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赤瞳の不良
13
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ライナー
:2011/12/03(土) 16:57:23 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
#2 家と少女
鉄骨を手で退かしながら、防寒女はゆっくりと起き上がる。
「撒かれたか……」
大通り。紅蓮達は、バイクの走行音を鳴らして、レースゲームのように軽車両を追い越して行く。
「クゥ〜! マッポに通報なんてされてないだろうな……!」
紅蓮は滝の後ろに座り、寒色少女を担いでいた。
つまり、1台のバイクに3人乗り。今も通報される可能性はあり得るのだ。さらに言うと、車を追い越していることで、違反になり、さらにスピード違反も犯している。3段活用の違反だった。
「通報されてたら、即ムショ行きっスね」
滝は暢気な調子で、紅蓮に言う。
人から見られれば、即変な人達扱いされるというのに、良く平気でいられるものだ。紅蓮はそう思う。
暫く街灯の当たる大通りを走り抜け、少し狭い住宅街へと入っていった。
ある場所で、滝はバイクを留める。
「着いたっスよ」
滝の声で紅蓮はヘルメットを外し、少女を担いだままバイクから降りた。
バイクを留めた先は、大きい日本式の屋敷で、ここが紅蓮の家、または阿曇組の本拠地と言った。
紅蓮が先頭になって屋敷の門をくぐる。
「お疲れ様ですっ! 阿曇の若頭!」
帰宅早々、柄の悪い男の声が紅蓮の耳に差し掛かる。
紅蓮は、あーハイハイ、とぞんざいに返す。家の入り口までの道程に、90°の角度で頭を下げる男達の間をスタスタと通り過ぎ、家に入って行った。
その姿を追い掛けるが如く、紅蓮に持たされた少女を担いで、滝も家の中へと足を踏み入れた。
「若〜、おかえりなさ〜い」
ボタンの花の柄をした着物を纏った女が、紅蓮にニッコリと声を掛ける。
彼女は樒(しきみ)と言う名前で、まあ、言ってみればメイドのような存在だ。ちなみに、苗字しか明かさないのは阿曇組の仕来りのようなものだった。
「おう、樒。滝の持ってるヤツ、悪いところないか調べてやってくんないか?」
紅蓮が親指を立てて、滝の方を差す。
樒は元女医で、この屋敷では怪我したときに頼れる人物だった。言うなれば、学校の保健の先生当たりだろうか。
「あらあら、こんな遅くに帰ってきたと思ったら、女の子まで連れてきて、もしかして……」
「テメェは何を考えてんだ! 言っておくが、コイツは空から落ちてきたんだ!」
紅蓮は樒の言葉を防ぐように言った。
「空?」
信じられない言葉に、樒は疑問符を浮かべている。
それもそうだろう。樒は事情を知らないし、あからさまにファンタジー一杯の嘘のような出来事なのだから。
「ハハァ〜ン、そう言うこと。分かりましたよ〜、アタイにお任せ下さいな」
案外素直に受け取ったことに、紅蓮はひどく驚いた。どうせ、紅蓮が誤魔化しているとでも思っているのだろう。
何となく嫌な顔をしながら、紅蓮は2階へ上がった。
「ったく、今日は不運だ。寒色系の少女が落ちてくるし、完全防寒の女が襲ってくるし……」
そんなことを思いながら、今日の占いを見ておけば良かった、と後悔した。
朝。部屋に布団を敷いて寝ていた紅蓮は、昨日風呂に入っていないことに気が付いた。
「風呂、入っかー……」
寝ぼけ眼の状態で、紅蓮は部屋の襖(ふすま)を開けて風呂へと向かう。
現在、午前5時。学校には間に合う時間帯だった。
紅蓮は、私立蘭西高等学校(しりつらんせいこうとうがっこう)に通う高校生だ。
学校が終わってからも、極道に関する仕事が溜り疲れる毎日だが、もしもの為に勉強はしている。と言うたぐいで入学した少年。
とりあえず今からは、余裕を持って風呂に―――
「お早う御座います」
紅蓮は風呂場にいた。しかし何故だろう、目の前には髪が青い少女が立っているのだ。
―――何の服も纏わずに。
「ドワアァッ!!」
紅蓮は大声を上げて、回れ右という体育の時間に身につけたスキルを発動する。
「て、テメーは何でこんな所にいるんだあー!」
半分棒読み状態で、紅蓮は少女に怒鳴りつける。
「昨日、お風呂に入りそびれて……」
運命とは恐ろしいものだ、紅蓮はそう思った。
そして、今日から紅蓮の不運な日々が送られるのだった。
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