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( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双
1
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:37:04 ID:w.OycBSI0
お久しぶりです。2年ほど放置してしまいました。すみません。
VIPはすぐ落ちるとのことなので、こちらをお借りさせていただきます。
今回は最終話一つ前の第7話です。遅かったくせにすみません。
ご存じない方は、下記URLを参考ください。
ブーン文丸新聞 様
第一部 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire/retire.htm
第二部完結編 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire2/retire2.htm
では、開始します。
233
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:18:23 ID:HcbLbdA20
覚悟をしていた。
この旅行が、みんなで集まれる最後の機会かもしれない。
次はいつになるのか、見当もつかない。
今後は、四人とも違う道を行くのだ。
部隊に編制された場合、同じ組になるとも限らない。
職場で言葉を交わすことすら難しいかもしれないのだ。
それなのに……何故?
どうして、モララーは……。
( ・∀・)
( -∀-)「んんっ」
問いをぶつけられると、モララーは後ろを振り向いた。
軽く咳ばらいをすると、視線をトソンへと向ける。
(゚、゚トソン
“(^、^トソン
彼女が微笑みながら、ゆっくり頷くと。
大きく息を吐いて、意を決するように青年は向き直った。
234
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:19:14 ID:HcbLbdA20
( ・∀・)「…………実はね」
(;-∀-) =3
(* -∀-)
(* ・∀・)
(* ・∀・)「トソンさんに、僕との子どもが出来ました」
235
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:20:37 ID:HcbLbdA20
( ^ω^)
( ^ω^)
( ω ) ゚ ゚
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ !(あぁ、だからか)
(´・ω・`)
(´・ω・` )彡
(;´゚ω゚`) !?
(*゚∀゚)
(*゚∀゚)「え、マジ!?」
236
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:21:59 ID:HcbLbdA20
(゚、゚トソン「これが一緒に行ける、最後の旅行かもしれないから
心配かけたくなくて隠してたんだけど」
(;-∀-)「かえって、不安にさせちゃったみたいでゴメンね。
もっと早く話しておくべきだった」
(゚、゚トソン「病院に行っている間も、ずっと話してたの。
知ったら、みんなどうするかな、って」
(゚、゚トソン「心配してくれたり、会いに来てくれたりするだろうけど……
忙しい中、揃って山奥まで来るのは大変でしょう?」
( ・∀・)「だから、誰でもペンダントを使って。
いつでも来れるように出来ないかな、って思ったんだ」
つまり、とモララーは続ける。
( ・∀・)「また、あの山小屋に来てほしいんだ」
237
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:22:49 ID:HcbLbdA20
( -∀・)「理由なんてなくていいよ。
気晴らし程度で全然かまわない」
( -∀-)「全員一緒でなくても、ちょっとした空いた時間でも大丈夫だから」
( ・∀・)「これからも……仲良くしてくれたら嬉しいんだ」
(* -∀-)「みんな僕の、僕たちの大事な……」
238
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:24:00 ID:HcbLbdA20
( ・∀・)「大事な、友達だからさ」
.
239
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:24:53 ID:HcbLbdA20
どうだろうか。
と続ける前に、モララーの体には強い衝撃が走った。
( ;ω;)「あ、あた当たり前ですおーーーー!!!
いつでも遊びに行きますおーー!!
おめでとうございますおーーー!! うわぁあああ!!!」
ブーンの感極まった突進を、モララーは踏みとどまって耐える。
そんな幼い行動に、ツンは困ったように笑いながらも
小さく拍手をして祝う。
ξ゚⊿゚)ξ「おめでとうござます、モララーさん、トソンさん」
(*゚∀゚)「アッヒャッヒャ! 二人の子どもなんて、会いに行かない理由がねぇよな!」
(;´・ω・`)「あー、ビックリした。嬉しさで死にかけることってあるんだね」
それぞれが反応を述べ、小さな輪を作った。
一人は捲し立て、一人は祝辞を、一人は胸の鼓動を必死で押さえながら
一人は、ただただ泣きじゃくりながら。
冷たく深い海の底で、笑顔の花が咲いていく。
240
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:26:00 ID:HcbLbdA20
( -∀-)
大切な友達に囲まれ、モララーは思わず頬を緩ませた。
同じように喜びを分かち合っているトソンにそっと手を伸ばしす。
(-、-*トソン
愛しむように、その手を握る。
どんなことがあっても、自分はもう何も手放さない。
罪も幸せも、全てを抱いて生きていこう。
『黒風』……いや、モララー=レンデセイバーは、心から誓った。
241
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:26:46 ID:HcbLbdA20
涙のような三日月は、漆黒の夜空に浮かび上がり。
揺れ動く水面に照らされて、まるで微笑んでいるかのようだった。
( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。
番外編 三日月の涙 完
242
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 14:29:28 ID:HcbLbdA20
以上が番外編です。
モララーのお話は双で終わってましたが、子どもたちの話が完結していないなぁ
と思いだし、構想をぼんやり考えて数年経ってました。
最近、創作らしい創作もしてなかったので筆ならしでもしようかと考えて
今回の番外編を書いてみた所存です。
もしかすると、また筆ならしとかいって、どうでもいい小話くらいは書くかもしれません。
その時はどうぞよろしくお願いします。特に何か考えているわけではないですが。
本編+番外編は、これにて完結としようとは思っています。
ご愛読ありがとうございました。
243
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 16:05:19 ID:yIT7Yo7w0
乙
楽しかったです、
244
:
名も無きAAのようです
:2020/11/28(土) 22:36:27 ID:hCi4UOe60
乙!!
わくわくするシーンばかりで読んでて楽しかった
番外編はずっと子供たちの卒業の話だったんだなぁ
245
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:41:02 ID:oLCKM6Z.0
激しい雨が降っていた。
横殴りの風と、轟く雷鳴。
地に爆ぜる水滴音は、周囲の空間全てを満たすかのよう。
魔法で焼け焦げた大地が、再び湿り気を帯びるに十分な時間。
( ∀ )
一人の少年が、浅く息をしていた。
口からは赤い血が零れている。
膝から崩れたような姿勢で、彼は力なく項垂れていた。
髪の隙間からも漏れてくる雨水は、まだあどけない顔を通してゆき
ただただ、地面へ流れていく。
虚空のような双眸の見つめる先には、人の形をしたものがあった。
……もの、だ。
既にそれは生命活動を行っていない。
本来ついているはずの首と胴体が、全く違う場所に落ちているのだ。
とめどなく流れている血液は、土砂と入り混じっても尚、赤く広がる。
( ;∀;)
246
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:41:43 ID:oLCKM6Z.0
気付かないうちに、少年の瞳は涙で覆われていた。
雨と錯覚するほど、感情を押し流すように零れていく。
命を絞り出すように、深く重いため息が出た。
震える拳を握り、思い切り地面に叩きつける。
心の内が何もまとまらない。
後悔か、諦念か、達成感か。
混濁する心に任せて、少年はただただ呻き声を上げ続けた。
その日。
大魔術師モララー=レンデセイバーは初めて
人を殺したのだ。
247
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:42:28 ID:oLCKM6Z.0
( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。
【零落の黒き風】
.
248
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:44:05 ID:oLCKM6Z.0
――VIP大陸とラウンジ大陸。
お互いの資源を、技術を、我が物にするために始まった戦争。
事の起こりを覚えているものは、もう既に少なく。
いつしか、意地のようなものだけで続いていた争い。
終わりの見えない戦は、歴史的にみればある日突然、というほどあっけなく終わる。
これは、その『終わり』に至る、少し前のお話――――。
嘗九話「大魔術師の称号」
249
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:44:55 ID:oLCKM6Z.0
王都NEET。
絢爛豪華な装飾と上品な石造りの土台や外壁で作られた城があった。
都の名と同じNEETという城である。
大陸間戦争の、情報すべてが集められる間接的な最前線。
今、この大陸で最も多くの演算を行っている会議室の扉を
厳しい眉をした男性が仰々しく開けて入っていった。
(`・ω・´)「スカルチノフ国王陛下。お耳に入れたい話が」
/ ,' 3「ほ? なんじゃね、シャキンよ」
初老の男性スカルチノフ国王は、近衛の位を持つ人間たちの間で指揮を執っていた。
南の戦況を、東の水際の戦いを、北の物資の動きを、西の人の増減を。
余すことなく情報を取り入れ、処理していく。
齢二十七にして、聖魔術師という現場で戦う人間として
最高位の称号を持つ青年、シャキン=ノーファルはやや慌てながら
忙しない王の傍へ跪いた。
/ ,' 3「ワシは今取り込み中でな。ナンジェの戦で圧し負けたせいで
人員が一気に足りなくなっての。急ぎ編成を組み直さねばならんのじゃ」
(`・ω・´)「であれば、ちょうど良き話かと。こちらを御覧いただけますか」
シャキンはそう言うと、立ち上がり
脇に抱えていた封筒から紙を取り出して渡した。
それは魔術の込められた用紙で『投影現像用紙』という。
一枚の中に映像や記録を、分厚い魔導書ほど内包できる優れた情報処理器具なのである。
映し出されているのは、とあるテストの結果。
国王の座す王都から、もっともっと離れた僻地で行われた
傭兵を選定するための試験の様子である。
250
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:46:09 ID:oLCKM6Z.0
/ ,' 3「なんじゃ、こんなもの。ワシは時間がないと言って……」
国王は言葉を止めた。
