したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part2

1名無しリゾナント:2011/01/18(火) 17:04:23
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第2弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

865名無しリゾナント:2012/09/03(月) 18:20:15
〈2、3人集ったら〉

3−1

道重さゆみは、鞘師里保、石田亜佑美と都内のとあるカフェに来ていた。

さゆみは、愛しい鞘師の横顔を盗み見ながら、ある「記憶」を蘇らせる。
それは、欲望の塊となって鞘師を抱いた、あの夜の「記憶」…。
そもそもさゆみは、ピンクの悪魔になったときのことを覚えていない。
だが、あの夜の「記憶」だけは、繰り返し見る淫夢によって、少しずつ復原された。
もちろん、それはただの妄想かもしれない。
さゆみの願望が生み出した蜃気楼にすぎないのかもれない。
しかし、さゆみは、その「記憶」が、妄想でも蜃気楼でも構わなかった。
その「記憶」の中には、縛られたまま身をよじり悶える鞘師が、確かにいる。
さゆみは、鞘師を見ながら、あの夜の「記憶」を、五感全てで味わい始める。

触覚。まだ誰も触れていない薄絹のような肌に、自分の指先の皮脂が染み込んでいく。
上下に撫でさするたびに、うぶ毛以外に摩擦のないなめらかな表面が桃色に火照る。
嗅覚。湿り気を帯びた胸元から漂う鞘師そのものの匂いが、本能に強く爪を立てる。
鼻先にかかってくる熱く淫らな吐息に、微かに残る自制心の欠片も砕き潰されていく。
視覚。服を首まで捲りあげられ、羞恥のあまり微かな蠕動を続ける、あどけない体。
ただそこには確かに凹凸が生まれつつあり、この年頃特有の危険な色気に満ちている。
聴覚。こらえきれず鼻から洩れ出る声が、鞘師の混乱している心を教えてくれる。
それは、泣いているようであり、責めているようであり、誘っているようでさえある。
味覚。首筋の汗、頬を伝う涙、拒む唇へ無理に舌先を押し込んで舐め取った唾液。
その全てに、芳醇さと、甘美さと、熟す直前の果実が持つ淡い酸味が感じられる。

「道重さん、アイスクリーム、溶けちゃいますよ」
石田の声で、さゆみは突然現実に引き戻された。
「あっ、そうだね…。なんか、おなか一杯になっちゃった。あゆみん、これ食べる?」
「えっ、いいんですか!?」
さゆみは頷くと、急いで「記憶」の世界に戻ろうと、再び鞘師の横顔を盗み見た。

866名無しリゾナント:2012/09/03(月) 18:20:48
3−2

「じゃあ、これ、私、食べちゃいますよ。鞘師さん、半分コしませんか?」
石田亜佑美のその言葉が、鞘師里保の心をかき乱す。
(『食べちゃいますよ……、鞘師さん……』)
「私は大丈夫。あゆみん、全部食べなよ」
(そう…、食べなよ…、この私を…、全部……)
……自分は一体何てことを考えているんだ!?
自らの心の声に激しい嫌悪感を抱きながら、鞘師は見たくもない天井を見た。
上を見たのは、そうしないと、自分の目がある場所に集中してしまうからだ。
そう、あのプルンとした石田の唇に…。

鞘師が石田の唇の魅力に気付いたのは、半年ほど前だ。
写真を撮ろうと石田の顔をじっと見ているうちに、鞘師はその美しい唇に魅了された。
彼女の肉感的な唇は、この世で最も美味なるものに思えた。
心地よさそうな弾力、瑞々しい艶、健康的な色。全てが完璧で理想的だった。
鞘師は、「見とれる」という言葉の意味を、そのとき初めて理解した。

スプーンが石田の唇に運ばれる。上下の唇が、鈍く光る金属の棒を優しく包み込む。
その棒が引き出されると、上下の唇それぞれを横切って、細い線が一本ずつ生まれた。
それらの線は、唇の柔らかさを如実に物語りながら深さを変え、そして消滅した。
もし、あのスプーンが、自分のこの人差し指だったら…。
熱く淫らな欲情の奔流が、鞘師の体の中心部を駆けあがった。
(ハッ!)
鞘師は、また自分が石田の唇を見つめていることに気付いた。
慌てて目の前のグラスを掴み、のどにサイダーを勢いよく流し込む。
鞘師は、自分の心を汚している、いやらしい情念をきれいに洗い流したかった。
炭酸の刺激による痛みを感じながら、鞘師は思った。
(私、道重さんやフクちゃんみたいに、変態さんになっちゃったのかな…。
 …じいさま、瀬戸内の海は、今も青くきれいですか?里保は…里保は、もう…)

867名無しリゾナント:2012/09/03(月) 18:21:27
3−3

石田亜佑美は道重からもらったその高級なアイスクリームの味に愕然としていた。
(嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!こんなに美味しい物が、この世に存在するわけがない!)
石田は、新たな味覚との出会いに心を震わせた。
思い起こせば、石田のこの一年間は、驚きの連続だった。

以前、「スターバックス」という喫茶店に同期みんなで行った時も、そうだった。
石田はそれまで、その高級な喫茶店に入ったことがなかった。
一方、工藤と佐藤は、まだ中学一年生のくせに生意気にも経験済みらしい。
プライドの高い石田は、二人に馬鹿にされたくなくて、初めてだということを隠した。
工藤が「フラペチーノ」というものを注文し、佐藤と飯窪もそれにした。
当然、石田もそれを選ぶしかない。他のものを注文すれば、ボロが出る可能性がある。
石田は、「フラペチーノ」とは、フラッペをフランス風に言い換えたものと解釈した。
だが、注文後、カウンターの上に乗せられたものは、石田の想像とは違っていた。
それはカキ氷ではなく、冷たいコーヒーの上にソフトクリームが乗ったものだった。
その飲み物の容器には、透明なドーム状のプラスチックの蓋がついていた。
蓋には小さな穴があいていて、長めのストローが突き刺してある。
(ハハ〜ン、これでアイスクリームをすくって食べればいいのね)
石田はさも慣れているような手つきで、ストローを抜いた。
めまいがした。(先が、スプーンみたいになってない…)
石田は、動揺を誰にも悟られないように笑顔を作りつつ、飯窪の方をさりげなく見た。
飯窪はストローを回した。コーヒーが白濁していく。それを飯窪はストローで吸った。
石田は慌てて、その行為をぎこちない手つきでまねて、コーヒーを吸い出してみた。
(嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!)
それは、苦みと甘みとが絶妙に調和した、信じられないほど衝撃的な美味しさだった。

鞘師を盗み見ながら恍惚としているさゆみ。石田の唇にまた心を奪われている鞘師。
あまりにも美味しすぎるアイスクリームを凝視し、テンションMAXの石田。
三人の心が共鳴することは…なかった。

868名無しリゾナント:2012/09/03(月) 18:22:05
〈Ending:かしましかしまし〉

田中れいなは、喫茶リゾナントの二階の自室で新しい陣形をノートに書いていた。
その陣形は、5人ずつ2チームで構成されている。
左から順に、石田工藤さゆみ生田鞘師。もう一つは、田中鈴木譜久村飯窪佐藤。
それぞれ、さゆみと譜久村は後ろに下がり、石田と鞘師、田中と佐藤は前に出ている。
つまり、両方とも、さゆみと譜久村のところで折れ曲がるV字型になっていた。
左のVは本隊。司令塔であるさゆみの隣に千里眼の工藤を置き、情報を収集させる。
新人ツートップの鞘師・石田が攻撃を担当。生田は精神破壊波で彼女らを支援する。
右のVは遊撃隊。飯窪の薄黄色の接着剤と、鈴木の物質透過能力で敵を攪乱。
さゆみの能力が使える譜久村は、負傷した仲間の応急処置を担当する。
また、譜久村は高橋の能力も使えるため、本隊との連絡係も担う。
攻撃はれいなのワントップ。
佐藤の役目はメンバーの移送係なので、その配置についてはあくまで形式的なものだ。
「ふぅ、疲れた〜。やっぱ頭使うのは性に合わん。
愛ちゃんとガキさんがおったら、こんなことせんでいいのに。早く帰って来んかな〜」
さゆみがコーヒーカップを二つ持って部屋に入ってきた。れいながノートを見せる。
「どれどれ…、うん、これでいいんじゃない?」
「右が少し不安やけど、飯窪が特殊能力を使えるようになったし、まあ、大丈夫やろ」
「そうだね。フクちゃんもさゆみの能力をだいぶ使えるようになってきてるもんね」
下が騒がしくなってきた。時計を見ると、集合時間を3分過ぎていた。
「じゃあ、あの賑やかな後輩たちに、見せに行きますか」
「ああいうの、『かしましい』って言うっちゃろ?れいな、うるさいのは好かん!」
そう言いつつ、二人の顔には笑みがこぼれ、階段を降りる音はとても軽やかだった。

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『女子かしまし物語2012』でした。
今回はオムニバス形式にしてみました。皆さんのお気に召す話があれば嬉しいです。
なお、最後の「陣形」は「What’s Up?…」の動画が元になってます。

869名無しリゾナント:2012/09/03(月) 18:22:50
=======================================
>>859からここまでです。
 いつもいつもすみませんが、よろしくお願いします。

870名無しリゾナント:2012/09/03(月) 23:38:34
行ってきました
これまでに書かれた作品とも呼応しててにやりとしてしまいました

871名無しリゾナント:2012/09/04(火) 01:06:24
>>354-358 の続き。

黎明学園中等部の校舎および敷地内の関連施設すべてにおいて
原因不明の水漏れが発生していた。全ての水道から。
けれど、実害は、見えざる部分で出ていた。

 カチカチカチカチ。

携帯の画面を見続ける。

 カチカチカチカチ。

文字を打つ手はまるで楽器でも弾いてるかのようにリズミカルに叩く。
彼女は微笑みを浮かべて打ち続ける。
周りでは悲鳴や、水の流れる音や、そういうものは一切無い。
彼女が居る場所は学校の校門前。
高等部からの生徒が何人か通っている、中等部の異変は一切無い。

 一切無い。

異変に気付く者は誰一人として存在しない。
平穏な平和を謳歌する生徒達は笑って帰って行く。

  なにしろこの国は、どうしようもなく平和なのだから。

まるで義務のように幸福を抱いたまま。

872名無しリゾナント:2012/09/04(火) 01:07:22
 "共鳴者"だけが持つ『位相空間』を形成する技術。

どうなった所で、誰もこれを打ち破る事は出来ない。
彼女は着信通りに事を進めていた。

 カチカチカチ、ピ。

そしてまた着信通りの行動を開始する。彼女はただ行動するだけなのだ。
それが行動原理であり、"あの人"に対する愛情表現である。
生田は微笑んで校門の中にあるグラウンドを踏みしめた。

 「i914の反応を知ったら凄く嬉しそうにしとおっちゃね。
 嫉妬してしまいそうやけど、でもあれを渡したらもっと喜んでくれるかな」

まるで恋する乙女のように身体を軽くさせて"ある物"を手に校舎へ入る。
ばしゃん、と水が跳ねる音。
目には見えない、だが生田には視えている。
"透明な水"は、彼女の膝下にまで溜まってきていた。


 「これ、そろそろ泳げるんじゃない?かのんちゃん平泳ぎできるんでしょ?」
 「この浅さだとまだ泳げないよ。というかそっちより浮き輪がほしい」
 「確かにそうだね。転ばないようにしないと」

"透明な水"は水圧の抵抗は感じるものの、服が濡れたりだとか体温を
奪うといった本来あるべき働きを持っていない。
つまりこれは、直接神経や精神に作用するなんらかのチカラ、という事になる。

873名無しリゾナント:2012/09/04(火) 01:09:29
だが具体的にこれがどういうものなのかは、あまりにも情報が不足していた。
鈴木が目撃している【ダークネス】とはまた別のもの、という事だけ。
唯一知っていると思われる鞘師は居ない。
"音"は聞こえている。
ただ静かに聞こえるのは、何故?

 「ハアハア、西棟が二階からしか行けないのがこんなに辛いなんて…」
 「明日筋肉痛だねきっと」
 「それだけなら良いんだけどねー」

二人はざぶざぶと見えない水の中をウォーキングする。
感覚的にはほとんど抵抗を感じないが、逆に、あるようでないという感覚は
走りにくくて仕方が無い。
通常の三倍は遅い気がして、さらに腰のあたりまで見えない水位が上がっている。

階段を上っていると、ふと、鈴木は何かを感じ始めていた。
鞘師の"音"とは別の何か、誰?誰か居るのか?
鞘師と一緒に。

 「――― どうして学校に【闇】が蔓延してるか、知ってますか?」

向こうから、静かに声が上がった。
鈴木と譜久村は瞬間的に身構えたものの、譜久村がその人物を呼んだ。
ハーブティの香りに嗅ぎ覚えがある。

874名無しリゾナント:2012/09/04(火) 01:17:04
 「亜佑美、ちゃん?」
 「知ってるの?みずきちゃん」
 「何度か朝の挨拶で会ってるけど、覚えてないですか?鈴木さん」
 「中等部の生徒会をやってるんだよ」
 「あ…」

鈴木は思い出したように声を漏らす。
風紀委員が学園の生徒を監督する立場なら、生徒会は、生徒が
生徒のために立ち上げた、正しい黎明学園の生徒としての生活を送ってもらおうと
自身が模範となって生徒を導く立場にある。

あの不定期に行われる「あいさつ合戦」でもその二つの組織がまとめているが
思えば何度か挨拶を交わした記憶があった。
だがそんな人が、よりによってこんな事態にどうしてこんな場所に?

