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美
1
:
◆f9klpsMBjM
:2021/03/23(火) 13:24:05 ID:JC05D13o0
美!!!
175
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:19:52 ID:hxc6LL6o0
六,了
176
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:21:39 ID:lv13lLzY0
(((( ;゚Д゚)))
177
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 20:11:30 ID:UvsrQjKs0
おぉ……唯一無二感がすごい
おもしろいです
178
:
名無しさん
:2021/04/13(火) 15:39:21 ID:V9pbAlDE0
ク̶̧̡̡̧̢̛̛̺͎̙̭̯̳͍̦͍͉͇̺͚͈̥̼̭͚͕̥̤̖̰͙͚͔̭̘̯̲͉̦̬̺̪͈̦̺̠͖̼͇̬̲̖̪̦̰̣̤̮̮͍̗̣́͂̏͛̈́̇̈́͂̽͂̏̓̉͌̀̇͊́͗͂̇̈̈͋̈́́̇͊̀̍̈́̔̈́̒̅͛́͂̋̈̈́͋͆̐́̿̃͆̃̂̎͋̚̚̚͝͠͝͝͠͠ソ̸̧̧̡̹̜̟̪͎̖̮̱̺̪̤̲͉̩͙̟͔̯͚̻͒̒̍̐̎̌̈́͌͒̇͒́͐͆͒̓̐̌͊͒̾̿̌̎̈́̀̿̍̅͘͜͜͝͝͠女̶̨̨̛̟͙͙̤̠̦͉͔̞͕̼̲̬̝̹͚͇̖͙̠͚͈̣̆̆͌̍̅̇͐̿͑̽̒̑̃̄͆͋͋̏̋̋̈́̇͆̊͐̍͌̽̽̊́͗̈͊̓͗͑͒́̀̽́͑́̆̚͘͝͠
179
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 20:56:32 ID:KZ3vL1s60
今夜投下します
180
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:09:02 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ァ....ぁ...
(・∀ ・)
辺尼は、ベッドの上、上半身を起こしたまま
恐怖に固ま
り
、動けなくなった。
助けを求める声すら、上げられなかった。
男は、ゆっくりと、彼女との距離を詰めていく。
181
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:09:33 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ァ....ヒュッ...カハッ!
男はベッドの上に膝立ちになり、辺尼に顔を近付ける。
そして、その手に持つ包丁を、彼女の首筋に、
ゆっくりとあてた。
( Д ;川 ヒュッ....ェ...ハッ...!
(・∀ ・)
( Д ;川 たす
(・∀ ・) 黙れ
182
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:10:28 ID:KZ3vL1s60
男はゆっくりと、柔らかく、辺尼の肩を掴み押し倒した。
男の大きな身体の影に、彼女は全身を包み込まれる。
彼女の視界から、光が消えた。
代わりに、真っ黒な男の巨体とその不気味な、人形のような顔が一面に広がった。
( Д ;川 まっ.....ね、たすけ...
彼女がそう言うと、じぐっ。と顎の右下辺りで水の濡れた音がした。
続く、鋭い痛み。触れていた冷たい刃が、なまぬるくなっていく感覚。
血が、首筋を垂れてシーツに流れていく感覚。
( Д ;川 .....ッ!!!!!!!!!!
(・∀ ・)
( Д ;川 は、はいっ....!
( Д ;川 ...はい、だじま...せん、こえ、
(・∀ ・) ...は?黙れって言ったんだが?
( Д ;川 ッッッ‼‼‼!?!
包丁を握る手の、親指が傷口に差し込まれた。
そのまま掻き回される。
鋭い痛みに声をあげそうになるが、必死で堪えた。
男は彼女の目を一度たりとも逸らさず、空いた片方の手で彼女の衣服を破り、
脱がしてい
く
。
.
183
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:11:44 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・)
(・∀ ・) ...ンだよ
ガブッ
( Д ;川 ッーーーーーーー!?
( 皿 ) ガブガブ....
( Д ;川 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
( O ) プホーーー
(・∀ ・)
(・∀ ・) お前さ
184
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:13:15 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川
(・∀ ・) 性格悪いだろ
( Д ;川 ...はい?
(・∀ ・)
ジグッ
( Д ;川 ッ⁉⁉
( Д ;川 フルフル...
(・∀ ・) ...いつも
(・∀ ・) いつもいつも、
185
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:14:13 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・) 能力がどうとか、デキるがなんとか
(・∀ ・) オレ無視しやがってよ。
( Д ;川
(・∀ ・) でもお前ら、結局ただの色仕掛けじゃん?
( Д ;川
(・∀ ・) お前らのさぁ、さぁ、大事な人なんて、大事な人じゃないのに
(・∀ ・) 大事なものなんてないだろ
(・∀ ・) 俺大事にされてないッ!
(・∀ ・) お前ら見てると足冷えるんだよ!頭痛くなるし
(・∀ ・) なんかうっさい音、ザラザラザラザラずっと聞こえんの!!!頭ん中で!!
( Д ;川 (な、何、言ってるの.....!?)
186
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:14:55 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・) 俺どこにもいないの!俺どこにもいないの!わかる!?
(・∀ ・) ...でも、本当は全員どこにもいないだろ
(#・∀ ・) なのに、「いる」みたいなツラしやがって、ムカつくんだよ!
(#・∀ ・) ....おいなんか答えろよォ!
.
187
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:15:50 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ま、待ってッ...!
(#・∀ ・)
( Д ;川 ...悪かったから、私が悪かったから...!