流れている映像と、書きだされている文字。
それらを一目見て二の句を失う。
国王がやるべきことは、たくさんある。
現状の戦闘状態、陣地の把握。奪還すべき場所、陸路や海路の想定。
戦いだけでない、戦いを支える民草のための政策。
先祖代々受け継がれる業務は、国王一人で担うには余りにも多い。
傍で支える人間は少なくないが、最終的な判決をするのは王だけ。
酷く真面目な性格もあり、部下からの情報はすべて一度目に通すことを決めていた。
結果的に業務が多くなってしまうのだが……そんな王を、誰もが慕っていたため
最初の方こそ、あれこれ言われていたものの、いつの間にか彼の器に身を委ねていた。
そんな多忙な毎日。
何か、状況を打破できる策の一つでも振ってこないか。
そう神に祈りながら、精神をすり減らしつつも懸命に奮起していた時だった。
/ ,' 3「これは本物かね、シャキンよ」
(`・ω・´)「私も真贋を確かめましたが……。紛うことなく本物です」
/ ,' 3「……すぐにこの子をワシの下へ。今すぐじゃ。一時間以内に連れてくるんじゃ!」
251
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:47:36 ID:oLCKM6Z.0
彼の心労を、神は見ていたのだろうか。
とてつもなく希少な宝石の巨大鉱脈を見つけたような。
まさに天からの恵みと言える存在が、用紙に映し出されていたのだ。
――数刻後。
王の一言で動き出した近衛魔術師たちが、転移魔法で帰ってきた。
その中の一人が、場に相応しくないほど幼い少年をの肩を抱いている。
先ほどの用紙に映し出されていた容貌と一致していた。
少年は、転移前に瞑っていた目を開けるとキョロキョロと辺りを伺った。
後ろで簡単に結ばれた長い髪が靡く。
怯える様子もなく、慌てる様子もなく。
ただ、今いる場所を、自分の予想と照合させているだけのようだ。
/ ,' 3「うむ、よく来てくれたの。みな、すまぬが少しだけ席を外してくれぬか」
側近の騎士や魔術師は、どよめいた。
会ったこともないうえ、話したこともない。
紙の上で見た、『事実』だけを知っているからこそ、誰もが反対した。
/ ,' 3「ええんじゃええんじゃ。何かあればすぐ声をあげよう。
ワシは、この子と話がしたいだけなんじゃ」
ここまで意固地になると、梃子でも動かない。
王をよく知る人物たちは、諦めて会議室から外へ出る。
だが魔術師達はその前に、王へ厳重で強固な防護魔術を幾重にも。
騎士は扉のすぐ裏で、いつでも駆けつけられるよう完全武装をして待機した。
252
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:48:26 ID:oLCKM6Z.0
/ ,' 3「まったく、過保護な奴らじゃの。
……まあ、だからこそワシも彼らを気に入っておるんじゃがな」
/ ,' 3「さて、茶でも入れるかの。アージンは好きかね?」
少年は黙って頷いた。
/ ,' 3「そうかそうか。銘柄のこともわかるのか。君は聡(よ)い子じゃの」
言いながら王は、華美な装飾のついたポットを手に取る。
茶葉の入ったそれは、彼の手に触れると突然湯気を噴き出した。
魔法で中に水を生成し、瞬時に適温まで上昇させたのだ。
慣れた手つきで、そのままカップにアージンティーを注ぐ。
近くの椅子にスカルチノフは座るように促すと、少年は従った。
互いの前にカップを置く。
リンゴの果実のような、深い甘みのある香りが空間を満たした。
机を挟んで、二人は向かい合う。
王が勧めると、少年は小さく会釈をしてからアージンを口にした。
/ ,' 3「さて、突然呼び出したりしてすまなかったの。
何事かと、驚いたじゃろ?」
尋ねると、少年はゆっくり首を横に振った。
/ ,' 3「ほ? 想定内じゃったと?」
流石にここまで想定外ではあった、と前置きしつつも彼は続ける。
253
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:49:22 ID:oLCKM6Z.0
自分は、闘技学校で恐れられていた。
自身の中にある、とてつもない魔力。
そのことに気付いてから、あえて隠すようにしていた。
それは調和を乱さないため、彼自身が望んでやっていたこと。
だが、とある日の魔術講義の時間。
彼は、つい普段よりも強い魔法を使ってしまった。
気のゆるみだった。
こうすれば、もっと効率が良いはずだ。
安易な考えで行った、何気ない詠唱。
称号を持たない、見習いの『魔術師』が使うにはあまりに強大な魔術。
上級魔法を披露してしまった時からだった。
以来、彼の周りには人が寄り付かなくなったという。
攻撃されるんじゃないのか。
心の中を読まれたりするんじゃないか。
大事なものを取られたりするんじゃないか。
実は恨まれていたりするんじゃないのか。
思ってもいないことを、周囲は勝手に想像で事実のように捉えてしまう。
悲しくて寂しかったけれど。
自分の力には、何か意味があるはずだ。
きっといつか、役に立つ時が来るはず。
254
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:51:01 ID:oLCKM6Z.0
そう思って耐え忍び……来たる傭兵テストの日。
つまり、今日。
王は手元の用紙に移されていた、テストの成績を読み上げていった。
/ ,' 3「魔法力測定試験……EX(計測不可)
魔術操作試験……SS
魔術習得数実演試験……EX(測定不可)」
他にも行われた試験内容は、全て似たようなもの。
つまり、全ての成績を最高得点、またはそれ以上で叩き出していたのだ。
/ ,' 3「これだけやれば、国の偉い人が一人ぐらいは自分の力に気付くはず……。
そういう魂胆だったわけじゃな?」
肯定の仕草を見て、スカルチノフは堪えきれず笑った。
/ ,' 3「ほっほっほっ! 良かったの。
まさか、一番偉い人に見つけられるとは思いもしなかったか」
嬉しそうに皺を作った顔で、ひとしきり王は喜ぶ。
そして、決意をした。
255
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:52:26 ID:oLCKM6Z.0
/ ,' 3「間違いなく、キミのその才は必要じゃ。
国……いや、世界を変える力になるはずじゃ」
/ ,' 3「これより、キミはワシの傍で仕えるがよい。
そうじゃな……無二の称号『大魔術師』を与えようかの」
/ ,' 3「受け取ってくれるかな? モララー=レンデセイバーくん」
飲み干したカップを皿の上に置き。
大魔術師の称号を授与するために伸ばされた手を、受け取りながら
少年は、嬉しそうに笑って答えた。
( ・∀・)「はい。謹んでお受けいたします。国王陛下」
256
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:53:49 ID:oLCKM6Z.0
――――。
ミ;゚Д゚彡「国王、一体どういうことですか!?」
(;´・_ゝ・`)「『大魔術師』とはなんです!? 我々は何も聞いてませんよ!?」
直後の作戦会議室は、普段の会合よりもっと騒がしかった。
近衛の階級をもつ、長い付き合いの人たちは
国王が取り決めた出来事について、矢継ぎ早に問い詰める。
/ ,' 3「じゃからの、彼はとてつもない魔術師での……」
(;`_L')「実績も何もない、あんな少年をどうして突然接受するのですか!?」
/ ,' 3「成績を見ればわかるじゃろうて」
(:-@∀@)「それは飽くまで試験の結果でしょう?
王が仰ることを鵜呑みにするのであれば、彼は我々の上役になるのですか!?」
/ ,' 3「…………お主ら……ちょっと落ち着け……」
ミ;゚Д゚彡「王が良くとも、軍が認めませんよ!
誰が、あのような子どもに率いられると!?」
/ ,' 3「……はぁ」
大きくため息をつくと、スカルチノフは徐に立ち上がる。
そして、部屋の隅でちょこんと座り、出来事をただ傍観していた少年……モララーへ小さな声で尋ねた。
257
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:54:54 ID:oLCKM6Z.0
/ ,' 3「レンデセイバーくん。キミの実力を皆に証明して欲しい。やれるかの?」
( ・∀・)「構いませんが……一体、何をすればいいんですか?」
/ ,' 3「そのままの意味じゃ。ここにいるのは、ワシの……いや、VIP大陸の精鋭。
大陸間戦争の主導権を握る我が国で、最も強いとされる戦士達じゃ」
/ ,' 3「最前線には『聖』の位を持つものがおるが……
その上に座す『近衛』はそれらを超えるもの。
故に手元に置き、ワシの身と国民たちを守らせておる」
( ・∀・)「つまり、彼らにぼくの魔術師としての力を見せられれば
王のご決断を納得いただけるはず……と?」
/ ,' 3「うむ。人数、場所はキミが決めてくれて構わぬ。
城や無関係の人を傷つけさえ、しなければな。
ああもちろん、殺しはならんぞ」
( ・∀・)「なるほど」
/ ,' 3「まあ、後はワシも見てみたいの。キミの実力を」
モララーは近衛の戦士達を一瞥した。
それから少し考え、できうる限りの最善を尽くせる状況を練りだす。
( ・∀・)「わかりました。お任せください」
勢いをつけて、椅子から飛び降りるモララー。
その行動を一挙手一投足余さず見ていた大人たちは、固唾を飲んで次の句を待つ。
( ・∀・)「今此処にいる皆さん、全員とお相手しましょう」
258
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:56:13 ID:oLCKM6Z.0
ミ#゚Д゚彡「…………は?」
完全に舐めている。
彼らは、子どもの余りにも軽率な言葉に激昂した。
学校を卒業したばかりということは、まだ15歳になったかならないかの年齢だ。
近衛の騎士魔術師達は、戦歴だけでも彼の年齢を優に超える。
そんなまだ尻の青いガキが、一人で自分たちを相手にする?
冗談でも笑えない。
( ・∀・)「国王陛下。もう、始めても?」
/ ,' 3「うむ。許可しよう」
ニヤリと笑う国王に、モララーも同じように笑い返す。
( ・∀・)「では、ご照覧あれ」
そして二本の指を、床に突き立てた。
黒い魔法陣が発生し、辺り一帯を覆う。
ミ;゚Д゚彡「なに!?」
(;-@∀@)「次元転移魔法!?」
彼らの中でも扱えるものは多くない。
出来たとしても、不安定でまともに立っていられない状態になるだろう。
だがモララーは、その秘術を完璧に完遂させていた。
259
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:57:35 ID:oLCKM6Z.0
そこは、周りの人間以外は誰もいない真っ黒な空間。
液体を垂らしたような風景の、無限に続く闇だけが満たされている場所だった。
( ・∀・)「さて。王が実力を見せろと仰った以上、ぼくも全力を惜しみません」
( ・∀・)「そうですね。まず一人ずつで来るのだけは、おすすめしませんよ」
( ・∀・)「ぼくを屈服させることが出来れば、皆さんの勝ち。
手が地に触れればそれでお終い、で良いでしょう」
( ・∀・)「皆さんが一人残らず地に伏せられれば、ぼくの勝ち。
もちろん、倒れても立ち上がれば、勝負は続きます」
( ・∀・)「そんな簡単なルールですが。どうでしょうか?」
淡々と告げる、戦いの規則。
手のひらを向けて、提案をする彼に対し、既に場は動いていた。
(;`_L')「!?」
腰につけていた剣を抜き、一足飛びで切りかかっていた近衛騎士。
返事も聞かず、先制攻撃を仕掛けていた。
260
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 21:58:54 ID:oLCKM6Z.0
だが、刃は届かない。
モララーは差し向けていた手を、そのまま白刃に添えている。
ただ、それだけなのに動かない。
押すことも引くこともできず、騎士はただ全力を剣の柄に込める。
( ・∀・)「ふっ!」