 「人の想いは強ければ強いほどカタチを作るもの。それがきっと
 ダメなことを判っていたとしても、想わずにはいられない。それが、【闇】を
 呼ぶんです、【闇】は人の悪意に"狂鳴"するモノだから」
 「亜佑美ちゃん、もしかして、知ってるの?何が起こってるのか…?」
 「だけど、それだけです。私にはそのためのチカラは与えられてないから」
 「どういうこと?」
 「早く行ってあげてください。手遅れになる前に、鞘師さんが危ないですよ」
 「あ、待って。亜佑美ちゃん!」

そう言って、石田はまた廊下の死角へと消えて行く。
譜久村が追おうとしたが、"透明な水"で階段を上手く上れず、結局見失ってしまう。
ハーブティの匂いは徐々に薄くなり、消えていった。

875名無しリゾナント:2012/09/04(火) 01:19:53
以上です。
当初は登場させる予定はなかったんですが、だいぶ
某舞台の影響を受けた結果がこれです。

---------------------------------------ここまで。

いつでも構わないのでよろしくお願いします。

876名無しリゾナント:2012/09/04(火) 12:46:43
行ってきたよん

ナマタの立ち位置とかだーいしの役割とかこれから明らかになっていくのが楽しみですねん

877名無しリゾナント:2012/09/04(火) 13:14:34
『女子かしまし物語2012』を投稿したものです。
>>870さん、代理投稿ありがとうございました!
行数の調整だけでなく、まとめスレの管理人さんへの連絡までしていただいて
本当に感謝しております。
お手数おかけして申し訳ありませんでした。

また、まとめスレの管理人さんにもこの場を借りてお礼申し上げます。
あのまとめスレがなければ、この楽しい遊び場を知ることができませんでした。
本当にありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。

878名無しリゾナント:2012/09/06(木) 12:15:39
>>489-492の続き。

 「――― 譜久村さん、鈴木さん、お二人には"共鳴"のチカラを
 使えるようになってもらわないと困るんです。きっとあの子もそれを望んでる。
 そうじゃないとこの世界は消えるしかないんですよ。
 主軸が歪み始め、バランスを失いつつあるこのセカイ。
 そのチャンスを前にして、何もせずに消される気ですか?」

ゆらり、ゆらり。
水面が揺れて、斜陽に透き通って、光を揺らす。

水の中で、ヒトは呼吸をすることは出来ないが、これは本物の"水"ではない。
全身を絡めて動かすことを許さない、閉じ込めるための空間。
視えない"透明な水"の中。
魚も泳いでいない水の世界。

まるで、プールの底。
鞘師はゆっくりと目を開ける。身体がダルさを訴える、動かない。
口から気泡が生まれる、だが息が出来る。本物ではない。
何故このまま生かされているのかは分からなかった。

 「皆、止まっちゃった。でもキレイだわ。全部沈めてあげたの。
 時間だって止めてあげられるわ、ほら見て。ずっと綺麗なままなのよ。
 必要としなくてもこんなに綺麗なものが出来るの、凄いでしょっ」

見覚えの無い女子生徒が視界に入る。
覚えている限りでは、背後から何かに包みこまれたのが最後だ。
多分、この"透明な水"に囚われたのだろう。

879名無しリゾナント:2012/09/06(木) 12:16:30
 「ねえ、なんで貴方は此処に居るの?自分が決めたの?
 私はね、親が無理やり入れたの、この学校に。それも勝手によ。
 "バケモノ"を傍に置いておきたくないって顔に書いてあった。
 学校なんかどこでも良かったけど、ここは最悪だわ。
 全てが醜いの、あいつらも、全部、全部全部全部全部全部!!」

ぐわっと、水圧が呼応するように重くなる。鞘師の表情が歪んだ。
気泡が幾つも上がっていく。まずい。

 「貴方は水みたいね。透き通った水面の雫のよう。
 羨ましい、私もそんな世界が欲しい。自分が自由にできる世界。
 ねえ鞘師さん、どうすれば行けると思う?貴方なら分かるでしょ?
 だって私と同じ感じがするもの。ねえ、ねえってば」

女子生徒は、答えが欲しい子供の様にぐずる。
鞘師は口を開くが、そこから溢れるのは気泡だけ。
両肩を掴まれて押し込まれると、重力に逆らわずにどんどん底へと落ちていく。
堕ちて行く。

光が遠くに見える。
光が遠くになっていく。遠のいて行く、意識の向こう側。

寂しさが、込み上げて来る。
途端、鞘師の視界に見えたのは、微かな光。暖かい光。

 「――― 」

その名前を呼んで、鞘師は微かに、口角を上げた。

880名無しリゾナント:2012/09/06(木) 12:17:13
 「――― ハア…ここ!間違い、ない…!」

息を整えない間に鈴木が指で示して叫ぶ。
教室の上に取り付けられたプレートには『美術室』と書いてあった。
西棟の端の端にあるこの教室は、移動授業か部活でしか使用される事が無い。
それも今日は部活が休みだ。

 「ダメ、鍵がかかってるっ」
 「今から職員室行ってもかなり時間かかるよ、どうしよう…」
 「こうなったら何かで割るしか…」

ドアがピクリとも動かない為、消火器でも良いから何かないかと探す。
その時、鈴木はゾワリと背筋を感じた。

 「二人とも、ちょっとそこ離れといた方が良いっちゃよ」

背後からパシャパシャと水が跳ねる音。
振り向くと、廊下にゴツゴツと何かをぶつけて生田が近寄ってきた。

 「えりぽんっ、もおどこに行ってたのよっ」
 「ちょっと用事があったっちゃん。でもなんか凄いことになっとおね。
 ここに犯人がおると?」
 「判んない、でも里保ちゃんがここに閉じ込められてるみたいで」
 「マジで?よぉーし、思いっきり振りあげるけんね、ホールインワンったい」

生田が構えたのは、ゴルフクラブだった。
ゴルフヘッドが鉄製で、鈍く光る。
大きな窓に狙いを定め、大きく振りかぶり。

881名無しリゾナント:2012/09/06(木) 12:18:14

 ――― バアアアアアアアアアアアアアァン!!!

切り裂かれるように割れたガラスから身を守るように体を屈めたが、その
裂け目から"透明な水"がドバッと流れ出てくる。

 「ねえなんか、水かさ増してない!?」
 「んーこれはけっこーヤバイかも☆」
 「ヤバイかもってちょ…!」
 
割れてしまった部分は元には戻らない。
三人は"透明な水"の奔流に飲まれてしまい、ついには天井まで到達してしまう。
息はできる。
だがどんどん体が重くなっている事に気づき、譜久村は鈴木と生田を探す。
鈴木はすぐに見つかったが、生田が水の逆流で美術室に入り込んでしまった。

 どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。

焦る。鈴木を離さないように抱きしめ、譜久村は焦りながらも考える。
彼女を助けなければ、この子も、助けたい。助けて、誰か。


 誰か、ねえねえ、誰か。

探るように手を動かす。揺れるスカート。揺らめく視界。
次の瞬間、あたりは、光の中だった。

882名無しリゾナント:2012/09/06(木) 12:24:31
以上です。
今のメンバーはどんどん道重さんによって変t(ryの王国に
なっている時点でネタの宝庫ですね、>>471-480さんとか。
当時の「ピンクの悪魔」がこの状況を予期していたらなにそれ怖い。

------------------------------------ここまで。
いつもお世話になっております。
投下はいつでも構わないのでよろしくお願いします(平伏

883名無しリゾナント:2012/09/06(木) 21:47:48
行って参りました

884名無しリゾナント:2012/09/07(金) 22:53:11
『好きな先輩』

〈今日の私美人ですか〉

1−1

生田衣梨奈は、学校から喫茶リゾナントへ向かう途中だった。
毎日少しずつ訪れるのが早くなる夕暮れ。もう秋が始まっている。
「もう5時か…新垣さん、今日も返信くれんかった…。えりな、泣きそう…」
誰もいない路地を歩きながら、生田は携帯を見つめる。
「ワンワン」「ワン」「ワオーン」「クーン」「バウワウ」「ウー」「キャン」「オン」
突然、たくさんの犬の鳴き声が耳に入ってきた。
生田が顔を上げると、リードの束を握った一人の少女がこちらを見ている。
歳は生田と同じくらいに見えるが、胸が大きく、鼻筋が通った美人さんだ。
少女の足下では、8匹の犬がこっちを見ている。
少女は微笑んでいたが、その目は明らかに笑っていなかった。
「こんばんは」
少女が生田に声をかける。
同時に、犬たちが尻尾を振りながら駆け寄ってきて、生田を円状に取り囲む。
「生田衣梨奈さん…ですよね?」
「…はい。えっと…、どちら様ですか?」
生田が警戒しながら答えると、少女の微笑が消える。
それを合図に、犬たちが生田の方を向き、同時に吠える。
「「「「「「「「ワン!」」」」」」」」
次の瞬間、生田の姿が消えた。
犬たちに囲まれた場所には、生田の通学鞄だけが落ちている。
「…行くよ」
少女がそう言うと、犬たちはすぐに少女のもとへ駆け戻る。
そして、さっき生田にしたのと同じように少女を取り囲み、一斉に吠えた。
今度は、少女だけでなく、犬たちも一緒に消えた。

885名無しリゾナント:2012/09/07(金) 22:55:01
1−2

生田は、薄暗い森の中に立っていた。
「一体、何が起こったと〜!?ここ、どこ〜?」
携帯を見ると、表示には「圏外」の文字。
生田は、とにかく森から抜け出そうと、低い方へ向かって歩き出した。
すると、水の流れる音が聞こえてきた。
「川だ!」
生田は音のする方へ急ぐ。
視界が急に開け、白い砂地が広がる川原に出た。
もう日が沈んでいるとはいえ、夕空の明るさで、辺りはまだよく見えた。
「川に沿って下って行けばいいっちゃろ。えりな、さえてるー!」
生田はそう言うと、川下の方へ顔を向けた。
そこには、信じられない光景があった。
「新垣さん!?」
数10m先に、大きな岩に座って川面を眺めている、生田の大好きなあの先輩がいた。
生田は子猫のような笑顔で新垣のもとへ走り出す。
しかし、生田の足はすぐに止まった。
新垣の後ろから、さっき路上で会ったあの少女が顔を出したのだ。
少女は、生田をじっと睨みつけている。
少女のその目には狂気が感じられた。
「あんた、さっきの…」
少女は、目つきを柔らかく変えてから新垣を見て、もたれかかり甘えるように言った。
「新垣さん、あの人知ってます〜?」
新垣が生田の顔をじっと見つめる。
生田の胸が、新垣に久しぶりに見つめられたトキメキで高鳴る。
しかし、新垣はすぐに少女の方を振り返ってこう言った。
「ううん、…知らない」
生田の顔と心が凍った。

886名無しリゾナント:2012/09/07(金) 22:56:46
1−3

「…にっ、新垣さん!私です、生田です!」
生田の必死の呼びかけに、新垣がまたこちらを向く。
そして、戸惑いの色を浮かべてすまなそうに答える。
「…ごめんなさいね。ちょっと私、あなたのこと、記憶にないのよ…」
その斜め後ろにある少女の視線は、生田を刺すように冷たかった。
「ねえ、…あずちゃん、この人、知ってるの?」
新垣が少女の方を再び向く。
「あずちゃん」と呼ばれた少女は、瞬時に表情を変え、穏やかに微笑む。
「いいえ、知りません。…新垣さん、ここで少し待っててくださいね」
そう言うと、少女は新垣の顔に手をかざす。
新垣は壊れたマリオネットのように岩の上に横になった。
生田の怒りが爆発する。
「新垣さんに何をした!」
少女は生田の方に歩を進めながら答える。
「新垣さんは私の精神干渉の力によって眠っている。
私の指示に従いなさい。さもないと、新垣さんは永遠にあのまま。
ちなみに、私が死んでも効果は消えないから、変な気を起こさないでね」
生田は、その不気味に落ち着いた声色から、少女の本気を感じた。
「あんたの狙いは何だ!?」
少女は生田の目の前で立ち止まり、静かにこう言った。
「生田衣梨奈、私と勝負しましょう。どちらの方が新垣さんへの思いが強いか…」
「はあ!?」
怪訝そうな生田に、少女は言う。
「勝負は三回勝負。先に二勝した方が新垣さんの正式な後継者となれる。いい?」
生田には、少女の狙いがいまいちよく分からなかった。
だが、「どちらの方が新垣さんへの思いが強いか」という少女の言葉に、生田の闘志が
メラメラと燃え上がった。
「新垣さんへの思いなら、えりな、絶対に負けん!」

887名無しリゾナント:2012/09/07(金) 22:58:01
〈今日の私色っぽいすか〉

2−1

「じゃあ、まずは第一回戦。『仲良し写メ対決!』」
「写メ対決!?待って、待って!えっと、えっと…、よし、えりな、これに決めた!」
生田は、新垣と笑顔で頬をぴったり寄せ合っている写メを見せた。
「この新垣さんの笑顔、たまらんやろ〜!」
「…ふ〜ん、確かにいい笑顔ね…。でも、この勝負は私の勝ちね。私のは、これよ!」
「こ、これは…」
生田は、言葉を失った。
「ふふっ、どう?私、新垣さんと一緒の布団で寝ちゃったの」
少女が出したのは、パジャマ姿でピースサインをしている新垣と少女の写真だった。
「もちろん、精神干渉で洗脳する前に撮った写真よ。あなた、こんな経験ある?」
「……ない」
「ふふっ、この勝負、私の勝ちね!」
口惜しさで声が出ない生田を見て、少女は勝ち誇ったように言う。
「次は第二回戦。今度はそっちが勝負の内容を決めていいわよ」
「……じゃあ、『いま身につけているもの対決!』」
生田は制服のシャツのボタンをささっと外し、前をはだけた。
中に着ている黄緑色のTシャツ、それは新垣からもらったものだった。
「どう!あんた、新垣さんからもらった服はあると?」
少女が下唇を噛む。少女の着ているTシャツは自分のものだ。
「…私だって、…私だって、新垣さんの服、欲しかったわよ…。
 でも…、着てみたらどれも入らなかったの!…胸が…きつくて…」
確かに、その少女の胸はとても豊かだった。
生田は少女の色っぽい体つきを見て、勝負には勝ったのに、強烈な敗北感を味わった。
「と、とにかく、これで1対1っちゃ!次は何で勝負すると?」
少女の顔が、それまでとはうってかわって、急に引き締まった。
「ここまではただのお遊び。次が本当の勝負よ」

888名無しリゾナント:2012/09/07(金) 22:59:34
2−2

少女は続ける。
「私には精神干渉の力がある。あなたは、精神破壊よね。
つまり、二人とも精神系の能力者。
どちらが新垣さんの後継者としてふさわしい力を持っているか、勝負しましょう!」
そういうと、少女は両手を前に出した。
「望むところたい!えりな、絶対に負けん!」
生田も両手を前に出す。
一瞬の間を置き、二人は叫び、ありったけの精神波を放出した。
「ハアアアアア!」「ウリャアアアア!」
少女は生田の精神を支配すべく、生田は少女の精神を壊すべく、全力を注ぎ込んだ。
二人の間の空気が震える。
力はほぼ互角だった。
しかし、時間が経つにつれ、徐々に生田が押され始める。
精神波の力は、集中力の高さが大きく左右する。
生田の集中力は、明らかに低下していた。
少女は自分が押している手応えを感じた。
あと一歩で自分の勝ちだ。
少女がそう思った時、突然、生田がその場を離れ、全速力で走り出した。
(逃げた!?)
少女は精神波を止めた。
しかし、生田は逃げたのではなかった。
生田が走っていったのは、新垣がいた方だ。
(何をする気!?)
少女は新垣がいた大きな岩を見る。しかし、そこに、新垣の姿は無かった。
直後、バシャーンと何かが跳びこむ水音が響く。
水音のした方を見ると、穏やかな川面の中で、そこにだけ波が立っている。
数秒後、そこから生田が出てきた。
右脇に、新垣を抱えて…。