(#・∀ ・)
( Д ;川
(#・∀ ・) なんだよ!続きねえのかよ!!!
(#・∀ ・) 黙って聞けよ!俺の話!!!!!
ジグッ
( Д ;川 ヒッ....!
188
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:16:32 ID:KZ3vL1s60
男は「力いっぱい」、天井を見上げた。
鼻息は荒く、胸は激しく上下している。
(# ∀ ) ハァっ....ハァっ....
(・∀ ・) スッ
( Д ;川 (包丁が、離れた....)
(・∀ ・)
( Д ;川 フルフル
(・∀ ・)
( 、 ;川
189
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:17:15 ID:KZ3vL1s60
しばし、嘘のような空白が挿入されていた。
男に馬乗りにされた状態の辺尼は、パニックを起こした頭で状況を整理していた。
当然、取るべき行動は一つ。
隙を見て男から凶器を奪い取り、無力化すること。
訓練で培った護身術を用いれば、可能な筈だった。
しかし、彼女の精神状態は、それを許してはくれなかった。
ならば、対話を試みるしかない。
この部屋は壁が薄い。先程の並々ならぬやり取りは、当然周囲に気付かれているだろう。誰かが警察を呼んだに違いない。
時間を、稼ぐのだ。
下手に出ようか。理由はわからないが、謝罪を続けようか。
思えば、その場を慮ること、取り繕うのは得意になっていた。
しかし、この狂人を相手にどうやって...?
.
190
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:17:44 ID:KZ3vL1s60
その時。
奇妙なことに、彼女の本能が、理性に押し戻された。
猛スピードで稼働し過熱していた反射的な思考、この場を切り抜き命を守る、という思考は
急激に何かによって冷却されていった。
彼女が近頃考えてきたことの蓄積によるものか。
(・∀ ・) はぁ....
(・∀ ・) 目、見せて
( 、 ;川
男は、人差し指と親指で辺尼の左瞼をこじ開けた。
辺尼は、何もせず、沈黙を貫いた。
男の顔が、彼女の目の数センチ上まで近付く。
.
191
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:18:11 ID:KZ3vL1s60
↑
← →
↓
192
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:18:52 ID:KZ3vL1s60
目。
白魚のような膜に、か細い血管が走り回っている。
恐怖で潤い、青白く湿った光沢を放つ膜。
その中心にある、色素の薄い、薄茶色をした瞳。
辺尼の精神状態を反映し、小刻みに動き回っている。
銀河のような虹彩が、中心の深く深く、終わりの見えない瞳孔に絶えず吸い込まれている。
彼女の外装は言葉になるけれど、その底知れない内面を言語は形容し得ない。
しかし、だ。
目は饒舌に「目の言葉」を用いて彼女を語る。もっと深く潜り、「彼女」を貫いた向こう側をも語る。
必然的に、辺尼も男の目を見た。言葉を聞いた。
193
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:19:41 ID:KZ3vL1s60
そして、気づいた。
男を狂人と片付け、警察が来るまで時間を稼ぐ。
これは、ありふれた手続だ。
辺尼が直接手を下さなくとも、全てが自動的に行われていく。
自動で、彼は居なくなる。
彼女は助けられる。
そう思えば、彼女が経験してきた事柄の殆どは、自動だった。
ただそれに気付いていなかっただけ。
辺尼には、何故自身が男に馬乗りにされているか、皆目検討もついていなかった。
理由を考えることすらしなかった。
なんという残酷。
これが自動操縦の結果だ。
己の為すこと全て、当然己が把握しているつもりだった。
それは間違いだ。
多くのことを見落としてしまった。だからこうして男に襲われ、男の目を覗いている。
襲われるのは彼女でなくてもよかったのだろう。しかしこれが偶然だとしても、畢竟、偶然ではないのだ。
つまり水路は、やはりとうに絶たれていた。
男の目の奥には、何もなかった。
残っていたのは、色もなく、光もない、ただ無限に広がる砂漠だった。
同じく、彼女の中にも何も残されていなかった。
.
194
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:21:22 ID:KZ3vL1s60
そのことを直感すると、意図するより先に、言葉が漏れた。
( 、 ;川 ...ねえ
( 、 ;川 私、ここにいないの
(・∀ ・)
( 、 ;川 いないのッ!
( 、 ;川 私、どこにもいないって
( Д ;川 いない、いない、いない、いない、いない、いない、いない......ッ!!
( ;∀ ; )
( ;∀ ; ) そうだよ
( 、 川
( ;∀ ; ) あーあ。
(つ∀ ) ゴシゴシ
( ∀ ) ハハ
( ∀ ) なんか、寒くね?
( ∀ ) ちょーー寒いんだけど....
( 川
.
195
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:22:06 ID:KZ3vL1s60
.
196
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:22:40 ID:KZ3vL1s60
<゚Д゚=> 警察だッ!その女性を離しなさい!
(・∀ ・) ...?
(・∀ ・)
( 川 ブツブツ.....
(#・∀ ・)
(#゜∀ ゜) ...オラァァァァァァァァァァァァ!?
(#゜∀ ゜) 近づくなよ!?ぶち殺すぞ!
197
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:23:40 ID:KZ3vL1s60
男の飛ばした怒号で、辺尼は我に帰った。
先程の奇妙な静寂は去り、再び恐怖が彼女を支配した。
男は彼女を盾にすると、既に血で赤く染まった首元に包丁を突きつけ、警察を威嚇する。
( Д ;川
( Д ;川 ...た、助けてッ!
