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もしも牧野まりあんLOVEりんがブレードランナーだったら

1名無し募集中。。。:2017/01/20(金) 20:03:37
くろっき「2つで充分ですよ!分かって下さいよ!」

2名無し募集中。。。:2017/01/20(金) 21:36:45
まりあ「Give me LOVE」

3名無し募集中。。。:2017/10/11(水) 19:14:46
https://i.imgur.com/cMYonQO.jpg

4名無し募集中。。。:2018/03/18(日) 17:56:17
牧野真莉愛はアパートの前に立っていた。
人通りが激しい。夕方なので誰もが家路を急いでいた。
真莉愛の視線の先の3階の窓には明かりが煌々とともっている。

真莉愛はエレベーターを使って3階に上がると、目的の部屋のドアをノックした。
小さな足音がドアに近づいてくる。
ドアの覗き穴の向こうで、何かが動く気配がしたが、すぐにしんと静まり返った。

「ピザの配達です」と真莉愛は言った。
「頼んでない」ドアの向こうから穏やかな返事が返ってくる。
「住所はここで、名前は関となってます。ちょっと遅れてしまいましたけど」
真莉愛は相手からピザが見えるように、覗き穴の前にピザを持っていった。

ドアの向こうにいる男の意志の力が食欲に負けるのを待つ。
ほんの数秒で決着がついた。
ドアを開けた男がまじまじと見つめてくる。だが、その視線は真莉愛が持っている箱に吸い寄せられた。

ドアが大きく開くと、男は真莉愛の全身が見えるようになった。
だから、目の前にいるのがピザの配達人ではないことに気づいた。
保温用のバッグもなければ、ユニフォームも着ていない。

男がいきなり不安になったのが手に取るように分かる。
「あんたは…誰だ?」

「誰かが来るのは分かってたはずです。話してもいいですか?」
関は一瞬ためらったが、結局、真莉愛をなかに入れた。

部屋に入ると、まばらな家具のどこを見ても塵ひとつなかった。
家具は統一感がまるでないが、それでも掃除は完璧に行き届いているようだ。

関はいったんキッチンに姿を消したかと思うと、すぐに2枚の皿を持って戻ってきた。
「最後の食事が宅配ピザとは…」
関はむっとした顔で真莉愛を見るとピザの箱をつかんだ。

皿にひと切れずつピザを取り分けて、1枚を真莉愛にうやうやしく差し出した。

5名無し募集中。。。:2018/03/18(日) 18:53:18
真莉愛が装填されたブラスターをテーブルに置く。
チーズがとろけたピザを口に持っていきかけたところで、関は凍りついた。

「召喚命令に従ってもらえると判断していいんですね?」真莉愛が言う。
関はピザを皿に戻すと、膝の上の皿をテーブルに置いた。

立ち上がり、部屋のなかをうろうろと歩き始める。
「分かってるさ、そのぐらい…」関は顔をそむけて冷静になろうとした。
次に真莉愛を見たときには、その目に絶望が浮かんでいた。

関は片側の壁から反対側の壁へと5歩で歩くと、また引き返した。
片手で髪をかき上げて心を決めた。

キッチンから持ってきたナイフをすばやく取り出すと、真莉愛の胸めがけて突き出す。
とっさに身をひるがえした真莉愛の左の肘が深く切られた。
同時に真莉愛の右手首が目にも止まらない速さでしなった。
ナイフを関の手から叩き落とすと、さっと屈みこんで床に手をつき、脚を旋回させる。

関の顔面に真莉愛のかかとがヒットして鼻が折れる鈍い音がした。
関はもんどり打って転んだが、ほとんど瞬時に立ち上がり、牛のように頭から真莉愛の腹部に突っ込む。
真莉愛は逆さまの体勢で壁にぶつかった。

