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赤瞳の不良

12ライナー:2011/11/26(土) 17:44:01 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「これは俺の勘だが、接近戦に縺れたらやばそうな感じがする」
 勘と言っても、あまり根本的ではない紅蓮の意見だったが、滝の足を2、3歩下がらせる。
 極道の世界では、上の人間の命令は絶対服従だった。

 阿曇組若頭、阿曇紅蓮―――
 その右腕である滝は、生まれた時から紅蓮を支えてきた。
「なー、滝ー。俺のとーさんっていつ帰ってくんの?」
 阿曇紅蓮、5歳。生まれた時、彼は母を失い、頭である父、阿曇 天斗(あずみ あまと)は旅に出ると言って、組を去っていた。
「もうすぐ……じゃ、ないっスかね?」
 幼い紅蓮が、乱暴な言葉を使う事に、滝 次五朗(たき じごろう)は少々悲しみを覚えていた。
 このような、赤い瞳という特性を受けついだ子供が、極道という中で失われるのではないかと、不安だった。
 自分よりも美しい存在は傷つけたくない、汚してはならないと考えていた。
 11年前、滝は17歳だった。
 天斗から救われ、組に入ったのを滝は良く覚えている。しかし、何故入ったのか、何故助けられたのかは未だに思い出せずにいた。
「とーさんって、どんな人だったんだ?」
「えーと、強くて、口べたで、とにかく男らしい人だったっスよ」
「んじゃ、俺はとーさんみたいに、強くて、口べたで、男らしい人間になってやる!」
 そう言う紅蓮の瞳は、微かに日の光を帯びて、真っ赤に輝いていた。
「いや、口べたはいいんじゃないスか……?」

 とにかく、滝は紅蓮の命令に絶対服従してきた。それはこれからもそうだし、紅蓮は無理な命令は今までしなかった。滝が今まで会ってきた中で、一番部下思いな上司だった。
 だから、どんな状況下でも、紅蓮の言うことに反論はしなかった。
 ただ、ギリギリまで待って―――

 その頃、紅蓮と防寒女は葉と銃弾のぶつけ合いをしていた。
 葉と銃弾だというのに、金属音が辺りに響く。
「クソッ! どうなってやがる、コイツの攻撃は!」
 無限と言うに等しいくらい、女の懐からは何枚もの葉が、手裏剣のように打ち出される。
「貴様に言ってくれるほど、そう易々とした技ではないわっ!」
 言葉と同時に、また、葉の先端が紅蓮を襲った。
 このままでは銃弾が足りなくなる。そう感じた紅蓮は急いで横に跳ぶ。
 紅蓮が葉を横跳びして躱すと、着地と同時に頬から血が溢れる。葉の側面は刃のように鋭かったのだ。
「チクショウ!」
 すぐさま体勢を立て直し、紅蓮は女に向かって銃声を響かせる。
 一瞬と言える銃弾の速さに、女は白いマントで身を防ぐ。たった一切れの布一枚で。
 銃弾がマントに当たると、これもまた金属音が響き渡る。一体、相手はどんな方法で、あのような芸当とも言える事をしているのだろうか。
「(弾切れか……)」
 スライドを引きながら、銃弾がもう残っていない事を察する。
「(あんまし、これは使いたか無いんだが……!)」
 紅蓮は銃のリリースボタンを押して、マガジンを取り出す。そして、それを懐へと仕舞うと、先程とは違う鉄骨の山に身を隠す。
「仕入れが難しい弾なら、一発で決めねぇとな!」
 紅蓮は、懐から新たなマガジンを取り出し、銃に填め込む。
 その間にも、女は鋭い葉を放っているようで、鉄骨の影から、緑の葉がまるで地から出たモグラのように、3つ4つ飛び出してくる。
 飛び出す葉に焦りながら、鉄骨の影で銃を構え、歩調を早めた。
「これでも、食らいやがれっ!」
 鉄骨の影から、銃口を女に向けた状態で飛び出した。
 呆気に取られた女を余所に、いらない力まで振り絞って、紅蓮はトリガーを引いた。
 大砲でも撃ち放つように、大きな銃声が響く。
 女は同じようにマントで防いだが、今度はそうではなかった。白いマントに銃弾が触れると、勢いよく爆発が起こったのだ。
 マントの外で炎が舞い上がり、黒い煙を纏いながら、女は鉄骨の山へと飛ばされて行く。
「逃げるぞ、滝!!」
 紅蓮の雷声(かみなりごえ)を聞き取って、滝は急いでバイクのエンジンを掛ける。
 バイクの荷台に、布団でも干すように掛けられた少女を紅蓮は担いで、滝の後ろへとバイクに跨った。
 鉄骨で蠢(うごめ)く女を確認しながら、バイクは工事現場をうるさく走り抜けていった。


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