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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第十章
529
:
明神
◆9EasXbvg42
:2025/03/09(日) 17:04:54
>「また…遊…ぼ…ね」
最後に笑顔をひとつ残して、バルディッシュは消滅した。
地球を裏切った元ブレイブのイクリプス――『悪役のロールプレイ』は、
"何者かになりきる"という本来のロールプレイングの楽しみに回帰したとも言える。
俺達ブレイブが採択した、全世界バフの起動とローウェル捜索までの時間を稼ぐ遅滞戦術は、
SSSのプレイヤーからすれば爽快感と無双ゲーの楽しさを著しく損なう
加えて一方的に不利を押し付けられるエンバースのロールプレイ理論。
βテストで無意味な苦行をやらされるクソゲーに、なったはずだった。
だけど、そんな中でも、工夫してこのゲームを楽しもうとしている奴らがいる。
キャラクターを作り込み、その世界に生きる登場人物としてドラマを生み出す――
それは、SSSとブレモンのどちらが欠けても成立しない「二つをあわせた新しいゲーム」の楽しみ方。
俺達とイクリプスが作り上げた楽しさだ。
「……はぁー。ゲームのキャラとフレンドになって喜ぶってだいぶイカれてますよバルさん」
一足先に消えていったバルディッシュを見送って、アヤコがクソデカ溜め息とともにそう漏らした。
「なになにアヤコちゃん、寂しいの??お前も俺達とフレンドになっていいのよ??」
「激ウザ。じゃぁまぁ自分もそろそろ消えますわ。フレに呼ばれてるんで。
……自分らの知らないところで勝手に死なんでくださいよ。
炎君にはまだ100回くらいビンタし足りないんすから」
アヤコの輪郭が解け始める。こっちは意図的なログアウト操作をしたんだろう。
その姿が消滅する前に、俺はどうしても聞いておきたいことがあった。
「……楽しかったか?」
「なんすかそれ、βテストのアンケート?」
『ゲーム体験の評価とその理由をお答えください』――みたいな問いだと自分で言ってて思った。
良いじゃねえか教えてくれよ。ローウェルにフィードバックしてやっからよ。
アヤコは肩を竦めた。
「自分らの世界って、性別とか恋愛とか、その辺の考え方がだいぶ薄れてんすよ。
男女の惚れた腫れたなんて、大昔のフィクションでしか触れられないようなものばっかで。
だからまぁ……そういうのを当事者の目線でやれて、結構?それなりに?良い空気吸えたかな?」
「フラれてんじゃん」
「殺すぞ……!!」
もうお嬢様のメッキどこにも残ってねえな……。
炎君とかいう恋愛脳の極地みてえな設定は、恋愛ごとへの漠然とした憧れが生み出したものなんだろう。
初手で彼女持ちのジョン君にモーションかけて脳破壊されてんのはホントにお気の毒としか言えねえけど。
光の粒に分解されて消える、その刹那。ほんの一瞬だけ、アヤコの解像度が上がった。
「炎君!……次こそは貴方の愛を奪いに伺いますわ。
それではいずれ相まみえる時まで――貴方がたに、星の神の祝福があらんことを」
それは、イクリプス流の「GGWP」だったのかもしれない。
そしてジョンの返事を聞くこともなく、アヤコは虚空へと溶けていく。
ロールプレイを全力で楽しみきった二人のイクリプスは、跡形もなく消え去った。
◆ ◆ ◆
530
:
明神
◆9EasXbvg42
:2025/03/09(日) 17:05:30
バルディッシュとアヤコが撤退し、スペルで地割れしていた空間も元に戻った。
これでライブ会場に行ける。
ベル=ガザーヴァと合流し、スペルで援護すれば、オーロールだって退けられるはず――
そう考えていた俺の目に飛び込んできたのは、
>「――見事」
>「……GGWP……ってか」
相打ちになったガザーヴァとオーロールの姿だった。
オーロールは対手の健闘を称えながら消滅していく。
後に残ったのは、融合を解いたマゴットと、槍ごと地面に墜落したガザーヴァ。
「ガザーヴァ!!」
たまらず駆け寄るさなか、まずマゴットの姿が消え、スマホにアンサモンの通知が入った。
召喚を維持できない瀕死状態ではあるが、ギリギリ生きている。
その一方で、ガザーヴァは――両腕と右足を欠損し、大小無数の傷口から血ではなく光が漏れていた。
これまで幾度となく見てきた、レイド級モンスターの死亡演出。
誰がどう見ても致命傷……もはや止めようのない、死へのカウントダウンだった。
「ガザーヴァ!おい!ガザーヴァ!!」