関は転倒の勢いに身を任せ、何度も真莉愛を壁にぶつける。
そしてそのまま壁をぶち破り、ふたりは隣の部屋へと転がりこんだ。

関の巨躯にのしかかられ、2度顔を殴られた。
駄目押しの一撃を見舞おうと振りかぶった関の隙をついて、真莉愛は拳を握りしめ関のあごを強打した。

目の前で星がくるくると回り、関はうしろにひっくり返る。
真莉愛は顔をしかめながら関に馬乗りになり、鼻とこめかみに何度も拳を打ちつけた。

6名無し募集中。。。:2018/03/18(日) 20:02:30
関がぐったりとなった。
哀れっぽいうめき声を発し、頭を横に転がしている。

真莉愛は身を引いて片膝をついた。
うしろによろけながら立ち上がり、壁にぶつかった。
「あなたは立たなくていい――」

テーブルに置いてあったブラスターを手に取った。
緊張で荒くなっていた息遣いが浅くなってくると、指から血が滴っていることに気づいた。
傷ついた肘を胸に抱えて、具合を調べる。

関が歯を食いしばりながら、どうにか片膝をつく。
ぐらぐらと揺れていたが持ち直したように立ち上がった。

「あんたたち新型は、こんな仕事に満足なのか?…」
関の声は、口いっぱいにビー玉を詰めこんでいるかのようにろれつがまわらず聞き取りづらかった。

真莉愛が黙っていると、関は耳障りな笑い声を発し、視界をはっきりさせようとまばたきした。
その顔は歪み、憎しみに歯をむいている。

しかし、どのような往生際の悪さを発揮したところで、避けがたい結末が待っていることは関にも真莉愛にも分かっていた。

関は総身の力を振り絞り、真莉愛に突進する。
真莉愛のブラスターから発射された銃弾が関の心臓をまっすぐに貫いた。

関はひざまずき、息も絶え絶えに真莉愛を見上げる。
真莉愛が感じていたのは勝利の喜びなどではない。哀れみだった。

死を目前にし、真莉愛を見上げる関の目に浮かんでいたのは怒りでも憤怒でも軽蔑でもなかったからだ。
その瞳に最期の瞬間に浮かんでいたもの、それは純粋で“人間的”な恐怖だけだった。

真莉愛は奇妙に凪いだ気持ちで、自らの血まみれの指を関の顔に運び、そっと目を閉じさせた。
長く、低く息を吐いてから、真莉愛はゆっくりと無線機を取り出す。
「こちら、まりあんLOVEりん」と告げた。

「重要度高のターゲット、タイムマシーン3号を確保。すみやかに回収を――」

7名無し募集中。。。:2018/03/18(日) 22:55:25
なんかきた

8名無し募集中。。。:2018/03/18(日) 23:50:57
いいね

9名無し募集中。。。:2018/03/19(月) 07:34:59
まりあの完成されたボディと「人工物」の親和性は異常

10名無し募集中。。。:2018/03/19(月) 10:11:39
疲労困憊していた真莉愛は夜明け前に家に戻ると、10時まで眠った。

目を覚ました真莉愛はキッチンで大きな錫のゴブレットに琥珀色の液体を注いだ。
喉が渇いていたのでごくごくと飲む。滑らかな液体が喉元を過ぎるとき、わずかにひりついた。

手鏡を取り出して、そこに映る自分の顔を見つめる。
殴られたせいで皮膚が裂けていた。

服を脱ぎ捨てて浴室に入る。頭上にある蛇口をひねると熱い湯が流れ落ちてきた。
髪と身体を2度洗った。擦りむけている首や手首に石鹸がしみる。
なかなか落ちないしつこい汚れをこすり続けて、それが痣だとようやく気づいた。