モララーはそのまま刃を握りしめて砕くと、空いた手で腹部に手を当てた。
そして魔力を込める。
(;`_L')「ぐあっ!?」
甲高い音と、重い音が同時に空間中に鳴り響いた。
思わず漏れた呻き声は、瞬時に遠ざかる。
纏っていた鎧が砕け、はるか彼方へ体が転がっていった。
その衝撃の余波だけで、傍に居る者は体制を崩しそうなものだ。
( -∀・)「ね、一人はおすすめしないと言ったでしょう?」
余裕を見せた隙だった。
モララーの背後に黄色の魔法陣が発生する。
そこから伸びるのは、おびただしい数の薔薇の蔓。
上級魔法スペルシーラーは、対象の魔力を完全に封鎖する。
その半透明に光る蔓に触れれば、いかなものであろうと魔法が使えなくなるのだ。
261
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:00:10 ID:oLCKM6Z.0
( ・∀・)=3
スペルシーラーやスペルキャンセラーなど、所謂『対抗魔法』と呼ばれるものには
打ち破る方法が二つある。
一つは純粋に、それを回避すること。
魔法に触れさえしなければ、効果は発動しない。
もう一つは、術者の魔力より、より大きな魔力をぶつけること。
網で獲物を捕らえようとも、網の強度が負ければ捕獲にはならない。
今回、モララーはどちらの方法でも回避できたのだが……彼はあえて、後者の手段を取った。
(;^^ω)「!?」
理由は、対象に反撃がしやすいから。
スペルシーラーを唱えていた近衛魔術師は、モララーに強く睨まれる。
周囲の薔薇が解けるように散り、見えない力が一直線に飛んでいく。
途端に、術者は泡を吹いて気絶してしまった。
視線を通して、そのまま脳の機能を混濁させる精神汚染魔法の効果だ。
ミ,,゚Д゚彡「シッ!!」
集中で視野が狭くなったと踏んだ、その近衛騎士は槍による刺突をしかけていた。
並の相手であれば、速度と強度に抗う暇もなく、傷を負って床に転げていることだろう。
( ・∀・)「残念でした」
ミ;゚Д゚彡「あギッ!?」
262
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:02:08 ID:oLCKM6Z.0
まるで紙のように、体を旋回させてそれを躱す。
穂先から体まで、回り込むようにして接近し、鎧に触れる。
短い魔術詠唱で、近衛騎士は気絶した。
身体能力を強化させ、動体視力も超化。
今のモララーは、近衛騎士であれどまともに敵う相手ではない。
( ・∀・)「連携でもしてこないと、あっという間に終わっちゃいますよ。
まあ、ぼくはそれでも構いませんが」
余裕そうに、モララーが手をぷらぷらと振る。
彼の周囲には、既に数人の騎士と魔術師が倒れていた。
既に立っている者と伏せている者が、ほぼ同数になっている。
何度も言うが、王の側近でもある『近衛』の称号を持つ騎士と魔術師は
大陸の中においても、最強に位置する強さを持っている。
そんな彼らを相手に、息を切らすこともなく
たった一人で制圧できるモララー=レンデセイバーは、まぎれもなく異常だった。
地面から突如、激しくせり出す巨大な岩柱。
対象を高速で上昇させつつ、体を断面で傷つける土魔法が発動された。
包み込まれているのは、当然モララーだ。
263
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:03:09 ID:oLCKM6Z.0
だが、聳えた岩山は次の瞬間には氷と化す。
氷の結晶をまき散らしながら砕けると、それはそのまま攻撃へと転じられた。
術者は抵抗も空しく、四肢を氷漬けにされ動けなくなっていた。
次はナイフを投擲されたので、モララーはそれを中空でせき止める。
何本も何本も重なったところで、束に電流がぶつけられた。
二重の攻撃で、一気に押し切る算段だったのだろう。
( ・∀・)「スペルカウンター。レベル10」
( ・∀・)「5倍返し!」
刃は爆ぜたように飛び交い、騎士の鎧を破壊していく。
遠くで援護していた魔術師は、反射された雷撃を防護魔法で防いだが
最終的に威力負けをして、感電と失神をしてしまった。
接近戦を騎士が、遠距離から魔術師が。
お手本のような戦いの連携に、モララーは感心する。
高度な技術、魔術を肌身で感じる。
( ・∀・)(ああ、やっぱ近衛のたちは凄いなぁ)
素直に、そう思った。
彼にとってはわからないが、魔術書や戦術書を読む限りでは
この領域に達するには相応の経験と才能が必要のはずだ。
ならば、努力には敬意を払わなくてはならない。
264
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:04:05 ID:oLCKM6Z.0
( ・∀・)「国王陛下、少々失礼。」
/ ,' 3「ほ?」
安全な場所で見られるよう、遠くで離れて魔術結界を張られていた国王。
声を直接脳内に届かせる魔法で、そう言うと
モララーは、今いる次元から国王だけを返した。
( -∀-)「さて……」
攻撃の手は止まない。
回避のために空中へモララーは飛び立つが、氷の刃や火球の嵐が彼を襲う。
合間を縫うように鋭い弓矢も飛んできた。
強化された肉体で、それらを防御しつつ
彼は神経を集中させた。
( -∀-)「無音斬り裂く死の胎動。混沌へと還す静謐の刃よ……」
両の手をかぎ爪状にして力を溜める。
脇を締め、そこに魔力を込めると黒い雷がバチバチと音を立てながら発生した。
(;-@∀@)「ば、バカな……!?」
……その詠唱に聞き覚えるのある魔術師は、腰を抜かした。
騎士は、恐れずに立ち向かっていった。
止めなくては、終わってしまう。
誰もが、次の一手が最後のチャンスであることを悟っていた。
265
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:04:55 ID:oLCKM6Z.0
( -∀-)「心切り裂く瘴炎と化せ」
集中のせいで、浮遊魔法を解いたからか
モララーは落下を始めていた。
着地をした、今こそが好機だ。
残り僅かな近衛騎士たちが、その千載一遇の瞬間を狙う。
(;-@∀@)「違う、そこじゃない!!」
( ・∀・)「ネインエスパルダ!」
一人の近衛魔術師が叫んだ時にはすでに遅く。
狙っていたはずのモララーの体が透けた。
攻撃が空を切る感覚は、希望を絶望へ変える。
それは自動発動される、幻影魔法を事前に使っていたため起こった現象。
彼らの目に映るより、はるか遠くにモララーはいる。
そこで、闇魔法の『大魔法』を既に放っていた。
稲光する両手を一気に握る。
黒い空間を、更に覆いつくすように広がる漆黒の波動。
包み込まれた人間は、永遠に闇の奥底へ落ちていく感覚と
全身を縦横無尽に振り回される錯覚で、一瞬にして廃人へと化してしまう。
扱えるものが多くない、最高等に位置するランクの魔法だった。
266
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:05:42 ID:oLCKM6Z.0
( ・∀・)「こんなところで、どうですか」
パンと手を叩くモララー。
いくら何でも、今回は完全発動まで出来ない。
気を失ったと同時に魔法解除。
時空転移魔法も消し、既に周囲は会議室へと戻っていた。
周りに横たわる、戦意を完全に失った最強の兵士たち。
その結果を見て、スカルチノフ王は静かに涙を流した。
/ ,' 3(おお……この子が居れば……戦争は終わる。間違いなく!
『今度こそ』、天は我々を見放しはしなかったか……!)
歓喜に打ち震え手を叩く国王を見て、モララーは満足げに笑った。
つづく
267
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/21(日) 22:08:57 ID:oLCKM6Z.0
こんばんは。作者です。
本編の後の話は書かないつもりでしたが、前日譚的なのはまだ書けるな
と思って、書き始めました。
既に完結まで書き終えているので、毎週土曜日か日曜日の夜に投下しようと思っています。
よろしくお願いします。
あ、トリップも無いままだとアレなので、一応新しいのつけておきます。
268
:
名も無きAAのようです
:2021/02/21(日) 22:19:22 ID:tztj5/Vg0
え”マジですか
269
:
名も無きAAのようです
:2021/02/22(月) 00:38:42 ID:L3BGNJn.0
やったぜ
全何話とかは書き上がっててもまだ明かせないやつ?
270
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/22(月) 06:53:35 ID:xn4bgDv.0
>>269
話数については、作品の中にヒントがあるので探してみてください。
来週の更新で、まずわかるかと
271
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:12:02 ID:CwhOLy0A0
嘗八話「モララーの役目」
国王が、側近に僅か15歳の少年を置いたという達しが出てから一週間が経った。
王の目的はただ一つ。
長きにわたる戦争を終結させるため。
その切り札として、モララー=レンデセイバーを手中に収めた。
当然、彼のやるべきことは決まっている。
溢れる魔力、強大な魔術。
多彩な攻撃魔法を行使して、敵軍を瞬時に蹂躙。
別動部隊の為の支援魔法をかけ、進軍速度を急上昇させる。
若さゆえ、魔力の回復は早い。
彼は止まることなく、ラウンジ大陸の部隊を
まさに獅子奮迅の活躍で突破していく。
血の海を、死体の山を、魔術の空を。
決して常人では作り出せない、悪夢のような風景を
虚静恬淡と背後に置いていく。
272
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:13:32 ID:CwhOLy0A0
ミ,,゚Д゚彡「こぉら、レンデセイバー。何度言わせる。
スープを掬う時は手前から奥だ」
(`_L')「食べる際に、いちいちフォークを持ち替えるんじゃない」
(;-∀-)「ぐ……。はい」
――――わけではなかった。
何かしらの策があるのか、モララーは戦場へ出ることなくNEET城で生活をしていた。
庶民の出自ゆえ、特に厳しい教育もなく。
自分には余りにも関係のない世界のことだから、知りもしなかった
基本的な会食でのマナーについて、近衛の役職の方々から教授されていたのだ。
_、_
( ,_ノ` )「お、来たね。今日も頼むよ」
(;・∀・)「はい。頑張ります」
食事が終われば、次は厨房で皿洗いの手伝い。
庶民の者ならまだしも、王族貴族の使う食器類だ。
身体に害が出る可能性のある魔法は使えない。
よって、王宮内の食器類は手洗いのみとされていた。
防水魔法も使えないので、手が荒れる。
モララーは傷に良く効くクレスト草の軟膏が手放せなかった。
273
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:15:30 ID:CwhOLy0A0
|゚ノ ^∀^)「それにしても、あなたも大変ね。こんな雑用ばかり任されちゃって。
よく知らないけど、凄い魔術師なんでしょう?」
( ・∀・)「いえいえ。新参者ですから、これぐらいはしないと」
城の傍にある大きな大きな庭。
兵士達の洗濯物を、モララーと雑用係の女性で手分けして干していた。
干す場合は魔法を使っても問題ないので、モララーは素早く手際よく
紐にシャツを通したり、タオルの皺を完璧に伸ばしながらスタンドへ掛けていく。
量が量なので、二人がかりで魔法を使っても、それなりの時間を要する重労働だ。
慣れている女性は、鼻歌交じりで次々に干し紐へ服を通していく。
モララーと遜色ない速度なのは、熟練の業ゆえだろう。
( ・∀・)「しかし、流石は王宮ですね。外で洗濯物を干せるだなんて」
仕事を終え、出来上がった色取り取りの衣類による虹を前に、腕組をしながらモララーは感嘆する。
|゚ノ ^∀^)「確かにね。普通は家の中だし」
( -∀-)「食事に作法……何もかも、ぼくが知らない生活ばかりだ」
|゚ノ ^∀^)「辛い?」
( ・∀・)「いえ、全く」
