レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
タブンネ刑務所14
-
ここはタブンネさんをいじめたり殺したりするスレです
ルールを守って楽しくタブンネをいじめましょう。
-
4ママちゃんが最初のベビちゃんを育てていた時は、それはそれは優しいお母さんだったことは前にも言ったミか?
2周目以降生まれたベビちゃんには、4ママちゃんすごく冷たいんだミィ。
今だっておソト(雑居房)のどこかには4ママちゃんのおチビちゃんがなんにんか居るはずなのですミが、誰も4ママちゃんを訪ねては来ていません。
ハッキリ言ってしまうと、あまり慕われてないのですミィ...
ちなみにミィのチビちゃんは今おソトにはひとりも居ません。このところタマゴ不精でしたミィから...
前にもたしか一度こういう時期があったミィ
....どうでもいいミィか?
今は4ママちゃんのはなしミィよね
4ママちゃんは他の一部のお母さんタブンネのようにベビちゃんをボコしたり、まして食べちゃったりすることは決してありません。いつまでもおっぱいに引っ付いてる子を引っ剥がしてブン投げることはありましたミが...
話しかけて、あやしたりすることもしません。
4ママちゃんの子達はコトバを覚えるのが遅いし、おっぱい離れしても口調の覚束ない子が多いようです。
だけどキョーミ無さそうに見えて、踏んづけたりしないように気をつけていることもミィにはわかります
ブー垂れることが多いですが、ベビちゃんが『おっぱいほしい』って泣き方をするとちゃんとミルクもあげています。まあ座り姿勢でちょっと不親切なのですミが...
でも4ママちゃん、小さいベビちゃんやビョーキになりかかったベビちゃんにも冷たいものですミから、前にふたり、おソトに出る前に死んじゃった子がいます
これはいわゆる“自然淘汰”と言えるかもしれまミィ。自然淘汰は4ババさんから教わったことです。
おソト(野生)の世界では、弱い子よりも強い子を優先して育てることがあるそうですミィ
手のかかるベビちゃんが沢山いるとたいへんだから、強い子だけでも生き残れるようにするそうですミィ
正直よくわからミィが、おソトはおソトで色々たいへんだとゆうことミィね...
お母さん(4ババ)に知識として教わりその娘さん(4ママ)に実演を見せてもらうという、何とも稀有なできごとだミィ....
昔死んじゃったふたりのベビちゃんをニンゲンに回収された時、ほんの一瞬ですミが、4ママちゃんの凄く悲しそうな横顔を、ミィはたまたま見ていました。
4ママちゃんがホントは心の優しいタブンネさんだってミィにはわかります
....4ママちゃん、この狂ったおウチで生き抜くためにワザとイジワルな態度をするのは仕方がないミィ
でもどうか、この囲いの中に居る間だけでも、自分のベビちゃんに対してだけでも、どうか素直なココロで接してあげて。
もし小ベビちゃんが死んじゃったりしたら、また悲しい思いをすることになるんだよ....
-
生きるためだけのお世話して全く愛情注いであげない赤ちゃんは長生きしないって
昔そんな人体実験があったんだけど
ベビンネちゃんなんて余計もろそうだな
と言うか赤ちゃんにとってのストレスを実母自ら与えて旨味出させるとは4ママちゃん本当にタブッてるよな
-
今は4ママベビちゃん‘sが生まれて最初の夜です
ミィのベビちゃん達も、4ママベビちゃんも4ママちゃんも、ミィんなスヤスヤミィミィと寝息を立てています。ただひとり、寂しそうに泣いている子を除いて....。
ミィの視界にはうつ伏せに横たわる4ママちゃんのカラダ上半分と、そこにピットリくっつくベビちゃんが2匹だけ見えています。
小ベビちゃんはおそらく4ママちゃんすとおるの外側、足元に居るミィのかな?
見えてるふたりのベビちゃんは健やかなお顔で、タブンネさんらしくお腹がポッコリとしています
もうふたり見えないベビちゃんが居るはずミが、きっと4ママちゃんの反対側に居るのでしょう、気持ち良さそうな寝息が聞こえてきます。
皆さん、タマゴから出てきたばかりの赤ちゃんタブンネを見たことありますミ?
出てきたばかりの時は、カラダにベチョベチョしたお水がついていて、そしてお腹がまだゲッソリとしています。
ポケモンとは不思議なもので、生まれてすぐにゴクゴクとミルクを飲むと、あっという間にタブンネさんらしいカラダに変わるのですミィ
.....ピィ.......ピヒィ......ヂ.......ヂグッ......
....小ベビちゃん、ベチョベチョはニンゲンに拭いてもらったでしょうミが、きっとカラダはゲッソリしたままでしょう
もう泣き方も弱りきっていて、何を訴えているのかミィでさえわかりません。
寒くないだろうミか?このおウチの夜は結構寒いのです。フツーはベビちゃん同士で固まったり、お母さんにふっついたりしてあったかいするのです
どうかせめてぬくもりを得ていればいいのですが....
—
....ミィには今、一つの思惑があって、どうしようかずうっと悩んでいます。前にも同じように悩んだことがあります
それは小ベビちゃんをミィのすとおるまで呼びこんで、おっぱいをあげることですミィ。このままでは死んでしまうかも知れないミィから
産まれたて、ましてカラダの小さな子ならばきっと柵の下を潜れます
”きょーどーいくじ“とか言ったミィかな?
おソト(野生)の世界でも、お母さんタブンネ同士で役割を分担して、他ベビちゃんを育てることがあるそうですミィ。例によってこれは4ババさんに教わったことです。
このおウチですらさとごがありますミィからね。まあニンゲンが勝手に決めるのですミが...
しかしミィの思惑は少し事情がちがいます
4ママちゃんはベビちゃんをじゅうぶんに育てられるわけですミィから...
寧ろミィよりも若くて、きっとミルクもたっぷり出て栄養もまんてんミィ
どうせ育児放棄しているのだから、さっさと小ベビちゃんを呼び込めばいいと思いますミ?
そう単純なものでもありません。
なんというか、お母さんタブンネには“お母さんのプライド”のようなものがあるのですミィ
もし小ベビちゃんをミィが育てて、ミィのおっぱいを飲んで、完全にミィに懐くようなことになったら、4ママちゃんきっとすごく傷付きます
ミィも、もし自分のベビちゃんをさとごに出すってなったら、とてもイヤです。
他のタブンネさんを信頼していないわけではないですミが、自分のベビちゃんはとっても大事なのです
上手く伝わるミィか....
昔4ババさんから、きょーどーいくじをしても、ベビちゃんは賢くて、決して自分のママを間違えたりしないと聞いたことがあります
....4ババさんには申し訳ないミが、それは嘘です。ミィが昔育てたさとごベビちゃんは、ミィんなミィのことを『ママ』って呼んでくれたミィから
もちろん嬉しかったミが、少し本当のお母さんに申し訳なくもありましたミィ。
....そういえば一体どこから来たさとごちゃんだったのかな?
昔4ママちゃんが育児放棄した時、
「ミルクを飲めてない子がいるミィ!」
ってミィがちょっと怒ったことがあるのですミが、その倍くらいの勢いでどなり返されましたミィ
それ以来ミィは口出しをしていません....
ある意味4ママちゃんはポケモンとしての本能が残っているのかも知れミィね....
どうか小ベビちゃんが無事に....
...ミィ....
なんだかミィもねむく....
-
小ベビ「....ピィ.......ピヒィ......ヂ.......ヂグッ......(…もう……ごーるしても…いいよね…)」
-
生まれ落ちた瞬間から痛みと苦しみと悲しみと寒さにじわじわと満ちあふれていく小ベビちゃんだけど
そのまま弱って静かにこと切れる事も許されないとか
マジタブンネさん
-
その次の日のおはなしですミィ
この日はミィの人生で何度目かの、人生最悪の日となりましたミィ。
お昼過ぎのことですミィ
ミィはいつものように、ベビちゃん達におっぱいをあげていましたミィ
オトナリでは4ママちゃんも、昨日産まれたベビちゃん達におっぱいをあげています。
赤ちゃんタブンネがおっぱいをせがむ泣き声と、お母さんタブンネが授乳を促すあやし声には特徴がありますミから、一ヶ所でおっぱいタイムが始まると、こうして周りでもおっぱいタイムが始まることがよく起こります。まぁミィの方はもうベビちゃんがしゃべれますから今回のは偶然ミィけど
とにもかくにも、側から見るととても平和なように見えたでしょう....
ミィは精一杯アゴを引いてオトナリを眺めると、4ママちゃんのお腹に4匹のベビちゃんが吸い付いているのが見えました。
4ママちゃんはすとおるの後ろに座るスタイルでおっぱいをあげますミィから、横たわるミィからもなんとかその光景が見えるのです。
案の定と言いますミか、やはり小ベビンネちゃんの姿は見えませんでしたミィ
4ママちゃんの授乳スタイル上、どうやっても最大4匹までしか同時におっぱいが飲めません。小ベビちゃんは撥ね出されてしまったのでしょう
ちなみにベビちゃんが大きくなってきてすとおるに完全に入れなくなると、4ママちゃんは立っておっぱいを与えるようになります。
なんて言うのか....ちょっとエッチな光景に見えますミィ
そういえばずっとコエは聞いていたけど、小ベビちゃんの姿はまだ一度も見ていないなとこの時思いましたミィ
不安で、悲しい気持ちになって、ミィが視線を戻した時ですミィ
大きな奇声が聞こえたと共に、ミィの視界に猛スピードで“なにか”が吹っ飛んで来ましたミィ
ガシャン!ゴスッ!ゴッ!グキッ!
「チィ~」「...ゥァ...」「...ッ...」「チ」
“なにか”が4ママベビちゃん‘sであると理解するのに、少し時間がかかりましたミィ
ベビちゃん’sのコエはとてもか細い、キケンなものでしたミ。
みなさん、赤ちゃんがイタイイタイすると大声で泣き叫ぶのは想像しやすいと思いますミィ。すごく痛いハズなのにほとんどコエも出ないってことは、命のキケンが想像されミィ
すとおるや囲いの柵にガッチャンして、ベビちゃん達は地面に落っこちました。
パタパタとおててを動かす子、腕がひん曲がってしまった子、ピクピクと震える子、この世のものとは思えぬ光景に少し唖然としたミィでしたが、すぐに冷静になりましたミィ
さっきの奇声も、この子達を投げ出したのも間違いなく4ママちゃん、こんなことは初めてでしたミィ。
ミィ「ミィッ!4ママちゃん!何があったミィ⁉︎」
-
4ママちゃん
「ミ゛ィィ゛ァぁぁ゛っっ!グミャアア゛っ」
ミィのベビちゃん達も驚いて振り向いたミが、みんな何が起きたのかわからず呆然としています。当然ミィ。ミィですら何が起きたかよくわかりません。
ブチュッ!ビリビリビチャーッ!...
少しの間4ママちゃんの呻き声だけが響き渡った中、ヘンな音が聞こえてきました。
ミィには聞き覚えのある音でした。なんと言うか、おニクがイビツに破れるような、それはそれはイヤな、とらうまになる音ですミィ....
長女ンネちゃん
「ママ!おばさんのおマタから赤いウンチみたいのが出てきたミチィ!おばさんビョーキになっちゃったんだミィ!」
視野が不自由なミィに、お姉ちゃんが4ママちゃんの状況を教えてくれました
もしかしてとは思ったけど、残念ながらそれは起きてしまいましたミィ。4ババさんと同じ状態です。
でもどうして⁉︎4ママちゃんはタマゴを産んでしばらく経っているし、さっきまで....、昨日だって元気一杯で、ゴハンだって食べていたんだミィよ⁉︎
しきゅうのビョーキ....。4ババさんと同じ...。みきさあ?殺されちゃうミィ⁉︎まさか...。そんなまさか...!?どうして。どうして...!?
....あたまがパニックになってしまって、それから先のことはミィも全部ハッキリとは覚えていません。ミィのベビちゃん達に何かを聞かれた気もするミが、4ババさんの時の事を思い出して、ココロが壊れそうだったのですミィ
チュイ?.....チィ....チィッ!
ミィがどんな姿勢で居たのか、なぜソッチを見ていたのかもわからミィが、どこからともなく産まれたてベビちゃんのチィチィ声が聞こえて、ミィの視界に、小さな小さなベビちゃんのアタマがモゾモゾと現れましたミィ
その時はミィも錯乱状態でしたミが、それは間違いなく小ベビンネちゃんでしたミィ
「ウビャーーーッ!チガァーーーッ!
ヴォォォぉぉぉぉっ.....」
—いたい!いたい!ママ、やめて!どうして、ママ!ボクもおっぱい....ボクはさびしくて....ママ......
................
ようやっと姿が見えた小ベビンネちゃんは、瞬く間に変わり果ててゆきましたミィ....
....ミィにとってはパニックが多すぎて...。気がつけば小ベビちゃんの小さくて可愛いおててが無くなって、ボタボタと血が落ちてきて、おなかから長い紐が出てきて、アタマからは黄色のグジュグジュが滴り落ちてきましたミィ。あんなに弱りきっていたとは信じられないくらいの、絶望的な大きな叫び声が聞こえてきましたミィ
死するタブは全タブ賢タブとはよく云ったものだミィ。生まれてからずうっと命の瀬戸際に居た小ベビちゃんの叫びには、たしかに意思が宿っていましたミィ。
....君も辛かったんだね。ママに甘えたかったんだね
小ベビちゃんをそんなんしたのは、目が真っ白になった4ママちゃん.....
もう、もう何も考えられミィ....。
どうして、どうしてこんなことに....
なぜいつもタブンネさんが、あの優しい4ママちゃんが、産まれたばかりのベビちゃんが......
——
「3ママお姉ちゃああ゛あん!怖いミィ!死にたくないミィ!助けて!だすげてっ!3ママ゛おでえぢゃあああんん゛!」
どれくらい経ってからでしょうミか...
聞き慣れたコエで、しかしながら絶望感に満ち満ちた大きなコエが聞こえて、ミィがハッとして顔を上げた時です。
オトナリの囲いの前、おソト(雑居房)に連れ出された4ママちゃんが精一杯コッチを向いて、精一杯の大声で叫んでいましたミィ
....そのコエは、可愛いお顔は、フキゲンな態度になる前の、昔の4ママちゃんそのものでしたミィ。
しきゅうのビョーキになったタブンネさんの末路は、ミィ以上に4ママちゃんはよくわかっているでしょう....。自分のママが殺されるのを、4ママちゃんは目の前で見せられているのですから......
-
.........気がつけば夜になりましたミィ
ミィの横ではベビちゃん達が身を寄せ合って寝ていますミ。お昼まで賑やかだったオトナリの囲いは、もう誰も居ません
4ママちゃんは、さっき4ババさんと同じトコロへと旅立ってゆきましたミィ
4ババさんと同じ方法で....
ヒドイ、ヒドイ方法で......
.....もう、もうミィにはなにも考えられミィ
生まれてこなければよかったんだミィ
ミィも、ミィのママも、4ママちゃんも、ミィのベビちゃん達も....みんなミィんな.....
—3ママお姉ちゃーーん!
—死にたくないミィーーッ!!
—おでえぢゃーーーン!
—だすげでビィ〜ーーーッ!
—こわいビィーーーー!!................
....4ママちゃんの最後の雄叫びが、頭の中でグルグルしています
4ママちゃんはミィよりも若いタブンネさんなんだミィ
この汚いおウチで生まれて、一度もおソトに出たこともないんだミィ
生まれて間もない時はカラダも綺麗なタブンネ模様で、チィチィ♪ってすごく可愛いコエで鳴いていたんだミィ
初めてのタマゴが孵化した時は、泣きながら喜んでいたんだミィ
ニンゲン達の為に、何個も何個もタマゴを産み続けたんだミィ
最後はビョーキになって、凄くイタイ方法でニンゲンに殺されて......
.........................
4ママちゃんが連れて行かれる時、ミィは必死に戦いました
このすとおるを壊して4ママちゃんを取り戻そうと、何度も何度もブツかりました
戦ったのは何度目ミィか....
ママとお別れした時、初めてのたねつけの時、最初のベビちゃんがしゅっかされた時、オゲレツモブさんが囲いに侵入してきた時....
すとおるに刷ってしまったせいで、ミィのお腹の横の毛も禿げ落ちてしまったミィ
ムダだとわかっていて、ニンゲンと戦うのは愚かだと思いますミ?そうかもしれません
だけど、だけど他にどうすればいいのでしょミィか?4ママちゃんは、ミィの、ミィの大切なオトモダチなのですミィよ?
その4ママちゃんが殺されちゃうのに、黙ってお祈りなんてできるわけありまミィ
ミィが戦ってる時、クソローブシンがケラケラ笑ってコッチを見ていたミィ
どうしてアイツは笑ってられるミか?
こんなの、どう考えても許されミィ
4ママちゃんも、どのタブンネさんも、尊い尊いポケモンなんだミィよ?
クソブシンも、ニンゲンも、おかしいと思わないのかミィ?アイツらにはココロがないのミィ?
ミィだって、タブンネだって、別にニンゲンを、従業ポケ達を嫌いたくて嫌ってるわけじゃないんだミィ!
どうしてこんな....
どうして.......
........
-
.......気づけば朝になりましたミィ
おウチの外が明るくなっても、ミィ達タブンネのトコロには、お日さまは届きません。
お日さまの下はポカポカあったかいって、昔ママや4ババさんがゆってたな....
遠くでマメパトの囀りが聞こえるミィ
空なんて飛べなくてもいいから、生まれてきたくなかったミィ
——
やがてベビ達もムニャムニャと起き出したミィ
ミィが何も言わなかったから、誰も何も言いません
——
やがてひとりのニンゲンがやって来て、ブツブツ言いながらミィのエサバコにほんの少しゴハンを入れて去って行きましたミィ
昨日食べなかったから、あまり好きじゃないゴハンが山になっています。食べようとも思いません
ニンゲンはなんで毎日毎日ミィのエサバコにゴハン入れるんでしょ?そんなことして楽しいミか?いいことなんかミィのに
——
「......チスンチスン。ママ、おっぱいちょーだい。
ママ。お願いチ。」
ミィ?....今のコエは、妹ンネちゃんミか?
.....もうミィにはそんな気もなかったミが、気がつけば横になっていて、ベビちゃん達がミィのおっぱいに吸い付いています
ベビちゃん達におっぱいをあげる時は、いつもとってもくすぐったくて、勢いが強い時はチョット痛い時すらあるのですミが、その痛さすらも嬉しさが溢れるものでした。タブンネさんの特徴なのかな。
しかし今は嬉しさなど感じられません
煩わしいだけです
....なんだか4ママちゃんが赤ちゃんに冷たくなった理由がわかった気がするミィ。きっと4ママちゃ..
チィ.... ミチッ... ....チビン.... ....ミッ
.....ミィ。いつもはずうっとおっぱいに吸い付いているベビちゃん達が、少しだけ吸って離れていきました
......思わず、触覚を使いました。
何度も言いますが、ミィ達タブンネさんの触覚は、感情を読み取ることができます
.....ベビ達、『寂しい』って思ってるミィ。
それだけではミィ。おなかがすいて、『ママどうして?』って気持ちミィ。今おっぱいを吸ったばかりなのミ....
.....どうゆうことかわかったミィ....
ミィ、ミルクが出なくなっちゃったんだミィ...
ベビ達は隅っこに固まっておしくらまんじゅうしています。昨日の朝よりもおなかがペッタンしているように見えます
もう、ミィにはママの資格もミィ
ごめんネ。ミィのベビちゃん達....
4ママちゃん、どうやらミィも、そのうちソッチへ行くようだミィ....。待ってて、また仲良くしてね....
-
ミィッ!
こうしてただメソメソしているわけにはいかミィ!
ミィはお母さんなんだミィ!優しい優しい、タブンネさんなんだミィ!
ベビちゃん達におっぱいをあげる為に、ゴハンも食べなきゃ!お水も飲まなきゃ!沢山おはなししてあげなきゃ!沢山愛してあげなきゃ!
4ババさんのおはなしを思い出すミィ。
世の中には、まだ目の開く前に食べられちゃうベビちゃん、目の前でタマゴを破られちゃうタブンネさん、気の毒なタブンネさんが沢山居るんだミィ
ミィは、ミィの目の前には、可愛い可愛い、大切な大切なベビちゃん達が居るんだミィ!