裸のまま診療セットを取りに行き、アルコールで腕を消毒する。
浅い傷は問題ないが、肘の傷は深い。処置をして閉じる必要があった。

ぴかぴかと光る医療器具とゼリーのようなものが入った瓶をトレイにのせる。
それは深い裂傷を治療するためのものだった。
糊のように傷を閉じることができる。

そのうえ縫合のように糸を抜かなくても傷が治れば身体に吸収されてしまう便利な方法だ。
真莉愛は瓶からゼリーを取り出して指で肘の傷に塗布した。
器具で皮膚をつまんで傷口をしっかり合わせる。
息を吹きかけ乾いたことを確認すると包帯をつけた。

簡易ベッド、肘かけのない小型ベンチ、その脇に照明つきの小さなテーブルがある。
シンプルな部屋だが、モノトーンで統一されたセンスのよさを感じさせた。

真莉愛は分厚いショーツだけの姿でマッサージとストレッチをする。
テーブルの上のラップトップが赤と青に明滅し、メッセージが届いた。
真莉愛は資料を読みながらボウルにさまざまな食材を入れてかき混ぜた。

五目焼きそばのようなランチをスプーンで食べながら真莉愛は窓の外の曇り空を眺めた。

11名無し募集中。。。:2018/03/19(月) 22:00:11
食器を片づけた真莉愛は、飾り気のないベッドに腰を下ろした。
マットレスは硬く、座ってもほとんど凹まない。
そのままごろりと横になり天井を見上げた。

平らな表面の白地に鳥のシルエットが投影され、黒く浮かび上がっている。
シルエットのリズミカルでやさしい動きが心地よかった。

ベッドの脇にひとりの少女が姿を見せた。
真莉愛は静かに笑った。
真莉愛が少女のための場所をつくると、少女は真莉愛の肩の上に頭をのせた。

「傷は痛む?」少女が心配そうな顔で尋ねた。
慎み深い所作、薄桃色の肌、つぶらで柔和なまなざし。
「大丈夫、平気だよ」真莉愛が答えると、少女は笑みを漏らした。

三次元的で、等身大のシミュレーション。つまりヴァーチャル・リアリティの少女だ。
ただし、現在あるものよりはるかに進歩したものだが。

真莉愛の“空想の友達”であるホログラム映像はまるで本物のような姿形と声を与えられている。
初めて会ったとき、真莉愛はどうしようもなくあふれる歓喜の涙を見られないよう気をつけた。
理解し合える相手ができた――そのときからふたりは姉妹のような関係になった。

少女はいつも真莉愛にお話をせがんだ。
真莉愛にとってお話をすることは楽しみでもあったが、苦痛でもあった。
真莉愛の職業上の“冒険談”をしょっちゅうせがむからだ。

普段から嘘をつく習慣がない真莉愛はわが身に降りかかった災難を話すしかない。
少女はわがことのように聞く。
それは少女の柔らかな瞳に、真莉愛自身の悲しみを映すことだった。

「気をつけてね、まりあちゃん」
たったひとりの親友に見送られながら真莉愛は仕事に出かける。
慈しむように真莉愛は言う。「行ってくるね、ちぃちゃん」

12名無し募集中。。。:2018/03/19(月) 23:15:12
http://stat.ameba.jp/user_images/20180319/22/morningm-13ki/93/c3/j/o0480036014152962464.jpg

13名無し募集中。。。:2018/03/20(火) 15:00:23
ちぃちゃんはホログラフィーAIなのね

14名無し募集中。。。:2018/03/21(水) 11:39:04
真莉愛は弱い風に髪をなびかせて歩道に上がった。
肘の鋭い痛みはもうない。少しずきずきはするが、肘の存在を意識する程度だ。

本部ビルの玄関までの21段の階段を早足でのぼる。
新鮮な空気を最後に吸い、ロビーに入っていく。人であふれていた。
空気を濁らせる煙草の煙と同じくらいの重みが場を覆っている。

真莉愛が点呼室の人混みをかき分けていくとき、誰も道を空けようとしなかった。
肩が真莉愛の肩にぶつかる。手が尻を撫でる。
真莉愛は無表情を保ってまっすぐ前を見ながら部屋の奥へ向かった。

