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【代理スレ】ウイングマン連載中 ドリムノート2冊目

216名無しさん:2010/04/10(土) 21:13:49 ID:fcro3KG2
STAGE5:麗紋VS舞美


レモンの気迫の熱唱を聞いた大崎は特別審査を行う事にした。対戦相手は―― 幼なじみの舞美!
大崎はレモンと舞美、責任者他スタッフを数名連れ、控え室で説明をしていた。

「勝った方はオレがプロデュースする 負けた方は徹底的につぶす 審査基準は『拍手』だ
 ボーズにはハンデをやろう、一人からでも拍手をとったらお前の勝ちだ」

「たった一人でも拍手したらオレの勝ち… いくらハンデでも、甘すぎじゃあ?」
「ボーズ、客はみんな舞美のファンだ 勝算はあるかな?」



―舞美の控え室―
大崎の提案にスタッフは愚痴っていた。
「一体何を考えてんだか、こんな勝手な事やってばかりいるから敵が多いんだ、あの人」
「他の審査員は怒って帰っちゃったし」
「大崎さんなんかに頼まなきゃよかったんだ」
「――でも、あの人の本物を見る目は確かだからな…」
ブツブツ文句を言うスタッフに対し、レモンと競う事になってしまった舞美は内心複雑だった。

。oO(――もしかしたら、レモンくんのデビューをジャマする事になっちゃう…
   わたしが放棄すれば… 放棄なんかしたら、やっぱり大崎さんが黙ってないだろうな
   レモンくんのあのきれいな歌声、他にあんな高い男の人の声は聞いた事ない
   わたしが負ける事だって十分考えられるわ)

その時、レモンが詰め所に入ってきた。
「レモンくん!」
思わず椅子から立ち上がってレモンに見つめる舞美。
。oO(勝つにしろ、負けるにしろ、憎みあう事にでもなったら……)
――――だが、舞美の不安をよそに、レモンは意外にもにっこり微笑み舞美の肩に手を置いた。

2172/6:2010/04/10(土) 21:14:16 ID:fcro3KG2
「大崎さんに世話してもらいたいけどさ、勝ち負けなんか気にしないでやろうよ!
 歌、歌えりゃいいじゃん!  ――それだけさ」

その一言で舞美の緊張は解けたようだ。舞美はレモンに今度はどんな歌を歌うのか尋ねる。
「そいつはお楽しみに オレの数えきれないレパートリーの中から、すげーの一発かますぜ!」
にこやかに答えるレモン。   …ん? レモン、お前 前回のラストで何て言った?


レモンは控え室のドアをそっと閉め退室すると―― いきなり頭を抱えてヘコみ始めた!
。oO(ああ〜 ホントはオレ『男の道』しか知らないんだよ〜
  違う局ったって、何歌ったらいいんだァ )  どーしよー…
――――案の定、舞美を困らせないようにと見栄を張っていたレモンだったw
自分でもなぜ舞美の所に言ったのか分からず、精神分裂を疑いつつ、トボトボ廊下を歩く。

…レモンが衣裳部屋の前を通りかかった時、ドアがスッと開き何者かに引きずり込まれた!!
「し〜〜…」
何者かはレモンに騒がないように指示する。…匂いからすると、どうも女性のようだ。
「だ 誰だ!?」
「わたしはね、昔っからあんたのファンなの 広川舞美なんかに負けちゃダメよ
 ――でも、その着物じゃちょっとダサいから…」
『うわ! 何すんだ!!』
「イメージってもんが大切なのよ、もっとこういう衣装で…」
『そ そこは! ヒィ〜〜〜〜!』  
…な、何が起きているのだろう… レモン、おねーさんに貞操を奪われるのか!? (*´Д`)ハァハァ 



―特別審査ステージ―
《お待たせしました、突然の都合により特別審査を行います
 まずは、広川舞美ちゃんの新曲『水色のシャポー』》
大崎の都合に振り回され、観客は怒って全員帰ってしまうと思いきや、観客席は超満員!
きっとみんな舞美の歌を聞きたいだけだろう。

2183/6:2010/04/10(土) 21:14:40 ID:fcro3KG2
ステージに舞美が登場し、ファンや親衛隊は歓声を受けつつ、歌い始める舞美。

         ♪あなたとハズんだあァの日ィ 空は ブル――スカーイ♪

…その頃、おねーさんに弄ばれていたレモンは…演歌歌手とは違うステージ衣装を着せられていた。
「一体さっきのは何者なんだ、こんなヘンな服着せやがって」   オレはピーターパンか
ステージの舞台袖で舞美の人気に改めて感心するレモン。

「負けた者は徹底的につぶす みんな舞美のファンだ、勝ち目があるかな?」

――レモンの脳裏に大崎の言葉がよみがえる。
「拍手ひとつでいいんだ …でも、『男の道』を歌わずにそれができるだろうか…?」
不安になるレモンだったが、逆に舞美はイキイキと歌っていた。
。oO(ああ レモンくんのおかげでこんなにリラックスして歌える…)

       ♪テュッテュッテュッ ラァ  みィズ イィろの シャ ポ―――♪

ちょっと失敗してしまい、ベロをちょこんと出して愛嬌を振りまく舞美。
「なんだァ? すげー音程がはずれたぞォ、これじゃファンもガッカリ」
苦笑するレモンだったが、予想に反して観客席はさらに盛り上がる!!
「う うそ 一段と客の声援が大きくなった…」

「あの娘は自分自身の事をよーく知ってるのね」
――突如レモンの背後から女性の声が聞こえた!
「あんた、さっきの!」
振り向こうとするレモンだったが、女性は振り向かせず人のステージを見るのも勉強、と諭す。
「うまく歌えないとこも、堂々と歌っちゃう 高望みはしないの
 その結果、かえってファンは音がはずれたりする所がカワイイとか思っちゃうのよ」
女性のアドバイスを受けるが、まだレモンにはその事が理解できないでいた。