.
198
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:24:32 ID:KZ3vL1s60
(#゜∀ ゜)
(#゜皿゜) .....なんなんだよォォォォォォォォォォォォ!どいつもこいつもよォォォォォォォ!
辺尼の声に反応した男は、怒り、悲しみ、失望...この世の全ての「負」をごった煮にした表情を浮かべた。
<゚Д゚=> 凶器を捨て、女性を解放しなさい!
(#゜皿゜) うるせえうるせえうるせえうるせえ!うっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
アマ
(#゜皿゜) もういい死ねよ!このクソ女!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
男は彼女を押し倒し、その腹に目掛けて包丁を振りかざす。
乾いた銃声が響いた。
男の肩に穴が空いた。
彼はそのままベッドの上へと倒れた。
<゚Д゚=> 確保しろ!
瞬く間もなく、彼女は警察に保護され、男は手錠をかけさせられていた。
<゚Д゚=> 大丈夫ですか
199
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:25:40 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ....はい、私は....
<゚Д゚=> 被害者首に裂傷あり、応急処置!
( Д ;川 痛っ.....!
(#゜皿゜) クソ!クソ!クソぉぉぉぉぉ!
(#゜皿゜) 次会ったらただじゃおかねえからな、オイ!!八つ裂きにしてやるからよ!
( Д ;川 ッ!
<゚Д゚=> 早く連れてけ
/
裏切りやがって!チクショオオオオオオ!
\
.
200
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:26:54 ID:KZ3vL1s60
数時間後。
辺尼の傷は幸い軽傷であったため、病院で手当を受けた後署で事情聴取を受けた。
小一時間ほど、家族構成、生活状況、勤務状況などをつぶさに尋問されたあと、彼女は待合室に解放された。
待合室には、彼女を待つ人は居なかった。
一人、手視を除いて。
('、` 川
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) 大丈夫か
('、` 川 はい
('、` 川 ご心配おかけして、すみません
(´・_ゝ・`) 警察は何やってんだ...届け出は出したのかい?
('、` 川 はい。...その時は取り合ってもらえませんでしたが
(´・_ゝ・`) そうか
201
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:27:26 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ・`) 男の名は窓単木というらしい。検査で興奮剤の陽性反応が出た
(´・_ゝ・`) そのうち診断が下りるだろうが、統合失調症の疑いもありだそうだ
('、` 川 そうですか
(´・_ゝ・`) ...あの辺りに一人で住むのは危険じゃないか。家族とか、いないのかい
('、` 川 疎遠でして
('、` 川 近々引っ越します
(´・_ゝ・`) それがいい
202
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:28:47 ID:KZ3vL1s60
(´-_ゝ-`) ...災難だったね。全く
('、` 川
('、` 川 ええ。ほんとうに。災難でした
(´-_ゝ-`) 世の中、狂ってきてるよなぁ。やっぱり
(´・_ゝ・`) 訳わからない薬に続いてストーカー....まさか僕の部下が襲われるとは
(´・_ゝ・`) 君は少し、休んだほうがいいな
('、` 川 そうですか?
(´・_ゝ・`) ああ。この仕事は切り替えが大事なんだ。現実を正しく見据えるためにも...ね
('、` 川 現実ですか
203
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:29:46 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ・`) ああ。君は思い詰め過ぎてる。今日の事件もあることだし...ゆっくり休め
('、` 川 現実
('、` 川 ...現実って何です?
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) ...社会に生きる者として、確かな判断力を持つ。何が悪かどうか、
はっきり分かること
(´・_ゝ・`) それで現実が始めて認識できる
(´・_ゝ・`) 近頃、君は混乱してるようだ。連中の影響を受けてね
('、` 川
('、` 川 いいえ
(´・_ゝ・`)
204
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:31:58 ID:KZ3vL1s60
('、` 川 何をしたらどうなるか、全部わかってます
(´・_ゝ・`) どういう意味だ?
('、` 川 ...私のしたことで、結果どうなるのか、何を意味するのか
('、` 川 私はわかります。混乱なんてしてません
(´・_ゝ・`) ...あっそ
(´-_ゝ-`) ....じゃあ率直に言うけど
(´・_ゝ・`) 捜査の足手まといなんだよ
('、`川
(´・_ゝ・`) わかるよな?
(´・_ゝ・`) 御託とかはどうでもいい...明日から休んでくれ
('、` 川 ...はい
('、`川 本当に、申し訳ございませんでした
205
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:32:50 ID:KZ3vL1s60
その日から、彼女は休職扱いとなった。
産業医からは、抗不安剤を処方された。
効きはしなかった。
.
206
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:35:09 ID:KZ3vL1s60
辺尼はベッドの上、膝を抱えて座り込んでいる。
窓単木に襲われた日から、彼の目を見た時から、ー彼女の見えている世界は大きく変わった。
本当のことが見えてしまうようになった。
部屋を覆い尽くしていた多肉は、全て捨てた。
今は薄暗く殺風景な景色が広がるばかりだ。
窓は、ただの貼り付いた四角になった。
カーテンが不気味に揺れた。
207
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:36:01 ID:KZ3vL1s60
彼女の頭の中で常に不協和音が鳴っていた。
それが一過性のものではないことを知っていた。
もう、元には戻れまい。これが真実なのだから。
彼女を囲む全てが不穏になった。
部屋の角、暗くなって奥の見えない廊下。空っぽのグラス。床にのたうちまわるコード。
全てが彼女を破壊していく。
手視は休んで現実を見極めろと言った。
しかし彼女の現実は、これまで少しも歪むことはなかった。
( 、 川
人間とは彼女の恐怖そのものだった。
昔からそうだった。ただ考えないように、無害であるように振る舞ってきた。
手視、捻野...誰にも彼女は心を開かなかった。
208
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:37:14 ID:KZ3vL1s60
「最初から何もなかった」心の中に、黒いタールのような狂気が満ちていく。
朝食も抜き、昼食も抜き、気付けば日が落ち夜になった。
夜は不協和音が大きくなる。
( 、 川 ....。
ガタッ
( Д ;川 ッ!!!!!