「よう、お人形ちゃん」
真莉愛は行く手を阻むように立っている男の横をすり抜けた。

目的のオフィスに入ると、宮崎由加がコーヒーを淹れていた。
「もう大丈夫なの、まりあちゃん?」
由加は真莉愛の直属の上司である。仕立てのいい上品な格好のせいで、いわゆる捜査官には見えない。

朗らかなタヌキ顔をした由加を、たいていの人は見くびる。
だが、それは大きな間違いで、それもまた由加がいかに有能かという証拠でもあった。

「遅れてすみません」真莉愛が言った。
「もっとしょっちゅう遅刻してもかまわないくらいよ、まりあちゃんの仕事ぶりは」取りなすように由加が言う。

「たまにはデートするとか、服を買うとかしてもいいのよ」
由加は若いくせに、まるで孫の相手をするお婆さんのような口調だった。

真莉愛の人生にそういうことが起きる可能性はなく、それは由加も分かっている。
それでもこの手の一方的な会話を由加は幾度となく繰り返す。
人間である由加にとっては見過ごせないことなのかもしれない。

15名無し募集中。。。:2018/03/21(水) 16:11:00
真莉愛は金に価値を見いだせたためしがない。
そもそも、大金が貯まるほどの金を稼いだことがなかった。

しかし貯金へのモチベーションを保つ目標があれば話は違ってくる。
オフィスで由加から一種のボーナスを与えられた真莉愛は、それなりの額の金が貯まったことに気づいた。

いつもコンピューター関連の付属品を買っている店に注文を入れた。
相応の割引をしてもらえる。真莉愛は費用をざっと計算してみた。
新製品は高価だが、いま使える現金でまかなえる。
出費を惜しむことのない買い物ができた。

買い物をすませて家に帰るころ、空が小さな雨粒を落としてくる。
湿った空気が顔に触れると真莉愛は爽快感を覚えた。

捜査本部長の秘書に提出するための報告書を完成させた真莉愛はなめらかなキーボードを撫でた。
ゆるいシニョンにまとめられていた髪をほどくと何度かキーを叩く。
頭上の照明がついて、ちぃが真莉愛の隣に腰かける。

「お仕事は終わった?」ちぃが尋ねた。真莉愛は微笑んだ。「プレゼントがあるの」
ちぃが驚いた顔をする。
「クリスマスじゃないし…記念日だっけ?」
真莉愛はクリスマスも記念日も祝ったことがなく、なんと応じればいいのか分からなかった。

怪訝な顔をした真莉愛の膝にちぃが片手を置いた。
「うれしいよ。えっと…早くちょうだい!」

真莉愛がポケットから黒い布製の袋を取り出す。
「これでいつも一緒にいられるよ」手のひらほどの長さの黒檀色の棒を差し出した。
ぴかぴか光る銀のボタンがついていて脇には“ちぃちゃん”と彫りこまれている。

この携帯用端末があれば一緒に外出できるのだ。
ちぃは身をすくめまいとしているように真莉愛を見つめた。
「気に入らない?…」真莉愛が尋ねた。
「最高!最高の気分!まりあちゃん、ありがとう!」ちぃは即座に言い返す。
そして、きれいな歯を見せてにっこり笑った。

16名無し募集中。。。:2018/03/22(木) 16:40:06
まりまー小説の作者さんかな

17名無し募集中。。。:2018/03/24(土) 15:12:51
真莉愛を乗せた空を飛ぶパトカーはビルのあいだをたくみに縫って進んだ。
上昇しながら、ほんの少し車体をまわし真莉愛はコンソールに向き合った。

