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明日へ繋ぐ想いのようです

1 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:34:27 ID:29OTBHmg0




神曰く、「双子の鍵が生まれた」。

やがて滅びゆくこの世界の遥か未来を開く鍵を守り通すこと。

それがお主らの使命だ。



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2 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:35:16 ID:29OTBHmg0





     明日へ繋ぐ想いのようです



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3 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:35:56 ID:29OTBHmg0




遥か遠く後方に火の手が上がっている。
夜の帳の降りた濃紺の空は本来の色合いを失い、不吉な赤に染められていた。

(;ФωФ)「くっ……故郷の方角か……」

从;゚∀从「ああ……だが今は後ろを向いてる場合じゃないぜ」

(;ФωФ)「前も塞がれているか」

森の中、道なき道を強引に進む三台の馬車の行く手を塞ぐのは魔物の軍勢。

その中で先頭に立つ、おそらく指揮官であろう蜥蜴の魔物が右手に禍々しい大剣を掲げる。
それと同時、無数の炎の球が軍勢から一斉に発射された。

ζ(゚ー゚;ζ「大いなる大地よ、我らを守りたまえ!」

(;‘_L’)「水よ、襲い来る炎を飲み込め!」

二人の声が重なる。

一つは大地の魔法。
デレの声に反応して地面が瞬時に盛り上がる。
そして、火球から馬車を守る土の壁となった。

一つは水の魔法。
土の盾でも防げなかった炎を飲み込み、水蒸気へと変えてしまう。

4 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:36:31 ID:29OTBHmg0

水蒸気の目眩ましに乗じて後方の馬車から数人が勢いよく飛び降りる。

ノパ⊿゚)「よっし、ここはあたしらの出番だな!!」

(;-_-)「うぅ……これを全部僕らで止めるのか……」

ノパ⊿゚)「なーに弱気になってんだ! ヒッキー、行くぞ!!」

ヒートが赤い髪を振り乱して真っ先に駆け出した。

ζ(゚ー゚*ζ「大地よ、道となり、かの者の跳躍の助けとなれ」

駆け出したといっても短距離だ、しかしヒートは魔法の力を借りて人の力では及ばない高さまで跳躍した。
対する魔物の軍勢は一人空に飛び上がった無謀な人間に火球を放つ。
ヒートはそれを全てかわし、あるいは武器で振り払って進んだ。

(・∀ ・)「あはは! 敵は上だけじゃないんだぞ!!」

地上を走り抜ける小柄な影。
武器に纏うのは火球を超える超高温の青き炎。

(-_-)「炎よ、邪悪なるものを焼き尽くせ」

ヒッキーの言葉に反応してまたんきの纏う炎が大きく燃え上がる。

(‘_L’)「水よ、戦士に力を!」

フィレンクトの放つ水がヒートを包み込む。

5 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:37:14 ID:29OTBHmg0
次の瞬間、魔物の軍勢の指揮官は姿を消していた。
正確には、またんきの炎によって黒い炭となって地面に崩れ落ちたのだ。

ヒートは重力に従い地面に降り立つ、と同時。
纏った水を刃に変えて周囲の魔物たちに放つ。
それだけで数十の魔物が姿を消していた。

ノパ⊿゚)「数、あんまり減ってないな」

(・∀ ・)「多いもんなー」

(-_-)「それでも、ここは僕らがどうにかしないと……」

騒ぎに乗じて、既に二台の馬車は先に進んでいる。
  _
( ゚∀゚)「文句言ってもどうしようもねぇぞ。
     俺らの役目は未来を開くことだって、アラマキの爺さんもうるさいくらいに言ってたろ」

|゚ノ ^∀^)「村でだってたくさんの人達が魔物と戦っているわ。
       ここで弱音を吐いたら、その人達の気持ちも無駄にしてしまう」

从'ー'从「そうだね。……木々よ、大いなる盾となれ!」

武器を振り回してきた魔物の攻撃を伸びた枝が防ぐ。

从'ー'从「おしゃべりしてる余裕はないようだね……」

6 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:37:46 ID:29OTBHmg0

ワタナベは先端に緑色の宝石のついた杖を握りなおし、レモナに背を預けた。

(‘_L’)「私達ならできるはずです。早く片付けて先行部隊に追いつきましょう」

|゚ノ ^∀^)「ええ、そうね」

七人の若者は円型に陣を構え、各々の武器を構える。
周囲は完全に囲まれている。
七人の乗っていた馬車を引いていた馬は逃げ出してしまった。
流れ弾に当たって燃える打ち捨てられた馬車の影から一体の翼を持った魔物が飛び出してくる。

|゚ノ ^∀^)「水よ、矢となり邪悪を撃ち落とせ!」

レモナが素早い動作で弓を引絞りき矢を放った。
水を纏ったそれは正確に魔物の翼を貫く。
  _
( ゚∀゚)「やっぱり一体一体はそこまで強くねぇな」

眼前の魔物を大剣で切り裂きながらジョルジュが言う。

(-_-)「やっぱり強い魔物は塔の方に配置してる、のかな……」

(‘_L’)「その可能性が高いでしょう」

ノパ⊿゚)「だったらやっぱりあたしらも追いつかないとな!」

(・∀ ・)「おれ、燃えてきたぞー!」

7 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:38:27 ID:29OTBHmg0

ヒートとまたんきが揃って魔物の群れに突っ込む。

从;'ー'从「もう! ちょっとは私達のことも考えて行動してよー!」

ワタナベが素早く杖を振るう。
杖の動きに従う木々が魔物の攻撃を阻害し、ヒートとまたんきの前にだけ細い道を作る。
  _
( ゚∀゚)「ワタナベ、俺をあいつらのとこまで運んでくれ」

从;'ー'从「もう、私の魔力が尽きちゃうよ!」

そう言いながらもワタナベはジョルジュの胴に植物の蔓を絡ませると、その力で彼を宙に持ち上げた。
急激に伸びる蔓は力強く伸びながらもジョルジュの体にかかる負担を考えながら
ゆっくりと地面に向かって、彼を下ろした。

地面に足を着けると同時、ジョルジュの剣が赤く輝きだす。
  _
( ゚∀゚)「焼き尽くしてやるぜ!!」

炎の剣を振り回しながらヒートとまたんきの背後の敵を薙いで行く。
さらに雨のように降り注ぐ水の矢と炎の球が三人の前衛を援護する。

|゚ノ ^∀^)「まったく、血の気が多いんだから」

呆れたように、しかし笑顔でレモナは呟く。
その表情は希望に満ちている。

.