地に伏せるガザーヴァを抱き上げる。冗談みたいに軽い。
呼びかけてどうにかなるもんじゃないと分かっていても、俺は声を上げずにいられなかった。
消えていく。次第にガザーヴァの輪郭が薄れ、紅茶に落とした角砂糖のように大気へ溶けてゆく。
「ジョン、ジョン!!『源泉』と『守護壁』だ!ありったけの回復スペルを寄越せっ!!」
ガザーヴァの体を回復の光が包むが、肉体の崩壊は止まらない。
俺は回復スペルを持ってないし、ジョンが持ってるのだってコンボに組み込む微回復のものしかない。
仮に大回復を持ってたとして、『この状態』のパートナーに回復が効果ないのなんて――
今までの経験で、わかっていた。
なんで。どうして。
益体もない疑問ばかりが頭の上を滑っていく。
なんで――命を捨ててまで戦ったのか。そんなもん、今更聞くようなことじゃねえだろ。
ガザーヴァの後ろには、未だ全世界へ呼びかけるために歌い続けてるカザハ君たちがいる。
委ねられているのは、俺達全員の命運。世界一つぶんの命を守るために、ガザーヴァは退かなかった。
「うわあああああ!!!」
取り乱すべきじゃなかった。だけど、意思と無関係に腹の底が震えた。
霧散していく光の粒をかき集めんと手を伸ばす。指の間をすり抜けていく。
その当たり前の現象に、どうしようもなく目の奥が熱くなる。
>「……みょう、じん……」
俺の声が聞こえたのか、ガザーヴァの唇が僅かに震えてか細い声を出す。
意識がある。生きてる……まだ生きてる!
531
:
明神
◆9EasXbvg42
:2025/03/09(日) 17:05:54
「ガザーヴァ!……大丈夫だ、絶対助かる。俺が助ける。
お前が命懸けでここにいる全員を守ったんだ。俺だってお前のために命を懸けられる」
一度死亡演出に入ったモンスターを助ける方法がないってことは、
プレイヤーなら誰でも知ってる常識だ。
……それが何だってんだ。
そんなもんは、ゲームの開発者が勝手に決めたルールに過ぎない。
この世界はゲームだが、システムを覆す方法はあるってことを、これまで何度も実感してきただろ。
あがけ。たとえ可能性が限りなくゼロに近くても。
逆境に立ち向かい続けるのが俺の目指したブレイブの姿だろ。
考えろ。俺が辿ってきた旅路の中から、ひとつひとつ状況打開の択を検証しろ。
『回復スペル』、『ゾンビ化』、『リボーンシード』――延命手段は数あれど、
それらはあくまで延命であって、失われた命を回帰させるものじゃない。
バロールに新しい体を用意させる――肝心のバロールが行方不明だ。
『捕獲』――ダメだ。死亡したモンスターは捕獲コマンドの対象にとれない。
思考を回すことで絶望から距離を取ろうとしても、やがて諦念に似た感情が追いついてくる。
ガザーヴァに両腕があれば、手を握ってやることが出来たのに――
「あ……――」
ひとつ、ひとつだけ心当たりに行き着いた。
消えかけの命に、外から生命力を分け与える方法。
『負荷軽減(ロードリダクション)』――。
手を繋ぐことで魔力の経路を形成し、相互に力を供給する魔法だ。
今のガザーヴァには経路を作るための両腕がない。
だったらどうするか……答えはすぐそばにあった。
かつてジョンは、カケル君の『トランスファー・メンタルパワー』を換骨奪胎し、
自己流のやり方で瀕死のカザハ君に命を分け与えた。
それがどういうやり方だったかも、ちゃんと覚えてる。
必要なのは、『勇気』ひとつだ。
腹の底から声を出せ。命を燃やせ。
寿命は少なからず縮むだろうが、ガザーヴァと一緒に生きられないなら、そんなもんに大した価値はない。
「寿命なんかいくらでもくれてやる。戻ってこい、戻ってこいガザーヴァ!!」
軽くなってしまったガザーヴァの体を抱き寄せて――
乾き始めたその唇に、自分の唇を重ねた。
【唇越しに生命力供給】
532
:
ジョン・アデル
◆yUvKBVHXBs
:2025/03/14(金) 21:08:33
「なんだよ…惚れちまうところだったよ…」
バルディッシュの最後の笑みを見た瞬間から…少しだけ時間がたっても胸のドキドキが収まらない。
んん…これは感動のドキドキだ。わからないが…きっとそうだ…だから…うん。
>「……はぁー。ゲームのキャラとフレンドになって喜ぶってだいぶイカれてますよバルさん」
>「なになにアヤコちゃん、寂しいの??お前も俺達とフレンドになっていいのよ??」
アヤコと明神が楽しく煽り合う。
え…?もしかして僕達が命のやり取りをしてる間上でこの【〜〜〜ツンデレ幼馴染と素直にさせたい俺〜〜〜】みたいな少女漫画的な空間繰り広げてたわけ?
