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リゾナントブルーのMVからストーリーを想像するスレ 第160話

1名無し募集中。。。:2019/04/17(水) 19:50:35
「時間かかる!せめて読んでいる間に攻めてこい!」
そこで何かに気付いたブルー
「た、確かに・・・気づかんかったわ。。。せやな、プランB!」
「な、なんやと」
「本で殴る!」
「物理!!」


第159話 『colorful戦隊 リゾナントガールズ’18』


前回のお話はこちら
リゾナントブルーのMVからストーリーを想像するスレ 第159話
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1508151962/



【用語】@wiki
http://www39.atwiki.jp/resonant/

【過去】第1話〜第20話のログまとめ
http://resonant.web.fc2.com/

【保管1】まとめサイト(仮)※第1話〜第24話の小説は収録完了
http://www45.atwiki.jp/papayaga0226/

【保管2】まとめサイト Ver.2 第25話〜第43話
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http://www61.atwiki.jp/i914/ IEの方はこちら

【保管3】暫定保管庫(まとめサイト3) 第44話〜第104話
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【保管4】まとめサイト Ver.4 過去ログ保管・編集中 第105話以降
http://resonant4.cloud-line.com

【スレのテンプレ・感想・作品のあとがき 他】したらば掲示板
http://jbbs.shitaraba.net/music/22534/

283名無し募集中。。。:2020/07/08(水) 02:22:34
ww

284名無し募集中。。。:2020/07/08(水) 02:36:05
民明書房的なネーミングすき

285名無し募集中。。。:2020/07/08(水) 17:57:44
俺は名もなきホゼナンター
リゾナンターの新メンバーを襲った謎の3人組の情報を盗み出すことに成功した
途中、敵襲に遭いちりぢりになってしまった。他の仲間たちの無事は諦めるしかなさそうだ

「花葬拳」なる拳法の使い手の、若き日の姿を映した動画を手に入れた。

https://www.youtube.com/watch?v=0DFlu9hOTOs

これをリゾナンター達に届ければ、きっと役に立つに違いない。
あとは、これを郵便ポストに投函して…ん?誰だ…

ぐしゃっ

286名無し募集中。。。:2020/07/08(水) 20:52:26
動画見ますた。オラワックワックしてきたぞ!

287名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:00:24
3.

同期の二人が激闘を繰り広げている一方で。
謎の衝撃によって吹き飛ばされた山崎愛生は、どこからともなく聞こえてくる美しいピアノの演奏に誘われるように
倉庫街の奥にあるコンクリート造の建物の中に足を踏み入れていた。

音楽に導かれるままに、最上階の部屋のドアを開けると。

「…ようこそ。私の演奏会に」

部屋の奥に置かれた立派なピアノで演奏をしていたと思しき女性が、その手を止めて愛生のほうに顔を向ける。
肩まで伸ばした髪がふわりと揺れる。黒のシンプルなワンピースと穏やかな顔立ちは、とてもではないがリゾナンター
たちを襲った3人のうちの一人のようには思えない。が。

「ただ。申し訳ないのですが、演奏会はこれで終幕です」

不穏な言い回し。
対する愛生は、虚ろな目をしてその場に立ち尽くしているだけ。

288名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:00:57
「あなたの命をもって、幕を引かせてもらいましょうか」

言いながら、再び鍵盤に向き合い、指を踊らせる。
美しい、それでいて蠱惑的な音色。
お誂え向きに床に置かれていたナイフを、愛生は無言で拾い上げ自らの首筋に当てた。

「それでは、ごきげんよう」

十の指が、フェルマータへと激しく躍動する。
ナイフを持つ右手に溜まった力が、一気に引き下ろされ。

優雅な演奏者に向け、投げられた。
女性は慌てることなく、フィナーレの曲調を変えて両の五指を思い切り鍵盤に叩きつける。
女性の心臓に狙いを定めていた銀の光が、見えない何かによって阻まれ、からんと音を立てて床に落ちた。

「ピアノ、好きですよ。白と黒がパンダさんに似てて」
「山崎愛生…あなたのことは『聞いてます』」
「だから、もっとお姉さんの演奏が聴きたいです」
「他の二人は知りませんけど、わたしは敢えてあなたを対戦相手に選んだ」
「聴かせて…くれますよね?」
「その意味、わかりますよね」

比較的ゆっくりとした話し方をする二人の間には、臨戦態勢に伴う熱のようなものは見られない。
けれど、戦いはすでに始まっていた。

289名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:01:35
女性は再び鍵盤に指を走らせる。
響き渡る、攻撃的な音色。愛生の肩先が切り裂かれ、露になった肌にうっすらと血が滲んだ。

「音を吸収してますね。だから、その程度の損傷で済んでいる」
「……」
「けど、音楽というものは単一ではない。いくつもの音が重なり、混ざりあって複雑な音色を構成する。その多段攻撃に
あなたは…耐えられますか?」

徐々に演奏が激しさを増す。
愛生は自らを害しようとする音楽を止めるべくピアノに近づこうとするが。
やはり、見えない壁。
直接破壊はおろか、例えば部品などを吸い寄せてピアノの機能を阻害することすらできない。

「攻撃と防御を兼ねているんですね」
「ええ。音楽は万能です。そして、何かを吸収・反射することでしか攻撃手段を得ることができないあなたに」

一際大きな衝撃波。
愛生の額のあたりが、出血する。

「わたしの演奏を止めることはできません」

このままでは、手も足も出ないまま、荒ぶる音色によって全身を切り刻まれてしまう。
額から垂れてくる血を「吸収」し、視界を確保しながら。
愛生は苦境から脱する手段に思いを巡らせていた。

290名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:02:31
その間にも、女性の奏でる攻撃的な音楽が愛生を徐々に傷つけてゆく。
最初の相手のコントロールを奪うような音楽に対しては、音を吸収することで対応できた。
しかしこの密室では演奏された音楽が壁に、床に反響しとてもではないが音を吸収しきれない。
ならば。

「無駄ですよ」
「!?」
「わたしに音を反射させても。わたしの奏でる音色は、刃にも壁にもなる。けれど、あなたが反射する音はあくまでも
音でしかない」
「ですよね。だから…こうします」

愛生は、先ほど弾き飛ばされたナイフに向けて手を翳す。
ゆっくりと、黒い手によって吸い寄せられるナイフ。

「何の真似ですか?」

愛生の行為を嘲笑したげな表情で横目に見る女性。
しかし、次の行動に思わず目を剥く。

白い手が、翳される。
但し、女性の方ではなく、部屋の照明に向かって。

ナイフの切っ先が、蛍光管を直撃する。
鋭い音とともに破裂する硝子、部屋は闇に閉ざされた。

291名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:04:05
女性はピアノの達人であった。
だから、暗闇に包まれたとしても指の感覚で演奏することは容易い。
しかし、視界が闇に包まれたほんの一瞬だけ。演奏を止めてしまう。
それは暗闇を恐れる動物の本能。
その一瞬の隙を、愛生は見逃さなかった。

普段の鷹揚な話し方とは打って変わって、風を切り裂くが如き疾さで女性に体当たり。
咄嗟の事で受け身も取れず、女性は椅子から転げ落ちた。

チャンスとばかりに追撃を仕掛ける愛生、大きく踏み込まれた一歩はなぜか再び後退する。
先ほどのピアノの音とは違い、無機質な電子音。

黒いワンピースに袈裟懸けに掛けられた、小さな鍵盤。
所謂、ショルダーキーボードと呼ばれる楽器だった。

「賢明ですね。あのまま追撃をしていたらこの“ショルキー“で蜂の巣にしてました」
「すごいですね。そんな隠し玉を持ってたなんて」
「ふふ…それは『お互い様』じゃないですか?」

女性が、狂ったようにショルキーを掻き鳴らす。
しかしそれは攻撃のためではなく。

292名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:04:37
深く、強く鳴り響く音色は。
遠くの場所で戦う同胞二人の耳に届いていた。

「そろそろ潮時か」
「今日はほんの挨拶代わり。帰って先輩たちに伝えなさい」

「あなたたちリゾナンターの、安らかな時間は終わった、と」

ほぼ同時に。
三人の刺客の姿が煙のように掻き消えた。

― りおちゃん! めいちゃん!! ―
― 二人とも、無事!? ―
― これはとにかく、帰って先輩たちに報告しなきゃですね ―

リゾナンター同士のみが使える、「心の声」で互いの無事を確認しあう三人。
かつてリゾナンターの最大の敵であったダークネス。大きな犠牲を払いつつ壊滅させ、脅威は去ったはずだった。
しかし、突如として現れた三人の刺客は嵐の到来を告げる。
物語は、再び流れ始める。各々の、思惑を乗せて。

293名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 01:12:44
「We need a name」

>>265‐269
>>277‐281
>>287‐292

思わせぶりな感じで終わりましたが続きとか何も考えてないです
宇宙剣士かえでぃのIV撮影感動巨編とか書くのに忙しいので今日はこれにて

294名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 08:41:21
いいね
さすがみんな強いな

295名無し募集中。。。:2020/07/09(木) 11:53:48
えー
そんなこと言わずに是非ビヨ…じゃなくて15期メン話を

296名無し募集中。。。:2020/07/10(金) 00:02:20
続きも欲しいけど宇宙剣士かえでぃドコー!!??

