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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです

1名無しさん:2020/10/14(水) 17:28:46 ID:YvZFQxxU0

         タクシー
      (゚」゚)ノ
    ノ|ミ|
     」L
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        _/ ̄ ̄\_
       └-○--○-┘=3

2名無しさん:2020/10/14(水) 17:29:36 ID:YvZFQxxU0

≪1≫


 大なり小なり事件はあるが、とにかく世界は平和である。
 どこかで何かは起こっているけど、私の周りはすごく平和だ。

 そんな平和でありがちな日々の中、私は今日も学校に向かっている。
 市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――


.

3名無しさん:2020/10/14(水) 17:31:08 ID:YvZFQxxU0


ξ;゚⊿゚)ξ「ぢごぐぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」 ダダダダダ!

 しかし時刻はマジでヤバイ。午前8時を大きく過ぎている。
 ぶっちゃけ遅刻寸前なので独白なんかしてる場合ではなかった。

 私はとにかく爆走していた。全力で走るためカバンも家に置いてきた。
 身一つで疾走してる自分に若干の疑問もなくはないが、ともかく今は遅刻しない事が肝心なのだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「セーフ!」ガラガラッ

 かくして私は遅刻を免れ、教室に辿り着いた。

( ´∀`)「いいえ遅刻です」

ξ゚⊿゚)ξ「はい」

 なるほどアウトらしい。
 私は教室に着くなり速やかに着席し、そして手を上げ自白した。

ξ゚⊿゚)ξ「先生、教科書忘れました」

( ´∀`)「うーん見るからに手ぶらだったもんね。
      ツンさん、せめて教科書は持ってきてほしいモナ」

ξ゚⊿゚)ξ「はい先生」

 私は涼しげに返事をしてから隣の席に一瞥を送った。
 教科書ないから見せて、という意味のアイコンタクトである。

.

4名無しさん:2020/10/14(水) 17:34:19 ID:YvZFQxxU0

ξ゚⊿゚)ξ チラッ

('A`)

ξ゚⊿゚)ξ

(;'A`)「……なんか言えよバカ」

 バカって言う方がバカ理論で言うところのバカである隣席の生徒、ドクオ。
 ドクオは机をこちらに寄せ、ようやく素直に教科書を見せてくれた。
 バカなりに自分の仕事は分かっているようだった。

ξ゚⊿゚)ξ「なんも言わないわよ。授業中に喋っちゃダメでしょ」

(;'A`)「……お前、形だけは優等生ぶるよな」

ξ゚⊿゚)ξ「失礼ね、私はいつでも優等生なのだわ。ちょっと愛嬌強めなだけで」

('A`)「愛嬌で済まねぇレベルの問題児だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな事より授業に集中しなさい。
       今どこやってるのよ、教えなさいよ」

('A`)「いやもう終わりだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ」 キーンコーンカーンコーン

 勉学に向けて意気込んだ矢先、授業終了のチャイムが鳴り響く。
 おかしい、いくらなんでも終わるのが早すぎる。これは異常事態に違いなかった。

ξ;゚⊿゚)ξ「ありえない、授業がもう終わって――!?」

('A`)「お前が入ってきた時点で9割終わってたからなぁ」

( ´∀`)「はいじゃあここまでモナ。解散!」

 解散の合図と同時にクラスの雰囲気が軽くなる。
 私も早速席を立った。次の授業のためにも教科書が必要である。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえドクオ、次の授業ってなに?」

('A`)「は? もう昼飯だよ」

ξ゚⊿゚)ξ

 なるほどね、と心で呟く。
 もう午前8時もクソもなかったな。
 帰ったら時計の針を直しておこう。
.