8 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:39:41 ID:29OTBHmg0



二台の馬車はボロボロになりながらも道を駆ける。
馬に治癒魔法を掛けながら進むが、それでも生き物の体力には限界がある。

( ゚д゚ )「そろそろ馬車を放棄しないとならないかもな……」

( ´_ゝ`)「ここまで結構距離あったもんな」

从 ゚∀从「徒歩ってなると魔物に囲まれないように今まで以上に警戒が必要になるな」

(´<_` )「たぶん、塔に全員で辿り着くのは無理だ。早めに配置を考えた方がいい」

( ´_ゝ`)「そんなの最初から決まってるだろ。精鋭は前の馬車に乗ってる。残るのは俺達の方だ」

从 ゚∀从「まぁ……そうなるわな」

( <●><●>)「あのバカ二人が素直に頷くか、それが問題ですが」

( ゚д゚ )「頭が痛いな。二人は能力があるだけに余計に性質が悪い」

ミルナはそう言って馬車を引く二人の子供に目を向ける。
若者と呼ぶにもまだ幼い年齢の二人だが、優秀な魔術師だ。
その未来ある優秀な子供二人さえ戦わねばならないという悪夢のような状況に眩暈がした。

9 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:40:12 ID:29OTBHmg0

馬車は馬を休ませるために一時停止する。
前の馬車に続いてミルナ達の乗る馬車も停止した。

森の途切れる少し手前、小さな広場に若者たちは腰を落ち着けた。
時間に追われる旅である、しかしまったく休息せずに進み続けることは不可能である。
馬車での長時間の移動は慣れていない者が多いうえに、
特に幼い三人の子供は慣れない馬車に揺られているだけで体力を消耗しているようだった。

他の者達に休息を命じ、ミルナとハイン、ロマネスクとデレの四人は輪になって今後の作戦を話し合う。

( ФωФ)「うむ……この場の最年長は吾輩であるが……」

从 ゚∀从「苦しい決定になるのは皆わかりきってることだ。誰も文句は言わねぇし、私が言わせねぇよ」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね。安心して最終決定をしてほしいな」

優しく言うデレの表情は固い。
言葉ではそう言いつつ、ロマネスクの決断に間違いは許さないという意思が滲み出ていた。

( ФωФ)「目的地は『時の塔』。しかし全員で辿り着くのは無茶である。
        奴らはもう吾輩らの行動に対して先手を打ってきている」

从 ゚∀从「……裏切者どもが、予言のことも言ったんだろうな」

( ゚д゚ )「あいつらが戦力としていれば、まだこの戦いもましなものになっただろうが」

10 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:40:54 ID:29OTBHmg0

ζ(゚ー゚*ζ「過ぎたことを言っても仕方ないよ。私達は手持ちの駒だけでこの危機を乗り越えないと」

( ФωФ)「……デレの言うとおりである。
        しかし、最初は四台で出発した馬車もすでに二台にまで減ってしまった」

( ゚д゚ )「ああ、まだ塔までは距離がある。それも……これから進むのは遮蔽物のほとんどない平原だ。
     空を飛ぶ魔物たちに一方的に襲われたら全滅も見える状況だ」

从 ゚∀从「途中で足止めは必須だ。私は予定通りそっちを率いるが……」

( ゚д゚ )「俺もワカッテマス達と共に、状況次第ではハインと同じタイミングで外れることになるだろうな」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね……塔にどれだけの魔物がいるかわからない状況だし、
       出来れば屋内戦向きのミルナには最後まで残ってほしいけど……」

( ゚д゚ )「単純な戦闘能力ならドクオやクーの方が上だ。
     おそらく奴らにとっての最後の砦には一番強い奴らが配備されていることだろう。
     俺じゃ力不足だ」

夜明けが近い。
薄紫の空が次第に明るくなってゆく。
森のはずれの、この広場にも光が射し始める。

( ФωФ)「……当初の予定通り、行くである。ハインと流石兄弟が最初、次にミルナ達に抑えを頼む。
        残りの全員で塔に入れれば、吾輩らにも勝機はあるはずである」

11 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:41:27 ID:29OTBHmg0

三人が力強く頷いた。

从 ゚∀从「ああ、任せろ。別れることになっても、絶対に魔物達を殲滅してすぐに追いついてやるからな」
      だがロマネスク、一つだけ頼みがある。裏切者のことなんだけど……」

ハイン以外が揃って息を呑んだ。
風の音さえ聞こえぬ静かな広場、ハインの声だけが静かに響く。

从 ゚∀从「ブーンのことだけ、気を遣ってやってくれ。あいつが一番、奴のことを気にしてたからさ」

( ФωФ)「……分かった。話だけはしておくのである」

ζ(゚ー゚*ζ「メンタル面なら私の方がいいかもね。ロマネスク、口下手だから」

(;ФωФ)「むぅ……デレはこんな時でも毒舌であるな……」

ζ(゚ー゚*ζ「事実を言っただけなんだけどな」

四人は出立の準備を始める。
元より目立たぬために焚き火も存在しない、準備は眠っている者達を起こすだけでいい。

遥か遠くに薄っすらと残る三日月の方向、それが目指す先だ。

.