ミィは幸せなタブンネさんなんだミィ!
この子達ももうすぐおっぱいを卒業して、いずれはとらっくに乗せられて、短い命が終わってしまうんだミィ。今ミィがおっぱいをあげることは、キライなニンゲンを喜ばせるだけかもしれミィ。
でも、でもこの子達は、毎日真剣に生きているんだミィ!
こんな汚くてうるさくて毎日酷いことが起こるおウチに生まれたくて生まれてきたわけじゃないでしょうミが、それでもどの子もとっても優しくてココロの綺麗な、タブンネさんらしいタブンネなんだミィ!
ベビちゃんは何も悪くないんだミィ
お母さんが、ミィが、せめて少しだけでも、ほんの少しの間だけでも、幸せにしてあげなくちゃ!
ありがとミィ、妹ンネちゃん。
たいせつなことを思い出せたミィ。
ごめんネ、ベビちゃん達。おなかがすいていたよね。ママに甘えたかったよね。不安だったよね。
きっともう少し、一緒に居られるから。
ママは君達のおかげで、とっても幸せミィ!
-
ミィの思いは、なんだか振りのようになってしまったミィ
お昼のゴハンの時間のことミィ
ニンゲンはミィのゴハンだけではなく、ベビちゃん達のゴハンとお水も置いて行きましたミィ
ミィはこれまでなんにんものベビちゃんを育てていますから、ベビ用のゴハンが与えられる意味がわかるミィ
もうすぐきっと、この子達とお別れしなければなりません
———
ミィ達のゴハンのことをおはなししていなかったミィね
ミィ達のゴハンは、おソト(種付けストール前の屋外)になっているヤツ(黒ずんで小さくて歪な形状のオボンオレン)が主な原料だそうですミィ。ミィのママがそう言ってましたミ
.....ママはそこまでしか教えてくれませんでしたが、ずうっと食べているうち、ミィには気づいたことがあります。このゴハンにはなんと、タブンネさんが混じっています。
間違いではないと思っています。
だってゴハンを眺めてみると、所々ピンクのおけけが混じっていますミから。
そしてたまに入っているイモムシみたいなのは、きっとタブンネさんの触覚です。
気づいてからはミィはイモムシは食べていません。食べれるハズがありません。
仲間を食べていることに気づいてからしばらくは、ゴハンを食べられなくなってしまったものですミィ。
...まあおっぱいを出すためにまた食べ始めたのですミが。それでも進んで食べたいとは思わミィけど。これしか食べものはありません
ニンゲンはこのゴハンのことを“たぶこっぷん”と呼んでいます。改めてニンゲンの考えることは狂っていると思いますミィ。
どこまでタブンネさんをいじめたら気が済むんだミィ!仲間を食べさせるなんて...!
ミィはファンタジーがキライなタブンネさんですミから、なるべくこの世界のゲンジツを子供達に伝えていますミが、ゴハンのことは教えないようにしています
知らないままでいた方が幸せに決まっているミィ
ママも、4ババさんも言っていたミが、タブンネさんは、本当は“おぼんのみ”っていうのと“おれんのみ”っていうのを食べて生きていくそうです。いつか食べてみたいと思っていますミィ。きっとおいしいんだろうなぁ...
(屋外に成っているのはオボンオレンだが、あまりにも汚く歪な為4ババですらそれに気づかない。工場群排気と酸性雨の為か味はやや酸味と苦味があり、「肥やしタブンネ」の為か少し旨味もある。本来のそれとは全く別の代物である)
———
長女ンネちゃん
「ねえママ、もうすぐお別れするミィ?ママはどこに行くミィの?」
妹ンネちゃん
「チィおソト行きたくない!ずーっとママと一緒チィ!」
ミフフ、ベビちゃん達が少し元気を取り戻してくれてよかったミィ。それにしても、生まれた時はあんなに小ちゃかったのに、よく成長したものだミィ。
ベビちゃんが大きくなるのは本当はすごくすごく嬉しいことなのですミが、ミィはフクザツです。
スクスク育つってことは、それだけしゅっかまでの時間がなくなるってことですミィから....
-
ここから子タブンネ達がどういう風に処理、加工されて運び出されていくのか今から楽しみ
そしてポケモンユナイトにもまさかの殴られ役としてタブンネちゃん続投とは……
やっぱ殴られるの好きなんすねコイツ
-
>>604
一度離乳で引き離すのに
4ママちゃんが初子の出荷がトラウマだって言ってるとこから
ベビを甘やかすいけないママには目前でやるのかと想像できてエモいですね
-
感慨に浸っているばかりではいられません
ベビゴハンが与えられたということは、今一度ベビちゃん達に伝えなければならないことがあります。
ミィ達タブンネさんの運命ですミィ
おソト(雑居房)では、毎日のようにタブンネさんがとらっくに乗せられて、しゅっかされてゆきます。
今ここにいるようにミィはとらっくに乗ったことはありませんミが、かぜのたよりというヤツで、しゅっかされるタブンネさんの行く先はなんとなくわかります。
殺されるのですミ
ほとんど感情の無さそうなおチビちゃんすら、とらっくに乗せられる時は凄く大声で暴れます。殺されることをみんなわかるのです。タブンネさんはとっても賢い生き物だってことを、どうか知っていただきたいミィ
ミィ達は、タブンネさんは、ベビちゃん達は、ニンゲンに殺される為に生まれてきて、殺される為に生きているようなものです。
....なんか我が子へ伝える教育としてイカれてる気もするミが、ゲンジツはゲンジツなのです
ミィのようなお母さんタブンネは、ベビ達を可愛いするだけではありません。色々なことをおはなしします。
もちろん4ババさんも色んなおはなしをしていました。
....いつも隣でミィもそれを聞いていました。
4ババさんはとっても優しくて、賢いタブンネさんでしたミが、ミィにはひとつだけ、どうしても賛成できないことがあります。
ニンゲンや従業ポケのことですミィ
4ババさんは、ニンゲンさんにも、他ポケさんにも、みんなに対して優しく接することが、“タブンネの誇り”だと言い聞かせていましたミィ。
しかしながら、いずれはニンゲンの手によってしゅっかされるのです。従業ポケどもはニンゲンに従って、タブンネさんをイジメるのです。そんなヤツらに優しくなんてする必要あるわけミィ!
4ババさんはちょっと優しすぎたのです!
ちょっと失礼ミが、4ババさんが『ニンゲンさんにも優しく』なんて言うもんだから、ベビちゃん達はみんなニンゲンを信頼していましたミ。
そのニンゲンさんに結果裏切られるから、4ママ妹ンネちゃんはショック死してしまい、4ママちゃんはイジワルな態度を取るようになってしまったのですミィ。
—
ミィはニンゲンは酷い生き物だとベビちゃんに教えています。そしてニンゲンのはなしの他に、従業ポケどもに対する接し方も、ベビ達に教えなければいけません....
このおウチにはミィ達タブンネさんの他にも、色々なポケモンが居ます
まずはタブンネさんを捕まえたりぶん殴ったりするヤツらミィ。ダゲキ、ローブシン、ズルズキンってのが居ますミィ
ズルズキンとローブシンは、タブンネを挑発したり、ニンゲンの目を盗んで触覚を引っ張って遊んだりする腐れゲドー野郎共ミィ。
ダゲキはちょっとマシですミが、アイツはアイツでココロのないヤツなんだミィ。ダゲキに殴られると凄く痛いんだミィ....
-
他に、おウチの床を掃除する係の、水の技を使うポケモンが居るんだミィ。ウンコ掃除係のクセに、みんな生意気なんだミィ!
フタチマルってヤツは割と無害ミが、しかしながら別にタブンネの味方をしてくれるわけではありません。
タチの悪いヤツはマリルリってヤツです。コイツはタブンネよりも小さくて弱そうなクセに、熱い水を吹きかけたり、ニンゲンに隠れてタブンネをブン殴ったりするクソポケなのですミィ!
もうひとり、シャワーズってのが居ますミィ。皆さんシャワーズを見たことがありますミか?おとなしそうな顔してますミが、皆さん決して騙されてはいけないミィ!とんでもない性悪女ミィ!タブンネのことを『ゴミタブ』とか『ウンコポケ』とか呼ぶのですミィ!
....そしてもう一匹、クワガノンっていうポケモンがいます。ミィがお母さんになって間もない頃にやってきました。
ミィがまだチビちゃんだった頃、シビビールってヤツが居たんだミィ。クワガノンと同じ、すごく痛いビリビリを飛ばしてくるヤツだったミィ。
未だに夢に見るミが、ある日突然、ニンゲンの横でシビビールは口の大っきい化け物に変わったんだミィ。突然の出来事におソトのチビちゃん達が逃げ出す間も無く、化け物は次々とチビちゃんを食い散らかしていったミィ。ニンゲンが慌てて化け物を引っ込め、後には見るも無惨な残骸が残りましたミィ....
シビビール、化け物が居なくなって喜んでいた矢先、クワガノンはやって来たミィ。
....なんて言うのか、ブシンやマリルリとは違う恐ろしさがありますミィ。ただただタブンネさんを殺戮することを楽しむ、ポケモン兵器のようなヤツですミィ。
ミィは戦うことは嫌いミが、クワガノンが尋常じゃないくらい強いのはなんとなくわかります。クソブシンやダゲキですらガノンが出てきたら怖がっていますミから....
———
......ミィッ。...ミグフン....ッッ.......ミスンスン.....
なんか自分で話していて、とても辛いおはなしだミィ....
ポケモンは.....同じポケモンです。
どうして、どうしてタブンネさんだけが、いつも辛い目に遭わなければならないのでしょう。殺されなければならないのでしょう。
どうして他のポケモン達は、タブンネを助けようとしてくれないミィ?タブンネじゃなくてニンゲンの味方をするミィ?同じポケモンなんだミィよ?
どうしてニンゲンは、タブンネだけを殺すミィ?マリルリやローブシンのことは可愛がるのに...。タブンネはよしよししてくれないミィ?
ベビちゃん達におはなししてこの世界のことを教えるのは当然ミィ。でもその世界自体が狂っていたら、一体ミィ達はなんのために生まれたんだミィ?
ミィだって、本当は4ババさんのように、
『みんなと仲良くするミィ!』ってベビちゃんに教えたいミィのよ?タブンネさんは優しいんだミィ。どうしてどうして、誰もそのことをわかってくれないミィ.....?
—
ミィッ!
いけないミィ。お母さんとして強く生きるって決めたばかりだったミィ!
ベビちゃん達は泣きながらも、ミィのおはなしを真剣に聞いてくれましたミィ。ミィがしっかりしなきゃいけないミィよね。
今までのベビちゃん達も、ミィんな、ミィんな良い子だったミィけど、今回の4ベビちゃんも、本当に素直な良い子達だミィ!
暗いおはなしをしてしまったミが、みんなどうかそのままのいい子で....
いつかきっと、アルセウス様がタブンネを助けてくれるミィ!こんな優しいタブンネさんがいつも悲しんでいていいわけが無いミィ!
きっと、きっといつか.....
-
そろそろクワガノンの再登場かな?
シャワーズちゃん、タブンネさん嫌いなの分かるけど
そんな汚い言葉遣いしたらダメよww
-
>いつかきっと、アルセウス様が
タブンネが創造神の名前を呼ぶとか凄い不敬ですねw
そして君達が食虐ポケモンなのは、神様も承認してると思うよ。
-
ベビちゃん達もすっかり元気を取り戻してくれて、ミィ達おやこは、これまで以上に仲良しするようになりましたミ。
すとおるのせいで抱っこもできないし、ギュッてしてあげることもできません
それでもひとりずつ、ミィのすとおるの前まで来て、尻尾をフカフカにしてあげたり、毛並みを整えてあげたりしています
....ちょっと窮屈なんだミィけどね。
ゴメンネ....ベビちゃん達。すとおるを壊す力がママにあったら、抱きしめてあげられるのに。ホントはみんなママにもっと甘えたいよね....
きっともうすぐお別れミィ
みんなどうか、タブンネさんの誇りを忘れちゃいけないミよ?
きっと大丈夫ネ。4ベビちゃん共とっても優しいもの。ママ、とっても嬉しいミィ。
—
その日はみんなで精一杯ふっついて眠りました。相変わらずすとおるが邪魔するミが、それでもベビちゃん達のぬくもりをミィはしっかり感じましたミィ
これまで何度も感じてきましたが、いつもとっても優しい気持ちになります
....昔4ババさんが言ってた通りだなぁと、今思っています。
なんやかんや悲しい出来事が起きて、許せミィと思うことも一杯ありますミが、やっぱり我が子達と居られるこの時間はとっても幸せです。
ミィの子どもに生まれてくれてありがとネ。
生きていればきっときっと、良いことが起こるミィから....ママはそう信じているミィ
———
次の日になりました
昨日と違って、ニンゲンは朝と夜、2回ベビゴハンを持って来ましたミ。
いよいよお別れが近づいてきたんだと改めて感じます
ミィは今日も、代わりばんこにベビちゃん達を呼んで、すとおるの前でヨシヨシしてあげました
ホントにみんな大きくなったもので、行き違うのも一苦労です
ミィがヨシヨシしてあげられない時、ベビちゃん達はおソト(雑居房)をよく眺めるようになりました。
ベビちゃん達もきっともうすぐお別れして、おソトに出ることがわかってきたんだミィね...
まあミィがしつこく言ってるからかもだけど...
ベビちゃん達は、もしかしたら早くおソトに出たいのかもしれないミィ。なぜならば、この囲いはとっても狭いのです。今のベビちゃん達が走り回ることなんてもちろんできません。あらゆる面でこのおウチは不自由です
ベビちゃん達、長女ンネちゃんと次女ンネちゃんは割とゴハンを食べてるミが、弟ンネちゃんと妹ンネちゃんはゴハンもお水もキライみたい。
わかるよ....ママもこのゴハンは好きじゃないから。仲間を食べちゃうなんてホントはしたくないミィ
-
ミィ達の暮らすこの囲いも、少し様子が変わってきました
ベビちゃん達がまんぞくに動き回れないのもそうですが、昨日一日でもの凄くクサイクサイになりました。
...敢えて口には出さミィけどね。
原因はハッキリしています
長女ンネちゃん達のウンチが、ミィのと同じ破壊力に成り上がったのです。自分で言うのもとっても恥ずかしいミが、“たぶこっぷん”を食べるとウンチがとってもクサイクサイになるのです。
この囲いは、たねつけのすとおるから戻って来た時はまあまあ綺麗にされてるのですミが、お母さんタブンネとベビちゃんが暮らしている間は一切掃除されません。
閉じ込められているわけですから囲いのどこかにウンチをしなければならず、ずっとクサイままです。ミィのかわいい肉球もきっとウンチまみれミィ。決して慣れることなどありません
今回のベビちゃん達はちゃんとトイレのできる子達ですが、それでも床はあちこちウンチ跡とオシッコ跡があります。怖いことが沢山あったから、ベビちゃん達その度にお漏らししちゃうからだミィ。綺麗好きな子でも、ビックリするとお漏らししちゃいます。
なんとなく、4ママちゃんの居た囲いの方を見てみました。
少ししか居なかったから割と綺麗ミが、よく見ると血の跡がついてるミィ
そういえば、小ベビちゃんは4ママちゃんに咬み殺されちゃったんだったミィね...
あの時はミィもパニックだったミが、他のベビちゃん達はどうなったんだミィ?どこかにさとごに行ったのミィかな?
今冷静に考えてみると、あの夜小ベビちゃんが寂しく泣いていた時、やっぱり無理矢理でもミィのところへ連れ込めばよかったミィ。あんなに小さいまま死んでしまうなんて可哀想ミィ
でもあの時は4ママちゃんに嫌われちゃうかもって怖かったんだミィ
....きっと今頃、天国で一杯ママに甘えているところだよね。キミのママはホントはとっても優しいミよ。沢山ミルクを飲んで、天国で大きくなってネ...
———
次の日、また朝からベビゴハンが与えられました。
ベビちゃん達、もう少し、もう少しだけきっと一緒に居られるミィ。ママが居なくなっても、ずっと仲良くね。どうかそのままの優しさで....
——
お昼過ぎのことですミィ
ニンゲンがひとりのお母さんタブンネを引き連れて、左の囲いまでやってきましたミィ。2ママさんってタブンネさんですミィ。たしか「2ママさん」じゃなくて別のおなまえがあるって昔言っていた気がするけど、忘れちゃったミィ。ごめんなさい...
2ママさんは、ミィや4ママちゃんのようにすとおるには入れられず、囲いにそのまま置かれました。
....無理もないことだミィ。2ママさんのお腹は、4ママちゃんよりももっと大きくて、とてもすとおるに入れるワケなんてミィことはミィにもわかるミィ
ミィもすとおるの外に出たいなってちょっと思ったミが、決して2ママさんを妬んだりはしませんミィ。ホントに大きなお腹だから心配ミィ
ミィ「2ママさん、こんにちミィ。おかげんいかがミィ?どうか無事にタマゴを産んでくだミィね」
「・・・・・・」
-
ミィが優しく話しかけても、2ママさんはうんともミィとも言いません。最初のベビちゃんがしゅっかされてしまった時からだったかな?あっと言う間に変わり果ててしまった、チョット気の毒なタブンネさんです
ミィのベビちゃん達も、久しぶりのオトナリさん登場で気になってるみたい。
だけど、みんな一度隣を見たミが誰も話しかけません。怖がってるみたいミィ
....無理もないことですミィ
こーゆう言い方は良くないかもしれませんが、2ママさんはとっても不気味です。ミィは挨拶するけど正直チョット怖いですミィ
みなさんは触覚がないからわからないかもしれミィが、フツーのタブンネさんのカラダの音は、「トクン、トクン...」て優しい音が聞こえます。オゲレツなタブンネさんだとそれがちょっと早くなるような感じです
それが2ママさんの場合、「ドッ...ドッ...ドッ...」って、なんかタブンネさんどころか、生き物ではない感じの音がします。
タブンネさんの触覚は相手の感情を読み取れるのは有名なはなしミが、2ママさんは一切の感情が読み取れません。ダゲキやクワガノンですら感情があるのミ....
さっきも言ったように、彼女はちょっと気の毒なタブンネさんなんだミィ...
このおウチへ来たばかりの時は、こんな感じではなかったのです....