5名無しさん:2020/10/14(水) 17:39:17 ID:YvZFQxxU0


〜〜〜〜〜


 昼の間に教科書を持ってこいと言われたので、私は一旦家に帰った。
 ついでに自宅で昼食を済ませた。おいしかった。

('A`)

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオはずっと1人ね」

('A`)「無駄に動かないだけだ」

 かくして学校に戻った私は席に着き、1人暇そうにしているドクオに声をかけた。
 これは単なる事実なのだが、ドクオには友達が居ない。

('A`)「それより、ちゃんと教科書持ってきたんだろうな」

ξ゚⊿゚)ξ「当然じゃない。私を誰だと心得てるの?」

(;'A`)「……分かってるよ。お嬢様だろ、お嬢様」

ξ-⊿-)ξ「そうなのだわ。分かってるじゃない」髪ファサ…

 やれやれこれだからドクオはドクオなのだ。
 私は自慢の金髪ドリルを払い上げ、自信たっぷりに威厳をアピって見せた。

 かくいう私――『魔王城ツン』にはとんでもねえ秘密があった。
 ぶっちゃけ私は魔王の娘である。魔界出身のガチ魔物、マジモンのお嬢様なのだ。
 平々凡々とした日常パートなんて今だけだ。蓋を開ければ色々とすごいのである。

ξ゚⊿゚)ξ「フフフ……みんな私の正体も知らず……」

('A`)「人格と素行の問題だと思うよ」

.

6名無しさん:2020/10/14(水) 17:41:00 ID:P3yxYjEo0
復活マジ?

7名無しさん:2020/10/14(水) 17:41:54 ID:YvZFQxxU0

( 'A`)「……さておき、今朝テストの返却があったんだが」 ペラッ

ξ;゚⊿゚)ξ「ゔッ!!」

 テストアレルギーなので即死級の阿鼻が爆発してしまった。
 ドクオは自分の解答用紙を机に出し、お前も見せろと言わんばかりに細い目を向けてきた。
 やめてほしい、テストアレルギーなので。

('A`)「隠しても無駄だからな」

ξ;゚⊿゚)ξ「……いや、コレが意外と結果よかったりするのよ」

('A`)「いいから出せ」

ξ;゚⊿゚)ξ「うち意外とやれる子やけん、そげん悪かことには……」ガサゴソ

 私は机の中を探り、そこにあった嫌な手応えを取り出した。

ξ゚⊿゚)ξ
 つ[ ]と

 長方形の紙切れ、それはまさしく解答用紙。
 その名前欄の隣には、私の体重くらいの点数がしっかりと書き出されていた。
 ちなみに私の体重は42キロである。ちょっと痩せすぎかな?(笑)

('A`)「27点ですね」

ξ゚⊿゚)ξ「はい」

('A`)

('A`)「27点って、お前……」

 ドクオはただ静かに目を伏せ、眉間を抑えて肩を震わせた。

('A`)「バカじゃん……」

ξ;゚⊿゚)ξ「……復習、頑張るし……」

('A`)「人間界の勉強、流石にもう少しマシになろうぜ……」

ξ;´⊿`)ξ「……はい……」

.

8名無しさん:2020/10/14(水) 17:47:51 ID:YvZFQxxU0

(;'A`)「……それで、この有り様でもまだ『アレ』やるんだよな」

ξ;´⊿`)ξ「へえ、帰ったら物理の授業がありんす」

 ちなみに物理の授業とは 『物理戦闘の特訓をする』 という意味の隠語である。
 帰宅後の特訓は正直めちゃくちゃつらい。やりたくない。
 しかし私は魔王城ツン、逃亡なんて許されないのである。

('A`)

('A`)「もう諦めてスケジュール考え直せよ。身の程に合わせようぜ」

Σξ;゚⊿゚)ξ「そこまで言う!?」

 とはいえ、ドクオの言い分もまた正論だった。

 今の私は当然の期待に応えるのが精一杯で、魔王の重責を負えるほどの実力は無い。
 魔王だなんだは形式だけ。肩書きだけの誇張表現、生まれに基づくただの設定。
 今の私を言い表すなら、もういっそ『出来損ない』とか『期待外れ』で済ませた方が正確なのだ。

 ……そんな私に出来ることは、今あるものを裏切らないこと。
 ただそれだけを徹底し、私は今を生きているのだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「――ええい黙らっしゃい! な〜にが身の程じゃい!」

('A`)

ξ;゚⊿゚)ξ「私は魔王の娘なのよ! 意地のひとつもあるのだわ!」

('A`)「いや、だからそれが空回ってるんだよって」

ξ;゚⊿゚)ξ「なによ! 逃げて放り出すよりマシなのだわ!」

(;'A`)「計画を練り直そうって話だろ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ぐぬ……この屁理屈ボケカスモンスターちぢめてボケカスが……」

( ´∀`)「はーい、もう授業始まるモナー」 ガラガラッ

 そうこうしてる間に予鈴が鳴り響く。
 つらくきびしい地理の授業が幕を開けようとしていた。

.