12 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:41:53 ID:29OTBHmg0



草と疎らな木しか存在しない広大な平原を二台の馬車が疾駆する。
いつの間にか霧に覆われた中、遠くに目的地である塔の影が薄っすらと見えてきた。

ξ゚⊿゚)ξ「このまま何もないといいんだけどね……」

川 ゚ -゚)「そうはいかないさ。敵だってここが正念場、
     私達を今ここで始末できれば目的に大きく近付くことになるんだからな」

ξ゚⊿゚)ξ「クーって、本当にクールよね。私はやっぱり割り切れないわ」

川 ゚ -゚)「私はツンのそういう優しいところが好きだよ」

前を走る馬車の御者台には二人の若い女。
目の下には揃いの僅かな隈があるが、その目には疲れを感じさせない力強い光があった。

川 ゚ -゚)「『鍵』の様子は?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。よく眠ってる。ご両親の魔法がよく効いてるのね」

川 ゚ -゚)「さすが親子。魔法の相性は抜群か」

ξ゚⊿゚)ξ「でも……もうあの子達は……」

13 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:42:27 ID:29OTBHmg0

川 ゚ -゚)「これは仕方ないことだ。アラマキ先生の予言に従い、村の皆で決めたことだ。
     いや、街や異国に出ていた人達までわざわざ戻って力を貸してくれてるんだ。
     私達にはやれることをやる義務がある」

ξ゚⊿゚)ξ「……わかってるわ」

ツンが静かに呟いたその時、後方の馬車から大声。

(´<_`;)「敵襲だ!」

オトジャの声がする。
それに続いて激しい音がツンとクーの耳に届く。

(;´_ゝ`)「雷よ、我らを守りたまえ!」

アニジャの放つ雷が大きな光の膜を作り走る馬車を守る。

(;ФωФ)「敵は空からであるか……」

(´<_`;)「ああ! だがここで止まったら囲まれる、せめてまた森に入るところまで行かないと……!」

馬車から顔を出したロマネスクと二台目の馬車に乗るオトジャが大声で会話をする。
いつの間にか空は僅かな朝日さえ遮られ黒に染まっていた。

ξ;゚⊿゚)ξ「あんな大軍……全員の魔力が空になっても片付かないわ……」

14 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:43:00 ID:29OTBHmg0

川 ゚ -゚)「霧がなければ今頃は対処のしようがなかっただろうな。
     ツン、君は馬車に下がれ。ここは私とロマネスクさんに任せろ」

ξ゚⊿゚)ξ「でも」

川 ゚ -゚)「今は力を温存するのが君の役目だ」

ツンは何も言い返せないまま馬車の中に入った。

川 ゚ -゚)「ロマネスクさん、馬をお願いします」

(;ФωФ)「ここで魔力を使い切るではないぞ」

川 ゚ -゚)「分かってますよ」

クーはアニジャの作り出した雷の盾をすり抜けてきた魔物たちを弓矢で射ってゆく。
霧の中でも正確無比な狙いにより、いまだ馬車に接近する魔物はいなかった。

(´<_`;)「アニジャ、俺が代わる」

(;´_ゝ`)「弟よ、後は頼む。魔法の維持って体力使うんだよ」

(´<_` )「だから日頃からもっと体力付けろと言ってたのに……」

(;´_ゝ`)「お、俺の勝手だろ。俺は体力使わない派手な魔法をドーンとやる方が好きなの!」

(´<_` )「はいはい。じゃあ手綱は頼んだぞ」

15 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:43:25 ID:29OTBHmg0

アニジャが生み出していた雷の盾は少しずつ厚さを失っている。
盾を強引に突破した魔物達が馬車に襲い掛かる。

(;ФωФ)「渦巻く風よ、我らの敵を遠ざけよ!」

片手に手綱を握ったまま、器用にロマネスクが魔法を放つ。
広範囲に渦巻く風が魔物を強引に遠ざける。

川 ゚ -゚)「大丈夫、まだ馬車には近付けさせていないぞ」

クーが弓矢で魔物を撃ち落としながらオトジャ達に声を掛ける。

(´<_` )「雷よ、我らに大いなる守りを!」

アニジャの盾を覆うようにオトジャの放つ雷光が広がった。
その雷光の一部は天を貫き、黒い空に青い穴さえ開けた。

(´<_` )「俺の魔法は長くは持たない。出来るだけ早く森まで進んでくれ」

(;ФωФ)「もちろんである」

二台の馬車は速度を上げる。
森はまだ遠い。
しかし黒い空は少しずつ、だが確実に晴れていた。

16 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:43:58 ID:29OTBHmg0

川 ゚ -゚)「雷の魔法が苦手な魔物だったようだな。少しずつ撤退しているみたいです」

( ФωФ)「しかし油断は禁物である。
        この先のことを考えると、追ってくる分はやはり迎え撃つ必要はあるな」

川 ゚ -゚)「……出来れば、ここにいる全員で塔に挑みたかったのですが」

( ФωФ)「……吾輩も同感だ」

(´<_` )「よし……順調だ」

( ´_ゝ`)「俺の魔法だとあんまり効いてないみたいだったんだけどな」

(´<_` )「それはアニジャの魔法が守りだけを考えていたからだ。
      俺みたいに盾と矛を一体化した魔法を意識すれば同じことが出来たはずだ」

( ´_ゝ`)「『魔法は使い手の意志を具現化したもの』
      ……とか言ってたのはアラマキの爺さんだっけか?」

アニジャは時折オトジャの盾とクーの矢で防げなかった魔物達を雷の矢で打ち抜きながら呟いた。

川 ゚ -゚)「二人とも随分余裕が出てきたようだな」

17 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:44:37 ID:29OTBHmg0

(´<_`;)「ほんとは俺、結構きついんだけど……」

( ´_ゝ`)「まあ、本当にやばくなったら俺が交代するよ。
      兄弟だから魔力の相性もばっちりだし、
      次はオトジャの盾の効果を引き継いで俺も維持出来るだろ」