そんな中、準備担当スタッフから声がかかる。
「沢口くんは何歌うの? カラオケ用意するから」

2194/6:2010/04/10(土) 21:15:11 ID:fcro3KG2
《はい、舞美ちゃんでしたァ さぁ、続いては先程飛入りで『男の道』を歌った沢口麗紋くんです》
舞美が歌い終わり、司会のアナウンスが流れる
――が、この時点ですでに観客席からもっと歌わせろだの、帰ろうだのブーイングが飛ぶ!
「ごくろーさん」
「今度はちゃんとしたマイクで歌いなね、はい」
舞美からマイクを受け取り交替するレモン。

《――曲は……  ?    水色のシャポーです》

『ええ!?』
『 な ん だ っ て !? 』
まさか今発表したばかりの舞美の新曲を選んだ事に、舞美と舞美のファンは驚く!!
。oO(『男の道』以外で知ってる曲っていったら、今聞いたこの曲しかないんだ
   歌詞がわかんないけど―― 歌うしかない!)
一か八か決意するレモンをよそに、水色のシャポーの前奏が流れ始める――――

         ♪キミとォ シロォミィの 日の丸ベントー ブースカー♪

Σ( Д )    ゚ ゚ ななななななんじゃこりゃああああああ!!!???
思いっきりメチャクチャな歌詞に、当然ファンは 大・激・怒 !!!!
。oO(ゲゲッ いきなりまずい反応! やっぱりこういう時は広川のように踊りながら歌うべきだな)
作戦を変更し、メチャクチャな歌詞に加え、メチャクチャな振り付けで踊るレモン!
――もちろん、観客席は全員、今にもレモンに襲い掛からんとするほどの大ブーイング!!

…しかし、その大ブーイングの中、たった一人… あのそばかす少女だけ真面目に聞いていた。
。oO(――さっきの演歌より、声が合ってるみたい なんで最初からポップスにしなかったのかしら)

            ♪チンチンチン ア―― 水色ォーのシャポー♪

「ひどい、ひどすぎる!音程が狂う所までマネして!」
「やめさせろ!バカにするのも程がある!!」
大激怒しているのはファンだけではなかった。あまりにひどさにスタッフまで激怒している!

2205/6:2010/04/10(土) 21:15:33 ID:fcro3KG2
観客とスタッフを敵に回してしまったレモンは、スタッフに強制的に退場されていった…
「す すごい…」
…しかし、当のマネされた舞美は―― レモンの才能に驚いていた。

「勝負あったな、ボーズ お前の負けだ」

拍手の一つももらえなかったのを確認した大崎は審査員席を後にする。
『待ってよ、大崎さん! ひどいですよ、オレ『男の道』しか知らないのに!
 どうして『男の道』で勝負させてくれないんですか!?』
「歌を一つしか知らねーでプロになろーってのがあまいんだよ」
「う… せめて『男の道』の、オレの『男の道』の感想を聞かせて下さい!」
「――確かに桃次郎にひけを取らない『男の道』だった
 …だがな、オレは同じものには二度は感動せん!
 言っておくぞ、ボーズ 芸能界に出てこれても… オレがつぶしてやるからな」

大崎とレモンのやり取りを物陰で聞いていた舞美。
「ちがう… みんな分からないの? この曲は新曲よ、レモンくんは今日初めて聞いたはずなのに
 メチャクチャなダンスだったけど、ちゃんとリズムにのってたし
 なにより メロディーを完璧にコピーしていたのよ、一度しか聞いてないのに
 あのきれいな高い声 あのリズム感 レモンくんが水色のシャポーをちゃんと覚えていたら…
 わたしは完ペキ負けていたわ」

レモンの隠れた才能に戦慄を覚える舞美はレモンに駆け寄ると泣きべそをかきながらお詫びする。
「ごめんね、わたしがレモンくんのデビュー ジャマしちゃうなんて」
うつむいていたレモンは急に舞美に振り向くと――――
  んべっ☆
アカンベーして舞美のウケを狙うが… 当然、受けない。
「泣き虫だなァ、またみんなの前でハジかく気か?
 喜ばなきゃ、大崎さんにプロデュースしてもらえるんだからさ
 ――オレはさ、また一からやりなおせばいいさ  じゃあな、また芸能界で会おうぜ」
ウインクし舞美の前から立ち去るレモン。そんなレモンを泣きながら見送る舞美だった。
「レモンくん… あなたって人は」

2216/6:2010/04/10(土) 21:15:50 ID:fcro3KG2
――レモンは何事もなかったかのように会場から出ると… やっぱり凹んだ!! 見栄っ張り!
「あー 拍手の一つくらい、取れるとおもったのになァー」 _| ̄|○lll

   パチパチパチパチ
――拍手だ!! それもすぐ目の前で!
凹んでいたレモンは突然の拍手に顔を見上げると、そこには女性が立っていた。

「おもしろかったよ、レモンくん」

レモンはこの声に聞き覚えがあった。衣装を強引に着せたり、アドバイスしていた女性だ!
開口一番、怒鳴りそうになるが、女性のスカートに気がつきレモンの手が伸びるッ!!
『毎日パンツかえてるかーい!』
   が し 
――しかし必殺のデルタ・エn …もとい、スカートめくりは腕をつかまれ未然に防がれた!!
Σ(;゚д゚) そんなバカな!誰だ、このおねーさんは!?

「何から何までお父さんにソックリなんだから…
 ある時はナゾのスタイリスト またある時はかげの声 しかしてその実体は――――」

キューティーハn …ではなく、元アイドル歌手の 秋 野 こ の え だった!
「キミをスターにしてあげる」
レモンの腕をキリキリと締め上げつつ、微笑むこのえだった。   イタイイタイ    <続く>

2221/4:2010/04/11(日) 21:00:46 ID:x5IJd6tA
STAGE6:レモンの大切なもの


10年ぶりに秋野このえと再会したレモンはこのえから説明を受けていた。
「そーか、あんた とうちゃんの初ステージの時いた、アイドルの… よくオレの事おぼえてたね」
このえは10年前、レモンが桃次郎の変わりに歌った事をきっかけに注目していたのだ。
「あんただけだ、オレの才能わかってくれるの!」
喜びのあまり、このえの手をがしっと握り、無駄足にならなかった事を喜ぶレモン。

「見てなさい、広川舞美なんか足元にも及ばないよーな 売れっ子アイドルにしてあげるわ」
――次に出たこのえの言葉に思いっきりスッ転ぶレモン! ちょ、ちょっと待て!!『アイドル』!?