( Д ;川 (まただ、また来た!!)
ゴソゴソ
( Д ∩ ;川 (嫌だ!聞きたくない!来ないで!)
ギシッ
(・∀ ・) ユラァ......
( Д ;川 ーーーーーーーッ!
209
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:38:02 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・) 俺ら、どこにもいない
( Д ;川 ァ....ァ...
(・∀ ・) ねえ
(・∀ ・) 俺ら、どこにもいないよな??
( Д ;川 知らない...!あなたなんか...知らない!
(・∀ ・) 俺のこと無視しやがってよ。お前もどこにもいないって、俺知ってるんだぜ
( Д ;川 うるさい!うるさいッ!
( Д ;川 この世界は...私は空っぽなんかじゃない!
(・∀ ・)
(・∀ ・) おいおい...現実を見ろよ
( Д ;川 ッ....!
(:\)\;∀〜;-) ブブブッ
210
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:39:45 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ\:0) ブブッ
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) 現実を見ろ、辺尼。足手まといなんだよ
( Д ;川 ガタガタガタガタ
( Д ;川 違う...こんなの、現実じゃない!
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ#):#= ブブブッ
( `ー@)3 ブッ
( `ー´)
( `ー´)大丈夫か?お前最近溜め込みすぎなんだよ
( `ー´)俺と一緒に来い。忘れさせてやっから
( Д ;川
( `ー´)だいじょーぶだいじょーぶだって
( Д ;川 やめて、さわらないで
211
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:42:29 ID:KZ3vL1s60
( `ー´)は?
( `ー´)
(@:\;0ー´)どうしようもねえな...マジで... ブブブッ
2「2@;:@) ブブッ
\;3、`*川 ブブブッ
:;'、`*川 ブッ
('、`*川
( Д ;川
('、`*川 はぁ....。失望したわ
('、`*川 じゃあね。バイバイ
212
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:43:52 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ま...待ってよ!
( Д ;川 ....まって、よ...
( 、 ;川
( 、 川 (...そうか)
( ∀ 川
( ∀ 川 はは
( ∀ 川 あなたはこんな、地獄の中に居たのね
( ∀ 川 脾都...
( ∀ 川 (今、分かった。何もないってことが)
( ∀ 川 (何もなくても、人は何かに縋らなきゃ、生きていけない...)
( ∀ 川 (現実逃避、なんかじゃないのね。これは...自分の形をなんとか保つために、必要な、こと)
213
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:45:04 ID:KZ3vL1s60
( 、 川
( 、 川 (私には、もうこれしかない)
プルルルルルルルル.....
( 、 川
214
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:46:21 ID:KZ3vL1s60
ノパ⊿゚) 「もしもし」
( 、 川 脾都
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) 「噴水の前で待ってる」
( 、 川 ...
( 、 川 ...たすけて
ノパ⊿゚) 「うん。助けるよ、絶対」
215
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:46:52 ID:KZ3vL1s60
美
.
216
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:47:15 ID:KZ3vL1s60
七,了
217
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 23:24:18 ID:VBrvvisw0
乙
218
:
名無しさん
:2021/04/17(土) 22:22:31 ID:PtnXe.cg0
唐突ですが今作はストーリーに直接関わりませんが
从*゚- ゚∀从 ジャスミンと死ぬようですの続編になっています。
宜しければご覧ください。BBHさんまとめありがとうございます :D
https://reiwaboonnovels.fc2.net/blog-entry-34.html
219
:
名無しさん
:2021/04/17(土) 22:30:24 ID:PtnXe.cg0
ジャスミンと死ぬは今作のスピンオフ的なお話です
220
:
名無しさん
:2021/04/19(月) 00:19:01 ID:UbGGOkaA0
乙乙
ペニ、完全に向こう側へ行っちゃったな
221
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:53:15 ID:8lVb0cJU0
投下します
222
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:54:30 ID:8lVb0cJU0
窓単木に対する生理的な恐怖は勿論あった。あの夜のことを思い出すたび、過呼吸に陥るほどに。
しかし、今辺尼がどっぷりと浸かっている絶望に比べれば、それは小さな問題だ。
絶望とは、あらゆる事柄を彼女らが蔑ろにしてきたという確信。それに気付いた人間が彼女の他に居ないという孤独。
絶望は窓単木の目からやって来た。しかし彼女の中にいつでもあったのだ。
そしてそれは手視、捻野、母親、関わってきた全ての人間の顔に変形して彼女の脳内に蘇ってくる。
辺尼にとっては脾都だけが、絶望の世界の外側に居た。彼女ただ一人が、自動化の摂理から逸脱していた。
他の道があったか?そんなことは考えても無意味だった。
彼女がいなければ、とうに死んでいただろうから。
.
