日本外交のトラウマ
―――この法律は、「お祖父さん、岸信介氏の見果てぬ夢を果たす」という安倍さんの個人的な願望が、強く出ているのでしょうか?それとも、米国から、要請されていたという要素が強いのでしょうか?
私は、両方だと思いますね。安倍さんが一番やりたいのが「戦後レジームからの脱却」なのですよ。これは三本柱があって、一つは「憲法改正」。二つ目が「対等な日米同盟」。この対等っていう中身が問題なのだけど。そして三つめが「自虐史観に支配される教育改革」という。これを同時進行でやってきているのですよ。これが、ある意味でおじいちゃんの、岸信介さんのやろうとしたこと。非常に強い決意で臨んだのだけど、道半ばにて倒れた。その時期がいま、巡りまわって孫の自分に来たっていう気持ちが非常に強い。
それから、もう一つが、湾岸戦争のトラウマ。あの時、自衛隊の派遣を何度も要請されたのだけれども、結局出さないで、お金だけ出した。感謝をされなかった。そしてトラウマの最たるものは、歴代の首相によく聞かされたことだけど、アメリカの国防総省があれ以来、二言目には「日本って国は、そこまで恥ずべき臆病者か?」って言われた。「日本には外交ってあるのか?」とある筋から言われ続けた訳ですよ。これが彼らのトラウマなのですよ。本当にトラウマ。
それに対して、ジャーナリズムの立場から言うと、当時それを止めた後藤田正晴さんが正しい。彼の「アリの一穴論」。絶対ダメだって。外務省も「これをやらなければ、日米同盟もおかしくなりますよ。孤立しますよ」って、説得に後藤田さんのところに行くわけですよ。そうすると後藤田さんが「ふざけんな。やるならやってみろ」と「俺を倒していけ」って「俺は体張ってでも止める」って。「これはアリの一穴なんだ。これを認めたら憲法なんて、9条なんてないのとおんなじだ!どんどん、どんどん戦争する国になってしまう。そこまで分かっているのかお前ら!」って。
それで最後は出さないって決断するのですよ。この争いが、ずーっと。で、アフガンのときに、敢えて名前を挙げちゃえば、アーミテージですね。国防総省、日米安保のドンとか、ハンドラーってね、異名を持っているのだけども。
彼が最初に言ったのが「Show the flag」。とにかく、日本旗「日の丸」だけでも立ててくれよと。紛争地、アメリカが戦っているところで。それで次がイラク戦争。「Boots on the ground」って。それでこないだ「News23」で彼とインタビューやりましたけど。何と言ったかというと、「長年憲法9条がバリケードのように立ちはだかって、日米軍事の協力ができなかった」と。「今度、それがなくなるのだ」と。
バリケードが取り払われると。それで、敢えて言うと、「Show the flag」、「Boots on the ground」次は、「Sheds the blood」、「血を流せ」って日本も少しは。ついに、ここへ来たってところですよね。でもね、「Sheds the blood」って大変なことなのですよ。
でも、トラウマからするとそうしなきゃダメだって。これを私がなんでここまで強く言えるかっていうとね。新法案を推進してきた自民党や政府の幹部、外務省の高官やOBとかみんな取材しているのだから。彼らの本音ベースの発言なんかも、取材して取っている。彼らはっきり言うのですよ、「自衛隊が血を流せないで、どうしてこれから日米同盟が成り立つのですか」って。そうゆう発想が根底にあるわけだよ。見捨てられ論ですよ。