『デェ――――!? なんでアイドル!?』

オーバーリアクションで驚くレモン!
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「ジョーダンじゃない、とうちゃんのように演歌歌手になるんだ!」
大波荒れる海をバックに意気込むレモンに、演歌を歌って楽しいか問うこのえ。
「楽しい? なんでオレが楽しくなきゃいけないのさ!
 みんなが喜んでくれれば、それでいいじゃないか!」
レモンの答えに思わずレモンのオーバーリアクションをマネしつつ驚くこのえ!
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「――ナンチャッテ そんな事だと思ったわ
 今のままじゃ、スターはムリね あんたにはとっても大切なものが欠けてるわ
 何が欠けてるか、わかったらここに来なさい 答えはこの街の至るところに転がってると思うよ」
そう言ってこのえはレモンに『オータムプロ 秋野このえ』と書かれた名刺を差し出した。



父のステージ衣装に着替え、会場をあとにしたレモン。
「大切なものが足りない」…この言葉をずっと考えながら歩くが意味が分からない。

2232/4:2010/04/11(日) 21:04:58 ID:x5IJd6tA
みんなに喜んでもらい、一生懸命歌うだけではダメなのか?
意地悪しないで教えてくれりゃいいじゃねぇか… そう心の中で愚痴りながら歩くレモン。
…とりあえず、演歌の道はは諦めないが「大切なもの」を探してみようと決意するレモンだった。



―原宿駅・歩行者天国―
――時間はあっという間に流れ、もう夕日が沈み始めていたが…「大切なもの」は見つからない。
多くの通行人が派手な着物(ステージ衣装)のまま歩くレモンを横目で見ている。
しかし、レモンは…
「…東京は さすがに 広い」 もう、バテバテだった。

――ふと、近くから何やら音楽が聞こえてきたので覗いてみると、竹の子族が踊っていた。
少々驚き、戸惑いつつも良く見ようと近寄ると… いきなり道端の変な格好の男が音楽を奏でた!
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「なにやってんの?」
「……悪いが、カツラ取って頭を掻いてくれないか」
怪訝に思いながらも言う通りにするレモン、気持ち良さそうにする男。しかもシンバル鳴らしながら。

「おまえ、変な奴だな」
『どっちがだ!』

わざわざボケに付き合ってくれたのにそう言われ、思わずツッコむレモン!
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「オレのジョーダンにつきあってくれる奴なんて、滅多にいないぜ
 あ、そーそー 何やってるかだったな  ――音楽スケッチさ
 ここには色んな人がいる、その様々なイメージを音で表現するのだ
 例えば、カワイイコが通ったりすると…(甘いムードの音を出す)
 そして、キミみたいに時代感覚メチャクチャな奴は、さっきのように(激しい音を出す)
 それを録音して、後で聞くわけだ たくさん集まったら、個展を開くつもりだ
 フッ、アクティブかつクリエイティブ………
 その上、人生の苦み・甘みを感じさせるいいシュミだろーが」

2243/4:2010/04/11(日) 21:05:21 ID:x5IJd6tA
「…暗いなぁ」
レモンの呟きに反論できなくなる男だった。――だが、一声高く大笑いすると――
「ほっといてくれ(´・ω・`) 人がどう思おうと、オレは楽しいんだ 音楽ってのはそーいうもんだ」
レモンは男の言葉を変なの、と一蹴し立ち去ろうとする。
自分が楽しくなくたって、他人が楽しんでくれればそれでいいのに…それがレモンの思念だった。

「自分が楽しくないのに、本当に人を楽しませる事は出来ないんじゃないかな」

――途端、男は今までと違った真面目な顔で意表を突いた言葉を吐いた。
その言葉を耳にしたレモンは一瞬足を止め、真顔で男の方を振り返る。
……だが、男は再びカツラを被り、パフォーマンスに戻っていた。
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ふと、背後から声をかけられ、振り返ると舞美がいた。変装の為眼鏡をかけてるが。
二人は誰もいない公園の丘に行き、夕日を見つめながら雑談にふけった。
「――でね、それが音楽スケッチなんだとさ」
「ああ、そーいえば、そーいう人いたいた おもしろーい」
「変だと思わないか?」
「楽しそーじゃない、音楽の表現方法なんてその人の好きにすれば。
 何より楽しけりゃ音楽だと思うわ」
舞美の言葉に、レモンの脳裏に先程の男の言葉がよみがえる。
『自分が楽しくないのに、本当に人を楽しませる事は出来ないんじゃないかな』

…ところで舞美はなぜここに来たのだろうか?
「わたしね、落ち込んだりするとあそこに行くんだァ
 レモンくんも見たでしょ、みんなキラキラしててすっごく楽しそーじゃない
 見てるとわたしもガンバローって元気が出てくるの」

2254/4:2010/04/11(日) 21:05:40 ID:x5IJd6tA
。oO(楽しそうか… オレはこの10年間、歌ってて楽しいなんて思った事、一度もなかったなぁ
   ただ、とうちゃんのようになりたいって…
   とうちゃんのかわりに夢をかなえるんだって、それだけでガンバってきた
   マイクをへこませ、声を壊して女みたいな声になっちゃうまで練習したのに…
   楽しくなけりゃ、音楽じゃないなら…オレの歌はなんなんだ?
   あ〜〜〜〜 くそ、こんがらがってきた!)