( ФωФ)「アニジャは体力面が不安であるがな」

(;´_ゝ`)「それさっきオトジャにも言われた」

太陽は徐々に南中する。
魔物の迎撃は順調だった。
アニジャとオトジャは交代で雷の盾を維持し、魔物を防いでいた。
クーの弓の腕前も疲れで鈍ることはなかった。

しかし、休みなく平原を駆け続けた馬は限界も近かった。
交代で治癒魔法を使い疲れを癒してやるが、それでも限界はある。

ζ(゚ー゚*ζ「もう少しで森だね。この子達の状態が心配だけど……」

川 ゚ -゚)「森に入ったらもう馬は使えそうにないか……」

ζ(゚ー゚*ζ「徒歩だと結構時間が掛かりそうだけど……
       代わりの馬が都合よく調達出来るわけもないからね……」

18 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:45:04 ID:29OTBHmg0

川 ゚ -゚)「せめてイヨウかジョルジュでもいればな。
     あいつら動物の扱いがうまいから、何かしら見つけられたかもしれません」

ζ(゚ー゚*ζ「……それはどうかな。この辺りは魔物の放つ瘴気の影響も大きいから、
       そもそも野生動物自体がほとんどいないかも」

川 ゚ -゚)「しかし徒歩だと……あの子達のことをどうするか……」

ζ(゚ー゚*ζ「それならあの子達のご両親から預かった紐があるけど」

川 ゚ -゚)「ここにいる中で子供を抱えてまともに戦闘出来る人間なんているんですか?
     そもそも下の兄弟の面倒を見てたのが私とブーンと流石兄弟くらいです」

ζ(゚ー゚*ζ「いなくてもやらなくちゃ。最初は私がやるから、周りの警戒はクーに頼むよ」

川 ゚ -゚)「……わかりました、デレさん」

限界を超えて馬達は走り続けた。
太陽が頂点に達した頃、馬車はとうとう森の中に隠れることが出来た。
そして、馬達はとうとう力尽きてしまった。

動けなくなった馬達を解放し、最後に治癒魔法を施してやる。
それでも動けるようになるまで数時間は掛かるだろう。

19 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:45:59 ID:29OTBHmg0

从 ゚∀从「予定通り、私と流石兄弟がここに残ろう。空の魔物をここで減らしておけば後が楽だろ」

( ФωФ)「……そうであるな」

ロマネスクは苦々しい表情を隠しもせず頷いた。

( ><)「ハインねーちゃん、僕達とお別れなんです?」

从 ゚∀从「ああ、しばしの別れだ。ミルナの言うことよーく聞くんだぞ」

(*‘ω‘ *)「……ねーちゃん、絶対また会うっぽ」

从 ゚∀从「ああ、もちろん。私もアニジャもオトジャも、
      すぐにここの魔物どもをどうにかして助太刀に行くからな」

( <●><●>)「……」

从 ゚∀从「ワカッテマス、そんな顔すんなよ。私が今まで約束破ったこと、あったか?」

( <●><●>)「ええ、何度も。明日は剣術を教えると言ったのが
        急に狩りや釣りになったことが数え切れないほどあります」

从;゚∀从「よく覚えてんな……」

ハインは頭をかきながらワカッテマスを見下ろす。

20 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:46:40 ID:29OTBHmg0

( <●><●>)「でも……洒落にならない嘘は吐きません。
        つまらない冗談を言うし忘れっぽいし約束をすっぽかすけど、
        僕らを悲しませることはしません。あなたは優しい人ですから」

从 ゚∀从「……良いこと言うな、ワカッテマスは」

ハインはワカッテマスの頭を乱暴に撫でた。
これがいつものハインの撫で方だ。

( ><)「ワカッテマスくんずるいんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽ!」

小さな二人もハインの元に寄ってくる。
そんな二人を同じようにわしわしと撫でる。
いっそ髪をかき混ぜるような撫で方だった。

从 ゚∀从「ワカッテマス、ビロード、ちんぽっぽ……私達の未来を、頼んだぞ」

ひと時の別れの言葉に、幼い三人は力強く頷いた。

('A`)「ハインさん、そろそろ……」

ドクオがハインに声を掛ける。
ハインは三人に手を振ってドクオの元に駆け寄った。

从 ゚∀从「おう。ドクオ、あいつらのこと頼んだぞ」

21 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:47:22 ID:29OTBHmg0

('A`)「……わかってる。それにハインさん、すぐに追いついてくるんならそんな心配ないだろ」

从 ゚∀从「お前は話の分かる奴だな。そういうとこ、好きだぜ」

('A`)「そういうのやめてください」

从 ゚∀从「もう、冗談だってのに可愛くない奴。少しはちびっ子三人組を見習えよ」

二人は年長者達の元に集まる。
ロマネスクが真剣な表情でハインを見つめた。

( ФωФ)「頼むぞ、ハイン」

ハインは無言で頷く。
無言だが、その頷きに全てが込められていた。

( ´_ゝ`)「ハインさん、そろそろ魔法を解くぞ」

从 ゚∀从「ああ、私が合図したら頼む。あいつらが盾の圏内ぎりぎりまで行ったら合図するから」

去りゆく背中達を見つめる。
誰も振り返らない。

从 ゚∀从「よし、アニジャ」

22 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:47:51 ID:29OTBHmg0

アニジャが頷く。
そして数秒の時間を掛け、盾は少しずつ消えてゆく。

(´<_` )「さて、アニジャの魔力の残量はどの程度だ?」

銀の刃を持つ片手剣を構えたオトジャが隣に立つアニジャに問い掛ける。

( ´_ゝ`)「まだまだ余裕。ハインさん三人分はあるな」

从 ゚∀从「ほう……私の魔力量を馬鹿にするとはいい度胸じゃないか……」

指を鳴らし始めたハインの様子に、アニジャはすぐさま態度を変えた。

(;´_ゝ`)「じょ、冗談ですぅ。クー一人分に少し足りないくらいですぅ……」

从 ゚∀从「ふむ、分かりやすい答えをありがとう」

三人は冗談を言いながらも魔物達から目を離さない。
ここに辿り着くまでに空の魔物はだいぶ数を減らしている。
しかしまだ半分以上が残っている。
さらに懸念事項はそれだけではない。