—————
(また昔のおはなしですミィ。ちょっとお付き合いくださいミ)
初めて2ママさんと会ったのは、たしか種付けすとおるでしたミィ
ニンゲンA
「テメー!また入ってねえじゃねえか!そんなに交尾好きか⁉︎子宮でガキ殺してんじゃねえだろうな?オイ!」
昔のミィ
「ギャミーー!ごめんなさいミィごめんなさいミィ!!叩かないで下さいミィ!蹴らないで下さいミィ!もうたねつけは嫌ミィ!タマゴは産みたくミィ!ミィヤーーーン!」
そうだミィ。あれはミィが2回くらい連続でたねつけをやらされて、なぜかすとおるを移動させられず、かわりにニンゲンからブン殴られていた日だったミィ
お昼頃だったかな?ニンゲンがまんまるいヤツ(モンスターボール)を開けると、突然2ママさんは現れたのです。
まんまるに入れられるのは必ず別ポケだと思っていたから、あの時は驚いたミィ…
2ママさん
「ミッミィ?ここがミィの新しいおウチ...?ミィッ!タブンネさんがいっぱい!でもみんな凄く汚いミィ!それにとっても臭いミィ!どうして閉じ込められてるミィッ!?ミィこのおウチ怖い!イヤイヤ!牧場に帰るミィ!」
2ママさんは登場するや否や、何かが決壊したようにけたたましく叫んでいたミィ。
ニンゲンがぶっ叩いたり蹴り飛ばしたりしながらされるがまま、ミィのオトナリのすとおるに入れられました。
すとおるに入ってから狂ったように暴れていたので、ミィはちょっとおててとおなかを擦りむいてしまいミィ。たねつけすとおるは囲いの方と違って、お母さんタブンネ同士が密接しています。
-
2ママさん
「ミ゛ィッ!ミ゛ィッ!いやミィいやミィ!どうしてこんな狭い所に...!何かの間違いだミィ!飼育員さーん!助けに来て!ベッドもソファーも無いミィ!アンヨも痛いミィ!臭いミィ!こんなのイヤー!」
時々聞き慣れないコトバを言いながら、2ママさんはすとおるの前の方を必死に叩いていました。
よくわからミィが、無理矢理連れて来られたんだなってゆうのはなんとなくわかったミィ。
2ママさんが来たばかりの時は、嗅いだことのないとても良い匂いが漂ってきました。
昔のミィ
「2ママさん、落ち着いてミィ!おソトから来たのミィ?今は悲しいかもだけど、逆らってもミィ達の運命は変わらミィ!おててケガしちゃうミィ!だから落ち着いて....」
2ママさん
「...ミスンミスン。あなたは...?どうしてそんなに汚れているのミィ?ここはどこミィ?ミィは2ママさんじゃないミィ!◯◯(忘れちゃったミィ)っておなまえがちゃんとあるんだミィ!」
昔のミィ
「...ミィ。ごめんなさいミ。◯◯...さん?ミィ達は生まれた時にニンゲンにばんごうをつけられて、それで呼びあっていますから...」
2ママさんは4ババさんともミィのママとも違う、ちょっと変わったタブンネさんでしたミィ。決して嫌いってことはありませんが、なんていうか、ちょっと見てきたものがすごく違うっていうか...、ミィとはおはなしがなかなか噛み合わミィ。
—
2ママさん
「ミィ〜ン♪ミミィ〜ッ♪ニンゲンさん♪きのみをくれるミィ?それともポロックミィ?ミィ、ゴハンよりも先にここから出して欲しいミィ!それにミィ、どこかにリボン落としちゃったミィ!探してきて欲しいミィ♪」
ニンゲン
「おうおうおう新入りか。元気に媚びるね〜気色ワリィぜ、それ。明日は早速イチャイチャタイムだぞ〜。楽しみにしとけよ〜」
夜のゴハンの時、2ママさんはお耳をパタパタさせて尻尾をフリフリしながら、甘ったるいコエでニンゲンに話しかけました。
ご存知のようにタブンネさんは色々な可愛いコエを出すポケモンですミが、2ママさんのコエはミィも聞いたことのないようなコエでしたミィ
....チョット悪いけど、なんてゆうか、ニンゲンに向かってそんなコエを出すのはみっともないなってその時思いましたミ
2ママさんのお願いなど聞いてもらえるはずはなく、またしばらく大声で暴れたあと、しぶしぶ“たぶこっぷん”をチビチビと食べ始めました。
2ママさん
「ペッペッ!ミケホッ!....ミィ。このフーズ美味しくないミィ。お水もヘンなお味....。ねえ、3ママさん。他にはどんなメニューがあるのミィ?おやつはポロックミィ?ヒウンアイスミィ?」
昔ミィ
「めにゅ?ぽおっく?ミィ達が食べたり飲んだりできるのは、このゴハンとこのお水だけミィ。....お察ししますミィ。美味しくないミィよね。だけど我慢して食べミィと、死んでしまいますミィ」
2ママさんはギャグみたいな顔で驚きながら絶望していましたミィ
—
2ママさん
「ミフッ。ミグッ。...ミンミン。....こんなの絶対何かの間違いミィ。ニンゲンさんのおウチはフカフカのソファーがあって、美味しいオヤツも沢山食べれるって....。早く迎えに来ないかな。ミィ臭い所嫌いミィ...」
なんやかんや言いながら、2ママさんはゴハンを全部食べて、お水も全部飲んでました。
2ママさんがどんなトコロから来たのか、今でもあまり詳しくは知らないミが、なんとなく悪いタブンネさんではないんだなと思いました。最初はちょっぴりニガテだったけど。
元のおウチに帰るって言い張っていましたミが、次の日たねつけが行われミィ....
-
2ママ元バースデータブンネちゃんかw
落ちぶれたバースデーちゃん主役の話はたくさん見るけど客観的に他タブさんの目から見てみるとこんなんなのか
究極のお花畑系なんだろうな
-
タブ虐するのは発達障害、愛着障害、パーソナリティー障害のどれか
つまり人間的価値が低く、貧困家庭に生まれた生まれながらの棄民であるのは明白である
-
虐.厨は脳に障害があって、自分の幸せを自覚できないから他者を虐げて留飲を下げようとする
チー牛キモメンなので女にもありつけないから女性的な印象が強いタブンネを凄惨な目に遭わせることで心の平衡を取ろうとする異常性欲者なのだ
-
2ママさん
「ミギィ〜ッ....ッァ...。ぐ、ぐる゛ミィッ。なんなのミィ?ごのネッグレスは...?ニンゲンざん!外して欲じいビィ〜....」
昔ミィ
「2ママさん!それは“くびわ”ミィ!もう諦めるしかミィ!”たねつけ“が終わるまでは外されミィ!歯を喰い縛って!気持ちを強く保つミィ!」
朝ごはんの少し後、それは唐突に始まりましたミィ
始まる前にたねつけのコトを教えてあげればよかったなと後悔したミが、仕方がなかった気もしますミィ。2ママさんがあまりにもゲンジツを受け入れていない様子だったものですから、アレコレ言うのも気が引けたのですミィ....
ニンゲンA
「新入り、暴れんじゃねえ!もうすぐママになれるぞ〜、嬉しいなあ、良かったなー!」
ボコッ!ゴスッ!
2ママさん
「ミキャキャァァあ゛ばばっ....!いだいっ!イヤ゛ッ!ごわいミィ!ごばいビィ〜ンン....!どぼじでっ!なんでだだぐのビィっ⁉︎だでがっ!だずげでっ!ヤメてミ゛ィーーッ!」
ニンゲンB
「いや〜スゲえ抵抗っすねコレ....。ペット用個体ってどんな教育受けて....てか、あーっ!やべえ!コレって注射打ちましたっけ?」
ニンゲンA
「あーやべえ!打ってねえわ!今からでもいい!お前持ってこい!バージンの9ヶ月だから生殖は問題ねえけど、数出なくなる!」
—
ミィや4ママちゃんも“初めての時”はかなり抵抗したものですが、2ママさんもその例に漏れませんでしたミィ。
2ママさんは“とざま”ですミィからこの後何が起こるかまだわかっていなかったでしょうミが、恐怖で泣き叫んでいました。涙の飛沫がミィにもたくさんかかりましたミィ。
たねつけの時はくびわとくさりで自由を奪われてから、すとおるの後ろが開けられます。
ニンゲンの言う通りにお尻をすとおるの外に出すまで、きんぞくばっとってヤツで何度も突かれるのです....
—
2ママさん
「グミブミミグミィブィャ〜〜ァ゛ァ゛ァ゛!?びっダ〜!イダイ!ビィのアンヨ゛がぁ!?ビィ〜ぶるるっ....」
やがてニンゲンによってタブモモに“くすり”を打ち込まれ、2ママさんの呂律が回らなくなってきましたミィ
ミィはこの時何度もたねつけを経験していましたミから慣れっこというか、当たり前のできごとのようになっていましたが、改めて狂った行為だなって思いましたミィ
他のポケモンさんやニンゲンも、こんなコトをしてタマゴを作るミィのかな?
ドスン、ドスン、ズズ...ズリュズリュ.....
そうこうしているウチに、”たねタブンネさん“の足音が聞こえてきましたミィ
たねタブンネさんがなんにん居るのかミィも知らないミィけど、トコトコっていう普通のタブンネさんの可愛い足音とは違い、重々しく、何かを引きずるような重厚な音がしますミィ....
ニンゲンA
「おうおう王子来ちまったぞ!ホラ2番、姿勢悪い。もっとケツ突き出せ!」
ゴッ!ゴキッ!
2ママさん
「...グッ!....ミゴッ.....
ニンゲンはすとおるの上によじ登ると2ママさんを踏みつけ、もうひとりがボウを嵌めて2ママさんのアゴと背中を固定します。ミィのところにボウははみ出してきますが、頑丈に固定されていて助けてあげられません
すとおるはタブンネさんを閉じ込めるだけでなく、時に拷問器具と化しますミィ...
-
たねタブンネさん
「グミヒヒィ〜ッ♪ブミビィ!ブミッ!ブヒッ!若い娘だミィ!いいニオイだブヒィ♪はやくっ!はやぐっ!」
ニンゲンC
「お待たせっす〜2番って新入りだっけ?準備良いっすか?種Aで記録お願いしまーす。放しますよ?」
ニンゲンB
「Aね、了解。いや〜今日も不気味なほど元気だねー。。俺何に生まれ変わっても畜タブ舎の母タブンネだけは絶対嫌だわ。そんなんツッ込まれたら死ぬだろ...マジで....」
2ママさん
「.....ミィ⁉︎.....次はナニ?男の子のタブンネさん...?....ミィ?....ハァ...ッ.....あなた....しゃべり方がお下品ミ。そんなんじゃレディに嫌われえ゛オオオオオがアガガガガがびぃぃぃやーーーああ゛!?痛い!イダァァァァァビィ!ヤベデッ!おでがいヤメでミィィィガァァァァァ....!!!
ブチュッ!ゴッ!ゴッ!.......
.....惨い悲鳴とおマタが破ける音が響いて、たねつけは始まりましたミィ
ミィは何度もやらされてるって言いましたが、実は何が行われているのかハッキリとは知りません。ただおマタにものすごく太くて長くて熱い“何か”が入ってきて、カラダの中から焼かれているようなカンジです。
.....言ってるだけで震え上がるミィ
たねタブンネさん
「ブミィバッフォン!ミバッフン!アア゛ア゛♪やめられないミ゛ィ♪アア゛ッ!アアア゛ア゛♪」
たねタブンネさんの姿をハッキリ見たことは無いミが、少なくともミィが知ってるだけで3にんは居ます。
寡黙に大きなイキリ声を上げるたねさんも居ますが、この時のたねさんはオゲレツに喚くタイプのたねタブさんでしたミィ....
モブチビちゃんA
「ミュィーッ!“たねつけ”ミィ!おねえさんが“たねつけ”やってるミィ!」
モブチビちゃんB
「違うミィ!あれは“なかよし”ってゆうんだミィよ!ミィのママがゆってたミィ!」
モブチビくんC
「おにいさんの方は喜んでるミィ?ボクもおとなになったらあんなコトするのかな?なんかイヤだミィ....おねえさんがかわいそう」
たねつけが行われる時は毎度のことなのですミが、チビちゃんスペースのおチビちゃん達が集まってきましたミィ
自分がやらされる時はイタくてコワくてそれどころじゃないミが、こうしておチビちゃんのコエを聞くと改めて狂っているなと思いますミィ
純粋な子供達の前でこんな乱暴を見せつけるなんて...
—
たねタブンネさん
「アア゛ア゛いイ゛イ゛ッ!オオオオ゛ッ
フィニッシュだブミィーーーーー!!!」
2ママさん
「イヤァ゛ーーーーア゛ーーーーッッ!!」
やがてたねさんが果てたようで、2ママさん最初の試練が終わりましたミィ
ニンゲンたちはたねさんをよしよししながら首輪を嵌めて引きずって行き、すとおるの中には泣きながら悶絶する2ママさんが残りましたミィ
ミィ「2ママさん、苦しかったミィね。痛かったミィね。ミィ達も何度もやらされてるんだミィ。どうか、どうか助け合っていきましょミィね...!」
2ママさん
「....ァァ....ど....どうじで.....ミィ.......」
.......2ママさんはやがてそのまま失神してしまいミィ
おマタからはものすごい血が出ていたようで、ミィの足もとまで流れてきましたミィ
-
頭お花畑のタブンネが現実を知って壊れていく様とかめっちゃ好き
もうすでに壊れかけだけどここからどうやって壊れていくか気になる
-
強制種付けの描写、丁寧で良かったです。
次は産卵、育児、離別、そして種付けのループですねw
-
たねつけが終わってから、2ママさんはシクシクミィミィと泣いているだけでミィの問いかけには答えてくれませんでしたミィ
だけどゴハンはちゃんと食べてお水も全部飲んでいました。背に腹はかえられミィ
ちなみにベビちゃんにおっぱいをあげる以外の時期は、ゴハンの量はとっても少ないです。太り過ぎて、すとおるに入れなくならないようにするためだそうですミィ
太るなって言うのなら、お母さんタブンネにちゃんと運動させて欲しいものだミィ。
ポッコリしたおなかが、タブンネさんの可愛いトコロなのミ....
—
次の日にはミィもたねつけをやらされて、その次の日には2ママさんはニンゲンに変なニョロニョロ(聴診器)をおなかに当てられて、囲いがついている方のすとおるへ移動させてゆきましたミ。無事にタマゴができたようですミィ
嬉しいと言うのか何と言うのか....
さらにその次の日にはミィも後を追うことになりましたミィ
——
ミィの方が後に移動したにもかかわらず、2ママさんは中々タマゴが生まれませんでしたミィ
ミィや4ママちゃんも最初の頃はそうでしたが、2ママさんのおなかはそれはそれは大きくなっていましたミィ
2ママさんはずっと苦しそうに呻いていて心配でしたミが、耳を澄ますとおなかからは確かに鼓動が聞こえてきました。
相変わらず、ミィの問いかけには答えてくれません
仕方のないことミィね、酷いことが起こる上に、産卵の苦しさもあるのですミィから....
2ママさんが一体どんなトコロから、なんで、どうやってここへ来たのかとか、前のおウチではどんな暮らしをしていたのか、色々と聞いてみたいことはありました。
ミィはこのおウチで生まれて、ずうっとこのおウチで過ごしているので、おソトのおはなしを聞くのが大好きです。
なんて言うか、「しあわせ」を想像するにも何を想像して良いのかわからないのですミィ....
だけどとてもそんなコト聞けるような様子ではありませんでした。
2ママさんはおそらくしあわせな暮らしをしていたと思いますミから、思い出したら辛い気持ちになるだけだミィ
とにかくココロが壊れてしまわないか心配だったミィ。どうやら悪いタブンネさんではなさそうでしたミから
-
ミィの心配は杞憂だったようで、やがて2ママさんは元気を取り戻すことになります
ベビちゃんが生まれたからです
前よりもよくしゃべるようになった気がしました
—
....2ママ1stベビちゃん‘sが生まれる前には、これまた一悶着あったんだミィ
ミィの方が先にタマゴが生まれたから凄く心配したんだミが、2ママさんはタマゴの数が多くて、ひとつひとつがとっても大きかったものですミから、時間がかかってしまっただけでした。
最初のタマゴが生まれてから最後のタマゴが生まれるまでたしか丸一日かかった気がするミィ
2ママさんのタマゴがふたつくらい出てきた後、通りかかったニンゲンにそれを回収されたんだミが、2ママさんものすごく抵抗しましたミィ
ニンゲン
「おうおう!ようやっと生まれたか2番!そりゃそうだよなー。安くねえカネ払ってんだぞおま....てか待て。これタブンネのタマゴか!?デカ過ぎじゃね?ホントにお前が産んだ?ドラゴンとか出てこねえだろうな...」
2ママさん
「ミ゛ィーッ!ミ゛ィミィ!!ニンゲンさん!ミィのタマゴ取っちゃダメ!どうしてそんなコトするのミィ!!?ミィがあっためるの!ミィのベビちゃん...!!」
2ママさんはこれまでの様子が嘘のように、物凄い勢いでニンゲンに歯向かいましたミィ
気持ちはわかるミィ。お母さんにとって、タマゴやベビちゃんというのはとっても大事なのです
ミィ「2ママさん!落ち着いて!横になるミィ!まだおなかの中にタマゴがあるんだミィから!ころんだら割れてしまうミィ!くやミィが、今はニンゲンに従うミィ!タマゴはすぐ近くにあるミィから!落ち着いてミ!」
2ママさんはしばらく取り乱していましたが、最後はミィの言うことを聞いてくれました。
丸一日かけて8個ものタマゴを産んだ後はちょっと苦しそうにしていたミがすぐ元気になって、精一杯首を動かしてタマゴを見ようとしていました。
首が真後ろを向けるわけミィから、ほるだあのタマゴは見えないんだけどね...
-
やがてミィのタマゴの方が先に孵ったのですミが、ミィのベビちゃんが2ママさんの方の囲いを気にして寄って行くと、2ママさんはとっても優しくアヤしてくれました
2ママさん
「こんにちミィ、オトナリのベビちゃん♪可愛いチィチィ声ミィねえ〜。もうすぐミィのベビちゃんも産まれるんだミィ!ミィんな仲良くしてネ!ほら、ベロベロミィ〜」
ミィのベビちゃん達もみんな嬉しそうで、それはとっても微笑ましい光景でしたミィ。
改めて、2ママさんは決して悪いタブンネさんではないんだなって思いましたミィ
—
結構時間はかかったミが、やがて2ママさんのベビちゃんも無事に孵っていって、2ママさんは涙を流しながら、ホントに喜んでいましたミィ
2ママさん
「オオ゛ッ!ミオオオン゛オン...!なんて...!なんでガワイイんだビィッ!ミィのベビちゃんだちっ!ミィがママだビィッ!ずーっと一緒だミ゛ィよっ!ミィ〜ンミンミン!」
2ママさんが元気になってから、いつかこのおウチのコト教えてあげたほうがいいかもって考えていたのですが、そんなコトはとても言えませんでした。
いずれは離されるミィ、とか
いつかはしゅっかミィ
なんて口が裂けても言えないほど、ホントに感動的な光景で、ミィももらい泣きするほど2ママさんは喜んでいました。
——
2ママさん
「ミッミッ♪いっぱいおっぱい飲んでミィ!スクスク育つミィよ〜、ミィのベビちゃんたち♪やっぱりニンゲンさんは優しいミィねぇ〜♪こんなにたくさんのベビちゃんと一緒に過ごせるなんて!」
2ママさんは本当にすっかり元気を取り戻して、来たばかりの頃と同じようなカンジになっていきました
2ママベビちゃん‘sは孵ったばかりの時から凄く大きかったです。ニンゲン曰く母親の“えーよーじょーたい”が良いからだとか何とか。
カラダは大きくて、コエも大きくてとっても健康そうなのですが、少しアンヨを覚えることや、しゃべり始めるのが遅くて不思議に思いました。
——
「ベビちゃん達♪ニンゲンさんがゴハン持ってきてくれたミィ!みんな挨拶するミィ!」
〜
「さあベビちゃん達、もうお日様もおねんねだからタブンネさんもおねんねミィ♪むかーしむかしのことだミィ。山に住むタブンネが、リングマと相撲をとっていましたミィ。リングマがタブンネをぶん投げると、谷底へ真っ逆さまに...」
〜
「ベビちゃん達、ママのゴハンもワケたげるミィ♪ほーらみんな押さないで、ミフフ、おいちいミ?」
〜
「今日はママがおウタを歌ってあげるミィ!
♪た〜ぶん〜ね〜ご〜ろし〜の〜ゲッコウガ〜♪♪...」
〜
「どうしたミィ?眠れないミィ?ママがおはなししたげるミィ♪むかーしむかしのことだミィ。ある砂浜で、エビワラーがプロトーガを虐めていましたミィ。そこへ通りかかったタブンネタロウ、エビワラーを注意しますが、きあいパンチを喰らうと一瞬で胴体が消し飛んで....」
〜
「ニンゲンさんがお仕事してるミィ。ミィんなでおてて振りましょミ♪そのうちきっとお名前つけてくれるミィ!ベビたちニンゲンさんに良い子だってアピールするミィよ〜♪」
〜
.......................................