889名無しリゾナント:2012/09/07(金) 23:01:33
2−3

あかあかと燃える焚火の前で、少女は生田の言葉を聞いていた。
「新垣さん、寝相が悪いけん、岩から落ちるんやないかとずっと気になっとんたんよ」
「…あなた、だから、途中で集中力が切れたのね?」
「そんなのは言い訳にならん。新垣さんは、いつも集中力を切らさず周りをみとった。
もし新垣さんが起きてたら『生田ー!修行が足らーん!』って、叱られとったと思う。
それに、あんたの精神波は、本当にすごかった」
少女はうつむいてしまった。
自分は、新垣と一緒に寝た。だから、新垣の寝相の悪さはよく分かっている。
それなのに、自分は新垣が岩から転げ落ちることなど全く想定していなかった。
一方、生田は、一度も一緒に寝たことがないのに新垣の寝相が悪いことを知っていた。
そして、あの激しい戦いの最中でも、新垣の身を案じ続けていた。
(私の…負けか…)
「よし、だいたい乾いた!とにかく、今回の勝負はあんたの勝ちでいい。
だから、お願いやけん、新垣さんを元に戻して!
超悔しいけど、新垣さんの後継者の地位は、今日のところはあんたに譲る!」
生田はそう言いながら、立ち上がって少女に握手を求める。
少女は生田を見上げながら尋ねる。
「あなた、私のこと、憎くないの?」
「えりなのいいところは、『すぐ許す』やけん。
それに、新垣さんを好きな人に悪い人はおらん!」
少女は吹き出した。そして、生田の手を握った。生田も少女につられて笑い出した。
二人の少女の楽しそうな笑い声が、静かな夜の森にこだまする。
しばらくして笑いがおさまると、少女は、新垣に向って静かに手をかざした。
生田がそれを見ていると、急に少女の手が自分の方へ向けられた。
「えっ!?」
少女の精神干渉の力が、無防備な生田の心に入り込む。
まるでマネキンにでもなったかのように、生田の動きが止まった。
少女が口笛を吹くと、闇の中からあの8匹の犬が現れ、生田を囲んで一斉に吠えた。

890名無しリゾナント:2012/09/07(金) 23:02:40
〈今日の私元気ですか〉

3−1

精神系能力のスペシャリストである新垣が、なぜ少女の力に屈してしまったのか。

新垣は、高橋愛を捜索する旅に出ると、すぐにブログを始めた。
ブログには、「超能力を持つ女性の情報求む」と書き、謝礼を出すこともつけ加えた。
何がしかの情報が得られるかと期待したが、何の反応もないまま、数か月が過ぎた。
ブログを閉鎖しようか迷っていたある日、携帯に見知らぬ人からのメールが届いた。
タイトルは「精神干渉と瞬間移動」、本文には、住所だけが記されていた。
捜索が手詰まり状態だった新垣は、藁にもすがる思いで急いでその住所へ向かった。
そして、その日の夜遅く、一棟の古びたアパートにたどりついた。
明かりの点いている部屋は一つしかなく、新垣はそこのチャイムを鳴らした。
ドアが開いて出てきたのは、高校生くらいの年頃と思われる純朴そうな少女だった。
新垣が事情を話すと、やはりその少女があのメールの差出人であった。
少女は、自分には特殊な能力があると言う。
申し訳ないと思いつつ、新垣は彼女の心を覗こうとした。
すると、驚くべきことに、その少女は、新垣の精神干渉を完全に防いだ。
そして、「ほらね」と言うかのように、愛敬のある顔でにっこり笑った。
話を聞くと、その少女は、新垣と同じく精神干渉の能力者だった。
ちなみに、瞬間移動の能力があるのは、少女が飼っている8匹の犬だった。
いずれにせよ、高橋とは関係がないと分かり、新垣は落胆し、少女に別れを告げた。
すると、少女は満面の笑顔で新垣を引きとめた。
「今夜はもう遅いからここに泊まっていって下さい」
新垣は、その少女の屈託のない笑顔の奥に、暗い影があるのを感じた。
この子は私と同じ力を持っている。ならば、私と同じ苦しみを経験してきたはずだ。
望んでいない「異常」な力によって、この子もつらい思いをしてきたのだろう。
アパートで一人暮らしをしているのも、家族がこの子を遠ざけたかったからか…。
少女への同情心が芽生えた新垣は、一晩だけその少女の家に泊まっていくことにした。

891名無しリゾナント:2012/09/07(金) 23:04:10
3−2

少女は、新垣にべったり甘えてきた。新垣は、甘えてくる年下の子が大好物だ。
初めて同じ力を持つ人に出逢えて、この子本当に嬉しいんだな。新垣はそう解釈した。
新垣は、その天然気味の少女とたくさん話をし、思う存分つっこみ、そして、笑った。
捜索の旅で心身ともに疲れていた新垣は、その少女の元気な笑顔に、心から癒された。
仲間と離れた寂しさに凍えていた心が、切ないくらいのぬくもりで溶けていった。
少女を見つめる新垣の目に、戦士の鋭さはもはや残っていなかった。

新垣の滞在は延びていった。
毎日の食事は、新垣の好物ばかりを、少女が一生懸命作ってくれた。
幸福感におぼれていた新垣は、全く気付いていなかった。
その食事には、特殊能力を抑制する、マルシェ特製の薬物が混入されていたことに。
新垣の能力は徐々に弱まっていき、五日後、新垣の心はその少女に完全に支配された。
少女は新垣を山奥の川原に連れて行き、自分は犬と一緒に生田のもとへ「飛んだ」。

その少女、関根梓の正体は、ダークネスの元「研修生」である。
梓は幼い頃から、その異常な能力によって、家族や周囲から疎外され続けた。
自殺を考えていた梓に、ある日、闇の組織からの使者が声を掛ける。
自分の力を正当に評価してくれるその組織に、梓はすがりついた。
組織に加入すると、そこには、彼女と同じような境遇の仲間がいた。
彼女たちは、一人前の戦士となるべく、「研修生」として特殊能力を日々鍛え続けた。
だが、「研修生」の中には、その能力が、組織の要求するレベルに達しない者もいた。
そのような少女は、落伍者とみなされ、一定期間が過ぎると組織から追い出された。
梓も、そんな落伍者の一人となった。同期で落伍者となった者は梓の他にも6人いた。
ある日、ついに組織から最後通達が下された。しかし、梓たち7人は諦めなかった。
彼女らは組織に対して、もう一度自分たちの力を試してほしいと直訴した。
組織はそれを了承し、彼女ら一人一人に、過酷なミッションを与えた。
そして、それをクリアすれば、彼女らをダークネスの正規メンバーにすると約束した。
梓に与えらえたミッションは、同じ能力を持つ新垣里沙を廃人にすることだった。

892名無しリゾナント:2012/09/07(金) 23:05:46
3−3

梓は、新垣里沙について研究するため、ダークネスの資料室に篭った。
新垣が以前ダークネスの一員だったこともあり、データは質量ともに充実していた。
能力、性格、行動など、新垣を知るために、あらゆる書類や映像に目を通した。
梓は、ある意味「先輩」である新垣について、膨大な知識を手に入れた。
その結果、梓の心に意外な感情が生まれた。梓は、新垣を好きになってしまったのだ。
その戦闘能力はもちろん、優しさ、可愛さ、心の強さ、全てが梓を魅きつけた。
梓は、自分の感情にとまどった。

感情の整理がつかないうちにミッションが始まった。梓は予定通り新垣を罠にはめた。
自分が組織から認められるには、そうするしかなかった。
梓は、せめて、新垣と一緒にいられるそのわずかな時間を、心から楽しもうと思った。
ただ、その楽しい時間に水を差される瞬間があった。
新垣が、困ったような笑顔で「生田衣梨奈」という後輩のことを嬉しそうに話す時だ。
梓はその幸せな後輩に激しく嫉妬した。梓は、どうしても生田と勝負したくなった。
自分の方が新垣を深く愛しているということを、生田に知らしめたかった。

焚火が、燃え尽きた。
月明かりがやけに明るく感じられる。
予定の時刻が来て、腕時計型通信機から声が響く。「No6、結果を報告せよ」
梓は表情をひきしめ直して立ち上がる。(とうとう、この時が来ちゃったか…)
長年に渡る血の滲むような訓練の日々を振り返り、梓は、非情になる決意を固める。
眼前に眠る新垣の心を完全に抹殺すべく、梓は両手を正面に向け、指を広げた。
その時、月の光に照らされた両手の指先が、キラキラと輝いた。
突然、梓は膝から崩れ落ちる。そして、冷たい川砂に両手を着いた。
頬に涙を走らせながら、梓は静かに言った。「…No6、…ミッション失敗です…」
白い砂の上に並ぶ爪の一枚一枚には、美しいラピスラズリで文字がかたどられていた。
「あ」「ず」「ち」「ゃ」「ん」「あ」「り」「が」「と」「!」
それは、洗脳前の新垣が、もんじゃ焼きの御礼にと施してくれたネイルアートだった。

893名無しリゾナント:2012/09/07(金) 23:07:23
〈Ending:LALALA…先輩〉

生田は、夜の路地にぼーっと立っている自分に気が付いた。
「あれ〜、…えりな、何しとるんやろ…?うわ!もう8時だ!」
携帯の時刻表示は、ミーティングの集合時間を2時間も過ぎていることを示していた。
生田は、地面に落ちている鞄を拾い、喫茶リゾナントへ走り出した。
携帯メールの着信音が、繰り返し鳴る。
「うわっ、みずきから一杯メールが来とる!もう、一体どうなってんのー!?」
それまでの3時間分の記憶が、生田の脳からきれいに消し去られていた。

「…ここ、どこ?」
一方、新垣も、とある駅の前で呆然としていた。
新垣は、時間を確かめようと、携帯を見る。
そして、そこに表示されている日付を見て、さらに目を丸くする。
「はあ!?9月7日!?ウソ!ウソ!ウソ!何でよ!今日は3日でしょ!?」
状況が全く理解できない新垣は、携帯を両手で握り、足をばたばたさせた。
周囲にいた数人が、そのオーバーで時代遅れな新垣の動きを、珍しそうに見ている。

そんな新垣の様子を、物陰からじっと見つめる一人の少女がいた。
少女は小さく呟く。
「大好きです、先輩…」
そして、少し寂しそうに微笑みながら、夜の街の雑踏の中へ消えて行った。

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『好きな先輩』でした。
敵の少女のモデル、関根梓ちゃんは(仮)のメンバーで、ガキさんの大ファンです。
とってもグラマーで、ガキさんとは大違…、あれ?なんか首が冷たあbぽしhそg

894名無しリゾナント:2012/09/07(金) 23:08:04
=======================================
>>884からここまでです。
 いつもお手数をお掛けしてすみませんが、よろしくお願いします。

895名無しリゾナント:2012/09/08(土) 14:08:57
行ってきたよん
関根さんが八匹の犬を連れているのは八犬伝の舞台にでも出てたのかと思って調べてみたらリアルに飼ってたのねん
ガキさんの服のサイズとが関根さんに合わないとか少し毒を吐きつつ優しい話にまとまってましたねん

896名無しリゾナント:2012/09/08(土) 19:05:35
895さん、代理投稿ありがとうございました!
また、暖かいご感想もありがとうございます。
八犬伝のアイディアは面白いなあと思いました。
書いているとき、まったく思いつきませんでした。

897名無しリゾナント:2012/09/08(土) 22:19:17
>>538-541の続き。

 な、なに……っ!?

圧倒的な光の量に戸惑いながらも、コハクのヒカリが溢れ出す。
譜久村自身からそれが放出されている事に気付く。
包まれるような感覚。暖かさ。不意に手がポケットへ。

 「フクちゃんに預けておくね。きっと大事なものになる筈だから」

放出されるヒカリがもっと広がりを増す。
手のひらに置かれた箱がひとりでに蓋を開け、その中から浮力で現れた、砂時計。
コハクの光が"透明な水"に水面を作り、波紋が生まれる。
その波紋の中心から水が隆起し、まるで生き物のように砂時計の周りを
グルグルと螺旋状に囲み始める。

目の前には、巨大な水の空洞が出来ていた。

譜久村の指が自然と動き、水が自由に、上下左右と操る。
優しい風が、強い風が、暖かい風が流れた。
旋風を形成したかと思うと、その真空から鋭い爪の様な疾風(かぜ)が無数に飛び交う。

――― パアアアアアアアアアアンッ!

"透明な水"を切り裂き、粒がシャボン玉のように壊れて、消えた。

 「エッ……?」
 「ハア…ハア…ッ、里保ちゃんを返して!」

898名無しリゾナント:2012/09/08(土) 22:21:04
譜久村の声に応えるように疾風(かぜ)が唸る。
教室全体を包んでいた筈の"透明な水"を、女子生徒を巻き込んで
窓ガラスをブチ破り、校舎の外へと放り出された。
女子生徒は何が起こったのか判らず、だが浮遊感と共に一気に恐怖を抱く。

 落下。それは死へ沈む刹那。

 「きゃああああああああああ」

見上げる夕暮れの景色がある其処は、海よりも真っ青な空があった。
譜久村は窓から身体を出し、女子生徒の手を掴むように腕を伸ばす。
落下する身体に緩やかな気流が包み込むと同時に、女子生徒の意識は途絶えた。




 ――― コハクのヒカリに抱かれていたあの瞬間。
 薄紅色の閃きが過る視界に譜久村が見ていた記憶が在る。
 彼女に映るのは夢ではなく現実。それも欠片では無く、水面を見るように。
 だからきっと、これは誰かの記憶なんだと、雫が跳ねた。

 「何してんの?そんな思いつめた顔してぼーっと立っちゃって」

女性は、命の選択を迫られていた。
相手も自分も同じ立場なのだと気付いたときに、曖昧だった道が
少しずつ、それでも確かに其処にあることを知らしめる。

899名無しリゾナント:2012/09/08(土) 22:24:28
女性は自分の命が、世界の命が儚いことを始めから知っていた。
それを受け入れていた筈なのに、それを寂しいと感じるに至った
理由が確かにあったのだ。

 微かに生きる希望を見つけてしまったからだ。

女性がまだ少女だった頃、年季の入った木目のターンテーブルで
レコードに針を落とす老人に出会う。
老人は古ぼけた音に耳を傾け、少女は向かうように立ってその姿を見つめる。

 「笑ってしまえば良いのさ。風景の違いに気付かないヤツらなど
 いくらでもいるからね。眺める景色がいい加減なのだよ」
 「でもみんな、みえるものしかしんじないよ」
 「見えるモノ、見えないモノ、今になってそれが判るなんてね」
 「おじいちゃんはこのきょくがすきなら、えりも、すきになっていい?」
 「ああ、今思えば、私は好きだったんだな。どんなに嫌っても、結局は
 元に戻ることを信じてた、信じてたんだよ」

老人と少女の会話は一度も噛み合わないままだった。
だけど少女に対して向けられた視線と、頭を撫でるその皺と一緒に残る暖かさが
両親の優しさを十分に受け止められない少女にとって、何か、かけがえのない
ものになって行くのを感じていた。

陽が落ちるまで続き、古ぼけたレコードが老人の手によって自然と音を
止むまで、少女は、永遠とも思える時間に身をゆだねていた。

 病室で居る独りとは別の、傍に在るという安心感に漂いながら。

900名無しリゾナント:2012/09/08(土) 22:29:45
以上です。

>>578
動物に能力が備わってるというのもビックリですが、現実に8匹も
飼ってる事実にw 大量飼いして放置してる人ぜひ見習ってもらいたい(犬好き

ガキさんが出てくる作品には大半が胸をイジられてるというこのスレ独特の風習に涙。

-----------------------------------------ここまで。

すみません、かなりこちらを独占しているようなカタチになってしまって…。
いつでも構わないのでよろしくお願いします。

901名無しリゾナント:2012/09/09(日) 01:02:54
行って参りましたm(__)m

902名無しリゾナント:2012/09/09(日) 09:28:10
代理投稿ありがとうございます!
最近はすこし長めになっているので
何かあればぜひ仰ってください。