从 ゚∀从「地上は私が処理しよう。アニジャは空を、オトジャは適宜援護を頼む」

霧が晴れた今、地上の魔物達も追ってきていた。
先に別れた仲間達には処理しきれなかった魔物達、そして別の地域からも魔物達がこの地に集結しつつある。

从 ゚∀从「私達が……ダメでもやるしかないんだ」

23 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:48:20 ID:29OTBHmg0

ハインが勢いよく地を蹴った。
駆け出した先には大型の魔物。
獅子のような黒い体に巨大な角、開いた口からは鋭い牙が覗いている。

しかし臆することはない。
後ろには信頼する仲間達が、前には守るべき仲間達がいるのだから。

一閃。放ったのは長剣による横薙ぎの斬撃。
魔物の喉を狙った攻撃だが、それはわずかに首元を掠っただけだった。

(´<_`;)「雷よ、我らに力を!」

オトジャの声が響く。

从 ゚∀从「ありがとよ!」

自らの剣が雷の力を纏ったのを確認し、ハインは再び魔物に向かう。

魔物はハインなど眼中にないようで、三人をそのまま押し潰して先に進もうとしている。
ハインは今度は足元を狙った。

从#゚∀从「おらぁ!」

今度は突き刺すような攻撃。
刺した瞬間、はじけるように光が瞬いた。
魔物の咆哮を聞きながら、ハインは慌てて剣を抜いて反撃に備える。

24 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:48:52 ID:29OTBHmg0

地上には他の魔物達も数を増やしていた。
剣を振るうと雷があふれ出し、周囲の魔物を焼き払った。
しかし威力は高くない、時間稼ぎにしかならなかった。

从 ゚∀从「……数が多いな」

(´<_` )「ああ……全部を倒し切るのは到底無理だ」

从 ゚∀从「出来ればここで食い止めたかったんだがな。仕方ないさ」

オトジャが広範囲に雷の雨を降らせた。
魔物の群れがひるんだ隙にハインは走る。
一体でも多くの魔物をここで倒してしまうために。

オトジャと背中合わせになって再び対峙するは先程の黒い魔物。

从 ゚∀从「アニジャは大丈夫か?」

(´<_` )「空の魔物は俺達に興味がないみたいで。アニジャが一方的に攻撃してる。
      数を多少減らすくらいしか出来てないけどな……」

从 ゚∀从「そうか」

涎を垂らした獅子の魔物が口を大きく開く。
次の瞬間、ハインの立っていた場所は黒く焼け焦げていた。

从 ゚∀从「炎か」

25 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:49:19 ID:29OTBHmg0

素早く回避したハインとオトジャ。
回避する際にも数体の魔物をその剣で切り伏せていた。

響く魔物の咆哮。
再び火炎のブレス。

从 ゚∀从「さっきの足への攻撃が効いてる」

小さく言って、ハインは走る。
魔物との距離は瞬く間に詰まる。

魔物はそれでも構わず炎を吐いた。
当たればただでは済まない、待つのは死のみの超高温の炎。
ハインの髪が僅かに焼け焦げた。
つんと鼻をつく匂いに顔をしかめ、そしてハインは笑った。

从 ゚∀从「大地よ、邪悪を滅ぼす塔となれ!」

ハインの足元の大地が隆起する。
魔物はそれに反応できず、口の中に炎を溜めてハインを見上げた。

(´<_` )「雷よ、鋭き槍となりて魔を貫け!」

オトジャの声に魔物が視線を下げるがしかし。

从 ゚∀从「終わりだ!」

ハインが飛び上がる。

26 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:49:46 ID:29OTBHmg0

魔物がオトジャを仕留めようと炎を吐き出すよりも先に、魔物の体を雷の槍が貫いた。
口から洩れ出た炎が周囲の小型の魔物達を焼き尽くす。

しかし黒き魔物はまだ息絶えていなかった。
苦痛に悶える様にして身体を横たえる直前、頭部にとどめの一撃。
ハインだった。
剣はその身の半ばまで魔物の頭部に突き刺さっていた。

从 ゚∀从「……お疲れさん、オトジャ」

(´<_` )「ハインさんこそ」

ハインが手早く剣を引き抜き、魔物から飛び降りる。
周囲には依然として魔物の群れ。

(´<_` )「もう注意が必要な魔物はいなさそうだな」

从 ゚∀从「ああ、しかし油断は禁物だぜ」

そう息を吐いたハインだが、すぐに目を剥いた。

(´<_`;)「あれは……!」

ハインは疲れも見せずに走り出す。

从;゚∀从「アニジャ! 背後に気を付けろ!」

27 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:50:26 ID:29OTBHmg0

(;´_ゝ`)「うお!?」

アニジャの背後に迫っていた魔物を切り倒してハインは笑う。

本当は、笑ってなどいられない状況だ。
なぜなら、三人の周囲には先程の黒き獣と同じくらいの瘴気を纏った魔物が
視界に収まるだけで四体はいるのだから。

それでもハインは笑う。
だからこそハインは笑う。
泣いても喚いても何の解決にならない。

从 ゚∀从「すまんな。でももうお前の背中を危険には晒さない。
      さぁ……私達の戦いはどうやらここからが本番みたいだぜ」

未来を開くには、常に前だけを向き続けなければいけないのだ。

.