モララーは嘘偽りなく、笑顔で答えた。
/ ,' 3『おぅい、レンデセイバーくん』
274
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:17:03 ID:CwhOLy0A0
夜も更けた頃合いだった。
モララーが額に流れる汗を拭っていると、頭の中に声が響いた。
対象とのみ、会話が出来る中級ランクの音信魔法。
魔術師といえ、王がそんな魔法を使えることに驚きつつ
モララーは返事をする。
(;・∀・)『はい、なんでしょうか』
/ ,' 3『少しこっちに来てくれんかの』
魔力の発信源を探る。
モララーが居る場所から、はるか遠く。
王都の上方……城の頭頂部からだった。
(;・∀・)『今すぐですか?』
/ ,' 3『出来る限りの』
(;-∀-)『かしこまりました。では、急ぎで』
モララーが、音信魔法を切ったと同時に念じる。
275
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:18:31 ID:CwhOLy0A0
上部から勢いよく滝のような水が降り注いだ。
全身を洗い流すと、頭を揺さぶり水滴を軽く弾く。
そして、風の魔術と火炎魔術を同時に使用。
温風で肌と衣服の湿り気を、瞬時に無くす。
遠くに生えている、香りの良いシルムの葉をちぎって引き寄せ
手の中に取ると、ぎゅっと握りしめた。
液体に変化したそれを霧状にし、モララーは体に振りまいてから
別の魔術詠唱をする。
( ・∀・)「時の間で空成る間へ。我が描きし時空へ飛ばせ」
青い魔法陣を足元に発生させると、光の球に体が変化する。
空間転移魔法。
彼が、この城に連れてこられた時に近衛魔術師が使ってた上級魔法だ。
( ・∀・)「お待たせしました」
/ ,' 3「ほー。本当にキミはなんでも使えるんじゃの」
276
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:19:43 ID:CwhOLy0A0
そこは、国王の部屋。
王位を脱ぎ、肌触りの良いガウン一枚で過ごせる快適な空間。
夜風が気持ちの良いバルコニーで、王は待っていた。
手には中身の減ったワイングラスを握っている。
普段から肌身離さずつけているという、金色のブレスレットが月光に反射し
少しだけモララーは目を細める。
/ ,' 3「どうじゃね、一週間過ごしてみて」
( ・∀・)「ええ、とても楽しいことばかりです」
/ ,' 3「ほっほっほ。そうかそうか。それは良かった」
( ・∀・)「国王陛下こそ。気は休まっていますか?」
/ ,' 3「ほ?」
( ・∀・)「お部屋の外……後は屋上の方も。
見張りの者が居るみたいですが。普段から、そうなんですか?」
/ ,' 3「おお、それか。
いやな、普段はそこまで厳しくしてはないんじゃよ。
ただ、君が近くに来る場合はどうしても、とな」
( ・∀・)「気配探知魔法は気にならないので?」
/ ,' 3「慣れたもんじゃよ。まったく。みな、過保護すぎるんじゃ」
( ・∀・)「そうですか……」
277
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:21:30 ID:CwhOLy0A0
過保護、と王は言うが。
モララーは、きっとその行為が
ただの善意で成り立っているのだろうと気付いていた。
会って、話して。改めてわかる。
自由そうだけれど、いつも民や国の為を思って
ただひたすらに邁進して生きていることを、肌で感じる。
そんな人に仕えられて、幸せ以外のものはない。
だからこそ、損得勘定なしにこの人を守らなくてはならない、と思うのだろう。
きっと、得体のしれない人物が急に傍に現れたから
みんな普段より、強く緊張しているに違いない。
ましてや、認否はさておき……自分たちより実力は上の存在。
忠義があるのであれば、警戒しない方がおかしい。
/ ,' 3「ところで、今日の訓練はどうじゃった?」
( ・∀・)「そうですね。捗ったんじゃないでしょうか。
みなさん、流石ですよ、昨日より、三十分も長く掛かりました」
/ ,' 3「ほっほっほっ。相変わらず、無茶苦茶なことを言うのキミは。
あれでも、我が大陸随一の精鋭なんじゃがのぅ……」
278
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:23:07 ID:CwhOLy0A0
モララーが先ほどまで行っていたのは
最上級の兵士に与えられる称号『近衛』達との模擬戦。
街から遠く遠く離れた、訓練専用の荒野で毎晩執り行われている。
近衛の兵士たちは、訓練こそすれ戦いの最前線には居ない。
故に、実践の感覚が薄れてしまう。
かといって、まともに相手を出来るのは同じ称号帯の人間のみ。
時間や相手を考えると、実戦形式の訓練をする機会は非常に少なくなってしまう。
そこで抜擢されたのがモララーだった。
それなりにプライドを持っていた彼らだが。
あの日、モララーに完膚なきまでに屈服させられてから
反発するように、挑み続けている。
未だ、誰も彼に土をつけることは適わないが
それでも、着実に距離が縮まりつつある実感はあるそうだ。
( ・∀・)「ところで、国王。ぼくから一つお伺いしても?」
/ ,' 3「おお、なんじゃね。なんでも聞くが良いぞ」
( ・∀・)「初陣はいつ頃になるのですか?」
/ ,' 3「ほっほっほっ。それか」
279
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:25:26 ID:CwhOLy0A0
不満があるわけではなく、純粋なる疑問だった。
スカルチノフは、モララーを戦争を終わらせる最強の手札として引き入れた。
だが、一週間経ってもやっていることは雑務や訓練のみ。
早く戦場に出せば、戦況は一変するはずだ。
なのに、どうして……?
ずっと思っていた疑問であった。
/ ,' 3「キミ一人の力で軍を押し進めるには、まだ信頼がなくての」
/ ,' 3「戦場に出て、場を制圧するまでは良い。
その後どうするか、じゃ。戦場は何も、原っぱだけではない。
野営地、市街地。それらも戦場になりうる」
/ ,' 3「敵とはいえ、非戦闘員をむやみに殺生するのは悪でしかない。
それではいけない。戦争が悪だと、怨恨しか生まぬ。
怨恨は終わりのない戦いを増長しかせん。
ゆえに、残された敵の『民』を保護する義務がワシらにもある」
/ ,' 3「たとえ、彼らが望まなくともの」
/ ,' 3「そこまでのケア、キミ一人で出来るかな?」
( ・∀・)「……いいえ」
280
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:26:57 ID:CwhOLy0A0
/ ,' 3「となれば、人を頼るしかないの。
じゃが、国を離れればワシの庇護も薄くなる。
ただただ、力ばかり強いキミの後ろを、不平不満無く任せられるようになるには
もう少しだけ時間が必要なんじゃよ」
( ・∀・)「なるほど。それでお城中の世話を……」
/ ,' 3「嫌かもしれんが、キミ自身の為に。
我慢して続けてくれぬかの。
時を見て、ワシはキミを使う予定じゃ」
/ ,' 3「その時は頼むぞ。大魔術師よ」
スカルチノフは、心の底からモララーのことを考えてくれていた。
ただの戦闘兵器では、軍の士気を維持するのは難しい。
特に、内戦と違い大陸間の戦争の場合は海も渡るほど長距離だ。
一日二日で終わる戦ではない。
士気が下がれば、質も下がる。
そこまで考慮して、スカルチノフはVIP大陸の一戦士として
モララーを馴染ませようとしていたのだ。
/ ,' 3(……心配しているのは、それだけじゃないんじゃがな)
今までの戦い方、訓練での動き。
スカルチノフは余さず見ていた。
そして、一つだけ気付いたことがある。
281
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:29:27 ID:CwhOLy0A0
それは、戦争においては致命的な弱点。
一人の戦士として、究極の欠陥。
だから、いつかどこかで克服してもらいたい。
しかし、それは本当にモララー自身が許せるだろうか。
堕ちゆく自分を受け入れられるだろうか。
この長い戦争を終わらせるためとはいえ
たった15の少年へ、重い十字架を背負わせるのに
無責任であってはならない。
スカルチノフ国王も、本当はどこかで迷いがあったのだろう。
そのために、少しでも平穏の場を作ってあげたくて
彼を城中作業員として兼任させていたのだ。
( -∀-)「はい。精一杯頑張ります……!」
モララー自身にも覚えのある『弱点』。
それを押し込めるように、強く拳を胸に当てて返事をした。
つづく
282
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:30:53 ID:CwhOLy0A0
おまけ
/ ,' 3「ところで、レンデセイバーくんよ」
( ・∀・)「?」
/ ,' 3「お主、近しい家族がおらんと言っておったの」
( ・∀・)「ええ。親戚は居ましたが……別段仲良くは。」
/ ,' 3「ワシも、妻に先立たれてからもう長くてな。
子供もおらんうちに、いつの間にか年ばかり食ってしまった」
/ ,' 3「ちょうど、息子や孫が居ればのぅと思っておったのじゃよ」
( ・∀・)(まさか……)
/ ,' 3「と、いうわけで。これからは、ワシの事を『お爺ちゃん』と呼んでも良いぞ」
(;・∀・) て「いやいやいや。仮にも国王様が何を仰っているんですか」
/ ,' 3「国王じゃが、一人の老人でもあるんじゃ。人恋しくなって、何が悪い!」
#
(;-∀-)「それはそうでしょうが……」
283
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:31:47 ID:CwhOLy0A0
/ ,' 3「別に、皆の前でそう呼べと言うわけではない。
ただ、少しでもお主にも
王都へ来て、安らかに思える場所があれば、と思ったんじゃが」
/ ,' 3「……ワシのことなんて、そんな風に思いたくないわけかの……」
(;・∀・)(うわあ! わかりやすく落ち込んでるぅ!)
/ ,' 3「寂しいのぅ……寂しいのぅ……」
チラチラ
(;・∀・)
(;-∀-)
(;-∀-)=3
(;・∀・)「わかりましたから。顔をあげてください、おじい様」
284
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:33:00 ID:CwhOLy0A0
/ ,' 3「ほ? 今なんと?」
( ・∀・)「おじい様、です。それじゃダメですか?」
/ ,' 3「よい、良いぞ! それじゃ! おじい様!
* 良い響きじゃのう……」
(;-∀-)(全く、本当に道楽好きな御人だなぁ……)
/ ,' 3「また暇な夜には呼ぶからの。
* その時はちゃんと来るんじゃよ、モララーくん」
( -∀-)「……ええ、わかりました」
王の威厳を下ろした時の、無邪気な老人の笑顔。
この人の為なら、頑張っても良いかもしれない。
そう思いながら、モララーは静かに夜風に当たりつつ
楽し気に話す、老人との会話を楽しむこととしたのであった。
285
:
◆mGwfd747EA
:2021/02/27(土) 21:36:02 ID:CwhOLy0A0
今回はちょっと短めでした。
基本的には土曜日のこれぐらいの時間更新になりそうです。
そんなことより、聖剣伝説LOMのリマスター発売が発表されましたね。
この作品を作る際に、発想の元となった作品なので興奮が止まりませんでした。
良かったらみなさんも、ホームタウンドミナを聞いてみてください。
モララー君の山小屋モデルは、「マイホーム」だったりします。
286
:
名も無きAAのようです
:2021/02/28(日) 06:55:35 ID:CdpBQlSs0
乙です
287
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:29:43 ID:xNGrs6b20
嘗七話「初陣」
( ・∀・)(おや……?)