223
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:55:01 ID:8lVb0cJU0
夜
廃墟
光の届かぬ深海のよう
独生に用意させた浴槽に浸かる、二人。
辺尼は脾都に頭を預ける。
脾都の腕の中
辺尼はそこだけが、安らぎの場所なのだと思う。世界のどこに行っても恐怖からは逃れられまい、と。
224
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:55:38 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
ノパ⊿゚) ...ねえ、辺尼
( 、 川 ...?
ノハ-⊿-) こんなこと言うのはおかしいんだけど...
ノパ⊿゚) 辺尼は、あたしよりずっと...不幸だよ
チャプチャプ
( 、 川
( 、 川 でも、あなたたちには何もない。未来も、過去も
ノハ ⊿ ) それは、
ノハ ⊿ ) ...そうだけど
ノハ ⊿ ) でも、辺尼はここにすら居ない....
225
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:56:26 ID:8lVb0cJU0
( 、 川 ...ッ
ノパ⊿゚) ...だから、ここに来たんでしょ
ノパ⊿゚) あたしもそうだった。わかるよ
( 、 川 ...そう、ね
ノハ ⊿ ) あたしなんかでごめんよ
( 、 川
( ー 川 ...ふふ
( ∀ 川 皆、不幸だよ
ノパ⊿゚)
( ー 川 全部...全部
( 、 川 目を覆いたくなるくらい....醜くて、哀れ...
226
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:56:54 ID:8lVb0cJU0
( 、 川 ねえ、脾都
ノパ⊿゚)
( 、 川 美は、存在するの?
ノパ⊿゚) あるよ
( 、 川 ...美を持つのは、悪いこと?
ノパ⊿゚) ...そんなことない
ノパ⊿゚) 美は幻想なんかじゃなくて
ノパ⊿゚) あたしたちが一度、無くしたモノなの
( 、 川
ノパ⊿゚) ...じゃあ
( 、 川 コクッ
ノパ⊿゚) ....一緒に行こっか
227
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:58:19 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
ノパ⊿゚) 大丈夫?緊張、してる
( 、 川
( 、 川 ...もう大丈夫
( 、 川 はい
辺尼は脾都から頭を離し、左腕を見せる。
脾都はその腕に布を巻きつける。布が彼女の白い肌に触れた所から、じわりと濡れていく。
彼女は手際良く辺尼の腕を縛ると、インジェクターを取り出し彼女の静脈に刺し込んだ。
ノパ⊿゚) ...いくよ
( 、 川 ...うん
薬が辺尼の中へ押し出されていく。鈍い痛みが、皮膚の下に散る。
瞬間、意識がみるみる遠くなっていくのが分かった。落ちていく感覚を覚えているのに、
対して視点は上昇していき、己の身体が、浴槽が、脾都が、小さくなっていく。
部屋に置かれたドラム缶、廃墟、奏柵の街並...と全てが猛スピードで縮小し、世界が一面のくすんだ色に変わっていく。
その時、漠然と脾都が「入ってきた」のを感じた。
そこで辺尼の意識は途切れ、視界が暗転した。
.
228
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:59:12 ID:8lVb0cJU0
.
229
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:59:50 ID:8lVb0cJU0
ぽた
ぽた
ぽた ぽた
ぽた
ぽた ぽた
ぱら ぱらぱら ぱらぱらぱら
ぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱら ぱらぱらぱらぱら
ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
-
230
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:00:46 ID:8lVb0cJU0
辺尼は闇の中、暖かな雨を浴びていた。
しばし、雨を感じる。
そうしているうちに、この闇が、瞼の裏であることに気付いた。
( 、 *川
静かに瞼を開く。周囲が俄に明るくなっていく。裸足に、砂の感覚がする。
開闢。
一筋の地平が生まれていく。
それは嫋やかに膨らんでいき、世界として彼女の前に顕現する。
辺りは、一面の砂漠だった。
天からは黒い雨が降りしきっていた。
雨は絶えず彼女を濡らす。
一方
それは擦り抜ける様にして、砂に染み渡ることを知らない。
231
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:01:54 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 ここは...
辺尼は周囲を見渡す。
何もない。延々と続く、砂の丘。
風すらない。
彼女は、彼方、丘の向こうに人影を見た。駱駝を駆り砂漠を往く。
隊商だと分かった。
瞬間、彼女の身体を電撃が走った。
.
232
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:02:37 ID:8lVb0cJU0
( Д *川 あ
( Д *川 あーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
電撃は、彼女の身体をどこまでも軽くした。
軽くした、と感じると同時に彼女は、人ならざる速さで駆け出した。
.
233
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:03:19 ID:8lVb0cJU0
( ー ;)なんだ、あれは!
( 0 ;) 女...?女なのか!?
ザワザワ...
彼女の存在に気付いた商人たちは歩みを止めた。
護衛の剣士達は、駱駝から降りると剣を抜いて構えた。
( Д *川 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!
( ー ;)襲ってくるぞ!殺せぇぇぇぇぇ!
彼女が隊商の目の前に辿り着くなり、顔を布で覆った男が斬りかかる。
俊敏である。頭2つ程低い彼女へ向かって、剣が振り下ろされた。
( Д *川 っ!
彼女はそれを片方の掌で受け止める。
刃は彼女の掌で止まる。無傷だ。
234
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:04:23 ID:8lVb0cJU0
( ー ;)....なんだと!?