28 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:51:00 ID:29OTBHmg0



晴れた空。涼しい風。
こんな美しい景色の中をいつか旅したいと、そう願っていたはずだった。

( ^ω^)「塔もだいぶ近付いたおね」

ブーンが呟く。

('A`)「ああ。だが、追っ手を全部振り切るのは無理そうだ」

( ^ω^)「やっぱりあの子達をこんな危険なところに残すのはダメだお。ここは僕が……」

('A`)「ブーン。使命を忘れたか?」

( ^ω^)「お……」

('A`)「たとえ死んででも、俺達にはやるべきことがあるだろ」

( ^ω^)「……」

('A`)「もう戻れないんだよ。帰る場所はない、来るとこまで来ちまった。進むしかないんだ」

ブーンの反論はない。
ドクオはブーンからは視線を外し、前を見据える。

29 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:51:45 ID:29OTBHmg0

結局、道中で乗ることの出来そうな動物を拾うことは出来ず、一行は徒歩で塔を目指していた。
現在先頭を歩いているのはブーンとドクオだ。
周囲に警戒し、必要があれば魔物を処理してここまで来た。
途中に休憩は何度か挟んでいるが、緊張感のせいもあって疲労はだいぶ溜まってきている。

( ><)「……疲れたんです」

ビロードが小さな声で言うが、静かな周囲にはよく響いた。

( <●><●>)「ビロード、我儘を言うものじゃありません」

( ><)「でも疲れたんです。ちょっとお休みしたいんです」

( <●><●>)「ビロード、さっきも休んだでしょう」

( ><)「……こんなことなら村に残った方が良かったんです。そうしたら今頃……」

ビロードの言葉を遮って乾いた音が響いた。

( ><)「何するんですか、ワカッテマスくん」

ワカッテマスがビロードの頬を張った音だった。

(;゚д゚ )「おい、二人とも落ち着くんだ」

仲裁に入ったのはミルナだ。
立ち止まった二人の間に割って入り、様子を窺う。

30 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:52:20 ID:29OTBHmg0

( ><)「どいてください、ミルナおにーさん。先にやったのはワカッテマスくんなんです。
      やり返さないと僕の気が収まらないんです」

ビロードはいつもの様子からは信じられないような低い声で言った。
ミルナを押し退けようと強く腕を掴むが、歳の差に伴う腕力の差がそれを許さない。

( ゚д゚ )「しかし暴力は駄目だ。俺がワカッテマスを叱るから、今は落ち着いてくれないか」

( ><)「そうやって、ミルナおにーさんはいつも偉そうなんです」

(*‘ω‘ *)「ビロード」

ミルナを掴む腕にますます力を込めたビロードを諫めるのはちんぽっぽの声だった。

(*‘ω‘ *)「見損なったっぽ。まさか私達の役目を忘れるなんて」

( ><)「役目? 役目が何だっていうんですか?
      予言なんて不確かなものに振り回されて死にに行くこの旅を君は正しいと思ってるんですか?」

(*‘ω‘ *#)「ビロード! お前がまさかそこまで馬鹿だなんで思ってなかったっぽ!」

今度はビロードに掴みかかろうとするちんぽっぽをブーンが止めた。
ブーンの腕の中でちんぽっぽが吠える。

(*‘ω‘ *#)「私だってずっと平和に暮らしたかったっぽ! でも、それは魔王が許さない!
        だから私達がやらないと! 嫌でも苦しくても、私達の他の誰にも出来ないんだから!!」

( ><)「そんなの嘘なんです。大人達が僕らに役目を押し付けただけなんです」

31 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:52:56 ID:29OTBHmg0

(;ФωФ)「ビロード……」

( ><)「みんな馬鹿なんです。アラマキさんの予言なんてきっとぼけが始まってるだけなんです。
       『鍵』ってなんですか? そんなわけのわからないものを守るために
       命を懸けるなんて意味ないんです」

ζ(゚ー゚*ζ「……ビロード、あなたの言いたいことは分かった。一度、私の話を聞いてくれるかな?」

デレは腕に抱えていた幼子を傍らのツンに託し、ビロードの前に歩み出た。

( ><)「デレさんがそんな馬鹿だなんて思わなかったんです」

ζ(゚ー゚*ζ「まずは私達の目的を整理しよう。私達の目的は『時の塔』に『鍵』を送り届けること」

デレの言葉にビロードの反応はない。
不貞腐れたようにデレを睨みつけている。

ζ(゚ー゚*ζ「それはなぜ?」

デレがクーに視線を向けた。

川 ゚ -゚)「魔王から世界を守るためです」

ζ(゚ー゚*ζ「正解。だって魔王がこの世界をすべて手に入れてしまったら、
       私達人間が生きていけるはずないもんね。
       じゃあ、なぜこの仕事を私達がしているんだろうね、ツン」

32 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:53:30 ID:29OTBHmg0

今度はツンがデレに指名される。

ξ;゚⊿゚)ξ「それは……ええと……。私達がアラマキさんに頼まれたから……」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね。『前途有望な若人達に使命を託す』と言って、アラマキ先生は私達に全てを託した」

(;ФωФ)「でもそれは……」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、ロマネスクの言う通り。
       この場に残った中で真実を知るのは私とロマネスクだけだね」

( <●><●>)「真実?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。予言があって、それから色々あって……それでも私達が旅に出ることが決まった時、
       アラマキ先生も含め大人達は言ったよね。『必ず使命を果たしこの地に戻ってこい』って。
       でもあれは、嘘だったんだよ」

(;'A`)「どういうことだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「虚勢だったっていうこと。
       あの時すでに村には魔物の軍勢が迫っていて、それを感知している者がいた。
       特に魔力探知に優れた人にしかわからなかったみたいだけどね」」

ロマネスクは大きな溜息とともにデレに続く。

( ФωФ)「吾輩達にもそれは知らされた。
        そして彼らはこの旅の一団で最年長である吾輩とデレに託したのだ。
        『一人でも多くの命を未来に繋げ』と」