城に来てから、二週間が経った頃。
テーブルマナーに怒られることもなくなり
皿洗いの速度や精度も格段に上昇した頃。
洗濯物を取り込み、城の倉庫へ戻る途中のことだった。
仰々しい鎧を着た軍隊。
破れたローブを纏う集団。
意気揚々としながら、上部の謁見室へ向かおうとする兵士たちが居た。
それ自体は別に珍しいことはない。
どこかで戦いがあって、戦果の報告に来たのだろう。
だが、今日は違っていた。
その集団から、一人だけ。
分厚い金属の鎧をガシャガシャと鳴らしながら
大股でモララーの所へ向かってくる男性が居たのだ。
288
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:31:19 ID:xNGrs6b20
( ゚д゚ )「……」
(;・∀・)「な、何か……?」
普段誰かに話しかける部位より、かなり上。
意識しないと見えないほど高くにある顔へ、頑張って首を向けながら問う。
だが男性は何も言わず、品定めするようにただただ少年を見つめている。
時折、何かを感じ取ったのか大きく息を吸い込むのだが
その動作が、捕食前の獣のようで強く恐怖心を煽る。
敵兵ではないし、何か粗相をした覚えもない。
どうしたものかと、ピタッと合ってから逸れない鋭い眼光に、脂汗を流している時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「こら、怖がってるでしょ!」
( ゚д゚ )「おっ!? お、おお。そうか! こいつは失礼した」
気持ちの良い高い音がパシーンと、モララーの上方から鳴り響く。
杖の先から延びた薄い布が、男性の頭部で叩かれたことが原因である。
音の割に痛みのない小道具を魔法でしまうと
男性の後方から、ゆるりと巻いた髪の小柄な女性が出てきた。
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんねぇ。この人、初対面の相手を無言で見つめる癖があって」
( ゚д゚ )「力量を測っているんだ。戦士として必要な行為なんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「だからって、誰も彼もやって言いわけじゃないでしょー?
そんなんだから、ロマネ君に抜かされるんだよ」
(; ゚д゚ )「そ、それは今関係ないだろう!」
289
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:33:19 ID:xNGrs6b20
(;・∀・)「……あの?」
ζ(゚ー゚*ζ「あっと。ごめんごめん。いきなりビックリしたね」
親し気に話す二人の空気と、今の状況がわからず
モララーは中身が山になった洗濯籠を脇に浮かせたまま、動けずにいた。
それを見て、女性は『白魔術師』の証である
戦闘用純白ローブの埃を叩きながら向き合う。
ζ(゚ー゚*ζ「私はレイ=デ=ジェレイド。デレでいいよ。
こっちは私の夫のミラン。みんなからは、ミルナって呼ばれてるんだ。
あなたは、モララー=レンデセイバー君でしょう?」
( ゚д゚ )「君のことが、戦線でも噂になっていてな。
それで気になっていた所、姿を目にしたからつい見入ってしまった。
無礼をしてすまないね」
大男は厳しい顔を緩ませて、握手を求めた。
鎧の胸元に刻まれた白い獅子は、彼が『白騎士』の階級であること示している。
おずおずとモララーも、勢いに飲まれながら大きな手を握り返す。
( ゚д゚ )「しかし、話を聞いた時は何かの間違いかと思ったが……」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、物凄い魔力ね。見たことないわ、こんな膨大な量」
(;・∀・)「ど、どうも……」
近衛の階級の人たちですら、一見ではモララーの強さを看破できなかった。
前情報があったからとはいえ、それを直に見て判断できるとは。
290
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:34:43 ID:xNGrs6b20
( ゚д゚ )「それほどの力量があれば、本当に終わりは遠くないのかもしれんな」
ζ(゚ー゚*ζ「出撃命令とか出ているの?」
( ゚д゚ )「おお、そうだ。戦利品なのだが、綺麗な小刀が手に入ってな。
お近づきの印だ、君にあげよう」
ζ(゚ー゚*ζ「やだ、そんな小汚いもの渡しちゃ失礼でしょ。
モララー君、今度もっとマシなもの持ってくるから。
そんなの受け取らなくていいよ」
(;-∀-)「あー……えーっと……」
似たもの夫婦という言葉があるが、その通りだ。
ペースがわからない。
デレが手綱を握っているように見えるが、デレもデレで
割と相手の様子を伺わずに、話したいことを述べてくるタイプだ。
モララーの周囲で見たことない人種ゆえ、困惑してしまう。
( ФωФ)「二人とも」
そんな二人の背後から、声がかけられた。
ミルナに劣らない、巨大な体躯。
佇まいだけで、モララーも一目でわかった。
かなり強い人だ、と。
291
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:36:49 ID:xNGrs6b20
身の丈ほどもある、大剣を背負った姿。
その階級にのみ着用が許可されている、金細工で魔術加工をされた輝く白銀の鎧。
彼ら、白騎士を従える部隊の総隊長……『聖騎士』だ。
( ゚д゚ )「ロマネスク」
( ФωФ)「寄り道する暇はないのである。
戦果の報告は速やかに行うように、と常に言っているのである」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだったね。
ごめんなさい、ロマネく……団長。
じゃあ、レンデセイバー君。またね」
( ゚д゚ )「好きな食べ物とかあれば、教えてくれ。また持っていくよ」
手を振りあい、二人は集団へ戻っていった。
その背を追うように、ロマネスクと呼ばれた軍団長も歩みを進める。
が、歩みを止めて背中越しにモララーへ話しかける。
( ФωФ)「……お主が『大魔術師』であるか」
(;・∀・)「え? あ、はい」
ちらりと、その風貌を見る。
王都での出来事は、ロマネスクの耳にも当然入っていた。
言うように、凄まじい魔力だ。嘘でも誇張でもない。
292
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:38:35 ID:xNGrs6b20
誰かが、その強さを持ってすれば戦争の終結も夢ではないと吹聴していた。
確かに、そうだろう。
……だが。
( ФωФ)(まだ、ほんの子供なのである……)
少しだけ失望のため息をつくと、ロマネスクはそのまま王の下へと歩いて行った。
一人残ったモララーは、無駄に流してしまった汗もそのまま
呆然と立ち尽くす。
(;・∀・)(なんか、嵐みたいだったなぁ……)
同時に思ったこともある。
ここに来て、初対面で。
モララーを恐れなかった人たちに、初めて出会った。
兵士以外の人たちですら、彼を受け入れるのに少しの時間を要した。
にも拘らず、まるで最初から恐怖なんて持たず
純粋にモララー=レンデセイバーという個人を見てきた人は
国王を除いて、居なかった。
( -∀-)(……ああいう人達も居るんだ……)
世の中、知らないこと。まだ出会ったことのない人が、本当にたくさん居るんだ。
改めて、世界の広さを身に染みて感じるモララーなのであった。
293
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:40:37 ID:xNGrs6b20
――――。
/ ,' 3『モララーくん、今からこっちまで来てくれるかの』
またしばらくしてからの事。
普段よりやや緊張気味の声で、王はモララーを呼び出した。
遠隔対話魔法の発信源を辿ると、どうやら『こっち』とは作戦会議室のことらしい。
それだけで、これから告げられるであろう出来事を理解した。
手に汗を握り、短く返事をする。
あてがわれていた自室から遠くないので、その高鳴る気持ちを抑える時間を作るため
モララーは歩いて、現場へ向かった。
/ ,' 3「よく来たの。ま、座りなさい」
( ・∀・)「はい」
既に、王と謁見するのに緊張は無くなっている。
城内の、日常と戦争が入り混じる独特な雰囲気にもとっくに慣れた。
だが、今日だけは違う。
今までにない、新しい出来事がこれから起こる。
その確信で、モララーの額はしっとりと汗ばんでいた。
294
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:42:37 ID:xNGrs6b20
/ ,' 3「この地図を見てくれるかね」
投影魔法で鮮明に映し出された、大陸の地図が部屋の真ん中にある。
スカルチノフが指をさすと、魔力に反応して赤い点が浮かび上がった。
王都から離れた土地。
戦線の激戦区というわけではないが、決して安全ではない地域だ。
/ ,' 3「今さっき入った情報での。
このシャトー方面に、ラウンジ軍の補給地があるそうなんじゃ」
/ ,' 3「隠蔽『呪文』で隠されておったせいで、なかなか見つけられんでな
ようやくしっぽを掴んだのじゃが……」
/ ,' 3「今、近隣で動ける部隊がなくての。
あるにはあるんじゃが……戦闘後で消耗が激しい」
/ ,' 3「じゃが、この機会を逃せば、また拠点を移動してしまうじゃろう。
ゆえに、早く叩く必要がある」
( ・∀・)「そこで、ぼくの出番……というわけですか?」
興奮を押さえながら、静かにモララーが告げる。
スカルチノフ王は、それに対してゆっくり頷いた。
/ ,' 3「聖魔術師シャキンの部隊が、近くで待機しておる。
彼らと合流し、速やかに敵拠点を潰して欲しいんじゃ」
/ ,' 3「出来るかの?」
295
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:44:44 ID:xNGrs6b20
返答は決まっていた。
モララーはゆっくり息を吐くと、覚悟を決めるように力強く答える。
( ・∀・)「はい、出来ます」
少年のやや強張った表情。
その覚悟と……一抹の不安を抱きながら。
スカルチノフは、遠くにいるシャキンへ魔法でやり取りを始めた。
が、その前に何かを思い出した王が、作戦机の傍にあった箱に手をかける。
/ ,' 3「おお、そうじゃ。初陣を飾るキミにプレゼントがあるんじゃった」
( ・∀・)「?」
――――。
(`・ω・´)「……む」
( ・∀・)「お待たせしました。モララー=レンデセイバー、ただいまより作戦に合流致します」
半刻後。
浮遊魔法を使って急行していたモララーが、地へ降り立つ。
長髪と共に、黒い外套がふわりと浮かび上がった。
296
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:47:16 ID:xNGrs6b20
(`・ω・´)「なんだ、そのマントは。黒魔術師の戦闘服とは違うようだが」
( ・∀・)「スカルチノフ国王からの戴物です。初陣祝いだそうで」
(`・ω・´)「……ふん。随分と可愛がられて。良い気分なものだな」
( ・∀・)「はあ……」
(`・ω・´)「いいか。お前を見つけ、そして王に推薦したのは私だ。
つまり、私が居なければ今のお前はここに居ない。
それを肝に銘じておけ」
( ・∀・)「それはどうも。ありがとうございます」
(`・ω・´)「……ちっ。作戦を伝える。こっちへ来い」
いまいち子供らしくない反応が気に食わないのか
シャキンは苛立ちながら、部隊を収集させた。
モララーは彼の態度に、苛立ちを覚えないわけではなかったが
何かを言い返しても、きっとこういう類の人には無意味だろう。
そう思って、グッと堪えることにしていた。
はたして、どちらが大人と言えるのだろうか。
(`・ω・´)「今我々が居る場所がここだ。
敵の拠点は、ここにある。
斥候によると、今動いているのは補給調達部隊のみ。
本隊はそれが戻り次第、活動を開始するそうだ。」
投影魔法で地図を使いつつ、シャキンが状況を説明する。
聞いている人数はかなり少ない。
動ける者だけ集められたようだが、下手すると両手で数えられるぐらいだ。
297
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:48:52 ID:xNGrs6b20
敵の拠点の規模を考えると、明らかに劣勢。
まともな戦闘行為であれば、逃げに徹する状況だが……。
(`・ω・´)「そこで補給部隊を我々が制圧し、その間に……レンデセイバー。
お前が拠点の本隊を潰せ」
( ・∀・)「ぼく一人で、ですか?」
(`・ω・´)「こちらは戦闘行動後なのだ。
逃げているわけでもないのに、連戦はかなり厳しい」
(`・ω・´)「だから、万全のお前一人でやるんだ。