レモンは自問自答に陥り黙り込んでしまう。そんなレモンをどうしたのかと不安になる舞美。
よく考えたらこんな所に連れて来るなんて…ダイタンだなとドキドキする舞美。
ふと、急にレモンが立ち上がりビクッとして見上げると……笑顔で踊っている!?
「どうしたの?」
「え? なんか悩むのやめたら、体が軽くなって体が勝手に動くんだ
 広川の歌、歌った時にくせになっちゃったかな?」
「プッ、相変わらず変なダンスだけどノッてるじゃない 音もなしによくそれだけ…」

「音? あるじゃないか、聞こえないか? ――この東京が音楽だよ
 車のクラクション、人のざわめき… 色んな音が重なり合ってリズムになってるじゃないか!」

レモンの意外な感性に感心した舞美は一緒に踊る事にした。
――夕日をバックに、丘で楽しそうに踊るレモンと舞美だった――       <続く>

2261/6:2010/04/12(月) 21:32:35 ID:VfYnAu36
STAGE7:ライバル宣言


―イソベプロダクション・社長室―
そこには社長に直談判中の舞美がいた。
「だめですか ――レモンくんは絶対才能あるんです、イソベの力になると思います、だから…」
「キミもダイタンな事するねー、直接わたしに言いに来るとは しかし、なぜその男にこだわる?
 ひょっとして、その男の事が――」
口ごもる舞美に社長は言葉を続ける。
「アイドルに恋愛は禁物だよ、スキャンダルの種になる
 それに… うちに引き取る必要もないようだし、
 噂ではこのえがその男を売り込もうとやっきらしいからな」
「なんですって あの、秋野このえが…」



―大通り―
通行人をかきわけ、嬉しそうにひた走るレモン。
『キミをスターにしてあげる』
このえの言葉を思い浮かべ、レモンはひた走る!走る!走る!走れメロス…もといレモン!
『絶対してくれよ! ボクはアンタに賭けた! 今行くぜ――――!!』



―薄汚れたビルの一室、オータムプロダクション―
「――そうですか、はい わかりました
 …ダメですよ、このえさん 沢口麗紋の名前聞いただけで、どこも断ってくるんですよね
 これで全てのテレビ局から沢口麗紋は締め出されちゃいましたよ、どうします?
 ――大体、半月前にできた事務所に架空のタレント、社員はボク一人…
 これじゃ、テレビ局が相手してくれる訳ないんだよなぁ」
電話担当をしていたおかっぱ頭の青年が半ばあきらめモードで愚痴をはいていた。

2272/6:2010/04/12(月) 21:32:58 ID:VfYnAu36
『ハハハッ そうくると思ったわ! みんな大崎のしわざよ、あの人手回しが早いから』

…しかし、社長であるこのえは意外にも対策があるかのように大声で笑い飛ばした!
「笑い事じゃないですよ、もし本当に沢口麗紋ってのが来ちゃったら、どう言い訳するんですか?」
「言い訳なんかしないわよ、こっちにだって考えが…」

『 沢 口 麗 紋 、 や っ て ま い り ま し た ァ ! 』

――噂をすれば影が差す!ちょうどいいタイミングでグリコポーズでレモンが到着!!
『待ってましたァ!』
ぶりっこポーズでレモンを歓迎するこのえさん、来てしまった事に驚く青年!
『今日からよろしくお願いしまーす』
このえに挨拶しつつ、イメチェンしたこのえと軽く雑談するレモン。
だが、青年は和やかに会話する雰囲気ではなかった。
。oO(どぉすんだァ、あいつやたらハリキッちゃって… あやまるなら今のうちだァ)
青年はすばやくレモンの前に飛び出て、デビューさせられなくなった事をひたすら謝った。

『余計な事言うんじゃない!』  ボカッ

…社長に殴られますたorz
「お おれ デビューできないんですかァ スターにしてやるって言ったじゃないか…
 だからオレ、あんたの言う通り『足りない物』を探してきたし!
 ポップスを試しに歌ってみる気になったのに!! これじゃ詐欺だ、ペテンだ、大ウソツキだァ!!」
事務所に来る早々、期待を裏切られたレモンは困惑しながらも怒鳴り始めた!
「お願いです、オレ何でもします! だからデビューさせてください!
 一年でも、二年でも待ちますから!!」
「『なんでも』するのね だいじょーぶ、まかせなさい!約束は守るわ!」
やたら自信ありげなこのえの態度に不安になる青年。
「フッ 一年? チッチッチッ」(* ̄∀ ̄)"b"
親指で後ろの看板を指差すこのえ。
そこには <デビューまであと 3 0 日 > と書かれたボードがあった。

2283/6:2010/04/12(月) 21:33:18 ID:VfYnAu36
「一ヶ月か……… え え ーー 一 ヶ 月 !? 』 ( Д )    ゚ ゚

いくらなんでもこれは早すぎる!さすがのレモンも読者も驚くぞこれは!
社員の青年もさすがに一ヶ月はムリだと耳打ちするが、このえの考えは断固変わらない!

「一ヶ月、これは変えられないの! モタモタしてたら大崎に本当に潰されるわ!
 今だってすでにジャマされてるのに!」

「じゃあ、デビューできないってのは 大崎さんが…」
「そうよ、くやしいでしょ 大崎をギャフンと言わせるには、一ヶ月でデビューするしかないのよ
 その為にはレモンくん、キミ何でもするって言ったんだから、私の言う通りにしてもらうわよ」


―場面は変わって、オータムプロのビルの下―
「ここだわ」
なんとそこには舞美がいた。
。oO(秋野このえ、元イソベのタレント 歌手をやめるまでは大崎さんと組んでいたという…
   我が強くて、自分の為ならまわりの人間を踏みつけてまでも生きてゆく
   ――その為に芸能界を追われた、この噂が本当なら…
   レモンくんはいいように利用されてボロボロになっちゃう!)
不安になった舞美はひたすらビルの階段を駆け上がった。



―再び場面は事務所に戻る―
「この人、知ってるでしょ」
この絵は1枚の女性の写真をレモンに見せるが…レモンはあっさり「知らない」と即答。
「ふ 不安だわ、こんなコが芸能界にデビューしていいのかなァ
 こいつ、今や知らない人がいないくらい有名なのよ」
困惑した顔であらすじ書きや読者に問いただすこのえさん。自分もアイドルには疎いですが何か?

