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赤瞳の不良
7
:
ライナー
:2011/11/20(日) 15:17:47 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
紅蓮の体が完全にバイクから離れ、振り落とされるのを感じた。
体は少女を抱えたまま、垂直に落ちてゆく。
「(ヤベッ……!)」
と、その時、垂直な動きは騒々しい音と共に、アスファルトと平行な動きに変わった。
「大丈夫ッスか、アニキ」
同行していた滝が、透かさず捕まえてくれたようだ。紅蓮は大きな溜息と共に緊張感を吐き出す。
「ああ、大丈……」
紅蓮の言葉の最後に、「大丈夫」の「夫」の字は現れず、「丈」の部分の口を保ったままだった。何故なら、紅蓮のバイクが鉄骨の山にダイブする瞬間を目の当たりにしたからだ。
我に返った時、大きな爆発音が、硬直した紅蓮の耳を襲う。
「……夫じゃねー!!」
叫びと共に、鉄骨からはキャンプファイヤーのように炎が巻き上がった。
「今日も派手にやりましたねー、アニキ」
「お、俺の愛車があァー!!」
捕らえられた滝の腕を振り払い、紅蓮は炎舞い上がる鉄骨の山に、少女を抱えたまま駆け寄る。
「危ないッスよー! アニキー!」
「コノヤロー! メンチ切った訳でもねぇのに、こんな事でチャリをオジャンにしちまったよぉ〜!!」
炎の山を前に、紅蓮は半分泣き声で叫ぶ。
「放火魔で捕まらない内に逃げますゼー! アニキー!」
面倒臭そうに滝は紅蓮に呼び掛ける。
しかし、紅蓮は炎を見つめ、悲しみに暮れている。
「(ったく、こうなると面倒臭いんだよなぁ〜、アニキ……)」
滝は同じ言葉を三回ほど繰り返すと、紅蓮はやっと滝の方に振り返った。
あからさまに目線を下に落とす紅蓮は、タイヤで黒色濃く傷つけられたアスファルトの上をなぞるように歩く。
「で、アニキ。その娘どうするんスか?」
「とりあえず、気ぃ失っているみてーだし、家に持ってって組の者に怪我ねぇか確かめて貰うか」
少しふて腐れたような声で、紅蓮は真っ黒な滝のバイクに跨(またが)る。
「待て」
急に掛かる声に、2人は驚いて肩を一瞬ビクつかせた。警察の声だったら、かなりまずいことになる。
掛かった声は裏口の方からで、2人は恐る恐る振り返る。
後ろには1人の女が立っていた。
炎の光で照らされ、細かいところまでよく見える。女は赤いマフラーを手で首元に下げ、白いマントを着ている。マントの下には黒いセーターを着込み、髪は蜘蛛の糸を束ねたような滑(つら)らかな白髪だった。
「そいつを渡せ」
整った顔付きの割りに、ぶっきらぼうな言葉を放つ。
「アンタ、コイツの親戚かい?」
滝はそれに張り合うように、鋭い目付きで相手に問う。
「……ああ、そうだ」
女の言葉には、少し躊躇(ためら)いがあった。本当の親戚なら、躊躇(ためら)うことなく親戚だと言ってくるだろう。
「どうします? アニキ」
滝は女を睨んだまま、紅蓮に訊いた。
紅蓮は滝の言葉を聞き取りながら、女の方へ目を向ける。女とは少し距離があったが、紅蓮の視力は1、5で正常なためよく見えた。
瞳が濁っている。
人間誰だって目はごまかせないものだ。嘘をつけば必ず瞳が濁り、光を失う。
「んじゃあ、別の場所で話そう。ここじゃ警察(マッポ)が来ちまうからな」
紅蓮が女にそう言うと、女からは意外な言葉が放たれた。
「だったら消せばいい」
「……消す?」
紅蓮の頭上には疑問符が幾つも浮かび上がった。こんな山のような大きい炎、消防車でも呼ばなければ消せるはずがない。
すると女は、足下にあったブルーシートを燃える鉄骨の山に被せる様に広げる。無論、ブルーシートだけでは炎を消すことは出来ない、はずだった。
大きく広がったブルーシートは、空中でいきなり靡(なび)きを失う。そうかと思うと、今度は落下速度が速まり、あっという間に炎の山に被さった、いや、むしろ落ちた様に見えた。
ブルーシートは鉄骨と鈍い金属音を響かせながら、その山を崩し、勢いで炎が消える。
「これで良いか」
まるで何事もなかったように、女は真顔で紅蓮に言う。
紅蓮と滝の2人はその瞬間、ただ唖然としていることしか出来なかった。
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