出来るんだろう? 『大魔術師』であれば」
……この人は、多分ぼくの心配なんて微塵もしていないのだろう。
何かしら場をかき乱し、そしてあわよくば漁夫の利で功績をあげておく。
ダメならば、状況を鑑みて撤退を選んだ。そう報告すれば納得が行くから問題はない。
そんな魂胆が、嫌味ったらしい物言いから聞いてとれる。
棘のある言葉から汲み取った裏側に対し、思考を巡らせるモララー。
( ・∀・)「ええ、わかりました」
だからこそ、あえて胸を張って答えた。
内なる感情を押し殺し、何食わぬ顔で返事をすると
ショボンは、やはり不機嫌そうな顔で戦闘の準備を始めた。
( ・∀・)(…………ずるい人間だな)
298
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:49:52 ID:xNGrs6b20
ただ戦争の道具として。
自分の利益のためだけに、他人を利用する。
近衛の階級の人間は、もう上を見ることがない。
それぞれが国王に信頼を置かれているため、降格の心配もないだろう。
だから、権威の割には優しい人が多かった。
初見こそ、様々な軋轢があったにせよ、今ではモララーと不仲とは言えない。
王に呼び出されて、雑談をする夜の時間においても
既に見張りとして警戒する兵士は誰一人居なかった。
逆に、モララーが傍に居るならむしろ安全だろう。
そういう態度が見て取れるほど。
( ・∀・)「覚悟してなかったわけじゃないけど……」
実際に、悪意と悪態をつかれると癪に障るものだ。
このまま感情に身を任せると、自我のコントロールも難しくなりそう。
( -∀-)
国王から受け取った黒外套を、ギュッと握りしめる。
魔法繊維で編まれた特殊な素材のそれは、全ての光を吸収する闇のよう。
静謐を司るような、その様相と
自分を信頼して送り出した王の想い。
それぞれを胸に抱き、飽和させ、怒りを追い出す。
( ・∀・)=3「ふぅ」
一息ついて、顔を軽く叩いた。
開始の合図もないまま、いつの間にかシャキンの部隊は動き始めている。
299
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:52:06 ID:xNGrs6b20
自分が動いても問題ないだろう。
理解したモララーは、期待と不安が入り混じった複雑な感情のまま。
敵の陣営へと単身乗り込んでいった。
そんな背中を見ながら、一人の部下がシャキンに尋ねる。
( ><)「ノーファル団長。
本当に、あのような子供一人に任せて良いのですか?」
問いに対し、シャキンは移動用の馬に乗馬しつつ
鼻で笑いながら答えた。
(`・ω・´)「任せるも何も、奴はやると言った。
その結果を待つだけだ」
( ><)「僕も話は聞いています。
ですが……あの拠点の人数を制圧できるとは、とても……」
そもそもの前情報も少ない。
どんな兵士が居て、どんな武装がしてあるのか。
人数だけは、概算で把握している。消耗したシャキン部隊の5倍は居るそうだ。
(`・ω・´)「新兵が、己の力を過信して戦場で散る。
別に珍しい話でもあるまい。どうであれ、我々には関係ないこと」
(`・ω・´)「補給部隊の殲滅後、報告を待つ。
あの小僧へ手出しの必要はない。帰ってこなければ、我々も帰還すればいい。
これ以上、無駄な戦闘は避けるべきだ」
300
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:55:25 ID:xNGrs6b20
(`・ω・´)「まったく、王の道楽に付き合わされる身にもなってほしいものだ……。
気まぐれで、手駒に出来そうな優れた魔術師を見つけたというのに
まさか、王自らの側近……ましてや、特権階級を授けるとはな」
( ><)「……お気持ち、察します」
遠くで爆発音が鳴り響いた。
方角は、ラウンジの拠点方面。
どうやら、始まったらしい。
シャキンの部隊は、既に街道から逸れた高台の方で待機していた。
遠視、拡大の魔法と気配察知の魔法。
それらを行使して、好機を待つ、
自分たちの根城が攻撃を受けたのでは。
そう判断した、異国の装いをした集団が
案の定、慌てたように走っている姿を部隊の一人が捉えた。
(`・ω・´)「よし、行くぞ!」
数の不利もない。
立地も完璧。
これならば、問題なく勝てる戦。手柄になる。
運が良ければ、自らの招いた誤算の排除も可能。
どう転ぼうが、自分には利しかない。
ニヤリと笑ったシャキンは、馬から跳躍し
風魔術による上空からの奇襲を実施した。
301
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:56:27 ID:xNGrs6b20
(`・ω・´)「これで全部か?」
周囲に出来上がった、死体の山を見ながら聖魔術師が問う。
( ><)「はい。生存者なしです」
( ^^)「こちらも、制圧完了です」
泥が跳ねた頬を拭い、シャキンは遠くに待機させていた自分の馬を呼び寄せた。
軽くまたがり、さらなる追手が来ないか、しばし備える。
(`・ω・´)(思ったよりは時間がかかってしまったな)
いくら有利であったとはいえ、シャキン達は別の地域で戦闘行動をした後だ。
疲労もあったし、体力魔力共に消耗している。
自分たちの拠点を出てから、帰らぬ者になった兵も居る。
それでも、勝利を掴み取ったことには小さな誇りを感じていた。
( ><)「……そういえば団長。本拠点の方はどうなったのでしょう?」
(`・ω・´)「……報告もない。戦闘行為らしき音や魔力も感じない」
(`・ω・´)「この様子じゃ、どうせ死ん( ・∀・)「生きてますよ」
302
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:57:38 ID:xNGrs6b20
(;><)「な!?」
(;^^)「いつの間に!?」
突然、馬の前にモララーが立ちはだかった。
着地音すらしなかったので、本当にいきなり目の前に出現したように見える。
(`・ω・´)(転移魔法ではない……。ならば、風魔法か?)
僅かに足元に残る魔力を感じ、シャキンは憶測した。
物理的に移動してきたにしては、あまりに遠い距離の移動だが……。
それをここまで隠密状態で出来るものなのか?
(;`・ω・´)「……拠点はどうした」
冷や汗を垂らしながら、唾を飲み込み
意を決するように、一つの疑問を尋ねた。
( ・∀・)「とっくに制圧済みですよ。
皆さんの邪魔になってはいけないと思って、待っていたんです」
(;`・ω・´)「なに?」
( ・∀・)「戦果報告をしたいのですが。構いませんか?」
(;`・ω・´)「……」
その素っ頓狂な言葉に、部下と顔を見合わせる。
終わった? 既に?
あり得ない。
あの数を、自分たちの戦闘より早く終わらせた?
疑問は尽きることがないが、一つだけそれを解決する方法があった。
そもそも、それをするためにモララーはわざわざ彼らの前に来たのだから。
303
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 21:59:38 ID:xNGrs6b20
馬を走らせ、急いで現場へ。
目の前に映る光景は、信じがたいことだが……
モララーの言葉通りの、事実だった。
草は焦げ、家は凍り。
不自然なほど鋭利に切り裂かれた家屋。
無数の光弾痕や、呻き声をあげて横たわるラウンジの武士。
一個師団が近づいても、迎撃の気配がしない時点でわかっていた。
本当に、拠点一つを短時間で潰してしまったのだ。
(;><)「す……凄い……」
(; ^^)「これほどとは……」
倒れている敵兵を見る。
気を失い、浅い呼吸をしているその人物の装いは上位の呪術師だ。
VIP大陸で言うなら、聖魔術師級である。
(`・ω・´)「……」
爆破魔法で消し飛んだ家屋を、シャキンは覗き込んだ。
武装をしていない人間たちも、もちろん存在している。
衛生兵や給仕係だろう。
彼らも余さず、気を失って倒れている。
304
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:00:48 ID:xNGrs6b20
―――――聖魔術師は、既に違和感に気付いていた。
それは、戦闘を行ったのであれば、一つや二つはあっておかしくないもの。
戦士ならば、軍人ならば、誰であろうと作れるもの。
しかし、ここには一つもない。
繊細な動作、気遣いをすれば不可能ではない。
だが、それは……戦争においては、あまりに『無駄』な行為。
(`・ω・´)「!」
(;=゚д゚) 「ッ!!」
息を潜め、気配を殺し。
僅かな呪力で、音を消し。
一切の迷いなく、冷たい刃が首筋を襲う。
部屋の死角に隠れていた、敵兵の一人がシャキンへ奇襲を仕掛けてきたのだ。
305
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:02:09 ID:xNGrs6b20
並の戦士ならばやられていただろう。
だが、そこは聖魔術師。
動きに出る前の、微細な殺気を探知し迎撃行動に入っていた。
瞬時に繰り出せる得意の氷魔法。
動きを予測し、回避のために一歩だけ下がり。
凍てついた刃をもって、確実にその頸動脈を切り裂く!
(;=゚д゚)「がっ!?」
次の瞬間、敵兵は意識を失い泡を吹いて倒れた。
手に持っていた武器は、凄まじい力で掴まれたせいで
骨の砕けた腕と共に、重力に引かれる。
(`・ω・´)「なんのつもりだ」
(;-∀-)「……」
氷の刃は、斜めに敷かれたスペルカウンターで弾かれ、天井に突き刺さっていた。
問いに対し、焦りながらも間に割り入っていたモララーが答える。
(;・∀・)「そこまでする必要はないでしょう」
(`・ω・´)「……こいつは私を殺す気だったぞ」
306
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:03:36 ID:xNGrs6b20
(;・∀・)「ですから、ぼくが制しました。ぼくの不始末です」
(`・ω・´)「……」
その怯えるような、まだ光を秘めた純粋な瞳。
シャキンの邪魔をしたことを叱責されると、恐れているのではない。
原因はもっと別の……。
(`・ω・´)「お前は先ほど、拠点を制したと言ったな」
(;・∀・)「ええ、その通りだったでしょう。
多少、詰めが甘かったのは認めます」
(`・ω・´)「お前が言う『制する』とはなんだ?」
(;・∀・)「敵兵を屈服させ、再度戦闘行動を起させない状態にすることです」
(`・ω・´)「……」
(`・ω・´)「…………クク。はっはっはっ!!
なんだ、所詮はガキだったか!!」
モララーの答えに、シャキンは大きな口を開いて笑った。
周囲の人間も、堪らずその言葉に失笑する。
307
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:04:36 ID:xNGrs6b20
(;・∀・)「な、何が……!」
味方のはずの人間たちが、まるで途端に敵になったかのよう。
自分がおかしいはずもないのに、咎められる理不尽な感覚。
四面楚歌の状況が呑み込めないモララーの胸元を、シャキンは思い切り掴み引き寄せた。
(`・ω・´)「いいか、小僧。ここは戦場だ。
私たちは、戦争をやっているんだ。子どもの遊びではない!」
(`・ω・´)「お前の戦闘能力の高さには驚かされたよ。
残った魔力を見ても、間違いなくお前は我々の誰より手練れの魔術師だ」
(`・ω・´)「だが……この場において、お前を『強い』とは言わん。
何故だかわかるか?」
(;・∀・)「……」
(`・ω・´)「お前……『一人も殺していない』だろう?」
(;・∀・)「……!」
308
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:05:43 ID:xNGrs6b20
シャキンが言う前に、モララーは既に予感していた。
その核心を突かれることを。
彼の使った強力な火炎魔術も、激しい雷撃も、鋭い風の刃も。
全て、致命傷には至っていない。
気を失わせたり、腕を折ったり足を折ったりしただけだ。
確かに、即座に戦闘行動をすることは難しいかもしれない。
だが、確実な『とどめ』は一人として実行していなかった。
(`・ω・´)「そんな甘っちょろい心構えで戦場に出てくるとはな。
国王も盲目になったものよ。訓練のつもりだったか? えぇ?」
(;・∀・)「お……国王陛下は関係ない!」
(`・ω・´)「ある。王が気付いていなかったわけあるまい。
それでも、淡い期待を込めて送り出したのだろう。責任が伴う行為だ」
(`・ω・´)「だが、結果はどうだ? 私は今、殺されたかもしれないのだぞ?」
(`・ω・´)「私ではなく、別の人間であったなら死んでいたかもしれない。
そうなれば大きな喪失だ。鍛えた戦士を失うのだからな」
(`・ω・´)「わかるか? お前の言う『制圧』が招く結果がこれなのだ!