-
2ママがタブ舎に来た理由が気になる。リボン無くしたとか言ってたから、おそらくバースデイタブンネ・・・
①子供が受け取り拒否したので処分
②バースデイが不評で、行き場が無くなり処分
③おつむが弱く、バースデイ基準から落選により処分
-
>>624
③に1票w
産まれたベビの歩行や言葉が遅いってのも気になるな
しかし子守唄やお話の内容ひどいわ
よく2ママも平気で子供達に歌えるもんだ
ゲッコウガに対する風評被害じゃん
-
2ママさん
「ねえ、3ママさん?あのポケモンさん達は?沢山のおチビちゃんはなぜあんなに騒いでいるのミィ?みんなどこに行くのミィ?」
ミィ
「アレはダゲキってのとズルズキンってヤツですミィ。....ちょっと言いにくいですミが、彼らはあまりタブンネさんに友好的なポケモンではありまミィ。おチビちゃんがどこに行くのかは、ミィもあまり詳しくはわからないミィ」
——
2ママさん
「ねえ3ママさん?ダーリンはいつになったらこのおウチに来るのかしら?まぁちょっとお下品だったから、少し心配ミィけど」
ミィ
「だーりん?たねタブさんのことミィ?彼らはここには来ませんミィ」
——
2ママさん
「ねえ3ママさん?ベビちゃん達のお風呂はいつ入らせてもらえるミィ?みんな所々汚れちゃって汚いミィ」
ミィ
「おふろ?ベビちゃん達の汚れは、かわいそうだけどずっとそのままミィ...。ミィ達の汚れはいずれ落として貰えるミが、ちょっと乱暴な方法ですミィから、少し覚悟が必要かもですミィ」
——
....2ママさんにこのおウチの残酷さを伝えられるタイミングは何度もあったのですが、いつも言いそびれてしまったミィ
ベビちゃんが生まれて数日間、2ママさんがあまりにものんびりしたことを言うので、なんとなく心配に思ったミィ。今思えば、ベビちゃんがしゃべれない内にハッキリ言っておくべきだったかも知れないミィ...
———
2ママベビちゃん‘sが生まれて何日経ってからでしょうミか、最初の悲劇が、立て続けに起こりましたミィ
2ママさん
「ミィ....。オシャレさせてくれるのは良いんだミィけど、ベビちゃんの耳飾りセンスが悪いミィね....。可愛いリボンに変えて欲しいミィ...」
2ママさんはひとりのベビちゃんを正面に立たせてすとおる越しに抱きながら、何やらブツブツ小言を言いはじめましたミィ
ミィはちょうどおっぱいをあげている最中でその様子がよく見えていました。
—
ベビちゃん’s誕生以降、2ママさんはタブが変わったように、このおウチに対する文句とゆうのを言わなくなりましたミ
あんなに嫌がっていた狭いすとおるの中で精一杯体勢を変えて、はみ出すことのできる腕や脚、おクチを使って巧みにベビちゃんをアヤしていましたし、教えるまでもなくミィと同じようにおっぱいもあげて、不味いと言っていたゴハンも美味しそうに食べるし、ベビちゃんに分け与えたりもしていました。
ベビちゃんの汚れを気にしながらも、いつの間にか2ママさん自身のアンヨはウンチで汚れていました。きっと妊娠していた頃うまく後ろで用を足せず、すとおるの中でしちゃって踏んづけちゃったんだと思うミィ。来たばかりの頃の良いニオイも完全にしなくなったミィ
まぁベビちゃんが生まれたらベビちゃんに夢中になってしまうので、自分のことがあまり気にならなくなるのはミィにもよくわかるケドね...
何よりもミィが不思議に思ったのは、来たばかりの頃にもましてニンゲンを信用してるってゆうか、よくあの甘ったるいコエでニンゲンに話しかけるようになりましたミ
すとおるに閉じ込められたり、あの苦痛なたねつけを促したのもニンゲンなのに、どうしてそんな親しみを持てるのか、まったく理解ができなかったミィ
-
おっぱいをあげながらボンヤリと2ママさん‘s囲いを眺めていたミィでしたが、よく考えたら2ママさんの姿をハッキリ見るのは今が初めてだなって気づきました
たねつけすとおるはお母さんタブンネ同士の距離が近すぎて、逆によく見えないのですミィ
だいぶこのおウチに馴染んできてウンチ汚れがある反面、毛並みや尻尾はミィや4ママちゃんよりもうんと綺麗だなって思いました
そして2ママさんの横腹に、見覚えのあるものを発見したのですミィ!ミィのママのおなかにあったのと同じ傷、たぶんこのおウチでできたものじゃない白い傷(刃物による刺し傷)ですミィ!
....ミィはそれを見てハッとしてから、ひとつ気づいたことがありましたミィ。2ママさんがここへ来てから度々口にしていた『りぼん』って言葉です。
このおウチで生きていく上で使わない言葉なので忘れていたのですが、ミィのママが大事に尻尾にしまっていた黒いカサカサ(汚れきって劣化したバースデーリボン)、ママのママから貰った大切なお守りだってママは言っていたミが、あのお守りもたしか「りぼん」ってママが呼んでいた気がしたのです!
ミィ「ねえ2ママさん!2ママさんひょっとしてニンゲンのおウチで暮らして....
2ママさん
「うん、やっぱり可愛くないミィ!待っててベビちゃん、ママが取ったげるミィ!今度もっと可愛い耳飾りを貰おうね!」
ミィの言葉を遮るようにして、2ママさんが徐にベビちゃんの“たぐ”を掴みました
ミィ(一体何を....?まさか....ね?....)
たぐがおミミにしっかりと打ち込んであるのはチビンネちゃんが見たって明らかなことなのでそんなはずないと思っていたのですが、それは起きてしまいました
掴まれ2ママベビちゃん
「.....ミュイ?........ミチュィ....?.......」
ベビちゃんは怪訝なお顔を浮かべて鳴いていました
大好きなお母さんがそばに居て安心している反面、おミミに危険なテンションを感じて怖がっているようなカンジでした
(掴まれベビちゃんはまだ目が開いてませんでした)
ミィ「ちょっと、2ママさん⁉︎何をするつもりミ..
ビリビリ....ブチィッ!
ベビちゃん
「チュミャ゛アア゛!!ギィヤ゛ーーーアあ゛あああアア゛ーーゥッッッ.....
か弱いベビ耳が音を立てて千切れ、血と透明なお水、黄色いニュルニュルしたお水がピューピュー飛び出してきてようやっと、2ママさんも自分の過ちに気づいたようでした
2ママさん
「.....ミ...?......ミ゛ィ!?ミィッ!ミ゛ーッ!ごめんミィ!ベビちゃんだいじょぶミ⁉︎ママはただダサい耳飾り取ってあげようと....ああ゛ッ....!どうして....」
2ママベビちゃんの絶叫と異変にミィの乳飲みベビちゃんもみんな驚いて、チィチィ喚きながらミィの背中側に逃げ出しました。
ミィは空いた口が塞がらず、何も言うことができなかったミィ
「....ウビィ~....ミヂィ~......ゥゥゥ゛....ミガァァ゛....」
ドピュッ!....ピュー!....ピュー......
「『ダサい耳飾り取ってあげようと....』
じゃねーよ!」ってツッコミが頭に浮かんだミが、千切れベビちゃんの状態は笑いごとじゃない程に深刻でした。
よかれと思った行為が事故を招くことはたまに起こることかもしれませんが、いくらなんでも限度というものがありますミィ!
それまでもうっすら思わなくはなかったのですが、2ママさんはちょっと抜けているってゆうか、ハッキリ言ってしまうとおバカなんだなって思いました。
失礼ながらもっと色々注意しておくべきだったミィ
-
2ママさんを非難する気持ちもありましたミが、起きてしまったものは仕方がミィ
とにかく千切られベビちゃんを最優先に考えなくては!
ミィ「2ママさん!決して舐めたりしてはいけないミィ!おーいニンゲン!こっち見ろ!ケガしてる子が居るミィ!」
ミィの心配をよそに、2ママさんの行動はミィの想像とは違うものでしたミィ
2ママさん
「ごめんミィごめんミィ!ベビちゃんっ!ママが“タブンネのまほう”で治してあげるミィから...!」
ポウッ...
なんと2ママさんのおててから、優しい光の玉が出てきて、ベビちゃんのおミミに降り注いだのです!
ミィはまた別の意味で、空いた口が塞がらなくなりましたミィ
それはミィのママが使っていたのと同じ、ミィがどんなに練習しても使うことのできない、紛れもない“タブンネさんの魔法”でしたミィ!
2ママさんってホントは凄いんだか何なんだか...
——
2ママさんの魔法を以ってしてもベビ耳がふっついたりすることはなかったミが、血は止まったようでイキもだいぶ落ち着いてきた頃、ふたりのニンゲンが囲いの前までやって来ました
ニンゲンA
「なんだなんだ必死になって....あーっ!耳千切れてんじゃねえか!嘘だろ⁉︎コイツひょっとして虐待ママ?ざけんなよ?虐待ママの入れ替えで買ってきたんだぞ!」
ニンゲンB
「いや待て。今癒しの波動使ってなかったか?そういやコイツポケセン配布個体の可能性高いとか何とか...」
2ママさん
「ミィッ!ニンゲンさん!ベビちゃんがおケガしちゃったのですミィ!早く手術して!...ミィッ!治してくれるのミィ⁉︎ありがとうございミィ〜ン!」
ニンゲンは2ママさんから千切れベビちゃんを引ったくると、イキを確認しているようでした
ニンゲンB
「うーん...。どう思うコレ?生後6日だっけ?結構深いぞ?赤ん坊だし抗生剤は勿体ねえからあり得んけど、一応傷薬くらい塗っとくか?」
ニンゲンA
「まあ8匹も居るしね。駄目なら駄目で別にいいと思うけどね。てか母親責じゃねえとしたら誰がやったんだ?兄弟ゲンカ?ベビンネハンター?」
ニンゲンはケガしたおミミに適当にスプレーを吹っかけると、ポケットからギラギラ(カッター)を取り出しましたミィ
ミィもすっかり忘れていたミが、男の子ベビちゃんのおマタ傷つけの為にやって来たようですミィ
千切れベビちゃん
「.....ミヒィ....ミフッ....ハッ.........ミ!ミガァーーーーーッ!!ギャギャギャミゴブバァーーーーーっ!!」
千切られベビちゃんは不幸にも男の子だったようで、おミミを千切られて数十分後にチェリンボまで取られてしまったミィ
2ママさん
「ミ゛ィーッ!ミ゛ーーッ!何するのビィッ!?ベビちゃん痛がってるビィっ!やめでっ!ベビちゃんをがえじでミィ〜ッ!!」
2ママさんはタマゴを取られた時さながら、もの凄い勢いですとおるに突進を始めました
ニンゲンB
「おーやべえやべえ!2ママちゃ〜ん。これは赤ちゃんが美味しくなるための必要な治療なんだよ〜。だから静かにしてね〜。俺たちただでさえ去勢処理苦手なんだぞ〜」
2ママさん
「“治療”!?なーんだ♪それを先に言って欲しいミィ!ベビちゃん達!ニンゲンさんの言うこと聞くミィ!治療してくれるミィって♪」
ニンゲンが何か話すと2ママさんは一瞬で翻りましたミィ。まるでコントみたいでしたミィ
ミィはニンゲンの言うことの意味がハッキリとはわからないことが多いんだけど、2ママさんは細かい意味まで理解しているようでした。やっぱりニンゲンと暮らしていたんだミィ!
それにしても、なんか都合の良い解釈をしているようにも思えるケド....
-
"ベビちゃんをおいしく "
のフレーズには誰も突っ込まんのか…
まあ主役ママちゃんも
出荷の先は知らんからなぁ
-
言葉は理解できてもその背景や機微を理解できないんだろうなぁ
3ママもたいがい頭悪いけど2ママは輪をかけて頭悪いね
そういうタブンネさんが好きだよ
-
3ママ、嘘は言わないけど本当の事も言わないのなw
まあその方が後々ダメージデカくなるからGJだけど。
はたして千切られベビは呆気なく逝くのか無事出荷されるのか・・・
-
タブンネさんWikiでショーケースの裏側読み返してたんだけどやっぱ面白い
望み薄かもしれんが続きこないかな
-
>>632
ショーケースあれはあれで完結されてる大作だけれど
それこそ小ママサイドの話とか番外は作れそうではあるね
-
ユナイトでも仲良くしようねタブンネちゃん!
-
レジェンズではまだタブンネさんの姿が見えず……
トレーナーがポケモンを直接攻撃できる仕様だったら絶対タブンネさん出してほしい
やっぱりさ、ポケモンバトルじゃなくてタブンネさんは直接殴りたいっしょ
-
タブンネ(ヒスイのすがた)
-
養タブ舎のママンネsideの続きとチビンネの章マダー?
-
ようつべの子猫動画とか見てたら
出荷じゃなくて普通に大事に飼われているのにチィチィピィピィ泣きながら必死にケージから抜け出そうとするベビンネちゃんが見たくなる
あと子供に尻尾掴まれてモフられながらか細くチーチー悲鳴あげてるの
-
ポケモン剣盾でタブンネ狩りしてて思うのはもっと被ダメージ描写が生々しかったらよかったなってこと
タブンネさんがきあいパンチとかコメパン喰らってグチャグチャになるところが見たい
-
タブ舎の更新2ヶ月止まってる…作者戻ってきて-!
-
今ここ見てる人います?
これまで投下された作品とトーンの違うネタがあるのですが、需要はありますか?
-
ちょくちょく見てるよー
どんな作品か気になるし投下してくれたら嬉しい
-
自分も見てます。
良かったら新作投稿お願いします。
-
ありがとうございます。では、投稿させて頂きます。
タイトルは「情はないけど掟はあった」です。
-
TO:○○地方レンジャー協会事務所 担当者様
CC:○○地方ポケモンセンター本部 担当者様、カントーポケモン学研究所 主任研究員 オーキド・ユキナリ博士
メールにて失礼いたします。
いつもお世話になっております。1月ほど前に当○○地方の研究所分室に赴任した●●と申します。きのう確保した野生ポケモンについて通報させていただきます。
先週、地元自治体から頂きました依頼(山脈の尾根で一昨日通報があった、暴れまくるボーマンダの件です)に絡む件となります。
きのうの夕方、ボーマンダ確保後にレンジャー協会にて借り受けていたリザードンで山脈上空を飛行していたところ、リザードンが尾根の登山道上で衰弱したポケモン2体を発見、三度旋回した後で現地に降下しました。
エルレイドを繰り出し、テレパシー経由で「私の群れに来るか? もしかしたら死よりもひどい目に遭い続けるかもしれないけれど」と伝えたところ、1体は逃走、もう1体のみ同意してエルレイドに接触したため確保しております。
確保個体の調査結果は以下の通りです。
種族名:タブンネ(イッシュ地方原産)
個体情報:♀、Lv44
推定月齢:満3年6月〜4年
特性:さいせいりょく
技:なきごえ、いやしのはどう、てんしのキッス、チャームボイス
飼育歴:当個体についてはトレーナー管理個体データベース該当なし(個体管理チップ見当たらず)
近親交配の有無:あり(少なくとも直近の親世代は近親交配)
てんしのキッスは純野生では覚えない技であったため、DNA採取結果を元に再び関係各機関データベースに広汎に照会したところ、警察管轄の捜索者リスト及びイッシュ地方の管理個体データベースにて、血縁個体の該当がありました。
10年前に当○○地方で失踪した、イッシュ地方出身のA氏のタブンネです。
関係各機関においては既知かと思われますが、10年前に親族通報を受けた捜査が行われた際は、A氏が無届けでポケモン保護区から侵入して山脈の踏破を試みた説が浮上したものの、決め手を欠いていたために捜査が打ち切られていたとのことです。
またA氏が「コモルー・タブンネ・メタモンを無許可で同伴させて入国したことを遺族に密かに自慢していた」との情報について、当方は今朝になって初めて認識したのですが、この2体がつがいになって山脈で子孫を成していたとの推理が成立するところです。
ボーマンダは去勢済かつ個体管理チップ有りのため遺族に厳重注意の上で返還されるとのことですが、この確保したタブンネの扱いについては当分室の独断では決定しかねるところです。
近親交配した個体は当地もイッシュも輸送・生育共に不可ですし、借り受けたリザードンのしつけ方の問題もあります。
(また、当地では、無去勢個体の持ち込みに対する強硬論と評しますか、他地方の如き安楽死は絶対不可だと強く反対される方もおられるのは皆様御承知のところかと存じます。外来種は特にその世論が強硬であるのが現状でありますが)
当研究所本部を含めて各機関で対応を協議するにあたり、メールにて取り急ぎ情報共有させて頂きます。
-
ミーちゃん達のねぐらは、岩と雪の山の中に隠れるようにあるほらあなでした。近くに崖がありました
ミーちゃんの実のおじいちゃまは、メタちゃまとタツおじいちゃまと仲がよくて、マスターの相棒でした。とおいとおい場所でヒトと一緒に住んでいて、マスターと一緒にこの場所にやって来たそうです。
他のヒトにはないしょだよってマスターに言われながら雪の季節の山に入って行った遠い昔、マスターはうっかり崖から滑り落ちてしまったそうです。
タツおじいちゃま達はたまたまマスターを下敷きにして落ちたから助かって、でも、マスターは頭の骨を折って死んでしまっていました。タツおじいちゃまは特に雪も氷も苦手だったから死にそうになって、そばで運よくほらあなを見つけて、マスターの亡骸を抱えてみんなで逃げ込んだそうです。
メタちゃまは他の生き物のこころを読むことができました。実のおじいちゃまはキスでねむらせることができて、タツおじいちゃまは戦うことができました。
ほらあなの生き物たちがどんな風に生きているのか読み取って、殺して、食べて、みんなで助け合って生きていました。ミーちゃんが生まれるずっと前からです。
実のおじいちゃまとメタちゃまは生き続ける中でつがいになって、ほらあなの中で子どもを生みました。一番初めに生まれた子がミーちゃんのおかあちゃまで、7回孵った卵の中で一番体力があって、それでいてしんちょうな性格だって言われてました。おかあちゃまの兄弟姉妹は他に3体生き延びて、ほらあなの群れから出ていきました。
このほらあなは、岩と雪の山の中では一番すごしやすい場所です。群れを続けさせることを考えて、おかあちゃまとおじいちゃまがつがいになりました。そのつがいから生まれた4回目の卵がミーちゃんです。一番上のおにいちゃまとつがいになって、卵を2回産みました。
ある日の朝、めっきり弱ったメタちゃまが年のせいで息を引き取りました。タツおじいちゃまはほらあなの中で激しく泣きわめいて、荒れ狂いながら急に大きくなりました。
灰色の素敵な身体だったおじいちゃまは突然光ると、翼を生やしながら色を変えてほらあなの天井を突き破って吠えたのです。
ここにいちゃいけないんだと思いました。このほらあなはもう住んじゃいけない。お別れもできないまま、みんな思い思いに地吹雪の吹き荒れる山を駆けまわったせいでしょう、おかあちゃま以外のみんなともはぐれて、いいねぐらも見つからない中でフラフラと雪の中をさ迷っていました。
5日くらい逃げた頃、気が付けばとても目立つ尾根の道の上にいました。何も考えたくありませんでした。
タツおじいちゃまとも違う翼の大きな生き物が目の前に降り立って、その翼から初めて見る生き物が降りました。ほらあなの中のねぐらにあったマスターの格好と同じような姿、「ヒト」だと直感しました。言い伝えのマスターとも違う、メスのヒトでしたが。
ミーちゃんは気の毒がられていました。へたり込むミーちゃん達の目の前に緑と白のお兄さんが出てきて、その考えを頭に直に教えてくれました。
私たちの群れに掟があるように、ヒトの群れにはヒトの掟があって、その掟でミーちゃんは助けられるか分からないけれど、ただ、今この瞬間死にそうな状況だけは救えるかもしれない。ただ、それから先はどうなるかこのヒトにも分からないって。この時死ねばよかったって悔やむかもしれないけれど、死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないけれど、それでもよければヒトの群れにおいで、って。