297名無し募集中。。。:2020/07/10(金) 01:40:45
くっころ編ね

298名無し募集中。。。:2020/07/10(金) 14:11:16
>>296
よこやんが鋭意作成中です

299 名無し募集中。。。:2020/07/10(金) 23:32:47
他のホゼナンターたちがわざわざ敵地に赴いて命を散らしてるようだな
俺はあいつらとは違う
今はパソコンさえあれば自宅に居ながら情報が入る
これを見てくれ 音楽を武器に変えるという能力者の近影だ

https://search.yahoo.co.jp/image/search?p=%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%81%BB%E3%81%AE%E3%81%B4+%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%BC&ei=UTF-8&ts=11964&aq=-1&ai=5iaQvZymSsa.qSGNZwF4TA&fr=top_ga1_sa#mode%3Ddetail%26index%3D1%26st%3D268

このショルキーの構造が解析できればリゾナンター達にとって大きく役に立つはず

ピンポーン

ん?
こんな早朝から来客かくぁwせdrftgyふじこlp

300名無し募集中。。。:2020/07/12(日) 12:36:20
15期もいいけどちぃちゃん横やんかえでぃーがクローズアップされるような話もちょうだいよ

301名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:17:12
□ セットドキュメントチサキ(仮) -森戸知沙希- ■

都会の夜というのは不思議なもので。
煌びやかな一面を持ちつつも、闇に親しくもある。
そういう時間帯はうっつけである。蔓延る悪にとっても。
そして、その悪を狩る側にとっても。

森戸知沙希に与えられた仕事。
それは、とある一人の男を討伐すること。
男は、世間では名の知れたグルメ評論家。元々はしがない芸人だったそうだが、ある日突然才能が「開花」し、
現在の地位に昇り詰めていた。ただしそれはあくまでも表の姿。

男は、能力者であった。
それも、精神操作系の。
能力名は「愚者の戯言(joke of the fool)」。その強力な精神作用は、男のついた嘘を相手に信じ込ませる
質の悪いものであった。そうして得た地位を悪用し財を成し、あまつさえその資金が闇へと流れているという。
このまま放置しては、より大きな富を得て闇の勢力の拡大に寄与する恐れがある。

そこで白羽の矢が立ったのがリゾナンターの中でも比較的若手に近い知沙希と。

302名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:17:48
「ね! 二人だけで任務とか久しぶりですよね!」

まるで向日葵のような笑顔で、こちらに笑いかけてくる。
なぜか浮き浮きな、隣の相棒。彼女は年下ではあるが、リゾナンターとしては自分のほうが後輩なのだから
敬語を使われるのはどうなのかなとは思う。元々は自分のほうが「能力者」としての歴が長いから、という
のがあるので仕方が無いと言えば仕方ない話。が、これはこれで関係としては成り立っているので結果オー
ライなのかもしれない。

「横やんは最近は加賀さんと一緒にいること、多いから」
「あれ、もしかして嫉妬? まあかわいいってのはそれだけで罪なんですねきっと」
「……」
「ねえ無視しない!」
「はいはい、かわいいかわいい」
「ですよねー!」

明らかにあしらわれているのに、かわいいの一言で上機嫌。
短時間のうちに表情を目まぐるしく変えてゆく一応先輩 ― 横山玲奈 ― 、その笑顔は知沙希には眩し
過ぎるくらいに、眩しい。

二人はやがて、男の住む高級高層マンションにたどり着く。
下から見上げれば、昏い夜空へ果てしなく伸びる。眩暈がしそうだった。
その玄関を彩る照明が、二人を照らして影を作る。背格好の似た小柄な二人が作り出す、小さな影。

「でも相手は精神操作の能力者か…あまり気乗りはしないかな」
「え、何でですか?」
「うん。昔、ちょっとね」

何となく言葉を濁した知沙希が、オートロックのインターホンを押しながら顔を近づけた。
先輩である野中美希の調べで、男がこの時間に「女の子を呼んでいる」のはわかっている。

303名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:18:18
「…早く入れ。あまり人目につかないようにな」

暗く、荒んだ声。
テレビでよく見る好感度抜群の明るい声とはまるで違う。
それも全て、彼の「能力」によるものなのだろう。

無駄な動作をすることなく、速足でエレベーターの中に駆け込む。
標的の居住フロアは38階。窓から侵入し手早く済まそうという玲奈の案が却下された理由だ。

「で、どうする?」
「男は玲奈たちをそういう商売の子たちと勘違いして油断するはず。部屋に入ったら、速攻で決めちゃいますか」
「そうだね。変に戦闘能力でも持ってたらめんどくさいし」
「その時は玲奈の『召喚』で、ちょちょいのちょいって」
「それさ、騒ぎになるよ」

知沙希の一言で、しゅんとしょげ返る玲奈。
その様はまるで小型の愛玩犬のようで、とても愛らしい。
人見知りな知沙希ではあるが、玲奈に関してはそのような特性からかすぐに打ち解けることができた。
今では、様々な意味で近くにいてほしい人物である。

電子音が、目的地への到着を告げる。
正面の部屋から、2、3部屋先が男の居室だ。

玲奈がピンポンダッシュするような姿勢で、ドアホンを鳴らす。
しぐさがいちいちコミカルなので、笑い態勢の低い知沙希は思わず笑ってしまいそうになるが、状況が状況なだけ
に今は我慢しないといけない。
そのうち、ひと呼吸置いて部屋の主と思しき人物がドアを開けた。

304名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:19:14
「おじゃまします」

言いながら、二人してドアの隙間に体を滑り込ませる。
待ち受けていたのは、白のバスローブを着た標的の男だった。

「大丈夫か? お前ら、未成年者じゃないだろうな」

二人の姿を見て、その男はそんなことを言う。
風呂上りなのか、髪は濡れて乱れ、目の細さも相まって不気味な様相を呈していた。
テレビの画面ではあんなに笑顔を湛えていているのに。今の目の前の男は、下卑た笑みを浮かべる変質者にしか見えない。

「未成年者ではありませんが」
「『能力者』ですよ」

息を合わせたかのうように、言葉を繋げる。
男は、知沙希の顔を見て、はっとする。が、それよりも前に彼女が攻勢に打って出た。
軽く小指を噛み、指の先から染み出た血。

「抵抗は無駄ですよ」
「うるさい!」

男は傍にあった引き出しから、黒い棒状のものを取り出す。
護身用にと買っておいた特殊警棒だ。

知沙希は仕方ない、とばかりに。
指先から垂れる血の雫。それを、結晶化させてゆく。瞬く間に出来上がる、血の刀。

305名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:19:51
血限定念動力。
自らの血を操り、変化させる。
水限定念動力の派生のようなもの、と知沙希は言う。
操れるのは自らの血のみではあるが、その分融通が利く。とは本人の弁。

「こ…この野郎!!」

先手必勝、とばかり振るわれる警棒。
その特殊合金でできたボディを、真紅の刀があっさりと弾き返す。
斬撃を受けたインパクトで腰を抜かす男を、知沙希の血がさらに襲い掛かる。
指先から赤い布から解けた糸のように細く長く棚引くそ血、それが瞬く間に男の体を拘束した。
男が全力でもがいても、その拘束が緩むことはない。

「わ。あっという間」
「『能力者』と言っても、戦闘力は皆無だったみたい」

「お前!なんでこんな…ほどけ!ほどけよ!!」
「あなたの悪業は既に知れ渡ってます。『愚者の戯言』による詐欺の取引、嘘の吹聴…何の罪もない小さな定食屋さんを、私欲
のために潰したこともあったそうですね。おとなしく罪を償ってください」

やがてマンションの前に、数台のパトカーが駆け付ける。
男の嘘で塗り固められた栄光は、終わりを告げた。

306名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:20:29


留置所。
その狭く冷たいコンクリートに囲まれた場所で。
男は、憎悪の炎を燃やしていた。

中には、自分のほかには1人だけ。
先ほど毛布を頭に被せた状態でおずおずと中に連れて来られたかと思うと、隅に座ったきり一言も話さない。
不気味なやつ、でもそんなことはどうでもよかった。

くそ、何で俺がこんな目に!!