903名無しリゾナント:2012/09/10(月) 01:39:46
>>588-590 の続き。

 夕暮れのひこうき雲。
 明日は雨かと訊ねてみれば、何処からか嗄れたレコードの音が聞こえてくる。
 春夏秋冬。
 季節は巡り、廻り、回り。

老人がベッドに仰向けに寝そべるようになってから、少女に視線を向けることは無くなった。
真っ白な部屋の天井に向かって口を開く。

 「私の想いは、最後まで伝わらなかった。それでも良いと思ってた。
 だが、駄目だな、心臓をえぐり取られるような気持ちになる。
 だから無くなってしまえばいいと、思ったんだ。だが、それは、悪……か」
  「生まれたときから、わたしは欠けてたんだって、ここがね、しんぞうが、悪いんだ。
 おじいちゃんとおんなじ、おんなじだけど、おじいちゃんの方が悪いんだね。
 きょうもあのうた、きいてないね。おじいちゃんはあのきょく、すきじゃなかったのかな。
 …えりのことも、すきじゃなかったのかな。
 みんな、えりのこと、きらいなのかな、欠けてるから、きもちわるいのかな…」

少女の頭には包帯が巻かれていた。
傷痕が出来ていた。でもこんな痛みよりも、心臓が酷く痛んだ。
持病と同時に、精神が、ココロが、押し潰されそうに。鬱されて、涙が溢れる。
老人は撫でてくれなどしない。
ただボソボソと呟いて、真っ白な天井を見ていた。

 「ああ、誰かを想って目を閉じることは、不幸そのものなのかもしれないな」

904名無しリゾナント:2012/09/10(月) 01:40:35
老人は、自分自身に話しかけている。心の奥の自分自身に。
想いはここに在るのに、わたしはいない。
わたしはここにいるのに、わたしはいない。
わたしはいないのに、想いは此処に在る。

 「その目は私を見てないんだね」

傷痕が痛む。でも自分の想いは、確かに此処に。
希望が、自分を押し潰す。悟る。思い知る。

 老人の真っ白な部屋に、少女は初めから、独りで立っていた。
 レコードは二度と鳴る事はない。

――― 其処は、屋上だ。
 夕暮れ、女性は、屋上に居た。
 其処は階段の上、踊り場の隅、手摺のあっち側、向こう、何処か。
 ヒュー、という音が歌のコーラスのように聞こえる。
 街は、いつの間にか失った自分のはじっこに気付かずに、ずっと歌を唄っている。

そうだったのだ。
老人の部屋にあったレコードの音は、きっと、そんな歌ばかりなのだ。
期待をして、手を伸ばして、届かない。
昨日を全て忘れたフリして、言い訳と意味の無い繰り返し。
この曲は、そんなひとたちを不意に振り向かせるために、流れている。

 そしてそんな曲ですら、女性の近くで鳴ることを止めてしまった。

905名無しリゾナント:2012/09/10(月) 01:42:14
老人は誰を想い、誰を殺したのか、それを知る術はもうない。
女性は扉を開き、そして、大きな、小さな背中を見つけた。
死に方の模索を行い、ヒトは逝き方を選んでいる。

 其処はステージ、命の、オーディション。
 振り返る表情に驚きと、笑顔が浮かんでいた。

 「――― 『リゾナント』で待ってるって約束だったのに、破っちゃいましたよ」

景色が急に変わり、女性は静かに、微笑んだ。
風に水が揺れる、そのたびに、女性の身体もゆるやかな波に上下する。
まるで、宇宙を泳いでいるように。

 「だって皆がふんばってるのに、絵里だけ待ってるなんてそんなの。
 仲間なら仲間らしく、頑張ってみたくなったんです。だって、夢じゃなくて、現実だから」

ミナソコに身体を沈め、其処から歪んだ夜空を眺める。
月が水面に映っている。三日月が、揺れた。
他には何も無い、音も聞こえない。ここは宇宙だ、透明の、宇宙。

 「醜い夢ほど醒めないんだって。だから願うの、いつも願ってた。
 この死体のような未来が夢でありますようにって」

女性の瞳が次第に虚ろう。
探るように誰かを抱きしめ、誰かがむせび泣く声が響く。
頭を撫でる、サラサラとした髪が、風で揺れる。

 「でも大丈夫だって判ったんだよ、夢はいつかは醒めるんだって。
 だから諦めないで。きっと大丈夫だから」

906名無しリゾナント:2012/09/10(月) 01:58:59
 諦めないで、ガキさん    


新垣里沙は涙を流しながら、女性を強く抱きしめた。
女性の身体がぐったりと動かなくなったから。
やがてセカイの風景も代わり、誰かの悲鳴が木霊する。
黄金の光が弾け、誰かが言葉を紡いだ。

 「終わらせよう、絶望も、希望も。そして…」

ヒト型を模した光は、一人の女性へと姿を変える。
新垣里沙は視線を交差させ、悲しみと喜びを入れ混じらせた表情を浮かべた。
背後に群がるのは【闇】と、狂気。

 「一緒だったはずなのに、どうして?」
 「あーしはただ、変わってほしかっただけなのに」
 「でも分かってたんでしょ?この子達が、私達が"共鳴"のチカラを
 持っていることで、世界は、また一つになることを望んでる。それを覆すことは出来ないの」
 「そうやね、多分、それはあーしらですら間に合わない。
 でも信じてる、何故バラバラだったはずのものが一つになるのか、一つになった後
 どうやって変わっていくのか、その答えが正しいと、信じ切ってみせる」
 「貴方はなぜそこまで…」
 「信じあうんはあーしらの専売特許やろ?」

新垣は唇を噛み締め、女性へと【闇】を解き放つ。
呑み込まれた女性の身体が爆発したように黄金の光を放ち、全ての光景が包まれた。

907名無しリゾナント:2012/09/10(月) 02:01:23
以上です。
少し話しが混雑してたりと読みにくい点もあるかと思います、すみません。

--------------------------------------------ここまで。

いつでも構わないのでよろしくお願いします。

908名無しリゾナント:2012/09/10(月) 21:45:08
行ってきましたー

909名無しリゾナント:2012/09/15(土) 23:06:47
>>630-633 の続き。

――― 醒める。
真っ白な天井、少しだけ不安になる、今は、まだあの現実の中?

 「聖!」
 「みずきちゃん!」

聴覚が、視覚が、触覚が、二人の姿を見つけ、在ることを感じさせる。
元気な笑顔を浮かべてくれる彼女達に、譜久村は自然と、ほころんだ。
瞬間、引き上げられるように意識が覚醒する。

 「里保ちゃんは!?」
 「隣で寝てるよ」

鈴木を挟み、隣のベットには鞘師が寝息を立てていた。
冷静になってみると、ここは保健室らしく、時計を見るともう夜になろうとしている。

 「…里保ちゃんと一緒に居た子は?」
 「大丈夫だよ。先に目が覚めて帰っていったから」
 「そっか、良かった…助けられたんだね」
 「でも不思議やったね、気がついたらあの水も無くなっとったし。
 何よりも窓が元に戻っとったっちゃんっ」
 「え?」
 「確かに割ったはずっちゃけど、まあ先生にも上手く言って、聖達をここまで
 運んでもらえたらええんやけどね、怒られなかったのはラッキー♪」

910名無しリゾナント:2012/09/15(土) 23:08:21
生田がニヒッと笑ってピースした。
妙なことを口走ったが、あまりにもアッサリと言うものだから譜久村は面喰ってしまう。
正直、彼女よりも一緒に居た三人が巻き添えを喰らっていたかもしれない訳だが。

 「どうやって言ったの?」
 「簡単っちゃよ。水にすっころんで気絶しちゃったんですーって」
 「ちょ、私達がアホみたいじゃないそれ」
 「でも信じてくれたけんね」

生田が悪びれた様子もなく言いのけ、譜久村は文句を呟く。
ただそのやりとりが、ようやく終わった事を告げているような気がした。
鈴木も安心したようにその姿を見守っている。

 「ああ、あと、今先生が家に電話してくれとるよ。聖のところは
 お母さんが怖い人やけんね、上手く言ってくれるようにお願いしといたから」
 「あ、そういえばこんな時間…ごめんね、私のせいで二人にも迷惑かけて…」
 「それは里保にも責任があるっちゃよ。なんか変なのに狙われとおみたいだし」
 「うーん、何から話せばいいのか…」

生田の疑問に譜久村が頬を掻く。
すると、保健室のドアがノックする音が聞こえ、三人は顔を見合わせる。
先生が戻ってきたのか?
咄嗟に鈴木が立ちあがり、ドアを開けようと手を伸ばす。
瞬間、グアッと勢いよく外側から開け放たれ、鈴木は思わず横に避けた。

 「りほりほ!りほりほおおおおお!」

911名無しリゾナント:2012/09/15(土) 23:09:13
叫び声が上がる。一瞬空気が固まった様な気がした。
黒髪をなびかせ、長身の背中が走り抜けた先には二人が居る簡易ベット。

 「きゃあああああああああああ」

と、何も無い所でつまづいた長身の影が、譜久村が居る簡易ベットへと倒れ込んだ。
その後に悲鳴。
名も知らない訪問者に抱き倒されてしまった譜久村は慌てふためく。

 「はっ、このふくよかな感じ。
 この持ち主は誰!?もしやこれが覚醒したりほりほだというの!?」
 「聖になにするっちゃこの変態!」
 「む、失礼なの、この私に向かって変態なんてそんな面白みのない名前で
 片付けようという誰かさんは、KYえりぽんね?」
 「な、なんでえりなのこと知っとおと?」

生田が不意をつかれたように珍しく慌てた。

 「ドアの前に居るのがかのんちゃん、で、この子がフクちゃん、ね。
 ふむふむ、やっぱり可愛らしい子が揃ってるの。若くて可愛くて…はぁ」
 「道重さん、あまりそういうことをするのはどうかと思いますよ」

鈴木にバシバシと叩き起こされた鞘師が、ムクリと身体を上げる。
道重と呼ばれた影、女性はその姿を見て更に表情を豊かにさせた。

912名無しリゾナント:2012/09/15(土) 23:14:20
以上です。

この作品において謙虚に隠れて誰かの事をベタ褒めしては
危ない発言をするという行為をしている、という事は一切ありません。
言いたいことは面と向かって言いましょう(真顔

愛ちゃんの誕生日に続き11期メンバーが決定し、9期と10期の
ブログ始まったりといろいろ目まぐるしいですが嬉しいことだらけです。

>>710
愛ガキのお守りを作った人と同じくらいの熱を感じる…。

-----------------------------------ここまで。

いつもお世話になっております。よろしくお願いします。

913名無しリゾナント:2012/09/16(日) 13:35:04
行っときますかね

914名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:01:17
『恋愛ハンター』

〈どんな場面でも逃げない〉

1−1

「No.6も結局失敗したわね。報告書みたけど、あの子達ほんとダメダメよね〜。
殺せるときに殺しとかないと後で酷い目に遭うんだって、なんで分かんないのかな?」
粛正人Rのその言葉に、マルシェは反論する。
「あの…、彼女たち、標的を『殺せ』とは指示されてなかったと思いますけど…」
「そんなの関係ないわよ。『絶対に殺すな』とも言われてないんでしょ?
正当防衛で仕方がありませんでしたって言えば、それで済む話じゃない」
「これまで石川さんはそうしてきたんですか?」
「私は正直者だから、そんな言い訳しない」
「そうですよね…。石川さんはいつも『ムカついたから殺した』ですもんね…」
「分かってるじゃん」
(だから、上から信頼されないんだって、この人、なんで分かんないのかな?)
マルシェはそう思いながら、ある少女のデータを画面に開いた。Rがそれを覗き込む。
「どれどれ…。なんか地味な能力ね〜。やっぱりこの子もダメなんじゃない?」
「そうですかね。これ、初めて戦う相手には、かなり有効だと思いますよ」
「じゃあ、賭ける?もしこの子が失敗したら、最新の能力増幅薬1ダースちょうだい」
「あれ、かなり寿命縮めますよ」
「別にいいわよ。長生きしようなんて思ってないし」
「石川さんがよければ別にいいですけど…。じゃあこの子が成功したら何くれます?」
「そうねえ…、私が趣味で作った、断末魔だけを二時間収録したCDなんてどう?」
「……ほんと、素晴しいご趣味ですね」
Rはそれを褒め言葉として受け取った。
「まあね!それはともかく、この子以外の6人はもう全員『不用品』ってことよね。
てことは私の出番か。あの子達、どんな断末魔を聞かせてくれるのか、楽しみだわ〜」
Rは両手の指を胸の前で組み、嬉しそうにお尻を振った。

915名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:01:55
1−2

鞘師里保と鈴木香音は、とある寂れた歴史博物館に来ていた。
社会科の授業で歴史新聞を作ることになり、その資料を集めるためだ。
入り口の左側にある小窓の向こうでは、受付係と思われるおじさんが爆睡していた。
入場料と書かれた箱に中学生2名分の料金を入れ、二人は暗い廊下を進んでいった。
休日だというのに、他に入館者は一人もいないようだ。
「里保ちゃん!見てて!」
鈴木は、大声で替え歌を歌い、廊下を猛スピードで匍匐前進し始めた。
「香音ちゃん、遊びに来たんじゃないんだよ」
「私さあ、歴史とか超苦手だもん。こういうことは頭のいい里保ちゃんにまかせた!」
鈴木はそう言いながら鞘師の方を振り返り、渾身の変顔をした。
鞘師はニコリともせず、一人で展示室の方へ向かっていった。

鞘師が三番目に入った展示室は、ガランとしていて中学校の教室ほどの広さがあった。
たくさんのガラスケースが壁際に並び、そこに日本の伝統的な武器が展示されている。
鞘師は、その中の一振りの日本刀に釘付けになった。
機能美の塊のような刀身。美しく装飾された鞘。
鞘師は時間を忘れて、その美を堪能していた。
「きれいじゃのう…」
「本当ね」
突然、女性の声がした。鞘師は後ろを振り返る。
そこには、自分よりは年上と思われる、一人の少女が立っていた。
「でも、こんな風に飾られてるだけじゃあ、この子が可哀そう…
この子が生まれたのは、こうやって見世物になるためじゃないのに…」
少女がケースに近づく。その目つきは明らかにおかしい。
「ほら、聞こえるでしょ?『私、もっと綺麗になりたい…、私の唇に紅をさして…』」
少女はガラスを拳で叩き割り、日本刀を手に取った。
「分かったわ…、私が今から綺麗にお化粧してあげますからね…」
妖しい笑みを浮かべて刀に話しかけながら、その少女は鞘師の方を向いた。