このヒトは、優しくはないけれど正直だって思いました。おかあちゃまは弱った身でも怖がって、一目散に逃げていって雪の向こうに消えました。
迷って、迷って、ミーちゃんは緑と白のお兄さんの腕の中にうずもれたんです。「ほかのヒトには存在を知られちゃいけないよ」っていうのは、マスターが言い遺したっていう群れの掟だったけど、でも、今、とっても苦しいのは間違いなかったから……。
(続く)
-
>>646
すいません、以下の箇所はミスです。
× 実のおじいちゃまはキスでねむらせることができて、
〇 実のおじいちゃまはキスでこんらんさせることができて、
てんしのキッスは眠り技じゃなくてこんらん技でした……。
-
乙
確かにあんまり見たことない切り口の作品だね
これからタブンネさんがどんな一生を送るか楽しみにしてる
-
「最初は新種のポケモンではないかと思っていました。図鑑が『タブンネ』だと判定した時は、正直申し上げまして、とても驚きました。何故にイッシュのポケモンがここに住んでいるのかと」
パソコンの画面上で何人かがうなづいた。「でしょうね」なんてつぶやきも聞こえた気がする。
あの雪の登山道で見つけた子が完全な新種ならベストだった。新種でなくとも生息地域の新発見であればベターだった。この研究所分室で、研究名目で可愛がられるから。
真相はどちらでもなくて、それどころか想定の斜め上だった。無許可で持ち込まれていた外来種の子孫、それも近親関係で生まれた子で。この地域どころかカントーでさえ安楽死一直線の個体である。いや、カントーで起きた事象ならまだ精神的には負荷は軽かったかもしれない。即座に薬殺で処理完了だ。それでも精神的負荷はゼロだとは思わないけれど、まだマシだ。
……もっとも、そんなことは思うだけで口には出すまい。立場を自覚してない甘ちゃんだって非難されるのが分かってるからだ。
年の大半が吹雪いているか、そうでなければあられが降っているような岩と雪の山脈に囲まれた土地。その中で相対的にマシな小さな盆地にへばりつくように、ヒトは集落を作って古くから生きてきた。ちょっと昔までは交通の便も悲惨な場所で、何とかして生きてきたような場所だった。
ポケモンとヒトの関係はカントーやシンオウとは異なるもので、よく言えば独特で、悪く言えば排他的とも言えた。普段からあまりにも実りに乏しい土地なのだ。うっかりすればヒト共々飢えかねない環境は、当然の帰結としてひどく厳しい規則を生んだと思われる。
規則その1、ヒトは山脈の生態系を乱してはいけない。特定の種が増えすぎたり減ったりし過ぎると、結果的にヒトの暮らしに響くから。
規則その2、ヒトに飼われるポケモンは、その生死と繁殖の一切を飼い主たるヒトに委ねるものとする。繁殖のしすぎは飢餓に直結するから。
規則その3、山脈から降りてきてヒトの領分を犯したポケモンは、その生命を以ってヒトに償うものとする。そうでもしなければヒトが死ぬ。
規則その4、ヒトは山脈にむやみに入り込んではいけない。どうしても入山する場合は各山で整備された登山道を行くこと、そこを外れた者は自殺者とみなす。
規則その5、ヒトは山脈のポケモンをむやみに食べてはいけない。ただし、明らかに死にかけている個体は、発見者のポケモンの生き餌にしてもいい。繁殖も譲渡も不可。一冬一個体に限り、うっぷん晴らしの的にして虐めても構わない。
他の地方で議論の的になるのは特に5つ目の規則だろう。近年になって交通の便が発達し、ゆるやかにだが意識が変わりつつあった。もっとも、生き餌以外にも研究用途でポケモンを確保することが許されるようになったのはつい最近で、今から2ヶ月くらい前の話だ。先月この地に研究所の分室が開設されたのも、当然、この規則変更に基づく。
この地方の法制度が今の仕組みになった何十年も前から、あの雪の山脈は「ポケモンの保護区」だった。言うまでもなく他所からのポケモンの持ち込みは厳しく規制されている。
10年前に無許可で入り込んで勝手に遭難死したA氏に対して、この地の世論は滅茶苦茶に厳しい。亡くなった人だから本人には言えないが、「何で外来ポケモンを繁殖させてるんだバカ!」的な罵倒は、普通に世間話の愚痴で言われる。
新しい研究所の分室に勤める余所者の女は、愚痴の向け先としてちょうどいいらしかった。何しろその余所者がタブンネを最初に確保したのだから、地元の人は余計に愚痴りたくなるらしい。
「●●さん、そのタブンネは一通りの調査が完了次第うちに引き渡しをお願いします。スケジュール感が固まり次第、メールで構いませんので御一報下さいね」
レンジャー協会の会長は、画面越しにそう言った。言い分は正しい。
タブンネを見つけたのは正確に言えばレンジャー協会から借りたリザードンだった。あの雪の登山道でルール通りに3回旋回、逃げなかった個体は死にかけと判定して降下、事前のルール通りに念話でどうしたいかを聞いて、それでも来た個体を連れてきた。
新種ならばこの分室で研究用にする、さもなければ発見者(この場合はレンジャー協会)の所有物。レンジャー協会は地元の人達の集まりだ。当然にリザードンの生き餌にするだろう。
パソコンのディスプレイは何分割かされている。そのうちの1つは研究所の本所で、会議に参加しているオーキド・ユキナリ主任の顔は、あえて言えば若干引きつってる気がした。カメラの映り方の問題かもしれないが。
主任は知っているのだ。この分所で合法的に飼ってるエルレイドがこっそり教えてくれたこと。
――あの子は、ほんとうにリザードンにあげちゃうんですか? リザードンはあの子に欲情してますよ? 子どもができるような組み合わせでもないのに。
-
ヒトのねぐらは、あのほら穴とも山の中とも違って、屋根も壁も真っすぐで、聞いたことがない音と、嗅いだことがない匂いがしていました。
食べたこともない美味しい食べ物を食べて、温かい場所で静かに眠れて、あの尾根の道で出会ったヒトのお姉さんの下でとても安らかに過ごせたんです。2日間だけは。
エルレイドのお兄さんにふわふわ浮かせてもらいながら、広い広い世界のかたちを教えてもらいました。
北のあの辺りがマスターが落ちた崖とミーちゃんの昔のねぐら、タツおじいちゃまが飛び回ってヒトに捕まったのがあの辺り、ミーちゃんがお姉さんと会ったのはあの辺り。真反対の南の山脈を飛び越えて遠くに遠くに行ったらカントーという土地に出て、ずっと南に行ったらクチバという土地がある。マスターはクチバに上陸した後、山を越えてこの土地にやって来た。
――あなた達の存在そのものが掟破りだった。マスターは山に入るべきではなかったし、ほら穴の中でつがうべきでもなかった。
ヒトのお姉さんも、エルレイドのお兄さんも、静かに教えてくれました。
――山もヒトも生き物も、優しくはないけど掟はある。長く生き続けるための掟が。
山の外から血筋が混ざってはいけなかったんだ。あの山でよそから来た者がつがうこと、増えること、生きるために殺すこと、どれも掟を破ることだった。だからあなた達の親も子もこれから殺される。よそ者の血がこれ以上増えないように。
――待って。ミーちゃんはそんな掟知らない!
――そうだね。でもマスターは知っていたはずなんだ。ヒトの世界では大切な掟だったから。あなた達にそうしたことを何も教えず、掟を破らせたマスターがいちばん悪い。
ただ、私達にはあなたは救えない。ヒトだってここで生きる限り掟は破れないから。破ったら私達が食い詰める。
お姉さんも、エルレイドのお兄さんも、正直でした。優しくないけど正直でした。ミーちゃんを気の毒がりながら金縛りをかけて、浮かせて、ねぐらの外へ。
気の毒がっていたのは分かっていたから動けませんでした。こいつに逃げられたら俺達が困るなぁって、エルレイドのお兄さんが考えていたのも分かりました。それで頭の上にミーちゃんを浮かせながら、お姉さんの言葉を教えてくれました。
――違う場所で違うように生まれ育ったのなら、こことは違う幸せを感じられたかもしれないね。
あなたはこれからあのリザードンのものだ。それがここの掟。冬の間のうっぷん晴らしに使うって。たぶん、あなたがここをこうして見るのは最初で最後だ。
嗅いだ事の無い香り、見たことのない街並み、変わらない雪の空、山々。地面に下ろしてはもらえなかったけれど、眼に焼き付けるように嗅いで、見て、感じて。
おじいちゃんが語っていたことを思い出しました。マスターが生きていた時はずっと良い暮らしだった、良いものも食べてた、ヒトの恵みのおこぼれだったけれど、ほら穴とは違うもの。ヒトの群れが長い間をかけて創り上げたもの。
――なあ、隣の俺の主には内緒ってことにしてくれ。あのリザードン、とんでもない性格してるぞ。
こっそり心を壊してあげようか? 何もかもを忘れて、何も感じない心になるように。ここのヒト達はな、ただメシさえ食わせておけば何したって構わないってフツーに思ってるんだぜ?
迷いました。あの雪の道で質問された時はフラフラで夢中だったけれど、今は違います。考えて、考えて、決めたことをただ念じました。
――ありがとう。でも、ミーちゃんはミーちゃんのままでいさせて。死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないって教えてくれて、それでも良いってミーちゃんが考えたことだから。
それに、生まれたことが掟破りだったっていうのなら、それで怒られるのも仕方ないって思うから。
――そうかい。「まじめ」で「かんがえごとがおおい」奴は、こういう時には損だな。
(続)
-
>>648
乙ありです。
切り口が独特なのは自覚しています。
読んだ時にどう感じたか、折をみて教えて頂けましたら嬉しいです。
-
――この先どうなるかは私にも分からない。後から振り返った時、今この山で死ねばよかったって悔やむかもしれないけれど、死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないけれど、それでもよければヒトの群れにおいで。
そんなのはイヤ! 我に返った時、叫びながら尾根から逃げ出してしまっていました。
ミーちゃんはいません。横にいた大事な娘。雪の山の中で辛うじてはぐれずに一緒にいた、かけがえのない存在。さっきまで座り込んでいた尾根を見上げます。見えにくいけれど音ははっきり聞こえていました。抱えられて飛び立っていくらしい大きな翼を見上げるしかありませんでした。
何故わたしは逃げてしまったのでしょう。娘と離れたことなんて一度もないのに。ひどい目に合うのが怖くて逃げて、それで一匹ぽっちです。なおさら怖くなるのは当たり前なのに。
夕闇迫る中で、風も雪も強く吹き荒れます。山は温かみの全くない、冷たいだけの世界でした。5日間ねぐらがなく弱った身体には堪えます。
ズシャッ!
突然、ほっぺたに鋭い痛みがありました。視界の中で血が舞います。
斜め後ろにニューラさんが2匹いました。いつの間にか近づいてきたのでしょう。どちらも爪を振り回しながらニタニタ笑っていました。振りほどくわたしの腕に噛みつき、あっという間に引き倒されて、更にお腹に爪を振るわれるところまでは覚えています。
「コイツすげえ回復するねぇ。アンちゃんっ」「ほんとだぁ〜」
気が付いたとき、かつてのねぐらとも違う岩穴にいました。ニューラさん達が面白がりながら、横たわった私をつついて馬鹿にしていました。
腕と脚が猛烈に痛みます。どちらも一本ずつ無くなっていました。目の前でニヤニヤしたニューラさん達が美味しそうにかじり付いて見せびらかしてきました。
雪の山は一切気が抜けない世界ですから、弱った姿で気を抜いた方が悪いのです。食べられて生涯が終わるのだろうと思いました。いじめ倒されてここで生命が尽きるのだと。
下手に体力のある身体がアダになりました。岩場の中で、いたぶられながら少しずつ少しずつ食べられていったのです。
-
レンジャー協会の事務所に、リザードンが降り立った。先日借りたのとは違う個体だ。背にレンジャーを載せ、爪にロープを握っていた。ロープの先端は薄赤い物体だ。目の前にどさりと下ろされる。
「さっそく1体確保しました。まだ息あるようですんで、そっちの分室で鑑定をお願いできます? こないだの協議通り、血縁鑑定と、できれば過去の動きを追跡できれば」
リザードンが運んでいたのは逆さ吊りのタブンネ。ひどく汚れていて、血だらけで打ちのめされているが意識はある。辛うじて息があるという程度だが。
――おかあちゃま!! おかあちゃま!!
エルレイドの上でタブンネが震えた。エルレイドは器用に片手のねんりきで浮かせながら封じ込み、もう片方の手で私の手を握る。
――ちょっと暴れないで黙ってて。ただ知りたいことを念じて。あなたが知りたいことを私が聞き出して、教えてあげるから。
――ごめんなさいっ!! えっと、何があったの? 死んじゃうのっ!?
「……血縁は大丈夫ですけど、記憶の方は1日で済むかどうかも含めてちょっと明言いたしかねますね」
右脚、左腕、右耳いずれも根元から欠損、ついでに言えば尾も無い。意識不明で出血多数。ヒトがつけた傷ではないだろう。おそらく小型のポケモンに食われたか千切られた辺りか。
――生きるかどうかは分からない、やるだけのことはやるけれど。でも命をつないだとしても最期は生き餌という掟だ。生きているうちにあなたと話せるどうかも分からない。それは分っておいて。
――あっ……。
「今の技術上、メンタルが壊れてると記憶の鑑定は無理ですので、それも御了解頂けますでしょうか? こういう状態ですと、生きてるかどうかも含めて一か八かになると思います。あと、事後で構いませんのでメールの方で申請書の提出もお願いします」
「そうですかぁ。よろしくお願いします。申請は出しますので」
「この傷はなかなかキツいですね。記憶の解析の都合でお伺いしたいのですが、どんな状況で見つかったんです?」
「最初の1体が見つかった尾根の割と近くですよ。複数のニューラに嬲られてました。うちのウィンディが見つけたんです」
――あなたとはぐれてから、割と近い場所で何体かのニューラにやられていたらしい。よく生きていたものだね。
「ところで、こいつも含めたタブンネ達の駆除後の扱いですけど、今回の騒動が一段落したら、生き餌にする以外にもここの事務所で食べちまおうという話が出てるの、知ってます? 外来種の繁殖って村が襲われるのと同じくらいキツいことですんでね。伝統に従って茹でて食っちまえって主張する奴がいるんですよ。うちの事務所に」
(続)
-
>>653
誤字がありました。
× 意識不明で出血多数。ヒトがつけた傷ではないだろう。
〇 意識不明瞭で出血多数。ヒトがつけた傷ではないだろう。
-
「生態系を乱すことは禁忌」で、かつ「登山道を除いてはヒトがうろつくことが禁忌」である山脈で、「登山道以外の場所に外来ポケモンが繁殖していた」事が判明した場合、ヒトはどうするべきか。
生態系維持のために駆除が必要だが、さりとて登山道ではない奥深くに不用意に分け入るのはそれもマズい。解は、「熟練した地元のレンジャーが、細心の注意の上で山に入る」。
いつもは登山道の安全確保を主として動いているレンジャーの方々が、こういう処置を選ぶというのは特別なことだ。死と隣り合わせの世界に踏み入れる事だと表現する方もいる。世論として仕方ないとは許容されている。レンジャー協会が貸し出しているリザードンが普段は登山道の上しか飛行しないというのも、こうした考え方からすればもっともなことだった。
10年前に無許可で山に入ったA氏は、自らの意思で登山道を外れたらしい。生前、故郷の家族にだけは自慢していた。
そして登山道から見えない場所で崖から落ちて即死、連れていたコモルーとメタモンとタブンネだけが生き延びた。元々タツベイ時代に去勢されていたコモルーは繁殖しようがなかったが、メタモンとタブンネは繁殖可能な身体だった。
最初の3匹のポケモンのうちタブンネは昨年のうちに寿命で死亡、メタモンが次いで最近死亡、コモルーはメタモンの死と進化のタイミングが重なってボーマンダの身体で狂乱してしまい、理性がやられた状態で動き回って、登山道付近に出没した。こおりタイプが苦手なドラゴンポケモンが、10年間も雪山の中で食糧事情の劣悪な状況で過ごし続けたのだ。むしろ10年も正気だったのが不思議だった話だ。
レンジャーの方々は、3人がかりで天井がだいぶ崩落したほら穴に踏み込んだ。
無防備に入った訳ではない。ゲンガーとルージュラとユキノオーを繰り出し、中のポケモンを全て眠らせたという。「さいみんじゅつ」と「うたう」と「くさぶえ」を5分間重ねがけ続ければ大体のポケモンはまず眠る。レンジャーの経験則だった。
雪が吹き込まない最奥の場所に、ヒトの男性の全身の骨と、雪山登山の道具の残骸があった。A氏の遺体と遺品だ。他には、ひとつ残らず割れたタマゴの残骸と、タブンネの骨と、巣穴の跡。さらに生きたマニューラ1体とニューラ4体が眠っていた。
念入りに見分を終えて生きたタブンネがいないことを確認した後、レンジャーの方々は出せるポケモンを全てボールから出した上で、マニューラ達を叩き起こしたという。
マニューラを頂点とする野生の群れ5体vs(相性的に不利な個体を含むとしても)強大なポケモン10体以上。さらにほら穴の外ではリザードン3体が堂々と主を待っていた。表面上は笑顔でも半ば力の差で恫喝するようにやり取りを交わし、「A氏の身体と残った遺品、タブンネ達の残骸をほら穴から持ち出す」というヒトとポケモンの交渉は成立した。
なお、レンジャーの方々がマニューラを叩き起こす直前には、ほら穴の出入り口に集音機材を固定していた。
一見すると岩に見えるそれは、頑丈で、電源がなくとも1月ほど稼働するタイプだ。電波類は飛ばさないタイプなので1月後にはまた回収に赴かなければいけないが、回収後には研究所の分室でタブンネの鳴き声の有無を徹底的に分析することになっている。
ニューラ達が巣くってしまった上、仮にニューラ達が居なくなったとしても鳴き声をキャッチされたらヒトが来る。もはやほら穴は、タブンネという種の寝床としては成立しないようになっていた。
-
TO:○○地方レンジャー協会事務所 担当者様
CC:○○地方ポケモンセンター本部 担当者様、カントーポケモン学研究所 主任研究員 オーキド・ユキナリ博士
メールにて失礼いたします。
いつもお世話になっております。○○地方研究所分室の●●です。
現在各機関にて対応中のタブンネの件につきまして御報告致します。当分室宛に鑑定依頼ありましたタブンネ(生体2体目、遺体1〜5体目、タマゴ1〜3個目)の件です。
まず、生体2体目の調査結果は以下の通りです。
管理番号:№2
個体情報:♀、Lv53
推定月齢:満9年〜9年6月
特性:さいせいりょく
技:なかまづくり、いのちのしずく、てんしのキッス、チャームボイス
飼育歴:当個体についてはトレーナー管理個体データベース該当なし(個体管理チップ見当たらず)
血縁関係:(A氏のメタモンとタブンネを第1世代とする)第2世代目
特記事項:精神面の傷が大きく記憶探知不可、尾、右脚、左腕、右耳欠損。
№1の確保直前まで共に雪山にいた(エルレイドに打診された際に逃げ出した)個体と思われます。確保時には「複数のニューラになぶられていた」との確保者の証言有り。