小型で実用的、きわめて進歩した空を飛ぶパトカーだ。
プロセシング・ユニットが作動し、受動推進器を使って自動で着陸する。

真莉愛は無線のマイクのスイッチを入れた。
休憩を伝え、現在地を報告する。指令所から了解との返事を確認した。

ちぃを起動する。助手席にちょこんと座ったちぃが真莉愛をまじまじと見た。
真莉愛の仕事が死と背中合わせのものだとは知っていたが、実際に“体験”したのは初めてだ。

「どこであんな撃ち方を習ったの?」ちぃが尋ねた。
ついさっき、有力情報があると言ってきたタレコミ屋と腹立たしくも銃撃戦になったのだ。
「習ったわけじゃないよ」そういう機能が備わっていることはちぃも分かっている。
「まあ、そうだけど」ちぃはそう言いながらも目を輝かせていた。

「でもさ、立ち止まりもしなきゃ、狙いを定めもしないで、あんな離れたところから1発でなんて」
「ちゃんと狙ったよ」
「だけど…プロみたいだった」
真莉愛は屈託のないちぃの顔を見て笑みがこぼれた。

ちぃはくすくすと笑い、話を続けた。外の世界がどれだけ刺激的かについて。
ひとしきり愉快な話をしてから真莉愛が言った。「仕事を始めるよ」
ちぃは深呼吸した。笑いすぎて出た涙をぬぐい、頭を横に振る。

「どこに向かうの?」ちぃが尋ねる。
「手がかりを追う。話を聞ける相手に会うの。令状も証拠もないから用心しなきゃだけど」

空に舞い上がり、空中で停止したパトカーの座席で真莉愛はきびきびと作業をした。
これまでの情報やスキャンの結果を瞬時にチェックする。
ちぃに向き直った。「安全運転するけど念のためベルトはしてね」

18名無し募集中。。。:2018/03/24(土) 17:53:16
ちぃは窓の外に目をやる。景色が過ぎ去っていく。単調で気の滅入る景色。
閉鎖された工場に代わって荒廃した家々が見えてきたと思ったら、また無人の工場群が現れた。

これから向かう地区は掃き溜めだ。警察官および捜査官を歓迎しない。
屈強な男ですら、夕方以降の通報には尻ごみする。

真莉愛が説明した。
「捜しているターゲットが売春宿にいるって情報があるの。
だからその女の子たちを操ってるポン引きに話を聞く。
誰かなにかを見たかもしれないから女の子たちにも話を聞くけど、その前にポン引きと話をつける。
そうしないと相手にされないから」
ちぃはゆっくりとうなずいた。

知らないうちに景色が変わっていた。
荒廃した一戸建ての代わりに塗装していない丸太小屋や掘っ建て小屋が並んでいる。
街に現存する工業地帯だ。鋳造所や機械工場は黒煙を吐き出し、有害な化学物質を垂れ流す。
大通りに点在する電波塔からは絶えずブーンという音が聞こえていた。

ここに住む人々は政府の援助を求めておらず、援助を受ける資格もない。
自力で、自分たちの持っているものだけでやりくりしているのだ。
下水道は未発達で真冬でも悪臭漂う空気で淀んでいた。

不快な汚染物質を喀出して真莉愛は咳きこんだ。
「大丈夫?」ちぃが尋ねた。「平気。すぐ慣れるから」真莉愛はゴホンと咳をしてから答えた。
それからボタンをひとつ押すと、パトカーのルーフから小型のドローンが分離して浮遊する。

目的の家の玄関ポーチは狭いが頑丈にできていた。
真莉愛が激しくドアを叩いたので窓がカタカタ鳴った。「開けなさい!」またしてもドアを叩く。

鍵とチェーンが外れる音がしてドアが小さく開いた。「なんの用だ?」
「ネオ・ニシオ警察署です。お話があります」真莉愛は胸のバッジを叩いた。

男の眉が大きく上がった。
怪しげな笑みを浮かべながらも、ちゃんとドアを開けた。

19名無し募集中。。。:2018/03/24(土) 19:15:49
家に入った真莉愛はぐるっと周囲を見まわす。
家を左右に分ける中央の廊下から階段が延びていた。フォーマルな応接間、ダイニングルーム。
どんな空間に入るときでも、まず危険がないか確かめる必要がある。