こんなものが、制圧行動になるわけがあるまい!」
(`・ω・´)「最も簡素でわかりやすい制圧とは、『敵の息の根を止めること』だ。
何故そんな簡単なことができん!?」
309
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:07:15 ID:xNGrs6b20
(;-∀-)「………………ぼくは」
(`・ω・´)「なんだ?」
(;・∀・)「…………」
言葉が出なかった。
何を言っても、きっと返される。
それは、モララー自身が誰よりわかっている。
(`・ω・´)「聞いてやる。言え。何故なんだ? あ?」
(;-∀-)「…………」
詰め寄られた顔をそっと押しのけ。
懸命の魔力で、掴まれた胸元の手を解く。
(`・ω・´)「はっ、言い返せもしないか。臆病者め!」
感情による反論をぐっとこらえ、モララーはマントを翻して歩き出す。
(`・ω・´)「このことは王にも報告するぞ。さぞや残念な顔をするだろうがな」
(`・ω・´)「はっはっはっはっ!」
(; ∀ )(…………くっ!)
モララーは逃げるように、青い色の魔法陣を発動させた。
光に体が消えていくその間も
周囲からの嘲笑だけは、ずっと耳に残っていた。
つづく
310
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/06(土) 22:08:00 ID:xNGrs6b20
中々、こいつマジでむかつくな……っていうキャラクターが作れなくて四苦八苦してます。
次回も予定通りに投下しますので、よろしくお願いします。
311
:
名も無きAAのようです
:2021/03/06(土) 22:40:41 ID:oNBg8PhE0
otu
312
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:26:01 ID:2vfxdqwE0
( ・∀・)「……」
その夜。
モララーは星の煌めく空を眺めていた。
風が強く、空気も薄い。
誰にも邪魔されることのない、自分だけしか居ないと思える空間。
そこは、城の最上部である、見張り台の更に上部。
屋根の上で風ではためく、NEET国の旗が飾られたポールの先に少年の姿はあった。
浮遊と足場固定の魔法を上手に使い、横なぎの激しい気流を物ともせず
ただただ座って虚空を眺めている。
彼の頭に反芻されるのは、戦場での出来事。
自分の甘さが招いた結果と、それを咎められたこと。
シャキンの態度に腹を立てたわけではない。
あの時、あの場においては彼の言動は正しかったと言えよう。
なのに、何故こんなにもやもやするのだろう。
お腹を摩ってみても、答えは見つからない。
( -∀-)=3「……はぁ」
悩んだところで、意味はない。
それを解消する手立てはあるのだが、踏み切れないのは自分の弱さ。
313
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:27:35 ID:2vfxdqwE0
沈む気持ちをため息に出してみたものの、わだかまりは解けない。
頭を思い切りかきむしり、髪がぼさぼさになるまで力を籠め続けた。
自傷行為で少しだけ落ち着いた心を取り戻すと、モララーは立ち上がる。
そして気配の遮断魔術を自分にかけた。
トンッとポールを蹴ると、甲高い金属音が空に溶ける。
見張りの人へ無駄な心配をかけぬように、真っすぐ急降下。
地面に向いていた頭をぐるんと回転させ、足を伸ばし
風魔法で重力と落下速度を相殺させ、ゆっくり着地した。
場所は、自室の窓枠。
施錠せずに出かけたので、そのまま楽に開けられた。
身体を屈ませて、柔らかなカーペットに足を落とす。
埃一つ立てずに受け入れた高級絨毯は、未だに彼の足には馴染まない。
モララーの自室は、城の一角に与えられた。
古い客室を、彼専用に仕立ててもらったのだ。
唯一の身内である親戚は、別に裕福ではなかった。
最低限の生活は保障されていたが、余裕とは無縁の世界。
だからこそ、落ち着かない。
無駄に装飾のされた部屋の照明も、艶やかに磨き上げられたテーブルも。
全身が溶けていってしまいそうなほど、ふかふかのベッドで眠ったことはまだない。
頭から肩まで覆える大きな羽毛枕と、薄いシーツを被って地面で眠るのがいつもの彼の就寝スタイル。
少しでも混乱した脳をすっきりさせようと、煩雑に置かれた寝具に手を伸ばした時だった。
314
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:28:41 ID:2vfxdqwE0
( ・∀・)(ん……?)
部屋の外に、誰かの気配がある。
それも二つ。
こんな夜更けに来る人物には、心当たりがない。
国王ならば『呼び出し』をするはず。
他にあるとすれば、清掃係の人だが……。
どうにも妙だ。
扉を跨いだ先に、じっと佇んでいる。
待ちくたびれているのか、爪先で地を叩く音も聞こえる。
何だろう、と思いつつ、敵意がないことだけは理解できる。
襲ってくるのであれば、もう少し上手に隠れるはずだから。
( ・∀・)(あ、そうだった)
忘れていた気配遮断の魔法を解いてみる。
すると、すぐにリアクションがあった。
「あれ? もしかして、もう部屋に居るのかな?」
「む? しかし、誰も通らなかったであるぞ?」
315
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:30:12 ID:2vfxdqwE0
「そうだけど……。うーん……。いや。やっぱり居るよ」
「おーい、レンデセイバーくーん! いるー?」
高い声と低い声。軽く戸をノックで叩く音もする。
障害物を挟んでいるため、くぐもって聞こえるそれには聞き覚えがあった。
( ・∀・)「どうしたんですか、こんな夜更けに」
ζ(゚ー゚*ζ「おお、やっぱり居た。
やあやあ、こんばんは。いつの間に帰ってきてたの?」
( ФωФ)「……こんばんは、である」
そこに居たのは、白魔術師のデレと聖騎士のロマネスクだった。
嘗六話「戦う理由」
316
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:31:15 ID:2vfxdqwE0
ζ(゚ー゚*ζ「はい、これ。お茶が好きって聞いたから。私と旦那からね。
初陣お疲れ様の労いの品です!」
( ФωФ)「……こっちは、衣類である。あまり替えを持っていないと聞いたので」
( ・∀・)「はあ、ご丁寧にどうも……」
香りの高い茶葉の詰め合わせと、仕立ての良いシャツを受け取りながら
モララーは戸惑いつつも、二人を迎え入れる。
何度か声をかけてもらったことがあるが、こうして面と向かって話すのは初めてだ。
部屋に客なんて招くこともなかったので、モララーは魔法で簡易ソファーを作った。
普段は使わない羽毛布団に、防水の魔術をかけて、水球を中に閉じ込める。
座れるように形成したそれは、柔らかく二人の腰を受け止めていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、何か飲んでたの?」
テーブルの上に置かれた、飲みかけの飲料物を見てデレが問う。
( ・∀・)「ああ、すみません。これは今朝のもので……。片付け忘れていました」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ。何を飲んでたの?」
317
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:32:54 ID:2vfxdqwE0
( ・∀・)「クレスト草の薬茶です」
( ФωФ)「クレスト草?」
( ・∀・)「はい、そうです」
ζ(゚ー゚*ζ「塗るのは聞いたことあるけど……飲むのは初めて聞いたなぁ」
( ・∀・)「すり潰して、高い温度で煎ずれば飲めるんですよ。
一種の着付け薬ですね」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだぁ。今度試してみようかなぁ」
( ・∀・)「ええ。ちょっとコツが要りますけど、簡単ですよ」
( ФωФ)「……」
( ・∀・)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
( ・∀・)「……おっと。おもてなしもせず失礼。
頂いたお茶、煎れますね」
ζ(゚ー゚*ζ「あら、どうも」
( ФωФ)「かたじけないのである」
ポットを瞬時に洗い、お湯で満たす。
統一感のないカップを人数分揃え、お茶を濾す。
318
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:33:52 ID:2vfxdqwE0
ピーベリーという、柔らかく甘い桃のような香りの茶葉だった。
舌に触れれば、踊るような甘味が口全体に広がる。
( ・∀・)「……」
( ФωФ)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
普段口にしない茶に舌鼓を打っているが、会話は弾まない。
再び沈黙が訪れる。
薄暗い部屋の中で、時計の音だけがただ規則的に鳴り続けていた。
他愛もない会話をしに来たわけではあるまい。
遅い時間。
初陣の後。
報告内容は既に、城内へ知れ渡っていることだろう。
『期待の大魔術師』の戦果だ。誰もが興味を持ったに違いない。
普段では起こりえない、普通じゃない出来事。
関連付けるには、充分な理由だ。
ζ(-ー-*ζ「……ふぅ」
319
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:35:03 ID:2vfxdqwE0
デレが小さくため息をつく。
この均衡状態に、意味がないことはわかっていた。
最初から変な探りを入れる必要もあるまい。
目の前に座る少年の、何かを伺うような目線に観念したのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、レンデセイバーくん」
( ・∀・)「はい」
ζ(゚ー゚*ζ「今日、初めての実戦だったよね」
カップを両手で抱えるように持ちながら、優しい口調で話す。
( ・∀・)「……はい」
ζ(゚ー゚*ζ「どうだった?」
( ・∀・)「どう、とは?」
ζ(゚ー゚*ζ「そのまんまの意味だよ。
人生の初体験だもん、何も感じなかったわけじゃないでしょう?」
( ・∀・)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「よかったら、聞いてみたいな」
( ФωФ)「……」
聖騎士の団長も、表情を変えずに聞きに徹している。
320
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:36:51 ID:2vfxdqwE0
( ・∀・)「……そうですね」
予想から遠くない内容の質問が出てきたので、モララーは動揺していなかった。
適当な嘘を述べることもできる。
大げさに話を盛って、落胆させることもできるだろう。
でも、何故だろう。
この人たちの前で、そんなことをするのは間違っている。
特別親しい間柄でもないはずなのに。
どうしてか、モララーは取り繕わずに口を開くことが出来た。
( ・∀・)「はじめ、国王陛下に命を下された時は、胸が躍りました」
( -∀-)「ああ、ぼくも遂に戦いの役に立てる時が来た、って」
( ・∀・)「学校での訓練とは違う。自分の意思、行動で全てが左右される戦の場。
そんな所に、自分も足を踏み入れるんだと思うと……」
( -∀-)「……なんだろう。ワクワク……うぅん……。ドキドキしていたのかな」
ζ(゚ー゚*ζ「うんうん。それで?」
( ・∀・)「一人で、拠点を制圧するように言われた時は、ちょっと驚きました。
そこまで任せてもらって、いいのだろうかって」
321
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:38:18 ID:2vfxdqwE0
( ФωФ)「それはシャキンの独断なのである。
力量があれど、新兵を一人で戦場に送り出すなんて、あってはならないのである」
( ・∀・)「ですよね。……でも、ぼくは抗議をしなかった」