返す返すも、腸が煮えくり返る。
組織が与えてくれた「能力」で、男は薔薇色の人生を歩むはずだった。
しかし、それも一瞬の夢。実際はこの暗くて寒い、黴臭い場所にうずくまっている。それが現実だ。

しかしあの女…どこかで見たことがあると思ったら、ちくしょう…

男は二人組の少女に襲われた時のことを思い出す。
あの片割れの顔をどこかで見たと思ったら。冗談じゃない、こうなったら洗いざらいぶちまけてやる。
どうせ自分は組織にも見放されているだろう。せいぜい命がけの嫌がらせをさせてもらおうじゃないか。

男が下卑た笑いを見せたその時だった。

「やっぱり。覚えてたか」

留置所に居た、毛布を被った人物。

307名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:21:10
男は耳を疑う。
この声はどうみても女。留置所は別に男女別というわけではないから、相手が女でもおかしくはない。
だが。この少しかすれた感じの声には、覚えがある。

― おとなしく罪を償ってください ―

「お前!!」

男が想像した通り、毛布を自らはぎ取った女は。
森戸知沙希だった。しかし、いったいなぜ。

「あんまり私の事、喋られても困るんですよね」

言いながら、男に近づく知沙希。

「お、おい! まさかこんなとこで殺しでもやるつもりか!! お前は正義の味方じゃないのかよ!!!」
「殺しはしませんよ。正義の味方になったつもりもね」

では何をするつもりなのか。
男の不安をひとつずつ、ひも解くように。

「私の能力は、『血限定念動力』ではありません。真の能力は…『記憶の』、いや」
「?」
「私の真の能力をあなたが知る必要はない」

語りかける。
不安が恐怖へと変わってゆく男。
戦おうとすれば、この前のように一方的に蹂躙されるのは必至。

308名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:21:59
「お、おい! 誰か! 誰か来てくれ!!」
「『あの子』が言ってた。私の能力はスパイ活動にうってつけだと。ある意味、新垣里沙以上に」
「なあ! 変なやつが留置所に紛れ込んでるんだよ!!」
「無駄よ」

新垣里沙。
その名前を男は知っていた。
かつて自分と同じく闇の世界に身を寄せながらも、最終的には闇から離反した、精神操作の使い手。

大声を出しても誰もこちらに来ない理由。すなわち、絶望。
完全に腰が引けてしまった男の額に、手をやる。

「破砕(クラッシュ)」

まるで、電撃にでも打たれたかのように。
男は白目を剥き、前のめりに倒れる。
男の脳からは、森戸知沙希の存在は完全に消えていた。
もっとも、男からはもう自分の名前ですら聞くことは叶わないだろう。
弛緩しきった表情、口から垂れさがる涎には人を司る知性そのものが抜け落ちていた。

「組織の幹部は、真の能力を隠し持つ…か。皮肉ね」

留置所の扉に手をかけながら、憐みの目を男に向ける。
そのほんの少しの憐憫の情も、扉を閉めることで吹き込んだ風によって儚く消えていった。

309名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:23:14
森戸知沙希:【血限定念動力(ハイマキネシス;haima kinesis)】

森戸知沙希の有する念動力。
自らの血を自由に操り、攻撃に使用する。
血液の持つ凝固作用をコントロールすることで、強力な打撃にも耐えうる硬度と鋭さの血でできた刀や、相手に
巻き付き身柄を拘束、簡単には断ち切れない血の糸を生み出すことが可能。
硬度を利用することで自らの身を守る防御にも転用可能。
使い手が達人であれば、水と名の付くものなら血すら操る「水限定念動力」と違い自らの血しか使うことができ
ないため使い勝手はあまりよくはないし、使いすぎると貧血を起こす危険性もある。
本人曰く時々耳が赤くなるのは、「念動力に使う血を作っているから」。眉唾物である。ちなみにこの能力は














森戸知沙希の作った、虚構の能力。

310名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:50:06
ミスター耳赤w

311名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 19:50:57
よこちぃいいね

312名無し募集中。。。:2020/07/14(火) 21:20:22
えっ?
最後の一文って…?

313名無し募集中。。。:2020/07/15(水) 02:04:21
今まで出てきたちぃちゃんの設定を統合したような感じなのかね
にしてもスパイ設定とかガキさん以来で懐かしいやらなんやらw

314名無し募集中。。。:2020/07/15(水) 03:36:51
てか敵のグルメ評論家って大島さん?

315名無し募集中。。。:2020/07/15(水) 21:39:34
そう、戦う能力者は「自分の能力を隠す」事がまず大前提となる設定はありですよね。

そういえば書かずに終わった作品のプロットで、大ボス中澤さんの能力が実は・・・ と言うのがありました。
その作品ではミキティを破ったロシアの「氷使い」を中澤さんが粉砕するのです。
まさに「組織の幹部は、真の能力を隠し持つ」設定でした。

316名無し募集中。。。:2020/07/15(水) 22:31:50
リリーが戻ってくるって

末満健一のTRUMPシリーズ最新作「黒世界」に鞘師里保、コミカライズも
https://natalie.mu/stage/news/387710
https://ogre.natalie.mu/media/news/stage/2020/0715/sayashiriho_art.jpg

317名無し募集中。。。:2020/07/16(木) 02:32:05
>>314児島、、いや、渡部だよ

318名無し募集中。。。:2020/07/16(木) 16:08:36
>>315
もしかして昔平行世界の中澤さんが大集合する話を書いた作者さん?

>>316
黒鞘師や!

>>317
児嶋だ…って先に言われたよ!!

319名無し募集中。。。:2020/07/17(金) 00:33:48
気になったのが、血限定念動力の英訳?と思しきハイマキネシス;haima kinesisなる単語
kinesisは運動・動きから転じて、念力を意味する英語。
リゾスレでは記憶では「パイロキネシス」「アクアキネシス」「オイルキネシス」の3つ能力
が登場したと思うんだけど、この前例に倣えば「ヘモキネシス;hemo kinesis」となるはず
haimaって何由来なのかしら?

320名無し募集中。。。:2020/07/17(金) 10:50:53
>>318
平行世界のなかざーさんは私ではありません・・・ あれは面白かったですよね。

そして「児嶋でもねーよ!!」っと突っ込んでおくw

321名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:20:56
「DREAM」

たぶん、戦場というのはこういう場所なんだろうと、思った。
天を焦がす業火、崩れ落ち瓦礫になってしまったコンクリート。
そこに、私は立っていた。

満身創痍。そう言ってもいいほど、私は傷つき疲弊していた。
全身の傷口から染み出る血液、へばりつく、ぼろぼろの服。

「…ちゃん」

誰かに、呼ばれる。
私より少しお姉さんに見える、同じくらいの背格好の子。「いつもは」お嬢様のような上品な表情を湛えているその顔も、
今は苦痛と疲労によってくすんで見える…え、いつもは?
私はこの子を。知らない。けれど、知っている。不思議な感覚だった。

「やなみんは」

自然と、口をついて出てくる誰かの名前。
はじめて言葉にするはずの名前なのに、その子の名前は不思議と口に馴染んでいた。

そのお姉さんは、被りを振る。
きっとそのやなみんという子は助からないだろう。
予感とともに、心を締め付けるような深い悲しみが私の中を駆け抜ける。

322名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:21:32
「舞ちゃんは? ふなちゃんは?」
「わからない…」
「梨沙ちゃん、どうして。どうしてこんなことに」

涙とともに、何人もの知らない子、けどよく知っている子たちの名前が浮かんでくる。
そして。目の前のお姉さんは「梨沙ちゃん」という名前なのだろう。
でも、私が感情を露にすればするほど、梨沙ちゃんは困った顔をするばかりだった。

息が苦しい。
方々で燃え盛っている火が熱を生み出し、肺の奥まで焼き付きそうになる。
炎が照らすのは、低く垂れこめる闇夜。そして、炙り出される絶望。

どうしていいのかわからなくて、視線をできるだけ遠くへ投げ出そうとしたその時だった。
目に映る、ゆらゆらと揺れる炎に照らし出された、二つの影。

大きい影が、小さい影を貫く。
その小さな影の正体。私は、知っていた。

「嗣永さん!!!!」

胸を貫手で貫かれた「嗣永さん」は、普段からからかい気味に私たちが言っていた青白い肌をさらに蒼ざめさせて。
その場に、崩れ落ちた。
私は、「嗣永さん」をそんな目に遭わせた大きい影を、空気が張り裂けんばかりに睨みつけた。
絶対に、許さない。

323名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:22:10
「よくも、よくも嗣永さんを」
「だめ、…ちゃん!!」

私は梨沙ちゃんの制止を振り切り、その大きな影に向かって走る。
よくも。こんなことを。私に、私たちに居場所を与えてくれた「嗣永さん」を。
私はどうなってもいい。たとえ刺し違えても。こいつは。こいつだけは。

大きな影が、ゆっくりとこちらを振り返る。
彼女もまた、「私が知っている顔」だった。

324名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:22:56












「ふくむら…さん?」

325名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:23:29
ʚ ɞ

横山玲奈は、今朝見た奇妙な夢を思い返す。
嫌な夢だった。夢に出てくる登場人物、一人を除いて誰も知らないのに。
でも、良く知っている。そんな感覚があった。
そして。「私たち」に仇を成している人が、譜久村聖だった。
いくら夢でも気分がいいものではない。

玲奈にはもちろん予知能力など持っていないし、自分が保持している能力は精神を司る性質とはまるで縁のないもの
である。だから、夢の内容が現実のなにかにリンクしているとはとても思えなかった。

けど。

まるで自分以外の誰かが経験したことを、覗き見ているような。
そんな錯覚を覚えるのもまた、確かだった。
考えれば考えるほど、わけがわからなくなっていた。

やめよう。
玲奈は、それ以上今朝の悪夢とも言うべき夢について考えるのをやめた。
玲奈自身、仲間を失った経験がないわけでもない。
そんな忘れてしまいたい過去に繋がるようなことを、これ以上頭の中に入れておきたくなかった。