明神…?さすがに嘘だよな…?………よし…きめた!後でガザーヴァにチクってやろっと。
>「自分らの世界って、性別とか恋愛とか、その辺の考え方がだいぶ薄れてんすよ。
男女の惚れた腫れたなんて、大昔のフィクションでしか触れられないようなものばっかで。
だからまぁ……そういうのを当事者の目線でやれて、結構?それなりに?良い空気吸えたかな?」
>「フラれてんじゃん」
>「殺すぞ……!!」
「…まじで仲良くなってんね」
バシン!
僕の頬が再び平手打ちの刑に処される。どうして…。
>「炎君!……次こそは貴方の愛を奪いに伺いますわ。
それではいずれ相まみえる時まで――貴方がたに、星の神の祝福があらんことを」
バルディッシュがいなくなったことでいる意味がなくなったのか…それとも目的を達成したからなのか…
アヤコは明神に対する怒りや僕の平手打ちをかましてはいるが…穏やかな顔でログアウトしていく。
言いたい事は一杯あった…部長の進化だってアヤコの炎が無くては不可能だった。
今まですべての旅の軌跡が僕の力になった。例え時間としては短いものだったとはいえ…アヤコの…一族の炎も大切な軌跡の一つだ。
だから感謝の一言くらいいっても…バチは当たらないだろう。
「また遊ぼうぜ!」
そして僕はログアウトしていくアヤコを見送った。
533
:
ジョン・アデル
◆yUvKBVHXBs
:2025/03/14(金) 21:08:46
「部長…いけるか?」
「にゃあ」
力なく部長が鳴く。
強敵相手の激闘…かなり強引な進化方法…どれもHPじゃなく…部長の体力を削るには十分だった。
部長にも…僕にも休息が必要だ…だが…戦場は僕達に休む時間を与えてはくれない。
「カザハのバフの効果が切れたら…僕も部長もその場でぶっ倒れるかもな…」
僕の体の奥底には確かに力が湧いてくるだけの気力がまだ残っている。しかし…それはカザハのバフの効果あってのものだ。
戦場の特異性…俗に言うアドレナリンという奴だろう…要は紛い物の元気という事だ。
「くそ…血が足りないせいか思考が弱ってきてるな…」
だがこれ以上時間を掛けるわけにはいかない。カザハを助けにいかなくては。
明神も落ち着いているが…内心はガザーヴァの事が心配で仕方ないのだろう…そわそわを隠せていない。
これ以上…僕の都合でこれ以上合流を後らせるわけにはいかない。
「明神…ガザーヴァの位置はわかるか?部長に乗って行こう!そっちのが早いはずだ。」
マゴットがついてるとはいえ今の状況で危険度が一番高いのはガザーヴァだ。
本音を言えばカザハの元に飛んでいきたいが…ただでさえ遅れているのに私情を挟むわけにはいかない。
「部長…すまないが…頼むぞ!」
「にゃあーーーー!」
僕達は部長の背に乗り空を駆けた
534
:
ジョン・アデル
◆yUvKBVHXBs
:2025/03/14(金) 21:08:59
>「――見事」
ガザーヴァの元へついた僕達が見たのは恐らくガザーヴァが交戦していたであろう…名前は…なんだったか…の死を見た。
無事敵を退けたのだ。喜ばしい事だと…僕達は心の底から喜んだ。
死にかけ…いや…見るからに致命傷のガザーヴァの姿を見るまでは。
「あれ…は…………な…なんてっ」
>「ガザーヴァ!!」
どけっ!と明神が叫びながら部長から飛び降りる。まだ結構高さがあったので痛かっただろうに…そんな事も気にしないまま。
明神は顔歪ませながら…ガザーヴァに近寄っていく。
「にゃあ…」
部長が切なげに鳴く。
僕には部長がどんな意味を込めて鳴いたか分かった…いや…部長が鳴かなかったとしても…あのガザーヴァの容体を見れば一目瞭然だ。
――ガザーヴァは…もうすぐ息を引き取る。
>「ガザーヴァ!おい!ガザーヴァ!!」
体が崩壊しかかっている…もうこうなればもう誰にも止められない。
明神が名前をどれだけ叫ぼうとも…体は徐々に…消えていく…バルディッシュのように。
どうしてこうなった…?
