょく出てきたので、補足を見ては「なるほど〜」となっていますw
さて、青い髪の少女は一体何者なんでしょうか……気になりますw
これからも頑張ってください^^ノ

15ライナー:2011/12/25(日) 18:51:04 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
月峰 夜凪 さん≫
コメントだいぶ遅れまして済みません(汗)
全然スレッドに触れていなかったので……

新鮮ですか!? そう言って貰えると有り難いです。新鮮さは重要かなと思っていたので^^;
主人公は、やはり容姿からして良い物を! と思って、こういった容姿にしてみました。気に入って貰えて良かったです!
青い髪の少女は、これからがお楽しみですよ^^
本当に返すの遅れてしまいましたが、頑張りますので、応援宜しくお願いします!

16ライナー:2011/12/25(日) 20:42:13 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
たったの一つですが、語句補足です^^;

ムショ……刑務所の事

17ライナー:2011/12/25(日) 21:23:45 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net

 紅蓮は湯に浸かりながら、ジッとしていた。
 水面から半分程顔を出して、ブクブクと息を吐き出す。
「(忘れろー! 忘れろ俺ー! 学生から変態に成り下がるぞ俺ー!)」
 心中で、敢えて不良(ヤクザ)でなく学生言ったのは、紅蓮自身分からない。いつも不良(ヤクザ)の方で押し切っているにはいるのだが、こういう例えの場合学生が優先されるのだろうか。
 10分くらいこんな事を続け、紅蓮は窒息になりそうになりながら、そして逆上せそうになりながら風呂を上がる。
「ふー、疲れたー……あ、いや、何で風呂で疲れてんだ、俺……」
「それは、逆上せたからじゃないですか?」
「あー、それだな、逆上せたからだな……」
 言葉を途中で失って、紅蓮は横を振り向いた。
「………」
 バスタオルが、青髪の少女へと投げられる。
 それを受け取った少女は、紅蓮の方を見やって首を傾げた。
「どうしたんですか?」
「いや、お前の方がどうしたんですかー!?」
 紅蓮は、一生懸命バスタオルで身を隠しながら叫ぶ。少女はまだ、体に何も纏っていなかったのだ。
「ッてかさー、服ぐらい着ろよ! 風引くだろ? お願いだから俺に変な事しないでくれる!?」
 何だか自分が少し女子みたいだ、紅蓮は悲しくそう思う。
「えーと、私の服が無くて……」
 少女は自分が裸を見られたのにも関わらず、普通に紅蓮に言った。こういう場合なら、顔を赤らめて、俯いて、それでもって小声で呟くならまだ分かる。それなのに、普通に話しているなんて、どれほど鈍感なのだろうか。
 紅蓮はタオル一枚を腰に巻いたまま脱衣所を飛び出し、長い廊下の先に向かって言い放った。
「樒ーッ! この子の服持って来ーいッ!!」
 すると、空気が読めない動きで、樒が少女の着ていたワンピースを持ってきた。
「若、いくら何でも女の子の服を嗅ぎたいだなんて……」
「誰がそんなこと言ったんだ! つーかそっちに服があるって事は、コイツは全裸で風呂場に来たんかい!?」
 紅蓮は少女の肩を掴んで、少女を纏っていない肌隠し中のタオル一枚と一緒に少女が飛び出る。
「わ、私がこの娘の服を洗濯している内に……そんな関係に……!!」
 樒はワンピースを廊下に落とし、両手で口を塞いだ。
「テメーは何を想像してんだ!! サッサとコイツを着替えさせろ!!」
 何とか樒と青髪少女を脱衣所に押し込み、紅蓮は廊下に佇む。
 ドッドッと、いかにも重みのありそうな足音を立てて、滝が廊下を歩いてきた。容姿はまだ外着ではなかったので、滝も起きたてだろう。
「……どうしたんスか、アニキ」
 暫く黙ってから、紅蓮は言った。
「着替え、置いてきちった……」
 その廊下は石庭に接していたため、冷たい風が吹き付けてくる。
 その寒さに、紅蓮は身を屈めながらも、樒達が出てくるのを待った。
「アニキ、タオル持ってきましょうか……?」
 紅蓮は震える体で首を振る。
 冷たい風が、さらにその場を凍り付かせるように滝の声が呟かれた。
「そうスか……」
 タオルは現在、脱衣所に全て納められていたのだった。不運と風が、紅蓮の体を痛めつける。
 惨めな気分になりながら、紅蓮は言った。
「今、何時……?」
「7時30分っス」
 紅蓮が学校を出るのも、その時間帯。そして、現在学ランが脱衣所。
「休もうかな、学校……」
 今年一番、弱気になる紅蓮だった。