326名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:24:12
こんなことを考えてしまうのも。
先ほどまで一緒に仕事をしていた森戸知沙希が「ちょっと用がある」などと言ってどこかに行ってしまったからだろう。
知沙希は不思議な人物だ。
もともと人なつこい性格だと周りに評される玲奈ではあったが、知沙希はまた特別であった。
いつの間にか心に染みてくるような、そんな人。顔を合わせれば、他愛もないことで笑いあうことができる。
リゾナンターの同期である加賀楓とはまた別の意味で、玲奈の生活に欠かせない人物。
そう感じていた。

だから、今日みたいにふいっとどこかに行ってしまうと、不安になる。
そんな不安が、今朝がたに見た不穏な夢のことを思い起こさせるのだろう。

玲奈は自らの心を覆い始めた暗い靄を振り払うように、大きく体を振る。
そうだ、今日は今まで忙しくて見れなかった、撮りためた特撮ものでも見ようか。
仮面ライダーのような、勧善懲悪のヒーローものを玲奈は趣味にしていたが、先ごろ始まった宇宙盗賊ものの番組は特に
彼女を夢中にさせていた。

宇宙を股にかける義賊と、そのパートナーであるワケありの過去を持つ元傭兵。
さらに彼女たちを追いかける駆け出しのジャーナリストも巻き込んだ、一大銀河スペクタクルロマン。
途中で何故か挟まれる、凛々しい宇宙剣士のお色気シーンなどもあって、特撮ものとしては異例の人気を誇っていた。
もちろん玲奈もそのファンの一人で、仕事の無い時は喫茶店の仕事もそこそこにテレビにかじりついてしまうほど。
しかし最近は新人たちの教育や自分たちの仕事が重なったりでなかなか見ることができていなかったのだった。

327名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:24:42
家に帰ったら、お店の中を片づけるとか何とか言って、テレビを独占しなければ。
浮足立つのを抑えきれず、鼻歌まで飛び出す始末。
そんな玲奈が、深まりつつある夜空に目を向けた。思わず、目を疑う。

その少女は、空を飛んでいた。
いや、飛ぶと言うより。大きく跳躍し、弧をゆっくりと描きながら着地し。また大空へ跳ぶ。
倉庫街を抜けた中層程度のビル群、その屋上を飛び回るように。少女は玲奈の視線の先を横切ってゆく。

縞模様のインナーに、オーバーオール。頭に三角のニット帽を被ったいでたちはまるでハロウィンの会場から抜け出してき
たようにも見えるが、黒を基調とした配色の為かそこまで目立ってはいない。これが仮に赤だったとしたら、たちまち騒ぎに
なるところだろうが。

常人では考えられないほどの跳躍能力。
もしかして能力者? 玲奈はその影を縫うように跳躍する少女に注視する。

…うそ。

その、髪をおかっぱにした少女に。
玲奈は見覚えがあった。とともに、そんなことは絶対にありえないと。
なぜならその少女はあの時に、もう。

「ゆは…ね?」

絶対にそんなことはない。あるはずない。
思いつつも、玲奈はその少女の名前を呟かずにはいられなかった。

328名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 02:32:04
>>321-327
「DREAM」

>>319
血の事をギリシャ語でαίμα(エマ)と言うのですが、古代ギリシャの
発音だと(ハイマ)になるそうです。本来キネシスという言葉につく血を
意味する接頭語はおっしゃる通り「hemo」「hemato」になるのですが、まあ
語呂がいいのと、どうせちぃちゃんの創作能力だということでこうなりました


大島さんの振りの方と児嶋だよツッコミーズの皆さんに感謝w

329名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 08:34:39
宇宙盗賊ってあそこの〇〇ちぃかなw

330名無し募集中。。。:2020/07/18(土) 13:50:55
ぽんちぃネタをここでぶっ込んでくるとはw

331名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:16:37
□ セットドキュメントレイナ -横山玲奈- □

ありえない話だった。
何故なら、「彼女」はあの事件で命を失ったはずだから。
けれど。だからこそ、確かめたい。
玲奈は迷わず、頭に念じる。

どこからともなく現れる、朱塗りの「門」。
鳥居に模されたその門から、濛々とした白い煙が立ち込め、そして。

「わんっ!」

白い。犬、ではない。
ふわふわと地面すれすれに浮いているその「生き物」は、大型犬くらいの大きさの。
体の三分の一ほどが頭で構成されている、つるんとしたずんぐりむっくりの体形。
爪の付いた手足は短く、まるで誰かさんのようだ。
首元まで裂けた大きな口が目立ち、目は退化しているのかほとんど目立たない。
要するに、妙な生き物。

「おねがい、あの子を追って!」
「ばう!」

言いながら、白い生き物の上に乗る玲奈。
するとその生き物は、首元にある鰓のような器官から白い煙を噴き出しながら大空に上昇。
玲奈の目標である少女を猛追し始めた。

332名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:17:16
異獣。
この白い生き物をはじめとして、玲奈が「召喚」する生き物は全てそのカテゴリーに入っている。
玲奈はその「異獣」を召還する召喚士の一族の末裔であった。
この世ならざる「異獣」の住む、どこかの別の世界とこちらの世界を「門」で繋ぐことによって、自らのしもべ
となる彼らを呼び出すことができる。玲奈が聞いた話によると、高位の召喚士は強靭な肉体をいとも容易く引き
裂く牙を持った白と黒の1対の獣や、目の前のあらゆる生物を餌とする八本足の異形の獣、果てはどんな異能も
容赦なく喰らい尽くしてしまう獣、などなど。凄まじい威力を誇る「異獣」を召還することが可能だと言う。

が。
玲奈がリゾナンターとなるきっかけ、召喚士の隠れ里が闇のものの手による襲撃を受け壊滅してしまったせいで。
召喚士としての教育を満足に受けることができないまま、独り立ちすることになってしまった。よって。
呼び出すことのできる異獣の種類は多くないし、そのほとんどが攻撃の補助的な役割しか担うことができない。

今玲奈が乗っているこの白い異獣もまた、あまり攻撃手段としては向いていない。
その大きな口で齧られればそれなりに手傷を負うが、おとなしい性格ゆえに、自分に危害を加えようとする存在
に出くわすと一目散に「門」へと還って行ってしまう。

ただ、移動手段としては文句のつけようのない速さを誇る。
先輩である石田亜佑美や佐藤優樹が能力を行使した時に勝るとも劣らないその速力は、ターゲットを追跡するのに
最適解とも言えた。

「異獣」全般に言えることだが、彼らがこの世界に留まることのできる時間は限られている。
その時間、凡そ99.9秒。その後は強制的に元の世界に送還されてしまう。
しかし玲奈には自信があった。それだけの時間があれば、十分にあのおかっぱの少女に追いつけると。

333名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:17:51
獣はぐんぐんスピードを上げてゆく。
最初は豆粒ほどだった少女の後ろ姿が、だんだんと大きくなって。
ついには着ている服の縞模様が判別できるくらいの距離まで近づいたその時。

何か大きなもので、殴り飛ばされた。

結構な高度から叩き落される形となった玲奈。
それを身を挺して守る白き獣。地面に激突、の前に自らがクッションの役割を果たすように下敷きになり衝撃を
和らげる。肺が潰れそうな打撲で一瞬息が詰まるが、逆に言えばその程度で済んだということ。
ただ、臆病な異獣はそそくさと門の方向へと逃走してしまったが。

「だめですよぉ〜、おねえさぁん」

頭上から、声が聞こえてくる。
妙に芝居がかった、甲高い声。ぶりぶり、という擬音がぴったりだ。
それとともに、目の前が暗くなる。見上げると、そこには。

二階建てくらいの大きさがあるのではないかという、巨大な、熊のぬいぐるみとしか表現できない物体。
熊ではあるのだが、両耳がコアラのように大きい。サイズさえ間違えていなければ愛らしい造形だ。
そのふさふさの毛で覆われた肩に、声の主と思しき少女が座っていた。

「ゆはちゃんに何の用があるかは知らないけど、『能力者』に嗅ぎ回られるのは今、まずいんですよねぇ」

ポニーテールを揺らし、満面の笑みを見せながらそんなことを言う少女に。
玲奈は、気づく。少女が、あの子のことを「ゆはちゃん」と呼んだことに。

334名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:18:31
「ゆはちゃんって! やっぱりあの子は」
「何かおねえさん、めんどくさそうだから。『排除』しますねっ」

目が無くなってしまうほどの笑顔に似つかわしくない、不穏なキーワード。
ぬいぐるみの巨大な拳がこちらに向かってくるのはほぼ同時だった。
巨体とは思えない素早いモーション、しかし玲奈はすんでのところで一撃を躱す。

どうやら相手は問答無用でやる気のようだ。
おそらくもう追跡していた少女に追いつくことは不可能だろう。
ならば、目の前の相手から直接聞きだすしかない。

「だったら…色々、答えてもらうよ!!」

玲奈の前方に現れる、6つの小さな「門」。
仄暗い孔の向こうからけたたましい金属音を鳴らして射出されるは、漆黒の鎖だ。
これが現在の玲奈における、唯一と言っていいほどの攻撃手段。これも一応意思を持った「異獣」らしい。
標的に目掛けて勢いよく体を伸ばし、絡め取り無力化する。門の小ささに合わせて鎖も細くはあるが、それでも
人間一人を縛り付けるには十分だ。

