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リゾナントブルーのMVからストーリーを想像するスレ 第160話

381名無し募集中。。。:2021/03/08(月) 22:13:31
彼女は大げさに両手を広げ、マジックに失敗した奇術師のように、おどけた。
奇術師は、そのタネを明かされれば、自ら幕を引かなければならないと聞いたことがある。
彼女もまた、それに倣うように、「何が、ダメでした?」と口にした。

ざわり。と、何かが動く。それが一体なんであるのか、野中美希は即座に理解した。
先ほど自らが溺れた湖から、水柱が勢いよく立った。まるで龍が天に向かって昇るようなその様に唖然とする。が、自然と足が動いた。恐怖に立ち竦まずにいてくれたことに、深く感謝
しながら、美希は走り出す。
水柱は矢となり、美希へと降り注ぐ。冗談じゃないと、必死に逃げる。

次々と落とされるそれを紙一重で避けたと思えば、彼女が目の前に立ちはだかる。
“水の刀”が振り下ろされる。美希は咄嗟に左手で彼女の手首を抑え込む。力と力が拮抗する中、彼女が下がる。
すぐに体勢を立て直す。息が切れる。水の中に居たように、呼吸が続かない。落ち着けと言い聞かせる。
「なに、言ってるんですか」と、絞り出す。

「全部、ダメですよ」

強がりは風にあっさりと攫われる。あまりにも薄っぺらくて、彼女は笑う。

「最初、騙されてたじゃないですか」
「騙されたフリですよ。演技です」

誤魔化すようにそう言うと、彼女は肩を竦めたあと、「初めまして。野中さん」と呟いた。
直後、彼女の周りに水のカーテンが広がった。カーテンは閉まり、かと思えばすぐに開き、敬愛する鞘師里保の顔は、見たこともない「少女」へと変貌していた。


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