そのまま彼女は刃を握りへし折ると、男の腹へ蹴りを入れた。
蹴りは男の腑を貫通し、背中から踵が飛び出した。
崩れ落ちる男の肩を踏み台に、もう一人の男へ飛びかかる。
( 0 ;) う、うああああああああっ!
遮るように構えていた刃は、彼女が「通過」するなり砕け散った。
彼女は男をそのまま押し倒し、首を掴んでへし折った。
刹那、叫びとともに、四方から振り下ろされる剣。一つは、彼女の右腕に、一つは、彼女の首に、
ひとつは、彼女の背に。
235
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:05:20 ID:8lVb0cJU0
そのいずれも彼女に傷一つ付けることなく、静止した。
辺尼は一つの剣を奪い取ると、瞬く間もなく、彼らの首を跳ね飛ばした。
駱駝を捨て、散り散りに逃げ出していく商人たち。
逃しはしまい。一人一人、殺していく。
彼女を動かしていたのは、底のない殺意。
そしてそれと同じ程の、悦びだった。
.
236
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:06:26 ID:8lVb0cJU0
(; _ ) あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!
( Д *川 (逃がすか)
辺りは血で一面赤に染まっていた。
彼女に背を向けて逃げていく。最後の一人。
彼女は男の肩を掴み、引き倒す。
馬乗りになり、顔に巻かれた布を剥がした。
237
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:07:16 ID:8lVb0cJU0
バサッ
(;´・_ゝ・`) ...お、お願いだ、助けてくれ!!
( Д *川
( ∀ *川
グシャッ
.
238
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:08:13 ID:8lVb0cJU0
.
239
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:08:50 ID:8lVb0cJU0
(_∀……)
( 。Д ) (_____:::)
( 0 。_)
( ___)
(´。_ゝ__)
( 。ー。)
(__∀ 。)
.
240
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:09:27 ID:8lVb0cJU0
瞬間、辺りに静寂が訪れた。
己に打ち続ける雨の音だけが、世界の音になった。
対象を失った辺尼の殺意と悦びは、急速に消え去っていった。
代わりに湧き上がってきたのは、途方もない、食欲。
241
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:10:40 ID:8lVb0cJU0
( Д *川 ジュル
抗える筈が無かった。
辺尼は、彼女の下で死骸となった手視の首に齧り付く。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
無我夢中で、手視の肉体を貪る。
極度の高揚感で、四肢が痙攣した。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
242
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:11:39 ID:8lVb0cJU0
数時間後。辺尼が我に帰ると、辺りには骸骨のみが転がっていた。
それから。
気が遠くなるほどの間、彼女は砂漠を放浪し、人を襲い、食らった。
砂漠に夜は来なかった。
.
243
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:12:37 ID:8lVb0cJU0
.
244
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:13:45 ID:8lVb0cJU0
数え切れないほどの人間を襲った。
手視、捻野、窓単木、非記、診競、脾都、これまで知り合った全ての人、見覚えのない人、
これから会うであろう人....
朧げにだが父や、母をも手にかけたことを、憶えていた。
それでも殺したいという衝動と、飢えは収まらなかった。
どれ程の時が経っただろうか。
ある時、遂に絶え間なく降り続いていた雨が止んだ。
重く垂れ込めた雲が真っ二つに切れ、離れていく。
光が砂漠に差し込んでいく。
辺尼を、溢れんばかりの陽光が包んでいく。
( 、 *川 !
('、`*川
('、`*川 雨が...
.
245
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:14:40 ID:8lVb0cJU0
重厚な弦楽の響きが、砂漠に木霊した。
空気が震えている。
まだ丘の向こうには雲がかかっているが、
一人の子供が、こちらへ向かってくるのを、見た。
丘陵を下る途中で、子供は日陰と日向の境界線を踏み越えた。
そのまま平地に差し掛かり、辺尼の方へゆっくりと歩いてくる。
その輪郭は朧げに揺れている。
(#゚;;-゚)
246
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:16:12 ID:8lVb0cJU0
スタスタスタスタ
(#゚;;-゚)
('、`*川 あなたは...
(#゚;;-゚) 辺尼、
顔に火傷の跡が残る、少年。
彼は辺尼に飛びつくと、彼女の懐に頭を埋めた。
(# ;;- )
('、`*川 ...泥
意図せず、辺尼の口から彼の名前が漏れた。
彼のことは、何一つ知らなかった。
何をするべきかは、知っていた。
247
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:16:57 ID:8lVb0cJU0
辺尼は左腕を陽光に晒す。彼女の手首がひとりでに裂けていく。
そうして生まれた十字の傷口から、絶えず真っ赤な血が流れ始めた。
泥と呼ばれた少年は、その傷に口をつけ、辺尼の血を飲み干していく。
彼が口を離すと、傷は癒えていた。
.
248
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:17:28 ID:8lVb0cJU0
(#゚;;-゚) ('、`*川
見つめ合う、二人。
辺尼が先にまばたきをした。
次の瞬間には、泥は一艘の小舟になっていた。
('、`*川
249
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:18:13 ID:8lVb0cJU0
...それから、辺尼は小舟を引いて砂漠を歩いた。
世界を照らし続ける正午の太陽は、どれほど時が経とうとも動くことはなかった。
海を探すのだ。
彼女は一度も立ち止まることなく、幾千の丘を越えた。
途中で人に会っても、殺意が湧くことはなかった。
時の感覚が彼女から消え去っていった。
幾千が、幾万に変わった。
幾万が、幾億に変わった。
250
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:19:09 ID:8lVb0cJU0
.
251
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:19:55 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 あっ
('ー`*川 ...海だ
.