身体の欠損はニューラに捕食されたものみて矛盾しません。「さいせいりょく」のとくせいにより体力が比較的維持されたため、長期にわたりニューラに害されたと推測されます。
レンジャー協会の強い要望により身体の最低限の治療後に引き渡し予定です。
また、遺体1〜5体目の調査結果は以下の通りです。
管理番号:№3
個体情報:♂
推定月齢:6年〜6年6月
血縁関係:第3世代目と推定。母:№2 父:第1世代のタブンネ
特記事項:A氏の遺体があったほら穴にて発見。発見時はほぼ骨のみ。研究所に持ち込まれた時点で死後3〜4日経過。ボーマンダの狂乱後に一旦ほら穴に戻ってきたものの、その後マニューラに襲われたものとみて矛盾しません。
管理番号:№4
個体情報:♀
推定月齢:3年〜3年6月
血縁関係:第3世代目と推定。母:№2 父:第1世代のタブンネ
特記事項:№3と同じ
管理番号:№5
個体情報:♀
推定月齢:1年〜1年6月
血縁関係:第4世代目と推定。母:№1 父:№3
特記事項:№3と同じ
管理番号:№6
個体情報:♀
推定月齢:1年〜1年6月
血縁関係:第4世代目と推定。母:№4 父:未発見個体(第3世代のタブンネ)
特記事項:№3と同じ
管理番号:№7
個体情報:♀
推定月齢:1年〜1年6月
血縁関係:第4代目と推定。母:№4 父:未発見個体(第3世代のタブンネ)
特記事項:№3と同じ
タマゴ1〜3個目の調査結果は以下の通りです。
管理番号:№8
個体情報:♂
血縁関係:第4世代目。母:№1 父:№3
特記事項:A氏の遺体があったほら穴にて発見。発見時は卵殻のみ。マニューラに捕食されたものとみて矛盾しません。
管理番号:№9
個体情報:♀
血縁関係:第4世代目。母:№1 父:№3
特記事項:№8と同じ。
管理番号:№10
個体情報:♀
血縁関係:第4世代目。母:№4 父:未発見個体(第3世代のタブンネ)
特記事項:№8と同じ。
以上、御報告致します。
なお、№1の記憶の分析情報に基づくと、ほかにタブンネの未発見個体が山で生存している可能性が十分あります。
・ボーマンダが狂乱状態になる前にひとり立ちした個体:第2世代が3体、第3世代が5体程度か。
・ボーマンダが狂乱状態になった際に逃げ出した個体:第3世代が最低2体、第4世代が最低5体。
現状、山の中でタブンネと繁殖可能な種は未発見ですが、近親交配の上で繁殖した個体が山の中で生きている可能性は否定できません。
(続)
-
なお、№1と№3の間の繁殖状況に関しては、№1により、「タマゴを計2回4個産み、うち初回の1個は無精卵だった」との情報がありました。
№5・№8・№9が所生の子とタマゴであると思われ、この組による子孫は駆除されたものと思われます。
イッシュ地方の文献と比してだいぶ繁殖・生育ペースが劣る状況です。栄養状況を鑑みハイペースでの繁殖は難しい状況であったと推測が成り立つところです。
(続)
-
投稿乙
生き残ったミーちゃんのその後も楽しみなんだけど、
生態環境の話とか思いの他ガチな内容でお話としても続きが楽しみ
-
山脈の生態系は独特だった。
氷タイプではムチュール系・ニューラ系・ウリムー系の繁殖が確認されており、その氷ポケモンを狙う炎タイプとしてヒトカゲ系・ガーディ系も繁殖している。
意外なことにヨーギラス系もいる。ジョウトやカントーでの主食は土だが、ここの地方では多少硬い岩でも何でもないように消化するらしい。水や氷に弱いのは他地方と変わらず、サナギラスの頃までは地中で生きている。運よくバンギラスに進化できた個体のみ地上に掘り出てくることがあり、掘り出た跡が穴になったり崖になったりして、雪に隠れて天然の落とし穴になったり、がけ崩れや雪崩の原因になったりする。
山の雪解け水は北の方から低地に流れを形成し、凍ったり解けたりを繰り返しながら盆地に流れ込み、一本の川になる。川は盆地を突っ切り、南の山脈の切れ目を通って、カントー方面に繋がる深く険しい渓谷を流れ抜けていく。
この川の中では、コイキング系やニョロモ系が(他地方の川と比べて多いわけではないが)いることにはいる。川の流域にはイーブイ系も繁殖している。イーブイの進化先はおおよそグレイシアで、たまにシャワーズだ。北の山脈の上の方では、地面を掘り出した時にたまに「こおりのいし」が出るし、川の底にはたまに「みずのいし」が転がっている。運のいいイーブイやニョロゾがこうしたものに触れるらしかった。
盆地を囲む山々でも、場所によっては地質と生態系の微妙な違いがある。南側の渓谷の両岸では質のイマイチな亜炭の層が露出しているが、その辺りでは炎ポケモンは出てこない。地元のヒトが焚き付けにするくらいの使い道しかないが、下手に炎を出すと出した個体ごとえらい事になりかねないと本能的に忌避されているらしい。
明確な食物連鎖の頂点となる種がこれだとは言えない山の環境で、それぞれ喰う喰われる関係性を持ちながら、微妙な食物連鎖が成立していた。
コイキング以外の全てポケモンが、タイプ上で不利な相手に対しても一度は攻撃できるような有効な技を遺伝したり、成長で身に着けたりしている。山の中の生存競争は熾烈で、たとえ二段階進化した個体であっても、極限まで食い詰めてしまえば駄目元で人里に降りてくる。
ヒトが畑で育てているのは、主に、きのみ・芋・雑穀。地質に恵まれない地域であっても何とか育てられるものを、懸命に育てて生きてきたのだ。畑に手を出せば怒り心頭のヒトに確保される。
水と焚き付けは取り合えず困らない土地柄ゆえ、そうしたポケモンは即座に生きたまま茹で上げられて生命が終わる。「食べられる部分は全て胃袋に入れる」という表現そのままに(ヨーギラスのわずかな筋肉でさえ)最大限栄養になり、食べきれない部分も余すところなく利用されるのがオチだった。
-
「骨も提供してほしいという依頼は初めてでした。聞いてはいましたが、ここの方々は食糧にされるんですね」「そりゃあ食べられますからね」
レンジャー協会の事務所の庭先、大鍋がかまどの火の上で鎮座していた。まだ中身は水だけだが、煮えてきていて湯気が激しい。
セメントの床に敷いたブルーシートには、5体分のタブンネの骨が並んでいる。分室での鑑定後にここに引き渡され、綺麗に洗浄を終えていた。
骨は何もしなければ食用にはならないが、何時間も煮れば溶け切って出汁が取れるしスープになる。そこそこ美味しいらしい。近くのヒト達に振舞うことになっている。定期的にやっていることだという。
ブルーシートの上のひときわ大きな頭骨に棒が振り上げられる。かなり硬かったはずの♂の骨はいとも簡単に砕けた。ある程度粉々になってから鍋に突っ込むとかどうとか。
研究者に連れられたエルレイドは、黙ったまますぐそばの金網に視線を向ける。先日引き渡したあのタブンネは網にしがみ付いて骨を凝視していた。首輪を鎖でつながれて全身ボロボロだ。案の定、リザードンに手酷い目に遭っているらしい。そのリザードンは今は不在だ。つい先ほどタブンネの群れの捜索に大張り切りで飛んで出て行った。
つがいも子も、全員がねぐらでニャースにやられて死んでいた。どれほど抵抗したのかは知りようがなく、ヒトは骨しか手にしていない。そのことを主に独断で密かにテレパシーで告げた時、タブンネの心は波打った。波打ったが、筋道だった思考の発露は今のところ無い。
そういえば母親がどうなったのか話したこともなかった。あの母親の身体はともあれ心は壊れ切っていて、ここでただ喰われて終わるらしい。エサも水も摂れないのだから、早々にそうせざるを得ないだろう。主は見切りをつけている。明日辺りにはここに運ばれるはずだ。
棒は容赦なく次々と骨を打ち据えていく。「かんがえごとがおおい」あのタブンネは、何も言わず涙も流さずにヒトの作業をじっと見ていた。
(続)
-
>>658
乙ありです。設定を考え始めたら止まらなくなりました。それらしく説得性があれば幸いです。
次回以降ミーちゃんサイドのお話(レンジャー協会であったこと)です。
-
>>660 誤字がありました。たびたびすいません。
× つがいも子も、全員がねぐらでニャースにやられて死んでいた。
〇 つがいも子も、全員がねぐらでマニューラ達にやられて死んでいた。
雪山にはニャースは出ないです……
-
投稿ありがとうございます。
この先はブイズも登場するのでしょうか?
リザードンとタブンネの話も見てみたいです。
-
――あなたとはぐれてから、割と近い場所で何体かのニューラにやられていたらしい。よく生きていたものだね。
これから私の住まいに連れて帰る。運が良ければもう一度会えるかもしれないね、ここで。でも期待はしないで。身体が生きて治ったとしても、心が死ねば何もできない。ひどい目に遭い続ければ、生き物はたまにそうなる。
――おかあちゃま、体力は強いから。
――あなたの母だけでなく、あなたも同じだよ。身体が生きていても、心が死ねば何もできない。それはヒトも生き物も同じこと。あなたの身体や心でも同じことだ。そうではないかな。
ミーちゃんはゆっくりと下ろされて、代わりにおかあちゃまがエルレイドのお兄さんの上に浮き上がりました。
それを見る暇も無く、ヒトのお姉さんとも違う、ヒトの太い腕が荒っぽくミーちゃんの首に巻き付いてきて、感じたことのない重く冷たいモノが喉を締めました。
ミーちゃんの触覚がこのヒトの思いに触れました。おかあちゃまとは真反対の方向に連れて行きたいようです。隙あらば乱暴に蹴り飛ばしたいような心持ちのヒト。覚悟していたはずなのに、ミーちゃんは縮こまった心で従うしかありませんでした。
-
「毎年のことだけどやっべえな、アイツ」
そのレンジャーは、半ば笑い半ば感嘆するようにガラス窓の外のリザードンを指した。1つ年下の後輩レンジャーが呆れながら同意する。
「アイツ、冬になるとああなりますもんねぇ」
肥えた個体が好みらしい奴だった。そういう体型の野生ポケモンと雪山で触れることはそうそうないが、まれに出会うと目の色を輝かせるし、飛び方もえらく生き生きするのでレンジャー協会でも有名だ。タブンネの丸々した体型はそういう好みのリザードンにはたまらないだろうと関係者の誰もに予想されていたし、実際予想通りだった。
この地の古くからの掟には、『雪山で明らかに死にかけている個体は、発見者のポケモンの生き餌にしてもいい。繁殖も譲渡も駄目だが、一冬一個体に限り、虐めの的にして構わない』というものがある。
冬の始まりのこの時季に雪山でこうした個体を見つけて、被虐対象としてこんな♀があてがわれたことは、リザードンにしては本当に喜びの極地だろう。
発見以来とんでもなくうずうずしていた思いは存分に発散されている。協会敷地の、とりあえず他所からは見えない(事務所の窓からは丸見えの)庭の奥で。
リザードンは図鑑に載っている背丈(1.7m)よりもやや大きい形で育っていたし、タブンネは栄養状態が悪かったためか、逆に図鑑に記載された背丈(1.1m)よりもやや小さい。
タブンネが鎖で金網に繋がれた時、倍ぐらいの身長差と、倍どころではない重量差で圧倒されながら震えていた。リザードンはお行儀よくレンジャーが庭から去るまで待っていて、去った瞬間に本性丸出しで襲い掛かったのだった。
まず「かわらわり」を繰り出した。ノーマルタイプのポケモンに格闘技はよく効くようで、タブンネは、あの真新しい分室で唯一の技として残された「なきごえ」を1発だけ上げて失神している。セメントの床の上にリザードンは座り込み、脱力したタブンネを自らの股の上に抱え上げたのだ。
タブンネが意識を取り戻した時の痛みはとんでもなかっただろう。種族が違いすぎ繁殖できない組み合わせで、本来は考えられない大きさのものを突っ込まれ続けているのだから。リザードンの腕の中でちょっとした悲鳴を上げるなり、リザードンは余計にヒートアップした。幾度目かの繰り返しで学習したのか体力が尽きたのか、もはやタブンネは声も上げない。
今は、あられのちらつく中で金網に押し付けられている。挿さったまま覆いかぶさられるのは、それはそれでしんどいだろうと思い、レンジャーは半笑いになる。
少し前まで、あてがわれたポケモンはまさしく見つけたポケモンのものだった。ヒトが干渉することはなく、冬を越せずにすぐ死んでいた。
エサだけは出すようになったのが、5年前だ。
他地方との交流による意識の変化もあるが、一因はこのリザードンにもある。あまりにも激しすぎて1日で潰してしまった例が3年連続したからだ。もっとも、許される時だけはとんでもなく気性が荒れるというだけで、ヒトの示した規範は厳守しているし、普段の働きぶりもレンジャー事務所では一番優れていると言って良い。そのためレンジャー協会の会長にいたく気に入れており、「さすがにもったいないから、もうちょっと生かすようにするかね? 他所の地方のフーズも普通に買える世の中だしな」の鶴の一声で、エサの配給が解禁された。
一応の外聞があるから表からは見えないが、レンジャーではなくても皆知っていた。このタブンネのように泣こうが血を出そうが絶望に苛まれようが、それは掟に従ったものだとヒトもポケモンも理解していたし、この地で生きるための当然かつ最小限の犠牲だと考えていた。
こんな生贄がなければ、あの山を飛んでヒトのために戦う過酷な日々は、間違いなく絶対に割に合わないのだ。
(続)
-
>>663
リザードンとタブンネの関係を書いてみました。今はこんな感じです。今後も視線を変えてこの2匹を描写できればとは思っています。
ブイズはどうでしょう。話の筋次第では出せるかもしれませんし、アイディアはあるのですが、この掲示板の場所柄、タブンネの絡まない更新はできるだけ避けたいところです。
-
お応えいただきありがとうございます。
冬の間のうっぷん晴らしってそういう意味でしたか(すみません。649の最後、三行見落としてました)
これはこれで楽しみです。
ブイズの方は山に棲む個体が登場したら嬉しいと思っただけですので、お気になさらないでくださいね。
-
本当におたがいのことを思い合えない相手と一緒に過ごすことって、こんな風なことなんだって初めて分かりました。昼は昼でうっぷん晴らしの的にされること、夜は夜で的にしてくる相手に抱き寄せられたまま眠り続けるということ。
それでも、ミーちゃんのことを延々痛めつけるリザードンのおじさんに散々触れるから、心にも自然と触れてしまいます。
おじさんにとって、ヒトの群れのために生きている厳しい厳しいいつもの日々は、冬にミーちゃんみたいな子をいじめ倒して挙句に食べてしまう喜びと引き換えのようでした。ミーちゃんはヒトから食べ物を貰って、その代わりにいじめ尽くされることを望まれていて、むしろそれ「しか」望まれていませんでした。
ヒトから貰える食糧は、確かにあの山のほらあなの中では食べたことがない味がします。それだけは良いことです。良いことと言ったらそのことだけです。
リザードンのおじさんは、つがいになった1番上のお兄ちゃまとは真反対でした。あのほらあなの中ではタマゴを作って子どもを生み育てることだけを誰もが望んでいたけれど、今はタマゴも産めない相手の心と一緒にただ受け止めるだけです。
おじさんは、誰かとタマゴを作っても、ヒトの都合が付かないときは孵化したそばから子どもが茹で殺される掟です。ミーちゃんのようにどう頑張ってもタマゴが出来ない相手はかえって都合が良いそうでした。
2周り前の冬には、とっても未熟な身体の子を的に決めてミーちゃんのようにいじめ倒し、何度かタマゴを生ませたけれど、その都度おじさんは自分の足て踏みつぶして相手が黙って泣くのをお構いなしにまた盛り続けたとか。冬の終わりにはタマゴと一緒に殺して食べたそうです。好みの身体とはかけ離れてたけど、タマゴができる相手もまぁ楽しいと思ったそうで。……金網にしがみ付くミーちゃんの首を後ろから締めて、モノを抜き差ししながら笑って言う話じゃないと思いました。
おじさんは、腕の中で声を出されるのがとても嫌いです。暴れられるのも嫌いです。だからすぐにミーちゃんは黙って固まって涙だけ流すようになりました。
思えば、ヒトのお姉さんは正直でした。「死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないけれど、それでもよければヒトの群れにおいで」って。あの時、雪山の道でお姉さんと初めて会った時、お姉さんはミーちゃんに間違いなくそう言ったんですから。
エルレイドのお兄さんも、お兄さんなりにミーちゃんを心配していたんです。心が壊れれば、死んでしまえば、何もかも忘れて何も感じないようになれば、確かにそれはそれで楽なはずでした。
-
ここに来て2晩眠った後の朝のことです。リザードンのおじさんはヒトの仕事で飛び立ちました。ホッとして冷たい床に座り込んでいたミーちゃんのところにヒトがやって来て、ミーちゃんを脅すように歩かせて別の金網に繋げたのでした。
向こう側に、エルレイドのお兄さんがいました。ヒトのお姉さんと、他のヒトと、並べられた誰かの骨。とても覚えのある形です。
――久しぶりだな、俺は分かるか? だいぶつらいようだが、心は死んでないかい?
親身になってはくれないけれど、気の毒がってはくれるお兄さんです。癒してはくれないし、支えてもくれないけれど、でも、心に触れても苦しくない相手に会えて少しだけホッとします。
――エルレイドのお兄さん。ミーちゃんの心はまだ生きてるよ。まだ。
お兄さんもまたほんの少しだけホッとしたようでした。でも、すぐにまじめな顔に切り替えて、真剣にたずねてきたのです。
――ヒトが持ってきたそこの骨のことだがな、山のアンタの仲間に関係する事らしい。余計につらくなるだけの話だが、知りたいか?
――え、教えて?
悪い予感しかしません。悪い予感しかないけれど教えてもらうしかありません。お兄さんの心の声は、以前のようにミーちゃんを気の毒がっていました。
――アンタらの昔のねぐらに、ヒトが大勢で踏み込んだらしい。ここのヒトは、山に入った余所者はできるだけ捕まえたいって考えるからな。
でも、そこれはアンタの仲間は一匹も生きていなくて、代わりにマニューラとニューラの群れが巣食ってたんだと。
ヒトが踏み込む前に、マニューラ達がアンタの仲間を襲って食い散らかしたっぽいな。アンタの母親とアンタは山の中で逃げ回って挙句に迷ったけれど、ねぐらに戻って来れた奴もいて、そういうのがマニューラ達にやられたんだろう。どんな戦い方をしたのかはヒトにも分からないが、ともかくアンタらの仲間は負けて食われた。
ねぐらにあったアンタらのマスターの骨と、マニューラが食った後のアンタの仲間の骨だけを、ヒトは山からここに持って帰ってきた。ヒトの骨は他所でヒトが弔うが、アンタの同族はここでヒトが食らう。
――そんなっ。
金網の向こうで骨が並べられます。全部で5体分。覚えがあるのは当然です。ミーちゃんと一緒に過ごしていた群れの仲間の誰かなんですから。
――ヒトはな、生き物が骨になったとしても、生きていた頃の実の親と子の関係は見抜くんだ。アンタのつがいとつがいの間の子は、どっちもねぐらで骨になってた。アンタの妹と、妹の子2体も同じく骨になってたらしい。それと、ここには持ち込まれてないが、ねぐらにあったタマゴが3個くらい、完全に割られて喰われてたそうだ。
これって、……アンタのつがいも子も、マニューラ達のせいで全滅したってことじゃないのか? アンタの子は小さいのが1体に、タマゴ2個だろ?
