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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part2
899
:
名無しリゾナント
:2012/09/08(土) 22:24:28
女性は自分の命が、世界の命が儚いことを始めから知っていた。
それを受け入れていた筈なのに、それを寂しいと感じるに至った
理由が確かにあったのだ。
微かに生きる希望を見つけてしまったからだ。
女性がまだ少女だった頃、年季の入った木目のターンテーブルで
レコードに針を落とす老人に出会う。
老人は古ぼけた音に耳を傾け、少女は向かうように立ってその姿を見つめる。
「笑ってしまえば良いのさ。風景の違いに気付かないヤツらなど
いくらでもいるからね。眺める景色がいい加減なのだよ」
「でもみんな、みえるものしかしんじないよ」
「見えるモノ、見えないモノ、今になってそれが判るなんてね」
「おじいちゃんはこのきょくがすきなら、えりも、すきになっていい?」
「ああ、今思えば、私は好きだったんだな。どんなに嫌っても、結局は
元に戻ることを信じてた、信じてたんだよ」
老人と少女の会話は一度も噛み合わないままだった。
だけど少女に対して向けられた視線と、頭を撫でるその皺と一緒に残る暖かさが
両親の優しさを十分に受け止められない少女にとって、何か、かけがえのない
ものになって行くのを感じていた。
陽が落ちるまで続き、古ぼけたレコードが老人の手によって自然と音を
止むまで、少女は、永遠とも思える時間に身をゆだねていた。
病室で居る独りとは別の、傍に在るという安心感に漂いながら。
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