それにあとひとつ。内装と清潔さを判定し、目撃者や犯人に関する証言の価値を見積もるのだ。
床はきれいに掃かれ家具は整然としていた。この点に関しては合格だろう。

頭上でドンという大きな音がした。大きな足音が床に響く。
階段の上に現れたのは筋肉隆々の巨漢だった。
頭は身体に比して小さく、盛り上がった首の筋肉が余計に目立つ。

「なんの用か知らんが、さっさと帰ってくれ。そいつは警護のための人造人間でね。いくらあんたでも勝てないよ」男が言う。
「そうはいきません」真莉愛が答えると巨漢が近寄ってきて乱暴に真莉愛の肩を揺さぶった。

真莉愛はブラスターを抜いた。銃口はポン引きの顔に向けられている。
巨漢の手に銀色の光が走り、カチカチという音がして飛び出しナイフが握られた。

ポン引きは銃口を見つめた。
「よく聞けよ。その銃を俺の顔からどけろ。さもなきゃ死ぬことになるぜ」
巨漢が動いた。体重がかかって床がきしむ。
真莉愛が一歩前に出る。巨漢も一歩前に出る。真莉愛がもう一歩進む。

そのとき、ふたつのことが立て続けに起こった。
ポン引きの頭の半分が消えた。窓が割れた。
遠くから聞こえたライフルの発射音が真莉愛の頭でこだましている。
1発だけ。頭を狙った狙撃。

巨漢が真莉愛に飛びかかった。真莉愛が撃ったと思ったらしい。
ブラスターが手から叩き落とされ、床に倒された。
巨漢の手には飛び出しナイフが握られている。
動きを封じられた真莉愛の顔面にナイフが近づいた。

巨漢の手首を左手でつかみ、手探りでブラスターを握る。
長く鋭い刃が真莉愛の左目に突き刺さるのと同時に巨漢の頭が血しぶきを飛ばして消滅した。

20名無し募集中。。。:2018/03/24(土) 20:01:13
真莉愛の耳にちぃの悲鳴が届いた。
カチッ、カチッ、カチッ。もう銃弾は残っていない。
それでも真莉愛は引き金を引き続けた。

そのあとブラスターを床に落とす。ゴンという音がくぐもって聞こえる。
「まりあちゃん!まりあちゃん!」ちぃの泣き叫ぶ声が大きな音になった。

真莉愛はなんとか肺に空気を取りこもうとして胸を大きくふくらませた。
ナイフは目に刺さったままだ。柄がテントのポールのように前後に揺れている。

「まりあちゃん!」またちぃの声が聞こえた。
「この…」真莉愛は手を目に持っていこうとした。
「だめ!」ちぃが叫んだ。

「…ちぃちゃん」真莉愛がささやいた。「ひどい?…」
ちぃは自分に強いて、真莉愛の顔から突き出たナイフを見た。
真莉愛は射殺した巨漢の男の血にまみれている。
目からは透明な液体が流れ出て、血の気のない頬を伝い落ちていた。

「そんなにひどくない」ちぃは嘘をついた。
刃渡りは少なくとも15センチ。3分の1は目を貫き、3分の1は脳組織に達している。
ひどいのは分かっている。口に出して言わなかったのは奇跡だ。

真莉愛は首に筋を立てて頭を動かすまいとこらえている。
ちぃの人工頭脳は通信ユニットを使い現在位置に救援を要請するシグナルを送った。
徹底的にデータベースを検索し、できるだけ広範囲に。

いつでも攻撃できる状態で浮遊しているドローンから小型のガトリング砲とセンサーが突き出していた。
たったいま砲弾を放ったように焦げた銅と硫黄の匂いを漂わせながら。


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