9名無しさん:2020/10/14(水) 17:49:44 ID:YvZFQxxU0


 〜放課後〜


 授業が終わり、部活が終わり、学校が終わり。
 1日を終えた学生達も思い思いに動き出し、校舎にはささやかな静寂が広がっていく。

 そんなよくある学校生活、終わりの風景。
 私は今日の名残りを眺めるように教室に居残り、ドクオが部活から戻るのを待っていた。


ξ゚⊿゚)ξ「それでドクオがね、急に爆発して死ぬの」

 「そうなんだ、すごいね!」

ξ゚⊿゚)ξ「死ぬのよ」

 もちろん一人ではない。ちゃんと話し相手も居る。
 話し相手はクラスメイトのまゆちゃん(モブ生徒)だ。AAは無い。
 今日も随分と話し込んだ気がする。時計を見ても、そろそろお開きのようだった。

ξ゚⊿゚)ξ「……さて、今日もウソばっかり話してしまったわね」

 「うん、何一つとして真実を語らなかったね! 逆に凄いよ!」

ξ゚ー゚)ξ「ふふ、何があっても私が魔王だなんて信じちゃダメよ。
      女子高生でも流石にキツい」

 私とまゆちゃんはマジでどうでもいい事で時間を潰せるタイプで、心底気が合う間柄だった。
 下敷き卓球、鳥類観察、ひたすらウソを言い合うなど、そのクソどうでもよさは校内随一を自負している。
 そんな私達の様子は大体まんがタイムきららなので各位そのように想像してほしい。

('A`)「ヴァー」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、ドクオが来たのだわ」

 かくしているとドクオが戻ってきた。
 彼は教室の入り口に突っ立ったまま、「帰ろうず」の意である呻き声を上げていた。

.

10名無しさん:2020/10/14(水) 17:54:52 ID:YvZFQxxU0

ξ゚⊿゚)ξ「それじゃあまゆちゃん、続きはまた今度」

 「うん! またね、魔王城さん!」

('A`) ヴァー

 支度を済ませて教室を出て、まゆちゃんに最後の挨拶をしてから帰路に着く。
 私の日常はこれでおしまい。少なくとも、普通の人間としての日常は完全に終わった。

 ここから先はもう一つの日常。
 一介の魔物として、魔王の娘として過ごす夜の時間である。

ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオ、せめてまゆちゃん相手には普通に話しなさいよ」テクテク

('A`)「馴れ合いは好きじゃないから……」トボトボ

ξ゚⊿゚)ξ「誤解されてもしょうがない……」

通りすがりのブルーハーツ「それでも僕は君のこと〜〜」

 人と魔物の二重生活を切り替える通学路は、私にとって大きく意味のあるものだった。
 朝は寝坊しちゃうのであんまり意味がない。

ξ゚⊿゚)ξ「とにかく、まゆちゃんに失礼な態度は取らないでよね。
      めちゃくちゃ貴重な友達なんだから……」

('A`)「分かってるよ。だから関わらないようにしてるんだろ……」

 私が人間として振る舞える時間は極僅かだ。
 魔物の寿命を鑑みれば、それこそ『今』は一瞬の出来事として記録されてしまうだろう。

 そんなエモい感情を区切り、胸にしまうための帰り道。
 せいぜい20分程度の道行きを、私はゆっくりと歩いていく。

('A`)「コンビニ寄るけど」

ξ゚⊿゚)ξ「私も」

 肉まん買って帰った。

.