であるからして、相手はもちろん熊のぬいぐるみではなく、肩に乗っている少女だ。
からからと音を立てて迫りくる黒い鎖、しかし少女は笑顔を崩すことなくその場に座り続けている。

その理由は、忠実なる僕の存在。
もこもこの大きな手が、鎖から少女を守り切っていた。

335名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:23:29
「ありがとうエミリーちゃん」
「安心するのはまだ早いよ!!」

しもべの名を呼び、にっこり笑っていた少女の目が、一瞬、見開かれる。
先ほどまでの雰囲気とはまるで違う、冷徹で鋭い目つき。玲奈は、背後にもう一つ「門」を築き上げて鎖を飛ば
していたのだ。
奇襲成功、隠し玉の存在により少女は黒の鎖に捕縛されてしまう。

「捕まえた!」
「んふふー、それはどうでしょー?」
「負け惜しみ? 敗者の弁はそこから降ろした後でゆっくり聞かせてもらうから!!」

いつの間にか元の笑顔に戻っていた少女。強がりかはたまた諦めか。
そんなことを思いながら、玲奈は鎖に念じる。
彼女の意を汲んだ黒鎖が大きくしなり、少女を捕縛したままこちらへと引きずり下ろした。
ぽそり。人が落ちた割にはあまりに軽い音。

「な、なんじゃこりゃ!」

鎖に絡め取られたそれは。赤と青に彩られた、布。
広げてみると、四角い生地に2色3列の縦じま。青い生地の部分の中央には、白い丸が描かれていた。
当の少女は相変わらず巨熊の肩に座ったままだ。

「その国旗。どこの国のものだか、知ってますぅ?」
「そ、そんなの知らないよ!!」
「真ん中の白い丸…ごはんに似てません? ご飯はライス、ライス、ライス…ラオス! 正解は、ラオスの国旗でしたぁ」

がんじがらめにされた少女がどうやって国旗の布と入れ替わったのか、よりも自分の無知を馬鹿にされたような
気がして玲奈は怒りを覚える。再び宙に舞っていた黒い鎖を少女の元へ差し向けようとしたその時。

336名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:23:59
最初は、突風が吹いたのだと思った。
しかし、身を襲う殺気がそれを否定する。
目に入ったのは、さらりと流れる髪、青い学生服。
そして、ガラスのヴェールの奥の、美しい瞳。

「お前の心は、どこにある」
「!?」

いつの間にか、接近を許していた。
玲奈が捉えたのは、青い学生服を着た眼鏡の…男?
地味な美男子?は玲奈目掛けて構えていた刀を斜めに切り降ろす。

金縛りなのか、相手の気迫にやられたのか。
体が竦み避けることすらままならない。思わず目を瞑る玲奈、耳に響くのは。
金属が噛み合う、鋭い音。
玲奈と剣士の間に、滑り込むように割り込むものがいた。
また強い風。けれども、さっきとは違い心地いい。
良く見知った、ショートカットの頼れる同僚の背中。
見まごうはずがない。

「…かえで」
「帰りが遅いと思ったら。こんなとこで何道草食ってんの」

玲奈はおろか刺客の剣士ですらも、捉えられないほどの速さで駆けつけておきながら、息ひとつ、乱れていない。

「てことで。あんたの相手はあたしだ。美男子?剣士さん」

自ら「風」を称する加賀楓は、涼しげな顔をしたまま、相手の刃を圧倒していた。

337名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:24:39
横山玲奈:【召喚(サモンアビリティ;Summon ability)】
この世ならざるどこかの世界と、こちらの世界を繋げる「門」を顕現させ、それを介して異世界の住人である「異獣」を
呼び出す能力。「門」は鳥居の形をしており、小柄な玲奈よりもさらに小さい。召喚する「異獣」の種類により一度に七つ
までの門を出現させることが可能。
玲奈は気の遠くなるような昔の時代から「異獣」を使役し、邪悪なるものと戦ってきた「退治屋」の一族の末裔であり、幼少
の頃から一族の隠れ里で「退治屋」となるべく厳しい修行を繰り返していた。が、作中の事情により中途半端な形での召喚術
の習得しかできておらず、使役できる「異獣」の種類も一人前のそれと比べ極端に少ない。
なお、「異獣」がこの世に存在できる時間は99.9秒であり、それを過ぎると強制的に「門」へと還されてしまう。
なお、「異獣」と石田亜佑美などが呼び出す「見えざる獣」の違いは召喚者以外の人間にも見えること、確かな実体を持って
いること、自らの意思を持っていることなどが挙げられる。なので、敵によって傷つけられる、コントロールが利かなくなり
暴走するなどの危険性もないわけではない。

338名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 01:30:00
>>331-337
懲りずに横やんの話を書いてしまいました。
能力設定はかの名作「朱の誓約、黄金の畔」からのリゾナントです
まあ使い勝手がいいようにだいぶダウンサイズさせていただきましたが

ところで、「朱の誓約、黄金の畔」の続きまだですか?w

339名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 13:04:07
ふむ・・・ 13期物か…。 アレは良い物だ。

横やんかわええ。かえでーかっこええ。

340名無し募集中。。。:2020/07/22(水) 20:48:10
まだ13期が入り立ての作品だったな>朱誓金畔
二人の絆が深まっている今、どんな話になっていたのか……

341名無し募集中。。。:2020/07/28(火) 21:56:14
かえD不足やで

342名無し募集中。。。:2020/08/02(日) 01:07:57
ガキさんがJPルーム辞めるんだって
芸能活動はやるっぽいけどね

343名無し募集中。。。:2020/08/03(月) 00:10:10
リゾオリメンで現在も事務所残留してるのが、愛ちゃんさゆれなの3人か
さみしくなったもんだ

344名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:11:19
□ セットドキュメントカエデ -加賀楓- □

玲奈の危機に何とか間に合った加賀楓ではあったが。
噛み合わせた刃をずらし、後ろに距離を置いた相手を見て。

こいつ…

学生服を着た剣士、その実力を測る。
手にした刀の持ち方からは、凄腕、と言ったような印象はない。しかし。
油断するな、ある種の勘のようなものが楓の心に向けて警鐘を鳴らしていた。

「私の心は…ここに在る!」

言葉とともに、急激に間合いを詰める剣士。
この動き、剣士のものではない。楓は瞬時にそう判断するが、かと言って軽んじられるものでもなく。
踏み込まれる一撃を、楓は黒柄の刀で受け止める。
男子の繰り出す攻撃にしてはやや軽めの衝撃、顔と顔が近づく。

「あんた…女か」
「そうだ。何か問題でも」
「別に!!」

男装の麗人か。
仲間内ではさぞ持てはやされることだろう。自分もタイプは違えど、不本意ながらその境遇は想像に難くない。
刃を受けた勢いを削ぎつつ、弾き返す。
向こうも値踏みのつもりだったのだろう、それ以上攻めることはせず間合いを再び大きく取る。

345名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:11:51
「ここちゃーん、取りあえずその場は任せてもらってもいいかなぁ?」
「…任された」

仲間の言葉を落ち着いた声色で返す、剣士。
色めき立つのは楓の隣の小型犬だ。

「余裕ぶっちゃって!この同期の凸凹コンビを甘く見てると、後悔するんだから!」
「横山は下がってて」
「えーっ!何でよ!!」

不服そうな玲奈に向かって、小声で、

「他にも仲間が居そうだ。横山はそれに備えて」
「…わかった」

と囁く。
わずかだが、ここから少し離れた場所に人の気配がする。
本当にあの二人の仲間かどうかはわからないが、可能性がないとは言い切れない。
それに。

「背中はあんたに預けた。行くよ」

自分の死角を「相棒」にカバーしてもらうこのスタイルは、なぜだかしっくりと馴染む。
遠慮なく、攻撃に全振りできる。

346名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:12:31
照れ隠しというわけではないが、言葉の代わりに相手に向かって走り出す。
相手が刀を得意とするわけではなさそうな以上、こちらに一日の長がある。ならば、一気に畳みかけるまで。

瞬時に相手の懐に飛び込み、切っ先を斜に走らせた。
それをまるで拳を打ち下ろすような動作で思い切り叩きつけて防御する剣士。

この動き…空手か!?