2294/6:2010/04/12(月) 21:33:41 ID:VfYnAu36
    バキッ☆
…とりあえず説明とあらすじを続けよう。あー痛ぇ…
「矢頭真琴 超人気の若手女優。こいつがね、今度レコードを出す事になって…」

『レモンくん!』

ちょうどその時、舞美が事務所に乱入したきた!
「あ、広川舞美だ!」
「これはめずらしいお客様」
「あれ―― 広川、おまえ何しに来たの?」
「レモンくん、行こう」
理由も言わずに強引にレモンの腕を引っ張る舞美。
「ちょ、ちょっと待ってよ 何言ってんだァ、やっとオレここでデビューできそうなのに」
「デビューする前に潰されちゃうわ、この人に」
「潰そうとしてるのはあなたでしょ、広川さん」
「ど どうしてわたしが…?」
「そうだよ、どうして広川がそんな事を…」
「いいえ、この子絶対レモンくんの妨げになるわ だってバックに大崎がいるんですもの
 ――大崎はあなたを使って、レモンくんを潰すに決まってるじゃない
 『そのために』あなたをプロデュースしてんだから」
「それじゃあ、まるで わたし――…」
「そう、大崎のレモンくんを潰すための  道  具  ね」
このえの言葉に一同、静まり返ってしまい―― しばしの沈黙が流れた。

「…そう… いかにもあなたが考えそうな推測ね
 それじゃあ、あなたは何をする為にレモンくんを利用するつもりなの?」
今度は舞美がこのえに反論を始めた。

「変な事言う娘ね、聞いたわ
 イソベのコンテスト、すでに書類審査で落ちてたレモンくんを
 あなたがムリヤリコンテストに出場できるようにしたんですってね
 こうなるのも、全てあなたの筋書きどおりなんじゃないの?」

2305/6:2010/04/12(月) 21:33:58 ID:VfYnAu36
レモンはこのえの言葉に一瞬耳を疑った。
「――どう思おうと勝手だけど、そうやって勝手に動き回って、昔のわたしみたいにならないよう、
 気をつけなさいね」
「どういう意味?」
舞美がこのえを問いただそうとした時、突如レモンが舞美を呼び止める。

「広川! お前イソベに帰れよ、オレも一ヵ月後にデビューしたら、お前とはライバルなんだぜ
 ライバルの事務所にいちゃ、まずいだろうが」

一ヵ月後にデビューする事を聞き、舞美も驚きを隠せなかった。
「一ヵ月後? 一ヵ月後って、まさか…」
「そう、あなたの新曲が出る日にレモンくんはデビューする ――この意味、分かる?」

「わたしを・・・・つぶす気ね」

「そう」
ここに来て、レモンもようやくこのえが一ヶ月にこだわった理由を悟った。
「もう…… 仲良くしてられないな」
「もう…いいわ 幼なじみのよしみで、色々なアドバイスしてあげようと思ってたけど、
 もういいわ、勝手にしなさいよ ――そう思ったら気が楽になったわ
 お互いガンバローね、それじゃあ――」
レモンの言葉に一瞬舞美はうつむいたかと思うと、プイとそっけなく答えて事務所をあとにした。

「エライ、よく言ったぞレモンくん!」
「――広川をこのえさんのようにしたくないから…
 あんた、大崎さんに潰されたんだろ? 昔のわたしのようにって、そういう意味なんだろ」
「へぇー、するどいじゃない
 …でも、あの娘が言うように、キミをただ利用しようとしてるのかもよ?」
レモンに対し、意地悪く微笑むこのえ。しかし、今のレモンはこのえを信用するしかなかった。
「あの会場にいたり、オレがここに来るのが当然のようにデビューの計画を進めてたり、
 偶然とは思えないけど… さぁ! オレはまず何したらいいのかな!」
決意を固め、意気込んで社長の指示を待つレモンに対し、秋野社長の最初の命令は――

2316/6:2010/04/12(月) 21:34:16 ID:VfYnAu36
「キミには  『  女  』  になってもらうわ」

…一瞬、あっけにとられつつも息を飲み込み――「やろうじゃない、おもしろそーだ」と返す。



―大通り―
。oO(――フン、何よ レモンのバカ! せっかく心配してやってんのに… 人の気も知らないで…
   わたしが、こんなに こんなに… 好きなのに…… レモンのバカ!!)
涙をこぼしながら自分の事務所に戻る舞美だった。             <続く>

232名無しさん:2010/04/13(火) 21:22:04 ID:ryOzyOWk
STAGE8:天使の声


――やる気になったレモンに降りた秋野社長の最初の命令はこんなものだった。
「キミには  『  女  』  になってもらうわ
 この矢頭真琴の代わりに、歌を歌ってもらうの
 発売が半月後に迫っているの、明日早速レコーディングよ、いいわね」
「・・・・・・・・・・・OK」
。oO(…てな訳で、オレが女になる事になった
   これがオレのデビューとどういう関係があるのか分からないけど、とにかくやるしかない
   ――たく、このえさんは何考えてんだか… デビューまで28日しかないってのに)



 ―レコーディングスタジオ―
「ここだけの話だけどね、  ド  ヘ  タ  !!   …もう聞けたもんじゃないんだから
 ムリしてレコードなんか出さなきゃいいのにねー」
「そーねぇ(こっちには都合いいけど)」
打ち合わせしているのは責任者とこのえだった。
「ところで替え玉の娘は?」
「フフ… 見ておどろくなよ、入ってらっしゃい」
また髪型が変わったこのえが合図すると、ゆっくりとドアが開き―― 可愛い女の子が入ってきた!