252
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:20:53 ID:8lVb0cJU0
一面に広がる、水。
陽光を受け銀色に光り輝く、大海。
彼女の足は水に浸かっていた。
からからに乾き切った小舟が、初めて水に濡れた。
辺尼は小舟に乗り、洋へ漕ぎ出していく。
('、`*川 ...さよなら
砂漠が離れていく。
もう二度とその地を踏むことはあるまい。彼女はそれから、振り向くことはしなかった。
253
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:21:41 ID:8lVb0cJU0
それから数時間、辺尼はあることに気付いた。
太陽が、傾き始めている。
それまでずっと彼女の真上にあった太陽が、水平線の向こうに移動していた。
彼女は、太陽を追うことに決めた。
はじめての夜は、満点の星空に心を打たれた。
漕ぐことを止め、長い間、星を眺めていた。
眠ることはなかった。
朝になると、彼女は再び漕ぎ始めた。
254
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:22:19 ID:8lVb0cJU0
太陽は巡り巡り、辺尼を乗せた小舟は何もない大海原を進み続けた。
はじめの夜から数日経って、彼女は月はどこにあるのかと思った。
結局、月はどこにも見当たらなかった。
しかしここは黒い雨が降り、太陽が沈まなかった世界だ。不思議には思わなかった。
そうして海の上で時間が過ぎていったある日。
辺尼は彼方に島を見つける。
('、`*川 ...!
('、`*川 ...泥、もうすぐだよ
255
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:23:35 ID:8lVb0cJU0
彼女は昼も夜も休まず舟を漕ぎ続けた。
ただの微細な点だった島が、少しずつ大きくなる。
しかし、夜が明ける度、彼女の身体は動かなくなっていった。
石のように全身が固まり、かつての力は失われていった。
彼女は気力を振り絞り、全速力で舟を進めた。
('、`;川 (間に合え...間に合え...!)
256
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:25:01 ID:8lVb0cJU0
それから、数日が経った。
小舟は島に到着した。
舟は朝日を浴びながら、浅瀬で浮き沈みしている。
< ゚ _・゚> おい!
< ゚ _・゚> 舟だ!舟があるぞ!
[ Д`] 何だと!?まさか伝説は本当だったのか....!?
< ゚ _・゚> 俄には信じ難いが、そのようだ...!
[ Д`]待て、誰か乗っているぞ!
< ゚ _・゚>
< ゚ _・゚> ...石像、か?
( 、 *川
257
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:26:07 ID:8lVb0cJU0
[ Д`]...それは、
[; Д`]小舟に乗った「動かない女」....!何もかも、言い伝え通りだ...
<; ゚ _・゚> とんでもない発見をしてしまったみたいだな...
< ゚ _・゚> こうしてはいられない、他の者を呼ぼう!
石のように硬くなった辺尼の肉体は、島の民によって神殿に運ばれた。
小舟は、人々の言い伝えに従い森の中に安置された。
神殿は最も高い丘の頂にあった。30の石柱に支えられ、広場を見下ろしている。
日没。赤く染まった空は、青く黒ずんでいく。
千の人が、そこにいた。二千の目が、辺尼を見上げていた。
司祭が両手を高く振り上げ、祝詞を叫ぶ。
258
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:27:35 ID:8lVb0cJU0
(゜W゜) <€0 {}$ >< : )Q!!!!!!!
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
「<€0 {}$ >< : )Q!!!!!!!!!!!!」
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
.
259
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:28:24 ID:8lVb0cJU0
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
<; ゚ _・゚> あれを見ろ!あれは...なんだ!? オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ[ Д゜]あれは....月だッ!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
[ Д゜]伝説の通り、月が現れたんだッ!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
/ ̄ ̄\
/ ⊂二二⊃
| |⊂二⊃
⊂二⊃ /
\__/
.
260
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:29:01 ID:8lVb0cJU0
その月は、真っ白な、満月だった。
神殿の背後から月は昇り、姿を民衆の前に現した。
月は天蓋の中心を通って、夜の世界を一周し、水平線の向こうへと消えた。
その日から、月が現れるようになった。
その日から、辺尼は神殿に祀られる13柱の神に加えられた。
そして、彼女こそが最後の神だった。
月と太陽とが、凄まじいスピードで世界を回転し始めた。
261
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:30:14 ID:8lVb0cJU0
ウッ... オジイチャン.... ウゥ... ニイサン....
ウゥ... < - _・-> ウゥ.... ウッ... [ Д-] サヨナラ....
アナタ.... トウサン..... アナタ.... オジサン....
辺尼を見つけた青年たちは、彼女が瞬く間に年老い、消えていった。
262
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:31:15 ID:8lVb0cJU0
人は死に、産まれ、時には争い、笑い、怒り、泣き、絶望し.....