916名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:02:37
1−3

「あんた、何者だ?」
少女はその問いに答えず、両手で刀の柄を握り、切っ先越しに鞘師を見据えた。
その構えは、四肢のどこにも力みがない見事なものだった。
だが、鞘師には余裕があった。少女の構えには、わずかではあるが隙がある。
このレベルの相手なら容易に倒せると鞘師は思った。
睨み合って数秒が経った。
(そろそろ来るか…)
鞘師がそう思った時、少女の姿が突然消えた。
(何っ!?)
鞘師は左の脇腹に冷たさを感じた。
そして、左後方から少女の声が聞こえてきた。
「うふふっ…。とっても綺麗よ…」
鞘師が振り向くと、少女が満足そうな顔で、目の前にかざした刃先を見つめている。
自分の左の脇腹を見ると、服が裂けていて、白い肌に一本の赤い筋が走っている。
そこに、赤くて丸い球が幾つか生まれ、大きくなり、じわじわ垂れ落ち始めた。
鞘師は痛みを堪えながら、いま起こったことを冷静に分析した。
少女が消えて、後ろに現れた。そして、その間に自分の腹部が斬られた。
少女は瞬間移動したわけではない。瞬間移動であれば、斬る「時間」がない。
おそらく、彼女は、文字通り目にも止まらぬ高速で移動し、攻撃したのだろう。
人より優れている自分の動体視力をもってしても、少女の動きは全く見えなかった。
ということは、少女は通常時の何十倍、いや、何百倍の速度を出せるということか…。
仕方がない。もう一度少女の動きを観察して、攻略の糸口を掴もう。
そう結論付けると、鞘師は少女の一挙一動を見逃すまいと目を凝らした。
鞘師の頭の中に、「逃げる」という選択肢はなかった。
「この子、あなたの血がもっと欲しいみたい…」
少女は、わずかに血脂のついた刃先を、鞘師に向けていた。
鞘師は瞬きもせず少女を凝視し続ける。少女の視線が一瞬右大腿部の辺りに注がれた。
そして、また少女が消えた。鞘師は、左足に冷たさを感じた。

917名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:03:45
〈立場なんてのは関係ない〉

2−1

スカートが裂け、左の太ももの内側から血が流れ出ている。
鞘師は激痛に耐えながら、再び敵の能力を分析し始めた。
消える前の目線から推測するに、少女は、間違いなく右足を斬るつもりだった。
実は、鞘師は「罠」を仕掛けていた。右足に分かりやすい隙を作っておいたのだ。
そして、少女が消えた瞬間、鞘師は右足を引いた。
結果、少女は、狙っていた右足を斬ることができなかった。
左足を斬られたのは、たまたま切っ先が届いてしまっただけだろう。
鞘師は、以上の状況から、二つの結論を導き出した。
一つは、少女は、消える前に、刀で斬りつける場所を予め決めているということ。
もう一つは、攻撃が始まったら、斬りつける場所を途中で変更できないということ。
「里保ちゃん!?」
突然、鈴木の声がした。鞘師の傷と少女の刀を見て、鈴木は状況を理解したようだ。
鈴木は怒りの形相で少女に突進した。鞘師は足の傷で動けない。鞘師が叫ぶ。
「香音ちゃん!そいつ、すごいスピートで襲ってくるから、気を付けて!」
頷く鈴木。とりあえず鞘師は、鈴木の戦いを見守ることにした。
二人の戦いが始まった。だが、少女はなぜかあの「加速」攻撃をしてこない。
鈴木は、物質透過能力を駆使して、少女の斬撃をすり抜けることができる。
そのため、鈴木の方が次第に優勢になり、少女は防戦一方になっていった。
戦い始めて5分後、ついに鈴木の強烈な蹴りが、少女の腹部を完璧にとらえた。
少女は数m吹っ飛ばされて、部屋の壁に背中を打ちつけた。
鈴木もさすがに攻め疲れたのか、その場を動かずに呼吸を整えている。
少女は何とか立ち上がり、刀を構えた。
睨み合う両者。
そして、鈴木が少女へ向かって駆け出そうとした時、少女が消えた。
鈴木は急いで透過能力を発動する。一方、鞘師は鈴木の5mほど後方を見た。
鞘師の視線の先に、少女が現れた。刀に付着している血の量がさっきより増えていた。

918名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:04:24
2−2

「ううッ…」
鈴木がしゃがみこむ。腹部から血が大量に流れ出す。
(香音ちゃん…)
鈴木の状態を心配しつつも、鞘師は懸命に分析を続けた。
この少女の特殊能力が「加速」であることは間違いない。
今の「加速」攻撃を見ると、少女が消えてから鈴木の後方に現れるまで、約0.4秒。
その間に少女は10m程移動した。あの少女の通常の動きなら、2秒はかかる距離だ。
すると、その速度は通常の約5倍…。
だが、その程度であれば、自分の動体視力をもってすれば見えないことはない。
それなのに、今回も自分の目は少女の姿を捉えることができなかった。
このことから導き出される答えはただ一つ。
おそらくこの少女は、「加速」能力だけではなく、「透化」能力も使用している。
動きが見えないのは、速すぎるからではない。見えないように姿を消しているからだ。
加えて、もう一つ気付いたことがある。
それは、少女が「加速」能力を連続で使用できないということだ。
もしできるのであれば、鈴木に攻め込まれ、劣勢になったときに使っていたはずだ。
では、なぜ使用できなかったのか。
おそらく、あの能力は、発動する前に一定の「準備」時間が必要なのだろう。
ちなみに、鈴木は、物質透過能力を発動させるのに、約0.5秒かかる。
しかし、一度発動させれば、3秒間程その状態を持続させることができる。
よって、少女が「加速」能力を発動するタイミングを正確に予測することができれば、
鈴木はその物質透過能力によって、少女の斬撃を完全にかわすことができる。
鞘師は、少女の「加速」攻撃を、もう一度じっくり観察したいと思った。
少女が鞘師にゆっくり近づいて来る。
鞘師の目は、少女が自分の心臓の辺りへ一瞬視線を向けたのを見逃さなかった。
(次はここを狙っちょるんか…。避けそこのうたら一巻の終わりじゃのう…。
じゃが、うちは負けん。絶対に香音ちゃんに攻撃のタイミングを教えるんじゃ)
鞘師は、少女の動きに目を凝らした。

919名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:05:16
2−3

その時、鈴木が叫んだ。
「里保ちゃん!見てて!」
そして、少女に再び突進し、息もつかせぬ連打を繰り出した。
鞘師はすぐに気付いた。
鈴木は、己の身を犠牲にして、鞘師に少女の能力を見せようとしているのだ。
(香音ちゃん…、ありがとう。香音ちゃんの覚悟、絶対に無駄にしない!)
鈴木は攻め続ける。ただし、腹部の流血が尋常ではない。
鈴木の動きはすぐに鈍くなり、ついに足が止まった。
少女がニヤリと笑う。そして、少しの間鈴木を睨みつけてから、また姿を消した。
0.4秒後、少女は鈴木の後方に姿を現し、同時に鈴木の肩口からは鮮血が噴き出た。

少女は倒れている鈴木の頭を踏みつけ、それまでの鬱憤を晴らすかのように喚いた。
「雑魚のくせにでしゃばりやがって!私の標的は、お前じゃなくて鞘師里保なんだよ!
お前みたいな雑魚はなあ、自分の立場をわきまえて、大人しくしてりゃあいいんだ!」
鞘師の目つきが変わる。
鞘師の心の中で固い「殻」のようなものが割れて、灼熱の怒りが溢れだした。
その溶岩のような怒りは、血と混じりあって、全身に満ちていく。
少女はようやく気が済んだのか、鈴木から離れて、刀の切っ先を鞘師に向ける。
鞘師は無意識に、割れたガラスケースの中にある鞘を取り出した。(…1、…2、)
そして、その鞘を左手で握り、自分の左脇腹に押し付ける。(…3、…4、)
脇腹から血があふれ出し、握った鞘の口へ滑り込んでいく。(…5、…6、)
見えない刀の柄を握るように、鞘師は右の拳を鞘の口に当てた。(…7、…8、)
鞘師が両目を閉じる。(…9、…来る!)
少女が消えた。同時に、鞘師の右拳が、凄まじい速さで弧を描く。
その右拳の後を追うように、鞘の口から真っ赤な線が走った。
消えてから0.4秒後、鞘師の後方に、少女の姿が現れる。
少女は刀を右前方に突き出し静止している。鞘師も右拳を天高く掲げたまま動かない。
静かな時が流れる。その静寂を破ったのは、少女が床に倒れた音だった。

920名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:05:53
〈恋のタイミングをのがさない〉

3−1

俯せに倒れている少女の胸の辺りから血が流れ出し、野火のように広がっていく。
鞘師は右手を降ろし、床にゆっくり跪いた。
服の胸元が刀で斬り裂かれている。
だが、露わになった白い肌には、かすり傷一つ無かった。

鞘師は、少女の「加速」攻撃の弱点を掴んでいた。
あの攻撃は、「どこを」・「いつ」襲って来るかさえ分かれば、容易にかわせる。
「どこを」襲って来るか。
これは、少女の視線を追えば簡単に推測できた。
「いつ」襲って来るか。
これも、鈴木香音のおかげで、遂に見極めることができた。
人は、何かに集中すると、どうしても呼吸の仕方や目の動きに変化が生ずる。
鞘師は、そのような変化が少女の身体に現れたのを見逃さなかった。
そして、その変化から、少女が消えるまでの時間を正確に計った。
その結果、少女が集中してからちょうど10秒後、「加速」能力が発動した。

ちなみに鞘師は、異常に正確な「時間感覚」を持っている。
例えば、表示を見ずにストップウォッチを15秒00で止めることなどは朝飯前だ。
今回の戦いにおいては、鞘師のこの精密な「時間感覚」が力を発揮した。

一方、少女を斬ったことについては、鞘師自身、よく覚えていなかった。
戦い終えた鞘師は、周囲をよく見回してみた。
すると、血痕が、自分の足もとの床から、壁、天井まで一直線に走っている。
鞘師はそれを見て、自分があの時何をしたのか、ようやく理解した。
(血で、斬ったんか…)
それが、鞘師の特殊能力、液体限定のサイコキネシスの最初の発現だった。

921名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:06:35
3−2

鞘師の連絡を受け、佐藤優樹が道重さゆみと一緒に瞬間移動してきた。
さゆみは、すぐに、深手を負っている鈴木の治療に取り掛かった。
一方、佐藤は、持参したバケツと雑巾でせっせと展示室の掃除をしている。
さゆみは、両手からピンク色の光を放出し、鈴木の傷を一分ほどで全て治した。
ただし、出血量がかなり多かったため、しばらくは安静が必要だ。
さゆみに「寝てもいいんだよ」と優しく言われると、鈴木はすぐに寝息を立て始めた。
続いてさゆみは、鞘師の治療にとりかかった。
鞘師の傷はさほど深くなく、意識もはっきりしている。治療は数秒で終わった。
「あの…、道重さん…。そこの傷…、もう治ってますよ」
さゆみは、鞘師の内ももを撫でている手を名残惜しそうにゆっくり放した。

さゆみは、敵の少女をそのままにしておけず、傷の治療を始めた。
傷は非常に深く治療には数分かかりそうだった。鞘師は複雑な表情でそれを見ていた。
5分後、佐藤の瞬間移動が可能になり、鈴木を喫茶リゾナントへ運んでいった。
それからすぐに、少女の治療が完了した。しかし、少女は気を失ったままだ。
汗を拭きながらさゆみが顔を上げると、見なれない少女が展示室の入口に立っていた。
鞘師もすぐに気付き、さゆみの前に跳び出して臨戦態勢をとる。
だが、その少女は意外にも二人に深々と頭を下げた。
鞘師の肩越しにさゆみが尋ねる。
「最近、立続けに私たちを襲ってきたのは、あなたの仲間よね?目的は一体何なの?」
「…自分たちの力を組織に認めてもらって、正式な『戦士』に昇格するためです…」
「組織って、ダークネス?」
「はい…」
「あなた、ダークネスがどんな組織か、分かってるの?」
「……」
「あいつらは、人を人とも思わない、ひどいやつらなのよ?そんな…」
突然、さゆみの言葉が止まった。
鞘師が振り返ると、さゆみの鳩尾の辺りに、赤く染まった刃先が突き出ていた。

922名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:07:15
3−3

さゆみの背後には、気を失っていたはずのあの少女が刀を握りしめて立っていた。
「動くな!動いたら、心臓を斬る!」
鞘師は、刃先の位置と鬼気迫る少女の顔とを見て、やむをえず攻撃を断念した。
少女が鞘師を睨みつけながら、後から現れた少女に向って叫ぶ。
「せっきー!早くこいつを洗脳して!こいつさえ始末すればミッションは成功なの!」
「みーこ!もうやめて!その人がみーこの傷を治してくれたこと分かってるんでしょ?
もう、無理して悪人を演じるのはやめて…。そんなみーこ、私、見たくない!」
「なに甘いこと言ってんの!?私が負けたら、7人みんな終わりなのよ!?」
「そんなことない!組織から追放されたって、死ぬわけじゃないわ!」
「あのね、せっきー…、私達はもう組織について深く知りすぎてしまったの…。
そんな私達を、あの組織が無事に外の世界に戻してくれると思う?」
「……」
「…でも、私が昇格できれば、上に頼みこんで皆を救うことができるかもしれない。
私にとってあなた達は、生まれて初めてできた『仲間』なのよ…。
あなた達を守るためなら、私、鬼にでも、悪魔にでもなってやるわ!」
「…あんたこそ、甘いの…」
さゆみが蒼白い顔を苦痛で歪ませながら、後ろで刀を握り締めている少女に言う。
「…あんた、本当は心のどこかで気付いているんでしょ?
ダークネスが、あんたみたいな下っ端の言うことに耳を貸すわけないってこと…。
気付いているくせに、それを認めるのが怖くて、現実から目を背けてる…。
もし仲間を救いたいなら、自分の全てを賭けて、目の前の現実に立ち向かいなよ…。
その覚悟もないくせに、『仲間を守りたい』だなんて、軽々しく言うんじゃねえっ!」
さゆみが前へ動いた。
少女は反射的に刀を左に滑らせ、心臓を斬り裂く。
切っ先が背中から離れ、傷口から大量の血が噴き出した。
鞘師はすぐ刀を蹴り飛ばし、少女の顔面に拳を叩き込む。
さゆみはゆっくり前に倒れながら、胸に両手を当てた。
ピンク色の光が、さゆみの胸で爆発する。

923名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:08:03
〈Ending:計算なんてのはしない〉

「道重さん!道重さん!」鞘師は、さゆみの上体を抱き上げて叫んだ。
さゆみは、背中に鞘師の温もりを感じ、自分が生きていることを認識できた。

さゆみには強力な治癒能力がある。だが、意識が無ければ、その能力は発動できない。
そして、治癒能力を発動できなければ、当然のことだが、さゆみは死ぬしかない。
それが分かっていながら、さゆみは前に出た。
意識を失う前に能力を発動できるのか。また、できたとしても治療は間に合うのか。
それらの「計算」を、さゆみは一切しなかった。
さゆみは、人質をとられているという呪縛から、一刻も早く鞘師を解き放ちたかった。
さゆみの頭の中にあったのは、仲間を守りたいという思いだけだった。
鞘師は、さゆみを見つめながら、その愚かなまでにまっすぐな仲間への愛情と、心臓を
斬られるという壮絶な恐怖と痛みに耐えたその強靭な精神力に、畏敬の念を抱いた。