――うん。……その通り。
――で、こういう時に山から持ち出した骨っていう物はだな、ここのヒトは粉々にして茹で溶かして食うらしい。アンタのつがいも子も、今からそうなる。
ここの食う食うわれる掟ってこういうものらしいぞ。俺は初めて知ったが。それと、ここのヒト達は、エサを食わせさえすればそういう物を見せつけても良いって思ってるんだ。
つらすぎると涙も出なくなるのでしょうか。そういうことはミーちゃんの心が死んでいく前触れなのでしょうか。
ミーちゃんの心がどうなろうとお構いなしに、お姉さん以外のヒト達は、金網の向こう側で、楽しそうに骨を砕いて、茹でて、美味しそうに飲んで騒ぎ続けるのです。
(続)
-
>>667
どういたしまして。
今回読み返して頂いてお気づきになった通り、元々>>649を書いた時からリザードンにこういうことされる描写をいつか書くということは確定していました。今後もご期待に沿えば幸いです。
完全にプロットが固まり切っているわけではないのですが、今までの投稿分でも、伏線になるかもしれないことをさらっと書いてたり書いていなかったりします。
分からない事や疑問点などがもし有りましたらお気軽にお尋ねくださいませ。よろしくお願いします。
-
「●●さんも、残酷なことだと思われてますか? 他所の地方の人達みたいに」
スープの入った椀を求めて三々五々関係者が集まる中、不意に振られた質問だった。レンジャー協会の会長からの。
値踏みされているのだと思う。尋ねてきた本人だけではなく、周囲の人々からもだ。馴染めない見識を持つ者を受け入れる余地なんて、ここでは持ち得ないのだから。
「あくまで個人的な見解ですが、残酷さというよりも、……生きるための努力と知恵が、他の地方と比べて段違いに必要な土地なのだと感じました。でも、皆さん方はそれを受け入れて生きておられる」
無難だが真実の一面を突いた言葉ではないか、と、我ながら思う。会長や周囲の何人かは納得したようで、強く首を縦に振った。一人のレンジャーだけが苦笑する。
「ここで色んな決まり事を守れそうにもない人はレンジャーを目指しませんもんね。そういうのが嫌な奴はそもそもレンジャーになりゃしない」
レンジャーの言葉には自嘲するようなニュアンスがあるが、周囲のリアクションを見るにそれもまた正しいのだ。こちらの立場では微妙な苦笑いでフォローするしかないけれど。
「今のところそれを受け入れて汗を流す方々がおられるから、ここの町での人が生活できている、という事もまた真実ではないでしょうか。……もちろん、決まりをどうするかはここの方々が決める事ですけれど。私どもだって、ルールを変えて頂いたからこそここに着任できたのですから」
「そうですねえ。でも、そういう決まりが嫌でたまらない子は、レンジャーになりたがらないどころか、若い頃にカントーに出て戻って来なかったりするんですよ。
仕方ないことなのかもしれません。レンジャーになることも、ここに住むことも、無理矢理やらせる話じゃないですから。特にうちは熟練でも運が悪かったら死んだりする業界ですからね、うちの息子みたいに」
「えっ? ……息子さんが、ですか?」
驚いたこちらに向けて、会長は世間話のように言った。
「5年前でした。登山道のふもとに近い辺りで食い詰めたバンギラスが出たってんで、息子をリーダーにして3人がかりで倒してたら、その後でリザードンが5体ばかり飛んできましてね。えらい強い集団だったらしくて、うちの息子が生命を持ってかれた上、息子と組んでた若手2人も揃って大怪我したんです。おまけにリザードンは1体倒し損ねたんですよ。息子が連れてた♀のグレイシアを掴んで山の上の方に飛んで逃げたらしくて、今も見つかってないんです」
-
ほらあなでチビちゃんが生まれた時のことを思い出していました。ミーちゃんの初めてのタマゴのうち、1個はタマゴの形をしただけで生命は宿りませんでした。残り1個をしがみつくように温めて過ごし、生まれた子を震えながら抱き寄せたのです。
チビちゃんは他の子と同じように愛されていました。タツおじいちゃまもメタちゃまも実のおじいちゃまも、おかあちゃまも、一番上のお兄ちゃまちゃまも。誰もが。
ほらあなの外で実のおじいちゃま達が貴重な食べ物を見つけたある日、タツおじいちゃまのかえんほうしゃであぶった肉をみんなで分けて齧りながら、おじいちゃま方の昔話を聞いたのです。
ヒトの世界のこと、マスターのこと、食べ物のこと、可愛がられたこと、技を教えたおじちゃまのこと、実のおじいちゃまのパンチのこと、タツおじいちゃまの炎のこと、メタちゃまのへんしんのこと、戦い方の知恵を受けてほらあなから独立した仲間のこと……。
ほらあなの中で生まれ育った子は、みんな、おじいちゃま方が編み出した戦い方や生き方の知恵を授かっていました。ミーちゃんがずっと生まれる前からそうでした。
大事な大事な思い出が粉々になっていくような気がします。ヒトのお姉さんだって思い出を粉にして溶かして食べています。
ミーちゃんは捕まるべきではなかったのでしょうか。あの時お兄さんの腕にうずもれるべきではなかったのでしょうか。
ミーちゃんが捕まらなければ、あそこでお姉さんたちに拾われなければ、ほらあなのことはヒトに知られることはなくて、仲間たちがこうして食べられることもなかったはずなのです。
(続)
-
「オマエラは雪の上だと目立つ身体してるのに、群れは一体どこにいるんだろうなぁ? 山の中を散々飛び回ったのに今日は空振りだよコンチクショウ」
「……ミーちゃん、分からない。みんなバラバラに逃げたから……」
夕闇が降りつつある頃、リザードンの腕の中で、その♀は小さく応じた。気弱な答えは、いかにも登山道に死にかけで突っ立っていた馬鹿らしく、全く役に立たない。リザードンは舌打ちしながら♀の首を軽く締めた。
リザードンの飼い主達は、この馬鹿の同族を根こそぎ山から消し去りたいのだという。
こいつらは何日か前に山で大暴れしていたあのボーマンダのあおりを食らい、群れが散り散りに逃げていたらしい。この馬鹿と母だけが生け捕りされ、何体かの骨だけが元のねぐらで発見されている。他にも生きてたのがいるようだが、それらはまだ行方知れずだった。
元のねぐらの場所だけは分かっても、地吹雪が連日続いたため、そこを出てどこに行ったのやら匂いの追跡が全く効かなくなっている。馬鹿の種族らしく分かりやすい所に新たな寝床を作っていれば良かったのだが、案外そういう風ではないようで、どこにも手がかりが見あたらないのだった。
糞も毛皮も足跡も見つからないのだから、飼い主達の間では、とっくに野生のポケモンに喰われたか、見当違いの場所を探し回っているのではないかという声があった。あるいは夜中に密かに動いているのではないかという声もある。(リザードン達は日が沈んだら山には入らない。単純に「危険だから」だ)
ちまちました捜索は好みではなかった。何年か前の冬のような、不意打ちのようなバンギラス1体と怒り狂ったリザードン5体の連戦のような死闘はそれはそれでキツかったが(その時は飼い主のひとりとグレイシアが喪われた)、今回のようないつ終わるとも知れない捜査は別の意味で嫌いだった。飼い主達の命令だから従うが、個体毎の好みや苦手は全く無い訳ではない。
そうしたうっぷんを晴らすように、リザードンは腕の中の馬鹿に感情を丸ごとぶつける。好みの体格で、癪に障る声を出すこともなく、黙って受け入れる♀。馬鹿だが悪くはないと思う。何やってもいいという条件であてがわれた個体なのだからリザードンを制止する者はだれもいない。
夜になってしばらくした頃、後ろの方でやり取りがした。ヒトの声と、同じ飼い主達に飼われているウィンディの咀嚼音。生き餌を喰わせてもらっているようだ。
生き餌のものらしい甲高い鳴き声が上がる。腕の中の馬鹿がビクッとして鳴き返したものだから、リザードンはイラっとして「かわらわり」を繰り出す。今回は意識が飛ばずにグッタリするのみ。
咀嚼と鳴き声が続く。馬鹿は今度は耳を抑えてイヤイヤし始めたので、リザードンはその両手を引っぺがして引き続き欲情をぶつけた。
この山で掟を破ったお前らが悪い。勝手につがって増えた罰だ。親が喰われようが何されようが俺の相手に集中しろ。馬鹿が。
思いは通じたらしく、馬鹿はただ黙って涙だけを流していた。
(続)
-
話はここで折り返しになります。次の投稿より時系列が動く予定です。
-
なお、次の投稿まで1週間開く予定です。12月6日の週より続きの投稿を再開します。
現段階では今後のプロットは詳細を詰めている段階ですが、タブンネ以外のポケモンも、タブンネ同様にさらっとひどい目に遭う描写を普通に出す流れで考えています。
ここでの連載で許容されるものなのか、ご意見賜りたく存じます。
-
迷うなら止めなよ…
ただでさえ異色の話なのにもっと続けるの?
-
ここはタブンネさんがひどい目に合うことを楽しむ場所だから
ある程度は許容されるかもだけど本筋から外れるならやめといたほうがいいかもね
-
タブ舎と掟の続き待ってます
-
こんにちは。「情はないけど掟はあった」を書いている者です。
未だ今後の筋に迷っていて続きを書けていない状況で恐縮ですが、別のネタを思いついたので投稿します。前後編の予定で、今日はとりあえず前編のみの投稿になります。
「情はないけど掟はあった」とはシチュエーションは似てますが、別の地方の別の出来事としてお読みください。
-
とある森のタブンネの群れにとって、滅びの危機は、突然に始まった。
ある日、森のずっと遠くに見える山々が前触れなく轟音と共に煙を吹いて、灰色の石と砂の雨を長いこと降らせたこと。それが全ての始まりだった。
森の木々が急速に枯れだし、本来あったはずの実りが全く期待できなくなった。森の中で暮らすタブンネ達はもちろん、その他の種族も徹底的に飢えた。あらゆる種族が殺気立ち食糧競争が激化して、挙句の果てに格闘ポケモンが徒党を組んでタブンネ達のねぐらを襲撃した。そこでタマゴと同胞が何体か殺されるに及んで、とうとうタブンネ達は森を捨てたのだった。
ねぐらにも食糧にも全く見込みがない逃避行だった。森は当然のことながら、森の外でも周囲のあらゆる植物が枯れていた。灰の雨は水脈さえも毒に代えてしまった上に、フラフラと彷徨うタブンネ達は他の肉食ポケモンにも恰好の獲物として狙われる。異変が起きる前には20体ほどだった群れは、森を捨てて2日目にはわずか4体にまで減っていた。
そして2日目の昼、生き残っていた4体のうち2体が、かつて草地だった場所のど真ん中でほぼ同時に倒れ、共に動けなくなった。
辛うじて立てる2体だって、倒れていないというだけでそこから動き出せるというわけではなかった。
皆がつられるようにへたり込んで絶望のままに空を見上げる。バサバサというバルジーナの翼の音が恐ろしい。戦う体力があるはずもなく、群れの滅びも明白に見えていた。
だが、その時、意外にもバルジーナは離れていったのだ。追い払われるような慌て方で一目散に飛び去って行く。
タブンネ達にも原因は分かった。遠くからこちらの方へ、大きな何者かが大地を蹴るように駆け寄って来ていた。森では見たことがない種族だが、明らかに強そうに見えた。タブンネ達に体力さえあれば、それこそバルジーナのように逃げ出していたところだろう。どう見たって力で敵いそうにもない相手だ。
より強い悲しみと絶望がタブンネ達を支配する。無意識に4体が抱擁し合って覚悟を決めて――
またしても意外なことに、そのポケモンは、そこではタブンネ達を食べることはしなかった。
目の前で立ち止まって息も絶え絶えの彼等を見下ろす。ポケモンの背に乗っている誰かが降りてきた、――ヒトだった。横に、ふわふわと別の見知らぬポケモンを浮かせている。
そのヒトはヒトの言葉で語りかけ、浮いている方のポケモンが、タブンネ達にも分かる言葉で語り直した。
「アンタら、飢えて死にかけているんだロう? 主についてくるのなら、きのみだけは食べられるようにはしてあげられるロト!
主は、飼っているポケモンに生き餌を与えたがっているんだロト! アンタらがつがいになって、生まれてくる子を一匹残らず生き餌にずっと差し出し続けるなら、その間はアンタらにオボンを毎日食べさせてあげる事だけはできるロト。それでもよければ主に飼われるロト」
弱ったタブンネ達の中で、重い戸惑いと迷いの視線が交錯する。♂と♀が共に2体ずつの集団だったから、なるほどつがいはちょうど2組ずつ成立するはずだ。
みな山の異変があってから今に至るまで、全く何も食べていないに等しい。メシに困らないという点はそれだけで猛烈に魅力的には違いなかった。例え、取り返しのつかない強烈な代償があったとしても。
「この辺りには、きのみの生えてそうな場所はもう全く無いロト! 主について来なければここで飢え死ぬしか無いロト!
でも、ついてくれば、きのみには困らない代わりに、生き餌にするためだけにタマゴを生んで育てる日々になるロト。主についてくるかどうか、アンタらがそれぞれ今すぐここで決めロ」
1体の♀が怯えてはっきりと首を横に振った。1体の♂が、つられる様にその♀に抱き着いて同調する。しかし残りの2体は違った。残るもう1体の♀が逡巡の末に顔を上げてもう1体の♂の手を取り、覚悟を決めて頷き合ったのだ。
4体の視線が再びぶつかり合う。責め合いではなく労り合いの目線。互いの判断を認め合って惜しむ一瞬の眼差しだけで、それぞれの別れは終わった。
-
うちのバンバドロとハブネークのための生き餌製造機は、いまのところとても従順で大人しい。
生き餌製造機の正体は、リビングのど真ん中に置いた、大きな金網のケージの中で巣食っている一組のタブンネの夫婦。元々、火山噴火の影響で食い詰めていた奴らだった。
奴らを飼い始めた時、ロトムを通して俺は言った。
「お前ら夫婦はもうこのケージからは出れないと思え。子どもがどんなに恨もうが喚こうが、責任を持って子どもを差し出すこと。苦しい状況でメシを食わせてやってるんだ。生き餌を差し出す条件を守れないのなら、お前らを飼っておく意味なんてない」
しょっちゅうハブネークが這い回っているリビングで、この夫婦は牢獄の囚人のように監視されながら暮らしている。
俺は、最初っから、産んだタマゴの数はごまかしようがない環境にこだわっていた。最初の約束を違える事だけはないように。巣作り用の新聞紙と餌のオボンをケージの天井から投げ与え、ゴミバケツの処理だけしておけば、定期的にタマゴを生んで孵化させ、やがて乳離れした子を差し出してくれるように。
ケージの中と外で発生する揉め事は、案の定、タブンネの子を隠したり見つけ出したりするような方向には向かわなかった。予想通り、食べられるために生まれてきた子が両親に反抗するような事ばかり。夫婦の方は覚悟を決めてうちに飼われているけれど、ケージの中で生まれてくる子の方はそんなこと知ったこっちゃないという話らしい。当たり前といえば当たり前のことだ。
奴らを飼い始めて2ヶ月後、1回目の子の引き渡しの時だった。その時に差し出されるはずの子は4体だった。
最初の1体は反抗心に燃えて大暴れする性質だったらしく、最後の最後までケージにしがみ付いて大泣きしながら抵抗していた。あまりにも大暴れするのでウザさにロトムがキレて夫婦に一喝、慌てた夫婦の♂の方が子どもをケージの柵から叩き落として殴りつけ、しまいには子を無理矢理に持ち上げてケージに首を突っ込んだハブネークに直に食わせた。
食われる時にも絶叫が上がった。断末魔は甲高い鳴き声で、俺の耳にえらく響く。耳の良いタブンネ達にはなおさら聴覚のダメージになっただろう。子を持ち上げていた♂は苦渋の顔で、♀の方も真っ青な顔で立ち尽くす。残った3体の子は両親とも距離を取り、ケージの片隅で互いに抱き合って震えていた。
やがて子どもたちの内、真ん中の子が涙を流しながら俺を見る。意を決したように何かを言った。ロトムが通訳した。
「食べられて死んじゃうのは分かってるけれロ、どうしてもきょうだいで一緒に死なせてほしい、って言ってるロト。誰かが最後に生き残ることだけは怖いらしいロト」
「……なるほどねぇ。どうするバンバドロ?」
3体を食べるはずのバンバドロに尋ねてみる。ヤツはうちの土間に繋げていて、興味津々でこちらを見ていたのだ。訊かれた方はちょっと考えて頷いたから、俺も頷いた。
「ハブネーク。そいつらは順番に噛みついて弱らせてから、バンバドロの方に咥えて渡してくれ」
その指示もロトムが通訳しているから、タブンネ達にも通じる。子ども達はもう反抗しなかった。泣いてたけれど。なされるがままに毒の牙を受けて土間にドサドサと放り出される。
バンバドロは滅茶苦茶に張り切っていた。希望通り、ぐったりと横たわる子ども達をまとめて積み上げてから一思いに踏み潰す。
一瞬で土間の上に3体分の圧縮ミンチができあがり、バンバドロが食らいつく。リビングのゲージの中からもその有様ははっきり分かったはずだった。
-
俺はタブンネの性分を舐めていたのかもしれない。
嘘ついて騙くらかした訳でもなく、最初から生き餌として子どもを差し出すのが条件だと言っていたのに、条件通りに子どもを食わせたらケージの中で夫婦で揃って憔悴しだしたのだ。
……あの時決めた覚悟はどうしたんだ、一体。
それでも夫婦の間でヤることはヤれたらしい。タマゴができない5日間のエサはずっと俺のわずかな激マズ残飯だった、そのせいかもしれないが。
1回目と同じく4個のタマゴができた朝になって、元通りにケージの天井を開けてオボンと新聞紙を投げ入れる。ロトムを通して俺は言った。
「お前ら、案外精神的に脆かったんだな。死ぬのが嫌なら子どもを育てて差し出せよ。それができないならここを出ていくか、お前らが生き餌になっちまえ。そうすれば俺はうちの外でまた生き餌に産んでくれそうなつがいを探す。今はどこでも餌不足で飢えてるから、子どもを差し出してでも生き延びたい奴は大勢いるはずだ」
断続的に噴火を続ける火山の影響は酷いものだ。うちの辺りでは石が飛んでくることはまず無いが、窓から見える世界は未だにどこもかしこも灰だらけだった。きのみも雑草も生えようがない世界なのはリビングの真ん中からでも分かっただろう。
俺はバンバドロ使いの配送屋兼土建屋。(昔はトレーナーをやっていたが)今の本業で火山災害支援に関われているから多少マシな方というだけだ。ヒトの社会では農業で食べていた人達の離農がローカルニュースの大問題になっている。野生のポケモンだってどれほどが飢えたのか知れたものじゃなかった。
「俺はな、タブンネを愛でる余裕も、タブンネを繁殖させてその子孫の分まで食わせる余裕も、どっちも無えんだ。バンバドロの生き餌を産んでくれるつがいを、外の世界よりほんの少しマシな環境で飼うくらいが精々なんだぞ。それを分かっててくれ。お前らがここにいる限り、お前らが育てるのはお前らの子じゃない。俺達の生き餌だ」
情を振り切って生き餌製造業をやっているんだと割り切ってもらえるならそれで良かった。俺としては。
ケージの中での作業といえば、子どもを育てるか、汚れた新聞紙を千切ってケージの隙間から外のバケツに出す(それ以外へのゴミ捨ては元々キツく禁じていた)くらいだろう。今は外の世界が異様に厳しいのだから、飢えずに生きていける環境というものは、子への情を無くしても釣り合うくらいの貴重な価値がある。後はこいつら夫婦が割り切れるかどうか次第だった。
(続)
-
新作、ありがとうございます。
これもまた面白そうな話ですね。最初の子は潔かったようですが、聞き分けのない子と生き延びたい親の喧嘩なども見てみたいです。
バンバドロって馬なのに肉食なんですか。
-
>>683
レスありがとうございます。今週中には後編を書き上げるつもりです。前編と同じくらいの長さになると思います。
リアルの野生の馬でも、死んだ馬の肉を食べたことが記事になったり、ヒヨコを食べた動画が複数ネット上に上がったりしています。執筆当初からそういう情報を念頭に置いてました。
完全に作者の個人的な見解ですが、バンバドロは草食寄りの雑食のつもりで捉えています。たまには肉を食べることもあるような(食べなくても生きていける感じの)種族のつもりです。
-
もしも火山の噴火が発生せず、俺の懐具合にまだ余裕があれば、(バンバドロ・ハブネーク・ロトム以外にも)他にポケモンを飼うことや繁殖させることに関心を持ったかもしれない、逆に、野生よりもほんの少しマシな環境で生き餌用のポケモンを囲うという発想には至らなかったかもしれない。
空想に逃避してしまえば、頭の中だけでは無限に救いが生まれる。しかし実際は、余裕も救いも無い現実の方が常に正しい。現状で余裕のないなりに考えた結果がこの夫婦のこんな扱いで、俺の懐具合でできることが精々がこの程度だった。徹頭徹尾、ただそれだけの話だ。
たとえ本心を覗かれても構わなかった。俺は、一貫して本音丸出しで接していたのだから。
人生初の試みだったから、俺は油断していたのだと思う。