僕が…無駄に話してたせいか?僕がもっと決着を急げば…ガザーヴァは死なずに済んだのではないか?
「明神…僕」
>「ジョン、ジョン!!『源泉』と『守護壁』だ!ありったけの回復スペルを寄越せっ!!」
無理だ。助かるわけがない。
部長の回復スペルは耐久よりの部長を生かす為であって…いやスペルでは…この状態から回復できる事など出来はしない。
「わかった…」
いくら部長の回復やバフを重ね掛けしたとしてもどうにもならない。
そんな事は…明神が一番よくわかってるはずだ。
僕には…どうする事もできない。
すぐ近くにカザハもいるだろう…他の二人はちょっとわからないが…そう遠くはないはずだ…だけど
連絡も繋がらないような状況で…だがもしつながったとしても…崩壊は始まっている。止められない…。
明神が回復の噴水を汲んできて必死にガザーヴァを回復させようとする。
あんなに冷静な明神が…間違える事はあっても冷静さだけは決して手放さなかった明神が。
誰よりも感情的になりつつも自分を見失わなかった明神が。
効果がないと分かっていながらガザーヴァを治そうとする姿を…見ていられなかった。
535
:
ジョン・アデル
◆yUvKBVHXBs
:2025/03/14(金) 21:09:11
>「ガザーヴァ!……大丈夫だ、絶対助かる。俺が助ける。
お前が命懸けでここにいる全員を守ったんだ。俺だってお前のために命を懸けられる」
全員を救うヒーローになると宣う自分が情けなくて…どこまでも効果のない回復を続ける明神が見ていられなくて。
僕はただその場に座り込むことしかできなかった…。
そんなとき
>「そうか――みんな、聞こえるか」
繋がらないはずの通信から…エンバースの声が聞こえた。
なぜかわからないが通信が回復したのだ!僕は急いでみんなに通信を掛ける
エンバースが何か重要な事を喋っていた気がする…でも今はそれどころじゃないんだ!
「カザハ!カザハ!大丈夫か!?…そうか…よかった」
カザハののいつもの声を聞いて安心するも明神の悲痛な叫び声で現実に戻される。
「聞いてくれ!ガザーヴァが!大変なんだ…大けがして…もう姿も消えかかってて…それで…!」
もう少し疲れていなければ…貧血じゃなければ…明神の狼狽え姿をみても冷静にいられただろう。
戦いで疲れ果てていたのは体だけじゃなかったと…思い知る。
>「……みょう、じん……」
ガザーヴァの消えそうな声の前で僕はただ涙を流し…明神を見つめる事しかできない。
>「寿命なんかいくらでもくれてやる。戻ってこい、戻ってこいガザーヴァ!!」
確かに…その方法があった…!生命の直に渡す方法が…!
無意識に僕が取ったカザハを助ける為の方法。ラスベガスに来るために使った方法。
僕が使った時とはわけが違う!確かにカザハは弱ってはいたがまだ猶予がある段階だった。
でもガザーヴァは文字通り…消えかかってる…もう傷口を中心に崩壊は進み…肉体という概念すらも曖昧になってきている。
崩壊してて実行できるかどうかすらもわからない…もし出来たとしても……
当たり前のことだが…一つの体に命は一つだけだ。
生命エネルギーは…「命」は…例外を除けば全員が等しく持っているが増やすことはできない。
どれだけ生命力にあふれていようと限界がある。
崩壊する体を本気で止めようとするならば…明神の命は…
「や…………」
やめろという言葉がでなかった。もし倒れているのがガザーヴァではなく…カザハだったら僕も同じ事をしていたから。
明神だってそんな事百も承知だ…なら僕がこの場でできる事は…。
二人が無事でありますように
そう祈りながら周囲の警戒をする事だけだった。
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