11名無しさん:2020/10/14(水) 17:57:53 ID:YvZFQxxU0


 〜ツンちゃんの家〜


ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」

('A`)「おじゃまします」


ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい、遅かったですね」トテトテ

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。友達と話し込んじゃって」

ミセ*゚ー゚)リ「また?」

ξ゚⊿゚)ξ「……学校生活には関知しない決まりでしょ」

 家に帰ると、同居人&お世話係の餓狼峰ミセリさんが玄関まで出てきてくれた。
 奥のリビングからは美味しそうな夕飯の匂いが漂ってくる。
 ミセリさんのエプロン姿も相まってか、この時ばかりは日常的な感慨を覚えてしまう。

ミセ*゚ー゚)リ「普通に心配してるんですよ。連絡もしてくれないし」

ξ゚⊿゚)ξ「既読なら付けてるじゃない」

ミセ;*゚ー゚)リ「返信が欲しいって話ですよ!」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさいのだわ。そんなんだから独身なのだわ」

ミセ*゚ー゚)リ「いささか高潔なだけです」

 そもそも魔物には独身もクソも無いのだが、確かにそれはその通りだ。
 私も高潔なのでよく分かる。高潔なのは大変である。

ξ゚⊿゚)ξ(高潔なのは、高町なのはみたいで良いわね……)

('A`)「……じゃあ俺はこれで」

ミセ*゚ー゚)リ「あれ、今日も夕飯いいの?」

('A`)「適当に済ませるんで」

 私の友達、という体での護衛を終えたドクオは気だるげに踵を返す。
 今日も何事もなく終われたと、彼は長い溜息を吐きながら家を出ていった。

ミセ*゚ー゚)リ「そっけない。食べてけばいいのに……」

ξ゚⊿゚)ξ「シリアス遠慮マン」
.

12名無しさん:2020/10/14(水) 18:02:37 ID:YvZFQxxU0


ミセ*゚ー゚)リ「……さて。では『お嬢様』、この後はどうされますか?」

 エプロンを脱ぎながら、ミセリさんはやや固い口調で言った。
 ここから先はもう殴り合いの時間なので、私の心も少しだけ強張ってしまう。

ミセ*゚ー゚)リ「お風呂にするか、ご飯にするか、それとも」

ξ;゚⊿゚)ξ「……特訓が先よ。でなきゃ風呂もご飯も無駄になるじゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「無駄に『してる』だけですよ。こけたり吐いたりしなければいいんです」

ξ;-⊿-)ξ「……分かってるのだわ。用意するから先に行ってて」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、ごゆるりと」

 ――私はミセリさんを横切って家に上がり、努めて遅い足取りで2階の自室に入っていった。
 自室に荷物を置き、制服からジャージに着替え、軽いストレッチまでを終わらせる。

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

 時刻は午後7時を回ったところ。
 私はここから8時間、特訓用の異空間でひたすら特訓をし続ける。
 しかもその異空間は精神と時の部屋なので、特訓後でも現実では1時間しか経過していない。

 これが私にとっての『夜』。
 毎日欠かさず行われる、日常に対するもうひとつの日常だった。

 地上ボケ防止とはいえ、人間社会に合わせた体で30時間以上も活動するのは結構しんどい。
 ましてやそこに物理特訓(スパルタ)が入ってくれば尚更で、つまりつらい。

ξ;゚⊿゚)ξ

 しかしそれでも続けるしかない。
 なぜなら私は魔王城ツン。やらねば名前がすたるのだ。

ξ;-⊿-)ξ「……行くか」

 色々考え込んだ後、大きく一息ついて胸をなでおろす。
 私は渋々動き出し、自分の部屋を後にした。


.

13名無しさん:2020/10/14(水) 18:04:01 ID:YvZFQxxU0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ――特訓用のスペースは、魔術的に構築された異空間内に用意されている。
 その広さは東京ドームくらいで、岩場や崖の多い立体的な地形をしていた。

 草木の類を一切排除した人工的な荒野。
 私とミセリさんはそこに立ち、特訓開始に向けたあれこれを云々していた。

ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様、今日の調子は?」

 ジャージ姿のミセリさんが伸び伸びとストレッチをしながら問いかけてくる。
 ここで「絶好調!^p^」なんて答えると死んでしまうので、私はわざとらしく顔色を悪くして答えた。

ξ;´⊿`)ξ「もーだめ、疲れすぎてて動きたくない……」

ミセ*゚ー゚)リ「であれば肉体の限界を超えるチャンスですね! 頑張りましょう!」

ξ゚⊿゚)ξ「違うそうじゃない」

 ミセリさんは大体いつもこんな感じだった。
 多分あんまり人の話を聞いてないんだと思う。

.