その日、立て続けの噴火が落ち着いて降灰も無いので、家の窓を全開にしていた。2回目のタマゴは4個とも前々日に孵っていて、タブンネの赤ん坊は母の乳を含みつつよく鳴いていた。そこに俺がオボンと新聞紙を入れたので、両親はオボンを食べていた。
うちの周辺はガチの灰だらけで、植生は壊滅的に悲惨だった。この辺りは元々はタブンネが普通に住んでいる地域で、タブンネという種族は一般的に非常に耳が良い。
さて、飢えたタブンネの群れが、健康的なタブンネの子の鳴き声と、瑞々しいオボンを両親がかじる音を聴き付けたら、一体どうなることだろう。
ロトムに呼ばれた俺がトイレの長い用事を切り上げてリビングに戻ってみると、めっちゃ分かりやすい構図が出来上がっていた。
ケージの中でバツの悪そうな顔をする夫婦、よく理解してるかは分からないが一応黙り込んでいる4体の子、土間から窓の方を威嚇するバンバドロと、本気で牙をむき出しにしたハブネーク。
最後に、うちの庭からリビングをガン見しているタブンネの群れ。赤ん坊2体を含めて、……ちょうど10体か。全員餓死寸前らしく、特に赤ん坊は両個体とも死んでるんだか生きているんだかがよく分からん。ハブネークが制止しなかったら、今頃は家に上がり込んで食糧強奪してたかもしれないな、コイツら。
「ロトム。こいつらの言い分を聞いてくれ。先に『全員一斉に話されても分からないから、群れの長だけ喋れ』と言った上でだ。まあ、こんな状況で言いたい事なんて分かり切ってるが」
ポケモン同士のやり取りが始まる。指名された長の声は切羽詰まっているのが分かった。この状況でのんびりしているはずもないが、懇願の声色は極度に強い。
「あー、群れがみんな飢えそうで、どうか赤ん坊の親の分だけでもきのみを分けてくれないかと言ってる、ロト」
「ロトム、俺の言う事そのまま伝えてくれ。
……俺は、飼っているポケモンの生き餌が欲しいんだ。ここのタブンネ夫婦は、あの檻の中からは一生出れない。そしてここで生んだ子を残らず俺達の生き餌に差し出していて、代わりに俺からきのみをもらう。そういう約束で住まわせてるんだ。それ以外のタブンネにきのみを渡す余裕は、俺には無い」
ゆっくりと話す言葉が訳される。庭から弱々しい悲鳴が上がった。ケージの中への夫婦の同情と、哀しみと、羨望と、この群れの中で死が定まった子と我が身への悲嘆。
ケージの中でも夫婦が多少しょげていた。特に♀の方、こりゃあ死にかけてる赤ん坊に同情しているな。俺が声を掛けなければ、この夫婦だって衰弱死一直線だったはずだし。
まぁ良い、多少マシな選択肢を言うだけ言うのもありだろう。俺が損する話でもない。
「死にかけてるそこの赤ん坊達に、乳を飲ませたいのか? そこの夫婦が余計に子どもを育てられそうなら、その赤ん坊達だけは引き取るぞ。ただし、引き取った子どもは将来のうちの生き餌にしかなれないが。今すぐ餓死する元々の運命が、ほんの少し違う運命になるだけ、それだけだな。ただ、少なくとも生きている間は乳は飲めるだろう。肥えた子どもは理想の生き餌だからだ。
その他のタブンネは、俺達は要らん。アンタら痩せすぎてて餌にもならねぇよ。子どもの運命を決めたら、ここからとっとと出てってくれ」
ケージの夫婦と庭の群れ両方に向けた言葉を、ロトムがまた通訳した。ケージの柵と窓越しに鳴き声が飛び交う。俺、長だけ喋れと言ったはずなんだがなあ。
ただ、喋らせた分だけ意見は出まくったようだ。覚悟も方向性が固まり、別れの挨拶も交わされたらしい。
1体の赤ん坊は死にかけたまま母親らしき成体に強くしがみ付いていた。もう1体は、死にかけてるなりに肝の据わった顔でこちらに差し出されたのだ。
こうして引き取った個体は、ケージの中で♀の乳房に無我夢中で吸い付いた。元々の子が4体とも若干引くくらいの勢いで。
-
ケージの中で引かれつつ同情されつつ♀の乳を独占すること丸3日。元々の子4体よりも小さかった背丈は追い越す形で大きくなり、体型もだいぶマシになって、何より歯も生えた。タブンネの成長力ってすげー。
「どっからどう見ても乳離れする時期だな。あっという間に生き餌にはぴったりに育った、自覚はあるか?」
ロトム経由で尋ねてみる。その子は、ケージの中で覚悟した顔で頷いた。何とも潔さに振り切った個体だ。
ケージの天井部は他の面と同じく全面金網だが、ロックを外せば、蝶つがいを起点にしてフタのように開口できるよう作ってある。俺が前に子を食わせた時のように天井を全開にすると、ハブネークは舌なめずりをしながら中に首を突っ込んだ。
全く叫ばなかったし、泣きさえもしなかった。牙の一突きと丸呑みだけで静かに終わった。
人間もポケモンも、どんな生き物も、自分が見知った経験に基づいた価値判断しかできない。
野生の環境で飢餓に苦しんだ経験のある夫婦や、1体だけ引き取られた子にとっては、俺はまさしく救世主だし、従うべき相手だった。俺が提示した条件は取り返しのつかないものだったが、苦渋の末にでも納得して身の振り方を決めている。俺に逆らうはずがない。
タブンネは本質的に他者を気づかう善良な生き物でもある。自分自身が単に食われるだけの元野生の子にとっては、身内を踏み台にする自責は生まれない。腹一杯になる歓喜と、差し迫った己の死の覚悟。それしか求められない立場だったのだ。
他方、ケージの中で生まれた子達は、火山灰だらけの大地で飢え死にかけるという経験をしておらず、俺の条件に納得した訳でもない。生まれた時からいずれ生き餌として食べられる運命しかなかった。
野生の子を引き取ってわずか3日間でも一緒に育てさせたのは、家の外側の世界で、タブンネの野生の群れがどんな経験をしていたのかを4体の子に知らしめるため。ケージの中で母体の乳が飲めるという環境は、それだけで絶対的にマシなんだと理解してもらいたかった。ごく短い生涯が確定しても、なお釣り合う程度には、貴重な環境なのだと。
生き続けたい親と、食べられる運命を勝手に決められた子のケンカは、発生するよりは、発生しない方がいい。俺は住まいの静寂性を何が何でも重視しているという方ではないが、リビングが静かであるならそれに越したことはなかった。
それで元野生の子を引き取って食わせた結果だが、予想外の方向に向かった。親子ケンカは起きなくなったが、子の方が授乳を拒否するようになったのだ。覚悟を決めて食欲を満たし成長して乳離れした子がすぐ食べられたのだから、何も乳を摂らずに成長しなければいいと思ったらしい。そういう教訓になったのかよ、クソ。
「常々言ってるが、俺はタブンネを愛でる余裕も、タブンネを繁殖させてその子孫の分まで食わせる余裕も、どっちも無え。お前らは生き餌製造機としてここにいる。
ここのガキ共に無理矢理にでも乳を飲ませろ。乳離れした子は生き餌に最適な時期だが、それ以外のタブンネだって生き餌に出来ない訳じゃないんだぞ。子どもを乳離れさせられないなら、お前らが一家揃って生き餌になるか、ここを出てってくれ」
ロトムを通した通告の結果、痩せた子どものうち3体は母の♀の乳を飲むようになった。1体はロトム経由で思いがけないことを言ったのだ。
「その子だけ、許されるなら、乳離れが終わった時、生き餌にするんじゃなくて外の世界に追い出してほしい、と言ってるロト」
「へ?」
「厳しくてすぐ死ぬ場所なのは知ってるロト。ただ、このケージじゃないトコで死にたいらしいロト」
覚悟を決めて外からケージに入る奴がいるんなら、覚悟を決めてケージから外に出たい奴もいる、ということか。俺は夫婦を保護する時、子は生き餌として全部差し出すという条件を突き付けている。この希望は条件に反するものだが……。
「今回は良いだろう。外側から引き取った子が1体居たから、元々の子が1体少なくなっても帳尻は合う」
告げられた子は安堵の顔で控え目に喜び、夫婦もホッとした顔をした。
-
すいません。書き上がらず中編になりました。
後編は1週間以内に書き上げて投稿する予定です。
-
その夜。
月のない真っ暗闇の中で、うちの窓ガラスを叩く音がした。カーテンを閉め切っているから庭の様子は伺えないが、高めの鳴き声も聞こえる。ケージのタブンネ達も全員反応していた。
「野生のタブンネか? この間みたいな」「そうらしいロト」
ハブネークを呼び寄せて傍に待機させてから、カーテンを全開にして窓を開ける。
予想通りタブンネがいた。今回は成体と赤ん坊が1体ずつのペア。成体の方は思わず俺が飛び退くほどインパクトのある顔をしていた。何があったのか知らないが、全身ガリガリで傷だらけ血だらけ、おまけに右目の眼球が瞼から完全に外れてぶら下がっていやがる。どう見てもこっちの目は完全失明状態だろう。左目の方はちゃんと見えているっぽいが。
「えっらい見た目だなアンタ。……ロトム、うちに何の用事か聞いてくれ」
ロトムが聞き出す前に、成体の方が喋りはじめていた。痩せこけて覚悟の決まった子をこちらに突き出しながら。
「アー、……嫁さんと赤ちゃんを連れて困っていたら、他のポケモンにおそわれて、嫁さんが死んじゃったらしいロト。ここでタブンネの子どもを生き餌にしてるのは知ってるロト。この子は一度も満腹になった思い出が無いらしいロト。この子を差し出すので、一度でも腹一杯に乳を飲ませてもらえないか、って言ってるロト」
なるほど、じゃあこいつは父親か。親子共倒れで飢え死にするよりも、子どもにせめて思い出を作らせてやりたいという思考の。
気持ちは分からんでもない。乳しか飲めない時期の子が母親を喪えば、ほとんどの場合は餓死するしかない。元々つがいと子だけだった家族の中に、他に乳を出せる♀がいるわけでもなく、乳の代替になるような果汁が入手できるわけでもなく。
ケージの中の夫婦に目を向けた。先日のように育てられそうなら引き取るかと尋ねようとして……
どん! と、大地が揺れた。
グラグラと強い揺れが続く、リビングの壁のTVが倒れ、窓のガラスが割れ、電気が消える、どこかで物が落ちたり倒れたりする音がした。
ロトムから大きくサイレンが鳴る、暗闇の中でスマホ型の画面が浮かび上がり、こちらに向けて叫んだ。
「火山噴火の情報! 揺れと噴石に注意! ここでも岩が降ってくるかもしれないロト!」
マジかよ。
慌てて壁に掛けていた懐中電灯を外してオンにして、横に掛けていたヘルメットを被る。土間のバンバドロをボールに入れてテーブルの下へ。ハブネークも黙ってテーブルの下に潜り込み、バンバドロのボールを守るようにとぐろを巻いた。
電池式のカンテラを点けてタブンネ達のケージの上に、タブンネ達は、……ケージの中だからこのままで良いはずだ、岩に屋根を突き破られたとしても、ケージの天井はかなり硬めの金網だし。
そこまで考え終えた頃には、揺れはだいぶ落ち着いていた。
ケージのタブンネ達は一匹残らず柵にかぶりつき、窓の方を指差して必死の形相で鳴いている。
「窓枠が外れたらしいロト。さっきの親子が逃げ損なって下敷きになってるって言ってるロト!」
-
慌てて窓を見る。窓のサッシは確かに丸ごと外れていた。家から懐中電灯の光を当てると、言われた通り、庭に転がるサッシの下で親子は共に頭から大流血していた。息はあるようだが……。
視界の上の方が光った。
平野のずっと先にある山脈の奥の方で、空が赤く燃えている。山の向こうで、花火の打ち上げよりも大きな光の柱が天に向かって跳ね、その光の手前では巻き上げられた石や岩らしいものがチラつくように飛び交っていた。轟音と小刻みな揺れが、また来た。……いや、音と揺れだけで済んでいる内はまだマシか。
「ロトム、こいつらの救出は諦めるように伝えてくれ。どんな岩が降ってくるか分からないのに、ここで外には出られない」
自分の飼っているポケモンなら、この状況でもきずぐすりを投げてぶっ掛けるくらいはやっただろう。しかしこの親子は野生だ。そこまでの救命はできない。
「分かったロト」
ロトムが通訳しなくても俺の判断が分かったのだろう。ケージの中のタブンネ達は皆気落ちした顔でうつむいている。そこにロトムの通訳が駄目押しのように伝えられ、全員が暗い顔をする。何だかんだで優しいんだな、こいつらは。
「ロトム、今の時刻は?」「21時ちょうどだロト」「そうか。とりあえず朝までうちで待機だな。夜が明けたら避難するぞ」
問題の火山は山脈の奥にあるし、最高峰でもない。溶岩も、ガスも、ここに届く前にもっと高い他の山に遮られるはずだ。だから火山性の揺れや、山を飛び越えてくるかもしれない噴石だけが脅威になるはず。
ここにもいずれ避難勧告が出るのだろうが、夜中に不用意に屋外に出るのも危ない。こういう時は夜明けまで待機してもらうのだと、確か役所も言っていた。
懐中電灯とロトムの光を頼りに、テーブルの下に押し込んであった、組み立て式の非常用のパイプベッドのパーツを引きずり出す。それなりに大きいベッドを完成させてから、これまた非常用の寝袋を広げて、俺はパイプベッドの「下」に潜り込んだ。
これまで黙っていたハブネークが俺に寄り添った。閉じた口から舌だけを出し、舌の上に器用にバンバドロのボールを載せている。俺はハブネークの頭を撫でてからボールを受け取り、ベッドの脚のボール置きに置いた。家の屋根を破って岩が降って来るとしても、とりあえずベッドがブロックしてくれればいいのだが、……これもまた気休め程度だろうか。
火山灰が降り始めた時点で、非常用の備えは色々と考えていたのだ。備えが実際に役立ってほしくはなかったが。
そういえば、他にも決めていたことがあった。
「ロトム、タブンネ達に通訳してくれ。
ここでも火山の被害がこんなに出た以上、俺も、夜が明けたらこの家を捨てることになるだろう。
お前らが故郷を捨てたときみたいに、俺の先行きは分からないままだ。これからの俺はもっと余裕がなくなるし、夜が明けたら、ありったけの食糧を持ってここを出るつもりでいる。
生き餌製造機としても、もうお前らを養えない。夜が明けるまでに、これからどうしたいかをお前らが話し合って決めておいてくれ。ここで食われるのがいいのか、何もないまま、この家から外へ放り出されたいのか。
……もし親と子で分かれるなら、夜のうちに、腹を壊さない限界まで乳を飲ませた方がいいだろう。外は食糧のある場所じゃないし、こんなんで一度別れたら二度と口にできねぇぞ」
無情な指示だとは思う。だが俺は嘘は吐いてない。ケージの中で酷い葛藤が生まれたようだが、俺自身への抗議はなかった。
-
断続的な揺れと衝撃と時折の悲鳴が長々と続き、目を閉じていても一睡もできない夜になった。
それでも少しずつ夜は明けて、火山とは正反対の方向から空は明るんでくる。
日の出の時刻の少し前に、パイプベッドの下から這い出して改めてリビングを見た。案の定室内はロクでもない荒れようだった。物が外れたり割れたり倒れたり、無事なものが何一つ無いような気がした。
サッシが外れた窓から庭を見る。うちを訪れていた親子は、サッシに加えて新たな岩にも潰されていた。父親のタブンネの頭の倍くらいありそうな岩が、文字通り父親の上半身を圧し潰しているのだ。
「子どもはその岩の下らしいロト。2時頃の噴石が屋根に跳ね返ってそこに落ちて、それで完全に潰されたのをタブンネ達が聞き取ってるロト。それまでは親子とも弱ってたけど鳴いてたって言ってるロト」
「……こんなのがあの山から降ったのかよ。夜中の2時に」
うちの庭だけでも大小さまざまな石やら岩やらゴロゴロしていた。俺や、飼っていたポケモン達だけでも無傷で済んでいることが、かなりの幸運に思えるくらいに。
どう考えても今はここには住めない。いつか噴火が落ち着きさえすれば、ひょっとしたらここに戻ってくる日もあるかもしれないが、とても今は無理だ。
俺はケージのタブンネ達に向き合った。
「ロトム。タブンネ達にこれからどうするか聞いてくれ。夜に言った通り俺はここを出るしかない、タブンネ達までは養えない」
ケージの中の夫婦は、子ども達を抱き締めつつ互いに寄り添っていた。ロトムの短い指示を受けて♂が話す。
タブンネ達の親子の絆がこれまでと微妙に違う気がする。
1度目の出産で食われた子どもたちとは喧嘩だらけだった。2度目の出産のこの子らは、険悪さはだいぶマシだが親子の間でまだ隔意はあった。その隔意はおそらくもう全員から消えている。
「元々外に出たがってた子が1体いたけど、ちょうど歯が生え始めたらしいロト。今から家を出た先で、適当な場所で解放してもらえないか、と言ってるロト。ただその子を連れて行くだけで、面倒を見てもらえなくても構わないらしいロト。
その子以外は全員ここで生き餌にしてほしいと言ってるロト。食べられる覚悟はできてるらしいロト」
ここで解放してほしい、ではなく、避難先まで連れってってほしいか。なんかちょっと図々しい要求とも言えなくはないな。……まあ、この子らの内1体なら許容範囲か。2体以上だったら流石に却下してたが。
「良いだろう。外に出たい奴だけをこちらへ」
ケージの天井を開けて、差し出された1体をテーブルの上に置く。そして俺は気合い十分で待機していたハブネークの頭を撫で、無言でケージの方へ合図した。
俺が避難の準備をする内に生き餌を食い尽くすよう、ハブネークには言い含めていた。
……このケージの中で犠牲を払ってでも生きていくと決めた夫婦の生命は、この時、こういう経緯で終わったのだった。
(終)
-
お待たせしました。
この話にはおまけがあります。9割方書き上げてますので遠からず投稿予定です。
-
生前、とーちゃんが檻の中で話していたっけ。
――本当はタブンネ達は、地面に流れる川の水を飲んで、木に実ったきのみや、地面に生えた草を食べていたんだよ。
あの火山が灰を噴き出して、水もきのみも草も全部枯れてダメになった。タブンネだけじゃない他のポケモンも、みんなギリギリまで飢えて死んでいったり、殺し合ったりしたんだ。
この辺りは灰色しかない世界になってしまった。もしも叶うなら、灰が届いていない遠い場所に行って、灰色じゃない世界を見てほしいんだ。
早足で進むバンバドロのおじさんの背中の上で、ニンゲンが着ている服の首元から顔を出して、初めての世界を見てみる。生まれた檻の中とは真逆の、広い広い灰色の平野。ぼくじゃ困るんだろうと一目で分かる位に、岩や石がゴロゴロと転がっていた。
――とーちゃんも、かーちゃんも、みんなも、おそとにでたいとはおもわないの?
――もう、僕達は外に出ちゃいけないんだよ。僕達は、子ども達を生き餌に差し出した。お前たちのお兄さんやお姉さんだ。
殺してしまった子やここで死にたい子を放っておいてまで生きることなんて、僕も母ちゃんも望んではいけないんだ。もう十分生きた。これでいい。
同じ時に生まれたきょうだいは、外の世界の恐ろしさも、とーちゃんかーちゃんがあの檻の中に入った理由も、いずれ食べられるはずの運命も、それこそタマゴの頃からずっと教わって生きてきた。
狭い檻の中で、お互いの考え方や個性の違いを隠し合えるはずがない。みんなは外が怖くてあの家で死にたがってた、逆にぼくだけが外に出たがってた。お互いがお互いの心を知っていた。
外の世界の音を聞いたことはあっても、まじまじと見たことはなかった。とにかく広くて生き辛い場所だという事だけは教わっていた。
未熟な目で見ても、食べられるものがあるとは思えない場所。すぐ死ぬかもしれない場所。それでも、檻の中では死にたくなかった。あの場所は生まれた場所に違いないけれど、死に場所ではないと願った。きょうだいの中でぼくだけは。
ぼくらが生まれる前に死んでいったお兄ちゃんやお姉ちゃんは、ただ最後に生き残って孤独に死ぬことだけを恐れていたのだという。その考えは分かる。分かるけど、ぼくだけはそれがしっくり来なかった。
檻の中で生き続けたがった子は前にもいたけれど、孤独でも構わないから外に出たいと希望した子は、ぼくが初めてだったらしい。あの家にいた頃、ロトムのお兄さんはそう言って檻の外側で珍しがっていた。
――許しておくれ。僕達は親らしいことは何もできない。
――ごめんなさい。本当は群れの中で、外の世界での生き方を教えてもらいながら成長するものなのに。
――いいや、とーちゃん。かーちゃん。ぼくはしあわせだったよ。ここまでそだててもらえたんだから。
そんな言葉の後にぼくだけは檻から出されて、違う場所に載せられて、その下で、両親も弟妹もみんなハブネークのおっちゃんに食われた。このニンゲンは約束を違えない。約束の通りの運命だった。
親や弟妹とのお別れが幸せな事だなんて絶対に思わない。けれど、食べる物が無くなって飢えたり、全くの不意打ちで誰かを亡くしたりするよりは、ずっとずっと幸せだったと思う。
とーちゃんもかーちゃんも、ぼくらのこういう育ちを不憫だとも思ってたらしい。でも、そもそもとーちゃんやかーちゃんがニンゲンとの約束を結ばなければ、ぼくは生まれていない。だから、ぼくは誰も恨んではいなかった。
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板