「は はじめまして」

恥しそうに挨拶する女の子。これにはあらすじ書きも見事にハートを射止められた!( ゚ω゚)-3 フンス
「か かわいいじゃないか! このえちゃん!こりゃ、替え玉なんかに使うのもったいないよ!」
責任者は大絶賛だが…このえは浮かない顔だった。
「冷たいものどうぞ」
ふと、別の女の子がドリンクを持ってきてくれた。 すると――

233名無しさん:2010/04/13(火) 21:22:34 ID:ryOzyOWk
「毎日パンツかえてますゥ?」

――いきなりスカートめくりする女の子! …って、ま、まさか!? (;゚д゚)
「あ あら わたしとした事が… ホホホ」
『こ こ こ この  ど  バ  カ  !! だれがこんな! こんな!!
 何ででっかいバッグ持って来たのかと思ったら、まったく! 脱がしてやる!!』
本当に超ものすごい形相で女の子に怒鳴り散らし押し倒し、服を脱がし始めるこのえさん!
。oO(このえちゃんにこんなシュミがあったとは…)
…鼻の下を伸ばし、よだれを垂らして傍観する責任者は――

『ん!? お、男!?』

案の定、女の子はレモンの女装だった!!!!!!!!!!!!!!!! ( Д )    ゚ ゚
『誰が女のカッコウなんかしろって言ったのよ! あーキモチわるい!!』
「女になれって言ったじゃないかァ」

                 (しばらくお待ち下さい)

…さて、レモンは普通の服に着替えて責任者に挨拶した。
「女になってもらうって言ったのはね 言葉のアヤ!
 女の子の代わりをやってもらうからそう言ったのよ、バカ!」
…いや、このえさん、どう考えてもあなたの説明不足です。本当にあり(ry
当然、責任者は男をつれてきたこのえにふざけてんのかと大激怒!! 男が女の歌歌えるもんか!
――しかしこのえは至って冷静だった。
「10分だけ時間くれる? とりあえず、彼の歌聞いてよ それでもダメだって言うなら帰ります」
「10分…? 昔のよしみだ、キミがそこまで言うなら10分だけだぞ」
責任者はしぶしぶ承諾し、レモンにヘッドホンを渡す。
「大体、曲のメロディーも知らないんだろ?『お遊び』は10分だけだぜ 本当に 一応聞いてみるか」

レモンが歌を聞いている間も責任者の愚痴は止まらなかった。
「現実的に考えて、無理に決まってるだろ、真琴ちゃんの音域(キー)って結構高いんだぜ
 裏声のきもち悪いのはカンベンしてよ」

234名無しさん:2010/04/13(火) 21:22:57 ID:ryOzyOWk
「覚えました」
「え!? だって、まだ…!」
「一度聞けば十分でしょ、こんなの」
あどけない笑顔であっさりと答えるレモンだった。

…という事で、一応音楽をかけながらレモンの歌を聞いて見る事に。
。oO(矢頭真琴さんになったつもりで歌おう、今更おろされるのいやだからな)

                ♪恋をうらなう花びらを♪

レモンの第一声を聞いた責任者は驚きのあまり持っていたペンをポトリと落とす。
『す すごい! ヤツは天使なのか!!』
その歌声は他のスタッフまで真琴のイメージにピッタリだと太鼓判を押した。
しかし責任者はそれだけなのかとスタッフの襟首を掴んで叫ぶ!

『わからんか! この声だよ! オレが今まで捜し求め、夢にえがいていた声!!
 この世には存在しないのかと諦めていたが、この声はまさに『それ』だ!!
 友達感覚のアイドルに飽きつつあるこの時代に、
 夢の国から抜け出たような中性的な声はもろに「はまる」ぞ、売れる!!』

異常なほどまでに興奮し豪語する責任者だったが、このえは声は彼の魅力にすぎないと言う。
このえに言われるまま、責任者はレモンの方を振り返ると―― 曲に合わせ踊るレモンがいた。


 ―同時刻、スタジオ廊下―
『…ったくもう、どうして「吹き替え」なんか使うのかしら、許せない!』
「真琴より下手な奴だったらただじゃすまないからな」
自分のジャイアン並の音痴を棚に上げて怒る真琴と、ガラの悪い男…多分マネージャーがやって来た。
マネージャーはスタッフにもうレコーディングしているのかと尋ねる。
「あ、おはようございます ええ、男の人が歌ってますけど」
『男! 真琴の代わりに男だと!?』
――当然、怒ったマネージャーはどういう事だと録音室に殴りこむ!

235名無しさん:2010/04/13(火) 21:23:17 ID:ryOzyOWk
…しかし、録音室では責任者がレモンの歌にのめりこんでいた。
「ダンスを始めた途端、歌のイメージがいっそう膨らんで、情景が見えるようだ」
「シカトかよ、どこまでバカにしてるんだ」
だが、真琴は流れてきたレモンの声を耳にし、これが本当に男の声か疑問に感じていた。
どんな男が歌っているのか気になった真琴は録音室のガラスを覗き込むと――
踊っているレモンのバックに、花園で踊る女性のイメージがありありと見えていた!
女性がこちらを振り向くと、その顔は…

『わ わたしが! わたしがいる!!』

『おい!!』
突然のマネージャーの大声で我に返る真琴や責任者達。
「あ、こりゃどうも! 町田さん、いらしてたんですか」
「どうでもいいけど、出迎えも無しかよ」
そんなやり取りの中、真琴はレモンと話がしたいので呼んで欲しいと言う。
「なんだぁ、話って
 …『歌お上手ね、わたし感激しちゃった チュッ』…なぁんてされたらどうしよう
 ども、初めまして 沢口麗紋です」
録音室から出てきたレモンを見つめ、真琴はにっこり微笑むと… いきなり強烈なビンタを1発!!
その光景を呆然と見る責任者とこのえ、憎たらしい顔で見るマネージャー。

『目立ちすぎなのよね!』

プリプリ怒ってスタジオを後にする真琴を、レモンは叩かれた頬を押さえただ呆然と見ていた。
「みんながキミに気を取られたのがシャクにさわったのよ」
このえがレモンを慰めようとするが―― レモンは全然こたえていなかった!
「いやー! なんかプロの迫力って感じだなァ!! やっぱりあの位気迫がなくちゃな、うん!」
「めげないコ」
涙までうっすらと浮かべているのに前向きなレモンにちょっと呆れつつも、本番へと移行する。

236名無しさん:2010/04/13(火) 21:23:34 ID:ryOzyOWk
 ―数日後、オータムプロ―
世間では矢頭真琴の新曲『花ことば』のレコードが発売されていた。
「デビューまであと15日ですよ、あの替玉がなんかトクになってるの?」
「なってるわよ、あのディレクターなんか、キミの事気に入って今度もぜひ、って言ってるのよ」
その時、あのおかっぱ頭の社員が血相を変えて事務所に飛び込んできた!