14名無しさん:2020/10/14(水) 18:08:31 ID:YvZFQxxU0

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあとりあえず魔力生成から始めましょうか。
      お嬢様は出力を抑えつつ、扱える分だけ生成してくださいね」

ξ゚⊿゚)ξ「ウス」

 さて、いよいよ特訓開始である。

 魔力=やる気みたいなものなので、ここで魔力を作り過ぎると色々と危ない。
 私は魔力生成だけは普通に出来るのだが、その魔力をコントロールするのがとにかく下手だった。

 だから魔力生成は程々で済ませ、コントロールできる範囲で次の段階に移行する。
 生成された魔力は固有の色を獲得し、所謂オーラ的なものとして現れるのが特徴だ。

ξ-⊿-)ξ「……ん、できた」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。今日はそのまま、もう少し」

 時間をかけてゆっくりと練り上げた魔力が、少しずつ真紅に色付いて像を結ぶ。
 制御限界もあるので大した変化は見られないが、然るべきアレが良い感じになっている。
 傍から見ると界王拳の趣もあると思う。魔力に集中すると語彙力が無くなって困る。

ミセ*゚ー゚)リ「……にしても普通ですね」

ξ;-⊿-)ξ「……やる気なくなるから言わないでほしいのだわ」

 魔力の感覚を呼吸に重ね、自然体へと推移させる。
 ここまでやって、これでようやく及第点だ。魔力の扱いは本当に大変である。

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ私も用意しますね」 スッ

 私の所作を見届けると、程なくミセリさんも魔力を発揮。
 同時にハンターハンター(旧アニメ)みたいな効果音が空に唸り、僅かに空気が震えだした。

ξ;゚⊿゚)ξ !

 ――その鳴動と共に現れ、ミセリさんの身体を包むコバルトグリーンの魔力。
 前述の例えに合わせるならば、その趣は完全にブロリーであった。

ミセ*゚ー゚)リ「……はい、こちらも済みました」

ξ;゚⊿゚)ξ「……ウス」

 魔力の基本は生成、制御、成形の3段階。
 そして、ミセリさんはその全てを高いレベルで習得していた。
 魔力の質も総量も、私が生成したものとは比べ物にならないほどだ。

.

15名無しさん:2020/10/14(水) 18:14:04 ID:YvZFQxxU0

ミセ*゚ー゚)リ「少しずつではありますが、お嬢様にも上達は見られます。
      とにかく基本は大切に。毎回言ってますが、疎かにしないよう」

ξ;゚⊿゚)ξ「わ、分かってるのだわ」

ミセ*゚ー゚)リ「それはなにより。では次、成形の練習を始めましょうか」

ξ;゚⊿゚)ξ「ゔッ! ……はい」

 魔力を生成し、コントロールし、意図したものに成形する基本の3段階。
 この内、私がまともに出来るのは魔力生成だけである。
 出力を抑えまくればコントロールもギリ出来るのだが、問題は最後の『魔力成形』――。

ξ;゚⊿゚)ξ「そいやぁぁぁぁぁ! 魔力成形!」
 つ魔と

ミセ*゚ー゚)リ

ξ;゚⊿゚)ξ「あああああ魔力が逆流する!! うおおお魔力成形!!」
 つ魔と

ミセ*゚ー゚)リ(このアホっぽい掛け声、直すべきかな……)

 魔力は生成だけでも身体機能を大きく向上させてくれる。
 が、それだけでは魔力の全性質を引き出せているとはとても言えない。

 生成段階ではオーラのように無形の魔力。
 それを身体強化や魔術などに発展させる最後の工程こそが魔力成形。
 ただでさえ魔力コントロールがヘタクソな私には、これがもうマジで無理で死にたい。

 しかし、立派な魔物を目指すなら魔力成形は必修科目。
 だからこそ、私も簡単なものでいいから成功させてみたいのだが、

.   _ ∩
  レヘヽ| | テテーン
    (・x・)
   c( uu}

ξ;´⊿`)ξ「ウサちゃんになった……」

ミセ*゚ー゚)リ「どうして……」

 私の魔力はウサちゃんにしかならない。
 もうヘタクソとかいう次元ですらなかった。

.