楓の予測は当たっていた。
鉄槌の後に来るのは、正拳突きを礎にしたような、刺突。
鋭い刃が、上半身を無防備に晒した楓に襲い掛かる。

現れたのは、武骨な金属製の、盾。
その頑ななまでの耐久力が、切っ先の一撃を弾いていた。

「形状変化(シェイプ・チェンジ)」。
手にした物質の素材はそのままに、形状だけを変える能力。
その力を用いて、金属盾を日本刀のような、いや、楓が思い浮かべる理想の日本刀の形に変えていたのだ。
彼女が日本刀を用意しそれを形状変化させるのではなく、その逆を選んだ理由。
それは、「理想のあの人」が携えていた刀に、少しでも近づけるため。
だから。あの人の意志を受け継ぎたいから。
こんなところで後れを取るわけには、いかない。

相手がよろけた隙を突き、楓が再び攻勢に出る。
一完歩を大きく。踏み込み、そのまま再び刀に戻した自らの武器を走らせようとした。
だが、嫌な予感。楓と剣士の間に存在する「何か」に気付き、飛びのく。

347名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:13:04
「よく気づいたね。気づかなきゃ、君の首は胴体と永遠にさよならすることになっていた」
「へえ…ぞっとしない話だね」

能力。
剣士もまた、自らの異能力を行使したのだ。
しかし楓には相手がどのような能力を持っているのかはまだわからない。
もしかしたら、彼女が自らのスタイルにそぐわない武器を使っているのは、能力に関わっているからなのか。

「どうした?遠慮しないでかかって来なよ」
「言われなくても!!」

挑発に、敢えて乗る。
ただし、楓はその場から動かずに刀をそのまま遠くの剣士目掛けて振りかざす。
その瞬間、風を切る太刀筋はそのまま研ぎ澄まされた刀のように、一直線に飛んでゆく。
咄嗟に自らの刀でそれを受けた剣士、その表情には驚きの色が見て取れた。

「飛ぶ、斬撃…風を操るのか?」
「まさか。二重能力者(ダブル)じゃあるまいし。けどね、そのからくりは…教えてあげない!!」

二撃、三撃と。
楓の放った斬撃が風の刃となって、剣士に襲い掛かる。
手にした刀で防戦一方の青い制服。しかし楓の攻撃は止むことは無い。
一見して圧倒的優勢に立つ楓、その手の動きが急に止まった。

「かえで?」
「くそっ…やられた」

訝しむ玲奈、苦虫を噛み潰したような表情になる楓。
その右手からは、赤い血が滴り落ちていた。

348名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:13:40
「これも気づいたか。私も闇雲に攻撃を受けてたわけじゃない。さすが『リゾナンター』と言うべきか、けどね」

こいつは、こちらの素性を知っている?
「リゾナンター」という言葉を出され、思わず身を固くする楓と玲奈。

「もう遅いね。君はもう、『見えない刃』に囚われているのだから」

楓は、気づいていた。
いつの間にか、自分の周りを不可視の刃に囲まれていることに。
少しでも体を動かせば、刃は容赦なく楓の体を切り刻むだろう。

「どうやら洗いざらい話してもらうのは、そっちのほうになったみたいだけど」
「…どういうこと?」
「こちらも、君たちのことについて色々知る必要がある。倒すべき『敵』としてね」

玲奈が「何か」に気付いて今はここにいない少女を追いかけているのは、知っていた。
それをさらに追跡していたらこのような場面に出くわしたわけだが、まさか向こうがこちらに用事があったとは。
そもそも玲奈が最初に見かけた少女というのも、罠か何かではないのか。

「何か、勝ったような気でいるみたいだけどさ」
「そう思わなければ、こっちへ向かってくるといい」

言いながら、不敵な笑みを浮かべる剣士。
その不遜な態度が、楓の心に火をつけた。

349名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:14:18
「一瞬だ。瞬き、するんじゃないよ」
「何っ!?」

楓の言ったとおりに。
あっという間の出来事であった。
手にした刀を「解き」、身にまとわせた楓。
さながら鎧のように彼女の体を覆い尽くしたプロテクター、大きく身構えると、周囲から硝子の割れるような音が響いた。

「刃をはじき落した!?」
「終わりだっ!」

野球のバッターがホームラン予告をするように。
右の手を剣士に向けた。楓の体を守っていた金属は再びその手に集まり、刀を成し。
一直線に伸びた刀身が、剣士の眉間を貫いた。

かに見えたが、わずかに剣士の反射神経が速かった。
顔をのけ反らせ一閃を躱す、けれども。

紙一重で避けきれなかった一撃。
彼女が身に着けていた眼鏡は、真っ二つに割られて儚く地面に砕け散った。

「え、うそ…やだ…」

どういうわけか。
それまでの、凛々しい面持ちが一転して弱弱しい少女のものに変わってしまう。
遠くから、嘆息が聞こえてくる。

「あーあ、いいとこまで行ったのにぃ。こころがなよなよモードになっちゃったら、ひとまず撤収しかないねえ」
「もーっ、みいみっ」
「ほら、さっさと引き上げる」
「う、うん!」

大きな熊のぬいぐるみの肩に乗った少女が、何かを念じ始めると、空のどこからともなくやって来る謎の飛行物体。

350名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:14:54
「なにあれ」
「ミッキー…マウス?」

困惑する楓と玲奈をよそに、猛スピードに似つかわしくないその物体。
大きな耳とM字額、ミッキーマウスの顔だけを象ったような巨大なぬいぐるみ。は。
とてとてと走り飛び乗った剣士、彼女を乗せたまま夜空を急上昇しはじめた。

やがて熊のぬいぐるみの肩の高さにたどり着いた妙な乗り物に、少女もまたジャンプして乗り込む。
入れ替わるようにして大きな熊のぬいぐるみは煙のようにその場から消えてなくなってしまった。

「今日はこのくらいで。次は、『あめのもりかわうみ』全員で相手してあげるよっ」
「くそっ! 横山、いつもの乗り物は!」
「さっき出したばっかだから無理ぃ!!」

そもそも乗り物じゃなくて『異獣』だし。
なんてことを思っている間に、二人の少女は夜の闇で見えなくなってしまうくらいの高さに消えていた。

「ああ、行っちゃった…」

悔しさを滲ませる玲奈だったが、すぐに楓の様子がおかしいことに気付く。

「どうしたの、楓」
「『あめのもりかわうみ』…まさか」
「かえでー、知ってるの?」

深刻そうな表情をする楓を、玲奈は訝しげに見つめる。
が、怪訝な目になるのはむしろ楓のほうだった。

351名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:18:37
「あんた、覚えてないの? あの事件のことを」
「あの事件…」

楓の言う「あの事件」について。
わからなかったけれど。けれども。
すぐに、結び付いた。
まるで誰かの手によってびりびりに破かれた記憶同士が、何かの拍子で触れ合い意味を持つかのように。

降りしきる雨の中で、少女が倒れていた。
深き森の中で、別の少女が横たわっていた。
流れる川の瀬で、また別の少女がうつ伏せになっていた。
海の中で、静かに沈んでゆく少女がいた。

「ゆ…は…ね…?」

加賀楓:【形状変化(シェイプチェンジ;Shape change)】
ある物質を、同じ素材の違う形に変える能力。質量自体を変化させることはできない。
とは言え何でも変えられるわけではなく、せいぜい1、2種類の物質に限られる。
楓が変えることができるのは、金属及び空気。金属は、小型盾を同質量の刀に変えて攻撃手段とする。
その形は、楓が尊敬していた誰かが持っていた日本刀によく似ている。また、緊急手段ではあるが刀身を伸ばし
離れた相手を攻撃することも可能のようだ。一瞬ではあるが、自らの体を守るプロテクターのように金属を展開
することもできる。
空気の形状変化は主に刀による斬撃に、鋭く形を変えた空気を載せることで風の刃という攻撃手段に変えること
ができる。風使いのように自らの体に纏わせたり渦巻くような操り方をすることはできない。

352名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 04:25:40
>>346-351

なんだか長編になりそうな気がしますがきっと気のせいです
ほら短編だって言っておけば放置しても(

353名無し募集中。。。:2020/08/04(火) 22:07:30
おおこれは長編だ!(確信

354名無し募集中。。。:2020/08/06(木) 05:07:15
雨ノ森川海w
ビヨーンズに詳しい人がいたらもう少し盛り上がるのかしら?

355名無し募集中。。。:2020/08/10(月) 21:42:02
いいぞもっとやれー

356名無し募集中。。。:2020/08/10(月) 21:47:06
なんかこのスレって王道だからなのか他のメンバーに疎い人も多いキガス

357名無し募集中。。。:2020/08/12(水) 16:13:55
出戻り組(笑)なのでビヨーンズどころか13期〜15期ですら勉強中ですw

358名無し募集中。。。:2020/08/31(月) 22:42:44
何か書きたいけど肝心の娘。に動きがなくて書きづらい・・・コロナめ

359名無し募集中。。。:2020/09/14(月) 00:59:44
愛ちゃんおめ

360名無し募集中。。。:2020/09/14(月) 13:04:24
i914おめでとう

361名無し募集中。。。:2020/09/21(月) 22:31:33
i921になっちゃったけど愛ちゃんおめでとう(遅っ

362名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:06:29



科学では説明がつかないような、超常的な能力を扱う「能力者」。
しかし誰もがその能力を自らの意思でコントロールできるわけではない。
能力を暴発させ、物的・人的被害を出してしまうかもしれない。よしんば能力を手中に収めても、悪用に走る危険性がある。
反社会的勢力に取り込まれ、さらなる被害を拡大させることがあるかもしれない。
能力者の存在は、力の強大さから時として社会的リスクとも成り得る。しかし、うまく使えばこれ以上の人材は存在しない。
当時の政府高官及び能力者機構の統括者は、幼くして能力を発芽したものを積極的に保護・教育することでリスクを回避し
、かつ自分たちの手駒として活用することを考えた。

それが、「能力者の隠れ里」。
現代の科学技術や、能力者による視覚偽装・空間転移術を駆使し、世俗から完全に隔離されたその養成所は。
全国に十数か所の拠点を築き、誰に知られることなく優秀な能力者たちを輩出していた。