『すっごいですよ、『花ことば』の売れ行き! 特に声がいいって、そりゃもうすごい評判!!』

「そーこなくっちゃ」
「ふーんだ、直接オレがうれしい訳じゃねーもん」
――レモンの投げやりな態度にこのえは鼻で笑って作戦の説明をする。
「そんな事ないわよ、その 評 判 の 声 が あ な た だって、皆知ったらどうなる?」
                                    <続く>

237名無しさん:2010/04/14(水) 21:14:32 ID:tQHidf1o
STAGE9:天使の声    <表紙:レオタード姿のセクシーなこのえさん>


              <『花ことば』いきなり初登場第一位!>
               <テレビ出演拒否 ナゼの声高まる>
              <新作映画のハードスケジュールの理由>
            <中学時代の友人語る、真琴の音楽X(ダメ)の事実>

『花ことば』発売後、あらゆるメディアでは↑こんな事ばかりの見出しでいっぱいだった。
そして、レモンのデビューまであと5日と迫っていた…。


 ―オータムプロ―
このえとレモンはレオタードに着替え、ダンスの練習をしていた。
そんな中、相変わらず名前の不明な社員が冒頭のスポーツ新聞を持って駆け込んでくる。

「替玉の事バレそうですよ!このラリホースポーツ! 真琴ちゃんの中学時代の友人って奴が
 『真琴は音楽はまるでダメであんなにうまい訳ないわ!あのレコードはデタラメだ!!』
 …って、ホラ!!」

「――で?」 動じることなくあっけらかんと答えるこのえ。
「で?じゃないッスよ! レモンくんが替玉してるとか、色々バレたらまずいでしょ!」
「別にいいのよ、バレちゃっても ――だって、その記事はね、わたしがでっちあげたの」
『どわー! やっぱりそうだったのか! こんな事したら真琴さんがかわいそーじゃないか!!』
いきなりレモンがこのえに向かって豪語してきた!
「わかってないなァ キミはまともにデビューできないのよ、大崎のせいで…
 この世界は喰うか喰われるかなの、カワイソーなんて言ってられないのよ
 作戦はうまくいったわ、これで真琴があの記事がデマだって事証明する為に、TVで歌う事になる
 ――その時、真琴のかわりにキミが出るのよ!」
「そんな事したら、大騒ぎになるぜ」
「大騒ぎ、大いにケッコウ それだけキミは有名になるじゃない」
…とりあえず、レモンは真琴の居場所をこのえに聞きだした。何をするつもりだ?

238名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:00 ID:tQHidf1o
 ―某スタジオ―
『真琴さん!真琴さん! どこですかァ!!』
大声を出して真琴を探すレモン。そんなレモンをマネージャー・町田が冷ややかな目で気づいた。
スタッフの1人がレモンに話しかけるが、レモンは真琴に会わせてくれの一点張り。
そのやり取りに町田が歩み寄ってきた。
「おめーか… 真琴なら、右を奥に行った休憩室にいるぜ」
『町田さん! いいんですか!?』
レモンは町田にお礼を言い、その場をあとにする。
しかし町田の手には、冒頭のラリホースポーツが握られていた――



 ―休憩室―
真琴はシャワーを浴びていた。これは予想もしなかったサービスシーン!( ゚ω゚)-3-3 フンス フンス
ドアをドンドンと叩く音に、真琴はバスローブを着て訪問者を出迎える。
「まことさん!いないんですか! 大事な話が… あっ!」
ドアを開けた途端、湯上りの真琴のセクシーなおっぱいの谷間に一瞬釘付けになるレモン。
「大事な話があるんだけど… 服を着るまで待っています」
「何テレてんのよ、純ねェ いいわよ、入りなさいよ」
一瞬後ろを向きつつも、真琴に言われるまま休憩室に招かれるレモン。
…しかし、レモンの手は『例の必殺技』を発動させようとムズムズしていた。

。oO(た 耐えろ!「パンツかえてるかーい」をやったら、大変な事になりそーだ)

…湯上りだから当然なのだが、今真琴は明らかにノーパン状態。
理性を超機動員… もとい、総動員させてグッと耐えるレモンだったw いや、やってくれ、ぜひ!

239名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:22 ID:tQHidf1o
撮影がすぐなので用件を手短に話してもらう真琴。
レモンの用件はもちろんラリホースポーツの件のお詫びだった。
「あー、あれどこかの誰かのインボーだわね
 わたしは逃げたりしないわ、こうなればテレビに出てやるわ
 例え日本で『口パク』は禁止されてても、ステージに立ってやる!
 ――あんたとはレコードっきりだと思ったけど、また『声』を借りる事になったわね
 歌っているようにみせるなんて、わたしにはたやすい事 全国民をだましてみせるわ」
「いつ出るつもりなんですか?」
「すぐにでも出てやりたいけど、一番早い歌番組が9月1日のベストヒット10なのよ、
 だから、それ」
――9月1日は5日後… それはこのえの計画通りの、レモンのデビュー目標の日だった!

。oO(スキャンダルを流すタイミング、真琴さんの性格、歌番組の目標、全てを計算して…
   このえさん、あんたって人は…)

今更ながらレモンはこのえの策略を改めて思い知るのだった。
「実はここに来たのはね、だまってるのってフェアじゃないと思って… その
 あの…   んー  実は! オレのデビューの為に真琴さんを利用したんだ!
 テレビ出演の時、俺が出ていっちゃう計画でね
 …あと5日ある、その間に手を打つなら打てばいい オレは人を踏み台にしてまで…」
「――バカよ… 話しちゃったら計画がパーじゃない
 …でも、その正直なところがあなたの魅力なのかもね キミに…ホレたのかな」
困惑してレモンは真琴に近寄るが、突然泣きながら抱きつかれた!