18ライナー:2011/12/28(水) 15:46:58 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 結局、紅蓮は学校を休み(朝風呂の時に風邪を引いたから)、布団に潜りながら青髪の少女と部屋にいた。
「だいぶ遅れちまったが幾つか訊いて良いか?」
 少々鼻声になりながら、紅蓮は少女に言う。
「はい」
「んじゃ訊くけどよ、何で空から落ちてきたんだ? 最も、お前自身気を失ってたみてぇだから分かんねぇと思うけど……」
 紅蓮の鼻声が聞き取りづらかったのか、少女は暫く黙ってから口を開いた。
「えーと、恐らく落ちてきたからだと思います」
「どこら辺が理由になってんだ!!」
 改めて紅蓮は聞き直し、何分か経った今、やっとちゃんとした答えが出てきた。
「分かりません」
 つい、どこら辺がちゃんとしているのか訊きたくなるが、意味の分からない答えよりずっとまマシだ。にしても、ここまで溜めて来てまさかの「分からない」は、紅蓮にとって殺してやろうかと思う勢いだった。
 しかしながら、紅蓮は女という生物に簡単に手を挙げる程無能ではない。どんなに鈍感で馬鹿でも、不良(ヤクザ)と知らない相手にいきなり殴り掛かるのは、自分の正体を明かすのと同じだ。
「……ま、それは分からないとしてこれ以上の詮索はしねぇ。それじゃあ、髪の白い厚着した女は知ってるか?」
 紅蓮が本当に訊きたかったのは、コッチの方だった。
 おかしな術を使う相手を知りたい、同じ人類にそんな奴がいるなら早めに片付けなければ、それが紅蓮の考えだ。
 すると、少女は青い髪を波打たせるようにして頷いた。
「その人は、私を狙ってて、何故狙っているかというと、力を押さえるとか何とか……」
 少女の話を聞いて、紅蓮は身を乗り出して訊く。
「アイツに攻撃が効かなかったのだが、何でか分かるか?」
「硬化能力です。物質の繊維を固めて、どんな物でも堅くすることが出来るって言うのですね。それのお陰で、物理攻撃はほぼ防げます」
 今の少女の発言で、全ての整理が付いた。
 あの白髪防寒女が投げてきた葉が何故あれほどにも鋭かったのか、それは硬化していたからだ。紅蓮の銃撃がマントで防がれたことも、それに準ずる。
「なるほどな……」
 紅蓮は半ば納得した表情になる。しかし、その後微妙な沈黙が後に続いた。
「……硬化、能力!?」
「え、何か変ですか?」
 少女はまたも首を傾げて、疑問符を浮かべる。
「能力って……お前ら一体何なんだよ。空から降ってきたり、物固めたり……」
 紅蓮に言われて、少女は思い出したように「あ」と声を上げた。
「これ、言っちゃダメなんだった……」
 何処まで馬鹿なんだ、紅蓮はそう思う。
 言ってはいけないと念を押されていたようだが、それなりに念を押されていたのだとしたら言わないだろう。それとも、念の押し方が甘かったのだろうか。
 とにかく、紅蓮が今関わろうとしている事は、非常識であって、一番信じたくないファンタジーが絡んでいるのだ。
「……とりあえず、俺には言っちまったんだから全部言ってみろって」
 紅蓮は少女に言うが、少女は俯きながら何か呟いていた。そして、不意を突くように顔を上げる。
「これ知った人間は、殺さなきゃいけないんですけど、死んで貰って良いですか?」
 風邪を引いていた紅蓮は、一気に寒気が増していくのを感じた。
「無理って言ったらどうするよ……?」
 布団の中に収まった紅蓮の手は、服の懐に忍ばされる。そこには一丁の銃が入れられていた。

19ライナー:2012/01/01(日) 12:28:43 HOST:as01-ppp17.osaka.sannet.ne.jp

「じゃあいいです」
 紅蓮はその言葉に拍子抜けする。
 一体、どこまでが重要でどこまでが重要でないのか、紅蓮にしてみたら白昼夢(ファンタジー)が起こっている時点で油断はならないはず。
 でもしかし、相手に殺意はないようで、それを察して紅蓮は懐から手を出した。
「……で、まず根本的なところから訊くぞ? お前らは何者なんだ?」
 青髪の少女は黙る。
 言ってはいけない事なのだろうが、もう紅蓮にはばれている訳で、殺しもしないなら、喋ってもいいはずだ。
 そして、少女は口を開く。
「それじゃあ、貴方は何者って訊かれたらどうします?」
 最もな意見だった。
 確かに、自分の存在を当たり前と思っている時点でそれは難しい。紅蓮の場合なら普通に人間だ、とでも言った方が良いのだろか。
 紅蓮は考えて、質問の仕方を変える。
「お前らの……あれだ、硬化能力ってのは何なんだ? 一種の魔法みたいなモンなのか?」
「うーんと、魔法ではないですね。いや、ここで言うなら魔法でしょうか?」
 少女は、何やら紅蓮に伝わらない独り言を繰り返している。
「ま、そう思ってもらって結構です」
 これは完全に少女の方が自分で納得しているのではないだろうか、紅蓮はそう思う。
「……で、その魔法ってのはどこで手に入れたんだよ?」
 別に、紅蓮自身、魔法が欲しい訳ではなかったが、少女の住む世界の確認程度に訊いてみた。
「ヘヴンです」
 一言。少女はそう言った。
 紅蓮の知識が間違っていなければ、『天国』と言う意味になるだろう。
「何処の国の町だ?」
 何となく恐怖を感じ、紅蓮は諦め半分で訊いてみた。
 答は勿論―――
「地球には有りませんよ」
 だろうな、と、紅蓮は心中で返す。
 それにしても、紅蓮は意外に自分が冷静さを保っている事に驚いていた。恐らく、いきなり殺しに掛かられていたら、白髪防寒女のように驚く騒ぎの事ではなかっただろう。
「もう、だいぶ喋っちゃいましたけど、これから言うことも黙っていてくださいね?」
 事は真剣に運ばなければいけないのだろうが、少女の目は笑っていた。
 別に怖みが混じっているようなものでは無いのだが、多分、いや、絶対にこの場に適切ではない表情だ。
 紅蓮は幾多の荒い仕事をこなしてきたが、ここまで肝が据わっている(いや、単に無神経なだけな)少女は見たことが無い。
 そして、両者は結局、自分の事は自分で解決したような気になっていた。


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