「みーこ」は床に這いつくばりながら、さゆみと鞘師の姿を呆然と見ていた。
「せっきー」が「みーこ」の横に跪き、手を肩にそっと乗せる。
八匹の犬が展示室に入ってきて、二人をとり囲み、一緒に消えた。

さゆみは、鞘師の可愛らしい顔を間近で見ているうちに、欲望を抑えきれなくなった。
「りほりほ〜、さゆみ、なんか目が見えなくなってきたの。もっと強く抱いて…」
ハンターのように爛々と輝いている目を見れば、その言葉が嘘なのはすぐに分かる。
だが、鞘師は、自分のささやかな胸の膨らみに、さゆみの顔をギュッと押し付けた。
(道重さん、今回だけ…特別ですよ)
「おー、いっつあぱぁらだいすなの!」

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『恋愛ハンター』でした。なお、敵の少女のモデルは、(仮)の仙石さんです。

924名無しリゾナント:2012/09/16(日) 19:09:24
=======================================
>>914からここまでです。
 いつもすみませんが、よろしくお願いします。

925名無しリゾナント:2012/09/16(日) 21:48:45
行ってくるのだよ

926名無しリゾナント:2012/09/16(日) 22:00:46
行って参りましたが性懲りもなくまたレス番入れ忘れて猿さんです…ホントにすみませんm(__)m
さゆのラストのセリフのせいで、素敵な物語が台無しになったような、このセリフだからこそ爽やかな読後感なのかは人それぞれですねw

927名無しリゾナント:2012/09/17(月) 10:27:51
>>926さん
代理投稿ありがとうございました!今後もよろしくお願いします。

さゆの最後のセリフ、実は、削るかどうか、ぎりぎりまで悩みました。
しかし、今回のタイトルが変態ハン…もとい、恋愛ハンターだったので、
「ハンター」的な描写は外せないと思い、結局、残すことにしました。

928名無しリゾナント:2012/09/18(火) 14:22:30
>>722-724 の続き。

道重さゆみと名乗った女性は鞘師の知り合い、らしい。
ただこの人物もきっと普通の人ではない、と思う。

 「りほりほ、寝癖がついてるの、ああでもこの感じがまた寝起きって感じで…」
 「心で呟いてることが全部もれてますけど」
 「意思疎通!やっぱりりほりほは才子なの!」
 「ごめんね皆、ふだんはこんな感じじゃないんだけど」
 
鞘師が苦そうに笑みを浮かべる。

 「この人って、りほちゃんのお姉さん…?」
 「んー保護者、かな」
 「一つ屋根の下で一緒に暮らしてる時点ですでに姉妹に近い繋がりはあるの。
 でもりほりほはそんな風に思ってくれてないみたいね」
 「いや、別にそういう意味じゃなくて、お世話になってるのはいつも感謝してますから」
 「…さゆみ泣きそうなんだけど。りほりほにそんなに感謝されてたなんて…」
 「そんなわけで道重さん、皆を送ってほしいんですけど」
 「判ったの、全力で送ってってあげる。すぐに手配するね」
 「その前に聖が放心状態っちゃけど、おーい聖ー」

上手く言いくるめた鞘師のおかげでその場は落ちつくことに。
職員室に寄ってみたが先生が居なかったため、書き置きを残して学校を後にした。
どこから手配したのか、黒服を着込む運転手に道重は目的地を伝え、車が発車する。

 「もしかしたら危ない仕事とか?」

929名無しリゾナント:2012/09/18(火) 14:23:06
そんな少し失礼な発言が上がってしまうほど、道重の人物像が不透明だった。
不敵に笑みを浮かべた道重が、続いて提案する。

 「それなら私とりほりほの家に遊びに来てみる?さゆみとりほりほの」
 「別に強調しなくてもいいと思うんですけど…」
 「いいじゃないりほりほ。せっかくなら泊まって行くのもアリなの」

突然の提案に顔を見合わせる。鈴木が少し遠慮気味に口を開く。

 「えっと、今じゃダメですか?」
 「今日はいろいろとあったし、皆疲れてるでしょ。
 そんな状態で聞くよりはまた日を改めてって事で」
 「なんで知ってると?事情なんてほとんど話してないのに」
 「まあ来るなら来て、住所は教えておくの。えりぽん以外の二人は大歓迎」
 「うわーん、みずきーっ」

生田に抱きつかれる譜久村に渡された紙には本当に住所が明記されていた。
車が止まり、最初に降りたのは生田だ。次に譜久村。最後は鈴木。
鈴木が車を降りたとき、鞘師が口を開く。

 「ごめんね、かのんちゃん」
 「え?」
 「部活、サボらせちゃったから」
 「ああ、まあ学校もあんな感じだったし、部活どころじゃなかったかもだしね。
 りほちゃんが無事だったから、今回はそれでチャラだよ」

930名無しリゾナント:2012/09/18(火) 14:28:53
鈴木は鞘師の肩をポンポンと叩いて笑顔を浮かばせ、家のドアに消えて行く。
車は自身が住まう家へと発車する、道重の視線に気づいた。

 「良い子たちね。ここまで付き合ってくれるなんて」
 「…多分、そういうセカイだからだと思います」
 「主軸の歪みか。でもあの子達は何も知らないの。純粋に心配してるんじゃないかな。
 "わざと敵に捕まる"っていうのは考えものだけど」
 「…」
 「<MEM>の回収を手伝ってくれるのはホントに感謝してるし、それなりの
 ことをしてあげることが条件にも含まれてる、でもさゆみのチカラでは
 どうすることも出来ないことだってあるの、特にこのセカイではね。
 それは判っていてほしいの」
 「…すみません」
 「ううん、謝るのはさゆみの方。鞘師を、あの子達を巻き込んで
 自分のわがままを突き通すなんて勝手なことだと思ってる。
 だからいつでも止めて良いんだよ、きっとどう転んでも鞘師やあの子達に
 とって、最悪の事態にしかならないんだから」
 「でも私が"歪み"なら、別の道もありえるかもしれないんです。
 答えを見つけれるかもしれない、だからこれは、私の意志です」

 私の、意志と、覚悟なんです。

鞘師の真剣な眼差しに、道重はそれ以上言えなかった。
彼女には心の底から根付く「覚悟」と「意志」に突き動かされている。
それは自分達のせいではないかと、道重は悲しくなった。

931名無しリゾナント:2012/09/18(火) 14:29:27
"Reborn" 、有限の人間に変化を求めた無限の現象。
醜い人間の果てに、それでも必要としたセカイの群れ。

 眠り続ける親友は一体今、どんな夢を見ているのだろう。
 行方不明の同期は一体今、どんな現実を目の当たりにしているのだろう。

自分がこのセカイに在ることにどんな意味を持つのだろう。
答えはまだ、見えなかった。

932名無しリゾナント:2012/09/18(火) 14:37:00
以上です。
これで今の時点でストックは終了です。
ゆっくり投下なのは本当に申し訳ないのですが
実はまだ中盤にも差し掛かってないのが実状(汗
しばらく潜ります。次回はリゾナンターの動向から始まる予定、かも。

---------------------------ここまで。

>>927
最後の台詞が終わりを告げているっぽくて良かったですよ。
終わりの安心感を抱かせてもらいました。
続きを楽しみにしてます。

いつもお世話になっております、いつでも構わないのでよろしくお願いします。

933名無しリゾナント:2012/09/18(火) 20:53:39
いってきます

934名無しリゾナント:2012/09/18(火) 20:57:52
いってきましたー

935名無しリゾナント:2012/09/19(水) 09:35:55
>>934
わわ、ありがとうございますっ。
まだ規制が解けない中、ホントにいつもお世話になってしまって…。

936名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:45:31
『私がいて 君がいる』

〈どうして涙が出るんだろう〉

1−1

「さゆ…、れいなは絶対に賛成できん」
喫茶リゾナントの店内の空気がピンと張り詰める。
道重さゆみはコーヒーカップに目を落としたまま、厳しい顔つきで黙っている。
れいなは、鞘師里保の方を見た。
鞘師は複雑な表情で、天井に目を向けていた。
二階では鈴木香音が寝ている。
鈴木は鞘師のために、自分の身を犠牲にした。そして、あの少女に刀で斬り刻まれた。
大量出血のダメージは大きく、鈴木はすぐに近くの病院に入院し、輸血を受けた。
鈴木が退院して、皆のもとに戻って来れたのは、つい昨日のことだ。
鞘師はれいなの問いに何も答えない。店内は静まり返った。
「私は、道重さんの意見に従います」静寂を破って、譜久村が強い口調で言い切る。
「リーダーの出した結論に従うのが、私達の義務だと思います」
「リゾナンターにそんな義務はない!」れいなが声を荒げる。
れいなの後ろにいた工藤が、おもむろに口を開く。
「あの…、私は、田中さんの方が明らかに正しいと思います。
偉そうに言って申し訳ありませんが…、道重さんの考えは、間違っています」
工藤はれいなの横に並び、さゆみと譜久村の方を見つめた。
飯窪、石田、佐藤は困惑した表情で黙っている。さゆみが懇願するように言った。
「れいな、これがさゆみのわがままだっていうのは、よく分かってるの…。
でも、さゆみ、ほうってはおけないの…。お願い、れいな、分かって…」
「分からん!さゆは、仲間が傷つくことになっても平気なんか!」
現在の体制において、れいなとさゆみの対立はリゾナンターの崩壊に繋がりかねない。
重苦しい雰囲気の中、生田は心の中でつぶやいていた。
(…新垣さん…、早く…早く帰って来て下さい…)

937名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:46:15
1−2

高橋愛・新垣里沙・光井愛佳が相次いで離脱し、一方で新人がどんどん増えた。
その結果、リゾナンターは、結成以来、最も脆弱な体制となってしまった。
愛佳が去って数日経った夜、れいなとさゆみは、二人きりで話し合った。
新人たちの教育、新しいフォーメーション、今後の戦略…。論点は尽きなかった。
二人は、時間が経つのを忘れて、忌憚のない意見を言い合った。
知りあってもう何年もたつが、こんなに長い時間二人だけで話したのは初めてだった。
議論は翌朝になってようやく終わった。
窓の外を眩しそうに眺めながら、れいなが最後に言った。
「さゆ、やっぱり、リーダーはどっちかに決めといたほうがいいと思う。
さゆがリーダーやってよ。れいな、そういうのは性に合わん」
どちらがリーダーになろうが、二人がリゾナンターの中心であることに変わりはない。
そう思ったさゆみは、れいなの提案を快く受け入れ、新リーダーに就任した。
しかし、さゆみはすぐに後悔することとなった。

リーダーは、重要な事案の全てに対して、最終的な決定を下さなければならない。
さゆみはいつも恐れていた。
(さゆみが決めたことのせいで、メンバーの誰かが死んじゃったら、どうしよう…)
もちろん、さゆみが独断で何かを決めることはなかった。
必ずれいなや後輩たちと話し合い、皆が納得できる最善の結論を出す。
当然、結論に対する責任は、話し合いに参加したメンバー全員が、負っている。
だが、さゆみは、そうは思っていなかった。
リーダーとして、その結論にGOサインを出した時、全ては自分の責任になる。
リーダーとはそういうものだと、さゆみは考えていた。
ミーティングの最後、決定したことをさゆみが確認する。全員の視線が自分に集まる。
メンバー一人一人の信頼に満ちた視線が、焼けた火箸のようにさゆみの心を突き刺す。
(愛ちゃんだったらどうしてたかな…?ガキさんならもっと良い案を出してたかも…)
ミーティングのあと、さゆみは、誰もいない公園で一人考え込むようになった。
ある夜、れいなが、たまたまその姿を見かけた。

938名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:47:05
1−3

れいなが公園の横を通ると、さゆみが一人でベンチに座っているのが見えた。
薄暗い外灯に照らされたその表情は、今まで見たことがないほど、苦悩に満ちていた。
(さゆが、また何か悩みよう…。最近、毒舌も出んし、ほとんど笑わんくなった。
リーダーになったからって、そんなに一人で背負い込まんでいいのに…)
れいなは苛立っていた。
どうしてさゆみは自分に相談してきてくれないのか。
自分の頭が悪いからか。
いやいや、さゆみだって似たようなもんだ。
さゆみ、絵里、自分の三人は、タイプは違えど間違いなく全員「あほ」に分類される。
(…絵里…か…)
亀井絵里を思い出したことによって、れいなの苛立ちが別の感情に変わった。
(…れいなじゃあ、絵里のかわりは、つとまらんか…)
鉛色の無力感が、れいなの胸の底に重くのしかかった。

だが、れいなは前向きな人間である。
れいなは、これからは自分が全力でさゆみを支えていこうと決意した。
誰かを支えたいなどと思ったのは、れいなにとって、生まれて初めてのことだった。

れいなの不器用な努力の日々が始まる。
れいなはまず、日ごろ思っていることをどんどん口に出すことにした
「さゆ、二人でがんばろう!」
「さゆ、何か悩みがあるなら、れいなに言い!」
「さゆがいてくれて、本当に良かったっちゃ」
れいなは、照れ臭さに耐え、さゆみに声をかけ続けた。
これまで、れいながそんなことを口に出して言うことは、まずなかった。
さゆみは、れいなのそのような変化に驚き、怯え、訝しんだ。
しかし、徐々に、それらがれいなの自分に対する気遣いの表れだと分かってきた。
さゆみは、涙が出そうなほど嬉しかった。

939名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:47:52
〈どうして楽しくなるんだろう〉

2−1

ある日、さゆみが訓練に遅れた。
予定では、その日は新しいフォーメーションを考えることになっていた。
これまでも、さゆみが遅刻することはたまにあった。
そんなとき、れいなは、決まってこう言っていた。
「もういい!さっさと始めよ!さゆは後方担当やし、後で教えればいいっちゃろ!」
だが、その日のれいなは違った。
「さゆが来てから決めたいけん、みんな、ちょっと待っとろう」
そう後輩たちに言って、訓練のスケジュールを大幅に変更した。
遅れて訓練室に入って来たさゆみに、飯窪が耳打ちする。
「田中さんが、道重さんを待とうって、おっしゃったんですよ」
さゆみは、石田と乱取りをしているれいなを、笑顔で見つめた。

また、こんなこともあった。
7月になって、さゆみの誕生日が近づいてきた。
れいながカレンダーを見ながらつぶやく。
「さゆ、誕生日の0時にメールをもらうと、すごく嬉しいって言っとったな…」
れいなは決めた。
今年は、0時ちょうどにさゆみにハッピーバースデイメールを送ってみよう。
もちろん、そんなことをするのは、生まれて初めてだ。
その日かられいなは、暇さえあれば、メールの内容を考えるようになった。
そして、あっという間に誕生日の前日になった。
深夜11時。数十行に及ぶ長文のメールはもうとっくに完成している。
時計をぼんやり眺めていると、突然、携帯が鳴りだした。
「うわっ、佐藤だ。こんな遅くに何やろ?」
れいなは着信ボタンに触れた。