同じことを繰り返し続けるように辺尼には感じられた。
星は流線型を描くかの如きスピードで空を駆け回った。
全てが加速し、夜と昼がストロボの発光のように繰り返され、その白黒の瞬きが極限に至ると、
全てが透明になった。
それから、透明な世界が長い間続いた。
263
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:32:59 ID:8lVb0cJU0
そして、とある日の夜、時は唐突に進むことを止めた。
人間は最早いなくなった。月明かりだけが、神殿を照らしていた。
天井は剥がれ落ち、床は海水に満たされていた。
島は、長い歳月を経るうちに、神殿を除いて海の底へ消えてしまった。
( 、 *川
辺尼は、遥か昔、この島にやってきたことを思い出した。
泥は、どこにいるのだろう。
あの小舟は、どこに行ってしまったのだろう。
闇に飲み込まれた彼方から、火の灯りが近付いてくるのが見えた。
それは、小舟だった。
先端に洋燈を灯した小舟が、ひとりでにこちらに進んでくる。
('、`*川
264
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:33:45 ID:8lVb0cJU0
小舟は辺尼の足元にやってくると、彼女の脚を洋燈で小突いた。
彼女には心なしか、嬉しそうに思えた。
('ー`*川
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
265
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:34:39 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
チャプチャプ
ノハ ⊿ ) ....。
( ;、; 川 なんだ、これ...
ノハ ⊿ ) 本当に、すごい
ノハ ⊿ ) 本当に、本当に...すごい
( ;、; 川 まって....
( ;、; 川 こんな気持ち、初めてで
ノハ ⊿ )
ギュッ
( ;、; 川 あ....
.
266
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:35:40 ID:8lVb0cJU0
.
267
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:36:23 ID:8lVb0cJU0
ミセ*゚ー゚)リ 大丈夫?風邪引かないでね
ノパ⊿゚) ありがと
ミセ*゚ー゚)リ はい。辺尼もこれ
('、`*川 ...ありがとう
ノパ⊿゚) どうだった?行ってみて
('、`*川
('、`*川 言葉になんか、できる自信ないけど...
('、`*川 ....私だと思った
ノパ⊿゚)
268
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:37:33 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 凄い内容だったけど...全部、私だよ
('、`*川 認める
ノパ⊿゚) ...よかった!
ノパ⊿゚) なんかね...もしこれが何でもなかったらどうしよって...思ってた
('、`*川 ...今の感じはね
('、`*川 ...嘘みたいに、世界が軽いの
('、`*川 脾都、診競...ありがとう
ノパ⊿゚)ミセ*゚ー゚)リ ポー
ノハ* ⊿ ) ...うん。まあでも、褒められるようなことじゃないよ
ノパ⊿゚) ここにいる皆、もう犯罪者な訳だし。さ
('、`*川
('、`*川 ...そうね
269
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:37:59 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 でもこれで満足
('、`*川 二度目はない、かな
ノパ⊿゚) ...それもありだね
( ー *川 はは、取締官失格だな...
('、`*川 退職ね、これは...
ミセ*゚ー゚)リ もう、会えなくなっちゃうかな?
('、`*川 ...どうかしら
ノパ⊿゚) 五日後、あたしたちは奏柵を出るよ
('、`*川 ...そう
270
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:38:37 ID:8lVb0cJU0
ノパ⊿゚) あ、これ言ったらヤバかったかな...
('、`*川 安心して。誰にも言わないから
('、`*川 あ
('、`*川 一つ質問、いい?
ノパ⊿゚) ?
('、`*川 あなたたちは、どうして何度も行くの
ノパ⊿゚)
271
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:39:01 ID:8lVb0cJU0
ミセ*゚ー゚)リ ...私は、自分の美が壊れるのが怖くて
ミセ ー )リ 何度も、何度も確認しないと、自分が保てないと思ったから
('、`*川 ...そう
('、`*川 美も、永遠じゃないのね
ミセ ー )リ ううん
ミセ ー )リ 美はきっと、永遠なの
ミセ*゚ー゚)リ 私が、弱いだけ
('、`*川
272
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:39:40 ID:8lVb0cJU0
ミセ*゚ー゚)リ ごめんね。変な話して
('、`*川 ...いいよ。やっと色々わかった
('、`*川 脾都
('、`*川 今日、あなたと行って分かったことが一つある
ノパ⊿゚) ?
('、`*川 ...助けを求めてるのは、あなたも同じね
ノハ ⊿ )
('、`*川
('、`*川 ...多分、一番空っぽなのはあなた
ミセ*゚ー゚)リ っ...
ノハ ⊿ )
('、`*川 ...酷いこと言ったと、思う。傷付けたら、ごめんなさい
ノハ ⊿ ) ...いや
ノパ⊿゚)いいよ。ありがとう
273
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:40:20 ID:8lVb0cJU0
ノパ⊿゚) ...正直、あなたに声かけたのも
ノパ⊿゚) 助けたい、とか以前に辺尼の美に興味あったからだと思う
ノパ⊿゚) あたしは空っぽかもしれない。何も覚えてないんだ
ミセ*゚ー゚)リ ...。
('、`*川
('、`;川 あ〜...やっぱごめんね。前言撤回する
('、`*川 脾都は凄いよ。私を救ってくれた
('、`*川 私にも恩返しさせて欲しい
('ー`*川 だからまた、会いましょう
ノパ⊿゚) そうだね
ミセ*゚ー゚)リ いつか、ね
ミセ*゚ー゚)リ 今日はありがとう。私は見てただけだけど、すごい励みになったよ
('、`*川 そう
ミセ*゚ー゚)リ 私、頑張るよ。いつか...美に負けないようになる
274
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:40:47 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 ...そんな凄いの
ノパ⊿゚) うん。みっちゃんは凄いよ
ノパ⊿゚) あたしたち全員を救ってくれたんだ
('、`*川 ...へぇ
ミセ*゚ー゚)リ ...うん
ノパ⊿゚) じゃあね。ここに居ても危ないだろうし、また電話してよ
('、`*川 ええ、また
ノパ⊿゚)ノシ ミセ*゚ー゚)リ ノシ
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