『キミの好きにしなさい! それでキミがいいんなら!』

そんな真琴にレモンは優しく肩に手をかけ、歌番組に出るのをやめようかと言おうとした時…
今度はいきなり突き放された!?
「フン、すっかりその気になっちゃって 今のがわたしの武器よ
 この演技があればわたしは生きてゆける フッ、スキャンダルなんか血とし、肉としてやるわ
 見てなさい、人気を下げるどころか上げてみせるわ
 出るなら出ればいいわ、しょせん歌手なんて そんな小細工しなけりゃ、売れないもんね」

240名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:39 ID:tQHidf1o
――その一言にカチンと来るレモン!
「別にィ、――でも 今、わたしの演技でキミは確かにドギマギしたでしょ
 そこにリアルなドラマがあるからよ
 歌にもドラマがあると言うけど、あの時 わたしがラブソングを歌っても、キミあんな反応した?
 百の恋の歌を歌ったところで、ほんの一秒の恋の演技にはかなわないって事よ」
『そんな事ないよ! とうちゃんの歌にはしっかりとしたドラマがあった!
 聞く人によっては映画に負けないくらいのすてきなドラマが!!』
「ふーん 聞く人によっては…ねぇ」
挑発的な態度の真琴にレモンは歯を食いしばり、『花ことば』で真琴の心を動かそうと決意する。
「それは楽しみね」


――話を終え、休憩室から退室するレモン。
レモンは気づかなかったが、休憩室の前には町田がいて会話を全て聞いていた。

 ―時代劇スタジオを通るレモン―
「くっそー 歌をバカにしやがって… もうようしゃしねーぞ!」
プンプン怒りながら進むレモンの前に、セットによりかかってにこやかに呼ぶ町田がいた。
「あれ、あんた真琴さんのマネージャー さっきはどーも」
「よ レモンくんだっけ? ちょっとつきあってくれよ」



『おちょくりやがって!!』
人気の無い所にレモンを連れ込み、暴行を働く町田!
「オレらを利用しただとォ?
 真琴が何て言おうと、事務所としてはスキャンダルの種を見過ごす訳にいかねぇんだ
 てめぇみてえな奴は、二度と・・・・・・ 歌 え な く し て や る ぜ !! 」
倒れたレモンの喉に何度も拳をたたき付ける町田!

241名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:54 ID:tQHidf1o
 ―オータムプロ―
飛び出していったっきり、なかなか戻ってこないレモンを気づかうこのえと社員。
「まったく何考えてんのかしら」
「ホント、何しに言ったんですかねェ 真琴さんのところに」
  ガチャ
「来た」
ドアが開く音に振り返る二人。 そこには――――

「ゼー ゼー ただいまガ〜」
『ど どうしたのよ、その声!!』
ボロボロになった上に、声までつぶされてしまったレモンがそこにいた!

『へへ… づぶされぢゃったァガ〜 ぞ ぞれより花ごどばの歌詞教えでよ おぼえでないんガ』
                                     <続く>

24229話6:2010/05/19(水) 21:46:23 ID:???
…それからどれ位の時間が経ったのか…
母親が帰ってきた直後、倒れていた惣一を見て助け起こす。
『お母さん!! 妖精が…妖精が僕を殺そうとしたんだ!! ほら!!あそこで死んでるのがそうだよ!!』
「まさか… これが妖精だなんて…」
母親は妖精の死体をつまみ上げ、トイレに流す。これでもう大丈夫…



翌日、惣一は美沙里を訪れ報告していた。
{…だから妖精の姿を見ちゃいけない、って言ったじゃない}
「ご… ごめんなさい…」

{別にあやまる事はないわ
 でも… 昆虫採集用の薬なんかで、その妖精が…死ぬとは思えないけどね…}

ミザリィの言葉にまたしても顔面蒼白になる惣一だった…



 ―その夜・住宅街―
マンホールのふたがゆっくりと開き、中から息も絶え絶えな妖精が這いあがってくる。
『クソォ… アノガキ 今ニ見テロ…  必 ズ 復 讐 シ テ ヤ ル !! 』
夜空に妖精の声が響く。その夜は不気味なほどに見事な満月だった…



次の日、惣一が学校から帰ってくるが、まだ母親は仕事でいない。
ゲームでもしようかと自室へ戻ると、なんと部屋がめちゃめちゃに荒らされている!
「こ… これは… 誰がこんな事…」
『俺ノ仕業ダヨ! コノ前ハヤッテクレタジャネェカ…ドウナルカ、ワカッテルダロウナ コゾウ?』
妖精が復讐しに現れた!
惣一はたまらず逃げ出すが、妖精はすぐに殺そうとせずじわじわ殺そうと後を追う…

24329話7:2010/05/19(水) 21:46:45 ID:???
――しかし、外に出た妖精の前に女性の足が立ちはだかった!ミザリィだ!!
{あらあら、面白い生き物がいるわねぇ}
姿を見られた妖精はミザリィも殺そうと飛び掛るが、ミザリィは妖精を叩き落した!
叩きつけられ弱った妖精を拾い上げると、{いい商品になりそうだわ}と観察する。
『ナ!? ドウイウ意味ダ!? ハ…離セ、苦シイ!!』
必死の抵抗も空しく、妖精はそのままミザリィに連れ去られていった――――



一方、惣一は美沙里に助けを求めにやってきた。
『お姉さん、お姉さん!! 妖精が… 妖精が生きてたんだ!!』
{あら、そんな事より新しい商品が入ったのよ 見せてあげるわ}

そう言って取り出したのは、連れ去った妖精の『 剥 製 』…もちろん本物の!!

{君のコレクションに加えてみない?}



{…皆さんも身の回りで物がなくなった時は注意して下さい…
 あなたのそばに、妖精がいるのかもしれません… 恐ろしい妖精が…}


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