940名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:49:06
2−2

「こんちくわ〜、たなさたん、おきてました〜?」
「ああ、起きとったよ。どうしたと?」
「あの〜、たなさたんにおしえてほしいことがあるんです」
「なによ?」
「みちしげさんのたんじょうびってあしたですか?あさってですか?
きょう、ふくむらさんにおしえてもらったんですけど、
まーちゃん、どっちだったか、わすれちゃって…」
れいなは、自分が今していることを、後輩に知られるのが急に恥ずかしくなった。
「さゆの誕生日?うーん、れいなもよく覚えとらん」
「そうですか〜。まーちゃん、いつもみちしげさんにめいわくかけてるから、
ごめんなさいっていうきもちをつたえたくて〜、たんじょうびのめーるを、
よるの12じにおくりたいなあっておもったんです」
「そっか…。じゃあ、工藤とかに聞きいよ」
「どぅーもあゆみんもはるなんもみんなねちゃってて、おきないんです。
せんぱいさんたちも、るすばんでんわでした」
れいなは、今日の訓練終了後、くたくたになっていた8人の姿を思い出した。
「まあ、あんだけ疲れとったら、しゃあないやろね。佐藤は眠くないんか?」
「まーちゃんは、7じにねて、めざましどけいをせっとして、いま、おきました」
(ふーん、佐藤もああ見えて、けっこう考えとるっちゃね…)
「あ、思い出した!さゆの誕生日は明日で合うとるよ」
「そうですか!たなさたん、ありがとーごだいまったー!おやすみなさ〜い」
れいなは電話を切ったあと、ふと思った。
(あれ?佐藤が0時に送った場合、れいなの送ったメールはどうなるんやろ?
ひょっとして、0時ちょうどには着かんと?)
なにぶん、れいなにとっては初めての挑戦なので、どうなるのか全く予測がつかない。
(佐藤のメールのせいで、れいなのメールが遅れて着いたらどうしよう。
さゆ、0時ちょうどが嬉しいって言っとったしな〜)
れいなは、さゆみの誕生日を佐藤に教えたことを、少し後悔した。

941名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:50:04
2−3

れいなは緊張していた。時計の長針が、59分を指している。
れいなは、佐藤に負けたくなかった。
もちろん、自分のメールが少し遅れても、きっとさゆみは喜んでくれるだろう。
また、一番最初のメールが佐藤のものでも、それはそれでさゆみは嬉しいはずだ。
しかし…、れいなは納得がいかなかった。自分は、三時間もかけてメールを打った。
どんな内容にするか悩んだ時間は、おそらく数十時間を超えている。
こんなに一生懸命考えて書いた自分のメールが、一番に届かないのは納得がいかない。
れいなの胸の中で、負けず嫌いな性格が爆発する。
秒針が頂点に近づいていく。れいなの額を滅多にかかない汗が伝う。
5…4…3…2…1…(いけえっ!)
れいなは、人差し指に全神経を集中させ、画面を超高速で「タン!」と叩いた。
(…うまく、…いったと!?)れいなは携帯を持ったまま、中腰の体勢で立っていた。
そして、座ることも忘れて、数分間、携帯の画面をじっと見つめていた。
♪しょおじきをつたえないのがあ〜♪
メールの着信音が鳴った。れいなは、急いでその返信メールを開いた。
「……おっ、れいなが一番だったって書いてある!やったー!めっちゃ、嬉しい!」
れいなは、自分が一番だったことを、子どものように喜んだ。
そして、満面の笑みで、メールの続きを読んだ。
「うん…うん…、よっしゃ!さゆがよろこびよう!」
メールの文面からは、さゆみの感激がひしひしと伝わってきた。

れいなの気遣いはその後も続いた。そのせいか、さゆみの顔にも明るさが戻ってきた。
次第に毒舌も出てくるようになり、もう一人で公園に行くこともなくなった。
さゆみが元気にしていると、なぜかれいなも嬉しかった。
さゆみが自分を信頼してくれているというのが、以前の何倍も強く伝わってきた。
二人でふざけているときには、今までなかったほどの楽しさを感じた。
れいなは思った。
(れいな、今のさゆが一番好きかも!)

942名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:51:07
〈どうして愛 求めるんだろう〉

3−1

リゾナント店内の空気は、ますます重苦しさを増している。
れいながきつい口調でさゆみに言う。
「さゆ、いい加減に目を覚ましいよ!」
そして、鞘師の方を見て、励ますように言った。
「鞘師も、自分の気持ちをはっきり言い!」
鞘師は複雑な表情のまま、口を固く閉じている。
このままでは埒が明かない。そう思ったれいなは、説得をあきらめ、最終手段に出た。
「こうなったら、多数決で決めるしかないやろ。
さゆの意見に賛成やったら左手を、反対なら右手を挙げる。さゆ、それでええやろ?」
さゆみが頷く。
「それじゃあ、みんな…、手を上げり!」
さゆみと譜久村が左手を挙げる。
れいなと工藤は右手を挙げた。
鞘師・生田・飯窪・石田・佐藤は、どちらの手も挙げていない。
こわばった表情の鞘師に、れいなが諭すように言った。
「鞘師、さゆに遠慮は要らん。自分の気持ちに正直になりい」
それを聞いて、鞘師は、ようやく手を挙げはじめた。
だが、頭上に挙げられたのは、右手と左手、すなわち、両手だった。
れいなの表情が一気に険しくなる。
「鞘師!」「待ってください!」
突然、鈴木の声が響いた。れいなが振り向くと、階段を下りた所に鈴木が立っていた。
「私、里保ちゃんが何を悩んでいるのか、分かるんです。
ずっとここで、皆さんの話し合いを見てました。
里保ちゃんが道重さんの意見に、賛成でも、反対でもあるのは、理由があるんです」
「香音ちゃん、やめて…」
止めようとする鞘師の方を一度見てから、鈴木は意を決したようにこう言った。

943名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:52:46
3−2

「里保ちゃん、亜佑美ちゃんの写真が撮りたいんです!」
「えぇっ!?…鞘師さん…?」石田が、頬を赤らめながら鞘師を見る。
鞘師は恥ずかしそうに顔を隠しながら走って外へ出ていった。飯窪が慌てて後を追う。
「はあああああ!?」目の前の状況に驚くれいな。鈴木が話を続ける。
「里保ちゃん、亜佑美ちゃんの唇が好きなんです。私、ずっと前から気付いてました。
でも、里保ちゃん、あの性格だから、ずっと言い出せないで悩んでたんです…」
「えっと…、れいなは、鞘師が傷つくやろと思って、さゆに反対しとったっちゃけど、
ひょっとして、鞘師も、『そっち』の人やったと?」
「…もういいの。れいな、今回のことはさゆみが悪かったの…」
さゆみが、ホワイトボードに長い横線を引く。その線の下にはこう書いてあった。
『リゾナンター新ルール!写真を撮られても気にしない!』
さゆみが椅子に座り、ため息混じりに言う。
「さゆみ、りほりほの寝顔を見ると、どうしても放っておけないの。
あんなに愛くるしい寝顔は、人類の至宝として永久保存すべきだと思うの」
「道重さんの言う通りです。愛するものを写真に残すのがどうしてだめなんですか!」
興奮して大声になってしまっている譜久村に、工藤が反論する。
「でも譜久村さん、私が着替えてるところまで撮るじゃないですか!」
「撮るわよ。それが何か?」
「『それが何か』って、そんなの、だめに決まってるでしょお!」
「誰にも見せないわよ。聖が一人で愉しむだけ。ねぇ、道重さあん」
「ねぇ、フクちゃあん」
れいなは心底呆れていた。
そして疲れ切ったように階段へ向かいながら、こう思った。
(絵里は、さゆの暴走をうまく操縦しとったなあ。けどれいなはもう付き合いきれん!
やっぱり、れいなじゃ、絵里のかわりはつとまらん!)

一方、生田は、皆の話を全く聞いておらず、相変わらず新垣のことばかり考えていた。
(愛する新垣さん、早く帰って来て下さいね…。衣梨奈、毎日待ってるんですよ…)

944名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:54:57
3−3

ミーティングは自然に終了となった。
皆が帰り支度をし始めた時、突然、「カランコロン」とドアベルが鳴った。
入ってきたのは、一人の少女と、八匹の犬。
とっさに警戒するメンバーたち。だが、少女は背中に深い傷を負っていた。
さゆみが前に出て言った。「あなた…、『せっきー』さんよね?」
すると、その少女は、その場でいきなり土下座をし、大声で叫んだ。
「お願いです、助けて下さい!このままじゃあ、みんな、殺されちゃう!」
床についた手に、涙がぽたぽた落ちている。
さゆみは、すぐに少女を奥の部屋に連れて行き、傷の治療をした。
戻ってきた鞘師・飯窪も含めて全員が見守る中、少女の治療は無事に終わった。
梓は、さゆみに礼を言ってから、自分がここに来た理由を涙ながらに話し始めた。
ミッションに失敗した梓たち7人は、自分たちが死刑になると確信していた。
そこで、ダークネスから逃げ出す計画を立て、今日、それを決行した。
だが、脱走は失敗した。梓以外の6人はすぐに捕まってしまった。
何とか逃げ出すことのできた梓は、仲間を助けたくてリゾナントに瞬間移動してきた…。
「自分の言ってることが、すごくずうずうしいってことは分かってます…。
でも…、他に頼る人がいないんです…」

梓を奥の部屋に残し、全員が店の方に移動した。
「…さゆ、どうする?」れいながさゆみに言う。
「…あの目は嘘をついてないと思う…。さゆみは、あの子達を助けに行きたい」
さゆみはそう言うと、メンバー一人一人の顔を見た。
鞘師が、鈴木が、そして後輩全員が、それぞれさゆみを見て頷いた。
最後に、隣にいるれいなが、引き締まった表情でさゆみの目を見て言う。
「罠かもしれんけど、まあ、れいながおるし、なんとかなるっちゃろ。
とにかくれいなは、リーダーのさゆについていくけん!」
「…れいな、ありがとう!」
メンバー一人一人の信頼に満ちた視線が、さゆみの心を暖かく包み込んだ。

945名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:55:58
〈Ending:少し大人になったかな〉

関根梓を加えた11人が、8匹の犬の作る円の中に入った。
工藤の顔がこわばっているのを見て、佐藤がニヤニヤしながら言う。
「どぅー、きんちょうしてるでしょ〜?」
「してないよ!まーちゃんと『飛ぶ』より、犬と『飛ぶ』方がずっと恐くないわ!」
「えー!どぅーはまーより、いぬさんのほうがすきなの!?」
「もう、うるさい!佐藤!工藤!静かにしい!
…さゆ、佐藤って、もう13歳やろ?年の割りに、幼すぎると思わん?
れいな、あのくらいの頃は、絶対、もっと大人やったと思う。
そういえば、さゆ、佐藤からの誕生日メール、なんて書いてあったと?」
「え?誕生日メール?佐藤からは来んかったよ。来たのは次の日…だったかな?」
「はあ!?ちょっと!佐藤!聞きたいことがあるっちゃけど!」
梓が大きな声で言う。「みなさん、準備はいいですか?」
佐藤がれいなの方を見て、口の前に人差し指を立てて「シーッ」とする。
れいなが佐藤に「べーだ!」と言う。佐藤も「べーだ!」と返す。
さゆみが溜息をつく。
「それでは、行きます!」梓の合図で、11人と8匹が、一斉に消えた。

その数分後…。
リゾナントから遠く離れた地で、光井愛佳は携帯を懸命に操作していた。
「どうしよう…、誰の携帯にも繋がらへん…。みんな、どこにおるん…?
…お願い…、電話に出て……」

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『私がいて 君がいる』でした。
次回からは、(仮)篇のクライマックスになります。

946名無しリゾナント:2012/09/21(金) 17:57:33
=======================================
>>936からここまでです。
 いつもすみませんが、よろしくお願いします。

>>932さん
ご感想ありがとうございました。とっても励みになります。

932さんの今後の展開、楽しみです。
「"Reborn" 、有限の人間に変化を求めた無限の現象。
醜い人間の果てに、それでも必要としたセカイの群れ。」
こういう表現が、「うまいな〜」って思っちゃいます。

「眠り続ける親友」「行方不明の同期」
きたきたきたー!

947名無しリゾナント:2012/09/21(金) 21:13:54
じゃあ行ってくるのだよ

948名無しリゾナント:2012/09/21(金) 21:23:43
行ってきたのだよ
現実の話とリンクしたさゆれな話や新ルールに笑ってしまう反面
長く続いた(仮)編も綺麗に3×3+1でまとめていてお見事だなと敬服します
つづきまってますよー

949名無しリゾナント:2012/09/22(土) 13:24:11
>>948さん
代理投稿ありがとうございました!

皆さんの感想を読むと、話し合いの落ちは見抜かれてたみたいで、
ちょっとへこんでます。失敗いかし次は成功するのさ〜

今後もよろしくお願いします!

950名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:10:30
「おまえら〜街を破壊するのだ〜」
「「「「「イイイィィィィィ〜」」」」」」

黒頭巾に黒の全身タイツのいかにも悪役ですと自己主張の強い集団が突然現れたのはうきうきした日曜の午後
手にどうみても殺傷能力はあるが、効率極まりなく悪い斧だの重そうなバズーカを持ち暴れている
どうみても警察なり自衛隊が遠距離から射撃すれば一掃できそうなのだが、ここは小説の世界
数少ない役割を果たそうとモブキャラの市民達は悲鳴を上げて、蜘蛛の子を散らすように逃げ回る

昼間に日曜朝7時半の光景が広がっているのを見て黒ずくめ集団の女ボス、中澤は高らかに笑う
「これぞ、ダークネスの力や!まずはここ、浅草を制圧し、次いで巣鴨、柴又と広げていくのだぁ」
「待てい!!悪事を働くのはそこまでじゃ!」
「誰や?姿を現せ!」
現実的には姿を現さないで長距離からライフルとかで狙撃しちゃえばいいのだがそんなことはしない
そして、こんなどう考えても世界征服なんてできそうにない組織にすら当然のようにヒーローは現れる

「悪は許さない、リゾナントレッド! 鞘師里保」
「正義の名のもとに立ちあがる リゾナントブルー 石田亜佑美」
「お前たちだけは許せねえ リゾナントハニー 飯窪春菜」
「共鳴の輪の中に生まれたから リゾナントノーマルグリーン 鈴木香音」
「えり達は立ちあがる リゾナント新垣グリーン 生田衣梨奈」
「まーちゃんも立ち上がる リゾナントエメラレルドグリーン 佐藤優樹」
「あなたの心に優しい風が流れますように リゾナントももち色 譜久村聖」
「「「「「「「7人そろってリゾナントガールズ(仮)」」」」」」」
そしてしゅびしぃぃぃっと決めポーズを決める7人

「・・・おい、待てや」
「正義の名のもとに悪は許さない!正義は待たない」
「・・・待ていうとるやろ」
「待ちません。共鳴の元に生まれし絆を見せつけてあげます!」
「待ていうとるんやから話聞けや!!黙らんと奥歯に指入れて歯ぁガタガタいわすぞ、こらあ!」