能力の制御及び育成を図るうえで、止むを得ない事態が発生することがある。
例えば、「能力喪失」。力を使うことに慣れていない能力者の卵たちは、時として自らの能力を失ってしまう。
この場合は記憶操作のスペシャリストに依頼し、能力や里に関する記憶を全て白紙にされた状態で里を出ることになる。
一般人として暮らすことができるわけだから、ある意味幸せな結末、とも言える。

里において施される、能力制御の訓練。
里の制度が確立する前までは、常軌を逸した訓練とは名ばかりの虐待や効率だけを追い求める非人道的実験が体制・反体制
側を問わず横行していた。結果。命を落としてしまうもの、精神的なトラウマを刻み込まれてしまうものが続出した。
そのことも鑑みての隠れ里制度の確立であったが、それでも異能を抱える卵たちを完全にフォローしきれるかと言えば首を
降らざるを得ないのが現状だ。

363名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:07:06
関東近郊に、「東の里」と呼ばれる隠れ里最大規模の養成所がある。
そこで、前代未聞の事件が発生した。それが、「雨野森川海事件」と呼ばれる五人の少女が犠牲になった痛ましい事件だ。
「東の里」で能力制御の訓練に励んでいた中学から高校生くらいの少女たちが、次々に謎の失踪を遂げた。訓練を投げ出しての
逃避行かとも思われたが、失踪した少女たちはいずれも能力制御の成績が優秀であり、里を出る日もそう遠くなかったため、
その可能性は否定された。

となると、残りは侵入者による拉致。
世に蔓延る数多の反社会・反体制組織もまた、自らの切り札として能力者を欲していた。ドロップアウトして闇に走った能力者
をそのまま取り込むのも一つの方法であるが、やはり一流の馴致を受けたものののほうが戦力になる。というわけで、何とか隠れ
里を探し出そうと躍起になる組織は決して少なくない。
鉄壁とも言える防衛体制に瑕疵があったのか。当時の責任者は必死になって彼女たちを探した。だが、事件は最悪の結末を迎える。

ある少女は、雨に打たれて水たまりに顔を埋め。
ある少女は、草生い茂る野原に倒れて。
ある少女は、深き森の中で。
ある少女は、川の瀬に顔を漬けるように。
ある少女は、海辺で波に洗われながら。

そのいずれもが、息絶えていた。
彼女たちの体に目立った傷がなかったことから、悪意を持った人間による拉致や死に至らしめるような暴行は否定された。
責任者が何とか理由をつけてひねり出した理由は「自殺」。思春期特有の微妙で不安定な心情が刹那的な自死へと導いた。
そう結論づけるしかなかった。
仮初の理由を元に、派遣されたカウンセラーたち。通り一遍の仕事を終えて彼らが帰った後には、里には元の平穏が訪れていた。
そして、多くの里に関わる人間は事件があったことすら、忘れていった。その事件以降、主だった不可解な事件など起こらなかった
というのも大きな要因ではあるが。

364名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:07:44


リゾナンター達の根城である、喫茶リゾナント。
決して多くは無い利用客を迎え入れる店内も、今は外の闇に当てられ深い黒の様相を呈している。天井の小さな明かりが、キッチンの
カウンターを隔てて立つ二人の女性の周りをうっすらと照らしていた。

「正直、私も『あめのもりかわうみ』という言葉を聞くまでは忘れていました」

神妙な顔をして、楓は言葉を吐き出す。
まるで、自分が事件を忘却の彼方へ追いやっていたことを恥じるように。
しばらくは後輩の報告を黙って聞いていた、リゾナンターのリーダーである譜久村聖。
自らの考えが纏まったのか、ゆっくりと口を開く。

「『事件』のことは、聖も聞いてる。伝えらえてることが事実なら、彼女たちがこの世に存在しているはずがない。けど」
「横山は、例の連中と思われる子の一人を『ゆはね』と呼んでました。それで思い出したんです。私が東の里に居た頃に、将来を嘱望され
ながらも突然命を絶ってしまった子たちのことを」
「現れた子は、よこやんが目撃した子を含めて3人。それ以外にも何人か隠れて様子を見ていたかもしれないね」
「ええ。少なくとも、気配がありましたから」

聖は、カウンターのテーブルを見つめるように視線を下に落とす。
難しい決断を下す前、彼女は決まってこのような仕草をする。
普段はサブリーダーの石田亜佑美や、参謀的役割を果たしている小田さくらの意見を聞いてから、自らの考えを述べることが多いが。
たまたま彼女たちは別件の仕事があり不在であった。
聖は、思慮深いリーダーだ。特にこのような非常にナイーブな性質を持つ案件に関わる決断なら猶更だ。
しかし、楓は聖の言葉を待っていた。この人なら、きっと正しい答えを用意してくれると信じていた。

365名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:08:21
「わかった。『事件』についてもう一度洗ってみる。彼女たちの目的が見えてくるかもしれないし」
「ありがとうございます!!」
「ただし。かえでぃーたちは通常営業ね。ここのところ、闇の勢力の活動が活発になってるみたいだから、仕事も山積みなんだよね」
「そうですね。新人たちが出会ったっていう謎の三人組の事も気になりますし」

パトロール中にルーキーたちが遭遇した、三人の能力者のことについても既に聖には報告が上がっていた。
ほまれと愛生がああでもないこうでもないと言い争う中、要領を得ない部分もあったが、何とか基本的な情報は把握する。まあ、その後
上長に報告するためのレポートを書き上げるのには随分苦心してしまったが。

「北川たちと互角にやりあったそうですよ。能力者としては腕のあるほうなのかもしれませんが、逆にそこまでの脅威ではないかと」
「そうね…けど、3人の話を聞く限り相手方もかなりの余力を残してたっぽいって。ダークネスがトップを含めて大半の幹部を失った
今、逆にそうやって自由に動ける集団のほうが怖いかもね」
「わかりました。頭に入れておきます」

引き締まる楓の顔を見て、聖は思う。
楓がこの喫茶店を訪れてから早3年。当初の頑なさはだいぶ取れてきているようにも思えるが。

もう少し柔軟なところが出てくれば、聖もこの喫茶店を任せられるのに。

ここのところ、聖は自分たちの「次の世代」について思いを馳せることが増えてきた。
先代のリーダー・道重さゆみが全ての能力を喪い隠居を決めたのが25歳。彼女の同僚だった田中れいなや新垣里沙、初代のリーダーである
高橋愛も同じような年齢でリゾナントを去っていった。
聖も来年で24歳になる。必然的に今後のことを考えざるを得なかった。

366名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:08:55
「よこやんは」
「もう2階で寝てます。森戸さんと一緒にこなした仕事の後にあの出来事ですから。疲れてたんでしょうね…森戸さんは?」
「かえでぃーたちより早く報告に戻って来てたよ」
「そうですか」

楓の表情がほんの少しだけ、険しくなる。
しかしそれは光の矢のような一瞬。
元々はリゾナンター達が属する系列とは別の能力者たちの組織にいたという、知沙希。最初からある程度のキャリアを携えた人間が「共鳴」
することなど、今までにないまさにレアケースだったという。

しかし現に彼女はリゾナンターの一員として仲間たちと馴染み、良好な関係を築き上げた。
本人曰く人見知りとのことだが、年の近い先輩や同期たちとはそれなりに打ち解け、本来の性格と思しきおちゃらけた一面などもたまに顔を
覗かせるようになった。能力者としての腕も確かであり、かつてのリゾナンターであった鞘師里保を範にした我流の剣術からは、加賀流剣術
を修める楓も目を見張るほどの練度が伺えた。同じ仲間、一人の人間としても森戸知沙希は信用するに値する人物である、と自信をもって言う
ことができた。

なのに、なぜだろう。
楓の心にはちりちりと燻るような、得体のしれない何かがあった。
わからない。暗闇に手を突っ込み何かをまさぐろうとしても空しく手ごたえがないように、答えは出なかった。

嫉妬…とか?

思いかけて、鼻で笑ってしまう。
同時に浮かぶ、向日葵のような笑顔。
あほくさ。思わず思い浮かべた人物に投げつけるぶっきらぼうな言葉は照れ隠しでもあり。

367名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:09:45
「ちょっと、外出てきます」
「なに? こんな時間からトレーニング?」
「はは、これから忙しくなりそうなんで」
「かえでぃーも連中とやり合ったんだから。ほどほどにして、ゆっくり休んでね」

「愛刀」を携えて外に出ようとする楓を、やさしく見守る聖。
隠れ里ではリーダー的立場にいたとあって新人の割にしっかりしたところを見せていた後輩、懸念の頭の固さも、当初から比べると随分柔軟
になったような気もする。「次世代」を託すに相応しい後輩の一人であることは間違いない。

だから。
聖は、楓の表情が一瞬強張ったのを見逃してはいなかった。
もちろん理由はわからない。とは言えむやみやたらに探りを入れていいようなことにも思えなかった。
もしかしたら、と。歴代のリーダーたちなら、何らかの手段を講じて彼女の悩みを解きほぐすことができるのだろうか。
それだけではない。えりぽんなら、あゆみちゃんなら。思いかけて、首を振る。

先代からリゾナンターのリーダーという重責を任されてから、早数年が経つ。
幾度も危機を迎えながらも乗り越えてはきたが、今まで自らが辿ってきた道、選び取った選択肢が正しかったのかどうか、正直に言ってしまえば
胸を大きく張れないところもあった。
けれども、響きあうものたちの襷を受け取ったものとして。
迷うわけにはいかない。後ろからついてきてくれる、後輩たちの為にも。

368名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 01:10:39
>>362-367
とりあえず、まあ

369名無し募集中。。。:2020/09/30(水) 02:45:34
おお!また物語が動き出すのですね!