( ・∀・)「だって、出来ると思ってしまったから」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
( ・∀・)「敵の拠点を見つけ、どう攻め入ろうか考えました。
奇襲するのか、正面突破なのか」
( ・∀・)「探知魔術で、敵の数が思ったより多くないことがわかったので
結局、正面突破で行こうと決めました」
( ФωФ)(……報告書の通りなら
普通はあの人数を、多くないとは言わないのである)
( ・∀・)「相手が何をしてこようと、勝てる自信がありました」
( ・∀・)「見たことない剣術だったけど。知らない武器だったけど。
魔法……いえ、呪文ですら、ぼくより何もかも劣る連中だった。
だから、怖くなかったんです」
( -∀-)「……でも」
モララーは思い出す。
それは、初めて相まみえた『敵』の姿。
322
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:39:45 ID:2vfxdqwE0
必死の形相で、自分を殺しに来る異国の人間。
気が遠くなるほど積んだ研鑽の時間。いや、毎日サボってたかもしれない。
若い男性だけど、故郷には誰か好い人でも居るのだろうか。
そうでなくても、大事な家族が居たりするかもしれない。
共に汗を流し、涙を飲んだ盟友達と晩酌を交わす約束もしただろう。
ああ、何でもいいから早く戦いが終わらないかな。
何もかも面倒くさい、逃げてしまうか。
一人ひとり、背負う人生がそこにはある。
ぼくは今から、そんな『人間』たちの今日を終わらせるんだ。
( ・∀・)「そんな権利が、ぼくにあるのだろうか」
( ・∀・)「たかだか15の子供が、他人の人生を左右しても良いのか」
( -∀-)「覚悟をしてきたつもりだったけれど……」
( ・∀・)「そう思ったら、魔力を強く込められませんでした」
323
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:41:26 ID:2vfxdqwE0
( ・∀・)「結局、ぼくに出来るのは、敵を地に伏せることだけだったんです」
( ・∀・)「情けない話ですよね。
やろうと思えば、出来るはずのことをしないで。勝手にやり遂げた気になってたのに。
結果的に……誰も殺すことは出来なかった」
( -∀-)「殺すことが……怖かった」
それ以上の言葉を紡げなかった。
何を言っても、もう自分を庇護することしかできない。
( ФωФ)「なんとも、甘えた思想であるな」
だから、そう言われても納得しかできなかった。、
数多の戦を勝ち抜き、首を切り落としてきた聖騎士は続ける。
( ФωФ)「情けが仇。自分の逃した敵兵は、いずれ力をもって反逆してくるかもしれない」
( ФωФ)「戦場では死ななかった者が強者である。
運よく生き延び、それを繰り返すうちに強大な力を蓄えるやもしれないのである」
( ФωФ)「だから、反逆の機会を与えぬよう、敵意を持った戦士は余さず殲滅すべし」
( ФωФ)「闘技学校の出自ならば、当然習ってきたはずである」
( ・∀・)「……ええ、もちろん。習いました」
324
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:42:48 ID:2vfxdqwE0
拳を握りしめる。
当たり前のことだ。
我々は戦争をしている。
幼稚な陣取り合戦ではない。
殺せば勝てるし、殺さねば負ける。
戦場に身を置くものならば、誰もがわきまえている心構え。
けど……それでも。
( ・∀・)「学生時代に疎まれている時でも。
こうして皆さんに受け入れてもらえて、お城で暮らしている時でも」
( ・∀・)「ぼくは不思議と、誰かの姿を目で追ってしまう」
( ・∀・)「楽しそうにしている姿、泣いている顔。怒っている背中。楽しそうな足取り。
どんな背景があるのか、いつだって興味がわいてしまう」
( ・∀・)「……人間が、どうしても大好きなんです」
325
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:43:51 ID:2vfxdqwE0
( ∀ )「だから……」
人間一人だけで、どれほどの歴史があるのだろう。
誰と会って、誰と別れたのだろう。
何が好きで、何がきっかけでそれに興味を持ったんだろう。
色んな人の、色んな人生を考えるのが好きだ。
そんな色づく明日を止めてしまうような自分は……堪らなく嫌だ。
ζ(-ー-*ζ「……なぁんだ、そんなこと悩んでたんだね」
( ・∀・)
相槌を打って、子供をあやすように聞いていたデレが鋭い言葉を放った。
少年が抱える、一つの、大きな悩み。
『そんなこと』なんて片付けられるなんて、酷く失望する。
真剣に悩んでいることを、大人は馬鹿にしたがるかもしれない。
幼稚な問題なら、なおさらだ。
それでも、決定的な何かに踏み出せない障壁に変わりはない。
簡単にあしらわれるのは、いくらなんでも。
326
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:45:27 ID:2vfxdqwE0
ζ(゚ー゚*ζ「私だって、誰かを殺すことは今でも怖いよ」
( ・∀・)「え?」
( ФωФ)「吾輩もである」
(;・∀・)「え? え?」
予想しなかった言葉に、モララーは挙動不審になる。
そのまま、正論で言いくるめられるものだと思っていたから。
まさか、肯定されるとは思わなかった。
白魔術師のデレでも、武勲のある勇士ロマネスクでも。
殺人には抵抗がある……?
ζ(゚ー゚*ζ「いくら敵でも、殺す行為に何も感じないなんて。
そんな人は、滅多に居ないよ」
( ФωФ)「いるとすれば、頭のねじが外れた戦闘狂か。
もしくは、大義名分で感情を押し殺せる大英雄ぐらいなものである」
ζ(゚ー゚*ζ「多少の慣れはあるけどさ。何も感じないって言えば嘘になっちゃうかな」
(;・∀・)「……そう……なんですか」
ζ(゚ー゚*ζ「私ね、今年で3歳になる娘がいるの」
( ФωФ)「吾輩は息子が」
327
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:47:12 ID:2vfxdqwE0
それぞれが、大事そうに持っていたロケットペンダントを見せてくれる。
ぷっくりとした顔の幼児、無邪気に笑う女の子。
二人とも、どこか親の面影がある。
ζ(゚ー゚*ζ「戦いがつらくなった時は、いつもこの子のこと思い出すの。
私がここで踏ん張らなきゃ、この子たちの未来が無くなってしまう、って」
( ФωФ)「相手も、同じことを抱えているかもしれないのである。
けれど、それを考え始めてしまえばキリがないのである」
( ФωФ)「そうなると、もう後に残るのは己が掲げる『正義』のみ」
( ФωФ)「生き残った方が、正しいと証明する」
( ФωФ)「誰かの為ではなく、自分自身の為に。我々は戦うのである」
( ФωФ)「自分たちの未来は、そうやって築いていくしかないのであるよ」
ζ(-ー゚*ζ「ま、うちの旦那みたいに、難しく考えるのをやめる人も居るけどね〜」
( ФωФ)「ミルナは、先ほど言った戦闘狂に片足を突っ込んでいるのである」
ζ(゚ー゚*ζ「でしょうね。だから不用意に敵陣へ突っ込んでケガしちゃったんだけど」
( ФωФ)「間抜けなのである。この場に居ないことを後悔すべきなのである」
328
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:48:46 ID:2vfxdqwE0
( ・∀・)「……」
( ∀ )
ああ、凄いな。この人たちは。
きっと、本当にたくさんの死体の山を作ってきたんだろう。
その度に、悩んだに違いない。
でも、守るべきものがあって、
それを失いたくない。
だから、戦う。
強い信念を持って生きている、本物の『戦士』なんだ。
モララーの視界が薄く滲む。
感銘を受けただけではない。
……悔しい。
自分も、その領域に入れるだろうか。
不安だらけだ。
今でも相手のことを考えないなんて、出来る気がしない。
理性の箍を外す器用な真似も出来るはずもない。
329
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:50:20 ID:2vfxdqwE0
けど。
それでも。
誰かのためじゃない。
自分の為に……!
( ∀ )「……ぼくも」
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
( ФωФ)「なんであるか?」
( ・∀・)「ぼくも、あなた達みたいな……立派な戦士になれるでしょうか?」
月明かりが部屋を照らす。
深く沈んだ気持ちを払拭するように、瞳に光が灯る。
330
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:51:32 ID:2vfxdqwE0
まだ年若い少年。
背負うには重すぎるかもしれない。
いつか重責に潰されるかもしれない。
しかし、それでも大人たちはあえて言う。
ζ(^ー^*ζ( ФωФ)「もちろん(である)」
少しでも先達の威厳を、若者の未来を明るく照らすため。
大きく頷きながら、返事をしてくれた。
つづく
331
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:52:51 ID:2vfxdqwE0
おまけ
ζ(゚ー゚*ζ「というか、モララーくんなら私たちより、ずっと凄い魔術師になるよ」
( ФωФ)「間違いないのである。
現時点でモララー殿の魔術は、近衛階位の人たちですら恐れているのである」
(* ・∀・)「そ……そうです……か?」
ζ(^ー^*ζ「やだー、照れちゃって。可愛い!
よーし、元気出てきたなら、もうちょっとお話しようか!」
( ФωФ)「では、今後のことを考えて海上決戦の戦術理論でも……」
ζ(゚ー゚*ζ「ロマネ君、そんなクソつまんない話で夜を更けさせるつもり?」
(;ФωФ)「クソつまんないとは失礼である! 大事な知識なのであるぞ!?」
( ・∀・)「……そういえば、お二人はやけに仲が良いですよね」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、うん。幼馴染だからね」
( ФωФ)「実家は共にVIP街なのである」
( ・∀・)「へー……どの辺ですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うわ、地図も投影できるんだ? キミ、本当に凄いね」
( ФωФ)「吾輩の家は……ああ、そこ。その家である」
332
:
◆mGwfd747EA
:2021/03/13(土) 21:53:49 ID:2vfxdqwE0
ζ(゚ー゚*ζ「私の家はそっちの方。ね、結構近いでしょう?」
( ・∀・)「凄いなぁ、お二人とも一等地じゃないですか」
ζ(゚ー゚*ζ「でしょう? 頑張ってるんだよ、これでもね。
そうだ。モララーくんのおうちはどこなの?」
(;-∀-)「……あぁ……ぼくは……えー……」
( ФωФ)「……デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんごめん。ね、ね。
ロマネ君の奥さんって、どんな人だと思う?」
( ・∀・)「え? うーん…………何となくでいいですか?」
( ФωФ)「言ってみるのである」
( ・∀・)「背が高くて……髪が長くて……ちょっと冷たい感じの綺麗な人……?」
ζ(゚ー゚;ζ「え、もしかしてモララーくんてば、読心魔法使えるの?」
( ・∀・)「あはは、まさか」(今は使ってないですけどね)
( ФωФ)「まさに、そのまんまの人である」
ζ(゚ー゚*ζ「今は休暇を取って、お子さんの世話してるんだって。
いずれは、どこかで会えるかもね」
( ФωФ)「……いずれ、であるか」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの、ロマネ君」
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