33 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:54:04 ID:29OTBHmg0

ビロードは黙っていた。
デレを睨んでいたはずが、いつの間にか俯いて地面を見つめている。

ζ(゚ー゚*ζ「割り切れない気持ちは分かるよ。だって、嘘を吐かれてたことに変わりはないからね。
       でも大人達の事情も酌んでほしい。
       特にビロードは、真実を知ったら絶対に村に残って戦うって言ったでしょ?」

( <●><●>)「ビロードは、お父さんとお母さんが大好きですから……」

ワカッテマスが見つめる先、ビロードは何も言わない。
黙って地を見つめる彼の心情を読み取れる者はこの場にはいなかった。

重い沈黙だった。
クーがそろそろ口を挟むべきかと考えた時、上空から何かが降ってきた。

川;゚ -゚)「敵襲か!」

素早く弓矢で迎撃する。
しかしその何かは空中で破裂し、煙を周囲にばら撒いた。

ξ;゚⊿゚)ξ「な、何よ!?」

見通しの悪い中、ツンは味方を求めて声を張る。
伸ばした片腕に振れたのは黒い袖口だった。

(;'A`)「ツン……残念だったな、俺だ」

ξ;゚⊿゚)ξ「冗談言ってないでどうにかしないと。その子、私が預かるわ」

34 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:54:42 ID:29OTBHmg0

ツンは自分の抱えていた子供を背負い、ドクオの腕からもう一人を受け取る。

ξ゚⊿゚)ξ「悪いけど……戦闘は任せるわ」

('A`)「ああ、もちろん。その為にここにいるんだからな」

ドクオが先端に青い宝石のついた杖をかざす。

('A`)「吹雪よ、邪悪なるものを凍てつかせよ!」

ドクオとツンを中心に巻き起こる吹雪が周囲を凍らせる。

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと、味方巻き込んでないでしょうね……」

('A`)「俺の詠唱聞いてなったか? 大丈夫だって」

徐々に視界が開ける。
砂埃と細かな氷の粒の向こう、二人の視界に入って来たものは。

川;゚ -゚)「良かった! すぐに逃げるぞ!」

叫ぶクーの姿だった。

川;゚ -゚)「空は囮だ。地下から魔物が襲ってきた。お前たちは大丈夫か!?」

('A`)「ああ、無傷だ。そっちは?」

35 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:55:19 ID:29OTBHmg0

川 ゚ -゚)「ビロードが掠り傷を負っている以外は大丈夫だ」

クーはそう言って二人の手を引いた。

川 ゚ -゚)「ここにはミルナさんとワカッテマス達が残る。私達は行くぞ」

('A`)「ビロードはあの調子で大丈夫なのか?」

川 ゚ -゚)「……わからない。それでも行くしかないだろう。私達には為さねばならぬことがある」

ξ゚⊿゚)ξ「……そうね」

三人は走り出す。
二人の赤ん坊はこの騒ぎの中でもよく眠っている。
無事にデレ、ロマネスク、ブーンと合流し、六人は揃って塔への道を走り出した。

.

36 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:55:43 ID:29OTBHmg0



( ゚д゚ )「行ったか……」

小さくなる背中をしばし見送って、ミルナが呟いた。

( <●><●>)「数が多いですね」

(*‘ω‘ *)「さすがの私らでも全部を今すぐ片すのは無理っぽ」

ワカッテマスは投げナイフ、ちんぽっぽは槍を構えて言った。

( ><)「……」

( ゚д゚ )「ビロードは休んでいてくれ。ここは俺達がどうにかする」

ミルナも巨大な槌を地面に叩き付けて言う。

( ゚д゚ )「俺が散らす。その後の援護を頼む」

ワカッテマスとちんぽっぽが頷いたのを確認し、ミルナが飛び出す。
意識を向けるのは前と左右と空、そして地面。

魔物の密集する区域まで一気に走り抜け、そして槌を振るう。
小型の軽い魔物達はその一振りで地に倒れた。
しかしいかんせん数が多い、一気に殲滅するのは不可能だった。

37 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:56:06 ID:29OTBHmg0

ミルナの攻撃から洩れた魔物に、炎を纏った小さなナイフが突き刺さる。
魔物の絶叫の響く中を今度はちんぽっぽが駆ける。
ワカッテマスも逃した魔物を的確な突きで処理していく。