しかし「雨野森川海事件」とは・・・?w

370名無し募集中。。。:2020/10/02(金) 20:57:33
雨ノ森川海のノを野にしたのかw

371名無し募集中。。。:2020/10/15(木) 18:38:54
またハロメンがリゾスレのネタになりそうな話してる
https://ameblo.jp/juicejuice-official/entry-12631675172.html

372名無し募集中。。。:2020/10/15(木) 22:37:59
>>371
なんてリゾスレデーだ!
http://n2ch.net/r/-/morningcoffee/162765907/?guid=ON&rc=41

373 名無し募集中。。。:2020/12/07(月) 22:45:57
おーいノシ

374名無し募集中。。。:2020/12/14(月) 23:08:10
ノハ´’v’ソノシ

375名無し募集中。。。:2020/12/28(月) 14:31:41
リゾスレ的観点から見てみたいw
https://www.youtube.com/watch?v=zmqckg_6X5A

376名無し募集中。。。:2020/12/28(月) 15:34:23
851     ルリカの本命はフィエールマンだって
├852     今の馬場は向いてないよなあ
└880     ルリカ当たったかもしれないな
693     671だけどフィエールマンの単勝50万買ったわ
├882     大丈夫か?ww
├885     惜しいwwwww
└890     80万もやっちゃったのかww
 └904     7千円払えやアホ
759     有馬記念 ◎ラヴズオンリーユー 〇ワールドプレミア ▲カレンブーケドール ▲クロ...
├872     ばああああああああああああああああああああああああああああああああああ...
├881     ラヴズ道中から手ごたえ悪かったなw
├905     惜しかったな クロノ1着で買ってただけに
├906     新星おつかれさまでした 来年の金杯もよろしくお願いします
├908     おつかれさまでした
└911     おつかれさま 惜しかったな
├926     エゲツない地下臭 艦娘音頭でソレ・ソレ・ソレ―――wwww
└927     TRFキッズバックダンサーの経験がいかされてるなw ソレ・ソレ・ソレ―――...
朝日奈央は何やっても下品にならない菊地亜美は何やっても下品にならない横山ルリカは何やっても下品にならない

377名無し募集中。。。:2021/01/17(日) 23:28:37
あけましておめでとう!

378名無し募集中。。。:2021/03/08(月) 22:10:59

-------

岸に上がり、水を背にして、思わずそう口にした。
長い黒髪を靡かせた涼しい目元のその人を、野中美希はそう呼んだ。

心臓が早鐘を打つ。
水を纏った己が、水を操る彼女へ、歩み寄る。
この場所が何処であるかとか、なぜ急に水底へ叩き落されたのかとかいう疑問が、一瞬で消え去る。
今、目前に広がっている希望へと、縋り寄る。

逢いたかった。
ずっと、追い続けてきた。
言いたいことも、聞きたいことも、数多あった。
共に闘ったのは、僅か1年のことだ。その中で多くのことを学んだ。彼女が旅立ってからも、ずっとその背中を見てきたつもりだ。

「野中ちゃん」

久し振りだね。と笑う彼女に、飛び込みたくなる。
このまま近づき、両腕を広げてぎゅうと抱きしめれば、その温もりを感じられる。
温もりに触れたい。彼女を知りたい。彼女がこれまで歩んできた時間を、共有したい。

その距離になるまで、あと少しという所だった。
美希の脚がぴたりと止まる。まるで地面に根を生やしたように、動かなくなる。

「野中ちゃん?」

379名無し募集中。。。:2021/03/08(月) 22:12:14
小首を傾げる、彼女。
「鞘師里保」その人であると、認識している彼女。
少なくとも美希は、そう思っている。そう、思って、いた。

はず。
なのに。

一歩ずつ、後退していく。
何かが、警鐘を鳴らす。ぴりぴりとこめかみが熱くなる感覚を知る。
目の前に佇む現象を紐解くために必要な「解」を探し始める。
先ほどまで自らが沈んでいた水底が、静かに呼吸を取り戻す。魔窟のように、罠の口が大きく開く。

「野中ちゃん―――」

3度目の名前を呼ばれた後、確かに、残念。という声が、聞こえた気がした。
いつの間にか、彼女は“水の刀”を手にしていた。
それは勢いよく振り下ろされ、地面が割れていく。
咄嗟に左に避ける。此処はどこだと考えを巡らせる。

野中美希は、自らが溺れた場所を思い返す。
水を口に含んでしまったが、しょっぱくはなかった。海水ではない、真水だ。ということは湖なのか。
ちらりと目だけでその方向を見るが、湖の大きさがどれほどのものかは分からない。

380名無し募集中。。。:2021/03/08(月) 22:12:52
再び彼女に目を向ける。
水の形を自由に変える“水限定念動力(アクアキネシス)”。水が枯れないよう、記憶の中の鞘師里保は、常に、闘いの場ではペットボトルを携えていた。
が、今は武器となり得る広大な水は、すぐそこにある。
あの場に落とされたら勝ち目はない。そうなれば、あの“水の刀”から距離を取るのが得策か。
いや、この場所が何処か分からないのに、当てもなく逃げ回るのは不利だ。
何より自分は方向音痴だ。知らない場所で迷子になるなど、目も当てられない。

「あなたは、誰なんですか?」

思考は全く纏まらなかった。解を引っ張り出す時間と、ヒントが欲しい。
まずはセオリー通り、情報を得ようと口を開く。

彼女は首を傾げ、「うちだよ?」と笑う。
笑うと目がなくなってしまうほどの、細くて鋭い目元が、好きだった。
「本物だよ」と彼女は言う。右手の“水の刀”は離さないまま。

「知っていましたか?本物は、本物だよ。なんて言わないものですよ」

考えろ。考えろ。考えろ。
思考こそ、自らの大きな武器となると、野中美希は思っていた。

381名無し募集中。。。:2021/03/08(月) 22:13:31
彼女は大げさに両手を広げ、マジックに失敗した奇術師のように、おどけた。
奇術師は、そのタネを明かされれば、自ら幕を引かなければならないと聞いたことがある。
彼女もまた、それに倣うように、「何が、ダメでした?」と口にした。

ざわり。と、何かが動く。それが一体なんであるのか、野中美希は即座に理解した。
先ほど自らが溺れた湖から、水柱が勢いよく立った。まるで龍が天に向かって昇るようなその様に唖然とする。が、自然と足が動いた。恐怖に立ち竦まずにいてくれたことに、深く感謝
しながら、美希は走り出す。
水柱は矢となり、美希へと降り注ぐ。冗談じゃないと、必死に逃げる。

次々と落とされるそれを紙一重で避けたと思えば、彼女が目の前に立ちはだかる。
“水の刀”が振り下ろされる。美希は咄嗟に左手で彼女の手首を抑え込む。力と力が拮抗する中、彼女が下がる。
すぐに体勢を立て直す。息が切れる。水の中に居たように、呼吸が続かない。落ち着けと言い聞かせる。
「なに、言ってるんですか」と、絞り出す。

「全部、ダメですよ」

強がりは風にあっさりと攫われる。あまりにも薄っぺらくて、彼女は笑う。

「最初、騙されてたじゃないですか」
「騙されたフリですよ。演技です」

誤魔化すようにそう言うと、彼女は肩を竦めたあと、「初めまして。野中さん」と呟いた。
直後、彼女の周りに水のカーテンが広がった。カーテンは閉まり、かと思えばすぐに開き、敬愛する鞘師里保の顔は、見たこともない「少女」へと変貌していた。

382名無し募集中。。。:2021/03/08(月) 22:14:11
ああ、やはり。と思うと同時に、それでもなお、ぞくっとした。
幼さが残る顔立ちだが、そこに纏う雰囲気は、鞘師里保と似ていたのだ。
だからといって、その名前を呼んでしまうのは、なんと愚かだろうと思う。

まさかそれが、この少女の能力だろうかと、疑う。
可能性はある。これまで何人もの能力者と闘ってきたが、自分の予想を超えた力を持った相手も多かった。
“変身(トランスフォーム)”、あるいは“複写(コピー)”、“擬態(ミミクリー)”…あらゆる可能性を視野に入れる必要がある。油断すると首を刈られる。

「野中さんは、水は好きですか?」
「……」
「私は、好きですよ」

まずい。と思ったときには遅かった。
再び、水の中へ落ちた。なぜ息を吸っておかなかったのかと後悔すると同時に、普段意識して呼吸することはないよなと、どこか冷静に思う。

野中美希は水の底へと落ちる中、再び思考する。
紛れもなく、此処は水の中だ。呼吸はできない。口の隙間から泡が出る。酸素はない。
海水ではない。水が汚れているようには思えない。自然界のものとするには、あまりにも綺麗だ。
プールの水か?であれば塩素が強いはずだが、それも感じない。


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