16名無しさん:2020/10/14(水) 18:16:52 ID:YvZFQxxU0

ミセ;*´ー`)リ「……なんというか、これはこれで面白いですよ」

ξ;゚⊿゚)ξ「面目ない……」

ミセ;*゚ー゚)リ「構いません。今に始まった事じゃないですし、魔王化まで先は長いですから。
       最初はもっと簡単なイメージからいきましょう。小物とか布とか……」

ξ;´⊿`)ξ「ウサちゃんイメージしてる訳じゃないのに……」

ミセ;*゚ー゚)リ「おかしいですね、あれが原点だったりするんでしょうか……」

 前述のとおり、私はもう魔力成形というヤツが苦手で苦手で最悪だった。
 それ抜きにしても私は弱いので、一旦今は基本を固める感じて特訓メニューが組まれている。

 つまりは物理の時間、物理戦闘の特訓となる。
 かくして身体強化全開のパワフル脳筋特訓が幕を開け――

ミセ*゚ー゚)リ

ミセ*゚ー゚)リ「……これは、本当にやるしかなさそうですね」ボソッ

ξ゚⊿゚)ξ ?

 ……と、思ったのだが。
 ミセリさんは口元に手を当てたまま踵を返し、独りごちつつ考え事を始めてしまった。
 それから少しして考えがまとまったのか、ミセリさんはまたこちらを向き、普段の調子に戻った。

ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様、すみませんがちょっと外に出てきますね。
      いくつか連絡を済ませておきたいので。ちょっと自主練してて下さい」

ξ*゚⊿゚)ξ「えっ、サボってもいいの!?」

ミセ*゚ー゚)リ「自主練と言いました。具体的にメニュー出しましょうか?」

ξ゚⊿゚)ξ「岩盤ベンチプレスは勘弁してください」

ミセ*゚ー゚)リ「よろしい。でもまぁすぐ戻ってくるので気にしないで下さい。
      むしろ不意打ちを仕掛けますから気を抜いちゃダメですよ?」

Σξ;゚⊿゚)ξ「不意打ちはもっと勘弁してください!!」

 このあと不意打ちされてボコボコにされ、いつもの物理特訓が8時間続いた。
 なお特訓風景はほぼ暴力シーンで構成されており、作品健全化のため全カットされるのだった。

.

17名無しさん:2020/10/14(水) 18:20:54 ID:YvZFQxxU0

≪2≫


 ――……あくる日の学校、昼食の時間。


ξ゚⊿゚)ξ「しんどい」

('A`)「……そりゃ分かるけど」

 昨日の特訓、一昨日の特訓、更にその前の特訓。
 魔王になるべく続く日々は、それはもう凄まじい筋肉痛を私にもたらしていた。

 現在、私の全身は筋肉痛でバッキバキ。
 矯正ギプスを付けてるレベルで動きが拙く、昼食を食べることすら正直つらい。

 「はい魔王城さん、あーん」

ξ゚⊿゚)ξ「すまぬ……すまぬ……」 パクパクモグモグ

 なのでクラスメイトのまゆちゃんにあーん(はぁと)で食べさせてもらっている。
 とても楽なのでずっとこれがいい。
 かくして私はまゆちゃんのヒモ女になった。ここ薄い本が出るところです。

('A`)「とりあえず今日と明日は休みなんだろ? それで十分休んどけよ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……まぁ連休は嬉しいんだけど、それはそれよ」

 ――そうなのである、突然だが休日なのである。
 近頃の私を見かねたのか、あのミセリさんが珍しく連休をくれたのである。
 まったく、特訓なしで過ごせる日なんていつ以来だろうか。

ξ;-⊿-)ξ「……たった2日じゃ今ある疲労を取れるかも怪しいのだわ。
        魔力はともかく、体力と気力の回復には1週間は欲しいものね」

(;'A`)「そこは諦めろよ。ミセリさん脳筋で人の気持ち分かんねえんだから」

ξ゚⊿゚)ξ(けっこう酷いこと言うなコイツ)

 ちなみにいつものミセリさんは

【 ミセ*゚ー゚)リ「今日はご帰宅が早かった事ですし、もう8時間いきましょう!」 】

【 ミセ*゚-゚)リ「たまには数日ブッ通しで鍛えるか……(気分)」 】

 といった調子なので、連休なんてものはマジで発生しない。
 ゆえに今回の休暇は極めて貴重なものなのである。大事にしていきたい。

.


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