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赤瞳の不良

5ライナー:2011/11/19(土) 23:43:46 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net

  −第一章−

 #1 「不良と白昼夢」

 夜道のアスファルトを踏み締める、2人の姿があった。
 1人はゴツイ体つきで、革ジャンを着込み、スキンヘッズで額に銃弾のような傷跡があった。360°どこから見ても危なそうな人間だ。
 人通りの少ない道で、歩いてくる通行人はその男から逃げるように距離を取って過ぎ去る。
 その隣を歩くのは学ランを着た少年で、学ランのボタンを全て外し、中から真っ赤なTシャツが覗いている。髪は褐色1つ混ざらない黒髪で、少々癖が付いていた。そしてその瞳は燃える炎のように赤く輝いていた。
 少年は身長175センチメートルある高校生くらいの顔立ちだったが、大柄な男と並んでいると少年の方がむしろ小さく見えた。
「今月の見ケ〆料(みかぎりりょう)は、しっかり貰ったんだろうな、滝」
 荒々しい声で、赤目の少年は滝となじられた男に言い放つ。
「大丈夫ッスよ、アニキ。 ちゃーんとドス利かせておきましたから、ったくアニキは心配性だなぁ」
 お前以外なら心配しねぇよと、少年から上から目線な言葉が出る。どうやら少年の方が地位的に上に立つようだ。
 暫く2人は街灯灯る狭い道を通り、ネオンサインが眩しい大通りへと出た。
 大通りへ出ると、2人は路上駐車してあったバイクにそれぞれ跨(またが)る。
 ちなみに少年がバイクに乗れると言うことは、16歳以上であると言うことだ。
 男のバイクは真っ黒にペイントされ、この男はどこまで黒を追求するのかと突っ込みたくなるくらい黒尽しだった。それは持っている携帯までもが黒で、ここまでくると、そう言えば千利休も黒が好きだったらしいなどと、どうでも良い雑学が阿曇 紅蓮(あずみ ぐれん)に溜息を吐かせる。
 一方、紅蓮のバイクはその名を受けつぐように赤く、赤いと言っても仰々(ぎょうぎょう)しい赤ではなく、落ち着いた黒よりの赤だった。例えるならば、赤ワインと言ったところだろうか。
 とりあえず紅蓮はエンジンを掛けて、滝の前を走る。
 バイクの走行音はネオン街を駆け抜けて、再び人目に付きづらい道へと入った。
「アニキ! 今日は酒(きす)飲(ひ)かないんですか?」
 バイクの音をうるさく思いながら、滝は叫ぶ。
「バカ! 俺はまだ未成年だぞ、補導の対象になるっての!」
 紅蓮は振り返りもせず、滝に言い返す。
 そして滝は、今度はバイク音を良いことに小声で呟いた。
「……夜中までバイクで走ってる方が補導されますよってな」
 すると、紅蓮が小さな公園前でバイクのスピードを急に下げる。
 ぶつかりそうになった滝は、紅蓮の前を通り過ぎてから静かにブレーキを掛ける。
「危ないッスよ〜! 何してんスかアニキ!」
「おい」
 紅蓮は空を見上げたまま滝に言う。
「何スか」
「今日の天気予報って……」
「晴れッスよ」
 もうすぐ日付が変わるのに、何を言っているんだこの人はと思いながら滝は呟く。
「女って、降ってこないよな」
「んなもの降ってきたら、アッシが網担いで捕まえに行きますよ」
「あれはどうだ?」
 紅蓮が空目掛けて指差す。
 滝は紅蓮の指先を追いながら、空を見上げた。
 すると、そこに見えたのは、調度月光に当たり女の人影を作り出している景色だった。
「バンジージャンプじゃないんスか?」
 暢気に滝は言い放つ。
「あんな所じゃ紐吊せねーだろ、紐無しバンジーやってんじゃね?」
 紅蓮も暢気に言い放つ。いや、言葉自体は暢気じゃなかった。

 紐無しバンジー

 2人の顔が一気に青ざめる。
「行くぞ、滝!」
 紅蓮の声で滝もバイクに飛び乗る。
 2人は住宅街に騒音被害を与えながら、少女の落下地点へ急ぐ。
 別に景色が見え立ってだけで、そう遠い距離じゃなかった。2人はそのまま、少女の落下地点であろう工事現場にバイクのタイヤを踏み入れた。
 工事現場と言っても、今は鉄骨置き場になっているような場所だ。
 すると、紅蓮の少し前方に少女が落下する。
 少女は髪が青く、水色のワンピースを着ている。が、今はそんなことは考えている場合じゃない。
「クソッ! あれやるしかねえか!!」
 紅蓮は前輪を浮かせ、後輪だけでバイクを走らせる。ウィリーと言う奴だ。
 乗り始めの頃、紅蓮はやっと免許を取ったような自分が何度もウィリーを練習して、幾つものバイクをスクラップにしてきた事を思い出す。しかし、蹲踞とを考えている場合ではない。
 バランスを取って両手を少女の前に差し出す。
「届けェー!!」
 紅蓮の両手が、そっと少女に触れる。
「あ?」
 思ったよりも軽く、紅蓮は余計な力を外に放出する。何せ、紅蓮は女の体など持ち上げたことは愚か、触れたことさえなかったのだ。
 瞬間、余計な力が紅蓮とバイクを引き離す。


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