951名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:11:15
「ヒィィィィ・・な、なんですか?」
レッドと名乗った少女が恐る恐る女ボスに尋ねる
「お前ら、色々とつっこむところ多すぎるやろ!お前ら自分達の名前名乗ってみい!」
「リゾナントガールズ(仮)っちゃ♪かわいいやろ?」
何も言わずに女ボスは新垣グリーンに光弾を放った
「うざいわ、うざい。ほんでなんや?(仮)って?正式名称つけんかい!」

「いや、それはですね、まだ私達正式なグループではないので、戒めとして(仮)として」
「・・・ええねん、お前ら、自分に自身もてや!一応、正式なメンバーとして認められているんやから
 メジャーやろ?このスレではお前らメジャーな存在になりつつあるねん
おそらくもう辻とかAより知名度も人気もあるやろ。あいつら意外に使いずらいのバレとんねん」
「そ、そんなことないですわ。過去の功績を見る限り聖達にできるのはただ頑張るだけですわ
ほら、こうやって頑張っているうちに見てください♪アッパーカットが得意になりましたわ」
「いや、知らんから!あとアッパーカットするときに胸が揺れてるの見たブルーの目が怖いやろ」
「・・・悔しくはないです。動きの邪魔になるだけで、頑張れば私だって。私だってこのさらしを」
「嘘はあかんで」
もちろんブルーの目はうるんでいるのだが、その理由は言わなくてもいいだろう

「それからな、おい、緑色!」
「なんだろうね?」「は〜い、まぁちゃんで〜す」「えりのこと呼んだと?」
「ほら、こうなるやろ!3人も緑がいるって混乱するだけや!三人だけ自己紹介してみい」
「リゾナントノーマルグリーン 鈴木香音」
ノーマルグリーンが蟷螂のように両手を構える
「リゾナント新垣グリーン 生田衣梨奈」
新垣グリーンが両手を眉毛の近くで構える
「リゾナントエメラレルドグリーン 佐藤優樹ことまぁちゃんで〜す」
・・・佐藤が両手を上げて手を振る
「おい、作者!手を抜くな!何しとんねん」
・・・いや、だって「エメラルドグリーン」ってうつの地味に大変で(汗

952名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:12:05
「いやいや、そこは頑張れよ!表現力稚拙なんやからせめて人並みに書けるように努力せえや
・・・さて、本題に戻るが、おかしいやろ!緑が三人って!区別つかん!」
「いや。それは、その、色じゃなくて中身をみてほしいっていう思いからなんだろうね」
「いや、違う。それはおかしいやろ。色変えた方が個性出るやろ」

「え〜エメラルドグリーン好きな色だから、まーちゃんはいいんですよ」
「お前の主観はいらんねん!大事なのは区別がつくことや!見た目区別つかんとやってけんねん!
それから生田!お前に至っては色じゃないやろ!なんや!新垣色って」
「黄緑っちゃ!先代の新垣さんのイメージカラーにきまっとうやろ?」
何も言わずに生田の腹にまた光弾が撃ち込まれた
「おめえは先代の福岡と一緒に寝てろ」
新垣グリーンは色は新垣だが中身はれいなであった

「だいたい、ノーマルグリーンがその立場にいるのが問題あるんだよ」
「な、なんでだろうね!香音だって立派なヒーローなんだろうね!」
突然名指しで呼ばれたノーマルグリーン(以下G)は
「いやいや、香音はGじゃないんだろうね、せめてノーマルとかにしてほしいよ!
 Gだと偉大な人にも嫌われている虫になるし、香音はGさんの真似はさすがにできないんだろうね」
「ほら、それや、香音、お前は突っ込みなんやって!
 他の二人のボケが濃すぎて、キャラ消されているんやで!3の字とかいうとったけど、最近そうでもないやろ?」
痛いところをつかれたノーマルは一歩後ずさり、頭を抱え込む
「うっ、そ、そうなんだよね、みんな、天然だったりキャラが濃くて常識通じないんだよね
 この前までは新垣さんと光井さんがいて突っ込みキャラいたけど、それもいないんだろうね」

そうなのだ。この世界における突っ込みキャラは新垣、光井、鈴木、強いて言えば中澤、藤本くらいしかいない
しかしながら魔女は今現在、白くドロドロした液体と戦っておりそれどころではない
かといって、かつての仲間達が敵として出るのも誰も望んでいない
そして至った結論はこうだ
「今、突っ込みキャラが不足しているんだろうね」「不足しているんや」

953名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:12:59
「せやから、私からお前ら7人に提案や」
唐突に呼ばれたのでレッドは飲んでいたサイダーが変なところに入ってむせ込んだ
「おい、レッド、オマエ、敵と戦っているのに何休んどるんや!高橋から何も言われんかったと違うんか?」
「え、いや、これは、あの、そうですね、私、水を操る能力持っているので常に持ち歩いているんですよ
それで、ボスさんが香音ちゃんと話しているから邪魔してはいけないと思ってですね」
「そうっちゃ!里保はあなたに気を使って」
三度目の光弾がKYを襲った

「基本的に緑色は鈴木にするんや。後の二人は他のメンバーと共鳴した時に現れる設定にする
 こうしたら、お前らの共鳴の力もイメージつきやすいし、突っ込みキャラも守れる
 ついでに言うなら執筆能力の低い作者も助かる」
・・・うん、その通り。作者としては助かります(笑)
「確かに、それはいい設定ですね!さすが、ボスさん!」
ハニー色の褒め芸も炸裂する
「それでは、まぁちゃんのエメラルドはグリーンと私、ブルーが共鳴した時にしましょう」
「生田さんの新垣グリーンは飯窪ちゃんと共鳴した時にするんですわ」
「じゃあ、里保ちゃんと共鳴した時は・・・」

電柱柱の影から一人の少女が心臓をwktkさせて8人の様子を見ていた
(私だよね?私だよね?)

「赤と緑でお花みたいだからさくらちゃんですわ」

電柱柱の影でオレンジは泣いた
ハoT 。Tル<なんでどぅだけ出番無いの・・・

「ちょっと待つっちゃ!えりはその提案に反対っちゃ!」
「おまえ、タフすぎるやろ!」
さすがKYほとんど決定している流れでも意見を挙げる

954名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:14:46
「新垣グリーンどうしたんだろうね?」「なんや?」
二人のこの世界数少ない生き残りのつっこみに睨まれてもKYの壁に守られた新垣グリーンは動じない
「確かにそのアイデアは戦隊ヒーロー好きなえりとしても面白いと思うっちゃ!
 でも、でっかい問題点もあることにきづいとうと?」
にやにやして言う新垣グリーンに思わず光弾を放とうとする中澤だったが、そこは必死でこらえた
「なんや?いうてみい?」

「もし、えりとまぁちゃんが出て来なくなったら、今度はボケが弱くなるとよ」
「あ、ほんまや」
残ったのは鞘師、石田のダンスコンビ、天然の譜久村、エピソードトークが得意な飯窪
どう考えても自然なボケが出そうなのは譜久村しかいない
「確かに・・・話の流れとして真面目になりそうなんだろうね」

ボケと突っ込みのバランスは難しい。公式なんて存在しない
つっこみは一人でも十分なのだが、ボケは多くいるからといっていいわけではない
つっこみが面白さを増す部分はあるにせよ、どうしてもそのボケの質は大事なのだ
そう、数よりも質なのだ。数よりも質なのだ。

「やけん、えりとまぁちゃんのコンビがいたほうが予測不能になっていいと思うと」
「確かに二人がいないと突発的な事件は起きないんだろうね。
 二人とも何をしでかすか先が読めないからコメディには向いているだよね」
そうやって真面目に考えている横ではエメラルドは電信柱の後ろにいる工藤(オレンジ)に気付いて笑っている

「というか、気付いたんやけど、お前らの仲間のオレンジ色の戦隊ヒーロー無駄に強いやろ!」

Berryz仮面 オレンジ⇒夏焼 雅
キューティーレンジャー⇒矢島 舞美
リゾナントガールズ(仮)⇒工藤 遥

「なんや、この格闘に圧倒的に強そうな三人組!正直、本体より強いやろ、こいつらだけなら」
「確かにそれはそうかもしれないんだろうね(汗)」

955名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:15:18
「戦隊ヒーローはピンチになると心強い味方が現れるものですわ!ですから、オレンジはサブなんですわ!」
そういい胸をますます張り出すのはももち色である
「やめい!お前がそれやると、目のやり場に困って、色々問題おこんねん!」
「それなら、私がズキューーーーーーーーーーーーン!」
「やめい!JOJO立ちすんなや、ハニー色!違う問題起こるやろ!」

「あ、あの〜すみません、ちょっといいですか?」
申し訳なさそうに声をかけたのはレッドだった
「あ、なんや?」
「あの〜私達って敵ですよね?そろそろ戦わなくてはいけないのではないでしょうか?」
「・・・そやったな。よし、来いや!女、中澤相手になったるわ!」
しかし、更に申し訳なさそうな態度のレッド

「どうした?こっちから行くのか台本やったか?」
「いや、そうではなくてですね、限界です」
「・・・・は?」
「いや、話が長くなって、読者が飽きていると思うんです。だから戦うのは次回ということで」
「・・・せやな、そうするか」

♪エンディングテーマ

〜次回予告〜
ハo´ 。`ル<7人の少女たちの前に現れた女ボス。
色と名前の事だけで終わった一回目の放送をどう思ったのか
視聴率は?視聴者の評判は?そして、次こそ中身はあるのか?そして、第三話目はあるのか?
次回 カラフル戦隊リゾナントガールズ(仮)第二話『ハニー色とももち色』
ハoT 。Tル<出番は予告だけ?

ノノ∮‘ _l‘)<この番組は譜久村の提供でお送りいたしましたわ

956名無しリゾナント:2012/10/25(木) 23:20:03
以上「colorfull戦隊リゾナントガールズ(仮)①」です。
「あえあ」ネタに飽きたから書き始めたものです。コメディは書いていて楽しいですw
リゾナンター関係ないかもしれないけど、堪忍してくれるとありがたい
まぁちゃん、鞘師のシリアルな話の後にこんなんで申し訳ないです

代理投稿よろしくお願いします。

957名無しリゾナント:2012/10/26(金) 12:22:05
遅くなったけど行ってきたよん
本スレでも書いたけどメンバーのカラーを巡るやりとりはゴレンジャイを思い出した
作者さんはごっつ世代の人ですかねw

958名無しリゾナント:2012/10/26(金) 21:06:58
ありがとうございます!いや〜改良の余地まだまだありますね、こうやってみると
さっき、ゴレンジャイ初めて観ましたw板尾さんおもしろいですね〜
知らなかったけど、かぶっていてなんか悔しいっす・・・オリジナリティないな・・・
作者は24歳です

959名無しリゾナント:2012/11/04(日) 18:46:46
スーこれがりほりほの匂い…
子供特有のミルクみたいな匂いにちょっとだけ思春期を思わせる酸っぱいアクセントが…
幸せ、ってこういうものなのね。もうこのまま時が止まってしまえばいいの。

しかし背後にTシャツを忘れた事に気づき戻ってきた里保がいると知って、さゆみは本当に時が止まってしまった。

否。店内に里保が足を踏み入れるわずか1秒前に、さゆみは普段からは想像もつかないような反射神経と跳躍力
によって、Tシャツを咥えたままカウンターの下に隠れることに成功する。りほりほに変態バレしたくないという保身と、
いつまでもクンカクンカしていたいという欲望が重なる事で実現したまさに奇跡であった。

「さっ鞘師、どうしたの?」

何事もなかったかのようにカウンターから姿を現すさゆみ。
顔は赤いし息も荒いし、おまけにさゆみの重さんも大変なことになってるが、里保には気づかれていないようだった。

960名無しリゾナント:2012/11/04(日) 18:48:08
「実は道重さんに相談があって」
「相談って何…あひっ?!」

真剣な顔つきで話す里保を他所に、さゆみの重さんに電撃が走る。
実は奇跡の大ジャンプを決めた時に、懐の携帯電話が何故か股間の位置にずれてしまったのだった。
携帯はマナーモードになっており、着信があるとブルブル震えていけない刺激を与え続ける。

「私…この能力のせいで、学校の友達とも馴染めなくて。水があるところには迂闊に近づけないし。
だから色々経験してそうな道重さんに教えてもらいたくて」

里保が心を開いている。
のは結構なことだったが、さゆみの重さんも股の機械のせいでぱっくり開いてしまっていた。
慌てて股を閉じようとすると刺激がよりダイレクトに伝わり、さゆみの腰が思わずくの字になる。

「あの、どうしたんですか?」
「ううん、何でもないの」

何でもなくはない。
既にさっきの変態プレイと今の携帯バイブでおまた大洪水である。
そしてあまりの刺激に、ついにさゆみが声を上げる。

961名無しリゾナント:2012/11/04(日) 18:49:18
「あっあっ、ま、股の機械にぃぃ」
「は?」
「またのきかいにいいいいい!!!!!」

急に叫びだしたさゆみ。
顔を見ると、眉を吊り上げ紅潮させている。里保はさゆみを怒らせてしまったのだと思った。
ただここで引くわけにはいかない。

「道重さんにとっては確かにくだらないことなのかもしれません。でも、わたしは」
「またのきかいに!!またのきかいに!!!」
「何ですかさっきから又の機会にって!今じゃなきゃダメなんです!」
「だからまたのきかいにいいいいいい!!!!!」

さゆみは涙を浮かべ涎を垂らし髪を振り乱している。
そんな、相談にすら乗ってくれないなんて。里保は慈悲のないさゆみの態度にショックを受けた。
ある意味さゆみは今自慰をしてるのだが。

962名無しリゾナント:2012/11/04(日) 18:50:35
里保が顔の表情をなくしていくのを見たさゆみは大いに焦った。
もしかしてりほりほ、勘違いしてる!?
でも誤解を解くには一度イッてからでないと、ろくな答えすら口にできない。今までのりほりほ
盗撮画像を頭に思い描き、渾身の力を込めて叫ぶ。

「イッて!!!もうイッて!!!!」
「そんな、行ってだなんて!!」
「違うの!行って欲しくないけどさっさとイッて欲しいの!!!」
「…わかりました。失礼します」

肩を落とし去ってゆく里保。

「待って行かないででもイッちゃうのあっあああああああああ」

里保の淋しそうな後姿を見ながら、さゆみもまたいってしまうのだった。
里保との心の距離は開いてしまったし、さゆみの重さんも開きっぱなしだった。

963名無しリゾナント:2012/11/04(日) 18:51:14
この後、里保は頼れる先輩・田中れいなに相談した。

964名無しリゾナント:2012/11/04(日) 18:56:33
>>959-963
りほりほのTシャツネタの続きです。
こんなものを代理の方に頼むのも心苦しいんですが、代理投稿お願いします。
題名は「またのきかいがリゾナント」で。今適当につけました。

最初は見つけたのがりほりほじゃなくて石井さんで、いきり立った黒い焼き芋がどうのこうの・・・
という話だったんですが、みなさんの「股の機械に」への食いつきに共鳴してこういう結果になり
ました。とある話のリスペクトで心苦しいので、元ネタも貼っておきます。

http://m-seek.net/kako/event/messe08/1118769937.html


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板