(*‘ω‘ *#)「ああもう! 数が多い!!」

時折水の魔法で敵を一掃しながらちんぽっぽが叫ぶ。

( <●><●>)「これでも先に残った皆さんが後方からの魔物を処理してくれています。
        僕たちも全力を尽くしましょう」

(*‘ω‘ *#)「わかってるけどイライラするっぽ!」

ちんぽっぽが豪快に槍を振り回す。
そこに出来た隙に付け入ろうとする魔物をミルナが叩き潰した。

( ゚д゚ )「これじゃあ体力を消耗するばかりだな……」

三人に聞こえないくらいの声量で呟く。
三人はまだ幼い。
体も成長途中で、体力の限界も成人よりは早いはずだ。

そんな三人に長期戦は無理だろう。
ある程度殲滅したら撤退し、体力を回復しなければならない。
しかし、その為の手段がミルナの頭には浮かばない。

ワカッテマスとちんぽっぽは戦っている。
村にいた頃に身に着けた魔法と武術を上手く組み合わせ、最大限の戦いを見せている。

38 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:56:33 ID:29OTBHmg0

( <●><●>)「炎の渦よ、我らの盾となれ」

ワカッテマスが自分とビロードを守る炎の盾を作り出す。

( <●><●>)「ビロードのことは任せてください。ちんぽっぽ、ミルナさんの援護は頼みます」

(*‘ω‘ *)「任されたっぽ!」

ちんぽっぽはその身軽さを生かし、戦場を跳ねまわる。
槍で薙ぎ、突き、敵と距離を取り、時折水の魔法で周囲を牽制する。

(*‘ω‘ *)「水よ、矢となり敵を貫け!」

ちんぽっぽのがら空きの背中を守るように雨が降り注ぐ。
背後にいた数体の魔物が雨に打たれ地に臥した。

( ゚д゚ )「ちんぽっぽ、魔力の消費はもう少し抑えられるか?」

(*‘ω‘ *)「むぅ……頑張ってみるっぽ」

ミルナは時折息を調えながら戦闘を続ける。
一時期王都の騎士団にいた頃に身に着けた体力と技術の賜物だ。

( ゚д゚ )「背中は俺が守る。だから魔法は、本当に防げない攻撃が来た時にだけ使うんだ」

ミルナの言葉に頷き、ちんぽっぽは眼前の敵を見据える。
二本の足で立つ、人と獣が混じり合ったような風貌の狼の魔物達。
片手に剣を持ち、片手に盾を持つ姿は人の戦士と変わりない。

39 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:57:17 ID:29OTBHmg0

(*‘ω‘ *)「やってやるっぽ!」

踏み出す。
自身の背丈よりも大きな槍を豪快に振り回す。
一体目の魔物は一撃で跳ね飛ばしたが、二体目に盾で防がれた。

(*‘ω‘ *#)「っぽ!!」

一瞬拮抗した力、それを崩したのはちんぽっぽだ。
僅かに力を抜き、相手の体勢を崩す。
狼の魔物は人を連想させる見た目のわりに知能が高くないようで、
そんな簡単なフェイントにも引っかかってくれた。
すかさず喉に一撃を与え、改めて周囲を見渡す。

( ゚д゚ )「……ワカッテマスの援護に行くぞ」

(*‘ω‘ *)「わかったっぽ」

いまだ炎の盾で防御しながら、時折ナイフを放っているワカッテマス。
善戦はしているものの、やはり人二人の体を守る盾を維持し続けるには経験が足りない。

ワカッテマスの方に走り出した二人を追う魔物達の数は多い。

( ゚д゚ )「木々よ、邪悪を捉える檻となれ!」

ミルナの詠唱に応じて森の木々が形を変える。
急速に枝を伸ばし、ミルナ達と魔物の群れを分かつ檻となった。

40 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:57:42 ID:29OTBHmg0

( ゚д゚ )「全部は防げんか……」

檻から洩れた魔物達、その数はけして多くはない。
しかし、その中の一体に翼を持つ者がいた。

ミルナの槌の攻撃を避け、魔物は飛びながらワカッテマスとビロードの元を目指す。

(*‘ω‘ *;)「水よ、魔物を縛る鎖となれ!」

ちんぽっぽの詠唱は早かった。
掲げた槍の先から水の鎖が伸び、魔物を捕らえようとした。
しかし、少し遅かった。

魔物は天高く飛び上がり、鎖から逃れた。
そして小さな口から瘴気を吐き出し、炎の盾を突き破らんと飛び込んだ。

(;゚д゚ )「草木よ、魔を縛る戒めとなれ!」

ミルナの魔法も間に合わない。

(*‘ω‘ *;)「ワカッテマス! ビロード!」

ちんぽっぽの叫びが響く。
一瞬、ワカッテマスのナイフの銀色が閃いたが、それを受けても魔物は止まらない。

( <●><●>)「……持たない」

41 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:58:11 ID:29OTBHmg0

今は盾の維持より魔物の攻撃から逃れる方がいいと咄嗟に判断した。
しかし、件の魔物は瘴気を放っている。
人間には猛毒となる魔力の塊は、多少の距離をとっても無効化は出来ない。
そして何より、ワカッテマスのそばにはビロードもいる。

( <●><●>)「ビロード、おとなしくしててください」

ワカッテマスは蹲っていたビロードの体を抱え、その場から離脱すべく魔法の威力の調整を始める。
炎に焼かれても魔物はまだ生きている。
逆に瘴気でワカッテマスとビロードを殺そうとしている。

ワカッテマスが立ち上がった時、魔物はついに炎の壁を突き破ってワカッテマスの眼前に現れた。

(;<●><●>)「炎よ……」

詠唱するより早く、魔物が迫る。

大量の瘴気が二人を包む。
ワカッテマスは素早くビロードに覆いかぶさり、その小さな体を庇った。

人間の体を蝕む毒、それが瘴気。
魔物が持つ不思議な特性で、人間はいまだその全てを解明するには至っていない。
しかし経験則として、それが危険なものであることはとうに知れている。

全身に浴びれば、それは瞬く間に体を蝕んでゆく。
体内に取り込めば、内から身体と精神を破壊される。

ワカッテマスはきつく目を瞑り、己の体が滅びることを覚悟した。
実際、その背は焼けるように熱かったのだ。

42 ◆ZZAuuuWmmA:2017/08/20(日) 14:58:51 ID:29OTBHmg0

「させない……」という小さな声がワカッテマスの耳に届いた次の瞬間、
ワカッテマスは自分の状況をやっと理解することになる。

(;゚д゚ )「ワカッテマス!」

叫ぶのはミルナ。
慌てて体を起こしてみると、自分が生きていることに気付く。

体は無事だった。
ただ、背中が異常に熱い。
そっと右手を回してみると、そこは赤い液体でべっとりと濡れていた。

( ><)「我が身に宿りし魔力よ、かの者の生命力を高めよ」

ビロードが呪文を紡ぐと、仄かな光がワカッテマスの全身を包んだ。

( ><)「……ごめんなさいなんです」

ワカッテマスの周囲に、先程まで迫っていた魔物はもういなかった。
その代わり、振り向いた背後の地面には大きな影が横たわっていて、
その体は元の形がわからない程に切り刻まれていた。

( ><)「ワカッテマスくん、まだ来るんです」

(;<●><●>)「え、ああ……」


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